衆議院

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第11号 平成16年2月27日(金曜日)

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平成十六年二月二十七日(金曜日)

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  平成十六年二月二十七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部科学大臣河村建夫君。

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 義務教育は、憲法の要請により、すべての国民に対し、必要な基礎的資質を培うものであり、国と地方が適切に役割分担しつつ、円滑に実施することが重要であります。

 一方、政府においては、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三を閣議決定し、地方の権限と責任を大幅に拡大するとともに国及び地方を通じた行政の効率化を図る観点から、国と地方の役割分担に応じた事務事業のあり方の見直し、国庫補助負担金の縮減に向けた検討を進めているところであります。

 この法律案は、かかる政府の方針を受け、義務教育費国庫負担金について、義務教育に関する国の責任を適切に果たしつつ、義務教育に関する国と地方の役割分担及び費用負担のあり方の見直しを図る観点から、その負担対象経費を限定することとするものであります。

 次に、この法律案の概要について御説明いたします。

 この法律案は、退職手当及び児童手当に要する経費の性質にかんがみ、平成十六年度から、公立の義務教育諸学校の教職員等に係る退職手当及び児童手当に要する経費を国庫負担の対象外とするものであります。

 なお、このことに伴う地方財源の手当てについては、所要の財源措置が講じられることとされております。

 以上が、法律案の趣旨でございます。(拍手)

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 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。中野正志君。

    〔中野正志君登壇〕

中野正志君 自由民主党の中野正志でございます。

 私は、自由民主党、公明党を代表して、ただいま議題になりました義務教育費国庫負担法等の一部改正法案に関して質問いたします。(拍手)

 現在、政府において進められている三位一体の改革は、国から地方へ、地方にできるものは地方にの理念のもと、地方の歳出歳入両面での国による関与を減らし、住民が行政サービスの受益と負担の関係を選択できるような地方財政制度の構築を実現するため、国庫補助負担金の廃止・縮減等の改革、税財源移譲、地方交付税の改革を一体的に行うことを目指した改革であります。

 もちろん、まだ道半ば、改革の歩みは十分でありません。地方の不満も厳しく受けとめます。しかし、地方が、国の財政的な関与、統制から脱却して真に自立し、住民に主体的に必要かつ十分なサービスが提供できるようにしていくために必要な改革であることは論をまちません。教育分野においても、こうした観点からの必要な見直しを行うことは重要であると考えます。

 そこで、まず、今回の義務教育費国庫負担法等の改正の本来的な趣旨について文部科学大臣にお伺いいたします。

 義務教育は、憲法の要請に基づき、国民として必要な基礎的資質を培うため、すべての国民に一定水準の教育を無償で提供するものであり、国は国民に対して一定水準の教育を提供する責任を負っています。

 また、物的な資源に乏しい我が国においては、人材こそ社会存立の基盤であり、明治期以来、多くの先人たちが、日本の未来を担う子供たちを育成するため、教育施策の発展充実に努め、その成果が我が国社会の原動力となってきたことには異論はないと考えております。

 諸外国に目を転じれば、イギリスのブレア首相は、政権の最優先課題を問われ、第一に教育、第二に教育、そして第三に教育と答え、教育水準の向上をスローガンに、教育予算の増加などの諸改革に取り組んでおります。また、アメリカのブッシュ大統領も、教育は私の最重要課題であるとし、連邦政府主導の教育改革に取り組んでおります。

 我が国においても、こうした諸外国の動向を十分に踏まえ、知の世紀である二十一世紀において、今後も我が国が活力ある社会を維持し、さらなる発展を遂げていくために、今こそ教育の重要性を再認識し、国家戦略として教育施策の充実に努めていくことが極めて重要だと考えております。

 このため、教育の分野における三位一体の改革の推進については、国の国庫補助負担金の削減だけを目指すような財政的な観点からの議論のみによるのではなく、日本の未来を担う子供たちの教育のためにどのような制度にすることが望ましいのかという観点からも十分に検討を行い、国は教育の財源は保障する、使い方は地方の自由だというぐらいに、将来に禍根を残すことのないようにしていくことが必要と考えます。

 義務教育費国庫負担制度のあり方についての文部科学大臣の所見をお伺いいたします。

 以上、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 中野正志議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、今回の義務教育費国庫負担法等の改正の趣旨についてのお尋ねでございます。

