第43号 平成15年7月4日(金曜日)
平成十五年七月四日(金曜日)―――――――――――――
議事日程 第三十二号
平成十五年七月四日
午後一時開議
第一 日本郵政公社法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
第二 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案(塩崎恭久君外四名提出)
第三 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
裁判官訴追委員辞職の件
裁判官訴追委員の選挙
日程第一 日本郵政公社法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
日程第二 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案(塩崎恭久君外四名提出)
日程第三 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出)
午後一時三分開議
○議長(綿貫民輔君) 御静粛に願います。
これより会議を開きます。
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裁判官訴追委員辞職の件
○議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。
裁判官訴追委員高村正彦君から、訴追委員を辞職いたしたいとの申し出があります。右申し出を許可するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。
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裁判官訴追委員の選挙
○議長(綿貫民輔君) つきましては、裁判官訴追委員の選挙を行います。
○下村博文君 裁判官訴追委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。
○議長(綿貫民輔君) 下村博文君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。
議長は、裁判官訴追委員に臼井日出男君を指名いたします。
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日程第一 日本郵政公社法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)
○議長(綿貫民輔君) 日程第一、日本郵政公社法の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。総務委員長遠藤武彦君。
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日本郵政公社法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔遠藤武彦君登壇〕
○遠藤武彦君 ただいま議題となりました日本郵政公社法の一部を改正する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、日本郵政公社の経営の健全性の確保に資するため、郵便貯金資金及び簡易生命保険資金の運用方法に、投資顧問業者との投資一任契約の締結による信託会社への信託を加える等の改正を行おうとするものであります。
本案は、参議院先議に係るもので、去る六月十一日本委員会に付託され、翌十二日片山総務大臣から提案理由の説明を聴取し、同月二十六日質疑を行い、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案(塩崎恭久君外四名提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第二、商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。法務委員長山本有二君。
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商法及び株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔山本有二君登壇〕
○山本有二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、定款の授権に基づく取締役会の決議による自己株式の取得を認めるとともに、中間配当限度額の計算方法を合理化しようとするものであります。
本案は、自由民主党、公明党及び保守新党の共同提案として、塩崎恭久君外四名提出によるもので、去る六月二十四日本委員会に付託されたものであります。
委員会においては、二十五日提出者塩崎恭久君から提案理由の説明を聴取し、二十七日から質疑に入り、七月一日これを終局し、討論、採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第三 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出)
