衆議院

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第3号 令和6年5月31日(金曜日)

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令和六年五月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平  将明君

   理事 泉田 裕彦君 理事 大西 英男君

   理事 中村 裕之君 理事 武藤 容治君

   理事 伴野  豊君 理事 山崎  誠君

   理事 小野 泰輔君 理事 平林  晃君

      畦元 将吾君    今村 雅弘君

      上田 英俊君    大岡 敏孝君

      神田 憲次君    木村 次郎君

      小森 卓郎君    佐々木 紀君

      鈴木 淳司君    土井  亨君

      中根 一幸君    古川  康君

      細田 健一君    宗清 皇一君

      山本 左近君    逢坂 誠二君

      菅  直人君    篠原  孝君

      田嶋  要君    野間  健君

      阿部 弘樹君    空本 誠喜君

      竹内  譲君    中野 洋昌君

      笠井  亮君    浅野  哲君

    …………………………………

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会長)

   (政策研究大学院大学名誉教授)          黒川  清君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)代表)

   (株式会社クロト・パートナーズ代表取締役)    石橋  哲君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (国際大学学長)     橘川 武郎君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (原子力コンサルタント) 佐藤  暁君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (長崎大学核兵器廃絶研究センター教授)      鈴木達治郎君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      野崎 政栄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     神田 憲次君

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     山本 左近君

  阿部 知子君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  山本 左近君     江渡 聡徳君

  篠原  孝君     阿部 知子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 原子力問題に関する件(原子力規制行政の在り方)


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     ――――◇―――――

平委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件、特に原子力規制行政の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、アドバイザリー・ボード会長及び会員の、政策研究大学院大学名誉教授黒川清君、わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)代表、株式会社クロト・パートナーズ代表取締役石橋哲君、国際大学学長橘川武郎君、原子力コンサルタント佐藤暁君及び長崎大学核兵器廃絶研究センター教授鈴木達治郎君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ていただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、御了承をお願いいたします。

 それでは、まず黒川参考人にお願いいたします。

黒川参考人 おはようございます。大変お忙しい方々に来ていただきまして、ありがとうございました。

 実は、大事故が起きてからもう十年以上たちまして、これがありますけれども、ちょうど二年前に、あれから十年という話で、相当、いろいろなところから呼ばれたり、Zoomでやりましたけれども、何が変わったのかと言われて非常に困っているんですね。

 実を言うと、このようなことは、福島の最中ですけれども、立法府の方が法律を作って、私たちにやれよということをしていただいたことで、やはり立法府がイニシアチブを取ったというのは非常に大事なことだと思っておりまして、先生方お一人一人が日本の法律を決めている責任者ですので、そういうところで、大部分が行政府の方から来るようではちょっと困るなという話はしているんですけれども、そういう意味では、両方やるのはそうですけれども、先生たちはやはり立法府の人ですので、こういうことをやっていただいたのは、非常に歴史的にも大事なことだったんじゃないかと思っております。

 そこで、ちょうど十年たって、あれをやったときに、御存じだと思いますけれども、私は、全てのセッションをあらかじめノーティファイしまして、英語でもみんな出しておりましたので非常にいろいろなフィードバックがどんどん来たんですけれども、実際、最終的に規制のとりこというような、政府の失敗ということですけれども、それがあったんだなというのがキーワードになって出したので、すぐさまにいろいろなところからフォワードをいただきました。

 実際に、アメリカとかフランスにも呼ばれてずっと行ってきたんですけれども、ちょうどダニエル・イノウエさんがあそこでトップをやっておられましたので、彼とは二回ばかり会いまして、本当によくやってくれたねということでしたけれども、ああいう人に直接褒められたのは非常にうれしかったんですけれども、日本も民主主義になったのかなという話になったと思います。

 というわけで、ちょうど二年前でしょうか、あれから十年ということで、ここにあるような、いろいろなところから、あれからどうなったんだという話で、今はZoomですけれども、かなり毎日のようにやりました。

 実際、私から見ると、余り変わっていないんだよねということになってしまうんですね。そこが、私がいろいろなことができたのはよかったと思うんですが、そういう意味で、余り変わっていないんじゃないかな。それはなぜなのかということは先生方に考えていただいて。

 大変だと思うんですね。民主主義というのは数の問題がありますし、行政府それから立法府ということがあるので、先生方の一人一人のやはりアクティビティーというのは非常に大事ですけれども、もちろん行政府のサポートとかいろいろなことも大事ですけれども、そうじゃないかなと思います。

 それで、そのほかにもいろいろな講演とかパネルディスカッションもかなりありまして、これはZoomでかなり長々とやったんですけれども、二枚目ですけれども、このようなことがありまして、十年たって何が起こったのかというのは、結構、ここにあるように、ハーバード大学とかUCLAがやっているものとか、あれからどうなったのという話で、いろいろなかなり大きなセッションを二時間ぐらいやったんです。そういう意味では、私としては、あれから日本が何か変わったのかということをはっきり言えないところに問題があると思っております。

 実際に、先生方も御存じだと思いますが、いろいろな意味で、インターネットでどこでも何でも探せるようになっていて、しかも、どこでも外からも見えるわけなので、この点がちょっと、これだけの大事故を起こして日本が余り変わっていないんじゃないかというようなインプレッションがあると思うんですが、この辺に問題があるんじゃないかと思います。

 最近になってロシアとウクライナの話がありますけれども、では、皆さんは、この日本は原発のところをどういうふうにプロテクションしているのかという話ですね、余り書かないですよね、ここに問題があるんじゃないかと思うんです、一つは。

 もしあれが、テロリストが入ってきて、今、プーチンとあそこがやっていますけれども、今、中国の方も非常にそういうリーダーが割合に、勝手なことと言ってはおかしいんですけれども、民主的ではないようなプロセスでやっていますから、日本にある原発はどのようにプロテクションされているのか、これはすごく大事な話だと思うんですね。

 皆さんはこれをやはり明らかにして、法律を作ってきちっとするというのは先生方一人一人の責任でありますので、是非、メディアも余り書いていないんですけれども、その辺をしっかりするのが大事じゃないかと思っています。

 また想定外だなんという話は二度と聞きたくないので、これは行政府もあるかもしれませんけれども、やはり立法府の先生方に、大変だとは思うんですけれども、今のプロテクションはどうなっているのかというのも、不十分じゃないかなと思いますが、私も余り専門ではありませんが、確かに、今のウクライナの話を見ていてもそうだし、中国のところを見ていてもなかなかちょっと心配だし、プーチンさんを見ていてもちょっと心配だしということでは、やはり原発のところは非常にいいターゲットになっているというのは確かですので、この辺を是非先生たちも考えていただきたい。

 この辺の問題はすごくあるんじゃないかというので、こういう機会をいただきましたので、先生方、立法府の方々の一人一人がすごく大事だし、そのためには国民のアウェアネスがどのぐらいに上がるかということも非常に大事ですので、先生方に本当に私は期待をしたいと思います。

 いろいろなところでいろいろ聞かれると非常に返事がしにくいところもあったんですけれども、今の世界の様子を見ていると、非常にどこで何が起こるか分からない感じになっていますよね。そこのところが一番心配だなというので、本当に、立法府の先生方に大いに頑張っていただきたいというのが私のメッセージでございます。

 こんな機会をつくっていただいて本当にありがたいと思いますし、こういうダイアログのセッションがいろいろなところであると思うんですけれども、先生方もたくさんの案件があるのはよく知っていますけれども、こんなことでまたやられちゃったなんということがもう二度とないようにしていただきたいというのが私の切なるお願いでございます。

 本当に、今日はありがとうございました。(拍手)

平委員長 ありがとうございました。

 次に、石橋参考人にお願いいたします。

石橋参考人 石橋哲です。発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 国会事故調には、全体工程のプロジェクトマネジメント機能として参加いたしました。二〇一二年から、国会事故調報告を出発点とし、世代を超えて社会のシステムについて考え合う場を共創するということをテーマにして、わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)というサークル活動をやっております。それを通じて、高校、大学、日本赤十字社若しくはNPOなどとのコラボを継続しております。

 今、画面が出ましたけれども、先日、久方ぶりに「ソクラテスの弁明」を読み直しました。こんなところがありました。紀元前三百九十九年、約二千四百年前の発言です。読み上げます。

 よき友よ、アテナイ人でありながら、もっとも偉大にしてかつその智恵と偉力との故にその名最も高き市の民でありながら、出来得る限り多量の蓄財や、また名聞や栄誉のことのみを念じて、かえって、智見や真理やまた自分の霊魂を出来得るかぎり善くすることなどについては、少しも気にかけず、心を用いもせぬことを、君は恥辱と思わないのか

 次、お願いします。

 国会事故調は、結論と提言で、問題解決に向けて、多くの犠牲を帰結した人災である福島原発事故を起こした真因、組織的、制度的問題を指摘して、次のように述べています。

 本事故の根源的原因の背景にあるのは、自らの行動を正当化し、責任回避を最優先に記録に残さない不透明な組織、制度、さらにはそれらを許容する法的枠組みであった。また、関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心であり、世界の潮流を無視し、国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする組織依存のマインドセット、思い込み、常識であった。

 当委員会は、規制される側とする側の逆転関係を形成した真因である組織的、制度的問題がこのような人災を引き起こしたと考える。この根本原因の解決なくして、単に人を入れ替え、あるいは組織の名称を変えるだけでは、再発防止は不可能である。

 次、お願いします。

 国会事故調は、この真因である組織的、制度的問題を解決し、再び、規制する側がされる側の規制のとりこに陥らないよう、国家に対する国民の信頼を再建することを目指して、様々な意思決定プロセスの透明性、公開性を担保、確保することを目的として、七つの提言をしています。

 提言一は、国民の安全に対する責任を国会、国会議員が負うこと、すなわち、原子力安全規制当局に対し様々な規制のとりこの力を及ぼし、事故を帰結した行政府、電気事業者の動き全体を、立法府が監視するべきと提言しています。監視対象は、行政府、電気事業者の動き全体です。

 本特別委員会は、提言一に基づいて設置されたと聞きましたが、当委員会設置当初の与野党申合せでは、当委員会の監視対象を原子力規制委員会とするとされています。

 この申合せは、監視対象を行政府、電気事業者全体とする提言一の趣旨とは全く異なります。提言の趣旨とずれた申合せをいつ、どこで、誰が、どのような理由で行い、また、それがなぜそのままなのか、理解に苦しみます。前回、二〇二二年五月十日の意見陳述の際にも申し上げたところでございます。

 次、お願いします。

 提言にある仕組みをつくるには時間がかかると予想されたことから、国会事故調は、国会に対し、実施計画を速やかに策定し、その進捗を国民に公表することを求めました。夏休みの宿題と一緒です。私は、当委員会で発言の機会をいただくたびに申し上げておりまして、先生方におかれては、既に十二分に御承知のことと思います。

 次、お願いします。

 今日は、三月十一日から四千八百三十日目です。

 国会事故調は、事故から九か月後、当時の衆参満場一致で成立した東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法に基づいて設置されました。七つの提言を含む報告書を国会の先生方に提出したのは、二〇一二年の七月の五日。それから約百三十八か月。少なくとも前回、私が発言の機会をいただいてから丸々二年、七百五十二日が経過いたしました。

 次、お願いします。

 前回参上した二〇二二年五月十日以降の本特別委員会の審議を、衆議院のホームページから勉強させていただきました。

 昨年四月十九日に行われた経済産業委員会、環境委員会との連合審査会を含めて、委員会の開催は計二十回。時間数は千八百九十九分です。手続的な開催は除き、実質的な審議が行われたのは九回、時間は千七百十七分でございます。

 今、私の資料としてお手元にお配りさせていただいておりますA3のこんな表がございます。こちらを御覧いただければと思います。今、画面で見ていただいていますのは、それをやっています。集計の字が細かくて、申し訳ございません。先生方には、別紙としてお配りしています。この表は、敬称略、発言時間数順で上からソートをかけています。

 実質審議は九回、千七百十七分で、御発言の委員は四十名。議事録を確認させていただいたところ、国会事故調提言の実施計画の作成、公表に関連すると私が感じられたのは一か所です。

 次のページをお願いします。

 当該部分は、二〇二二年の十一月の十日。足立委員の御質問のラストの十秒、事故調がまとめた提言がどのくらいできているのか、そういうことをちゃんと精査という言葉を述べておられます。前回参上時からの御審議、千七百十七分のうち、提言実施の計画策定に近い言及を確認できたのは、この十秒のみでした。

 以前、この委員会での意見陳述の際、国会が提言を実行できない理由は何かという御質問をいただきました。私からは、実行しないという判断を与野党の先生が毎日積み重ねてきたことの集積ではないかとお答えいたしました。この二年間、先生方は、提言を実行しないという判断を、一日一回として、さらに七百五十二回も積み重ねてきたのだと確認をいたしました。

 次、お願いします。

 二〇二二年十二月八日の浅野委員の質疑にも注目いたしました。

 本特別委員会設定の際の与野党申合せによる特別委員会の目的と監視対象が事故調提言一の趣旨と異なっているということは、先ほど述べたとおりですが、そのことを述べられた上で、この変更が委員会の先生方の意思で修正可能であるということを衆議院事務局委員部に確認をされていらっしゃいます。その後の、この御検討はどのようになりましたでしょうか。是非、お聞きできればと思います。

 国会事故調は、規制する側がされる側のとりこになっていたことを、規制のとりこというキーワードで指摘をいたしました。この質疑は、指示する側がされる側のとりこになっている、相似形の様相を呈しているというふうに感じました。

 次、お願いします。

 四月下旬、私は、防災士研修を受けてまいりました。テキストには、防災士たるもの、公的機関による具体的で明確な情報を尊重するという記載がありました。理由は、発災後は行政が、災害発生の原因、規模、被害状況、二次被害の可能性、行政による対応の現状、被災地住民の行動指針などについて、できるだけ早く、具体的かつ明確な情報を出すように心がけるものであるとしています。

 次、お願いします。

 災害の際、公的機関から社会に対して共有されるタイムラインは、国民から信頼されるものであることを前提としていると学びました。その信頼は、日々の積み重ねによる構築が唯一の道であると考えます。

 次、お願いします。

 国会事故調は、人災の根源的原因であった制度的問題の解決を目的として、透明性の確保と公開性の担保の確立を提言いたしました。原発事故を含む、災害進展タイムラインが国民に信頼される場面においても、この二つが両輪となることは言うまでもありません。

 原発事故の際の災害進展タイムラインは、地域ごと、原子炉ごと、発災時点の事象ごと、自然状況ごとに、様々に異なると思います。それらタイムラインは、どのように社会と共有されているのでしょうか。

 次、お願いします。

 国会事故調は、調査人員の調達やPC等の備品の調達、報告書の印刷作業も含めて、たかだか半年強の調査期間しかありませんでした。扱えなかったことはたくさんあります。国会事故調で扱わなかった事項に整理して、記載されているとおりです。検討すべき事項は多岐に及びます。

 次、お願いします。

 国会事故調は、提言を一歩一歩着実に実行し、不断の改革の努力を尽くすことこそが、国民から未来を託された国会議員、国権の最高機関である国会及び国民一人一人の使命であると当委員会は確信すると述べています。

 変われなかったことで起こした事故に対し、国権の最高機関たる国会、その国会を構成する国会議員の先生方を代表として頂く国民の一人として、事故から今日までの四千八百三十日、一体自分は何をしてきたのか、深く自問をいたします。

 次、お願いします。

 残念ながら、報告から十二年。えとが一周しました。私たちの代表たる国会は、行動をもってその信念を示しています。できないのではなくて、やらない。国会事故調報告は、このような状況にも使えるよう、提言七、独立調査委員会の活用を提言しています。国会事故調という前例がございます。

