第36号 平成15年5月30日(金曜日)
平成十五年五月三十日(金曜日)―――――――――――――
平成十五年五月三十日
午後一時 本会議
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○本日の会議に付した案件
預金保険機構理事及び同監事任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件
運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。
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預金保険機構理事及び同監事任命につき同意を求めるの件
労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件
中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件
運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件
○議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。
内閣から、
預金保険機構理事及び同監事
労働保険審査会委員
中央社会保険医療協議会委員
及び
運輸審議会委員に
次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。
内閣からの申し出中、
まず、
預金保険機構理事に篠原興君及び松田京司君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
預金保険機構理事に廣瀬権君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
次に、
預金保険機構監事に中嶋敬雄君を、
労働保険審査会委員に白井康正君を、
中央社会保険医療協議会委員に村田幸子君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。
次に、
運輸審議会委員に榊誠君を
任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。
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保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、保険業法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣竹中平蔵君。
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) ただいま議題となりました保険業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
我が国の生命保険を取り巻く環境は、保有契約高の減少や株価の低迷等に加え、超低金利の継続によるいわゆる逆ざや問題により、一層厳しいものとなっております。
こうした中で、これまでも生命保険契約者保護のための資金援助制度の整備や保険会社の経営手段の多様化等を図るための措置を講じてきたところですが、今般、保険業の継続が困難となる蓋然性のある保険会社について、保険契約者等の保護の観点から、契約条件の変更を可能とする手続等の整備を行うため、この法律案を提出することとした次第であります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、保険業の継続が困難となる蓋然性のある保険会社については契約条件の変更の申し出を行うことができることとするとともに、契約条件の変更を行うための手続として、株主総会等の特別決議のほか、異議申し立て手続等を行うこととしております。
第二に、契約条件の変更に当たっては、保険契約者等に対し、契約条件の変更がやむを得ない理由、契約条件の変更の内容、契約条件の変更後の業務及び財産の状況の予測に加え、基金及び保険契約者等以外の債権者に対する債務の取り扱いに関する事項、経営責任に関する事項等を示さなければならないこととしております。
第三に、契約条件の変更は、それまで積み立ててきた責任準備金に対応する権利に影響を及ぼしてはならないこととするとともに、変更後の予定利率は、保険会社の資産の運用の状況その他の事情を勘案して政令で定める水準を下回ってはならないこととしております。
第四に、内閣総理大臣は、契約条件の変更の申し出の承認を行うとともに、必要に応じ保険調査人に契約条件の変更の内容等について調査させた上で、当該保険会社において保険業の継続のために必要な措置が講じられた場合であって、かつ、契約条件の変更が保険契約者等の保護の見地から適当であると認められる場合でなければ、契約条件の変更案の承認をしてはならないこととしております。
第五に、基金に係る債務の免除を受けたとき等の基金及び基金償却積立金の取り扱いについて規定の整備を行うなど、所要の措置を講ずることとしております。
以上、保険業法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を申し上げた次第であります。
何とぞ御審議のほどよろしくお願い申し上げます。(拍手)
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保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。増原義剛君。
〔増原義剛君登壇〕
○増原義剛君 自由民主党の増原義剛であります。
私は、自由民主党、公明党、保守新党を代表して、ただいま議題となりました保険業法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
生命保険は、人の生死や疾病などのさまざまな危険に備え、国民が自助努力によってその生活基盤を保障するという重要な役割を担っております。また、我が国では約九割の世帯が生命保険に加入しているなど、国民生活に深く根づいており、今後の高齢化社会においても、この自助努力はますます重要なものになると考えます。
そうした中で、バブル崩壊以降、我が国では、世界でも例を見ないゼロ金利政策が継続されております。バブル期には六%を超えていた国債金利も、今では一%を切っており、極めて異例な事態と言わざるを得ません。
こうした政策は、我が国経済の設備投資や住宅建設などにはプラスの役割を果たしているものと考えますが、一方、利子所得減少による消費の減退、年金などの資産運用の低迷など、必ずしも好影響を与えていない面も出てきていると考えます。
そこで、まず、このような超低金利政策の意義について、竹中経済財政政策担当大臣の御見解をお伺いいたします。
こうした超低金利政策の影響を受けているものの一つに、生命保険会社があります。生命保険会社は極めて長期の保険契約を多く抱えておりますが、超低金利の長期化に加え、株価や地価の下落という資産デフレによりまして、保険会社が保険契約者に約束した予定利率と実際の運用利回りとの間に乖離が生じ、いわゆる逆ざやが構造的な問題となってきております。さらに、生保の保有契約高は減少傾向にあり、生命保険会社の経営環境は極めて厳しいものになっていると考えます。
そこで、超低金利や資産デフレの長期化が生命保険会社の経営にどのような影響を与えているのか、生命保険会社の経営状況をどのように認識しているのか、竹中金融担当大臣の見解をお伺いいたします。
次に、生命保険会社が、経営の健全性の確保に向けて、みずからの努力でその健全性を確保するために取り組むことは当然のことでありますが、そこには、経済環境も含めて、みずからの努力では限界も生じているのではないかと考えます。厳しい経営環境のもとで、抜本的な対策が講じられないまま、時の経過とともに体力を消耗し、最悪の場合、破綻に至るといったような事態になれば、保険契約者に大きな負担をもたらすことは、過去の七社の破綻事例を見れば明白であります。
また、かつての高い予定利率の保険契約者と、近時における一・五%といったような低い予定利率の保険契約者の間で、世代間の不公平ももたらしているのではないかと私は考えております。
もとより、保険契約は私的な契約であり、憲法上の財産権の保障といった問題もあることから、その変更については慎重に取り扱わなければなりませんが、現在のようなゼロ金利や資産デフレがかくも長く続くとはだれも想定していなかったことであり、私は、事情変更の原則に照らして考えるべき問題でもあろうと思います。
これらを踏まえれば、国民の多くが加入している生命保険の保険契約者の真の保護という観点から、予定利率の引き下げ制度という、破綻に至る前のセーフティーネットを用意することは、ぎりぎりの政策としてやむを得ないと考えます。
今回の制度整備の趣旨について、竹中金融担当大臣に改めて説明を求めます。
今回のスキームは、各社ごとに、保険会社・保険契約者間の自治的な手続によって契約条件の変更を行うものであります。すなわち、保険契約者自身が、予定利率の引き下げを行うことが本当に自分の利益につながるものであるかどうかを判断することが求められております。
そのため、保険会社は、保険契約者に対して、契約条件の変更の内容のみならず、保険会社の経営内容や収支見通しにつきましても、十分な情報開示、ディスクロージャーを行うことが必要であると考えます。また、政府においても、総理以下関係者が国民にこのスキームの真の意義と内容をしっかり説明することが重要であり、これらが確保されて初めて今回のスキームが有効に機能するのではないかと思います。
