衆議院

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第8号 令和7年4月15日(火曜日)

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令和七年四月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 谷  公一君

   理事 上田 英俊君 理事 上川 陽子君

   理事 牧島かれん君 理事 神津たけし君

   理事 坂本祐之輔君 理事 森田 俊和君

   理事 東   徹君 理事 日野紗里亜君

      大西 洋平君    加藤 竜祥君

      岸 信千世君    草間  剛君

      小池 正昭君    田野瀬太道君

      萩生田光一君    三反園 訓君

      宮内 秀樹君    宮下 一郎君

      東  克哉君   安藤じゅん子君

      市來 伴子君    中谷 一馬君

      橋本 慧悟君    福田 淳太君

      福森和歌子君    柚木 道義君

      奥下 剛光君    黒田 征樹君

      仙田 晃宏君    浮島 智子君

      大森江里子君    阪口 直人君

      本村 伸子君    吉良 州司君

    …………………………………

   国務大臣

   (デジタル大臣)     平  将明君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)         三原じゅん子君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (新しい地方経済・生活環境創生担当)       伊東 良孝君

   デジタル副大臣      穂坂  泰君

   文部科学副大臣      武部  新君

   国土交通副大臣      古川  康君

   内閣府大臣政務官     今井絵理子君

   デジタル大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    岸 信千世君

   総務大臣政務官      古川 直季君

   厚生労働大臣政務官    吉田 真次君

   農林水産大臣政務官    庄子 賢一君

   政府参考人

   (内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官)         岸田里佳子君

   政府参考人

   (内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官)         北尾 昌也君

   政府参考人

   (内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官)         松家 新治君

   政府参考人

   (内閣府地方分権改革推進室長)          坂越 健一君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房長)            中村 英正君

   政府参考人

   (こども家庭庁成育局長) 藤原 朋子君

   政府参考人

   (こども家庭庁支援局長) 吉住 啓作君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   楠  正憲君

   政府参考人

   (デジタル庁統括官)   村上 敬亮君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 新田 一郎君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 伊藤 正志君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森友 浩史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  真弘君

   政府参考人

   (林野庁次長)      小坂善太郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小林 太郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         岸谷 克己君

   衆議院調査局地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別調査室長 阿部 哲也君

    ―――――――――――――

四月十五日

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

谷委員長 これより会議を開きます。

 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局審議官岸田里佳子さん外十五名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

谷委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小池正昭君。

小池委員 皆様、おはようございます。自由民主党、千葉十区の小池正昭でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私からは、本日、子供政策について伺いたいと思いますが、こどもまんなか社会の実現に向けた政府の司令塔としてこども家庭庁が発足して二年が経過しました。この二年という歳月は、政策を実際に実行できて、評価ができるのかという意味では、まだまだ期間が十分なものではないとは思っておりますが、昨日も、総務省から、人口減少また少子化についてというようなことで明確にデータが示されました。

 そんな中で、我が国が深刻な少子化問題に適切に対応ができているのか、あるいは全ての子供たちの健やかな成長を支援する政策は実際に進んでいるのか、こういったことが国民から投げかけられているということ、この辺をしっかりと胸に刻みながら、責任を持って対応していかなければならない。与党自民党に所属する一人としてこれからもそのような活動をしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 具体的な質問でありますが、まず保育関係であります。

 現在、全国には、未就学児が利用する保育所の数、これが二万三千五百六十一園、幼稚園は八千五百三十園、認定こども園、これが一万四百八十三園存在しています。これらは、待機児童対策が求められた結果、未就学児の受入れ体制、これを急速に整備して、保育への株式会社の参入あるいは小規模保育の導入とか、こういったことを政府の方で決めていただいて、積極的な受皿づくりによってここまで増えてきたというふうに思います。

 一方で、では、この急激な受皿づくりに対して人材が追いついているのかというような指摘は、実は結構前からありました。実際に、最近では、高額な手数料で人材を紹介するビジネス、こういったものも顕在化して、保育士不足というものが本当に深刻な状況にあります。

 現在、あらゆる産業において人材不足の懸念が強まっておりますし、また、若年人口の減少、これからも続きますので、保育を志す学生、これも実際には年々減少しているという実態があります。そういった意味で、これまで増やしてきた保育の受皿、これをどのように維持していくのかということ、これは大きな課題であるというふうに思います。

 施設の安定的な運営と安全で良質な保育の提供のためにも、適切な保育人材の育成、これが必要であることは言うまでもありませんが、既に全国の保育士養成校で定員割れが発生している現実があります。また、これまで多くの保育士を養成してきた実績のある各地の専修学校であるとか短期大学、こういったところも、実は閉校あるいは定員を削減という現実が起こっています。

 そのような中において、令和八年度からは、こども誰でも通園制度、これが全国展開されるということになるわけですが、保育人材の養成と確保、これはより深刻な問題として捉えていく必要があると考えています。

 そこで、まず初めに三原大臣にお伺いしたいと思いますが、こども家庭庁として、この保育人材の確保について、将来も安定的にかつ良質な保育環境を維持するためにどのような対応を取っていくのか。この委員会でも多くの委員から指摘があったところですが、改めて大臣にお伺いをしたいと思います。

三原国務大臣 保育士の有効求人倍率が依然として全職種の平均を上回るなど、全国的な保育士不足の状況に加えて、委員御指摘のこども誰でも通園制度の制度化ですとか配置基準の改善に伴って、今後も保育士の更なる確保というのが求められるなど、保育人材確保、これは喫緊の課題であるという認識は共有しているところでございます。

 このため、保育士等の処遇改善につきましては、令和六年度補正予算で一〇・七%の大幅な改善を実施し、令和七年度予算でも財源を確保した上でこれを反映しておりまして、これを含め、平成二十五年度以降では累計で約三四%の改善を図ってきたところですが、このほか、保育士を目指す方への新たな資格の取得支援、就業継続のための環境づくり、離職者の再就職の促進への支援のほか、保育の現場と職業の魅力向上など、保育人材確保に向けた取組、これを総合的に進めているところでございます。

 また、潜在保育士の復職の支援等を強化するための都道府県における保育士・保育所支援センターの法定化や、地域における集中的な保育人材の確保のため地域限定保育士制度の一般制度化を内容とします児童福祉法改正法案につきまして、先般、この委員会でも可決いただいたところでありまして、速やかな法案成立に向けて全力を尽くしてまいる所存でございます。

 これらに加えて、今委員御指摘の養成校における入学者数の減少等も踏まえまして、より多くの若者に養成校に入学し、そしてまた保育士を目指していただけるように、養成校に通う学生への修学資金の貸付けや、保育所等への就職促進やキャリア教育等に組織的に取り組む養成校への支援などに取り組んでございます。

 これらを通じて、保育人材確保、引き続きしっかりと取組を進めてまいりたいと考えております。

小池委員 ありがとうございました。

 様々な取組を進めていただいていること、今認識をしておりますが、やはりなかなか効果が実際には上がっていないという御指摘も様々あります。そういった意味で、今大臣、直接いろいろと、本当にるる説明していただきましたけれども、引き続きどうぞよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 次に、保育ニーズの偏在というものが起こっています。これに対しての施設運営への影響について伺いたいと思います。

 全国の待機児童数、これは、平成二十九年の二万六千八十一人をピークに年々減少をしております。少子化の影響ということでもあるかと思います。

 都市部においては、引き続き保育ニーズは高いんですが、全国的に見ますと、保育の申込者数は令和三年四月から徐々に減少に転じております。特に地方部において、少子化と人口減少によって保育ニーズが減少している。場所によっては定員に満たない施設が多くなっています。これによって、施設の運営に継続性、この継続性を担保するというか、これからも継続して運営していただくということに困難が生じているのではないかというようなことも昨今耳にするようになりました。

 保育施設の運営原資、これは主に、国から支給される子供一人当たりの単価に掛ける園児数ということになりますから、園児数の減少は施設の運営費の減少に直結します。このため、人件費、あるいは施設の維持や管理費用、この捻出が徐々に困難となり、必要な保育士数の確保すら難しいという事態にも陥る可能性がございます。そういった意味で、地域の子育て環境の後退につながってはいけないというふうに考えます。

 そこで、園児数が減少傾向にある中においても、各地域で必要な保育サービスを安定的にかつ持続的に提供するための支援、こういったことが必要になってくると考えておりますが、こども家庭庁として、これは藤原局長ですか、お伺いをしたいと思います。よろしくお願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育の公定価格につきましては、利用児童数に基づいて配置すべき職員数が決まりますので、利用児童数に応じて支払われる仕組みとなっており、基本的に、定員規模が小さい区分の方が単価が高いという仕組みになってございます。

 一方、保育所の利用児童数に定員割れが生じている場合などには、適切な利用定員に見直しをしていただくことが必要でございまして、市町村において、事業者との意思疎通を図り、その意向を十分に考慮しつつ、当該施設での最近の実利用人数の実績ですとか今後の見込みなどを踏まえて適切に利用定員を設定していただくよう、自治体にお示しをしているところでございます。

 その上で、令和七年度予算では、定員六十人以下の保育所に係る定員区分を十人から五人単位に細分化をしたところであり、利用定員よりも利用子供数の方が少ない場合に生じる給付費の収入の減少分の軽減を図ることとしてございます。

 今年度から施行しております経営状況の見える化において経営情報の分析を行いながら、今後も適切に公定価格の設定を行ってまいります。

 また、地域におきまして保育所の多機能を進めていくことも、その地域ごとの保育機能を維持するための一つの方策と考えておりまして、先進治療に関する調査研究ですとか過疎地におけるモデル事業の実施なども進めております。

 こうした取組を通じまして、人口減少、少子化が進行する中で持続可能な保育提供体制を確保できるように努めていきたいと考えております。

小池委員 ありがとうございました。

 実際、定員を五人刻みとか、対応していただくということなんですが、具体的に言うと、例えば百人いた保育園が定員が本当に半分ぐらいになっている。それこそ百人の体制でやっていましたので、施設もしっかりとしているんだろうと思います。とはいえ、地方に行くと本当に半分以下、それでも地域で保育は担っていかなければならない。これは現実に起きている状況であります。

 やはり、人件費の部分で、処遇改善でいろいろやっていただいていますが、運営上の厳しさというもの、これがどんどん出てきますので、施設運営が継続されなければ、保育士、幾ら賃金に対して加算しても、園自体がなくなってしまうと地域での保育サービスを提供できませんので、こういった問題が起きていること、是非、これからの課題として位置づけて対応をお願いしたいと思います。

 次に、保育の地域区分についてなんですが、昨年八月の人事院勧告で公務員の地域手当の地域区分の見直しがございました。この地域区分ですが、物価が高い地域への配慮でありますけれども、これまでは市町村単位だったんですが、これから、より広域化して、都道府県単位ということに見直しが行われています。

 そして、保育園の運営に必要な費用である公定価格もこの地域区分が適用となっていますので、地域区分の見直しがそのまま公定価格に反映された場合には、場所によってというか、結構多いんですけれども、大幅な減収になるという保育園が多数発生するということがありました。

 これに対して全国の自治体からもかなり強い要望がなされたわけですが、私の千葉でも、東京都とやはり地域区分が大幅に変わりますので、江戸川一本ですね、これは川一本で全く変わってしまうということになります。

 そういった現実がある中で、自治体が本当に懸念しているんですけれども、保育サービスを持続的にかつ安定的に提供するために、地域区分の変更と公定価格の在り方について、今配慮をいただいている部分はあるんですが、検討状況、また、これから、こども家庭庁として今後の対応をどのように考えているのか、伺いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育につきましては市町村に実施義務が課されており、民間施設においても公立施設と同水準の保育を提供できるように、その公定価格については公務員の給与水準に準拠することとしております。

 このため、お尋ねの地域区分につきましても、公務員の地域手当における地域区分に準拠することを基本としながら、他の社会保障分野の制度との整合性を踏まえて改正をしてきているところでございます。

 令和六年人事院勧告を踏まえた保育の地域区分の対応につきましては、仮に、この勧告をそのまま当てはめますと、都道府県単位に広域化することで、県内の隣接する市町村との不均衡の解消が図られる一方で、一部では県外の隣接する市町村との差が現行よりも拡大をするということとなります。

 こうした課題を踏まえまして、令和七年四月からの見直しは今般実施をせずに、引き続き見直し方法について丁寧に議論を進めていくこととしたところでございます。

 地域区分につきましては、これまでも、全国知事会等に、参画をいただいている審議会で御意見を伺っているとともに、千葉県知事や千葉県市長会を始めとして、自治体からも直接御意見、御要望をお伺いしているところでございます。

 引き続き、自治体を始めとする関係者の御意見も伺い、また、他の社会保障分野の動向も踏まえながら、注視をしながら、丁寧に検討を進めていきたいと考えております。

小池委員 ありがとうございました。

 検討を続けるということですが、これは結構大きな問題でして、運営自体が、本当に一気に今までの収入が激減してしまって、保育士の給与の基本部分さえも払えないと。先ほども申し上げましたけれども、処遇改善での加算はあくまでも加算なんですよね。基本部分、やはり施設が安定的に運営ができなければ元も子もないということになりますので、この地域区分、非常に注目されておりますし、各現場も今見守っておりますので、是非、局長、この辺はよろしくお願いしたいなと思います。

 最後になんですが、時間がほぼ参りましたので、質問しようと思いましたが、私から発言だけにしておきたいと思います。

 実は、今日、児童館についても伺おうというふうに思っておりました。児童館は今、現在、全国で少しずつ減っています。しかしながら、ゼロ歳から十八歳まで、年齢層が幅広いところで利用できるという特徴、これはなかなか、全国的に見ても我が国の中で非常に珍しい施設であります。その充実と支援、こういったことは、こども家庭庁としても、児童館、是非よろしくお願いしたいということを申し上げまして、私からの質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

谷委員長 次に、安藤じゅん子さん。

安藤(じ)委員 おはようございます。立憲民主党の安藤じゅん子です。

 通告に従いまして一般質問を行います。前向きかつ国民に寄り添う御答弁のほど、よろしくお願いいたします。

 まず、デジタル政策につきまして、ベースレジストリー、公的基礎情報データベース整備改善計画の策定状況について伺いたいと思います。

 こちらは、行政手続において情報の提出は一度限りとすること、ワンスオンリーや、民間事業者のDX推進等に向けて、行政機関間の情報連携や民間事業者を含めたデータの利活用を推進するために、公的基礎情報データベース、ベースレジストリーとして社会の基盤となるデータ群の整備や利活用を進めるというところであります。

 こちらの方が、昨年六月公表のデジタル社会の実現に向けた重点計画のうち、整備、利用促進のために、今年度夏までに当該整備改善計画の策定と、具体的な目標として定めていらっしゃるところでありました。策定の進捗状況はどうなのか、お聞かせいただきたいと思います。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 ベースレジストリーとは、住所、所在地情報や法人の名称等、多数の手続において参照されるデータベースを指すものでございます。昨年の関係法令改正を踏まえまして、まずは、国民の利便性向上や行政運営の効率化に特に資するものとして、住所、所在地関係、商業・法人登記関係、不動産登記関係の整備を進めることとしております。

 デジタル庁といたしましては、本年夏までにベースレジストリーの整備改善計画を策定すべく、デジタル庁の有識者会合において御議論をいただいているところでございます。

 このうち、例えば商業・法人登記関係のデータベースにつきましては、来年三月から順次リリースすることを目指しておりまして、足下ではシステムの設計、開発を行っているところでございます。引き続き、法務省とも連携をしつつ、円滑な運用開始に向けて計画的に取り組むことをお示ししていく予定としております。

 このほか、住所、所在地関係や不動産登記関係のベースレジストリーにつきましても、その効果的、効率的な整備、運用に向けて、関係省庁とともに検討を進めているものでございます。

 有識者会合の御議論も踏まえつつ、整備改善計画におきましては、こうした取組の全体像をお示しできるように鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えております。

安藤(じ)委員 御答弁ありがとうございます。

 当初予算にしっかりと事業がのっていくよう、確認のためにも行わせていただきました。よろしくお願いいたします。

 次に、マイナンバーカードについて伺いたいと思います。

 国は、マイナンバーカードは、対面、非対面問わず確実、安全な本人確認、本人認証ができるデジタル社会のパスポートであるとし、希望する全ての国民が取得できるよう、申請及び交付の環境整備を推進してきました。

 まずは、マイナンバーカードの電子証明書の更新需要への対応について伺います。

 マイナンバーカードの有効期限は発行から十回目の誕生日まで、電子証明書の有効期限は発行から五回目の誕生日までとされています。平成二十八年、二〇一六年のマイナンバーカードの交付開始から十年目となり、平成二十八年に取得した者については、順次、カード本体の有効期限を迎えることとなります。また、令和二年、二〇二〇年には、マイナンバーカードを活用した消費活性策でありますマイナポイント事業により多くの者がカードを取得しており、当該者については、順次、電子証明書の有効期限を迎えることとなります。そのため、令和七年度は、マイナンバーカード及び電子証明書の更新が多数見込まれています。

