衆議院

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第4号 令和5年11月30日(木曜日)

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令和五年十一月三十日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 中谷  元君

   幹事 船田  元君 幹事 階   猛君

   幹事 中川 正春君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    伊藤 達也君

      石破  茂君    岩屋  毅君

      上田 英俊君    衛藤征士郎君

      尾崎 正直君    大串 正樹君

      大塚  拓君    鬼木  誠君

      川崎ひでと君    齋藤  健君

      下村 博文君    鈴木 英敬君

      中川 貴元君    中西 健治君

      仁木 博文君    葉梨 康弘君

      古川 禎久君    古屋 圭司君

      松本 剛明君    山口  晋君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      新垣 邦男君    大島  敦君

      奥野総一郎君    城井  崇君

      近藤 昭一君    中谷 一馬君

      谷田川 元君    吉田はるみ君

      青柳 仁士君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    河西 宏一君

      國重  徹君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月三十日

 辞任         補欠選任

  伊藤 達也君     山口  晋君

  越智 隆雄君     川崎ひでと君

  細野 豪志君     中川 貴元君

  松本 剛明君     仁木 博文君

  山本 有二君     上田 英俊君

  本庄 知史君     中谷 一馬君

同日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     山本 有二君

  川崎ひでと君     鈴木 英敬君

  中川 貴元君     尾崎 正直君

  仁木 博文君     松本 剛明君

  山口  晋君     伊藤 達也君

  中谷 一馬君     本庄 知史君

同日

 辞任         補欠選任

  尾崎 正直君     細野 豪志君

  鈴木 英敬君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題(広報協議会を含め、国民投票法を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題、特に、広報協議会を含め、国民投票法を中心として自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。船田元君。

船田委員 私は、長く憲法調査会そして憲法審査会に加わってまいりましたが、この国会から久しぶりに幹事として加わることになりました。今後の議論の活性化と円満な運営に努めたいと思っております。

 昨年来、国会開会中はほぼ毎週審査会が開かれ、これは望ましいことであります。これまでは自由討議が中心でございましたが、既に、緊急事態をめぐるテーマでは議員任期の延長を中心として議論が煮詰まってきておりまして、今後は他の一、二のテーマに絞って精力的に議論を集約していければいいなと思っております。

 国会法におきましては、発議の際には、内容において関連する事項ごとに区分して個別に発議するものとする、このように規定をされております。つまり、一括の審議、一括の投票ではないということであります。複数のテーマを、それぞれに賛否を聞けるような仕組みとなっておりますので、せっかくの改正の手続でありますので、できれば複数のテーマにおいて発議をするということを念頭に入れたいと思っています。

 そうした中、先週の幹事懇談会で、事務方から、国民投票法で設置が義務づけられております広報協議会の規程案が示され、その合意に向けまして一歩踏み出していることはうれしい限りであります。

 一方で、憲法改正国民投票運動をめぐる諸問題は、与野党間でなお合意が得られておりません。私は、平成十九年の衆議院憲法調査特別委員会で国民投票法の成立に関わってまいりましたが、国民投票運動はできる限り自由にとの趣旨を盛り込み、規制は、例えば、特定公務員の運動禁止や、公務員や教育者の地位利用の禁止、さらには多数人買収の禁止など、最小限にとどめたつもりであります。したがって、放送CMなどの規制あるいは運動費用の上限規制には慎重であるべきというのが私の考えであります。

 しかし、賛否の分量において不公平が生じたり、フェイクニュースなどで世論がねじ曲げられたりすることは避けなければならず、これをチェックする役割を広報協議会が担うことで対応すべきであると思っています。

 例えば、テレビCM規制の議論はまだまとまっておりませんが、テレビ局自体が、その賛否の内容や分量、放送時間帯などにおいてバランスを取るためCM考査というのを行い、自主規制を行っていただく、この方向になっておりますので、これは評価に値するものと思います。その状況を広報協議会に定期的に報告をしていただくということも考えられます。

 CMや意見広告の出し手やその寄附者に、一定金額以上のかかった費用総額を広報協議会に報告をさせるということ、これも考えられます。国民投票運動の主体にも同様に、運動費用の総額を事後的にあるいは中間的に報告をさせるということも重要な手段ではないかと思っています。このことを通じまして、公平性の確保、あるいは一定の歯止めは利くのではないかと思っております。

 なお、外国人の寄附については、やはりこれは禁止をするという方向で各党間、合意が得られるのではないかと思っています。

 ネットを使った広告や意見表明に直接規制を加えるということは現実的に困難であると思いますが、主なプラットフォーマーに対して、運動期間中の回数やかけられた広告費などについても広報協議会に報告をしてもらうことで、一定の歯止めは利くのではないかと思います。

 フェイクニュースなどのファクトチェックにつきましては、広報協議会があらかじめフェイクニュースの典型例やガイドラインを内外に示したり、外部のファクトチェック機関と連携をする、こういったことも有効な手段であると思っています。

 なお、これらのシステムを検討する際は、今年の十月の十四日に実施をされましたオーストラリアにおける憲法改正投票、テーマは先住民の人権擁護に関するものでありましたが、このオーストラリアの状況を参考にすることは極めて有意義である、このように思っております。適切な時期にそのヒアリングを行うか、あるいは事務局に調査をさせてみてはいかがかということを提案をしてみたいと思っています。

 いずれにしましても、広報協議会には、国民投票運動あるいはそれに類する様々な広報活動の公正さを保つために、その役割の拡大や明確化が求められ、そのためにも国民投票法の改正ということを目指すべきだと私は考えております。

 以上であります。

森会長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 前回の当審査会で、自民党の中谷筆頭は、憲法改正や国民投票は、国民に理解していただくためにはプロセスや内容が非常に大事だと発言されました。

 その後、岸田首相は、来年九月までの自民党総裁任期中の憲法改正を目指す旨、答弁しました。

 中谷筆頭に伺います。

 岸田首相のこの答弁を受けて、前回の見解に変わりはないですか。変わりがないとすれば、岸田首相の言われる来年九月という期限に当審査会は縛られないというお立場だと理解していいですか。後ほどお答えください。

 そもそも岸田首相は、憲法改正の期限にはこだわるものの、改正の内容についてはこだわりが見えません。二十二日の予算委員会でも、三木委員から、緊急事態の際の議員の任期延長について憲法改正議論を進めることについて見解を問われ、答弁を避けました。憲法改正の期限については自民党総裁の立場を持ち出して積極的に答弁しつつ、憲法改正の内容については内閣総理大臣の立場を持ち出して答弁を避ける、これは極めて御都合主義です。

 今に始まったことではありませんが、岸田首相は、ぶれずに一貫した言動を取るべきです。仮に内閣総理大臣の立場にこだわるのであれば、行政府のトップとして憲法尊重擁護義務を負う以上、憲法改正の期限に言及すべきではありません。他方、自民党総裁の立場にこだわるのであれば、憲法改正の内容を示さずに改正の期限だけを指定するのは、建築工事の発注において、設計図を示さずに完成時期を指定するようなものです。立ち位置が定まらない岸田氏の発言は百害あって一利なしだと申し上げておきます。

 さて、憲法に関し、国会が何を優先して議論すべきか。今年五月の朝日新聞の世論調査が参考になります。

 それによると、七項目の中からの複数回答で、一位が憲法改正のための国民投票の在り方で四六%、二位がデジタル時代における人権保障の在り方で四四%、三位が敵基地攻撃能力の保有で四三%です。緊急事態時の国会議員の任期延長は一八%にすぎず、下から二番目です。

 我が党は、国民が最も関心を持っている上位二つのテーマにつき、通常国会終了後にワーキングチームをつくり、私が座長となって検討を進めてきました。このうち、憲法改正のための国民投票の在り方については、後ほど奥野委員と中谷委員から発言する予定です。

 もう一つの、デジタル時代における人権保障の在り方については、生成AIの急激な発達、普及や戦闘地域でのフェイク情報の拡散により、先ほどの世論調査の時点よりも更に国民の関心は高まっているのではないでしょうか。

 私たちは、インターネットとSNSの普及に加え、昨今のAIやデジタル技術の急速な進展が国民に多くの恩恵をもたらしていることを否定するものではありません。他方で、利用者の関心を引きつけることを重視するアテンションエコノミー、対象者の特性や個人情報を分析し、嗜好や行動パターンを推測して情報提供するマイクロターゲティングの悪影響は看過できません。そして、こうした手法などにより、個々人が自分の趣味、嗜好に合う情報だけに取り込まれてしまうフィルターバブルや、同じような意見を持つ者同士で議論を重ねて極端な考えに至るエコーチェンバーという現象が見られるようになっています。

 また、誤情報、偽情報といった有害無益な情報や他者を傷つける情報が拡散し、周知されやすくなる一方、本来拡散、周知されるべき公共の利害に関わる重要な情報については、公権力による廃棄、隠蔽、改ざんや報道機関への圧力によって拡散、周知されにくくなっている状況が生じていることは極めて問題です。

