衆議院

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第4号 令和元年5月20日(月曜日)

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衆議院情報監視審査会規程第二十九条第四項に基づく会議録

    ―――――――――――――

令和元年五月二十日(月曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   会長 浜田 靖一君

      後藤田正純君    金田 勝年君

      江崎 鐵磨君    赤澤 亮正君

      山内 康一君    大島  敦君

      太田 昭宏君

    …………………………………

   参考人

   (元警視総監)

   (元内閣危機管理監)   米村 敏朗君

   参考人

   (公立大学法人兵庫県立大学理事長)

   (ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長)     五百旗頭真君

   参考人

   (原後綜合法律事務所代表弁護士)         三宅  弘君

   衆議院情報監視審査会事務局長           五十嵐一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 行政における特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況に関する件(平成三十年年次報告書)


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     ――――◇―――――

浜田会長 これより会議を開きます。

 行政における特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施の状況に関する件、特に平成三十年年次報告書について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、元警視総監・元内閣危機管理監米村敏朗君、公立大学法人兵庫県立大学理事長・ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長五百旗頭真君、原後綜合法律事務所代表弁護士三宅弘君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本審査会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、今般私どもが提出いたしました平成三十年年次報告書につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 米村参考人、五百旗頭参考人、三宅参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度会長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、まず米村参考人にお願いいたします。

米村参考人 着席したままで失礼をいたします。

 本日は、この審査会にお招きをいただきまして発言の機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げます。

 ただ、私は、今現在、二〇二〇年東京オリンピック組織委員会のチーフセキュリティーオフィサーとして、オリンピックセキュリティー全体を統括する仕事をしております。これは、国の行う情報活動ともいささか関係がございますが、直接情報活動にタッチしているものではありません。あわせて、実務の経験からかなり離れております。ということで、果たして、この報告書等を読ませていただいて御意見等を申し上げたとして、どこまで実態を踏まえているかということには、いささか心配をしております。

 また、個別のテーマにつきましては、これまで、当審査会の御尽力によりまして、相当程度意見あるいは質疑が行われ、また、それに対する答弁が積み重ねられているように思います。そういうことでありますので、いわば屋上屋を重ねるような意見を申し上げても余り意味がないかなとも思います。

 そこで、冒頭でありますので、私がこれまで長きにわたって国家の行う情報活動というものについていろいろと考えてきたことを少し申し上げたいというふうに思います。

 実は、この法案が事務方で策定されている当時、私は内閣危機管理監をしておりました。内閣危機管理監というのは、御承知のとおり、事態対処であります。いわば、国民の生命、身体、財産に重大な被害が生じる、あるいは生じるおそれがある、そういう事態にどう対処するかというのが仕事であります。したがいまして、政策マターには直接タッチをいたしません。発言の機会もないと言っていいかとも思いますが。ただ、当時、事務方の方で、この法案を一度説明に来てもらったことがあります。あくまでも参考ということで来たんだろうと思いますが。

 その際、一読して一言最初に申し上げたのが、実は、これで大丈夫かということでした。これで大丈夫かと。その理由は、一つありまして、これはとても役人的な発想なんですが、これじゃとても国会審議がもたないということでありました。もう一つは、実質的なその中身の話なんですけれども、一読した印象として、制度設計が極めて不十分という印象を持ちました。事務方としてはその点についてその時点であらかじめ準備があったかとも思いますが、その後の国会審議を見ておりますと、とてもそういう準備があったとは思えないという感じがいたしました。

 私は、実は、情報の仕事は、専ら捜査あるいは危機管理の実務を通じて情報収集をする。その中にはいわゆる秘密の情報というのも含まれております。そういった仕事をする中で、その秘密の情報が外部に漏れて、オペレーション上、大変苦労したことが実は一再ならずあります。そのときにつくづく思ったことなんです。若干シニカルな言い方になるかもわかりませんが、人間というのは秘密を知っているだけで満足しない、秘密を知っているということを誰かに知ってもらって初めて満足するんじゃないかというふうに思いました。

 これに対しては、いや、そうじゃない、都合の悪い情報は隠すのが人間だという主張もあろうかと思います。残念ながら、昨今の現実はこの主張をいささか裏書きしているという印象もありますし、とてもこれをはね返す力があるようには思えません。

 ただ、情報の漏えいと情報の開示、情報自由とは別問題でありますが、漏えいという観点からいきますと、そのときに担当者にも申し上げたんですけれども、これは大変重要な情報だ、だからこれを漏らしたら罰則を強化するということでは秘密は守れない、問題の本質は管理だ、管理こそ最も重要なテーマであって、管理ということを中心にして法案をつくるべきだと。

 実際上そういうたてつけにはなっているか、こう思いますが、例えば、この法案の名称にしても、私の印象としては、特定秘密保護法という秘密ということを中心概念にするのではなくて、特定情報の管理に関する法律ということで、管理というものを中心にすべきではないかということを印象に持ったわけであります。

 次に考えたことは、管理という管理ボックスに、ある情報、秘密情報を入れる入り口の問題があります。その次に重要なのは、実は出口の問題だ。入り口と出口が問題なんだけれども、出口の方こそよほど問題なんだ、問題というか、それが重要な課題なんだということをそのときにも申し上げた記憶があります。

 なぜこういうことを申し上げるかといいますと、私は、先ほど申し上げましたとおり、捜査あるいは危機管理の実務を通じて情報活動をやってきた立場である。そのためには、情報の収集、集約、分析、あわせて、それに基づく情報の発信という仕事をしてきました。その仕事をしている過程でつくづく感じたのは、実は、情報の収集にしろ発信にしろ、国民の皆さんの理解と協力がなければとてもできないということでした。とてもできないということが実感としてありました。そういう意味では、たとえ秘密の情報であっても、基本的に、国家が収集し保有する情報は、国家の専有物でもなければ、それぞれの行政機関、情報機関と言っていいかどうかは別として、行政機関の専有物ではない、あくまでも国民の共有物だという考えです。

 御案内のとおり、二〇〇九年に制定された公文書等の管理に関する法律の第一条、ここでは、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とあります、公文書につきまして。当然の話だ、こう思います。この公文書の中身である情報も、当然これと同じ考え方で捉えられるべきであろうということだろう、こう思います。

 その次に私が考えましたことは、一つは、組織であれ人であれ、自己観察の能力とモラルを失うと必ず崩壊が始まるということであります。

 これは実は情報の話とは別なんですけれども、私が小渕恵三総理の総理秘書官をしていた当時、警察の不祥事が発生し、あるいは発覚し、国会でも大議論となりました。結果、警察刷新会議というものができて、警察改革を行った。なぜこうなったんだろうかと思ったときに、やはり、組織として自己観察の能力とモラルを失ったのではないかというふうに思った次第であります。

 この情報の収集、管理、あるいは出口の問題にしても、行政機関においてこの自己観察の能力とモラルというものを持つことが極めて重要であります。

 加えて、これに対する担保措置として、外部からのいわゆる監視、検証といった機能は、これも極めて重要だろうというふうに考えております。

 当審査会の役割は、まさに行政機関が行う情報収集、管理につきまして、あるいはその出口も含めまして、行政機関が果たすべき自己観察の能力とモラルをいかに担保するかというのが大きな使命であろうか、僣越ながらそう思っております。これまでの議論等々を勉強させていただきまして、大変御尽力をいただきまして、ある程度の制度構築はできてきたなという印象を持っております。ただ、それで十分かどうかは、まだこれから検討しなければならないということだろう、こう思います。

 時間がありませんのではしょって申し上げますけれども、公文書というものに対する日本人の感覚あるいは政府の感覚というものが、もっと強いものでなければいけないというのが私の印象です。今は、たしか国立公文書館の建てかえについて行われているか、こう思いますが、私も何度か公文書館を見たりしましたけれども、ほかの国の公文書館と比べると極めて質素なものであります。この点について、ぜひ御尽力をいただきたいなというふうに思います。

 最後に、二つばかり当審査会にお願いがあります。

 国家の行う情報活動というのは、いわゆる特定秘密情報には限りません。むしろ、情報活動全般について自己観察の能力とモラルを担保する機能を今後持っていただければ、それこそ行政機関にとって有用なものだろうというふうに思います。

