第5号 令和6年5月9日(木曜日)
令和六年五月九日(木曜日)午前十時開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 加藤 勝信君 幹事 小林 鷹之君
幹事 寺田 稔君 幹事 中谷 元君
幹事 船田 元君 幹事 逢坂 誠二君
幹事 本庄 知史君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 北側 一雄君
青山 周平君 井出 庸生君
井野 俊郎君 井上 貴博君
伊藤 達也君 石破 茂君
稲田 朋美君 岩屋 毅君
越智 隆雄君 大串 正樹君
黄川田仁志君 熊田 裕通君
中西 健治君 長島 昭久君
藤丸 敏君 古川 禎久君
古屋 圭司君 細野 豪志君
三谷 英弘君 山下 貴司君
山田 賢司君 山本 有二君
大島 敦君 奥野総一郎君
城井 崇君 神津たけし君
近藤 昭一君 階 猛君
堤 かなめ君 谷田川 元君
吉田はるみ君 青柳 仁士君
岩谷 良平君 小野 泰輔君
三木 圭恵君 大口 善徳君
河西 宏一君 國重 徹君
赤嶺 政賢君 玉木雄一郎君
…………………………………
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
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委員の異動
五月八日
辞任
北神 圭朗君
同日
補欠選任
階 猛君
同月九日
辞任 補欠選任
城内 実君 青山 周平君
篠原 孝君 神津たけし君
牧 義夫君 堤 かなめ君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 城内 実君
神津たけし君 篠原 孝君
堤 かなめ君 牧 義夫君
同日
辞任
藤丸 敏君
同日
補欠選任
北神 圭朗君
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本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題)
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○森会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法の改正を巡る諸問題について自由討議を行います。
この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内といたします。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
発言の申出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
○中谷(元)委員 自由民主党の中谷元でございます。
五月三日は憲法記念日でありまして、各党の主張を拝聴させていただきました。
朝日新聞が報道した中で、憲法改正での世論調査という記事がありました。この中では、具体的な条文作りに賛成である、これが五九%、反対が三〇%と、賛成が反対の二倍となっております。また、緊急事態において選挙ができないときに、議員任期を延長して、憲法改正をして対応すべきかという質問に対して五一%が賛成と、過半数を超えております。
これまで憲法審査会では、数年をかけて緊急事態において選挙実施が困難な事態について議論を重ね、論点整理も行ってまいりましたけれども、審査会の議論においては、国の緊急事態において国会機能を維持するための条文化について、各政党間で起草作業を行い、その具体的な条文のたたき台を基に審査会で論点を深く議論していくべきであるという意見がありまして、事態は機が熟してまいってきております。
これまで論点整理で共通認識となっている要件としては、第一に、広範性についてであります。
審査会では、全国で長期選挙ができないような状況があるのか、その立法事実はあるのかという発言がありました。選挙の一体性が害されて、広範な地域において選挙が困難な事態とは、どの程度の広さの範囲を想定しているのか。
私が考えますに、この広範性の要件は、全国で選挙が困難というような事態ではありません。今、もし衆議院総選挙の直前に東日本大震災が発生したとすれば、東北ブロックの過半の小選挙区で選挙実施が困難となり、その小選挙区及び比例の東北ブロックの議員も選出をされません。そればかりか、茨城県内、千葉県の一部でも選挙ができずに、北関東ブロック全体にもその影響は及びます。その結果、全体で総定数四百六十五人のうちの一割を超える七十人ほどの衆議員が選出されないという試算があります。参議院選挙の場合を考えると、全国の比例代表区の選挙区は一人も選出されないということになります。
このような選挙実施の困難な地域の広がりは、国政選挙の同時実施の原則に照らせば、まさしく選挙の一体性が害されるという要件を満たすものと考えられますが、この選挙の一体性が害されるか否かの具体的な基準は、選挙延期の手続を定める法律において定めるということになります。
自然災害、感染症、戦争、テロなど、緊急事態の態様や発生する場所、それが都市部か地方か、平野部か半島地区か、地形や地勢によって選挙困難な状況は様々でしょう。だから、一義的な基準の設定は難しいと思いますが、それでも、恣意的な判断にならないように一定の明確な判断基準を定めることが必要になります。
今後、条文案のたたき台を示した議論の中では、憲法改正原案の文言だけではなくて、このような具体的な基準のイメージについてもしっかりと議論をしていかなければなりません。これは、皆さんがそろってこの場で議論をしておくということが極めて大事なことだと思います。
第二に、七十日を超えて選挙が困難な事態という長期性の要件につきましても、議論で整理が必要です。
憲法五十四条、衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に衆議院の総選挙を行い、その選挙日から三十日以内に国会を召集しなければならないとあります。
条文を素直に読めば、総選挙の実施は解散から四十日以内に行わなければならないと定めておりまして、この要件は七十日ではなくて四十日とすべきではないかという意見もありますが、私は、総選挙の実施の見通しがついているのであれば、たとえ四十日を超えたとしても、できるだけ参議院の機能を尊重して緊急集会で対応することが望ましいと考えておりまして、憲法五十四条の趣旨をかんがえてみますと、現行憲法は、衆議院不在の期間を最大で七十日程度あり得ることを想定しているものと解釈することができます。
逆に言えば、さすがに七十日以上の衆議院の不在を現行憲法は規定をしていない。衆参の、審査会に合致をした、こういった状況が見通せる場合は、四十日を超えて選挙実施が困難な場合であっても緊急集会で対応するとともに、万が一それを超えるような例外的な選挙困難事態への対応は、衆参そろっての二院制の国会で国難に対応する、そのようなすみ分けが適切と考えているところであります。
三つ目は、内閣不信任決議を禁止すべきかどうかという論点です。
選挙困難事態発生時には、国会機能維持のためには、国会は通常、開会、つまり、閉会禁止の措置とともに衆議院の解散禁止の措置を定めるべきことについてはほぼ異論がないと思います。
そういたしますと、議院内閣制の統治機構の下に、行政府と立法府のチェック・アンド・バランスの観点から、内閣の解散権の対抗措置であります衆議院による内閣不信任決議についてもセットで禁止をすべきではないかという考えにも一理ありますが、この緊急事態こそ総理のリーダーシップが問われる場合で、大半の議員がどうしてもこの総理、この内閣では現在の国難を乗り切れないと判断する場合は皆無ではないと思いますので、最後の手段として内閣不信任決議の余地を残しておくということが適切と考えます。
したがいまして、内閣不信任決議が可決された場合には内閣は総辞職をすることになりますが、これは緊急時における国会中心主義の徹底として説明できると考えております。
以上、選挙困難事態における国会機能維持の条文化について論点を整理してみましたが、既に多くの会派から、早急に条文起草作業に入るべきとの御意見をいただいております。
大事なことは、全ての会派がここの下に、そして真剣に議論をするということ、幅広い会派がこの協議の場において意見を述べて、賛否を含めて国民に論点を明らかにすることであります。中でも、反対の立場の方も議論に加わって意見を述べていただきたい。国民にとっての、憲法を議論する場所がこの憲法審査会でありますので、全ての政党が集まって、意見を述べて、議論ができる国会唯一の機関、この憲法審査会におきまして、よろしくお願いしたいと思います。
なお、昭和二十一年の憲法制定時の国会では、芦田均議員を委員長とする帝国憲法改正委員会の中で、修正案の作成のために小委員会が設けられ、各会派、共産党の方も発言をされまして、憲法第九条二項冒頭に、前項の目的を達成するためにという文言の共同修正案が作られ、同案が委員会に報告されて、可決をされました。
