衆議院

メインへスキップ



第4号 令和6年4月25日(木曜日)

会議録本文へ
令和六年四月二十五日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君

   幹事 寺田  稔君 幹事 中谷  元君

   幹事 船田  元君 幹事 逢坂 誠二君

   幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    伊藤 達也君

      石破  茂君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    越智 隆雄君

      大串 正樹君    城内  実君

      黄川田仁志君    熊田 裕通君

      中西 健治君    長島 昭久君

      藤丸  敏君    古川 禎久君

      古屋 圭司君    細野 豪志君

      三谷 英弘君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      大島  敦君    奥野総一郎君

      城井  崇君    近藤 昭一君

      篠原  孝君    牧  義夫君

      道下 大樹君    谷田川 元君

      青柳 仁士君    岩谷 良平君

      小野 泰輔君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    河西 宏一君

      國重  徹君    赤嶺 政賢君

      玉木雄一郎君    北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  吉田はるみ君     道下 大樹君

同日

 辞任         補欠選任

  道下 大樹君     吉田はるみ君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は七分以内といたします。

 発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田(稔)委員 自由民主党の寺田稔でございます。

 緊急事態におけます国会機能の維持については、多くの議員から、条文化作業を開始すべきとの意見が示されました。

 しかし、およそ憲法改正の発議が行われる場合には、それまでにクリアすべき重要な課題として、両院の議長が協議をして定める国民投票広報協議会規程の制定ということがあります。これなくして国民投票を実施することはできません。

 そこで、国民投票広報協議会に期待される役割、また検討すべき論点について俯瞰的に述べたいと思います。

 まず、憲法改正が発議をされれば、その条文案が改正条文あるいは新設の条文、場合によっては条文の削除という形で発議として示されることになりますが、国民が発議をされた内容を理解するためには、その条文そのもののみならず、憲法改正の議論の経緯、憲法改正案の趣旨、論点の要旨、賛成意見、反対意見の内容を知る必要があります。こうした憲法改正案の内容面に関する広報の一切を担いますのが、国会に設置されます広報協議会であります。

 なお、国民投票法十九条によりまして、総務大臣、中央、地方の選管は、投票期日、国民投票の方法の手続面に関する周知のみを行うという役割分担、デマーケーションとなっております。

 それでは、広報協議会は、実際発議があったときに設置をされるわけですが、その具体的な権能については、国民投票法十四条におきまして、憲法改正案の内容や賛成意見、反対意見を紹介する国民投票公報の作成、投票所内におけます、投票所内に掲示をする憲法改正案の要旨の作成、また、憲法改正案の広報のための放送、新聞広告に関する事務、その他憲法改正案の広報に関する事務が規定をされています。

 ここで言うその他憲法改正案の広報に関する事務につきましては、平成十九年に成立をいたしました国民投票法制定時には余り想定をされていなかったインターネット、SNS等による広報、あるいはタウンミーティング、いわゆる説明会の開催などが考えられます。

 国民投票法十七条等によりまして、広報協議会規程には、その運営の細目を定める細則、事務局の組織、広報活動の詳細などのいわゆる細則的事項を定めることと規定をされています。しかし、この協議会規程は、昨年の十一月二十一日の当憲法審査会幹事懇談会において、事務方よりその内容の報告を聴取をしたところでありますが、まだ制定に至っておりません。

 その他、この幹事懇では、これに関連する重要な課題も提起をされています。主要な三つの論点について申し上げたいと思います。

 まず第一番目は、国民投票運動の資金上限規制、CM規制についてであります。

 資金量の多さあるいは多寡がCMの量に影響し、一方的な情報のみが流されるとの懸念から、国民投票運動の資金の上限の設定やあるいは放送CM等に関する規制強化を求める意見が出されました。また他方、国民投票運動については、公職選挙法の適用がないことから、基本的に自由にすべきとの意見も出されたところであります。

 私といたしましては、国民投票運動は原則自由という国民投票法制定当時の議論を十分尊重し、資金上限は設けず、基本的に、CMについても、その出し手、受け手の自主的規制、いわゆる自主的取組によって解決すべきであると考えております。

 次に、フェイクニュース対策であります。

 フェイクニュースに対する有力な対策の一つとして挙げられておりますファクトチェックに関し、当憲法審査会では、広報協議会の機能としてファクトチェックを行うべきであるとの意見も出されましたが、他方、このファクトチェックについては、公権力の表現の自由への介入という面もあることから、ファクトチェック自体は民間団体に任せるべき、したがって、広報協議会自体がファクトチェックを行うことに否定的な意見も出されました。

 私としては、ファクトチェックについては、基本的に民間事業者に任せるべきであると考えております。

 そして、第三の論点が、広報協議会における広報、予算、人材面の充実強化であります。

 広報協議会による正確で中立性の高い広報をより一層充実させることにより、国民に届く情報が賛否平等に近づき、一方的な情報流布に基づいて投票することを抑止をすることができ、また、いわゆる偽情報対策、フェイクニュース対策にもつながる。そこで、広報協議会の広報の充実強化を図りますために、一体どのような手段を一体どの程度行っていくべきかが論点となるわけであります。

 この点に関しましては、例えばインターネット、SNS等を利用した広報の具体的な方法等についても十分検討する必要があります。また、広報協議会の広報活動を下支えする事務局の組織、規模、また広報に関する予算規模についても十分な議論が必要となってまいります。

 いずれにしても、これらの論点は国民投票が行われる前に決着を見ておく必要があり、今国会会期中にも十分議論をしておく必要がございます。広報協議会規程の条文化作業など、広報協議会の権限や役割についての議論を加速をさせるべきであると考えております。

 終わりに、憲法改正の議論の在り方についてでありますが、私は、保岡興治会長時代の平成二十七年、憲法九条をめぐる諸問題につき当憲法審査会で発言の機会をいただきましたが、それ以外にも憲法には多くの論点が存在をしていることは御承知のとおりであります。

 大事なことは、優先順位をつけて十分な議論を行い、合意が得られやすい事項から憲法改正に向けて積極的に取り組むことであると思います。そして、広報協議会規程の制定など、国民投票の実施のために必要な手続上の規定の整備についても積極的に取り組んでいくべきであると考えます。

 以上でございます。

森会長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 逢坂誠二でございます。おはようございます。

 芦部信喜さんの憲法の教科書、「憲法」という教科書がありますけれども、その中に、国家緊急権について、次の記述があります。国家緊急権は、立憲的な憲法秩序を一時的にせよ停止し、執行権への権力の集中と強化を図って危機を乗り切ろうとするものであるから、立憲主義を破壊する大きな危険性を持っている。こういう記述があるわけです。

 一方、国家緊急権を実定化する方法として、次の二つの方式を紹介しています。一つ、緊急権発動の条件、手続、効果などについて詳細に定めておく方式、二つ、その大綱を定めるにとどめ、特定国家機関、例えば大統領に包括的な権限を授権する方式。芦部さんは、この実定化について、次のように指摘します。危険を最小限に抑えるような法制化は極めて困難であり、二つの方式、いずれも、多くの問題点と危険性をはらんでいる。このようなことを教科書の中で述べております。

 現在、衆議院の憲法審査会では、緊急事態への対応として、衆議院の任期延長が俎上に上がっています。議事録などを読みますと、推進派の皆さんは、任期延長には立憲主義を破壊する懸念はないと感じているように受け止められますが、本当にそうでしょうか。私は、もっと慎重に、多角的に議論すべきだと感じています。憲法審の議論では、芦部先生の指摘も踏まえた、落ち着いた議論をしなければなりません。

 さて、二〇〇七年一月四日、当時の安倍総理は年頭記者会見で、次のように述べました。是非私の内閣としても改正を目指していきたいということは、当然参議院の選挙においても訴えてまいりたい。さらに、今年の一月三十日、岸田総理は施政方針演説で、次のように述べました。総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく最大限努力をしたいと考えています、今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。

 総理がこうした発言をすることが、落ち着いた憲法議論を阻害し、憲法改正をすべきと考えている皆さんにとっても事実上の足かせになっているのではないでしょうか。なぜ、こうしたことを理解せず、この類いを発言するのか、意味が分かりません。憲法審での落ち着いた議論を主権者である国民の皆様が見て、時代に応じた憲法改正への思いが、泉から水が湧き出るようにしみ出てくる、そんな議論を私はしたいと思っています。そのような思いを持つ私から見ると、安倍元総理や岸田総理の発言は憲法議論の阻害要因です。

 さて、私は、一九八三年四月、自治体の職員として社会人生活をスタートしました。一九八三年は、統一自治体選挙の年です。採用と同時に選挙管理委員会の職員としての併任発令を受け、統一自治体選挙の事務に従事しました。また、同年六月には参議院選挙、年末には衆議院が解散され、国政選挙の事務も含め、短期間に三つの選挙事務を経験することができました。それ以降、役所を退職するまでの十一年間に、統一自治体選挙三回、国政選挙八回の選挙事務を経験させていただきました。こうした経験の中で、幾つか記憶に残る選挙があります。

