衆議院

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第2号 平成16年10月13日(水曜日)

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平成十六年十月十三日(水曜日)

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 議事日程 第二号

  平成十六年十月十三日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。岡田克也君。

    〔岡田克也君登壇〕

岡田克也君 民主党代表の岡田克也です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、昨日の総理の所信表明演説に対して、私自身の見解を明らかにしながら、総理に質問をいたします。(拍手)

 質問に入る前に、豪雨や台風による被害に遭われた皆様に対して、心からお見舞いを申し上げます。私は、福井、三重、香川などの被災地を訪れ、関係者の皆さんの切実な声を聞いてまいりました。政府に対して、被災地域の実情に即した、早期復旧のための対策を要望いたします。

 さて、昨日の総理の所信表明演説は、各省庁の政策を羅列しただけで、重要な政策課題について具体性に乏しく、総理のやる気が伝わってこない、官僚の作文にすぎないというのが私の第一印象です。

 具体的に、重点を四点に絞って質問をいたします。

 まず第一に、小泉総理の基本的な政治姿勢に対して質問をいたします。

 昨日の総理の所信表明演説は、本来、特別の意味を持つものであったはずです。すなわち、小泉総理が内閣改造を終え、新たなスタートに当たって、日本国総理大臣として取り組むべき国政の基本方針を国民に対し明らかにし、理解を求めるべき重要な機会でした。しかし、総理が総裁として残された二年間の任期の中で一体何をやりたいのか、その姿が見えてきません。

 小泉総理は、内閣改造後の記者会見で、郵政民営化実現内閣と名づけてもいいのではないかと述べられました。私は、この発言に強い違和感を覚えました。

 内閣や内閣総理大臣がなすべきことは、国民が将来にわたり平和で安定した生活ができるように国家の運営を行うことであり、国際社会の中で日本がその責任を果たしていくことです。郵政改革は重要な政治課題ですが、今の日本が直面している課題の一つにすぎません。内政、外交上の重要課題が山積をしています。

 外交上の課題として、戦後、世界の平和の創造に重要な役割を果たしてきた国際連合が、重大な危機を迎えています。日米同盟のあり方も問われています。総理みずからが二度訪朝したにもかかわらず、その後の日朝関係は完全に行き詰まっています。日本にとって米国と並ぶ貿易相手国であり、北朝鮮の核問題解決に重要な役割を果たすことが期待される中国との関係も、大きな懸案を抱えています。悪化するイラク情勢への対応も重要な課題です。これらについての具体策が所信表明演説の中で何も語られていません。

 内政面では、国民の老後の不安を解決するための年金制度の抜本改革の方向性、地方分権推進のための大胆なビジョン、地方経済の再生と雇用の安定のための具体策、そして歳出構造の見直しと税制改革の方向性を明らかにした財政構造改革など、いずれも内閣が全力を挙げて取り組むべき課題です。これらの課題に対して、総理は、いかなる優先順位をつけて具体的にどう取り組もうとしているのでしょうか。そして、残された二年間の任期の中で、少なくとも何を実現しようとしているのでしょうか。

 小泉総理が郵政改革を重視していることはよくわかりました。しかし、それ以外に今後二年間で特に優先して取り組むべき課題は何なのか、改めて総理が国民に対して明らかにすることを求めます。(拍手)

 昨年秋の総選挙、そしてことしの参議院選挙を経て、日本も本格的な政権選択の時代を迎えました。次の総選挙において政権交代することが、私の、そして民主党の使命です。小泉総理の内閣改造に先立って、私は、民主党の次の内閣を新たにスタートさせました。いつでも政権交代できる準備はできています。(拍手)

 私は、小泉政権に対し、批判のための批判に終わることなく、国民に選択肢を示すための前向きの国会論議を行います。この本会議で次の内閣の鳩山ネクスト外務大臣、横路ネクスト厚生労働大臣が質問に立つのをスタートに、予算委員会や各委員会において、次の内閣のメンバーを先頭に、堂々たる国会論議を開始します。もちろん、私も小泉総理と党首討論を重ねたいと考えています。国民の立場に立って、率直で正直な議論を心がけたいと思います。小泉総理が逃げることなく党首討論を開催し、私の質問に対して正面から答弁されることを求めます。(拍手)

 第二に、外交の基本問題、特に日米関係について質問します。日中関係、日朝交渉などその他の具体的な問題は、鳩山ネクスト外務大臣にゆだねます。

 小泉総理は、内閣改造後の記者会見で、日米同盟と国際協調を両立させていくのが日本外交の基本であると述べられました。しかし、今までの小泉外交の最大の問題は、日米同盟と国際協調が両立できていないことです。

 世界の平和と安定の確保のための最後の手段としての武力行使は、国連の安全保障理事会の決定に基づき行われるべきであり、各国の判断に基づく武力の行使は安保理決議がなされるまでの自衛権の行使に限定されるというのが、国連憲章の最も重要な理念です。他方で、米国のブッシュ政権は単独行動主義を強調し、先制攻撃を正当化しています。このことは、国連憲章の理念に対する重大な挑戦であり、戦後の世界平和創造のための枠組みを根底から揺るがしかねないものです。

 世界の中の日米同盟の名のもとで、この米国の単独行動主義を補完し、助長してきたのが小泉総理です。そのことがいかに重いことであるかとの認識は総理にあるのでしょうか。総理は、国連憲章の理念と先制攻撃、単独行動主義との本質的な矛盾に対しどのように考え、今後、その矛盾解決に向けてどのような努力を行おうとしているのでしょうか。

 私は、テロや大量破壊兵器の拡散という世界の直面する問題を解決するためにも国連の果たすべき役割は極めて重要で、米国を国際協調路線に引き戻すことこそが同盟国としての日本の役割であると考えています。総理の答弁を求めます。

 イラク戦争は、その米国ブッシュ政権の先制攻撃の不幸な失敗例です。まずイラク攻撃先にありきの中で、大量破壊兵器の存在を理由に、多くの国々の反対の中、戦争が開始されました。大量破壊兵器はありませんでした。国家がみずからの判断で戦争を開始することを認めることが、いかに危険であり、問題があるかということを改めて認識させることになりました。

 小泉総理も、大量破壊兵器があることを根拠にイラク戦争を支持しました。総理は、この戦争が国連決議に基づくものであったことを強調し、みずからの誤りを決して認めようとはしません。仮に政府の見解に立ち、国連決議に基づく武力行使であったとしても、そのことが事実誤認に基づき戦争を支持したことを正当化するものでは決してありません。

 小泉総理、あなたは余りにも軽率だったのです。罪のない数多くの命を奪った戦争を支持したことは重大です。そして、リーダーにとって重要なことは、みずからの誤りを率直に認めることです。イラク戦争を支持したことは重大な誤りであったことを認め、日本国民、そしてイラク国民に対して謝罪すべきです。総理の答弁を求めます。(拍手)

 次に、日米同盟の将来について質問します。

 米国からは、一九九六年の橋本・クリントン両首脳による共同宣言で確認したアジア太平洋地域をさらに超えて、インド洋や中東をも含む日米同盟の拡大が求められています。米軍の再編成、トランスフォーメーションもその流れの中で行われています。しかし、このことは、日本の安全保障政策にとって大きな政策転換を意味します。単独行動主義、先制攻撃を主張する米国との同盟関係を今無制限に拡大することが日本の国益にかなうことなのか、そして日米安保条約との整合性はどうなるのか、これらの根本的な問題について総理の明快な答弁を求めます。

 そして、日本の安全を確保するためだけの日米同盟ではない以上、日本の過重な基地負担、そして日米地位協定の不平等性の見直しは、必ず実現しなければなりません。

 私も、沖縄で米軍ヘリコプターの墜落現場を見て、普天間基地問題の解決は時間との競争であると改めて認識しました。さきの戦争で言葉にあらわせない犠牲を受けた沖縄県民が、その占領時代と実質的に異ならないだけの過大な基地の負担を強いられているその現状は、放置できません。沖縄基地の国内外への移転を実現しなければなりません。同時に、日本の米軍基地の規模を縮小しなければなりません。

 困難な問題ですが、国民の理解を得て、説得をしながら乗り越えていかなければなりません。その覚悟と具体的プランが総理にあるのでしょうか。総理の答弁を求めます。(拍手)

 第三に、内政上の重要課題について質問します。

 まず、年金改革です。

 十月一日から改正年金法が実施になりました。さきの参議院選挙を通じて示された、本当の意味での年金制度の抜本改革を望むという国民の気持ちは、無視されたままです。民主党は今、全国各地で年金の問題を議論するための集会を開催していますが、国民は明らかに政府の説明に納得していません。私も、各地の集会に出席をし、持続可能な年金制度を何とか確立してほしいという国民の切実な思いを強く感じています。年金制度改革を先送りせず、しっかり議論することが政治の責任です。

 総理は、年金の抜本改革について、三党合意を持ち出して、早急に協議を開始することが必要だと言われますが、抜本改革案について責任を持って自民党をまとめるというような姿勢は全く見られません。所信表明演説の中でも、単に課題を列挙して、「難しい問題に一つ一つ答えを出していかなければなりません。」と他人事のように述べるだけです。それでは単なる先送りにすぎません。

 私は、小泉総理に改めて提案します。第一に、基礎年金相当部分について、全額税方式により一元化し、その財源に年金目的消費税を活用すること。第二に、いわゆる二階建て部分については、一元化を前提に、国民年金対象者を含めた負担と給付のあり方について検討すること。第三に、納税者番号制の導入を行うこと。この三点を小泉総理が約束するのであれば、与野党間の協議は意味あるものとなります。

 以上の提案について小泉総理はどう考えるのか、誠意ある答弁を求めます。(拍手)

 次に、地方分権について質問します。

 総理、私は今、民主党代表として、なるべく地方を訪れ、一人でも多くの人々に会い、話を聞くことを心がけています。今、地方は、公共事業依存型経済から自立型経済への転換期にあり、構造変化の中で苦しんでいます。しかし同時に、国には見られない新しい動きの胎動を感じることができます。消費者の求める安心、安全な農産物づくりに取り組む地域、キノコやサツマイモなどをブランド化して、国に頼らない自立的な農業を目指す地域、中国市場や高齢者市場への対応など時代の変化に対応した取り組みを行う地域の中小企業など、地方には本来底力があります。

