衆議院

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第25号 平成16年4月20日(火曜日)

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平成十六年四月二十日(火曜日)

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  平成十六年四月二十日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 川口外務大臣のイラクにおける邦人人質事件等についての発言及び質疑

 景観法案(内閣提出)、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(イラクにおける邦人人質事件等について)

議長(河野洋平君) 外務大臣から、イラクにおける邦人人質事件等について発言を求められております。これを許します。外務大臣川口順子君。

    〔国務大臣川口順子君登壇〕

国務大臣(川口順子君) 四月十五日、イラクで人質となっていた今井紀明さん、郡山総一郎さん、高遠菜穂子さんの三名が無事保護されたのに続き、十七日、安田純平さん、渡邉修孝さんもバグダッド市内で無事保護されました。

 今回の一連の事件に関し、八日、外務省にイラク人質事件緊急対策本部を設置し、九日、内閣に官房長官を本部長として在イラク邦人人質事件対策本部が設置されました。また、十日午前、アンマンに逢沢副大臣を本部長とする現地対策本部を設置し、現地における体制を強化しました。

 政府としては、これら一連の事件の早期解決のために最大限の努力を行ってまいりました。そのような努力の一環として、八日の三名の邦人が人質となる事件の発生を受け、人質の安全かつ速やかな解放を求めた私のビデオメッセージを収録し、同メッセージは、十一日午前一時ごろ、ロイター及びAPTNにより全世界に向けて配信されました。また、イラクの関係者を初め関係国政府等、関係各方面への働きかけを行ってまいりました。

 十五日に二名の邦人が拘束されたとの未確認情報を受けた際にも、バグダッドの日本大使館やヨルダンの現地対策本部に対し、事実関係の確認に全力を挙げるべく指示を出し、あわせて、関係国政府等に対して、情報提供等の協力を依頼しました。

 今般無事解放された方の御家族の方々に対し、改めて心からのお喜びを申し上げるとともに、五名の解放に御尽力された関係者の方々、イラクの関係者の御尽力と世界各国からの御支援に、心からお礼を申し上げたいと思います。(拍手)

 先に解放された三名の方々については、十六日にイラクからアラブ首長国連邦のドバイに向け出国し、同地にて健康診断等を受けた後、十八日夜、関西空港経由で羽田空港に到着しました。

 また、後に解放された二名の方々については、十八日にバグダッドからヨルダンのアンマンに移動し、モスクワを経由して、二十日午前に成田空港に無事到着しました。

 イラクの治安情勢は予断を許さぬ状況にあり、政府としては、これまで退避勧告を発出する等、累次の注意喚起を行った中で今回の事件が発生したことは、まことに遺憾です。今後とも、イラクへの渡航は、どのような目的であれ、絶対に控えることを強く勧告していきたいと思います。また、海外に渡航する邦人の方には、みずからの安全についてはみずから責任を持つとの自覚を持ってみずからの行動を律するよう、改めてお願いしたいと思います。政府としても、海外における邦人の安全確保のため、引き続き、可能な限りの努力を継続していきたいと思います。

 現在、依然として複数の第三国の方々がイラクにおいて拘束されていると承知しています。政府としては、いかなる理由であれ、人質をとる行為は許されざる犯罪と考えており、このような行為については、今後とも、これに屈せず、毅然として対応いたします。

 イラクの早期復興のためには、秩序と治安の早期回復、政治プロセスの円滑な進展が必要であり、引き続き、イラク人のイラク人によるイラク人のための民主的な国家樹立に向けて、人道復興支援の実施に努めていきたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(イラクにおける邦人人質事件等について)に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。藤田幸久君。

    〔藤田幸久君登壇〕

藤田幸久君 民主党の藤田幸久です。

 私は、四月八日この事件が発生した翌日に、民主党の派遣でヨルダンに向かい、民主党の現地本部を立ち上げました。そして、こうした事件が起きた責任の一端は政府にあるものの、事件解決のためには政府に協力するという民主党の立場から、独自の情報収集並びに支援活動を開始いたしました。その経験を踏まえて、民主党・無所属クラブを代表して、質問させていただきます。(拍手)

 今回、政府が速やかに逢沢副大臣を中心とする現地対策本部を立ち上げ、中東全域の在外公館を総動員した危機管理対応は、これまでにはないもので、一定の評価はするものです。

 しかし、私は、今回、日本人五人全員を解放に導いた最大の功労者は、宗教指導者からの働きかけと、アルジャジーラ等の地元メディアを通した日本人家族からの率直なアピール、そして、それにこたえたファルージャを中心とする地域住民の皆さんのおかげだと確信をしております。これらの方々に深く御礼を申し上げます。(拍手)

 まず、人質受け入れで活躍したイスラム聖職者協会ばかりでなく、各国のイスラム教の指導者が犯人グループに対する説得を行っていました。例えば、日本在住四十年のイスラミックセンター・ジャパンのサリー・サマライ代表理事や、世界宗教者平和会議、WCRPの関係者、ヨルダンのアル・キラン元宗教大臣なども、イスラム聖職者協会と連携しながら活動しておりました。

 これらの方々は、人質になった人々が英米占領当局と無関係な民間人であること、罪のない人を罰してはならないというコーランの教えを守るなどを訴えるとともに、バグダッドの多くのモスクに集めた食料品や医薬品などの物資をファルージャの支援に送っておりました。こうした行動が、人質グループを支えるファルージャの住民全体の信頼も得たものと思っております。

 以下、今回の問題に関して、外務大臣並びに官房長官にお伺いをいたします。

 今回、日本政府は、こうした多くのイスラム教関係者の行動を十分把握していなかったばかりか、感謝の意も不十分で、イスラム聖職者協会などの反発さえ買ってしまったと聞くのであります。彼らについて、どんな実態把握とアプローチを行っていたのか。今回の人質解放に至った経緯を見ても、また、イラクでイスラム聖職者が影響力を強めている様相を見せていることからも、今後、こうした方々との関係強化にどんな努力を傾けていくつもりか、外務大臣に伺います。

 今回の人質事件は、一週間で七百人近くが米軍に殺りくされた地域住民の抵抗運動、レジスタンスが背景にあることを、人質解放に協力してくれたクベイシ師が明言しています。したがって、小泉総理が犯行グループをテロリストと呼んだ際、犯行グループのみならず、ファルージャなどの住民の多くが、自分たちもテロリスト呼ばわりされたと反発を感じておりました。

 総理は、今でもテロリストと見ているのか、それとも、クベイシ師のように、米軍に対する抵抗活動の一環ととらえているのか、官房長官の見解を伺います。(拍手)