 ちなみに、調査室作成の資料によりますと、更新必要枚数は、令和六年度がカードと電子証明書を合わせて九百万件であったのに対し、令和七年度のそれは二千七百九十万件となっており、実に三倍であります。

 そこで、伺います。

 更新手続のため、市区町村の窓口の混雑が想定されます。市区町村の負担軽減のため、どのような支援を行っていくのでしょうか。

新田政府参考人 お答え申し上げます。

 今ほど御指摘いただきましたとおり、今年度はマイナンバーカードの導入から十年目となりますので、初年度にカードを取得した方は有効期限を迎えます。また、電子証明書の更新件数も増加いたします。

 なお、カード及び電子証明書の有効期限は誕生日が基準となってございますので、申込みが一時期に集中した当時とは異なりまして、更新対象者は、十二か月で、一応分散されるということになりますので、当時よりは一定程度平準化されるものと考えてございますが、ただ、そうはいいましても更新需要が増えますので、しっかりと円滑に更新手続を行っていただくことが重要と考えてございます。

 自治体に対しましては、窓口体制の増強を図りますとともに、土日や平日夜間の開庁の拡大や、駅周辺や公共施設での臨時交付窓口の設置、予約制の導入、拡充などの取組強化を促してございまして、また、これらの取組に必要な経費についてはマイナンバーカード交付事務費補助金で財政支援も行ってございます。

 総務省としては、今後とも、カードなどの更新が行われるようしっかりと取り組んでまいります。

安藤(じ)委員 御答弁ありがとうございます。

 窓口の分散等、あと、今回は、発行時期に比べまして、誕生日ということで分散される見込みであるということを確認いたしました。

 ただ、誤登録であるとか取り違えであるとか、総点検のときには自治体に対して本当に大変多くの負担をかけたということが、やはりまだ現場は記憶に残っておりますので、是非とも丁寧な御対応をいただけたらと思っています。

 次に、有効期限切れを迎える者に対する更新手続の周知など、円滑な更新に向けてどのような取組を行っていくのか。

 円滑な更新に向けた更新手続の周知にもかかわらず、うっかり更新時期を過ぎてしまった場合、どのような支障が生じるのか、また、何らかの救済措置を設ける考えはあるのでしょうか。お願いします。

新田政府参考人 お答え申し上げます。

 更新忘れを防ぐために、カードも電子証明書につきましても、有効期限の三か月前に、地方公共団体情報システム機構から対象者に対しまして有効期限切れ通知書が送付されます。それを見ていただいて更新の必要性を国民の方に認知いただける仕組みとなってございまして、また、マイナポータルでも期限を確認することができますので、総務省としては、市町村を通じて、今後も住民の方にしっかりと周知徹底を図ってまいりたいと考えてございます。

安藤(じ)委員 どうもありがとうございます。

 現在、災害に遭われた方が無料で更新ができていたりとか、そういったサービスもホームページ等で確認することもできておりますので、引き続き丁寧な対応をお願いしたいと思います。

 次に、郵便局でのマイナンバーカード交付等について伺いたいと思います。

 令和三年、デジタル社会形成整備法による郵便局事務取扱法の改正により、地方公共団体が指定した郵便局が実施可能な事務に、マイナンバーカードの電子証明書の発行、更新等に係る事務が追加されました。また、令和五年の法改正により、マイナンバーカードの交付等に関する事務も追加されました。指定郵便局でもマイナンバーカード、電子証明書の交付、更新が行えることとなっており、指定郵便局を増やすことは、手続可能窓口の多数分散化につながるため、市区町村窓口の混雑解消、負担軽減に資すると考えます。

 そこで、伺います。

 それぞれの事務について、現状、どれくらいの数の郵便局で取扱いを行っており、今後増やしていくためにどのような取組を行っているのでしょうか。お願いします。

新田政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、カードの交付などの事務につきましては、十団体において三十二の郵便局、電子証明書の発行、更新などの事務は、三十五団体において百郵便局に対して委託がなされておりまして、このほか、九団体が現在準備を行っているという状況でございます。また、今、郵便局への委託に関心を持っていただいている自治体も約二百ございますので、これらが増えてくるんだろうと思います。

 総務省としましては、市町村向けの説明会での周知でありますとか、先行団体の事例集を横展開するなどの取組を行いまして、また、財政的にも補助金で支援をして、郵便局への委託の推進に努めてまいります。

安藤(じ)委員 どうもありがとうございます。

 千葉の方では千葉市と習志野市で活用しているということで伺いました。習志野市の方では、市役所の窓口を閉めて、全て郵便局に、四月からスタートしている、受取は市役所の窓口になっているということで、こういった先進の自治体の取組を横展開なりしていただけるのかなと期待しております。よろしくお願いいたします。

 次に、マイナンバーカード機能のスマートフォンへの搭載について伺いたいと思います。

 現時点でスマートフォン用電子証明書を搭載できるのはアンドロイド端末のみですが、令和七年春にリリースできるよう取組を進めているとしていました。令和七年三月三日の衆議院予算委員会で、今年の中頃には今度はアップルにも搭載される旨、大臣答弁がありました。

 そこで、搭載時期について確認をしたいと思います。

 iPhoneへの搭載に向けた取組の進捗はどうでしょうか。具体的に、令和七年何月頃の搭載を目指してお取組を進めていらっしゃるのか。お願いいたします。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 能登半島のときにも、本当に、携行率の高いスマホへの搭載があればと思う局面が何度もございました。

 こうしたことも踏まえ、政府では、まず令和六年五月に、二〇二五年の春にリリースできるよう取組を進める旨の公表をしており、先生御指摘ございました、うちの大臣も国会答弁で、今年の中頃にはマイナンバーカード自体がアップルにも搭載されるということで、現在、この方針に即して作業を進めております。

 ただ、何分、本人確認をするソフトでございまして、バグがあるというわけになかなかいかないものですから、今、テストの佳境でございまして、万が一、このテストの過程で何か起きたときにということでは、リリースの日程がずれる可能性もあるものですから、申し訳ございません、今の時点で何月と申し上げることは難しゅうございますが、発表どおりの目標を目指して作業が進んでいるということを御報告申し上げます。

安藤(じ)委員 ありがとうございます。

 もちろん、本当に、バグがあっては意味がないので、スケジュールをしっかりと確認した上で、リリースをお願いできたらと思います。

 マイナンバーカードの更新需要対応でも問いましたけれども、二〇三〇年の更新需要見込みがまた膨大であると思います。高齢者の更新状況やスマートフォンへの搭載、そして次期マイナンバーカードの物理カードの必要性をどのように判断していくのか。今から準備が欠かせない観点から、将来的な物理カードの必要性について伺いたいと思います。

 令和六年の法改正により、スマートフォンに搭載したカード代替電磁的記録の送信により、スマートフォンのみで本人確認が可能となります。また、モバイル運転免許証やその他各種証明書のスマートフォンへの搭載が実現すれば、今後ますます、スマートフォンさえあれば、従来のプラスチックカード、物理カードを持ち歩く必要性がなくなることとなります。

 次期個人番号タスクフォース最終とりまとめにおいては、将来的な物理カードの必要性について、「その利便性の確保も含め中長期的な課題として、引き続き検討を続ける。」としています。

 そこで、伺います。

 次期マイナンバーカードの導入に向け、物理カードの廃止、若しくは、物理カードの発行とスマートフォンへの搭載を選択可能にするなど、今後どのように検討していくのでしょうか。

村上政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘にもありました、昨年度、大変重要な課題でございますから、有識者及び総務省を始め関係省庁と一緒に検討会を設置しまして、様々な論点を検討したときにも、例えば、もうスマホをメインにすればいいんじゃないかといったような声もありましたが、スマホについて言いますと、買換えサイクルが十年よりもはるかに短い方が多いということでございますとか、それから使いにくいとか、いろいろな議論もありまして、やはりスマホをメインにするのは難しかろうということでございます。

 何より、やはり、特に運転免許証を返された高齢者の方が写真つきの身分証明書として重宝されているなど、物理的な身分証明書としての用途もまだまだ残っているのが実態なものでございますから、次期カードで物理カードをやめるというのは時期尚早であろうということで、カードのベースに暗号を強くしてということを考えてございます。

 ただ、その次の次も見通して、将来ということでいきますと、いろいろな技術的可能性は検討する必要があるということで、引き続き勉強を続けてまいりたいと思います。

安藤(じ)委員 ありがとうございます。

 立憲のデジタル部会の方でも、やはり、一割の方、デジタル対応が完全ではないという場合には、誰一人取り残さないデジタル社会の実現、優しいデジタルということで取組をしておりますので、是非ともその方向で、歩調で、引き続き検討の方を進めていただけたらと思います。

 次に、子供施策について、大きく二点、内密出産と里親制度について伺いたいと思います。

 まず、内密出産についてです。

 三月三十一日、墨田区の社会福祉法人賛育会賛育会病院が、親が育てられない子供を匿名で預かるいわゆる赤ちゃんポストの取組とともに、新たに、妊婦が医療機関以外に身元を明かさず出産する内密出産も同時に開始するという報道を目にしました。

 熊本県熊本市の慈恵病院に続き全国二例目ですが、熊本へは、特に関西や首都圏から新幹線や飛行機という交通手段による利用もあったことを考えれば、東京都内での制度開始で相当数が見込まれるのではないでしょうか。

 賛育会病院の賀藤院長は、赤ちゃんの遺棄や虐待死など痛ましい事件が後を絶ちません、こうした事態を回避するための、緊急でかつ最終的な手段であると認識しています、行政機関や民間の関係団体と連携して、このプロジェクトを必要としない社会を目指して、職員一同しっかりと取り組んでいきたいとのお話をされていらっしゃいました。

 国は、東京都、墨田区としっかりと連携をし、国の立場から、期待される法整備についてもスピードを上げて取り組む必要性について、四月一日、大臣会見を拝見し、認識はされていらっしゃるなということを確認いたしました。

 そこで、三原大臣に伺いたいと思います。

 内密出産につきまして、まず、予期せぬ妊娠に悩む妊婦や子育てに葛藤する産婦を国はどのように支援をしているのか、お願いします。

三原国務大臣 お尋ねの、妊婦が身元情報を医療機関の一部の者のみに明らかにして出産するいわゆる内密出産は、母への母子保健、福祉による支援等が出産後途切れてしまうことや、希望する妊婦に対し、身元情報を明かすことの説得や、それによる支援等の説明、相談は誰がどのような形で行うのか、子の出自情報を誰がどのような形で管理し、開示するのかなど、幅広い観点について様々な御意見がある状況と認識しておりまして、慎重に議論していくべき課題というふうに考えてございます。

 現在、こども家庭庁では、予期せぬ妊娠や子育てに悩んでいる方々を支援するため、都道府県や市町村における相談窓口の整備や、困難な事情を抱える妊産婦に対する一時的な住まいや食事の提供を含めた、妊娠時から出産後までの包括的な支援の推進、特別養子縁組の制度の周知といった取組を行っております。

 予期せぬ妊娠や子育てに悩んでいる方々におかれましては、まずは早期に関係機関に相談いただきたいと考えておりまして、性と健康の相談センターやこども家庭センターなどの相談窓口又は民間の妊娠SOSサービスなどに迷わず御相談をいただきたいと考えております。

安藤(じ)委員 ありがとうございます。

 孤立出産、自宅出産、飛び込み出産に至るまでの葛藤、これについては、本当に、自死念慮であるとか、出産のためにはさみやクリップを用意していると報告書にもありました。

 ネット検索時に相談ダイヤル等が表示されるようにしていくとか、今まさに大臣からもありました、切れ目ない支援をしていく妊娠SOSの取組等、千葉県も行っているんですけれども、やはり、こういった、事件化する前、新生児等の殺害、遺棄事件が発生した際には、妊婦のみが逮捕される、そして未成年でない場合には氏名が公表されるという事案、状況につきまして、大臣はどのように考えていらっしゃるのか、また、解決に必要なことは何だとお考えなのか教えていただけたらと思います。

三原国務大臣 子供の出自を知る権利というのは、児童の権利に関する条約に、できる限りその父母を知る権利を有するとされているとおり、重要な権利であるというふうに認識をしております。

 このため、内密出産に係るガイドラインにおきまして、医療機関において行うべき措置として、内密出産を希望する母親に対し、子供への身元情報の開示の意義を伝えること、母親の氏名等の身元情報について当該病院内で明文化した規程に基づき適切に管理すること、身元情報の開示方法や開示時期等が子供にしっかり伝達されるように医療機関や児童相談所において対応することなどをお示しするとともに、こうした措置が適切に行われるように都道府県から医療機関に対して指導を行うよう依頼しているところでございます。

 先ほども述べましたように、こども家庭庁といたしましては、そうした予期せぬ妊娠、そしてまた子育てに悩んでいる方々におかれましては、まずは早期に関係機関に御相談をいただきたいということを皆様にお伝えをしているところでございます。

安藤(じ)委員 ありがとうございます。

 出自を知る権利については、これから更に諸外国の事例等も研究をしていくということで報道もありましたし、今大臣も取組をしていただけるということでありました。

 内密出産制度の今後の在り方、スケジュールを含めて、今後の国の対応について教えていただいてもよろしいでしょうか。諸外国の研究のところ。

三原国務大臣 お尋ねのいわゆる内密出産について、昨年十二月に総理から、ドイツの例など、外国における法体系がどうなっているのか、出自を知る権利がどのように位置づけられているのかなどをよく研究して、そのような観点から政府部内で検討させたいという旨の御答弁があったことを受けまして、今年度に海外の法制度に係る事例研究の実施を予定しているところでございます。

安藤(じ)委員 ありがとうございます。

 まとめます。

 事例研究で、ドイツとかは、たしか十六歳で出自を知る権利を行使するとかがあると思います。我が国にとってそれが何歳がベストなのか。いろいろこれから研究が進んでいくかと思いますけれども、例えば移民政策においても、労働力を呼んだのに人間が来たと言われるように、これから多文化社会になっていくと思います。どの子供たちも、日本で育っていくときに、しっかりと権利が保障されていく、成長することができる、生きていくことができる、こんな日本をつくっていくために協力していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。

 どうもありがとうございました。

谷委員長 次に、橋本慧悟君。

橋本(慧)委員 立憲民主党の橋本慧悟です。

 本日は、この質問の機会をいただいた関係各位の皆様に感謝を申し上げ、そして、地元明石市、淡路島の兵庫九区の皆様にも感謝を申し上げます。そして、遅くまで本当に職員の方々もいろいろと御対応をいただきまして、誠にありがとうございます。感謝を申し上げてから、質問に入らせていただきます。

 まず、今日は、児童福祉サービス、その中でも通所サービスの所得制限についてを取り上げていきたいと思います。

 平成二十六年度の児童通所サービスの利用者は約十六万人強、そして令和六年度には五十万人を超えたということで、この十年間でも約三倍となって、本当にかなり増えている利用の実態であります。

 資料につきましては、いろいろつけておりますが、ちょっといきなり一枚めくっていただいて、二枚目ではありますが、このグラフを見ても、右肩上がりに利用者が増えていることが見て取れると思います。

 サービスの認知度向上もあるでしょうが、明らかにこのニーズは増えており、サービスの質と量、この充実がより一層国としても求められるとともに、この増え続けるニーズについて、本当に誰も取り残さないんだという観点で制度設計することが必要だと考えています。

 このように、本当にニーズが近年とても増えているこの児童通所サービスを通した療育、発達支援の重要性をどのようにお考えか、三原大臣のお考えをお聞かせください。

三原国務大臣 発達支援を受けている子供の数は、発達障害の認知の社会的広がりなども背景に増加をしているというふうに承知をしております。

 発達障害のある子供とその御家族の不安をしっかりと受け止め、その育ちと暮らしを支えていくため、これまでも、身近な地域で障害児支援が提供できるよう、事業所の設置等、地域の体制づくりに努めてきたところですが、引き続き体制の整備等を進めていくことは大変重要であると考えております。

 障害のある子供とその御家族の支援に当たりましては、地域において関係者が連携し、気になる段階から早期に切れ目なく支援することが重要だと考えておりまして、保健、医療と連携した発達相談の充実、児童発達支援センターを中核とした関係機関の連携による地域における支援体制の強化、そしてまた相談援助、障害特性に応じた子育ての支援等、家族支援の充実などに取り組んでいるところでございます。

 今後とも、障害児とその家族が安心して暮らすことができるよう、支援体制の整備充実を進めてまいりたいと思います。

橋本(慧)委員 大臣からも、本当にこれからも充実について進めていくと御答弁をいただきました。

 ただ、この発達支援は、障害児御本人のための現物給付支援であるのにもかかわらず、親の収入、世帯の収入にひもづけて、障害児本人の障害特性は何ら変わらないのに、所得制限によって利用料や自己負担上限に差があるのが現状です。

