衆議院

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第13号 令和5年6月1日(木曜日)

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令和五年六月一日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 伊藤信太郎君 幹事 上川 陽子君

   幹事 柴山 昌彦君 幹事 新藤 義孝君

   幹事 山下 貴司君 幹事 階   猛君

   幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    伊藤 達也君

      石破  茂君    石橋林太郎君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      神田 憲次君    熊田 裕通君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      下村 博文君    田野瀬太道君

      辻  清人君    中西 健治君

      平沼正二郎君    船田  元君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      務台 俊介君    山本 有二君

      吉田 真次君    渡辺 孝一君

      新垣 邦男君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    篠原  孝君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      金城 泰邦君    國重  徹君

      浜地 雅一君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     石橋林太郎君

  大塚  拓君     吉田 真次君

  細野 豪志君     平沼正二郎君

  吉田 宣弘君     金城 泰邦君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     岩屋  毅君

  平沼正二郎君     細野 豪志君

  吉田 真次君     大塚  拓君

  金城 泰邦君     吉田 宣弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(特に、参議院の緊急集会を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、参議院の緊急集会を中心として討議を行います。

 この討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝であります。

 五月十八日の審査会では、大石、長谷部両参考人より、参議院の緊急集会について、専門的見地から御意見をお伺いしました。

 本日は、これまでの審査会での討議及び両参考人の意見を踏まえまして、参議院の緊急集会について私なりに整理をしたいと思います。

 まず、配付資料の上段を御覧ください。

 憲法五十四条が本来想定しておりますのは、衆議院の解散時に国会の対応を必要とする緊急の案件が発生し、それを処理するために参議院の緊急集会を開くことができるということであります。これは、その後の一定期間内に総選挙の実施が予定されており、新しい衆議院議員が選出されることを前提に、二院制国会の例外として、一時的、暫定的な制度であることを意味するわけです。

 この点につきましては、審査会の議論でも多く出され、大石、長谷部両参考人からも同様の意見がありました。

 つまり、参議院の緊急集会は、二院制国会の機能が予定された選挙によって回復するまでの間に活用される、平時の制度と位置づけられるわけであります。

 また、大石参考人の指摘のように、このような二院制国会の例外規定は厳格に解釈すべきことについても、多くの委員に共通した意見と考えます。

 これを前提に、次の、配付資料の一、場面の限定を御覧ください。

 五十四条一項の文言上、緊急集会の開催は衆議院が解散されたときに限定されますが、大石、長谷部両参考人共に、任期満了による衆議院不在の場合にも類推適用できるのではないかとの意見でございました。

 例外規定に関する条文の厳格解釈の原則及び立憲主義の観点からすれば、こうした拡張解釈は基本的には望ましくないと考えます。一方で、任期満了による場合も総選挙の実施が予定されており、衆議院の不在が六十日前後の一時的、短期間であるという状況の共通性を考えれば、類推適用について検討の余地があるとも考えられ、更にこの議論を深めたいと思います。

 次に、配付資料の二、期間の限定を御覧ください。

 緊急集会を開くことができる期間について、大石参考人は、七十日という数字は一義的に明白であるから、これ自体を延長する解釈は取れないと明確に述べる一方、長谷部参考人からは、平常時にはきっちりと守らなければならないが、非常時になれば生き延びることが大事だから、七十日を超えて緊急集会で対応することも可能との意見でありました。

 私は、緊急集会が二院制国会の例外規定であることを踏まえれば、原則として、憲法の文言どおり、最長で七十日と考えるべきであります。一方で、一の場面の限定の議論と同様に、総選挙の実施が予定されているが、国会召集までの期間が七十日を超えてしまうというような場合には、状況の共通性という観点から、多少の延長があり得るかどうか、検討の余地があると考えます。

 続いて、配付資料の三、権限の限定、案件の限定を御覧ください。

 この点について、大石参考人は、参議院の緊急集会は内閣のみが開催を求めることができ、内閣が提案した案件を参議院が審議、議決することなどを踏まえ、その権限をやみくもに拡大することは、内閣と参議院の関係を大きく変えてしまうだけではなく、参議院によって衆議院の権限を奪うという危険をもたらしかねないとの意見を述べられました。長谷部参考人も、参議院の緊急集会の権限に限定があることは認められております。

 したがって、参議院の緊急集会の権限や案件が限定的であることは、学識的にも異論はないものと考えます。

 配付資料の四は、暫定性についてであります。

 緊急集会で取られた措置の効力が、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意を得なければならない暫定的なものであることについては、大石、長谷部両参考人とも異論はなく、限定的に二院制の例外としての権能はあっても、二院制の機能を代替できるものではないことが明確になったと考えています。

 したがって、我々が議論を進めてきた緊急事態における議員任期の延長などの措置は参議院の緊急集会でカバーできるものではなく、あらゆる事態に陥っても国会機能を維持するという観点からの議論は更に加速させなければならない、このように考えます。

 配付資料の下段、議論に当たって留意すべき事項を御覧ください。

 まず、1、参議院の緊急集会については、これまでの討議により、総選挙が実施され、新しい衆議院議員が選出されることを前提にした平時の制度であり、期間、権限や案件も限定された暫定的な制度であること。

 次に、2、日本国憲法には、参議院の緊急集会では対応できない有事に陥った際の規定がなく、そもそも、いわゆる有事の概念が規定されておらず、緊急事態の発生を想定した制度は整備されておりません。

 しかし、そのような有事として、東日本大震災や高い確率で発生が予想されている首都直下型、南海・中南海トラフ巨大地震を考えると、発生する蓋然性は高まっており、今や現実の脅威となっております。

 私たち国会議員は、立法府の責任において、いかなる事態が発生しても、国民の生命と財産を守り抜かなければなりません。憲法に緊急事態条項を整備し、二院制国会を機能させるための議員任期延長など、国会機能維持のための措置を講じておくことは喫緊かつ必須であり、立憲主義の観点からも極めて重要です。

 なお、三分の一の定足数が確保できれば国会機能は維持可能であるから、選挙ができるところで総選挙を行い、その後は、繰延べ投票を使って、選挙が実施可能になったところで順次行っていけばよいとの意見を聞きました。取りあえず選挙ができたところで選ばれた議員で、定足数さえ満たせれば国会が機能するともいうような意見は、立法府に身を置く者として、到底受け入れることはできません。

 また、衆議院の比例選出議員については、そのブロック全ての選挙区で結果が出るまで、一人の当選人も確定しないことになります。このような不完全な状態をもって、国民の代表機関である国会が機能しているとはおよそ言えないと思います。

 国政選挙は、全国一斉に同じ条件で民意を問い、その集約として国会議員が選出される、それが民主的正当性のある立法府であり、緊急事態に陥っても、その姿を追求することは当然と考えます。もちろん、厳しい状況であっても、できる限り早期に選挙を実施することは当然であり、自分たちの都合のよいように恣意的な判断があってはならないことも、これまた当然であります。

 また、参議院の緊急集会を軽んずることはあってはならず、規定された条件や範囲においては、参議院の重要な機能としてしっかり活用していくことは言うまでもありません。

 これまで述べた意見を改めて集約すると、まず、参議院の緊急集会は、平時の制度として、その適用範囲をどの程度拡張できるか、検討を加えてはどうかということであります。あわせて、憲法上の規定がない有事においても国会機能を維持するため、議員任期の延長を始め、どのような緊急事態条項を整備すべきなのか、議論を煮詰める必要が更に深まったというふうに考えております。

 これに加えて、3です。このような措置を講じても、どうしても国会機能が維持できないという万が一の事態についても検討が必要であり、内閣の緊急政令や緊急財政処分の制度について議論を深めるべきとも考えています。

 もちろん、こうした制度は、積極的な活用を想定するのではなく、究極の備えとして、いかなる場合においても超法規的な政策判断を行うことなく、政府の行動を統制するという立憲主義の観点から重要と考えています。

 以上、参議院の緊急集会の位置づけと適用範囲に関する論点を私なりに整理をさせていただきました。

 各会派からの御意見も伺った上で、今後は、こうした要素も含め、議員の任期の延長を始めとする緊急事態条項の創設について、憲法審査会として総括的な論点整理を行ってはいかがかと考えております。具体的な進め方につきましては、筆頭間協議や幹事会などで相談させていただきます。

 今朝の幹事会におきまして、次の定例日である六月八日に審査会を開催し、討議を継続することを提案いたしました。引き続き、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い論議が行われるよう委員各位の御理解と御協力をお願いして、私の発言といたします。

森会長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。

 今日の審査会は、参議院の緊急集会について、先般の参考人質疑を踏まえての議論になります。

 私は、ここでは、もう少し原点に立ち返ったところを話の出発点としていきたいというふうに思います。

 この出発点というのは、緊急事態条項が必要かどうかということでありました。この論点については、私たちは、憲法に緊急事態条項、すなわち、通常の統治機構を超えて権力を集中させ、緊急事態に対応する権能を明記するということは必要ないというふうにこれまでも申し上げてきました。それぞれの法律の中で体制がつくられているということであります。

 不文の法理である国家緊急権を実定化し、憲法上の緊急事態条項を設けるということは、かえって権力によるその濫用のリスクというのを高めていきます。緊急事態の大義名分の下、緊急事態条項が濫用されるというリスクであります。

