衆議院

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第10号 令和5年5月11日(木曜日)

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令和五年五月十一日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤信太郎君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 山下 貴司君 幹事 階   猛君

   幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      石井  拓君    石破  茂君

      石原 正敬君    岩田 和親君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      神田 憲次君    岸 信千世君

      熊田 裕通君    小林 鷹之君

      國場幸之助君    下村 博文君

      田野瀬太道君    田畑 裕明君

      辻  清人君    中西 健治君

      船田  元君    古川 直季君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      細野 豪志君    務台 俊介君

      山本 有二君    新垣 邦男君

      大島  敦君    奥野総一郎君

      城井  崇君    近藤 昭一君

      篠原  孝君    本庄 知史君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      岩谷 良平君    小野 泰輔君

      三木 圭恵君    國重  徹君

      浜地 雅一君    吉田 宣弘君

      玉木雄一郎君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     田畑 裕明君

  越智 隆雄君     石井  拓君

  大塚  拓君     岸 信千世君

  渡辺 孝一君     岩田 和親君

同日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     古川 直季君

  岩田 和親君     石原 正敬君

  岸 信千世君     大塚  拓君

  田畑 裕明君     青山 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     渡辺 孝一君

  古川 直季君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(特に、参議院の緊急集会を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、参議院の緊急集会を中心として討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝です。

 本日は、緊急事態における議員任期延長に関連し、参議院の緊急集会の適用範囲について、議論となる点を整理してみたいと思います。

 まず、この国の運営の大前提とすべきは、どのような事態に陥っても、我が国の民主主義の根幹である国会機能を維持する、このことであります。そのためには、あらゆる事態において二院制国会を維持し、民主的統制の下に国の運営を行っていくことが重要と考えております。

 しかしながら、我が国の憲法には、いわゆる有事と言われる緊急事態の規定が欠落しております。

 本日のテーマである衆議院解散時における参議院の緊急集会は、予定した衆議院総選挙が実施されることを前提とした、いわば平時の規定であり、短期間に適用される制度です。仮に、衆議院の解散時や議員の任期満了時に緊急事態が発生し、長期かつ広範な地域において選挙の実施が困難な状態に陥ったときの対応は、憲法に規定されておりません。結果として、衆議院不在の状態が継続され、国の根幹を成す二院制国会が機能しなくなってしまいます。

 私は、長期にわたって衆議院不在が予想されるような有事が発生した場合においても二院制国会を機能させるために、憲法の明確な要件に基づき発動される緊急事態時の議員任期延長などの措置を講じておくことは、立憲主義の観点からも極めて重要と考えているわけであります。

 この基本的な認識を前提とし、憲法五十四条の文言に沿って、参議院の緊急集会が想定している適用範囲について、確認をしてまいりたいと思います。

 まず、配付資料上部、憲法五十四条の条文を御覧いただきたいと思います。

 第一項で、「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。」として、解散から新しい衆議院議員による特別会の召集までは、最大七十日間であることを定めております。

 次に、第二項では、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」と規定し、二院制国会の大前提である両院同時活動の原則を定めているわけであります。その上で、「但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」と規定し、二院制国会の例外としての参議院の緊急集会を定めているところであります。

 さらに、第三項では、この参議院の緊急集会において取られた措置は、「臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」として、その効力は限定的なものであることを規定しております。

 以上の文言を手がかりにいたしまして、日本国憲法が参議院の緊急集会の適用範囲をいかに限定的なものと考えているのか、四つの論点から検討してみたいと思います。

 まず、この配付資料の一、場面の限定でございます。

 五十四条二項では、明確に「衆議院が解散されたとき」と定められております。一方で、この規定を拡張解釈し、任期満了による衆議院不在時にも類推適用できるのではないかとの意見があります。

 この任期満了による衆議院不在の期間は、公選法及び国会法によって、総選挙までの三十日プラス臨時会召集までの三十日の最大六十日とされており、解散・総選挙が想定する七十日と同様に、一時的な衆議院不在の場合と言えるかもしれません。

 しかし、条文上、明確に「衆議院が解散されたとき」と規定されているにもかかわらず、任期満了時にも類推適用することは、憲法の明文規定に反し、立憲主義の観点からは決して望ましい解釈とは言えないと思います。

 次に、配付資料の二、期間の限定の論点です。

 憲法五十四条一項が想定する参議院の緊急集会が開催可能な期間は、解散から総選挙までの四十日間に加え、特別会召集までの三十日間、最大でも七十日間と考えられます。総選挙までの四十日に特別会召集のための準備期間を加えた、四十日プラスアルファ程度ではとの見解もございます。

 いずれにしても、参議院の緊急集会は、四十日プラスアルファから最大七十日程度の期間に次の新しい国会が召集されることを前提とした、平時の制度であることが理解できます。

 これに対し、この期間の限定を拡張し、衆議院の解散中に緊急事態が発生し、総選挙が七十日を超えて困難な場合にも参議院の緊急集会の規定が類推適用でき、議員の任期延長を行わなくてもこの規定で事足りるのではないかとの意見があります。この論点こそは、参議院の緊急集会に関する解釈の最も重要なポイントであります。

 この類推適用を認める拡張解釈の理由は、衆議院の総選挙が七十日を超えた場合であっても、衆議院不在という点では同じだからと推測されます。しかし、憲法が想定する衆議院の不在期間は、あくまで平時の一時的な期間であり、予定された期間内に総選挙により新たな衆議院議員が選出されることを前提としているはずであります。

 衆議院が解散され、衆議院議員が不在となった状態で仮に緊急事態が発生し、かつ、総選挙の実施がいつ行われるか予測できないほど厳しい状況に陥ったとします。そのときこそ、国民の安全と生活を守るため、憲法上の大原則である二院制国会の機能を最大限発揮することが求められるはずであります。

 にもかかわらず、有事において、国会が二院制の機能を発揮できず、その民主的統制を平時の制度としての一院である参議院の緊急集会に委ねることは、憲法が求める国の運営原則にかなっているとは到底言えず、国民の負託に応えることにもなりません。

 また、そもそも、参議院の緊急集会は二院制国会の例外であり、その規定の厳格な解釈が大原則であることは言うまでもありません。

 このように、参議院の緊急集会は、その開催可能な期間について限定されたものであることがよく分かると思います。

 なお、こうした議論は、参議院の緊急集会の位置づけを変更させるものではなく、平時における衆議院解散から総選挙を経て特別会召集までの衆議院不在の期間においては、国会機能を代替する機関として憲法により特別に位置づけられた重要な規定であると認識しております。

 私たちが議論すべきは、一院が持つ権能についてではなく、現行憲法に欠落している、有事における二院制国会の機能をいかに維持するかという観点からの検討であることを、改めて皆さんと共有したいと思います。

 次に、配付資料、三の1、権限の限定を御覧ください。

 参議院の緊急集会は二院制国会の例外であり、その性格から、内閣総理大臣の指名、条約締結の承認、内閣不信任決議などの権限は行使できないと考えられており、その解釈も現行規定の枠内で安定しています。

 次に、2、案件の限定です。

 五十四条二項ただし書では、参議院の緊急集会を求めることができる主体を内閣と規定しています。これを受けて、国会法では、緊急集会で審議できる案件は、内閣が示した案件とこれに関連する案件に限られるとされています。

 これについては、国会法改正により、処理できる案件の範囲を拡大できるのではないかとの意見があります。しかし、国会法における案件限定は、内閣が緊急集会を求めることを踏まえた憲法上の要請であり、法律でこれを拡大することには無理があり、慎重な議論が必要と考えます。

 ここにおいても、参議院の緊急集会が行使できる権限の面でも、審議できる案件の面においても、限定的であることが理解できると思います。

 最後に、配付資料の四、暫定性の論点です。

 参議院の緊急集会で取られた措置は、事後の衆議院の同意が必要であり、暫定的な措置とされています。新たに衆議院が構成され、二院制国会の原則に復帰する以上、当然のことと思われます。この点につきましては、現行規定の枠内解釈で安定しているものと思われます。

 以上、私なりに論点整理をさせていただきました。

 そのポイントは、配付資料の下、枠囲いにありますように、第一、参議院の緊急集会は平時における二院制国会の例外であることを踏まえ、立憲主義の観点からも、憲法の慎重な解釈が必要ではないかということです。第二として、憲法に議員任期延長などの新たな規定を設け、有事における二院制国会の機能維持を図るため、万全の措置を講ずるべきではないかということであります。

