衆議院

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第4号 令和7年6月3日(火曜日)

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令和七年六月三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江渡 聡徳君

   理事 岩田 和親君 理事 津島  淳君

   理事 細野 豪志君 理事 田嶋  要君

   理事 野間  健君 理事 宮川  伸君

   理事 阿部 弘樹君 理事 岡野 純子君

      栗原  渉君    國場幸之助君

      佐々木 紀君    鈴木 英敬君

      関  芳弘君    世耕 弘成君

      西田 昭二君    根本  拓君

      長谷川淳二君    福田かおる君

      宮内 秀樹君    森下 千里君

      山本 大地君    阿部 知子君

      岡田 華子君    小熊 慎司君

      齋藤 裕喜君    下野 幸助君

      高松 智之君    波多野 翼君

      伴野  豊君    斉木 武志君

      村上 智信君    小竹  凱君

      平林  晃君    福重 隆浩君

      佐原 若子君    辰巳孝太郎君

    …………………………………

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (東海大学国際原子力研究所所長)         近藤 駿介君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (長崎大学客員教授)

   (NPO法人ピースデポ代表)           鈴木達治郎君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)代表)

   (株式会社クロト・パートナーズ代表取締役)    石橋  哲君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (龍谷大学政策学部教授) 大島 堅一君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (国際大学学長)     橘川 武郎君

   参考人

   (アドバイザリー・ボード会員)

   (原子力コンサルタント) 佐藤  暁君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      野崎 政栄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     國場幸之助君

  坂本竜太郎君     山本 大地君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     福田かおる君

  山本 大地君     坂本竜太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  福田かおる君     西田 昭二君

同日

 辞任         補欠選任

  西田 昭二君     石原 宏高君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 原子力問題に関する件(原子力の利用に係る諸課題と規制行政の在り方)


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     ――――◇―――――

江渡委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件、特に原子力の利用に係る諸課題と規制行政の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、アドバイザリー・ボード会員の、東海大学国際原子力研究所所長近藤駿介君、長崎大学客員教授、NPO法人ピースデポ代表鈴木達治郎君、わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)代表、株式会社クロト・パートナーズ代表取締役石橋哲君、龍谷大学政策学部教授大島堅一君、国際大学学長橘川武郎君及び原子力コンサルタント佐藤暁君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に委員会を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ていただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず近藤参考人にお願いいたします。

近藤参考人 近藤です。

 本日は、原子力安全規制と第七次エネルギー基本計画に関して、関係機関が国会事故調の、我が国原子力界は透明性と公開性、そして世界に学び、自らを顧みる姿勢に欠けていた、そのことが大事故を招いた原因という指摘をどう踏まえているかについて点検するべく、幾つか申し上げます。

 二〇〇〇年代の初め、原子力委員会は、当時、核燃料サイクル論争が霞が関をにぎわしていたことを受けて、核燃料サイクルの選択肢は、経済性のみならず、循環型社会の追求、エネルギー安定供給、将来における不確実性への対応能力の確保等の視点から総合的に評価するべきものとし、そうした評価を実際に行い、その結果を踏まえて、我が国における原子力発電の推進に当たっては、核燃料資源を合理的に達成できる限り有効に利用するべく、安全性、不拡散性、環境適合性を確保するとともに、経済性にも留意しつつ、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とするとしました。今次エネルギー基本計画に示されている原子力政策は、この基本方針を踏まえていると認識します。

 また、この大綱では、この基本方針の後に、長期的には技術の動向、国際情勢等に不確実要素が多々あるので、国、研究開発機関、事業所等は、状況の変化に応じた政策選択に関する柔軟性を確保するために、使用済燃料の直接処分技術等に関する調査研究を進めることが期待されるとしました。

 先日、当委員会における辰巳議員の質問に対して、私、政策大綱の作成時には路線選択について柔軟性の確保も念頭に置かれていたと申し上げたのは、この記載の存在のゆえです。

 なお、先日同僚会員から指摘されましたように、最終処分法は、再処理によって発生するガラス固化体を地層処分するためのNUMOの業務を定めていますが、その五十六条においては、NUMOは経産大臣の認可を得て、核燃料物質を容器に封入したものについて最終処分と同一の処分を行うことを受託できるとしていますので、使用済燃料を最終処分する御提案があれば、受け入れることが可能です。よって、直接処分の採否は、この法律が決めているのではなく、行政の政策判断によると解するべきと考えます。

 これらのことからしまして、私としては、今回のエネルギー基本計画制定過程において、政府は、国民の皆様に対して、エネルギーをめぐる内外の変化を踏まえても、この基本計画を今後の我が国の原子力施策とすることが合理的であると考えるがどうかと問いかけ、寄せられる疑問に丁寧にお答えするべきではなかったかと考えます。本計画の中に、政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実という一節があって、そこにこういうことが大切とされているのを見まして、隗より始めよという感想を持った次第でございます。

 第二に、原子力安全規制行政に関して、原子力基本法の第二条が安全の確保を旨としとあるところ、二〇一二年の改定で、前項の安全の確保については、確立された国際的な基準を踏まえて云々とされました。当時、基本法なのに確立された国際的な基準を踏まえてという規定は曖昧でおかしいと思ったのですが、一昨年の改定では、さらに、その第二項として、事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って云々という条項が追加されました。これは事業法の色彩が強い規定でありまして、教科書的に言えば、憲法と個別法の間をつなぐ基本法という常識に照らしますと、強い違和感を覚えるものです。

 国際社会では、米国の原子力規制委員会の原子炉安全規制の基本哲学は、アディクエート・プロテクション・オブ・パブリック・ヘルス・アンド・セーフティー、公衆の健康と安全を適切に保護すること、つまり、リスクをゼロにすることではなくて、合理的に達成可能な範囲での高い安全性を義務づけると法定されていますし、英国のオフィス・フォー・ニュークリア・レギュレーションは、比例原則、すなわち、リスクが高ければ対策は厳しく、リスクが低ければ対策はそれに応じて軽くてよいという原理の下、合理的に達成可能な限りのリスク低減、ALARPを原理として規制活動を行うとしています。

 大学の法学の授業で、我が国の憲法では第十三条がこの比例原則を述べていて、行政裁量を羈束していると習った記憶がございますが、このことを踏まえれば、この第二条第一項は、前項の安全の確保については、憲法十三条を踏まえ、合理的に達成可能な限り高い安全性を確保することであるとするのが基本法にふさわしい姿と考える次第です。

 こうした国際社会の標準的な安全規制哲学のエッセンスが原子力基本法に明定されなかったゆえか、原子力規制委員会は、新しい規制基準の制定過程においては、防護の厚さが足りなかったことが福島事故の原因との批判に応えるべく、より多重化された深層防護を整備することをひたすら大事にしたようです。この深層防護の哲学には防護の厚さを決める論理は内在しませんので、通常、比例原則やALARPの要請を受けて活用することが国際的に確立された考え方なんですが、そのような観点からの議論はなされなかったようでございます。

 その結果、特に、こうした総合判断が重要になる意図的航空機衝突等の外的脅威対策において、英国、カナダあるいは隣の韓国等で採用されている影響緩和と国家防衛機能の連携を重視する考えは採用されず、分散配置されたモバイル設備での柔軟対応というのは、私からすると全体的合理性の観点から意義を有すると考えるのですが、これは、暫定措置としてのみ受け入れるとして、特定重大事故等対処施設を安全機能の冗長性と物的隔離を確保して整備せよと、こうしたテロ行為は元々、国際通念では、国家防衛機能により確率的に見て十分起こり難い設計基準外事象とされるべきものであるにもかかわらず、設計基準事象と同等の設備整備を義務化する、国際的にも特異な要求が制定されました。

 このことは、とにかく設備を強化するので社会の皆さん安心してくださいという当局の姿勢が見られ、当時の社会情勢としては安心が何より大事であったことから当然だと反論されることを承知しつつ、専門家としては、世界に学ぶという点でこれはいかがかと問題提起せざるを得ません。

 ところで、この数年、世界の原子力安全関係者の間では、気候変動や情報技術の悪用、そして軍事衝突に係るリスクに関心が高まり、こうしたリスクをいかに管理するべきかの議論が行われ、合理的に達成可能な限りリスクの低減を図る観点から、必要な対策に関して、共同しての取組も含めて意見交換がなされています。

 このエネルギー基本計画においても、こうしたリスク要因の存在に言及はされています。計画ですから言及だけでいいのかなと思いつつも、私としては、そのような意見交換があることを踏まえて、意見交換の場で我が国は対策かくあるべしとの考えを発言していくべしと、一歩踏み込んでもよかったのかなと思っております。

 最後に、計画は、革新軽水炉について、事業者は、更なる安全性向上を目的としてこれに組み込まれる新たな安全メカニズム等と新規制基準の関係性の整理に向けて、規制当局と積極的な意見交換等を行うべしとしています。こうした対話は各国の規制機関において既に行われてきており、これら機関から、年報等において、こうした対話は有意義であったと紹介されています。

 私としましては、我が国におけるこの対話で大切なのは、今述べた規制哲学をどう体現するかの説明と評価に関する意見交換と思うところ、関係者が共有するべき安全哲学が明確にされていないゆえに、ハウ・セーフ・イズ・セーフ・イナフ、つまり、社会と共有を目指すリスク水準に関する徹底した議論のない対話に終始することを恐れ、そうならないことを強く希望するものであります。

 私からは以上です。

 ありがとうございました。(拍手)

江渡委員長 ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 おはようございます。

 それでは、私の方は、三点お話しさせていただきたいと思います。

 まず最初に、もちろん、前回もお話ししましたが、この委員会ではできるだけ、推進、反対にかかわらず、重要な課題に優先順位を置いていただきたいということで、三つ、今日は、再稼働に関わる問題は避難計画問題に重点を当てたいと思います、それから次世代革新炉の研究開発、それから人材確保に、お話ししたいと思います。

 では、次のスライドをお願いします。

 再稼働に関わる問題で、御存じのとおり、左側の方は水戸地裁の判決で、再稼働は、避難計画問題が大きな理由になって、差止めが命じられました。特に複合災害、これが大きな問題になっていると思うんですけれども、住民の方が、この地域は人口が多いので、重大な、かつ深刻な被害を与えることになりかねないという判断がされました。

 右側は、最近ですけれども、能登地震を踏まえて、新たに避難計画に変更が必要ではないかということについて、内閣府も来られて、新潟でヒアリング、説明会をやったということなので、そのときのニュースなんですが、地元の方々の関心を聞くと、やはり十分でない、国の説明を聞いても安心できないということで、しっかりしてほしいというコメントがなされています。

 次のスライドをお願いします。

 これはNHKが調べた調査で、私がやったわけではないんですけれども、なかなかいい調査で、複合災害への対応が十分ではない、不十分ではないかということで、全国を調査されまして、左側は、道路が寸断された場合の避難道路の復旧、確保は誰がするのかというのがはっきりしていないということで、十九道府県のうち六道県しか明記されていない。

 右側は、PAZ、いわゆる半径五キロ以内の避難圏で、すぐに避難できる、しなきゃいけないとなっているんですが、避難できない場合は屋内退避場所を確保することになっているんですね。この場合、これも、調査しますと、十六か所のうち五か所しか確保されていないという調査結果であります。

 次のスライドをお願いします。

 これは、人口に対してどれぐらい収容人数が確保されているかという、これもNHKの調査なんですが、何と三か所で一〇%以下のところがあったということで、福井大学の安田先生のコメントなんですけれども、やはり人口が多いところは見直す必要があるのではないか、これも国がちゃんと見直してもらわないと困るというふうにおっしゃっています。

 次をお願いいたします。

 避難計画の仕組みなんですけれども、どうなっているかというと、国の方では中央防災会議と原子力規制委員会が基本的な考え方を示して、県、市町村の防災会議、市町村防災会議で避難計画を作る、それを、地域原子力防災協議会、それから原子力防災会議と、幾つも会議があるんですけれども、これが最終的には了承するということになっていまして、地域原子力防災協議会では確認、原子力防災会議では了承。誰も審査や承認をしないことになっています。

 ということは、自治体がしっかりとしてやらなきゃいけないとなるんですが、これは自治体、先ほど申しましたように、国がしっかりしていないとなかなか難しいということで、これで見ると、政府には責任がないように見える。規制委員会も対策指針を作成するのみでありまして、私個人的には、規制基準の中に避難計画の審査も入れるべきだという考えなんですけれども、たとえそれができなかったとしても、誰が評価、担保するのかということを明確にする必要があるのではないか。

 例えば、原子力規制委員会が審査する、あるいは原子力防災会議が最後に、了承になっていますけれども、ここで原子力規制委員会の助言を得て審査、承認するというふうに法律改正が必要ではないかと思います。

 では、次、お願いいたします。

 次世代革新炉の研究開発に関わる課題なんですけれども、革新軽水炉と呼ばれているものをよく見ると、実は実質的には余り革新ではなくて、既にもう国際市場で導入が計画されているものが多いので、これは既存の軽水炉の改良型と言っていいかと思います。既に安全審査も通っている海外のものも多いですね。もちろん安全性は高いんですけれども、特に注目されているのが小型モジュール炉と言われているものですが、これも従来型の、以前からかなり研究開発されてきたものであって、特に革新というわけではないんですが。

 最近、このSMRの中で、高純度低濃縮ウランという、高濃縮ウランというのは二〇%以上で核兵器に転用できるものなんですが、そのぎりぎりまで燃焼度を高めたものをHALEUという言葉で呼んでいるんですけれども、これが注目されているんですが、高純度低濃縮ウランは濃縮度が高いので、ひょっとしたら核兵器に転用できるのではないかという論文が出されています。この検証をする必要があります。

 また、このような濃縮度の高いものは、基本的には高燃焼度で直接処分を前提にしているものが多いので、我が国の政策と整合性があるかどうかの検証も必要だと思います。

 それから、SMRは最近のデジタル技術を駆使しておりまして、例えば、スモール・モジュール・リアクターは四つ、五つ同時に同じサイトに造って、それを一つの制御場所でやるということで、デジタル技術で制御するということが非常に取り入れられているわけですが、デジタル技術を採用すればするほどサイバー攻撃に対する脆弱性があるというふうに指摘されていまして、核テロに対する検討も必要になります。

 いずれにしても、日本市場に導入するとすれば新しい規制基準が必要になる可能性がありまして、慎重な安全審査が必要であり、経済性評価や環境評価も必要である。核燃サイクルについても評価する必要があると思います。

 次、お願いいたします。

 一般的な話になりますが、次世代革新炉、これから、いわゆる研究開発、国が研究開発をする場合の課題についてお話ししたいんですけれども、この研究開発、私自身は、将来の選択肢を確保するということで基本的には賛成なんですけれども、人材確保に役立ちますからね、ただし、現状において、ほかの研究開発課題との優先順位をまず考えていただきたい。安全確保はもちろんですけれども、廃棄物処分や福島第一廃炉など、研究開発課題はいっぱいあるわけですから、本当に今、次世代革新炉に重点を置くべきかどうかを検討していただきたい。

 次世代革新炉として、エネルギー基本計画には、高速炉、高温ガス炉、フュージョンエネルギーといった次世代革新炉が一括で書かれているんですけれども、実際は、それぞれの原子炉は技術成熟度が大きく異なりまして、核燃サイクルもそれぞれ異なるんですね。

 例えば高温ガス炉は、既に実験炉や原型炉が運転していまして、基本はワンススルーです。それから、高速炉、ナトリウム冷却炉も既に原型炉まで運転していますし、フランスでは実証炉も運転しています。新たな革新型高速炉も提案されていますので、デザインによっては変わってくる。増殖をしないで、廃棄物燃焼に重点を置いているものもあります。それから、トリウム溶融塩炉は、つい最近、二〇二五年四月、今年の四月に中国が実験炉をまたやりました。六〇年代に開発は一度されているんですけれども、問題があって実用化はなくなったんですが、このトリウム溶融塩炉についても検討する必要がある。核融合は、当然まだ臨界に達していないので、恐らく我々のタイムスパンでは実用化は難しいのではないかと思いますが、このように、技術成熟度が違う。

 ちょっと次のスライドを見ていただきたいんですが、これは近藤委員長が原子力委員長のときに我々が核燃サイクルの政策選択肢の検討をしたときの新型炉の評価なんですけれども、技術成熟度が違うんだということで、このTRLという、テクノロジー・レディネス・レベルという概念で国際的には評価がありまして、その技術成熟度に応じて研究開発計画を立てるということになっていますので、そのような計画にしていただきたいというのが私の願いです。

 次、お願いいたします。

 そうはいっても、これまで一体、日本は幾らお金を使って、どんな研究開発をやってきたかという評価、反省が余りされていないのではないかというのが私の、私自身もそうなんですけれども、反省しているところでありまして。ここに書かれていますが、日本ではいろいろな原子炉をやってきましたが、実用化しているものは一つもないということについてどう考えるのかということですね。もちろん研究開発で得られたプラス面もいっぱいあると思うんですが、これをまずやらなきゃいけない。この評価についてまずやらなきゃいけないと思うんです。

