衆議院

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第5号 令和4年6月3日(金曜日)

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令和四年六月三日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 赤澤 亮正君

   理事 大西 英男君 理事 神田 憲次君

   理事 鈴木 淳司君 理事 古川  康君

   理事 野間  健君 理事 伴野  豊君

   理事 伊東 信久君 理事 中野 洋昌君

      畦元 将吾君    井出 庸生君

      井林 辰憲君    石川 昭政君

      今村 雅弘君    江渡 聡徳君

      勝俣 孝明君    神田 潤一君

      新谷 正義君    高木 宏壽君

      長坂 康正君    西田 昭二君

      堀井  学君    堀内 詔子君

      松本  尚君    三ッ林裕巳君

      宮内 秀樹君    宮澤 博行君

      簗  和生君    阿部 知子君

      菅  直人君    山崎  誠君

      米山 隆一君    渡辺  創君

      藤巻 健太君    堀場 幸子君

      吉田とも代君    河西 宏一君

      平林  晃君    浅野  哲君

      笠井  亮君

    …………………………………

   経済産業副大臣      細田 健一君

   経済産業大臣政務官    岩田 和親君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            更田 豊志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松下  整君

   政府参考人

   (警察庁警備局警備運用部長)           安田 浩己君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     由良 英雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長)   須藤  治君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      松山 泰浩君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  門山 宏哲君     井出 庸生君

  江田 憲司君     山崎  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     松本  尚君

  山崎  誠君     江田 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  松本  尚君     門山 宏哲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

赤澤委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官松下整君、警察庁警備局警備運用部長安田浩己君、復興庁統括官由良英雄君、経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長須藤治君及び資源エネルギー庁電力・ガス事業部長松山泰浩君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤澤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。堀井学君。

堀井委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の堀井学でございます。

 質問の機会をいただき、委員長始め理事の皆様方に感謝を申し上げたいと思います。

 早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 皆様御存じのとおり、泊原発廃炉控訴の判決が五月三十一日に言い渡され、今後運転は認めないという司法の判断が下されました。過去には、福井地裁が関西電力大飯原発三号機、四号機の再稼働を認めない判決を下し、また水戸地裁が日本原子力発電東海第二原発の運転を認めない判決を下していますが、原子力規制委員会として各地域の地裁が下す判決についてどのように評価しているのか伺いたいところではありますが、更田委員長からはコメントは差し控えるという答弁になることが予測されますので、それらを踏まえまして政府の再稼働の方針について伺いたいと思います。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の泊発電所の訴訟も含めまして、裁判の結果につきましては、経済産業省としましてもコメントは控えさせていただきたいと思います。

 その上で、原発再稼働、原子力発電所再稼働についてのお尋ねでございますけれども、政府といたしましては、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めました原子力発電所につきましては、その判断を尊重し、地元の御理解を得ながら再稼働を進めるというのが方針でございますし、このことについては現在も変わりございません。

堀井委員 報道で伝えられる内容を見る限り、多くの国民が誤解をされていると思います。地裁の判決をテロップで緊急的に紹介したり、番組を切って、判決で運転を認めないと繰り返し報道となれば、もう再稼働できる手だてがなくなったと思う方も国民の中にはいるはずであります。最高裁の判決ならばニュースの速報としてテロップ出しも理解しますが、何を基準にしているのか、ほかの項目の地裁の裁判判決はそういったことをせずに、事原子力問題になると事を大きくする日本の報道の在り方に私は疑問を感じております。

 今回の判決は、北電と住民の裁判での判決であります。北電側が判決に不服を申し立て、控訴の手続に入りますので、次は高等裁判所での判断となります。

 原子力規制委員会はあくまでも再稼働をできる安全を確保できたかを調べるのが役割であり、審査基準に合格するならば、最終判断は都道府県、立地市町村となるわけであります。国民には理解し難い複雑な内容となっているので、多くの国民に一人でも理解者が増えてほしいと思ってやみません。

 次に、ALPS処理水についてお伺いをしたいと思います。

 東京電力福島第一原発で増え続ける汚染水を処理した上、希釈をして海に放出する東電の計画について、原子力規制委員会は事実上の合格を示す審査書案を了承したとあります。審査書案については、意見公募、パブリックコメントを経て正式に計画を許可するとあります。ALPS処理水の海洋放出を規制委員会が厳正なる審査を行った結果の了承でありますが、関係者の中には、いまだに消えぬ不安や心配、風評被害を恐れている方が少なくありません。

 更田委員長から、国会の答弁の中で規制委員会が安全と認めた理由を改めて国民にお示し願いたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 そもそも、私たちが定めている規制基準というものは、十分に人の健康や環境に影響が出ないような厳しい基準を設けているところであります。

 原子力規制委員会は、東京電力から申請された計画の内容について厳正に審査をした結果、この規制基準を満たしていることはもちろんのこと、さらに、政府方針にのっとって、はるかに保守的といいますか、必要以上に十分に希釈をして、そしてきっちり確認した上で海洋に放出するという計画であるということを確認しております。政府方針にのっとっているということは、これは安全上の小さな懸念すら起こり得ないようなレベルでの放出であるというふうに考えております。

堀井委員 非常に厳しい基準で、必要以上に十分に希釈をして、非常に安全であるということが今の更田委員長からの御答弁で明らかになったわけであります。適切に処理されたものであることが国民にも広く理解されて進められることを望みたいと思います。

 今後、実際に海洋放出が始まりますと、メディアはまた、事を荒立てるかのように連日ニュースとして広く国民に報道することが予測されますが、その都度、世界最高の安全水準を誇る原子力規制委員会が立ち会い、国民に対しては何度となく、安全である理由を広く国民に周知していくことが非常に大切になると感じています。独立性、中立性、透明性の確保を図り、組織体制の充実をつくり上げた原子力規制委員会だからこそのなせる業であります。

 安全である審査と同時に、更田委員長にはメディアにも出演していただいて、理解促進に一肌脱いでいただきたいと思います。海洋放出の時期には、来春と聞いておりますので、既に委員長の大役を終えられているのであれば、有識者の一人として引き続き日本の原子力と海洋の未来のためにお力をおかしいただければと考えます。お答えできる範囲で答弁を願いたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 少し繰り返しになりますが、ALPS処理水の海洋放出につきましては、これは、私が委員長になる前の田中委員長の下でも委員五人全員一致をして、また、私が委員長に就任してから現在に至るまで一貫して、委員全員が一貫して、海洋放出によって人の健康や環境に影響が出ることはないと申し上げております。

 これは、こういった言い方をしますと御批判を受けるかと思いますが、安全上の問題とすら言えないようなものであります。これは、安全上の懸念を持っていただくこと、もちろん風評被害を恐れる方のお気持ちは大変よく分かります。それから、事故を経た炉心を通ってきた水を、それをその後きれいにしたものであるとはいうものの、心理的な抵抗などが大きいものであることは私たちも十分理解をしております。したがいまして、多くの方の御理解をいただきながら進めなければならないことはよく承知しておりますけれども、安全上の問題が起きるということは到底考えられません。このことは一貫をしております。

 現時点では、私は委員長としての責任を全うすることが何より第一でありますし、退任後の活動について申し上げるのはふさわしくないとは思いますけれども、考えに変わりはありません。これについては、私の後、山中委員長の下でも変わらないものと思いますので、これは、情報の発信それから御理解をいただくための努力というものは委員会として続くことだと思いますし、原子力に携わる者の一人として責任の一翼はあるのであろうというふうに思っております。

堀井委員 恐らく、海洋放出の際は多くの報道機関が、今、ただいま海洋放出が始まりましたというような番組を立てて、国民をあおるようなこと、そして国際社会をあおるようなことをするのではないか。もちろん、これは報道としては大事なことではありますけれども、その際、コロナであった様々な専門的な報道番組のように、有識者やその知識を持たれた方々がよくコメントを出す場面がありますので、そういったところで、やはり原子力規制委員会の委員長を経験された方が安全ですよということを広く国民に周知していただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 次に、廃炉・汚染水・処理水対策チームにおいて、ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた行動計画が策定をされております。大きくは、一つ目に、風評を生じさせないための仕組みづくりとしての対策が六項目、二つ目に、風評に打ちかち安心して事業を継続、拡大できる仕組みづくりとしての対策が四項目。十の対策をもって、関係府省庁が連携をしてこれに臨んでいくわけであります。

 しかし、これは海洋放出による風評被害対策となります。現状は、コロナ禍による価格低迷の経済損失、国際情勢による燃油高騰と物価高、加えて海洋放出による風評被害を考えたとき、事業を継続するに当たって、将来不安は想像するに堪えません。こうした三つの負の連鎖が生じていることを理解して対策の強化を図っていかねばなりません。

 今後も対策の実施状況を継続的に確認し、状況に応じて随時、追加、見直しを行うとあります。一人の廃業者、離職者も出さないという覚悟で政策の充実強化を図るよう求めますが、処理水の風評被害が発生した場合の経産省そして関係省庁の決意をお願いしたいと思います。

須藤政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月の基本方針決定以降、自治体や農林水産漁業者を始め様々な方々との対話を重ねてまいりました。その中には、ALPS処理水の処分に伴い生ずる風評影響を懸念する声を御指摘がありましたように多くいただいております。これは強く認識をしておるところでございます。こうした声をしっかり受け止め、その御懸念を払拭するため、昨年十二月には政府として取り組むべき具体的な対策として行動計画を取りまとめました。

 今先生のお話にもございましたけれども、この計画では、IAEAの協力を得て科学的根拠に基づく安全性をまずしっかり発信していく、そういうことで安心を浸透させるなどの風評を生じさせない対策、あるいは、漁業者の設備投資や販路拡大に対する支援、基金や賠償等のセーフティーネットを充実させるなどの風評に打ちかつための対策など、様々な対策を講じることとしています。

 また、この計画では、今後とも地元の皆様の御意見を伺い、各産業の現状などをしっかり確認しつつ、随時必要な対策の追加、見直しを行っていくこととしております。

 こうした取組を政府一体となって実行していくことを通じまして、事業者の皆様に安心して事業を継続、拡大していただける、廃業とか離職というお言葉もございましたけれども、安心して事業を継続していただけるように関係省庁が連携して取り組んでまいりますし、廃炉を担当する経済産業省としても率先して責任を持って取り組んでまいりたいと考えております。

堀井委員 事故の現場、立地市町村、海洋放出がなされる場所、それぞれありますけれども、農林水産省に関わる一次産業の方々が注目をされておりますが、やはり、地域で観光に訪れる観光関連産業であったり、影響を受ける幅というのは非常に大きくなっていくんだろうと思います。そうしたことも踏まえて、日本経済全体やその地域に及ぼす影響をしっかり加味した上で政策推進に取り組まれるようにお願いしたいと思います。