 一九九三年七月十二日午後十時十七分、北海道南西沖地震が発生しました。震源地は北海道奥尻島の北方沖の日本海海底、マグニチュードは七・八、震源に近い奥尻島の揺れは震度六と推定されました。当時奥尻島には地震計がなかったため、推定ということであります。火災や津波で死者・行方不明者二百三十名の大きな被害となりました。当時の奥尻町の人口は四千七百人、この町で二百名以上も死者・行方不明者となったのですから、いかに大きな被害であったかが分かります。

 実はこの時期、七月四日公示、七月十八日投票の第四十回衆議院選挙の真っ最中でした。奥尻町は地震の被害で大変な状況の中でしたが、結局は予定どおり選挙を実施しました。

 現在、憲法審査会では、大規模災害時などに衆議院の任期を延長すべきとの議論が出ています。私は、この議論は非常に安易だと思っています。本当に選挙ができないケースがあるのかどうか、災害に強い選挙の在り方はないのかなどの議論、工夫が十分にされているようには見えません。とにかく何でもいいから憲法を変えればよい、そんな議論に思われて仕方がないのであります。

 まずは、災害時など緊急時の対応として、選挙ができるような工夫を最大限行うことです。例えば、選挙人名簿の管理の在り方、他自治体との協力関係の構築など、検討すべきことは多々あると思われます。

 こうした災害に強い選挙の在り方についての議論を国会図書館を通して調べていただきましたが、そうした資料が余り見つかりませんでした。つまり、日本ではこの点に関する議論が十分ではないと思われます。私自身の選挙事務の経験も踏まえて、災害時の選挙の在り方を今後考えてみたいと思います。

 最後に、前回、憲法審査会において、NHK中継に関する質問がありました。

 一般論として、国会での議論が多くの国民に共有される機会が増えるのはよいことだと思っております。また、事務局に調べていただきましたところ、過去一度、憲法関連委員会がNHKで中継された実績もあるとのことです。

 こうした点を考えてみますと、この憲法審査会の議論がNHKで中継されることはあり得ることだと考えます。ただし、電波には限りがありますので、どのような条件、場面で中継するか、しっかりとそうした条件を検討することも必要なことだと考えております。

 以上です。

森会長 次に、小野泰輔君。

小野委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の小野泰輔です。

 前回、自民党の加藤幹事から、条文起草作業に入るべきとの御発言がありました。条文起草委員会については幹事懇で今どのような状況となっているのか、中谷、逢坂両幹事に認識をお伺いしたいというふうに思います。

 奥野委員は、先週、NHKの世論調査のデータを引き、多くの国民は憲法改正の必要性を感じていないと発言をされました。ところが、昨年五月の共同通信調査では、改憲機運が盛り上がっているかとの質問については、高まっている、どちらかといえば高まっているを合わせて二八%でありましたが、憲法改正の必要性については、どちらかといえばを含めて七二%が肯定との結果でありました。

 調査によって改憲の必要性についてはこのようにいろいろと異なるデータがありますが、憲法論議について世論を喚起することは、賛否いずれの立場においても重要でありまして、当審査会でも各会派から何度も提案がなされているとおり、先ほど逢坂幹事からもありましたが、NHKによる当審査会のテレビ中継を行うべきと考えます。この点は立憲民主党も主張されているところでありまして、異論はないんじゃないのかというふうに思います。

 現在、衆議院では放送法改正案の審議をしておりますが、NHKの必須業務に放送番組のネット同時配信、放送番組の見逃し配信及び番組関連情報の配信が追加をされますので、これらの手段でも憲法審査会の審議状況を広く発信してもらえればよいのではないかと思います。ちょうど、本日九時から開始されている総務委員会で法案の採決が行われるということですので、本会議の討論で、各会派でこの点を主張したらいかがでしょうか。

 立憲民主党からは立法事実がないという主張がなされていますが、それがあるかないかは、よその会派が一方的に決めつけられるものではありませんし、すべきでもないと考えています。今国会で審議した共同親権に関する民法改正案も、まさに立場によって見解は異なっていました。議員立法は、それぞれの会派が、自らの政策立案過程を経て、国民の代表が集まった国会で問うものであります。当然、立法事実があると会派が判断した上でテーブルに上げているわけであります。それが妥当かどうかは、国会の場において各会派が、そして最終的に国民が判断すべきことと考えます。

 例えば、教育無償化について、奥野委員は憲法改正など必要ない、本庄幹事が憲法問題ですらないと先週発言をされましたが、それは両委員の考えにすぎません。我が党は、国の形の根本を表す憲法に教育無償化を書き込むことは、国民として、どういう理念で人づくりを行うのかの魂を込めるという意味で、非常に重要だと考えています。特に、大学入学者の半数が、貸与型奨学金を利用し、卒業後にその債務の返済に追われている現実に鑑みると、憲法に教育無償化を明記し、国民の意思を書き込むことには十分な立法事実があると考えます。

 立法事実があるかどうかの判断をし、それを法案や憲法改正案として出すところまでは、各会派の信念に関わる部分であり、他者がその考えを批判することは一向に構いませんが、他者が否定できるものではないということを申し上げておきたいと思います。それはまさに立憲主義、民主主義を否定することではないでしょうか。

 もし、教育無償化が必要だという考えについて我々と一致しているとして、それを憲法に定めることは全く不要ということなら、逆に、憲法の意義や重みというものを軽んじているというふうに私には思えて仕方がありません。

 お互いが持つ価値観を条文の形で提案し合い、国民の前に選択肢を示すことが政治家の務めであるはずです。先々週にも申し上げたことですが、多くの会派が合意形成した改正内容を具体的な条文の形で提案すらできないのは異常としか言いようがありません。

 奥野委員からは、改憲が目的化しているのではないかとの御発言が先週ありましたが、公明党の北側幹事から再三答弁を求められている、参議院の緊急集会の権能の拡充は憲法改正が必要ではないのかという質問に正面から向き合わない姿勢からは、改憲をしないことが目的化しているのではないかと言わざるを得ないと思います。

 改憲が必要だ、必要ないというように考えが埋まらない以上は、改憲を必要とする会派が提案する項目について議論を尽くし、決められた手続に従って進んでいくことがなければ、永遠にこのようなことを繰り返すことになります。議論を尽くし、お互いの考えが出た段階では賛否を決するのが民主主義ではないのかと思います。

 大阪都構想のときのように、具体的な案が示された中で賛否について判断するということを正々堂々とやるべきです。二度の大阪都構想の住民投票では結局我々の提案は否決されましたが、そういうプロセスを踏むべきであります。最終的に判断するのは国民であり、その判断の機会を奪う権限が一部の会派にあるということ自体がおかしいと考えています。

 自民党にも申し上げたいんですが、なぜここから先に進もうとしないのか、私には理解ができません。

 私個人も改憲したいと思う項目は、我が党が掲げているもの以上にたくさんあります。我が党として、現状で各会派と議論し、ある程度、国民に改正の判断を求めるレベルにまで行き着くものと思われるものを選択しているわけであります。

 立憲民主党の各委員も、五十三条の臨時国会の召集期限については憲法上明確に定めるべきとの主張を繰り返しておられるので、堂々とその改正案を提案すればよいのです。石破委員もずっと主張されておりますし、私も個人的には賛同しています。

 多くの会派が提案している緊急事態条項を改憲項目として受け入れる代わり、立憲民主党が必要だと思う改憲案も具体的に出すのであれば、自民党も応じるのではないでしょうか。

 岸田総理の総裁任期中に憲法改正を実現するという公党の党首の公約に対し、賛同する超党派はスケジュールをにらみながら取り組んできたのであり、そのスケジュールにのらないで議論を重ねてこなかった論点については、残念ながら、俎上にのせられなくても仕方がないと思っています。ただ、我々が定例日開催にこだわらなければ、まだまだできると考えています。

 この問題を打開するには、自民党が腹を決める以外にはないと思います。自民党に本気でやるつもりがないのなら、国民に向けてそれをはっきり言うべきだと思います。いつまでもこの状況を続けるべきではありません。先に進めるのか、このままだらだらと過ごすのかを決めるときがもう来ているというふうに思います。

 以上です。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 国民投票制度、また、国民投票広報協議会に係る課題について意見を述べます。

 アイルランドでは、本年三月八日、憲法改正案が国民投票に付され、結果として否決をされました。

 アイルランド憲法は一九三七年に制定されましたが、今回の憲法改正案の内容は、家族に関する二つの条項の改正案でした。

 第一点は、現行の四十一条二節には、母親たちが家庭における義務を怠って働きに出ることがないよう、国は努力をしなければならないと定めています。男女共同参画の理念に明らかに反し、時代遅れだとして、その削除が提案され、代わって、家族相互の扶助をうたった条文案が提案されました。