 資料一、カラーの資料をつけておりますが、児童通所サービスの利用料金は、皆さん御存じのとおり、四段階に分けられておりまして、生活保護受給世帯や住民税非課税世帯はゼロ円です。住民税所得割額が二十八万円以下、一般一と呼ばれる区分は、おおむね年収約九百万円までのところで、一月当たり四千六百円の利用料でございます。一方、一般二、年収ベースで約九百万円以上の世帯では、一月最大三万七千二百円の支出となり、その差は、一般一と一般二を比べると、最大約八倍の差が出ている状況です。これは、一年間に換算すると約四十五万円の差が出ますし、六歳から十八歳までの十二年間ということで考えると約五百四十万円もの差が出るということですね。これは教育負担にもかなり重たくのしかかってくる金額だと思います。

 子供の障害特性は関係なく、世帯の所得によってこれだけ差が出ることについて、所得制限は私は不公平だと考えるんですが、大臣はいかがでしょうか。

三原国務大臣 障害児支援に関する福祉サービスの利用につきましては、制度の持続可能性や公平性の観点から、一割の自己負担を原則とすることとされましたが、高所得階層を含め、保護者の所得に応じた自己負担額の上限額を設定し、過剰な負担とならないよう配慮を行ってまいりました。

 本制度は、所得に応じて月ごとの上限額を設けているものであり、利用に当たっての所得制限などを設けているものではありませんが、その上で、これまでも、令和元年十月以降は、三歳から五歳の障害児に係るサービスの利用者負担を所得にかかわらず無償化して、きめ細かい配慮をしているほか、障害のある全ての子供がその成長に合った補装具を使うことができるよう、昨年四月から補装具費支給制度の所得制限を撤廃するなどの見直しを行ってきたところでございます。

 障害児とその家族の支援は大変重要と考えておりまして、障害児とその家族が安心して暮らすことができるよう、引き続き、しっかりと応援をして、推進してまいりたいと思います。

橋本(慧)委員 るる御説明いただきましたが、しかしながら、親御さんとか世帯の収入で線引きがされてしまうと、あなたはある程度収入があるのであれば公的支援を少しなくしますよというような国からのメッセージにもやはり受け止められてしまうんですよね。そういう当事者、御家族からの痛切な意見というのがかなり届いております。

 障害をお持ちの方々を育てていくということは、経済面とか以上に、本当に日々大変な思いをされているわけです。そんな方々に、そして子供たちに寄り添って、全ての子供を真ん中にして育てていくというところで、本当の意味でそんな国にしていただきたいと私は強く申し上げます。

 誰でも、私も含め、障害を持つ子の親になる可能性があるのにもかかわらず、やはり、この所得制限によって本来受けられるべき福祉が制限されているとしたら、本当にこれは安心して子供を産み育てられないと考えています。

 済みません、次は二問まとめてお聞きできればありがたいですが、では、この所得制限があることによって利用者負担に差が出ることから療育の利用控えが発生しているという認識はあるかということをお聞きしたいのと、また、もし利用控えが発生をしましたら、当事者児童に与える心身の影響というものはどのようなものが考えられるでしょうか。参考人の方にお聞きします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の利用控えにつきましては、一部の団体からの要望等で承知をしております。

 障害者通所支援の利用負担の上限額が高額であることを理由に利用控えが発生しているかどうかの調査等については、実施していないところでございます。

 こういった、議員御指摘の利用控えに関する調査につきまして、今申し上げましたように実態は把握しておりませんが、障害児通所支援サービスの利用は障害児の発達の支援において重要な役割を果たすべきものと認識しております。

 委員の御指摘の点については、しっかりと受け止めさせていただきたいというふうに思います。

橋本(慧)委員 ちょっと二問まとめてお聞きしたので、済みません、御丁寧に対応をいただきました。

 しかしながら、答弁の中にありました、過去にそういった利用控えが起きているかというような調査は国の方ではやっていないということですが、地元明石市内の事例で恐縮ではありますが、発達障がい児親の会、おつきさまという団体が、市内の三十四の事業所を通じて、当事者家族からのアンケートを実施されました。これは、所得制限世帯と基準を超える見込み世帯の回答者の約六七%が、実は、この所得制限により、利用控えをし、利用回数を減らしている、又は減らす見込みだという実際の回答があるんですね。

 先ほど、利用控えが起きた場合、当事者の児童の発育についてはやはり懸念が出る点もあるんじゃないかという理解を私はしましたが、この数字が統計学上有意かどうかというのは別ですけれども、実際にそういう声がある、利用控えをせざるを得ないという声があるのが現状ですので、しっかりと受け止めていただきたいです。

 そして、何が問題かというと、サービスの利用控えが起きますと、障害児本人の自立や社会参加の制限だけではなく、障害特性の悪化、居場所や支援が制限されて、例えば不登校に拍車がかかるなど、そういう副次的な、二次的な障害のリスクとか懸念があるわけです。きょうだい児でありますとか親は、福祉とのつながりを制限されることで、レスパイト、休息することができずに、家庭内でのケアの負担が、責任がかなり重たくのしかかることになります。経済的、精神的、時間の制約による負担から、進学や就労も左右されることもあるんです。

 ここで、済みません、通告はしておりませんが、このような状況で、まずは、大臣にお聞きしたいんですが、是非とも、全国的にでも、所得制限による利用控えが実際起きているんじゃないかということについて、実態調査とか早急な制度の見直しが必要と考えるんですけれども、大臣としての御見解をお聞きできればと思いますが、よろしいでしょうか。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の利用控えに関する調査につきましては、その実情の正確な把握をするに足る実効的な調査等をする上での課題もあると考えておりまして、慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

 いずれにしても、障害者通所支援の利用は障害児の発達支援において重要であると認識しており、その利用の実情につきましては、様々な機会を捉えて把握に努めてまいりたいというふうに考えております。

三原国務大臣 今答弁ありましたように、調査というのがなかなか難しいというふうに思っております。いろいろな形で把握できるように努めてまいりたいと思っております。

橋本(慧)委員 大臣から御答弁をいただきました。

 いろいろな形で把握をすること、これは本当に大事だと思いますね。何とか状況を把握しないと、本当の問題点というか、当事者が困っているところ、有効な対策ができないと思いますので、是非とも、そういった声が強くあるということも認識をいただいて、把握に努めていただければと思います。

 御答弁の中にも先ほどありましたが、資料の三を御覧ください。ごめんなさい、まだ御答弁はいただいていないんですけれども、ちょっと、時間の都合上、再質問したので飛ばさせていただくんですが。

 資料の三には何を書いているかというと、障害児福祉における所得制限の一覧を上の部分に書いているんですね。補装具の所得制限は撤廃されましたという御答弁を先ほどいただきました。確かに、これは制度が前に進んだので非常に歓迎すべきことですが、このように、まだまだ、本来支給されるべき手当がもらえなかったり、負担が増えたりする、これが世帯の所得制限によって行われているというのが現状であります。特別児童扶養手当や障害児福祉手当、また児童通所サービス、ショートステイなどの障害福祉サービス、日常生活用具の給付、特別支援教育就学奨励費などが当たります。

 本当に、物価高とか、実質賃金が伸びない中、また住居費とか教育費もかさむ中、所得制限が引かれている層、ラインというのは本当に富裕層と言えるのでしょうか。決してそうではなくて、税金や社会保険料の負担も五割近く占める中で、日々の生活防衛を図っていらっしゃるわけです。その中で、この所得制限によって大きな制約を受けられて、重層的な所得制限もこの当事者の御家族にはかかっている。その中で、ダブルパンチ、トリプルパンチを受けているというような、本当に苦しい胸のうちを実際に私はお聞きしております。

 次にお聞きしたいのが、基礎自治体においては、住民税所得割が、二十八万円というラインで所得制限のラインが決まっている。この基準が定められた経緯と、本当に妥当なのかという、私も思っていますので、是非これについて、ちょっと簡潔にお答えをお願いします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 障害児支援の利用者負担につきましては、平成十八年の制度創設時からこれまでの間、負担軽減の観点から、累次の軽減が図られているところでございます。

 お尋ねの所得区分につきましては、平成二十年に講じられた障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置の一部として、前年の特別対策による負担軽減措置の対象世帯を拡大するために設定され、それまで市町村民税所得割十六万円未満とした区分について、二十八万円未満に拡大したところでございます。

 この市町村民税所得割二十八万円の水準につきましては、児童がいる世帯において、どれだけカバーするかという観点から、他の所得保障や給付の制度における線引きとの対比においても大きな違いはないというものと承知をしておるところでございます。

橋本(慧)委員 今御答弁をいただきました。

 平成十九年度以降、特別対策でありますとか緊急措置、そして低所得の方の無料化など、制度の改善が進んでいることは確かに承知はしているのですが、やはり、今、現状と照らし合わせると、まだまだ足りない。

 まだまだ本当にしんどいんだという痛切な声が、特に重度の障害をお持ちのお子さんからも届いておりますし、今、医療的ケア児を抱えて本当に必死に日々の生活を運営されている方々、私も、実際に現場にお伺いもしましたし、その方の個人宅にもお邪魔をしてその現状というものを見てまいりましたので、本当にそういった声がある。それをしっかり受け止めることこそが、誰も取り残さない、こどもまんなか社会の実現につながると思いますので、是非とも前に進めていただきたいです。

 そして、ただ、資料の六の上の部分に当たるんですが、全世帯における世帯年収九百万円の世帯の割合というのは、児童のいる全ての世帯では、左半分ですね、三三・六%。九百万円以上というのは約三三%に対して、障害児を持つ世帯については、右半分ですけれども、一二・四%なんですよね。

 先ほど申し上げましたが、様々な御苦労を乗り越えながら経済活動も行って、社会で活躍して、そして収入を上げると、所得制限の網にひっかかって様々な支援が制限されていくんです。これは本当に理不尽なことだと私は思っております。障害児の中でも僅かこの一二%の子供だけに療育、発達支援の所得制限をかけることは、社会全体にとっても本当に大きな損失だと考えております。

 実際に、また資料が移動して申し訳ありませんが、資料四、これの上の表です。こどもまんなか障害児福祉を望む親の会さんから拝借した資料ですが、実例として、所得制限適用によって手取りの逆転が起きているということを表しています。こうやって、生活にかけられるお金がもらえる手当などによって逆転をしてしまう、これは本当に大きな問題だと私は考えております。

 本当に、質問、うまく通告はできていないかもしれませんが、三原大臣は男女共同参画とか女性活躍社会の担当大臣でもいらっしゃいますね。障害児を育てながら頑張って働いて収入を増やしたら、所得制限で負担が増えてしまうという、実質的にサービスが制限されてしまう現状はおかしいとは思わないでしょうか。どうぞよろしくお願いします。

 親の所得による制限は合理的かどうかというところで通告をさせていただきましたが、大臣、是非御答弁をお願いします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございました所得の逆転現象につきましては、障害児などの家庭の家族構成や制度の利用状況によって様々な状況にあるものと考えておりまして、一概に逆転現象の有無についてお答えするのは困難というふうに考えております。

三原国務大臣 今局長が答弁していただいたとおり、やはり、こうしたサービスをしっかりと届けていくということ、とても大切なことだと思います。委員の御指摘も踏まえてしっかりと考えていかなければならないことだなというふうに、今、率直に感じたところでございます。

橋本(慧)委員 大臣も、重くというか、しっかり受け止めていただいたと理解をしました。

 障害児の中でもこの一握りの子供たちに、結果として自立訓練の制限をかけ続けることになってしまっている、一部ではそういう現状がある。この所得制限で節約できた、僅かな財源というふうに当事者の方々もおっしゃいます、私もそう思うんですね。所得制限をかけることで、財源は幾らか節約はできるかもしれませんが、国民の人生を大きく犠牲にするという側面もあるということは分かっていただきたいです。

 そして、これは決して特別扱いをしてほしいという思いではなくて、排除しないでほしいんですよね。特別扱いではなくて、この社会の仕組みの中から排除されているというような気持ちになりますので、是非とも、こういった思いを我々政治に関わる者は絶対させてはいけないと思いますので、本当に、この制度の改善に向けて、力強く取り組んでいただきたいと思います。

 済みません、時間も押してまいりました。

 その中で、ちょっと数字的なところを教えてもらえたらと思うんです。資料にもつけております、最後の方であります。

 「社会保障(参考資料)」という、財務省が出している資料がございまして、そちらの利用者負担の変遷、利用者負担の在り方によると、利用者負担額が一般一と一般二の所得区分によって示されているんですね。所得区分が一般二、つまり月額の上限が三万七千二百円の世帯の割合は一二%、そして総費用は全国で約六十七億円と読み取りました。

 この一般二区分の方々の負担上限額を一般一と同額にした場合、追加で国の支出というのはどれくらいかかる見込みでしょうか。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の障害者通所支援の利用者負担につきまして、一般二区分の負担上限月額を一般一区分と同額まで引き下げた場合の財政支出について試算するには、上限額の変更に伴う利用喚起の可能性等、様々な要素を考慮する必要がありますので、一概に計算することは困難であるというふうに考えてございます。

橋本(慧)委員 これは、通告の中でも、事前にお聞きしたときも、ちょっと数字を出すのは難しいかもしれないというのはお聞きはしておりましたので、やむを得ないかなと思う反面、この辺り、機械的な数字ですので、出せると私は思うんですよね。

 ここについては、これからも私もしっかり勉強していきたいと思いますし、単純にこの表からスライドさせて当てはめても、きっと百億円もかからないと思うんですよね。六十億円程度じゃないかなと。うなずいてもいただいておりますが。例えば、それぐらいの金額で、国の追加支出をそれぐらいの負担で、本当に困っている方々、除外されている、排除されていると思われているような方々の気持ちに寄り添うことができるのであれば、私はこれはやるべき、十分にやる価値があると考えています。

 もう一つ質問はしたかったんですけれども、済みません、準備をいただいたところ、もう時間が来ましたので、申し訳ありません。

 また、重度の障害をお持ちの方、医療的ケアをお抱えの方は特に、本当に日々大変な思いをして、そして、制度のはざまに落ちることで理不尽な思いをされているんですね。それによって奥さん側の働き控えが起きている御家庭も多いということも分かっていただいて、我々もしっかりと、この障害児をお持ちの方々の生活、向上していくように、そして、皆さんの、子供たちの権利が守られるように頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

谷委員長 次に、福田淳太君。

福田(淳)委員 立憲民主党の福田淳太です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 地方創生に関連して、まず、交通空白地対策について伺います。

 私の地元、長野五区は、飯田市、伊那市、駒ケ根市、上伊那郡、下伊那郡で構成されます三市十九町村の地元でございます。いずれも、公共交通機関に恵まれているとは言い難い地域です。七十代や八十代で運転するのは当たり前で、中には、九十代でもハンドルを握る方もいます。

 やはり、年齢が高くなれば事故の危険も増します。さらには、既に免許を返納した人や様々な理由で運転ができない人もいるわけです。こういった交通弱者対策が急務となっております。

 例えば、上伊那郡宮田村では、一枚九百円分の福祉タクシー券を配付しています。免許を自主返納した人であれば、年齢を問わず、年間、最低でも七十二枚受け取ることができます。しかし、村内のタクシー会社は一社しかなく、村によると、その会社が動かせるタクシーは二台だけとのことでした。せっかく行政の努力でタクシー券を配付しても、そもそも動かせるタクシーがないわけです。さらには、運転手も不足しているといいます。

 そうであれば、乗り合いバスという手段もあるかと思います。しかしながら、バス会社の関係者にお話を伺うと、地域のために必要性は理解していただいているものの、こちらもやはり運転手不足が続き、収益性の悪い乗り合いバスよりも、貸切りバスなどにその分の運転手を振り分けたいのが本音のようです。

 そこで、交通空白地における経営が厳しいタクシーやバス事業者への援助、また、運転手不足対策も含め、交通空白の解消に向けて総合的にどのような対策を講じていくのか、伺います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 経営状況の厳しいバス、タクシー事業者への支援や運転手不足対策についての御質問を頂戴いたしました。

 国土交通省といたしましては、バス、タクシー事業者に対し、従来からの路線バスへの運行費補助に加えまして、運賃改定の迅速化や算定手法の見直しを通じた賃上げの促進、採用活動や二種免許取得に係る費用に対する支援制度の創設、外国人材の活用に向けた特定技能制度の対象分野への追加等の措置を講じてきたところでございます。

 また、昨年の七月に国土交通省「交通空白」解消本部を立ち上げ、地方運輸局により課題を抱える自治体への伴走支援を行うとともに、十一月には「交通空白」解消・官民連携プラットフォームを設置いたしまして、民間の力も活用し、地域の足、観光の足の確保に強力に取り組んでいるところでございます。

 今後は、令和七年度から令和九年度の三か年間を交通空白解消・集中対策期間といたしまして、自治体、交通事業者に対する伴走支援、パイロットプロジェクトの推進、財政支援などを通じまして、地域の取組を総合的に後押しすることで、交通空白の解消に取り組んでまいります。

福田(淳)委員 ありがとうございます。

 もう事業者ですとか自治体の努力ではどうしようもない状況に置かれている方々がたくさんいらっしゃいますので、今御説明いただいたような事業とか取組、是非しっかりと進めていっていただけるようにお願いを申し上げます。