予定利率の引き下げにおける保険会社のディスクロージャーと政府の国民に対する説明責任の重要性について、竹中金融担当大臣の見解を伺います。
予定利率の引き下げといっても、一般に保険契約は複雑な計算によって設計されており、契約条件の変更の内容について、ひとり保険契約者だけに判断を求めることには無理があると思います。したがって、保険会社から提案された内容が保険契約者の権利を不当に害しないものであるかどうか、十分なチェックが働くような手当てを講じることが必要であると考えます。
また、将来、景気が好転し金利が上昇する、そういうことも十分に考えられるわけであります。こうした場合には、予定利率を引き下げた保険契約者に対して、優先的に配当を行ったり予定利率を再び引き上げるといった対応も行うべきであると考えます。
今回の法案において、こうした観点から実際にどのような配慮がなされているのか、竹中金融担当大臣の答弁を求めます。
さらに、今回のスキームは、保険会社の破綻を未然に防ぎ、保険契約者の真の保護を図ることが目的ではありますが、そのための負担をひとり保険契約者のみが負うことには問題があると考えております。
そこで、保険契約者以外の関係者がどのような負担を負うのか、例えば、保険会社の経営責任はどうなるのか、銀行等が拠出している基金や劣後ローンの扱いはどうなるのかといったことも、保険契約者の理解を得るためには重要な問題であります。
こうした点について、今回のスキームではどのような手当てがなされているのか、竹中金融担当大臣の答弁を求めます。
最後に、今回のスキームは個別の保険会社の申請により行うものであるため、各社は解約の増加や新規契約の減少をおそれて実際には使われないのではないかといった指摘もあります。
私は、保険会社において予定利率の引き下げを行う場合には、例えば合併・再編といったような施策をあわせ行うことにより、初めて保険契約者の信頼を維持することが可能であると考えます。
今後、生命保険に対する国民の信頼がさらに向上するよう、本制度を的確に運用されることを政府に要望し、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 増原議員にお答え申し上げます。
超低金利政策の意義についてお尋ねがございました。
日本銀行は、平成十三年三月から、消費者物価指数の上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで量的緩和の枠組みを継続することとしており、これにより、現在、短期金利はゼロ近傍にまで低下しております。
日本銀行によるこうした取り組みには、短期のみならず長期金利の抑制による景気への刺激や人々のデフレ懸念を解消する効果が期待されておりまして、実際にも、企業や家計の借り入れ負担の抑制を通じて、設備投資、住宅投資、ひいては雇用等の面で、景気の下支えに一定の貢献をしてきたものというふうに考えております。
生命保険会社の経営状況についてのお尋ねがございました。
超低金利等の長期化による逆ざやのほか、保有契約高の減少、株価の下落等により、生命保険会社は構造的に厳しい経営環境にあると考えております。こうした中で、生命保険会社は経費削減や合併・再編等の経営努力を積み重ねているところであるというふうに承知しております。
予定利率引き下げ制度の趣旨についてのお尋ねがございました。
我が国の生命保険を取り巻く環境は、契約高の減少、株価の低迷等に加えまして、超低金利の継続によるいわゆる逆ざや問題により、一層厳しいものとなっているというふうに認識しています。
こうした中で、逆ざや問題を解消し、保険契約者の保護を図るため、保険会社・保険契約者間の自治的な手続によって契約条件を変更する仕組みを整備し、経営の選択肢の多様化を図るもの、これが趣旨でございます。
ディスクロージャー及び政府の説明責任の重要性についてのお尋ねがございました。
契約条件の変更が保険会社・保険契約者間の自治的な手続により行われるということを踏まえれば、ディスクロージャーは極めて重要であり、保険会社は保険契約者に対してみずから幅広いディスクロージャーを行うこととなるというふうに考えております。
また、政府としましても、制度の意義、内容等について、十分理解が得られるよう努めてまいる所存でございます。
契約条件の変更の内容のチェックや優先配当などへの対応についてのお尋ねがございました。
今回のスキームにおいては、行政当局は、必要に応じて第三者の専門家に契約条件の変更の内容等について調査させた上で、契約条件の変更の内容等が保険契約者の権利を不当に害していないか等をチェックすることとしております。
また、契約条件の変更の対象となる契約者に対しては、優先配当等を行うことが考えられますが、その場合には、その方針を定款に記載させること等によりまして方針の明確化等を図ることとしております。
保険契約者以外の関係者の取り扱いについてもお尋ねがございました。
今回のスキームは、保険会社・保険契約者間の自治的な手続により契約条件を変更するものであり、経営責任や基金等の取り扱いについても保険契約者の十分な理解を得ることが求められるというふうに考えております。
このため、保険会社に対し、経営責任や基金等の取り扱いについて記載しました書類を保険契約者に送付することを法律上義務づけることとした次第でございます。
以上六問、お答え申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 永田寿康君。
〔永田寿康君登壇〕
○永田寿康君 民主党の永田寿康でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました保険業法の一部を改正する法律案につき、御質問をさせていただきます。(拍手)
まず第一に、一回の通常国会で同じ法案を二度改正することになった経緯につき、御質問を申し上げます。
先日、保険業法は改正されました。生命保険契約者保護機構に関する政府の支援を延長するための法改正であります。そのとき、既に政府は予定利率の引き下げを検討していたにもかかわらず、この問題は法改正に盛り込まれませんでした。自民党の山崎幹事長は、予定利率の引き下げは統一地方選挙にマイナスであるという発言をしています。
しかし、何千万人という保険契約者に影響する問題であれば、むしろ、選挙の争点の中心に据えて有権者の意見を反映させるべきではなかったかと私は考えております。この点について、第一に質問いたします。(拍手)
第二に、契約者と生命保険会社との情報の非対称性について質問をいたしたいと思います。
政府案では、生命保険会社がつくった再建案、予定利率の引き下げや契約者債権以外の債権カットも含むものですが、この保険会社がつくった再建案を契約者総代会などに提示して理解を求めることとされています。
しかし、契約者にとってみれば、この保険会社が示した案が適切なものかどうか判断をするのは絶望的に難しいのであります。なぜなら、死差益、費差益、利差益といったものが契約者に秘密にされている上に、財務諸表の正確さにも疑義があるからであります。
現在、すべての保険会社はソルベンシーマージン比率が二〇〇%を上回っており、健全だとの説明がなされております。しかし、この説明をまともに信じている人はほとんどいません。むしろ、健全だ、健全だと言い張る一方で予定利率の引き下げが華々しく議論されることに、契約者は大きな戸惑いを感じているのです。
民主党は、死差益、費差益、利差益の開示はもちろんのこと、ソルベンシーマージン比率の計算の根拠となる数値についても契約者に説明すべきだと考えています。この情報開示の制度を盛り込むつもりがないか、金融担当大臣にお伺いしたいと思います。(拍手)
第三に、憲法の保障する財産権との関係を指摘したいと思います。
政府案では、十分の一以上の契約者が異議を申し立てれば、この再建案は実行されないこととなっています。裏を返せば、破綻処理をした方が有利であるような契約者が全体の十分の一未満であれば、この再建案が実施されてしまいます。その場合、このような破綻処理をした方が有利な契約者の財産権はなぜ保護されないのか、法律的な説明を求めたいと思います。
第四に、仮にこの憲法問題がクリアされても、破綻処理をするよりも予定利率を引き下げた方が有利であるという説明を避けて通ることは許されません。この破綻処理よりも有利だという説明は、だれが、どのようにして行うのか、そして、その説明が間違っていたときにはだれが責任をとるのか、明確な答弁をお願いしたいと思います。
なお、新聞や雑誌には、政府、金融庁がモデルケースを用いて試算したその試算を引用して、破綻処理をするよりも予定利率を引き下げた方が有利であるとの説明がなされています。しかし、破綻処理では確かに保険会社の価値は解散価値に限りなく近づいてしまうかもしれませんが、税金による救済の可能性もあるわけですから、必ず破綻処理よりも有利だということを先験的に断言することには無理があると思います。
今、ここで、同じ条件で比較した場合には、破綻処理をするよりも必ずしも予定利率を引き下げた方が有利であるとは言い切れない、断言できないということを確認したいのですが、金融担当大臣、確認させてください。(拍手)
第五に、破綻を回避するために予定利率を引き下げるのですから、予定利率を引き下げた後に破綻してしまったのでは元も子もありません。その後の経営の安定性が確実に確保されるという理由はどうやって説明されるのか、だれが説明するのか、そして、間違っていたときにはどのようにして責任をとるのか、確認したいと思います。
