第8号 令和7年3月17日(月曜日)
令和七年三月十七日(月曜日)午後二時開議
出席委員
委員長 渡辺 周君
理事 小泉進次郎君 理事 齋藤 健君
理事 長谷川淳二君 理事 落合 貴之君
理事 後藤 祐一君 理事 櫻井 周君
理事 池下 卓君 理事 長友 慎治君
石田 真敏君 井出 庸生君
上田 英俊君 大空 幸星君
大西 洋平君 国光あやの君
小林 茂樹君 坂本竜太郎君
塩崎 彰久君 島田 智明君
中曽根康隆君 根本 拓君
平口 洋君 広瀬 建君
福田かおる君 向山 淳君
森下 千里君 山本 大地君
江田 憲司君 鎌田さゆり君
黒岩 宇洋君 源馬謙太郎君
篠原 孝君 手塚 仁雄君
眞野 哲君 馬淵 澄夫君
矢崎堅太郎君 青柳 仁士君
金村 龍那君 斎藤アレックス君
福田 玄君 森ようすけ君
中川 康洋君 山口 良治君
高井 崇志君 塩川 鉄也君
福島 伸享君
…………………………………
参考人
(中央大学法学部教授) 中北 浩爾君
参考人
(駿河台大学名誉教授) 成田 憲彦君
参考人
(慶應義塾大学名誉教授)
(弁護士) 小林 節君
参考人
(東京大学教授) 谷口 将紀君
衆議院調査局第二特別調査室長 森 源二君
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委員の異動
三月十七日
辞任 補欠選任
石田 真敏君 大空 幸星君
中曽根康隆君 上田 英俊君
広瀬 建君 森下 千里君
今井 雅人君 眞野 哲君
斎藤アレックス君 金村 龍那君
同日
辞任 補欠選任
上田 英俊君 中曽根康隆君
大空 幸星君 石田 真敏君
森下 千里君 根本 拓君
眞野 哲君 今井 雅人君
金村 龍那君 斎藤アレックス君
同日
辞任 補欠選任
根本 拓君 大西 洋平君
同日
辞任 補欠選任
大西 洋平君 広瀬 建君
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本日の会議に付した案件
政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案(大串博志君外九名提出、第二百十六回国会衆法第一〇号)
政治資金規正法の一部を改正する法律案(小泉進次郎君外五名提出、衆法第四号)
政治資金規正法の一部を改正する法律案(小泉進次郎君外五名提出、衆法第五号)
政治資金規正法の一部を改正する法律案(青柳仁士君外一名提出、衆法第一四号)
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○渡辺委員長 これより会議を開きます。
第二百十六回国会、大串博志君外九名提出、政治資金規正法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案、小泉進次郎君外五名提出、衆法第四号、政治資金規正法の一部を改正する法律案、小泉進次郎君外五名提出、衆法第五号、政治資金規正法の一部を改正する法律案及び青柳仁士君外一名提出、衆法第一四号、政治資金規正法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。
本日は、各案審査のため、参考人として中央大学法学部教授中北浩爾君、駿河台大学名誉教授成田憲彦君、慶應義塾大学名誉教授、弁護士小林節君及び東京大学教授谷口将紀君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、参考人各位からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
念のため申し上げますが、発言する際には委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。
それでは、まず中北参考人にお願いいたします。
○中北参考人 中央大学法学部の中北と申します。
委員長、理事、委員の皆様におかれましては、発言する機会を賜りまして、心よりお礼申し上げます。
日本政治の歴史と現状を研究してきた立場から、意見を述べさせていただきます。
私が本日、最も強調させていただきたいのは、企業・団体献金について、拙速に決めるべきではないということでございます。確かに、昨年末の臨時国会で、企業・団体献金禁止法案については令和六年度末までに結論を得るという申合せが行われました。しかし、残り二週間で、禁止か存続か、これを決めるのは適切ではないと考えます。今後、第三者的な機関で議論を深める、こういう結論を得ていただきたいと存じます。
一つ目の理由は、企業・団体献金を切り出して個別的に論じるのではなく、個人献金や政党交付金などを含めてトータルに検討すべきだということです。
二つ目の理由は、国政の議論ばかりが行われ、地方議員、政党の地方組織などについての議論が不十分ということです。一部の野党は、政党交付金を導入した見合いで企業・団体献金を禁止すべきであったと主張しています。しかし、政党交付金は国政選挙の結果を基準に政党本部に支給されますが、それとの見合いで企業・団体献金を禁止すれば、国政以外にも影響が及びます。都議会自民党の不記載問題を見ても、地方議員などを視野に入れた議論が必要であると考えます。
三つ目の理由は、誤った過去の理解に基づいて禁止が主張されていることです。一九九四年の細川護熙首相と河野洋平自民党総裁のトップ会談で企業・団体献金の全面禁止が決まったという主張が野党からなされていますが、お配りした衆議院事務局作成の表を見ても、正しい理解とは言えません。百歩譲っても、基本的な事実について与野党間に共通認識がない以上、企業・団体献金の存廃を拙速に決めるべきではありません。
以上、三つの理由から、企業・団体献金については、第三者的な機関で徹底的な議論を行うことが適切だと考えます。具体的に述べると、国民民主党と公明党の提案に基づいて、さきの臨時国会で決まった政治資金監視委員会を早期に設置し、そこに議論、提言を委ねてはいかがでしょうか。もちろん、合意できる事柄については是非早急に決めていただきたいと思います。
さて、現在の政治資金制度の最大の問題はどこにあるのかというと、税金丸抱えの国営政党化です。政治学では、本来、市民社会の中から生まれてきた政党が国家からの資金援助などに依存するようになってきたことを指して、カルテル政党化という言葉が使われます。そして、既存政党が党員を減らすなど、市民社会との結びつきを希薄化させていることなどを背景に、世界各国でポピュリズムが台頭しています。なお、ポピュリズムは、政治学では、大衆迎合主義ではなく、反エリート主義プラス反多元主義と理解されています。
お配りした図を見ていただきたいのですが、企業・団体献金の総額は、平成の政治改革で制限が強化されたことを受けて、一九九四年の五百七十七億円から二〇二三年には八十五億円と、大幅に減少しています。その分、パーティー収入は増えていますが、百四十一億円から百八十七億円へと増加するにとどまっています。個人献金が増えているのかというと、そうではなく、四百四億円から二百八十四億円に落ち込んでいます。
結局、一九九四年の政治改革で導入された年間三百十五億円の政党交付金が、受取を拒否している共産党を除いて、各政党の財政を支えています。自民党本部の例を取ると、国民政治協会を経由する企業・団体献金は、同じ時期、七十二億円から二十三億円に減少する一方、政党交付金が百五十九億円と、収入の七割を占めています。立憲民主党は八五%、日本維新の会は七八%と、更に依存度が高くなっています。
企業・団体献金を禁止すれば、国営政党化ないしカルテル政党化がますます進み、政党の有権者からの遊離、ポピュリズムの台頭に拍車をかけてしまうでしょう。なお、スウェーデンの研究所によると、百八十一か国のうち、政党向けの企業献金を禁止しているのは二七%、候補者向けを禁止しているのは二三%にとどまります。
これ以外にも、企業・団体献金を禁止せよという野党の主張については、何点か違和感を禁じ得ません。
第一に、昨年大きな問題になった事案は、あくまでも自民党の派閥による収支報告書への不記載です。この事案を捉えて、企業・団体献金の禁止や、企業、団体によるパーティー券の購入の禁止に踏み込むのは、根拠が乏しい。法改正のための立法事実が十分にあるとは言えないと考えます。国民の疑念を招くから禁止するのではなく、実際に起きた問題に対して一つずつ具体的に取り組んでいくべきです。
第二に、しばしば企業・団体献金によって政治がねじ曲げられているという批判が行われますが、独裁ではないリベラルデモクラシーでは、多様な個人、団体が政治に参加して競争し、政策決定に影響を及ぼそうとします。政治学では多元主義と呼びます。その下でも、団体間のチェック・アンド・バランスなどが働けば、公共の利益が実現されると考えます。問題は、企業、団体が献金などを通じて影響力を行使し、政策をねじ曲げることではなく、相互にねじ曲げ合った結果、著しく公益が損なわれているか否かなんです。
もちろん、過去に著しくそうした例が発生し、その結果、企業・団体献金には総枠制限や個別制限が加えられております。それでも足りないというならば、こうした量的制限を強化することに加え、イギリスのように、企業に対して事前の株主総会の承認決議を義務づけるといった方法もあります。より有効な別の方法は、企業、団体に対するカウンターパワーを強化することです。具体的には、個人献金の促進です。いずれにせよ、一足飛びに企業・団体献金を禁止するのが適切なのか、慎重に判断すべきであります。
第三に、しばしば抜け穴が生じるという批判がなされます。これについても違和感があります。政治資金制度改革は、抜け穴を塞ごうとして新たな抜け穴を見つけるイタチごっこの歴史です。企業・団体献金を禁止しても、個人献金や政治団体の献金が抜け穴になる可能性は否定できませんし、政党の機関紙などへの企業広告の形を取るかもしれません。かえって見えにくくなるおそれがございます。したがって、抜け穴を塞ごうとするよりも、可能な限り公開性を高め、有権者が選挙で適切に判断できるようにするのがよいと考えます。
第四に、企業・団体献金だけを切り出して禁止することが、政党間の競争の公平上、適切なのか疑問です。実際、労働組合や宗教団体のボランティアに依存して選挙活動を行っている政党も存在します。旧統一教会はボランティアを通じて政治家に影響を及ぼそうとしましたが、だからといってボランティアを禁止すべきということになるのでしょうか。そうではないでしょう。同様に、企業・団体献金に問題があるとしても、だからといって全面禁止すべきということにはならない、こういうふうに考えます。
私がその上で実現をしていただきたいと考えることは、以下の三つです。
第一に、公開の徹底です。
自民党は、禁止よりも公開をと主張している以上、公開強化法案の対象をもっと広げた方がいいと考えます。ただし、この点に関しては、さきの臨時国会で、与野党合意の下、オンライン提出の義務づけも、データベースの公表対象も、政党本部、政治資金団体、国会議員関係政治団体に限ったことが原因ですので、与野党間で協議をして合意形成していただきたい、このように考えます。もちろん、対象数が多く、実態もまちまちなので、どのように実現していくかは慎重に考えなければなりません。また、データベースの検索可能な範囲を極力広げるとともに、可能であれば、研究上も有益ですので、公開期間を三年ではなく無期限にしていただくことをお願いいたします。
第二に、個人献金の促進です。
近年の投票率の低下、政治不信の広がりなどに対処するためには、政治参加を促進し、有権者が民主主義の観客ではなく主権者になるようにしなければなりません。個人献金は、そのためのきっかけになります。個人献金すれば、献金先について関心を持つでしょうし、定期的に国政報告などが送られてくることになるでしょう。立憲民主党が、小口の個人献金を中心に税額控除を拡充する案を出しています。ただ、NPOの寄附税制との均衡であるとか、税額控除の拡充による減収分だけ政党交付金の総額を減額するとか、考えるべき論点が残されているように考えます。
第三に、政党助成制度の見直しです。
その一つは、制定時の政党助成法に盛り込まれていた三分の二条項の復活です。この条項は、各政党に対する政党交付金の上限を前年度収入実績、すなわち、政党交付金を除く自主財源の三分の二以下に限定するものです。そこには、つまり、当初の政党助成法には、政党が国家財政に過度に依存すること、つまり、国営政党化を避けるべきという明確な理念があり、それが三分の二条項として存在していました。ところが、翌年、一九九五年に廃止されてしまいました。
もう一つ、政党交付金について言うと、女性議員を増やすために、政党交付金の議員数割の半分を女性議員数割で配分することであります。女性議員の割合は、現在、衆議院で一五・七%、参議院では二五・四%です。私は、法律によって候補者の三割を女性にするよう政党に義務づけるクオータ制の導入が適切であると考えますけれども、それが難しいのであれば、まずは女性議員を増やすインセンティブとして政党交付金を活用すべきだ、このように考えます。
最後になりますが、石破総理の商品券問題で、有権者の政治不信が一層高まっております。自民党におかれましては、相次ぐ政治と金の不祥事について大いに反省していただきたいと思います。ただし、この商品券問題は、企業・団体献金の在り方とは直接的には関係いたしません。委員の皆様におかれましては冷静な議論を行っていただきたい、このように考えます。
以上でございます。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、成田参考人にお願いいたします。
○成田参考人 駿河台大学名誉教授の成田でございます。
令和の政治改革も、開始以来、一年以上が経過いたしました。是非、今国会におきまして実り多い改革が実現いたしますよう祈念いたしております。
冒頭では、平成の政治改革につきまして、特に、石破総理が昨年十二月五日の衆議院予算委員会で、「一九九四年の政党助成法成立時に、政党助成金を導入する代わりに企業・団体献金は廃止の方向となったというようなことは、そういう事実は実際にございません。」と発言された点に関わる事実関係を中心にお話しさせていただきます。
私は、政治改革の当初は国会図書館調査局の政治議会課長として、与野党の先生方に政治改革の課題や諸外国の実例などの調査サービスを御提供しつつ、与党、野党を問わず各党の政治改革案の取りまとめに関わらせていただきました。また、平成五年八月発足の細川内閣においては、細川総理の政務秘書官として、総理の手足となって政治改革に取り組ませていただきました。
本日は、これらの体験を基にお話しさせていただきます。
政党助成法案が初めて国会に提出されたのは、海部内閣の政治改革三法案の一つとしてです。この法案は廃案となり、その後、平成五年の通常国会では、社会党と公明党も政党交付金交付法案を含む政治改革法案を共同で提出しました。
四月十六日の衆議院の特別委員会の審議で、公明党の一年生議員の山口那津男議員が質疑に立ち、社会・公明党案で企業・団体献金を全面的に禁止していることと政党交付金導入との関係について尋ね、社会党の提出者が、政党が税金から公的助成をもらうためには、国民が批判している企業献金は廃止しないと納得を得られないと答弁されました。
山口議員は、一方の自民党案が、政党助成を導入しながら、逆に企業、団体の政党への寄附の限度枠を従来の二倍に拡大しているのは果たして納税者の理解を得られるかを尋ね、自民党の額賀福志郎議員が、我々の政治活動が透明性を持ってきちんと信頼される形をつくり上げていきたいということを考えて、政党助成ということを皆さん方にお願いいたしたということでございますと答弁されました。
このほか、民社党は独自の法案要綱を発表し、やはり政党への公費助成を前提に、企業・団体献金は廃止するという立場を取りました。
以上から、平成の政治改革では二つの考え方があったことが分かります。一つは、政党助成を導入し、代わりに企業・団体献金は禁止するという考え方、もう一つは、政党助成を導入するとともに、企業・団体献金の政党への限度額も増額し、政党中心の選挙制度の導入と併せて政党の財政基盤の強化を図ろうとする考え方です。石破総理の御発言は、当時、石破総理が自民党にいらしたかどうかは別としまして、この自民党の考え方によるものと言えるでしょう。
事実の経過を申し上げますと、この自民党の考え方の案は衆議院で廃案又は否決となり、その後、成立したのは、政党助成を導入する代わりに企業・団体献金は抑制するという当時の野党の考え方の案でした。
次に、細川内閣での経緯について申し上げます。