 そのような中で、今回課題として取り上げられたのは、緊急事態により選挙困難事態が続くと想定される場合にはどうするかということであります。

 この課題に対して、どんなときでも権力の濫用を国民代表機関である国会が統制するという立場に立てば、最初に考えなければならないのは、選挙困難事態をでき得る限り早急に解消して選挙を実施し、国民の意思を反映した衆議院の機能を取り戻すということであります。

 選挙困難事態の捉え方としては、これを理由に時の政権が恣意的に選挙を先延ばしして権力の維持を図り、暴走するという危険性をいかに防ぐかという観点が大切であろうかと思います。また、それが出発点だと思うのです。

 それを踏まえた上で、具体的に検討すべき主な論点は、次のようになります。

 まず、選挙困難事態を早期に解決する方策であります。

 これに関して、日弁連の提案が次のようにあります。まず、1、平時において、選挙管理委員会に対し、選挙人名簿のバックアップを取ることを義務づける。さらに、2、大規模災害が発生した場合には、避難者が避難先の市区町村の選挙管理委員会に出向いて投票を行える制度を設ける。三番目に、郵便投票制度の要件を緩和することにより投票できる制度を備えていくといった内容であります。これに加えて、インターネット投票の実施規定を設けるということも重要であるというふうに思っております。

 次に、選挙困難事態の認定基準と効果の問題であります。広範な地域での長期間の実施不能を意味する選挙困難事態とはどのような事態を指すのか、この定義であります。

 選挙が実施できない地域のみを除いた選挙の一部実施が許されるのか。許されるとした場合に、その基準などを事前に決めておく必要があります。すなわち、選挙の公正な施行に支障がある選挙区の割合が、例えば全体の三〇%なら選挙の一部実施をしていいのか、五〇%ならどうか、それとも、一〇〇%の選挙区で選挙が公正に施行できなければ一切選挙ができないというのかということについて、様々な事例を想定しつつ、選挙困難事態の具体的な認定基準と認定の効果を策定していくことが必要だと思います。

 さらに、選挙困難事態の認定主体の問題もあります。

 選挙の延期や実施の決定をするのは、政府だけでいいのか。国会ないし参議院の緊急集会の関与が必要なのではないか。それとも、第三者機関に選挙の延期、実施勧告などの権限を付与することも必要であるのではないかということであります。この機能を一定程度裁判所に付託するということ、こんな論点も含めて、更に議論が必要だというふうに思います。

 さらに、選挙困難事態により衆議院議員が不在となる期間が長期にわたって続くと想定される場合にどうするかという点も、当審査会で議論されています。

 しかし、実際には選挙困難事態が長期化する蓋然性が低いということ、そうしたケースを事前に想定することは困難であるということは、大石、長谷部両参考人も述べておられます。また、過去の例から、そのようなケースは起きていないということも指摘をされています。

 そのような中で、たとえ発生する確率が低いものであっても、あえて選挙困難事態の長期化を想定する必要があるということであるとすれば、私たちは、現時点では、さきに述べた選挙困難事態に対する課題を解決した上で、参議院の緊急集会で対応することを選択すべきだと考えております。

 ただし、通常の二院制の中で国会が果たすべき機能とは区別して、内閣から付託される限られた課題に臨時的、応急的に対応することが前提となっていくのは当然であります。さらに、選挙が行われて衆議院の機能が戻ったときには、憲法五十四条の規定に基づき、それを承認する手続というのが必要であります。

 なお、七十日を超えて選挙困難事態が続くと想定される場合には、緊急集会では対応できず、議員任期を延長して対応する案が出ておりますが、現時点で、我々は議員任期の延長は必要ないと考えています。

 元々、七十日は、その間に選挙をして衆議院の機能を取り戻す期限の目安であって、万が一これを超えたからといって、参議院の緊急集会の機能が否定されるということはないと考えています。

 もっとも、緊急集会の活動可能期間について、衆参の憲法審査会で議論を詰め、一定の制約があるとの共通認識に達した場合には、議員任期延長についても、国会機能を維持するための選択肢として議論を進めることもあり得るということ、ここもあると思います。

 ただし、その際には、先般の長谷部参考人の立憲主義に基づいた見解に留意する必要があると思います。議員任期の延長を可能とすれば、時の政権がそれを悪用して、選挙で民意の審判を受けることを避けていつまでも権力の座に座り、緊急事態を恒常化させてしまう危険があるということであります。時の政権が議員任期の延長を権力維持のための手段として使うことがあってはならないということ、これを強く申し上げておきたいと思います。

 以上、緊急集会を取り巻く課題について、私たちの論点整理をしました。

 参議院の憲法審査会でもこの議論は続いております。緊急集会に関する議論は、参議院の論点整理を尊重していくということが必要であると思います。そこを待たなければならないということであります。最後にこのことを申し添えて、私の今日の発言といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。

 初めに、参議院の緊急集会に関する各論点について、日本維新の会の見解を簡潔に述べます。

 第一に、場面の限定、すなわち、衆議院の任期満了による衆議院不在時にも憲法五十四条を類推適用できるか否かについては、類推適用できるとの説もありますが、条文上明確にすることが必要と考え、我々は、国民民主党、有志の会の皆さんとともに、任期満了時にも緊急集会を開催できる旨を憲法に明記する憲法改正案をお示ししているところです。

 第二に、期間の限定については、憲法五十四条一項が定める日数は一義的な意味を有しており、最大で七十日間に限定されると考えます。

 第三に、権限と案件の限定についてですが、権限については、二院制の例外という性格に照らして、内閣総理大臣の指名、条約の締結の承認、内閣不信任決議などの権限は行使できないと考えます。

 先日の参考人質疑で大石眞先生がおっしゃったように、本予算の議決についても慎重に考えるべきです。案件については、憲法五十四条二項が緊急集会の要求権を内閣にのみ認めていることなどから、内閣が示した案件とこれに関連する案件に限定されると考えます。

 次に、国家の緊急事態時に、衆議院が解散又は任期満了により存在しない場合、参議院の緊急集会によってこれを乗り切るべきとの考え方がありますが、そのような考えには以下に述べる理由により反対であり、繰り返し主張しておりますとおり、議員任期延長を含む緊急事態条項を憲法に創設すべきであると考えます。

 まず、衆議院の優越を含んだ二院制の原則を軽視すべきではないと考えます。なぜならば、有権者は衆議院の優越を含んだ二院制を前提に衆議院選挙に投票していると考えられるからです。

 緊急事態において選挙実施が困難な状況に至って衆議院が存在しない中で、七十日を超えて数か月あるいは一年以上、参議院のみで予算や法律を無限定に決めていくことは、衆議院選挙、参議院選挙の投票の際には有権者は想定していないと思われます。

 先日の参考人質疑において、長谷部恭男先生からは、憲法四十三条が定めているとおり、いずれの地域から選出された国会議員も全国民を代表しており、多くの選挙区で繰延べ投票や選挙の延期が行われていたとしても、できるところから順次選挙を行い、定足数の三分の一を満たせば、国会としての審議、議決を行うことには正当性がないとまでは言いにくいという趣旨の御発言がありました。

 しかし、この全国民の代表の意味については、政治的代表として選挙母体の意思に拘束されないという表決の自由が本質的な意味であり、また、国民意思と代表者意思の事実上の類似も重視されるべきとする社会学的代表の意味も含むと解されます。

 そして、非現実的とのお話もありましたが、実際に、南海トラフ地震やパンデミック、また、狭い日本において全土が武力攻撃にさらされるという事態において、全国の大部分で選挙実施困難な事態が半年間や一年以上にわたって及ぶ可能性も否定はできません。また、災害等で選挙が実施できない地域の民意の反映こそが、緊急事態においては非常に重要です。

 加えて、選挙の一体性の視点も重要です。

 地域政党から出発した我々日本維新の会のように、特定の地域の選出議員が多い政党も現実的に存在しているわけですが、例えば、南海トラフ地震などで近畿地方が半年以上にわたって選挙実施困難事態が続いたと仮定した場合、我が党の、隣におります大阪選出の馬場代表も私も、兵庫選出の三木議員もここに座っていないということになるように、特定の政党の衆議院議員のみが極端に数が少なくなり、現実の民意を反映した議会構成とならないおそれなどもあります。

 これは選挙実施困難事態の認定要件にも関わる問題ですが、現代の政党国家においては、議員は政党を通して国民の代表者としての実質を発揮できるため、国民の政党への支持をできるだけ正確に国会の議席数に反映することは重要だと考えます。

 次に、衆議院と参議院で多数派政党が異なる、いわゆる衆参のねじれ国会も想定しておく必要があります。

 選挙実施困難で衆議院が存在しない中で、例えば野党が参議院で過半数の議席を有していた場合、議会運営は極めて困難となり、国の存亡に関わる緊急事態において迅速な意思決定ができない、いわばデッドロック状態になってしまうことも考えられます。国の存亡に関わるような緊急事態においては、与党も野党も関係なく一つにまとまるはずだという考えもあるかもしれませんが、私は、何らの担保もない情緒的な話に国の存亡を懸けることはできません。

