衆議院

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第8号 令和5年4月20日(木曜日)

会議録本文へ
令和五年四月二十日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 坂本 哲志君

   理事 田中 英之君 理事 谷川 弥一君

   理事 坂本祐之輔君 理事 湯原 俊二君

   理事 中司  宏君 理事 中川 宏昌君

      東  国幹君    井原  巧君

      今村 雅弘君    大野敬太郎君

      神田 潤一君    小寺 裕雄君

      小森 卓郎君    鈴木 隼人君

      谷川 とむ君    土屋 品子君

      中川 郁子君    中曽根康隆君

      平沼正二郎君    深澤 陽一君

      牧島かれん君    保岡 宏武君

      渡辺 孝一君    末次 精一君

      堤 かなめ君    福田 昭夫君

      緑川 貴士君    森田 俊和君

      住吉 寛紀君    堀場 幸子君

      輿水 恵一君    鰐淵 洋子君

      西岡 秀子君    高橋千鶴子君

    …………………………………

   参考人

   (公益社団法人日本医師会常任理事)        長島 公之君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総合政策推進局長)     冨田 珠代君

   参考人

   (公益財団法人東京財団政策研究所研究主幹)    森信 茂樹君

   参考人

   (株式会社New Stories代表取締役)   太田 直樹君

   衆議院調査局地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別調査室長 阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  石田 真敏君     神田 潤一君

  宮路 拓馬君     東  国幹君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     平沼正二郎君

  神田 潤一君     深澤 陽一君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     宮路 拓馬君

  深澤 陽一君     石田 真敏君

    ―――――――――――――

四月二十日

 子供のための予算を大幅に増やし、保育士の増員など、保育・学童保育制度の抜本的改善を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第八六八号)

 同(吉田統彦君紹介)(第九〇〇号)

 同(斎藤アレックス君紹介)(第九二五号)

 健康保険証廃止の中止を求め、マイナンバーカード取得の強制に反対することに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第九五〇号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第九五七号)

 同(志位和夫君紹介)(第九七〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四六号)


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、公益社団法人日本医師会常任理事長島公之君、日本労働組合総連合会総合政策推進局長冨田珠代君、公益財団法人東京財団政策研究所研究主幹森信茂樹君及び株式会社New Stories代表取締役太田直樹君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず長島参考人、お願いいたします。

長島参考人 日本医師会で情報、IT化、医療保険などを担当しております常任理事の長島でございます。

 本日は、医療の現場の立場から意見を申し上げます。

 マイナンバーカードと健康保険証を一体化したマイナ保険証によるオンライン資格確認システムを基盤とする医療DXは、是非とも推進すべきと考えております。

 お手元の資料二ページを御覧ください。

 では、なぜ、今、医療DX、すなわちデジタル化、IT化による変革が必要になったのでしょうか。それは、医療を取り巻く状況が大きく変化したからです。

 まず、医療提供体制といたしましては、医療機関の機能が、専門化、分化が大きく進んでおります。一つの病気、一つのけがであっても、まず急性期、回復期、慢性期あるいは在宅など、それぞれの機能を提供する医療機関が分化してまいりました。

 次に、患者さん側の状態も変わりました。昔は、急性期やけがが中心でしたので、一つの病院で完結しておりました。しかし、現在は、複数の病気を抱え、慢性の状態であるという方が大きく増えております。また、介護も必要となってまいりました。

 したがいまして、現在は、地域の医療機関の間の連携、医療と介護の多職種連携の必要性が大きく増大しております。

 ところが、そこで重要となる医療情報の共有に関しまして、医学の進歩によりまして、医療情報が大きく、種類も量も増大してまいりました。したがって、従来の紙の紹介状のやり取りでも十分な場合もまだございますが、それだけでは十分ではない、あるいは大きな負担がかかるということも増えてまいったということでございます。

 また、医療関係者の様々な業務も増大し、負担も大きくなっております。

 さらに、今後、人生百年時代を迎えまして、国民御本人が主役となる健康増進、健康寿命延伸が大変重要です。その際には、御本人が御自分の状態をよく把握していただいて、把握に基づき、しっかりと生活習慣を改善したり、適切かつ必要な医療を継続するということが重要です。これには、今までのやり方では十分対応できない。IT化、デジタル化が必要となってまいりました。

 三ページを御覧ください。

 こういった状況の変化を踏まえまして、日本医師会では二〇一六年に、日医IT化宣言二〇一六として、今後の指針を示しました。その中では、医療機関が安心、安全、安価に地域医療連携に活用できる医療専用ネットワークの構築を目指すべき、また、地域医療連携、医療、介護の多職種連携をITで支えるという方向性を示しました。

 今まさに国が進めております医療DXの中核となる全国医療情報プラットフォームは、まさにこの日本医師会の考えを実現したものと考えております。

 このプラットフォームは、マイナンバーカードによるオンライン資格確認システムのネットワークを更に拡充して、介護を含む医療全般にわたる情報について共有、交換できる全国的なプラットフォームです。

 日本医師会としまして、このシステムがまさに今後の医療DXの基盤となるもの、そして、これが、まず何よりも国民、患者の皆様に安心、安全でより質の高い医療が提供できるもの、これは日常の診療だけではなくて、例えば災害や救急など、まさに命に直結する場面においても非常に有用であるというふうに考えております。また、医療現場の負担軽減にもつながるということで、現在、全面的に協力しております。

 四ページを御覧ください。

 ただし、注意すべきことがございます。医療は国民の健康と命に関わることですので、誰一人取り残されるということがあってはございません。これは、国民の皆様はもちろんのことですけれども、その国民に医療を提供している全国の医療機関や介護施設、ここが取り残されてしまえば、肝腎の医療、介護が提供できません。したがいまして、全国の医療現場も決して取り残されることはあってはならない。そこに対して、国としてしっかりと、丁寧、きめ細かい持続的な支援が必要と考えております。

 さて、デジタル、総務、厚生労働大臣によるマイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会におきましては、一体化に向けた課題を整理して、必要な検討を実施しようということがまとめられました。その下に置かれました専門家ワーキンググループに私も参加して、様々な意見を申し上げました。本年二月にはその中間とりまとめが作成されましたので、これに沿ってしっかりと対応を進めるということが重要かと思っております。

 五ページ目です。

 まず、何よりも重要なことは、マイナ保険証の意義、メリットを国民の皆様、医療現場の皆様にしっかりと御理解いただくということです。

 最大のメリットは、何よりも、これまでの、例えば、薬の服用履歴などを含めた医療情報を正確かつ網羅的に医師等に説明できるということで、これは手間を省くということ以上に、そもそも、そのような詳しい、細かいことを御記憶なさっているという方はほとんどいらっしゃいません。したがって、これが今までは不可能でした、これを可能にするということが最も重要です。そして、今までの様々な健康、医療データに基づいて、より安全で適切な医療を受けることができる、一方、医療機関側としては、医療を提供することができる、これが最大のメリットと考えております。

 したがいまして、こういうメリットがあるんですよ、この意義を国民の皆様に広く知っていただく、そして、マイナンバーカードをしっかり取得していただいて、健康保険証と一体化していただく、これが最も重要なことというふうに考えております。また、このことを医療現場の皆様にも御理解いただくということも重要と考えております。

 六ページです。

 では、中間とりまとめで示された一体化に当たっての取組は何かと申しますと、この(一)から(八)まででございますが、この中には、法律上の対応が必要というものがございました。これがまさに今回の一部改正において対応されたものと思い、大歓迎しているところでございます。

 例えば、(一)のマイナンバーカードの特急発行・交付の仕組みの創設、(三)の市町村によるマイナンバーカードの申請受付、交付体制強化の対応ということで、例えば市町村から指定された郵便局で可能となるというようなこと、また、(四)健康保険証廃止後の資格確認の取扱いということで、資格確認書が提供されるということ、また、(七)乳幼児のマイナンバーカードということで、顔写真を不要とするということで、このような適切な対応が今回の法改正によって行われるということで、これを是非進めていただければと思っております。

 それ以外にも、(二)の環境整備、あるいは(五)のタイムラグへの対応、また(六)の実務上の課題ということで、特にここにおいては、第三者によるマイナンバーカードの取扱いということが現実的には必要となりますが、その際に、では、預かる側、管理側の不安を解消するような環境整備というのが大変重要かと思っております。また、国民の御理解を得るということで、(八)の説明会も大変重要かと思います。

 また、これは中間とりまとめですので、最終取りまとめの中には更に追加される取組もあるかと思います。ここのところをしっかりと実現していくということが極めて重要と考えております。

 最後、七ページでございます。

 医療DXは、国民の命と健康を守るのに大きく貢献しますので、是非推進すべきと考えます。その医療DXの基盤となるのが、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に基づくオンライン資格確認システムですので、これも是非とも推進すべきと考えております。

 私からは以上です。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、冨田参考人、お願いいたします。

冨田参考人 ただいま御指名をいただきました連合の冨田でございます。本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。

 連合には約七百万人の組合員が集っており、本日は、働く者、生活者の立場から意見を述べさせていただきたいと存じます。

 初めに、マイナンバー制に対する連合の考え方を申し述べます。

 連合は、納税者共通番号制度の頃から、いわゆるマイナンバー制の早期導入を求めてまいりました。その理由は次の二点です。

 一点目は、税による所得再分配機能の強化です。

 コロナ禍では、諸外国と比して、日本のセーフティーネットの脆弱性が露呈をしました。マイナンバーを使って正確な所得把握ができていれば、真に支援が必要な層に対して、申請型ではなくプッシュ型の給付が実現できたと考えます。加えて、全ての預貯金口座をマイナンバーにひもづけることができれば、金融所得を含む所得税の総合課税化を実現するとともに、低所得者対策として給付つき税額控除制度を構築することも可能となります。

 二点目は、安心と信頼の社会保障の実現です。

 データ基盤の整備推進を通じた医療、介護の情報連携の向上により、本人にとっては、良質な医療・介護サービスの受療が可能となりますし、自分の健康情報を確認できることによって健康意識が高まることも期待がされます。

 これらを実現していくには、いまだ根強く残るマイナンバー制への不安や誤解を払拭をし、マイナンバーカードの普及促進を図るため、安全性の一層の周知や個人情報管理体制の強化を行っていくことが必要です。また、オンライン申請など利便性の周知を徹底するとともに、更なる国民の利便性向上を図るためにも、行政手続のデジタル化やマイナポータルの活用を推進していくべきと考えてございます。

 連合としても、お手元にチラシをお配りをさせていただいておりますが、マイナンバー制度に対する理解やマイナンバーカードの取得促進に向けたチラシを作成をし、組合員へのマイナンバーカードの取得の働きかけを行っているところでございます。

 本日は、こうした考え方に基づきまして、特に、個人番号の普及促進策、戸籍などの記載事項への氏名の仮名表記の追加、行政機関等経由登録等の特例制度の創設の三点につきまして、実施に際して国民への丁寧な説明が必要との観点に立って、意見を申し述べます。

 一点目は、個人番号の普及促進策です。

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化の推進に当たっては、大前提として、医療DX推進基盤となるオンライン資格確認などのシステムの導入が必須です。先月よりシステム導入が原則義務化をされましたが、運用開始状況を見ると、完全導入には至っておりません。また、医療機関などに対しては導入促進のための診療報酬上の加算も講じられておりますが、更なる導入促進策の周知徹底、取組の加速化を図ることが重要です。

 そもそも、医療DXとは何か、医療DX推進によるメリットは何かということが国民に十分理解されていないのではないでしょうか。医療DX推進によって、自分の健康情報を確認できるようになることで健康意識が高まることや、データ活用で医療の質が向上されることなどが期待ができます。本来は、こうした点について共通認識が醸成された上で、システム導入などの各種政策を進める必要があると考えます。

 なお、今回の法案では、資格確認書の仕組みの整備などが盛り込まれています。資格確認書は、マイナ保険証を所持していない人が医療を受ける際に必要な規定と考えますが、同時に、従来の保険証廃止により、患者や国民、医療機関などにとって、不便や過度な負担にならないようにすることも必要です。改正法案の概要資料にも書かれているように、国民皆保険の下、全ての被保険者の円滑な保険診療を可能にするためにも、現場や当事者の声も含めて進めていただくことを求めたいと存じます。

 二点目は、戸籍などの記載事項への氏名の仮名表記の追加についてです。

 法改正の中間試案の補足説明の中には、氏名の仮名表記を法制化する必要が高まった背景の一つに、我が国における社会全体のデジタル化の推進、特にベースレジストリーとしての整備を推進する方針が定められたことが挙げられており、また、登録、公証が必要な理由として、「正確に氏名を呼称することが可能となる場面が多くなることによって、他人から自己の氏名を正確に呼称される権利・利益の保護に資する。」とあります。

 本日は、この点に立って、特に国民への丁寧な説明が求められる点について、二点、意見を申し述べます。

 一点目は、氏名の仮名表記の許容性及び氏名との関連性についてです。

 戸籍法第十三条に、氏名の仮名表記は、「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない。」とする規律が設けられます。

 「一般に認められているもの」は、読み手によっては、既に読み方として一般社会に認められているもの以外は認めないと解釈されることも懸念されます。この点について、法制審の中では、名のり訓のような創造的な読み方が制限されることを危惧する意見が多数を占めてございました。

 そのため、要綱案の補足説明では、「命名文化や名乗り訓が創造される慣習を否定したり、その創造を制約したりするものではなく、それらを前提とし、常用漢字表の制定経緯や名に名乗り訓が多用されてきた歴史的経緯等を踏まえて、氏名の仮名表記の許容性及び氏名との関連性に係る審査についての規律を設けるものである。」とあります。さらに、なお書きでは、「国民への周知に当たっては、以上のような本文の規律の趣旨についても併せて周知することが考えられる。」とされてございます。

 したがいまして、国会審議においては、この読み方の許容性の範囲が狭まることのないように御留意いただきつつ、国民への周知の方法についても御議論をいただきたいと存じます。

 二つ目は、読み方の届出についてです。

 戸籍に読み方を付すに当たっては、一億二千万人を超える全ての国民が自ら届け出る必要があるわけですが、高齢者やDV被害者など、届出が困難な層への特段の配慮が不可欠です。あわせて、膨大な届出を受ける地方自治体の負担軽減策の検討も求めたいと存じます。

 三点目は、行政機関等経由登録の特例制度の創設についてです。今後進めていく上で丁寧な対応が必要と考える点について申し述べます。

 口座登録通知に不同意の回答をしない場合は自動的に口座登録されると認識をしてございますが、まずは国民にこのことを周知をし、国民全員から同意を得られるように取り組むべきであり、回答までの期間については十分な期間を設けるべきと考えます。また、通知を受け取ることが困難な層、特に視覚障害者や療養中の方などへの十分な配慮を行うべきと考えます。

 あわせて、今回は年金受給者が対象であり、事務手続は日本年金機構が担うとされておりますが、通常の業務に付加されるものですので、人員増など負担軽減策の検討も必要と思います。

 なお、本施策の実施によって、システム改修や郵送代など少なからぬ費用が発生すると思いますが、この費用が年金財源から手当てされることのないよう、しっかりとした予算措置を求めておきたいと存じます。

 最後に、今回の特例措置により、登録した口座の利用目的が安易に拡大され、流用されることがあってはならないと考えておりますので、この点についても十分な御議論をお願いをしたいと存じます。

 以上を申し上げまして、私からの陳述といたします。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、森信参考人、お願いいたします。

森信参考人 おはようございます。東京財団政策研究所の森信でございます。

 私からは、マイナンバーを活用したデジタルセーフティーネットの構築の必要性についてお話をさせていただきたいと思います。

 現在、本委員会で、マイナンバーの利用範囲の拡大、マイナンバーカードの普及、利用促進などの法案が審議されていますが、マイナンバーやマイナンバーカードを活用した行政手続の簡素化、利便性の向上という点については順調に進んでいると考えております。