 実は、私が原子力委員会にいたときに、近藤委員長のときに、事故直後ですから、原子力の将来がどうなるか分からないという状況の下で研究開発についての見解をまとめたものがありましたので、ちょっと論点を整理させていただいたので、抜粋ですけれども、三点。

 まず、基礎基盤研究の着実な実施、これが非常に大事です。どうしても研究開発は、プロジェクト志向で物を作りたい、建てたいというふうに行ってしまうんですが、基礎基盤研究の方が大事でありまして、これが弱っています、日本の場合。特に原子力もそうです。学術や人材育成に非常に役立ちますので、基礎基盤研究の着実な実施がまず第一。

 それから、実用化するに当たっては社会ニーズをちゃんと反映する必要があるので、公的に評価が必要だということですね。社会ニーズを反映するために、いろいろな原子炉、多様化が必要だと言っているんですが、最後のところが大事なことですね。技術というのは予期せぬ社会影響がありますので、これをちゃんと評価する必要があって、そのためには、理学、工学だけではなくて人文社会の方々も入れた、いわゆるELSIと言われている、倫理、法、社会的側面と呼ばれる幅広い視点から、自律性を持った包括的な評価組織という、この自律性を持ったが大事であります。今、学術会議が問題になっていますけれども、この自律性を是非保ったような評価組織をつくっていただきたいということを公的にもお願いしています。

 次、お願いいたします。

 最後に、人材確保の問題ですが、今ちょっと研究開発のお話をしましたが、大事なことは、最も必要な人材は何か。ここはやはりプライオリティーが大事ですね。それから、将来必要となるもの、将来にかかわらず必要になるものという、それぞれ、やはり目的をはっきりして人材確保政策を立てなきゃいけない。既存原発の安全な運転がまず大事ですよね。それから廃棄物処分、それから福島第一原発廃炉、最後に原子力の新設があります。それぞれ、これは異なる人材が必要になってきます。

 したがって、これも当時の原子力委員会の見解文なんですけれども、これも事故直後に作った見解なので、将来どうなるか分からないということで書かれていますが、まずは人材需給マップを作ること。これについては、産業界、学界が中心となってやるのが望ましいと思うんですが、やはり政府の役割も一部必要になってくる。

 実は、原子力産業協会の方で原子力人材育成戦略ロードマップというのを作られていて発表されているんですが、最近では去年の三月に作られているんです。これを見ていただくと分かるんですが、産業界が中心になっていると、どうもやはりはっきりしないところがある。将来の人材、分野ごとにですね、それが問題がないかと思っています。

 それから、教育機関の原子力、放射線教育の整備、これも非常に大事でありまして、特に、放射線教育というのはいろいろな分野で必要になってきました。原子力の将来にかかわらず、これは必要である。

 それから、社会人教育機能の整備、あるいは次の安全確保、核不拡散、核セキュリティー。特に、核不拡散、核セキュリティーというのは人材が不足しています。将来、やはりこれも、原子力がどうなろうと必要だと思います。

 最後に、原子力業務へのインセンティブ強化ということで、奨学金とか留学制度とか、これも原子力分野への人を確保する意味で大事だと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

江渡委員長 ありがとうございました。

 次に、石橋参考人にお願いいたします。

石橋参考人 石橋哲です。発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 国会事故調には、全体工程のプロジェクトマネジメント機能として参加しました。同委員会解散後は、サークル活動、わかりやすいプロジェクト(国会事故調編)で、国会事故調報告を出発点として社会の仕組みについて考え合う場の共創をテーマに、全国の高校生、大学生、社会人、日本赤十字などとのワークショップを継続しております。

 本日のテーマは、原子力利用に係る諸課題と規制行政の在り方ということですので、私からは、規制行政の在り方についてお話ししたいと思います。

 前回参上時にも申し上げましたが、国会事故調の核心は、「問題解決に向けて」、今お配りしていますダイジェスト版の八ページにありますけれども、の記載であると私は考えます。

 事故の根源的原因の背後にあるのは、自らの行動を正当化し、責任回避を最優先に記録を残さない不透明な組織、制度、さらに、それを許容する法的枠組みであったということですね。この根源的原因の解決なくして、単に人を入れ替え、あるいは組織の名称を変えるだけでは、再発防止は不可能であると述べております。

 次のページをお願いいたします。

 国会事故調は、事故、又はその根源的原因であった規制のとりこの再発防止のために、原子力安全の確保に際して、透明性の確保と公開性の担保の確立を国民の代表である立法府に求めました。それは、モニタリング可能性の確保、国民からの信頼に基づく社会的合意形成に不可欠であると思います。

 次、お願いします。

 国会事故調は、日本の憲政史上初めて機能した、立法府による行政府への監視でした。規制のとりこの再発防止には、監視の継続が不可欠です。そのために、七つの提言をもって、やっていただきたいこと、その際の目線をフルセットで国権の最高機関である国会に求めています。

 次のページをお願いいたします。

 行政を監視する立法府。その立法府を主権を信託する側である国民が監視するためには、提言の実施に際し、実施計画の策定と進捗状況の国民への共有が不可欠です。国会事故調は、そのように明記し、立法府に対して提言をしています。

 次、お願いいたします。

 実施計画の策定においては、政府がただいま進めているEBPMツールが有効であると考えます。ありたい姿をインパクトして、国会事故調提言が継続的に実施されている状態と置き、ロジックモデルを策定し、次のページをお願いします、各工程について、ガントチャート化による見える化による共有というのが有効であると考えます。

 次のページをお願いします。

 前回も申し上げましたけれども、国会事故調では、時間を含めて様々なリソースの制約がございました。取り扱わなかった事項も多々ございます。また一方で、今も緊急事態宣言が解除されていない事故は様々に進展しています。今日もほかの先生方からおっしゃるように、課題は山積しています。規制のとりこの再発防止に向けた取組は、日本国民にとって喫緊の課題です。

 次のページをお願いします。

 報告書の提出から今日で百五十五か月経過いたしましたが、提言の実施に向けた実施計画の策定の議論は、極めて遺憾ながら、実質的に行われておりません。

 次のページをお願いします。

 「君は恥辱と思わないのか」。前々回、前回の参上時に、二千四百年前のソクラテスの言葉を御紹介いたしました。

 次のページをお願いします。

 私は、この国が、国民から信頼され、外国から敬意を払われる、国内的に安定した国であってほしいと強く望みます。一人の国民として、使命を担うことに参加したいと考えます。主権を有する国民の信託を受けている立法府による、国民に対する背信行為、意図的な無意識のふりをする暴力が長く続かないことを心から祈りたいと前回参上時にも申し上げました。

 次、お願いします。

 この状況の原因がどこにあるのか。プラトンは、対話編「パイドロス」で、師ソクラテスにこんな言葉を吐かせています。

 どんなことを議論するにしても、そこからよき結果を上げようとするなら、初めにしておかなければいけないことが一つある。議論に取り上げている当の事柄の本質が何であるかを知っておかなければいけないということだ。ところが、考察を始めるときに、それを知っていると決め込んで、お互いにちゃんと同意を得ておかないものだから、彼らは、自分自身とも、またお互いの相手とも、言うことが一致しないのである。

 私は、彼らの話を盗み聞きしているような気分を味わいました。

 次のページをお願いします。

 先日、五月二十八日に公表された、規制改革推進会議による規制改革推進に関する答申には、大変共感する言葉が記載されていました。ここでも、規制、制度の所管官庁、いわゆる行政府が規制のとりこに陥ることのないようにすることが大事であるとうたわれています。

 次のページをお願いします。

 改革に着手し、期限を切って着実に実現するためには、改革の実現までの工程表、すなわち規制改革実施計画を作成すること。規制改革実施計画の策定に当たっては、規制制度間の連携を進めるため、関連する改革事項も包括的に取り込んだ計画の策定が求められると記載されています。

 次のページをお願いいたします。

 また、当初意図された改革が違った形で進むケースがしばしば見られる。決定事項が骨抜きにならないように、改革の効果測定やKPIなどによる見える化を進めていくことが大事であると書かれています。

 次のページをお願いします。

 規制のとりこの再発防止のためには、透明性の確保によるモニタリング可能性の確保と、公開性の担保による信頼に基づく社会的合意形成の道の確保が不可欠であると考えます。

 次のページをお願いします。

 国会事故調資料の開示の議論もなされないままに放置され、今や、衆議院インターネット審議中継のサイトにも元々保存されて掲示されていた国会事故調動画の多くが抹消されているようです。

 事故の再発防止という国民の信託を受けた国会が、もろもろをなかったことにする、意図的な無意識のふりをする暴力の状態を克服し、事故の根源的原因たる規制のとりこの再発防止に向け、立法府が行政府を監視する機能を仕組みとして確立し、国民からの信託に応える。国会事故調は、「不断の改革の努力を尽くすことこそが、国民から未来を託された国会議員、国権の最高機関たる国会及び国民一人一人の使命であると当委員会は確信する。」と記載しています。

 私は、中学校、高等学校の生徒さん方、大学生と現状を共有し、私たち国民が何を考えなければならないのか、社会の仕組みについて考え合う場を共創しています。

 規制のとりこの再発防止に向け、立法府による行政府に対する監視機能の実効性に魂を入れる国会事故調の提言が、国民の信託を受けているはずの国会、国会議員によって、百五十五か月目の今日、どのように取り扱われ、憲法で置かれている三権分立の実態がどのようなものであるのか、私たちの代表である先生方がどのような御議論を展開されるのか、今日もお聞きしてまいりたいと思います。

 ありがとうございます。(拍手)

江渡委員長 ありがとうございました。

 次に、大島参考人にお願いいたします。

大島参考人 おはようございます。

 本日は、貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 五月のこの委員会で申し述べた点に加えまして、いただいた論点に関して、三つの観点から意見を申し上げます。

 まず、最初に申し上げておきたいのは、規制と推進の分離が形骸化しているという問題です。

 この表も御覧ください。この表は、NPO法人である原子力資料情報室が作成したものです。

 表を見ますと、原子力規制庁の設立当初、二〇一二年九月の規制庁の幹部は、警察庁、環境省、経産省の出身者が一人ずつでした。しかし、二〇一七年一月には、経済産業省出身者が五人中四人になりました。二〇二二年七月には、主要の五つのポスト全てが経産省出身で占められるようになりました。二〇二四年七月になると、一人が警察庁出身に替わりましたが、依然として四人が経済産業省出身です。これは、事業や推進を担う省庁から規制機関の幹部職員になるルートが形成されてしまっているということを意味します。

 一枚飛ばしまして、五枚目、お願いいたします。

 このような状況は、回転ドア現象というふうに呼ばれます。規制当局者と被規制者の間を人が行き来するという状態を指す言葉です。

 回転ドア現象は、規制のとりこということに関する研究で頻繁に取り上げられるものです。規制機関の職員が事業や推進の出身ですと、当然ながら、事業や推進の立場の理解や共感が強まります。そして、本来の規制という公共的な使命と利益が損なわれる可能性があるとされています。

 規制機関の人事の中立性を確保するには、制度的な手当て、法改正を含む措置が必要だというふうに考えます。

 人事に関連して、つけ加えておきますと、原子力規制委員会の委員の専門について申し上げておきます。原子力規制委員会に関しては、人文社会科学的な知見を持った委員がおりません。当然ながら、原子力規制に関しては、そういった知見に基づく判断も必要となってきます。

 例えば、原子力施設の審査においては、経理的基礎というものも対象になります。ですが、原子力規制委員会の委員構成を見ますと、そのような専門的判断はまずもって不可能というふうに考えます。委員の一人は、少なくとも社会科学的知見を有する委員を選ぶべきです。

 また、つけ加えておきますと、原子力規制庁の法律職についても、事業者との利害関係から独立した中立的な立場の人材を確保する必要があること、また、再就職に当たっては、再就職先も関連する法律事務所であることを禁じたり、一定期間そういった関連する法律事務所には再就職しないということを規定する必要があるということも申し述べておきたいと思います。

 二点目、申し上げます。六枚目、お願いいたします。

 次に申し上げたいのは、住民参加手続が欠如し、むしろ後退しているという点です。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定プロセスには住民参加の制度が存在していません。これは五月の委員会でも申し述べたとおりです。

 そのような中で、NUMO、原子力環境整備機構は、五月から、国民的議論をと称して、新聞などの主要メディアで広報活動を始めております。しかし、このような活動は、NUMOがあたかも中立機関であるかのようなものになっています。NUMOは、最終処分地を選定し、最終処分を実施する事業者であり、その意味で推進機関ということになります。事業者が国民参加を装う形で広報を行うことは制度上も問題です。

 むしろ、NUMOに国民的議論を語る資格があるのかと思わされるようなことがありました。

 先月、島根県益田市で、請願提出の動きがあるとの報道がされました。報道によれば、地元経済界の一部が、突然、文献調査への応募を求める請願書を提出しようとしていたということのようです。これは島根県知事や益田市長の反対により中止となりました。ですが、この問題は、請願の背景にNUMOの関与があったと報じられていることです。

 二〇二五年五月二十二日付の山陰中央新報には、次のように報じられています。

 読み上げますと、関係者によると、メンバー間で共有されていた請願書案は、核のごみ関連施設視察などを支援したNUMOが作成、最終処分場は次世代に残す選択肢として非常に意義がある事業の一つとあり、文献調査の受入れ自体にデメリットはないと記されていたと報道されています。同じ報道では、益田市の経済界有志は、NUMOの協力を得て、青森県六ケ所村を視察していたということも明らかになっています。

 NUMOは請願文を実際に起案したんでしょうか。NUMOの理事構成を見ると、経済産業省出身者も含まれています。経済産業省がNUMOのこうした活動を把握していなかったとは思えません。NUMOと経産省には、国会に対して明確に説明させるべきです。

 地方自治体は、地方自治の原則に基づき、自らの意思で判断すべきです。もしNUMOがその意思の形成に重大な介入をしていたのであれば、また請願文を起案していたのであれば、それは制度の根幹を揺るがす深刻な問題です。このような動きはやめさせるべきだというふうに考えます。特に、国民的議論を訴えるのであれば当然だというふうに思います。

 次に、再稼働に関わる点について述べさせていただきます。七枚目をお願いいたします。

 取り上げたいことは、原子炉の設置変更に当たって、住民が意見を述べる機会がないということです。

 二〇一二年、原子力規制委員会設置以前は、住民が意見を述べ、それに対して返答するという場がありました。公開ヒアリングというふうに言われていましたけれども、二回にわたって実施されていました。それに対して、原子力規制委員会設置後は、この公開ヒアリングというプロセス自体がなくなりました。今は、地元の意見を直接聴取し、その意見を反映するという機会がありません。これは、原子力規制委員会が技術的安全性の側面に偏っているということを示しています。

 少なくとも、原子力安全委員会時代ですら開いていた公開ヒアリングは、より充実させた形で複数回実施すべきです。IAEAの安全基準によれば、早期からの効果的な市民参加が原子力安全にとって重要だということが定められています。市民参加は原子力安全基準の一つです。国際的な安全基準にできるだけ早く近づくよう制度改革すべきです。

 三点目、申し上げます。避難計画についてです。八枚目を御覧ください。

 三つ目に、原子力災害対策、とりわけ避難計画についての法改正の必要性を述べたいと思います。先ほど鈴木参考人の述べたことと関連します。

 原子力災害対策に関連し、現行制度では、原子力規制委員会は避難計画の実効性を技術的審査の対象にしておらず、原子炉の安全性審査と住民避難とが制度上切り離されているということがあります。

 規制委員会は、原子力災害対策指針を策定することで間接的に避難計画に関与しています。ですが、その実効性や地域事情との整合性を審査する制度的枠組みは全くありません。

 このように、原子力発電の安全確保における最後のとりで、特に住民にとっては最後のとりでであるべき避難計画が制度上軽視され、実効性の担保がされていないのです。これは、原子力の安全対策全体の根幹を揺るがすような深刻な欠陥だと考えます。

 避難という点に関して、私は、能登半島地震の現地調査を通じて、現行制度の限界を強く感じました。

 能登半島地震では、関西電力、中部電力、北陸電力が計画していた珠洲原発の立地地点間近で巨大地震が発生しました。珠洲原発は電源開発基本計画に組み込まれていたものであるというふうに理解しております。私は、そこでは、道路があちこちで寸断されている様子、住宅が全壊だけではなく半壊、一部損壊といった状況になっていることを目の当たりにいたしました。また、珠洲市や志賀町の議員の皆様から説明を受けて、地震や津波、地盤隆起の下で避難することができないという話を聞きました。

 原子力防災計画、避難計画の審査がされていない以上、当然ながら、その面での安全性は確保されていないということになります。原子力発電を進めるのであれば、原子力防災計画、避難計画を審査対象にし、この許可が下りなければ原子力発電所を動かせないというふうにするべきです。現状では、避難という側面で安全性が確保されてはいないというふうに考えます。

 私からは以上となります。

 この度は、貴重な機会を賜りまして、ありがとうございます。(拍手)