憲法改正は、この審査会の場所でしか議論できません。是非、反対の立場の皆さんにも、議論を尽くす、熟議を行う、国民に対しての考えをしっかり述べるという場で、御出席をいただきまして御意見を述べていただきますよう、よろしく御理解をいただきまして、私の意見表明といたします。
どうもありがとうございました。
○森会長 次に、逢坂誠二君。
○逢坂委員 逢坂誠二でございます。
前回の審査会で、私から、災害時など緊急時にも選挙ができるような工夫を最大限行うことが必要だと言及をしました。選挙事務は、一〇〇%うまく実施できて当たり前、ちょっとでもミスは許されません。市区町村の選挙管理委員会の職員は、そうした強い緊張感の中で、どんな事態が起きても何とかして選挙事務をやり遂げるという強い使命感を持っていますが、私の経験に照らしてみると、これまで災害に強い選挙への工夫が十分ではなかったと感じております。
そこで、どのようなポイントに留意すべきかを、二〇二三年二月の「ボーターズ」という雑誌、この七十二号からの記事を引用する形で紹介したいと思います。
以下、引用でございます。
周知のとおり我が国は災害大国です。地震、風水害、雪害、火山噴火などの自然災害が全国のどの地域で発生してもおかしくなく、ちょうど選挙の執行時期が災害発生と重なることも十分想定されるところです。このような場合でも、各選挙管理委員会においては、公職選挙法等の法令に則った適時適切な対応が求められ、かつ、法令に明確に定めがない突発的な対応や要員のやりくり、取り分け投票所、開票所の運営など引き続き事務を執行するための適切かつ迅速な判断が求められます。
したがって、実際にこのような事態の発生に備え、具体的には、災害の種類やその発生時期(事前準備、公示・告示後、投票日・開票日当日等)、発生地域(沿岸地域か中山間地域等か)など、あらゆる場合を想定した対策を市区町村の庁内関係部局と調整・連携し、選挙管理委員会としてどのように意思決定し、どのように混乱なく適正に行動すべきか、あらかじめその際の行動マニュアルなどを関係部局と調整のうえ策定しておくことが、是非とも求められるところです。
このような市区町村の選挙管理委員会においては、平時のみならず有事に備えた対策を関係部局と調整のうえ、マニュアルとして取りまとめることは、なかなか簡単なことではないでしょう。しかしながら、平時にこそ有事での対応策をきっちり定めて十分な備えをしておくことは、選挙事務は常に百点満点が求められる「選挙人の貴重な一票を守る」という事務であるが故に、必要かつ当然のことといえるものです。
少なくとも、災害対応に関する法令や例規における関係規定を取りまとめて、選挙管理委員会の事務局内部で共有しておくだけでも、有事の初動対応に資することができるものと考えられます。
また、マニュアルの作成に当たっては、安易に繰延投票や再投票とする決定を行うことは、選挙人の混乱、そのための人、物、場所、費用の新たな確保、首長や議員の不在による行政の停滞などを招来させないという考慮をもとに、「選挙の執行は一度始めたら極力継続して最後まで行う」ということを基本理念としつつ、現場の投票管理者等や事務従事者が選挙管理委員会との協議などを経ずに、判断することはしてはならないことなどの基本的事項を併せて盛り込むことも必要と考えられます。
選挙執行事務は、災害等の発生があったとしても、ミスは許されず、期限が定まった中での即時性をもって対応が求められる、行政事務の中でも特殊な事務です。
選挙管理委員会に求められる多くの事務執行とその職責の重さに鑑みると、人員配置や予算の確保など、選挙管理委員会のあり方そのものについて、議論すべきときかもしれません。
以上、引用を終わらせていただきますが、こうした指摘も踏まえつつ、今後、災害に強い選挙の在り方を十分に検討する必要があります。また、選挙人名簿の管理の在り方、緊急時の自治体間の選挙事務、応援体制も同時に考えなければなりません。このような検討もなしに安易に議員任期の延長を行うのは、順序が逆であります。
さて、前回の討論の中で、日本維新の会の岩谷委員から、議員任期の延長をしないことの方が立憲主義にそぐわないといった趣旨の指摘がありました。しかしながら、議員任期については、議員任期を延長する事由、延長する期間、延長のタイミングなどを誰がどのように判断するかによって立憲主義を大きく毀損する可能性もあることを指摘させていただきます。
また、玉木委員からいわゆるスーパー緊急集会に関するお尋ねがありましたが、それはまさに緊急集会というものをいかに位置づけるかの議論であり、今後、緊急集会の在り方について更に議論を深めるべきと考えております。
以上でございます。
○森会長 次に、三木圭恵君。
○三木委員 森会長、ありがとうございます。
日本維新の会・教育無償化を実現する会の三木圭恵でございます。
先ほど中谷幹事の方から、選挙困難事態における条文化、条文起草作業に進んでいくべきだというお話がございました。日本維新の会もその御意見にまさしく賛成をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
それから、逢坂幹事の方から、災害に強い選挙、その選挙事務ということで、そういったこともきっちりやらなければならないのではないかという御意見をいただきました。本当に私もそのとおりだと思います。災害が起きても、対応できる範囲の中で選挙ができるのであれば、きっちりそういった選挙事務に対しても備えていくべきだと思いますが、私は阪神大震災の被災者でございますけれども、やはり大規模な災害が起きたときというのはかなり難しい、地方自治体においては厳しいのではないかなというふうな思いを持っております。またこれもきっちり議論をさせていただければなと思います。
まず、私の方は、今日は国民投票の方に関して意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、ネット広告の規制に関して、この課題が解決するまでは国民投票ができないと主張される党もありますけれども、令和四年四月二十七日に提出されました三項目について、その内容が、開票立会人の選任に係る規定整備、投票立会人の選任要件緩和、ラジオによる政見放送にFM放送を追加という案件でございます。これは、選挙制度を定める政治倫理特別委員会ではとっくの昔に採決され成案されておりますが、なぜ国民投票の制度を定める憲法審査会では審議、採決されないのか、不思議でなりません。
ちなみに、この発言、私は三回目でございます。森会長におかれましては、この件、いかがなさるおつもりなのか、早急に結論を出してもよろしいことかと思いますので、御采配の方をお願いいたします。
次に、ネット広告の規制に関してでありますが、フェイクニュースの取扱いに世界は大きく動いています。もちろん、これは選挙や国民投票のみに係る問題ではなく、今やネットの世界ではフェイクニュースを作り出すことが容易になり、国民の生活全体に大きな影響を及ぼしていると言わざるを得ません。
しかしながら、その中でも、国民の代表を選ぶ選挙や国の方向性を決める国民投票などは、フェイクニュースにより国民の真意とはかけ離れた選挙結果になることがあり得、外国の勢力などが加担することも考えられ、国家としての取組が大変重要となる時代となっていることは間違いないと言えます。投票結果が偽情報によって恣意的に覆されることは、国の存亡に関わる一大事です。国家の安全保障面から、最も細心の注意を払うべき問題であります。
例えば、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、大量の偽情報が拡散しました。ロシア政府では、SNSや国営メディアの報道などを組み合わせ、偽情報を拡散し、武器としています。
そこで、選挙や国民投票における偽情報、フェイクニュースに対する諸外国の規制の現状を、参考に述べたいと思います。
EUでは、デジタルサービス法の中で、戦争や感染症の世界的流行のような危機的事態に関し、巨大ITが取るべき対策、深刻な脅威への関与を防止、制限するための措置をEU側で決め、求めることができる危機対応メカニズムを定めました。
デジタルサービス法とは、二〇二二年に制定され、違法コンテンツ対応や消費者保護強化等についてオンラインプラットフォーム事業者に対する規制の枠組みを定めるものです。特に、月間平均有効利用者数四千五百万人以上の事業者のうち欧州委員会が指定する巨大オンラインプラットフォーム事業者に対しては、透明性の確保や透明性報告の追加的義務などを課しています。デジタルサービス法の規定に反した場合、最高で前年度の総売上高の六%の罰金が科されます。
偽情報に関連する規定の中で、選挙や国民投票に関するものとして、例えば、巨大なプラットフォーム事業者について、市民の議論、選挙プロセス及び治安に対する実際の又は予見可能な悪影響等についてのリスクの特定、分析、査定を行うこと、そういったリスクについて緩和措置を講ずることが定められています。緩和措置の中には、ディープフェイクに対するマーキングによる区別が含まれます。