 今朝の幹事会において、本日の集中討議を踏まえ、来週の定例日には参議院の緊急集会について参考人質疑を行うこととなりました。引き続き、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い議論が活発に行われるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いいたしまして、私の発言といたします。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎です。

 本日は、参議院の緊急集会に関連して発言をさせていただきます。

 日本国憲法は、徹底した国会中心主義を採用し、いわゆる緊急事態条項を設けていません。昨年から見てきたように、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症、それぞれにつき基本法制があり、濫用のおそれなく緊急事態等の認定を行い、対応する仕組みがあらかじめできています。これらで不十分な場合、例えば予算措置が必要であるとか新たに現行法改正の必要が生じた場合には、国会で審議をして対応することになります。急ぐのであれば、迅速に審議を進めればよいだけであります。

 緊急政令、緊急財政処分条項については、日本国憲法制定時に検討されましたが採用されず、いかなる場合でも、立法機能、行政監視機能等、国会機能の維持を大前提として、事前の立法による政令委任、参議院の緊急集会の規定が設けられた経緯があります。

 こうした経緯から見ても、いわゆる緊急事態条項を憲法に規定する必要がないことは明らかです。公明党も同趣旨の御発言をされたと理解しております。

 ただし、現行憲法上、明らかでない点があります。災害や武力攻撃事態などにより選挙が期日までに行えず、衆議院の全部又は一部が選任されない場合にどのように対処するかという点です。これを、選挙困難事態と仮に呼びます。

 参議院の緊急集会は、憲法の条文上、衆議院の解散から特別国会の召集までの七十日間に、内閣は国に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会を求めることができる、緊急集会において取られた措置は臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合にはその効力を失うと規定されており、通常どおり選挙が行われることを前提とした規定ぶりになっています。

 つまり、今の現行憲法には、選挙困難事態、選挙ができないということについての規定がないわけであります。このことから、日本国憲法は、選挙はいかなる場合にも行うことを前提としていると考えられます。

 一方で、大災害、大規模テロや武力攻撃事態、感染症など、様々な事態を想定しておかなければならない状況が近時生じています。現に、東日本大震災の際には、地方公共団体の議員及び長について、半年を限度として、選挙期日、そして議員任期の延長が行われました。

 国会議員の任期は憲法に明示されており、地方公共団体議員のように法律で任期を延長することはできません。現実に国政選挙が行えない場合にどのような対処をするのか、あらかじめ議論をして結論を得ておく必要があります。

 そこで、まず、どのような場合が選挙困難事態に当たるのかについて、先ほど述べた例を念頭に慎重に議論し、定義を定める必要があります。

 その上で、選挙ができないかどうかの具体的な判断については、一義的には選挙を実施する行政府に委ねざるを得ないと考えられますが、そこで、時の政権が権力維持のために恣意的に選挙を先送りすることを防ぐため、権力分立の観点から、司法及び国会をこの判断に関与させる必要があると考えます。また、司法の関与を考える場合、憲法裁判所の設置の是非も併せて議論すべきであります。

 加えて、選挙をいかなる場合にも行うことが基本である以上、選挙困難事態の期間や地域についても慎重な判断が必要であります。

 すなわち、選挙困難事態について、どのような場合が想定されるのか、あるいはそのような事態は生じないのか、それを誰が判断するのか、そしてどの程度の期間を想定するのか、全国一斉に投票を繰り延べるのか地域を限定するのかといった論点について、有識者から伺う必要があると考えます。

 次に、選挙困難事態の認定が全国に及び、衆議院の定足数を満たさなくなる場合に、参議院の緊急集会制度でどこまでカバーできるのかが論点になります。

 選挙困難事態に関し、新藤幹事の以前の論点整理メモにも、議員任期の延長等は、緊急集会で対応できない場合の措置とあります。つまり、緊急集会で対応できない場合とはどのような場合かについて定まらないと、議員任期の延長の議論に至らないことになります。

 緊急集会については、任期満了により衆議院議員が存在しない事態においても、類推適用により招集できるという説が近時有力になっています。こうした見解に立てば、災害時など選挙実施のめどがある程度立つ場合には、選挙を繰り延べつつ、緊急集会で対応できることになると考えます。

 この点についても、有識者の方の見解を伺いたいと思います。

 さらに、全国的な選挙困難事態が長期にわたる場合、緊急集会の活動に機能的、時間的に限界があるのか、何ができるのかという問題があります。

 機能的限界については、緊急の必要に該当するものである限り、国会の権能の全てを行うことができるとする説もありますが、緊急集会はあくまで臨時のものであることから、全ての国会の権限が行使できるわけではないとする説が有力のようであります。緊急の必要については、制定過程から、旧憲法と同様、福祉増進という積極目的のために本条を発動することはできないとする有力説もあります。

 また、条約締結の承認が可能なのか、内閣総理大臣が欠けたとき、内閣総理大臣の指名はできるのか、内閣不信任決議はできるのかなどの論点もあります。

 一方、七十日を超えてどこまで緊急集会で国会機能の代行ができるのか、時間的限界については余り議論がなされていないように思われます。

 緊急集会が機能的、時間的にいかなる範囲で二院制の国会、通常の国会の代行ができるのか、有識者に伺いたいと思います。

 以上について、有識者の見解を伺い、審査会で議論を詰め、国会中心主義の観点から必要があるということであれば、議員任期の延長について、国会機能を維持するための選択肢の一つとして議論を進めてもよいというふうに考えております。

 最後に、全国的な選挙困難事態の対応を考える際、仮に議員任期の延長という手段を取るとすると、任期が終了しているのに選挙を経ていないという民主的正統性の問題があり、これについても、参議院緊急集会と同様、慎重な検討が必要であるということを念のため申し上げて、発言を終わりたいと思います。

 以上です。

森会長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 参議院の緊急集会については、本審査会において、この間、主にその射程、期間、権限等について議論がなされてきました。そして、それは、大規模災害やパンデミック、内乱、武力攻撃などにより選挙実施が困難な中で、解散又は任期満了によって衆議院議員が存在しない状況となった際に、いかに国会の機能を維持するかという課題に対処するための議論でありました。

 しかし、その議論は、あくまで現行の憲法下においてそのような事態になった際にどのような対応が可能かという議論です。本審査会は、憲法改正も含めて、我が国にとってベストな憲法とはいかなるものかを議論する場であるはずです。

 ゆえに、現行憲法を前提に緊急集会で対応する場合と、憲法を改正して任期延長を規定すること、いずれが優位か比較考量して結論を出さなければならず、そのために、今週と来週で緊急集会について集中討議が行われているということを改めて確認させていただきます。

 そして、緊急集会の各論点について、仮に、最も限定的な解釈、すなわち、緊急集会は解散時のみに、四十日を超えない期間で、条約の承認や本予算の議決はできず、かつ、内閣が示した案件に限って権限が行使できるという考えに立った場合はもちろん、最も広範な解釈、すなわち、解散時だけではなく任期満了時にも、七十日を超えて、内閣の示した案件か否かにかかわらず、予算の議決等、国会の権限に属する全てを議することができるという解釈に立ったとしても、緊急事態における任期延長は必要です。

 なぜなら、言うまでもなく二院制は憲法上の重要な原則であり、その例外たる一院のみによる緊急集会で長期間対応するよりも、議員任期を延長して二院制を維持する方が権力分立と国民主権の観点から優位であるからです。

 この考えに基づいて、我々維新の会は、国民民主党、有志の会とともに、憲法五十四条を改正し、その三項として、衆議院議員の任期満了後に総選挙が行われる場合において、国に緊急の必要があるときも同様とするとする規定を設け、緊急集会は任期満了時にも開催できることを憲法に明記することを提案しています。

 その上で、九十五条の二を設けて、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかとなったときは、議員任期が延長されると規定することを提案しています。

 これにより、緊急事態による選挙実施困難な状況が七十日以内であれば臨時的、暫定的な措置として緊急集会で対応し、七十日を超える場合は議員任期延長で対応することを明確化し、また、憲法上の重要原則である二院制を維持しつつ、議員任期の延長が例外的措置であることにも配慮をしています。