 私は北海道の太平洋沿岸でありまして、この問題に対して非常に危機感を持たれている漁業者が数多くいることは皆様方にお伝えしたいと思います。浜を持たれる選挙区の方々は、この問題に関しては多くの御指摘をいただいているのではないかと思います。

 私の浜では、沿岸では冬の時期にスケトウダラ、タラコの漁が盛んになるわけであります。マダラも多く、その多くの出荷先が韓国であったり中国、アジア圏の国々であります。原発事故以降、その販路の拡大ができず、販路を失って非常に悩まれているという実情があります。今回、処理水の報道を受けて、更にこうした輸出に対する解禁が遠のくのではないかということで危惧をしております。落胆も広がっているのであります。

 これは、海洋放出によって近郊に起こる風評被害にとどまりません。太平洋全域、日本全域の風評対策となることが必要と考えます。先ほども申し上げたとおりであります。産業全体の問題だと考えております。政策推進に当たって、補助対象、給付対象の範囲について、もう既に政策として示されておりますが、いま一度、どういった規模でどれだけの事業規模を予定しているのか、お伺いをいたしたいと思います。

須藤政府参考人 ALPS処理水の処分による風評影響について心配する声は、福島のみならず、御指摘がございましたように、北海道を始め、様々な地域の漁業者を中心とする方々から伺っているところでございます。

 まずは、安全対策の徹底や科学的根拠に基づく情報発信など、風評を生じさせない対策を徹底することが大前提ではございます。

 その上で、そのような御懸念があることを踏まえまして、万一風評が生じた場合に備えて、水産物の需要減少への対応を全国で機動的に実施するための基金を令和三年度補正予算で三百億円措置してございます。

 具体的には、水産物の需要創出のための企業の食堂等への提供や多様な販路拡大の取組への支援、それから漁業者団体による水産物の一時的な買取り、保管、需要開拓の取組等への支援に加えまして、風評影響を防ぐためのALPS処理水の安全性に関する理解醸成の取組、これは海外を含めてということになろうかと思います、こういったことを行ってまいります。

 引き続き、漁業者の皆様を中心に御懸念、御不安を払拭していくべく、この基金事業等の着実な実施を含め、しっかりと対応してまいります。

堀井委員 ありがとうございます。

 実は私も、この三百億円の基金を含めて、政策の内容というのは各漁協の方にもお示しをさせていただいて、こういう形で、安全に、そしてもし何かあった場合にも対処できるような対策を国は取りますということでお示しをさせていただいております。しかしながら、どうしてもその政策の表を見るのはトップの方ばかりでありますから、一漁業者としては非常に不安を抱えているというのも事実であります。周知徹底も図った上で、着実にこの予算が消化されていくようにお願いを申し上げたいと思います。

 最後の質問とさせていただきます。

 更田委員長、委員として五年、委員長として五年の合わせて十年の任期が九月で終えようとしております。残された期間が三か月、残しているわけでありますけれども、そうした中でこの質問はふさわしいかふさわしくないかとは思いますけれども、国会も終わって参議院選挙が終われば、もうこの場で質疑に立ち更田委員長にお礼を申し上げる時間がございませんので、お許しいただきたいと思います。

 日本の原子力全体の問題解決に真剣に誠実に丁寧に御対応されている姿に、まだまだ委員長を続けていただきたいと思うのは私だけではないと思います。残りはまだ三か月ありますが、これまでの御尽力に心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 激務であったの一言に尽きますが、振り返って委員長として、日本の原子力問題に取り組み、自分自身が胸を誇れるものを是非教えていただきたいと思います。また、道半ばで離れる心残りの仕事も当然あってしかるべきでありますが、引継ぎをする際、次期山中委員長や委員の皆さんに継承したいこと、伝えたいことがあれば、教えていただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 ありがとうございます。

 科学的、技術的情報だけに基づいて独立した判断を貫くということはできたと思っております。また、事業者との間で、継続的改善の必要性、これに対する認識を共有できたことはよかったことだというふうに思っております。

 規制の質を高めるのには時間がかかり、また努力を要しますけれども、質を低下させる方は、これはもう一瞬で、一つの行動、判断で一気にその質は低下をしてしまいますので、初心を忘れないことが最も大事で、山中委員長以下、委員のメンバーには強い緊張感を保っていただきたいというふうに申し上げたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

堀井委員 国会は六月十五日で会期末です。この国会内にあともう一度質疑の場があると思いますので、それぞれの党の皆さんからもお礼の言葉があるのかと思います。参議院選挙後、臨時国会となった場合、身を粉にして十年もの長きにわたって頑張ってこられた更田委員長にねぎらいの言葉を我々は伝えることができませんので、この場で、残任期間三か月前に失礼ではありますが、一言お礼を述べさせていただきました。

 初心を忘れず強い緊張感を持って臨むこと、それらを我々も委員会として次期委員長に、このようなことを更田委員長が次期委員長と委員に申し上げていたということもしっかりお伝えしていきたいと思います。本当に長きにわたりありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

赤澤委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党の平林晃です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長始め関係の先生方に心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず冒頭、宮城県石巻、女川にまたがる東北電力女川原子力発電所についてお聞きをいたします。

 同原子力発電所に関しましては、基準に合格し、地元自治体も再稼働を了承しておられます。現在進められている安全対策工事が完了すれば再稼働される、およそ二年後になるということであります。

 この再稼働に向けて、住民の皆様の心配がやはり避難計画と伺っております。原発災害が発生した際に円滑に避難ができるのか、渋滞が発生して身動きが取れなくなってしまうのではないかと。とりわけ女川原発エリアに設定されている準PAZ、これは牡鹿半島先端部分と周辺離島であります。半島先端部については、陸路で避難をしようといたしますと、どうしてもこれは一旦PAZを通過せざるを得ない地域となっております。元々住んでいるのはPAZでないにもかかわらず、陸路で避難するとPAZを通過する、こういう状況になっているということであります。もし避難時に渋滞が発生して身動きが取れなくなったら、避難しているのかいないのか、本当に住民の皆様の心配は当然だと思っております。

 こうした不安に対しまして、エリアは少し北に上がりますが、国道三百九十八号線の石巻バイパスの整備が進められていると伺っております。再稼働が迫る中、こうした道路を是非急ぐ必要があるのではないか、これに限らず陸路の整備も更に必要ではないか、そして、それをも活用した実効性のある避難シミュレーションの実施も必要ではないのか。これらの件に関しまして、政府の認識をお伺いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問のありました女川地域におけます原子力災害時の住民の避難計画でございますが、これにつきましては、令和二年に女川地域の緊急時対応を取りまとめております。その中で、ただいま御指摘もありましたけれども、PAZや準PAZの住民の方の避難先や避難経路については詳細に定めるとともに、交通誘導対策を講ずるでありますとか交通規制対策を行うといったような、避難の円滑化に向けた対応策についても定めているところでございます。

 このように緊急時対応はもちろん取りまとめておるわけでございますけれども、原子力災害対応に終わりや完璧はないということはよく分かっておりますので、より一層の避難の円滑化に向けて、更なる改善に絶えず取り組んでいきたいと考えているところでございます。

 御指摘のありました国道三百九十八号石巻バイパス沢田工区の整備につきましては、今年の三月に国土交通省が新規事業として決定したというふうに承知しておりますけれども、こうした道路整備を始めとしました避難の円滑化に資する事業というのは地域住民の皆様の安全、安心の観点からも大変重要であると認識しておりますので、引き続き国土交通省などの関係省庁とともに連携してしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 また、内閣府としましても、ただいまちょっと、準PAZで避難が心配というようなお話でございましたけれども、非常に狭い道路の一部の拡張でありますとかのり面の強化といったものにつきましては内閣府の行います緊急時避難円滑化事業ということによっても対応可能でございますので、こうした事業に取り組む、あるいは御指摘のありました避難シミュレーションを必要に応じて行うといったことも含めまして、引き続き住民避難の円滑化に向けた対策を推進していきたいと考えております。

 いずれにしましても、原子力防災の備えに終わりや完璧がないことから、今後も地域の意見を聞きながら原子力防災体制の充実強化を図り、原子力災害対応の実効性向上にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

平林委員 ありがとうございます。本当に、僅かなことで逃れられたということも起こり得る話だと思いますので、是非とも細かい部分も含めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 ここで、質問ではないんですけれども、関連して、我が地元の中国地方におきまして、島根原発の再稼働、昨日、島根県知事が了承したというニュースも流れておりました。これに向けて再稼働の条件は全て整ったということでありますが、避難計画における周辺他県への避難の実効性など、不安は払拭されていないということも地元から伺っております。引き続き、この件も含めて御対応いただければありがたく存じます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、福島第一原子力発電所、一F廃炉の状況に関連してお聞きをいたします。

 ALPS処理水の海洋放出、このことに関しまして、先ほど堀井委員の方からも御質問があったことと重なってしまいますけれども、原子力規制委員会が審査、了承したということで、その中身、先ほどはざっくりとした御答弁だったと思いますので、少し、観点がどんな観点だったのかということも含めまして規制委員長に伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 今回の審査には特徴があります。

 といいますのは、まず私たちは規制の求めている要求に合致しているかどうかというところをしっかりと見てまいります。通常の審査はここで終わりですけれども、今回のALPS処理水の海洋放出に関しては、さらに、政府方針にのっとった計画となっているかどうかという確認も併せて行いました。そういった意味で私たち内部ではパートワン、パートツーというような言い方をしておりますけれども、政府方針は、規制の要求をはるかに超える安全、これは安心のためのものも含めてですけれども、非常に大量の希釈等も含んでおりますが、この政府方針にものっとったものであるかという確認を規制委員会としてしております。

 更に加えて、環境影響評価についても妥当な、環境影響評価といいましても、非常に希釈して出るものですから、出ないものをどう評価しようかとするもので、技術的には簡単なことではありませんけれども、東京電力が行った環境影響評価に関しても、妥当なものであるかというのを審査の中で確認しております。具体的には、混合が十分になされるかどうか、それから濃度の確認がきちんと行われるかどうか、さらに希釈が計画どおり行われるかどうか、そして何か異常が検知されたときにはきちんと停止することができるか、こういった点について審査を行ってきたところでございます。

平林委員 ありがとうございます。パートワン、パートツーということで、二段階の審査をされたということ。

 濃度に関して言えば、恐らく千五百ベクレルという値。日本の排水が六万ベクレルというふうにも伺っておりますので、これに比べると非常に低い値を恐らくパートツーで求められたのではないかなというふうに理解させていただきました。こういった意味で、科学的な安全性を規制委員会の方で御確認いただいたということでございます。

 この規制委員会の了承、五月十八日だったかと思いますけれども、時を同じくいたしまして、この日から二十日までIAEAのグロッシー事務局長が来日をされ、総理への表敬訪問、政府関係者との会談、一Fへの訪問などが行われたと報道されています。グロッシー事務局長は、ALPS処理水の海洋放出について支援の継続を表明したと承知いたしております。

