衆議院

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第12号 令和5年5月23日(火曜日)

会議録本文へ
令和五年五月二十三日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 橋本  岳君

   理事 今枝宗一郎君 理事 坂本 哲志君

   理事 田中 英之君 理事 谷川 弥一君

   理事 坂本祐之輔君 理事 湯原 俊二君

   理事 中司  宏君 理事 中川 宏昌君

      井原  巧君    石田 真敏君

      石橋林太郎君    今村 雅弘君

      大野敬太郎君    小寺 裕雄君

      小森 卓郎君    塩崎 彰久君

      鈴木 隼人君    田所 嘉徳君

      高木 宏壽君    谷川 とむ君

      土田  慎君    土屋 品子君

      中曽根康隆君    西野 太亮君

      牧島かれん君    宮路 拓馬君

      保岡 宏武君    山口  晋君

      渡辺 孝一君    末次 精一君

      堤 かなめ君    福田 昭夫君

      緑川 貴士君    森田 俊和君

      池畑浩太朗君    住吉 寛紀君

      堀場 幸子君    輿水 恵一君

      鰐淵 洋子君    西岡 秀子君

      高橋千鶴子君

    …………………………………

   国務大臣

   (デジタル大臣)     河野 太郎君

   デジタル副大臣      大串 正樹君

   デジタル大臣政務官    尾崎 正直君

   政府参考人

   (内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官)         佐脇紀代志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  吉川 徹志君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局審議官)        山澄  克君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   楠  正憲君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   村上 敬亮君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   二宮 清治君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   山本 和徳君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           日原 知己君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         佐藤 寿延君

   衆議院調査局地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別調査室長 阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     石橋林太郎君

  小森 卓郎君     土田  慎君

  鈴木 隼人君     山口  晋君

  中川 郁子君     田所 嘉徳君

  中曽根康隆君     西野 太亮君

  中司  宏君     池畑浩太朗君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     大野敬太郎君

  田所 嘉徳君     高木 宏壽君

  土田  慎君     塩崎 彰久君

  西野 太亮君     中曽根康隆君

  山口  晋君     鈴木 隼人君

  池畑浩太朗君     中司  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     小森 卓郎君

  高木 宏壽君     中川 郁子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

橋本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官佐脇紀代志君、内閣官房内閣審議官吉川徹志君、個人情報保護委員会事務局審議官山澄克君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、デジタル庁統括官楠正憲君、デジタル庁統括官村上敬亮君、デジタル庁統括官二宮清治君、デジタル庁審議官山本和徳君、総務省大臣官房審議官三橋一彦君、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官城克文君、厚生労働省大臣官房審議官大坪寛子君、厚生労働省大臣官房審議官日原知己君及び国土交通省大臣官房技術審議官佐藤寿延君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。堤かなめ君。

堤委員 おはようございます。立憲民主党の堤かなめです。

 我が党は、デジタル五原則として、一、政府による国民の監視手段にしない、二、個人情報の保護の徹底、三、セキュリティーの確保、四、利便性の向上、五、誰も取り残さず、使わない人が不利にならないの下、行政のデジタルトランスフォーメーション、DXを推進すると掲げています。

 四月二十五日の本特別委員会では、私は、マイナンバーカードとマイナ保険証について、この立憲DX五原則のうち、二、個人情報、五番目の、誰も取り残さないという点からの問題性を指摘した上で、従来の紙の保険証の存続を強く要望いたしました。

 今回は、政府クラウドを中心に質問させていただきます。

 初めに、政府クラウドに移行した場合の運用コストについてお聞きします。

 資料一を御覧ください。

 昨年十二月二日の日経新聞電子版でございます。見出しは、「政府クラウド、先行自治体で運用コスト「倍増」の課題」となっております。「人口約一万一千人の埼玉県美里町は十月末、全国約千七百の自治体に先駆けて政府・自治体の共通システム基盤「ガバメントクラウド」上に基幹業務システムを移行し、稼働させた。国の施策により、自治体はそれぞれの基幹業務システムを二〇二五年度末までにガバメントクラウド」、政府クラウド「上の「標準準拠システム」に移行する「自治体システム標準化」が求められている。」というふうに報道されております。

 そこで、下線部一にも示しましたように、埼玉県美里町において、運用コストが移行前に比べまして一・九倍に膨らむ、つまり二倍近くに膨れ上がるとしたら、小さな、この美里町のような小規模の自治体にとっては非常に負担が大きいと思いますが、どう受け止めておられるのか、お聞きします。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 地方自治体の基幹業務システムの統一、標準化について、昨年十月に閣議決定をした標準化基本方針におきまして、標準準拠システムへの移行完了後に、運用経費等は、平成三十年度比で少なくとも三割の削減を目指すとしております。

 中間報告は、あくまで現行システムをそのままガバメントクラウドに移行した場合の試算であり、御指摘の美里町のように複数団体で現行システムを共同利用している場合におきまして、こちら、試算においては単独でのシステム構築、運用としていることや、また、既存の回線に加えてガバメントクラウドへの接続回線を新設すること等によりましてコスト増になっているというふうに分析をしております。

 ガバメントクラウドへの移行については、引き続き実証事業を進めておりますところ、デジタル庁としても、小規模団体にとって負担にならないよう、先行事業等を通じて得られる知見を踏まえまして地方公共団体におけるガバメントクラウド利用の環境整備を進めて、例えば、既存の回線とガバメントクラウドへの接続回線との二重利用の解消を図ることを始めといたしまして、システム構成の最適化等によりましてコストの削減を図ってまいりたいというふうに考えております。

堤委員 今お答えにもありましたが、国は、自治体システム標準化によって、二〇一八年度と比較して運用コスト三割減を目指すとされています。その中で、こういった美里町のような事例もあるわけですけれども、今のお答えでは、それは、この美里町のある意味特殊な事情であって、全体としてはそうではないというようなお答えだったかと思いますが、全国約千七百の自治体がシステムを標準化した場合の運用コストについて、毎年どの程度かかるのか、そして三割減は達成できると考えているのか、お聞きいたします。

河野国務大臣 自治体の情報システムの標準化につきましては、三月に仕様書を確定をして、今、それに基づいてシステムの開発が進んでいるところでございます。

 まだ標準、移行して、しているところがないものですから、現時点で見通しを申し上げるのは困難でございますが、この運用経費の三割削減につきましては、クラウド化することによる単純なコストの削減に加えて、技術的に推奨されるシステムの構成に見直す、そのために、サーバーの機能やリソースの適切な見直しが行われる。あるいは、ガバメントクラウド事業者が提供するマネージドサービスを利用することによる、セキュリティーやバックアップの管理が自動化されることになります。また、アプリケーションなどを複数の自治体で共同利用することで費用が按分される。また、国、地方のシステムがガバメントクラウド上に構築されることで運用も効率化される。

 様々コスト削減の要素がございますので、これらを勘案して三割の削減というものを目指してまいりたいと思っています。

堤委員 現時点で見通しが困難という大臣のお答えでしたけれども、例えば、私たちが家を建てるといった場合に、見積りもなく発注するということはあり得ないわけで、もう一度お聞きします。

 毎年どの程度かかるのかということにお答えいただいておりません。答弁漏れでございます。ここにつきまして、大臣にもう一度お答えいただきたいと思います。

河野国務大臣 繰り返しになりますが、現時点で見通しを申し上げるのは困難でございます。

堤委員 政府としてちょっと無責任ではないかと思いますので、御指摘をさせていただきます。

 また、それがなぜ三割減が達成できるのか、私にはにわかには信じ難いと言わざるを得ないわけですけれども、資料一の下線部二にありますように、美里町では通信回線費も増える。以前のシステムであれば千四十万円で済むところが、政府クラウドへの移行により六千万円を超えて、六倍以上に膨らむということです。そのため、政府クラウドと自治体や事業者をつなぐ専用線については、国に対し整備や運用を求める声が出ているとのことですが、この声に応えていただけるのでしょうか。お聞きします。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の美里町の例におきましては、通信回線費用が大きく増加している原因は、先ほど申し上げましたとおり、主にガバメントクラウド接続サービスを活用した接続回線に加えて、従来のデータセンターへの接続回線も維持することにより回線経費が二重となっているということが原因となっております。

 これは、基幹二十業務を含むあらゆる庁内システムをガバメントクラウド上へ一度に移行することが困難であって、一時的に回線費用が二重となってコストが増大する時期が生じる可能性が高いことから、その経費と現行の回線経費とを比較することとしたものでございますけれども、先行事業における検証を進める中で、通信回線費用も含め、最適な通信回線の在り方について検討してまいります。

 具体的には、デジタル社会の実現に向けた重点計画において、将来的な国、地方を通じたネットワークの在り方を見据えつつ、標準準拠システムへの本格移行における当面の接続方法の選択肢といたしましては、LGWANやガバメントクラウド接続サービスを活用した接続を想定し、引き続き具体化を進めるというふうにしておりまして、この方針に従って着実に検討を進めてまいります。

堤委員 着実に検討を進めてまいるということで、こういった小規模自治体の負担にならないようにお願いしたいと思います。

 では、政府クラウドの委託先ですが、これはお隣の福田昭夫議員からも度々質問しておりますように、米国企業四社、グーグル、アマゾンウェブサービス、マイクロソフト、オラクルであると聞いています。

 政府クラウドについて、昨年度、令和四年度に米国企業四社に支払った利用料の金額と、今後、約千七百の地方自治体の二十業務等が政府クラウドを利用したと仮定した場合に発生する、毎年米国企業四社に支払う政府クラウド利用料は幾らになると見積もっているのか、お聞きします。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 ガバメントクラウドサービス提供事業者へ支払う利用料に関しましては、単価契約に基づき、実際に利用した分のみを支払う従量課金制による支払いとなっております。

 令和四年度は、地方公共団体のガバメントクラウド先行事業やデジタル庁のウェブページ等で利用したところ、ガバメントクラウドサービス提供事業者に支払った利用額は総額で約四・五億円となっております。

 また、今後、地方公共団体の二十業務などのシステムがガバメントクラウド上の標準準拠システムへ移行したと仮定した場合の毎年の利用料についてでございますけれども、ガバメントクラウドを利用するシステムや利用開始時期は各地方公共団体が決定するものであること、また、先ほども申し上げましたとおり、ガバメントクラウドは利用実績に即して利用料が発生する従量課金制でありますので、現時点でお答えすることは困難でございます。

 なお、従来、各地方公共団体が個別にシステムを調達、運用していた際に発生した費用と比較をいたしますと、国、地方の多くのシステムが利用するスケールメリットを生かし、利用料の単価がより安いものとなるべく、デジタル庁が交渉していくこと、また、クラウド仕様のシステムにいたしましてガバメントクラウドの機能を効果的に使っていくということで、トータルコストは軽減されると考えております。

堤委員 具体的な数字はいただけませんでした。本当に幾らになるのか。そして、これは一回契約してしまうとある意味独占になってしまいますので、四社それぞれにといっても、本当に幾らになるのか。引き上げられてしまったら、従量課金制度を使っただけだということですけれども、引上げの交渉にどうやって応じるのかなど、大変懸念があるということを指摘しておきます。

 次に、政府クラウドにアップされる情報の内容についてお聞きします。

 政府クラウドには、外交や防衛の機密情報はアップされるのでしょうか。もしそうであるならば、外交機密や防衛機密に関するクラウドは海外の企業ではなく日本国内の企業から調達すべきと思いますが、いかがでしょうか。

二宮政府参考人 お答えいたします。

 政府情報システムは、効率性の向上、セキュリティー水準の向上などを図る観点から、クラウドサービスの利用を第一候補としてその検討を行うものとするクラウド・バイ・デフォルト原則に基づくこととしております。

 そうした中、政府としては、原則として、セキュアでコスト効率が高く、利用者にとって利便性の高いサービス提供が可能となるガバメントクラウドを活用することとしているところでございます。

 他方、御指摘の、安全保障等の機微な情報を扱う場合には特に強い説明責任が求められますことから、機器構成や運用体制などを利用者自らが把握できることや運用面の詳細を管理できることなど、利用者にとっての高度な自律性が重視をされるところでございます。

 このため、外交や防衛に関する安全保障等の機微な情報を扱う場合には、ガバメントクラウドではなく、安全保障等の機微な情報等に係る政府情報システムの取扱いに基づきまして、利用者が適切なシステムを選択することとしております。

堤委員 この米国四社が運営する政府クラウドではないということだと理解しました。

 それでは、政府クラウド上には、年収や資産などの金融情報、病歴、処方薬などの健康情報、学歴や資格などの情報、そして、思想信条、犯罪歴などの要配慮個人情報など、他人に知られたくない情報、漏えいすれば悪用されかねない情報がアップされることになるのでしょうか。

 政府クラウドにはどのような個人情報がアップされるのか、具体的にお聞かせください。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 各府省庁及び地方公共団体の情報システムのガバメントクラウドの利用につきましては、順次進められるものでございます。ガバメントクラウドを利用するシステムや利用開始時期につきましては、各府省庁や地方公共団体が決定することでございます。現時点で、具体的に取り扱う情報の範囲について一概に申し上げることは難しいところでございます。

堤委員 先ほどから、現時点では答えられないということですけれども、こういった大きな政府のプロジェクトを実際に施行していく中で、見取図もなく、試算もなく進めていかれるということについては、非常に、やり方として大きな疑問を感じざるを得ないということを指摘しておきます。

 次に、情報漏えいのリスクについてです。

 資料二を御覧ください。

 東京商工リサーチの調査でございます。上場企業とその子会社の二〇一二年から二〇二二年までの十一年間の事故件数は、累計千九十件に達したということです。漏えい、紛失した可能性のある個人情報は、累計一億二千万人を超え、日本の人口に匹敵するスケールに広がっています。上場企業による公表分だけでこれだけの事故が発生しているというわけでございます。