 あわせて、情報の監察あるいは検証をする上において、大変僣越な物の言い方でありますが、余り委員の皆さん方がおかわりにならないことの方が重要だろうと思っております。

 私は、警察庁の外事課長のときに、外事情報部というのがぜひ必要だということで上に頼みましたけれども、結果、できました。そのときに申し上げました、上の方に。少なくとも三年はスタッフをかえないでほしいと。グローバルな情報コミュニティーの中で仕事をしていく上には極めて重要なことでありまして、人がころころかわるようであれば信用されません。

 当審査会が信用の問題だと言っているわけではありませんが、やはり、蓄積された経験と能力が必要なのがこの審査会だろう、こう思いますので、今申し上げたこと、大変失礼な言い方かと思いますが、よろしくお願いしたいというふうに思っております。

 今後更に充実した議論が当審査会を中心に行われることを心から願っております。

 以上です。(拍手)

浜田会長 ありがとうございました。

 次に、五百旗頭参考人にお願いいたします。

五百旗頭参考人 失礼します。

 このような重要な審査会にお招きいただいて、光栄に思い、感謝しております。

 私は、学者、歴史家でありまして、インテリジェンスコミュニティーのメンバーではありませんし、情報セキュリティーの専門家でもない。その面では素人でございます。ただ、歴史家として、機密文書の旺盛な利用者、消費者として過ごしてまいりました。

 第二次大戦中のアメリカの対日政策について、アメリカ公文書に基づく研究をやっておりましたが、公文書館の資料を見ますと、文書のヘッドに、コンフィデンシャルとかシークレットとかトップシークレットとか、トップシークレットで気が済まなくて、例えば、ロスアラモスの砂漠で一九四五年七月に最初の原爆実験が大成功した、それをポツダムにいるスティムソン陸軍長官に伝える文書には、トップシークレット、そしてアイズオンリー、見るだけですよ、見たら御処分をという指示まで書き加えた文書が、しかし、ちゃんと公文書館に残っていて私が読めるというんですから、これまた微妙な問題ですけれども。というふうなものに親しんで研究をしてまいりました。

 つまり、三十年たてば原則全て、どんなトップシークレットであっても国民に帰すんだ、それが民主主義社会のたしなみなんだという考えが前提になって、それに恩恵を受けて研究することができた。そのようなアメリカ、イギリスなどの文書の扱い方に大変敬意を持ってつき合ってきた次第であります。

 そういう意味で利用者、消費者なんですが、他方、防大校長として五年八カ月、その際には浜田大臣が私の上司でもあったわけですけれども、安全保障機密の世界に少し近づいた面がありました。二〇〇八年に防衛省改革会議が設立されて、その委員を務めた。その契機になったのが、自衛隊に「あたご」の衝突事件だとかいろいろな不祥事がある、そうしたものにどう対処すべきなのかということで、私はそれの対処の文書の起草役なども仰せつかったことがありました。

 とりわけ、アメリカから得たイージス艦についての機密情報を海上自衛隊が内部教育用に用いたんですね。そのことをアメリカが問題視いたしまして、大変厳しい圧力がかかってきたという事案がありまして。

 つまり、機密情報の管理が甘かったり、あるいは、これは全く、イージス艦を日本は海上自衛隊の中に導入して、そして運営しなきゃいけないんですから、イージス艦情報は不可欠なんですね。それを教育するというのは、アメリカからもらってきた人がやるのは任務だと思われるんですが、それを第三者に渡したということで大変厄介な問題が起こる。管理制度が不十分であるということがありますと、国際的に信用されない、そして本当に必要な情報すらも得られなくなる危険があるんだということをその事案で痛感させられました。それをちゃんとやらない日本については、日本に伝えることは世界に伝えることだなどというやゆをされて、したがって日本に重要なことを伝えてはならないなどというふうなことを言う政治指導者がアメリカにいたりするというふうなことになるわけであります。

 つまり、二つの命題、一方で、公文書は、今、米村さんがおっしゃったことと私も観点を基本的に同じくしているわけですが、国民の共有財産であって、民主主義社会にあってはそれを政治家や公務員が私してはならない、一定のルールに従って公開し、国民、社会に帰すということが行われなければならないというのが基本的な考え方であります。同時に、他方において、国の安全保障、国益を損なうおそれがある情報は、これを管理し秘匿するということがルール化、制度化されていなければならないというのがもう一方の命題であります。この二つの命題をしっかりとやり抜くということが、全ての民主主義社会のジレンマに満ちた課題であり、本審査会が設立されたゆえんであると思う次第です。

 イギリス、アメリカなど、国家の安全保障それからプライバシーに触れる文書は非公開とかあるいは一部黒塗りにするというふうな措置を明瞭にルールとしてとりますが、しかし、原則三十年たてば公開する。

 三十年原則で、私もその微妙なところで、一九七四年に初めてアメリカの公文書館を使う研究に出かけたときに、三十年であれば、三十年前は一九四四年で、第二次大戦の終戦までいっていないんですが、アメリカが非常によく仕事をしてくれて、終戦まで全部の文書が見られるようになっていたんですね。そのことは非常に幸運でありましたけれども。

 原則三十年で公開する、ただし、特別のインテリジェンス、情報については、五十年の場合も、百年の場合も、期限を設定しない場合もある。それもまた、英米などで運用として了解されているところであります。

 日本で五年前にこの特定秘密保護法が施行されまして、日本もインテリジェンスを国際的に共有し得る制度を持つに至った非常に重要な一歩であった、画期的だと思います。ただ、初めての本格的な一歩ゆえに、米村さんもおっしゃいましたけれども、まだまだ不十分なところ、あるいは試行錯誤が不可避である。であるだけに、法律を一つつくって放置するのではなくて、改善、修正を視界に入れて、衆参両院にこの情報監視審査会を設けまして、特定秘密という微妙な二面性を帯びる問題について立法府が大きな方向性を示す、そして行政府がそれを行う、その行いようをしっかりと見守って、そぐわないところがあるならば指摘して修正を求める、そういう制度をつくったのは大変立派で、しばしば、法律を一つつくったら後は担当省庁にお任せというふうなことが少なくないと思いますが、これはなかなかよくやっていると思います。

 事実、五年にわたり、鋭意問題点を洗い出して提案を重ねられ、本来あるべき姿を明らかにせんと尽力してこられたことに敬意を表するものであります。

 そうした努力にもかかわらず、どうしたことか、最近、世上をにぎわせる公文書をめぐる事案というのが次々に出てくる。この審査会が直接担当する問題とも言えないんですけれども、日本の統治の伝統の中に、よらしむべし、知らしむべからずという古い伝統がありますね、家康の言葉だとも言われますけれども。公文書を廃棄したり隠蔽したり改ざんしたりするということは統治者の自由である、それが統治に役立つのならば、そして国益に沿うのであればというふうな感覚というのはこの社会に案外根強いのではないかと心配されるような事案が、近年、世上を騒がせたところであります。

 そして、その二つの要請、全ての文書は国民に帰さなければいけない、公開するというのと、しかし、国家、必要のためにしっかりと管理、秘匿するというその両立が大事でありますが、一方を見失うと他方も崩れるという例が南スーダンPKOの日報問題ではないかと思います。

 内戦状態の自衛隊現地部隊の日報というのは、極めて貴重な情報源であります。これを、まだ現在進行形の紛争が続いている中で公開するということは、国家安全保障上、考えられない問題だと思うんですね。今はまだ、日本自身は引き揚げたとしても、一緒に戦った国連PKOの部隊は向こうにいるわけですね。それで、日本が洗いざらい出しちゃいますと、友軍といいますか、一緒に参加した他のPKO部隊にも迷惑がかかり得る、そういう微妙な問題。外交交渉ですら、進行中のときには、それをオープンにせよなんてことは誰も言わない。全部あけすけに見えたトランプなんて、トランプ大統領じゃなくてカードゲーム、何のおもしろみもない。進行中のときには、最大限そこで上手な駆け引きをするというのが国益に必要であるわけで、ましてや、安全保障にかかわる自衛隊部隊の活動については、公開については極めて慎重でなければ。

