衆議院

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第14号 平成16年3月12日(金曜日)

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平成十六年三月十二日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第七号

  平成十六年三月十二日

    午後一時開議

 第一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案(災害対策特別委員長提出)

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本日の会議に付した案件

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 日程第一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案(災害対策特別委員長提出)

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 弁護士法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(青少年問題に関する特別委員長提出)

 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員山原健二郎君は、去る八日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 山原健二郎君に対する弔詞は、議長において昨十一日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議 をもってその功労を表彰された山原健二郎君の 長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

議長(河野洋平君) 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙を行います。

小渕優子君 裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(河野洋平君) 小渕優子君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に横路孝弘君を指名いたします。

 ただいま指名いたしました横路孝弘君は裁判員の予備員でありましたので、この際、新たに裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に樽床伸二君を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は第三順位といたします。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 日程第一は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案(災害対策特別委員長提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長堀込征雄君。

    ―――――――――――――

 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔堀込征雄君登壇〕

堀込征雄君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及びその主な内容を御説明申し上げます。

 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震は、房総半島の東方沖から三陸海岸の東方沖を経て択捉島の東方沖までの日本海溝及び千島海溝並びにその周辺の地域における地殻の境界またはその内部を震源とする大規模な地震であります。

 これらの地域では、三十年以内の発生確率が九九%とされている宮城県沖を初めとして、大規模地震発生の切迫性が指摘されており、地震及びこれに伴う津波により生ずるおそれがある被害の軽減を図るため、事前の対策を着実に進めておくことが必要であります。

 本案は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が重大な被害を及ぼすおそれがあることにかんがみ、当該地震に係る地震防災対策の推進を図るため、特別の措置を講じようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域として指定するものとしております。

 第二に、推進地域の指定があったときは、中央防災会議は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画を作成し、及びその実施を推進しなければならないものとし、また、指定行政機関の長等は防災業務計画等において、避難地、避難路、消防用施設その他の地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備に関する事項等を定めなければならないものとしております。

 第三に、推進地域内において病院、劇場、百貨店、旅館その他不特定かつ多数の者が出入りする施設等を管理し、または運営することとなる者は、あらかじめ、当該施設または事業ごとに、津波からの円滑な避難の確保に関する事項等を定めた対策計画を作成しなければならないものとしております。

 第四に、国は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する観測及び測量のための施設等の整備に努めなければならないものとしております。

 第五に、国及び地方公共団体は、推進地域において、避難地、避難路、消防用施設その他の日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関し地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備等に努めなければならないものとし、この場合、積雪寒冷地域においては、交通、通信その他積雪寒冷地域における地震防災上必要な機能が確保されるよう配慮されなければならないものとしております。

 第六に、国は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進のため必要な財政上及び金融上の配慮をするものとしております。

 以上が、本案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 本案は、昨日の災害対策特別委員会において、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決定したものであります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

小渕優子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、弁護士法の一部を改正する法律案、右三案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 小渕優子君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 裁判所法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 弁護士法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、弁護士法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長柳本卓治君。

    ―――――――――――――

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び同報告書

 裁判所法の一部を改正する法律案及び同報告書

 弁護士法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔柳本卓治君登壇〕

柳本卓治君 ただいま議題となりました各法律案について、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事の員数を六十七人、判事補の員数を十六人、簡易裁判所判事の員数を十二人、裁判官以外の裁判所職員の員数を四百人、増加するものであります。

 次に、裁判所法の一部を改正する法律案は、裁判官以外の裁判所職員の研究及び修養体制の整備を図るため、裁判所書記官研修所及び家庭裁判所調査官研修所を統合し、裁判所職員総合研修所を設置するものであります。

 最後に、弁護士法の一部を改正する法律案は、弁護士資格の特例制度全体の整合性を確保するため、一定範囲の大学の法律学の教授、衆参法制局参事、内閣法制局参事官等の弁護士資格特例の見直しを行うものであります。

 各案は、去る九日本委員会に付託され、本日野沢法務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑を行い、これを終局し、直ちに採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、各案に対し、それぞれ附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 三案を一括して採決いたします。

