衆議院

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第2号 令和4年4月7日(木曜日)

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令和四年四月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤澤 亮正君

   理事 大西 英男君 理事 神田 憲次君

   理事 鈴木 淳司君 理事 古川  康君

   理事 菅  直人君 理事 野間  健君

   理事 伴野  豊君 理事 伊東 信久君

   理事 中野 洋昌君

      畦元 将吾君    五十嵐 清君

      井林 辰憲君    石川 昭政君

      今村 雅弘君    江渡 聡徳君

      勝俣 孝明君    門山 宏哲君

      神田 潤一君    新谷 正義君

      高木  啓君    高木 宏壽君

      長坂 康正君    藤丸  敏君

      堀井  学君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮澤 博行君

      簗  和生君    阿部 知子君

      江田 憲司君    逢坂 誠二君

      米山 隆一君    渡辺  創君

      藤巻 健太君    堀場 幸子君

      吉田とも代君    河西 宏一君

      平林  晃君    浅野  哲君

      笠井  亮君

    …………………………………

   経済産業副大臣      細田 健一君

   環境副大臣

   兼内閣府副大臣      務台 俊介君

   文部科学大臣政務官    高橋はるみ君

   経済産業大臣政務官    岩田 和親君

   防衛大臣政務官      岩本 剛人君

   衆議院法制局第三部長   望月  譲君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            更田 豊志君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            覺道 崇文君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     林  俊行君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 池松 英浩君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           坂本 修一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           林  孝浩君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           川合 豊彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            茂木  正君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 町田 一仁君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月七日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     藤丸  敏君

  西田 昭二君     高木  啓君

  簗  和生君     五十嵐 清君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     簗  和生君

  高木  啓君     西田 昭二君

  藤丸  敏君     北村 誠吾君

同日

 理事菅直人君同日理事辞任につき、その補欠として野間健君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

赤澤委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事菅直人君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に野間健君を指名いたします。

     ――――◇―――――

赤澤委員長 この際、御報告いたします。

 第百九十三回国会、原子力問題調査特別委員会理事会の決定により、本委員会の活動等について専門的見地から助言を求めるため、会員七名から成る衆議院原子力問題調査特別委員会アドバイザリー・ボードを設置いたしました。

 本アドバイザリー・ボードにつきましては、各会派の理事等の協議により、今国会においても設置することとなりました。

 以上、御報告申し上げます。

     ――――◇―――――

赤澤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 原子力問題に関する件の調査のため、本会期中、アドバイザリー・ボード会員から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人として出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

赤澤委員長 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、原子力規制委員会の活動状況について説明を聴取いたします。更田原子力規制委員会委員長。

更田政府特別補佐人 原子力規制委員会委員長の更田豊志でございます。

 衆議院原子力問題調査特別委員会における御審議に先立ち、原子力規制委員会の業務について御説明申し上げます。

 まず第一に、原子力施設等に係る規制の厳正かつ適切な実施について申し上げます。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ強化した規制基準への適合性審査については、これまで、発電用原子炉について十一の事業者から二十七基の原子炉に係る申請が、核燃料施設等について九つの事業者から二十一の施設に係る申請がなされております。

 このうち、発電用原子炉については、令和三年九月十五日の中国電力島根原子力発電所二号炉に対するものを含め、これまでに計十七基に対して設置変更許可を行いました。また、核燃料施設等については、核燃料物質の加工施設、使用済燃料の再処理施設等に対して、これまでに十一件の事業変更許可を行うとともに、試験研究炉に対して、これまでに二件の設置変更承認及び五件の設置変更許可を行いました。

 発電用原子炉の運転期間延長については、これまでに関西電力高浜発電所一号炉及び二号炉、美浜発電所三号炉並びに日本原子力発電東海第二発電所の計四基に対して認可を行いました。

 発電用原子炉の廃止措置計画については、これまで計十八基に対して認可を行いました。このほか、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」を始め計九件に対しても廃止措置計画の認可を行いました。

 また、平成二十九年に改正された原子炉等規制法に基づき、令和二年四月から原子力規制検査制度の運用を開始し、事業者のあらゆる安全活動について監視を行っています。

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所におけるIDカード不正使用事案及び核物質防護設備の機能の一部喪失事案については、昨年九月に東京電力から改善措置報告書が提出されたことから、昨年十月に追加検査の計画を決定し、検査を開始しております。現在、核セキュリティー文化、安全文化の視点を含め、東京電力の実施した原因分析と改善措置の内容を追加検査により検証するとともに、東京電力の改善措置活動の実施状況とその効果等について確認を行っております。今後、追加検査を進め、さらに東京電力が実施すべき事項や改善が必要な事項を明らかにしつつ、核物質防護への取組を監視、指導してまいります。

 原子力規制検査については、核物質防護に係る検査を原子力規制庁本庁の専門部門に加え現地の原子力規制事務所の検査官も行うこととするなど、継続的な改善にも取り組んでいます。引き続き、事業者等とのコミュニケーションを図りつつ、検査制度の改善に努めてまいります。

 また、これ以外にも、原子力施設等で事故トラブルが発生した場合は、速やかな状況確認などを通じて、今後とも引き続き適切に対応してまいります。

 以上のとおり、原子力施設等に関する審査、検査を順次進めております。

 規制基準については、安全研究等により得られた最新の科学的、技術的知見、新規制基準に係る適合性審査の実績等を踏まえて、標準応答スペクトルの規制への取り入れなどに係る改正を行い、継続的に改善を図っております。

 第二に、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取組の監視等について申し上げます。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の安全な廃炉や汚染水対策の実施に向け、規制当局としての立場から、安全かつ着実に廃炉作業が進むよう、積極的な監視、指導を行うとともに、関係省庁等と連携し、環境放射線モニタリングの実施とその結果の公表を行っております。

 昨年四月十三日に政府方針が決定された多核種除去設備等処理水、いわゆるALPS処理水の海洋放出については、昨年十二月二十一日に東京電力から実施計画の変更認可が申請され、現在、公開の審査会合において厳正に審査しています。本年三月二十一日から二十五日には国際原子力機関、IAEAによるALPS処理水の取扱いに関する規制レビューを受け入れ、審査等の客観性及び透明性を高める取組を進めました。今後、関係省庁等と連携し、ALPS処理水に係る海域モニタリングを行ってまいります。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故調査については、昨年三月の中間的な取りまとめを踏まえ、放射性物質等の放出又は漏えい経路、原子炉建屋における水素爆発等について検討を重ねており、今後、これまでに得られた知見と規制との関係を精査するとともに、調査、分析を継続してまいります。

 また、三月十六日に発生した福島県沖地震による外部への影響は確認されませんでしたが、一号機原子炉格納容器の水位低下やALPS処理水をためるタンクのずれなどが生じていることから、引き続き状況の確認を進め、安全が確保されるよう対応してまいります。

 第三に、原子力災害対策及び放射線モニタリングの充実並びに保障措置について申し上げます。

 原子力規制委員会では、本年四月六日に甲状腺被曝線量モニタリングの追加及び原子力災害医療体制の見直しを内容とする原子力災害対策指針の一部改正を決定するなど、原子力災害対策指針の継続的な改定を進めています。また、原子力災害時における医療体制の着実な整備を進めるなど、原子力災害対策の充実を図っております。

 放射線モニタリングについては、原子力規制事務所におけるモニタリング担当職員の配置及び関係道府県への技術的支援等により、緊急時モニタリング体制の充実を図っております。

 また、国際約束に基づく国内の原子力施設に対する厳格な保障措置の適用により、国内全ての核物質が平和的活動にとどまっているとの評価を継続してIAEAより得ております。

 以上、原子力規制委員会の業務について御説明いたしました。

 原子力規制委員会は、与えられた職責を踏まえ、原子力利用の安全が確実に担保されるよう、また、我が国の原子力規制に対する信頼が回復されるよう、今後とも努力してまいります。何とぞよろしくお願い申し上げます。

赤澤委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤澤委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官覺道崇文君、復興庁統括官林俊行君、外務省大臣官房審議官池松英浩君、文部科学省大臣官房審議官坂本修一君、文部科学省大臣官房審議官林孝浩君、厚生労働省大臣官房審議官宮崎敦文君、農林水産省大臣官房審議官川合豊彦君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長茂木正君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君及び防衛省大臣官房審議官町田一仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤澤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。鈴木淳司君。

鈴木(淳)委員 自由民主党の鈴木淳司であります。

 まずは、更田委員長、この十年間、本当にお疲れさまでございました。原子力規制委員会、規制庁発足から十年、あの過酷事故で原発への信頼が大きく損なわれて以来、その厳しい状況の中から今日に至るまで一貫して規制の現場をリードしてこられたことに対して、まずもって感謝と敬意を表したいと思います。

 その上で、現在我が国の原子力が置かれている状況や課題の認識についてお聞かせいただければと思いますが、質問の前に少し触れておきたいことがあります。

 先日、電力の需給逼迫の中で、あわや大規模停電に至るかという緊急事態が生じました。直前に発生した地震による火力発電の停止等の様々な要因が重なったこともその背景にあるかと思います。幸いにして何とか大規模停電は回避できたものの、極めて危機的な状況に至っていたことは事実であります。しかし、そのときもし仮に東日本で原発が一基でも稼働していたとするならば、ここまでの事態にはならなかったのではないかとも思います。

 ちょうどその日、皮肉なことに、私たちは党内で原子力規制の在り方について議論をしておりました。先々の安全性を高める議論は当然に必要です。しかし、今まさに目の前にある危機に対して本来なら原子力が持っているはずのポテンシャルを何ら発揮できていないことに対して、内心じくじたる思いをしたのも事実であります。ここは何としても審査を加速化して再稼働を進めなければならないのではないかと思います。

 そんな思いの中で、質問に入ります。

 まずは、原子力の安全確保の認識についてお尋ねいたします。

 規制委員会の任務について、原子力規制委員会設置法には原子力利用における安全の確保を図ることと定められております。ただ、その安全の確保とは、原子炉等規制法などに基づく規制にとどまらず、広く、プラントの運転現場や技術開発などを担う人材確保、部品等を供給する産業基盤などが備わって初めて実現されるものと思います。

 しかしながら、新規制基準に基づく審査が当初の想定よりもはるかに長期化する中で、実は我が国の原子力を支える人材やサプライチェーンは極めて厳しい状況にあるかと思います。これは原子力利用における安全確保の上でも重要な課題になっております。

 とすれば、規制委員会は、炉規法等に言うサイトのみならず、原子力を支える人材や産業の問題にまでしっかりと視野を広げ、それは推進側や事業者の問題であって規制側としては関与しないという姿勢ではなく、原子力を支える基盤として、それも委員会の重要な課題として御認識いただきたいと思いますが、委員長の見解をお伺いしたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 御指摘は大変重要であると思っております。

 もとより、原子力利用における安全の確保は、現場の方々であるとかそれから技術開発を担う人材、これは規制、推進を問わず、産業界における人材も含めてでありますけれども、そういった人材が、産業基盤が備わって初めて安全の確保というのは可能となるものであります。したがいまして、人材の確保に危機感を持っているのは、産業界、規制側、双方同様であろうと思っております。

 私たちは規制に携わる人材の育成に向けた取組を幾つも行っておりますけれども、将来規制に携わるか、あるいは産業界の現場で業務に携わるかによって学ぶべき専門の内容が異なるわけでは決してありません。そういった意味では、規制側、推進側、あるいは原子力委員会であるとか関係省庁における人材育成の取組というのは大変重要であると考えておりますし、原子力規制委員会もその中で役割を果たしていきたいというふうに考えております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございます。

 次に、規制活動の効率性についてお尋ねいたします。

 言うまでもなく、原子力は動いていないことが安全なのではなく、動かさずに止めておくことが安全を守ることではありません。人材や技術は、発電所が稼働し産業が動いていく中でこそ維持向上するものと考えます。ということは、厳格な審査のみに固執して長期にわたり運転を停止させることは、予見可能性の低下から人材や投資の減少を招き、かえって他のリスクを生む結果になるのではないかと危惧されます。

 とすれば、規制審査を効率的に進め早期の稼働につなげていくことが安全確保の面からも重要ということになろうかと思います。規制の効率性については、例えば米国のNRCでは、よい規制の原則において独立性や開放性と並んで効率性の重要性が明記されているのですが、我が国の規制委員会の活動原則にはその効率性の概念が含まれてはおりません。規制活動における効率性の重要性について規制委員長はいかなる認識をされているのでしょうか、お尋ねいたします。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 もとより、原子力規制委員会も効率的な審査を行うことを望んでおります。

 また、原子力発電所を例に取りますと、停止しているから必ずしもリスクが低いというわけではありません。世間的に思われているほどと言うとちょっと語弊があるかもしれませんけれども、運転中の原子力発電所とそれから停止中の原子力発電所でその危険性に大きな差があるというわけではありませんので、停止が必ずしも安全だというふうに考えているわけではありません。

 一方で、審査の効率化に関しては、なかなかの悩みがございます。

 一つは、プラント側の審査、シビアアクシデント対策等々に関しては、これは、審査が進むにつれて各事業者共に先行する審査の例等から学ぶことができたために、PWR、BWR、それぞれの炉型に対して審査はスムースに進むようになってまいりました。一方で、地震や津波や火山活動といったサイト固有の問題に関わる議論というのは、サイトそれぞれで置かれている状況が非常に大きく異なるために、先行する審査の経験から学べることというのがどうしても小さくなってしまっています。

 そういった意味で、ここに悩みがあるわけですけれども、それでも私たちの意図をできるだけ的確に事業者に伝えられるように、各審査会合ごとに、これは泊三号機の審査で進めようとしておりますけれども、審査会合ごとに合意したことあるいは当方から指摘した論点を文書化するなどしてコミュニケーションができるだけ的確に図れるように、今後とも審査の効率化には努めてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(淳)委員 今まさに審査の効率化のお話をいただきましたけれども、同じ思いであります。安全性の部分で妥協することなく、なおかつ効率的に審査を進めるためには、審査会合での実効性ある議論がなされることが重要であるかと思います。

 審査活動の在り方については、なお改善の余地があるのではないかと思われます。

 新検査制度の中で、プラントに常駐する検査官と事業者との間で建設的な議論ができるようになり良好な関係が築けるようになったとの声も聞かれる反面、論点整理や具体的要求データも示されないままに一発勝負的側面のある現状の審査会合の問題や、本来なら審査会合に臨む前により精度の高い準備を可能とするような工夫ができる余地のあるヒアリング機会の活用など、効率的な審査会合の実現に向けては更なる改善の余地があろうかとも思います。

 質問事項や論点を事前に整理し、審査の手戻りを避けて綿密な準備を求めるなど、効率的、効果的な審査会合の実現に向けてのコミュニケーションの改善等についての必要性について規制委員長はいかにお考えか、お尋ねいたします。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 審査会合は、これは公開で行っておりまして、ユーチューブ等でどなたでも見られるような状態で行っております。一方、ヒアリングは、議事要旨を公開しておりますが、完全に公開で行っているわけではありません。そういった意味で、ヒアリングの持つ意味というのは限定的であるべきだろうと思っています。

 我々の判断であるとかはっきりした方針というのは公開の審査会合で伝えるべきであって、ヒアリングというのは、資料の形式の確認であるとか、そういった限定的な意味をヒアリングに持たせようとしています。そういった意味で、審査会合を、これは、事業者の希望するだけ審査会合というのは開ける状態ですし、私たちは、審査会合を行うことに対して何ら、事業者の要望を断っているようなわけではありません。

 むしろ、現状でいいますと、評価だとか検討を進めて結果を得てから規制庁にそれを提示するのではなくて、検討を始める段階で、この方向の検討で果たして合っているだろうかというような確認を、小まめに規制委員会、規制庁に対してしていただくような姿勢を事業者に求めたいと思っております。規制当局に接することに対するためらいがあるような状態ですと、なかなか効率的な審査は行えませんので。

 さらに、これは経営層だけではなくて、事業者の現場の方々も含めて、当方の意思を繰り返し伝えて、先生のおっしゃるような効率的な審査が進むようにというふうに心がけたいというふうに思います。

鈴木(淳)委員 是非、そうした関係になっていただけますように期待をしたいと思います。

 原発の再稼働を求める声に対して、政府は常に、安全性の確認が取れた原発は再稼働させるとしています。規制委員会の判断が尊重されるのはもちろんでありますが、全てが規制委員会任せであっていいはずはありません。