 今回の改正は、昨年六月の経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三等を踏まえ、義務教育費国庫負担金について、義務教育に関する国の責任を適切に果たしつつ、義務教育に関する国と地方の役割分担及び費用分担のあり方の見直しを図る観点から、国庫負担の対象経費を国が真に負担すべきものに限定するため、退職手当及び児童手当に関する経費を国庫負担の対象外とするものであります。

 次に、義務教育費国庫負担制度のあり方についてのお尋ねがございました。

 義務教育は、憲法の要請により、知育、徳育、体育の調和のとれた児童生徒を育成し、国民として共通に身につけるべき基礎的資質を培うものであり、国は、すべての国民に対して無償で一定水準の教育を提供する最終的な責任を負うものであります。

 義務教育に係る経費負担のあり方については、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三等を踏まえて、財政論だけではなくて教育論としてしっかり議論するために、現在、中央教育審議会において、義務教育制度のあり方の一環として検討もいただいておるところであります。

 文部科学省といたしましては、義務教育費国庫負担制度について、地域の創意工夫に基づく多様な取り組みが展開されるように、平成十六年度より総額裁量制を導入することといたしております。

 今後とも、地方の自由度を拡大していくために必要な見直しは行いつつも、全国すべての地域にすぐれた教員を確保するために、国の責任において教育の機会均等と水準を確保するという制度の根幹は引き続き堅持するという観点に立って、十分な議論を行うとともに、適切に対応してまいりたい、このように考えております。(拍手)

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議長(河野洋平君) 高井美穂君。

    〔高井美穂君登壇〕

高井美穂君 民主党の高井美穂です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。(拍手)

 法案の中身について審議をする前に、まず、日本の教育の現状についてお伺いをいたします。

 昨年秋に初めて議席を与えられた新人議員として、また、あと四年少々で義務教育年齢に達する娘を持つ母親として、私は、近年の教育のあり方に大きな疑問と不安を抱いております。

 私が中等教育を受けたのは、いじめ、学級崩壊、不登校、教員の不祥事など、多くの問題が教育の現場に噴き出し始めたころであります。いい成績をとっていい大学に行き、いい会社や安定した仕事が得られたらそれで安心だと思って頑張ってまいりました。しかし、それは間違いだったと今思っています。いや、間違いだったというより、そういう時代は終わったんだということに気づきました。

 私自身、現代社会の豊かさを享受しながら、生きることに喜びを見出せず、悩んで苦しんでいたころがありました。何一つ不自由ないのに、何のために生きればいいのか希望が持てなかった。今、多くの子供たちが、かつての私のように悩んでいるのではないかと思っています。

 世の中にはさまざまな教育論がありますが、子供たちが本当に求めているものは何なのか、必ずしもつかめていない気がいたします。もっと子供に歩み寄って、現場の声に耳を澄まさなければ、ゆとり教育が学力低下、学力格差をふやしたのと同じような失敗を繰り返してしまうのではないかとの懸念が消えません。

 文部科学大臣は、国策として最も大事な、これからの日本を支える人づくりについて、教育行政に何を取り入れ、何をやめていくべきとお考えになっておられるか、お尋ねをいたします。

 次に、提案されている法案の中身についてお聞きいたします。

 この法案は、いわゆる三位一体改革関連として、文部科学委員会に付託される予定であります。昨年、共済費長期給付と公務災害補償基金を一般財源化したのに続く改正であり、今回は、義務教育教職員の退職手当と児童手当に係る部分を国庫負担の対象から外し、一般財源化するものです。

 私は、この法案が地方分権をどれだけ進めるものになるのか、また義務教育の改革にどれだけ資するものになるのか、この二つの観点から慎重に検証されるべきであると考えております。(拍手)

 教育の分野でも、国が最低基準を責任を持って保障した上で、地方分権化、多様化を進めていくことが必要と考えます。しかし、もともと裁量の入る余地のない退職手当と児童手当を一般財源化することが、どれだけ地方の自由を拡大することにつながるのでしょうか。私には理解できません。