 さて、この緊急集会と議員任期延長について、立憲民主党の奥野委員から、緊急集会が任期満了時に招集可能か、臨時会同様のフルサイズの機能を有するか、本予算審議が可能か、有識者の見解を踏まえた検討が必要、解釈、国会法改正で対応不可能ならば議員任期延長を議論すべきと考える旨を、城井委員からは、緊急集会の射程、機能、権限についての議論の結果、選挙困難事態への対処が必要となれば、任期延長と合わせて、閉会、解散禁止等を検討すべき旨を、中川幹事からは、緊急集会の憲法解釈の結論によっては、憲法に選挙困難事態における議員任期の特例を設ける必要が出てくる可能性もあり得る旨を発言されておられます。

 私は、先ほど申し上げたとおり、仮に緊急集会について最も広い解釈を取ったとしても、現行憲法にこだわらず、憲法改正も視野に入れるならば、二院制の原則はできる限り維持されるべきなので、議員任期延長規定を創設することがベターなはずです。にもかかわらず、現行憲法の緊急集会の解釈では対応不可能ということが明らかになって初めて、憲法改正による議員任期延長を検討するとおっしゃいます。

 立憲民主党にお伺いいたしますが、これは、憲法改正をしたくないため、できることなら憲法改正をしなくて済む緊急集会を活用したいということなのでしょうか。すなわち、議論の前提として、憲法を改正したくないというお考えがあるのではないでしょうか。念のため確認をさせていただきたいと思います。

 さらに、立憲民主党にお伺いしますが、緊急集会の憲法解釈について、どのような解釈であれば任期延長が不要だと考えるのか、そしてそれはいかなる理由なのかを教えていただきたいと思います。

 また、昨日の参議院憲法審査会で、立憲民主党の杉尾秀哉筆頭幹事は、議員任期延長などの憲法改正は不要であると断言をされた上で、任期延長を含む憲法改正が不要な理由をとうとうと述べられました。立憲民主党として議員任期延長のための憲法改正は不要という結論に達したということなのか、中川幹事にお伺いしたいと思います。

 加えて、このような緊急集会や任期延長についての本審査会での議論において、立憲民主党の委員から、衆議院だけで議論を進めることは問題、我が党の参議院議員も強く反発とか、緊急事態ぐらいは参議院に花を持たせるのが衆議院の情け心などといった旨の発言がなされていますが、是非、しっかり衆参合わせて党内で議論し、十分に意思疎通を図ってから本審査会に臨んでいただきたいと思います。

 なお、昨日の参議院憲法審査会において、我が党の音喜多駿政調会長が、安全保障環境の激変や大規模災害発生のリスク、そして百年ぶりに感染症の蔓延を経験した我が国にとって、参議院の緊急集会では補い切れない長期にわたる緊急事態は想定しておくべきであり、そうなった際の行政の暴走、権力の暴走を止めるためにも、緊急事態条項、議員任期の延長の項目の創設につき早急に前へ進めるべきと述べており、我々維新の会は、これからも衆参の所属議員が足並みをそろえて、一丸となって緊急事態条項創設を含む憲法改正を目指していくことを申し上げて、私の発言を終わります。

 ありがとうございました。

森会長 ただいま岩谷君から立憲民主党に対して御質問がございましたけれども、適切な時期に御答弁をお願いいたします。

 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一です。

 本日のテーマであります参議院の緊急集会について意見を述べます。

 まず、憲法五十四条二項の緊急集会については、検討すべき論点として、一つ目に、緊急集会の意義、制度趣旨、二番目に、緊急集会の適用場面として、条文には「衆議院が解散されたとき」となっておりますが、任期満了選挙中のような場合にも類推適用ができるのか、三つ目に、仮に類推適用できるとしても、その活動期間はどの程度と考えるのか、四つ目に、緊急集会で審議できる事項、範囲をどう考えるのか、最後に、五つ目、五十四条二項にあります「国に緊急の必要があるとき」とはどのような場面を指すのかということがあろうかと思います。

 まず、一番目の緊急集会の意義、制度趣旨については、確かに、現憲法は、緊急政令や緊急財政処分を置かない代わりに、いわば国会中心主義を取るため、緊急集会は万能の機能を有するとの見解もありますが、憲法は二院制を大原則とし、かつ、衆参両院の同時活動の原則を定めているわけですから、参議院の緊急集会は、衆議院が存在しない場合の、一定の活動期間を区切られた、国会の代行機関として認められた例外的かつ暫定的な制度であると考えております。

 したがって、これから述べる様々な論点についても、例外規定である以上、厳格に解釈されるべきと思います。

 次に、衆院の解散の場合以外にも類推適用できるかでありますが、衆議院が不在となったときに緊急の必要がある場合の国会の代行機能という点に着目すれば、解散以外の任期満了選挙の場合などにも、新たな衆議院の誕生を待ついとまがなく、国会の代行機能を発揮すべき場合はあり得るわけですから、活動期間や権限の問題は別としても、衆議院の任期満了選挙時などにも類推適用することは可能と思います。

 ただし、実際に衆院の解散以外の場合にも緊急集会を開催することに疑義が生じないよう、憲法の条文を改正して堂々と解散時以外にも適用することが、例外規定は厳格に解釈すべきという意味からは妥当と思います。

 次に、解散時以外にも緊急集会が行えるとしても、その活動期間はどの程度かという論点につきましては、衆院解散時の緊急集会は七十日間の活動期間の制限があるのに、ほかの場合にはこれを超えて大幅に活動が可能という解釈はなかなか難しいと思っております。

 憲法は毎年の常会召集や毎年の決算審議を定めており、また、予算案は単年度主義を前提としていること、さらには衆院の予算先議権があることなどからすれば、一年間を超えて緊急集会を認めることは、これら憲法の規定に抵触することは明らかです。

 やはり、緊急集会は二院制の例外を成すものである以上、拡大的な運用は避けるべきであり、また、明文で衆院の解散時には七十日間の活動期間の制限があることも併せて考えれば、緊急集会の活動期間はやはり七十日程度とするのが妥当であろうと思います。

 四つ目の論点、緊急集会で行える事項、範囲についてです。

 この問題は、緊急集会は、憲法上、内閣が求める場合に限定され、かつ、国会法では案件も内閣が示したものに限ると規定をしておりますけれども、その内閣が示す案件は広範なものに及ぶのか、例えば予算案なども緊急集会で行えるのかという論点と、もう一つは、国会法を改正すれば、内閣が示した案件以外にも議員に発議権等を認めることができるのかという二つの論点があろうかと思います。

 まず、最初の、緊急集会で審議できる案件の範囲ですが、確かに、過去行われた緊急集会では暫定予算も審議されました。ただし、このときは、三月二日に当初予算案が衆議院を通過し、その後、参議院に予算審議が移った後の三月十四日に衆議院が解散をされ、予算が不成立となったため、二か月間の暫定予算として緊急集会で審議されました。つまり、衆議院の予算先議権に抵触しない形で開かれたということです。

 やはり、衆議院の優越を定めた規定に抵触するような議案を内閣が示して緊急集会に委ねることには一定の限界があろうと思われます。

 次に、国会法を改正すれば、内閣が示した案件以外にも議員は発議、質疑できるのかとの論点です。

 これは先日の当審査会でも私が発言させていただきましたが、国会法で緊急集会は内閣が示した案件に関連する事項に限ると改正された経緯において、当時の内閣憲法調査会第二委員会で海保参議院議事部長は、緊急集会を求める手続、緊急集会における議案の発議等の議員権能についての規定等を設け、はっきりと条理上緊急集会の本質と相入れないものを排除することによりましてと発言をされております。つまり、内閣の示した案件以外に議員が発議等を行うことは緊急集会では行えないと明言をしているわけでございます。

 つまり、五十四条二項は、内閣に緊急集会の請求権限があることだけでなく、緊急集会で議論すべき案件も内閣の示したものに限られ、議員立法や行政監視機能といった一般の議員権能は制限される趣旨であるとの解釈を示しているものと言えますので、内閣が示した案件以外を議員が発議できるとするような国会法の改正はできないと解釈すべきです。

 最後に、五十四条二項の「国に緊急の必要があるとき」とは、参議院の緊急集会は二院制の原則のあくまで例外であることや、憲法五十四条三項で衆議院の承認を要件としていることからすれば、この要件というのは、総選挙後の特別国会、任期満了時にも類推適用できるとすれば、任期満了選挙後の臨時国会を待つ余裕がないほどに切迫した国家的必要がある場合であろうと思っております。したがって、現在議論されております国政選挙の実施が困難となる事態は、これに当然含まれてくるというふうに私は思っております。