江渡委員長 ありがとうございました。

 次に、橘川参考人にお願いいたします。

橘川参考人 おはようございます。橘川です。

 前回はちょっと体調不良で欠席いたしました。申し訳ありませんでした。

 今日は、第七次エネルギー基本計画と原子力発電と題してお話しさせていただきます。原子力推進派でもなく反対派でもない、現実主義的な立場だと自覚しておりますので、なるべく具体的な話をしていきたいと思います。

 まず、このエネルギー基本計画の策定過程の問題点としてどうしても強調しておきたいのは、これの中心的な仕事に当たります審議会である基本政策分科会の構成が偏っているのではないかと。十六人の委員の中で圧倒的多数が推進派であります。明確に原子力に批判的なことを言っている方は一人しかおらず、その方も消費者代表なので、余り、ハウの話はできるんですけれども、ホワットのところで議論がしにくいというところがあります。

 例えば、基本政策分科会の前身であった審議会の委員を務められました、今日参考人で来られている大島さんだとか、法政大学の高橋さんだとかという方を入れて、ちょっと違った視点からの議論も必要だと思います。

 それからもう一点、福井県知事が基本政策分科会の委員になることは賛成なんですけれども、第七次エネ基自体がまずは福島に寄り添うというところから出発していますので、福島県知事の参加も必要なのではないか、こういうふうに考えます。

 やはり委員が若干偏っているために、去年の秋口は、もう既に国は再生可能エネルギー主力電源化と言っているにもかかわらず、議事録を見ますと、多くの委員が再エネの批判と原子力のことばかり言っていまして、業界で一番読まれていますエネルギーフォーラムという雑誌の去年の十一月号は、原子力主力電源化のリアリティー、そういう議論にさえなっていました。

 最終的には、私、エネ庁事務局村瀬長官が鎮静化を図ったと思います。原子力も大事だけれども再エネも大事だというような言い方をして、原子力二割という線に落ち着いたんじゃないかと思っております。

 それが議論の中身にも反映していまして、基本的な議論の筋はこういうことです。三段論法で、DXやAIの関係でデータセンターが増える、そうすると電力需要が増える、そうすると原子力が必要だ、こういう三段論法なんですが、一つ目の矢印、電力需要が増えるというところは、IOWNが実用化します十年後くらいまでの間はそれが正しいかと思います。問題は、二つ目の、だから原子力だと受けるところでありまして、主力電源は再エネと決めているわけですから、まずは再エネでどう手当てをすべきかということを議論して、それで十分でなければ原子力を、そういう議論だと思うんですが、原子力しか議論しない、ここのところが問題なんじゃないか。

 こんな単純なことを国民は理解していないぞということで、理解促進という言葉がよく使われるんだけれども、これは裏返せば国民の理解不足を言っているわけで、非常に上から目線の議論になっているのではないかと思っております。もし原子力のことをもっと積極的に言うなら、後ほど言いますけれども、原子力の新しい価値を提示する必要があるのではないかと思います。

 次に、エネ基の中身そのものですが、私は、メディアの考え方とは違いまして、大きな流れは、原子力発電の地盤沈下が更に進行したというふうに思っています。

 もちろん、定性的に見ますと、明らかな原発回帰です。次世代革新炉の開発、大々的に書き込みました。原子力の最大限活用、これは再エネと併せてですけれども、複数箇所で言及されています。そして、一番大きな問題だと思いますが、私、第六次まで基本政策分科会の委員だったんですが、そのとき一生懸命盛り込みました福島事故以降の可能な限りの原子力への依存度の低下という文章が削除されました。それから、次世代革新炉の建設について、従来は廃炉を行った立地に限定されていたわけですけれども、同じ電力会社ならば別の立地でもいいと。つまり、九州電力が玄海で廃炉すれば川内で立地してもいい、こういうふうに緩和されました。明らかに定性的に見ますと原発回帰です。

 ところが、ターゲットは二〇四〇年のエネ基なので定量面が重要なんですが、これを第五次、第六次、第七次と、ターゲットイヤーにおける再エネの見通しと原子力の見通しを比べてみますと、第五次エネ基、三〇年ターゲット、再エネ二二から二四%、原子力二〇から二二%、ここで初めて再エネが原子力を上回りました。第六次エネ基、ターゲットイヤーは三〇年、再エネ三六から三八%、原子力二〇から二二%。そして、今回の第七次エネ基は、四〇年がターゲットイヤーですが、ベースシナリオでいいますと、再エネは四から五割に対して原子力は二割ということで、両者の格差が開く一方なんですね。つまり、大きな流れとしては、再エネ主力電源化が更に進み、原子力副次電源化が定着してきたというのが読めるわけで、この二の点はどうしても書かざるを得なかったと思うんですが、これがあるがために僕は一を定性面で強調したんじゃないかと思います。

 つまり、エネ基は四〇年にターゲットしているんですが、メインで言っているのは次世代革新炉なんですが、次世代革新炉というのは今から間に合わないことは確実なので、それを言っているということ自体が、メディアが言うように、そこに本質があるのではないんじゃないかと私は理解しております。

 そして、四〇年以降も、いいか悪いかとか、好きか嫌いかの問題とは別において、原子力というのは非常に使い勝手が悪いと思います。今、次世代革新炉で一番リアリティーが高いと言われます関電の美浜四号機、造るのに最低一兆円かかると言われています。ところが、関電は七基の既設炉を持っていまして、これは、運転延長をやるためには一基当たり数百億円で済むわけで、二桁コストが違うわけですね。そういう状況の中で、本当に電力会社は次世代革新炉を造るでしょうか。

 十日ほど前に、九電が川内三号機を造るという報道がありましたが、たまたま私はそのときに別件で鹿児島にいたんですが、県知事と県議会議長とお話しする機会もありましたけれども、これは別に何も新しい動きがあるわけではなくて、具体的な動きが始まったということではないようであります。

 ここまで言っていると、何か単純な反原発派のように見えるんですが、ちょっとここからは色が違うところで、大島参考人とかに怒られるところなんですけれども。

 私は、カーボンニュートラルを促進する上では、水素、アンモニア、合成燃料、あるいは合成メタンという次世代燃料が非常に大事だと思いますが、これがなかなか進まないのは、基本的な原料でありますグリーン水素が非常にコストが高いというところに問題があると思っています。

 では、どうすれば解決するのか。

 そこで、原子力発電所の内部でカーボンフリー水素を作る、このことを提案させていただきたいというふうに思います。三つメリットがあります。

 なぜグリーン水素が高いかというと、太陽光、風力で水の電気分解を行いますと、太陽光、風力の稼働率自体が低いために電解装置の稼働率が低くなってしまいます。これがコスト高の最大の原因です。

 それから、日本の場合、グリーン電力が多少なりとも安いということで、あらゆる水素、アンモニア、次世代燃料の計画を、ほとんど重要なものは海外でやることになっています。そうすると、海外からそれらを運んでくるための輸送コストがかかりますし、エネルギー自給率の向上にもなりません。ところが、原子力発電所でカーボンフリー水素を作りますと、これは国産化ということになりますので、今の輸送コストも省けますし、エネルギー自給率の向上にも寄与します。

 三つ目は、この原子力発電所で発生する電気を水素製造に回せば、それだけ電力市場に回す分を減らすことができる。今のままだと、かなりのところで再稼働が進むと、再エネの出力制御をどんどんやらなきゃいけないということになると思うんですが、これを抑えることができるというメリットがあると思います。

 本来はカーボンフリーという点で共通の特徴を持っている再エネと原子力の共生というものが可能になる、こういうふうに考えております。こういう新しい価値の提供を国民に示すことこそ、原子力の議論を前に進める上で重要だと思っています。

 今申し上げたことは、水素製造ができるという高温ガス炉、次世代革新炉の話ではありません。既存の原発ですぐにでもできるというところが重要であります。

 柏崎刈羽の再稼働が進まない最大の原因は、私は、地元メリットが不明確だ、地元の県議会与党も賛成に回らないのはここの点にあると思います。なかなか柏崎刈羽の六号機の電気を新潟に回すことは難しいんですが、水素を作ればそれが新潟の産業発展にとっては大いに役に立つ、そういうメリットも出てくると思います。このような考え方はほかの日本の原発にも展開可能だというふうに思います。

 以上で終わります。(拍手)

江渡委員長 ありがとうございました。

 次に、佐藤参考人にお願いいたします。

佐藤参考人 原子力コンサルタントの佐藤暁でございます。

 私の方からは、用意しておりますスライドはございません。代わりに、六ページの原子力利用に関わる諸課題と規制行政の在り方と題しましたレポートがございますので、これに沿って、かいつまんでお話しさせていただきたいと思います。

 あらかじめいただいておりました四項目をカバーしております。一点目が原子力発電所の活用ということで、再稼働とそれから新設、建て替えの話ですけれども、これは三つにブレークダウンして議論してございます。

 まず最初に、再稼働の加速ということなんですけれども、まずは、現状どうなっているのかということですが、三十三基中、再稼働にこぎ着けたのが今日現在までで十四基と。これを炉型別にブレークダウンしますと、PWRが十六基中で十二基、一方、BWRの方が十七基に対して二基というふうに、顕著な差が表れているということです。

 原因とか実態を更にブレークダウンしていきますと、このレポートに四つブレットがあるんですけれども、それの上から三つ目にちょっと注目していただきたいんですが、事業者がまだ申請書も出していないということで、審査のステージにすら進んでいないところが九基分あるということなんですね。ほかにもいろいろ、まだ工事が終わっていないとか、いろいろな事情を抱えているということです。

 それから、この項目の後段に述べてあるんですけれども、一方で、もし再稼働が順調に進んでいっていたときにどうなっていたかということを想定しますと、実は、バックエンドの方が行き詰まっていまして、順調に再稼働すると、使用済燃料がどんどん発生してきて、それが取り扱えなくなってしまって、止めざるを得ない、そういうパラドックスもあった。結局、再稼働が進まなかったのでそれが顕在化しなかったというようなおかしな現象も起こっていたということですね。

 これについて、どのように加速をしたらいいのかということについては、原因がいろいろ複合的に、多様な原因が複雑に関連しているということで、なかなか効果的な方法というものは見出しにくい。特にまだこの九基については申請書すら提出していないということですので、結果としては、この状態がまだこれからもしばらく続いていくということにならざるを得ないというふうに私としては観測をしております。

 それから、二つ目の再稼働後の方針ということですが、これは前々回の会のときに口頭でお話しさせていただきましたですけれども、五兆円、六兆円を費やして何とか再稼働にこぎ着けたプラントに対しては、これをなるべく有効に活用するべきであるというのが私の考えです。

 そういう観点から見ますと、資料の二ページ目に書いてありますけれども、二点問題がありまして、稼働率が極端に低い。今世界では四百十五基ありまして、それの平均稼働率が八三・二%、一方、日本は三十一か国中二十四位で、設備利用率は七一・九%と一〇%以上低い。日本がずっと手本にしてきておりましたアメリカと比べますと、アメリカは九十四基あるんですが、九三・三%ということで二〇%以上の開きがある。この稼働率が経済性を大きく引き下ろしているということです。

 それから、このブレットの最後の、四番目に書いてありますけれども、パワーアップレートをしていない、発電所が本来もっと発電の能力があるところを抑えて定格でずっと運転してきている。これも、これは個別に見ていかないと分かりませんですけれども、一五%くらいのまだ余裕がある。それを引き上げて運転をするならば、余分なコストをかけないで発電量を増やすことができる。

 そのように、稼働率で、例えば、設備利用率で一五%、それから余裕の分のパワーアップレートで一五%上げるということをもし実現したならば、今よりも三〇%発電量を増やすことができる。コストをかけないで発電することができる。これは、逆算すればコストをそれだけ下げることができるということになるわけです。

 ポイントは、せっかく再稼働にこぎ着けた発電所をなるべく有効に利用するべきではないかということです。もちろん安全第一ですけれども、そのための規制の整備、見直し等も必要ですけれども、目指す方向としてはそういうことは検討するべきではないかというふうに思います。

 それから、次の、新設、建て替えの件ですけれども、これに関しましては、冒頭にちょっと結論的なところを一つ書いてあるんですけれども、福島事故後の新設、建て替えプラントは、もしこれが検討されるとしても、福島事故前と同一の炉型であってはならない。今や安全設計思想の本流は、原子炉事故の防止と緩和に対し、熟練した運転員の判断や行動、いわんや厳しい環境の中に飛び込む勇気などではなく、自然の原理に委ねたパッシブ設計なのであり、産業界で言うところのジェネレーションスリープラスという炉型になってきております。

 ですので、建て替えとはいっても、古い発電所を潰して新しい発電所をまた造る、そういう発想ではならないということです。もう一つ世代の進んだプラントを建てなければならない、もしやるならばですね。

 ですけれども、既に世界ではそういうジェネレーションスリープラスの発電所をあちこちで建てているわけですが、その実績は決して芳しいものではありません。三ページに表にして示してありますけれども、スケジュールの遅れ、それからコストオーバーラン、これが非常に顕著です。今や発電所を一基建てるのに一兆円、二兆円、そういう数字になってきている。

 ですので、一般的な日本での感覚として、一基建てるのに三千、四千億円、建設工期としては五、六年、オーバーナイトコストとしては一キロワット当たり三十万円、そういう数字が頭の中にまだ残っている方々もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、今やもう、がらりとそれが変わってきている。工期は二、三倍長くなって、コストは数倍跳ね上がっている。ですので、ジェネレーションスリープラスも非常に悲観的な状況にあります。

 問題は、ただ、コストだけでなくて、ほかにもいろいろな別の問題を抱えております。これは四ページに、中段以降にブレットで示してありますけれども、先ほど工期が長引いて十数年かかっていると申しましたのは、これは実際に工事が始まってからの期間です。ですけれども、実際には、整地のためとか、用地買収とか、それから建てる原子炉の型式認定だとか、更にもっと時間がかかります。

 そういう時間を考えますと、電気が欲しいと言ってから原子力がそれに応えられるまでに二十年ぐらいかかってしまう。そういう二十年の間に、世の中どう変わるか分からないわけですね。産業構造も変わっていきます。国際情勢も変わっていきます。そういうものに機敏に対応するという意味で、原子力はふさわしくなくなっているのではないかというふうに観測されます。

 それから、ちょっと時間も大分過ぎていますので少し急ぎます。

 二番目の次世代革新炉の開発、五ページ目ですけれども、結論だけ申しますと、一番下の三行なんですが、今の日本の電力事業者にとって現有する既設炉の運営だけ、それから規制機関にとってはそれに対する規制業務、これだけでももう十分大きな負担になっているというときに、第四世代、ジェネレーションフォー、これを考える余力はまずないと。まだまだ課題が山積している中で、まずは既存の原子炉の安全をしばらくモニタリングしていくというところに注力すべきであって、ほかのところまで拡大するという余力はないというふうに感じております。

 推進行政と規制行政のバランスについては、技術的な点からすれば、今のところうまく規制機関は機能しているというのが私の見立てです。

 最後の人材確保ですが、これについては、いろいろな特徴があるというふうに見ているんですが、最後の二つだけちょっと申しますと、作業が運転停止期間中に集中して、休閑期と繁忙期の仕事量の差が極端で、収入や利益が不安定、休閑期の補償がないため安定雇用が維持しにくいという問題があります。

 それから、産業界が特定の元請企業を頂点に系列化しており、電力会社のコスト削減の試みが下層企業に対するほど厳しくなっている。その締めつけに大分嫌気が差してきているというのも大きな問題です。

 これに対する解決の方法として一つ可能性として考えられるのは、アメリカのような同業組合、ユニオン、これをつくって、共通に技量、資格を持った人たちが動き回れるような環境をつくる。アメリカの場合には、比較的これがうまく機能しているように見受けられます。ただ、日本の場合には、系列化の問題がありまして、それをやるときに消えないといけない会社とかが出てくるという問題が出てきて、反対も出てくるかと思いますけれども、一つの案として将来に向けた大きな改善として考えるときが来たのかなというふうに思っております。

 以上が私の意見でございます。ありがとうございました。(拍手)

江渡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江渡委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岩田和親君。

岩田委員 自由民主党の岩田和親でございます。

 質問の機会をいただきましたことを感謝申し上げ、そしてまた、本日、アドバイザリー・ボードの皆さんには参考人として御参加いただいたことに感謝を申し上げたい、このように思います。

 私、この委員会の委員も何度も務めていますし、また理事も複数回務めさせていただきました。改めて、やはり国会事故調の提言を受ける形でこの委員会で真摯な議論がされているということ、これは非常に重要なことだ、このように思っておりますし、そしてまた、今日御参加の皆さん、アドバイザリー・ボードの設置といったものは、やはりこれは、まさにその国会事故調の提言を受ける形で、そしてまた、ほかの委員会にはこういった機能というものは基本見られないわけでございますので、また、それが一回限りの参考人ということではなく、いわゆる常設と申し上げていいんだと思いますけれども、こういう形でなされていること、これは本当に意義があることであろう、このように思っているところであります。