 次に、公立病院への支援について伺います。

 地方創生二・〇の基本的な考え方として、安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生を掲げております。また、その地域での妊娠、出産をかなえるというのは、地方創生の元来からの目的でございます。こういった環境を整備するためにも、様々な診療科がある規模の大きい公立病院を守っていく、地方での暮らしを左右する大きな存在となるかと思います。

 総務省が行った過疎地域への移住者に対するアンケート調査で、移住する際に重視したことを聞くと、病院や診療所、介護施設など医療、福祉の環境が整っていることは、全体でも割合が高く、特に、四十代と六十代以上ではそれぞれ二位と三位でした。東京一極集中の是正に向けて移住の促進という観点でも、医療提供体制の確保は重要になるわけです。

 そこで、まず、多数の診療科を抱える公立病院の存在と、移住、定住との相関関係についてどのように考えているか、伺います。

今井大臣政務官 地方創生二・〇の実現に向けて、地域の中核的な病院が、誰もが安心して暮らせるための町づくりの拠点として果たす役割は大きいと考えております。また、委員御指摘の総務省の調査などにおいても、移住に当たり、地域の医療体制が重視されているという点は承知しております。

 地方創生に資する取組なんですけれども、例えば、医療機関が地方自治体と連携して実施する、移住者も含めた住民の健康増進であるとか介護予防等に関する取組については、政府において、これまでも地方創生の交付金によって支援しているところでございます。昨年十二月に取りまとめた地方創生二・〇の基本的な考え方において、安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生を取組の柱の一つとして位置づけております。

 政府といたしましては、先生の御指摘も踏まえて、本年六月を目途に、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定してまいります。

福田(淳)委員 ありがとうございます。

 今御答弁でもありましたが、やはり、町づくりという観点でも公立病院の役割が大きいということでした。しかし、公立病院を存続させることは、決して楽なことではございません。全国の公立病院の七割が今赤字と言われております。

 私の地元の複数の自治体が一部事務組合として運営している公立病院は、元々、移転新築をする予定でございました。当初かかるとされていた費用が五十億円、しかし、資材価格の高騰などにより百六十億円に急増しました。更にまた上がって、現在では二百七十億円と試算されており、この移転新築の計画自体が一旦ストップしてしまっている状況です。

 この病院は築約四十五年で、通路の幅などが現在の基準に合っていないそうです。計画が進まない間も老朽化が進んでしまいます。それでは国の補助はないのか、厚生労働省に調べてもらいました。令和六年度補正予算に、物価高騰等により施設整備等が困難となっている医療機関への支援が盛り込まれております。しかし、公立病院は一般財源化しているため、補助の対象外とのことでした。

 病院は当然、いつかは建て替えなければならないものです。公立病院の七割が赤字ということを考えると、今回取り上げさせていただいた病院だけではなく、全国にも共通する問題かと思います。地域の医療提供体制を守るのはもちろん、移住、定住の促進のためにも、公立病院の新築、建て替えに対して補助をする必要があると考えますが、御所見をお聞かせください。

森政府参考人 公立病院の建て替えについてのお尋ねでございます。

 御指摘のように、現在、公立病院等を含め地域の医療機関は、物価高騰それから建築単価の高騰に直面して、大変厳しい経営状況というふうになっております。

 このため、厚労省においては、昨年度の補正予算に盛り込んだ物価高騰への対応や、一千三百億円の緊急的な支援パッケージにおいて、一定の要件に該当する公立病院、例えば、僻地の中核を担っていただけるような公立病院等を支援の対象としております。特に、従前の国庫補助事業の交付対象となる施設整備事業については、物価高騰を反映した単価と補助単価の差額を支援させていただいているところでございます。

 また、総務省においては、病院事業債によりまして、公立病院の新築、建て替え等に関する地方財政措置を講じているものというふうに承知しております。

 公立病院を含む地域の医療機関への支援については、引き続き、総務省とも連携しながら、物価高騰それから建築単価の高騰への対応を含めて、必要な対応をしてまいりたいというふうに考えております。

福田(淳)委員 ありがとうございます。

 次に、子供関連の質問を何問かさせていただきます。

 虐待などを理由に、家庭にいることに息苦しさ、生きづらさを抱えている子供が、今、新宿の歌舞伎町に集まり、ここ数年社会問題化しております。トー横キッズと呼ばれる少年少女たちが飛び降り自殺やホームレスを暴行死させる事件を起こしたり、若しくは性被害を受けてしまうような状況が起こってしまっております。

 これは、トー横キッズが注目されているだけで、同じように家庭に居場所がない子供は全国にいるわけです。生きづらさを抱える子供たちの安全を確保した上で、家庭以外の居場所を提供することが急務となっております。

 こういった中、虐待などの理由で家庭で暮らすことが難しい十代から二十代の人が安全に宿泊できるこども若者シェルターが令和六年度から始まり、今年三月末に運営のガイドラインを策定しました。まずは、このこども若者シェルターは全国で何か所設置見込みか、伺います。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、こども家庭庁では、令和六年度にこども若者シェルター・相談支援事業を創設いたしました。本事業は、自治体がこども若者シェルターを設置した場合にその運営費等を補助するものでございますが、今年度の補助申請はこれから受け付けるところであり、現時点での設置見込み数をお答えすることはできませんが、自治体からは、昨年度末に公表したシェルター運用に関するガイドラインを踏まえて実施を検討するという声も聞いております。

 実際に事業実施に向けて予算を確保している自治体もあり、今年度は複数の設置が想定されるところでございます。

福田(淳)委員 ありがとうございます。

 是非、多くの自治体で設置が進むように、丁寧に説明とか設置を促していっていただけたらと思います。

 このシェルターの特徴の一つが児童相談所の支援対象を超える十八歳以上の人も対象にしていることです。続けて、この十八歳以上も対象とした理由は何か伺います。また、家庭に居場所がない子供たちの支援にどのような効果を発揮するのか、お教えください。

三原国務大臣 こども若者シェルター・相談支援事業は、親からの虐待などによって家庭に居場所のない子供、若者が繁華街に集まり、犯罪に巻き込まれたりするような危険な事態が起きていること等を踏まえまして、子供や若者のニーズに合った必要な支援が受けられ、宿泊もできる安全な居場所などを確保するため、昨年度創設をさせていただきました。

 こども家庭庁におきまして、家庭等に居場所がなくて様々な困難を抱えている若者、親からの虐待などの家庭環境などが原因でそうした状況に追い込まれていることが想定されますので、若者自身の努力だけでは、安定した生活基盤を確保して、自立に向かうということが容易でないという状況にあると考えております。

 そうした若者に対しては、十八歳以上かどうかといった年齢に関係なく、まずは安心、安全な環境を確保する必要があると考えておりまして、本事業は、十八歳未満の児童だけではなく、十代からおおむね二十代までの子供、若者を対象としております。

 こども家庭庁として、本事業を通じて、子供や若者が、自分には安心できる居場所があるんだ、そして味方して理解してくれる大人がいるんだといった、そういう体験を重ねて自己肯定感というものを身につけていただく、そして自立に向けた一歩を踏み出せるようにということで、しっかりと支援してまいりたいと考えております。

福田(淳)委員 ありがとうございます。年齢に関係なく、若者の安全、安心を確保する、支援から外れていた十八歳以上の方にも支援の手が届くことは大変いいことだと思います。

 ただ、この施設にいれるのは基本的に二か月程度と伺っております。施設から出るまでに、仕事や新たな生活環境を整えなければならないわけです。こども若者シェルターでは十八歳以上の入所者に対して、自立に向けてどのような支援を行うのか、伺います。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 こども若者シェルターの利用は、議員御指摘のとおり、おおむね二か月間を想定しておりますが、子供、若者の心身の状態や退所後の生活に関する意見、意向等を総合的に勘案し、必要である場合には二か月を超えることもあり得るというふうに考えております。

 子供、若者がシェルター退所後に安定した生活を営むためには、このシェルター利用期間中に退所後も展望した計画的な支援を行っていくことが重要であるというふうに考えております。

 そのため、このこども若者シェルター・相談支援事業では、子供、若者本人の意見、意向を尊重し、関係機関と連携しながら、退所先の調整、生活の見通しの確保等に向けた相談支援を行うほか、関係機関への同行や連絡調整等を実施するようガイドラインでお示ししております。

 これにより、子供、若者が、シェルター退所後も、地域社会の中で自立して安定した生活を送ることができるよう支援をしてまいりたいというふうに考えております。

福田(淳)委員 ありがとうございます。

 一方で、十八歳未満に関しては、こども家庭庁がまとめたこども若者シェルターに関するガイドラインでは、十八歳未満の子供が事前に親権者から同意を得ることが難しい場合は、利用の際に親権者の同意までは要しないものと考えて差し支えないとの方針を示しました。その一方で、子供の意思を尊重しながらも、親権者へ可能な限り速やかに連絡することが必要とされております。

 親権者の同意までは要しないとしたことと、親権者への連絡を速やかに行うことを盛り込んだ理由をお聞かせください。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 本事業のシェルターへの入所は、一時保護委託による場合を除き、利用者本人と本事業の事業者間の利用契約に基づき行われるものというふうにしております。そのため、利用者が未成年者である場合には、民法第五条を踏まえ、親権者等の同意が必要となります。

 一方で、本事業のシェルターを利用する子供は、虐待を受けているなど、家庭に居場所がないことでシェルター利用を希望している場合が多いと想定されること、親権者等の同意なく締結された利用契約であっても、親権者等が取り消さない限りは有効であることを踏まえ、事前に同意を得ることが困難であると見込まれる場合には、まずは子供の安全を優先して保護することとし、親権者等の同意までは要しないものとして差し支えないとガイドラインにおいて整理しております。

 一方で、親権者は身上監護権を有しており、親権者と事業者間の法的なトラブルを防止する観点からは、シェルター利用を継続するためには、子供の意見、意向を尊重しながら、可能な限り速やかに親権者等に連絡することが必要であるとガイドラインにおいて整理しているところでございます。

 こども家庭庁としては、こども若者シェルターーの適切な運用を確保するため、引き続き、ガイドラインの周知等に努めてまいりたいというふうに考えております。

福田(淳)委員 次に、子供のSNS被害について伺います。

 SNSは既に私たちの生活に根づいております。今、このSNSがきっかけで犯罪に巻き込まれてしまう子供が増えております。

 警察庁の統計では、SNSにより犯罪被害に遭った十八歳未満の子供は千六百六十五人おり、高止まりの状況が続いております。特に小学生は増えている傾向でございまして、実に、十年前の五倍近くまで増えております。最近では、東京都調布市の当時十五歳の女子中学生が闇バイトに加担したとして逮捕されました。報道によると、少女はSNSを通じて闇バイトに応募したそうです。

 海外では、SNSの利用について、年齢を区切り、規制をかける動きもあるようです。また、睡眠障害やうつ病を患ったり、拒食や自傷行為に走ったりするなど、心身への悪影響があるとされております。

 まず、この諸外国の子供に対するSNS規制の状況について伺います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 こども家庭庁では、オーストラリア、イギリス、アメリカなど、諸外国における青少年のインターネット環境整備に関する調査研究をこれまで実施してきております。

 例えば、オーストラリアでは、昨年十一月に、特定のSNS等運営企業に対しまして、十六歳未満がアカウントを保有できないようにするための合理的な措置を義務づける法律が制定されたことなどを承知してございます。

福田(淳)委員 ありがとうございます。

 御答弁いただいたように、オーストラリア議会では、昨年、十六歳未満のSNS利用を禁止する法案を可決しました。この可決した法案は、SNS事業者に、規定年齢に満たない子供の利用を防ぐ措置を求め、違反した事業者には最大四千九百五十万オーストラリア・ドルの罰金を科す、大変厳しい規制となっております。

 私は、むやみやたらにSNSを規制すればいいものとは思っておりません。子供の自由を制限するのは、有益な情報を入手する機会を逸してしまいます。さらには、SNSの情報が、孤独や生きづらさを抱えた子供たちが居場所を見つける、場合によってはこういった窮状から脱するきっかけになるかもしれません。

 しかし、近年のSNSでの子供の被害を見れば、SNSの悪影響をしっかりと研究し、青少年とSNSの向き合い方について例えばガイドラインを設ける必要性などがあると私は考えております。

 こういった諸外国でのSNS規制や日本国内での青少年への被害を受け、どのように対応していくのか、お考えを伺います。

谷委員長 三原大臣、既に持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。

三原国務大臣 はい。

 青少年が安心してインターネットを利用できるような環境整備、極めて重要な課題でありますが、一方、表現の自由、適切な情報を入手する機会の確保とのバランス、SNSの活用が子供の生活にメリットとなる場合もあることをどう考えるかなど様々な論点があるので、十分な検討が必要だと思っております。

 私どものワーキンググループで引き続き丁寧な議論を行いまして、夏頃を目途に論点整理してまいりたい、その上で、法制上の対応の必要性の有無、それと検討要請などを各所管の省庁へしていくということ、しっかり私どもが司令塔機能を果たしてまいりたいと考えております。

福田(淳)委員 終了します。ありがとうございました。

谷委員長 次に、黒田征樹君。

黒田委員 日本維新の会、黒田征樹でございます。

 今日は、まずこども家庭庁の役割についてというところから入らせていただきたいと思います。

 前回、三原大臣そして平大臣、お待ちいただいて、質疑できぬまま終わってしまいまして、大変失礼なことになってしまいましたので、先に始めさせていただきたいというふうに思います。

 二月の末に、この日本国内における出生数が七十二万人ということで、国の推計よりも十五年前倒しになっているというような報道がなされました。

 各地方自治体でも様々な取組をしておりまして、私の地元堺市におきましても、未就学児においても、例えば妊娠から出産、それ以降、学生生活が終わるまでというところで様々な支援をしております。

 例えば子育てひろばであったりとか、例えば児童福祉司、児童心理司を倍増させるであるとか、保育料の無償化、そして給食の無償化、中学校給食を始めたりとか、様々な取組というのはしているんですけれども、いかんせんこの堺市というのは、立地上、大都市大阪市に隣接しているところでありまして、まさに子育てにおける都市間競争の真っただ中にいるというのが今の現状でありまして、それでも、できるところはやっていこうというところで、地方自治体でも努力をしているというところをまず認識をしていただいた上で、このこども家庭庁を創設したその背景そして取組と成果、そしてまた今抱えている課題、この辺についてお聞かせいただければというふうに思います。

三原国務大臣 こども家庭庁は、常に子供の最善の利益を第一に考え、子供の視点で子供に関する取組、政策を我が国社会の真ん中に据えるこどもまんなか社会を目指すための新たな司令塔として二〇二三年四月に創設されました。創設以降、子供施策に横串を通しつつ、リーダーシップを発揮して、こども大綱の策定ですとか三・六兆円の加速化プランを含むこども未来戦略の策定など、子供、子育て事業を抜本的に強化してまいりました。

 昨年の通常国会では、こども未来戦略を具体化するための子ども・子育て支援法などの改正や子供性暴力防止法の制定も実現させていただきました。また、昨年十二月には保育政策の新たな方向性や放課後児童対策パッケージ二〇二五などを策定いたしまして、共働きの世帯を始めといたしました子育て家庭への支援の充実のほか、本年一月には旧優生保護法の補償金等支給法の施行に伴う取組も始めさせていただきました。

 令和七年度予算にも子供、若者、子育て家庭を取り巻く重要課題に必要な事業を計上しまして、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 こうした取組、この二年間で実現できたのは、やはり従来各府省庁が別々に担ってきた子供政策を一元化して、そしてまた、総合調整権限を持つこども家庭庁が子供政策の司令塔としてあったからこそであるかなというふうに考えております。

 その上で、今後は特に貧困、虐待、いじめ、不登校、障害児、医療的ケア児など、本当に困難に直面している子供たちを支えるという取組の質の強化を一層進めてまいりたいと考えております。

 まずは、先般この委員会で可決させていただきました児童福祉法などの改正法案の成立に向けて全力を尽くしてまいります。さらに、子供たちが信頼できる大人に安心して悩みを打ち明けられる環境整備、一人親家庭の個別のニーズに寄り添う体制などの充実、様々まだまだ、青年期の若者たちへの支援等もございます。

 引き続き、様々な改善を繰り返しながら前に進めていくということを頑張ってまいりたいと思っています。

黒田委員 ありがとうございます。

 二年でできることといったら、まだまだ道半ばだなというふうなところもあろうかと思いますけれども、今おっしゃっていただいたようなところというのは、まさに市町村、基礎自治体で最前線で担っているというところがありますので、まさに現場の声を聞いていただいて、どういった支援が必要なのかというところを、着実に国の方で支援策を講じていただいて、そして迅速に対応していただくというところはお願いしたいなというふうにも思います。

 それでは、続いてお聞きしますけれども、今の少子化の現状の分析というのは一体どのように考えているのかというところをお聞かせいただきたいというふうに思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 少子化の要因には大きく分けまして、そもそも結婚する婚姻数の数の減少と、結婚した後の夫婦の子供の数の減少の二つに分けられると思っております。

