第2号 令和7年11月20日(木曜日)
令和七年十一月二十日(木曜日)午前十時開議
出席委員
会長 武正 公一君
幹事 上川 陽子君 幹事 寺田 稔君
幹事 葉梨 康弘君 幹事 船田 元君
幹事 松尾 明弘君 幹事 山花 郁夫君
幹事 米山 隆一君 幹事 馬場 伸幸君
幹事 浅野 哲君
五十嵐 清君 稲田 朋美君
大野敬太郎君 鬼木 誠君
加藤 勝信君 塩崎 彰久君
柴山 昌彦君 新藤 義孝君
田野瀬太道君 長島 昭久君
中谷 元君 西村 康稔君
平沢 勝栄君 古川 康君
古川 禎久君 細野 豪志君
森 英介君 山口 壯君
五十嵐えり君 枝野 幸男君
大串 博志君 岡田 悟君
奥野総一郎君 黒岩 宇洋君
篠原 孝君 柴田 勝之君
竹内 千春君 津村 啓介君
藤原 規眞君 吉田はるみ君
阿部 圭史君 池畑浩太朗君
和田有一朗君 福田 徹君
福田 玄君 河西 宏一君
浜地 雅一君 平林 晃君
大石あきこ君 赤嶺 政賢君
北神 圭朗君
…………………………………
庶務部副部長憲法審査会事務局総務課長事務取扱 高森 雅樹君
衆議院法制局法制企画調整部長 神崎 一郎君
衆議院憲法審査会事務局長 吉澤 紀子君
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委員の異動
十月二十三日
辞任 補欠選任
井野 俊郎君 鬼木 誠君
三谷 英弘君 古川 康君
山田 賢司君 西村 康稔君
十一月四日
辞任 補欠選任
岩屋 毅君 新藤 義孝君
同月七日
辞任 補欠選任
山下 貴司君 田野瀬太道君
同月二十日
辞任 補欠選任
井出 庸生君 塩崎 彰久君
山岸 一生君 枝野 幸男君
同日
辞任 補欠選任
塩崎 彰久君 五十嵐 清君
枝野 幸男君 山岸 一生君
同日
辞任 補欠選任
五十嵐 清君 井出 庸生君
同日
幹事山下貴司君同月七日委員辞任につき、その補欠として葉梨康弘君が幹事に当選した。
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本日の会議に付した案件
幹事の補欠選任
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(衆議院英国・EU・ドイツ憲法及び国民投票制度調査議員団の調査の概要)
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○武正会長 これより会議を開きます。
幹事の補欠選任についてお諮りいたします。
委員の異動に伴いまして、現在幹事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、会長において指名するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○武正会長 御異議なしと認めます。
それでは、幹事に葉梨康弘さんを指名いたします。
なお、会長代理につきましては、引き続き船田元さんにお願いいたします。
――――◇―――――
○武正会長 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
この際、衆議院英国・EU・ドイツ憲法及び国民投票制度調査議員団団長の枝野幸男さんより報告を聴取いたします。枝野幸男さん。
○枝野委員 衆議院英国・EU・ドイツ憲法及び国民投票制度調査議員団を代表して御報告申し上げます。
私たちは、去る九月十四日から二十一日まで、イギリス、EU及びドイツの憲法及び国民投票制度について調査をしてまいりました。
この議員団は、本審査会のメンバーをもって構成されたものでありますので、この際、団長を務めました私から調査の具体的な内容について御報告をさせていただき、委員各位の御参考に供したいと思います。
議員団は、当時本審査会の会長を務めておりました私を団長に、会長代理の船田元さん及び現会長の武正公一さんが参加し、合計三名の議員をもって構成されました。
なお、この議員団には、衆議院憲法審査会事務局、衆議院法制局及び国立国会図書館の職員が同行し、調査をサポートしていただきました。
本調査団では、中心的な調査テーマとして、「国民投票における偽情報対策及び外国勢力による介入への対応、政治広告規制」を設定いたしました。これは、二〇〇七年の国民投票法制定時には想定しなかったネットに関する様々な問題が発生し、特にSNSの進展に伴ってより問題が複雑化していることを踏まえたものです。現状では、憲法改正国民投票の場面で、外国勢力による介入や偽情報の影響を防ぐための対策が十分には講じられていません。そこで、一つの参考として諸外国の取組を調査テーマといたしました。
あわせて、議会の解散権や調査権、さらには最近行われた憲法改正の背景など、憲法本体に関するテーマについても調査をいたしました。
まず、「国民投票における偽情報対策及び外国勢力による介入への対応、政治広告規制」を中心に、二つの国、一つの機関における主な調査結果を報告いたします。なお、ドイツを始めEU加盟国には国民投票制度を有しない国もあることから、選挙の場面における偽情報対策等も調査をしています。
最初の訪問国であるイギリスでは、選挙委員会の最高執行責任者及び実務担当者、国家安全保障等の観点から情報を分析、監視している国家安全保障オンライン情報チーム、NSOIT、偽情報対策の中心的な法律であるオンライン安全法を執行するオフィス・オブ・コミュニケーションズ、OFCOM、英日議員連盟の共同代表である貴族院議員、議会改革に取り組んでいる庶民院議員などからヒアリングし、質疑応答、意見交換を行いました。
これらを通じて、ネットにおける偽情報や外国勢力による介入について、イギリスでも日本と全く同じ問題を抱えていることが確認できました。
イギリスでは、これらの問題に対応するための法制度として、オンライン安全法や政治広告規制に関する二〇二二年選挙法が制定されています。ロンドンでのヒアリングの結果、次のような現状と課題があることが分かりました。
偽情報対策等において最も重要な論点は表現の自由とのバランスですが、イギリスでも、表現の自由との関係で様々な考慮が払われています。具体的には、プラットフォーム事業者に課する法的義務の内容がポイントです。
まず、コンテンツの内容ですが、オンライン安全法の対象は主に違法なコンテンツであり、偽情報については、外国干渉罪に当たるものに限られます。その上で、事業者への義務づけの態様は、リスク評価やシステムを通じたリスクの最小化など、システムに焦点を当てたものにとどまっています。
また、NSOITは、ネット上の偽情報を発見しても、事業者に削除や修正を命じる法的権限はなく、事業者に任意で削除や修正を依頼するしかありません。
すなわち、公的機関は、原則として、コンテンツの内容の正しさに直接介入するものではありません。これらは、オンライン上の安全確保と表現の自由とのバランスを意識したものだとのことでした。
表現の自由とのバランスに関し、次に注目すべきは、政治広告についてです。
政治広告については、二〇二二年選挙法により、デジタルインプリント表示義務が導入をされました。これは広告主の氏名及び住所を明示させるものであって、広告内容の規制ではありません。このような仕組みは、当審査会においても委員各位から既に提案があったところです。
イギリスのインプリント表示義務の主な対象は有料広告であり、無料広告は、政党によるものなどを除いて対象外となっています。したがって、インフルエンサーに資金提供をして発信してもらう場合は、基本的には対象外となります。
