衆議院

メインへスキップ



第6号 令和4年6月8日(水曜日)

会議録本文へ
令和四年六月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤澤 亮正君

   理事 大西 英男君 理事 神田 憲次君

   理事 鈴木 淳司君 理事 古川  康君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 野間  健君

   理事 伴野  豊君 理事 伊東 信久君

   理事 中野 洋昌君

      畦元 将吾君    石川 昭政君

      今村 雅弘君    江渡 聡徳君

      勝俣 孝明君    門山 宏哲君

      神田 潤一君    新谷 正義君

      鈴木 英敬君    高木  啓君

      高木 宏壽君    中川 貴元君

      西田 昭二君    堀井  学君

      堀内 詔子君    宮内 秀樹君

      宮澤 博行君    簗  和生君

      山本 左近君    阿部 知子君

      江田 憲司君    菅  直人君

      米山 隆一君    渡辺  創君

      早坂  敦君    堀場 幸子君

      吉田とも代君    河西 宏一君

      平林  晃君    浅野  哲君

      笠井  亮君

    …………………………………

   参考人

   (公益財団法人原子力安全研究協会理事)      山口  彰君

   参考人

   (国際環境経済研究所理事)

   (東北大学特任教授(客員))           竹内 純子君

   参考人

   (獨協医科大学国際疫学研究室福島分室長・准教授) 木村 真三君

   参考人

   (龍谷大学政策学部教授) 大島 堅一君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月八日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     中川 貴元君

  大西 英男君     高木  啓君

  長坂 康正君     山本 左近君

  簗  和生君     鈴木 英敬君

  藤巻 健太君     早坂  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 英敬君     簗  和生君

  高木  啓君     大西 英男君

  中川 貴元君     井林 辰憲君

  山本 左近君     長坂 康正君

  早坂  敦君     藤巻 健太君

同日

 理事大西英男君同日理事辞任につき、その補欠として三ッ林裕巳君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

赤澤委員長 これより会議を開きます。

 理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事大西英男君から、理事辞任の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤澤委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に三ッ林裕巳君を指名いたします。

     ――――◇―――――

赤澤委員長 原子力問題に関する件、特に原子力規制行政の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、公益財団法人原子力安全研究協会理事山口彰君、国際環境経済研究所理事、東北大学特任教授(客員)竹内純子君、獨協医科大学国際疫学研究室福島分室長・准教授木村真三君及び龍谷大学政策学部教授大島堅一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ていただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず山口参考人にお願いいたします。

山口参考人 皆様、おはようございます。原子力安全研究協会の山口でございます。

 本日は、原子力問題調査特別委員会におきましてこういう発言の場を与えていただき、大変光栄に存じます。

 これから、十五分という時間をいただきましたので、私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 お手元に資料をお配りしてございます。タイトルに、原子力規制行政の在り方についての意見ということで書いてございます。

 まず、原子力規制というのはとても難しいことであるということを申し上げたいと思います。上の方に四角で囲ってありますように、原子力規制というものは、原子力の利用により享受する恩恵、それと適切に均衡するように原子力の利用に伴うリスクを管理する、そういったことでございます。したがいまして、利用による恩恵ということと原子力の利用に伴うリスクというものにどう向き合うかというところが問題なわけであります。

 それに対して、安全の確保ということで、日本で、原子力基本法にはこのように書いてございます。安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資することを目的として、行う。そして、さらに、第三条の二に、その安全の確保を図るため、原子力規制委員会を置くということで定めてございます。

 ここで、ポイントは、安全の確保ということは一体どういうものであるのか、どうすれば安全の確保が実現されたと我々は考えるのか、そういう点でございます。

 さて、それを踏まえまして、元々、震災後、日本の原子力規制委員会は、アメリカの原子力規制委員会をモデルとして、その構成、組織が検討されました。さて、では、アメリカはどう考えているか、これを御説明したいと思います。

 二、リスクの管理というところを御覧ください。

 アトミック・エナジー・アクト、これは原子力基本法に相当するものでありますが、一九五四年のアトミック・エナジー・アクトの中で、不当なリスクがないこと、アディクエートプロテクション、適切な規制ということがありますが、まずこれをやりなさいということが書いてございます。しかし、ここでも、適切な規制というものは何なのか、それが当然問題になるわけです。そこで、米国は、二階層構造の安全確保ということを書いてございます。それが、この不当なリスクがないということと、原子力規制に、規制委員会に自由裁量の権限を与えるということでございます。

 もう少し説明いたしますと、まず、不当なリスクがないということにつきましては、受容可能で適切な公衆防護レベルを確保するべきであると述べた上で、そのためには、必要なコストが幾らであろうが、それにかかわらず実施を求めなさいということで、そのように書いてございます。しかしながら、同時に、原子力発電所がゼロリスクであることを要求すべきではないということが書いてあります。

 これはどういうことかといいますと、米国では、一九八五年にバックフィットルールというものが導入されました。日本でも、新しい規制基準では、新しい知見が得られればそれを適切にバックフィットする、そういうバックフィットルールが確立してございます。

 そのときに、アメリカの規制委員会では、バックフィットルールの中で、その下の方にちょっと書いてございますが、委員会がどのようなバックフィットを求めるかについては、経済的なコストやそのほかの政策的な観点を考慮することは適切であるというふうに書いてあるわけです。そして、それに対して裁判になりました。その結果、一九八七年に自由裁量の権限ということが認められて、そして、二階層の構造ができ上がったわけです。

 自由裁量の権限の中では、事業者に対して、規制委員会は、(1)で述べましたアディクエート、これを超える安全対策を求める権限を持つんだということでございます。そして、その権限をどこまで執行するか、それには、経済的コスト、それからそのほかの政策的観点、例えばエネルギーセキュリティーとか、そういったものを考慮することは適切である。さらに、バックフィットの便益、すなわち、どの程度安全の質が向上したかということでございますが、それは、コストと比べてそのバックフィットが正当化されるということを求めたわけでございます。

 さて、この不当なリスクがない、あるいはリスクが管理されたということは一体どのようなことか、それが次の三ポツに書いてございます。英語をちょっと日本語にしてございますので、裏のページ、御覧いただきますと、リスクの同定、分析、コミュニケーション、受容、これはリスクを受け入れることですね、それからリスクの回避、それから転換、制御、こういったことを行って、コストと恩恵の観点から受容可能なレベルとするプロセス、これがリスク管理であるというふうに言っているわけです。

 この過程では、米国は、一九七九年にスリーマイル島の事故を経験し、そして、一九八六年に安全目標の政策声明を出し、そしてリスク評価を行ってリスクを管理し、一九九五年にリスクを活用するということのまた政策声明を出し、そういった長い経緯を経て確立された考え方、これが二階層構造の安全確保ということでございます。

 さて、こういったことが一体何に依拠して実現可能になるか、それがよい規制の五つの原則というところに書いてございます。安全を確保しつつ、しかも、コスト、それの経済性、あるいは便益、そういったものを考えながらリスクを管理していく、これはなかなか難しいことであります。そういった難しい意思決定、判断を行っていく上で、複数の価値軸を調和させるということが必要になってまいります。その根拠となるものがよい規制の五つの原則ということになります。

 まず第一に、自立性。これは、あるいは独立性でもいいんですが、ただの独立性ではなく、自立性というものが、高い倫理観と専門性によって判断がされること、そして規制が孤立しないこと、これをインディペンデンスといって定義していて、いずれかの考え方に偏らないようにきちんとコントロールしているわけでございます。

 二つ目、寛容性、オープンネスでございますが、これは、関係者というのは、公衆だけでなく、議会、行政機関、事業者、公衆、国際的なコミュニティー、そういうところと自由なコミュニケーションを常に維持していなさい、そういうことがこの二つ目、寛容性でございます。

 三つ目、費用対効果性。すなわち、規制の行政というものは、納税者それから事業者が最善のものを享受する、そういうことが必要であるということから、現実的な規制であること、そして、リスクの低減効果と整合させつつ投入する資源を最小化すること、それを費用対効果性として、三つ目の原則に述べているわけでございます。

 四つ目ですが、明瞭性。これは、規制が首尾一貫して論理的で現実的であること。

 そして最後に、信頼感、リライアビリティーですが、これは、研究、運転経験、そういった最新知見に基づいていて、規制の判断が安易に覆されないように、そして原子力の利用というものが安定的に行われるように、これが公衆から見ても、あるいは事業者から見ても信頼感につながるということでございます。

 すなわち、安全の確保を行うためにどういう考え方でやるのか、何と何を考慮してやるのか、こういった原則があればこそ、極めて難しい規制判断、これができるものだというふうに考える次第です。

 最後に、五ポツのところを御覧ください。

 今、原子力、これは極めて社会に対して様々なメリットをもたらすものであり、多くの国が持続的に活用していこうということを考えてございます。では、そのようなことをどうやって実現するか。

 米国を始め海外では、新しい革新炉の開発、これが進んでおります。その革新炉の開発をしっかり規制としても受け止めるために、米国は、ニュークリア・エナジー・イノベーション・アンド・モダナイゼーション・アクトという法律を作りました。これは、原子力エネルギーのイノベーション、それから規制の近代化、それを推進する法律でございます。

 その中に書いてございますのは、原子力規制委員会は、環境の変化に対して規制プロセスを向上させるとともに、非軽水炉のレビューに備え、対応すること。すなわち、非軽水炉と申しますのは、今議論になっています小型モジュラー炉、あるいは高速炉、高温ガス炉、そういった革新炉でございます。当然、こういった革新炉は新しい考え方の原子炉でございますので、規制がそれに対してきちんと適合するよう準備をきちんとしなさい、そういうことを決めているわけでございます。

 そして二つ目、原子力規制委員会は、ビジョンと戦略を策定し、非軽水炉技術の申請があった場合に効果的に効率よくレビューできるようにしなさい。こうやって、規制が持つべき専門性をしっかり高めなさいということを書いているわけでございます。

 こういった取組があればこそ、新しい革新炉というものが導入する、そういったプロセスが開けてくるということだと考えてございます。

 最後に、一番下、ここが私の結論でございますが、このように、現代は多様なリスクにさらされております。それは、エネルギーのセキュリティー、もちろん原子力のリスクもあるわけですが、様々な資源の導入リスク、それから地政学的なリスク、多くのリスクがございます。そういった中で、原子力技術を持続的に活用するということは、我が国にとって大変重要なことであります。そういった環境を踏まえますと、原子力規制行政において、これまで、安全の確保を行っていくというふうな考え方で規制を行っていたものを、リスクの管理をもって安全の確保を行う、つまり、適切にリスクを管理するという考え方に進化させていくべきではないかと考えます。これは、既に米国の例でお示ししましたように、原子力基本法に、確立された国際的な考え方に倣いということが書いてございますが、こういった考え方が確立された国際的なプラクティスであるというふうに考えるところでございます。

 以上で私の発言を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 ありがとうございました。

 次に、竹内参考人にお願いいたします。

竹内参考人 皆様、おはようございます。国際環境経済研究所の竹内と申します。

 今日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、早速意見陳述に入らせていただきます。

 まず、原子力規制行政の在り方を議論する上で、原子力規制行政の役割を考えてみたいというふうに思います。

 お配りしておりますペーパーの一というところに書いてございますけれども、これは原子力にかかわらず、一般的に、規制行政というものは、技術利用に伴う、全ての技術には利用に伴ってリスクがあるわけでございますけれども、そうした潜在的危険性というものが顕在化をする確率を最小化する、また、仮に顕在化した場合でも被害を最小限に抑えるための措置を講じ、その技術が社会にもたらす便益を最大化することに貢献すること、これを目的にしているというふうに理解をされます。

 原子力につきましては、原子力災害の特殊性から、事前予防、安全規制といったようなところと事後救済の制度、これの整備が特に重要な技術というふうに考えられます。

 一般的に、技術の利用につきましては、施設の安全性の責任というのは事業者が一義的に負うということでございます。では、それに当たって原子力規制行政というのはどんな役割を果たすのかといえば、施設の運転に際しての安全に関する必要条件、これを提示をすること、そして、その条件に適合しているかどうかの審査を行うということ、これが役割として求められることでございます。

 原子力規制は、国民、立地地域の住民からの原子力技術に対する信頼、これを大きく左右するものでございます。私の著書から、原子力に対する安心というのは、つまるところ、安全をつかさどる者への信頼感に尽きると書かせていただいておりますけれども、これまでのところ、少ないとはいえ、我が国で、福島事故後、再稼働というようなものを始めた原子力発電所、こういったものが数基出てきているということは、これは、原子力規制委員会、規制庁の皆様が非常に厳しい審査を行っているという信頼が国民からあり、そして、加えて申し上げれば、事故、トラブル等なく再稼働した炉が運転されているといったようなところかと思います。

 もう一つ、原子力規制というのは、原子力事業の事業性にも当然影響を及ぼします。原子力発電というのは、燃料コストはほとんどかからないものの、発電及び廃炉、こういったものの費用、これらの大宗が固定費といったような性質を持っております。損益分岐点となる設備稼働率は約七〇%ぐらい、これは非常に雑駁な仮定を置いて計算をしたものでございますけれども、高い稼働率、安定的な運転というようなこと、これを満たすことによって初めて大量で安定的、安価な電気を生む技術として存在する、貢献することができるというものでございます。

 そういった特徴を持つということを踏まえてこの原子力規制行政ということについて考える必要があるというところでございます。

 次の、二に書かせていただいておりますけれども、日米の原子力行政、これに対する相違点から見る我が国の課題というところを申し述べたいというふうに思います。

 なぜ日米を比較するのかといったようなところでございますけれども、国際的な核物質の管理の必要性、あるいは、各国の政策や安全規制の影響を強く受けること、もう一つ、大規模な投資を必要とすることから、原子力というのは、資金調達コスト、これを圧縮しないとプロジェクトとして非常に成立しづらいというような、こういった特徴がございまして、そのためにはやはり国が後ろにいるということが重要であったために、多くの国では、原子力事業というのは国営体制の下、発展をしてまいりましたが、日米というのは、事業創成期から民間、民営体制を取ってまいりました。

 ただ、両者の原子力規制行政には黎明期から差があり、福島原子力発電所事故後、特に差が拡大したというふうに認識をしております。

 日米の原子力基本法及び関連の法制、これを読み比べてみますと、大きく二つの特徴があるというふうに思います。

 一つは、米国では、具体的に政府の行うべきプログラムが書かれているというようなこと、もう一つは、これは原子力に限らずでございますけれども、米国は、連邦行政機関の規制的活動全般に対して費用便益分析といったようなものが要求されるというようなところでございます。

 原子力のまずプログラム化といったようなところでございますけれども、米国では、それまで軍事技術として発展をしてきた原子力技術、これを民間が利用することを促していく、要は原子力発電を導入していくということに国が方針転換をした際に、民間事業に参画を促した。その際に、民間事業者からは、技術開発、そして何かあったときの事故、そうしたときには国が必ず責任を持ってくれるということでなければ参画できないというような、ある意味、明確な意思表示が米国ではなされたというようなところ。

 こういったところに比べて、我が国では、国策として推進されることへの強い信頼があったということと、電力事業者も規模が大きかったというようなところもあって、ある意味、非常に積極的な姿勢を民間事業者が見せたということが、当時の東京電力あるいは関西電力に勤めていた方の著書からもうかがうということができます。

 こうしたところから、プログラムについての部分でございますけれども、国の関与というところについてでございますが、導き出される課題として、国の関与の曖昧さを残して、これまでは、本来民間事業者が取り得るリスクを超えた民営体制が確立をされてきた、その下で発展してきたというふうに我が国の原子力事業は言うことができると思います。それが、福島事故後に行われました電力システム改革、いわゆる電力自由化によって、そのリスクを取り切るということが難しい状況になっているというところでございます。

