衆議院

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第3号 令和4年4月28日(木曜日)

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令和四年四月二十八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤澤 亮正君

   理事 大西 英男君 理事 神田 憲次君

   理事 鈴木 淳司君 理事 古川  康君

   理事 野間  健君 理事 伴野  豊君

   理事 伊東 信久君 理事 中野 洋昌君

      東  国幹君    畦元 将吾君

      井林 辰憲君    石川 昭政君

      今村 雅弘君    江渡 聡徳君

      勝俣 孝明君    門山 宏哲君

      神田 潤一君    国定 勇人君

      熊田 裕通君    新谷 正義君

      高木 宏壽君    土田  慎君

      長坂 康正君    西田 昭二君

      堀井  学君    堀内 詔子君

      三ッ林裕巳君    宮澤 博行君

      江田 憲司君    逢坂 誠二君

      菅  直人君    篠原  孝君

      米山 隆一君    渡辺  創君

      藤巻 健太君    堀場 幸子君

      吉田とも代君    河西 宏一君

      平林  晃君    浅野  哲君

      笠井  亮君

    …………………………………

   経済産業副大臣      細田 健一君

   経済産業大臣政務官    岩田 和親君

   防衛大臣政務官      中曽根康隆君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            更田 豊志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澤田 史朗君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松下  整君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        平岡 成哲君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 藤野  克君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           林  孝浩君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮崎 敦文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  湯本 啓市君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   政府参考人

   (環境省大臣官房環境保健部長)          神ノ田昌博君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 大和 太郎君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  北村 誠吾君     堀内 詔子君

同月二十八日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     土田  慎君

  宮内 秀樹君     国定 勇人君

  簗  和生君     東  国幹君

  阿部 知子君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     簗  和生君

  国定 勇人君     熊田 裕通君

  土田  慎君     畦元 将吾君

  篠原  孝君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  熊田 裕通君     宮内 秀樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

赤澤委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澤田史朗君、内閣府大臣官房審議官松下整君、内閣府総合海洋政策推進事務局長平岡成哲君、総務省大臣官房審議官藤野克君、文部科学省大臣官房審議官林孝浩君、厚生労働省大臣官房審議官宮崎敦文君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官湯本啓市君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君、環境省大臣官房環境保健部長神ノ田昌博君及び防衛省防衛政策局次長大和太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤澤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井林辰憲君。

井林委員 おはようございます。自由民主党の井林辰憲でございます。

 今日は、原子力問題調査特別委員会で質問の機会をいただきまして、委員長、理事始め同僚議員に御礼を申し上げます。

 私の地元の選挙区には御前崎市の旧御前崎町部分が含まれている関係で、御前崎市には浜岡原発が立地しております、私の選挙区自身には立地をしておりませんが、立地自治体が私の選挙区であるという関係で、原子力発電所そのものについて、私の地元では非常に身近な問題でございます。

 ですので、浜岡原発と申し上げますと、平成二十三年、二〇一一年三月十一日の東日本大震災と、その後、五月六日、浜岡原子力発電所の全原子炉の運転停止を当時の海江田経済産業大臣を通じて中部電力に要請され、その九日後には、運転中の浜岡原発の四、五号機の停止と、定期点検中の三号機について当面運転再開を見送るという決定が行われました。

 当時、私は新人候補予定者として地域を回っていましたが、正直言って、私自身も非常に強い違和感があると同時に、この前後に様々、特に与党ですが、当時の、主要な政治家が浜岡原発に視察に来て、様々な発言もされていました。これが、私の政治家としての、原子力発電所というものについて接する機会、また、大きな政治課題として捉えるきっかけでもありました。

 以来、十年以上進んでいるわけでございますが、その間、私も、環境省の政務官を拝命しまして、原子力規制や原子力防災も担当させていただきましたし、その後は、党で、今、筆頭理事であります鈴木委員長が務めていらっしゃいますが、党の特別委員会でも事務局や委員長代理を拝命して、関与させていただきました。原子力の安全性を追い求める原子力規制委員会と規制庁の皆様方の奮闘に敬意を表しながら、議論をしてまいりたいというふうに思っております。

 まず初めに、原子炉等規制法が二〇一七年に改正をされ、当時、私は環境省で政務官をしておりまして、国会や党内で様々な議論があったことを今でも覚えております。この炉規法改正は、この前年の二〇一六年のIAEAによるIRRSのレビューを受けての改正でありますが、法の附則十八条において、施行後五年以内の、施行状況に検討を加え、必要な措置を講ずるということが求められております。

 二〇二〇年、二年前ですが、四月に、新検査制度の施行でこの炉規法改正は完全施行となりました。この五年後見直しというのはいつからを出発点にするのか。一部施行が二〇一七年、法成立後すぐしていますので、もう五年たっているなんというやぼなことは申しませんが、それでも、五年後見直しについてそろそろ視野に入ってきていると思っております。

 そして、完全施行でもう二年回していますので、この間の委員長の所感と、そして、五年後見直し、やはりIRRSのレビューが一つの大きな契機になっていますが、これはやはり、一度受ければいいというものではなくて、ルーチンで受けていくことが必要だと思いますが、それについての委員長の考えをお聞かせください。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 原子炉等規制法の改正をしていただいて、二年間、特に、新しい制度の下での原子力規制検査、この二年間はおおむね順調に運用できているというふうに考えております。

 この制度の最も大きなポイントというのは、検査における事業者責任の明確化であるとか、あるいは検査官のフリーアクセス、それからリスク情報の活用などがありますが、検査する方、される方、双方に新しい知識であるとか新しい理解を求めるものでありますので、正直言って、検査官や検査をされる方々の負荷というのは相当なものになるのではないかというふうに危惧をしておりましたが、双方、実によく勉強をしていただいて、また士気も高いですので、事業者との間のやり取りでも、これは、検査をする側、される側、双方にとって有益な改善であったというふうに認識をしております。

 それから、附則で定められております施行五年後の見直しですが、御質問にもありましたように、四月で五年を一部は迎えております。そういった意味で、間もなくその作業に着手しようと考えているところであります。

 それから、IAEAによるIRRSというレビューですが、これはまさに、御指摘のとおり、定期的に受けることに意味があると思っております。また、前回のレビューでいただいたことが今申し上げたメリットの大きな改正につながったわけですので、こういった客観的な評価を受けるというのは貴重な機会だと考えておりますので、今後とも継続して、また、余り間隔が広がらないようにレビューを受けてまいりたいというふうに考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 特に、IRRSのレビューの受検をルーチンでということで、これを、私もやはり第三者で常にチェックを受けていくのが大事だと思いますので、是非お受けをいただきたいと思います。

 もう一つが、ATENAについてお伺いをしたいと思います。

 原子力規制委員会発足直後、私が政務官を務めたときもそうなんですが、福島第一原発の事故の反省として、原子力業界との一種のなれ合いが安全神話を生んだとしまして、事故の遠因になったという指摘も多くございました。今でも規制委員会、規制庁と原子力事業者とのやり取りは原則公開となっていまして、私個人的には、もう少しざっくばらんなというか、意見交換の重要性もあるんじゃないかというふうに思って、これは、なれ合えということではないんですが。

 そうした中で、原子力産業全体の知見とリソースを効果的に活用して、規制当局とも対話を行う組織として、原子力エネルギー協議会、ATENAが二〇一八年七月に設立をされました。これまでも、長期停止期間中の発電用原子炉の経年劣化に関する議論ですとか、デジタル安全保護系の議論など、様々成果もあったと思いますが、他方、私から見ても、新設の組織であるということと、原子力全体の方向性が業界として見えにくいということもあって、組織の厚みという問題もあると思うんですが、電事連との関係も含めてですが、様々課題もあると思いますが、規制当局として、こうした電力業界、産業全体と接していて、ATENAに対する課題そして期待について、委員長から所見を伺えればと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 ATENAにつきましては、もう一つの事業者組織であるJANSIと並んで、これは東京電力福島第一原子力発電所事故に対する産業界としての反省を踏まえたアクションであるというふうに考えております。

 ATENAは、ATENA自身が表明をしておりますけれども、米国のNEIという組織をモデルとしておりますけれども、規制当局から見た場合に、産業界の技術的意見が一つの組織で代表されて、しっかりとそことコミュニケーションが取れるということは、規制当局にとっても大変大きなメリットがあると考えております。

 また、米国のNEIとUSNRCとの関係を見ていますと、いい意味での対立関係が生まれています。これは決して上下関係ではなくて、同じ土俵の上に立って、技術的な意見を交わす相手として強いNEIがあることが強いUSNRCを支える上でも重要であると思っておりますので、原子力規制委員会にとっても、ATENAが強い組織になってもらいたいと思っています。

 また、ざっくばらんな議論についても、公開でもできると私は思っています。実際に、米国NEI等は、極めて厳しい批判的意見を公開のレターというような形でNRC宛てに発信するなど、はっきりした明確な意思表明をすることによって、先ほど申し上げた、よい意味での対立関係、緊張関係を持つことができているというふうに考えております。

 今後とも、ATENAが、これから、高経年化技術評価であるとか、あるいはデジタル系のもの、デジタル系は一つの成功例でありまして、先んじて産業界が改善の姿勢を示すこと、それを私たちが確認するということで、継続的な改善の一つの大きなステップを進めることができましたので、そういった意味で、今後とも、ATENAについてはしっかりした厚みを持った活動をしていただきたいと思いますし、私たちとしても、円滑なコミュニケーションに努めてまいりたいというふうに考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 やはり最後は組織の厚みというのが重要になるのかなというふうに思いますが、ここは二律背反なんですが、組織の厚みというのはその産業界の厚みにつながりますので、そうすると、これは推進と規制の議論からするとまた難しい問題を抱えているのかなというふうに思っております。今日は、この場ではこれ以上は踏み込むのはやめておきたいと思います。

 あと、この場で個別の原子力サイトについてやり取りをするのは不適切だと思うんですが、私の選挙区外ということと、このサイトということではないんですが、審査の方向性としてあるべき方向に向かっているし、これは一度、委員長にちゃんと確認をさせていただきたいと思うので、取り上げさせていただきたいと思います。

 泊原発の三号機でございます。私が内閣府の原子力防災担当の政務官を務めさせていただいた二〇一六年に総合防災訓練も行われました。ですので、折につけ、審査会合など、毎回見ているわけではないですが、ウォッチをしてまいりました。

 正直言って、規制委員会と事業者とのやり取りがうまくできていないなというのが、もう少しかみ合った議論をすれば安全性も高まるし、これは私の地元でもそうなんですが、やはりそういう議論が地元の皆様の安心というものにつながっていくんじゃないかなというふうに思って見ておりました。

 その中で、先月の、三月三十一日の審査会合で、審査における残された論点の確認というのが行われました。これは、規制当局側から、気になる点というか考えをしっかりと示したということ。そして、その後の四月十二日の原子力規制委員会と泊原発の事業者である北海道電力の経営層、これは議事録が手元にありますが、社長も出席をされております。

 この場で意見交換が行われまして、ちょっとこの議事録をそのまま読み上げさせていただきますと、更田委員長の発言ですが、スペシフィックな評価や解析に関する担当者同士の審査会合というようなもの、我々の方としては応じることができると思っている。この前段では、もちろん、原則公開とか、ユーチューブでちゃんと上げるということです。

 これは、翻訳をすると、私は、審査会合というのは今まで、規制委員会の委員の方々が出てきて行うというのが審査会合だということですが、ただ、規制委員会の委員が判断すべきことと、それを支える事務組織である規制庁の職員が判断すべきことというのは、それぞれいろいろあるんじゃないかなということを思っておりました。

 そういうことも踏まえると、私、これはちょっと前向きなというか、私のそういう思いも込めて判断をすると、審査会合は審査会合でやるんだけれども、事務的なヒアリングとは別に、公開を原則としながら、事務的な審査会合というんですかね、そういうものも考えられるんだというような発言だというふうに思っておりますし、これは私は、今回のことをロールモデルとして、イメージが勝手に一緒だと解釈するのも危険なので、ここをちゃんと確認をさせていただきたいと思いますが、今回の泊の三号機における一連の審査及び発言について、今後の方向性と、他のサイトの審査への展開について、委員長の所見をというか考えをお伺いをしたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 北海道電力泊三号機の審査の中で学んだこと、双方で学んだことで、大きな特徴が二点あると考えております。

 一つは、他のサイトの審査にちょっとなかなか応用が利かないといいますか、独特のところがあって、これは先生御承知いただいていると思いますけれども、双方共にあると思っていた火山灰が見に行ったらなかったという大きな行き違い、これが泊三号機の審査を最大の特徴づけている点であります。

 もう一点は、これは他の審査にも共通して問題としてあり得るのではないかと考えているのは、当方が投げたつもりのボールがきっちりキャッチされていない。それから、北海道電力はこれでいいんだと思ってどんどん解析なり作業を進めていって、持ってきてみると、規制当局からそれじゃないと言われてしまう。これは、やはりコミュニケーションの問題といいますか、お互いの理解がきっちりかみ合っていないということの問題で、これは改善ができますし、また、ほかの審査にも共通しているものだろうと思っています。

 そこで、北海道電力の経営層の方々と、もう少し、これはお互いの不利益になりますので、私たちもリソースを投入し続ける形になりますし、北海道電力にとっても長期化はもとより望むところではないでしょうから、このコミュニケーションを改善しようということと、それから、北海道電力に、地震関係や地質関係の専門家を北海道電力は十分に備えてくれていなかったところ、電中研等々から人を借りてきている状況が続いていたので、やはり人の厚みを増してくださいということをお願いしたのとともに、コミュニケーションに関しては、もとより、審査会合は委員の出席を必須としているものではありません。これは例えば、川内、玄海、高浜等々のたくさんの審査が続いているときに、私、当時、委員で審査会合に出ていましたけれども、全ての審査会合に常時いたわけではありません。

 そういった意味で、少し、委員の出席を必須と見ていたかのような、ちょっとこれも行き違いがあったのではないかと思っていまして、事業者に求められれば私たちは幾らでも審査会合を開く用意がありますし、また、その中で、特定のメンバー、委員の出席等々を必須とするような考えを持っているわけでは決してございませんので、委員抜きでの審査会合というのは進めていけるというふうに考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 これは四月の十二日の発言の後、まだですので、なかなか、内部での検討もこれからだなというふうに思いますが、委員抜きでの審査が進められるんじゃないかという委員長の発言は大変重いものでありますし、私も、先ほど申し上げましたけれども、やはり、委員の方が出てきてきちっと審査を受けるものと、事務的にきちっと見ていくものというのは、リスク、重要性、また様々な事案によって分けていくべきじゃないかな、それが安全性を高めることに逆につながるんじゃないかなというふうに思っております。

 まだなかなか全部固まり切っていないですし、いきなり、では、かちっとしたマニュアルなんかにしちゃうとまたマニュアル化してしまう審査になってしまいますので、是非規制委員会の中で御検討いただいて、よりスムーズな審査、そして、先ほど委員長がおっしゃられましたように、ちゃんとコミュニケーションが取れるような審査になることをお願いをしたいと思います。

 最後に、委員長に、これはちょっと時間の関係で、するかどうか分かりませんよということでございますが、今年の九月に更田委員長の退任が決まってございます。九月の退任が今決まるのはどうかという問題もありますが、これは国会の関係もあって、そうせざるを得ないということでございます。大変寂しい気持ちもありますが、しかし、委員の交代というのは組織の新陳代謝という意味でも極めて重要でございますし、原子力事業者に対する規制委員会の影響力は絶大と言っていいほどありますので、こうしたことも必要だと思います。

 恐らく、委員長の性格ですと、今までの何か振り返って感想をみたいなことを言うと、いや、まだ残りの任期があるから全力でやるんだとおっしゃりそうな性格かなというふうに思うので、そういう質問は避けますが、更田委員長の退任をもって、原子力規制委員会の発足から在籍している最後の委員ということになります。これまでの発足からの経緯、そして今の現状、そして、やはり組織に新陳代謝は必要ですけれども、全部入れ替えればいいというものでもありません。将来に向けた思いというか抱負というか、こういう規制であるべきだということがあれば最後にお伺いをしたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 四年半前、委員長に着任をしたときに、二つ目の五年間には一つ目の五年間にはない難しさがあるという旨を申し上げました。というのは、発足時の思いですが、発足時は、大変な緊張感と使命感の下で、委員五名に加えて規制庁職員も一丸となって、また、炉規法の改正によって新しい基準の策定に向けた時期も明記をされていましたので、極めて濃密な時間を過ごしました。その経験によって立てるからこそ前へ進める部分が最初の五年間にあって、二つ目の五年間は、やはりどうしてもそれが薄れていく部分を何で補うかということが大変難しく思えました。