 一方で、マイナンバーを活用し、国が取得している所得情報を国民生活の安心につなげる給付制度、私はこれをデジタルセーフティーネットと呼んでおりますが、その構築という面において、つまりインフラの整備と制度の構築という両面においては遅れているのではないかと感じております。

 マイナンバー制度の趣旨、理念を改めて社会保障・税番号大綱で確認しますと、社会保障と税を一体で運営し、効果的、効率的な政策を実現することとなっております。

 具体例を挙げてみたいと思います。

 政府は、物価対策として、低所得世帯に一律三万円の給付、子育て世帯には別途子供一人当たり五万円の給付を行いますが、その判断基準は住民税非課税世帯かどうかとなっております。住民税非課税世帯で子供が二人おられる場合には三プラス十で十三万円の給付がもらえますが、住民税を少しでも負担しておればゼロになります。

 これまで、コロナ対策として、一世帯当たり十万円の臨時特別給付金なども行われてきました。その対象は住民税非課税世帯でした。

 しかし、このように、住民税課税か非課税かというアナログ的な基準に基づいて給付を受けられるかどうかという制度設計は、次のような問題を生じかねません。

 住民税の課税最低限、つまり、単身の給与所得者の場合には年収百万円、会社員、専業主婦、子供一人の三人世帯では年収二百五万円、この以下では住民税が非課税になりますが、先ほど述べた給付金がもらえるということになれば、ここのところで就労調整を行う壁をつくっている可能性があります。

 今大きな社会問題になっている、百六万円や百三十万円を超えると本人の社会保険料負担が生じ、就労調整が起きるという問題にも通じるところがあります。

 我が国は、現在、マイナンバーで納税者全員の収入、所得情報を把握しているわけで、それをうまく活用して給付と組み合わせる制度を構築すれば、このような壁はなくなり、無駄な給付を排除するとともに、住民税を負担しているが困窮している家庭への給付なども可能になると思います。さらには、このような制度を所得の不安定なフリーランスやギグワーカーにも広げて、新たなセーフティーネットを構築することもできます。

 欧米には、専業主婦などが新たに労働市場に参入する際に生じる逆転現象をポバティートラップ、つまり貧困のわなと捉えて、番号で収入と給付を連動させて対応する制度が導入されています。

 例えば、オランダでは、勤労によって生じる社会保険料負担を低所得の間は軽減する制度を個人に適用し、就労の促進を図っています。英国では、税や社会保険料を差し引いたネットの世帯所得に逓減型の給付を与える制度を導入し、労働インセンティブを与えてこの問題に対応しております。

 これらの制度は、給付つき税額控除と呼ばれ、番号で個人や世帯の所得を把握して、税と社会保険料負担を一体的に捉えた上で設計されております。先ほど連合の方からもこの制度についての言及がありました。欧米諸国で積極的労働政策の一環として広く導入されているグローバルスタンダードな制度と言えます。

 マイナンバー制度が普及してきた我が国でも、所得と給付を連動させ、きめ細かい給付が行われるようなインフラ整備と制度の導入を進めていく必要があると思います。このような制度は、単に逆転現象を防止するだけではなく、勤労インセンティブを供与する、いわゆるトランポリン政策として大きな意義を持っております。このような制度構築に向けての努力がマイナンバーへの国民の信頼醸成につながると考えております。

 私は、番号を活用して収入、所得情報と社会保障などの給付を連携させる姿をデジタルセーフティーネットとして提言してきましたので、もう少し具体的な話をしたいと思います。

 制度設計の肝と言うべきは、給付を行う社会保障官庁や地方自治体が、デジタル手続法のワンスオンリーの原則にのっとり、国税当局、税務当局の所有する所得データを広く利用できるデータハブをつくるということです。給付を行う社会保障官庁などが給付事務に当たって所得情報をフルに活用できるというシステムで、一方で、データの一元管理が最高裁の判例で禁じられておりますので、ハブという概念で整理をしております。

 具体的には、企業が、従業員の給与や契約先の個人への報酬などの支払い情報をデータ化して、税務当局に提出します。これは、今もこういう資料は提出しているわけです。それをデータ化して提出するということです。社会保障官庁などは、その業務の必要に応じ、必要なデータをそこから入手し、給付事務に活用します。このような情報連携をスムーズに行うためには、関係者間の守秘義務の解除や目的外利用などの問題もあるので、仕組み全体をハブということで法令で定めることが望ましいと思います。

 企業による所得情報の提出頻度を月次、つまり毎月にまで高めれば、個人や家計の所得に応じた、きめ細かく精度の高いプッシュ型給付も可能になります。

 英国では、企業から従業員の所得情報が毎月、歳入関税庁、日本の国税庁ですが、ここに報告され、その情報が労働年金省に提供され、中低所得者の有資格者に毎月給付が行われるユニバーサルクレジットという制度が導入されております。

 我が国でも、働き方改革などで増加したフリーランスやギグワーカー、さらには副業などの収入情報を、マイナンバー制度と法定調書制度を活用して、プラットフォーマーや業務を発注する企業などから税務当局が効率的に集め、情報連携をすることが可能になれば、広く勤労者全体をカバーしたセーフティーネットの構築が可能になります。

 デジタルセーフティーネットというコンセプトはデジタル庁も共有しており、様々な検討が進められていると承知しております。二〇二五年には、ガバメントクラウドにおいて、情報連携の基盤である公共サービスメッシュの構築が行われ、住民データを保持している自治体の基幹業務システムについてデータの標準化とかガバメントクラウドの活用を進めることが可能になります。これにより、ガバメントクラウド上で、自治体が保有している住民データを給付等のサービスにおいて円滑に活用していくインフラが実現します。

 このようなことを念頭に置いた上で、我が国でも所得に応じてきめ細かい各種給付ができる制度の構築を検討していただきたいというふうに思っております。

 繰り返しになりますが、マイナンバー制度の理念は、より公平公正な社会の実現、社会保障がきめ細やかかつ的確に行われる社会の実現です。国民の将来不安を軽減するデジタルセーフティーネットの構築は、我が国経済社会の安定的な発展に寄与するものと考えます。

 以上です。よろしくお願いします。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 次に、太田参考人、お願いいたします。

太田参考人 株式会社New Storiesの太田と申します。よろしくお願いいたします。

 二〇一五年一月から国民一人一人に番号が付番をされまして、翌年一月からマイナンバーカードの交付も始まっておりますけれども、ちょうど同じ時期に、具体的には二〇一五年一月から二〇一八年八月まで、私は、総務大臣、後にマイナンバーカード担当大臣も兼務された大臣の補佐官をしておりました。その前は、世界的なコンサルティング会社のアジアのテクノロジーの統括をしておりまして、データ利活用に関して、日本だけではなく海外の知識経験を持っております。大臣補佐官退職後は、自分の会社を起業しまして、地方におけるデータ利活用の支援をしております。

 こうした経験を踏まえて、今日は三点、まず、現状認識、それから次に、今回の法改正に対する私の意見、最後に、今後の課題を申し上げたいと思います。

 まず、現状認識ですけれども、プライバシーあるいはセキュリティー等の個別の大事な論点はありますけれども、全体として、マイナンバー制度がどういうものなのかという共通認識があった方が建設的な議論ができるというふうに考えて、申し上げます。

 三点申し上げます。

 まず一点目は、海外と比較した日本の選択についてです。

 我が国の個人番号制度の導入は、御存じのように、かなり海外に比べると後発になります。そして、先行事例を見ますと、番号制度の導入の仕方、利用の仕方は非常に様々、幅があることが分かります。そうした中で、日本の選択については、御記憶かと思いますけれども、二〇一〇年に、専門家や様々なステークホルダーが参加をして、国民的かつ集中的な議論がされております。

 当時、個人番号の利便性、これと、それに対してセキュリティー、プライバシー等の不安、これは比例するという認識の下に、かつ、海外のベンチマークとして、利用範囲が小さく絞られているドイツ型、それから中程度のアメリカ型、それから大変広い範囲で利用されている北欧型、これを比較した上で、当時の議論を踏まえて、最も大きな利用範囲をやっていこうという選択がなされております。

 当然、さっき申し上げたように、情報管理のリスクが大きくなるわけなんですけれども、そこは、後発にやるということのメリットを生かして、分散型の管理方式、あるいは、国民が自分の情報をどう使われているのかが見えるようにすること、それから、確実な本人確認、データ利用に関しての。それから、法令により目的外利用を防ぐという様々な仕組みが、制度面あるいは運用面で導入されるということになりました。

 こうした選択がなされたわけなんですけれども、二〇一五年から導入された後、こうした仕組みは、必ずしも全てが円滑に動いていたわけではありません。そして、番号制度は、その関係もあって、限定的な利用範囲で始まっております。

 ただ、導入から八年がたちまして、さっき申し上げた分散型管理ですとか情報活用の見える化、国民への見える化、こうしたものが円滑に機能し始めたのが現時点の立ち位置だと思います。したがって、利用範囲の拡大というのが、今は好機、機が熟しておるというのが一つの現状認識です。

 二点目ですけれども、住基ネットからの歴史があります。

 これは、先ほど申し上げたように、国民的な議論が行われて、広い利用範囲、それに対して支える仕組みの導入が選択されましたけれども、二〇一五年当時、私は政府におりましたけれども、マイナンバー制度利用の拡大については極めて慎重でした。

 例えば、マイナンバー制度の利用範囲をつくっていく工程表、これは当然あった方がいいわけなんですけれども、当時、思い出していただくと、工程表はなかったんですね。自民党の部会が作った独自のもの以外はありませんでした。私は、補佐官として、要るだろうというのを関係者と議論したんですけれども、非常に慎重論が強かった。その背景としては、住基ネットに対する裁判等への懸念、記憶というのがありました。この慎重な姿勢は理解できるところがあります。

 合理的なところは、さっき申し上げたように、利用範囲が広い、それに対してプライバシー、セキュリティーの仕組みというのがセットになっているわけなんですけれども、やはり、国民感情というものがあります。

 マイナンバー法案成立後、プライバシーですとかセキュリティーに対して国民が不安を感じるような事案が次々と発生しています。

 御記憶かと思いますけれども、代表的なものは、二〇一三年、Suicaの利用履歴データの販売が大変な社会問題を起こしました。それから二年後、二〇一五年には、日本年金機構の情報漏えい、これは百万人単位で起こったということで、これらはマイナンバー制度とは直接関係はありませんが、データ利用について国民感情にネガティブな変化が起こったことは、様々な調査から明らかになっております。

 そうした中、二〇一九年に、様々な検討を経てようやく、今度は政府がマイナンバー制度のロードマップを作成をしました。当時、情報連携も期待どおりには動いておりませんでしたし、マイナンバーカードの申請も低迷しておりました。マイナポータルも全く使われていないという状態で、政府には大変な危機感があったと思います。

 そこから、ロードマップを作って、徐々に関係組織の歯車が合い始めて、情報連携の利用件数は大幅に、何億件ということで増加をしていますし、コンビニ交付サービス、これは毎年七百万人、八百万人の国民の方が使っている。

 そして、デジタル庁が発足してからは、ワクチン接種証明アプリですとか、最近ではマイナポータルの引っ越しワンストップサービスなど、利用が着実に広がっているというところがあります。

 利用によるメリットが国民に理解されれば、セキュリティーやプライバシーについての感情的な懸念、これは当然減少することが分かっておりまして、国民感情に今度はポジティブな変化が生まれているというのが現状認識だというふうに思います。

 最後、三点目の現状認識ですけれども、マイナンバー制度が生まれたときの国民に対する約束です。

 二〇一〇年当時、国民的な議論で強く打ち出されましたのは、行政サービスの利便性向上、それから行政の効率化という改善型の変化だけではなくて、縦割りの申請主義それから待ちの行政、これを横串が通ったプッシュ型の社会保障に変えるんだということが強く打ち出され、大変な期待があったわけです。

 現在、行政サービスの利便性向上や行政の効率化は、さっき申し上げたようにかなり進んでおりますけれども、プッシュ型の社会保障は、さっき森信参考人がおっしゃったように極めて限定的です。

 国民的な議論からもう十年以上たちますけれども、国民の仕事の在り方、家庭の在り方は非常に多様化しております。さらに、新型コロナウイルスですとか激甚化する災害などによって、多様化するニーズへの対応が急務になっているというのが現状認識かと思います。

 そうした現状認識から、今回の法改正について三つ申し上げます。

 一点目、利便性向上が適切かどうか。例えば健康保険証とのワンカード化、これは、二〇一〇年の国民的議論を踏まえて選択された利用範囲の中に収まっており、かつ、具体的な利用例として明示をされております。分散型管理ですとか、国民自らが情報活用をコントロールできる仕組み、こうしたものが円滑化された現時点において、適切かつ必要なことだというふうに思います。国家資格の確認や情報連携、氏名の振り仮名等も同様だと思います。

 二点目、マイナカードの普及策が適切かどうか。これは、確実な本人確認の仕組みが円滑化されましたので、在外公館ですとか、地方公共団体が指定した郵便局で、カードの交付ですとか電子証明書の発行ができるというのは適切だというふうに思います。

 三点目、公的受取口座の登録促進、これが適切かどうかということですが、これは、給付型事務が効率化するだけでなく、さっき申し上げた、国民に対する大きな約束であるプッシュ型の社会保障、これにつながるものですので、適切かつ必要であるというふうに考えます。

 最後に、課題について一点申し上げます。

 今回の法改正では、行政サービスの利便性向上や行政の効率化、これは、制度ができた、国民的議論のときの目標にかなり近づくと思います。ただ、さっき申し上げたように、プッシュ型の社会保障実現には至りません。

 システム的にはいろいろ条件が整ってきておりますので、さらに、どのような法改正がプッシュ型の社会保障制度実現に必要なのかということの検討を是非加速していただければというふうに思います。

 以上、終了いたします。(拍手)

橋本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。牧島かれん君。

牧島委員 自民党の牧島かれんです。

 本日は、大変お忙しい中、長島参考人、冨田参考人、森信参考人そして太田参考人に本委員会に来ていただきまして、本当にありがとうございます。また、貴重な御意見をそれぞれの参考人からただいまいただいたというふうに思っております。

 このマイナンバー制度は、公平公正な社会をつくっていくんだという大きな目標が掲げられています。そして、行政の縦割りを打破していく、効率化していく、そして国民一人一人も利便性を感じられるものになっていく、こうした三つの大事な概念が含まれておりますが、ややギャップが生じている部分があるとするならば、この公平公正な社会とか、国民の利便性、行政の縦割りの排除、みんな賛同しているんだけれども、それがマイナンバー制度によってつくられていくものだという認識がまだ国民の皆様に十分に伝わっていない、ここにギャップがあるのではないか、これを埋めるために私たちは努力をしなければならないですし、参考人の皆様からの御知見も頂戴したいというふうに思っております。

 少しいい兆しがあるかなというふうに思っておりますのは、私自身も訪問いたしました北海道の北見市、ここでは、書かない窓口と通称言われている自治体の窓口DXが進んでいます。

 これは、住民の皆さんが手間だなと思っていた、役所での、いろいろと住所や名前や電話番号を書かなきゃいけない手続がなされないで済むようになる、又は、複数の窓口を回らないで済む、そして待ち時間が短縮される、書かない、回らない、待たないという役所が実現できる。

 これは、住民の利便性向上のためにも求められているし、行政の効率化のためにも必要な施策であると同意をされる方は多くて、デジタル田園都市交付金の中でも、タイプ1として紹介されたところ、多くの自治体が採用される横展開が進んでいます。