第六に、十分の一以上の契約者が異議を申し立ててこの再建案が否決されて実行に移されなかった場合、財務基盤に対する信用が失われて解約が殺到して破綻につながってしまう可能性はないのでしょうか。その場合、解約を停止する処分が行われるわけですが、解約が停止された場合、かえって経済的損失が拡大してしまうケースも考えられます。そのような契約者の財産権が保護されない理由を改めて御確認したいと思います。
第七番目として、契約者と保険会社の契約関係の不平等性について質問したいと思います。
現在、小泉政権の経済無策のせいで、保険料が支払えなくなって、やむなく解約に至る契約者はたくさんいます。そのような保険料が払えないことによって解約に至った場合、確かに契約不履行の非は契約者にあるわけですから、その責めを契約者が負うのは当たり前だと思います。しかし、今回の予定利率の引き下げは、逆ざやによって保険会社の財務基盤が著しく損なわれ、言いかえれば、保険金が支払えなくなる可能性が出てきたことが発端になっているのです。
つまり、契約不履行の非は保険会社の方にあるのであって、それを契約者がこうむるいわれは全くありません。しかし、現実には、その経済的損失は契約者に配分されてしまうのです。なぜこのような契約関係の非対称性が許されるのか、法的責任を説明していただきたいと思います。
第八に、政府は契約者総代会を一種の民主的議決機関とみなしています。しかし、現実を見てみれば、契約者総代会のメンバーは会社にとって都合のいい人ばかりが選ばれていて、今や、会社のお手盛り追認機関と化している契約者総代会はたくさん見られるのです。
この会社のお手盛り追認機関、契約者総代会が契約者の利益を守ってくれるだろうという現実離れした妄想を抱いている理由をぜひお聞かせいただきたいと思います。(拍手)
第九に、バブルのころの堕落した経営方針について指摘したいと思います。
バブルのころ、生命保険会社は、ろくにすぐれた保険商品を開発する努力を怠り、そして、わずかに予定利率が高いような商品を新商品と称して売っていたのです。特に、既存の契約者に対しては、既存の契約を解約し、新しい契約に乗りかえれば、解約した瞬間は損をするかもしれないけれども、後々、高い利回りで得をすることになるのだという説明をしていました。保険の外交員は、この乗りかえに対して、インセンティブまで受け取っていたのです。このような安易な乗りかえ主義の経営方針がいずれ破綻を招くことは、子供でもわかることです。
この乗りかえ主義の経営方針を採用してきた経営者の責任をいかに考えるのか、竹中大臣の認識を御説明いただきたいと思います。(拍手)
第十に、再建手続に関する政府の関与が小さ過ぎる問題について指摘したいと思います。
銀行の破綻の場合には、公的資金を導入し、日銀特融、特別支援、そして、一時国有化から受け皿銀行を探してくれるという、まことに手厚い政府の関与が認められています。
しかし、生命保険の場合には、破綻をして公的資金を導入されることはもちろん可能性としてはあるわけですが、予定利率の引き下げの場合には会社発議で債権者の了解をとらなければならないということで、極めて自主的、自治的な性格が強くなっています。
果たして、このような政府の関与が小さい手続で国民は信頼してくれるのでしょうか。特に、政府は、今回の予定利率引き下げは破綻処理に加えてその手前で再建する手段を新たに追加するものだという説明をしています。しかし、不十分な情報開示といいかげんな手続で契約内容の変更をするような、そんなことが認められてしまっては、かえって保険そのものに対する信頼が失われてしまうことになるのではないかと私は心配しています。
ですから、このような小さな政府の関与でいいと考えている理由をぜひ合理的に説明していただきたいと思います。
さらに、第十一に、運用失敗の責任も指摘したいと思います。
老舗の保険会社の中にも、立派に運用しているところはたくさんあります。そうであるならば、逆ざやによって破綻を心配されるような保険会社の運用失敗の責任は免れません。この運用失敗の責任について、竹中大臣、どうお考えになるのか、教えていただきたいと思います。
さらに、第十二として、横並び意識の強い保険業界で、ほかの保険会社に先立って予定利率の引き下げの手を挙げてくるような会社が本当にあらわれるのか、大変疑問があります。大臣の所感をお伺いしたいと思います。
第十三に、今回の制度が導入されれば、逆ざやを理由にした破綻は許されなくなるということを指摘したいと思います。
逆ざやの本質が、予定利率を下回る運用成績であるならば、予定利率を引き下げれば問題は解決するはずです。しかし、予定利率を引き下げるという手段が整備されておりながら、それを活用せず、漫然と問題を放置して破綻に至るようであれば、不作為の責任は免れません。この一種の背任とも言える経営者の不作為の責任はどのようにして法的に追及されることになるのか、ぜひ竹中大臣の御意見を伺いたいと思います。
さらに、第十四として、逆ざやを理由とした破綻が許されないのであれば、生命保険契約者保護機構のあり方も見直さなければなりません。
逆ざや以外の理由で破綻をするのであれば、公的資金を必要とするような大規模な破綻が起こる可能性は極めて低くなります。そうであるならば、契約者保護機構並びに政府の支援のあり方について縮小の方向で見直すべきだと思いますが、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
十五番目の指摘として、モラルハザードを指摘したいと思います。
民主党の五十嵐金融担当ネクスト大臣が指摘しておりますとおり、強過ぎるセーフティーネットはモラルハザードを引き起こします。本来、国民生活のセーフティーネットであるはずの保険に対して、生命保険契約者保護機構というセーフティーネットが整備されているということは、異常なことであります。保険が危険だという、このわけのわからない状態は、本来はあってはならないことなのです。
ですから、その無謀な運用や放漫な経営という、生命保険の財務基盤を著しく損なう原因となったこの二つのポイントについては、セーフティーネットに甘えるモラルハザードの蔓延が指摘されてしかるべきだと思います。
竹中大臣は、このセーフティーネットに甘えるモラルハザード、その因果関係についてどのようにお考えなのか、御所感をお伺いしたいと思います。
第十六として、責任を明らかにしない日本全体のモラルハザードについても指摘したいと思います。
古今東西、例を見ない低金利が続いています。この低金利は、もともと、銀行の経営を助けるために行われたものであります。銀行に利ざやを稼がせ、そして不良債権の処理を、処理なんかしません。処理をおくらせるだけです。先延ばしするだけです。この先延ばしをするための利ざやを稼がせてきた。一方で、逆ざやは生命保険に押しつけてきたのです。銀行も行政も政治家も一切責任をとらない、そして、銀行の預金者と生命保険の契約者に責任のすべてを押しつけてきた。このやり方は断じて不公正というべきであります。(拍手)
民主党は、経営者の責任を求めます。責任をとっていただいて、そして、身ぐるみはがれて路頭に迷うようではかわいそうですから、そうしたら温かい手を差し伸べてあげる。だけれども、その後に、失敗の責任をとって、その失敗の経験を生かして再チャレンジしたければしていただく。これが民主党の考える社会像であります。
失敗しても責任をとらない社会と、失敗した後に責任をとって再チャレンジしていただく社会とは、本質的に異なるものだと思います。日本の活力を復活させる意味で、竹中大臣、どちらの社会の方が望ましいとお考えになるのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。
この点について、先日の、りそな銀行に対する公的資金の注入についても、一つ申し添えたいと思います。
あれほどの金を使っておきながら、銀行の経営者の緊張感を復活させるための、ダイナミズムを復活させるための道につながらなかったということは、極めて遺憾であります。ぜひもう少しドラスチックな方法をとっていただきたく、お願いをします。
最後に、かつて予定利率がぐんぐん引き上げられていた時代の監督当局の責任についても指摘したいと思います。
予定利率が引き上げられていって、五%を超えて、何十年もの長期にわたる契約を認めてきた金融庁の責任は非常に重いと思います。ぜひ、その点について明らかにしていただきたいと思います。
本日は、本会議で大変時間の短い中、本来の質問の数分の一しか、ここで述べることができませんでしたが、続きは財務金融委員会でおつき合いをいただきたくお願い申し上げ、私の質問といたしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 永田議員から、十七問の質問をいただきました。
保険業法の改正の経緯でございます。
生保のセーフティーネット等に関する改正につきましては、本年三月末で、御承知の特例、セーフティーネットの政府補助の特例措置が切れることになっていますために、早期に手当てする必要があった、それが先般の法律改正でございます。
一方、予定利率の問題につきましては、多くの論点が存在しますことから引き続き幅広く検討したところでございますけれども、今般、関係方面と議論を深めた結果、このような形で本法案を取りまとめることができたため、国会で御審議いただく運びとなったわけでございます。
情報の非対称性、さらには、財務内容のディスクロージャーについてのお尋ねがございました。