 IAEAとの連携は、海洋放出実施状況の透明性の確保や国際的な情報発信の強化などの観点から極めて重要と認識をいたしております。今後のIAEAとの連携について政府はどのように構想しておられるのか、岩田大臣政務官にお伺いいたします。

岩田大臣政務官 お答えをいたします。

 グロッシーIAEA事務局長が五月に訪日をされ、福島第一原子力発電所の状況などを見ていただきました。その際、廃炉作業やALPS処理水放出のための準備において期待した以上に大きな進捗があり感銘を受けたなどの発言をいただいたところです。

 ALPS処理水につきましては、第三者による安全性の確認が重要です。そのため、IAEAから、処分の開始前、処分中、処分後の長期にわたりまして繰り返し評価をいただくこととしております。

 また、四月末には、IAEAが今年二月に行いましたIAEA職員と国際専門家によります評価の報告書を公表されまして、放出設備の安全性につきましては国際的な安全基準に照らして的確な予防措置が講じられていること、また、人への放射線の影響は規制当局が定める水準より大幅に小さいことなどの確認結果を示されました。

 さらに、IAEAは、ALPS処理水に関するサイトを新たに立ち上げ、日本語を含む七か国語で情報発信をしていただいております。

 今後も、ALPS処理水の安全性につきまして国際社会からの御理解を深めていただくために、IAEAに全面的に協力をするとともに、引き続き丁寧な情報発信を継続してまいります。

平林委員 ありがとうございます。本当に様々な協力を構想していただいているということで理解させていただきました。このIAEAとの協力は国内だけではなくて国際的な観点からも本当に重要であるというふうに考えておりますので、報道もございましたけれども、本当に政府の方から積極的な情報発信をしていっていただければというふうに考えておりますので、是非ともよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、科学的な観点の安全性の証明でありますとか国際的な連携、こういった様々な努力をする一方ではありますけれども、風評被害に関する心配はなかなか払拭されることはございません。

 前回、四月二十八日に私はここでも質問に立たせていただきましたが、風評被害を起こさない努力を徹底する、これはまず本当にそのとおりだと思いますけれども、そのときの御答弁の中で、対策を講じてもなお生じる風評に備えまして基金や賠償等のセーフティーネットの充実も図ることとしております、このように述べていただいておりました。

 大変ありがたいこととは存じますが、問題は立証というところであるというふうに思います。

 昨年八月二十四日の関係閣僚会議の当面の対策の取りまとめというところにおきましては、立証の負担を被害者に一方的に寄せることなく、被害の実態に見合った必要十分な賠償をセーフティーネットとして機能させるというふうに記述してあります。

 この部分だけを見ますと、これも本当にありがたい部分だと思うんですけれども、ただ、東北の皆様には、十一年前の賠償、これがなかなか認められなかったという思いがあると伺っております。例えば、宮城県南部の生乳業者、牛乳が売れなくなったけれども立証できなくて賠償を受けられなくなったとか、同じ宮城県の北部、水産加工業者が受けられなかったとかいうこともお聞きをしております。

 こうした事例も含めまして十一年前の対応をどう評価され、それと比べて今回は幅広い救済をしていただけるのか、前回されなかったような方も含めて今回はされるのかどうか、こういった点に関して政府の見解を伺います。

須藤政府参考人 お答えをいたします。

 東京電力の賠償に対する姿勢については、風評があったかなかったか、あるいは、損害額の確認のために大量の証拠書類を求められ、被害者の側に相当な御負担になっていると。私も地元に入って、こちらが被害者なのにこんなに負担が重いのかという厳しい意見というか、率直に言うとお叱りをいただくこともございます。大変重く受け止めているところでございます。

 そのため、政府方針では、東京電力に対して、まず賠償の期間、それから賠償の地域、業種、これを画一的に限定することなく対応すること、時間がたっているから駄目よとか、福島じゃないから駄目よとか、水産業じゃないから駄目よ、こう言わない、被害が出れば対応するんだということ、それから、客観的な統計データの分析等により立証負担を被害者に一方的に寄せることなく対応すること、できるだけみんなに見える、統計データの分析等を使うということを明記するとともに、政府としても、東京電力と風評被害を懸念する事業者団体等に賠償の枠組みを説明し、御意見、御要望を今お聞きしているところでございます。

 今後とも、東京電力を指導するということに加えまして、国が前面に立って、賠償基準の検討や事業者団体との協議を進め、被害の実態に見合った必要十分な賠償が迅速に行われるように取り組んでまいります。

平林委員 地域、期間、業種を限定せず、客観性を持って対応していただけるということでございました。

 十一年前とは違う対応を是非ともお願いしたいというふうに思います。本当に、この十一年間、私は東北の人間ではないので伺っているだけではありますけれども、本当につらい思いをしておられているということは間違いございませんので、是非とも寄り添った対応をお願いできればと思います。

 続きまして、東京電力による五月十九日に撮影の福島第一原発一号機の原子炉格納容器内部映像に関しまして、私もニュース報道によって拝見をさせていただきました。ペデスタルと呼ばれる部位が、元々コンクリートで覆われていたわけですけれども、今回の映像で確認する限り、内部の鉄骨がむき出しになっていると。テレビのインタビューに答えておられた経産省の参事官も、ちょっとびっくりですねというふうに言っておられたわけですけれども。更田委員長御自身も、大きな地震に襲われたとき、耐震性の評価どおりにもってくれるのかというのは懸念事項としてあるというふうにも述べておられます。

 万が一の事象によりペデスタルが崩壊すれば、圧力容器は当然落下すると考えられます。その場合に想定されること、あるいは廃炉計画に与える影響を更田委員長にお伺いいたします。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 御質問にもありましたように、格納容器内部調査において、ペデスタルの一部が、いわゆる鉄骨がむき出しになるような状態、鉄筋コンクリートの鉄骨がむき出しになるような状態が確認をされました。

 あの部分は事故のときに高温であるとかそれから蒸気にさらされていますので損傷しているということは予想はされましたけれども、一方で、具体的に目の当たりにすると、やはり、あっ、こういうふうになっているのかというのは、新たな、そうですね、驚いたというか、写真を目の当たりにすると、損傷の状態を見て、当然のことながら、じゃ、こういう状態になっていたときに、上の圧力容器を支えているわけですから、地震等に襲われたらどうなのかと。

 ペデスタル、もとより相当頑丈に造られてはいますので、かなりの部分がなくなったとしても圧力容器を地震の際にも支えることはできますけれども、やはり、まだごく一部の視野しか写真も撮れていないわけですので、そういった意味で、東京電力としては、どういうことが起きたらどういうふうな対処をする。

 実際は、例えば補強しようにも、すぐに対処ができるわけではありませんので、今の時点ではやはり、考えておくこと、こういうことが起きたらどうしようということを考えておくということが大変重要であるというふうに考えております。

平林委員 本当に、放射能が極めて高いエリアであり、対処が難しいということは私も想像できるところであります。そういった意味におきまして、しっかりと今から何かあった場合のことを考えておくということは大切だと思います。

 今のペデスタルの問題もそうですし、デブリ取り出しの問題もそうですが、技術革新が重要になってくると思っております。四月二十六日の本会議において成立した福島特措法の中で福島国際研究教育機構がありますけれども、この役割に期待したいと考えます。

 政府としても、本年九月に立地を決定し、来年四月の機構設立を目指して準備にいそしんでおられることと思います。廃炉計画における同機構に対する期待及びその期待の実現に向けた現在の取組を政府に伺います。

由良政府参考人 お答え申し上げます。

 福島国際研究教育機構は、福島を始め東北の被災地における中長期の課題の解決、ひいては世界共通の課題の解決に資する国内外に誇れる研究開発を推進していきたいと考えており、具体的な分野としては、ロボット、農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療、原子力災害に関するデータや知見の集積・発信の五分野を基本として研究を推進することとしております。

 廃炉は福島の復興のために必要な大きな課題でございますので、新機構としても、廃炉作業の着実な推進を支える技術開発として、ロボット、放射線科学・創薬等の研究開発に取り組むこととしております。特にロボット分野においては、高い放射線の中など、様々な過酷環境の下で作業を実行できる遠隔操作ロボットの研究開発などに取り組むことを想定しております。ほかの分野でも、廃炉に貢献できる技術開発を検討しているところでございます。

 改正法が公布されましたので、今後、新産業創出等研究開発基本計画等を策定し、機構における研究の具体的な中身について定めていく予定でございます。機構においてロボット開発や放射線科学研究で得られる知見を通じて廃炉事業の一層の加速化が期待されるところ、その実現のため、関係機関と連携しながら、その機能が十分に発揮されるよう、復興庁としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

平林委員 ありがとうございます。

 様々な御構想ですけれども、それを進めていくのはやはり、研究者、人であるというふうに思います。優秀な研究者を集めるという意味において、例えば兼業も含めまして様々なアイデアを使いながら立派な研究者を集めていただきたい、そのように考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 時間となりました。更田委員長に私からも御礼を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 また、他のスケジュールとの関係で、質疑の順番についても御配慮いただき、ありがとうございます。

 それでは、本日は僅かな時間しかございませんので早速質問に入りたいと思いますが、質疑順をちょっと一部変更させていただきまして、革新炉に関する質問から入らせていただきたいと思います。

 皆様御承知のように、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が非常に世界的に上昇しております。改めて日本にはエネルギー安全保障の重要性というものが突きつけられておりまして、我々国民民主党といたしましても、原子力発電所の再稼働、そして革新炉へのリプレースなどといった提案を先般させていただきました。その中で改めて注目されるのが、SMRや高温ガス炉といった次世代炉であります。

 五月二十七日の予算委員会で岸田総理は、原子力について、再稼働はしっかりと進めていきたいと答弁する一方、リプレースは現時点では想定していないという趣旨の発言をされました。

 まず、政府にお伺いしたいと思いますが、政府は、SMRや高温ガス炉など次世代炉の研究炉、実証炉の構築といったものは想定しておりますでしょうか。研究炉、実証炉についての質問です。よろしくお願いします。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇五〇年のカーボンニュートラル実現に向けましてあらゆる選択肢を追求していく、このためには、SMRや高温ガス炉等の革新原子炉の研究開発はもちろんでございますし、また、原子力産業の将来を支えていく技術、人材を育成していく上でも、研究炉や実証炉を通じた活動というのは極めて重要なものだと考えてございます。

 こうした中で、例えば、現在、文部科学省を中心に「もんじゅ」のサイトに設置する新たな試験研究炉についての検討が進められているところだと承知してございます。

 引き続き、研究炉や実証炉を活用した取組に産業界が参画し、更なる成果の実現、普及につながるように働きかけていきたいと思っておりますし、関係省庁と連携して、研究開発の環境の整備についてサポートしていきたいと考えてございます。