 これは本日の主要テーマではございませんけれども、一方で、原子力規制の在り方の中においても、自由化に対する変化に対して、抜けや漏れがないかというようなことを改めて確認をする必要が出るということを意味しております。

 もう一つ、日米との違いという中で申し上げると、米国の連邦行政機関の規制的な活動には費用便益分析を要求するということ、これは非常に歴史が、古くから行われているところでございます。

 要は、新しい規制を導入するときには、その規制によって国民が受けるメリット、これが規制に対応するために必要とするコストよりも大きくなければその規制は入れてはいけないという考え方、これが一般的に取られているというところでございますし、それが原子力規制においても例外ではなく適用されるというところになってございます。

 我が国の原子力規制を、そういった米国の方針、これを踏まえた上で概観をいたしますと、我が国の原子力規制委員会、こちらの行動原則、活動原則の中では、米国の規制委員会、これをなぞらえるような形で活動原則が定められているんですけれども、あえて効率性の原則というのが除外をされております。

 安全性の向上を目指した対策を取ったとしても、取り続けたとしても、あるところ以降は、不確かさが大きくなり過ぎたり、あるいはかえって逆効果になるということすら起こり得る、こういった領域においてむやみに多くの資源を投じるというようなこと、これを、若干批判的な言葉として、「滑稽な安全の姿」というふうに私を含む二名の先生方との共著の中で書かせていただきましたが、やはり効率性の原則というのは必要な考え方であろうというふうに認識をしております。

 日米の原子力発電関係の事業者あるいは規制機関、こういったものがどのように異なるのか、非常に似てはいるんですけれども異なるということを図解をさせていただいたのがその下に置いております図でございます。

 こちらはちょっと細かくなってしまいましたので、後でゆっくり御覧いただければと思いますけれども、非常に似ているんだけれども異なるという点が、例えば、原子力規制あるいは原子力政策、エネルギー政策というものに対する議会のチェック、こういったものが機能しているかといったようなこと、あるいは、事業者代表の組織が、事業者が安全を考える代表機関として規制と綿密なコミュニケーションを取っているか。よい規制というのは、規制機関だけがつくるというものではなくて、やはりその技術を使う人たちとの綿密なコミュニケーションによって成り立つということだとすると、そういったものが成り立っているかというようなところ、ここを書かせていただいているところでございます。

 おめくりいただきまして、三ページ目でございますけれども、こういった視点を踏まえまして、我が国の原子力規制行政改善に向けて必要な視点というようなことで申し述べたいと思います。

 原子力エネルギーを持続的に利用することの価値は小さいものではないわけですが、一方で、安全の規制というようなところは非常に重要であるというのは先ほどの山口参考人も述べられたところかと思います。

 適切なリスク管理と政策的意思、社会の理解に支えられて初めて原子力というのは役割を果たすということが可能になるわけですが、そうした中で、懸念をされる規制機関の方の御発言としてちょっと引用させていただいております。

 審査ガイドよりも個々の審査官の判断の方が上位である。あるいは、審査というのはいつでも誰でもどの時点からでもひっくり返せる仕組みが大事、あらゆるメンバーがちゃぶ台返しができることが大事。あるいは、規制の立場では審査において制約条件が課されていない。

 これは、安全最優先という点では同意をする向きもあろうかとは思うんですが、行政は憲法によって制約をされるのではないかといった根本的な原則、あるいは、ひっくり返るちゃぶ台の上で継続的な安全性向上を考えることができるかといった本質的な問題といったような課題がここからうかがえるというふうに思います。

 こうした点で、必要なこととしまして、適切なチェックと健全な批判。行政機関としての当然有するべき規制の効率性や首尾一貫性について、やはり規制機関としてチェックを受けるという体制整備、あるいは判断根拠の明示化、明文化といったようなところを徹底する。

 あるいは、積極的な外部の知見の取り入れや関係者とのコミュニケーション。独立性というのは孤立性を意味するものではないということの徹底、そしてもう一つ申し上げたいのが、国民、立地地域住民ともう少しコミュニケーションを取るというようなこと。米国のNRCでは、立地計画や、あるいは原子力防災についてもNRCが積極的に関与をしているというところがございます。

 三点目が、継続的改善に向けたシステムデザインということでございます。特に、規制基準を満たすことはゴールではないというのが今の一般的な認識でございます。そこをむしろスタートとして、事業者が自主的安全性向上に取り組み続ける、こういったことができる、機能するシステムを設計する必要がございます。

 ただ、その中で、自由化された市場においてコスト競争を求めるという制度と自主的安全性向上といったようなものを同時に求めるには、やはり社会として、どこがゴールだと、安全目標といったような議論が非常に重要になってまいります。そういった議論において、原子力規制委員会に期待される役割、社会とのコミュニケーション等においても期待される役割というのは非常に大きいというふうに理解をしております。

 具体的に求められる措置としまして、三点列記をさせていただきました。これは、全て、これがなければといったようなところを申し上げたというよりは、これを基に議論をしていただく、させていただくということが重要であろうと思います。

 まずは、我が国にとっての原子力技術の意義を原子力基本法で改めて議論をする、それにひもづいて原子炉等規制法というようなものが運営されるように、行う。

 規制行政として、福島事故後、急遽立ち上げられた原子力規制委員会でございますけれども、改めて、活動原則といったようなものの中に効率性あるいは首尾一貫性を取り込むべきではないか。

 そして、どのような機関であっても、やはり相互にチェック機関、チェックを受けるといったようなことがなければ独善に陥ってしまう、こういった考えから、原子力委員会なのか国会なのか、これはいろいろな考え方があるかと思いますけれども、チェックを相互的に受けるというようなことが必要ではないかということを集約させていただきましたのが次の図二でございます。こちらの図につきましては、私の私案でございますので、後で御覧をいただければというふうに思います。

 私からの意見陳述はこちらで終わらせていただきます。

 御清聴いただきまして、ありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 ありがとうございました。

 次に、木村参考人にお願いいたします。

木村参考人 それでは、お話しさせていただきます。

 まず、原子力規制委員会の適格性について、皆さん、論じたいと思います。

 原子力規制委員会及び原子力規制庁の立ち位置が、原発は経済活動に必要というもの、つまり、原発をスムーズに稼働させることを当然の前提としている機関であるということです。米国のNRCも同じ立ち位置です。

 実際、規制委員会の履歴を見ていけば、原発を積極的に推進してきた委員が多数を占めており、これまでの新規制基準の下での適格性審査や老朽原発の延長申請について、全て、適合、適格で許可を与えてきたことからも分かります。電力会社は、原子力規制委員会に申し出ればその望みの結果が得られるとたかをくくっていることは確かです。

 その意味で、原子力規制委員会の原発の適格性審査に対する中立性や市民性を満たしているかどうか、その適格性には大いに疑問が残ります。原発は必要であるとして、稼働させるための審査であって、稼働させない審査ではないというのが現状でございます。

 続きまして、規制委員会の検証審査機関の必要性というところを論じてまいります。

 原子力規制委員会は、準立法、準行政、準司法機関としての位置づけであり、立法権、行政権、司法権の行使において瑕疵がないかを審査する機関が必要です。つまり、規制委員会が行った決定の当否、それによる権力行使の正邪、第三者として下す判断の誤りなどについては、監視、審査、勧告を与える検証審査機関を備えねば、独走しても歯止めが利かなくなるという可能性がございます。

 こういった点から申し上げて、実際に規制委員会自体としての独立性というものを踏まえた上で、きちんとした第三者機関がそれが正しいかどうかを考えていくということが重要になろうかと思います。

 こういったことを前提に置いて、これから申し上げます問題というのを原子力規制委員会ではこれまでほとんど検討されてこられませんでした。現場に即して具体的に俎上に上げてもらいたいと思います。

 まず一つは、福島第一原子力発電所事故において、福島では、除染によって線量が下がったというのはもちろんございます。それは、農地と宅地の一部。

 森林は、ウェザリング効果と呼ばれる、気象現象を含めて、効果で下がってまいりました。それはほとんど、特に、ここで申し上げますのは、ウェザリング効果としての森林の部分です。それは、短寿命核種と呼ばれる放射性物質、非常に線量が高かったものが一気に下がっていく現象、そこを取り込んでしまえば明らかに事故当初からいえば低くなっていますが、半減期が比較的長いセシウム134、また、半減期が三十年というセシウム137においては、それでは説明がつきません。

 なぜならば、これは植物の三大栄養素と呼ばれる窒素、リン酸、カリ、そのカリウムの同族元素としてセシウムが存在します。このセシウムとカリウムの植物は見分けがつきません。そのため、栄養素としてセシウムを吸収、濃縮していくということになります。その結果として、成長点に集まって、それが落葉や落実となって地表面に落ちていく、放射性物質が森林の場合では常に地表面に蓄積されているということになってしまいます。

 次のページをお願いします。

 こういったことが実際には森林の中で行われていますし、中山間地域、福島県は約七割の山間部になっております、そういったところでは除染の効果というのは非常に限定的であるということです。こういったような、除染によっての劇的な線量の低下というのは考えにくいものです。実際、チョルノービリでも同じようなことが言われております。

 続きまして、甲状腺がんについてちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 こちらに述べる、ベラルーシ共和国ブレスト州における甲状腺がんの推移というグラフがございます。

 その前に、ベラルーシ共和国というところでチェルノブイリとの位置関係を見ていただきますと、お分かりにもなりますように、ブレスト州というのは、汚染の比較的強い部分から弱い部分、ほとんどないというところまでを含んでいる状況です。これはヨウ素131という半減期が僅か八日間という非常に短い半減期のものの汚染地図でございますが、こうした汚染の中で暮らす人々の中に、以下のような甲状腺がんの推移というものが見えてまいります。

 この甲状腺検査というのは、チェルノブイリの原発事故前から行われております。それは、ベラルーシ共和国というのは内陸性であって、大きな、海もなく、河川のみしか存在しませんので、ヨウ素の欠乏が見受けられる、ヨウ素欠乏症ぎみの地域であるということがございます。そういった観点から、甲状腺疾患を抱えた国民が非常に多うございまして、それに対しての検査ということで、新生児からの検査を行っております。

 その結果として、事故前から見ていってもお分かりのように、事故から数年たってから子供の甲状腺がんが出てくるということになっています。その子供の甲状腺がんが徐々に増えていくところで、ベラルーシと米国との協定によって甲状腺検査が更に進められた結果、急激な上昇が見られるようになりました。

 このように、時間を経過していくと、小児から、こちらにお示ししておりますように、思春期の甲状腺がん出現者が増えてまいり、最終的には大人へ移行します。

 実際、二〇〇二年からは、このブレスト州では、移動検診車によって、穿刺吸引細胞診といって、疑わしい部分の、甲状腺部位にあるがんとおぼしき部分に対して針を刺して細胞診を行うということをしてまいりました。その結果、思春期から、さらには大人の人たちへの甲状腺がんが非常に増えてきていることが明らかとなりました。

 実際に、事故から三十年たった二〇一六年には二百六十三人、翌年、二〇一七年には三百十人というふうに、現在も甲状腺がんの出現者が増えてまいります。

 このように、原発事故というものは長期にわたる影響があるということを、皆さん、御理解していただきたいと思います。

 続きまして、三枚目の記事なんですが、原発へのミサイル攻撃というふうなタイトルにしておりますが、実は、皆さん、日本では報じられていない情報です。これは、私もネット検索でいろいろ探したんですが、一切出てきません。

 ちなみに、私のところには、今年の四月五日に政府専用機で来日したウクライナの避難民を私が預かっております。その避難民から直接私のところに、今日こういう話をするんだという話をしたところ、六月五日の情報を知っているかという話を言われるので、私は知りませんということになると、その方から実際に情報を、これはウクライナ語で書いてあるんですが、二〇二二年六月五日午前五時半、ユジノウクラインスカ原発の上空をロシアから発射されたミサイルが超低空で飛行し、原子力災害や河川の放射能汚染を引き起こす可能性があったという記事が報じられており、それはアメリカの三大ネットワークであるCNNも大々的に報じました。

 こういったことが、日本の中での情報の中で埋もれてしまい、出されていない。こういう危機感を、じゃ、誰がどう判断していくのかというところの問題点というのは十分考えないといけません。

 原子力規制委員会は、本来、環境と人体への影響を議論すべきところでありますが、そういったところよりも、技術的な部分しか述べておりません。こういったような状況の中で安心して暮らせる世の中を構築していくためには、きちんとした情報を入手し、かつ、それを判断していく機関としても動かなくてはいけないと私は思います。

 原発事故が起きた場合、実際、その影響というのは十年や二十年では収まり切れない常識があります。それにもかかわらず、僅か十年という形で東京電力福島第一原子力発電所事故は矮小化されました。影響はほとんどないという原子放射線に関する国連科学委員会の報告をうのみにすることなく、長期的影響を考えていかないといけないというのは、私が示したベラルーシの現状を見ていただくとお分かりと思います。

 まして、ウクライナへのロシアの侵攻により、原子炉への攻撃が起こる可能性が出てきました昨今、地震、火山などの自然災害にとどまらず、こうした議論をし、その安全性を議論すべきではないでしょうか。

 また、自然災害や戦争、テロリズムによる重大事故に対し、原子力規制委員会は、国際原子力機関が採用している深層防護、第一層から第五層の考えでいえば、第五層に当たる避難計画を適合性審査の対象に組み入れていないということも重要です。こうした議論を原子力規制委員会は真摯に受け止め、国民の安全を守るための議論をするように強く求めます。

 以上です。(拍手)

赤澤委員長 ありがとうございました。

 次に、大島参考人にお願いいたします。

大島参考人 龍谷大学の大島と申します。

 本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 二枚目を御覧ください。

 本日は、原子力発電をめぐる諸課題を踏まえつつ、原子力規制行政に関する意見を四点述べさせていただきます。

 まず、三ページ目、原発事故処理、廃炉について述べさせていただきます。

 二〇二二年で東京電力福島第一原子力発電所事故から十一年がたちました。周辺はいまだに放射性物質で汚染されている地域が広がっています。いまだに多くの人が避難を強いられています。福島には原発事故の影響が色濃く残っています。また、福島第一原子力発電所そのものの処理、廃炉、後始末の課題が残されています。

 事故を起こした原発そのものの処理の基礎となっているものは、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚会議が二〇一九年に策定した東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所一から四号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ、いわゆる中長期ロードマップです。

 ところが、この中長期ロードマップに関しては重大な問題があります。それは、ステップ2完了、すなわち二〇一一年十二月を起点にして、三十から四十年で廃止措置を完了するとしている点です。

 一F廃炉に対し、原子力規制委員会は、特定原子力施設監視・評価検討会で、東京電力が行っている様々な廃止措置の取組を評価、検討しています。ところが、原子力規制委員会は、東京電力が行う作業の大本になっている中長期ロードマップそのものについては評価、検討を行っておりません。

 現実的に考えれば、三十から四十年、残り十九年から二十九年で廃炉するということは不可能です。むしろ、無理なスケジュールをそのままにしていることが様々な問題を引き起こしているというふうに考えます。

 廃炉に要する期間について、ごく簡単に申し上げます。

 早稲田大学の松岡俊二教授は、昨年、二〇二一年に、一F廃炉についての論文を発表しています。この論文では、スリーマイル島原発事故を参考に、一Fの燃料デブリを取り出すのに要する時間を推計しています。推計の結果、燃料デブリの取り出しのみで、甘く見て六十八年、厳しく見て百七十年かかるとしています。この期間は、燃料デブリの取り出しにのみ要する期間です。膨大に発生する放射性廃棄物の処理処分は検討の対象外となっています。つまり、三十から四十年で廃炉するという中長期ロードマップは、もはや実現性のないものとなっております。