 これらの結果、社会の分断が進み、民主主義の前提たる建設的な議論が困難になるほか、個人の意思形成過程がゆがめられ、内心の自由が侵される憲法十九条の問題、本人に無断でその人物像が形成、利用され、個人の人格的自律が脅かされる憲法十三条の問題、匿名による無責任な誹謗中傷や個人情報の発信、拡散により名誉権やプライバシー権が侵害される同じく憲法十三条の問題、国民が本来入手すべき情報を入手できないことにより言論の自由や取材、報道の自由が空洞化する憲法二十一条の問題などなど、数々の憲法問題が現に生じたり、将来生じたりする危険が高まっています。

 以上の問題を解決する方法として、現状の憲法規範には手を加えず、法令で必要な措置を講じるべきか、それとも、憲法規範そのものを必要な範囲で見直すとともに、これを具現化する法令を制定していくべきか、両論あり得ると思いますが、議論に際しては、憲法が志向する国家観が大きく変容してきたことを念頭に置くべきと考えます。

 すなわち、十九世紀以前の憲法は、夜警国家を志向し、国家の役割は極力限定して、国家からの自由を保障することが中心でした。しかしながら、産業資本主義と都市化、工業化の進展により、二十世紀の憲法は、福祉国家を志向し、国家による自由を保障するようになりました。そして、二十一世紀の今、金融資本主義とグローバル化、デジタル化の進展により、憲法は、情報国家、つまり、国民の自己実現と自己統治にとって不可欠な思想、言論の自由市場を機能させるために国家が積極的な役割を果たす国家、これを志向する必要があるのではないでしょうか。

 こうした歴史的視座に立った場合、情報国家にふさわしい憲法はどうあるべきかというテーマは極めて重要です。憲法改正という選択肢も視野に置きつつ、党派を超えて建設的な議論を行うべきです。

 最後に。この会議室では、これまで、国会議員の任期を延長すべしという意見があちらからもこちらからも上がり、響き渡ってきました。これぞまさしくエコーチェンバーであります。当審査会が、時代や民意から隔絶されたフィルターバブルに陥ることなく、国民が真に望む重要なテーマについて腰を落ち着けて虚心坦懐に議論する場となることを切に望みまして、私の発言を終わります。

中谷(元)委員 岸田総理の、来年九月末までの目の前の任期中に憲法改正できるように最大限努力をするという思いは、十分承知はしております。この総理の熱い思いを受けて、来年九月までの現在の任期中に憲法改正を実現すべく最大限努力をするということは、我々自由民主党員の当然の責務であると考えております。

 しかし、他方、その憲法改正を確実なものにすべく、できる限り幅広い会派の合意形成に努め、国民の理解を得ていくために丁寧な議論をしていく必要があります。岸田総理も二十七日の参議院予算委員会で、総理として、憲法改正の内容や進め方について直接触れることは控えたい、国民の理解を深めるため、国会で議論が深まることを期待したいと述べておりまして、当審査会の丁寧な議論を見守っております。このような丁寧な議論を進めれば、おのずと議論は収れんしていくものと考えております。

 この意味において、前回の私の発言と岸田総理の答弁の間に基本的な大きな違いはないと考えておりますので、与党筆頭幹事として、憲法審査会における議論を更に深めるように努めてまいりたいと思います。

 そして、階議員が今提案されました、デジタル時代における、またAIの進化における憲法の在り方等につきましては、大変重要な視点がありますので、人権保障の在り方も含めまして、今の、情報時代となった世界の変化に対して、それにふさわしいテーマではないかなと思いますので、このような問題につきましても党派を超えて議論をしていくべきだと考えておりますので、どうぞ具体的な提案をよろしくお願い申し上げたいと思います。

森会長 次に、青柳仁士君。

青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。

 本日は、まず、十一月二十一日の当審査会幹事懇談会で提示された国民投票広報協議会の関係規程案の整備の在り方について、意見を述べさせていただきます。

 当審査会で議論のたたき台となるこの規程案の策定は、前国会、六月八日の当審査会で、我が党の小野議員が、夏休みの宿題として森会長にお願いしていたものです。起草に御尽力いただいた衆議院法制局及び憲法審査会事務局の皆様に深く感謝申し上げます。

 資料には、広報協議会の組織とその権限、そしてそれをサポートする事務局の全体像及び改正すべき関連法などが具体的に示されています。それらを子細に見ますと、広報協議会及び政党等の放送、新聞広告に関する事務における、放送事業者と新聞社の決定手続や、政党等による賛成意見、反対意見の放送、広告の枠組み、憲法改正案のインターネットによる広報や国民への説明会の開催、フェイク情報への対処の在り方など、早急に内容を詰めるべき課題があります。

 我が党の二度の住民投票の経験からいえば、とりわけメディアやインターネット上にあふれるフェイク情報への対応は重大な論点であると考えています。偽情報の発信、流布に歯止めをかけなければ、国民の投票行動に大きな影響を与え、公正な選挙の実現、すなわち民主主義の根幹が揺るがされかねないと思っております。

 国民投票となれば、国内だけの問題では済みません。来年一月に総統選を控える台湾では、中国発と見られるアカウントからの有害な偽情報が増加傾向にあると伝えられています。

 我が国の憲法改正の動きを阻止したい特定諸国による情報戦、認知戦への対策も不可欠であると考えます。政府は、昨年末に決定した国家安全保障戦略で、偽情報の拡散を含め、認知領域における情報戦への対応能力を強化すると打ち出しましたが、対応は始まったばかりです。

 前回の当審査会では有志の会の北神議員が指摘されたように、ドイツなど諸外国の例に倣い、国家としてファクトチェックによってフェイク情報を特定し、根本から絶つ、そういった体制を早急に備えることが肝要と思います。守りの主体は政府、立法府など公的機関が担うべきでしょうが、必要であれば民間事業者、機関の協力も仰ぐことも検討すべきと考えます。

 また、憲法改正案の国民に対する広報、つまり放送や新聞における広報や広告に関する規程については、公職選挙法で定められている内容に沿って確定することができると考えています。しかし、通常の国政選挙と憲法改正の国民投票で大きく異なる点が幾つかあり、この点に留意しつつ制度設計していく必要があると思います。

 憲法改正においては、複数の条項に関する改正案が発議されることが想定されます。例えば、政党等が行う放送、新聞での広告は、放送時間や掲載サイズ、回数などを、条項ごとに賛成側と反対側とで平等に割り当てていくことになると考えますが、そもそも当該憲法改正の国民投票において、全部で何項目の改正が提案されているのかなどが示され、さらに、それぞれの項目について各政党などの賛否がどうなっているのかについてマル・バツの一覧表で示すサマリーを設けるなど、国民にとって分かりやすく、混乱を防ぐ取組も非常に重要だと考えます。

 一方で、憲法改正自体に反対する一部の政党が広報協議会の規程案の合意形成を無為に遅らせる工作を行うようなことはあってはならないと考えております。衆参両院の憲法審査会幹事会と議院運営委員会における広報協議会の関係規程の決定プロセスについては、全会一致ではなく、審査会長、議運委員長の議事整理権に基づき、機が熟せば多数決という民主的な手続でなされるべきです。

 衆参両院がしっかりと足並みをそろえることも欠かせません。広報協議会の規程を決定し、国会職員法等関連法の改正を終えなければ、憲法改正の国会発議も国民投票もできません。当審査会においては、この規程を整備、確定する作業は、改正条文案の取りまとめと同時並行的に、遅滞なく進めていくべきです。

 自民党総裁である岸田総理が、二十二日の衆議院予算委員会で、我が党の三木議員の質問に対して、自身の総裁任期である来年九月末までに憲法改正を目指すと、目標年限、すなわち自民党としての本委員会での議論の締切りを明言されました。先ほど中谷幹事も、最大限努力するのは自民党員の責務であると明言されました。

 総理がこの国民への重い約束を果たすために、来年九月までに憲法改正の国民投票を行おうとすれば、国民投票の実施には国会発議後六十日から百八十日間必要であることを鑑みて、遅くとも来年の通常国会終盤までに発議しなければなりません。発議には相当な日数をかけて衆参両院で審議、採決が必要となることを想定すれば、今国会で憲法改正原案の取りまとめに入らなければならないはずです。

 ところが、今国会の衆議院憲法審査会は、会期延長がなく、また定例日の開催に限定すれば、本日を含めて残すところ二回のみです。岸田総理が示された決意とは裏腹に、憲法改正を党是に掲げる自民党からは一向に熱が伝わってきません。