 今回の日本人人質の行動が稚拙で不注意であり、家族の言動も一部身勝手であったことは否めないと思います。しかし、帰国して感じることは、あれだけイラクなど多くの国々の人々が人質解放に協力してくれたのに比べ、日本における人質と家族に対するバッシングの強さです。

 小泉総理に至っては、どれほど多くの人に迷惑をかけるかということも考えてほしいと発言しています。小泉総理としては、迷惑であったが解放に取り組んだというのでしょうか。英国人や韓国人、フランス人等の人質も、皆迷惑な行為をしている人々という認識を小泉総理が持っておられるのか、官房長官の見解を伺います。(拍手)

 もう一つ、日本でのはやり言葉は、自己責任ということです。

 アメリカのパウエル国務長官は、人質の人々の自己責任を問う声があることについて、だれも危険を冒さなければ私たちは前進しない、よりよい目的のため、みずから危険を冒した日本人たちがいたことを私はうれしく思うと述べております。

 海外での危険に対する自己責任が問われるならば、サマワの自衛隊宿営地に攻撃などがされたら、政府は自己責任で撤退するということになると思われます。政府の見解と、政府の自己責任とは何か、官房長官に伺いたいと思います。(拍手)

 今のイラクは、米国が各地で同時多発的戦場を抱え、戦線が拡大する一方です。ファルージャやナジャフなどの戦闘で明らかになったのは、今や、スンニ派、シーア派、バース党、反フセイングループも含めた反米感情が一挙に高まり、今や大同団結した全イラク国民対アメリカの戦いとなっています。これに、パレスチナやイランも含むアラブ世界全体の反米感情が加わっています。このイラクの戦況に対する政府の見解を官房長官に、また、中東全体での反米感情の高まりと、アメリカの孤立化の危険について外務大臣に伺います。(拍手)

 この間、スペインばかりか、タイ、ニュージーランドなどによるイラクからの撤兵の動きなどが高まっています。イラク全体が戦場と化している中、イラク特別措置法の定める非戦闘地域がもはや存在しないことは明白です。サマワが依然非戦闘地域であると強弁し続けるおつもりか、政府の見解を官房長官に伺います。(拍手)

 ここに来て、ブッシュ米大統領は、国連主導のイラク政策に転換していく考えを示す発言をしています。小泉総理もブッシュ大統領に倣い、この一年余り、国連が日本を守ってくれるわけではないなどといった国連軽視の発言や対応をとってきましたが、昨日になって、米国の旗の下より、国連の旗の下すべての国がイラクの復興に力をかす方が、米国の善意も大義も理解されやすいという政策転換を示す発言をいたしました。

 これは、民主党の主張してきた好ましい方向です。国連を守り立てていく姿勢を示すものです。しかし、国連主導というかけ声だけでなく、真にイラク人主導の政権に移行するには、イラク国内の各勢力が参画し、アラブ諸国やフランス、ドイツ、ロシアなどが実質的にかかわる体制が不可欠と考えますが、官房長官及び外務大臣の明確な答弁を求めます。

 最後に、イラクのほぼ全体が戦争状態にある中、人道援助が最も必要なのは、サマワではなく、現在被害が著しいファルージャなどにおける犠牲者です。イラクの人道復興支援というのであるならば、依然数多くの負傷者を抱えるファルージャに対して、例えば、イスラム教指導者やヨルダン政府による医薬品の緊急提供などを行うべきではないでしょうか。それがイラクの国民の目に日本国民の善意をよく理解してもらえる本当の人道援助であることを、長年NGOで援助活動に携わってきた経験も踏まえつつ、官房長官に質問して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣川口順子君登壇〕

国務大臣(川口順子君) イスラム聖職者との関係強化の必要性についてのお尋ねがございました。

 そもそも、サダム・フセインの圧制下において、宗教指導者の活動は大きく制約を受けていたと承知をいたしています。フセイン政権崩壊後、イラクにおいては、宗派のいかんを問わず宗教指導者が市民の支持を得て、政治的、社会的役割を強めている例が少なくありません。我が国としては、かかる事情を踏まえて、さまざまな人脈の形成も含めてイラク情勢への対応を検討していく必要があると考えております。

 なお、今回の邦人人質の解放に当たって、在イラク大使館がいかなる団体等と連絡、接触を持っていたかについて言及することは、現下のイラク情勢及び先方との関係等にかんがみ、差し控えたいと考えております。

 同時に、イスラム聖職者協会の協力に関しては、私からも謝意をきちんと表したところでございます。

 二番目に、中東全体での反米感情の高まりと米国の孤立化の危険性についてお尋ねがありました。

 中東諸国の中には、イラクのファルージャ侵攻や米イスラエル首脳会談の結果などに対し批判の声があると承知をいたしております。一方、中東全体の安定のためには、米国のリーダーシップは不可欠であります。我が国は、米国のリーダーシップを得つつ、できるだけ幅広い国際協調の輪をつくりながら中東全体の安定を図ることが重要であると考えております。

 最後に、国連主導のもとでのイラク人による政権樹立に向けた取り組みについてお尋ねがございました。

 イラク人による民主的な政府の樹立に向けた政治プロセスにつきましては、我が国は、選挙等の分野で知見を有する国連の関与を確保しつつ、今後とも、イラク内の各派の間で幅広い合意を得ていくことが重要と考えておりまして、従来より、あらゆる機会をとらえて国際協調の重要性を訴えてきております。

 米国のみならず、イラク国内の各勢力やアラブ諸国、その他主要国がかかわる体制をつくることが重要であるということは論をまちません。我が国としては、新たな安保理決議が採択をされ、政治プロセスやイラク復興のための国際協調が一層強化されるということが有意義であると考えております。今後とも関係国と緊密に連携をとっていく考えでおります。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 藤田議員にお答えします。

 犯人グループをテロリストと見るのか、抵抗運動ではないかといった点について御質問がございました。

 犯人グループの具体的動機が明らかではない以上、彼らをどう呼び、位置づけるかについて確定的に述べることは困難であります。

 また、犯人グループが地元住民から広い協力や支持のもとで今回の事件を起こしたとは聞いておらず、証拠もございません。推測に基づいて犯人グループと地元の方々が一体であるかのごとき説明をされることは適当とは思っておりません。

 いずれにしましても、一番重要なことは、いかなる理由であれ、今回のような無辜の民間の方々を拘束し、要求を突きつけるといったような行為は、我が国にとって決して容認することはできないということであります。(拍手)

