第4号 令和7年4月10日(木曜日)
令和七年四月十日(木曜日)午前十時八分開議
出席委員
会長 枝野 幸男君
幹事 上川 陽子君 幹事 寺田 稔君
幹事 船田 元君 幹事 山下 貴司君
幹事 武正 公一君 幹事 津村 啓介君
幹事 山花 郁夫君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 浅野 哲君
井出 庸生君 稲田 朋美君
井野 俊郎君 大野敬太郎君
小林 茂樹君 小林 鷹之君
柴山 昌彦君 新藤 義孝君
高市 早苗君 葉梨 康弘君
平沢 勝栄君 深澤 陽一君
古川 禎久君 古屋 圭司君
三谷 英弘君 森 英介君
山口 壯君 山田 賢司君
五十嵐えり君 岡田 悟君
奥野総一郎君 重徳 和彦君
階 猛君 柴田 勝之君
平岡 秀夫君 藤原 規眞君
松尾 明弘君 谷田川 元君
吉田はるみ君 米山 隆一君
青柳 仁士君 阿部 圭史君
和田有一朗君 平岩 征樹君
福田 徹君 河西 宏一君
金城 泰邦君 浜地 雅一君
大石あきこ君 赤嶺 政賢君
北神 圭朗君
…………………………………
衆議院法制局長 橘 幸信君
国立国会図書館調査及び立法考査局総合調査室専門調査員 南 亮一君
国立国会図書館調査及び立法考査局国土交通調査室専門調査員 遠藤 厚志君
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
―――――――――――――
委員の異動
四月十日
辞任 補欠選任
小林 鷹之君 深澤 陽一君
細野 豪志君 小林 茂樹君
平林 晃君 金城 泰邦君
同日
辞任 補欠選任
小林 茂樹君 細野 豪志君
深澤 陽一君 小林 鷹之君
金城 泰邦君 平林 晃君
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(憲法改正国民投票法を巡る諸問題(ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策))
――――◇―――――
○枝野会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、憲法改正国民投票法を巡る諸問題、ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策について自由討議を行います。
本日の議事について申し上げます。
まず、幹事会の協議に基づき、衆議院法制局当局及び国立国会図書館当局から説明を聴取し、その後、自由討議を行うことといたします。
では、衆議院法制局当局及び国立国会図書館当局から順次説明を聴取いたします。衆議院法制局橘幸信局長。
○橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。
本日は、枝野会長始め幹事会の先生方の御指示により、国民投票法に関する御議論のうち、ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策に関するこれまでの本審査会における議論の概要について御報告をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
早速ですが、お手元配付の資料の表紙と目次をおめくりいただきまして、一ページ、及びこれに併せて、簡単な用語解説を掲載いたしました二ページを御覧ください。
本審査会では、ネットの適正利用の観点から、ネット社会と憲法の関わりをテーマとして、この分野の第一人者でいらっしゃる慶応義塾大学の山本龍彦先生から御意見を伺いました。山本先生は、現在のネット時代における言論環境の変化について、次のように述べて、大きな警鐘を鳴らされました。
すなわち、まず、個人データからAIを用いて当該個人の趣味、嗜好、健康状態や精神状態、社会的信用力に至るまで自動的に予測、分析をするプロファイリング、この手法によって得られた情報が、対象者を選別して効果的な選挙戦略を構築する政治的マイクロターゲティングに用いられると、民主主義に多大な影響を及ぼすこと、また、いかに人々の注意を引き、自分のサイトに一秒でも長い時間とどまってもらうかといったアテンションエコノミーの時代では、事実の報道よりも刺激的な情報の方が拡散されやすいといった傾向から、デジタル言論空間は刺激競争の場へと変容していくこと、さらに、これらのネット社会の特徴が、個人的傾向によって選別された同じ意見だけに触れるようになるフィルターバブルを生み、それが、同じ意見を持つ者同士だけが触れ合って意見が極端化していくエコーチェンバーと組み合わせられると、ますますフェイクニュース拡散の温床となっていくと述べられました。
このような状況において外国からの介入があると、選挙はもちろん、国民投票においても、有権者が適切にその権利を行使できる基礎的条件が失われてしまい、その結果の正統性すら疑われる状態に陥ってしまうとも指摘されました。
これに対して考えられる方策として、まずは、ふだんから言論空間全体を健全化すること、これを山本先生は情報的健康と呼んでいます、そのためには、EUのように政治広告の透明性を高める規律を行うこと、さらに、デジタル空間において今や国家権力をしのぐほどの権力を持つに至っている巨大デジタルプラットフォーマーたちに対して、一定の法的措置、ハードローと、その任意の協力に基づく自主規制、ソフトロー、これを取り合わせた措置を講じることが必要だと述べられました。
以上のようなネットによる言論環境の現状を念頭に置きつつ、複数の実務関係者からのヒアリングも行っております。
資料の三ページを御覧ください。
まず、LINEヤフーなどインターネット関係事業者による一般社団法人セーファーインターネット協会の吉田専務理事は、偽情報対策について次のように述べられました。
一つ、マスメディアをその主な担い手とするこれまでの情報環境が相対的に安定していたのとは異なり、インターネットの出現によって個人にも情報発信の場が与えられた結果、情報の質は玉石混交となり、近年では民主主義を脅かすような偽情報が横行するようになってきたこと、二つ、これに対処するためには、社会を構成する各機関が協力して偽情報に強い社会の実現を図る必要があると述べて、偽情報対策の重要性を訴えられました。
そして、この偽情報の問題については、単一の手段で、副作用なく問題を解決することは難しいこと、また、表現の自由を確保しつつ、他の法益との調整を図りながら対策を行う必要があることなどを述べられた上で、考えられる方策としては、一つ、正確な情報を目立つ箇所に掲載すること、二つ、自然な動線の中に正確な情報に触れる機会を現出することが肝要であると指摘した上で、三つ、社会的なコンセンサスを得つつも、あくまでも最終的には各民間事業者が自主的に判断することが大事であることを強調されました。
なお、吉田参考人が言及した従来のマスメディア、いわゆるオールドメディアなどとも呼ばれるようですが、これについては、現在のネット時代における新たな役割を期待する御発言もございました。すなわち、放送CMの文脈の中での御発言でしたが、法的な枠組みの裏づけがある民間放送事業者が流す放送CMは、ネット広告がフェイクであるかどうか、その信憑性を判断する際のバロメーターになり得るといった趣旨の新藤義孝先生の御指摘です。
以上を踏まえた各会派の委員からの主な御発言を、資料四ページと五ページにまとめております。
前回の放送CMやネットCMの分野とは異なり、このネットの適正利用一般の分野においては、これまでの議論においては、発信禁止などの直接的な法規制に関する御意見はほとんど見られませんでした。他方、一定の義務づけを行う間接的な法規制に関しては、与野党を問わずに各会派から様々な御意見、御提言が述べられております。例えば、一つ、勧誘や意見表明を行う者、すなわち情報の発信者のメールアドレス等を画面に表示することを義務づけること、二つ、国民投票に係る憲法改正案に関する発信については、検索事業者等に対して、広報協議会ホームページのURLを優先的に表示することを義務づけたり、あるいは協力要請をしたりすること、三つ、ネットの適正利用について利用者の努力義務を定め、情報リテラシーを醸成するための措置を講じていくことなどです。
また、自主的取組を後押しするための緩やかな法的措置として、広報協議会による、ネット適正利用を促すガイドラインの策定や、事業者等の自主的取組としての自主規制を促す御意見もございました。
次にファクトチェックですが、その概要等の基礎知識を資料六ページにまとめておきました。これは御参照いただくことにとどめて、次の資料七ページを御覧ください。
ファクトチェック・イニシアティブの楊井事務局長をお呼びして、我が国におけるファクトチェックの現状と対策について伺いました。
楊井参考人は、まず、国境を越えた偽情報、誤情報の流通リスクが高まっている今日、海外ではファクトチェックが活発に行われていること、これに対して、我が国におけるファクトチェック活動は資金、人材共に不足していることを指摘されました。現在でも、国際ファクトチェックネットワークの認証を得たファクトチェック団体は、我が国では三団体にとどまっております。
その上で、楊井参考人は、このような我が国の現状を考えると、検証活動の独立性を保った上で、民間のファクトチェック団体に対して何らかの公的支援を行う枠組みが必要であること、プラットフォーム事業者の協力も不可欠だが、他方、法律で直接規制をすることは望ましくなく、あくまでも民間団体に任せるべきとの御意見を述べられました。
以上を踏まえた各会派の委員や参考人からの御発言を、資料八ページから十一ページにまとめてございます。
まず、八ページと九ページを御覧ください。
一つ、広報協議会がフェイクニュースの例示やその取扱いに関するガイドラインを策定すること、二つ、影響の大きいフェイクニュースについては事業者から広報協議会に一定の報告義務を課すこと、三つ、広報協議会と民間ファクトチェック団体が相互に連携をすること、このような方策が各会派から提案されております。
次に、十ページと十一ページを御覧ください。
公的機関である広報協議会が自らファクトチェックを行うことの是非について議論がなされてまいりました。すなわち、諸外国においても選挙手続や外国由来の情報を対象として公的機関がファクトチェックを行っている例はあり、我が国でも広報協議会がファクトチェックを行うことを検討すべきとの積極説が述べられる一方、ファクトチェックは民間団体が自主的に行うべきものであり、国会に設置された広報協といえども、公的機関がこれに直接介入することは国家権力による情報統制の危険を生じさせるため行うべきではないとする消極説も述べられております。
外国の制度については、次に国立国会図書館の御担当者から御報告がございますが、資料十二ページに、事実かフェイクかの検証を公的機関が行っている海外の事例について、本審査会において積極説の委員が言及された国を中心に、若干の事例を掲載しておきました。
最後の資料十三ページの一覧表は、前回の論点を含めて、各委員の主な御意見を一覧表にしたものです。御議論の際の参考資料として御参照いただければと思います。