 費用面でも重大な問題が生じています。

 四枚目のスライドを御覧ください。

 東京電力は、燃料デブリの本格取り出しまでに一兆三千七百億円かかると発表しています。表にありますように、二号機の試験的取り出しと二号機での若干の規模拡大のみで一兆三千七百億円となっています。デブリ取り出しの規模の更なる拡大は、想定困難とされています。つまり、燃料デブリの取り出し費用は現時点で予測不可能というふうになっているわけです。

 もちろん、費用面以外の問題もあります。高線量の下での作業となりますので、被曝労働の増大や放射性物質拡散のリスクは払拭できません。また、膨大な放射性廃棄物の処分方法や、行き先が決まらないという状況もあります。一Fの安全な処理を進めるためには、まずは、中長期ロードマップそのものの見直し、再評価を行うべきです。

 私が座長をしております原子力市民委員会では、まずは、福島第一原子力発電所の安定化のために外構シールドを設置することを提唱しております。資料を配付しておりますので、是非後ほど御検討いただきますようよろしくお願いいたします。

 二点目、原子力規制委員会の独立性と不偏性について述べさせていただきます。

 五ページ目を御覧ください。

 原子力規制委員会設置法が可決、成立して今月で十年となります。改めて、原子力規制委員会の独立性と不偏性が確保され、更に発展させる必要があると考えます。

 まず、何について、何からの独立性かという点について絞って強調したいと思います。

 原子力規制委員会は、御承知のように、三条機関であります。つまり、原子力規制委員会に求められる独立性とは、専門的知見に基づく職権行為について、他の行政機関、大臣から指揮監督を受けないということです。

 加えて、国会事故調査報告書でも指摘されましたとおり、福島原発事故の原因となった規制のとりこに陥らないためにも、規制と利用推進が分離されていることが独立性の観点から極めて重要です。これは、原子力に関する安全を確保する上で極めて重要です。政治やその他の行政機関からの不当な圧力や要求に原子力規制委員会は応じてはなりません。また、政治やそのほかの行政機関においても、利用推進の観点から原子力規制の在り方にあれこれ要求するべきではないと考えます。

 六ページ目を御覧ください。

 一方、国会は国権の最高機関です。そこで、国会としては、何より、原子力規制委員会の目的である原発事故防止、安全性の確保の取組について厳重なチェックを行っていただきたいと考えております。

 加えて、独立性とともに、不偏性もまた原子力規制委員会には求められると考えます。不偏性は、単に制度があるだけではなく、運用面での改善により、日々向上させていくべきです。例えば、独立性や不偏性を担保するには、形式的に情報が開示されていたりプロセスが透明であったりするだけでは不十分で、広く一般国民や、原子力事業者とは直接関係のない専門家がチェックし、批判すること、また、原子力規制委員会がこれを受け取り、コミュニケーションを行う場が設定される必要があります。さらに、情報は単に公開、開示されていればよいというわけではなく、独立性、不偏性が外部から確認、チェックできるようにする必要があると考えます。

 なお、原子力規制においては安全性が何よりも優先される理由について申し上げます。

 一般の産業技術とは異なり、原子力発電は、一旦事故が起きれば、天文学的な被害がもたらされます。これが一般の産業技術とは著しい違いです。人が扱う技術である以上、一〇〇%安全はあり得ないのは当然のことですが、一般の産業技術であれば、事故被害は一〇〇%事故を引き起こした企業が賠償しなければなりません。そのため、一般企業では、事故を起こさないインセンティブが企業に働きます。ところが、原子力発電は、事業者に形式的な損害賠償責任はありますが、実質的には国民がその費用負担をしています。

 したがって、原子力発電では、安全を最優先させる経済的インセンティブが事業者にはほとんどありません。取り返しのつかない被害がもたらされる可能性があるにもかかわらず、損害賠償責任は実質的に一部免除されていること、これが決定的な違いです。であるからこそ、原子力においては安全規制が何よりも重視されるというふうに考えます。

 これらの点に関しましても、原子力安全の確保の観点から、今後御検討いただきたく思っております。

 三点目です。原発の高経年化、つまり老朽化と運転延長について述べます。

 七ページ目を御覧ください。

 まず、原則ですけれども、原子炉等規制法において原子力発電所の運転期間は四十年とされております。また、原子力規制委員会の認可を受けて、例外的に二十年を超えない期間で一回限り延長することもできるとされております。

 最近、六十年運転があたかも容易になってきているかのように政策議論が進められています。本当に六十年運転が世界の当たり前になっているのかということについて見る必要があります。

 確かに、アメリカでは、六十年の運転期間について、延長が出ております。ところが、実際には六十年運転を達成した原発は世界では存在しておりません。

 例えば、一枚飛ばしまして八ページ目を御覧いただきますと、許可された年数以前に原子力発電所の多くが廃止となっております。つまり、六十年の運転認可があったとしても次々廃炉されていくわけです。

 その理由は、ほとんどが、丸に囲まれましたマーケットコンディションズです。簡単に言いますと、原発が経済性を失って競争力を持たなくなったため閉鎖されていくというわけです。

 現在アメリカで運転されている最も古い原子力発電所は、七ページに戻りまして、ナインマイルポイント1という原子力発電所です。運転期間は今年で五十三年です。

 これらの既設の原発であっても経済性が失われていることが現実なので、運転延長を安易に進めることは経済性の観点からも合理的とは言えません。

 最後に、原子力発電と戦争の関係について述べさせていただきます。

 九ページ目を御覧ください。

 御承知のように、本年二月二十四日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始いたしました。ロシアは、侵攻当初から二つの原子力発電所を攻撃しました。特に重大なのはザポリージャ原発への攻撃でした。

 ザポリージャ原発には六基の原子炉があります。ヨーロッパ最大の原子力発電所です。三月四日以降、ロシアの管理下にあり、ウクライナのエネルゴアトム社が二基の原発を運転しております。五月三十一日には、エネルゴアトム社の総裁代理が、核の大惨事につながるおそれがあると警告しています。

 十ページ目の図は、ザポリージャ原発が事故を起こした場合、放射性物質がどのように拡散していくか、ウクライナ規制当局が評価した地図です。これに日本地図を重ねますと、その影響の広さが容易に理解できることと思います。

 これに加えて、武力攻撃を受けている最中に原発を運転していた事実も重大な事実です。

 十二ページを御覧ください。

 ウクライナの原発依存度は、二〇二一年に五五%でした。このような高い原発依存度のために、戦争中ですら原発を動かさざるを得ないという危険な状態にあります。

 したがって、日本の原子力規制に関して次の二点が指摘できます。

 第一点は、日本は沿岸に原発が集中立地しており、武力攻撃を受けた場合の重大事故発生の可能性が否定できません。そのため、早急に、武力攻撃を受けた場合のリスク評価を具体的に行う必要があると考えます。

 十一ページに戻っていただきます。

 かつて、一九八四年に、日本の外務省の委託で日本国際問題研究所が、原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察というレポートを発表しております。改めてこのような検討を各原子力発電所について行うべきです。その上で、原子力規制の在り方や原子力利用の在り方について再検討を行うべきと考えます。

 第二に、福島原発事故という過酷事故を経験した日本としては、原発依存を続けることのリスクを改めて検討すべきです。SMR、小型炉ですけれども、検討が行われつつありますが、この原発というのは、小型である以上、経済性がないため、大量生産、大量設置ということが前提とされている原子炉です。人の住むところの近傍にSMRが大量に設置されれば、戦闘地域になった場合に非常に大きなリスクとなります。このようなことがウクライナでなくてよかったというふうに私は思っておる次第です。

 以上、簡単に四点を御意見申し上げました。

 この度は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤澤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神田憲次君。

神田(憲)委員 おはようございます。自由民主党の神田憲次でございます。

 今日は、こうして四名の先生方に大変貴重な時間にもかかわらずお越しいただきましたことに、まずもって感謝申し上げます。ありがとうございます。

 早速、私の持ち時間二十分ですので、質疑に入らせていただきます。

 本年三月二十二日には、電力需給が逼迫しまして、東北と首都圏では停電寸前までに至りました。昨日には、この夏及び冬、国が、電力の需給逼迫についての節電のお願いがございました。さらには、ロシア軍のウクライナへの侵攻なんですが、エネルギー価格の高騰という形で影響が広がりまして、資源エネルギーの安定供給が最優先であること、この点を改めて示したわけです。

 こうした事態に備えて、エネルギーの安定供給のためにバランスの取れた現実的な電源構成が求められると考えるわけですが、その上で、岸田総理大臣も、エネルギーの安定的な供給の確保のために、原子力規制委員会の審査体制の効率という観点、この点を図りながら、新しい規制基準に適合すると認められた原発は可能な限り活用していきたいという意向を示しておられます。

 しかしながら、実際のところ、原子力発電所の適合審査が長期化しておりまして、これまで、十七基に対して設置変更許可がなされているものの、原子力規制委員会において審査中が十基となっております。

 審査体制の効率化それから合理化を図る必要性について、山口参考人と竹内参考人の御見解をお伺いしたいと存じます。

山口参考人 山口でございます。御質問ありがとうございます。

 審査体制、審査の効率化を図ることの必要性という御質問でございます。

 まず、規制委員会、一番最初の審査のときには、当然、新しい規制基準の下で時間がかかるということを述べられておりました。しかしながら、これまでに多くの審査の経験、知見、これを得ております。それを踏まえて、六か月とか一年とか、そういうふうに効率化されるということをおっしゃっておられました。そういう技術的、あるいは審査のプロセスとしての見通しもある中で、何より、審査は、国民のために行う行政でございます、規制は。そうしますと、まずは、一番国民の便益を増やす方向で、これまでの審査の経験を十分に活用して審査の効率化を図っていくということは、これはもう言うまでもなく、非常に重要なことでございます。

 そういう中で、規制委員会としては審査の効率化を図るという考え方を一つの軸として審査の取組方をこれから議論していくということを、是非希望しているところでございます。

 以上でございます。

竹内参考人 竹内でございます。御質問いただきまして、ありがとうございます。

 今、山口参考人からもございましたとおり、規制というものは、国民のためにその技術のもたらす便益を最大化する、これを目的に行われるものでございます。

 効率化といいますと、あるいは迅速化といいますと、大切なもの、安全をむしろないがしろにするのではないかというふうな御不安を持たれるというようなことがあろうかと思いますが、それを求めているわけでは決してございません。ただ、効率的な審査の中に必要な、例えば事業者との綿密なコミュニケーション、こういったものをすることで、よりよくこの技術を使うといったような方向に規制が向かうこと、そういったようなことが必要であろうと思います。

 そしてまた、安全というようなものを、共通ゴールを、事業者側と規制側が共通の目標を持って取り組んでいくというようなこと、これに向けては、やはり首尾一貫であるといったようなことも必要なわけでございまして、例えば、令和元年だったと思いますけれども、規制委員会の委員長、北海道電力株式会社の泊原子力発電所に関する規制活動につきまして、言うことが大きく変わったというようなこと、これは自分たちも反省すべきであるということをおっしゃっておられます。

 こういった今までの知見も含めて蓄積をして、やはり活動原則の中に効率性というようなものを入れることによってよりよい規制になるということを含めて、期待を申し上げているところでございます。

 私からは以上でございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 原子力発電における安全性向上の取組という観点からちょっと御質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど来出ておりますように、二〇一一年の福島第一原発の事故、この反省と教訓を踏まえて、原子力の安全規制というのは世界で一番厳しいというレベルまでになって見直されてきているわけです。

 原子力規制委員会によって非常に厳格な規制基準ができまして、原子力事業者の自主的な安全性の向上というのは、ずっとこの間、進められてきておるわけなんですが、これまで十一年余りの原子力安全規制を含めた原子力の安全性の向上の取組については、どう評価されておりますでしょうか。山口参考人、竹内参考人に御見解をお願い申し上げます。

山口参考人 山口でございます。

 質問にお答えしたいと思います。

 自主的な安全向上の取組についてどう考えておるかということでございます。

 御承知のとおり、新しい規制基準を策定したときには、これまでの安全設計審査指針、これは前の安全基準ですが、それをしっかり見た上で、福島事故の様々な教訓に関するレポート、これを徹底的に調査し、海外の規制の現状、これを全て調べ上げて、いずれにも遜色のないように、ちゃんとカバーできるように、そういう形で策定された基準でございます。それで、そういう基準を踏まえて、この十一年間、いろいろな安全向上の取組をやってきたわけでございます。

 さらに、あわせて、確率論的リスク評価の導入というものが進みまして、実際に、新しい規制基準で、対応した設備、自主的安全向上の取組というものが定量的に評価されてございます。これは、規制の要求として一部既に公表されているものがございますし、あるいは研究段階としてやられておるものもございます。

 その数字を御紹介するのが一番適切かと思いますけれども、今回、新しい規制基準で、シビアアクシデント、いわゆる過酷事故に対する要求が厳しくなったことに加えて、テロや自然災害、そういうものへの厚み、さらに可搬型機器への取組、そういった多層的な、多様性を備えた取組によって、確率論的リスク評価の評価結果がおおむね一桁あるいは二桁ぐらいリスクが小さくなるという結果が出てございます。

 このことからも、自主的安全向上の取組に効果があったということは十分分かることではございますが、しかしながら、最も重要なことは、そういった評価に満足することなく、安寧することなく、引き続き事業者の方々が、安全評価、それから安全向上の取組、海外新知見の取組、そういうものを続けているということこそ極めて大切なことであると考えてございます。

 以上です。

竹内参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 竹内からも申し上げたいというふうに思います。

 リスク管理の安全工学的な、その数字ですとかそういったものについては山口参考人から今御発言がありましたので割愛をさせていただきますけれども、改めまして、世界で一番といったようなこと、そういったところに安寧することなくといったようなところが非常に重要な観点かというふうに認識をしております。

 原子力規制というものが、先ほど、求められる役割、私は、必要条件を提示して、それに合格しているかどうかの審査を行う、その役割であるというふうに申し上げました。そういった審査をしたときの、断面で切ったときの安全性というようなものではなくて、そこから継続的に向上していくというような仕組みづくりが非常に重要であって、その観点からいいますと、若干やはり懸念がありますのが、長いこと停止をさせた状態で審査を行っているということによって、現場で運転すると、運転しながら設備と向き合う、そういったような、何かちょっとした不具合を察知するような、現場の能力というんでしょうか、そういったようなものは磨かれているんだろうかというようなところ、こういったところも懸念するところではございます。

 そういったところも含めまして、継続的な改善の仕組みということを規制の皆様にどうやって盛り込んでいただくか、システムにデザインしていただくかということが重要な観点ではないかというふうに考えてございます。

 以上でございます。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 安全性、それが第一義的に重要で、問われるべき観点だと思います。

 一方で、今度は二〇五〇年のカーボンニュートラルという観点から申し上げると、原子力を欠いた状態では我が国のカーボンニュートラルの実現というのは本当に困難な状況にありますでしょうし、政府がもう少し原子力技術の位置づけを明確にすべきだという指摘もあるわけです。

 再生可能エネルギーを最大限活用すべきだという御意見もあるんですが、どうしても、現状では、天候に左右される再生エネルギーのみに頼ることには限界があるわけです。

 昨年改定されました第六次エネルギー基本計画の中では、原子力については、国民からの信頼確保に努めて、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用していくという方針が示されておりますし、同計画では、原子力は二〇%から二二%という比率になっておりますが、原子力規制委員会の適合審査の合格に加えて、地元同意がしっかり得られないと進められないわけで、もう少し原子力発電への位置づけというものを明確にしていくことが必要であると考えるわけですが、この原子力発電の位置づけについて、山口、竹内両参考人の先生にお伺いしたいと存じます。