次に、フランスでは、二〇一八年に、選挙時におけるフェイクニュースのための情報操作との闘いに関する法律が成立しました。法の対象となる情報であるフェイクニュースを定義し、選挙期間内、投票日前三か月に当該情報が拡散されている場合、候補者等から求めを受けた裁判官は、プラットフォーム事業者に対して送信防止措置を命じることができます。裁判官は、申立てから四十八時間以内に停止に関する判断を行わなければなりません。プラットフォーマーは、一、アルゴリズムの透明性確保、二、偽アカウント対策などの協力義務を負います。憲法評議会は、送信防止はその情報の不正確又は誤解を招く性質や投票の誠実性を毀損するリスクが明白である場合のみ正当化されると判断しました。
アイルランドでは、二〇二二年に二〇二二年選挙改革法が成立し、国民投票と選挙に共通して適用されるオンライン情報に関する規定として、選挙委員会が偽情報等の監視及び調査を行い、ソーシャルメディアなどのオンラインプラットフォーム事業者等に対し、削除通知、訂正通知、同委員会による調査中であることの表示命令、アクセス遮断命令等を行うことができる旨を定めています。
このように、フェイクニュースを規制する法律を定めている国は今後増えていくことが予想されますが、日本でもこういった取組や議論が必要ではないでしょうか。フェイクニュースの定義、認定をする主体、認定の方法、認定した場合の措置などを決める必要性があると考えます。国政選挙に関しては選挙管理委員会が、国民投票に関しては広報協議会が、大きな役割を担っていく方向性が考えられます。
私は、個人的な意見として、デジタル社会の発展に向けて何らかの規制が必要であると考えています。特に、巨大プラットフォーマーに対しての規制は、国民の安心、安全な生活のためにも必要不可欠な時代に突入してきたのではないでしょうか。
以上が、諸外国の偽情報に対する法律の一部です。日本は随分遅れていると言わざるを得ません。
その上、憲法審査会を開かないとか、国民投票法案の審議、採決をいつまでも先延ばしにするとか、起草委員会をつくること自体に反対するとか、イデオロギーに縛られた政党間の足の引っ張り合いに時間を費やすのは、国のためにならないばかりで、全く無駄な作業であると思います。世界に後れを取らない日本であるために、真摯に、議論の場を積極的に、必要とあれば開催回数を増やして取り組んでいただくことをお願いして、私の発言を終えます。
ありがとうございました。
○森会長 私に要請がありました点につきましては、幹事会等において協議をいたしたいと思います。
次に、河西宏一君。
○河西委員 公明党の河西宏一でございます。
本日は、発言の機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
我が国における東日本大震災や新型コロナウイルスの世界的蔓延への対応では、ほぼ全ての行政分野及び国民生活万般にわたる多くの立法措置が必要であったこと、また、さらに、議員立法、とりわけ衆法によって少なからず法律が制定されたことなどの事実を踏まえまして、いわゆる選挙困難事態に際しては、国会が両院同時活動を行い、立法府として十分な行政監視機能を担う中において、内閣が適切に行政権を行使し、国民の生命財産を守る対応に当たるべきであり、そのためには議員任期延長が可能な法整備が必要だとこれまで申し上げてまいりました。
その上で、本日は、視点を立法府から国民の意識に移して、今世紀に入って以降の憲法改正に対する賛否の推移を俯瞰しつつ、意見を申し上げたいと思います。
東京大学大学院の境家史郎教授がおっしゃるように、基本的には何らかの点で憲法改正が必要と考える有権者と憲法改正は必要ないと考える有権者の割合は、平時はほぼ同程度で拮抗してきたわけでありますけれども、本日お配りの資料のグラフに示されました朝日、読売、加えまして毎日新聞の全国紙三社の世論調査によれば、近年、その意識に変化が起きているわけでございます。その変化は、世論調査全体の内容や設問の文言によって調査値に差が出ることを差し引いたとしても、グラフから読み取れるほど明確であります。
まず、変化のきっかけの一つは、二〇一一年の東日本大震災です。発災以降、憲法改正に賛成の層が一時五〇%を超える水準を示し、一方の反対層は、これに対照的な動きを見せて、一時三〇%程度まで下落をいたしました。
もう一つのきっかけは、二〇二〇年以降の新型コロナウイルスの世界的蔓延であります。これは全国各地が有事の現場となったためと考えられますが、世論の変化は東日本大震災にも増して顕著であります。憲法改正の賛否は、パンデミックが起きるまでの数年は、四〇%から五〇%あたりで拮抗、あるいは反対が上回っていたわけでありますけれども、コロナ禍に直面した二〇二〇年以降は、おおむね憲法改正に賛成が反対を上回る水準まで上昇をしております。
その上で、立法府に身を置く者として申し上げたい点は、憲法改正に対する世論について、賛否の比較や高低のみならず、現実を目の前に、国民の皆様の意識に変化が起きていること自体が重要であるという点でございます。やはり、戦後最大の危機とも言われた大規模な緊急事態に近年直面し、数多くの重要な法整備を迫られた立法府がこの変化にどう応えていくのか、具体的な行動が問われていると考えます。
次に、選挙困難事態について、改めて概念的に整理をさせていただきたいと思います。
近時の学説においては、緊急事態の概念について、より精緻な議論が行われていると承知をしております。
早稲田大学の愛敬浩二教授は、平時の統治機構をもってしては対処できない程度の緊急事態のみを指すものを非常事態として分類し、一方で、緊急事態は、平時の法制度、法運用とは異なる対応を必要とする概念を広く含むとし、緊急事態に対処するための特別な立法や法運用が行われるとしても、平時の統治機構の下でそれが行われ、立憲的統制が十分に機能するのであれば、それは緊急事態であっても非常事態ではないと整理をされております。
また、東北大学の奥村公輔教授は、非常事態を、戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害など、平時の統治機構をもってしては対処できない事態、一方、緊急事態を、テロの多発や感染症の蔓延など、平時の統治機構をもって対処できる事態と整理し、その際の国家緊急権を、行政権が立憲的な憲法秩序を維持しながら平時よりも強い措置を取る権限とされております。
両先生方の整理の仕方には若干の差がございますけれども、いずれも、平時の統治機構による対処が可能か否かを基準に非常事態と緊急事態を区別をされております。
この別でいえば、当審査会で議論をされてまいりました選挙困難事態は、平時の統治機構をもって対処可能であり、立憲的な憲法秩序を維持しながら対応すべき緊急事態の一つとして整理され、あくまでも十分な行政監視機能の確保を目的とする議員任期延長は、人権の保障や権力分立、すなわち立憲的な憲法秩序の維持に資するものであり、立憲民主党の皆様の方向性とも決して相反するものではないと考えております。
一方、緊急政令や緊急財政処分につきましては、この別でいえば、議員任期の延長をしてもなお国会の立法機能の維持が困難であり、権力分立による平時の統治機構ではもはや対処不可能ないわゆる非常事態を念頭に議論されるべきと考え、これまで我が党の北側幹事が申し上げてきましたように、議員任期延長とは区別して発議すべき事柄と考えております。
以上、本日は、世論の変化と、また、選挙困難事態に係る概念上の整理について申し上げましたが、これらの観点を踏まえましても、少なくとも、選挙困難事態を想定した議員任期の延長に係る憲法改正の条文案について、たたき台を基に議論すべき段階を迎えていることは明らかでございまして、今後の更なる建設的な議論を期待申し上げ、私の意見表明とさせていただきます。
以上でございます。
○森会長 次に、赤嶺政賢君。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
この間、毎週のように憲法審査会が開かれ、改憲を議論するのが国会議員の責任だ、改憲に向けて国民の理解を深めなければならないなどと、改憲議論をあおる主張が繰り返されました。また、憲法九条を変えて、国防規定を設けるべきだとか、自衛隊を軍隊として位置づけるべきだという発言が繰り返し行われています。
こうした中で、五月三日の憲法記念日に合わせてメディアが行った世論調査では、国民が九条改憲を求めていないことが示されたと思います。朝日新聞の調査では、憲法九条を変えない方がよいと答えた人は全体の六一%で、変える方がよいの三二%を上回っています。国会での九条改憲が声高に叫ばれる下で、九条を変えるべきではないという世論が多数を占めている事実を重く受け止めるべきだと思います。
その上で、今日は、憲法九条の意義について改めて意見を述べたいと思います。