契約条件の変更が保険会社・保険契約者間の自治的な手続により行われることを踏まえれば、御指摘のとおり、ディスクロージャーは極めて重要であるというふうに思っております。特定の項目について特に開示を義務づけるといったことは考えておりませんけれども、保険会社は保険契約者に対してみずから幅広いディスクロージャーを行うこととなる、これが経営戦略にもなるというふうに考えております。
なお、ソルベンシーマージン比率の内訳についてでありますけれども、これは、平成十四年三月の府令改正におきまして、各保険会社に開示を義務づけることとしたところでございます。
財産権との関係についてお尋ねがありました。
憲法の保障する財産権、これは重要でありますけれども、法律によって合理的な範囲の制約を加えることは、つまり、別の公益を守るという場合は憲法に違反するものではないというふうに承知しております。
今般の予定利率の引き下げにつきましては、保険契約者の保護の観点から、保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合に限り、一定の限度を設けた上で厳格な手続を経て行う、保険契約者に対する情報の提供や行政当局のチェックも行うということでありますので、総合的に勘案すれば、合理的制約としてこれは容認されるのではないかというふうに思っております。
破綻処理との比較についてお尋ねがありました。
これは、御指摘のとおり、大変難しい問題だと思います。予定利率の引き下げに当たりましては、保険会社には、保険契約者の十分な理解が得られるよう説明することが当然求められます。したがって、法律上も、引き下げの理由や引き下げ後の経営の見通し等を示さなければならないこととしております。
さらに、行政当局は、必要に応じまして第三者の専門家に契約条件の変更の内容について調査させた上で、条件変更の内容等が保険契約者の権利を不当に害していないか等をチェックする仕組みをつくっているわけです。
また、御指摘の試算でありますけれども、これは、試算でありますので、あくまで一定の前提を置いて機械的に行ったものでございます。破綻と予定利率引き下げの場合の比較、これはなかなか単純に比較することはできません。いずれにしても、これについては、私どももしっかりとまた説明していきたいというふうに思っております。
利率引き下げ後の経営をどうするかというお尋ねがありました。
予定利率の引き下げに当たっては、先ほども申し上げましたように、保険会社は契約者に対して引き下げ後の経営の見通し等を示さなければならないこととしている、また、行政当局は必要に応じて第三者のチェックのシステムも持っているということでありますので、契約者の権利を不当に害しないということをぜひきちっとチェックしていきたいというふうに思っております。
手続中の解約の停止についても少し言及がございましたので申し上げますが、予定利率の引き下げは保険会社・保険契約者間の自治的な手続により行われる、まずもって保険会社に、保険契約者の十分な理解が得られるような対応が当然のことながら求められます。
では、解約に係る業務の停止はなぜ行うのかということでありますが、これは、手続を混乱なく粛々と進めて、保険集団の維持を図るために必要な場合に行うものでありまして、契約者の保護にむしろ資するものと私たちは考えております。
今回のスキームでありますけれども、保険契約者にとって不平等ではないのかという御指摘もございました。
今回のスキームは、保険契約者の保護を図るため、保険会社や保険契約者の自主的な判断、自治的な手続により契約の変更を可能とする、あくまで趣旨はその点でございまして、契約者の十分な理解を前提とした仕組みとなっております。
こうした観点から、保険会社に対して、経営責任の取り扱い等についても契約者に明示させることとしているわけでございます。
保険会社の総代会についてお尋ねがありました。
保険相互会社の総代会は、業務運営の最高意思決定機関でございます。社員から選出された総代によって構成される。これがうまく機能しているかどうかという御指摘でございますが、総代会については、法律上、少数の社員に議案提出権を与えているなど、できる限り多くの社員の意思が経営に直接反映されるような仕組みが設けられているというふうに認識しています。
また、各保険相互会社は、総代会に保険契約者の意思が十分反映されますよう、総代選考方法の改善、総代会のディスクロージャーの充実等を進めているところであるというふうに承知しております。
いわゆる乗りかえ主義の経営方針というお言葉を使われましたが、保険商品の開発及びその認可に関する責任についてもお尋ねがございました。
生命保険会社は、商品設計に当たって、それぞれの時点での運用利回り等を踏まえ、予定利率の設定を行ってきたわけであります。最近の超低金利の長期継続によって逆ざやが発生しているというのは事実でございますが、こうした状況は当時においては必ずしも予見し得なかったものというふうに理解しております。
また、保険商品の認可につきましても、当時の運用利回りの状況等に照らして考えれば、当時としてはそれなりに適切な判断が行われたものというふうに考える次第でございます。
今回のスキームに対する政府の関与についてお尋ねがございました。
今回のスキームは、基本的には、破綻に至っていない保険会社について、契約者との間の自治的な手続によりその変更を可能とするものでございます。
行政としても、保険会社からの申し出の承認や契約条件の変更の内容等の承認など、あくまで契約者の保護を図る観点から十分なチェックを行う仕組みとなっておりますし、また、ぜひそのように運営していきたいというふうに思っております。
保険会社の運用責任についてのお尋ねがございました。
会社の経営内容は各社ごとに異なるものであって、一律に論じることは適当ではありませんけれども、保険契約高の減少、株価の下落等により厳しい経営環境にある。総じてそのようであることは間違いございません。
こうした中で、逆ざやは多くの生保会社に見られる状況となっておりまして、その背景に、超低金利の継続という構造的な要因があるものと考えております。そうしたことを背景にぜひ今回の措置を図りたいというふうに考えているわけでございます。
予定利率引き下げの申し出、横並び意識のことでございますけれども、申し出があるのかどうかというようなお尋ねがございました。
今回のスキームをどのように用いるかというのは保険会社や保険契約者の自主的な判断でございますけれども、保険会社が将来の経営のあり方を考える際に、経営の選択肢の一つとして、この予定利率引き下げの申し出の検討がなされていくというふうに考えております。
保険会社が破綻した場合の不作為の責任についてもお尋ねがございました。
破綻の際の経営者の責任の所在については、これは個々のケースに即して判断する必要があるわけですけれども、その処理の過程において、必要に応じ、経営者の厳格な責任追及が行われることとなっております。
セーフティーネットの見直しについてお尋ねがございました。
セーフティーネットについては、万一の場合に備えて契約者の保護を図る、もってシステム全体の信頼性を確保するという観点から整備しているわけであります。
なお、先般整備いたしました政府補助の特例措置を含むセーフティーネットが平成十七年度までの措置であったために、十八年度以降のセーフティーネットのあり方については引き続き幅広く検討しなければいけない、これはこれで大変重要な問題だというふうに認識しております。
同時に、セーフティーネットとモラルハザードについてお尋ねがございました。
生保のセーフティーネットについては、契約者の保護のために万全を期するものでありますが、同時に、当然のことながら、モラルハザードを起こさないような留意は、これは必要であるというふうに考えております。
こうした観点から、生命保険については、セーフティーネットによる補償水準を責任準備金の九〇%としている、さらに、保険会社の破綻の際は、必要に応じて、経営者の厳格な責任の追及も行われるということになっております。
非常に大きな問題として、日本全体のモラルハザードをどのように考えるのかという御指摘がございました。
基本的な考え方は、これはやはり、しっかりとした自己責任の体制のもとでモラルハザードが生じないようにする、自由な契約、自由な行為のもとで万が一にも問題が生じた場合にはその最低限のセーフティーネットを張るというのが、基本的な資本主義社会、自由競争社会における考え方であろうかと思っております。今回の措置がこうしたことに矛盾しないような形でぜひ我々も運用していきたいというふうに思っております。
最後でございますけれども、高予定利率の保険商品の認可についてのお尋ねでございます。
保険商品の認可は、保険数理に基づく合理性、妥当性等の基準によって行われております。近年、何度も申し上げましたが、過去に例のない超低金利の状況が続いたことによりまして、かつて認可した保険商品に逆ざやが発生しておりますけれども、その時々の運用利回りの状況等に照らせば、当時としてはそれなりに、やむを得ない、適切な判断が行われていたということを認識しております。
以上十七問、お答えを申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(綿貫民輔君) 中塚一宏君。
〔中塚一宏君登壇〕
○中塚一宏君 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました保険業法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)