 第二点は、四十一条三節ですけれども、家族の基礎たる婚姻制度を特別に保護することを国に求めていて、婚姻を基礎とする家族のみが保護の対象と解されています。そうすると、内縁関係にある夫婦やその子供は、国が保護すべき家族でなくなってしまう。政府は、婚姻だけでなく、その他の持続的な関係も家族の基本とすべきだとして、改正案を提出しました。

 極めて妥当とも思える憲法改正案には政府・与党だけでなく主要野党も賛成していましたが、国民投票の結果は、共に否決をされました。第一の女性の義務削除は七三・九三%が反対、第二の婚姻だけでなく持続的な関係も家族とする変更には六七・六九%が反対でした。

 なぜ国民投票で圧倒的に否決されたのか。改正案の内容からは、意外な印象を受けます。アイルランドでは、近年、同性婚や人工妊娠中絶が国民投票で可決され、合法化されています。そのことからしますと、カトリックの影響が強く、保守的だからという単純な理由ではないと思われます。政府の準備不足や説明の稚拙さを指摘する声や、そもそも、改正案の内容以前に、今の政府に対する不満が強く、反対票が多く投じられたとする見方もあります。この結果を受けまして、憲法改正を主導したバラッカー首相は辞任をいたしました。

 国民投票というのは、本来、個別の重要政策に対する賛否を国民に問うものですが、往々にして、時の政府に対する信任投票になりがちです。このことは、二〇一七年七月の当審査会の海外調査で、イギリスでのEU残留か離脱かを問う二〇一六年六月の国民投票、また、イタリアでの二〇一六年十二月の憲法改正国民投票でも、多くの識者から同様の指摘があったことを思い起こされます。国民投票で有権者の過半数の賛成を得るということは容易でないことを私どもは知らなければなりません。

 そもそも、国民投票と選挙とでは、国民から見て全く次元が異なるということを認識しなければなりません。選挙は、有権者が立候補している候補者個人若しくは政党を選択します。候補者や政党の掲げる政策もさることながら、有権者が受け止める候補者の人柄、キャリア、印象なども重要な判断要素となってきます。一方、国民投票は、有権者が提案された政策の是非を選択します。

 憲法改正は、憲法に成文化された国の基本政策の一部を変更しようとするもので、国民は、国民投票を通じて、提案された政策の是非を判断します。したがって、国民は変更しようとしている政策を理解しなければなりません。そもそも何のために憲法改正をしようとしているのか、憲法の改正をすると何がどのように変わるのか、具体的な要件と効果はどう定めているのか等々、国民が政策を正しく理解するのは、そう簡単なことではありません。

 国民投票は、賛成、マルか、反対、バツの二者択一です。有権者が政策を十分に理解し、支持してもらうためには、疑問点や不明瞭な点があれば、これを解消しなければなりません。発議に至るまでの国会審議の中で国民の理解が深まるようにする必要がありますし、また、憲法改正案の発議後も国民に分かりやすい広報活動を尽くすことが不可欠です。

 憲法改正国民投票において、広報協議会の役割は極めて重要です。国民投票広報協議会は、憲法改正案の発議があったときに国会に設置されます。国民投票を実施するための必須の機関です。国会法及び憲法改正国民投票法の中にその組織や事務等について定められていますが、広報協議会が改正案発議後直ちに機能するためには、より詳細な規程が両院議長の下で決定されていなければなりません。広報協議会規程、事務局規程、広報実施規程などであります。

 昨年の十一月二十一日、衆議院憲法審査会の幹事懇談会で、事務局から規程案の概要が示され、協議がなされました。その多くは事務的に作成が可能な事項ですから、会長から事務局に対し、各規程案の作成を改めて指示をしていただいて、幹事会等で取りまとめをしなければならないと考えます。

 言うまでもありませんが、広報協議会の中心となる役割は、国民に対する憲法改正案の広報に関する事務です。国民投票法には四つの事務が定められています。第一に、国民投票公報の作成、これは選挙の際の選挙公報に当たります。第二に、投票所に掲示する憲法改正案の要旨の作成。第三に、広報協議会及び政党等の放送、新聞広告に関する事務、これは選挙の際の政見放送等に当たります。第四に、その他憲法改正案の広報に関する事務です。

 審査会また幹事会で特に議論すべきは、国民への広報の充実強化のため、その他憲法改正案の広報に関する事務として何をすべきか、何ができるかを明確にすることだと考えます。これまで審査会で議論となったことも踏まえまして、以下、三点申し上げます。

 第一に、放送、新聞とともにインターネットを活用した広報の実施ができるようにすべきです。その際、信頼できる事業者を選定するための手続、基準を明らかにする必要があります。また、国民投票運動CMを取り扱う事業者に求められるガイドラインを作成する必要があります。例えば、CMの広告主は誰なのか、広告主名、そして、国民投票運動のCMである、広告である旨の表示をしてもらうことが最低限必要だと考えます。ガイドラインに沿わない広告は信用性に欠けると判断されます。

 第二に、フェイクニュース対策です。広報協議会は、プラットフォーム事業者に対し、ネット検索結果において広報協議会の情報発信が優先的に表示されるよう要請するとともに、民間のファクトチェック機関と緊密に連携し、偽情報、誤情報を指摘できるようにすべきです。

 第三に、憲法改正案に係る公開の説明会、討論会の実施です。

 以上、国民投票広報協議会は、国民投票における賛否の判断材料として、憲法改正案の内容を国民に正確に理解していただくための情報提供をするもので、国民投票実施のための不可欠な機関です。

 この国会中に是非、衆議院憲法審査会として各規程案を取りまとめ、参議院憲法審査会に提案できるようにすべきと申し上げて、私の意見といたします。

森会長 ただいま会長たる私に御要請のありました広報協議会に関わる諸規程の件については、幹事懇等で協議をいたします。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 憲法と地方自治について意見を述べます。

 今、地方自治をめぐって重大な問題は、政府が地方自治も民主主義も無視して基地建設を強行していることです。

 最も顕著なのが沖縄です。辺野古新基地建設をめぐって、玉城デニー知事が、公有水面埋立法に基づき、沖縄防衛局の設計変更申請を不承認としたのに対し、政府は、国民の権利救済のための行政不服審査法を悪用して、知事の決定を取り消しました。さらに、玉城知事に設計変更申請を承認するよう指示し、知事が従わないと、地方自治法上の代執行によって県知事の権限を奪い、工事を強行したのです。国に逆らう自治体は徹底的に排除するという強権政治そのものです。

 政府はこれまでも、県の承認取消しや撤回に対し、国の機関である防衛局が国土交通大臣に審査請求し、救済するという自作自演を繰り返してきました。こうした政府のやり方に対し、百十名の行政法学者らが、法治国家にもとるとの批判の声明を出し、全国知事会は、国と地方自治体は対等であるという原則に基づき制度を見直すよう繰り返し求めています。にもかかわらず、行政不服審査法を濫用したばかりか、代執行を強行したことは、地方自治そのものを否定する暴挙です。

 そもそも、新基地建設反対は県民の圧倒的な民意です。二〇一三年一月、沖縄県内の全四十一市町村、議会、県議会、経済社会団体の代表が上京し、米軍普天間基地を閉鎖、撤去し、県内移設を断念することを求める建白書を政府に提出しました。まさに島ぐるみの要求です。その後も、二〇一九年の県民投票や三度の県知事選挙によって、新基地建設反対の民意を示し続けています。県が基地建設に反対するのは当然のことです。

 ところが、政府は、この民意を一顧だにしないばかりか、新基地建設と沖縄振興策をリンクさせ、分断を図ってきました。

 二〇一三年十二月に、安倍首相は、向こう十年間、毎年三千億円台の沖縄振興予算を確保することを表明し、当時の仲井真知事は埋立てを承認しました。この仲井真知事の裏切りに県民の怒りが沸き上がり、一四年の県知事選挙で翁長雄志知事が勝利すると、政府は一転して、振興予算を減らし続けてきました。その一方で、県を通さず市町村に直接補助金を出す仕組みまでつくり、県を排除しようとしています。金で自治体の声を押し潰し基地建設を強行しようなど、許されるはずがありません。

 重大なのは、この地方行政をゆがめるやり方で、安保三文書の下で全国でも強めようとしていることです。その典型が、公共インフラの軍事利用の強化です。

 政府は今月、三文書に基づき、地方自治体が政府との間で自衛隊が平素から優先的に利用できるようにする確認書を交わすことを条件として、空港や港湾を整備する仕組みをつくりました。今年度は、全国で十六の空港と港湾を特定利用空港、港湾に指定し、三百七十億円かけて整備すると公表しています。地域振興のためにインフラ整備を求める自治体の要望につけ込み軍事利用を迫る、極めて卑劣なやり方です。

 さらに、政府は、今国会に地方自治法改定案を出し、政府が国民の安全に重大な影響を及ぼすと判断すれば、個別法に規定がなくても自治体に指示できる仕組みまで導入しようとしています。国と地方は対等、平等という原則を投げ捨て、自治体を国に従属させるものです。沖縄県での強権的なやり方を全国に広げようというものであり、断じて容認できません。