 したがって、あの問題で情報公開をされたときに、今はまだできませんと、まず、だんと言うべきだったんですね。これは、そういうふうに、部隊の安全のみならず国際関係、あるいは生々しい、部隊について、固有名詞も出てまいります、そういうプライバシーの問題もあるわけで、これを今直ちに出すことはできない、将来は必ず出しますがというふうにすべきだったんですね。それを言えずに、全部出さなきゃいけないという強迫観念と、しかし実際問題として出したらいけないんじゃないかという思いとの中で揺れ動いて、あるのないの、隠蔽するのしないのというふうな不幸な袋小路に入ってしまったのではないかと思うわけです。貴重な歴史公文書を毀損、廃棄しかねないことに、つまり、国家の安全のために、今は管理するということができないために公文書そのものを廃棄しかねないという、両方失うという危険にさらした。

 私が広島大学の先生をしていたときに、女性のゼミ生の一人が、自分のお父さんは、インパール作戦で部隊の中のたくさんの人が死んだのに生きて帰ってきた、なぜ父は生きて帰れたのかということを卒論に書きたいと大変変わった提案をしたので、それはぜひやりなさいと。お父さんから話を聞くだけじゃなくて、防衛庁戦史室の資料とあわせて、なかなかいい論文を書いている。中国新聞でそれが記事になったほどだったですね。これはやはり国民の財産でもあるんですね、どのようにして部隊がと。

 彼女のお父さんの場合には大変おかしくて、馬をインパール戦に連れていったわけですね。馬の世話をすることによって安全を得たというんですね。つまり、戦闘が始まる前に、馬を連れて安全なところへ逃げなきゃいけないんですね。そのお世話をするということによって自分は生き延びたんだというふうなそういうケースもありましたが、そういうことを将来、国民が、自分の親なり祖先なりがあの作戦に参加した、そのときにどういうことをやったのかということがちゃんと使えるというのは、これは国民の公共財としてのだいご味の一つだというふうに思います。

 報告書を拝見している中で、保存期間一年未満の特定秘密文書中、平成二十九年度中に廃棄されたものが四十三万件あるというのを見て、驚愕いたしました。しかし、内訳を見てみますと、そのうち四十万件は、原本が保管されているものの写しであって、写しにすぎないからというので廃棄したんだ、それから、全部又は一部の転記したものでしかないというので廃棄したと。それから、二万弱は、決定の途中段階のものであって最終決定にまで生かされたわけではないのでと言ってしまう。これは、私たち歴史家にして、そんなことをしてもらっては困る。

 いろいろなオプションはあるんですね。そのオプションの中で、例えばアメリカの場合だったら、国務省がつくった案は軍の方に回されてきます。軍がそれに対して批判を言うわけです。賛成したり、反対したりするわけです。逆もまた真で、軍のものについて国務省がだめだと言ったりするわけです。

 もとが、向こうに原本があるから、こちらでそれをどう扱ったかということを捨てていいわけじゃない。政府機関の諸組織の連携の中で最終的な決定に向かっていくわけで、それのもとがあるからといって消しちゃいけない。特に転記だとか抜粋とかいう場合には、それが非常に意味を持っている。どこをポイントとして受けとめて反応したかということは非常に大事なのであって、したがって、異論とか採用されなかった考えにも、最終案の理由が、逆に反映されていることが少なくない。結論だけではなくて全プロセス、その理由というのが非常に大事であるということから、安易に、もとのもの、原本があるからといって消すということを許してはいけないと思います。

 それから、三千件余りは、日程、日常業務などの形式的なものであって、これはどうでもいいから捨てたというんですが、それは違うと思うんですね。

 例えば、きょう誰と会ったとかは、どうでもいいといえばどうでもいい、政策決定に余り関係ないと思われるかもしれないけれども、実は非常に大事な意味を持つ。「佐藤榮作日記」というのが、七巻ですかね、出ていますけれども、「佐藤榮作日記」は鉄道員の報告書じゃないかと。何時何分発とか、そういう非常に形式的事実の列記がほとんどで、自分の思想とか考えなんかはめったに出てこない。でも、調べていくと、ああ、この日にこの人がやってきたのかというので、非常に、相手側の状況なんか入れると大きな歴史的意味を持ってくることがあるんですね。ですから、形式的な日程だけのことだからといって、それを軽視してはいけない。総理の一日はやはり大事なんですよね。

 というので、四十三万件無造作に廃棄するということは考え直すべきではないかというふうに思います。

 国の安全と国益のために機密文書をしっかり管理して、その運用手続を築き、そして研究し、作案、制度と、担い手が非常に大事でありますので、米村さんの主張と同じですけれども、これをしっかり強化、整備していくということが大事で、行政側にあって、特定秘密文書、それを動かす、管理する中心として独立公文書管理監を設け、情報保全監察室、そしてアーキビスト等による助言制度が必要だ。それぞれ非常に大事で、これを強化していかなければ、形骸化すれば危うい。それだけ難しく重要な問題だと思っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

浜田会長 ありがとうございました。

 次に、三宅参考人にお願いいたします。

三宅参考人 本日は、当審査会にお招きいただき、発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。心より感謝申し上げます。

 私はことし三十七年目の弁護士ですが、弁護士になった当初から情報公開法の制定を求める運動をしてまいりまして、外側で運動していたんですが、なぜか法律が制定された後は政府の側に組み込まれてしまいまして、小泉政権下では総務省の情報公開法の制度運営に関する検討会委員、それから福田康夫官房長官主宰の内閣府公文書の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会委員というのをさせていただきまして、公文書管理法をつくるんだという動きがございました。そこにコミットしているうちに公文書管理法はできましたが、民主党の政権から現在の自公政権下、政権交代をまたいで昨年の七月五日まで八年間、公文書管理委員会の委員、それから公文書の利用請求の拒否処分の妥当性を審査する特定歴史公文書等不服審査分科会会長という役回りを得まして、それまで国相手の裁判をやっていたんですけれども、これはちょっと合わないので全部裁判の代理人はやめた、そういうような経過がございました。

 本日は、情報は民主主義の通貨、公文書管理は民主主義の基盤という立場から、特定秘密法のあり方について少し御意見を述べさせていただければと思います。

 この特定秘密保護法の制定、公文書管理法の制定から四年後になされたものですけれども、国会法が改正されて、衆参両院に情報監視審査会が設置されたことは本当によかったことだと思っています。いろいろ法律については問題がございましたが、この法律の中での重要な役割は、つくったころと比べてますます重要性が高まっていると思っているところでございます。

 もちろん、その法律の中では、審査会から行政機関の長に対して特定秘密の提出を求めることができるという、権限が強い、断るときには内閣が理由を疎明しなきゃいけないというのがございます。それから、調査をして改善勧告をする、秘密保護法のあり方について勧告をするということは将来の法改正にもつながる役割を果たすということでございますので、とても大事だと思っております。

 私も、たまたま戦前の治安維持法とか軍機保護法とか国防保安法などを趣味的に研究してまいりまして、特定秘密保護法がそのような戦前の法律の暴走の再来とならないための、この機関は重要な歯どめの機関であると考えております。

 この審査会で特定秘密について提出を求めたり、制度運用についての改善勧告をすることで、川に例えれば、川上で特定秘密指定の妥当性がチェックされるということがあると、特定秘密が拡大解釈されることがないということで、川下では、秘密保持の疑いで不当に逮捕、起訴されるというような、戦前になされた事例のようなものが防げるからだという意味で、この審査会でのチェックがとても大事だと考えております。

 私は、現在、日弁連の秘密保護法・共謀罪法対策本部長代行という、日弁連会長のかわりにいろいろこの分野について対応する立場にございますが、両院の審査会が各院の議長に提出された平成二十七年と二十八年の報告書に対しての意見書、並びに、衆議院の審査会の二十九年度の年次報告書に対しても、それぞれ意見書を提出させていただいております。その一部については、この平成三十年度の年次報告書でも少しいろいろ回答がされているところでございますけれども、まだ問題点が残っていると思いまして、過去の報告書を踏まえて、きょうは少し意見を述べたいと思います。