細川政権誕生の出発点となった平成五年七月二十三日の日本新党とさきがけによる政治改革政権の提唱、及び、それに賛同した八党派による七月二十九日の連立政権樹立に関する合意事項では、共に、政党助成の導入による企業・団体献金の廃止がうたわれていました。
また、八月二十三日の所信表明演説で、細川総理は、「企業・団体献金については、腐敗のおそれのない中立的な公費による助成を導入することなどにより廃止の方向に踏み切ることといたします。」と述べられました。
その後取りまとめられました細川内閣の政治改革法案では、政党助成を導入するとともに、本則では、企業・団体献金は政治家の政治団体に対しては禁止し、政党と政党の政治資金団体に対してのみ可能とし、附則第九条で、政党と政治資金団体に対する企業・団体献金も五年後に見直すとされました。
即時全面禁止とならなかったのは、新生党やさきがけなど自民党離党組が激変緩和の必要性を主張し、企業・団体献金禁止を強く主張していた社会党も、比例議席二百五十議席と比例の全国名簿を取ることを優先して、企業・団体献金禁止で譲歩したためです。
ただし、社会党内では、附則の五年後見直しは五年後廃止の意味だと説明されました。このことは、本日臨むに当たって、当時の社会党執行部関係者にも確認してまいりました。また、細川氏も、先週お会いして話を伺いましたが、五年後に即時廃止かはともかく廃止に踏み出すものと受け取っていたということでした。
細川内閣の政治改革法案が参議院で否決となり、平成六年一月二十八日の細川総理と河野総裁のトップ会談となったことは御承知のとおりです。このときの合意書を配付させていただいておりますが、この「記」以下の合意内容は、総理と総裁の御意向を確認しつつ、その場で私が文章化したものです。前書きとワープロは自民党本部の職員が作業してくれました。このトップ会談で総理と総裁が協議したのは、第二項の、政治家個人の政治団体に対する企業・団体献金の禁止を五年間猶予するということでした。附則第九条の五年後見直し規定は、トップ会談の対象とならず、自民党も賛成して成立しました。
この規定はその後の法改正で附則第十条となりましたが、五年後の一九九九年十二月に、この見直し規定を受けて、衆議院で、自民、自由、公明は企業・団体献金を存続させて附則第十条を削除する案を、民主党は個人献金中心に移行する過程として企業・団体献金の規制を強化して附則第十条は残す案を、共産党は企業・団体献金を全廃して附則第十条を削除する案を提出し、自自公案だけが委員会を通過しましたが、本会議にかけられず成立しませんでした。見直しがあったと言えるためには立法措置が講じられることが必要で、現在までそれがないのですから、見直しは行われていないことになります。
見直しが行われなかったときに見直し規定の効力はどうなるかについては、効力は失われないと考えるのが一般的のようです。ただし、見直し前の状態が長期間継続すれば、現状が肯定され、見直し規定の意義は失われるという考え方もあるようです。しかし、その後、国会で繰り返し企業・団体献金の廃止が議論され、野党の見直し法案も何度も提出されていますから、現状が肯定されていることはなく、見直し規定は現在も有効と考えられます。
そもそも、見直しの意味ですが、法令用語としては、単にもう一度考えるではなく、特に近年はサンセット条項の考え方の影響などもあり、より積極的に改めるとか、やめることを含意して用いられることが多くなっているようです。また、一九九九年の見直し論議の際、自民党は、この規定に「政治資金の個人による拠出の状況を踏まえ、」とあるが、個人の拠出が伸びていないのだから企業・団体献金を廃止しなくても問題はないと述べましたが、この規定では個人の拠出が伸びていることを見直しの前提としているわけではありません。例えば、個人による拠出を促進する税額控除制度とセットにすれば、「踏まえ、」に該当するでしょう。
以上、見直し規定が入った経緯も踏まえて考えるなら、結局のところ、細川氏と河野氏が口をそろえて企業・団体献金の全面禁止は三十年越しの宿題とおっしゃっておられるのは、極めて適切な発言ではないかと考えております。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、小林参考人にお願いいたします。
○小林参考人 私は憲法学者ですから、原理主義的なお話をさせていただきます。
まず、政治の定義から入らせていただきます。
政治というのは、目標は国民全体の利益の向上、最大多数の最大幸福でありますが、ただ、世の中が与えられる利益には限りがありまして、奪い合いの側面があります。と同時に、主権者たる国民全て、個性的で、自己中心的で、無限の欲望を持っております。ですから、この争いをうまく調整するのが権力を使った政治の業で、今ではそれが更に外国との調整まで加わる大変な仕事であります。
その中で、我々は歴史の結果として民主主義政治を採用して、それが正しい、代わるものをいまだ見つけていないわけでありますけれども、分析的に言えば、一つは平等な参政権、法の下の平等と参政権、もう一つは情報流通の自由、表現の自由、この二つを駆使して我々は調整をし、先へ進んでいるわけであります。
そのような政治の場において、企業、団体、まあ、労働組合に代表されますが、献金の性質はどういうことかというと、企業というのはそもそも営利法人であります。つまり、私の会社の利益さえあればいいという目的性を持っています。誤解しておられる方がおられると思いますけれども、労働組合も、我が労働組合の、我が労働者たちの待遇改善という、実はこれは部分利益を求めております。それに対して、政治というのは全体利益を求めるべきものであります。
だから、そういう関係の中で企業・団体献金を考えますと、企業において、企業の利益につながらない金を出したら、役員は背任になるんですよね、企業に損をさせたことになる。企業の利益に返ってくる献金をしたら、これは権力との取引で贈収賄になってしまうんですね。これははっきりしていますよね。だから、これは方向性としてはやはり禁止すべきとしか言いようがないと私は思います。
それに対して、団体といっても、政治結社、政党などはまた全く違いまして、分かりやすいのが、共産党と自民党というのは全く真逆の政党に見えますよね。だけれども、実は、真逆であって真逆じゃないんですね。つまり、どちらも目的はある、全体の利益の向上なんです。ただ、どこが違うかというと、自民党は自民党的やり方でいくことが全体の利益の向上につながると信じている人の集団であって、共産党は共産党的なやり方でやることが全体利益の向上につながる。
だけれども、いずれにしても、政治結社というのは全体利益の向上を目指す存在でありますから、これはさっきの民主主義の論理からいったら、規制する理由がないんですね。
そこに個人献金で集まってくるものはどういうことかというと、憲法二十九条で保障された財産権、自分が努力や運で手に入れた財産をどう使おうが、犯罪手段にならない限りは勝手でしょうというのが財産権の本質でありますから、そういう意味で、その集まった金を政治結社がどこへどう使おうが、これ自体は民主主義と反するものではないということであります。
この分野で昭和四十五年の最高裁判例が時々引用されるんですけれども、私は憲法学者としてそれを正直言って笑わせていただくんですけれども、我が国は、御存じの話だと思いますけれども、判例法国じゃありませんよね。イギリス、アメリカという歴史的背景のある国じゃなくて、あくまでも立法府は国会だけなんですね。
判例法国というのは、法廷で法律が作られるんです。国会でも法律が作られるんです。そして、新しい方が有効というシーソーゲームをやっているわけです。ですから、判例というのは、厳格に言えばその事実関係にしか適用されないし、時代背景がとても問題になる。だって、判例が生まれたとかということは、なかったことが生まれたわけでしょう。判例が変更されたということは、変更されるわけでしょう、夫婦別姓の問題なんかと同じで。
ですから、それほど拘束力のあるものではないけれども、ただ、度々引用されますのでちょっと言わせていただきますけれども、会社の社会的役割を果たす、社会的役割というのは、会社は、ちゃんと働いて商品やサービスを世の中へ出して、それで社会に貢献しているじゃないですか。得た対価で社員を養って税金を納めている。終わっているじゃないですか。それ以外何をするんですか。買収をするんですかという話ですよね。
それからもう一つ、公共の福祉に反しない限り認めると最高裁は当時言ったらしいですけれども、公共の福祉というのは、社会全体の共存共栄の利益の土台を壊しちゃいけませんよという意味ですよね。そういう意味では、まさに企業献金というのは本質において買収であるから、もろ、露骨に公共の福祉に反することで、これは禁止されるべきである。
以上でございます。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
次に、谷口参考人にお願いいたします。
○谷口参考人 本日は、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
企業・団体献金の在り方について、所見を申し述べます。
結論から申し上げますと、企業・団体献金の禁止について、この度、与野党間に幅広い合意が成立するのであれば、私も反対するものではございません。ただ、ここまでの国会審議の状況を拝見する限り、そのようなコンセンサスが形成される見込みは必ずしも高くはないように思われます。与野党それぞれの法案が相打ちになり、何も変わらずに国民の政治不信を深める事態だけは避けていただきたい。そのための与野党の現時点での合意可能領域は、企業・団体献金規制の強化、抑制というふうに考える次第であります。
三十年来、政治改革を研究テーマの一つとしてまいりまして、この度、私も改めて一次史料を確認いたしましたが、平成の政治改革当時に、政党に対する企業・団体献金を全面禁止する合意が与野党間に成立をしていた事実はございません。他方、企業・団体献金の規制を強めるという方向性については、確かにコンセンサスが存在をしておりました。その延長線上に着実にステップを踏むことが、現在求められていることと考えます。
そこを一足飛びに企業・団体献金を全面禁止してしまうと、中選挙区制時代のような金権腐敗政治こそなくなったとはいえ、それでも政治には一定のお金がかかりますから、政治資金パーティー、もしパーティーを禁止したのであれば機関紙誌の発行その他の事業に事実上迂回をしてしまいます。文字どおりの迂回献金をしたり、あっせんをしたりしたら違法になるにしても、あうんの呼吸で企業の幹部や団体のメンバーが特定の政党支部に個人献金を行って、かえって透明性を引き下げてしまうおそれがあります。
御案内のとおり、この週末も、閣僚が受けた個人献金の一部が、政治資金収支報告書の住所欄に寄附者が代表を務める企業や団体の所在地を記載をしていた、あるいは同一の企業グループの幹部たちが同じ日に閣僚に献金をした、かような報道がなされているわけであります。
このように、形だけ企業・団体献金を禁止しても、実質的に企業や団体から政党、政治家に寄附が流れる実態までを変えることができなければ、国民の失望は深まるばかりであります。企業・団体献金への規制を強めつつ、税制優遇による個人献金の促進や、後ほど申し上げる政党交付金基金制度の創設などの策を講じることによって、実質的に企業・団体献金を縮小、フェードアウトさせていく道筋を整えていくことが肝要と思われます。
まず求められる規制強化は、企業・団体献金を受け取ることができる政党支部の限定であります。政治資金規正法第二十一条第四項は、一以上の市町村、選挙区を単位として設けられる政党支部は、党本部や政治資金団体と同様に企業・団体献金を受けられることと定めています。
この点につきまして、一九九三年十月二十日の衆議院政治改革特別委員会において、山花貞夫政治改革担当大臣は、法律上、幾つでも政党支部をつくることは可能であるが、常識的には、当時存在していた支部の数よりは少なくなるだろうと答弁をされておりました。
結果的にこれは見込み違いでございまして、実際には何千もの企業・団体献金を受けられる政党支部が存在をしていることは、今国会における質疑でも話題になったところでございます。
どのような単位に支部を設置するかは各党の自由でありますが、そのうち企業・団体献金の窓口を限定することにより、政治資金の透明性を高めるべきです。特定の政治家に寄附をしたいのであれば、その政治家が所属する党本部に誰々議員の政治活動のためと使途を指定して寄附を行って、党本部がその責任を持って配分をすればいいのであって、十分可能な策と考えます。
次に、現在は資本金の額や組合員数等に応じて年間七百五十万円から一億円とされている企業・団体献金の総枠制限の引下げも考えられます。一昨年、自民党に対する献金の最高額は、一企業で五千万円、業界団体は七千八百万円でありましたから、総枠制限の引下げはそれほど困難なことではないはずです。
企業・団体献金を制限すると同時に、個人献金を促進することも必要です。これにつきましては、税額控除の適用対象となる寄附の範囲を拡大するとともに、その税額控除率を引き上げる提案がなされておりますから、速やかに可決されることを望みます。
現下の政治、経済、財政状況からして、税金を原資とする政党交付金の増額は国民の理解を得にくいと思います。
そこで、例えば、政党交付金基金という制度をつくって、そこに個人そして企業や団体が寄附できるようにして、集まったお金を政党交付金に加算して各党に配分するようにしてはいかがでしょうか。特定の政党や政治家を支持するのではなく、日本の政党政治、日本の議会制民主政治全体を支える仕組みをつくるのであります。御関心がございましたら後ほど御質問いただければと存じますが、この仕組みは、企業献金に関する八幡製鉄事件最高裁判決の欠点を補うものでもあります。
以上、企業・団体献金の廃止、存続をめぐって各党が対立している状況にあって、合意可能領域はどのようなものであるか、あるいはどのようなものであるべきかを述べさせていただきました。よろしく御検討賜りますようお願い申し上げまして、私の発言とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○渡辺委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○渡辺委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。長谷川淳二君。
○長谷川(淳)委員 自由民主党の長谷川淳二でございます。
四名の参考人の先生方におかれましては、本当に貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。
私ども自由民主党としましては、政治資金問題に対する真摯な反省の下に、合意を見出すべく、真摯に今審議に臨ませていただいているところでございます。
企業・団体献金につきましては、当委員会理事会の申合せにより、三月末までに結論を得ることが求められています。一方で、今、参考人の先生方からお話がありましたように、政治資金制度は民主主義のいわば土台でございます。極めて重要でございます。冷静な議論の積み重ねが必要でございます。是非とも参考人の先生方には御助言を賜りたいと思います。
それでは早速、初めに、まず、平成の政治改革を研究されておられる中北参考人と谷口参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
政治改革に関する平成六年のいわゆる総総合意の解釈についてでございます。当時の細川護熙総理と河野洋平自民党総裁がトップ会談をして合意をしたものでございます。ここで、企業・団体献金は政党助成金の創設とセットで廃止が約束であったとの主張がなされているところでございます。ただ、当時の実務に携わっておられた伊吹文明元議長は、この認識は正しい認識ではないという御指摘をいただいています。
先ほど来、中北参考人、そして谷口参考人からもこの点を正確に、誤った認識であると御指摘をいただきました。私ども、この総総合意の中には、政治家個人の資金管理団体への企業・団体献金の五年後の廃止が盛り込まれているだけでございます、その後の経過を見ても、企業・団体献金廃止ありきということは誤りであるというふうに思っております。
そこで、まず、細川元総理、河野元総裁の言う、政党助成金とセットで廃止が約束だったという言葉を前提とすることは適切ではない、むしろ誤りだということにつきまして、平成の政治改革を研究されている立場から、中北参考人、谷口参考人の更なる御見解を賜りたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
