衆議院

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第6号 平成29年9月14日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十九年九月十四日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 三原 朝彦君

   理事 岩田 和親君 理事 関  芳弘君

   理事 高木 宏壽君 理事 中村 裕之君

   理事 山際大志郎君 理事 田嶋  要君

   理事 初鹿 明博君 理事 中野 洋昌君

      青山 周平君    井林 辰憲君

      石川 昭政君    石田 真敏君

      江渡 聡徳君    大西 英男君

      北村 誠吾君    斎藤 洋明君

      白須賀貴樹君    助田 重義君

      田中 良生君    高鳥 修一君

      津島  淳君    額賀福志郎君

      前川  恵君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      山田 美樹君    阿部 知子君

      荒井  聰君    菅  直人君

      伴野  豊君    山井 和則君

      輿水 恵一君    斉藤 鉄夫君

      塩川 鉄也君    藤野 保史君

      足立 康史君    木下 智彦君

    …………………………………

   政府参考人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会長)

   (政策研究大学院大学名誉教授)          黒川  清君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (政策研究大学院大学客員研究員)         石橋  哲君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (東京理科大学イノベーション研究科教授)     橘川 武郎君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授)    鈴木達治郎君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (拓殖大学政経学部准教授)            益田 直子君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      関  武志君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月七日

 辞任         補欠選任

  うえの賢一郎君    田中 良生君

  土井  亨君     関  芳弘君

  野中  厚君     石田 真敏君

  堀井  学君     宮澤 博行君

  村井 英樹君     井林 辰憲君

  簗  和生君     細田 健一君

同月二十三日

 辞任         補欠選任

  木内 孝胤君     山井 和則君

九月十四日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     青山 周平君

  佐々木 紀君     白須賀貴樹君

  高木  毅君     山田 美樹君

  細田 健一君     前川  恵君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     勝沼 栄明君

  白須賀貴樹君     佐々木 紀君

  前川  恵君     細田 健一君

  山田 美樹君     高木  毅君

同日

 理事土井亨君八月七日委員辞任につき、その補欠として関芳弘君が理事に当選した。

同日

 理事木内孝胤君八月二十三日委員辞任につき、その補欠として初鹿明博君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

六月十六日

 一、原子力問題に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件

 原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)


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     ――――◇―――――

三原委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      関  芳弘君 及び 初鹿 明博君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

三原委員長 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として原子力規制委員会委員長田中俊一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三原委員長 この際、田中原子力規制委員会委員長から発言を求められておりますので、これを許します。田中原子力規制委員会委員長。

田中政府参考人 おはようございます。

 本日は、三原委員長の御配慮により、このような場で御挨拶する機会をいただきましたこと、大変光栄に感じるとともに、皆様の非常に貴重な時間を頂戴することを恐縮しております。

 原子力規制委員長をお引き受けしてから五年たちました。

 東京電力福島第一原子力発電所の大事故を踏まえて発足した原子力規制委員会は、失墜してしまった原子力安全規制についての信頼をどうしたら取り戻せるかが始まりでした。

 まず取り組んだことは、国会事故調査委員会により厳しく指摘された規制のとりこから抜け出して、国民から信頼されるための規制組織を目指すための議論で、委員だけではなく、規制庁の全職員が参加して意見を交わしました。その結果として生まれたのが、原子力に対する確かな規制を通して、放射線の有害な影響から人と環境を守ることを使命とし、独立性、透明性を堅持し、科学技術に基づく中立的判断を基本理念として、一人一人が強い向上心と責任感を持って取り組むという組織理念です。

 その後は、この組織理念を基本に、防災指針や、原子力発電所、原子力施設の新規制基準の策定、福島第一原発の廃止に係る安全確保や原発敷地の破砕帯調査、新規制基準に基づく原子力発電所や各種原子力施設等の新規制基準への適合性審査など、目前の課題に昼夜を挙げて取り組む日々が続きました。

 こうした実績を踏まえて、昨年の一月には国際原子力機関によるIRRSレビューを受けましたが、そこでは、日本は、実効的な独立性及び透明性を有する原子力規制委員会を設立したこと、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を新規制基準として迅速かつ実効的に反映させたという評価を得ることができました。

 その一方、IRRSレビューでは多くの改善事項も指摘されましたので、それを積極的に受けとめて、この春には原子炉等規制法の改正もさせていただきました。改正の柱は、原発の再稼働を踏まえた検査制度の強化です。法改正に当たっては、先生方から強力な御支援と御助言がありました。改めてお礼申し上げます。

 この五年間を振り返ると、私としては、原子力規制委員会、規制庁が我が国の原子力規制組織としてしかるべき役割をようやく担えるところまでたどり着きつつあるというふうに考えています。これは、原子力規制委員会が、国会の審議の中で三条委員会に位置づけていただき、独立性を堅持することができたことと、全ての議論が公開される中で、規制庁職員一人一人の力量が向上し、たくましくなってきたことにあると思っております。

 原子力発電所の審査に加えて、さまざまな原子力施設等の審査はまだまだ続きますが、これからは、絶えず安全規制の見直しを図り、適切にバックフィット制度を活用しつつ、継続的に安全性の向上を図ることが重要であると考えています。

 バックフィット制度は、安全神話を払拭し、最新の知見に基づいて安全性の向上を図る上で本質的に重要な制度で、法にこの制度を位置づけていただいた国会の見識に、改めて敬意とともに感謝する次第です。

 最後に、原子力規制委員長の職責を少し超えるかもしれませんが、いただいた貴重な機会ですので、一言申し上げさせていただきたいと思います。

 これまで、平成二十七年九月の川内原発一号機の再稼働を皮切りに、十二基の原子力発電所の審査が終わり、五基の原発が稼働するに至っていますが、原子力発電所の許可をすると、例外なしに、規制委員会が稼働の是非を判断しているとして、さまざまな意見が寄せられます。これは全くの誤解で、私たちの使命は、二度と住民が避難しなければならないような原子力事故は起こさせないという厳格な安全規制を行うことであり、原子力発電所の稼働を判断する役割や権限は与えられていません。

 私は、こうした誤解が生じる背景には、原子力政策についての議論の不足があると感じています。安全確保は私たちが担わなければなりませんが、原子力の適正な利用を進めるためには、東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、国内外の諸情勢、技術の進歩等を踏まえて、原子力政策がどうあるべきか、国会の場でぜひとも十分な議論を重ねていただく必要があると感じています。

 さらに、どうしても申し上げておきたいことがもう一つあります。それは、原子力利用を進める観点から、人材と技術基盤を継続的に確保する方策について御配慮いただきたいということであります。今後の原子力利用のいかんにかかわらず、さまざまな分野の専門家や技術が必要とされますが、我が国の人材と技術基盤は極めて心配される状況にあると言っても過言ではありません。

 福島第一原発事故から六年半経過しました。徐々にふるさとへの帰還も進んでいますが、生活や心の再建に苦慮しており、事故はまだ終わっておりません。私自身は、規制委員長を辞した後は、福島でふるさとの復興のお手伝いをしたいと考えています。

 最後に、福島と原子力規制委員会への引き続きの御支援を賜りますようお願いして、挨拶を終わらせていただきます。

 本日は、貴重なお時間をいただきましたことに改めてお礼の言葉を申し上げたいと思います。五年間にわたり御指導、御鞭撻いただきましたこととあわせて、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

三原委員長 この際、委員長から一言申し上げたいと思います。

 二〇一一年の福島原発事故に我が国が直面して、米国のNRCを手本に、日本型NRC、原子力規制委員会が政府から独立した組織として創設されました。この新しい組織の委員長として、田中委員長は、みずからの知識と経験そして良心に従い、委員会を指導してこられました。もちろん、委員長のこれまでの決定には民主主義の常として賛否がありますが、少なくとも田中丸は我が国の原子力行政に一つの方向性を示してきたと私は思います。

 九月十八日をもって田中委員長は委員長の重責を離れられますが、これ以降も、社会に対し専門の目から大いに批判を期待いたしております。

 健康に御留意の上、さらに御活躍を祈念申し上げます。長年本当に御苦労さんでございました。ありがとうございました。

 田中原子力規制委員会委員長さんは御退席いただきまして結構でございます。ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

三原委員長 引き続き、原子力問題に関する件、特に原子力規制行政の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、アドバイザリー・ボード会長及び会員の、政策研究大学院大学名誉教授黒川清君、政策研究大学院大学客員研究員石橋哲君、東京理科大学イノベーション研究科教授橘川武郎君、長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授鈴木達治郎君及び拓殖大学政経学部准教授益田直子君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 皆様方におかれましては、本委員会に設置されましたアドバイザリー・ボード会員をお引き受けいただき、心から感謝、御礼申し上げます。皆様の専門的見地から助言を得て、委員会活動を進めてまいる所存でございます。本日は、それぞれのお立場からの忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、橘川参考人、鈴木参考人及び益田参考人からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、参考人各位には委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 御発言の際は着席のままで結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず橘川参考人にお願いいたします。

橘川参考人 東京理科大学の橘川と申します。よろしくお願いします。座らせていただきます。

 それでは、原子力政策に関する意見を陳述させていただきます。

 国会事故調の活動を踏まえまして、現在も残る幾つかの問題があると思いますが、私は、大きな問題が五つあると考えております。

 一つ目は、国会事故調の時点で必ずしも立ち入った議論ができなかった点であります。これは、使用済み核燃料の処理問題、バックエンド問題ということになります。エネルギー基本計画で減容炉ないし毒性低減炉と位置づけられた「もんじゅ」が廃止された状況のもとで、どうやってこの使用済み核燃料の問題を根本的に解決していくかという道筋はまだできていないと思いますので、この点が一点目としてあると思います。

 それから二つ目は、国会事故調でも大きく問題になりました国際基準の適用という点で、改善も進んだと思いますが、特にテロ対策ですね、アメリカ政府が同時多発テロの直後に発表しました、それを見てアメリカの原子力規制委員会が発表しました資料のB5条b項、特に航空機の突入に対する対策等について、なかなか、情報の性格上、内容がつまびらかにされていない点もありまして、もしこれがうまく対応できていたら福島の事故はとめられたかもしれないという意見も強いわけでありまして、この点も今後議論が必要かと思います。

 それから三つ目は、規制委員会の機能であります。

 個人的見解でありますが、規制委員会に対しては、原子力推進派からも原子力反対派からも批判があります。ということは、原子力規制委員会は頑張っておられるのではないかというふうに私は思います。

 ただし、電力自由化の実際のマーケットの状況を見ますと、規制委員会の審査の時間のかかり方によって非常に競争条件に影響を与えているというような問題があります。もちろん、それによって危険性最小化という目標を全くゆがめてはいけないと思いますが、そういう市場の状況があるということは念頭に置いた方がいいのではないかと思います。

 四つ目は住民合意の問題でありまして、いろいろありますが、一番これも国際基準との関係でそごがあると思いますのは、避難計画立案に対して、諸外国では国がもう少し前面に出てコミットしていると思いますので、この点を今後考えていく必要があるんじゃないかと思います。

 そして五番目、何よりも強調したいのは、福島復興の問題であります。特に、これにかかわる国民負担等の問題ということで、残された時間、私はこの問題について集中的に議論したいと思います。