 安全の確保等、原発の安定的稼働について、原子力を含むエネルギー政策全般に関する責任を持つ政府は果たしていかなる対応を取るのでありましょうか。

 米国から高速増殖炉の共同開発を求められるなど、本来、世界から高く評価されてきた日本の原子力技術であります。運転停止期間が長引く中で、予見可能性、事業性の確保とともに、細っている人材の確保や産業基盤の維持に努め、再稼働から始まって、改良型、さらにはより安全性の高い新型炉に向けての研究開発や実装に至るまで、関係省庁、産業界、研究機関等を挙げて、まさに国を挙げての迅速な支援と体制強化が求められると思いますが、果たして政府はいかなる覚悟とスケジュール感を持ってこれらの課題に取り組んでいくおつもりか、お尋ねいたします。

細田副大臣 ありがとうございます。

 先生はよく御存じだと思いますけれども、昨年に閣議決定をいたしましたエネルギー基本計画におきまして、二〇三〇年度に原子力発電比率を二割強とするエネルギーミックスを公表させていただいたところでございます。まず、このエネルギーミックスにおける原子力発電比率の達成に向けて着実に再稼働を進めていくというのが政府の基本的な方針でございます。

 当省といたしましては、決して手をこまねいているわけではなく、発電所の再稼働が円滑に進むように、産業界に対して事業者間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけるとともに、国も前面に立って、立地自治体等関係者の理解と御協力を得られるように粘り強く取り組んでまいる所存でございます。

 また、二〇五〇年のカーボンニュートラルを実現するためにはあらゆる選択肢を追求するという方針の下、原子力については必要な規模を持続的に活用していくこととしております。革新炉の研究開発やその成果の実用化を支えるためには我が国が有している高いレベルの技術、人材が不可欠でありまして、将来を見据えて現在の原子力産業を維持強化していくことというのは国にとっての急務であるという強い認識を持っております。

 今後とも、原子力産業の実態をしっかりと把握し、そのニーズに即して、革新炉の研究開発や人材の育成、さらには御指摘がありました将来につながるような原子力サプライチェーンの維持強化といった取組も、また先生からも御指導をいただきながら足下からしっかりと進めてまいりたいと考えております。

鈴木(淳)委員 ありがとうございました。

 ロシアのウクライナ侵攻に端を発した世界的なエネルギー供給不安の中で、フランスやイギリスなどを始め、世界で原子力の再評価が始まっています。

 我が国においても、エネルギー安全保障と準国産電力による供給力確保、さらには今や世界的課題でもある脱炭素社会の推進のためにも、原子力を持続的に活用していく国家的必要性はますます高まっていると思います。

 福島第一原発事故の反省を踏まえ、世界最高レベルの新規制基準の下、原子力発電所の安全性が格段に高められたのは規制委員会と事業者双方の努力の成果かとは思うものの、事故後十一年を経た現在、これまで再稼働を果たしたのはいまだ僅か十基にとどまっているのも事実であります。

 世の中にゼロリスクはあり得ません。原子力規制も、利用を止めるためのものではなく、いかに安全に動かすかが問われるかと思います。その点、まさに今求められるのはIAEA基準に言う規制の最適化かと思います。

 カーボンニュートラルの側面やエネルギーの安定供給の面からも今まさに世界的な再評価の動きが始まっている原子力について、期待される便益のみならず、その利活用に伴うリスクも含めて国民が受け入れていくためには、果たして国民は何のために原子力を利用するのか、国全体を貫く基本的な方針とはいかなるものかというものを原子力委員会としてこの機会に国民の前にしっかりと示していくことが極めて重要になると思いますが、政府はこの点をいかにお考えでしょうか、お尋ねをいたします。

覺道政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のございました今後の原子力の利用についての国としての基本方針につきましては、平成二十九年七月に、原子力の利用に関する基本的考え方を原子力委員会が決定し、政府として尊重する旨、閣議決定がなされているところでございます。この基本的考え方につきましては、その中で、五年を目途に適宜見直し、改定する旨が定められてございまして、本年七月に策定から丸五年を迎えますので、現在、原子力委員会におきまして、幅広い有識者等からヒアリングを行いながら改定に向けた検討を進めているところでございます。

 先生御指摘のとおり、カーボンニュートラルの世界的要請やエネルギーの安定供給の面で、前回策定して以降、原子力を取り巻く環境にも様々な変化がある、このように認識をしてございまして、このような点も踏まえつつ、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えてございます。

鈴木(淳)委員 是非よろしくお願いします。期待したいと思います。

 角を矯めて牛を殺すという言葉があります。本来、規制の側も、あるいは事業者の側も、推進側も、原発の安全性を高めたいという気持ちは同じかと思います。ただ、そこに十分なコミュニケーションを欠けば相互の信頼関係も築けず、それによる規制審査のいたずらな長期化と予見可能性の低下から、それがまさに原子力の活用を遠ざけ、もし先々我が国が築いてきた原子力の技術や基盤自体を損なうことになってしまうとすれば、これは誠にもったいない国家的損失になると思います。

 まさにエネルギー危機ともいうべき今、電力の安定供給と脱炭素化への切り札ともいうべき我が国の原子力技術が十分に活用できないという、この極めて不幸な状況から一日も早く脱却するために、この機会に、関係省庁も、規制委員会、規制庁も、事業者も、全ての関係者が相互のコミュニケーションの改善努力を通じて共通目標たる原子力の安全活用に向けての足並みをそろえてほしいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、古川康君。

古川(康)委員 自由民主党の古川康でございます。

 今回、質問の機会をいただき、誠にありがとうございました。今回は、大きく三点について御質問させていただきます。

 まず、地元の声をお届けすることから始めてまいります。

 佐賀県から毎年様々な政策に関する国への提言をいただきますが、原子力規制に関して今回新規で入ってきたのが新たな原子力規制検査制度への関係自治体の関与でありました。

 新たな原子力規制検査制度がスタートしました。この制度については、事前通告型から抜き打ち的検査へ、チェックリスト型からあらゆる事業者活動を対象とした検査へということを目指したものだと理解しています。現時点においては、制度導入への強い思いがあり、目的や目標が明確になっていると思いますし、厳格で効果的な検査が期待できると考えます。

 ところが、どんなものでも時間の経過などによっていろいろな問題が生じてきます。例えば、検査官が人事異動する、あるいはそもそも時間が経過をする、そういうことによって制度の風化、劣化が起こらないかという懸念が地元にはあります。

 お尋ねをいたします。そういう状況を踏まえて、佐賀県からは、国だけでなく関係自治体にも検査の実施を原子力規制当局に対して要請することができるようにしていただけないか、また、検査の際には自治体職員の同行を制度化していただけないかという提案が来ているところでありますが、これについての委員長の御見解を伺います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省と教訓を踏まえて、国の独立した組織として設置をされたものであります。私たちは、科学的、技術的根拠に基づいて独立した意思決定をすることが大変重要だというふうに考えております。

 一方で、地方自治体も、各地域にある原子力施設の安全に対して、これもまた重要な役割を担っておられることと思います。

 それぞれが重要な役割を持っている中で、やはり独立してそれぞれの役割を果たすことがより効果を上げるのであって、せっかく二枚ある備えを一枚にしてしまわないことは重要だろうと思っています。そういった意味で、規制委員会の判断は独立したものであるべきものだと思っておりますし、また、規制委員会は自治体の判断に介入するようなことがあってはならないというふうに思っています。

 そういった意味で、自治体と規制委員会との間のコミュニケーションも大変重要ではありますけれども、やはり、それぞれが独立した判断、独立した検査、確認を行うことが重要であるというふうに考えております。

古川(康)委員 確かに、委員長がお話しになりましたように、そうやって二枚看板でやっていくということの重要性も理解するところでありますし、現時点におきましては、原子力規制検査制度そのものについて、立地自治体の事務あるいは権限というものが明文化されておりません。また、権限を認めれば、当然、それに伴っての責任というものも生じてまいります。

 今の委員長のお答えについては一定理解するところではありますが、現実にこうした声があり、こうした声に応えることが立地地域住民の原子力規制行政に対する信頼や安心にもつながるものだと強く訴えておきます。

 次に、立地地域との対話についてお尋ねをいたします。

 平成三十年六月に、自民党から、原子力安全規制・原子力防災の充実・強化等に関する提言が出されました。今日に至るまでこの提言に沿った政策の展開が行われており、今拝見しても、実に内容のあるものだと私も思うところでございます。この提言のトップに掲げられていたのが、真の信頼は対話から生まれるという言葉でございました。まさにそのとおりだと私は思います。

 また、こうした提言を受けて、原子力規制委員会の方々が立地自治体とのコミュニケーションを従前にも増して充実させるため意見交換が行われるようになったと伺っておりまして、大変すばらしいことだと考えています。

 そこで、お尋ねいたします。この意見交換会、どのような形で、全部で何回行われていますでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 これは、委員長であるとか委員が現地の発電所などの施設を視察する際に併せて、県知事の方々であるとか地元の首長さん方等との間の意見交換を行っておるものでございます。

 平成三十年の二月にこれを始めまして、これまでに七回実施をしておりますが、残念ながら、コロナ禍の下で、何回か企画までには至っているものの、近年はなかなか一堂に会して意見交換ということが持てないでおりますので、最後に行ったのが令和二年ですから、一昨年の十二月を最後に、それ以降は実施できておりません。

 私としても、先ほどの検査に関わる佐賀県との間の御議論もそうでありますけれども、こういった意見交換のときに直接声を伺えるということが大変私たちにとっても勉強になりますし、また参考になりますので、是非とも、コロナの収束とともにこういった意見交換の機会というのはできるだけ多く持ってまいりたいというふうに思っております。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 今委員長からお話しいただきましたように、佐賀県でも一回行われたわけでありますが、現地のお話をお伺いしますと、率直に申し上げて大変よかったという声であります。なかなかこういう機会はないし、サイトを見ていただいたその折に意見交換ができるということで、現場、いわばホームグラウンドにおいて話し意見交換ができるということの意味というものは非常に大きい。地元に来ていただき、地元の方々の声を耳にし、それに対して率直なお答えをいただく、これによって信頼が深まるきっかけになっていくことになるのではないかと私も思います。

 そして、今、コロナ禍の中でなかなか思ったようにできないというお話もございました。

 地元からの声をもう一つ申し上げれば、まさに、早く二回目をやってほしいということなのであります。こうした機会を重ねていくことによって、信頼感の醸成につながると思います。

 コロナが収束したらというお話でございましたが、収束を待つというのではなく、コロナ禍の中にあってもどのような形であれば実施できるのか、そういう観点に立って是非とも二回目をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 佐賀県との意見交換については、平成三十年二月に山中委員とともに、玄海発電所を視察するとともに、佐賀県知事、玄海町長などの皆さんと意見交換を実施いたしました。

 強く感じましたのは、やはり紙やメールでは駄目な部分があって、顔を突き合わせて生に声を伺うということは私自身にとっても大変貴重な経験でございましたので、是非とも、佐賀県との意見交換については、コロナ対策の許す範囲で、やり方も工夫して、二回目の開催ができるように努力してまいりたいというふうに思います。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 次に、カーボンニュートラル政策下における原子力発電の位置づけについてお伺いをさせていただきます。

 菅内閣は、三百八十四日間という任期でございましたが、この間に多くのことを成し遂げたと私は思っております。スピーディーなワクチン接種の実現を始めとする新型コロナ対応という短期的な政策に加えまして、例えばデジタル化、例えばカーボンニュートラルという我が国の大きな方向性を打ち出されたと思っています。

 その代表であるカーボンニュートラル政策、その中でもエネルギーに関してお尋ねをさせていただきます。

 先日、IPCC、気候変動に関する政府間パネルの報告書が八年ぶりに公表されました。地球温暖化の進展に対する危機感が表れているものと理解をしているところであります。私はそのサマリーを読みましたが、その中には非化石燃料へのシフトというものはかなり細かく詳しく書かれておりましたが、私から見て、残念なことに、原子力発電というものについての考え方を私自身が見つけ出すことができませんでした。

 また、これとは別になりますが、一方で、EUタクソノミーにおきましては、持続可能な経済活動の観点から、原子力発電と天然ガス、これらがEUタクソノミーに該当するとされて、現在欧州議会における採択に向けての作業が行われていると承知をしています。

 そこで、お尋ねをいたします。先ほど鈴木委員のお尋ねになったことと重複もいたしますが、我が国においても、現在、温室効果ガスの削減に向けて、二〇三〇年そして二〇五〇年に向けての目標が定められております。それぞれの目標における原子力エネルギーの位置づけについて再度お尋ねをいたします。

細田副大臣 ありがとうございます。

 昨年の十月にエネルギー基本計画を閣議決定いたしました。この中で、原子力については、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源であるとしております。

 このような観点から、原子力発電所については、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくというのが政府の基本方針でございます。

 二〇三〇年度の電源構成においては、先ほど申し上げたとおり、二〇%から二二%程度を見込んでおります。また、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けては、あらゆる選択肢を追求するとの方針の下、原子力については、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくこととしております。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 今御答弁もいただきましたように、まずは、足下の二〇三〇年の目標、これを達成するためには再稼働をしっかり進めていかなければなりません。これをしっかり進めないことには二〇三〇年の目標の達成は難しいと考えています。また、二〇五〇年の目標、これについては、あらゆる選択肢をという言い方になっていて、どういうエネルギー源で、どのようにということについて、私から見たときにはまだまだ曖昧な部分があると思いますが、それでも、原子力エネルギーの活用が前提とされていることについては間違いはないと思います。

 この二〇五〇年に向けての具体的な道筋をもっと具体的に明確にしていかなければ、例えば大規模な製造業の設備投資などをこれから行っていくときに、どういうエネルギー源を前提にしてやるのかということについて道が見えてこないということになってしまいます。それが分からないうちは大規模な設備投資にちゅうちょする、そういうことがあってはならないと考えます。是非とも明確に道を、ロードマップをしっかりつくり上げていくこと、そのことをお願い申し上げておきます。

 次に、ウクライナ情勢下におけるエネルギー需給について質問いたします。

 これも鈴木委員から御質問がございましたが、ウクライナ情勢下で、改めてでありますが、エネルギーの安定供給の脆弱性と必要性、これらが浮き彫りになってきたと考えます。国際情勢は、残念なことに、時として大きく変化をいたします。どういう情勢の中にあっても、エネルギーを安価に、そして安定的に、さらに安全に供給する、そのことが求められていると思っています。

 今、サハリン2からのLNGの供給なども問題になりつつありますが、調達先を多角化することの重要性もここに来て明らかになっていると思います。

 エネルギーの安定供給の面からも、原子力発電を有効に活用していくことこそが国民生活と日本経済にとって必要であると考えますが、いかがでしょうか。

細田副大臣 ありがとうございます。

 先生御指摘のとおり、最近の国内情勢また国際情勢は、エネルギーの安定供給体制の構築の重要性を再確認するきっかけとなったというふうに私どもは考えております。

 四方を海で囲まれ、自然エネルギーを活用する条件が諸外国と異なる我が国において、SプラススリーEの全てを満たす単一の完璧なエネルギー源が存在せず、今後の技術革新などの不確実性を踏まえれば、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求することが重要であると考えております。その上で、原子力については、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持でき、かつ実用段階にある脱炭素のベースロード電源であり、安定供給の観点からも引き続き活用していく方針でございます。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 次に、特定重大事故等対処施設についてお伺いをいたします。

 委員長は、三月十六日の会見におきまして、自民党の電力安定供給議員連盟が決議文を経済産業省に持っていったということについて、このように御発言をされました。政党が行っている推進の当局であるとか、経済産業省であるとか、あるいは事業者が何らかのこれを受けてアクションというのがあれば、そのアクションが規制に関わるものであれば検討に入っていくということになるだろうと思いますけれども、この決議を受けて直ちに原子力規制委員会が何かをするということは考えておりません、こういう内容であったかと存じます。

 まず、お尋ねいたします。そもそも、このいわゆる特重、これは何のために設置を義務づけておられるのでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所事故では、事業者の用意したいわゆるシビアアクシデント対策であるとか、あるいは、環境中に放射性物質が放出される状況を抑え込むことができませんでした。これを受けて新たに強化した基準では、こういったシビアアクシデントであるとか、あるいは意図的な航空機衝突などのテロリズムによってプラントが大規模に損傷した状況で、消火活動であるとか、あるいは放射性物質の放出を抑え込むといったような活動ができるような対策を要求しております。可搬型設備等を中心とした対策で事業者はこれに応える形を取って、これで基準に適合しています。