 今国会は残すところ十三日というふうに一定考えられますが、予定どおり閉じたとしても、閉会中審査も行うべきではないでしょうか。

 ゴールに向けて、今国会そして来年の通常国会では、定例日にこだわらず、当審査会の開催日程をできる限り増やして討議を加速させるべきではないでしょうか。

 この二点について自民党の中谷筆頭幹事にお尋ねし、私の発言を終わります。

 ありがとうございました。

中谷(元)委員 来年九月末までということで憲法改正できるように最大限努力をしていくということ、これは我々自由民主党も当然の責務であると考えております。

 したがいまして、憲法改正ができますように、この審査会におきましても、できる限り幅広い会派との合意形成に努めて、取りまとめをして、今後とも丁寧な議論をしてまいりたいというふうに考えております。

森会長 次に、河西宏一君。

河西委員 公明党の河西宏一です。

 今国会より憲法審査会の委員に加わらせていただきました。本日は、森会長を始め各会派の幹事、委員の皆様におかれましては、発言の機会を頂戴し、誠にありがとうございます。

 まず、国会議員の任期延長を始めとした緊急事態条項に関する我が党の基本的な立場について、若干の考察を加えつつ申し述べます。

 憲法第四章第四十一条で「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関」とうたわれる国会は、その権能の重要性に鑑み、二院制、両院同時活動が大原則であります。

 その原則の例外として規定される参議院の緊急集会は、衆議院解散から特別会召集までの立法機能を一定程度維持するという憲法上の重要な権能を有する一方、緊急集会は内閣のみが求めることができ、かつ、緊急集会で取られた措置は、最終的には衆議院の同意が不可欠であります。また、国会法では、参議院の緊急集会においては、内閣が示した案件に関連するものに限り、議員の発議や請願が可能であると定められているところでございます。

 したがいまして、参議院の緊急集会が持つ立法機能の案件が限定的であり、立法措置の効力も暫定的であることを踏まえるならば、緊急事態の発生に直面したときこそ、衆参両院がそろって立法機能、行政監視機能を担う両院同時活動の状態を追求すべきであると考えます。

 では、緊急事態において必要な国会の立法機能とは、質及び量においてどの程度のものであるのか、実例に照らして考察を加えたいと思います。

 まず、従前の御議論では、選挙実施が困難な緊急事態において議員任期の延長が必要であるとの認識が自民、公明、維新、国民、有志の五会派で共有されていると承知をしております。

 その中で、いわゆる選挙困難事態の具体的な類型については、一、大規模自然災害事態、二、テロ・内乱事態、三、感染症蔓延事態、四、国家有事・安全保障事態、五、その他これらに匹敵する事態の計五事態があり得ると整理をされてまいりました。

 今世紀を振り返るならば、我が国は既にこれら類型に及び得る事態、すなわち、二〇一一年の東日本大震災、また、二〇二〇年に端を発した新型コロナウイルスの世界的蔓延に直面いたしました。戦後最大の危機とも言われた事態に直面する中で得られた歴史の教訓を反映させることは、立法府に身を置く者として、いわば当然の責務であろうと考えております。

 そこで、これら二つの大規模な緊急事態において法律がどれだけ制定されたのか、カウントを試みました。お配りさせていただいた資料の集計表を御覧ください。なお、法案数となりますと未成立の法案等も含まれるため、実際に制定された法律の数をカウントした点を付言いたします。

 まず、東日本大震災への対応では、緊急性が高いものという意味で、震災が発生した二〇一一年に四十四本、翌二〇一二年に十九本、計六十三本の震災関連法が制定されました。

 また、制定法律件数の全体としても、二〇一一年は前年の七十二件から百二十六件へと大幅に増加しており、震災対応で多くの立法措置が必要であった点がうかがえます。

 さらに、その内容を見ましても、例えば、統一地方選特例法、東日本大震災税特法、東日本大震災財特法、原発事故調法、平成二十三年原子力事故被害緊急措置法、東日本大震災復興基本法などが挙げられ、その他の法律も含めますと、ほぼ全ての行政分野及び国民生活全般にわたる立法措置がなされております。

 他方、新型コロナ対応では、国内で患者が確認された二〇二〇年に十本、翌二〇二一年に二十二本、計三十二本の新型コロナ関連法が制定されております。

 具体的には、雇用保険法、臨時特例等法、令和二年度特別定額給付金差押禁止法、地方交付税法一部改正、そして新型インフル特措法一部改正などでございます。

 加えて、いずれの緊急事態においても、法案の提出別を見ますと、閣法の提出、成立にとどまらず、多数の法律が議員立法によって制定されたことが分かります。具体的には、東日本大震災では、計六十三本のうち、議員立法が二十二本、そのうち衆法は十七本と大半を占めました。また、新型コロナ対応では、計三十二本のうち、議員立法は七本で、全て衆法でありました。

 このように、緊急事態発生時における制定法律件数からは、与野党の枠を超えて、政治休戦し、国会議員が一致結束して立法に当たったこととともに、繰り返しになりますが、立法機能の案件が限定的、かつ、立法措置の効力も暫定的である参議院の緊急集会だけでは、緊急事態発生時に立法府に求められる十分な対応は困難であろうことが読み取れると考えます。

 したがいまして、やはり緊急事態発生時にこそフルサイズの立法機能、すなわち国会の二院制における両院同時活動を行い、その上で十分な行政監視機能を担っていく、その中において内閣が適切に機能を発揮し、国民の生命財産を守るという重要な使命を果たすべく対応に当たらなければならない、そのためには議員任期の延長が可能となる法体系の整備が必要であると申し述べまして、私の意見とさせていただきます。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 私からも、まず中谷筆頭幹事に確認をしたいんですが、先ほどもありましたけれども、さきの国会で総理が、任期中というのは来年九月の任期中、ここに憲法改正をするという意思を明確に表明をされました。

 中谷筆頭幹事からは今るる御説明があったんですが、あの総理の発言の後、自民党総裁たる岸田総理と中谷筆頭幹事は直接お話をされて、その真意を確認をされたのか、スケジュール感などのすり合わせをあの後されたのかどうかということをまず確認をしたいと思いますので、お答えいただければと思います。

中谷(元)委員 総理とは随時連絡をしたりすることは可能でございますが、実際にどういうやり取りとか、いつかということにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

玉木委員 いや、事実関係として、あの後、三木さんが質問をされて、総理が明確に、任期というのは来年九月の任期だとお答えになった後、それではちょっと急いでやらなきゃいけないかなと思って何らかの御相談、スケジュールの調整をされたのかどうかという、細かいやり取りはいいんですが、話をされたかどうかの事実関係だけ教えていただけますか。

中谷(元)委員 常に、適時適切に総理と連絡、連携は取っておりますが、本件につきましては、その内容等につきましてはお答えは差し控えさせていただきます。

玉木委員 いや、内容ではなくて、したかしないかだけお答えいただければ。

中谷(元)委員 国会審議もやっておりますので、個人的な発言等につきましては言及を差し控えさせていただきます。

玉木委員 していないというふうに受け取りました。

 やはり、自民党の総裁である岸田総理がおっしゃったことを受けてやっていくことが必要だと思うので、コミュニケーションを取ってやっていくことが大事だと思いますし、総理の発言の解釈を、勝手に解釈してやっていくというのはいかがなものかなという感じがいたします。要は、自民党の熱意と本気度がなかなか感じられないというのが正直なところでありまして、正直、絶望的な徒労感を感じています。

 やはり、丁寧な議論を重ねてきて、特に緊急事態における議員任期の特例延長規定の創設については、事務局にもマトリックスの表を作っていただいたり、有識者の皆さんにも来ていただいたりして、少なくとも四党一会派ではおおむね意見の集約が図れていると思います。私たち国民民主党、日本維新の会、有志の会の二党一会派では、もう共通条文案も作って世に問うていますので、会長にお願いしたいのは、議員任期の特例延長規定を創設するための憲法改正の条文案を作る作業部会の設置について是非お願いしたいと思いますので、是非お取り計らいをいただきたいというふうに思います。

 会長、いかがでしょうか。

森会長 幹事会等において協議をいたします。

玉木委員 よろしくお願いします。

中谷(元)委員 先ほど、話をしていないんじゃないかと断定されましたけれども、その件につきましては、思い込まないようにお願いいたします。しっかり話をしながらやっています。

 それからもう一点、総理も、内容とか進め方については直接触れることは控えたいということで、議論が深まることを期待すると述べておりまして、審査会で全て決まるんですよ、総理が発言しようがしまいが。各党が議論をして決めるというのが憲法改正のいわゆるルールでありますので、審査会においてやはりしっかり議論をして、我々自身がどうするかということに懸かっているわけでありますので、総理は国会に任せているという発言もされていますので、しっかりとその点は議論したいし、また、先ほどの協議会をつくってという御要望も重く受け止めていきたいと思っております。

玉木委員 限られた資源の配分なので、時間もリソースも事務局の作業も含めてなんですね。ですから、来年九月までにやるということであればその中で議論をしますし、もうそれは何の期限もないものだということになるとまた無限にテーマが広がっていくということになります。