 次、お願いします。

 私は、この国が、国民から信頼され、外国から敬意を払われる、国内的に安定した国であってほしいと強く望みます。国民の一人として、使命を担うことに参加したいと思います。「君は恥辱と思わないのか」、二千四百年前の賢人の言葉に思いを致しながら、本日、どのような御議論が展開されるのか、お聞きしてまいります。

 ありがとうございました。(拍手)

平委員長 ありがとうございました。

 次に、橘川参考人にお願いいたします。

橘川参考人 皆さん、おはようございます。国際大学の学長をやっております、橘川と申します。

 私は、国会事故調のメンバーではないということもありまして、実務的な観点から、当面、原子力政策で重要だと思われます三つの論点を、批判ばかりではなくて、ちょっと建設的な提言も含めてお話しさせていただきたいと思います。

 次、お願いいたします。

 取り上げる三つの論点は、柏崎刈羽六、七号機の再稼働の問題、次世代革新炉の建設の問題及び第七次エネルギー基本計画における原子力比率の問題であります。

 次、お願いいたします。

 柏崎刈羽原子力発電所の六、七号機については、一応、再稼働へ向けての法制度上の条件は整いました。昨年十二月に、規制委員会の、凍結が解除されました。そして、株式市場もそれに反応して、東電の株価が千円をつける。多分、経産省のターゲットは千五百円ぐらいだと思うんですけれども、民間に売るときの。そういう意味で、一歩近づいたと言えます。ただし、最後の地元の了解、これは非常に難航しています。

 それを難しくしたのが能登半島沖地震でありまして、新潟市の西区も液状化現象の被害を受けておりますので、避難計画の問題が改めて浮かび上がりました。元々新潟県は東北電力の配電エリアなので、自治体が作った避難計画に東京電力が協力するという枠組みなんですけれども、どこに需要家がいてどこに配電線があるかというのを知っているのは東北電力なので、これで大丈夫かなというような懸念が強まったわけですね。

 さらに、六、七号機が動いて、果たして新潟県内にどういうメリットがあるのか、こういう声も出てまいりました。

 花角知事は、出直し知事選をやることによって再稼働の信を問うと言われていましたけれども、多分、今の政治と金の状況から選挙をやるということを考えますと、まずやらないと思います。となりますと、県議会での同意ということになると思いますが、一番大きな問題は県議会の与党会派が再稼働に対して極めて慎重、この二つの理由からであります。

 私は、避難計画のためもあって、東京電力が東北電力の協力を取り付ける必要があると思います。例えば、KK、柏崎刈羽の電気を地元に売って新潟県内の電気の料金を下げればいいなと思ったんですが、もう既に新潟県は東北電力の電力で供給されております。しかも、女川二号機が動くと、今年のゴールデンウィークには出力制御もやっていますので、この話は余り現実的ではない。

 そうなってくると、一番私が現実的だと思っていますのは、柏崎刈羽の敷地の中に、東京電力と東北電力が共同して水素の発生装置、つまり、水の電気分解を原子力発電で行って、その水素を地元の、今新潟県が取り組もうとしていますグリーントランスフォーメーション、GXに結びつけるというようなことが一つの突破口になるかと思っております。

 次、お願いいたします。

 次世代炉の建設であります。

 岸田政権は一昨年夏に、次世代炉の建設と既存炉の延長、この二つを打ち出しました。その後、進んだのは既存炉の延長だけであります。新法も通りました。これが通るとどういうことになるか。

 次世代炉を造るとしたら美浜四号機であるというのはみんな知っているわけですけれども、関西電力にとってみれば、美浜四号機を造ると一兆円かかるわけです。ところが、既存炉の延長、今、七基動かしていますけれども、これは一基当たり数百億円、二桁違いますので、既存炉が延長できる状況の下では次世代炉は造らない、こういうふうに思います。

 それから、実は、岸田政権は次世代炉をやるやると言っていますが、GXの百五十兆円の官民投資の内訳を示した政府資料、その中では、原子力、次世代革新炉は僅か一兆円、百五十分の一の位置づけであります。これが実際のところだと思います。

 多分、第七次エネ基では、圧倒的多数を占めます原発推進派がいらっしゃいますので、次世代革新炉の建設というのは、言葉上は入ると思いますけれども、ほとんど意味がない。私自身は、危険性を下げますので、次世代軽水炉とそれから水素を作る高温ガス炉は有効だと思いますが、残念ながら、今のところ、現実問題としては頼りにされていない、この現実を視野に入れておかなければいけないと思います。

 次、お願いします。

 そのことと関連して、いよいよ始まりました第七次エネルギー基本計画での原子力の比率です。今度の計画は、非常に重たい前提条件がかかっております。というのは、来年ブラジルで開かれますCOP30に二〇三五年の温室効果ガスの削減目標を持ち込まなきゃいけないわけですが、既に、昨年のG7の前の担当大臣会議あるいはCOP28でも、三五年、一九年比GHG六〇%削減というこの目標がセットされているわけですね。

 これは、今我々が使っています一三年基準、一三年から一九年の間に一四%温室効果ガスは下がっていますから、発射台が一〇〇から八六に下がったところから六〇%削減ですから、一三年からだと六六%削減。かつて、第六次エネ基を作るときに、二六から四六に上げるのにも大騒ぎしたわけですけれども、また二〇ポイント上げなきゃいけない。こういうおもしの中で、新たな電源ミックスを作っていくということになると思います。

 そこに書いてあるのが、三〇年の今の第六次エネ基のミックスですけれども、残念ながら、再エネの目標は高くていいと思うんですが、取りかかりが遅かったので間に合いません。それで、三〇%ぐらいにしかならないと思います。原子力も、二十七基動かないと二〇から二二にいかないので、今十二基でありまして、三〇年は、結構甘く見ても二十基かなと思いますので、一五%程度。

 そういうふうに、今の第六次エネ基が厳しい中で、さっきのおもしがありますので、四〇年ミックスは例えばこんな感じになるんじゃないかと思いますが、再エネが四五%、原子力が三〇%、水素、アンモニアが五%、ゼロエミッション電源が八〇%で、化石が二〇%。この化石は、私は、四〇年までに石炭火力はやめられると思っていますので、アンモニアに替えることによって。ここで天然ガスということになります。

 問題は、この中で、もう既に第六次エネ基のときに、現実離れしているので野心的という言葉が使われたんですけれども、この原子力三〇%という数字は、今の状況から考えますと、野心的を超えて空想的の域に入ります。

 もしこれを本当にやるんだとしたら、たった一つだけ方法があるんじゃないかというのが、原子力をカーボンフリー水素の供給源として使うという考え方です。水素はカーボンニュートラルのキーテクノロジーなんですが、非常に高い。再生可能エネルギーからグリーン水素を作ろうとしますと、太陽光、風力の稼働率に合わせて水の電解装置が動きますので、電解装置の稼働率自体が下がっちゃうわけです。これが原子力ですと、電解装置の稼働率が上がりますので、コストが大幅に安くなります。

 それから、さらに、それでもグリーン水素は海外の方が安いというので、ほとんどのプロジェクトは海外でやることになっていますが、そうすると、海外から日本に水素を運んでこなきゃいけない、この費用がかかる。しかも、エネルギー自給率の向上には寄与しない。ところが、カーボンフリー水素を原子力から作りますと、国産化ということになりますので、こういう問題も解決する。

 そして、もう一つは、例えば、今、柏崎六、七が再稼働しますと、今の枠組みですと、電気が余ってしまいまして、東京電力エリアでも再生可能エネルギーの出力制御が起きると思います。しかし、これを電力市場じゃなくて水素製造のために使えば、再生可能エネルギーの出力制御を最小限に抑えることができる。つまり、原子力と再エネの両立が可能になるのではないか。

 こういうような議論が、私は、原子力について賛成か反対かという議論をしている時代ではなくて、実務的に前向きに解決策をしゃべる時期だと思いますので、検討していただければと思います。

 以上です。(拍手)

平委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 原子力コンサルタントの佐藤暁でございます。

 今日は、規制行政についてだけでなくて、原子力政策に関する少し大きな話をさせていただきたいと思っております。

 次のスライドです。

 目下、日本には十二基の加圧水型原子炉が稼働しておりまして、二十一基がまだ保留の状態にあります。しかし、それら保留状態の原子炉に対する全ての審査の終了や再稼働を待つ間にも、規制活動として着手すべきことはたくさんあります。今日は、これらをここの二つのカテゴリーに分けてお話しさせていただきます。

 次のスライドをお願いします。

 安全は、もちろん最優先です。新規制基準が適用され、各原子力発電所の耐震性が向上し、津波対策や竜巻対策も行われるようになったのは、安全性を高める意味で有効です。また、万一の原子炉事故に備えて、その抑止と緩和のための対策も追加されています。それらも安全対策としては有効なはずです。

 はずと申しましたのは、そのような安全対策の中身には、多くのマニュアルに沿った人的な対応が含まれていますことから、そのような有効性が発電所の職員の緊張感と技量に依存しており、それらを持続させていくための安全文化と訓練があってこそだということです。これらの点は、原子力規制委員会のスタッフにも強く認識していただいて、審査業務、検査業務に反映していただく必要があります。

 また、国外では、日本では着手していない安全対策としての新技術も開発と導入が進められております。その一つとしまして、福島事故のときには日本の全国民を震撼させた水素爆発を起こした事象、それに寄与した材料を改良した新しい燃料被覆材の開発もあります。

 核テロの脅威は、新たに出現した新種の脅威というわけではありません。

 次のスライドをお願いします。

 しかし、ほかの脅威に対する安全対策が充実してきているのに比べて、核テロの脅威への対策に関しては、依然とその有効性に満足できない問題が幾つかあるように感じられ、諸外国、特にアメリカにおける運用のレベルからは著しく劣っているのが現状です。

 次のスライドをお願いします。

 それらを具体的に列挙しますと、このような項目となります。引き続き検討していかなければならない項目がたくさんまだ残っていると受け止められます。

 次のスライドをお願いします。

 ここから先は、二つ目のカテゴリーとしまして、つまり、原子力発電の経済性向上のために必要なアクションについてです。

 経済性を優先するということは、安全性を犠牲にすることとの一般的な印象もありますので、注意が必要ではありますが、両立は可能です。

 日本の電力事業者の経営者は、欧米と比べて甘やかされてきた環境にあると言えないことはありません。そのためなのか、原子力による発電単価の引下げに対する努力が日本においては著しく緩慢でした。下請企業に対する発注額の査定が厳しいとの声も関係者からは漏れてきますけれども、電力事業者がより努力をすべきことは、そのような瑣末なことではなくて、原子力発電所の安全性を維持しながら、もっと設備を有効的に、効率的に使って、発電量と売上げを伸ばし、発電単価を下げることです。

 この努力の日米差は、既に福島事故以前にも歴然としていました。このまま放置され続けるべきではありません。これは、まずは電力事業者が意欲的に取り組むべき課題ではありますけれども、規制者としても、必要な規制インフラの整備などを用意するべきです。

 次のスライドをお願いします。

 電力事業者が具体的に取り組むべき課題は明白です。既にどれも欧米などで成功の実績があります。

 今見ていただいているスライドの灰色の面積を、稼働中の十二基と今まだ保留の状態が続いている二十一基が、設備利用率六五・六%で、この根拠については後で御説明いたします、四十年間運転を続けた際の発電量を示すものとした場合、発電量は七千二百七十テラワットアワーとなります。今の全国平均の家庭用電気料金がキロワットアワー当たり三十一円ということですので、これで換算いたしますと、このグレーの部分が二百二十六兆円という売上げに相当いたします。

 もし設備利用率をアメリカ並みに九〇%に引き上げる、そうしますと、この絵の緑の部分が増えます。発電容量に対しても、アメリカ並みに、パワーアップレートといいますけれども、出力を元々の、設計の定格よりも上げて、一五%引き上げたというふうにしますと、青の部分になるわけなんですが、さらに、その状態で発電施設の寿命を六十年あるいは八十年と延長した場合には、今度はオレンジ色の部分が増えてくるということになります。このオレンジ色の部分だけで、先ほどの一キロワットアワー当たり三十一円というもので換算いたしますと、六十年に延長した場合で百七十八兆円、八十年にすれば三百五十六兆円というふうになります。

 繰り返しますけれども、これは新しい未来の技術を期待してではありません。今アメリカが実践していることを、日本の電力事業者の関係者、規制関係者、それぞれの役割部分を学んで実行することによって達成できることです。是非ともこのようなことに対しての挑戦を政治の力で進めていただきたいと願います。

 また、このような活動は決して強引に進められるべきではありませんので、合意の形成のために十分議論に時間をかけて決定されなければなりません。

 次のスライドをお願いします。

 原子力発電所を建設するために、一基当たり数千億円ものお金がかかりました。そして、今、再稼働のためにもそれに匹敵するほどの巨額が投じられています。原子力関係者は、その巨額の投資を国民に還元する責任があります。再稼働で満足して、このスライドの黒の線をたどって進んでいけばいいということなのか、米国が進んでいる上の赤い線に近づける努力をするべきなのか、これは議論の余地はありません。

 今の甘やかされた経営環境から目を覚まして、新たな目標をロードマップに掲げて、目指すべきだと考えます。

 次のスライドをお願いします。

 これを御覧ください。このように、日本の原子力は、決して国際的に名誉ある地位にいるわけではありません。より安全にの次は、より経済的にを目標にして努力するべきです。電力事業者と規制者の双方がそれぞれの役割を果たして、次の十年間で達成を期待したいと思います。

 私の意見陳述は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

平委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 おはようございます。

 この委員会に呼んでいただきまして、ありがとうございます。ちょうど二年ぶり、先ほどの話もありましたけれども、皆さんにお会いできて大変うれしゅうございますので、もっと是非頻繁に呼んでいただければと思います。よろしくお願いします。

 私の論点は、これまでも何回もお話ししていますが、どうしても原発の議論というのは賛成、反対で対立してしまうんですけれども、原発の将来にかかわらず、重要な課題というのが山積みであります。是非国会で超党派で取り組んでいただきたい課題について今までもお話ししてきましたが、今日は、ごみの問題、高レベル廃棄物問題についてお話ししたいと思います。

 論点は四つであります。

 まず、現状、このままでは見通しが立たないということをお話ししたいと思います。次に、海外の事例、いっぱいあるんですけれども、脱原発を進めているドイツ、それから推進しているカナダ、両方で少しずつでは進展しているので、まだ実現していませんが、この例をちょっと御紹介したいと思います。三番目に、提案になるんですけれども、やはりもう一度国会で作っていただいた法律に戻る、その原点になっている原子力委員会の処分懇というのがありましたので、この論点を御紹介して、法律改正の必要性についてお話ししたいと思います。

 では、次をお願いします。

 これはちょっと時間軸を見たものなんですが、九八年に処分懇の報告書が出まして、二〇〇〇年に法律が国会で超党派で成立いたしました。二〇〇〇年のときに、目標として二〇四五年頃というのをたしか議論していたと思うんですが、これは、六ケ所村にあるガラス固化体の貯蔵の期間が五十年ということで、二〇四五年頃を目標にしていたんです。最初の東洋町の文献調査の提案が二〇〇七年、受入れ、これは失敗しまして、二〇二〇年にようやく二つ、北海道の寿都町と神恵内村、対馬が去年うまくいかなくて、今年、玄海町が出ました。

 三つ、今、文献調査が出ているわけですが、後でお話ししますけれども、十か所ぐらいというのがどうやら政府の目標らしいんですが、これはいつまで待つのかなと。それから、概要調査から処分場決定まで大体二十年かかるというのがNUMOの見通しなので、もう間に合わないのではないかというのが、この時間軸から見た場合でも分かると思います。

 次をお願いいたします。

 今後、どこまでこの文献調査の候補地を待つのか。十か所、本当にすぐ見つかるのか。三か所だけでは足りないし、その三か所でさえ、概要調査にいけるかどうか分からない。

 林官房長官が、ついこの間、記者会見でお話をされたんですが、多い場合には十件程度の関心地域から順次絞り込んでいくというのは海外の例にあるということで、これを多分考えておられるのではないかと思うんですが、明確には今の日本の計画には書かれていません。