 日本国憲法は、戦前の中央集権的な体制の下で、地方自治体が侵略戦争遂行のための国家総動員体制の一翼を担ったことへの反省から、地方自治を明記しています。これは憲法の平和主義と一体のものです。

 この地方自治の精神を破壊し、戦争遂行のための体制強化を進めようということは絶対に許されないと強調し、発言を終わります。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 おはようございます。国民民主党の玉木雄一郎です。

 今国会、もう七回しかこの憲法審査会が開かれません。前回申し上げたとおり、今国会では、五会派でおおむね意見の集約が図られてきた緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正に絞って、起草委員会を設置して条文案作りに取り組むことを改めて提案をしたいと思います。

 そのために、立憲民主党と自民党にそれぞれ、まずお願いがあります。

 立憲民主党さんにも、是非前向きに議論に参加していただくことをお願いしたいと思います。

 立憲民主党さんも、お手元に配っていますけれども、昨年二月二十二日に泉「次の内閣」で閣議了承された中間報告を見ても、これは奥野座長のワーキンググループだと思いますが、国会のあり方分科会ですね、その中で選挙困難事態という言葉が出てきます、真ん中あたりに。必ずしもこれを否定していませんし、緊急集会の位置づけ、射程、機能、権限等について、必要があれば憲法に明記することも検討対象にしておられますので、検討をやれば、私は、一定の合意が得られると。やはり野党第一党の役割は大きいと思いますので、是非、積極的、建設的に議論に参加していただきたいというのが一点です。

 自民党にお願いです。二つあります。

 一つは、これは私も気をつけますが、今後、緊急事態条項という呼び方をやめた方がいいと思います。

 緊急時における国家機能維持のための憲法改正の議論を我々はしています。先ほど逢坂先生から芦部信喜先生の話がありましたが、あれは基本的に、行政権、執行権の権限を拡大する前提で様々述べられていますが、我々が主に議論してきたのは、そういった内閣の暴走や執行権の権力の拡大が緊急時に広がらないように、立法府の機能をいついかなるときでも維持しようということを議論しているので、これは名前を、まず呼び方を変えた方がいいと思います。

 その意味で、小林先生からもう何度も提案がありましたけれども、いわゆる緊急政令の在り方については、一旦外して議論した方がいいと思います。まずは、災害時などにおける緊急時において、国会中心主義の観点や立憲主義の観点から国会機能をどう維持するのか、ここが一番合意が得やすいと思いますので、まずはそういう、呼び方も含めて、やってはいかがかというのが一つ。

 二つ目は、前回も言いましたが、九条の改憲案については理解はするんですが、これもお手元に配っていますが、自民党の憲法改正四項目の解説文書ですけれども、真ん中のところに赤線を引いていますが、自民党案も、現行の九条一項、二項と、ここからが大事です、及びその解釈を維持するというのが自民党の改憲案なんですが、その解釈を維持するというのは、前回、橘局長から答えてもらいましたが、国内法的には軍隊じゃないんだけれども国際法的には軍隊ですよという曖昧なことも含めて今解釈でそういう定義づけになっているのを維持するということなんですよ。

 その改憲案にどれほど意味があるのかということを私が従来申し上げ、遠くから石破先生にもうなずいていただいていると理解しているんですが、ここは少し優先順位を、やはり一回、これは他党の私が言うのもあれなんですが、一旦、ゼロベースで党内でしっかり議論された方がいかがかなということは申し上げたいと思います。

 その上で、具体的な質問をそれぞれ一問ずつしたいと思いますが、中谷幹事に改めて確認したいのは、前回ちょっと答弁がよく分からなかったので改めてお伺いしたいのは、自民党改憲案、九条改憲案、これをやった場合の、その改憲後の自衛隊は戦力なんですか、軍隊なんですか、ここは明確にお答えいただきたい。

 ここの解釈ですけれども、現行の九条一項、二項及びその解釈も維持した自民党改憲案後の自衛隊というのは、九条二項に書いている戦力に当たるのか当たらないのか、国際法上、軍隊と言うのか言わないのか。改憲後の話です、自民党がイメージする改憲後の自衛隊は何なのかということを、改めて、明確にお答えいただきたい。

 次に、立憲民主党に質問です。

 選挙困難事態についてはあり得るかもしれないということで前提を置かれていますが、仮にそうなった場合に、参議院の緊急集会が、七十日を超える期間、そして、憲法上、衆議院の優越が認められる、特に当初予算案や条約も扱えるいわゆるスーパー緊急集会を認めるべきと考えているのかどうか。そして、そのスーパー緊急集会が憲法改正を経ずともできるのかどうか。それを教えていただきたいと思います。

 我々は、一時的、限定的、暫定的である参議院の緊急集会の今規定している権限を越える活用をするならやはり憲法改正が必要だと思いますし、これは北側先生も同じことをおっしゃっていると思います。解釈でいろいろなものを広げていくというのは、やはり権力の濫用につながるのではないか。参議院といえども、権力です。

 立憲民主党の中間報告でも、この緊急集会の位置づけについては、先ほど申し上げたとおり、「憲法又は法律に明記することも検討する。」としておられますので、こういったことも含めて是非議論に加わっていただいて、合意形成を目指していきたいと思います。

 戦後、自民党が九条二項の範囲を解釈で拡大することで憲法の空文化を進めてきましたけれども、同じことを立憲民主党が、憲法五十四条の二項、三項、これを恣意的な解釈で範囲を拡大することで新たな空文化を招かないようにお願いしたいと思います。書いてあることは守りましょう。書いてないことをしたいなら、書いてあることを変えましょう。立憲主義を重視するなら、憲法の規範性を守っていこうではありませんか。

 最後に、森会長に対して、広報協議会の規程の整備、これを具体的に進めていただくことをお願いすると同時に、NHKの中継の導入の可否については早期に結論を出すことを求めて、私の発言を終わります。

森会長 私に対する御要請につきましては、先ほど申し上げましたように、幹事懇等で協議をいたします。

 また、複数の方に御質疑がございましたけれども、玉木委員の持ち時間が経過しておりますので、後ほどの自由討議の中で適宜御答弁願いたいと思います。

 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 先週も多くの問題提起がございましたので、幾つかについて、有志の考えを申し上げたいと思います。

 まず、立憲民主党の本庄幹事さんより、国会機能維持について、肝腎の立法事実について、認識が共有されているとは思えませんとの発言がありました。また、東日本大震災では、直後の首長、地方議員選挙が数か月延期されたものの、それは東北地方の被災三県内に限られた措置でしたとの例も挙げられました。

 この点については、公明党の北側幹事より何度か説明されていますが、私から繰り返しますと、一つは、東日本大震災のときは選挙が最大七か月延期されました。このとき延期されたのはたまたま自治体選挙でしたが、時期が時期であれば、衆議院の解散時などにもこうした選挙困難事態は起こり得たと考えるのが合理的ではないかと思います。二つ目には、この場合、選挙困難事態が発生した地域では、当該選挙区だけでなく、当該比例区の選挙結果も確定しません。したがって、国政全体で多数の議席が確定せず、選挙実施の同時性並びに一体性が害されます。被災された地域の衆議院議員が長期間存在しない状況も発生します。こうしたことが立法事実に当たるのではないかと認識しています。

 この立法事実については、芦部説による、法律を制定する場合の基礎を形成し、かつその合理性を支える一般的事実、すなわち社会的、経済的、政治的若しくは科学的事実という定義がよく引用されます。ここで言う一般的事実とは、単純に、過去に生じた事実だと狭く捉えるべきではなく、科学的検証などにより、将来に生じ得る事態をも含めるべきだと考えます。そうでなければ、危機管理関連の法律は全て、一度痛い目に遭わなければ、立法事実がないという理由で対応できないことになってしまいます。

 愚考はさておき、この点、専門家の橘法制局長の「立法学講義」という御著書を開くと、「「立法事実」とは、単なる「生のデータ」などではなく、そこから「抽象的な事実」を抽出・構成し、立法目的や立法手段の合理性を支えるものとして立案者において再構成された、理論的・規範的なものである。そうでなければ、現に生じていない、予測された将来の事象に対応するような立法などは、そもそも「立法事実」がない、ということになってしまいかねないではないか」との見解を示しています。衆議院法制局の神崎部長も、法律と条例の立案における立法事実の意味を論じた自治研究論文の中で同様のことを述べています。

 立法関係者の間では共通認識と言えるでしょう。学界でも、西原博史元早稲田大学教授は、対策が必要な異常事態として、ある現実に着目するとき、それは徹頭徹尾規範的な決断であると、同趣旨のことを述べています。

 確かに、これまでは国政選挙に係る選挙困難事態は発生していません。これは生の事実です。東日本大震災は、一つ、自治体選挙のみ、二つ、被災県三県にのみ、三つ、数か月間のみ延期されています。