 また、重ねて、冒頭からでありますけれども、メンバーの皆さんには真摯な御意見をいただきますようによろしくお願いをしたいというふうに思っております。

 さて、そういった中で、近藤参考人に御質問をさせていただきたい、このように思っております。

 まず、エネルギー政策、全体的な、大きな視点についてちょっと確認をさせていただきたいと思っておりますが、いわゆる、一言で言うと世界の情勢の不透明化、これは言うまでもなく、ウクライナへのロシアの侵略を始め、そしてまた中東の情勢もあります、このような状況がエネルギーの政策に大きな影響を与えているわけでありますし、そしてまた、脱炭素化、地球温暖化といった、こういった大きなテーマもトランプ政権の誕生によって試されている、こういうふうな場面でもあろう、このように考えております。

 そういった中で、日本だけではなく各国とも、いわゆるエネルギーの安全保障、こういったことに対しての取組を強化をしていると私も認識をしているところでありますが、その中で、各国の特に原子力エネルギー、この活用についての状況、そしてまた、これに対応する原子力規制の在り方、今現状どのようになっているのか、その御認識をお伺いしたいと思います。

近藤参考人 御質問ありがとうございます。

 ただ、大変大きな枠での御質問でございますので答えを簡単にするのが難しいんですが、基本的には、急いで申し上げますと、やはり、いっとき原子力に対する評価が、再生エネルギー、地球温暖化対策のことはあれども、様々な困難に直面していることを踏まえて、抑えぎみと申しましょうか、そういう状況にあったと思いますが。

 やはり、おっしゃるとおりのエネルギー安全保障という観点に立ちますと、自国でマネージできるエネルギー源がとても大事であるということと、そういう意味で、原子力はそういう特性を持って、かつ、地球温暖化対策の手段としても有効であるということで、例えば、典型的な例は北欧でございますが、フィンランド、スウェーデン、今やデンマークも、昔からずっと風力の国だったんですけれども、原子力について検討するということを言い出しておりますし、また、東欧にいきますとポーランド、この辺もやや控えめだったんですけれども、非常に原子力に関心を持ってきているという状況にあります。

 まだ具体的に実現するということではないんですが、おっしゃる意味での世界的な趨勢として、物の考え方として、原子力を大事にしなきゃならない、これを有効活用することが安全保障の観点から重要であるという認識は多くの国が持ち始めているというふうに申し上げていいと思います。

 それから、御質問の安全規制ということでございますが、これにつきましては、日本は福島の事故がありましたから、ある意味で規制のとりこという言葉ではないけれども、それを踏まえて、ある種大変革が必要であったし、実際にそれを進めてきたわけですが、よその国は、福島の事故についての国際的な評価はIAEAを中心としてなされて、IAEAの安全基準の委員会の委員長いわく、我々は結果として福島事故で今まで用意してきた安全基準を変える必要はほとんどないということが分かったと。自慢しているわけじゃないけれども、そういう言い方をしていた。

 ただし、幾つかの点で改良、改善する点はあるということを言って、例えば、不確実性という意味で、特に日本の場合は、地震、津波というのが非常にデータが不足していますから、不確実性に備えるという観点から、より厳しい、発生頻度の低いものについても考慮する。設計基準事象として、今まではただ千年に一度ぐらいの地震、千年に一度ぐらいの津波で設計していたのを、これを一万年に一度程度のものも考慮して設計するようにするという意味での変化、そういう意味で幾つか重要な変化の提言がありましたが、基本的には、これまでの中で、ある意味では、日々、本来、改良、改善していくべきですから、その流れの中でそうした新しい知見の取組をきちんと進めていくことが重要、そういう評価で取組が行われていると認識しております。

 以上です。

岩田委員 ありがとうございます。

 引き続き近藤参考人にお伺いしたいと思いますけれども、今お答えいただきました、そういうふうな世界認識の下で、今回の第七次エネルギー基本計画、この評価等についてお伺いをしたいというふうに思います。

 これも一言で表すのはなかなか難しくはありますけれども、まさに、お答えいただいたような世界情勢の不透明化、そしてまた、DXやGXの進展、また、これと関連する形でのデータセンターなどの需要が拡大していく、このように位置づけられて、そして、再エネと原子力をエネルギー安全保障に寄与して、かつ脱炭素電源として最大限活用していく、このようなたてつけになっているんだというふうに認識をしております。

 この中で、ちょっと一点、深掘りをいたしますと、原子力の活用についてでありますが、これは、再稼働を進めても、いわゆる六十年運転のルールといったものの関係上、新たに原子力発電の建て替えが行われない限り、中長期的に原子力発電の容量が減少をしていくという試算があります。これは、私は、いわゆるエネルギーの安定供給、安全保障に影響が出る、こういった心配もしているところでありますが、この点も踏まえた、エネ基の前提となるエネルギー需要などの見通し、そしてまた、それに対して、再エネと原発を最大限活用していくというふうな、この点についての御評価をお聞きしたいと思います。

近藤参考人 お答えいたします。

 今の点につきましては、その方針、基本的考え方について私は間違いはないんだろうと判断しております。

 実際に、おっしゃるように、では、それぞれ、太陽光、風力にしても、いろいろ新しい困難に直面していることも事実でありますし、原子力についても、再稼働が進まないという問題もあるし、おっしゃるように、六十年運転という制約条件の下では、当然、長期にわたって原子力を利用していくためには建て替え問題が出てくることは間違いないわけです。

 問題は、私の関心事は、やはり建て替えをどうやって進めるのかなというところでありまして、これは結局、今の電力事業者にとって、原子力発電所を建てるのに要する、一兆円とか二兆円とか今おっしゃられましたけれども、その規模はともかく、とにかく大きな投資をして、それの回収ができるのがスタートしてから十年後であるとかというように時間がかかるという問題について、投資する意欲を持てるかということが問題だと思うんです。

 ですから、これを、計画で期待しているような役割を果たさせるためには、投資環境を整備して、これは海外では既にいろいろな議論がなされていて、運転前から回収できるような仕組みを用意するとか幾つか提案があって、それなりに日本でも検討はしているようですけれども、そういうものをきちんと整備して、実際に環境を整えないことには事業者としては投資できないんだと思います。

 ですから、そういう意味でも、そういうものを整備しなきゃならないということは言いつつ、具体的なアクションとして、そういうものが整備されないことには前へ進めないと思いますので、計画は非常にいろいろなことがきれいに書いてあるんですけれども、それを本当にリアライズしていくというプロセスがこれから求められることだというふうに思っています。

岩田委員 ありがとうございます。

 今御指摘いただきましたように、基本計画でありますので、大きな道筋といったものは示されたものだと思っておりますけれども、それには様々な課題、これを整理をして進めていくということが重要である。私も、御指摘いただいたような、やはり電力事業会社がこれに投資ができるような、そういった環境といったものは、ちょっとここは議論はいたしませんけれども、この重要性というのは、これはやはり、特に政府としてもきちんと議論していくべきだろう、このように考えているところであります。

 あわせて、整理しなければいけない課題の一つに、今日の陳述にもいただきましたけれども、特に、各種の軽水炉の安全性に関する規制、この議論も、やはり全体の今後のスケジュールを考えますと、待ったなしで進めていかなければいけない、このように考えているところであります。

 どういった点を議論をしていくべきなのか、また、その進める在り方等も含めて、整理してお答えいただけたらと。近藤参考人にお伺いします。

近藤参考人 お答えいたします。

 今、軽水炉の問題につきましては、私の問題意識をそこに、やや極端な、つまり、発生確率の極めて低い事故に対しても特定事象対処設備を整備することの、いわば、私から見ますと、世界標準からすると重た過ぎる、それを用いて、安倍さん、安倍元総理は世界一厳しいとおっしゃったんですね。それはそういう意味で、政治的なメッセージとしては非常にいい取組だったと思いますけれども、やはり世界標準からするとどうかなというところがあるということはちょっとそこで申し上げました。

 問題は、しかし、次のステージの軽水炉の規制をどうするかという問題です。

 基本的には、私は今の規制基準、新規制基準はよくできているという認識でありますので、そこはきちんと適用していけばいいものと思いますけれども、ただ、新しいタイプの原子炉、軽水炉、おっしゃるように、パッシブセーフティーを強調した原子炉とか、あるいは、SMRであれば多分一基ということはないでしょうから、マルチで、複数基が同時に併設して、四基のSMRの制御室がワンルームで、四面にディスプレーが置かれているような、そういうような構造とか新しい取組が必要になりますし。

 ですから、そういうものについてどう評価をし、災害の防止上、支障のないことについて確認をするという手続については、応用問題ではあるんですけれども、あらかじめ様々な議論を重ねておくことは極めて重要というふうに思っております。

 以上です。

岩田委員 ありがとうございます。

 最後、ちょっとまた近藤参考人に、国民理解や双方向のコミュニケーションについての重要性についてお尋ねをしたいと思います。

 今日の意見陳述を拝聴させていただきながら、いわゆる現行の政策や規制、こういうことに対して一種意見を申されるというか、今採用されていない、こういった点も指摘をされていた、このように受け止めました。いわゆる合理的に達成可能な限りのリスク低減、これはこの委員会でも度々議論されている大事なテーマでございますけれども、こういった点であったり、おっしゃったわけでありますけれども、これはまさに、ちょうど資料の中にも、おっしゃった中にもありましたが、政策選択に関する柔軟性を確保する、こういった点も含めて、やはり幅広い議論をするということが大事だ、こういった意味での御発言だったんだろうと受け止めさせていただいたところであります。

 また、こういう議論の在り方、そしてまた、私自身もこうやってエネルギー政策に関わる国会議員として、また、私は佐賀県出身で、玄海原発もございますし、そして、いわゆる文献調査も県内、玄海町で始まったところであります。まさに国民理解のためにどのような情報発信をし、そしてまた皆さんの御意見をいただいていくのか。国民理解ということに対しては、やはり常々考えを持っているところであります。

 今申し上げたようなこういった観点から、国民理解、そしてまた双方向のコミュニケーションについての、現状どのようにあるのかと御評価いただくのと、また、今後どうあるべきか、この点についてお伺いしたいと思います。

近藤参考人 お答えいたします。

 私、エネルギー基本計画を読みまして、そこに書いておきましたが、やはり、問題意識として国民の皆様とのコミュニケーションは重要であると指摘しているんですが、はて、その作る作成過程においてそういうことをちゃんとやったのかというのは大変疑問だということを申し上げたわけです。

 それで、二つですね。一つは、やはり、私どもも、昔の原子力委員会も、廃棄物処分の、高レベル放射性廃棄物の処分のルールを原子力委員会で提言するに至っては、非常にたくさんの回数の国民との対話のチャンスを持ったわけですね。あの一九九〇年代にはまだほとんどの省庁でやっていなかったことを一生懸命やって、とにかくたくさんの声を聞いて報告書をまとめたという経緯があります。ですから、その経緯を思い出すと、今般の物の決め方としては、やはり国民との対話の時間が少なかったのではないかというのが第一の印象でございますし、これはしかし是非やらなきゃならないことだと思っています。

 それから、第二は、急いでしまいますが、パブリックコメントですね。あの仕組みが、やはり、事が終わってからコメントを求めるのではなくて、御承知だと思いますけれども、イギリスではパブリックコンサルテーションという言葉を使っていますが、政策選択肢を示して、自分たちはこれがいいと思うがどうかという問いかけをし、それに対するコメントをもらって会話をする、そういう仕組みになっているわけですね。コンサルテーションなんですね。

 ですから、日本でコンサルテーションがないというのはちょっと残念だなと思いますけれども、これはやはり是非前向きに取り入れを検討していただきたいなというふうに思っているところです。

 時間がないようですから、これでやめます。ありがとうございました。

岩田委員 ありがとうございました。

 安全第一に、そしてまたエネルギーの安全保障、これをしっかりやはり国民に対して責任を持って進めていきたいということを最後に申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江渡委員長 次に、宮川伸君。

宮川委員 立憲民主党の宮川伸でございます。

 本日は、アドバイザリー・ボードの先生方、貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。

 最初に、私も近藤先生の方にちょっと御質問したいんですが、放射性廃棄物の直接処分の部分に関して、柔軟性の確保が必要だというような御発言をされていたと思います。

 前回、五月のときにも少しバックエンドの話がありましたが、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の中で、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分を計画的かつ確実に実施させるために必要な措置ということがあって、これがどうなのかということが少し議論にあったと思います。

 先生にちょっとお伺いしたいのは、まず、福島第一原発事故のデブリでありますが、これを今後どう処理していくかということを議論する上で、やはりここの法律をある程度直さなきゃいけないという理解でいいかどうか、コメントをいただけますでしょうか。

近藤参考人 おっしゃる点は非常に重要な点とは思っていますが、デブリの姿形が分からないことには、これを処理できるのかどうかの判断ができないわけですね。ですから、もし処理して再処理と同様のプロセスに乗せることができるものであれば、それはそういう手続をすることも可能だと思います。

 ですから、選択肢として何ができるかについての議論すらまだできていない状況なので、御質問に対してお答えするには、私としては、そういうことを早く、早くといっても無理してもいけないんですけれども、きちんとデータを取って考えることが大切だということを東電にきちんと言うことが今求められていることだというふうに思っています。

宮川委員 先生、ちょっと引き続きなんですけれども、もう一つ、この法律に関して、プルトニウムの問題があると思います。日本は四十六トン近い大量のプルトニウムを今持っているということですが、これもプルサーマルで使い切れるかどうかということで、いろいろな議論があると思います。

 ですから、場合によっては、このプルトニウムもそのまま直接処分するというような道を、フレキシビリティー、柔軟性を持つべきではないかというような意見もありますが、その点はどう思われますでしょうか。

近藤参考人 プルトニウムの処分に関しましては、御承知のように、米ソでSTART、核兵器削減交渉というのが行われまして、双方、保有核弾頭の数を減らすことについて合意し、その結果生ずるプルトニウムをどうするかということについて議論がなされ、そして、ロシアは高速炉にも使うし、どんどん使っていく、アメリカはプルサーマルで使うということを決めて、そのためにMOX工場を造り始めたんですが、それが建設がうまくいかなくて失敗して、やめちゃったということがございます。

 問題は、それで、急いで言うと、アメリカの場合もやはり使い道がないなということになっているわけですが、もう一つの国はイギリスです。イギリスはなぜプルトニウムをあれだけ抱えていたかという問題ですが、問題は、核兵器の話を余りしたくないんですけれども、核兵器の弾頭、プルトニウムピットといいますが、これが劣化するわけですね。定期的に交換しなきゃならない。この劣化についてのデータをどこまで持っているかが、プルトニウムの扱いを決めるんですね。

 これについては長い議論がありまして、最近に至って、ピットは百年ぐらいは能力を維持しているのかなということが、大体皆さんのコンセンサスになってきたんですね。それを受けて、イギリスでは、それならばもう自分たちは抱えている必要がないかなということで、判断をして処分した、そういう経緯がございます。

 ですから、海外で起こっていることが日本に当てはまるかどうかについては、ちょっと別の観点で考えなきゃならない。日本として、したがって、プルトニウムをおっしゃるように使い切ることができないということになれば、それは処分も考えなきゃならないんですけれども、今の計画では、プルサーマルで一回は必ず使うということで、皆さん、電力会社の方がお考えですから、その意味では、まだそのことについて考える必要はないというふうに私は思っていますが、その先どうするかについては、これから議論がたくさんなされなきゃならないものだと思っております。

 以上です。

宮川委員 先生、もう一点、済みません。最後にもう一つ、原発から出た高レベル放射性廃棄物の直接処分のことですけれども、これも、こちらの委員からも、今の原発の中のプールの中に入っているのが、満杯になってしまっている、どうするかということがある中で、私は、やはり直接処分の選択肢も柔軟性を持ってしっかり議論すべきだというふうに思いますが、先生、どのように思われますでしょうか。

近藤参考人 先ほど御説明しましたように、最終処分法の五十六条には、そういうことを提案されれば、大臣の認可を得てできると書いてありますので、枠組みとしてはあるけれども、政策選択の問題だと思っています。大臣が判こを押さないと言われたら、おしまいなわけです。そういう意味で、議論をすることが大事だと思います。

 ですけれども、議論をするということは、結局、今、ガラス固化体を処分するということでお約束して、皆さんから、使用済燃料が発生した段階において、その処分の費用をいただいているわけですね。そういう制度ができているわけですから、それを、そういうことでお金を払ったけれども、今日のこれはもうやめだと言って、そうしないということを言って、そうしないと言ったところで、払わないで、自分たちで研究開発をするなり、あるいは、政府が研究開発を用意して、幾らで引き受けるのが適切かということを決めていただく制度設計ができて始めて実現ができるというふうに思っています。

 ですから、議論することについては、そういうことを具体的に議論することが議論することだというふうに私は思っています。

宮川委員 ありがとうございます。

 直接処分についてはここまでにしたいと思います。

 次に、石橋先生にちょっとお伺いをしたいんですが、今日も、この七つの提言に対して、スライドの中で、当委員会は、国会に対し、この提言の実現に向けた実施計画を速やかに策定し、その進捗状況を国民に公表することを期待するということでありますが、率直に、今のこの委員会、どのように感じられていらっしゃいますか。改めて御発言をお願いいたします。