現在、政府内で、インプリント表示義務の対象となる広告の範囲を拡大する方向で検討中であるものの、表現の自由とのバランスが難しい問題であり、簡単には結論が出ないとのことでした。
次の訪問先であるEU本部では、欧州議会の憲法問題委員会の委員、EUの外務省に相当する対外行動庁、デジタル政策を所管する欧州委員会通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局、政治広告規制を所管する欧州委員会司法・消費者総局、そして欧州議会対日交流議員団長からヒアリングし、質疑応答、意見交換を行いました。
EUでは、二〇二二年に制定されたデジタルサービス法、通称DSAがネット上の安全確保のための法制度の骨格となっています。
例えば、DSAでは、大規模なプラットフォーム事業者にリスクの評価、軽減措置を義務づけており、選挙への介入、影響もそのリスクの一つと位置づけられています。また、事業者は、毎年、報告義務を負っています。DSA違反には、年間売上げの六%を上限とする制裁金が課せられます。
具体的にどのような措置を取るのかは事業者が決める仕組みとなっていますが、それは表現の自由と関わるからであるとのことでした。
また、偽情報による個人の権利侵害があり、その個人がプラットフォーム事業者に削除を求めた場合でも、削除をするかどうかは事業者の判断次第です。個人と事業者の紛争の際、EU当局はどちらが正しいかの判断はしないとのことでした。
政治広告に関しては透明性確保策が講じられており、具体的には、政治広告の透明化及びターゲティングに関する規則、通称TTPAにより、政治広告である旨、広告主、ターゲティング技術の使用の有無の明示義務などが設けられています。ただし、無料の政治広告は規制の対象外です。
また、ターゲティングについては、一律の規制ではなく、情報の種類や対象者の年齢に応じたきめ細かな規制を設けています。
ティックトックでは既に有料政治広告の掲載を中止しており、TTPAの制定により、グーグルやメタも同様の方針を決定しているとのことでした。
ブリュッセルにおけるヒアリングでは、一様に、EUにおいてはロシアなどを拠点とする外国勢力から偽情報を用いた介入があると明言していました。
外国勢力による偽情報を用いた介入に関して、対外行動庁では、ロシアによる偽情報に関するデータベースを構築しており、そこには一万九千件のケースが蓄積されているとのことでした。
また、緊急警報システムを有しており、偽情報の発信に限らず、閲覧数の増大により人々の注目を集めるという形態での介入に対しても注意喚起をしているとのことでした。
EUでは、ファクトチェック団体の育成も行っています。ファクトチェックだけでは事業が成り立たないため、金銭的サポートを行っているものの、団体の活動方針などには介入せずに独立性を確保することがポイントであるとのことでした。
最後の訪問国であるドイツでは、デジタル政策を所管する連邦デジタル・国家近代化省の政務次官、外国勢力による介入に対処している連邦内務省、政党系シンクタンク、憲法を専門とする大学教授及び最近の基本法改正を担当した連邦議会の法務・消費者保護委員長などからヒアリングし、質疑応答、意見交換を行いました。
まず、偽情報やSNSに関する問題状況は、ドイツでも日本と同様であることが確認されました。
現時点では、外国勢力の介入によって選挙結果が左右されたことはないものの、今年二月の連邦議会選挙で過激主義政党であるAfDが二〇%もの票を取って躍進したことに明確に表れているように、SNSによって排外主義的な言動が広まり、政治状況が非常に大きく変わったとの認識は共有されているようです。
ドイツでも、表現の自由は、基本法、つまり憲法で保障されています。もっとも、ドイツでは、歴史的背景により、ナチス崇拝が表現の自由の対象外とされている点で日本と事情を異にします。とはいえ、それ以外の表現について、保障の外延がどこまでか、また、それを誰がどのように解釈して判断するのかという難しい問題はあります。その上で、国家は表現の内容に介入してはならないというのがドイツの基本原則です。これは、国家が介入すると、その時々の政権政党が何をどのように報道してよいかを決めることになってしまうおそれがあるためです。
なお、人を対象としない表現であれば虚偽でも構わないこととされ、この点は政治広告でも同様です。したがって、偽情報であっても、人を対象としない場合は許容をされています。ただし、ネット上の表現に関しては、EUの法制度であるDSAによる規制の対象となります。
EU本部では、制度設計者としてのブリュッセル目線のDSAに対する評価を聞くことができましたが、ベルリンでは、DSAを各国で執行する立場からの評価を聞くことができました。
元々ドイツでは、二〇一七年から、ネット上の違法コンテンツ対策のための法律としてネットワーク執行法がありました。DSAは実質的にこれに代わるものですが、内容的には不十分な点があるとの評価が示されていました。
例えば、一、個人の権利を保障するものであるから、個人の権利侵害が発生しない場合、つまり被害者がいない偽情報については適切に機能しない、二、偽情報の拡散は非常に迅速であるため、削除時点では既に拡散している、三、アルゴリズムなどの技術やユーザーの行動様式の変化のスピードについていけないといった課題があり、いかに対処すべきかに悩んでいるのが現状であるとのことでした。
政治広告規制についても、EUの法制については、一、アルゴリズムを規制していない、二、無料広告が対象外とされているといった課題があるとの評価でした。外国勢力が資金提供する政治広告に対する規制という点では意義があるものの、アルゴリズムで操作された無料広告の影響力が高まるおそれがあるとの指摘もありました。
いずれにしても、ドイツでも、偽情報対策、SNS対策は始まったばかりであり、まだ終着点は見えない状況であるとのことでした。
続いて、憲法本体に関するテーマについて、調査の概要を御報告いたします。
まず、議会の解散権については、イギリスでは、議会任期固定法が廃止されたため、いつでも自由に解散できるようになりました。なお、恣意的な解散時期の選択により、政権与党の得票が三から四%増えるとの調査結果もあるとのことでした。
次に、議会の調査権についてですが、まず、イギリスでは、庶民院で過半数を占める政党が内閣を構成することからうまく機能しておらず、野党の議員は政府の情報へのアクセスが難しいとのことでした。
一方、ドイツでは、議会の調査権が機能しているとの評価でした。例えば、委員会では少数派にも議題提案権が与えられていることから、少数派は自らの提案を公開の場に持ち出し、世論の喚起につなげることができるとのことでした。
さらに、ドイツにおける最近の基本法改正についてです。
昨年、憲法裁判所に関する基本法改正が行われましたが、これは、勢力を拡大しているAfDが将来的に憲法裁判所に影響力を行使することを未然に防ぐために、従来法律で定められていた裁判官の人数、任期等を基本法に格上げしたものです。この改正は、当時の与党会派である社会民主党、緑の党及び自由民主党と、野党第一会派であるキリスト教民主・社会同盟の間での協議を経て合意に至ったものです。