浅野委員 御答弁をありがとうございました。

 続いて、更田委員長にお伺いをしたいと思います。

 今の話でもありましたように、今後のカーボンニュートラル社会実現に向けて、革新炉に向けた研究開発や実証といったものは今後も国として取り組むという方針があるということでございます。そうなりますと、やはり規制側としてもこうした新たな動きに対応する備えをしておかなければいけないのではないかと思うわけでありますけれども、規制委員会としてSMRや高温ガス炉の安全基準や規制の在り方について現時点で調査研究を行っているのかどうか、その事実関係を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 まず、原則ですが、新技術の導入を促すというのは規制の大事な役割の一つだというふうに認識しています。その上で、特に米国やカナダ、英国等を始めとして、SMRの導入に関しては、規制に係る根幹の考え方に触れるような、アプローチの大きな変革が図られようとしています。

 そういった意味で、今、国際的ないわゆる規制のコミュニティーでもSMR導入に関する議論というのは極めて活発に行われています。我が国では導入の計画がないからといって、これから引いた形でいると、私たちは新しい考え方から取り残されることになります。これを規制委員会としては恐れていますので、国内に具体的な計画があるわけではありませんけれども、こういった各国規制当局の議論には参加をしておりますし、また、国際コミュニティーでの議論にも参加をして調査研究を進めているところでございます。

浅野委員 ありがとうございます。その委員長の御姿勢、規制委員会の姿勢というのは非常に私は大事だと思いますし、今後とも維持していただきたいと思います。

 今御答弁の中にもございましたように、国際的な規制の在り方、そういったことを議論するコミュニティーに参加しているということだったんですが、もう少し具体的にちょっとお伺いをしたいんですけれども。

 SMRの安全基準や規制の在り方については、IAEAのSMR規制者フォーラムというものがあるというふうに聞いております。このフォーラムにおいて各国のSMR規制に関する知見と経験が共有されたり議論されたりしているというふうに聞いております。こういった場に、私が以前事務方に聞いたところですと、このフォーラムには日本はこれまで参加してこなかったというふうな話を聞いたんですが、その事実関係の確認と、もし参加していないのであれば今後は参加すべきではないかと思いますので、SMR規制者フォーラムに関して御答弁をいただきたいと思います。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 まず、SMRの規制者フォーラムですが、昨年まではオブザーバーとしての参加をしておりました。今年に入りまして正式なメンバーとして登録をして、議論に加わっているところであります。

 また、同じIAEAでは、グロッシー事務局長のリーダーシップによって、新たなSMRに関する規制の考え方と、さらに導入側の考え方に関する議論をする場というのが設けられようとしておりまして、六月に第一回会合が開催される予定となっておりますが、これも、先般グロッシー事務局長が来日された際に招聘を受けまして、原子力規制委員会としても参加をする予定にしておるところでございます。

浅野委員 どうもありがとうございます。

 時間が終わりますので、最後、コメントにとどめておきたいと思います。

 我々がSMRに注目している理由といたしましては、大型炉と比べて期待される特徴が幾つかございます。例えば、発電に使用する核燃料の量が少なくて済むため、炉心の自然冷却による受動的安全性が向上したり、あるいは、EPZ、防災対策重点区域を現状よりも縮小できる可能性もあるのではないか、また、モジュール型の装置ですので、建設期間や費用の圧縮、機動的な出力調整や熱源としての多面的な利用、こういったことが期待されているわけでございます。是非、これから、この規制の在り方、国際的な連携をより密にしていただいて、我が国としてもこうした流れに乗り遅れないように御尽力いただきたいと思います。

 最後に、私からも、更田委員長に対しまして、これまでの十年間にわたって大変な重責を担われた、このことに心から敬意と感謝を申し上げ、私の発言を終わりたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 立憲民主党の阿部知子です。

 本日は、委員長在任中に大変熱心に更田委員長がお取り組みくださいました核物質防護規定違反について、改めてお伺いをいたします。

 原子力規制委員会では、二〇二〇年の九月までに起きた柏崎刈羽の不正IDカード事案、他人のIDを使って入構したりですね、そうした事案と、核物質防護設備の機能喪失事案、本来保安施設としてしっかりと機能を持っているものが壊れていたりして、侵入探知機等々ですけれども、そうしたものが放置されている事案について、この間、いわゆる追加検査として、二〇二一年四月から現在に至るまで、この柏崎刈羽の体制についていろいろ追加検査を行っている最中と思います。そして、その検査中に、実は昨年十二月、また、協力企業の社員が既に期限の切れたIDカードでここに入構するということが起きております。

 現状ではこうした不正ID使用によって核燃料棒の移動が禁じられて検査をしているという、まさに検査中にまた起きるというようなことについて、更田委員長はどのようにお考えでしょう。

更田政府特別補佐人 御質問にありましたように、柏崎刈羽原子力発電所に対して、現在追加検査中ではありますけれども、追加検査中であっても御指摘の事案のような問題というのは起こらないとは言えないと思っています。今回の事案は、うっかり期限を過ぎていた、ただし、それが最初に検知されずに、何回か期限の切れたもので入ってしまって、何回目かに気づいたので、過去これで入っていたんだねということが分かったと。大事なことは、東京電力がこうした問題の原因を究明して、これに適切な対策を講じて是正を図れるかどうかであるというふうに考えております。

 この事案につきましては、今後とも、検査を通じて確認をしておりますけれども、この事案だけに関して言うと、検査指摘事項には該当しないというふうに捉えております。

 なお、原子力規制委員会としましては、事業者が適切に是正措置を講じて再発防止策が徹底されることが重要と考えておりまして、東京電力の対応を検査の枠組みの中で確認し、必要に応じて追加検査においても改善措置計画の活動内容として確認をしていきたいというふうに考えております。

阿部(知)委員 委員長のお言葉ですが、そうした感覚というのは私はちょっと違うと思うんですね。うっかり事案だからこういうことは起こらないわけではないとおっしゃいますが、今検査中で、その意味で、うっかりすることも含めてやはりこれを起こらないようにしていかなきゃいけないというのが当然の姿勢なんだと思うんです。そうでなければ、柏崎刈羽周辺の方々は、不正IDカード入構のことが根本的には改まっていないし、不安でならないと。

 続いて、実は、五月十一日にも新たな不正ID使用事件が発覚をしております。実はこれは、関連企業の社員ではなくて、東電の本社の社員がまた入構期限の切れたIDカードで入ってしまう。委員長がおっしゃったように、それは今の追加検査項目にはない事案だからといっても、私は、うっかりが許されないような、確かに、期限切れのものを使うということはないわけではない、でも核物質防護規定というのはそうした慎重な扱いをしなければならないという、これが基本なんだと思うんです。

 委員長は今回、東電の本社の社員がこうした期限切れのものを用いて入構した、委員長が指揮してやってくださっている追加検査について中間報告が出たと思うんですけれども、そこでは、こうしたID不正事件や核物質防護の様々な施設の故障がきちんと早急に保全されないのは、柏崎刈羽原発独自のことなのか、あるいは東電の電力会社としての体質か、さらに他の電力会社はどうかというふうに三つに区分して検証したところ、柏崎刈羽の問題であるというふうに中間報告では御指摘であります。

 しかし、本社の社員もまた同じように期限切れで入ってしまうとなれば、せっかく委員長がやってくださっているこの追加検査の取りまとめにも反するような事態だと思いますが、これはいかがお考えですか。

更田政府特別補佐人 二つのことをお答えしようと思います。

 まず一つは、これは安全の問題でもセキュリティーの問題でも同様ですけれども、重要なことは重要なこととして、軽微なことは軽微なこととして捉える姿勢がないと、規制というのは実施することができません。むしろ、東京電力は心を入れ替えたから軽微なことは一切起きませんというような、要するにいわゆるゼロリスクに近いもの、これを求めることというのはかえって危険だと思っています。

 私は、仮に東京電力が核物質防護に関して極めて立派な体制を構築したとしても軽微な事象というのは起きるんだろうと思っています。軽微な事象は起きてはならないというようなのは、ある種、これは会見でも申し上げておりますけれども、うそ臭くて、こういった、何といいますか、ファンタジーにとらわれてしまうことは、問題の本質を見誤るのではないかというふうに考えております。

 それから、御質問の後半にありました中間取りまとめで申し上げたことですけれども、本社が白だというふうに申し上げているわけでは決してありません。

 ただ、福島第一と福島第二では、柏崎刈羽と同様なような不適切な状態というのは確認されませんでした。それを捉えて、本社と柏崎刈羽原子力発電所の関係も含めて、柏崎刈羽に固有の問題があったというふうに捉えております。

 繰り返しますけれども、決して本社が白だと申し上げているわけではありません。

阿部(知)委員 私が申し上げたかったことがちょっと伝わっていないんだと思います。これからも軽微な事案は起こらないわけではないと。それはある意味、これを軽微と見るかどうかは、私は違うと思いますけれども、委員長がそうお考えでしょう。

 しかし、私どもが外から入構いたします場合には、極めて厳密に身分証明書とその有効期限をチェックされております。私がここに見るのはいわゆる身内文化です。関係者であれば期限が切れていても他の人のでもよい、これが続いているのではないかと懸念をします。そして、そこに何かいろいろなものが入り込む余地があると私は考えます。軽微なものが起こらない、それが安全なんだと言いたいのではないのです。私が思う企業文化というもの、特に、自分たちの身内については甘く、外についてチェックしているという、そのやり方自身を変えていかないといけないんじゃないかと私は思います。

 そして、委員長の御指示で今度、柏崎刈羽で様々なそうした行動様式も含めて行動観察をされるということですが、それは東電の本社も含めてやっていただきたい。というのも、東京電力の柏崎原発なわけで、柏崎には特に問題があるというのは私も思っています。だけれども、こうした自分の中には甘く外にはというふうなものは風土的なものではないかということも思います。

 行動観察はどこまで広げられるんでしょう。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 繰り返しますが、本社を白だと思っているわけではありませんので、当然検査の対象には、今後とも、本社、マネジメントの在り方というのは検査の対象となってまいります。それから、内に甘く外にということももちろん私たちは関心を持っているところではありますけれども、一方で、たまにいらっしゃる方と日常的に入られる方のチェックという点では、私は、問題は日常的に入る人の方に起きやすいんだと考えています。そこの難しさというのをどう捉えるかというのも今後の検査を通じてのポイントだろうというふうに思っております。

阿部(知)委員 おっしゃるとおりで、日常的な方が気が緩みますので、しかし、そうしたところに問題が起きると。私もそれは委員長と同意をいたします。

 そして、私が東電自体に内在する問題がやはりあるのであろうと思うのは、委員長が追加事項で検査をされた中で指摘されているのでお気づきと思いますが、実はこの柏崎刈羽では探知器の故障を一年近く放置した、その背景には、そうした安全管理を外注、外に委ねて、委ねるときに外の会社から対処が遅れることがありますよという注意を受けながら、コスト、やっぱり安いからという形で、これを自社管理にしたわけです。そして、故障を一年近く放置した。約一年間で、一年は長いですけれども、そうした放置した事案が二十一件に及ぶわけです。