 地方のエネルギーを閉じ込めてきたのが中央集権体制であり、官僚支配の構造です。地方に権限と税源を思い切って移譲して、自立型の地方経済モデル構築を競わせることが日本再生のかぎです。大きな構想を持ち、本当の意味での地方分権を進めることが重要です。

 小泉総理の地方分権の進め方の特徴は、その場しのぎの、将来展望のない改革だということです。平成十六年度の三位一体改革は、税源移譲が先送りされたままに国庫補助負担金の削減や地方交付税の総額抑制が行われ、地方財政は大混乱しました。平成十八年度までの改革については、補助金改革案の取りまとめを全国知事会に丸投げし、知事会初め地方六団体がこれを激論の末まとめたにもかかわらず、各省庁が大臣を先頭に反対しているありさまです。

 総理は、中央省庁の圧力に地方がおびえちゃだめですよ、しっかりしてもらいたいと述べたと伝えられています。冗談にもほどがあります。しっかりしてもらいたいのは総理自身です。総理には、このような各省庁の公務員、そして総理みずからが任命した今まさしくひな壇に並んでいる各大臣の動きに対して、これをやめさせる責任があると考えますが、その意思があるのか、答弁を求めたいと思います。

 そもそも、大きな混乱の原因は総理にあります。地方六団体も明確に述べているように、三位一体改革の全体像が示されていないことが無用の混乱を招くことになりました。最終的にどれだけの税源移譲と国庫補助負担金の廃止を行うのか、そして税源移譲を行った結果生じる地方自治体の格差の問題についてどこまで地方交付税によって措置するのか、明らかではありません。全体像を示さない理念なき部分的手直しにとどまっているために、理念なき抵抗が行われています。

 総理は、平成十八年度までの全体像を年内に決定すると言うだけですが、十八年度以降も含めた三位一体改革の全体像を早急に示すことこそが必要です。この点について総理はどう考えているのでしょうか、答弁を求めます。(拍手)

 次に、郵政改革について質問します。

 総理は、郵政民営化を改革の本丸と位置づけています。私は、ユニバーサルサービスが求められる郵便事業を別とすれば、郵貯・簡保事業については民間でできることですから、本来は民営化するのが筋であると考えます。もちろん、民営化は手段であって目的ではありません。国民の立場に立ってプラスになる民営化でなくては意味がありません。民営化を行うに当たって、総理は少なくとも次の疑問にきちんと答える責任があります。

 第一の問題は、現在規模で三百五十兆円の資金を民営化法人がみずからのリスクで運用し、利益を出すことが現実に可能かということです。大手の金融機関ですら貸出先の開拓に苦労する中で、新規参入する郵便貯金会社、郵便保険会社が、どのようにしてメガバンクの十倍規模という巨大な資金の運用を行い、かつ利益を出すことができるのか、だれもが疑問に思っています。

 第二の問題は、結果的には民営化に失敗し、残ったのは形を変えた官業の肥大化だったということになりかねないことです。民間が株式を保有するという意味での、本当の意味での民営化がなされるまでの間、新規分野への進出を制限するとともに、まず事業規模の縮小を行うべきではないでしょうか。

 そして、第三の問題は、郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を買い続けることで特殊法人の整理合理化が進まない懸念があることです。これでは、財投資金が特殊法人の肥大化を招いたこれまでと何ら事態は変わらないことになります。

 以上の基本的な三つの問題点について、総理はどう考えておられるのか、議論の入り口として総理の明確な答弁を求めます。

 以上、幾つかの基本的な問題についての質問を行いました。しかし、郵政民営化の問題が今後どのような法案になるかは、政府と自民党との調整を待たなければなりません。むだな高速道路をつくらないということでスタートした道路公団民営化論議が、いつの間にか、ほとんどすべての高速道路を税金を使ってでもつくり上げるということに見事にすりかわったのは、記憶に新しいところです。郵政民営化法案がどのような内容をもって次期通常国会に提出されるか、注目しています。かえって日本経済に混乱をもたらし、国民にとってプラスにならないような見せかけだけの改革案であれば、小泉総理は厳しくその責任を問われることになることを最後に付言しておきます。(拍手)

 第四に、信頼される政治を実現するための具体論について質問します。

 日本では、多くの国民が政党や政治家を信頼していません。政治に対する国民の信頼がない中で、小泉総理御自身が述べられたように、国民に理解を求め、改革をなし遂げていくことは不可能です。日本歯科医師連盟、いわゆる日歯連の問題は、かつてのリクルート事件を超える問題であり、小泉総理は、自民党総裁として重大な決意を持って取り組まなければなりません。

 所信表明演説の中で、政治と金の問題について総理はほとんど語っていません。「政治家一人一人が肝に銘じ、常に襟を正さなければなりません。」と、まるで他人事です。自民党総裁として許しがたい責任逃れです。小泉総理が自民党総裁として、第一に、国民に対し説明責任を果たし、第二に、責任ある者が国民に対し謝罪するとともに法律上、道義上の責任をとり、第三に、二度と同じ事件が繰り返されないように制度改革を率先してなし遂げなければなりません。

 このような視点から、小泉総理に対して質問をいたします。

 まず、旧橋本派の一億円やみ献金問題について質問します。

 この事件に関し、会計責任者が逮捕、起訴され、村岡前衆議院議員が起訴されました。他方で、橋本元総理初め他の関係者は起訴されることはありませんでした。なぜ事件の解明が進む前に起訴されないことになったのか、一億円はだれが受け取り、そしてどのように使われたのかなど、大きな疑問が残っています。まず、これらの点について、事実関係を当事者が明らかにすることが大切です。総理が自民党総裁として、橋本氏初め関係者が、国民が納得できるだけの場所で、そして内容で、説明責任を果たすよう説得する意思があるのか、改めて総理の説明を求めます。

 また、国会で説明したいとの意向であると伝えられる村岡氏の国会証言を実現することが事実解明の第一歩と考えますが、まさか総理はそのことを否定されることはないと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。答弁を求めます。

 日歯連の事件は一億円問題だけではありません。自民党の政治資金団体である国民政治協会や自民党本部を利用した迂回献金の問題が指摘をされています。

 確かに、日歯連の国民政治協会への献金直後、自民党の特定議員の関係団体に国民政治協会から自民党経由でほぼ同額の献金が不自然になされるなど、大きな疑問が残ります。このような迂回献金が認められるようでは、政治資金規正法の改正を行っても何の意味もありません。

 総理は自民党総裁として、この問題について徹底的に調査を行い、国民に説明する責任があります。この点について小泉総裁はどう考えているのか、自民党の組織ぐるみのやみ献金疑惑であり、総裁自身の問題ですから、逃げずに答弁するよう求めます。

 きちんとした説明責任が果たされ、責任ある者が法律上または道義上の責任をきちんととることを前提に、事件の再発防止のための制度改革が必要です。迂回献金の禁止、政治団体間の寄附の量的制限、外部監査の義務化、収支報告書の不記載に対する罰則の強化、寄附の銀行振り込みの義務化などを内容とする政治資金規正法改正案を成立させなければなりません。民主党は、法案の提出を準備しつつあります。伝えられる自民党改革案では再発防止になりません。

 総理自身も、所信表明演説の中で、「政治に対する国民の信頼なくして、改革を進めることはできません。」と述べられました。みずからの発言の重みを自覚しながら、強い覚悟と決意を持って責任ある対応をされるよう強く望みます。小泉総理の答弁を求めます。(拍手)

 総理、最後に一言申し上げます。

 総理は、昨日の所信表明演説の結びの中で、高校野球の球児やオリンピックで活躍した選手を例にとり、やればできるというメッセージを繰り返されました。やればできる、すばらしい言葉だと思います。しかし、だれにも負けないだけの努力をしながら、華やかな甲子園やオリンピックに出場することができず、涙をのんだ数多くの高校球児やスポーツマンがいることも忘れてはならないと思います。努力した人が報われる社会にするとともに、努力したけれども報われないたくさんの人々がいることを決して忘れない政治を実現すること、目指すことを誓い、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 岡田議員にお答えいたします。

 内政、外交上の重要課題の優先順位についての御質問であります。

 私は、構造改革なくして日本の再生と発展はないとの信念のもとに、構造改革を断行し、個人や企業の挑戦する意欲と地方の自主性を引き出し、自信と誇りに満ちた活力ある社会を築くとともに、国際社会の一員として世界の平和と安定に積極的に貢献していく考えであります。

 郵政の民営化は、構造改革を進めるに当たり、行財政改革や経済の活性化の観点から極めて重要な方策であります。

 これに加え、御指摘の内政、外交のさまざまな案件は、いずれも重要な課題と考えており、年金を含む社会保障制度、金融、税制、規制、歳出の改革の推進や、日米同盟と国際協調を基本とした国益と国民の安全を守る主体的な外交政策の推進など、内閣を挙げて全力で取り組み、最善を尽くしてまいります。こうした考えについては、私の所信表明演説において述べたとおりであります。

 国会における議論についてでございます。

 私は、国会での議論などを通じて、小泉内閣が進めようとしている改革や政策について国民の理解が得られるよう、今までも努力してまいりました。具体論を進めようとしますと、何事にも賛否両論があります。反対の立場から見れば御不満もあるとは思いますが、国会での議論などを通じて、広く国民の理解と協力を得られるように引き続き努力していく考えであります。

 野党も、積極的に政策を提言していただくことは歓迎いたします。国会におけるさまざまな場において、批判論や反対論だけでなく建設的な政策論をしていくことが、お互い切磋琢磨していく上で重要なことだと私も考えております。

 米国の単独行動主義と我が国の対応についてでございます。

 米国が単独行動主義をとっており、国際協調路線へ引き戻す必要があるとの御指摘ですが、米国政府は、テロや大量破壊兵器の拡散といった国際社会の重要な課題につき、同盟国等と協議、協調しながら取り組んできております。また、我が国は、米国に対して、国際協調の重要性につき随時強調してきております。