 これから先の、さらに山中委員長の下での五年間というのは、初心をどのように維持するかということに、恐らくは委員長として大変苦労される部分がどうしてもあるだろうというふうに思っております。

 私たちは、発足するとき、今もそうですが、事故は起きるものとして考えるという組織です。ですので、常に緊急時、今夜緊急時かもしれない、あしたの朝緊急時かもしれないという思いで設計をされた組織でありますが、最初の初心というのは、決して喉元過ぎれば熱さを忘れるということのないようにという意識ですが、時間がたつと、あつものに懲りてなますを吹いているというような批判を受けるようになります。

 初心を忘れないということの難しさというのが時間の経過とともにますます大きくなっていくのではないかというふうに考えております。

井林委員 ありがとうございました。

 初心忘れるべからずということで、二度とあのような事故が起きないために何をすべきかということだというふうに思っておりまして、それは、ここにいる一同、皆同じ思いだというふうに思っております。

 これまでの委員長の御奮闘と、残りの任期、全力を尽くされることを心から祈念申し上げまして、私からの質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、神田潤一君。

神田(潤)委員 おはようございます。自由民主党、青森二区選出の神田潤一です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。今回、原子力問題調査特別委員会では初めての質問となります。よろしくお願いいたします。

 まず、ロシアによるウクライナ侵略は、武力による一方的な現状変更の試みであり、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明白な国際法違反です。それだけでなく、現在では、民間人の殺害や原子力発電所に対する攻撃など、重大な国際人道法違反を繰り返しており、断じて許されない戦争犯罪となっています。

 一方で、今回のロシアによるウクライナ侵略は、我が国の防衛のみならず、経済安全保障やエネルギー安全保障の観点についても様々な見直しを迫るものと考えております。本日は、そうした観点を含めて、幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず、電力需給への影響についてです。

 この三月には、福島県沖地震の影響で火力発電所が停止したことなどを受けて、電力需給の逼迫警報が出ました。

 また、お手元の資料一にあるとおり、この夏の電力需給予測を見ると、十年に一度の厳しい気象を想定した場合には、安定供給に最低限必要な予備率の三%は辛うじて確保できるものの、非常に厳しい需給見通しとなっております。

 さらに、二枚目の資料二の方を御覧いただくと、同じく今年の冬の厳しめの電力需給の予備率を見ると、東京から九州にかけての七エリアで安定供給に必要な予備率三%を確保できない見通しとなっており、特に、東京では一月、二月がマイナス予測となるなど、一段と厳しい電力需給の見通しが示されております。

 これは十年に一度という予測ということですが、ただ、近年では、こうした厳しめの猛暑あるいは厳しい冬の寒さというのが十年に一度以上の発生確率で出ているようにもうかがえます。

 こうした状況に加えまして、この度のロシアによるウクライナ侵略によって、原油や液化天然ガス、石炭など、エネルギーの燃料調達に係るリスクが高まっております。

 こうした状況を踏まえて、資源エネルギー庁に伺います。

 ロシアによるウクライナ侵略を踏まえた先行きの電力需給対策について、どのようにお考えでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 先月の福島県沖地震における火力発電所の停止、さらには、そのベースとしまして、近年の火力発電所は休廃止が非常に相次いできてございます。そういう中で、委員御指摘いただきましたとおり、今年の夏というのは、安定供給については、安定供給に必要な供給力が辛うじて確保できる状況でございますが、発電所トラブル停止若しくは御指摘いただきましたウクライナ情勢による燃料供給のリスク等を考えますと、予断を許さない状況になると考えてございます。

 さらに、この冬、より一層厳しい状況かと認識してございまして、東京エリアでは安定供給に必要な予備率三%を大幅に下回りマイナスの水準となってございますし、全国的にも必要な三%を確保できないという状況になるというふうに、非常に危機感を持っているところでございます。

 そういう中で、対策といたしまして、追加供給力の確保として公募を行い、休止している火力に対する再稼働を促すほか、燃料の追加調達を募集いたしまして、支援措置とともにこれを実施していくというようなことを講じたいと考えてございます。

 また、一昨日、衆議院の方では今回の電気事業法の改正を含みました法案を議了いただいたところでございますけれども、事前の届出制を通じて、供給力の管理というのをしっかり徹底してやっていきたいと考えているところでございます。

 これは、供給力の問題もそうでございますし、先日、需給逼迫警報を出させていただきましたけれども、需要側の節電のような要請、これもこれから考えていかなきゃいけない。需要面、供給面併せて、この夏そして冬に向けての需給対策はしっかりと万全を期して取り組んでいきたいと考えてございます。

神田(潤)委員 ありがとうございます。

 最近では、毎年のように千人を超える方が熱中症で亡くなっており、今年の夏は更に厳しい電力需給の逼迫が予想されるというお話もありました。エアコンが作動できないなどによって、高齢者や乳幼児などにとっては生命の危機が拡大することになります。そうしたことがないように、エネルギーの確保と早め早めの国民への呼びかけなど、最大限の対応を図っていただくようにお願いします。

 今お話しいただきましたように、エネルギーの安定供給が大きな課題となっている一方で、原子力発電については、資源エネルギー庁に確認したところ、当面の燃料の確保や発電コストの高騰などの懸念は特に指摘されていないというふうに認識しております。

 一方で、こうした状況下において、特に、相対的に依存度を高めていくべきと考えられる原子力発電所については、東日本大震災後に再稼働申請した二十七基のうち、これまでに再稼働したのは十基のみと認識をしております。もちろん、原子力規制委員会や原子力規制庁の皆さんが、東日本大震災のときに発生した原子力発電所の爆発事故などを受けて、新たな安全基準の下で再稼働に向けた審査を使命感を持って丁寧に進めていただいていることに対しては最大限の敬意を表したいと思います。

 一方で、国民が安心、安全に暮らせるように、電力を安定的に供給するということもエネルギー政策の最も重要な使命だと考えております。それが満たされないような懸念がある状況というのは一刻も早く解消することこそ政府の使命ではないかとも考えているところであります。

 そこで、原子力規制委員長、更田委員長に質問させていただきます。

 長期にわたって原子力発電所の運転を停止することには、例えば、事業者の予見可能性の低下などから人材や投資の減少を招いて、運転再開や廃炉などの作業の際にかえって安全上のリスクを生む懸念もあるのではないでしょうか。原子力発電所の再稼働審査では、こうした長期にわたる運転停止のリスクをどのように評価し、勘案しているのでしょうか。よろしくお願いいたします。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 原子力発電所の安全確保にとって最も大事なことは、発電所の運用に関わる職員の方々や関連会社の方々の人材の厚みとその実力です。長期停止に関しては私たちも懸念を持っておりまして、発電所の運転員の多くが温かい状態のプラントを知らないですとか、動いているときの振動やにおいや雰囲気、とにかく技術者としての感覚を持つ機会を長期間にわたって持てないでいるということに関しては、安全上の観点からも私たちも懸念を持っていて、審査のプロセスで、どのように、その働く方々の訓練であるとか、経験を積んでいただくかということに関して議論をしております。

 ですので、他社のプラントへ行って経験を積んでいただくであるとか、火力発電所での経験を積んでいただくとか、そういう様々なことをしておりますが、一方で、さらに、先生がおっしゃるように、人材の厚みについても、各社にしっかりとした要員を充てること、それから、これは私たち自身にとっても頭の痛い課題でありますが、人材育成にどのように取り組むかということに関しては、これは、事業者との間の、今後とも継続的に議論をしていかなきゃならない、非常に大きな課題であるというふうに認識をしております。

神田(潤)委員 更田委員長、ありがとうございます。まさに、現場の雰囲気を知っている委員長ならではの御回答だと思います。ありがとうございます。

 次に、資料三を御覧いただければと思います。

 こちらは、東日本大震災後の電気料金の推移のグラフになります。電気料金については、震災前に比べまして、このグラフにあるとおり、家庭向けで約二九%、また産業向けでは三一%上昇しております。

 そこで、資源エネルギー庁に伺います。

 この電気料金の上昇は、東日本大震災後に原子力発電所が長期にわたって運転を停止していることも影響していると考えてよいのでしょうか。また、原子力発電所の再稼働が進めば電気料金が低下する可能性もあるのでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からお示しいただきました資料にもございますとおり、東日本大震災後、電気料金は大体約三割上昇しているところでございます。

 私ども、この要因、複数あろうかと思いますけれども、一つには、御指摘いただきましたように、多くの原発が長期停止することになったわけでございますが、その供給力を補うために火力発電所を稼働させなければならない、この燃料費の支払い部分がコストに非常に大きく影響を与えているというのは指摘できるところかと思っております。

 また、あわせて、再生可能エネルギー、これも供給力として導入拡大に取り組んできたわけでございますが、初期コストがどうしても高いということから、フィード・イン・タリフの制度を導入して、利用者の方々に賦課金という形で負担をいただいているところでございます。この負担部分も相当上昇の要因になってきているというふうに考えるところでございます。

 こうした中で、原子力発電所の稼働と電気料金の関係でございますが、過去、二〇一七年、一八年と関西電力、また二〇一九年に九州電力が、再稼働を行って、これを背景としまして電気料金の値下げを行っているという事実はございます。

 料金水準がどうなるかということは、経営、コスト全般にわたるものですので、再稼働自体と直接結びつけて申し上げることはなかなか難しいわけでございますが、原子力の再稼働が進み、火力発電の燃料費が下がりますと、その分電気料金の抑制につながるということが期待できるものと考えてございます。

神田(潤)委員 ありがとうございます。

 これまでのやり取りで分かりますとおり、ロシアによるウクライナ侵略といった内外の情勢、あるいはカーボンニュートラルに向けた国としての取組、また、この夏にも懸念される電力需給の逼迫による国民生活への影響などを勘案しますと、資源を持たない我が国において、原子力発電と核燃料サイクルによって資源を節約したり確保したりしていくことの重要性や必要性はますます高まっていると言えるのではないでしょうか。

 もしそうであるならば、長期にわたって原子力発電所が運転を停止していることのリスクや、ほかの発電手段とのコストの対比、あるいは電力料金の高騰の背景などを国民の皆さんにも分かりやすく共有し、また、原子力発電所の安全確保を大前提としながらも、政治の責任として、再稼働の必要性について、国民の理解を促し、また議論を深めていくべき時期に来ているのではないでしょうか。

 このことにつきまして、細田経済産業副大臣にお考えを伺いたいと思います。

細田副大臣 ありがとうございます。

 神田先生の問題意識、私どもも完全に共有をさせていただいております。

 特に、先生よく御存じのとおり、我が国のエネルギー自給率は一〇%程度でございまして、これはOECD加盟国の中でも最低レベルでございます。この現実を私ども、冷徹に踏まえなければならないというふうに考えております。

 その上で、原子力については、実用段階にある脱炭素のベースロード電源であり、安定的で安価なエネルギー供給を確保する上で大変重要であると認識をしております。

 さきに松山部長から申し上げたとおり、再稼働を背景に電気料金の値下げが行われたという事例もございます。また、高レベル放射性廃棄物の減容化、有害度の低減、資源の有効利用などの観点から、核燃料サイクルを推進していくということも重要であるというふうに認識をしております。

 そのような状況の中で、原子力発電所については、安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくというのが政府の基本的な方針でございます。

 もちろん、私どもも前面に立って、原子力の必要性や、また核燃料サイクルの重要性などについて丁寧な説明を行い、国民の皆様の幅広い御理解が得られるように、情報発信に粘り強く取り組んでまいる所存でございます。

 引き続き、是非御指導よろしくお願いいたします。

神田(潤)委員 細田副大臣、大変力強い、前向きな御答弁をありがとうございます。

 まさに、安全性とそれから規制の効率性のバランスは、内外の諸情勢によって、その時期によって変わり得るものではないかというふうに考えております。私も、やはり国民あるいは地域住民の方への御理解を進めていくように、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 それでは、最後に、別な観点からの質問をさせていただきたいと思います。

 ロシアによるウクライナ侵略では、原子力発電所などの原子力施設が有事の際の武力攻撃の対象になり得るということが示されました。私どもの青森県には、建設中や稼働停止中のものを含めて複数の原子力発電所や核燃料サイクル施設などが立地しており、地元では、東アジアで有事の際にはこれらの施設が真っ先に攻撃の対象になるのではないかという不安が高まっております。

 こうした不安を払拭するために、例えば、今後、避難の際の輸送の確保や、地域の国民保護計画、あるいは住民の避難計画、また自衛隊等による防護計画の見直しなど、有事の際に武力攻撃を想定した準備を各自治体に任せるのではなく、国が主導的な立場で充実あるいは強化していく必要があるのではないかと考えます。これについて政府のお考えを伺いたいです。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 原子力発電所へのミサイルによる武力攻撃に対しましては、イージス艦やPAC3により対応が行われるほか、事態対処法や国民保護法等の枠組みの下で、警報の発令や住民避難等の措置を迅速かつ的確に講じることとなります。

 武力攻撃により原子力災害が発生した場合の住民の避難等につきましては、国民保護基本指針におきまして、防災基本計画における原子力災害対策編の定めと同様の措置を講ずることを原則としつつ、事態の推移に応じ、対処することとしております。

 また、各都道府県、各市町村におきましては、基本指針に基づきまして、状況に応じまして適切な住民避難を実施できるよう、国民保護計画や避難実施要領のパターンが作成されております。

 政府におきましては、都道府県をまたぐ広域的な避難など、難度の高い内容も含めた訓練を国主導の下で実施し、大規模な避難の実施に係る知見を蓄積していくとともに、原子力施設への攻撃に関するものも含め、避難実施要領のパターンの作成の支援を行うなどによりまして、地方自治体としっかり連携をしまして、有事の際の武力攻撃を想定した準備に国としても主導的な立場でしっかりと取り組んでまいります。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、国民の生命財産を守るため、いかなる事態にも対応できるよう、今後とも、関係省庁や地方公共団体との緊密な連携を一層強化しつつ、不断に検討、訓練等を行い、対処に万全を期してまいりたいと存じます。

神田(潤)委員 ありがとうございます。

 原子力発電や核燃料サイクル施設の安定的な整備、運用のためには、地元の住民の皆様の御理解と御協力が不可欠となります。国際情勢の変化などを踏まえて、今御答弁にもありましたとおり、不断の見直しを進めて、地元の方々の不安の払拭に努めていただきたいと思います。

 以上で私からの質問を終わります。本日は、ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党の平林晃と申します。

 本日は、当委員会初めての質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。新人議員として、しっかり勉強させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今後のエネルギー計画における原発の位置づけについてお伺いできればと思います。

 第六次エネルギー基本計画におきましては、二〇三〇年、原子力発電が占める割合は二〇%から二二%ということで示されています。一方で、二二年四月、現時点、再稼働している原発は十基、設置変更許可されたものは七基、審査中は十基ということで、これらがほぼフル稼働して初めてこの目標が達成できると伺っております。

 この目標達成、現時点ではやはりこの目標は大事だというふうに考えておりますので、平均で五年から七年かかると言われている設置変更許可審査をより迅速化する必要もあるのではないかと考えております。規制委員長の見解を伺います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を受けて、原子炉等規制法が改正され、また、原子力規制委員会設置法の御議論が国会で行われました。

 最も重要な反省の一つが規制と推進の分離でありまして、規制は推進の事情や論理に影響されない、独立した規制を求めるという意味で原子力規制委員会は設置をされております。そういった意味で、需給といった推進側のものによって審査や安全上の手続といったようなものが影響を受けるわけではないことを申し上げておきたいと思います。

 一方で、審査の長期化はもとより私どもも望むことではありませんので、私たちの規制資源をより適正なところへ投入するためにも、審査の効率化というのは重要であるというふうに考えております。

 その上で、効率化のための工夫としまして、私たちが投げたつもりのボールがきちんとキャッチされていないというような行き違い、理解の行き違い、それから、事業者が私たちの考えていない方向へいつの間にか進んでいるといった、これはもう、評価といったものは非常に長い時間を要しますので、事業者が事業者の判断で、共通した理解の下でない作業をしてしまうと、非常に大きな行き違いが起きます。

 こういったことを防ぐための工夫として、先ほど来申し上げています、より頻繁な審査会合であるとか、それから論点の文書化、さらには、審査会合に事業者が、事業者だけではなくて、ほかの事業者であるとか、メーカーであるとか、あるいは研究機関の方を連れてきても構わないといった意味での同席を許すといったような工夫を進めております。