○議長(綿貫民輔君) 日程第三、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員長高村正彦君。
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イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔高村正彦君登壇〕
○高村正彦君 ただいま議題となりましたイラク人道復興支援特別措置法案につきまして、イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、イラク特別事態を受けて、国家の速やかな再建を図るためにイラクにおいて行われている国民生活の安定と向上、民主的な手段による統治組織の設立等に向けたイラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取り組みに関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、国連安保理決議第一四八三号を踏まえ、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を実施しようとするものであります。
本案の主な内容は、
第一に、人道復興支援活動及び安全確保支援活動のいずれの対応措置の実施も、武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならず、我が国領域並びに戦闘行為が行われていない外国の領域及び公海において行うものとすること、
第二に、内閣総理大臣は、いずれかの対応措置を実施する場合には、基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならないこと、
第三に、内閣総理大臣は、自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、当該対応措置を開始した日から二十日以内に、その実施につき国会の承認を求めなければならないこと、
第四に、防衛庁長官は、基本計画に従い、対応措置として実施される業務としての役務の提供につき、実施要項を定め、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとすること、
第五に、この法律は、公布の日から施行し、四年を経過した日に効力を失うこと
等であります。
本法律案は、去る六月十三日本院に提出され、同月二十四日の本会議において、本法律案等の審査のため本特別委員会が設置され、引き続き趣旨説明及び質疑が行われました。
本委員会におきましては、同日福田内閣官房長官から提案理由の説明を聴取いたしました。翌二十五日より質疑に入り、同日小泉内閣総理大臣に出席を求めて質疑を行い、七月一日には参考人から意見を聴取するなど、連日審査を重ねました。
去る二日本案に対し、民主党・無所属クラブより、自衛隊の部隊等による対応措置の実施に関する規定を削除することなどを主な内容とする修正案が提出され、提出者から趣旨の説明を聴取した後、本案及び同修正案を一括して議題とし、質疑を行い、昨三日には再度小泉内閣総理大臣の出席を求めて質疑を行いました。同日本案に対する質疑を終了し、討論を行い、採決を行いましたところ、本案は、民主党・無所属クラブ提出の修正案を賛成少数をもって否決した後、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(綿貫民輔君) 討論の通告があります。順次これを許します。桑原豊君。
〔桑原豊君登壇〕
○桑原豊君 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、政府提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対し、反対の立場から討論を行います。(拍手)
民主党は、イラクの大量破壊兵器問題に対し、徹底的な国連査察を通じた武力行使によらない平和的解決を訴え、国連憲章上も重大な疑義のある米国等によるイラク攻撃に反対いたしました。しかし、小泉総理は、イラクの大量破壊兵器の脅威を理由に挙げ、いち早く米国を支持したのであります。
現在、フセイン政権の崩壊から三カ月近くたちますが、いまだに大量破壊兵器は発見されておりません。それどころか、米国や英国では、開戦前のイラクの大量破壊兵器に関する情報や報告書が操作され、脅威が誇張されていたとの疑惑が持ち上がり、大問題に発展しております。
六月二十四日、英国のストロー外相は、議会下院外交委員会で、政府が二月にフセイン政権による組織的な兵器隠しを立証する目的で刊行した文書は「恥ずかしい内容だった。」と証言し、情報操作の事実を認めております。
UNMOVIC、国連監視検証査察委員会のブリクス委員長は、六月三十日の退任に際して、NHKのインタビューに応じ、開戦前の二月の、大量破壊兵器の存在を強調したパウエル国務長官の安保理演説に触れ、「米軍などは集めた機密情報を明らかに拡大解釈したと思う。亡命者、衛星写真などの情報をもとに特定の場所の査察を要請されたが、大量破壊兵器は見つからなかった。だから我々は、米軍の情報には懐疑的になった。」と述べております。
民主党は、小泉総理がフセイン政権による大量破壊兵器保有の確たる証拠なしにイラク攻撃を支持したのであれば、その正当性を改めて問いただしていくとともに、小泉総理の責任を厳しく追及することをここで明確にいたしたいと思います。(拍手)