以上、本日は、ネットの適正利用、特にフェイクニュース対策について、本審査会におけるこれまでの議論の概要を分類、整理しながら、その論点を浮き立たせる形で御報告申し上げました。
私からの御報告は以上です。御清聴ありがとうございました。
○枝野会長 ありがとうございました。
次に、国立国会図書館調査及び立法考査局国土交通調査室遠藤厚志専門調査員。
○遠藤国立国会図書館専門調査員 国立国会図書館の遠藤でございます。
本日は、枝野会長、また幹事会の先生方からの御指示によりまして、諸外国のフェイクニュース対策について御報告させていただくことになりました。このような説明の機会をいただき、誠にありがたく思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
それでは、お配りした資料のうち、A3判の「諸外国・地域のフェイクニュース対策(一般)」及び次のページの「諸外国・地域のフェイクニュース対策(選挙)」と題された資料に沿いまして説明をいたします。なお、この資料は、刊行物やインターネット上の海外情報などを基に、各国の状況を取りまとめたものでございます。また、各国における状況のうち、主として、情報発信者に対する規制と、オンラインプラットフォーム事業者に対する規制を取りまとめてございます。
まず、一枚目の資料に基づきまして、選挙に限らない、各国における一般的なフェイクニュース対策について説明をいたします。
一番左、アメリカでございます。
アメリカにつきましては、連邦レベルでの直接的な規制は成立しておりません。ただ、州レベルでは、カリフォルニア州において、選挙におけるフェイクニュース規制の事例がありますので、後ほど御説明いたします。
次の列の欧州連合、EUです。
EUでは、二〇二四年二月からEU域内で全面適用になりましたデジタルサービス法におきまして、フェイクニュースの規制が定められております。
SNS等を運営する大規模プラットフォーム事業者に対する規制については、そのサービスの利用に起因してEU域内で発生するシステミックリスクに対する自己評価や軽減措置等が義務づけられておりまして、このシステミックリスクの内容として、米印にあります、同法において、違法コンテンツの拡散のほか、基本的権利や選挙等への悪影響などが示されております。そして、今申し上げた自己評価や軽減措置等の義務に違反をした事業者には制裁金が科される可能性があります。
また、その下、欧州委員会は、システミックリスクに対処するための自主的な行動規範の作成を奨励、促進することとされており、その行動規範として、二〇二二年偽情報に関する強化された行動規範があります。
この規範は、元々、関係者の自主的取組として作成されたものでございましたが、二〇二五年になって、デジタルサービス法に言う行動規範として承認されたものであります。
同規範には、例えば、外部のファクトチェッカーと連携するとか、偽情報の提供者に金銭的なインセンティブが生じないようにするといったことが定められております。
そして、同規範に違反した場合には、先ほど申し上げた同法における自己評価や軽減措置等の義務に係る規定に違反していると認定される可能性がございます。
三つ目の列のイギリスです。
イギリスでは、二〇二三年にオンライン安全法が成立しております。
同法において、まず、発信者に対する規制として虚偽通信罪が規定され、内容が虚偽であることを知りながら他の者に危害を与えることを意図して情報を送信する者は罪となります。
また、二つ下の利用者間サービス事業者に対する規制として、違法コンテンツに関してのリスク評価や削除等の安全確保を行うことが義務づけられております。
オンライン安全法における違法コンテンツは米印のいわゆる違法なものであって、偽情報一般は対象とはなりません。ただし、違法コンテンツの中には外国干渉の類型が含まれており、外国の勢力が干渉効果を意図して虚偽の表示を行うと、この外国干渉に該当することになります。
同法に基づき、英国通信庁は、SNSサービス等の事業者に対して情報提供を求めたり是正を命令したりする権限が与えられています。そして、その下のとおり、義務違反をした事業者に対しては制裁金が科される可能性があります。
四つ目の列の台湾です。
台湾では、社会秩序維護法において、発信者に対する規制として、公共の安寧秩序に影響を及ぼすと認められる風説の流布は拘留又は過料の対象となります。
このほか、台湾では、最初の枠の括弧書きのとおり、選挙、災害、感染症等のそれぞれの分野に対応する個別の法律において、発信者に対する規制として、偽情報を流布する行為を禁止することが定められており、罰則も、懲役から罰金、過料まで、それぞれの法律において定められております。なお、このうち、選挙関係は最大で懲役七年と罰則が重くなっております。
このページの最後の列に、参考として日本を掲げております。
日本では、現在、いわゆる情報流通プラットフォーム対処法があり、SNS等を運営するプラットフォーム事業者の義務等について規定されております。
ただし、権利の侵害が生じた場合の発信者情報の開示請求権や、開示の手続方法が定められていたり、また、大規模プラットフォーム事業者に対して、申出の受付窓口を設けること等の義務が課されたりしておりますが、権利侵害に該当しない偽情報一般については、特段の定めはされておりません。
次に、A3資料の二枚目を御覧ください。ここでは、選挙や国民投票関係について、フェイクニュース対策の法律を制定している国、地域について挙げております。なお、アイルランド、カリフォルニア州の法律は未施行又は未執行、フランスの法律は余り活用されていないとも指摘されております。
まず、フランスです。
フランスでは、二〇一八年に情報操作との闘いに関する法律が制定されており、インターネットを利用した選挙運動や国民投票に関する宣伝について、オンラインプラットフォーム事業者に対して規制がかけられております。
具体的には、オンラインプラットフォーム事業者に、コンテンツの宣伝の対価を支払う場合、自然人であれば身元、法人であれば名称、所在地、目的等の情報を利用者に提供することや、宣伝の対価として受領した報酬の総額が定められた金額を超える場合は、当該総額を公表すること等の義務が課されております。
また、投票の真正性に影響を与えかねない、ある事実についての不正確な又は誤解される主張又は非難が大量に配信された場合には、検察官や候補者等からの申立てに基づき、裁判官は配信を中止させる措置を命じることができることとされております。
次の列のアイルランドです。
アイルランドでは、二〇二二年に、二〇二二年選挙改革法が制定されております。
まず、情報発信者に対しては、選挙運動期間中に選挙又は国民投票の結果に影響を及ぼす意図で虚偽の言説等を公表した者のほか、選挙又は国民投票の結果に影響を及ぼすこと等を目的として、ボット、すなわち、自動化されたソフトウェアプログラムでその活動や投稿が実質的に人に起因しないもの、これを使用してオンライン上でのプレゼンスを複数生成させた者は、罰金や拘禁の刑の対象となります。
次に、二つ下のオンラインプラットフォームの運営者への規制として、サービスが偽情報の拡散に使用されている可能性があるなどの場合には、選挙委員会に通知することとされております。
また、大規模なオンラインプラットフォームの運営者は、偽情報等によってもたらされる重大なリスクを特定した報告書を作成して選挙委員会に提出することとされております。
そして、選挙委員会は、オンライン選挙情報を監視し、調査することができるとともに、削除や選挙委員会が調査中である旨の表示等を求めることができることとされております。
表の最後の列、アメリカのカリフォルニア州です。
カリフォルニア州では、州法において、次の規制が課されております。
まず、発信者に対する規制ですが、選挙から六十日の範囲内で、候補者に関する実質的に欺瞞的な音声又は映像媒体を悪意を持って拡散してはならないこととされております。また、選挙の百二十日前から、候補者に関する実質的に欺瞞的なコンテンツを含む広告等を悪意を持って故意に拡散してはならないとされております。
また、その下の大規模プラットフォーム事業者に対しては、次の規制が課されております。すなわち、事業者は、定められた期間内において、選挙関連の実質的に欺瞞的なコンテンツを特定し、削除したり、ラベルを表示したりしなければならないとされております。また、事業者は、カリフォルニア州在住者に対して、実質的に欺瞞的なコンテンツを報告するための容易にアクセス可能な手段を提供しなければならないこととされております。
そして、候補者等は、大規模プラットフォーム事業者に報告を行い、三十六時間以内に事業者から回答がなかったなどの場合においては、差止め命令等を求める訴訟を提起することができることとされております。
最後に、御参考でございますが、各国におけるファクトチェック又は情報の真偽検証活動は、A3の資料の次にありますA4の参考資料、縦置きですが、こちらの4の6に記述しております。
説明は以上でございます。御清聴いただきまして、誠にありがとうございました。
○枝野会長 以上で説明聴取は終わりました。
―――――――――――――
○枝野会長 これより自由討議に入ります。
この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内となっております。
質問を行う場合、一度に答弁を求めることができるのは二会派までとし、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて七分以内となりますので、御留意願います。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
発言の申出がありますので、順次これを許します。寺田稔さん。
○寺田(稔)委員 国民投票におけますSNS、ネット利用をめぐる諸問題については、従来から当憲法調査会において議論がなされてまいりました。有識者を呼んでの意見聴取、あるいは集中討議なども行ってきましたが、フェイクニュース防止の必要性、また、それに伴う人権侵害抑止の重要性は幅広く認識をされているものと思います。しかし、それと同時に、国民の情報アクセス権、表現の自由など、重要な法理、法益もあり、なかなか困難な問題を内在していることも認識をされているところであります。
最近の諸情勢を見ますと、偽情報、フェイクニュースは、あらゆる場面でかなり増えてきている印象があります。近時はフェイクニュースの手法も極めて巧妙化してきて、デジタルフォレンジック手法などを駆使して、一見フェイクとは分からないようなものまで出現をするに至っております。
SNSの拡散容易性に加え、日本大学小谷教授によれば、正しい情報を流すことより、自らの考え、立場を開示し、自らの立場を少しでも有利にしたい、あるいは支持を広げたいとの意図、また、アテンションエコノミーと言われる経済的利益を伴うものも出てくるなど、情報の正確性は二の次になる傾向が強まったと分析をしています。