 さらに、これらのテロリズムなどに対する対策の機能の信頼性を更に向上させるために、ポンプであるとか電源設備などで構成される特定重大事故等対処施設を更に加えて要求しているところであります。

古川(康)委員 ありがとうございました。キーワードとして、更に信頼性を向上させるためというお話がございました。

 ある方が望ましいものである、信頼性の更なる向上につながるというものであるというのは、確かにお話しのとおりかと思います。しかしながら、そのことイコール、この施設が実際になければ再稼働できないということに直ちにはつながらないのではないか、こういう考えもあるわけでありますが、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 既に申し上げておりますけれども、基準に適合している原子力発電所の、特定重大事故等対処施設なしでの、特重なしでの運転というものが直ちに危険だというふうに考えているわけではありません。

 一方で、今後、特定重大事故等対処施設を整備することによって改善が進むことは事実でありまして、約束された改善が果たせないようなことは、継続的な改善というのは東京電力福島第一原子力発電所事故の最大の教訓の一つでありますので、約束した改善が果たせなくなるような事態は避けたいというふうに考えております。

古川(康)委員 元々、この特重施設については、二〇一八年の七月七日までに設置することとされていました。それが、二〇一五年にルールが変更されています。経過措置の起算点、これが本体施設の工事計画の認可日として、その日から五年後が期限となりました。すなわち、ルールが変更されていたわけであります。

 先ほどお話があったように、先日の衆議院本会議において委員長はまさに、約束した改善が果たせないような事態は避けるべきである、こう御答弁されました。今もそうおっしゃいました。それはそのとおりだと思いますが、二〇一五年にルールを変更されたときには、同じ考え方の下でありながらも、現実の工事日程等を御覧になって御判断されたのではないでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 確かに一回、ルールを変更しております。これは施行日から五年後と元々はなっていたものなんですけれども。

 先ほどお話ししましたように、そもそも特定重大事故等対処施設というのは本体設備に加えて整備するものですので、本体設備の確認がきちんと終わらないうちに、本体設備がどのようになるかというのを確認せずに特定重大事故等対処施設の設計に関する議論に入ることはできません。

 当時、審査において、本体審査がなかなか終了しない中で、事実上、特定重大事故等対処施設の審査に入ることができない状態でありましたので、そこで、本体施設の工事認可を済ませて、本体施設の詳細設計が確認できてから特定重大事故等対処施設の審査に入れるように制度を変更したものであります。

古川(康)委員 ありがとうございます。

 更田委員長は、先日の会見の中で、大きな状況変化があったので再検討をということであれば議論の申入れがあるだろうと思っておりますと言われています。議論の申入れがあれば御検討していただけるということでよろしいのでしょうか。

更田政府特別補佐人 まず、政府又は事業者から議論、意見交換の申出をいただいたもので、それが規制に関わるものであれば、私たちは、お断りをする理由を持っておりませんし、お断りするべきではないだろうと思っております。したがいまして、議論に応じる用意は規制当局として十分に持っているつもりでおります。

古川(康)委員 ありがとうございました。是非そういうスタンスでお願いをしたいと思います。

 このほか、プルトニウム利用計画についても質問を準備させていただいておりましたが、もう時間が来たということで本日は諦め、また次の機会に移させていただきたいと思います。

 原子力の問題については、地元そして国としてやらなければいけない様々な課題があります。是非ともしっかりとした対応を更にお願い申し上げて、私からの質問の締めとさせていただきます。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 本委員会、原子力の規制の在り方、福島の事故を受けまして二度とそれを繰り返さないということで、しっかり今日も議論をしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まずは冒頭、原子力の規制の在り方、その大前提として、エネルギー戦略全体に関連した質問をまず冒頭に経済産業省の方にさせていただきたいと思います。

 言わずもがなでございますが、日本のエネルギー戦略というのはスリーEプラスSである。すなわち、S、安全性というのが大前提ということで、これがまさに我々の議論する原子力の規制というところに関わってくるわけでございますけれども、それに加えて、スリーEのバランスが取れている、安定供給である、経済の効率性、そして環境への対応ということをやっていくというのが全体の大きな戦略であるというふうに理解しております。

 しかし、その中でやはり少し気になりますのが、電力需給の逼迫ということが近年続いているのではないか、これが非常に気になるところでございます。

 スリーEの一つの柱の安定供給、ここが何よりもライフラインでございますので非常に大事でありますけれども、三月、先月には電力需給の逼迫の警報ということで、初めてこういうものも発令をされたりということも記憶に新しいところであります。

 そして、今年もそうでありますけれども、去年も、振り返りますと、二〇二〇年冬の需給は非常に逼迫するのではないか、こういう予想が立てられる中で、昨年はLNGの在庫が逼迫するということもございました、電力需給が非常にタイトになった、こういうことがあって、それに備えるということでやってきたはずであるけれども、今回も引き続きこういう状況になっているということでございます。

 まず冒頭、経済産業省の方に、先月の電力需給の逼迫、起きた原因等も含めて、現状の認識についてまずは答弁をいただきたいというふうに思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 先月二十二日でございますけれども、東京、東北エリアにおきまして電力需給の逼迫が生じました。初めて警報という形で皆様方にも御連絡申し上げ、まさに節電の御協力を先生方にも大変お力添えいただきながら頂戴し、大規模な停電に至ることを回避できましたことを私どもの方から御礼申し上げたいと思っております。

 委員から御質問がございましたが、電力に関する需給の逼迫ということは、エネルギー、特に電力というものが私どもの生活、経済社会を支える基本であるエネルギーの供給の問題であるということから、しっかりと取り組まなければならない、一方で、昨年そして今年と非常に、供給力自身の懸念といいますか、本当にこのままで大丈夫かということについて、しっかりと受け止めながら対策を打たなければならないというふうに考えているところでございます。

 御質問いただきました先般の需給の逼迫の原因を含めてでございますけれども、まずは、きっかけになりましたのは三月十六日の福島県沖の地震の影響です。地震直後に十四基、発電所が停止いたしました。その後、もちろん電力会社の方々は懸命に復旧していただいたわけでございますが、それでも、逼迫に至ったときで六基、引き続き動かないまま、一部はまだこれから長期停止する可能性を含んでございます。

 これに併せて、三月の二十二日という時期にいたしますれば非常に厳しい天候に徐々に変化していったことがございます。日中の気温が平年より大幅に低い、五度の予想が三度、二度と下がっていったということで、需要が非常に大きく伸びたこと。同時に、天候が悪くなりますと、日が出ると大変供給力が期待できる太陽光も、ほとんどこれが出てこなくて供給の支えになっていかないというものがございますので、結果的に、これに併せて三基、追加でトラブル停止もございまして、この日には非常に厳しい状況に至ったところでございます。

 現在、三月の二十五日から、資源エネルギー庁の審議会で有識者の方々に今回の事態の検証作業というのを始めていただいております。まずはこの検証で、今何が必要なのかと。供給力の面、そして需要面のところ、節電のところも含めて、及びこういうことの対応というところも含めてしっかりと検証し、安定供給が確保できるよう、取組をしっかりと進めていきたいと考えてございます。

中野(洋)委員 いろいろなトラブル、重なってということではあるかとは思います、トラブル停止というのが。地震ももちろんありまして、他方で異常気象というところと、両面でということではありますけれども。しかし、二年続いてというところになると、全体的な電力の供給の容量そのものも、やはり少しこれはてこ入れをしていかないと今後のこうしたことに備えられないのではないかという思いもございます。

 そこで、経済産業省にもう一問質問をしたいのが、今後の電力需給の見通し、要は去年も冬は相当需給が厳しいということで、見通しを毎年やっていただいていますけれども、最近、毎回、かなり厳しいというような予測が続いているというふうに感じております。今後の需給についてどういう見通しがあるのかというのを経済産業省にお伺いしたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 毎年度、夏と冬と、逼迫が懸念される時期を念頭に、安定供給ができるかどうかということの検証作業を行って、事前に対策を打っているところでございます。

 昨年度のうちに今年度の検証、予測といいますか対策を打っている中で、電力広域的運営推進機関が取りまとめた見通しの中では、この夏の予備率について言いますと、七月の東京、中部エリアが四・二%、八月の東京から九州までの七エリアが五%と、決して楽ではないんですけれども、ある程度確保できる見通しになっておりました。

 他方で、委員から今御指摘いただきました三月十六日に発生しました地震の影響、火力発電所の長期停止ということが出てくるようでございましたら、またこの状況についても、予備率の低下ということがあり得るということでございますので、今、検証作業を専門家の方で電力会社とともにやっているところでございます。

 また、御指摘いただいたように、より厳しいのは冬でございます。先ほど申し上げました、昨年度に行いました冬の見通しについて申し上げますと、現時点で、東京エリアが一月が〇・一%、二月が一%となるなど、安定供給ラインである三%の予備率が確保できないという見通しになってございます。その上での先般の東京エリア、東北エリアでの逼迫が生じたということ、その中には、委員御指摘いただいたように、近年の需要の大幅増というのも考えていかなければならない。

 これは今専門家の方々に様々御意見を賜りながら進めているわけですが、コロナが長期化することによる需要増、リモートワーク、社会構造の変化、あるいは異常気象、太陽光の大量導入の平時とそうでないときの差、様々なことが考えられるわけですが、私どもからしますと、こういったものをしっかりと検証した上で、安定供給のために今何が必要なのかということを検討していきたいと思っております。

 もちろんのことながら、これまでも、追加的に休止している火力に対して公募をかけまして資金支援しながら再稼働していただくということですが、点検時期をずらす対策ですとか、様々な対策が交錯しているわけですけれども、現下の状況を踏まえた中で、更に言いますとウクライナ情勢の中で、燃料供給の安定供給懸念というのが生じてきている中でどういった対策が必要か、真摯に検討を進めていき、必要な対策を講じていきたい、このように考えてございます。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 様々、更に考慮しないといけない要素が、先ほどまさに御答弁もいただいたんですが、ウクライナ危機ということで、さらに、EU側がロシアに対して、欧米を含めて、エネルギーの関係の経済の制裁というのがどうなっていくか等も含めて、かなりいろいろな予測があり得るのではないかとは思っております。状況が更に悪化するという可能性も十分に考えられると思います。ここはしっかりとまず検証していただいた上で、必要な対策というのは、オール・ジャパンで何ができるのかはしっかり考えていかないといけないということを思います。

 そこで、エネルギー安全保障はまさに国の安全保障そのものでございますので、スリーEプラスSを達成するということには、Sをしっかり確保しながら、安全性を確保した原発を再稼働させる、これが一つの重要な側面かと思います。

 そこで、S、セキュリティー、原子力規制庁の安全の確保について、委員長に何問か御質問をさせていただきたいと思います。

 改めてになるんですけれども、福島の事故後の原子力規制、新規制基準ということで、世界最高水準の規制の基準も定めてまいりましたけれども、やはりそれに甘んじることはしないと。新しい最新の知見があれば、バックフィットということもございますし、自律的に事業者が、今決まっている基準だけ守ればいいんだ、こういうことではなくて、安全性をどんどん向上させていく取組を推進するということが非常に大事な安全確保の側面かなというふうに思っております。

 先ほども検査の制度の議論もございましたけれども、新たな検査制度が二〇二一年に本格的な実施ということで、施行の期間も過ぎてこういう検査も新しく始まったということでございます。最新の知見を常に取り入れていくという観点からは、原子力規制行政側と原子力の事業者が、透明で健全な形でお互いの取組の意図や情報共有を、こういうものを正確に伝えていくということも非常に大事なのではないかと思っております。

 委員長の方も、そうした観点から、現在、事業者の方と意見交換もされながらこうした取組を行っているというふうに思っております。こうした新たな原子力の規制行政というのは、まさに今やっていて、まさにこれを現在進行形で改善させていくという取組の途上であるかというふうには思っておりますけれども、こうした、原子力の事業者が自律的にかつ継続的に安全性を向上させていくという、原子力の新たな規制の行政の在り方に委員長は今取り組まれておられて、いろいろな事業者とのやり取りも含めての御感想もあろうかと思いますが、現状、どのようにうまくいっているのか、これからまた改善していくべき点は何か、こういうことについて委員長の御所見をいただければと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 継続的な安全性の向上というのは、東京電力福島第一原子力発電所事故の反省の中で最も重要なものの一つであります。

 さらに、継続的に安全性を向上させていく中で、事業者の自律性を尊重する、事業者自らが向上していこうという活動がよりスムースにいくための試みとして、先生の御指摘の中にもありました新たな検査制度で、事業者が自らの責任を明確化し、また検査を自ら行うという制度は効果を上げてきていると思いますが、もう一つの柱が、安全性向上評価というものがありまして、これは、事業者が自らの原子力施設について個別の安全性の評価を行う、あるいはストレステストのようなものを行って、この結果を私たち規制当局に対して届出をするものであります。

 私たちはこれを承認したり認可するわけではなくて、事業者がこれを私たちに届出をする制度ですけれども、これによって事業者がより自らの所有する施設について深く知ることになり、また一般に対しても個々の安全性について語れるようになる、これが安全性の向上に向けて大きなインセンティブを持っていただくことになるだろうというふうに考えております。

 新検査制度も、それからこの安全性向上評価制度も、どちらもまだ歩みは半ばでありまして、現状に満足することなく、引き続き制度の改善に努めてまいりたいというふうに考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。まさに制度が道半ばでということもおっしゃっていただきました。不断のブラッシュアップというのがやはり必要かと思いまして、新たな検査制度と安全性向上評価という二つの柱ということでおっしゃっていただきましたので、この改善というのは是非取り組んでいただきたいと思っております。

 今回、新たに導入された制度といたしまして、例えば、米国の原子力規制委員会などでは既に運用されていると聞いておるんですけれども、例えばこうした検査の制度から得られた気づきであるとか最新の知見、こういうものを文書で情報共有していくという仕組み、インフォメーションノーティスというふうに言われておりますけれども、こうした制度を日本においてもこれから導入していく、こういうお話も伺ったところでございます。

 委員長に、いわゆる日本版のインフォメーションノーティス制度導入の意義、そして、今後の狙いというか、どういう点を改善させていきたいのか、こういうことについて答弁いただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 二つのことを申し上げます。

 一つは、規制当局の役割というのは、要求したり強制したりといったようなものだけが役割ではありませんで、やはり、促していく、こういったところに関心を持ってください、こういったところが注意のポイントですということを事業者に広く知っていただくということも重要だと思っています。そういった意味で、このインフォメーションノーティスという制度は、有効なものになるように育てていきたいと思っております。

 もう一つは、私は、かつて規制当局の外にいて安全研究を行っておりましたけれども、ある意味規制当局ウォッチャーだったわけですが、米国の規制当局を見ているときに、インフォメーションノーティスを見ると、今、NRCは、要求しているわけではないけれどもこういうことに関心を持っているんだというのを外部の人間が知る上で非常に有効であったと。

 もちろん、規制委員会も発足して以来様々な文書は出してはいるんですが、委員会資料であったり会合資料という形ですけれども、はっきりインフォメーションノーティスといって番号を振ることで、私たちの関心事項は今こうであるんだ、あるいは事業者にはこういう点に注意を払ってもらいたいということをお知らせする上で、少なくとも米国ではうまくいっていると私は思いますので、私どももそれに倣って、この制度がうまく回るようにしていきたいというふうに考えております。

中野(洋)委員 ありがとうございます。二つの狙いということで言っていただきました。まさにそういう意味で、こうした原子力の規制の在り方を日々改善していただいているということには改めて敬意と感謝を表したいというふうに思います。制度がうまく機能して、更に安全な高みを目指していけるような、そういうものにして、是非お願いをしたいというふうに、今日、改めてお願いを申し上げます。

 済みません、時間が余り残っておりませんが、福島の復興についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 私も経済産業の政務官として取り組んでまいりました。福島の復興にとって、廃炉・汚染水・処理水対策、これが非常に重要でありまして、ALPS処理水の処分が非常に大事なクリアすべき課題であります。地元や国民の理解を得るための丁寧な情報の発信や説明などが不可欠だというふうに思います。政府が先頭に立って進めていかないといけない。

 他方、規制庁の立場としては、原子力の安全性を審査するという立場ではあろうかと思いますけれども、それのみならず、やはり、透明性であるとか信頼性の向上、こういうものに資する形でのモニタリングや、IAEA、第三者機関等の目も入れていく等の取組も含めて是非行っていただければと思っております。