 現行のエネルギー基本計画の冒頭ですけれども、福島の復興、再生に全力で当たるというのが基本計画の冒頭に入っています。それがエネルギー政策を再構築するための出発点であるというふうに書かれています。

 この福島事故に対処する際に、私は二つ原則があると思います。福島の復興、再生を全力でなし遂げるという点が一点と、東京電力の供給エリアで電気の安定的で低廉な供給を確保する。この二つが問題でありまして、東京電力という会社がどうなるかというのは本質的な問題ではないんじゃないか、こういうふうに私は思っております。

 その上で、既に、二十一兆五千億の事後費用がかかる、こういう話が出ております。この数字はもっとふえるのではないかという意見もありますが、私は、この福島の復興ということを考えますと、福島にお金が回らないと話にならないので、国民負担は最終的にはやむを得ないと思います。

 しかし、そこに行き着くためには物事には順序がありまして、まず、事故を起こした東電が、やるべきことを全部やる、思い切ったリストラをやった上で、次に国民負担という議論にならなければ、国民が納得できないのではないかと思います。その思い切ったリストラというのは、端的に言いますと、柏崎刈羽発電所を含みます発電所の資産の売却、完全売却ということになると思います。

 柏崎刈羽の後、いろいろ選挙はありましたけれども、原子力問題が前面に立って争点になった選挙というのは余り多くありません。代表的なものは、二〇一四年二月の東京都知事選、そして二〇一六年十月の新潟県知事選挙がありますが、結果が非常に逆の結果になりました。

 私は、日本の国民というのは非常にリアリストなのではないかというふうに思っていまして、なぜそういう違いが生じたのか。もちろん、柏崎の地元であります新潟県民からすると、自分たちのところで危険性を伴いながらつくった電気が東京に売られていくというたこ揚げ地帯方式に対する批判はあったと思いますが、この二つの選挙が一番逆になった決定的な理由は、次のグラフにあると思います。

 これはエネルギー価格なんですが、細かいことは申しませんが、ほかは天然ガスの価格ですけれども、緑の太い線が原油価格でありまして、二〇一四年二月の東京都知事選のころはバレル当たり百ドルだったわけです、新潟県知事選挙のときにはバレル当たり四十ドル台ということで、つまり、原子力が再稼働しないと非常に電力コストが上がって、貿易も赤字になり、国民負担が重くなるということが明確だったのが東京都知事選挙のときで、はっきり言って再稼働か再値上げかということが問われていたと思うんですが、新潟になるとその条件が消えまして、二酸化炭素の問題では原子力の位置づけは言うことができるかもしれませんけれども、コスト面では理由がはっきりしなくなった。ここが非常に大きな条件の変化があるというふうに思います。

 私は、こういうことを考えますと、日本の国民というのはリアルに状況変化に合わせて判断しているんじゃないかと思いますので、その国民を信じて、原子力の問題について、きちんと言うべきことはちゃんと言う。例えば、原子力を何らかの形で使い続けるのならば、新しいものほど危険性は小さいに決まっているわけですから、リプレースの話をしないのはおかしい。逆に言うと、古いものはどんどん畳んでいって、私は、原子力依存度は今の計画よりももっとずっと下げるべきだ、こういうふうに思っていますが、そういう正面突破の議論がされていないというのがおかしいのではないかと思います。

 柏崎刈羽のことについて言いますと、まずは東電が完全売却しないと、東電が残っていると福島のリスクとつなげられますからほかの電力会社が連携するわけにいかないので、完全売却して初めて柏崎刈羽の再稼働という話が出てくるのではないか、こういうふうに思っています。

 具体的には、避難計画のこともありまして、地元の東北電力はかまざるを得ません。しかし、東北電力はキャッシュの問題で限界がありますから、原電が出てきて国がある程度バックアップする、こういう準国営の体制が必要か、そういうふうに思います。

 そうしますと、準国営で原子力が運営できるようになりますと、中立的な値段で電力卸取引所に原子力から集まった電気を使うことができますので、自由化も進むと思います。さらには、柏崎刈羽を売るということは、東京電力の火力発電所も売ることになりますので、LNGが他社の手に東京湾で渡りますから、東京湾に石炭火力をつくる必要がなくなりますので、地球温暖化対策にもプラスになるのではないかと思います。

 時間になりましたので、私の話はこれで終わらせていただきます。(拍手)

三原委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 長崎大学の鈴木です。よろしくお願いいたします。

 それでは早速、私の方から、まず一枚目は、私自身、原子力の専門家であり、長い間原子力に携わってきた人間の一人として、今回の事故を防げなかったことについて深い責任を感じておりまして、反省もしております。もちろん福島県民の方々に対してですけれども、影響を受けた方々皆様に心よりおわび申し上げたいと思います。

 私の、事故からの教訓なんですが、四つ挙げてありますが、最初にまず、想定できないことを想定することというのが大事ではないか。

 二番目は、私自身が原子力工学の専門家として工学的リスク評価というのをやってきたわけですが、今回、この事故を踏まえて、工学的なリスク評価だけでは原子力のリスクをはかることはできない、経済的、社会的評価というものを考える必要がある。もう一つは、リスク評価をするときに、専門家だけ、特に工学的専門家だけでは決められない、人文社会系の専門家や一般市民の方々の意見も入れて評価すべきである。この二つを学びました。

 三番目は、国民との信頼醸成、これが原子力政策の円滑な推進には不可欠であるということが大事であります。

 そのためには、信頼される独立した情報提供の仕組みが必要である。きょうお話ししたいことの最大のポイントとして、行政や科学技術を独立した立場で評価する第三者機関が不可欠である、これを強調したいと思います。

 では、我々は福島事故から学んだかということなんですが、これは先ほども出ましたけれども、エネルギー基本計画の「はじめに」のところに非常に貴重な文章が書かれておりまして、政府及び原子力事業者は、安全神話に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、このような悲惨な事故を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならないという大事な文章がありまして、これを、私もそうですが、皆さんもぜひ頭に置いて、エネルギー政策、原子力政策を議論していただきたい。

 しかし、例えば黒川先生の書かれた本を読ませていただきますと、五年が経過して、最近、原発事故は徐々に風化してきてはいないだろうか、事故の反省を全て消し去ろうとしているように見えるとか、畑村洋太郎先生から二つコメントを引用させていただきましたが、「事故を考え直したり、反省をしたりしたかといえば完全にノーだ。」、それから「提言が実行されているかいないかをちゃんと見る組織も動いていないようにみえる。」と。このように、五年たって、もう六年になりますが、福島原発事故から学んでいないのではないかというのが私の一番の懸念であります。

 国会事故調の提言の七が非常に大事でありまして、「独立調査委員会の活用」というところの中に、全部読む時間がありませんが、大事なことは赤い字で書いてあるところで、特に後半のところですね、「原子力事業者及び行政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関」をつくるということが大事だというふうに書かれています。これがまだ実現していないのではないかというふうに私は思っています。

 では、当面のアジェンダとして私が強調したいのは、原子力をやめるか否かにかかわらず、解決すべき課題というのは非常に多くある。ここでは五点挙げていますが、最後にもう一点だけ、「もんじゅ」後の研究開発と人材確保についてもちょっとお話ししたいと思います。

 最初に、使用済み核燃料、廃棄物問題。これも橘川先生からも御指摘がありましたが、使用済み核燃料をどうするか、これは脱原発か否かにかかわらず重要な問題でありまして、私は二点挙げたいと思います。

 一つは、安全性の向上。プール貯蔵の安全性というのは、今回の福島事故でも皆さんおわかりになりましたように、非常に危険なことが起き得るということで、特にテロとの関係は重視したいと思います。

 それから、これを防ぐための一番の方策は、乾式貯蔵へできるだけ早く移すということなんですが、今は民間事業者に任せられておりますが、やはり政府の役割が必要なのではないかというふうに考えています。

 それから三番目は、使用済み燃料は、今は資源として考えられているんですが、これは全量再処理政策ということの硬直性が問題でありまして、中間貯蔵をするにも再処理稼働が必要になってくるという関係があります。したがって、使用済み燃料は資源であるという考え方をぜひもうちょっと柔軟にしていただきたい。後でお話ししますが、再処理拠出金制度というのが昨年できましたが、これも全量再処理政策につながっているものであります。

 高レベル廃棄物の問題は、科学的には私は十分に処理処分できると信じておりますが、残念ながら国民に信頼されていない。このプロセスを信頼できるようなものにするために、四つほど掲げていますが、まず第一に、先ほど申しました再処理と廃棄物処分の関係について明確にしていただきたい。再処理は必ずしも廃棄物処分を容易にしないということは、既に私が原子力委員会のときにも小委員会で評価をしております。ただ、いまだに再処理が廃棄物処分を容易にするということが言われておりますが、これをまず明確にしていただきたい。

 それから、直接処分を、現在の法律では不可能でありまして、これをぜひ可能にしていただきたい。これが使用済み燃料の扱いを柔軟にする重要なポイントであります。

 それから、長期保管と合意形成のプロセスについては日本学術会議が提言をしておりますので、これについてもぜひ検討していただきたい。

 最終的に、一番大事なことは、全体のプロセスを評価する第三者機関がやはり必要であるということであります。

 再処理等拠出金法の成立、昨年ですが、これを見ていただきますと、ポイントは、再処理を円滑に進めるために全ての使用済み燃料についての費用をあらかじめ拠出金として義務づけるということでありますので、これは全量再処理路線の継続を意味しているわけです。残念ながらこれは、私が原子力委員会にいたときに、柔軟な核燃料サイクルにしてほしいという決定と、それから、エネルギー基本計画にも戦略的柔軟性を確保するという文章があります、これに矛盾しているのではないかというのが私のポイントであります。

 国会で議論していただいて、実は、この再処理等拠出金法について附帯決議がなされております。これは全て大事なことが書かれておりますので、ぜひこれを実行していただきたいんですが、一番私が強調したいことは、柔軟性の問題と、三番目、プルトニウムバランスについて。実は、もともとの法律については、プルトニウムバランスについて一言も書かれていませんでした。この附帯決議のおかげで、再処理をする場合にはプルトニウムバランスに気をつける、原子力委員会の意見を聞くということが書かれましたので、これをぜひ遵守していただきたいと思います。

 放射性廃棄物処分における第三者機関の必要性というのは、これも私が原子力委員会のときに強調したものでありますが、経済産業省のワーキンググループにおいてもその重要性については指摘されています。しかし、現時点ではこの第三者機関の役割をしているのは原子力委員会そのものでありまして、私自身は、原子力委員会では第三者的立場ではないというふうに考えておりまして、やはり中立的な機関をちゃんとつくることが必要ではないかと思います。

 核テロリズムについてですが、私が一番強調したいことはプルトニウム在庫量問題です。日本の在庫量は既に四十八トンありまして、これをどうやって減らしていくかというのは国際的な安全保障の課題として注目されています。