一方、民主党は、既に、イラク国民がこれ以上の災禍に見舞われることがないようにとの人道的見地、中東全体の平和と安定への影響、国連安保理決議一四八三号の採択、米国からの支援の要望等に照らし、我が国がイラク復興支援に積極的に取り組んでいくべきとの見解を明確にいたしております。
この立場から、先月、いち早くイラクに調査団を派遣し、現地のニーズをつぶさに検証してまいりました。その結果、調査団は、自衛隊でなければ果たせないニーズは特定できないという調査報告をまとめております。
民主党は、この報告も踏まえつつ、現地のニーズ、憲法上の問題、対イラク・対中東政策に関する戦略、そして、米同時多発テロ以降、多様化する世界の脅威に対し、国際社会の安定した枠組みをいかに構築していくかなどを総合的に勘案し、現時点で自衛隊を派遣することは妥当ではないという結論に達しました。
特に、今回、自衛隊を派遣することによって、国の内外から高い評価を得ている海外での自衛隊の平和維持活動、PKOがその支持をなくしてしまうのではないかということを強く懸念いたしております。なぜなら、今回のイラクにおける自衛隊の活動は、国連のもとで行われる平和維持活動とは根本的に性格を異にするものであるからであります。
国際社会の認知のもと行われてきた自衛隊による世界の平和と安定への取り組みがいつしか現地で歓迎されない占領軍の活動と同一視されるようになっていたという状況を、絶対につくってはなりません。しかし、このたびの自衛隊のイラクでの活動には、そのような危険性と懸念があることを指摘せざるを得ません。
本法案は、国連憲章違反の疑義がある対イラク攻撃の根拠を、安保理決議六七八、六八七及び一四四一号に基づくものと位置づけていますが、これもまた極めて問題であります。これでは、国際社会のコンセンサスが得られていないものを根拠にすることによって、国連決議一四八三号に基づく復興支援活動には協力しようという道までも閉ざすことになってしまいます。
また、「基本原則」の第二条に、自衛隊の活動はいわゆる非戦闘地域に限るとありますが、戦闘員と非戦闘員を峻別することも困難な現地で非戦闘地域を特定することは、まさにフィクションであります。これがフィクションであることは、最近の米英軍をねらった襲撃、反撃の事例を見れば明らかです。
与党調査団の杉浦団長も、一日の参考人招致の場で、「戦闘地域、非戦闘地域の定義、線引き等の議論は別にして、非常に危険度は高い、安全ではない地域であることは間違いございません。」と述べております。
憲法上の問題を回避するために、明確な根拠も示し得ないまま無理やりに非戦闘地域なるものをつくり上げ、自衛隊の活動地域は安全であると強弁しているにすぎません。
また、派遣される自衛官は、武力を行使するわけではないので、イラクでは、戦闘員に適用される国際人道法は適用されないことになります。しかし、危地に飛び込んで命がけの活動を余儀なくされる自衛官に万が一があったとき、その人権と命はどう保障されるのでしょうか。さらに、自衛隊がイラクの人々を殺傷せざるを得ない状況も考えられないわけではありません。あいまいな位置づけのまま自衛隊を派遣する政府の無責任な対応を指摘せざるを得ません。
武器使用基準のあり方についても、現地情勢を勘案すると、自衛官の安全が危惧されます。
自衛官は危険だから派遣しなくて、文民は派遣してもいいのかという議論がありますが、制服を着ている自衛官であるからこそ、反撃、攻撃の対象になりやすいのです。これは、この数カ月間のイラクでの死者数の内訳から見ても明らかと言えます。無論、文民でも強盗団などの襲撃に巻き込まれるという危険性はありますが、これまで、文民がねらい撃ちされたというケースはほとんど聞きません。攻撃の対象となっているのは、米英軍などの占領軍であることは歴然としています。
他方、イラクでは、NGOやジャーナリストだけでなく、国連職員も早々に戻って活動いたしております。このように、世界じゅうから文民が入ってイラクのための人道復興支援に取り組んでいる中、自衛隊派遣のみにこだわる我が国の対応は、到底、国際社会の理解と尊敬が得られるものとは言えません。
本法案は、自衛隊による対応措置の実施について、国会の事後承認としています。しかし、自衛隊派遣の重要性及びイラク情勢、そして民主的統制の観点から、事前承認とすべきであります。
政府は、事前承認とすると迅速な対応がとれないと言いますが、そもそも、現在、イラクに緊急に自衛隊を派遣しなければならないニーズはありません。政府が二十六日の特別委員会で示した「実施の可能性があると想定される業務の例」は、人員、物資の輸送と水の浄化、補給、配給を挙げています。戦争後の復興に赴く自衛隊が国会承認を得る余裕もないような緊急の事態は想定できません。
また、武器弾薬の陸上輸送を排除していないことは、テロ対策特別措置法で安全確保の見地から除かれたことに照らしても、認めることはできません。
さらに、本法案は施行から四年の時限立法でありますが、現在でも刻々と現地情勢は変化しているのであり、期限を二年に短縮すべきであります。
以上、この法案は余りにも問題の多い欠陥法案だと言わざるを得ません。はっきりしているのは、何があってもアメリカのために、というよりブッシュ政権のために、初めに自衛隊派遣ありきという一点だけであります。政府の姿勢には、イラクの再建、中東の平和、そして世界平和の創造に向けて主体的にかかわろうとする意思も戦略性も感じられません。