 例えば、九条の二を創設して九条を改正していくという議論も出ていますが、私は正直申し上げて、いわゆる自衛隊明記論というのは、違憲論を解消できないという意味では中途半端な内容になっているので、九条を改正するのであればもう少し緻密な議論をやはり行うべきで、来年九月というと間に合わないと思います。

 緊急政令についても、我が党は賛成なんですが、これについては公明党さんも若干慎重だというふうに捉えていますし、合意を形成するという意味では、来年九月というとなかなか難しいのではないか。

 そして、今、階議員からもありましたデータ基本権は、我々も二〇二〇年から言っていますので、憲法改正で盛り込むことは賛成なんですが、階議員もおっしゃったとおり、法律でできるのではないのかという意見も一方で、これは立憲民主党の中にもあると思いますから、もしこれで立憲さんが改憲するということであれば、それをテーマに一気にまとめていってもいいと思いますけれども、ここも少し、これまで余り緻密な議論を審査会でやってこなかったので、来年九月というとやはり難しいのではないのかと思います。

 であれば、やはり来年九月ということを一つ考えて具体的にやるとすれば、やはり、最も広く議論され、一定の論点整理が行われてきた、緊急時における議員任期の延長を始めとした緊急事態条項について具体的な条文案を取りまとめるということが現実的ではないかなと思って提案をしております。ですから、改めて作業部会の設置は求めたいと思います。

 あと、奥野さんが今日はお越しなのであえて申し上げると、中川筆頭幹事からは、立憲民主党としては、いわゆる選挙困難時においても議員任期の延長は要らないという明確な発言があったんですが、かつて、私が記憶しているのでは二回、戦時など選挙が困難な事態においては議員任期の延長を可能とする憲法改正も検討の余地ありという旨の発言はされておられたんですが、それは考えが変わったのか。このことについては、また別の機会でいいので教えていただきたいというふうに思います。

 最後に、国民投票法改正案について申し上げたいと思います。

 我が党も、基本的には、問題意識は、今、階さんがおっしゃったとおりだと思っています。なので、国民投票法改正案の成立には最大限協力したいと思っておりますが、ただ、ネットの広告をどこまで規制するかというのは、一方で国民広報協議会におけるネット広報がどこまで行われるのかということと裏腹なので、セットで考えていく必要があるのかなというふうに思います。

 一番正確な情報発信ができるのが改正案を取りまとめた政党なので、その政党からの発信が禁止される一方で偽りのプロパガンダが拡散されると、国民の正しい判断がゆがめられてしまうと思います。政党等による情報発信を幅広く禁止する前に、国民広報協議会でいかなる情報発信がどこまでできるかを具体化する必要があると思います。録音、録画の公営限度額をどこまで認めるのかということも重要な要素だというふうに思っておりますので、こうした議論を併せて積み重ねていくことを是非やっていきたいと思います。

 以上です。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 冒頭、一言申し上げます。

 昨日、米軍横田基地所属のオスプレイが鹿児島県屋久島沖に墜落しました。これ以上、危険なオスプレイの飛行を容認することはできません。米軍オスプレイは直ちに撤収させるべきです。自衛隊も導入を中止すべきです。憲法の上に日米安保がある実態こそ変えることが政治の最優先課題だと、まず申し上げておきたいと思います。

 国民投票法について意見を述べます。

 私たちは、現行の国民投票法には、国民の民意を酌み尽くして正確に反映させるという点で重大な欠陥があると主張してきました。具体的には、最低投票率の規定がないこと、公務員や教育に携わる者の投票運動を不当に制限していること、改憲案に対する広告や意見表明の仕組みが公平公正なものになっていないこと、この三点について繰り返し指摘をしてきました。

 今日言及のあった広報協議会も、改憲を進めるのに都合のいい仕組みとなっています。協議会の委員は改憲に賛成した議員が大多数を占め、議事運営を主導することができます。協議会の事務である広報やテレビ、新聞広告も、改憲原案の説明や賛成の意見が大部分で、反対の意見は僅かであります。全く中立公正とは言えません。

 国民投票法の根本的な欠陥を放置したまま手続の規程を整備する議論を進めることは認められません。そもそも、今、国民は改憲を重要課題と考えてはいません。国民が改憲を求めていない下で、改憲のための国民投票法は整備するべきではありません。

 次に、イスラエルのガザ攻撃についてです。

 イスラエルとハマスは戦闘の休止を二十九日まで延長することで合意していましたが、それ以降については合意に至っていません。イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスをせん滅させると述べ、戦闘休止が終わればガザへの攻撃を再開すると明言しています。

 今、緊急に必要なことは、戦闘休止を停戦につなげることであり、その働きかけを国際社会が強めることです。ところが、岸田首相は、停戦が一朝一夕に成るということはすぐには期待できないと開き直り、停戦に踏み切ろうとしません。多くの子供や市民が犠牲になっている中で、余りにも無責任な態度であります。

 イスラエルは、ガザの病院や学校、検問所、難民キャンプなどへの攻撃を繰り返し、国際社会から国際法違反だという批判が相次いでいます。いかなる理由があろうとも、何の罪もない住民を殺りくすることなど絶対に正当化できるものではありません。日本政府は即時停戦を正面から訴えるべきです。

 イスラエルとパレスチナの問題は、武力では争い事を解決できないことを示しています。双方が話合いのテーブルに着くための外交努力こそ必要であり、憲法九条に基づく平和外交が強く求められております。日本政府はその役割を果たすべきであります。

 最後に、武器輸出についてであります。

 イスラエルがガザへの空爆にF35戦闘機を使用していることが報じられております。F35は、アメリカの一元的な管理の下で、共同開発国九か国と日本やイスラエルなどが部品を融通し合って生産しております。

 二〇一三年に安倍政権は、内閣官房長官談話を発出し、F35の導入国に日本企業が製造した部品や役務を提供することを可能にしました。当時、私は、イスラエルが近隣国を度々攻撃し、国際法違反のパレスチナ自治区への入植を繰り返していることを指摘して、イスラエルへの提供は紛争を助長すると批判をいたしました。しかし、政府は、イスラエルはもう導入を決めており、国際紛争の助長にはつながらないなどといって居直りました。

 ところが、今、実際に国際法も無視した無差別攻撃に使われる事態になっています。しかし、政府・与党は何らの反省も示しておりません。その上、岸田政権は、防衛装備移転三原則とその指針を見直し、殺傷兵器の輸出解禁に踏み切ろうとしています。与党のワーキングチームでは、国内企業がアメリカからライセンスを得て生産している戦闘機やミサイルをアメリカやその他の国に輸出できるようにすることが検討されています。

 今、アメリカは、イスラエルやウクライナへの大量の軍事支援により、武器や弾薬が不足していると報じられております。ライセンス品の輸出を解禁すれば、日本製の兵器が直接紛争地で使用されることになりかねません。

 さらに、岸田政権は、イギリスやイタリアと共同開発する戦闘機を日本が直接第三国に輸出することまで狙っております。世界の軍事紛争に拍車をかけ、多くの市民の殺りくに加担する危険は重大です。

 憲法九条をじゅうりんする武器輸出の拡大は今すぐやめるべきだと強調して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 国民投票法は、古い法律で、今から十六年前の二〇〇七年五月に公布されています。十六年前といいますと、フェイスブックがこれまで学生に限定していたサービスを一般にも開放した時期です。また、ユーチューブがそのサービスを本格的に開始した時期でもあります。初代のiPhoneが発売されたのも、この年です。つまり、いわゆるテック企業の黎明期に当たります。以降、この分野で激しく情勢が変化していることは言うまでもありません。

 私がこれまで何度も訴えてきたSNS等を利用した偽情報の流布や選挙介入も、この後に盛んになっていくので、国民投票法には当然想定されていません。同様に、同法十四条に規定される国民投票広報協議会の事務にも、偽情報対策は明確には含まれていません。

 一方で、これまでも諸外国の事例を紹介していますが、今年に入ってからも、カナダのトルドー政権では、二〇一九年と二一年の総選挙における中国の選挙介入、具体的には、候補者十一人に対する資金提供や野党の香港系議員に対する威嚇について、独立した特別調査官を任命し、調査を行っています。なお、この議員への威嚇をめぐっては、在トロント中国総領事館の館員を国外追放としています。

 また、EU議会では、今月、中ロを念頭にした選挙介入を阻止するための政治広告に対する規制を大筋で合意しています。具体的には、選挙又は国民投票の三か月以内にEU域外の団体が政治広告に資金を出すことを禁止する内容が盛り込まれました。繰り返し違反したプラットフォーム企業には、年間売上高の最大六%の制裁金が科される罰則も設けられています。

 さらに、来年一月の台湾の総統選挙では、昨年から既に多くの偽情報が出回っているとの報道が出ています。台湾の国家安全局によれば、昨年七月以降、約千七百件にも上る偽情報が出回っているとのことです。台湾のある民間ファクトチェック団体は、登録された二千四百人ものボランティアを使って、こうした偽情報のファクトチェックに励んでいるようです。