山口参考人 山口でございます。

 原子力発電の位置づけについて考えるところを申し述べさせていただきます。

 原子力発電というものは、御承知のとおり、運転中に二酸化炭素を出さない。それから、実際に、一回燃料を炉心に入れますと数年間運転が続けられる。しかも、そのウランを効率的に使えば、数千年にわたってエネルギーを確保できる。しかも、多くの雇用を生み出す。それも、原子力発電所、既に五十年を超えて運転する原子炉が十基以上世界にはございます。日本は、アメリカに、それからヨーロッパに比べると、アメリカより平均年齢で二十年、ヨーロッパより十年ほど若いという状況でございます。ということは、それを使えば、六十年、あるいは廃止措置の間もいろいろな事業がありますので、七十年、八十年というふうな雇用や経済に対する効果をもたらすものでございます。

 そういう観点で、国の原子力の利用に対する考え方は、様々な、多くの副次的な効果も含めて位置づけるべきだということで考えてございます。

 当面、我々の極めて重要度の高い、プライオリティーの高い問題は、エネルギー源の確保、それからカーボンニュートラルへの実現、これは、あらゆるシナリオ分析を行っても、原子力抜きでは実現できないというものは、日本のみでなく世界各国のシナリオ研究が物語っているところでございます。

 是非、そういった特性を持っている、価値を持っている原子力の役割、実力を再評価して、しっかり国の重要なエネルギー源の中核として位置づけていただきたいというふうに考えてございます。

竹内参考人 御質問ありがとうございます。竹内でございます。

 まず、カーボンニュートラルに向けてというところが冒頭ございました。カーボンニュートラルに向けて大幅な脱炭素化を図っていくためには、需要の側の電化、例えば、ガソリン車をバッテリーを積んだ車に替えていく、そういった電化という部分と、あるいは、電源の脱炭素化、これを同時に進めるということが大きなセオリーになります。

 そうしますと、低炭素電源、脱炭素電源というものを大量に必要とする社会にこれからなるというようなところでございますが、再生可能エネルギーを主力化していくというところは、これは政府も掲げておられるところでございますが、やはり移行に時間がかかるというようなところは大きくございます。

 そして、まだ現状では、主力となる太陽光発電あるいは風力発電というのは、自然変動性を持つということと、やはり土地の取り合いというようなところ、日本は既に太陽光発電導入量でいえば世界第三位、国土面積当たりでいえば世界断トツで一位という状況でございますが、やはり自然変動性があるといったようなところは乗り越えられないところでございます。

 この長い移行期間をどのように国民にとってのリスクをできるだけ最小化して乗り越えていくかという観点の中で、原子力の位置づけを明確化するというようなことは非常に重要でございまして、国の方針がはっきりしない限り、地方自治体はこれをどのように考えればいいのか分からない、置き去りにされてしまうというようなところがあるかと思いますし、事業者も投資判断に悩む、これはエネルギー全体に対して悩んでしまうということになりかねないということを申し上げたいと思います。

神田(憲)委員 ありがとうございます。

 先ほど来、安全性の観点、これは皆様からも出ている話なんですが、お伺いした両参考人、何度も答弁の方でお話しになられている点でございます。その安全性を重視した上で、国家としての原子力の位置づけ、大変私も大事だと思っているんですが、その安全性を確保する上で、原子力を支える人材とか産業の問題も重要な課題であるかと思います。

 福島第一原発事故以来、原発の長期停止によって、原子力の人材とか技術、それから産業基盤に深刻な影響が生じていると感じております。技術の承継と人材の長期的な育成の観点からも本当に切に求められているんだと思います。

 そこで、原子力の人材、技術、それから産業基盤の強化に直ちに着手する必要性について、山口、竹内両参考人にお伺いしたいと存じます。

山口参考人 山口でございます。

 人材、あるいは、サプライチェーンといいますか産業の基盤、それについてお答え申し上げます。

 ここのところ、最後に運転を行った原子力発電所は北海道電力の泊三号機でございます。それでももう十数年たってございまして、その間新設がなかったこと、それから、この十年間、多くの発電所が建設していなかったこと、そのダメージは極めて重大な、大きなものであるという認識でございます。

 一方で、今年、ニュースで流れましたように、米国で、テラパワー社、これはビル・ゲイツ率いる会社でございますが、そちらが我が国の高速炉の技術に対して技術協力をしてほしいと。それは日本で培ってきたナトリウム高速炉技術に対する評価が国際的にも高いということを示しているものでございますし、それは軽水炉におきましても、例えばイギリス、ベトナムといったところが日本に是非原子力発電所を協力してほしいということでプロジェクトが進んでおったわけでございます。

 しかしながら、昨今の福島事故の影響、それから経済性等の問題によってなかなかうまくいっていない、こういう中で、人材それからサプライチェーン、相当苦労してございます。

 今がちょうど福島の事故から十年たったところですから、その十年間の空白というのは、一番若い二十数歳から三十数歳にかけて、脂の乗り切ったようなところの世代がおおむね抜けておる、弱体化している。それから、十年間新設がないということによって、産業界、どんどん原子力の事業から抜けるというところも出てございます。

 しかしながら、今の時点では、先ほどのテラパワー社の例でお示ししましたように、まだ間に合う。しかしながら、次のリプレースを考えるということをしない限り、カーボンニュートラルの実現という観点でももちろんそうなんですが、人材が損なわれる、あるいはサプライチェーンが切れてしまうということになりますと、イギリスとかアメリカが一時期苦しんだような状況に陥っているという認識です。

 私もこの三月まで大学におりましたので、急ぎ人材育成を強化していくこと、これの重要性、ひしひしと感じてございます。

 以上です。

竹内参考人 竹内でございます。御質問ありがとうございます。

 原子力技術の日本のサプライチェーンというのは、福島事故前、非常に充実したものでございまして、福島事故前に新設された原子力発電所、国産化率は九五、六%、七%と非常に高いものを誇っておりました。

 こういった中で、例えば、米国の原子力、自由化をしてしばらく新設が途絶えた状態で書かれた原子力再興のレポートが二〇〇〇年代初頭に出されたんですけれども、そのときには、新設をするためには日本のサプライチェーンのここを押さえなければいけないから早めに言わなければ駄目だと書かれたほど、世界的に、ある意味、高い評価を受けていたサプライチェーンを誇っていたわけでございますけれども、問題意識、提示してくださったとおり、やはりこの十年間動いてもいない、二十年ほど新設もしていないというような形になりますと、やはり技術というのが、支える人材というのが弱体化していくというのは、これは避け難いところであろうと思います。

 もちろん、今、福島の廃炉の現場、あるいは原子力のそれぞれの現場において頑張ってくださっている、こういうときだから入りたいと言ってくださっている若者にお会いしたこともございますけれども、そういった若者の、ある意味、気持ちに甘えるのではなくて、国として、この技術を使うのであれば、方針として示して、この技術に対しての教育のサポートであるとか、そういったところをしていくということが必要になるかというふうに認識をしております。

 以上でございます。

神田(憲)委員 本当に、今日は貴重な御示唆を賜り、ありがとうございました。私の質問はこれにて終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

赤澤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲・無所属会派を代表して、米山から御質問させていただきます。

 実は予定していた質問じゃないんですけれども、今ほど神田委員からの御質問で、効率化、安全への取組の評価、また原子力発電の位置づけ、また人材の確保ということについて、山口委員、竹内委員のみから御意見を伺ったんですが、せっかくですので私は木村委員、大島委員から伺いたいということで、木村委員、大島委員それぞれ簡潔に、規制基準の適合性審査を効率化することについての意見、また今までの安全の取組への評価、また、カーボンニュートラル等も含めて、原子力発電の国の政策に対する位置づけ、また人材確保に対する意見をそれぞれお伺いできればと思います。

木村参考人 それでは、お話しさせていただきます。

 私自身としては、適合性というものは、まず技術ありきで話をされているということが前提となっております。この技術ありきでやってしまうこと、今まで皆さんがおっしゃっていたように、こういう安全性を担保するためには技術者をそのまま維持しなくてはいけないということは、確かにあろうとは思います。実際の具体例としては、柏崎刈羽原発での不祥事続きというものに対しては、こうした人材不足が露見したものだとは思います。

 しかしながら、こうしたものを、じゃ、技術をそのまま維持するためにやっていくかどうかというものと原子力の安全性については、やはり大きな隔たりがあるかと思います。

 ですので、私自身としては、適格性等について議論することというのは、やはり持続とはまた別個のものであるというふうに考えております。

 続きまして、カーボンニュートラルの件に関してですが、私自身としての意見としては、じゃ、カーボンニュートラルをするために原子力は必要である、ベースロード電源ということを元首相もおっしゃられておられましたが、これを維持するためには原子力があるということを前提として考える必要があるのかどうかも、もう少し議論していただきたいと思います。

 なぜならば、私は常に、ずっとこれまでも話をしているんですが、蓄電能力、実際に、超電導蓄電というようなもの、そういう技術を用いてしまえば、かなりのエネルギーロスが減じられることになると思います。

 そうしたような状況下の下で、原子力が必要ありきという前提ではなくて、基本的には、それ自身の、蓄電能力を向上させるという技術を世界に先駆けて日本がやっていけば、新しい技術立国としての日本が成り立つと思います。

 ということで、私の発表は終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

大島参考人 お答え申し上げます。

 効率化に関してですけれども、私、原子力規制委員会の全ての審査を拝見しているわけではありませんが、見ている限り、特段非効率には感じたことはございません。むしろ、泊原発の遅延というか遅くなっているのは、原子力事業者の方が対応ができないということがあるのではないかというふうに思っております。

 あと、サプライチェーンに関してですけれども、こういった産業構造の転換はしばしば起こっています。原子力も、稼働が十基で、新規も見込めないということになると、当然ながらサプライチェーンは維持できなくなるわけです。

 こういった衰退産業を維持することは、国家においても非常に困難で、むしろゆがんだ経済をもたらすというふうに思いますので、むしろ逆に、そういったサプライチェーンが劣化して失業者などが出てくるということに対して、真正面にその対策をした方がいいというふうに思います。むしろ、維持できないサプライチェーンを維持することによって、かえって痛手を負うようなことがあってはならないというふうに思っております。

 あと、カーボンニュートラルに関してですけれども、これはIPCCの報告書でも出ておりますが、原子力によってもできるし、再生可能エネルギーによってもできる、その選択は国民に任されているということになっております。

 私は、それは当然のことであって、IEAという国際エネルギー機関、これはしばしば原子力を多めに見積もる機関ではありましたが、今はIEAも、原子力の利用に関して、ネットゼロという、二〇五〇年排出ゼロという報告書を出しておりますが、そこで書かれている、最も大きな割合を持つのは再生可能エネルギーで、九〇%以上となっております。

 そういった流れからしても、やはり原子力の位置づけは国際的にも非常に下がっているのであって、その流れの中に日本も当然ながらあるのであろうというふうに考えます。

 以上です。

米山委員 大変ありがとうございます。

 更田委員長もおっしゃられていたところではあるんですが、日本の原子力規制行政の大きな問題点は、規制当局と推進当局が一緒であった、そこがやはりいろいろな、もちろん位置づけというのはそれぞれであると思うんですけれども、それと規制というのは別でやるべきだ、安全というのと産業推進というものは全く別のもので考えるべきだというふうに、私も更田委員長の御見解に非常に賛成するところでございます。

 次は、安全についての御質問をさせていただきたいと思います。

 一応、私は短いながら知事なんかをやっていたりして、一体全体安全と言っていいかどうかと非常に悩んだところではあったんですが、そこで非常に重要になるのが、やはりハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフという言葉なんだと思います。一体どのぐらいセーフを、よしとするのかと。もちろん、ゼロリスクというものはないわけなので、やはり安全というものに対して一定の基準を示してくれないと、逆に、判断を迫られる知事なんかも判断しようがないということになります。

 ちなみになんですが、例えば自動車事故というのは、令和三年、一年間に二千六百三十六件あるわけです。一件当たり一千万円とすると、大体二百六十億円ほどの費用がかかっているというふうになります。飛行機事故ですと、大体、ヘリコプター等を含めて、一年で数件あって数人死亡で、一件一億円ぐらいとすると、一年数億円ぐらいだろうというふうに思われます。

 ところで、原発事故というのは、一九六六年に東海原子力発電所が稼働して五十年で、ジェー・シー・オーの臨界で三名、福島第一原発事故で関連死を含めて千三百六十八名死亡しておりますので、単純計算ですと年二・六人ほど亡くなっている。事故処理費用を政府は二十兆円と見積もっていて、これは八十兆円と見積もる方もありますので、これは、ざっと、簡単にするために五十兆円と考えると、ほぼ年間一兆円の費用を要していたことになります。ただ、これは古い規制基準ではこうだったということになろうかと思います。

 先ほど山口委員からもお話がありました、新規制基準では、私は、聞くところでは、炉心損傷が一万年に一回と設定されているということかと思うんですが、そうしますと、日本全体で五十基ありますので、炉心損傷は大体二百年に一回あるだろう、一回ぐらいの確率だということだと思うんです。

 そうしますと、前回が五十年に一回で起こったわけなので、先ほど一桁から二桁とおっしゃいましたが、実のところ、四倍ぐらいじゃないかと。実は桁に達していないぐらい、五十年に一回が二百年に一回になった程度ではなかろうかと私は何となく推測しているんですが、四倍か十倍かというのは余り大きな差ではないと思うんです。

 長々と前提を申し上げましたが、ということで、現在、恐らく二百年に一回ぐらいだろうと私は思っていますが、違うというなら御指摘いただいて、このぐらいのセーフティーでセーフ・イナフなのか、また、このセーフは、逆に、二百年に一回という基準であるとして、現在の新規制基準に適合しているならばそれは達成されると評価されるのか、それぞれ全委員の御意見を伺えればと思います。

山口参考人 御質問ありがとうございました。

 ハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフというのは、大変重要な問いかけであり、各国の安全の関係者が悩んでいる問題であります。それに応えるために、日本の原子力安全委員会、規制委員会ができる前の組織ですが、その中では安全目標専門部会というものをつくりまして、安全目標の議論をしてございます。

 そのときのスタート点は、社会に存在する健康リスクを有意に増加させないこと、これが出発点でございます。じゃ、有意に増加させないためには何をやればいいのかというところにしっかり思いを巡らすということが大変重要なことであり、それが結果として、百万年に一回程度という形で健康リスクを定義してございます。

 この百万年に一回という意味合いは、世界に、今、社会に存在するリスクを十分下回る、具体的な数字でいえば、二桁以上下回るという数字になってございます。

 しかし、重要なポイントは、百万年に一回という数字が重要なのではなくて、そうやって様々なリスクを俯瞰的に見ながらしっかり原子力発電所のリスクを管理していく、その上で安全に使っていく、そういう発想をやる、そのために使うものが安全目標であるわけです。

 そして、その後で性能目標というものがつくられましたが、性能目標は、安全目標を実現するために、原子力発電所の特徴を踏まえれば、炉心を損傷させないことが重要だ、だから、炉心損傷の発生頻度で十のマイナス四乗という数字を導いたわけでございます。

 その十のマイナス四乗をどのように使うかですが、今先生御指摘のように、これを原子炉の基数で割って何年に一回起きるという使い方をするのは私は間違いだと考えてございます。

 つまり、どれぐらいの認識を我々が持っているかということを表すものであり、それから、新しい規制基準との関係におきましては、実は、TMIの事故、これはヒューマンエラー、設計エラーで起きたんです。そして、チェルノブイリの事故、これは安全文化の問題で起きた。福島第一の事故、これは地震、津波、自然現象で起きたわけです。世界の原子力界は、こういった問題が起きると、それを徹底的に水平展開をして、同じようなことが起きないように問題点を除去していくわけです。

