衆議院

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第6号 平成17年2月15日(火曜日)

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平成十七年二月十五日(火曜日)

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  平成十七年二月十五日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 谷垣財務大臣の平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに麻生総務大臣の平成十七年度地方財政計画についての発言並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

 国務大臣の発言(平成十七年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を財務大臣から求め、平成十七年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を総務大臣から求めます。財務大臣谷垣禎一君。

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) ただいま議題となりました平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 平成十七年度予算においては、歳出改革路線を堅持、強化するという方針のもと、従来にも増して、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出について三年ぶりに前年度の水準以下に抑制し、新規国債発行額についても四年ぶりに前年度より減額したところであります。一方、予算の内容については、活力ある社会経済の実現や国民の安全、安心の確保に資する分野に重点的に配分するなど、めり張りのある予算の配分を実現しました。

 しかしながら、我が国の財政収支は引き続き厳しい状況となっており、特例公債の発行等の措置を講じることが必要であります。

 本法律案は、厳しい財政事情のもと、平成十七年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置及び年金事業等の事務費に係る負担の特例に関する措置を定めるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、平成十七年度の一般会計歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができること等としております。

 第二に、平成十七年度において、国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務の執行に要する費用に係る国等の負担を抑制するため、国民年金法、国民年金特別会計法、厚生保険特別会計法及び国家公務員共済組合法の特例を設けることとしております。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、現下の経済財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、定率減税の縮減とともに、金融・証券税制、国際課税、中小企業関係税制等につき所要の措置を講ずるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、国と地方のいわゆる三位一体の改革との関係で、平成十八年度に国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要となることを展望しつつ、平成十一年以降、景気対策のための臨時異例の措置として継続されてきた定率減税について、導入時と比較した経済状況の改善を踏まえ、その規模を二分の一に縮減することとしております。

 第二に、金融・証券税制について、株式投資を促進するための環境整備の一環として、特定口座で管理されていた株式の無価値化による損失を譲渡損失とみなす特例を創設する等の措置を講ずることとしております。

 第三に、国際課税について、外国子会社合算税制を国際的な企業活動の実態により一層即したものとするとともに、国債の保有者層の拡大を図る観点からの、非居住者等が保有する国債の非課税特例を受けるための手続の簡素化等を行うこととしております。

 第四に、中小企業関係税制について、中小企業の新たな事業活動の総合的な促進に資する観点からの中小企業の支援のための税制上の措置等を講ずることとしております。

 その他、所得税の寄附金控除の限度額の引き上げ、法人税に関し民事再生等の場合の資産評価損益と欠損金の損金算入等に関する措置、検査機関等の登録等に対し登録免許税の負担を求める措置のほか、共同で現物出資をした場合の課税の特例の廃止等既存の特別措置の整理合理化を図るとともに、住宅用家屋に係る所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等期限の到来する特別措置について、その適用期限を延長するなど所要の措置を講ずることとしております。

 以上、平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 総務大臣麻生太郎君。

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 平成十七年度地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 まず、平成十七年度の地方財政計画の概要について御説明申し上げます。

 極めて厳しい地方財政の現状を踏まえ、経済財政運営と構造改革に関する基本方針などに沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことに努めております。一方、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行うこととし、安定的な財政運営に必要な地方交付税などの一般財源を確保することを基本といたしております。

 引き続き生じる財源不足につきましては、一般会計からの加算、特例地方債の発行などにより補てんすることとし、地方財政の運営に支障が生じないようにいたしております。

 さらに、三位一体の改革として行われる国庫補助負担金の一般財源化等に対応し、所得譲与税による税源移譲等の措置を講じております。

 以上の方針のもとに、平成十七年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は八十三兆七千六百八十七億円となり、前年度に比べ八千九百八十二億円、一・一%の減となっております。

 次に、地方税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、現下の経済財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、地方税制の改正を行うものであります。

 具体的には、定率減税の縮減、所得譲与税の増額、法人事業税の分割基準の見直し、非課税等特例措置の整理合理化等を行い、あわせて、国有提供施設等所在市町村助成交付金等について、所要の改正を行うことといたしております。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成十七年度分の地方交付税の総額につきましては、一般会計から交付税特別会計への繰り入れ等により、十六兆八千九百七十九億円といたしております。

 普通交付税の算定のための単位費用の改定等を行うほか、税源移譲予定特例交付金の増額、公営企業金融公庫納付金制度の延長、地方公務員共済組合の事務に要する費用に係る、地方団体の負担の特例措置の延長等を行うため、関係法律を改正することといたしております。

 以上が、地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。(拍手)

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 平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに国務大臣の発言(平成十七年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明及び発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。萩生田光一君。

    〔萩生田光一君登壇〕

萩生田光一君 自由民主党の萩生田光一です。

 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案並びに特例公債法案について、自由民主党及び公明党を代表して質問いたします。(拍手)

 質問に入る前に、お許しいただき、一言申し上げます。

 私は、地方議員を経験して、一昨年より国政に参画いたしました。

 各自治体は、閣議決定を受けた政府予算案をもとに一斉に向こう一年間の予算編成を行い、それを審議する重要な議会が第一定例会、三月議会であります。

 申し上げるまでもなく、それらの予算には国の交付金や補助金が組み込まれ、国家予算と緊密に連携したものばかりであります。

 その年の税制改正や法改正を踏まえ、少なくとも、衆議院での予算審議や答弁の議事録を日々注視しながら、いわば未確定の国家予算を前提として、不安を抱きながらもさらに審議を進めていくのが地方議会の姿であり、私も当時、なぜ国会はもっと先を走ってくれないのかといういら立ちを感じたこともたびたびありました。

 ところが、民主党を初めとする野党の一部は、総理の答弁を問題にして本会議を退席し、自分たちの要求が受け入れられないと主張して予算委員会の審議拒否を続ける。これでは、地方の時代といいながら全く地方のことを考えていないというそしりを受けても仕方ありません。(拍手)

 今、私たちに求められているのは、国民生活に密着した平成十七年度予算並びに関連法案を、議論を尽くして一日も早く成立させ、地方自治体に堂々と予算を送り、実りある議論を深めていただくことではないでしょうか。

 国会議員は、主義主張の違いがあっても、議論をするために国民に選ばれた者であり、自分たちの要求が通らないからといって審議に応じないなどというのでは、議会制民主主義を破壊する行為であり、容認することはできません。野党に猛省を促すものです。(拍手)

 それでは、質問に入ります。

 まず初めに、平成十七年度の税制に関連して、三宅島災害に関する減免についてお伺いします。

 この二月一日から、四年半に及ぶ避難生活を経て三宅島の住民の本格帰島が始まりました。この間、土石流によって我が家を失ったり、あるいは仕事場を失った島民にとっては、まさにこれからが復興への長い道のりになると思います。

 所得税については災害減免法の適用があり、資産に甚大な被害を受けた場合は一定割合での減免はなされますが、法人税については事業用資産の損失は損金算入することができることから、災害減免法の適用はされません。

 しかしながら、年度途中の災害発生であり、納付状況もさまざまであり、実際、四年半前の納付期限が延長されている企業は約七十社に上ります。すべての資産を失って大きな借財を抱えても再び立ち上がろうとする中小零細企業に対して、通り一遍の制度ではなく、国税庁長官の判断で全額を減免しても国民の理解はいただけると思います。

 東京都や三宅村は既に地方税すべての減免の検討を終了しましたし、最大の避難先である八王子市初め各自治体は引っ越しの粗大ごみの処理手数料を免除したり、家具の一時預かり等の支援策を講じております。必要なのは、ガスマスクを手にしてでもふるさとで暮らそうという国民に勇気を与えることであり、こういうときこそ助け合い、励まし合うのが日本人の心であるはずです。

 そして、三宅島のみならず新潟中越地震の被災者についても、長引く避難生活が予想される今、自然災害における地域に合った柔軟な減免対応が求められますが、谷垣財務大臣の御所見を伺います。

 次に、税制改革についてお尋ねします。

 平成十七年度税制改革においては、平成十一年度に導入され現在まで継続されている定率減税について、二分の一に縮減することとされております。

 当時の著しく停滞した経済状況に対応していわば緊急避難的に導入された本制度と政府の思い切った構造改革への取り組みは、不良債権処理と相まって一定の成果を上げてきたと評価をいたします。

 回復を実感できないという地域や分野もあるものの、経済全体として着実に回復が進んでいる今日、所得税、住民税の基本的役割の一つである財源調整機能の回復という観点からも、今回の政府案には基本的に賛成の意を表します。

 そこで、恒久的減税とされていた定率減税を今日の改正で縮減するに至ったのはどのような考え方にのっとっているのか、財務大臣にお伺いします。

 一方で時限的措置を半歩本則に戻すとはいえ、国民から見れば、所得税、住民税合わせて一兆六千五百億円の増税であることは事実です。

 平成十五年の男子給与所得者の平均年収は約五百五十万円であり、これを夫婦と子供二人のモデル世帯に当てはめ、影響額を試算すると、所得税一万五千円、住民税七千円、合計二万二千円の増税となり、家計に負担となることは否めません。

 景気回復が本物と言い切るには個人消費が活発にならなくてはならず、税負担増によるマイナス要因で、国民からは、かつての消費税率の引き上げによる景気後退と重ねて見る不安の声も上がっております。

 今回の見直しが、せっかく回復傾向にある我が国の景気の足を引っ張るようなことがあっては断じてならないと思いますが、景気腰折れの懸念について、財務大臣の所見を伺います。

 いずれにせよ、アメリカや中国のいわば外需に支えられた側面のある景気回復をより確かなものとするため、また、国民の不安を払拭するよう、この際、政府として景気に対する細心の目配りとしっかりとした経済運営のかじ取りを強く望みます。

 今回の改正は、全体として税負担が増加する内容になっておりますが、その中で、経済の活性化に向け、企業における人材育成の強化の取り組みを支援する人材投資促進税制が創設されることとなっております。