 海洋放出に向けた取組ということで、委員長の今後の取組を答弁いただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 東京電力から昨年十二月に提出されたALPS処理水の海洋放出に係る実施計画につきましては、現在厳正な審査を進めているところでございますが、御指摘のように、このプロセスの透明性というのは大変重要であります。

 そういった意味で、公開の審査会合で議論を進めるとともにIAEAのレビューを受ける、それから、国際的な関心も持たれておりますので、議事録の英訳をしたもの等の資料をウェブ上で公開するなどの試みを進めているところであります。今後、まだ審査は続きますけれども、より細やかな審査資料であるとか審査書の作成、それからその英訳、そして、モニタリングに関してはモニタリング情報の公開も含め、モニタリングは放出以前からのモニタリングも大変重要な意味を持っておりますので、こういったものの公開にきちんと努めてまいりたいというふうに思います。

中野(洋)委員 済みません、復興庁に、時間が来てしまいまして質問できませんでした。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は時間が僅かしかございませんので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 更田委員長におかれましては、これまでの長きにわたりまして規制委員長としての役職を務められましたこと、心から敬意を表させていただきたいと思います。

 それでは、質問に入りますが、今日は、まず原子力規制委員会設置法の解釈について伺いたいと思います。

 第一条、目的規定がございますけれども、原子力規制委員会は、この第一条、ポイントだけ申し上げますと、原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、又は実施する事務を一元的につかさどるとともに、中立公正な立場で独立して職権を行使することで、もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的とするというふうに定められております。

 安全保障という言葉があるわけですけれども、この中にエネルギー安全保障という概念が含まれていると委員長が考えられているかどうか、是非お考えを伺いたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 原子力規制委員会設置法の第一条にある我が国の安全保障という文言につきましては、国会における法案の御審議や附帯決議などを踏まえ、原子力規制委員会が原子力安全規制、核セキュリティー及び核不拡散の保障措置を一元的に担うという観点から規定されたものというふうに理解しております。

浅野委員 直接的な御答弁ではなかったですけれども、確かにそういった趣旨も含まれていると思います。

 昨今、ウクライナの情勢緊迫化に伴ってエネルギー供給に対する危機感が世界中で高まっている中で、やはり、エネルギー安全保障の観点から我が国の安全保障を捉える、これも必要なのではないかと私は考えております。

 その立場から次の質問をさせていただきたいと思うんですが、先ほど鈴木委員の質疑の中でもございましたが、審査に時間を要しているという今の現状、いろいろな要因があるというふうに思いますけれども、審査会合の前の事前ヒアリングの効率化という議論が先ほどございまして、私も全く同じ問題意識を感じておりました。

 今いろいろと話を聞いておりますと、事前ヒアリングでは、事業者側の説明予定内容の詳細のヒアリングにとどめられておりまして、例えば説明内容が一部不十分であったり、あるいは、規制側が確認したい論点を改めて含めてもらえるような、内容の改善に対するやり取りというのはされていないというふうに聞いております。

 ただ、やはり、審査会合という大変貴重な機会の中で国民の安全に関するしかるべき議論をしていただくためにはこういう事前の論点整理というものは必要ではないかというふうに思うんですけれども、なぜこれまでこの事前ヒアリングの中でそういったいわゆる論点整理というものを行ってこなかったのか、その辺りの背景、そして委員長の考え方について伺わせていただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 まず、審査におきましては透明性の確保が非常に重要で、これは前提であるというふうに考えております。

 公開の審査会合の議論が判断を伝える場であるとしますと、ヒアリングはそれに先立って資料等の確認をするものという位置づけをしております。ヒアリングは、要旨は公表をしておりますけれども、非公開で行っていますので、その場で規制側の判断を伝えたりするようなことは慎むべきであるというふうに考えております。そういった意味で、ヒアリングの持つ意味というのはあくまで限定的であるべきだと思いますし、議論の時間がというのであれば、公開の審査会合をより頻繁に開くといったような形の方が望ましいというふうに考えております。

浅野委員 その委員長のお考えについては、過去の規制委員会の会議議事録の中でも同様な御発言をされていることを確認したんですが、審査の結果を伝えるわけではないと私は思うんですね、不足の論点を補うように。先ほど委員長自らおっしゃいました、要求するだけではなく促していくことも大事なんだと。事業者の自発性を尊重した上で、しっかり事業者側に、論点を整理し、そして審査会合に臨んでもらうことが大事なんだ、私はそう解釈いたしました。

 そういう観点からすると、説明内容の事前聴取というのは確かに大事です。なぜならセキュリティー上公開できない内容も審査の対象となっておりますし、それをしっかり把握するためにはそういうことも必要だと思いますが、ただ、やはり、審査会合という非常に重要な場面、そして、そんなに頻繁に行うことができないというふうにも聞いております。一回一回の審査会合の中身をより向上させていく責務は規制側にもあると私は思っております。

 これは別に、早く審査を終わらせるためとか早く再稼働させるためではなくて、皆様のお立場は中立でありますから、規制側からも中立ですし、事業者側からも中立なプロセスでなければいけませんし、そこに効率性から来る納得感というような要素もあるかと私は思います。したがいまして、事前ヒアリングの内容の改善に向けて是非更なる検討をお願いしたいというふうに思います。

 時間があと僅かとなってしまいましたけれども、もう一問、最後、伺いたいと思います。

 標準処理期間二年というのがございます。ただ、今、それとは裏腹にかなり長期化しておりまして、その一つの要因が今申し上げたような会合の進め方というものにも起因していると思うんですけれども、委員長が考えていらっしゃる、標準処理期間に近づけていくためのボトルネックが現状で何なのか。そして、事業者側そして規制側それぞれがどういったところを改めていけばその現状が改善されるとお考えなのか。最後にその部分をお伺いしたいと思います。

赤澤委員長 更田委員長、申合せの時間が来ているので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

更田政府特別補佐人 はい。

 お答えをいたします。

 ボトルネックは、やはり、地震、津波、火山といった自然、サイト固有の安全性の確認に係る議論であるというふうに思っております。

 さらに、事業者側からしてみると、サイトの自然の特性の把握というのは、その後も努力は続ける必要があるとはいうものの、一回限りといいますか、断層であるとか、地震の強度であるとか。したがって、事業者の方はなかなか地震や津波に関する専門知識を有する要員を十分に自分の組織で抱える動機を強く持てない状態がありますので、事業者によっては、やはり、地震や津波、地質についての議論がしっかりできる状態が整っていない事業所があるのは事実であります。

 いずれにしましても、こういった地質であるとか地震に関わるような議論が審査のボトルネックであるというふうに認識をしております。

浅野委員 終わります。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、菅直人君。

菅(直)委員 今日は、原子力発電所を国内に持つことがある意味での安全保障上のリスクになっているということを含めた議論をさせていただきたいと思います。

 皆さんも御承知のように、ウクライナに対するロシアの侵略はまさに許し難いものであります。その中でも、私は、ロシア軍が三月の四日にウクライナのザポリージャ原発に対して通常兵器による攻撃を加えたというニュースには本当に驚愕をいたしました。

 そこで、まず原子力委員長にお聞きしたいと思います。稼働中の原発に対する通常兵器による攻撃あるいはテロ攻撃があった場合に、原発が破壊される可能性があるのではないかと。

 福島原発事故のときにも私もいろいろな場面に当たりましたけれども、あれは外部電源と内部電源が地震と津波で落ちたことによってメルトダウンにつながったわけですが、こういう通常兵器あるいはテロ攻撃によって、それと同様、それ以上の原発が破壊される可能性があるのではないかと考えますが、委員長の見解をお聞かせください。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 通常兵器による武力攻撃、これに対する備えを要求しているわけではありませんし、また、審査の中でこういった武力攻撃について検討しているわけではありませんので、その結果についてお答えをすることは困難でありますけれども、通常兵器の破壊力そのものは、蓄積されている放射性物質をまき散らすだけの力を持っているわけですので、一般論から考えますと、原子炉建屋や使用済燃料プールが直接被害を受けた場合には環境への放射性物質の放出は避けられないというふうに考えております。

菅(直)委員 私もそのとおりだと思うんです。そして、そのことが持つ意味を私はきちっと議論しなきゃいけないと。つまりは、原子力発電所のいろいろな危険性は言われてきましたけれども、それがそうした攻撃によって起きる可能性が現実にウクライナでは起きているわけです。

 私は、今お答えになりましたけれども、特に稼働中の原発が破壊された場合には、例えば、止まっている原発の場合は、まあ、止まり方にもよるでしょうが、稼働中の原発が破壊された場合には、今答弁もありましたが、相当大きな、場合によっては福島原発事故を超えるような、そういう被害が発生する可能性が私は高いと思います。重ねて、それに対する委員長の見解をお聞かせください。

更田政府特別補佐人 私たち原子力規制委員会は、通常兵器の持つ破壊力等の情報に触れているわけではありませんので、破壊力を前提とした審査や評価等を行っておりませんので、武力攻撃を前提とした被害についてお答えするような評価結果なり検討結果を持っているわけではありません。

 しかしながら、先ほども申し上げましたように、兵器は直接的に物をまき散らす破壊力を持っておりますので、さらに、運転中の原子炉は短寿命の、それだけ放射能強度の強い放射性物質を蓄えている状態にありますので、武力攻撃を受けたときの被害というのは大きなものになるというふうに考えております。

菅(直)委員 今、資料を二つほどお示しいたしました。

 第一の資料は、日本維新の会が三月十五日、つまりはウクライナにおけるザポリージャ原発に対する攻撃があった二週間ほど後ですか、そのときの資料であります。日本維新の会のウクライナの危機から国民生活を守るための緊急経済対策という中に、原発の再稼働、再稼働に向けた残る課題が特重の整備のみとなっている美浜三号機、高浜一号機、二号機始め運転計画の前倒しが可能な原発については、緊急の特別措置としてエネルギー基本計画を改訂し内閣の責任で再稼働させると。

 私はこれに驚きました。現実にウクライナでそうした事態が起きている中で、それを全く無視して、再稼働させろというのは一体どういう意味ですか、これ。

 それに加えて、その後、参議院の決算委員会で維新の音喜多政調会長はこういう言い方をしています。今発言があったように、もちろんあった方がいいです、安全性は追求していけば、できることはたくさんあるわけですけれども、答弁いただいたように、なかったとしても、すぐさま安全性に問題が出るわけではない、こういう答弁を決算委員会で更田委員長に、音喜多参議院議員はやっています。

 なかったとしてもすぐさま安全性に問題が出るわけではないというのは、私は、完全に国民に対する誤解を招く表現だと。なかったとしてもというのは、どういうことでこの音喜多さんが言ったのか。

 つまりは、特重の施設がなくてもすぐさま安全性に問題が出るわけではないという意味で言われたんでしょうが、特重というのは元々、何かの事故があったような場合のために置くわけでありまして、そういうことが起きていないときには、より安全にするために置くものですから、それがあってもなくても関係ないかもしれないけれども、まさに現実にウクライナでそういう事態が起きている中で、なかったとしてもすぐさま安全性に問題が出るわけではないというのは、これは明らかに私は国民に間違った情報を流していると。

 私はそう感じますが、これはお答えしにくいかもしれませんが、委員長としてこの発言についてはどう考えられますか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 特定重大事故等対処施設にしても、武力攻撃を想定した備えではございません。あくまで、意図的な航空機の衝突であるといったようなテロに対する備え、更に言えば重大事故等対策としての信頼性を高めるためのものでありますので、特定重大事故等対処施設があったから武力攻撃に対して安全性を維持できるというものでは決してありません。

 重ねて申し上げますけれども、現在の規制当局、私たちの要求は、武力攻撃への備えを要求しているものでは決してございません。

菅(直)委員 ちょっと今の答弁は逆なんですね。なかったとしてもすぐさま安全性に問題がないと。なかったとしてもというのは、なくてもテロ攻撃とか武力攻撃が平気のように読めるわけですよ。それは明らかに間違った発言だと思ったので、そのことをお聞きしたんです。

 もしお答えしていただけるなら、してください。

更田政府特別補佐人 私の御答弁差し上げた趣旨というのは、あっても平気だというわけではないという意味で申し上げました。

菅(直)委員 そうですよね、あっても平気とは言えない。なくて平気だなんということを、少なくともそういうふうに理解できるような発言を日本維新の政調会長である音喜多議員がしたことに対して、私はこの場をかりて、撤回することを求めておきたいと思います。

 そこで、少し話を戻しますが、テロ攻撃の中には、例えば何らかの爆発物で攻撃を加えるということも一般的に言えば可能性としては入るんじゃないですか、委員長。

更田政府特別補佐人 テロ対策としてどこまでのものを想定しているかということを申し上げるのは、悪意ある第三者に情報を伝えることになるので、これまで公開をしていないところでありますけれども、一定程度のもの、この想定について詳しく申し上げることはできませんが、例えば大型の航空機が意図的に衝突してくる場合などに備えた対策というものを要求しているところでございます。

菅(直)委員 これ以上繰り返しませんが、航空機が意図的に突っ込んでくるというのは、テロ攻撃を超えているテロ攻撃じゃないですか。

 ですから、委員長の立場でそういう言葉を使いにくいというのは分かりますけれども、一般の国民の皆さんからすると、そういう可能性がある場合にはそれを少しでも防がなきゃいけないと考えるのが当然なのに、それをしなくても安全性は確保されているような、間違った理解を振りまくような主張に対しては、先ほど申し上げたように、抗議を申し上げ、改正を求めておきたいと思います。

 そこで、少し話を進めてみたいと思います。

 それでは、どうしたらいいのか。つまり、原発が存在すること自身が日本の安全保障上の大きな問題であるということになれば、どうしたらいいのかということに当然なります。私は、端的に申し上げて、全ての原発をなくする、それでも十分に電力は供給できる、このように考えております。

 そこで、今日は農林省に来ていただきました。農林省は、ここに二一年度版がありますけれども、営農型太陽光発電取組支援ガイドブックというのを例年出されています。これによれば、営農型太陽光発電、つまり、農地でお米や野菜を作りながら、その上空で、パネルを間隔を置いて並べて発電する。

 これによってどのぐらい発電ができるか。私は、この中に書いてあるいろいろな事例を計算してみました。大体、一ヘクタール当たり五百キロワット程度の発電が可能だということが計算してみますと分かりますけれども、それについて農林省の見解を伺いたいと思います。

川合政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、日本で必要な電力を賄うために営農型太陽光発電をやるということでありますと、相当な面積が必要になる、今委員御指摘のキロワットの換算でいきますと相当な面積が必要になると考えております。

菅(直)委員 どれだけの面積が必要かということを計算したものを、私も以前お示ししたと思います。

 今、日本の農地面積はおおよそ幾らですか。

川合政府参考人 お答えいたします。

 約四百万ヘクタールでございます。

菅(直)委員 そうですね、四百万ヘクタールで、一ヘクタール当たり五百キロワットのパネルを置いて、一年間の日照時間を三百六十五日で三時間平均として約千時間、掛け算を私はしてみましたが、農林省にもそれをお示ししましたが、それは御存じですか。

川合政府参考人 お答えいたします。

 委員が試算された数字については承知しております。(菅(直)委員「幾らですか」と呼ぶ)五百キロワット掛ける千時間掛ける四百万ヘクタールで、二兆キロワットアワーになるという試算でした。(菅(直)委員「もう一回、正確に、大きな声で。二兆ですね」と呼ぶ)はい、二兆、二兆キロワット。

菅(直)委員 二兆キロワットアワーというのはどれだけの量かということを、全国民の皆さんによく伝えてください。

 今、日本が使っている電力はたしか年間約一兆キロワットアワーだ、そういうふうに言われていますが、どうでしょうか、農林省。

川合政府参考人 お答えいたします。

 委員の御提案のように、日本で必要な全電力を賄うためには、相当な面積の農地で安定的な営農型太陽光発電が行われるということが必要なことは承知しております。

 ただ、実際には、電力網への接続が可能かどうかとか、あるいは、天候不順による、発電量が減少して電力需要が不安定になることはないかといった、様々な課題をクリアする必要があると考えております。

菅(直)委員 基本的な数字を認めていただきました。他の問題は、主に経産省の問題なので、今日は余りそれには深入りしません。

 少なくともきちんとした形で対応すれば、例えば天気が悪いときはどうかとかいろいろなことが、やじが飛んでいますが、もちろん夜は発電はしないわけですよ、しかし、いろいろな形でそれを融通することは、一般的に夜の電力需要量は少ないですから、それは幾らでもやれるわけでありまして、そういう意味で、私は、原発というものが安全保障上のリスクであるという点も日本においてきちんと議論をしなきゃいけないと。