日米同盟は重要だからいついかなるときもアメリカの言うことを聞いておればいい、アメリカの機嫌を損ねてはいけない、そんなことでは……
○議長(綿貫民輔君) 桑原豊君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○桑原豊君(続) 本当の日米パートナーシップをつくることはできません。
平和と安定の道を歩んできた我が国の将来に禍根を残す法案となりかねないとの深い憂慮を表明し、私の反対討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) 江崎洋一郎君。
〔江崎洋一郎君登壇〕
○江崎洋一郎君 保守新党の江崎洋一郎でございます。
私は、自由民主党、公明党及び保守新党を代表し、政府提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に賛成の討論を行います。(拍手)
ケネディは、「真の平和は、多くの国が協力して生み出すもの、多くの措置が重なって初めてつくり出されるものである。」と言っております。私も、平和はただそこにあるものではなく、多くの人々、多くの働き、多くの国々とのつながりの中でつくり出されるものであると考えます。政府案は、その思いに基づき日本らしい貢献を実現していくためのものであります。
さて、政府案賛成の第一の理由は、イラクの復興支援は、イラクに対する武力行使に賛成したか反対したかを問わず国際社会の一致した要請であり、我が国はこれに率先して参加し、その責任を果たすべきであるということであります。
国連は、安保理決議一四八三号において、イラクにおける米英の統合された司令部、いわゆる占領軍に特別の権限を認めるとともに、人道的救援の提供、復興の支援、国家・地方の統治機関の回復・樹立の支援、文化財保護などに国連が重大な役割を果たすことを決議いたしました。
この決議に基づき、米英を初め韓国、イタリア、スペインなど、既に二十九カ国がイラクに部隊等を派遣ないし派遣を予定し、人道復興支援活動及び民主的な統治機構の設立に向けて、全力を挙げて活動しております。参加国は近く五十カ国にも上ると予想され、我が国に対する要請も強いものがあります。
我々与党三党は、六月二十日から二十五日にかけて、イラクに調査団を派遣し、現地の状況と必要な支援及び我が国としてどのような支援活動ができるか等を調査してまいりました。その結果、日本に対する支援要請はあらゆる分野に及び、具体的な活動としては、水の浄化、補給や人道物資を含む輸送、とりわけ航空輸送への強い期待があることが明らかになっております。
法案の速やかな成立により、イラクの復興支援活動に一日も早く参加すべきであります。
第二は、イラク復興支援の中心は自衛隊でなければならないということであります。
イラクにおいては、組織的、計画的な戦闘行為は終結いたしましたが、いまだ散発的な抵抗活動やテロ行為等が続いております。しかし、テロ行為を恐れていては、復興は一歩も進みません。テロ行為などの妨害行為に対処し、復興を速やかに進めていくためには、実力組織であり、徹底的に訓練され、かつ、自己完結的能力を保有する組織体である自衛隊の派遣が不可欠であります。
治安状況が悪く、復興途上にあるイラクにおいて主体的に支援活動を行うためには、炊飯も安全確保も物資輸送も自己完結的にできる組織である自衛隊を派遣する以外にありません。自衛隊の派遣を中心に据えた政府案は、極めて妥当であります。
この点、イラクは危険な地域であるから自衛隊の派遣は認めず、文民の派遣ならよしとする意見には、賛成できません。
第三は、日本にとっての日米同盟関係の重要性であります。
大量破壊兵器の開発が急速に進む今日、専守防衛を防衛の基本原則とする我が国にとって、日米同盟の意義はますます重要となっております。特に、北朝鮮の核開発等により北東アジア情勢が緊迫の度を増している現実を直視しなければなりません。
その米国が、世界平和のため、イラクのフセイン独裁政権に対する武力行使、戦後の復興、再建へと必死の努力を行っているとき、同盟国である我が国がこれを積極的に支持し、これに協力していくことは、当然のことであります。
戦後、我が国は、一貫して、平和主義、国際協調主義、国連重視の姿勢を持って歩んでまいりました。
法案が成立した場合、自衛隊が我が国のイラク復興支援の主たる任務を担うことになります。派遣される自衛隊員は、砂嵐や熱風という厳しい自然環境と悪い治安状況という劣悪な環境のもとで任務を遂行しなければなりません。政府として、派遣される自衛隊員が誇りを持って任務を遂行できるよう、居住環境の確保等に十分な予算を確保するとともに、武器使用に関し、安全の確保に必要な武器携行等に最大の配慮をすべきであります。
最後に、国際社会における紛争が起きるたびに法律をつくって対処するのではなく、平和のための恒久法の制定を検討すべきと考えます。さらに、国の防衛のみならず、国際的な平和の回復、発展に貢献するための組織として、自衛隊の役割と責任は飛躍的に高まっております。平和で安全、安心な状態をつくる自衛隊がその任務にふさわしい組織となるためにも、保守新党は、かねて主張している防衛庁の省昇格の一日も早い実現を求め、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) 達増拓也君。