 三案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

小渕優子君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 青少年問題に関する特別委員長提出、児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 小渕優子君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(青少年問題に関する特別委員長提出)

議長(河野洋平君) 児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。青少年問題に関する特別委員長武山百合子君。

    ―――――――――――――

 児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔武山百合子君登壇〕

武山百合子君 ただいま議題となりました児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 本案は、児童虐待が引き続き頻発している状況にかんがみ、児童虐待の防止等に関する施策を強化するため、児童虐待の定義の明確化、国及び地方公共団体の責務等の強化、児童虐待の通告義務の範囲の拡大、児童の安全の確認及び安全の確保に万全を期するための規定の整備等を行おうとするものであります。

 その主な内容は、

 第一は、保護者以外の同居人による身体的虐待、性的虐待または精神的虐待の保護者による放置等が児童虐待であることを明確にするものとすること、

 第二は、児童虐待の予防及び早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援等を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体の間の連携の強化、民間団体の支援その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならないものとする等、国及び地方公共団体の責務を見直すものとすること、

 第三は、児童虐待を受けたと思われる児童を通告義務の対象とするものとすること、

 第四は、児童相談所長または都道府県知事は、児童の安全の確認及び安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ適切に、警察署長に対し援助を求めなければならないものとすること、

 第五は、保護者の同意に基づく施設入所等の措置が行われている場合についても、児童との面会または通信を制限できるよう規定を整備するものとすること、

 第六は、児童虐待の防止等に関する制度に関しては、この法律の施行後三年以内に、児童の住所または居所における児童の安全の確認または安全の確保を実効的に行うための方策、親権の喪失等の制度のあり方その他必要な事項について、この法律による改正後の児童虐待の防止等に関する法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること

としております。

 以上が、本案の提案の趣旨及びその内容であります。

 本案は、本日青少年問題に関する特別委員会において、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 何とぞ速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案及び中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣中川昭一君。

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 中小企業をめぐる経済情勢は依然厳しく、やる気と能力のある中小企業に対する資金供給の円滑化を図ることは、引き続き重要な課題であります。

 中小企業金融においては、金融機関の担保による融資が大きな割合を占めており、中小企業金融の円滑化を図るためには、貸付債権の証券化手法の普及により無担保融資を拡大することを促すことが必要であります。

 また、平成十四年十二月に成立した中小企業総合事業団法及び機械類信用保険法の廃止等に関する法律において、政府は、平成十六年三月三十一日までに、中小企業信用保険等の業務を中小企業金融公庫に行わせるための措置を講ずることが必要であるとされております。

 こうした状況を踏まえ、今般、本法律案を提案した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、中小企業金融公庫法の一部改正であります。

 その改正の第一点は、民間金融機関等による中小企業者に対する無担保融資の拡大を促すための業務として貸付債権等の証券化を支援する業務を中小企業金融公庫に追加する等の措置を講ずることとしております。

 第二点は、中小企業信用保険等の業務を中小企業総合事業団から中小企業金融公庫に移管するための所要の措置を講ずることとしております。

 第二に、独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部改正であります。

 繊維関係業務の合理化等の措置を講ずるほか、独立行政法人中小企業基盤整備機構の設立のために必要となる措置を講ずることとしております。

 引き続きまして、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 現在、リスクの高いベンチャー企業や事業再生に取り組む企業に十分に資金供給がなされていない中、出資により資金供給を行う仕組みであるファンド制度に対するニーズが高まっております。

 しかしながら、現在の本法に基づくファンド制度は、出資先のベンチャー企業へのつなぎ融資ができなかったり、経営革新や事業再生に取り組んでいる幅広い企業への出資ができないなどの課題を抱えております。

 こうした状況を踏まえ、ファンド制度の一層の拡充を図るため、今般、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、ファンドが、出資のみならず、出資先企業に対する融資もできるようにいたします。

 第二に、ファンドの投資対象の制限を撤廃し、中堅企業などにも幅広く出資ができるようにいたします。

 以上が、これら法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)及び中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。河井克行君。