 今日、朝からの議論で、これまで聞いている中では、何かこう、原発がないと電気が足らないんじゃないかという方ばかりを言いますが、原発があることが日本の安全保障上の大変なリスクだという議論は、残念ながら、これまでの論議を聞いていましたが、出ておりません。まずそのことも含めた議論をしなきゃいけないのが、今のウクライナへのロシアの攻撃という、現実に起きている問題に対して、そのことをきちんと議論すべきで、それに対する私の答えは、今農林省からもいただきましたけれども、四百万ヘクタールの農地を営農しながら活用すると。

 このことについて、私は農林省にあえてお聞きしますが、なぜこれが可能になったんですか。

川合政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、営農型太陽光発電につきましては、農業生産と再生可能エネルギーの導入を両立する有用な取組であると考えております。発電設備下における地域ごとの最適な栽培体系の検討などを行うほか、営農型太陽光発電取組支援ガイドブックを作成しまして、取組事例や必要な手続、支援制度などを紹介するとともに、営農型太陽光発電の事業化を目指す農業者に対する相談対応を行うことなどを通じまして、営農型太陽光発電の導入を推進しているところであります。

 今後とも、優良農地を確保しつつ、地域活性化に資する形で営農型太陽光発電の導入を進めてまいります。

菅(直)委員 ポイントが一つ抜けているんです。なぜ可能になったのか。

 それは、農地法の解釈で、ソーラーパネルを載せるための柱の下の農地の宅地転用を、たしか十年ほど前ですか、あの福島原発事故があった、宅地転用を認めたことによっていわゆる農地と太陽光発電の両方を両立させることができるようになったからだと私は認識していますが、いかがですか。

川合政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、農地で営農型太陽光発電に取り組む際には農地法に基づく一時転用の許可が必要でありまして、そういった取組をしております。

 以上でございます。

菅(直)委員 余りはっきりした答弁じゃありませんでしたが、大体肯定されました。

 つまり、一般的には農地というのは構造物を造っちゃいけないという法律の体系なんです。それを例外的に、ソーラーシェアリングで太陽光発電をする場合には柱の下のところだけの宅地転用を認めたんです。それもいろいろな時期がありましたが、かなり今はそれが可能になっています。

 そこで、せっかく経産省にも来ていただきましたから、経産省にもお聞かせいただきたいと思います。

 経産省からいろいろな意見を聞くんですが、私が提案している、まさにある意味では農林省が提案しているこの営農型太陽光発電を拡大していけば日本における電力需要を賄うことが理論的にはできると思いますが、それを妨げているのは、場合によっては経産省が余りにも原発がなければ電力が足らなくなるということを国民に、私から言うと間違った情報だと思いますが、それを言い続けていることがあるんじゃないかと。

 現実には、原発がなくても、安全保障上のリスクもなくなりますし、それに加えて、営農型太陽光発電だけではありませんが、そういうことによってそれに代わる手段があるということを、もう少し経産省もきちんと理解して発信すべきだと思いますが、経産省の担当者、いかがですか。

茂木政府参考人 再生可能エネルギーは、エネルギー安全保障にも寄与しますし、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現に向けての鍵となる重要な国産エネルギーだという認識を私どもは持っております。その推進に当たりましては、国民負担を抑制しながら、地域と共生しながら最大限導入していく、これが政府としての基本方針でございます。

 今御指摘がありました営農型の太陽光発電、いわゆるソーラーシェアリングでございますが、こちらも、太陽光発電の導入ポテンシャルの拡大につながるということと同時に、営農と発電の両立を通じまして地域の活性化の効果もある重要な取組だというふうに考えておりまして、再生可能エネルギーの主力電源化の一翼を担うという認識を持っております。その拡大に当たりましては、周辺の農業生産や環境への配慮、こうした農業政策との整合性ですとか地域の住民を含めた関係者との共生を図りながら導入を進めてまいりたいというふうに考えております。

 一方で、再エネについては、出力変動にどう対応していくのかとか、ブラックアウトを回避するためにいろいろな慣性力をどう確保するか、あるいは地域の御理解を得ながら適地を確保していく、こうした課題ももろもろございます。

 私どもといたしましては、二〇五〇年に向けた再エネの技術開発とかコスト低減の見通し、様々な不確実性がございますので、こうした不確実性を考慮しないで再エネだけでカーボンニュートラルを目指す政策を選択するというのは、日本のエネルギー政策としては適当ではないというふうに考えております。

菅(直)委員 これほど適当なものがないんですか、最適じゃないですか。可能性として、四百万ヘクタールを使えば、可能性としてある、二兆キロワットアワーの。それは今、数字を私も示しましたし、示されました。もちろん、ほかの手もあります。太陽光だけじゃありません、風力もあります。

 ただ、残念ながら、私はこの十何年見ていますけれども、風力発電についてもなかなか伸びていません。太陽光が圧倒的に再エネでは伸びてきています。事実関係は分かっていると思いますよ。私は、率直に言って、経産省が再エネ導入に対して積極的な行動を取っていないのが一つの原因だと思っています。

 つまり、先ほど言われたように、できないと言うんじゃなくて、いかにすればやれるかということを考えるのが経産省の役割じゃないですか。今日は経産委員会じゃないから、余り言いませんけれども。

 例えば発送電の分離なども、スペインなどでは一社が全国の送電網を持っていて各発電事業者に、いろいろな地域の状況を予測して、それによって停電が起きないようにやっています。日本は発送電分離をやったと言いますけれども、結局、東電が東電の子会社に送電網を移しただけで、あるいは関電が関電の子会社に移しただけで、発送電分離というのは全く進んでいません、私から見ると。これは経産省の責任じゃないですか、いかがですか。

茂木政府参考人 御指摘の電力システムの改革というのも、経産省としてこれまでも進めてきております。

 それから、エネルギーの安定供給という観点からは、私も先ほど申し上げましたが、様々な不確実な要素を加味しながら日本のエネルギー政策に最適なものを追求していくということであります。そういう意味では、再エネに加えまして原子力も水素もアンモニアも、新しい選択肢も様々出てきておりますので、こうした選択肢を追求していくということが重要だというふうに考えております。

菅(直)委員 ですから、それを進めるのが経産省の役割じゃないですか、本来の、電気事業法を担当している。私から見ると、それを妨げているのが今の経産省の役割なんだというふうになっている。

 先ほど申し上げた発送電分離にしても、なぜ所有権分離をしないんですか。子会社じゃないですか、単に。ですから、電力の不足とかいろいろ起きても、親会社である電力会社は、子会社がもうかるか、親会社がもうかるか、どっちが損するかで、ツーペイですからね。そういうことは分かっているんでしょう。

 経産省にはもうちょっと、本当に電気事業法を管轄するのであれば、その責任を感じてもらいたい。私はこの十年間見ていますが、残念ながら、電気事業法を管轄するにおいてそういうことをしっかりと考えて、経産省からこういうふうにしたらよりできますという提案が、少なくとも私が知る限り、納得できるものが出てきたことはありません。

 もう一度だけ聞きます。もうちょっと経産省は、電力の責任を持つ役所ということを続けるつもりなら、できない理由をやるのではなくて、こうすればできるという提案を出すべきだと思いますが、いかがですか。

茂木政府参考人 電力システム改革、それから送電線の整備をどうやって行っていくか、そして電源をきちんと確保していく、こうした様々な取組を責任を持ってしっかりと進めてまいりたいというふうに思います。

菅(直)委員 では、ほとんど最後になりますが、先ほど農林省には確認を取りましたけれども、私が提案しているというか、ある意味では農林省の事例でもありますように、一ヘクタール当たり五百キロワットのパネルを置いて年間千時間、それを四百万ヘクタールでやれば二兆キロワットアワーの発電量が理論上可能である、この数式について。私は経産省にもお示ししたと思いますが、この数式について何か間違いがありますか、それともこの数式は正しいということですか、経産省。

茂木政府参考人 委員からお示しいただきました、農地面積四百万ヘクタール、一ヘクタール当たり五百キロワット、それから日照時間が一日三時間でしょうか、と仮定して千時間という前提で御計算をされていると。この考え方については、私どもも先生から伺いまして承知をしております。

 これ自体が適当かどうかというのは私どもが判断する立場にはございませんけれども、一つの考え方として、農地面積についても、それから一ヘクタール当たりのキロワットについても、一定のそういう数字があるということは私どもは確認をしているところであります。

菅(直)委員 ついでに申し上げますと、二兆キロワットということは、一兆キロワットが余るわけです。では、それはどうすればいいか。

 例えばの話、これも御存じでしょうが、CO2の原因は発電だけじゃありません、製鉄においても物すごくCO2が出ています。それはカーボンを使うからです。水素を使うのであれば大丈夫です。逆に、余った電気で水を電気分解して水素をたくさん出して、その水素を使って今の溶鉱炉でカーボンを使わなくする。多分、数十%の容量です、今製鉄から出ているCO2の排出は、他のものとの中で。そういうことがなぜ進められないんですか、経産省。

茂木政府参考人 委員の御指摘が今ございましたとおり、日本でカーボンニュートラルを進めていこうと思うと、製造業の分野、特に熱ですとか、原料で使われている化石燃料をどのように代替していくのか、そこからのCO2をどのように抑えていくのかというのは非常に重要な課題であります。その一つの解決策として水素は重要だというふうに私どもは考えておりますし、そのための技術開発についても、今回、グリーンイノベーション基金を投入して進めているところであります。

 そして、ではその水素をどこから導入してくるのか、造ってくるのかということは、一つは、今御指摘がありましたとおり、国内で再生可能エネルギーの導入が進んでくれば、ここからの余剰電力を活用した水素、これも一つの重要な供給源です。一方で、製造業の中で大量に水素を使おうということになると、それだけではなかなか十分に供給がされない可能性もありますので、これは、海外からの水素調達も含めたそういうサプライチェーンも併せて構築していくというふうに考えています。

菅(直)委員 ですから、私が申し上げているのは、海外に頼らなくても理論上はできるんじゃないですかということを前提に言っているんです。

 先日も、エネ庁の皆さんに党で来てもらっていろいろと話を聞きましたが、どうも経産省はそういう問題に対して消極的で後ろ向きです。もっとチャレンジングにやるのが元々の経産省の、私の知っている、かつては「官僚たちの夏」という本を書かれた方もおりましたけれども、意欲的な役所だったのが、今や何か、既存の電力利権を守るようなことしか言っていないように残念ながら私には感じられるということを申し上げて、質疑を終わりたいと思います。

赤澤委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、質問のお時間を頂戴し、ありがとうございます。

 私は、まず冒頭、今年の一月、原発への投資を条件つきで促進するいわゆるEUタクソノミーに抗議する書簡を、先ほどの菅元総理始め五人の日本の総理がEU委員長に送りましたところ、日本の環境大臣から、その中に記載のあった「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ、」ということが福島への風評被害を生む懸念など抗議を届けられたということでありますが、果たしてそうした問題をこうした形でなかったことにすることが歴史にとっても子供たちにとってもどうであるかという観点からお伺いいたします。

 今年の一月二十七日には、六人の甲状腺がん摘出を受けた福島の若者が東京電力に対して訴訟を起こしております。

 まず冒頭、一問目の質問であります。

 お手元にお示ししましたグラフ並びに数値は、環境省の拠出金によって福島県が行ってきた十八歳以下の子供三十八万人の甲状腺検査により見つかった甲状腺がんは、疑いも含めてこの十年で二百六十六人、手術が済んで確定したものが二百二十二人となってございます。

 この環境省からいただきましたデータを私の方でグラフ化いたしました。それが左の図でございます。二〇〇八年から表示させていただきましたが、事故前は年間一、二名程度だったものが、事故翌年、二〇一二年では男女計十三人、二〇一三年四十三人、二〇一四年十五人と山があり、二〇一五年の三十人、二〇一六年十二人、二〇一七年十七人、二〇一八年十一人。もうすぐ一九年の統計が出ると伺っておりますが、これはいずれも発症ですので、その年に発見されたということであります。

 同時に、国立がん研究センターの統計で見た場合、これは厚労省からこれにのっとって数値を教えていただいたものですが、子供の甲状腺がんというものは大体一年間でどのくらいの数になるのか、これを、皆様の参考のために資料の二枚目に記載してグラフにいたしました。これは、二〇一六年で比較をしてございますが、甲状腺がん罹患率、人口十万人対というものでございます。上段が女性、下段が男子でありますが、ブルーが全国、オレンジが福島となっておりまして、福島での登録されたがんのケースの多さは歴然といたしております。まず、このデータについてどのように考えられるか、厚生労働省にお願いいたします。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、地域がん登録及び全国がん登録によりますと、委員御紹介いただきましたけれども、福島県における甲状腺がんの罹患率、これにつきましては、全国平均と比較して高い傾向となる数値を示しているところでございます。福島県における甲状腺がんの罹患者数の増加と放射線の影響等については国内外の専門家会議において評価されていると承知をしておりますが、その中では、例えば原子放射線の影響に関する国連科学委員会においては、現時点では放射線の影響とは考えにくく、非常に感度が高い若しくは精度がいいスクリーニング技法がもたらした結果であると報告されているものと承知をしております。

 厚生労働省におきましては、全国がん登録等のデータを用いまして、甲状腺がんを含むがんの正確な罹患情報等の収集に努めてまいりたいと考えております。

 全国的には、甲状腺がんにつきましては、長期的に見ますと、一九八五年に比べて年齢調整罹患率が倍程度になるなど、長期的には上昇傾向にあるという状況でございます。

阿部(知)委員 長期的には上昇傾向にあるといっても、ここまで顕著ではないわけです。

 今、厚生労働省は、スクリーニングの結果も精度のいいものでスクリーニングしたからというふうにはおっしゃいましたが、そうであれば、実はスクリーニングというのは、一回目については言えるかもしれません。スクリーニングして見つかった、スクリーニングしなかった群との比較はスクリーニング効果と申します。でも、二巡目、三巡目、四巡目、同じ母集団でやって、また出る、また出る、また出るということを繰り返しております。私は、やはり、簡単に因果関係を否定するのではなくて、そこにある事実、データに基づいて多様な要因をきっちりと分析していかないと、歴史にも恥ずるものになると思います。

 続いて、今日お越しいただきました務台環境副大臣にお願いいたします。

 先ほどお示しした二〇一六年の方のデータは、私が申しましたように、スクリーニング効果では、二〇一六年というと一回目のスクリーニングはもう、終わっていますから、説明をできません。

 最近ではよく、過剰診断、要するに手術し過ぎたとか穿刺検査をし過ぎたというふうに言われる方もありますが、例えば福島県立医大で手術をなさった鈴木真一先生は、日本甲状腺学会の診療ガイドラインというものにのっとって十ミリ以下ならば細胞診を実施しないとか、また、鈴木先生のなさった手術の結果、リンパ節の転移が七七・六%、甲状腺の被膜外に浸潤したのが三九・一%。いわゆる過剰診断では到底語れない実態がございます。

 環境副大臣といたしましては、今、福島の県立医大で行われてきた手技も含めたやり方、ガイドラインにのっとって大変慎重に行い、結果的にしかし全摘もせざるを得なかった子もあったという不幸な実態でありますが、これを過剰診断というふうに当然語ることはできないと思われますよね。いかがでしょう。

務台副大臣 いわゆる過剰診断については、明確な定義はされていないというふうに我々も認識しております。一般に甲状腺がんは進行が遅いことが知られており、甲状腺検査によって将来的に症状やがんによる死亡を引き起こさないがんを診断し治療してしまう可能性があるという指摘もあることも承知しております。

 福島県で行われている県民健康調査甲状腺検査により二次検査の受診が必要と判定された受診者については、各々の医療機関において学会のガイドライン等に基づいた診断と治療が適切に行われているものと認識しております。

 いずれにしても、環境省では、甲状腺検査の対象者や御家族の不安に応えるため、二次検査を受ける方への心のサポートの実施体制の強化をする事業などを行っております。

阿部(知)委員 通常、過剰診断というのは、必要もないのに穿刺をしたり手術をしたりすることを簡単に言うと指していますが、先ほど御紹介したようにリンパ節転移もあるし浸潤もあるしということで、医学的にはこれは過剰診断とは申しません。

 そして、今、務台副大臣が御答弁いただきましたように、この検査はもう少し時間がたってみればまた傾向が分かってまいりますので、御家族や御本人を支えながら、しっかり検査が受けられる体制というものを持続していただきたいと思います。