石橋参考人 ありがとうございます。

 先生方はどのようにお感じになっていらっしゃいますでしょうか。これは、御質問してはいけないということなので質問はしないんですけれども、胸に手を当ててお考えいただければいいんじゃないかと思います。よろしくお願いします。

宮川委員 石橋先生、再度、この同じようなスライドを私も何度か見ているんですが、この同じような御説明を今まで何年ぐらいやられていらっしゃいますでしょうか。大体でいいんですが。

石橋参考人 このアドバイザリー・ボードというものができたのが二〇一七年の五月だったと思いますけれども、ほぼ同じスライドを使い回しております。

 以上です。

宮川委員 アドバイザリー・ボードの先生の重要な御発言が、ずっと何年も何年も繰り返しされていると思います。

 ちょっと委員長にお願いをしたいんですが、一度しっかり、この委員会の中でも、これをどう扱うのかという議論が必要なんじゃないかと思うので、是非、理事会で一度議論をしていただけませんでしょうか。

江渡委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議させていただきたいと思います。

宮川委員 ありがとうございます。

 次に、避難計画のことについてお伺いしたいと思います。

 鈴木参考人、アドバイザリー・ボード、お願いをしたいと思いますが、複合災害に関してなんですけれども、これをどうするのかということで、やはり、複合災害、今、南海トラフの問題とかもありますから、私は複合災害の避難計画を作るというのは重要だというふうに思いますけれども、この複合災害の計画をしっかり作る必要があるというふうに思われるかどうかということと、大島参考人の方からもありましたけれども、これを安全性審査の対象として入れていくべきかどうかということについてコメントをいただけますでしょうか。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 複合災害についての避難計画の実在については、是非必要だと思います、当然ながら。

 安全審査の中に入れるのも、私はいいと思うんです。ただ、安全審査の法律改正等、どれぐらい時間がかかるか分からないので、できるだけ早くやるという意味では、今ある仕組みの中で責任を明確にするというのが私の今回の意見なんですけれども。原子力防災会議が最後、了承、たしか了承でしたよね、言葉が。了承という言葉ははっきりしないですよね。だから、誰かが審査してちゃんと承認するというプロセスを明確化することが大事であって、一番ふさわしいのは規制委員会だと思います。それができないのであれば、防災会議だと思いますね。

宮川委員 この複合災害、もう一度鈴木先生なんですが、複合災害のもので、今既に動いている原発もあるわけですが、そこも、私のちょっと見た目では複合災害の対策が十分できていないところがあると思うんですが、そういうところはどのようにしていくべきだと思われますでしょうか。

鈴木参考人 今の法律ではもう審査を通っているわけですから、しようがないわけですよね。だけれども、今、実はその動いているところでも、当然、裁判が行われるところもありますので、それで止まる可能性ももちろんありますが、私は、地元の方々の不安を解消する意味では、早急に避難計画の実効性というのを再度検証すべきだと思う。

 これは最終的には首長さんの判断に委ねられているんですけれども、この負担が大変大きいのではないかと思うんですね。結局、住民投票とか何かという可能性もなくはないと思うんですけれども、やはり、専門家の意見を聞きながら、ちゃんと実効性を担保するというプロセスを明確化する必要があると思います。

宮川委員 ありがとうございます。

 ちょっと、近藤先生、もう一度、済みません。今の複合災害の問題なんですが、こちらも複合災害に対しての避難計画をやはりしっかり作るべきだと。これも何らか審査で、きちんとできているかどうかというのを審査すべきだというように思われるかどうか、御意見をいただけますでしょうか。

近藤参考人 防災計画で、特に、皆さんおっしゃるとおり、複合災害の問題に焦点が当たっています。実際、しかし、大事なことは、複合災害というのは、我々、オールハザードアプローチと言うんですけれども、あらゆるハザードの可能性について組合せを考えて、その中でまさにALARP、可能な限り被害者、被災者の発生を防ぐというポリシーの下で、その組合せの妥当性を検証していくことが大事ということなんですね。

 ですから、それを誰がどう審査するのがいいかというのは、基本的には、やはり防災計画ですから、地元の皆さんが納得しないものではしようがないわけです。ですから、地域社会の仕組みの中で、もちろん専門家を呼ぶのは構わないですけれども、地域社会、専門家の中でもって、オールハザードアプローチの観点からきちんとした防災計画を作るということが何より大切だと思います。

 私、ちょっとここへ来る前に新潟県の、新潟県は、県の専門家の集団にも評価をさせて結果を出しています。ですから、ああいう形で、新潟県としても、自分たちで勉強をして、かくあるべし、これがいいんだ、悪いんだということを議論しているのを見ますと、審査という言葉に何の意味があるか分かりませんけれども、これでいこうと決めるプロセスについては、その自治体の皆さんが納得する仕組みで整備すればいいのではないかというふうに思います。

宮川委員 ありがとうございます。

 最後に、ちょっとコストのことをお伺いしたいんですが、佐藤参考人、お願いをいたします。

 今日、資料をいただきましたが、第三世代のものを造っていくとかなり高いという表をお示しいただきました。今、政府の方からよく、原発の発電コストが十二・六円・パー・キロワットアワーとかいうのが、数字が出ていると思いますが、こういうような建設が進んでいった場合、その十二・六円というのはどのようになると思われますでしょうか。

佐藤参考人 お答えいたします。

 政府の出しているコストの方はキロワットアワー当たりのコストということで、私が示したのは、オーバーナイトコストといいまして、発電所を建てるときのコスト、これで議論しているわけですけれども、電気料としてのコストとしてはキロワットアワー当たり何円ということになりますので、その場合には、結局、設備利用率だとか、それから何年運転するとか、そういうファクターに影響されるわけですね。

 とはいえ、建設コストももちろんインパクトはあります。今の一基建てるのに一兆円を超えるような規模というのは想定されていないと思いますので、当然、そのコストは電気料金にも跳ね返っていって、今示しているよりももっと高いコストというふうになっていくというふうに思います。

宮川委員 ありがとうございます。

 大島先生にお伺いしたいんですが、今、コストの点ですけれども、ちょっと時間がもうなくなってきてしまったんですが、もし可能であれば、私は東海第二原発の問題をずっとやっているので、東海第二原発が再稼働した場合に、十二・六円という数字で電気が売れるようになるかどうかというようなところを、ちょっとコメントいただけますでしょうか。全体の価格でもいいんですが。お願いします。

江渡委員長 大島参考人、簡潔にお願いいたします。

大島参考人 簡潔に申し上げます。

 私は、電気料金アドバイザーとして、消費者庁の電気料金アドバイザーで、電気料金値上げの際の資料を拝見しました。

 そのときに、東京電力の値上げ申請の内容を見ますと、平均、機械的に発電量と支払っている対応を見てキロワットアワーに換算しますと四十円を超えておりましたので、大変高い電源になっているというふうに理解しております。

宮川委員 時間になりましたので、終わりにします。

 どうもありがとうございました。

江渡委員長 次に、村上智信君。

村上(智)委員 日本維新の会の村上智信でございます。

 原子力特別委員会におきましては、最初の質問になります。

 アドバイザリーの先生方、本日は大変貴重な話をありがとうございました。

 私は、選挙区としては福岡県の東の方、十一区になるんですけれども、そこら辺は原発があるわけでもなく、かなり遠くまで行かないとないものですから、選挙区内で原発について聞かれることは余りないんですけれども、ただ、たまたま原子力発電所のバルブを作る会社が地元にありまして、岡野バルブというんですけれども、そこの方からはやはり言われます、早く再稼働してほしいと。柏崎刈羽、そこにバルブを納めているそうで、何とかなりませんかという話はあります。必要な見直しはすればいいんですけれども、そういう意味では、その見直しのための期間をなるべく短くしてほしい、そういう話を言われました。

 早速質問に入りたいと思います。

 最初は、橘川学長に御質問したいんですけれども、今日、大変お召し物がすばらしくて、私もこれぐらいのものを着られたら、多分、選挙区で目立って、安定的に勝てるんじゃないかなというふうに思うんですけれども。

 さて、橘川学長がお話しになった話の中で、原子力の新しい価値を伝えるべきだ、原子力発電によるカーボンフリー水素製造ということを提案をされております。水素社会、これを目指そうというふうな意見があることは私も存じております。

 実は、私自身は理系でして、大学院において、そういうことに関係する研究室にいたんです。その研究室では、私以外の人が、太陽の熱を利用して水素を製造して、そして水素社会を築こうじゃないかというふうなことを提案をして、研究をしていたんです。実際にそういうふうに太陽の熱で分解できるかどうか。そして、もちろん、そういう研究をしているだけに、水素社会についてもいろいろと勉強しました。

 水素脆化という言葉がありますけれども、水素は非常に小さい分子です。水兵リーベ僕の船、その表の中で一番最初に出てくるのが水素ですから、非常に小さい。それを閉じ込めるのも非常に大変。ですから、金属で閉じ込めようとしても、小さい水素は入っていってしまって、水素を壊してしまうという話があります。あるいは、安全面で見ても、水素はすぐに酸素と反応して爆発するという面もあるということで、その大変さも聞いておりました。

 そして、太陽光の発電で水素を分解するという話を先ほどしましたけれども、先生は原子力という話をされました。太陽光の場合は、電気が、照ったりあるいは雲に隠れたりして発電できるときが限られるので、そのときに水素を製造してためておけばいい、だから、太陽光と水素のセットは非常にいいんだというふうな議論もしていました。

 そういう話はありましたけれども、しかし、私が研究したのは三十年も前なので、随分状況も変わっているのかもしれません。

 そこで、橘川学長には、水素社会に向けての夢のある話をもう一度教えていただきたく、三十年前とは多分かなり変わっているんじゃないかと思います。そして、特に、地元のメリットを明確化すれば原発の再稼働につながるという話もされていましたので、どういうメリットが地元にあるのか、雇用とかがあるんじゃないかと思いますけれども、何かそういうメリットとかも、夢のある話を水素社会について教えていただけたらと思います。

 よろしくお願いします。

橘川参考人 御質問ありがとうございました。

 まず、太陽光、太陽熱から水の電気分解を行って水素を作る、それ自体は全然反対いたしません。グリーン水素、むしろ、太陽を使って水素を作るというのは世界の主流だと思っております。

 ただ、申し上げましたように、日本の場合、太陽光発電の稼働率は一二%なので、それで水の電気分解をやりますと、電解装置の稼働率が下がってしまい、コストが上がってしまうので、原子力も使ってみてはどうかというのが私の考えです。

 それから、水素脆化の話が出てきましたけれども、非常に面白い対比がありまして、日本の都市ガス業界は五〇年に向けて合成メタンでいこうとしているんですが、ヨーロッパの都市ガス業界はそうではなくて、水素を直接都市ガスに使おうとしています。ここでちょっと見解が非常に分かれるんですが、ヨーロッパのガス業界に聞きますと、水素脆化の問題はもう既に技術的にクリアされていると申しています。日本の場合は、そうでないという議論がかなり強くありますので、そこら辺のところを今後精査していく必要があるんじゃないか。

 夢のある話、具体的に新潟県でいいますと、多分、合成燃料を作る上で極めて重要なのはメタノールという製品なんですけれども、これを日本で一番作っている工場が、三菱ガス化学の新潟工場というところがあります。ここは非常に水素をたくさん必要としています。

 それから、柏崎にリケンピストンリングの工場がありますが、ヨーロッパでカーボンフットプリントが厳しくなりますと、部品工場で二酸化炭素を出している、そういうような工場で関わっている自動車は売れなくなるという将来像が出てきますので、部品工場での二酸化炭素を回収して、水素と合わせてカーボンリサイクルを実現するというのは極めて大事でありまして、そういう新潟県の産業発展にとっても、柏崎刈羽で水素を作ってそこに供給するというやり方が一番の地元メリットになるのではないかというふうに思っております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 カーボンリサイクル、確かに、それに水素を使うというのはアイデアとして勉強になりました。

 次に、近藤所長に質問したいと思います。

 今日のお話の中で、リスクが高ければ対策は厳しくして、低ければそれに応じて軽い対応でいいんじゃないかという話をされた上で、テロ対策、テロの行為については設計基準外の事象として捉えていいんじゃないか、国際的にもそういうふうなものなんだという話をされていました。

 もし、ほかの国がちゃんと議論した上でそういうふうに設計基準外ということにしているんだったらいいんですけれども、しかし、ほかの国がちゃんとリスクを評価してそういうふうに基準外にしているのかどうなのか、それについてはちょっと私では分からないものですから、是非、そういうふうな、国際的にほかの国がそういう評価をちゃんとやっているかどうか、そこら辺ももう少し詳しくお聞きしたいのと、もし、ほかの国と日本で比べて、ほかの国はできている、日本はできていない、そこはこういうふうなことに理由があるんだ、審議時間が短いんだとか、あるいは専門家が少ないんだとか、何かそういうふうな理由があるんだったら、それを教えていただけたらと思います。

近藤参考人 お答えいたします。

 急いで言いますと、今のような御質問は私が答えるべきではなくて、規制当局に質問されてしかるべきだと思うんですけれども。つまり、そういう議論をした上で選択をしたということが国民の皆さんに説明されることが大事だというふうに申し上げたいと思うんですが、私のささやかな勉強の上では、やはりポイントは、国防システムとのリンケージをどうするかです。つまり、そういう異常な飛行について国防システムが対応できるかどうかですね。

 卑近な例でいえば、例えば、ロシアがオホーツクで韓国の飛行機を、民間機を撃墜しました。あれは領空侵犯だから、ぱっぱとやっちゃったわけですね。そういう国防システムがしっかりしていれば、そういう異常な飛行はほとんどチェックされるということになるわけです。

 ですから、そこのところのリンケージを考えたかどうかなんです。ですけれども、私の理解している範囲では、やはり非常に、規制委員会の中で物を解決しようということに思いを込めて、必死こいてつくったシステムになっているんじゃないかということを申し上げたわけです。

 しかし、国際社会の常識は、そういう意味で、どの国もそういう意味のレビューをして、この部分はそこで担保させて、十分そういうことが起こらないようにしているということを納得した上で、それを前提にして仕組みをつくっている。そういうことを申し上げたわけです。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 続けて近藤先生にお願いしたいんですけれども、原子力発電所のテロ対策、これが結局、過剰じゃないかという御指摘になっているんだと思いますけれども、今のテロ対策の規制において具体的にどこら辺が過剰なのか、もし二、三、例を、先生が思う過剰な部分について、例を教えていただけたらと思います。

近藤参考人 お答えいたします。

 私、別にテロ対策が過剰ということを申し上げたつもりはなくて、そういう航空機衝突に対する対応について申し上げたわけです。

 ですから、皆さんが世上一般に言われる原子力発電所のテロ対策で様々なカテゴリーがありますよね、侵入防止とか。そのトータルについて完璧かということについて言えば、ルールは完璧かもしれませんけれども、実際に起こっていることを見れば、それを適切に実施されていないという意味で問題点があるということは柏崎の例が示すとおりでもありますし、また、福島の事故が起こった際にも、いろいろ問題があったこともあります。

 ですから、侵入防止の仕組みについてのレベル、分野でいいますと、なお十分検討しなきゃならなくて、それについては、福島の事故の後、規制委員会の作ったルールはよくできていると思いますが、ただ、実態として現場でそれがきちんと履行されているかについては、何かチェックする仕組みをもうちょっと強化した方がいいかという議論はあるんだろうと思っております。

 以上です。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 次は佐藤先生にお聞きしたいと思います。

 今日のお話の中で、原子力発電所の定期検査について説明をされていましたけれども、リスク評価に基づいて最適化されていないんじゃないかという話でした。

 アメリカの方では二十四か月のサイクルで行われているので、その分、コスト的にもいいんじゃないかということになるんじゃないかと思いますけれども、他方で、日本は十三か月。私が原子力の関係者の方から聞くと、十三か月ごとに定期検査をして三分の一ずつ燃料を取り替える、それの方がいい面もあるんだという話も聞いたこともあるんですけれども。

 これに関連してもう少し幅広く教えていただけたらと思うんですけれども、運転サイクルを延ばすことによって発電単価を下げられるという面がどれぐらいの効果があるのかとか、安全面で心配されることがあるのでしたら、具体的にどうなのかということも教えていただけたらと思います。

佐藤参考人 ただいまの質問に対してお答えいたします。

 アメリカが十八か月、二十四か月の運転サイクルを導入したというのはもうかれこれ二十年以上も前のことでして、それは目的としては、やはりコストを下げるというところに集中していたわけです。ですので、これを達成してコスト低減に寄与しないという論理はないのかなと。