先ほど成田参考人の方から説明がございましたが、若干私は違った認識を持っております。
当時の資料などを見ますと、まず、連立与党案の段階で見直しという形になっています。なぜか。社会党は廃止論でした。しかし、小沢一郎氏ら新生党などは存続論、その上で公開論でした。それを足して見直しになっている。さらに、自民党は存続論です。その連立与党案の段階で見直しになっているものと、自民党案、これで最終的には自民党に寄ったはずで、そこで廃止が決まるはずがございません。廃止が前提にあったという理解になるはずがありません。ですから、この間の経緯を見ても、廃止することが当然だろうという流れには決してなっていない。是非、この点も検証をちゃんとしてコンセンサスをつくってから議論を進めていただきたいと思います。
また、附則の十条、この法律の施行後五年を経過した場合においては、政治資金の個人による拠出の状況を踏まえ、政党財政の状況等を勘案し、見直すと。残念ながら、個人献金はこの間減少しております。政党の財政も潤沢とは言えない状況が続いています。ですから、一九九九年の段階でもこの状況は見えていたわけなので、この段階で、もちろん政治家の資金管理団体については廃止になったわけですけれども、政党あるいは政治資金団体についての献金については存続という形で一応決まったと理解するのが正しいのではないか、このように考えます。
以上でございます。
○谷口参考人 お答え申し上げます。
先ほど来話題になっております一九九四年政治資金規正法の附則第十条は、これは、前年の細川連立内閣の提出法案からきております。これに関して、当時の細川総理は、一九九三年九月二十二日の衆議院本会議におきまして、「連立与党間における、企業献金の廃止の意見に考慮し、その見直しを行う旨の合意を踏まえまして、」中略、「五年後の見直しにおきましては、連立与党間の合意の趣旨を踏まえまして、公的助成の効果や個人献金の拡充の程度なども考慮して、企業・団体献金の廃止についても当然検討がなされるものと考えております。」このように答弁をしておられます。
先ほど参考人からの陳述がございましたとおり、当時、社会党は政党に対する企業・団体献金廃止を主張しておりましたから、後に土井たか子衆議院議長が橋本総理に詰め寄ったり、あるいは現在も細川元総理がそうした解釈に理解を示したりすることは分かるわけでございますけれども、平成の政治改革においては、企業・団体献金に対する規制を強化するという点に関しては幅広いコンセンサスが成立していたものの、政党に対するものまで禁止をするという認識は細川連立与党の間ですら共有をされてはいなかった、まして自民党の入れるところではなかったというのが客観的な事実でございます。
ちなみに、この附則による、「この法律の施行後五年を経過した場合においては、」云々かんぬん、「会社、労働組合その他の団体が拠出する政治資金のあり方について、更に検討を加えるものとする。」という附則は、実は、一九七五年の改正からずっと定められているということでございまして、このとき何かが大きく変わったということではございません。
○長谷川(淳)委員 ありがとうございます。明確に、政党助成金とセットで廃止ではなかったということがここで改めて正しく確認できたと思います。
分かりやすく言いますと、当時の細川連立与党はいろいろな議論があった、いわば三角でございます。自民党は企業・団体献金は存続、丸でございます。三角と丸がバツになるはずがないというふうに私は認識しております。
次に、政治資金の在り方について、中北参考人にお伺いをさせていただきます。
先ほど来、個人献金、企業・団体献金、政党助成金、トータルでの検討が不可欠であるという、私は極めて正しい御指摘をいただいたと思います。政党が公的助成に頼ることの問題点。先ほど、政党のカルテル政党化、ポピュリズムに陥る危険性もある、あるいは国家権力の介入の危険性もある。
そして、個人献金の問題。今度、企業・団体献金を全廃すれば個人献金に振り替わると。ただ、日本の場合は共同体社会ですから、必ず誰かが何らかの地域や企業や組合に所属している。そうなると、個人献金と言えるかどうかという疑念がどうしても生じます。かえって政治資金の透明性を損なうんじゃないかということもございます。
また、個人献金を促進するために寄附税制の拡充、これは大いに検討すべきと思います。ただ、やはりNPO税制よりも大胆に拡充することはかえって、形を変えた公的助成ではないか。これも、各党各会派だけではなく、広く国民の皆さんの御意見を中立的に聞くことが必要じゃないかと思います。
いずれにしましても、企業、団体が、個人の様々な帰属を得て、社会経済の主体として活動しているわけでございます。やはり、そうした企業、団体が果たしている役割を踏まえて、節度ある形で企業、団体にも支え手として参画していただく、こういったことが重要ではないかというふうに思っています。
したがいまして、この公的助成、政党助成金、個人献金、そして企業・団体献金の在り方について、いま一度、中北参考人の御見解をお伺いしたいと思います。
○中北参考人 御質問にお答えします。
私は、政党政治にとって、政治活動の自由というのは非常に重要なものだ、これを強調させていただきたいと思います。
戦前の日本は、軍部、国家の弾圧によって政党が解散させられ、大政翼賛会、こういう形になりました。こういう歴史を踏まえて日本国憲法が制定されたわけであります。こういった点を十二分に議員の皆様にも、こういった歴史を背負っているということを認識していただきたい。
この自由ということ、政党政治における自由ということ、それは様々、個人の政治参画も含めてということですけれども、この大切さがややもすると損なわれてきているのではないか、国営政党化しているんじゃないか、こういう危機感を述べさせていただいたところであります。
それから、問題になっていることが、個人献金と企業・団体献金、どうなのか。原理的に言えば、今の民主主義は一人一票制によって成り立っております。ですから、個人献金の方が望ましいということは原理的に言えるかもしれません。
ただ、個人献金が善で企業・団体献金が悪かというと、そういうわけではありません。
例えば、アメリカの大富豪が四百億円を使って大統領候補を推した、これが選挙結果に関わったんじゃないかということが流れております。こういったことを踏まえて考えますと、現実には、個人の方がかなり特定の利益を推す可能性がある。企業の方は、例えば国民政治協会という政党に入れれば、幅広い、例えば自由主義社会を守るとかそういった次元で、公益的なところに近いところで要求を期待して献金をする可能性もあるわけなので、すなわち、個人献金が善で企業・団体献金が悪だということを言うことはなかなか難しいのではないか。
また、個人献金と企業・団体献金、なかなかグレーゾーンがございます。本日、昨日報道されている大臣の献金の問題もございますし、あと、この委員会においても大串委員が、グレーゾーンがあるからこそ罰則規定を設けるのはなかなか難しかったという発言もしております。何が自発性なのか、自発的な個人献金なのか、非常に実は難しいです。我々の自発性というのも、周りから、環境から言われて自発的に行っているように考えているところもあるので、きれいに分かれることはなかなか難しいという前提でお考えいただくことが必要ではなかろうか、このように考えます。
以上でございます。
○長谷川(淳)委員 中北参考人、ありがとうございます。
中北参考人がおっしゃるように、おそれがあるだけで禁止、規制をするということではないと思います。おそれがあるからやはり公開を徹底し、最終的には国民、有権者の皆さんの不断の監視と批判の下に置くということがまず第一、一番大事だというふうに思います。
最後に、受け手の問題の指摘もございます。
政党支部について、我が党は、五千人近い議員を擁し、地域、あるいは各選挙区、そして職域に組織をつくっております。これは、我が党が国民政党であるがゆえに、様々な国民の皆さんの声を酌み上げるために組織をしています。
ただ一方で、これは中北参考人がおっしゃるように、例えば、労働組合を母体とする政党さんは、労働組合がいわば選挙の実動部隊でございますので、我が党に対しては、そんなに選挙の政党支部が必要なのかどうか、制限すべき、こういった指摘もあるところでございます。
やはり、政党のよって立つところ、歴史によって様々で、その収支の構造も違います。企業・団体献金あるいは政党機関紙、様々な収支の構造がある中で、やはり、それぞれの政党の成り立ちに由来するそうした違いをお互いに十分尊重した上で、各党各会派間で議論を重ね、合意を得る努力が求められていると思います。一票でも多数であればよいというものではないというふうに思っています。我が党は、圧倒的多数であったときでも、我が党独断で政治資金制度を決めたことは行ってきておりません。
そこで、政治改革のプロセスを研究されてきた中北参考人に、今回の企業・団体献金について、三月末までに結論を得るために、党利党略による数合わせの論理ではなく、第三者機関で徹底的に議論をすべきと御提言いただきましたが、やはり政党のそれぞれの成り立ちを尊重しながら、一致点を見出すためにいかなる方策や知恵が考えられるのか、御助言をいただきたいと思います。
○中北参考人 質問にお答えします。
我が国は、自由主義的民主主義を取っております。その下では多様な主体、多様な政治主体が競争する、これによって活力、あるいは国民の様々な利益を代表していく、こういう社会でございます。ですから、この多様性、そういうものがなくて、一つの正しい方法があれば独裁でいいわけです。そうではない。
ですから、自民党の在り方、あるいは立憲民主党の在り方、共産党の在り方、公明党の在り方、こういったところで甚だしい弊害があるところについては一定の規制はかけていかないといけない、このように考えますけれども、しかし、一つの党だけこの特性を押し込んで抑圧するというふうな形を取ることが適切かというと、疑問を持っております。
こういった中で、やはり幅広い合意を形成、皆様の間でしていただきたいと思いますし、そのためには、第三者的な機関で慎重に検討し、コンセンサスをつくっていただきたい。
そして、現状では、国民民主党と公明党がキャスチングボートを握っております。この両党は中道という立場を採用しているかと思っております。中道というのは、ただ足して二で割ることではございません。幅広い国民的な合意を形成する、こうした役割を担うのが中道政党の役割だ、このように考えております。両党にはしっかりそうした役割を担っていただきたい、こういうふうに期待をいたしておるところでございます。
以上でございます。
○長谷川(淳)委員 ありがとうございます。
我が党も、一致点を見出すべく、真摯に協議をしてまいります。その思いで臨んでまいります。
以上です。ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、江田憲司君。
○江田委員 参考人の皆様、本日は、お忙しい中、本当にありがとうございます。
ただ、委員長、私は昨年十二月の本委員会で、河野洋平元自民党総裁の招致を要請をしたんですが、本日、いかなる理由で出席をされていないんでしょうか。ちょっと御説明いただければ幸いでございます。
○渡辺委員長 その点につきましては、理事会で改めて協議をしたいと存じます。
○江田委員 今日は、細川護熙元総理のある意味で分身というか、一心同体で仕事をされてきた成田参考人も来られておりますので、しかも、河野洋平元総裁はいろいろなところで、五年後見直しを条件に政党への企業・団体献金も廃止が合意できたとおっしゃっているわけですからね。是非歴史の証人としてこの場に出ていただきたいと思いますので、是非お取り計らいをお願いしたいと思います。
さて、昨日、自民党の参議院議員から驚くべき発言が出まして、十万円の商品券交付に対して、歴代総理が慣例として普通にやっていたんだというふうな発言をされているんですけれども、まさに、こういうのを配るとすれば、政務秘書官の役回りなんですね。
成田参考人、当時、細川政権下では慣例として普通に行われていたんでしょうか。端的にお答えください。
○成田参考人 全くございませんでした。細川さんにも確認いたしました。
○江田委員 ありがとうございます。
私は、自民党の総理大臣の橋本龍太郎さんの政務秘書官で、もし十万円の商品券を交付するとすれば私の役回りだったんですが、断固としてこういうことはなかったということは申し上げたいと思います。
こうした認識を持っている議員がいることも情けないですし、ある意味で、これだけ、この委員会でも政治と金の問題が議論をされ、いかにして二度と政治と金の問題を起こさないような方策が検討されている折に、当の総理大臣が十万円もの商品券を交付、これがいかに異常なことかということは、私は申し上げておきたいと思います。
先ほど中北参考人からは言及がございましたので、谷口参考人から、この問題についてどうお考えか、石破総理の責任問題をどうお考えか、ちょっと御答弁いただけませんか。
○谷口参考人 戦前のことでございますが、組閣のときに、首相は官邸に集まった記者団にお酒を差し入れるという慣習がございました。そのところ、岡田啓介総理大臣は、この慣習に反して、お酒を冷やす氷だけを配った、こういう逸話がございます。
岡田総理の場合は単にお酒を買う金がなかったというふうにも言われておりますが、政治と金の問題が起きているさなかに総理大臣に就任されたわけですから、慣習にとらわれず、瓜田李下のお気持ちを持っていただきたかったというふうに存じます。
○江田委員 ありがとうございました。
それから、政治家個人への企業献金、団体献金は禁止されたとはいえ、先ほど谷口参考人からも言及がありましたとおり、政党支部なるものが雨後のタケノコのように出てきまして、九四年にそういう方向性が示されたので、五年間で、九九年当時は五千八百、今現在は七千八百、二千以上増えているんですね。
政党支部というのは、ある意味政治家個人と一心同体ですから、そこに企業・団体献金を受け入れれば、実際上、政治家個人への献金が許されると同じ状況だというふうになっているんですけれども、これに対してちょっと中北参考人の御意見を伺いたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
政党支部については、自民党の政党支部、特に選挙区支部が設けられたのは平成の政治改革以降というふうに私は認識しております。特に選挙区支部の機能としては、特に国会議員の場合は地方議員の総力を結集する、そういう選挙活動の目的と、やはり政治資金の問題、この二つがあると理解しています。
ただ、自民党の場合というのは、自分党と言われるように、政治家が個人で集まってできた政党でございます。そうなると、先ほど長谷川委員からもありましたように、国会議員、地方議員、様々な、多くの地域に根差した政党ですので、その結果として、支部が膨張している。そして、ややもすると、その支部について、例えば都道府県連そして党本部、これが十分にコントロールできているかというと、心もとない状況であることも事実であります。
ただ、先ほど私がお話ししたように、例えば、地方議員であるとか地方政党組織について十分な考慮を入れて、考慮して政治資金の扱いについて決めてきたかというと、そうではないということでございますので、こういった点も含めて慎重な審議をしていただきたい、このように考えております。
以上です。
○江田委員 ということは、特に問題視していないということですね。
○中北参考人 問題があるかどうか慎重に検討すべきだということでございます。
○江田委員 はい、分かりました。
私は大問題だと思っております。尻抜け、抜け穴、抜け道見つけの大天才だと思っていますから、こういう体質を是正するのが政治改革の役目だと思っております。
さて、成田参考人、政務秘書官というのはなかなか国民の皆さんにはなじみがないんですけれども、先ほど申し上げましたように、ある意味、総理の分身であり、一心同体であり、総理と共有する情報のレベルも総理レベルにないと全うにお支えできないという職だと思いますね。そういう意味で、今日は細川総理の分身として私は来ていただいていると思っているんですけれども、その点で、一番肝腎のポイント、この附則、五年後見直し、政党への献金、これについての意味をもう一度ちょっと御説明いただけませんか。