 もう一つ、政府が文献調査の申入れを行うように変えたんですけれども、今回も、一応玄海町には政府から申入れをしたことになっているんですが、なぜ玄海町に申し込んだかの理由は説明されていないです。外から見ると、どうやら受け入れてもらえそうなところに申し込んでいるのではないか。これは、やはりちょっと透明性に欠けるのではないかと思います。

 最後に、文献調査の受入れ前に十分な合意形成ができていないので、どうしてもその調査の受入れ、手を挙げたところで分断が起きてしまう。この分断を理由に、対馬市の市長さんは受け入れないということを決断されたわけですが、本来は、文献調査を受け入れても次の概要調査に進む必要はないので、分断が起きない制度になっているんですけれども、残念ながら、文献調査を受け入れると次も受け入れなきゃいけないんじゃないかというふうになってしまって、分断が起きてしまうということですね。

 次をお願いします。

 これは、経産省が出している科学的特性マップと、現在の文献調査の候補地を見たものなんですが、どれも必ずしも適しているというところではない。玄海町は、ほとんどグレー、好ましくない特性があると推定される地域です。寿都町は、比較的グリーンでいいんですけれども、黄色い部分、これは断層があるのではないかと言われている地域が含まれている。神恵内にしてみたら、ほとんどが黄色でございます。

 これを見ると、一応方針としては、概要調査を選定できる見込みがない場合以外はやるとなっていますので、これはやらなきゃいけないわけですね。そうすると、私が心配しているのは、ほかにいい場所があるにもかかわらず、手を挙げたところは全部やるということになってしまいますので、大変時間がかかるのではないか。

 次をお願いしたいと思います。

 この高レベル廃棄物地層処分への国民全体の理解なんですが、これは日本原子力文化財団が毎年やっている世論調査なんですけれども、一番最新のものを見ても、改善はしているんですが、まだ十分に賛成が得られていない。

 賛成している意見としては、賛成、反対、原発の利用、廃止にかかわらず処分は取り組まなければいけないというのは、国民の合意があるということですね。これは大変重要だと思います。でも、反対の意見の中には、もちろん、処分場は決まらない、それから地中深く埋めることには賛成、反対が均衡している、それから自分の地域では嫌だというところがまだ十分に多いので、これは何とか改善しなければいけません。

 次をお願いいたします。

 海外のケースなんですが、ドイツは、脱原発を決めたんですけれども、それでもなかなかうまくいっていないので、かなり仕組みを変えました。それで、二〇一三年から法律を変えて、やはり複数の候補から段階的に絞り込んでいく、これは科学的に調べて絞り込んでいくということで、何と最初は九十か所選んでいます。それで、各段階ごとに、最終的には議会で確定するという国会の関与が明記されています。右手の組織図の方もかなり変わって、日本でいう環境省が管轄になっています。国の責任の下で、実施機関が主体として動いているということであります。

 次をお願いいたします。

 カナダの方は、原発を推進しているんですけれども、ここもかなり難しかったんですね。それで、一応ここも見直しをしまして、現在、三十年ごとのタイムスケジュールの下で、サイトをやはり絞り込んでいくというプロセスをつくっているのと、ちょっと見ていただきたいのは、オプションという言葉が入っていますが、今の計画でうまくいかなかった場合の選択肢も用意しておくということですね。

 それから、強調したいのは、右手に書かれている、独立した評価グループによるレビューを段階ごとに作っているということであります。これは、実施主体がやったことについて、専門的な知見を持ったグループが必ずそれをチェックするという仕組みを持っているということですね。

 次をお願いいたします。

 私の提案は、ここから提案になるんですが、原点に戻れということで、処分懇の報告書をもう一度読んでいただきたいと思うんです。

 基本的考え方の頭、一番最初に、今後の原子力政策がどのような方向に進められるにせよ、処分場は必要であるということですね。

 それから、透明性確保と情報公開、ここに公正な第三者がチェックを行う。

 それから、技術と制度についても、社会に受け入れられるような制度にすること、リスクマネジメントの観点、これは選択肢を広げておくということですね。これも書かれています。

 それから、処分地選定プロセスでは、やはりプロセス自体の公正な第三者によるレビューの仕組み、先ほどの第三者のチェックは科学的な面での第三者のチェックですが、処分地選定プロセスの方でもやはり第三者のレビューが必要であるということですね。

 次をお願いいたします。

 現在の法律を見てみますと、第一条が、発電に関する原子力の適正な利用に資するという表現になっておりまして、これは、やはり素直に読めば、推進のためというふうに読めます。発電に関する原子力に係る環境の整備、目的は、発電の環境整備ではなくて、国民のための、環境を守るための整備でなければいけないと私は思います。

 第三条の、経産大臣が基本方針を定めることになっていますので、管轄は経産大臣なので、やはりこれも原子力推進というふうに見られてしまいます、推進のために必要だというふうに見られてしまいます。

 次をお願いいたします。

 これに基づく基本方針、ここでも、国のエネルギー政策を推進していく上でという文章が入っておりますので、これではやはり原発に反対する方はなかなか賛成できない。

 国は前面に立って取り組むとなっていますが、基本的に、今見ていても、NUMOが中心になってやっていて、国がどれだけ説明しているかはよく分かりません。

 それから、先ほど申しました科学的特性マップを作ったのに、基本方針では、そのマップを使って、科学的な有望地を使って国民に理解を深めると書いているんですが、今そういうふうになっていないのではないかということであります。

 最後に、基本方針の中には、やはり選択肢を確保する面から、直接処分、処分方法についても検討となっていますが、今の対象は、再処理工場から出てきたものしか対象になっていないので、直接処分ができないです。これでは多様な選択肢の確保になりません。

 最後のスライドになります。

 ということで、是非国会でもう一度高レベル廃棄物の処分法について検討していただき、超党派で、原発推進、反対にかかわらず取り組んでいただきたい。

 まず第一に、原発の将来にかかわらず、廃棄物処分が必要であることを法律に明記すること、それから、推進でないということを明らかにするために、管轄を経産大臣から環境大臣に移すこと、使用済燃料も最終処分の対象にすること、それから、ここが大事ですね、処分プロセスを評価する第三者機関の設置を法律に書き込むこと、できれば、行政府の中に置いてもいいですが、国会に置かれることも可能かなと思います。最後に、立地プロセスに国会の関与を持たせること、皆さんで是非この問題について責任を持って議論していただきたい。最後の、科学的根拠を基にというのは、これは法律に書かなくてもいいかもしれませんが、今の絞り込んでいくプロセスについて、是非科学的根拠を持ってやっていくということは大事じゃないかと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

平委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

平委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。細田健一君。

細田委員 皆様、おはようございます。自民党の細田健一でございます。

 質疑の機会をいただきまして、本当にありがとうございました。

 改めて、アドバイザリー・ボードの先生方、お忙しいところを当委員会に御出席をいただき、本当に有益な御知見を披瀝いただいたことに改めて心から御礼を申し上げます。

 また、黒川会長、先ほど、事故からもう十年以上たったということで、十三年たったわけでございますけれども、この十三年、国会事故調の御報告の取りまとめを含めて、原子力安全文化の向上に本当に不断に、また継続的に取り組んでおられることに改めて心から敬意を表し、また感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 二度とあのような事故を起こさないということ、そしてあの事故から謙虚に学ぶということ、これは本当に党派を超えて、国民全体の思いだと思いますし、また、それが実現されるように、先生方のいろいろな御意見を本当に有効に活用しながら取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 改めて、先ほど何人かの先生からお話がございました国会事故調のレポートに立ち返って考えてみますと、この提言の一の中に、国民の健康と安全を守るために、規制当局を監視する目的で、国会に原子力に係る問題に関する常設の委員会等を設置する、これがこの委員会だというふうに私は理解しております。ですから、主たる目的は規制当局の監視ということになろうかと思います。

 そこの2)に、この委員会は、最新の知見を持って安全問題に対応できるよう、事業者、行政機関から独立した、グローバルな視点を持った専門家から成る諮問機関を設けるというふうに書かれておりまして、この諮問機関というのがアドバイザリー・ボードという名前になっていますけれども、まさにグローバルな視点を持った先生方にお集まりをいただいて議論をするということだと思っております。

 したがって、この事故調のレポートに立ち返ると、一義的には、私どものミッションは規制当局の監視ということだと私は考えております。

 これはもう黒川先生を始め各先生方には釈迦に説法でございますけれども、あの事故が起こる前までは、いわゆる原子力安全・保安院という組織が経済産業省の中に設置されていたということに象徴されるように、いわゆる原子力の規制と推進が分離というのが曖昧であったという非常に強い批判がありました。これは、IAEA等々からそういう批判があったというふうに記憶しております。

 あの事故の結果、これは一つの大きな成果だと思っておりますけれども、行政府の中においては、推進と規制が完全に分離された、非常に独立性の強い原子力規制委員会、原子力規制庁が設置をされて、国家行政組織法三条委員会という位置づけが与えられて、独立して事業者等々を規制、監視するということになったわけでございます。これは一つの成果であると思っております。

 ただ、一方で、独立性が強いがゆえに、当然、人間は間違いを犯す可能性がございますから、これは規制委員会そのものも、場合によっては間違いがあったり、あるいは行き過ぎがあったりするかもしれない。したがって、独立性の強い規制委員会に対しては、やはり国会を始めとする各機関が、言論の自由というのがありますから、様々な言論空間の中で批判が行われるのは当然だと思いますし、また、それに対して規制委員会、規制庁は本当に謙虚に応えていく義務があるというふうに考えておりますけれども、国会あるいはアドバイザリー・ボードの先生方の御支援をいただきながら、間違いがあれば正していくということをしっかりとやっていくということではないかというふうに考えております。

 ちょっと今申し上げたような観点から幾つか質問させていただきたいと思いますけれども、時間が余りないので申し訳ないんですが、一つは佐藤先生に、このプレゼンをいただいた資料の五ページとそれから六ページになるんですけれども、一つは、五ページで、核テロ対策の課題についていろいろなお話がありました。

 これは、私もちょっと勉強不足で申し訳ないんですけれども、確かに規制委員会の核テロ対策の部分では完全なブラックボックスになっていまして、議事そのものも非公開です。ただ、彼らの言い方というのは、当然、テロリストに攻撃に資するような情報を与えてはならないということで、これは保秘の必要性が非常に高いので一切公開しないということを繰り返し言っていて、事実上ブラックボックスになっているわけですけれども、これは、今お話をお伺いしますと、アメリカでは運用が違うんですか。つまり、例えば設計基準脅威の具体的な明示というようなことも、恐らく日本では非公開というような扱いになっているのかなと思うんですけれども、ここのアメリカと日本の違いというようなものをもう少し具体的に教えていただけば大変助かります。

 それから、もう一つは、次の六ページ、より経済的にというプレゼンの資料の一番最後の部分、改革は発電事業者の主導によるべきだがというところ、これは私も大賛成でございますけれども、規制機関としても、今から必要な規制インフラの整備を検討すべきと書いてありますけれども、この規制インフラの整備というのは具体的にどのようなことを指すのか。

 といいますのは、むしろ、これは立場の違いによっていろいろな意見がありますけれども、今、一般的な意見としては、リスク評価に基づかず、規制委員会あるいは規制庁は過重な規制をかけているのではないかというような批判もあるわけでございまして、ここに、更に規制インフラの整備というのは具体的にどういう意味を示しておられるのかということをもう少し具体的に御教示いただければ大変助かります。

佐藤参考人 御質問をどうもありがとうございました。

 今の御質問に対してお答え申し上げます。

 まず最初に、設計基準脅威についての御質問でした。これは、アメリカの場合には、特に二〇〇一年の、九・一一と言っている具体的なテロがあったわけですので、それをきっかけに引き締められたという経緯もありまして、大分エスカレートした内容になっているというふうに見受けられるわけです。

 そういうこともありまして、この設計基準脅威に関しては、具体的に申し上げれば、同時多発テロが、まさに同時多発だったわけです、それから自爆テロだったわけです、こういったことが原子力発電所に対しても行われるのではないか。一か所だけからの攻撃ではなくて、陸からも海からも同時に攻められてくるのではないか。それから、そのテロリストというのは、高度に訓練をされて、武器というよりは兵器の扱いにも慣れていて、人を殺傷すること、自分が殺されること、それを恐れないで攻めてくるのではないか。そういった特性を具体的にうたっているわけです。

 ですので、そういう脅威に対して対抗できなければならない、自然にそうなるわけですので、それに見合った、セキュリティーのスタッフというよりは、むしろ戦闘員と言っていいくらいのチームを、各発電所に百二十人ぐらいの体制、今やアメリカの原子力発電所は、プラントのスタッフの二割ぐらいがセキュリティーに関係する人たちだというふうに言われているくらいです。発電所の敷地の中も、戦場になる場合を想定して、いろいろなところに、高いところから照明を照らして狙撃をしたりだとか、そういう設備ができてしまっている、そういったところが日米の差です。

 その基になっているのが設計基準脅威ということで、これはもう既に明文化されております。それが最初の御質問に対するお答えです。

 次は、経済的に進めるための、経済的に変えていくための規制インフラというのは具体的にどういうことなのかということですが、私の御提示しました資料の八ページを見ていただけると説明しやすいんですけれども、八ページのスライドに、具体的にどういうことをやってアメリカが経済性を高めてきたかということが書いてあります。

 例えば、設備利用率の向上ということの中には、今、日本では、十三か月を超えない頻度で、止めて検査をしないといけない、そうなっているわけですけれども、それも、アメリカでは、大分早い時期に十八か月、二十四か月というふうに延ばして、しかも、止めて検査するばかりでなくて、運転しながら検査をするということ。それから、検査の範囲も決まっているわけなんですけれども、その検査の中には無駄な、必要のない検査までやっていないか、そういうものをリスク評価をして削減をしたりとか、そういうこともやっているわけですね。

 それは、電力会社が自主的に、勝手に、いいことではないわけです。当然、そういったことをするときには、安全上のリスクが高まるという見方もあるわけですので、それをやはり規制としても見ていかないといけない。ですので、それは規制の中に盛り込まれなければなりません。

 あるいは、今、百万キロワットで発電している発電所を百十五万キロワットに引き上げるということをするならば、そのタービンを回すための蒸気流量を増やしたりだとか発電機の能力を上げたりだとか、いろいろなところを変えていかないといけません。蒸気の流量が増えれば、それだけ振動しやすくなるとか劣化が進むとか、そういうこともあります。ですから、そういう場合にはどういったところを見ていかないといけないのか。

 もっといろいろたくさんありますけれども、日本でも、最近、認可更新が四十年から六十年に延長されているわけです。これも、簡単にオーケーしたわけではないわけですね。劣化管理をしっかりやっていくというところを審査をして、それを許可しているわけです。

 こういった規制の活動はたくさんあります。審査をすること、検査をすること、たくさんあります。それを全てシステム化する。システム化されたもの、それが規制インフラであります。

 以上がお答えになります。

細田委員 ありがとうございました。

 規制行政の改善に当たって、大変ありがたい御示唆をいただいたと思っております。本当にありがとうございます。

 先ほどちょっとお話をしましたけれども、典型的な現在の規制委員会あるいは規制庁に対する批判の一つが、審査に時間がかかり過ぎているんじゃないかという議論がございます。

 これは、今、新規制基準に対して設置変更許可を各プラントが取ろうとしているわけなんですけれども、行政手続法では、標準処理期間が二年とされています。しかし、二年とされているにもかかわらず、もう七、八年が当たり前みたいな感じになっていまして、これは規制委員会、規制庁の方にも様々な言い分がありますし、私も、ある程度、そういうこともあるのかなというところもあるんですけれども、やはり通常の民間と政府の関係から考えると、それこそ、場合によっては行政訴訟を起こされてもおかしくないようなレベルじゃないかなという気もしないではありません。