 次に、人質の方たちが結果として内外の多くの人々に迷惑をかけたという発言があったということについて御質問がございました。

 御質問の趣旨は、政府は迷惑であったが解放に取り組んだということなのかということのようでございますが、これは全くの間違いでございまして、論理の履き違えというように思います。いかなる事情や状況であろうとも、海外にいる邦人を保護するため努力を行うということは政府の責務でございます。我々は、今回もそのために全力を尽くしております。

 他方、今回事件に巻き込まれた五人については、昨年より三十回近く退避勧告や注意情報の出ているイラクに渡航し、拘束された結果、解放のために内外の多くの人に迷惑をかけたということを各個人として認識してほしい、そういう趣旨でございます。

 五人の方々が今回の事件をどう受けとめるかということと、政府が救出のために努力をするということとは、全く別の次元の話であり、混同して語ることは、そのこと自身がおかしいというように思います。(拍手)

 それから、他国の人質の方々については、拘束された背景や事情が異なるものであり、比較して論ずることはできません。

 次に、自衛隊の撤退についてのお尋ねがございました。

 イラクにおける自衛隊の活動に当たっては、常に最新の現地情勢を把握するとともに、適切な警戒や予防のための措置をとり、政府としても隊員の安全確保に万全を期しているところでございます。

 派遣の終了時期については、現地の政治・治安情勢を考慮しつつ、イラク人による国家再建の進展状況を総合的に踏まえて適切に判断してまいりますが、活動する場所で戦闘行為が行われるようになるなど、いわゆる非戦闘地域の要件を満たさない状況、これが生じた場合には、自衛隊は任務を終了することとなるものと考えております。

 イラクの現状について御質問がございました。

 イラクの治安について、全般として、依然予断を許さない状況にあることは事実であります。国連決議に基づいて、多くの国々がイラクの復興と安定のために努力を行っております。その上で、イラク人によるイラク人のための民主的政府の樹立のために政治プロセスが進められようといたしておるところでございます。

 多くのイラクの国民がこのような努力を評価し、支持していますが、新しいイラクをつくっていく上で、さまざまな勢力間で意見が必ずしも一致しないところがございます。また、米軍など連合軍による統治に反発する勢力もあることから、治安がなかなか安定しない状況にあることも、これも事実ではございます。

 国連による関与を一層強めていくことが重要と考えますが、各国が今行っている復興、安定の努力を放棄してしまえば、イラクが破綻国家、無秩序な状態に陥ってしまうことは確実でございます。意見の食い違いを乗り越え、各国、各勢力が協力して、平和で安定したイラクをつくるために努力を続けるべきと考えます。批判だけをしていても、何も解決の道にはつながりません。(拍手)

 次に、サマーワが非戦闘地域であるかとのお尋ねがございました。

 サマーワを含むムサンナ県の治安は、イラク南東部の中でも安定しておりますが、テロ等の可能性を否定することはできないと考えております。

 サマーワの情勢については、関係機関等とも連絡をとりつつ、常に最新の情報を収集しておりますが、現地の状況に関するこれまでの情報とあわせて総合的に判断すれば、現在においても、サマーワが非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。

 次に、各国や各勢力が実質的にかかわる体制が不可欠ではないかという御質問がございました。

 まさに、国際社会が意見の違いを乗り越え、イラクの復興、安定のために一致協力して支援を行っていくことが重要と考えております。

 しかし、そのためには、単に他国の批判をしているだけでは問題は解決しません。お互いが相手の立場を思いながら協力強化のために努力するとともに、実際に一歩一歩イラク人のために具体的な支援を行っていくことが必要であり、我が国としてもできる限りの努力を行っているところでございます。

 最後になりますが、ファルージャに対する人道支援の必要性について御質問がございました。

 イラクに対し種々の支援を行う必要については、これは従来より申し上げているとおりでございます。現に、治安の問題など種々の制約のある中で、できる限りの支援を行っているところでございます。

 ファルージャを含め、イラクのどこにどのような支援を行うかということは、支援のニーズのみならず、治安の問題を含め、実際の支援の実現可能性や他の支援ニーズとの兼ね合いなどがあると思います。また、何よりも、イラクの人々に支援を行うことにより、イラクの復興と発展、ひいては平和と安定につながることが重要であります。

 そのような意味でも、ファルージャの停戦合意が成立し、地元の協力も得て、治安が今後回復することを期待いたしております。

 以上であります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、まず、無事解放された人質の皆さんと御家族の皆さんに心からお喜び申し上げます。

 政府のイラク報告に関して質問します。(拍手)

 今、イラク全土で、占領軍とイラク国民の衝突が広がっています。この極めて深刻な事態をつくり出しているのは、米軍によるイラク国民に対する鎮圧・掃討作戦ではないでしょうか。ファルージャでは、米軍が町を包囲し、クラスター爆弾まで使用し、モスクを空爆し、六百人以上の命を奪いました。罪のない市民、女性や子供たち、そして老人が犠牲になっているのです。

 小泉総理は、治安悪化の原因が一部の武装勢力にあるかのように言いますが、米英による国際法違反の侵略戦争と不法な占領支配のもとで、国際人道法にも違反する無差別の殺りく行為がイラクの広範な人々の怒りを呼んでいるのではありませんか。

 米国政府は、米兵を二万人増強して、抵抗勢力をせん滅し、力で抑え込もうとしていますが、これでは事態は鎮静化するどころか、一層の流血と憎悪の悪循環に陥るのではないでしょうか。

 小泉内閣は、アメリカに無差別の殺りく行為の中止を求めるべきではありませんか。答弁を求めます。(拍手)

 こうした中で、イラクに軍隊を派兵しているスペインのサパテロ首相は十八日、千三百名の部隊をできるだけ早く撤退させるよう命じました。きょうは、ホンジュラスも撤退を表明しました。さらに、ポーランド、ウクライナ、ポルトガルなど、米国のイラク占領体制を支えてきた有志連合の国々が米軍の掃討作戦を批判し、米軍の作戦行動に距離を置く姿勢を強め、軍隊撤退をも検討し始めていることを政府はどう受けとめていますか。この状況のもとでも、なお自衛隊のイラク派兵に固執する理由は何でしょうか。

 小泉総理は、自衛隊は人道支援のためと強調しますが、今回、日本人の人質解放に努力していただいたイスラム聖職者たちは、人道復興支援であっても外国軍隊は要らないと繰り返し述べています。今こそ自衛隊の撤退を真剣に検討すべきではありませんか。

 自衛隊が撤退してこそ、日本がイラク国民の信頼のもとにイラクの平和と真の人道復興に貢献する道が開かれるということを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣川口順子君登壇〕