 さらに、衆議院と参議院の同時選挙が予定されている中で緊急事態となった場合、あるいは、緊急事態で衆議院選挙が実施困難な中で、参議院選挙も一年以内など近い時期に予定されていた場合は、状況によっては参議院議員も半数しか存在しなくなることも想定できます。衆参合わせて七百十三名の定数の中で、たった参議院議員百二十四名しか存在していない国会で国の存亡に関わる緊急事態を乗り切っていくのか、あるいは、任期延長で衆参がフルスペックで機能している国会の下で乗り越えていくのかを比較したとき、後者が立憲主義と国民主権にかなうと考えます。

 議員任期延長については、国民の基本権たる選挙権を奪う、あるいは現在の民意を反映していないため民主的正統性がないため、認めるべきではないとの主張もあります。

 しかし、あらかじめ憲法で緊急事態における議員任期延長を規定しておけば、有権者は、緊急時には任期を延長した上で国難を乗り切るために国民の代表を選ぶものとして国政選挙で投票を行うことになるため、そのような前提で選出された国会議員の任期が延長され又は復活することは、民主的正統性は確保されていると考えます。

 もっとも、それが緊急事態に名をかりた権力維持策として濫用されるおそれがあるため、十分な歯止めが必要となります。それゆえ、議員任期延長については司法によるチェックが不可欠であり、我々維新の会は、任期延長の決定の際にも、その延長の期間が六か月を超えた際にも、憲法裁判所が関与できるようにすべきことを主張しています。

 以上、七十日を超える長期にわたる有事の際に参議院の緊急集会で対応することには多くの問題があるため、いつ起こるとも分からない有事に備えて、一刻も早く憲法を改正して緊急事態条項を創設すべきであることを改めて申し上げて、私の発言を終わります。

 ありがとうございました。

森会長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一です。

 前々回、お二人の憲法学者の先生方に、参考人として当審査会において御意見を頂戴いたしました。改めて感謝を申し上げたいと思います。

 緊急集会の性質につきましては、両参考人とも、衆議院の解散時のみならず、任期満了選挙時にも類推適用ができること、しかし、あくまで緊急集会は暫定的な措置であること、その権限も一定の限界があることは共通をしていたと思います。ただし、その期間については、大石先生は、あくまで七十日程度であるべき、長谷部先生は、平時は七十日程度であるが、非常時は日数にこだわらずに総合的に判断し得る旨述べられました。

 私の理解では、大石先生は、七十日間を超えて影響が及ぶような場合には、明文化するか否かは別として、国家緊急事態に対する対応を検討すべきであるとのお考えを示され、長谷部先生は、国家緊急時においても緊急集会を活用し得る、若しくは活用すべきとの見解であると拝察をいたしました。

 この点について、公明党としては、参議院の緊急集会は、あくまで二院制及び衆参同時活動の原則の例外である以上、その適用範囲は厳格に解釈すべきであり、また、権限も一定の限界があるため、国政選挙が実施困難となる緊急時においては国会機能の維持を図るべきである、その国会というのは、二院制及び衆参同時活動の原則の下での国会機能の維持であり、七十日間を超えるような選挙困難事態においては、一定の要件の下、国会議員の任期の延長を認めていくべきとの立場であります。

 そこで、参考人の意見の中で、特に長谷部先生の御意見で印象深かったのは、広範かつ長期にわたり選挙実施が困難となる事態が発生し、かつ、それを予測することができるのかといった問題提起でありました。

 確かに、任期満了選挙前、若しくは衆議院の解散後に、あらかじめ震災等の選挙困難事態が生じるかを確実には予測はできません。しかし、我々は、実際に東日本大震災を経験し、発災後、翌月の四月に迫った地方選挙では、特例法を制定し、多くの自治体で選挙期日が延期され、地方議員の任期も延長されました。最も遅い自治体では、約七か月間延期されたわけであります。

 残念ながら、災害の多い我が国では、同じような規模の大震災が起こり得ることは予測しなければならないわけでありまして、また、東日本大震災や阪神・淡路大震災など、実際に起こった経験を踏まえれば、災害が発生したその時点において、被害の状況等から、その影響がどの程度広範な範囲に及ぶのか、また、その期間もどの程度長期にわたるのか、すなわち、選挙困難事態が生じるか否かを予測し得る知見が既に我々にはあるわけであります。

 現実に大規模災害を経験し、また今後も同程度以上の災害が発生する可能性が指摘されている現状において、国民の生活を守るための予算措置や立法措置を図るための国会機能の維持をいかに構築すべきかを議論すべきは、我々立法者に与えられた責任であると思います。

 また、繰延べ投票を活用し、順次選挙を実施していくべきとの指摘もございました。

 東日本大震災のときには、繰延べ投票制度によることなく、特例法を制定いたしました。確かに、法律で任期延長ができない国会議員を選ぶ国政選挙の場合は、特例法では対応できない、繰延べ投票を活用するしかないとの見解もありますが、一定範囲の自治体若しくは選挙区で議席が確定する地方選挙と異なり、国政選挙の場合は、全国一斉に同時に行うべき選挙の一体性が求められる点が重要であります。

 これは、選挙を同時に行わないと、被災地域の議員や、また比例代表議員が選出されないことのみならず、首班指名を始めとする国政全般に対する選挙時における民意の適切な反映が行われないからであります。仮に、繰延べ投票を順次行っていくと、既に実施された選挙結果を考慮して有権者の投票行動が左右される可能性は否定できず、選挙で反映されるべき民意に時間的な幅が生じてしまいます。

 確かに、国政の補選でも同じ現象は生じると言えますが、広範なエリアで繰延べ投票が行われる場合と一部限定された選挙区で行う補選とでは、有権者の投票行動に与える影響は大きく異なるものです。

 やはり国政選挙というのは選挙時の民意を同時一体的に反映させる必要がありますので、広範な地域で国政選挙が実施困難な場合に繰延べ投票を順次行っていくことは、選挙の一体性の観点から許容できないのではないかと思っております。

 また、国会議員は全国民の代表であるため、定足数が満たされる議員が選出できれば国家運営が行えるとの指摘もありました。

 しかし、被災地域の議員が不在では、議員と有権者の近接性の観点に照らすと、果たして、被災地域選出議員が不在のまま行う復興に関する予算審議や立法活動に対し、現実的に地元有権者の理解が得られるのか、疑問であります。

 四十三条に言う全国民の代表とは、選挙区の有権者の意思や後援団体などの特定の選挙母体の代表ではない、言い換えれば、選挙母体の訓令に拘束されないという政治的代表という概念と、国民意思と代表者の意思の事実上の類似性が求められる社会学的代表の概念があることは、言うまでもありません。社会学的代表という側面もあることからすれば、被災地域の議員が不在でも定足数を満たす議員がいればよいというのは、いささか形式的過ぎると思います。

 国会議員の任期を延長することによる濫用の危険性についても指摘がございました。

 この点、我が党としては、国会議員の任期延長に係る議決要件を出席議員の三分の二とする特別議決とし、その延長の期間は原則六か月間であり、再延期できる場合も一年間を上限とする案を提示しております。これにより、時の政権が選挙期日を無用に引き延ばすという濫用の危険は回避できるものと思います。

 ただし、衆議院解散後に選挙困難事態が生じた場合、衆議院が存在しないため、任期延長の議決を行うのは参議院の緊急集会となるのか、それでよいのか、この点は議論すべきと思います。

 以上、先日の参考人の御意見も踏まえて、改めて会派としての意見を述べましたが、我々立法者は、選挙困難事態が生じる可能性がある以上、たとえ発生する蓋然性が低いとの指摘があったとしても、国民の命や権利を守るため、あるべき法制度を構築する責任を負っております。参考人からあった濫用の危険にも十分配慮しながら、いかなる事態にも万全を期すための制度設計をしなければならないと思います。

 以上でございます。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 緊急集会の期間については、私も最大七十日とすべきだと考えます。大石先生が主張されたように、七十日という数字が書いてあることの意味というのはやはり捨て難く、それを突破されたら、どこまでが限界か分からなくなるからであります。

 一方、長谷部先生は、四十日や三十日といった具体的数字の入った準則規定は、平時には一〇〇%守らなければならないが、緊急時においては、まず生き延びることが大事だから、必ずしも一〇〇%従わなくてもいい旨述べられました。しかし、これは、緊急事態を理由に行政の解釈で憲法に書いてあるルールを恣意的に拡大することに道を開くものであり、むしろ権力の濫用につながる危険性をはらんだ解釈だと考えます。

 より具体的に言うと、仮に七十日を超えて緊急集会を適用できるとして、では、いつまで可能なのか、そしてその期間を決めるのは一体誰なのか、憲法に規定がない以上、結局、その決定は実質的に時の内閣が行うことになり、権力の濫用につながるおそれを払拭できません。

 また、長谷部先生は、七十日は、ある政治勢力が権力の座に居座り続けることを防止する規定だとおっしゃられましたが、参議院が現在のように衆議院の多数派と同じ政党が多数を占めている場合には、結局、同じ政治勢力が権力に居座り続けることになります。しかも、両院同時活動の原則が崩れた形で居座ることになります。

 そして、こうした、先生もおっしゃったモーリス・オーリウ流の緊急事態の法理を認めるのであれば、憲法九条の規定や解釈は全く意味がなくなってしまいます。国家の存亡を懸けた究極の緊急事態が戦争であり、そのときに、国家の生き残りのためであれば、敵基地攻撃どころか、フルスペックの集団的自衛権の行使さえ可能となります。条文解釈から導かれる専守防衛や必要最小限の制限も消えうせてしまうでしょう。