 この点について、橘川先生と鈴木先生、審査に時間がかかり過ぎているんじゃないかという批判、また、これを改善するために何かできることはないのかどうかという点について、橘川先生と鈴木先生から御知見をいただきたいと思います。

橘川参考人 私は専門ではないので、私の判断では、規制委員会は全体としていい仕事をしていると思います。理由は、賛成派も反対派も規制委員会を批判しているからです。

 以上です。

鈴木参考人 御質問ありがとうございました。

 アメリカも、スリーマイル島の事故の後、やはり規制が非常に厳しくなって、大変審査が長くなったり複雑になった経緯があって、そのときにどうやって改善したかというと、今、佐藤さんからお話がありましたが、アメリカでは、INPO、原子力発電運転者協会をつくって、合理的にデータに基づくリスク評価をやりましょうということで、時間はかかりましたけれども、機器そのものの事故率とかをいろいろ調べて、データに基づいて、ここの分野は審査はそんなに頻繁にやらなくていい、ここはやらなきゃいけないと重点的に変えていって、それで、リスクインフォームド規制というものを九〇年代に入って、これが大きな転換期になりましたので、日本も、やはり産業界でデータをそろえて、規制当局と話をして、合理的な規制に持っていくのがいいのではないかと思います。

細田委員 ありがとうございました。

 確かに、今お話があったとおり、私自身も、一番いいのは、取りあえずピアレビューといいますか、やはり原子炉のことが一番分かっているのは原子力事業者ですから、例えば、東電のOBの方がほかのBWRをいろいろ審査して、その結果について行政が追認するというような形の規制が一番望ましいのではないかというふうに個人的には考えております。

 やや推進側の議論に入るんですが、先ほど鈴木先生からお話があった、NUMOが適地を指定すべきではないかということ、これも本当に私も大賛成でございまして、国策民営といいながら、やはり今のやり方では、特に地方の首長さんに非常に多大な精神的負担がかかるので、これについても是非きちんと参考にさせていただきたいというふうに思っております。貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

 もう時間がなくなりつつあるんですけれども、それでは、最後に黒川先生に、せっかくの機会ですので。

 この十三年間、いろいろな御尽力をいただきまして、本当にありがとうございました。変わらないところもありますし、また、先ほど申し上げたように、例えば、政府の中では推進と規制の分離というのが今明確に行われるようになりましたので、それ自体は一つの成果だと思っています。また、それに基づいて、規制機関、先ほど橘川先生の方から、右も左も規制委員会を批判しているから、正しい道を行っているんじゃないかというのは私も全く同意でございまして、特に、推進側あるいは推進しないということ、これは本当に政治的な立場は様々ありまして、当然のことだと思いますけれども、ただ、双方から批判されるということは、逆に、正しい道を進んでいるのかなという思いもいたしております。

 黒川先生の目から御覧になって、今の規制機関の在り方、あるいは、ここはもう少し何とかしたらいいんじゃないかというような点があれば、是非御教示いただければありがたいと思います。

黒川参考人 ありがとうございます。

 私も、実は、ずっとこのところ考えておりまして、日本は何が普通じゃないのかということですね。今日、見ていても、ほとんど男の人ばかりですよね。普通の民主主義の国、大体二十四ぐらいあると思いますけれども、こんなところはないと思うんですよ。なぜそうなのかということが全部の元にあるんじゃないかと思っています。

 圧倒的に男の人が多いんですけれども、例えば、二世議員はどのぐらいいるか。つまり、民主主義の国で二世議員がどのぐらいいるかというと、どのぐらいだか知っていますか。一番多いのがタイとフィリピンですね、三番目がアイスランドです。分かりますか、どうしてか。四番目が日本なんですよ。なぜなのか。こういうところが全部一緒になっているんじゃないかと思うんですね。

 この間、ちょっと大蔵省の人が三人ぐらい来られて、どうしてこうなのかという話を聞きに来たんですけれども、例えば、ハーバード大学とかケンブリッジ大学というのは皆さん御存じですよね。あそこは、世界ではいい大学だと思いますね。大蔵省にそういうことを言うと、頭で考えさせるというのはすごく大事だと思うので、ああいうところに入るのに入学試験というのはあるかね、こう聞くわけですね。あると思いますか、ないと思いますか。どうやって採ると思いますか。ないですよ。何で日本はあるわけ、そうすると。日本の教育というのは、入試をターゲットにした教育をしているんじゃないですか。

 東京大学の学生の才能はどこに生かされているかなんという話をまた次にするんですけれども、そうすると、みんな考えてから返事をして、どうせ自分たちもみんな東京大学ですから、こうだとは言えないので、何でしょうとしばらく考えてから言うんです。何だと思いますか、東大の学生の才能が生かされているところ、明らかにほかより優秀だ。クイズ番組ですよ。何でも知っていて、すぐ正解を出せるという人でしょう。そんなのがどういう役に立つわけ。それでうまくいっていたんですよ、なぜか。

 皆さん、民主主義だと言うけれども、本当に民主主義になるというのは、歴史的に見ても何かすごいバトルがあるはずですよ、ヨーロッパから始まっているにしても。そうすると、王様なんかは大体どこかですっ飛んじゃうわけですけれども、日本は民主主義になったんでしょうかね。戦争に負けて、マッカーサーが来たわけですよね。これが民主主義だよと言うから投票しているだけなんじゃないかと私は思っています。つまり、それでうまくいったからですよ。

 ジャパン・アズ・ナンバーワンと書いた人はエズラ・ボーゲルさんですけれども、あの人は、若いときからのターゲットは何をしているかというと、中国を勉強しているわけですよね。一九七〇年ぐらいに行くんだけれども、必ず日本に寄らないと中国に行けないわけじゃないですか。日本にそのときにワンストップしているときに、日本が成長し始めたので、一九七五年ぐらいだと思いますけれども、二、三年おられるんですよ。いろいろな人に話を聞いてあれを書くんですね、ジャパン・アズ・ナンバーワンになるような素質があるねと。これがばか売れしたんですね、日本語に訳すと。みんながボーゲル先生、ボーゲル先生と。日本は褒めると売れるんだということが分かったわけですよ。つまり、外から見ると、何が違うのかという理由をずっと考えていると、そこなんじゃないかと思うんですね。

 この三十年、OECDの国で日本だけGDPが増えていないのはよく御存じでしょう。どうしてか、それを考えてくださいよ。

 例えば、いい大学に入って、東京大学でもいいんだけれども、三菱銀行に入るじゃないですか。十年もすれば、それなりのバンカーでしょう。住友銀行に移れますか、移りにくいでしょう。そんな国があると思いますか。その人たちはバンカーなんだから、三菱銀行のものじゃないんですから。

 それでうまくいったのはなぜなのか、この三十年、GDPが増えないのはなぜなのか、そこを考えないと、常にペリフェリーの一つ一つのことで議論をしているのが日本で、すごくまずいんじゃないかなというのが私の最近の考えです。

 それでうまくいった理由を、この三十年、GDPは日本だけ増えていないじゃないですか。何でメディアが言わないわけ。

 例えば、朝日新聞に入って十五年もすれば、朝日新聞のジャーナリストだけれども、ほかの、毎日新聞なんかに移れますか、移れないじゃないですか。だから、紹介するときに、あなたは何ですかと言ったら、私はジャーナリストなんて言いませんよ、朝日新聞の者ですと言うんだから。これがジャパンなんですよね。

 今、ここは皆さん男ばかりだけれども、こういうのはすごくへんてこりんというか、異常ですよね。それで、私が最近言っていることは、男の人と女の人とは基本的に価値観の座標が違うんだという話を結構しているんですけれども、また、私はお医者さんだし、アメリカで十四年ぐらいキャリアをつくっていたので、日本の弱いところというのはよく気になるんですよね、かえって。もう帰れないと思っていると、日本がいろいろなことをやっているのは分かるんだけれども、何かこれはまずいんじゃないのということがよく見えちゃうんですね。

 だから、そういう意味で、すごく変なところで変なことをやっているんじゃないかなというのが私の感想ですよね。やはり女性が考えることというのは全然違うと思うんだけれども、いろいろなものによるから。そういうことです。

平委員長 先生、本質的なお話なんですけれども、時間が来ておりますので。

細田委員 石橋先生には、時間がなくて、失礼いたしました。

 終わります。ありがとうございました。

平委員長 次に、田嶋要君。

田嶋委員 立憲民主党の田嶋要です。よろしくお願いします。

 最後に黒川先生の御高説をいただきまして、ありがとうございます。本当に、考え出すと、そうした日本の状況から全て派生して様々なことが起きているなということは私も毎日感じるわけでございますが、同時に、この国はこういう国の形で、日本のペースでしか変わっていけないのかなという半分諦めのような気持ちもいつも持つわけでございます。

 今日は久しぶりのアドバイザリー・ボードでありますので、今の黒川先生のお話を受けて、これまでの十数年を振り返って、恐らく、石橋先生も大変な御不満をお持ちになって今日発表されておるかと思います。

 改めて、必ずもう一度過酷な事故が起きる可能性がある、そういう仮定に立って、少なくともこの委員会にいる私たちは想像力たくましく考えていかなければいけない。今まで非常に怠惰だった部分もあるし、やるべきことをやってこれなかったじくじたる思いもたくさんあるわけでございますが、改めて、せっかく今、黒川先生からも大所高所のお話をいただきました、このアドバイザリー・ボードと原子力の特別委員会、今後、どういうふうにあるべきか。

 先ほど、鈴木達治郎先生からも、もっと頻繁に呼んでほしいという話もありましたけれども、私もそんな思いでございますが、よろしければ、石橋先生から、具体的にどうしたらいいかという御提言がもしあったら、いただきたいと思います。

石橋参考人 ありがとうございます。

 今、日本のペースでしか変わっていけないというお言葉がございました。原子力発電所事故というのは、極めてロジカルに、神に近いような力が物すごいスピードで起きていきます。日本のペースでやっていては間に合いません。総合的な見地から広く検討していく、その場その場で対処するというのでは負けます。相手は神です。

 先ほど御質問がありましたけれども、この委員会として何をなさっていくべきかというお話でございました。この提言を差し上げてから十二年間、国会の先生方に提言実行のための計画をお願いしているんですけれども、先ほど申しましたように、御議論いただきましたのはこの二年間で十秒でございます。

 先生方はやらないという御意思を示していると思われますので、是非、この提言七を御活用いただいて独立調査委員会で計画を作る、それに基づいた計画進捗若しくはそれの精査ということをやることによって、ほかの先生方からも御提案がありました、喫緊の課題、待ったなしの課題を着実に実行していくということを世界にも後世の国民にもお示しいただければというふうに思います。

 以上です。

田嶋委員 私も、アドバイザリー・ボードをスタートさせたときの筆頭理事もやらせていただいたので、本当にじくじたる思いがあります。改めて先生方からしっかりと御指導いただきながら、やれるべき役割を果たしていきたいと思っております。

 鈴木先生、もっと頻繁にというお話もございましたが、本来だったらどうあるべきだというふうに、何か具体的なイメージがありましたら御提示いただきたい。

 私は、先ほどの最終処分の問題などは、本当に、チームを組んで、できれば国会中二回ぐらい、閉会中も含めて年に、四半期に一回ぐらいは先生方の情報をいただきながら、今日も私は知らないこともございました、先ほどのように、原発推進の前提に立った処分のことしか法律に書かれていないのでという話がありまして、なるほどということで合点がいったわけでございます。

 そうしたことを含めて、私たちでは、残念ながら、国会議員の日常を考えますと、知らないことがたくさんあり過ぎると思います。そうしたことをもう少し、ショックな情報も含めていただける機会を増やすべきと思っておりますが、先生は具体的にどういう御提言がございますか、お願いします。

鈴木参考人 まず、特別調査委員会ですから、毎回国会を開くたびにつくるんですよね。そうじゃなくて、常設の原子力調査委員会をつくっていただきたいのがまず第一。

 その中で、今おっしゃったみたいに、常設の委員会だと多分予算もつくんじゃないかと思うんですが、トピックごとにちゃんと調査グループをつくって、専門家を交えて、これも独立したグループじゃなきゃいけないと思いますが、調査をしていただいて、提言を受けて、それに基づいて法案を作っていただくというプロセスを明確にする。

 先ほど石橋さんからも御意見がありましたが、やはり計画を作って、目標を達成するような仕組みにしていただくと大変ありがたいかなと思います。

 以上です。

田嶋委員 ありがとうございます。

 是非、そうした具体的な方向に、今日を契機として始められるように頑張っていきたいというふうに思います。

 それでは、佐藤先生にお尋ねをしたいというふうに思います。

 安全性という点と経済性という点の御指摘がございました。少し具体的でございますが、私も国会で取り上げた件でございますが、原発の炉そのものよりも、使用済燃料の保存の部分、水に、プールで冷却を続ける、そちらの方が危ないんだという指摘。特に、日本の場合には原発の立地の場所でそうした水冷をしているんですが、私どもは、何度かの機会に、海外の基準のように、ドライキャスクという方式をずっと提言をしております。

 先ほど佐藤先生からは、アメリカが実践していることを日本でやれば達成できるというお話がありまして、私は、どうも日本というのは、こういうところでも日本らしさが出るんだと思うんですが、都合のいいところだけつまみ食い的に、ほかの国でやっているからというお墨つきを得ながら日本でやっているような感じがして、その一つがドライキャスクを事業者任せにしているということ。

 今、本当に僅かなところしかそれをしていないと思いますが、これは歴代の規制委員長、田中委員長も更田委員長も、明らかにドライキャスクの方が安全性が高いと明言されているんです。されているけれども、せんだっても私が聞きましたところ、基準はクリアできているからどっちでもいいですよ、ただ、補助金をつけて、インセンティブはドライキャスクに与えています、でも、やるかどうかは事業者任せです、これが今のスタンスなんですね。

 私は、こういうことはあってはいけないというふうに思っておりますが、その点ついて、いかがでしょうか。

佐藤参考人 御質問ありがとうございます。お答えいたします。

 まず、プールで冷却するという場合には、どの発電所もプールで貯蔵できる容量に限界があります。ですので、本来であれば、日本の場合には、これを再処理施設に持っていって、タイムリーに処理されていくというはずだったわけですけれども、そのように事は進まなかったわけですので、どんどんどんどん各発電所に蓄積していった。

 電力会社としては、一つの発電所の中で使用済燃料を号機間移動したりだとか、あるいは発電所を、別の発電所に持っていったりだとか、そういうやりくりもしてきたわけですけれども、それも限界に達する、それでとうとうドライキャスクの方にかじを切った、それが現状なんだなというふうに見ております。

 燃料プールで水冷にするか、ドライキャスクで空冷にするか、どっちが安全なのかという点に関して言えば、プールの方は水を強制的に循環して冷却します。これに対して、ドライキャスクは一〇〇%パッシブです。つまり、全く何の動力もなしに自然の熱対流で冷却が進みます。ですので、根本的に原理の違いがあるわけですけれども、ドライキャスクの方が安全だ、それを進めるべきだということを主張された方には、そういう技術的な理由もあったものだというふうに思います。

 お答えになっているでしょうか。

田嶋委員 今おっしゃっているのは、ドライキャスクの方が必ずしも安全性が高いとは言えないというようなお答えなんでしょうかね、私はそういう理解には立っておりませんけれども。私と一緒の考えということでいいんですか、ドライキャスクの方が安全性が高いということをおっしゃっていらっしゃるということで。

佐藤参考人 今の回答の中で、私は、ドライキャスクの方がパッシブだ、全く人手に、強制的な冷却システムを必要としていないということで、どちらが優劣、上なのかということに関して言えば、それぞれ一長一短のところはありますけれども、ドライの方が安全だという理屈もあるというふうに思います。