 このほか、上場していない企業や、米国など、先ほどの四社など、海外に拠点を置く企業、行政機関など、様々な組織で事故が起きており、流出した個人情報はまさに天文学的なボリュームに上るとの見方もあるそうです。

 後述しますように、米国の企業は欧州でも数々の情報漏えいなどの事故を起こしています。そういう中、政府は、国民全員の個人情報を米国のクラウドに置こうとしているわけです。

 政府クラウドの委託先である米国企業四社との契約関係につきまして、個人情報が漏えいした場合、罰金を科したり、損害賠償を請求したりできる内容になっているのでしょうか。あわせて、これら米国企業四社は、個人情報を漏えいするなどの懸念はないのか、信頼できる企業なのか、お聞きします。

二宮政府参考人 お答え申し上げます。

 ガバメントクラウドサービスを提供している事業者との契約といたしましては、通常の業務システム委託契約と同様に個人情報の適切な取扱いを規定しておりまして、正当な理由なくこの契約を履行しない場合、クラウドサービス提供事業者に対して損害賠償請求ができるものと規定をしているところでございます。

 そもそも、クラウドサービス提供事業者は、クラウド上で取り扱う各府省庁や地方公共団体の情報につきまして、アクセス制御により当該情報を取り扱わないこととなっているところでございます。

 その上で、万一、クラウドサービス提供事業者による不適切な漏えいがあった場合には、ガバメントクラウドサービス提供事業者に対しては、その契約上、日本法に準拠することとしておりますので、個人情報の取扱いに対しては、事案の内容に応じて、個人情報保護法などが適切に適用されるものでございます。

 なお、ガバメントクラウドサービスを提供している四社に関しましては、ガバメントクラウドの運営において情報の漏えいが発生したことはございません。そして、ガバメントクラウドの調達に当たりましては、政府情報システムのためのセキュリティー評価制度であるISMAP制度の認証等を取得していることや、第三者監査人による適切な監査を受けていることなどを調達要件としておりまして、クラウドサービス提供事業者において厳格なセキュリティー対策が取られることを担保しているところでございます。

堤委員 では、自治体のシステムが政府のクラウドに載ってくると、全国の自治体の住民の方々の情報が米国四社に持っていかれるのではないかという懸念の声も聞きます。住民の情報、国民の情報が、本人が知らない間に海外に流れたりするということはないのでしょうか。情報漏えいしないための対策はどうなっているのでしょうか。お聞きします。

二宮政府参考人 お答えいたします。

 ガバメントクラウドでは、データへのアクセス権限は、先ほども申し上げましたとおり、データを保有する行政機関がそれぞれ設定をしておりまして、それ以外の者は、米国四事業者のクラウドサービス提供事業者であってもアクセスすることはできず、各地方公共団体において適切に保全されるものでございます。また、仮に、万が一データへの不正アクセスがあったとしても、暗号化などによりまして、データをのぞき見ることができないようにすることとしております。

 これらの保護措置に関しましては、これまでも各府省庁や地方公共団体などの関係者に対して、関連資料の提供や各種説明の場におきまして説明を行ってきたところでございます。各府省庁や地方公共団体の皆様にガバメントクラウドを安心して利用いただけますよう、関連資料や質疑応答集の更なる充実や丁寧な説明を引き続き行ってまいります。

堤委員 安心して利用してもらえるようにということでございましたけれども、これは私の杞憂かもしれませんが、資料三を御覧いただきたいと思います。

 政府クラウドの委託先の一つ、アマゾンウェブサービス、こちらは、アマゾンの一つのビジネスとして二〇〇六年にスタートしたクラウドサービス事業でございます。この親会社ともいうべきアマゾンが、データの取扱いの基本原則を守っていないということで、七億四千六百万ユーロ、およそ九百七十億円を超える制裁金を科すという決定を受けたという報道でございます。

 政府は、信頼できるとか、データは暗号化されているというお答えですけれども、本当に大丈夫なのかと思います。恐らく、我が党の、隣の福田昭夫議員はもっと、非常に強い懸念をお持ちなのではないかと思っております。

 四点目に、我が国における個人情報保護の強化についてお聞きいたします。

 資料四を御覧ください。

 欧州における高額の制裁金の事例トップテンのリストでございます。先ほど御紹介したアマゾンへの制裁金、これはルクセンブルクが行ったものでございます。それが制裁金の一番多い、トップでございます。それから、ほかの、アイルランド、フランス、ドイツにおいて、メタ、グーグルなどの企業に対し、多額の制裁金を科すことが決定されております。

 このように、EU諸国においては、一般データ保護規則、GDPRに基づいて、それぞれのデータ保護機関が、規制に違反した企業などに対し、前年度売上げの最大四%を制裁金として科すことが可能となっており、実際に多額の制裁金を科すことを決定しています。

 一方、日本のデータ保護機関である個人情報保護委員会は、これまで一度も刑事罰や罰金刑を科したことはない、日本企業に対してもと聞いていますが、間違っていないでしょうか。

山澄政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御案内かと思いますが、罰金刑、刑事罰等々につきましては、行政機関である我々が直接科すものではございませんで、捜査機関による捜査、検察官による起訴を通じて科されるものでございますので、その適用状況について、私どもが網羅的、完全に把握する立場にございません。

 その前提で、私どもが承知しておる限りということで申しますと、個人情報保護法に基づきます刑事罰や罰金刑の適用状況については承知しておりません。

堤委員 ということですので、法制度を変えて、我が国の個人情報保護委員会においても、EU諸国と同様、やはり前年度売上げの最大四%などの強力な制裁金の制度を導入すべきだと。やはり何かあったときに責任をちゃんと取ってもらうということを担保しておかないと、きちんと我々の大切な国民の情報を守っていただけないんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

山澄政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御発言がございましたEUの制度の課徴金制度というものがあると承知しております。

 我が国の一般的な課徴金制度のたてつけ、例えば先行事例で独占禁止法等々ございますが、私ども理解をしておる範囲におきましては、違反行為によって得られました不当利得というものを基準にその額が算定されるというのが我が国法制度の基本的なたてつけであると認識しております。

 個人情報につきましては、安全管理措置義務違反による漏えいというように、違反行為がありましても、その利益が幾ら幾らというふうに発生していない場合がございまして、その課徴金、独禁法のような課徴金というものがなじむのかどうかというものについては、よくよく検討が必要だと思っております。

 他方、先ほどお答えしたのと若干関連もありますけれども、適用事例のあるないはともかく、違反事例、仮に、万一違反があったときの、その抑止の観点から、令和二年の個人情報保護法改正によりまして、一定の罰金の法定刑の引上げですとか、あるいは法人重科の導入というものを図ったところでございますし、違反事実の公表という制度についての規定を整えたところでございます。

 こういうような、我が国なりの、きちっとした抑止力を持つような措置を整備いたしまして、違反する企業が万一にも現れないように実効的な制度というものを構築してきたところでございますので、引き続き、このような形も、手段も含めまして、個人情報、個人の権利利益の保護を図ってまいりたいと考えてございます。

堤委員 是非、早急に対策を、実効性のある対策を進めていただきたいと思います。

 次に、子供データの保護についてです。

 資料五を御覧ください。

 時間がなくなってきましたのではしょりますが、このように、いろいろなデータ、欧米だけではなくアジアでも、非常に、子供については特に厳しい、大人以上に厳しい取扱いをするようにということを法的に定めたり、規則を作ったりしているというふうに聞いています。

 そこで、この子供データの保護の必要性について、政府はどのように認識しているのか、また、諸外国と同レベルにまで規制を強化すべきと考えますけれども、いかがでしょうか。

山澄政府参考人 お答え申し上げます。

 当然でございますが、我が国の個人情報保護法の目的といいます中に、個人の権利利益の保護というものが目的でございまして、子供も当然にしてその権利利益保護というのが最上の目的であります。

 先生御提出された資料の中にもありますように、例えば、英国のチルドレンズコードにおきましては、子供の個人データの取扱いに当たって、利用目的等の公表や保護者のコントロールを求めており、また、EUの一般データ保護規則、GDPRでは、子供の個人データの取扱いに当たって、一定の場合には親権者による同意を求めているなど、子供の権利利益の保護を図っているものと私どもも承知しております。

 我が国の個人情報保護法におきましても、個人情報取扱事業者が個人情報を取得するに際して利用目的の通知、公表を求めることですとか、子供の個人データの第三者提供等を行う際には親権者等の同意を求めておりまして、これらの規定を適切に運用することを通じて、子供を含む個人の権利利益の保護というものを図ってまいりたいと考えてございます。

堤委員 我が国では、残念ながら、まだ子供に特化したデータ保護のガイドラインがないと聞いております。子供は、やはり社会経験ですとか知識が大人に比べて浅いので、リスクの判断がなかなか的確にはできない、ありていに言えばだまされやすいということかと思います。そのため、アメリカなどでも子供へのターゲット広告の禁止など、規制の強化も議論されていると聞いています。

 また、子供は大人以上に情報漏えいに脆弱であると思います。例えば成績、出欠や健康状態などの個人情報がネット上に流出してしまった場合、進学や就職への影響もあるかもしれません。実害に至らなくとも、精神的に大きなダメージを受けてしまうかもしれません。我が国でも子供に特化したデータ保護のガイドラインを作成していただきますよう要望しておきます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、末次精一君。

末次委員 立憲民主党、末次精一でございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、今回、本改正案が提出されたわけでありますけれども、内容的には、もうこれまで各委員さんから御質問もあり、我が国のデジタル化を進めていく、進展させていく法案であるということは私も理解しております。

 それで、その一方で、内容的なものを見ると、これもまた、これまでの質問の中で御指摘もございましたけれども、端的に平たく言うと、今頃、今更というようなお声もあったとおりであります。本当に、今フロッピーディスクとか、どこで買えるんだということもありますし、もう今のパソコン自体、CD―ROMを入れるような機能がついていないものもあるわけでございます。

 そういう中におきまして、そもそも、この改正案の提出が、いわゆる先進国と言われている日本において、なぜここまで放置されていたのか。これは、そもそも、デジタル化を阻害する何か要因でもあったのではないのか、そういうことをよくよく分析して問題点を明確にしていかなければいけないというふうに感じました。

 なぜならば、それは、そこをきちんと、これまでデジタル化を阻害していた要因というものがあるのであるならば、今後デジタル化を推進していくに当たって、これまでの阻害要因というものを認識した上で、それをなくしていくということをしなければ、また何年かたったときに、今回みたいに、えっ、今頃ですかというようなことが起こりかねないということもあるのではないかと思っております。

 確かに、菅政権になって、岸田内閣になってデジタル臨調ができて、構造改革のためのデジタル原則というものを制定し、それに至ったわけでありますけれども、その一方で、先ほどから申し上げていますように、そもそも、なぜ今になったのかということもやはりきちんと分析しなければいけないと思いますが、その辺りについて、本改正案の提出が今に至った原因分析をどのように考えているかについて、大臣にお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 やはり、世の中、変わることに対する抵抗というのがあるんだろうと思います。日本は二十世紀のアナログ技術で大変に進んでいたというところはあろうかと思います。二十世紀に日本が輩出した様々な技術、製品、恐らく世界でもトップクラスであったと思いますが、一つは、デジタル技術の前段階で余りに進んでいたものですから、やはりそれを温存しようとする、そういう慣性みたいなものが働いていたというのは、これは社会全体にあるんだろうと思いますし、そのときに、それでやってきたんだから、何もわざわざ苦労して、あるいはリスクを取って変えなくてもいいのではないか、本来なら、もっともっと、より便利になる、より効率的、より生産性を上げられるんだけれども、やはり新しいものに移行するときには、様々な慣れないことをやらなければいけない、あるいはミスも当然出る、いろんな不都合も出る、だから嫌だということはあるんだろうというふうに思います。

 また、イデオロギー的に反対というものも当然あったのではないかと思いますし、中には、陰謀論のようなもので反対ということもあったんだと思います。

 これまで個別の規制改革というのはやってまいりましたが、それはやはり点の改革だったんだと思います。規制改革担当大臣だったときに、認め印、要するに、本人確認には全く資するところはないんだけれども慣例でやっていた認め印、これは実印とか登録印は別ですけれども、認め印をやめようということを決めて、一斉に政府の行政の中の認め印を洗い出して、廃止をしたということをやりました。

 今回も、同じように、点の改革をやるのではなくて、もうアナログを全部やめようということを最初に決めて、アナログ規制になっているものを一八六八年まで遡って全部洗い出して、今回廃止をするということにさせていただきました。昨年の十二月にこの工程表を決定をして、最速で今回法律を改正という法案を出させていただいた、そういうことでございます。

末次委員 本当に丁寧な答弁、ありがとうございました。

 今、大臣から、非常に緻密に分析していただいた結果をお話しいただいたわけでございますけれども、その中で一つ気になることがございまして、いわゆる成功体験があったということですね、これまでの。それはそうかなと私も感じてはおります。

 ただ、いわゆる企業でいえば、もうこれは日本の中小企業の全体に共通することであると私は感じておりますけれども、高度成長時代に、非常にいろんな要因によって日本が経済的に発展してきた、その中で、バブルがあり、いろんな国際化が進み、環境の激変が起こっている。ただ、これまでうまくやってこれたんだからと、いわゆる成功体験があり、それが根拠のない自信になって、環境の変化に対応できなくなって、いわゆる企業でいえば減収、倒産していくという例が、もう御多分にあると思います。それがまさに国家レベルで起こっていたという御分析でございました。

 ただ、企業は、その社長が責任を取れば、ちょっと冷たい言い方かもしれませんけれども、それで完結するわけであります。ただ、今回のように、国全体のいわゆる経済力に関わる問題となれば、これはどこかで、やはり、いわゆる政治のリーダーだと思うんですけれども、そこの、私は、日本でリーダーシップを発揮する、そういった瞬間が、ときがなかったのではないかと今の大臣の御答弁を聞いて感じたわけでありますが、じゃ、今後、強力なリーダーシップを発揮していく必要があるのではないかと思いますけれども、その辺りについて、大臣の意気込みというか、大変ちょっと僭越でございますが、お考えをお聞かせいただければと思います。一体これは誰がリーダーシップを発揮していくのかということでございますが、その辺りの大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