 私は、そういうものが安全の継続的な向上の取組であり、安全目標の使い方という認識をしてございますので、先ほどの最後のお答え、今の原子力発電所は安全なのかという問いにつきましては、そういった我々が明らかにしてきた課題を十分真摯に対応して対処している、それが今の原子力発電所の姿だと認識してございます。

 以上になります。

竹内参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。竹内でございます。

 私自身も、そのハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフというのは、本当に、ずっと心の中に抱えているといいますか、重要な問いかけであろうというふうに認識をしております。

 やはりこういったことを、ゼロリスクはないというのであればどこに安全の目標を置くのかといったようなところを社会で議論する、こういったところは規制委員会に私はそのコミュニケーションもリードしていただきたいと先ほど意見陳述の中で申し上げたところでございますけれども、規制委員会に委ねるべきなのか、あるいは国会という社会の負託を受けた存在が議論するべきなのか、非常に大きな問題であるというふうに、いずれにしても、認識をしております。

 こういった問題に今までなかなか数字を出すということは難しかった、いろいろな取組があったわけでございますけれども、先ほど山口参考人がおっしゃったように、震災前からも議論はあったわけですけれども、一応こういった数字を共有しようということではあっても、確定というにはまだ至っていない。こういったところの議論を深めることから我が国にとっての原子力技術の位置づけというようなものを議論することになるというふうに認識をしておりまして、国会でもこういった御議論をいただければというふうに考えております。

 以上でございます。

木村参考人 まず、原発事故に対してのリスク管理、リスク議論というものに対して一つ考えていかねばならないことは、じゃ、地震が起きたから地震のための問題を徹底的に検証していけばいいのか、じゃ、火山があって、もし事故が起きたら、今度は火山についてやっていけばいいのかというふうな問題が出てくると思います。

 実際に、こういったような問題というのは、リスクを前提として先に考えていかないといけない問題だと思っております。なので、事故が起こる前提として言うならば、あらゆる事故を想定してのリスク管理が必要になろうかと存じます。

 その点でいいますと、昨今こうやって言われておりますように、ロシアのウクライナ侵攻によって原子力発電所自身が非常に危険な状況になっているというような状況を鑑みたところ、果たしてそれが、その安全性というものに対して担保できるのかということになろうかと思います。

 私自身としての見解としては、リスク論というのを簡単に論じるのではなくて、やはり、起きたことの検証も重要だとは思いますが、起こり得る可能性を十分検討した上で適格性というものを考えていくことが重要だと思います。

 これが私の意見でございます。

 以上です。

大島参考人 原発事故がどれぐらいの頻度で起こるのかということを簡単に考えますと、原子力利用がされて五十年ないし六十年ぐらいで、深刻な事故は五回起きております。ですので、十年に一回であったというふうに総括することが大事だと思います。

 それと、確率論的リスク評価がありますが、確率論的リスク評価の考え方がどこか間違っていたのではないかというふうに私は認識しております。確率論的リスク評価に関する専門家の話を伺いますと、個別の部品であったり何かの対策が相対的にどこが弱いのかを測るものが確率論的なリスク評価であって、何か原子力発電所が十万年に一回とか事故が起きないという、そういうものを物語るものではないのだというふうに説明を受けたことがあり、多分そうなんだろうなというふうに理解しております。

 また、原発の安全性について、非常に大事だと思われますのは、私は、環境保全なので、環境被害を発生させた場合に、不可逆的な被害を発生させるようなものはやはり社会としては受け入れられないということではないかというふうに思います。

 また、事故を起こした場合ないしは被害を起こした場合に、発生者が責任を負わなければ、それはリスク評価にならないというふうに思います。それは、リスクを受ける者が国民、あるいは、その対策をするのは国民の費用で行うのであれば、それは、当然ながら、発生者はそのリスクを小さく見積もることになります。ですので、そういった、誰がどれぐらい負担するのかということに着目しなければならないというふうに思います。

 原子力発電は、事故もそうですけれども、放射性廃棄物も、結局国民が考える、なぜか国民が考えるということになっております。本来は、産業廃棄物の一種ですので、事業者が全て責任を持つという法制があれば、それを何か国民があるいは国会が考える必要は当然ながらないわけであります。原子力事業だけが非常に特別視されている、そこに非常にゆがみがあるというふうに私は思っております。

 以上です。

米山委員 大変ありがとうございます。

 もう時間が非常に限られているんですが、あと一つだけ聞かせていただいて、簡潔にお答えいただければと思います。済みません。

 先ほど関連死が千三百六十八人あったと言いましたが、これはもちろん、御意見としては、それは関連死であって、本当の、何というか、事故そのもので亡くなられたわけじゃないという御意見はあるんですけれども、それこそ首長みたいな立場になってみますと、いや、そうはいったって避難させないわけにいかないじゃないか、避難させずにそこにいろなんて言ったら、それはそれでパニックが起こって、別の形態の関連死が起こるだけだ、だから、いずれにせよ、何かあったらそれは逃げていただくしかないんだと。

 かつ、今現在では避難計画というものはほぼほぼ自治体に丸投げといいますか、自治体が何とかせいと言われている。それで、自治体が何とかして自分で判断して、稼働を許可するかどうかは知事が決めろというようなことになっているわけなんですが、果たしてこれでいいのかと私は常々、大体、県にそんな審査能力はないがなと思っているところなんです。

 この避難計画の規定の在り方について、各委員に御意見を伺えればと思います。あと一分ぐらいしかないので、済みません、短くお願いいたします。

山口参考人 ありがとうございます。

 それでは、簡潔にお答えしたいと思います。

 御指摘の点はおっしゃるとおりで、一つ重要な点は、防災計画、避難というのは、原子炉の事故時の挙動というのをきちんと踏まえて定めていくということが大変大事です。

 今御指摘いただいたとおり、関連死ということでは、海外からのアドバイザーの方もおっしゃっているんですが、屋内退避をしていればそういう事態にならなかったのに、プラントの状態と避難計画とがしっかり対応していなかったがゆえに、多くの被害、お亡くなりになる方がいらっしゃった。

 ですから、プラントの状態、事故の特性というものをちゃんと反映させた避難計画が重要です。ですから、それは、事業者それから規制当局、それが自治体にもう少し支援をしっかりするべきであるというふうに思います。

 以上になります。

竹内参考人 ありがとうございます。

 では、私からも一言だけ。

 先ほど申し上げたんですけれども、原子力規制委員会も、今、サイト内の安全性が自分たちのテリトリーといいますか所掌範囲であるというような形の審査活動を行っておられるようですけれども、やはり原子力防災といったようなところにももう少しコミットしていただくということが必要ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

木村参考人 避難の在り方については、一番問題なのは、過酷事故が起きた場合のシミュレーションが一番重要だと思います。このシミュレーションによって、避難について、最大限、被曝を起こさせない、させないということを前提として考えねばならないと思っております。その議論を規制委員会でもできるようにしていただければと思っております。

 以上です。

大島参考人 現状では、避難経路が十分に確保されていないというところがほとんどだというふうに思います。

 原子力規制におかれましても、避難経路の確保がきちんと確保されていなければ再稼働が認められないというような規制になるべきだというふうに思っております。

 以上です。

米山委員 大変ありがとうございました。

 時間超過、大変恐縮です。

 以上です。

赤澤委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会、堀場幸子です。

 本日は、本当にお忙しい中、貴重なお話を本当にありがとうございました。

 私、持ち時間が皆さんと同じ二十分しかございませんので、早速質問に移らせていただきたいと思っております。

 一番最初に、まず、安全とは何かという御質問をさせていただきたいと思います。

 三・一一の前と後で、安全という概念に対する考え方というのはどのように変わったのか、また変わらなかったのかについて、全ての参考人の先生から御意見を頂戴したいと思います。よろしくお願いいたします。

山口参考人 山口でございます。

 安全とは何かという、これまた本質的な質問ですが、私の資料の中でお話ししたように、米国の例を御説明しました、二階層の規制、一つが、不当なリスクはないこと、やはり私はこれが安全というのを一番表していると思います。

 その理由は、不当なリスクはないことというふうに安全を定めますと、では、不当なというのはどういう意味合いなのか。これは先ほどの、ハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフという質問と非常に近いものがあるわけですけれども、不当なというものが何かということを問い続けて、それを解消するように試みるわけです。

 そのために、米国は、規制委員会に、規制で要求しているものを超えて事業者に求める権限を与えるというふうな論理展開をしているわけでございます。

 ですから、安全とは何かということは、逆に、不当なリスクがないことということを実現するために、不当なリスクというものをしっかり認識して、それを除去する活動を続けていくこと、こういう行為であるというふうに思っております。

 以上になります。

竹内参考人 御質問ありがとうございます。竹内でございます。

 安全とは何かという、非常にまた本質的な問いかけをいただきましたけれども、安全とは何かというのは震災前後で変わるものではないというふうに認識をしております。

 もし変わったものがあるとすると、やはり安心というものが大きく求められるようになった、そして、その安心というものを非常に得づらくなっているという状況において、どこまで求めるのが安全かという、ある意味、震災前に本当は定めておければよかったところについても議論をし、安心といったようなところを確立していかなければいけないという難しい状況にあるということだというふうに理解をしております。

 以上でございます。

木村参考人 安全という言葉自身の抽象的なものではなかなか難しいということをまず述べさせていただきます。

 震災以降、もちろん、かなりの部分は改善されてきたと思います。しかしながら、この安全というものが非常に抽象的でございます。そういった抽象的な問題に対して、幾つかの事例を挙げるだけではなくて、あらゆる想定をしていくということについて考えていかねばならないと思っております。

 以上です。

大島参考人 非常に重要な御質問をいただきました。ありがとうございました。

 安全とは何かということですが、環境保護の観点からすれば、不可逆的な被害が発生しないこと、それが安全であるというふうに考えております。また、危険な行為を行う者がその責任を持てるような範囲に収めることということだというふうに理解しております。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 専門家ではない私たちが安全という言葉を使うときに、やはりその言葉の意味が人によってとても違うんだなというふうに常々感じているところです。安全を確保する、安全を目標にする、こういった言葉に込められている意味が使う人によってとても違うのではないかというのが、今お話を聞いていて思っていたところです。つまり、竹内先生がおっしゃっていました、安心というものをつくっていくための安全というふうな考え方というのがあると思うんですけれども、そのための安全が、考え方がちょっと人によって違うのかなというところを今御質問させていただきました。

 リスクの評価というものと安全基準について御質問させていただきます。

 三・一一前のリスクの評価というところでは、やはり確率論的なところが多かったというふうに考えています。また、その確率論というところが安全神話をつくり出したのではないかというふうな議論も耳にしたことがございます。一方で、三・一一の後、絶対的なリスクの評価、一〇〇%、リスクゼロといったような、それを求めるような動きになってきたように感じています。

 そこから十年以上がたちまして、再びこの場で安全基準というものについて考えるとき、それは、事故の率、故障率といった確率論的な評価を続けていていいのか、若しくは、どのラインだったら許容できるのかといった、許容を考えるというような議論をするべきなのかということについて考えているところでございます。

 山口参考人と竹内参考人にお尋ねさせていただきたいと思います。

 人工物に、一〇〇%の安全であったり、完璧というものは存在しないと思っています。機械には、初期故障やトラブル、劣化と、様々なアクシデントがあります。それをどのように捉えていくのか、そして、その捉え方というものは三・一一の前と後でどう変わったのか、教えてください。

山口参考人 人工物に一〇〇%の安全はないということで、それは御指摘のとおりです。

 それで、震災の前は、確率論的リスク評価ということは、瑕疵のないことといいますか、要は、原子力発電所は大丈夫だ、問題ないんだ、それを言うために使っていたと思います。現在は、確率論的リスク評価は、先ほど述べました不当なリスクを見つけるためにやっている、そういう基本的に大きな違いがありまして、言い方を換えますと、震災の前は一〇〇%の安全をどんどん追求していこうとしてやっていたのに対して、今は、一〇〇%でないところを暴いていこう、そういうことでやっている、そういう認識でございます。

 それで、当然、先ほどの御質問の中で、三・一一以降、リスクゼロを求めている方向にというふうにおっしゃったというふうに聞き取ったんですが、今の私の御説明のとおり、三・一一以降は、リスクゼロを求めるのではなくてリスクを暴いていく、そのためにきちんとリスク評価を活用していく、そういう流れに転換したんだ、そういうふうに理解してございます。

竹内参考人 竹内でございます。御質問ありがとうございます。

 確率論的リスク評価の部分、これは震災前からも行われていたわけでございますけれども、私自身の理解といたしましては、外的事象、内的事象、いろいろな事象に対してバランスよく使って、要は、今、山口参考人がおっしゃったように、悪さを見つけ出すということをしなければならなかったわけですが、若干使い方が悪かったというか、見れるリスクといいますか、自分たちが見られるリスク、発見しやすいリスクにちょっとフォーカスをしてしまった。例えば、自然災害でいえば、地震は皆さん議論をしていたわけですが、津波というようなものが起きたときというようなもの、あるいは内部溢水というようなものが起きたときといったような、満遍なく行うということができていなかったのではないか。

 確率論的リスク評価という手法が悪かった、使うツールが悪かったというよりは、使い方が悪かったのではないかというふうに考えております。それを、今、改善が図られて、悪さを見つけ出すというツールとして改めて、満遍なく使うということが取り組まれているというふうに認識をしております。

 以上でございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 私が一〇〇%を求めるというのは、国民的な感情として、どうしても一〇〇%安全なものを求めてしまいがちになったのではないか、それだけ三・一一が私たち日本国民にとって大きな契機になった、大きなアクシデントだったということだと思います。

 より、今、原子力発電所の再稼働に向けて、今本当に電力が足りない、そしてまた、一方で電化を進めている、例えば自動車であったり、様々な産業のイノベーション、デジタル化、こういったものに電力が欠かせない中で、やはり再稼働に対する拒否感若しくは恐怖心、こういったものが皆さんの中にあるという現実は、このリスクについての考え方が国民と専門的な先生方との間に少しギャップがあるのかなというふうに感じているところでございます。

 安全神話から脱却をして、安全を管理する、若しくは安全のために絶え間ない努力を積み重ねることで、やっとそれを安全というふうに言うことができるようになるのだと、今回、非常に学んだところでございます。

 社会的受容性、そしてそれは、イコール、安心だと思っています。この安心をつくり出すためのというところで、別なところで、竹内先生のどこかに書いてあったんですけれども、安全をつかさどる者への信頼感なんだというふうに書かれていたと記憶しています。それの一つに、住民との対話、コミュニケーションということがあるかと思います。この点については、皆さんのお話の中からコミュニケーションという言葉はかなり出てきたんですけれども、日本維新の会の今回のマニフェストの中でも、住民との対話と合意形成の場をつくるということをマニフェストで言わせていただいています。

 コミュニケーションを通じて安心をつくるということに関して、もう一度、端的で、ちょこっとでいいので、竹内参考人に教えていただければなというふうに思っています。安全というところと安心というところで御意見を頂戴したいと思います。

竹内参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 安心をつくるというようなところに全く正解はないといいますか、誰もが試行錯誤しているところではないかというふうに思います。

 ただ、申し上げたいのは、この試行錯誤をして、コミュニケーションを取ろうとしていること、姿を見せること、とにかく、地域の方たちの、立地地域の方たちの不安に寄り添うと言うとちょっと安っぽい言葉になってしまいますけれども、対話をするという姿勢を、規制委員会、規制機関、あるいは事業者が双方に取り続けるということが非常に重要であろうというふうに思っております。

 そうした中で、国会の皆様、議員の皆様にも、そういったことを聞き取りをしていただくということとともに、やはり原子力のリスクだけ語るということではなくて、やはりリスクというのは社会に様々あるのだというようなところ、ここを前提として議論をしていただくということが重要であろうというふうに思います。