 国連憲章の理念と米国の先制攻撃、単独行動主義との関係についてでございます。

 国連憲章のもとでは、一般的に武力の行使が禁止されていますが、自衛権の行使に当たる場合や安保理の決定がある場合には武力の行使が認められております。御指摘の先制攻撃については、我が国として他国の国際法解釈につき有権的な評価をする立場にはありませんが、いずれにせよ、米国は国連憲章を初めとする国際法上の権利及び義務に合致して行動しているものと考えます。

 事実誤認に基づいてイラク戦争を支持したのではないかとのお尋ねです。

 我が国が対イラク武力行使を支持したのは、イラクが十二年間にわたり累次の国連安保理決議に違反し続け、また、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえようとしなかったとの認識に基づくものであります。この点は、平成十五年三月二十日の内閣総理大臣談話において述べたとおりであります。したがって、対イラク武力行使に対する支持が過ちであったとの御指摘は当たりません。

 日米同盟と日本の国益、日米安保条約との関係でございます。

 私は、ブッシュ大統領との間で、世界の中の日米同盟を強化していくことで一致しております。これは、日米同盟関係のもと、日米両国が世界におけるさまざまな問題の解決に世界の国々と協調しながら取り組んでいることを踏まえまして、このような協力関係をさらに強化していくことを確認したものであり、我が国の国益に合致するものと考えております。このような同盟関係は、日米安保条約に基づく協力に限られたものではなく、日米安保条約上の権利義務関係は何ら変更されておりません。

 在日米軍の兵力構成のあり方と日米地位協定の見直しについてでございます。

 在日米軍の兵力構成の見直しに関しては、抑止力を維持しつつ、沖縄等地元の過重な負担の軽減を図る観点から、米側との協議を進めてまいります。また、日米地位協定につきましては、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えのもと、運用の改善に努力しているところであります。

 年金制度の与野党協議についてでございます。

 御提示された三点については、これまで民主党が提案されていた最低保障年金との関係など、必ずしも明らかではない点もありますが、いずれにせよ、全額税方式の基礎年金と生活保護をどう調整するのか、年金の財源としての保険料や税の組み合わせをどうするのか、消費税を財源とするのは基礎年金のみとするのか、医療、介護についても対象とするのか、国民年金対象者に対する二階建て部分をつくることは事業主負担がないため保険料負担が従来より大きくなることをどう考えるのか、納税者番号制の導入により所得の公平な捕捉がどこまで可能かなど、さまざまな論点を抱える難しい問題であります。

 政府としては、経済界や労働界などの参加を得ながら、こうした問題について幅広く議論を現在進めておりますが、いずれにしても、これらの問題に答えを出すためにも、さきの通常国会において自民党、民主党、公明党三党が合意をしたわけであります。連合の笹森会長も述べているとおり、民主党は、国民的観点から真摯な政党間協議を行い、国民に対する政党の責任を果たすべきであり、早急に与野党協議を開始することが必要であると考えております。(拍手)

 地方の改革案の実現に向けて各大臣を指導すべきではないか、十八年度以降を含めた三位一体改革の全体像を早急に示すことが必要ではないかとのお尋ねでございます。

 私は、地方にできることは地方にとの理念のもとに、総論賛成の議論を具体化するため、国の補助金を削減し、国から地方への税源移譲を進め、同時に地方交付税を見直す三位一体の改革を進めてまいりました。

 三位一体の改革については、先般、関係大臣に、地方団体の補助金改革案を真摯に受けとめて積極的に取り組むように明確に指示したところであります。現在、関係大臣は、私の指示に従い、地方団体との協議等、改革の具体化に向けさまざまな検討を進めているところであり、いずれにしても、年内には、今年度の一兆円に加え、来年度からの二年間に行う約三兆円の補助金改革、税源移譲、地方交付税改革の全体像を決定いたします。

 十八年度以降の三位一体改革については、決定された十七、十八年度の改革の成果を見きわめた上で判断する必要があると考えております。

 郵政民営化と三百五十兆円の資金運用等についてでございますが、郵政民営化については、先月、基本方針を閣議決定したところであり、今後、これに基づいて具体的な制度設計を進めてまいります。

 まず、民営化法人が三百五十兆円の資金を運用できるかとのお尋ねでありますが、郵政民営化は、国民の貯蓄を経済の活性化につなげるために、資金の流れを官から民へ構造改革するものであり、このような改革の趣旨にかんがみれば、民営化後の郵便貯金会社、郵便保険会社が市場経済の中でみずからの責任と経営判断によって資金運用を行うことにこそ意義があると思っております。

 今後、具体的な制度設計、法案化に当たっては、民営化時点における既契約分に係る資産運用についてこれまでと同じように安全性を重視するとともに、民間金融機関への影響、追加的な国民負担の回避、国債市場への影響を考慮した適切な資産運用を行いますが、厳密な資産負債総合管理のもとで貸し付け等も段階的に拡大できるように検討してまいります。

 民間による株式保有がなされるまでは新分野進出の制限等を図るべきではないかとの御質問でありますが、基本方針においては、例えば、郵便貯金会社、郵便保険会社については特例法を時限立法で制定し対応するなど、イコールフッティングの度合いや国の関与のあり方等を勘案しつつ、業務内容、経営権に対する制限を緩和していくこととしております。

 この基本方針を踏まえ、郵政民営化の制度設計、法案化を進めるに当たっては、当然のことながら、官から民への改革の趣旨に反して民業圧迫となることのないよう配慮してまいりますが、他方で、郵政民営化に当たっては、現在、郵便局ネットワークを通じ提供されているサービスを廃止縮小するという方向ではなく、国民の貴重な資源を最大限活用するという方向で検討すべきであると考えております。

 また、郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を買い続け、特殊法人の整理合理化が進まないのではないかとのお尋ねでございます。

 先ほど申し上げた官から民への資金の流れの改革の趣旨からいって、財投改革に係る経過措置を除き、民営化後の郵便貯金会社、郵便保険会社が財投債を制度的に買い続けるということはあり得ません。

 特殊法人等については、改革対象となる百六十三の法人について、平成十三年十二月に策定した特殊法人等整理合理化計画に沿って改革を進めておりまして、既に八割強について廃止、民営化、独立行政法人化等の措置が講じられ、財政支出を一兆四千億円削減する等の成果が上がっており、今後とも改革を着実に進めてまいります。

 日歯連の献金問題についてでございます。

 私は、政治資金をめぐる不祥事が後を絶たないということについては厳しく受けとめております。政治家が政治資金を受け取る際には、政治資金規正法にのっとって適正に処理されなければならないのは言うまでもないことであり、まず、政治家一人一人が法律を守らなければならないことは当然であります。

 日歯連の事件については既に裁判手続にかけられているところでありますが、およそ政治家たるものは、人から言われるまでもなく、みずからの問題についてきちんと説明することが重要であると考えます。また、国会における証言の取り扱いについては、国会において決めるべきことでありまして、各党各会派において十分議論していただきたいと考えます。

 日歯連の献金問題についての事実解明についてでございますが、御指摘の政治団体間の資金の移動については、既に、政治資金規正法上、報告書記載義務が課され、透明性が求められているところであります。この点について、自民党としては、政治資金規正法にのっとって適正に処理することとしているところでありまして、組織ぐるみのやみ献金との指摘は当たりません。

 いずれにせよ、政治に対する国民の信頼は改革の原点であり、信頼の政治の確立を目指して政治改革に取り組んでまいります。

 政治資金規正法の改正についてでございます。

 基本的には、政治資金を広く、薄く、公正に得るとともに、その透明性を確保するための明確なルールをつくり上げる必要があると考えます。

 具体的な改正案については、現在、自民党内において議論が行われているほか、与党の公明党、さらには民主党の改正案など、さまざまな考え方があるところであり、幅広い理解が得られる内容となるように、各党各会派間でさらに議論を深めるべきものと考えます。こうした議論を踏まえつつ、政府としても必要な検討を進めてまいります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 武部勤君。

    〔武部勤君登壇〕

武部勤君 私は、自由民主党を代表いたしまして、総理の所信表明演説に対する質問を行います。(拍手)

 冒頭にまず、今回の台風二十二号を初め、今夏に相次いだ台風により亡くなられた方々に対し、謹んで哀悼の意をささげるとともに、心からお見舞いを申し上げます。与党として、政府と協力し、被害施設等の早期復旧と被災者の生活再建に万全を期してまいります。

 さて、私は、昨年の総選挙の政権公約である「小泉改革宣言」を中心に総理のお考えをお聞きしてまいります。

 かつて、二宮尊徳は、芋こじ会というものを催して、村の人々が車座になって本音で話し合う場を設けました。芋こじとは、泥のついた芋を洗うとき、おけの水の中で芋同士がぶつかり合ってきれいになることであります。本日は、本音で総理にさまざまお尋ねをいたしますので、どうか総理も本音でお答えをいただき、与党内はもとより、広く議会内、そして国民の間にも議論を起こし、日本全国で改革の芋こじをしていただきたいと存じます。

 まずは、小泉改革についてであります。

 小泉構造改革とは何か。それは、国民の自由な精神が遺憾なく発揮され、自由で活力にあふれ、伸び伸びとした経済社会の実現であり、一言で言えば、頑張る人がちゃんと幸せになれる国をつくろうということでありましょう。

 かつて、憲政の神様と言われた尾崎咢堂は、人生の本舞台は将来にありと言いました。その意味するところは、政治は常に将来を見据えていなければならないということであります。

 近年、小泉改革ほど将来を見据えて行われた改革はまれであります。小泉政権誕生前、バブル崩壊後も行われるべき構造改革が先送りされ、膨大な借金を積み上げてきました。小泉総理の就任から三年半、構造改革の成果は着実にあらわれ、我が国経済は今や政府の見通しを上回って回復しつつあります。とはいえ、郵政民営化を初めとする改革本丸はこれからであります。

 そこで、私は、日本経済が自律的な回復軌道に乗り始めた今こそ、いよいよ改革の仕上げに本腰を入れるべきときと考えるのであります。今まさに、国民の、そして民間企業の多くが望んでいる規制緩和を推進し、行政を縮小し、なおかつ、行政のサービスを向上させるときであります。