 いずれにしましても、審査の効率化には双方の努力が必要でありますので、引き続き、安全の確保を大前提として、最優先として、審査の効率化を図っていきたいというふうに考えております。

平林委員 ありがとうございます。

 本当におっしゃられるとおりで、安全性の確保が絶対条件でありまして、その上で、様々な工夫をして、もとより望んでいないというお話もありましたけれども、迅速化に取り組んでいただけるということで、非常によく分かりました。ありがとうございました。

 続きまして、二〇三〇年の目標を達成した上でのことになるとは思います、二〇%から二二%というこの目標を達成した上にはなると思いますが、それから先、二〇五〇年に向けて原子力発電の位置づけをどのように考えておられるのか、政府の見解を伺います。

細田副大臣 ありがとうございます。

 資源が乏しく、自然エネルギーを活用する条件が諸外国と異なる我が国において、SプラススリーEの全てを満たす完璧なエネルギー源は存在せず、二〇五〇年、今から約三十年後でございますけれども、その三十年後の技術革新などの不確実性を踏まえれば、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求して二〇五〇年のカーボンニュートラルを目指すことが重要であるというふうに考えております。

 その上で、原子力は、実用段階にある脱炭素のベースロード電源であり、安定供給の観点からも、国民からの信頼確保に努め、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくこととしております。

 いずれにいたしましても、二〇三〇年を超えた二〇五〇年に向けた原子力政策の在り方、あるいはそれを含む今後のエネルギー政策の在り方については、様々な御意見を踏まえながら、議論、検討を進めてまいりたいと考えております。

 ただ、いずれにせよ、将来を見据えて、原子力の安全性の向上に向けた研究開発や人材育成を始めとした政策をしっかりと前に進めてまいりたいと考えております。

平林委員 副大臣、丁寧な御答弁ありがとうございました。

 先の議論になりますので、明確なこれという回答は当然難しいとは存じますけれども、SプラススリーEという基本の考え方の下にあらゆる選択肢を考えていくということで、原子力もやはりその一つであるということで理解をいたしました。

 理想論はともかく、現実論として、私もやはりおっしゃられるとおりだなというふうに考えておりますので、安全性はもう本当に大優先、福島の事故の反省、本当にそれは絶対譲れないと思いますので、その上で正しい選択をしていっていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 続きまして、福島第一原発、その廃炉に関してお伺いできればと存じます。

 二号機における燃料デブリ取り出しに関しまして、当初、令和三年内に開始することを想定されていたということですが、感染症拡大の影響で一年程度遅延する見通しと承知をしております。その結果、残念ながら、十年以内のデブリ取り出し着手という目標を断念せざるを得なくなった、このことは非常に残念というふうに思っておりますけれども、ただ、何とか作業は開始しなくてはいけないということで、鋭意努力もしていただいているものと承知をしております。

 今年内、二〇二二年内の試験的取り出しの見通しについて、現状の認識を伺います。

湯本政府参考人 お答えいたします。

 二号機におけます燃料デブリの試験的取り出しにつきましては、議員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症拡大によりまして、英国でのロボットアームの開発作業に影響が生じております。このため、英国での工程を切り上げる、あるいは開発者の増員を行うなど、遅延を最小限にとどめられるよう取り組んできたところでございます。

 現在、本年二月より、楢葉町にあります原子炉の実寸大の模擬施設を用いまして、本格的な試験、それから操作訓練の方を実施しております。目標から一年遅れの令和四年内の試験的取り出し開始に向けまして、引き続き取組を進めてまいります。予測の難しい困難作業が発生することも予想されますけれども、国も前面に立ちまして、安全かつ着実に準備を進めてまいります。

平林委員 ありがとうございます。

 本当におっしゃられたとおり、予測の難しい作業も発生するのではないかというお話でございました。

 報道等で承知しているところでは、アームの先端に金属のブラシ等を取り付けておいて、それでデブリの表面をこすったり、あるいは小さな容器で吸い取ったりして、数グラムを採取する作業というふうに伺っております。デブリ全体は八百トンを超えるというような推定もあるわけで、途方もない量なわけですけれども、とにかくこの試験的な取り出しで中身の状態が分かっていかないと先が見えないということでありますので、何としても実現できますように、御尽力いただいている皆様、何とぞお願いを申し上げます。また、困難な作業に取り組んでいただいておりますことに、心から感謝を申し上げる次第です。

 続きまして、福島関係で、ALPS処理水の海洋放出について伺います。

 放射線の影響が全く出ないレベルまで処理水を希釈した上で、来年四月を目途に海洋放出される予定と承知をしております。この方針、風評被害の最大限の抑制は大前提であると認識をしております。この風評被害の抑制に関する政府の取組を伺います。

湯本政府参考人 お答えいたします。

 ALPS処理水の海洋放出につきましては、昨年四月の基本方針の決定以降、地元自治体や多くの関係者の皆様との対話を通じまして御要望や御懸念をお聞きした上で、昨年十二月、政府として取り組むべき具体的な対策を行動計画として取りまとめたところでございます。

 政府といたしましては、この行動計画に基づきまして、安全性を発信し、安心を浸透させるなど風評を生じさせない対策や、事業者が安心して事業を継続できるようにする風評に打ちかつための対策を政府一丸となって着実に実行し、御懸念の払拭に努めていくこととしております。

 具体的には、安全対策につきましては、原子力規制委員会の審査と並行いたしまして、第三者の立場からIAEAの確認を得つつ、国内外に透明性高く発信すること、処理水の安全性や処分の必要性につきまして、生産者から消費者に至るまで、サプライチェーンに関わるできるだけ多くの方々に御理解をいただくべく説明を尽くし、放出後も変わらず商品が売られ、消費される環境を整えることなどを通じまして、安心感を醸成し、風評を生じさせないための取組を徹底してまいります。

 また、放出による影響を強く御懸念されております漁業者の方々などが安心して事業を継続できるように、設備投資などの生産性向上に向けた取組ですとか販路開拓といった御支援を実施すること、あるいは、対策を講じてもなお生じる風評に備えまして、基金や賠償等のセーフティーネットの充実も図ることとしております。

平林委員 ありがとうございます。

 様々取組を進めていただいているということで、本当におっしゃられたとおり、心配されている漁業者はたくさんおられると思いますので、丁寧な取組をしていただければと存じます。何とぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、私、中国比例選出ですけれども、その中にあります島根原子力発電所について伺います。

 島根原子力発電所二号機の再稼働に関しましては、二〇一三年十二月に出された設置変更許可申請が実におよそ七年九か月を経て昨年九月十五日に許可が得られ、また、立地自治体である松江市、周辺自治体の出雲市、安来市、雲南市、また、隣接する鳥取県米子市、境港市が再稼働を容認する旨を回答しておられると承知をしております。

 一方で、緊急時に取るべき対応についても詳細な計画が立てられていることも承知をしております。

 ただ、地元の御不安といたしまして、その内容が本当に実行できるのかというお声もいただいております。五キロ圏内、いわゆるPAZ内におられる一万人の方の速やかな避難、あるいはUPZの住民の一時移転で広島、岡山に本当に移動できるのかなど、この実効性に不安を感じるという声を伺っております。

 こうした不安に応え、避難計画の実効性を高めるために、政府はどのように取り組んでおられるのか、伺います。

松下政府参考人 お答え申し上げます。

 島根地域の原子力災害時の対応につきましては、令和三年七月、内閣府、島根、鳥取両県及び国の関係省庁で構成する島根地域原子力防災協議会におきまして、「島根地域の緊急時対応」を取りまとめ、この緊急時対応が原子力災害対策指針等に照らし具体的かつ合理的なものであることを確認し、同年九月、原子力防災会議で了承されているところでございます。

 この緊急時対応におきましては、原子力災害対策指針が定める防護措置の考え方に基づき、緊急事態の区分に応じて防護措置を講じることとしておりまして、ただいま委員からも御紹介ありましたとおり、全面緊急事態においては、島根原子力発電所からおおむね五キロ圏内のPAZの住民の方が避難するといったような計画になっているところでございます。

 この住民の方の避難を円滑に行えるようにするため、「島根地域の緊急時対応」におきましては、地区ごとに避難先を確保し、それぞれ複数の避難経路を設定するとともに、自家用車での避難が実施できない方のためにバス等の避難車両を確保しているところでございます。また、県警察による避難車両の誘導等の交通対策を行うこととしているほか、原子力災害時の避難・誘導システムを導入し、避難経路上の信号を青色灯火とすることで避難車両を優先的に通行させることとするなどの対策を盛り込んでおります。

 こうした対応につきましては、住民説明会を通じて住民の皆様にこれまでも御説明を行ってきておりますが、引き続き、自治体と連携をしながら丁寧な説明を行っていきたいと思っておりまして、よく御存じないがゆえに不安を感じているという方についての不安を和らげるための努力をしていきたいと思っております。

 それと併せまして、実際の災害時に対応に当たる要員の能力向上、これが極めて重要でございます。島根地域でも、毎年、原子力防災訓練を行っておりますが、今後も、訓練や研修を通じて対応要員の能力向上に一層努めていきたい。

 こうした取組を通じまして、原子力災害対応の一層の実効性向上にしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

 以上でございます。

平林委員 ありがとうございます。

 私も、計画を拝見しましても、本当に緻密に組んでいただいているなということを感じているところでございます。今おっしゃられたとおり、それをきちっと周知していくということも大事であると思いますし、その上に、不安を感じておられる方も中にはいらっしゃいますので、そういった新たな部分に関してはまた手を打っていただく。

 また、予算措置も講じていただくことも含めまして、ちょっと時間がないのでこの質問は省略させていただきますけれども、「島根地域における原子力防災の取組について」の末尾に、「地域防災計画・避難計画の整備に「完璧」や「終わり」はなく、今後も訓練等を通じて、国と関係自治体が一体となって継続的に、避難計画の充実・強化に努めていく。」このように書いていただいておりまして、本当にそのとおりだなと思いました。私も、地域と政府との懸け橋になれますように連携を取り続けてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の内容になります。原子力分野における技術開発支援と人材育成に関してお伺いをいたします。

 原子力分野におきましては、現在も様々な新技術が開発されていると認識をしております。SMR、小型モジュール炉でありますとか、プレハブのような規格化されたものとか、そういったものを聞いております。こうした革新的な原子炉の開発とともに、現状の原子炉の安全性が向上することも重要であります。

 これら様々な原子炉分野の技術開発を後押しするために、政府はどういった予算措置を取られておられるのか、政府参考人に伺います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力発電の安全性を始め、技術の高度化を図る上でも、また、サプライチェーンの維持強化という観点から申し上げましても、今委員御指摘のように、原子力分野の技術開発、新しい技術開発は大変重要だと考えてございます。

 昨年十月に閣議決定されました第六次エネルギー基本計画の中でも、将来に向けた原子力利用の安全性を抜本的に高める新技術の開発を進めるとしているところでございます。

 お尋ねを頂戴しました予算措置の話でございますが、安全性について申し上げますと、例えば、事故時に水素を発生しない燃料、これは事故耐性燃料といいますが、これの技術開発ですとか、もし事故が起こった場合の溶融燃料を受け止める耐熱材の開発、こういった安全性向上に向けた技術開発の予算支援事業を行ってございます。

 また、先ほど例示いただきましたSMRも含めてでございますが、高速炉ですとか高温ガス炉といった革新炉に関しまして、技術開発及びその実証の取組の支援というものも併せて予算措置で講じているところでございます。

 今後とも、国際連携、これは海外のプレーヤーと一緒にやることも重要でございますし、また、民間の創意工夫を活用することが重要でございます。将来を見据えまして、技術開発をしっかり推進していきたいと考えてございます。

平林委員 ありがとうございます。

 様々手を打っていただいておりまして、本当にやはり育成していくことが重要だと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 予算と同様に重要になるのが人材であります。日本の原子炉、この十年間、福島の事故以降は新しく設置されたものはないということで、記事なんかを拝見いたしておりますと、そういった経験がないとなかなか技術者も育成されないというようなこともお聞きをいたしました。日本の今後の原子力技術を支える、また、新しい技術を開発してもらうために、人材をしっかりと育成していく必要があろうかと思います。そのための方針を政府参考人に伺います。

林政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、原子力分野の人材育成は非常に重要な分野であると考えております。一方で、近年、原子力関係の学科、専攻数や大学教員数が減少し、また、稼働している試験研究炉が減少しているなどの課題にも直面しております。

 こうした状況の中で、中長期的な観点から、原子力分野の人材育成を最大限効果的に行っていく必要があると考えております。このため、文部科学省では、大学や高等専門学校が所有する限られた人材育成のリソースを有効活用する、こうしたために、産学官が連携した横断的な教育研究機能を有する拠点を構築して、当該拠点において人材育成の取組の充実を図っている、こうした取組をしてございます。

 文部科学省としては、このような取組を通じ、引き続き、原子力の基盤を支える人材育成をしっかりと進めてまいります。

平林委員 ありがとうございます。

 残念ながら、教員数が減ったり、炉も減ったりということで厳しい状況にある、そういう中でも、大学間の連携によって、設備あるいは指導側の人材も共有をしながら育成をしていくというお話であったかというふうに存じます。本当に適切な取組だと思いますので、是非しっかりと人材育成をしていっていただければと思います。

 個人的には、僕も理工系の大学におりましたので、雰囲気として、どうしても学生が、原子力というとちょっと避けてしまうような雰囲気もあったりするのを感じました。やはり重要な分野ですので、何かしらのインセンティブを与えられないか、そんなことも考えておりまして、私もしっかりと人材育成に関しまして考えていければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 本日、一般質疑ということで、四月七日に行いましたこの委員会での委員長に対する質疑の続きを今日はさせていただければというふうに思っております。

 今日委員長にお伺いしたいのは、三点ほどあるんですけれども、いずれも、やはり今、規制審査に時間を要している、その原因に関するものでございます。是非、委員長自身のお考えも併せて御答弁いただけることをお願い申し上げます。

 まず、一問目の質問ですけれども、前回の質疑の中で、委員長は次のようにおっしゃりました。規制委員会の審査会合について、審査会合とヒアリングの位置づけについて私が質問をさせていただいたときの答弁でありますが、ヒアリングはそれに先立って資料などの確認をするものという位置づけをしているという答弁を委員長はされておりましたが、この方針、つまりは、ヒアリングは審査会合に先立って資料等を確認するもの、審査会合は判断を伝える場である、この方針というのは委員長が決めたものなのか、それとも何らかの手続を経て定められたものなのか、これについて御答弁をお願いいたします。

更田政府特別補佐人 お答えいたします。

 御質問いただいた中にありました方針につきましては、いわゆる新規制基準適合性の審査を開始するに当たりまして、二〇一三年、平成二十五年の七月十日に行いました原子力規制委員会の定例の会議において議論をいたしまして、また、規制庁が整えた資料に基づいて、ヒアリングの位置づけ等について定めたものでございます。

 したがいまして、規制委員会として決めたものでございます。

浅野委員 ありがとうございます。

 繰り返しになりますが、平成二十五年、二〇一三年の規制委員会の会議の中で定められたものだということを確認させていただきました。

 ということは、ちょっと更問いになりますけれども、このヒアリングの位置づけ、そして審査会合の位置づけ、繰り返しになりますが、審査会合は判断を伝えるもの、ヒアリングは資料の確認をするものという位置づけは、委員会で決めればまた内容の変更もまた論理的には可能である、こういうふうに理解をしてよろしいでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 審査会合の位置づけ、ヒアリングの位置づけは原子力規制委員会が定めたものでありますので、改めて議論をして定め直すということは、理論的にはとおっしゃいましたけれども、理屈の上ではあり得ることというふうに考えております。

浅野委員 ありがとうございます。

 次の質問です。

 こちらも前回の委員会で質問させていただきました、原子力規制委員会設置法第一条にある安全保障という文言の解釈について、先般、委員長の答弁では、この安全保障というものは、原子力安全規制、核セキュリティー及び核不拡散の保障措置を一元的に担うという観点で規定したものだという答弁がございました。

 ただ、恐らくこの規制委員会が設立された時点でこういった課題認識があったものというふうに思いますけれども、現状、やはりエネルギー問題、エネルギー安全保障という問題を我が国は目前に抱えておりまして、やはりこの安全保障という意味の中に、エネルギーの安定供給を前提とした安全保障である、保障措置なんだという解釈を再規定すべきではないかと思うんですけれども、これについて委員長の御見解を伺えればというふうに思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 これは国際的にも今多くの国で前提として認識されていることでありますけれども、原子力行政にとって重要なことは、推進と規制が行政の中できちんと分離されていること、独立した規制、独立した推進が置かれることが大変重要だと考えております。したがいまして、この分離が原則でありまして、安定供給というのは推進側の守備範囲であります。これは規制側のいわゆる安全保障の概念の中に含まれるものではないというふうに考えております。