田嶋委員 私はドライの方が、もう答えは出ていると思っているんですね。だから、やるだけの話なので、だって、そうじゃなかったら、政府がインセンティブの補助金をつけるわけがないですよね、ドライキャスクをやるんだったら補助金を出しますと言っているんだから。

 ただ、数百億、恐らく一千億はいきませんけれども、一基当たり数百億かかるので、それは事業者の負担にもなるので、先ほど佐藤先生がおっしゃった経済性と安全性のトレードオフですね。トレードオフなくできるという先ほどの御主張ですけれども、典型的にはやはりトレードオフが常に発生するんじゃないかというのが私の思いでございますので、もう一回、じゃ、佐藤先生。

佐藤参考人 もう一つ、説明を補足させていただきます。

 ドライキャスクでの保管になりますと、どうしてもその保存場所が外、屋外ということになります。外から丸見えになります。それから、保管が、特に日本の場合ですと地震が多いわけですね、ですので、置いている場所で地震が発生して、揺れる、倒れる、スライドする、そういったこともあります。ですけれども、そういったことは克服できない問題ではないわけです。

田嶋委員 ここで論争する意思はございませんが、私は、ドライキャスクの方が可動性があるがゆえに、先生が強調されたテロ対策という意味でも、まさに照準を当てて、いろいろな近隣の国からミサイルでプールを狙われているような状況を現実的に想起すべきだと思いますね。

 だから、そういう意味では、ドライキャスクというのは非常に優れた点も多いので、一か所の使用済燃料をプール化するのに一千億以下、数百億、五百億、六百億かかるとしても、これはもう義務づけるべきだというのが私の立場だということを最後に申し上げさせていただいて、次の質問をさせていただきたいと思います。

 今、佐藤先生からも、先ほどの話で、コストと安全性の問題が必ずしもトレードオフではないというふうな話もありましたが、ただ、私は、これは橘川先生にお尋ねしたいと思います。

 やはり世界の常識として、原発は、やればやるほど割高になっているというのは揺るがないことであって、革新的とか次世代とかいったらますますコストは上がる一方だ。コストが高くてもやるんだという主張はあると思うんです。ただ、コストを見る限り、答えは明らかになっていて、量産効果が生まれる風力や太陽光と比べて決定的に原発というのは高い、しかも、安全を施せば施すほどコストは上がるというのは世界の常識だと私は感じておるんですが、橘川先生の中ではそのことは明快なんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

橘川参考人 明快ではありません。原発がコストが高いというふうな考え、いわゆる一律に高いとは思っておりません。

 原発が高いと言っている論者は、原発は揚水式で調整するからというので揚水のコストを入れている学者が多いんですが、現状、揚水は太陽光の調整のために使われていまして、その考え方からいくと、今、再エネのコストに揚水を入れるという方が現実でもありまして、私は、一概に原発がコストが高いとは考えておりません。確実に水素を作る上では、原子力が安いということは言えると思います。

田嶋委員 水素のための原発利用ということに関しては、私もこれから研究をしてみたいと思っております。

 そうしますと、世界でいろいろな団体、各種団体から、発電単位当たりの発電コストというグラフがよく出ております。御案内のとおりでございます。過去十年で風力や太陽光が二十分の一のコストになり、原発は顕著な右肩上がりになっている、それから、LNGや石炭火力に関しては横、フラットないし若干上がっているというような感じのグラフ、それはCO2のコストということだと思います。

 これは、別に原発推進だろうが反対だろうが、揺るぎない現実だと私は思っておりますが、そこは橘川先生と今日論争する気はございませんので、引き続き、御相談させていただいて、いろいろ御指導いただきたいというふうに思っております。

 それでは、もう一点お尋ねするんですが、NRCのやり方を学びながら、いろいろな規制の精度、強度を上げてきたということで、世界で一番厳しいというようなフレーズも、かつて総理の口からもよく出てきたわけでございます。

 そこで、私、最近、やはり特に思いますのは、先ほど、新潟の柏崎刈羽が困難性を高めているということで、一月一日の能登半島の地震ということがございました。

 黒川先生にお尋ねしたいと思いますが、もうそろそろ、深層防護の第五層、すなわち、いわゆるオンサイトではなくてオフサイトの部分をきちんと規制当局の審査の対象に入れるべきではないか。日本は、先ほど、都合のいいところだけつまみ食いをしている、ドライキャスクはやらない、そして、深層防護も、第四層まではやるけれども第五層は抜きにした、そういうようなことをやっていると、すなわち、当然、また安全神話であるし、自分たちの原発推進がつまずかないように都合のいいところだけ安全を強化していますよというふうに取られかねないと私は思うんですね。

 そういう意味では、深層防護の第五層、すなわち、オフサイトのいわゆる避難計画、特にあの一月一日から、複合災害ということで、本当に実効性のある避難計画などというものがこの国で作れるのかという議論がたくさん今出ているわけでございますが、黒川先生、その点について、すなわち、第五層もいわゆる日本の規制庁が検査の対象に入れるべきだという考え方について、いかがでしょう。

黒川参考人 私が言える立場ではありませんけれども、本当に、今までを見ていると、それから世界の状況を見ていると、フランスなんかもそうだと思いますけれども、誰が守っていると思いますか、今、テロはどこにでもあるわけでしょう、一つあったら、それでどうなると思いますか、これなんじゃないかなと私は思っているんです。

 それで、多分、今全部、軍隊がやっていると思いますけれども、日本は誰がやっていると思いますか。(発言する者あり)多分、違いますよね。今、みんな軍隊が守っていますよ、万一を考えているわけだから。だから、もう一回何かが起きて、これは万一なんという話をしているようじゃちょっとまずいんじゃないかなという話をしておいた方がいいんじゃないかなと思いました。

田嶋委員 どうもありがとうございます。

 以上で終わります。

平委員長 次に、空本誠喜君。

空本委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会、空本でございます。

 今日は、先生方、大変貴重なお時間、ありがとうございます。

 私の方からは、いろいろ先に先生方に聞きたいことをお渡ししたんですが、まずは今日のお話を聞いてから、一つ一つ聞いていきたいと思います。

 まず、黒川先生の方にお聞きしたいと思いますが、その前に、先ほど黒川先生の方から、メディアさん、記者、新聞社、こういった方々は余り移動が少ないというところで、今、立憲の篠原先生の方からそうじゃないよということもありましたので、結構移動が多いよということを一言だけお伝えしたいと思います。

 それで、先ほど、最初に、原子力は今余り変わっていないというふうな御発言がございました。私は、逆に、原子力は変わってしまって、人材はいなくなった、また技術は落ちてきている、なくなってきている、失われている、逆に、原子力の規制は強化されてはきました、技術的には。そういった意味で、やはり大きく実は原子力は変わってきているのかなというふうに感じるんですが、いかがでしょうか。

黒川参考人 ちょっと私は何とも言えないんですけれども、今、日本の一番の問題は、原子力もそうなんですけれども、今、日本は長寿で有名じゃないですか、世界中で。今、百歳人口が九万人を超えていますよね、六十五歳以上が三〇%を超えていますよね、どうするんですか。

 それで、今、妊娠するかどうか、子供を産めるのは女性しかいません、女性が二人や三人の子供を産もうと思いますか。つまり、今はピルがあるものだから、妊娠するかどうかはコンドームからピルになっているんですよ。だから、それは、一番の大事な問題はそこなんじゃないかなと私は思っていまして、全体を見ると明らかに、そういう国というのはほかにないんじゃないかなと思います。

 たまたま島国だから、うまくいっているんですよね。だから、ヨーロッパを見るといろいろな国はこうなっていますけれども、そうじゃないので、日本は、やはり一番の問題は長寿社会、どんどんちっちゃい人が少なくなってくる、どうするんですかというのが一番の問題だと思うんですよね。

 だから、そういう意味では、エネルギーも全部そうだし、食事もそうですけれども、日本の一番の問題はそこなんじゃないかなと思っています。それが一番心配です。

空本委員 社会的に日本が変わっていないということで、ありがとうございます。

 橘川先生の方にちょっとお聞きしたいんですが、次世代型の革新炉はちょっと割高かな、古い軽水炉のリプレースといいますか、次世代型に替えながら軽水炉を替えていく、これが一番いいんじゃないかなということをおっしゃっておられましたが、私もそれが一番現実的かなと思っております。今、美浜があるんですが、浜岡原発とか東通とかあるんですが、そういう新規立地ということについてはどのようにお考えか。

 それと、もう一点。高温ガス炉、核融合炉、こういったものを、今、皆期待を持っているんですが、実は様々な、高温ガス炉については核燃料サイクルの問題がありまして、燃料はちょっと厳しいんですね、核燃料サイクルに向かないんですね。そういったこともありますので、私自身は、革新炉といいますか、安全性を高めた現在の原子炉を次世代型に替えながらやっていくことが一番現実的かなと思うんですが、それについてもう一度、橘川先生の方からお答えをお願いいたします。

橘川参考人 次世代革新炉は五つあると思います。

 一番夢の技術は核融合です。ただ、これは、私は五〇年以降本格化だと思いますので、五〇年のカーボンニュートラルとは直接関係ないと思っております。

 あと四つのうち、小型モジュール炉は、世界的にはこれが伸びると思います。送電線が弱いところでも使えますので、今後、アフリカ等は小型モジュール炉が建ってくると思いますが、最初の御質問にも関わりますけれども、私は、日本は既存立地でしか次世代炉は建てられないと思っていますので、既に百万キロワットが動いているところに三十万キロワットの小型モジュール炉を造っても余り意味がないので、世界では有望だけれども日本には向いていないと思っております。

 それから、ナトリウム冷却炉は、「もんじゅ」をやめてしまいましたので、政策の一貫性という点からいっても、ちょっと難しいんじゃないかと思っています。

 そうすると、意味があるのは次世代軽水炉。これは、今、日本で動いている十二基というのはみんな加圧水で、みんな古いので、私は、リプレースの意味は危険性を下げるということになると思っていますので、そういう意味では、これは意味があると思います。

 それと、水素を作るという意味で、高温ガス炉だと思います。再処理に向かないと言われていますけれども、ここは鈴木先生と同じ意見で、世界の流れは一回使った使用済核燃料は直接捨てるという方がメインなので、サイクル一本やりというのが間違っていて、直接処分を考えればその問題は解決すると思います。

空本委員 次世代型の軽水炉というのが現実的というお話は私も納得するところでありまして、高温ガス炉ですとか核融合炉についてはなかなかいろいろな問題がありまして、また核融合についてはトリチウムを扱うということで、また、その扱う量も、今現在、汚染水を処理水として浄化させながら海水に流させていただくということをやっていますが、それとレベルが違うんですよね。そういった意味で、核融合自身そう簡単ではないと思うんですが、佐藤先生、いかがでしょうか。

佐藤参考人 核融合については、まだ私も勉強不足なところはありますけれども、いろいろな核融合の技術のタイプがあるわけですね。二重水素と三重水素というのが一番オーソドックスな核融合ですけれども、融合させると必ず中性子が出てきて、その中性子が材料を劣化させたり、あるいは放射性物質を作ったりということで、デメリットもあるわけです。

 もちろん、核融合を持続させて経常的にエネルギーを取り出すというところもまだまだ時間がかかるというところがあるわけですけれども、どうせ核融合を期待するのであれば、私はその先の、二つの原子をぶつけて、両方とも非放射性物質の元素に変わって中性子が出てこない、それも今研究されているわけですね。ですけれども、そちらは更にもっとハードルは高いというところで、期待はし続けていってもいい技術で、実現すればというふうには思いますけれども、まだ当面は、そこに到達するまでには時間がかかるだろうというふうに私は思っております。

空本委員 ありがとうございます。

 それでは、原子力委員であられました鈴木先生の方に、原子力委員だったときのことも踏まえてちょっとお聞きしたいんですが、やはり私、核融合は、研究開発することは大変重要であって、様々な果実を得ることができると思っています。また、高温ガス炉についても、研究開発は大変私も意味深いものと思っています。ただし、水素の取扱いとか、東海にあった研究炉であれば、やはりいつもいつも水素を入れていかなきゃいけないとか、そういったいろいろな問題があって、簡単ではない。けれども、そういう研究開発は大変重要であろうと思います。

 ただし、現実ベースで考えれば、今の軽水炉をベースにしながら、安全性を高めるような次世代型の軽水炉というのが一番現実的かなと思うんですが、そういった意味で、原子力の専門でございますので、核融合、高温ガス炉、また次世代の軽水炉、どのようにお考えでしょうか。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 次世代炉の研究開発については私も基本的に賛成なんですが、原子力委員会のときにも、我々は提案を出させていただいたんですが、研究開発をやる場合には必ず第三者のチェックを受けること、これがないから、始めたらやめられない、あるいは既得権益で続いてしまう、そういうことが起きてしまうので、公正な研究開発の評価をする仕組みをつくることを条件に研究開発を続けることは賛成です。

 今も言ったように、核融合でも高温ガス炉でも、一般の方々にも分からないですよ。だから、専門家も含め、しかも、科学技術的な評価だけではなくて社会的な影響、例えば、レーザー核融合だと、これは水爆の技術につながってきますので核不拡散の検討もしなきゃいけないということで、社会的影響も含めた評価ができるようにしていただきたいと思います。

 以上です。

空本委員 ありがとうございます。貴重な御意見だと思います。

 そして、石橋先生の方にちょっとお伺いしたいんですが、先生の資料の二ページ、事故調の結論と提言を見ながら、ここの中に、赤線を引かれたところに、責任回避を最優先に記録を残さない不透明な組織、制度とありまして、政府と電力のトップ、こういった方々は、やはりその辺、記録を残さない、開示しない、残している実は記録はあるのかもしれない、あるけれども開示しない。私も現場にいまして、東芝の方で原発を造っていましたので、設計、そして研究開発もさせていただいていて、現場の人間は一生懸命やっています、けれども、トップマネジメントとして問題があったのではないかなというところ。

 やはり現場の方々の思いと、電力さんのトップ、トップマネジメント、あと政治の、規制の問題、そこら辺に問題があったのかなと思うんですが、いかがでしょうか。

石橋参考人 ありがとうございます。

 問題があったのではないかというのは、まさに御指摘のとおりだと思います。

 今日お配りしております国会事故調のダイジェスト版がございます。こちらの方の最後から三枚目の八ページと書いてあるところの右下に規制当局というところがございます。先ほど御覧いただいたところは、その右側の、真ん中にある問題解決に向けてというところの文章をパワポで示しているんですけれども、規制当局というのがございます。

 こちらに書いてあるのは、当時、原子力安全規制に係る様々な省庁、別に原子力安全委員会とか原子力安全・保安院に限らないです、ところが、このようなことがあった、それを解決するために、国会若しくは国会議員が原子力発電に係る国民の安全の確保について自ら責任を取る、そこにコミットするというのがこの国会事故調の提言の趣旨でございます。

 ということから思えば、この委員会はまさに重要でございまして、原子力安全規制に係る規制のとりこが再び起こらないような監視を続けていただきたいというふうに思います。

 以上です。

空本委員 そこで、今回、能登半島の地震がございました。能登半島の地震で、志賀原発の外部電源が一部喪失をされました。余り変わっていないということもありますが、いろいろ規制は厳しくなって、非常用DGとか、また高圧の電源車とか、そういったものは装備をちゃんと高めてきたといいますか、装備をしてきて、そして、系統も三系統残っている。けれども、ここで、いろいろ電力さん関係の資料を見ていると、だから大丈夫なんだというふうな言い方をされているんですよね。

 私は、そこにちょっと問題があって、今回、変圧器の問題があって、そこの冷却用の油が漏れてしまって、その系統が使えなくなってしまった、それについてのちゃんと説明をしながら、そして、その説明に対して、そこはこれからも改善を進めていく、そうしなければ安全性を高められない、そこが抜けていると思うんですよね。