 役人はよく、規模を小さくすればサービスも縮小すると言いますが、こんなことは民間ではあり得ない話であります。民間は常に、安くてよいものを提供するために血の出る努力を重ねており、それこそが、敗戦の焼け野原から世界第二位の経済大国になった大きな要因であります。なぜ同じ人間、なぜ同じ日本人でありながら、民間にできて役人にはできないのか。それは、役人の能力が劣っているからではなく、そういう安くてよいものを出すような仕組みを私たち政治の場にいる人間がつくってこなかったからであります。

 今、小泉改革は、官にメスを入れて構造改革を行いつつあります。それは、単に行政を縮小するだけではなく、縮小しながらもサービスを向上させるという仕組みにまで盛り上げていくことが必要なのではないでしょうか。

 まずはしかし、官の規制を奪い去ることであります。

 日本経済が回復しつつあるのは、民間企業の想像を絶する努力によるものであります。ですから、その努力を無にするようなことを断じて許してはならず、さらにこの民間の勢いを持続させていくためにも、官に対する一層の改革の必要性を私は感じております。

 官とはすなわち、民に仕えるものをいうのであります。官が民間の犠牲の上に成り立つなどというおぞましい状況は、我が党は断じて許さない。そのためにも、小泉改革は何としてもやり遂げなければならないのだと考えます。改めて総理の御決意をお伺いいたします。

 次に、郵政民営化の問題であります。

 郵政民営化とは、巨大で非効率的な国営事業を民営化することで国民の負担を減らし、よりよいサービスを国民に提供するためのものであります。

 私たちは、かつての国鉄や電電公社など、民営化によってよみがえった、あるいは民営化によってサービスが向上した例をたくさん知っております。それは国民も周知の事実であります。

 郵政は、民間と類似の事業を営みながらさまざまな優遇を受け、一兆円とも言われる見えない国民負担があると言われ、さらに、その資金は特殊法人設立などに充てられ、ずさんな経営によって国民のお金が泡と消えていったのであります。預金高は民間の金融機関を大きく上回り、保険、金融、物流の巨大官製市場が日本を覆っているのであります。ですから、民営化はぜひとも強力に進めるべきであります。

 しかしながら、民営化前に民業を圧迫するような、なりふり構わぬ事業拡大が目に余ります。民間宅配業者による事業差しとめ提訴は、民営化に名をかりた民業圧迫拡大の象徴であります。

 郵政民営化につきましては、賛成派の中にむちゃな事業拡大を考える人がおり、反対派の中に本来の民営化の目的を勘違いしている方がいるという現状であります。やはりここは、郵政民営化の目的を明確にさせることが、改革推進の上で何よりも必要なことではないでしょうか。

 かつて、大平内閣時代、当時の渡辺美智雄大蔵大臣は、マスコミ、テレビに登場して、お茶の間の主婦やお年寄りに対して、例のミッチー節で売上税の必要性をとてもわかりやすく説明したものであります。

 私は、郵政民営化の目的とは、国民によりよいサービスを与え、郵政公社職員にはやりがいと新しい試みにチャレンジできる土台をつくり、国家としてはむだなお金を拠出せずに済むようにする、大きく考えればこの三点ではないかと思います。

 総理に民営化の目的と改革の決意について、また、竹中大臣には、民営化を進める上で解決すべき課題はどこにあるのか、どのような民営化像を描いているのかをわかりやすくお示しいただきたいのであります。

 一点だけ、郵政民営化は、決して郵政公社職員に問題があるから起きたのではないということをつけ加えたいと思います。悪いのはシステムであって、そこで働く人々は毎日全力を尽くしておられることを疑うものではありません。

 顧みれば、かつて郵便制度が日本に生まれたとき、その役割を各地の庄屋のしかるべき方たちが請け負ってくれました。しかるに、明治政府は、維新後わずか四年で、手品のように郵便制度をつくり上げてしまったのであります。

 以上のように、日本郵便の父、前島密は、壮大かつ緻密な構想をもって郵便制度を日本に根づかせ、新しい発想と大胆な行動力で市場を切り開いたのであります。再び前島密のような構想と実行力で、民営化後の郵政公社が堂々互角の条件のもとで民間企業と戦ってほしいと私は願うものであります。

 次に、官業の民間開放についてお伺いいたします。

 尾崎咢堂は、かつて、政治は、政府の役人だけに任せておくと、役人は自然わがままになり、人民の生命財産を勝手に処分し、人民に非常な迷惑を与えることになると述べております。官製市場はまさにその代名詞である。これを民間に開放せずして、どうして改革が進み得たと言えましょうか。

 我が党は、政権公約として、「民間からの提案に基づく競争入札等により、国と地方の行政サービスを民間に移譲する。」と国民に約束いたしました。これを受けて、政府もまた、規制改革・民間開放推進会議によって、官製市場の民間開放による民主導の経済社会実現を目指すという中間報告を出したのであります。具体的には、年金の給付や徴収、刑務所など公的施設の管理運営、車庫証明などの各種登録業務、航空管制などについて、民間開放を進めるべきであるとされております。

 官と民の競争入札という画期的な政策は、民間の合理的な手段によって硬直している官製市場に風穴をあけると同時に、官のコスト意識、サービス意識の向上につながるものであります。

 総理が示された基本方針にも官業の民間開放が盛り込まれておりますが、我が国として今後どのように官業の民間開放を進めていかれるのか、お聞かせください。

 「小泉改革宣言」は、公的機関の民営化、官業の民間開放、これに加えて、生活者重視の行政へ、行政の役割の転換もうたっています。

 行政の役割とは何か。大切なことでありますから、何度でも同じことを申し上げます。官は民に仕えるものであり、民間がいかに安心して、安全で、かつ自由に経済活動ができるか、そのことをただひたすら考え、実行する、これが官の役割であります。ゆえに、官業の過剰な民間に対する関与を削減し、規制の縮小、撤廃を進めねばなりません。と同時に、悪質な業者に対する監視もまた怠ってはならないのであります。

 「小泉改革宣言」では、このような観点から、行政の新たな役割の手段として、金融取引に関する新たな法整備や消費者保護基本法の強化、裁判外紛争処理制度創設、悪質業者に対して弱い立場にある消費者を保護するための団体訴権の立法化、発注側である官庁の罰則を強化する官製談合防止法の強化、独占禁止法及び公正取引委員会の強化など総合的な法整備を提唱しております。

 既に、さきの通常国会で消費者保護法、証券取引法、特定商取引法の改正などが行われ、独占禁止法改正案など、今国会に提出される案件も多く、制度の整備は着々と進んでおります。

 しかし、なお一歩踏み込んだ消費者保護が必要ではないでしょうか。例えば、すべての金融商品を網羅して規制する投資サービス法、悪質業者に対する団体訴訟制度などであります。

 また、今回の独禁法改正では課徴金引き上げが盛り込まれておりますが、事業発注側の意向や影響を受けやすい中小建設業者にすれば、発注側が談合に関与した場合の罰則も強化しなければバランスを欠くことになります。

 関与から監視へ、事前規制から事後チェックへという行政の役割転換に当たり、こうした制度整備についてどのように取り組まれるのか、お答えいただきたいと思います。

 次に、公務員制度の改革についてお尋ねいたします。

 「小泉改革宣言」の中で、公務員改革については幾つかの視点を打ち出しております。一つは、公務員の不作為、つまり怠慢の一掃であり、一つは、現場の士気を高めるための新たな評価方法の導入、そして天下りの制限などであります。

 国民が行政に対して抱いている不満は、行政がなすべきことをなさずに、非効率な仕事を延々と繰り返し、不正や犯罪を見逃したりしている点であります。

 年金行政、学校教育の現場や児童虐待、廃棄物処理等々、事例は多々ございます。なぜ仕事を怠るのか。それは、よいことを評価するのではなく、間違いの少ない者を評価する現在のシステムが原因であります。これでは、問題にふたをして黙っていた方がよいという風潮を生んでしまいます。公務員の不作為をなくすためにも、評価制度の見直しが必要であります。

 さらには、行政の役割転換などで新業務のために増員が必要となっても、安易に増員をせずに、仕事の電子化や外部委託を進め、浮いた人員を配置がえすることで確保すべきであります。

 私の農水相時代、消費者に軸足を置いた農林水産行政にすべく、八千人の食糧庁を廃止して、その半分を新しい消費・安全局に配転するという大改革を実行しました。今や、食の安全、安心のために、彼らは生き生きとして活躍しているのであります。

 公務員改革とは、単に非効率な行政制度を見直すことではなく、公務員がはつらつと働ける環境をつくることだと考えますが、総理の御所見を伺いたいと存じます。

 次に、補助金改革についてお伺いいたします。

 地方にできることは地方にという道州制を初めとする地方分権改革は、官から民へと並ぶ小泉改革のもう一つの柱であります。国から地方に事業事務と権限を移譲する補助金改革は、地方六団体が実に苦労に苦労を重ねてまとめていただいた改革案であります。にもかかわらず、各省は省益のみを優先し、反対するだけではなく、地方自治体に対しておどしともとれる圧力をかけている実態が明らかになりました。

 補助金改革は、総理から関係大臣に対して、地方の改革案を真摯に受けとめ、実現に向けて率先し、責任を持って全力で取り組むようにと強い指示が出されました。年内にも、税源移譲、交付税改革を含めた三位一体改革の全体像を示すとの考えも述べておられます。関係大臣は政治家としての矜持を必ずや発揮してくれるであろうと確信いたしますが、補助金改革にかける総理のリーダーシップに期待をし、改めてその御決意を伺いたいと存じます。

 最後に、各種世論調査において国民の関心が最も高い社会保障制度改革についてお伺いいたします。

 我が国は、少子化が進む一方で、社会保障関係費の当然増が毎年一兆円に達しております。抜本的な制度改革に踏み切らない限り、現役世代のみで高齢世代を支え続けることはもはや不可能であります。現役世代の負担能力を第一に考えた社会保障制度全体の再設計が求められているのは、そのためであります。