 コスト削減や利潤第一主義に走り過ぎてしまった国内企業にとっても、改めて社員を育成する環境を整えるよい機会であり、将来の日本経済を見据えた際には、人という資源が一つのかぎになるため、極めて意味のある措置と言えます。

 そこで、この措置は今後どのような効果を上げていくと考えているのか、財務大臣並びに中川経済産業大臣にお伺いいたします。

 次に、平成十七年度特例公債法案に関連してお尋ねいたします。

 我が国の財政は、平成十七年度末の公債残高が五百三十八兆円程度に達する見込みであるなど、引き続き非常に厳しい状況にあります。

 このような状況の中、来年度予算においては歳出改革路線を堅持、強化するとの方針のもと、従来にも増して徹底した見直しが行われ、歳出の抑制と所管を越えた予算配分の重点化、効率化が断行されたと承知しております。

 同時に、国と地方のあり方を根本的に見直し、合併特例法も後押しして、三年前には約三千二百あった市町村の数は、来年度当初には約二千四百までに減り、二年後には約二千前後になる見込みと聞きます。

 合併による財政的効果があらわれるのは数年先と思われますが、地方にできることは地方にという総理の基本姿勢によって、政府・与党が一体となって国、地方の財政のあり方を見直した三位一体改革を初めとする各種制度改革への取り組みとあわせて、本格的な地方分権時代への幕あけを迎えた平成十七年度予算の特色について、小泉総理の御認識をお伺いします。

 次いで、歳入の確保と財政健全化への道筋についてお伺いします。

 他の主要先進国を見渡しても、我が国ほど巨額の借金を背負っている国はございません。こうした中で国民の安心を確保するためには、持続可能な財政を構築することが喫緊の課題であることは言うまでもありません。

 政府は、二〇一〇年代初頭にはプライマリーバランスを黒字化させるとの目標を掲げているわけでありますが、足元を見ますと、十六年度の国、地方合わせたプライマリーバランスの赤字額は、昨年と比べ若干改善が見られるものの、対GDP比で四・四%にも上っております。

 財政健全化に向けた道筋はなおも厳しいと考えられますが、小泉総理は今後どのように財政構造改革の実現に取り組んでいくのか、その決意をお聞かせ願います。

 また、持続可能な社会保障制度を構築していくためには、あわせて、安定した歳入の確保は不可欠です。総理は任期中の消費税の引き上げはしないと繰り返し発言しておりますが、引き上げはしなくとも、議論は避けられないものと考えます。

 そこで、改めて、消費税の引き上げについて総理はどのように考えているのか、お聞かせ願います。

 最後に、国債管理政策についてお伺いします。

 平成十七年度予算におきましては、四年ぶりに新規国債発行額の減額がなされておりますが、特例公債を含め、なお三十四兆円を超える新規財源債の発行が見込まれております。現実問題として財源が足りない以上、やむを得ざる措置ではありますが、平成十七年度の国債発行額は、借換債なども含め約百七十兆円という相当な額に上ると見込まれています。したがって、こうした国債残高の累増に対処し、円滑に国債を消化するためには、財政構造改革の推進により国債に対する信認を確保していくことはもちろん、国債管理政策を適切に運営していくこともますます重要になってくるものと考えます。

 そこで、国債管理政策に対する基本的な考え方と今後の取り組みについて、財務大臣にお伺いします。

 いずれにせよ、十七年度特例公債法及び所得税法等改正法は重要な歳入法案であり、十七年度予算と一体不可分のものとして、我が国経済のため速やかに成立することが必要であることを強調して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 萩生田議員にお答えいたします。

 十七年度予算の特色でございますが、一般歳出を三年ぶりに前年度以下に抑制し、新規国債発行額を四年ぶりに減額するなど、財政規律堅持の姿勢を明確にするとともに、増額するのは社会保障と科学技術振興の分野のみ、公共事業関係は四年連続、防衛費は三年連続マイナスとするなど、めり張りのある予算編成を行うことができたと考えております。

 特に、三位一体の改革については、地方の提案を真摯に受けとめた上で、十七年度は一兆七千億円余の補助金の廃止・縮減等を行い、一兆一千億円余の税源を移譲するとともに必要な地方交付税を確保するなど、国から地方への改革をより一層具体化したものとなったと考えております。

 財政健全化についてですが、政府としては、二〇一〇年代初頭には政策的支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えることを目指し、引き続き歳出歳入の両面から財政構造改革を強力に推進することとしております。厳しい環境ではありますが、必要な政策努力を続ければこの目標の達成が視野に入ってくることは、内閣府の試算においてお示ししているところでございます。

 具体的には、二〇〇六年度までの間、政府の大きさが二〇〇二年度の水準を上回らない程度とすることを目指し、国、地方が歩調を合わせて歳出改革路線を堅持、強化する。二〇〇六年度までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見きわめ、また経済活性化の進展状況及び財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する。二〇〇七年度以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うと同時に、民間需要主導の持続的成長を実現する。二〇〇七年度以降の財政収支改善努力に係る歳入歳出を一体とした改革の検討に着手し、二〇〇六年度内にその結論を得ることとしており、こうした財政健全化の取り組みの中で国民から広く理解を得られるよう努力してまいります。

 消費税でございますけれども、私は、従来から、在任中に消費税を引き上げる考えはないと明言しております。しかしながら、税制全体のあり方として消費税の議論は大いに結構であると申し上げてきております。

 少子高齢化が進展する中、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合い、社会保障等の公的サービスを安定的に支える歳入構造を構築する上で、消費税は重要な税であり、今後、税制全体のあり方を幅広く検討していく一環として、消費税についても国民的な議論を深めていく必要があると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 萩生田議員にお答えいたします。

 まず、三宅島等の被災地域についての税の減免についてお尋ねがございました。

 被災地域の円滑な復興を支援するため、さまざまな政策対応がなされておりますが、税制については、所得税について災害減免法の適用がございますほか、申告等や納税の期限の延長措置が設けられております。また、法人税法上、被災して事業の用に供することができなくなった事業用資産に係る損失については損金算入することができますし、さらには、中小企業者が新規に設備投資を行う場合にさまざまな特例措置が設けられております。

 こういった措置の活用によって、被災地域における中小企業の事業活動の再開が円滑になされることを期待しております。

 次に、定率減税の縮減に関する考え方についてのお尋ねがありました。

 定率減税は、平成十一年以降、著しく停滞した経済活動の回復に資するため、個人所得課税の抜本的見直しまでの間の特例措置として継続されてきたものでありますが、今回の見直しは、導入時と比較した経済状況の改善や、三位一体の改革との関係で、平成十八年度に国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要になることを踏まえまして、その規模を二分の一に縮減するものであります。

 それから、定率減税の見直しと景気との関係についてのお尋ねがありました。

 今回の定率減税の見直しに当たっては、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮したところでございます。定率減税の縮減を含めた今般の税制改正による平成十七年度の増収額は千七百億円弱にとどまることから、景気に対する影響は大きなものではないと認識しております。また、制度改正が経済に与える影響については、負担増のみを取り上げて議論するのではなく、歳入歳出両面での措置の影響を政策全体の中で総合的に考える必要があります。

 こういうさまざまな要因を加味した上で策定した平成十七年度政府経済見通しにおいては、今後とも、消費が着実に増加することによって、引き続き民間需要中心の緩やかな回復を続けると見込んでいるところでございまして、景気腰折れの懸念は当たらないものと考えております。

 それから、人材投資減税の効果についてのお尋ねがございました。

 基本方針二〇〇四において人間力の強化が重点課題とされ、民間企業においても人材育成の積極的な取り組みが行われる中で、これを支援する観点から、教育訓練費が増加した場合に一定割合を法人税額から控除する制度を創設することとしております。この措置の有効活用によって企業の人材育成の取り組みが強化され、経済の活性化につながることを期待しております。

 それから、最後に、国債の大量発行下における国債管理政策についてお尋ねいただきました。

 今後とも大量の国債発行が見込まれる中でございますので、まず大事なことは、財政構造を改革していくことの推進によりまして、国債に対する信認を確保するということでございます。その上で、中長期的な調達コストを抑制して確実かつ円滑な消化を図るために、市場のニーズや動向等を十分に踏まえて国債発行を行うこと等、これが国債管理政策の基本であるというふうに考えております。

 平成十七年度におきましても、適切な国債発行計画をつくったほか、商品性、保有者層の多様化を図る観点から、個人向け国債について、固定金利型の新商品を導入する予定であります。

 今後とも、国債管理政策の適切な運営に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 人材投資促進税制についてのお尋ねでございます。

 萩生田議員の御指摘のとおり、人こそが我が国経済発展を支える最大のかぎだと考えておりますけれども、九〇年代以降の厳しい経済状況のもと、我が国企業の人材投資は約一千億円も減少しております。二〇〇七年以降の団塊世代の定年到達などが見込まれる中、企業の戦略的な人材育成を強力に後押しすることが不可欠となっております。

 このため、人材投資促進税制の創設を要望し、来年度税制改正に盛り込まれたところであります。本税制は、人材育成に積極的に取り組む企業を対象にしており、特に中小企業に対し手厚く措置するものであります。本税制により、企業の従業員に対する教育訓練が積極的に拡大強化され、質の高い人材によって、より高い生産性と産業競争力が実現されるものと考えております。(拍手)

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議長(河野洋平君) 中川正春君。

    〔中川正春君登壇〕

中川正春君 中川正春です。

 民主党・無所属クラブを代表して、質問をしていきたいというふうに思います。(拍手)

 まず、質問に入る前に、先ほど、今回の国会の混乱についてのコメントがありました。これは、問題をごまかしてはだめだと思うのです。本来の、今回の国会の混乱については、すべて自民党に責任があります。(拍手)

 橋本元総理は、国民に対して説明をする責任があるんです。それに対して、国会は調査権を持っております。そのみずからの調査権を自民党国対が否定をしていくような今回のこの運営については、猛省を促したい。私たちは断固闘っていくことを改めて表明をしていきたいというふうに思います。(拍手)