また、今年の基本法改正は、国の起債はGDPの〇・三五%に景気の要素を加味した額以内に限られるという、いわゆる債務ブレーキ条項を改正するものであり、具体的には、国際情勢の変化に対応するために、一定の防衛費等は債務ブレーキ条項の適用除外とするものでした。
従来は、民主主義的な既成政党で基本法改正の要件である議会の三分の二を占めることが前提となっていましたが、この状況は、今年二月の連邦議会選挙におけるAfDの躍進で変わってしまいました。AfDがこの基本法改正に反対することが明白であったため、選挙結果が出た後、新議会が招集される前に急いで改正が行われました。
なお、総選挙後、新議会招集前であっても、選挙前の議員に任期、身分が残っていることは基本法に明示をされており、この間に改正を行ったことは法的には全く問題がないとのことでした。
最後に、以上を踏まえて、団長として若干の所見を申し上げます。
まず、偽情報対策などについてです。
今回調査した三つの国、機関のいずれにおいても、政治的な偽情報に対する強力な規制は表現の自由との関係で非常に難しいとの共通認識があり、現状では明確な答えは出ていないところです。特にドイツでは、ナチス称賛は表現の自由の範囲外であるというドイツ特有の事情を背景としつつも、なお表現の自由や国家の政治的中立と偽情報への対応との兼ね合いに悩んでいる点が率直に示されました。
日本でも問題状況は同様であり、今後、偽情報対策の議論を相当深掘りしていく必要があると考えます。
その際、EUの偽情報対策や政治広告規制の仕組みは、オーソドックスながらも時代の最先端を行くものが多いと受け止めました。
偽情報に関しては、表現内容に直接介入するのではなく、プラットフォーム事業者などに違法な書き込み等に対処する義務を課し、その監督によって対応するという方法や、大規模な事業者に対して偽情報などのリスクの軽減措置を求めるといった方法が取られています。また、政治広告についても、広告主の明示義務やターゲティング技術利用の規制が設けられています。これらは、表現の自由との兼ね合いをしっかりと見据えたものと評価できます。
各国とも、ネット技術の急速な発展の中で、偽情報対策と外国勢力による介入への対応のどちらについても大変苦慮しているのが現状です。特に外国勢力からの介入については、これを断固阻止しなければならないという点では各国で共通認識があります。しかし、どのようにして早期段階で捕捉して排除するかという手法については簡単に答えが出るものではなく、いまだ悩んでいる状態です。憲法や国民投票制度という観点からの議論とともに、技術的な側面からの進展を促していく必要があると考えます。
また、偽情報対策の実効性確保にはまだ多くの課題があるように感じました。特に、直接的な被害者がいない偽情報、例えば失業率などの経済指標や政治的統計データに関する偽情報については、拡散して大きな影響を与えても直接の被害者がいないことから、被害者がプラットフォーム事業者に削除を申し出たり、訴訟を起こしたりするという手段が使えません。一方、公権力がこうした偽情報を取り締まれるようにすると、逆に正しい事実まで隠蔽される可能性すら生じてしまいます。対応策について、慎重さとバランス感覚が求められる状況となっています。
さらに、偽情報の拡散スピードへの対応も重要です。イギリスやドイツでは、人員の確保など態勢の強化を重視していると伺いました。日本でも組織や人員の面での対応を進めていく必要があるところです。
日本では、ターゲティング技術利用の規制について必ずしも議論が進んでいません。しかし、当該技術のもたらす影響力の大きさと、規制された場合に予想される効果、そして表現内容そのものへの規制でないことなどから、早期かつ優先的に議論を進めることを提起いたします。
これらはこれまでの表現の自由に基づく人権論だけでは解決できない新しい課題でもあり、この新しい課題への具体的な解決策を見出すことはいまだ難しい状況だという印象を強く持ちました。表現の自由が持つ優越的な地位を前提としつつも、ネット社会に対応した新たな憲法理論の模索が求められます。
なお、イギリスでは、オンライン安全法の執行機関であるOFCOMの政府からの独立性が特徴的でした。職員は公務員ではなく、幹部の任命や活動資金の面でも政府からの独立性が担保されています。さらに、説明責任は政府ではなく議会に対して負っています。
意見交換の中で伺った、OFCOMの幹部間で合意できることはほとんどないが、唯一の例外はOFCOMの独立性だとのジョークが忘れられません。
表現の自由に関わる規制機関の政治的独立性は、その権限行使の在り方とも関連する重要な論点であると理解しています。
次に、憲法改正の在り方については、最近のドイツの基本法改正に関して印象に残っている点があります。
まず、憲法裁判所に関する基本法改正については、現在、憲法裁判所は政治的中立性が保たれていて、国民の信頼が高いと評価されていること、そして、既成政党の間に、基本法に明記されている機関は我々にとって非常に核心的な機関であるから守らなければならないのだ、お互いの損得を一切抜きにして協調路線で進めようというコンセンサスがあり、既成政党間の信頼関係の下で改正が行われたとのことです。
また、今年行われた債務ブレーキ緩和に関する基本法改正についても、改正の議論の前提として、既成政党の間で、党派を超えて民主的な価値観を共有しているという共通了解があったとのことです。
日本とドイツでは政治状況が必ずしも同じではありませんが、私たち国会議員が憲法やその改正に関する議論を行うに当たり、参考になる点もあるのではないでしょうか。
ただいま御報告申し上げました調査の詳細については、現在、海外派遣報告書を鋭意作成中ですので、こちらも併せて御参照くださいますようお願いをいたします。
最後になりますが、今回の派遣に御協力いただきました全ての関係者の皆さんに心から感謝を申し上げ、私の報告とさせていただきます。
ありがとうございました。
○武正会長 以上で海外調査の報告は終了いたしました。
引き続きまして、調査に参加した委員から海外派遣報告に関連しての発言をそれぞれ七分以内でお願いいたします。
発言時間の経過につきましては、おおむね七分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、まず、船田元さん。
○船田委員 先ほど枝野団長から詳しい御報告がありましたので、私からは簡潔に要点のみ申し上げさせていただきたいと思います。
一つは、国民投票や選挙における偽情報対策においては、イギリス、EU、ドイツとも表現の自由を非常に大切にしておりまして、フェイクの監視や是正は政府が直接行うのではなくて、間接的に、例えばプラットフォーマー等が対応するという体系になっているということでした。
イギリスでは、オンライン安全法の下、OFCOMがプラットフォーマーとの意見交換を行い、プラットフォーマーが任意にフェイクの削除、修正を行うということになっていること。
ドイツでは、ネットワーク執行法からEUが命令しましたDSA法に変化をしておりますが、国家は情報の真偽の判断はしない、その代わりに、フェイクに対してはプラットフォーマーが対応するというたてつけになっていること。
EUのDSAにおきましては、フェイクをトラステッドフラッガー、いわゆる信頼できるモニターと言われておりますが、これが監視をしてプラットフォーマーに通告する仕組みになっていること、そして、プラットフォーマーが独自にリスク管理をして、その管理した結果を政府に報告をする、こういったことで間接的なことが行われております。