 それをした上で、さらに、非常用DG、高圧電源車、こういったものを装備して、緊急事態でも対応できる、今回は問題なかったというような説明があればいいんですが、電事連さんの説明とか、いろいろ電力さんの説明を見ると、今回の本当に、福島原発のときは外部電源が全部喪失してしまったがために大きく影響されたわけでございますので、そういった意味で、そこの一番重要なところが抜けているんじゃないかなと思うんですが、鈴木先生、佐藤先生、いかがでしょうか。うなずいていらっしゃったので、どうぞお願いします。

鈴木参考人 いろいろな電源がそろっていることは、間違いなく安全性が高まっているというのはまず事実だと思います。

 一方で、変圧器の問題については、いまだに原因が多分分かっていない。ということは、福島事故の教訓を踏まえると、さっき、想定外はもうやっちゃいけないというのがありましたから、まさにそのとおりでありまして、いろいろなことを考えなきゃいけないということですね。要するに、想定外も考えなきゃいけないということなので、変圧器はかなり重要な役割を占めますから、その原因究明についてきちんと進めていくことが大事ではないかと思います。

佐藤参考人 お答えいたします。

 変圧器の故障というのは、実は二〇〇七年に新潟で、柏崎で大きな地震があったときに、三号機の主変圧器が火災を起こしたということもありました。

 あのときには、変圧器が揺れたことによって、内部の電気、変圧器ですので中にはコイルとか入っているわけですが、それがこの中で放電をして、絶縁油を分解させて爆発性のガスを起こして、圧力が一気に上がって、着火して煙が出た、そういうことに至ったわけで、私も、能登の地下の主変圧器が故障を起こしたといったことで、すぐそれを連想しまして、同じようなことが起こったのではないかというふうに想像したわけです。

 ただ、主変圧器に対してもほかのものと同じようなレベルでの基準を適用すべきかどうかというのは、ちょっと違った考えがありまして、確かに電源は大事です、ですけれども、安全系の電源と、それから非安全系の電源系というのは分けて設計されておるわけでありまして、主変圧器というのは非安全系の方に属しています。ですので、そこまで全て、原子力発電所にある設備は全部安全系並みに造れというふうなことをもし要求するならば、ますますコストは上がっていくばかりで、経済性に逆行していくものだと思います。

 だからといって、火災とか故障を許していいというわけでもありませんですけれども、やはり安全系と非安全系に対する見方は違う基準があっていいものだというふうに私は考えます。

空本委員 佐藤先生のお考え、私も賛成でございます。設計をやっていますので、そうなってしまうんですよね、実際のところは。安全系と非安全系というか、コストも考えながら、しかしながら、最後の安全は確保するというところでの考え方が普通の設計の在り方なので、私もそこは賛成でございます。

 あと、最後に、「もんじゅ」、高速炉について。

 今、高速炉と言っていますが、高速増殖炉にしなければ意味がありません。核燃サイクルをちゃんと回さなければ、使用済燃料の問題も解決はしないということでありまして、あのとき、ちょうど「もんじゅ」の事故のときに私は東芝におりまして、隣の部隊、私は電気の部隊におりましたけれども、機械の部隊がみんな行って、あそこで現場対応したというところなんです。

 やはり、あの事故は、しっかり国会議員はもう一度理解をし直しながら、ナトリウム漏えいと放射性の漏えいとの違い、そして、それがどう今後高速炉開発につながっていくかというのを整理しなきゃいけないのかなと思うんですが、鈴木先生、いかがでしょうか。

鈴木参考人 「もんじゅ」のプロジェクトについても、先ほどお話しさせていただきましたように、総括的な評価がなされていません。なぜ、あれだけのお金をかけたのに運転ができなかったのか。単に事故だけの問題ではなくて社会的な問題も含めて、その反省がないまま高速炉をそのまま続けていってもしようがないと思います。まずは反省をして、包括的な評価、高速炉研究開発がなぜうまくいかなかったのかということについて、これこそ国会で調査委員会をつくっていただいて、評価していただくのがいいのではないかと思います。

空本委員 そのときは、是非またいろいろ御意見をお願いします。

 ありがとうございました。

平委員長 次に、平林晃君。

平林委員 公明党の平林晃と申します。

 本日は、アドバイザリー・ボードの先生方、本当にお忙しい中、国会までお越しをいただきまして、貴重な御意見をいただいていることを心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 私は、前回の総選挙で初当選をさせていただいた一回生でございまして、東日本大震災当時は、一国民として、報道等で、どっちかというと僕は西の方におりましたので、そういったところで状況を理解をしていた、つぶさに理解できていない部分もありますので、率直にお聞かせをいただけたらありがたく思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 報告書のダイジェスト版を確認をさせていただきまして、本当に改めて今回のこと、二〇一一年三月十一日に起きてしまったこと、それが人災であるということを極めて悔しく思うとともに、決してそれが起きてはならないということを深く思わせていただいているところでございます。

 提言を七項目いただいているわけですけれども、まずは、その提言一の中で国会の対応を求めておられて、その上でこの委員会も立ち上がり、その前に規制委員会、規制庁も立ち上がっているということなわけであります。

 制度、組織を整えることは当然重要だというふうに思っているんですけれども、ここを黒川先生に総論としてお聞きできればと思うんですが、その制度、組織を生かすのもやはり人だというふうに思いますので、報告書の構成としては、人心に根本的な原因があったということ、だからこそ制度、組織を改善していくということになっていますけれども、その上で、やはり人の重要さというか、人の意識の大切さということを改めて思うわけです。

 この部分に関して、総論として、この十二年間どうだったのかということを教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

黒川参考人 本当に十年たってしまったんですよね。日本は先進国だし、いろいろなエンジニアリングも何も非常に進んでいるわけですよ、世界の中でも。にもかかわらずあの事故が起きたのは、津波という物すごいことがあったわけです。

 それから、やはり今の世界は、中国の台頭とか今のウクライナの問題とか、そういうことがあるわけですよね。全部で四百ぐらい原発があると思うんですけれども、日本でも五十あって、これはいいターゲットになっちゃっているわけですよ、もし何かあったら。だから、今言ったように、今度は人のじゃないけれども、今そういう可能性があるわけですから、ウクライナを見ていればそうですけれども、もしこれで考えていなかったなんということは絶対言ってはまずいですよね。

 だから、東電の小林さんが会長になったとき、私はその話をしに行ったんですよ。あなたは外から来てなったんだから何とかしろという話はしたんですけれども、彼も、ううんなんて言っていましたけれども、そういうところでは、やはり東電はそれだけの責任があるんじゃないかと思うんですよね。

 だけれども、先生たちはやはり立法府の人ですから、これを知らなかったよねという話でまたもう一回あったときに、日本というのは全く信用されなくなると思うんですよね。私が一番心配しているのはそれなので、機動隊ではどうしようもなくて、世界中が今こうなっちゃっているので、みんな軍隊がやっているわけですから、やはりそれは遠慮しないでやらないと、あのとき、またそうだったんだよねなんて言うんだったら、ちょっと日本はどうにかなっちゃうんじゃないかなというのが私の一番の懸念です。

 だから、これに書いてあるように、あれだけやって、いろいろな人に私も呼ばれたり、いろいろなところへ行って、ワシントンでもしゃべりましたけれども、しゃべったけれども何も変わらないというのが私が一番いらいらしているところで、何かあったときというのは、今の世界を見ていると、中国の問題もそうだけれども、ああいうことも起こっているので、みんな、原発は危ないということで軍人が守っているわけですよね。だから、そこのところはすごくまずいんじゃないのかなと。

 是非立法府の方々がどこかでプッシュをしながらやはりそれをやっていただかないと、万一というのはまた起こりますから、それが私としては一番の懸念であります。

平林委員 ありがとうございます。よく分かりました。

 続きまして、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に関しまして、少し佐藤参考人と鈴木参考人にお聞きできればというふうに思います。

 本件については、燃料デブリの試験的取り出しも、なかなか困難に阻まれている状況があります。また、先ほど言及がありましたけれども、使用済燃料プールからの燃料取り出しというのも、そもそも危険な部分もあるし、取り出しも非常に困難を極めているということ。また、ALPS処理水の処分なども本当に大変、一Fの廃止措置が完了する前提で完了するわけですけれども、これが長引けば長引くほどALPS処理水の放出も長引くということなわけでありまして、本当に今列挙しただけでも、一つ一つ大変なお話である、作業である。

 歴史的に前例のない難作業であり、世界の英知を集めることが重要である、これは鈴木参考人がおっしゃっておられるお言葉ですけれども、厳しい状況が続く中、まず、これまでの作業に対してどう評価をしておられるのか、また、それに基づいて、今後、作業をどういうふうに見通されるのか、また御助言がありましたら、お二人の参考人にお聞きできればと思います。

佐藤参考人 お答えいたします。

 まず、燃料デブリの取り出しで難航しております。当初、事故が発生してから間もなく、四十年で終わらせますというようなことを発表されたわけですけれども、具体的には、一応マイルストーンというものがあるわけですけれども、非常に具体性のない、分かりにくい。一番分かりにくいのは、最終的に四十年たった後にどういう姿になるのか、そういう絵がないということです。いまだにそれがないわけです。

 今までの進捗状況を見てみますと、デブリの取り出しも、これが最後の一番の山場になるという認識はあるわけですね。それに合わせてロボットアーム型のマニピュレーターを開発したりだとか、ですけれども、これも限界が見えてきた。次は、次世代型といいますか、AIを駆使した四足のロボットかヒューマノイド型のロボットか、そういうもので挑戦してみよう、そんな話も出ているところですけれども、そもそも四十年でそれが達成できるとは到底思えないわけですね。

 廃炉といえば、通常はグリーンフィールドに戻す、全く全部なくして緑色の芝生に戻すというのが廃炉の完成の絵なわけですけれども、それが見えてこない。むしろ、今の第一発電所の中には、いろいろな焼却炉だとか廃棄物の貯蔵庫だとか、どんどんどんどん、かえって建物が増えていっています。

 ですので、これは、四十年後に廃炉、完成するというのは、その完成の定義にもよりますけれども、少なくともグリーンフィールドになることはないというふうにもはや断言してもよろしいのではないかというふうに思います。

 ならば、むしろ、グリーンフィールドを目指す廃炉ではなくて、もっと役に立つインフラに変えていく。例えば、全国の廃炉を総合的に処理するような施設を造るとか、使用済燃料の処理もあります、いろいろな高レベル放射性廃棄物の処理もあります、そういうポジティブなものに変換していく。廃炉のプロジェクトというのは、ただお金をかけるだけのプロジェクトです。何も生産しません。ですけれども、それを少しでも生産性のあるものに転換していく、そういう切替えが必要なのではないかというふうに私は考えます。

 以上です。

鈴木参考人 まず、先ほど引用していただいたように、前例のない難しい作業の中で、現場の方々が非常に頑張っておられることについては大変敬意を表したいと思います。これまで十三年間大きな事故もなくやってこられたことは、一つの成果として評価できると思うんですね。

 ただ、一方で、今、佐藤さんがおっしゃったように、将来がやはりなかなか見えない。

 私は、前回でも提言させていただきましたが、東京電力一社に任せていてはなかなか難しいのではないか、経済的にも技術的にも、世界の英知を集めて取り組むような廃止措置機関をつくる、それから、エンドステートと言われる最後の姿をどういうふうに考えるかということを議論を始める。そういうふうなことをきちんと定めていくためにも、やはり福島原発廃止法というのが必要なのではないか。

 今、定義もはっきりしていないんですね、どこまでやったら廃止なのかということも。これもやはり国会で是非議論していただいて、どういうものが必要なのかということを検討していただいて、ちゃんと法律で決める。地元の方々との対話も非常に重要ですので、そういうプロセスも含めて検討していただきたい。

 しつこいようですけれども、そこは前回も提案させていただいたんですが、廃止措置そのものについてもちゃんと第三者機関がチェックする仕組みが必要ではないかと思いますので、これも含めて法律を考えていただければと思います。

平林委員 ありがとうございます。

 重要な御提案をいただきましたので、様々しっかり検討してまいります。

 続きまして、石橋参考人にお話をお聞きできればと思います。

 能登半島の地震に関してなんですけれども、今回、半島だから様々なことが言われて、道路が寸断されたり、また、地震が起きて家が潰れたら屋内退避もできないんじゃないかとか、そういったことが様々指摘をされて、私は中国地方の選出で、島根原発がございます、島根の原発も半島に位置をしていて、避難等、困難を極めるのではないか、こういう心配を伺っております。

 内閣府では、これらの教訓を踏まえて、各地域の緊急時対応の更なる充実強化に取り組むこととされているわけですけれども、この点に関しまして、石橋参考人はどう考えておられるのか、御意見を伺えればと思います。

石橋参考人 私は、今年の一月一日に能登半島の地震があったということはニュースで知りました。現場にはお邪魔をまだしたことがございませんので、先生の御質問にちゃんとお答えできるかというのは甚だ心もとないというふうには思います。

 もし何か事故があったときの避難、被害を受けないために何をするのかということについては、先ほどおっしゃったとおり、内閣府の原子力防災が何かをしているというのはお聞きをしたことはございます。ただ、それが本当に実効性があるのかということについては、誰が検証されているのでしょうか。私は分からないです。

 原子力規制委員会設置法には、助言をするという機能があるというふうに伺っておりますけれども、助言というのがなされているのでしょうか。もしそういうことが可能であれば、実効性はある程度担保はできるんじゃないかと思いますけれども、それが果たしてあるのかどうかという部分については、私には分からないです。

 これは、先生方が調べて、御審議いただいて、御判断いただくということが、原発事故の際の国民の安全を確保するためにコミットする国会として、それが不可欠なのではないかというふうに思います。

 以上です。

平林委員 ありがとうございます。

 実効性、まさに我々も本当に心配しているところで、能登半島が起きる前でしたけれども、私なりに、現場から意見を伺いながら、その実効性に関してどうなのかということは質問させていただいているということは申し述べさせていただけたらと思います。

 続きまして、橘川参考人にさっきのプレゼンテーションの確認をさせていただけたらと思うんですけれども、日本の原発が六五%の利用率でしたか、正確な名前は忘れましたけれども……(橘川参考人「それは佐藤さんの方です」と呼ぶ)橘川参考人の意見陳述のカーボンフリー水素の供給源ですね、この部分が橘川参考人の御提言でありました。失礼いたしました。

 私の認識が、ちょっと勉強不足なんですけれども、電力の需要というのは、これから増えることはあっても減ることはない、こんなような認識を周りからというか、教えられているような状況がありまして、例えば、電化がどんどん進んでいくということにおいて、高、中、低、いずれのシナリオにおいても、二〇一九年に対して二〇五〇年というのは二九%からもっと増えるようなことが想定されているということを考えますと、新たな用途を開拓するという言葉の中身がちょっとしっくりこなかったもので、その辺に関して教えていただけたらと思います。

橘川参考人 多分、第七次エネルギー基本計画でも、これからの電力需要がどうなるか、一つのポイントですが、第六次のときに電化の中心と考えられていたEVではなくて、これからはデータセンターが中心的な電力需要増になると思います。いろいろ既に見解が出ていますけれども、私がありそうだと思っていますのは、現在、年間一兆キロワットアワーですけれども、これが一・二兆キロワットアワーくらいに、五〇年に向けて増えていくという方向だと思います。

 そのときに、一方で、原子力が動いた場合に、現実問題として、例えば、北海道電力なんですが、泊三号機なんかが動きますと、かなり出力制御が起きますというふうに発表しています。

 私は、ですから、先ほど言われたように、原子力がないと電力需要が足らないというような、それを全部電力に充てないと電力需要が足らないという状況ではない、こういうふうに思っております。

 むしろ、再エネと原子力をうまく組み合わせるということの方が大事だと思っていますので、電力としても使うけれども、水素の供給源としても使うというような発想がないと、三〇%なんて、私は現実は難しいと思っているんですが、そんな数字は国民は納得できないと思います。