    〔河井克行君登壇〕

河井克行君 自由民主党の河井克行です。

 私は、自由民主党と公明党を代表いたしまして、議題になりました中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案と、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律、いわゆる中小ベンチャーファンド法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 今、日本経済は、設備投資と輸出を中心にようやく回復の兆しがあらわれてきました。二〇〇三年度第四・四半期のGDP成長率は、年率換算で六・四%を記録しました。しかしながら、真の意味での日本経済の回復とは、全国の中小企業が元気になることにほかなりません。なぜならば、全国の企業数のうち九九・七%は中小企業ですし、すべての雇用者の七割は中小企業で働いている人たちだからです。ところが、日本銀行が発表した最新の業況判断IDでは、大企業がプラス一であるのに対して、中小企業はマイナス二八に今なお、残念ながらとどまっています。

 今、静かに過去を振り返れば、不況が長引いてしまった原因は、金融制度の機能不全にありました。金融は、国の経済活動の血液です。その大切な血の流れが滞ってしまった。国内銀行の貸出残高は、九三年以降の十年間で百兆円も減りましたが、わけても中堅・中小企業の借入残高は、大企業のそれが約一割減少であるのに対して、およそ三割も減ってしまいました。厳しい貸倒引当金の計上や自己資本比率の低下により、民間の金融機関が貸し倒れに立ち向かう力は確実に衰えましたし、不動産価格の下落によって、中小企業の担保による借り入れ余力も低くなりました。金融機関による間接融資に必要な資金の多くを頼っている日本の中小企業は、いわば血管の目詰まりに直撃されてしまったのです。

 この苦境を切り開くために、昨年末、政府が取りまとめたのが、経済活性化のための産業金融機能強化策です。そこには、従来型の金融制度を脱却し、産業金融の担い手と手法を多様化することなどがうたわれています。

 ここで、経済産業大臣にお尋ねいたします。

 経済産業省が、今回の中小企業金融公庫法などの改正を含め、これから産業金融の多様化にどのように取り組んでいくのか、具体的にお示しください。

 次に、今回の法改正への御意見を地元の地域金融機関に伺いましたところ、改正の趣旨、すなわち、無担保の中小企業向け貸し付けを公庫が部分保証し、証券化したものを買い取ったり、投資家が購入する際の保証をつけるということには、そろって期待が寄せられました。

 むしろ、彼らの関心は、公庫の現場が新制度を実際にどのように運用するのかにあります。つまり、公庫は無担保貸付証券をどこまで買い取ってくれるのか。中でも、経営が厳しく、融資の可否の判断が難しい、いわゆる灰色融資先についての公庫の姿勢が問われています。

 借り手の関心は、要は、融資がふえるかどうかにあります。今回の法改正によって、全国の中小企業への無担保貸し付けがどれくらいふえるのでしょうか。また、本当にねらいどおりの効果が上がるのでしょうか。大臣の御所見と御熱意を問います。

 さらには、あわせて提案されている中小ベンチャーファンド法の改正により、ファンドが資金繰りに苦しむ中小企業にとってどのように役立つことになるのか、お尋ねをいたします。

 地元を歩けば聞こえてきます、金融機関が融資さえしてくれれば会社の先行きにもっと希望を抱くことができるのにという意欲ある数多くの中小零細企業の皆様のお声が、今回の法改正により少しでも小さくなることを期待をして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) お答え申し上げます。

 まず、産業金融の多様化についてでございますが、中小企業金融や地域金融の機能強化を図るためには、手法や担い手の多様化が重要であり、無担保融資の拡大、売り掛け債権等の担保としての活用、出資機能の充実、さらには再生支援策の充実等を図ることが必要であります。

 このため、経済産業省といたしまして、今国会に中小企業金融公庫法及び中小ベンチャーファンド法の改正法案を提出したところであり、今後、関係省庁等と協力しつつ、関連する施策の早期実現に取り組んでまいります。