河野国務大臣 やはり、今回のコロナ禍で、例えば、給付金の支払いにやたらと時間がかかった、あるいは、ワクチンの接種を進める際に、当初は受診票の枚数を数えればワクチンの接種回数が分かるみたいな話になっておりまして、やはり日本の行政のデジタル化、遅れているよねというのがかなり赤裸々になったんだと思います。

 そういう中で、政府として、デジタル庁という新しい組織をつくって、そこがとにかく司令塔となって日本のデジタル化を進めようという決断が行われたわけでございますので、政府としてデジタル化への遅れということを認識をし、デジタル庁に司令塔の役割を果たせということでございますから、デジタル庁が各省庁と緊密に連携をしながら、日本のDXをしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

末次委員 ありがとうございます。

 今、大臣の御答弁の中で、各省庁と連携を緊密にというお話がありましたけれども、非常に大事なこと、いわゆる縦割り行政ということを打破していくということが日本のデジタル化を進める課題であるということは従来から指摘されているとおりであります。

 そこで、各省庁と連携を取るということでございますが、これを、もう一つちょっと私がお伺いしたいのは、じゃ、自治体との連携をどう考えるかということかと思います。

 これは、もうデジタル化だけではなくて、いろいろな施策に関して国が制定をする。例えば空き家問題とか、今結構取り上げたり話題になっていることでありますけれども、ただ、非常に形としてはいい法案とか施策とかができているわけでありますが、いざこれを実行する自治体に行くと、いろいろな、なかなかうまくいかない。これを私も全国の自治体にアンケートを取ったりしてみるんですけれども、大体出てくるのがマンパワー不足、人材不足ですね。あと、現場の実態にそぐわないような問題があって、結局、自治体からすると、これやりなさいよと言われて、お尻をたたかれ、無理やりやらされているというような状況が、もう至るところで出ている。

 今回、さりとて、デジタル化について同じようなことが起こったらいけないと思うわけであります。これは、今年の一月六、七に、行政デジタル改革共創会議、これは御存じと思いますが、行われ、自治体と省庁間の職員の皆様、ITベンダーの社員の皆様が一堂に会して意見交換を行ったということで、日本は非常にオープンガバメントが進んでいるということでありましたけれども、そのオープンデータに対して現場の課題が山積ということも、すごくそこで指摘されたわけであります。その中で、やはり最も挙がったのが、自治体のマンパワー不足ということでもあります。

 それと、もう一つ、埼玉県美里町の例でいうと、既存システムをガバメントクラウド上に移行した、ところが、運用コストが一・九倍に膨らむ試算が出ているというんですね。その一方で、国は自治体システムを標準化により、運用コストを三割減を目指すとしているけれども、こういったいわゆるミスマッチが起こっているわけであります。

 そういうことで、先ほど大臣が連携ということをお話しいただきましたけれども、じゃ、自治体との連携について、自治体の課題をどのように捉えておられるのか。今、マンパワー不足と、こういった運用コストを、私は一例を挙げさせていただきましたけれども、その辺りについてお考えを聞かせていただきたい。現状をどのように捉えておられるかということと、それについてどのような解決策、手段を取っていこうとされているかということでございます。お聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 行政のデジタル化というときには、もちろんこれは国だけでなく、地方自治体のデジタル化というのも進めていかなければなりません。

 これは、地方自治ということもありましたから、千七百四十一の自治体がそれぞれオンプレでシステムの開発をやってきた。ですから、例えば、何か手当が変わる、税率が変わる、何かが変わるたびにシステムの改修をしなければならず、そこで、それぞれの自治体がコストを支払ってきたというようなこともございます。

 あるいは、保育園に入るための就労証明書、これは千七百四十一の自治体のほとんどが違う書式を自分で作っているものですから、企業からしてみると、従業員が住んでいる自治体に合わせて書式が違う、そういう手間もかかっておりました。

 もちろん、地方自治、それぞれの自治体が独自でいろいろなことをやっていくというのは大事なことでありますが、システム化をする際には統合をした方がはるかに効率的で生産性が上がっていくというものもあります。そういう中で、一緒にそろえていくもの、それから、その中で地方自治をどういうふうに発揮するかということを考えていかなければならないだろうというふうに思っております。

 もちろん、マンパワーの問題もございます。これは単に人手というだけでなく、デジタルをどれだけ理解をしているかというところも重要で、これまでは余りそこに世の中的に重きを置かれていなかったものですから、日本の場合はIT人材がITベンダーに集中しているという傾向が他国と比べてもあるようでございます。

 今、いろいろなところでIT人材の取り合いになっているというところがありますので、デジタル庁としては、それぞれの自治体からデジタル庁に人を出していただいて、そこで、二年間デジ庁で仕事をしていただいて自治体にお戻しをする。それなりに人のトレーニングにもなりますし、デジ庁との結びつきというのも出てまいりますので、それをもう少し拡充しながら、自治体の人材のトレーニングみたいなこともデジ庁で併せてやりながら、今後のDXに備えていきたいというふうに思っております。

末次委員 ありがとうございました。

 それでは次に、本改正案が目標とする年に実現したということを前提としてお話をさせていただきますけれども、まず、私がずっと地域で活動しているときに聞いていたのが、よく、日本というのは生産性が悪いんですよということで聞いておりました。私も、経営のコンサルタントとしてなりわいを立てていたこともあって、その原因というものを何だろうと現場目線でいろいろ悩んだり考えたりすることもありました。

 その一方で、今回、このようにデジタル化が進む法案が出されたことで、じゃ、労働生産性というのはどのように変わっていくんだろう、どのように向上していくんだろうというのはやはり興味がある、関心があるところでございます。

 労働生産性の向上への効果ということでありますが、その前に、我が国の労働生産性の現状というものをどのように御認識されているか、このデジタル改革に関連して。そこをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、坂本(哲)委員長代理着席〕

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 一時間当たりの労働生産性は、我が国は今四十九・九ドルという統計がございまして、OECD加盟三十八か国中二十七位。それから、今のは一時間当たりですが、一人当たりにしても八万一千五百十ドルでございまして、三十八か国中二十九位ということで、正直、必ずしも高くない。

 また、特に地域に多いサービス業で、保健衛生・社会事業でありますとか建設業とかを見ますと、この日本国全体の平均よりも更に低いという状況でございます。デジタル改革によるこうしたサービス業等の生産性の向上は急務であるというのが私どもの認識でございます。

末次委員 今、デジタル化は急務ということでお話がありましたので、それでは、今回の、アナログをデジタルにするという、マイナスをゼロにするような、ちょっと言葉が適切かどうかとは思いますけれども、失礼を省みず申し上げさせていただきますと、本当にマイナスをゼロにするというような段階ではあると思います。

 その一方で、今御答弁いただきましたように、デジタル化は急務ということでございますけれども、まず、本改正案が実現されたということになった場合、この労働生産性の向上への効果というものをどのように考えておられるかというのをお聞かせいただきたいと思います。

村上政府参考人 幾つか例示でお答え申し上げられればと思います。

 例えば、量的には、河川、ダム、都市公園の維持修繕の点検を、これまで目視でやってきたところを、ドローンや水中ロボット等を今回の見直しにより使えるようになる。これは、かなり現場は人手をかけて作業をしてきた項目でございます。ただでさえ人繰りが回らないといった声もあったところ、こういった部分は大いに改善をするのではないかと思います。

 また、行政内部だけでなく、例えば介護サービス事業所等に必置の管理者、専門職等の常駐規制、これも今や常識となった感もございますが、テレワーク等の取扱いを明確化し、積極的に使えるようにすることによって、これらの業種における労働生産性の向上にも大きく寄与するという、それぞれの業務の合理化、人手不足の解消、生産性の向上といったところについては、今回の一万条項の見直しの中には多く役に立つものが含まれているというのが私どもの認識でございます。

末次委員 分かりました。

 是非これも、現場の方にそういった事例とかを周知していただいて、こういうことに取り組めばこういういいことがあるんだということを、これはまさに縦割り行政を超えて普及していただければということをお願いしておきます。

 次に、医療現場におけるデジタル化の遅れによる問題点ということについて、まず御答弁いただきたいと思います。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 医療現場におきましては、十万強の医療施設がございますけれども、その規模等々また大きく異なっていることから、一人で、個人立で行っている医療機関においてデジタル化することのメリット、こういったことを御理解いただくのもなかなか難しいところもありまして、一体的に進めるということが、これまでやや困難なところはございました。

 医療の現場では、様々な情報が、基本的には書面での掲示が基本でありましたりですとか、事業報告の提出、こういったことも基本的には書面というところで運営されてきたことは事実でありまして、厚生労働省といたしましては、様々な、例えば医療情報、医療電子カルテ、こういったものの電子化ですとか、地域においての共有、こういった取組も進めてまいったところではありますけれども、更にこういう取組、医療のデジタル化を進めることによって、医療現場の業務負担の軽減ですとか効率化、国民の皆様への情報提供、こういったことが円滑に行われるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

末次委員 これはちょっと質問通告にもしておりましたけれども、質問の聞き取りでもしておりましたけれども、今回、今現状、医療現場でのデジタル化が進まないことによって、コロナ禍の中において非常に混乱が起こっていたということでありますが、それについての御認識と、もうコロナ禍というのは終わってほしいんですけれども、今後また第九波、十波が来たりしたときに、これまでのような混乱が収束されるというふうな御認識なのかどうかというのをお伺いしたいと思います。

大坪政府参考人 お答えをいたします。

 今般のコロナ禍におきましては、感染症の特有ではありますけれども、限られた一部の医療機関において医療の提供がなされてきたというところ、ここを、今後は、五類以降は幅広い医療機関で医療の提供、見直しをしていただくということで今進めております。

 ただ、コロナ禍におきましては、例えばオンライン診療による遠隔医療、こういったところが非常に重要なツールというふうにもなっておりまして、医療機関の方に出向いていただかずとも御自宅において医療をオンラインで受けていただく、こういったことが非常に役に立ったというふうに考えております。

 厚生労働省といたしましては、こういった経験を踏まえて、今後、更に、オンライン診療等の遠隔医療、こういったことのデジタル化の環境整備、こういったものを進めてまいりたいというふうに考えております。

    〔坂本(哲)委員長代理退席、委員長着席〕

末次委員 ありがとうございます。

 ほかにも、非常に、そもそもの申請のやり方、ファクスでやったり、もう何回も現場で書き直して同じような書類を出さなきゃいけないとか、そういう問題もあったと思いますので、それは改善していただけるものというふうに今の御答弁で認識させていただきたいと思います。

 あと、時間の関係で、少し、ちょっと順番を逆にさせていただきます。今、医療現場におけるデジタル化について質問させていただきましたので、引き続き、医療現場のことについて続けさせていただきます。

 医療DXの必要性については、四月二十日に行われた当委員会の参考人招致で医師会の方から、マイナ保険証とオンライン資格確認による医療DX推進の必要性についてということで提言がなされましたので、それについては御認識されておりますし、今回の質問では触れずにおきますけれども、その中で、私もちょっと地元の医師の方々にいろいろヒアリングをしてきて、医師会で前回提言をされた中で、現実問題としてなかなか時間がかかるのではないかというのと、ここに出ていないものもたくさん声が上がったわけであります。その中で、私が伺ったのでまとめると十八項目ぐらいあったんですが、その中でちょっと絞って、二点、聞かせていただきます。

 これは電子化によって簡単にできるのではないかと御指摘があったのが、重複医療、重複薬剤処方と重複検査でありますが、これのデジタル化についての政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

城政府参考人 重複の検査、それから重複の薬剤処方の改善ということでございます。

 こうした重複の検査、投薬を抑制するためには、医療機関や薬局の連携体制の構築でありますとか、患者の医療情報それから服薬情報、こういったものの一元的かつ継続的な把握が必要でございます。

 重複検査につきましては、現在進めております電子カルテの情報の共有化、これを全国で可能とすることによりまして、異なる医療機関間で検査結果がリアルタイムで共有されてまいります。そうしますと、重複検査の抑制につながるということが期待されるところでございます。

 また、重複投薬につきましては、電子処方箋の仕組みを今進めておりますが、この仕組みを通じまして、医療機関や薬局において直近の処方や調剤の情報の閲覧が可能となります。また、自動的に重複投薬等のチェックも行われるということになります。こうしたことによりまして、重複投薬の抑制にもつながるということが期待されるところでございます。

末次委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一つ、重複画像診断について、時間の関係上、これの説明はちょっと省略いたしますが、この重複画像診断について、デジタル化をどのように考えておられるのか。これは、アメリカですか、については、検査センター、センター化にして、こういった、いわゆる医療費の削減に取り組んでいる、そしてそれを成功例として挙げられますが、そういった例を、他国の例も踏まえて、日本がどのような方向を目指そうとされているのかということをお聞かせいただきたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 重複画像診断、画像検査についてということでございます。

 現在でも、患者様側の、複数の医療機関を受診されるときに、同じようなレントゲンの検査やCTの検査を受けられるということで、重複の課題があるということを認識はいたしております。

 我が国におきましては、集中的にどこかでということではございませんが、全国で、先ほど申し上げたような電子カルテ情報の共有を行うことによりまして、異なる医療機関での画像診断の結果をお互いに共有できるという形を目指してございます。

 具体的には、一つの医療機関で行った画像検査の診断の結果でございますとか、病状を示す主な画像、ポイントになりますキー画像、これの共有が可能となるということを目指しております。これによりまして、重複検査の抑制ということを期待したいというふうに考えております。