 この先に何が来るかといえば、恐らく行かない市役所ということになるんだと思います。スマホの中で、手のひらの上で、六十秒で行政手続が完結できる世界を目指すんだということは、かねてより、平井初代大臣の頃から何度も私たちは繰り返し申し上げてきた未来像であります。

 太田参考人は、未来像をプロトタイプしていくというところの専門がございますので、是非お話をお聞かせいただきたいと思うんですけれども、この将来像は、皆さん共有していただく、その基盤がマイナンバー制度である、ここを御理解いただくために、この八年間を振り返ってみて、これから私たちがしなければならないことは何なのか、課題はどこにあるのか、御説明をいただければと思います。

 太田参考人にお願いします。

太田参考人 御質問ありがとうございます。

 八年間で利用は着実に広がっています。さっき申し上げたように、コンビニ交付は七百万人使っておりますし、あとは、e―Taxは一千万人以上使っているというような数字はあるんですけれども、なかなかやはり数字だけでは実感できない部分もあるんですが、一つには、やはり広報をもう少しうまくやるというところはあると思います。

 そこは、デジタル庁がかなり分かりやすい資料、やはり国が出す資料というのは非常に文字が多くて、曼荼羅と言われるように分かりにくいのが、非常に分かりやすい、グラフィックも含めたものがあるというのが一ついい変化だと思います。

 二つ目は、私は今、地方でいろいろ仕事をしておりますけれども、国民の方から近い、住民の方から近いのはやはり基礎自治体になりますので、マイナンバーカードを交付するのも基礎自治体になりますので、基礎自治体が、もう少し住民の方に手触り感のあるビジョンをつくって、それを着実に実現していくというようなことがあると思います。

 これまでは、やはり、マイナンバーカードの交付が大変だ、大変だということばかりで、なかなかそういうビジョンを発する自治体も非常に少なかったんですが、例えば、一ついい例として申し上げると、群馬県前橋市ですね。ここは、ビジョンを市民の方、民間企業も参加してつくって、そこの中核にマイナンバーカードがある。

 これによって、住民一人一人にパーソナライズされた、行政サービスだけではなくて、公民連携した、例えば移動ですね。例えば、要支援の方というのは便利な移動が受けられる。そういうものが少しずつ実現されて、近未来の、視覚障害のある方のサポートなんかも、マイナンバーカード、マイナンバーと連携してできるというビジョンが出ていますので、こういう身近な基礎自治体が一つ一つ、具体的なビジョン、それからそれを実現していくというところが大変重要になってくるというふうに思います。

 以上です。

牧島委員 太田参考人、ありがとうございます。

 それぞれの自治体が、一番身近なところでビジョンを提示する、そして広報活動もしっかり行っていくということだと思います。

 冨田参考人にお尋ねしたいのですけれども、まず、「マイナポータルを使ってできるあんなことやこんなこと♪」「マイナンバーカードがあればいろんな手続きがスムーズに行えるよ。」というこの広報、すごくいいものだと思っております。

 今御指摘あったとおり、広報活動が重要になる中で、特にこのチラシでは、「人生におけるマイナンバー活用シーン」で、「〇歳からつくれるよ。」というところから始まって、進学、就職、結婚、引っ越し、妊娠、出産、育児、これは手続をするのが大変面倒くさいんだよねと皆さんから寄せられる、その一つ一つの人生ステージにおいて、マイナポータルを使うと便利になる、マイナンバーカードがあると短縮された時間の中で効率的に実施することができる、そして退職後も、介護保険の手続などもありますと。

 このチラシを作ることに至った経緯、こういう人生シーンを描くことがいいのではないかといったような議論がなされていた理由などがあれば是非御紹介いただきたいのと、それから、今、マイナポータルでは、見つける、調べる、忘れないをサポートするということでアップデートがされている最中でございますので、もっとこうなったらいいなという御意見もありましたら、是非アドバイスをいただきたいと思います。

冨田参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 このチラシを作るに至った経過なんですけれども、私ども、政策実現のために地方連合会や構成組織と本当に多くの話合いをするんですが、そのときに、マイナンバーカードを使った様々な我々の政策実現するための話をしますと、いや、マイナンバーカードって怖いでしょう、だって個人情報が抜き取られるし、持っても何に使えるか分からないから、メリットはどこにあるのというような声を大変に多くいただいています。

 これは恐らくデジタル庁の調査に出てくる結果ともリンクするものだと思っていまして、いや、そんなことはないんだ、情報は抜き取られることもないし、むしろメリットは、持っていれば、要は、出産から、最後、退職まで、こうした手続が一貫にできるんだということをできる限り分かりやすく、皆さんに身近に、そして、お子さんが手に取って、何か作れるらしいけれども、お父さん作ってよ、お母さん作ってよ、そうしたような身近なものが作れないかというような経過があって、こうしたチラシを作らせていただきました。

 なので、見ていただきますと、できるだけ文字がなく、絵で分かるように、それから一連の流れが分かるように、そしてセキュリティーに関する情報なども入れさせていただいたことになります。

 先ほど御意見いただきました今後に対する御要望なんですけれども、ただ、まだまだマイナンバーの活用シーンがあるのではないかというふうに思っておりまして、例えばなんですが、引っ越しの場合は、転出届の提出はスマートフォンでできるんですけれども、転入届は実は役所に行かないとできないということで、引っ越し手続、スマートフォンというか、マイナポータルで完結できないようになっていますので、例えばこうしたことができるようになるですとか、あとは、比較的高齢者の方が、スマートフォンでマイナポータルにアクセスするときに、どうしてもICカードの読み取り方が難しくてアクセスが難しいといったような声も聞かれますので、こうしたことに対しての利便性の向上なども御検討いただけるとありがたいと存じます。

 ありがとうございました。

牧島委員 貴重な御意見、ありがとうございます。

 引っ越しのところは、まさに三月、四月、進学や就職で動きがあるさなかですから、いろいろな具体的な御意見も現場から聞こえてくるところだと思います。引っ越し先の役所の予約まではスマホでできるんだけれどもというような御意見もあると思いますので、より自治体窓口のDX化が進められるようにしたいと思います。

 また、御高齢者の方の、読み込む場所がスマホの機種によって違う、それも分かりやすく提示するようになってはいるものの、もう少し工夫ができるように、常にアジャイルで開発をしていきたいなというふうに思ったところでございます。

 少し個別具体のお話に移らせていただきたいと存じます。太田参考人に御質問いたします。

 今回、この法改正で、国家資格と各種免許の管理のデジタル化が進められるというふうに感じています。今は、国家資格の登録、まず資格を持っている方と、それを管理される方と、そして行政と、プレーヤーと言われる方たちが三者おられるわけですけれども、郵送で送らなければならなかったりとか、また手続を窓口でしなければならなかったりで忘れがち、又は、当該本人がお亡くなりになったときに、御家族がその死亡届を管理をされている団体に出すのを忘れてしまうということも当然考えられる。こうした管理を徹底するための、国家資格等情報管理連携・活用システムというものを位置づけなければならないということだと思います。

 また、今、引っ越しのお話もありましたけれども、自動車の登録、これも、国土交通省さんが住所変更の履歴を確認するのではなくて、もっとシンプルなやり方ができるはず、住民票を取得しないでもできるというような、こうした具体的なユースケースを通じてマイナンバー制度の御理解を広げていきたいということになろうかと思いますが、この辺り、ユースケースについて、そしてそれを通じた促進の考え方について太田参考人に御質問いたします。

太田参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃったように、国家資格は、マイナンバーにひもづいて確認できるというのは、使う側、資格を持っている側、それから行政側、手間が省けるという非常に分かりやすいメリットもあるんですけれども、今後、社会がデジタル化していく中で、いろいろなサービスが、専門家、例えば病院の先生だったり、あるいは何かの資格を持っているという方から提供されるわけなんですけれども、対面で提供されている場合と比べて、オンラインになると、本当にその人が資格者なのかということの確認が非常に難しいですし、あたかも資格があるかのように、悪意を持ったサービスを提供するということも非常に簡単になってくるということがあります。

 まさにデジタル社会においては、この人はどんな人なのかというのをしっかりとひもづいた形で確認できるというのは、そういう利用者の被害、トラブルを防ぐということで、非常に将来的にも大事になってくるというふうに思いますので、今回、利用を拡大したというのは、デジタル社会になるということを見据えると、手間を省く以上のメリットが今後生まれてくるというふうに考えております。

 以上です。

牧島委員 本人確認がより一層重要になってくるという視点からの御紹介をいただきました。

 もう一点、太田参考人に、政府委員にもなっていただいていて、いわゆる振り仮名問題、読み仮名問題というところにも関わってこられております。コメントもしていただいております。この法改正によって、そこも整理をされていく。私たちの長年の実現すべきゴールが近づいてきているという思いでおりますけれども、この点もコメントいただけますでしょうか。

太田参考人 御質問ありがとうございます。

 振り仮名問題、これはまさにデジタル庁ができてよかったというふうな一つなのかなと思います。

 と申しますのは、やはり、例えば、金融機関というのは振り仮名を使っているわけなんですけれども、行政に振り仮名がない、あるようでないという非常に中途半端な状態があるわけですね。あるんだけれども、これは正式なものじゃないということをずっと言ってきたわけです。

 これに関しては、結構関係省庁の議論がずっとあったというのを私も承知しておるんですが、なかなか前に進まなかった。ここをやはり規制改革のミッションも負ったデジタル庁ができたことによって、ある種、ちゃんと方針がつけられたということは、大変、デジタル庁ができた意義だというふうに思いますし、いよいよ給付金の給付ですとかいろいろ動く中で、金融機関が使っているような振り仮名、読み仮名がちゃんと行政の方でも使えるということも非常に大きいですし、そのほかの仕組みも読み仮名を使うものが結構多いので、情報連携、データ連携という意味でも今回は大変インパクトがある改正だというふうに考えます。

 以上です。

牧島委員 ありがとうございます。

 今、給付金のお話もありましたので、森信参考人にお尋ねしたいと思います。

 公金の受取に当たって、コロナ禍ですごく手間がかかった、時間がかかった、もっとデジタルだと早いと思ったのにという御意見をたくさんいただきました。そのボトルネックになっていたところは、やはり、口座一つでいいので、公金を受け取るための口座を登録しておいていただければ早くお届けができたはずだということで、実は、閣法で公金受取口座の登録の法律ができ上がる前に、議員立法で、超党派で提出をさせていただいた経緯もありました。

 なので、是非、森信参考人、この公金受取口座の登録をすることによって、被災されたとき、コロナだけではなく、パンデミックだけではなく、自然災害に遭ったときにも、住民の皆さん、国民の皆さんにとって、いち早く、迅速に正確に受け取る制度なんだということをどのように伝達をする必要があるのかということと、それから、先ほど太田参考人からも御指摘のあったプッシュ型支援の在り方についても、御所見をお聞かせいただければと存じます。

森信参考人 お答え申し上げます。

 今御質問の最初の点ですが、公金受取口座の登録ということにつきまして、私は大賛成であります。

 私の考え方はもっと幅広く、これからも第二段階、第三段階が進んでいくと思いますけれども、やはり、銀行口座に付番をするということはどこの国でも行われておりますし、元々、番号制度というのは、私の理解では、税の総合課税をするために導入されているんですね。つまり、利子所得というものを把握するために番号をつけて、勤労所得と併せて総合課税にするというのがそもそものこの番号の始まりなので、アメリカでもそうですし、イギリス、フランスでもそうですが、そういう観点からいきますと、この利子を生む金融機関の口座には、やはり番号というものは、非常に相性がいいと言うとちょっと語弊がありますが、フィットするものではないかというふうに思っております。

 これからも、公金受取口座だけでなくて、次の段階で金融機関に義務を課しながら付番が進んでいくと思いますが、私は、口座付番を更に進めて、やはり国民の、これは別に国が国民の資産を管理するという話ではないと思いますが、資産状況を勘案するような給付もあり得ると思いますので、そういうふうに進めて、お願いできたらいいなというふうに思っております。

 それから、二番目のプッシュ型なんですが、これは、プッシュ型の給付ということで、いろいろ考えられますが、私も、北欧の例なんかを見ていますと、例えば、本人がある一定の年齢になれば、自動的にいろいろな制度が受けられるようになり、修学のためのいろいろな制度が受けられます。日本でも幼児教育のためのいろいろな支援がありますが、そういったものが、手続が全くなくて、国側が持っている情報に基づいて、何年何月にあなたが何歳になるので、むしろこういう給付が受けられますよという、まずお知らせが入って、そのお知らせに基づいて申請をすれば、その給付金が受け取れる。それから、一番最初の反応というのが、国から、あなたの息子さんが何歳になりましたから、こういうふうな手続をしてください、そうするとこういう給付が受けられますよという親切なメールが来るということで、それがやはりプッシュ型の一つの代表例かなというふうに私は思っております。

 以上でございます。

牧島委員 マイナポータルなどで、忘れないをサポートする、その先を御示唆いただいたように思います。

 残りの時間、長島参考人にお伺いしたいと思います。

 医療DX推進に向けて、力強い御所見を頂戴いたしました。マイナ保険証があることによって自分自身の健康管理ができるようになる、さらには、災害時も、仮に持っていなくても、しっかりとお薬の履歴を医療従事者の方に確認いただけるといったようなユースケース、事例も紹介をされているところであります。

 ただ、一方で、御指摘があったとおり、持続的な支援が国には求められるという御指摘もございました。医療DXの今後の未来像、そして国に求められる支援、どのようなものなのか、もう一度御説明をお願いできればと思います。

長島参考人 ありがとうございます。

 医療DXは、今後の日本の医療を更に支えて、国民の皆様により安全で質の高い医療を提供するために最も重要な基盤になるというふうに思いますので、これは是非推進すべきと思います。

 ただし、目的が医療の提供ですので、医療を提供する側に大きな負担がかかり過ぎて肝腎の医療が提供できないとなってしまっては、これは本末転倒かと思います。

 そういう意味では、三つ重要なことがあるかと思います。

 IT、デジタル化は目的ではなくて、あくまでも道具ですので、できるだけ使いやすい道具にしていただくということ。それでも、どんなに使いやすくしても、やはりお使いになれないという国民の方、あるいは医療関係者が出てきますので、そこをしっかりとサポートしていただくということ。それから、ITリテラシー、リテラシーというのは単なる技術ではなくて、その医療情報はどのように大きな意味があるのか、メリットがあるのか、逆にリスクがあるのかということを十分御理解した上で活用していただく、この三つを国としてしっかり進めていただくということが重要かと思います。

 そして、医療機関、薬局、介護施設などが負担のために肝腎の業務ができないということが決してないように、きめ細かく、丁寧に、そして持続的に支援していただく。例えば、導入、維持、あるいはサイバーセキュリティー対策等には多大な費用も発生しますので、ここのところ、本来はやはり国が全額支援していただくというようなこと、あるいは様々な環境整備も支援していただくということが重要ではないかと思います。

 そのように支援していただくことで、国民の皆様にしっかりとした医療を提供してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

牧島委員 時間となりました。

 大変貴重な御意見、誠にありがとうございました。

橋本委員長 次に、坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 立憲民主党の坂本祐之輔でございます。

 参考人の皆様におかれましては、御多用の中御出席をいただき、誠にありがとうございます。

 限られた時間でございますので、早速でございますけれども、質疑に入らせていただきます。

 まず初めに、参考人の皆様方、冨田参考人、長島参考人、森信参考人、太田参考人にお尋ねをいたします。

 マイナンバーの利用拡大やマイナンバーカードの普及につきましては、マイナンバーに対する国民の不安を払拭して、理解を得ながら、丁寧に進めていくべきものであると考えます。しかしながら、政府の進め方は、私にとりましては逆のように思えてなりません。健康保険証の突然の廃止を含む今回の改正案は、かなり強引ではないかと考えております。