憲法九条は、国家間の争い事を絶対に戦争にさせないことを求めています。この九条の理念は、凄惨な沖縄戦を経験した私たち沖縄県民の命どぅ宝という強い思いと通じるものです。だからこそ、本土への復帰に際し、沖縄県民は平和憲法の下に帰ることを強く望んだのであります。
今、岸田政権は、ウクライナは明日の東アジアだなどと述べ、沖縄を始め南西諸島での軍事力の強化を推し進めています。住民合意を無視した基地の拡大強化や、空港や港湾の軍事利用、さらに敵基地攻撃のための長射程ミサイルまで配備しようとしています。沖縄を軍事要塞化し、再び戦場にする動きは断じて容認できません。
こうした政府の動きに対し、沖縄では、二度と沖縄を戦場にさせないと、対話による問題解決を目指す取組が進められています。本土復帰から五十年を迎えた二〇二二年に玉城デニー知事が政府に提出した建議書は、政府がアジア太平洋地域において、平和的な外交、対話により緊張緩和と信頼醸成を図り、平和の構築に寄与することを求めています。さらに、沖縄県は今年三月、地域外交基本方針を発表しました。そこでは、二度と沖縄を戦場にしてはならないという思いは、平和を希求する沖縄の心として今日まで受け継がれていると述べ、県が主体的に、太平洋島嶼国との国際協力活動や海外自治体との友好関係を強化し、信頼醸成を図ることを強調しています。
緊張の最前線に立たされている沖縄県民が強く求めているのは、憲法九条に基づく平和外交にほかなりません。日本政府がやるべきは、軍事に軍事で対抗し、戦争への危険をつくり出すことではありません。あらゆる紛争を話合いによって解決するために知恵と力を尽くすことです。
私たち日本共産党は、九条に基づく平和外交を進める上で、徹底的な対話によって平和の共同体をつくってきたASEAN、東南アジア諸国連合の取組に日本外交が学ぶべき英知が示されていると考えています。
ASEANは、武力の不行使や紛争の平和解決などを誓約した東南アジア友好協力条約を土台に年間千五百回もの会合を行うなど、粘り強い対話の努力を積み重ねてきました。この地域を平和と協力の地域に変えてきました。さらに、この友好協力条約を日本やアメリカ、中国など域外諸国にも拡大させ、今では、東アジア規模で条約を推進するASEANインド太平洋構想、AOIPを提起しています。それは、ASEAN十か国に日本や中国、韓国、アメリカ、オーストラリアなど八か国を加えた東アジア・サミットを活用し、東アジア全体に対話と協力の枠組みを広げようという構想です。ここにこそ平和をつくり出す展望があります。
憲法九条を持つ日本こそ、東アジア地域を戦争の心配のない地域にするために、全ての国を包摂する対話と協力の枠組みを発展させることに尽力すべきだと強調して、発言を終わります。
○森会長 次に、玉木雄一郎君。
○玉木委員 おはようございます。国民民主党代表の玉木雄一郎です。
憲法審査会も、今国会、残り六回となりました。今後の運営について、まず三点提案をしたいと思います。
来週からは、全会派を入れた起草委員会を設置し、これまでの議論を経ておおむね意見の集約が図れた緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正について条文案作りに着手すること、このことをまず求めたいと思います。
二つ目に、国民投票広報協議会の規程案を具体的に策定することを求めます。
三点目に、これは何度も出ていますが、広く国民にこの審査会の議論を知っていただくためにNHKの中継を導入すること。
以上三点を会長及び幹事の皆さんにお願いをしたいと思います。
議論の分かれる論点についても、具体的な条文案をベースに議論した方が国民にも分かりやすいと思います。というのも、先般の憲法記念日における各種のメディアのアンケートを見ましたけれども、議論していないような架空の論点についての賛否が示されているものもあります。憲法審査会で何を具体的に議論しているのか、もっと解像度高く国民の皆さんにお示しする必要があると改めて感じました。
ちなみに、今日資料も出ていますが、憲法改正に賛成ですか、反対ですかという問いがよく聞かれますが、冷静に考えるとおかしなアンケートだと思います。例えば、法律改正に賛成ですか、反対ですかと聞かれたら、多分多くの国民はまず、どの法律ですかと聞き返すはずです。憲法改正についても、どの条文をどのように変えるのかという、そのような問いのレベルまで具体化しないと、そもそもアンケート自体に意味がないし、いたずらに無用な不安を国民に広げるだけになってしまうと考えます。
特に、大規模災害が発生した場合などに選挙実施が困難なときに、選挙期日を延長し、その間、議員任期を延長することのルールと手続を定めることについては、私は、冷静に話せば多くの国民が理解を示してくれるはずだと思います。
この論点について国民の理解を得るためには、私は、野党第一党である立憲民主党さんの果たす役割が非常に大きいと思います。各国の例を見ても、与野党が合意できた改憲案には国民も安心して国民投票で賛意を示すということが海外の調査でも示されておられます。
逢坂幹事が述べられたように、災害に強い選挙づくりの体制をつくることは私も大賛成であります。例えば、オンライン投票も可能にするような検討を早急に進めるべきだと思います。しかし、それでもなお選挙実施困難な事態は想定し得ると思っています。
前回も述べたように、昨年二月に泉「次の内閣」で閣議了承された中間報告の中にも、立憲民主党も選挙困難事態は否定していませんし、緊急集会の位置づけ、いわゆる射程について、必要あれば憲法に明記することも検討するとされています。これは奥野さんがまとめられたものだと承知をしております。
逢坂幹事から先ほどスーパー緊急集会についての回答をいただきましたけれども、具体的に確認したいのは、立憲民主党として、現行憲法下で、憲法改正をしなくても、七十日を大幅に超える期間、そして憲法上衆議院の優越が認められる当初予算や条約についても取り扱えると考えているのかどうか。これはもし可能なら具体的に回答いただきたいと思っています。特に、予算と条約というのは明確に衆議院の優越性が認められているので、これを、万能の権限を参議院の緊急集会に認めてやるというのは、私は、やはり現行憲法ののりを越えるのではないかなというふうに思います。
私たちは、参議院の緊急集会の射程はあくまで一時的、限定的、暫定的であり、その射程を超える活用を行うなら、やはり憲法改正が必要だと考えます。解釈で緊急集会の権限、射程を拡大するのは、多くの人が恐れる権力の濫用につながる可能性があるからです。であれば、衆参同時活動の原則に立ち戻り、選挙実施困難な事態が発生した場合には、やはり、選挙期日を延期し、議員任期を延長する憲法改正の方がよりよい改正ではないかと考えます。
もう一点、議論を整理するために質問したいのは、昨年、参考人でお越しをいただいた長谷部恭男先生がおっしゃった、大規模災害が発生した場合に、選挙が可能となった地域から順次繰延べ投票を行って当選者を決めていけばいい、そして、三分の一以上の議員が選出された時点で定足数を満たす、こういう考えに同意をするのかどうか。これについても、奥野さんでも逢坂さんでも、御意見を賜ればと思います。
例えば、私は四国の出身なんですが、南海トラフ地震が発生したときに、四国とか近畿とか東海ブロックの各府県で選挙ができない、でもほかではできるという場合に、できるところだけで選挙をやって、その結果が全国民を代表する選挙としての正統性を付与できるのかどうか。私は、とても選挙の一体性が確保されているとは思えません。
こうした長谷部教授の考え方に、立憲民主党としてどうお考えなのか。もし考えがあれば、意見を是非伺いたいと思います。
最後に、長谷部先生のような学者と私たち国会議員との間には根本的な違いがあります。学者は既存の条文の解釈を出発点にして現状を説明する学説を組み立てるのに対して、私たち国会議員は、立法者であり、それゆえ、たとえ蓋然性が低くても可能性がある限り、国民の生命や権利を守るため、あるべき法制度を構築する責任を負っているはずであります。危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではありません。それは、国民の生命や権利を守る責任を負った私たち国会議員をおいてほかにはありません。私たちが決めない限り、答えは出せないのです。
芦部先生が晩年、これは山下先生からも指摘がありましたが、九条と自衛隊の矛盾を説明し切れず、政治的マニフェストと考える説まで考えて悩んでおられたようですけれども、憲法の規範性を外すというのは、私は本末転倒ではないかなと思います。しかし、こうした学者の悩みを取り除くのも立法者としての我々の責任であり、我々しかできないことではないでしょうか。
以前も申し上げましたが、書いてあることは守りましょう、そして、書いてあることと異なる事態が生じたときは、書いてあることを手続に基づいて改めましょう、それが立憲主義の原点だということを申し上げて、私の発言を終わります。
○森会長 会長に対して御要請のありました点につきましては、しっかりと受け止めて、幹事会等で協議をいたします。