 以上であります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 緊急集会と、若干、憲法九条についても述べたいと思います。

 まず、緊急集会について、少し大きな枠組みの話をさせていただきたいんですが、私は、憲法の統治機構に関わる条文は厳格に解釈すべきであって、無理な解釈は避けるべきだというのが基本的な考えだと思います。

 皆さんも覚えていらっしゃると思います。昨年二月に本審査会に参考人としてお越しをいただいた高橋和之先生、東大名誉教授も、憲法の条文で人権に関する規定は原理の性格を持つのが常識であり、統治機構の規定はルールの性格を持つのが通常であると解されますと述べておられます。そして、原理は、ルールのような明確な要件を定めたものではなく、他の原理との調整を前提とした規定であるが、一方、ルールは、他の原理との調整を予定していない明確な準則であって、厳格に解釈すべきと述べておられます。

 であれば、まさに統治機構の規定の一つである緊急集会を定めた憲法五十四条も、ルールとして厳格に解釈、適用すべき条文の一つであると思います。緊急集会は、原則、条文上、解散時のみに適用と書いている以上、解散時のみに厳格適用すべきと考えるのが適切だと思います。

 また、解散から四十日以内に総選挙、そして選挙から三十日以内に特別会の開会が憲法に規定されている以上、緊急集会は七十日を超えて国の重要事項を決定することはできないと解すべきだし、さらに、事後的に衆議院の同意が得られなければ措置の効力が失われる暫定性も憲法上明記されている以上、緊急集会はあくまで一時的、暫定的な仕組みであると厳格に解釈すべきだと考えます。

 そもそも、緊急集会の権能を解釈で無制限に広げることは、二院制を原則とする憲法の規定に違反すると考えます。ここでの本質的な議論は、行政対国会ではなくて、国会の中における一院制か二院制の是非だというふうに思います。

 つまり、立法や解釈で、あくまで一時的、暫定的、限定的と現行憲法上規定されている緊急集会の射程を延ばしたり拡大することは立憲主義に反することになり、よって、憲法に明記されている議員任期を延長するには、やはり憲法改正が必要だと考えます。

 そこで、先ほどからありましたけれども、来週は四つの論点について参考人に確認したいと思います。

 まず、緊急集会について対応できる場合、これは解散時のみならず任期満了時も含むのか。我々は、原則、厳格に解釈すべきなので、もしそうであれば、それは憲法に明記すべきだと思いますので、先ほど、我々、維新の皆さんとそして有志の皆さんと一緒に出した共通条文の中には新たな規定を設けております。二つ目に、七十日を超えて可能かどうかということですが、可能ではないと我々は考えるので、この点も確認したいと思います。権限について、本予算の議決や条約の承認等も可能かということ。そして案件、これは先ほどから出ていますが、内閣が示した案件以外も独自に審議可能かどうか。こういった点について明確にしていきたいと思います。

 そして、やはり立法や解釈で対応困難となれば、そのときは、先ほど奥野さんも言っておられましたが、野党第一党である立憲民主党さんにも是非、憲法改正の具体的な議論に入っていただきたいと思います。もし立法でできるということであれば、篠原先生に何度も聞いていますけれども、具体的な特別立法の内容をお示しいただきたいと思います。

 次に、憲法九条についても述べたいと思います。

 九条こそ、軍事的公権力の行使という最大の権力行使に係る規定だと思いますので、ここも厳格に解釈すべき条文の一つだと思います。

 前回、私は、自民党の九条改正案の問題は、自民党の、組織としての違憲論は解消されても、自衛隊の行使する自衛権、つまり行為としての違憲論が解消されないという問題を指摘いたしました。つまり、自衛隊が九条二項で禁止されている戦力なのかどうかということを曖昧にし続けるがゆえに、自民党案の国防規定では違憲論が解消できません。やはり、九条改正を検討するのであれば、自衛隊を戦力として位置づける本質的な議論をすべきであって、戦力不保持を定めた九条二項の範囲の中で、しかも解釈によって自衛隊を戦力もどきと位置づけるやり方そのものを改めるべきだと考えます。

 この点に関して、一九五二年四月一日のジュリストの対談記事がとても興味深いので紹介したいと思います。

 我妻栄先生、宮沢俊義先生、田中二郎先生、兼子一先生、石井照久先生、団藤重光先生という法学界のスーパースターが勢ぞろいして、憲法改正と再軍備について誌上対談を行っています。これは是非皆さんも御覧いただきたいと思います。

 時は一九五二年、まさに警察予備隊が保安隊に改編される前夜での議論です。そこで我妻栄先生は次のように述べています。再軍備のような憲法制定当時には恐らく考えられなかった問題でも、憲法をいじくらないでそのままやっていこう、又はやっていけるという態度を取ることは私は賛成できないのです、それで、やはり重要な問題について、憲法の無理な解釈をしないで、それを堂々と取り上げて、国民全体の世論を聞いて十分論議を尽くした上で改正するかしないかを決めるという公明な態度を取ることが必要であると。これに対して田中二郎先生も、根本の考えにおいて、私は、今、我妻先生のおっしゃったところに全く賛成です、憲法をルーズに解釈して、ずるずるに、あたかもそれを改正したのと同じような実質的内容を与えていこうということは考え物ですと述べています。

 また、我妻先生はこうも述べています。この憲法の下にこれ以上のことをやるのは何といってもこじつけだ、そこで事情をはっきり示して、国会でも十分討論して、最後には国会の意見を聞いて、こうした事情、ああした事情でできた憲法が、こうした国際事情になったときに我らは何をなすべきかということをはっきり決定すべきではないか、つまり、抜き足差し足では困る、ここでちゃんと歩き直さなくちゃならぬのじゃないか。これに対して宮沢俊義先生も、私もその意見に賛成です、こういう難しい問題については、やはり国民全体が十分討議して、決定するチャンスを与えることは非常に望ましいと述べて、田中二郎先生も、これに対して、私も全く同感ですと述べています。

 また、団藤重光先生は、国内の秩序維持のために客観的に必要な限度ということが警察力の本質なので、それを超えると戦力となる、国内秩序の維持のために使うのだから警察力だ、戦力じゃないというのは非常に乱暴な議論だと思うと述べ、石井照久先生も、それは全くそう思いますと賛同の意を示しています。

 このように、警察予備隊から保安隊への改編時の一九五二年当時から、戦力に相当する実力組織を無理な解釈で戦力ではないとすることは非常に乱暴な議論とされていたわけであります。

 あれから七十年以上の月日が流れ、今、憲法九条改正の議論をしているときに、依然として自衛隊は戦力ではないとする解釈を前提に進めることは、積年の宿題に答えを出すものどころか、むしろ、長年引きずってきたこじつけを固定化させることにもつながるのではないか、そう懸念します。今こそ、これ以上の抜き足差し足忍び足ではなく、ちゃんと歩き直す必要性があると思いますし、そういった議論を行うべきです。

 憲法九条こそ、軍事的公権力の行使という最大の統治行為に関する規定です。まさに厳格に解釈すべきルール、準則であります。だからこそ、無理な解釈から卒業し、自衛隊を明確に戦力と位置づけることが憲法の規範性を回復する上でも必要であることを指摘しておきたいと思います。

 以上です。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 参議院の緊急集会について意見を述べます。

 憲法五十四条二項は、衆議院が解散され、国に緊急の必要があるとき、内閣が参議院の緊急集会を求めることができるとし、同条三項は、緊急集会において取られた措置は臨時のもので、衆議院の同意がない場合にはその効力を失うと規定しています。この規定は、国民の自由と権利を奪い、侵略戦争への道を突き進んだ歴史への反省を踏まえたものです。

 明治憲法は、帝国議会の閉会中に行政府による緊急勅令や緊急財政処分を可能としていました。政府は、この制度を濫用し、国民弾圧の手段に使いました。議会で廃案になった治安維持法の重罰化法案を議会閉会後に緊急勅令で制定したのは、その象徴的な事例です。

 敗戦後、政府は、新憲法制定に当たり、衆議院の解散などで国会を召集できず、緊急の必要があるとき、法律や予算に代わる閣令を制定できる旨の規定を盛り込もうとしました。しかし、旧憲法下と同様の制度を復活させる規定は総司令部との交渉過程で退けられ、代わりに憲法に取り入れられたのが参議院の緊急集会の制度です。