 しかしながら、このことによって国民のマイナンバーに対する不信感を更に強めて、マイナンバーカードを持つ人と持たない人、また、マイナ保険証を持つ人、持たない人の分断をあおってしまっているのではないかとも思えて、残念でなりません。

 このような政府の進め方につきまして、それぞれの参考人から簡潔に御見解をいただきたいと存じます。よろしくお願いします。

冨田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 健康保険証の廃止など、少し唐突な政府方針の発表、報道が、国民や医療を受けられる方にとっては大変な混乱になったかというふうに思ってございます。

 特に、マイナ保険証に関しましては、我々の元にも、子供はどうなるのか、マイナ保険証を取得しても本当に使えるのかといったような疑問の声が寄せられておりましたので、審議会の中では、連合の委員から、やや唐突感が否めないと率直に申し上げさせていただいたところです。

 先生の御指摘のとおり、マイナンバーの利用の拡大やマイナンバーカードの普及に際しては、やはり、いまだ残る根強いマイナンバーカード制への不安や誤解を払拭をし、国民の理解を得ながら、丁寧に進めていくべきだと考えてございます。何のためにこうした施策を推進するのか、そのことを国民の目線に立って分かりやすく示していくことが大事だというふうに考えてございます。

 以上でございます。

長島参考人 医療DXは、スピード感を持って展開するということが重要とは思いますが、一方、拙速となって混乱や支障が起こることも決してあってはならないと思います。

 そういう意味では、一体化に関わる検討会で示された課題として、特に国民あるいは医療現場に、その意義、メリットを十分理解していただくことが最も重要とされておりますので、そこのところ、国としても、しっかりと丁寧な周知、そして心に届くような説明をお願いしたいと思います。日本医師会としても、その辺り、しっかりと協力させていただきます。

 以上です。

森信参考人 お答え申し上げます。

 私は、先ほど申し上げましたように、やはり、マイナンバーを社会保障給付にうまく活用していくことが、国民の理解を得られる最大のポイントになるのではないかというふうに思っております。

 今まで、行政面での、手続面での活用というのは大変進んできたというふうに思いますが、もう一つ、給付につなげるという点ではやや遅れているのではないかと思っておりまして、そこを改善することが必要かなというふうに思っております。

太田参考人 海外と比べての日本の位置ということでお答えしたいと思いますけれども、一億人規模でマイナンバーカードのような本人確認手段があり、それを使って健康保険資格等を確認できる国というのは日本しかございません。数百万人の北欧の国等ではできますけれども、もう桁が二桁違うというところであります。ですので、非常に、世界中、誰もやったことがないことをまずやっているんだということを認識する必要があるかと思います。

 ただ、その中で、日本が一つ世界に誇る成功体験がありまして、それは、デジタル庁の検討会でも確認されましたが、アナログ停波という、これまた各国が非常に苦労している。もうテレビは国民全員が見るものですから、どの国でもアナログ停波というのは大変苦労しているんですけれども、それも極めて短期間に、世界中がどうやったのというふうに質問に来るレベルでやったというのが日本であります。

 ですので、健康保険証についても、アナログ停波と同じようなチャレンジだということを認識して、やはりそれは行政だけではなくて、業界団体それから国民も、一丸となって同じように取り組んでいくというような位置づけで進んでいくというのが、今後の方向かというふうに思います。

 以上です。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 それでは、続きまして、冨田参考人にお尋ねをいたします。

 給付つき税額控除の導入について、マイナンバーの必要性が指摘されてきました。マイナンバーの利用範囲が拡大されることで、給付つき税額控除の導入に向けた環境整備が進んでいると考えます。給付つき税額控除の導入について、御見解をお伺いいたします。

冨田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 連合は、効果的、効率的な低所得者への支援策として、マイナンバーを活用した給付つき税額控除の仕組みを構築をし、その具体的な制度として、就労支援給付制度と消費税還付制度を導入すべきであると考えてございます。

 就労支援給付制度というのはどういう制度かと申し上げますと、労働者が負担する社会保険料、雇用保険料の半額相当分を所得税から控除をし、控除できない部分は還付する仕組みでありまして、低所得被雇用者の税負担だけではなく、保険料の負担の軽減にもなると考えてございます。

 先ほど森信先生からも同じようなお話ありましたが、今言われているような壁の問題を解決するときに、こうした仕組みをセットで導入することが、より効果的ではないかというふうに考えてございます。

 また、消費税還付制度とは、基礎的消費に係る消費税負担分を支給する仕組みです。基礎的消費というのは主に食費になりますが、この消費税還付制度によって低所得者に限定した給付を行うことで、消費税の逆進性への対策としても有効であると考えており、この制度の導入を考えてございます。

 ただ、これを導入していくためには正確な所得把握が大変大事になりますので、先ほども森信先生おっしゃっておられましたが、やはり全ての預貯金口座に対してひもづけをしていくような取組も併せて必要だというふうに考えてございます。

 以上でございます。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 それでは、続いて、冨田参考人にお尋ねをさせていただきます。

 氏名の仮名表記の追加についてですけれども、法案の中では「一般に認められているもの」とありますが、当て読み、当て字や、いわゆるきらきらネームについてはどのようにお考えになるでしょうか。また、自治体における登録の際に、課題等はあるでしょうか。

冨田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 冒頭の陳述のときにも申し上げましたが、名前につきましては、命名文化を否定をしたり、その創造を制約するものではなくて、やはり、歴史的経過などを踏まえた対応が求められるというふうに考えてございます。

 一方で、今後、読み方の届出を受理し審査するのは、戸籍の窓口で行うことになります。戸籍窓口において統一的に円滑な審査ができるような内容の通達等が作成されると聞いておりますが、受理する側の戸籍窓口と届ける国民、双方にとって分かりやすい通達などを作成をし、周知徹底していくことが必要と考えますので、この点についても御議論など、よろしくお願いをしたいと存じます。

 以上でございます。

坂本(祐)委員 それでは次に、森信参考人、太田参考人にお尋ねをいたします。

 森信参考人と太田参考人は、マイナンバー制度の見直しを検討するマイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループの構成員であると承知しております。このワーキンググループの中で、公共サービスメッシュという仕組みについて検討されていらっしゃるとのことです。

 この公共サービスメッシュは、各機関の個人情報を集約をして、そこに各機関が情報を取りに行く仕組みとなっているとのことで、マイナンバー制度の分散管理の原則を変更するものになるのではないかと考えておりますが、このことにつきまして、検討状況や分かることがありましたら、御教示をお願いいたします。

森信参考人 お答え申し上げます。

 私は確かに構成員になっておりますが、技術屋ではないものですから、公共サービスメッシュの中身のシステムについては余りよく承知していませんが、私が理解している限りは、あくまで分散管理。一元管理を排除して、自治体の中で、しかし、今、ばらばら、縦型に、隣の課も違うシステムを使っているようなところをきちっと整備をしていこう、それで国のガバメントクラウドにうまく接合させていこうと。これがないと、繰り返しになりますが、適切な給付が実はできないという意味で、そういう給付なんかのシステムのインフラをつくるものだというふうに考えております。

 以上です。

太田参考人 公共サービスメッシュに関してお答えいたします。

 私の意見も、最初のマイナンバー制度の設計思想である分散型管理、利用範囲が広いので分散型管理をするということは堅持されると思っております。

 これまでの、ちょっと歴史を振り返ると、さっき申し上げた、特に二〇一五年の年金情報の流出問題、これを受けて、御承知かもしれませんが、自治体のシステムが大きく変わりました。

 これは、分離の原則というのが導入されまして、基本的に二〇〇〇年代の半ばから、LGWANというふうにアルファベットで呼ばれておりますけれども、自治体のシステムはインターネットから遮断されるという形で、日本年金機構の年金流出につながった例えばメールなんかも直接入ってこないという形になって、途中壁があって、その壁を通り越えないとメールも届かないということになっております。今、自治体でインターネットにつながっているのはホームページぐらいしかないというのが現状です。

 したがって、情報連携は非常に複雑なやり方をしておりまして、中間サーバーと呼ばれる特別なサーバーを立てて、そこに連携したいデータを副本として写して、それが分散されているわけなんですけれども、それがいろいろつながっているという大変複雑な仕組みになっておりまして、これはメンテも大変ですし、写していくのでデータの鮮度も低いという問題があります。

 昨今は、やはりクラウドという、クラウドというのは、建物の中にサーバーがあるのではなくて、ネットワークのところにサーバーがあるということなんですけれども、さっき申し上げた、インターネットから遮断されているということで、長らく行政システムというのはクラウドが使われないということになっておりました。

 これが、政府の検討の中で、こういう条件であればクラウドを使っていいよということが、ここ数年の間に、ガイドラインも含めて、調達方法、契約方法も整備されましたので、ようやくクラウドを使えるようになりました、行政もですね、というのが現状です。

 そのクラウドという技術を使って、これまでの中間サーバーという古いシステムをクラウドの方に移す、技術的な変更をするというのが公共サービスメッシュということになりますので、仕組み自体は分散型、ただし、それが古いサーバーではなくて、クラウドという新しい仕組みを使って、より低いコスト、それから便利さ、セキュリティーも上がるということで、いろいろ新しい技術の恩恵を得る形で分散型管理が進化するというふうに御理解いただければいいかというふうに思います。

 以上です。

坂本(祐)委員 ありがとうございました。

 それでは続きまして、長島参考人にお尋ねをさせていただきます。

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化につきまして、健康保険証が廃止された場合、外来の医療機関の現場としては問題ないのか。

 また、現場の開業医の皆様につきましては、健康保険証の廃止に賛成している方が多いのか、反対している方もいらっしゃるのかなど、日本医師会の中で意見聴取や調査等はされていますでしょうか。調査をされているようでしたら、おおむねどのような調査結果だったのでしょうか。調査されていないようでしたら、長島参考人のお分かりになる範囲でお答えいただければありがたいと存じます。

長島参考人 オンライン資格確認が原則義務化されるということを踏まえまして、日本医師会としましては、全国の会員に対してアンケート調査等を行いました。そこで、このような課題があるということが上がってまいりましたので、それをしっかりと整理して、それを、診療報酬等を決める場である中医協において、きちんとして資料として提供しました。

 それをきちんと踏まえていただいて、いわゆるやむを得ない場合に対する経過措置というものを決めていただいたというふうに考えておりますので、おおむねそこのところで対応していただいているとは思いますけれども、全国には様々な環境の医療機関がございますので、ここはやはり、しっかりとそこが、医療提供が継続できるように、今後も、様々な困ったことがないかということを日本医師会としても情報収集するとともに、それを国と共有したり、あるいは関連する様々な業界とも共有することで、そのような、取り残されるということが決してないように、しっかりと協力してまいりたいと思いますし、国にもそのような対応を是非お願いしたいと思っております。

 以上です。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いをいたします。

 続いて、長島参考人にお伺いいたしますが、オンライン資格確認システムにつきまして、不具合が生じることが多いと聞いておりますが、大規模な通信障害が発生する可能性もあります。不具合や通信障害で資格確認システムが使用できない場合、マイナ保険証だけでは資格確認ができないといった状況になることが考えられます。

 現状では、マイナ保険証を使用できないときには、現行の健康保険証で資格確認をしているとのことでございますけれども、健康保険証が廃止されてしまった場合、医療機関では何をもって資格確認を行うことになるのでしょうか。

長島参考人 障害が起こらないシステムというのはあり得ないと思いますので、そういうことはあり得るという前提で、今後、対応を考えていくべきかと思っております。ここのところに関しては、国ともしっかりと協議して、このような場合にどのような形で対応できるのかというところを整理する必要があるかと思います。

 そこのところを今、国にもお願いしているところですので、そこのところで医療機関にも国民の皆様にも、決して迷惑がかからないような方向性というのを求めてまいりたいと思います。

 以上です。

坂本(祐)委員 もう一件、長島参考人にお伺いをいたします。

 医療機関でのオンライン資格確認システムの導入につきましては、導入の期限が本年九月に延長されました。導入義務は変わっていません。システムを導入せずに閉院、廃業を予定している医療機関につきましては、来年の秋までは続けられるとのことでありますけれども、システム導入義務化がなければ診療を続けられるにもかかわらず、システムを導入しない又は導入できないために続けられないという医療機関もあると思います。そのような医療機関につきまして、どのようにお考えでしょうか。

長島参考人 先ほど、最初の意見でも申し上げましたが、誰一人取り残されない、ここは医療機関も当然含まれる。なぜなら、医療機関が地域医療を提供していますので、もしも地域医療の提供に支障が生じれば、国民、住民の皆様に不利益になるからです。

 そういう意味では、先ほど申し上げました、やむを得ない場合の経過措置というところで、おおむねのところは対応できているとは思っておりますが、その中の、経過措置の六つの類型の中の最後のところに、その他やむを得ない事情により困難な場合というのがございますので、こういうところで、今本当に困っているんだというような場合、これは是非、日本医師会としても様々な情報を集めたいと思っていますし、そこのところをしっかりと対応していただけるということ、これは国にも是非お願いしたいと思います。しっかりと地域医療が継続できるということが最も重要かと思っております。

坂本(祐)委員 それでは次に、太田参考人にお願いをいたします。

 地方自治体に大変詳しいというふうにお伺いをさせていただいておりますけれども、市町村によるマイナンバーカードの申請受付、交付体制強化、先ほど、中間とりまとめで示された、一体化に当たっての取組をされていらっしゃるということでございますけれども、市町村の負担、あるいは先ほどおっしゃっていただいた郵便局、こういった山間地域の郵便局とか、これからますますこの対応についての労力が必要である、混乱を来すことも考えられると思いますけれども、その点について、お考えをお願いいたします。

太田参考人 お答えいたします。

 御存じのように、マイナンバーカードは、大変、普及率、もう七割を超えておりまして、特に十八歳以上の国民に対してはほぼ一〇〇%に近い普及になっているということで、これは世界的にもやはり日本ぐらいしかないという状況かと思います。

 今後、例えばマイナンバーカードの裏についておりますICチップ、電子証明書、これは五回目の誕生日で切れますし、マイナンバーカード自体も十回目の誕生日で切れるということで、毎年一千万人近い更新が起こってくるというのが、もうこれから現実になってくるというところです。

 これを、やはり行政だけ、自治体だけでさばくというのは、現実的に、特に小さい自治体になってくると、もう悲鳴が今の交付段階でも上がっておりますので、更新が毎年物すごい数が来るというのはちょっと耐え切れないと。かつ、住民の方からしても、住んでいるところと働いているところが結構離れていたりしますので、やはり住んでいるところの自治体に行かなくちゃいけない、しかも土日やっていない場合もあるというときに、ではどうやって更新するの、その間、では病院に行けないのみたいな話も出てきますので、やはりその窓口を、例えば勤務先の自治体でもできる、あるいは自治体以外でもできるというふうに広げていかないと、せっかくいいサービスがあるのに、かえって不便になるというのが近々もう見えているというところでございます。

 そうした中で、やはり、全国に二万五千局、大体小学校の学区ぐらいの範囲で、ある。小学校の学区の意味は、高齢者の人でも歩いて行けるということですね。こういう場所は、もう郵便局しかないんですね。

 逆に言うと、郵便局はまだあるというのがやはり日本の強みだと思いますので、そこできっちり、公的権力、本人確認みたいなところと事務的なところを分けながら、今できている本人確認の仕組みを拡張していくというのは非常に国民のニーズにも応えますし、せっかく郵便局を維持してきた日本の強みを発揮するということになりますので、是非進めるべきだというふうに思っております。