 もちろん会社ですから安全管理にコストは重要ですが、それと安全とをてんびんにかけるような思考を取ってはならないというのが東京電力福島第一原発事故で分かったことです。津波の危険性が言われながら、それに対策せず、結局はあの事故を引き起こした。私がここに見るのは、安全管理においてしっかりとした措置、対策ができることを第一にしなければと。それが更田委員長がやっておられる原子力規制庁の安全性についての姿勢なんだと思いますが、これについてはいかがでしょう。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 これは数年前にもお答えをした中にあるんですが、東京電力に、特定することがなかなか難しいんですけれども、コミュニケーションといいますか、どのような組織もトップダウンとそれからボトムアップがうまく組み合わさって安全であるとかセキュリティーが守れる構造であると思うんですが、東京電力の場合に、例えば今回は、現場の方は問題があることを承知していた、それが現場の声としてきちんと上まで届かなかった。これは他の電力や他の組織でも起こり得ることではあるんですけれども、やはりその中で柏崎刈羽の問題に特徴的な部分がありました。当然その中に本社も関与しているわけですので、決して本社を検査の対象外としたわけではありませんけれども、この東京電力の固有の問題というのをちょっと捉えかねているところはあります。

 繰り返し申し上げておることですけれども、格納容器漏えい率試験で意図的に規制当局を欺こうとした電力会社でもあります。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故の当事者であります。さらに、事故の反省の下で、核物質防護に関しては他の電力に見られないような問題が起きている。ここに一貫するものは何だろうかというのを捉えるということが大変重要だと思っておりますので、先生の御指摘も含めて、まだ検査を続けているところでありますけれども、しっかりと把握に努めたいというふうに思っております。

阿部(知)委員 今委員長から御答弁いただきましたように、東京電力が福島第一原発事故を起こし、それ以外にも様々な柏崎刈羽での不正事案も、IDや核物質防護の保安設備以外にもございました。そうしたものを考えたときに果たして運転者としての適格性はあるのか、私は前からそれを指摘しておって。

 資料の最後のページにつけさせていただきましたが、今はレッドカード状態、第四区分でありますが、その第四区分の中でありながら、さっきの保安施設の点検等々を外注をやめ、故障を直しもせず放置する。それであっては、私はこれは第五区分相当だと思います。事業者が国民の健康と安全の保護を確保するための安全活動を実施しているとはとても言えない状態にあろうかと思います。

 今の委員長の問題意識は、これから解明されるということでありますので、今回、委員長が代わられるに当たって、本当によくやっていただきましたこの核物質防護規定違反の問題をしっかりと次にも引き継いでいただきまして。安心と安全が違うことは分かります。でも、安全性が担保されていないというのも事実でありますので、御尽力いただきますことをお願い申し上げて、最後、御答弁をお願いいたします。

更田政府特別補佐人 まだ、柏崎刈羽の核物質防護に係るものに関して、検査中でありますし、当然、特定、把握、私たちの理解もまだ道半ばであります。委員間での議論も活発にしておりますし、委員長が代わっても原子力規制委員会が厳正な姿勢で臨むという点に変わりはないということは間違いないというふうに考えております。

阿部(知)委員 ありがとうございます。

 終わらせていただきます。

赤澤委員長 次に、渡辺創君。

渡辺(創)委員 立憲民主党の渡辺創でございます。本委員会では初めての質問となります。よろしくお願いいたします。

 先日、福島県の双葉町にある東日本大震災・原子力災害伝承館を訪ねました。東日本大震災の被災地には何度か足を運んでおりますけれども、コロナ禍もあり、福島県へは約三年ぶりに伺いました。

 常磐線で双葉駅まで向かいましたが、車窓からは、かつて田畑であったであろう場所に低木が育ち、夏草が広がっている手つかずの風景が見えました。この地で人間の営みが突然方向性を失ったということの象徴のように感じられ、大変胸が痛む思いがしたところです。

 さて、この伝承館ですが、令和二年九月にオープンしています。あの日からの経験、未来への教訓とのテーマが掲げられていますが、貴重な資料が展示をされ、特に住民の証言等を基に、福島県が大震災、津波そして原子力事故という複合災害にどう向き合わざるを得なかったのかということが主眼の一つになっています。

 オープンの際には当時の菅総理も来館されているようですが、現在の岸田政権で原子力防災を担当されている山口大臣は同館に訪問されたことがあるでしょうか。

松下政府参考人 お答え申し上げます。

 山口大臣でございますが、震災直後に被災地を訪問したことはあるものの、令和三年十月に内閣府原子力防災担当大臣として着任して以降、福島県双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館に訪問したことはないと伺っております。

 なお、山口大臣としては、時間が許せば当該伝承館にいずれ訪問したい意向であると聞いております。

渡辺(創)委員 意向であるということなので、是非と思うんですけれども、国内で唯一、原子力防災というのをきちんと考えることができる施設であるわけですので。

 実は、私が行っているときに修学旅行生が来ておりましたけれども、一生懸命見られているんですが、今の中学生ぐらいの年代であると東日本大震災が起こったときには認識ができるような年齢ではなかったから、やはりこうやって薄れていくんだなとすごく感じました。

 その意味でも、国民に原子力防災を担当している大臣がそこをしっかり伺っておくというのは姿勢として重要なことではないかというふうに思いますので、もちろんいろいろな業務もあられてお忙しい中だというふうに思いますけれども、是非、この重要な意義を考えていただいて、早期の訪問を期待したいと思っておりますので、しっかりお伝えいただきたいというふうに思います。

 また、同館で、地元紙、福島民友新聞社が震災から十年に合わせて出版した「東日本大震災十年 証言あの時」を購入して読みました。

 この複合災害と向き合ってきた自治体のトップや関わった閣僚など、二十八人の証言が記されています。大混乱の中でそれぞれの立場から何を守ろうと奮闘し、どのような後悔を持ち苦悩し続けてきたのか、実に価値のある証言集であるというふうに思いました。その中でも、私は、情報が乏しい大混乱の中で被曝の恐怖を抱えながら、ある意味では羅針盤なく取り組まざるを得なかった住民避難に関する部分が非常に印象に残りましたし、住民避難の責任の所在が不明瞭な現状に対して警鐘を鳴らしているというふうに感じたところです。

 今回の質問では、万が一の際の避難計画を中心とした緊急時対応を中心に質問してまいりたいと思います。

 現行制度のおさらいから入りますが、原発から半径三十キロ圏内にある自治体は原子力防災の対策が必要なわけです。住民の避難に関しては、対象となる自治体が作った計画を基に、原発立地の十三地域ごとに設置された地域原子力防災協議会で避難計画を含む緊急時対応が原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であるかを確認し、その上で総理が議長を務める原子力防災会議に報告し、同じく具体的かつ合理的になっていることを国として了承するということにされています。

 済みません、私、昨年秋に通ったばかりですので基本的な質問をさせていただきますが、ここで言う了承という意味はどのようなもので、どのような作業を具体的に行っているのか確認したいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのありました原子力防災会議における了承ということでありますが、ただいま委員から御指摘がありましたとおり、これに先立ちまして地域原子力防災協議会において地域の緊急時対応が原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることの確認が行われるわけでございますが、その確認した結果について報告を受けまして、原子力防災会議として異議がないことを確認するプロセス、これが了承でございます。

渡辺(創)委員 では、確認していきたいと思いますけれども。

 今まで原子力防災会議の開かれているものの議事要旨を確認いたしましたが、緊急時対応の取りまとめが必要な十六地域のうち、現在、九地域でこの了承という作業がなされています。緊急時対応が議題となっているときには、毎回、同会議の席上では、原子力防災担当大臣から報告があり、それを受けて原子力規制委員長が原子力災害対策指針に沿った具体的で合理的なものであると考えているという旨の発言をし、その後関係閣僚の発言が続いて、最後に総理が了承したという形でその作業が終わっているというふうに議事要旨からは確認できます。

 そこで、確認なんですが、どうしても文書を見ていると形式的な了承作業を行っているというふうに見えますけれども、今まで前例もありませんし、現実的には想像し難いですが、もし仮に原子力防災会議が緊急時対応を了承しないというふうに判断した場合は、理屈上、地域原子力防災協議会での確認が不十分であったという理解になるのが自然だというふうに思いますけれども、その際には地域原子力防災協議会での作業をやり直すということになるのか。まあ、実態としてなかなかこういうことは起こらないというのは分かっておりますけれども、理屈の整理としてどうなっているのかということを確認したいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 仮に、委員御指摘のような、緊急時対応について原子力防災会議で了承が得られないといったような事態になりましたら、これは当然、地域原子力防災協議会において再度検討を行うということになると考えております。

渡辺(創)委員 ということは、そこの場で了承しないということがあり得るということなので、差し戻して、じゃ、事実上、地域原子力防災協議会がその内容についてもう一回改めて決めるわけですよね。それをもう一回了承するということであれば、了承という言葉の意味が責任の所在を含めて明確になっていませんけれども、最終的に決定をするという権限はやはり一番上の会議にあるということの理解になるようになると思うんですけれども、そこはどうでしょうか。もう一度、了承の意味も含めて、つまり、どこに責任があって、誰が決定をすることができるのかということを含めて御答弁ください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 緊急時対応を取りまとめる主体は、あくまで地域の原子力防災協議会でございます。協議会が取りまとめ、原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であることを確認した、それについて原子力防災会議は了承を与えるというものでございます。

 もちろん、その了承の中には、内容が原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であるという判断も含まれていれば、さらにその確認のプロセス、これがきちんと行われているということの両方を含むと考えますけれども、それによって緊急時対応を取りまとめた主体が原子力防災会議に変わるというものではありません。その意味で、決定ではなく了承であるということでございます。

渡辺(創)委員 では、ちょっと聞き方を変えたいというふうに思うんですが、何が言いたいのかというと、責任がどこにあるのか。極めて重要なものですよね。十一年前の経験の中ではそこがしっかり整っていなかったからこそ今こういうことをやらなきゃいけないという問題意識を持って取り組んでいるわけです。その中で、住民の避難、そして場合によっては命にも関わることがここで決定づけられるようにした。極めて大きな判断ですよね。そんなことだからあえて確認をしていきたいんですが、やはりそこをクリアにする必要があると思うんですけれども。

 現状のスキームを踏まえれば、内閣府という立場で見たら、内閣府はまず、県、市町村の地域防災計画、避難計画の策定を支援する立場というふうになっています。そして、今議題になっている地域原子力防災協議会を設置して参加する、そして支援をするという立場というふうに位置づけているわけですが、これを普通の国民の感覚で素直に見れば、今議論があったように、実質的に固まるものを決めるのはこの地域原子力防災協議会ということになるわけですから、ここに内閣府として深く関与しているわけなので、国は避難計画に責任を持つ立場であるというふうに理解していいですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、原子力災害に備えた地域防災計画、避難計画につきましては、災害対策基本法等の法令の規定によりまして、自治体が作成する責務を有しております。法令上自治体が作成する責務を有しているものについての責任は自治体にあるというのが、それは理論上そういうことになるんだろうというふうに思います。