 一つ目は、特定秘密文書の保存期間は一年以上として、その保存期間の定め方については明確な基準を定めるということをより具体化していただきたいということでございます。

 五百旗頭参考人の意見の中にも、保存期間一年未満の特定秘密が四十四万件存在するという、今お話がございましたが、私もこれは報告書を聞いて初めて知ったわけでございます。

 昨年、一昨年の公文書改ざんをめぐる問題や廃棄の問題を、公文書管理委員会の委員としていろいろ各府省庁の公文書管理規則の改正に働きかけましたが、意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡づけや検証に必要となる行政文書については原則一年以上の保存期間を定めるとございますから、本来、特定秘密として指定される情報は、これは重要な意思決定にかかわるもの、事業、事務の跡づけにもとても大事なものだと考えていますので、基本としては一年以上になるのではないかと考えます。いろいろ例外的に措置がございますが、なお、重要又は異例な事項に関する情報を含むようなものについては原則一年以上ということで、公文書管理法が行政文書管理規則を変えましたので、この観点から国の情報管理のあり方についてこの審査会で更に議論を深めていただきたいと思います。

 また、そうしますと、保存期間が一年以上になるということであれば、公文書管理法が全て適用されるということになりますので、特定秘密保護法と公文書管理法をセットで検討していただいて、原則として国立公文書館に移管をするという取扱いをぜひ、運用上していただきたいし、このようなことを公文書管理法や特定秘密保護法の中で規定していただく必要があろうかと思います。

 レジュメの中でも、重要な文書を一年、三年、五年、十年の保存期間であっても移管してと。原則三十年の保存で開示をするという公文書管理の三十年ルールというのがございますけれども、なお国立公文書館では、私はその規則の改定に立ち会いましたが、五十年、八十年、百年、百四十年というのが最大の期限として設けてありますけれども、百四十年秘密にしておいておいて開示はしない、しかし管理をする、そういうような、歴史の流れの中で公文書管理並びに特定秘密の管理がなされる必要があるのではないかと思います。

 細かい話でいいますと、あらかじめ指定や職員の知識としてのみ存在する特定秘密の指定等というのは、これは紙の媒体としての行政文書の不存在という形になりますので、特定秘密指定はできるだけ行うべきではないと考えております。

 それから、三十年を超える行政文書を特定秘密文書として保有している場合とか今後保有する場合について、この三十年の年次報告書の中でも、内閣情報調査室から、今後とも、特定秘密文書の長期にわたる保有については、その状況の把握に努め、その適正を確保するために何らかの措置が必要かどうか引き続き検討してまいりたいと。多分、秘密指定から三十年はもうちょっとまだ時間が先だろうというようなことでこういう回答になっているのかと思いますけれども、私たちとしては、この公文書管理の運用の改善の中で、独立公文書管理監といういわゆる各省庁を横串にする公文書管理のエキスパートを国で決めたわけですから、その管理監において三十年指定又はその厳格な運用を考える、そういう部署としての独立公文書管理監において速やかなルールづくりがなされる必要があろうと考えております。

 もし、そのようなものができないとすると、私どもとしては、先ほど五百旗頭委員がアメリカでの対日政策の施策についての調査研究を御報告されましたが、私も参りましたけれども、ナショナルアーカイブズはレコードエージェンシーという記録管理庁とセットになっておりますから、国立公文書館兼記録管理庁の方の、記録管理庁に相当するものを公文書管理庁として設けていただきたい。私の個人的な願望は、尾崎憲政記念館の跡地にできるあのワンフロアぐらいは公文書管理庁のフロアにしていただきたいというのが私の、本当は個人的な希望でございます。

 それから、特定秘密の内容は、秘密を漏らすことはできませんから、名称のつけ方に非常に気をつけなきゃいけない。これは特定秘密の方のルールですけれども、公文書管理の方のルールは、Yプロジェクトとか何月何日の件とか書いちゃいけない、何が書いてあるのかをタイトルからわかるようにしなきゃいけない。この二つのせめぎ合いが、先ほどから出ている情報の管理と国民の知的資源の運用のあり方の現場での非常に微妙なところだと思いますので、この辺についての統一的な基準をこの審査会でも検討していただく必要があるのではないかと思います。

 先ほど言いました、提示要求を活用する方法とそれから改善勧告の方法等を活用していただいて、より積極的に検討をしていただくこの重要な委員会に大いに期待をしたいと思っております。

 また、政府に対してこの場でお伝えしておきたいことは、情報監視審査会の報告書において指摘された事項については、明確な期限を設けて対応状況をきっちり報告していただくということで、国会と政府でのやりとり、それを常に国民として見られるような、そういう状況をつくっていく必要があろうかと思います。

 もちろん、国民サイドには、諸外国の情報監視機関が日本に比べて非常に権限が強いけれども日本は大丈夫かと。生まれたところですので、これから大きく育ってほしいところでございますけれども、現在もそうであると思いますけれども、先生方、力のある政治家がでんとここに構えていただいて、行政の文書、情報のあり方について意見を言っていただく、そういう仕組みがとても大事だろうと思っております。そういう意味では、先ほど申しました特定秘密の提出要求とか改善勧告の中まで更に踏み込んでいただいて、現在、これまで行われてきました特定秘密の管理、特定秘密の保存状況や書類の点検等にとどまらない部分にも踏み込んで議論をしていただきたいと思っているところでございます。

 最後に、施行からちょうど五年目に当たりまして、特定秘密保護法に基づく運用基準の制定後五年の見直しということがことし議論されるというところでございますが、項目だけ列挙しておきましたが、時間の関係ではしょりますけれども、やはり、情報監視審査会からの強い求めがあったときには全ての非開示の情報の報告等をきっちりしなきゃいけないというものを行政機関に義務づけるということを国会法等に設けるということで、更に情報監視審査会の強い権限を期待したいと思います。

 衆議院よりは参議院でかなりサードパーティールールの運用について議論をされておりますけれども、これについても、これはあくまで慣行ですので、慣行は十分尊重しなきゃいけませんけれども、どういう場合に提供拒否が許されるのか、あるいは許されないのかの明確な要件とか基準を法に定めていただきたい。

 それから、特定秘密の指定要件である非公知性について、たまたまどこかでそれが明るみに出たからといって非公知性の要件は満たされませんよというのは、政府の審査会における答弁として承っておりますけれども、やはりこの辺も、非公知、要保護性、実質秘という秘密の三要件の非公知の要件については厳格に運用する規定を設けていただきたいと思います。

 また、内部通報者保護規定は、特定秘密保護法の規定のときに先送りになった課題でございますが、消費者保護法の内部通告制度の中でもまだここの部分はない部分でございますので、今後更に研究をしていただきたいと思います。

 適性評価の実施については、私、どうも弁護士間では、適性評価を不同意にしたんだけれども不利益を受けないだろうかという心配の相談なんかが実は来ておりまして、この辺のことを考えますと、評価の結果、不適格とされた場合とか、不同意をした場合に不利益を受けないということを担保する制度なども必要ではないかと考えています。

 それから、情報保全監察室、全ての職員というわけにもまいりませんでしょうけれども、幹部職員についてはノーリターンルールを決めていただいて、ここに来れば、先ほど、委員としては三年は必ず務めるべきだという米村参考人の意見がございましたが、事務局も、情報保全監察室の担当職員も、そこで骨を埋める人をぜひつくっていただきたい。アメリカに行きますと、いろいろ情報公開とか情報監視のところでは、私はここをプロパーでやっているんだという、やはりそういう人がいますので、そういう人が組織を支えることがとても大事ではないかと思っております。

 独立公文書管理監や両院の情報監視審査会において、特定秘密以外の秘密の指定の適否も検討していただく必要があろうかと思います。

 先ほど出ました南スーダンPKOの日報の問題は、実は、毎日七十ページなり八十ページ電子送信されてくるデータが防衛省・自衛隊で総括報告ができたら公文書の扱いにしない、こういう扱いで、情報公開請求しても不存在という決定をしたこと自体がやはりおかしかったんだと思うんですね。これはちゃんと管理をして、それで、何十年は出せません、出すとしても、ここは出すけれども、ここは黒塗りですというようなことを管理をして運用するということをすべきだったのに、報告ができたらもう情報じゃない、だからみんな自由に持っていいけれども出さなくていい、これがやはりおかしいというので、戦略的な公文書管理ができていない、それから、インテリジェンスがこんなことでは果たせないではないかというようなことを私は非常に厳しく言っていたわけですけれども、この点は特定秘密指定ではないわけですね。