その一つの例が、小谷教授によりますと、二年前、二〇二三年、中国関係者の、ALPS処理水は汚染水で危ないとの偽情報発信が様々な主体から一斉に行われたことを挙げておられます。当時、ALPS処理水についての投稿が我が国に対する投稿の七割超を占めるといったような事態に立ち至ったわけでありますが、最近の各種選挙を見ても、偽・誤情報の流布などの弊害が極めて強まっており、さきの公選法の改正で、その附則で、選挙運動時のSNSの利用については必要な措置を講ずるとされており、そのことは、四月一日の与野党間で行われました選挙運動に関する協議会で優先検討事項とする方針が示されたところであります。
選挙という場面におきましては、公選法の虚偽事項公表罪があり、これはSNS上の偽情報、フェイクニュースにも適用されることが確認をされています。政府も、国会答弁で、SNSでの偽情報の拡散防止のための偽情報の取締りの必要性、また、国内外の由来を問わず虚偽事項公表罪を適用していく、さらに、迅速な偽情報削除のため、情報流通プラットフォーム対処法を適用するとの方針を明確に表明をしております。
選挙に限らず、一般の偽・誤情報に対しては、改正プロ責法によりまして、発信者特定の裁判手続の迅速化が図られますとともに、情報流通プラットフォーム対処法で、偽・誤情報の削除依頼に対して、プラットフォーマーがあらかじめ公表した客観的な基準の下、この削除基準に該当するものは投稿削除を行うことができることとなりました。
では、国民投票の場面でのフェイクニュース対策としていかなる制度設計を行うかは、党内でもこれからの検討すべき論点として今後検討を行う予定といたしておりますが、選挙という場面では、先ほど申し上げましたとおり虚偽事項公表罪の規定がありますが、これは、選挙時に偽情報が拡散されると民主主義そのものが危殆に瀕する、揺らぐとの考え方に基づくものであり、憲法改正のための国民投票の場面でもそのような罰則規定を備えるべきかということが一つの論点となるものと考えられます。
国民投票の場面でのフェイクニュース対策としては、先ほど申し上げました情報流通プラットフォーム対処法が適用可能であることはもちろんでありますが、広報協議会がいかなる関与をすべきかについては異なる見解が存在をします。
すなわち、ファクトチェックを広報協議会自らが行うとの見解と、ファクトチェックはファクトチェック機関に任せるべきとの見解が存在しますが、この点については、昨年末、十二月十九日の憲法審査会でも申し上げましたとおり、我が党でも今後の検討事項であります。党としてまだ正式な意見集約ではありませんが、私自身としては、昨年四月二十五日の憲法審査会で申し上げましたとおり、公権力の表現の自由への介入を極力避けるとの観点から、ファクトチェックそのものは原則ファクトチェック機関に委ねるべきであると考えます。今後更に議論を深めていくことができればと思います。
なお、情報リテラシー指数世界第一位のフィンランドでは、政府当局であります国家緊急供給庁が、ネットで広がっているフェイクニュースを公表したり、SNSの運営会社に偽・誤情報アカウントの削除を直接依頼したりしています。これは、国民の情報教育が早くから進み、政府の研究機関で偽・誤情報を見抜くAI基盤モデルを開発するなど、極めて先進的な事例として世界的にも注目をされているところです。
我が国においては、残念ながら、国民の情報リテラシーの点でも、政府の情報処理に対する国民の認知、信頼の点でも、そのレベルまで到達しておらず、今後の推移を待つべきものと思います。
そこで、国会図書館事務局に、もしフィンランドについての何らの情報があれば御教示いただければと思います。
○遠藤国立国会図書館専門調査員 寺田先生、御質問いただき、ありがとうございます。
それでは、会長の御指示に基づきまして、寺田先生の御質問に対する御回答を申し上げます。
参考資料の四十八ページの方にもございますけれども、参照した資料によりますと、フィンランドでは、ロシアと国境を接しておりまして、軍事的な圧力や偽情報、プロパガンダにさらされてまいりました。
フェイクニュース対策といたしましては、フィンランドでは、一九七〇年代から国の教育課程にメディアリテラシー教育が位置づけられ、現在も教科横断的に教育が行われております。
二〇二三年公表のメディアリテラシーの各国比較によれば、四十七か国中、今先生おっしゃったとおり、フィンランドは一位となっております。
以上でございます。
○寺田(稔)委員 ありがとうございました。
以上で終わります。
○枝野会長 次に、岡田悟さん。
○岡田(悟)委員 立憲民主党・無所属の岡田悟です。
国民投票におけるフェイクニュース対策について、私どもの考えを申し上げます。
昨今の選挙では、SNS等において虚偽情報や個人の誹謗中傷が大規模に拡散され、選挙結果を左右していると言わざるを得ない状況が生じています。また、諸外国では、自国に外交上有利となるよう、SNS等での投稿を組織的に行うことで、他国の世論形成に影響を及ぼそうとする動きがあります。
なお、今国会では、選挙戦でのポスターへの品位を求める公職選挙法の改正が実現をしました。SNS等の規制も議論となりましたが、附則によって、今後必要な措置を講ずるものとされました。選挙や政治活動でSNS等を単純に規制することは、表現の自由や政治活動の自由等を制限しかねないため、慎重な検討が求められているものと理解しています。
さて、私は、昨年十月の総選挙で兵庫七区から立候補をし、比例近畿ブロックで当選をしましたが、その直後、十一月に兵庫県知事選挙が行われました。選挙期間中や、その前後における齋藤元彦兵庫県知事による県職員へのパワハラ疑惑等の公益通報をめぐる混乱は、皆様もよく御存じのとおりと思います。とりわけ選挙戦においては、一連の問題の告発者の方や、この問題を追及していた元県議会議員の方にまつわる虚偽情報、誹謗中傷がSNSや動画投稿サイト等を通じて広く拡散をされました。
自ら命を絶たれた告発者の方は、個人であるにもかかわらず誹謗中傷にさらされ、元県議会議員の方もまた、今年一月に亡くなりました。自殺と見られています。元県議会議員の方は、生前、SNS等に端を発した誹謗中傷に大変苦慮していると私の知人に打ち明けていました。
そして、これらの情報源には、日本維新の会に所属をしていた別の県議会議員が立花孝志氏に提供した文書が含まれていました。選挙で選ばれた公職にある者がフェイクニュースの情報源となった事実は、極めて深刻に受け止めなくてはなりません。
では、こうした深刻な状況の中、憲法改正の国民投票を適切に行うことが可能でしょうか。これまでの憲法審での議論を踏まえつつ、その方法とルール作りについて検討をしました。
憲法審ではこれまで、国民投票広報協議会がファクトチェックに関与する手法が提案をされてきました。他方、広報協議会によるファクトチェックは、公権力による表現の自由への過度な介入になり得るとの懸念も示されてきました。これを踏まえれば、いかに虚偽情報であろうとも、脅迫や人命に関わるデマなど、犯罪となるものを除けば、これを制限したり削除したりすることは、実際には困難です。
そこで、特に大きく拡散をされ、世論に与える影響が大きい投稿等について、SNS事業者から情報提供を受け、広報協議会が付随的情報提供を行うといった形が考えられます。拡散された虚偽の投稿に対して広報協議会が把握している事実は何々ですなどの文言を表示することで、有権者へ注意を促します。表現の自由への過度な介入を回避しつつ、有権者により正確な情報をお示しをするとすれば、この程度が限界ではないでしょうか。
また、昨今の選挙戦では、いわゆるアテンションエコノミーを利用した収益化、SNS等で金銭を支払って虚偽情報や誹謗中傷を拡散させることが問題化しています。
兵庫県知事選挙においては、業務のクラウドソーシングを仲介するサイト、クラウドワークスを通じて、事実ではないが、より感情に訴えやすいセンセーショナルな内容の切り抜き動画を作成する業務が発注され、受注者は自身の政治信条とは無関係に動画を作成して金銭を受け取っていたことが明らかになっています。これは公職選挙法をめぐる議論でも論点となっていますが、国民投票でのこうした収益化は、罰則を設けるなどして厳しく禁止をするべきでしょう。
もっとも、これらの方法でフェイクニュースの問題が十分に解決をできるとは考えておりません。虚偽情報の拡散のスピードと、これが定着をしてから説明を尽くして誤解を解くことの困難さは、国内外の多くの専門家が指摘をしているところですし、私自身も日々地元で経験をしています。
SNS等で既に生じているこれらの問題については、後ほど米山隆一委員からお話をいただきます。
また、るる申し述べました国民投票の公平及び公正さを確保する方法を検討する中で、例えば、広報協議会とファクトチェック機関との連携の在り方、そして広報協議会とSNS事業者との連携の在り方など、より検討を深めるべき論点があるものと考えます。そのため、今後は、専門家やSNS事業者を参考人として招致をし、意見を伺う機会を設けることが適当であると考えます。
これで私からの意見表明を終わります。
○枝野会長 次に、阿部圭史さん。
○阿部(圭)委員 日本維新の会の阿部圭史です。
我が党は、憲法改正国民投票法の実施に当たっては、表現、言論の自由に配慮し、過度な規制は行わず、国民投票広報協議会等を通じた正確な情報発信によって国民的議論を喚起することが重要であると考えております。
そもそも、先週の本審査会における橘法制局長の御説明の中にもあったとおり、国民投票法制定の基本理念は、国民投票運動はできるだけ自由に、規制は必要最小限にということです。その理念を大事にするべきであると考えます。その上で、ネット上のフェイクニュース等が社会問題化している現状に鑑み、情報リテラシー教育の推進を図ることが重要でございます。
一方、外国勢力からのフェイクニュースを通じた憲法改正国民投票プロセスへの介入は、断固として防がねばなりません。外国勢力からのサイバー攻撃、国民投票プロセスへの介入は情報戦、認知戦として捉えるべき課題であり、四月八日の衆議院本会議で可決された能動的サイバー防御、アクティブサイバーディフェンス法案の役割も大きいと考えます。
政府が三年前の国家安全保障戦略で導入を宣言した能動的サイバー防御が、本法案によって本格的に第一歩を踏み出しました。しかし、あくまで第一歩でありまして、アクティブサイバーディフェンスはまだまだ強化すべき領域です。国民投票プロセスに当たっては、外国勢力からのフェイクニュースを通じた介入に対し、サイバーキルチェーンを通じてアクセス・無害化措置をどこまで実行できるかが問われているとも言えます。国民投票広報協議会と警察、自衛隊との連携が重要になってくるのではないでしょうか。
外国勢力からのサイバー攻撃、憲法改正国民投票プロセスへの介入は、全体に対する偽情報、ディスインフォメーションの拡散である場合や、有権者のプロファイリングを行った上で、特定の有権者層に対する政治的マイクロターゲティングが挙げられると思います。
外国勢力による選挙への干渉は、選挙コンサルタント会社ケンブリッジ・アナリティカの事例が皆様御存じのとおり挙げられます。二〇一六年の米国大統領選ではトランプ陣営を、イギリスのEU離脱を問う国民投票、通称ブレグジットでは離脱派をそれぞれ支援したとされるケンブリッジ・アナリティカが、フェイスブックのデータから詳細な心理的プロファイリングを行い、各フェイスブックユーザーを、神経症で極端に自意識過剰、陰謀論に傾きやすい、衝動的怒りに流されるなどと細かく分類をした上で、この分類に応じて政治広告を出して分類をしていたというふうにされております。