 特に、今回は、税制改革という観点から質問をしていきたいというふうに思います。

 最初に、税制の基本的な見直しを前提とする今国会の重要課題について、総理並びに関係大臣にお尋ねをしていきます。

 まず、三位一体であります。

 去年から続いているこの問題に対しての混乱、これも、改めて言えば、小泉総理が無責任な問題提起をしたということにあります。国の形を変えていくような大きな改革については、第一に、関係する地方自治体に対して最終的にどのような財政基盤を保障するのかということを示すこと、これが大事です。ここをはっきりさせなければ、改革に対する不安のみが先行して、皆が削られる、この問題を削られるというときに、腹がしっかりせずに迷い込んでしまうということになるわけであります。

 今回の小泉政権による三位一体論は、このプロセスとは全く逆になっておりまして、まず、国の補助金や負担金を削ることから議論を始めております。削られることだけがはっきりしていて、後にそれがどのような形で個別の自治体に財源保障されるのか、これが提示されなければ、関係者は慌て、個別案に反対することで右往左往してしまう、これは目に見えているわけです。

 具体的に質問をします。

 国の基幹税のうち、所得税、消費税、そして法人税の何割をどのような形で地方税に移譲するのですか。さらに、今回の暫定的な所得譲与税による財政補てんは地方の格差を広げるということもあります。地方交付税に頼っていない東京のような自治体のひとり勝ちになってしまうわけであります。東京などの自主財源の大きい自治体から財源を確保して地方に調整資金として分配をするような、地方交付税にかわる仕組みをつくることが急務だと認識しますが、見解をお伺いしていきます。

 次に、年金改革の問題があります。

 去年の参議院選挙で国民が最も注目した年金の問題の争点は、はっきりしておりました。年金のシステムそのものを根本的に見直すべきか、それとも、現在の仕組みをそのままに、保険料を引き上げて給付を引き下げるということでいいのか、こういう二者択一の問題であったわけであります。国民は、問題の本質をここでとらえました。その不安と不公平を解消するために、年金の一元化という手法を中心に、現在の年金システムを持続可能な新しい制度にシステムとして大改革をしていくべきだ、こういう結論を出したわけであります。

 私たち民主党は、所得比例による保険料と、消費税を財源とした最低保障年金の組み合わせによって公的年金を一元化する新しいシステム改革案を出しております。政府・与党は、なぜ、小泉総理自体も同意をしている一元化を前提としたシステム改革案をここに出してこないのでしょうか。

 こうした議論が何回も繰り返されてきたわけでありますが、それにもかかわらず、具体的な提案がないことの原因は、ただ一つ。小泉総理、あなたが、自分の任期の間は消費税を上げることはしないと早々に宣言をし、消費税に関するトータルな議論を封印してしまったということにあります。

 政治決断を怠り、官僚の内向きの議論だけで年金問題を解決しようとすれば、お金が足りないから保険料を引き上げて給付を引き下げよう、そういう結論にならざるを得ないのであります。その結果、年金システムの破綻は早められ、国民の将来不安はますます大きなものになっていきます。

 総理、この際、消費税の将来あるべき姿も含めて年金のトータルなシステム改革プランを政府から提示させること、これを改めて求めます。(拍手)

 以上の問題を指摘した上で、今議題となっております所得税の定率減税縮減の問題について質問をいたします。

 まず、この問題について、私たち民主党は、明確に反対を主張していきます。

 理由は、三つあります。

 第一に、五年前にこの減税が実施された趣旨は、六兆円の恒久減税であります。故小渕総理のもとで時の自民党政権が打ち出した政策が、所得税を構造的に下げようという意図で恒久減税という、この表現が使われました。だから、定率減税だけでなく、高額所得者の最高税率も同時にあのときに引き下げられているのであります。

 今、それを戻すとすれば、ここで所得税の基本的な構造問題が説明をされなければなりません。さらに、このときに同時に実施された高額所得者の最高税率についても戻すのかどうか、改めて議論をされる必要があります。そのことがなければ、今回の定率減税廃止は、金持ちの減税はそのままで、サラリーマンを中心とする中低所得者層をねらい撃ちにしている増税にほかなりません。これでは、金が足りないからと取りやすいところから取るだけの話であります。小泉総理、この矛盾をどのように説明されますか。

 第二に、今回の増税議論の背景になっている景気の持ち直しについて、政府の判断は間違っているのであります。

 社会保険料の引き上げや所得税控除の減少で勤労者の可処分所得は既に減少している、そのところに今回の定率減税がさらなる追い打ちをかけています。さらに、東京で感じる景況感と疲弊した地方において感じる景気の状況、これは基本的に大きな開きがあります。また、国際的なマーケットを相手にリスク分散できる大企業と、国内の構造的な変化に適応しかねて立ち往生している中小企業とでは、景気に対する見方が百八十度違います。言いかえれば、小泉政権がつくり出した日本社会の亀裂、勝ち組と負け組の開きが、いまださまざまな社会の矛盾を生みながら、その差を大きくしている状況が続いていると言えるのであります。

 そこに増税を強いれば、景気と社会矛盾はさらに大きくなり、そして、与党税制大綱にも、景気動向を注視し、見直しを含めて機動的、弾力的に対応するとありますが、その社会矛盾に対して危機感を持って即刻見直して、この増税を中止すべきだと主張していきたいと思います。(拍手)

 第三には、増税をする前に、歳出の削減をして、むだ遣いを徹底してなくすということが国民の意思であります。

 国民に税の負担を求めるときに、その前提となるのは、政治、行政への信頼であります。税のむだ遣いが本当に解消されるのか、国民は厳しい目で審判を下そうとしています。民主党が今回発表した独自の予算案では、基礎年金の国庫負担分は増税で賄うのではなく、公共事業を中心とした他の歳出予算の削減から捻出することをまず出発の第一歩だと主張しております。最初から増税では、国民の理解は得られるはずがありません。

 現に、会計検査院から指摘された去年の税のむだ遣いは、その額が過去二十年間で最高のものとなっております。特別会計にどうしてメスを入れないのですか。独立行政法人は焼け太り。政府予算の中では、従来の大型公共事業が大手を振って復活してきております。総理はどのように国民に説明するおつもりなのか、答弁を求めます。(拍手)

 定率減税について、最後に指摘をしておきます。

 これほどに国民生活に大きな影響を及ぼす法案を、今回のように他の税制改正案と一括にして、日切れ法案として厳しい時間的制約の中で審議を求めるのは、国会が国民に対して十分な審議を尽くすという意味で責任を果たしていないと思うのであります。私たちは、この定率減税の縮減については、他の所得税法等の改正項目から独立をさせた独自の審査を求めます。(拍手)

 この際、所得税について全体の議論をしておきたいというふうに思います。

 民主党は、来年度の予算編成の中で、少子化対策と国民の新しいライフスタイルへの適合を目的として、所得税の諸控除につき根本的な構造改革をすることを提案しております。具体的には、配偶者控除、特別配偶者控除、そして扶養控除の廃止をして、そこからの財源である三・六兆円を、子供一人当たり平均一万六千円、これを中学校卒業時まで各家庭に支給するという内容であります。

 もう一方で、家族単位の税制が働く意思を持った女性の社会進出を阻害してきたという問題があります。これを、個人を中心にした所得税の構造にしていくことで、私たちは、日本社会全体の活性化を図ろうとしております。

 同時に、私たち民主党は、資産投資に対する損益通算も前提にして、流動性所得と合算した形での総合所得課税化に向かって大改革を提唱しているのであります。前提となる納税番号も、個人情報の管理に配慮し、税の目的だけに限った形で早期に導入をすべきだということを主張してまいりました。

 今回のように、政府が小手先の所得税改革を続ける限り、現実の社会構造からかけ離れてしまって、税制度の矛盾はますます大きなものになっていくだけであります。

 改めて財務大臣に聞きます。本来の所得税のあるべき改革の姿について、政府にビジョンがあれば、それをここで説明してもらいたい。同時に、来年度の日程も含めて、具体的な改革案の国会への上程スケジュールについてもお答えをいただきたいというふうに思います。

 最後に、NPO税制について触れておきたいと思います。

 現在、日本では、約二万に上る認証を受けたNPOが活発に活動しているにもかかわらず、寄附金が所得控除の対象になる認定NPOの数は、何と全国で二十六団体であります。この惨たんたる結果は、法律の成立過程で私たちが何回も指摘をしてきたとおり、税金を取り立てる側の税務署、国税庁がNPOに対して認定権限を持っていることが問題なのであります。早急に認定機能を第三者機関に移すべきだと思いますが、財務大臣の見解を聞かせていただきたい。

 また、アメリカでは申請団体の約八割が認定NPOとして認められているようでありますが、日本では最終的には何割くらいの認定目標を設定するのか、これも同時に答えていただきたいと思います。(拍手)

 十年前の阪神・淡路大震災以来、大規模災害が各地で続発してきましたが、今では、各種NPOやボランティアの活動なしには到底その困難を乗り切れないほどに、日本の社会は大きく協働の世界に依存をしております。それだけに、我が党は、せめて最近の新潟やスマトラ沖等における大規模災害を国で認定し、その範囲の中で、貢献をするNPO団体に対してもたらされた義援金や寄附金を寄附者が所得控除できる道を広くつくっていこうという特別措置法を準備しております。これには、ぜひ与党の皆さんにも……

議長(河野洋平君) 中川正春君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

中川正春君(続) ともに賛同してもらいたいわけでありますが、政府の所見も同時にお聞かせいただきたい。

 最後に、一つ御提案をしておきます。

 小泉政治の国民攪乱戦術が、ここ数年の総理の不敵な笑いの中に見えてきました。問題の本質を議論することからは逃げて、にせものの争点と利害関係者のいがみ合いを演出する。国民にとっては、大山鳴動すれどネズミ一匹であります。不安とフラストレーションが増幅されるだけで、基本的な問題は大きく先送りをする。このままでは、私たちの生活が危ない、日本が浮かばれない。こうした国民の危機感は、必ず政権交代へのうねりとなって、小泉政権だけではなく与党全体を押しつぶしていって広がっていくと私は確信をしております。