 しかし、そういう公文書管理のあり方、情報公開にかかわる、また情報の管理にかかわる、秘密全般の指定にかかわる問題というのを、ぜひ情報監視審査会でもお話しいただき、議論していただく必要があろうかと思います。

 二十機関しか特定秘密保護法の対象機関にない。検察庁を一つの省庁として六十を超える機関のわずか二十機関だけが特定秘密保護法の対象になっている。それ以外のところの秘密はどうなのかというところまで議論を深めていただきたいと思うところでございます。

 最後に、秘密指定解除請求手続というのも法律の中にございませんので、これはアメリカの場合には、先ほどございましたが、三十年たてば基本的に一旦は秘密指定を解除する、九十何%はそれで出るけれども、しかし三十年たってもだめなものは更に指定する、こういうルールもこれから御提案いただきたいところだろうと思います。

 以上でございます。(拍手)

浜田会長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

浜田会長 これより自由質疑を行います。

 自由質疑は、運営協議会における協議に基づく方法で行いますので、御協力をお願いいたします。

 それでは、質疑を希望される方は挙手をお願いします。

後藤田委員 後藤田でございます。

 きょうは、本当に余人にかえがたい先生方三人にお越しをいただきまして、まことにありがとうございます。

 このインテリジェンスという考え方、皆様方は非常にバランスのとれた御意見でございましたが、米村さんは、情報というものを実務で、安全保障、危機管理、治安維持、そういった側面の方で御活躍され、今これからもオリンピックに向けて大変御尽力をいただくということで、ありがたいと思っています。五百旗頭先生も、学術的な、アカデミックな立場からの知見をいただきました。一方、三宅先生からは、逆に、インテリジェンス、情報というものを知る権利、人権、またいわゆる権力の暴走抑止、こういう立場からの専門としてお話をいただいたと思います。

 まさにお三方の御意見というものが情報と国家安全保障との関係を明確に示しておりまして、私は、まさに、国家安全保障と情報への権利に関する国際原則、実はツワネ原則というのが、皆さん御承知のとおり、国際的に民間専門家が提唱されたものがございます。このツワネ原則、繰り返しますが、国家安全保障と情報への権利に関する原則ですね、この根本的なビジョンといいますか、ここをやはり、米村さんもおっしゃったように、国民と政治が、また行政が共有しなきゃいけないと思っています。

 それは何を言っているかというと、今の、今回の保護法につきましては、何を秘密とするか、こういう考え方である。ただ、国際的な専門家が提唱したその国際原則では、何を秘密にしてはならないか。何を秘密とするのかと、何を秘密にしてはならないか、この議論からスタートすべきだ、こういう提唱なんですね。この考え方について皆様方もどう思うかという御意見を聞きたいのと、何を秘密にしてはならないのかということの方が正しいのかなというふうに私は個人的には思っておりまして、では、秘密にしてはならないものは何なのか、これを皆様方がどう考えるのか。

 例えば、いわゆる、もう戦争は二度と起こしてはいけない、ゆえに、一部の権力者がまさに過去の例のように戦争に突進してしまった、これは、やはりそのきっかけなり、今歴史家も検証されているように、いろいろな形での意見があります。まさにこれが公文書のあり方であり、国民共有の知的資源、そして、それは、二度と間違いを起こさない、こういう原則だと思います。やはりそういう意味で、例えばアメリカの世界戦略に対して日本がどのようにコミットしていくか、これが多分我々の、国民も含めて、一番、具体的に言うと懸念するところだと思っています。

 そういう意味で、何を秘密にしてはならないのかというこの原則をどのように先生方はお考えになるか。いやいや、そうじゃなくて、何を秘密とするかでいいんだという御意見があればそれはそれでいいんですが、その辺についてお三方から御意見をいただきたいと思います。

米村参考人 何を秘密にしてはいけないのか、あるいは、一旦秘密にしても、それをいつまで続けるのかというのとパラレルな問題だろう、こう思います。それは、結論から言うと、やはり国民が知るべき情報はいつまでも秘密にしてはいけないということだろう、こう思います。

 若干エピソードの話で、山本善雄さんという方がおられる。この方は旧帝国海軍の最後の軍務局長です。彼が軍務局長になったのは、これは五百旗頭先生は御承知だと思いますが、ミズーリ号で調印式が行われる前日です。彼自身は、実は、海軍の解体のために軍務局長になった。一旦彼は公職追放を受けましたが、その後、吉田茂首相によって、海上自衛隊の前身であります海上警備隊、この建設準備委員会の責任者になりました。その際、彼はアメリカとさまざまな交渉をしたと話しています。彼は、亡くなったときに、実は文書が残っていました。極秘の文書が随分残っている。奥様に言い残したのが、この文書は実は吉田さんからは廃棄しろと言われたんだけれども、これは必ず国民が知ってもらうべきだということで残したものです。現在、その文書がどこにあるか。国立公文書館にあるのか、あるいは防衛省の史料室にあるのかわかりませんが、いずれにしても、これはもう公開されています。

 つまり、国民がこれは知るべきだという情報というものを、これは秘密にすべきではないし、あるいは、秘密にしたとしても、一定のタイミングで明らかにすべきだというのが一つの鉄則、考え方ではないか。その点についても、審査会としては重大な関心を持っていただく、大いなる関心を持っていただくことが、ひいては信頼をつくるものではないかというふうに思います。

 以上です。

五百旗頭参考人 ありがとうございます。

 してはならないリストをつくり始めると、これは広範にわたるということになると思うんですね。大概のことは全部公開、秘匿してはならない。

 逆に、秘密にすべきことは、民主主義各国で大きく言えば二原則だと思うんですね。一つは、国家安全保障にかかわる。日本の場合には、日米安保条約にかかわるアメリカ側が秘密とすることについて、それを漏らしてはいけないというのが非常に多いですね。先ほどのイージス艦情報というのも、それの端っこにある、先端部分の問題です。そのほか、南スーダンのとき、部隊の安全とともに、国際関係上の配慮というんですか、迷惑をかけない、そういうことが必要だ。これは、国の安全保障に広く言えばかかわりますが、国益。国益と言い出すとこれは非常に広くなりますので、現在進行中のものについて、外交交渉でカードを全部テーブルの上に出してゲームは成り立たないように、当面は。

 しかし、しばらくしたらあけなきゃいけない。それは、今、米村さんがおっしゃったように、国民にとって極めて重要な問題、日本の運命を左右するような重要なことである。あればあるほど、それは必ずあけなきゃいけないんですね。

 そのことを、かかわった政治家、行政官は、誇りを持って、自分は精いっぱいあの時点で、もちろん全部はできない、誰も全能ではない、スペードのエースではあり得ないですから、できることに限界はあるけれども、与えられた状況の中で最善を尽くした、そのことのあかしとして、誇りを持って開くことを受け入れなきゃいけないと思うんですね。それを闇に葬るというのは非常によくない。

 吉田茂は、例えば、ダレス国務長官になる予定の特使との間で、日本が再軍備する、五万の国防軍をつくることを内々に約束して、それでダレスの理解を得たわけですね。それをやるから今は無理をしないでくれ、しかし、今、日本国民の中で再軍備するというと大問題になるから伏せてくれというふうにお願いして、了承されて、アメリカは別に漏らさなかった。知る人は知るというふうになっちゃって、やがてこれは堂場資料というので吉田とダレスの交渉なんかが明るみになって、三十年ぐらい前ですか、国民の共有の知識になりましたけれども、それまでの間は一応伏せていたわけですね。