 したがいまして、原子力規制委員会設置法について、エネルギーの安定需給を前提として規制行政を行うといったような改正を私どもの方から提案するという考えは持っておりません。

浅野委員 ありがとうございます。

 今の委員長の御答弁、規制と推進は分離されるべきものだ、私も全くそのように思いますが、念のため確認ですけれども、やはり規制委員会のお立場として、言い方を換えますと、エネルギーの安定供給のいかんにかかわらず、やはり規制を徹底すること、規制審査を正確に、厳格に行うことを優先して考えるべきである、そういう立場を取っている、このような解釈をしてよろしいでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 原子力の利用に当たりまして、安全が確保されることは大前提であって、安全の追求に妥協は許されないと考えております。審査はその安全について重要な判断を行うものでありますし、また、直接現場で安全の確保に当たっている事業者との間で共通理解を生むことが大変重要です。したがいまして、双方が納得のいくまで議論をすること、疑問や曖昧な点を残したまま判断をしてしまうといったことがないようにするということは大変重要なことだというふうに思っております。

 一方で、その上で、審査をいたずらに長期化させることは私どもとしても望むことではありませんし、それがエネルギーの安定需給といった理由ではなくて、私たちの規制資源をより適正なところへ投入するという観点、そしてまた、事業者は事業者自身が自分たちの施設の安全確保により努力を注げるように、審査が無駄な時間を過ごさないということは大変重要だと思っておりますので、既に御答弁を差し上げておりますけれども、審査の効率化のための工夫は今後とも講じてまいりたいというふうに考えております。

浅野委員 最後の質問です。時間が僅かなので、質問のみさせていただきます。

 現在、規制委員会の活動原則、五つあると思いますけれども、独立性、実効性、透明性、向上心と責任感、緊急時即応、この活動原則を見直すということは理屈上可能でしょうか。その場合、どのような手続が必要になりますでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 当該活動原則は原子力規制委員会によって決定しているものでございますので、再度規制委員会で決定すれば、見直すということも可能であります。

浅野委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二です。

 今日はお世話になります。よろしくお願いします。

 今、前段、浅野さんが審査のことを質問されましたので、本題に入る前に、ちょっと具体的な話を一点だけお伺いさせてください。

 北海道の泊原発ですけれども、規制基準への適合審査、これが今遅れているというふうに承知しています。二〇一三年の七月に、新規制基準の施行と同時に新規制基準への申請を泊原発は行っておりますけれども、あれから九年たって、同時期に申請した、五原発十基あるわけですが、その中で泊だけが、これは審査がまだ完了しておりません。

 この遅れている理由というのは、委員長、どのように見ているでしょうか。

更田政府特別補佐人 最大の理由は、サイト内にあります破砕帯の活動性につきまして、この活動性を否定するための立証材料として、ある火山灰の層が見られるということを示しておりまして、旧規制当局、原子力安全・保安院ですが、原子力安全・保安院もそれを認めていて、火山灰があるものとして審査を続けておりました。その火山灰の層が見られるということで、それは活動性は否定されているよねという前提に立って審査をどんどん進めてしまったんですけれども、いざ実際に現地に行ってみると、その火山灰の層が見られない。

 そこで、破砕帯の活動性の議論が振出しに戻りまして、そして、活動性の否定のための北電の努力というのが数年間にわたって続くという状態ですので、実質的には、そういった地質に関わる議論というのは、立証するための材料を整えるのに大変長い時間がかかりますので、審査が続いていたというよりは、数年間止まっていて、規制委員会は、北海道電力が立証材料を整えるのを待っていたという状態が続いておりました。

逢坂委員 分かりました。

 それで、もう一点だけ。今後、この泊原発の審査ですけれども、それを例えば前倒しをするとか、何らかの便宜を図るとか、規制委員会として何らかの取組をする、規制委員会自らが何らかのことをやるということはあり得るんでしょうか。

更田政府特別補佐人 これは、泊三の審査だからということは特に何も考えておりません。

 ただ、度々、北海道電力との間に、言ったつもりのことが伝わっていないとかというような、やり取りのかみ合わないところがありましたので、そういった意味については、先日も北海道電力との、経営層との間の意見交換を行いまして、当方の意図が正しく伝わるように、また、先方が先走った作業をしてしまわないようにといったような工夫は進めようと考えておりますが、特に泊三について、これは安全の確認は大前提でありますので、特に審査の内容に影響が及ぶようなことは何も考えておりません。

逢坂委員 今の更田委員長の答弁を聞いて、安心いたしました。

 私は、やはり原子力発電所の適合性審査というのは、ルールを飛び越えて特別な便宜を図るべきではないというふうに思っているんですね。決められたルールの下で確実な審査をすべきだというふうに思っておりますので、その方向でよろしいでしょうか。

更田政府特別補佐人 繰り返しになりますが、審査は、疑問を残したり妥協を許してはいけませんので、しっかりとした議論を行うことは大事であって、この原則は、泊三号機の審査にあっても変わらないものというふうに考えております。

逢坂委員 どうもありがとうございました。

 それでは次に、津軽海峡の話を聞かせてください。

 津軽海峡、これは国際海峡であります。国際海峡でありますので、津軽海峡を航行できる外国船舶の種類に制限はないというふうに承知をしております。

 そういうわけで、外国の軍用艦も航行できるわけですが、津軽海峡を航行できる外国の軍用艦、これは大間岬の沖合何キロ程度まで接近することができるのか。もう一点、それと比較する意味で、太平洋を航行できる外国の軍用船、これは六ケ所村の沖合何キロまで接近できるのか、この点を教えてください。

平岡政府参考人 お答えをいたします。

 津軽海峡においては、領海幅が三海里、約五・五キロとなっております。一方で、六ケ所村沖合におきましては、領海幅は十二海里、約二十二キロというふうになっております。

 領海における外国船舶の航行につきましては、領海等における外国船舶の航行に関する法律などにより規制などが行われており、その適用は個別具体的な状況に応じて行われるため、一概にお答えすることは困難でありますが、一般論として申し上げれば、国連海洋法条約に基づいて、外国船舶は我が国領海内において無害通航権を有しており、無害通航を行う限り、法的には、御指摘のような距離の制限はないものと承知しております。

逢坂委員 無害通航権があるということは理解をいたしましたけれども、でも、軍用艦の場合は、それは五・五キロ、二十二キロということに規定されるという理解でよろしいでしょうか。

平岡政府参考人 外国船舶につきましては、軍用艦も含むということであります。

逢坂委員 ということは、軍用艦であっても、五・五キロを超えて接近することは可能だということでしょうか。

平岡政府参考人 お答えをいたします。

 外国船舶につきましては、軍用艦も含みまして、我が国領海内においては無害通航権を有しております。これは、あくまでも無害通航を行う限りでございますので、その場合に限り、法的には、御指摘のような距離の制限はないということであります。

逢坂委員 了解いたしました。

 それでは、ちょっと次の質問をさせていただきます。

 これは更田委員長にお伺いしますが、日本の原発、これは原子炉、核燃料プールに限って質問させていただきたいんですが、航空機の落下について、日本の原発というのは耐えられる構造になっているのかどうか、これを端的にお伺いします。

更田政府特別補佐人 これは審査で確認をしている内容について申し上げますけれども、故意によるものを除く航空機落下については、航空機落下の確率を評価して、防護について設計上考慮する必要はないということを確認した上で審査を進めておりますので、評価は行っておりません。

 一方、意図的な航空機落下につきましては、特定重大事故等対処施設等々や、あるいは本体施設に落下した際の緩和措置について審査を進めておりまして、そのときの対処についての審査を進めているところではあります。

 それから、テロに関しては、これはテロの強度等々に関してはちょっと申し上げることはできませんけれども、一定の強度のものに対する審査、確認は行っているところであります。

逢坂委員 委員長、内閣府の平岡さんはもう退室して構いません。よろしくお願いします。

赤澤委員長 ありがとうございました。

 それでは、平岡事務局長は退席されて結構です。

逢坂委員 どうもありがとうございました。

 それでは、更田委員長にもう一つ。

 日本の原子炉及び核燃料プールは、ミサイル攻撃については、これは大丈夫な状況なのでしょうか。いかがですか。

更田政府特別補佐人 ミサイル攻撃につきましては、私たちは、そのミサイルの威力、破壊力等について知る立場にはありませんし、また、評価を行っているわけではございませんので、お答えすることが困難であります。

逢坂委員 ということは、まず、ミサイルの方から整理しますと、ミサイル攻撃については、審査においては評価の対象にしていない、検討していないということ。

 それから、航空機の事故については、事故によるいわゆる落下、これは落下確率を評価した結果、落下に関する防護については設計上考慮する必要はないという判断をしている。

 あるいは、テロや意図的な航空機の衝突については、それはプラントが破損される可能性を想定しつつ、例えば可動性の、何か可搬性の設備ですか、それを中心にして対処をするということを考えている、そういう整理でよろしいでしょうか。

更田政府特別補佐人 おおよそ先生がおっしゃったとおりですが、更に言えば、可搬設備等々での対処の信頼性を高めるための設備として、特定重大事故等対処施設がございます。

逢坂委員 そういうことからすれば、委員長、航空機の意図的な落下、あるいはテロ、あるいはミサイル攻撃、それによって日本の原子炉あるいは核燃料プールは破壊される可能性があるということが、破壊されないということを言っているわけではありませんので、破壊される可能性がある、そういう理解でよろしいでしょうか。

更田政府特別補佐人 先生がおっしゃっている可能性というのはミサイル攻撃までも含んだものですので、ミサイル攻撃を受ければ、当然破壊されると思います。

逢坂委員 航空機についてはいかがでしょうか。意図的な航空機の衝突、あるいはテロ、この場合については、プラントが損傷することを前提にして可搬型設備のことに言及しているのではないでしょうか。

更田政府特別補佐人 プラントの損傷という言葉の定義にもよりますけれども、航空機が落下したときに、例えば格納容器、建物は、航空機が直接ぶつかったときに、建物自身は壊れるかもしれませんけれども、そのときには原子炉は緊急停止しておりますので、事故を起こすわけではないです。ですから、原子炉建屋ですとか格納容器の破損イコール放射性物質の放出に結びつくような事故という意味ではありません。

 したがって、私たちが求めている対処というのは、航空機がぶつかって、例えば建物が壊れても、原子炉が速やかに停止することができて、冷却機能が維持できるようなという意味での対処を求めております。

逢坂委員 そこに私は若干飛躍があるような気がするんですが、ミサイルの場合は、破壊される可能性というのはあるかもしれない。航空機の場合は、原子炉建屋に限って何か破壊されているようにしか聞こえないんですけれども、原子炉あるいは核燃料プールには影響がない、そういう前提で考えておられるんでしょうか。

更田政府特別補佐人 いえ、原子炉の建屋を例に申し上げましたけれども、例えば、航空機落下で大きな、余り脅威について詳しく申し上げるのはあれですけれども、冷却系の流れ、海水系等に衝突するケースも非常に深刻な影響を与えますけれども、その場合でも冷却が維持できるように、それから、核燃料プールに関して言いますと、これは衝突の形態によると思っています。核燃料プールは、必ずしも非常に頑丈な容器で囲まれているわけではありませんので、一定の燃料の損傷はあるだろうというふうに思っております。

逢坂委員 ちょっと私は分からないんですけれども、航空機の場合は、原子炉が破損する、壊れるということについては言及されないんですが、意図的な航空機の墜落、あるいはテロ、その場合、原子炉そのものは破壊される可能性というのはないという判断をしているのかどうか、そこはいかがですか。

更田政府特別補佐人 想定の具体的なレベルまで申し上げませんけれども、意図的な航空機落下については、一定程度の航空機の規模を考えたときに、事故に至らないようにするための手だてというのは審査で確認をしております。

 一方、テロまで含めると、これはそのテロの強度によりますので、これも、あり得べきテロの強度というのを定めて、その上での確認をしておりますので、更にその想定を上回るような脅威があれば、それは事故に至るということはあり得るものというふうに考えております。

逢坂委員 事故に至るというのは、原子炉が壊れるような事故に至ることもあるということでしょうか。いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 私がここで事故という言葉を先ほど申し上げたのは、環境中に放射性物質を放出してしまうような事故に至るという、そういう意味で申し上げました。

逢坂委員 この間のやり取りを総合しますと、ミサイルでは原子炉も壊れる可能性がある、航空機の意図的な落下、若しくはテロによっては、放射性物質が放出される可能性のある事故につながる可能性も否定できないということだというふうに理解をいたしました。

 そうすれば、とにかく、ミサイル攻撃とか、あるいは航空機の意図的な落下とか、あるいはテロ、こういうものが起きてしまうと、日本の原子力発電所にとってみると、極めて重大なリスク、これを生ずる可能性があるんだというふうに私は今の話から感ずるわけです。

 そこでなんですが、意図的な航空機の衝突やテロ、ミサイル、これを防ぐために、今、最大限、日本では何ができるのかということなんですが、私は、現況では、日本では原子炉は基本的には警察が守っているわけですが、これは経産省に聞いた方がいいのかと思うんですが、今の日本で最大の対策というのは、自衛隊が原発を守ることではないかというふうに思うんですが、経産省、これについての認識はいかがでしょうか。

中曽根大臣政務官 委員にお答え申し上げます。

 原子力発電所の警備については、委員おっしゃったとおりで、一義的には、公共の安全と秩序を維持をする警察機関において実施をしているところでございます。

 その上で、一般の警察力をもっては治安を維持することができない事態等が発生した場合には、当該事態がいまだ武力攻撃事態に至らない事態であったとしても、自衛隊は治安出動等により対処することが可能となっております。

逢坂委員 自衛隊が治安出動で対処することができるということは可能だということは理解をいたしております。

 経産省にお伺いしたいんですけれども、とにかく、航空機の意図的な落下、テロ、ミサイルによる攻撃、これから日本の原子炉を守らなければいけないと思っているんですね。その際に、自衛隊がこの原子炉を防護するということについて、経産省としてはどのように見ているか、お伺いします。

細田副大臣 今、中曽根政務官からお答えをしたとおりでございますけれども、原子力発電所の安全の確保は、原子力規制委員会が規制する発電所の設備上の対応や事業者の対応にとどまるものではなく、事態対処法や国民保護法の枠組みでの措置など、警察、自衛隊など関係省庁、関係機関が連携して対応することとしていると認識をしております。

 例えば、平素の原子力発電所の警備については、一義的には警察機関が実施をいたしますけれども、原子力発電所に対する武力攻撃の排除については、ミサイル迎撃における多層防護を含め、自衛隊が適切に対処していただけるものと承知をしております。

 その上で、日本の国民の命や暮らしを守るため十分か、関係省庁、機関が連携をして対応を不断に検証し、改めるべき点は改善していくことで、安全の確保に万全を期してまいりたいと考えております。

逢坂委員 細田副大臣、今の答弁を私は理解するんですけれども、例えば、武力攻撃が発生したときに、多層防衛を含め、自衛隊が適切に対処するといったような答弁をされたかと思うんですが、これは別に原発に限りませんよね。だから、どの施設であっても、仮にこの国会であっても、もしそういう事態になれば、これは自衛隊が適切に対処するということになっているのは、今の法のたてつけですよね。

 だから、原子力発電所だけを特に、先ほど言ったとおり、特別なリスクがあるわけですから、どう守るのだということを私は聞いているんですよ。その上で、平時、原子力発電所を自衛隊が防護することについて、経産省としてはどうお考えですかと聞いているんです。いかがですか。

細田副大臣 基本的には、今お答えしたとおりでございます。

 平時においては警察力で事態への対応を行い、何らかの事態対処の必要が生じた場合には、自衛隊で適切に対応いただけるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、先ほど武力攻撃の質問に対しまして、神田先生からの御質問に対しまして内閣官房からお答えを差し上げたところでございますけれども、原子力施設を含む、今お話がありました個別の我が国の領土、領海内の施設への武力攻撃等の具体的なリスクを含めて、警備、防衛上の情報について、私ども経済産業省は、基本的には把握する立場にないというふうに考えております。

逢坂委員 ちょっと今の答弁はよく分からなかったんですけれども、後でちょっと議事録をよく読ませていただきます。

 そこで、もう一点、経産省にお伺いしますが、海外の原子力施設、これは、例えば軍が警備をしているという例があるというふうに承知をしているんですが、これについて、経産省の認識はいかがでしょうか。