 ただ一方で、原子力災害に対する避難計画というのは、これは非常に影響が広域にわたって、広域にわたる避難が必要でありますので、なかなか個々の自治体だけでは十分な避難計画ができないという現実もございます。ですので、内閣府では、原発の所在地域ごとに地域原子力防災協議会を設置しまして、その枠組みの中で、実態としては関係省庁と自治体が一体となって避難計画を検討しているというところでございます。

 ですから、たてつけとして、市町村が法令上作成の主体ですから、その意味の責任は自治体にありますけれども、国もしっかりとコミットして、その避難計画が具体的に進むようにコミットしておりまして、そういった役割を国は責任を持って果たしているというところでございます。

渡辺(創)委員 今の御説明は分からなくはないですよ。分からなくはないが、国としては市町村に責任があるというふうに、では、基本的な責任は市町村にあるのか。今、国が関与するというのは分かるんです。では、なぜ、国が責任を持つというところまで判断することはどうしてできないのかなということを聞いているんです。最終的に了承するのは総理が議長の会議ですよね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたのは、法令上自治体が作成の責務を負っています地域防災計画、避難計画について、自治体が責任を負っているということを申し上げました。

 原子力災害からの避難、これを適切に行うためには、個々の自治体の避難計画が具体的、充実的であることに加えまして、その地域が全体として対応すべきものが適切なものでなければならないということであります。

 非常に関係する自治体が多くなっておりますので、多くの自治体が避難計画に関係しますし、さらには実際に原子力災害時に対応する国の機関、これの、それはどんな機関がやるかというと防災協議会、これも併せて全体として適切に対応ができなければいけないということで各地域ごとに緊急時対応を取りまとめているということでございまして、この緊急時対応を取りまとめて、原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的であるということを確認するプロセスには、それは国の機関も、自治体もそうですけれども、責任を持って関与いたしますし、原子力防災会議も国の機関として了承している、その意味において国も責任を負っているということだと考えております。

渡辺(創)委員 これ以上やっても多分平行線だと思うのでやめますけれども、そこまで広域にまたがるものであって、一自治体では責任が持てないものだから、当然ですよね。ないことを望んでいますけれども、もし原発の事故があったときに、一自治体の範囲だけで物事が終わるはずなんて絶対ないわけですから。そもそも、それを自治体に責務があるとしていること自体が課題ではないかなというふうに言っているんです。

 もちろん、ここに至るまでの議論の中には様々な政治的な変遷等もあって、全て国が悪いと言えることではないというふうに思いますが、様々な裁判の中でも指摘されたりしてきている状況の中ですから、この責任、住民の避難、命を守るための避難に対して、どこに責任があるかということを曖昧なままにしている状況をやはり改善に向けてはっきりさせていくということは必要な作業じゃないかというふうに思っています。

 私は、個人的な思いとしては、避難計画の審査を規制基準の中に盛り込んで避難計画の実効性を担保するべきではないかというふうに思いますけれども、その点については四月七日のこの委員会の中でも規制委員長から、防災計画を立てる主体とサイト内の安全性を考える主体は離れていた方がいいという趣旨の発言がございましたので質問にはいたしません。

 ただ、やはり、今の状態というのは、住民にとっても、自治体にとっても、国にとっても宙ぶらりんな状態で、住民の不安を緩和するというためにもやはり整理が必要ではないかということを改めて申し上げたいというふうに思います。

 いずれにせよ、原子力発電の推進を図ってきたのは国なわけですから、避難計画を含む緊急時対応は国の責任とはっきりさせるべきではないかというふうに思います。ただし、もちろん実態は自治体が住民に一番近いわけですので、関係ないということを言っているわけではありませんが、最終的な面倒をかける責任というかは国が持つ、そしてそこに事業者もやはりもっときちんと責任を明確にすべきだと思いますが、そういう明瞭な仕組みをつくることが必要ではないかというふうに感じています。

 次の質問に移ります。

 避難計画の実効性が担保されていないという意味では、昨年三月に水戸地裁であった東海第二原発の運転差止めを認めた判決では、実現可能な避難計画や実行体制の整備について、ほど遠い状態と指摘されたわけです。判決後、東海第二地域の原子力防災協議会の作業部会は今年の三月四日に一度開催されただけのようでございますけれども、東海第二地域での緊急時対応の策定状況をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 東海第二地域におきましても、他の地域と同様でありますけれども、茨城県や関係省庁が参加する東海第二地域原子力防災協議会、これを設けておりまして、この枠組みの下で、原子力防災体制の充実に向けまして、具体的には、避難先施設の確保のほか、避難車両や避難ルートの確保でございますけれども、こういった諸課題について検討し、避難計画の具体化、充実化に取り組んでいるというところでございます。

 東海第二地域につきましては、周辺の人口が非常に多い、三十キロ圏内の人口が九十万人を超えるといったような状況でございまして、検討、調整しなければいけない事項が他の地域に比べても膨大であるということから、なかなか検討が長期化しており、緊急時対応の策定には至っていないという状況であるということはそういったとおりでございますけれども、引き続き、避難計画の具体化、充実化を図るべく、内閣府としても自治体と連携しながらしっかりと検討を進めていきたいと考えているところでございます。

渡辺(創)委員 人口が多くて課題が多いというのは承知しているつもりですが、では、一定の見通しは深く関与している国として持っていらっしゃるんですか。

松下政府参考人 お答えを申し上げます。

 現時点において、いつ頃までにできるというような見込みが立っている状況ではございませんが、一つ一つ、課題の解決へ着実に検討を進めていきたいと考えているところでございます。

渡辺(創)委員 作業部会の議事要旨を見たんですけれども、全く、水戸地裁判決で指摘された内容等を、司法の場で指摘されたことを踏まえて新たな対応をしていこうというような中身のものには、議事要旨しか見えないので分かりませんが、少なくとも、作業部会、一回しか開いていませんけれども、その中のものはそう見えないというのが実態のような気がするんです。

 そこで、あえてお伺いをしたいんですが、水戸地裁の判決での指摘は今後のこの地域の緊急時対応の策定に影響を与えるんでしょうか。先ほど委員会の中で地裁判決は最高裁の判決じゃないから余り意味がないみたいな話もありましたけれども、私はそんなことはないというふうに思いますけれども、その点についてお伺いをしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の水戸地裁判決自体につきましては、これは国が当事者ではない民事訴訟の判決でございまして、現在控訴もなされているというようでございますので、判決に対するコメントは差し控えたいというふうに考えております。

 ただ、当然、この東海第二地域におきましても、他の地域と同様に、地域全体として原子力災害対策指針等に対して具体的かつ合理的な緊急時対応の取りまとめを目指しておりますので、その方針に変わりはないということでございます。

渡辺(創)委員 国が当事者ではないというのは分かりますけれども、司法の出す答えについては、もちろん三審制ですから、最初の地裁であることは事実ですけれども、それは関係ないことと言い切っていいのか。ましてや、住民の不安をしっかり解消し、有事のときに対応できるために緊急時対応を決めていこうという作業を今しているわけですよね。その途中の段階で、司法というある種世の中を代表する声から、こんなのでは駄目じゃないかという指摘が出ているわけですよね。それを当然踏まえてやるというのが関係者として真摯な姿勢ではないか、私はそういう気がするんですけれども、そこはどうですか。当事者じゃないからという問題ではないと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 判決の中でも、原子力災害対策指針等に定める防護措置が適切に行える状況になっていないというような御指摘を受けていたというふうに、参考として見させていただいたときはそんなふうに私は理解をしております。

 これは、避難計画ができていない自治体があるといったようなことを踏まえてこういう判断がなされているということだろうと思いますけれども、これは、原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的な緊急時対応を取りまとめれば、それは判決の指摘にも応えることになるのではないかなというふうに思っておりますので、特に作業方針について大きく変更する必要はないというふうに考えているというところでございます。

渡辺(創)委員 福島の事故から十一年がたっているわけですね。今まで聞いてきたように、いつまでにこの緊急時対応がそれぞれのエリアで、今できていないところで。まあ、いろいろ事情があることは分かりますし、急げばいいというものでもないのも分かっていますが、いつあるか分からないことに対しての対応を決めていこうとしているのに、速やかと必ずしも言いづらいのかもしれないという状況がある、そして、世の中から指摘が出ていることについてはやはりきちんと受け止める姿勢を持って、より充実。

 先ほど冒頭で別の方の質問の中で原子力防災に終わりはないし十分もないというふうにおっしゃられたと思いますが、まさに、その姿勢を反映させるのであれば、きちんと司法の答え等も受け止めながらやるべきではないかということを大変強く感じるところですので、やはり国民の納得をきちんと築いていくということが今大事な作業だと思いますので、そのことをお願い申し上げまして、私の質問は終わります。

 どうもありがとうございました。

赤澤委員長 次に、吉田とも代君。

吉田(と)委員 日本維新の会の吉田とも代と申します。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、平成二十五年七月、地震、津波等の基準を強化した上で、炉心損傷の防止や格納容器の破壊の防止、また放射性物質の拡散抑制としての対策を講じる新規制基準が施行され、これにのっとった原子力発電所が稼働対象となり得ます。

 そのような中、規制委員会から設置変更許可が下りているにもかかわらず、なぜこんなに再稼働に時間がかかっているのか。BWRの再稼働の見通しについてお伺いをいたします。東北電力女川原子力発電所二号機、BWRや、東京電力柏崎刈羽原子力発電所六、七号機、そして日本原子力発電東海第二発電所、中国電力島根原子力発電所二号機の現在の状況をお聞かせください。

 また、本年四月七日の委員会質疑の中で更田委員長は、各事業者共に先行する審査の例等から学ぶことができたために、PWR、BWR、それぞれの炉型に対して審査はスムーズに進むようになってまいりましたと御答弁されています。

 しかしながら、我が国の原子炉で最も多く稼働している軽水炉には、加圧水型原子炉、PWRと、沸騰水型原子炉、BWRの二種類に分類をされていますが、再稼働中のものは全てPWRであり、BWRは含まれていないのが現状です。現在稼働しているものはPWRであり、BWRは稼働していない。これは型式によって何か要因の違いがあるのか、また、BWRの審査が長期化している理由、どのような見解か、お聞かせください。

更田政府特別補佐人 まず、BWRの状況についてお尋ねがありましたので。

 柏崎刈羽原発の六号機、七号機、これは許可を受けております。ただ、七号機は許認可手続が終了しておりまして、六号機については、設置許可の後に設工認という詳細設計の確認作業がありますけれども、この設工認に入っているところですが、まだ補正という新しい設計に基づいた申請が行われておりませんので、設工認についてはまだほとんど審査が進んでいない状況です。