 もし延長することによって別のコストが膨大にかかるということであれば、当然そうではないわけですけれども、十分設備利用率を上げることのメリットの方が圧倒するということで、燃料に対しては三分の一というふうな、PWRの場合三分の一、BWRの場合で四分の一というのが標準的ですけれども、それも、運転サイクルを延長したからといって、その部分が増える、それほど極端に変わるわけではなくて、燃料コストが高くなるということもありません。

 ですので、一方で、いろいろな高度なエンジニアリングが発生する。燃料の設計も変えないといけません、濃縮度も上げないといけません、燃料の組成も変えないといけませんといった高度なエンジニアリングがありまして、これは産業界側でも、規制機関でも取り組まないといけない課題なので、私の見たところでは、そういう細かい議論をする余裕が今までなかったんだろうなというふうに見ております。

 コスト的には、きっとメリットはあるというふうに考えております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 延ばすのも単純じゃないなというのは本当に分かりました。

 また佐藤先生にお聞きしたいんですけれども、原子力の人材確保について、原発を新しく造らないとそういう人材も伸びないとか増やせないとかいう話も聞きますし、一旦原子力の人材が失われると、またそれを取り戻すためにより多くの労力が要るので、原発を早めに建てた方がいいんじゃないかと言う方もいますけれども、今の規制を変えるというだけでも、定期検査の期間を延ばすということをやるだけでも原子力人材は育成できそうな気もしますけれども、そこら辺も含めて、原子力人材についてコメントがありましたら、お願いします。

江渡委員長 佐藤参考人、時間の関係もありますので、簡潔にお願いいたします。

佐藤参考人 委員御指摘のように、運転サイクルを延ばせばますます点検の頻度が下がるということで、ニーズが下がってくるということがありますので、それと並行してオンラインメンテナンスを進めていくというのも、一つの解決策として、平準化させるということがあるかと思います。

村上(智)委員 分かりました。

 私からの質問は以上です。ありがとうございました。

江渡委員長 次に、岡野純子君。

岡野委員 こんにちは。国民民主党の岡野純子と申します。

 本日は、アドバイザリー・ボードの先生方、お忙しい中、国会までお運びくださいまして、感謝申し上げます。ありがとうございます。

 私は、昨年秋の衆院選以降、今の立場にありますが、元々、自治体議員として働いておりました。地方議員経験者が国政を目指すときに、みんなが一様に言うのが、自治体でできることに限界を感じて、国政の場で制度設計に携わりたくなったというような、そういうことを動機といたしますが、類に漏れず、私もそういった経験をしておりまして、やはり、地方議員としてやっている間に国政でなければ変えられない現実にぶつかり続けた結果、今ここにおります。ぶつかった壁は様々な事象がございましたが、エネルギー政策というのもまた、私がこの場所を志した大きな要因となっています。

 私、二〇一一年三月の震災が起こった直後の四月の統一選での初当選で政治家の世界に入りました。言葉を選ばず申し上げますと、政治家になったその瞬間から、我が国の電力需要の話というのが政治材料としてされてきた様子を見てまいりましたし、それを遺憾にも思っていました。イデオロギーが顕著になりがちな事象であるからこそ、だからこそ、二項対立に陥ることなく、また、この原子力を語れない空気というものを払拭して、我々だけではなくて、国民全体が自分事として考えていく、そういう必要があるだろうというふうな、そういった思いを持っております。

 私、他の委員会の方は経済産業委員会に所属をしておりまして、この間、経産委員会での様々な議論というのは、いずれの法案も電力供給と密接に関わるものでありました。例えば、半導体産業の推進ですとかデータセンターの建設によって電力需要が増す話が出たときには、これらの成功の鍵の一つが電力の安定供給であると語られまして、また、その後のGX推進法のことを議論したときには、カーボンニュートラルを達成するためには、脱炭素エネルギーの安定供給こそが、これは国力をも左右するんだといった、そういう状況が語られてきました。

 そんな状況にありますが、先生方には釈迦に説法でありますけれども、原材料費が現在高騰しておりまして、国際的にもエネルギー情勢が複雑化、不安定化している中で、エネルギー安全保障の観点からも、国産のエネルギーが強く求められている状況であります。

 では再エネはどうかというと、洋上風力を始め、課題が山積しておりまして、原子力発電もクリアにすべき課題が複数ある。そういった日本の電力の安定供給には何重もの課題があるなということを、この間、痛いほど実感をしてきておりまして、だからこそ、二項対立ではなく、全体議論として、もっと発電の在り方というものを広く平場で話していくべきだとますます感じるようになりました。

 そうした思いを持っているからこそとお伝えした上で、六人の参考人の皆様方からそれぞれに一言ずつ伺いたいと思いますが、こういった状況で、では、我が国のエネルギー政策はどう進めていけばいいのか。

 先ほど橘川先生御発言の中に、電力需要が急伸するから、だから原子力の拡充というのは、この二つ目の矢印はおかしいんじゃないかというふうな御意見がありました。それのみだったら当然そうだと思いますが、私は、この間、経産省の皆さんの動きなどを見ていると、原子力も拡充しないといけない、あらゆる脱炭素エネルギーをあの手この手で拡充しないといけないけれども、それぞれに課題がとても複雑にあるというようなことに直面したからこそ、非常に根本的な質問になってしまいますが、先生方に御意見を伺いますのはこれが初めての機会ですので、この日本のエネルギー政策の進め方や在り方というものがどのようにあるべきかとお考えか、まずは一言ずつ御意見を賜れればと思います。よろしくお願いします。

近藤参考人 お答えいたします。

 今おっしゃられたそのとおりでございまして、ここで振り返ってみますと、やはり、それぞれ皆応援団がいて、ここまでいろいろなエネルギー技術の利用が進んできたわけですが、しかし、当然、足下、たくさんの課題があるわけで、それをどうこなしていくか、そのために、皆さん、つかさつかさが知恵を尽くしていく以外に手はないんだと思っています。

 しかし、どなたかおっしゃっていましたけれども、夢もまた必要でして、この国は何を目指して、エネルギー政策の観点から何を目指していくのかということについて、これは意見が統一できるとも私は思いません。様々な見方があっていい世の中でございますから、統一した見方、目標があってしかるべきだという言い方はしたくないんですが、しかし、その上でも、それぞれの目標を出して、それに対する、それを実現可能な、それを実現するための選択肢を出して、様々な目標と選択肢の組合せを見て、国としてどれを選ぶのかな、あるいは、国民の皆様の観点からどれを選ぶのかなということを決めていく、そういう対話のプロセスがこれからますます必要なことかなというふうに思っているところでございます。

 以上です。

鈴木参考人 ありがとうございます。

 私の基本的な考え方は、福島事故を起こした日本としては、原子力依存度はできるだけ下げていくという政策がやはり正しいのではないかと思います。

 その上で、今のエネルギー基本計画にも書かれていますが、世界的にも、再エネがとにかく主力電源化するというのは、先ほどの橘川委員からもありましたけれども、これはもう経産省も電力会社も国民もみんな認知しているところでありますから、それに最大限努力を尽くす。

 それから、あらゆる選択肢が必要だというのは、まあ当たり前と言えば当たり前なんですけれども、それでは政策としてはなかなか言えなくて、政策というのはやはり優先順位を明らかにしていくということなので、それぞれのエネルギーのいいところ、悪いところをちゃんと評価しつつ、どこに優先順位を置くか。

 そういう意味では、再エネの主力電源化が第一であって、原子力は、残念ながら、私は肩を壊したエースと言っているんですけれども、なかなか信頼できるエネルギーとして使えないのではないかということで、最低限、現状維持というのはあるかもしれませんが、基本的には依存度を下げていく、リスクが大きいですからね、ということは大事ではないかと思います。

石橋参考人 ありがとうございます。御質問にお答えいたします。

 この問題は、複雑にいろいろ絡み合っていると思います。おっしゃるとおり、二項対立を克服するというのは非常に大切な課題だと思います。それに当たっては、同時に、国民からの信頼に基づく社会的合意形成が不可欠です。

 透明性の確保によるモニタリング可能性の確保、公開性の担保による社会的信頼に基づく社会的合意形成の道を開く、そのためにも、実施計画の策定と進捗状況の国民への公表というのが不可欠であるというふうに考えております。

 以上です。

大島参考人 しばしば電力供給の安定性というのは特定の電源に結びつけて議論されることが多いんですけれども、本来は、供給信頼性という指標がありまして、そこで判断されます。原子力がとりわけそれに貢献するという知見はありません。実際には、十分な供給力を確保されているかどうかというだけの話であって、特定の電源がとりわけこれに優れているというふうにはなりません。なので、この電力供給の安定性、必ず原子力について議論されるというのは非常に問題だというふうに考えます。

 一方、電源に対する考え方は、電力供給の安定性ということは抜きに、別にいろいろ考えるべきことがありまして、国民経済、国民社会に対して脅威的な、頻度は少なくあったとしても、脅威的な影響を与えるものについては社会的に判断して、それはやめるべきだというふうに判断するのはあり得ることだというふうに思います。それは原子力に当たるというふうに思っております。

橘川参考人 原子力をめぐる二項対立がよくないというのは、そのとおりだと思います。ただ、そのこと以上に、原発反対派も推進派も知恵がないと思います。

 反対派は、例えばドイツの緑の党は、原子力を減らすときに、石炭をうまく使いながら、その間に再生が育つのを待つ、こういう対案を示したわけです。こういう対案が反対派から出てこない。推進派の方は、電力が足りなかったら原子力しかないという、それを私、原発脳と言っているんですけれども、そのアプローチばかりでありまして、先ほど言いましたように、原子力の新しい価値みたいなものを提案するということをしない。対立していることだけじゃなくて、両方の議論のレベルが低いというのが問題だと思います。

 ただし、日本のエネルギー政策で一番欠けているのは、需要サイドからのアプローチが弱い。エネ庁がやっているわけで、供給サイドからの話、電源をどうするかとかという話はされるわけですけれども、国民を含めて、どうやってエネルギーを使っていくのか、そこの知恵の出し方。

 実は、省エネ技術こそ日本の世界に冠たる技術でもありますので、そこで、まず世界に向けて夢を発信していくような国にならなければいけないのではないか。需要サイドからのアプローチが重要だと思います。

佐藤参考人 私の考えとしましては、エネルギー政策としては、特に電力ですけれども、電力供給は機敏性がないといけない。五年後には需要がかなり高くなるというときに、発電できるまで十五年、二十年かかるというテクノロジーはそれにマッチしないというふうに思います。

 あと、原子力の場合は、これからますますバックエンドの問題、もうこれはずっと過去何十年も先送りにされてきたわけですけれども、いつかは解決しないといけない。それからあと、原子力防災の問題ですね。こういった大きな問題を抱えているということを認識しながら、政策は検討されるべきだというふうに考えます。

岡野委員 先生方、それぞれにありがとうございました。急に話を振ってもこんなにたくさんの知見をいただけて、ぜいたくな時間だなと思いながら伺いました。

 では次に、近藤先生にお伺いしたいと思います。

 本日、御提言の中に特定重大事故等対処施設についての言及がありました。もう既に何人かの委員から質問がありますが、私はこのことに限らず、原発に関わる国民理解を考えるときに、何だか不安という住民感情に対して過剰な安全機能の強化で応え合うという、合っているようで、これはちゃんとぶつかっているのかな、全体的な合理性に欠いているんじゃないかなと思うことがこれまでもございました。

 先ほど、先生は特重施設を指しまして、設計基準外事象とされるべきという表現ですとか、安全機能の冗長性という表現をされたのを見まして、この件に関して私もそのように感じたことがございまして、当然、当時の社会情勢としては必要だったのかもしれませんが、書いていらっしゃった、合理的に達成可能な限りのリスク低減を原理として規制を行っていくべきというのは、まさにそのとおりだなというふうに感じました。

 そこで、まずお聞きしたいのは、先生の御見解からして、この施設がどれくらい、先ほどのテロ対策全般のことではなくて、この施設に限定をした場合、どれくらい必要不可欠なものであるとお考えなのか、まず伺いたいと思います。

近藤参考人 なかなか難しい御質問で。必要不可欠と規制当局が考えて、これを整備しなさいとしているわけですから。そういう意味で、全体合理性の観点からどうかということを申し上げたんです。

 ただ、すぐあるべき反応は、規制委員会は全体的合理性を追求することをミッションにしていないと言われたら、それでおしまいなわけで。つまり、何を申し上げたかというと、私は、原子力基本法を御覧になってみると、もうすっかり書き換えられてしまって、放射線利用すら入っていないような、に近いような、発電、発電で書かれてしまっていて、余り、しかし、そのエッセンス、本来、基本法だから基本哲学が書かれているはずなのに、それが書かれていないことに端を発していろいろな問題が起きているのかなということを申し上げたわけで。

 そういう意味で、今は、権利を持って、決定する責任を持っているのは規制委員会ですから、本来、それは当然、憲法の羈束で裁量権が羈束されているわけですけれども、そのことについて、憲法が何を要求しているかについての一般的な議論もどこでもなされていない。

 そこで、今日はあえてそのことについて、私は、今日申し上げたかったのはそこなんです、一番申し上げたかったのは。比例原則なりについて、社会的に憲法が要求しているんだよということについて、皆さんがそう思っておられるのかどうかを確認したくて、今日はあえて発言させていただいた次第でございます。

 以上です。

    〔委員長退席、岩田委員長代理着席〕

岡野委員 失礼いたしました。ありがとうございました。

 今、ここを特出しをしてお聞きをしたのは、これまでの特重に関する質疑の規制庁などからの答弁を聞いていますと、整備されていないからといって直ちにリスクが増すというものではないと言っておきながら、しかし、期限までに造れなければ発電を止めよというところで、そこに合理性というか説得力というか、そういうものがあるのかなということを感じてしまっているわけです。

 設置期限の五年というものも、根拠を何度もいろいろな委員が聞いていますけれども、総合的に判断をしてというところで、極めて漠然としているなというふうに感じております。これはまた釈迦に説法ですけれども、社会情勢が大きく変わって、人手不足ですとか資材の高騰というのがあって、一般の工事であっても全国的に工事が延びているということが課題化している中で、こんなに秘匿性と専門性が高い、施工が難しい施設であるにもかかわらず、その期限を変更しないというところの、それを我々はどう受け止めたらいいのかなという気持ちがありまして。そこへの見解を、近藤参考人と、また、もしよろしければ、本日、日本の原子力発電所の整備、利用率の低さに触れていらっしゃいました佐藤参考人にも、この五年の期限ということについて、具体的な根拠というものが私はどうしても見つけられないところにありまして、その辺りの御見解をお聞きできればと思います。

岩田委員長代理 時間が来ておりますので、御協力をお願いしたいと思います。

近藤参考人 お答えいたします。

 私は、五年については勉強していませんで、昔、ほったらかしておいていいよという感じのような、そういう原子力施設もあったんですけれども、そういうことを踏まえると、やはり何か期限を決めるということは大事だというふうに思っています。

 ただ、期限を決めたら、今度はそれのフレキシビリティーをどうするかという問題を多分御指摘されていると思う。ですから、それは、おっしゃるような社会情勢等に依存する部分があるとすれば、それを踏まえて見直せばいいわけで、そういう意味のフレキシビリティーをどう考えるかという問題に帰着されるものだと思っています。

佐藤参考人 お答えいたします。

 猶予期間に対して定量的な正当根拠があるのかというのが、すごく難しい問題だと思います。ただ、今の設備でも、人的な対応のできるような電源車だとかポンプ車だとか、そういうものをたくさん発電所で準備できているわけでして、それはテロがあった場合でもある程度使えるということなわけですが、やはり、原子力の安全を発電所の所員のそういう人的な行為に委ねる、危険を冒しながら対応するというのは、本来の好ましい形ではない。それのために、もっと恒久的な設備として特重設備を設置する、そういう思想があるんだろうなというふうには理解はできるわけですね。

 その場合の猶予期間というのは、これはなかなか定量的な根拠というふうなのは難しいんだと思いますけれども、ある程度妥当な必要期間として設定したものだというふうに受け止めております。

岡野委員 済みません、時間ですので終わりますが、一言だけ。

 石橋先生、ソクラテスでお返しをしたいと思いまして、私は、無知の知という言葉をずっと自分で受け止めて、これまで勉学などに当たってまいりました。これからも謙虚に自分の無知を認識して、この問題に当たっていきたいと思います。

 今日はどうもありがとうございました。

岩田委員長代理 次に、平林晃委員。

平林委員 公明党、平林と申します。

 本日は、アドバイザリー・ボードの先生方、お忙しい中、国会まで足をお運びいただき、また貴重な御意見をいただいておりますこと、心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、私は議員になる前、大学で教員をずっとしてまいりましたので、ちょっと人材確保に係る問題からお話を聞かせていただけたらというふうに思います。

 人材確保の件に関しまして、文科省、経産省、規制庁からお話を伺いますと、様々な手を打っておられるということを学ぶことができました。

 文科省に関して申し上げれば、原子力学科が減ってきていて、現状では三校しかない。こういうような状況にあるということもお聞きしまして、だからこそ、学校それぞれでカリキュラム等全体をカバーすることが非常に難しくなってきていて、大学間で講義を出し合ってカリキュラムを構成するなど、協力体制を取っておられる。こういったことをお聞きしまして、そのためのコンソーシアムなんかもできているということでございました。