二番目には、国民投票運動、あるいは選挙運動、それから政治活動におけるSNSの利用に当たっては、各国とも一般の記事よりも厳格に対応しているということも言えると思います。さらに、外国からの介入については最も厳しい対応をしているという状況になっていると思います。
具体的には、イギリスでは、二〇二二年選挙法によりまして、選挙に関する有料広告に限り、デジタルインプリント表示を義務づけているということ、ドイツでは、選挙広告についてデジタルアーカイブを義務づけていたり、あるいは民間がチェックするコミュニティーノートを活用していること、EUにおきましては、先ほどありましたように、TTPA規制によって、政治広告の透明化、つまり、広告であることの明示や費用負担者の明示、それからターゲティング操作の有無を明示することを義務づけているというようなことであります。
三つ目には、フェイクニュースに対応する際、オールドメディア、すなわち放送や新聞などマスメディアを含めて、正しい情報をきちんと発信することが極めて重要であるということを各国の担当者は述べておりました。
また、四番目には、低年齢のときからSNSの利用やその接し方について望ましい在り方を学ぶこと、すなわち情報リテラシーを高める教育、この重要性を強調する担当者もおりました。
最後に、記事の内容と同時に、マイクロターゲティング、フィルターバブル、あるいはボットなど、アルゴリズムの操作が非常に問題となっているということでありますが、これにつきましては、なかなか技術的に難しく、追いつけない面があるということを各国あるいは機関においては強調しておりました。
以上でございます。
○武正会長 続いて、議員団の一員といたしまして、私からも発言いたします。
デジタルサービス法、EUのこの法律は、二〇二〇年提案、二〇二二年制定、そして昨年、EU加盟国に適用ということでございます。
プラットフォーム事業者は、利用者保護のため、事業者の情報取引を仲介する仲介者としての責任、義務を明確にしたものであります。仲介業者による停止、削除などの報告、違法コンテンツの通報、広告であることの明確な識別、広告の内容、提供元などの情報公開、リスクの評価、軽減などの義務が課せられております。選挙の健全性に対するリスクも対象となっております。また、毎年、報告書を提出する義務も負っております。そして、これに従わない場合、先ほども御報告があったように、世界の売上高の六%まで各国が制裁金を課することができる、非常に強い規則でございます。
あわせて、デジタル市場法、DMAとパッケージになっております。ちなみに、DMAは、事業者を指定し、事前規制、こちらは制裁金は全世界売上高の一〇%までとなっております。
二〇一七年ドイツ・ネットワーク執行法が置き換えられていることについての課題は、団長報告にあるとおりでございます。
次に、EUにおけるファクトチェック充実のための取組についてお話をいたします。
EUでは、ジャーナリストとファクトチェック団体との間で信頼のネットワーク構築を重要としております。プレトリップとしてジャーナリストに集まってもらい、偽情報や外国勢力の介入に関してトレーニングをしております。一方、ジャーナリストからは情報提供を受けるということであります。
一方、ファクトチェック団体の育成には苦労しているというふうに伺いました。財政的な面というのがやはり大事なところということでありますが、独立性に配慮しながら金銭的なサポートを行っていると伺いました。
次に、イギリスにおいて、選挙委員会という極めて独立性の高い組織がございます。この選挙委員会は、EU離脱の国民投票の際、下院が示しました、イギリスはEU加盟国として残留すべきか、それに対する答え、イエスかノーかという、政府が二〇一五年に下院に提出した質問文並びに答えの文言を、二〇〇〇年法により、イギリスはEU加盟国として残留すべきか、それともEUを離脱すべきか、それに対する答え、EU加盟国として残留する、EUを離脱するという質問並びに答えの文言に見直したのが、この選挙委員会でございます。
二〇二二年選挙法に当たり、デジタル広告にインプリント表示義務を設けた理由は、選挙委員会が、国民投票の出版物、広告の背後に誰がいるのか、及び、誰が費用を負担しているのかを特定するためであります。一定の有料デジタル広告、それ以外の無料デジタル広告について表示義務があります。無料で行われるSNSの投稿などについては、期間が国民投票期間中に限定される、あるいは広告関係者が投票運動者等に限定されての対応ということであります。
なお、団長報告に加えるならば、投票運動者がインフルエンサーに広告の発信を依頼し、インフルエンサーが自身の投稿としてそれを公表した場合、インフルエンサーが発信者、依頼した投票運動者が広告主となります。インプリント記載義務は広告主の氏名及び住所でありますが、しかし、政党との関係が明らかになりません。そこで、政党との関係に関する情報も追加するよう、政府内で検討中であるということです。無料広告は対象外ということでありましたが、先ほどのように限定された形で対象となっておりますが、一定の政治的内容を含むものについては対象に加える方向で検討中でありますが、表現の自由と規制とのバランスが非常に難しい問題と伺っております。
OFCOMにつきましては、プラットフォーム事業者が、オンライン安全法に基づいて、違法情報、有害情報に関してリスク評価を行い、報告義務をOFCOMに対して負っております。
次に、イギリス、ドイツにおける議会調査権、少数者の権限についてでありますが、イギリスでは、省別の特別委員会を設けるなどの工夫がされております。
ドイツについては、先ほどもお話があったとおりでありますが、少数者の調査権と呼ばれておりまして、四分の一以上の国会議員の動議があれば、賛成があれば、調査委員会を設けることができるとされております。証人喚問や文書の提出要求など、極めて強い権限がある調査委員会、政府に頼らずとも調査を行う、そうした権限も持っているとされております。大体、今、年に二回ぐらい、こうした調査委員会が設けられていると聞きました。
最後に、イギリスの任期制限法廃止、また議会の解散権についてでありますが、二〇二一年に任期制限法が廃止をされるということによって、恣意的な解散が行われてしまうのではないのかという危惧も伺ったところであります。
これにて調査に参加した委員からの発言は終了いたしました。
―――――――――――――
○武正会長 これより自由討議を行います。
発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。
発言は自席から着席のままで結構でございます。
なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。
発言が終わりましたら、名札を戻していただくようお願いいたします。
また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内となります。質問を行う場合、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分以内といたしますので、御留意ください。
発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。
それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。