 このように、諸外国では、外国の介入によって選挙や国民投票において国民の意思がゆがめられないよう、様々な対策が今なお講じられてきています。

 この点、去る六月に、東京大学先端科学技術研究センターが「カナダの偽情報対策にみる成果と課題 日本へのインプリケーション」と題する報告書を発行しています。著者の桑原響子研究員によれば、カナダやEUでは、偽情報に対して政府及び社会の両面での協力が必要とされていることを指摘しています。

 例えば、カナダでは、選挙妨害を阻止するための政府タスクフォースを設置し、政府機関が自ら偽情報の監視結果を公表する一方で、民間の偽情報対策への政府助成など、官民両面で対応している事例を示しています。

 また、同報告書では、ここから引用ですけれども、日本の偽情報に対する脅威認識の高まりや政府によるイニシアチブは、カナダのそれと比較すれば数年単位の遅れがあると言える、それは、日本が文化、経済、言語といった障壁の存在により、欧米諸国と比較して致命的かつ深刻な外国からの偽情報キャンペーンの脅威に直面しなかったためだと我が国の現状を分析しています。

 確かに、我が国は、これまでは致命的かつ深刻な外国からの偽情報の脅威に直面していません。しかし、何もわざわざ致命的かつ深刻な脅威に直面するのを御丁寧にお待ち申し上げている必要もありません。どうも我々はいつも、この分野に限らず、事が起きてから騒ぐのが得意であるように思います。現に、ALPS処理水の放水に際しては、中国発の偽情報が多く出回りました。今も人工知能の翻訳機能が飛躍的に進歩していることなどを踏まえると、もう少し危機感を持つべきだと思います。

 こうした視点から、国民投票法第十四条に規定される国民投票広報協議会の事務に偽情報対策を追加し、規程案等にも関連内容を盛り込む手当てをすべきだと考えます。

 国民投票広報協議会の事務局体制を充実させた上で、政府や民間団体と連携して、少なくともファクトチェックを行える仕組みを構築することが求められます。日本の民間ファクトチェック団体の数が少なく、規模も小さく、機能が弱いのみならず、欧州における制裁金等の規制もなく、プラットフォーム事業者との本格的な連携も機能しているとは言い難い。よって、国民投票広報協議会も自らファクトチェックを行うことで、氾濫する偽情報に対応する必要があると考えます。

 なお、アイルランドを参考にして、偽情報に対する監視や調査を行い、プラットフォーム事業者などに対し、削除通知やアクセス遮断を命じる制度を導入することも検討に値します。

 もちろん、一般国政選挙でも同様の対策が求められると思います。しかし、これがなされるのをじっと待つ必然性もないように思います。時代の要請にもはや沿っていない十六年前の法律等を差し迫った課題に応じて改正することに、何か本質的な問題があるのでしょうか。手続上の障害があるのでしょうか。むしろ、民主主義の根幹に関わるこの問題に危機感すらない政府に対して、先鞭をつけて警鐘を鳴らすくらいの気概で臨むべきではないかと申し上げて、私の意見といたします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 私からは、広報協議会を含め、国民投票法を中心として意見を申し上げます。

 まず指摘したいのは、国民投票法に関しては、投票の外形的事項である公職選挙法並びの投票環境整備に関し、いわゆる三項目案が、自民、維新、公明、有志の四会派から昨年四月に提出されている、公職選挙法改正の際には全会一致で可決され、そして、各党に異論のある内容ではないにもかかわらず、趣旨説明が行われた後、一年半審議が行われておりません。

 投票環境整備は、立憲民主党の皆様がよく主張される、令和三年に成立したいわゆる七項目案の附則四条の検討事項の第一号に掲げられているものであります。附則四条の重要性を強調する皆様であれば、その筆頭に掲げられている事項である三項目案の速やかな成立を図らなければつじつまが合わないということを御指摘し、速やかな採決に是非御賛同していただきたいと思っております。

 その上で、冒頭、我が党の船田幹事も発言しましたが、投票の質に関する事項、すなわち、国民投票の公平公正を確保するための事項に関し、広告放送及びインターネットによる有料広告の在り方、偽情報対策やSNS対策といったインターネットの適正利用確保策について問題提起がなされております。

 広告にせよ、ネット上の情報発信にせよ、法規制を行うことについては、これは政治的表現の自由を制約することにつながるということを指摘しておかなければなりません。政治的表現の自由は、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという民主政治に資するものでして、憲法上保障される表現の自由の中核を成すものであります。であるからこそ、その制約には極めて慎重な議論が必要であります。

 こうした点を踏まえて、現行の国民投票法では、国民投票運動はできるだけ自由であることを原則として、投票の公正の確保のための必要最小限の規制のみが設けられております。広告規制やデジタル社会の弊害に目が行く余り、この原則をないがしろにすることは許されてはならないと思っております。

 この点については、海外派遣報告が大変参考になりました。すなわち、七月の海外派遣では、配信停止命令等の表現の自由の直接的な規制手法の課題も明らかになりました。

 まず、フランスでは、投票日前、およそ三か月間、偽情報が流布されていると裁判所に申し立てた場合、裁判官が四十八時間以内に判断し、配信停止を命じることができるという手続が設けられておりますが、二〇一九年の欧州議会選挙の際に一件あった申立てが棄却されて以降、余り使われていないとのことでありました。

 また、アイルランドでも、昨年、選挙委員会が偽情報に関する監視や調査を行い、プラットフォーム事業者などに対し、削除通知やアクセス遮断を命じる制度が設けられました。しかし、これもまだ運用実績がなく、選挙委員会事務局長も、これは最後の手段という位置づけであって、他の全ての手段がうまくいかなかったときのみに行使したいと考えていると述べ、この権限の行使に慎重な姿勢を見せております。

 このように、森団長報告にあったとおり、法規制に取り組む両国とも、いまだ有効な対策を見出すことができておらず、いわば走りながら考えている状態にあると言えます。

 このように、国際的に見ても、あらかじめ完璧な法規制を設けるというふうな解決策が見出せない中、国民投票の公平及び公正の確保は、法規制よりも、各事業者、政党等の関係者の自主的な取組による解決こそがまずは穏当で実効性のある結果を期待できるのではないかと考えます。この点については、森団長報告の中でも、アイルランドのトリニティー・カレッジのケニー博士が同様の見解を述べていたというふうな報告を受けているところでございます。

 そして、こうした手法を取るに当たって、国民投票広報協議会に期待される役割は極めて大きいものがあります。広報協議会が質、量共に充実した広報を行うことはもちろんのこと、広報協議会がガイドライン等を示し、各事業者の自主的な取組を促すことも考えられると思います。

 そのためにも、特に、広報協議会の具体的な活動内容に関する制度設計の詰めを早期にする必要がございます。そして、その前提として、さきの幹事懇談会で法制局、憲法審査会事務局より提示された広報協議会や広報協議会事務局に関する規程の条文案については、早急に各党で議論して、法整備を進めていくべきであると考えます。

 私の意見は以上でございます。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。

 資料を二枚お配りしています。

 まず、附則四条についてから発言させていただきますが、令和三年五月六日の当審査会において、附則四条について、これから述べるような趣旨説明を私は行っています。

 読みますけれども、スポットCMの扇情的な影響力や、インターネット広告も含めCMに投じる資金の多寡が投票結果に与える影響等を踏まえると、CMや運動資金などについて一定の規制が設けられなければ、公平公正な国民投票の実施は期待できません、これらの点その他国民投票の公平及び公正を確保するための措置については、令和元年に、当時玉木代表、旧国民民主党から、私も提出者でしたが、提出された国民投票法改正案において、一定の措置を講ずることを定めたところですが、この法案の審議はいまだ、この時点ですから提出されて二年たなざらしになっていたわけですが、いまだ行われていません、このような積み残しの課題についても、早急に具体的な検討を開始し、一定の結論を得る必要があると考えて、この修正案を提出した次第でありますということであります。

 以下、修正案の内容ですけれども、ここがポイントですが、国は、この法律の施行後三年を目途にということですね、条文を御覧ください、追加の二項目を始めとする投票人の投票に、これは先ほど山下委員が言っておられた公選法並びの部分ですね、の二項目にプラス、国民投票運動等のための広告放送やインターネット有料広告の制限、運動資金規制、インターネットの適正利用の確保を図るための方策その他の国民投票の公平及び公正を確保するための事項について検討を加え、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとしておりますというのが内容であります。条文をお読みいただければと思いますけれども。

 さらに、その後の自由討議の中で、私が、二号の公平及び公正を確保するための事項を提案した理由として、現行の国民投票法では投票の公平及び公正は担保されない、例えば、外国政府なりが大量の資金でネット広告を大量に出して投票結果を左右するおそれがあるため、この事項を求めたという発言をしています。