これらの事例は、民主主義の根幹を揺るがす事態でございます。令和四年十二月八日に本審査会にお越しいただいた慶応義塾大学の山本龍彦参考人も、「政治的マイクロターゲティングは、かなり効果的です。フェイクニュースにだまされやすい人にフェイクニュースをリコメンドすれば、その人の感情や意思決定を容易に操作できる。」と述べていらっしゃいます。
ケンブリッジ・アナリティカが自社を形容して、ビヘービア・チェンジ・エージェンシー、行動を変化させる組織であると定義していることからも分かるように、民主主義は外国勢力からハックされ得るということが分かります。
我が国の最高法規である憲法を改正する国民投票プロセスにおいても、同様のマイクロターゲティング広告を活用した投票の操作や、外国勢力の介入に対抗する措置を実行せねばなりません。
ケンブリッジ・アナリティカが関与した興味深い事例として、同社の元CEOは、カリブ海の島国であるトリニダード・トバゴの二〇一三年の選挙を挙げています。
同国の国民は大まかに黒人系とインド系の集団に分かれておりまして、同社はインド系の集団のために働いたと述べています。
同社は、黒人系のユースの世代、すなわち青少年世代をターゲットとし、ドゥー・ソー・キャンペーンと題して、いわゆる現在の政治や選挙というものに対して抵抗することがクールだという観念に基づきまして、選挙に行かないことがクールだという運動を展開しました。要するに、黒人系の若者に選挙に行かないように促したということです。
一方、インド系の若者は、たとえ選挙に行かないことがクールだという運動に浸ったとしても、各自の家という中で両親の教えに従う傾向にあることから、選挙に行くと想定されました。
このように、特定の社会層の無関心を高める広報活動によって、十八歳から三十五歳の投票率で四〇%もの差が出たことで、選挙結果で六%の差をもたらし、インド系に勝利をもたらしたとされています。
ごく最近の外国勢力による選挙への干渉として興味深い事例は、昨年十一月に行われたルーマニア大統領選挙です。
反EUや反NATOを掲げ、陰謀論や親ロシア的主張を展開し、当初泡沫候補であった土壌学者のカリン・ジョルジェスク氏が、中国のテクノロジー企業バイトダンス所有のSNSアプリ、ティックトックの動画の拡散を通じて急速に支持を集め、昨年十一月二十四日に行われたルーマニア大統領選挙の第一回投票で二三%の得票率で決選投票に進出しました。
しかし、政府の国家防衛最高評議会が機密文書を公開したところ、同氏のSNS戦略に親ロシア勢力の関与があったことを公表したことで、憲法裁判所が選挙を無効としたものです。
SNS上の異変が始まったのは選挙の二週間前。約二万五千のアカウントが突然活発にジョルジェスク氏に関する投稿を行ったとのことです。
ジョルジェスク氏は、憲法秩序の転覆を図った罪等で起訴されました。また、ルーマニア憲法裁判所は、去る三月十一日、来月、五月四日に行われる大統領選挙のやり直しについて、ジョルジェスク氏の立候補を禁止する最終判断を下しました。
ルーマニア情報庁や欧州委員会もティックトックの調査を行っているとのことです。欧州委員会は、本日の国立国会図書館の説明にもありました、偽情報などの対応をプラットフォーム企業に義務づけるEUのデジタルサービス法に基づき、昨年十二月三日に欧州議会での公聴会にティックトック技術担当者を呼んだところ、次のような証言がございました。ルーマニア大統領選挙で、第一回投票の前後一週間だけで、候補者に成り済ましたアカウント約一千件を削除。選挙前後の三か月間で、ルーマニア国内だけで七百万回の不正に押された「いいね」を削除。偽アカウントは六万六千件以上削除。
我が国でも、若者を中心にティックトックがかなり使われていることに加え、サイバー戦にたけた中国、ロシア、北朝鮮に囲まれています。憲法改正の国民投票プロセスを考えれば、より一層、アクティブサイバーディフェンスを含む体制の強化が望まれることが分かります。
ここで、五月二十二日に参考人聴取があるというふうにお聞きをしておりますけれども、二名の参考人の追加を提案したいと思います。一人目は、ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏。二人目は、ティックトックの周受資CEOです。
枝野会長におかれては、何とぞ御高配賜りますようにお願い申し上げます。
以上、終わります。
○枝野会長 お申出の件については、後刻、幹事会で協議をいたします。
次に、平岩征樹さん。
○平岩委員 国民民主党の平岩征樹です。
昨年十月に初当選したばかりではありますが、憲法調査会において諸先輩方が積み重ねてきた議論の土台とルールを尊重し、議論に参加させていただきたいと思います。
さて、私からは、まず、憲法と情報に関する人権について、国民民主党がこれまで主張してきた前提を述べた上で、国民投票を実施するに当たって論点になり得る三つの点に絞って発言いたします。
国民民主党は、かねてから、情報自己決定権や思想、良心の形成過程の自由の保障を含むデータ基本権を憲法に明記すべきという立場を取ってきました。
デジタル時代の到来とAI社会の進展により、プロファイリングやターゲティングによって個人の思想、良心がその形成過程からゆがめられ、ひいては選挙等の公正に対する脅威となり得るという懸念はもはや杞憂ではありません。このような状況は現行憲法制定時には全く想定されておらず、時代に即した人権保障のアップデートが必要です。この観点から、当然、憲法改正の手続を定める国民投票においても、意見の形成過程における自由は最大限保障されなければなりません。
〔会長退席、船田会長代理着席〕
以下、国民投票に関する考え得る三つの論点を申し上げます。
第一に、ファクトチェックの限界についてです。
ここで述べるまでもなく、ネット、とりわけSNSの進化により、日々大量の情報が生み出され、高速に拡散されています。それらは、誰が発信したかも、真偽も不明であるにもかかわらず、SNSのアルゴリズムによって、さもそれが真実かのように表示されてしまいます。そして、情報のつくり手は、スマホを持つ全ての人、潜在的には国民だけでなく外国勢力をも含み得る一方、ファクトチェックを行えるのは、専門教育を受けた限られた人材、機関に限られます。よって、全ての情報の検証は現実的に不可能で、ファクトチェックは全て間に合わないという前提に立って議論を進める必要があると考えます。
これを防ぐ方法として、これまで議論されてきたような公式情報をしっかり整備するということは重要ですが、それを上回る速度と質、量の虚偽情報が出回る事態もかなり現実的に想定しなければなりません。先ほど御説明いただいたように、EUでは、デジタルサービス法により、大規模プラットフォームに対しリスク評価やアルゴリズムの透明性確保を義務づけていますが、こうした制度的対応も我が国の議論に参考になるものと考えます。
第二に、投票の効力についてです。
昨年のルーマニア大統領選挙では、ロシアの介入が疑われ、憲法裁判所によって無効の判決が出され、再選挙が予定されています。この事例では、まず、憲法上に、憲法裁判所に対して、百四十六条f、ルーマニア大統領選挙のために定められた手続の遵守を確保し、選挙結果を確認するという役割が付与されていました。そして、情報機関の捜査によりテクノロジーによる不正操作等が判明し、適切な役割が付与された裁判所に適切な情報が提供された結果、選挙の無効が判断されたと理解しています。
日本においては、昨年の兵庫県知事選挙において、デマを含む大量の誤情報が拡散された結果、選挙結果に影響を与えたことが示唆されていますが、選挙無効の判断には至っていません。
憲法改正をめぐる国民投票においても、情報の真偽を明らかにした上で、結果に与えた影響を評価し、投票の効力を適切に判断する仕組みが必要ですが、現在の国民投票法において再投票を規定した第百二十八条は、そのような事態を十分に想定されていません。また、警察を含めた情報機関や裁判所の体制も整備されているようには見えません。我が国においても、投票結果の効力判断に関する法整備、体制整備を検討すべきと考えます。
第三に、デマ情報への罰則と規制についてです。
二〇一六年の熊本地震においては、当時のツイッターにおいて、動物園からライオンが逃げ出したとのツイートがなされ、二万回以上リツイートされた結果、動物園には問合せの電話が殺到して業務を妨害することとなりました。デマの投稿者は三か月後に逮捕されたものの、不起訴となっています。
現行法では、デマの生成、拡散自体に罪はなく、偽計業務妨害や名誉毀損等によって対処しているのが現状です。また、民事裁判における損害賠償請求によって高額な賠償を認める例も出てきています。
しかし、憲法改正に伴う国民投票において、これらは実効性のある罰則となるのでしょうか。デマを生成した者が損害賠償として金銭的な負担を負うというのは想像し難く、また、厳重な刑事罰を負うということも想定されていないように思います。国家の根幹たる憲法改正において、注目集めや金もうけを目的としたデマ情報の拡散が予見される中、そうした行為のハードルが余りに低くなっているのではないかという懸念があります。
ほとんどの国民は、デマを自ら生成することはないでしょう。しかし、外国勢力も含めた少数の悪意ある者が大量の情報を生成すれば、それらがアルゴリズムを通じて流通し、大多数の善良な国民もそれを信じ、さらには拡散に手をかしてしまうということがあり得ます。多くの人々に影響を及ぼす構造が存在する以上、効力と規制について議論を避けることはできないように思います。
最後に、これらの問題は、ほかの論点に比して憲法審査会における議論の蓄積が乏しく、また、技術の進展により、その性質も日々変化しています。したがって、改めて有識者や事業者から意見を聴取する場を設けることが必要だということを申し上げ、私からの意見表明といたします。
〔船田会長代理退席、会長着席〕
○枝野会長 次に、河西宏一さん。
○河西委員 公明党の河西宏一です。
本日は、国民投票におけるネットの適正利用、特にフェイクニュース対策をテーマとして、衆議院法制局また国立国会図書館から御説明をいただきました。
フェイクニュース対策は、法治国家たる我が国の根幹を左右する憲法改正をめぐる国民投票において極めて重要な対策であり、国民投票広報協議会の役割は大変重たいものがあります。
広報協議会の役割は、第一に、国民投票公報の作成、第二に、投票所に掲示する憲法改正案の要旨作成、第三に、広報協議会及び政党等の放送、新聞広告に関する事務、そして第四に、その他憲法改正の広報に関する事務がございますが、フェイクニュース対策は、この第四の、その他憲法改正の広報に関する事務に当たり、その内容の明確化を図るべく、これまで様々な御議論がございました。
その上で、AIなど急速な技術の進展やフェイクニュースの巧妙化に伴い、求められる対策の内容も日進月歩で複雑に変化しているように感じます。
そこで、本日は、フェイクニュースが社会的影響を及ぼすそれぞれの段階において必要と思われる対策は何か、情報の作成、公開、拡散、受容の四段階に整理し、意見を申し述べたいと思います。