 私からは以上でございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 本当に、この安全というところと安心というところが、原発再稼働若しくは原子力行政において非常に重要なところだと認識しています。

 次に、被害の最小化をしていくことという点についてお尋ねさせていただきたいと思います。

 避難経路や環境モニタリング、拡散予測というものがあるかと思います。三・一一の前と後で、避難経路のこと、若しくは防災計画等で改善されたこと、また変わらなかったことについて知りたいと思っています。特に、防護措置、ヨウ素の配付等々なんですけれども、この点に関しては木村参考人に主にお尋ねしたいと思っています。

 住民避難の際に、自治体の避難計画を見ていますと、避難経路等を確定する際には環境モニタリング等で判断するというふうにあるかと思います。しかし、三・一一の事例を見ていますと、気象条件や地形等々の複合的な要件によって拡散の状況がかなり異なると分かっているかと思います。

 この予見可能性なんですけれども、当時も余り活用されなかったようですが、日本における拡散予測であるSPEEDIと避難経路の確定についてお尋ねさせてください。先ほど木村参考人の方からありました、シミュレーションといったところになってくるかと思います。

 日本の原子力の、拡散のところを見て、どうしても、半円だったり、円の状態で広がっていくという状況を見受けることが多いんですけれども、実際はそんなことはないと思っています。

 先生がされている様々な研究の中で、その広がり方が決して半円的ではないというところはよく語られることだと思っています。ですので、日本にあるSPEEDIというコンピューター分析する機能があるかと思うんですが、そこの状況と予測ということについて、木村先生、少し教えていただけるとありがたいです。

木村参考人 どうもありがとうございます。

 今回、この事故以降、SPEEDIは避難のツールとしては使わないというふうになってしまいました。しかしながら、今回、この重大事故を踏まえた上で、万が一、起こってはなりませんが、次に災害が起きた場合、SPEEDIは十分活用できると思っております。

 なぜならば、気象予測システム、これ自身であれば、諸外国、特にアメリカ海洋大気局や、あとドイツの気象庁等々で出されている気象予測システムでもかなり細かなことが判断がつきます。

 しかしながら、日本で最適に、状況を鑑みた上でシミュレーションを行うとなれば、SPEEDIが最も我が国にとってはよいことだと思っております。それを使うことによって避難経路の策定をするということは可能ではないかと思いますということをお伝えしたいと思います。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 私ども日本維新の会の方も、SPEEDIを活用できるんじゃないか、そして、避難訓練及び防災の、特に防護措置のときにいち早くヨウ素を配付するということの重要性を鑑みた場合、このSPEEDIをもっともっと活用させていただくということが重要であり、避難計画そして避難訓練のときにも、それを念頭に置いた形で何か訓練をしていくようなものが必要ではないかというふうに考えています。

 日本維新の会、またこれなんですけれども、マニフェストでも、避難計画への規制委員会の関与を法定していくというふうに訴えさせていただいています。これは非常に重要で、やはり、先ほど申し上げました、一〇〇%がないということであるならば、こういった日々の訓練の中で私たちは安全をつくり上げていく、そして、それは住民の皆さんとともにつくり上げていく、それが非常に重要なことだと考えておりますし、また、自治体における責任というもので考えた場合であっても、環境モニタリングだけ、その場の数値だけではやはり測り切れないものがある。ならば、こういったSPEEDIといったような日本の技術も活用した上で避難経路を確定していくという方向転換が日本では必要ではないかというふうに考えているところです。

 次に、大島参考人にもお尋ねしたいことがあったんですけれども、ちょっと時間が微妙なところになってしまっていて、大島参考人がこの中で使われているウクライナにおける拡散予測に関しても、これはSPEEDIに似ている何か技術が使われているという理解でよろしかったでしょうか。

大島参考人 どうもありがとうございます。

 私、これは、ウクライナの規制当局が発表しているものをそのまま持ち出したもので、調べようと思ったんですけれども、詳しい情報はありませんでした。なので、恐らく気象条件も踏まえて、先ほど示しました、数字が出ているものは何時間後にどこに到達するかというようなものではありましたが、詳しい情報は載っておりませんでしたので、今日はお答えすることはできません。

 ありがとうございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 やはり、各国で、この資料を見ただけでも、恐らくSPEEDIに近いものを使って予測をしているということもしっかりと考えなければいけないと思います。

 日本にその技術があるんですけれども、三・一一のときになぜか使われなくなり、そしてその後、日本では使えないものだという判断をされているようなんですけれども、使えるものがあるならば、人の命を、そして人の健康被害をしっかりと防ぐことができるにもかかわらず、それを選択しないというのは非常にナンセンスというか、あり得ないことですので、そういった、避難計画とモニタリング、そしてSPEEDIのようなコンピューターの解析を使って予測をしていくということも併せて原子力行政には必要なのではないかというふうに考えております。

 本日は、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。やはり一番は、安全というものが、リスクというものをどのように捉えるのか、安全の確保というのはリスクの管理、リスクを管理することで安全を確保していくんだ、そういったこと、若しくは、様々なコミュニケーションが必要であるということ、そして、試行錯誤している姿を皆さんと見ていくことで信頼感をつくっていくこと、そういった様々なことを学ばせていただきました。本当にありがとうございました。

 また機会がございましたら、是非、様々なことを教えていただきまして、私どもの政治的な判断に資するようなお話をたくさん聞かせていただきたいなというふうに思っております。

 本日はどうもありがとうございました。

赤澤委員長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 今日は、原子力問題調査特別委員会の参考人質疑ということで、四人の参考人の先生方に大変貴重な御意見を賜りまして、改めて感謝申し上げます。山口参考人、竹内参考人、木村参考人、また大島参考人、本当にありがとうございます。

 私も、原子力問題調査特別委員会、長らく所属をさせていただいておりますけれども、やはり福島の事故の教訓があり、そして、当時、いろいろな議論がありました。規制のとりこ、あるいは推進と規制の分離独立といったこともありましたし、また、安全神話から脱却していかないといけない、そんないろいろな議論もある中で、世界でも最高水準の新規制基準を、原子力規制庁という組織がしっかり審査をして、安全性の確認をされた原子力発電所を再稼働するという取組を進めてまいりました。

 本委員会については、やはり原子力規制がしっかりとなされているのかということを、立法府の国会の立場からしっかりそれを見ていくということが非常に大きな使命だと思っておりますので、そうした観点から、ちょっと冒頭、少し今までの質問と重複をする部分もあるかと思うんですけれども、四人の参考人の皆様に、今の原子力規制庁、今まで安全基準の審査をしてきて、取組を行ってきた、これについての全体的な評価と、あと、今後の大きな改善点という問題意識を是非お伺いをしたいと思っておるんです。

 今まで審査をしてきて、再稼働が今十基、そして設置変更許可ができているのが七基あって、まだ十基、審査中というふうな状況でもございます。結局、申請がまだない炉も九基あり、そして、結果的には廃炉ということで二十四基、かなりの炉が廃炉ということの選択をしたという状況もございます。

 この間、いろいろな世論調査なども見ておりますけれども、やはり国民の原子力に対してまだまだ不安だというお声もある中で、安全性の確保された原子炉を、しっかり規制委員会が評価をして、それを再稼働していくというところに関しては一定の御評価もいただいているのかなというふうに私個人的には思っておりまして、そういう意味では、この新しい規制基準による審査、あるいはこの原子力規制庁という新しい組織、これについて、一定の御評価をいただいているような取組、もちろん改善しないといけないことはいっぱいあるかと思いますけれども、というふうに私個人的には思っておりますけれども、改めて、この原子力規制庁の安全審査に対しての現段階の四人の参考人の皆様の御評価、また今後の改善点ということで、まずは冒頭、御答弁をいただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

山口参考人 御質問ありがとうございます。

 今の規制についての評価、評価というとちょっと恐れ多い話ですが、まず、規制の厳格性、専門性、技術的な能力、これは大変すばらしいものだというふうに評価してございます。

 これから改善していかなきゃいけないところは、誰が一体ステークホルダーなのか。ステークホルダーというのは、まず事業者、これが一番重要な規制機関にとってのステークホルダーになります。なぜならば、事業者は、プラントを所有して、運転して、安全に一義的な責任を持つ。だから、規制者にとって、事業者、これが一番重要なステークホルダーであります。

 一方、規制は行政でありますので、国民、議会、政府のほかの組織、そういったところも重要なステークホルダーになります。ですから、まず一点目は、本来、規制当局にとってのステークホルダー、誰ときちんとコミュニケーションを取るべきか、そこのところをしっかり再認識していくということが一点目かと思います。

 それから、二点目なんですが、効率性というのはあるんですが、ただ効率性効率性と求めても駄目でございまして、何が重要かというと、これまでの経験をしっかり文書化をして、首尾一貫した規制を行うこと。毎回、プラントの規制をやるたびに手戻りになっていてはまずいわけで、十分、さんざん議論したことというのは、しっかり考え方を整理して、文書化をして、それを次に反映していく。それによって、安全性を損なうことなく効率化が進んでいく。それによって、規制のリソースも節約できますし、より重要なことは、リソースをもっと重要な問題に振り向けることができる。

 ですから、今の、首尾一貫性といいますか、ちゃんとエビデンスに基づいて一つ一つ進歩していくという点、それから、コミュニケーションを取る上で誰が重要なステークホルダーなのか、実は事業者が重要なステークホルダーである、そういう認識をしっかり共有していただきたい、そういうふうに考えてございます。

 以上でございます。

竹内参考人 御質問いただきまして、ありがとうございました。竹内でございます。

 まず、原子力規制が今までしっかりなされてきたかの評価、なかなか難しいところではございますけれども、先ほども意見陳述の中で申し上げましたとおり、大変な混乱の中で新しい規制基準を策定をし、そして、少ないとはいえ再稼働を進めてきたというようなところ、これは当然評価をされるべきであろうというふうに思います。

 ただ、よりよくすることはできるというふうに思っております。今まで、先ほど申し上げましたとおり、規制の役割というのは、基準を定めて、策定をして、それに合致しているかを審査するということ。安全を保証する神でもない。そういった、安全を保証しなければならないという、ある意味、肩に力が入った状態になりますと、規制機関自身がゼロリスク神話に陥ってしまうということになる。

 こういった中で、改善点は、先ほど山口参考人もおっしゃいましたけれども、判断基準の明確化や文書化、こういったもの。アメリカの規制機関では、コミッショナーが例えば賛否が割れたときも、賛成、反対、そしてその理由というようなところを明示するというようなことが明確化されております。なぜ、これは駄目だったのか、どういう判断がされたのかということを明らかにすることによって知見を蓄積していくといったような改善、こういったものが図られるというところでございます。

 一点だけ、国としてやはり間違えてはいけないというふうに思いますのが、原子力の規制機関に対して、やはり規制機関に委ねるということは、その技術を使っていくという方針を示しているということだと思います。

 国民の皆様の中には止めてくれる原子力規制委員会を望むというようなところがあるかもしれませんけれども、それは規制機関の役割ではない。それは、もし原子力をどんなに安全性を高めても、ハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフのイナフにならない。

 あるいは、電力供給のリスク等が十分低減できるといったような、他のリスクを考えても大丈夫だというようなことで判断するのであれば、それは政治が判断して脱原発法か何かでやるべき話であって、規制でやる話ではないというようなところだというふうに思います。

 以上でございます。

木村参考人 これまでの新基準に関しては、原発事故が起こる前までに関してよりも非常にそれは工学的、技術的には進歩したものだと考えております。

 しかしながら、ここで考えていただきたいのは、原発ありきという前提の下での規制委ということがどういったものなんだろうかということを考えていただきたいと思います。

 基本的には、一番問題なのは、万が一事故が起きたときのことを想定した場合に、避難経路の問題、これは先ほどからこれまでずっとお話をしてきましたが、やはり避難についての議論、そういったものがきちんとなされていないというのは、これは規制委として果たしていかがなものかと思います。

 また、もう一つは、地震という問題というのは、これまで、実は私は福島に住んでおります。昨年の二月十三日、今年の三月十六日と、震度六弱の地震がありました。こうしたような地震対策に対しても、非常に、一時的にでも外部電源喪失というようなことが起きたりするわけです。非常用電源が働いたから大丈夫だというわけではなくて、きちんとした対策を練るときに、規制委の中に地震学の専門家が入っていない。地質学の専門家はいたとしても、地震学の専門家がいなければ、やはりこれは安全性が担保できないのではないかというふうに考えております。

 この二点についてきちんと国会で議論していただきたいと思います。

 以上です。

大島参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 お手元に、原子力市民委員会が作成いたしました「原発の安全基準はどうあるべきか」という資料をお配りしておると思います。ここに、原子力規制委員会ないしは今の規制の在り方の基本的な問題点をまとめております。

 この原子力市民委員会というのは、プラント技術者や原子炉の設計に携わった方、あるいは原子力安全委員会の事務局で技術参与をされていた方など、専門家の方でお名前を出せるような方が中心にまとめているものです。

 私自身は、以前の原子力規制の在り方や審査の在り方に比べれば格段の進歩はしたと思っております。というのは、透明ですし、全ての審査がビデオで見られたりとか、そういった形式的な部分については非常に優れたものになったというふうに思っておりますということです。

 ただ、幾つか欠落がやはりあると思っておりまして、例えば、また御参照いただければと思いますけれども、この「原発の安全基準はどうあるべきか」の八十二ページにも書かせていただいておりますが、例えば立地審査指針が不採用になっているということで、これは立地している地域の住民の方々にとっては重大なリスクがあるのではないかといったことが指摘できます。また、あるいは、四十五ページに書かせていただいておりますけれども、クロスチェック解析を行わないような審査を行っていたりとか、様々、テクニカルな点では指摘できることはたくさんあるかと思います。

 あと、先ほど冒頭で御意見申し上げた際にも言いましたけれども、立地自治体の住民の皆様、あと一般の国民の方々に、直接、規制委員会が意見を聞き、コミュニケーションを行うといったことは残念ながら行われておりません。これはやはり自治体やあるいは一般国民に向けたそういった機会を設けることが必要です。もちろん、パブリックコメントでかなり丁寧にお答えになっていることは事実ではありますけれども、そういった努力が必要ではないかというふうに思っております。

 以上です。

中野(洋)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 続きまして、ちょっと山口参考人に、御説明いただいた資料の中でもう少し詳しくお伺いしたいことがございまして、それは、一つは、リスクの管理ということでアメリカの原子力規制のところを御紹介をいただいて、二階層構造になっているというところが非常に、こういう仕組みでなっているのかということで、改めて思ったところであります。

 この二階層構造というのが、一つは、アディクエートプロテクションということで、不当なリスクがないレベルのものを求めているというのがまずあった上で、さらに、委員会が自由裁量で更に求めていくというところの仕組みを御説明いただいたんですけれども、何というか、自由裁量で、どういう観点から規制をかけていっている現状なのかというか、要は、一番目の、一階層目の不当なリスクがないというのはある程度、相当程度のことを求めているんだけれども、更に何か求めているような形でちょっとお見受けしたんです。

 この一段階目が最低限のものを求めていて、更に高いものを求めていくということなのか、ある程度、最初からかなり高い水準ではあるんだけれども、さらに、いろいろな政策的観点から、何か事業者が、規制をかけていくということなのか、ちょっともう少し詳しく御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

山口参考人 お答えいたします。

 まず、アディクエートプロテクションというのは、法律の中できちんと規定されているものです。ですから、日本でいえば規制基準と同じで、これは厳格に、必ず守らないといけないもの。それに対して、実は、このアトミック・エナジー・アクトというのは一九五四年の版でこういう形になったわけですが、その後、アメリカもいろいろなことを経験して、スリーマイルアイランドの事故とか、それで、バックフィットルールというのをつくったわけです。