 このことを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 中川議員にお答えいたします。

 地方への税源移譲でございますが、三位一体改革については、今年度の一兆円に加え、来年度から二年間で三兆円程度の補助金を改革し、平成十六年度に措置した額を含めておおむね三兆円規模の税源移譲を目指します。

 この税源移譲は、平成十八年度税制改正において、所得税から個人住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施いたします。

 財政力格差の調整でございますが、個人住民税の税率をフラット化することや税源帰属の適正化を目的とする法人事業税の分割基準の見直しなどにより、税源分布の偏りを緩和することが可能であります。これらと地方交付税の財政調整機能とによって、財政力格差にも対応できるものと考えます。

 消費税と年金制度改革でございますが、さきの年金改正により、長期的な給付と負担の均衡を確保し、持続可能な年金制度に見直すことができたと考えておりますが、なお、今後の産業構造、雇用構造の動向に十分対応できるのか、また、年金の一元化を目指すべきではないかとの議論もあるところであります。

 さらに、二〇〇七年から人口減少社会を迎え、少子高齢化が進展する中で、年金を初めとする社会保障制度を持続可能なものとしていくことは、これからの我が国社会のあり方にかかわる極めて重要な政治課題でもあります。

 このため、年金制度だけではなく、医療、介護などを含めた社会保障制度全体について、税や保険料等の負担と給付のあり方を含め、一体的な見直しを行う中で、これらの問題についても検討していくことが必要であると考えます。

 消費税に関する議論を封印している、また、年金のトータルなシステム改革プランを政府から提示するべきとの御指摘であります。

 私としては、社会保障制度の一体的な見直しを行う際には、消費税の活用ということも当然検討の対象になるものと考えておりますが、消費税を年金のみに充てるのか、他の社会保障の財源との関係でどうするかとの議論も必要であると申し上げてきたところであります。

 この点も含め、年金制度を初めとした社会保障制度の論議については、政府のみならず、与野党が立場を超えて国民的立場から取り組むことが政治の責任であり、与野党間で早急に真摯な議論を開始していただきたいと考えております。

 定率減税と所得税の最高税率についてでございます。

 定率減税の実施時に、当時の小渕総理は恒久的減税という言葉を使われましたが、これは未来永劫改正しないということではなく、一年限りでなく期限を定めないという趣旨であると承知しております。定率減税については、三位一体の改革との関係で、平成十八年度に国、地方を通ずる個人所得課税の抜本的見直しが必要になること等を踏まえ、十七年度においてはその規模を二分の一に縮減するものであります。

 他方、個人所得課税の最高税率の引き下げは、税制調査会の答申で指摘されているように、税制の抜本的改革の一部先取りとして実施されたものであり、定率減税とは位置づけが異なるものと考えております。

 景気と定率減税の関係でございますが、現在の経済状況については、定率減税の導入時と異なり、産業再生や不良債権処理などの構造改革の進展により経済の体質強化が実現されつつあり、今後についても引き続き民需中心の緩やかな回復を続けると見込んでいるところであります。また、定率減税の縮減を含めた今般の税制改正による平成十七年度の増収額は一千七百億円弱にとどまることを勘案すると、景気に対する影響は大きなものではないと考えております。

 税の負担を国民に求める前提として厳しい歳出削減をすべきとのお尋ねでございます。

 私は、増税よりも歳出削減が先との考えに立って、歳出改革路線の堅持、強化に取り組んできたところであります。平成十七年度予算においても、三年ぶりに一般歳出を前年度以下に抑制したところであります。こうした中、公共事業予算については、全体として三・六%削減し、個別事業についても、削減した公共事業予算の枠内で事業の効果等について厳密に検証した上で計上したものであります。

 また、特別会計についても、産業投資特別会計を初め、廃止を含めた事務事業の見直しを徹底的に進めております。さらに、独立行政法人についても、三十二法人を二十二法人に再編するなど、従来の事業をゼロベースから徹底的に見直しております。

 いずれにせよ、今後とも聖域なき歳出改革を行っていくことは当然でありますが、少子高齢化の進展に伴い社会保障給付費の増大などが見込まれることから、歳出面のみならず歳入面も含めた両面からの財政構造改革を推進していく必要があるのではないかと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 中川議員にお答えいたします。

 あるべき所得税改革という御議論がございました。

 個人所得課税については、財源調達であるとか、あるいは所得再分配という機能を回復していくことが大事であります。それと同時に、経済社会の構造変化に対応して、広く公平に負担を分かち合う制度としていくということも大事な課題でございます。こういう観点から、近年、あるべき税制の構築に向けまして、配偶者特別控除、それから年金税制、金融所得課税といった見直しを着実に行ってきたところであります。

 それから、三位一体の改革との関係で、国、地方を通ずる個人所得課税についての改革が迫ってきておりますが、まず、個人住民税については、応益性の観点から所得割の税率のフラット化、それから所得税につきましては、所得再分配機能を適切に発揮すべく税率構造等を見直す、こういう方向で役割分担を明確化していくという基本方針を既に明示しておりまして、十八年度改正で実現を図るべく具体的検討を進めてまいります。

 それから、NPOの税制でございますが、寄附金優遇の対象となりますNPO法人を認定する機関については、国税に関する支援措置について全国一律の基準で適用するものでございますので、行政改革の流れや諸外国における実態等を踏まえまして、客観、明確な要件を設けた上で、国税庁長官の認定としているところであります。

 認定NPO法人の比率の目標設定については、多様なNPO法人がある中で、税制上の優遇措置の対象とするにふさわしい法人であることを担保していくために一定の認定要件を定めておりますが、あらかじめNPO法人の一定割合を認定NPO法人とするという目標を定めることは適当ではないと考えております。

 民主党が準備されている特別措置法については、その詳細を承知しておりませんので所見を申し述べることは差し控えたいと思いますが、NPO税制を含む寄附金税制については各種優遇措置が設けられておりまして、近年の税制改正においてその拡充を図ってきたところでございます。これらの措置がより一層活用されることを期待するところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 平岡秀夫君。

    〔平岡秀夫君登壇〕

平岡秀夫君 民主党の平岡秀夫でございます。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました平成十七年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案など四法案について質問を申し上げます。(拍手)

 総理の答弁いかんによりましては再質問することがあることをあらかじめ申し上げておきます。

 まず最初に、特例公債の発行を含む財政問題について伺います。

 総理は、就任当初、国債発行三十兆円を掲げましたけれども、結果として、みずからを世界一の借金王と称した小渕総理をはるかに上回るペースで国債発行を決めています。現在までのところ、百四十四兆円の国債発行を決定しています。国債残高も平成十六年度末までの三年間で八十五兆円増加しており、この額は国家予算の丸々一年分に相当する金額となっています。

 総理は、税収の落ち込みは前任者の責任で、消費税率の引き上げは後任者の仕事であるとでも言いたいのかもしれませんけれども、これだけの巨額の借金を負うに至った責任をどのように認識しておられるのか、その所感をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)

 総理、平成十七年度予算は財政の健全化に向かっているのでしょうか。総理は、平成十七年度予算について、施政方針演説の中で、「新規国債発行額を四年ぶりに減額しました。」と得意げに述べておられました。しかし、財政収支の収支じりを賄う特例公債の発行額は、平成十六年度補正予算後の二十七兆九千億円よりも、平成十七年度予算では二十八兆二千億円とむしろ増加しているのであります。これは、財政は健全化しているどころか、むしろ悪化しているではないかと考えられますけれども、総理の見解を伺います。(拍手)

 平成十七年度予算は、一つのターニングポイントとなっています。それは、異常とも言える低金利の恩恵で、平成七年度以降低下傾向にあった国債の利払い費比率が上昇に転じているからです。

 この十年間、国債残高の増大により元本償還額は増加してきましたけれども、利払い費が低下傾向にあったため、国債費はほぼ横ばいでありました。しかし、今後は、残高増による元本償還費の増に利払い費の増が加わり、急激に国債費が増加していきかねません。まさに財政破綻が現実化するポイントに差しかかっていると考えますが、総理の認識はいかがでしょうか。

 総理は、国債発行三十兆円の公約を事実上破棄して以来、二〇一〇年代初頭に基礎的財政収支黒字化を目指すと繰り返していますけれども、総理自身からは一向にその具体策の説明がございません。一方で、内閣府が二〇一〇年代前半に基礎的財政収支黒字化の試算を示すと、総理はこれを、内閣府が勝手に行っているもので、政府の目標や公約ではないとしています。これでは国民が戸惑うばかりです。

 内閣府の試算に総理が責任を負わないのであれば、この試算に一体何の意味があるのでしょうか。また、総理自身は、一体どのようにして財政健全化を進めていこうとされるのか、具体的に国民に説明していただきたいと思います。(拍手)

 総理は、自分の在任中は消費税率を引き上げないと言い続けておられます。そのことの意味について、総理は、まず歳出の徹底的な見直し、行政改革への徹底的な取り組みを行うとしていますけれども、実際には、総理が就任して以来、雇用保険料の引き上げ、医療保険負担増、配偶者特別控除の縮減、年金保険料引き上げなど、さまざまな形での負担増が決められております。その額は、今年中に実施されるものを含めれば、合計四兆八千億円にも達します。総理が消費税率を引き上げないと言うことの意味は、消費税以外の負担は何でも引き上げていくということなのか、総理にお伺いいたします。

 総理は、「改革と展望」の参考試算において前提として示されている平成二十年度以降の消費税の増税について、特定の政策意図に基づくものではないと説明しておられます。しかしながら、二〇一〇年代初頭に基礎的財政収支を黒字化する道筋を示す参考資料である以上、何らかの特定の政策意図を感じざるを得ません。もし、総理の説明どおりとするならば、別の前提に立った他の試算も国民にしっかりと示すべきではないでしょうか。総理の見解をお伺いいたします。(拍手)