○大串(博)委員 ただいまは詳細な報告をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。
立憲民主党の大串博志でございます。
私、個人的なことでありますけれども、この九月まで三年間、党の方では選挙の責任者として務めておりました。その間、多くの投票行動、選挙というものに対応してまいりましたけれども、このことを含めて、投票というものに関するSNSの影響に関して、中心に聞かせていただければと思います。
まずは武正会長にお尋ねさせていただきたいんですけれども、私、非常に感じたことの一つ、SNSの投票行動というものに対する影響は、この三年間で急速にかなり変化したなという感覚を持っています。特にこの一年半の中でも急速に変化したなというふうに感じています。
とにかく、技術あるいはシステムの変化のスピードが極めて速い、よって、影響の与え方もかなり速いスピードで変化しているということで、したがって、これに対する対応策、今るる、EU、イギリス等々における対応策に関しても御説明いただきましたけれども、とにかく、変化するものに対して対応していかなければならないということで、相当な難しさを、対応しているEU当局、欧州当局も感じていたのではないかなというふうに思います。
そこでお尋ねですけれども、相手方の変化が速いということに関してどのように対応していこうとしているのかということに関して、お聞かせいただけたらと思います。
○武正会長 お答えいたします。
御指摘のように、関連する技術の進歩は急速であり、どこも対応に苦慮している様子でございました。
そこで、欧州の当局においては、より根本的な対応策として、偽情報を流されても動じないような社会をつくろうとしておりました。この点に関連しては、メディア関係者の相互交流を通じたスキルアップなどの機会の提供や、社会全体のメディアリテラシーを高めるような施策等を実施しているとの説明がありました。
また、今朝、新聞の方でも報じられておりますが、EUのAI法一部延期案というのは、やはり、アメリカとの関係、プラットフォーム事業者などとの関係など、そういった状況も鑑みながらの対応かというふうに感じております。
以上です。
○大串(博)委員 ありがとうございます。
そのような非常に難しい対応を迫られているのではないかなというふうに思います。
これはまさに、我が国においても選挙というものがあり、かつ国民投票というものが行われるとすると、同じ状況を将来的に常に変化するものとして捉えていかなければならないんじゃないかなというふうに思いますが、大本は、やはり私はプラットフォームビジネスに存在していると思うんですね。プラットフォームビジネスが提供する、まさにプラットフォーム、アルゴリズムを含めて、これによって様々な影響が変わってくるということ、あるいは大きくなるということじゃないかというふうに思うんですね。
私、この三年間の中でも、与野党で、選挙運動に関する与野党の協議の場というのを持って、SNSが選挙に与える影響にどう対応していくかという議論を始めていました。九月までやりましたけれども、実は相当難しい議論があって、事業者からもかなりのヒアリングもしましたけれども、なかなか難しいなというのが、正直、九月までの行き着いたところで、山高しという感じがしました。
ただ、一つ私、感じたのは、やはり大本はプラットフォームビジネスにあるので、プラットフォームビジネスに対して、表現の自由に十分に配意しながらではありますけれども、規制を強化する、EUのDSAもありますけれども、これを強化していくということは不可避ではないかなと。その点において、日本においてはまだまだ、その機運の醸成も含めて、いっていないのではないかなというふうな感じがするんですね。
プラットフォームビジネスに対して、表現の自由を考えながらも規制を強化していく、この実効性をどうやって担保していくかということに関しての当地への評価に関して、お聞かせいただけたらと思います。
○武正会長 DSA等の施策の評価に関しては、DSAは、個々の表現の内容に立ち入って直接制限するものではなく、プラットフォーマーに対して偽情報の拡散等に伴う全体的なリスクを軽減する措置を義務づけるというものでありますが、このような法の設計は、表現の自由等により配慮したものであるとともに、プラットフォーマーの自主的な取組を尊重し、柔軟な対応を可能にするものであるとの肯定的な見解が示されております。その一方で、懸念の声も聞いたところであります。
以上を踏まえて、私個人の所感を申し上げれば、EUにおける規制が実効性を持つとすれば、四億五千万人の人口を背景とした交渉力が一つの理由。懇談の場では、五億七千万人のパワーで一緒にやりましょうと言われたことが忘れられません。仮に我が国がプラットフォーマーに対する一定の規制を行うとなれば、EUによる規制との相乗効果が期待されるのではないかと思います。
○山口(壯)委員 自由民主党の山口壯です。
武正さんの、EUと日本の連携の可能性、ここが非常に私の関心を引きました。
それは、私、二〇一六年に部落差別解消推進法というのを議員立法でやらせていただいたんですけれども、その関連で、今、有害情報に対して例えば制裁金とかということもEUの方で、そういう話を今お聞きしたわけですけれども、今現状、例えば、ある地域が部落の関係の地域だったというのを巧妙にいまだに流している団体があるんですね。それを削除するというところで、日本のプラットフォーマーの場合には割と理解が進んで、大体六割六分だから三分の二ぐらいは削除ができているんです。残りの三分の一というのは、大体、外国のプラットフォーマーであることが多いわけですね。なかなか部落差別に対する理解というものが簡単ではないというのも原因です。
その中で、EUと日本の連携の可能性ということを言われたことが私の関心を引いたわけですけれども、削除ということに対して、例えば制裁金も含めて、これから日本がどういうふうに考えていけるかということの参考になるような気がするんです。
そういう意味で、武正さんの印象として、EUがそこまで、要するに、削除のみならず制裁金というところまで踏み込んでいる、そのことについて、日本に置き直してどこまで可能性があるかなというのを、個人的に印象をどういうふうに受け止められたか、聞かせていただければありがたいです。
○武正会長 お答えいたします。
今、大串さんの質問にもお答えしたところとかぶるんですけれども、ドイツのデジタル省の政務次官と意見交換をした折のやり取りを先ほど御紹介をさせていただいたところです。ですから、やはり、四億五千万人のヨーロッパの市場、それから一億二千万人の日本の市場、合わせて五億七千万の市場として、プラットフォーム事業者に対して交渉力を持ち得るのではないのか、連携があればというような示唆があったところで、先ほどのような御報告をしたということであります。
今のことも含めて、制裁金のことも含めてですけれども、プラットフォーム事業者への交渉力を日本として持ち得るという意味でのEUとの連携というのは必要なのではないのか。実際、政府の方も、今年もそうした場を設けていろいろ進めているというふうに聞いておりますので、是非そうしたことが必要ではないかというふうに思います。
○山口(壯)委員 あともう一つ。
先ほどの議論の中でもありましたけれども、この件は表現の自由との絡みというものが一番大きいんだと思うんです。部落差別解消推進法を作るときにも、やはり表現の自由との絡みが一番のポイントの一つでした。