 既に、政府は、二〇一四年の核セキュリティーサミットの時点で、そこには二つ声明が出されていまして、一つは日米首脳による共同声明、もう一つは核セキュリティーサミットの共同コミュニケであります。両方とも、世界の核物質の保有量を最小化する、あるいは、最小限のレベルに維持するということについて日本政府はコミットしております。これをどう実現していくか。世界の核物質の量を下げていくわけですから、当然、日本の在庫量も削減していく必要があります。これについて明確な政策的な決定がなされておりませんので、ぜひこれを実現していただきたい。

 あとの二点はちょっときょうはお話しできませんが、このプルトニウム在庫量問題が二〇一八年に改定期限を迎える日米原子力協定との関係、あるいは、次に、核テロリズムとして注目されている従業員信頼性確保の問題、これはIAEA勧告は法制化を勧告しているんですが、日本では法制化が見送られたという理由、これについてやはりぜひ議論をしていただきたいと思います。

 次の問題は、規制庁の独立性担保なんですが、私は、政治的独立性は既に担保されたと思っていますが、きょうお話ありましたが、重要な点として、技術的独立性、これについての議論をぜひしていただきたい。

 時間が参りましたので。

 地域の住民との対話の場の形成というのは、これは原子力規制委員会の設置法案に対する附帯決議というのが参議院でなされておりまして、ここで「本法施行後一年以内に地方公共団体と国、事業者との緊密な連携協力体制を整備する」、それから「三年以内に諸外国の例を参考に望ましい法体系の在り方を含め検討し、必要な措置を講ずる」ということが書かれています。これがまだ実現していないので、これをぜひ実現していただきたい。

 廃炉の透明性確保と被災者人権確保ですが、この福島廃炉の問題で、私がやはり原子力委員会のときに見解文を出しておりますが、ここでも、廃炉の透明性確保のために第三者機関を設置すべきだということを言っております。

 それから、被災者の人権確保では、子ども・被災者支援法という法律が通っておりまして、ここでも基本理念と国の責務が書かれておりますので、これもぜひ、今後の復興のときにこの法律にのっとってやっていただきたい。

 最後、「もんじゅ」後の研究開発、人材確保。先ほど規制委員長からもお話がありましたが、私は、この人材確保の問題は非常に重要であると考えておりまして、原子力委員会のときにも見解も出させていただきましたが、「もんじゅ」後の研究開発でやはり重要な点として、工学的な評価だけではなくて、倫理、法、社会的側面を含めた総合的な評価機関をつくるべきだということを提言させていただきました。

 それから、技術基盤の維持として、基礎基盤研究の重要性、それから、工学的研究専門家だけではなくて、人文社会系の研究推進、この原子力分野ですね、もお願いしたいというふうに思います。

 では、私の方は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

三原委員長 ありがとうございました。

 次に、益田参考人にお願いいたします。

益田参考人 拓殖大学の益田直子と申します。

 本日は、発言の機会をいただきましたことを関係者の皆様に感謝申し上げます。

 私は、評価研究と行政学を専門としております。大学院時代に客員研究員として行ったアメリカの大学院で、評価がもたらす影響の研究をしておりました。その際、ガバメント・アカウンタビリティー・オフィス、通称GAOと呼ばれる、独立した立場から政府活動の評価を行うと同時に、立法府の補佐を行うという機関の役割に関心を持ちました。

 具体的には、GAOは、評価結果を立法府、行政府、国民に知らせることにより、何か問題が起こっている、または起こりつつあるという警告を発する役割を歴史的な経緯の中で担うようになっていったことに強い関心を持ち、その要因を博士論文としてまとめ、出版をしました。

 例えば、一九九二年に年金記録に関する記入漏れとその要因を明らかにしたことは日本でも報道されています。ほかには、二〇〇二年ごろにエネルギー政策策定におけるエネルギー関連会社の影響に関する調査を行い、二〇〇七年にイラク戦争後のイラク政府による復興実績の評価を行い、そして、二〇一四年に福島原子力発電所の事故を受けての調査対象十六カ国における原子力規制機関の対応状況の調査を行っています。それぞれ調査結果は公表され、該当する行政機関には勧告を行っています。

 こうしたGAOによる評価活動によって行政を監視する機能がどのようにアメリカの統治機構において誕生したのかという著書がきっかけとなり、アドバイザリー・ボードのメンバーに加えていただいたと考えております。そのため、本日は、他国の経験を踏まえて、立法府が行政監視を行うに当たりヒントとなるお話を幾つかお示しできればと考えております。

 本日は、関連する過去二つの研究成果を踏まえて、次の二点についてお話をいたします。

 一点目が、アメリカにおいて、立法府は、行政監視の能力を強化するために、なぜ独立かつ立法補佐の機関を必要としたのかです。GAOが議会に近づきながらも、議会の日常的権力作用からは一定の距離をとり独立性を確保する位置にいるからこそ、議会の行政監視を補佐できると考えられているのはなぜかです。

 二点目が、国際比較の視点から、日本は評価政策と評価文化の成熟度の程度はどのように評価されており、その理由は何かについてです。日本は、評価政策については高く評価されていますが、評価文化の成熟度については課題があるという調査結果が出ています。評価文化の成熟度をはかる測定指標は九つありますが、そのうち、他国と比べて最も評価が低いのが、議会における評価の実施と結果の利用に向けた制度化の程度です。つまり、評価活動における立法府の役割に大いに課題があるという結果が出ています。その要因として考えられる事項につきましては、後ほどお話をします。

 まず初めに、一点目の、アメリカにおいて、立法府は、行政監視の能力を強化するために、なぜ独立かつ立法補佐の機関を必要としたのかについてお話をします。

 詳細はこちらの写真にある「アメリカ行政活動検査院 統治機構における評価機能の誕生」という著書をごらんいただきたいと思いますが、本日は、立法府との関係にのみ焦点を当ててお話をします。

 こちらの図は、GAOが立法府との関係と機能をともに変化させてきたということを示しています。

 まず、GAOの機能における変化について説明します。

 一九二一年に、財務省内にあった監査機能を新たにつくったGAOに移行させたのが設立のきっかけでした。政府の全ての支出証票の監査を行う機関でした。一九五〇年には、GAOは、政府支出における無駄な経費の節約など、経営管理上の効率性に関する監査を始めます。そして、一九六七年の法改正により立法府はGAOが行政府の貧困対策プログラムの効果を評価することを義務づけ、これにGAOが成功をしたことにより、一九七〇年代以降は政策の効果を検証する評価活動がふえていきます。

 他方、立法府との関係にも変化が起こりました。図の中の「位置」と書かれている箇所がそれを示しています。

 一九二一年の設立当初は、設立法に立法府の機関であると明記されておらず、行政機能の幾つかを財務省から引き継いだ組織であったので、行政府と立法府の両方の境界線をまたがる組織という説明もありました。そのため、GAOは、行政府の枠内に戻されそうになる動きに何度も直面しました。しかしながら、一九四五年の行政府再編法に、GAOは立法府の一部と明確に表現され、さらに、一九八六年の最高裁判所判決で明確に立法府の機関であると示されるようになるに至って、論争は解決しました。

 このように、GAOは、行政府から立法府に近づくとともに、財務的検査から政策の効果の検査、つまり評価を行う組織に変わっていきました。

 なお、二〇一六年度のみの勧告数は二千七十一件です。四年前の二〇一二年度勧告のうち、二〇一六年度までの四年間で執行された率は七三%です。未執行の勧告のデータベースは公開されています。

 このように立法府とGAOの関係が近づくためには、相互の取り組みが必要でした。立法府側からは、上院下院の両院がGAOに対する議会側の要望を報告書により明確に示しました。例えば、議会との関係の密接化、GAO報告書の提出のタイミングの改善、監査の観点を政策効果にまで拡大することなどの勧告が出されました。また、実施する上で必要な法律の制定を行いました。

 一方、GAO側は、議会側の要望に応えるように、専門職職員の専門領域の配分を変え、新たな監査活動である評価の実施を牽引する評価・方法論課を新設するなどの組織改革を行い、質が高く議会の意思決定のタイミングに合わせた評価書を作成し、その件数を大幅にふやしていくことで議会からの信頼を得るようになりました。つまり、立法府とGAOの間に行政監視能力を向上させるための相互作用がありました。

 その背景には、数々の行政府への不信感を高めるような出来事がありました。莫大な連邦政府資金の支出を伴う福祉政策、ベトナム戦争による軍事費の増大、それらに伴う赤字の持続的拡大がありました。例えば、福祉プログラムは法の目的を達成できているのかについて議会が疑問を持ち始め、その評価をGAOに義務づけました。その後、ウォーターゲート事件と呼ばれた大統領の不祥事が起こると、国民は、行政権が濫用されているという認識を高め、行政府への不信感を強めるのみならず、それを監視すべき議会の行政監視機能が効果的に働いていないと考え、議会への不満も高めていくことになります。

 こうした国民による政府の正当性への強烈な疑念が、議会改革を推し進めていくことになりました。

 具体的には、議会が行政府に情報を依存しているために行政府が優越していると考え、議会の情報力を向上するために、信頼性の高い独立した情報源の獲得が必要になります。そして、一九七〇年の立法府改革法の制定により、GAOに評価の実施を義務づけました。

 ここで重要な点は、政府活動への正当性の確保が必要になり、そのために、議会のみならず国民にとっても信頼性の高い情報の活用が不可欠となり、党派性やバイアスから自由な独立した組織との関係を強化したということであると考えます。

 次に、二点目の話、つまり、国際比較の視点から、日本は評価政策と評価文化の成熟度の程度はどういった位置づけにあり、それはなぜかについて、簡潔にお話をしたいと思います。

 表は、二〇一五年のジェイコブらによる評価文化の成熟度に関する調査において対象となったOECD諸国十九カ国の中での日本の順位を示しています。下から六番目に位置しています。また、評価政策については、公式化されているとともに十分に確立した国に分類された国々に日本も位置しておりますが、その中で最下位に位置しています。

 評価を下げている最大の原因は、数値からも明らかなとおり、六、議会における評価の実施と結果の利用に向けた制度化の程度、配点はゼロから二点でなされておりますが、そのうちの〇・三です。参考としている論文において、日本の評価の低さの理由について明確な説明はありません。

 しかし、他国の議会の中には、一、議会みずからが評価を行う場合や、二、独立性の高い機関が評価を行うことを議会が求め、議会が法律の策定や修正を行う場合、三、議会における予算審議の中で行政機関が行った評価情報を利用する場合などがあることを説明しており、日本はこれらに該当しないと判断されたと推測できます。

 以上となります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

三原委員長 ありがとうございました。

 この際、黒川参考人から発言を求められておりますので、これを許します。

黒川参考人 ありがとうございました。三原委員長のもとでこのようなアドバイザリー・ボードを設けていただいたことに感謝します。

 私どもは、国会事故調という立法府の法律によって行われた委員会でしたけれども、これは日本の憲政史上初ということで、世界では普通、民主主義が比較的マチュアなところは当たり前なんですね。御存じのように、イギリスでは、大体こういうことが四つか五つぐらい、ずっと続いています。例えば、ブレア首相がどうしてイラク戦争へ行ったのかというのは多分八年ぐらい続いて、膨大な報告書が出てきましたけれども、そういうことをやはりやっているのが、三権分立の、民主主義が初めて機能しているという証拠になったのがこの委員会だと思います。