第一に、作成段階です。
フェイクニュースは、何らかの意図を持って作成される偽情報であります。この作成を防ぐためには、偽情報が民主主義にとっていかに脅威であり、社会を不安定化させるのか、広報協議会がガイドライン等を通じた周知啓発に努めるとともに、他方で、外国等による偽情報の作成について、その意思を取り除き、あるいは抑止する、政府の外交及び安全保障上の努力が求められます。
第二に、公開段階です。
フェイクニュース発信への抑止策として、意見表明を行う者等の発信元に関する情報の表示を義務づけることが考えられます。また、現在、国内で開発中の、情報の起源を表示するオリジネータープロファイルのような技術がウェブブラウザーやSNS等に標準搭載されれば、併せて活用することも有効と考えられます。
イスラエルの歴史学者、ユバル・ノア・ハラリ氏が指摘したように、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどマスコミ四媒体とSNS等のインターネット媒体の最大の相違は、何をトップニュースにするのかを生身の人間が決めているのか、あるいはAIのアルゴリズムが決めているのかという点にあります。このアルゴリズムによるエコーチェンバーやフィルターバブルが分断を生み、それがフェイクニュースを起源とする場合は最悪のシナリオと言えます。
したがって、公開段階で、広報協議会が作成し憲法改正の賛否両方の意見を公平かつ平等に示した公報を、アルゴリズムとは切り離し優先的に表示させるようなシステムの構築及び稼働をSNS事業者等に要請することも有効な対策になり得ると考えます。
第三に、拡散段階です。
この段階に至りますと、フェイクニュースはアルゴリズムによって不可逆的に拡散されていくことになり、ますますファクトチェック機能が重要となります。
本日、衆議院法制局より御報告のあったように、このファクトチェックを広報協議会が行うのか、あるいは民間団体が行うのか、その実施主体について御議論があるところであります。当審査会における参考人の御発言や、国立国会図書館の調査等、海外における運用等の事例を踏まえ、第一義的には、国は、表現の自由を保障する観点から、ファクトチェックは民間団体が行うべきであり、当該民間団体への支援や、あるいは、ファクトチェック結果をアルゴリズムに反映させる仕組みをSNS事業者等と連携して構築することが求められると考えます。
その上で、外国等が明らかな意図を持って作成また拡散したフェイクニュースが公共の利益に重大な侵害を及ぼすと判断される場合等の国による対処については、令和四年十二月に閣議決定された国家安全保障戦略の、偽情報等の拡散を含め、認知領域における情報戦への対応能力を強化するとの方針に基づき議論すべきではないかと考えております。
最後、第四は、受容段階であります。
一度拡散され受容された偽情報の影響を完全に一掃することは困難で、ディープフェイクに至っては、それが架空の内容だと分かっていても、後遺症のように人間の思考に拭い切れない影響を残す可能性すらあります。
したがって、いわばゼロフェイクではなくてウィズフェイクを前提に、国民一人一人がいわば免疫としてフェイクニュース等への批判的能力を身につける環境づくりが広報協議会に求められてくるものと考えております。
そのためには、慶応大学の山本龍彦教授が提唱されたいわゆる情報的健康の観点から、自分とは反対の意見も含めバランスよく情報に触れる公開討論会等の機会を最大限活用すること、また、コンテンツの生成主体がAIか否かをパーセンテージで示すような、正誤判断を補助するツールの提供も場合によっては有効ではないかと考えております。
加えまして、政党や政治家自身が、憲法改正への賛否に係る意見表明と併せ、対立を超えて多様な意見に触れることの重要性や、国民を分断しない、させないとの強い意思を積極的に発信していくことが求められるのは言うまでもございません。最終的にはこうした私たち政治家の覚悟や良識も問われている、このようにも思うことを申し述べまして、発言を終わります。
○枝野会長 次に、大石あきこさん。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
本日、国民投票法を巡る諸問題、特にフェイクニュース対策について議論をしておりますが、確かに、事実ではないこと、事実をゆがめるようなことを広げる、それによって死者も出ているという現状もありますので、対策が必要ではありますし、一理はあるんです。しかし、議論の大前提を間違ったときに全く異なる結果が生まれてしまうので、私は、この審査会の議論においても皆さんに注意を促したいと思っています。
まず、フェイクニュースを流す主体というのが、国会議員や権力者ではなくて一般国民、圧倒的に国民側が訳の分からない事実をゆがめたフェイクニュースをやるんだという、圧倒的にそういう前提をしいておられると思うんですね。なぜなのか、違うんじゃないか。
自民党の寺田委員が本日フィンランドの事例を用いまして、フィンランドの国民の情報リテラシーが高いんだ、しかしながらと、こういうふうにおっしゃっている。我が国においては残念ながら国民の情報リテラシーが追いついていないということで、国民の情報リテラシー問題にされていて、それはおかしいんじゃないか。ここに座っている衆議院議員、国会議員のリテラシーはどうなんだ。憲法を遵守するという意識はどうなんだ。事実をゆがめていないか。そういう、フェイクニュースを流す主体を一般国民に絞った議論というのは非常に問題があると考えています。
本日の法制局の資料でいいますと十ページと十一ページですけれども、広報協議会がファクトチェックを実施すべきでないという見解がありますよね。国家権力による情報統制の危険が生じる可能性があると。まさにそうでありますし、十一ページにおいても、有識者の参考人の意見として、政府自身がファクトチェックをやることが、何がファクトなのかどうかということを政府がやるということは、憲法上、検閲のリスクにもなりますからというふうに言っています。
こういった権力者側の情報統制の危険、憲法上の問題というのに加えて、やはり、事実ではないこと、事実をゆがめることをやる権力者側、そういった現状もあるという前提をしかなければ、これは全く違った、外にいる国民があくまでフェイクニュースを流すんだ、じゃ、権力者側が十分権力に注意して検閲にならないようにしましょうねという議論では、これは不足していると考えています。ですから、やはり実際の事例に基づき解像度を上げて検証しなければ、これは全く間違った結果になると考えるんですね。
もう少し、なぜこの意見をするのか、エッジを利かせて言えば、やはり、この衆議院の憲法審査会のメンバーでもこの議論を進めていく危険性を感じるからであります。だから、こちら、運営者側といいますか、審査会長も含めてですけれども、検証するべきことだと考えています。
今回、七分しか意見を表明する場がないので、なかなかどれを選んで言うのかというのは難しいんですけれども、やはり、オフィシャル側、権力者側が事実ではないことを発信する場合があるのだという事例検証としては、一つは都構想で、そしてもう一つは万博、そういった事例で検証するべきだということがあります。
都構想でいいますと、二〇二〇年の都構想の住民投票の投票日の二日前ですけれども、毎日新聞が、都構想でまだ語られていない追加的コストとして、四つの特別区に分割するときに二百十八億円の追加コストが要るという試算を大阪市自身がやったということをスクープで報道しています。
これ自身は、私も含め市民が検証すると、現状ある前提条件の中でかなりもっともらしい試算でした。初めて出された試算でしたが、これを、オフィシャル側、大阪府や大阪市自身が、大問題だ、事実ではないということで大騒ぎしまして、大阪市のその試算を出した人の処分にまで至っています。そういったことがありますので、これは検証されるべきです。そして、これは時間を取ってお話ししたいんですけれども、七分しかないので、こういった検証をするべきだという意見といたします。
そして、やはり、オフィシャルが、運営者が何がファクトなのかどうかということを検閲する、制動を加えるということの問題はこの審査会でも起きているのではないかということを、これは枝野審査会長に要望及び質問という形でお話ししたいと思うんですけれども。
前々回のこの審査会においても、立憲の藤原委員ですけれども、法制局の作成資料について、これは事実がゆがめられているというような議論をされました。それを、法制局の職員を侮辱するような言論だから批判したんだよというふうに審査会長はおっしゃるんですけれども、そうじゃなくて、やはりこれは、審査会長がおっしゃるように、法制局の資料に責任があるのですから、審査会長の資料の管理に対する提言であったと受け止めて検証されるべきであったのに、審査会長がその場で注意をして、法制局の職員にそういう言い方は駄目なんだという注意をして、そして、主には改憲を主張されている会派ですけれども、翌週に次々と、藤原委員に対する抗議というか、許し難いという言葉を次々述べたというのは非常に恐ろしいことで、そういった資料を、ここの委員の、特に改憲派の意図を酌んでそういう資料が作られたのではないかという観点を抗議するというのはあってはならないだろうと、改めて表明します。
そして、私に、前回の審査会の後に枝野審査会長が私を注意したんですね、審査会長室に来るようにということで。注意したものの、余り明確にはされなかったんですが、キーワードとしては国賊、チンピラという、私が、これこれこういうことをする人は国賊だ、これこれこういうことをするというのはチンピラだと言った、そのワードのことは出されました。そのワードをもって、要するには失礼だという内容なんですけれども、失礼だという注意を行われました。
これはなぜなのか。例えば、維新の方が壊れたテープレコーダーと改憲を反対する人たちのことを何度も言っていますが、これは失礼ではないのか。そういった、そのように注意したのかという公平性の観点。それから予見性ですよね。非常に言論というのは公正な論評に幅が広いものですから、その幅を教えてください、予見性のためにも教えてくださいということに対しては、それは説明がなかったんですよ。だったらば、そういった運営がここでもなされてしまうんですね。
私の言ったワードというのは、単にあなたはチンピラと言ったわけじゃなくて、なぜそう言ったのか、事実に基づいて、事実を念頭に、公益性の高い論評として行っておりますので、単なる注意というやり方で萎縮させるのではなくて、明確な基準、公平性と予見可能性という基準で説明責任を伴うように注意をしてください。
以上です。
○枝野会長 申出の点については、幹事会で協議をいたします。
次に、赤嶺政賢さん。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
前回も述べたように、私たちは、国民が改憲を求めていない中で、改憲のための国民投票法の整備を進める必要はないという立場です。