 また、この柏崎刈羽については、先ほど来御質問もありましたけれども、IDカードの不正使用事案ですとか核物質防護設備の機能の一部喪失事案がありましたので、追加検査を行っているところでありますので、この追加検査が柏崎刈羽では継続をしております。

 それから、東北電力の女川二号機それから日本原電の東海第二につきましては、これは設置許可に加えて設工認も認可済みでありまして、これらの審査を踏まえた保安規定の変更認可申請、これの補正がこれから行われると考えています。日本原電、東北電力、共にまだ補正の申請を行っておりません。また、並行して使用前の確認を行っております。

 それから、島根の二号機については、これは許可後の設工認、設計及び工事の計画について審査中で、これは半ばといったところであります。

 それから、BWRについて。まず一つは、BWRというのは、事故を起こした福島第一原子力発電所の一号機から四号機ですが、これはBWRであります。そういった意味で、設計上の難しさ、それから申請に向けての準備にBWR各社の方が時間がかかったというのが事実だろうと思っています。そこで、まずPWRということで、PWRの六サイトの審査を先行させましたので、そういった意味で状況はPが先に行っています。

 ただし、審査期間に長くかかるかどうかというのは、炉型よりもむしろ、どこのサイトにあるかの方がずっと大きな要因になっています。地震ですとか津波、火山、こういったものに対する審査の時間の方がはるかに長くかかりますので、炉型というよりはむしろサイトの置かれている自然条件が審査期間を左右しているというのが実際のところであります。

吉田(と)委員 更田委員長、ありがとうございます。

 まず、今、五基について現状のお伺いをいたしました。そしてまた、炉型に関しては余り関係がなく、むしろ地形、置かれている地域の環境によって異なってくる、いろいろな要因が複合要因であるということは理解をいたしました。そしてまた、BWRがより慎重に進められている、業者の方でもそのような進め方がされているということは理解をいたしました。

 再稼働に向けて、まず三点がそろっていないといけないと私は思います。技術、人材、そして何より地元の理解、どれが欠けても稼働ができないと思いますので、これは同時並行的にスピード感を持って対応をお願いしたいと思います。

 続きまして、二点目の質問に入らせていただきます。

 令和四年四月七日の委員会で我が党の堀場幸子議員は、人材不足が深刻化している中、人材育成の取組について質問をされました。その中の答弁で、これまで培われた技術及び人材を適正に継承するとともに、大学における原子力分野の人材育成が重要な役割を担うと考える一方、近年、原子力関係学科、あるいは専攻数、大学教員数が減少をしている現実があると述べておられます。

 しかしながら、一番大きな課題としては、メーカーの技術者不足、電力会社を支えるメーカーに人がいないのではないでしょうか。福島第一原発事故以降、原発の長期停止により、原子力発電所において運転経験を積むことができなくなっている状況が生じております。このような、電力会社によって再稼働した原発へ運転員を派遣するなどにより、実際の運転を学ぶことで力量維持向上に努めている実情があると承知はしておりますが、このままでは原子力に携わる人材の確保や技術継承に深刻な影響が出かねない現状だと考えます。

 経産省として、どのようにこの人材不足をバックアップしていくのでしょうか。御見解をお聞かせください。

細田副大臣 ありがとうございました。

 原子力は、実用段階にある脱炭素のベースロード電源であり、安定供給確保の観点から、重要な電源として活用していく必要があると考えております。

 昨年閣議決定いたしましたエネルギー基本計画においても、二〇三〇年断面で電源構成のうち原子力発電の比率を二〇%から二二%とさせていただいたところでございます。

 安全性の確保を大前提に、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた場合には、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めていくというのが政府の変わらぬ基本的な方針でございます。

 今先生からまさに御指摘があったとおり、安全最優先の再稼働を着実に進めていく上でも、発電所の運転や保守管理などを支えている現場の技術、人材の維持強化は極めて重要な課題であると認識をしております。

 当省といたしましても、産業界全体で現場を含む組織マネジメントの更なる高度化や技術人材の育成を計画的に進めていくよう、事業者、関係機関に働きかけを行うとともに、設備の管理、保守やリスク対応などに関する専門家研修など、大学や公益法人、企業などが行う現場人材の育成に向けた取組に対して支援を行っているところでございます。

 今後とも、原子力の現場を支える人材、技術を始め産業基盤全体を維持強化していくために、官民連携の下でしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(と)委員 今、様々な取組について御紹介をいただきました。

 早い段階でベースロード電源にこの原子力を復活するべきだというメッセージがないと、やはり大学も講座をつくっていくような文化がなくなってしまうと思います。今日、明日、技術者が増えていくわけではないからこそ、まず中長期的な視点では大学で技術者を養成する、そして短期的な目の前の視点ということでは運転員さんへの補助などを行っていく、同時進行で、そして次世代にも続くようなメッセージを経産省は積極的に打ち出していく必要があると考えますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 それでは、続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 原子力については、実用段階にある脱炭素のベースロード電源であり、安定供給確保の観点から、重要な電源として活用をしていく必要があります。政府としても、安全性の確保を大前提とした上で原発の再稼働を着実に進めることが重要というスタンスだと承知しております。

 しかしながら、原子力発電所の適合性審査が長期化しており、これまで十七基に対して設置変更許可がなされているものの、原子力規制委員会において審査中が十基となっており、行政手続上の標準処理期間二年を大幅に超えて審査しており、こうした審査の状況を踏まえ、審査体制の強化、審査プロセスの効率化、合理化が必要であると考えますが、今後どのように捉えていかれるおつもりでしょうか。

 原子力規制委員会においても、過去の審査における主要な論点などを公表することにより、事業者の予見性を向上させ、効率的な審査が進むような取組が行われていることは理解をしております。しかしながら、この厳しい現下のエネルギー安全保障の観点から、安全性を担保した上で審査の時間をこれまで以上に短縮する方法について、原子力規制委員会の認識をお伺いいたします。

更田政府特別補佐人 まず、御質問の中にもありましたように、安全が確保されることは大前提ですので、安全の追求に妥協は許されません。したがいまして、その審査は、事業者との間で徹底的な議論を通じて共通理解を醸成し、納得のいくまで議論をすることが大事だと考えております。

 その上で、私たちも、規制に使う資源、人や時間というものは、重要な事象、事項はほかにもたくさんありますので、できるだけ重要な課題に適切にリソースを投入する観点から、審査が効率化されることはもとより望むところであります。

 ところが、審査というのは待ち時間が極めて長い。やはり、何か、事業者に評価のやり直しであるとか、それから、先ほど申し上げたように、地盤の調査等々になりますとボーリングであるとか穴を掘っている時間等々もあって、実際に議論を闘わせている時間よりも事業者の再検討なり資料を待っている時間が物すごく長いんです。ここを改めるのが一番、まず何より事業者に頑張って早く調査なり分析、資料の作成等をしてもらうということが大事なのは間違いないのですが。

 その上で、今までの経験からすると、こちらの言ったことが正確に伝わっていない、それから、事業者の方からも確認せずにある方向へ走ってしまって、その結果が出てきてから、いや、そうじゃないとなってまた手戻りをするということがありましたので、そういった意味で、小まめに規制当局に対して確認をしてもらうということが大変大事だと思っています。ですから、いつでもとにかく聞いてくれというのが基本姿勢です。

 それから、先生がおっしゃったように、論点の明確化、文書化。これは北海道電力の泊原子力発電所三号機の審査について試みとして始めているところでありますが、これから各社の経営層等の話も聞いて、他の審査にも展開をしていきたいと考えております。

 それから、審査に他の事業者やメーカーそれから研究機関からの同席を認めるといったような試みをしております。

 いずれにしましても双方の努力が必要ですので、引き続き、事業者との間のコミュニケーションを取って、審査の効率化へ向けて努力をしてまいりたいというふうに思います。

吉田(と)委員 ありがとうございます。

 まさに今、更田委員長から御答弁いただきましたように、やはり、事業者側のスムーズな申請が行われるように、情報共有そしてコミュニケーションを更に強化いただきまして、再稼働加速に向けて業界一丸となって進めていただきたいと思います。

 そういたしましたら、私の質疑時間は終了いたしましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。

赤澤委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 本日も、貴重な質疑の機会をありがとうございます。

 それでは、早速始めさせていただきます。よろしくお願いいたします。先日も同じような質疑をさせていただきましたけれども、改めてシンプルに質問させていただきます。

 政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルを目指すことを宣言いたしました。原発を再稼働せずカーボンニュートラルを実現させるのは、現実問題としては非常に難しいのではないでしょうか。カーボンニュートラルを実現する、原発は再稼働しない、この二つは両立し得ないのではないでしょうか。カーボンニュートラルを実現するためには原発を再稼働するしかないという認識でよろしいのでしょうか。お考えをお聞かせください。

岩田大臣政務官 お答えをいたします。

 二〇五〇年カーボンニュートラルなど、気候変動対策を進める中にありましても、安定的で安価なエネルギー供給を確保するということは最重要の課題でございまして、安全確保を大前提とした上で原子力を利用していくことは欠かすことができないと考えております。

 こうした観点からも、安全性の確保を大前提にしまして、地元の理解を得ながら原子力発電所の再稼働を着実に進めていくということが政府の方針であります。

 経済産業省としましては、発電所の再稼働が円滑に進むよう、産業界に対しまして事業者間の連携による安全審査への的確な対応を働きかけるとともに、国も前面に立ち、立地自治体等の関係者の理解と協力を得られるよう、粘り強く取り組んでいく決意です。

藤巻委員 ありがとうございます。おっしゃられるように、安定的な電力供給を維持して国民生活を守ることこそが重要だと私としても考えております。理想論ではなく、目の前にある現実として、その道筋をしっかりと立てていっていただきたいと考えております。

 時間も限られておりますので、次の質問に移らせていただきます。

 テロ対策についてお伺いいたします。

 テロ攻撃は多くのパターンが想定され、その対策を全て網羅することは難しいとも考えておりますが、極めて重要なことですので、一つ一つ想定し対処するしかないというふうにも考えております。

 先日、我が党の堀場委員から、サイバー攻撃された場合についての質問、答弁をいただきましたが、テロリストが原発敷地内に侵入し中央制御室の占拠を企てた場合はどうでしょうか。一般の警察では対処は難しいでしょうし、自衛隊が要請を受け治安出動したとしても時間的に間に合わないと考えております。自衛隊が到着する頃には中央制御室は占拠されてしまっている可能性が高いというふうにも考えられます。

 そうすると、現実としてそういったテロを防げるかどうかは原発特別警備部隊に懸かっていると考えますが、この原発特別警備部隊、どのような組織で、どの程度の人員構成、どう配置されているのか、どのような装備をしているのか、答えられる範囲でお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