○成田参考人 先ほど冒頭で御説明いたしましたように、連立政権の中には、企業・団体献金即時全面禁止論と、連立政権樹立の合意では禁止するということになったわけですが、それについて、即時全面禁止と、しかし、激変緩和は必要だ、こういう両論がありまして、本則では、議員の政治団体には即時禁止、しかし、附則で、五年後見直しで政党及び政治資金団体についても見直すという規定になったんですが、連立の中では、それから細川さんも見直しは禁止というふうに理解していたというふうに聞いております。
○江田委員 私なりの理解をちょっと申し述べて、後で成田参考人に確認したいんですけれども、確かに、細川当時総理と河野洋平総裁の直接会談の場では政党への献金問題は話題に上らなかった、しかし、連立八党派の合意である、企業・団体献金の全面禁止を前提とした、後に附則十条となる見直し規定はそのまま、議論もされず、附則に残っているという意味は、それに対して自民党も賛成しているという意味は、まさに、附則の見直し規定が五年後全面禁止を意味していた、こういう私の理解でよろしいですか。
○成田参考人 いろいろ御議論があると思いますが、私も、おおむねそういう趣旨で理解していいのではないかと考えております。
○江田委員 結局、当時の状況を顧みますと、リクルート、ロッキード事件、今の政治状況への怨嗟の声に比較すべくもなく、もうふざけるなと。河野洋平元総裁の言葉で言うと、ふざけるなというのが当時の、平成の政治改革の国民感情だったということで、そういう深刻な状況を受けて、国民一人当たり二百五十円も税金をいただこうなんという厚かましい要求ができる状況じゃなかったと思うんですよ。だからこそ、自ら身を切るというか、企業・団体献金は全面禁止するから、その代わりにこういう政党助成金を入れさせてくれ、それで政治の浄化が図れるんだというのは、私は道筋としては非常にうなずけるんですけれども、そういう状況ではなかったんでしょうか。
○成田参考人 自民党は別の考え方をしていたようですが、先ほど冒頭で申し上げましたように、自民党の考え方は衆議院で廃案ないし否決になりまして、連立政権の考え方が法案として成立しましたから、その意図は含めて法解釈をなさるべきだというふうに考えております。
○江田委員 私は、合意当事者であるお二方が、しかもトップリーダーですよね、そういう方が、五年後廃止だった、それが合意だったんだとおっしゃっている、やはり歴史的な証言の重みというのは大きいと思いますよ。当事者でもなく、その場にいたこともなく、ましてや政治家でもない、政治家だって中枢にいたわけでない人がああだこうだ言うことと、当事者が、トップリーダーたる当事者が歴史の証言としてあちこちでおっしゃっていることと、どちらを国民が信用するかというと、私は当然合意当事者の方だと思いますが、いかがですか。
○成田参考人 トップ会談で合意したのはあくまでも議員個人の政治団体に対する企業・団体献金の禁止を五年間猶予するということでございましたが、河野さんが現在、細川さんとの間で企業・団体献金を五年後に廃止するという合意があったという御発言をされている趣旨につきましては、当然河野さんにお尋ねいただきたいんですが、ただ、河野さんは、ロッキード事件のとき、自民党の金権腐敗体質を批判して離党された方で、企業・団体献金については大変厳しいお考えを持っていらしたと思いますので、細川総理の、結局、企業・団体献金は廃止するという考え方に大変共鳴されておられて、それで現在のような御発言をなされているのではないかというふうに解釈をいたしております。
○江田委員 今の議論でもお分かりのように、より一層、河野洋平元総裁を、この委員会に来ていただいて、また御発言をいただくということで、必要性が高まったと思いますので、是非お取り計らいを、委員長、再度お願いを申し上げます。
○渡辺委員長 速やかに理事会で協議いたします。
○江田委員 いずれにせよ、私が本当に腑に落ちないのは、企業・団体献金と個人献金を同一視するような議論で、もう陸続として犯罪行為、贈収賄が起こってきたのはこの企業・団体献金をめぐる話なんですよ。本当に申し訳ないけれども、立法事実としてこれだけの弊害が我々の目の前にあるのに、個人献金と同一視した議論を何かしているというのは、私は、悪いけれども、学者先生のレベルの話だと思いますよ。
我が立法府の議員としては、やはりこれは、こういう立法事実に基づいて企業・団体献金を全面禁止するような法案を成立することこそ我々の責務だと最後に申し上げて、私の御質問とさせていただきます。
どうもありがとうございました。
○渡辺委員長 参考人に対する敬意を念頭に、やはり穏当な発言で御質問をいただきたいと思います。
次に、池下卓君。
○池下委員 日本維新の会の池下卓でございます。
本日は、参考人の皆様、お忙しい中このような場にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、早速、企業・団体献金の件につきまして御質問の方をさせていただきたいと思うんですが、まず冒頭は、成田参考人と小林参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。
先ほど小林参考人からのお話にもあったかと思うんですけれども、そもそも企業は営利を目的としている団体でありまして、企業献金に見返りを求めないということは、逆に、株主さんであったりとか利害関係者、こういう方々たちへの背任行為になるというお話があったかと思います。
ただ一方で、自民党さんの方では、企業・団体献金が悪であると思わないと。石破総理も、企業・団体献金によって政策をゆがめられたことはないということで、主張されております。今国会でも野党の皆さんからも様々議論があったかと思いますが、企業や団体に対する租税特別措置法に基づく減税であったり優遇措置を受けている、この内容について、詳細な内容というのは、誰それにとか、どんな団体にとか、具体的な詳細な金額というのはなかなか分かりづらいのではないかという点は御指摘されているかと思います。
一方で、これまで企業、団体に余り関係のない政策といいますのがスポイルされてきたのではないかと。例えば、子供たちに対する教育の問題。我々維新の会が教育の無償化というのをずっと訴えてきたんですけれども、これもずっとなかなかできてこなかった実態があります。たまたま現在は少数与党の中でこれが実現しそうだということになってくるのかと思うんですけれども、まさにこれまでの政治といいますのは、企業・団体献金を背景として貴重な国民からの税金を適正に配分していく、企業に向けた政策、それ以外の政策と適正に配分されてこなかったんじゃないかなと思うんですけれども、この点について御見解を一つ聞きたいと思います。
加えて、現行の政治資金規正法において、既に企業・団体献金についてある程度厳格な規定がされている点につきまして、やはり私は、そもそも企業・団体献金は慎重に取り扱われるべき性格があると思っております。自民党の主張どおりに、企業・団体献金が政策をゆがめるものではないということでありましたら、現行法においても特別な規制を設ける必要はないのではないかと思いますけれども、御見解をお二人にお伺いをしたいと思います。
○成田参考人 政治と金につきましては、大きく二つの考え方があると思います。
一つは、自民党の政治改革大綱で、政治資金は政治が活動の自由を獲得するための非常に重要な要素であると。政治は金がなければ自由を得られない、こういう認識、これは一つの真実を含んでいると思います。
しかし、別の考え方は、先ほどの江田先生、それから福島先生などがおっしゃられていることは、通産省ないし経産省で、金をもらう議員がいかに自由を失っているか、縛られているか。したがって、政治は金をもらうと自由を失う、政治が自由であり続けるためには金をもらってはいけない、こういう考え方、こういう二つの考え方があると思います。
私は、長いこと、政治はやはり金をもらわないと自由が得られないのではないか、特に、その場合には、個人献金だといろいろうるさいから、やはり寛大な企業献金をもらっているのはいいのではないかという考えを持ってきましたけれども、最近になって、先ほど池下先生もお触れになられました、やはり献金で政治がゆがめられている、それで政策がゆがめられていることはないという主張もありますけれども、しかし、環境経済学などに疫学的方法というのがございます。つまり、汚染原因の分布と被害の分布が重なれば、やはりその物質は汚染の原因である。
それと同じように、企業献金の分布とそれから整備する政策の分布を見れば、先ほどお話しになられましたように、金が集まらない分野、かつて、女性だとか人権の問題だとか優生保護法の廃止とか、そういうものはなおざりにされているわけですから、疫学的手法で見れば、やはり政治と金は因果関係にある。
こういうことで、やはり、政治が自由であるために献金を辞退するというのが新しい生き方ではないかというふうに現在私は考えております。
○小林参考人 今、成田先生のお話を伺って、特につけ加えることはないんですけれども、要するに、疫学的とおっしゃったけれども、巨視的に見ていると、やはり大企業に有利な税制とか、それから政治献金をしない人々がほっておかれるとか、それからもっと典型的なのは、よく言われるモリカケ、桜、東北新社、これはやはり、密接に時の権力者に政治献金したところが不当に有利になって、もはやはじけてしまって事件化してしまった、そういう緊張関係はあると思うんですね。
最初に私は原理的に白か黒かの話をしましたけれども、それをドラスチックにここでなされるべきだとは思っていないんです。やはり、漸進的に変化するために切り込むべきところは必ずある、ないとは思わない。
以上でございます。
○池下委員 お二人の先生、ありがとうございます。
疫学的、また巨視的ということで、企業・団体献金の話をしていただきました。私も、やはり、格差の問題であったりとか、今、日本の国内で内在している多くの課題といいますのは、企業や団体に関係しない分野というのが非常に多いと思うんですね。やはりそれが国民の皆さんに直接関係するところは非常に多いと思いますので、そこに貴重な財源である税金をなかなか分配できない今の現状というのは問題があると思いますので、その根幹である企業・団体献金というのは是正していかなければならないのかなと思っております。
次に、成田先生の方にお伺いをしたいと思うんですが、令和六年五月二十七日の当委員会の議事録を先日拝見させていただきました。そこをちょっと読ませていただきたいと思うんですけれども、政党支部も政党として企業が献金できるというのは、規正法の二十一条第四項でございます、それで、この規定は、細川内閣の政府案で、政治献金は政党及び政党の政治資金団体に限るということにいたしましたときに、そうすると地方議員には政治資金が入らなくなるということで、地方議員が政党に対する企業献金を得られるようにするということで挿入された規定でございます、あのとき、自民党は、議員の政治団体にも企業献金を認めるという規定をしておりましたから、政党支部を政党にするという規定は不要ということで、随分あのときは自民党に攻撃されました、こういう規定はおかしいということで盛んに言われましたけれども、今、自民党が大変その恩恵を受けられているのではないかという具合に議事録に残っているところでございます。
今、政党支部を含めた政党と言われるのは七千八百以上あると言われている中で、結局、政党支部が政治家個人とイコールになっている状況の中で、抜け道になっているとお感じになられているでしょうか。改めて、企業・団体献金は不必要であるかどうか。二点につきましてお伺いをしたいと思います。
○成田参考人 先ほど、一九九九年に五年後の見直し規定を受けた見直し法案が出たということを申し上げました。その中で、民主党の見直し法案は、政党支部の献金を受ける能力を制限する、たしか五十万程度だったと思いますけれども、そういうのも一つの生き方であろうとは思います。
それが第一点と、もう一つは何でしたか。(池下委員「七千八百を超える政党支部が政治家個人とイコールになっているんじゃないですかということ」と呼ぶ)いわゆる二つの財布ですね。ですから、その辺は工夫の余地があって、もしかしたら与野党のある意味で折衷案的な要素になり得るものかという感じもいたします。
○池下委員 ありがとうございます。
それでは次に、谷口参考人の方にお伺いをしたいと思うんですけれども、今度は、企業・団体献金及び政治資金パーティーの収支の透明性についてちょっとお伺いをしていきたいという具合に思います。
現行の政治資金規正法では、いわゆる受け手であります政党等といった政治団体にどういった企業、団体が寄附をしているとかパーティー券を購入したという事実というのがなかなか詳細に把握できないという状況であるかと思います。
一方で、出し手である企業、こちらは、会社法であるとか税法であるとか、そういう範疇で運用されているがために、どこの政党や政治団体に寄附した、パーティー券を購入したという点が非常に分かりにくいのではないかなと思っております。
実は、私、議員になる前、税理士の仕事をさせていただいておったんですけれども、何度か企業の税務調査に立会いをさせていただいたことがあります。税務署、国税が企業に税務調査に入ったときに、よく反面調査というのをやるわけなんですよね。この企業が脱税行為をしているかどうかというときに、その取引先であったりとかというところにもう一つ調査に入りまして、領収書であったりとか請求書であったりとかというところを確認する。だから、受け手と出し手と両方確認してくるということをやって、それの事実に基づいて根拠はどうなんだということを確認して、脱法行為があったとか脱税行為があったとかというのが、いわゆる会社法であったり税制の世界であったかなという具合に思います。
実際に過去に、税務調査が入ったことで、企業から政治家への資金提供があったかということが明らかになったケースもありますし、ただ、これは偶然にやはり発見されたものであって、政治資金規正法の枠内の中でなかなか発見がしづらいのではないかなと考えております。
また、年間五万円以下の献金は、個別の氏名や企業名の記載義務がないために、企業、団体がどれだけの資金を出しているのかというのもなかなか分かりづらい、不透明なものだと思っております。
そこで、企業・団体献金の資金の流れが不透明なまま放置されるのは、政治資金の公正性を確保するため非常に問題であるかと思いますけれども、今の企業の政治資金規正法と税法の違いというのも、当然同じ範疇ではないので分かりづらいというところもあるかと思うんですけれども、そこも含めてちょっと御見解をお伺いしたいと思います。
○谷口参考人 なかなか難しいお尋ねでございますけれども、政治資金規正法でいけないという場合に税法でというのは、当然あり得る手段であるかと思います。
ただし、一方で、税法でやるという場合は、これは国家権力の発動ということになりますので、慎重の上には慎重を求められるということでございます。
ですので、そこの空白を埋めるものとして、この度、国会議員関係政治団体に対しては、政治資金監視団体というものをつくって、自律的な調査権限をこれから与えることになるかと思いますけれども、そこでより実効的な調査の体制というものが整えられる、あるいは整えられるべきであるというふうに考えている次第でございます。
○池下委員 じゃ、ちょっと時間もありますので、一つだけ中北参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどのお話の中で、企業・団体献金がなくなると、交付金だけになりますと、国営政党化、カルテル化、やはりポピュリズムの台頭になるのではないかという御懸念がありました。
ただ、私、ちょっと考えるのが、政党交付金というのはそもそも税金ですので、国民のお金でありますね。逆に、企業・団体献金こそ、お金持ちの団体、これは声を聞くことになるかと思うんですけれども、僕はポピュリズムにならないと思うんですけれども、そこの見解をもう一度お伺いしたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
例えば企業・団体献金であれば、それを拠出してもらうために団体と接触をするでしょうし、個人献金もしかりです。特に党員になってもらうということになれば、やはり有権者に根が張った、そうした政治になるんじゃないかと思います。
他方、企業・団体献金がそんなに汚いんでしょうか。例えば維新、大阪・関西万博はたくさんの協賛企業がいますけれども、それでねじ曲がっているんでしょうか、万博の公共性が。