末次委員 非常に前向きな御答弁をいただき、ありがとうございました。

 私が予想したのは、なかなか難しいということかなと思ったんですけれども、なぜならば、これはいろいろなメーカーが入っていて、そこのいわゆる利害関係の調整、既得権益の、そういったものをなくしていくということで、まさにこれは身を切る改革というものが必要ではないかと思ったんですが、そういう前向きな答弁をいただきましたので、是非是非進めていただきたいと思います。

 それともう一つ、質問通告しておりました画像診断、遠隔医療についても、デジタル化を進めることによって、放射線科の医師不足解消というものにもつながってくると思いますので、是非是非進めていただきたいと思います。

 あと、我が国のデジタル化について、世界の中でのデジタル化の達成状況とかを踏まえた未来像について大臣にお伺いしたいと思っておりましたが、最初の質問の中でかなりな部分を答えていただけたというふうに認識いたしましたので、また詳細については、機会をいただければ改めて質問をさせていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、お疲れさまでございます。

 冒頭、今日お配りする資料について、出典についてちょっと補足をさせていただきます。出典は、令和二年度、厚労省の審議会ということで、資料をお配りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まずは、デジタル時代に対応した経済社会をつくる上での規制の見直しを含めた一括法案ということで、地方行政との関連でお尋ねをいたします。

 自治体には国からの法定受託事務がございますが、国の法令でアナログ規制が見直しとなった場合には、それにひもづく法定受託事務に関連した条例、規則も見直されることになりますけれども、全国の自治体ではトータルで百万を超える数と言われる条例、規則があるわけであります。この中には、法定受託事務に関わるものだけではなくて、地方が独自に担う自治事務に関する条例、規則というものも相当多くございます。

 デジタル庁としては、一部のオンライン申請やシステムのデジタル化だけでない、行政サービス全体のDX、デジタル完結を目指しているわけですけれども、地方行政のDXを考える際には、今回の見直しに関わるもの以外の取組、自治事務に関するものも含めた取組状況も都度確認をしていかなければならないと思いますけれども、これに対する御所見、今後の御対応、いかがでしょうか。

河野国務大臣 地方自治体のDXについては、法定受託事務のみならず、自治事務に関しても見直しをしていただくことが必要だろうというふうに思っております。

 以前、認め印の廃止を自治体にお願いをしたときにも、国の方でマニュアルを作りまして、洗い出しの作業から様々、必要な作業、こうやったらスムーズにできますというようなマニュアルを出しましたので、今回もマニュアルを自治体向けに公表しているところでございますが、今十五の自治体が手を挙げてくれておりますので、実際にその十五の自治体と一緒に課題を洗い出して、実際に見直しをやっていく、その結果を横展開をしていくということをやってまいりたいというふうに思っております。

 また、アナログ規制を廃止をするに当たって必要な技術についてはテクノロジーマップを整備をし、財政的にはデジ田の交付金で財政面を支援する、そういうことを考えておりますので、少し丁寧に自治体に寄り添いながら、こうした作業を進めていただく後押しをしていきたいと思っております。

緑川委員 大臣がおっしゃった、自治体向けに政府が作成したマニュアルですけれども、自治事務に関する取組を含めて、やはり、自治体がどのように進めていくべきかということで、この取組の参考となるような実例も紹介をして横展開を図るということは、おっしゃっていただいたこと、とても大事だというふうに思います。

 一方で、十五の自治体に対して、トータルでは千七百の自治体がございますから、やはりその実情は様々であるというふうに思いますし、自治体の、それぞれ内部からの不安、また反発の声が上がるということにもマニュアルは触れているわけでございます。

 その上で、デジタル庁が自治体に期待する取組の方向性というのは、このマニュアルには、首長などの幹部がリーダーシップを発揮して、庁内への呼びかけを行うことによって、各部署が点検や見直しの目的、意義を理解して、前向きに取り組む機運を醸成していくということでありますので、取組が進んでいくかどうかというのは、つまるところ、首長や幹部の改革への意欲、能力によるところが非常に大きいということになろうかと思います。

 改革に前向きでデジタルに強いリーダーがいるというようなところは進めやすい。一方で、もちろん、専門チームをつくりながら現場のDX、各部署の取組を進めようという意欲的な自治体もあるんですけれども、なかなかうまく進められないというところもやはり出てくるかというふうに思います。

 そして、法定受託事務に関わるところでは、例えば、デジタルが加速していっても、自治事務では相変わらず紙媒体であったり、あるいは対面での手続、改善するべき点がいまだ残されているというままでは、やはり地方行政の全体のDXという点では実効性が薄れてしまうということにもなるかと思います。

 当初の期限を政府として前倒しして、二〇二五年の六月までとしていたのを、来年の六月までに国の法令の一万近くの条項を改正するというふうに、明確な時間軸も加速をして設定をされましたけれども、その時間軸に対して、自治体間での取組が、やはり状況にばらつきが生じ得るのではないかということを少し心配をしております。

 それに対する大臣のお考え、そしてフォローアップなども含めた今後の取組の方向性、お伺いしたいと思います。

河野国務大臣 以前にやりました認め印の廃止、それから先日のコロナ禍でのコロナワクチンの接種の推進、こういうものは、割と目に見えるものですから、首長のリーダーシップがしっかりと発揮されやすいものだったというふうに思っております。

 私も、認め印の廃止やらワクチン接種の推進で首長さんとじかにいろいろ意見交換をさせていただきましたけれども、首長さんが、自分の町の状況をよく把握をされていて、どこに課題があるのかというのをよく分かっていらっしゃって、多くの場合は、こうやったらうまくいく、どうだという提案もいただいて、割と二人三脚でやってきたところでした。

 今回のこのシステムに関しては、一つは、なかなか見えないというものと、それから、技術というのが非常にある面難しい。首長さんの中でもこのIT技術を理解をされている方が極めて限られている中で、首長にリーダーシップを発揮していただかなければいけないということを考えると、やはり、首長のリーダーシップと、それをサポートする体制というのが大事なんだと思います。規模の小さい自治体は、優れた人がいればかなり飛躍的に前に進みますが、そういう人材がいないところはちょっと手探りの感じがあると思います。

 今、デジタル庁では、そういう自治体からデジタル庁に人を出していただいて、デジタル庁で仕事をしていただきながら、そういう人をリエゾンに、いろいろなやりくりを、やり取りをして自治体をサポートしよう。あるいは、共創プラットフォームというものを立ち上げて、デジタル庁の職員と自治体の職員が直接ネット上で会話をしながら、ここが分からないとか、ほかでうまくやっているケースはないか、そういう情報をどんどん流しながらやっているところでございますので、デジ庁として、自治体の人材をいわば育てるお手伝いをしながら、自治体に寄り添っていきたいというふうに思っております。

緑川委員 御答弁ありがとうございます。

 やはり、DX全体ということに関連すると、今日も御議論がございますが、デジタル庁の言うエンド・ツー・エンドのデジタル完結、これを目指していく上ではどうしても避けて通れないというのが、政府としての立場としては、自治体の業務システム、これを標準化する、そうした、移行していくということですが、その期限も二六年、つまり二〇二六年三月ということですから、三年以内に設定をしているわけであります。つまり、それまでには、地方の条例、規則に係るアナログ規制全体の洗い出し、見直しも含めて、一定のめどがついていかなければならないというようなものになると思います。

 取組を加速する中で、現場の自治体、各部署の懸念にはやはりしっかり向き合っていただきながら、この人材の交流、おっしゃっていただいたことも含めて、一層この取組を深めながら、国の責任として丁寧な助言、支援を行っていただきたいというふうに思います。

 千七百の自治体の業務システム、この自治体のシステムの標準化ですけれども、この業務がクラウドに移行する際の情報漏えいの懸念については、堤委員からの御指摘もございました。やはり最大の懸念というのはセキュリティーにあるというふうに私も考えております。

 これまでは、サーバーやソフトというものが庁舎内にあって、その設定に多少不備があっても外からは攻撃ができない、そういう構造になっていました。しかし、標準システムでは、クラウド化によってこのシステムが外部化して、システム管理について外部への依存をやはりこれまで以上に強めてしまうというリスクがありますし、セキュリティーの技術的な部分で、自治体の作業が、技術的な部分では担う部分が少ない、業者任せになりやすいということがあります。その結果として、ガバナンスが失われ、責任の所在が曖昧になりかねないということも考えられるというふうに思います。

 それを防ぐためにも、システムがいかに複雑になっても、この技術の理解のハードルが増しても、自治体はこれにしっかりと追いついていかなければなりません。その人材の育成に当たっては、自治体側で必要になるのは、やはり専門業者と技術的に対等で、なるべく対話ができるような人材。更に言えば、業者側の不備にもその都度気づけるようなチェック体制も自治体として持っておかなければならない。そうした体制が不可欠であるというふうに思いますけれども、総務省、いかがですか。

三橋政府参考人 お答えいたします。

 地方公共団体、地方自治体の情報システムの標準化、共通化は、各地方団体、地方自治体における個別のシステム改修や制度改正対応などの維持管理に係る負担の軽減を図りますとともに、地方行政のデジタル化の基盤となり、住民の利便性の向上や行政運営の効率化に資するものでございます。

 一方で、委員御指摘のとおり、自治体の基幹業務システムが二〇二五年度までに標準システムへ移行することを目指しているところでございまして、その移行に際しましては、小規模自治体では、デジタル人材が不足しており、体制も脆弱であるという声があることも承知をいたしております。

 そのような御意見を踏まえまして、総務省としては、各地方自治体に対しまして、標準化、共通化に係る詳細な手順を示しました手順書をお示ししておりますとともに、手順の進捗状況や質疑応答等を共有いたしまして都道府県と連携した移行支援を実施するなど、自治体への様々な支援に取り組んでいるところでございます。

 また、御指摘の、自治体で標準化、共通化の取組を行うに当たり必要となる人材についてでございますけれども、今年度より、都道府県等における市町村支援のためのデジタル人材の確保に要する経費、これにつきまして新たに特別交付税措置を講じることとしております。

 また、標準化、共通化を含む地方自治体におけるデジタルトランスフォーメーションの取組を支援するための専門アドバイザー制度を創設いたしまして、その取組を充実強化しているところでございます。

 これらの取組によりまして、都道府県と連携いたしまして、特に小規模自治体に対するきめ細かな支援、これを行うことによりまして、引き続き、標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行を実現できるよう、地方自治体の意見を丁寧にお聞きしながら必要な対応を行ってまいります。

緑川委員 やはり、信頼性のある業者を見る目を、しっかり見抜く目を持つということが重要であるというふうに思います。そのためにも、自治体の職員、ITのベンダー関係の社員、そしてデジタル庁や関係省庁、それぞれ連携しながら、標準化を進める上での十分な情報共有をして、懸念点も含めてしっかりと議論を深めていただきたいというふうに思います。

 次の質問ですけれども、国が自治体に義務づけている、保育所の運営状況をチェックする実地検査についてお尋ねしたいと思います。

 この実地検査は、自治体職員の人手不足への配慮などを理由として、今年度から児童福祉法施行令が見直されて、適用できる例としては、自然災害が起こったり、あるいは、前年度の検査で問題がなかった施設などは、実地によらずに、リモートや書面での検査が可能になりました。

 しかし、昨今、バスへの園児の置き去り事故や相次いで表面化している虐待の事件、そして先週も、乳児が給食のリンゴを食べて心肺停止となっている事故も起きています。こうした痛ましい事件、事故を未然に防ぐためにも、行政の施設に対する検査の実効性を高める、その重要性は増しているというふうに思います。

 共同通信が自治体に行ったアンケート調査では、二〇一三年度以降この十年間で、虐待などの不適切な保育を理由とした保育施設への行政指導や処分は残念ながら増えている傾向にございます。それも氷山の一角であるという見方があります。

 そして、こども家庭庁の実態調査で、事案をどう把握したかの経緯の項目で、自治体の検査や巡回指導で明らかになった虐待もございます。現場でのチェックが重要であるということが、改めて実態調査、国の調査でも明らかになりました。

 それに対して、条件によって実地での検査が行われなくなるということは、事案の正確な把握をやはり難しくしてしまう、そんな検査の緩和であるというふうに懸念をしてしまいますが、お考えは、改めましていかがでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 保育所等に対する指導監査でございますけれども、保育所等の保育内容や保育環境を適切に確保する観点から大変重要であるというふうに考えております。

 このため、保育等の質を確保するとともに、指導監査の実効性を更に高める観点から、委員御指摘のとおり、先般の政令改正において、実地監査を原則とした上で、効果的かつ効率的な監査が行えるように、一定の要件を満たす場合には実地によらない方法での指導監査を可能とするというふうにしたところでございますが、その一方で、不適切事案等が発生した自治体では全ての保育所等に実地監査を行うことですとか、監査実施率の定期的な把握、公表の実施など、監査の実施率向上のための取組を行うこととしているところでございます。

 さらに、虐待等の未然防止、それから発生時の対応に関する措置を講じているかなど、子供の安全管理や適切な保育支援の実施に関する項目をより優先的かつ重点的に確認すること、それから、実地によらない監査で疑念が生じた場合等、速やかに実地監査に切り替えること、不適切事案等の情報提供等を受けた場合は、子供の安全の観点から、必要に応じて、実地の特別指導監査を行うことなども併せて求めているところでございます。

 国としては、引き続き、自治体による保育所等への指導監査の実施を後押しし、指導監査の実効性をしっかりと確保してまいりたいと考えております。

緑川委員 検査の実効性を高めていく一つの重要な要素は検査率。自治体として、全体で恐らく四割未満という低い検査率を高めるということはもちろん大事なんですけれども、それを各自治体で高めていくということと、検査を実質緩和するような、実地での検査をしなくていいということは、やはり別の話であるというふうに思います。