 以上です。

坂本(祐)委員 参考人の皆様には大変にありがとうございました。

 以上で質問を終了させていただきます。終わります。

橋本委員長 次に、堀場幸子君。

堀場委員 日本維新の会の堀場幸子です。

 参考人の皆様に今日は本当にいろいろなお話を聞かせていただきまして、勉強になったなと思っております。まだまだ分からないこともたくさんありまして、本日は皆様からたくさんの御示唆をいただきたいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず一番最初に、長島参考人にお尋ねしたいと思います。

 全国医療情報プラットフォームを構築していただいて、そして医療のDXを進めていく、これは我が日本維新の会も非常に強く推進をお願いをしている分野でございます。

 そして、二〇二五年には大阪・関西万博がございまして、そこのテーマも、「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマを掲げさせていただきまして、その中でも、健康、医療というのは大きなテーマの一つとなっております。未来のヘルスケアとか、あとは最先端の再生医療とか、そういったことを、この万博を通じて世界中の皆様に見ていただきたいなと思っているところでございます。

 そして、それと同時に、それを実現していく、そして、それを普及して皆さんに、手元に届けるためには、医療DXが進んでいくということが非常に重要だと認識をしているんですけれども、医療のDXと、万博で行われる様々な最先端の医療、若しくはそういった未来のヘルスケア、そういったものに関する御所見をいただきたいと思います。

長島参考人 詳細な所見というのは持っておりませんが、今後の将来のヘルスケアにおいて、やはり医療DXというのは極めて重要かと思っております。

 一つは、いわゆる一次利用ということで、御本人のための医療に役立つということも重要ですが、もう一つが、二次利用ということで、いわゆるビッグデータ、リアルワールドデータとしての活用ということにも有効かと思います。そのようなものが未来のヘルスケアに大きく役立つかと思いますので、そのようなところで関係する可能性はあるかと思います。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 今、ちょっと違うところですけれども、内閣委員会の方でも、医療情報を、治療であったり新薬の開発に役立てるために匿名化をして、医療のそういったデータをやっていくというような法律の改正とかいう法律案というのをやらせていただきましたけれども、やはり、ここから日本が医療という分野で最先端になっていくということも重要ですし、それが、私たちの健康、そして元気でいられるということにすごく寄与するんだということ。そして、マイナンバーの、昨日さんざんマイナポータルについてやっていたので、この委員会の皆様にはちょっとあれなんですけれども、やはり、マイナポータルの中で自分の健康状態を見ていくことができる、こういった仕組みというのは非常に我々にとっても有用なんだなというふうに考えているところでございます。

 ですので、医療DX、是非どんどん推進していただいて、マイナンバー制度、そしてマイナポータルを使って、私たちとつながる、そういった医療を目指していただければなと思っております。

 そして、マイナンバー制度というのは、マイナンバー、マイナンバーカード、そしてマイナポータルという大きな三つの社会インフラから成立しておりまして、私は、昨日さんざんこの委員会でマイナポータルをやらせていただきました。そして今日は、マイナンバー制度自体について、ちょっといろいろお話をさせていただきたいなというふうに思っております。

 昨日の質疑で、私、大臣にもお聞きしました。やはり、社会保障・税番号大綱において、低所得の、資産も乏しい等、真に手を差し伸べるべき者に対して、給付を充実させる、社会保障をきめ細やかに、かつ、的確に行うということのために、受益、負担の公平性、透明性を高めようとするためにマイナンバーをやっているんですよねという質問をして、これには変わりないという御答弁をいただきました。

 やはりここが重要なところなんだなというふうに思っておりまして、私ども日本維新の会としても、ベーシックインカム若しくは給付つき税額控除というものをお約束をさせていただいております。

 ほかにも、解雇のルールであったり、そして労働の流動性、こういった観点からも、マイナンバーでしっかりと自分の労働、そしてそれが、税金を納めるときにいろいろなところに、労働して、働くとそれが大変手間なんですけれども、そういったものが簡素化されていく。そして、確定申告が非常に楽になって、それが給付につながっていくということもそうですし、やはり、先ほど森信先生がおっしゃっていた月次で切っていただくというのは非常に重要で、今、私たちは前年度の所得に対して給付をいただいているんですけれども、去年はすごく働いたけれども、今年はお金がないんだよねというときは、そのときはもらえないんですよね。

 去年、すごく頑張って所得が多かったから、でも、その仕事を失って今ちょっとお金がないなとか、フリーランスで、例えば、私は女性ですから、子供を産んでちょっとお休みしている時期で、お仕事をセーブしていたら、ちょっと所得が少ないけれども、去年の所得が多かったから給付が少ないとか、そういった現象というものが起こりますので、今、森信先生がお話しになられたということが非常に重要だなというふうにお聞きをさせていただきました。

 我が党のことを少しお話をさせていただくと、税と社会保障の一体改革というふうに言わせていただきまして、フェアでシンプルな仕組み、そして、それが成長戦略につながるという税制度への転換、若しくは、消費を喚起する、経済成長していく、そういった改革を目指しています。特に、課税のシステムを変えていこうということを言わせていただいておりまして、社会保障では、手元に残るお金を増やし、チャレンジできるセーフティーネットを引くんだというふうに考えています。

 その考えとマイナンバー制度の関連性、先ほど少しお話をいただいていたんですけれども、こういった税制度の改革とマイナンバー制度というものがどのような関係性にあるのか、森信先生、少し御説明をいただければと思います。

森信参考人 お答え申し上げます。

 給付つき税額控除というのは、私は実は十五年ぐらい前から提言をしておりまして、一時、法律にも既に書かれていることなんですが、現実にはいろいろなハードルがあって、なかなか進まない。この進まない原因は、やはりそれをやるためのインフラがないというのが大きな、これまでの政府の言い方だったんですね。

 ところが、今、今日、この場で皆様方がまさに御審議いただいているようなことが、マイナンバーの活用が進みまして、さらに二〇二五年には公共メッシュということで、いよいよそういうインフラが整う、そういうことになりましたので、私は、制度所管官庁はしっかり本腰を入れて、そういうところに、制度構築に向けて、いよいよ検討すべきだというふうに思っております。

 それで、ちょっと、御質問に適切に答えているかどうか分かりませんが、ポイントだけ申し上げますと、やはり今、非常に多いのは、いわゆるフリーランスの方とかギグワーカーとか、そういった方が増えているわけですね。そういった方の所得情報あるいは収入情報というのは、なかなか、個人事業主の方ですから、本人が申告していただかないと、税務当局もうまく取れないわけですね。

 そこで、私は、やはりこういう方の収入情報をうまく税務当局が取り込んで、その所得情報を、これは公共財として、いろいろな霞が関の官庁に提供するべきだというふうなことで、先ほどハブというふうに申し上げたんですね。

 それで、では、どうやって諸外国はそういうギグワーカーとかフリーランスの所得情報、収入情報を取っているかといいますと、やはりプラットフォーマー、ここを通じ、ギグワーカーというのは基本的にはプラットフォーマーを通じて単発のジョブを得て、収入を得ているわけですから、そういうふうなプラットフォーマーからきちっと日本も情報を取れるような、これは国税通則法の改正も必要になるかと思いますが、そういったことを整備して、やはり中低所得者の所得をたくさん集めていって、それは公共財なんだから各省で必要な制度づくりに使ってください、そういうような発想の転換が必要じゃないかと。それで、インフラがいよいよもうでき始めているということが一つ、大きな点じゃないかというふうに思っております。

 それから、イギリスなどは、オーストラリアもそうなんですが、リアルタイムインフォメーションといいまして、要するに、企業は、自分のところで働いている従業員、会社員、あるいは発注先の、特に従業員などは源泉徴収をしているわけですね、毎月支払うときに。その情報は今はマスで、毎月幾ら、自分の会社の従業員の源泉徴収をしましたということは国税当局に伝えているんですが、Aさん、Bさん、Cさんから幾ら取ったかという情報は、たしか伝えていないと思うんですね。だから、そういうところは、別に法改正が要るわけではありませんから、手直しをしていくと、リアルタイムで、リアルタイムといっても月ごとなんですが、月ごとで、そういう我々国民の収入情報、所得情報が国税当局に行く、それを必要なところで活用していく、そういうふうにすればいいんじゃないかというふうに思っております。

 ちょっと、御質問にうまく答えているかどうか分かりませんが、取りあえずこれで。

堀場委員 ありがとうございます。

 今、ちょっと、イギリスの例が出ましたので、もう少し教えていただきたいなというふうに思っています。

 私の理解で正しければ、今、勤労タックスクレジット、ワーキングタックスクレジットがイギリスではあって、それ以外にも児童のこととか、様々なものがいっぱいありますので、先ほどの先生のお話でも少し出ていましたユニバーサルクレジットに移行しようとしているところだというふうに理解をしております。ただ、これが余りうまくいっていないということもお聞きしているんですけれども、その辺りを少し教えていただけますか。

森信参考人 お答え申し上げます。

 今まで、勤労税額控除とか児童税額控除とか、いろいろ控除がたくさんありました、イギリスには。それで、これを、たしかブレアだと思いますが、ブレア首相が、全部一括してもっといいものをつくろうということでユニバーサルクレジットという概念ができて、今どういう制度かといいますと、つまり、ネットの収入の中から税、社会保険料負担を引いたこのネットの所得に、中低所得者には逓減型の給付を行うことによって、要するに、新しく働く人、主に専業主婦とか、そういった方が労働市場に入ってきたときに、税とか社会保険料負担が生じるので、何だこれは、手取りが増えないじゃないかというような、いわゆるポバティートラップを避けるために、そういう給付をすることによって皆さんが働くようになるということで、いわゆるトランポリン政策ということで労働党のブレアが入れたんですが、それがだんだんだんだん保守党政権に、キャメロンとか保守党政権に替わっても、これはいい制度だからということで、現在も続いております。

 ただ、これは膨大なコンピューターシステムなんですね。要するに、国民全員の収入と給付をつなぎ合わせるわけですから、それで時々トラブルが起きるということで、そういう意味ではうまくいっていないということは時々言われるんですが、制度全体としては非常に有効に機能しているというふうに言われております。

 それで、結局これは、そういうふうな、イギリスでは、特に毎月の情報が企業から国税当局に行きまして、すぐその情報が雇用労働省ですか、雇用年金省に行って、その雇用年金省の方で、Aさん、Bさん、Cさんごとに必要な給付額を計算して、それをその人の口座に振り込むということで、一応このシステムは回っているんですね。

 原則、このようなシステムは、ほかのヨーロッパ諸国でも大体同じようなものが入っているんです、まあイギリスが一番優れておりますが。それで、コロナのときの給付金なんかもこの制度を使ったものですから、もうイギリスでは、たしか二週間後ぐらいには給付金が振り込まれたというふうなことになっております。

 もう一つ、ちょっと追加させていただければ、アメリカでも似たような制度があるんですが、アメリカは、申告時に自分で、一年に一回の申告時に自分で申告して、中低所得者にはこれだけ還付をしてくださいという還付制度になっているんですね。

 そこで、ちょっとシステム自体は違うんですが、思想は一緒です。要するに、中低所得者が働き始めて、税金とか社会保険料負担が生じる、そこで、余りそれが労働阻害にならないように少し給付を与えて、そうやって全体を回していく、そういうふうな制度でございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 冨田参考人にお尋ねしたいんですけれども、今、こういう制度、先ほどおっしゃっていた給付つき税額控除もそうなんですけれども、やはりポイントは就労インセンティブだと思っています。この制度、マイナンバーを使ったこういった制度になることで、どのような就労のインセンティブがつくとお考えか、教えてください。

冨田参考人 ありがとうございます。

 今言った制度について、連合の中で、それらについてのメリットだとかデメリットみたいなものを余り議論したことがないので、直接的にお答えするのは難しいかというふうに思いますが、私どもが給付つき税額控除を先ほどから申し上げているのは、できる限りやはり労働参入する人たちを増やしていきたいということと、あとは、手元に、就労を継続するための支援をやはり税でサポートしていく必要があるからだというふうに考えております。

 私ども、税の考え方の基本に、公平、連帯、納得の税制というのを掲げておりまして、やはり連帯、支え合うという部分を税に求めてまいりたいというふうに考えておりまして、先ほどからこうした制度の必要性をお願いをさせていただいているところでございます。

堀場委員 ありがとうございます。

 本当は、もっといっぱいお聞きしたいことがあって、やはりこのデジタルセーフティーネットという考え方、これについても非常に、あとデータハブという、この二つが私はあと聞きたかったなと思っているところなんですが、森信先生にもう一つ、データセーフティーネット、この考え方についても少し簡潔に教えていただけますか。

森信参考人 お答え申し上げます。

 私が言っているデータハブの概念は、税務当局が番号をつけて、納税者の所得情報は全部一応持っているわけですね。それを給付といかに結びつけるかといったときに、一元管理はやはり憲法違反になるということで、自由にそれを所管官庁が取りに行けるようなハブをつくる。だから、管理はあくまで国税当局が管理をしていて、それを、必要なことに応じて取りに行けるハブをつくる。それは、やはり守秘義務とか目的外利用の問題がありますから、そういう制度をつくるときには、そういうハブのようなものを一応法律で明記して、この中でやりますよということがやはり国民には必要なんじゃないかなということで、ハブという言葉を使わせていただきました。

堀場委員 ありがとうございます。

 もうちょっとやりたいことがいっぱいあるので、ちょっと次に行かせていただきまして、太田参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。

 私、昨日の質疑で、マイナポータルの機能の中で、行政機関だけではなくて、民間とか市民団体とか、民間の皆さんに対しても、APIでつながっていくということ、提供していくということが非常に重要ではないかという質疑をさせていただきました。

 この辺りについてもう少し、太田参考人の知見の中での、もうちょっと民間とのAPIを盛んにしていくというポイントでお話をいただければと思います。

太田参考人 御質問ありがとうございます。

 実態として、マイナポータルのAPIというのは、たしか二〇一八年に実装されたんですけれども、全く使われていないというのが実態です。

 民間事業者に聞いてみると幾つか理由が挙がるんですけれども、まず、もう状況が変わったという前提でお話ししますが、当時は、やはりカードがまだ普及していない。マイナポータルを使う前提はカードですので、マイナカードが普及していないというのが一つ。二つ目は、非常に使いにくいということで、使おうと思っても途中で諦めてしまう人が非常に多い。これは例えば、いろんなところでひっかかるんですけれども、それが大きな理由ですね。

 ただ、使いたいというニーズはあって、例えば、代表的な例は電子母子手帳ですね。電子母子手帳は、代表的なサービスは、もう百万人単位で使っているサービスが民間にありますけれども、行政と連携して使われているわけなんですが、例えば、予防接種がいつなのかというのは自分で入力しなくちゃいけない。ただ、データは行政にあるわけですね。マイナポータルを通じて取り出せる。ただ、やはりカードがない、使い勝手が悪いということで全然連携してこなかったんですが、ここに来て、カードはもうほぼほぼみんな持っている、大変、今、デジタル庁の方で使い勝手もよくなっているということで、今後、API連携というので、例えば、自動的に電子母子手帳に、予防接種を受けたかどうか、次の予約はいつなのかというのがちゃんと連携されて入るようにこれからなるというふうに思いますので、残念ながら、これまでは、物すごい開発費をかけて全く使われていないという状況だったんですけれども、今後大きく変わるというふうに考えております。

 以上です。

堀場委員 ありがとうございます。

 私も、昨日の質疑で、マイナポータルが非常に使いにくいということをずっとやらせていただきまして、大臣の方からも、ベータ版が出ればきっと使いやすくなりますというお答えを頂戴しておりましたので、本当に期待をさせていただいております。