 今こそ、老後の安心とともに、子供たちの未来のために真剣な取り組みが必要であります。

 さきの国会で、与党と民主党は、社会制度改革に関する三党合意を取り交わしました。党派の立場を超え、与野党協力して将来にわたって安定した社会保障制度を構築することが、我々政治家に課せられた使命と考えます。三党合意に署名した民主党初め野党各党の諸君に、まずそのことを申し上げたいのであります。(拍手)

 しかしながら、社会保障が相互扶助であるというならば、現役世代にのみ過剰な負担を押しつけず、世代間が互いに思いやり、痛みを分かち合わなければなりません。また、現役世代のみに負担を課す定率減税より、すべての世代が公平に負担する消費税を財源の柱として考えるべきではないか。

 さらには、実態が明らかになればなるほど社会保険庁のでたらめぶりは目に余るものがあります。年金制度に対する国民の強い不満と不信感を払拭するため、業務の民間移譲を含め、社会保険庁の解体も視野に入れた抜本改革や、社会保険の個人勘定化も検討すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 さて、質問の終わりに臨み、一言申し上げます。

 三年後の二〇〇七年には、参議選、統一地方選が行われ、衆議院もまた任期満了を迎えます。私は、今や政党政治は、日本の将来と政権をかけた真剣勝負の場に立たされていると痛感いたします。

 この八月、私は衆議院調査団としてブラジルを訪問しましたが、その際にお会いした日系人の方々は、だれしもが年齢よりはるかに若々しく見え、その目は少年のように輝いていたことが印象的でありました。甲子園を沸かせた高校野球健児も、アテネ・オリンピックやパラリンピックで活躍した日本選手の皆さんも、また、サマワで人道復興支援に汗を流している自衛隊員諸君にも共通する、気迫と気概に満ちたまなざしだったように思います。それは、困難の先には希望があるという強い信念に裏打ちされたものだと考えます。

 これまで何度か引用した尾崎咢堂は、政治家はみずからの良心に従って行動すべきであると言っております。私は、総理はまさにそのことを実践されておられるのだと確信しております。なぜならば、強い反対が予測されることを率先するには、信念と、信念を支える良心が必要だからであります。

 「小泉改革宣言」は、我が党が国民に約束した政権公約であることは言うまでもありません。我が党の一員として、私も、みずからの良心に従って信念を貫きたいと思います。その信念はすなわち、改革の推進と、そのための環境づくりであります。私も、尋常ならざる決意でこの難局に臨む覚悟であります。(拍手)

 結びに当たり、この場をおかりし、総理の求める、守られる政治資金制度、透明な政治資金制度の確立を我が党はかたく国民の皆様にお約束いたします。そして、我々は、断固たる決意で総理をお支えいたします。

 小泉総理の揺るぎなき改革貫徹を確信し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 武部議員にお答えいたします。

 小泉改革実現に向けた決意についてでございます。

 小泉内閣は、構造改革なくして日本の再生と発展はないという信念のもとに、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にというこの総論賛成を、各論に向けて着実に構造改革をしてまいりましたけれども、この方針どおりこれからも続けてまいります。

 今、構造改革の芽が大きな木に成長するか否か、大事な時期を迎えていると思います。御指摘のように、改革の本丸である郵政事業の民営化、三位一体の改革を具体化するこれからが私は正念場だと心得ております。今後とも、引き続き、規制改革を含め、民間や地方のやる気を引き出す改革を断行してまいりたいと思います。

 郵政民営化の目的と決意についてでございます。

 民営化の目的は、官から民へという方針のもとに、全国津々浦々に置かれている郵便局のネットワークを生かして、良質で多様なサービスが安い料金で提供可能になり、国民の利便性を最大限に向上させる、郵政公社に対する見えない国民負担が最小化され、それによって利用可能となる資源を国民経済的な観点から活用することが可能になる、郵貯、簡保三百五十兆円の資金が民営化されることにより、特殊法人の改革とあわせて、公的部門に流れていた資金を民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる、約四十万人の公社職員が民間人となり、小さな政府の実現に資する、これらの理由を通じて、構造改革を一層前進させ、民営化が必要である。国民に大きな利益をもたらす民営化にしたいと思っております。

 郵政民営化は、このように構造改革の本丸というべき重要課題でありまして、内閣一丸となって取り組み、次期通常国会に法案を提出し、平成十九年四月から郵政公社を民営化いたします。

 官業の民間開放についてでございます。

 私は、官から民へという方針のもとに、官製市場である医療、教育等の分野で構造改革特区において株式会社の参入を可能とするなど、規制改革や官業の民間委託を推進してまいりました。これからも、官民が対等な立場で競争入札を行い、価格と質の両面ですぐれた公共サービスを実現するための手法である市場化テストの導入に向けた検討を果断に進め、官製市場の民間開放に積極的に取り組んでまいります。

 消費者保護の制度整備についてでございます。

 行政が事前規制から事後チェックへ転換する中で、消費者が安心して暮らせる社会を構築するために、消費者政策を推進することが重要であります。このため、議員御指摘のいわゆる投資サービス法の整備、消費者団体訴訟制度の導入、発注側が談合に関与した場合の罰則強化に向けた専門的検討等も含め取り組みを進めているところであり、政府としては、消費者政策を今後一層拡充強化していきたいと考えております。

 公務員制度改革でございます。

 御指摘のように、行政に対する国民の信頼を確保し、公務員が士気を高め、持てる力を最大限発揮できるようにすることが大切だと考えております。このため、与党からの申し入れも踏まえ、関係各方面の理解を得つつ、職員の能力、実績を的確に評価するための制度の整備を含め、能力本位で適材適所の人事配置を実現する人事制度を構築するなど、改革の具体化に取り組んでまいります。

 社会保障財源についてでございます。

 先般の年金改正法の審議を通じて、年金の一元化問題を含む社会保障制度全般の一体的な見直しについて議論を進めていく旨の三党合意がなされたところであります。与野党が立場を超えて早急に協議を行うことが必要であります。

 一方、政府としては、社会保障の在り方に関する懇談会を設置し、社会保障制度全般について、税、保険料の負担と給付のあり方などについて幅広く議論を現在進めております。

 こうした中で、税制のあり方については、昨年末の与党税制改正大綱を踏まえ、御指摘の個人所得課税、消費税のあり方を中心に、国民的な議論を進めていく必要があると考えております。

 年金制度に対する国民の不満と不信を払拭するため、社会保険庁の抜本改革、社会保険の個人勘定化を検討すべきではないかとのお尋ねでございます。

 民間から迎えた社会保険庁の新長官のもとで、先般、まず着手すべき六十五項目の改革メニューを掲げた緊急対応プログラムがつくられたところでありますが、今後さらに、官房長官のもとに設置した有識者会議の御意見を踏まえ、親切、迅速、正確な国民本位のサービスの実現に向けて、業務や組織の抜本的な見直しを進めてまいります。

 また、年金制度をより身近で実感できるものとするため、被保険者個々人の保険料納付実績を点数化してわかりやすく表示する仕組みを導入するなどの取り組みも進めてまいります。

 なお、社会保険の個人勘定化については、個人情報の保護の観点やシステムの整備に膨大なコストと時間を要することなどの問題があり、今後の課題であると考えております。

 補助金改革にかける私の決意でございますが、私は、地方にできることは地方にとの方針のもとに、総論賛成の議論を具体化するため、補助金、税源移譲、地方交付税、これを三位一体で改革を進めていくという方針で、今までも各大臣に指示しております。先般、私は関係大臣に、地方団体の補助金改革案を真摯に受けとめて積極的に取り組むように明確に指示したところであります。

 今後、政府が一丸となって、地方とも協議を行いつつ、今年度の一兆円に加え、来年度からの二年間に行う約三兆円の補助金、税源移譲、地方交付税等の改革の全体像を年内に決定いたしたいと思っております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 武部議員から一問、質問をいただきました。郵政民営化の課題とその具体像についてのお尋ねでございます。

 郵政民営化の実現に当たりましては、何といっても国民の御理解と御協力を得ることが最大の課題であるというふうに認識をしております。民営化の意義などにつきまして、国民の理解を深めるために、担当大臣として最大限の努力をしてまいる所存でございます。

 また、民営化の具体像についてでございますけれども、先般、郵政民営化の基本方針を閣議決定したところでございます。その中で、経営の自由度の拡大、民間とのイコールフッティングの確保、事業ごとの損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底などを中心とする枠組みを示したところであります。

 いずれにしましても、今後、経済活性化の実現や国民に対する利便性の向上に資するなど、さきの五つの基本原則や三つの指針にのっとり、透明なプロセスのもとで詳細な制度設計に努めてまいる所存でございますので、各位の活発な御議論をお願い申し上げる次第でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(中野寛成君) 鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、小泉総理の所信に対し、特に外交案件に関して質問を申し上げます。(拍手)

 現在の我が国は、国としての尊厳をいたく失っています。そして、その多くは、戦略性なき場当たり的、表面的外交によるものであります。きのうの総理の所信表明演説を伺っても、まさにその思いが強くなりました。

 冷戦中はそれでもまだよかったのでありますが、地位協定の改定をなし遂げたドイツなどとは異なり、我が国は、冷戦後の安全保障のあり方を構想することを怠ってまいりました。在日米軍の再編が現実の議論となっている今、米国から言われる前に、我が国の方からも新しい安全保障のあり方を提示すべき絶好の機会であります。

 今こそ、適切な間合いのもとで日米関係を発展させながら、台頭する中国を見据え、アジア太平洋地域に、FTAをスタートに恒久的で普遍的な経済社会協力及び集団的安全保障の制度を希求すべきであります。外交には、十年後、二十年後、そして五十年後の我が国、アジア、そして世界の姿を構想した、しっかりとした理念、戦略が必要であります。ところが、今まで小泉総理からついぞ伺ったことがありませんので、どうぞ小泉総理、ここでぜひそれを聞かせていただきたい。