また、立憲民主党に御質問がありましたけれども、後ほど若しくは後日、御発言の中で御答弁いただければと思います。
―――――――――――――
○森会長 次に、委員各位による発言に入ります。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。
発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司です。
私は、当審査会の一メンバーとして、毎回、各委員からの発言に真摯に耳を傾けてきました。その発言内容を基に提案をさせていただきます。
まず、この審査会は、憲法改正案の発議権を有するものであります。この観点からすると、次のことが言えます。すなわち、憲法を改正できるのは主権者である国民の皆さんです。しかし、現状は、憲法改正に賛成か反対か、国民の皆さんによる判断の場、すなわち、国民投票に参加し、主体的に意思表示をする場を奪っているのが現状です。これは国会の不作為と言っても過言ではありません。
もちろん、憲法を改正しても、昨今の喫緊の課題である円安や物価高には即対応することはできません。しかし、日本が十年後にも、世界情勢が大きく変わっても、世界から尊敬され、かつ日本が責任ある主導的国家であり続けるためには、今こそ憲法改正が必要と考えます。我々国会議員は将来への責任を負っているのであります。
さて、審査会は、ここ数年で数十回にわたり開会されています。既に議論の段階から改正案の取りまとめ段階に来ていることは間違いありません。そこで、この審査会での各政党、各委員の発言を簡単にファクトベースで申し上げます。
まず自民党。幅広い会派間で改正原案作成のための協議を行うため、起草委員会をつくり、条文取りまとめ作業を進めることを提案。
公明党。議論は出尽くしている。緊急事態のテーマについて改正原案を策定し、取りまとめるべし。
維新。当審査会の生みの親である故中山太郎先生は、政局とは離れ、静ひつな環境で運営すべし。発議権を有する審査会に衣替え後もこの精神は脈々と生きている。直ちに起草委員会を設けて、改正原案の策定をすべし。
国民民主。起草委員会を設置し、速やかに具体的スケジュールと戦略を示すべし。
有志の会。条文取りまとめの起草委員会を立ち上げ、結論を出す審査会にかじを切るべき。
一方、立憲民主党は、憲法に関する議論を引き続きしたい、じっくりと構えて議論を等々。これでは、起草委員会設置に反対のための議論ではと疑いたくなるのは私だけではないでしょう。
当審査会設置に当初から反対をするが出席している共産党を除けば、立憲民主党以外全ての政党会派は起草委員会設置に賛成の意を表明しています。民主主義の大原則は、少数意見に耳を傾けるものの、最終的には多数の意見を取り入れ、結論を得ること。
審査会長の取り計らいにより、当審査会に改正原案取りまとめのための起草委員会の設置を強く要望いたします。
一方、私からは、私の持ち時間の範囲内で、立憲民主党筆頭幹事に対して、何ゆえ、まずは起草委員会設置にも賛同できないのか、御答弁をいただければ幸いです。
以上で発言を終えます。
○森会長 私に御要請のあった点については、しっかりと受け止め、幹事会等で協議をいたします。
また、立憲民主党に対する御質問は、後日、発言の中で御答弁を願います。
○吉田(は)委員 立憲民主党の吉田はるみです。
発言の機会をいただき、ありがとうございます。
今この憲法審査会で議論すべきは、選択的夫婦別姓、同性婚、性別変更要件など、国民が求めている課題に対してです。国民、司法、そして経済界からも、国会動けの声が大きく上がっています。
今回は選択的夫婦別姓を取り上げます。
二〇一五年、二〇二一年と、最高裁は、夫婦同姓を規定した法律は合憲と判断しました。しかし、注目すべきは、二〇一五年、違憲とした判事の以下の意見です。多くの場合、妻となった者のみが、個人の尊厳の基礎である個人識別機能を損ねられ、また、自己喪失感といった負担を負うことになり、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とは言えないと。
実際、二〇二二年時点で、結婚した配偶者で改姓しているのは女性の方で、その割合は九四・七%です。男性委員の皆様、自分の名字が変わることを想像してみてください。どうお感じになりますか。
二〇二一年判断では、この種の制度の在り方は、二〇一五年大法廷判決の指摘するとおり、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないと言うべきであると付言されています。つまり、国会で議論して判断せよとの司法からの要請です。二〇一五年最高裁判断時の桜井元判事が指摘しています。
憲法二十四条では夫婦が同等の権利を有することが掲げられていますが、現実は、この夫婦同姓によって、男女の上下関係が根底に流れているのではないでしょうか。そんなことを言うのは女性のわがままと言う方もいらっしゃいますが、とんでもないです。一個人としての問題、尊厳の問題。わがままのそしりは当たりません。
資料一を御覧ください。これは選択的夫婦別姓に関してですが、三十代以下は七八%、七六%と、若い世代は選択的夫婦別姓を支持しています。
本年四月十八日に國重委員、翌週二十五日には道下委員が同性婚を取り上げました。
この同性婚に関して、配付資料の二を御覧ください。三十代以下、八八・八%、九一・四%と、やはり若い世代の方々は同性婚に賛成です。
先ほどの選択的夫婦別姓もそうですが、若い世代は圧倒的に賛成なのです。それなのに、なぜ憲法審査会で議論しないのでしょうか。なぜ国会で法案の審議すらしないのですか。この国会というところは、若い世代や女性の声に耳をかさないところなのでしょうか。
森会長、お願い申し上げます。来週は、選択的夫婦別姓に関して取り上げていただけないでしょうか。
○森会長 幹事会等で協議をいたします。しっかりと受け止めます。
○吉田(は)委員 お願いいたします。
このような憲法議論をすることこそ国会議員の責務であり、改憲ありきの憲法審査会ではありません。今の裏金国会で緊急事態条項、国会議員の任期延長を優先したら、国民の皆様は間違いなく、国民より自分たちのことが先かと思うことでしょう。
もし、来週、選択的夫婦別姓を取り上げないというなら、その理由を明示していただきたいと思います。森会長、よろしくお願いいたします。
最後に、国民投票法の問題点を指摘させていただきます。
二〇二一年九月十八日に国民投票法の改正が行われ、施行されました。附則四条で三年をめどに見直すとあり、それが本年九月になります。
現行法では、改憲項目の数に上限がありません。何項目も新旧対照表を読み込み、賛否を問うことは、シンプルなイエス、ノーを問う国民投票にはふさわしくないです。また、SNSなどによる外国資金やAIの影響、フェイクも懸念事項です。
こうした国民投票法の問題点があり、裏金問題がはびこる国会。そして、二〇二一年の総選挙の選挙公報において、憲法に言及した議員は僅か一八%。国民は、衆議院議員に憲法議論を負託したんでしょうか。そんな中で改憲条文の起草委員会の設置を議論することなど、傲慢の極みです。
今、国会は、国民の信頼を失っています。どうかそのことを謙虚に受け止めてください。
以上申し上げ、私の発言を終わります。ありがとうございました。
○青柳(仁)委員 日本維新の会の青柳仁士です。
本審査会のNHK中継について、中谷筆頭幹事に質問させていただきます。
従来から、各党各会派からこの提案がなされてまいりましたけれども、先々週の本委員会で、私の方から逢坂幹事に、NHK中継に関する立憲民主党の方針ということについてお伺いさせていただいたものに関して、先週の審査会でお答えをいただきました。
それによりますと、国会での議論が多くの国民に共有される機会が増えるのはよいことである、そして、過去一度、憲法審査会の議論がNHK中継された事実がある、こうした点を考えれば、憲法審査会の議論がNHKで中継されることはあり得ることである、こういうことをおっしゃっておりました。
こういった、前向きな発言と捉えておりまして、NHK中継に関しては、各党各会派、異論がないものだというふうに確認ができたと思います。したがいまして、次回幹事会で直ちに、是非、中谷筆頭幹事の方から具体的な実施についての提案をしていただけないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○中谷(元)委員 幹事会で再び提案をしてみたいと思います。
○青柳(仁)委員 どうぞよろしくお願いします。
それから、先週、立憲民主党の議員の方から、一部の会派は改憲そのものが自己目的化しているというような発言がありました。
この発言自体が私は非常に失礼なものであると思うんですが、今日も、極めて重要な論点をたくさんの委員の方々が掲げておられて、賛否は別にして、すばらしい議論が行われていると思います。そうした中において、それがあたかも、単に改憲そのものが自己目的化しているという非常に雑な評価を一方的に下すというのは、この審査会の議論そのものの価値を毀損するものであると思いますし、全委員、これは立憲民主党も含めた全ての委員に対する侮辱であるというふうに私は思います。