平林委員 非常に重要な認識を教えていただきまして、ありがとうございます。

 恐らく時間的に最後になるかなと思っていますけれども、これは佐藤参考人にお聞きできればと思います。

 適合性審査に時間がかかっているということはずっとずっと言われているわけですけれども、その要因は、教えていただいたところになりますが、どうしても地震とか津波とか、そういったことに対する評価が時間がかかる、自然ハザードという部分に関して。時間がかかるということとともに、人がいないということも教えていただきました。人がいなければ、当然育てなくてはいけないんですけれども、それもなかなか難しいようなこともお聞きしておりまして、この点に関しまして、今後、体制強化、人材育成、打つべき手があるのかどうか、その辺を佐藤参考人に教えていただけたらと思います。

佐藤参考人 お答えいたします。

 適合性審査に時間がかかっているということにつきましては、実は、二年前のこの場で私はそれなりの回答をさせていただいているんですけれども、事業者側と規制側、両方に責任があると思っています。

 まず、事業者側は、たくさんの電力会社があるわけですけれども、それらが全て統一的な産業界側のガイドラインを作って、統一的なレビューができるように準備をすれば、時間短縮になったのではないか。それから、規制側は、標準審査指針を作って、まさにアメリカはそういうものを作っています、規制委員会のスタッフがそれを使って同時並行してレビューをすれば、統一的なレビューができるわけです。

 当時、日本には標準審査指針が整備されませんでした。事業者側も、産業界側のガイドラインを作りませんでした。ですので、全てが一つ一つ、ケース・バイ・ケースのような審査になっていって非常に時間がかかった、それが起こったのではないかというふうに思います。

 それに対しては、今既にここまで時間がかかってしまって、今からそれをやるべきだというにはもう既に遅過ぎると思います。残念ながら、このまま、なるべく効率よく、一生懸命審査してくださいという以外にないかなというふうに思います。

 あとは、自然ハザードに対する問題ですね。これは、大分慎重な評価がされているというふうに私は感じております。地震に対しても津波に対しても、前よりは大分しっかりとした基準になってきているというふうに思います。

 新しい断層が発見された、新しい種類の地震が発生した、そういうたびにどうしても右往左往してしまっているというところも見受けられますけれども、そもそも、原子力発電所の設計の段階での十分なマージンも考慮するならば、現に志賀発電所の場合もそうですけれども、安全系の設備に対する影響は全くないか非常に限定的であるということも物語っているように、今のところ、うまく機能しているのではないかというふうに私は思っております。

 以上です。

平林委員 時間となりました。以上で終わります。

 ありがとうございました。

平委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今日は、アドバイザリー・ボード会長の黒川清参考人、会員の石橋哲参考人、橘川武郎参考人、佐藤暁参考人、そして鈴木達治郎参考人、お忙しいところ、御意見をありがとうございました。今日伺っていても、もっと頻回にお越しいただきたいと痛感いたしました。

 今日は限られた時間なので、本日のテーマである原子力規制行政の在り方に関わって何点か質問します。よろしくお願いします。

 まず、五人の参考人の方々に一言ずつなんですが、東京電力福島第一原発事故から十三年余りがたった今、原子力規制行政として何が一番求められているか。

 福島事故の最大の教訓の一つが、推進と規制の分離でありました。二〇一二年七月に国会事故調の報告書が出て、提言の五で、新しい規制組織の要件として、規制組織は、今回の事故を契機に、国民の健康と安全を最優先とし、常に安全の向上に向けて自ら変革を続けていく組織になるよう抜本的な転換を図る、新たな規制組織は以下の要件を満たすものとするとして、その冒頭に、高い独立性、第一に政府内の推進組織からの独立性、第二に事業者からの独立性、第三に政治からの独立性を実現というふうにされております。

 これを受けて設置されたのが原子力規制委員会。設置法第一条の目的で、専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する原子力規制委員会を設置というふうにされております。

 そういう中で、最近でいいますと、昨年来、原発回帰への大転換が進められているということなんですけれども、一方では、いまだに政府が発令した原子力緊急事態宣言が発令中で、解除をされていない。

 この時点に立って、原子力規制行政に求められていることはいろいろあると思うんですけれども、最も求められていることを一点挙げるとすればどのような御意見をお持ちか、五人の参考人の方から一言ずつ伺いたいと思います。

黒川参考人 透明性ですね、私から言うと。

石橋参考人 同じ答えになってしまいますのであれですけれども、先ほど、提言を受けて原子力規制委員会設置法ができたという御指摘があったんですけれども、違います。報告を出す前に原子力委員会は閣議決定されていますので、違います。

 お答えとしては、透明性と公開性だと思います。

橘川参考人 原子力規制行政については、今のままでいいと思います。

 問題は、原子力、もう一つの切り離した推進の方であって、そちらが全く戦略がなくて、漂流していると思います。そちらこそ問題だと思います。

佐藤参考人 私は、一番大事なのは、やはり人を守るという強い信念だと思います。

鈴木参考人 私が今一番心配しているのは独立性ですね。規制庁の方々が通産省と話をしていたということが報じられましたが、規制庁のノーリターンルールが本当に守られているかどうかちょっと心配なので、独立性をまずきちんと担保していただきたいと思います。

笠井委員 ありがとうございました。

 石橋参考人からは、違うんですというお話がありました。提言の流れの中でこれができているということは間違いないことだと思っております。

 そこで、黒川参考人と鈴木参考人に、先ほどもちょっと出たことなんですけれども、国会事故調の報告書で指摘をされた規制のとりこに関わって伺います。

 昨年の通常国会では、原発の推進を国の責務とすること、国の施策として原発を持つ電力会社の事業環境整備を行うこと、原発を六十年超使えるようにすることなどを織り込んで、原子力基本法を根本から改めました。同時に、原子炉等規制法、炉規法から原発の運転期間に関する条文を丸ごと削除をして、経産省所管の電気事業法に移した。これによって、原発は六十年超どころか七十年超の運転を可能とするということで、そういう意味では、原発政策の大転換ということがなされたわけであります。

 そこで、鈴木参考人からもお話があったんですが、伺いたいのは、これらの法案審議の前年から、経産省の側から原子力規制庁に協議を持ちかけて、原子力基本法や炉規法、原子炉等規制法の具体的な改正内容について協議を行ってきたということが明らかになりました。私も国会でそのことを質問しながら、協議があったことを認めているわけです。そういうことでいいますと、原発の運転期間を原則四十年と定めた原子炉等規制法の条文を、運転期間は利用政策であるなどと、法解釈をある意味ではねじ曲げて、原発の運転期間の定めを規制委員会から経産省に移し替えたわけであります。

 これは、規制の側が推進の側の論理に取り込まれた、規制のまさにとりこではないか、その再来ではないかというふうに私は受け止めているんですけれども、黒川参考人とそれから鈴木参考人の御見解を伺いたいと思います。

黒川参考人 私たちも、ずっと、初めて立法府がああいうものをつくっていただいて、六か月間という時間でやりましたけれども、最後に、やってみると、これはみんな分かっていてやらなかったんじゃないのか、何かことわざみたいなものがあるんじゃないかとみんなで言っていたら、誰かが、これは規制のとりこだよと言ったので、さっとまた調べてみたら、規制のとりこがぴったりするんですね。それで、経済をやっている人に聞いたら、もう典型的ですよと言うから、自分で知っていたんじゃないのかという話をしたんですけれども。

 だから、そういうふうに、お金が大事なのか何が大事なのか分からないんだけれども、私の結論は、民主主義になっていないということだと思うんです。

 もちろん、その前は、天皇陛下がいるとかそういうのが普通ですけれども、民主主義になったというのはいつだと思いますか。戦争に負けてからでしょう。一九四五年ぐらいだと思うんですけれども、そのときにマッカーサーが来たわけですよ、原爆が二つの後で。マッカーサーが、これが民主主義だと言うからみんな投票しているだけで、頭の中は何も変わっていないんじゃないかと思いますね。そうじゃないですか。つまり、民主主義になるというのは、自分たちで何かをして民主主義になっているんだけれども、戦争に負けて、マッカーサーが来て、そうやっただけの話です。

 よく見ていると、本当に日本は独立しているのかなということもまた問題だし、議員さんでも、二世議員がどのぐらい多いかというと、民主主義で、二十四ぐらいありますけれども、二世議員が多いのは、一番多いのはフィリピンとタイで、三番目がアイスランドで、四番目が日本ですから、どうしてそうなのかなという話を考えるのがすごく大事なんじゃないかと思うんですね。

 だから、原発のときには、これをどうやってそこまでいったのかというのは、いろいろなところで出しても、基本的に何も変わっていないなというのが私の思想なんですね。だから、民主主義になっていないんじゃないか。そのプロセスを見てみれば、マッカーサーに言われたからやっているだけだなということが、私の今のところ考えていることです。

鈴木参考人 私の経験からいっても、事務局職員の独立性や専門性がすごく大事なんですね。

 規制庁をつくるときに、当然ながら人を集めなきゃいけなかったわけですが、そのときにノーリターンルールを作って、規制庁に一旦来たら元に戻らないというルールのはずなのが、どうやらちょっとそれが緩和されているみたいで、しかも、今、ほとんどの規制庁のトップは経産省の方々で占められているということは、現実はそうではなかったとしても、見えるだけでも独立性に嫌疑がかかってしまいますので、ノーリターンルールの厳密な実行とそれを監視する仕組みが必要かなと思います。

笠井委員 ありがとうございました。

 鈴木参考人に伺いたいと思うんですが、先ほど冒頭にお話があった核のごみをめぐる問題で、原子力規制委員会の廃棄物事業計画許認可をめぐって伺いたいと思うんです。

 先ほどお話もあったように、やはり今ある廃棄物の処分は当然必要であります。それは必要なんだけれども、しかし、まだその見通しが立っていない中で、これ以上、核のごみを作り続けていいのかということも問われるというふうに思います。

 それで、原発で出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみの処分地選定に関しては、お話もありましたが、この間、原発回帰にかじを切った岸田政権は、最終処分に関する基本方針ということで、昨年、二〇二三年の四月の閣議決定で、北海道の二町村以外に複数の地域での文献調査の実施を目指すというふうなことで、経産省は、電力会社やNUMOと全国百か所以上の自治体を訪問して、政府一丸となってこれの取組を強めてきた。

 そういう中で、直近でいいますと、齋藤経産大臣の直接の要請を受けた佐賀県玄海町の脇山町長は、去る五月十日に、第一段階となる文献調査の受入れを全国三例目で、しかも、原発立地自治体では初めて表明をするということになった。

 他方で、先立つ長崎県の対馬市では、昨年九月に受入れ促進の請願が僅差で議会では採択になりましたが、比田勝市長は、安全であるという市民の理解を得るのは難しい、市民の合意形成が不十分と判断したとして受け入れないと表明した。なかなかこれは難しい問題だと思います。

 何より、伺ってみると、地元住民の皆さんの一番大きな懸念といいますか、幾つもあるんですが、極めて強い放射能を持って、万年単位で管理をしなきゃいけないことが必要だとされる核のごみが持つ危険性の問題です。

 原子炉等規制法、炉規法の第五十一条の二以降に、原子力規制委員会による許認可の規定というのがあります。基準に適合していなければ許認可が得られないことにはなっているんですけれども、その規制基準がいまだに定まっていない。一体どうやって核のごみを安全に長期間保つことができるかということを確認できるのか、原子力規制行政としてそういう規制基準というのを設定できるんだろうかと私は思うんですけれども、その点は、鈴木参考人はどのようにお考えでしょうか。

鈴木参考人 まず、ちょっと一言。何万年も管理しなければ安全が確保できないとおっしゃいましたが、地層処分の考え方は、何万年も管理するのではなくて、管理は三百年で終えて、後は地層に任せるという人間が管理しない方法で処分するということなので、ここがまず基本的に考え方が違うと思います。

 したがって、何万年も管理できないというふうに思っておられる方がいるとすれば、それは誤解なので、そんなことはできないという前提でごみの処分をやるということ、それが地層処分の考え方ですね。

 規制基準はもちろん作らなきゃいけないんですけれども、海外のケースを見ますと、候補を絞るところでガイドラインをまず作る。どういうところが望ましいか、これも基準がはっきりしなきゃいけないですよね。それから、だんだん絞っていって候補地が決まってきたら、今度は実際の調査をしなきゃいけません。その調査をした上で実際の設計の基準を決めていくことになります。

 もちろん、原則としてのガイドラインというのは今でもあるんですけれども、実際に調査が進まないと現実の規制基準も決まっていかないと思いますので、早く調査を進めていくことが大事ではないかと思います。

笠井委員 万年単位というのは、つまり、地元の住民の皆さんでいうと、核のごみ自体は万年単位ということがあるんだよねという懸念がある。三百年という今言われる地層処分の話は承知した上での懸念事項ということを申し上げたわけなんですが、この辺は本当に大きな課題で、どうするのかということが問われているなということを改めて感じているところです。

 最後に、橘川参考人と鈴木参考人に伺いたいんですが、先ほど来出ています能登半島地震を踏まえた原子力災害対策指針の見直しをめぐってのことなんです。

 私も今年二月の予算委員会でただしたんですけれども、能登半島地震で、北陸電力志賀原発の避難計画が、ある意味、絵に描いた餅、机上の空論ということで、実効性がないことが明らかになりました。地震によって避難道路の過半が寸断をして、屋内退避といっても、家屋の倒壊あるいは停電や断水もあって、食料も調達できない。原発が重大事故だったら逃げようにも逃げられないということで、そのことが改めて浮き彫りになって、私も、先日、別の委員会ですが、視察をして、現地でもいろいろな状況を見てまいりました。

 そこで、今、東京電力が再稼働を計画している柏崎刈羽原発の六、七号機のある新潟県でも、住民や自治体からも、能登半島地震を受けて、地震などとの複合災害の際の実効性を問うという声が相次いでおります。

 柏崎刈羽原発周辺では、中越地震やあるいは中越沖地震のときに道路寸断が多数発生していて、二〇二二年の十二月には、記録的な大雪で、周辺の国道八号線などで大規模な立ち往生があった。私はちょうど柏崎刈羽に視察に行くというので東電に申し入れていて、どうぞと言っていたんですけれども、雪だから来ないでくれというふうな状況になったんです。

 東京電力福島原発事故では、避難困難でいかに大きな犠牲が出たかということについては、双葉病院のことも改めて頭に浮かぶわけです。そういう中で、まさに福島事故の痛苦の教訓こそ生かさなければならないと思うんです。

 現在の原子力災害対策指針そのものの実効性が、そういう意味では、根本から問われている。

 原子力規制委員会は、屋内退避については見直しを始めましたが、今回の能登半島地震で明らかになった現実を踏まえて、避難計画をめぐってどういう検討が必要か、この点での原子力規制行政の在り方をどう考えるか、お二人に伺いたいと思います。よろしくお願いします。

橘川参考人 個人的なことで申し訳ないんですが、私は笠井さんと同級生なんですけれども、今みたいな言い方をされるから、私は、共産党の支持率が、もうちょっと上がるところが下がる、本来上がるべきところが上がらないと思っています。

 志賀原発について言うと、さっきも議論になりましたけれども、変圧器は確かに問題でした。だけれども、二回線切れたけれども、五回線にしておいたから三回線残った、これが本質なんですね。そういうふうに五回線にしたのは皆さんの努力なんですよ、共産党を始めとして。

 規制は、三・一一の反省で、やはりちゃんとやらなきゃいけないね、そういう努力をやったからそうなっていたわけで、それを、絵空事で全部駄目になっちゃったという言い方をしたら、皆さんがふだん言っていて、変わってきたいいところを否定することになるんじゃないか、そこを心配します。