ですから、企業だって被災地に寄附することがあります。狭い利益だけでやっているわけではない、様々な広い利益で行動することも、当然行っているわけであります。ですから、一概に企業献金が悪だと決めつけることはむしろ維新は避けた方がいいんじゃないか、このように考えますけれども、いかがでしょうか。
以上でございます。
○池下委員 ちょっと時間がないですけれども、我々は、万博関係団体から、政党として一切、団体献金は受け取っておりませんので。
ありがとうございます。以上です。
○渡辺委員長 次に、長友慎治君。
○長友(慎)委員 国民民主党の長友慎治でございます。
四人の先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
まずは、参考人の四人の方に、冒頭、一問お聞きしたいと思います。
企業・団体献金の問題をずっと予算委員会から、そしてこの政治改革でも議論をしてまいる中で、いわゆる全面禁止すること、政治団体を含む全面禁止が憲法違反であるのかどうかというところがまだはっきりしておりません。各党で受け止めはあるんですけれども、例えば衆議院の法制局や内閣法制局にどうなのかと聞いても検討をしていないということで、明確になっていないわけなんですが、四人の先生方がどういう見解かを、まず、企業・団体献金を全面禁止することはやはり憲法違反なのかどうか、そうではないのか、それぞれお聞きしたいと思います。順番にお願いします。
○中北参考人 お答え申し上げます。
企業・団体献金については、るる、ここの中でも議論があったように、八幡製鉄事件で一応合憲という形になっております。しかし、その一方で、立法政策によって規制するということは認められているということになっておりますので、禁止ということは可能であろうというふうに思います。
ただ、衆議院法制局、先般説明があったように、やはり政治活動の自由は憲法上非常に重要な価値でございます。その一方で、公共の福祉という憲法上の理念によって一定制約がかかるわけですけれども、甚だしい弊害があれば禁止は可能だと思いますけれども、それほどの弊害がないのであれば禁止というところは妥当ではない、必要最小限を超えてくるということになりますので、この辺りを冷静に考えていただきたいというふうに思います。
以上でございます。
○成田参考人 一九七〇年のいわゆる八幡判決は、日本国憲法が保障する基本的人権は、事柄の性質上、企業にも妥当することは全て企業にも適用される、例えば身体の自由は企業には事柄の性質上適用されませんが、政治活動の自由、言論の自由は企業にも適用できるので、企業もそういう人権を享受できるというのが八幡判決の骨子でございます。この理屈に立ちますと、政治献金は禁止できない、禁止すると憲法違反ということになるわけです。
しかし、この考え方は、判決が出た当初から、八幡献金を認める憲法学者も、論理の構成として非常に無理があるという、非常に多くの批判がございました。
それで、私は、もし今日、最高裁が新たに判決をすれば、恐らく判例変更があるんじゃないかと個人的には思っています。どういう判例変更かというと、禁止するかどうかは国会の裁量事項であって、国会が判断するんだということになると思います。そうすると、禁止しても別に憲法違反にはならないということになるというふうに考えております。
○小林参考人 企業にも人権があるというのは、それはそのとおりなんですけれども、ただ、企業にも表現の自由はあると思うんですね。それをやってもらっちゃ困る、それはやってほしいとか、企業とか企業、団体が言うことはできますよね。それ以上に、金を出すとなると、私はやはり、企業は営利法人ですから、これははっきりしていますから、直接的利益にならない金を出すとなったら、それは理論上は背任になるし、それで訴えられたわけじゃないですか。それで、直接的利益になるお金を出したら、これは贈収賄になるじゃないですか。この線引きは変わらないような気がするんです。
それで、今、成田先生がおっしゃった判例変更ですけれども、昭和四十五年というのは高度経済成長のときの八幡製鉄ですよね。日本全体が高度成長して、パイを大きくする牽引車の一つですよね。それに自由があったとしても、今の日本製鉄というのは、逆に言えば、縮小した日本経済の中の奪い合う競争者の一つですよね。
だから、どこまで今の最高裁の判事のメンツで憲法を御存じか知りませんけれども、憲法学者はいないんですけれども、ただ、倫理的に考えて、企業の献金は禁止できると私は思います。だけれども、企業の発言はどうぞ御自由にです。労働組合だって部分利益を追求していますから、我々の待遇だけですから。その点で、政治結社をちゃんとつくればいいんですよ。政治結社は発言をできるし、金集めをして金を配っても、制限は要らないですよ。
これが私の観点です。
○谷口参考人 既に各参考人のお答えからも明らかかと思いますが、もう少し詳しく申し上げますと、八幡製鉄事件判決におきまして企業・団体献金合憲の話が出てきたのはどういうロジックかというふうに申しますと、企業献金は、本来、自然人にのみ認められている参政権を侵して、自民党を支持していない株主の参政権を侵すから、民法九十条で言うところの公の秩序に反しているという原告の主張に対して、最高裁は、先ほど御紹介のありましたとおり、憲法上の基本権は可能な限り国内企業にも適用されるので合憲であるというふうに判決をしたものでございますけれども。
原告の主張はそもそも民法違反で来ているわけですので、ここで憲法を持ち出す必要はなかったというのが学界の通説的な考え方、有名な判例評釈でいいますと、とんだ勇み足というふうに当時言われていたんですけれども、であって、それが学界等の通説的な考え方ということでございまして、最高裁自身も、これ以降、企業献金が問題となった裁判では八幡判決のこの部分は先例としていないわけでございます。
というわけでございますので、先ほど来参考人からも陳述ございましたとおり、やってみないと分からない、企業献金を全廃したところで、今最高裁がどういうふうに判決をするかというのは分からないというのが正直なお答えかと思います。
○長友(慎)委員 参考になりました。ありがとうございます。
話を変えます。また四人の参考人の皆様にお伺いしたいと思います。
予算委員会からこの間、政治改革で様々議論してくる中で、企業・団体献金の問題については資金の出し手の規制というものを議論をしてきた経緯がありますが、出し手の規制ばかり注目を浴びてきたと思うんですが、我々国民民主党としては、受け手の規制というものをもっと強化をしていくべきじゃないかと。
先ほど来議論になっていますけれども、自民党さんの方には支部が七千八百ほどあって、そこが受けることができているということに関しては、出し手だけ規制しても受け手がそれだけ受けてしまったら献金はなくならないだろうということで、透明性も広がらない。
その点において、真に資金の流れの全体像を明らかにするためには、政治資金の透明化に資するものとして受け手の規制も私たちはやるべきだということで、企業・団体献金についての上限を設けた上で、企業・団体献金を受け取ることができる主体を政党本部などに極力限定をする、受け取った献金については全て公開をする、その上で、速やかに、これから先やらないといけないんですけれども、政党のガバナンスについて定める政党法を制定して、政党法によるガバナンス規定に服する政党の原則本部のみ企業・団体献金の受け取りを認めると。
そういうことを提案を我々は今しようとしているというか、してきて、主張しているんですが、この考えにつきまして、四人の参考人の皆様の御所見を伺いたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
受け手の規制ということでございますけれども、これは、政党の性格、規模等によって様々でございますので、一律に規制することが適切なのかどうか、なかなか難しい部分があるのではなかろうか、特に地方議員、地方組織については十分な議論がなされていないというふうに考えますので、慎重に考えていただきたいというふうに思います。
それから、政党法についてですけれども、やはり、政治活動の自由ということが非常に私は日本国憲法上要請されているのではないかと。したがって、理念法的な形で政党法を作って、政党の運営が民主的になされなければならないといったようなことを規定するのは差し支えないと思いますけれども、事細かく政党の在り方を規制するのは、やはり国営政党化の道を開きかねない。できれば、やはり、各政党が、例えば、余り褒められたことはないですけれども、自民党がガバナンスコードを作っているように、自主的に様々なそうした仕組みをつくって公表していく、それをブラッシュアップしていく、そういう仕組みをつくっていく、これが私は正しい道ではないか、このように考えております。
以上でございます。
○成田参考人 先生方、政党支部がなぜ企業献金を受けられるかということをお考えになったことはございますか。
これは非常に巧妙な立法技術が駆使されていまして、つまり、政党しか、ないしは政治資金団体を含めてですが、政党しか企業献金を受けられないわけですね。そうすると、政党というのは、国会議員五人以上、ないしは国政選挙で二%以上ですね。そうすると、政党支部は、国会議員五人とか得票は二%持っていないですね。ですから、二十一条の四で実に巧妙な立法技術が行われていまして、政党支部のうち、選挙区支部あるいは市町村を区域とした支部以外のものは政党の一部ではないという規定の仕方をしているんですね。
だから、逆に、選挙区支部とか市町村単位、特に地方議員のする支部は政党の一部だから、全体の政党の一部だから、必ずしも、政党が献金を受けるときは、本部で受けなくても、その一部であるこっちの方で受けてもいいという論理構成になっているわけですね。
これは、私、大変巧妙というか工夫したというか、ことになっておりますから、単純に政党支部は政党ではないということにすれば、あるいは制限をかければ、準政党にすれば、いろいろな規制は可能になる、そういうことだろうと思います。
○小林参考人 政党法についてですけれども、憲法上は自由ですよね。法律を作ると不自由が始まるんですよね。それを先ほど来気にしておられるんだと思うんですけれども。私もそれはよく分かるんです。だけれども、今ここを見たって、議会制度というのは世界の常識ですよね。それも政党で動いているじゃないですか。こんなに公的な存在でありながら、憲法の中にも書いていないし、政党法もないし。だから、そういう意味では、もう成熟した民主主義国家として政党法を作れるのではないのかなと。
だけれども、そうすると、政党要件とか国庫の補助要件とかということで、ドイツで深刻な議論をやっていましたけれども、要するに、国家権力を握っている政党により、少数政党に対するいじめとかコントロールが起きる、これは運用上の問題として気をつけなきゃいけない。
済みません、中途半端なお答えで。真剣に悩んでいるものですから。やってみる価値はあると思います。
以上です。
○谷口参考人 御意見に賛成でございます。
○長友(慎)委員 ありがとうございます。
最後の一問にいたします。
時間が許す限りお聞きしたいと思うんですが、三月末までに与野党で結論を得るということにしておりますので、何かしらの形に集約していかないといけないと思います。先ほどから御指摘出ているとおり、今のままでは、自民党案、与党案と野党案が、なかなか両方の溝が埋まらないという中で、与野党でどのように合意していくべきかということを、それぞれのお一人から端的にお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
○中北参考人 お答えします。
国民民主党と公明党が提案して設置が決まっております政治資金監視委員会において、きちんとした議論を慎重になした上で、その提言を待って与野党間の合意をつくっていく、これが一番私はよろしいのではないか、このように考えております。
○成田参考人 平成の政治改革の第八次審もそうでしたけれども、政治が基本的方向を出さないと、審議会は結論を出せないんですよ。そんなこと、審議会の学者とか何とかが決めて、じゃ、政治がそれを守って立法するか、そんなことはあり得ない。
ですから、やはり政治が方針を出すしかないので、それは先生方が徹底的に議論されて方針をお出しください。それに尽きると思います。
○小林参考人 今の状況で企業・団体献金を禁止の方向性を出さないと、本当に政治が、具体的には自民党政権が有権者に否定されてしまうと思うんですね、今度の参議院選挙で。ですから、前の見直し規定が結局うやむやになった、あんなことでは、もう少し明確に禁止の方向性を決めて、時限をつけて、それで、具体的には、一気に革命的変化を起こしては困りますから、軟着陸する努力をいろいろしながら。だから、今この段階では、やはり期限をつけて、禁止を決める、企業と団体献金、決めるべきだと私は思います。
以上です。
○谷口参考人 現在の政治状況の下では、企業・団体献金を抑制するというところ以外に合意の可能性はないというふうに思います。まずはそれで第一歩を踏み出していただいて、更にその先を行きたいのであれば、これは有権者が決めるということになろうかと思います。
○長友(慎)委員 ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、中川康洋君。
○中川(康)委員 公明党の中川康洋でございます。
今日は、各先生方、参考人質疑ということで、本当に貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。
私、ちょっと顔が怖いものですので、謙虚な質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。謙虚に今日は質問させていただきます。
まず初めに、これは繰り返しになりますが中北先生と谷口先生に、もう何度も出てきていますけれども、一九九四年の改正規正法による附則の九条と十条について、これをどう読むかということ、これが大事なのと、それとやはり、そこから見る河野洋平氏のオーラルヒストリーの正確性、ここをちょっと改めて確認をしたいと思うんです。
私も、この二つの附則の条文を見ると、当時、企業・団体献金を抑制するという方向性は、コンセンサスは得られていたけれども、この全面禁止というところは合意はなかったのじゃないか。これは文献を見てもそういうふうに私も思うわけでございます。そこを両先生、繰り返しになりますが見解を伺いたい。
併せて、本委員会でも度々議論になっておりますが、それに基づくことも含めて、河野洋平氏のオーラルヒストリー、ここで主張している、公費助成が実現したら企業献金は本当は廃止しなきゃ絶対おかしいんですよという氏の言葉とともに、一九九四年に政党交付金導入と引換えに企業・団体献金禁止で合意したとするこの河野氏の主張は、先ほどの条文の文面から見ても、正確と言えるのかどうか。ここはやはり確認しておく必要があるかと思うんですが、両先生の御見解を改めて伺いたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
私は個人的に河野洋平先生を尊敬しているものでございますけれども、ただ、この点についての御記憶については正しくないのではないかと考えております。私は歴史を研究してまいりましたが、当事者の証言では多々間違いがあるということはございます。残念ながら、人間の記憶というのは完璧ではございません。ですから、記憶に頼って文書を見ないというのはやはり怠慢ではないか。当時の新聞を繰ってみれば、こうした合意があったとは考えられないわけであります。
先ほど成田参考人の方から連立与党案として全面禁止だったという話がありましたけれども、そういうことはございません。社会党は全面禁止を主張しましたが、新生党などは存続論でありました。それで見直しということになっていますので、その連立与党案ですら、禁止は合意がされておりません。
あと、河野洋平先生、細川総理、このお二人の思いは分かりますけれども、お二人だけで合意したわけではありません。そのトップ会談には、自民党からは森幹事長、そして新生党の小沢代表幹事が陪席していたと聞いております。このお二人がおって原案を作成したという中で全面禁止になるということは考えにくいということでございますので、是非、立憲民主党等にございましては、小沢一郎先生の御証言を得てはいかがか、このように考えております。
以上です。
○谷口参考人 ただいまの中北参考人の御発言に尽きております。一言つけ加えるのであれば、一次史料は二次史料に優越する、これが常識でございます。