 そして、最後に、提出者の意思として、この附則四条に基づく措置がなされるまでは憲法改正の発議はできない、こう解するべきであります、こういうふうに私は述べています。

 要するに、このままの国民投票法で国民投票を行った場合に、公正な投票結果が担保されないということを述べているわけであります。

 そして、附則四条の定める施行後三年の期限は、来年、二〇二四年の九月になります。ということは、来年の通常国会までにはこの検討を終えて、必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないということになるわけであります。憲法改正に真剣に取り組もうというのであれば、国民投票法改正の検討を急ぐべきであります。

 私は、憲法改正を否定するものではありません。議論をしっかりとして、議論が尽くせれば、国民投票法を使う場面もあり得ると考えて、こうした附則を提案させていただいているわけであります。

 ところが、これまで検討はほとんど進んでいません。

 CM規制については、これまで一定の議論が確かに積み重ねられてきました。放送CMについては、民放連の考査ガイドラインによって、意見表明CMについても取り扱わないこととする自主規制が導入されるなど、評価できる点もあります。

 しかし、発議後から投票期日十五日前までは賛否の勧誘のためのCMも意見表明CMも自由に放送ができ、先ほど申し上げたような運動資金の多寡や外国政府の介入で投票結果が左右されるおそれがいまだあります。

 二枚目、我々の法案についてのポンチ絵がありますけれども、これを御覧いただけると分かりますが、我々は、真ん中の、これまでの立憲民主案のところ、1、2、放送広告規制の修正のところですが、国民投票運動の全ての期間において賛否勧誘のためのCMを禁止し、また意見表明CMについても政党等は全期間を禁止して、全て国民投票広報協議会の広告放送に委ねるべきという案を今作っているところであります。これは、以前、旧国民案としても同様の内容が当委員会には提出されていました。

 それから、放送に規制をかけることは、ネットCM等に規制がかけられないことを念頭に、慎重であるべきとの意見がありますが、ネットについても、これは後ほど中谷委員からお話しさせていただきますが、一定の規制をかけるべきであります。

 さらに、運動資金規制については全く議論が進んでいません。

 資料の我々の案を御覧ください。支出上限額の設定、収支報告書の提出義務、外国人等からの資金援助の禁止を規定することとしていますが、これらによって、ネットも含めてCMへの支出も抑制されることになりますし、また、外国政府の干渉も防ぐことができます。

 一部、船田先生から、全く同じではありませんが、同様の内容の御発言も初めて自民党としていただきましたけれども、運動資金規制こそ私はまず最優先に改正すべき課題だと思います。早急に議論をして、改正をお願いいたします。

 最後に、先ほど中谷幹事からございました、最大限努力する、来年九月までに最大限努力をして憲法改正をとおっしゃっていましたが、この附則四条に基づく措置というのが前提になります。これがないと、仮に国民投票をしたとしても公正な結果が担保されない、外国政府の干渉によって誤った投票結果になる可能性もあるわけであります。

 伺いますが、この附則四条、とりわけ二号ですが、これを措置するということも最大限努力の中に入っているのかということを伺いたいと思います。そして、その上で、これが間に合わない場合は九月中に憲法改正がなされないということはあり得るということをさっきおっしゃったんでしょうか。中谷幹事に伺いたいと思います。

 それから最後に、玉木委員の方からありましたけれども、我々はいわゆる選挙困難事態と呼んでいますが、それについては、今党の方で意見を取りまとめていますから、私の考えも盛り込みつつ、いずれどこかでお話をしたいと思います。

 以上です。

小野委員 日本維新の会、小野泰輔でございます。

 先ほど青柳委員から、そして、この質問は前回のこの会議でも岩谷委員からも質問させていただいているんですが、中谷幹事にもう一回同じ質問をしたいと思います。

 もうあと十三日しか今国会が残っていない中で、閉会中審査でもっともっと検討を進めるべきじゃないか、このことについてのお答えがないということと、あと、それから、定例日にこだわらずに、来通常国会においても、開催日数をできるだけ増やして、しっかり改正のスケジュールにのせるということを考えておられるのか、この二つ、改めてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

中谷(元)委員 必要があれば、閉会中も議論をするということは私は大いに結構だと思っております。ただし、開会につきましては、各党会派の了解の下にこの審査会はできておりますので、幹事会、幹事懇等でこういったことが了解されるように努力はしてみたいと思います。

小野委員 是非頑張っていただきたいと思うんです。

 この間、実際に憲法の改正案を作ろうという集会があって、そのときにも自民党さんに対して非常に厳しい声が国民の皆さんからも発せられておりましたが、私も、常々申し上げましたし、そのときも申し上げたんですが、具体的なスケジュールなくしてちゃんと仕事が成し遂げられるということはないと思うんですね。

 ですから、やはり、それに必要なスケジュールがどうで、そしてそれに対して、足りないのであればちゃんと日程を用意するということを、これはもう、岸田総理、岸田総裁がそれをやるというふうにおっしゃっている以上は、それがセットにならないと、本当に自民党に期待をして憲法改正を成し遂げてくれという方々が信用できないというふうに思いますので、ここは是非こだわっていただきたい。そこをないがしろにして憲法改正といっても、絶対にできないというふうに思いますので、改めてお願いを申し上げたいと思います。

 今日は、この間の幹事会で、事務局の皆さんが本当に頑張っていただいた、先ほど青柳委員からもありました。私が、この間の通常国会で、夏休みの宿題として、事務局の皆様に、規程を是非事務局の方でも作るように進めていただきたいというふうに申し上げたところ、しっかりとその仕事を果たしていただいたということで、我々審査会本体とは違って、事務局の皆さんは、もしかして審査会で本当に憲法の改正のスケジュールが急速に回り出したときには、やはりやるべきことはやっておかなきゃいけないなということで、努力をしていただいたというふうに思っております。

 そういう中で、私もこの規程のたたき台の内容を拝見させていただきました。まだまだ細かく詰めていかなきゃいけないところがたくさんあると思いますので、これはやはり事務的にもやっていかなきゃいけないことだと思うんですね。

 そこで、森会長に御提案なんですけれども、この規程、先ほど奥野委員がおっしゃったように、広告規制の話とかそういうところももちろん詰めていかなきゃいけないんですが、ただ、事務的にもうちょっと細かいところも実際にはやっていかなきゃいけないことだというふうに思っています。

 そこで、幹事会のレベルでも結構なんですけれども、事務局の方でどんどん進めた内容について、それを各会派でしっかり、やっている内容を確認していただいて、そこの詰めをしていただくということも九月の改正までにやっておかなければいけないことだというふうに思いますので、そこは是非、森会長のハンドリングでしっかり進めていただくようにお願いをしたいというふうに思います。

 森会長、よろしくお願いいたします。

森会長 小野君の御提案につきましては、幹事会等で協議をいたしたいと思います。

小野委員 あと、もう残りの時間は余りないんですけれども、橘法制局長にちょっとお伺いしたいと思うんですね。

 規定をちょっと私も見ていて、先ほど赤嶺委員からも、公平性を確保できるような形でないと駄目だというようなこともおっしゃいましたし、ただ、国民投票法には様々な公正性を担保するための規定というのは入っているんですが、ただ、その中でも、結構いろいろと細かく考えていくと難しいなという問題があるんです。

 例えば、国民投票法の十二条三項において、各議院の各会派の所属議員比率に応じて広報協議会の委員を決めていくという割当てがあるんですけれども、ただ、これは、反対派の方々の比率が足りない場合には一人も入らないみたいなことが起きないように、ちゃんとそこは反対派の方も最低限割り当てましょうみたいな規定がちゃんと書かれているんですね。

 ただ、先ほどもどなたかからお話がございましたが、憲法改正の項目というのは一項目には限りません。例えば、我々が協議した中で緊急事態条項だけ国民投票に付そうということではなくて、例えば九条とか、あるいは教育無償化とか、複数の論点について賛成、反対が分かれるというようなこともあって、そういう場合に、公平性を期すためにどういうふうに委員の割当てをすべきかなんということも実は細かく我々は議論していかなきゃいけないというふうに思うんですが、こういったことに関して、例えばということで私は疑問を感じたんですが、事務局の中でどういう議論があるのか、あるいはどういったお考えがあるのかというのをお聞かせいただければと思います。

橘法制局長 小野先生、御質問ありがとうございます。国民投票法の制定時に立案、審議のお手伝いをさせていただきました立場から、御答弁申し上げます。

 御指摘のように、発議される憲法改正案ごとに各会派の賛否が異なることは当然にあり得ることでありますから、今御指摘の国民投票法十二条三項のただし書、すなわち、反対会派に配慮した広報協議会委員の選任規定として認識されている、反対した会派からも最低一人は委員が選任されるように配慮する旨の規定、これが定められているところです。

 このような規定が置かれていることを勘案いたしますと、広報協議会の委員選任あるいは広報協議会が置かれる数については、発議された憲法改正案ごとに広報協議会を設けるというのがシンプルかつ厳格な解釈運用であるようにまずは思われます。他方、国会法及び国民投票法では、発議された憲法改正案の個数に言及することなく、憲法改正の発議があったときは広報協議会を設けると規定しておりますので、複数の憲法改正案が発議された場合であっても、一つの広報協議会でもってまとめてその事務を行うといった円滑かつ効率的な運用を行うことも、条文上は許容されているものと考えます。