 ふだん、憲法の条文を守れと主張する方々は、このようなモーリス・オーリウ流の緊急事態の法理を許すのでしょうか。五十四条二項については緊急事態の法理が当てはまるが、九条には当てはまらないとするのは余りにも御都合主義であり、論理的整合性を欠いていると思います。この点に関しては、もしよければ、共産党や立憲民主党のお考えを伺いたいと思います。

 ちなみに、モーリス・オーリウは、緊急事態の法理の根拠として、その権力の根源は神にあると述べています。権力の起源が神にあるとする神学理論が正しいと考えている人がここにいるとは思えません。

 もう一つ、長谷部先生が紹介されたイギリスのバッコーク判決についてですが、私も、緊急時には赤信号を無視していいと思います。だからこそ、その例外を事前に憲法や法律に書くことを提案しています。

 実は、この判決の最後の部分で、裁判官が今私が申し上げたことと同じ趣旨のことを述べています。こうです。私は法律を改正すべきだと思います、全く例外なく違反とする法律を放置したことで、議会は消防署における終わりない議論に道を開いてしまったのだから、それを終わらせるべきだ、本日の判決がそうした議論に終止符を打つことができればと思うが、議会はもっとよい対応ができるはずだと。つまり、緊急時には赤信号を無視できる命令は仕方がないと判示しつつも、そうした例外を法定することを議会に求めています。

 立憲主義の基本は、まず、憲法に書いてあることを書いてあるとおり尊重することが原則ではないでしょうか。立憲主義を徹底するためには、事前に緊急事態における例外的対応を憲法に明定しておくべきです。

 これに関して思い出すのが、日本国憲法制定当時、いざとなったら内閣のエマージェンシーパワーで処置すればいいと言ったGHQに対し、日本側から、憲法をこれから作ろうという際に、超憲法的な運用を予想するようでは、明治憲法以上の弊害の原因となる、全てが憲法の正条によって処置されるようにすることがむしろ正道ではないかと反論した事実です。

 私たちも、今、超法規的、超憲法的な運用に頼るのではなく、憲法の規範性を重視しようとした当時の日本側起草者と同じ思いを共有すべきではないでしょうか。

 そして、長谷部先生のような研究者と私たち国会議員との間には根本的な認識の差があると思います。学者は既存の条文の解釈を出発点にして体系的に学説を組み立てていくのに対して、私たち国会議員は立法者であって、それゆえ、たとえ蓋然性が低くても、可能性がある限り、国民の生命や権利を守るために、あるべき法制度を構築する責任を負っているはずです。危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではありません。それは、国民の生命や権利を守る責任を負った私たち国会議員にほかなりません。私たちが決めない限り、答えは出ないのです。

 そして、こうした認識の差は、選挙に係る認識においてより顕著だと思います。特に、選挙が可能となった地域から順次繰延べ投票を行って当選者を決めていけばいいという考えは、到底取り得ないと思います。投票期間が大幅にずれて行われる選挙は、国民意思の表明に時間的な差を生じ、選挙の一体性が担保されないからです。全国一斉に行われる国政選挙の正統性に対する考え方が、学者の先生方と根本的に異なっていると言わざるを得ません。

 また、三分の一以上の議員が選出されたから定足数を満たし、そして国会議員は全国民の代表だからよしとする考えも、余りにも形式的に過ぎると思います。例えば、先ほど岩谷委員が述べたように、近畿地方で大災害が発生して選挙ができないときには、維新の会の議員の当選者が大幅に減るでしょう。そんな中で開催される国会が全国民を代表した選挙と言えるかどうか、これは疑問です。

 最後に一言申し上げます。

 戦後、私たちが目撃してきたのは憲法の死文化です。本来なら憲法を改正して対応すべきところを解釈を駆使して対応してきた結果、憲法に書いてあることと現実との乖離が放置され、憲法の死文化が進行してきたのです。更なる憲法の死文化を止めて、憲法の規範性を回復することこそが、この憲法審査会の責務ではないでしょうか。

 よって、緊急事態における対応についても、権力の濫用につながりやすい緊急事態の法理に安易に委ねるのではなくて、憲法を改正し、憲法の死文化を防ぎ、立憲主義を守り抜くべきであることを主張して、発言を終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 前回に続いて、緊急事態を理由とした国会議員の任期延長と参議院の緊急集会について意見を述べます。

 この間の議論で特徴的と感じている点を幾つか申し述べたいと思います。

 一つは、議員任期の延長が国民の参政権を制限することへの認識が極めて希薄だということです。

 日本国憲法は、前文で、主権が国民に存することを宣言し、国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動すると述べています。国民主権は日本国憲法の基本原理であり、国民の選挙権は最大限に保障されなければならないものです。

 二〇〇五年の最高裁判決は、国民の選挙権について、国民の国政への参加の機会を保障する基本的権利として、議会制民主主義の根幹を成すものと述べ、これを制限することは原則として許されないと強調しています。

 ところが、今、緊急事態を理由に、議員任期を延長し、国民の選挙権を制限することを当然視する議論が行われています。議会制民主主義を根底から揺るがすもので、国民主権を軽んじるものと厳しく指摘しなければなりません。

 任期延長の口実として、国会機能や二院制の維持が強調されていますが、その大前提は、国会が国民に正当に選挙された議員で構成されていることです。人為的に任期を延長し、国民から信任を受けていない議員が長期にわたって居座り続けることは許されません。衆議院議員が不存在の場合は、臨時の暫定的措置として参議院の緊急集会で対応し、その後に国民から選ばれた衆議院がその当否を判断する仕組みを維持すべきであります。

 長期にわたって総選挙を実施できないおそれがあるというのであれば、そのような事態を招かないための選挙制度の改善を議論すればよいのであって、憲法を変えて任期延長を可能にするなどというのは、まさに本末転倒の議論であります。

 二つ目は、議員任期の延長が、権力の濫用と恣意的な延命につながる危険が鮮明になったことです。

 長谷部参考人は、議員任期を延長すれば、総選挙を経た正規のものとは異なる、ある種の国会が存在することになり、国会に付与された全ての権能を行使できることから、緊急時の名をかりて、通常時の法制度そのものを大きく変革する法律が次々に制定されるリスクがあると指摘しました。その上で、任期の延長された衆議院と、それに支えられた従前の政権とが長期にわたって居座り続ける、緊急事態の恒久化を招くことになりかねないと警告しました。

 そのようなことは考えていないという反論があるようですが、いついかなるときも権力の濫用が起こらないように、三権分立を始めとする民主政治の仕組みがつくられてきたことを思い起こすべきではないでしょうか。

 我が国では、一九四一年、衆議院議員の任期が、任期満了前に立法措置により一年間延期されました。緊迫した内外情勢下に短期間でも国民を選挙に没頭させることは、挙国一致体制の整備を邁進しようとする決意に疑いを起こさせないとも限らないというのがその理由でした。その間に、東南アジアへの戦線拡大と真珠湾攻撃に踏み切り、無謀な戦争に突入していきました。この歴史への反省から、戦後の日本は、権力者の都合で恣意的に任期を延長することのないように、法律ではなく、憲法に任期を規定したのです。

 憲法制定議会において、金森担当大臣は、国会議員の任期を自ら延ばすことは甚だ不適当であり、そのために憲法に四年の任期を明記したこと、そのときには必ず選挙に訴えて、国会が国民と表裏一体化しているかどうか現実に表さなければならないことを強調しています。この指摘を重く受け止めるべきです。

 前回、また今日も、玉木委員から、緊急集会に七十日間を超える対応を認めることになれば、フルスペックの集団的自衛権の行使も可能になるのではないかという質問がありました。この問題を考える上で土台に据えなければならないのは、日本国憲法はどういう憲法なのか、何を求めた憲法なのかということです。

 日本国憲法は、侵略戦争によって多大な犠牲を出したことへの反省と、二度とあのような惨禍を繰り返さないという決意の下に作られたものです。だからこそ、権力の濫用を招く議員任期の延長も、他国の戦争に参加する集団的自衛権の行使も、それが限定的であれ、ましてや全面的であれ、認められる余地はないというのが私の考えです。長谷部参考人が指摘したように、五十四条、九条のいずれの条項も、憲法の趣旨、目的を踏まえて考えていくことが重要だと思います。

 以上で発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 私の方は、緊急集会を七十日以上延長できるかという論点に絞って意見を申し上げます。

 結論から申し上げますと、大石参考人の発言、すなわち、参議院の緊急集会が両院同時活動の原則に対する例外を成すものであることを考えますと、その存続期間は、憲法上、やはり最大で七十日という制約に服すると考えるのが合理的であろうとの意見に賛同します。

 他方、これに対して、長谷部参考人の反対論は、次の二点に分解できます。

 一つは、緊急事態の恒久化を防ぐために平常時と非常時とは明確に区分されるべきであり、後者の場合には七十日を超えることも許される。

 二つ目には、なぜ許されるかといえば、五十四条一項は単なる調整規定であり、非常時にまで生真面目にこだわらなくてもいいんだという意見であります。そもそも七十日と定めている理由は、解散した後に内閣が何かと理由をつけていつまでも総選挙を実施しない、あるいは、総選挙後いつまでも国会を召集しないことが起こり得るからだけの話だという意見です。