 また、規制庁も、最大三千万円の補助をされて、規制委員会の日常業務の見学でありますとか、東京電力福島第一原子力発電所の見学に行ってもらう、こういった支援も十年も続けてきておられ、それなりの成果を上げておられる、こういったことも学ばせていただくことができました。

 そうした上で、私が感じることなんですけれども、こういう様々な施策、それぞれ本当に大事なことであるということは間違いないというふうに思うんですけれども、やはり受皿をつくっていく、そういう施策だというふうに思いますので、やはりそのところに若い人なり、人が来てもらうということがやはりどうしても大事になってくるというふうに思うわけであります。

 そう考えますと、私も工学の人間ですので、例えば、学生時代にキャンパスに原子炉研があったわけですけれども、なかなかそこに学生が行きたがらないような雰囲気がやはり現実としてあったりするわけですよね。こういったところを打ち破っていくためには、やはり、鈴木参考人もちょっと書いておられますけれども、インセンティブというところはどうしても大事になってくるんじゃないかなというふうに思っておりまして、こういった観点から、やはり学生に入ってきてもらう、別に学生に限らず社会人でもいいんですけれども、入ってきてもらうためにどうしたらいいのか、こういったことを先生方はどう考えておられるか。

 この点に関しまして、是非近藤先生にお聞きしたいのと、鈴木先生にお聞きしたいのと、あと佐藤先生、ユニオンのこともお話しされておられましたので、ちょっとこの辺に関係しましてお聞きできればと思います。よろしくお願いいたします。

    〔岩田委員長代理退席、委員長着席〕

近藤参考人 お答えいたします。

 非常に大事な問題と思っていまして、私も長く教育に携わってきましたので、今感じることは、ちょっとはしょりますが、大学よりは中高生に関心を持っていただくことが重要だというふうに思っていまして、今、福島を中心に、各大学が工夫をして、中高生向けに様々な取組をやっているんですが、これは非常に人気があって、例えば大阪大学の皆さんは、あそこで説明をやって、大阪に連れてきて研究室の見学をさせるとかして、非常に中高生の関心が高いということが見えてきているわけです。

 ですから、問題は、中高生が大学に入るとき、あるいは就職するときに、親御さんの影響で、どうも選択が狭められているということに問題があるというふうに聞いていまして、そこをどうするかというのは、結局、元に戻って、社会全体として、原子力に対する評価が、あるいはビジョンが共有されていないというところに大きな問題があるので、ですから、どこに特化して詰めることが大事かというよりは、やはり社会全体として様々な取組を複合して進めていくことが大事だなというふうに思っているところでございます。

鈴木参考人 人材確保で一番大事なのは、どういう人材が求められるかというニーズをまず明確にすることなんですね。ニーズがはっきりすれば、それに対応する戦略ができてくると思うんですが、ただ、一般的に、原子力の人材が必要だといってもいろいろな分野がありますので、それをまず明記すること、明らかにすることですね。

 一方で、そもそも考えてみれば、原子力工学科ができる前は何もなかったわけですから、それでも原子力、日本でちゃんとやってきたわけですよね。ということは、優秀な技術者、これは機械も電気も物理も化学もいろいろあると思うんですけれども、いろいろな基礎基盤技術が大事だと言ったのはそういうことでありまして、どんな分野にも、優秀な人材があれば適用できるはずなんですね。

 だから、優秀な人材というのは、特定の分野に限ることなく、基礎基盤技術をきちんとカリキュラムを作ってやっていく、これが大事だと思うので、全体として文科省にお願いしたいのは、大学の基礎基盤技術の予算がどんどん減っているということは大変深刻な問題でありまして、将来どうなるか分からないわけですから、そういう基礎基盤技術の人材を確保することが最も大事だと思っています。

佐藤参考人 議員の御質問にお答えしたいと思います。

 まず、原子力産業というのは、いわゆる非常にレーバーインテンシブな、労働力を必要とする産業です。本当に末端の作業から高度なところまであるというところで、アカデミカルな分野と、そういうことで、産業界の部分というのは、人を引きつけるための方策としてはちょっと切り離して考えないといけないというふうに思うんですけれども。労働力の方に関して言えば、やはり、まずは雇用が安定していて、そこそこ利益のある仕事であること、これは必須だと思います。今そこがむしばまれてきているというところですね。

 それから、ちょっと全体的なお話をしたいと思うんですが、インセンティブのお話があったわけですけれども、一番大事なインセンティブは、私は、私自身が原子力産業界に足を踏み入れた理由でもあるんですけれども、社会のために貢献したいということです。その仕事に従事することに誇りを持てるということです。

 今、福島事故があってからは、そこがぐらつくわけですよね。むしろ社会のために悪いことをしてしまったのではないか、それに加担してしまったのではないかと。ですので、そこの、社会に貢献していけるというような誇りを取り戻す必要があるのではないかというふうに思います。

 一つ例を申し上げたいんですけれども、これはアメリカの例ですけれども、規制機関、NRCというところがあるんですが、これは連邦の行政機関の一つなわけですが、そういう連邦の行政機関というのはたくさん、何十もあるわけですが、その中でアンケートを取って、自分の仕事に誇りを持てるというので、しばらくナンバーワンだったときがあります。NASAとかスミソニアン博物館とか、いかにも楽しそうなのがある中、そういうものを抑えてナンバーワンだったんです。

 それはやはり、国民のために貢献できる、そういう誇りがその地位に引き上げていったというのは、日本にもきっと当てはまるんだというふうにも考えます。

平林委員 ありがとうございます。三人の先生方、本当にそれぞれの御意見をいただきましたこと、心から感謝を申し上げます。

 大学の基盤経費が本当に今少なくなっておりますので、そこの部分は私も強く危惧をしておりまして、その部分に関しましてはしっかりとこれから取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

 それでは、次の観点なんですけれども、橘川参考人にお話を聞けたらというふうに思うんですけれども、スライドの中で、第七次エネ基策定過程の問題点ということでお話をされて、明確な反対がお一人のみであった、このようなことをおっしゃられたわけでございます。

 そういうメンバーの構成という話をされたわけですけれども、年代ということもどうだったのかなということも少し思っておりまして、私も、大学の教員をしていたこともあったりして、若い世代の方と話をすることもよくあるわけですけれども、その意見を取り入れる必要性について。これは、基本計画の最後にも、若者を含む幅広い層とのコミュニケーションを充実させていく必要があるということは記載されているというふうに認識をしておりますけれども、これに関してどういった方向性が考えられるのかという点。

 もう一個、済みません、時間がないので併せて二点目も聞かせていただけたらと思うんですけれども、イギリスでちょっとお聞きした話なんですけれども、CCCという組織があるということですね。コミッティー・オン・クライメート・チェンジなので、基本的には気候変動に関する第三者委員会であるわけですけれども、政府に助言、報告をしておりまして、エネルギーミックスなんかに関してもお話をするということでございます。

 こういった政府外公共機関、こういったものが日本にも存在すれば、政府の施策に対する透明性というのがより向上するようにも考えておりまして、この点に関しましても、橘川参考人の御意見を伺えればというふうに思います。

橘川参考人 一般論として、若い世代の声を聞くというのは大事だと思います。今度の第七次のエネ基のプロセスでも、今までやっていなかった若者世代の代表が発言する場を与えられるというようなことがあったと思います。

 ただし、やはり私の、一番大事なのは、きちんとしたエネルギーに関する専門的知識を持った人を集めるということが大事で、考え方はいろいろありますから、そこのダイバーシティーが大事だ、そっちを思います。

 それから、政府外の独立系の研究機関の重要性は非常に強く感じますが、残念ながら、私、エネ基の委員を長くやっていまして、エネルギーコストの研究とかを六つくらいの研究団体に発注するんですけれども、大体もう最初から答えが分かるんですね。政府寄りの団体と政府批判的な団体、そのとおりの答えが出てくるという話なので、そこは日本社会の一つの問題だと思うんですけれども、もうちょっと中立的なというか、ある意味で賛成派も反対派も一目置くような、そういう研究機関が必要なんじゃないかと思います。

平林委員 ありがとうございます。

 若い方もそうだけれども、専門家、ダイバーシティーという話、また中立性というお話をいただいたところでございます。そういう意味におきましては、先生方がまさにそういった場に出られるのかなんということも、質問の準備もしながら考えておったところでございますけれども、ありがとうございました。

 それで、もう多分、時間があと一問ぐらいかなという気もするわけですけれども、防災計画や避難計画について、これは鈴木参考人、また聞かせていただけたらというふうに思うんですけれども。

 私、中国比例ブロックというところの選出でして、中国電力島根原発の避難計画について、これまで何度となく、この委員会でも質問させてきていただいております。

 島根原発は、御存じのとおりですけれども、県庁所在地に所在する唯一の原発である。県庁までの直線距離は八・五キロぐらいしかないんですよね。本当に近いなというふうに思うわけですけれども、PAZが大体九千人弱、UPZが四十五万人ということで、四十五万人というのは全国三番目なんですよね。半島に位置しているので、能登半島地震以来、住民不安が増大している、こんなような状況にあるということでございます。

 だからこそ、避難経路とか経費的支援、様々質問してきまして、そのたびに内閣府の原子力防災担当者からは具体的な支援の内容を答弁いただいており、それなりに対応していただいているということ、これは間違いないというふうに感じておるところでございます。

 ただ、ここを対応すれば別の要望が出てくるといった感じで、本当に地元の不安がどうしても払拭できないというようなことも感じておるところでございます。実際、先ほど、鈴木参考人の資料でも、島根は道路でも屋内退避所でも収容率でも安心できないということが全部にできてしまっているわけでございます。

 だからこそ、伺いたいのは、基本的にこの現状をどう打開していけばいいのかなと。基本的な考え方を教えていただけたらというふうに思うんですけれども、先ほどの御意見では、政府が承認する、こうすべきではないか、こういう御意見だったわけですけれども、インタラクティブに足りない部分を政府も助言しながらつくり上げていく、こういった体制も必要なのではないかなというふうに思うわけですけれども、鈴木先生の御意見を伺えたらと思います。

鈴木参考人 地元の方々の意見を聞いていると、やはりどうしても不安が残るといって、首長さんの最終的な判断になるんですが、当然、市民の方々は意見がいろいろあるし。

 それから、避難計画というのはやはり、さっき近藤委員長がおっしゃいましたけれども、地元が一番よく分かっているわけですから、当然、地元で計画を作るわけですよね。だけれども、最終的に、原子力の場合は特に専門的な知識がどうしても必要なんですよね。そのお墨つきがやはりどうしても欲しいというのが、よく地元の方々から聞くんですけれども、分からないですよ、正直言って、一体どこへ逃げたらいいかとか。実際に避難計画を作るときにそういう専門的な知識がどうしても必要で、指針しかないわけですから。

 海外のケースで見ると、最終的にはやはりどこかの専門的な知識を持ったところが助言をするなり承認をするなりというプロセスがあって、住民の方々が安心できるという。今はどうしても首長さんに責任が、負担が行ってしまいますので、これではなかなか難しいんじゃないかなというのが私の見解ですね。

 さっき言ったように、規制委員会がもっと審査、中に入れるか、あるいは防災会議の方で責任を持って最終的に規制委員会の助言を得ながら避難計画を承認するかというのが現実的なのではないかなと思います。

平林委員 ありがとうございました。

 様々伺わせていただきまして、これからもしっかりと勉強して、原子力に関しまして進めていけたらと思っております。

 少し時間は早いですけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

江渡委員長 次に、佐原若子君。

佐原委員 では、座ったままでお願いいたします。済みません。

 れいわ新選組、佐原若子です。よろしくお願いいたします。

 今日は、このような貴重なアドバイザリー・ボードの先生方のお話をお伺いすることができまして、私は感激しております。私、核燃阻止一万人訴訟原告団の副代表もしておりますので、このお話を本当に地元の原告団のみんなと一緒に聞きたかったなと、感激いたしました。先生方のお話は、科学的な知見に基づいて、法律にも基づいて、どちらの側に立つのではなくて、中立的な御意見を伺いましたので、本当に貴重な時間でございました。

 青森県の県議会で、核燃料サイクルが全員一致で通ってしまった。そこには、ある種、原発脳に洗脳されていたのではないかなと思う節があります。

 国側の方が説明にいらしたときに、核燃料サイクルは核反応のない安全な工場だから心配することはないよみたいなことを言ったわけですね。でも、私たちは、核燃料サイクル、再処理工場を三日動かせば原発一年分の放射性物質が出るんだよというお話はそのときは伺わなかったし、そして、いわゆる放射性物質の濃度規制がないということもありました。濃度規制を設けたら稼働できないような施設だったわけですね。そういうことは私たちは余り聞かせられなかった。

 ですから、今日の先生方の御意見のように、市民が、国民が一緒に参加して、共にその問題を解決しつくり上げていくということがとても大事なんだということをお話しくださったのは、感激いたしました。

 そしてまた、避難のことですね。それで、国に責任はないんだということをさっきお示しくださいまして、ああ、そのような法律があったのか、それは何と無責任なことかと思ったんですね。自治体にはそのように、例えばバスを何台か調達するとかどこかに避難の場所をつくるとか、そういった力はありません。それをないのを承知で、国ではなく自治体の責任で、国はバックアップするだけというような、バックアップを本当にしてくれたでしょうか。

 私は、珠洲の原発が建たないでよかったなとあのとき思いました、地震のとき。何があるか分からない、想定外のことが起きるのが地球だと思うんですね。富士山だって爆発するかも分からない。それは誰も分かりません。そのときに、何があっても大丈夫というような避難計画や措置を講じておくのが国の務めだと思っております。

 私は、原発脳に洗脳されたという方々が非常に多く、地元でも、それなりの地位のある方こそ、原発がなければ駄目なんだと、その安全神話に、安全神話だけじゃない、様々な神話に洗脳されてしまっています。本当にそうなのだろうかと私は思うんですね。国産エネルギーが必要ならば、例えば小水力発電は、この国の地形や水脈や自然のことを考えると、大変すばらしいことではないかなと思うんですよ、そんな長い送電線も要らないし。それに、ペロブスカイトとか、そういった産業界の中でも様々な発展がございました。

 原発に余りにも加担することで、例えば再生可能エネルギーはかつて日本は世界のトップランナーだったんですね。それがなぜ駄目になっていったのか。やはりそれは、原発延長で、原発ありきの政策がそうさせたのではないかなと思うんです。

 ですから、今ここで二者対立させるのではなくて、本当に、国民が苦しまずに、安全に、そして福島で被災された方のことも必ず念頭に置いて、原発はどうするのか、バックエンドはどうするのか、それを真摯に議論していくべきときが来たんだと思うんですね。

 私は青森ですので、御存じのように、縄文の遺跡がございます。世界で一番長く続いた文明です。それを私は誇りにしていて、縄文魂と言っております。縄文時代、縄文の人たちは人を傷つける武器を作らなかった。共に助け合って生きていく、共生の文化です。

 私は、その心をもう一度日本人が、みんなが取り戻して、ノット・イン・マイ・バックヤードではなくて、みんなの問題として、私は、トイレなきマンションはもう建ったんだよといって侮蔑されて、三日間不眠に陥ったことがあります、若いときでした。そういうことではなくて、なぜそのようなものを建ててしまったのか、では、どうやってトイレは造るのか、そういう議論をこれからもしていきたいと思うんですよ。

 そして、本題に。私は前置きが長いということをいつも注意されて、済みません。それで、エネルギー基本計画の中の小型原発についてお伺いします。

 政府が進めようとしている小型原発は、データセンターの建設を見越し、建設が進められようとしています。しかし、日本では、建設用地の問題や建設主体、使用する核燃料の濃縮、製造など、様々な課題があると思います。特に核燃料の濃縮は、これまでの原発の燃料の五・六倍も高いとも言われています。現在それができるのはロシアだけとも言われています。日本ではどうするのか、建設用地もデータセンターの周辺に確保しようとするのか、疑問です。

 そして、新規立地、建設には多くの困難が予想されます。また、製造するメーカーも、一基、二基造っていても、製造ラインやサプライチェーンをそれで維持していくことは大変だと思います。

 そこで、参考人の先生方に、その小型原発の課題と実現可能性をどのように考えていらっしゃるのか、御意見をいただきたいと思います。

江渡委員長 全ての参考人ですか。

佐原委員 はい。佐藤先生、橘川先生、近藤先生、鈴木先生に、それぞれの御意見をいただければと思います。

江渡委員長 分かりました。

 では、まず佐藤参考人から。

佐藤参考人 お答えいたします。

 スモール・モジュラー・リアクターの現実性という御質問かと思います。

 これは既に経済評価も一部してありまして、数字は出ているんですけれども、問題はそれの信頼性。といいますのは、これは、時系列的に言えば、大型軽水炉の経済性がうまくいかなかったから、その逆に小型化しよう、そういう発想で生まれてきたわけなんですけれども、その直前の大型軽水炉がこれだけでできると、一キロワット当たりアメリカで二千ドルというふうなことを豪語していたわけですけれども、実際はその数倍かかっているわけです。