一方で、そういった印象で言うのであれば、逆に言えば、立憲民主党だけが憲法を一字一句変えないことそのものが自己目的化しているのではないかというふうにも見えるわけです。
ですから、こういうお互いの印象を言い合っていても意味がないと思っておりまして、やはりこれは、こういった議論をしっかりと国民の皆さんに見ていただいて、そして判断していただくというのが、これが民主主義の在り方であろうと思っております。そういった意味でも、NHKの中継というのは極めて重要であると考えておりますので、是非御検討をお願いいたします。
それから、今我々が話し合っているのは、緊急事態の際の国家の機能維持のことであります。内閣の暴走であるとか、あるいは執行権の権力の拡大が緊急事態のときに広がっていかないようにということで、先ほど、内閣不信任決議を出すこともできるというような話がありました。まさに、そういった権力の暴走を抑えるための立法府の機能を維持するということを今我々は話し合っているわけです。
国会は国権の最高機関でありまして、唯一の立法機関ということは、まさに憲法に定められているとおりです。最高機関というのはどういう意味かといいますと、国会が主権者たる国民の意思を最も直接に代表するものである、したがって、国の全ての機関のうちで最も重要である、こういう意味であります。その在り方を議論するというのは、まさに立憲民主党が言っている立憲主義そのものではないかと私は思うわけです。ですから、これについて議論をしないという態度は、まさに自党の結党の理念を毀損しているものであるというふうに私は考えざるを得ないと思います。
それから、先ほど話のありました、議員任期の延長あるいは緊急集会の在り方、これはやり方次第で立憲主義を毀損するのではないかという御発言が立憲民主党の方からありました。
これも、まず、各党の立憲主義、憲法を重要視しているというのは、ここにいる全ての委員、全ての会派が同じだと思います。ただ、それを立憲主義と表現するかどうか。また、その内容というのはそれぞれ違ってくる。したがって、立憲民主党の立憲主義というのを全ての人が受け入れているわけではもちろんないというわけですが、ただ、それを踏まえたとしても、議員任期の延長の在り方あるいは緊急集会の在り方が、もしそれによって立憲主義を毀損する可能性があるのであれば、それを毀損しないような内容にするということを議論することが筋ではないかと思うんです。まさにそういったことは条文を起草する委員会の方で、どのような条文であれば毀損しなくて済むのかということを考えていくことがまさにこの審査会のあるべき姿だというふうに思います。
憲法審査会というのは、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査する機関というふうに定められております。先ほども他党の議員から発言がありましたが、発議権があるわけですから、それをしっかりと責任を果たすということを我々全員が、全ての会派が考えるべきだと考えております。
以上で終了します。
○北側委員 公明党の北側一雄です。
先ほど逢坂さんの方から、これは前回もおっしゃっていたと思うんですけれども、災害に強い選挙事務体制をつくらないといけない。これは全くそのとおりでして、これにまた反対をするような人たちはいないんだろうと思うんです。しっかり具体的に、災害時でも選挙が執行できるようなそういう仕組み、オンライン投票も含めて、それをしっかり進めていくということなんだろうというふうに思うんですね。
ただ、そこもやはり限界があるということを申し上げたいと思うんですね。
逢坂さんの方では繰延べ投票の話も少しされていましたが、この審査会でも、繰延べ投票制度というのはどこまでできるのかという議論は相当やってきたんです。
この繰延べ投票制度というのは公職選挙法に規定があるんですけれども、天災その他避けることのできない事故により投票所において投票を行うことができないとき、そのときには、選管が決めるんです、選管は、更に期日を定めて投票をするというふうに決めているんですね。
これまでこの繰延べ投票制度が実施された例というのはそんなに多くなくて、少ないんです。先ほど逢坂さんもおっしゃったように、選挙事務に携わっている方々はできるだけ予定どおり実行していこうと努力をされますので、極めて少ない。
少ないんですけれども、その例を見ますと、一つの自治体の本当に一部の地域である場合が多いんですね。それも、繰延べするのはせいぜい一週間程度。どんなことが原因だったかというと、集中豪雨、それから台風。こういうときに、一部の本当に限定された地域でこれは投票することが困難だと言われるような場合に、過去幾つかの例です、繰延べ投票が実施をされたという例があるんですね。これが繰延べ投票制度です。
これを使って、例えば東日本大震災のときに、あの広範な地域で繰延べ投票ができるかというと、できるわけありません。被災東北三県、そして茨城県の水戸市、この全域において全て繰延べ投票、それも、実際に選挙ができたのは半年以上先の話なんですね。これはもう繰延べ投票の範囲をはるかに超えている事態が発生をしていると言わざるを得ないわけでございまして、繰延べ投票制度には極めて限界があるんだということも是非御理解いただきたいと思うんですね。
その上で、選挙困難事態ということを見るときに、私は、これも以前申し上げているんですが、二つの視点があると思うんです。
一つは、有権者の側から。東日本大震災のときに、そこの有権者の方々は、いかに避難をしていくか、いかに自分の命を守るか、また家族の人たちの命を守るか、これで本当に当初大変なわけですよね。そして応急復旧活動というふうに続くわけでございまして、有権者の側から見ると、とてもとても、長期間の間これは投票できる環境にないという有権者側の視点。
もう一つの視点は、これは逢坂さんがかつて首長を経験されていらっしゃいましたから一番よく分かると思うんですが、選挙というのは、選挙事務をつかさどる方々、この方々がいないと選挙なんかできないんですね。もう本当に多くの人が選管を中心として選挙事務に携わっていただいているわけですね。こういう方々がいないと、適正な選挙というのは実行できません。
ということは、巨大な地震等で、東日本大震災のようなそういう大震災が起こったときには、まず、その人たち自身も被災者なわけですよね。東北三県の方々は皆被災者なわけです。そういう被災者の方々が公務員であるということで選挙事務が執行できるかというと、とてもできない。かつ、そのときは何をしているかというと、市を挙げて、地方自治体を挙げて救命活動に、復旧活動に取り組んでいるわけです。それも、その地方自治体の方々だけではありません、全国の自治体からその被災地に乗り込んで、まさしく活動されているわけですね。そういう中で本当に適正な選挙が実行できるのかというと、やはりできない場合があるよね、これが選挙困難事態です。
というふうなことで、今回、このような本当に大災害等の緊急時においても、国会の機能、二院制を原則とする国会の機能を維持をするために、そしてそのことによって国民の生命や財産を守るために、議員任期の延長、選挙期日の延期とともに議員任期の延長というのを議論していきましょうと。これは憲法改正をするしかありません。そういう議論を、この二年余りの間、この審査会では非常に集中して議論がなされてきたという経緯でございまして、立法事実そのものは明らかにあるというふうに改めて申し上げたいというふうに思うわけでございます。
御感想があったら、是非御意見をお聞かせ願いたいと思います。
○岩屋委員 自民党の岩屋毅です。
これまでの委員各位の真摯な御議論に心から敬意を表したいと思います。
この間、最も時間を割いて論じられたのは、いわゆる緊急事態条項についてでありました。現行憲法には国会中心主義が貫かれており、それは今後とも堅持しなければなりません。緊急政令については今なお様々御意見があると思いますが、国会議員の任期延長についてはおおむね一致点が見えてきているように感じます。是非取りまとめの作業に入っていただきたいと思います。
その上で、憲法改正となれば、最大の焦点はやはり九条となるでしょう。戦後政治の最大の対立軸は、まさしく九条をめぐってのものでした。それは五五年体制が終わったはずの今も続いています。
しかし、間もなく戦後八十年になろうとしています。安全保障に関して、決して観念論ではない、リアリズムに立脚した成熟した議論を行っていくためにも、私たちはそろそろここを乗り越えていく必要があると考えます。
もはや、我が国が自衛権を有し、自衛隊が合憲であることについては十分に国民のコンセンサスが得られていると思います。したがって、憲法に自衛隊を明記するとしても、それはいわば確認的改憲となります。
確認的改憲ならする必要がないという御意見もあるでしょう。しかし、私は、過酷な任務に日々精励している自衛官の名誉のためにも、国民の皆さんに是非その確認をしていただきたいと思っています。