 しかし、生の事実と立法事実はおのずと異なります。南海トラフ、首都直下型地震に関する地震学の知見を踏まえ、東日本大震災の生の事実から、橘局長のおっしゃる抽象的な事実を抽出すれば、一つは、自治体以外の選挙に、二つは、三都道府県規模を超える領域に、三つ目は、数か月間を超える延期期間にも及び得るものとして、規範的に決断することができます。

 加えて、新型コロナ感染を上回る感染症の蔓延に関する疫病学の予測、さらには、台湾有事に関する安全保障の専門家たちの予想などに考えを巡らせば、十分、立法事実として成立するのではないでしょうか。

 それでも認識は共有されないのかもしれません。しかし、ここまで議論をしている以上、認識の違いは尊重しつつ、小野委員からもございましたが、どこかで審査会として結論を出さざるを得ないと思います。論じて決しないということでは、本審査会の責務は果たせません。

 私としても、実際に選挙困難事態が発生した際に、いや、想定外でしたとならないためにも、早急に条文案の作成に入ることを求めたいと思います。

 次に、自民党の稲田委員より、自民党のたたき台素案では、参議院の合区を解消すべく、参議院議員の選挙において、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも一人を選挙すべきものとしているなどを明記しているとの発言がございました。

 我々も、参議院の合区は解消すべきだと考えています。ただ一方で、そのためには、憲法第四十三条一項にある、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」という条文をめぐり、衆参の役割を始めとする統治構造そのものの議論を深める必要があると考えます。引き続き検討すべき重要な課題でありますが、これまでの審議の流れに従うならば、国会機能の維持に絞って条文案作りを進めることを優先すべきだと思います。

 最後に、同党の石破委員より、平成二十四年の自民党憲法改正草案には、内閣は要求があったときは二十日以内に臨時会の召集を決定しなければならないとの記載がある旨発言がありました。全く賛同します。実際、我々三会派の共同案にも、臨時会召集要求に係る召集期限を二十日以内と明記しています。

 以上申し上げたことから、やはり早く起草委員会を立ち上げて、石破委員御指摘の第五十三条の改正を含む、国会機能の維持に絞った条文案作りを進めることを要請して、私の発言とします。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

山田(賢)委員 自由民主党の山田賢司でございます。

 これまで、当審査会におきまして多くの議員が、具体例も挙げつつ、緊急事態、まあ、選挙困難事態における議員任期の延長を中心とした国会機能の維持の観点から論理的な御意見を述べられ、少なくとも五会派の間では、この点に関する憲法改正の必要性についての認識が共有されているものと承知しております。

 もはやこの点については、なぜ改正が必要かという話を繰り返すのではなく、どう改正するのかを具体的な条文で審議すべく、速やかに改正原案作成の起草委員会をスタートさせ、原案をまとめて本審査会に御提示いただくことを、自由民主党所属の議員の立場からも強く求めます。

 さらに、日本維新の会・教育無償化、それから国民民主党、有志の会の三会派におかれても、具体的な条文案を提出されていることに敬意を表します。私自身も、三会派が出されている条文案を拝見させていただきました。是非、これについても具体的な議論をさせていただきたいと思っております。

 続いて、憲法九条改正に関して、先週、立憲民主党の奥野委員から、自衛隊が憲法違反と考えている国民はおおむね一割程度、立法事実はないと言ってよいとの御発言がありましたが、これに関して違和感を覚えます。一方で、憲法学者の約七割は、自衛隊は違憲又は違憲の疑いがあると考えているとの調査もあります。また、仮に自衛隊を違憲と考える国民が一割程度だったとして、そうした声というのは立法事実にならないのでしょうか。

 この審査会は、少数会派であってもひとしく発言の機会が確保され、御意見が伺える貴重な機会だと感じております。この点、共産党さんは一貫して、自衛隊は憲法違反だとおっしゃっております。私自身は共産党さんとは全く異なる立場ですが、直接、生の声で自衛隊違憲論を伺うという点で、この憲法審査会の場での議論は必要だと考えております。

 では、なぜ自衛隊が必要か。これは、なぜ国の主権と独立を守ることが必要かということにつながると考えます。

 国民の生命財産を守ることは当然のこととして、日本国憲法が国民に保障する人権規定や教育、福祉などの様々な行政サービスの履行は、我が国の主権が維持、確保されていることが当然の前提です。他国に侵略された場合に、侵略した国が日本国民の人権を保障してくれるわけではありませんし、教育の無償化や将来の年金を保障してくれるわけでもありません。

 国民主権の我が国において主権とは、すなわち、国の在り方を国民自身が決める権利です。この主権を外部の侵略者から侵されないように守ることは、日本国憲法の秩序を守ることでもあります。護憲派を標榜される方にも、是非、日本国憲法を守るためにも、日本国の主権と独立を守る必要があるということを御理解いただきたいと思います。

 しかしながら、我が国の日本国憲法には、他国からの侵略からいかに国民を守るか、いかに国民主権の憲法秩序を守るかについての規定がありません。強いて挙げれば、前文にある、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」となっているのみです。

 現代において、他国を武力で侵略する国などないというような理想が通用しないことは、現実の国際情勢を見れば明らかです。国家の存立という根本のところで、他国による武力侵略から守る実力組織を持っていいのか悪いのかといった議論が生じないように明記することは、大変重要な意義があると考えております。

 先週、そして今週も、国民民主党の玉木委員からは、自衛隊明記をしても、九条二項を削除しなければ、違憲論の解消につながらず意味がないという御趣旨の御発言があったと承知しております。二項を削除した方がよいという考え方に共感する人も我が党の議員の中にも多くいるとは思いますが、二項を削除しなければ自衛隊明記をするだけで意味がないとは私は考えておりません。

 よく例に挙げられるコスタリカは、憲法で軍隊の保持を禁止していると言われますが、コスタリカ憲法においても、恒久的な機関としての陸軍、アーミーの保持禁止を定めた上で、国防のための軍隊、ミリタリーフォーシズを組織することができると定めております。

 国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄とその目的を達するための戦力不保持が規定されているということと、自国を守るための実力組織を明記するということは、何も矛盾しないと考えております。むしろ、明記することで、自衛隊は二項が禁じる陸海空軍その他戦力には当たらないと整理することができると考えております。

 国際法上の軍隊と国内法上の軍隊が違うという御指摘もありました。これは、同じ文言であったとしても、国内法であっても法律が違えば、その法律においてこの文言をどう定義するかによって解釈が違うということはあります。

 ここで玉木委員にお伺いしたいんですが、このまま九条二項を残しているとできないことであって、九条二項を削除して何ができるようになればよいとお考えなのか、是非御教示をいただきたい。また、今日でなくてもいいので、できれば、国民民主党さんが考える九条の改正案についても、具体的な条文案をお示しいただけるとありがたく存じます。

 また、選挙困難事態における国会の立法機能の維持に関しても、時間が許せばお答えをいただきたいんですが、解散によって一旦失職した衆議院議員を復権させることの是非、これは両論あろうかと思います。また、復権させるとして、誰が承認するのか。三会派案では、失職した衆議院議員自身も議決に加わるという点についての問題点、さらには、様々な問題があります。

 時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。また機会を見つけて議論させていただければと思います。

 ありがとうございます。

牧委員 立憲民主党の牧義夫でございます。

 今国会で初めて憲法審査会に参加をさせていただきました。本来であれば、これまでの議論を踏まえて、そこからスタートすべきところだと思うんですけれども、これまでの議論というのは、そもそもかみ合っていません。改憲をせかす皆さんのお話を聞いていると、内容はともかく、改憲そのものが自己目的化しているようにしか聞こえてきません。

 以下の理由で、私も、改憲の必要性、立法事実に疑問を持つ者の一人であります。

 まず、緊急時における立法府の機能の維持についてでありますけれども、二〇二二年に行われたネット投票に関するアンケートで、各党が実現に賛成と答えており、反対表明はありませんでした。二〇二一年提出のネット投票法案には、国民民主も日本維新の会も共同提出者になっております。与党がやると言えば、明日からでも実施に向けた具体的な検討に入ることができるわけであります。

 国会の審議についても、リモートで幾らでも対応できるということがこのパンデミックの体験を通じてもう既に実証済みだというふうに思っておりますので、立法府の機能の維持については、これは、我々はきちっと法改正によってできるということを申し上げたいと思います。

 そして、教育無償についてでありますけれども、現行憲法で義務教育無償は御承知のように保障されております。その上で、高等教育についても、国連人権規約A規約にある漸進的無償化の条項を、これは我が国は長年にわたって留保してきましたが、二〇一二年、民主党政権によって留保が解除されております。

 憲法九十八条二項で、国際的な公約についてはこれを遵守するということが定められておりますので、憲法にまた教育無償化を書き込むことは、屋上屋だと言わざるを得ないというふうに思います。