 だけれども、このような重要な問題を永遠に伏せることを、吉田さんはワンマンですから、永遠にと言いたがる。吉田さんだけじゃなくて、アメリカだって、ルーズベルトは記録を残すことを非常に嫌ったんですね。マッカーサーもそうです。強い強力な指導者というのは概してそういうふうになって、インフォーマル。ジョンソン大統領ですら、閣議だとか、国家安全保障会議、NSCの会議での、議事録の残るところでの話を嫌がって、火曜日の夕方に気の置けない数名の者で重要なことを決めたいと。そこは議事録を残さないんですね。そういう傾向があります。

 だけれども、正規の、英米の政府はみんな記録をとりますので、大統領もそこでかかわってやったことは残るわけですね。そういうのからだんだん今は、まあ、ニクソンも、だけれどもテープが残っていて大変なことになっちゃったですね。

 というので、重要な問題を記録を残さずに決定するということの余地というのはどんどん減っていくし、我々は、それを大いに、記録を残すように、誇りを持って、重大なことにかかわったことをしっかり記録していく、それをいずれ国民で共有するというふうにやるべきだと思っております。

 したがって、その二原則をとめどなく拡張するのではなくて、限定的に妥当に抑えるということが大事であって、秘匿しないことをやたらふやさないことの方が結局はよろしいと思っております。

三宅参考人 何を秘密として、何を秘密としてはならないのか、そういう御質問でございますが、これは、やはりシステムの問題として、国の情報法制全般をうまく制度化し、運用していくべき問題だろうと思います。

 冒頭の経歴のとき御説明しましたが、一九九九年に情報公開法ができるまでも、大方二十年ぐらいこの立法にかかわりました。そのとき、先ほど申しましたように、情報並びに情報公開は民主主義の通貨であるということでこの法律ができたわけで、さらにその十年後に公文書管理法ができた。そこまでの流れは、一九九三年ですかね、行政手続法ができて、行政改革、開かれた政府という流れで大きく流れてきて、その法律をつくるときに、大統領命令による秘密指定制度というのを情報公開法の中に入れるかどうかという実は議論をしたこともあるんですけれども、そのときはつくらなかったわけですね。情報の性質によって公開するかどうかを判断して、原則公開の基本的な枠組みをつくるということで、しかも、その文書がないといけないということで公文書管理法が出てきた。

 ただ、情報公開法の中にも、国家安全保障や公共の安全、秩序の維持にかかわるものは行政機関の長が相当と認める情報は不開示とするということで、ほかのプライバシーとか企業秘密よりももっと行政機関の一次的な判断が尊重されるような枠組みで秘密を保護しようということがございましたが、日米の安全保障政策上の関係というのがやはり一番大きかったんだろうと思います。

 二年前に、エドワード・スノーデンさん、日弁連で、ロシアにいるスノーデンさんとインターネットで結んでインタビューしたことがあるんですね、シンポジウムをやりまして。そのとき、何で日本で特定秘密保護法ができたのかといったら、アメリカの中枢においては、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと同じように秘密をシェアさせたいグループに入れたいからだということを、彼はインテリジェンスの専門でしたけれども、そういう話をしていたわけです。

 ああいう形でいろいろな問題提起をされた方の発言ということでお聞きになっても構わないと思いますけれども、やはり、国家戦略なり世界戦略の中で当面秘密にしなきゃいけないものは必ずあるだろう。そこのところを、まさに先ほど申しました、この情報監視審査会できっちり審査をする、このたてつけは、特定秘密保護法が前提とした上での国会法の改正としてとても大事だった。

 小さく産んで大きく育てるという意味では、その後、公文書管理法のガイドラインの中で、特定秘密以外の極秘と秘密と取扱い注意などのようなものをどうするか、この文書の管理の仕方というのは日本で内閣制度ができてからずっと何もつくられずにいたところを、統一的に公文書管理法の中に位置づけたんだろうと私は思っているわけですけれども、その中で、国立公文書館に移管をすると。ですから、特定秘密保護法の中でも、五年ごとの秘密指定で最長三十年、特別のものは六十年に延ばせる、しかし、こういう三十年の秘密指定をしたものは国立公文書館に最後は移管するんだということになっています。

 そうすると、二十五年ぐらいまでは適当に管理していいかというような話になるといけないので、これはやはりここできっちり管理をしていただきながら、三十年に満たないけれども重要なものがどのような運用になっているのかを見ていただく。そういうことで、何を秘密とし、何を秘密としてはいけないのかということを、まさに国民の期待を負ってこの委員会でちゃんとチェックをしていただくことがとても大事だろう。

 国民サイドとしては、何とか情報公開法の請求をして、だめと言われて、ほとんどノリ弁状態で真っ黒なのが出るわけですけれども、これに懲りずに皆さん頑張るわけですね。

 また、先ほど申しました、一番最後のところの三十年ルールのところでいいますと、三十年たてば秘密指定を解除する、一旦指定を解除するけれども、そこでレビューした上で、重要なものは秘密をそのまま保持する。

 私、二年前ですか、トランプ大統領が日本に来られる前にハワイのアリゾナ記念館に立ち寄られた翌日、実はアリゾナ記念館に行ったんです。それで、見ていますと、十二月、アメリカでは七日ですね、七日に飛行隊が来るところを傍受していたレーダーの傍受記録が出ているんですよ。それがクラシファイドになっていて、一旦秘密指定されているんですけれども、クラシファイドが解除されて展示されているんですね。これはまさに、一九四〇年にクラシファイドされたものが二〇一七年に我々が直に見られる、こういう秘密の管理と、それが長い年月によって開示されて国民が見られるというところのアメリカの適正なルールは、やはり、秘密指定解除要求のようなところはまだまだ参考にするところがあるんだろうと思います。

 だから、フラットに秘密にすべきものと秘密にしてはならないものがあるんじゃなくて、大きな開かれた政府の中で、しかしコアの部分として秘密にしなきゃいけないところを国会の中でどこまで機能させていくのかというところの観点から、まだ立法的な課題もあるし、運用上の課題、きょう述べさせていただいたようなところがあるのではないかと考えています。

太田(昭)委員 米村参考人、オリパラのテロ対策ということで大変重責で大変だと思いますが、そこで、サードパーティールールに係る情報に対する審査会の監視のあり方ということで、サニタイズ等の加工などで幾つかの手段もあるというふうに思うんですが、現場での経験を含めて、サードパーティールールに係る情報に対するこの審査会の監視のあり方について今感じていることがあったらお話しいただきたいということです、一つ。

 それから、五百旗頭先生、四十三万件の廃棄ということで驚愕をしたということでありますけれども、なかなか、廃棄ということについては去年からずっと我々は真剣に取り組んできたわけですが、軍のものとか、アメリカの場合、国務省とか、先ほどから、政府機関との連携とか、結論だけでなくてプロセスとかいうことが大事だということ、この辺は、システムとしてアメリカと現在の日本というのが違っているのか。それとも、きょうは三人とも、公文書のあり方というものに対する重要性の認識というものをもっと国民意識とともに高めていかなくちゃならないというような、そうした底流にある公文書というものに対する日本人全体、政治家全体、政府全体というものの違いというものがあらわに今なってきているのかという、その辺の具体的な、廃棄問題を中心にしてお話を聞きたいということ。

 そして、最後に三宅参考人にお聞きしたいというふうに思いますけれども、独立公文書管理監の体制強化というものは我々も同じ考え方なんですが、一般紙での発言でも、専門家ではないとか、あるいは内部の監視だけでは限界がある、こうおっしゃっているわけですが、それについて簡潔に教えていただければというふうに思います。

米村参考人 サードパーティールールは、私も、実務上、それについて、言ってみれば経験をしております。慣習ではありますけれども、極めて重要なルールです。これはお互いの信頼関係を根本から崩しかねないというルールなので、まずその点は御理解をいただきたいと思います。

 その上で、では、そのサードパーティールールで守られた情報をどこまで第三者に提示できるかという問題でありますが、中身によりけりだろう、こう思います。

 特に情報源、ヒューマンインテリジェンスの情報源に関するものは、これはとてもできません。もともとサードパーティールール以前の問題だと言ってもいいか、こう思いますが、ただ、中身によっては、しかるべきところへこの情報を伝達する、伝えるということについては、相手方の了解を得られるというケースもあろうか、こう思います。ケース・バイ・ケースだろう、こう思います。