そういう意味では、どちらかというとEUの方が、表現の自由というものより、もう少し有害情報というものに対する規制にシフトしているのかなというふうにも思うんですけれども、もう一度その点について武正さんの印象をお聞かせください。
○武正会長 EUの場合は、元々そうした基本的な考えが示されて、考え方がきちっとあって、その中での、こうしたDSAあるいはDMAという規則が各国に適用、ただ、それぞれの各国での例えば刑法なども尊重しての対応とかいうような形が、それぞれの各国の自主的な取組も、団長報告にあったように、重んじての対応ということかと思います。
こうしたEUの考え方についても、先ほどちょっと触れましたように、そうはいっても、世界的な状況、情勢にも影響を受けながらも取り組んでいるわけですから、その基本的な考え方を守ろうということで取り組んでいるわけですから、ここはやはり日本も参考にするところはあるのではないか、また連携も必要ではないかなというふうに思います。
○山口(壯)委員 以上です。
○和田委員 日本維新の会の和田有一朗でございます。
まず、海外調査、お疲れさまでございました。報告を受けまして、私は、質問というよりは、発言をさせていただきたいと思います。
船田会長代理の御報告を見させていただきますと、三番目に、「オールドメディア(放送・新聞など)を含めて、正しい情報をきちんと発信することが重要であると、各国の担当者は述べていた。」、こういう報告がありました。私、これは全く同感でございまして、これまでも数回この調査会でも発言をしたことがございました。ですので、このことについて発言をしてみたいと思います。
既存メディアの報道というのは、多くの人的資産を活用して、いわば労働集約的とも言えるような作業によってでき上がっていると思います。既存メディアの報道は、多くの記者による様々な関係者への丁寧な取材に基づいて制作されているものであり、足で裏を取って集めてきた記事を、内部で複層的なチェックを経た上で発信されている。つまり、記事の信頼性を確保するために、特に人的な面において多くのコストをかけているんだろうと思います。マンパワーを活用して丁寧な作業の上に信頼性が生まれていると言ってもいいと思うんです。今どきこんなことを言ったら笑われるかも分かりませんが、古い言い回しで言うと、営業は足で稼げみたいな、今の時代、こういうことを言うと、あなたは昭和の人ですねと言われるかも分かりませんが、こんなようなイメージの中で、日々の記者さんたちの営みで、裏を取って丁寧にでき上がっている。
しかし、昨今、インターネットの普及などにより購読者数の減少は止まらない。そして、紙媒体の新聞の読者も激減していると思います。折り込みを私たちはやります。皆さんもされると思います。折り込み屋さんにデータを毎月もらいます。そうしたら、毎月のように激減していっている。怖いぐらい減っていますね。
以前は、朝、駅頭をしていたら、今でもずっと私はしますけれども、横にある売店にぱっと小銭を放り投げてぱっと新聞を取っていくというサラリーマンの方がたくさんいました。これが朝の風物だったと思います。これがまた活気も生んでいたような気がするんです。私なんかはそこから緊張感も得ていました。
どういうことかというと、ぱっと取って一瞬見た記事にあることと自分がしゃべっていることとの距離というか、それをやはり感じるというか気に留めるというか、どう捉えるかな、違う論を書いているものとはどう距離があるんだみたいなことまで感じていたんです。それも私にとっては、やはり新聞、紙媒体がそういうふうに出ていっているということはすごいことだということに今更気づくときがあるんです。
私みたいな、注目度のないというんでしょうか、存在感の薄い、ワン・オブ・ゼムみたいな議員からいいますと、有力な代議士が夜中宿舎に帰ってくるところを張り込んで、そして院内でもストーカーのように記者さんが追っかけているのを見ていると、これは何をやっとるんかいなと私は思ったりもするときがあるんですが、最近思うのは、こういう人々がこういう活動を重ねることによって、きちっと裏を取ってできているんだろうなというふうなことを私は思うようになりました。
私なんか、家で私しか新聞を読みません。学生の子供すらほとんど読まない。家内は、あなた、もう夕刊はやめましょうよと言われるんですが、私は何で取るかというと、もちろんニュースを取りたいというのもありますが、やはり自分が愛読している新聞社を支えなきゃいかぬ。どことは言いませんよ、正論をずばっと書く新聞社ですけれども。そういうところはやはり我々が新聞配達できちっと取るということが、メディアを支える、言論を支えるということになるんだろうと私は思ったりもして取るんですけれども、しかし、今の状況は非常に厳しい。そうなると、既存メディアの経営が厳しくなるだろうし、リストラも始まるでしょうし、メディアの淘汰も始まるかも分からない。
そんな中で、インターネットにおける偽情報なんかの広まりとか外国勢力からの介入が問題になる中で、既存メディアが果たす役割は重要です。
そう考えると、ネット上のメディアやインフルエンサーの影響力は高まりますけれども、その質は玉石混交、根拠不明のものも散見される。そんな情報が拡散されることで、選挙にも影響が出てくる。この状況を放置すれば、労力をかけずに根拠の乏しい情報を発信する一部のメディアというか、そういうものが増えて、よくないと思います。
そう考えると、私は、既存メディアを健全に保護育成するフレームをつくっていく必要があるということを今回の御報告を聞いて改めて感じたので、発言します。
最後に一点だけ。早く憲法審査会で条文起草委員会をつくって、早急に憲法改正を図るために進めるべきだと主張をして、終わらせていただきます。
以上です。
○浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。
まず、海外派遣に行かれた皆様、大変お疲れさまでございました。また、本日の派遣報告をまとめていただいたことについて、枝野団長、そして武正会長を始め関係者の皆様に感謝を申し上げます。
今回、英国やEU、ドイツで意見交換を行われた中で、偽情報対策においては、いずれの国、地域においても、表現の自由を最大限尊重しながらどこまで規制をかけ得るのかというバランスに大変苦慮している現状を改めて認識することができました。
本審査会におけるこれまでの議論を少し振り返りますと、国民投票法に関してはですが、テレビCMやネットCMの規制の在り方、偽情報対策や、フィルターバブル、エコーチェンバーといった情報の偏在に対する問題意識、さらには、ファクトチェックや、プラットフォーム事業者にどのような法的、制度的役割を求めるのか、外国勢力からの介入や、資金規制をどう設計するのか、その文脈の中で広報協議会をどう位置づけるのか、こうした論点について重層的な議論を積み重ねてきたところだと承知しています。
その上で、今回の海外派遣報告の中では、幾つか新たな視点への気づきも得られました。例えば、有料広告に必ずしも依存しなくても、インフルエンサーの活用などを通じて、国民投票の雰囲気や世論に大きな影響を与え得る可能性が存在すること、そして、特定の被害者が明確でない、被害者が見えない、見えにくい偽情報について、どこまで、どのような形で公権力が関与し得るのかという極めて難しい課題があるということを認識をさせていただきました。