国務大臣(川口順子君) 高橋議員から、三問の御質問がございました。

 まず、イラクにおける治安の悪化の原因についてお尋ねがありました。

 現在、イラクにおいては、民主的な政府の樹立を通じた民生安定の取り組みが進んでいる中、イラク社会を不安定化し、政治プロセスの進展を妨げること等を目的とした攻撃が繰り返されています。駐留連合軍はイラクの治安安定のために最大限努力しており、また、大多数のイラク国民は平和を希求していると承知しています。治安を安定させ、六月三十日の統治権限の移譲につなげることが今重要な課題であると認識をしています。

 次に、イラクの治安の安定化に向け、米国へ働きかけるべきではないかとのお尋ねがありました。

 我が国は、イラクにおける治安の回復は政治プロセスの進展にとって不可欠であると認識しており、治安回復の重要性について、累次機会に米側とも意見の交換等を行っているところです。我が国は、治安安定化に向けた関係者の努力を支持しており、できる限り早急に秩序と治安の回復が図られ、事態が鎮静化することを希望しています。

 最後に、イラクに駐留する各国部隊に関するお尋ねですが、イラク復興支援のあり方については各国が主体的に判断すべきものと考えており、さまざまな事情から部隊の派遣の見直しを表明した国も一部ありますが、派遣継続を明確にしている国も多いと承知しています。

 なお、ポーランド、ウクライナ、ポルトガルが部隊の撤退を表明したとは承知しておりません。

 いずれにせよ、我が国としては、統治権限のイラク人への移譲を六月三十日に控え、国際社会による一層の支援が重要であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 高橋議員にお答えします。

 自衛隊の撤退を検討すべきではないかとのお尋ねがございました。

 統治権限のイラク人への移譲を円滑に進展させるためにも、国際社会がイラクをこれまで以上に支援することが重要になっております。

 イラク復興支援のあり方については、各国が主体的に判断すべきものであり、我が国は、国際社会の責任ある一員として、資金協力と人的貢献を車の両輪として、我が国にふさわしい人道復興支援を続けていくべきであると考えております。

 また、自衛隊の行う人道復興支援活動は、米軍の占領行為に加担する性格のものではございません。自衛隊がイラクの復興のために行う医療、給水や公共施設の修理などの人道復興支援は、地元イラク人からも高い評価を得られるものと確信しており、政府の考え方に変わりはございません。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

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 景観法案(内閣提出)、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、景観法案、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣石原伸晃君。

    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

国務大臣(石原伸晃君) 景観法案、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、景観法案につきまして申し上げます。

 近年、経済社会の成熟化等に伴い、個性のある美しい町並みや景観の形成が求められるようになっており、各地で良好な景観の形成に向けた取り組みが進められております。また、国としても、観光立国を実現するという観点から、良好な景観の形成に向けた取り組みを進めております。

 このような景観をめぐる状況の変化に対応し、良好な景観の形成を国政の重要課題として位置づけるとともに、地方公共団体の取り組みを支援するために、良好な景観を形成するための法的な仕組みを創設することが求められております。

 この法律案は、こうした状況を踏まえ、我が国で初めて景観についての総合的な法律として定めようとするものでございます。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、良好な景観の形成に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び住民の責務を明らかにしております。

 第二に、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定、景観計画区域、景観地区等における規制、景観重要公共施設の整備、景観協定の締結等について定めております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行っております。

 次に、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして申し上げます。

 この法律案は、景観法の施行に伴い、都市計画法、建築基準法、屋外広告物法その他の関係法律について必要な規定の整備を行うものです。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、都市計画法の改正により、都市計画の地域地区として、景観地区を規定しております。

 第二に、建築基準法の改正により、景観地区等における建築物の規制に関する規定を整備するとともに、条例で景観重要建造物に対する規制の緩和を行うことができるとしております。

 第三に、屋外広告物法の改正により、市町村が屋外広告物に関する条例を制定できるようにすること、屋外広告物の許可対象区域を全国に拡大すること、簡易除却の対象となる屋外広告物等を追加すること、屋外広告業の登録制度を創設すること等の措置を講じております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行っております。

 次に、都市緑地保全法等の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。

 この法律案は、都市の緑とオープンスペースの効果的かつ効率的な保全、増加が求められている状況にかんがみ、緑地の保全、都市の緑化、都市公園の整備を総合的に推進するための制度の創設、拡充等の措置を講じようとするものです。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、市町村の定める緑地の保全及び緑化の推進のための基本計画の記載事項に、都市公園の整備の方針等を追加しております。

 第二に、都道府県は、都市計画に緑地保全地域を定めることができることとし、当該地域内の建築物の新築等について届け出制を導入しております。

 第三に、市町村は、都市計画に緑化地域を定めることができることとし、当該地域内で敷地が大規模な建築物の新築等を行う場合には、一定割合以上の緑化施設を敷地内の空地や屋上に設けなければならないとしております。

 第四に、都市公園について、効率的な都市公園の整備を図るため、立体都市公園制度を創設しております。

 その他、地区計画等の区域において条例により緑地の保全のための規制を行う制度並びに首都圏及び近畿圏の近郊緑地保全区域における管理協定制度の創設等、所要の規定の整備を行っております。

 以上が、景観法案、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 景観法案(内閣提出)、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。原田令嗣君。

    〔原田令嗣君登壇〕

原田令嗣君 自由民主党の原田令嗣です。

 自由民主党及び公明党を代表いたしまして、景観法案、景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び都市緑地保全法等の一部を改正する法律案についての趣旨説明に対し、質問をさせていただきます。

 まず初めに、日本の景観の現状に対する基本認識と今後の取り組みについてお尋ねします。

 日本の景観は、幕末、明治期には国際的にも大変評価が高いものでした。例えば、日本の象徴とも言える我が静岡県にある富士山に初めて登った外国人、初代の英国駐日総領事オールコックは、深く日本の風景を愛し、江戸の景観を、ヨーロッパには江戸に匹敵する美しさを誇り得る首都はないと絶賛しました。また、日本人の景観を大切にする気持ちは、葛飾北斎の富嶽三十六景に代表されるような景観文化を生み出してきました。

 しかし、それから百三十年以上経過した今日、我が国の景観を見ますと、都会だけでなく、日本の原風景ともいうべき農村部においても、かつて外国人が称賛してやまなかった日本の美しい景観は危機的な状況にあります。町に乱立する電柱、空中に張りめぐらされた電線、放置されている違法な広告物、そして無秩序な町並みと、私は、今こそ抜本的な対策を講じなければ、我が国の景観は取り返しのつかない状況になってしまうと憂慮しております。