予定利率引き下げを含めた保険業法の改正案は、今通常国会の前半に提出されると聞いておりました。しかし、医療保険の自己負担の引き上げ、年金の給付水準の引き下げ等、国民負担増への批判と統一地方選挙への影響を考慮してか、予定利率の引き下げについては先送りをしておりました。選挙が終わって一安心なのでしょうか、ころ合いを見計らって再度頭をもたげてきたというのが率直な感想です。まさに、理念もなく、場当たり的、無責任な政策運営であり、見識を疑わざるを得ません。(拍手)
生命保険は、個人生活の最悪の事態に対応するラストリゾートであり、これが簡単に破綻してしまいかねない経済情勢も異常であります。りそな銀行問題等で我が国金融システムが揺らぐ中、生命保険会社の逆ざやが深刻化し、放置すれば生保が次々と倒れ、連鎖して資本の持ち合い関係が強い銀行の倒産も相次ぎ、ひいては我が国金融システムが崩壊する危機に陥るため、こうした事態を未然に防ぐために、破綻処理という法的整理の前段階に利率引き下げという、言ってみれば極めて不明朗な私的整理の道を設けることになるのではないかと危惧をせざるを得ません。
以下、順次伺います。
まず第一に、一度見送った予定利率引き下げについて、経済・金融環境においてどのような変化があり、今回、改正案を提出するに至ったのか、竹中大臣の明確な答弁をお願いいたします。
第二に、旧業法では、主務大臣による予定利率変更命令や、保険会社による自主的引き下げを可能とする条文がありました。当該条文は、九六年改正で、保険契約者の権利保護の観点より削除されておりますが、旧業法当時から、行政命令や集団的決議によって個々の契約条件を不利益変更することの是非は論争となっていたはずであります。保険契約者の保護のために一たん取りやめた考え方を今なぜ復活させるのか、御答弁をいただきたいと思います。(拍手)
第三に、保険契約者の保護ということについて伺います。
予定利率を引き下げることにより保険契約者を保護するとしておりますが、では、予定利率の引き下げをこうむる契約者は果たして本当に保護されることになるとお考えなのでしょうか。一部の契約者が犠牲となって契約者全体の公平性を確保できると考えているのか、ひいては保険システム、金融システムを安定させるという大義名分が本当に国民的理解を得られるとお考えなのでしょうか。
第四に、契約者間の公平性の問題について伺います。
現在、新たに保険契約を締結する場合の予定利率は、押しなべて二%以下の低利率であります。この新契約から生み出される利差益、死差益、費差益は、逆ざやを埋める貴重な財源となっているのが現状です。本来はより安い保険料で契約できるのに、逆ざや契約が存在するために必要以上に高い保険料を払わされている契約者が、少なからず存在いたします。ならば、予定利率を引き下げることによる財務余力は低予定利率の契約者にも還元されてしかるべきであると考えますが、御見解を伺います。(拍手)
第五に、「保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合」を、だれが、どのように判断するのかということであります。
契約者に不利益な契約変更を迫る以上、その判断は厳正中立に行われなければなりません。どのような場合が保険業の継続が困難となる場合なのか、例えばソルベンシーマージンとの関連でいえばどういう事態なのか、具体的にお示しいただきたいのであります。
第六に、このような法改正が行われるということは、現時点でそれを必要とする保険会社があるという認識なのか、お伺いいたします。
第七に、生保と銀行の資本の持ち合いについて伺います。
今回の法改正における予定利率の引き下げに伴い、基金や劣後ローンの債務免除について、一般の株式会社で言うところの株主責任、保険でいえば銀行が負うべき責任についてどのようにお考えか。保険契約者の保護をうたいながら、その実は金融危機を回避するためのものではないかと疑念を抱かざるを得ません。加えて、債務を免除した銀行は株主代表訴訟に耐えられるとお考えなのか、伺います。
第八に、民間同士の契約の変更について、なぜ行政が関与する必要があるかということであります。
保険会社と保険契約者との自治的な手続により契約条件を変更するということをうたっているならば、なぜ行政当局が契約条件の変更案を承認する必要があるのでしょうか。保険会社が契約変更が必要だと考えるなら、それは保険会社の責任において契約者と交渉を行うべきであります。御所見を伺います。
第九に、そのまま放置すれば破綻するというのであるならば、これはまさに保険会社の更生、再生に関する問題であります。であるならば、行政の関与ではなく、裁判所により、安定的な再生計画、更生計画を立てるべきと考えます。この考え方についていかがお考えか、お聞かせをいただきたい。
第十に、このような法律を準備しなくても、ふだんから保険会社の経営内容を厳格にチェックし、早期に保険会社の経営健全化に関する命令を発し、それでもだめなら更生手続に移行するようにするべきであります。早期であれば、傷み方もさほどではなく、責任準備金のカットも行わなくて済むはずです。御所見を伺います。
第十一に、一たん予定利率を引き下げて保険業を辛うじて継続できたとしても、契約者の信頼が得られなければ、かえって保険契約の解除の続出をもたらすことになりかねません。契約者の多数により予定利率変更が否認された場合、その保険会社の存続は極めて危うくなると言わざるを得ません。万一、そのような事態が発生した場合、具体的にどのように対応するおつもりか、お伺いいたします。
第十二に、バブル期に六%以上もの高い予定利率を設定してしまったのは、国家的信用をバックに予定利率を引き上げてきた簡易保険の存在を見逃すことはできません。簡易保険との競合関係についていかなる御認識をお持ちか、お伺いいたします。
第十三に、そもそも保険業法は、まさに、保険会社の行動を一々指導する業法です。口うるさく指導してきたにもかかわらず、予定利率による運用が立ち行かなくなったら保険会社の責任で料率を引き下げさせるというのでは、一体、監督官庁は今まで何をしてきたのかということになります。この点について、竹中大臣に具体的に御説明をお願いいたします。
政策の失敗によってデフレが長期化し、史上最低の金利が続き、生保会社の逆ざやが累積し、さらに巨額の保有株式評価損をもたらした小泉内閣の失政であることを認め、少なくとも経済中立政策を進めていくべきであり、それに向け、金融・税制・経済政策を打ち立てていくべきであります。
りそな銀行の公的資金投入問題にしても同様です。不良債権処理が必要であることは論をまちませんが、その一方で、銀行業や生命保険業の生産性向上のための施策がとられているとは全く思えません。そのことなしに不良債権処理もあり得ないと考えます。竹中金融担当大臣の御所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 中塚議員から、十四問の御質問をいただきました。
制度導入の背景についてのお尋ねでございます。
日本の生命保険を取り巻く環境は、先ほども申し上げましたけれども、契約高の減少、株価の低迷、超低金利の継続による逆ざや問題によって一層厳しいものになっているというふうに考えております。
こうした中で、逆ざや問題を解決しまして保険契約者の保護を図るためには、保険会社・保険契約者間の自治的な手続によって契約条件を変更する仕組みを整備し、経営の選択肢の多様化を図ることが重要であるというふうに考えております。そうした趣旨から、この法案を提出することとしたわけでございます。
旧保険業法における契約条件変更の規定との関係についてお尋ねがありました。
旧保険業法には、行政命令や、相互会社の定款の定めに基づく契約条件の変更を可能とする規定が確かに設けられておりましたが、第一に、行政命令の効力を直接既存の契約者に及ぼすこととなり不適当なのではないか、第二に、相互会社が株式会社と同質化している実態とかけ離れているのではないか、そういった議論がなされてきたわけであります。そうした趣旨から削除されたものというふうに承知しております。
これに対して、今回のスキームは、保険契約者の保護の観点から、相互会社、株式会社の区別なく、保険契約者の主体的な判断、自治的な手続によって契約条件の変更を行うものでありまして、保険契約者の十分な理解を前提とした仕組みにしたつもりでございます。
保険契約者の保護についてのお尋ねがございました。
今回の法案は、会社と契約者の自治的な手続によってこの条件を変更する新たな選択肢を追加するものであって、引き下げの対象となる保険契約者の十分な理解を前提とした仕組みとなっております。
いずれにしましても、予定利率の引き下げは、保険契約者等の保護の観点からやむを得ない場合に限られて行われるものでありまして、基本的には保険契約者の利益に資するものだというふうに考えているわけでございます。
契約者間の公平性についてのお尋ねがありました。
予定利率の引き下げにより逆ざや問題が解決されれば、保険業の継続が確保されるほか、配当の改善も期待されますから、おのずから、低予定利率の保険契約者の利益に資することになります。保険契約者間の公平にもこれは資するというふうに考えるわけであります。
契約条件変更の申し出の要件についてお尋ねがありました。
「保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合」というのは、将来を見通して、契約条件の変更を行わなければ他の経営努力を織り込んだとしても保険業の継続が困難になることが合理的に予測できるような場合、そういう場合であるというふうに考えます。