 実は、この点については、国民投票法の制定時にも議論になった点でございまして、当時の与党案提出者の船田元先生、そして野党案提出者であった枝野幸男先生、共に、反対会派への配慮規定といった制限の枠内で、一つの広報協議会でまとめて事務を行わせる、そのようなことを想定している旨の御答弁もなされているところです。

 したがいまして、実際の運用におきましては、憲法改正の発議がなされ広報協議会が設置される段階で、その時点での各会派の所属議員数の比率あるいは賛否の分布、そのようなことを念頭に置いて、個別具体的に御議論がなされるということではないかと思料いたしております。

 以上です。

小野委員 橘局長、ありがとうございます。非常に詳細な答弁をいただきました。

 過去にもそういった形で、船田先生とか枝野先生とか、そういう詳細にわたる議論もされているわけなので、ちゃんとそれを今詰めて、そして、具体的なところで、では、何が公平なんだということをしっかり詰めておくことは大事だと思いますので、そういう議論は是非各幹事でもやっていただきたいなというふうに最後にお願いをしたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 二点、申し上げたいと思います。

 一点は、今日も相当議論がございました広報協議会規程でございます。

 先週でしたか、幹事懇で、事務方の方から広報協議会規程の案について、たたき台について説明がございました。

 憲法の改正をしていくためには、この広報協議会規程というのがないとできません。国民投票の際に必要不可欠な機関、そして役割を担っていただくわけでございまして、この広報協議会規程について、是非成案を得られるようにしないといけないと思います。

 その意味で、広報協議会規程というのは、衆議院の憲法審査会だけで決められる話ではありません。参議院の憲法審査会とも協議をしなければいけません。最終的には衆参の議長が決定をする、こういう手続を踏まないといけないわけでございまして、これはやはり相当時間がかかると思います。

 また、内容的にも、今日も意見がございましたが、この憲法改正国民投票法が制定された当時は、インターネット広告、インターネットを活用した情報発信、こういうことについては前提が置かれておりません。何も書かれておりません。したがって、インターネットを活用した広報をどうしていくのか、一方で、偽情報等、フェイク情報等をどう排除していくのか、こうした役割も広報協議会に担っていただかないといけない側面があると思うんですね。内容的にも詰めないといけないことが多々ございます。

 そういう意味で、この広報協議会規程について、是非、これは両院で進めていく必要がありますので、衆参で広報協議会規程の検討をしていく場というのを、またメンバーを決めていかないといけないと思うんですね。そういう場、衆参で協議ができる場、衆参での協議会、これを早急に、広報協議会規程等の決定についての衆参での協議会の設定を是非スタートしてまいりたい、していただきたいというふうに思います。これが一点です。

 もう一点は、議員任期の延長の問題です。緊急事態における議員任期の延長のテーマ。

 これについては、昨年の通常国会、臨時国会で二十回、今年の通常国会でも十五回、実質審議が行われたんですが、その実質審議の中でも、この緊急事態条項をどうしていくのかということは相当議論がなされて、前の通常国会では論点整理までなされました。そういう意味で、議論は相当煮詰まっていることは間違いないというふうに思うんですね。

 これは是非お願いをしたいんですけれども、私は、かねてから申し上げているとおり、やはり、できるだけ幅広い合意の形成をしていかねばならないと思うんです。そういう意味で、五会派の間では、ほぼその方向性、そして必要性、また、仮に条項を作るとしたらこんな条項かなというふうなことも含めて、相当共有をされているんですね。

 そういう中で、是非お願いしたいのは、立憲民主党の中で、私、今まで、この議員任期の延長問題について、立憲民主党の皆様からもいろいろな意見があったことを承知しています。そこは、賛成論もあったし、反対論もあったような、両方あったような気がするんですね。是非、立憲民主党として、緊急事態における国会議員の議員任期延長問題についてどう考えるのか、是非これは早く結論を示していただきたいなというふうに思うんです。それを踏まえた上で、いや、これは全く必要性がないんだというのであれば、やはりちょっと違う段階に入っていかざるを得ないのかなと思うんです。そこのところを、できるだけ早く立憲民主党の考え方というのを示していただきたい。

 示していただいた上で、期待を申し上げれば、一緒に条項案を検討していけるようになったらいいなと私は期待しているんですけれども、いや、全く必要がないんだというのであれば、これはもう賛成会派だけで条項案についてもやはり検討していくようなステージに入っていかざるを得ないんじゃないかな、その時期が近づいてきていると思うんです。

 是非、その点、党内で御検討いただければありがたいなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 以上です。

鬼木委員 自由民主党の鬼木誠でございます。

 まず冒頭、昨日起こりました米軍CV22オスプレイの事故に、心からお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 自衛隊の事故ではございませんが、同盟のアメリカがまた日本の国内で起こした事故ということで、大変に心を痛めております。

 自衛隊員は命を懸けて国民を守っております。そしてまた、訓練でさえ命懸けという中で日々の業務に励んでおります。その自衛隊員の存在がこの憲法の下では非常に不安定であるということを改めて問題に感じております。

 虚心坦懐に素直に憲法を読めば、今の憲法では、自衛隊の存在は違憲のそしりを免れないのではないでしょうか。もし最高裁が違憲の判決を下すようなことがあれば、自衛隊の存在自体が認められなくなります。まさかそんなことがと思っても、三権分立の下、司法がそう判断すれば、そうした事態は起こり得るわけであります。一見して違憲に見えるものを、運用上、解釈上合憲だというのは、むしろ立憲主義にもとるのではないでしょうか。

 憲法に自衛隊を明記し、自衛隊及び隊員の地位の安定、名誉や誇りを守ってほしいと思います。是非、憲法審査会においても、これまでの自衛隊についての議論、論点整理、まとめていただきたいと思います。

 また、なぜ衆参三分の二の改憲勢力があっても憲法改正が前に進まないのかと、国民の中に大きなフラストレーションがたまっております。先週は野党からも、やるやる詐欺だとお言葉をいただきました。本当に承服できないところであります。一番悔しい思いをしているのは、我々自民党であります。

 現在、中川筆頭幹事の下、野党幹事の皆さんの御理解も得て、憲法審査会を毎週開いてくださっていることには心から敬意を表します。

 その上で、安倍政権下で見てきた風景は、憲法審査会を開くことに野党が合意をしない、憲法以外の問題で政府の様々な不祥事を捉えて、信頼関係が崩れたなどという理由で合意せず、それでも与党で開こうとすれば、国会の全ての委員会審議をストップさせて、国会の機能が停止したことがありました。

 与党は、国民生活に責任を持っているので予算や法律を停滞させるわけにはいかない。結局、国会の正常運行を優先して、何度も憲法議論が進まなかった、議論すらすることができなかった。国民生活そのものである予算と法律をいわば人質に取られて、国会が空転してきたことが今でもトラウマとなっていると感じております。

 憲法改正発議は、国会にしかできない権能であります。国会にのみ託された権能であります。国会議員は、憲法改正について真摯に向き合う義務があります。また、国民には、憲法改正に関わる権利があります。最後は国民が決めることであります。国会が憲法改正に真摯に向き合わないことには、国民の権利を奪っていると言えるのではないでしょうか。

 改憲に、賛成も反対も、各論での意見の違いもあってしかるべきだと思います。与野党とも、自分を信じて、自分の意見を信じて、自分を応援してくれる、自分の意見に賛同してくれる国民を信じて、国民の前で堂々と国民のための憲法議論をやってまいりましょう。

 先週は、国民の玉木委員から、議論をピン留めして、ここまではみんな共有しましたよねというところでピン留めをして議論を前進させましょうという御提案、また、維新の小野委員からは、期限を決めて議論を進めようという前向きな御意見がございました。本日は玉木委員から、作業部会をつくろうという御意見がありました。まさに、条文案を作る作業に入るべきときが来ているのではないでしょうか。

 以上、私からの意見を申し上げまして、皆様方に憲法改正に向けた議論、更に加速していくことを呼びかけまして、私からの発言といたします。

 以上です。

中谷(一)委員 立憲民主党の中谷一馬です。

 本日は、AIとデジタル技術の進展を踏まえた私たちの国民投票法に関する提案について申し上げます。

 私は、先ほど階幹事が言及した、党のAIとデジタル技術の進展を踏まえた国民投票法等検討ワーキングチームで事務局長を務めています。急速に普及している生成AIやデジタル技術の進展が国民投票運動などに悪用されることのないよう、インターネット規制をどのように行うべきか、有識者や事業者、業界団体から御意見を伺いながら議論を重ねました。