 その自治体の管内の施設の実地の検査率が例えば五割以上、つまり施設の半数以上を実地で検査できていれば、翌年度はこれらの施設については実地によらない方法で検査もしてもいいというような見直しになっていますけれども、ここでお配りした資料を御覧いただきたいと思います。

 (1)のところで、保育所で勤務する保育士の経験年数についてなんですが、公立と民間を合わせた全体の保育所で、半数の保育士で経験年数が八年未満になっています。

 政府の分析では、賃金に見合わない仕事量あるいは労働時間であることなどが理由となって、短期間に離職する保育士が多いということなんですが、中でも多いのが、御覧いただくように、二年未満で辞めてしまうというケースであります。たとえ前回の実地検査で問題がなかったとしても、保育士が定着せず、別の保育士がすぐに入れ替わるような、そんな現場もあるわけであります。都内のある認可保育園では、担任が一人減ったために新任の保育士に大きな負担がかかることになり、園児の虐待につながってしまったという事件が実際にありました。

 こういう現場に対しては、リモートや書面のチェックでは状況を十分に把握することができないのではないか、深刻なケースを短期で実地によらない検査を行ったばかりに見逃してしまうという場合も起こり得るのではないでしょうか。いかがでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたけれども、指導監査の重要性は言うまでもございませんし、実地監査についても必要性については十分に認識をしているところでございます。そのような中で、様々な問題を解決していかなくちゃいけないというふうに考えております。

 今、例えば、御指摘のございましたとおり、保育士自身が離職率が高い等、人材をどういうふうに確保していくかということも必要な課題でございますので、保育士の不足についてどういうふうに解決をしていくのか。そのためには、保育の環境、職場の環境の改善といったことも必要ですし、また、保育の現場の負担の軽減ということも必要である。それからまた、先ほど、キャリアが、若い職員が多いという話がございましたけれども、そうした若手の保育士をサポートするような体制を取っていくことも必要であると考えております。

 そのような観点から、先ほど申し上げたように、監査自体については、ある意味めり張りを利かすという意味で、先ほどのような形で見直しを今回図っているところでございますけれども、あわせて、負担軽減等については、例えば、保育補助者の配置ですとか保育支援者の配置、ICT化の推進等によってそれぞれの職場の状況の改善を図っておりますし、また、若手のサポートという意味では、例えば、主任保育士専任加算等によって、キャリアのある保育士がきっちりと若手の職員をサポートできるような仕組みですとか、若手保育士のスキルアップ等への巡回相談によるサポート等を行いまして、トータルとして底上げを図っていきたいと考えておりまして、全体として適正な監査、適正な保育の現場の状況をつくり出すことができるように、我々としては努力していきたいというふうに考えているところでございます。

緑川委員 まず冒頭、保育の現場の負担軽減が重要であるというふうなお話がありましたけれども、いまだやはり、保育士の配置基準についてもこの後触れたいと思いますが、保育士に対する支援が十分でないばかりに今の状況が生まれているというふうに思います。

 こういう現状の中では、やはり検査もしっかりと行っていかなければならない。政府の言う保育の質の確保、実効的な検査を、両立を図るためには、保育現場の雰囲気、そして保育士の表情や子供の接し方、実地の検査でなければ分からない情報が多々ある中で、その糸口をつかむことで事案の早期の把握、問題がそれ以上広がるのを防ぐということになるわけで、今のこの発生事案の推移を見ると、今は実地による検査を強化をするということが筋である、今の状況であるというふうに私は考えております。実地によらない検査というのはより厳格に規定をするべきである、こういうことは強く申し上げておきたいというふうに思います。

 この実態の把握に当たって、そもそも不適切な保育とは何であるのかという、その捉え方が検査する自治体によっても相当違うという課題もございます。

 先週、岐阜市が、不適切な保育と言い切れないものまでカウントしていたということで、国に報告していた件数を取り下げた、実態調査の件数を取り下げたということがありましたけれども、逆に言えば、調査の中で、件数が少な過ぎる自治体というのもあるわけであります。

 不適切な保育という認識が自治体ごとに異なっていて、その基準について曖昧な側面があることによって、不適切な保育が確認された場合に、その施設から自治体に報告する、あるいは、その基準や手続の方法についても、国の実態調査によれば、多くの自治体で各施設には周知されていないという問題がございます。

 そのために、自治体としての、事実確認のプロセスや、事案の公表の判断とか、あるいは保護者への説明、被害に遭った保護者や子供の精神的なケア、再発防止への対応方針、いずれも重要な対応であるにもかかわらず、対応方針があると回答した自治体というのはごく僅かで、ほとんどの自治体は方針がないという調査の結果になっています。

 まずは、この発端である不適切な保育ということの捉え方について、共通の理解を地域、施設で持てるようにしていくということ。

 自治体が行う検査では、施設への評価基準がまちまちで、監査員の個人の主観で判断される場合があるといった、評価方法の運用の課題というものも聞かれます。

 そのために、自治体でばらつきのある評価基準を標準化していくことによって、不適切な保育を正確に把握していく。そして、評価基準を作ることで、自治体の職員でなくても評価を担当できるようにして、自治体の人手不足も和らげながら、施設側との情報交換も大事にしていく。そして、事案が確認された場合の公表や保護者への説明など、適切な情報公開にも取り組めるような体制づくりというものを、国としてしっかり、責任の下で後押しをしていくということが大事であると思いますが、お考えはいかがでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、指導監査基準について、要は標準化していくべきではないかという御提案でございます。

 都道府県等が行う保育所の指導監査につきましては、国といたしましても、指導監査の統一的実施を確保するために、監査の実施方針、実施方法、監査項目等について自治体にお示しをしておりまして、児童の安全の確保等に係る事項の点検もその中でお示しをしているところでございます。

 保育所等における不適切事案への対応につきましては、先日、今も御紹介がございましたけれども、今後の対策を取りまとめたところでございます。

 この中では、不適切事案の把握や公表に係る対応も含めまして、保育所等や自治体等に求められる対応を整理したガイドラインを新たに策定をいたしまして、例えば、対応窓口の設置ですとか、事案の重大性等に応じまして、事案の公表等の対応を行うこと等といったことをお示しするとともに、また別途、虐待等に関する通報義務の創設ですとか、虐待の状況の公表といったことにつきましては、児童福祉法改正による制度的対応も併せて検討を国としてもしてまいりたいというふうに考えておりまして、具体化に向けて今後検討してまいる予定としております。

 こうした対応によりまして、子供たちの安全、保護者の安心の確保に万全を期してまいりたいというふうに考えているところでございます。

緑川委員 やはり大多数の保育士にはしわ寄せが行っている、今のこの発生事案のいろいろなニュース、報道であるというふうに思います。

 こうした一部の保育士が行ってきた、子供たちに対する暴言、乱暴な接し方を省みたり、保育士同士で未然に問題を防ぐこと、何より、試行錯誤しながら日々頑張っている、保育の現場に向き合っている保育士に対して悪影響が生じないように、不適切な保育に対する共通の理解を持って、情報の透明性をガイドラインも通じて高めていただくことを求めたいというふうに思います。

 現場の人手不足、やはり保育士の心の余裕を奪ってしまうことが問題の引き金になっている。そもそもの、この人材不足の大きな要因は、七十年以上も前から変わっていない、時代遅れとも言われる保育士の配置基準にあります。保育士一人で、四、五歳児であれば三十人を見なければならないという配置基準、これは、保育士一人で十人前後を基準としている欧米と比べれば、明らかに緩い、手薄な基準であると言わざるを得ないと思います。それに対して、政府が三月に示したたたき台では、保育施設の運営費の増額は行われても、保育士の配置基準はいまだに改定されません。

 子育ての家庭の孤立を防ぐために、保育所や幼稚園には通っていない無園児の一時預かりを進めることは大事ですけれども、そうした新たな役割も担っていく中で、質の高い保育ということを言うのであれば、その保育士の待遇について、子供の命、安全を守る重い責任にやはりしっかり見合うものにしていくということ。ゆとりのない保育や保育士が定着しない原因となっている配置基準、今こそ見直さなければならないというふうに思いますが、最後にお伺いします。

橋本委員長 こども家庭庁黒瀬長官官房審議官、申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 保育士不足、それが不適切保育の背景にもなり得る、そういったことも認識をしているところでございまして、私どもとしても、安心して子供を預けられる体制整備を急ぐ必要があると考えてございます。

 そのため、今般取りまとめたこども・子育て政策の強化に関する試案におきましても、「一歳児及び四・五歳児の職員配置基準について一歳児は六対一から五対一へ、四・五歳児は三十対一から二十五対一へと改善する」としているところでございまして、こういったことも含めてしっかりと体制強化が図れるように、我々としても努力をしてまいりたいと考えております。

緑川委員 質問を終わります。ありがとうございました。

橋本委員長 次に、西岡秀子君。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、一連のマイナンバーカード、マイナ保険証のトラブルにつきまして、再発防止へ向けた取組についてお伺いをいたします。

 マイナンバーカードを使用したコンビニでの住民票、証明書交付で別人のものが発行されたことですとか、マイナ保険証に誤って別人の情報がひもづけられたケースが多数あったこと、また、別人の顔写真を掲載したマイナンバーカードが交付されたことなど、一連のトラブルが発生をいたしております。

 それぞれ、何が原因であったのか、この検証をしっかりと進めまして、再発防止を徹底することが大変重要だと思います。また、これらのトラブルについては本来あってはならないことであるという認識の下で、今後どのような再発防止を徹底していく方針かということにつきましてお伺いをいたします。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘をいただきました一連のトラブルは、いずれも個人情報の保護に関する国民の皆様の信頼を傷つける重大な事案であり、国民に不安を与えたことについて大変申し訳なく思っております。

 再発防止策についてお尋ねをいただきました。

 個々に細かくはあれでございますが、主としてコンビニ交付サービス若しくは印鑑登録証関係の事案につきましては、まず、最初にトラブルが分かった本年三月以降、総務省及びJ―LISの方から全国の自治体及び富士通Japan社を含む全ての関連事業者に対して総点検を行うよう要請、さらに、その総点検中であるにもかかわらず、富士通Japan社が開発したアプリを原因とする事案が追加的に出ましたことから、五月の八日に、デジタル庁から同社に対して、要請という形ではありますが、自治体のシステムの運用を停止して徹底的に再点検を行うよう要請を行ってございます。

 現在、富士通Japan社において、自治体と調整し、順次、サービスの停止及び再点検が進みつつあると承知しておりますが、いずれにせよ、その全体の進み方も含め、よく見まして、徹底した再点検がなされるよう、二度と同じ事象が起きないよう対応を進めてまいりたいと考えてございます。

 また、健康保険証のオンライン資格確認の関係につきましては、こうした誤りの防止について、本年二月、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会の中で既に議論し、中間とりまとめを踏まえて適切な対応を進めつつ、厚労省さんにあるところではございますが、さらに、保険証の情報登録につきましては、厚労省とも連携をして、全保険者の事務処理の点検とデータ全体の確認を進めるということを決め、発表させていただいたところでございます。

 いずれにせよ、こうした事案が再発しないよう徹底して取り組んでまいりたいと考えてございます。

西岡委員 このような事案が多く発生していきますと、やはり先ほど申されたように、国民の皆様のこの制度に対する大変不信が増大するということにつながりますので、今回の様々な事案の検証をしっかりとしながら、再発防止に努めていただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。

 デジタル時代におきましては、個人情報を始めとしたデータの利活用を図ることは、住民サービスの利便性を向上して、また、公平公正な給付を実現していく意味でも大変必要なことであると認識をいたしております。一方で、先ほど様々なトラブルの事例がございましたけれども、個人情報を厳格に保護していくということが担保されていることも大変必要だと思っております。

 デジタル庁としても、人間を中心とするデジタル社会の構築を目指しておられるというふうに理解をいたしておりますけれども、人を中心とするデジタル社会の構築について、河野大臣の御見解とともに、以前も質問をさせていただいたことがございますけれども、デジタル時代におきましては、様々な施策を進めていく上で、自らのデータの自律権、個人情報の自己決定権というものの確立が私は大変重要だと考えております。これから個々の手続がデジタルで完全に完結していく社会を目指している中で、やはりこの自己決定権というものを議論せずに進んでいくことは私は困難だと思っておりますけれども、再度河野大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 デジタル社会の実現に向けた重点計画では、デジタル社会の目指すビジョンとして、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を掲げております。

 また、地理的な制約、年齢、性別、障害や疾病の有無、国籍、経済的な状況等にかかわらず、誰もがデジタル化の恩恵を享受することにより、日常生活の様々な課題を解決し、豊かさを真に実感できる、誰一人取り残されないデジタル社会の実現を目指すこととしております。

 御指摘の、データ自律権や個人情報の自己決定権については、その内容、範囲及び法的性格に関して様々な見解があり、明確な概念として確立しているものではないと承知をしておりますが、デジタル社会の実現に向け、データの適正な取扱いが重要であることは言うまでもありません。

 個人情報保護法、マイナンバー法など、個人情報保護に係る関連法令に基づいて、個人情報の適正な取扱いの確保を図っていく必要があると認識をしております。

西岡委員 大臣からは、明確な定義がないということで、先般の質疑と同じ答弁でございましたけれども、今後、このデータ自律権、個人情報の自己決定権、コントロール権、大変重要な視点となるというふうに思いますので、また再度、河野大臣のお考えを引き続きお尋ねをしていきたいというふうに思っております。

 続きまして、現在のアナログ規制に関する見直しの工程の進捗状況についてお伺いをいたしたいと思います。

 デジタル臨調が設置をされまして、デジタル技術の活用が可能であるにもかかわらず、省庁や自治体に対して書面などでの確認を義務づけているいわゆるアナログ規制につきまして、七項目に分類をした中で、見直し方針が示されました。河野大臣によりまして、見直しの期間が三年から二年に前倒しされまして、二〇二四年までの工程表が取りまとめられたところでございます。