 次に、民主党予算案について伺います。

 今月一日、民主党は、平成十七年度予算案を記者発表いたしています。もとより、国の予算案は、法律案と違って、憲法上政府しか提出できませんので、民主党予算案については国会に提出されて審議されることはありませんけれども、民主党が主張している政策を予算であらわしたものとして、政府案と比較してみていただきたいと思います。

 民主党予算案の重点項目は、子ども・子育て、教育、地方の活性化、財政健全化でありますけれども、そのうち以下の二点について、総理の見解を伺いたいと思います。

 まず、子ども・子育て予算についてです。

 主なものは、第一に、子ども手当の創設です。義務教育終了時までのすべての子供一人に対して、月額一万六千円の子ども手当を支給します。その財源としては、歳出の削減に加えて、所得税の扶養控除や配偶者控除を廃止することによる税の増収一・九兆円を充てることとしています。

 第二に、出産時助成金の創設です。現在の健康保険給付である出産一時金に加え、出生児一人当たり二十万円の助成金を給付し、出産時の負担軽減をします。

 第三に、学童保育の拡充です。学童保育実施箇所を現行の一万四千カ所から二万カ所にふやしてまいります。

 その他もろもろ含め、子ども・子育てに関する予算は、政府案が一・一兆円であるのに対し、民主党案では、その四・二倍の四・五兆円となっております。

 このように、子ども・子育てに重点的な予算配分を行っていくことについて、総理としてどのようにお考えになるでしょうか。

 次に、地方の活性化予算についてです。

 基本的な考え方は、地方が自由に使えるお金をふやすため、税財源を大胆に国から地方に移譲し、地方の自己決定能力を高めることによって地方の活性化を実現しようというものであります。先ほど、萩生田議員の冒頭の発言は、地方をあくまでも国に従属させるということを前提にしたものであって、私たちのこの考え方とは相入れないものがあります。

 政府案では、数年度間で三兆円の補助金削減と二・四兆円あるいは三兆円の税財源の移譲という規模にとどまっていますけれども、民主党予算案では、政府予算案の補助金のうち生活保護費等を除いた十六・八兆円と税源移譲対象分としての一・八兆円、合計十八・六兆円を改革の対象としております。

 具体的には、この十八・六兆円のうち公共事業関係補助金四・五兆円とその他の歳出削減分一兆円と合わせて、五・五兆円を地方に税源移譲し、改革対象となる残りの十四・一兆円については、十二・五兆円を政策分野別に使途自由な一括交付金として地方に交付することとしています。

 このように、地方が自由に使える財源を地方に移していく枠組みをつくることについて、総理はどのようにお考えになるでしょうか。

 最後に、年金事務費の負担特例について伺います。

 年金保険料が社会保険庁の公用車購入費用や宿舎建設費用に充てられていることに対して国民から強い批判があったことは、記憶に新しいところであります。

 平成十年度から平成十七年度予算まで、年金事務費負担の特例によって年金保険料で事務費が賄われている金額は約七千四百億円にもなります。政府による年金制度改革後でも、厚生年金で四百三十兆円、国民年金で五十兆円など、各年金財政には膨大な過去の債務超過があると試算されています。

 このような状況では、この七千四百億円は、いずれ年金財政に返すべきもの、いわば隠れ借金とも言われるべきものではないでしょうか。総理の見解を伺いたいと思います。(拍手)

 昨年四月に総理は、衆議院厚生労働委員会で、年金保険料は基本的に年金に充てる、事務費に充てないという指摘、これはやっぱり真摯に受けとめるべきだと思っています、より効率化を図らなければいけないと思っていますと答弁されています。また、総理が総裁を務める自民党の公約においても、年金保険料は年金給付に関係しないことには使いませんとしています。

 しかし、平成十七年度予算においては、再び年金保険料を社会保険庁事務費に流用することとし、さらに、社会保険庁事務費全体が二千七百八十八億円から二千八百億円に十二億円もふえているという結果になっています。これは、流用を行わない、事務費は効率化するという総理・総裁の約束が二つともほごにされた結果となっていますけれども、総理はどのような責任をとるおつもりなんでしょうか。

 総理は、改革を訴えて国民の支持を求めてこられました。しかしながら、これまでの小泉改革は、看板のかけかえ、負担の押しつけ、問題の先送りと評価せざるを得ないものであります。

 以上の私の質問に対し、すれ違い、開き直り、先送り答弁とならないよう、真正面から答弁されることを期待して、私の質問といたします。

 なお、時間の都合上、国債管理政策については質問から省略させていただきましたので、財務大臣、御容赦いただきたいというふうに思います。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 平岡議員にお答えいたします。

 財政運営についてでございます。

 小泉内閣におきましては、平成十四年度から平成十七年度にかけて、財政規律を堅持するとの方針のもと、重立った歳出項目について歳出の抑制を行い、平成十七年度予算においても、社会保障関係費及び科学技術振興費を除いたすべての主要な経費について対前年度マイナスとしたところであります。また、こうした量的な観点のみならず質的な観点からも、例えば特別会計の見直しや決算の予算への反映などを通じ、歳出のむだを省くための取り組みを強力に推進してきたところであります。

 こうした結果、国及び地方の基礎的財政収支赤字が平成十四年度の五・五%から平成十七年度には四%に改善する見込みであり、また、平成十七年度予算において新規国債発行額を四年ぶりに減額するなどの成果を上げてきております。

 今後とも、引き続き、公務員の人件費を含め、まずは徹底した歳出削減、むだな税金の使い道の排除に取り組んでまいります。

 国債費の急増による財政破綻への認識及び国債管理政策でございますが、十七年度末の公債残高が五百三十八兆円程度に達し、今後とも国債の大量発行が見込まれるような現状では、金利上昇により国債費が増加するなど財政負担が拡大するおそれがあることは否定できません。

 このため、財政運営に当たっては、国債金利の上昇による利払い費への影響等について常に細心の注意を払うとともに、持続可能な財政構造の構築に向けて歳出歳入両面からバランスのとれた財政構造改革を進めていくことが、国債に対する信認を確保していく観点からもまずは重要であると考えております。

 その上で、中長期的な調達コストを抑制し、確実かつ円滑な消化を図るため、市場の動向等を十分に踏まえた国債発行を行うとともに、個人向け国債の販売等により保有者層を多様化するなど、国債管理政策の適切な運営に引き続き努めてまいります。

 財政健全化の道筋及び「改革と展望」の参考試算の意味でございますが、政府としては、二〇一〇年代初頭には政策的支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えることを目指し、引き続き歳出歳入の両面から財政構造改革を強力に推進することとしており、「改革と展望」二〇〇四年度改定においてその道筋を示しているところであります。

 具体的には、二〇〇六年度までの間、政府の大きさが二〇〇二年度の水準を上回らない程度とすることを目指し、国、地方が歩調を合わせて歳出改革路線を堅持、強化する。二〇〇六年度までに、国と地方双方が歳出削減努力を積み重ねつつ、必要な行政サービス、歳出水準を見きわめ、また経済活性化の進展状況及び財政事情を踏まえ、必要な税制上の措置を判断する。二〇〇七年度以降も、それ以前と同程度の財政収支改善努力を行うと同時に民間需要主導の持続的成長を実現する。二〇〇七年度以降の財政収支改善努力に係る歳入歳出を一体とした改革の検討に着手し、二〇〇六年度内にその結論を得ることとしており、こうした財政健全化の取り組みの中で国民から広く理解を得られるよう説明責任を果たしてまいります。

 なお、参考試算は、「改革と展望」に示された政策努力について、一定の仮定を置いてマクロ経済の姿や国と地方の財政の姿を試算したものであり、必要な政策努力を続ければ二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支黒字化の目標の達成が視野に入ってくることが示されております。こうした試算は、今後の中期的な経済財政運営のあり方を検討する際の一つの参考、手がかりとして意義があると考えております。

 社会保障や税制面での負担増に関するお尋ねです。

 私が在任中は消費税を引き上げないと申し上げておりますのは、この間に、徹底した行財政改革により税金のむだ遣いを見直すためであり、こうした観点から、現在、各般の改革に取り組んでいるところであります。

 他方、少子高齢化等の経済社会の構造変化が進む中、活力ある経済社会を構築するためには、経済社会の構造変化に対応した税制の見直しや、国民一人一人が安心して活躍できるよう、将来にわたって持続可能な制度を構築するための社会保障制度改革を進めていく必要があります。

 医療保険や雇用保険等の社会保険料の引き上げを含む社会保障制度における給付と負担の見直し、配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止等についてもこうした観点から取り組んだものであり、負担増の側面のみを取り上げて議論することは適当ではないと考えております。

 「改革と展望」の参考試算の前提でございますが、試算を行うに当たっては、二〇〇九年度までに基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることを前提とし、内閣府において、便宜的な仮定が予断を与えぬよう、所得税と消費税で半分ずつ措置すると仮定し、特定の財源に偏らない前提を置いたものであります。

 この参考試算は、前に申し上げたとおり、今後の中期的な経済財政運営のあり方を検討する際の一つの参考としてお示ししたものであるために、国庫負担の財源のあり方については他の前提による試算は実施しておりませんが、いずれにしても、消費税のあり方については国民的な議論が必要な問題であると考えます。

 民主党予算案についてです。

 子ども・子育てに関しては、政府としては昨年末に、働き方の見直し等の企業の取り組みや地域の自主的な活動なども含めた総合的な施策を盛り込んだ子ども・子育て応援プランを策定したところであり、その中で、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図ることを重要な課題と位置づけたところであります。

 このため、現在進めている社会保障制度全般についての一体的な見直しの議論の中でも、社会保障給付の中での少子化対策給付のあり方も含め検討を進めることが重要と考えております。

 なお、民主党の御提案につきましては、厳しい財政事情のもとでどのように財源を捻出するか等について、もう少し具体的に建設的な議論をいただく必要があると考えますが、いずれにしても、単に予算規模で評価することなく、子ども・子育て応援プランを着実に推進していくことが重要と考えております。