 次に、証券化支援業務の対象と規模についてのお尋ねでございますが、平成十六年度の中小公庫における証券化支援業務の事業規模としては、合計二千四百億円を見込んでおります。また、証券化支援業務の実施に当たっては、さまざまな地域や業種の幅広い層の中小企業が無担保融資を受けられるように制度を運営したいというふうに思っており、こうした趣旨を民間金融機関等にしっかり伝え、制度の積極的な活用を促したいと考えております。

 次に、ファンドによる中小企業支援についてのお尋ねでございますが、中小企業の創業や経営再建に対して、銀行融資だけでなく、出資などにより資金供給を多様化していくことが必要でございます。

 従来から、中小ベンチャーファンド法により出資という資金供給の手法を促してきたところですが、今回の法改正により、ファンドに融資や債権取得の機能を追加するとともに、出資の対象企業を中堅企業等にも広げることといたしました。これによりまして、中小・中堅企業に対して、その実情に応じた多様な資金供給が可能となり、中小企業の再生等を促すことになると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 吉田治君。

    〔吉田治君登壇〕

吉田治君 私は、民主党・無所属クラブを代表しまして、ただいま御提案のありました中小企業金融公庫法及び独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部を改正する法律案、中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律案について、関係大臣に質問を行います。(拍手)

 昨年十月―十二月期の実質経済成長率は年率で六・四%に達し、バブル期以来の高成長の結果が出ています。しかし、国民の生活実感とは大きく異なっております。いまだ多くの中小企業や地方は不況の真っただ中にあります。ちまたから聞こえてくるのは、経営者が自殺をした、住宅ローンが払えなくなった、経済的理由で高校、大学を中退したという話ばかりであります。そこに、中国の経済発展に伴う鉄鉱石、コークスを初めとする原材料の高騰に伴う原料高によって、ますます中小企業の足元は引っ張られているのであります。

 小泉構造改革は、私たち民主党が提唱している地域地場産業からの経済再生を軸とする改革とは真っ向から異なるものであり、まさに最大の景気対策は小泉内閣の退陣であると訴えてまいりました。しかし、総理は、毒まんじゅうを食わせて、そして政権の延命を図り、経済失政を繰り返してきた竹中大臣すら更迭をせず、再任させているということは、言語道断と言えます。(拍手)

 血も涙もない、硬直的な金融庁の検査が多くの中小企業を倒産に追い込んだのは、もはや、だれの目にも明らかなことであります。金融機関は金融庁におびえ、少しでも赤字があれば貸せない、短期間で返済できない借金があると追加融資はだめだ、そういう状況に追い込まれ、貸し渋り、貸しはがしに走りました。その結果、信用収縮が起こり、中小企業がばたばたとつぶれるという状態が起こってまいりました。

 竹中大臣、みずからの金融政策の失敗について、真摯に反省しているのですか。毎年三万人以上の人が自殺をします。その四分の一が経済・生活問題であるという事の重大さにかんがみれば、やめればそれで終わりだ、それで済むのだという話では決してありません。どう責任をとるのか、明らかにすべきときに来ているのではないでしょうか。(拍手)

 私たちの要求にこたえ、金融庁は、中小企業向け検査マニュアルの改訂に取り組んでおります。しかしながら、小手先の対応と受けとめざるを得ません。私たちは、中小企業向け融資の中には実質的にもう既に資本とみなされるものも含まれており、こうした視点も盛り込んだ大胆な検査マニュアルの改訂に取り組むべきだと考えております。竹中大臣の答弁を求めます。(拍手)

 さて、この中小公庫法等の改正案は、私たち民主党が主張してまいりました中小企業に対する無担保無保証の貸し出しを促進するものであり、当然の措置と考えます。遅きに失したとも言えます。しかも、予算の裏づけは不十分であると言っても過言ではありません。

 目玉である証券化支援業務についても、出資金として国費が四十億円支出をされます。これによって二千四百億円の貸付規模がふえると見込まれております。しかし、これでは余りにも規模として小さ過ぎると考えられます。