 因果を断定して論争していること自身、子供たちにはとても不幸だと思います。とにかくあなたたちを支えて治療がちゃんとできるようにしますよというのが少なくとも私は国の責任だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、ただいまはウクライナ情勢もございまして、その中で原発の再稼働はいかに何でもひどかろうと先ほど菅元総理の御発言にありましたが、この間ヨーロッパから伝えられる報道は、チェルノブイリにロシア軍が侵攻して以降、ヨーロッパでは安定ヨウ素剤が品切れになったり需要が逼迫しているという報道が伝えられております。それくらい地続きですし、もしも事故があった場合に安定ヨウ素剤というのはチェルノブイリ原発事故を経験したヨーロッパの人々にとっては何としてでも手に入れておかねばならないという危機感の表れかと思います。

 その安定ヨウ素剤につきましても、果たして我が国の準備状況がどうであるのか。これは別に軍事的な侵攻を想定した質問ではございませんが、しかし予防できるものは予防するという観点からお伺いをしたいと思います。

 開いていただきまして、三ページの皆様の資料には、そもそも復習になって恐縮ですが、放射性ヨウ素は甲状腺にたまって甲状腺がんの原因になるということがチェルノブイリで強く言われましたので、以降様々な見直しが行われまして、放射性ヨウ素が来る前にきちんと安定ヨウ素剤を内服しておくということが方針になりました。

 上の段は、ヨウ素剤はいつ飲むのが効果的かというと、放射性ヨウ素がやってくる約二十四時間前、一日前ですね、それだと九三%、次の放射性ヨウ素を吸収しなくなる。続いて八時間になってしまうと半分以下の阻害になる。二十四時間以降はほとんど阻害できない。すなわち、緊急時に早く適切に飲むことが重要であると。

 ところが、下段を見ていただきますと、放射性ヨウ素に対する防護のためのヨウ素剤服用指示は実は福島第一原発事故のときは伝わっておりませんでした。これは、国会事故調のメンバーであった崎山さんのおまとめであり、また、国会事故調の正式報告でもありますが、当時の原子力安全委員会からオフサイトセンターにファクスを送信したけれども行方不明、そして、福島県の知事には三月十六日にファクスを送信したけれども、誰も十八日までファクスに気がつかないで、結局、水素爆発のときには間に合っていないというか、ヨウ素剤の服用というのはほとんど通達されておりません。

 福島県知事から市町村に服用指示をすべきであったけれども、残念ながら知事にその明確な自覚が、知事部局と言った方がいいと思いますが、結果的にはこの事故では一万人しか内服できておらないという状態が分かってまいりました。

 更田原子力規制委員長に伺いますが、実際にはあのとき原子力安全委員会の取決めの下で果たしてどれくらいの人が飲むべきであったのか、また、行き渡らせるためには当時として何が必要であったのか、御意見があればいただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所事故当時、安定ヨウ素剤の予防服用については、放射性ヨウ素による小児甲状腺等価線量の予測線量が百ミリシーベルトを超えるような放射性ヨウ素の放出又はそのおそれがある場合に服用を指示することとされていました。

 先生の御指摘にもありましたように、国会事故調の報告書によりますと、東京電力福島第一原子力発電所事故の際、原子力災害対策本部及び福島県知事から適切なタイミングで服用指示が出されなかったこと、原子力安全委員会の助言が曖昧であったことなどにより安定ヨウ素剤が適切に配布、服用されなかったものとされております。

 実際、当時は、放射性物質がどのタイミングでどれだけということが分からない状況でしたので、なかなか指示に関しても困難があったものと承知をしております。

 その上で、実際に適切に配布されていたら安定ヨウ素剤の服用がどれだけの効果を上げていたかということに関しては、私ども、評価結果であるとか考察の結果というのを持っておるわけではございませんので、お答えすることは困難であります。

阿部(知)委員 いずれにしろ適切には配布されておらなかったというお話で、なかなか、おっしゃっていただいたように検証は難しいこととは思いますから。しかし、その経験にのっとって、これからをより改善していくために、今日の更田委員長のお話にも述べられていたところかと思いますが、私は、その上で、果たして現在それを可能にしているかという観点からお伺いをしたいと思います。

 開けて資料の四枚目を見ていただきますと、ここに、PAZ、UPZという描き方で、サイトから五キロ圏内と三十キロ圏内に分けて各々の対策が述べられております。下の方を見ていただきますと、五キロ圏内は放射性物質が放出される前の段階から予防的に避難を行う、五キロですから。三十キロの方は、予防的な、例えば屋根の、頑強なコンクリートに入るとか、屋内退避、避難、一時移転を行って、そのときにヨウ素剤を緊急に配布するとなってございます。

 果たしてこれが、うまくワーク、働くかどうか。先ほど更田委員長もおっしゃいましたが、なかなか、事故時に測定し必要なヨウ素を渡すということが、これは現実において難しいところもあろうかと思います。

 例えばPAZというところでは、各々、事前配布をしておいて、その方たちに飲んでいただくということですが、務台原子力防災担当副大臣にお伺いいたしますが、果たしてこれが五キロ圏内でどの程度事前に渡っているかというようなことについて、配布率はどれくらいであるかとか、現状について御存じであるかということが一点。

 また、続いて恐縮ですが、原子力防災会議においては本当にこれが機能するかどうかが審査されていないのではないかと思うのです。防災計画が上がってきて防災会議が持たれて、これで防災計画オーケーですよというときに、このヨウ素の配布がしっかりなされているかどうかが確認されていないのだと思います。例えば、女川の原発では四十歳未満の配布対象者が七百六十五人、PAZ、五キロ圏内について実際に渡っている方は二百人程度でしかなかったということも出ていて、しかし、それでも原子力防災会議は計画が策定されているというふうに了承を出しておられます。私は、安全性の点からも、もっとしっかりと安定ヨウ素剤が渡って初めて防災計画としてゴーだと言うべきだと思います。

 二点続けてお伺いしました。果たしてPAZ内の自治体でどのくらいの配布率か内閣府は把握しておられるか、そして、半分以下でも防災計画オーケーというのは妥当ではないのではないか、二点お願いいたします。

務台副大臣 まず、PAZ内のヨウ素剤がどのくらい配布されているかということでございますが、PAZ内の住民については、原則として四十歳未満の方を事前配布の対象としておりますが、四十歳以上であっても、妊婦、授乳婦、あるいは挙児、子供を産むつもりのある女性が事前の配布の対象となっております。そして、四十歳以上の方であっても、希望者には事前配布をしてもよいとされております。

 こうした考え方に基づき、各自治体ではPAZ内の全住民数等を把握した上で事前配布を行ってきておりまして、実際に配布された方の数もその過程で把握されているというふうに理解しております。配布率を、内閣府で把握している総数は、五九%に事前配布されている、PAZ内でございますが、そういう把握でございます。

 そして、避難計画に関して、ヨウ素剤の配布を条件とすべきではないかということについては、避難計画は国と自治体がそれぞれ有する知見等を十分用いながら一体として策定することが適当であり、国が自治体の避難計画を審査するという枠組みにそもそもなじまないものと考えております。不断の見直し、改善を阻害する可能性もありますので、慎重に考えさせていただきたいと思います。

阿部(知)委員 私は自治体に過剰干渉せよと言っているのではなくて、これは安全性に極めて直結をしてまいります。

 そして、今、平均すれば五九%ということですが、本来その方たちは、一〇〇%とは申しませんが、事前に持っていていただかなきゃいけない、また、そういうお話を伝えて、適切な内服ができるような状態にしておかなければいけないということであります。そのために原子力防災指針というものも作られていると思いますし、お手元の四ページ目の資料、これは小泉防災担当大臣のときに配られたものですが、令和二年の二月四日というところに、今の、PAZはもちろんですが、UPZ、三十キロ圏内でもいわゆる事前配布の推進について都道府県にアナウンスしてくれと通知したわけです。

 その心はといいますと、事前配布してあれば、逃げていく途中に、どこか避難所のある場所に寄ってヨウ素剤を持って更に行くということをしなくてもよいので、できるだけUPZにおいても事前配布によって避難等が一層円滑になるということを考えて例えば薬局等々でも配布できたら、薬局に来られればそれで意味を話せますし、そういうことを通知されました。これもほとんど、幾つかの自治体ではやっておられますが、まだほとんどやっていない。

 この際、とにかく安全性は予防に勝るものはない、そして知識も大事ということで、防災担当の部署である内閣府とまた更田委員長にも、こうした点の徹底というか、リスクコミュニケーションと実際の配布を充実させていただきたい。今日は御指摘をさせていただきます。

 その上で、時間の制約で、最後に更田委員長にお伺いいたします。

 この間、原子力規制委員会で甲状腺被曝線量モニタリングというものの改正を行っております。放射性ヨウ素による甲状腺被曝を避けるためにも、安定剤の内服と同時に、福島事故でも分かりましたが、ほとんど測られていない、甲状腺被曝のデータがないという中で、今回、原子力規制委員会として、災害対策指針のうち甲状腺被曝線量モニタリングの改正と医療体制の見直しを行ったと思います。前者についてお伺いいたしますが、甲状腺被曝線量モニタリングの目的をもう一度おっしゃっていただけますか。

更田政府特別補佐人 これまで甲状腺にどれだけ放射性のヨウ素が蓄積していたか、その時点での蓄積量を測るすべというのは開発されていなかったわけですけれども、実用可能な技術というものが、計測器が開発されたことから、その計測器を用いた運用について定めるために指針を改定いたしました。

 その時点において、特に若い方ですけれども、甲状腺にどれだけ放射性物質が蓄積されていたかを知ることによって、その方の個人としての被曝量が、もちろん、ヨウ素によるものだけではなくて外部被曝も含めてですので、その方の行動履歴等も追わなければなりませんけれども、まず事故によってその方がどれだけの被曝をしたのかということを知るということが目的であります。

阿部(知)委員 委員長が明確におっしゃったように、個人の被曝量を知ることが目的。そうであれば、個人にデータも返していかなければリスクコミュニケーションも完結しないと思います。拝見していると、やり取りの中に、この次は、では情報伝達はどうするのだというと、検討するとなっていて、それでは、そもそもの目的が個人の被曝量を特定していくということでありますので、完了しないと思います。

 お手が挙がっていましたので。

更田政府特別補佐人 被曝をされた方の中には、どれだけの被曝を負ったかということが公表されることを望まない方もいらっしゃいますので、個人情報の保護ということも相まって難しい問題とは思いますけれども、検討を進めてまいりたいと思います。

阿部(知)委員 公表せよと言っているのではなくて、その方にお伝えする仕組みであります。

 あと務台大臣に一問残しましたが、今の避難計画もせいぜい福島の事故の百分の一の放射能の放出の中で想定されています。住民はそう思っていません。この辺りも、何を想定してやっているのかも伝えていただけますようお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

赤澤委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子でございます。

 本日、原子力特別委員会での初質疑となります。よろしくお願いいたします。

 その前に、先ほど立憲民主党さんの方から、我が党の、ウクライナ危機等から国民生活を守るための緊急経済対策についてのお話がございました。取り上げていただきまして、ありがとうございます。

 これに関しましては、消費税の軽減税率三%でありますとか社会保障の減免、中小企業対策とともに、今のウクライナ危機においての食品や生活品の値上げ等々の物価高騰、そして、景気の停滞とインフレが同時に起こるスタグフレーションのリスクによって私たちの生活がいかに変わってしまうのかという危機感を持ってこの提言書を出させていただいたと、私は若輩者ながら理解しております。

 この中で、原油の価格高騰を受けて、その対策として、消極的な選択かもしれないけれども、この特重を非常に重要だと認識しております。これが非常に重要だけれども、新規制基準を満たしているのであれば、再稼働を緊急的にするのは内閣の責任でやってはどうかというお話だったと理解しております。

 これに対して立憲民主党さんが、営農型の太陽光発電ということで、日本中の全農地の上に太陽光がつくということのようなので、私の大好きな里山の景色、あの田園風景がなくなってしまうのかなと思うと、少し寂しい提案ではあったかと思っております。

 そして、太陽光発電は、これから電気自動車が非常に普及していく中で、夜の発電で充電をすると言われていることであったり、あと、私の知り合いもいますけれども、在宅で医療を受けていらっしゃる方が夜間に電気がなくなってしまうと非常に厳しい状況に陥る。

 そういったことも含めまして、私ども日本維新の会では、安定した電気の供給ということを念頭に置きましてこのような発言をさせていただいていると理解しております。決して特重を軽視しているわけではないということを申し上げさせていただきまして、質疑を始めさせていただきたいと思います。

 私、選挙区は京都一区でございますけれども、京都の人間でございます。舞鶴市について質問させていただきたいと思っております。

 舞鶴市は、福井県の高浜原発より五キロ圏内に立地しておりますが、府県をまたいでいるがゆえに、リスクと支援のバランスが福井県のほかのエリアと比べるとよくないという現状がございます。今の状況について御説明いただきたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねがございました、福井県の高浜にございます高浜原発に関してでございますけれども、立地自治体及び周辺の自治体に対しましては、原子力発電所を建設し長年運転していくためには、地元の方々に御理解を賜り、ある意味御負担をおかけすることになるわけでございますので、これに対する交付金といたしまして、電源立地地域対策交付金というものを交付しているところでございます。

 その場合に、現行の制度ということから申し上げますと、実際に立地している市町村、自治体なのか、その隣接なのか、また、福井県という県なのか、周辺の県なのかといった、様々な行政区分及び状況ということに鑑みた形で交付金の配分額というのを決めてきているところでございます。

 ここが、福井県ではない、周辺の県となり隣接県となります京都府に属している、周辺隣接市町村であります舞鶴市につきましては、ここのアンバランスといいますか、ここについては改善していただきたいという御要望をこれまで頂戴してきたところでございます。舞鶴市自身、全国で唯一、立地県以外で予防的防護措置を準備する区域、PAZという地域でもございます。

 この御要望を踏まえた形で、交付金額の算定に際しまして、立地自治体である福井県高浜町の交付金額を一といたしました場合、立地県内の隣接市町村がこの五割で、舞鶴市を含む立地県外の隣接市町村は二・五割という形でございました。これを改善する形で、平成二十九年からこれを二・五割から四割まで引き上げているところでございます。

 このような形で、実情を踏まえて、交付金の配分について一定の配慮を行って改善を図ってきているところでございますが、引き続き、舞鶴市の皆様方のお声にも耳を傾けながら、電源立地地域対策交付金による支援に加えまして、地域振興などの支援などにもしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 行政区分というのが非常に重要だというのは分かるんですけれども、科学的なリスクの面で見たときには変わらないのに、府県の境という、後から人間が恣意的に引いた線のせいで支援の内容が異なる、それが、二五が四〇になりましたけれども、ほかの自治体、お名前は挙げませんが、同じ条件の自治体とは一〇%の差があると認識しております。この一〇%、結構金額が大きいですので、地方自治体にとっては非常に大きな金額だと思っております。また、それだけではなく、ほかにも、もらえることができない、適合しない交付金があるとも聞いております。

 なぜ府県をまたぐと支援の金額が変わるのか、そして、科学的な、合理的な判断をしていただけない理由について、お願いいたしたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、原発の立地というところから周辺にわたって、危険度という意味でいいますと、だんだんだんだん軽減していくという面もあろうかと思います。同時に、行政及び市民生活というものは様々な行政区分を前提になされているのも現実でございます。

 市町村の合併、統合というのもいろいろと進んできている中で、市町村の形というものも相当変わってきているという実態の中で、生活を行っている方々の安全度というものと、様々な風評や、進めていく上での課題というものをどう乗り越えていただけるのかということについては、バランスを取りながら考えていかなきゃいけないのかなと考えてございます。

 元々、二・五ということで、非常に大きくバランスを欠いていた状態であったものについて、御要望を踏まえて改善してきたところでございます。交付金というのは一つの御支援申し上げるためのツールでございますが、様々な地域振興策を含めて、改善する余地がないかどうか、引き続き検討を進めていき、しっかりとした支援を続けていきたいと考えてございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 府県をまたいでPAZが存在し、全域がUPZ内にある日本で唯一の都市が舞鶴市でございます。ほかの周辺自治体と同じように、避難計画を含む緊急時の対応の取りまとめもしております。にもかかわらず、再稼働に関する同意権もなく、該当しない交付金もあるというのでは、余りにも公平性に欠けているのではないかと思っております。できるだけ早く、せめて周辺自治体と同じ基準にしていただきたく、御検討を強く要望いたします。