 今日は、参考人の先生方に、このマイナンバー制度でどんな未来があるのか、そして、どのような思いがあるのかというものをお聞きさせていただきました。

 やはりデジタル社会というものがもっともっと身近になるように私どもも頑張ってまいりますので、何とぞこれからも御示唆の方をよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

橋本委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。

 参考人の先生の皆様から貴重なお話をいただきまして、大変にありがとうございます。

 まさに、長島先生からは医療DXの必要性ということでお話をいただき、また、冨田先生からも、マイナンバーの活用による、医療を始め様々な国民の利便性の向上、そして、森信先生からはデジタルセーフティーネット、そういう言葉でいろいろ説明をいただきました。また、太田先生からは、デジタル化における行政の効率化やその改善と同時に、プライバシーの保護だとかセキュリティーの大切さということでお話をいただきました。

 まさに、マイナンバーの利用範囲を拡大したり、マイナンバーカードの機能を更に高めていくということによっていろいろな形での可能性が見えてくる中で、やはり、キーワードとして、そこまでいったら先ほどのデータ連携も進むし、いろいろな情報の機能も深まってくるとしたら、どこまでプッシュ型のサービスというか、とにかく申請しなければとか、どんどん行かなければではなくて、例えば、医療でも、プッシュ型で、こういうところを気をつけてくださいねとか、また、先ほどの給付もそうかもしれませんし、いろいろな情報とかいろいろなサービスがプッシュ型で来るということは非常にありがたいことである。

 一方で、プッシュ型を実現しようとすると、それなりに、どういう方にこのサービスが必要なのかという部分では、情報をしっかりと掌握をした上で、必要な方と必要でない方をある程度分けるという形でやらなければならないということで、プッシュ型サービス、私は、もう大変便利でいいなと思う一方、その導入についてはもう大変難しいところがあるかなと。

 口座の情報もなければプッシュ型はできないですし、また、医療情報にしても、きちっとした医療情報が把握されていないと何をどうしたらいいか分からないなど、あるいは、所得にしても、家族の状況だとかもないとできない場合もあるということで、こういった課題について、太田参考人、森信参考人、冨田参考人、長島参考人の順で聞かせていただきたいと思うんですけれども、まさに今後データ連携が進んで様々な機能が高まってくる中で、プッシュ型サービスというものを導入する際の課題と留意点等につきまして御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

太田参考人 お答えします。

 幾つかの観点があると思うんですけれども、まず三つ、ちょっと申し上げたいと思います。

 一つは、やはり行政側に、DX、DXというふうに言いますけれども、いわゆるXは何かというと、仕事の仕方を変えるということがX、トランスフォーメーションになりますけれども、なかなか動機が弱い部分があるというふうに思います。

 例えば、例を挙げますと、実際実現しましたが、児童手当の資格確認ですね。これは行政が情報を持っているわけですから、横に連携すれば。ただ、縦に見ると、申請してもらわないと受けられませんという話になるんですが。これを変えていくのが、やはり行政が仕事の仕方を変えて横に連携をすれば、資格確認なんかしてもらわなくてもこっちで分かりますよというようなことなんですが。しかも、それは検討会で提言されたのにもかかわらず放置、私はこれは放置だと思いますけれども、放置されていた。

 こういうのを、DXのXで仕事の仕方を変えようということをちゃんと行政がやっていく。もう自分の仕事である、従前の、法律にのっとって毎年仕事をしていったらいいということではなくてXをやるんだということが、やはり、政府もそうですし、自治体の方もXをやるのだということを進めていくのが一つだというふうに思います。

 二つ目は、やはり、プッシュ型のためには、まさにおっしゃるように、国民のデータを行政が使うということになりますので、信頼関係ということが大事になってきます。

 ただ、国際比較をしますと、これはデータでもうずっと出ておりますけれども、国民の政府に対する信頼というのは、欧米あるいは中国に比べても、日本の場合は残念ながら低い。これはもうデータで出ております。これに対して、一つ希望は、実は自治体に対する国民の信頼は高いんですね。これは日本の特徴です。

 したがって、さっき申し上げたように、やはり、マイナンバーカードを、あるいは行政データを使って、プッシュ型のサービス、いいものがありますよということを具体化していくときに、自治体が先導する、実績をつくっていくというのが極めて大事で、そこに信頼関係があって、その基盤はマイナポータルという形で国がつくっているということであれば円滑に進むと思うんですが、いきなり、国が全部つくりました、自治体は使ってください、その先に住民がいるという順番でこれまでやっていたので、何か信用できないというような展開になっていましたので、自治体起点でプッシュ型を進めていくというのが大事だというふうに思います。

 最後に、どうしてもやはりデータ流出ゼロということはあり得ませんので、流出するときの対策について、しっかりとBCPですとかルールを作っていくというようなところ、データが流出したときにどう対応するんだということをちゃんと各政府の府省ですとかあるいは自治体が訓練をしていくというのが三点目としては非常に大事だというふうに思います。

 以上です。

森信参考人 お答え申し上げます。

 プッシュ型というのは物すごく概念が広くて、単にお知らせというだけから、もう何もやらなくても給付が届くという、広い概念なんですね。

 私、一つここで申し上げたいのは、私は税務の専門なものですから、プラットフォーマー等々からマイナポータルに情報が入ってくる、つまりe―Taxというシステムについてちょっとお話を申し上げたいんですね。

 これは、実は記入済申告制度というふうにヨーロッパでは呼ばれていまして、要するに、国税当局は、番号をつけて、私のいろいろな情報を持っているわけですね。例えば、単に給与所得だけじゃなくて、どこで講演して、どこで幾ら講演料をもらっているかというのは全部一応持っているわけなんです。そういう持っている情報は、申告のときに国税当局から納税者にまず返してくださいよと。返すというのがこれはヨーロッパの原則になっているんですね。

 したがって、ヨーロッパでは、申告の一か月ぐらい前でしょうか、私に関して国税当局が持っている情報が、ばっと、私のポータル、あちらではポータルじゃないと思いますが、私のところにメールで返ってくるんですね。それをチェックして、記入漏れがないかどうか、それから、事業所得なんかは経費がやはり、経費は国税当局に分かりませんので、自分で計算して、記入して、そして申告をするというふうなことで、要するに、国が持っている、あるいはどこかが持っている情報は申告のときに全部私が入手できるようにするというふうな制度が、これから日本でもやるべきだと思うんですけれども。

 それについていろいろ進んできているのがAPI連携で、去年からですかね、例えばふるさと納税のときに、必要な控除証明書が、さとふるとかそういったプラットフォーマーから私のところに、申告に当たってデータで連携されて取れるようになっているわけですね。

 それから、もう数年前から、いわゆる年間取引報告書という、証券会社で取引したいろいろな配当とか株式譲渡益の情報も、データで私のところに来るように、取れるようになっています。それが自動的に申告につなげられるようになってきて、そこの部分がだんだん進んできているんですね。

 それをもっと進めていく。例えば、先ほどちょっと申しましたが、私がギグワーカーだった場合には、私が幾ら、いろいろな店でこれだけ、ウーバーイーツの配達料をもらったかどうかというのが、分かるのはプラットフォーマーですから、プラットフォーマーから私にマイナポータル連携で、API連携で情報として入ってくれば、それを私は申告につなげる、すごく簡便なことができると思うんですね。

 そういった意味で、プッシュ型といっても物すごく概念が広くあるので、個別的にやはりピンポイントして制度を進めていくことが必要ではないかというふうに思っております。

冨田参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 私も、大きくは二点あるのではないかというふうに考えてございます。

 プッシュ型に限らず、マイナンバー制を使って様々な情報を収集するということは大変多くの個人情報が集積されることになりますので、特に個人情報の管理体制を強化することと安全性を担保すること、これがまず大変重要だというふうに思ってございます。

 大きく二点目なんですけれども、何をプッシュしてお知らせをするのかということなんですが、これは、どういう情報を選択するのかということも大変重要ですし、どういうところを通じてプッシュされるのかということも大変重要かというふうに思っております。なかなか、全ての方がデジタルに接しているわけではなくて、私ども、誰一人取り残さないという観点からすれば、やはりこのことが結果としてデジタルデバイドなどを引き起こしてはならないというふうに思いますので、取捨選択と、それからそれに対する国民の理解と環境の整備、こうしたものを複合的に取組をしながら進めていく必要もあるのではないかというふうに考えてございます。

 以上でございます。

長島参考人 保健医療分野におきましてプッシュということで考えられます一つは、行政が行う健康サービス、例えば予防接種とか住民健診等に関する情報を、いつ、あなたが対象になっていますよとお知らせするというのは非常に有効かと思いますので、検討に値するかと思います。

 もう一つは、先ほど申しました、これから国民が主役となって健康増進、健康寿命延伸を行うという意味で重要になってくるのがパーソナル・ヘルス・レコード、PHRかと思います。公のものが持っているPHRのデータに関しては、マイナポータルを使って御本人も閲覧可能ですけれども、民間PHR事業者もAPI連携を使って取得可能となっておりますので、この民間PHR事業者が、それを使って、さらに、それだけではなくて、スマートウォッチ、スマートフォンなどを利用した毎日の健康情報も取得して、それを併せて一種のリコメンド、アドバイス機能というのを持っていくということも可能かと思います。

 ただ、そのときに医学的な安全性、有効性が非常に重要ですので、そこは例えばかかりつけ医等医療の専門職としっかり連携していただいて、そのような形でしっかりとお知らせする、参加していただくということも重要かと思っております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございました。

 まさに、まずそういった信頼がなければなかなか物事がうまく進まないことと同時に、プッシュ型と広く言ってしまうと見えないんですけれども、具体的な、ピンポイントで、このデータ、どんなデータをどんなことに、どういうふうに使うのかということをよく整理をしながら、丁寧に進めていくことがまた必要なのかなというふうには理解をさせていただきました。

 そんな中で、太田参考人と冨田参考人にちょっと聞かせていただければと思うんですけれども、まさに、どんな情報を何に使っているかという、見える化ということが非常に大事になってくることと、そのことを自動的に処理して初めて行政の効率化というのが進む中で、最近ちょっとチャットGPTとかが話題になっているんですけれども、AIの活用とか、そこにどういう形で、安全に安定して、そういったものを活用しながら信頼性をかち取って、かつ効率的なそういったサービスにつなげればいいのかなという、その辺の御示唆をいただければと思います。

太田参考人 チャットGPT等、生成的AIというのがもう非常に話題になっておりまして、これは本当にもう一か月単位で状況が変わりますので、今後更にいろいろな、もちろん便利だということと、対して不安ですとか課題というのも、両方見えてくると思うんですけれども、やはり、AIに関しては、データを使うのがAIになるわけですけれども、中立的な、AIによっていろいろな判断がゆがめられていないかと。

 例えば、日本でも、余り知られていませんけれども、住宅ローンを貸していいかどうかというのはもう人間が判断していないんですね、多くのメガバンクは。ただ、これを広く公開すると、やはり利用者の方が嫌がると。何だ、人間じゃなくてAIが俺のやつを管理しているのかというふうに言われるので余り言われていないんですけれども、もう既にそういうことが起きている。

 ただ、実は、その判断が差別を生んでいないかというようなことが例えばもうアメリカでは問題になっておりまして、それは、例えば人種によって判断の差が出ていないかとかいうことがありまして、そういうことをちゃんとやはり中立的にジャッジする、ウォッチする機関というのがだんだん出ていまして、多分日本でも、データが利用できるというのはどんどん便利になるんですけれども、その利用した結果、何か差別だったりあるいは課題が生まれていないかというのをウォッチするような、恐らく第三者的な組織というのが今後必要になってくると思いますので、行政データも含めて、使われた結果についてのウォッチというのが非常にこれから大事になって、まあ、日本ではまだこれからだというふうに思っております。

 以上です。

冨田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 AIとそれから我々、働き方をどうするのかということについては、私ども、大変大きな課題だと思っているんですが、なかなか、まだちょっとそこに触れるところまでの具体的な議論に至ってはいないということなんですが、ただ、私どもも一度研究をしたことがございまして、AIがアルゴリズムも含めてどういうふうになっていくのかということに対しては、何点か懸念を持ってございます。

 私ども労働組合にも大変毎月多くの労働相談が来ますので、実は、ホームページの入口上にチャットボットを設けていて、簡単な御質問にはAIがお答えするようなシステムを入れているんですけれども、これは、質問を想定をして、あらかじめQをデータの中に用意し、ぶつけるものでありますので、そこのところでできない質問は、要は電話で問い合わせてくださいという形になるんです。

 今言われているようなチャットGPTのようなものは、どの情報を提供するのかをAIが判断するということですので、その情報の信頼性がどの程度にあるのかですとか、アルゴリズムに対する様々な、先ほどの監視の機能であったりだとかルールがない中ですと、やはりプライバシーの問題や人権や差別などを引き起こしてしまうのではないかという懸念がありますので、ここは慎重に議論をしていく必要があるのではないかというふうに考えてございます。

 ありがとうございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに情報の信頼性とか、あとは、どんなアルゴリズムでどういったことがなされるのかということを慎重に確認をしながら、適切な、そういったサービスが今後どのように進められるかについては慎重に議論をしていくことなんだろう、そのように思います。ありがとうございます。

 そこで、最後に太田参考人に聞かせていただきます。

 これからの社会のデジタル化、そして、より便利で、またいろいろな形の情報を利活用する社会において、スマホというのが結構大事な、そのうち誰もが持って、その中の情報から取り出されたり、そこに情報が入ったりという部分が非常に重要になってくると思うんですけれども、今後の社会におけるスマホの役割とか価値とか、一方で、スマホというふうに概念があるんですけれども、スマホもいろいろなアプリでいろいろな形でカスタマイズできる。やはり、利用者の方に応じた、そういった適切なカスタマイズがスマホでされると、より便利な、よりいいデジタル社会になるのかなというふうにも感じるんですけれども、その辺の、スマホの利活用の未来と社会についてちょっと御示唆をいただければと思います。

太田参考人 お答えします。

 ちょっと一般的なところも含めてなんですけれども、デジタル社会において、例えば、個人の権利ですとかプライバシーをどう守るかとか、あるいは、ソーシャルメディアでは非常に分断を生んでしまうですとか非常に激しい攻撃が行われるですとか、様々な問題がある中で、これは国連中心に、個人の資質として、割と勉強ができるというIQ、あるいは社会でうまくやっていけるEQというのが定義されているわけなんですけれども、DQというのが十年ぐらい前から定義をされております。これは、デジタルにおける生きていくための資質という、権利を尊重するですとかプライバシーを守るですとか、いろいろなことが含まれているわけなんです。

 このDQというのがまだ日本では余り本格的には導入をされていないというところがありまして、これは教育をつかさどる文部科学省だけではなくて職場も含めての話になりますので、大人も含めて、こうしたDQとは何なのか、どういうふうに学んでいくのかというところをやっていかないと、やはり、道具であるデジタルあるいはスマートフォンに振り回されて、一番使っているのは例えばソーシャルメディアあるいはゲームですけれども、中毒という症状も青少年を含めて出てきていますので、あるいは、判断がゆがめられるですとか、こういうことに対する備えというのを、デジタル社会を促進していくというのと同じ多分スピードでやっていかないと、かなり厳しいことも予想されるということで、DQというのを政府としてもきちっと議論いただければというふうに思っております。

 以上です。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 DQにつきましてもしっかりと議論を進めさせていただきたいと思います。

 今日は、貴重なお話、ありがとうございました。

 以上で終わります。ありがとうございます。

橋本委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 本日は、大変御多忙の中で、長島参考人、そして冨田参考人、森信参考人、太田参考人、御出席をいただきまして、これまで大変貴重な、御示唆に富んだ御意見を拝聴することができました。ありがとうございます。