 九条についてですが、岸田政権は、二〇二二年十二月、専守防衛の原則に基づく従来の安保政策を大転換し、新たな防衛三文書を閣議決定しました。防衛費をGDP比二%に倍増、敵基地攻撃能力、つまり先制攻撃容認に踏み切ったわけです。この時点で既に現行憲法を逸脱していると言わざるを得ないと思うんですけれども。

 ちなみに、自衛隊の条文への明記にこだわる意見がありますけれども、ちなみに、世界最大の軍事大国であるアメリカ合衆国憲法における軍隊の位置づけというのを見てみますと、修正八条、これは議会の立法権限を定めた条項なんですけれども、その十二項に陸軍の編成、十三項に海軍の創設と維持とあります。陸軍については、歳出の承認は二年を超えないというただし書までついております。十五項に反乱鎮圧のための民兵団の招集というのがありますけれども、海兵隊や宇宙軍、サイバー軍といった記述はどこにも見当たりません。ちなみにの話でございます。

 防衛力の増強こそが抑止力強化につながるとの意見もありますけれども、私は、現行の九条一項、二項の存在こそが何よりも戦争抑止につながっていると思っております。自らは戦争をしないとうたっている国に対して武力攻撃をしかけることは、国際社会の中で相応の非難と制裁を覚悟しなければならないはずです。今回の敵基地攻撃能力保持で、その抑止力の一部が損なわれることを大変危惧をしております。

 ロシアによるウクライナ侵攻は大いに非難されるべきと考えるものではありますけれども、しかし、NATOの東方拡大とウクライナのNATO加盟への意思表示、つまり、ロシアに対する挑発がなければ、あるいは未然に防ぐことも可能だったとの見方もあります。

 以上、立法事実に関して述べさせていただきました。

 次に、改憲推進五会派の思惑もそれぞれあるんだなということを先週の会議で感じさせていただきました。維新の委員の発言を聞いて特にそう思ったんですけれども、予算委員会のときは委員長職権で押し切られ悔しい思いをしたけれども、当審議会でこそ会長の職権で前へ進めてほしい、そういった旨の話だったんですけれども、しかし、私は、責任ある与党は軽々にそんな無責任な挑発には乗らないと信じております。

 なぜならば、責任ある与党の皆さんは、現行憲法の成り立ちについて十分に理解し、現実を踏まえ、特に九条についても既に解釈改憲で事足りると実際正直なところ考えているわけで、岸田総理の発言も自民党支持層に向けての単なるリップサービスだと私は理解をしております。

 憲法についての深い議論を重ねることは大いに歓迎をいたしますけれども、かつての首都機能移転のときのように、最後に各論に入った途端、それぞれの思惑の違いから破綻することが容易に想像されます。

 先ほど、現行憲法の成り立ちについてと申し上げました。昭和二十一年に成立した日本国憲法がGHQから押しつけられたものか、そうでないかの議論をここでするつもりはありませんが、少なくとも占領下で制定された憲法であることは事実です。

 しかし、本来ならば、ポツダム宣言十二項に、日本の最終の政治形態は日本国民の自由に表明される意思によって定めるべきとありますけれども、本来ならば、その趣旨に従えば、サンフランシスコ平和条約、昭和二十六年で主権を回復して、ここで改めて新憲法を制定することもできたわけです。しかし、そうではなくて、あえて自らの意思でこの現行憲法を保持することを決めたと解すべきだというふうに思いますので、押しつけ論については、これは意味のない話だと言わざるを得ないと思います。

 そしてまた、ここで忘れてならないのは、平和条約と同時に、その陰で、日米安保条約行政協定が結ばれたということです。占領が解除されると同時に、米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を約束したわけで、これは主権の一部放棄と言ってもいいのかもしれません。

 これは私個人の考えでありますけれども、日米安保条約地位協定を見直して、日本が真の主権回復を果たした後に九条二項を見直すといったような真正面からの議論であれば、お試し改憲のための不毛な議論よりももっと意味のある議論になると思いますが、保守政治家を自認する皆さんは果たしてどう思われるのか。答えられる方がいたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。

 以上です。

岩谷委員 日本維新の会の岩谷良平です。よろしくお願いします。

 先ほど、立憲の逢坂幹事から、芦部先生の「憲法」の本を引用されて御発言がございました。

 この芦部先生の本には、国家緊急権について、この国家緊急権は、一方では、国家存続の際に憲法の保持を図るものであるから、憲法保障の一形態と言えるが、他方では、立憲的な憲法秩序を一時的にせよ停止し、執行権への権力の集中と強化を図って危機を乗り切ろうとするものであるから、立憲主義を破壊する大きな危険を持っていると確かに書いてあります。

 しかし、先ほど玉木委員が御指摘されたように、有事の際の選挙困難事態における議員任期の延長というのは、まさに、芦部先生がおっしゃる執行権とか行政権への権力集中を避けるべく、むしろ、国会の権能を維持して、しかも両院制の維持を図るものでありますから、引用されたことはまた違う話ではないかというふうに思うんですね。

 むしろ、有事において国会が一院のみになってしまうこと、あるいは、選挙困難事態が長引いて、参議院も含めて国会議員が存在しない中で有事に超法規的に対応するということの方が、むしろ立憲主義にそぐわないというふうに思うんですが、この点、いかがでしょうか。御質問いたします。

逢坂委員 後日、整理してお答えしたいと思います。

岩谷委員 お答えいただきたいと思います。

 そして、もちろん、御懸念として、お手盛りの議決で任期延長を繰り返す、そういった危険があるのは事実だと思います。ゆえに、我々は、その対策として、特別多数の議決を要求したり、あるいは司法の関与というのを主張しているわけなんです。

 これに関して自民党さんにお伺いしたいと思います。

 この議員任期延長の議決要件について、維新、公明、国民、有志の、いわゆる改憲五会派、自民党を合わせて五会派ですね、そのうち四会派は、出席議員の三分の二以上の特別多数とすべきとしております。一方で、自民党さんだけが、この五会派の中で、過半数も含めて議論が必要というお立場だと思います。

 この点、新藤前筆頭が、特別多数の議決を必要とするのは議員の除名など原則や現状を変更して特別な状態をつくり出すときであるから、任期延長の場合は当たらないのではないかというような御主張がありました。

 しかし、先ほど申し上げた議員自身によるお手盛りの議決を防止する意味でも、また、原則四年、六年とされている任期を延長することも、新藤前幹事がおっしゃった、現状を変更して特別な状態をつくり出すという意味で除名等の場合と同様であると思いますので、やはり議決要件は特別多数とすべきではないかというような質問もさせていただいておったんですが、この点についてお答えをまだいただいておりませんので、改めて自民党さんから、特別多数にすべきなのか、あるいは過半数でよいと考えているのか、現状のお考えをお伺いしたいと思います。

中谷(元)委員 国会の議決というのは、過半数が原則でございます。その一方で、お手盛り防止という観点から三分の二以上とすべきとの考え方も一つの考え方としてあり得るものでありまして、この条文起草作業においてこれは結論を出すべき論点でありますので、この点において議論させていただいて、合意形成に向けて議論を深めてまいりたいと思っております。

岩谷委員 まさに起草作業の中で議論していただきたいんですが、その起草作業が全く始まらないものですから、この審査会の場でも議論を深めていく必要があると思いますので、御回答を、また後日いただければというふうに思います。

 立憲民主党さんにお伺いいたします。

 選挙実施困難事態が生じることが可能性としてはあるということは立憲民主党さんも認めているという認識で間違いないかどうか、まずお伺いしたいと思います。

逢坂委員 実は私、東日本大震災のときに選挙の延期をする担当を総務省でやっていました。その際に、対応がこれで十分かどうかという議論がありまして、あのときは、まさに直前に、選挙があったものですから、法律で延期をしたわけです。

 今後ああいう事態がないように、選挙の上で何が対応できるかを検討しようということになっていたんですが、どうもこの十年余りを見るとその検討が行われていないんですね。だから、そうしたことも含めて、選挙困難事態というのは、論理としてはあり得るけれども、事実上あるのかないのかはもう少ししっかり精査しなきゃならないと思っています。

 その意味で、今日の私の冒頭発言なんです。選挙の在り方についてまだ工夫できるところはないのか、選挙人名簿の在り方はどうか、選挙の応援の体制は組めるのか組めないのか、そういったことも考えた上で、最終的に、実態としてあるのかどうかということになろうかと思います。

森会長 岩谷君の質問時間が過ぎましたので、ここで終わります。

岩谷委員 分かりました。

河西委員 公明党の河西宏一でございます。

 本日、また昨今の御議論をお伺いをした上で、私の意見を申し上げたいというふうに思います。

 今日もそうですが、あえて選挙困難事態という言い方で始めさせていただきたいと思いますけれども、この選挙困難事態の立法事実、また、これまでの震災等を踏まえた経過も踏まえて、各党また各幹事、各委員の皆様から意見の表明があったところでございます。