 当時の金森大臣は、憲法制定議会でのこの趣旨について、民主政治を徹底させて国民の権利を十分に擁護するためには、政府の一存で行う処置は極力防止しなければならない、どんなに精緻な憲法を定めても、非常という言葉を口実に破壊されるおそれがないとは断言できないため、行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えた、特殊の必要が起これば臨時会を召集して処置し、衆議院の解散後で処置できないときは参議院の緊急集会で暫定の処置をすると明確に述べています。

 ところが、今議論されているのは、戦争やテロ、内乱などに際して、内閣による緊急政令や緊急財政処分を可能にし、政府に権力を集中させるというものです。憲法の制定経緯と根本原理を無視し、国会の権能を奪い、国民の権利を制限する憲法停止条項にほかなりません。

 大規模災害や感染症の蔓延なども理由に挙げられていますが、東日本大震災やコロナ感染症の拡大においても、緊急事態条項がなかったから対応できなかったという問題は起きていません。この審査会に参考人として出席した憲法学者や災害の専門家が、極端な事例を出して議論すれば間違う危険性が高いと繰り返し指摘したことを思い起こすべきです。

 ロシアのウクライナ侵略などを挙げて、いついかなるときも国会の機能を維持することが必要として国会議員の任期延長を可能にすべきだという主張も行われていますが、有事の認定という重大な決定に際してこそ国民の判断を仰ぐべきです。アメリカにつき従って他国の紛争に軍事介入する決定を行った政府と国会議員に対し、選挙を通じて退場させる機会を奪うことは許されません。

 国民の参政権を奪う任期延長は、議会制民主主義の否定であり、行うべきではありません。衆議院が不存在の場合は、憲法の規定に沿って、国民から選ばれた参議院の緊急集会で対応すべきです。

 今、安保三文書の下で、国民の命と暮らしが脅かされています。

 戦後の日本は、日米安保体制の下で、外交、軍事、経済のあらゆる面でアメリカへの国家的な従属を深めてきました。米軍の補完部隊として創設され、育成、増強されてきた自衛隊は、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる周辺有事に際して、米軍への兵たん支援のみならず、相手国領土を直接攻撃する任務まで担わされようとしています。

 非正規雇用の拡大、消費税の連続増税、そこに物価高騰が追い打ちをかけ、国民の生活実態は深刻です。にもかかわらず、アメリカの軍拡要求に応え、軍事費をGDP二%に激増させ、現在と将来の国民に新たな負担を押しつけようとしています。歯止めなき軍備増強で侵略戦争を遂行し、国の財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験を思い起こすべきです。

 日本国憲法は、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、制定されたものです。

 今政府がやるべきことは、地域の緊張を高め、戦争の危険を引き寄せる軍事力の強化ではありません。この地域で絶対に戦争を起こさせないために、全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させる徹底した外交努力です。憲法が生きる政治の実現が今こそ必要だということを強調し、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 どうしても皆さんの発言のリサイクルになってしまいますけれども、参議院の緊急集会について意見を述べたいと思います。

 まず、私の理解を申し上げますと、緊急集会は、選挙ができる状態を前提とするという意味での平時の制度です。確かに、憲法制定の経緯の中で緊急時のための制度として設けられていますが、問題は、どう考えても長期にわたり選挙が実施できないような事態を想定していないというところにあります。

 こうしたことから、日本維新の会、国民民主党との三会派による共同提案では、選挙ができる場合の緊急対応は緊急集会で対応する、しかし、選挙が長期にわたり実施できず、国会が開会できないおそれがある場合には、議員任期の延長で対応できることとしています。

 今、意見を申し述べた上で、三つの論点について私の考えを申し述べたいと思います。

 第一の論点は、解散時以外の任期満了時にも緊急集会の規定を類推適用できないかという点についてです。

 憲法第五十四条第二項では、内閣が緊急集会を求めることができるのは衆議院の解散中と限定されています。しかし他方で、確かに、議員が不在になるという状況は解散時も任期満了時も同じです。そうしたことから、緊急集会を解散時だけでなく衆議院の任期満了時にも類推適用できるという学説があることも承知しています。

 我々三会派の共同提案では、衆議院議員の任期満了後に総選挙が行われる場合において、緊急集会を求めることができるとする改正を提案しています。こうすることにより、任期満了時の取扱いが解釈によらず明確なものになると考えています。

 しかし、任期満了時に緊急集会を活用できたとしても、繰り返しになりますが、元々緊急集会が想定している緊急時とは、普通に選挙が行われることを前提としています。第五十四条第二項で、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」とした上で、第三項で、「緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」と規定されています。任期満了時に緊急集会を開けるように類推適用したとしても、この条文との整合性を図るためには総選挙が前提となります。

 次に、七十日の期限限定を少しでも緩和することができないかとの論点が本審査会で出されています。

 我々の三会派の案もそうですが、憲法上許される緊急集会の活動期間が七十日以内という考え方は、先ほど申し上げた第五十四条第一項及び第三項の規定から自然に計算されるものです。つまり、解散から次の特別国会までの期間は、第一項に従って、解散から総選挙実施までの四十日に加え、総選挙から特別国会召集までの三十日を加えて最大七十日になります。

 また、任期満了の場合は、根拠規定が公職選挙法第三十一条第二項と国会法第二条の三になりますが、任期満了後に総選挙が行われる最大の期間は三十日、また、その後に召集される臨時会は、その任期が始まる、つまり任期満了時の総選挙の場合は投票期日から三十日以内とあるので、最大六十日となります。したがって、いずれの場合でも、憲法改正をしない限り、七十日間を超えることは違憲のおそれがあるというふうに思います。

 三つ目の論点として、緊急集会が審議できるのは、内閣提出の案件及びこれに関連する案件に限られるとされているけれども、この条件を緩和できないかとの意見もありました。

 これは、国会法上、緊急集会は内閣が個別具体的に示した案件しか審議できないと規定されているので、この法律を改正すれば、緊急集会でも他の国会活動が可能になるという主張かと推測します。しかし、事はそう単純ではありません。まず、国会法で内閣が請求した案件とこれに関連する案件の審議しか認められないとされるのは、緊急集会は内閣が求めた場合に限り開催されるといった憲法の趣旨から導かれるものであり、この案件の限定は憲法の要請するところと解されているからです。

 憲法学の通説でも、参議院の緊急集会で行使できる権限は国会の権限全般に及ぶのではなくて、行使できない権限があると限定的に解釈されています。もっと言えば、この学説の根本にある考え方は、参議院だけで国会活動をなし得るのは極めて異例なことであって、権力均衡の観点から、わざわざ内閣に緊急集会の請求権を与えている、この重みを踏まえたものであると私は理解しています。

 以前も引用しましたが、憲法学者佐藤功先生の言葉をかりれば、緊急集会制度は、両院制の国会に対する極めて特殊な場合の異例的、変則的措置であります。これが、緊急集会に関する国会法の条文において内閣の請求する案件に限定されている実質的な考え方だと考えています。したがって、形式的に国会法を変えましょうという話には簡単にならないというふうに思います。

 以上、参議院の緊急集会は、国会の二院制の例外であるがゆえに、審議の対象や活動期間の面でおのずと制約があります。この件に限らず、一般的に、法律を考える上で例外規定というものは厳格に解釈しなければなりません。だからこそ議員任期の延長制度というものが必要だと考えているわけですが、これらの点について、来週、本物の憲法学者の御意見を聞きたいと思います。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 本日の緊急集会の議論に当たって、大切なのは、やはり危機管理の要諦である想定外をできるだけなくすという視点から議論をすることがまず一点の要諦だと思います。そして二点目は、これまで議論をされなかったことかもしれませんけれども、この緊急集会というのは、一種の緊急事態条項ではあるけれども、世界でも類を見ない我が国独特の制度であるということ、あるいは、玉木委員もお話をされておりましたけれども、統治機構のルールは基本的には厳格に解釈をしなければならない、そういう視点だと思っております。二院制の例外である緊急集会の活動範囲を拡張して解釈するということは、今申し上げた諸点からも、私は基本的には慎重であるべきだというふうに考えております。