 この委員会は、もちろん公開でやりましたし、英語の同通も入れていますし、今の時代ですからオンラインで誰でも見られますし、その後の記者会見も全部見えていますので、どの記者がどんな質問をしたかということも記録に全部残っています。それも英語の同通を入れているというのが私たちの信条だったわけですが、七つの提言をしています。

 この報告書は世界で英語でも出ていますので、関係者には非常によく読まれておりまして、時々、例えばヘッド・オブ・ステートとか、いろいろな人が来たときに、あの報告書はすばらしいんだけれども、七つ提言しているよね、七つで何か起こりましたかと結構聞かれちゃうんですね。そういう話が関係者でもみんな知られていますので、この提言の七つのうち、一だけが、これが三回目です。

 最初は、森先生が委員長でやりまして、このときは、私ども九人の委員が呼ばれて、ここで話を、いろいろな質疑応答をしたというのが、三時間ぐらいしましたが、二度目は、吉野先生になられまして、結局何も開催されなかった。これが初めて、三回目で、二回目ですけれども、アドバイザリー・ボードというのもちゃんと入った初めてのことで、これはすごく私どもは評価できるなと思っています。七年たってようやっと提言の七つのうちの一の初めてが形としてもできて、三原先生たちとも御相談したんですけれども、私、このような七人のメンバーにさせていただいたのは、今のような、行政府とかいろいろな、原子力だけじゃない方の意見も聞いていただきたいと思ったからであります。

 ですから、今回、そういうところからいうと、福島の事故は非常に世界共通の大きな問題ですし、四百基以上あるような原子力の安全性については、ぜひ、起こった事故のこれからの処理も含めて、業界の人たちがみんなどんどん公開して、一緒にやってもらいたいということを随分言っていますけれども、そういう雰囲気が、皆さん、あると思っているでしょうかという話が一番の懸念です。

 つまり、これを世界のエキスパートとかなり透明性を持って公開することによって、水もそうですけれども、そういう提言が、それを日本の政府がそのもとで今度は執行していけば、明らかに、この事故から関係者みんなで学ぼうよ、それを国民とシェアしようよという気持ちが出てくるわけで、これはまさに立法府の責任ではないかと思っております。

 そういう意味では、今、アメリカの三権分立の歴史を話していただきましたけれども、こういうことも非常に参考になると思いまして、私どもは、国会事故調のときに、国会図書館の方も三人ついておりましたので、いろいろなことで助けていただきました。見てみると、彼らは物すごく優秀ですね。こういうことを頼みたいんだけれどもと言うと、そんなこと簡単ですよと言ってどんどんやってくれるんですが、最後の方はほとんど徹夜で三人がずっと手伝ってくれましたけれども。

 このようなプロセスは可能だと思うので、やはり行政府を常日ごろから評価していて、今益田さんが言ったようなことが起こるようになっているプロセスですが、ぜひこれをやっていただきたいし、こういうところにこそ非常に意思の高い国家公務員をふやすのは非常に大事じゃないかと私は思っております。

 さらに、このような委員会は、先ほど言ったバックエンドの問題にしても皆そうですけれども、私どものやったような独立した調査委員会というか、それを時に応じてどんどんつくっていただくのは非常に大事なプロセスではないかということを皆さんにぜひ共有していただければ、だんだんだんだんそういう動きが国会議員の先生方の中、つまり国権の最高機関ですから、その方たちに、何が問題で何がどうなのかなという話を、だんだん意識が広がっていけば、必ずこのようなGAOのようなものができ、また、私どものような、課題によっては、皆さんもいろいろな意見はあるかもしれませんけれども、明らかに独立した、専門家を入れたような調査委員会の報告書を出される。

 アメリカの場合は大体年間に百ぐらいそれをやっていますけれども、ナショナル・リサーチ・カウンシルが大体チェックするようになっていますが、これはアメリカのアカデミーの成り立ちそのものが、リンカーン大統領が、アカデミーは大事である、それは国の機関ではないというふうにして、さらに、そのかわり国の政策にいろいろアドバイスを下さいねということで一八六三年につくっているので、いろいろな政策でも必ずそこに問い合わせをするという形になって、ナショナルアカデミーというか、ナショナル・リサーチ・カウンシルは、基本的には全ての経過をオープンにして、公開してやっているので、それをするかどうかはまた議会が判断することですけれども、非常に国民からも信頼されるインスティテューションになってきたという歴史があります。

 そういう意味では、先生方は政治家ですから、政府の方に行くとかいろいろなことがあるにしても、多分この委員会そのものはこの二回で終わりなのかな、またメンバーがかわられるのではないかと思いますが、私個人としては、ぜひ先生方に、このアドバイザリー・ボードはしばらく続けていただけるようなことができれば、次に引き継ぎしたときにまた、こういう私どもの見解、あるいは専門家、鈴木先生と橘川先生もおられますけれども、先生との、こういう認識をぜひ広げていって、こういう形の日本の国のガバナンスができてくるといいなと切望しているというのが、私の委員長としての本当に国民に対する気持ちだと。先生方の見識と、このような提言の一のやり方、書いてあるとおりなことをやっていただいて、私は、委員全体とそれから国会事故調に関係した皆さんを代表して本当に感謝しております。

 このプロセスがぜひ続けられ、また広がって、国の統治のメカニズムということについての先生方の判断材料をいろいろと提供できるというシステムができると、今言ったような、世界から見た日本の民主主義というのがどう動いているかという話を認めていただくと、だんだん国民からの、ああ、そうか、選挙ってこういうものなんだという意識も変わってくるだろうと思っておりますので、本当に、先生方の見識とこのような機会をつくっていただいたことを、私は国会事故調の委員長として、いろいろなところから問い合わせがありますけれども、一歩進んだよと、それについてはやはりかなり理解を、その機会を使って、また先生方との、この委員会の意味とそれから国会事故調の意味が少しずつ広がっていくことが日本に大事かなと思っております。

 本当に心から感謝しております。ありがとうございます。

三原委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

三原委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 この際、委員各位に申し上げます。

 前回と同様に、質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただき、必ず委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートをまた横に戻してください。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べください。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

大西(英)委員 自民党の大西英男でございます。

 諸先生のお話、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 その中で、橘川先生の御見解についてお尋ねをしたいと思います。

 先ほど規制委員会の田中委員長から、退任の御挨拶というと語弊がありますけれども、まとめの御挨拶がありました。

 そうした中で、今、規制委員会の最大の課題になっているのは柏崎刈羽の再稼働問題でございまして、先日審議が行われたとマスコミ報道で伺っております。

 その中で、次期の委員長候補でもある更田委員長代理から御発言がありました。それは、今マスコミ等で、東京電力の、もちろん福島原発問題に対する責任問題というのは、これは批判されて当たり前のことでございますが、東京電力だからああいう事故が起きたのか、それとも他の日本の電力会社がこれを担っていたらああいう事故に至らなかったか、そんな議論も今回の再稼働問題に関連をして行われておりますが、更田委員長代理は明快に、これは東京電力でなくても起きた可能性がある、東京電力だから起きた事故ではないというような御見解を、ある意味では勇気を持ってお示しいただいているんですね。

 そういった中で、橘川先生から御指摘があって、ある意味では東電解体論ですね、東電の資産を全部売却しろ、そうしないと今回のこの問題の収束は得られないというお話がございました。

 一つお尋ねしたいのは、今、東京電力が、経営努力によって、膨大な賠償、そしてこれからは廃炉、これを受け持つために努力を続けています。その中で、柏崎刈羽の再稼働というのは重要なポイントにもなっているわけで、これが再稼働ができれば、東京電力が自己努力によって、国民負担を最低限に軽減して行えるという試算もなされているわけですけれども、これについて先生はどのようにお考えになっているのか、伺いたいと思います。

 もう一点は、東京電力の資産の売却によって、今日のこういった事故の処理費用の一切が賄えるのかどうか、国民負担というような問題が出てこないのかどうか、これについてもお伺いをしたいと思います。

 以上です。

橘川参考人 御質問ありがとうございます。

 まず、冒頭の点ですが、更田さんと同じ意見でありまして、東京電力だから起きたとは考えません。他社でも起きた可能性は十分ある、こういうふうに思っております。

 次に、私の議論は東電解体論ではありません。小売の会社とそれから系統の会社が残ります。ここは確実にもうかっていきまして、そのもうけの一部を半永久的に、ちょうどチッソが水俣病の賠償金を払い続けているのと同じように、払い続ける。そういう意味では、福島の責任を小売と系統の会社が払い続ける。従業員数は半分になって、リストラ効果が大きくなります。東電の社員もボーナスをもらいながら賠償金を払える、こういう仕組みになる、こういうふうに思っていますので、解体論では全くありません。

 それから、売却で賄えるか。賄えない可能性が非常に大だと思います。ただし、筋論として、最終的には国民負担になると思うんですけれども、東電が賄えるだけ賄ったという上で初めて国民負担の議論になると思いますので、賄えるかどうかという点でいうと、かなり疑問である、でもやらなければいけない、こういうふうに考えております。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 委員長の御指名ありがとうございます。

 そして、こうした委員会を二回にわたって開いていただいて、大変私ども、この国会におります者にとっても非常にいい経験をさせていただきましたし、結実をさせていきたいと思います。

 その上で、黒川先生がお選びになった七人の委員の方いずれの方からも、きょうのお話もとても参考になりましたので、黒川先生にもお礼を申し上げたい。

 質問は、今の柏崎刈羽の再稼働ということをめぐって、お三方にお願いをいたします。

 まず、黒川先生には、いわゆる事故調を通じて規制のとりこになっていたということを含めて、東電、東京電力の原子力事業者としての適格性をはかるときに、先生にとっては、これは技術的には例えば規制庁がゴーを出したとしても残る問題があると規制庁もおっしゃっていますが、いかなる点でそうした適格性をはかっていくのか。例えば、今の御質問のように経済的な安定もあるでしょう、あるいは倫理的、社会的問題、あるいは技術的なものもあるでしょう。果たして、再稼働に当たっての単に技術的ではないところの適格性はどうお考えになるかということ。

 同じ点で、橘川先生にも、これは東電以外の主体であるべきだとおっしゃるのは、主には経済的な部分で国民の納得もきちんと果たさねばならないからということもおありでしょうが、そのほかには要因があるのか。

 そして、鈴木達治郎先生には、いわゆる規制庁の独立性は技術的独立性も必要であるという御指摘で、今回そういう観点から、柏崎刈羽の評価においてはこの点はどうであるかという、同じテーマですので、お願いします。

黒川参考人 ありがとうございます。

 一つは、今、柏崎その他のこともありましたけれども、実際は、IAEAのリコメンデーションは、もしシビアアクシデントが起きたときには、最初から住民がどのように避難をするかということをやっていなくてはいけないわけで、これがされているかということになると、川内もそうですが、立地のところと、起きたときに放射能が拡散していく場所というもののまた違いがありますよね、そこをまだやっていないんじゃないのかということは比較的誰でも知っていることなので、そういうことをやった上でないと、やはり、再稼働をしちゃっているのはどうしてなのという話は関係者はみんな知っている。知っているにもかかわらず、できないというか、まあ、国会としてはやらなくちゃならないことがいろいろあると思うんですけれども、そういう話ができなくてもやっちゃっているというのはどうなのかねという話は関係者は皆知っていると思いますから、そういうのが国の統治の問題というメカニズムについての認識だと思います。