 今回、その実現のための法改正でございますけれども、あと一年余りで取り組むということでございますけれども、現在の進捗の状況についてお伺いをいたしたいと思います。

村上政府参考人 進捗状況についてお尋ねをいただきました。

 二一年十二月にデジタル原則を発表し、昨年六月に一括見直しプランを決め、それに沿う形で各省と調整をし、年末に、一万条項、デジタル原則を踏まえたアナログ規制の見直しに係る工程表を決めたところでございます。

 今回、法律によるものにつきましては、まさに今回の法令改正を踏まえということになりますが、政省令等、一部先行して行政側でできるものにつきましては、おおよそでございますが、大体年度内、令和四年度内で四割前後程度の改革が既に進みつつあるところでございます。

 残りにつきましても、それぞれの項目に即しまして、技術の検証が必要なものは技術の検証をし、手続が必要なものは手続を踏みといったような形で、決められた工程表に沿いまして、御指摘をいただいた二四年六月までを目途に一掃すべく、作業を進めてまいりたいと思っているところでございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 一方で、デジタル臨調の対象とならないアナログ規制とはどのようなものであるかということについてお伺いをしたいと思います。

村上政府参考人 今回の対象外のものということで御指摘をいただきました。

 細かく挙げると様々ございますので、例示で申し上げますと、まず、今回、申請とか、割と各規制の国民のフロントのところでまずは一掃をということでございますが、細かく申し上げますと、例えば就労証明書、保育所手続で使いますが、これがまだ公共団体ごとにばらばらである、若しくは、企業が就労証明書を出すに当たって、マイナポータルでオンラインで出せるシステムがまだそろっていないといったようなところ。

 それから、制度的には解禁をされましても、なかなか、セルフレジでどうやって年齢確認をするかというところ、今回、日本フランチャイズチェーン協会さんの方で自主的なガイドラインを作成し、実務に即した対応が見えたことで初めて動き始めてございますが、こういったものの整備もございます。

 また、さらに、横断的な取組といたしましては、今回、まさに、出していただくところ、検査するところといったところは大分進んでございますが、その先、実際に行政の内部に入って、手数料の納付から処分通知といったようなところの中でのオンライン化のデジタル化完結がどこまで進んでいるのかといったところで見ますと、残念ながらまだ課題は残っている状況でございます。

 こういったデジタル化完結の完遂に向けて、所管省庁等との協議、調整、それからオンライン化に向けた支援方策の検討といったようなところを、経済界からも多数要望いただいてございますので、引き続き、たゆまず進めてまいりたいと考えているところでございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 対象とならない規制についても取り組んでいくということでございましたけれども、デジタル化につきましては、大きなメリットがある反面、様々なデメリットも指摘をされております。

 デジタル臨調におけるアナログ規制の見直しにつきましては、人手不足の課題を解消したり、生産性の向上や経済成長に結びつくことによって所得の向上に寄与し、また、スタートアップなどの振興や新しい産業の創出につながることが期待をされております。一方で、デジタル化の進展によりまして、分野によっては雇用が失われるという懸念ですとか、本人確認や、本物であることを確実に証明できるなどの真正性の証明におきましても懸念が指摘をされております。

 その懸念に対してどのように認識をして今後取り組まれていかれる方針であるかということについて、河野大臣にお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 ヨーロッパなどでは、雇用が脅かされるということで、例えばロボットとかAIに対するおそれみたいな感覚がどちらかというとあるような気がいたしますが、我が国は、かなり人口減少が早くなっております。

 我が国で、人が人に寄り添う、ぬくもりのある社会をしっかりとつくっていこうとするならば、人間がやらなくてもいいものはAIやロボット、デジタル技術にお任せをして、人間がやらなければいけないところに人間は集中をする。それをやるから、人が人に寄り添う、ぬくもりのある社会というのをつくることができる。そういう意味で、デジタル化というのは、人口減少、高齢化が進む日本の国にとって非常に重要な技術だというふうに思っております。

 もちろん、AIなどが導入されることによって失われる雇用というのもございますが、デジタル技術によってつくられる雇用というのも多くあるはずでございます。失われる雇用についてはリスキリングで対応をしていくということが非常にこれから重要になってくるんだろうと思います。

 また、本人の確認、真正性につきましては、おかげさまで、マイナンバーカード、今九千七百万枚弱まで参りました。オンラインでの本人確認、これが最高位の証明書でございますので、これを使った様々な行政サービス、民間サービス、これから発展をしていくことになろうかと思っておりますので、国民の皆様の信頼と御理解を得ながら、しっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

西岡委員 大臣の方から、ぬくもりのあるデジタル社会という、ぬくもりのあるというお言葉を御答弁いただきましたけれども、雇用によっては、やはりこのデジタル化で雇用が失われる部分もあるという中で、大臣も御答弁されましたように、リスキリングを含めた職業訓練、またリカレント教育を含めて、全ての人がそういうリカレント教育、リスキリングをしっかりと受けられる教育体制を整備をしていくということも大変重要な課題であると認識をいたしております。

 続きましての質問でございますけれども、アナログ規制撤廃によりましてデジタル化が進んでいくわけでございますけれども、デジタル化による効率化や省人化と、安全性の担保をどのように両立で図っていくかということにつきましてお伺いをしたいというふうに思います。

 アナログ規制撤廃が、先ほど御質問させていただきましたように、二〇二四年六月までに撤廃すること自体が目的化されることによりまして、急速なスピードでこのアナログ規制撤廃というものがこれから進んでいく中で、省人化、効率化を急ぐ余り安全性が損なわれるようなことがあってはならないと考えております。

 その中で、その両立をどのように図っていくのかということが極めて重要でございます。特に、人命に関わる、また安全に関わる重要インフラですとか災害対策につきましては、大変このことが重要だというふうに思いますけれども、効率化、省人化とともに安全性の担保を両立でどのように図っていく方針であるかということについてお伺いをいたします。

村上政府参考人 御指摘いただいたとおり、効率性のみならず安全性についても十分に考慮することは極めて重要であり、安全性が確保された上での見直しであると考えてございます。

 例えば、製造設備の作動状況や異常の有無の定期点検をセンサーやIoTに置き換えられるか、これはやはり検証した上で、人がやる場合と同等だということが確認できてのことであるというふうに考えてございます。

 九千六百六十九のうち約千四十につきまして、こうした技術検証をした上でということで、各省とも協議をして進めさせていただくことになってございます。今年の九月まで、若しくは年度内、それぞれに応じた検証をした上で次のステップへと、全体の期限に間に合うように進めてまいりたいと考えてございます。

西岡委員 しっかり技術的な検証を行った上で進めていかれるという御答弁でございました。

 一方で、もとより、目視ですとか常駐等によっても必ずしも完全に安全性が担保されているわけではございませんけれども、デジタル技術を活用する場合において、どの程度までそのリスクを許容するのかどうか、技術要求水準を示す必要性が指摘をされております。このことについての御見解をお伺いしたいと思います。

村上政府参考人 御指摘のとおり、要求水準を明確にすること自体は極めて重要なことだと考えてございますが、ただ、残念ながら、例えばトンネルのクラックを発見する、若しくは、その同じ構造物の瑕疵の発見でも、じゃ、それが河川の場合どの程度発見できればいいのか等々、場合によっては、規制によっては、同じ規制でも、川の場所とか、そういうことによっても求められる水準が違うといったような、個々の事情が相当複雑にございますので、ちょっと、デジタル庁の方から統一的な技術要求水準をお示しをするのは難しいのではないかと考えてございますけれども、逆に、関係省庁と連携しつつ技術検証を進めるというのは、関係省庁だけでもなく、私どももきっちりとコミットした上で検証していくという趣旨でございます。

 いずれにせよ、安全性を担保した形で合理化が進んでいくように、しっかり進めてまいりたいと思います。

西岡委員 是非、安全性というものを、大変重要な中で進めていただくことを、お願いをいたしたいというふうに思います。

 私も、先ほど緑川委員の方から御指摘がありました、保育所における子供たちの安全性、これこそ安全性を守ることが最重要課題であると考えております。先ほどの議論と重複いたしますので、詳しく述べることは省略をさせていただきたいというふうに思いますけれども、やはりリアルに現場を実地検査することでしか見えないものが大変多くあるというふうに思っております。

 昨今の、今保育所で起きている様々な問題を含めて、また、大変、保育士不足によって、一人一人の保育士の先生に過度な負担が重くのしかかっている現状も含めて、今のこの現状で、アナログ規制の対象とする、実地検査を対象とするということについては、私は大変リスクがあるというふうに思っております。先ほど御答弁いただいておりましたことを聞いておりましたけれども、やはり今の時点で対象とするということについては問題があるということを御指摘をさせていただきたいと思います。

 続きまして、自然災害、有事も含めましてあらゆる事態を想定する必要がある中で、システムダウンが発生した場合や広範囲な通信障害が起こった場合に、どう安全性を担保していくかということも大変重要だと思っております。このことについての方策をお伺いしたいというふうに思います。

村上政府参考人 御指摘のとおり、大変重要な問題であり、デジタル庁のみならず関係省庁力を合わせて、例えば、災害対策の観点からは内閣府が、電気通信の観点からは総務省が、電力供給の観点からは経産省が、それぞれ力を合わせて当たっていくということであろうと思います。

 また、特に、直接関係します政府情報システムにつきましては、関係各省庁において保有する情報システムの運用継続計画、いわゆるBCPというものを適切に整備する。例えば、同時被災しない場所へのバックアップシステムの確保や、自家発電能力の確保等の対策を講じていくこととなっている。こういったようなことにつきましても、府省横断的にしっかりと連携をして、いろいろ取組の内容を定めているところでございます。

 いずれにせよ、御指摘の点をしっかり遺漏のないように、各省力を合わせて取り組んでまいりたいと思います。

西岡委員 まさに今御答弁あったように、省庁横断的にあらゆる事態を想定をして、それに備えていくことが大変重要だと思いますので、引き続きのお取組をお願い申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、最初のフェーズにおきましては、デジタル技術につきましては視覚だけで、判断そのものは人が行う、後半のフェーズにおいてはAIが判断するということも想定をされております。その場合の安全性について、最終的な責任の所在はどこにあるのかどうか。このことについての御見解をお伺いしたいというふうに思います。

村上政府参考人 現状、AIによる最終判断まで含めて見直しをしたという事例はまだ出てございませんが、技術代替が更に進めば、そういったケースが出てくる可能性もあり得るというふうに思います。

 ただ、いずれにせよ、これは規制を執行するための手段の問題でございますので、AIが導入されたからそれぞれの制度を所管する行政の責任が省かれるということではないというふうに考えてございます。

 デジタル庁といたしましても、AIの判断に関する責任の在り方、国際的にも様々な議論が今後進んでいくと思いますので、関係省庁とも連携しながらしっかり検討してまいりたいと思います。

西岡委員 将来へ向けた大変重要な課題であるというふうに思いますので、国際的な議論も含めて、また国内でもしっかり議論を進めていただくことが重要だというふうに思っておりますので、お願いを申し上げたいと思います。

 それでは、先ほどから議論があっておりますけれども、地方公共団体における取組への支援についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 今回のデジタル完結の取組につきまして、アナログ規制の撤廃につきましては、地方公共団体でどういう取組が進んでいくか、どういうスピードで進んでいくかということが大変重要であると思っております。

 デジタル庁として、点検・見直しマニュアルを公表されておりますけれども、このことをどのように周知徹底を行い、また、地方公共団体の取組についてどのように検証、評価していく方針であるかということについてまずお伺いをしたいと思います。

村上政府参考人 一部、先ほど大臣から御答弁した内容とも重複をいたしますし、御指摘をいただいたとおり、まずマニュアルを公表いたしました。これにつきましては、直接、都道府県、市町村にデジタル庁の方から周知をし、ウェブ説明会なども開催をしてございます。

 また、大分県や福岡市などでは、こういう形で作業が進んでいるといったようなところを公表していただいてございます。やはりこういった事例は大変分かりやすいということで、これらの公表でございますとか、例えば、岐阜県は独自に、条例の直すべきところを見つける仕組み、これを、自治体の職員とデジ庁の職員とが共同で持っておりますネット上のプラットフォームで公表をしていただいてございます。

 ほかにも、公募した十五団体と連携をいたしまして、作ったマニュアルが本当に自治体に使いやすいものであるのかどうかということの検証も含めて、マニュアルの更なる充実をしていく。

 さらには、今後、必要に応じて状況についての全国調査などもしつつ、モデル自治体との取組状況を共有するといったような、PDCAサイクルをどんどん回していくことで全自治体に対して適切な取組を広めてまいりたいと考えているところでございます。

西岡委員 次の質問につきましては言及にとどめたいというふうに思いますけれども、自治体の規模ですとか首長の認識によって、取組に大きな差が、今後、より生じてくる可能性がございます。住民サービスに格差が生じないような取組というものが大変必要だというふうに思います。

 また、関連をいたしまして、地方公共団体におけるアナログ規制の見直しを通じましてデジタル実装を後押しするために、デジタル田園都市国家構想交付金デジタル実装タイプの活用によって、どのように地方公共団体の取組を後押ししていく方針であるかということについてお伺いをしたいと思います。

村上政府参考人 例えば、福井県あわら市では、目視巡回点検を行っていた都市排水路について、監視カメラ、水位計の設置、スマホからの確認、緊急時の迅速な情報確認、これはデジ田交付金のプロジェクトとして支援させていただいてございます。また、愛知県では、危険物取扱者に対する法定講習のオンライン受講を可能にするということで、そのための仕組みの整備、こういったことも進んでございます。

 正直申し上げまして、まだそんなに件数は多くないんですが、こういった使い方が既に始まっているということをよく周知をした上で、引き続き、本交付金の有効な活用を促してまいりたいと考えてございます。