今日のテーマとなっているインターネットでのフェイクニュースなどの問題も、これに対応するために国民投票法を整備するべきだという声は上がっていません。もちろん、意図的に悪質なデマや誹謗中傷を発信することはいかなる場合でも許されません。システムやサービスの基盤を提供しているプラットフォーマーなど、事業者の責任も重大です。しかし、政府や国会が言論の内容に直接介入することは、国民の表現の自由の抑圧につながります。国民の基本的人権に関わる問題であり、国民投票法ありきで議論を進めれば、誤った方向に向かいかねません。
実際に、これまでの議論でも、国会に設置する広報協議会にファクトチェックの役割を担わせるべきだという主張がされています。しかし、協議会の委員の大多数は、改憲に賛成した会派から選ばれる仕組みです。改憲を進めるのに有利な意見がまかり通り、少数派の意見が抑圧される危険性を持つものです。改憲派が多数である協議会がファクトチェックを行えば、その判断は恣意的なものになりかねません。
そもそも、国家権力である国会がネットの書き込みや動画の内容を調べ、措置することは、国民の自由な意見表明に対する検閲にほかなりません。そのための危険性は、この審査会に出席した参考人も指摘しています。国民投票法と絡めた議論はやるべきではありません。ましてや、広報協議会を具体化する規程作りを進め、ファクトチェックまで担わせることは絶対に認められません。
その上で、インターネットをめぐる政治的課題について意見を述べます。
この問題を考える上で重大なことは、政府が企業の利益のためにデジタルデータの利活用を優先させ、個人情報や保護をないがしろにしてきたことです。
ネットやSNSで虚偽情報や誹謗中傷が拡散されやすい要因の一つに、利用者の関心に合った動画や広告を表示させる仕組みの問題が指摘されています。そこでは、プラットフォーマーなどの事業者は、視聴履歴や行動履歴などの膨大な情報を基に、利用者の趣味、嗜好や性格などを分析し、それに合わせた情報を表示するようになっています。この仕組みが偏った情報に陥りやすい環境を生んでいると言われています。
こうした個人情報の収集やプロファイリングは、プライバシー権や内心の自由、人格権など、国民の基本的人権を侵しかねない重大な問題です。だからこそ、EUは、自己情報へのアクセス権や忘れられる権利、プロファイリングなどによる意思決定を拒否する権利を個人の基本的権利として保障し、その下でプロファイリングやレコメンドシステムなどを規制しています。
日本の個人情報保護法制も、国民の人権を拡充させる方向で強化することが求められています。山本龍彦参考人は、自己情報コントロール権を保護法制の中に位置づけるべきだと強調されました。
ところが、日本政府は、企業による個人データの利活用を優先させ、個人情報の保護を置き去りにしてきました。デジタルデータの利活用を成長戦略と位置づけ、官民が保有する個人情報を企業が利用しやすいよう制度化し、自治体が持つ個人情報まで企業が利用できるようにすることを強制しています。
一方で、保護対象となる個人情報は限定的なものにとどまっています。個人情報の収集や利用は、そのほかの規約などと一緒に通知、公表されていれば、利用者に自覚がなくても同意したとみなされます。海外への移転も禁止されていません。国民の個人情報を企業のもうけに利用し、人権を脅かすもので、断じて認められません。
インターネットが国民の当たり前の通信手段となる中で、個人情報保護法制を抜本的に変革し、国民の人権を保障することこそ必要です。そのための議論を憲法審査会ではなく予算委員会や内閣委員会などの各常任委員会、特別委員会で大いにやるべきだと申し上げて、発言を終わります。
○枝野会長 次に、北神圭朗さん。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
偽情報の蔓延については、これは正確な情報に基づく民意形成をゆがめ、選挙を始め民主主義の健全な運用に支障を来します。今の米国の現状を見れば一目瞭然です。また、外国から発生するものも多く見られ、外交、安全保障上の観点からも厳しい対応が求められます。米国の国論分裂の背後には、同国の国務省が警告しているように、ロシアの影が見え隠れしています。
我が国でも、昨年十月四日の日経新聞によれば、二〇二三年以降、沖縄独立をあおる偽動画が主に中華圏向けのSNSで拡散されています。同紙が分析したところ、約二百もの中国の工作アカウントが投稿の拡散に関わっていたことが明らかになっています。一橋大学の市原麻衣子先生は、今回の沖縄独立デモの動画が明らかなうそでも、沖縄と中国のつながりの印象づけになる、日本の世論分断を刺激する効果は十分あり得ると警鐘を鳴らしています。
先週の本審査会で、私はEUのデジタルサービス法にこうした外国の介入の文脈で触れましたが、柴山委員も御指摘されたとおり、国内外問わず、偽情報の拡散防止にも使います。この法律により、プラットフォーマー自らが、国内外の違法コンテンツの拡散と、それによる国民の権利や選挙等への悪影響を評価し、対策を取ることを義務づけられます。違反したら、巨額の制裁金を科すことができます。
一方で、これとは別に、私は、国民投票広報協議会が、国民投票の過程並びに外国勢力を起源とする偽情報に対して、自らファクトチェックを実施する必要性について発言してまいりました。もちろん、これに対し、政党が主導する協議会がこうしたことをするのは公権力による言論の自由への関与となるとの懸念が本日も表明されています。
しかし、まず考えていただきたいのは、同じく言論の自由に重きを置く欧州諸国が、我が国に比べて、ファクトチェック団体の質も高く、数も多い上に、プラットフォーマーに対する、今申し上げた厳格な規制が整っているにもかかわらず、なぜ当局自らがファクトチェックを行っているのかということです。
推測するに、そもそもプラットフォーマーのビジネスモデルというものが、アルゴリズムにより利用者に大量の情報と広告を届けることにあり、それらの客観性を保証する動機が低いこと、偽情報は正しい情報に比べて拡散が速く、これを訂正する情報の拡散は遅いこと、このような隙をついて、中国、ロシアなどが相手国の社会分断を謀る情報発信を助長していることが背景にあるように思います。つまり、偽情報の氾濫を放置すれば自国の民意が一部の国家に操作されかねないとの危機感から、あらゆる対策を講じているのではないでしょうか。
以前も報告したとおり、ドイツ、オーストラリア、カナダなどでは、選挙管理委員会自らが、選挙過程全般に関係する偽情報を特定し、公表しています。また、EUの対外活動庁も、外国からの偽情報対策に関する専門サイトを立ち上げております。既に一万八千件を超えるファクトチェックを行っています。これは、選挙過程だけではなく、政策、意見に関する事実関係にも踏み込んでいます。
御参考までに、このサイトには次のように書かれております。偽情報を作成し拡散するのは、インターネット上の個人だけではない、外国、特にロシアと中国は、法の支配、選挙で選ばれた機関、民主主義の価値観、メディアへの信頼を損なわせることで私たちの社会に分裂を招き、民主主義を弱体化させるために偽情報と情報操作を組織的に利用してきた、外国の情報操作と干渉の一環としての偽情報は、EUとその加盟国の安全に影響を与える安全保障上の脅威となると。
このように、諸外国では、言論の対象に違いはあれども、それぞれ、民主主義を守る観点から、また安全保障の観点から、当局自らがファクトチェックを行っています。
他方、我が国のファクトチェック団体は、その数も、規模も、体制も、機能も、まだまだ改善の余地があります。加えて、欧州における制裁金等の規制もなく、政府とプラットフォーム事業者との連携も機能しているとは言い難い。先ほど寺田委員が指摘した公職選挙法等の措置もありますが、罰則なき削除命令では、やった者勝ちに終わるでしょう。
こうした中で、他の先進国が普通にやっている公権力の介入を嫌う余り、体制が十分と言えない民間団体との連携だけで偽情報対策が有効にできるのか、甚だ疑問と危機感を感じます。
したがって、現時点では、国民投票広報協議会が、少なくとも、国民投票の過程に関する言論の事実検証を行うべきだと考えます。明らかに外国勢力を起源とするものであれば、より踏み込んだ形での事実検証が求められます。同時に、そのための専門家を広報協議会に招致するなどして、専門性と公平中立性を確保するための体制を整える必要もあります。
事実とうそがない交ぜにされる中、民主主義の過程において国民の自律的な意思が阻害されないため、より積極的な姿勢で臨むべきことを申し上げて、私の発言を終わります。
―――――――――――――
○枝野会長 次に、委員各位による発言に入ります。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は三分以内となります。質問を行う場合、一度に答弁を求めることができるのは二会派までとし、一回当たりの発言時間は全ての答弁時間を含めて五分以内となりますので、御留意ください。
発言時間の経過につきましては、それぞれおおむね三分経過時、五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○井出委員 自由民主党の井出庸生です。
国民投票に係るフェイクニュース対策について発言をいたします。
私は、令和四年十二月の憲法審査会で慶応大学の山本龍彦先生がおっしゃったように、言論空間全体が様々な情報がある中で、フェイクニュースへの免疫を獲得する状態を目指していくこと、また、同年六月、NPO法人ファクトチェック・イニシアティブの楊井参考人がおっしゃったように、フェイクニュースを法律で規制することには私も慎重であり、言論空間の中で、ファクトチェックの活性化、民間の活動が極めて大事だと考えております。
その上で、憲法審査会で議論のありました、国民投票広報協議会がフェイクニュースについてどのように関わることができるかについて申し上げたいと思います。
様々な議論がこれまでされておりますが、先ほどの北神委員の御発言、北神委員は昨年六月にも、国民投票の過程そのものについて広報協議会がその対処をするべしとの御発言をされていたとも思います。私も、フェイクニュースの対象に広報協議会そのものの活動がなった場合、これに対してどう説明、どう反論していくかということは議論をしておく必要はあろうかと思います。
広報協議会は、衆参十名ずつの委員で構成をされる、立法府の下に置かれるものでございますので、まずそうしたことも、立法府でそれぞれの活動でというようなお話もあろうかと思いますが、広報協議会の中で慎重な合意形成がされれば、協議会としての対処ということもあり得るのではないかというふうに思います。
慎重な合意形成と申し上げましたのは、ファクトチェックには事実と意見の峻別が必要であるということでございまして、慎重な合意形成を図るということによって、事実関係に特化した説明、反論というものが検討できるのではないかというふうに考えております。
それともう一つ、外国からの干渉についても御議論がございます。
私は、外国からの干渉については、これは国民投票と関係なく、まず、ふだんから政府を中心に様々な検討、議論をしておくことが必要だと思います。発信元が明らかなものやそうでないものも想定されますが、私は、特に、発信元が明らかでないものをどのように発信元を特定していくのか、日本のインテリジェンス機能については非常に懸念を持っております。