 まず、解散による衆議院不存在の場合のみこの緊急集会が適用されるのかどうかという論点についても今申し上げたような諸点で臨まなければいけないということと、あと、任期満了の場合は、基本的にはあらかじめその満了時期が分かっているということから、この明文が解散の場合に限定をされているということを重く見なければいけないということであろうかというふうに思います。

 現に、昭和五十一年、もし仮に任期満了と災害等がダブルで来た場合にこの緊急集会を準用することができるのかということが国会で議論されたときに、憲法学者が主張しているようなもちろん解釈ですとか拡張解釈について、時の法制局はこれに踏み切ることができませんでした。それだけやはりこの準用ということを議論するのは重いことだということの表れでないかというふうに考えております。

 この点、日本維新の会あるいは国民民主また有志の会の三会派で、選挙の一体性が害されるほど広範な地域において国政選挙の適正な実施が七十日を超えて困難であることが明らかな場合には緊急集会ではなくて任期の延長をもって臨むべきだという提案をされていることは、これは一考に値する非常に理論的な提案ではないかなというように思っております。

 もちろん、私どもも、いざというときに、緊急集会が任期満了のときに利用されることが絶対にいけないのかということを否定しているわけではなくて、今おっしゃったような限定的な期間、あるいは、当初は範囲内で緊急事態が終わると思っていたんだけれどもそれが長引いてしまったというときには、これはやはり緊急集会で臨むというようなこともあり得るのかなというように考えております。

 さて、この緊急集会について、権能の限定ということが言われております。

 おっしゃるとおり、衆議院というものの存在がない以上は、衆議院の優越の決議、あるいは憲法改正のように衆議院の議決が必要な決議というものは、この緊急集会によって行うことができません。そして、さらに、留意しなければいけないのは、衆議院の任期と参議院の任期が接着しているような時点で緊急事態が起きてしまったような場合、参議院の緊急集会を開催するときの人数が僅か百二十四名と、参議院の法定議員総数の二分の一になってしまうということでございます。

 こういった限定的な権能、あるいは範囲についても、人数についてももしかすると半分になってしまう参議院にフルスペックの国会審議を委ねてよいのかということは、私は慎重に考えるべきだというように考えておりますし、また、立憲民主党や共産党がこの任期延長の濫用による歯止めというものをしっかりと考えるべきだということに関して言えば、それは、緊急事態が去ったときにしっかりと政治部門が民意による選挙という形で審判を受けるということを強調させていただきたいというように思っております。

 最後になりますけれども、では、任期延長あるいは緊急集会があれば緊急政令や緊急財政処分というものは必要ないのかという論点について付言をさせていただきます。

 先ほど申し上げたように、当初、この緊急集会を制度化した時点においては、当時のドイツなどの事例や、あるいは明治憲法下の緊急勅令などの弊害を想定して、そのような処分あるいは政令というものは認めないという判断を下しましたけれども、その後の様々な激甚な災害あるいは諸外国の事例等を見た場合、あるいは選挙ができない場合の多くは、国会すら開けない、あるいは国会を開いて審議をするいとまがない、そういった事例をきちんと想定した場合に、諸外国で見ているような形での緊急政令や、あるいは政令に包括的な委任を設けるという対応の仕方を私はしっかりと制度化するべきだということを申し上げて、発言を終わらせていただきます。

城井委員 立憲民主党の城井崇です。

 私からは、憲法改正の手続としての国民投票におけるネット広告の課題について発言をします。

 国民投票法の制定から十五年以上がたちましたが、この間、インターネットを取り巻く環境は大きく変化し、国民投票法にも大きな課題を突きつけています。一昔前と比べ、現在では、インターネットの発展、普及、SNS利用の一般化によって流通する情報が過剰となり、アテンションエコノミーと呼ばれる状況が生まれています。また、AIなどを駆使したマイクロターゲティングが広がり、フィルターバブルやエコーチェンバーが生じた結果、内心の自由が知らぬ間に侵されるのではないかと懸念されています。

 さらに、フェイクニュースの流通などを踏まえると、言論の自由市場が機能するという考え方は、残念ながら再考すべきです。フェイクニュースや外国からの不当な干渉といった問題の解決が民主主義の強化にとって極めて重要であることは、今や世界各国の共通認識です。

 立憲民主党は、これらの課題に対処するため、これまでも国民投票法の改正を提案してきました。これまでの憲法審査会での議論では、ネット規制は困難であるという立場の会派もありますが、立憲民主党は、ネット規制は必要かつ可能であるとの立場です。実際、外国の例を見ると、ネット規制を導入しているケースが多くございました。

 これに関連して、国立国会図書館から三月に刊行された「諸外国の国民投票運動におけるオンライン広告規制」という報告書が大変労作でありまして、非常に参考になります。諸外国それぞれに異なる背景や事情があると思われますが、ネット広告等について、透明性や公平性の確保、フェイクニュース対策といった目的から検討が行われ、一定のルールが設けられている国もあるようです。

 先日も中川幹事から提案しましたが、改めて、この審査会の場で国立国会図書館から説明を聴取することを提案します。森会長に幹事会で協議することを求めます。

 その上で、立憲案の趣旨と内容について、諸外国の例と対比しつつ、改めて説明します。

 まず第一に、放送CMについて、勧誘広告を全面的に禁止するとともに、政党等による意見広告を禁止すべきです。また、ネットCMについて、政党等によるネットCMの禁止、ネット事業者等による掲載基準の策定の努力義務、広報協によるガイドラインの策定などの規定を盛り込むべきです。国民投票における放送CM及びネットCMの規制は、フランスでも行われています。具体的には、国民投票の投票日の六か月前から放送CM及びネットCMの利用が禁止されています。

 第二に、資金力の大小によってCM量に格差が生じることを防ぐため、支出金額の上限を設定するとともに、収支報告書の提出義務を課すべきです。英国、ニュージーランドでも、国民投票運動の公平性を確保する観点から、支出金額の上限が設定されています。また、外国人等からの資金援助を禁止すべきです。外国人等に対する規制は、英国、フランス、アイルランド、ニュージーランドにも見られます。

 第三に、ネット等の適正利用の確保を図るための表示義務を課すべきです。英国、アイルランド、ニュージーランドでも、国ごとに義務の対象や内容に差異は見られますが、何らかの表示義務が課されています。

 第四に、情報アクセス権を保障する観点から、広報協が全国各地で説明会を開催したり、オンラインで広報することを可能とする規定を設けるべきです。オンラインによる広報は、アイルランドでも行われています。

 第五に、フェイクニュースなどを防ぎ、情報環境権を保障する観点から、ネット等の適正利用や民間のファクトチェック機関と広報協との連携について規定を設けるべきです。フェイクニュースなどの拡散を規制する措置は、フランス、アイルランドでも取られています。

 これらのほかにも、ネット広告に関与する特定デジタルプラットフォーム提供者の責務の明確化、バンパー広告やインストリーム広告などの動画広告の取扱い、フェイク広告対策としてのオリジネータープロファイル技術の開発、動画配信サイトの位置づけなど、新たに対処すべき論点も出てきています。

 以上の各項目は、国民投票法改正法の附則四条に掲げられた検討項目にも合致するものであります。これらに対処しないまま、万が一、憲法改正の国民投票に突き進めば、国民の間に取り返しのつかない分断を招くおそれがあることを指摘して、私の発言を終わります。

森会長 御提案の件につきましては、幹事会等で協議をいたします。

小野委員 日本維新の会の小野泰輔です。

 先週五月三日の憲法記念日においては、様々な憲法改正関連のイベントや番組特集がありました。国民の間でも憲法改正の機運が高まってきていることを大変うれしく感じております。我々国会議員は、そのような国民の期待に着実に応えるため、具体的な中身のある議論を積み重ねていかなければなりません。

 参議院においても、昨日、緊急集会について議論されたとのことで、両院が足並みをそろえて緊急事態条項の取りまとめに向けて動き始めたことを歓迎したいと思いますが、ただ、先ほど、うちの岩谷委員が中川幹事に御質問をしました。杉尾幹事の意見が、緊急集会があるので憲法改正をする必要はないというようなことがありましたが、この点について、私の時間がもし余りましたら、中川幹事からお答えをいただきたいというふうに思います。

 十八日には当審査会において、参議院の緊急集会について参考人をお招きすることと聞き及んでおります。このように、論点を一つ一つ丁寧に取り上げて議論していくことができており、改めて、会長や幹事各位、委員の皆様に敬意を表しますとともに、感謝を申し上げます。