西岡委員 先ほどの大臣の答弁でもあったんですけれども、やはり、自治体の首長の取組による差、ITに対する理解を含めて、企画力、地方公共団体の企画力がこの交付金実装タイプには大変必要であるという側面があると思いますので、その辺りもデジタル庁の方でしっかりと御支援をしていくことが必要であるということを申し添えたいと思います。

 関連になります。再度の質問になりますけれども、先ほど大臣からお答えをいただいた内容と重なるというふうに思いますけれども、政府が目指すデジタル化完結に向けましては、地方公共団体の取組自体がその成否を決すると言っても過言ではないというふうに思います。地方自治の本旨を踏まえた上で、今後、デジタル大臣として、自治体の規模、首長の認識の違いもある中で、スピード感を持って進めていく、現実的に進めていくために、どのように大臣として取り組んでいかれるかということについてお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 行政のデジタル化を進める上で、やはり、市民に一番密接にサービスを提供するのが最前線である自治体でございますので、国のDXのみならず、自治体のDXというのはデジ庁としても非常に大切だと思っております。

 ただ、先ほどから話が出ているような、リソースにも差がございますので、情報通信技術への対応について、今回の法案では、国は義務にしておりますけれども、自治体は努力義務ということにさせていただいているところでございます。

 地方自治というのは大変大事でございますけれども、システムを統一をする、あるいは様々なフォーム、様式を統一をするというのは、これは世の中全体の効率化、生産性の向上にもつながりますので、そういう部分については、自治体の御理解をいただきながら、就労証明書の様式を統一をするとか、いろいろなことはお願いをしてまいりたいと思っておりますが、ガバメントクラウドに自治体のシステムを統一、標準化して、統一をしながらでも自治体の特色というのは十分に発揮できると思いますし、むしろ、そこへ統一をすることで、いろいろなサービスも同じように、お互い分からないところは補いながら、あるいは費用を按分しながら進めるということもできるようになってまいりますので、これは自治体にとってもプラスの面というのが非常に大きいのではないかと思っております。

 今、日本の自治体の多くは、人口が減少し、また高齢化が進む、過疎の問題も抱えている中で、やはり市役所、町役場、村役場のバックオフィスをどのように効率化しながら縮小をして、限られたリソースを本当に市民の皆さんとの密接な関係のあるところに、そのサービスにリソースを割り当てていくということが今後非常に重要になってくるというふうに思っておりますので、それが進められるように、デジタル庁としてもしっかりと自治体のDXを支えてまいりたいというふうに思っているところでございます。

西岡委員 河野大臣の積極的な、三年であるところを二年に縮小して、今精力的にお取り組みをいただいております。地方自治体について、いろいろな事情もございます。先ほど大臣がおっしゃった、その自治体の特色を生かした、こういう取組を是非後押しをしていただくことをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

橋本委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 昨日、たまたまテレ朝のニュースで、またもマイナ保険証のトラブルという報道がありました。医療機関の窓口でマイナ保険証をカードリーダーにかざすと、登録がありませんとなって、瞬間的に無保険になっていたというものでした。大阪府守口市の女性で、社会保険から国保に資格が移ったということで届出は済ませていたのですが、自治体の方で手続が追いついていなかったといいます。この案件は今後も起こり得る、最初に懸念していたことが現実に起こったことだと思いました。

 また、今朝は、大臣、既に会見をされているようですが、公金受取口座のひもづけで、別人の口座を誤って登録されていたという案件がございました。四件あったということでありますけれども、この間も、マイナ保険証で他人の履歴がひもづいたことや、コンビニでの誤交付、相次ぎました。医療履歴や戸籍情報、そして今の受取口座の問題も、いずれも最も機微な個人情報であります。デジタル推進を掲げている大臣として、この事態の重大性についてどう受け止めるのか、伺います。

河野国務大臣 いろいろな事案が発生をいたしまして、個人情報の保護に関する国民の皆様の信頼を傷つけることになりまして、大変申し訳なく思っているところでございます。

 システムの問題というのは、これは本来起こしてはいけないもので、富士通Japanについて徹底的に再点検を行う、必要ならシステムを止めて再点検を行うように要請を行ったところでございます。

 委員からお話のありました登録の問題は、これは保険者がデータの登録をしなければ、現行の保険証も発行できません。ですから、これはマイナンバーカードの問題というよりは、保険者の登録の時間の問題で、これは厚労省の方で、事業者から保険者までの申請の時間、あるいは保険者がそれを受け取ってからデータを登録するまでの時間、これはもう一定期間内にやるようにということで厚労省から通知が出ると伺っておりますので、こうした問題については対応ができるようになるだろうと思っております。

 また、公金受取口座につきましては、共用端末で、本来、御本人に操作をしていただくところ、マニュアルを逸脱して支援員が操作を行ったということでございますが、御本人がなかなか操作をしづらいから支援を受けに来られるということで、例外的に、御本人がシステムの操作ができない場合には支援員に操作をお願いしますが、ログアウトができていなかったということがはっきりしておりますので、ログアウトを御本人と支援員とお互い確認をするということをマニュアルに明記をして、例外的には支援員が対応することも認めるということにいたしました。

 誤入力というのは、これは起こり得ることでございますので、公金受取口座についても、これまでの登録を全件チェックをし、今後も定期的にチェックをしてまいります。

 また、保険証につきましても、マイナンバーカードとのひもづけのところ、今回、遡って全て総点検をすると同時に、今後も何らかの形で点検をしていこうということでございますので、仮に誤入力、誤記その他があったとしても、きちんとそれを発見して対応ができるように体制を組んで、国民の皆様に安心してデジタル化の恩恵を受けていただけるようにしてまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 ログアウトしないうちにまた入れちゃったとか、起こり得ると大臣はおっしゃいましたけれども、起こり過ぎているんです。これは一つ一つ、何かあったら原因は富士通Japanだとか、そういうので済ませるわけにはいかない。織り込み済みの問題だと言わなきゃ、そこできちっと体制ができていると言わなければ、最初に私が指摘したように、機微な情報なんだということで、このまま済ませるわけにはいかないと思うんですね。やはり急ぎ過ぎたんじゃないかと言わなきゃいけないと思います。

 改めて大臣に確認したいと思うんですが、大臣自身は、マイナカードは義務づけるべきと思っていらっしゃるのかということなんです。

 というのは、本法案の背景となったデジタル臨調の第一回、二〇二一年十一月十六日ですが、当時の萩生田経産大臣が、デジタル庁を設置して、デジタル大臣をきちんと国民に見せた上で選挙を行って、国民の信任をいただいた以上は、今までのように、マイナンバーカードは作りたい人で是非作ってくださいねという世の中ではなくて、マイナンバーカードを作って、使ってこういう世の中に変えていくのだということをきちんと説明して、これは勇気を持って国民皆ナンバー制度にしていかないと、目指すデジタル社会というのはできないと思いますと言い切っているんですね。

 河野大臣も、そのように思っていらっしゃるんでしょうか。

河野国務大臣 これまでも答弁しておりますが、マイナンバーカードにつきましては、対面による厳格な本人確認をし、また、顔写真を必要とするというふうにしておりますので、取得を義務化せず、申請によることとしております。現段階で、カードの義務化は難しいと考えております。

高橋(千)委員 大臣個人の意見を聞いたつもりですが、今、大臣としても個人としても同じということでよろしいですね。

河野国務大臣 答弁のとおりでございます。

高橋(千)委員 では、厚労省に伺います。

 先ほど少し大臣の答弁の中にあったわけですが、二〇二一年十二月二十三日の社保審第百四十九回医療保険部会で報告されたのは、マイナ保険証に異なる個人番号が登録された事案、二〇二一年十月から十一月までの間に三十三件。二〇二一年十二月から翌年の十一月までの間に七千二百七十九件あったと報告されています。驚く数字です。

 厚労省は、再発防止策として、雇用主が社会保険の届出時に雇用者の個人番号を記載するよう、六月一日から、来月の話ですが、省令改正をしました。

 マイナンバーカードを持たない人は、個人番号の記載を拒否する人が多いです。これまでも、雇用主が明記することは義務ではありました。しかし、雇用者が拒否した場合は、それを届け出れば手続上は受け取れた、問題なかったはずなんですね。これからは必ず番号を聞かなければならないことになる。これは事実上の強制にならないんですか。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 健康保険の資格取得届につきましては、現在も様式に個人番号の記載欄がございまして、現在も事業主に対して、被保険者の個人番号を記載して保険者に提出いただくということを求めてございます。

 オンライン資格確認等システムへの迅速かつ正確なデータ登録を徹底するため、今般、事業主には被保険者のマイナンバー等を資格取得届に記載する義務があるということを法令上明確化することとしておりまして、あわせて、事業主は被保険者に対してマイナンバーの提出を求めることができる旨を規定することとしております。

 被保険者の方から個人番号の提出を受けられない場合につきましては、被保険者の方に対して、資格取得届等へのマイナンバーの記載が義務とされていることを丁寧に伝え、その提供を促していただくことが重要というふうに考えてございまして、こうした考え方を事業主に対して、しっかりと周知させていただきたいと考えてございます。

高橋(千)委員 最初に私、質問で言いましたよね、元々義務になっていると。でも、それをあえてまた通知を出したわけですよね、六月一日からということで。それは、これまでは、拒否した場合に、無理やりそれを聞くことはできなかったからでしょう。それを義務だとあえて法令上明記したということは、結局、雇用主から、あなた個人番号を届け出なさいと言われてしまう。その関係性がこれまでとは違くなってしまう。違いますか。

日原政府参考人 お答え申し上げます。

 この義務という点で申し上げますと、現在も省令で定めます様式には個人番号の記載欄がございまして、こちらは任意ということではございませんので、記載義務があるというふうに解してございます。今回は、それを法令上、明確化したというものでございます。

高橋(千)委員 全く答えになっていないと思います。雇用主と雇用者の関係を、これはひょっとしたら大きく変えてしまう重大な決定だと指摘をせざるを得ません。

 続けますが、昨年六月三日に、デジタル臨調は、デジタル原則に照らした規制の一括見直しプランを発表しました。「アナログ規制が広く社会に浸透していることが、「デジタル化」を阻害し、デジタル技術の活用を阻んでいる」として、構造改革のための五つのデジタル原則を基本方針に据えました。デジタル完結、アジャイルガバナンス原則、機動的で柔軟なガバナンスというそうですが、官民連携、相互運用性確保原則、共通基盤利用原則、この五つです。

 大臣に一つ追加で伺いたいんですが、デジタル五原則が、これから議論するアナログ規制問題に大きく影響すると思うんですが、今日配付した資料の1に、デジタル社会を形成するための基本原則があります。これは、二〇二〇年の十二月二十五日閣議決定、デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の中で明記されている十の基本原則であります。

 これは調査室が簡潔にまとめてくれたものですが、例えば、一番にあるオープン・透明性。二番にある公平・倫理。利用者への説明責任を果たし、自己の情報を主体的にコントロールできるようにする。これらは大変大事な原則だと思います。

 一人一人の幸せの実現のためにと最初に重点計画でうたっているわけですが、この原則が、いわゆるこの十の原則は大前提だと思います。大臣の御所見を伺います。

河野国務大臣 委員にお配りをいただきましたこの資料の、デジタル社会を形成するための基本原則というのは、これは、デジタル改革、規制改革、行政改革を通じて実現すべき価値を示しているというふうに認識をしております。

 ここで書かれている内容を実現するために、二〇二一年十二月のデジタル臨時行政調査会において、構造改革のためのデジタル原則、五原則を策定をしたわけでございます。この五つの原則にのっとりまして、政府として、デジタル改革、規制改革、行政改革、これを進めていくということになります。

高橋(千)委員 今の、価値を示しているという表現は、なかなかいい表現だなと思って聞いておりましたが、そのことと五原則が、デジタル原則をこれから徹底していくんだぞということが、何となく沿わない、沿わないというか、そごがあるのかなという思いがして、これから質問したいと思います。

 それで、一括見直しプランのうち、法改正が必要な一つとして出されているのが、書面掲示規制のある六十二の法律の見直しであります。そのうち、公示送達について聞きたいと思います。

 例えば民事訴訟法では、裁判の当事者に対して訴状を送達しなければなりません。ただ、住所などが不明で送達できない場合に、裁判所の掲示場に二週間掲示することで送達したものとみなすという制度です。行政手続法においても、許認可の取消しなどの不利益処分を行おうとする場合には、処分の名宛て人に聴聞などにより防御権を行使する機会を与える、これも二週間としています。

 このように、現行の公示送達が、限られた人しか見ないであろう掲示板に期間を限定して行っている理由は何か。また、それが今回、一般公衆にインターネットでの閲覧が可能になるのはなぜなのか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、それぞれの制度の中で、各公示送達制度において定められている一定の掲示の期間、本法案で改正をする公示送達制度は全て結果として二週間でございますけれども、これについては、送達を受けるべき者が公示送達が行われた事実を認識し、書面を受け取る機会を保障するための合理的な期間という考え方から設定されているものというふうに承知をしてございます。

 また、方法の方でございますけれども、本法案で改正する公示送達制度については、送達を受けるべき者が所定の掲示場所に赴かなければ送達について認識することができない、現状そういうことになってございますが、本改正により、インターネットによる閲覧等を可能とし、いつでもどこでも必要な情報を御本人様が確認できるようにと、これは利便性の向上に資するという観点から今回御提案をさせていただいているところでございます。

高橋(千)委員 利便性の裏には不利益というものもあるのではないかと思います。

 時間の節約で二つを一つにして聞きますが、やはり、送達の受ける側が、防御権を保障するということ。公示送達は最後の手段と言われているのは理解できます。しかし、それでも限定的な手段であったことの理由は、やはりプライバシーの保護であったのではないか。

 例えば、犯罪者ではないのに、自らの訴訟記録、在留資格とか土地の筆界特定とか多種多様でありますが、ネットというのは、二週間で削除されたとしても、拡散された後では完全に消滅できません。しかも世界中に広がります。プライバシーの侵害になると思います。