 私も、前回、発言の機会をいただきまして、この選挙困難事態について意見を申し述べさせていただきました。改めて、この具体的な類型、想定をされているものでありますけれども、大規模自然災害事態、またテロ・内乱事態、また感染症蔓延事態、国家有事・安全保障事態、そして、その他これらに匹敵する事態ということで、計五事態があり得るということであります。

 これは繰り返しになりますけれども、そういう意味におきましては、二〇一一年の東日本大震災、また、二〇二〇年、これに端を発した新型コロナウイルスの世界的なパンデミック、こういったことがあったわけであります。

 まず、今日、初めに指摘をさせていただきたいのは、東日本大震災につきましては、選挙が延期をされたのは、被災三県に加えまして、茨城県の水戸市、私もかつて住んでおったところでありますけれども、こちらが、市長選挙、また市議会議員選挙、これが延期をされております。

 そういったことでございますと、先ほど北神委員からございましたとおり、東北比例ブロックに加えまして北関東ブロックが確定をしないことになるんだろうということで、これは決して少なくない影響を及ぼすものというふうに考えております。

 また、これは前回の繰り返しになりますけれども、東日本大震災への対応という意味で、立法府の動きということを定量的に前回御紹介をさせていただきました。

 緊急性が高いものという意味で、この震災が発生をいたしました二〇一一年には四十四本、そして、翌二〇一二年に十九本、計六十三本の震災関連法が制定をされたわけであります。

 また、制定法律全体としても、二〇一一年は前年の七十二から百二十六件へと大幅に増加をしたということで、これは多くの立法措置が必要だったということであります。

 先ほど来ある、やはり議員任期を延長することによって二院制のフルスペックの国会機能を、こういう事態だからこそ維持をしていく、また、権力に対する監視機能、政府に対する監視機能、これを強めていくということは、私も全くもって賛同するところでございます。

 また、新型コロナ対応ということでいいますと、国内で患者の方が確認をされたのは二〇二〇年でありましたけれども、この年に十本、そして、翌二一年に二十二本、計三十二本のコロナ関連法が制定をされたわけであります。雇用保険法とか、特別定額給付金の差押禁止法等々でありますし、また、更に付言をするならば、いずれの大地震、またパンデミックにおいても、議員立法が非常に多かったというところでありました。

 震災対応、東日本大震災の対応では、計六十三本のうち、議員立法が二十二本、そのうち衆法が十七本と大半を占めた。また、コロナ対応では、三十二本のうち議員立法が七本で、これは全て衆法であったということであります。

 ですので、やはり議員任期をこういった選挙困難事態にはしっかり延長して、立法機能の確保、また行政の監視機能というものをしっかりと確保していくということは非常に大事なんだろうというふうに思っております。

 そういったことを踏まえて、特に、コロナ前後における民意の、世論の変化ということも今日は指摘をさせていただきたいと思います。

 憲法改正の賛否の推移につきましては、境家史郎東京大学の大学院教授が、様々、戦後の大まかな推移、御指摘をされて、主に五点指摘をされているんですが、その中で、最初の四点は割愛をいたしまして、五点目に、こういう御指摘をされております。

 近年においては、何らかの点で憲法改正が必要と考える有権者が、そうでないと考える有権者の方々とほぼ同じ程度に存在をしているということなんですが、ただ、最近の朝日新聞社、また読売新聞社、それぞれの世論調査を見ますと、二〇二〇年以降、すなわち、これはコロナによるパンデミックが始まって以降、憲法改正に賛成だという民意が五〇パー、また六〇パー、改正反対を上回っている、そういうトレンドが見て取れるわけであります。

 国民の皆様は非常によく現実を御覧になっているということでございまして、立法事実とともに、こういった世論の変化、民意の変化というものもよく踏まえながら、当審査会においては議論を前に進めるべきだろう、こういうことを申し上げまして、私の意見表明とさせていただきます。

 以上でございます。

山下委員 自由民主党の山下貴司です。

 私は、直ちに具体的な条文を起草するための協議を始めるべきという立場から発言いたします。

 我々が提案する四項目は、いずれも憲法が直面する緊急の課題であり、国民投票や関連法令の整備に必要な時間を考えると、今から具体的議論を始めなければならない問題です。

 まず、緊急事態はいつ起こるか分かりません。年明けに能登地震があり、先週も四国で震度六の大地震が、そして昨夜も震度四の地震がありました。被災された皆様には心からお見舞いを申し上げますが、首都直下型の大地震や南海トラフ地震などは、いつ起きてもおかしくありません。国会が機能不全となるような緊急事態においても憲法秩序に基づいて国民の生命、身体、財産を守るためにも、現行憲法に欠けている緊急事態条項の整備は喫緊の課題であると考えます。

 危機意識のない方は、そんなことは想定外、想定しなくてよいと言いますが、想定外のことが起きるのが現実です。現に、関東大震災が発生したのは、日本に正規の総理が存在しないときでした。前任の加藤首相が死去後、後任の内閣が発足していなかったからです。そのとき、日本の先人は、明治憲法の条文に基づいて、新しい山本権兵衛首相を任命し、国会が開会するまでの三か月の間、十数本の緊急勅令を出して乗り切ったのです。

 このように、日本には、緊急事態に憲法に基づいて対応した経験があります。ただ、明治憲法には緊急事態に対応する条項がありました。また、九割の国の憲法が緊急事態の条項を持っています。しかし、今の日本国憲法にはないのです。

 緊急時の国会機能の維持、特に選挙困難事態についてここで申し上げます。

 遅くとも来年秋までには衆参の任期が切れます。そのタイミングで大規模な首都直下型地震が発生し、長期にわたり国会が機能不全となる、任期満了後、国会議員が存在しなくなったのに、広範囲にわたって選挙もできず、国民の生命を守るための法律や予算を審議する国会も開けない。私たちは、そのような場合でも日本国憲法に基づいて国政を行うべきであり、だからこそ、憲法に緊急事態に関する条項を定めるのが立憲主義を守ることであると考えます。

 なお、国会議員の任期満了後の国会について、参議院の緊急集会条項の類推適用で対応すべきとする見解もあります。しかし、当審査会でも配付された「「参議院の緊急集会」に関する資料」によれば、緊急集会が任期満了の際に開けるかについて、従来の通説は、憲法に明文の根拠がないことなどを理由として否定的に解していたとされ、例えば、憲法学の権威として最高裁判事を務めた伊藤正己東大名誉教授は、衆議院の任期満了によって総選挙が行われるときにも起こり得る事態であるが、明文上このときは参議院の緊急集会は認められないと、否定説に立つことを明らかにしています。

 最近こそ緊急事態への類推適用を認める憲法学者が多くなってきたとはいえ、決めるのは、時として変わる憲法学者の多数決ではなく、最高裁です。伊藤正己最高裁判事のような文理を重んじる立場の最高裁判事が多数を占めれば、任期満了時の緊急集会の類推適用が最高裁で否定され、緊急集会で議決された措置が全て無効と判断される可能性は厳然として存在します。その場合の大混乱を考えると、安易な類推解釈にかけるより、緊急事態の対応については憲法上明記すべきであります。

 この方向性については、既に当審査会の与野党五会派が共有しています。改正のためにかかる議論の密度、国民投票期間、改正を踏まえた関係法律の整備とその周知期間を考えると、まさに今から具体的条文の在り方を協議する必要があります。

 同様に、自衛権の行使の明確化についても喫緊の課題と考えます。

 我が国をめぐる安全保障の環境の厳しさもさることながら、先ほど逢坂委員から芦部「憲法」の引用がありましたので、その芦部「憲法」の最新版の一ページには、この補訂をされた高橋和之教授が、芦部先生が最晩年に、憲法九条を法的拘束力のある規範ではない、むしろ政治的マニフェストと考える説を検討すべきかもしれないと、最近知って非常に悩んだということが書かれてあります。

 芦部先生は最晩年に、九条を法的に拘束する規範だと考えると、憲法を改正するか自衛隊を解消する方向で考えるかしない限り、憲法規範との矛盾を解くことができない、そうでなければ、第三の道として、政治的マニフェスト、つまり法的拘束力のない規範として憲法九条を考えるべきだ、そう再検討しなければならないと述べたということで、この高橋教授は、先ほど引用のあった芦部「憲法」の冒頭で、七割以上の国民が自衛隊の存在を支持すると答えるようになっている、こうした現実を前にして、憲法学は自衛隊の憲法適合性問題を棚上げした、立憲主義を守れという呼びかけは、憲法と現実の乖離を説明し指針を与える理論なくしては、うつろにしか響かないと書かれております。

 このように、憲法学の権威ですら指針を示さない中、国民の代表者から成る国会こそ、憲法に定められた責務、すなわち発議を国民に対して果たすべきであります。

 これまで丁寧に議論を重ねてきた当審査会の議論を踏まえ、喫緊の課題である項目について、与党のみならず野党の多くも求める条文起草のための協議会を求めることを求めて、私の発言といたします。