細田副大臣 ありがとうございます。

 原子力発電所の警備については、例えば、米国では、規制当局であるNRCのホームページによりますと、まずは武装した警備員などが対処し、必要に応じて地元及び連邦の警察組織の出動により対処が行われることとなっていると理解をしております。

 その上で、武力攻撃に対しては、当然、必要に応じて軍との共同により対処されるものと考えておりますけれども、詳細は承知しておりません。

逢坂委員 アメリカはそういうルールになっているということは、私も、余り深くではありませんが、何となく承知はしております。

 一方、例えば、フランスのラ・アーグというところにある再処理工場、ここには地対空ミサイルが配備されているというふうに承知をしているんですが、これについての見識はありますでしょうか。

細田副大臣 先ほど申し上げましたが、今先生が御指摘になったようなお話は、極めて安全保障政策あるいは防衛政策上の課題であるというふうに考えておりまして、私どもとしては、詳細は承知しておりません。

逢坂委員 先ほど更田委員長から話があったとおり、ミサイル攻撃には、やはり原発は壊される可能性がある、航空機の落下であっても、放射性物質が外へ漏れ出る、あるいは激しく外へ出る可能性もあるというふうなことを言われているわけですね。だから、原発の守りというのは、やはり今の段階で本当によいのか、これを考えるべきときに来ているのではないかというふうに私は思っております。

 この原発をどう守るかについて、是非経産省としても更に検討を深めていくべきではないか、私はそう思うんですが、いかがでしょうか。

細田副大臣 今後、必要に応じて政府部内で様々な検証、また議論を行われると考えておりますけれども、必要に応じて私どもとしても対応していきたい、こういうふうに考えております。

逢坂委員 それでは次に、核燃料サイクルについてお伺いをします。

 日本の原子力発電所に限らず、世界の原子力発電所は、使用済核燃料の処理にみんな苦慮をしている。日本では、使用済核燃料の処理に対処するために、使用済核燃料を再処理をしてMOX燃料を作ってそれを使うということで、核燃料サイクルを行うことで、使用済核燃料問題に対するある一定の答えというふうに言っているわけですが、使用済MOX燃料は、これはどうするおつもりなんでしょうか。

細田副大臣 ありがとうございます。

 まず、核燃料サイクルについては、資源の有効利用、あるいは廃棄物の減容化、あるいは有毒性の低減という観点から、推進すべきであるというふうに考えているところでございます。

 使用済みのMOX燃料については、現在、技術開発が行われているところでございますけれども、昨年策定いたしましたエネルギー基本計画については、二〇三〇年代を目途にその技術の確立を目指して様々な資源の投入を行っていくということとされていると認識をしております。

逢坂委員 要するに、核燃料サイクルをやれば、使用済核燃料の問題というのは解決するんですか。

 要するに、新たな使用済MOX燃料が出るだけであって、その使用済MOX燃料を、例えば直接処分をするというならまた話は変わってくるわけですが、今のお話からすると、使用済MOX燃料を直接処分はしないわけですよね。

 じゃ、いつまでたっても使用済燃料の問題というのは解決しないんじゃないですか。いかがですか。

細田副大臣 先ほど申し上げたように、有害性の低減、例えば、直接処分をすれば、プルトニウムという有害性の高いものを直接地中にということになるのは先生よく御存じだと思いますけれども、そのような有害性の低減でありますとか、あるいは廃棄物の減容化の観点から、先ほど申し上げたように、基本的には、使用済燃料は再処理してから処分をするというのが私どもの基本的な考え方でございまして、これを実現するために必要な技術開発をしっかりと行っていくというのが基本的な私どもの立場でございます。

逢坂委員 後で冷静になってというか、丁寧にお考えいただきたいんですけれども、使用済核燃料を再処理すれば、減容化される、毒性の低減、あるいは、放射性物質の半減期、十万年以上から約一万年ぐらい、八千年ぐらいに短くなる、それは私は十分理解しますよ。

 だけれども、それで作った燃料をもう一回使えば、今度は使用済MOX燃料が出るわけですよ。じゃ、使用済MOX燃料をどうするんですかと私は聞いているんです。そこでまた再処理します、それで使用済MOX燃料を再処理した新MOX燃料を作る、また使う、それではまた使用済MOX燃料が出るわけですよ。これをどうするんですかというのを聞いているんですよ。

 いつまでたってもこれは解決しないんですよ。いかがですか。

細田副大臣 ありがとうございます。

 使用済MOX燃料の処理処分の方策については、使用済MOX燃料の発生状況とその保管状況、再処理技術の動向、関係自治体の意向などを踏まえながら、引き続き、二〇三〇年代後半の技術確立を目途に研究開発に取り組みつつ、検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

逢坂委員 ということは、技術開発がされるまでは使い続ける、技術開発がされたら、使用済MOX燃料、MOX燃料、核燃料サイクルはやらないということなんですか。そこも何もまだ決まっていないということなんでしょうか。

細田副大臣 先ほど申し上げたとおり、基本的には、有害性の低減でありますとか資源の有効利用の観点から、使用済燃料を再処理して処分するというのが政府の基本的な考え方でございまして、これは、昨年決定されたエネルギー基本計画にも明記をされているということですので、この点については是非御理解いただきたいと思います。

逢坂委員 ちょっと理解できないんですが、使用済燃料を再処理をして処分するというふうにおっしゃいましたよね。再処理をして処分する。再処理をした後、それでは、その作ったMOX燃料は使わないという意味ですか、それは。どういう意味ですか。何を処分するんですか。

細田副大臣 再処理をして、いわゆる有害性の高いもの、廃棄物についてはそれを処分するということでございます。また、プルトニウムを含む、使える核物質については再使用するということでございます。

逢坂委員 繰り返すようですが、やはり再使用するんですよね。再使用したら、また使用済みのものが出るわけですよね。それをまた再使用するんですね。それではまた使用済みのものが出るわけですね。いつになったら終わるんですかということなんですよ。

 それでは、それは現時点では不明確だけれども、技術開発がされるまでそれを続けるという意味ですか。

細田副大臣 申し訳ありません、技術開発がされるまで続けるという意味がちょっと私はよく分からないんですけれども、いずれにせよ、使用済みのMOX燃料を再処理する技術について、二〇三〇年度代を目途に技術開発を進めるというのが私たちの立場でございます。

逢坂委員 使用済MOX燃料の再処理の技術開発を二〇三〇年度を目途に進めるということですか。ということは、やはり使用済MOX燃料も改めて使うということですね。

 そうなれば、使用済MOX燃料を使った後のまた使用済燃料も出るという想定で今はいるということですか。

細田副大臣 資源の有効利用の観点から、使える核物質はできるだけ使っていくというのが私どもの立場でございます。

逢坂委員 私は、原子力発電のやはり最大の問題というのは、幾つも問題があるんですけれども、この使用済燃料の処理ができないということだと思っているんですよ。

 核燃料サイクルは、確かに減容化ですとか毒性の低下という観点は、それはあるんだろうとは思いますけれども、やればやるほど、使用済燃料の問題というのは先送りしているというふうにしか思えないんですね、だって、必ず使用済燃料は残るわけですから。

 アメリカなどでは、これは、経済性の観点から見ても技術的な観点から見ても、核燃料サイクルは合理性がないということで、一九七〇年代だったかと思いますが、明確に政府で決め打ちはしていませんけれども、これはマーケットの原理にも合わないということで、もう行っていないわけですよ。

 これをいつまで続けるのかというのは、私は、逆に、社会に対して大きな悪影響を将来に対して残すのではないかというふうに思っておりますので、そのことだけを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

赤澤委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の鹿児島三区選出の野間健と申します。

 本特別委員会で初めて質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 私は、九州電力の川内原子力発電所の十キロ圏内に住む地域住民の一人であります。また、その十キロ圏内の地域から選出された国会議員として、地域の皆さんの様々な思いや、また声、疑問、要請、要望について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、原子力発電所の運転延長二十年の問題についてであります。

 地元の川内原子力発電所は、一号機は、二〇二四年の七月に運転開始から四十年を迎えます。二号機は、二五年の十一月に四十年を迎えます。これから、事業者からまだ申請等もありませんので、二十年の延長をするかどうか今の段階では分かりませんけれども、これは、ある段階から、従来は、原子炉の容器とか、あるいは原子炉の格納容器、コンクリートの構造物など、いろいろな経年変化、交換ができないものとして、四十年ぐらいで運転はやめるべきだということだったのが、ある時点から、これは二十年延長になったわけです。

 そもそも、二十年延長しても大丈夫だ、その根拠。そして、どんな条件があったらこれは大丈夫、安心できるのか。そしてまた、これはもうそろそろ本当に迫ってきているわけですけれども、いつ申請を、一年前までに出すようにということになっていますけれども、一年も短いような気もいたします。その審査期間など、どういうことになっているのか、お答えいただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 四十年を超えて運転期間を延長しようとする場合には、まず、新規制基準に適合しているということは前提でありますけれども、その上で、設備の劣化状況を把握するための特別点検というものを行った上で、延長しようとする期間の基準適合性を示して、運転期間が満了するまでに規制委員会の認可を受ける必要があります。

 今先生、一年前までにと。更に言いますと、この特別点検というのは、運転後三十五年を経た状態でケーブルですとかコンクリートの劣化状況というものを確認をして、そのデータとともに申請を行うという手続になっております。

野間委員 とりわけ、一番、大丈夫かなと思われるのは原子炉ですね。これが四十年たって、これは、中を、中に入って勝手に見ることはできないわけですけれども、この辺は、どうやってその劣化の状況、安全性を確認されるんでしょうか。

更田政府特別補佐人 長く運転された炉で問題となる技術的なポイントの一つが、今まさに先生がおっしゃいました圧力容器、金属の大きなお釜ですが、これが、事故を起こして水を注入しなきゃならないときには冷たい水が入っていきますので、急に冷たい水が入ってきたときにもろくなって割れるのではないかという、脆化の問題が一番のポイントとされています。

 金属は、中性子を浴びて、使用されているに従ってもろくなってまいりますので、このもろくなるのがどのくらい進行するかというのがポイントとなっております。

 このために、各原子炉は、監視試験片という圧力容器鋼材と同じ材料を圧力容器の中へ入れておりまして、それを、三十年なら三十年、三十五年なら三十五年たったところで取り出して、シャルピーという、たたいてみるという形で、どのぐらいもろくなっているかというようなデータを得ております。

 運転年数と、それから、そういった中性子の照射量ともろくなり具合、脆化の進み具合との間の相関を取って、このまま運転を続けても、もろさがあるレベルを超えないということを確認した上での運転期間の延長ということになっております。

野間委員 三十五年たって以降、そういう様々な審査、確認がなされていくということでありますけれども、確かに、規制委員会からあるそういったお墨つき、安全だということが出たとしても、やはり地域に住む私たちとすると、技術上あるいは書類上これは大丈夫だと言われても、本当にこれは大丈夫なのか、地域に住み続けられるんだろうかというその安心を得ることは、ただ単にそれだけではできないと思います。

 既に関西電力の高浜一、二号機、美浜の三号機は二十年延長ということになっていますけれども、こういったところも含めて、立地住民の同意なり合意、納得、これは規制委員会のちょっと役割とは外れてくるのかもしれませんけれども、やはり非常に大事なポイントだと思います。

 立地住民の同意をどのように得ていくのか、どういった活動を考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 私たち原子力規制委員会、原子力規制庁は、私たち自身の役割を全うすることが非常に大事だろうと思います。審査、検査をしっかり進めていく、その上で、こういった規制とは別に、地元の立地自治体であるとか御地元の方々の同意プロセスというのは、個別のプロセスとして、またこれも重要なものであると思っております。

 それぞれが独立して役割を果たすことが重要ですので、私たちが御地元の同意プロセスに介入するようなことはあってはならないというふうに思っております。

 一方で、私たちはどのような審査をしてきたかということに関して説明責任を持っておりますので、御地元からの御要望があれば、説明会等へ規制庁職員が出向いて、基準の内容であるとか審査で確認した内容について説明を差し上げているところであります。

野間委員 是非、どういう審査をして、どういう過程でということはきちっと丁寧に説明をしていただきたいと思います。

 鹿児島県では、一昨年、新しい塩田知事が誕生した際の知事のマニフェストとして、この二十年延長問題については県民投票で信を問うということも考えているんだ、県民に直接信を問うた方がよいというような局面であればやりたいということも、マニフェストでも述べているところであります。

 今、規制委員会についての役割については分かりましたけれども、今日はエネルギー庁の方からもお見えでありますので、その辺をどういう形で地域の皆さんにきちっと納得してもらえることを考えているのか、教えていただきたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもは、原子力発電所の稼働に関しましては、福島事故の反省をしっかり踏まえまして、安全審査を、独立した原子力規制委員会のしっかりした審査を受けて安全確保がされるということがまず大前提、その上で、地元の方々の御理解を得て進めていくということが、これまた併せて大変重要なことだと考えてございます。

 個別の地域地域で、地域の方々、地域といっても一くくりにはなかなかできませんで、立地の自治体から周辺の方まで、様々あろうかと思います。各地域地域の中での御理解がしっかりといただけるように私どもも説明を尽くしていきたいと思いますし、その中で、再稼働の問題、若しくは、今委員御指摘のございましたような期間のお話、これはこれからの話でございますが、いずれにしろ、地元の方々の御理解を得るように、私どもはしっかり努めてまいりたいと考えてございます。

野間委員 今、立地自治体のみならず隣接のというお話が出たんですが、これは、私ども、本当に地元に住む者として、様々な地域の自治体の皆さんからの声があるんですね。

 これは、電源三法、電源立地地域対策交付金のことになりますけれども、立地自治体であります薩摩川内市には、それ以外のものもいろいろあるんですけれども、これに絞って言えば、令和二年度で十六億三千四百万の交付金があります。隣接する、本当にすぐそこに発電所が見える地域ですけれども、いちき串木野市ですとこれが九千六百万、また、すぐ近くの、お隣の阿久根市は七千五百万、十分の一以下ですね。すぐそこに見える地域に住んでいる自治体がそういった状態です。

 これはいろいろな計算式があって算出されているということはよく分かっていることなんですけれども、その計算式も、電力の契約をしている人が何人いるかとか、人口とか、いろいろあるんですけれども、しかし、隣接のところも過疎化や少子化が進んで人口も減っています、電力を契約している人も少なくなっていますけれども、もしもの場合の、例えばいろいろな避難の問題とかそういったことも含めると、ただ単にそういった基準だけで交付金を出しているというのは、地域の皆さんにとっても、もしもの場合の危険の負担、命に関わる問題でありますので、そういったことで、なかなか、隣だ、市の境がここにあるということだけで自分たちが余りに低く見られているんじゃないか、そういう憤りもあるわけです。

 これに対して、いろいろな計算式でもちろんやっているのはよく分かるんですけれども、やはりそれだけじゃない別な基準も考えていくべきだと思いますけれども、いかがですか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の、原子力立地に限らず、電源立地ということを進めていくためには、その発電所を設置する地域及びその周辺の地域の方々に、非常に長年にわたりまして、その建設段階から運転、それに伴う様々な御負担をおかけすることになると思っておりますので、先ほどの再稼働の話もそうでございますが、御理解を得ながら進めていく必要がありますし、その地域の方々に我々としても寄り添いながら応援、支援させていただくということが基本かと考えてございます。

 今委員御指摘いただきました電源立地地域対策交付金というのはその一つでございまして、発電用施設の設置、運転の円滑化を図るため、立地地域の自治体に対して交付しているものでございます。

 もう委員もよく御理解されていらっしゃるかと思いますけれども、人口の多い地域とそうでない地域、若しくは原発自体から近いところと遠いところ、様々ございます。当然のことながら、立地をお受けいただいている自治体にはより手厚く、住民の多い方々のところにはより多くとなりますし、そうでないところにはより少なくということになってしまうのは、事の道理としましては、より近いところの危険負担というところの問題と、同時に、行政区分としての切りというものは、やはり行政の中で生活が進み、様々な問題が、いいところも悪いところも受けているという現実というのがあろうかと思っております。また、当該地域は、様々な、合併等を含めて行政区分の変更がなされてきているという経緯もございます。

 いずれにしろ、そういったことも踏まえて、現状、交付金の算定単価の設定、配分がなされていると承知しています。

 ただ、御留意いただければと思いますのは、この交付金は、もちろんその一つではあるわけでございますが、その他もろもろ、地域振興策のような形で支援事業も併せて行っているところでございます。

 御指摘のように、当該立地自治体のみならず、周辺の方々の御理解も大変重要でございますので、皆様の御理解が得られるように、しっかりと施策の充実に取り組んでいきたいと考えてございます。