〔達増拓也君登壇〕
○達増拓也君 私は、自由党を代表して、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対し、反対の討論を行います。(拍手)
米田建三内閣府副大臣は、先日のテレビ番組で、イラク特措法について、「おれは大反対したんだが、とりあえず賛成する。なぜならば、運用の問題で欠陥をカバーするというこそくな形でも、イラクに日本がプレゼンスすることの国益が大きいと思うから賛成します。」と発言しました。
委員会審議で、米田副大臣は、発言に問題はなかったとの考えを示しました。また、福田官房長官も、米田副大臣の説を認め、内閣として問題視しない認識を示しました。
とにかくイラクに自衛隊を派遣するため、あえて欠陥法案を成立させようという小泉内閣の本音、政府・与党の本音が委員会審議の中で明らかになったわけであります。
ショー・ザ・フラッグの次はブーツ・オン・ザ・グラウンド。スローガンというには情けない、俗な言葉に象徴される安易な対米追従意識。そのかりそめの心地よさを国益と錯覚し、自衛隊隊員の安全や尊厳を二の次にして法案成立に走る政府・与党。実際には自衛隊を危ないところには行かせないようにするからいいのだと、お互いに言い聞かせ、法案の欠陥に目をつぶる政府・与党。
イラク特措法案において、武力行使に当たらない対応措置なるものをいわゆる非戦闘地域において実施するということが一体どういうことなのか、その限界はどこまでなのか、委員会審議では結局明らかになりませんでした。
そのときの具体的な状況下でなければ判断できませんという答弁を繰り返す小泉内閣。この法案のもとで自衛隊がどう活動するかは、その場になってみなければわからない、やってみなければわからないという驚くべき無責任さ。しかし、法案の論理的整合性は整っているから大丈夫という幼稚な欺瞞。このような法案が、このような審議を経て、このような採決のときを迎えてしまうという恥ずべき事態は、国民に対して大変に申しわけない限りであります。(拍手)
そもそも、我が国の自衛隊の隊員は、ブーツに例えられたり、ブーツ千足と数えられたりすべき存在ではありません。自衛隊の隊員は、一人一人に名前があり、家族があり、ふるさとがあり、防衛に携わる誇りを持っています。その隊員が日本の名誉を背負って任務に赴くに当たっては、相当の大義が必要であります。
国連の安保理または総会等で決議が行われ、国連から参加要請があれば、日本は国連平和維持活動等に参加し、武力の行使を含むいかなる協力も行うという原理原則を明らかにすべく、自由党は、安全保障基本法案を国会に提出しています。諸国民が正当な手続に従って互いに合意した大義のもとであれば、自衛隊の武力行使は日本国憲法が禁ずるものとは解されず、自衛隊は、諸国民の軍隊と同様の装備や行動基準で海外での活動が認められるべきです。
一方、かかる合意のなされた国際的大義がない場合には、自衛隊を派遣すべきではない。
小泉内閣がイラク特措法案のよりどころとする安保理決議第一四八三号は、イラクの大量破壊兵器問題の解決方法について諸国民が合意できなかった経緯、一方で米英等が国権の発動としてイラク戦争を開始した結果、米英等がイラクにおける実効的支配を確保したという経緯を踏まえ、占領国と国連との間の国際法上の関係を整理しようとしたものであり、日本国自衛隊が名誉ある地位を占め得るような平和維持活動への参加を国連加盟国に要請する決議にはなっていません。
アメリカもイギリスも、戦争をするつもりでイラクに軍を派遣し、実際に戦争をし、イラク国民の側からは停戦や終戦に関する何らの正式な意思表示がない中で、戦争の延長として占領が続けられています。当然、占領軍に対する攻撃はやみません。小泉内閣は、かかる国際法的現実と軍事的現実に目をつぶり、戦争に行くのではないと言い張り、戦争にならない装備と行動基準で、戦争の現場に自衛隊を派遣しようとしています。
かかる自己欺瞞に目をつぶる根拠として、アメリカの意に沿うようにイラクに自衛隊を派遣することが日本にとって大きな国益であるという安易な幻想が政府・与党内にあるようです。
アメリカの軍事力には、他の国々が束になってもかないません。イギリスがついてこられないなら単独でイラク戦争を始めるという構えも見せたアメリカにとって、おつき合い程度の軍事協力は毛ほどの軽さしか意味を持たないと見抜くべきです。
十二年前の湾岸戦争のときには、国際社会の合意もあり、アメリカは、日本の参加を真剣に要請しました。やれ、輸送船と輸送機を出してくれ、車両を出してくれ、掃海艇を派遣してくれ、もちろん人も出してくれ。それが、今回は、ブーツ・オン・ザ・グラウンドという気安さです。本当は来てもらわなくても全然構わないと言っているようなものです。
国連の平和維持活動の決議がなされない今のイラクは、日本国自衛隊の隊員が命をかけるべきところではありません。
北朝鮮問題でアメリカに守ってもらうためにイラクでアメリカに協力するのだという議論がありますが、ブーツ・オン・ザ・グラウンド程度のおつき合いでアメリカが命をかけて日本を守ると期待するのも、安易な幻想です。北朝鮮問題に対処するには、日本独自の防衛体制と日米安保条約の運用体制を万全にするよう、これはこれで努力しなければ、他の地域で何をやってもだめです。
そもそも、北朝鮮問題で楽をするためにイラクで自衛隊の隊員を危険にさらすというのは、ひきょうであり、諸国民の軽べつと侮りを受ける考え方です。(拍手)