 そして、その要因の背景でございますけれども、以前、一九八〇年当時は出生数が百二十万人を超えていたわけですが、当時と比較いたしまして、足下でございますが、例えば若者における非正規雇用労働者の割合でございますけれども、八〇年代は八%程度でございましたが、足下は二五・四%ということで、三倍ほど増えております。また、未婚の女性に理想のライフコースというアンケートを取りましたところ、専業主婦とお答えくださった方が、八〇年代は三割だったものが、足下は一三%でございます。他方で、仕事と出産を両立させる、そういうのが理想だとお答えになった方が、八〇年代は一八・五から足下三四と倍増しております。実際、専業主婦の世帯でございますけれども、これは八〇年に比べて半減しておりますし、逆に共育ての家庭は八〇年から倍増しております。こうした変化が根底にあると思います。

 こうした社会情勢の変化も相まって、経済的な不安定さや出会いの機会の減少であるとか両立の難しさ、あとは女性にやはりどうしても負担が偏っている、そういうことをどうするのか。あとは、子育ての孤立感や負担感、教育の費用負担等々、複雑に絡まっておりますけれども、こうした点が少子化の背景にあると思っております。

 また、先生がおっしゃったように、地方それぞれの課題もあるかと思います。そういうことも丁寧にヒアリングしてまいりたいと思います。

黒田委員 ありがとうございます。

 今大きく分けて、婚姻数が減っているということと、結婚した中でもお子さんが減っていると。今の分析はもうまさにそのとおりかなというふうにも思いますが、だから、そういったところで、少子化対策に向けたそういった今後の取組というものが非常に重要になってくるというふうに思いますけれども、今お答えになられたように、非常に複雑な要因が折り重なっているというような中で、どのように大臣は取り組んでいくのかというところをお聞かせいただきたいと思います。

三原国務大臣 今、官房長がお答えいただきましたけれども、少子化の流れを反転させるというのは大変難しい、しかしながら時間との闘いだということだと思っております。

 そして、大きく夫婦の子供数の減少とそして婚姻数の減少ということで今御答弁させていただきましたけれども、特に私は、婚姻数の減少には若者の賃上げとか働き方改革、こうしたことが必要なんだろうというふうに考えております。大幅に要件緩和を行った地域少子化対策重点推進交付金、こうしたものによって、地域の結婚支援ですとか将来設計支援の着実な実施、そしてまた若者の将来設計の支援はプレコンセプションケアなどの取組、こうしたものも大変重要だというふうに考えてございます。

 こうした取組に当たりまして、私どもも、結婚や子供を持つことが当たり前のことではないといった若い世代の価値観の多様化であるとか人生設計の変化、こういうことも直接お聞きして、それを前提として若い世代に寄り添った施策の検討に生かすために、ワーキンググループも開催してまいりました。若い世代の声をしっかりと反映していく、そして将来設計の支援の強化、具体化、こういうことに取り組むことが大変重要なんだろうと思います。

 この少子化対策、今年度から本格実施する加速化プラン、これを着実に実行して、政府全体で粘り強く取り組んでいくことが大変重要だと考えております。

黒田委員 先進国の中で、少子高齢化、これはどこも抜本的には解決できていないというような中で、大臣が担っておられるこの役割というのは非常に重要だと思いますし、困難だというふうにも思います。

 今おっしゃられたように、例えば働き方であるとか今の社会の背景の中で、先ほどお答えいただいた非正規の数であるとか専業主婦の数であるとか、そういったこともあろうかと思いますけれども、目に見えていること以外に、潜在的に今の若者がどういうふうな思いで結婚に至らないかというところはあると思うんですね。

 僕は先日、自分の後輩の女の子ですけれども、結婚していない子で、その話を聞いたら、今SNSがいろいろ浸透していて、先に結婚したあるいは先輩が結婚している家庭のきらびやかないろいろな投稿を見るたびに、自分はこういうふうになれるんだろうかとか、何かきらびやかなところが見えるがゆえに、自分がそこにたどり着くかどうか、自分がそうならなかったら恥ずかしいじゃないですけれども、自尊心が傷つくというか、そういった心境もあったりとか、また、タレントさんがママタレとかでいろいろ発信されているのはいいと思うんですけれども、それだけ立派に仕事されていた方でもこれだけ子育てってしんどいんだというふうに映っていたりとか、今、表面上に見えている以外のいろいろな要素というのがまだまだあると思うんですね。そこを丁寧に酌み取って、それをしっかりと施策に反映していく。

 さっきの事例でいうと、圧倒的な格差の話だと思います。先ほど御紹介いただいた出生数が百二十万人とかいたような時代は、一億総中流社会とか言われて、今みたいな施策を打つとかそういう必要もなく子供さんが増えていたという時代だったというふうに思うんですけれども、今はそういう手を打ってもなお少子化が進んでしまうという状況でありますので、そういった時代と比べて今はどう違うのかというところを丁寧に分析していくというところが必要だというふうに思いますので、そこはお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 続きまして、マイナンバー、カードも含めてですけれども、活用について、平大臣、お越しいただいていますので、質疑させていただきたいというふうに思います。

 これは一点のみです。公金受取口座についてお聞きしたいというふうに思っておりまして、この現状の認識と今後の取組についてお聞かせいただきたいというふうに思います。

平国務大臣 ありがとうございます。

 公金受取口座に関する現状でありますが、迅速かつ簡易な給付の実現を図るため、緊急時等に給付金等を受取可能な口座をデジタル庁に事前に登録していただく公金受取口座の制度は二〇二一年に導入されました。コロナ禍のときに私は副大臣をやっていまして、なかなか給付金が届かないという問題もあり、牧島さん、いらっしゃいますけれども、そういう問題意識の下に、公金受取口座という制度を野党の皆さんとも協力してつくらせていただいたところであります。

 現在、公金受取口座の登録数は約六千三百万であり、我が国の人口の約半分に相当しています。そういった中で、今後、登録件数を一層増やしていくことが重要であるというふうに考えております。次のパンデミックがいつ来るか分かりませんし、大規模自然災害のときには迅速に様々な支援が受け取れるということで、しっかり取り組んでいきたいと思います。国民や自治体に対してパンフレットを通じた制度の分かりやすい周知、広報を進めるとともに、登録経路の拡大として、これまでのマイナポータルや確定申告の際に登録する方法に加えて、この四月からは銀行等の窓口でも登録可能となっております。

 引き続き、公金受取口座の登録を促進していきたいと考えております。

黒田委員 この質問をさせていただいたのは、先日、自民党さんの方から、五万円か十万円か給付するというようなお話が出ておりました。私自身、堺市議会というところの出身で、まさにコロナ禍も市議会議員として務めてまいりました。そのときに、やはり給付する地方自治体の苦労というものを目の当たりにしてまいりました。これは何かといいますと、たくさんありまして、とにかく膨大な事務作業が生じるわけです。職員さん、人事異動までして、職務命令をしっかりと発出して、ほかの業務を止めて作業に当たるというところで、さらに、給付の順番等をメディアでもどこが早いとか遅いとかそういうことであおられますので、何でうちの自治体は遅いねんというようなクレームを受けたりとか、あとこの事務作業が千七百四十一自治体の全てでコールセンター等々を設置するということで、その業者の取り合いになるというか、様々な御苦労があります。

 今、迅速にそういった給付ができるようにというようなお話もありましたけれども、現時点でこの給付をしようという場合が起こったときに、公金受取口座というのが全国の市町村で実際に、大臣、機能すると思われますか。

平国務大臣 まず、私は、給付については全く承知していませんので、政府として検討しているということではなくて報道ベースだと思います。

 一般論として、今、問題は、六千三百万口座ということでかなり増えたは増えたんですが、人口の約半分ということになっています。なので、この公金受取口座を活用することは当然できるんですが、残りの部分は多分自治体、市町村さんにお願いをするということになると思います。ということもありまして、この割合をやはり増やしていくことが自治体の負担軽減にも直接利いてくることになりますので、口座数を増やしていくということになるということだと思います。

黒田委員 これは内容を実際に自治体の方に聞きますと、ダブルで案内をせなあかんというような作業で、余計に手間がかかると。

 ちょっと済みません、何の給付のときか忘れましたけれども、マイナンバーの公金受取口座を使うか、今おっしゃられたように、半分程度あるということで、これを使うか、それとも、通常の給付の形を取るかというところを迫られたときに、やはりダブルで案内を出して、時間的な制約もある、準備もある、そんな中で、半分、本来はマイナンバーの情報を国に言えばいただけるということで進めていけるんですけれども、それがなかなかその決断に踏み切れない。半分あったとしても、やはり従来型の給付に頼ってしまうというようなことがあります。半分行ったから自治体の負担が徐々に減っていくでしょうということには実際になっていないわけですね。

 ですから、そういったところを、僕も、半分進んでいけば、そこはしっかりとそっちでやっていくような仕組みになればいいのになというふうには思うんですけれども、これはやはり制度上の問題で、様々な自治体の苦労が二重でかかってくるというようなところがありますので、それも踏まえて、先ほどもおっしゃられた、次どのようなパンデミックが起こるかもしれない、そのときに迅速に対応するというところであれば、そこをどのように、大臣、今の状況を更に改善していくのか、そういった意気込み等があればお聞かせいただきたいというふうに思います。

平国務大臣 コロナ禍で自治体の方が大変な苦労をされたというのは、私も現場で、政府で見ておりました。そういった中から、この公金受取口座という考え方が出てきたわけであります。

 実際にコロナ禍で給付されたので、自治体自体が名簿を持っていたので、その後何かやるときは、公金受取口座じゃなくて、自治体のそもそも持っている名簿で同じやり方でやる方が楽だというのは実際あったと思います。ただ、これは経年していくと、また新たに作り直さなければいけないということがあるので、今委員御指摘のとおり、当面ハイブリッドでいかざるを得ないので、ハイブリッドで、単なる二重業務になるということではなくて、全体の負担が減るように今からしっかり準備していきたいと思います。

黒田委員 是非お願いします。やはり現場の実態をしっかりと聞いていただいた上で、それに見合った制度で、より迅速に国民に何かの給付が届くというような制度というものをしっかりと築いていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 最後に、地方創生についてお聞きしたいというふうに思います。

 地方自治体に対して、地方創生の名の下に、今年度から毎年二千億円の給付金を増やしていくというようなお話がありましたけれども、そもそも地方自治体の運営における課題の認識とか、そういった取組の内容についてお聞かせいただきたいというふうに思います。

伊東国務大臣 黒田委員の御質問にお答えいたします。

 近年、人口減少や、あるいは過疎化、人手不足の深刻化に伴いまして、持続可能な地方行財政の確保は喫緊の課題と認識いたしております。

 自治体の行政につきましては、総務省におきまして近年研究会が設置され、自治体間の連携やデジタル技術を活用した事務の効率化、あるいは、国、都道府県、市町村の役割の在り方を含め、必要な行政サービスを提供するためにどのような方策が考えられるか、検討されているところであります。

 地方創生を推進する観点からも国として自治体の取組を後押しする必要があると考えており、御指摘の新地方創生交付金、二千億でありますけれども、財政支援のみならず、人材派遣あるいは人材支援や情報支援の各支援を充実する必要があるもの、このように認識いたしているところであります。

 今回、中小規模の市町村の支援のため、国の職員が現地訪問等を通じて地域を副業的に支援する地方創生伴走支援制度を創設するものとしておりまして、人材面からの支援の充実も行っているところであります。

 これらを通じて、国として、地域の自主的、主体的な取組をしっかり後押ししていきたいと考えております。

黒田委員 もう時間なので質疑はいたしませんが、様々な地方創生の施策を打つ前に、そもそも小規模の自治体ではフルスペックの行政というものができなくなってきております。消防とか、ごみも一部事務組合とか、そういうような現状の中で、そもそも創生していく体力そのものがなくなっているというような現状もありますので、僕は総務委員会にも所属しておりますので、総務委員会とこちらの方と質疑を連携しながら、そういった対策についても今後議論を深めていきたいというふうに思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、日野紗里亜さん。

日野委員 国民民主党の日野紗里亜です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、特別児童扶養手当及び障害児福祉手当における所得制限について御質問させていただきたいと思います。

 二〇二四年十月に児童手当の所得制限が撤廃され、全ての子供が、親の所得にかかわらず、ひとしく手当を受けることができるようになりました。私自身、四人の小学生を育てる母親として、子育て家庭の声を代弁して感謝を伝えさせていただきます。

 この所得制限撤廃は、二〇二三年十二月に閣議決定されたこども未来戦略方針において、全ての子供と子育てを応援するという理念に基づき実現されたものです。また、先日可決された多子世帯への大学修学支援も所得制限を設けない形で法定化されております。さらに、高校の学費に関しても、収入要件を撤廃した無償化の議論が進んでおります。

 にもかかわらず、障害児に係る手当については、いまだに所得制限が残されたままです。しかも、その所得制限は、かつて所得制限があった頃の児童手当よりも更に厳しい基準となっています。

 例えば、子供二人を扶養している保護者で年収が約七百三十万を超えると、月五万五千円ほどある特別児童扶養手当はゼロとなります。先ほど橋本議員が言っていました。これに加え、障害児福祉サービスの利用についても、三歳から五歳を除く年齢では、所得に応じて月最大三万七千二百円の自己負担上限が設定されており、これも家計を大きく圧迫しています。

 今の日本社会で障害のある子供を育てるには、多くの時間と多くの労力と多くの費用を要します。そのような中、きょうだい児の生活や学び、そして心にも影響が出始めています。そんな悲痛な声が家庭から上がっています。重度の障害がある家庭では、両親共にフルタイムで働くことは難しく、実際には収入が一定水準を超えていても生活は厳しい、そういった家庭が多くあります。

 こうした現実を前に、なぜ障害のある子供に関する支援だけが今もなお所得制限つきなのでしょうか。今後、この所得制限の在り方について見直す議論が進んでいるのか、また、進んでいるのであれば、現時点で明確な時期は決まっているのか、まずは厚生労働省から簡潔にお答えいただければと思います。お願いします。

吉田大臣政務官 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきました特別児童扶養手当等につきましては、制度発足時から所得制限を設けているものでございまして、これは全額公費負担による制度でありますので、障害児の生活の安定に寄与するよう必要な範囲でこれを支給するという制度趣旨や、障害基礎年金など他の制度との均衡も踏まえているものであります。

 お尋ねの所得制限についてでございますけれども、これにつきましては、制度の持続可能性や公平性等を踏まえて設定しているものでございますので、委員御指摘の所得制限の撤廃につきましては、制度の目的や他の制度との関係も含めた慎重な議論が必要であるというふうに考えているところでございます。

 引き続き、制度趣旨を踏まえながら、障害児に対する各種の給付制度については適切に運用してまいりたいと思っております。

日野委員 今、制度の目的という御答弁がありましたが、大臣、これは政府として、こども未来戦略の理念と整合的な制度となっているでしょうか。お答えください。

三原国務大臣 所得制限の撤廃につきましては、先ほど議員から御指摘いただきましたように、児童手当では、全ての子供の育ちを支える基礎的な経済支援として昨年十月から、障害児の補装具についても、子供の成長に合わせて頻繁に買い換える必要があり、経済的な負担が重いことを踏まえて昨年四月から、それぞれ実現したところでございます。

 一方で、障害児等に対する手当につきましては、こども家庭庁におきまして所管しているものではありませんが、所得制限の撤廃につきましては、障害児の生活の安定に寄与するよう必要な範囲で支給するという制度趣旨や、障害基礎年金などの他の制度との均衡を踏まえた慎重な議論が必要であると承知しております。

 障害児の支援につきましては、こども未来戦略では、子供の補装具費支給制度における所得制限の撤廃と併せまして、児童発達支援センターの機能強化による地域における障害児の支援体制の強化ですとか巡回支援の充実など支援基盤の拡充を行うこととしておりまして、障害児とその家族が安心して暮らせるよう、そういう形でしっかりと取組を進めてまいりたいと考えております。

日野委員 先ほどほかの議員も指摘していましたが、決してこの所得制限、富裕層における所得制限ではないということをよく知っていただいて、しっかりと現場の声に耳を傾けていただければと思います。

 続きまして、次の質問に入ります。

 産後ケア事業におきましては、子育て家庭へのきめ細かい支援として、育児に関する不安への対応やメンタル面のサポート、孤立しがちな母子のケアなど、多面的な意義を持っています。先日の大臣の御答弁におきましても、産後ケア事業の委託先の確保を行っていく、こういった御発言がございました。

 実際、現在この事業の委託先としては、病院、診療所、そして助産所、この三つの施設形態があり、それぞれ大体、三割、三割、三割、全体の約九割を占めているところです。一見すると、制度として多様な委託先が確保されているように見えますが、現場の運用実態としては、必ずしも制度設計の意図と一致していません。