 もう一つは、前から電力会社のあり方が、本土では九つの電力会社の発電と送電がある程度モノポリーになっていますから、電力というのは生活あるいは企業の一番の上ですから、どうしても電事連みたいなものにもなって、ある程度独占しちゃうわけですから、グリッドもなかなかつくれないし、そういうような独占企業で腐らなかったものはないわけですから、そういう意味では、それがなぜこれをきっかけに直っていく方向にならないのかなという話は、世界の関係者はみんな知っている。だから、日本の統治は何かよくわからないなという話は皆さん認識しているようであります。そこに私は一番の懸念があるということですね。

橘川参考人 適格要件の問題でこれまで述べてこなかった点を言いますと、今の避難計画の話にかかわりますが、東京電力が地元ではないということです。新潟県民にとって自分の町の電力会社は東電ですけれども、それは東京電力ではなくて東北電力でありますので、避難計画をきっちりつくる上では東北電力がかまざるを得ないと思います。しかし、東北電力がかもうとするときに、東京電力が残っていますと福島のリスクとつながりますから、会社の経営上そこには出てこられない、東京電力はいてはいけないわけです。

 もう一つは、東北電力は資金力が十分ではありませんから、やはり原電の参加、場合によっては新潟県の参加ということもあるかと思いますけれども、そういう仕組みが、現実問題として柏崎をガバナンスしていく上で、避難計画からいって、適格性という点で東京電力には問題があると思います。

鈴木参考人 正直申しまして、柏崎刈羽の評価について、詳細を私は見ていないので、この件について判断することはちょっと難しいと思いますが、それ以外、全体的に見た場合に、規制庁の技術的独立性は高まっていることは間違いないと思います。十分かどうかについては、私の見た限り、独立性は高まってきてはいるんですが、逆に独立過ぎて、いろいろな専門家とのコミュニケーションとか、その辺が少し不足していたかなという点はあるかと思います。

 ただ、これも改善されてきているような気がしていまして、今回の判断の中で、技術的に規制基準は満たしているけれども、福島の廃炉を含めた事故の反省をちゃんとしているかどうかという、やや定性的な判断を保留しているというふうに私は理解しているんですけれども、この辺は多分、これまでの規制機関ではなかなか議論されていなかったことなので、規制庁みずからが考えられた点ではないかなというふうに私は評価しております。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 本日は、参考人の皆様、大変貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 きょうは、大変恐縮なんですけれども、時間の関係で、鈴木参考人に三点お聞きしたいと思っております。

 第一に、核燃料サイクルの問題であります。鈴木参考人は、さまざまな雑誌等で、核燃料サイクルの見直しというのが避けられないという御趣旨の発言をされていると思うんですが、どうしてこの見直しが避けられないのかというのが一点。

 そして第二に、プルトニウムの問題であります。再処理拠出法の御指摘もありましたけれども、再処理すればプルトニウムが出てくるわけで、世界でプルトニウム削減を求められる中、日本の原発再稼働やそれに伴う再処理、全量再処理路線というのがどういう意味を持つのか、それが、きょうはちょっとお述べにならなかったんですけれども、来年の日米原子力協定との関係について、もう一点お答えいただければと思っております。

 最後に、第二の論点とも絡むんですが、核兵器との関係で、鈴木先生は長崎大学の核兵器廃絶研究センター長でいらっしゃいますし、日本パグウォッシュ会議の代表でもあられるということで、さきの国会では、日印、インドとの原子力協定が結ばれたわけですが、アジアは今、北朝鮮の核開発もあって、核の問題というのが重要な局面にあると思っているんですけれども、この核兵器の問題と日本の核燃料サイクル政策あるいは原発輸出政策、これをどう見ていらっしゃるか。

 以上三点、お願いできればと思います。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 核燃サイクルの見直しがどうして必要かということについては、私が原子力委員会にいるときに既に見直しを前提に評価をさせていただいて、現時点で再処理よりも直接処分の方が経済的であり、それから、安全性や廃棄物処理の観点からいって再処理と直接処分に差はないという判断をしておりまして、ただ、現実に六ケ所再処理工場が完成していますので、当時の結論は、将来柔軟な選択ができるようにしてほしいという結論を出しました。

 私個人的には、特に「もんじゅ」の廃炉が決定した時点で高速増殖炉の開発見通しが不透明になったということが一番大きいと今は思います。それを考えますと、核燃料サイクルは高速増殖炉が実現しないと意味がないので、「もんじゅ」廃炉の時点で核燃料サイクルの見直しは必至だと考えています。その中で特に、使用済み燃料の中に既に再処理できない使用済み燃料というのもあるはずですので、少なくとも直接処分は可能にしていただきたいというのが私の希望であります。

 二番目については、一番目と関係してくるんですが、全量再処理路線を続けるということは、プルトニウムを生産し続けるということです。原子力の将来の見通しがまだはっきりしない時点で再処理を続けることは、プルトニウムの在庫量がふえていくということです。これはぜひとも避けなければいけない。これは既に日本政府もそれを先ほど申しましたように認めているわけですね。そのためには、再処理のペースを落とし、必要のない再処理はやめるという決定が必要ではないか。

 日米協定では日本の再処理を三十年間包括的に認めてきているんですが、あくまでもそれは日本の自主的なプルトニウムバランスをとるという前提になっておりますので、これが、今後もプルトニウム在庫量がふえていくという状況であると、恐らくアメリカ政府の中にも見直しの議論が起きる可能性があります。現時点ではまだ起きておりませんが、日米協定そのものの見直し云々とは独立して、核不拡散の観点、核セキュリティーの観点からプルトニウム在庫量を減らす、そのために燃料サイクルを柔軟に見直していくことが必要ではないかと思っています。

 三番目は、私が今一番強調している点は、核燃料サイクルを維持することが潜在的な核抑止力になるという考え方が、あちこちで意見が出されていることです。これはかえって周辺に緊張をふやすことにつながるわけですから、私は、こういう意見が出ないように、日本の平和利用に徹する原子力政策ということをぜひ国会の方でも監視していただいて、核燃料サイクルは平和利用のためにやるのであって、原子力は平和利用のためであって、潜在的核抑止力のために核燃料サイクルを維持するということは、ぜひやめていただきたいと思います。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 私、きょうお聞きしたいのは、まず、橘川参考人と鈴木参考人に、この間の原子力規制委員会における東電の原発運転の適格性の問題について、先ほど阿部委員からも御質問がありました、関連してお尋ねしたいんです。

 私、やはり、この原発の事故の問題をめぐっては、まだまだ解明されていない問題がある。その点では、新潟県において検証委員会が立ち上がり、米山知事が三つの検証が必要だということを述べています。事故原因の解明であり、避難の問題についての検証が必要だ、それから、事故による健康への影響や避難生活などについての検証が必要だ、こういう三点での検証が求められているということを述べているわけです。

 やはり、事故原因についても、地震動による重要機器への影響がどうなっているのか、この間の裁判でいえば、津波について予見できていたのではないのか、こういう問題もありますし、新潟県の検証委員会の指摘の中で、メルトダウンに係る東電のマニュアルが存在をしていたということがこういうことでも明らかになってきたわけで、まだまだ究明、解明、検証の途上だということも示していると思います。

 私、そこでお尋ねしたいのが、やはりこういった事故原因の検証、また広域の避難計画の実効性の検証、事故による健康や避難生活への影響の検証、これらがまだ途上であるにもかかわらず、東電の原発運転の適格性の判断を本当にできるのかと率直に思うんですが、その点についてのお考えをお聞かせいただきたいということ。

 あと、益田参考人にお聞きしたいのが、議会におけるこういった行政監視、日本は問題ありという御指摘があるということで、この点についてもやはりどうするのかということが問われているところだと思っております。課題は何なのか、どうすればよいのかということについてお考えがあれば、ぜひお聞かせいただきたい。

 現状、国会においても、例えば会計検査院を活用するという点で報告を求めるような、こういう点での改善措置を行ってきたという経緯もありますし、また、やはり国会図書館というのが、ナショナルライブラリーというだけではなくて、そもそも国会議員を補佐するという大きなシンクタンクとしての役割を持っているわけです。そういったもののより積極的な活用などもあり得るのかなと思うんですが、日本における議会の行政監視機能を高めていく、その点で求められていることが何かということについてお聞かせください。

橘川参考人 御質問ありがとうございます。

 東電の適格性の問題については、先ほど申しましたように、避難計画の部分については私は疑問を持っていますが、それ以外の部分については、規制委員会で議論しているわけで、私はそれ以上の知識はありません。有識者でありますけれども、なぜ有識者かというと、専門ばかだから有識者なのであって、知らない部分は無識者なんですね、むしろ。私の専門は電力の歴史でありまして、そこの技術的なことについてとやかく言える立場ではありません。

 それと、ちょっと御議論で私はやや違うなと思ったのは、今の議論の立て方だと、永久に事故の検証は済まないという形になると思います。そのためにバックフィットという制度があって、あるところで危険性の最小化で規制委員会がオーケーを出したら、オーケーが出てくると思います。その判断が新しい知見が出て間違っていたら、また原発をとめればいいわけでありまして、永久の暫定基準であり、バックフィットという制度だと思いますので、完璧な形にまで検証が行われないと結論が出ないという立場はちょっと違うんじゃないかな、そういうふうに思います。

 以上です。

鈴木参考人 今の橘川さんの御意見に近いんですけれども、まず、私、整理しますと、柏崎刈羽が規制基準を満たしているか否か、これは既に、きのう規制委員会はオーケーを出したわけですね。

 二番目に、柏崎刈羽は満たしているけれども、東電が福島事故を受けて反省をしてちゃんと安全第一の組織になっているかどうかというのが、今規制委員会が判断を保留した。これは大変大事な判断基準でありまして、私は規制委員会の判断を評価したいと思いますが、その理由として、今の橘川さんの御意見と一緒なんですけれども、事故の検証が全部終わるまで待っていれば、いつまでたってもなかなか難しいと思うんですね、これを判断するのは。

 最初に、例えばスリーマイルアイランドのときのアメリカの議論や何かを聞いていますと、事故を反省して、それをちゃんと発電所の安全管理に反映できる仕組みができるかどうか、これが大事なんですね。これは、当時は、組織の改善とかメンテナンスの方の規制を入れるとか、仕組みがちゃんとできるかどうかということを誰かがチェックするというふうに。そういう意味では、アメリカの場合にはINPOという組織ができて、産業界全体でTMIの事故の反省をするということが明らかにきちっとなってきたということが大きかったわけです。

 私は、東電だけではなくて、果たして本当に、福島原発の事故を、教訓を踏まえて、日本の電力、原子力全体が教訓を学んでいるかどうかという方がむしろ大事だと思うんですね。そういう意味では、日本でもINPOに倣ったような組織、JANSIといいますが、原子力安全技術協会ができていますけれども、今特に、確かに東電が大事だと思うんですが、事故の検証をまつまでもなく、事故の教訓を踏まえて、新しい組織にして、根本的に原子力発電に対する態度を変える、これがちゃんと見えないと、多分これが新潟県が検証委員会をつくった理由だと思うんですが、これがはっきり見えない限り、確かに再稼働についての不安が残るというのはあると思います。