今、国際社会では理念の戦いが始まっていることを、政府・与党は悟らねばなりません。
冷戦時代には、抑止のための軍事バランスが決定的に重要であり、戦車、軍艦、作戦機、核兵器の数、こういったものを緻密に計算して戦略を練る軍事的リアリズムが決め手になりました。ところが、今日、隔絶した軍事力を誇るアメリカで流行しているネオコンの議論は、その軍事力を全面的に活用し、アメリカが理想とする民主主義を世界じゅうで実現しようという、極めて理念的な主張であります。
主要国間の戦争が遠のいた冷戦後の国際社会においては、軍事的リアリズムよりも理念が国の命運を決めるということに、特に日本版ネオコンと呼ばれる若手議員の皆さんに気づいていただきたいと思います。
日米同盟さえしっかりしていれば日本の安全保障は今後五十年間大丈夫と言う有識者がいます。しかし、そのレベルに安住していては、本質的な日本の危機がかえって進行してしまいます。百年先、千年先の日本国民が誇れるような理念を、我々は語らなければなりませんし、そのような原理原則を法制化しなければなりません。「千代に八千代に」の日本国なのですから。
かかる気概なき、こそくな法律はかえって日本と世界の将来を脅かすものであることから、イラク特措法案に反対することを重ねて表明し、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) 赤嶺政賢君。
〔赤嶺政賢君登壇〕
○赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、自衛隊のイラク派兵法、軍事占領支援法に対し、反対の討論を行います。(拍手)
本法案は、政府の言うような、イラクの復興人道支援のための法案ではありません。米英が始めた無法なイラク戦争とそれに続く軍事占領に自衛隊を派兵し、日本が軍事占領に参加、加担する、まさに軍事占領支援法であります。
戦後初めて、軍事占領支援のために、しかも、今なお戦闘が続くイラクに自衛隊を派兵することは、武力の威嚇、武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法九条に真っ向から違反するものであり、到底許されるものではありません。(拍手)
かかる重大な法案を通常国会会期末に提出し、会期を延長した上に、わずか一週間という短期間の審議で、中央・地方公聴会もイラク現地調査も行わず、数の力で押し通そうとしているのであります。議会制民主主義を無視した不当きわまりないやり方に、断固抗議するものであります。(拍手)
そもそも、この法案の出発点は、イラク国民からの要請にあるのではありません。ブーツ・オン・ザ・グラウンド、地上部隊を出せというアメリカの要求に従い、小泉総理が、初めに自衛隊派兵ありきで進めたものであります。本法案は、その内容においても、そのやり方においても、その動機においても、断じて容認できないものであります。
以下、具体的に反対理由を述べます。
第一に、この法案が前提としている米英軍によるイラク戦争に全く正当性がないことであります。
政府は、今回のイラク攻撃が国連安保理決議に基づくものと言いますが、安保理事会がイラクに対する武力行使を認めていないことは明らかであります。アメリカがイラクへの武力行使容認決議を画策したのに対し国際社会の圧倒的多数がこれを拒否した経過からいっても、明白であります。
しかも、米英がイラク戦争の最大の口実とした大量破壊兵器はいまだ発見されず、米英国内ですら、政府の情報操作の責任追及が行われているのであります。
小泉総理は、イラクが大量破壊兵器を保有していると断言しながら、いまだその根拠を示し得ないにもかかわらず、その責任を何ら明確にしていないことは極めて重大です。イラク戦争は、どこから見てもその大義は成り立たず、全く道理のないものであることは明らかであります。(拍手)
第二に、政府は、米英の軍事占領に正当性があると言いますが、国連安保理決議一四八三は、無法な戦争に基づく占領行政に合法性を与えておらず、占領行政に対する国連加盟国の協力を要請しているものでもありません。無法な戦争の結果として、占領国に対し、国際人道法に基づく義務や責任を果たすよう求めているにすぎないのであります。フランス、ドイツなどがイラクへの派兵を拒否しているのは、当然のことです。
私は、沖縄の、米軍占領下で育ちました。占領された住民にとっては、いかなる理由によっても、外国占領軍は容認しがたいものであります。しかも、それが違法、不当な軍事占領であればなおさらであります。
現に、米英の軍事占領支配はイラクの国民から深刻な抵抗と反発を受け、武力衝突が続発しています。これに対し、米英軍は、治安の回復、安定の名のもとに掃討作戦を展開しているのです。その米英占領軍を自衛隊が支援することになれば、イラク国民の目に占領軍の加担者と映ることは明らかではありませんか。占領に抵抗するイラク国民から反発と抵抗を受け、砲火を交えるという危険きわまりない事態も起こるのであります。
米英の軍事占領に自衛隊が参加、加担することは、断じて容認できません。(拍手)
第三に、イラクへの自衛隊派兵は、憲法の平和原則に真っ向から反するものです。
本法案は、戦後初めて、現に戦闘が行われている地域に自衛隊の陸上部隊を展開させるものです。政府は、イラク国内に非戦闘地域を設定するから憲法違反にならないと言いますが、イラクの実情に照らせば、これが全くの虚構の議論であることは明らかではありませんか。