偽情報やネガティブな情報ほど拡散スピードが速いことについては、これまでもこの審査会において参考人からも度々指摘があり、議論されてきたところですが、例えば、プレバンキング、すなわち事前に誤解や偽情報の芽を摘んでおく取組や、適正な国民投票の実施に向けて、我々国会議員とプラットフォーム事業者、有識者等が継続的に意見交換を行うラウンドテーブルのような場を制度的に位置づけることの有効性について、更に検討を深める必要があると考えます。
最後に、私から法制局に質問させていただきます。
今回の報告の中で、やはり、インプリント表示義務の適用範囲拡大をめぐって、表現の自由とのバランスの観点から極めて難しい論点に直面しているとの説明がありました。現地での意見交換を通じてどのような点が具体的な論点、問題として浮かび上がっていると把握されたのか、もしそうしたやり取りがあれば、御紹介をいただきたいと思います。また、法制局としての見解もあれば、併せてお願いいたします。
○高森参事 今回同行させていただきました、憲法審査会事務局総務課長の高森でございます。
まず私から、イギリスのデジタル政治広告へのインプリント表示義務の制度について、選挙委員会から伺った内容を補足させていただきます。
国民投票運動に関しては、まず、有料広告については、主体にかかわらず、一律にこの表示義務が課せられます。一方、無料広告については、運動に一万ポンド以上支出する者には義務が課されているのに対し、支出額がそれ未満の者には、個人であれ団体であれ、義務が課されておりません。
その上で、現在、支出額が一万ポンド未満であっても、団体に対しては表示義務を課し、個人については表示義務を課さないという制度改正が検討されているということでございます。
以上でございます。
○神崎法制局参事 衆議院法制局の神崎でございます。
高森課長の今の御説明を前提にいたしまして、法制局から同行いたしました職員として、感想めいたコメントになってしまうことをお許しください。
現在イギリスで検討されております制度改正は、一万ポンド未満の団体が表示義務から除外されていることにより、説明責任なく影響力のあるコンテンツが拡散されてしまうという弊害を防ぎつつ、対象を団体に限定することにより、純粋な個人の政治的表現の自由とのバランスを図ろうとするものであると推察いたします。
ただ、それが本当に純粋個人なのか、あるいは団体から資金提供を実は受けている抜け穴的個人なのか、実務的に見分けることができるのかどうかという疑問がございます。
また、有料広告か無料広告か、一万ポンド以上か未満か、あるいは団体か個人かという切り分けは、厳密な登録運動者制度を既に導入し、その時点で表現の自由に対するかなりの規制に踏み切っているイギリスだからこそ可能なアプローチであるとも感じたところです。
以上です。
○河西委員 公明党の河西宏一でございます。
今回の調査で得られた知見は、国民投票における偽情報対策及び外国勢力による介入への対応が民主主義を守る上で重要であること、これを改めて認識させるものでございます。枝野団長を始め議員団の皆様に敬意を表します。
私から、以下四点、所感及び意見を申し述べさせていただきます。
第一に、表現の自由とのバランスの重要性であります。
調査で確認した諸外国・地域の共通点は、いずれも、表現の自由を基本としながら偽情報対策に取り組んでいることであります。イギリスのオンライン安全法やEUのデジタルサービス法では、公的機関が直接的にコンテンツの内容に介入するのではなく、プラットフォーム事業者に対するシステムレベルでのリスク評価、軽減措置を義務づけるなど、間接的な対応を採用されておりました。
本年五月の参考人質疑で、桜美林大学の平和博教授は、民主主義社会では、強権国家のような特定情報の即時排除は困難であり、社会のレジリエンス強化が肝要だと述べられておりました。これは諸外国の実践と合致をしております。
なお、表現の自由には、言論活動による人格形成という個人的な価値と、国民が政治的意思決定に関与する自己統治としての社会的価値を包含をいたします。また、情報の送り手の自由と、知る権利を含む受け手の自由から構成をされます。芦部信喜先生は、知る権利は参政権的な役割を演ずると捉え、その理由を、個人は様々な事実や意見を知ることによって初めて政治に有効に参加をすることができるからであるとされました。
したがいまして、偽情報は、表現の自由が保障しようとする自己統治の価値や、知る権利が目指す民主的政治過程への有効な参加を阻害、侵害する危険性を有するというふうに考えられます。表現の自由を守るとはどういうことなのか。難しい課題ではありますが、精緻な議論を通じて、有効な対策の方向性を見出す必要があると考えます。
第二に、政治広告規制の透明性確保についてであります。
イギリスの二〇二二年選挙法ではデジタルインプリント表示が、またEUのTTPAでは広告主やターゲティング技術の使用の有無等の明示が義務づけられていると報告がありました。やはり表現内容の制限よりも透明性を重視するアプローチは我が国が参考にすべき手法であると、改めて認識をすることができました。
第三に、外国勢力による介入への危機感であります。
ブリュッセルでのヒアリングでは、EU対外行動庁がロシアなどを拠点とする偽情報に関するデータベースを構築し、約一万九千件のケースが蓄積されていることが報告をされました。我が国でも同様の脅威認識が共有をされております。実際の国民投票時における外国勢力の介入を未然に防ぐ体制整備が急務であります。
第四に、ファクトチェックと情報環境整備の重要性であります。
EUでは、ファクトチェック団体の独立性を確保しつつ、育成、財政支援を行っておりまして、様々苦慮があるということでありました。また、船田幹事からは、オールドメディアを含む正しい情報発信の重要性についても指摘がされました。SNS時代の今、個人を含む情報発信が社会認識を形成する力は極めて大きく広範であることを十分に認識をしなければなりません。
同時に、マイクロターゲティングやフィルターバブルの問題が指摘されており、東京大学の鳥海不二夫教授も五月の審査会で指摘されたように、ミドルウェアという考え方を適用した推薦システムの選択制、これはアルゴリズムのことでありますが、技術的な対抗手段の開発も重要であります。
この点を踏まえまして、国民投票広報協議会の役割として、技術的視点も含むガイドラインの策定やファクトチェック団体との連携の在り方を検討すべきだろうというふうに思っております。
以上四点、意見を申し上げました。
各国とも試行錯誤を続けておりまして、ドイツでは、まだ終着点は見えない状況との率直な所感も伝えられたところであります。
我が国でも、検討すべき項目は、総務省が所管する情報通信や、あるいは内閣官房が所管をする国家安全保障など広範であります。国民投票法十四条一項四号のいわゆるバスケットクローズで読み込むことは困難でありまして、立法又は関係省庁の連携などしかるべき枠組みで適切かつ着実に検討されるべきものと考えます。
その上で、広報協議会の事務内容や事務局の組織の在り方及び規模等を具体化し、関係規程の整備の必要性があること、これを改めて申し上げまして、私の所感、意見とさせていただきます。
以上でございます。
○大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。