 産後ケア事業は、制度上、生後一歳未満まで利用可能とされていますが、病院や診療所では、生後四か月を過ぎると受入れを断られるケースが少なくありません。これは、元々、予算という大きな課題に加えて、本事業が病院の空きベッドを活用するという発想からスタートした背景もあって、動き出すようになった乳児の転落のリスク、そして、医療職が新生児対応には慣れていても、活発に動く月齢の赤ちゃんへの対応には不慣れという実情にも起因していると聞いております。

 しかしながら、私は、むしろこの四か月以降こそ、母親に対するケアがより必要になる時期だと思っております。というのも、生後五か月には離乳食が始まります。そして、生後六か月を過ぎると、ずりばいができるようになって行動範囲が拡大して動き出す、けがのリスクが高まってまいります。そして、この頃には夜泣きも始まって育児者は慢性的な睡眠不足。そして、思うように産後の母体が回復しない。また、この頃、成長、発達に差が出てきます。やはりよその子供と比較して我が子は大丈夫なのかしら、こういった心配も増えてきます。

 こうした要因は複雑に重なることから、出産直後より、ゼロ歳児後半に産後うつが悪化するケースが多いです。このような時期こそ、専門職による育児のアドバイスやメンタルケアの必要性が高まる、そう思っています。にもかかわらず、現在の委託体制では十分に対応ができていません。

 この制度上の利用可能月齢と実際に受入れ可能な体制との間に大きな乖離があると思っています。これについて、ちょっと制度の詳細をお話しいただくと長くなってしまいますので、この乖離について、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。お願いします。

三原国務大臣 産後ケア事業は、出産後一年以内の母子に対して心身のケアや育児サポートなどを行う事業であり、四か月以上であっても産後ケアを必要とする方が事業を利用できるように体制整備を進めることは今委員御指摘のように大変重要だと認識しております。

 他方、現場の声として、例えば宿泊型の産後ケア事業では四か月以上のお子さんを預かる場合、見守りの職員を追加で配置する必要があって受入れが難しいという声も承知をしておりまして、先般実施した調査でも、この宿泊型では四か月を超えるお子さんを受入れ可能と回答した市町村は半数弱にとどまっております。

 こうした課題に対応する観点から、新たに令和七年度予算で、四か月以降のお子さんを預かった際の職員配置への加算ですとか、宿泊型において夜間に二人以上の人員配置をした場合の職員配置への加算を創設いたしました。これらの事業を通じて、引き続き、四か月以降のお子さんをお持ちの産婦の方々を含めケアを必要とされる方がこの産後ケアを利用できるようにしっかり取組を進めてまいりたいと考えております。

日野委員 この四か月以降の加算について、これは大臣じゃなくて大丈夫です、自治体事情もあると思うんですけれども、想定される一利用当たりの報酬単価、これを現時点で分かっていればお答えください。お願いします。

谷委員長 政務官、答えられますか。ちょっと政府委員は呼ばれていないので。

 通告されていましたか。

日野委員 通告はさせていただいておりましたが。

谷委員長 では、ちょっと時間を止めてください。速記も止めてください。

    〔速記中止〕

谷委員長 速記を起こしてください。

 三原大臣。

三原国務大臣 兄姉、生後四か月以降の児を受け入れる施設への加算拡充、これは一施設当たり十七万四千二百円となります。

日野委員 また報酬単価についても別のときに聞かせていただきたいと思います。

 では、続きましての質問に入ります。

 先ほどちょっと病院の方でベッドの転落のリスク、また動き出す子供に対して慣れていないということから受入れができないといったことを発言させていただきましたが、一方で、こうしたニーズに対して柔軟かつ的確に応えているのが助産所でございます。助産所は、病院とは異なって、家庭的な温かみのある環境の中でベテランの助産師が母子に寄り添う、そういったきめ細やかなケアを提供しています。

 しかしながら、現状では助産所が収支面で非常に厳しい経営が強いられております。と申しますのも、分娩や通院による診療報酬が収入の主となる病院や診療所とは異なり、単独事業としての継続が大変困難であるからです。

 その理由としまして、事業そのものの認知度がまだ十分でなく利用者数が少ないこと、そして委託単価の低さが挙げられます。さらに、キャンセル料に関しましても、これは深刻な課題があるんです。利用者の当日の急なキャンセルによってもキャンセル料は徴収できず、準備や人員確保にかかったコストは全て事業者の持ち出しとなってしまう、こうなっています。実際、キャンセル料の設定について問合せしても、空きベッドを使っている事業なので、こうした説明をされるケースもあり、ここでも病院を前提とした制度設計が浮き彫りになっています。助産所では、一件の依頼に対して一人のスタッフが出勤しているため、空床活用とは全く異なる実態があるということがあります。

 さらに、訪問型の場合では、交通費も事業者の自己負担であります。委託先が少ないので距離が長いところもたくさんあります。もちろんここに急なキャンセルが発生すれば完全な赤字でございます。こうした制度上の支援不足とは対照的に、助産所では、もうからないと分かっていてもそれでもやるといった、思いあふれ、志の高いベテラン助産師たちが母子にとって本当に意味のある、そういった地道な支援を続けてくださっています。

 もちろん病院や診療所においても、本当に母子のためとなるケアを提供してくださっている、そんなところはもちろんありますが、一部の受託先には、診療報酬の確保を主眼とした運用が散見される、こういった声も上がっております。

 病院向けの制度設計がされている中で効果的なケアを提供している助産所、このジレンマをどういうふうに埋めていくのか、制度として真に支えるべき対象は誰なのか、いま一度制度を見直す必要があるのではないでしょうか。

 制度の対象月齢と実施体制との乖離を是正するとともに、委託先が足りないという本事業の課題を解決するためには、助産所の活用を促進するという視点が不可欠だと私は思っています。助産所という専門的、家庭的なケアが可能な委託先の確保に向けて今後どのような支援策を講じていくお考えでしょうか。大臣にお答えいただければと思います。

三原国務大臣 委員御指摘のとおり、特に規模の小さな助産所を含めて産後ケア事業に係る経営上の課題につきまして令和五年度に実施しました調査研究におきまして、約半数近くの事業所が市町村からの委託単価が低いという回答をしております。

 国の補助金の基本単価につきましては、事業者が十分な人員配置や必要な物品の購入などができるように、例えば、宿泊型では一施設に当たって月額上限約二百六十万円を設定して、この上限額は助産所も病院も同額としているんですが、多くの助産所に対する市町村からの実際の委託額というのは、市町村の判断によって国の上限の約二百六十万円を下回っているというふうに承知しております。

 私も、地元神奈川、横浜ですとか川崎、寒川、いろいろなところの産後ケア事業、現場の声を直接伺ってきたところでございます。そうした現状も踏まえて、本年四月に施行した改正子ども・子育て支援法において、産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置づけて、市町村が都道府県と連携しつつ、事業を行う施設等を計画的に整備することとし、この事業費について都道府県負担を導入して、これによって市町村負担を軽減する、今まで市町村負担だったものを、二分の一だったものを都道府県に四分の一負担してもらう、だから市町村も四分の一になるということにして、委託単価が低いといった課題の解決にもこれはつながっていくものというふうに考えております。

 さらに、施設改修や設備費用が高いですとか稼働率が低いということ、この経営上の課題も挙げられていることも踏まえまして、令和六年度の補正予算で受入れ人数を増やすための増改築に対する施設整備等の補助も拡充いたしました。

 これらの取組を通じて、次世代育成支援対策施設整備交付金の拡充、あるいは、産後ケア施設改修費などの支援事業を新規に行いましたので、是非委員からも御協力いただいて、こうしたことの周知、私どももしっかり頑張ってまいりますが、是非御協力をいただいて、皆さんに、御利用したいという方に利用していただける、そうした産後ケア事業にしていきたいと考えておりますので、今日、御質問ありがとうございます。是非頑張ってまいりたいと思います。

日野委員 今、都道府県が四分の一になって、市町村も四分の一になったという御答弁をいただきました。

 でも、都道府県に予算がないところもありまして、実は、そういうふうになったことによって余計に利用回数が減ってしまった、こんな自治体もあるという声も届いています。

 また、施設改修におきましても、病院と診療所は対象になっていても、助産所が対象になっていない、こういった現場の声も上がっていますので、そちらも併せて御確認いただけますと幸いです。

 最後に、事業の認知度や内容の分かりにくさ、これも大きな課題だと思っております。

 私の地元愛知県では、自治体から産後ケア事業の案内を受けたことがある人の割合は今六割に下がっています。必要な情報が届いていないというのは、これは特に、妊娠とか出産のときというのは一時的に多くの情報を受け取ります。なので、制度は、本当は案内してくれたかもしれないんですけれども、埋もれがちでございます。なので、継続的かつ段階的な情報提供の工夫が求められると思います。

 さらに、現在、産後ケアは多様化しています。そして、自治体が推進している国家資格を有する産後ケア事業、これが具体的にどのような支援を行うものなのか、対象月齢や提供されるケアの内容などが利用者にとって分かりやすく整理されているとは言い難い現状があると思います。

 こうした点を踏まえ、制度の認知向上に向けた広報の在り方や、利用者が必要なタイミングで正確な情報を受け取れる仕組みの整備、さらに、事業内容の明確な定義づけとその周知について今後どのように取り組んでいくか、大臣にお伺いさせていただきたいと思います。

三原国務大臣 産後ケア事業の周知、広報に力を入れるということは大変重要だと思います。

 例えば、本年二月には、産後ケアを利用した方の声や具体的なサービス内容などを紹介する動画を作成いたしまして、各種SNSの発信や全国のフードコート、タクシーでの放映、こうしたことも行いました。

 また、自治体での周知、広報も進むように、昨年度改定いたしました産後ケア事業ガイドラインで、母子保健手帳の交付の際や妊婦訪問などでのリーフレットの配付、市町村のホームページ、公式SNSなどでの積極的な周知、こうしたものが求められることを示した上で、自治体で活用いただけるように、産後ケア事業の紹介チラシの作成も行ったところでございます。

 是非委員からも、このできたての紹介チラシ、本当は今日、皆さんにお示しもしたかったんですけれども、是非そうしたものも通じて、必要とされる全ての方に利用していただけるような広報、周知というものを徹底してまいりたいと思いますので、どうぞ皆様にもよろしく御協力のほどお願いしたいと思っているところでございます。

日野委員 終わります。ありがとうございました。

谷委員長 次に、大森江里子さん。

大森委員 公明党の大森江里子でございます。

 質問の機会を頂戴し、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、一人親家庭に対する自立支援策についてお伺いいたします。

 私は母子家庭で育ちました。当時は今よりも一人親家庭を取り囲む環境は厳しく、母は必死で働き、私を育ててくれました。幸い、近隣の方たちにも恵まれ、多くの方に励まされ、人の温かさを知ることもできました。現在、一人親家庭への様々な支援も増えていますが、更に一人親家庭の子供たちが安心して成長していけるようとの思いも込めて質問させていただきます。

 国民生活基礎調査の資料によりますと、令和三年においては、子供の貧困率は一一・五%で改善傾向に見えますが、一人親世帯の相対的貧困率は四四・五%とまだ高い状況です。一人親世帯が自ら稼いで収入を得て貧困状態から脱していくためにも、就業から定着までの支援は非常に大切だと思っております。

 初めに、政府の自立支援策のうち就業支援の実施状況、また今年度拡充された内容についてお伺いいたします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 こども家庭庁においては、一人親家庭等に対する就業支援として、就業相談や講習会から求人情報の提供等までの一貫した就職支援サービスを提供するひとり親家庭等就業・自立支援事業の推進、丁寧な状況把握の上で個々のケースに応じた自立支援プログラムを策定し、自立状況をフォローするきめ細かな自立、就業支援、資格取得のための給付金の支給など、就業に関する様々な場面において支援を行っているところでございます。

 こうした各事業については、各自治体において地域の実情等を踏まえて実施いただいておりますが、例えば、母子家庭等就業・自立支援センター事業については、約九割の自治体で実施されており、令和五年度の一年間で相談件数が延べ八万九千七百八十三人、うち把握できている就職件数は三千九十四人となっており、一人親の就職に向けて一定の効果を発揮しているものと考えております。

 引き続きこれらの事業を着実に実施するほか、ハローワーク等の関係機関と連携した取組を行い、就労支援を通じた一人親家庭の自立促進の取組を進めてまいります。

大森委員 ありがとうございました。

 こども家庭庁の資料によりますと、令和三年度の調査時点で、父子家庭に比べると母子家庭は非正規の就業の割合が高く、平均年間就労収入は父子家庭に比べると母子家庭の収入は半分ほど少ない状況です。

 そこで、就労支援においては、非常勤やパートではなく常勤での就業といった安定的でより高い収入を得られるような就業支援が必要だと考えておりますが、御見解をお伺いいたします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、一人親の方が費用面、収入面で安定し、さらに就労収入の上昇が見込める仕事に就き、経済的に自立できるように支援することは大変重要であるというふうに考えております。

 このため、これまでこども家庭庁では、先ほど答弁させていただいた一人親の方が就職に有利となる資格取得の支援などを行ってきているのに加えまして、令和六年度補正予算において、一人親家庭の資格取得のミスマッチの防止や就業先の職域拡大を図るために、企業とマッチングをし、業務内容を見据えて講座を受けていただく、職場訓練をしていただいて、そしてその就職予定先に確実に就業、定着をしていただくといった支援を一体的に行うモデル事業を創設いたしました。

 こうした企業とのマッチングを活用した強力な就業、定着支援について、自治体の創意工夫を凝らした実効性のある取組を幅広く支援することとしております。

 こども家庭庁といたしましては、これまでの取組に加えて、このモデル事業においても成果が出せるよう、一人親家庭に対する就業支援にしっかりと取り組んでまいります。

大森委員 ありがとうございます。しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、一人親家庭の自立支援策のうち、養育費確保等支援についてお伺いします。

 一人親世帯の相対的貧困率が高い要因の一つとして、養育費の受給率の低さがあると思っております。

 昨年成立した改正民法では、離婚時の取決めがなくても別居している親に養育費を請求できる法定養育費制度の創設が盛り込まれてもいます。

 厚生労働省の令和三年度の全国ひとり親世帯等調査によりますと、養育費受領率は二八・一%、母子世帯の割合でございますが二八・一%と三割に満たない状況でございます。一人親世帯のうち、七割もの母子世帯が養育費を受け取れておりません。

 現状の御認識と、受領率の抜本的な改善に向けた対応策についてお伺いいたします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、養育費の履行確保は政府として取り組むべき重要な課題というふうに認識をしております。

 このため、こども家庭庁においては、これまで、個々の条件に応じた専門的な相談支援、公正証書の作成支援、保証会社や弁護士の利用等に係る費用の補助などの養育費の履行確保に資する取組を行う自治体の支援を行ってきたところでございます。

 また、これらの支援策について、今年度より、離婚前の相談支援から離婚後の養育費履行確保支援までを伴走型で一体的に提供できるよう、離婚前後家庭支援事業として事業の再編強化を図ったところであり、引き続き、各自治体での事業活用が進むよう、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大森委員 ありがとうございます。

 続きまして、自治体で設けられている相談支援体制についてお伺いいたします。

 子供を連れて離婚する際には養育費の取決めをするということが重要だと思いますが、離婚の手続に精いっぱいで、養育費の取決めまで一人で対応できる方というのは少ないと思います。ですので、公的な支援というのはとても大切だと考えております。

 現在は、取り決めた内容を公的に証明する公正証書の作成費用、また弁護士への相談費用などを一人親に支援する自治体も増えているようですが、自治体の財政力や人員によって支援の実施に地域間格差が生じないよう、全国どこに住んでいても必要な支援が受けられるような制度設計や財政的支援の強化をお願いしたいと思っております。御見解をお伺いいたします。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 一人親家庭に対する支援策につきましては、各自治体において地域の実情等を踏まえて実施いただいておりますが、一部の自治体での実施となっている事業がある一方で、例えば母子家庭等就業・自立支援センター事業や高等職業訓練促進給付金など、約九割あるいはそれ以上の自治体で実施されている事業もございます。

 こども家庭庁としては、議員御指摘のとおり、地域の実情に応じて柔軟かつ的確な事業の実施を進めながら、どこに住んでいても必要な支援を利用しやすいようにすることが重要であるというふうに考えておりまして、令和七年度予算においては、自治体の使いやすさも踏まえた事業の再編強化を行うとともに、就業支援や相談支援について自治体独自の取組に対する支援も可能としたところでございます。

 引き続き、こうした事業設計の見直し等に加え、自治体に対する事業内容の周知等も適切に行うことで、各自治体において確実に一人親支援が行われるよう、その推進に努めてまいりたいというふうに考えております。

大森委員 ありがとうございます。

 政府は、令和五年四月に養育費受領率の達成目標を掲げて、二〇三一年に養育費の取決めの有無にかかわらない全体の受領率を四〇%とし、養育費の取決めをしている場合の受領率を七〇%とすることを目指しています。こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律にも、子供の貧困に関する指標に一人親世帯の養育費受領率が加えられています。