 また、地方に対する補助金の大半を廃止し、一括交付金化や税源移譲を実施するという民主党の提案につきましては、補助金の性格等はさまざまであることから、個別に事務事業の徹底的な見直しを行いつつ改革を進めていくことが重要であり、より個別具体的な議論が必要ではないか。一括交付金化するといっても、地方へいかなる基準で配分するのか、所要額の算定、交付の仕組みなど具体的な制度設計が示されていないのではないかといった問題点があり、慎重な検討が必要ではないかと考えます。

 なお、政府としては、地方からの提案を真摯に受けとめた上で、補助金改革、税源移譲、交付税改革の三位一体の改革を推進しているところであります。

 年金事務費負担の特例及びその内容でございますが、年金制度については、さきの年金改正により、長期的な給付と負担の均衡を確保し、持続可能な年金制度に見直すことができたと考えております。

 他方、年金事務費の費用負担については、年金給付に要するコストであることから、給付と負担の関係を明確化する観点から保険料で負担すべきとの考え方もあること、民間の保険会社や国が行っている他の保険制度等においては事務費に保険料を充てることを基本としていることから見ても、国の財政状況を見ながら年金事務費に保険料を充てることも許されると考えており、平成十七年度においても、国の厳しい財政状況にかんがみ、特例措置を継続することとしております。

 その対象については、国民の理解が得られるよう、年金給付に必要な適用、徴収、給付事務やシステム経費に限定することとしており、国会で御指摘のあった職員宿舎や公用車などの経費は国庫負担としております。

 また、年金制度改正等に伴うシステム経費が大幅に増加する中で、システム経費を除く内部管理事務経費や保険事業運営のための適用、徴収、給付事務の経費については約一〇%の縮減を行ったところであり、いずれにしても、効率的で厳正な予算の執行を図り、国民の信頼を損なうことのないよう努めてまいります。

 なお、この特例措置については、法律において保険料で経費を負担することとしたものであり、いわゆる隠れ借金には当たらないと考えております。

議長(河野洋平君) 平岡秀夫君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。平岡秀夫君。

    〔平岡秀夫君登壇〕

平岡秀夫君 総理の答弁に対して再質問をさせていただきます。(拍手)

 その前に、どうも総理の答弁が、官僚が書かれた答弁を読まれるだけで、中身が先ほどの自民党の議員の方に対する答弁と同じであるという、そんな状況でありました。大変寂しくも思っておりますけれども、私は、二つの点について御質問を申し上げたいというふうに思っております。

 まず第一は、地方への税財源の移譲の問題についてであります。

 総理は、国から地方へと言っておられる割には消極的な答弁だったと思います。そもそも、官から民へというふうな言葉で行っている民営化も看板のかけかえにしかすぎないということを考えれば、やむを得ないのかもしれません。

 しかし、先ほど総理が答弁されました、個別の補助金についてしっかりと検討した上でやる、ぜひそれを示していただきたい。それを示さないで私たちの総合的な改革案に対して注文をつけるということについては、私は納得がいきません。ぜひ、個別の議論をどのように進めていくのか、総理からお示しいただきたいというふうに思います。

 さらに第二点として、年金事務費の負担特例について重ねて質問いたします。

 総理は、今回の年金事務費の負担特例については、あくまでも負担特例という形で法律ができ上がっていることについてどのようにお考えになるんでしょうか。本来であれば、先ほど総理が説明されたような内容であるならば、堂々と本体の法律を改正して、本来、年金保険料で負担すべきものは何なのか、国費で負担すべきものは何なのかしっかりと議論した上で、国民的視野に立って議論されるべきものであります。今回の法律案は、あくまでも負担の特例法という形で便宜的に行われているにしかすぎない。こんなやり方で国民が納得できるはずはありません。

 総理はこうした問題についてしっかりと抜本的な対応をとっていく、抜本的な制度改正をしていくということを要請したいというふうに思っております。この点についての総理の御見解をお示しいただきたいと思います。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 平岡議員に再度答弁いたします。

 地方への税源移譲でございますが、三位一体改革については、今年度の一兆円に加え、来年度から二年間で三兆円程度の補助金を改革し、十六年度に措置をした額を含めておおむね三兆円規模の税源移譲を目指します。

 この税源移譲は、平成十八年度税制改正において、所得税から個人住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施いたします。

 年金事務費の費用負担についてでございますが、年金給付に要するコストであることから、給付と負担の関係を明確化する観点から保険料で負担すべきとの考え方もあることや、民間の保険会社や国が行っている他の保険制度等においては事務費に保険料を充てることを基本としていることから見ても、国の財政状況を見ながら年金事務費に保険料を充てることも許されると考えており、平成十七年度においても、国の厳しい財政状況にかんがみ、特例措置を継続することとしております。

 その対象については、国民の理解が得られるよう、年金給付に必要な適用、徴収、給付事務やシステム経費に限定することとしており、国会で御指摘のあった職員宿舎や公用車などの経費は国庫負担としております。

 また、年金制度改正等に伴うシステム経費が大幅に増加する中で、システム経費を除く内部管理事務経費や保険事業運営のための適用、徴収、給付事務の経費については約一〇%の縮減を行ったところであり、いずれにしても、効率的で厳正な予算の執行を図り、国民の信頼を損なうことのないよう努めてまいります。

 なお、この特例措置については、法律において保険料で経費を負担することとしたものであり、いわゆる隠れ借金には当たらないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(中野寛成君) 寺田学君。

    〔寺田学君登壇〕

寺田学君 民主党の寺田学です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました地方財政計画、地方税法等の一部を改正する法律案並びに地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 その前に、最年少の国会議員として、また、いまだ選挙権を持たない若者たちの声を代弁する意味も込めまして、総理に一言申し上げたいと思います。

 それは、現在の総理の政治姿勢は、これからの世代の将来を打ち壊す無責任きわまりないものであるということです。年金改革しかり、教育問題しかり、財政問題しかり、口では次世代のためと言いながら、何ら長期的ビジョンも持たず、次世代にツケばかりを回す、本当に無責任きわまりない政治が小泉政権です。

 総理、今現在、日本で一年間に何人の赤ちゃんが生まれているか御存じでしょうか。年間百十万人もの子供が今、生まれています。一日で約三千人。私がこの質問をしている間にも、約二十五人の赤ちゃんがこの日本に生まれてきています。総理の六十年以上も後に生まれてくるこの子供たちに対して、あなたは、君たちの未来は安心だと自信を持って言えるような政治をしているでしょうか。

 今の総理の態度は、その点において、余りにもふまじめ過ぎます。その場しのぎを繰り返す総理のせいで、一体、何万人の若者の未来が危機にさらされているのか、よく理解していただきたい。それができないのであれば、幾ら財政難とはいえ、将来にツケを回す国債など、あなたから発行させるわけにはいきません。

 本来であれば政権交代が今すぐにでも必要ですが、少なくとも総理在任中は、より長期的ビジョンに立った、本当に誠意あふれる本質的な政治を行うことを冒頭強く要請します。(拍手)

 さて、本題に入ります。

 平成十七年度の地方交付税総額は、昨年のような大幅な削減はなく、地方自治体も一年前のような大きな混乱には陥らないと想像しています。しかし、交付税改革が一翼をなす三位一体改革はいまだ不十分な改革にとどまっていることから、法案への質問とともに、補助金改革、税源移譲など三位一体全般、総合的な観点から質問させていただきます。

 まず、三位一体改革に関する昨年末の政府・与党の合意内容について質問します。

 昨年十一月の政府・与党の合意は、平成十八年度までの三位一体改革の全体像を平成十六年秋までに明らかにすると骨太の方針二〇〇四で決定したことにゆえんしております。しかし、その合意内容は、義務教育費国庫負担金制度、その取り扱いを中央教育審議会にゆだねるなど、先送りばかりのうやむやな合意に終わりました。骨太方針で定められた、全体像を明らかにするということとは大きな隔たりのある結果となってしまいました。これは、総理お得意の公約違反そのものであります。この閣議決定を無視した行為に関し、総理はどのように責任をとられるか、お伺いいたします。

 昨年の三位一体改革において、総理がどれほど号令をかけても省庁を統制することができないことは、国民の前に明らかになりました。いわば、官僚と族議員の手のひらで踊らされる小泉改革の限界が再度露呈した結果と言えます。

 ただ、唯一前進したと言えることは、骨太の方針二〇〇四において、地方関係団体に補助金改革の具体案を取りまとめるよう依頼したことであります。その背景には、平成十六年度向けの三位一体改革において、省庁間の対立が激しく、取りまとめに苦労した経緯があり、ともすれば、十七年、十八年度における三兆円の三位一体改革が、再度、財務省、総務省、補助金管轄の省庁の三すくみで何も進まないのではと、そういう懸念があったと理解しています。

 その点で、地方に補助金改革案を作成することを依頼することは、総理お得意の丸投げの典型とは言えますが、省庁対立の反省と学習が生かされており、そしてまた、地方の声に耳を傾ける前向きな態度として、一たんは評価しました。しかし、結末といえば、その反省と学習を忘れ、結局のところ、再び財務省、総務省、補助金管轄省庁、そして族議員による四すくみの最悪な状態となり、十六年度より熾烈な省庁の権益争いが起きました。

 結局のところ、地方六団体が苦心の末に提出した改革案は全くもって尊重されず、あげくの果てに、省庁と族議員の言いなりで、地方六団体案を軽視して行った数合わせの合意を、総理は、地方案を真摯に受けとめたと強弁するのですから、厚顔無恥と言わざるを得ません。

 そこで、あえて総理にお伺いします。

 総理が地方六団体案を真摯に受けとめた具体的な成果とは何でしょうか。そして、三位一体改革の本旨と言える地方の自由度は、どの分野でどのように達成されたのか。具体的に御説明願います。(拍手)