 ただ、私は、規制委員会で今やっている全体的な活動については評価していますので、さっきの二番目のポイントで、規制基準は満たしているけれども、組織としてどうかということについて今判断を保留したということで、もし規制委員会がオーケーを出せば、私は再稼働していいと思います。あと避難の問題はまた別にありますけれども、これはまた別の問題です。

益田参考人 御質問ありがとうございました。

 御質問は、日本の議会の行政監視を高めるために必要なことは何であるかという話であったかと思います。

 これは、日本のみならず、世界の諸外国、大統領制をとるのであれ、議院内閣制を採用しているのであれ、さまざまな、いろいろな仕掛けを研究者もそれから政策決定者も議論をして、今でも進めていると思います。

 日本におきましても、これまでも制度論の中で、会計検査院の機能をどうするのかであるとか、立法補佐機関、国立国会図書館もその中に入ってまいりますけれども、そうしたものをどのようにしていくのか、それから、行政府の中になりますけれども、総務省行政評価局といった、かつての行政監察を行っている機関の機能をどのようにしていくのか、今までも数々の議論がなされ、そして、その一部が実行に移されたというふうに考えております。

 今後、これらの制度が、例えば、政策評価が二〇〇一年に導入されましたけれども、その政策評価がどのような機能を発揮しているのかということを政府として検証した、つまり議会が主導して検証したということは、今まで起こっていないのではないかと思います。ですので、今、国会を取り巻くさまざまな政策情報を提供しているところがどんな情報を出して、それが議会にとってどのように判断できるのか、どれだけ有用な情報として機能しているのか、そうした検証を行うことは重要ではないかと思っています。

 直接のお答えになっているかわかりませんけれども、この評価を評価する、また政策情報を出している組織の情報の出し方を検査する、調査するといったことは、まだ不十分ではないかなというふうに考えております。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 きょうは、アドバイザリー・ボードの先生方、本当に貴重な御意見をいただきまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 前回のアドバイザリー・ボードでも、私、質問させていただいたこと、少し似たような質問になるかもしれないんですけれども、お聞かせいただきたいと思うんです。

 この委員会でも、冒頭、田中委員長から、規制、自分の任期を振り返られてということで、さまざまお話もございましたけれども、私も、この国会に設置をされた委員会の一番大きな目的の一つは、やはり、福島の事故の反省を生かして、そして二度と原子力の事故は起こさない、こういう原子力の安全監視の体制を構築する、それを国会としてしっかり監視をしていく、これが一番大きな使命であろうというふうに考えております。

 ですので、田中委員長の、新しい規制庁の体制で今までやってきたこの五年間、この新しい原子力の規制のあり方というのは、果たしてちゃんと機能していたのか、十分だったのか。あるいは、国会が監視をしている、それは十分果たされていたのか。これの率直な御評価と、あるいは、改善を今後していくべき点があればどういうものがあるのか。これについて、まずは鈴木先生と橘川先生に率直に御意見いただければと思っております。前回も黒川先生に同じ質問をしまして、かなり辛口の御意見もいただきましたけれども、ぜひ率直な御意見をいただければと思います。

 もう一つは、益田先生の方から、議会による行政の監視ということで諸外国のお話をいただきまして、確かにこういう日本の評価が、非常に、特に議会が低いというのが、私も初めて今回知りましたので、ぜひさまざままた教えていただければと思うんですけれども。

 私もちょっと、外国の行政と議会との関係性のあり方というのは余り詳しく知っているわけではないとは思うんですけれども、私も前職で役所の方、行政側におりましたので、そういう意味では、大分、この日本の行政と議会のあり方という意味では、与党の事前審査のプロセスがかなり政策決定に関しては大きなウエートを占めているのかなというふうに思っておりまして。

 そういう意味では、政策が出てくる前に、与党が事前に、部会であるとかさまざまな場面で審査をする。その政策が今までどうだったのかという評価を踏まえながら、こういう方向性でやっていくというところを、いろいろな意見をしながら、法律なり予算案として出てくる。要は、議会に出てくる時点で、与党との事前の審査というのが全部終わっているという状況で出てまいりますので、そういう意味では、少し、ほかの国がどこまでどうなのかというのはあれなんですけれども、議会でどのように評価をするのかという部分においては、確かにもうある程度終わったものが出てくるということで、そこも少し違う部分があるのかなというふうに思いまして。

 もし全然ピントのずれている意見であれば、ぜひ、いや、そうじゃないということで、また御指摘いただければと思うんですけれども、そういう諸外国との、政策評価のやり方の進め方も含めて、少しやはり違うのかなという気もいたしましたので、その辺も踏まえて、なぜ日本がこういう低い評価を受けていて、どういう改善点があるのかということについて、ぜひ教えていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 規制行政、原子力規制委員会は、私は、答えはイエスですね。頑張っていると思います。

 二番目の国会ですけれども、残念ながらノー。なぜかといいますと、例えば、国会だけではないです。実は行政府、国会、両方ですね。きょう私が発言させていただいた中身にあるんですけれども、本当に原子力事故、福島事故の反省を踏まえていれば、もっと違った道があったと思います。

 例えば、原子力問題に関する件、きょうの議題、案件の中に「(原子力規制行政の在り方)」というふうになっているんですが、原子力規制行政については、私も議事録を読ませていただきましたが、非常に厳しい御質問をされたり検証をされてきている。それもあって原子力規制行政は機能していると思うんですが、残念ながら、政策全般とか産業界の反省とか、その辺の審議はまだ不足しているのではないかと。

 きょうお話しさせていただいた廃棄物の問題、それからバックエンド、使用済み燃料の問題、再処理の問題、プルトニウムの問題、もういろいろあると思うんですね。これは必ずしも直接福島の事故の問題ではないんですけれども、やはり福島事故を踏まえて、原子力行政を根本から見直すというのが私は必要だと思いますので、この点についてぜひ今後審議していただけたらと思います。

橘川参考人 私も、基本的には、規制委員会については、先ほどちらっと言いましたけれども、評価していいのではないかと思います。

 一つ数字を挙げますけれども、福島の原発事故が起きた瞬間に、五十四基原発はありました。三基建設中でした。つまり五十七基あったわけですけれども、そのうち、今日までに十二基が廃炉になっています。そして、今日、六年半たっても、十九基は稼動ないし再稼働の手が挙がっていません。それから、十四基は手が挙がったけれども、まだ規制委員会の審査中で、十二基が規制委員会がオーケーを出した。こういう配置になっているわけですね。

 この並びは、やはり規制委員会がそれなりに機能していて、手を挙げるところも一種の抑止力がきいているというふうなことを示しているのではないかというふうに思いますので、大筋でいうと規制委員会は機能しているのではないかと思います。

 一方、国会というよりも政治家の皆さんと言った方がいいかと思うんですが、原子力政策の改革は私は全く進んでいないと思います。戦略もないし、司令塔もいないというのが現実で、エネルギー問題で、システム改革は進みましたけれども、原子力改革は進んでいないというのが率直なところで、端的に言うと、システム改革は選挙で票になりやすいけれども、原子力改革は選挙で票を減らしかねない、ここが一番大きな問題だと思います。真面目に考えるなら、使い続けるならリプレースの話をしなきゃいけないし、一方で、バックエンド問題が解決できなかったら畳み方というオプションも考えなきゃいけないと思うんですね。

 そういうリプレースから原子力の畳み方まで、幅広にいろいろなオプションについて議論するというのが原子力改革のあり方だと思うんですが、端的に言いますと、政治の方は私は評価できないと思います。

益田参考人 御質問ありがとうございます。

 大変重要な御質問でありまして、日本の議会の行政監視、先ほどの先生からも御質問いただきましたけれども、このことについては、今ちょうど調査をかけているところでありまして、まだ、今まではずっと制度論で、どのような統治機構上のどの位置づけの組織がどんな役割を担うのがいいかという、そうした話は諸外国を例にいろいろなところが出ております。しかしながら、実際に、では政策情報、その中でも各行政機関が何千件にもわたって毎年出している評価情報は、どんなふうに行政機関内それから立法府内で流れているんだろうかというところを見ることによって、議会の行政監視の中での評価というものをもう探ってまいりたいと思っています。

 結論からいいますと、これだというものは今のところはございませんけれども、ただ、評価といいますのは、どのような政策過程の中でどのような形態で政策が生まれようとも、出てきた政策、たとえそれが、言葉は悪いですけれども、与党と野党の妥協の産物であったとしても、つくられたものがどのように実際に社会に対して、国民に対して作用したのかというところを探るのが評価というものでありまして、その評価を積み重ねることによって、例えば、さまざまな自然災害のたびに評価活動を行って、では問題が起きたときにどのような対応がとれたのか、そして、とった後、どのような復興をなし遂げられたのかということの各災害ごとに評価を蓄積することによって、では今後、政府は将来このような災害が出たときにどんな対応をとったらいいのだろうかという、そのような過去を振り返る作業なんですけれども、将来に向けた提言を行うというのが評価活動でありまして、先生がおっしゃるとおり、政策決定過程の中には、今、与党の事前審査の話が出ましたけれども、確かにそういったことがありますが、評価は、それも関係はしてきますけれども、むしろ事後的に調査をすることによって将来の課題に対応するということであろうかと思います。

 ですから、最後のスライド、七番目のスライドでお示ししましたとおり、今もしできることがあるとするならば、今の制度の中で可能なことがあるとするならば、三番目はできるであろうと思います。「予算審議の中で」とありますけれども、行政機関は毎年膨大な量の政策情報、評価情報を皆さんにお示ししていますので、国会報告もなされていますので、その評価情報をうまく利用していくというのは最初の取っかかりではなかろうかと思います。

 以上です。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。本日はありがとうございます。

 黒川先生にも御質問申し上げてよろしいですね。ありがとうございます。

 きょうは、アドバイザリー・ボードの皆様、黒川先生にもお越しをいただいて、ありがとうございます。

 黒川先生の方からは、提言の七つについて、なかなか進んでいないんだという御指摘がありました。

 ぜひ御理解をいただきたいことは、全く何もやっていないわけじゃなくて、国会で多数がとれていないだけでありまして、例えば、日本維新の会は、早い段階で原発再稼働責任法案という法律を出しています。これは、五本の法律の束ねの膨大な改正法案になっているんですが、避難計画への国の関与から、それから地元同意の法制化、それから賠償責任の無限、有限という議論、それから最終処分の問題まで、包括的なソリューションを提示させていただいていますが、そもそも提出はしたが誰も相手にしてくれないという状況で、これは弱小政党ですから仕方ないんですが、ぜひそういうものも、お時間ありましたら一べつをいただければ、こう思うわけであります。

 我々がそういうことに取り組んできた思いは、やはり、福島第一原発事故の教訓を踏まえた原子力政策の抜本的な見直し、これは実は、震災があった、事故があった二〇一一年の八月に成立をしている支援機構法の附則の六条にも、そうやれと書いてあるんですが、与党はやっていません。与党というのは、当時は民主党、今は自公ということですが。