○中川(康)委員 私も、やはり過去に残された文献に基づいてどう判断していくのか、どう考えていくのかというのは非常に大事な視点かというふうにも思っておりますので、改めてこの委員会で、両先生の、いわゆる文献に基づいてこれまで研究なされてきたその成果というものを紹介をしていただきたいと思いまして、お話をいただきました。
次に、また続きまして谷口先生にお伺いしたいんですが、企業・団体献金を直ちに禁止することによる副作用というところで、先生は昨年の五月二十七日の参考人質疑の中でこのように申されております。
直ちに企業・団体献金を禁止いたしますと、いわゆる個人献金への迂回が発生するものと予想され、政治資金の流れの透明性がかえって妨げられるおそれがあるわけでございますと話されています。私もこの考えには同感でございます。
そして、企業・団体献金を禁止する場合においては、更なる個人献金の促進策、今日もおっしゃっていただきました政党交付金の在り方、また政治資金の支出の在り方などを総合的に検討した上で、激変緩和のための経過措置も含めた実効性あるロードマップを描かないと、副作用が主作用を上回る事態になりかねないこと、これを懸念する次第でございます、このようにお話をいただいています。
この先生が話された副作用が主作用を上回るとは具体的にどのような意味か、ここで改めて詳しく御説明をいただきたいと思います。
○谷口参考人 時間がございませんので、端的にお答えをいたします。この週末に報道されたような事案がこれに当たるかと存じます。
○中川(康)委員 非常に端的な御説明をいただきまして、ありがとうございました。
やはり、薬もそうですけれども、副作用が主作用を上回ってはいけないと思いますので、そういったところをどう考えながら、我々が立法府に身を置く者としてこの議論を進めていくのかというところが大事だなというふうにも思っております。ですから、ロードマップをしっかりと考えていくこと、さらには、やはりいろいろなところにこれは影響していきますので、そういったことも含めて考えていくことの必要性、そういった示唆をいただいたものではないか、こんなふうにも感じております。
そうしましたら、続いて谷口先生、続いちゃって恐縮なんですが、先生の今日の御発言の中で、国民の政治に対する信頼を確保しつつ、議会制民主政治の不可欠な要素である政党全体を支えるために、政党交付金の基金という制度、これをつくることが大事ではないか、こんなお話をいただきました。
それで、私もこの必要性というのを感じておる一人でございますし、例えば、この方法であれば、よく野党がこれまでも主張しておりますいわゆる献金の賄賂性というものが著しく低下をする、このように私は考えますし、さらには、企業とか団体にとっても、いわゆるコンプライアンスの向上でありますとか、さらには社会貢献性、企業・団体献金にはこの社会貢献性があるというふうに言われていますけれども、その社会貢献性が更に増すのではないか、こんなふうにも考える一人でございます。
その中で、先生が今おっしゃいました、この制度は、まず、一九七〇年の最高裁判決の欠点を補うものであるというお話をいただきました。今最高裁判決についての評価もいただきましたが、ここのところをお伺いしたいのと、それと、この政党交付金基金という案は、過去には、まさしく自民党さんの支援団体であります経団連も検討したことがある、こんなことを伺ったことがあるわけでございますが、その点について、先生の御見解を賜りたいと思います。
○谷口参考人 お答え申し上げます。
先ほども若干申し上げたところでございますけれども、八幡判決におきましては、政治献金は企業の定款に定められた事業目的の範囲外であり、取締役は定款で定められていないことに会社のお金を使った、こういう原告の主張に対しまして、最高裁は、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為である、こういうふうに判決をしたわけでございます。すなわち、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なので、政治資金を寄附することは、災害救援資金や地域社会、各種福祉事業への寄附と同じだというふうに判決をしたわけでございます。
しかし、ここには一つ問題がございまして、企業献金は、災害救援資金や地域社会、各種福祉事業への寄附と同じで日本の議会制民主主義、政党一般を支えるものだとは言ったのでございますが、それがどうして特定の政党への寄附を認めることになるのかというのを論証していないわけでございます。
本件で争われた八幡製鉄による自民党への献金が行われたのは一九六〇年、まだ日本国内でイデオロギー対立が激しかった頃でございますから、資本主義、リベラルデモクラシーを支えるということで、自民党に寄附を行うということは同じと見れたとしても、少なくとも今日においては、日本の議会制民主主義、政党一般を支えることと特定の政党に寄附することとの間には論理が飛躍をしておるわけでございます。
この点、政党交付金基金への寄附は、まさしく政党一般、我が国のリベラルデモクラシーへの支援でございますから、八幡製鉄事件判決の判示を忠実に具現化する構想と言えるのではないかと考える次第でございます。
○中川(康)委員 ありがとうございました。よく分かりました。
我が党も今回の提案の中で、ちょっと法案こそ出せていないんですが、いわゆる規制の強化、さらには個人献金の促進の仕組みの整備、そして、今先生がまさしくおっしゃった、私ども仮称と言っていますけれども、政党交付金基金の創設というのを提案の一つにさせていただいております。
それで、企業・団体献金、労働組合も含めた団体ですけれども、やはり中には、この政党を応援したい、さらにはこの政治家を支援したいという純なる思いの方々もおられると思うんです。私も、落選中、落選を四年間していたんですけれども、そういった思いで支援をしていただいている企業、団体はありました。
だから、そこまでも否定するものではないというふうに思うんですが、しかし、やはり、政党政治全体を支えるとか育てる、そういった意味合いにおいては、そういった献金の仕組みと併せて、広く政党政治を支える、こういった考え方があってもいいんじゃないか、そして、それを企業や団体が広く選択をしながら日本の民主主義が前に進んでいく、こういった在り方は私もあっていいんじゃないかなというふうにも思いますので、これには確かに時間がかかるわけでございますが、そこを含めて、時間をかけて議論をしていくことの必要性がやはり今あるのではないか。
そして、政党交付金、これは国民の皆様に今負担をいただいているわけでございます。この基金が増してきたら、それに比して、その状況も見ながら、いわゆる政党交付金、国民の皆様の負担というのは減らしていくという、これがやはり国民の皆様に対しても我々を理解いただける範囲の一つじゃないか、こんなふうにも思いましたので、今日、先生にその内容を改めてこの場で確認をさせていただきました。
そうしたら、時間が迫ってまいりましたが、中北先生に、今日、先生のお話の中で、まさしく私どもが今検討しております政治資金監視委員会の設置についてお話をいただきました。
これはまさしく、私ども、やはり政治資金を監視するための第三者機関の設置というのが必要じゃないかということで、前国会、前々国会から議論を重ねてきて、やっとプログラム法を、各党皆さんの御理解をいただいて成立をし、今まさしくその法案の作成を、これから各党の皆様と議論に入ってまいりたいと思っています。
私どもは、今回の政治改革議論の中で、いろいろな重要な要素があるんですが、やはり外部の目でしっかり見てもらう、こういったことの重要性ということで、この政治資金監視委員会というのをいわゆる最重要事項というふうに捉えていますし、これは監視をするだけではなくて、やはり提言もしっかりとしてもらう。今、提言の中でいわゆるどこまで国会が従うのかみたいな話もありましたが、提言をし、そこにやはり我々がしっかりと沿っていく流れというのは私は大事じゃないかと思いますが、この設置についての先生の評価、これに委ねるのはいいというお話はいただきましたが、これそのものに対する評価、ここをお伺いしたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
私は、政治資金監視委員会、国会に設置するということは非常に重要なことだったと。やはり政府ではなく国会、これはやはり、国営政党ということが懸念される以上、そして政治活動の自由の観点からも、国会に設置する、しかもそれが監視機能とともに提言機能を持つということは、国会の自主的な判断として正しかったと思いますし、早期に設置していただきたい。
その一方で、しかし、各政党の内部におきましても、政治活動の自由という観点から内部規律を働かせていただきたい、このようにもお願いをしたい、このように考えております。
以上でございます。
○中川(康)委員 ありがとうございました。
我が党は最初、行政府の三条委員会というふうに言っていましたので、今、国会に対する御評価をいただいたというところを含めてどう考えていくか。
しかし、あのときも、我々はやはり議論を収れんさせていくことが大事だということで、そして秋の国会では一つの結果を得たというふうに思っていますので、今の先生のお話をしっかりとまた参考にさせていただきたいと思うのと、最後、先生の御発言の中でこんな御発言があるんですね。昨年十二月二十四日の時事通信の配信記事の中で、企業・団体献金の禁止は慎重に考えるべきだ、これはもう先生がおっしゃっていただいています。明らかに公益が損なわれていれば禁止すべきかもしれないが、いろいろな組織が政治に参加し、バランスを取っていくのが健全な議会制民主主義だというふうに述べられています。
今の政治資金監視委員会のところにもちょっと共通する部分があるかもしれませんが、この健全な議会制民主主義とはどういうものか、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
○中北参考人 お答え申し上げます。
我が国は、独裁政治ではなくて、自由民主主義体制でございます。その下で複数政党制というのを採用しております。したがって、様々な団体が様々な政党を支援する。部分利益かもしれませんけれども、部分利益が競合し、ただ、思いとしては国をよくしていくという思いの下で競合し、この競争の中から公益を見出していく、こういうシステムでございます。
ですから、何か、部分利益だから汚い、全体利益じゃないといけない、主張が曲がってはいけない、こういうふうなことを過度に強調すると、非常に独裁的なところに近づいていくというふうに思います。
ですから、しっかりと部分利益を背景に持ちながらも全体の利益を損なわないようにする、こういう立場というのがこの自由民主主義体制の下では各政党に求められるのではないか、このように私は考えております。
以上でございます。
○中川(康)委員 ありがとうございました。
今日は時間の関係でお二人の先生にお話を伺いましたが、本当に、四名の先生含めて非常に重要な示唆をいただいております。
私ども、これからも、本当に、権力を有する者だからこそ謙虚にこれから議論をして成案を得てまいりたい、このように思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
本当にありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、高井崇志君。
○高井委員 れいわ新選組の高井崇志です。
今日は、貴重な御提案、ありがとうございます。
さっき、国民民主党の長友委員から、憲法との関係について四名の先生に質問がありました。私も四人の先生方に同じ質問を最初に聞きたいと思うんですが、同じ憲法の話なんですが、もう少し踏み込んで。
私たちれいわ新選組は、今、企業・団体献金禁止の憲法違反から、更に政治団体まで全てこれを禁止してしまうのは、これはやはり行き過ぎで憲法違反の疑いがあるんじゃないかということで、立憲さん、それから維新さんはそこを除くという法案を出してこられました。ただ、我々は、実際は結構、企業やそれから労働組合などの隠れみののような形で政治団体がつくられて、脱法的に行われるんじゃないかということで、これはもう全面禁止した方がいいんじゃないかという意見です。
そこについてはもし意見があればお聞きしたいんですが、更に私が聞きたいのは、これを内閣法制局に問うても全く回答が返ってこない。衆議院法制局はもちろん見解を述べていただいたんですが、有権解釈権はないんだとおっしゃって、あくまでも立法の補助であるということです。
それから、内閣法制局は、この問題はもう三十年前から、この企業・団体献金が憲法違反かという議論があるのに、全く何の見解も持っていないと。先日、総理が答弁したら慌てて、しかもいまだに、今後検討するとか、具体的な事例に応じて検討すると。
これは私は、ちょっと内閣法制局の怠慢、あるいは、その設置法に問題があるのであれば、これはやはり変えないといけないんじゃないか。
やはり、およそ法律の運用に対して、内閣法制局というまさに法律のエキスパートが集まったあれだけの組織をつくっておきながら、政府から聞かれたことにしか答えない、政府の法律にしか答えないというのはもったいなさ過ぎる。
これは全部最高裁まで一々裁判するのかということであれば、やはりもうちょっと、国民から、少なくとも国会からの要請に対して速やかに憲法解釈を述べる、そういう機関であるべきだと思っていますが、それぞれ先生方の御見解をお聞かせください。
○中北参考人 お答え申し上げます。
ちょっと前段の御質問から入らせていただきたいと思います。
私は、二〇一九年、れいわ新選組が個人献金を集めて、千円から握った方々の献金を受けて、そうした形で活動を始めたということを高く評価しているものであります。
しかし、その一方で、企業・団体献金、さらには政治団体からの献金を禁止するというのは、政治活動の自由上、やはりこれはさすがに行き過ぎではなかろうかというふうに考える次第であります。冷静に、何が問題なのか、どういう弊害があるか、こういったところ等を勘案して結論を出していただきたいと思います。
二点目の憲法の解釈の問題でございますけれども、日本は三権分立でございます。有権解釈というのは基本的に最高裁においてなされる、裁判を通じてなされるという形になっております。そういうことから、内閣法制局はそういう立場を取っている、このように理解しております。
したがって、もしこうしたことを避ける、憲法解釈ということをきちんと、より積極的に受け取れるようにするのであれば、維新さんが主張しているような憲法裁判所を設置するとかこういったことも含めて考えるべきであって、しかし、三権分立ということを考えると、軽々に内閣法制局に有権解釈を求めるような制度を導入していくというのが正しいかどうか、これは慎重たるべき、このように考えております。
以上です。
○成田参考人 企業、団体に政治団体も含めて、政治団体も献金を禁止するという考え方がございます。しかし、憲法には二十一条に結社の自由というのがございまして、個人だったら献金できるけれども結社にしたら献金できなくなるというと、結社の自由の侵害ですよね。結社の自由というのは、結社をつくる自由と、つくられた結社が活動する自由がございます。もちろん、企業も労働組合も結社の一部ですから、結社の中にも一部、その特性に応じて献金を禁止することは構いませんが、結社は全て献金できないとなると結社の自由の明白な侵害になるということで、内閣法制局も衆議院法制局もうんとは言わないということだろうと思います。
それから、政治団体をつくると抜け道になるという話が何回か出ておりますが、西松事件というのがございまして、政治団体をつくって迂回の献金をして事件になったのがございました。小沢先生だけじゃなくて、自民党、幹事長が、ちょっと名が出てきませんが、大量に摘発されました。西松事件がございますから、ですから、そういうことをやればそれは取締りの対象になるということで、そこの手当ては現在既にできているということだろうと思います。
○小林参考人 まず有権解釈の話ですけれども、正確には、三権分立ですから、最高裁にも内閣にも国会にも解釈権があるんですね。
つまり、分かりやすく言うと、自衛隊法を国会が作ったということは、あの自衛隊法は合憲であるという国会の判断が出ているんです。違憲だったらやるわけないじゃないですか。たまたまそれが事件になって最高裁に行ったときに、最高裁の有権判断が出る。それが矛盾したらどうするか。それは立法と最高裁で調整されていく。これが歴史です。