 また、そもそも、政府の中小企業対策予算が余りにも少な過ぎます。現在、参議院で審議をされております来年度の政府予算案、農業関連予算は三兆円、中小企業対策費はわずか一千七百八十三億円、予算総額八十二兆一千百九億円のうち、たったの〇・二%しか配分がなされていないという中、企業全体の九九・二%を占める中小企業への対策費としては、余りにも寂しい限りであります。

 政府予算の二・二三倍に当たる三千八百八十一億円を、私たち民主党が政権をとったならば、予算案として計上するという形で計画をしております。政府は、平成十五年度の補正予算で中小企業対策を増額したと説明をしておりますが、当初予算からなぜ中小企業対策を充実させておかなかったのか。今般の法案における予算措置も含めて、中小企業対策費は少なくとも倍増すべきであると考えますが、これについて、中川経済産業大臣、谷垣財務大臣の答弁をいただきたい。(拍手)

 もともと中小企業信用保険公庫が行っていた事業を中小企業総合事業団の信用保険事業に移した経緯があります。今回の法改正で、さらに中小企業金融公庫に移管することになっております。信用保険という中小企業政策の根幹にかかわるものについて、朝令暮改とも言える組織変更を行って、政策がおろそかになることがないのか、明らかにしていただきたい。また、行財政改革の視点を強調するのであるならば、関係する役員、職員、予算はそれぞれどのように削減をされるのか、天下りへの歯どめをどう講じるのか、具体的な数字や方策を示すべきであります。

 以上の点について、経済産業大臣の答弁を求めます。

 また、政府系金融機関を活用すべきことは必要と考えますが、足利銀行の破綻に見られますように、地域の民間金融機関が消えてしまっては、地域経済にとっての打撃は余りにも大きい、そう言えます。今後、地域の金融機関をどのように育成していくのか、そのビジョンがおありなのか、竹中大臣、中川大臣の答弁を求めます。

 中小ベンチャーファンド法改正についても、融資機能の追加などが盛り込まれており、時宜にかなった措置とも考えられます。ただし、この法改正において、今まで以上に、個人投資家がファンド融資に勧誘される可能性もあり、暫定的措置がとられるとはいいながら、トラブルが多発する可能性があるとの懸念があります。こうした問題に対していかなる措置を講じるのか、経済産業大臣の答弁を求めます。

 ベンチャー企業を支援するためには、金融のみならず税制上の措置も重要であります。平成十六年度の税制改正でも、未上場株式の譲渡益の税率引き下げ、エンゼル税制対象の特定中小会社の範囲の拡大など盛り込まれてはおりますが、こうした措置をさらに拡充するとともに、私たち民主党が主張してまいりました、新しい中小法人に対する法人課税の減免、中小同族会社の留保金課税の完全撤廃にも踏み込むべきではありませんか。谷垣大臣の答弁を求めます。

 中小企業の経営者には、とりわけ個人保証という制度が本当に重くのしかかっております。この制度によって、いかに優秀な経営者でもこの道連れになってしまう可能性に直面をしているのであります。中小企業における連帯保証は、まさに前近代的な、野蛮な制度と言わざるを得ません。(拍手)時として、会社の経営者以外にもその災難が襲いかかってくる点で、青天のへきれきとなることもあります。日本はまさに近代国家と言えるのでしょうか。

 中小企業が倒産した場合の債務の返済を個人が無制限、無期限で保証する包括根保証制度、まさに根本から見直すべきときであります。借金を背負っていた人が亡くなり、相続によって、保証人になっていた家族に借金返済が及ぶ事例も少なくありません。遺書を残した自殺者の中には、負債関係が最多の遺書であります。そして、その遺書には、事業不振、生活苦、失業と続いております。

 ようやくこの国会に、自由財産の金額の拡大などを含んだ破産法関連の法案が提出されています。まさに、これも遅きに失したものと言わざるを得ません。さらに、保証人が過酷な返済責任を負う例がふえていることの対応策について、法務省は議論を進めています。しかし、この国会への法案提出は間に合わないと聞いております。