米軍に対する攻撃が連日起こっており、米軍の司令官自身が、イラク全土が戦闘地域、戦争はまだ終わっていないと発言しています。このようなイラク国内で、自衛隊は、武器弾薬を含む輸送、補給、医療など、米軍への後方支援活動を行うのであり、幾ら非戦闘地域だといっても、攻撃を受けないとは言えないのであります。
しかも、派遣する自衛隊の武器装備に法的制限はありません。既に、防衛庁は、重機関銃を装備した装甲車や対戦車砲などの武装を検討しています。
米軍支援活動中の自衛隊が、攻撃を受ければ、指揮官の命令のもとに、部隊として組織的に武器を使用し、反撃することになるのであります。これが武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法に反することは、余りにも明らかであります。(拍手)
最後に、日本のイラク支援は、イラク国民の意思を尊重し、イラク国民の要求に基づき、国連を中心とした、非軍事の人道復興支援でなければなりません。これは、すべての加盟国に人道救済、復興支援を求めている国連決議一四八三にも合致するものであります。
私は、日本共産党の現地調査団の一員としてイラクを訪問しました。医薬品が不足している、医療技術の水準を上げたい、農業支援や雇用、職業訓練など、イラクの復旧復興のため、さまざまな分野で、日本の支援を求める声を聞きました。イラク国民から、軍隊の派遣を求める声は全くありません。こうしたイラク国民の声にこそ、耳を傾けるべきであります。
イラク国内に自衛隊を派遣し、イラク国民に敵対して軍事占領を支援することは、日本とイラク国民、イスラム社会との友好関係に深刻な障害をもたらすだけであります。イラク国民の反発と抵抗によって、米英の占領支配が泥沼化することは必至であります。
長期にわたる軍事占領支配に自衛隊を派兵することは、日本の進路にとっても、世界の平和秩序からいっても、極めて重大な障害をつくり出す誤りであることを厳しく指摘し、憲法違反のイラク派兵・軍事占領支援法の廃案を断固として主張し、討論を終わります。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) 今川正美君。
〔今川正美君登壇〕
○今川正美君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対して、反対の立場から討論を行います。(拍手)
きょうは、くしくもアメリカの独立記念日であります。かつてはモンロー主義を掲げたアメリカも、第二次大戦後は、国際社会のトップリーダーとして自他ともに認める存在となりました。
ところが、その米国を大きく狂わせたのは、二年前の同時多発テロ事件でありました。これを契機に出されたブッシュ・ドクトリンは、特定の国を悪の枢軸、ならず者国家と指定し、国際社会を無視してでも武力で相手国を先制的につぶすことを当然としました。
皮肉なことに、アフガニスタンへの報復戦争と今回のイラク戦争でアメリカの敵となったのは、オサマ・ビンラディン率いるテロ組織とフセイン独裁政権でしたが、そのいずれも、旧ソ連によるアフガン戦争とイラン・イラク戦争でアメリカ自身が支援を惜しまなかった相手でありました。
今回、イラクの大量破壊兵器問題では、国連のIAEAやUNMOVICはもとより、フランス、ロシア、中国など国連安保常任理事国を初め圧倒的多数の国々は、国連査察の徹底した継続による平和的解決を求めたのでありました。しかし、米英両国は、国連の武力行使容認決議もないまま、フセイン独裁政権打倒と中東の民主化あるいは石油利権をねらいとして、戦争に踏み切ったのであります。
米英両国は、イラクの大量破壊兵器の隠匿を戦争の理由としました。しかし、フセイン政権が崩壊してから約三カ月たつというのに、いまだに大量破壊兵器は発見されていません。むしろ、米英両国では、イラクの大量破壊兵器に関する情報操作、証拠偽造の疑惑が露呈して、ブッシュ、ブレア両政権は危機に立たされているのが現実であります。
このような大義なき戦争を実際はわかっていながら、ほこりをかぶった六七八、六八七や、査察継続を求める一四四一など、一連の国連決議を身勝手に解釈し、日米同盟重視を理由にイラクへの武力攻撃を支持した小泉総理とその内閣は、国際法を犯し、イラクの罪なき民衆を殺傷した米英両国と同罪と言わざるを得ません。(拍手)しかも、せっかく長年にわたって築いてきた中東諸国と我が国との信頼関係を大きく傷つけてしまいました。
そもそも、世界最大の大量破壊兵器の保有国である米国が、大量破壊兵器を隠し持っているかもしれないイラクを武力制裁する行為は、わかりやすく例えると、そもそも道交法を認めず免許証も持たない米国が交通違反を犯したイラクをいきなり暴力で制裁する行為に等しいでしょう。
こうした無謀な米国を支持する小泉内閣の姿は、あたかも、飲酒運転で暴走するブッシュ大統領の車の後部座席からわざわざウイスキーを勧めて他人をひき殺すお手伝いをするに等しい。同盟国だったら、ブレーキを踏み、エンジンキーを抜いて、暴走車をとめてやるのが小泉総理の役目のはずです。(拍手)
かつては、後部座席、つまり野党からブレーキを踏めば、助手席、つまり自民党の内部からもブレーキを踏んで、政治の暴走を抑止する装置があったはずですけれども、今、この政治の現状は、その機能が壊れているありさまであります。