 この一点目につきましては、確かに緊急事態の恒久化は防がなければいけません。そのために、平常時、非常時をはっきり分けなければいけないのも全くそのとおりです。しかしながら、問題は、この目的ではなく、長谷部参考人の主張する手段で果たして緊急事態の恒久化は防止できるのかということです。

 というのも、長谷部理論によりますと、内閣は単独で、今は非常時だと決められます。もっと怖いのは、平常時にいつ戻るのかという判断も内閣の一存で決まります。国会の意思は一切反映されません。加えて、非常時のみならず、憲法が求める両院同時活動の原則の例外状態も恒久化されかねません。

 非常時を理由に、衆議院に多数がない場合、時の政権が参議院の緊急集会で法案などを押し通す誘惑に駆られないと誰に言えるのか。実際、一九四八年、第三回国会において、吉田総理は、言うことを聞かない衆議院を解散して、緊急集会で予算の議決を図ろうとしたことを我々も思い出すべきであります。

 次に、二点目です。

 五十四条一項は単なる調整規定であって、拡大解釈をしてもいいのか。

 長谷部参考人の御著書「憲法の良識」には、調整規定ではなく訓示的規定だという表現を使いながら、五十四条一項については、何にもなければ法律の条文どおりにしてください、もし何か正当な理由があって、どうしてもこの日数が守れなくなったとしても違法にはなりませんと。続いて、七十日の期限を切る理由として、昔のヨーロッパ諸国の話になりますが、例えば国王が議会を解散した後、全く議会の選挙をしようとしないとか、選挙はしたけれども自分たちにとって都合のいい結果ではないので新しい議会を召集しないといったことが歴史的な事例としてありました、そうならないよう、きちんと日数を区切って総選挙をして、選挙後に新しい国会を召集しなさいと書いてあるだけなのですとあります。

 確かに、樋口陽一東大名誉教授も、「注解法律学全集」の中で、少し違う視点から、解散による総選挙の場合だけ、本条、第五十四条で憲法が直接に定めを置いているのは議会制の歴史を反映していると指摘した上で、解散をした後の選挙結果が行政府にとって望ましいものではないときに再度の解散をあえてするようなことすらあったからであると、過去の事例で裏づけています。

 いずれの説を取るにせよ、五十四条一項は内閣の権力濫用を防止する規定であり、日数を限定しているのはそれなりに重たい事柄だというふうに考えます。これを、単なる調整規定あるいは訓示的規定にすぎず、内閣だけが非常時だと判断することで延長できるという解釈が許されるのかと首をかしげざるを得ません。

 この疑問に対して、阪口正二郎一橋大学大学院教授は、「憲法改正をよく考える」の第三章「改憲論と「生ける憲法」」の中で、参考になる考えを示しています。

 すなわち、憲法の条文には、大別して、明確で解釈の余地が余りないものと、曖昧で解釈の余地を残すものがあると原則論を披瀝した上で、憲法五十四条一項は、ちょっと中略しますが、相当程度に明確な条文であり、解釈の余地は余りない、他方、表現の自由を保障した憲法二十一条のような条文は、解釈の余地を残し、解釈によって時代の変動に対応する場合が多いと、まさに我々のこの議論に示唆を与えてくれています。

 以上を踏まえると、条文そのものの性質からして、今の解釈の話ですね、また日数の限定が権力濫用防止のための趣旨であることからして、五十四条一項は厳格に解釈されるべきであり、緊急集会が七十日間を超えることは難しいというふうに考えます。

 また、百歩譲って七十日を超える解釈が可能だとしても、長谷部参考人が強調してやまない、平常時と非常時を明確に区別することにより緊急事態の恒久化を防止する目的を実現するためには、その区別の判断が内閣だけに委ねられる解釈運用は手段として危ういと言わざるを得ません。

 こうしたことから、七十日間を超える選挙困難事態に対しては、緊急集会という手段よりも、憲法上、国会における事前の厳格な手続と事後の司法による関与を要件とする議員任期の延長制度の明文化が望ましいと考えます。これは、今述べてきた五十四条一項の法律解釈論の観点からもそうですし、また、内閣に対する国会の統制を図るという観点からもそうですし、さらには、憲法の二院制の原則の観点からも望ましいと考えます。

 以上です。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 私は、憲法五十四条二項に定める緊急集会を任期満了時に活用するということにつきましては、その文言が、そのように定められていないこと、また、この参議院の緊急集会が、先ほど来お話があるように、権限に限定があると解されていること、また、二院制の例外となることから、極めて慎重に議論をするべきだというように考えております。

 前回の参考人質疑で、長谷部参考人は、憲法五十四条二項の目的は、現在の民意を反映していない従前からの政府や政権の居座りを防ぐことだというように述べておられます。

 しかしながら、議員任期の延長に際して、選挙困難事態の認定あるいはその延長について厳格な判断をすることによって、そのような濫用を防ぐことができます。私は、その認定は、司法ではなくて、例えば、中川幹事が先ほどおっしゃったような、国会あるいは国会に設けた機関などの認定によって客観的に行うという手段が考えられるのかなというように考えております。

 緊急事態が終了した後には、そこで選挙が実施され、そしてまた、新たに政策の見直しが実施されることによって民主主義が健全に機能していれば、そのような居座りなどということを考えることは私は余地がないというように思います。

 そして、何よりも問題なのは、長谷部参考人が、繰延べ投票を活用して、投票ができるようになったところから順次投票を行っていけばよいと述べたことであります。

 これも、先ほどから議論があるとおり、比例代表選挙については、その比例ブロックの一部でも選挙を実施しないと当選人を確定することはできません。また、被災地で選挙ができないことから、そこの地域の議員が一院において空白になるということがあり得ます。緊急事態対応を講ずる上で肝腎な地域の代表者が選出できないということになるわけです。

 先ほど赤嶺委員は、選挙は国民の重要な権利だとおっしゃいました。当該地域の代表においても、居座りだからどかせろということを赤嶺委員はおっしゃるのでしょうか。

 この一人一票の原則、そして民意を可能な限り正確に反映すべきということは、例えば、一票の格差において、地域間における国民の投票価値の平等をあれほどまでに裁判所がしっかりと要求しているということからも明らかであるかと思います。ゆがんだ民意を使ったこのような緊急事態の対応というのは、私は極力避けるべきだというように考えております。

 そして、長谷部参考人は、七十日を超えても緊急集会で対応すればよいというふうにおっしゃっていますが、これは、北神委員がおっしゃるとおり、もしそれを認めてしまうと、衆議院の多数派を取ることができない、少数の会派に信をおく内閣が、あえてこの事態を活用するために、選挙を行わず、そして、参議院の緊急集会で望む政策を行うということを恒久化してしまう可能性が避けられません。

 緊急集会で対応している間は、内閣は職務執行内閣にすぎないわけです。そして、その内閣の大部分は前衆議院議員ということになります。そのような内閣が長期間にわたって緊急事態に対応するということが、果たして正当化されるのでしょうか。

 そして、ちょっと考えれば分かることなんですけれども、もし議員任期延長というものを想定しなければ、例えば今日この後、直後、非常に強毒性の高いパンデミック、感染症が発生して、コロナは三年で収まりましたけれども、今後五年間選挙困難事態が継続した場合には、衆議院のみならず、参議院議員も一人も議員がいなくなっちゃうわけです。そのような場合に、緊急集会も開催されないということになりかねません。

 そのような事態が本当に起きるのかどうかということはともかく、先ほど来お話があるとおり、あらゆる事態を想定して、任期の延長ということを緊急事態条項の一部として定めていくということは、私は国民にとって必要な国会の責務であるというふうに感じますので、そのことを申し上げ、私の意見とさせていただきます。

近藤(昭)委員 立憲民主党の近藤昭一でございます。

 私は、緊急事態条項及び緊急事態における国会議員の任期延長問題について発言をさせていただきたいと思います。

 そもそも緊急事態条項とは何かということでありますが、自民党は二〇一二年に、憲法改正草案を発表しました。その内容は、一つ、内閣が緊急事態宣言を出し、二つ、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定でき、三つ、予算の裏づけなしに財政上必要な支出その他の処分ができ、そして四つ、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる、五つ、緊急事態中は基本的人権の保障が解除されるというものであります。

 内閣が緊急事態宣言を出すことで、内閣は、一つ、国会の立法権、二つ、予算の決定権、三つ、地方自治体を独占し、四つ、国民の基本的人権を侵害できるなど、憲法の民主主義、基本的人権に関わる諸原則を停止できるという内容であります。つまり、緊急事態条項を創設することによって、緊急事態において憲法の根本的原則を停止できるということになるわけであります。ですから、私は緊急事態の創設に反対をします。

 長谷部参考人が、平時と緊急時の区別を重視し、緊急時の対応はあくまで臨時的措置にとどめ、平時の憲法上の諸原則の維持に努めることを強調したのは、緊急時の対応が憲法の諸原則を停止することになるからだと思います。

 では、緊急事態における国会議員の任期延長についてはどう考えるべきでありましょうか。

 緊急事態における国会議員の任期延長についても、一つ、国民の選挙権を実質上制限をする、二つ、国会議員であることの正統性の根拠が乏しくなる、三つ、内閣に選挙困難の認定を委ねると、内閣が恣意的に国会議員の任期を延長する濫用を生むなどの問題があります。結局、国会議員を固定化し、内閣の独裁を生むおそれがあります。