 役所の所管に基づけば、破産や保証人の問題は、経済産業省よりも法務省が扱うべき事項と言えましょう。しかしながら、中小企業の現場に近く、厳しい現実に直面している経営者の声を聞いているはずの経済産業省こそが、そのリーダーシップをとるべきではなかったのでしょうか。かかる事態を傍観し、まさに政府に抜本的な対策をとらせなかった経済産業省、経済産業大臣の責任というものは重いものがあると思います。

 生活破綻や自殺に追い込まれている中小企業の経営者、従業員、その家族の人たちが置かれた状況を直視し、政府は、彼らの命や生活を守るため、破産法制や保証人制度を根本から改革すべきであります。経済産業大臣は、総理や法務大臣をみずから説得してでも、大胆な見直しを実施させると約束すべきではありませんか。明快な御答弁をいただきたい。(拍手)

 昨年の通常国会に引き続き、この国会にも、民主党は、中小企業者に対する銀行等の資金の貸付けの適正な運営の確保に関する法律案を提出いたしました。中小企業者に対する資金の貸し付けに関する銀行の説明義務及び書面の交付義務並びに貸し付け方針の策定義務を定めることにより、中小企業の経営の安定及びその事業の成長発展に資することを目的としたものであります。

 この法律案では、銀行は、保証人がその履行をする期限及び限度額を定めるように努めなければならないと規定しています。これによって、いわゆる包括根保証契約の締結を制限できるものと確信しております。

 私たち民主党は、政府提出法案に対し是々非々の立場で臨み、必要な法案に対しては堂々と賛成票を投じております。これと同様に、政府・与党の側も、民主党提出の法案について、良識ある態度で臨むべきではありませんか。

 今般の民主党提出の法案に対して、政府・与党はいかなる見解をお持ちでしょうか。修正すべき点があれば、こちらも協議をいたします。私たちの真摯な提案に対し、政府は積極的な取り組みをすべきではありませんか。また、金融機関全体をリードする意味でも、政府系金融機関の貸し付けについて、個人保証を撤廃すべきと考えます。経済産業大臣より御答弁をいただきたい。

 最後に、産業再生策に関連して質問をいたします。

 政府は、産業活力再生特別措置法、産業再生機構法など、さまざまな手段を講じてまいりました。民主党の要求によって、勤労者、中小企業の立場に立った法案修正も行われてまいりました。こうした趣旨が生かされるのか、今後ともしっかりと監視をしてまいります。

 国民感情からしては、債権放棄を安易に進めることは問題である、債権放棄の恩恵を受けるのは主として大企業であり、中小企業にはその恩恵が及びにくい、そのような声もあります。しかしながら、条件を厳しくし過ぎて債権放棄がスムーズにいかないと、中小企業の連鎖倒産を招くおそれがあることも事実であります。

 その中でも、債権放棄をして利益が生じた際に税務署が課税をして、これによって企業の再生がおくれているという意見が多数寄せられております。まず、債務免除益にかかる税収は幾らと想定をされているのか明らかにしていただき、バブル時代の借金はまさに通常の方法で簡単に返せるものではないことにかんがみ、一定の条件のもとに優遇措置も講じることが必要であるか、検討すべきではありませんか。時限立法やRCCが入った場合に限定するなどの方策は考えられないでしょうか。最後に、財務大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 吉田議員から三問の質問をいただきました。

 金融検査を初めとする金融行政のあり方及び中小企業金融についてのお尋ねでございます。

 政府としては、より強固な金融システムを構築する観点から、金融再生プログラムの諸施策の推進に全力を尽くしております。こうした中で、不良債権は今着実に減少し、このことに対しては内外からも高い評価を得ていると考えております。また、こうしたことが昨今のマクロ経済の好転にもつながっております。まだまだ険しい道のりではありますが、我々は、断固とした決意でこの改革を進めてまいる所存でございます。

 中小企業金融については、検査が中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしにつながることのないよう、中小企業の経営実態を十分に勘案し、財務内容のみならず、業種の特性、代表者の資産内容等について十分に配慮したきめ細かい金融検査の実施に努めております。さらに、中小・地域金融機関については、リレーションシップバンキングのアクションプログラムの各種取り組みを進めております。こうした取り組みを受けまして、無担保無保証融資の拡大など、中小企業金融にも新たな動きが出てまいりました。