先日も海上自衛隊でのヘリの事故が発生しました。亡くなった隊員に哀悼の意を表するとともに、残る七名の隊員の一刻も早い救助を心から祈っています。
防衛大臣として一番つらい行事は、毎年市ケ谷で行われる殉職隊員追悼式です。自衛隊開設以来、既に二千人を超える隊員が主に訓練中の事故で亡くなっています。亡くなった隊員にはお若い人が多い。式典の前に御遺族の控室に御挨拶に上がるのですが、そのとき、小さなお子さんたちの姿には胸が締めつけられます。ここに何人も防衛大臣経験者がおられますが、皆さん同じ思いをされたことと思います。今なお一部に残る自衛隊違憲論は、この際、完全に払拭すべきだと思います。
その上で、自衛隊を憲法に明記するとした場合、自衛の範囲が最大の争点になっていくと思われます。さきの安保法制の審議においても、その点をめぐって激しく議論が交わされました。
それまで政府は、我が国は集団的自衛権を有してはいるが、その行使は憲法の制約によって禁じられていると説明してきました。しかし、法案策定に先立つ閣議決定において、我が国の存立が脅かされる事態に限って、他国に加えられた武力攻撃を排除することができるとしたわけです。その意味するところは、我が国の存立を維持するために行う武力行使の中には国際法上は集団的自衛権の行使とみなされるケースもあり得るということであって、いわゆるフルスペックの集団的自衛権を認めたわけではありません。
これは現憲法の下でのぎりぎりの解釈だったと思いますし、その自衛権行使の新三要件は既に法定されています。したがって、仮に憲法に自衛隊を明記したとしても、そのことによって自衛権の範囲が無制限に拡大することにはならないと考えます。
なお、現段階での自民党の九条改正イメージ案は、九条を維持した上で自衛隊を追記するとしています。九条が憲法の平和主義の象徴であり、その平和主義を堅持することを明確にするためです。
一方、自民党の中には異なる意見もあります。第二項を削除しなければ自衛隊違憲論は解消されないという考え方であり、他会派からも同様の意見が聞かれました。先般、自民党憲法改正推進議連がまとめた改正案はその考え方に基づいています。
また、公明党さんからは、内閣の職務の中に自衛隊を加えるという案も出されていたと記憶しています。
このように九条をめぐってはいまだに様々な考え方があることから、今後更に議論を加速していくべきだと思います。
以上申し上げて、私の意見といたします。
ありがとうございました。
○本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。
先週の本審査会において、私の発言について何人かの委員から言及がありましたので、本日はその点を中心に、改めて私の意見を申し述べます。
まず、いわゆる選挙困難事態と国会議員の任期延長に関連して、私が過去の事例として東日本大震災、阪神・淡路大震災、関東大震災を挙げたことに対し、有志の会北神委員から、単純に、過去に生じた事実だと狭く捉えるべきではなく、科学的検証などにより、将来に生じ得る事実をも含めるべきとの御意見がありました。
もちろん、私は過去に生じた事実だけで判断しているわけではありません。過去に生じた事実を踏まえ、将来起き得る首都直下型地震や南海トラフ地震も想定して議論、検討することは、政府はもちろん、国会としても当然のことです。我々は、選挙困難事態は論理上、観念上はあり得るとも述べています。
ただ、全国の広範な地域で相当程度長期間、選挙が実施困難な事態ということが現実問題としてあり得るのか、あり得るとしてそれはどのくらいの可能性なのか、いまだ説得力ある科学的検証は示されていません。
先ほど、自民党中谷幹事より、東北ブロックで国政選挙ができなければ、全国で広範な地域で選挙実施困難に該当する旨御発言がありましたが、私はそうは考えません。これは判断の問題であり、同様の曖昧さは時の政権にも当てはまると思います。
その上で、私は、選挙困難事態は立法事実の認識が一致していないと申し上げました。あえて、立法事実がないとは申し上げておりません。その趣旨は、同じ過去の事例であっても、選挙困難事態か否かで見解を異にしているということです。
例えば、自民党中谷幹事は先般の能登半島地震をしばしば挙げておられますが、能登半島が全国の広範な地域なのでしょうか。私は、被災地域の繰延べ投票等で対応可能であると考えます。
また、中谷幹事からは、福島で原発事故が起こり、帰還困難で一年も二年も帰れないような地域の選挙は一体どうしたらいいのかとの御発言もありました。しかし、こういった場合には、繰延べ投票、不在者投票、あるいは避難先での投票など、議員任期の延長によらない対応策は幾らでも考えられるのではないでしょうか。
公明党河西委員からは、東日本大震災では、岩手、宮城、福島の被災三県に加えて、茨城県水戸市の市長選、市議選が延期されているとの御指摘がありました。先ほど、中谷幹事からも同様の御発言がありました。しかし、水戸市長選は三十三日、市議選は二十九日の延期です。仮に国政選挙で同様の状況があっても、繰延べ投票等で十分対応できる範囲です。
中谷幹事からは、自衛隊の出動の国会承認において、一刻を争うときに、国会が、衆議院が開かれないというのは、まさにこの国の緊急事態における対応ができない一つの例だとの御発言もありました。しかし、自衛隊御出身の中谷幹事はよく御存じかと思いますが、自衛隊の出動は国会の事後承認でも認められており、不都合は生じません。
このように、先週の各委員の御発言だけ取り上げても、私には、議員任期延長の必要性が示されているとは思えません。そのことを、私は控えめに、立法事実の認識が一致していないというふうに申し上げているわけでございます。
そもそも、日本国憲法の三大原則の一つである国民主権に由来し、憲法第十五条によって保障される国民の参政権、選挙権は、最も重要な基本的人権であり、議会制民主主義の根幹を成すものです。国会議員の任期延長とは、すなわち、これを制限することにほかなりません。特に、被災地以外の有権者にとっては重大な権利侵害です。
公共の福祉や安全保障のために基本的人権や個人の権利が制限されることは当然あり得ます。しかしそれは、他の取り得る手段を追求した上で、両者を比較衡量した結果導かれるものです。
しかし、現在の議員任期延長の議論は、その必要性ばかりが強調され、選挙権の制限や議会制民主主義の形骸化、ひいては国民主権の侵害といったデメリットやリスクについて、戦前や諸外国の経験も踏まえた十分な考察や議論がなされているとは言えません。
また、議員任期の延長、すなわち、憲法十五条が保障する国民の参政権、選挙権を制限する前に、災害に強い選挙体制の整備など、他に取り得る手段について十分な議論や検討も行われなければなりませんが、現在の政府や国会でそういった取組がなされているとは言えません。
以上のとおり、議員任期の延長に関する現在の議論は、そのデメリットも代替措置も十分に議論、検討されないまま、もしかしてあるかもしれない極めて小さな可能性に殊更に焦点を当てて、その打開策を、議会制民主主義にとって最後の手段とも言える議員任期の延長に安易に委ねています。条文案に基づく議論の段階に達しているとはとても言えず、更に深掘りした議論を丁寧に重ねるべきだというふうに考えます。
以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。
○山下委員 自由民主党の山下貴司です。
逢坂幹事から、災害時の選挙の困難性について御発言がありました。概要、災害に強い選挙の在り方を検討すべき、災害時であっても選挙事務はミスが許されない、平時こそ有事に備えておくべき、選挙人の一票を守る、民主主義を守る必要性を述べられました。まさに、私もこの点において同感であります。
そして、私たちは、非常事態においても民主主義、立憲的秩序を守るため、平時である今こそ、当審査会で選挙困難事態を想定して具体的案文を検討すべきだと申し上げているわけであります。南海トラフ地震や関東大震災のような大災害の場合に、逢坂議員のおっしゃるミスが許されない選挙事務など到底期待できない選挙困難事態においてどのように国会機能を維持するか、既に五会派は、おおむね一致する検討の方向性を示しております。また、この点について本庄幹事も、立法事実は否定しないと御発言がありました。
民主主義は少数意見を大切にしますが、一部の会派に当審査会での発議のための議論を行うこと自体を否定する権限まで与えるものではありません。先ほど、古屋委員から逢坂幹事に対して、なぜ起草委員会の設置について反対するのか否か質問がありましたが、こうした極めてシンプルな質問にすら今お答えになれないのはなぜでしょうか。私の持ち時間の範囲内で逢坂幹事に質問いたします。
○逢坂委員 起草委員会については、まだ議員任期の延長については議論すべき論点がある、だから起草するのは早い、単純に答えるとそういうことです。今、本庄委員からも話をしたことと同義でございます。