 知事会が、地方の自由度の拡大につながらない単なる地方への負担転嫁だと怒るのは、当然であります。第一、総務大臣みずから、地方の自由度の拡大につながらない退職手当等の一般財源化は反対と、経済財政諮問会議で表明されております。

 そこで、現在もそのようなお考えなのか、税源移譲予定交付金を創設する総務大臣にお尋ねをいたします。(拍手)

 一方、日本の義務教育にとってプラスになるのかという観点から見て、本法案にどのような積極的な意義があるのでしょうか。私には、そのような意義は全く見出せないのですが、果たして、この法案を文部科学省は何のためにお出しになるのか、これは文部科学大臣にお尋ねをいたします。

 あわせて、本法案の附則第二条に白紙委任的な検討条項がございますが、附則第二条の解釈をお聞かせ願います。

 今、私は、文部科学省も総務省も、本来やるべきことを棚に上げ、貴重な時間を浪費しているとしか思えません。財務省など他の省庁も同罪です。しかし、最も責めを負うべきは、地方分権への流れを迷走させている張本人である小泉三位一体改革であります。(拍手)

 本当に地方の自由度を拡大しようというなら、奨励的な補助金から一般財源化していくのが普通でしょう。その方が分権の効果も国民に見えやすく、理解が広がるはずです。小泉総理がリーダーシップをとって、そういう形で査定基準をつくり、基準に合致する補助金をリストアップしていくのが筋ではないでしょうか。

 ところが、三年間で四兆円、十六年度はとりあえず一兆円という数字だけが先に決まってしまいました。あとは役所に丸投げし、何とか一兆円のつじつまを合わせてくれ、こういうことですから、ビジョンなき財政論と言うしかありません。

 鳥取県の片山知事は、三位一体丸という船に例えれば、乗っている人たちの間に、その船をどこにこぎつけようかという共通の理解がないのですと批判しておられます。どこに行くのかを、方向性を指示するのは、船長である小泉総理のはずです。地方分権論議を矮小なものにしてしまった小泉総理の責任は、厳しく指摘されなければなりません。(拍手)

 小泉総理は、三位一体改革とは、地方がみずからの創意工夫と責任で政策を決める、地方が自由に使える財源をふやす、地方が自立できるようにするとおっしゃっているようです。これ自体はもっともなことだと思いますが、では、実際に出てきた本法案のどこにそうした趣旨が反映されているのでしょうか。本来なら総理みずからにお尋ねしたいところですが、経済財政諮問会議を担当する竹中大臣にお尋ねをいたします。

 次に、税源移譲予定特例交付金についてお尋ねいたします。

 これは、本法案の条文には触れられておりませんが、要は、国庫負担から外される退職手当、児童手当を交付金で措置しようとするものです。この交付金は人口比例で配分をしますから、それだけだと賄えない地方が多数出てきます。その差額を地方交付税措置するということでありますが、実際に必要な退職手当が全額措置されるのかどうか。これは、文部大臣、総務大臣、それぞれに見解をお伺いします。

 さらに、この交付金は、その名からすれば、税源移譲されることを前提としている交付金であろうと思います。本当に税源移譲される場合、いつの段階で移譲を行うのでしょうか。その際、退職手当、児童手当に要する経費は、そっくりそのまま全額移譲されると認識していいのでしょうか。

 また、昨年、共済費長期給付、公務災害補償について一般財源化した際には、二分の一を地方特例交付金、残り二分の一は交付税特別会計から借り入れ、元利償還時において地方が負担する仕組みをとっております。こうした過去の国庫負担金対象額の一般財源化、交付金化、こうしたちぐはぐな仕組みをどのように整理していくのでしょうか。

 以上の点について、総務大臣の御見解をお尋ねいたします。(拍手)

 文部科学大臣にお尋ねいたします。

 文部科学省は、義務教育費国庫負担制度の根幹は堅持、つまり、給与本体は国庫負担から外さないという前提のもとで、地方分権を求める声にこたえて、総額裁量制を政令改正で導入しようとしておりますが、この制度の趣旨と仕組みについて御説明を求めます。

 この制度は、国庫負担金総額は都道府県に渡し、その使い道において地方の裁量を一定拡大し、都道府県の自主的な判断で教員配置ができるようになると理解しております。しかし、加配教員の扱いなどで依然として地方は縛られるとの指摘もあります。どのようにお考えでしょうか。