 一方で、私は、能登半島沖の地震は、むしろ、震度七が起きた志賀原発よりも柏崎刈羽の避難計画が大丈夫か、そちらの方が社会的なインパクトは大きいと思いますので、柏崎の問題として、能登半島からどう反省するのか、供給エリアでもない東京電力は、本当に避難計画をきっちりしたものを作れるのかどうか、それが今まさに新潟県で問われている。それに対してどうしたらいいかというのが、先ほど私は述べたつもりであります。

鈴木参考人 避難計画については、内閣府と自治体と規制委員会でたらい回しになっているような感じがするんですね。

 基本的には自治体が責任を持ってとなるんですが、誰かが検証しなきゃいけないんだけれども、検証する仕組みがはっきりしていない。最終的には内閣府が承認することになっていますけれども、今回のように、基本的に見直しをしなきゃいけないというときに、誰がそれをやるのかということがはっきりしていないので、私は、最終的には、さっき田嶋議員がおっしゃっていましたけれども、規制の審査基準の中に避難計画をやはり含めるべきだ、それで、今回のようなことが起きたら、規制委員会がイニシアティブを取って見直しをして、それに基づいて自治体が避難計画を作るという方法がいいのではないかとも思っています。

笠井委員 ありがとうございました。お二人の意見を伺いました。

 橘川参考人は、私は同窓で、若干橘川さんが先輩なんですけれども、最初のコメントは、共産党に伸びてほしいという御期待の逆の表れと思って伺いましたが。

 実際、私は現地に行ってすごく感じたのは、とにかく、原発への賛否を超えて、本当にあの志賀原発の周辺が震源地だったら大変なことになったんじゃないか、今回はそうじゃなかったから、トラブルはあったけれども、原発自体は事故にならなかったと。

 珠洲に原発計画があって、それに対して反対の声があった。今、原発はいいなと思っている方も含めて、現地でいうと、あのとき反対してもらって、今、珠洲に原発がなくてよかったねと震源地のそばで言われているということがあるので、これは原発の賛否の問題というよりも、実際にどうするのかということについては、避難計画の問題については、今、鈴木参考人もおっしゃったように、しっかりと考えていく必要があるのかなというふうに思っています。

 そういう点では、私自身は、福島事故の教訓から、原発はゼロ、それから省エネ、再エネへの転換こそ気候危機打開やエネルギーの安定供給のために必要という意見を持っています。ただ、そういう立場だけれども、ここは規制行政の在り方について議論ということで、幅広くいろいろなことを伺うということでやっていたということで御承知いただきたいと思います。

 本日伺いましたアドバイザリー・ボード五人の参考人の皆さんの今後の原子力規制行政に関する御意見を踏まえて、国会事故調の提言の一にある規制当局に対する国会の監視と、さらに、石橋参考人からは、国会はもっと積極的に、能動的にやるべきだという御意見がありました、そういうものをしっかり受け止めて、今後の委員会の取組、そして質疑もやっていきたいと思います。

 今日は、ありがとうございました。

平委員長 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲と申します。

 本日、最後の質疑者になります。よろしくお願いいたします。

 ちょっと喉の調子が悪いので、マスクを着けたままの質疑とさせていただきます。

 私も、初当選以来一貫してこの委員会に所属をしておりまして、もう七年目に入りました。毎回毎回、アドバイザリー・ボートの皆様方からは、非常に、当委員会に対する期待と叱咤激励を両方いただいてきたというふうに認識をしております。

 今日、石橋参考人の資料にもありましたけれども、やはりこの委員会が当初事故調の提言内容をしっかりとどの程度対応できているのかということについて、是非皆様方の御所感を伺いながら、ちょっと確認をしていきたいというふうに思っております。

 提言全て、全部で七つありますけれども、まず、政府に対する提言となっている二と三についてはちょっと本日は取り扱いません。

 まず、簡単なところからいきますと、提言の六について、法規制の見直しということで、今日の石橋参考人の資料の中にはダイジェスト版がありますけれども、提言六を見ますと、一元的な法体系への再構築ですとか、あるいは当事者同士の役割分担の整理、また、規制当局に対して、その履行を監視する仕組みの構築であったり、バックフィットの導入のようなものが書いてありました。

 私もそれぞれよく見ていきますと、今できていないのは、やはり法体系の一元化、再構築であります。昨年も、GXの関連の法律の議論のときに、原子力基本法と電気事業法を改正して原子力発電所の運転期間の制度の見直しを行いましたけれども、やはりここでも、いろいろな法律を同時に触らないとこういったことが実現できないという点では、まだまだ我々としては道半ばなんだろうというふうに思っております。

 提言四と五について見ていただきますと、提言四については、電気事業者の監視という項目なんですが、この一番最後の4)、立入調査権を伴う監査体制を国会主導で構築するという部分で、国会に対する提言が盛り込まれております。

 国会主導で構築をできているかというと、今できていないと思っているんですけれども、規制委員会に対して、我々が規制当局を監視する、その規制当局が立入監査も含めて事業者を監視しているという状況が今ありますので、機能的にはこの要求を満たしていると言えるのではないかというふうに理解をしております。

 また、提言の五、新しい規制組織の要件というところで、国会に対しては、原子力規制委員会に対して自己変革を続けることを要求し、国会はその過程を監視するというふうに書いてあります。

 我々も、いろいろな意見の先生方がいますけれども、例えば審査の効率化を進めるべきではないかですとか、あるいはノーリターンルールの厳格化であったりとか、透明性の向上といった様々な観点で、規制委員会に対しては様々な要求をしてまいりました。全て聞き入れてもらえているわけではないにせよ、その進捗状況についてはこの委員会でも継続的に監視をしてきているという意味で、提言五に対しては、私としては、ある一定の役割を果たせているのではないかというふうに感じているところです。

 提言一と提言七については最後にちょっと取っておきたいんですが、提言四と五に対して、これまで当委員会が行ってきた、今の状況を踏まえて、是非、黒川参考人、石橋参考人のお二人から御所感をいただきたいと思っております。

黒川参考人 先生方は御存じのように、国会事故調というのは、先生たちが法律を作ってやらせたわけですよね。もっともっとこういうのは立法府がやる仕事じゃないかなというのが私の言い分で、先生方のおっしゃるとおり、先生方はやはり選挙で落ちたらどうしようもないというのもあるので、広げるのをどうするかというのもすごく大事ですよね。

 だけれども、今、福島後では、かなりの人たちは、なくたっていいんじゃないのという人が多いと思うんですけれども、だから、どういうふうなキャンペーンをしていくかというのは、先生たちだけじゃなくて、そういう人たちがやはりやらなくちゃいけないんじゃないかなと思います。

 それは、一つは、メディアはすごく大事だと思うんですけれども、メディアもそういうことを書かないし、最近は、高齢者になって、妊娠するかどうか女性の選択になって、だから赤ちゃんが少ないという話もありますけれども、そういう話もメディアがどんどん書かないし、御存じだと思いますけれども、今、日本の財界の方では内部留保が五百兆になっていますよね、何で使わないのか、私は全然これを理解できないですよね。

 だから、そういう話をメディアが何で言わないんだということを言っているんですけれども、結局、みんなサラリーマンなんでしょうね。だから、そこが日本の一番の問題で、ネットになったって、何にも使っていないですよ。

 だから、国会事故調だって、あんなのは初めてだということ自身が、元々与党だった方々がつくったのかもしれないけれども、ああいうプロセスが初めてだったということ自身が、日本は民主主義になっていないんだという証拠だと思うんですね。

 だから、そういう意味で、どれだけの人たちがこういう意識を共有するかというのが、やはり、立法府から出すのも大事だし、いろいろな人たちがそれをやらないと、本当に日本はこのままだんだんだんだん年寄りばかりになっちゃって、GDPは全然増えないし、内部留保は五百兆あって、何をやっているのという話をしているんですけれどもね。

 この辺が、どうやったらそういう人たちが一緒になって、次の世代をどんどんどんどん、やろうやろうという話をしていくことが大事だと思っているので、是非、私ももう残り少ないですから、そういうことはせっせとやろうと思っていますので、先生方、頑張ってくださいというのが私の気持ちなんですね。

 ありがとうございます。

石橋参考人 ありがとうございます。

 提言四と提言五ですけれども、誰がいつまでに何をどこまでやるのかということについて、御議論はされているのでしょうか。それは国民に公表されているのでしょうか。進捗状況は、そういう意味での公表というのはなされているのでしょうか。それが全ての出発点ではないかというふうに思います。

浅野委員 ありがとうございました。

 主体となるものと目的と時間軸、こういったところはしっかり我々としても意識をしなければいけないというのは、おっしゃるとおりだというふうに思います。

 ただ、ちょっと今やはり伺っていて思ったのは、委員会に所属している我々が何をやらなければいけないかという使命、役割に対する認識と、当時のこの提言をまとめられた皆様方のその願いといいますか、期待というところが、私も七年間ここに在籍していて感じるのは、そこをもう一度やはり一回整理をして、一致をさせる必要があるのではないかとも今感じております。是非、この委員会の中で今後そういった場が設けられることを期待したいというふうに思います。

 次の質問ですけれども、先ほどから何度も取り上げられている提言一について、こちらについても伺っていきたいと思います。

 提言一を見ますと、四項目あります。1)については、規制当局からの説明聴取や利害関係者又は学識経験者等からの意見聴取、その他の調査を恒常的に行うということで、外形的には、規制当局そしてアドバイザリー・ボードの皆様、また東京電力を始めとする関係事業者の方々をこの委員会にお呼びをして、定期的に聴取をさせていただいております。それが不十分かどうかはそれぞれ意見があると思います。

 2)については、もう言わずもがな、皆様が存在していることそのものが、この対応、証明かなというふうに思っております。

 そして、私が少し問題視しているのが3)であります。今回の事故検証で発見された多くの問題に関し、その実施、改善状況について継続的な監視活動を行う、括弧書きで、国会による継続監視が必要な事項として本編に添付してあるというふうに書いてあります。

 この本編に添付されていた継続監視事項を見てみますと、時間の関係で全ては申し上げませんが、安全目標の策定、指針類の抜本的見直し、あとはクリフエッジ効果のある事象に対する特別な配慮ですとか、事故解析ツール、モニタリング設備の整備等々、かなり広い範囲で専門的な項目が継続監視対象とされています。

 私は、やはりこれをやるためには、皆様方がおっしゃる独立した専門的な調査機関、調査委員会というのが必要ではないかというふうに思うんですね。我々の持っている知識だけでは、こうした広範かつ専門的な項目を継続的に監視をし続けるというのは、非常に難しい部分もあろうかと思いますので、私は、こういったところをしっかりやるためには、まさに、提言七にあるような独立調査委員会が必要ではないかというふうに思いました。

 あともう一つ、鈴木先生に伺いたいと思っているんですが、私は、事故を再発させないために、しっかりとその事故原因を分析して、現状の対策内容が妥当かどうかを監視する以外に、我々がいずれにしても必ずやらなければいけない最終処分場の選定、あとは設置、運用、こういった点については、やはり問題がまだまだ今山積していると思います。

 今、最終処分場選定が遅々として進んでいかない原因の一つは、例えば技術開発ですとか調査活動、こういった科学的アプローチと、国民の理解醸成や意思決定といった社会的アプローチを橋渡しできる存在が不在なのではないかというふうに感じております。

 科学的特性マップというのがありますが、これが本当に科学的目的に使われているのか、ちょっと私は非常に疑っておりますし、専門知識を持たない首長や政治家が政治的リスクを負いながら調査の受入れ等を判断しなければいけないという状況が続いていますし、NUMOは、技術開発、調査、あるいは市民との対話は行っていますけれども、意思決定には関与できていないというところで、やはりこういった現状を打破するためにも、提言七にあるような独立調査機関、調査委員会が必要だと私は思いますし、鈴木参考人も先ほど同様な趣旨をおっしゃっていたのではないかと思うんですが、改めてその点について御所見を伺いたいと思います。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりでありまして、国会の役割は非常に重要で、提言には恒常的にと書いてありますよね、そのためには、先ほど申しましたように、常設委員会をつくり、それから、独立調査委員会も常設の委員会にしていただかないと難しいと思います。

 それと、独立の調査委員会にしようと思えば、事務局もちゃんと独立したものがなきゃいけないので、専門家を集めると同時に、事務局もちゃんと設置していただいて監視を続ける。

 高レベル廃棄物については御指摘のとおりなんですけれども、私は、委員会は、かなり専門的なものと、それから実質的にかなり幅広い活動が必要になってくるので、高レベル廃棄物の処分事業そのものに対しても、やはり専門の第三者機関が必要ではないかなというふうに思いまして、今回も提言させていただきました。

浅野委員 改めて、黒川参考人にもお伺いしたいんですが、とりわけ、私は目の前の、これまでの対策内容の精査以外にも、これからやらなければいけない最終処分の問題を前進させるためにも、やはり提言七の確実な履行というのが必要だと思うんですけれども、同様な趣旨になりますが、黒川参考人からも一言いただきたいと思います。

黒川参考人 ありがとうございます。

 国会事故調のフォローアップについては、やはり立法府が何かのことをつくって、そんなにお金がたくさん要るわけじゃなくて、大学生とかそういう人たちが何回かやりながら、どんどんどんどんそういう話を、それでリポートをどんどん出していくということがすごく大事なんじゃないかと思うんですよね。

 こういうこと自身が日本でどうも初めてだったらしくて、立法府がぼんとつくってしまって、あんたたちやってよね、これの中でちゃんとやってちょうだいと言ったので、私が言ったのは、委員長をやれなんといったって、これはすごく、考えてみればやばいじゃないですか、どう見ても。

 それで、警察の人とかにいろいろ聞いたんですけれども、こういうときにどうやってそういう人たちを討ち取るかという話があり得るので、どこかで、電車の中で婦人警官なんかが、こいつはやはり変態だみたいな話で捕まえるんだなんという話をみんな聞きましたから、そういう話でもあるので、やはり一歩一歩これをフォローしていただけるようなことを立法府がやっていただければ、大学生とかいろいろ、大きなバジェットじゃないと思うんですよね、それで、それをどんどんどんどん出しながらやっていくと、あ、それはそうだよねと言ってくれる人が増えると思うので、是非そういうことを先生たちでやられるのが一つは面白いんじゃないかと思うんですね。

 しかも、今ネットの時代ですので、そういう人たちの中でやっていることを英語でもどんどん出せばいいわけで、それも私はあの最中にやっていましたけれども、英語でも出して、外からそれはいいよねという話がどんどん出てくるので、やはり立法府というのはそれをやるところじゃないだろうか。

 大したお金じゃないと思うんですけれども、コンティニュアスに、そういう大学生のチームとか、いろいろな人たちがやりながら、外と一緒にやるというのはすごく大事だなとまた思うので、先生のおっしゃっているようなことは結構いいなという気がするんですね。

 だから、そういう意味では、日本人だけじゃなくてみんなでやろうよねという話はすごく明るいと思うし、全部やらないうちにそういうのがぽんぽん今ネットで出せますから、そういう話をちょっとやってみるのは面白いなと思って、私もできることがあったら、そのサジェストはできるかもしれないなと思っていますけれども、外と一緒にやるというのも大事だとすごく思います。

浅野委員 時間がもう参っていますので、最後に、ちょっと委員長に一つ提案をさせていただきたいんですけれども、今のこのやり取りの中で、この委員会でこれまで、提言一から提言六まで一定程度取り組んではきているものの、やはり今、我々が直面する課題、最終処分場の問題ですとか安全対策に対して、しっかりと客観的な目を入れて、国民的な合意を形成する環境を整備するためにも、独立調査委員会なる存在を一度検討する価値は十分にあると思っておりますので、是非、当委員会としても、提言七に含まれる独立調査委員会の設置に向けて、まずは検討をする機会を設けていただくことを申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

平委員長 後刻、理事会で協議をさせていただきます。

浅野委員 じゃ、本日は終わります。ありがとうございました。

平委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたします。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十六分散会


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