なお、ソルベンシーマージンの基準は、現時点での保険金等の支払い能力の充実の状況を客観的な数値で示すものでありまして、早期是正措置を的確に運用していくためのもとにもなっているわけでございます。
今般の法改正と保険会社の経営状況の関係についてお尋ねがありました。
超低金利の継続による逆ざやのほか、保険契約高の減少、株価の動向等によって、保険会社は構造的に厳しい経営環境にあるというふうに考えております。
ただし、現時点において、契約条件変更の申し出を行う保険会社を具体的に想定しているというものではございません。
基金等の債務免除についてのお尋ねがありました。
予定利率の引き下げに際しては、保険契約者の十分な理解を得ることが求められていると考えておりまして、この法案において、保険会社は契約者に対して基金等の取り扱いについても示さなければならないこととしております。
今回のスキームを活用しまして保険会社の破綻を未然に防ぐことは、結果として債権者等の利益にも資する面があり、基金等の取り扱いについては、保険会社・保険契約者の間の手続の中で、債権者等にとっても合理的な形で適切に対応されるべき問題であるというふうに思っています。
行政が関与する理由についてのお尋ねと、行政ではなく裁判所が関与すべきではないかというお尋ねがありました。
今回のスキームは、保険業の継続が困難となるような蓋然性がある段階で契約条件の変更を行うことを可能とするものであることから、基本的には、保険会社や保険契約者の主体的な判断、自治的な手続により行われるべきでありまして、これは裁判所の関与は要しないというふうに思います。
ただし、保険契約者の保護を図る観点から、保険会社からの申し出の承認や契約条件の変更の内容の承認など、行政がチェックを行う仕組みを盛り込んでいるところでございます。
早期是正措置や更生手続で対処すべきではないか、別の手法でやるべきではないかというお尋ねもございました。
保険契約者の保護を図る上では、従来から、早期是正措置制度の厳正な運用に努めるとともに、是正措置に至る前段階から保険会社による早目早目の経営対応を促すとともに、万一破綻状態に陥った場合には早期の対応を行う必要があると考えてきたところであります。
一方、今回の法案は、将来の破綻を予防するために契約条件の変更を可能とするものでありまして、これによって、経営の選択肢の多様化が図られまして、保険契約者の一層の保護に資することになるというふうに考えるわけであります。
予定利率引き下げ後の経営や、予定利率引き下げが否認された場合の対応についてお尋ねがありました。
予定利率が引き下げられた場合は、保険契約者に対して示した経営方針等に沿って安定的な業務が確保されますよう、十分な経営努力が行われることが重要であります。
また、仮に予定利率の引き下げが否認された場合については、保険契約者の保護の観点から、改めて対応が検討されることが必要でありますが、いずれにしましても、まずもって、保険会社が保険契約者の理解を十分に得られるよう努めることが重要であるというふうに考えております。
簡易保険との競合関係についてのお尋ねがありました。
生命保険会社が逆ざやの存在等によって厳しい経営環境にあることは事実でありますけれども、これは、経済や金融市場の状況等、さまざまな要因の影響を複合的に受けた結果であり、その中で簡易保険の存在がどのような影響を与えているかということに関して、一概に申し上げることは困難であるかと思います。
いずれにせよ、簡保事業は民業を補完する立場にあるとの基本的な考えのもと、公平な競争条件が確保されることが重要でありまして、総務大臣の監督のもと、公社の業務が適切に運営されるものと考えております。
保険会社の監督に関するお尋ねがございました。
まず、保険商品については、保険数理に基づく合理性や妥当性等の基準によって認可していくことになるわけであります。その際に、その時々の運用利回りの状況等に照らして考えれば、適切な判断がその時々では行われてきたというふうに考えております。
また、保険会社の監督についてでありますけれども、早期是正措置を活用する、さらには、適切な検査やモニタリングの実施によって経営状況を的確に把握するとともに、各保険会社に対しては、健全性の確保に向けて真剣な努力を求めてきているところでございます。
小泉内閣の経済政策に対する御指摘が最後にございました。
小泉内閣は、やるべき構造改革を行わなければ日本経済の再生はないという認識のもとで、デフレ克服を目指しながら各般の改革を推進し、経済情勢に応じては大胆かつ柔軟に対応するという一貫した方針で経済運営に当たってきたと認識しています。
こうした方針のもと、私も金融担当大臣として、平成十六年度には不良債権問題を終結させることを目指して、金融再生プログラムの着実な推進に努めてきております。引き続き金融改革の強化を図ってまいる所存でございます。
以上十四問、お答え申し上げます。(拍手)
―――――――――――――
〔議長退席、副議長着席〕
○副議長(渡部恒三君) 吉井英勝君。
〔吉井英勝君登壇〕
○吉井英勝君 私は、日本共産党を代表して、保険業法の一部改正案について質問します。(拍手)
第一に、本法案の最大の問題は、保険契約者が受け取る保険金を大幅にカットして、国民の生活設計に大打撃を与えるという問題であります。
予定利率引き下げの対象となるのは九五年以前に契約した方であり、生保が積み立てた責任準備金の比率でいえば、全契約の七〇%という膨大な保険契約が対象となります。金融庁の限られた試算でも、最大四〇%も保険金がカットされてしまいます。しかも、解約が制限される間は、解約して生活費に充てることもできず、当座の生活にも悪影響が及ぶのであります。
総務省の調査でも、国民の八割が老後の生活に不安を抱いています。その中で、老後のための自助努力として、七割とトップを占めているのがこの生命保険です。本法案は、公的年金が削られる中で、年金を補完するために厳しいやりくりをして生命保険に加入している多くの国民に大変な影響を及ぼすものであります。
竹中大臣、国民の多くが将来不安を抱いているまさにこのときに、国民の自助努力を踏みにじり、将来設計を破綻させるようなことをしていいのですか。契約者にどのような責任があるというのですか。明確な答弁を求めます。(拍手)
日本の保険契約者は、金額比で六割以上が、一定額の保障を特徴とする生命保険に加入しています。変額保険など、受取額が変動する保険商品は〇・六%にすぎません。これは、国民の多くが、保険に対して万が一のときの保障を求めているからです。ところが、本法案は、会社側の都合で保険金を一方的に減らすというものであります。
竹中大臣、予定利率引き下げは、一時的に保険会社の負担を軽くしたとしても、結局は、一定額の保障という保険商品の特徴を失わせ、保険会社への信頼低下に拍車をかけ、ひいては、保険業そのものの存在意義を失わせるのではありませんか。公的保障が次々と削減されるもとで、生命保険まで他の金融商品と同じようになってしまえば、国民は万が一のときの保障をどこに求めればいいのですか。答弁を求めます。(拍手)
第二に、政府は、破綻よりましだなどと言いわけをして、この法案を強行しようとしています。
しかし、政府が破綻よりましとしている根拠は、破綻後の予定利率が一・五%、責任準備金のカットが一〇%という前提による、たった一つだけの試算にすぎません。実際には、破綻した東京生命や協栄生命など複数のケースでは、政府の試算よりも高い水準で契約者保護が図られています。金融庁は、国民が十分判断できるように、複数の試算を出すべきではありませんか。伺います。
また、政府は、自治的手続だ、選択肢をふやすだけだと盛んに言っています。
しかし、本法案は、建前上は生保会社の申請に基づいていますが、実際には、金融庁が竹中プログラムにある早期警戒制度等を活用して生保会社を申請に追い込んでいく仕組みとセットになっています。
また、引き下げに反対の保険契約者が異議申し立てを行おうとしても、変更対象契約者総数の十分の一と同時に、変更対象契約金額総額の十分の一という厳しい要件をクリアしなければなりません。これでは、少数意見の切り捨てです。これでどうして自治的手続などと言えるのか、明確な答弁を求めます。
さらに、本法案は、首相命令で、生保会社の解約業務を停止させると同時に、保険契約者が解約できる期間をこれまでより短縮する規定も設けています。選択肢がふえるのは金融庁や会社の経営者だけであって、保険契約者にとっては、解約が制限されるなど、選択肢が減るのが実態ではありませんか。明らかにされたいと思います。
政府は、一斉地方選挙前には、予定利率の引き下げ案を出さず、選挙が終わった途端に、金融審議会などでの十分な議論もないままに、利率引き下げを強行しようとしています。そもそも、二年前の金融審議会では、予定利率引き下げは社会的認知が大前提だとされ、パブリックコメントでは九割が反対でした。政府は、なぜ今回はパブリックコメントを行わないのですか。それは、本法案が到底社会的認知が得られないからではありませんか。
自民党は、危機にある生保業界から、十年間に十四億円も政治献金を受け取っています。本法案は金で政治をゆがめる典型であり、企業献金を直ちにやめるべきであります。
第三に、なぜ生保の危機が生まれたのか、どのようにして打開するのかという問題です。
もともと、生保事業は金融庁による免許制であり、金融庁は、生保商品の認可や財務状況の検査監督など、経営全般にわたって極めて大きな責任を負っています。逆ざやの原因となった高い予定利率の保険商品をかつて誘導し認可したのも、実は金融庁ではありませんか。経営者の責任は重大ですが、生保会社の経営悪化を知り尽くしていながら、適切な検査監督を行わず、生保の経営をここまで悪化させた金融庁の責任を一体どう認識しているのですか。伺います。