 政府・与党の合意の中で、最大の焦点であった義務教育費国庫負担金については、十七年度中に中央教育審議会の審議結果を踏まえて決定することとなりました。しかし、中教審が判断できる範囲がいまだ不明です。小学校、中学校、いずれの教員給与を対象にするのかという取扱対象までなのか、それとも負担率の変更などの手段をも含むのか、はたまた、中教審の結論次第では税源移譲額をゼロにすることまでできるのか。三位一体改革の全体像を既に明らかにしたというのであれば、総理の明確な答弁を求めます。

 続いて、生活保護負担金に関して質問させていただきます。

 この生活保護に関する負担金についても、十七年度中に結論を得ることとされています。そもそも生活保護は、地方公共団体にとって法定受託事務であり、負担率の引き下げは単なる地方への負担転嫁であることは明白であります。昨年の総務委員会におきましても、麻生総務大臣が、地方が納得し、地方の自由度が増すことこそ、補助金改革の一番の根底であると発言されています。

 そうすれば、生活保護負担金は、地方六団体の改革案にもリストアップされず、そしてまた、地方への負担転嫁にしかならないことをかんがみれば、再度議論の場にのせること自体、必要性を感じませんが、その点について、総理の御所見をお伺いします。

 続いて、地方交付税について質問させていただきます。

 政府・与党の合意において、交付税算定プロセスに地方関係団体の参画を図ることが盛り込まれております。これは、そもそも交付税の性格が地方固有の財源であり、いわば国が地方にかわって徴収する地方税である、そのようなことに起因していると考えます。

 確かに、かつて大蔵大臣を務められた宮沢元総理も、平成四年の本会議において、交付税の性格に関して、地方の固有の財源であると申し上げて差し支えないと発言しております。しかし、現財務大臣の谷垣大臣は、昨年の経済財政諮問会議に提出された資料「地方の自立のための改革に関する基本的考え方」の中で、地方交付税は国税の一部を地方に配分するものである、そう述べられています。

 そこで、確認します。

 宮沢元総理も同意されている、地方交付税は地方固有の財源であるとの認識を総理並びに谷垣財務大臣は持たれているのでしょうか。御答弁願います。(拍手)

 いずれにせよ、交付税の算定に際し、地方関係団体の参画が図られることは、大きな前進と思います。なぜなら、交付税の総額を決定する地方財政計画は総務省と財務省の役人によって決められ、地方の意見と実情が軽視されていることは以前から問題となっておりました。

 しかし、注意しなければなりません。昨年の三位一体に係る地方六団体提出の改革案の取り扱いが非常に軽率であったことを勘案すれば、このたびの、交付税算定プロセスにおいて地方団体と協議するとは、結局、形ばかりで、実質的には何ら地方との共同協議事項が反映されないということも予想されます。

 そこで、総理並びに総務大臣、財務大臣にお伺いします。

 政府・与党の合意の中で盛り込まれた交付税算定プロセスに係る地方関係団体との協議の場というものは、ただ単に地方関係団体からヒアリングを行うだけの場なのか、それとも、ともに協議し決定していくことを想定している場なのか、どちらでしょうか。お答え願います。

 小泉総理が進める三位一体改革自体は、さまざまな問題を抱えつつも、もはや地方分権の流れはとめられません。今後、国から地方へのかけ声のもと、地方ができることは地方で行うシステムの構築が加速するでしょう。そうすれば、現在の肥大化した霞が関の体制が大きな変化を強いられることは当然の運びです。

 そこで、総理に質問します。

 政府は、今後地方分権が進み、地方に権限と財源を渡したことで役割を終えた省庁、部局並びに人員をどのようにスリム化し、ないしは再構築するのでしょうか。総理の具体的な指針をお示しください。

 また、一説には、より一層の地方分権を進めた結果、分権後の知事を含む首長の権限がますます強くなり、多選による弊害が顕在化するのでは、そう懸念する声も多いと聞いています。それを受け、与党自民党では知事の多選を禁止する法整備を始めたと聞いております。

 私個人といたしましても、首長の多選による弊害は、時と人物によって顕在化する可能性があるものと考えております。その弊害を払拭するためにも、またドッグイヤーと言われる昨今において、人材の流動性を持つことで時代に適した行政運営を目指すためにも、首長の多選禁止の法整備を検討することはまことに意義深いものと考えております。

 そこで、総理にお伺いします。

 憲法上議論すべき点は多々あるものの、多選禁止の法整備化についての賛否をお伺いします。また、総務大臣にも同様にお伺いいたします。(拍手)

 最後に、定率減税について伺います。

 今回の地方税法改正案並びに所得税法改正案では、定率減税を二分の一縮減することとしており、その縮減によって一兆六千五百億円もの増税が行われると言われております。我が国の経済情勢はいまだ不透明であり、そのことは日銀の政策態度からも明らかです。その意味では、定率減税導入の目的はいまだ達成されていないと言えます。

 さらに、今後は、配偶者特別控除一部廃止、年金・雇用保険料の引き上げなど、国民負担増がメジロ押しです。このような状況下で、国民にとっては大型増税となる定率減税の縮減・廃止を強行することは、余りにもリスクが高いと思われます。

 今回の定率減税の縮減が景気へのマイナスにならないという確信は、どのようなところから生まれてきているのか、総理並びに財務大臣の御所見をお伺いします。

 現在、政府が行っている地方分権改革は、改革と呼べるような代物ではなく、三位一体改革も三位一体の手直し程度のものであります。そしてまた、国の財政改善のため、地方財政計画、交付税の抑制ばかりに注力している点も的外れと言わざるを得ません。

 真に国、地方を通じた簡素で効率的な行財政システムを構築するのであれば、地域間格差の是正の手だてを施した上で、地方に思い切って権限と税源を移譲し、地方にコスト意識を持たせることこそ近道です。いわば、分権こそが最大の財政再建であり、効率的な行政の構築を助けます。この基本原則を改めて総理に御認識いただいて、互いの信頼のもと、政府と地方が綿密な協議を繰り広げ、より一層の分権改革を進めますよう強く要望いたしまして、私の質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 寺田議員にお答えいたします。

 三位一体改革について、骨太方針二〇〇四との関係でございますが、改革の全体像については、地方六団体がまとめた改革案を真摯に受けとめて、地方とも協議を重ねた上で、政府・与党において取りまとめたものであります。

 義務教育費国庫負担金の取り扱いなど残された課題についても、国と地方の協議の場などを通じて検討を進め、本年中に結論を出します。こうした内容については、地方からも一定の評価をいただいているものと考えております。課題についての取り扱いを含めて、平成十八年度までの改革の全体像を明らかにしており、御指摘の閣議決定に違反するものとは考えておりません。

 三位一体の改革の具体的成果でございますが、平成十六年度の一兆円に加え、来年度から二年間で三兆円程度の補助金を改革し、おおむね三兆円規模の税源移譲を目指します。十七年度は、一兆七千億円余の補助金の廃止・縮減等を行い、一兆一千億円余の税源を移譲します。また、地方自治体の安定的な財政運営に必要な交付税を確保しています。

 三位一体の改革を進めることにより、事務事業の見直しと補助金の廃止・縮減を通じて、国の関与を縮小します。また、地方への税源移譲や交付税改革を通じて、地方の権限、責任を拡大して、地方分権の一層の推進を図ります。

 義務教育費国庫負担金でございますが、中教審においては、義務教育費国庫負担金の取り扱いに関し、義務教育制度に関する国の責任を引き続き堅持するとの方針のもと、費用負担に関する地方案を生かす方策と教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について、幅広く検討が行われていくものと考えております。

 生活保護費負担金については、各都道府県の保護率に格差があること等も踏まえると、生活保護制度における国と地方の役割や費用負担のあり方について、地方団体関係者と幅広く議論した上で結論を出すべきものと考えており、このため、昨年十一月の三位一体の改革に関する政府・与党合意にもあるように、改めて地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行った上で、本年秋までに結論を出していくこととしております。

 地方交付税改革の中で交付税の性格についてはという話ですが、地方交付税は、国税五税の一定割合が地方団体に法律上当然帰属するという意味において、地方の固有財源であると考えます。

 三位一体の改革の中では、地方交付税の財源保障機能については、その全般を見直し、縮小する一方、地方交付税の地域間の財政力格差を調整し一定水準の行政を確保する機能は、今後とも必要としております。引き続き、地方公共団体を初め関係者の意見も十分踏まえながら、算定方法の簡素化、中立化などの交付税改革に取り組んでまいります。

 三位一体の改革の全体像の中で、交付税算定プロセスへの地方の参画に関するお尋ねでございますが、これは、交付税の算定に当たって、国と地方が議論を深め、一層の連携を図ることであると認識しております。

 三位一体の改革による国の行政組織等のスリム化についてでございます。

 国と地方を通じた簡素で効率的な行財政システムを構築することは重要であり、三位一体の改革の実施に当たっては、組織、業務のあり方を積極的に見直し、行政の機構・定員等のさらなる減量・効率化を推進してまいります。

 このような取り組みを含め、これまでよりも一段と厳しい、今後五年間で一〇%以上の削減という方針の実現に向け、本年夏に改定する定員削減計画においてこれまでの削減目標を倍増させ、政府全体を通じた大胆な定員の再配置を強力に推進するとともに、できるだけ純減を確保するよう努めてまいります。

 知事の多選制限についてでございますが、さまざまな議論がありますが、基本的には地域の住民が選挙で判断すべきものと思います。

 定率減税の縮減は平成九年の景気低迷の再来になるのではないかとの御指摘でございます。

 平成九年度後半以降における経済の低迷については、同年七月に始まったアジア通貨・金融危機や、同年秋以降の金融機関の相次ぐ経営破綻が実体経済に大きく影響を及ぼしたものと考えております。

 現在の経済状況は、産業再生や不良債権処理などの構造改革の進展により、経済の体質強化が実現され、今後についても引き続き民需中心の緩やかな回復を続けると見込んでいるところであり、また、定率減税の縮減等の検討に当たっては、民間部門に過度の負担が生じないよう配慮したところであることから、平成九年の再来になるとの御指摘は当たらないと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 地方交付税算定プロセスにつきまして、地方団体が参加することについてのお尋ねがあっております。