ですから、有権解釈という点でいけば、先ほど話にも出ましたけれども、内閣は内閣法制局、衆議院にも衆議院の法制局があるじゃないですか。参議院にも参議院の法制局があるじゃないですか。まずそこから意見を徴して、それを国会の多数決で我々はこれに賛成すると言えば、国会による、国権の最高機関ですからね、有権解釈が立ちます。それは一つの政治的議論のガイドラインになると思います。
それから、今、成田先生がおっしゃったんですけれども、憲法二十一条で結社の自由と言いますけれども、各政党を見ても、何となく意見の合う人がまとまって動くのが人間の本質じゃないですか。そういう意味で、政党というのは自然発生でできる。これが結社の自由ですよ。
ただ、さっき中北先生が、部分利益であっても全体利益と調整してと巧みにおっしゃったけれども、部分利益しか目指していないものが、その利益を目指して金で権力者と取引する、これがトラブルを起こしている事実がいけないと言っているので。部分利益しか持っていない会社が、発言する自由はあるんですよ、金で買う自由はなくても、表現の自由はあるんですから。それは私も禁止していません。
だから、その点を少し整理して、そういう意味で、企業と労働組合などの団体の政治献金は禁止すべき方向性にある、だけれども、政治結社の献金は自由の方向性にあると思います。
○谷口参考人 後段部分につきましては、現行制度を取る限りにおいては、過日の内閣法制局長官のような答弁にならざるを得ないかというふうに存じます。
それから前段部分につきまして、政治団体から政党その他の政治団体等への寄附を禁止いたしますと、そもそも合憲性の問題が生じるとともに、当該政治団体がアメリカのスーパーPACのようになるおそれが生じます。
スーパーPACと申しますのは、候補者に献金をすることはできませんけれども、個人や企業、団体からは無制限にお金を集められて、その莫大な金銭を、候補者のいわば別働隊としてテレビ広告やネット広告に投入をしている。これがアメリカで政治資金が非常に多額になっている元凶ということでございます。
このスーパーPACとして機能するその他の政治団体は、これはあくまで政党外部の存在でありますから、その党が一年に幾ら政治資金を使ったのかという集計の中には当然入ってまいりません。また、相互に独立をして動くという建前ですから、もし隠そうとすれば、その合算も容易ではないわけでございます。これを勝手連と言えば聞こえがよくなるわけでございますが、言葉を換えて政治資金版二馬力選挙というふうに申し上げれば、この潜在的な危うさを御理解いただけるかと存じます。
○高井委員 ありがとうございます。大変勉強になる御意見、たくさんありがとうございました。
それではもう一つ、これも四人の参考人にそれぞれお聞きしたいんですが、先ほど中北参考人から、れいわ新選組の個人献金、一生懸命集めて褒めていただきましたが、正直、限界がやはりあります。我々はやはり常に資金不足でございまして、そういう意味では、この企業・団体献金も本当はという部分はありますが、ただ、やはり政策をゆがめるところが非常に問題であると我々は考えていますので、全面禁止をあえてここはしております。
そういった中で、私の提案は、常々国会で申し上げているんですけれども、政党交付金を見直していただきたい。今の政党交付金は議席数割で全部配分をしていますが、しかし、少数政党、例えばイギリスなんかは、ショートマネーといって野党にだけ配分される政党交付金がありますし、それからあとは、半分は均等割にして、そして残りは得票数割にするとか、そういう方法があると思うんですね。
というのは、今回だって、我々、小さな政党ですけれども、こうやって同じ時間をいただいて十五分質疑させていただいていますし、あらゆる法案について必ず賛否をしっかり調査をした上で行っていますから、そういう共通機能が各政党にあるわけで、これは議員数で割ったら、明らかにやはりその配分として私はおかしいと思いますので、政党交付金について、中北先生や谷口先生は言及もありましたが、四人の先生からそれぞれ、政党交付金、今私が申したような少数野党にも厚く配分するという方法はどうお考えでしょうか。
○中北参考人 お答え申し上げます。
政党交付金を使って様々な施策、特に民主主義を促進する方向で効果を考えていくということは私は有益だと思いまして、その一環として、女性議員を増やす、こうした方向で使う女性議員割、こういったことを考えてはどうかということを御提案させていただきました。
そういう観点からいえば、確かに、少数政党を優遇するということはあり得るかもしれませんけれども、そうなると、例えば国会に議席がない政党との平等をどうするのかといった問題がかなり強い形で出てくるのではないかというふうに考えますし、しばしば野党の先生方は、イギリスの制度がすばらしい、野党に傾斜して配分されるのがすばらしいとおっしゃいますけれども、イギリスのこうした助成金の金額、規模というのは日本の十分の一ぐらいでございまして、もしそうしたら、恐らく野党への配分額というのは減ってしまうのではないか、このように考えます。
全体を見て、これだけの多額の政党助成があるのは日本とドイツです。ドイツの場合は、やはり闘う民主主義ということで、戦前のナチズム、こういったものの反省から、政党法を作りながら政党助成をしていく、こういう形になっていますけれども、日本の場合はそういう形にもなっていない。ですから、全体を見て検討しなければ相当危ういことになるんじゃないか、このように考えております。
以上です。
○成田参考人 先ほど冒頭発言で御紹介しましたが、平成五年の社会党と公明党の共同提案による政党助成金交付法案は、議席は考慮せず、得票率のみで配分するという規定になっておりました。その理由は、国民が寄附をする代わりに税金から払ってもらうんだから、国民の支持を正確に反映する配分方法が望ましい、それは得票率であると。議席というのは小選挙区が入るとゆがむから、その議席でゆがんだ比率で各党に配分するのはおかしいということで、社会党、公明党案は得票率による配分をやっていました。
一つの考え方であろうというふうに思っております。
○小林参考人 やはり、一人一票を前提とする民主主義ですから、得票率に比例するのがいいと思います。
ただ、確かに、れいわみたいに、具体的例を言って申し訳ないけれども、有為な新政党がありますよね。そういうものを芽を摘まないためには、まるでベーシックインカムみたいに全ての政党に基本的に一塊上げた上で、あとは得票比例でいく、これが一つ。それからもう一つ、議院内閣制を活性化するために、よく言われることですけれども、野党第一党のシャドーキャビネットにちゃんとした経費を支給する。これでも随分政党の活性化はできるんじゃないでしょうか。
以上です。
○谷口参考人 御趣旨に反対ではございませんけれども、なかなか合意可能性がないかなというふうに考えております。
それゆえに、私は、政党交付金基金というものを設けて、国民の懐を痛めることなく、寄附というような形で政党交付金の増額を図る、当然これは与党にも野党にも益するところがあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
○高井委員 大変貴重な意見、ありがとうございました。
これで終わります。ありがとうございます。
○渡辺委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。
四人の参考人の皆様、今日は貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。
最初に、中北参考人にお尋ねをいたします。
冒頭の意見陳述の中で、公開の徹底のお話をされておられました。その中で、公開期間の三年から無期限への延長をということでお話があり、その点、研究上も有用だということもコメントとしてあったところは、そのとおりだと思っております。
そもそも、収支報告書の要旨の問題について、その公表義務について、これが削除をされるということがこの間行われたわけですけれども、このことについてはどのようにお考えになっておられるのかについて教えていただけないでしょうか。
○中北参考人 お答え申し上げます。
昨年、参議院に維新の推薦で参考人として出席させていただきました。その際にも申し述べたように、要旨の廃止ということは、後々、検証可能性というのを損なってしまうということになりますので、研究者の端くれとして、これはどうにか避けていただけないかという話をさせていただきました。その思いは全く変わっておりません。
確かにコストはかかるかもしれないけれども、この点については、与野党しっかり議論していただければというふうに個人的には思っております。
以上でございます。
○塩川委員 ありがとうございます。
そうしますと、自民党の公開強化法案というのが、一階、二階、三階というお話がありましたけれども、一階、二階部分というのが、三年でそもそも公表はなくなってしまう、これまであった要旨も作らないということになると、この三階建てそのものが成り立つのかといった点でも、こういった要旨の廃止の問題をそのままにしたこの自民党の案についてどうお考えなのか、お聞かせください。
○中北参考人 お答え申し上げます。
今お話にあったように、一階部分、二階部分があって三階部分があるということになりますので、仮にデジタル情報による提出が幅広い形で義務づけられ、そしてデータベースとして記録され、その上に例えば公開強化法案みたいな三階建てがあるということになっておりますので、そもそも論として、やはり、公開期限の三年というところに今決まっているところをどうするのか。それが、もちろん、公開期限がかなり無期限とかになってくれば要旨の問題がそもそも発生しないわけでありますので、こういったところをトータルに考えていく。
その一方で、これまでの公開の在り方については、個人名、住所が特定される、ずっとさらされ続ける、こういった問題もありましたので、こういったところ全体で、与野党で協議をしていただきたいというふうに考えております。
○塩川委員 ありがとうございます。
次に、谷口参考人にお尋ねをいたします。
意見陳述のところで、企業・団体献金を受ける政党支部の限定のお話がございました。その際に、一九九三年の十月二十日の山花大臣の答弁を引用されたところですけれども、これはちょうど我が党の東中光雄議員の質疑における山花大臣の答弁と聞いております。その際、山花大臣が、今ある県本部とか支部、総支部の数よりは少なくなることが常識的な流れということを答弁では言っておられましたけれども、我が党の東中議員は、都道府県や市町村単位でつくることができるじゃないか、そうなれば、全部数え上げれば三千六百八十一にもなるし、二つ以上の市町村単位や都道府県単位でもつくることができるから、更に、いわば無数につくることができるということが可能だということを取り上げていたところです。
ですから、当時から、このように数千の政党支部をつくって、そこから政治家個人が企業・団体献金を受け取るという抜け道ができることは明らかだったのではないかと考えますが、その点についてはいかがでしょうか。
○谷口参考人 御指摘のとおりかと存じます。更につけ加えるのであれば、参議院の側では、今度は自民党の関根則之議員から同様の質疑がなされておりまして、そこでもやはり、これは山花大臣ではなく佐藤観樹自治大臣であったかというふうに記憶をしておりますが、やはり同様の答弁がなされた。この二つの答弁によって穴が空いてしまったというのが私の認識でございます。
○塩川委員 ですから、政治家個人への企業・団体献金を禁止と言いながら、当時から、こういった政党支部を通じてということで穴が空いていたという話であります。
その点、成田参考人にこの点でお尋ねしたいんですけれども、この三十年前の政治改革の議論において、こういった、政党支部を通じた政治家個人への企業・団体献金へという抜け道、こういうことが想定されていたのではないかと考えるわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
○成田参考人 先ほど、規正法の二十一条の四で政党支部が政党である法的仕組みを申し上げました。これは、細川内閣で実際に成立した法律ですが、考え出したのは自民党で、その前に、自民党法案が出たときにそういう仕組みを導入しまして、それで細川内閣でもその仕組みを受け継いだ、こういうことです。
それで、自民党側の事情は、要するに、政党助成なり献金を受けるのが本部だけだと、地方議員が困るというんですね。それで、地方議員の資金を手当てをするためにどうしても政党支部が必要になるという考え方でした。今後検討されるときにも、地方議員の資金をどうするかということをやはり同時にクリアしていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
当時から、政党支部がいろいろ使われるということは当然予見されておりました。
○塩川委員 ありがとうございます。
それともう一つ、実際のパーティーについてですけれども、九〇年代にこのパーティーの仕組み、収支報告にも明らかにするような、そういうことが行われたわけですけれども、それが実際には企業・団体献金の迂回路として使われるような、そういう実態というのがあったわけであります。実質、政治資金パーティー、自民党の場合など、八割ぐらいが企業、団体からというのは、これまでの収支報告書の公開の経緯を見ても、見て取れるわけです。
そういった点で、九〇年代における政治改革において、政治家個人への企業・団体献金は禁止したといっても、実際には政党支部を通じて穴が空き、また、パーティー券収入という形を通じても穴が空いている、そういったことが、当時からそういう議論はあったのではないかと思うんですが、その点について、成田参考人はいかがでしょうか。
○成田参考人 当時から当然、そういう懸念はございました。
それで、パーティーにつきましては、しかし、その前は大変無秩序で、誰でも、個人であろうと、誰であろうともパーティーをやることができて、非常にパーティーが乱立しましたので、政治改革、これは細川内閣だけではありません、その前のいわゆる緊急政治改革、与野党合意でやった部分が多いんですけれども、パーティーを秩序立てるという意味で政治団体がやるとか、それから、最初は五十万以上、細川内閣は五万超でしたけれども、自民党との合意で二十万超を公表するというような、一応秩序はつくりました。
ただ、正直申し上げて、一遍に全ての蛇口を止めるわけにはいかないということでパーティーは許されたわけですが、その後、当然そういうものは整理されていくべきだというふうに考えられていた、少なくとも連立政権ではそういうふうに考えていたということでございます。
○塩川委員 ありがとうございます。
小林参考人にお尋ねをいたします。
小林先生がお書きになったものの中で、経済力がある人たちの政治的影響力を強める企業・団体献金自体が、一人一票という民主主義の大前提に反する、法律で全面禁止するべきだと述べておられました。
企業・団体献金というのが、国民の参政権、選挙権を侵害するものではないのか、このように私は考えますが、小林参考人の御意見を伺いたいと思います。
○小林参考人 全く明白なことなんですけれども、要するに、民主主義というのは、全ての人間が対等であるという前提で、そして、生身の自然人の持っている実力で議論し合って、投票を重ねながら調整していく。そこに、自然人の道具にすぎない法人をつくることができる、あるいは管理することができる、いわば金持ちか有力者が、更に法人の金を持って、大体、共産党に献金する大企業はないと思うんですけれども、権力を持っている側に献金して、そして、結果的に大企業に有利な税制が現に行われているというようなことじゃないですか。これは細かな立証は要らないと思うんですね。
そういう意味で、結局は、本来ワン・マン・ワン・ボートのはずのものが、要するに、お金持ちはプラスアルファの力を持って、これじゃ昔の制限選挙と同じで、歴史に逆行するということを申し上げたわけであります。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
続けて小林参考人に伺いますが、日本経団連が政策評価というのを政党に対して行っております。拝見すれば、そのメインが自民党であることは当然明らかなわけですけれども、こういった政策評価に基づいて企業に政治献金の呼びかけを行っている、日本経団連の政策評価に基づく企業献金の会員企業などへの呼びかけという、この在り方についてはどのように受け止めておられるでしょうか。