 それでは、若干重なる質問もあるかと思いますけれども、質問に入らせていただきます。

 まず、冨田参考人にお尋ねさせていただきます。

 今回の法改正によりまして、マイナンバーの利用範囲というのが拡大をいたします。これまで社会保障、税、災害対策の三分野に限られておりました利用範囲が、国家資格、自動車登録、在留外国人関連事務などに拡大をいたします。

 今回の法改正によりまして、法定事務に準ずる事務についてもマイナンバーの利用を可能にすることや、法律でマイナンバーの利用が求められている事務について主務省令で規定することで情報連携が可能となるという内容が盛り込まれております。

 この法改正を経ずに利用が拡大することについて、連合としての御見解をお伺いをしたいと思います。

冨田参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 私ども、マイナンバー法の利用拡大につきましては、現行のマイナンバー法で定められた社会保障、税、災害対策の三分野以外の利用につきましては、国民への丁寧な説明と合意形成を図ることを前提に、安全性の確保と行政の効率化の向上及び国民生活の利便性の向上が認められる項目のみを対象とすべきと考えてございます。

 今回の対象範囲はそうした範囲に合致するものと考えておりますので、連合としても、この範囲については理解ができるというふうに考えてございます。

西岡委員 続きまして、この範囲については御理解できるということでございますけれども、これまでの国会としての監視機能が十分ではなくなるのではないかなど、また、先ほど冨田参考人からもございました、国民への説明責任というところでも懸念の声もございますけれども、どのようにお考えになっておられるでしょうか。

冨田参考人 ありがとうございます。

 先ほどマイナ保険証のときにも申し上げたんですけれども、少し唐突過ぎるような政府の進め方ということに関しては、ここはやはり丁寧な説明が非常に必要だというふうに思いますし、今回の様々な利用の拡大などについても、それがなされることによってどういうふうに我々の生活の利便性が向上するのか、若しくは、そうした免許の更新をされる方にとって利便性が向上するのかといったような、その周知の部分につきましては私どもも積極的に行っていきたいというふうに思いますけれども、なかなかその周知が進まないという現状にありますので、こうした広報については引き続き御尽力をいただきたいというふうに思います。

 あわせて、利用範囲が拡大をされることで、恐らくは、更に情報が重なっていくと、またその情報が漏れるのではないのかという不安とセットになってございますので、そうした不安と誤解に関する払拭に対するもの、安全性についての広報も併せて行っていただけるとありがたいというふうに思ってございます。

西岡委員 連合の方でも大変広報活動にお力を入れていただいておりまして、国民への周知の部分ではまだまだ十分でないということも私たちも自覚して、しっかり努めていかなければいけないと思っております。

 続きまして、冨田参考人にまた質問をさせていただきたいんですけれども、戸籍等の記載事項への氏名の振り仮名追加について、先ほど御質問がございましたけれども、私からは、既に戸籍に記載されている方の氏名の仮名表記の収集につきまして、氏については戸籍の筆頭者が届け出ること、また、名についてはその戸籍に在籍している方が届けられるということの中で、氏については戸籍筆頭者に限定されるために配偶者は届出ができないというような事情もございます。

 今回の法改正に伴うこのような制度につきまして、連合としてどのような御見解を持っておられるかということをお尋ねしたいと思います。

冨田参考人 ありがとうございます。

 今ほど御説明いただいた観点につきましては、私も、法制審の委員でございましたので、届出をする、氏に対する届出についてなぜ筆頭者でなければ駄目なのかということについては繰り返し事務局に対して答弁を求めたところなんですが、結論としては、現行の戸籍法がそう定めているので戸籍の筆頭者だというふうに伺っております。

 ただ一方で、今、今回の法改正とは議論が違いますが、やはり自己の氏名を正確に呼称される権利の観点からいくと、夫婦別氏制度などへの要求も、求める声も大変多くなっており、連合としてもそれは進めていきたいというふうに考えております。

 あと、例えばなんですけれども、氏の読み方次第も、審議会の中では、例えば東と西で、これは例示で出ていたんですけれども、ヤマザキさんはヤマサキと読むこととヤマザキと読むことがあって、既にそれを使って、恐らくは、様々な社会の中で進めていらっしゃる方もいらっしゃると思いますし、場合によってはパスポートをそういった形で取られている方もいらっしゃるんだというふうに思いますが、今回のこの氏の届出においては、どちらにするのかというのを夫婦でよく話し合ってどちらかに決めなければならないとなると、要は、一方の方にとっては、これまで自分が呼称していた名字の仮名表記というか、呼ばれ方を変更しなければならないということがありますので、そうした話合いの結果などを、しっかり促す意味でも、どちらか、筆頭者だけではなく配偶者も届出の当人としてそういった機会を担保していただけるようなことも必要だというふうに考えており、そうした意見を申し上げさせていただいたところでございます。

 ただ、現行の法の枠の中での規定の話ですので、そうした状況については是非、今後届出をする際にそうしたことが、話合いが必要なんだということも併せてきちんと国民に周知がされるようなこともお願いをしたいというふうに考えてございます。

西岡委員 参考人から今お答えいただいたんですけれども、様々なケースが想定されるということを踏まえた上での対応というのが大変重要だと思いますし、今のような状況をしっかり国民にお伝えをしていくということも大変重要だと考えております。

 それでは、長島参考人にお尋ねをさせていただきます。

 今、大変様々な御知見をいただいたんですけれども、オンライン資格確認システムにつきましては、四月から医療機関に導入義務というものが課せられたんですけれども、現状で、私が昨日委員会質問でお尋ねをしましたところ、導入状況が七三%ということの中で、九月まで経過措置が取られたというふうに認識をいたしております。

 先ほど参考人からも、全国いろいろな医療機関には様々な事情、環境があるということの御言及もありましたけれども、これから誰一人取り残されない医療体制を構築していくということも言及でございました。

 医療の現場において、この導入についての現場からの御意見や課題というものがありましたら御教示いただきたいと思います。

長島参考人 現在、実際に稼働しているところはまだそういうような数字かと思いますけれども、一方、顔認証カードリーダーの申込み自体はほぼ一〇〇%に近いところまでいっているかと思います。

 したがって、この差というのは、やはり対応に少し時間がかかっているということかと思います。それには、それに携わる業者の方々にも非常に負担が大きくて、なかなか素早く対応することが難しいということがあるかと思います。

 この辺りは国からも業界の方に働きかけていただいて、できるだけ九月までに間に合うようにしていただくというふうにお聞きしておりますけれども、ここのところは、とにかく目的としては非常にすばらしいことですので、これは国だけにお任せするのではなくて、医療現場も、そして関連する業界も一致協力して、なるべく早く進めていくということが重要かと思います。

 その際に、様々な課題を持っているところもまだ多いかもしれません。日本医師会では、そのための相談窓口も以前から設置しておりますけれども、そこのところで丁寧にいろいろな状況をお調べして、そこのところは国とも実際の情報を連携して、できるだけ支援をしていく、決して取り残されるところがないように支援をしていくということが重要かと思います。これは国にも是非お願いしたいと思います。

西岡委員 長島参考人からは本当に力強いお言葉がございましたけれども、全国、地域、いろいろな事情もございますし、離島、半島を含めて、体制というものが取れないという経済的な、いろいろな事情もあるという中で、しっかり国としても支援をしていくということも改めて認識をさせていただきました。

 続きまして、長島参考人にもう一問質問させていただきたいんですけれども、マイナンバーカードの取得に課題のある方、この方への環境整備が大変大事だという御言及がございました。また、その関連としても、第三者がマイナ保険証を預かる局面が出てくるということについても課題であるという御認識がございました。この辺りについて、御教示いただけることがあればお願いいたします。

長島参考人 今の二つの課題に関しましては、まさに一体化に関する検討会のときのワーキンググループで、実際に関係する団体の代表の方にも来ていただいて、様々なヒアリングを行いました。そこでも様々な不安とか心配というお声もお聞きしました。

 それに対する対応として、先ほど御紹介した八つの取組というのが紹介されて、今回の法改正というのもそれに対応していただいているというところも多いかと思います。

 一方、法律ではなくて、実際の様々な取組の中で対応すべきこともまだまだ多いかと思いますので、ここは、先ほど申しました、関係者が本当に一致協力してしっかり進めていく。

 ただし、国がそこのところのリーダーシップを持つとともに、しっかり支援をしていただく。そして、利用者、あるいは預かる側、管理する側の不安もできるだけなくすような環境整備を急いでいただく。そして、そのことをしっかりと国民や関係者に周知していただくということが重要かと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 利用者も、また、預かる側の皆様の大変心配や懸念もあるというふうに思いますので、しっかり国として取り組んでまいりたいというふうに思います。

 それでは、森信参考人にお尋ねをさせていただきます。

 森信参考人が、新聞記事の中で引用されていた発言でございますけれども、今、行政の効率化だけが中心の議論のある中で、事務の効率化だけではなく、困っている個人に手を差し伸べるきめ細やかな社会保障につながる制度改革を実現すべきだという御言及がありまして、大変私も同じ思いでございますけれども、デジタルセーフティーネットのインフラの制度の構築、このことにも御言及がありました。

 大変重要な御指摘だと思いますけれども、森信参考人のお考えになる制度の構築について御教示いただければというふうに思います。

森信参考人 お答え申し上げます。

 デジタルセーフティーネットという概念で整理しておりますけれども、基本的に私の考え方は、個人個人の所得情報、これはもう国税当局、地方税の当局が番号をつけて保有しているわけですね。しかし、これは彼らだけのものではなくて、やはり国民全体がそれを共有する、いわば公共財のようなものだというふうに考えておりますので、彼らの持っている、税務当局が持っている所得、収入情報を、必要に応じて、給付をする官庁、制度を所管する官庁が使えるようなインフラを構築する必要があるということをずっと申し上げて、考えてきているんですけれども。

 そのためには、やはり、国税当局には、守秘義務とか、それから目的外使用とか、いろいろ法律で縛られているところがありますので、それをそういうふうなきちっとしたセーフティーネットに使うのであれば、そういう制約をなくす必要がある。

 さらに、それを単にPDFとか紙の情報で連携するのではなくて、データとして使いやすく、各省がそれを使って必要なところを抽出して給付を配るというふうにするためには、データ化も必要である。

 そういうことで、これをやるためには、まず、公共財であるというふうな概念を霞が関の諸官庁に持っていただくとともに、そういうインフラをつくる、データで回していくインフラをつくる必要がある。これが、私が聞いておる限りでは、二〇二五年のいわゆる公共メッシュの完成によってほぼできる。

 できると同時に、制度がなければ動きませんから、その制度も併せて国会で議論いただいて。例えば、先ほど申しましたように、住民税非課税かどうかで突然ゼロになったりするような制度はやめて、今の住民税非課税世帯が、例えば、奨学金などもすごく優遇されているわけです、それから大学の入学金とか授業料も優遇されておりますが、突然ゼロか給付かというふうになるような制度がいっぱいありますので、そこをなくすような、それぞれこれは所管官庁が違うと思うんですけれども、それをなくすような制度を、間を埋めていくような制度をつくっていくというふうな努力、この両方が併せて必要だというふうに考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 森信参考人が先ほどおっしゃいましたし、連合の冨田参考人からもございましたけれども、将来的に全ての口座番号とのひもづけというものがやはり大前提になるというふうに思います。

 国民民主党は、多分、全政党の中で唯一、全口座とのひもづけということを申し上げておりますけれども、そこに至るまでには、今回、口座番号の登録の内容も法改正に盛り込まれておりますけれども、やはり、この制度が何のためにあるのか、また、個人情報管理に対するしっかりとした体制があるということをまだまだ国民が理解をされていないという問題があるというふうに思いますので、しっかりそういう体制をつくっていくためには、これから、国の役割、大変重要だと思いますし、私たちがしっかり説明をしていくということも重要だということを改めて確認をさせていただきました。

 それでは、太田参考人にお尋ねをさせていただきます。

 先ほどから諸外国の事例というものを御教示いただいたわけでございますけれども、諸外国におきましては、かなり、日本から先駆けて先行いたしております。例えばデンマークにおいては、世界の電子政府ナンバーワンということで、私もいろいろその資料を読ませていただいたんですけれども、今は、スタッフレス、ペーパーレス、キャッシュレスから、カードレスという段階に来ているということでございます。

 私自身が考えるのは、日本が例えばどういう政府を目指しているのかという将来像が今全く見えていないということも日本が遅れてきている原因の一つではないかというふうに思っているんです。日本として、今、デジタル社会の中で、どういう政府の在り方、社会の在り方に向かっていくのかということをやはり明確に示して推進していくことが大事なのではないかと思いますけれども、そこに対する太田参考人の御所見をお伺いできればというふうに思います。

太田参考人 御質問ありがとうございます。

 税、社会保障等に個人番号を使ったり、データを使ったりというのは、おっしゃるようにデンマークを含めて北欧が進んでいるわけなんですけれども、北欧の一つの特徴は、税、社会保障が国民所得に占める比率が高い、これは国民負担率というふうに、御存じだと思いますけれども、それが高いという特徴があります。それが高い、六割、七割というふうに高いので、それをちゃんと使うということで、データを使って、プッシュ型等も含めてシステムをつくっているというところがあります。

 翻って、そこと比較した日本政府の在り方なんですけれども、やはり一つ留意しなくてはいけないのが、国民負担率が大きくこの三十年、四十年で変わっているということです。

 私も含めて、国民、国民というふうによく申し上げますけれども、どの世代かによってやはり国民負担率が違うんですね、社会に出たときの。今、マクロでいくと、一番資産をたくさん持っている団塊の世代が社会人になったときの国民負担率は二割台です。私は五十五歳ですけれども、社会人になったときの国民負担率は三割台です。個人的なことで、私の娘、息子になると五割に近いということで、全く違う社会に出ていくということになっています。

 そうなってくると、二割と五割というのは相当違いますので、それだけ支払っている、データも持っている、どういうふうにそれを活用してくれるのという期待が当然高まっているということを踏まえて、やはり政府の在り方というのを考えていかなくちゃいけない。これは世代によってもずれているので、団塊の世代の方からすると、そんなに取られていないという中で、いや、そんなにデータを使って、プライバシーはどうなのという話になりますけれども、若い世代になってくると全く状況は違うわけですね。そうした議論をやはり丁寧にやっていくということがまず一つ大事だということ。

 あともう一つ、北欧の大きな特徴は、さっきもDQということを申し上げましたけれども、データを使っていくということは、日本ではお上というふうに言いますけれども、全部お上に任せるのではなくて、国民がそこに参加するというのが大事なんですけれども、北欧は、やはり小学校から民主主義についての学校教育というのを、社会人になるまで非常にやっているんですね、デンマークは非常に有名ですけれども。

 だから、民主主義の在り方ということをきちっと教育するというのは、これは関係ないように見えるんですけれども、政府がデータを使っていろいろサービス、仕組みをつくっていくというときは、国民参加が、きれいごとではなくて、本当にリアルな話として前提になりますので、民主主義をきちんと子供から社会人まで学ぶということをやっていかないと、やはり地に足の着いた、しっかりした仕組みにならないというふうに思います。

 以上です。

西岡委員 ありがとうございます。

 時間となりました。大変有意義な、重要ないろいろな御指摘をいただいたと思いますので、今後の質疑や政策立案に生かしていきたいというふうに思います。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、四人の参考人の皆様、御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴いたしました。ありがとうございました。

 早速質問させていただきたいと思います。

 まず、長島参考人に伺います。

 今度の国会ではマイナ保険証が最大の争点になっているかなと思うんですけれども、マイナンバーカードによるオンライン資格確認は医療DXのインフラということが最もおっしゃりたいことではなかったかなというふうに思っております。