 三位一体改革におきまして、昨年夏、地方団体に廃止すべき補助負担金の具体案の作成をお願いしたところですが、その案をもとに国と地方の協議を行ったことは御存じのとおりです。その際、地方団体から、地方財政計画の策定についても参画したい旨の要求があっております。

 これを受けて、平成十七年度の地財計画におきましては、三回にわたり地方六団体と協議を重ねてまいってきております。さらに、ことしに入って、総務大臣と地方六団体の会長を構成員とする地方財政に関する総務大臣・地方六団体会合を正式に発足させ、一月の十八日に第一回の会合を開催し、地方税財政関連法案について協議をしたところであります。

 今後とも、このような協議の場を通じて、地方財政に関する重要事項全般につきまして、総務省と地方六団体とが論議を深め、一層の連携の強化を図ってまいりたいと考えております。

 知事の多選禁止についてのお尋ねがあっております。

 多選の問題につきましては、多選による弊害などを除去するため、これを禁止すべきであるとの意見がある一方で、有権者が判断すべき問題であるとして禁止に反対する意見もあるところでありまして、幅広い観点から検討すべき今後の問題であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 寺田議員にお答えをいたします。

 まず、地方交付税の性格についてのお尋ねがございました。

 これは、総理からも御答弁があったところでございますが、特定の国税の一定割合を国から地方へ交付するということが法律で定まっておりますので、その意味で固有の財源と言って差し支えないと私も考えております。

 それから次に、交付税算定プロセスへの地方の参画に関するお尋ねであります。

 先ほどこれは総務大臣から御答弁がありましたけれども、昨年、政府・与党において取りまとめた三位一体の改革の全体像に沿って、各地方団体に対する地方交付税の配分基準のあり方について、これは地方交付税の性格を踏まえて、総務大臣が地方と議論を行っていただく、これは十分意義のあることだと思っております。

 それから、定率減税を入れるについての景気認識、平成九年の景気低迷の再来になるのではないかというお尋ねがございました。

 これはもう、先ほど総理が御答弁になったことにつけ加えることは何もございません。同じ認識でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(中野寛成君) 河合正智君。

    〔河合正智君登壇〕

河合正智君 公明党の河合正智でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました平成十七年度地方財政計画、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の三議案について質問いたします。(拍手)

 公明党は、さきの衆議院選挙のマニフェストの中で、地方分権、すなわち三位一体の改革を積極的に推進していくことを国民の皆様にお約束いたしました。その実現のため、党内に地方分権・三位一体改革推進委員会を設置し、国会議員のみならず、当事者である地方議員の参画も得て、本日まで議論を進めてまいりました。政府との協議の場におきましても、改革のプレーヤーは地方団体である、地方の意見を尊重しなければならない、地方の自由度、裁量の範囲を拡大することが大事であり、単なる補助率の引き下げなどは安易に行うべきではないと再三主張させていただきました。

 昨年末に政府・与党で合意しました平成十八年度までの三位一体改革の全体像では、昨年八月に地方六団体が提示した国庫補助負担金等に関する改革案を踏まえ、約三兆円の国庫補助負担金の廃止・縮減を決定するとともに、十六年度の措置分を含めて、おおむね三兆円規模の税源移譲額を目指すことを改めて確認することができました。

 もちろん、一連の経緯の中では、霞が関で決められないことを地方に丸投げしたとか、国庫補助負担金の削減が不十分であるなどと、さまざまな声も上がりましたが、国、地方の連絡会議を重ねながら、政府・与党、そして地方団体との協議の中で結論を得ることができましたのは大きな成果であると考えますが、今般の改革の全体像に対する総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 さて、政府・与党で合意した全体像には大きな課題が残されています。

 その一つが、義務教育の国庫負担制度です。この問題については、本年秋までに中央教育審議会において結論を得ることとされておりますが、事は国にとって最も重要である教育の問題でございます。財源論のみならず、教育の本質についての議論を深めながら検討を進めるべきであると考えますが、いかがでしょうか。

 二つ目に、生活保護、児童扶養手当に関する負担金の問題であります。これにつきましては、地方団体関係者が参加する協議機関で見直しについて検討を行い、秋までに結論を得ることとされておりますが、とりわけ、生活保護制度は我が国の公的扶助として国民のセーフティーネットの役割を果たしているものであり、慎重な対応が求められます。公明党といたしましては、単なる補助率の引き下げは地方にとって自由度、裁量性を高めるものにはならず、改革の意図に反するものになると改めて申し上げたいと思います。

 以上の二つの課題につきまして、それぞれ総理の御見解をお伺いさせていただきます。

 続きまして、十七年度地方財政計画について質問させていただきます。

 今年度の地方財政計画は、改革の集中期間の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保することとされました。十六年度に大幅に削減された地方交付税で混乱を来した地方団体の皆様からも一定の理解が得られていると感じております。

 地財計画上、人員の約一万二千人純減や民間委託の拡大、技能労務職員の給与是正など、地方歳出の削減努力も評価できるものであると考えております。また、投資的経費に係る地方単独事業費を抑制する一方、循環型社会の構築や環境問題等への対策、少子高齢化対策など一般行政経費に係る地方単独事業費を増大させるなど、ハードからソフトへの移行も喫緊の課題であったと考えております。

 十七年度の地財計画に対して、総務大臣の地方団体へのメッセージをお聞かせいただきたいと思います。

 次に、地方行革についてお伺いいたします。

 公明党は、結党以来、一貫して、国、地方を問わず積極的に行政改革に取り組んでまいりました。昨年末閣議決定された新行革方針の中にも、公明党のムダゼロ対策本部で取り組んでまいりました公用車の廃止やIP電話の導入が盛り込まれており、この取り組みによる十七年度予算の削減効果は、公共事業コスト縮減を除いた額だけでも、約百十五億円となっております。

 さて、この新行革方針では、地方行革をさらに推進するため、本年三月までに新地方行革指針を策定することとされております。

 地方行革の中では、当然、民間委託の推進や地方公営企業の見直し等、進めなければならない課題は山積であります。中でも、地方公務員の定員、給与の適正化は強力に進めなければならない課題であると認識しております。

 先日、総務省で行った調査によりますと、地方の特殊勤務手当の中には、給食調理員が調理業務を行った場合に支給される調理師手当や、住民課等の職員が戸籍及び住民登録の業務を行った場合に支給される戸籍登録手当等、時代の変化の中で見直すべき内容が数多く見受けられたわけであります。

 言うまでもなく、公務員の給与、手当は国民の税金で賄われており、国民、住民の納得が得られるものでなくてはならないことは、地方自治の本旨に照らして当然でございます。新地方行革指針の策定に当たっては、自立した地方を標榜する自治体にふさわしい行政改革の水準をお示ししていただくことを期待しているところでございます。

 今後の地方行革に対する総理の御決意を最後にお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 河合議員にお答えいたします。

 三位一体の改革の全体像についてでございます。

 地方にできることは地方にという理念のもとに三位一体の改革を進めることにより、国の関与を縮小し、地方の権限、責任を拡大して、地方分権を一層推進することを目指しております。

 改革の全体像については、地方六団体がまとめた改革案を真摯に受けとめて、地方とも協議を重ねた上で、政府・与党において取りまとめたところであります。その内容については、地方からも一定の評価をいただいていると考えております。

 義務教育費国庫負担金の取り扱いなど残された課題についても、国と地方の協議の場などを通じて検討を進め、平成十七年中に結論を出します。

 義務教育費国庫負担制度についてでございます。

 この取り扱いにつきましては、御指摘のとおり、財源論のみならず、教育の本質について議論を深めながら検討を進めることが重要であることから、義務教育制度に関する国の責任を引き続き堅持するとの方針のもと、費用負担に関する地方案を生かす方策と教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について幅広く検討し、今年中に結論を出してまいります。

 生活保護費及び児童扶養手当に関する国庫負担率についてでございます。

 昨年十一月の三位一体の改革に関する政府・与党合意において、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成十七年秋までに結論を得て、平成十八年度から実施することとされており、この合意を踏まえて、国と地方の協議機関において、生活保護制度や児童扶養手当制度のあり方について幅広く議論を行った上で結論を出す考えであります。

 今後の地方行革でございますが、これまでも地方公共団体に積極的な推進を要請してまいりました。これを受けて、地方の側でも真摯な取り組みが行われてきましたが、御指摘の特殊勤務手当を含め、給与制度や運用等に関して、住民の目から見てもなお改善すべき点が見受けられると思います。

 先般閣議決定された「今後の行政改革の方針」を踏まえ、今年度中に地方公務員の給与の適正化の強力な推進等を初めとする新たな指針を策定し、地方行革の推進に積極的に取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 平成十七年度の地方財政計画に対するお尋ねがあっております。

 今回の計画に関しましては、地方団体に対しどのようなメッセージを送ったかということでありますが、まず、警察官三千五百人の増員を織り込んだ上で、地方公務員を一万二千四百人純減するなど、歳出の抑制を行っております。

 また、地方団体が社会福祉などソフト経費を重視しておるという実情に応じまして、投資的経費を減額、経常的経費を増額するという形で、計画と決算の一体的な乖離是正を行ったところであります。

 その上で、地方団体が何より望んでおりましたのは、安定的な財政運営に必要な地方交付税などの一般財源総額というものを確保いたしております。

 平成十七年度の地財計画は、以上の方針をもとに作成をいたし、所要財源を確保しておりますので、それぞれの地方団体において、今後一層の行財政改革を進めていただく、そして地域の実情に応じた行政サービスに努める、そして首長さんが地域を経営するという感覚、哲学で行財政運営をしていただきたいと思っております。(拍手)

副議長(中野寛成君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(中野寛成君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       総務大臣    麻生 太郎君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       経済産業大臣  中川 昭一君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 杉浦 正健君

       総務副大臣   今井  宏君

       財務副大臣  田野瀬良太郎君


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