安田政府参考人 お答え申し上げます。

 原発特別警備部隊は、全国の原子力発電所に常駐をして原発の警戒警備に当たっている部隊でございます。この部隊は、専門の訓練を受け、自動小銃、サブマシンガン、耐爆・耐弾仕様の車両等を備えて、二十四時間三百六十五日体制で原発の警戒警備を実施してございます。

 なお、この部隊の具体的な警備体制でありますとか個々のテロに対する対応要領等につきましては、これを明らかにすると今後の警察活動に支障を来すおそれがありますことから、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

藤巻委員 なかなか警備上の理由から詳細をお答えいただくのは難しいとも考えるんですけれども、仮に訓練を受けた武装戦闘員が複数名で侵入を図っても、それを阻止できるだけの能力は備えていると考えて大丈夫でしょうか。

安田政府参考人 お答え申し上げます。

 仮にテロを企図すると思われる者による原子力発電所への侵入、攻撃事案等が発生した場合には、ただいま御答弁を申し上げました、自動小銃やサブマシンガン等を備え、専門の訓練を積んだ原発特別警備部隊が事案の対処に当たることとなります。

 今後も、部隊の練度向上、装備資機材の充実等に努め、原子力発電所の警戒警備に万全を期してまいりたいと考えてございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 原発の敷地内に侵入して中央制御室の占拠を図る、これは、サイバーテロやその他のテロ、例えばミサイル攻撃だったり飛行機で突っ込むというようなことに比べて容易に準備ができてしまい、最も起こる可能性が高いテロの一つかと考えております。このテロを防げるかは、先ほどから申し上げています原発特別警備部隊に懸かっていると言えます。原発特別警備部隊に最大限の敬意を表すると同時に、その責務を果たすべく職務に取り組んでいただきたいと考えております。

 続いて、次の質問に移らせていただきます。

 今週の火曜日、五月三十一日に、泊原発は安全性の基準を満たしていないとの理由から、札幌地裁は北海道電力に対し運転差止めを命じる判決を言い渡しました。一方、原子力規制委員会は、昨年七月、敷地内にある断層が活断層ではないという北海道電力側の主張を認められております。

 規制委員会としては、現時点での泊原発の安全性をどう見ておられるのでしょうか。また、九年にもわたる泊原発の再稼働に向けた安全審査、こちらの方の進捗状況や今後の見通しも併せてお答えください。

更田政府特別補佐人 お答えをいたします。

 まず、今回の民事訴訟の判決によって私たちの審査が影響を受けるということはありません。

 その上で、泊三号機に対する審査ですけれども、これは、これまでも御答弁をしておりますけれども、あるはずの火山灰の層が見つからなかったということで、断層の活動性に係る再検討、調査に非常に長期間を要しました。審査を再開して、活断層の活動性について一定の結論を得て、現在、自然ハザードの審査に関してある意味終盤を迎えているところであります。

 一方で、津波に対処する施設、防潮堤等々の設計についてはこれから議論の最も重要なところへ入っていくと思われますが、まだこれについては北海道電力から十分な説明を受けることができる状況には至っておりません。

 このために、先ほど申し上げました審査の効率化のための工夫ということで、四月に北海道電力社長と意見交換を行って、要望があれば何でも言ってくれと。安全のレベルでまけることは全くしないけれども、審査の進め方について要望があれば何でも言ってほしいということで、忌憚のない意見交換ができたというふうに思っております。

 いずれにしましても、原子力規制委員会としましては、引き続き厳正な審査を続けてまいりたいというふうに考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 この問題、非常に重要な問題で、今後の原発政策を大きく分ける問題だと思っていますので、引き続き注視させていただきたいと思っております。

 時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

赤澤委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 去る五月二十三日に行われた岸田・バイデン日米首脳会談の共同声明は原子力協力を拡大するとして、セットで公表されたファクトシート、日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップでは、日米両国は、原子炉の運転期間の長期化及び燃料供給の安定性確保に関する協力を含めるべく、既設炉の十分な活用に関する協力の機会を追求するというふうに明記をいたしております。

 そこで、まず経済産業省、資源エネ庁に伺います。ここで言っている原子炉の運転期間の長期化、英文ではリアクターライフというふうにありますから原子炉の寿命ということになりますけれども、この原子炉の運転期間の長期化というのは何を意味しているんでしょうか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員も御指摘いただきましたように、五月二十三日に日米首脳会談が行われまして、その際に発出されました共同声明と併せましてファクトシートが公表されてございます。これが日米競争力・強靱性パートナーシップとされるものでございますが、この中で日米両国間の原子炉の運転期間の長期化に関する協力が記載されているところでございます。

 ここで言う運転期間の長期化でございますが、国によって事情は違いますけれども、日本におきましては、現行の原子炉等規制法で認められております、当初の運転期間である四十年を超えて一回に限り最大二十年の運転期間延長、この長期に運転する運用というところのことを意図したものでございます。

笠井委員 では、最長で六十年を超えるという意味もあるということですか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 この首脳会談での共同声明及びファクトシートというものは、日米協力として何をやっていくかということについてでございます。具体的な取組として念頭に置いておりますものは、アメリカにおける既存原子炉の運転期間に関する取組ですとか、日本での高経年化対策、こういうことを進めておるものですから、そういう取組ですとか、あるいは長期に安全に運転していくということに関する相互の技術的知見など、こういったものを共有してお互いの原子力の技術というのを高めていくということに対する協力でございます。

笠井委員 では、最長で六十年を超えるというようなことで長期化というところを考えているんじゃないということですか。そこを、さっき答えを言っていない。端的に。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の場合、我が国の原子炉等規制法では、原子力発電所を運転することができる期間を四十年とし、一回に限り、原子力規制委員会の認可を受けて、最大二十年の延長を可能としているところでございます。したがって、米国のような六十年を超えた運転は現行のルール上できないものと承知しております。

 この現行の枠の中でお互いに技術協力としてどういうことができるか、こういうことを前提にまず両国間の技術協力を進めていくということが現在の立場でございます。

笠井委員 最大六十年ということであればこれまで言ってきたところと同じなので、なぜ共同文書であえてそうやって長期化というのを言うのか。

 今、松山部長からお話がありました。長期運転の実績がある米国の情報、技術的知見を共有するんだというお話がありましたけれども、では伺いますけれども、協力して情報、知見を共有して得られるという米国における原発の長期運転の動きというのはどのようになっていますか。

松山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員の御質問が、長期運転がどれぐらいの期間でやっているかという御質問だという前提でお答え申し上げますと、アメリカでは、原子力発電所の運転期間は四十年とまずされておりまして、その後二十年ごとに米国原子力規制委員会による延長認可を取得する制度になっていると承知してございます。

 二〇二二年六月現在、アメリカで運転している原子力発電所は全部で九十二基あるわけでございますが、そのうち、一回目の運転延長認可を取得したものが八十四基、そして二回目の運転延長認可を取得したものが六基あるというふうに承知してございます。

笠井委員 さらに、八十年まで延長認可の取得をしているというのは何基ありますか。

松山政府参考人 答弁が重なってしまいますけれども、アメリカの制度は、四十年で、二十年ごとの延長ということになってまいります。二回目ということは、二十年が二つ続くわけでございますので、この期間を通算すれば六十にプラス二十ということでございますので、二回目の運転延長認可というものを取得したものは六基あるというふうに承知してございます。

笠井委員 米国では百年までの延長に向けて技術課題を議論しているということがありまして、経済産業省が第六次エネルギー基本計画に向けた原子力小委員会に提出した資料がここにありますけれども、これを見ますと、長期運転については、諸外国において、例えば米国では、運転中原子炉の半数が四十年を超える運転を行う中、さらに八十年運転の認可が行われるなど長期運転への動きが出ているということで、諸外国における長期運転の動きということでアメリカのことが紹介されて、今答弁された、若干数字が変わっていますけれども、アメリカの状況が言われ、そして二〇二一年一月には百年までの延長に向けて技術課題を議論する会合を開催していると。

 まさにそういう、米国と協力して運転期間の長期化の情報あるいは知見を共有するというのは、日本でも米国のように運転期間を延長して八十年、百年の運転を目指そうということになってくるのではないかということだと思うんですよ。

 そこで、更田委員長に伺いますけれども、これまで原発の運転期間をめぐって、私との間でも様々な議論をさせていただき重ねてまいりました。委員長は、いわゆる原子力発電所の運転期間については四十年で、一回に限り最大二十年延長、これが国会が原子炉等規制法改正で決めたルールだということを繰り返し強調されてこられました。これがまさに東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえたルールだと思うんです。もちろん、審査に当たって原発の技術課題を見るにしても、あくまでそれは運転期間ルールの枠内でのことだということだと思うんですけれども、委員長はどのようにお考えでしょうか。

更田政府特別補佐人 これまでもお答えをしておりますけれども、端的に申し上げれば、あくまでルールの中のもの、そのとおりだと思います。

 私たちは、期間の問題というのは先生の御質問にもありましたように国会で幅広い観点からお定めになったものでありますので、私たちの役割というのは、あくまでそのルールの中で科学的、技術的な観点から延長の可否を判断していくものであるというふうに考えております。

笠井委員 運転期間は四十年が原則、最大二十年延長認可は例外だ、これが炉規法改正時の揺るぎない趣旨であります。それを、今委員長もおっしゃいましたが、国会の議論もなく、政府が勝手にゆがめて、日米間で長期化ありきで協力を約束するなんということがあってはならないと私は強く思うわけであります。

 そこで、改めて更田委員長に確認ですが、この間の当委員会でも求めてまいりましたけれども、規制委員会は、設置法の第一条の中立公正な立場で独立して職権を行使するという目的規定に沿って、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一とする運営を貫いて適合性審査に当たっていただきたいと思うんですけれども、その点での根本姿勢といいますか基本姿勢について、改めて御答弁をお願いしたいと思います。

更田政府特別補佐人 本日、さきの御答弁で申し上げた、非常に規制の難しいところというのは、規制の質を上げるのには大変な努力と時間が必要でありますけれども、その質は一瞬で低下すると思っています。この一瞬で低下するというのは、何よりも、推進の論理であるとか需給の論理に影響されて安全の判断をしてしまうようなことがあれば一瞬で規制に対する信頼は再び地に落ちるのだと思っています。

 そういった意味で、最も大事なことの一つでありますけれども、その中心にあるのは推進と規制の分離、これは行政の中できちんと守られるべきだというふうに考えております。

笠井委員 今、更田委員長は非常に大事なことをおっしゃったと思うんですね。推進と規制の分離ということでありますが、やはり、推進側の論理に影響されることなく国民の安全の確保を第一とするという運営を是非とも貫いていただきたい、適合性の審査に当たって貫いていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。

 また委員長とは質疑の機会があると思うので、今日はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

赤澤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 原子力問題に関する件、特に原子力規制行政の在り方について調査のため、来る八日水曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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