さて、不法な戦争後、本来なら、米英両軍は速やかに撤退し、国連主導のもとでイラク復興を図るのが本筋です。しかし、現実は、米英両国による不当な軍事占領が続いています。国連決議一四八三も、米英両軍の戦争を合法化したわけではなくて、人道復興支援を各国に要請はしても、軍隊派遣を求めているわけではありません。支援のあり方は、それぞれの国の憲法など、それぞれの仕組みによってやるものです。
政府・与党は、人道支援と安全確保、つまり治安維持のためには自己完結型組織たる自衛隊が適切であり、非戦闘地域へ派遣するから憲法に抵触しないと繰り返しておりますけれども、全くの詭弁であります。
私も、社民党の団長としてイラクの現地を調査してきましたし、また、野党各党の調査の報告によっても、イラクの治安状況はかえって悪化しています。与党の調査団はどこを見てきたのでしょうか。現在、一日平均二人の米兵が襲撃され、死亡しています。政府の言う非戦闘地域も、決して安全地帯ではありません。仮に、安全地帯であるのなら、わざわざ武装組織は必要ないはずです。国連も、このたび、人道支援の領域では丸腰、非武装が望ましいとのガイドラインを発表しているのです。
いずれにせよ、イラク復興支援の前提としては、治安回復とあわせて健康上の安全が不可欠です。その象徴的事例が、劣化ウラン弾による被害なんです。
米軍による劣化ウラン弾の使用は、湾岸戦争とコソボ紛争で証明されました。湾岸戦争とその後の経済制裁によって、イラクの多くの人々は放射能障害に苦しみ、特に、多くの子供たちが命を奪われているのです。こうした被害実態の検証は時間を要します。
今回のイラク戦争でも劣化ウラン弾が使用された事実は、我が国の民間団体や国際的な専門機関の調査で既に立証されています。しかし、我が国政府は、劣化ウラン弾と放射能障害との因果関係及びイラク戦争で使用を否認する米国報告をうのみにするだけです。これでも、世界で唯一の被爆国と言えるのでしょうか。
NGOであれ、派遣予定の自衛隊であれ、イラク復興支援に当たる人材をむざむざ放射能被害にさらすのですか。広島、長崎で原爆投下の洗礼を受けた日本であればこそ、その先端医療を生かした支援ができるのではありませんか。
教育の分野でも同様です。イラクの学校の先生は、月に二百四十円、よくても千五百円ほどの月給で、まさしくボランティアで頑張っています。イラクの多くの子供たちが一日も早い支援を望んでいるのです。自衛隊などの出る幕ではありません。(拍手)
ところで、本来、戦争放棄、戦力不保持を定めた憲法とのかかわりで専守防衛を原則とする自衛隊を、このように長期間、その基本的任務を外れて海外派兵に使用することは、決して許されません。国会では、海外派兵を為さざる決議までしているはずです。しかし、冷戦後、この十年余り、自衛隊は専らPKOやインド洋派遣などに従事し、自衛隊法上の雑則運用の実態にあるのではありませんか。
我が国の独立と平和を守ると宣誓して入隊した自衛官にとって、海外派遣は、憲法違反であることはもとより、雇用契約違反であります。
一昨年十一月以来、テロ対策を名目にしたインド洋派遣は二十カ月に及んでいます。今、どういう実態にありますか。この間、二人の自衛官が命をなくし、任務遂行中に組織ごとの飲酒事件まで発覚しましたが、政府は、国会に報告すらしません。派遣命令が下る前に辞職したり転属する自衛官も出てきているようであります。果たして、彼らを非難することができるでしょうか。毎年、七十人を超える自衛官が自殺しており……
○議長(綿貫民輔君) 今川正美君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○今川正美君(続) その半分は、いじめ、しごきによるものと思われます。皆さん、自衛官も人の子なんです。その人権をもっと尊重しなければなりません。まるで機械のように、便宜的に自衛隊を活用し、政治的に利用することは、厳に慎まなければなりません。(拍手)
一方では、派遣中の補給艦や護衛艦は実質的に米軍の指揮下に入っていること、イラク戦争に従事している米空母に燃料を提供している事実は、テロ特措法の趣旨からも外れております。このように、自衛隊艦船が戦闘地域に踏み込んでいないかどうか、停泊港はどこかすら政府は秘密にしており、国会での検証は不可能で、シビリアンコントロールは機能していません。
このように、自衛隊を占領下のイラクに派遣することは、憲法上からも、実態面からも許されません。政府は、イラク国民にとって一番必要な支援から目を背け……
○議長(綿貫民輔君) 今川正美君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。
○今川正美君(続) 米国から高い点数を稼ぐために自衛隊を派遣しようとしているにすぎません。
私たち社会民主党は、本法案を直ちに廃案とすることを強く求め、私の反対討論を終わります。(拍手)
○議長(綿貫民輔君) これにて討論は終局いたしました。
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○議長(綿貫民輔君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
――――◇―――――
○議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時六分散会