 長谷部参考人は、先ほど我が党の中川筆頭も述べたとおり、緊急事態の恒久化のおそれがあると指摘されました。実際、一九四一年に、衆議院議員の任期が任期満了前に一年間延長されたことがあります。

 その理由は、今日のような緊迫した内外情勢下に、短期間でも国民を選挙に没頭させることは、国政について不必要にとかく議論を誘発し、不必要な摩擦競争を生じせしめて、内外外交上甚だ面白くない結果を招くおそれがあるのみならず、挙国一致防衛国家体制の整備を邁進しようとする決意について、疑いを起こさしめぬとも限らぬので、議会の任期を延長して、今後ほぼ一年間は選挙を行わぬこととしたというものであります。まさに、政権が独裁化し、戦争を遂行するための国会議員の任期延長と選挙の先送りだったのであります。

 むしろ、緊急事態に必要なのは、国会議員の任期延長ではなく、どんな状況でも選挙ができるようにする平時からの備えであると思います。この点では、大石参考人が、改憲ありきではなく、立法による備えの必要性を述べられていました。日弁連からその具体的内容について提案がなされていることは、先ほど中川筆頭が述べたとおりであります。

 今日、日米と中国との緊張関係が取り沙汰されています。こうしたときに求められるのは、戦争することを前提とし、憲法諸原則を停止させる緊急事態条項の創設ではなく、戦争しないための徹底した平和外交の努力ではないでしょうか。

 許し難いロシアのウクライナ侵攻によって、ウクライナの死者は一万人を超え、難民は一千万人を超えています。人々の生活は壊され、自由も奪われています。ロシア側の兵士も、多くの人々が強制的に徴用されています。一旦始まった戦争は拡大をしていき、終結する見通しは立ってはいません。

 過去の日本の起こした戦争でも、アジアの人々は二千万人、日本人も三百十万人が亡くなられています。一旦戦争を始めると、その犠牲はおびただしいものになります。国民一人一人の命と生活を守るのが安全保障であり、政治家の使命ではないでしょうか。

 その観点からいえば、戦争を回避することこそ安全保障の核心でなければなりません。日本が、台湾有事を想定し、米国と一体となって敵基地攻撃能力を保有し、軍事予算を無制限に拡大することは、中国にとっては威嚇と感じ、日米を上回る軍事力を増強しようとするでしょう。こうした軍拡競争は、国民一人一人の生活を壊し、戦争を招くおそれを大きくしていきます。

 日本が取るべき戦争回避の道は、際限のない軍拡をやることではありません。憲法九条一項に定められた武力による威嚇や行使をしないという立場を発信し、平和的な手段による問題解決を自ら率先し、他国に促すことであります。日中の共同声明また米中の共同コミュニケでも、この原則を合意をしています。この原点に立つよう、中国、米国に働きかけることこそ重要であります。

 日本が再び戦争の道に踏み出さぬよう、また、国民の皆さんの命と生活を守るために、政治家の使命として、徹底した平和外交を行うべきと考えます。

 ありがとうございます。

小野委員 日本維新の会、小野泰輔でございます。

 私も、今日二巡目で何を話そうかなと思っていたんですが、岩谷議員の原稿を事前に見て、ほぼ何も言うことがないなというふうに思っていました。そして、浜地委員とそれから玉木委員、北神委員も、本当にすばらしい、緊急集会の結論について説得的な論評がなされたということで、私、特につけ加えることはもうないんですけれども、参考人の質疑、我々が教科書も勉強した先生に対して意見を申し上げるのは本当に私も申し訳ないことだなと思ったんですが、やはり、憲法学者の先生方と、そして実際に国民の生命財産を守る政治家の間では、大きな認識の違いがあったなということを実感した参考人質疑だったというふうに感じております。

 特に、平時と有事という議論がありました。新藤幹事から、以前から、この緊急集会というのはあくまで平時の制度なんだというような御指摘があって、そのことについて、結構どうなんだろうというふうに私は思っていたんですけれども、ただ、長谷部先生も、平時と有事は明確に分けるべきだというふうにおっしゃっていて、このことについては何も変わりはないというふうに思うんですね。

 ただ、私が参考人質疑が終わった後に感じたことというのは、平時と有事を分けるのは当たり前なんですけれども、そこにおける対応の仕方が随分と違うなということだったんです。

 我々は、緊急事態条項を考えなければいけないという立場の人間からすれば、平時と有事を分けるということは、それは制度そのものもしっかりとつくっておかなければいけないということなんですけれども、長谷部先生の場合には、それは緊急集会だと。そして、その運用の仕方が、平時の場合には一〇〇%数字を守らなきゃいけないけれども、有事の場合には、その作ったルールというのは、数字というのは別に守らなくていいんだというようなことをおっしゃっていて、随分、私は、それは乱暴な議論だなと。

 そして、有事の場合にこそ、どれだけぎりぎりでルールを守るかということを我々は議論しているわけですけれども、そのことはやはりなかなか政治家との認識の差が大きいのかなというふうに思いました。

 同時に、私は、長谷部先生のお話を聞いているときに、私も、二百八国会の二月二十四日、令和四年の二月二十四日にちょうど高橋和之先生に質問させていただいたときにも、高橋先生からも似たような話があったことを思い出したんですね。「極端な事例を出せば出すほど、権限をどこかに大幅に移譲する以外に解決の方法はなくなっていくわけですね。」、あるいは、南海トラフということがあった場合に、「もう誰か一人に権限を全面的に集中するような制度をつくる以外にないということになるだろうと思うんですね。」、こういうことをおっしゃっているんですね。

 これはやはり、本当に立憲主義と言えるのかというふうに思います。有事が起こったときに、なりふり構わずに何でもありだというのが本当に立憲主義なのかということを、これは政治家の側も、憲法学者も、我々も法律を学んだときには教科書を必ず読んでいますから、このことは、国家緊急権ということを、割と起こったときにはしようがないみたいに学者の皆さんは考えていらっしゃるんですが、これは本当に日本の憲法学としていいのかどうかというのは、山下先生もうなずいていらっしゃいますが、これは是非、法曹の皆さんにも考えていただきたいというふうに思っております。

 その上で、中川幹事に、今日はもう私も発言を短く終わりたいと思いますから答えていただきたいんですが、七十日を超えたとしても参議院緊急集会が行えないという理由はないんだというふうにおっしゃいましたが、しかし、これは長谷部先生もお認めになっております。今日、新藤幹事が一覧表を作っていただきましたけれども、権限・案件の限定とか暫定性の問題はやはりあるんだということを長谷部先生もお認めになっているわけですが、ここについての制約条件を、七十日以上緊急集会が維持された場合にどうやって乗り越えていくのか、それこそ何でもありというふうに言うんですかということをお尋ねしたいということ。

 それから、権力の濫用を防ぐ、防ぐというふうに立憲民主党の皆さんはおっしゃっていますけれども、しかし、これは私もちょうど参考人の質疑のときにも申し上げましたが、参議院の緊急集会だって、これは参議院がもう案件が終了しましたというふうに宣言しない限りは権力の濫用は続くわけですね。ですから、そこに何の差があるのか。

 つまり、立憲民主党の皆さんは憲法改正をしたくないから、そちらの、例えば我々が提案しているような任期延長の方は濫用があるんだというふうに言っていますが、参議院の緊急集会だって、先ほど岩谷委員が言ったように、半分の参議院議員しかいないような状態でずっと濫用が続く可能性があるわけですが、そのことに目をつぶっているのではないかというふうに思いますが、そのことについてもお答えいただきたいと思います。

中川(正)委員 ありがとうございます。

 そこは非常に重要な論点だと思うんです。だからこそ、私たちは、選挙困難事態の定義、これをしっかりと議論をした上で、選挙をまずやるということを、さっき申し上げたように、第三者機関か、あるいは皆さんが言っているような裁判所等々含めて、しっかり認定するというか、そういう機能を前提にした議論をしなければいけないということを言っています。

 だから、任期延長するかしないか、あるいは七十日を超えるか超えないか、これはまだこれからの議論の余地は私たちはあるというふうに思っているんですが、それよりも大事なのは、やはり、選挙はやらなきゃいけないよということ、ここなんだと思うんです。そのことを強調したつもりで、さっき申し上げたということです。

小野委員 まだ残っていますか。

森会長 もう発言時間は過ぎておりますので。

小野委員 では、一言だけ。済みません。

 もちろん選挙をできるだけできるようにする努力は、我々だってそれは考えるわけです。ただ、ちょっとお考えが違うのは、それすらも無理なときを考えていないということなんですよ。それをやはり否定してはいけないというふうに思います。

 以上です。

浜地委員 済みません。今日、二回目、発言させていただきます。ありがとうございます。

 今日、私、お話を聞いていまして、参議院の緊急集会の性質論が国会議員の任期延長問題に深く関わることは確認をしました。しかし、一部、繰延べ投票を活用すればいいんだという議論、先ほど私、反証させてもらいましたけれども、ここは、この委員の皆様方で繰延べ投票の活用の仕方というのはちょっと確認をした方がいいと思っております。

 私の理解では、繰延べ投票は、既に何か事態が起きたときに、選挙の公示日又は投票日が既に決まっていて、決まった後に何か事情があって投票日に投票できないというときに繰延べ投票をするものだと思っています。