 例えば、この審査会にそれを出すといった場合に、結局その中身でありますし、何のためだということで、相手方からどういうふうな理解が得られるかというのが一つの原点だろうというふうに考えております。

 以上です。

五百旗頭参考人 ありがとうございます。

 アメリカ、イギリスのようなこういう情報問題での先進国は、やはり国民的な認識の基盤に支えられているところが非常に多くて、それを感じるのは、例えばナショナルアーカイブズや、それから分館もあるんですけれども、それを読む部屋に行きますと、よく日本人の研究者と会うんですよね。それで、熱心だね、君も原資料を見てやっているのかと。いや、もう今では、人の書いたものを、あるいは横のものを縦にしても、オリジナルな論文とは認められない、原文書を見て書かないとだめなんだと。そうだねと。日米の研究者だけじゃなくて、市民もよく来ているんですよ。それはどうしたのかといったら、自分の地域の問題だとかあるいは家族の問題とかで調べたくなってというと、もう資料はどんどん出てくるんですね。

 というふうに、やはり、民主主義の、結局国民に帰すんだという意識が根づいているところは強いなと思います。マッカーサーだとかルーズベルトやジョンソンが、制約されずに自由に言いたいことを言ってと思っていても、底辺の基盤というのは強い。

 日本の場合は、それに対して、よらしむべし、知らしむべからず的な伝統があって、それだけに非常に努力が要る。だから、この会は非常に大事だと思うんですね。それを活性化させていかなきゃ、制度化していかなきゃいけない。

 その中で、ここまで言うとひんしゅくを買う面もあるかもしれませんが、最も大事なもの、閣議、それから今だとNSC。これは、国家の最重要事項について審議、決定しているわけですね。国家の重要決定の中で、ここで行われるものは最も大事だと思うんですね。だけれども、閣議決定というのは、この件については別紙原案のとおり承認と書いてあって、そこで太田委員が厳しい突っ込みの批判をしてそれをどうこなしたかというのは出てこないんですね。議事録がない。これは非常に残念なことで、今出せとは言いませんよ、だけれども、三十年、場合によったら六十年でもいい、その後には国民が共有する知的財産にする、公共財にするということがなきゃいけない。

 NSCができて、すばらしい、今までとは違った、分断的な機構を全体として関連づけ、統合づけて、しかも、情報に基づいて決定していくという制度はできたわけですね。だけれども、それがやはり公開されなきゃいけない。議事録がとられ、いつの日にか公開される。微妙な問題ですから、今出せとは言わないけれども、そういうふうにならきゃいけないと思うんですね。

 それをリードすることによって、日本国民それからお役所の人たちにも、違うんだ、こうしなきゃいけないということを皆さんにぜひ御指導いただきたいと思っている次第です。

三宅参考人 独立公文書管理監についての体制の強化ということで御質問でございます。

 昨年、公文書の改ざんの問題があって、より強い権限を持った横串の組織が必要だということで、最終的に内閣の方から提案されたのが独立公文書管理監でした。独立公文書管理監にどの省庁のどういう方がなられるのかと見ておりましたら、前任の方は水戸地方検察庁の検事正だった方で、その方が横滑りになられたということですから、お役人の世界ではそういうクラスの方が公文書のトップをつかさどられると。

 なられた後の、国民から見てなかなか顔が見えないんですね。実は日弁連で、一回会ってお話を聞きたいと非公式に言ったんですけれども、断られてしまいまして。非公式でもいいからしゃべらせてもらえば何かいろいろな話ができるのになと思ったりしたこともあるんですけれども、それ以上に更にいろいろな関心を持って見ていますが。

 今回、三十年の年次報告書に、結構いろいろ審査会で発言したりするケースが、事例がここに書いてあって、例えば、独立公文書管理監としては、特定秘密の検証・監察の中で非公知性を欠いていると思われるものがあれば、必要な確認を行い、その結果欠いていると判断すれば、指定の全部あるいは一部解除の是正の求めを行うこととなるだろうというような、ここを読みまして、役割はわかっていらっしゃるんだなと。

 実際にこれが運用できるのかどうかというのを我々としては今すごく注目しているところでございますので、ぜひ、この委員会からハッパをかけていただいて、やはり、国民にも見えるような形の公文書管理についての発信を独立公文書管理監としてもしていただきたいというのが、これはもう国民としての要望だと思います。

 公文書管理の改ざんの問題については、世論調査なんか見ると、まだ国民にもやもやっとしたものがございますが、やはりその辺のところをすかっとしていただく役割を担われるのは、本来、この独立公文書管理監のお役目ではないかなと考えています。

 先ほど、専門家でないことや内部からの昇格で十分なのかという議論がございましたが、一番のポイントは、先ほど来、五百旗頭参考人の方からお話が出ている、アーキビスト的な視点があるのかどうかというのが、とても私どもとしては懸念を持っているところです。つまり、検察官としてずっと暮らしてきた方が、歴史認識みたいなもので、この文書は大事だから残さなきゃいけないんじゃないかというようなことを直観的に感じ取れるのかどうかというのがちょっとなかなか、刑事記録の保存の問題なんか絡みますと、とてもそこまでアーキビスト的な視点を持てるのかがまだ疑問に思っているところです。

 公文書管理委員会などに御出席されていろいろな意見を聞いていらっしゃることはフォローしていますので、今後、独立公文書監としてのアーキビスト的な視点を持つために、今の公文書管理委員会などにお出になったり、国立公文書館との連携をどうなさるのかというような話をもうちょっと深めて、私どもも意見を述べていきたいなと考えているところでございます。

大島(敦)委員 きょうはありがとうございました。

 先ほどのお話の中で、米村参考人から、特定秘密保護法案ではなくて特定情報の管理法案の方がよかったのではないかというのは、非常に感銘を受けました。

 今の特定秘密保護法案、私、特別委員会の野党側筆頭理事として対案を出してずっと審議をしておりまして、一番最初、違和感を覚えたのは、戦後初めてです、閣法で国会議員を処罰する法律は。公職選挙法についても、あるいは政治資金管理法についても、要は量刑というのかな、どのくらいの処罰をするかというのは、これは全部議員立法なんです。ですから、閣法で初めて国会議員を処罰する法律が出てきたのがこの特定秘密保護法案なので、これは本当に政務三役の目が入った法案なのかというところが一番最初の私の疑問でした。

 もう一つ今思い出したのは、先ほど三宅参考人がおっしゃっていらっしゃった、もともとの法律の趣旨が、特定秘密を保護することによってアメリカを中心とする情報のソサエティーの中での情報の流通をより強化するという視点の方が優先されたのではないのかなというところを改めて思いまして。

 もともと、日本国が誰のものかというと、これは国民のものであって、日本国が持っている情報は誰のものかというのは、米村参考人、五百旗頭参考人がおっしゃっていたと思うんですけれども、これは国民のものですから、本来開示すべきというのが基本的な考え方。ただ、外交とか安全保障には他国との関係で開示できないものもありますから、それは立法府と行政府の緊張関係の中で開示の幅が私は決まるんじゃないのかなと思っておりまして、ですから、当委員会がやはり重要だということを改めて認識したとともに、五年たってからの見直し規定について、もう少し修文しておけばよかったな、あるいは質問しておけばよかったなと思うのは、これは行政、要は政府側が見直すわけですよ。だから、立法府はあくまで、今回の年次報告で、こういう項目についてということは述べるんですけれども、ある程度立法府の関与を強くした方が、より制度としては充実するのではないのかなというところを改めて感じ取りました。

 今回の三十年の年次報告の中でも、運用基準の見直しの関係ということで、独立公文書管理監による検証・監察関係の中にこういう文言がありまして、保存期間満了時の措置の検証・監察の際に歴史についても見識の高い専門家からも意見聴取するプロセスが必要だということを書いておりますので、その点について各参考人の意見をいただきたいのと、先ほどの指摘の中で、多分、三宅参考人、独立公文書管理監が検事正でいいのかというお話があって、私もふと思いまして、国会の同意人事にするぐらいの人事の方がいいかなと思いました。