 小泉総理は、週末に開催されたアジア・ヨーロッパ首脳会議、ASEMにおいて、国連安保理常任理事国入りに強い意欲を示されました。民主党は、国連改革を推進する中で、常任理事国入りを目指すべきであるとの立場を以前から明確にしています。総理は、以前はこの問題について消極的だったはずですが、国民に一切説明をすることなく、にわかに宗旨がえをしたというのは、国際社会において責任を果たすという覚悟があってのことではなく、ただ単に外務省の言いなりになったということではありませんか。(拍手)

 一方で、町村外務大臣は、常任理事国入りをするにはできれば憲法を改正しておくことが望ましいと発言をされました。今のような、米国の顔色をうかがい、つき従うばかりの外交では、何のための安保理常任理事国入りかとの思いもいたしますが、総理は町村外務大臣の発言に対して同意をされますか。イエスかノーかで簡単にお答えをください。

 さて、最も重要な二国間関係である日米関係についてお尋ねをします。

 民主党は、結党以来、日米関係を日本外交の基軸にすべきとの外交方針を持っています。しかし、そのことと、ブッシュ政権のあからさまな先制攻撃論や単独主義的な外交姿勢を支持することとは、全く異なります。健全な日米関係を維持発展させていくためには、言うべきときにはしっかりとみずからの主張を貫くという主体的な姿勢が最も大切であります。米国ばかりを気にしている小泉外交は、米国自身にも尊敬されておりません。

 イラク戦争について申し上げれば、つい先日、米国政府調査団は、イラク戦争の根拠とした大量破壊兵器は存在しなかったとする報告書をまとめました。その上、大量破壊兵器保有の証拠とされたアルミ管が実はミサイル砲弾だったとか、フセイン政権とアルカイダを結びつける証拠が怪しいことなど、ブッシュ政権内部の情報操作の一端が次々と報じられている始末であります。

 総理は、昨年春、大量破壊兵器はいずれ見つかると思う、イラク国営放送は随分うそを言っているとか、大量破壊兵器が発見されないからといってなかったと言えるのかなどと言い放ち、米国の武力行使を支持するのが妥当だと強弁されました。まさに、これらが詭弁、軽挙妄動であったことが天下に証明されたではありませんか。(拍手)

 米国による先制攻撃を正当化する根拠は、根底から崩れました。アナン国連事務総長も、国連総会における演説で、法の支配を尊重すべきと主張し、BBCのインタビューでは、イラク戦争は国連憲章に反すると明言しました。

 イラク戦争で犠牲となった民間人は一万六千人とも言われています。民主党の意見にも耳をかさず、独自の情報収集や分析もせず、不正確かつ恣意的な情報に基づいて安易に米国のイラク攻撃を支持した小泉総理の責任は、限りなく重いと断ぜざるを得ません。この問題に対して、すべての国民の皆さんに、真摯な説明を求めます。(拍手)

 このところ、原油価格がウナギ登りに高騰し、昨日は一バレル五十四ドルの最高値をつけました。我が国は他国へのエネルギー依存度が高く、イラク、さらには中東諸国などとの関係を考える上で、エネルギー安全保障の観点は欠かせません。自然エネルギーを含む代替エネルギーの研究は喫緊の課題でありますが、現実にエネルギーを今どこから調達するかは、我が国の根幹にかかわる大きな問題であります。

 しかし、ひたすら米国につき従ったイラク戦争の結果、これまで構築してきた中東諸国との関係は危うくなっているのではないでしょうか。イラク戦争に大義がなかったことが証明された今、このような観点からも総理の責任は重かつ大です。総理の責任を問います。(拍手)

 イラクではいまだ激しい戦闘やテロが続いており、小泉内閣が強行成立させたイラク特措法の前提は明らかに崩れています。したがって、民主党は、イラクへの自衛隊派遣には反対であり、いま一度、国連憲章や憲法の精神に立ち返り、イラク問題への対処方針を根本から見直すべきと考えます。

 しかしながら、総理は、この十二月に基本計画を変更し、自衛隊のイラク派遣を継続しようとの方針を固めたと報じられています。報道は事実なのでしょうか。総理の明確な答弁を求めます。

 民主党は、自衛隊の活用のみにとらわれない、官と民が協力する復興支援、例えばNGOによる職業訓練センターやイラク情報共有センター、さらには子どもの家の設置などを提唱しています。

 次に、在日米軍の再編問題について伺います。

 いわゆるトランスフォーメーションについては、総理の発言も、あるときは国内移転、またあるときは海外移転と、激しく揺れ動いています。言うまでもなく、この問題は米軍だけの問題ではなく、我が国安全保障そのものの問題であり、とりわけ司令部機能の移転などは、日米安保条約の性格にまでかかわってくる極めて重要な問題です。また、この問題には、米軍基地周辺住民や関係自治体も重大な関心を寄せています。にもかかわらず、政府から国民に対して、いまだに明確な方向が示されていません。

 私は以前から、独立国に外国の軍隊が駐留し続けることは世界の常識ではないことを再認識した上で、例えば普天間基地の国外移転を実現するとともに、海兵隊を沖縄からハワイ、グアムなどに移し、緊急派遣の際には我が国が何がしかの費用を負担するなどの方策を模索すべきであると主張してまいりました。

 しかし、政府の対応は、主体性がなく、受け身、泥縄式としか見えません。町村外務大臣は日米外相会談でこの問題を話し合ったと伺っていますが、我が国の考え方をしっかりと提示できなかったことは大変大きな問題です。常に受け身でしか考えてこなかったために、例えば陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転問題が出されると戸惑うばかりであったと伺います。

 米軍再編の方向性によっては、日米安保条約第六条の極東条項、さらには憲法を超える問題になりかねません。総理はこの問題をどう扱うつもりなのでしょうか。極めて重要な問題でありますので、明確にお話し願います。(拍手)

 総理は、ことしじゅうに新たな防衛計画の大綱を策定すると述べましたが、米軍再編に対する方針も明確でない中でしっかりとしたものができるのか、疑問を持たざるを得ません。

 先日、安全保障と防衛力に関する懇談会が報告書を取りまとめましたが、実際には国民的な議論もないままに進められるのではないでしょうか。総理の答弁を求めます。

 民主党は、在日米軍基地の約七五%が沖縄に集中し、過重な負担を県民に強いている事態を重く受けとめ、一刻も早い負担の軽減を求めてきました。その沖縄で、米軍海兵隊のヘリコプターが沖縄国際大学に墜落し、米軍当局が日本側の現場検証を容認せず、我が国の領土である大学構内を封鎖したことは極めて遺憾なことであります。(拍手)

 政府は、米国の説明で十分だとして問題にふたをしようとしています。また、小泉総理に至っては、現地にいまだ行かないばかりか、事件直後の沖縄県知事との面会にも応じず、夏休みを満喫されたようであります。なぜ、総理は現場を見ようとされないのでしょうか。

 我が国にとってこのような屈辱的な運用を許す日米地位協定は、言うまでもなく改定すべきです。例えば、米軍への警察権の行使や、政府あるいは地方自治体の立入調査のあり方は、直ちに見直すべきです。

 しかしながら、町村外務大臣も、地位協定の改定を急がずと発言されています。とんでもない話ではありませんか。そもそも、現状でも、米軍さえ同意すれば日米の合同捜査ができる仕組みになっているのであり、それが運用面でたびたびゆがめられてきたのが地位協定の歴史であります。またしても運用改善という言葉でごまかそうとするとは、冗談ではありません。こんな外交が我が国の尊厳を失わせているのであります。

 日米地位協定の改定についてどのような方針で臨まれるのか、総理から明確な説明をお願いします。(拍手)

 BSE問題でとまっている米国産牛肉の輸入再開問題が大詰めを迎えていると伺っています。先月の日米首脳会談でも、ブッシュ大統領から強い要求があったと報道されていますし、さきの日米外相会談でも、早期の輸入再開で合意したと伺っています。

 このような問題は、国民の生命に直結する非常に重要な問題であり、慎重な対応が望まれます。民主党も米国に調査団を送りましたが、米国内の対策にはまだ問題が残っており、輸入再開は時期尚早というのが結論であります。総理はなぜ大統領選までに決着をと考えておられたのですか。まさか、ブッシュ大統領の再選の方が日本国民の命より大事だったのでしょうか。(拍手)

 小泉総理が米国の顔色ばかりをうかがっている間に、中国の存在が外交上ゆるがせにできないほど重要なものとなりました。そんな中、靖国問題で日中首脳の関係が冷え切っていることは、国益を損なっていると言わざるを得ません。

 一方で、台湾の陳総統は、中国側が求めている対話再開の条件を受け入れ、東アジアの安全保障にとって建設的な姿勢を示されました。

 中国との信頼関係なしでは、北朝鮮や中台問題にも右往左往することになりかねません。また、国連安保理事会の常任理事国入りにせよ、中国や韓国などアジア周辺諸国を味方につけなければ不可能でありましょう。ASEMでも、中国の温家宝首相とは立ち話しかできなかったと伺っています。この三年間、首脳間の相互訪問が途絶えている事実を総理はどう受けとめておられるのですか。

 なお、中国との関係を考える際に、隣国であるインド及びロシアの動向が重要度を増していることは言うまでもありません。とりわけインドは、我が国が戦後国際社会に復帰する上で後押しをしていただいた大事な国であります。

 次に、日朝国交正常化問題について伺います。

 先月、二度目の日朝実務者協議が行われました。拉致事件については、かねてから疑問視されていた横田めぐみさんの情報などがわずかばかり訂正されただけであり、新たに浮上した藤田進さんなど、拉致の疑いが濃厚な事案について、全くまともな回答はありませんでした。

 一方で、食糧支援の監視員の受け入れを認めたのは、援助だけを目当てに、情報を小出しにして交渉を引き延ばしていると受けとめるほかありません。拉致被害者に関する再調査は、日朝首脳間の約束です。子供の使いではなく、実際に真実を語り、当事者能力を有する実務者が加わらなければ、次回の協議を行うべきではありません。

 総理は、平壌宣言が履行されている限り経済制裁はしないと発言をし、ほとんど進展もない中で食糧援助を約束しました。このような甘い対応が、北朝鮮側に、進展がなくとも協議が続けられている間は援助をも受けられると間違ったメッセージとして伝わって、拉致問題の解決をおくらせているのであります。この問題について総理の責任を問います。(拍手)