 そこで、質問は、ヤフーやグーグルのような一般のネットでも検索が可能なのか。ネットである場合、名前を書かなくても、当事者にしか分からないようなやり方で出すということもあると思うんですね。昨年の民事訴訟法の改正を参考にしたと聞いていますが、掲示内容については、プライバシーに配慮する観点から検討することとされたはずです。いかがでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案による本制度の見直しは、公示送達制度をデジタル原則に適合するものとするためにデジタル技術を導入するものでありますが、ある意味、御指摘のとおり、氏名とともに公示送達の対象である旨の情報が容易に拡散され得る側面もあるという意味では、当該者のプライバシーの保護に配慮を要する必要もあるというふうに考えてございます。

 その具体的な運用の在り方でございますけれども、法制審においても、送達を受けるべき者等のプライバシーに十分配慮する必要があるといった議論があったことを踏まえ、御指摘のありました昨年の民事訴訟法の改正によりましても、デジタル技術を導入するその規定及びこれに基づき策定される最高裁判所規則の内容等も参考にしつつ、今後これらを具体的に決めていくとされているところでございますが、私どもの今回の改正の行政法の世界でも、これを参考にしつつ、各制度の趣旨、目的に照らして、各府省とそれぞれやり方をよく検討してまいりたいというふうに考えてございます。

 御指摘のありました、ヤフーのような一般のネットでも検索可能となるのかという点につきまして、まだ結論は出てございませんけれども、そういったようなものを回避する技術があるのかどうかも含めて、よくよく制度を所管する各省と検討の上、具体的な方法論について答えを出してまいりたいと考えているところでございます。

高橋(千)委員 まず、容易に拡散するおそれもあるとお認めになったと思います。

 一般のネットでも検索が可能なのかということについては、そうしないというふうな明確な否定ではなかったと思いますので、ただ、回避する方法があるかということで検討されているということなので、やはり一般の検索というのは避けるべきだと重ねて指摘をしたい、このように思います。

 次に、デジタル法制局について伺います。

 資料の2を見てください。これ、上段はデジタル臨調の目的。デジタル原則を、デジタル改革だけではなく、規制改革、行政改革、三つの改革に貫くための必要な見直しを提案するとあります。

 そして、下段は、デジタル法制審査の視点です。これは、昨年秋の臨時国会の提出法案から既に始まっておりますが、本法案はこれに法的根拠を与えるものです。

 質問は、各省庁が点検するのではなく、あえて法制局という一括したシステムにしてチェックしなければならない理由はなぜでしょうか。また、チェックするポイントは何でしょうか。地方の条例に対しても影響するのか、伺います。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 一義的には各省に、もちろんそれぞれ検討いただくということだと思いますが、各省庁が自らフォローするのが難しいと。

 例えば、デジタル原則の解釈が、それぞれの省庁でばらばらに行われてしまうといったような事態も考えられますし、ベストプラクティスについての必要な知見が必ずしも各府省共通に共有されているという保証もございません。そういう意味では、デジタル庁が各府省と連携をして着実にベストプラクティスを反映させ、あるべきデジタル原則の完遂につきまして、統一的な解釈の下、進めていくという意味で、デジタル法制局をかませた形で進めていくということには意味があると考えてございます。

 チェックするポイントは何かという御指摘でございました。

 代表的には、七項目のアナログ規制に該当する、アナログ行為を求める場合があると解される規定、これは先ほど、技術中立性の検証といったようなところもございますが、この原則を具体的に当てはめていくときに、どこまでかとか、技術中立的なのかとか、やはり各府省、自分で判断しろと言われても、逆に言うと解釈に困るような側面もございます。そういったところ、それから、フロッピーディスク等の記録媒体を指定する規定、その他、デジタル原則に適合した運用を阻害するおそれがあると判断される規定がないかといったようなところを主として見てまいります。

 また、今後につきましては、テクノロジーマップや技術カタログをしっかりと活用していただいているかどうかというところも見てまいります。

 最後に、条例に対して影響があるのかという点でございます。

 今回の法案においては、自治体については、地方自治の観点から努力義務ということになってございます。必ずしも国は、こうした形での規制の見直しを強制することはできませんが、これについて前向きに取り組んでいただけるように努力を促すこと及びそれを努めてやろうとする自治体に対する適切な支援を行っていくことは、国の責務であるというふうに考えてございます。

 以上でございます。

高橋(千)委員 各省庁に必要な知見がない場合もあるので、ベストプラクティスを出すためには意味があるという答弁でありました。

 ちょっと今聞いていて思ったんですけれども、地方公共団体、これは、努力義務ということ自体が私はかなり重いと思っています。

 それで、本来であれば、各省庁が法律を作れば、それに準じて条例というのを作りますよね。ですから、そういう道筋なのかなと思っていたんですけれども、今のように、やはりデジタル法制局をかませてということは、結局、地方に対してもそういう流れになる、つまり、各省庁の上に法制局があって、地方にも浸透するように、そういう流れになるということでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 あくまでも地方自治の原則がございますので、デジタル法制局があることによって国と地方自治の関係が変わるということはないというふうには考えてございます。

 ただ、実際に、どの程度デジタル技術を採用するか、どこまでデジタル技術に置き換えていいか、これは本当に技術中立的に安全性と効率性を両立しているものなのかといったようなところ、これはむしろ、規制当局がそれぞれ個別に判断する方が難しいという側面もございます。

 そういう意味では、横断的に共通に取り組ませていただいて、このところまではいけるんじゃないかというところをよく関係省庁間で議論した上で国としての対応方針を決め、それをあくまでも参考としていただきつつ、それぞれの自治体においてここまではいけるんじゃないかという判断をする、それをやるという判断をなされた自治体の方にはデジ田交付金等を通じて財政的支援も行う、こういったような形で、アナログ規制の見直しを全体としてうまく進められるように取り組んでまいりたいと考えてございます。

高橋(千)委員 あくまでもないというお答えでありました。地方分権の時代ですから、そうだというふうには答えられないんだろうと思うんですね。

 資料の三枚目にあるように、今対象となるのが四万件以上だ。法律、政省令で約一万、通知で約二万、告示で約一万と。その下に、独立行政法人も書かれているのはちょっと気になりますが、上記を踏まえ、地方公共団体の取組を後押しと。後押しという表現で書いているんだけれども、しかし、先ほど来指摘をしているように、努力義務であり、デジ田交付金で後押しという表現もできるけれども、逆に言うと、そうしなければ交付金をもらえないという問題がございますので、非常に力が強くなっているのではないか、このように指摘をしたい。あくまでも地方の自主性を守るんだという立場でお願いしたいと思います。

 最後に、目視について伺いたいと思うんですが、四月十二日の国交委員会で、私は国交委員でありますので、このときは、知床遊覧船の事故から一年ということで、再発防止のための法改正の審議がございました。リモートによる監視の強化ということが事故対策検討委員会の報告に盛り込まれたことを受けて、斉藤国土交通大臣に、目視でなければならない分野があるのではないか、このように伺いました。

 斉藤大臣は、国交省としても、アナログ規制の見直し、工程表に沿って検討を進めているとした上で、見直しに対しましては、目視規制などが安全性の担保を目的としている場合には、それが引き続き確実に担保されることが大前提と答弁されました。斉藤大臣自身が非破壊検査の技術者だったこともあって、目視を大前提としながら高度な技術を使っていくのが最も効率がよいと、実感を込めておっしゃっておりました。大事なことだなと思っているんですね。

 デジタル庁としても、目視が必要とする分野は残るという考えか、それとも、時間がかかってもなくしていくという立場なのか、大臣に伺います。

河野国務大臣 今回のアナログ規制の見直しに当たりましては、デジタル技術を活用した場合でも、安全性や実効性が、規制の趣旨、目的に照らして必要な水準を確保できているというのを前提にしております。

 現在の技術では目視と同等の安全性や実効性の確保ができない規制は見直しは困難だと思っておりまして、例えば、不正の疑いがあるときに検査員が現地において能動的に資料を調べなければいけない立入検査ですとか、食用の鳥、検査員が目で見て触って異常の有無を確認する、こういう検査がございまして、これは現時点ではなかなか難しいと思っております。

 ただ、このような規制も、将来的な見直しの必要までを否定しているわけではございません。技術の進展に応じて、安全性などの検証を行いながら、不断の見直しを行っていくというのが必要だと思っております。

高橋(千)委員 今、実例として挙げていただいた、不正の場合の能動的な検査とおっしゃったのは、すごく大事なことだと思います。残念ながら、繰り返し、こうした問題が起こっておりますので、今例に挙げました知床もまさにそうなわけですよね、届け出た文書を改ざんしていたわけなのですから、やはりこれは、出てきた数字だけではなくて、能動的な検査が必要だということが最大の教訓ではなかったかと思っております。

 将来的に否定しないということは、必ずやるという意味ではないということでそれは受け止めたいと思うんですが、問題は、最後に、要望を込めた質問なんですが、そうはいっても、これが分からないうちに省令改正でいつの間にか変わっていますよということではなくて、やはり各省庁の判断を尊重し、必要な場合は法改正を行う、こういうふうにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、安全性とか実効性、これが規制の趣旨、目的に照らして必要な水準を確保できている、これが前提で将来的な見直しというのはやっていかなければいかぬと思っております。

高橋(千)委員 お答えではなかったと思いますが、まだ結論が出ていないということだと思うんですよね。

 一遍に省令改正を残りのものはしてしまうという意味ではないということでよろしいですか。統括官でもいいです。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、安全性や実効性が趣旨、目的に照らして確保されているということが、いろいろなことをやるときの前提ですよということを申し上げております。

高橋(千)委員 残念ですが、そこに懸念があるということを表明して、終わります。

橋本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、デジタル社会形成基本法改正案に対する反対討論を行います。

 昨年六月七日に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画では、デジタルの活用で一人一人の幸せを実現するためにとあります。デジタル情報社会の進展の中にあって、デジタルと無縁で暮らすことはできません。だからこそ、デジタルを上手に使いこなすことによって人々が豊かに暮らせることは重要です。ですが、いつの間にか、国際的にも遅れているとか、更なる規制緩和で官民連携など、手段が目的になってしまっている懸念が拭えません。

 反対する第一の理由は、デジタル法制局の創設です。

 昨年の臨時国会提出法案から既に実施されたデジタル法制審査に法的根拠を与えるもので、今後、各府省の法令の新規制定、改正の際には、デジタル原則への適合性を審査することにより、規制改革、行政改革を強力に推進しようとするものだからです。

 また、各府省を通じて地方公共団体をもコントロールするもので、賛成できません。

 反対する第二の理由は、目視や定期検査・点検規制、実地監査規制、書面掲示規制など七つの規制をアナログ規制と断じ、強引に規制緩和する点です。

 これらの規制は、医療、介護、福祉、輸送、交通、インフラ、製造、環境など多くの分野で、国民生活の安全、安心を守るために設けられたものです。多くの保育関係者の反対を押し切って、保育施設の実地監査をリモートでよしとする緩和をしました。また、目視で点検している河川やダムなどインフラの維持修繕を、ドローンや水中ロボット、常時監視、画像解析を活用するといいます。人手不足解消ともいいますが、そもそも、人手不足の原因は、長年にわたる公務員削減であって、デジタルと現場を知る職員を組み合わせてこそインフラの維持が可能となります。

 国民生活に関わる規制を一方的に規制緩和することは容認できません。このような重大な緩和を、本法案にある個別法を除いては国会にも諮らず、省令改正などで済ませようとすることは認められません。

 最後に、関係六十二法律を一括して改正する書面掲示規制については、インターネットを通じて広く知らしめることが利便性を高める点もありますが、公示送達を広く公衆一般にインターネットで閲覧を可能にすることは、極めてセンシティブな個人情報の漏えい、プライバシー侵害になることは否定できません。個別に慎重な検討を行うべきであり、三年後の実施は賛成できません。

 以上述べて、討論とします。

橋本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

橋本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

橋本委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、今枝宗一郎君外三名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、公明党及び国民民主党・無所属クラブの四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。今枝宗一郎君。

今枝委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。

 一 デジタル化の推進により、人手不足の解消や新しい産業の創出が期待される一方、雇用が失われる懸念があることに鑑み、労働移動が公正なルールに基づいて行われるよう留意すること。

 二 令和五年一月、国土交通省近畿地方整備局の河川監視カメラに不正アクセスがあった事案を踏まえ、不正アクセスや情報漏えい等を防止するため、セキュリティ対策の一層の向上を図ること。

 三 標識、利用料金等の書面掲示規制の見直しに当たっては、適用除外となる中小・零細事業者の範囲を適切に定めた上で、周知徹底すること。また、今後、法令改正を行う必要が生じたとしても、中小・零細事業者に対するデジタル化の強制とならないよう留意すること。

 四 定期検査・点検規制のデジタル化に当たっては、事故が発生した際の責任の所在に留意しつつ、安全性の確保に万全を期すこと。また、安全性を確保する手法として、デジタル技術を過信せず、人的な技術力の向上にも努めること。特に、保育に関する規制については、こどもの生命や身体の安全を守り、保育の質を維持するため、原則、年一回以上の実地検査を行うこと。

 五 土地区画整理事業における建築物等の移転又は除却に関する公告等のデジタル化に当たっては、デジタル技術に不慣れな人も情報を得ることができるよう配慮すること。

 六 警備業、自動車運転代行業及び探偵業に関する認定証や届出証明書の廃止に当たっては、認定を受けた事業者や届出をした事業者の信用性を担保するとともに、消費者トラブルを防止するため、必要な対策を講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

橋本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

橋本委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。河野デジタル大臣。

河野国務大臣 ただいま御決議をいただきました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

橋本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

橋本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

橋本委員長 次回は、来る三十一日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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