しかも、生保経営を瀬戸際に追い込んだのは、小泉内閣自身です。日経平均株価は小泉内閣発足時から約半分になり、まともな資産運用など望むべくもありません。株価下落による含み損が生保会社を直撃している責任をどう考えているのか、明確な答弁を求めます。(拍手)
本法案のねらいは、破綻前の予定利率引き下げを可能にすることで、銀行が拠出している基金や劣後ローンの全額カットを回避する点にあります。
銀行は、生保会社が好調なときには、劣後ローンに基づく高い金利を受け取り、生保会社が経営難に陥ったときには、みずからの負担分を契約者に押しつける。余りにも虫がいい話ではありませんか。
また、内閣総理大臣が利率引き下げを承認する際に、営業譲渡などが要件とされているのは、予定利率引き下げと生保業界の淘汰・再編をセットで行おうとしているからではありませんか。明らかにされたいと思います。
これまでの破綻処理では、受け皿の外資が、事前に提携し関係を築いておいて、破綻後には独占的に交渉し、必ずもうかる価格で買い取るという不健全なパターンが横行しています。本法案は、こうした契約者無視の再編を助長するものであります。
なぜ銀行や受け皿会社が負担すべきコストを何の責任もない契約者が負担しなければならないのか、明確な答弁を求めます。(拍手)
最後に、生保経営難の根底にあるのは、小泉内閣が進める経済大失政です。期限を切った不良債権処理、庶民増税と社会保障改悪が家計の保険料負担能力を低下させ、解約増と新規加入抑制を生み出しています。経済悪化と金融不全の悪循環をつくり出し、生保会社の経営を追い込んでいるのは、小泉内閣ではありませんか。こうした経済失政のツケを国民と契約者に押しつける政治はもうやめるべきであります。
今、政府がやるべきことは、日本経済の六割を占める家計消費を伸ばし、実体経済の立て直しを図ることであります。そのことこそ、生保危機解決の大道ではありませんか。答弁を求めます。
私は、小泉内閣の経済運営の大転換が必要だということを強調し、国民の暮らしと実体経済の立て直しに全力を尽くす決意を述べて、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 吉井議員から御質問をいただきました。
保険金額の削減の保険契約者への影響についてでございます。
今回の法案は、保険会社・契約者間の自治的な手続によって条件を変更する新たな選択肢を追加するものであります。保険契約者の十分な理解を前提とした仕組みとなっております。
いずれにしましても、予定利率の引き下げは、保険契約者等の保護の観点からやむを得ない場合に限り行われるものでありまして、基本的には保険契約者の保護に資するものというふうに考えております。
今回のスキームは保険業全体の存在意義を失わせるものではないかというお尋ねがありました。
今回のスキームは、将来の破綻を防止し、保険契約者等の保護を図るため、保険会社と契約者の間の自治的な手続によって利下げを可能とするものでありますので、予定利率の引き下げ後においても、安定的な業務が確保されますよう、十分な経営努力が行われるということが重要になります。
いずれにしましても、こうした対応によりまして、保険業の継続が図られ、保険業に対する信頼も確保されるということになると期待しております。むしろ、今回の法律によってこのシステムそのものが維持されていくというふうに考えるわけでございます。
金融庁による試算についてのお尋ねがありました。
御指摘の試算は、予定利率の引き下げについて保険契約者等の理解に資するよう、あくまで参考のために、一定の前提を置いた二つのケースについてそれぞれ機械的に行ったものであります。
両者を単純に比較することは適当ではございませんが、いずれにしましても、予定利率の引き下げは保険契約者等の保護の観点から行われるものでありまして、契約条件の変更の内容はその手続を行う保険会社の財務状況に応じて適切に決定されるものでありますことから、基本的には保険契約者の利益に資するものというふうに考えております。
保険契約者の自治的手続についてのお尋ねがありました。
今回のスキームは、繰り返し申し上げますが、保険契約者の十分な理解を前提とした仕組みとしておりますが、保険契約者数が膨大でありますことや保険の団体性にかんがみまして、保険契約者集団における意思決定システムとして、異議申し立ての手続を活用することとしております。
なお、解約に係る業務の停止は、手続を混乱なく粛々と進め、保険集団の維持を図るために必要な場合に行うものでありまして、保険契約者の保護に資するものというふうに考えます。
パブリックコメントについてのお尋ねがありました。
予定利率の問題につきましては、金融審議会が中間報告を取りまとめるなど幅広い検討を行ってまいりましたけれども、さらに、それに加えて、各方面と議論を深めた上で、今回の法案を提出した次第であります。
なお、パブリックコメントの手続でありますけれども、これは閣議決定等により定められておりますが、国会において御審議をいただきます法律案については、その対象にはなっていないものというふうに承知しております。
生命保険会社についての当局の監督責任でありますとか株価下落の責任についてお尋ねがありました。
保険商品の認可については、これは、保険数理に基づく合理性や妥当性等の基準により行われておりまして、その時々の運用利回りの状況等に照らして考えれば、適切な判断が行われてきたものというふうに考えております。
また、超低金利の継続等により厳しい経営環境にある生命保険会社の監督全般についても、検査やモニタリングを適切に実施し、各生命保険会社の経営健全性の確保に努めてきているところであります。
なお、株価の動向は、これはさまざまな要因で決まるものでございます。生命保険会社への影響という観点から、株価下落についての責任をこれだけで論じるのは適切ではないと思います。マクロ経済の運営は、これはこれで重要でございますから、引き続き全力を挙げて適切な運営を行っていきたいというふうに思います。
生命保険業界の淘汰・再編や銀行等が負担すべきコストについてのお尋ねがありました。
予定利率の引き下げに際しましては、保険契約者の十分な理解を得ることが求められております。法律上、保険会社は保険契約者に対して基金等の取り扱いについても示さなければならないこととしているわけであります。
いずれにしましても、合併・再編や基金等の取り扱いについても、保険会社・保険契約者の間の手続の中で十分に説明されまして、それぞれの戦略に応じて適切に対応されるべき課題であるというふうに考えております。
最後に、実体経済に関する御指摘でございます。
繰り返し申し上げますが、構造改革を行わなければ日本の経済の再生はないというふうに考えております。このために、金融の再生、金融の改革、規制の改革、歳出の改革、歳入の改革、この四つの構造改革に引き続き全力で取り組んで経済を活性化させたいというふうに思っております。
以上、お答えいたします。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(渡部恒三君) 植田至紀君。
〔植田至紀君登壇〕
○植田至紀君 社会民主党・市民連合の植田至紀です。
私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま提案されました保険業法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
本法案は、その内容における問題点はもとより、そもそも提出に至る経緯において重大な瑕疵があると指摘しなければなりません。
予定利率の引き下げなどという、当初の契約、約束事に反することをなすのであれば、しかも、個人の財産権の侵害を政府が法律によって保障するというのであれば、まず何よりも、国民の約九割が何らかの形で生命保険に加入しているという現実をかんがみるべきであります。もちろん、国民の理解を得ることは極めて困難、恐らく無理でありましょうが、とはいえ、幅広く国民の意見をまず十分聞くという姿勢を持つということが最低限のエチケットであります。
しかるに、契約者を置き去りにするのみならず、金融審議会の議論においてでさえ異論、反対論が続出するような内容を与党と政府、金融庁とのやりとりだけで法案提出するなど、断じて容認するわけにはいかないのであります。(拍手)
まず第一に、会期末に駆け込むように法案を提出する必然性が那辺にあるのか、摩訶不思議と言うほかありません。
本通常国会においては、生命保険のセーフティーネットの整備を主たる内容とする保険業法改正案が審議、既に成立し、公布されております。当初、予定利率の引き下げについてもあわせて提案される予定であったものが、統一自治体選挙を前にして国民の反発を招く法案を提出するのはよろしくないとの与党の思惑で一たん論議を凍結されたとのこと、風の便りに伺っております。
さて、ほとぼりも冷めた今、同一会期中に、しかも、同法改正案成立から二カ月を経ぬ今、再度、同じ法律について改正案が提出されるのは、極めて異常な事態であると認識せざるを得ないのであります。かかるまれな取り扱いをする理由、特別な事情があるのであれば、具体的に明らかにしていただきたい。
加えて、もう一点、法案の提出の経緯からすれば、法案提出それ自体がまさに風評リスクを生む根源になると言っても過言ではありません。かかる指摘にはいかにお答えいただけるか、あわせて伺います。
第二に、予定利率引き下げを行うこと自体が、いわゆる逆ざや問題の解決を生命保険会社と契約者たる国民にのみ押しつけ、政府がその責任を回避しているという点であります。