 今、四百五十の市町村、二十七の都道府県では、独自の景観条例を制定するなど、地域の特性に応じた美しい景観や風景をつくるための取り組みを行っています。

 これに対し、国は、これまで景観については果たして効果的な取り組みをしてきたでしょうか。海外に目を転じますと、例えばパリの美しい町並みは、国の法律により守られてきました。失われつつある我が国の景観をよみがえらせ、また、残された貴重な美しい風景を守り育て、後の世代に国民共通の資産として引き継いでいくという国の基本理念を明確に示し、そのための取り組みを早急に行うことは、我が国の重要課題であると考えております。

 そこで、国土交通大臣に、日本の景観の現状をどのように認識しておられるのか、そして、日本の魅力を高める美しい景観づくりにこれからどのように取り組んでいくのか、お尋ねしたいと思います。

 次に、景観法の目的や効果についてお尋ねします。

 今回提案されている三法案、いわゆる景観緑三法は、建物だけでなく、景観を構成する大きな要素である広告物や緑についても幅広く対象とする、大変有意義なものだと思います。特に、日本で初めて景観に関する総合的な法律、景観法を制定することは、これまで努力してきた地域住民や地方公共団体の取り組みを支援する上で大きな意味があります。政府一体となって美しさを重視する国づくりに取り組むことを宣言したものだと高く評価したいと思います。

 そこで、国土交通大臣に、景観法の趣旨、目的を改めてお尋ねするとともに、これまでの地方公共団体の条例による取り組みと比べ、新たに何が可能となるのか、お尋ねいたしたいと思います。

 私は、この景観緑三法が効果を発揮するには、良好な景観づくりが結局は地域の活性化や大きな経済効果につながることを国民がしっかりと理解し、地域住民も一体となって取り組んでいくことが大切だと考えております。古い建物を保存し、統一的な町並みを守っていくためには、そこに住む住民の理解がまず大事であり、そのためには、相続税等についても相応の配慮がなされることが極めて重要だと考えております。

 小泉内閣は、住んでよし、訪れてよしの国づくり、観光立国の実現を推進しています。そして、二〇一〇年までに日本を訪れる外国人旅行者を倍増し、地域経済の活性化や地域再生の柱にしようとしています。外国の方々が訪れたいと思うような魅力的な国とするためには、例えば、富士山と町並み、あるいは茶畑などの農地や漁港との調和のとれた現代の景観づくりを実現し、日本文化を再生させるとともに、外国の人にも楽しんでもらえる国づくりが大切だと考えております。

 地域再生が喧伝される中、良好な景観の整備が地域の活性化や経済的な効果につながることを具体的に国民に示すべきではないでしょうか。

 次に、違反広告物対策についてお尋ねします。

 美しい町並みをつくるには、乱雑な看板や立て看板、張り紙など屋外広告物が景観を阻害しないことが重要です。

 最近、駅をおりると、ここはどこの町なのかと一瞬わからなくなります。駅前というのは、そもそもその町の顔のはずです。でも、残念ながら、今目につくのは、どこに行ってもサラ金の看板ばかりです。町の特色ある顔にはなかなか出会えないのが現状です。屋外広告物をどのように規制すべきかは、基本的に、住民に身近な市町村が主体となって取り組むべきものと考えています。

 今回の屋外広告物法の改正案では、屋外広告物に関する条例を市町村が制定できるとされており、これは一歩前進であります。しかし、市町村が条例を制定しても、現状では、捨て看板やのぼり旗が歩道を占拠し、沿道に違反看板ばかりが並び、真剣に景観づくりに取り組む地方自治体はどこも違反広告物対策に苦慮しております。

 そこで、国土交通大臣に、違反広告物対策にどう取り組もうとされているのか、お尋ねします。

 最後に、都市の緑の保全と創出への取り組みについてお尋ねします。

 良好な景観を保全し、つくっていくためには、緑の保全と創出も欠かせません。住民にとって身近な公園や街路樹、長い間、人の手で守り育てられてきた屋敷林や里山。緑は、我々に四季の変化を与え、安らぎと潤いを与えてくれます。また、都市の緑地空間は、我が国の将来を担う子供たちの心身の健全な育成になくてはならないものです。また、ヒートアイランド現象の緩和や生物の生息・生育空間としての機能、避難地や延焼防止などの防災面での役割など、多面的な機能を持っています。

 国土交通大臣に、都市の緑の保全と創出にこれからどう取り組もうとされているのかをお尋ねします。

 日本人が日本人として誇りと自信を持つためにも、我が国の自然、歴史、伝統、文化を背景とした美しい景観を形成することは極めて重要です。この景観緑三法により、四方を海に囲まれ、美しい山河や里、そしてすばらしい町並みを持つ日本の景観や風景が世界に誇れるものとなることを切に希望しまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

国務大臣(石原伸晃君) 原田議員にお答え申し上げます。

 日本の景観の現状及び日本の魅力を高める美しい景観の形成に対する今後の取り組みについてお尋ねがございました。

 我が国では、これまで、急速な都市化の進展の中で、まず都市基盤を整備することに重点が置かれ、経済性や効率性、機能性を重視した結果、美しさへの配慮を欠いてきたと思います。

 そのため、現在、多くの地域について見ますと、町並みがふぞろいで全体として統一感がないこと、都市部を初め電線が張りめぐらされていること、違法広告物がはんらんしていることなど、景観上の問題が多々あると認識をしております。

 近年、ようやく急速な都市化が終わり、良好な居住環境を求める中で、住民や地方公共団体の景観に関する関心が高まりつつあります。このような、いわば価値観の転換点を迎え、国としても、良好な景観の形成を国政上の重要課題として位置づけ、総合的な景観施策を強力に進めてまいりたいと考えております。

 続きまして、景観法の趣旨、目的について、また景観法により新たに可能となる対策について、お尋ねがございました。

 現在、地方公共団体においては、良好な景観の形成に関する関心の高まりを反映して、景観条例を制定するなど、積極的に景観行政を進めております。このような景観に関する価値観の転換点を迎え、国としても重要課題として良好な景観の形成に取り組むこととしております。

 具体的には、これまでの地方公共団体の条例による取り組みの限界を踏まえ、景観法においては、第一に、国として、良好な景観の形成に関する基本理念や、国、地方公共団体、事業者、住民の責務をしっかりと位置づけること。第二に、これまでの景観条例による地方公共団体の取り組みに法的な位置づけを与え、これまでの規制は勧告どまりでございましたけれども、変更命令まで行うことができるという内容を盛り込んだところでもございます。