 しかし、この受領率の基礎となる調査は五年ごとに行われており、二〇二六年の調査の後は二〇三一年まで行われない予定でございます。二〇三一年での目標達成を本気で行うのであれば、調査の頻度はもう少し多くする必要があるのではないかということも感じております。

 続きまして、海外では、離婚にも裁判手続が必要な国が多く、子供が未成年の場合、養育費の適切な取決めがないと裁判官が離婚を認めないということもあるほか、不払いのときにも、公的機関が関与して、立替え払いや強制徴収の制度があります。また、その両方の制度の特徴を持つ国もあるようです。昨年成立した改正民法の附帯決議には、公的機関による立替え払い制度などの検討を深めることということも盛り込まれています。

 子供に確実に養育費を届けるためにも、日本でも立替え払いや強制徴収を行う公的機関の設立など養育費の不払いに備えた仕組みが必要かと考えますが、御見解をお聞かせください。

吉住政府参考人 お答えいたします。

 父母の間で養育費の取決めが行われ、その履行確保がなされることは、政府として取り組むべき重要な課題であるというふうに認識をしております。

 議員御指摘の立替え払いや強制徴収の制度につきましては、実務上の課題や制度の導入が当事者に与える影響など様々な論点があり、慎重な検討が必要であると考えておりますが、こども家庭庁としては、まずは現行の仕組みの下でしっかりと養育費確保を支援していくことが重要であるというふうに考えております。

 このため、令和元年度から、離婚前後親支援モデル事業により、親支援講座の開催のほか、取決めや履行確保のための手続や費用の支援など、養育費の履行確保に資する取組を行う自治体を支援してきたところでございます。また、本事業については、先ほどお答えいたしましたとおり、今年度から離婚前の相談支援から離婚後の養育費履行確保支援までを伴走型で一体的に提供できるよう事業の再編強化を図ったところであり、引き続き、養育費の取決めや履行確保が進むよう、法務省とも連携しながらしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大森委員 ありがとうございました。様々な御検討を進めていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 最後に、一人親家庭の貧困解消に向けた大臣の御決意をお伺いできますでしょうか。よろしくお願い申し上げます。

三原国務大臣 一人親家庭は、子育てと生計の担い手という二重の役割を一人で担っていて、様々な困難に直面し得るものであるために、世帯の状況に応じて生活や子育て、就業などを多面的に支援する、子育てをしながら自立できるようにしていくことは本当に重要なことだと考えております。

 また、実態把握の中で痛感するのは、特に厳しい状況に置かれている方々ほど、経済的な困窮に加えて、親の心身の健康問題ですとか社会的な孤立、子育ての悩み、子供自身の学校生活での課題など、多様な困難が複合的に発生しているということでございます。

 令和五年十二月に取りまとめた加速化プランでは、児童扶養手当の拡充、子供の学習支援や生活支援、就業支援や養育費確保支援など、今いろいろとお話がありました多面的な強化、こうしたものをしてきているところでございますが、厳しい状況に置かれている方々の支援、これは確実にお届けするということが必要だと考えております。

 このため、令和七年度予算では、一人親家庭への支援員やこども家庭センターの相談員が機会を捉えてアウトリーチするなど、必要な支援につながりやすいような環境をつくっていくとともに、こうした支援機関が福祉事務所や学校とチームを組んで、継続的、伴走的な支援ということに関わって困難を解きほぐしながら支えていく、そのための相談支援体制の強化というものを盛り込んだところでございます。

 他方、先ほど委員がお話ありましたように、親への支援はもちろんでありますけれども、様々な困難に直面している親の元で暮らすお子さん、子供の状況や気持ちに思いをはせるということ、子供に寄り添った支援を行うことは大変重要であると考えております。

 引き続き、本日委員から御指摘いただいたことを踏まえて、一人親家庭の皆さんが必要な支援を受けながら御自身でしっかりと生活していけるように、生活の安定、自立につながる支援を実施してまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

大森委員 大変に温かな御決意をありがとうございます。大臣の支援を確実にお届けするという御決意を伺いまして、大変にありがたく思っております。

 一人親家庭は孤立、孤独になりがちでございますので、どうか寄り添った温かな御支援を更に充実させていただきたいと思っております。一人親家庭の貧困は複合的な課題を抱えていると思いますので、これからも社会全体で支えていく体制を築いて対策を進めていただきますようお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 れいわ新選組の阪口直人です。

 適切な伐採は、森林を守る、そして林業を守る上で大変に大きな意味があると思います。今日は、自然と産業を両方守っていく、両立させていくという知恵をしっかり機能させるような、そういった施策についていろいろと御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、森林の価値について最初にお話をさせていただきます。

 森林の機能の貨幣評価額、これは、土砂災害防止に一年当たり三十六兆七千億円、そして洪水の防止や水質の浄化など水源の涵養に二十七兆一千二百億円、また大気保全機能に五兆一千四百億円など、合計で七十四兆九千九百億円の価値があるとされています。これは物すごい効果ですよね。私は、林業というものをもっと評価し、そして守っていくことが、森林の価値をしっかりと保全することにつながると考えています。

 ただ、これは、林野庁のホームページで見た二〇〇〇年の、今から二十五年前のデータなんですね。もっと新しいものはないのかと探したんですが、見つけることはできませんでした。

 例えば気象の緩和だったり遺伝子資源の保全というような、いろいろな価値を含めた森林の価値ということをしっかり伝えていくべきだと思うんですが、この点についていかがお考えでしょうか。

小坂政府参考人 お答えさせていただきます。

 森林の公益的機能の評価額は、平成十三年、学術会議の方で諮問、答申をいただきまして、考え方が整理されております。その考え方に基づいて当時試算した額が、議員の御指摘の額かと思われます。

 その後、生物多様性とか様々な価値について評価ができないかという議論があるんですけれども、なかなか価値化するのが技術的に難しいということもありまして、当時の評価額を現在も使っておりますけれども、今後は、またいろいろな知見が出れば、新しい知見に基づく評価額も考えていきたい、研究していきたいと思っているところでございます。

阪口委員 二十五年前のデータということで、やはりこれはアップデートして、様々な要素を加えて国民に広く知っていただく必要があるかと思います。

 一方で、大阪・関西万博が始まりました。その象徴である巨大木造リングには三百四十四億円が使われているということなんですが、ほぼフィンランドの木材が使われていると報道されています。このシンボリックな建物さえも国産の木材で賄えないこと、これは大変残念に思っています。

 では、質問させていただきます。

 まず、森林環境譲与税についてです。

 今回の質問に当たって、岐阜、三重、静岡、愛知の関係者に話を伺いました。

 その中で、二〇一九年から自治体に譲与されている森林環境譲与税、これは未成年や障害者の方々を除く全ての人々に一律年間千円を負担していただく、こういう税なんですね。非常に逆進性が高いということで、この点は賛同しかねますが。

 しかし、令和六年度税制改正により譲与基準が改められて、私有林人工林面積の譲与割合が五〇%から五五%に増えました。一方で、人口の譲与割合が三〇%から二五%に減り、また林業従事者の数に応じた譲与割合が二〇%となりました。

 ただ、譲与される自治体や事業者にとっての譲与額の過不足が生じているんです。具体的に言うと、個別市町村の譲与額の一位が横浜市になっています。二位が浜松市、三位が大阪市になっております。二位の浜松市は私有林人工林面積が最大ですが、横浜や大阪というのは大都市圏に位置するので、大阪には私有林も人工林も存在しません。

 そして、譲与額二位の浜松市にある静岡県森林組合の木材共販所に話を伺ったところ、譲与額が多くて使い切れていない、そういう現状も聞きました。また、譲与額一位の横浜市は、森林面積が少なく使用目途に困っているという話も出ています。一方で、岐阜県の東白川村森林組合では、自治体の人口が少ないこともあって譲与額が不足しているということなんですね。

 質問ですが、元々収入の多い自治体には多く譲与される一方で、林業が産業の中心になっている小さな自治体への譲与が僅かというのは、当初のこの税の目的にかなっていると言えるのか。私は、それぞれの自治体における森林関連事業量も譲与額の算定基準に加えてはどうかと思うんですが、この点について、政務官、どのようにお考えでしょうか。

古川大臣政務官 お答えさせていただきます。

 森林環境譲与税の使途については、法律上、森林整備、人材の育成、木材利用の促進等と定められております。そのため、譲与基準の指標についても、使途と相関が高いものとして、私有林人工林面積、林業就業者数のほか人口を用いているところでございます。

 令和六年度からは、委員が御指摘のように、これまでの活用実績等も踏まえ、私有林人工林面積の割合を五〇%から五五%にする一方、人口の割合を三〇%から二五%にする譲与基準の見直しを行っており、自治体における森林整備を始めとする必要な施策の推進につながるものと考えております。

 その上で、森林整備を進めていくためには、川上の自治体における間伐、造林等や、川下の自治体における木材利用の促進等を一体的に進めていくことが重要と考えております。

 森林環境譲与税の創設を契機として、都市部における公共施設の木質化に取り組む事例や、川上の自治体と川下の自治体が連携して森林整備等に取り組む事例も見られているところであります。

 今後とも、森林環境税に対する国民の理解を深めていくことが重要であることを踏まえ、関係省庁と連携し、全国の自治体における譲与税の一層の有効活用を促してまいります。

 なお、林業費を譲与基準とすることは、林業費が各地方団体の判断により増額することが可能なものであることから、譲与基準として中立性を欠くものとなりかねないなどの課題があるものと考えております。

阪口委員 川下のサポートということも必要だと思うんですが、実際に森林が存在するのは今政務官がおっしゃった川上ですから、川上の支援、森林が存在する場所の支援ということをより重点的に行っていく必要があると思います。算定額の更なる見直しを是非検討いただきたいと思います。

 次に、森林の間伐への補助金について質問をいたします。

 森林整備事業においては、植付け、下刈り、間伐等の作業に対して補助が行われています。このうちの間伐についてですが、県単位では補助金額が減っていて、事業年度末になるといつも補助金が不足して間伐を行えないというような状況になっています。木材の伐採、搬出、輸送というのは大変コストがかかるんですね。しかし、木材価格が長期的に低迷していることもあって、業者にとっては補助金がないと本当に採算が合わないんですね。

 御存じのように、木材には製材用のA材、合板や集成材用のB材、チップ、バイオマス用のC、D材があります。このうち特にA材、B材の需要を増やすことが木材価格の引上げにつながると考えていますが、一方で、全体として出荷量が減っていることによって、木材価格、C材、D材の高騰や原料の木材を確保できないということで、近年バイオマス発電所や大型製材工場が相次いで破産をしているんです。

 森林整備事業の補助金を増やすことは、間伐や伐採による木材の供給量を増やすことにつながると思います。何とか補助金をアップする、そういう方向性で検討いただきたいと思うんですが、お考え、いかがでしょうか。

庄子大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 我が国の人工林資源というのが今非常に利用期を迎えているのは、委員御存じのことというふうに思います。

 農林水産省はよく、切って、使って、植えて、育てる森林資源の循環利用ということを申し上げているんですけれども、そういうことをしていくためにも、森林の公益的機能、生物多様性とかあるいは治水の問題とか、そうしたことを発揮していくためには、今御指摘をいただきました主伐の後の再造林、あるいは間伐、こうしたことを適切に行っていくことが重要だと思っております。

 したがいまして、森林整備事業につきましては、令和七年度の当初予算そして令和六年度の補正予算合わせまして、前年度を三十一億円上回ります千七百六十二億円を措置しております。

 本省といたしましては、今後とも必要な予算の確保に努めて、しっかりと森林整備を進めてまいります。

阪口委員 林業を守る、森林を守るためには、木材需要を喚起することが非常に重要だと思うんですね。

 今、お米の価格も高騰していますが、木材の価格も需要と供給のバランスによって変動します。これは岐阜県の東濃ヒノキ白川市場でヒアリングをしたんですが、過去においては木材価格が一番高かったのが平成元年の一立方メートル当たり六万五千円なんですが、現在は一万六千円と低迷をしているんですね。木材の切り出しであったり搬出にはどうしても固定費がかかって、木材価格の高い安いにかかわらず、どのような木材であっても工場への直送や市場までの運搬でおよそ一立方メートル当たり一万二千円かかるそうです。このような状況ではどうしても国からの補助がないと林業が成り立たないという、本当に悲鳴が寄せられています。

 国として手を打てることはたくさんあると思うんですが、一つはやはり木材の需要を国策として増やしていくことが必要なんだと思います。例えば、木材建築について住宅購入補助を増額する、あるいは固定資産税の減免などあると思うんですが、特に、林野庁としてできることとしては、公共物件を木質化していったり、住宅リフォームの木材利用の推進などということはできるかと思います。また、冒頭に申し上げましたが、外国産材から国内産利用へ抜本的に転換して木材製品の需要を増やす、これが価格を上げることにつながり、また、日本の林業や森林を守ることにもつながっていくと思います。

 これらの点についての戦略であったり今後のグランドデザインということ、どのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

庄子大臣政務官 今後、人口減少に伴いまして、住宅着工の減少が見込まれております。

 こうした中で、国産材需要の拡大に向けましては、住宅分野で輸入材の割合が高い横架材等で国産材への転換を図るということは御指摘のとおりでございます。柱材とか土台は割と国内の、国産材を使っているんですが、横架材は外材が強いという状況がありますので、ここの転換を図りたいと思います。

 木造率の低い非住宅・中高層分野におけます新たな需要を開拓することも重要でございますので、本省といたしましては、住宅分野では、今申し上げたような横架材等への国産材利用に向けた技術開発、普及、そして木造化に向けましたCLTや木質耐火部材等の製品技術の開発支援、公共建築物の木造化支援、また、カーボンニュートラルへの貢献等への意義の浸透を図りながら、しっかり建築物への木造利用を促進してまいりたいと思っております。

阪口委員 最後にもう一度申し上げます。

 森林を守るため、そして林業を守るためには、これはやはり需要を喚起して、そして国内材が日本の様々な建設の現場で使えるようにしていかなければいけない。そのためには予算を増やさなければいけないと思うんですね。この点、全面的に協力をしたいと思いますので、是非同じ方向で頑張っていきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

谷委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 リニア沿線の被害について質問させていただきたいというふうに思います。

 リニア中央新幹線第一中京圏トンネル西尾工区の工事付近、愛知県春日井市明知町内の複数の井戸や池や水路、そうしたところが水がれ、水位低下の被害、あるいは事業者の方の社屋などへの被害が実際に出ております。

 リニア工事によって岐阜県瑞浪市大湫での水がれとか地盤沈下、これは大きなニュースになりまして、私も予算委員会で質問させていただいております。いまだに地盤沈下は瑞浪の方で続いておりまして、十センチ以上の地盤沈下という場所もございます。

 リニアの工事による被害というのはここだけではないわけですけれども、今日は春日井市の明知町の方で起きている事象について質問させていただきたいんです。

 この問題については春日井の市議会の中でも議論をされておりまして、議論をしてこられた伊藤建治市会議員と一緒に私も住民の方のお話をお伺いに現地に伺わせていただきました。

 お話をお伺いいたしますと、昨年の二月頃、池の水、井戸の水がかれてしまったと。雨が降って少し水が入るときもあるんですけれども、また今年の二月頃もかれてしまったと。また、ダイナマイトの振動なのか、井戸の壁面のところが崩れてしまって、ポンプに砂が入ってしまって修理をしなければならなかった、御先祖の方々の時代からこんなことは一度もなかったというお話です。百年以上こんなことはなかったということです。

 もう一つ、西尾工区の南の端なんですけれども、その近くの事業者さんの被害もございました。二〇二二年の春頃なんですけれども、地下水が突然濁り出した、三十年以上こういうことは一度もなかった、製品が変色をしてしまうという中で、数百万円の投資をして、ろ過装置を複数取り付けなければならなかったというお話です。社屋の建物にもひびが入っておりまして、床も波打ってあちこちに亀裂がある、これは現在も大きくなっているというお話です。

 この明知町の井戸や池の水がれ、水位低下というのは、春日井市議会の答弁では、現地調査をJR東海も行ったという答弁があったわけですけれども、どのような調査を行ったのか、また、この水位低下、水がれ、自然現象だというふうにJR東海は言っているそうなんですけれども、それを証明する証拠はあるのかという点をお伺いしたいと思います。

古川副大臣 お答え申し上げます。

 本年、令和七年三月の春日井市議会におきまして、同市内におけます水がれなどの被害並びにリニア中央新幹線工事の影響の有無について質疑があったと承知をしております。

 JR東海からは、第一中京圏トンネル西尾工区において、本年、令和七年二月頃から工事箇所付近の井戸の水がれについて複数の申出があったということから、JR東海社員がお話を伺い現地を確認した、この地域の令和六年十二月から本年、令和七年二月の降水量は、例年に比べて記録的な小雨であり、三月中旬以降は降雨により多くの井戸で水がれの状況が改善している、引き続き地域の方々のお話をよく伺うとともに現地の状況を注視していくとの報告を受けております。