 以上です。

道下委員 立憲民主党の道下大樹です。

 発言の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 私は、これまで本会議や法務委員会でも取り上げています同性婚と日本国憲法について意見を申し述べます。

 政府は、同性婚を法律で認めることについて、現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない、同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家庭の在り方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要すると述べています。

 この点、憲法二十四条一項は「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」とされているため、同性同士の結婚はできないように読めなくもないですが、この条文は、結婚相手を親が強制的に決めたり戸主や親の承諾を必要とする戦前の家制度から、婚姻をするかどうか、婚姻を誰とするかを本人の自由意思に解放する趣旨であります。そうだとしますと、異性婚は両性の合意のみによって成立することを定めたものと制限的に理解すべきであり、同性婚について禁止する規範ではないと考えます。

 この点については、以前の憲法審査会で、我が会派の吉田はるみ委員の質問に対して、自民党の当時の新藤筆頭幹事並びに公明党の北側幹事も、同性婚について禁止する規範ではないと発言されています。学説においても同性婚は禁止されてはいませんが、これを採用するかどうかは立法裁量であるという考え方が一般的です。なので、同性婚を法律で認めるための憲法改正は必要ないと考えます。

 なお、憲法二十四条二項が、配偶者の選択、婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならないとし、憲法十四条一項が法の下の平等、憲法十三条が個人の尊厳と幸福追求の権利を定め、その内実として、人格的生存に不可欠な自己決定権が保障されているとの理解の下では、むしろ同性婚も憲法上の保障を受けるとの解釈も有力に主張されています。この立場に立つと、その法的整備をすることは、単なる立法裁量ではなく、立法府としての責務となります。

 では、近年の司法判断はどうなってきたのか。これは前回の憲法審査会において公明党の國重委員も発言されましたが、憲法二十四条二項に違反若しくは違反状態、憲法十四条に違反という地裁判決が下されてきましたが、本年三月十四日の札幌高裁判決は、憲法十四条、憲法二十四条二項のみならず、憲法二十四条一項にも違反するとの判断がなされました。

 私は、この札幌高裁判決に対する見解を三月十五日の法務委員会で小泉法務大臣に質問しましたが、同性婚制度の導入の問題は我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題である、国民的なコンセンサスと理解がなければ、それを得た上でなければ進めることが難しいと考えるとのこれまでの政府答弁にとどまっています。

 昨年二月に産経新聞とFNNが行った世論調査では、立憲支持者七四%、無党派層七六%、自民党支持者六〇%と、支持政党にかかわらず六割以上の国民が同性婚の法制化に賛成しています。パートナーシップ制度を導入、運用する地方自治体は二〇二四年三月時点で少なくとも三百九十七自治体、人口カバー率八〇%を超えています。世界では性的マイノリティーに関する法整備が進み、約三十の国、地域で婚姻の平等が制度化され、G7の中で同性カップルのパートナーシップが国レベルで法的に保障されていないのは日本のみ。世界で取り残されている状況です。

 先日の札幌高裁の判決を受けて、原告は三月二十五日に最高裁に上告しました。国会は、最高裁でも違憲判決が出て確定されるまで、立法不作為という敗北、駄目出しをされるまで待つのでしょうか。

 家族法が専門で早稲田大学教授だった棚村政行先生は、札幌高裁判決の付言について、間髪入れずに法制化せよとのメッセージだ、国会や政府は重く受け止め、早急に議論を進めるべきだとコメントされています。先日、國重委員も、最高裁で国会の立法不作為を非難されることがあれば、それは立法府として恥ずべきこととおっしゃいましたが、私も同じ意見です。

 立憲民主党は、昨年三月に婚姻平等法案を衆議院に提出しています。同性婚を可能とする法的整備をすることに憲法上の支障はないものと認識しています。国会で与野党で議論して、速やかに同性婚の法制化を実現しようではありませんか。

 二年前の憲法審査会における我が会派の櫻井周委員の質問に対して、橘法制局長が、国会法において、憲法審査会の所掌事務の中に憲法違反を始めとする問題が生じていないかどうかを調査審議することもまさしく入っていると答弁されました。改憲ありきの議論が横行する本憲法審査会を市民、国民は冷静にかつ厳しく見ています。憲法違反の状況を調査、議論して法改正などを通じて解消、改善する取組が憲法審査会に求められているのではないでしょうか。

 以上で私の自由討論を終わります。

森会長 ここで、これまでの御質疑に対する御答弁をお願いいたします。

 まず、玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木です。

 山田委員から質問がありました。これは私も逆に聞きたいんですけれども、今の質問を聞いていると、自民党の改憲案は、結局、できることは何も変わらないということですよね。よく言われるのが、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しくなったので九条改憲が必要だということと論理的に整合性が取れませんよね、それは。新たにやるべきことを増やすために九条改憲だということで、多くの多分自民党を支持されている方はそうやって信じて九条改憲案を解釈していると思いますが、今の説明だと、何も変わらないから改憲しますということですよね。

 まず、根本的な問題は、もう釈迦に説法ですけれども、警察権の延長としてつくられてきた、警察予備隊、保安隊、自衛隊と来たこの流れをきちんとした戦力、軍隊として明記した上で、その自衛権の範囲が一体いかなるものなのか、平和国家としてどこまでその自衛権を認めるのか、国際法と全く一致していいのか、それとも、それより範囲が狭いのか大きいのか、そういう議論をきちんと本質的にするのが九条の議論ではないでしょうか。だから、改憲後の九条が戦力に当たるかどうかを何度も中谷幹事に聞いているのは、そういうことなんですね。

 一九五二年のジュリストに、当時の法律界のきらびやかな先生方が、まさに自衛隊発足前に、やはり国内治安を維持するための警察権を幾らいじくり回しても限界なので、やはり明確な、これはつまり、軍隊というのは外に向いて具体的な力を行使するのに対して、警察権はあくまで治安維持なので国内に向くわけですね、もっと言うと国民に向くわけなので、だから、そこに一定の制約とか警察比例の原則が出てくるわけです。

 でも、我が国の主権と独立を守るためには、ある意味、遠慮は無用です。我が国をどう守れるのか、そのことが、唯一のルールは国際法です。だから、そこをきちんと位置づけた、フォースとしての自衛隊をどう位置づけるのかという戦後ずっと回避してきた議論を天下の自民党はちゃんとやったらどうですかということを申し上げている。

 その意味で、中谷さんにもう一回質問ですが、今の自民党の九条の改憲案、この後、改憲した後のその自衛隊は戦力なんですか、軍隊なんですか。ここはちょっと明確に答えていただきたいです。

森会長 それでは、中谷元君に、今の質疑を含めて、これまでの御答弁を願います。

中谷(元)委員 本日の審査会での質問に答えさせていただきます。

 まず、玉木委員の、緊急事態条項という呼び方はやめた方がいい、国会機能を維持と位置づけるべきとの御意見、おっしゃるとおりだと思いますので、今後皆さんと協議をしたいと思いますが。自衛隊のシビリアンコントロールを考えても、やはり国会の機能を切れ目なく維持していくということは極めて重要なことでありまして、選挙が困難なときにおいても議員の任期の延長ができるようにしておくということは必要なことだと思います。

 それから、自衛隊の明記案が成立した後、自衛隊は戦力に当たるのかという御質問、また、軍隊に当たるかという質問ですけれども、自衛隊の明記案は、現在の等身大の自衛隊をそのまま憲法に明記をするものでありますから、戦力に当たらないという現行の解釈はそのまま維持をされます。

 また、自衛隊が軍隊に当たるのかという問題については、前回の審査会で確認があったように、軍隊の定義いかんによるというのが政府の解釈でありますが、この点についても、実は昭和二十九年七月に自衛隊が創設をされたときに、戦力との関係において、当時の鳩山内閣が、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは禁じられない、自衛隊は自衛目的であり、必要相当な範囲の実力部隊であり合憲であると答弁がございますが、この点につきましては、自衛隊明記案成立後もそのまま維持をされるというふうに考えます。

 次に、維新の小野委員、そして玉木委員、また岩谷議員からも、北神委員からも、幹事懇談会の場で条文作成の作業の協議を行うべきだという御意見がありました。既にこの点につきまして、維新の馬場幹事、三木委員からも、青柳委員からもかつて質問がありまして、私もそれには賛成でありまして、幹事懇談会の場で条文作成を進めるということを提案をいたしております。

 大事なことは、幅広い会派が協議の場に参加できるようにすることでありまして、条文起草作業に入ることに反対会派もあろうと思いますけれども、そのような反対の方々も、熟議、これを国会で行うということが大事なことでありまして、是非協議のテーブルに着いていただきたいと思います。

 それには、当方も、協議を行う環境を整備するに当たっては、この点について工夫が必要だと考えておりまして、現時点では、賛成する政党だけで政党間の協議を行って条文起草作業を進めるというのではなくて、反対の政党も協議に加わって、熟議の案文作りができますように努力を重ねてまいりたいと考えております。

 以上です。

森会長 まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。

 この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。

 これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.