 例えば、では、衆議院が解散をされた又は任期満了選挙が迫っている。実際の公示日や投票日が決まっていないんだけれども、繰延べ投票を行うためには、その投票所で選挙ができないことが分かっていながら、あえて公示日を設定し、選挙期日を指定することになるんだろうと思います。果たしてこういう使い方がいいのかどうか。

 そこを、ちょっといきなりなんですが、法制局が分かれば、繰延べ投票の正しい使い方といいますか、どういったところを許容しているのか、ここをちょっと実は確認しておかないと、いつまでたっても、繰延べ投票でできるんだということになりはしないかと思っておりまして。答えられるかどうか確認をしてから今質問していますので、ある程度のことを答えられるということでございますので。済みません、会長、もしよろしければ。

橘法制局長 失礼いたします。

 突然の御質問ではありますけれども、条文上どうなっているかだけ御報告を申し上げます。

 先生方御承知のとおり、まず選挙期日については、総選挙、通常選挙、その他地方の一般選挙とも、いついつまでに公示、告示しなければならないという形で選挙期日が一旦決まります。一旦決まった上で、繰延べ投票については、天災その他避けることのできない事故により投票所において投票を行うことができないときなどにおいては、更に期日を定めて投票を行わせる。つまり、選挙期日が一旦決まっていて、その上で更にもう一回期日を定めてやるというのが繰延べ投票だと。

 先生御指摘の点は、初めからやれないことが分かっているときに、ダミーで一回選挙期日を設定しておいて、それを更に延ばすというようなことなのか、それとも、そういうときには期日を定めないで繰延べ投票というふうにいきなりできるのかということについては、特に後者の点については、条文上はかなり困難ではないのかなと。そして、ダミーで定めるということに意味はあるのかなということは、ちょっと分かりません。

浜地委員 もうやめますが、ですので、繰延べ投票は、基本的に今、橘さんのお話でございますと、きちっと公示日、告示日が決まっていて、投票日も決まっている中で何らかの事態が生じたときにその投票所で投票できないということに、恐らくかなり限定されていくんだろうと思います。

 ですので、衆議院が解散し、まだ公示日が決まっていない若しくは任期満了選挙が迫り任期満了選挙の公示日また投票日が決まっていない中において何か投票所で選挙ができないような事態が起きたときには、私は繰延べ投票はできないんだというふうに思っております。

 ですので、非常に繰延べ投票をできるという議論は限定された事態でありますので、そういう意味でいうと、この繰延べ投票ができるという議論に余り我々委員としては引っ張られる必要はないんじゃないかなということを改めてちょっと確認をさせていただいたというところでございます。

 以上でございます。

山下委員 自由民主党の山下貴司です。

 私は、議員になる前、憲法担当の司法試験考査委員として、先日の参考人質疑の両参考人を始め、様々な憲法学者の学説に敬意を持って触れる機会がありましたが、その経験に照らしても、立法府の一員として、先日の長谷部参考人の参議院の緊急集会に関する御見解を正解とするわけにはいきません。

 その理由は、長谷部参考人の御見解は、憲法の明文に基づかないものであるばかりか、緊急集会という権限の不十分な機関による国会の片翼飛行を憲法に規定のないまま期限の定めなく長期化させかねないものであり、さらに、後日、裁判所が類推適用について違憲判断をすることが排除できないからです。

 先日御指摘したとおり、従来の通説は、任期満了時の緊急集会条項の類推適用については、憲法制定に深く関与した佐藤達夫元法制局長官や長年司法試験委員を務めた佐藤幸治京大名誉教授を始め、消極的でいらっしゃいました。さらに、類推適用を認める学者にあっても、緊急事態における緊急集会の存続期間や権限については、解釈が混沌としている状態であり、いざとなったときに実務がよるべき通説、判例は存在しません。

 そして、長谷部参考人提出資料七百七ページで指摘されるように、緊急集会で取られた措置を裁判所が遡及的に違憲無効と判断することも排除されていません。裁判所が、明文に反する任期満了時の緊急集会の開催や手続を違憲と判断し、緊急集会で成立した法律、予算を遡及的に無効と判断した場合、大混乱となります。

 長谷部参考人は、長期にわたって選挙を先送りしなければならない状況が実際に発生し得るか疑問とされましたが、これは、まさに東日本大震災で地方自治体の首長や議会の選挙をあらかじめ最大で七か月間延長した我が国の経験を踏まえない御見解であり、しかも、同様の立法措置では憲法上の国会議員の任期延長はできないことは、閣議決定に基づく質問主意書答弁でも度重ねて述べられた解釈であります。

 そして、緊急集会の権限が限られていることも問題です。既に指摘されているところに加え、例えば、緊急事態で総理が欠けている場合、通説では、緊急集会での総理大臣の指名を認めておらず、また、総理の臨時代理は、閣僚の任免権など総理の一身専属権は行使できません。緊急集会が継続する間は、総理が指名できないばかりか、財務大臣や防衛大臣など枢要閣僚が欠けても新たな閣僚は任命できないのであります。

 あり得ない話ではありません。関東大震災発生当時、加藤友三郎総理は一週間前に死去しており、後任の山本権兵衛総理は、大命降下に基づき震災発生翌日に任命され組閣し、国難を乗り切ったのです。現行憲法上は、衆議院ならぬ参議院の緊急集会では、そのようなことはできません。

 また、緊急事態による国会の機能不全が長期化した場合の規律も不明であります。

 長谷部説によれば、法は不可能事を要求しないことを根拠に、解散の日から四十日という憲法の明文を超えることは許容されるとし、緊急集会の継続期間を憲法上限定しない立場です。

 この立場によれば、逆に、緊急集会が続く間、国会議員の身分を持たない閣僚から構成される、しかも衆議院の信任に基づかない内閣が長期間居座ることが可能となります。そもそも、法は不可能事を要求しないとの理屈を用いれば、国会議員の任期の定めを超えることも憲法は許容するとの解釈すら成り立ってしまいます。このような極めて抽象的な法理論を根拠に憲法の明文を逸脱できるとするのは、立憲主義に反すると考えます。

 また、そもそも、定足数に満たない場合、緊急集会すら開くことはできません。首都直下型地震により、参議院議員の多くが死傷や交通途絶などにより本会議に出席できない場合です。こうした場合に、憲法制定時の先人が検討したように、緊急政令の必要がないかも議論する必要があります。

 今私たち立法府に問われているのは、審査会でも繰り返し指摘されている、想定された緊急事態における国会の機能不全にどのように対応するかです。憲法の明文や制定経緯に反し、通説、判例とも言えない安易な緊急集会の類推解釈論にすがって何の手当てもせず、憲法に基づかず、違憲との司法判断を招きかねない立法不作為を漫然と続けるのか、それとも、憲法の枠内で緊急事態に対応するため、九割の国家が憲法に規定しているように、立法府の責務として憲法に緊急事態条項を明記するのか。立憲主義を守る観点からいずれの立場が我々立法府に求められているかは明らかであります。

 その上で、緊急事態条項については、当審査会において、各党から相当な意見の蓄積がなされております。

 そこで、会長にはお願いでございますが、緊急事態条項について各党より出された主な意見を衆議院法制局に取りまとめさせ、国民に見える形でこの論点についての議論を行うことができるようお取り計らいをいただきたいことをお願いして、私の意見といたします。

森会長 ただいまの会長に対する要請につきましては、幹事会等で協議をいたします。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 報道等によりますと、与党内で衆議院の早期解散論が浮上しているようです。そもそも四年の任期のまだ半分も経過していないうちに解散・総選挙で民意を問わなくてはならない大義名分はあるのでしょうか。まして、今は、各地で地震が頻発し、北朝鮮のミサイル等の発射に対して破壊措置命令が発せられるなど、いつ何どき選挙困難事態が生じるか分かりません。

 先ほど来、任期延長のための憲法改正を行うべきだという立場から、蓋然性が低くても可能性がある限り、あるべき法制度をつくるのが国会の責務だといった御意見が述べられています。

 また、五月十一日の当審査会で、自民党の新藤筆頭幹事は、長期にわたって衆議院不在が予想されるような有事が発生した場合においても二院制国会を機能させるために、憲法の明確な要件に基づき発動される緊急事態時の議員任期延長などの措置を講じておくことは、立憲主義の観点からも極めて重要だと述べられていました。

 もし、本気でそう思っているならば、衆議院解散中に選挙困難事態が生じても二院制国会が機能するための措置を講じてから解散するのが筋です。そうした措置を講じないまま、解散中に大規模災害や有事が発生し、長期にわたって選挙困難事態が続くと見られる状況が生じたとしても、参議院の緊急集会で対応すればよいというお考えでしょうか。新藤筆頭にお答えを求めます。お願いします。

新藤委員 解散後に、もしそういった選挙が実施できなくなった事態については、その時点で、まず議員が不在になっているわけです。ですから、この審査会の中では、その議員をどう復活させるのか、また権限を与えなくていいのかという議論がございます。その上で、二院制の国会として、民主的統制を維持するための国会を維持していかないといけないというのが今までやってきた議論で、そこは階さん、お聞きになっていたと思うんですけれども。(階委員「答えになっていません」と呼ぶ)いやいや。