 金融庁としては、今後とも、金融システムの安定強化に努めるとともに、中小企業金融の円滑化に向けた積極的な取り組みを続けてまいりたいと考えております。

 金融検査マニュアルの改訂についてのお尋ねがございました。

 検査マニュアル別冊・中小企業融資編については、中小企業の実態により即した検査を確保する観点から、先般、改訂を行いました。中小企業の経営実態をさらにきめ細かく見ていくための工夫を数々織り込んでおります。

 中小企業向け融資の中には、実質的に資本とみなされるものも含まれているとの御指摘がございましたが、今回の改訂においては、まさにそのような視点に立って、いわゆる根雪的な融資の形で調達している債権を、金融機関が借り手の経営改善計画の一環として、デット・デット・スワップにより、資本的劣後ローンに転換している場合には、これを資本とみなすことができるような、そういう取り組みも含まれております。

 今回の改訂が、金融機関の中小企業向け融資の円滑化や中小企業の再生支援等に資することを期待しております。

 最後に、地域金融機関に関する今後のビジョンについてお尋ねがございました。

 中小・地域金融機関が地域の中小企業の再生や地域経済の活性化に果たす役割は極めて重要であると考えております。

 このような観点から、金融庁は、中小・地域金融機関について、昨年三月にリレーションシップバンキングの機能強化のアクションプログラムを公表し、これは、各金融機関がみずから機能強化計画を策定しまして、中小企業金融の再生と健全性確保、収益性向上に向けた各種の取り組みを進めるとともに、同時に、不良債権問題の解決を図るということとしております。

 いずれにしましても、金融庁としましては、中小・地域金融機関がリレーションシップバンキングの担い手として利用者から十分な評価と信任が得られるよう、最大限努めてまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) お答えいたします。

 まず、原材料等の価格の上昇についてでございますが、最近、中国経済の活発化等を背景とした需要の増加に伴って、御指摘の鉄鉱石も含め、原材料等の価格が国際的に上昇しております。こうした価格上昇は、製造コストの増加に直結するものであり、企業の収益への影響や原材料調達、ひいては産業経済への影響を懸念する声もあります。

 このため、私から、経済産業省を挙げて各方面から情報収集を行う体制を整備するため、原材料等連絡会議を設置するよう、本日、指示をいたしました。本会議で、国内外からの情報収集を行い、中小企業を含めた産業や我が国経済への影響について的確な実態把握に努めるなど、今後の状況の推移を注視していく所存でございます。

 次に、中小企業対策予算についてのお尋ねですが、平成十六年度の中小企業対策費につきましては、金融セーフティーネット対策や証券化支援などの金融対策、再生支援策、新たな事業に挑戦する中小企業支援策などに重点化をいたしまして、厳しい財政状況の中にありまして、対前年比増の一千七百三十八億円を予算案に計上しております。

 我が国産業の活力の源泉である中小企業が、やる気と能力を十分に発揮できるよう、中小企業対策を進めてまいります。

 信用保険部門の中小公庫への移管についてのお尋ねですが、今回の統合で信用補完制度には変更はありません。信用補完制度は、中小企業金融の円滑化に不可欠であり、引き続き積極的な運営を行ってまいります。

 また、統合に際して、重複部門の統廃合による組織のスリム化や役員数の削減を行います。職員数は、特殊法人等改革基本法の附帯決議を踏まえ、現職員の雇用を確保しつつ、定員削減計画に従って適切に対応してまいります。また、運営の経費につきましては、引き続き効率化を進め、必要最小限なものとしてまいります。

 役員人事については、適材適所で検討してまいりますが、現在の中小公庫の総裁は、昨年一月に民間から着任しております。

 今後の地域金融機関育成のビジョンについてのお尋ねですが、地域の中小企業の金融円滑化を図るために、地域金融機関の役割は極めて重要であります。このため、経済産業省として、政府系金融機関や中小企業再生支援協議会等と地域金融機関との連携の強化を図っているところであり、今般の法案も、中小公庫に証券化支援業務を追加し、地域金融機関の中小企業向け無担保融資の拡大を支援することを目的としております。関係省庁と連携をし、地域金融機関の機能の強化を通じ、地域の中小企業金融の円滑化に努めてまいります。