 こうしたことが続くのであれば、日朝国交正常化を急ぐ必要はありません。人の命を扱う問題には、時間を区切っての交渉が不可欠であります。一定の期日までに北朝鮮から誠意ある対応がない場合、経済制裁の発動や国連での協議も視野に入れるべきであります。

 与党内にも経済制裁に同調する意見が多く、町村外務大臣も経済制裁の可能性に触れていますが、総理は、ASEM閉幕後の記者会見でも、改めて経済制裁には慎重な考えを表明されました。本当にそれでよいのでしょうか。私は、何も経済制裁先にありきと申し上げているのではありません。逆に、総理の国交正常化先にありきが問題であると申し上げているのであります。(拍手)

 私は、きょう、このお昼に、特定失踪者の御家族にお会いしてまいりましたが、政府は特定失踪者問題に対して極めて不誠実な対応をしていると思わざるを得ません。ひょっとしたら、政府は、拉致被害者がどんどんふえていくことは北朝鮮との国交正常化を困難にするばかりだと、意識的に調査をおろそかにしているのじゃありませんか。だとすれば、まさに言語道断であります。もしそうではないのであれば、速やかに特定失踪者の調査を進め、拉致被害者の認定を行うべきです。総理、いかがでしょうか。

 つい先ごろ、米国議会では、核、ミサイル問題の解決のためには北朝鮮を民主化するしか方法がないとして、北朝鮮人権法案が可決されたと承知しています。政府はこれをどのようにとらえているのか、総理に伺います。

 また、私は、拉致被害者等支援担当室を拉致問題対策本部に格上げして、特定失踪者の真相究明や拉致問題の解決のための戦略を練るべきであると考えますが、いかがですか。

 さらに、北朝鮮の状況をもっと正確に把握するためにも、ファン・ジャンヨプ氏をお招きしたいとも考えておりますが、韓国政府からは、民間で呼ぶのであるならば差し支えないとの連絡がありました。総理、ぜひファン氏招聘に御協力を願います。

 次に、北朝鮮からの脱北者についてお尋ねをします。

 先日、日本大使館に逃げ込んだ脱北者の扱いは、その後どうなっているのでしょうか。また、政府は、人道的見地から、元在日朝鮮人の脱北者の再入国をひそかに助けていると聞いています。それはそれで結構なことでありますが、彼らはどのような法的地位や支援を受けているのでしょうか。脱北者の中には北朝鮮で政治迫害を受けている方もいると思いますが、難民申請がなされた場合、その扱いについても小泉総理に答弁をいただきたい。

 もう一つの拉致問題でありますシベリア抑留者問題についてお尋ねをします。

 私の祖父、一郎は、この問題の解決に力を注ぎましたが、未払い賃金問題などの問題はいまだに解決を見ておりません。関係者の方々も、もう既に御高齢になっておられます。政府・与党は、民主党の戦後強制抑留者特別給付金支給法案の成立に協力すべきであります。また同時に、サハリン残留韓国・朝鮮人問題についても、もっとしっかりとした対策を講ずるべきであります。総理から、ぜひ明確な方針を伺いたい。

 私は、五月下旬に国後、択捉を訪問いたしました。そこは、戦後間もないころの我が国を見るようでありました。民間人の中には、早く平和条約を結んで、もっと住みよい環境にしてほしいとの声も多くありました。小泉総理が最近とみに北方領土問題に熱を入れておられることについては、結構なことだと思います。しかし、問題は、相変わらずのパフォーマンスのみが先行して、来年春のプーチン大統領の来日を控えて、どんな戦略で北方領土問題を解決するつもりなのか、全く見えてこないことであります。総理にもし戦略がおありならば、具体的に御説明をいただきたい。

 プーチン大統領の最近の言動には、テロ事件の多発を契機に、国家の統制力を強化する方向が見てとれます。プーチン大統領は、ブッシュ・ドクトリンと同様に、先制攻撃も辞さずの構えを見せていますが、これは大変危険な発想になる懸念があります。我が国としても、プーチン大統領にはっきりノーのメッセージを伝えるべきだと考えますが、総理にはそのおつもりはありますか。

 次に、アフガニスタンに関連してお尋ねをいたします。

 アフガニスタンでは、初の直接選挙による大統領選挙が行われました。アフガニスタンこそテロとの闘いの原点であり、この国の行方がテロの根絶の上で極めて重要なのです。

 民主党としても、アフガニスタンへの支援には積極的に関与してきたと自負しており、今後とも、選挙監視はもちろん、新たな国づくりを積極的に支援すべきだと考えています。しかし、政府は、現地で活動するNGOの提言を受け入れず、治安悪化を理由に、選挙監視やNGO活動を抑制しようとしています。そのようなことでいいのでしょうか。総理の答弁を求めます。

 ノーベル平和賞に、ケニアで三十年間植林活動を行ってきた女性、マータイさんが選ばれたことは大変に喜ばしいことでありますが、一方で、これは、地球温暖化が世界の平和を脅かす最大の問題であることを示しています。

 地球温暖化により海水温が上昇し、台風が巨大化し、多発化すると言われています。この週末も台風の直撃に遭いましたが、台風上陸も、一九五一年以降では最高記録だそうであります。これが地球温暖化の影響だとすれば、一種の人災とも言えるのではありませんか。温暖化対策を怠れば、このような被害が年を追うごとに増大するのは必至です。

 相次ぐ台風により亡くなられた方々の御冥福を心よりお祈りを申し上げますとともに、被害に遭われた方には心からお見舞いを申し上げます。

 先日、ロシア政府が京都議定書の批准を決め、問題は一歩前進をしました。しかし、世界の温室効果ガスのおよそ五%を排出している我が国の責任は、極めて大きいと言わなければなりません。国際公約を果たすためには、二〇一〇年までに一四ポイント分削減しなければなりません。総理はどうやってこの溝を埋めるのか、具体的にお答えを願いたい。私の任期中の問題ではないと決して逃げないでいただきたい。

 また、京都議定書を実効あらしめるものにするためには、米国の批准が不可欠であります。総理は、さきの日米首脳会談において、米国にはどのような申し入れをしたのでありましょうか。総理の答弁を求めます。

 私は、ここであえて申し上げれば、たとえ京都議定書の目標を達成したところで、この程度の話では地球温暖化に十分な歯どめがかからないのではないかと大変深刻に憂慮しています。どうぞこの機会に、人類最大のテーマの一つが地球環境問題であることを皆で認識しようではありませんか。

 私は、我が国の歴代総理は、憲法を所与のものとして、日々変化する現実に対して無理につじつまを合わせようと憲法の解釈を曲げてきた面があると思っています。特に冷戦後は、そのような傾向が顕著になってまいりました。しかし、そのような無理のある解釈は、ますます憲法の条文を空洞化させ、憲法を形骸化させてきたと言わなければなりません。

 私は、我が国がみずからの役割をしっかりと果たしていく上で、憲法の条文が国際社会や国民の要請に合致しないような現実があるのならば、今こそ新しい憲法を皆でつくり出すべきではないかと考えています。そして、その新しい憲法は、まさに五十年を見据えて、我が国、アジア、そして世界の姿を構想することが望まれています。

 私は、新しい憲法においても、平和主義、すなわち、侵略行為や平和への破壊行為を否認し、そのための武力行使は永久に放棄することをうたうとともに、国連憲章五十一条に基づく制約された自衛権を明記し、さらに、国連その他の確立された国際機構が行う平和の維持と創造のための活動には積極的に協力するなど、国際協調主義をしっかりと書き入れるべきと考えています。そして、そのためにも、我が国は、アジア太平洋地域に恒久的で普遍的な経済社会協力及び集団安全保障の制度が確立されることを念願し、不断の努力を重ねることを宣言すべきであります。

 戦略性なき小泉外交に終止符を打ち、尊厳ある外交をつくり出すためには政権交代しかない、改めて政権交代こそが必要であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山議員に答弁する前に、岡田議員から再度答弁要求がございましたので、答弁いたします。

 三位一体の改革の実現に向けて各大臣等を指導する意思があるかとのお尋ねでございますが、私は、三位一体の改革については、既に関係大臣に、地方団体の補助金改革案を真摯に受けとめて積極的に取り組むように明確に指示したところであります。現在、関係大臣は、私の指示に従い、地方団体との協議など、改革の具体化に向けさまざまな検討を進めているところであります。

 橋本氏らの関係者が国民に納得できるだけの場所と内容で説明責任を果たすよう説得する意思があるかというお尋ねでございますが、この点については、橋本氏に限らず、およそ政治家たるものは、他人から言われるまでもなく、みずからの問題についてきちんと説明することが重要であると考えております。また、国会における証言等の取り扱いについては、国会において決められるべき事柄であり、各党各会派において十分議論していただきたいと考えます。

 鳩山議員に答弁いたします。

 我が国の外交に関する理念、戦略についてでございます。

 我が国の外交の目標は、何よりも我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保することにあります。この目標の実現のために、私はこれまで、その時々の国際情勢のみならず、中長期的観点に立った理念、戦略をも念頭に置き、外交を展開してきております。今後とも、日米同盟と国際協調を外交の基本として、我が国の国益の追求に最善を尽くす考えであります。

 安保理改革に関する質問でございます。

 私が国連での演説で述べたとおり、近年の国連、安保理の活動は多岐にわたり、国際の平和と安全を実現するために包括的な取り組みが必要となっております。その中で、憲法のもとで行ってきた我が国の貢献は高く評価されており、これは我が国が安保理常任理事国たるにふさわしい確固たる基盤となっていると考えております。

 常任理事国入りと憲法改正に関する御質問でございます。

 町村外務大臣は、我が国の常任理事国入りについて、現行憲法の枠内で可能であるとの認識を明確に述べたと承知しております。これは、我が国政府が一貫して表明してきている、憲法の範囲内で常任理事国としての責任を果たしたいとの立場と何ら違うところはないと考えております。

 不正確な情報に基づきイラク攻撃を支持したのではないかとのお尋ねでございます。

 我が国は、イラクが累次の国連安保理決議に違反し続け、また、国際社会が与えた平和的解決の機会を生かそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力にこたえなかったとの認識のもとで、自主的な判断に基づき武力行使を支持したのであり、御指摘は当たりません。