 というような実績がありますと、六千ドルぐらいでできるというふうに言っていたスモール・モジュラー・リアクターが本当にでき上がってみるとどうなるかというようなところに大きな懸念がある。

 安全性に関しては、確かに、非常にパッシブ化しておりまして、安全性は非常によくなっているというふうに評価することができます。ですけれども、やはり最終的な決め手は経済性で、そこに大きな不確定要素がまだあるというふうに思っております。

橘川参考人 SMRの他の炉に比べての特徴というのは、コストが安い、それから工期が短い、そして、グリッド、系統が弱いところでも運用できる、そこだと思います。

 したがって、世界的には、これから原子力を取っていく場合には、SMRがかなり、これはグリッドが弱いアメリカも含めて、広がっていくんじゃないかと思います。

 しかし、日本には向かないと思っています。日本の場合には、事実上、既存立地でしか建てられないところで、大体百万キロワットクラスの軽水炉が動いているところに三十万キロワットを造っても、複数、たくさん造らなきゃいけないわけで、意味がない。

 日本の重電メーカーは、それでは、なぜSMRに力を入れるかというと、彼らは海外で造ろうと思っている。余り日本で造ろうとは思っていない。それが、私が言いましたように、実は、四〇年代以降も日本でそんな次世代革新炉がばんばん建ってくるという状況とはほど遠い、こういうことであります。

鈴木参考人 小型モジュール炉は、元々、小型炉というのは安全性が高いということと、パッシブですね、今お話出た、これが一番大きな特徴で、実は八〇年代から議論されてきたものです。モジュール炉というのは、今度は、大量生産して安くしましょう、工場生産で安くしましょう。これが、だけれども、なかなか実現していない理由があるはずなんですね、八〇年代から議論されていますから。だから、それはやはり、一番の最終的な問題は経済性だと思います。

 一方、おっしゃった燃料サイクルの方ですよね。最近問題になっている、注目されている、さっきちょっとお話ししましたけれども、HALEUという、燃焼度が高いやつ、これは、燃料交換の頻度をできるだけ少なくして安全性を高めましょうということで、テロ対策にも役に立つということなんですが、一方で、高濃縮にすると核兵器転用の可能性もゼロではないということと、濃縮能力の問題が確かにあるということと、燃料サイクル全体を考えて評価をしなきゃいけないので、この辺がまだ十分にされていないのではないかというのが私の懸念です。

近藤参考人 私の意見も、皆さんおっしゃったとおりで、同じですが、日本でこれを使おうとしたら、恐らくSMRを一基建てるというのは余り意味がないので。恐らく、SMRを三基とか、さっきちょっと申しましたように、四基とか、並べて造るのかなと。これが最も合理的な立地の姿だというふうに思います。

 それは、小型ですから、様々な、小型でパッシブですから、安全性上のメリットがあるので、それはそれで使えるわけで。しかし、規模としては、それを並べて置くことによって、一定の、例えば三十万でも四つ並べば百万キロになるわけですから、そういうようなアプローチで適切なマーケット、シェアが取れるかというふうに考える。しかも、それは全体として工場生産でコストは下げられる、そういうことを考えているんだろうと思います。

 ですから、これはやはり、実際にそれを絵に描いてみて、フィージビリティーといって、きちんとした検討をしないことには余り議論としてはそれ以上進展しないので、私はまだその具体的な絵を、海外の絵は見ていますけれども、国内でそういうきちんとした、ここにこう建てられるという絵を描いていただいたのは見たことがないので、私はこれ以上は申し上げられません。

佐原委員 時間がないので、少し。

 橘川先生が御報告で、核燃料の直接処分ということに言及されていらっしゃいます。世界の流れもその方向で進んでいますが、日本だけが核兵器非保有国の中で全量再処理政策を掲げ、プルトニウムなど、準国産エネルギー資源として取り出していきます。直接処分の方が費用が安いと試算も出ています。

 どうして直接処分を選択できないのでしょうか。前回も直接処分のお話に触れまして、法の壁が課題だと認識しております。直接処分を検討すべきときだと考えますが、法の課題以外にも障害となっていることはあるのでしょうか。先生に、全員は今は時間が無理なので、どなたか。

江渡委員長 ですから、誰に聞きたいんですか。

佐原委員 済みません。じゃ、鈴木先生にお伺いしたいと思います。

鈴木参考人 いろいろあると思うんですけれども、まず、六ケ所再処理工場、大規模プロジェクトですよね。なかなか変更は難しいです。ああいう大規模なやつはですね。

 次に、短く言いますと、何回も私は言っていますけれども、客観的な評価がされていない。評価するのは常に経産省、電力会社、文科省、原子力委員会、私も入りましたけれども、なかなか客観的な評価が難しい。だから、そういう機関をつくるのが大事だ。

 三番目に、再処理の、今言ったように六ケ所のような大きなプロジェクトをもしやめるとすれば、大きな障害がやはり出ますので、ゆっくりフェーズアウトしていくような政策が必要なので、マイナスの面が出るものに対しての配慮も必要ですから、そういうことも考えた現実的なフェーズアウト政策が必要ではないかなと思います。

佐原委員 ありがとうございました。

 現実的なフェーズアウトですね。それは大変、そうだと思っております。

 ただ、時間なんですが、私、プルトニウムを無駄に作っていて、環境を汚して、それでフルMOXの大間原発、そういうのは発想がよくないと思うんですよ。もうやめましょうよと私は思います。そんなことをして、何か地震があったら大変なことになる、そういうふうな思いを抱いているのは、国民として嫌です。様々な神話が崩れています。

 そして、今、原発には被曝労働がつきものです。今のデブリにしても、どうして、地下水がいつも通っていくのに、地下水を止めるとか、そういう何か手段はないものだろうかなと、もっと真摯に議論してほしいなと物すごく思うんです。

 ですから、私たちの責任もありますし、どうかこれからも適切なアドバイスをいただきたいと思います。

 済みません、今日は時間をオーバーして、時間をいただきまして、どうもありがとうございます。大変有意義な時間でした。

江渡委員長 次に、辰巳孝太郎君。

辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。

 今日は、エネルギー基本計画の決定プロセスについて是非お聞きしたいと思ってきたので、今日、非常に分かりやすい資料も用意をしていただきましたので、橘川参考人にまずお伺いをしたいと思います。

 資料にもあるとおり、今回、第七次のエネ基の作成過程の問題点として、原子力推進派が圧倒的多数を占める基本分科会だった、明確な反対派というのは十六人中一人である、しかも、消費者代表でエネルギーの専門家ではないと。この中で、是非大島先生にも入っていただきたいという話もありましたけれども。

 そういう話があった上で、DXでDC、データセンターの急拡大が見込まれる中で、そこで原子力ということではなくて、本来であれば、電力の需要が急伸するのであれば再エネの議論をまずやるべきだと。これも非常に賛同するところなんですね。

 今回の第七次のエネ基の中で、これが非常に分かりやすかったんですけれども、定量的には原子力の地盤沈下が一層進展をしている、ただ、それを隠すために、定性的には明確な原発回帰というものを盛り込んだ、そういう中身になっていますね、こういうことでありました。四〇年以降も原子力は使い勝手が悪い電源であり続ける、こういう話でありました。

 ここまではもう本当にそうだと思うんですが、その上で、橘川参考人は、原子力発電によるカーボンフリー水素の製造ということを提案をされているわけなんですけれども、橘川先生の、参考人の今の理論、論理に沿う形で私も考えますと、仮に、原子力によるカーボンフリー水素の製造、これはまだ実現をされているわけではないわけですので、仮に、カーボンフリー水素製造ということがなかなか難しい、二〇三〇年あるいは五〇年、CO2の削減の目標になかなかかなわない、そこまでの技術はいかないということになれば、橘川参考人としても原発ゼロという選択肢はあり得るんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。

橘川参考人 私の発言を的確にフォローしていただいて、最後は全く違う結論に行かれた感じがあります。

 私は、日本の弱点はエネルギーと食料にあると思っていまして、端的に言うと自給率の低さだと思っていますから、資源小国の日本はやはりオプションはたくさん持っておくべきだと思いますので、原子力も一つの主要なオプションだというふうに思っています。

 今の議論で、何で途中で変わっちゃったかというと、原子力発電所でカーボンフリー水素を作るという技術は、決して難しい技術じゃなくて、実際にすぐにできる技術で、今度の大阪万博でも、関電が部分的ですけれども、既にやっています。

 そこのところを考えますと、そこからの方向性は共産党さんともすごく意見が合うところもあるんですけれども、どこかで何かいつも方向が違っちゃう。前の笠井さん、同級生なのでよく分かるんですけれども、いつもそんなもどかしさを感じております。

辰巳委員 最後の最後のところで分かれてしまうというところがあるのかもしれませんけれども。ありがとうございました。

 今度は、全員に、参考人の皆さん全員にお聞きしたいと思うんですけれども、政府が次世代革新炉という位置づけの一つとしている核融合というものがあるんですけれども、この核融合について質問をしたいというふうに思います。

 この核融合発電というのは、地上のミニ太陽と言われることもあります。水素などの軽い原子同士が衝突し重い原子核になる、そのときに放出されるエネルギーを発電に用いる、こういうものであります。現在の軽水炉や政府が検討しているほかの次世代革新炉、核分裂反応とは原理的に大きく異なるものであります。

 昨年三月に、この核融合に関する産業協議会が設立をされまして、四月、我が党の質問に対して、当時の齋藤経産大臣が、経産省としても、原子力発電分野の技術開発支援やサプライチェーンの維持強化等の観点から技術開発等の支援を今後とも検討していきたいというふうに答弁をされています。これから推進官庁が文科省から経産省に移り始めるのか、こういう印象もあるわけですね。

 この核融合をめぐっては、本年三月十七日に開催をされた第七十七回総合科学技術・イノベーション会議で、石破首相が、その早期実現を目指して国家戦略を今春に改定してください、こう発言をされております。報道によれば、二〇三〇年までに実証を目指す、それを明記する方向だということもあります。

 報道のとおりならば、元々は二〇五〇年と言われていたものを前倒しということになるわけなんですけれども、そこから実用炉を建設して実際に発電を開始できる、それは恐らくもっと後になると思うんですけれども。気候危機打開のためには、二〇三〇年までの期間が決定的な十年だと言われている。二〇三〇年までのCO2排出削減が重要ということですので、この核融合の開発目標と気候危機打開の時間軸というのは、私はかなりかみ合わないんじゃないかというふうに思います。

 これに関しては、資源が海水中に豊富にあるという説明もされております。トリチウムは自然界には余り存在しないわけですが、この取り出し方も技術的には難しく、仮に調達できたとしても、高コストになってしまうのではないかというふうに思います。

 全員に、参考人全員にお聞きしたいと思うんですが、このような時間軸あるいは技術面、コスト面から考えると、今、核融合に投資していくことが適切かどうか、これについての御意見を全員にお聞きしたいと思います。

近藤参考人 御質問は、今投資をすべきかということですが、これはイエス・オア・ノーで答えるべきものでもなくて、研究開発は、絶えずポートフォリオを用意して、様々な技術に適切に投資していくというのが大事、それを技術の進歩とともに見直していくことが筋でありますから。

 今、核融合の議論でやや抜けていると思うのは、前にちょっと鈴木さんもおっしゃったけれども、我々は、技術の発展レベルをTRL、テクノロジー・レディネス・レベルというもので評価する、これは国際的な常識なわけですね。核融合の今の技術は、レディネスからいうとレベル五ぐらいかなと私は思うんですけれども、そういうものが決してエネルギーの供給力になるということじゃない。十までありますから。

 ただ、実証と言っているのは、そういうものを、プロトタイプを造ってみて、これでいけるのかしらということを試す仕事を二〇三〇年までにやりたいと。これも大胆な目標と思いますけれども、それが計画なんですね。ですから、エネルギー供給の議論の世界には入っていないんです。将来のエネルギーとしての選択肢として、我々は、日本としての開発技術の粋を集めてそういうものにチャレンジしたらいいんじゃないかというのが総合科学技術会議の基本的スタンスですから、それはそれで結構なことだというふうに申し上げたいと思います。

 以上です。

鈴木参考人 近藤委員と全く同じ意見でありまして、研究開発はやっていいですけれども、エネルギー政策に乗るようなものではない。

 ただ、私が毎回お話ししていますように、評価なんですよね。いきなり走って、実証炉まで造っていいですけれども、誰が評価するんですかと。ちゃんとその研究開発を評価する仕組みがあるならば投資していただいても結構ですけれども、走ってしまうとがんがん行ってしまうというのではやはり危険だと思いますので、必ず評価機関をちゃんとしっかりつくってほしいというのが私のお願いです。

石橋参考人 私は余り詳しくないので、非常に感覚的なお話をさせていただきます。

 今先生おっしゃったとおり、ミニ太陽を私たちの手の上で動かすということになると思います。太陽というのは、昔、神様でした。そんなところにも至らない、原子力発電所の事故に対する私たちの取組方というのは私がこれまでも何度も申し上げてきたとおりでございますので、そんなことをするんですかというのが私の率直な意見でございます。

 以上です。

大島参考人 国際的なプロジェクトとして、フランスでITERというのをやっていましたが、二〇二四年、昨年に、二〇二五年から動かすということでしたが九年間遅らせて、それでその段階で三兆五千億円かかっています。これは実験炉です。実験炉というのは、核融合をある程度長い間持続させることができる状態にすることですね。原型炉というのは、それにもう少し発電もできるということをやります。実証炉は更にそれに経済性を伴わすという段階なので、実証は絶対にできないです。

 二〇三〇年には絶対にできないということなので、これをエネルギー源として考えるということは大変問題で、そういう、大風呂敷を広げることによって、夢があるじゃないかということでお金を使うというのは、それはやはり国としておかしいというふうに思いますし、IEAのネットゼロというシナリオにも、全く核融合というのは出てきません。

 原子力自体も役割は低くて、再エネは九割以上になりますけれども、原子力は全世界でも六%というものですので、これは、別に何か脱原発機関ではなくて、IEA、国際エネルギー機関というところが出している報告書ですので、少なくともそれに沿った形で国家運営をされていく方がいいのではないかというふうに思っております。

橘川参考人 私は、エネルギー周りの技術の中で、フュージョン、核融合は最も夢がある技術だと思っております。研究開発をするというのは、京都にも有力なベンチャーがあったりするので、賛成です。

 ただ、皆さん言われるように、二〇五〇年以降のマターだと思っていますので、当面のエネルギー供給に関係ないだけではなくて、カーボンニュートラルを実現する上でもこれを使うというのは現実的ではないと思いますので、その先の話だと思っております。

佐藤参考人 お答えいたします。

 まずは、核融合に関しては、テクノロジー上のギャップが非常にまだ大きい。核分裂の原子炉の開発は、まずはこの核分裂の発見から始まって、臨界状態をずっと維持できる原子炉を造るところに行って、それから商用炉というふうに比較的短時間で進んだわけですけれども、核融合炉に関していえば、臨界に相当する状態をつくるのにまだまだそこに達していないという状況ですね。

 御承知のように、核融合の場合には、プラズマの密度と温度、これをある一定領域に維持しないとそれが確保できないわけですけれども、今それのトップランナーとしては、従来の磁場を利用するよりもレーザーの方に進んでいて、トリチウムの融合ではなくて、むしろ、ホウ素なんかを使って生成した物質を非放射性物質にする、つまり放射性物質を作らない核融合、そういうのを研究していて、ある程度エネルギーを取り出せるところまで行っているんですが、とはいえ臨界に近い状態を達成するというのはまだまだ先で、経済性だとかそういう議論をする以前に、まだ基礎段階でのテクノロジーの確認が達していないというふうに捉えております。

辰巳委員 ありがとうございました。

 となりますと、首相が言うような二〇三〇年代までに実証を目指す、そう明記する方向という報道もあるんですけれども、なかなか現実的なのかという話になってくると思います。

 ちょっと、もう時間が来ていますので、もう私の御意見だけということになるかもしれませんが、やはり、この核融合の規制については、内閣府に設けられた有識者会議、有識者検討会において安全確保の基本的な考え方が取りまとめられております。その文書では、当面はという前置きはあるんですが、原子炉等規制法ではなくてRI法、放射性同位元素規制法の対象として規制を継続することが適当とされているんですね。

 原子炉等規制法とRI法では元々想定している規制対象が違いますので、耐震性の基準、事故シナリオの想定、工事などの認可手続、事業者の経理的基礎の要件など規制の内容が異なりますので、当面はRI法で規制を継続というのは、より緩い法律でしばらくオーケーということになってしまうというふうに思いますので、何人かの参考人の方もうなずいていただいておりますので、こういうことが検討されているのはいかがかということは最後に申し上げておいて、私からの参考人への質問とさせていただきます。

 今日は、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。

江渡委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

 次回は、来る十日火曜日委員会を開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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