野間委員 今、交付金のことについてはお聞きしたんですけれども、それと同様、それ以上に非常に重要な問題として、万が一のときの避難道路、避難計画等のことなんです。

 今申し上げましたように、隣接する、例えば阿久根市大川という地域がありますけれども、ここは非常に過疎化、高齢化が進んでいるところですけれども、非常に道が狭小、狭くて、もしもの場合、非常に逃げるのが困難な地域であります。

 立地自治体の薩摩川内市については、もちろん、これは不十分ですけれども、ある程度いろいろな避難道の整備が進んでいるところでありますけれども、こういった周辺のところは、手つかずの状態になっているところも少なくありません。こういった道路、避難道の整備等をどういうふうに考えておられるのか。

 とりわけ、二〇一五年に、福島のこと以来、川内原発は再稼働したわけですけれども、その直後に、これは避難道としての位置づけもあったわけですが、南九州西回り自動車道、鹿児島から熊本方面に抜ける高規格道路の事業化も、一括事業化を国から認められて、もしもの場合の避難道路にしようということでこれが進んだわけですけれども、残念ながら、それから今七年たって、ほとんど、薩摩川内市と阿久根間二十二・四キロは進んでいない。

 これは、最初、事業費は一千五十億と言われました。今、資材は高騰していますから、一千五百億ぐらいになるんじゃないかと思いますけれども、今のところ、七年たっても五十億も予算が来ていないというような状態で、なかなか、再稼働はしたけれども、避難、そういった面の、国からの防災に対する配慮が少ないということが、私たち地元住民の一つの思い、願いになっているんですけれども、いかがでしょうか、その辺は。

松下政府参考人 お答えいたします。

 万一の原子力災害時において避難の円滑化を図る上で、原子力避難道の整備というのは、地域住民の皆様の安心、安全の観点からも大変重要であるというふうに認識しておるところでございます。

 今後とも、関係自治体や関係省庁が参加する地域原子力防災協議会の枠組みなども活用し、地域の声をしっかりとお聞きしながら、避難道の整備が促進されるよう、国土交通省などの関係省庁とともに、連携して取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 それとは別に、内閣府の原子力防災担当におきましては、原子力災害時の避難をより円滑にするため、避難円滑化事業というものを行っております。

 これは、平成三十年度からモデル事業を実施しまして、その結果を踏まえて、令和三年度予算からは交付金の一メニューとしたものでございまして、この事業を利用して、局部的に狭いところを拡幅する等の事業が可能となっております。

 また、この事業は、おおむね五キロ圏内のPAZはもとより、おおむね三十キロ圏内のUPZにおいても活用が可能となっておりますので、関係自治体の御要望も踏まえながら、こうした事業によっても対応も検討してまいりたいと考えております。

野間委員 三十キロ圏内、十キロ圏内周辺に、まだまだ軽トラック一台しか入らないようなところもいっぱい残っておりますので、是非そういったところに対しての配慮をしていただきたいと思います。

 それでは、最後の質問になります。

 こういった延長のこともあり、また、これから、今、日本国内、二十四基の原子力発電所の廃炉が決定しておりまして、大量廃炉時代に既に入っているわけでありますけれども、とはいえ、原子力の我が国における産業自体が非常に今弱体化しているのも事実だと思います。

 原子力のいろいろな部品ですとか、あるいはその部材なんかを作っている会社が廃業したり、その仕事の内容をやめたり、例えば、原子燃料の被覆管を作っていたジルコプロダクツ、ここも廃業しました、また、鋳鍛鋼の製造をしていた日本鋳鍛鋼という会社も廃業した、あるいは、川崎重工もこの事業から撤退するなど、二十社以上が転業、廃業しているという状況でありまして、これに伴って、そのサプライチェーン、どういうふうにこれを維持していくのか、劣化している状況についてどういうふうにしていくのか。

 様々な施策をされていると思うんですけれども、お答えいただきたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、これまで原子力発電を長期にわたりまして実施してきた中で、その原子力発電所の建設、運転経験を持つ方々というものは、長年にわたり育成されてきていたと思います。運転、保守、プラント機器、部材等の製造、その現場、それぞれ高いレベルの技術を有してきた方々はいまだにいらっしゃいますし、そういう力はあるんだと思ってございます。

 他方で、震災後の事業環境の悪化というものは、このサプライチェーンに対して非常に大きな影響を与えているのは事実だと認識しておりまして、委員からも御指摘がございましたように、これを維持していく上で重要となる企業、若しくはその事業セクターですね、企業の中でも。この原子力をめぐるところの事業からの撤退が相次いでいる現実があるわけでございまして、物づくりの機会が失われていく中で、現場が失われていく中で、いかにこの高いレベルに技術を維持、承継していくかというのは非常に大きな課題、これは、安全な運転を維持していくという意味でも大変重要な課題だと思ってございます。

 昨年十月に閣議決定されました第六次エネルギー基本計画の中でも、産学官の垣根を越え、原子力の人材、技術、産業基盤の強化を進めていくということを定めたところでございまして、具体的な国としての、それを後押ししていく、まず、事業を幾つかの類型でやってございます。

 例えばで申し上げますと、機器製造から撤退する企業のデータというものをほかの企業に承継していくということを予算事業を通じて後押ししていく事業でございますとか、廃炉も含めてになってくるわけですが、発電所のメンテナンス等の現場の技術を持つ方々の社員を対象として、技能伝承をしていくための研修事業のようなものですとか、廃炉工程によって発生する廃材を溶融、鋳造し、再利用するという、事業化する取組によってこの事業自体を後押ししていくですとか、様々なものを、現場の実態も踏まえながら、予算事業によってまず呼び水をつくり、これを産業界の方々とともに大きな動きとしていくということに取り組んでいるところでございます。

 この人材、技術の基盤と維持強化というのは大変重要な課題でございますので、私どもも産業界と一体となって、前に進めるように取り組んでいきたいと考えてございます。

野間委員 なぜそういったことをお聞きしているかといいますと、今、世界で建設中の原子力発電所の六割が中国とロシアの企業がやっているということですね。それと、計画中の原子力発電所の五五%が、これもやはり中国とロシアであります。

 そういった意味で、技術とか人材は、このままいくと、中国とロシアにしかなくなってしまうおそれがあります。ですから、我が国独自のものを残していくには、これは民間だけにあれしていても非常に難しいと思います。

 もう釈迦に説法ですけれども、日本の様々な、過去、原発の輸出を国策としてやるということもありましたけれども、イギリスとかトルコ、ベトナム、様々な理由があったんでしょうけれども、全てこれは失敗しております。

 そういった意味で、相当国が責任を持って技術と人材を残していかないと、この大量廃炉の時代、そしてまた二十年延長の様々な問題も出てくるでしょうから、これは是非国が責任を持ってやっていただきたいと思います。

 もう一度、国の、いろいろなそういった細かい民間に対する補助、助成というのは分かるんですけれども、相当な国が決意を持って、主体となってやっていかないと残らないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘は非常に理解、共有するところでございまして、これだけグローバルにもこの原子力をめぐります技術競争というのが進み、特に、日本の中で新しい原子力についての現場がなかなかできてこないという現実の中で、いかにこの原子力ということをめぐる産業を、技術基盤をつくっていくかということは大きな課題、これは、今ある原子力というものを安全に確実に運転していくという意味でも、将来に向けてその基盤というのを維持していく意味でも大変重要だと思ってございます。

 これは、産業界任せにすることはできない、国としてもしっかりと役割を果たし、前面に立って、一緒になって進めていかなきゃいけない課題だと思います。エネルギーの形、今から未来に向けてしっかりと見据えながら、国もしっかりと取り組んでいきたいと考えてございます。

野間委員 是非お願いいたします。

 最後に、通告はしておりませんけれども、更田委員長は、この九月で御退任ということであります。このウクライナ以降、相当原子力に対する環境も変わってきていると思いますが、その辺りの、先ほどいろいろなミサイルの問題等も出ましたけれども、思いがありましたら、最後、一言お聞きして、質問を終わりたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を受けて、私たちが国際機関や国際コミュニティーから最も厳しく受けた批判の一つが、継続的な改善の欠如であります。引き続き、原子力の規制や原子力の安全確保につきましては、今の状態で十分なんだという慢心に至ることなく、継続的な改善に努めていくことが大変重要だと考えております。

 これまで、力が足りないところもありましたけれども、できるだけのことは努めてきたつもりでおりますが、今後とも初心を忘れない組織として、原子力規制委員会、原子力規制庁職員、士気は、いまだに高い士気を維持しておりますので、今後とも継続的な改善に努めてまいりたいと思いますし、私自身は別の立場でお役に立てればというふうに思っております。

野間委員 ありがとうございました。

 終わります。

赤澤委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 本日は、貴重な質問の機会をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問の方に移らせていただきます。

 まず、医療への原子力利用に関してお伺いさせていただきます。

 がん治療においては、陽子線、重粒子線治療など、高度な治療法が次々と開発され、欠かせないものとなっております。これらの治療の実績や現状等、現在把握されているものをお教えいただければと思います。

宮崎政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の重粒子線治療、陽子線治療につきましては、手術療法や化学療法等とともに、がん治療における重要な治療法でございます放射線治療の一つに位置づけられるものでございますが、現在、研究開発、さらに医療現場における実践として行われているところでございます。

 まとめまして、これらの粒子線治療につきましては、現在の仕組みを申し上げますと、専門家による会議におきまして、有効性、安全性のエビデンスを集積することで、将来的に保険適用の可能性があると評価されたものが、先進医療という形で該当の医療機関で治療が実施されております。また、その上で、さらに、有効性、安全性についてエビデンスが認められたものが保険適用とされまして、医療保険の給付対象という形になりまして、治療が実施されております。

 例えば、これは、令和四年度の診療報酬改定、直近では、肝内胆管がんなど複数の種類のがんに対して新たに保険適用とされるという形で、順次適用が拡大されているという状況でございます。

 実績につきましては、保険適用となっている治療に関しては、NDBオープンデータによりますと、令和元年度で、重粒子線治療と陽子線治療を合わせて五千三百六十三件の実績がございました。また、このほかにも、先進医療として実施されているものが年間で二千件程度あると承知をしております。

 粒子線治療につきましては、委員御指摘のように、種々の研究開発が現在も進められておりますので、政府といたしましても、日本医療研究開発機構、AMEDを通じまして、これらの研究に対する支援も行っているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 いまだ決定的な治療法が確立していないがん治療において、これらの放射線療法、大きな可能性を秘めていると考える専門家も多くおりますが、ちょっと同じ質問にはなってしまうかもしれないですが、がん治療におけるその有用性に関して、専門的見地からはどのように捉えておられるのでしょうか。

宮崎政府参考人 申し訳ございません、少し重複した形になりますけれども、これらの粒子線治療の中で、かなり、がん種ごとに、様々な、実用化の度合い、研究開発の度合いは進捗が違うと思います。

 その中で、有効性、安全性の評価をされて、一定の評価を受けたものが先進医療として実施され、さらに、その中で、既存の治療法などと比較して有効性や安全性が認められたものが保険適用という形になるということでございまして、既にそういうものが幾つか、複数の種類のがんに対して適用となってまいりましたし、研究開発が進んでおりますので、その中で更にエビデンスが認められていけば、順次このステップを踏んでいくという形になろうかと思います。

 こうした取組を、研究開発の支援という形で、支援をしてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 つい先日も、重粒子線治療の効率化に向け、群馬大と日立製作所が共同研究を始めることが発表されました。

 がんの治療法の確立は、人類の悲願でもあります。もし放射線治療がそこに大きく寄与する可能性があるならば、研究開発に相応のコストを払ってでも挑戦すべきだと私は考えます。更なる前向きな検討をどうぞよろしくお願いいたします。

 続いての質問に移らせていただきます。

 現在、我が国における発電は七五%ほどが火力発電で占められております。そんな中、エネルギー基本計画が見直され、日本でも二〇五〇年にカーボンニュートラルを目指すことが宣言されました。仮に、原発を再稼働しないと仮定し、さらにカーボンニュートラルを実現するとなると、再生エネルギーによる発電を大幅に増加させなくてはなりません。

 仮に、必要電力の大部分の発電を水力や太陽光などの再生可能エネルギーで賄うと仮定した場合、それを実現するためにどの程度の初期投資が必要で、維持していくのにどれだけのコストが必要か、国家財政や国民生活にどれほどの負担がかかるのか。技術的なものも含め、理想論ではなく現実的な選択肢として考えることは可能なのでしょうか。お考えをお聞かせください。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 再生可能エネルギーにつきましては、二〇三〇年度の温室効果ガス四六%削減、若しくは二〇五〇年のカーボンニュートラルの実現という政府の目標に向けて、国民負担を抑制しながら、地域と共生しつつ、最大限導入していくということが政府の方針でございます。

 一方で、再エネの更なる導入を進めていくためには、もちろん課題が非常にあるのも事実でございまして、一つには、電力の安定供給という観点からの課題、これは非常に大きいのが現状だと認識してございます。太陽光とか風力とかは自然によるものでございますので、当然のことながら、昼間は太陽が出ても夜は出ない、風がやんだときの対応をどうするか。

 電力の需給逼迫のみならず、安定供給のときに電気がないというわけになかなかいかないということを考えていきますと、安定供給を実現していくための調整力というものをいかに確保していくか。蓄電池というもののコストと量がなかなか限界があるという中で、この課題の乗り越えというのが、一つ、非常に大きな課題として存在していると思います。

 また、慣性力と技術的に呼ぶんですけれども、同期タービンで回していく際には停電防止のために非常に機能するわけなんですけれども、自然変動電源の場合はなかなかそうならないという現実もございます。

 この電力の安定供給という課題が一つございますし、また、自然条件、地形等々を考えていったときに、太陽光、風力を始めとしまして、場所を取るものですから、適地をいかに確保していくかということは、実際の地面を利用される方との調整というのが非常にこれから課題になってくるだろうと考えております。

 また、ちょっと今具体の数字はないんですけれども、投資額としましても、恐らく、系統の投資を含めまして、相当規模のものが必要になってくると考えております。

 そういうことから考えますと、今この時点で考えますと、技術を前提とした場合、再生エネルギーのみでほとんどのところを賄うのはなかなか難しいのが現実でございまして、未来に向けて、技術の革新の下で考えていく必要はあるわけでございますが、原子力、水力、水素など、多様なエネルギー源というものをバランスよく活用していくというのがこれから取っていくべき道なのかというふうに考えてございます。

藤巻委員 理想だったり目標だったり、そういうのを掲げるのは非常に大事だとは思うんですけれども、やはり、まずは目の前の現実をしっかり受け止めて進めていかなければならないと思います。

 現在、ウクライナ情勢の影響もあり、ガソリン価格や原材料費の高騰による物価高、コスト高により、日本経済は今、大変な状況にあります。

 特にエネルギーに関しては、価格上昇が起こり、同時に供給も不安定となっております。先月二十四日には、首都圏で大規模停電の危機が起こりました。また、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇が長期化する懸念も出ています。

 電力供給の方に目を移しますと、原子力が停止したことによる代替の天然ガスなどの利用量の増加や、エネルギーの海外依存による負担増が考えられます。厳しい規制措置が行われたことで、原子力発電所は現時点で僅か十基しか再稼働をしておりません。国民の皆様の厳しい目はあったにしても、この再稼働の遅れが影響し、日本の原子力産業、技術力は衰退している状況です。大学や大学院の原子力の学科や研究科に進む学生の数も減っています。

 そのような中、私たち日本維新の会では、松井一郎代表が二月二十八日に、電力が逼迫するとコストが上がり過ぎ、生活が成り立たなくなるとの認識を示し、動かせる原発は夏に向けて全て動かす判断を促す要請を政府にしております。

 加えて、我が党は、電力価格の高騰などに対応する緊急経済対策を萩生田経済産業相に三月十五日に提出しております。内閣の責任として、原発再稼働を提言しております。もちろん、徹底した安全対策を施すことは大前提でございます。あのような事故は、もう二度と、絶対に起こしてはなりません。

 その上で、改めて、再稼働についての現状や課題、今後の方向性をどうお考えになられているのか、お考えをお聞かせください。

岩田大臣政務官 お答えをいたします。

 ただいま委員からも御指摘ありましたように、昨今の情勢を受けまして、エネルギーの安定供給の確保に向けて、あらゆる選択肢を追求をしていくことの重要性を改めて認識をしているところであります。

 特に原子力は、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持でき、そして実用段階にある脱炭素のベースロード電源でありまして、安定供給の観点からも重要な電源であると考えております。