本日、海外事例の報告ということで、それ自体は非常に興味深いものでした。国民投票であったりとか選挙において偽情報をどう判断していくかというところで、独立性であったり表現の自由をどう調和させていくかというところで、非常に真に受けて真面目に運営していくという、その苦慮しているところなどが共有されて、非常に興味深かったです。
一方で、この憲法審査会で、国民投票法の広報協議会の在り方みたいなところで、偽情報のお話などは二〇二五年の通常国会の中でも議論されてきたんですけれども、審査会の議論においては、例えば、二〇二〇年の大阪都構想のことで、大阪府と大阪市という行政側が偽情報を、毎日新聞がフェイクを出したんだみたいな騒ぎになったりして、そういった、表現の自由とか独立性というところとはかなり離れた、メディアを規制していかないといけないんだとか、フェイクニュースだと行政側が判断していくという問題も話されましたし、自民党のDappi問題。広報協議会というのが、その中に改憲派や国会議員が入るわけなんですけれども、自民党側で、Dappiという旧ツイッターのインフルエンサーが、自民党と維新は持ち上げて、立憲と共産党を悪く言っていくというような、結局は、それは事実上、社長がやったんじゃないか、Dappiだったんじゃないかという中で、裁判で名誉毀損が確定するという。
そういった、広報協議会の内部にある党にも、自民党も取引をしていたようで、自浄作用といいますか、内部にも、フェイクニュースを、誹謗中傷を流したと裁判でも決まったような問題が横たわっていて、その自浄作用の検討というものも必要であると考えます。
こういった国民投票法の話で、広報協議会の在り方なども今後この審査会でも進めていったらいいんじゃないかという方向性なんですが、やはり全体像を見る必要があります。この議論を何のためにやっているかなんですけれども。
国民投票法というのは正式名称は日本国憲法の改正手続に関する法律ですので、あくまで憲法を変えるために、国民投票法の中の広報協議会の在り方をどう議論していくかということが延々と通常国会でもなされているんですけれども、ここへ来て、やはりこれは待ったをかけなければいけないと考えています。
自民党と維新の連立政権に十月に替わりまして、れいわ新選組としては、改憲のための毎週開催をしないでくれということは前からも言っていましたけれども、かなり状況変化があるんですよね。
まず、元々、通常国会、六月まで続いてきた議論としては、緊急政令の中でも、任期延長、改憲の中でも、衆議院の任期延長改憲の議論が中心でした。一方で、高市政権になったときに、緊急政令までやるんだ、憲法九条だということで、これまで改憲五会派が進めてきた任期延長改憲のプロセスというのも、一旦、その延長線上でありませんし、元々、国民民主党は緊急政令ではなくて任期延長改憲に絞ってやるべきだということで改憲五会派でまとまってきたことも前提が崩れておりますし、公明党も連立から離脱しているので、今までの延長線上で粛々と憲法を変えるための国民投票法の広報協議会の在り方みたいな中でこういった議論をするというのはおかしいと思いますので、武正会長には質問ですが、仕切り直しをするべきだ、毎週開くなということでどう考えるか、認識を聞きたいと思います。
また、高市政権でいいますと、財務大臣がこういったことをおっしゃっていますよね。生活保護は恥だという概念が日本がなくなったからこの国は悪くなったということを片山さつきさんという方がおっしゃって、その方は財務大臣をされています。
今年、生活保護の引下げが、そういった片山さつきさんなどの言動によって、実際に大バッシングを受けて引き下げられて、そういった引き下げられた生活保護が法律違反であったと最高裁で認定がありましたので、生活保護の引下げについて憲法違反だった、そういったことを二度とやっちゃいけないんだということこそがこの憲法審査会で話されるべきことであって、それを、憲法を変えるための、その前提もいろいろ変わった形での国民投票法の議論を継続、延長するというのはやはりおかしいと考えます。
それから、広報協議会のことで議論するのであれば、やはりDappi問題、内部で自浄作用をしていくということで、それを議題にするべきだと考えます。
以上です。
○武正会長 お申出の点については、後刻、幹事会で協議いたします。
○赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
私たちは、国民が改憲を求めていない中で、改憲のための国民投票法の準備を進める必要はないという立場であります。
フェイクニュースなどの問題についても、表現の自由など、国民の基本的人権に関わる問題であり、国民投票法ありきで議論を進めれば誤った方向に向かいかねないと指摘してきました。今日の報告を聞いて、その考えをより一層強くいたしました。
例えば、報告では、イギリスやドイツでは、政府など国家権力が情報の内容に介入しないことを大原則としているということが紹介されました。また、イギリスのデジタル安全法を執行する通信庁は政府から独立した機関であり、それによって、政治的な影響力を排除し、公平性、客観性を確保していることが言われています。
一方で、この憲法審査会では、国会に設置する広報協議会に、ファクトチェックやプレバンキングなど、ネット上の情報が虚偽かどうかを判断する役割を負わせるという意見も出されております。
しかし、広報協議会の委員の多数は改憲に賛成した会派から選ばれる仕組みであり、その判断は恣意的なものになりかねません。国家権力である国会が国民の言論に介入することにつながるもので、国民の基本的人権を侵す危険性は重大です。国民投票法と絡めてフェイクニュース対策を議論すれば誤った方向に向かいかねないということを改めて強調しておきたいと思います。
その上で、ネット上のフェイクニュースの問題を考える上で、各国の担当者が新聞や放送など旧来のメディアを含めた情報発信が重要だと述べられたことは示唆的でありました。国民が様々な場面で多様な情報に接することが、ネットでの情報を吟味し、判断することにもつながるのだと思います。
選挙でいえば、有権者が候補者と対話することや、選挙ビラやポスターを見て政策や主張を知ること、討論会などで各党の意見を比較することなど、政党や候補者の情報に接触する機会を保障することが重要であります。
日経新聞が男子普通選挙から百年を迎えて特集した記事では、SNSで虚偽情報が拡散されたときに、実際に会う経験が対抗手段になるという候補者の声が紹介されていました。
しかし、日本では、べからず法と呼ばれる公職選挙法の下で、戸別訪問は禁止され、ビラは、規格や枚数、配布方法が厳しく規制されています。選挙ポスターも、公営掲示板にしか貼ることができません。候補者討論会の法定や、かつての立会演説会の復活、十分な選挙期間の確保が必要です。
ネット空間ではアルゴリズムなどによって利用者が受け取る情報が画一化されやすい中で、実際の空間で政党や候補者の情報に接する機会が制限されれば、国民が接する情報も偏ったものになってしまいます。
国民が多様な情報に触れ、熟慮するための環境を整備するためにも、選挙の自由を拡大する方向で公選法を見直すことが重要だと強調しておきたいと思います。
以上です。
○武正会長 予定していた時間が経過いたしました。
これにて自由討議は終了いたしました。
次回は、来る十二月四日木曜日午前九時五十分幹事会、午前十時審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時十分散会