 さらに、地方公共団体等からの要望を踏まえ、条例では設けることのできない建築基準法の緩和措置とともに、御指摘のございました相続税等の軽減措置を講ずべく、関係省庁と調整をしているところでございます。

 良好な景観の形成による地域の活性化や経済的な効果について国民に示すべきだとの御指摘がございました。

 これまでも、地方公共団体と地方住民等の努力と工夫により、歴史的町並みの保全等の景観整備が観光客の大幅な増加につながり、地域の活性化に成功している事例が多々見られます。

 例えば、三重県伊勢市では、統一感のある町並みの整備、屋外広告物の規制、電線類の地中化等の景観整備を行い、イベントとの相乗効果もございまして、平成四年からの十年間で、観光客がおよそ九倍の三百万人になったという例もございます。

 また、北九州市門司港レトロ地区では、歴史的建築物を活用した景観整備により、平成七年からの七年間で、観光客数及び観光消費額がともに二倍以上になっております。

 このように、良好な景観の形成によって地域の活性化を実現することができ、経済的にも効果があるものと考えております。

 違反広告物対策の取り組みについてのお尋ねがございました。

 本法案では、条例に違反した屋外広告物について、行政代執行法に定める手続によることなく、都道府県知事や市町村長がみずから違反物件を撤去できる制度の拡充を行うこととしております。

 また、条例違反を繰り返して違反広告物を生み出す不良業者を規制するために、屋外広告業について、条例で登録制を導入し、営業停止などのペナルティーを課することができることともしております。

 このように、本法案は、違反広告物をなくして良好な景観を形成する観点から、必要な対策を盛り込んでいるものでございます。

 最後に、都市の緑の保全と創出についてのお尋ねがございました。

 これまで、都市公園の整備を中心として、都市緑化や緑地の保全を推進してまいりました。しかし、都市の緑を一層ふやすためには、都市の大半を占める民間敷地の緑化や、借地や土地の立体利用など用地買収によらない都市公園の整備など、多様な手法、多様な主体による緑の保全と創出に政策を転換していくことが必要であると考えております。

 こうした観点から、昨年十月に閣議決定された社会資本整備重点計画においても、緑の量を五年間でおよそ一割ふやすことを目標としているところでもございます。この目標を達成するため、本法律案で講じている制度を活用し、都市の緑の保全と創出に一層積極的に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 若井康彦君。

    〔若井康彦君登壇〕

若井康彦君 民主党の若井康彦です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提案の景観緑三法案について質問をいたします。(拍手)

 まず初めに、今日の切迫した状況の中で、景観法とは何とのどかなと思われるかもしれません。しかし、百聞は一見にしかず、すべての国民は、この不透明な時代を、景観を通じて、時代の姿、社会の形を目で見、肌で感じています。時代が大きく変わろうとしている今、その方向をわかりやすく示し、だれもが共感できるコンセンサスをつくる、その上で、景観の問題は欠かすことができないと思います。

 そこで、まず大臣、あなたが今暮らしておられる日本の都市、そして町、その景観は本当に美しいと言えるでしょうか。

 ヨーロッパでは、パリやローマだけではなく、どんなに小さな町や村も美しい町並みを有しています。かつて、日本と同じように、町を建設し続けた時代の歴史を経験しています。しかし、いつまでも建設を続けてきたわけではありません。何百年も前につくられた町ですけれども、今は、これらを上手に使いこなすことに没頭しています。そのためにお金と知恵を傾けています。

 その点、我が国の現状はいかがですか。二十一世紀に入った今、思い切った方向転換をすべきときではありませんか。今回、この景観緑三法が提案されたことを、その意味で私は率直に評価をしたいと思います。今後の国づくりの大きな転換点としてこの景観法を位置づける、そしてそれがより実効性のあるものになることを心から願うものであります。

 さて、そのためには、法案は今のものよりもより大胆なものでなければならない、私はそう考える。そこで、次の五つの問題点を提起したいと思います。

 まず、公共事業のあり方についてお伺いしたい。

 我が国は、二十世紀の後半、半世紀の間に実に五千万人の人口の増加を経験した。百万人の巨大都市を毎年一つずつつくってきたに等しい。今、突入しつつある超高齢化の時代、今後は逆に、急速に人口が減少する。これからの半世紀の間に、今度は三千万人以上の人口が減るのです。毎年六、七十万人の巨大都市が確実に一つずつ姿を消していくのと同じです。今、私たちは、その変曲点に立っている。これから毎年、加速度がついてきます。

 かつて、急増する人口を既存の町に押し込むために、大変な無理を重ねてまいりました。その結果、今の景観の現状がある。多少ばらばらであったり窮屈であったりというような市街地を延々とつくってしまいました。時には、古くからの由緒ある歴史的な町並みを壊してしまったこともあったに違いない。しかし、そうした粗製乱造の時代はとうに過ぎ去っています。

 今、抜本的な方向転換をすべきときです。そのため、相変わらず毎年三十兆円余も注ぎ込まれているこの公共事業の方向、これを抜本的に変える必要がありますが、この点、大臣の所見はいかがでしょうか。(拍手)

 そこで、先般、平成十五年七月に国土交通省が公表をした美しい国づくり政策大綱において、国土交通省は、この国土を魅力ある国にするために、まず襟を正すとある。行政の方向を美しい国づくりに向けて大きくかじを切ることにしたと述べている。そのとおりです。では、それをどのように政策化するのですか。

 この大綱の中で、十五の具体的施策を挙げていらっしゃる。例えば、公共事業における景観アセスメントシステムの確立、あるいは分野ごとの景観形成ガイドラインの策定、これらの提案がなされています。しかし、今回のこの法案の中には、これらの内容は全く含まれていません。大臣、なぜこうしたものを落としてしまったのか、その理由をぜひ教えていただきたいと思います。(拍手)

 第二に、緑とオープンスペースについてお聞きをしたい。

 先ほど申し上げたとおり、これから半世紀の間に三千万人以上の人口減が起きます。これまでの過密な市街地に生じる遊休地、これを積極的に集約して、コンパクトな土地利用を実現すべきときです。近い将来予想されている大震災に備えて、安全で質の高い都市へ脱皮をしていくことでもあります。人々はだれも、安全、安心な環境を心地よい景観として見ているわけです。