 ただ、私、昨日も質疑をしておりまして、メリットというのは必ずデメリットもあるわけで、メリットイコールそうしなきゃいけないということの理由にはならない、そういう意味では、納得できる答弁が政府からは得られなかったというのがあります。

 それで、先生が、医療の専門化、分化、あるいは一層の連携が必要だという御発言をされました。

 確かに、高度な医療の発展というのは、もうどんどん細分化されておりますし、ただ、圧倒的に多くの国民は、そうした高度な専門的医療にアクセスできずに、私も地方の出身だからというのもあるんですが、医師不足で地域医療が、病床削減ですとか、どんどん縮小していく、そもそもアクセスできない。あるいは、地域包括ケアがあるじゃないかとなると、介護も人材不足でそもそも選択できない、そういう状況があるわけですよね。

 こうした状況を踏まえて、医療DXを進めていくことが、本当にそういう立場の国民にとってメリットにつながるんだろうかということを率直に伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

長島参考人 医療DXは、目的ではなくて、手段、方法だと思っています。したがって、目的が最も重要ですが、日本医師会としては、何よりも、国民、患者の皆様に安心、安全で、より質の高い医療が提供できること、これにつながることが最も重要かと思います。さらに、医療現場の負担が非常に増大していることも踏まえると、医療現場の負担軽減、これも結果的に国民への医療提供につながるものと思っております。したがって、そこに本当につながるものかどうかという観点で見ていくということかと思います。

 では、実際に、例えばオンライン資格確認によるシステムが有効かといいますと、実際に有効だと実感している例がございます。

 というのは、その患者さんがほかのところでどんなお薬をいただいていますかということをお聞きするのは、非常に今まで大変だったんです。お薬手帳を持っていらっしゃらない方も非常に多いし、お薬手帳でも全部の情報が書いてあるわけではない。記憶をたどってお答えいただくというのは、事実上、極めて困難です。ところが、今回のオン資のシステムを使うと、ほかの医療機関でいただいている薬剤情報が正確に、網羅的に、迅速に、医療機関の負担が余りなく入手可能になりました。これは極めて患者さんにとっても大きな意義かと思います。

 また、今年一月から始まりました電子処方箋のシステムにおいては、重複投薬、ほかの医療機関と重なっている投薬とか、特に重要なのが併用禁忌、一緒に使うと悪影響がありますよというような処方をしようとした場合には、そこのところは注意喚起してくれます。デジタルでなければできないことです。紙ではできません。これはまさに、患者さんの命の安全につながるものと思っております。

 そのように、本来の目的にしっかり従って使っていく、また、医療機関も含めて誰一人取り残さないということが最も重要と思っております。

 以上です。

高橋(千)委員 今はお薬手帳もアプリになっておりまして、手帳、冊子であると、とてもじゃないが書き切れないじゃないかという実態があって、それがきちっと徹底されていけば非常に効果的なんだとおっしゃるのはよく分かるんです。ただ、それは今のマイナンバーカードによるマイナ保険証でなくてもできることではないかと思っております。

 それで、やはり検討会の中でも随分議論されたパーソナル・ヘルス・レコードの問題ですが、ずっと議論されてきたのは、やはり利活用の側ではなかったかと。つまり、個人にとって、ずっと統一した、生まれてから死ぬまでの情報が必要なのかというのは、必要な方はあると思うんですが、それが、なければならないということになるのかということが非常に疑問なわけです。

 それで、データは医療の発展にとってなくてはならないものだと思います。そしてそれが、今そのデータを提供している患者にとって、直接治すよという、自分の役に立たないものであっても、将来の医療に役に立つという考え方というのは、それは大事なことだと思っております。

 ただ、そうであっても、やはり医療のデータというのは最も機微な情報であって、個人の尊厳や同意を必要とするし、特に、弱者に対しては最も配慮をしなければならない、それは、ヘルシンキ宣言ですとか国際医療綱領ですとか、繰り返し確認されてきたことだと思うんですよね。

 それとの関係で一言伺いたいと思います。

長島参考人 医療DXにおける医療データの活用は、何よりも御本人のために役立てるというのが大原則であります。そうすべきだと思っております。まずは、先ほどお話ししました地域の医療連携が必ず必要になるので、連携するためにも、紙の紹介状では十分にはできないということで、御本人のために連携に使うということかと思っております。

 また、生涯にわたる医療、保健データというのも、残念ながら、今までは制度の縦割りのために、例えば、母子の状況、あるいは学校に上がる前の状況、あるいは学校、あるいは職域健診等、これがばらばらになっていましたけれども、やはりこれがしっかりとつながって御本人が把握できるということは極めて、御本人が健康増進、健康寿命延伸の主役になるということで、非常に重要なことかと思っております。

 そのような形で、まずは、何よりも御本人に役立てるということ、これをしっかり進めるべきだと思っております。

 以上です。

高橋(千)委員 直接お答えいただけなかったんですが、やはり個人の尊厳の問題、役に立ちたい、役に立つものだという先生の御発言は本当にそのとおりだと思っておりますが、そこに至る、やはり医療資源の問題ですとか、様々課題はまだあるのではないか、このように思って伺いました。

 次に、冨田参考人に伺いたいと思うんですが、せっかく、連合は労働者の団体でありますので、労働の問題で伺いたいと思います。

 この間、やはり住基ネットの初期の頃から、いわゆる個人情報の流出という問題は絶えず問題になってきました。あるいは年金情報、やはり基礎年金番号を統一するというその瞬間から、もう様々な問題が起こってきたということがあると思うんですね。再委託をして、派遣社員が個人のパソコンにデータを持ち帰って、流出してしまったというのを二〇〇七年に私は質問していますが、愛媛県の愛南町、そして秋田県の北秋田市、全く同じ会社だったんですね、そのデータを扱う会社が。

 そうしたことがあったんですけれども、やはり今の行政の窓口、ハロワもそうですが、窓口が非正規になったり、あるいは、圧倒的に行革の中で人が足りない。そこを埋めるのが外部委託であり、再委託であり、派遣社員でありと、そういうふうな関係になっている。ここがやはり非常に、いろいろ守秘義務とかいってもできない事情があったり、あるいは国民の不信感につながる問題だったと思うんですが、その点について、是非御意見いただければ。

冨田参考人 御質問いただきましてありがとうございます。

 どういう形でその職場に入ったとしても、働く皆さんは、やはりその職場において、自分の働きを、様々なサービスや提供するものに自分の労働の価値をしっかりとつけていきたいと思い、職場に入られる方が多いかというふうに思います。

 こうした状況が起きる状況には、恐らく複合的に様々な状況があって、もしかしたら働き方に不満があるのか、若しくは職場のコミュニケーションに問題があるのか、若しくはそうした、これは自治体に限らず一般の民間企業でも同じだというふうに思いますが、自分の仕事に対する評価が適切なのか、様々な状況が複合的に多分重なり合ってこうした状況が生まれてくるのではないかというふうに思います。

 したがいまして、私ども労働組合は、そうした状況に対しては様々な相談機能でしっかりとサポートしてまいりたいというふうに思いますし、何がよくて何が駄目なのかということに対しては、労働者だけでなく、それを、ちょっと使用者側という言い方が正しいかどうか分かりませんが、雇用されている側にも責任があるかというふうに思いますので、労使が互いにそういったことにしっかりと認識を持った上で、そうしたことが起きない状況をいかにしっかりとつくっていくのかということが大事だというふうに思います。

 あと、起きてしまったことは仕方のないことですが、二度と起きないような体制をどのようにつくっていくのかというのが大変大事だというふうに考えてございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 本当に一言で言うのは難しいことを聞いてしまいまして、申し訳ありません。

 今日も先生方から、あるいは質問者の方からも、デジタルの先進国として、スウェーデンの様子ですとか北欧の話などが出されていたと思うんですよね。そういう国というのは、例えば保育ですとかに参入するのがとても厳しい、公務の方がむしろ厳しいと。なぜかというと、民間は国が作った厳しい基準をちゃんとクリアしているからなんだというお話をされたことがとても印象に残っているんですね。

 やはり、そういう公共的な労働に対する価値というんでしょうか、あるいはガバナンスというんでしょうか、そこがしっかりできているところにまず学ぶということが必要なんじゃないかなということを常々考えていたということであります。済みません。

 それから、次に、森信参考人に伺います。

 デジタルセーフティーネットというお話がございました。

 給付つき税額控除というのは、民主党政権のときに提案されて、なかなか理のある話だと思っておりますけれども、ただ、今回、給付の話ばかり強調されるわけですけれども、給付ばかりではないと思うんですね。つまり、正しく税金を取る、正しく利用料を、確実に取るという狙いが当然あるんだろうと。つまり、余計な給付はしない、所得制限をかっちりやっていく、それが、給付とはまた逆の、表と裏の関係というのかな、狙いではないかと思いますが、伺います。

森信参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバーをつくりました趣旨は、大綱に書いてありますように、やはり、まず、正確な所得を効率的に把握するということが、一つ明確に入っていると思います。それと、適切な社会保障ということですので、適切に社会保障を給付していく前提としては、やはり適正に所得が把握されていないと社会保障自体がめちゃくちゃになると私は思いますので、そこはもう大前提だということを考えております。

 そのためには、やはりこういうデジタル社会におきましては、いろいろな働き方で、プラットフォーマーを経由して働くギグワーカーとかフリーランスとか、いろいろ増えてきましたので、これまでの、会社を中心に情報を把握するというだけでなくて、番号を活用して、そういった新しい分野にも正確な所得の把握をしていくことが必要ではないかというふうに考えております。

 以上です。

高橋(千)委員 済みません、もう少し詳しくお話ししたいと思うんですが、やはり、この発端は、税と社会保障の一体改革の中で議論されたことだと思います。そのときに、確かに、給付つき税額控除のように、必要な方に給付をするという議論と同時にされた議論は、やはり保険なんだから払わない人にサービスは提供しないということが、今の与党の皆さんから随分出された意見でございます。だけれども、社会保障の改革をしているわけですから、社会保険というのは単純な民間保険ではなくて、社会保障と保険の合体した価値というものがあるわけですよね。そういうことをちゃんと踏まえないと駄目だと思うんです。

 だけれども、今のオンライン資格システムですとか、かっちりと所得が把握されて、そして、本人の事情をよく考慮するとか、そういう余地がない社会になっていくということは一つ疑問でもあるんですけれども、そういう趣旨で質問させていただきました。もう一言あれば。

森信参考人 お答え申し上げます。

 その余地という意味が、例えば、少し税金を適切に申告しなくても大丈夫だというふうな意味での余地であれば、私は非常にそれは問題だというふうに思っております。やはり、みんな納税者が一人一人、公共サービスの提供のための財源を提供するためには、公平でみんながきちんと納税しているというのが大前提だと思いますので、そういう面においては、余地というよりも、やはりきちっとした適切な納税というふうなことが必要だと私は考えております。

高橋(千)委員 例えば生活保護であれば、今でも全部資産は明らかになっておりますし、扶養者までも照会をされる、そういうふうなことになっていますので、ある人の税金をちゃんとやっていないというのは、むしろ、うんとある人の話だと思って、私が議論しているのは、やはり、厳密にその所得が分かって、それで所得制限がかかる、だけれども、そこに払えない事情だとか様々なものを考慮する余地があるのかということが一つ言いたかったわけであります。

 申し訳ないが、適切な答弁というか、そこに関わる方がちょっと今日はいらっしゃらなかったのかなと思って、御意見を聞いていただければよかったと思っております。

 それで、太田参考人に伺いたいのですが、今回、戸籍法の改正が入っていて、振り仮名が盛り込まれているというのは、デジタルネットワークで確実につなぐためのツールとして振り仮名が必須であるということも理由なのかなというふうに思うんですが、そこをまず確認したいと思います。

太田参考人 お答えします。

 振り仮名を今回きちっと扱うということが必須かどうかという御質問なんですけれども、さっきお話しさせていただいたように、金融機関では振り仮名というのが口座の管理に使われておりまして、御記憶のように、コロナ禍での定額給付金に関しては、自分でそれを入力しないと口座が確認できない、間違って入力してしまうと給付金が受け取れないというようなことが起こっておりましたので、そういった給付の滞るようなことがないために、やはり道具として振り仮名というのは必須であるというふうに思います。

 ただ、ちょっと拡張して申し上げると、議論の中には、振り仮名、読み仮名というのは文化であるというような議論もあったかと思いますけれども、今回に関しては、やはり道具として、ツールとして読み仮名を使えるようにしましょうということですので、命名の在り方ですとか個人の考え方ですとか、そういう文化的な面に関しては全く別の話だというふうに思います。

 目的として、円滑に行政サービスが行われるように、ツールとして、これまであやふやだったので使えなかった、使えないので、国民に教えてくださいというふうに、データはあるのに聞いていたというところが現状でしたので、そこからきちんと円滑にサービスが進むということで、必要な今の改正だというふうに理解をしております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 そうだと思うんですよね。振り仮名がなぜ今回一緒に盛り込まれているのかという理由は、はっきりしたのかなと思っております。

 それで、太田参考人と冨田参考人にこの問題でもう一言伺いたいのですが、文化ではなく道具なんだとお話をされました。そうはいっても、氏名というのは最も個人のアイデンティティーに関わる問題ですので、私は、生まれたときに出生届と一緒に振り仮名をやる、そういうふうにしていけばいいのだろうと思うんですけれども、今、日常的に使っている振り仮名をまず行政が一旦つけてしまうということで、じゃ、違うんだったら自分で言えよという仕組みというのはなかなか難しい、いささか一方的ではないかという思いがどうしてもあるんですよね。

 大阪でマイナンバーカードの申請書に振り仮名をつけて出したら数千件も問合せがあったと。それほどやはり振り仮名というのは難しい問題だと思いますので、一言ずつ伺います。

太田参考人 私が先ほど申し上げた、非常に、文化的な面ですとか個人の考え方というのは大変大事だと思います。

 それと、今回の法改正による、移行期間というのはやはりあるとは思うんですね。ですので、その間、関連するところ、窓口には大変たくさん問合せがあるということはもう当然だと思いますので、それに対応する移行措置というのも念頭に置きながらやはり進めていくのが大事だというふうに思います。

 とはいえ、国民的には、やはり日本というのは、残念ながらというか、現実として、例えば、災害とかがどんどん起きていますので、何らかの形の給付が行われるというのは、もう来月にでも起こるかもしれないという、大型のそういう災害も起こる可能性もあって、そのときにまた、全部国が持っているにもかかわらず書かせるの、それで、書き損じるともらえないのということが繰り返されるというのは多分かなり厳しい状況だと思いますので、そこをどう見合いながら、やはり移行期間というのをいかに短くしていくかというのを関係組織がしっかり頑張るというような現状認識かというふうに思っております。

 大事なのは、定額給付は結構うまくいかなかった面が多かったんですね。その一つの原因がやはり読み仮名なので、今度起こったときに同じことをしたときの失望感というのはやはり非常に大きいというふうに思いますので、そこを念頭に置きながら移行期間をできるだけ円滑にしていくということだと思います。

冨田参考人 御質問をいただきましてありがとうございます。

 二点あるかというふうに思っておりまして、目的が何なのかということです。

 冒頭に申し上げましたが、やはりデータ、レジストリーとしてしっかりと集めていく必要性が今高まっているということを国民の皆さんに御理解いただくことと、今回、戸籍に仮名表記をつけるのは、自己を正しく認識していただくための、本人のためなんだということをしっかりと御認識をいただいて、今回、自ら届出をいただくことがまず第一になっておりますので、届出の期間中に全ての国民の皆さんが自ら届けていただけるような、そうした御理解が進むような周知の方法なども併せて御検討いただけるとありがたいと思います。

 ありがとうございます。

高橋(千)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る二十五日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十九分散会


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