 やはり、いろいろな運転経験を重ねていくと新しい知見が出てくるので、それを規制の中に取り込みたい。ところが、一度許認可を与えた発電所に対してバックフィットを課すということは、これは事業者にとっては大変な問題。したがって、このバックフィットルールの中で、そのバックフィットを行うことによる安全の質の向上が投資するコストに見合っているのであればバックフィットを求める、そういうルールを出したところ、裁判になりまして、規制委員会にはそういう経済性を勘案するような権限はないということで。その結果、最終的に出ていた法律によって二つ目の自由裁量の権限というものが明確になった。

 それで、例えば、水素爆発の問題ですね。これは実は、TMIの事故の後とか、水素の燃焼が問題になったりしたんですが、そういう問題があったりすると、規制委員会がそれを審議して、これは安全の向上の効果が大きいのか、あるいは経済的に見合うのか、あるいはそのほかの政策的な観点から適切か、それをさんざん議論しまして、最終的には投票によってそれを事業者に求めるか求めないか決める、そして、求めたときには、それを具体的にどういう方法で実現するかは事業者が自ら決める、そういった構造でございます。

 ですから、アディクエートプロテクションで、まず厳格に、やるべきことはしっかりやりなさい、その上で、自由裁量の権限によって、規制委員会が安全上の問題で気になるような点あるいは新しい知見、それが出たときには、規制委員会の自由裁量の権限で求めることができる。ただし、求めるに当たっては、ちゃんとその正当な理由、根拠、そして本当にそれがよい方法なのか、それを示しなさい。

 規制委員会はそれだけ重たい責任を担っているわけでして、だからこそ、規制委員会は、どこかの分野の専門家ではなくて、非常に見識のある、やっていただく方が五名、民主党、共和党から推薦されてなる、そういう役割になってございます。

 実は、規制委員会は、コミッショナーは、規制委員会が扱う案件の僅か一%しか規制委員会で決定はしない。すなわち、規制委員会は、いろいろな分野にまたがる本当に重要な問題にしっかり議論をする、それがやり方でございます。

 以上、御説明になります。

中野(洋)委員 ありがとうございました。大変よく分かりました。

 もう一点、そういう意味では、規制委員会がやはり新しい知見というかいろいろなものを取り入れていって、安全性の向上をしっかり考えていくというのは非常に大事かというふうに思っております。

 山口参考人の最後のところにも、革新炉のことでありますとか新しい技術、知見、こういったものの、しっかりと米国の方では対応をするようにやっているというふうなことも書いていただきましたけれども、こうした新しい知見や、またそうした研究、技術開発、こういったものについて、やはり私は、日本の原子力規制委員会も、そういう意味では、しっかりと追いついていけるように、こういうものを備えていくべきではないかというふうな問題意識、安全性の向上という観点からもやはり大事ではないかというふうに思いますけれども、これについて、今の規制委員会の取組ですとか、あるいはもっと、諸外国の例を見るとこういうところの知見の確保を力を入れていった方がいいとかございましたら、ちょっと済みません、もう質疑時間は終わっておりますので、短時間で、もしございましたらよろしくお願いいたします。

山口参考人 簡単に御説明差し上げます。

 いずれの国も、悩みは、規制の独立性を保ちながらイノベーションをどう進めていくか、そういうことでございます。

 イノベーションをやろうと思ったら、それに対してどういう規制をやるべきなのか。これは、イノベーションをやるわけなので、初めの段階では分かっていないわけですね。ですから、そこのコミュニケーションをしっかり取りながらイノベーションをやっていくということが、産業の活性化にとっても、エネルギーの確保にとっても、大変重要なことでございます。

 その上で、独立性、安全の確保、それをしっかりやるためには、何らかの枠組みが必要となります。それが、アメリカだけではなく、各国いろいろな形で、開発、イノベーションをやっているときに規制が適切な形で関与する仕組みを工夫してございます。

 この一つの例がここにあるNEIMAというアメリカの法律ということで、やはり日本も、技術立国でございますから、そういったことを進める上で規制がどのように適切に関与できるのか、独立性を保って関与できるのか、そういう工夫は是非しないといけない重要な問題であるというふうに考えております。

 以上です。

中野(洋)委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 本日は、四名の参考人の皆様には、お忙しい中お越しをいただき、また、本当に様々な視点から御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 私の方からも、今日のお話の内容も踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 この原子力問題調査特別委員会というものは、そもそも原子力規制行政を監視するという役割も一つ持って設置をされた委員会でございまして、本日、私からは、これまでの原子力規制委員会の取組の中で、少し懸念をしている部分について皆様から御見解を伺いたいというふうに思っております。

 一問目なんですけれども、先ほど竹内参考人がおっしゃっていたことと絡みますので、ほかの、山口参考人、木村参考人、大島参考人に伺いたいと思っております。

 これまでの原子力規制委員会の中では、特に今の更田委員長の運営の方針として、客観的、科学的根拠に基づいて審査を行うことや、あるいは規制と推進の分離、また審査の透明性、こういったことを強く意識した審査が行われてきたというふうに認識をしておりますし、その点は評価をしております。

 一方で、先ほど竹内参考人がおっしゃっていた、審査官の判断が審査ガイドよりも優先されるんだというような認識もこの委員会の中にはございまして、よく言えば判断の柔軟性を高めるとも言えるでしょうし、悪く言えば判断の属人性あるいは非科学性といったものを高めるとも言えるのではないかというふうに思います。

 やはり、これは一国の原子力規制行政をつかさどる大変重要な委員会でございますから、属人性というものは余り発揮されるのはどうなのかというふうに私は思うんですけれども、審査官の判断が審査ガイドよりも優位にあるという、この現状の委員会の認識について、皆様の御見解を伺えればというふうに思います。

山口参考人 山口でございます。

 今御指摘いただいた点、ガイドなどよりも審査官の判断が優先される点ということですが、少なからずあると考えます。

 それは日本だけの問題ではなくて、米国も同じでして、ちょうど日本は新検査制度が導入されましたけれども、アメリカもROPという制度を導入したときに、やはりその一番の問題というのは、審査官の判断、人によって判断が違うというところが問題だったわけです。

 それで、新しい検査制度ではそういうことのないよう、いろいろな形で工夫をされたわけですが、それの一つの方法として、アメリカはパフォーマンスベースドという考え方を導入しました。つまり、安全を表す指標を決めて、その指標に基づいてパフォーマンスを見てあげる。それが客観性を高める方法です。

 それから、やる意思決定を階層的な構造にいたしまして、実は、規制委員会の下には、アドバイザリー・コミッティー・オン・リアクター・セーフガード、ACRSと呼ばれる組織があって、そういうところは技術的な問題をしっかり議論する。そこの中には、発電所に元いた人、原子炉の設計に携わった人、それから研究者、いろいろな方が入って、専門家が入って、技術的な議論をする。そういう議論を踏まえて上がっていったものを、規制官が判断のときに使うわけです。それによって客観性や専門性が増していきます。

 ですから、何らかのそういう仕組みを持ち込むということが大事。

 それから、やはり、規制官によって判断が違うというのは、日本だけの問題ではなくて、どこの国でもあり得る。したがって、それをできるだけならして、それで予見性が高められるように、そして首尾一貫性ある判断ができるように、先ほどもちょっと申し上げましたが、しっかり判断の根拠なりを文書化していって、それを継承していく、そういった工夫が求められるというふうに考えます。

 以上でございます。

木村参考人 私自身も、先ほどの質問に対して、非常に恣意的な部分が入ってくる可能性があると存じております。

 そこには、やはり、第三者機関があって、その審議が本当になされているか否かというものをきちんと審議していく機関の設置が必要だと思っております。

 ということで、山口参考人がおっしゃられたことと私は同じ意見です。

 以上です。

大島参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 審査官の判断がガイドより優先されるということについては、確かにそういうところもあるのかもしれません。

 もちろん、ガイドラインなんかよりも緩いような判断を審査官がするのであれば、それは大変問題だというふうに思います。

 一方、想定外のことを事業者がやっている場合もございまして、例えば新潟の柏崎刈羽原発の場合の核物質防護に当たっての不祥事、不祥事というか、詳しい内容は規制委員会自身も明らかにできないようなことがあった、そういうことに関して審査官が何らかの判断をするというのは、安全規制上、非常に重要だというふうに思います。

 ですので、それが十分に機能しているかどうかというのは、先ほども冒頭で申し上げましたように、外部からのチェックを受けるべきだとは思いますが、しばしば、原子力規制については、審査官の判断がより厳しい形で出るのであれば、それは適切なのではないかというふうに考えます。

 また、原子力規制委員会については、かなり透明性は確保されていると思いますので、その点は評価しております。

浅野委員 ありがとうございました。

 今のやり取りを聞いた上で、次は竹内参考人に伺いたいと思いますが、今日の参考人の資料の中でも、規制の費用便益分析を用いるべきというふうにございました。

 私も以前からその必要性というものは感じておったんですけれども、今、やはり、ほかの参考人の皆様の意見を伺いますと、どうしても審査をする方の属人性というものが多少影響するだろうと。

 そうなったときに、できるだけ客観性を高めるために判断指標を定量化するといった工夫もあると思うんですけれども、ただ、最後に大島参考人がおっしゃっていたように、本来あるべきガイドよりも緩く判断するのか厳しく判断するのか、こういったところの妥当性みたいなのも十分に考慮しなければいけなくなると思うんですね。

 そうなったときに、費用便益分析といったものの視点が入ると、より、判断の客観性に加えて、その判断内容の妥当性のようなものが確保されるのではないかというふうに思うんですが、この点について、先ほどちょっと説明の中では簡単に触れられていたんですが、もう少し詳しく教えていただけますでしょうか。

竹内参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 費用便益分析、非常に重要なところでございます。

 先ほどおっしゃっていただいた、決められた基準よりも緩いあるいは厳しいといったような、そういったところに恣意性が働くといったところは、これは考える余地はないというか、認める余地はないわけでございまして、どうやってその基準を満たすかの満たし方において効率性を高めるというようなところが非常に重要でございます。

 ちょっと原子力の例でぱっと思いつかないんですが、例えば、アメリカで、スクールバスで事故が起きてお子さんが亡くなったと。じゃ、全米のスクールバスにシートベルトを義務化しようということになるということが議論された。けれども、シートベルト導入ということになると、相当のお金がかかって、コストを負担できないという学校が出てきて、そうなった学校では、みんながマイカーで通わせるということをせざるを得ない、親が送り迎えをせざるを得ない。マイカーの利用が増えるということになると、それは交通事故の確率からいって、その方がかえって人命が失われるのではないか。こういった形で分析をして、そういったシートベルト義務化を議論をしたというようなところも仄聞したところでございます。

 どうやって命を守るかといったような基準を緩めるとか厳しくするといったようなところではなくて、どうやって、決められた安全性を満たす道として、最も効率的にそこにたどり着くかというようなところ、これが効率性だというふうに私は認識をしているところで、それに役立つ分析として費用便益分析があるというふうに考えてございます。

 以上でございます。

浅野委員 今の内容についてもう少し伺いたいんですが、今の原子力規制委員会の体制ですと、費用便益分析というものをやれるだけの体制、あるいはその能力、機能があるのかというと、私は、現状、それは少し難しいのではないかというふうに捉えております。

 では、これをやろうとしたときに、米国では既にそういったものが用いられているということなんですが、我が国では、じゃ、どういった機能、あるいは体制を組めば原子力規制行政の中にこの考え方を取り込めるのか。この辺り、具体的な体制面であったり、組織の機能、こういったところについて御見解を伺いたいと思います。

竹内参考人 ありがとうございます。

 行政の費用便益分析というところ、これは原子力だけに求めるというようなところでは本来ないものだというふうに思っております。

 我が国の規制行政において、そもそも規制の費用対効果といったようなところ、私の専門でございますと環境行政ですとか、そういった様々なところがあるわけでございますけれども、費用便益分析というものが十分できているというふうに感じることは余り多くございません。ですので、原子力行政にだけこれを求めるというようなところでよいのかという問題点はまず申し上げた上で、御質問いただきました、原子力の規制行政の中に費用便益を取り込む体制が取れるのかといった点でございますけれども、確かに、おっしゃるとおり、体制面でも充実が必要であろうというふうには思います。

 ただ、それは、体制を充実させるというだけではなくて、やはり規制の在り方に、これは繰り返しになりますけれども、効率性、あるいは首尾一貫性、そして透明性は確かに持ってこれまで規制行政はされてきました。規制委員会の委員会というのは、ほとんどがユーチューブで閲覧をすることができます。ただ、ユーチューブで、動画で流すということが透明化ということではなくて、それを文書化をして、文字化をして、判断の基準、この結論、これを明確化していくという、この作業がなければ、これは、明確にした、透明な行政とは言い難いというふうに思います。

 そういったところも、相当に人員がかかるというところであろうかと思いますので、人員の体制と併せて、先ほどから申し上げている効率性、首尾一貫性、明確性、明示性、文書化といったようなところを進めていくということが必要になるかというふうに思います。

 以上でございます。

浅野委員 ありがとうございます。

 最後の質問になるかもしれないんですが、次は、山口参考人、竹内参考人、そして大島参考人に伺いたいと思います。

 私、この委員会、以前の、これまでの委員会の中でも取り上げてきたんですが、原子力規制委員会が行う審査会合の効率性にちょっと着目をしておりまして、審査会合を行う前段に、その中でどういった説明を事業者がするのかというのを事前に規制委員会が事業者にヒアリングをする事前ヒアリングの場というのがあるんですけれども、このヒアリングのときに、仮に、事業者側が説明をしようとしている内容が不足していたり、論点が不足していたりしても、そこでは指摘をせずに、規制会合の中で指摘をして、もう一度次回持ってきてくださいというようなことに今現状なっているそうなんです。

 私も質疑の中で聞いておりますと、やはり、規制側は、事前に何か助言をすることが、事前にそういう情報を与えるのはふさわしくない、ただ何を説明するつもりなのかを聞くだけでその会は終わって、あとは本番に足りないところがあれば言うんだ、こういうことなんですが、そうしますと、やはり、全体の効率としては、そのとき言ってもらえれば、説明すべき内容をしっかりと当日まで準備して説明をできたかもしれない、これによって相当な時間のロスといいましょうか、機会の損失があるんだというような現場の課題意識も聞いております。

 伺いたいのは、この事前のヒアリング、確認の中で、しっかりそういった、説明すべき論点を委員会も言って私はいいと思うんです。その代わり、何を言ったのかをしっかり概要を公開をすればいいと思いますし、そういった事前の論点の整理であれば、これは規制と推進の分離に逆行はしないというふうに私は思うんですけれども、参考人の皆様はそれをどのように捉えるのか、これについて是非意見をいただきたいと思います。

山口参考人 山口でございます。

 お答えいたします。

 まず、事前に論点を明確にするというのは大変いいことだと思います。

 規制のヒアリング会合というのは何のためにやっているかというと、目的は共通、安全性をしっかり確認して高めていくこと、安全な原子炉となるよう、発電所となるよう、両者で意見をちゃんと交わすということです。

 そういう意味で、何が重要な問題なのかというのを明確にするというのは、議論をかみ合ったものにする、それから、安全を向上させるという共通の目的にたどり着くための認識を共有するという意味で重要だと思います。

 御承知とは存じますが、泊発電所で論点を出したという例が最近ありまして、大変よいことであると思います。

 今御懸念の点が、それによって規制の独立性、事業者との関係が変な関係にならないのかということは当然懸念されるところではありますが、先ほどのコスト便益分析の話とも関連しまして、米国のNRCの方とお話しすると、米国では実はリスク評価のやり方を規制当局と産業界が両方とも独立に持っているんですね。それを聞いたら、もし今ならば、規制当局が持つことはやめて、産業界と協力してやるだろうと。なぜならば、リスク評価のやり方は、今、ピアレビューという、第三者的な目で確認する方法があるから、それによって、両者が同じような問題に投資するということによる弊害をなくせるということです。