 本年一月には、世界最大規模の政治リスク専門コンサルティングファームが今年の十大リスクに、生成AIの進化とSNSの普及によってもたらされる偽情報の拡散が社会を混乱させるリスクを挙げ、多くの人々が真偽の見極めができなくなる旨の懸念を示しています。しかし、現行法は、今や市場規模で放送広告を超えるネット広告への規制を全く用意していないなど、規制が不十分です。

 これまで立憲民主党は、政党等による有料ネット広告の禁止や資金規制による政党等以外の団体も含めた間接的な公正確保、ネットの適正利用努力義務、広報協議会によるネット広報などを提言してきました。ただ、残念ながら、偽情報の蔓延が続いており、日本国の総理大臣までもが詐欺の広告塔に悪用され、こうした状況が是正されるどころか、現在でも岸田首相の偽動画は出回っています。

 偽情報の拡散が社会の大きな脅威となっている現状を踏まえ、時代の変化に即応した対応として、今般、我が党のワーキングチームで新たに四つの規制を検討していますので、御説明します。奥野委員の提出資料も御参照ください。

 第一は、有料ネット広告における広告主の表示です。

 不適切な有料広告の排除に資するため、国民投票運動、意見表明のための有料ネット広告を掲載するときの義務として、当該広告が国民投票運動等のための広告である旨を表示するとともに、広告主に関する情報等を表示するものとします。

 第二は、有料ネット広告に関する情報の保存、閲覧、いわゆるアーカイブです。

 有料ネット広告の事後的な検証に資するため、諸外国、例えばアイルランドだと七年間、アメリカ・カリフォルニア州だと四年間にわたって、国民投票に関して一定のアーカイブを設けています。これを参考に、有料ネット広告を掲載する一定規模以上のデジタルプラットフォーム事業者に義務を課し、国民投票運動等のための有料ネット広告、広告主に関する情報等を一定期間保存するとともに、公衆がインターネットを利用して記録を閲覧できる状態に置くものとします。

 第三は、SNSの偽情報、誤情報の広報協議会への通報と応答です。

 大規模SNS事業者は、その提供しているサービスにより頒布されている国民投票運動等のための文書図画に関する情報について、広報協議会に対して必要な事項を通報するものとします。ただし、対象となる情報は、当該情報の閲覧者数等を勘案して、閲覧者の判断に及ぼす影響が大きいもののうち、不特定多数の利用者からその内容が虚偽である旨の通知があったものに限ります。そして、SNS事業者から通報を受けた広報協議会が必要があると認めるときは、当該通報に関わる情報を補足する形で、当該情報に関する事実の確認に資する情報を提供するものとします。

 第四は、広報協議会によるインターネット広報へのアクセスの容易化です。

 具体的には、検索サービス事業者に義務を課し、国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日までの間、検索を通じて国民投票に関する情報が表示されるとき、当該情報と併せて広報協議会のウェブサイトに関する情報も表示するものとします。

 新たな技術の進展を踏まえると、今申し上げた有料ネット広告対策や偽情報対策などについては、当審査会で関係事業者や有識者の意見を伺いながら真摯に議論し国民投票法を改正していくことが必要不可欠であることを申し上げて、私の発言を終わります。

石破委員 前回から、やるやる詐欺とか、やる気を疑うとか、そういう御発言が野党の委員の方から出ております。それは、私どもとして、内心じくじたるものはあって、やはり、国会休会中に、我が党としては、もっとあちらこちらで憲法を議論する集会をするべきではなかったかと思っておりますし、前国会において、この憲法審査会も、移動審査会でいいから、日本国中あちらこちらで国民に向けて語りかけるべきだということを申し上げましたが、一回も開催されなかったことは誠に残念だと思っております。幹事会でどういう議論があったか知りませんが、それはきちんとやらないと。

 世論調査が私は全部正しいとは思わないし、先般の共同通信の世論調査は、総理にやってほしいことは何ですかという設問で、当然、物価対策とか景気対策とか年金とか、そういう話になります。国民にとって、総理だろうが国会だろうが、それはもうほとんど一緒なんでしょう。要するに、政治に取り組んでもらいたいことは何ですかという問いですが、憲法改正は七%でしたからね。それだけの人しか関心を持っていないということに、我々はもっと危機感を持つべきだと思っています。

 国民は、日々の暮らしに忙しいので、朝から晩まで憲法のことなんか考えている人はいない。いるはずがない。こちらからきちんと語りかけなければ国民は答えてくれない。関心を持っている人、やってほしい人は七%しかいないということを、我々はもっと危機感を持って真剣に考えるべきだというふうに思っております。

 私は、大学で憲法を勉強したのは四十八年も前のことで、十八歳のときでした。そのときに、清宮四郎さんの憲法の本が教科書でした。そのときに、参議院の緊急集会というところで、このような制度は諸外国に類例がないというふうに書いてあったことは非常に強烈に印象に残っております。

 二院制度の国ばかりではないので、一院制の国も多いわけですが、では、諸外国はどういうふうにしているんだろうか。そして、緊急集会というのは、天皇が召集をされるわけではございません、緊急集会というのは、内閣が要請し、開くかどうかは参議院が決めるということで、普通の国会とは全く様相を異にするものであります。そしてまた、よほどの緊急の場合でないと開かれないということは、学校で習ったとおりのことであります。

 そうすると、なぜ緊急集会では駄目なのかという議論が私は十分だと思っておりません。かなり限界の事例においてそれは開かれるものでありますし、その後、衆議院が開会をされて、それなりの権能を発揮するわけで、なぜなのだというお話がまだ国民にはよく理解されていないし、私自身もそうであります。

 私は、今朝も、衛藤先生が会長であります自民党の有志の憲法改正推進議連というのをやったんですが、そこでもいい議論がありました。ただ、このお話は、参議院もきちんと議論にのせていかないと、これは参議院のお話ですからね、衆議院だけで議論して事足りるというはずがないのであって、これも幹事会にお願いしたいことですが、参議院がほとんど開かれていない、そして、これで総理の任期中ということが本当に現実味を持って議論されるか、私にはそれを実感することは全くできません。そこは参議院もきちんとのせて、議論の対象としてやっていくべきものであって、これは幹事会の御努力をお願いしたいと思っております。

 最後に、昨日の屋久島沖でのオスプレイの墜落事故、それは鬼木委員あるいは赤嶺委員からも言及がございました。私は日本共産党とは考え方を全く異にするものでありますけれども、憲法と日米安保と防衛二法、この関係はちゃんと詰めておくべきものだと思っております。

 二〇〇四年ですから、私が防衛庁長官をやっておったときですが、国際大学にCH53という米軍のヘリが墜落をいたしました。あのときに、日本の警察は全く入れなかった。本当にこれが独立主権国家なのかということであります。その後、岩屋防衛大臣が大変御努力をなさって、ガイドラインの一部改定がありました。立ち入れることになりましたが、それは米軍の許可がなければ立ち入らない、米軍が許可しなければ立ち入れないということです。

 これが本当に独立主権国家の姿なのかということですが、地位協定は日米安保とセットですから、そして、日米安保は、米国が結んでおります世界の安全保障の中で、たった一つだけ、履行する義務が非対称的です。私は非対称的双務関係だというふうに理解をいたしておりますが、これも日米だけ。本当にこれでいいのか。これは本当に憲法に由来するものなのか。だから、国会議事堂にヘリが落ちても同じことが起こります。本当にそれが独立主権国家のあるべき姿かということであって、私は、こういうことにきちんと我々は向き合うべきだし、地位協定の改定も含めて早急に議論しなければ、独立主権国家日本たり得ないというふうに思っております。

 以上、意見を申し述べました。以上です。

森会長 石破委員の前段の御指摘につきましては、幹事会等で協議をいたします。

 なお、先ほど、奥野総一郎君の御質問の中で、中谷筆頭幹事に対する質疑がございましたけれども、飛ばしてしまいましたので、ここで発言を求めたいと思います。

中谷(元)委員 奥野委員から附則四条の読み方についての御質問がありました。

 この附則四条というのは、あくまでも、検討を加えて、そして、その結果、必要と判断されれば必要な措置を講じるというものでありまして、この必要な措置を講じるといいましても、法改正が必要な場合もあれば、法改正は不要で、予算や運用で対応すればよいと判断される場合もございます。

 国民投票の公平公正を確保するための措置につきましては、これまでも立憲民主党の要求に応じて、国民投票をテーマに何度も自由討議が行われてまいりました。また、放送広告につきましては民放連、ネット広告に関しては日本インタラクティブ広告協会といった業界団体、憲法学者を参考人招致をいたしまして、意見を聞いた上での議論を深めてまいりました。これらは、立憲民主党の要求の下で実施された議論でございます。

 本日も、国民投票の公平公正を見据えて、広報協議会を含めた国民投票に関する議論を行っておりましたので、この検討は着々と進んでいるというふうに認識をしております。

 以上です。

森会長 予定した時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、来る十二月七日木曜日午前九時五十分幹事会、午前十時審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十九分散会


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