 また、参議院の緊急集会に関する参考人招致などは、両院合同で行うことも非常に意義深いことだと思います。以前、我が党の三木委員からも提案がございましたが、衆議院憲法審査会規程第二十四条に定める参議院憲法審査会との合同審査会の制度を活用することも、今後、必要に応じ、積極的に行っていただきたいと思います。議論の生産性を高めるためにも、また衆参で議論のスピードを合わせるためにも、森会長、どうぞよろしくお願いいたします。

 緊急事態条項については、予定されている参考人陳述及び質疑が大きく議論を前に進めるための重要なターニングポイントになるのではないかと考えております。それ以外に、国会議員の任期延長の判断に対する司法の関与の在り方についても、国民的なコンセンサスが得られるような議論を展開していく必要があると考えております。

 司法の関与に対しては、自公両党の皆様もその可能性に対して言及をしておられますが、条文案を共同で作成している我が党、国民民主党及び有志の会の三会派におきましても、憲法裁判所の関与の在り方について現在議論を行っているところです。

 まずは、緊急事態において司法が行政や立法に対してどのように関与すべきかの考え方について、参考人招致を行うことには大きな意味があるものと思います。森会長、是非御検討をよろしくお願いいたします。

 また、先ほど城井委員からもございましたが、先週、立憲民主党の階幹事からも、国民投票法の論点に関し、各会派の考え方を丁寧に整理をいただきました。

 CM規制について、立憲民主党とほかの会派で大きな隔たりが幾つかありますけれども、中でも、表現の自由を過度に制約している規制が非常に気になります。例えば、放送CMのうち、投票を呼びかける勧誘CMについて、立憲民主党は主体を問わず全期間禁止としています。民放連は、賛成と反対のバランスを自主的なガイドラインに従って判断すると回答しており、表現の自由を最大限尊重しつつ、国民投票の公平性を保つためには、放送事業者の判断に委ねるのが適切と考えます。

 また、昨今の公職選挙法の議論では、投票を呼びかける選挙活動と、そうすることが禁じられている政治活動を分ける現行の規制について疑問視する見解も出てきており、政党以外は意見CMが自由に行えるので勧誘CMは全面規制してよいというのはしゃくし定規に過ぎ、国民の表現の自由を必要以上に束縛するものではないかと考えます。

 さらに、ネットCMについて、立憲民主党は、政党等によるものは禁止とされています。これでは通常の選挙において政党によるネットCMが許されていることとの乖離が著しいですし、放送では勧誘CMは主体を問わず禁止されているのに、ネットでは政党等以外は制限がかからないということで、広告を出そうとする国民の表現の自由や放送事業者がCMを放映する機会を必要以上に奪うことにもなります。

 政党が行うネットCMに対する規制は、憲法改正の国民投票独自の論点ではなく、公職選挙法上の問題として同時に検討すべきテーマであるということも申し述べておきたいと思います。

 そして、立憲民主党が主張されるCM規制はそもそも表現の自由を過度に規制しているのではないかということを、憲法二十一条に照らして議論することも必要なのではないかと考えています。

 これまで放送事業者やネット広告事業者の参考人招致を行ってきましたが、憲法学の専門家からのCM規制に対する御意見も当審査会で伺いたいというふうに思います。森会長、この点についても御検討をよろしくお願いいたします。

 国民投票法に関する議論も、国民投票広報協議会の役割や体制など、詳細に詰めるべき点が多くあります。議論を拡散させることなく、岸田総理が掲げておられる発議のスケジュールに合わせ、必要な検討に我が党として真摯に取り組んでいくことをお誓い申し上げ、私の発言といたします。

森会長 御提案、御要請のありました件につきましては、幹事会で協議をいたします。

 また、質疑もございましたけれども、小野君の発言時間を過ぎておりますので、適切な機会に御答弁を願います。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 今日の最初の御発言の奥野委員の御発言の中に少し気になる点があったので、お話をさせてもらいたいと思います。

 奥野委員の御発言の中で、全国的な選挙困難事態というお言葉を何度か使われておられました。

 ここでも何度も議論してきておりますが、私どもは、選挙の一体性が害されるほど広範な地域において選挙の適正な実施が困難というふうに理解をしております。必ずしも全国的な選挙困難事態ということではございません。念頭にあるのは、東日本大震災のときのことでございます。

 今から十二年前、三月十一日に震災があったわけですが、四月に統一地方選挙が予定をされておりまして、結果として五十七団体で選挙期日を延期する、そして議員任期の延長、長の任期の延長をする、こういうことがなされたわけでございます。公職選挙法の繰延べ投票の適用範囲をはるかに超えているという認識の下で、新たに震災特例法というものの制定をしたわけでございます。

 結果としまして、選挙期日が最も遅かった自治体は二〇一一年の十一月二十日でございまして、予定された選挙期日から約七か月先に選挙が延期をされたわけでございます。このようなやり方というのは、一九九五年一月の阪神・淡路大震災でも同様の特例法を制定しております。

 仮に、東日本大震災のような巨大な地震災害があったときに、国会議員の任期がもう迫っている、若しくは解散がなされているというふうなことを想定いたしますと、国政選挙の場合は、これも以前に申し上げたんですが、衆議院も参議院も比例区選挙がございます。東日本大震災のように、広範な地域、被災三県、そして茨城県でも選挙期日が延期されているんですけれども、こうした被災地の繰延べされた投票の結果が長期間判明をしないということになりますと、具体的にちょっと想定しますと、衆議院の場合ですと、東北ブロックというのは十三名の定数があるんですね。茨城県は北関東ブロックです、十九名の比例の定数があるんです。そうすると、三十名を超えるような比例区の選挙の結果が長期間確定をしないということになるわけでございます。

 小選挙区においては、宮城県は五、福島県は四、岩手県は三、そして茨城県は七つあります。そうしますと、これも多数の小選挙区で、被災地の小選挙区の選挙の結果が確定しない。

 これは、一つは、そういう被災地を代表するような議員が長期間不在になってしまう、それで本当にいいのかというのが一つ。もう一つは、選挙の一体性です。やはり国政選挙は、地方選挙と違って、全国で同時に実施をしていくというのが大原則だと思うんですね。そうしないと、仮に繰延べ投票をやったとして、半年も遅れたその一部の地域の国政選挙というのは、果たして、国政選挙の正統性という観点でやはり大きな問題があるわけでございまして、選挙実施の同時性、さらには一体性、これは害されないようにしないといけない、その程度の広範な地域というふうに我々は考えているわけでございます。

 そういう意味で、全国的なという言葉がちょっと私には違和感がありまして、やはり、選挙の一体性が害されるほど広範な地域、そこで選挙の適正な実施ができない、困難だという場合だというふうに思います。

 南海トラフ地震、さらには首都圏直下型地震、これはもう想定をされているわけです。ない方がいいに決まっているんですが、いずれやってくるわけでございまして、そういう巨大地震のことを想定しますと、今、東日本大震災の例を出しましたが、より広範な選挙区で、また、より広範な比例ブロックで選挙の実施が困難ということが想定されますので、そういうことを考えますと、やはり、この議員任期の延長の問題というのは、できるだけ早く合意形成がなされて、憲法改正をしなければいけないわけでございますけれども、そうした議員任期の延長が国会議員に関してはできるように、もちろん、厳格な要件を定めた上でやっていくということが私は急がれるというふうに考えております。

 以上です。

山下委員 自民党の山下貴司です。

 本日未明にも首都圏で震度五強の地震がありました。今後、関東大震災級の首都直下型地震が発生する確率は、誰も否定できません。大災害など非常事態において、総選挙が行えないまま、衆議院の任期満了により衆議院議員が存在しなくなる事態を我々国会は想定する必要があります。

 このような場合に、憲法五十四条二項、三項の参議院の緊急集会が開けるかについては、私は、憲法の文理、そして次に緊急集会制度の立法経緯、そして、判例や政府解釈など何らの公権的解釈がなく、学説も有力な学者の間で分かれていること、そして、類推適用できないと司法判断された場合の措置の効力及びその萎縮効果に照らし、極めて慎重に検討すべきであり、任期満了時の対応を憲法上明確化した緊急事態条項が必要と考えます。

 まず、文理上、参議院の緊急集会を定める憲法五十四条二項は、「衆議院が解散されたときは、」と明文で定めており、五十四条も全体として衆議院の解散に関する条項であって、緊急事態に関する条項ではありません。憲法の文理上は、任期満了時に参議院の緊急集会を開くことができると解することは困難であります。