外国からの干渉について広報協議会ができることというのは、私は、冒頭申し上げましたとおり、広報協議会の活動そのものについてのことであれば、冒頭申し上げたような検討はあろうかと思います。
最後になりますが、言論空間のことは言論空間で正される、解決することが望ましいと考えており、その上で、最小限やるべきことを議論していけばよいのかなと思います。
可能であれば、北神委員の御見解もいただければと思います。
どうもありがとうございました。
○米山委員 立憲民主党の米山です。
私は、憲法投票において広報協議会のような対策を講ずることを前提とした上で、まず、それに先立って、先ほど法制局からも話のあった、通常の言論空間における健全性の確立の必要性について申し上げたいと思います。
現在のSNS上の言論空間は、偽情報や誹謗中傷があふれております。二〇二〇年にプロレスラーの木村花さんがネット上の誹謗中傷が原因で命を絶ち、二〇二二年に侮辱罪が厳罰化されましたが効果がなく、昨年の兵庫県知事選挙では、数々の偽情報が流された末に、誹謗中傷の標的となった兵庫県議会議員が命を絶つという痛ましい事件がございました。
実は、私自身もそこそこ誹謗中傷にさらされておりまして、偽情報や誹謗中傷を流す人にとっては中身は無関係で、それらしい動画に勝手なあおり文句と誹謗中傷を入れて動画サイトに置けば、面白がる人によって拡散され、少なからずの人が命を絶つほどに傷つけられ、世論が大きく左右されるということが現在進行形で起こっているわけです。
このような状況で国論を二分する憲法改正の国民投票を行った場合、憲法改正の発議そのものについては、今ほど来お話がありました様々なファクトチェックや法規制等によって一定の適正化が図られたとしても、今度は、その賛否を問う活動をする人、今ここに御列席の各党の議員の方々を始め市民の方々までもが標的にされ、激しい偽情報や誹謗中傷にさらされ、それによって投票結果が大きくゆがめられる事態が生じる可能性は決して低くない、むしろ起こる可能性の方が高いと考えざるを得ないと思います。
我々は、公正に形成された民意を適切に反映した憲法改正を行うには、国民投票におけるファクトチェックほかの法規制のみならず、まず、今現になされているSNS上での偽情報や誹謗中傷に対し、憲法で保障される言論の自由の観点も考慮しつつ、刑法、情報流通プラットフォーム対処法等の諸法令を改正、整備し、適正な言論空間の確立をする必要があることを強く申し上げたいと思います。
今ほどの私の見解に対して、二〇二〇年に、インターネットの誹謗中傷対策は侮辱罪の厳罰化で事足れりとして現在に至るまで不十分な対策しか打てていない自民党に御見解を伺うとともに、先ほど外国勢力からの介入に対しては非常に熱心に対策を訴えられたんですけれども、一方で、さきの兵庫県知事選挙において誹謗中傷の原因となった真偽不明の情報の流布に加担した県議が所属しておられました日本維新の会に御意見を伺わせていただきます。
以上です。
○枝野会長 では、日本維新の会に質問がございましたが、御答弁、どなたかいただけますか。
○米山委員 自民党にもお願いします。
○枝野会長 あと、終わって自民党ですね。
では、それぞれ一分ぐらいずつで。
○和田委員 私も県会議員を経験してきていて、現場というか、兵庫県政の今の現場にはいるわけですけれども、この問題は、御党がおっしゃるようなそういう感覚、あるいは先ほどの大石さんが言われるような感覚で単純に見えるものではないと私は思います。もっと深いものがあるだろうと。
○枝野会長 傍聴席はお静かにお願いいたします。
○和田委員 それは私は、深いというのは変な意味じゃなくて、基本的に、我々の社会が今どういうところに立っているかというところから考えないと答えは出ない。誰が悪い、あれが悪い、あの党が悪い、あいつが悪いの話では私はないと思います。
我が党は別にそういうものをあおったわけでもないし、我が党が何かそういうことに対して責任を持って誹謗中傷したわけではありません。これは私たちが、社会そのものが今持っている一つのものが背景にあると、私は個人的には思います。これは党の見解というよりも私の見解かも分かりません。
○寺田(稔)委員 我が党としても、これまでも、プロ責法の改正、そして、プロ責法を更に発展的に解消させて情報流通プラットフォーム対処法を作り、また与野党間で、先ほども申し上げましたとおり協議会も設定されて、このSNSをめぐる問題は優先検討事項とされているところでございます。
もちろん侮辱罪、あるいはまた、偽・誤情報に対しては、一般的な刑法規定ではございますが詐欺罪、これは財産的な供与を伴うという法律の構成要件がございますけれども、それによって経済的利益を得た場合は詐欺罪。また、風説の流布の規定というのが、これも一般規定ではございます、かつての証券取引法に規定されていた規定もあるわけでございますが、様々な検討を行っているところであります。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
現行憲法が制定された一九四六年以来、人権保障を取り巻く状況は大きな変貌を遂げてまいりました。具体的にはインターネットの普及やAI技術の誕生など、先ほど同じ会派の平岩委員が述べたとおりですが、それによって、フィジカル空間かサイバー空間かにかかわらず、有権者の主体的な判断過程のゆがみ、ひいては、自律した個人の尊厳といった、近代立憲主義が目指した中核的な価値それ自体が脅かされている状況が発現していると言わざるを得ません。
このような時代を迎えた中、個人の尊厳を守り続けるためには、データ基本権、すなわち情報の自己決定権の保障など、時代に即した人権保障のアップデートが検討されるべきだと思います。
特に、デジタル時代の思想、良心の形成過程の自由の保障については、重要な論点であると考えております。
プロファイリングに基づく個人の意思形成過程への働きかけによって、個人の内心の形成過程や認知傾向に過度な干渉が及ぶおそれがあることは、多くの識者が指摘しているところであります。思想、良心の形成過程自身が本人の自律的な選択、決定によるものとは言えないような事象が生じ得ることそのものが大きな問題であります。
そこで、そのような内心の思想、良心の形成プロセス自体の自由又は自律性がゆがめられることがないようにすることについても憲法に明記し、その保障を十全たらしめることを検討すべきと考えます。
ここで、自民党及び立憲民主党に質問させていただきます。
憲法十九条には、思想、良心の自由は、これを侵してはならないという規定がございますが、この解釈については様々な学説がございます。我々としては、今申し上げたように、その形成過程の自由も保障されるべきと考えておりますが、両会派の見解を伺います。
続けます。
一方、プラットフォーム提供者は、形式的には、国や地方自治体のような公権力ではなく私人でありますが、昨今の状況を踏まえれば、プラットフォームは、社会経済生活において不可欠な存在となっており、情報やデータ流通の文脈では、もはや国家と同等か、それ以上の社会的権力を行使していると言っても過言ではありません。したがって、プラットフォーム提供者自身の表現や編集の自由などにも十分に配慮しながらも、一定の責務を課すことを検討すべきと考えます。
他方、国には一般的に、国民を保護する責務があり、それこそが国家の存在意義そのものであります。したがって、国に対しても、プラットフォーム提供者がその責務を十分に果たすことができるような環境を積極的に整備する責務を課すことも必要となると考えます。
なお、国の環境整備の一環として、今後、国とプラットフォーム提供者との協定といったソフトロー的な手法が講じられることなども議論されておりますが、こうした自主規制については、国からの要請や法の支配をかいくぐるような運用とならないよう、民主的統制を担保するため、国会の関与を義務づけることなども検討されるべきと考えます。
発言は以上です。
○枝野会長 今、浅野さんからの御質問については、両党の幹事とお話をしましたら、いずれも次回に回答をさせてほしいと御要望でしたので、それでよろしゅうございますか。
○浅野委員 はい。
○重徳委員 立憲民主党・無所属の重徳和彦です。
私は、ネット空間でのフェイク情報のうち、特に外国勢力によるものについて意見を申し上げます。
私は、憲法改正の国民投票へのネット情報については、外国勢力によるフェイク情報への対処が本質的に最も重要な問題だと考えます。
日本国憲法の前文は、国民主権について、「これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」とあります。
すなわち、憲法改正を行う場合も、それは主権の存する日本国民の手で行わなければならず、そこに外国勢力の不適正な影響が入り込んだら、その憲法改正の効力も排除、無効とされかねません。日本国民がしかけるフェイク情報も何らか規制せねばなりませんが、外国勢力によるフェイク情報は、より厳しい対処をしなければならないと思います。
この点、国立国会図書館からの資料の中で、EUの対外行動庁の対ロシア真偽検証活動といったことも調査していただいておりますので、参考にすべきではないかと思います。
また、国民民主党の平岩委員から御指摘がありましたように、憲法改正の効力を判断する仕組みも必要ではないかと考えております。
ちなみに、ネット空間の情報通信の動きを監視する仕組みが、これは維新の阿部委員が御指摘されました能動的サイバー防御法案と考えております。この法案は、国家安全保障の観点から成立を目指しているものでありますので、外国勢力からの防衛を目的としているものであります。こういった法制も活用していくべきではないかと考えております。
もう一点は、現在日本国民が使用しているSNSサービスのほとんどを提供している外国のデジタルプラットフォーマーについてであります。一例を挙げれば、本のネット販売サイトを運営している最大のデジタルプラットフォーマーは米国のアマゾンであります。
本というのは、基本の本と書きます。文字どおり、人間の知性や知的行動の本(もと)と言えます。国民の思想に影響を与える知的情報の礎であります。
従来、本は町の本屋さんで買うのが一般的でしたけれども、昨今では、本屋さんの販売冊数は激減しまして、ネット販売が増えまして、町の本屋さん自身の数も激減いたしました。こうなると、デジタルプラットフォーマーがその気になれば、日本国民に読ませたい本をサイト上に表示をしてお薦めすれば、その本を選ぶ日本国民が増えるということになっていくでしょう。日本国民が読む書物の選択に特定の外国企業が過度に関わることは問題だと思っております。だから、私は町の本屋さんを守りたいと思っております。
ネット情報の支配力の根源は、SNSサービスを提供する外国資本のデジタルプラットフォーマーにあると言っても過言ではありません。今日、国立国会図書館から提供のありましたとおり、イギリスの二〇二三年オンライン安全法では、外国干渉の罪が違法コンテンツとして規定をされております。こういったことも参考に、規制について考えていくべきではないかと思います。
以上です。
○和田委員 日本維新の会の和田有一朗です。
意見を申し述べ、あと、国会図書館に質問をしたいと思っております。