 次の質問に参ります。サイバー攻撃への対応について。

 不安定な国際社会において、戦争の形態も変化しております。今はハイブリッド戦が行われていると承知しております。サイバー攻撃の危険性は今までになく高まっていると思っております。

 最初に、サイバー事案が発生した場合、捜査は都道府県警察が対応し、攻撃の手法や加害状況によってNISC等への情報提供をしていくシステムだと伺いました。そこで、更田原子力委員会委員長にお尋ねいたします。今現在の原子力発電所のサイバーセキュリティーの体制について教えてください。

更田政府特別補佐人 原子力発電所におけるサイバーテロ対策は、原子炉等規制法に基づき、IAEAの最新の基準に沿った規制基準により規制を行っております。

 具体的には、情報システムに対する外部からのアクセス遮断、情報システムセキュリティ計画の作成などを事業者に義務づけておりまして、原子力規制委員会が事業者の核物質防護規定の認可を行った上で、事業者が講じている措置に対する検査を行って、その内容を確認する仕組みとなっております。

 今後とも、事業者の措置の状況を継続的に確認するなど、原子炉等規制法に基づき厳格に規制をしていく所存でございます。

堀場委員 ありがとうございます。なかなか、新規制基準の中でサイバーセキュリティーに関してはまだまだ分からないことが多かったので、今回、御質問させていただきました。

 次なんですが、ちょっと時間がないので、一問飛ばさせていただきます。人材育成に関する取組について御質問させていただきます。

 原子力発電を再稼働にするにしても、フェードアウトして廃炉にするにしても、技術が必要なことには変わりがありません。今、この人材不足が深刻な問題となっております。経産省にお尋ねいたします。実際に現場で働く人の確保や、技術の維持、継承、そして安全性の向上に向けての取組を教えてください。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、原子力発電を始めとしたエネルギー産業というものを支えるのはやはり人材でございますので、人材の維持強化というのは非常に重要な課題だと思ってございます。

 昨年十月に閣議決定したエネルギー基本計画の中でも、産官学の垣根を越えた人材、技術、産業基盤の強化を進めるというふうに定めているところでございまして、経済産業省といたしましては、例えば、原子力施設のメンテナンスなどを行います立地地域企業等を対象にいたしまして、技能の維持、伝承ですとか、人材を継続的に確保するための訓練、実習といったような事業を行うですとか、電力会社やメーカー、自治体等を対象にいたしまして、発電所の運転、保守や、廃炉等を担う現場人材の育成のための研修といった人材育成を実施しているところでございます。

 引き続き、こういった事業を通じました人材の育成強化というのを図ってまいりたいと思っております。

堀場委員 ありがとうございます。今のような止まった状態がずっと続いていると、実際に運転している人が少なくなってしまうという問題もあるというふうにお聞きしております。こういった、シミュレーション等でやっていらっしゃる方はたくさんいらっしゃると思うんですけれども、今後も技術の確保、継承についてよろしくお願いしたいと思っております。

 文部科学省にお尋ねいたします。アカデミアの領域での最先端の研究が絶対不可欠な分野でございます。現状と取組について教えてください。

高橋大臣政務官 文科省の取組についてお答えをさせていただきます。

 原子力分野は、二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現への貢献であるとか、また構造解析、材料開発、さらには医療分野におけるがんの診断、治療など、様々な社会課題に対応するために欠かせない重要分野だと認識をいたします。

 こうした原子力分野において、これまで培われた技術及び人材を適切に継承するとともに、将来にわたって技術革新を推進していく必要があるところでありまして、大学における原子力分野の人材育成は非常に重要な役割を担うと考えております。

 ただ、一方で、近年、原子力関係の学科、あるいは専攻数、また大学教員数が減少しているという現実もございます。さらには、稼働している試験研究炉が減少しているなど、課題に直面をいたしております。こうした状況の中で、中長期的な観点から、原子力分野の人材を最大限効果的に育成していく必要があります。

 このため、文科省では、大学や高等専門学校が所有する限られた人材育成のリソースの有効活用を図るため、産学官が連携した横断的な教育研究機能を有する拠点を構築し、当該拠点において人材育成の取組の充実を図っているところであります。今後とも引き続き、こうした取組をしっかりと進めてまいります。

 以上であります。

堀場委員 ありがとうございます。

 私、現在四十三歳でございますけれども、その頃にはもう原発が造られ始めました。そして、私たちは、それを好きとか嫌いとか、危ないからどっかへ行け、そういうふうに思ってもそういうことはできない、だからこそ、私たちはそれを受け入れて、その現実をしっかりと前を向いて見ていかなければならないと思っております。

 日本は、世界で唯一の原爆の被害国です。そして、福島の事故を経験しました。だからこそ、原子力の最先端の研究分野で世界を牽引していく使命があると思っております。使用済みの核燃料や原発の廃炉技術、最終処分等、まだまだ研究と技術継承が必要であり、そのためには何よりも人材の確保と育成が必要だと思っております。多くの取組の中で、日本の未来を託せる研究と技術の継承を進めていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 私の地元、大阪十九区の熊取町に京都大学複合原子力科学研究所というのがございまして、そこで人材育成に関して、先ほど我が党の堀場議員が質問しましたけれども、そういったところがございます。ところが、この研究所もいろいろな事情で廃炉も決まっておりますので、そのことに関して後ほど質問させていただきます。

 まずは、先ほど立憲の菅議員が我が党の緊急経済対策に関しての御紹介をいただいたと思っておりまして、ただ、この内容に関して、電力逼迫をいかに解消していくかと、具体的な提案、そういった内容となっておりますし、原子力政策を総合的に提案する責任政党としての日本維新の会のスタンスでございますので、そのことをしっかりと御理解いただいて。

 実際に、平成三十一年の四月に更田委員長から、特定重大事故等対処施設に関して、これがないからいわゆる重大事故等に対処できない状態があるわけでは決してないし、セキュリティー等を鑑みても、プラントの状態は私たちが求める安全レベルに達していると考えているからこそ設置変更許可が行われているという御発言を、委員会の議事録若しくは記者会見での記録を、平成三十一年四月の更田委員長の御発言からの引用と、音喜多議員のお話だと思うんですけれども、これを更田委員長に御質問するというのは意味不明な感じがしますので、これはちょっと。本当に大変ですね。単に事実だけをお話しさせていただくということで、早速質問させていただきます。

 原発再稼働に関して、ロシア、ウクライナ情勢でエネルギー価格、原材料価格の高騰とか、三月十六日の福島県沖の地震で広野発電所の二基が稼働停止になったり、そして何よりも欧州のカーボンニュートラルのお話で、日本では、原発は二酸化炭素を出さず、発電が安定しており、利用のメリットが大きいというのもやはり事実でございますので、政府が再稼働を後押しすることも不可欠だと我々は考えております。

 そこで、安全性に関して、原発再稼働についてまずは質問したいと思うんですけれども、現行の原子力災害の際の避難計画に関して、委員会が作成した原子力災害対策指針に基づいて、国と自治体が参加した協議会において議論しながら策定していると承知しています。

 しかし、現時点で、避難計画の実効性に関しては、新規制基準の適合性審査の対象にはなっておりません。私が思うに、国と自治体ということですけれども、やはり自治体の負担はかなり大きいものだと考えております。そこで、避難計画の実効性を確保するためには、まずは新規制基準の適合審査の対象とすべきではないかと考えておるんですけれども、御意見をお伺いいたします。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 避難計画は地域の原子力災害に対する防災計画ですけれども、防災計画を立てる主体と、それからプラント、サイト内の安全性について考える主体は離れていた方がいいという観点があるというふうに考えております。というのは、私たち原子力規制委員会はサイトの中の事故に対する備え等々の安全性について検討するわけですけれども、サイト内でここまで頑張ったからサイト外はこの程度でいいというものでは決してないんですね。そういった意味で、サイト内の安全を考える主体とサイト外での安全を考える主体というのは独立していた方がいいという考えに基づいている点がございます。

 もう一つは、地域の防災計画は、これはもう、異なるサイトでそれこそ様々でありまして、地域の事情、道路の事情であるとか自然の事情、天候であるとか住民の方々の暮らしの実態ですとか、そういったものを踏まえた防災計画が立てられる必要がありますので、そういった意味で、現在のように地域で、実情を詳しく知っておられる方々によって防災計画が作られるということには大きなメリットがあるというふうに考えております。

伊東(信)委員 内と外を分けたりとか、各地域の事情を考える上でというのは分かるんですけれども、そういったところのことも鑑みながらも、自治体の負担というのをちょっと考えていただければと思っております。

 国のことなんですけれども、もちろん原子力損害というのはあってはいけないことなんですけれども、この損害賠償について、事業者を無限責任としたままでは、予測可能性というのがそんなに高くない、正直低いために、原子力事業自体を続けるのが難しくなるか、若しくは事業の責任を事後に国が幾らでも補填していく結果となりかねないので、原子力損害の国の責任に関して責任の明確化を図るべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林(孝)政府参考人 お答えいたします。

 平成三十年の原賠法の改正に当たり、御指摘の国の責任に関しても、原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会で専門的な観点から検討が行われたところでございます。専門部会の報告書では、原子力事業者が万全の被害者の救済や迅速かつ適切な賠償を最後まで行えるよう、国が引き続き責任を持って原子力損害賠償制度を適切に運用していくこと、これが重要であるとされております。

 現行の原子力損害賠償制度におきましては、賠償措置額を上限千二百億円とする原賠法に規定する損害賠償措置に加え、賠償額が賠償措置額を上回るような場合においても、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法に基づく相互扶助スキームを整備しており、被害者救済の観点から、国として必要な措置を講じているところでございます。

 引き続き、関係省庁と連携し、責任を持って原子力損害賠償制度を着実に運用することで、国としての役割を果たしてまいります。

伊東(信)委員 再稼働に関するところの国の責任の明確化というのは、今後非常に大事なことになると思います。

 そういう観点では、高レベル放射性廃棄物の最終処分に関しても、触れることに関しては本当に勇気の要る話だと思うんですけれども、実は今、三段階での処分地の選定プロセスが定められておりまして、北海道においても文献調査が行われているけれども、まだ最終処分場の決定にはいっていません。

 我が党の松井代表も申し上げているんですけれども、国で使用済核燃料のルールを決めないと将来世代に残すことになりますので、高レベル放射性廃棄物の最終処分の施設等の確実な整備を進めるために手続の法整備を進めるべきではないかと考えるんですけれども、いかがでしょうか。

岩田大臣政務官 お答えをいたします。

 過去半世紀以上にわたり原子力を利用し、使用済燃料が既に存在している以上、高レベル放射性廃棄物の最終処分は、日本の社会全体で必ず解決をしなければならない重要な課題でございます。

 そこで、最終処分場の選定プロセスに関しましては、最終処分法に基づきまして、文献や資料を基に地域の地質データを調査分析する文献調査、ボーリング調査等を行う概要調査、地下施設での調査、試験を行います精密調査と、地域の理解を得ながら、段階的な調査ステップを踏みつつ取り組んでいくということにしております。

 この選定プロセス中の最初の調査であります文献調査につきまして、かつては各自治体からの手挙げ方式というもののみでありましたが、二〇一五年に最終処分に関する基本方針を改定して、手挙げ方式に加えて、地域の理解状況を踏まえて国が主体的に文献調査の実施を申し入れる仕組みを明確に位置づけました。加えて、二〇一七年には科学的特性マップといったものをつくりまして、国が、約三割、適地というものを整理しております。その後、国はNUMOとともに全国で、百四十回を超える説明会など、対話活動を行ってまいりました。

 このような、国による主体的な地道な取組を積み重ねた結果としまして、二〇二〇年には、文献調査の実施について、北海道の寿都町から応募いただき、また、神恵内村からは国の申出に受諾をいただいたところでございます。現在、丁寧に地元の皆さんの声を聞きながら対話活動を進めているところでございます。

 今後とも、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定に向けまして、閣議決定した最終処分に関する基本方針等に沿って、国が前面に立って取り組んでまいります。

伊東(信)委員 いろいろステップがあるというのは承知しています。ただ、手続の法整備を考慮しなければなかなか進められないので、すぐにはなかなか難しいのであれば、今が議論すべきときではないかと思います。

 今年の夏も、昨年同様、猛暑が想定されたりとか、その場合の、あえての問いとなりますけれども、原発の再稼働計画はどうなのか。若しくは、ロシア、ウクライナの戦争の影響によって、今年の夏の影響とかを想定して、地域住民との調整というのはもちろん必要なんですけれども、それを考えるのは当然のことなんですけれども、新規制基準適合性審査をクリアして今年の夏に向けて実際に再稼働可能な原発というのが、もし具体的な名称が分かっていれば教えてください。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 どの原発がいつ再稼働するかというのは、なかなか明確に申し上げることは難しいところでございます。

 これまで再稼働した原発自体は、新規制基準策定以降、十基あるわけでございますが、原子力規制委員会による設置変更許可を取得して、地元から再稼働の理解も表明されたもの、その中で、安全対策工事中でまだ再稼働していない原子力発電所ということで申し上げますと、関西電力高浜発電所一号機、二号機、東北電力女川原子力発電所二号機の計三基がございます。

 どの発電所がいつ、どう再稼働に至るかということは、予断を持って申し上げるのは差し控えさせてもらいたいと思います。

伊東(信)委員 建設中のところもあると思いますし、なかなか答えづらいとは思うんですけれども。

 その際に、高浜原発のお話もお聞きしましたけれども、三・一一のときの電源喪失というような事態にならないように、原子力規制委員会が新たな安全基準を設けて、各原発がその対応をやってきたという認識はしております。では、先日の三月十六日の福島県沖の地震において、現在日本にある原発で、その稼働や運営に支障を来したものはありましたでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 先日の三月十六日の地震の影響で直接的な影響を受けた形で直後に停止したという原子力発電所は、資源エネルギー庁としては把握してございません。

伊東(信)委員 そういったいろいろな教訓を踏まえての御答弁だと思います。そういった天災に加えて、今回のロシア、ウクライナのお話、若しくはテロ対策に関して。原発の守りに関しては、他の国がどのように原発を守っているか、そういったことも参考にして考えるべきだと思っております。

 政府は、原発防衛に対する自衛隊を活用した迎撃ミサイルの配備や平時からの警護といった対策の検討を含めて、国家安全保障戦略など年内に改定する文書に反映するとお聞きしていますし、JAEAの情報によりますと、例えばアメリカでは、原子力施設の防衛は国土安全保障省、DHSの国土防衛脅威水準に維持されていまして、原子力プラントへの接近は本当に厳しく管理されております。司法機関、情報機関と軍隊との共同が強化されておりまして、国家警備隊、米国沿岸警備隊、州警察又は他の部隊によっても補完されていると承知しておるんですけれども、他国からの脅威に関する日本国内の整備において、どこまでの期間を考えて、概要をどの時期までに示すおつもりか、教えてください。

岩本大臣政務官 お答えさせていただきます。

 原子力発電所の警備につきましてでありますけれども、委員御承知のとおり、第一義的には、公共の安全と秩序の維持を責務とする警察機関において実施しているところであります。その上で、事態の態様によりまして自衛隊が原子力発電所を警護することが必要と判断される場合等には、自衛隊は警察機関と緊密に連携して対処することになります。

 具体的に、例えば、特殊部隊等による攻撃に対しては、必要に応じて、原子力発電所を含む重要施設の防護のための部隊を展開することなどが考えられるわけであります。

 自衛隊は、こうした事態に備え、平素から、警察、海上保安庁と共同訓練を行うなどして連携の強化を図っているところであります。

 また、例えば弾道ミサイルに対しましても、海上自衛隊のイージス艦による上層での迎撃、航空自衛隊のPAC3による下層での迎撃を組み合わせた多層防衛により対応することになります。

 いずれにしましても、防衛省・自衛隊としましては、こうした対応を通じて、いかなる事態におきましても国民の生命、財産を守り抜くべく万全を期してまいります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。先ほどの御答弁で、しっかりと今は警察も含めて守っていただいているという認識でいいというわけで、そこから段階的に応じて自衛隊の協力もあるということで、今はしっかりされているという認識です。

 ウクライナの原発の話なんですけれども、ロシアの攻撃でチェルノブイリとかの不安とかも国民の皆さんにもあったと思うんですけれども、例えばウクライナの原発が、まあ、仮の話というのはお答えしにくいと思うんですけれども、そういったところで、ウクライナの原発が爆発を起こして放射性物質が拡散するような非常事態が起きたとき、ウクライナ若しくは国際機関から要請があったときに、日本政府はその要請に応じる可能性というのはあるのでしょうか。