 今日、あいた土地を公園にすれば周りの地価は上がります。しかし、そこを建物で埋め尽くしてしまえば、周囲の地価は下がってしまう例が多い。真の都市再生とは、この貴重な空地を超高層ビルで埋め尽くすことではなくて、空地を確保し、環境や景観を取り戻すことだと考えますが、大臣の見解を伺いたい。(拍手)

 関連して、都市緑地法の改正について伺います。

 今回の提案では、名称こそ保全法から都市緑地法に変わっていますけれども、内容は相変わらず既存緑地の保全に主眼が置かれており、緑を創出し、都市に自然を取り戻そうという積極的な姿勢がうかがえない。緑をふやす方策に見るべきものはなく、ひたすら民間開発に依存をし、部分的な緑地をそこに付加させようという他人任せの姿勢に終始しているのではありませんか。

 過密都市東京よりもさらに人口密度の高いシンガポール、国の最重点政策の一つとして緑の創造に取り組んでいます。緑地の面積を年々ふやし続けています。緑は人と社会を安定させる大きな自然循環のシンボルであるにとどまらない、ガーデンシティーこそ海外から観光客を集め、資本を呼ぶ条件であるということがよくわかっているからです。

 市街地に生じる遊休地を積極的に集約して緑地に転換し、都市の中の自然循環を回復し、緑豊かな景観を創出すべきです。観光立国をかけ声倒れにしないためにも大転換が必須と考えますが、大臣の所見をお伺いしたい。(拍手)

 また、この点に関連いたしまして、農水大臣に伺いたい。

 農水省は、緑に関するこの政策課題にどのように取り組もうとしているのか、今回の法案の中ではっきりしない。都市縁辺の田園と里山、あるいは農山漁村の集落等の景観に、どのような政策を実施しようとしているのですか。さらに、農水省所管の公共事業が今国土景観の上に重大な影響を与えていると考えますけれども、これらに関するガイドラインの必要性についてどのようにお考えか、お答えください。(拍手)

 第三に、景観創造の主役はだれかという問題です。

 既に八〇年代より、全国各地で、景観計画を柱とする町づくりの取り組みがなされてまいりました。五百近い自治体が景観条例を定めて、それぞれの創意工夫を凝らしながら望ましい景観づくりを進めています。

 今回の景観法案は、こうした自治体の景観計画の流れをバックアップすることを基本的な目標とすべきでありましたけれども、なぜか、景観行政団体としての権限を都道府県や政令指定都市、中核都市に限定をしている、それはなぜなのでしょうか。大臣にお答えを求めます。

 さらに、我が国には、想像を超える時代の激変を何度も越えてきた、例えば京都のような貴重な歴史的景観が少なからず残されています。こうした歴史的遺産ともいうべき景観を守るには、当該自治体だけではとても限界がございます。自治体との協力のもと、古都保存法の活用等、今日の状況に合わせた法的措置と、都市景観を国民の共通財産として守るための補助事業の投入が必要と考えますけれども、大臣の所見をお伺いしたいと思います。(拍手)

 第四に、景観法との関連で、今政府が推進をしておられる都市再生についてお伺いをしたい。

 都市再生の本来の目的は、活力や魅力を失った都市地域を生き生きとした美しい町につくりかえることではないのですか。そのために重点的に公共投資を集中し、都市・建築法制の緩和を重ねてきました。しかし、それが地域にそぐわない開発を誘発し、都市の景観を損ない、かえって都市の活力をそぐことになっている例が少なくない。一刻も早く、都市再生という名で行われている景観の破壊をやめ、町のルールを取り戻し、市民の合意による町づくりへ根本的に軌道を改めるべきです。

 日ごろ、美しい町づくりを標榜しておられる石原大臣、基本的な軌道修正、お約束をしていただけますね。

 また、先般の施政方針演説における総理の観光立国行動計画についてお伺いをしたい。

 石原大臣も、景観法の意義を観光立国宣言との関連で先ほど述べられました。しかし、景観は観光立国の手段そのものでないことは言うまでもありません。理にかなった、時代にふさわしい景観づくりの道筋が確立をし、風格ある美しい風土を有する国となってこそ、景観を観光立国にうたうことができると考えますが、その点についての大臣の御感想をお聞きしたいと思います。

 第五に、都市計画と景観の関係について申し上げたい。

 日本の都市計画は、規制緩和の繰り返しの歴史です。今回の都市再生においても、容積や高さ制限等、都市計画の緩和が行われました。これは、世界的な都市政策の流れとは完全に逆行しています。

 みずからルールをつくることは、合意の形成であり、他からの規制とは本質的に違います。規制緩和という名のもとに、都市づくりのルールを破壊して、容積を積み増し、高さ制限を撤廃した、その結果、視界を妨げ、調和のとれたスカイラインが損なわれている。こうした都市計画のあり方こそ、今日の都市景観破壊の元凶ではありませんか。大臣の見解をお伺いしたいと思います。(拍手)

 建築行政にも大いに問題ありです。どんな良好な景観も、それにそぐわない一つの建物が建つだけでもろくも損なわれてしまう、そんな事例は枚挙にいとまがありません。景観は、建物のデザインそのものよりも、土地利用、位置、規模、高さなど、より基本的な要素が決定的なのです。

 建築行政は、大部分の自治体の権限の外にあり、手の届かないところで建築確認がおりることをチェックしようがない場合が少なくありません。それでは、いつまでも安心して住み続けられる環境や景観の維持は難しいと思います。住民の関与できない巨大な高層マンションが目の前に建ってしまうというようなことが起きる、そんな危ない町にだれが宅地を求めようとするでしょう。地価は下落をし、結局、町は寂れてしまうのです。

 景観というものは、こうした町のありようの指標なのです。景観権を織り込んだ建築行政への転換こそ良好な都市景観を守り育てる基本であると考えますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。(拍手)

 景観をつくるとは何なんでしょうか。必要にして十分なものこそ美しい。要不要を見きわめる判断力と思い切った決断が景観づくりの要諦であり、今こそ、それが必要とされています。ヨーロッパの国々では四半世紀、土地利用において、景観を共有することを私的に土地を所有し利用することに優先させる法を整備し、国と地方自治体が責任を持って都市計画を推進しています。それが美しい景観をつくる基礎になっている。本法案は、その点で勇気を欠いている、あるいは理念が薄弱であると言わざるを得ません。(拍手)

 改めて申し上げたいことは、景観こそ、国民のだれもがみずから考え、行動する国づくりへの入り口なのだということです。その意味から、望ましい都市、地域をつくっていく道筋として、都市計画法の抜本的改正を柱に、すべての公共事業の見直しを視野に入れた景観基本法の制定を私たちは改めて求めたいと思います。