 また、この総額裁量制は、一クラス四十人という現行標準法の中でのやりくりであります。この際、いっそ制度設計を見直して、民主党がこれまで強く主張してきた三十人以下学級を推進し、子供たち一人一人に目が行き届く環境整備を進めながら、地方の裁量、権限の移譲による、地域が主役の教育環境を整えるべきではないでしょうか。文部大臣の御見解をお伺いします。(拍手)

 最後になりますが、今ベストセラーになっております村上龍さんの「十三歳のハローワーク」に、次のような一節がございます。「格差のある教育システムには多大なリスクがある。」これは、小泉構造改革の中で、国民の経済格差が大きくなって、それがそのまま教育格差につながり、深刻な社会不安を招くだろうということに警鐘を鳴らしたものでありますが、私は、全く同感だと思っております。

 この鋭い指摘にどうこたえて制度設計をしていくのか、文部科学大臣の御見解をお尋ねし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣河村建夫君登壇〕

国務大臣(河村建夫君) 高井美穂議員の八つの質問に順次お答えさせていただきます。

 第一点は、これからの日本を支える人づくりについてのお尋ねでございました。

 私といたしましては、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指して、画一と受け身から自立と創造へという基本理念のもとに立って、教育の構造改革を進めてきたところでございますが、引き続いて、知育、徳育、体育のほか食育も重視しつつ、その内容の充実を図りながら、人間力向上を目指して、確かな学力や豊かな心の育成、知の世紀をリードする大学改革など、教育改革を積極的に進めてまいる所存であります。

 また、教育分野における規制改革を一段と推進し、教育の地方分権を積極的に推進するとともに、国は、全国的な教育水準の確保に留意しながら、必要な支援と環境整備の充実を図ってまいる所存であります。

 第二点は、今回の義務教育費国庫負担法等改正法案の提出趣旨についてのお尋ねでございました。

 今回の改正は、昨年六月の経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三等を踏まえて、義務教育費国庫負担金について、義務教育に関する国の責任を適切に果たしつつ、義務教育に関する国と地方の役割分担及び費用分担のあり方の見直しを図る観点から、国庫負担の対象経費を国が真に負担すべきものに限定するため、退職手当及び児童手当に要する経費を国庫負担の対象外とするものであります。

 次に、本法案の附則第二条の解釈についてお尋ねがございました。

 附則第二条につきましては、昨年十二月の三位一体改革に係る政府・与党協議会の決定を踏まえ、今回の法改正による退職手当等に係る措置について、政府として、平成十八年度末までの義務教育教職員の給与等に要する経費負担のあり方に関する検討の状況及び社会経済情勢の変化を踏まえつつ、必要に応じ適切な措置を講ずるとの趣旨を規定いたしたものであります。

 次に、退職手当の財源が税源移譲予定特例交付金により全額措置されるのかというお尋ねであります。

 税源移譲予定特例交付金は、御指摘のように人口で案分して交付されるため、税源移譲予定特例交付金の額と退職手当等に係る国庫負担金の減少額とは各地方公共団体で多少の違いが出てくることになりますが、国庫負担金の減少分は、地方交付税の算定を通じて、各地方公共団体の財政需要の実態に見合った財源調整がなされるものと承知をいたしております。

 次に、総額裁量制の趣旨とその仕組みについてお尋ねでございました。

 義務教育費国庫負担金の総額裁量制は、教職員の職務と責任の特殊性などを勘案した給与単価と教職員の標準定数により算定した負担金総額の範囲内で、その使い道を地方にゆだね、教職員の給与や配置についての都道府県の裁量を拡大しようとするものであります。

 これによって、地方の主体的な判断に基づき、例えば、習熟度別少人数指導の充実や少人数学級の実施など、地域の実情に応じた、よりきめ細かな教育の展開が可能になるものと考えております。

 文部科学省といたしましては、この総額裁量制によって、義務教育水準の維持向上に必要な財源を確実に保障しつつ、地方における創意工夫ある取り組みを一層促進してまいりたい、このように考えております。