昨年はまさにSNS選挙元年と呼ぶにふさわしい年であったと思います。いわゆる石丸現象に始まって、先ほどから話題になっている兵庫県知事選挙しかり、衆議院選挙しかり、ネットやSNSが選挙において大きな影響力を及ぼすことは明らかであります。既存メディアをネットが超えて新しい時代に入ったということがはっきりした、分岐点の年だったかも分かりません。
SNSが選挙や国民投票において活用されることは、もちろん誰もが自由に意見を表明でき、世の中を動かすことができるというメリットがありますが、フェイクニュース、フィルターバブルの影響により国民が両極端に分断されてしまうということが懸念されます。偽情報であっても知らず知らずのうちに真実だと刷り込まれてしまう危険性も実感しています。大変な時代だと私は思います。
私も、地元では朝の駅頭をしていますが、いまだにはっきりと厳しく、知事を辞めさせろという言葉と知事を守れという全く相反する二つの言葉を本当にたくさんの方からいただきます。両者歩み寄れない、折り合いのつかない状況があると私は感じていて、はっきりと県民が分断されているな、分断が進んでいるなと私は危惧をしています。五期県会議員をやりましたが、こんなことは今までありませんでした。なぜこんなことに兵庫県はなってしまったのかと私は悲しく思っています。
今私が感じているのは、ネットは選挙においては、正しい情報を広げるよりも、敵対味方というフレームを広げたり、政策論よりも敵をつくることを後押ししているのではないかと感じるようになってきました。
そこで、私は個人としては、実は、既存メディアの役割の重要性や責務が逆に求められるようになってきているのではないかと感じています。裏を取り、丁寧に記者が現場でニュースを集め配信をするという広範な作業、その機関、組織、これは社会にとって大切な基礎的なインフラだと思います。そういう意味で、既存の報道機関を更に公正中立なものとして健全に保護、育成する新たなフレームをつくる必要があるというふうにも私は思います。
さらに、私が懸念するのは、先週の審査会においても、先ほど来より出ている発言もありますし、私もしましたし、複数の委員が言っているように、こうしたネットやSNSの特性を利用して外国勢力が我が国に対して影響力を行使するのではないかという点です。
先週の読売新聞の報道では、ロシアが偽情報を流した結果、それを学習した生成AIが更に偽情報を流布するという再生産の構造が生じていると言います。人だけではなく生成AIまでもが偽情報に汚染され、更なる悪循環を生んでいる。ネットを通じた政治過程における外国勢力の介入、そしてそれによる国民の分断の危機を私は懸念しています。
そこで、せっかくですので、今回、国会図書館にお伺いします。
諸外国では外国勢力による偽情報の流布や政治への影響力行使について様々な対策がなされていると聞きますが、ロシア・メディア由来の偽情報を検証する取組が紹介されましたが、そうした取組の経緯や検証実績について、せっかくですので、参考までに教えてください。
○遠藤国立国会図書館専門調査員 和田先生、御質問いただき、誠にありがとうございます。
それでは、会長の御指示に基づきまして、和田先生の御質問に対する御回答を申し上げます。
二〇一四年のロシア勢力によるウクライナ東部などでの紛争の際、ロシアは偽情報キャンペーンを実施したとされております。その動きに対抗するために、二〇一五年の欧州理事会の指示により、対外行動庁の下で、EUvsDisinfoというウェブサイトを通じてロシア由来の偽情報を識別、検証して発表する取組が開始されました。
同ウェブサイトによりますと、現在までに一万八千件以上の偽情報の事例を収集してその誤りを暴いたとされており、さらに、ロシアがウクライナに本格的に侵攻を開始した二〇二二年には、二百七十万人以上の人々が同ウェブサイトを閲覧したとされております。
以上でございます。
○大野委員 自由民主党、大野敬太郎でございます。
偽情報などの議論では、表現の自由は非常に重要な価値であるのは当然で、規制は極力最小にすべきです。
一方で、新しい技術やサービスを前提とした、公共の福祉による制約の議論深掘りも重要と考えます。特にSNSは、匿名投稿が可能な上、収益構造の特殊性、広告手法の緻密性などから、質よりも注目度が評価され、極論や偽情報が拡散されやすい傾向、また、極端論者による中庸論者の萎縮や、個人別広告の影響などで意見誘導されやすい傾向にあります。外国勢力による主権侵害の影響工作も指摘される中で、投票結果の正統性は中心的な課題です。
そこで、二つの対比を行った上で、具体的な措置を提案してみたいと思います。
第一に、放送広告との対比です。
放送に関しては、投票日前二週間の勧誘CMの禁止や、放送法を前提として、事業者の自主的取組に期待しつつも、広報協議会の活用に注力するというのが我が党の基本的な方向ですが、SNS事業者には、事業の特性上、放送法に類する業法はなく、加えて、各種調査では、国民が投票で参考にする媒体や広告市場のシェアなどから、もはやその影響力は放送よりも高く、少なくとも国民投票上は、状況によっては何らかの法的措置が必要と考えます。
第二に、公職選挙との対比です。
現在、選挙運動に関する各党協議会においてSNS等に関する具体的な措置が検討されていますが、国民投票については、主に外国勢力の影響排除を念頭に、公職選挙と方向性は共有しつつも、場合によっては、公職選挙よりも踏み込んだ対応もあり得ると考えます。これは憲法改正の重要性に鑑みた帰結であるとともに、間接民主制よりも直接民主制の方が外国勢力の影響を受けやすいためであります。
第三に、以上の二つの対比を踏まえた具体的な措置を述べます。
言論空間全ての健全化の進展をにらみつつも、憲法改正という限定課題に関しては、広報協議会とファクトチェック機関との情報共有や行動規範策定のほか、事業者には、関連コンテンツを、広報協議会発信のもの、それ以外のもの、広報協議会を含む信頼できる機関から意見のあったもの、実名投稿など一定の質が確保されたものなどに分類の上、ラベル表示、表示優先順位の工夫など、そのほか、流通状況の公表や個人別広告の抑制など、透明化に向けた一定の対応を求めるのはあり得ると考えます。
以上です。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
先ほど、維新の和田委員が、フェイクニュースの問題について、どの党が悪いんじゃないんだという話で、大石さんの言われることとおっしゃったんですけれども、どれですか。私が先ほど発言したのは、現状の権力者が事実認定をするということは問題があるということを、都構想、大阪府、大阪市という行政体のやった事例として言いましたので、どの党が悪いという話をしていませんが、どれですかということを御質問したいです。
それから、維新の阿部さんにも御質問したいです。これは憲法審査会の今後の運営にも関わるのでお聞きしたいんですけれども。
前回、阿部さんが、私のこのような発言、国民投票法のCM規制において、これはざるだろうというものの例として、吉村知事、維新、メディアの蜜月について述べたんですけれども、その私の発言に対して、阿部さんがこのように発言しました。我が党の吉村洋文代表、大阪府知事に対して、まさに現実、事実を捉えていない言説をおっしゃっていましたので、そして、特定の人物や我々全議員に対して事実でないことを言うことはそもそも誹謗中傷、名誉毀損ということになると。そして、こういった言葉を言われる方、大石ですね、に対してるるいろいろ取り上げて申し上げる意味、義務もない、そして、我々、この認識は皆様と本当に同じ立場を有しているということだというふうに認識をしておりますとおっしゃったんですよ。
これはつまり、三段階の論法になっていまして、吉村知事、維新、メディアとの蜜月は事実ではない、名誉毀損である、そして、こういった名誉毀損をする大石にるるいろいろ申し上げる意味、義務がない、それは維新のみならず、我々、皆様、ここにいる人たちが同じ立場、いろいろ申し上げる義務がないというふうにおっしゃったので、それは問題がある、回答してもらわないと困る。
そして、これは、吉村知事に関することが事実ではない、名誉毀損だということを、反論することによって、そういった意見は駄目ですよということを申し上げたいんです。
事実ではない、つまりは維新とメディアの蜜月があるということに関しては、一つには、橋下徹さんが起こした裁判ですね、私に名誉毀損として起こした裁判において、このように私が言ったんですけれども、橋下知事は気に入らないマスコミをしばき、気に入らない記者は袋だたきにする、あの記者どうにかせえ、言うこと聞くんやったら特別の取材をさせてやるとか、あめとむちでマスコミを服従させていたという私の発言が名誉毀損であると訴えられたんですが、私のこの発言は重要部分において真実であると裁判所で認定されて、この裁判はそれで終わりました。なので、メディアの介入というのは認定されております。
ほかにも事例を。実際に、たかじんの何とか委員会で、祈、大阪都構想という形で橋下徹さんのバースデーケーキが出されたり……
○枝野会長 時間が経過しておりますので、御答弁が必要ならおやめください。
○大石委員 その他いろいろな都構想に関して持ち上げる形でテレビ局で取り上げられてきた様々な資料を、今日、配付資料にしたかったんですが、テーマに関係ないということで、資料は認められませんでした。これはネットなどにアップしていきたいと思いますが、こういった事実であるということに関してどう思うかお答えください。
○枝野会長 御質問がございました和田さん、阿部さん、お答えになりますか。
○和田委員 今るる大石さんが述べられたことが、はっきり言えば、我が党に対する誹謗中傷を含んでいると私は思うんです。印象として、多くの人が聞いたときに、我が党が言っていることはうそ八百であるような印象を与えがちである、そう私は取ったから、私の感覚として申し上げているまでです。
それと、もう一点言えることは、大石さんは発言の中で、権力者対権力者でない側という表現を使っておられる。ここにおられる方全員はどうなんですかという表現をさっきなさった。私は、そういうこと自体が、どこの党がどうだというふうに聞こえてしまう、私にとってみれば。そういう意味で言ったんです。
私の取り方が大石さんの話とキャッチボールにならないのかも分からないけれども、私は印象として、大石さんが特定の政党を念頭に何か批判をしているように、どこかが悪いというふうに言っているように私には取れるから、そうお答えしたまでです。
○阿部(圭)委員 吉村知事の件ですけれども、メディアとの蜜月ということですけれども、やはり、特定の都道府県においては行政府の長としてきちんとした御対応をされていると思いますし、それはまた、国においては石破総理が様々なメディアに登場するというのと同様のことだと思いますので、ほかの都道府県についても同様だと思いますので、そのような対応をしているというふうに私は認識しております。
以上でございます。
○枝野会長 予定した時間が経過をいたしました。
これにて自由討議は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時五十二分散会