更田政府特別補佐人 一般論ですけれども、ウクライナやIAEAからの具体的な要請があった場合には、これに基づいて協力に応じるという考えでおります。

 規制当局としましては、国際的な原子力の規制者の代表が集まった会議体がありまして、この会議体からウクライナの規制当局にレターを発出して、技術的な支援の用意があることを表明しているところであります。

 ただ、緊急事態に、頼んでもいない支援の申出を受けるというのは、ウクライナ当局にとってもかえって迷惑をかけることになりますので、やはりこれは緊密な連絡を取って、そしてウクライナ当局の望むような協力があれば、これを支援してまいりたいというふうに考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 そういったところから、日本における三・一一の教訓というのは、これで十分というわけではないんですけれども、しっかりとステップを置いてやられているというのは今日の質問の中で分かってきたとは思うんですけれども、過去の答弁にも既に記載されているんですけれども、二〇三〇年度の四六%削減を達成するためには、現実に今は十基というところなんですけれども、大体、何基ぐらいの原発がこれからの目標としては必要か。理論上の数字で構いませんので、お答えください。

岩田大臣政務官 お答えいたします。

 二〇三〇年度のエネルギーミックスにおける原子力比率につきましては、実際の設備利用率等は発電所ごとに異なりますため、確定的にお示しすることはできませんけれども、運転年数に応じた出力規模の平均値等を用いて機械的に計算した場合でありますが、二十五から二十八基程度で達成できる計算となります。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 質問時間が来てしまいましたので、これで終わりますけれども、本当は、京都大学複合原子力科学研究所の、廃炉になった後のBNCT、がんの医療技術の質問をしたかったんですけれども、いろいろ不測の事態がありまして、質問できなかったことを申し訳ございませんと謝って、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 二〇一三年一月の第百八十三通常国会冒頭に本委員会が設置された当初も私は委員でしたが、東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえた、国会事故調の提言に基づくこの委員会の役割というのはますます大きいと痛感いたしております。

 今日は、原発の運転期間ルールと、原子力規制委員会の独立性について質問いたします。

 まず、更田委員長、原子力規制委員会設置法案を可決した二〇一二年六月十五日の衆議院環境委員会が上げた決議にはこうあります。原子力規制行政に当たっては、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一として行うこと。まさにこれが原子力規制委員会の根本的立場で、決して規制のとりこになってはならないということだと思うんですが、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 御指摘のとおり、規制を推進から独立させるということは、国会での御議論の中でも最も重要な点であったというふうに承知をしております。

 原子力規制委員会としましては、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一として、科学的、技術的な見地から、独立して意思決定を行うということとしております。

笠井委員 そこで、原発の運転期間について、萩生田経産大臣は三月九日の衆議院経済産業委員会でこう答弁されています。原子炉等規制法は、原子力発電所を運転することができる期間を四十年とし、一回に限り最大二十年の運転延長を可能としております、この法律において、運転期間に関して、原則ですとか例外といった規定はないものと認識しておりますと。

 そこで、更田委員長に伺いますが、原子力規制委員会は、二〇二〇年七月二十九日、運転期間延長認可の審査と長期停止期間中の発電用原子炉施設の経年劣化との関係に関する見解というのを出されていますけれども、その第二項にはどのように書かれているでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 「原子炉等規制法第四十三条の三の三十二は、発電用原子炉を運転することができる期間を運転開始(最初の使用前検査に合格した日)から四十年とし、その期間の満了に際し原子力規制委員会の認可を受ければ一回に限りその期間を延長することができる旨定めている。」と書かれております。

笠井委員 原子炉等規制法ということでありますが、この規制法は、第四十三条の三の三十二第一項で、運転することができる期間は四十年とすると。そこでピリオドが打たれている。項を変えて第二項で、一回に限り延長することができると。さらに第三項で、延長する期間は二十年を超えない期間というふうになっております。ですから、原発の運転期間はあくまで四十年が本則ではないか。

 規制委員会の見解というのは、その原則をある意味曖昧にして、あたかも原発は六十年運転が可能であるかのような要約になっているんじゃないかと思うんですが、委員長、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 あくまで、これまでの認可も含めてですけれども、法律にのっとって、四十年を期限として、さらに一回に限り二十年を限界としての認可を認めるという、法の定めにのっとった運用をしております。

笠井委員 私は見解のことを伺っているので、見解が、非常にその辺が曖昧になっているんじゃないかと。運用の問題ということではなくて、この見解自身がどうなのかということなんです。

 炉規法に原発の運転期間が定められたのは二〇一二年の法改正でありますが、当時の国会の議論はどうだったかと振り返ってみました。炉規法の改正と原子力規制委員会設置法案をめぐって、政府案と、それから自民、公明提出法案の二案があって、修正協議で一本化された経緯があります。

 政府案を審議した六月五日の衆議院環境委員会で、細野豪志原発担当相当時はこう言っています。運転制限の期間につきましては、原則として四十年以上の原子炉の運転はしない、延長する期間において安全性が確保されれば例外的に運転を継続するという形にしておりますが、極めて限定的なケースになるというふうに考えております、安全上のリスクを低減するというのが、この運転制限制度の目的、四十年以上というのは極めて例外的だという、そういう制度になっておる、こう明確に答弁しているわけです。

 では、衆議院法制局に伺いますが、この炉規法第四十三条の三の三十二第一項から第三項までの内容と、それが審議された当時の立法者の考えはどうだったのか、お答えください。

望月法制局参事 議員立法の立案、審議の際にお手伝いさせていただく事務方の立場から御答弁させていただきます。

 お尋ねの核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第四十三条の三の三十二は、第一項で、発電用原子炉を運転することができる期間は四十年と規定し、第二項で、この期間は一回に限り延長することができるとし、第三項で、延長する期間は二十年を超えない期間であって政令で定める期間を超えることができないと規定しております。

 二〇一二年六月十五日の衆議院環境委員会におきまして、原子力規制委員会設置法案の動議提出者のお一人である江田康幸先生から、提出当時のこの条項について、四十年運転制限規制の趣旨は原則として四十年以上の原子炉の運転はしないこととするものでありまして、運転延長が認められるのは例外的なケースであると考えますとの答弁がなされております。

笠井委員 二案あって、政府の答弁も、それから立法者の方の答弁も、原則と例外というのは非常に明確に言っているわけです。四十年の運転期間は原則であり、二十年の延長は例外というのが立法時の解釈ということであります。

 規制委員会に国会答弁の変更はできないということになると思うので、更田委員長は、当然、これらの国会答弁を御存じの上で見解をお書きになったはずなんですけれども、そこには原則と例外の区別というのが、明確にそれが必要なのに、すっぽり抜け落ちている。

 運転することができる期間を運転開始から四十年とし、その期間の満了に際し原子力規制委員会の認可を受ければ一回に限りその期間を延長することができるというふうに書かれた見解というのは、立法時の解釈を踏まえれば、本当にそれを正確に見解として出すのであれば、明らかに曲解ではないか。いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 この見解、第三項の認識についてのお尋ねだと……(笠井委員「二項です」と呼ぶ)二項ですか。(笠井委員「二項の話です。原則と例外ということが明確になっているというのが立法時なのに、見解ではそこのところが明確になっていないではないか、曲解しているのじゃないかと」と呼ぶ)原則、例外という言葉は用いておりませんけれども、運転開始から四十年とし、そして一回に限り二十年を限界として延長することができるという趣旨を記したものというふうに理解しております。

笠井委員 規制委員会が見解をしっかり出すということであれば、その辺のところをきちっとやるということが立法の本来の趣旨等に照らして大事だと思うんですよ。規制委員会がこういう見解を出すと、萩生田経産大臣が、先ほど冒頭紹介したように、運転期間に関して原則とか例外とかいった規定はないというふうに認識していると平然と答弁することになる。私は、そういう意味では、この見解を出した規制委員会の責任は重大だと思います。

 更に重大なのは、規制委員会の見解の今言われた三項でありますが、運転期間を四十年とする定めは、このような原子力規制委員会の立場から見ると、かかる評価、劣化の評価ということだと思うんですが、これを行うタイミング、つまり運転開始から一定期間経過した時点を特定するという意味を持つものであるという趣旨が書かれておりますけれども、そういう認識だと。

 国会の議論で明らかなとおり、四十年とは原発の運転期間の原則であります。二十年の運転期間延長の評価を行うタイミングなどでは絶対にない。タイミングということになるわけですね、そこで出てくるこの三項は。四十年は原則で、最大でも延長二十年は例外が立法府の意思ですから、規制委員会の見解は、この点でも法解釈の曲解になっているんじゃないかと。四十年をタイミングというふうにすると。いかがですか。

更田政府特別補佐人 第三項に係るものでありますけれども、運用上、実態上、運転開始から四十年を経過した炉について延長ができるかできないかを審査する、まさに私たちにとってはタイミングでありまして、これは、そのタイミングの定めであるというものを語義どおり記したものであります。

笠井委員 原則と例外との関係が問題になるわけです。そこのところが、我々が審査をするタイミングという問題ではないということだと思うんです。

 伺いますが、規制委員会の見解が出された経緯について、この見解の前文では何というふうに述べているでしょうか。前文を紹介してください。

更田政府特別補佐人 前文には、見解を決定した経緯を書いております。

 簡潔に申し上げると、原子力規制委員会としては、かねてから運転期間の在り方について意見を述べる立場にない旨を表明してきたところでありますが、ATENAとの技術的意見交換会において報告を受けたことを機会として、改めてその考え方を説明しておくこととしたものであります。

 この当時、運転期間の考え方について、停止期間を除くべきではないかというような議論をされていたのに対して明確に答えるということを意図したものであります。

笠井委員 今、ちょっとつづめて言われたんですが、前文のところで、原子力規制庁から、経年劣化に係るATENAとの実務レベルの技術的意見交換会の結果についての報告を規制委員会が受けた、その意見交換は、事業者側から、運転期間延長認可の審査に関して、運転停止期間における安全上重要な設備の劣化については技術的に問題ないと考えられることから、一定の期間を運転期間から除外してはどうかという提案がなされたことに端を発するものである、原子力規制委員会としては、かねてから、運転期間の在り方について意見を述べる立場にない旨を表明してきたところであるが、上記の技術的意見交換会について報告を受けたことを機に、改めてその考え方を説明しておくこととするということで、この見解を出された。

 要するに、この見解というのは、電事連を超えた規模の、ATENAというのは電力会社と原発産業の集まりである原子力エネルギー協議会であって、それと規制委員会の意見交換会の場での事業者側の要求に端を発して、それへの対応としてつくられたということが書いてあるわけですね。つまり、規制する側が規制される側に支配されるという、規制のとりこということについて言うと、その再現になるんじゃないかと。いかがですか。

更田政府特別補佐人 見解の内容を見ていただければお分かりいただけると思いますけれども、ATENAの要望をはねつける見解となっております。停止期間を四十年から除くべきではないかという主張を再三ATENAから求められたのに対して、私たちは、運転開始から四十年、時計の針は止めないという旨の見解を述べたものでありますので、規制のとりこという御批判は当たらないというふうに考えております。

笠井委員 そういうふうに否定されますが、その後、電事連は、政府の第六次エネルギー基本計画策定に向けて、規制委員会見解の三、今の三項ですけれども、この三項を錦の御旗のごとく丸ごと引用した上で、原子力の利用の在り方に関して、現行の運転期間制度を規制当局の見解を踏まえて見直すことは政策的な課題と認識しており、検討いただきたい、このように求めてきているわけでありまして、四十年運転期間ルールを見直すように求めているというのが、そういう、この見解を錦の御旗にしてやっているわけですよ。

 つまり、規制の側の見解が見事に推進の側に利用されている。法解釈を曲解した見解そのものの撤回を、私は強く求めたいと思います。

 もう一つ、厳しく問われるのが政治との距離感です。

 今朝から議論がありましたけれども、自民党の電力安定供給推進議員連盟は、三月十日、原子力発電所の緊急的稼働について緊急決議を採択しております。この中で、原子力規制委員会に対してはこういうふうに求めています。

 これまで以上に効率的な審査、検査に努めることに加え、停止中の原発を速やかに稼働させるため、安全の確保を優先しつつ、稼働に係る規制上の制約を一時的に除外する等の措置を講ずること、例えば、再稼働後の発電プラントが特定重大事故等対処施設の設置期限を超えることで設置完了まで停止を余儀なくされている現状に鑑み、設置期限の見直しを図るなど、稼働継続を可能とする措置を講ずること。このように、この緊急決議では政党として規制委員会に求めている。

 更田委員長に伺いますが、特重施設でありますけれども、これは、ある方が望ましいというものではなくて、いわゆる新規制基準のうちで、実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造、設備の基準の第四十二条において、設けなければならないと。設置することが義務づけられております。つまり、規制基準を満たさなくても稼働継続を可能とする措置を講ずることというような要請に、そういう意味では規制委員会としては応えることはあり得ないと思うんですが、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 まず、新規制基準に適合している原子力発電所については、特定重大事故等対処施設がないことが直ちに危険に結びつくとは考えておりません。

 一方で、東京電力福島第一原子力発電所事故の最も重要な反省の一つは、継続的な改善が欠けていたということであります。

 特定重大事故等対処施設は、故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムへの対処の信頼性を向上させるための重要な改善であることから、経過措置期間を設けた上で整備することを要求しているものであります。

 約束した改善が果たせないような事態は避けるべきであるというふうに考えております。

笠井委員 先日の本会議でもその旨の答弁を委員長はされましたが、私は、なくても直ちに危険に結びつかないんだったら、なぜ特重施設をちゃんと、そういう意味では規制基準の中に位置づけて、そして稼働の条件になっているのかという問題になってくると思うんですよ。それは五年間の猶予とかということを含めてですけれども、いずれにしても、そうしたことについてとにかく規定されているわけですから。

 更田委員長は、三月十六日の定例会見で、この自民党の緊急決議への対応を問われて、原子力規制委員会が直ちに何かをということは考えていません、まずこれは、推進、政党が行っている推進の当局であるとか、それから経済産業省であるとか、あるいは事業者が何らかのこれを受けてアクションというのがあれば、そのアクションが規制に関わるものであれば検討に入っていくということになるだろうと思いますというふうにお答えになって、先ほども、議論に応じる用意があるということで、明確にそれに対して言われました。

 原発推進の政党や経済産業省、原発事業者からアクションがあればというふうにおっしゃるんですけれども、稼働に係る規制上の制約を除外せよというようなことを求める議論に規制委員会が応じるというのは、私はあり得ないと思うんです。規制委員会の独立性が根本から問われると思うんですが、どのように委員長はお考えでしょうか。

更田政府特別補佐人 あくまで公開の原則を守った上でありますけれども、私たちとしては議論そのものをはねつける立場にはございません、それが規制に関わるものである限りにおきまして。

 具体的には、経済産業省であるとかATENAとかと公開で議論をという申出があった場合には、これは受けることになるだろうという旨を申し上げたまででございます。

笠井委員 公開で議論したとしても、要するに、これは、規制委員会としては、根本に係る、稼働に係る規制上の制約除外というような要請をして、それの議論をしようというふうに、除外せよということを求めるということで、議論するということになりますと、それ自体がどういう意味を持つかということになると思うんですよ。

 つまり、そういうことであれば、規制委員会としては、除外するというようなことの要請については、私たちは議論できません、私たちは規制は大事ですということで、それをはっきり言わなきゃいけないということになるんだろうと思うんです。

 今政府が、第六次エネルギー基本計画で、二〇三〇年度に原発の電源構成比を、二〇から二二%の達成を掲げて、電力大手、それから原子力産業界と一体で再稼働に突き進んでいるということで、運転期間を延長させようとしているときだけに、私は、原子力規制委員会の役割というのは本当に重いと思うんですよ。その役割を本当に発揮しなきゃいけない。今、改めて十一年、東京電力福島第一原発事故から十一年たちますけれども、福島原発のような過酷事故を絶対に起こしてはならない、繰り返してはならない。これは共通の決意だし、規制委員会もそのことを思っていらっしゃると思うので。

 時間が来たから終わりますけれども、文字どおり、設置法第一条の中立公正な立場で独立して職権を行使するという目的規定に沿って、原子力規制行政に当たっては推進側の論理に影響されることなく国民の安全の確保を第一として行うこと、こういう委員会決議に即した運営を貫いて、本来の役割を規制委員会として取り戻すべきだということを強く求めて、時間が来たので、終わります。

赤澤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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