 それで、緊急集会は、あくまで、選挙が予定されている、その間の空白期間を埋めるための臨時の措置であって、私たちが今この審査会で皆が議論している緊急事態というのとは違う使い方になっている。それをこの間のお二人の参考人からの話であったわけで、緊急集会で、参議院によってそれを、国の緊急事態においても、参議院の一院制でもってあらゆるものができるというのは、そもそも限界があるということでございます。

階委員 私の質問に対して明確な答弁ができていませんが、現行憲法下では、解散中に選挙困難事態が生じたら緊急集会で対応せざるを得ないわけです。現時点で衆議院を解散することを容認する方々は、選挙困難事態には緊急集会で対応すればよいとする我々のような立場か、そもそも選挙困難事態は起こり得ないという、いわゆるお花畑の立場か、いずれかであると指摘しておきます。

 さて、前回の当審査会で玉木委員は、解散から四十日以内に総選挙を実施し、総選挙後三十日以内に特別国会を召集すべしという憲法の定め、いわゆる七十日ルールに反する運用を緊急事態下で容認することは立憲主義に反すると述べられ、この見解について我が会派に意見を求められました。私から回答いたします。

 確かに、立憲主義の見地からは、憲法に書いてあることは緊急事態であっても守ることが大原則です。しかし、そもそも立憲主義は、憲法によって国家権力を縛り、恣意的な権力行使を防ぐことに本質があります。したがって、憲法のルールを形式的に守ることを理由に挙げ、恣意的な権力行使の余地が広がるように憲法を解釈し、国家権力にとって都合のよい憲法改正を主張することは、立憲主義に名をかりた立憲主義の破壊であると言わざるを得ません。

 その意味で、十八日の当審査会における長谷部参考人の、政権の居座りを阻止するための七十日ルールを逆手に取って、従前の衆議院議員の任期を延長し、従前の政権の居座りを認めるのは本末転倒の議論との発言は、立憲主義の本質を踏まえたものであって、まさに正論です。

 本日の中川筆頭の発言からも明らかなとおり、我々は、七十日ルールを守れなくなるような選挙困難事態への対応につき議論することはやぶさかではありません。小野先生、北神先生の言うような、選挙困難事態を時の政権が恣意的に決めることを防ぐ必要があると考えております。

 しかし、解散から総選挙を経て、次の国会召集までの期間を縛る七十日ルールがあるからといって、論理必然的に緊急集会の活動期間を最大七十日に縛る解釈が成り立つわけでもありません。

 こうした不確かな解釈を根拠として議員任期延長のための憲法改正を行うことは、立憲主義の見地からは到底許されません。なぜなら、時の権力者が安易かつ長期に任期を延長して、政権を延命させ、選挙による民意の審判を仰がぬまま、フルスペックの権力を行使し続ける独裁政治につながるからです。

 そもそも、緊急集会の活動期間については憲法に明文の定めはありません。選挙困難事態をできるだけ防ぎ、また、早期に解消するための手だてを講じつつ、七十日という上限を設けず緊急集会の活動を認めるとともに、その権限の範囲は必要最小限かつ暫定的なものにとどめるという方向性が、より立憲主義に即した議論だと確信しています。

 以上です。

玉木委員 私からも、今、階先生からあったのでお答えしたいと思うんですが、七十日を超えて緊急集会を使うことが、そっちの方が権力の濫用になるんじゃないのかということを申し上げているんです。

 つまり、どういうことかというと、任期を延長して衆議院の多数の権力、国会の一翼の権力を延ばすことと、想像してみてください、緊急集会をやるときは、事実上、そのときの内閣が全てを決めます、基本的には。かつ、その内閣を構成する多くの元衆議院議員は、明確な法的根拠を持っていない人が内閣を構成しています。その人たちに一体いつまで権力行使を認めるかということについて、あるいは、その権力行使を解除するということについてのルールが明文上憲法には全く書かれていないので、かえって行政の、しかも、極めて正統性を欠いた内閣、行政の権力濫用を許してしまうので、おっしゃるとおり、議員任期の延長をすると、やはり議員たちの権限が拡大するんですが、それは立法府の権限なので、それはそれで一定の問題があると言うから、司法の判断も入れようということを我々は併せて提案しているんです。

 今の、特に、モーリス・オーリウ流の緊急事態の法理で、書いていないことを延ばして、幾らでも何とでもできる、終わりの期限も、神の論理だとか道徳だというところに最後根拠を求めるわけですよ。それの方がよっぽど権力の濫用になるんじゃないのかということで、だったら、ちゃんと議論して、平時のうちから、緊急時における特例的なことをきちんと、国民投票を経る形で、国民の合意を得た形できちんと明文化しておく方が権力の濫用を防げるんじゃないのかということを提案しているので、何かそのことをひん曲げて言っているということよりも、本気で心配しているんです。

 もう一点だけ、ちょっと申し上げたい。

 もう一つは、やはり、学者と我々が違うのは、選挙ができないような事態が起こる蓋然性が低いからいいのか、ちっちゃくてもちゃんとやるのかということを、これは我々が決めるしかないと思うんですよ。階委員はまさに被災地で経験されたと思うので。

 私は、例えば郵便投票をやる、やったらいいと思います。ただ、郵便局員も動けないと思います。

 その中でも、職務を一生懸命果たそうとあの当時頑張った、家族を顧みず頑張った人たちも、役場の職員も県庁の職員も郵便局の局員もいっぱいいたと思います。でも、彼らも同じく被災者であって、家族も被災している中で、とてもまともな選挙ができる状況じゃなかったので、当時与党だった我々は、特例法を作って地方議員の任期の延長の法律を通したんじゃないんですか。

 もちろん、今言ったような郵便投票、いろいろなことをやったらいいです。でも、できないことがあり得る。そのときのルールを事前に、平時にきちんと議論して決めておくことが立憲主義に合致するんじゃないのかということを提案しているので、何も権力の暴走を許すために提案しているわけではありませんので、それは是非御理解いただきたいと思います。

森会長 この議論は、そう簡単に決着する案件じゃないので、またの機会にしていただきまして、最後に、北側一雄君。

北側委員 済みません、簡潔に意見を述べます。

 まず、緊急事態における国会議員の任期の延長問題は、昨年来、当審査会で相当何度も議論を積み重ねてまいりました。五会派の間では、ほぼ私は考え方は共通をしていると思います。また、立憲の皆さん、共産党の皆さんの御意見もございます。相当、その争点といいますか違いといいますか、そこはもう明確になってきていると思いますので、一度この段階で、国会議員の任期延長問題についての整理を是非すべきである、できましたら、せっかくここまでやってきたんですので、この国会中に是非整理をしてもらえればというふうに思います。

 その上で一点だけ申し上げたいと思うんですが、今日、選挙困難事態、これは多分、立憲の皆さんも、それはあるかもしれない、こういう御認識だと思うんです。選挙困難事態を早くこれは解消しなきゃいけないんだ、そして早く総選挙をしないといけないんだ、これはおっしゃっているとおりでございまして、それは当然のこととして、我々多分五会派の間でも共通して、早く選挙困難事態を解消し、また、早く総選挙なり通常選挙なりをやろうということは、その認識は全く変わりはない。だけれども、やはり、七十日を超えて選挙困難事態というのはあり得るねという認識なんです。

 これはもう我々は経験しているわけです、東日本大震災。階さんはまさしく地元の方でございまして、あのときをもう一度思い起こすべきだと思うんです。

 あのときは、まずは被災者の方々の救援、救護、最優先です。被災自治体の職員の皆さんも被災者です。全国から、国、地方、民間のボランティアの皆さんが被災地に集まって、まずは救護、救援、全力を挙げて取組を我々はしました。そして、生活インフラ、経済インフラ、もう全て破壊をされてしまっている。そういう中で、復旧活動に全力を挙げて取り組みました。これも、被災自治体だけじゃありません。全国の自治体から、国から、民間ボランティアにも本当に頑張っていただいて、あの復旧活動をしたわけでございます。

 そういう中で、本当に七十日以内でいろいろな、もちろん、工夫ができて、できればいいですよ。ただ、選挙が実際あのときに本当にできたのか、国政選挙が一体性を持つ形で本当にできたのかということは、もう一度思い起こすべきです。

 選挙事務というのはそんな簡単なことじゃありません。投票所があればいいということじゃありません。大変な選挙事務、事務量も多い、コストもかかる、多くの人たちがその選挙事務に携わるわけです。投票のとき、開票のとき、どれだけの人数の方がやっているか……(発言する者あり)聞いてください。

 私が申し上げているのは、選挙困難事態というのは、やはり七十日を超えてあり得るでしょう、我々は東日本大震災のときにそのことを経験しているでしょう、それを早く解消すべきは当然の話。だけれども、そうであったとしても、実際、相当期間、長期間、選挙ができない。現実に、地方議員の選挙、首長の選挙はできなかったわけですよ。国政選挙ができるわけがありません。

 そういうことを考えたときに、きちんと、国会の二院制、同時活動の原則、そういうものが確保されるような形にしていくためにはどうすればいいのかということでこの任期延長の問題があるわけでございまして、そこは是非認識をしていただきたいというふうに私は思っております。(赤嶺委員「会長、さっき柴山先生から私の名前が出たので」と呼ぶ)

森会長 会長の指示に従ってください。

 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十分散会


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