 やはり、国会の同意人事にするということは、これは政府が提案する人事案件についても結構精査をして出してくるものですから、そういうことも踏まえて、今後、当特定秘密保護法案の運用のルールについて、より国民に資する方向で議論すべきではないのかなと思ったものですから、先ほどの点について、見識の高い専門家からも意見聴取するプロセスについて、各参考人の先生方から御意見をいただければと思います。

米村参考人 独立公文書管理監につきましては、極めて重要な役割を担っているというふうに思います、情報保全監察室も含めて。これはぜひ充実強化をしていただきたいということだろうと思います。これは特定秘密にかかわるだけの話ではないというふうに私は思います。国家の行う情報活動について、いわば、先ほどから何度も申し上げておりますが、自己観察の能力とモラルを担保する機能がここにあります。これだけでは心配なのでということも含めて当監視審査会があるわけでありまして、屋上屋を重ねるようだと言うかもわかりませんけれども、それぐらいのものがぜひ必要だというのが私の実感であります。ぜひその点はよろしくお願いしたいな、こう思います。

 それから、一点、なぜ私は秘密でなくて管理がいいか。秘密ということになりますと、秘密にやはり軸足が移っちゃうわけですよ。問題は管理なんです。管理というのは、別に何でもかんでも情報自由でいいと言っているわけではありません。先ほど申し上げたとおり、入り口と出口の問題があります。出口についても十分な関心を持つべきだという趣旨で、そっちの方がいいんじゃないかということで考えた次第であります。

 以上でよろしいでしょうか。

五百旗頭参考人 ありがとうございます。

 米村参考人と同じ観点に立っておりますけれども、御指摘の専門家の重要性、これは幾ら強調してもし過ぎることはないというふうに思っております。

 専門家は、まず管理監自身も専門的な見識が必要でしょうが、行政府内の職員、プロパーの専門家、こういう情報問題について扱える人がなければ、幾ら大事だといっても、実はアメリカと渡り合えません。世界にはインテリジェンスコミュニティーというのは大変根を張っていて、そしてそれを、おたくの制度は大丈夫というのは、これは必要条件なんですね。だけれども、更に積極的にといえばギブ・アンド・テークでしょう。日本が何を出してくれるから我々もこれを出すというふうなお話なんですね。それができるような豊かな情報内容を持ったエキスパートに支えられている政府でなければ難しい。

 そして、更に言えば、皆さんは立法府の中でこういう審査会を重視して運営してくださっているわけで、物すごく大事ですが、アメリカでも、ある種非常に微妙な機密度の高い問題について、議員六名にだけ内容を話して、もちろん、その六名は秘密を漏らしたらとんでもないことで、漏らさないけれども、この人たちには言う。それを、つまり、議員全体にやったらもうどこから漏れるかわからないけれども、数名のエキスパタイズのある議員にそういうことを共有してもらうということをやるんですね。それに応えられるような議員が立法府の中にもいてくれないとやはり困るわけで、皆さんにそのような担い手となっていただくことをぜひお願いしたい。

 そして、第三者、社会全体の中でというのはもう当然のことだと思うんですけれども、そういうふうな重層的にエキスパートが生きているというふうにならなければ、実は本物になかなかならないだろうと思っております。

三宅参考人 独立公文書管理監についてですが、公文書管理全般について横串で全ての省庁の公文書管理についてのあり方を監視、監督するという役割を持たされたことによって、単なる特定秘密保護法の中での枠組みから、国全体の情報の管理のあり方についての役割を持つようになったということなので、極めて地位として、本当は実は重いものだと思います。

 そういう意味で、先ほど言いましたように、検事正クラスからの横滑りで本当にいいのかなというところは、歴史見識のある専門家からの意見聴取手続というのをほのめかしていただいておるところはぜひ具体化していただいて、まずは、独立公文書監の役割の中で、アーキビスト的な視点を外部からも入れていただくというような形を行政の中でもとっていただきたいし、そこをぜひこの国会の中から提案していただいて行政を動かしていただく。これは与野党を超えて、国のインテリジェンス、情報の管理のあり方全般にかかわる問題だと思うので、ぜひきっちりやっていただきたい。

 そのときに、国会同意人事がいいのかどうかというのはまだちょっと私は微妙でございまして、私も、国会同意人事になったら、公文書管理委員を八年もできたかなと思ったりするところもございまして、結構好きなことを言っていましたので。そういうところからいうと、少しお手並み拝見ということで、もう少し様子を見て、国会同意人事にすべきかどうかはまた意見を固めていきたいと思っております。

山内委員 山内です。

 時間がないので、五百旗頭参考人お一人にお尋ねしたいと思います。

 インテリジェンス機関をどのように民主的に統制するかというのは先進国共通の課題だと思うんですけれども、そのため、主要国は議会にオーバーサイトのための委員会を置いていると思うんですが、そのあるべき姿についてお聞きしたいと思います。

 今のこの情報監視審査会は、どちらかというと文書の管理、特定秘密文書の管理をどうするかという議論に集中しておりまして、インテリジェンスあるいは情報をどうするかという議論はほとんどやる場ではありません。

 例えばですけれども、今、ファーウェイが話題になっていますけれども、私、最初にファーウェイがアメリカの安全保障にとって問題だという議論を初めて聞いたのは、二〇一三年ごろにアメリカ議会の情報委員会がファーウェイの問題のレポートを出し、同じ時期にイギリス議会も、やはりファーウェイの問題、情報監視の委員会がレポートを出し、そういうアメリカ、イギリスの議会はもっと広くインテリジェンス機関とかインテリジェンスの問題を議論して、報告書を出して一般に公開している。

 そういう意味では、我が国の委員会は非常に狭い、限られた業務しかやっていないわけですけれども、個人的にはそういうもう少し広い業務を扱うべきではないかなと思うんですが、先生の御意見をお聞きしたいと思います。

五百旗頭参考人 ありがとうございます。

 おっしゃることに全く賛成でありまして、私もそのように考えております。

 それにつけ加えて、最後に機会をいただいたので一言申し上げたいのは、国の行政に携わる人が、よらしむべし、知らしむべからず的な古いパターン、防御的になる。それに対してメディアが、落ち度をつかんで何とか揺さぶろうというふうに情報を求めるという傾向が非常にあって、その二つのものがぶつかり合っているときには、なかなか公開が、やはりディフェンシブになりますよね。ところが、しばらくすると、先ほどから出ているエキスパート、歴史家が使うようになるんですね。そうすると、ちゃんと文書を残していた人たちは再評価されるというのが歴史の現実なんです。

 アメリカで、例えば戦後のアイゼンハワー大統領、あの人はにこにこ、いいおじいさんで、岸首相ともゴルフをして裸のつき合いをしたけれども、大したステーツマンじゃないと言われていたんです。トルーマンもビジネスマンだねと。ところが、公文書が三十年後に全部出るんですね。それを歴史家が専門家として分析すると、よくやっているじゃないか、随分立派なこと、言われているよりもはるかに内容はいいよというふうに再評価されるんですね。逆に、非常に高い人が下がることもありますけれども。

 日本は、戦後日本外交なんてろくなものはないというふうに、敗戦の後のショックの中で日本人は思い込んでいたところがあるんですね。ところが、外務省は、国際基準で、三十年ルールで公開します。それを、公開したものを使って、若い研究者が、戦後日本のアジア外交とか、宮城大蔵君とかこうやるんですね。そうすると、当時言われていた、アメリカの言いなりになっていただけだろう、日本外交はと。全然違う。アメリカのプレッシャーはそれとして受けとめながら、独自の観点に立って日本の国益をこう再構築したというのが文書から出てくるんですね。戦後日本外交もまた再評価する、その基礎になっているのは公文書なんですね。

 ですから、ぜひしっかりと文書を残して、今は何を言われるか、これはもうかなり情動、国民感情は揺れるものがありますが、しかし、将来は心ある人に対してしっかりとアピールできる、そういうものとして残していくということをすれば、大変、国民もまた国も名誉を高めることができると思っております。

浜田会長 ありがとうございました。

 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。

 いただきました御意見を今後の審査会の活動に生かしてまいりたいと存じます。

 改めて、審査会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。本日はありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十四分散会


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