 こうした観点からも、安全性の確保を大前提にして、地元の御理解を得ながら、原子力発電所の再稼働を着実に進めていくことが政府の方針でございます。

 経済産業省としましては、発電所の再稼働が円滑に進むよう、産業界に対し、事業間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけるとともに、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得られるよう、粘り強く取り組んでいく考えです。

藤巻委員 先ほどから申し上げていますように、原子力が必要に応じて活用されていない現状は、日本経済や国民生活に負担を与えているのも事実です。また、規制措置や再稼働への審査が十分に効率的でないために再稼働が遅れているという指摘もあります。当初、一基当たり再稼働の審査に半年と言っていたにもかかわらず、十年経過しても審査に入れない原子力発電設備もございます。

 このような現状を踏まえて、再稼働への審査を円滑かつ効率的にしていくために、何かしらの対策等を検討しておられるのでしょうか。お答えください。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 審査の効率化のために、既に御答弁差し上げている中にもありますけれども、双方の理解の行き違いがないように、双方の論点を文書化して、それを取り交わすといったようなこと、それから、頻繁な審査会合の開催等々を通じて効率化を図っていきたいというふうに考えております。

藤巻委員 そういった面もあるんですけれども、先進各国の原子力規制では、リスク評価に基づいた規制措置を行っております。特に米国では、安全目標を定め、事故のリスクを確率論的に算出し、原子力発電所のリスクを総合的かつ定量的に評価しております。

 米原子力規制委員会では、行動規範に効率性を掲げております。一方、日本の原子力規制委員会は、よく似た行動規範を掲げているものの、その中に効率性がありません。日本では、客観的基準よりも、審査会や規制委員会の主観で設備の是非が判断され、規制が行われているという側面があるという話も聞いております。

 現在の規制措置に対するリスク評価の方法をお教えください。また、より客観的な、定量的な評価が効率性を導くとも考えますが、今後の方向性も併せてお答えいただければと思います。

更田政府特別補佐人 私どもの審査が主観的という御批判は全く当たらないというふうに考えております。

 米国と制度の違いはありますけれども、審査期間を比較しても、米国で新設炉の審査に要した期間というのは、今、ボーグルですとかサウス・テキサス等々で新設が進んでおりますけれども、申請から認可まで約十年かかっております。そして、いずれも運転開始には至っておりません。

 我が国の場合ですが、PWRの最初の十二プラントで審査に要した期間ですが、許可までに二年二か月、それから、許可から保安規定の認可まで平均して一年六か月ですので、合わせて三年八か月です。それから、旧規制当局でいえば、大間ですとか東電東通の新設に関して、かかった許可の期間は約四年間です。

 したがいまして、審査期間一つを取っても、米国の規制当局に比べて日本の規制当局が審査に要している期間が長いという事実はありません。

 それから、米国のリスク情報活用については、米国の産業界より、リスク情報の活用によって審査期間が長くなったという批判を受けています。リスク情報の活用が必ずしも審査期間の短縮に基づくものではありません。また、私どもの審査においても、リスク情報に基づいて、シビアアクシデントの進行の、シークエンスという言い方をしていますけれども、進行を抽出するなど、適宜リスク情報の活用を図っているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間の関係もあるので、次の質問に移らせていただきます。

 ロシアのウクライナ侵攻を契機に、テロ等により炉心の損傷が発生するおそれがある場合に、放射性物質の放出を抑制するための施設、いわゆる特重施設の在り方が問われております。

 安全保障環境が大幅に変化する中、あらゆるテロを想定し、対策を講じることは、原子力施設を維持する上において最重要事項であります。

 現時点での総合的なテロ対策、どのような事態を想定し、どのような対策を行っているのか、包括的にお答えいただければと思います。

更田政府特別補佐人 いわゆる新規制基準に適合した炉に対しては、テロ対策、シビアアクシデント対策も含めてですけれども、可搬的な装置であるとか、職員が動くことによって対処をするという防護措置を取っております。

 これの信頼性を高めるために、要員の動作等をより合理化する、それからテロやシビアアクシデントの対処をより強固なものにするという意味で、特定重大事故等対処施設の設置を求めているものであります。

 特定重大事故等対処施設の位置づけとしては、シビアアクシデントやテロへの対策の信頼性を高めるものという位置づけで要求しているものでございます。

藤巻委員 柏崎刈羽原発で二〇二〇年度に核物質防護設備の機能の一部喪失などの問題が発覚したことに対し、昨日、原子力規制委員会は、責任者が関連会議に参加していなかったなど、柏崎刈羽原発固有のものであったと中間報告をまとめました。

 会議に参加していなかったというようなレベルの話ではないと思いますが、このように問題に適宜対応していくことは重要であると考えます。

 一方で、特重施設の使用前検査が画一的で、実務と見合っていなく、合理性に欠けるという指摘もあります。今後の特重施設の使用前検査に関して、その方向性に関してお答えいただければと思います。

更田政府特別補佐人 特定重大事故等対処施設の検査について、詳細について申し上げることは差し控えますけれども、事業者の使用前の検査が、事業者自身の選択によってその合理化は可能であると思っておりますし、私たちの確認についても、これは、事業者検査を行う事業者との間の意思の疎通を円滑に図ることによって効率化は可能であるというふうに思っております。

藤巻委員 今の件も非常に重要な問題であるので、効率性を是非追い求めていただければと思います。

 エネルギー政策、非常に、最重要事項の一つで、国家の根幹でもございます。国家として、原子力とどう向き合っていくのか、どう活用していくのか、向こう数百年に及ぶ命題でもあります。

 一方、今日一日の生活においても、エネルギーは日々求められ、消費されています。当委員会で議論を深めていくことも意義があると考えております。

 本日は、ありがとうございました。私の質問を終わらせていただきます。

赤澤委員長 次に、吉田とも代君。

吉田(と)委員 日本維新の会の吉田とも代と申します。

 本日は、貴重な質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは、早速質問に移らせていただきます。

 本年四月五日午後、岸田総理は、萩生田経済産業大臣とともに、総理大臣官邸で、東京電力福島第一原子力発電所の処理水を海に放出する方針をめぐり、全国漁業協同組合連合会の岸会長と意見交換されたと報道されています。

 二〇二一年四月、当時の菅前総理と会談して以来、約一年ぶりの今回の会談で、岸会長は、国民や全国の漁業者の理解を得られない処理水の海洋放出に反対だという立場はいささかも変わっていないと述べられました。これに対し、岸田総理は、福島第一原発の廃炉の着実な進展は震災からの復興の前提であり、そのために処理水の処分は避けて通れない、一方で、漁業者がこれまでどおり漁業を続けたいという思いから風評を強く懸念していることも承知していると述べ、その上で、引き続き、国内外での情報の発信や理解の醸成を進めるなどの風評対策を徹底するとともに、全国の漁業者が安心して漁業を継続できるよう必要な支援を講じていくと説明されました。

 ここで、質問いたします。

 放送法の第四条には、「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」が放送事業者による放送番組の編集に当たって定められています。この規定の趣旨及び意見が対立している問題として配慮するにはどういうものが該当するのか、見解をお聞かせください。

藤野政府参考人 お答えいたします。

 放送法、これは、放送による表現の自由を確保する、そういう観点から、放送番組の編集につきましては、放送事業者の自主自律、これを基本とする枠組みとなってございます。

 その中で、委員お尋ねの、この法律の第四条、これは第一項第四号でございます。「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」という規定がございます。これは、国民に存在する多様な意見、これを一方に偏することなく放送されることによって、その問題に関する国民の理解が深まるようにしよう、そういったものでございます。こうした枠組みの中で、放送事業者においては、放送番組の編集の基準を定めて、それに従って放送番組の編集を行うというふうになってございます。

 例えば、これはNHKでございますけれども、放送の基準を定めてございまして、「意見が対立している公共の問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにし、」そして「公平に取り扱う。」こういったことを定めてございます。あるいは、日本民間放送連盟でございますけれども、こちらも基準を定めてございまして、「取材・編集にあたっては、一方に偏るなど、視聴者に誤解を与えないように注意する。」そういったことを定めてございます。

吉田(と)委員 本年四月二十六日の本会議で、我が党の早坂敦議員が福島復興再生特別措置法の一部改正案について質問をいたしました。その中で、南相馬市の郷土料理、ガニ汁を食する方が減ってしまったとし、「福島産の水産物は、厳しい検査と品質管理を行っており、世界一安全、安心であると言っても過言ではありませんが、それでも根拠なく危険視する風評が後を絶ちません。」と、深刻な風評被害について訴えました。このことは、ALPS処理水に関しても風評につながっております。

 このような声が上がるのは、水産物の放射線影響、そして処理水の安全性、この両者の区別ができていないことにあると私は考えます。

 報道の在り方として、先ほど藤野大臣官房審議官から御説明をいただきましたけれども、一般的にニュースで目にしますのは、一方の声を取り上げて報道することをよく目にするわけですけれども、誤解や印象操作を招くおそれもあり、背景をしっかりと理解できるような放送の仕方、賛否の声をバランスよく紹介することがもっとあってよいのではと考えます。先ほど、できるだけ報道は、自主自律、そして公平に取り扱うという御説明をいただきました。そういった観点を、より、引き続き、取組の強化に進めていただきたいと私からはお願いをしたいと思います。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 経済産業省は、二〇二一年四月に廃炉・汚染水・処理水関係閣僚等会議で決定した、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針において、風評影響に関して、継続的に確認し、必要な対策を機動的に実行していくこととしています。

 ALPS処理水の海洋放出により風評被害の影響を受ける可能性のある方々から、基本方針の決定後に生じた状況、今後見込まれる状況を確認し、必要と考える対策についての意見を聴取し、政策に反映することを目的としたワーキンググループを設置しています。現在、どのような声が寄せられ、対策が講じられたのか否か、お聞かせください。

湯本政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月の基本方針の決定以降、地元自治体や漁業関係者の方々などから、御指摘のありましたワーキンググループを始めとしまして、様々な機会を通じて繰り返し御説明や意見交換の機会をいただいております。

 その中では、福島復興の前提となります廃炉を進める必要性については理解しつつも、処理水の処分に伴う追加的な風評の発生を懸念する声ですとか、安全性について、東京電力だけではなく外部の客観的な目でチェックをし、科学的根拠に基づく正確な情報を国内外に広く発信して、消費者に分かりやすく伝えるようにといったお声をいただいております。あるいは、処理水放出後も変わらず商品が取引され続ける環境を整備するため、放出前からの十分な対策を求める声など、多くの御意見をいただいているところです。

 こうした御意見を踏まえまして、昨年八月には、IAEAなど外部の専門家の協力も得ながら科学的根拠に基づく正確な情報発信を行うといった風評を生じさせないための対策、それから、風評が生じたとしても商品の取引が継続される環境を維持するよう、事業者の生産性向上あるいは販路開拓などを支援することで風評に打ちかつための対策を盛り込みました、当面の対策というのもまとめております。さらに、十二月には、これを具体化した行動計画の形で取りまとめを行いました。

 現在、この行動計画に基づきまして、できる対策から早期に着手して、実績を積み重ねてきているところでございます。

 今後も、引き続き、御意見を伺いながら、随時、対策の追加、見直しを行い、必要な対策に機動的に取り組んでまいります。

吉田(と)委員 地元の方々の声を引き続きしっかり受け止めていただいて、きめ細やかな対応をしていただくことが、風評被害に苦しむ方々の具体的な要望を理解でき、また、必要な対応をしていくことが可能となります。風評被害を払拭していくことにつなげていくためにも、今後も寄り添って伴走していただくことを要望いたします。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 経済産業省の専門家会議が処理水の海洋放出の方向性を示し、政府は、二〇二三年春から海洋放出を決める基本方針を定めています。

 国際原子力機関、IAEAは、世界でも海洋放出は行われていますが、日本の処理水の海洋放出の基準は一リットル当たり千五百ベクレル未満で、世界の基準に比べると一桁ほど低く、仮に飲んだとしても健康に影響が全くない水準で、海に放出すれば大量の海水と混ざり、あっという間に無視できるレベルまで薄まると日本原子力学会の宮野廣委員長は見識を述べておられます。

 政府として、技術面での問題はなくとも、やはり具体的に漁業、水産業の方々に、納得し、貢献していくことが、風評被害に対する懸念を払拭し、理解を深めるために必要だと考えます。

 福島第一原子力発電所の事故後、日本産食品の輸入規制を続ける中国、韓国といった近隣諸国、地域に向けた情報発信を強化すべきであり、これら海外から届く反対の声が国内の風評被害を大きくしていると考えますが、見解をお聞かせください。

湯本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘ありましたとおり、ALPS処理水の処分に当たりましては、国際的な考え方に基づく国内の規制基準を厳格に遵守することとしておりまして、こうした対応を適切に行う限り、人体や環境への安全は確保されるものというふうに認識してございます。

 昨年四月の方針決定以降、この処理水の安全性につきまして、地元自治体や関係者の皆さんに繰り返し御説明を行っているところでございますが、こうした理解がいまだ十分に浸透していないというような御指摘があることは重く受け止めております。

 先ほどお答えしました行動計画に基づきまして、現在、安全対策、それから風評を生じさせないための広報に力を入れているところでございます。

 具体的には、御指摘になりました、第三者の立場から、IAEAの確認を現在進めておるところでございます。この結果を国内外に透明性高く発信していくことで、海外に対する発信も強化していきたいというふうに考えてございます。それから、広報のコンテンツ、こちらの充実も図っておりまして、SNSやホームページ、新聞広告なども活用いたしまして、より多くの方々に日常生活の中で処理水に関する情報を得る機会を提供していきたいというふうに考えてございます。

 こうした取組を通じまして、安心感の醸成、そして、風評を生じさせないための取組を徹底してまいります。

吉田(と)委員 福島第一原発で発生する汚染水から、多核種除去設備、ALPSでトリチウム以外の放射性物質の大部分を取り除いた処理水、これらは敷地内のタンクにたまり続けております。このALPS処理水に関する風評を拭うためには、処理水の安全性を科学的な見地からの丁寧な情報発信と、そして、福島第一原発の現状や放射線量、農作物の安全性について引き続き海外への理解を求めるとともに、国内の風評被害を懸念する声としっかり向き合い、対話する機会を重ね、今後も丁寧に情報発信をしていただくことを政府にお願いしたいと思います。

 それでは、引き続き、最後の質問になるかと思いますが、質問させていただきます。

 我が党の最も喫緊の課題として捉えておりますのが原子力の再稼働です。

 昨年十月、政府で閣議決定された第六次エネルギー基本計画において、二〇三〇年度四六%の温室効果ガス削減目標を踏まえ、原子力比率は二〇%から二二%にすることとなっております。

 先般、四月七日、我が党の伊東信久議員がこの件で質問された際は、実際の設備利用率は発電所ごとに異なるため、確定的に示すことはできないが、運転年数に応じた出力規模の平均値等を用いて機械的に計算をすると、二十五から二十八基で達成できる計算になるとの答弁もありました。

 しかし、東京電力の福島第一原発事故後、国内三十三基の原発の中で、現在再稼働しているのは十基にすぎません。二〇三〇年というと、あと僅か八年です。この乖離をどう捉えているのか、政府の見解を伺います。

岩田大臣政務官 二〇三〇年度のエネルギーミックスにおける原子力比率の実現に向けましては、安全性の確保を大前提に、地元の御理解を得ながら、原子力発電所の再稼働を着実に進めていくことが政府の方針でございます。

 経済産業省としましては、再稼働が円滑に進むよう、産業界に対して、事業間連携によります安全審査への的確な対応を働きかけますとともに、国も前面に立ちまして、原子力の必要性などについて丁寧な説明を尽くし、立地自治体など関係者の御理解と御協力を得られるよう取り組んでまいります。

 こうした再稼働に向けた取組やエネルギー政策における原子力の位置づけ等につきまして、国民の皆様の幅広い御理解が得られるように、丁寧な情報発信に取り組んでまいります。

吉田(と)委員 欧州では、昨年、風力発電量が減って電気代が高騰、コロナ禍からの経済回復でエネルギー需要が高まり、石炭の代わりに利用する天然ガスが記録的に高騰、天然ガスの約四割をロシアから輸入し、安全保障上の懸念から依存度を下げるべきとの声が強まり、原発回帰を後押しをしています。

 日本原子力産業協会によると、二〇二一年一月現在で、世界には四百三十四基の原発があり、東京電力福島第一原発事故後も、欧米やアジアでは原発利用が広がり、米原子力エネルギー協会の予測では、二〇二〇年、十兆円規模だった原子力市場が、二〇五〇年には四倍の四十兆円に拡大すると予測をしています。