 イラク戦争の結果、中東諸国との関係が危うくなっているのではないかとのお尋ねでございます。

 原油輸入の九割弱を依存する中東諸国との友好関係は、我が国にとって重要であります。こうした観点から、我が国は、中東諸国とも連携を図りながらイラク復興支援を進めるとともに、中東和平問題に積極的に取り組んでおります。また、経済等各分野の関係強化に加え、中東諸国との文化交流、文明間の対話も推進し、中東諸国からも高い評価を得ていると思っております。

 自衛隊のイラク派遣についてでございます。

 イラクの復興は道半ばであり、我が国としては、我が国にふさわしい分野において引き続き復興に積極的に貢献することが重要であると考えております。自衛隊のイラク派遣の基本計画では、派遣期間が本年十二月十四日までとされておりますが、その後どうするかについては、イラク復興の状況、現地治安情勢等を総合的に検討して、適切に判断してまいりたいと考えます。

 在日米軍の兵力構成見直しについてでございます。

 政府としては、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄等地元の過重な負担の軽減を図る観点から、米側との協議を進めてまいります。

 いずれにせよ、本件見直しは、現行の日米安保条約の枠内で行われるものであり、日本国憲法との関係でも問題の生じるものではないと思っております。

 新たな防衛計画の大綱の策定についてでございます。

 我が国は、自国の安全と繁栄を確保するためにも、今後、国際社会の平和と安定のために主体的、積極的に取り組む必要があると考えております。また、既存の態勢、装備等の抜本的な見直し、効率化を図りながら、テロや大量破壊兵器の拡散などの新たな脅威への対応について着実に取り組んでいく必要があります。

 今般、安全保障や経済分野の有識者から成る安全保障と防衛力に関する懇談会における五カ月間に及ぶ議論と検討の成果を踏まえた報告書が提出されました。今後、この懇談会の提言を踏まえつつ、国会における議論や日ごろの友好国との安全保障に関する意見交換などを参考にして、新たな防衛計画の大綱を策定し、将来に向けての安全保障政策と新たな安全保障環境に対応する柔軟な防衛力を構築していきたいと考えます。

 ヘリ墜落事故についてでございます。

 今回のような事故の発生は極めて遺憾であり、事故後直ちに、米側に対して、徹底した事故原因の究明と再発防止に全力を挙げるよう求めるとともに、各省庁に対して、内閣一体となった取り組みを行うよう指示いたしました。八月二十五日には稲嶺知事と会談し、事故の状況と地元の要望について改めて詳細な説明を受けております。

 その後、日米合同委員会のもとに新たな分科委員会を設置して、事故発生時における対応について日米間の協議の仕組みを充実させるとともに、沖縄危機管理官の設置など政府一丸となった取り組みを確保する体制の整備を図っております。

 米軍海兵隊のヘリの事故及び日米地位協定についてでございます。

 政府としては、日米地位協定については、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えのもとに、運用の改善に努力しているところであります。今回の事故の際の現場での対応を検証し、問題があった点について改善を図っていくべく、日米間で話し合っているところであります。

 米国産牛肉の輸入再開問題についてでございます。

 我が国として、消費者の食の安全、安心の確保が何よりも重要と考えております。政府としては、こうした観点から、食品安全委員会や関係省庁のBSEに対する国内措置の見直しを踏まえ、米国と協議を行っていく考えであります。

 日中関係でございます。

 日中間では人的交流や経済関係が拡大しております。また、昨年の三度にわたる日中首脳会談では、胡錦濤国家主席を初め、中国側から対日関係重視の姿勢が示され、先般のASEMの際にも、温家宝総理との間で日中関係の重要性につき改めて認識を共有しております。今後とも、幅広い分野での協力を強化し、未来志向の日中関係を発展させていく考えであります。

 拉致問題についてでございます。

 拉致問題は我が国国民の生命と安全にかかわる重大問題であり、安否不明の被害者に関する真相解明は喫緊の課題であると思っております。先般の日朝実務者協議における北朝鮮側の回答は不十分であり、今後、再調査の迅速な進展とその結果の速やかな提示につき、引き続き北朝鮮側に働きかけていく考えであります。

 北朝鮮に対する経済制裁についてでございます。

 安否不明者に関する真相究明のため、対話と圧力の考えに立って、北朝鮮側から早急に具体的な情報を得るべく、そのための方策につき鋭意検討を行っております。経済制裁も可能な手段の一つではあると思っておりますが、まず経済制裁ありきというのではなく、北朝鮮側が拉致問題等につき誠意ある対応をとるよう粘り強く働きかけていきたいと考えております。

 いわゆる特定失踪者問題についてでございます。

 これまでに政府が認定している拉致被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があることから、関係省庁が所要の捜査や調査を実施しております。その結果、北朝鮮による拉致行為があったとするに足りる情報が確認された場合には、当該者を拉致被害者として認定し、北朝鮮側に対し安否確認等を求めていく考えであります。

 米国の北朝鮮人権法案についてでございます。

 この法案は、いまだ大統領の署名を得ておらず、法律として成立していないと承知しておりますが、拉致問題を含めた北朝鮮に関する人道上の諸問題に対するアメリカ議会の強い関心のあらわれであると考えております。

 拉致問題の解決のための政府の取り組みについてでございます。

 これまでも、拉致問題を日朝間の諸懸案の最優先課題と政府は位置づけ、北朝鮮に対して、事態の解決を図るよう、対話と圧力の考えに立ち、働きかけてまいりました。また、安否不明になっている方々に関する国内外での調査を進めるなど、その解決に向けて、拉致問題に関する専門幹事会を中心に全力で取り組んでおります。

 今後の取り組み体制については、拉致問題の解決に向けて政府一体となった取り組みを確保する見地から、状況を見きわめながら適切に判断してまいりたいと考えます。

 ファン・ジャンヨプ氏の招聘についてでございます。

 ファン・ジャンヨプ氏招聘については、政府として引き続き、国会等の要請を踏まえ、同氏との間で必要な連絡等を行っていく考えであります。

 北京での脱北者事案についてでございます。

 北京日本人学校に侵入した脱北者と見られる二十九名については、九月一日の事案発生以来、我が方在中国大使館に所在していました。五名については、健康上の理由から、人道的観点より、既に中国から出国しました。政府としては、残りの人々について、引き続き、中国政府に対し人道的な観点からの速やかな措置を求めていく考えであります。

 いわゆる元在日朝鮮人の脱北者による再入国及び難民申請についてでございます。

 過去に我が国に在住した経験を有する者も含め、我が国の在外公館に対して庇護を求める者が外国人である場合は、人道上の観点も踏まえ、個々の事案に係る事情を具体的に検討した上で対応してきております。なお、難民申請を行うには当該者が国内にいる必要がありますが、申請があれば、難民条約にのっとり、個別に審査の上、判断することになります。

 シベリア抑留者問題及びサハリン残留韓国人問題についてのお尋ねでございます。

 政府としては、シベリア抑留者の御労苦がなお心の痛みとして残されていると認識しており、平和祈念事業特別基金による事業を推進してきており、今後とも誠意ある対応をしてまいります。

 また、サハリン残留韓国人問題については、本件の歴史的経緯を踏まえ、人道的観点からサハリン在住者に対する支援を実施してきており、今後も種々の支援事業に取り組んでいく考えであります。

 北方領土問題についてでございます。

 明二〇〇五年は、日露修好百五十周年という歴史的に重要な節目の年であります。来年初めのプーチン大統領の訪日に向け、幅広い分野での協力を進めるとともに、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結するという一貫した方針のもとに、プーチン大統領との間で、平和条約交渉を具体的かつ実質的に前進させるべく精力的に取り組んでいく考えであります。

 ロシア関係者の先制攻撃に関する発言についてでございます。

 我が国としては、ロシアがこれまでテロとの闘いに毅然として対応してきたことを支持しております。先制攻撃についてロシア政府関係者が種々発言していることは承知しておりますが、発言の趣旨、背景等が明らかでない中で発言の一つ一つにコメントすることは控えたいと思います。ロシア側の今後の動向を注視したいと考えております。

 アフガニスタン支援における選挙監視及びNGOの活動についてでございます。

 アフガニスタンで活動する我が国NGOについては、これまでも、NGO支援無償等による支援を行うほか、同国における具体的支援や安全対策のあり方についても意見交換等を重ねてきております。今後とも、現地の治安情勢を踏まえつつ、選挙監視やNGO活動について意見交換等を継続してまいります。

 京都議定書の約束達成についてでございます。

 京都議定書の六%削減約束を確実に達成するため、本年度行う地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しの結果を踏まえ、各種の温室効果ガスの排出抑制対策、吸収源対策、京都メカニズムの活用など、必要な追加的対策、施策を講じてまいります。

 京都議定書の批准に関する米国への働きかけについてでございます。

 かねてより、日米首脳会談を初め、気候変動に関する日米ハイレベル協議などさまざまな場で、京都議定書に関する我が国の考え方を申し入れてきております。先月の国連総会の際の日米首脳会談においては時間的な制約のため京都議定書については取り上げておりませんが、その後のロシアでの進展等を踏まえ、先週の日米外務大臣会談で、京都議定書加入に向けた再検討を要請しております。

 以上でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

梶山弘志君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明十四日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(中野寛成君) 梶山弘志君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(中野寛成君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       総務大臣    麻生 太郎君

       法務大臣    南野知惠子君

       外務大臣    町村 信孝君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       文部科学大臣  中山 成彬君

       厚生労働大臣  尾辻 秀久君

       農林水産大臣  島村 宜伸君

       経済産業大臣  中川 昭一君

       国土交通大臣  北側 一雄君

       環境大臣    小池百合子君

       国務大臣    伊藤 達也君

       国務大臣    大野 功統君

       国務大臣    竹中 平蔵君

       国務大臣    棚橋 泰文君

       国務大臣    細田 博之君

       国務大臣    村上誠一郎君

       国務大臣    村田 吉隆君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 杉浦 正健君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 阪田 雅裕君


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