それから、せっかくの発言の機会ですからお話しさせていただきますが、北側委員から何点かお話がございました。選挙の大原則といいましょうか、民主主義の大原則と言ってもいいかと思うんですけれども、選挙は……
○森会長 一応、今は山下君の発言の。
○逢坂委員 失礼しました。山下さんの時間の範囲で。はい。それでは取り消します。申し訳ございません。
○森会長 また後ほどお願いします。
○山下委員 ありがとうございます。
私どもは、まさに平時である今こそ、有事である選挙困難事態に備えて、与野党五党が主張するように、起草委員会を早く立ち上げ、具体的な論点を詰め、条文を考えるべきだと申し上げているわけであります。そうした起草作業を行うことが、まさに逢坂幹事の主張にも沿うものだと思っております。
私としては、起草委員会を早期に立ち上げるということを申し上げて、発言といたします。
以上です。
○藤丸委員 自由民主党の藤丸でございます。
個人的な意見ですが、自衛隊明記について、これまでも議論があっております。私は、七十三条の内閣の職務に、自衛隊を指揮するという号をできれば加えてもらいたいなと思っております。
その訳は、自衛隊は災害出動で人命救助等を担っております。なくてはならない、二十四万人の組織であります。しかし、多くの憲法学者は憲法違反としております。実態の容認では忍びなく、済まされないと思っております。
学生のときに、法哲学、アリストテレスとか、カントの永遠平和とか、ヘーゲルとかをやったときに、いつか役に立つだろうと芦部論文を、ちょっと五千円と高かったので、買っておりまして、それにも目を通して来ました。
是非、憲法改正の際にほかの項目と同様に入れていただきますようにお願いしたいと思っております。
なお、七十三条というのは、明治憲法では、第一章「天皇」の大権として書かれておりました。現行憲法では、五章七十三条「内閣」に七か号あります。願わくば、八号として、自衛隊を指揮するとの明記を願うものであります。
終わります。
○玉木委員 一点だけ。本庄さんの発言についてなんですけれども、これは一回、奥野さんとやったんですけれども、一部の地域の国政選挙を法律で繰延べしてやるということは、これは野田内閣のときの質問主意書にも明確に答えがあるんですが、できないという閣議決定があるんですけれども、そことの整合性はどういうふうに取られるのか。
読みますと、平成二十三年十一月十一日ですけれども、「御指摘の東日本大震災に伴う地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」、これは特例法、「のような法律を制定することにより「国政選挙の選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長すること」は、できないものと考える。」という閣議決定がございますので、こことの整合性をどう取られるのか、改めてお伺いしたいと思います。
○本庄委員 確認して、後刻、次回以降お答えしていきたいと思います。
○玉木委員 いろいろなことで、現行法、現行憲法下で対応することはしたらいいんですけれども、先ほど中谷幹事が冒頭あったように、やはりある種の役割分担があると思うんですね。
ある程度現行でできるところと、そこから先はできないところということをきちっと議論をして、そして、できないのであれば、無理な解釈で広げるのではなくて、きちんと立憲主義の観点から、そして憲法の規範性を維持する観点から、足りないところは書き込んでいくべき、改めていくべきではないかということで、具体的な改正条文案を我々、特に、維新、我々、有志の三会派で出しておりますので、そういったものを基にした条文案を作り、そして、その中で足りないところがあればまた立憲民主党さんからも御指摘をいただいて、よりよいものを是非作っていきたいと思いますので、改めて、起草委員会の設置を来週以降行っていただくことを求めたいと思います。
○稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。
発言できますことを感謝申し上げます。
本審査会の運営について、前々回も申し上げましたが、中谷筆頭幹事が既に、五党会派が合意している緊急事態条項についての具体的条文起草機関を早期に設置することを提案されておられます。早期の実現を強く要望申し上げます。
また、定例日の本審査会において、多くの発言希望者が残留したまま終了することが常態化しています。特に、委員の数が多い自民党は、多くの発言希望者が発言できないでいます。定例日の開催は十時から十一時半ですが、これを九時から十二時にすれば、より多くの委員が憲法に関連し広く問題提起し、改正議論も深まるのではないでしょうか。幹事会において是非御検討いただきたいと存じます。
本日は、再審法と憲法について発言します。
昨年三月に東京高裁で再審開始決定が確定した袴田事件は、現在、再審公判中です。既に事件発生から五十七年、第一次再審請求から四十三年、最初の再審開始決定から十年が経過しています。袴田さんが再審無罪の判決をかち得たとしても、六十年近くにも及ぶ審理に要した時間は二度と戻ってこないのです。冤罪で一人の人の人生が丸ごと奪われるようなことがあってはならない。これは国家権力による、憲法十三条に定めた個人の尊厳と幸福追求権の侵害と言っても過言ではありません。
日本国憲法は、三十一条以下、刑事訴訟における手続保障について、諸外国の憲法に例を見ない詳細な規定を置き、刑事手続の適正を憲法上の要請としています。これらの規定は、戦前の刑事手続の濫用や人権弾圧の反省の下、人権保障と公正な裁判の実現を憲法上目指したものです。
ところが、現在、刑事訴訟法における再審についての規定は、一九二二年に制定した大正時代のものを日本憲法下でもほぼそのまま維持しています。唯一、憲法三十九条において二重の禁止規定を定めたことから、戦前認められていた不利益再審を明確に禁止しましたが、それ以外は全く改正されず、取り残されている。すなわち、再審手続に現行憲法の精神が生かされていないのです。
例えば、再審手続における取調べ、証拠開示、検証などについて、何ら手続規定がなく、裁判官の広範な裁量に委ねられています。その結果、無罪を示す重要な証拠が捜査段階で隠されていても、開示されるか否かは裁判官の意向次第、再審請求審において重要な新証拠が埋もれたまま、再審無罪まで気が遠くなるような長い年月を費やし、甚だしい人権侵害を生じさせているのです。
袴田事件において開示された古い新証拠が再審請求審に提出されたのは、死刑判決から何と三十年後であり、再審開始決定をした裁判所は、捜査の違法性と証拠捏造可能性を指摘し、著しく正義に反するとして、袴田さんを釈放したのです。
二〇二〇年に再審無罪が確定した湖東事件では、第二次再審の即時抗告審まで一点の証拠開示も実現せず、再審公判で多数の証拠が開示され、捜査機関が隠していた無罪を裏づける証拠が明らかになりました。既に、二十四歳であった女性は四十歳、刑の執行も終わり、懲役十二年の刑を満期服役した後の再審無罪だったのです。
再審手続における証拠開示等は裁判官の意識、熱意次第、再審格差という言葉も生まれるほどであり、袴田事件のように、三十年以上一点の証拠開示も許されず、弁護人が繰り返し行った証拠開示請求を検察官も裁判官も無視し続けることができる現行法の不備は明らかです。
更に問題なのは、せっかく再審開始決定が出ても、検察官は機械的ともいうべき抗告を行い、更にその確定までに長期間が費やされています。
大崎事件では、過去三回も再審開始決定がなされながらも、検察官の抗告により再審開始が阻まれ、最高裁も、検察官の特別抗告に理由がないとしながら、地裁、高裁の再審開始決定を著しく正義に反するとして取り消すという異例の事態になっています。疑わしきは被告人の利益にという刑事司法の大原則は再審においても適用されるという白鳥決定に反するものと言わざるを得ません。もはや刑訴法の再審手続の改正についての立法事実は明らかです。
この状況を見て見ぬふりをしていることは、憲法三十一条の手続保障、憲法三十七条一項の迅速な裁判を受ける権利、そして憲法十三条の個人の尊厳を侵害し、立法不作為が憲法違反になっていると言っても過言ではありません。立法府に身を置く者として、憲法の精神が法制度に反映されているかどうか、立法不作為によって憲法違反を許容していないかどうかという観点を常に問いかけ、その責務を果たすべきだと考えます。
以上です。
○森会長 次に、長島昭久君。
もしあれだったら、時間なので次回でもいいですよ、ちょっと時間が押しているから。
○長島委員 来週で。
○森会長 分かりました。
まだ御発言の御希望もあるようでございますが、予定した時間が経過いたしました。
この自由討議の取扱いについては、与野党の筆頭間で協議をいたしておりますので、今後については、これを踏まえ、幹事会等において対応をいたしたいと存じます。
これにて自由討議は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十分散会