 再生可能エネルギーだけでは限界があり、脱原発、脱炭素の二兎を追うことはできないと、共通認識が各国に広がっております。脱炭素への原子力の技術維持が非常に重要であると国際環境経済研究所の竹内検査員は述べておられます。

 我が国も、目先の価格対策だけではなく、抜本的に安定的なエネルギーを確保する必要があり、それには原発の早期再稼働を政府が主導するべきであると進言させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、北海道電力泊原発三号機の適合性審査をめぐって、更田委員長に質問いたします。

 まず、北海道電力が他社と同時期の二〇一三年七月に設置変更許可申請をしてから十年近くが経過をいたします。いまだ審査が終わらない原因と、背景に何があるか、そして、そのことにどういう御認識を委員長としてお持ちか、お答えください。

更田政府特別補佐人 御質問の中にもありましたように、泊の三号機というのは、いわゆる第一グループであります。

 二〇一三年七月に申請がされて、関西電力の大飯三、四ですとか高浜三、四、それから伊方の三号機、それから、最も早く再稼働に至った川内一、二等々と同時に審査を開始して、泊の三号機に関しては、プラント側の審査も順調に進み、格納容器のスプレーの立ち上がり配管についての議論はややありましたけれども、プラント側の議論はとっくに、九合目ぐらいのところまで行く状態にありました。

 ところが、敷地内断層の議論において、立証の根拠とされていた火山灰が現地調査に行ってみたところ見られないということで、ここの議論が振出しに戻りました。

 その後、その敷地内断層、F―1断層と言われているものの活動性評価ですが、火山灰によらない立証に非常に長くの時間がかかりました。段丘編年ですとか、そういった地質学上のやり方を変更したのですが、掘削調査等々にも時間がかかりまして、昨年夏に議論は収束をいたしましたけれども、二〇二一年までですから、七、八年にわたって敷地内断層の議論をしていたという経緯があります。

 さらに、その後、津波ですとか火山についての議論に入ろうとしておりますけれども、これは、私たちの認識としては、北海道電力側の人材の厚みの不足といったようなところもあって、なかなか審査が速やかに進まない状況で今日に至っております。

笠井委員 活断層の見極め、評価が進まないで、その先、津波、火山などについても、いかないということでありましたが、先回は、三月三十一日の審査会合で、北海道電力泊原発三号機を取り上げております。四月一日の電気新聞は、審査の効率化に向けてアイデアを出し合う場として会合が設けられたと報じておりますが、当日は、規制庁から、「北海道電力泊発電所三号炉の審査状況」ということで出されて、北海道電力からは、「残されている審査上の論点とその作業方針および作業状況について」という資料が出されております。

 規制庁が三月二十二日の事業者面談で事前に示していた、残されている審査上の論点である、基準地震動の策定、基準津波の策定、火山影響評価、地盤斜面の安定性、敷地の地質・地質構造、プラント側の審査の論点という六つの課題について、北海道電力は、その回答と言える作業方針及び作業状況をまとめた対照表を提出しております。

 規制庁が事前に示していた論点への北海道電力からの回答ですが、このように、規制側と事業者側との間で問題と答えをすり合わせるような審査を行ったのは何のためか。いわゆる、これは審査の効率化のためということなんでしょうか。

更田政府特別補佐人 一言で申し上げますと、認識のずれを解消するための取組であります。

 特に泊三号機については、審査が長期化しているということもあり、また、私たちの投げかけた理解というものが先方の受け止める理解と異なっていたというようなやり取りがありますので、そういった意味で、相互理解をつくるというのが審査の上で大変重要なことですので、認識がきちんとお互いに伝わるようにといったものを目指した取組であります。

笠井委員 三月三十一日の審査会合で規制庁は、これまでは、審査の基本として、何をすべきかと規制委員会側で細かく言い過ぎないようにしてきた、本来、事業者側は自ら考えて安全を立証する、規制委員会側が言い過ぎないのが基本だが、泊については、規制委員会側の指摘を詳細に示すことで、乖離が生じることを防ぐ、双方の認識に乖離がないか確認をするというふうに述べております。

 まさに、審査側から論点を示して北海道電力側が回答する、認識に乖離がないようにするというのは、ある意味、聞こえがいいんですけれども、規制委員会側の問いに北海道電力側が正解を出すまで試験を続ける、まるで、生徒が試験で落第しないように、正解を出すまで指導する教師のようなものだというふうな印象を持つんですね。

 規制庁は、事業者側が自ら考えて答えを出すことが審査の基本と表明してきたわけですから、なぜ泊三号では基本を通さないのか。

 伺いますけれども、他社の審査において今回のような形式で回答や整理を求めたということはあるんでしょうか。

更田政府特別補佐人 立証責任が申請者側にあるということは、これはもう揺るぎないことであって、私たちが立証のための道筋を、ヒントのようなものを与えるというようなことはあってはならないと考えております。これは泊三号機の審査においても同様であります。

 一方で、私たちの投げたボールがきちんとキャッチされないですとか、申請者が私たちが求めてもいないような評価に長時間を費やしてしまうというようなことは、これもまたよろしくないと考えておりますので、そういった意味で、相互理解がきちんとなされる取組というのは大事だと考えています。

 これをまず泊三号機で今論点の文書化等々の取組をしておりますけれども、これは、他の審査においてもそれが有効であるというふうに考えられる場合には展開をしていけるものというふうに考えております。

笠井委員 では、他の審査においては、こうした回答や整理を求めるやり方はまだやったことはないと。

更田政府特別補佐人 個々の審査によって審査の状況等々は違いますけれども、私の理解している限りにおいては、泊三号機のような論点の文書化というような試みは、これが初めてであるというふうに認識をしています。

笠井委員 そういう意味では、前例のない審査の形式を取ったのはなぜかというのが問題になってくると思うんですね。

 四月六日の規制委員会では、規制庁から、三月三十一日の泊三号の審査会合の報告が行われております。その中で、こう言っております。

 泊三号に関連する審査の進捗を更に加速させるために何ができるかということで議論を行った、残された審査上の論点を改めて整理して、残された論点についての規制委員会側と事業者側の認識をそろえ、さらに、審査の進め方で工夫できることはないかといったことを議論した、残った論点についての原子力規制庁と北海道電力の認識が共通になり、北海道電力側の理解が深まり、審査の効率化につながる議論ができた、全体を通じて審査の進捗を進めることになるような充実した議論ができたという趣旨の報告を行っております。

 委員長に伺いますが、要するに、審査の効率化というのは、審査を早く終わらせることに通じる、その目的というのは、再稼働の推進という意味ではないんですか。

更田政府特別補佐人 残された論点という言い方に少し言葉の足りないところがあると思っていますのは、私は、常々、審査に当たる者に求めているところですが、ちゃぶ台返しを恐れるな、審査は終盤に向かってきているからもうこういったことは言わないでおこうというようなことは決してないようにと。当然のことながら、今、私たちが北海道電力に示している残された論点というのも、現時点で私たちが把握している論点という意味であって、今後新たな論点は浮上させないという意味では決してありません。

 そういった意味で、残された論点というのは、これを潰せば審査が終了するという保証を与えるものでもありませんし、ただ、今の時点で私たちはこれがポイントだと思っているよということをお互いに伝え合うということは、技術的、科学的に意味のある議論ができるということで、私たちはよい取組だと思っておりますけれども、残された論点というのは、これを潰したら終わりだよということを示すものでは決してありません。

笠井委員 四月六日の規制委員会後の定例会見で更田委員長は、記者から、泊三号機の議論で、規制側としての論点を整理して提示するというような若干異例の対応は手取り足取り感が否めないというふうに問われて、こう答えられております。確かに、正直なところ、手取り足取り感は出ているとお認めになりつつ、泊三スペシャルとまで言っておられるんですね。更田委員長は、柏崎刈羽をめぐって、たしか東電スペシャルということをおっしゃったことがあったと思うんですが、今度は泊もか、スペシャルと。

 箸の上げ下ろしは事業者の自主的取組を阻害すると繰り返し委員長はおっしゃってきたと思うんですけれども、今後の審査での規制委員会の技術的要求に対して北海道電力が適切な答えを返せないということであるなら、じゃ、審査をとにかく早く急げということじゃなくて、もう諦めろ、こういうふうに審査を打ち切るべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 これは、私自身、再三、難しいものだなというふうに自覚をしているところは、申請主義を取っておりますので、申請がされている限り、私たちは審査に応じるという立場を取っています。一方で、これだけ長く立証できないんだったら一旦取り下げたらどうだと。私たちも無駄なリソースをそこへ注ぐわけにはいきませんので、例えば、三年たって、四年たって一つの技術的論点に関してきちんとした立証ができないんだったら、一回申請を取り下げて、よし、またできるともし思うんだったらもう一回申請してくればいいじゃないかと本当に思うことは、泊ではなくて、ほかの事例にも私は思うところはあります。

 一方で、事業者は事業者として、様々な関係者の方々に対する理解を得るという観点も含めて、ずっと申請を続けます、説明を続けさせてくれと。その限りにおいて、私たちは、説明に来なくていいとか、申請を突き返すというような、行政機関としてそういった姿勢を取っておりませんので、申請はいつまでも続くという形になっているのは事実、先生のおっしゃるとおりだというふうに思います。

笠井委員 冒頭、今言われた、これだけ長く立証できないのであったら一旦取り下げたらどうだと。まさに私はそういう思いでいるわけなんですけれども、なかなか複雑ということを言われました。

 四月の十二日に、原子力規制委員会と北海道電力株式会社経営層による意見交換ということを議題にして、規制委員会の臨時会議が開かれました。北海道電力からは社長も出席をして、委員長と社長とのやり取りが主だったと思うんですけれども、これまでも規制委員会は、原発を運営する電力会社経営陣とは公開で意見交換を行っておりますけれども、今回は、従来と趣が違って、審査が遅れている泊三号機の審査を今後どうしていくかという内容だったと。

 なぜ今回は、泊三号機の審査にフォーカスしてそういう経営陣とやったんですか。

更田政府特別補佐人 これは、おっしゃるように、新しい取組であります。今までは、社長、会長といった経営層の方々との間の意見交換というのは、事業者の自らの安全に対する取組等々の状況を聞いて意見交換をするという形でしたが、今回の北海道電力との意見交換というのは、まさに泊三号機の審査の長期化を話題としております。

 一つ、まず、経営層と本件に関して意見交換を行った理由というのは、北海道電力に、特に電力会社として、これまで恐らく人材を厚く備えるということをしてこなかった地質であるとか火山であるとか、そういったものの人材に対してきちんとした投資をする意思があるか、そして、その意気込みがあるのかということを、これは経営者御自身の判断ということになりますので、そういった人材をそろえることについて、北海道電力経営層の意図を確認したいというのが大きな目的の一つでありました。

 それから、私たちは、私たちのボールの投げ方、向こうのキャッチの仕方等々についても新しい取組をしようとしているけれども、それについてどう思うかというような意見を伺うという趣旨をもって意見交換を行ったところでございます。

笠井委員 北海道電力側の的確な対応がなくて意思疎通がなかなかうまくいかなかったという中で、経営層の意図というのを確認したいと。

 まさに今言われたような、地震、津波とか火山について専門的議論に応じられる人材を抱えているのかどうかという問題とか、リソースの問題とか、かなりその点を指摘をされていますよね。

 更田委員長は、その後の記者会見で、そうした、そこで言われた発言の趣旨を問われて、北海道電力に対する要請と呼ぶべきか、督促と呼ぶべきか、懇願と呼ぶべきか、そういう言い方もされて前置きをされて、泊の審査チームを延々と抱え続けるわけにいかないという説明をされて、北海道電力について、いつも、ええ、頑張りますと言われる、がっちりとした手応えはなかったというふうに不信感をあらわにされたという記者会見での模様が明らかになっております。

 そこまで厳しい発言というのは、私、ある意味、規制委員長としては異例というふうにも思えるんですけれども、こうなると、北海道電力には原発を運転する資格があるのか、その適格性が、そこまで問われるという事態になっているんじゃないか。やり取りしてもそういうことになっておる、社長とやっても、そういうことをその後の記者会見でも委員長が言われる。

 そういう適格性の問題が問われるんじゃないかと思うんだけれども、その点はいかがでしょうか。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 地震や津波や火山の専門知識を備えた要員というのは、仮定の話ですけれども、一旦許可を受けて、また、御地元の理解等々も得て、発電所も動き出すと、必ずしも必要な人材というわけではありません。つまり、原子力発電所を運用して、運転してという人材ではなくて、火山に対する知識、それから活断層に対する知識というのは、あくまで許可を得るまでのプロセスで活躍する場があります。

 そういった意味で、電力事業者としては、そこへ大きな投資をするインセンティブがなかなか持ちにくいところがあるんですけれども、私たちが求めているのは、一旦許可を受けて、発電所の運用が始まっても、常に火山や地震等に関する最新の知識に関心を持って、最新の知見を理解できる要員を一定程度は電力会社に備えてほしいというふうに思っています。

 そういった意味で、北海道電力は、今、地質の議論をするときに他の機関から人を借りてこなきゃならないような状況が続いてきていますので、こういったところは改めてほしいと思っておりますけれども、一方で、今申し上げているように、こういった自然ハザードに関する要員というのが、一旦施設の運用が開始されてからも、いることが望ましいのは事実なんですけれども、運用に必須な要員というわけではないというふうに御理解いただきたいというふうに思います。

笠井委員 臨時会議の中で、更田委員長御自身が、社内の人的リソースの拡充に対する投資を惜しまないということを明確にしていただきたいと。そこまで強く言われたというのは、私は非常に印象に残っているので、だから、その辺のところが、本当に資格があるのかということにつながって、そして、一旦オーケーが出た後もそういうことが必要だという問題もあるということだと思うんですね。

 最後に伺いますけれども、審査の効率化ということがよく言われますが、この問題をめぐって、自由民主党の電力安定推進議員連盟が三月十日に採択した原子力発電所の緊急的稼働についての緊急決議という中にある要求項目の一つにこの審査の効率化がなっております。

 こう言っております。原子力規制委員会は、これまで以上に効率的な審査、検査に努めることに加え、停止中の原子力発電所を速やかに稼働させるため、安全の確保を優先しつつ、稼働に係る規制上の制約を一時的に除外する等の措置を講ずることということを求めているわけですが、四月二十一日の電気新聞は、その自民党の原子力規制に関する特別委員会の原子力規制をめぐる提案の素案の議論を報じております。

 審査の効率化や事業者とのコミュニケーション強化による予見性向上を求める方針で、常態化している審査長期化の是正などについて踏み込んだ提言を求める声が上がった、規制委員会が泊原発の審査で実施した事業者と今後の論点を確認し合う取組はよい試み、そして、審査効率化へ更に努めてほしいという所感が示されたということであります。

 委員長に伺いますけれども、今回の泊原発三号機の審査をめぐる一連の動きというのは、こうした議論と軌を一にしたものになっているんじゃないか、やはり、規制委員会による審査の効率化というのは、ここは確認したいんですけれども、停止中の原発を速やかに稼働させるためのものではない、そういうことはよろしいですね。

更田政府特別補佐人 これは私自身の理解ですけれども、効率化は必ずしも時間の短縮を意味するものではないと思っています。科学的、技術的な議論の密度を高めるというのも効率化ですから、より効率的な議論ができれば、私たちがより幾つもの技術的な着眼点を見つけることにつながって、密度の高い、効率的な、効果的な議論というのはかえって審査が長期化することだってあると思っていますので、効率化イコール短縮化だと考えているわけではありません。

 一方で、言った言わないを避けるというような意味においても、お互いの考えていることを文書化して取り交わすというような取組というのは、これはいい取組だろうというふうに思っておりますので、これは泊三で始めたものではありますが、効果的であると考えれば他の審査への展開というのも進めてよいのではないかというふうに思っています。

笠井委員 岸田総理は四月二十六日のテレビ東京の番組で、原子力発電所の再稼働をめぐって、原子力規制委員会の審査の合理化、効率化を図り、審査体制も強化しながら、できるだけ可能な原発は動かしていきたいというふうに述べて、総理としては、これまでになく踏み込んだ、再稼働に前のめりの考えを示されました。

 規制委員会は、効率化をめぐってのいろいろ議論はあると思うんですが、結局、そうした政府、推進側の土俵に乗ってしまってはいけないと思うんですね。

 前回の当委員会でも求めましたが、規制委員会は、設置法の第一条の「中立公正な立場で独立して職権を行使する」という目的規定に沿って、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一とする運営を貫いて適合性の審査に当たるべきことを強く求めて、今日の質問は終わります。

赤澤委員長 次回は、来る五月十日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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