 そういう立場を申し上げた上で、二点、お答えできることがございましたら、していただけることがありましたら、黒川先生、それから鈴木先生、橘川先生にコメントをいただけたらありがたいと思います。二点申し上げます。

 一点は、柏崎刈羽の再稼働の問題で、きのうの朝日新聞に出ていますが、これは政府と規制委員会が入れ子になっていまして、そもそも再稼働の問題は、エネルギー基本計画が規制委員会に丸投げをしています。規制委員会の基準に適合したら再稼働ねということで、基本的にはボールを規制委員会に投げて、でも、その根っこはエネルギー基本計画で閣議決定しているんですね。そうやってボールを規制委員会に投げているんだけれども、今度は規制委員会が、東電の適格性については保安規定という、電事法とか、要は経産省に丸投げしちゃった。お互いにボールを投げ合っていて、無責任体制が続いている、僕はこう思っていますが、これをどう見られているか。

 それからもう一点は、もう時間がありませんが、もう一点は、最終処分の問題で、私はやはり、十万年かかる原発のごみを、有毒性の低減をするためには高速炉が必要だ、こう思っていますが、橘川先生の、依存度低減の同時追求という御指摘もありました、また、鈴木先生は比較的そこはネガティブなのかもしれませんが、発電のためではなくて、有毒性の低減のために高速炉はやはりちゃんとやった方がいいと私は思いますが、いかがでしょうか。

 その二点、もしお答えいただけるところがあれば、片っ方でも結構ですから、コメントをいただければと思います。

黒川参考人 ありがとうございます。黒川です。

 そういうのはわかりますが、国会全体でやるというのはどうしても、最終的には数ですから、それはわかりますけれども、外から見ると全然見えない。

 そういう意味では、先ほど言ったような、国会でやる独立委員会なりGAOみたいなのがだんだん、すぐには変わりませんから、やっていくと、そういう人たちがどんどん自由に外に、透明性を持ってやれますから、そうすると、国民の意識も変わってくるし、世界の認識も変わってくる。

 しかも、メディアの方も非常に、今度、メディアが七年どうしたでしょうと、この間、科学ジャーナリストが集まってきて、いろいろな話を二時間ぐらい聞いてきたんですけれども、だけれども、あなたたちの責任は大きいよと随分言ったんですよ。記者クラブか何かでなっているから、だから、あなたたちが大体、議員さんが何とかなんと言う資格はないんだと大分言いましたけれども。あのときもかなり私は言いました。記者プレスで、最後に委員長の意見はどうですかなんて言う人が、何回かあるんですよ、癖になっているんだと思うんですけれども。全部公開しているんだから勝手に書いてくれと言っていますけれどもね。そういう話が全部レコードに残っているというのがすごく大事で。

 ぜひ私は、そういう意味では、議員さんはやはり政党の問題もあるし、先ほどの中野先生もそうですけれども、やはり自民党はあのころはそれぞれのファクションがあってやっていたので、それなりに、役所が来たのを勝手にやっているわけではなくて、政治的な決断というのをしていたわけですよね、ある程度、自民党の中では。それがやはりその中の健全性な議論がずっと成るということがすごく大事だなと思っておりまして。

 ぜひ、日本では、野党が何も育たなかったかというと、そうでもなかった歴史もあるので。最近、三谷先生という、東大の、学士院もやっておられた方がもう私と同じような年で、昭和三十五年生まれかな、六年ぐらいですけれども、立派な方で、最近病気をなされたので最近それを書いたとおっしゃっていましたけれども、非常にきちんと、何で日本ではあんな時代に一応民主的な野党ができていたのかというような話を検証しておられて、それが江戸時代からそういうインテューイティブに日本人はあったんだと書いてあって、非常におもしろい本で、読んでいたんですけれども、そういう意味では、もともと民主制度的なのが動く素地があの時代にあったというのは非常におもしろいことだなと思って見ていました。

 そういう意味では、私は、きょう、ずっとこのGAOの話も興味があったので、そういうプロセスを入れることが恐らく第一歩になるんじゃないかなと。いろいろな方法はあると思います。

 それから、先ほどからみんな反省、反省と言っていますけれども、反省は誰でもできるわけで、反省をどうやって生かして、具体的にそれでは何を変えていっているのかという話が見えるようになることが一番大事で、規制委員会は、少なくとも、本当の独立にはなっていないけれども、田中委員長が五年間頑張られて、少しずつその力が出てきた。それはやはり国民のサポートを得られてきているんじゃないかなと思いますが、先ほど言っているように、IAEAが言っていることが必ずしも、先進国の、技術大国であんなことが起きて、実際に反省はしたけれども学んでいるのかな、それによって変えているかというところにまだ疑問があるというところにちょっと課題があるんじゃないかと私は思っています。

橘川参考人 時間もあるので、簡単にお答えします。

 無責任か。無責任だと思います。

 そもそも、国策民営体制というのは誰が責任を持つかがわからないようになる仕組みだったところが最大の問題であって、現状も、原子力問題については、当事者が誰であるかが見えない、無責任状態が続いていると思います。

 高速炉、これはちょっと鈴木先生と意見が違うかもしれませんが、御意見に御賛成で、私は、「もんじゅ」は核種変換、毒性低減炉として高速炉技術を残すべきだったと思っています。ただ、これはうまくいくかどうかわかりません。時間も五十年くらいかかります、ノーベル賞五つくらいの価値があると思いますので。その間の時間を稼ぐためには、現実問題としては、オンサイト、原子力発電所の中での中間貯蔵、そして、そこに対しては消費地の人も含めて保管料を払う、そういう仕組みとセットで、うまくいくかどうかわからないけれども、やらざるを得ない努力だ、そういうふうに思っております。

鈴木参考人 最初の御質問は私も全く橘川先生と同じで、無責任だと思います、ボールの投げ合いをしているのが。だから、それこそ、それを国民が見ていて、信頼が得られないと思います。

 二番目の方は、高速炉は、御指摘のとおり、確かに減容に役立つ可能性がある。そういう意味では、私自身も研究開発は否定していません。

 ただ、これも先ほど黒川先生からありましたが、アメリカでは既に二十年も前にこの議論が、全米科学アカデミーでこんなに厚い報告書が出ていまして、研究開発はもちろんポテンシャルとしてやっていいけれども、当然ながら、高速炉を開発するリスクもあるわけですね。それから、減容といっても、放射性廃棄物のボリュームが減ることと毒性が減ることと、それから全体のリスクがどうなるかというのは、これは評価しなきゃいけないと。

 彼らの結論はリスクの方が大きいということなので、再処理しなきゃいけないですし、それから、リスクというのは、廃棄物が出てきて被曝するリスクと、地上でプルトニウムやほかの廃棄物を回すリスクがあるわけですから、それを総合して考えますとリスクが高いということで結論が出ています。

 したがって、これも、先ほどの話に戻りますが、ちゃんと第三者の機関をつくって総合的に評価をする。それと、今ある廃棄物の処分は十分に今のリスクでできるというのがその当時の全米科学アカデミーの結論でして、私もそれに賛成です。今のままで十分に放射性廃棄物の処分はできると思います。

石川委員 ありがとうございます。自由民主党の石川でございます。

 きょうは、さまざまな観点から原子力規制に対して御意見をいただきまして、まことにありがとうございます。

 冒頭、田中委員長がいらっしゃいまして、いろいろこれまでを振り返ってお話しいただきましたけれども、やはり我々から見て、国民目線に立つと、今の原子力規制行政、まだまだちょっと足らない部分があるなと私自身は思っております。その中で一番、端的に言うと、安全目標を定めずにここまで来てしまったという問題があろうかと思います。

 NRCを手本にしてこれまでやってきたわけですけれども、NRCは、御存じのとおり、死亡リスクをいかに下げて、それを満たすための性能基準があってということで、だんだんブレークダウンしながら、原子炉の強靱性とかそういったものをリスクで評価をして審査を行っている。非常に技術的にも確立をしていて、これは数字で評価されますから、誰が見ても、比較すれば、こちらの原子炉はこのぐらいのリスク、ここは少しリスクが高いよということが公開されています。これはNRCのホームページにも出ているわけですね。

 翻って日本は、安全目標を避けながらずっとやっていて、私も、田中委員長に直接委員会で、なぜ定めないんだ、定めるべきだということを迫ったわけですけれども、いや、そういう考え方はもう古くて、設けないんだというようなお話でした。

 その一方で、百万年に一度、百テラベクレルですか、以下に抑えるというような、性能目標のようなものを定めながら今やっているわけですけれども、私は、この安全目標、死亡リスクというものを避けるべきではないのではないか、日本にもきちっと定めて国民に説明をする、そうすることによって、裁判所で、今仮処分の判断が分かれていますけれども、裁判官も判断しやすくなるのではないかというように私自身は思っておりますので、技術的な知見をお持ちの先生方からちょっと、これに安全目標を定めるべきかどうかということの御見解をお伺いしたいと思います。

黒川参考人 なかなかそれは難しいことで、そういう意味では、私、最近、日本の文化はどうしてこれが常識なのかという話を結構本を読んでみると、例えば、最近もちょっと大学の教育のことも結構批判的に書いたんですけれども、最近、研究のアウトプットが落ちていますよね、ずっと。例えば、三菱銀行に入った人は住友銀行に移れると思いますか。そんな国はありますか、移れないなんという国。何省のキャリアはほかの省に移れないとかね。女性はいいんですよ、幾ら頑張ったって上に上がれないと思っているから。だけれども男の人は、だけれども、外資系には移っていいんですよ。日立のエンジニアはパナソニックに移れますか。

 だから、そういうのが不利になるようになっているのかもしれないけれども、当然、それが大部分の常識ですから。そこに、東芝にしてもオリンパスにしても同じ問題があったわけですよね。だから、そういう世界がほかにあるかと結構役所でも聞くんですけれども、それが日本の常識というところにおかしな問題があったんじゃないかとは思っていますけれどもね。だから、技術的なことよりは、それが私の言った、日本にユニークな文化があるんじゃないのと言っているのはそういう意味だと思います。

 ですから、各論で勝負するのは常にできるんだけれども、基本的にこれは日本のカルチャーの問題があったんじゃないかというのを書いて、それを読み解いてくれたのはデービッド・ピリングという、そのときの日本、それからその後アジア・パシフィックのFTの編集長をやってきた人が本を書きましたけれども、そのときの福島については、私が言っていることは、日本の人がみんな気がつかないというか認めたくないことを逆転して見せてみたんだなんという話をして、単線路線のエリートと書いたのはそういう意味ですけれども、そういうところが、あるときには極めて弱い。

 つまり、嫌ならやめるということができないというところに問題があるんじゃないかと私は思っているので、各論で言うよりは、むしろ基本的な日本の常識というのが必ずしも合わないところがいろいろあるんじゃないかということを意識した方がいいかなと思って発言させていただきました。

 返事になっていないかもしれませんけれども。済みません。

菅(直)委員 民進党の菅直人です。

 きょうは、アドバイザリーの皆さん、ありがとうございます。

 ちょっと一点だけお聞きしたいんですが、今、北朝鮮のミサイルの問題で、政府は常時警戒体制をとっているわけですが、これに対して、そういうことを警戒する以上は、原発で稼働しているものをとめておいた方がいいのではないかという指摘を裁判で今争っておられます。