 以上、質問いたします。明確なお答えを期待します。どうもありがとうございます。(拍手)

    〔国務大臣石原伸晃君登壇〕

国務大臣(石原伸晃君) 若井議員にお答え申し上げたいと思います。

 日本は美しいと言えるのか、公共事業のあり方を根本的に見直すべきときに来ている、そういう御指摘が冒頭ございました。

 これも先ほど御答弁させていただきましたが、我が国における戦後の著しい都市化と経済発展の中で、社会資本整備においても、これまで量的充足に重点が置かれてきて、美しさへの配慮が欠けていた点があったということは、私はそのとおりだと思っております。

 このため、みずから襟を正し、行政の方向を美しい国づくりに向けて大きくかじを切るべく、昨年七月に美しい国づくり政策大綱を策定したわけでございます。公共事業のあり方につきましても、この大綱の趣旨に即して、現在、見直し作業を進めているところでございます。

 次に、景観アセスメント制度や公共事業に関する景観ガイドラインについて、なぜ抜け落ちているのか、こういう御指摘がございました。

 景観アセスメントにつきましては、現在、必要となる景観評価の技術開発や手続等の整備について取り組んでおり、今年度、直轄事業の一部を対象に試行的に導入することとしております。

 また、景観形成ガイドラインにつきましては、施設の分野ごとに策定するものでもございまして、今年度中に道路、河川、港湾等について作成することとしているところでもございます。

 今回の景観法案では、公共施設について、景観計画に位置づけ、地域の景観に調和した整備が図られるようにしたものと御理解をいただきたいと思います。

 さて、人口減少時代を迎える今後の都市の再整備について、環境を取り戻す、景観を取り戻すというような御指摘がございました。

 御指摘のとおり、我が国の人口は、平成十八年をピークとして減少に転じるという歴史的転換点を迎えようとしております。このため、今後、人口減少、超高齢化に対応したコンパクトで、そして緑とオープンスペースが豊かな都市構造への転換が必要と考えているところでございます。

 遊休地の取得による緑地の創出について、他人任せではないか、こういうお尋ねがございました。

 これまで、平成十四年度までのおよそ三十年間に、およそ七万七千ヘクタールの都市公園を新たに整備するなど、緑地の創出というものを推進してきたわけでございますが、こうした土地取得による緑の確保に加えまして、やはり、都市の大半を占めます民有地の緑化の推進というものをこれからは進めていかなければならないと考えているところでございます。

 景観行政団体は市町村が原則であるべきであるという御指摘がございました。

 御指摘のとおり、良好な景観の形成は、最も住民に近い基礎的自治体である市町村が中心となるべきと考えております。一方、現状、市町村の一部しか景観行政を行っていないという現実もあるわけでございます。そのため、法制度的には、都道府県と政令指定都市、中核市は自動的に景観行政団体として位置づけ、その他の市町村は、手を挙げられましたら景観行政団体になることができることとしたところでございます。

 京都について、歴史的な都市に対するさらなる法的措置と補助事業を投入すべしという御質問がございました。

 国民の財産というべき京都等の歴史的な都市の景観の保全については、これまで、都市計画法による美観地区や伝統的建造物群保存地区の指定に加えて、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法による厳しい規制など、さまざまな景観の保全のための措置がとられてきました。事業の面でも、古都法に基づく土地の買収等の古都保存事業を特別の補助率で行っております。

 今回の景観緑三法を契機として、本年度創設いたしましたまちづくり交付金を活用させていただきながら、京都等の歴史的な都市の景観を守るために引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

 市民合意によるまちづくりに改めるべき、こういう軌道修正を行う、こういう御指摘がございました。

 都市再生は、都市機能の高度化と都市の居住環境の向上を図ることであり、都市における良好な景観の形成も含まれていると考えております。今回の景観法においては、市民合意によるまちづくりを進める一環として、住民やNPOなどによる景観計画の提案制度も取り入れたところでございます。

 景観行政の目的と観光立国の関係について感想をという御指摘がございました。

 景観法は、本則の中に書かせていただいておりますように、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現の三つを目的としているところでございます。

 景観法の基本理念にあるとおり、良好な景観は、観光その他の地域間の交流の促進に大きな役割を担うものであり、観光立国のためになるものであると考えているところでございます。

 しかしながら、景観法の目的を踏まえますと、観光立国の手段でのみ良好な景観の形成を図るものでないということは議員の御指摘のとおりだと考えております。

 さて、最後でございますが、都市計画の規制緩和と建築行政が都市景観破壊の元凶である、こういう御指摘がございました。

 都市計画の規制改革を進めるに当たりましては、良好な景観形成との両立を図ることが必要と考えております。今回の景観法を活用しながら、さらに景観に配慮した都市計画の実現を図っていくということが本法案の趣旨であると御理解をいただきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣亀井善之君登壇〕

国務大臣(亀井善之君) 若井議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、農山漁村における景観形成の取り組みについてのお尋ねでありますが、農山漁村の景観は、市街地縁辺部を含む里山、田園などにおきまして、農林漁業の営みを通じて形成されるものであります。こうした景観を守り、魅力ある農山漁村づくりに向けて、地域の個性を生かし、多様な主体が参加して農山漁村の振興施策を展開する必要があると考えております。

 農林水産省といたしましては、国土交通省及び環境省と共同で景観法案を提出し、景観農業振興地域整備計画の策定による景観と調和のとれた農地の利用促進や景観に配慮した森林施業の促進等の施策を講ずることとしております。

 今後、関係省とも連携をし、総合的な農山漁村の景観形成に向けた地域の取り組みを支援していく所存であります。

 次に、農林水産省の公共事業の取り扱いについてのお尋ねでありますが、農林水産省におきましては、昨年九月に「水とみどりの「美の里」プラン21」を公表し、今後の美しい農山漁村づくりに関する施策の推進方向を示したところであります。

 このプランの中では、農林水産省所管の公共事業について、農業農村整備事業の事業計画に景観配慮の観点を盛り込むとともに、公共事業の実施に当たっての景観配慮のガイドラインとなるよう、設計基準の見直し、手引書の作成を進める、このほか、美しい農山漁村づくりを牽引するモデル事業を実施するなどの方針を明らかにしているところであります。

 これらの取り組みを通じて、農山漁村の景観に配慮した公共事業の展開を図ることにいたしております。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣    川口 順子君

       農林水産大臣  亀井 善之君

       国土交通大臣  石原 伸晃君

       国務大臣    福田 康夫君

 出席副大臣

       外務副大臣   逢沢 一郎君

       国土交通副大臣 林  幹雄君


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