 そして、この立法経緯について、憲法制定の実務担当者であった佐藤達夫元法制局長官が、昭和三十四年、内閣の憲法調査会で述べたところによれば、衆議院の解散その他の事由により国会を召集することあたわざる場合に緊急の必要あるときに内閣令で対応するという案を日本側は提出しておりましたが、GHQから、非常時には幅広い委任立法や英米法流の不文法としての非常大権を使えばよいという考えで、否定されたということであります。

 これに対し、日本側は、委任では賄えない場合があり得る、全ての場合、憲法の枠の中で処理をするような形を整えておかないと将来恐ろしいことになると主張したところ、やっと、解散中の場合だけについて緊急集会の規定を認めようということになった、任期満了は時期が分かっておるから解散時ほどに深刻な問題はない、だから軽く見ていたと述べられ、参議院の緊急集会制度が特に衆議院解散の場合のみに厳密に限定して認められ、衆議院任期満了時の緊急集会が憲法上想定されていなかったことを明らかにしています。

 もちろん、緊急集会が衆議院満了時にも許されるかについて、判例はありません。内閣法制局も検討はしたが、参議院の緊急集会の制度は、極めて特殊な変則的、異例の措置であって、解散という予期しない事態の場合に限って、特に明文の規定をもって認めたものであり、それ自体として抑制的に運用されるべきものであるため、消極的に解すべきとの考えもあり、結論を得るに至っておらず、いずれにせよ、公権的解釈はありません。

 学説上も、長谷部早大教授を始め、類推解釈を認めようとする見解もありますが、元最高裁判事で憲法学の権威であった伊藤正己東大名誉教授、司法試験委員を長く務められた佐藤幸治京大名誉教授などを始め、従来の通説は、憲法に明文の根拠がないこと等を理由に、このような場合であっても、緊急集会を認めることには否定的であります。

 このように、公権的解釈もなく学説が分かれているにもかかわらず、明文や立法経緯に明らかに反する類推適用による衆議院任期満了時の緊急集会を強行しても、事後的に司法判断により緊急集会条項の類推適用が否定された場合、その緊急集会の下で成立した法律、予算などの効力が遡及的に否定されるおそれがあります。

 この点、緊急集会を適法に開いた場合には、憲法五十四条三項に定める衆議院の同意が得られなかった場合の効果については将来効と解する学説が有力ですが、裁判所が類推適用を否定して、そもそも緊急集会の要件を欠くと判断した場合は、緊急集会で定めた法律、予算が遡及的に無効となり、大混乱を生ずるということもあり得ます。

 この点、長谷部教授編に係る「注釈日本国憲法」で、衆院任期満了時も緊急集会を認める立場の土井真一京大教授ですら、緊急集会の要件を欠いていることを理由として衆議院が不同意とした場合には遡及効を認めないことには疑問がある、裁判所が当初から無効と判断することは妨げられないと解すべきとしています。

 裁判所が類推解釈による緊急集会による措置を遡及的に無効と判断する余地がある以上、安易な類推解釈に頼るべきでなく、緊急事態について、憲法において明確化しておく必要があります。

 加えて、緊急事態の時期と規模によっては、衆議院のみならず、参議院の半数も任期満了により不存在となる事態があり、そして、残る参議院も死傷や交通途絶等で緊急集会の定足数を満たさず、法律も予算も審議できない事態が長期化する事態もあり得ます。

 こうしたことを考えれば、国会が機能不全となる事態が長期化する場合に備えて、我々国会としては、憲法上、議員任期の延長を含め、緊急事態条項を定めるべきことを申し上げて、私の意見とします。

新垣委員 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 今年の憲法記念日も、地元沖縄で、平和憲法を守ろうと大きな声で訴えてまいりました。

 本日は、護憲の立場から発言をいたします。

 四月以降、憲法九条の二を新設する、いわゆる自民党の条文イメージ、たたき台素案を文字どおりたたき台にした議論が交わされております。

 これについては、公明党や日本維新の会が指摘するように、「必要な自衛の措置をとることを妨げず、」との文言では九条一項、二項の例外規定と読める余地が残されるとの意見に賛同をいたします。

 というのも、自民党案では必要な自衛の措置の内容が限定されておらず、自衛の範囲が不明確なため、九条一項、二項を空文化させる可能性が排除されません。自民党は、必要な自衛の措置とは必要最小限度、専守防衛のことであると主張をいたしますが、個別的自衛権や限定的な集団的自衛権といった表現でない以上、フルスペックの制約なき集団的自衛権を認め、自衛隊が保有する装備も無制限に拡大する危険性は残ります。多くの憲法学者や弁護士会の声明も同様の懸念を示しております。

 また、自民党の新藤幹事は、前回、四月二十七日の審査会で、必要最小限度や専守防衛の解釈を明文で規定したとしても、脅威の内容や程度によって相対的に判断しなければならず、その時点での解釈に委ねるのが適当との意見が多数派であるとの論点整理をされました。

 昨今の国政を見ておりますと、私は、時の政権の解釈に判断を委ねることほど危険なものはないのではないかと思って、大変危惧をしております。

 憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認し、殺傷能力のある武器輸出解禁の是非に焦点を当て、防衛装備移転三原則の運用指針見直し協議を始めた政党が現に政権を掌握する中、憲法審査会の場で自民党の委員の皆様が一様に、憲法九条一項、二項は堅持すると繰り返し発言をされておりますが、私はにわかに信じ難いものがあります。同時に、自民党の改憲案では自衛隊ができることは変わらないと主張されるのであれば、そもそも自民党の九条改憲案は必要ないのではないかと私は思ったりいたします。

 自民党は、国防規定や自衛隊の明記によって現憲法の欠陥部分を補い、憲法を頂点とする我が国の法体系を完成させると繰り返し主張しますが、前回の審査会で共産党の赤嶺委員が述べたとおり、憲法の上に日米安保があり、国会の上に日米地位協定がある以上、憲法法体系を侵食する安保法体系を是正しない限り、少なくとも、日米地位協定の全面改正なくして我が国の法体系の完成と主権の確立はあり得ないと強く指摘をしておきたいと思います。

 最近に至っては、台湾有事は日本有事、台湾有事は沖縄有事であるといった発言が自民党の国会議員の先生から公然となされております。敵基地攻撃能力の保有が抑止力になるとの説明を岸田総理や外務、防衛両大臣は繰り返ししますが、安保三文書改定によって、中国、ロシア、北朝鮮は日本政府を批判し、対抗措置を取ると明言をしております。むしろ安保三文書が東アジアを不安定にさせる原因になっている事実を、政権与党の国会議員の皆様には直視していただきたいなと思っております。

 戦争になれば、軍隊のある場所が標的になるというのが沖縄戦の教訓です。現に太平洋戦争の際には、米軍の軍事拠点になるとの理由で、日本軍は、オーストラリアのダーウィンを六十回以上にわたって空襲しました。

 住民らの避難手順を示す国民保護計画の実現性にすら疑問符がつく中、陸上自衛隊のミサイル部隊を沖縄の先島地域に配備して標準化させ、その標的を守るために迎撃用ミサイルを配備するのでは本末転倒だと思います。

 日本は、憲法に基づく平和主義の下、日本の武器によって国際紛争を助長しないとの方針を継承してきました。殺傷能力のある武器輸出を認めれば、平和国家としての理念を築き上げてきた国際社会からの信頼が大きく揺らぐことを自覚すべきだろうと思います。

 沖縄に暮らしておりますと、憲法九条を含む改憲論議そのものが、東アジアを始めとする諸外国に九条破棄を想起させ、疑念を抱かせるのではないかと思う場面が多々ございます。国家安全保障戦略においても、我が国の安全保障の第一の柱は外交力であることを掲げている以上、周辺諸国を無用に刺激し、平和外交の支障となり得る要素を極力排除することに政治は全力を尽くすべきだろうと思います。

 そのことを最後に強く申し上げ、私の意見を終わります。

森会長 予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

    ―――――――――――――

森会長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査のため、来る十八日木曜日、参考人として京都大学名誉教授大石眞君及び早稲田大学大学院法務研究科教授長谷部恭男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十八日木曜日午前九時五十分幹事会、午前十時審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十一分散会


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