各生命保険会社が逆ざやに苦しむ事態に至った責任は一体だれにあるのか。もちろん、生命保険会社の経営者の経営戦略、将来見通しの甘さは当然ながら指摘されるべきでありましょう。しかし、まず何よりも問われるべきは、政府、行政の責任ではありますまいか。
保険会社の商品設計、特に保険料の設定は、監督当局による許可制がとられてきたわけです。バブル期の高い予定利率は当局が認めたものです。監督当局として、生保会社の経営が本改正案を必要とするまで放置してきた責任を免れることはできません。バブル期に高い予定利率を設定した最大の理由は、当時の大蔵省が簡易保険の利率に合わせるように保険料の引き上げを迫る圧力があったということは、周知の事実であります。
しかるに、政府は、自治を名目に、銀行が生保会社に拠出している基金の取り扱いについての判断を避け、引き下げの最終決定についても総代会等にゆだねるなど、行政の責任を回避せんとしております。
当時の大蔵当局の見通しの誤り、さらには、国民の財産と密接に絡む特殊な商品を扱う生保会社への監督指導など、政府、行政の責任をいかに総括されているのか、個別具体的に明確な答弁を求めるものであります。(拍手)
第三に、契約者の保護についてであります。
法案の御説明によれば、本改正案は、契約条件の変更を可能とする手続を整備することで保険契約者の保護を図るそうであります。実に奇妙な論理構成であり、にわかに理解しがたい理屈であります。
提案者は、約束事をほごにし、予定利率を引き下げることが保険契約者の保護に資する最善の方法であるとお考えのようでありますから、その理由を的確に、わかるように教えていただけますでしょうか。
幾ら予定利率の引き下げが保険契約者の保護に資すると提案者が確信を持たれていたとしても、本改正案が国民生活に重大な影響を与える懸念が強いことまでは否定されないでしょう。
しかし、今回、パブリックコメントを実施した形跡すらないのは、何か理由があるのでしょうか。当事者すなわち契約者の意見を幅広く聴取しなかった理由、それを明らかにしていただきたい。私は、国民の声をしっかり聞くべきと考えますが、もし、私の考え方、認識に誤りがあれば、大臣の方から忌憚なく御指摘もいただければと思います。
さて、改正案における、利率引き下げの決定まで解約を停止するという措置について、憲法上疑義があるということも指摘しなければなりません。
憲法の個人の財産権の保障と照らし合わせても重大な疑義があるわけでありますが、この点については、破綻でない限り、行政が生命保険会社に解約停止命令を出しても契約者まではその拘束力は及ばない、契約者が解約を申し出れば生命保険会社は応じざるを得ない、仮に応じなければ訴訟を提起される、それを否定できないとの有力な見解があるわけです。
九五年の旧保険業法改正では、破綻前の予定利率引き下げを定めておった旧四十六条が削除された大きな理由の一つに、憲法上保障された財産権の侵害に当たるとの意見が反映されたということがありました。現在でも同様の解釈が成り立つと考えておるわけですが、御見解を伺います。
第四に、本改正案の実務上の問題について、一点だけ、若干お伺いします。
本改正案では、予定利率引き下げの申請は当事者たる生命保険会社が行う手順となっていますが、生保会社が手を挙げた途端、危ない生保であることを天下に公表するわけですから、新たな契約者獲得もままなりません。また、マーケットの目にもさらされるわけです。当該生命保険会社の契約者に動揺が広がることも当然でしょう。解約の申し出も、その後、続出するでしょう。申請、すなわち生命保険会社の信用が失われるのです。
ですから、実際に生保会社みずから申請するにはかなり逡巡することになると思いますが、監督当局は、事前の検査、協議などを通して当該生命保険会社に申請を行うよう指導されるのでしょうか。答弁を求めます。
さて、本改正案審議において忘れてはならないことについて、一言申し上げて、終えたいと思います。
本改正案審議に当たって、契約者すなわち国民の権利がいかに侵害されるかということが第一義として論じられなければならないことは言をまちません。
しかし、それに加えて、契約者と真摯に向き合い、国民生活の安定と安心の確保のために、まさに最前線で貢献してきた生命保険会社の営業職員の存在を忘れてはならないのであります。契約者から直接不安や不信をぶつけられるのは営業職員の方々です。恐らく、多くの営業職員の方々からすれば、自身の雇用不安を抱えつつも、まず第一に契約者との信頼関係をいかに持続させるかとの思いで本改正案の行方を見守っているであろうことは想像にかたくありません。
かかる状況に、誠実に生きる人々を追い詰めた責任はだれが負うべきなのか。逆ざや問題の背景に横たわるデフレが克服されたならば、そもそも、かかる改正案を提出する必要などなかった。そのことを想起するならば、まさに、本改正案が小泉構造改革なるものの破綻をより一層明白にしたというべきでありましょう。その点を指摘いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕
○国務大臣(竹中平蔵君) 植田議員にお答え申し上げます。
保険業法の改正の経緯についてのお尋ねでございます。
生保のセーフティーネット等に関する改正につきましては、本年三月末で政府補助の特例措置が期限切れとなっていましたため、早期に手当てする必要がありました。それが先般の改正でございます。
一方、予定利率の問題につきましては、さらに多くの論点が存在しますことから引き続き幅広く検討したところでございますけれども、今般、関係方面と議論を深めた結果、この法案を取りまとめることができたため、国会で御審議いただく運びとなりました。それが経緯でございます。
この法案の提出による風評リスクについてのお尋ねでございます。
今回の法案は、保険会社・保険契約者間の自治的な手続によって予定利率の引き下げを可能とする新たな選択肢を追加するものであります。保険契約者等の保護の観点から整備するという方針でございます。
政府としましても、制度の意義、内容について十分理解が得られるよう努めるとともに、保険会社の監督に当たっても、風評リスクが生じないよう万全を期していきたいというふうに思っております。
保険に関する過去の行政責任についてのお尋ねでございます。
保険商品の認可については、保険数理に基づく合理性、妥当性等の基準によって行われております。その時々の運用利回りの状況等に照らして考えれば、適切な判断が行われてきたものというふうに理解しております。
また、生命保険会社の監督全般につきましても、ソルベンシーマージン基準の厳格化でありますとかディスクロージャーの強化を図るなど、適切な対応に努めているところであります。こうした努力は今後もぜひとも続けたいというふうに思っております。
予定利率の引き下げが保険契約者の保護に資するのかどうかというお尋ねがございました。
今回の法案は、保険会社・保険契約者間の自治的な手続によって契約条件を変更する選択肢を追加するものでありますから、保険契約者の十分な理解を前提として仕組みをつくったつもりであります。
いずれにしましても、予定利率の引き下げは、保険契約者等の保護の観点からやむを得ない場合に限り行われるものであります。基本的には保険契約者の利益に資するものというふうに考えております。
保険契約者からの意見聴取をどうしたのかというお尋ねでございます。
予定利率の問題につきましては、金融審議会が中間報告を取りまとめるなど幅広い検討を行ってまいりました。言うまでもなく、この金融審議会には幅広い層からの御参加をいただいております。さらに、関係方面と議論を深めた上で、この法案を提出したところでございます。
なお、パブリックコメントの手続でございますけれども、閣議決定等により定められておるところによりますと、国会において御審議をいただく法律案についてはその対象にはなっていないというふうに承知しております。
予定利率の引き下げと憲法との関係についてのお尋ねであります。
憲法の保障する財産権、これは重要でありますけれども、法律により合理的な範囲の制約を加えることは、より大きな公益に資するという場合には憲法に違反するものではないというふうに承知しております。
予定利率の引き下げについては、保険契約者の保護の観点から、まず第一に、保険業の継続が困難となる蓋然性がある場合に限り、一定の限度を設けた上で厳格な手続を経て行われるということ、第二に、保険契約者に対する情報の提供や行政当局のチェックも行われるということ、こうした点を総合的に勘案すれば合理的制約として容認されるものであるというふうに考えております。
なお、予定利率の引き下げに当たっては、保険契約者の保護のため、手続を混乱なく粛々と進め、保険集団の維持を図る必要がありますことから、保険会社に対しまして、解約に係る業務の停止を命ずることができることとしているわけでございます。
最後に、予定利率の引き下げの申し出についてどのようにするのかというお尋ねがございました。
今回のスキームを用いるかどうかは、これはあくまで保険会社や保険契約者の自主的な判断によるものであります。保険会社が将来の経営のあり方を考える際に、経営の選択肢の一つとして、予定利率引き下げの申し出の検討がなされるものというふうに考えております。
自治的な制度という趣旨にかんがみれば、引き下げの申し出を行うことを当局が指導することは、これは適当ではないというふうに思っているところでございます。
以上、お答えいたします。(拍手)
○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時三十六分散会