 私も、あの福島原発事故の経緯を見ていると、少なくとも、燃料を外に出して冷却プールに入れておけば、万一ミサイルが、着弾であるか、あるいは間違って落ちてくるかということがあっても、被害は極めて限定的だと思います。

 そういう意味で、これはどなたに聞いていいかわかりませんが、鈴木先生もテロのことを言われていますけれども、できれば黒川委員長に、まさに危機管理とこの原発の問題で、こういうときだからこそ、少なくとも、ほとんど、上空を通っていくとどこかに原発はあるわけですが、そういう原発は停止しておくべきではないかということについてどうお考えか、意見をお聞かせください。

黒川参考人 それはどうかって、私の個人的な意見になるので、返事はちょっと避けた方がいいかなと。

 今のところは、いろいろ、原発もそうですけれども、コストが高くなっているし、世界じゅうがテロとかいろいろな話で不安な状況で、そういう話のをどうやって守るかというのがB5bにも入っているわけですので、その辺をやっているかという話も論争の一つの条件になるかもしれませんね。

鈴木参考人 ミサイルへの対応、対策全体の議論がやはりちゃんとされていないので、原発だけ捉えても私は不十分だと思うんです。原発をとめるリスクも当然ありますし、やはり、現在の北朝鮮の情勢に対してどういう安全保障体制をとるかということをもっと根本的に議論しないと、この問題は解決できないと思います。

初鹿委員 民進党の初鹿明博です。

 今質問しようと思っていたことを菅元総理が発言してしまったんですが、ちょっと追加で御質問させていただきたいんですが、テロ対策ということで、橘川先生も二番目に問題点として指摘をしておりまして、鈴木先生からは少し詳しくお話がありました。

 私も、菅先生がおっしゃったように、テロ以上に、今、海の反対側の国がミサイルを飛ばしてきているという状況の中で、非常に危険が高まっているというか、可能性がゼロではなくなっているのではないかという状況だと思います。そういう中で、立地条件として、日本海側に集中的に原発が並んでいるという状況が今あるわけですが、その点についてどのようにお考えになっているのかということを橘川先生、鈴木先生そして黒川先生にお伺いしたいのと、被害が起こったときに、避難計画というのが十分に今の中ではつくられていないのではないかというふうに思っておりますが、こういうミサイル攻撃だとかテロだとかが起こったときの避難計画というものも想定をしておく必要があるのではないかと思いますが、その点はどうお考えになっているのかということ。

 あと、鈴木先生に少し五ページのところでお伺いしたいんですが、従業員の信頼性確保の問題ということで、法制化が見送られたという御説明がありましたが、「法制化が見送られた理由?」となっていて、それについての説明がなかったと思いますので、少しそこを詳しくお聞かせいただきたいと思います。

 そして、益田先生にも一つお伺いしたいんですが、非常に我々議員にとって手厳しいお話をいただきましてありがとうございます。本当に、議会として反省しなければならないところは非常にあるなということを感じております。

 その上で、先ほどの中野先生の御質問に対する答えもあわせてお伺いさせていただきたいんですけれども、私は、GAOができたとしても、今の日本の政党のあり方や、国民の政治家を選ぶそういう意識というんですか、選び方というものが変わらないとなかなかうまくいかないのではないかというふうに感じております。

 というのは、やはり議院内閣制度の中で、与党は行政の決定をほぼ認める方向になっていて、ある意味、国会が内閣の追認機関のような状況になっているのが今の日本の状況ではないかと思います。

 先ほど、事前の審査を行っているからというお話ありましたが、そうであると、事前の審査を行っているからいいんだということになってしまうと、では野党の意見というのは無視をしていいのかということになっていって、それですと議会そのものが存在の必要がなくなってしまう。

 ではそれをどういうふうにしていくのかということが問われているわけですが、現状、各政党、党議拘束があるのと、行政のトップである総理大臣が公認権も持っているということで、選挙の公認と、またそういうことも絡んで議員それぞれの意思決定が拘束をされているということになっているんだと思います。そういう状況ですと、恐らく、例えばGAOでいろいろな情報が出てきて、それが的確な情報だったとしても、その情報に基づいた評価が議会の意思決定の中でできなくなってしまうのではないかという懸念があると思います。

 ですので、やはり政党のあり方やそういう政治家の意識というものを変えていかないとなかなか難しいのではないかと思いますが、益田先生、どのようにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

橘川参考人 先ほどの石川先生の議論にもかかわるんですけれども、欧米で今原発のリスクというと、基本的にはテロが一番大きいと思うんです。ミサイルも含めてテロと言いますけれども。

 日本の場合には、ここまでの、十四審査中で許可がなかなかおりない、柏崎まだ未許可だという数字に入れていますけれども、大きな一番のポイントは、地震、津波なんですね。ですから、単純に欧米の基準を持ってくることはできないんですが、少なくとも、まあ、安全目標という言い方は、私、原発があたかも安全になり得るみたいに聞こえるので、危険性最小化目標と言うべきだと思いますけれども、テロに関してはそういう国際基準みたいな数値化されたものをもうちょっと持ってくるということはありだと思います。プラスして、地震、津波をどう考えるかということを考えなければいけないと思います。

 よって、当然のことながら、避難計画にもテロの部分について反映させなければいけなくて、これはもう自治体では無理なので、明らかに国が関与しなければいけないと思います。

 それから、立地集中の問題なんですが、問題点の所在はわかりますが、今さらどうしようもないところがあって、私、リプレースと言っていますけれども、新規立地とは全く言っていません。それはあり得ないと思っていますので。現状の立地の中で最大限できることは何かというアプローチがリアリスティックかな、こういうふうに思っています。

 以上です。

鈴木参考人 集中立地の話よりも、やはりテロ、あるいは今回ミサイルはどこでも撃てるようになってしまいましたので、これは、やはり先ほど申しましたように、原発だけの問題ではなくて、総合的な安全保障体制を考えていかなきゃいけない。

 私、原発で一番心配しているのは、使用済み燃料のプールの問題と、それからやはりプルトニウムですね。日本海側という御発言がありましたが、もしプルサーマルを本格的に始めますと、プルトニウムの輸送を、日本海側も運ばなきゃいけないんですが、これは、今回の北朝鮮のミサイル事件以前から我々としては大変懸念を持っていました。だから、プルトニウムの輸送、これをどうするかというのは考えていただきたいと思います。

 それから、避難計画。これは先ほどの橘川さんと同じで、最初に私が冒頭で申しました、想定できないことを想定する難しさというのがあるんですけれども、やはり避難計画は、最終的には国民の方々が安心できるような仕組みにしなきゃいけないので、そういう仕組みをつくっていただくというのが大事かなと思っています。

 最後に、信頼性確認制度の法制化の問題ですが、私が原子力委員会にいるときの提案の中にも入っていたんですけれども、今の情勢、なぜ法制化が不十分か、問題かと申しますと、今、事業者が従業員から自主的に情報提供してもらって、それを事業者がチェックする仕組みになっているんですね。だとすると、事業者がどうやって従業員の過去をチェックしたり確認できるかというと、これはなかなか難しいと思うんですね。もし従業員がうそをついていた場合に、責任が今度は事業者に行っちゃうんですね、今の制度、規制だと。やはり、これは最終的には信頼性確認制度は国が責任を持ってやらないと、例えば警察に犯罪歴を、情報を確認できるとか、そういう制度が整わないと、なかなか信頼性確認制度の信頼性は上がらないので。

 今は、従業員の自主的な申告に対して事業者がチェックする、しかも、もし何かあったら事業者が責任をとる、これではなかなか確認制度としては不十分ではないかと考えています。

益田参考人 御質問ありがとうございます。

 なかなか回答が、はっきりとしたものはまだ申し上げることができないんですけれども、これも、今研究の中の最も核心に近いところの話をなさっているんだなと思います。

 大統領制と議院内閣制の間では、当然のことながら違ってくるところもありますし、特に議院内閣制は党議拘束での件が非常に強くききますので、それに対してどうするのかというところは議論になってくるであろうと思います。

 それは、実は、アメリカのGAOのように立法補佐かつ評価の活動を行うというのは、議院内閣制を採用しているイギリスにおいても同様の動きが見られておりまして、そうしたところを見ていますと、同じ議院内閣制をとっている日本においてもできなくはないのだろうというふうには考えております。

 ただ、党議拘束につきましては、イギリスを見ていても、そこをどのようにうまく、つまり、それを、党派性をとって、ある重要な問題について議論していくというようなところをどのようにしていくのかというところについては、いろいろな委員会の改革がなされておりますのでそれも参考になると思っておりますが、今、日本で果たして同じようなことが可能なのかどうかについては、今の研究の中からは申し上げることができません。

 ただ、党議拘束をある重要な局面においてどのように扱うのかというところがきかないと、確かに、客観的な信頼性に足る情報が出たとしても、それが見過ごされる可能性はあろうかと思います。

 さはさりながら、こちらの著書の中にもありますけれども、ちょっと場所が不明確でありますが、こういう文言がありまして、たとえGAOがなかったとしても議会はGAOのようなものを求めただろうという発言が議会の議員の中から出ているところをちょっと抜粋して載せてあるんですけれども、今直接にその文言を捜し出すことができませんが、そのように、行政、議会への不信、国民からのそうした政府の正当性に対する疑念が起きたときには、どうしてもそうした客観的で信頼性に足る情報というのはどこかに求めざるを得ない。それがいわゆるGAO、アメリカ的なやり方なのかどうかわかりません、けれども、恐らくそれはまたどこかで再燃してくるであろう、再度そうした議論が出てくるであろうというふうには思っております。

 済みません。ちゃんとした答えが今はまだ出ておりませんけれども、以上となります。

黒川参考人 ありがとうございます。

 世界がこのように変わってくると、あのような大きな事件は世界共通の問題ですから、初めて国会の事故調のようなものができているのだと思いますけれども、このようなプロセスあるいはGAOの問題、企業の統治も社外重役が入ってきたら随分変わりましたよね。だから、そういうのは、今まで日本的でよかったんだというよりは、世界の中の信用をかち取っていくためには何を、どういうことをしたらいいのか。

 すぐにはできないことがたくさんありますよ。アメリカでも、スリーマイルアイランドの後に、原子力の方の統治も自分たちで統治の仕方をつくっていくわけなので、時間はかかりますけれども、ぜひ、このようなプロセスで、国会という国権の最高機関がやはりこういうふうに何か少しずつ変わっていくというのはすごく大事なことじゃないかと思っています。それが国民に対する責任であるし、どういう人を選ぶかという、識者も変わってくるし、やはりそういう意味ではメディアの責任も大きいと思うという話はしておきましたけれども、このような機会を通って少しずつでも変わっていくということが起こっていくことが一番大事じゃないかな。

 反省はしても変わらないんじゃ絶対意味がないので、ぜひよろしくお願いしたいというのが私どもの希望だと思います。

 ありがとうございます。

三原委員長 理事会で決定した時間となりましたので、これにて参考人に対する質疑を終了いたします。

 この際、一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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