○小林参考人 もちろん、経団連も許されている公的存在で、それは、政治に対して政策評価するのは、これまた正当な権利だと思うんですね。
ただ、それに従って、企業に額まで割り振っていますよね。これは余計なことでありまして、要するに、我々にとって有利な政策をして、そうでない人も世の中にはいっぱいいるわけですよ、有利な政治をしてくれた方たちに、じゃ、まさにお礼のためにお金を献上する、こんなのは全く、お代官様と御用商人の世界ですよ。こういう構造が今国民に飽きられて、いろいろな政治的変動が起きているじゃないですか。
ですから、ここはきちんとした方がいいと私は思います。
以上です。
○塩川委員 ありがとうございます。
もう一問、小林参考人にお尋ねをいたします。
昨年の法律の改定で、外国人、外国法人等によるパーティー券購入を禁止したわけですけれども、一方で、日本法人で五年以上上場している外資系企業については企業・団体献金禁止の対象から除外するということがこの間行われてまいりました。
これはやはり、外国人等の献金は国家主権に関わると言いながら、特例を設けて献金もパーティー券購入も温存してきた。日本法人で五年以上上場している外資系企業をこういう企業・団体献金禁止の対象から除外をするといった対応については、どのように受け止めておられるでしょうか。
○小林参考人 自民党らしくないと私は思うんですけれどもね。
まさに今、トランプのおかげで戦国乱世状態になっているじゃないですか、世界が。国家主権ということで、非常にきちんと言ってきたのは自由民主党だと思うんですね。私はそれは賛成なんです。そういう意味で、どの国でも、外国の政治的介入というのはよろしくないというのが当たり前の話じゃないですか。主権国家なんですから、国民主権国家なんですから。
だから、そういう意味では、そこは何か別の動機が入っちゃったのかなと。例えば、でも、お金を下さるからいいわ、この人たちは、であったとしたら、誠に日本国として情けないことだと思います。
以上です。
○塩川委員 時間が参りましたので、終わります。
ありがとうございました。
○渡辺委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 有志の会の福島伸享でございます。
本日は、四人の参考人の先生方、本当にありがとうございます。
見ていますと、与党推薦の参考人の先生と野党推薦の参考人の先生で全く立場が二つに、真っ二つに分かれているんですね。第三者機関をつくると言ったけれども、本来、こうやってしっかりとした学術上の議論をすれば、やはり二つに割れると思うんですね。
しかも、この第三者機関の法案は、私がさきの臨時国会で指摘したように欠陥がありまして、この委員は両院協議会の推薦で決めることになっているんです。両院協議会の推薦で決めるとなると、多数決になると、多数派が有利になっちゃうと思うんですね。そうすると、結局、国民と関係ないところで決まるんじゃないかというおそれもありますので、私は、第三者機関でやろうがどうしようが、割れている以上は、とことんこれは議論して結論を出すしかないというふうに思っているということをまず冒頭申し上げたいと思います。
その上で、成田先生にお伺いしたいんですけれども、私、さきの委員会でも言いましたけれども、企業・団体献金というのは、自民党だけ収入の二割を企業・団体献金で賄っていて、あとはもうほんの数%の、ほとんど影響のないレベルしかもらっていないという意味では、自民党の問題だと思うんですね。
なおかつ、党本部になると、先ほど来、中北先生がおっしゃっている自民党も、六割が政党助成金なんですよ。ほかは七割。小泉先生は自民党はそれでも頑張っているんだと言いますけれども、一割の差ですから大した差はなくて、もはや、政党助成金制度が導入されて以降、党本部の運営は政党助成金に頼っていて、むしろこれは、地方議員とかあるいは一人一人の国会議員の収入の問題じゃないかと思うんですね。
私はなぜこれに反対するかというと、私も与党の議員と野党の議員を両方経験しました。民主党政権のときは与党の議員。パーティーをやったら、わんさかわんさか、やはりみんなパー券を買ってくれるんですよ、企業、団体が。その後、野党になったら全く買ってくれません。現に自民党も、二〇一〇年の野党のときから、二〇二二年の、与党になってからを見ると、企業・団体献金は一・五倍になっているんですね。
つまり、私は、さきの国会で言いました、これは単なる与党のボーナスだろうというふうに思っていて、平成の政治改革というのはそもそも、政権交代を起こしやすい仕組みとして小選挙区制度を導入し、また、金の面でも、与党の方にお金が集まって、しかも、その議員が政治活動をほかの、野党の議員よりも多くの秘書を雇ってやれるようになると、逆に政権交代の阻害要因になってしまうという点からも、不適切なんじゃないかなと思うんですけれども、成田先生の御見解をお伺いできたらと思います。
○成田参考人 今国会でもさきの国会でも、自民党からは、企業・団体献金は悪で個人献金は善だという立場は取らないという御発言が度々ございました。このせりふは平成の政治改革でしょっちゅう言われたせりふでございまして、自民党は三十年来主張を変えていないということでございます。
それで、平成の政治改革のときには、確かに野党は、企業・団体献金は悪で個人献金は善だと言ったんですよ。その理由として、野党は、当時の野党というのは、細川内閣では与党ですけれども、それは、ロッキード事件、リクルート事件を見ても、企業献金はやはり腐敗の温床になっている、腐敗をもたらしている、だから、企業献金は悪で個人献金は善だと。それに対して自民党は、いや、企業・団体献金は悪で個人献金は善だという立場は取らないという防戦をしたんですね。
ところが、三十年たって、今の野党はそんなこと言っていないんですね。今の野党は、別に善だとか悪だということと関係なく、立法がゆがめられる、国会の議論がゆがめられるから、だから禁止した方がいい、こういう議論に転じております。
ですから、自民党も、是非議論を発展させて、新しい議論で企業・団体献金の正当化の議論をやっていただきたい、こういうふうに考えております。
○福島委員 ありがとうございます。
私も全く同感でありまして、やはり日本の三十年間、主に自民党政権が担っている中で、なぜこの国は成長しなかったかという根源に私はそこがあると思っておりますので、この議論をしているところでございます。
その上で、また小林先生、今の成田先生の答弁の続きなんですけれども、個人献金が善で企業・団体献金が悪だという立場ではないとおっしゃるんだけれども、私は、質的に違うというのは憲法論からも導けるんじゃないかなと思っているんですね。
先ほど来、憲法の根拠とするのは二十一条の表現の自由でありますけれども、その前に、憲法十三条、幸福追求権、そこで、全ての国民は個人として尊重されるとあって、そこに出てくるのは個人なんですね。だから、個人献金であって、幸福追求の一つの手段として政治への参加があるから、一人一票、平等になって、その権利が保たれているんじゃないかと、私のような憲法の素人は思うわけですね。
だから、私は、企業・団体献金と個人献金というのは全く別種のものだと、その点からも導けるんじゃないかと思うんですけれども、小林先生の御意見をお伺いできればと思います。
○小林参考人 日本国憲法の十三条というのは、アメリカの独立宣言の引き写しで、その中で、オール・メン・アー・クリエーテッド・イコール、人はみんな平等につくられている。だから、階級社会でいじめてきたイギリスと戦って、一人一票で、民主国家を世界で初めてつくったわけですよね。それが、日本の憲法でいえば、四十四条と十四条に表れているわけです。
そして、政治献金は、二十一条の表現の一環としてというよりも、二十九条、自分の財産権をどうしようが勝手でしょうと。だから、これも個人なんですね、本来、十三条から流れている。そこに、企業という、本来、オール・メン・アー・クリエーテッドのメンに入っていない、人間の道具にすぎないんです、企業というのは。特定の目的を、つまり、私がここにいて、あちらでビジネスしたいから会社をつくって稼がせてもらう、こういう手段として開拓時代に発想されたものですよね、企業というのは。
だから、そういう、人間の道具にすぎない企業に一つの人格を与えちゃいけないんですよ。ですから、やはり十三条の原点に戻って、個人単位に考える、ナチュラルパーソンの個人単位に考えるべきだと思います。
○福島委員 ありがとうございます。
だから、その十三条の方が主であって、二十一条とかそういうのはそれに従属するものであって、上位概念はあくまでも個人の尊厳であるということだと私は理解いたします。ありがとうございます。
その上で、それを受けた上で、敬愛する中北先生にお伺いしたいと思うんですけれども、余り質問してほしくないと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、昨年の六月十四日、参議院の政治改革特別委員会の参考人質疑のときに、中北先生は、企業・団体献金の禁止には条件付賛成である、条件というのは、恐らく個人献金を拡大することを条件なんじゃないかなと文意では判断したんですけれども、そうおっしゃっております。
また、企業・団体献金や企業、団体によるパーティー券の購入を禁止することというのは、一定の理由があり、反対ではございませんとおっしゃっていたんですけれども、今日、話を聞くと、何か随分立場が変わっちゃって、与党推薦だから変わったとは思いませんけれども、その違いは何なのか、違いはなくて一緒なのか、その辺りの御見解についてお聞かせいただけませんでしょうか。
○中北参考人 厳しい御質問、どうもありがとうございます。
私は主義主張を一貫させているつもりでございまして、原理原則からいえば禁止することはあり得る、日本国憲法上も禁止することはあり得る。ただ、目下の日本の政党政治が抱えている資金的問題の課題は何なのかというところと関係して、国営政党化が一番問題である。そういったところについてきちんとした考慮をせずして即時に全面的に禁止するということは相当危ういのではないか。このように私は主張しているつもりであります。
例えば、企業、団体であれば政治がゆがむということを一方的に野党の皆さんは言うけれども、例えば、小泉純一郎総理のときに、自民党の最大の支援団体である全特、これを切り捨てるようなことをやっているわけですよ。農協改革も一緒。第二次安倍政権のときの農協改革、JAがあんなに自民党を支えているけれども、ある意味で規制を加えるような、こういうことを行っているわけです。JAが嫌なことをやった。立憲民主党も一緒ですよ。今の立憲民主党案、連合は賛成しているということを思っておられますか。余り賛成していないんですよ。でも、出しておられる。
ですから、結局、企業、団体が思うように政党が動いているわけではないんですよ。これはなぜかというと、多様な支援者がいて政党が成り立っている、これが重要なんですよ。一個の団体に従属的に政党が動いているわけじゃないんですよ。また、一個の団体に動かされないために、多様な団体に支援してもらうことが重要なわけですよ。
むしろ、野党の皆さんには、多種多様な企業、団体に支えてもらって、一個の団体がつべこべ言ったら、それに対してそうではないと言えるぐらいの力を私は持っていただきたい。そして、政権交代を成し遂げていただきたい。そういう力強さを是非持っていただきたい。このように考えております。
○福島委員 それは恐らく、学者の方はそうおっしゃるかもしれないけれども、現実にはそうならないんです。先ほど申し上げたように、野党になったら企業はパーティー券を買いません。ましてや、公表されると報復されるわけだから、与党に対してですよ、途端に買わなくなりますよ、それは。それが現実で、野党は、じゃ、企業・団体献金、悔しかったら集めろというのは、それは私は、申し訳ないけれども、選挙や政治活動をやったことのない机上の空論とあえて申し上げさせていただきたいと思います。
その上で、よく海外の例でも企業・団体献金は禁止されていないと言いますけれども、少なくとも、夏に行ったドイツとイギリスでは、全面的にもろ手を挙げて賛成じゃないと思うんですね。
確かに、ドイツのCDUは企業・団体献金を一定取ろうとしております。ただ、やはりSPDの方は、企業献金の是非が議論となって、我々から積極的に企業に献金を募るようなことをしていないとおっしゃっているわけだから、政党によってこれはいろいろな議論があって、そのせめぎ合いの中にあると思うんですね。
イギリスも、保守党の元議員の方は、一般に英国でも個人献金は善、企業献金は悪だという見方は日本と同様と。小泉議員は俺は違うとこの間おっしゃっていましたけれども、でも、イギリスも一般的には企業献金は悪だといって、現に、上場企業は株主の了解が必要だから、十四年間続いた保守党政権でも上場企業が献金したことはないというふうにおっしゃっていて、そういうのを聞いてみると、やはり企業献金というのは一定制限するというのは、胸を張って企業献金を受け取りますというものじゃないというのは世界の共通のようなものに思うんですけれども。
ただ、私はイギリスとドイツで特定の人しか聞いていませんから、その辺りはどうか、是非御説明をお願いいたします。
○中北参考人 お答え申し上げます。
先ほど、私が冒頭で説明した際述べましたように、企業・団体献金を禁止している国は全世界では四分の一程度ということでございます。これが多数ということではありません。
あと、先ほど、野党であるから企業・団体献金は来ないとおっしゃいましたけれども、二〇〇九年、政権交代が起きたのはなぜでしょうか。また、アメリカ、イギリス、中道左派政党も政権を握っております。
こういったことを考えれば、企業・団体献金は野党には入ってこないから永遠の野党だというのは、いささか福島先生にしては気弱な発言ではなかろうかというふうに思っております。
以上でございます。
○福島委員 ここで議論してもしようがないですけれども、それは全然違うということは私の経験から申し上げるし、小泉政権のときだって大変だったんです、これは私が自分の意見表明のときに申し上げましたけれども。そんな生易しいものじゃないということはまず申し上げたいと思います。
最後に、谷口先生にお聞きしたいんです。
企業・団体献金は、恐らく、段階的にやっていき、最後、禁止までするんだったら民意を踏まえよというのが谷口先生の御主張なのかなと要約させていただきましたけれども、我々、今、確かに迂回献金みたいなのが起きたら駄目だと思います、個人献金に偽装されて透明性が下がるというのはいけないと思っていて、いろいろ条文を考えて、私たち、立憲、参政、有志の会及び維新の会で作っている案では、会社とかが強制的に、役員の人がおまえ寄附しろとかというのを禁止する規定を設けておりますし、私はこれこそ第三者機関の役割だと思っておりまして、仮に望まない献金をさせられたような場合であったら、きちんとその第三者機関に申立てをして、しかるべき調査を行って、その後措置命令を出したり、最後はその上で罰則をかけるというやり方も立法上はあると思っておりまして、私はここが一番のキーだと思うんですよ。迂回させないための仕組みをいかに精緻につくるかというのがキーだと思っております。
その点について、迂回献金が起きるから企業・団体献金は禁止できないんだと一律に乱暴に言うんじゃなくて、そこは制度のつくり方じゃないかと思うんですけれども、先生の御認識、いかがでしょうか。
○谷口参考人 お答えいたします。
迂回献金と申しましても、あからさまな迂回献金というのはそもそも違法でございますので、そうすると、あうんの呼吸で行われるいわゆる迂回献金ということで、ここを制度化で網をかけていくというのはなかなか難しい。何か網をかけても、恐らく次の何か手段というのが見つかるということになるのかなというふうに存じております。
重ねて申し上げますが、私としては、企業・団体献金の即時全面禁止、もし与野党で合意なされるのであればこれは反対するものではございませんが、何かしらの習慣をやめるというようなことを御想像いただければと思いますが、あしたからきっぱりやめる、ゼロにするというのと、まずは量を半分にして、体が慣れたらまた半分にしてとだんだん段階的に進めていくのと、実効性はどちらがあるんだろうか、そういう道筋だろうかという道筋論で申し上げている次第でございます。
○福島委員 ありがとうございます。
四人の先生、ちょっと生意気な口を利いたかもしれませんけれども、どうもありがとうございました。
○渡辺委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時三十七分散会