本村委員 今日出させていただきました資料の中にも、これは春日井リニアを問う会の川本さんが作って、JRの資料からまとめてくださった資料なんですけれども、昨年二月の段階でかれているわけです。先ほど副大臣は今年の話をされたんですけれども、去年も水がれをしているわけです。降雨量も見させていただきましたけれども、去年は今年と比べても降雨量はそんなに少なくないという中で、去年水がれをしているわけです。

 資料を見ていただきますと、西尾工区のリニアトンネルのトンネルから出る水の量、つまり湧水の量は、上の方ですけれども、上の量と、観測用の深井戸の水位、これは下なんですけれども、二〇一九年から二〇二四年までの推移が分かるというふうに思います。その途中で、明知町井戸水濁るですとか、明知町井戸かれるですとか、そういうことが書いてあるわけですけれども、トンネル湧水量が増えて、そして井戸の水位低下が進んでいることが分かるというふうに思います。

 先ほど事業者の方の水が濁るなどの被害があったというふうに申し上げましたけれども、二〇二二年夏頃は深井戸はマイナス五十メートルにもなっております。これは、瑞浪の大湫の、被害があったわけですけれども、そこの水位低下よりも上回る量となっております。

 この西尾工区の観測用の深井戸はなぜ五十メートルにもなっているのか、その点、お示しをいただきたいと思います。

古川副大臣 JR東海からは、西尾工区の非常口工事施工ヤードのトンネル湧水量及び周囲の観測用井戸の水位のモニタリングの結果、西尾町の観測用深井戸の水位は令和二年一月頃から減っている一方、令和六年二月頃からトンネル湧水量が増えておりまして、その時期が一致していない、令和六年三月に明知町内の民家の井戸や池の水が低下した旨は承知しておらず、他の観測井戸の水位については変化が確認されていないとの報告を受けております。

 国土交通省といたしましては、事業主体であるJR東海に対し、モニタリング結果などを踏まえた適切な措置が取られるよう引き続き指導助言を行ってまいります。

本村委員 ありがとうございます。

 明らかにトンネル湧水量が増えていく中で、そして本線トンネルの工事が始まる中で、深井戸の水位低下というのは明らかに進んでおります。西尾工区のトンネル湧水量が大幅に増えた時期、観測用の深井戸の五十メートルの水位低下をした時期、そして明知町内の民家の井戸や池あるいは水路の水が減ってしまった時期が重なっております。そうした点をJR東海そして国は調査をするべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

古川副大臣 お答えいたします。

 JR東海からは、観測用深井戸の水位については令和二年一月頃から減少はしておりますものの、同一箇所の浅井戸の水位に変化はなく、また、周辺での水位低下に関する申出もないといった状況であると伺っております。

 また、JR東海から、一方で明知町では、令和七年二月から三月頃にかけて井戸の水位低下、枯渇に関する申出が十二件行われていますが、この地域での小雨の状況などによりまして、三月中旬以降は降雨により多くの井戸で水がれが改善しております。こうしたことから、現時点におきましてはリニア中央新幹線工事との明確な因果関係が認められる状況にはない、このように伺っているところでございます。

本村委員 そうやって言うからこそ、今日、湧水の量と、そして深井戸の水位の大幅な低下ということを申し上げているわけです。かなりこの地域はトンネルが地下深く掘られる、大深度という地下深く掘られるわけで、だからこそ深井戸の点も是非見ていただきたいというふうに思っております。

 西尾工区の工事の付近、明知町の水がれ、水位低下の被害に関して、住民の皆様への補償をしっかりと行うべきだというふうに思います。事業者の方のこともちゃんと調査して補償をするべきだというふうに思います。リニアの工事が事業者の近くに来たのは二〇二二年、ちょうど重なるわけです。そこで水の濁りが出ているということで、JR東海の言い分をうのみにするのではなく、客観的な調査をするべきだというふうに思います。そして補償をするべきだというふうに思います。

 副大臣、その点、国として是非そうしたことをやっていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

古川副大臣 JR東海からは、掘削工事に当たって地下水の水位や水質などの状況をモニタリングしている、工事との因果関係が認められれば、ほかの公共工事と同様に、国土交通省が定めた公共工事に係る工事の施行に起因する水枯渇等により生ずる損害等に係る事務処理要領などに基づきまして、地域の御意見を伺いながら補償などを行っていくとの報告を受けております。

本村委員 是非被害に対してはしっかりと調査して補償をしていただきたいというふうに思っております。

 もう一つ。リニアの坂下西工区では亜炭廃坑がありまして、陥没のリスクがございます。

 リニアは、例えば不二ガ丘というところでは地下七十五メートル辺りを工事するわけですけれども、その亜炭廃坑は地下七メートルから十四メートルの辺りにある。そうしますと、弾性波探査は十四メートルから十五メートルしか届きませんので、亜炭廃坑の丁寧な調査ができないというふうに思います。

 丁寧な調査をして予防の充填を行い、そして絶対に陥没事故を起こさせない対策を強化するべきだというふうに思いますけれども、副大臣、お願いをしたいと思います。

古川副大臣 この亜炭廃坑との関係についてでございますけれども、JR東海からは、坂下西工区の施工に当たりまして、事前に文献調査及びボーリング調査を実施いたしました結果、亜炭鉱となり得る層は地表面から約二十メートルないし四十メートルの深さで確認されていて、地表面から約六十メートル以上深い位置にあるトンネルの近くでは確認されなかった、また、一般的にシールドトンネルによる影響が考えられるとされるトンネル直径と同じ約十四メートルの範囲において弾性波探査による空洞調査を行うことといたしておりまして、既に実施をした調査掘進約二百四十四メートルにおきましても、マシンから発振した弾性波により空洞の探査が可能であることを確認した、さらに、空洞の存在が疑われる場合には、マシン内部からのボーリング調査を実施し、空洞の確認等を行う予定であると伺っております。

 国土交通省といたしましては、JR東海に対し、これらの調査を踏まえた適切な措置を取ることによって安全や周辺の影響に十分配慮して工事を進めるよう、引き続き指導助言を行ってまいります。

本村委員 絶対に陥没事故がないようにしていただきたいというふうに思います。

 そして、最後に、大臣にお願いします。豊かな水資源を守るという御決意を是非お願いしたいと思います。

伊東国務大臣 本村委員の御質問にお答えしてまいります。

 御指摘いただきましたリニア中央新幹線の建設に関しましては、所管の国土交通省において適切に対応されているものと承知をしているところでありますが、一般論として申し上げれば、地下水を含む豊かな水資源は人の生活を支える重要な要素であると認識をいたしております。

 本村委員御指摘のとおり、私の所信表明におきまして基本的な考え方に掲げた五つの柱の一つ目の柱であります、安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生について御説明をさせていただいたところであります。こちらに沿って、買物、医療、交通など日常生活に不可欠なサービスの維持向上等に向け、今後も関係省庁と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

本村委員 是非水資源を守っていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

谷委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 今日は、過去二回に引き続いて、自立した地域をつくるためのグランドデザインについてということと、それから地域活性化を担う人材育成についてという、この大きな二つの点について質問したいと思っています。

 これまで、過去二回において、地域が主役の国づくりのグランドデザインということで、私は大風呂敷を広げて、国と地域の在り方というのは、国と自立した地域、地域が基礎自治体になる、二層制の国づくりにすべきだということを訴えてまいりました。その背景の問題意識は、残念ながら今、これは地域、地方だけじゃないんですけれども、前も言いましたが、人も企業も地域も本当に国に依存している、依存体質がこの国に、日本に蔓延してしまっている。申し訳ないんだけれども、政府も与野党もその依存心をあおる。例えば、寄り添うというきれいな言葉の中で、自分たちを頼れば何とかしてやるぞということを次から次に打ち出していって、ある意味、頼ればそれが回り回って支持率の向上につながる、こういうようなことがまかり通ってしまっていると思っています。

 そうではなくて、よくあるように、ライオンが子供を力強く育てるためには谷に突き落とす、地方を谷に突き落とす、地方の人を谷に突き落とせとは言わないんですけれども、その意味は、言うまでもなくでありますけれども、とにかく自立する。そして、日本の国を、今言いました国に依存する、また東京に依存する、今現在は東京が機関車であって、そして残念ながら地方は自力走行できない客車というような走り方をしている、これを日本全体で、地方も自力走行していく新幹線型そして電車型、このような国にしなければ国全体の活力もあり得ない、こういう問題意識で提言をしてまいりました。

 大変申し訳ないんですけれども、これまでの地方創生政策というものは、地域がどうやったら自立して活力を取り戻すことができるのかという幹の政策というよりも、枝葉と言うと失礼なんだけれども、お金を渡す、制度的に、ある意味では規制緩和的なものをすることによって、部分的に元気は出るけれども、さっき言った依存体質を改革するまでには至っていないという問題意識であります。

 前回、外形的に生活圏、経済圏が一緒の地域、文化圏が一緒の地域、その中に必ず中核都市があること、そしてこういう条件を満たす大きな基礎自治体というのは、前も言いましたが、奈良時代の律令制を見たときに、古い、豊後だとか遠江だとか駿河だとか、そういうところがちょうど大きな基礎自治体に当てはまるということを申し上げました。外形的な在り方について私は申し上げたんです。

 私は、地方が自立していくためには、地方政府にならなければ駄目だというふうに思っているんです。そういう意味で、では、地方政府になるにはどうしなければいけないのかというと、ある意味では権限そして財源も地方に渡し切る。特に、生活に密着したテーマ、課題については法律制定権まで与える。そういう地方政府にしなければならないというふうに思っています。

 そして、あともう一点。これもさっきの谷に落とすということにつながってくるんですけれども、私は、今、国から地方に渡されている地方交付税、そしてひもつきではありますけれども補助金、これらの和を、プラスを例えば百とすると、最初の初期段階ではその百を渡し切る。けれども、五十年なのか六十年なのかその辺は議論すればいいんですけれども、例えば五十年先には、百だったものが将来的には三十しかいかない、七十については地域、地域で稼ぎ出せ、こういうふうにまでちょっと厳しい言い方をすると追い込んで、一方では、今言ったそれをやるだけの権限、財源、法律制定権までも渡すということですから、ある意味では本当に地域を自立させるための、地方政府にするための具体的な施策になるだろうと思っています。

 いま一度、こういう国と地方の二層制について、大きな基礎自治体が事実上地方政府になる、地方政府にしていくということについての大臣の見解をお聞きしたいと思います。

 もちろん、このような話というのは、憲法の第八章の地方自治のところを大改正しなきゃいけない。場合によっては、参議院と衆議院のそれこそ役割の在り方を見直さなければいけないかもしれない。そういうある意味では壮大な話になりますので、大臣が今、私はこうしますとまで言えないことは十分分かっています。ただ、地方創生担当大臣として、そこまでして地方を自立させていくんだ、達成感のエネルギーを与えていくんだ、こういうことをやる。地方創生大臣はその旗振り役なので、そういう大きな議論をある意味では提起する、そうしていただきたいと思っています。

 そういう意味で、私の過去二回、そして今申し上げた見解に対する伊東大臣の見解を求めたいと思います。

伊東国務大臣 吉良議員の御質問にお答えしてまいります。

 今お話ありましたように、前二回、御意見はしっかり拝聴させていただきました。私も、過去、地方議員を含めて経験があるものでありますから、おっしゃられていることがよく分かる点もたくさんありました。

 ただ、総体的に大きな問題でありますし、必ずしも全てが一つで割り切れるような話になかなかならないものでありますから、今、地方創生の担当大臣といたしましては、先生今お話しの中で、それぞれ、日本全国小さな自治体がたくさんありますけれども、その中で地域のリーダーあるいは市町村長のリーダーシップ含めて相当頑張っておられる、そしてまた成果を上げておられる地方、地域、自治体を含めてあるわけでございまして、それらを見ているときに、地域の民間人リーダー、また若者含めて相当頑張っておられるところには国としてあと一つ後押しをしてあげたい、大きくなるきっかけをつくってあげたいというような思いがあるものでありますから、地方創生という形の中でできるだけ国の支援をそういった頑張っているところに応援したいという思いでございます。

 それこそ、金太郎あめに例えられますけれども、隣近所全部同じだなんというのは本来の姿ではないだろう、こう思うところでもございまして、これから先生のおっしゃられたことをしっかり我々も心に秘めて、地域の、小さいですけれども地方創生につなげていければ、こう思っているところであります。

吉良委員 この点については最後にしますけれども、アイスランドは三十万ちょっとの国ですよね。それから、デンマークとかノルウェーとか五百万から六、七百万、スウェーデンとか北欧諸国は一千万以下の人口の国ですよね。それでも、そうやって国として自立すると世界にも発信できる影響力がある、そうなりますので、私は、日本自体も、先ほど言いました自力走行できる地方の集まり、ユナイテッド・地方ズ・オブ・ジャパンというようにしていかなければいけないということを申し上げまして、次の人材育成ということについてお話をしたいと思います。

 日本維新の皆さんには申し訳ないんですけれども、私は、私立まで含めて高校の無償化を進めていくということには反対の立場です。公立高校が事実上無償化されるということについては大いに賛成をします。それ以上のものについては、私は、ある意味では、それぞれの家庭の判断、それぞれの家庭の負担でいい、特に地方あたりは、地方は公立高校そして私立高校、いいバランスでそれなりの存在感を示していますので、ここのバランスを壊してはいけないというふうに思っています。そして、私立も含めた無償化をしていくのであれば、私は地方の国立大学の入学金、授業料を無償化すべきだというふうに思っているんです。

 ちなみに、五、六年前の数字にはなりますけれども、全国立大学の入学金、授業料を無償化した場合に必要な予算金額は二千六百四十六億円。今日は細かに入りませんけれども、三大都市圏と旧帝国大学を除く国立大学の入学金、授業料を無償化した場合は千七百二億円でやれるわけなんです。

 今言ったこういう議論がなされるときというのは、必ず親の経済力の差によって子供の学習する権利、それから高等教育を受ける権利が妨げられてはならないと。私も全くそう思っているんです。その最後のラストリゾートをきちっと設けないといけない。そしてそれは、一定の学力を持てば今言った授業料も入学金も無料で行けるという高等教育機関を持つべきだ、それが地方の国立大学だと思っています。

 そして、その地方の国立大学は、地域の担い手として、地域経済、地域社会の担い手として、ある意味では職業訓練校にしてもいいぐらい即戦力を養成していく、そういう大学にすべきだというふうに思っていますけれども、文部科学副大臣の見解をお伺いします。

武部副大臣 吉良先生のおっしゃるとおり、大学が地方経済を始めとした地方の社会の担い手を人材育成していくということは大変重要であるというふうに認識しております。

 私も、国立だけじゃなくて、地方の公立や私立の大学の学長さんともいろいろな意見交換をさせていただいておりまして、彼らも大変強い意欲を持っているということも改めて認識しています。

 文部科学省としましては、先般の中教審の答申も踏まえまして、地域の高等教育機関や地方公共団体それから産業界など、関係者が必要な人材育成等について議論する地域構想推進プラットフォームの構築を推進しております。地方に所在する国立大学がこのプラットフォームに積極的に参画することなど、地域の人材育成への貢献を促していきたいと考えております。

 また、委員の御提案の入学料、授業料の無償化については、大学教育を受ける者、受けない者との公平性の観点や、今一千七百二億円必要だというお話がありましたけれども、必要な財源の確保など大きな課題があると認識しておりますが、経済的な理由で学生が学びを諦めることがないよう、低所得者世帯等の入学料、授業料の無償化など、引き続き高等教育費の負担軽減に取り組んでまいります。

吉良委員 時間が来ましたので短くまとめますけれども、私なんか三人男兄弟の真ん中で、兄が東京の私立大学に行ったので、弟を考えると自分は絶対国立しかない、そういう思いでいました。

 とにかく、裕福でない家庭の子供たちも、これだけ勉強すれば今言った高等教育を無償で受けられるという場は絶対必要だと思っていますし、今、東京の大学は魅力的ですよね。だから、地方から東京に集まってくる、そして戻ることなく東京で就職してしまう。でも、地方部がそうやって無償化されれば、大都市圏というか都市部の今言った経済的に豊かでない子供たちが地方を目指していく、そして今度は地方で根づいていく。これも地域の人材を獲得し、そして育てていく私は絶好の手段ではないかと思っていますので、引き続いて検討をお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

谷委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。平デジタル大臣。

    ―――――――――――――

 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

平国務大臣 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律及び住民基本台帳法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この法律案は、マイナンバー利用可能事務等を拡大することで、マイナンバーの利用や情報連携等を推進し、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化を図ることを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 デジタル社会の実現に向けた重点計画に基づき各制度所管省庁に対して行った、マイナンバー制度の利用可能性に係る悉皆的な調査の結果等を踏まえ、司法書士、公認会計士、獣医師、電気工事士及び宅地建物取引士等の国家資格に関する事務並びに酒類等の製造免許に関する事務等におけるマイナンバーの利用を可能とすること等の措置を講ずることとしております。

 なお、この法律は、一部を除き、公布の日から起算して一年三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。

谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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