 中小ベンチャーファンド法の改正に関する個人投資家保護についてのお尋ねですが、ファンドが健全な機能を果たすためには、投資家保護に万全を期することは非常に重要なことであり、本改正案及び証券取引法改正案により、投資家保護のためのルールを整備することとしております。

 破産法制、保証人制度についてのお尋ねですが、破産した場合に手元に残る自由財産の拡大や包括根保証制度の見直しについては、経済産業省としても関係省庁に積極的に働きかけを行い、また、協力してその検討を進めてまいりました。

 その結果、今国会に法務省から破産法の改正案が提出されたところであり、また、包括根保証の見直しについては、私自身重要な問題と認識しておりまして、昨年十二月の産業金融機能強化策に明記されたところであります。法務省、金融庁など関係省庁と協力しつつ、積極的に対応してまいります。

 民主党提出の法律案につきましては、国会における説明もまだ行われていない段階でございまして、ここで具体的な内容について詳しく意見を申し上げるのは適当ではないと考えますが、金融機関に関する新たな義務を課すること等については、金融行政との整合性等の観点から、慎重に検討することが必要であると考えております。

 政府系金融機関の個人保証の撤廃についてのお尋ねですが、政府系金融機関においては、担保や保証人に依存しない融資の拡充に積極的に取り組んでおります。

 他方、個人保証を全面的に廃止することは、かえって中小企業の融資の可能性を狭める懸念もあり、適当ではないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 吉田治議員にお答えいたします。

 まず、平成十六年度の中小企業対策費についてのお尋ねですが、これは、やる気と能力のある中小企業の自助努力に対して支援を行うという基本的考え方に立ちまして、歳出内容の見直しを行いました。そして、中小企業の再生とか創業とか経営革新に対する支援、あるいは中小企業金融の円滑化といった、真に必要な経費について十分な予算を確保することといたしまして、一千七百三十八億円を計上しております。

 したがいまして、この予算を早期に成立させていただいて、これを着実に実行していくことが、中小企業対策として何よりも重要であるというふうに考えております。

 それから、中小ベンチャー企業支援税制についてのお尋ねでございますが、平成十五年度それから十六年度改正におきまして、エンゼル税制の大幅な拡充をいたしましたほか、欠損金の繰越期間を延長して新設の中小法人の事業展開などを支援するということをやっております。

 また、同族会社の留保金課税につきましては、制度そのものを廃止することは適当ではないと考えておりますが、十五年度改正で講じた留保金課税の一部停止措置によりまして、中小法人の多くが課税の対象外となっております。

 こういうふうに、税制上さまざまな支援措置を切れ目なく講じているところでありまして、これらの措置が活用されて中小ベンチャー企業の活性化に資することを期待しております。

 それから、最後に、企業再生の際の債務免除益について御議論がございました。

 債務免除を受けた企業がその期に課税所得を生ずるという場合は必ずしも多くないのではないかと思いますが、この種の税務上の統計がございませんので、どのくらい税収があるかということをお答えすることができないということを御理解いただきたいと思います。

 そこで、企業再生を円滑化する観点から、現行の税制でも、法的整理やあるいは私的整理ガイドラインに基づいて債権放棄が行われる、そういう一定の場合には債務免除益を累積欠損金で相殺することを認める措置を講じておりますが、さらに十六年度改正では、その累積欠損金の範囲を拡大することとしておりまして、企業再生を前提とした債権放棄については税制も相応の対応を図ってきているということでございます。

 以上、吉田議員にお答えさせていただきました。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

        法務大臣    野沢 太三君

        財務大臣    谷垣 禎一君

        厚生労働大臣  坂口  力君

        経済産業大臣  中川 昭一君

        国務大臣    井上 喜一君

        国務大臣    竹中 平蔵君

 出席副大臣

        経済産業副大臣 坂本 剛二君


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