 また、総額裁量制のもとでの加配教員の取り扱いについてお尋ねでございました。

 義務標準法に基づく加配定数は、法令で定める目的に応じ特例的に加算されるものでありますけれども、総額裁量制の導入に合わせて、都道府県の判断によって、少人数学級への活用なども含め、教職員の配置についてさまざまな工夫を講じることが可能になるように、その取り扱いを弾力化することといたしております。

 三十人学級についてお尋ねでございました。

 文部科学省では、教科等の特性に応じた少人数指導や習熟度別指導など、個に応じたきめ細かな指導を実施するため、平成十三年度より定数改善計画を推進しておるところであります。

 また、学級編制についても、地方の自主性を高める観点から、四十人学級を標準としつつも、都道府県の判断によって、これを下回る基準を定めることを可能としたところであり、平成十五年度において、三十都道府県が少人数学級を実施しております。

 さらに、今回の総額裁量制の導入によって、学級編制や教職員配置については地方の裁量が拡大されることとなり、地方の創意工夫を生かした教育活動が一層促進されるもの、このように考えております。

 最後に、経済格差が教育格差につながって社会不安を招くとの指摘がございました。学校教育の制度設計をいかにすべきか、こういうことでありました。

 すべての国民が、その能力に応じひとしく教育を受けることができるように教育の機会を保障していくことは、憲法が要請するところであります。文部科学省といたしましては、今後とも、全国どこの地域においてもすべての子供たちが安心して教育を受けられるように、義務教育費国庫負担制度の根幹は堅持するという観点に立って、適切に対応してまいります。

 また、特に奨学金制度、この事業、これによって拡充すること、そうした教育施策の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 高井美穂議員から四問いただいております。

 まず、義務教育国庫負担金の一般財源化に対する考え方につきましてのお尋ねをいただいております。

 義務的経費であります退職手当等々の一般財源化は、それ自体では地方の自由度の向上に資するものとは考えがたい、私もそう思います。しかし、今回の措置は、平成十八年度末までに給与費全額の一般財源化について検討を行うということになっております中で、まず退職手当の一般財源化を行うことであり、改革を一歩前進させるものだと認識をいたしております。

 次に、税源移譲予定特例交付金についてのお尋ねがあっております。

 教職員の退職手当等に係ります国庫負担金につきましては、その一般財源化いたします相当額の全額を地方交付税の基準財政需要額に算入いたします。これによりまして、各都道府県の必要額は確保されると考えております。

 次に、その時期についてのお尋ねがありましたが、退職手当等、今後額が大きく変動することが予想されますので、したがいまして、昨年末、政府・与党の決定におきましても、税源移譲予定交付金というのを設けさせていただきまして、各年度の退職手当などの必要額を確保することといたしております。同時に、給与費全額の一般財源化の検討なども踏まえ、税源移譲の時期を判断することといたしております。税源移譲の時期や額につきましては、この決定の趣旨に沿って適切に判断する必要があるものと考えております。

 最後に、義務教育費国庫負担金の整理の方法についてのお尋ねがあっておりました。

 義務教育費負担金を一般財源化する際に地方税とするか交付金とするかにつきましては、その時点におきます一般財源化に係る議論や対象経費の性格などなど、いろいろ考えた上で、地方団体の財政運営に支障が生じないように対処することを基本といたしております。

 今後も、適切に財源措置を講じつつ、基幹税によります税源移譲につなげていくことで、地域主権、地方分権の時代にふさわしい地方税財政等々、基盤の確立に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 高井議員から、一問、三位一体の改革の趣旨と本法案の関連についてお尋ねをいただいております。

 政府は、三位一体の改革を推進し、地方の権限と責任を大幅に拡大し、同時に、行政全体のスリム化を目指しているわけでございます。

 義務教育費国庫負担制度につきましても、基本方針二〇〇三において、地方の自由度を大幅に高める観点からの見通し、検討を着実に進めるための工程を示しております。今般の改正は、その工程に沿ったものと考えております。まさに、全体として地方の自由度を高め、税源移譲につながるものでございます。

 政府としては、引き続き、三位一体の改革工程を加速、強化するよう、積極的に取り組んでまいる所存でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

        総務大臣    麻生 太郎君

        文部科学大臣  河村 建夫君

        国務大臣    竹中 平蔵君

 出席副大臣

        文部科学副大臣 原田 義昭君


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