 もう一つ、近い例では、研究施設、試験データを取るとき。これも、アメリカでもフランスでもそうなんですが、そういう試験データを取るところは規制も産業界も共通でやる、その代わり、その解釈や判断は独立にやる、そういう形で、両者が共通して同じような研究施設を持ってやるということを回避するということでございます。

 これも、考え方は、安全に関わる試験データを取ることは、安全を向上させて、国民のためになり、産業界にとっても規制側にとってもいいことである、そういう同じ共通の概念があるがゆえであり、したがいまして、今御質問ありました点、規制のヒアリングの中で双方が論点を明確にし合って実りある議論にしていくという方向、私は大賛成でございます。

 以上になります。

竹内参考人 ありがとうございます。

 端的に申し上げます。

 私も、論点を明確にしていくということの改善は非常に重要なことだと思っております。

 今まで、ともすると、規制側と事業者側が疑心暗鬼といいますか、これなら大丈夫なんだろうかというようなところで非常に時間を浪費していた。

 繰り返しになりますが、国民のための審査でございますので、こういった形で、より安全性を高めるということで論点を明確化するということは、どんどん機会を持ってやっていった方がよろしいかというふうに思っております。

 以上でございます。

大島参考人 私の考えを述べさせていただきます。

 原子力規制委員会のやり取りを見ておりますと、事前のヒアリングをするというのは、効率性が、今、ないのではないかというお話もありましたが、いきなり本番であるよりも、非常に効率的になっている仕組みではないかというふうに思います。

 そこで論点を出して確認をされているというふうに私は認識しておりまして、より深めた内容で本番を迎える、そのときに、今まで論点となっていなかったものが、より深い委員会での審議の中で出てくれば、当然ながら追加の要求をするというのはあり得るだろうというふうに思っております。

 また、コスト・ベネフィット分析についても当然で、原子力規制委員会の方は実際にはやっていないと思います。コストの場合、これは環境経済学の方でもそうなんですけれども、対策の費用だけではありません。被害の費用も、被害がどれぐらい出るのかということも計算に入れてのコスト・ベネフィット分析であって、そこは大きく欠落している部分なので、是非これは、追加的ではありますけれども、効率性という観点からも、経済全体の効率性という観点からも、今の考え方を広げて、コスト・ベネフィット分析も含めて検討すべきだというふうに思っております。

 ありがとうございます。

浅野委員 時間が参りましたので、終わります。

 どうもありがとうございました。

赤澤委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、山口彰参考人、竹内純子参考人、木村真三参考人、そして大島堅一参考人、お忙しいところ、御意見ありがとうございました。

 まず、木村参考人、大島参考人に伺います。

 この間、原油価格の高騰やロシアのウクライナ侵略などによって、エネルギーは外国頼みということの危うさが浮き彫りになっております。自給率を高めて気候危機を打開する上でも、私は、省エネと一体に、一〇〇%国産の再エネ大普及が重要になっていると思うんですが、ところが、政府の方は、昨日、岸田政権が閣議決定しました今年の骨太方針で、原子力を最大限活用するとして、効率的な審査を掲げるなど、規制を緩めて、そして再稼働を推進して、運転期間まで延長しようとしている。東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえずに、あの事故がなかったかのような対応だ、あるいは政策だと言わなきゃいけないと思っているんです。

 そこで、伺うんですけれども、三・一一から十一年、いまだに福島の放射能汚染は除去されずに、事故処理のコストは莫大で、今後の見通しもついていない中で、こうした今の政府の対応についてどのように感じておられるか、端的に一言ずつ、お二人に伺いたいと思います。

木村参考人 三・一一以降、福島県を始め、汚染地域の広がりというのは、福島だけにとどまらず、いろいろな地域に出ております。

 実際、これに対しての対策等について、政府は、住民の声をもっと聞くということ、それも、自治体の首長に話を聞くのではなくて、もっと現地の住民に聞いていただきたい、実際の実情を聞いていただきたいというのが私の願いでございます。

 以上です。

大島参考人 お答えいたします。

 被害の実態を私は福島に行って直接伺うこともありますが、福島原発事故の被害を大きく受けた方ほど、原子力事故のリスクが少しでも残っているのであれば再稼働は絶対許したくないというふうにおっしゃっています。これはまさに、事故が不平等に起こり、かつ、損害賠償も含め、最も被害を受けた人ほど、その損害賠償が十分ではないというふうになっている現状があるんだというふうに思っております。

 そういった事態が残っているのが現状であり、原子力規制行政でもそのような方の話を直接聞くということがすごく大事なことなのではないか。これは数字の話ではなくて、本当の、リスクの話じゃないんですね、ダメージ、本当に起こってしまった被害の話ですので、そこを踏まえたものが必要ではないかと思っている次第です。

 以上です。

笠井委員 実態と、やはり被災者の、被害者の声をしっかりと受け止めるということが大事だというのは、私もそのとおりだと思います。

 そこで、木村参考人に更に伺いますが、去る六月一日に島根県知事は、全国で唯一県庁所在地にある松江市の島根原発二号機について、再稼働に同意すると表明いたしました。三十キロ圏内の人口が四十五万人余りということで、全国の原発でいうと三番目に多くて、過酷事故が起きた場合の避難計画の実効性がその中で問われると思います。

 木村参考人は意見陳述の最後に、原子力規制委員会は避難計画を適合性審査の対象に組み入れていないことを厳しく指摘をされました。そんな新基準に適合していることをもって、私も、再稼働させてはならないと思います。

 そこで、伺うんですけれども、東京電力の福島第一原発事故では、要介護者の避難が困難と。私も予算委員会で直接その問題も取り上げましたが、大熊町の双葉病院などから避難途中に病が悪化して亡くなる悲劇が相次ぎました。過酷事故が起こった際に、安全に、被曝させずに避難ということができるのかという問題について、木村参考人、どのようにお考えでしょうか。

木村参考人 貴重な御意見をどうもありがとうございます。

 私自身、安全に、被曝をさせないで避難をさせること自体は不可能だと思っております。特に、障害を抱えた人たちに対しては、私自身も福島にこれまでもう十一年住み暮らし、現地の方々との対話を十分行いながら話をしてきましたが、やはり、社会的に、身体的弱者という方々に対する避難についての議論というのは、非常に遅れております。こうしたことについてもきちんと議論をせねばならない。

 しかしながら、原子力規制委等に対して、この議論というのはなされておりません。特に、避難という場合、その避難経路も重要ではございますが、最も問題なのは、そういった心身共に弱者の方々への対応が十分ではないということ。これらに対して、さて、どういうふうに誘導していけばよいのかということについては、全く議論がなされていません。

 こうしたことに対しても、きちんとした国の指針を皆様にもお願いして、答弁とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

笠井委員 更に木村参考人に伺いたいんですが、旧原子力安全委員会が定めた原子炉立地審査指針、そこでは、敷地境界での目安線量を定めておりました。ところが、東京電力福島第一原発事故を受けて、原子力規制委員会の新基準は、メルトダウンのようなシビアアクシデントが起こり得るという前提で作り直されたわけですが、目安線量を使った立地審査をやめてしまいました。

 福島事故と同程度の事故が起きた場合、全ての原発で原発敷地境界での線量が立地審査指針での目安線量を超えて、原子炉を動かすことは困難になるからというのが、当時、説明だったわけですが、これが果たして世界最高水準の審査基準というふうに言えるというふうにお考えでしょうか。

木村参考人 被曝問題に対しては、やはり線量基準を設けるというのは重要ではないかと思います。

 とにかく、これは、被曝の規制というものに対して、可能な限り被曝をさせないということが前提でございます。しかしながら、今現在、この原子力防災に対しても、被曝はある一定限度我慢せざるを得ないというようなことがありますが、これは福島の原発事故を省みることなしに決められてしまっているような気がします。

 私自身は、やはり今後、今問題が大変、福島の問題として出ております。しかも、それは健康問題含めて出ております。こうしたことも踏まえて、線量限度というもの、線量規制というものは私は重要ではないかと思っております。

 以上です。

笠井委員 福島の問題ということだったので、木村参考人にもう一問だけ更に伺いたいんですが、今、福島では政府が旗を振って住民の帰還というのが進められておりますが、しかし、やはり除染という点ではまだ終わっていない、まともにされていないという状況で先ほどもお話があったんですが、そういう中で、戻っていいと、そして、戻れるのに戻らないのはあなたの責任ですよというかのごとく、賠償問題も含めて、被害者に責任を転嫁して、加害者を免責することがあってはならないと思うんですね。

 それで、除染をめぐる福島のリアルな実態との関係で、この問題について御意見を伺いたいんですが。

木村参考人 この件に関しても、実は今も、現在も避難を続けられている浪江町津島地区の方々と協力しながら、今、放射能汚染地図を作ることをやっております。

 実際に津島地区は八割以上が山間部です。森林除染等がなされていない。特定地域として一部分の除染は行われ、線量を下げる努力はなされています。それは十分評価はできますが、ただし、彼らの生活が、じゃ、住宅地域のみの除染、また、畑だけ、田んぼだけ除染をすればよいのかというと、そうではございません。なぜならば、あの地域は、暮らしてみないと分からないと思うんですが、実際、非常に冬が長い。しかし、作物を作るためには、それほど適していない地域です。そういったようなところでは、山の恵みというのを非常に頼っておりました。それが、森林というもの、そういう森林だけではございません、里山ですね、人と動物が共存するような地域、そういったところでの山の恵み等については、いまだに非常に高い線量で、つい最近も測定しましたが、数万ベクレルの放射能が含まれた山菜が出ております。

 こうしたような実態を鑑みますと、除染というものに頼ることなく、実際、除染だけでは済み得ないのではないかと思います。非常に私自身が帰還困難区域の人たちに厳しい部分も言わざるを得ない。なぜならば、除染をしたから大丈夫だということにはならないんだと。だから、除染ありきで話を進めるよりも、どうやって生活していけるかというのは、本当に根本的に考えていかねばならない。決断の時期も来ているのではないかと私は思っております。

 以上です。

笠井委員 大島参考人に伺います。

 東京電力福島第一原発事故の廃炉、それからデブリの取り出しをめぐっても、実に莫大な費用、コストと年月がかかるという御指摘がありました。その中で、原子力規制委員会が中長期ロードマップに現実性があるかどうか評価する必要があるという御意見を表明されたので、私も全くそのとおりだと思うんです。

 さらに、その点では、再稼働のために新基準に適合するには、いわゆる安全対策にも莫大な費用がかかってくる。これらは全て電気料金か税金、つまり国民負担ということになるわけですが、それが果たして見える化しているかどうかというのは重要なポイントではないか、国民との関係ですね、というふうに思うので、その点なんですけれども、今、物価高騰で電気料金も跳ね上がっております。

 ところが、例えば、東京電力、TEPCOの電気の御使用量のお知らせというのが来るわけですよね。これを見ますと、請求金額の中に再エネ電力賦課金ということで、その金額が具体的に記載をされていると、なるほどとなるわけですが、原発のコストに幾ら払っているかについては、この料金の内訳欄には金額が出ていないということで、記載がなくて分からないということになっています。後ろの方にあれこれ説明書きみたいなのはありますけれども、ぱっと見て、ないということで、そういうことが実態だと思うんですが、こういう料金については、消費者、国民にどう示されるべきだというふうにお考えでしょうか。

大島参考人 ありがとうございます。

 原発事故のコストは膨大で、政府の試算で二十三・八兆円というふうになっております。多くが国民負担になっていまして、それが今後どれぐらいの負担になるのかというのは、会計検査院でも、いろいろな試算はしておりますけれども、分からないということになっています。

 大きな特徴は、広く薄く長くしてしまうので、電気料金にするとこれだけ少ないんですというような話になってしまうのが大きな特徴です。

 ですので、やはり、もちろん電気料金の中に幾らぐらいが原発事故のコストになって入っていますよということに加えて、総額幾らで、どれぐらいの費用負担になっているんだというのは入れ込むべきですし、東京電力は国民の負担で様々な事業がされているということもありますので、ホームページ等にでも広報していくべきだというふうに思います。

 今は、これだけ頑張っていますという自らの頑張り、それはあるんだと思いますけれども、そこだけが強調されているような現状ではないかと思っております。

笠井委員 更に大島参考人に伺いますが、コスト・ベネフィットの問題なので関連してなんですけれども、今、政府は、昨日決めた骨太方針では、再エネと原発を最大限活用というふうに言っておりますが、これは果たして両立するのかということであります。

 参考人は、今年三月二十八日の「論座」の中で、国際科学雑誌の研究成果を挙げられて、「原子力と再エネの普及には負の相関がある」「原子力を増やせば再エネが減ってしまう」「原発のような大規模集中型電源に最適化された電力系統(送電網)は小規模分散型の再エネ導入を妨げ、その結果、再エネ導入に時間と費用が一層かかるようになる可能性がある」というふうに紹介をされています。

 この点でも、やはりエネルギー政策を根本的に見直すことが必要なんじゃないかと、この「論座」の論文を拝見して思ったんですけれども、参考人の御意見を更に伺いたいと思います。

大島参考人 お答えします。

 これはたしかネイチャーエナジーという国際科学雑誌に掲載されましたソヴァクール氏などの論文の内容だったと思います。これは、原子力発電と再エネ、CO2排出削減の関係を世界各国の過去のデータを統計分析して、その相関関係を見たものです。

 それに関して言いますと、原発を推進したところは再エネはそれほど推進されなくなってしまう、逆に再エネを推進した国は原発が抑えられるといった負の相関があるのではないかということが明らかになっているのと、原子力発電を推進したからといってCO2削減とは余り関係がなかった、逆に再生可能エネルギーを増やせばCO2削減が導かれたというような結論が書かれております。

 そういった意味では、こういったことは事実に基づく統計的分析ですので、こういうことはエネルギー政策の立案においては十分考慮されるべきだというふうに考えております。

笠井委員 では、もう一問、大島参考人に伺います。

 五月二十三日のバイデン・岸田日米首脳会談の共同声明では、原子力発電を重要かつ信頼性の高い供給源と位置づけて、小型モジュール炉などの開発加速を表明いたしました。

 参考人が意見陳述の最後に一言触れられたんですけれども、コスト面も含めて、こうした新型炉を開発することについてどのようにお考えか、改めて伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

大島参考人 簡潔に申し上げます。

 SMRというのは何十種類もあるので一まとめになかなかしづらいんですけれども、共通は小型化です。小型化したことによって経済性がないということは、SMRを推進するような報告書などにも必ず書かれていることです。

 では、どこで経済性を確保するのかということで、標準化して大量に造る、それで普及させるんだというふうにしておりますが、これは、放射性廃棄物の問題は解決しておりませんし、もちろんリスクも残る。また、そういったSMRが開発されるようなことがアメリカから起こったのはなぜかというと、アメリカでは大型の原子炉が経済性を持たない。というのは、大きな、大型原発を投資する環境にないということがあって、小型の原子炉をできるだけ普及させようという、原発メーカーが考えたモデルです。

 ですので、そういった条件の下でやっているものですから、大量に導入されない限り、SMRの経済性は確保されないというふうに思いますし、もし仮にSMRが入ったとしても、ウラン資源には限界があるので、いずれ再生可能エネルギーに依拠したエネルギーに転換しなければならないということは事実ですので、放射性廃棄物を発生させるような電源を今から選択することは余りよろしくないのではないかというふうに考えております。

笠井委員 時間が来ましたので、せっかくの機会で、山口参考人、竹内参考人には伺えなかったんですが、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.