第14号 平成17年3月22日(火曜日)
平成十七年三月二十二日(火曜日)―――――――――――――
議事日程 第八号
平成十七年三月二十二日
午後一時開議
第一 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
第二 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
第三 介護保険法施行法の一部を改正する法律案(内閣提出)
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○本日の会議に付した案件
日程第一 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第二 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 介護保険法施行法の一部を改正する法律案(内閣提出)
介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑
午後一時二分開議
○議長(河野洋平君) これより会議を開きます。
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○議長(河野洋平君) 御報告いたします。
去る十九日、清子内親王殿下の納采の儀が行われましたので、当日、議長は、本院を代表して、皇居において、天皇陛下、皇后陛下及び清子内親王殿下に御祝詞を申し上げました。
右、御報告を申し上げます。(拍手)
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日程第一 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(河野洋平君) 日程第一、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
委員長の報告を求めます。財務金融委員長金田英行君。
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国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔金田英行君登壇〕
○金田英行君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
本案は、国際開発協会の第十四次増資に伴い、同協会が開発途上国の経済成長と貧困削減に果たす役割の重要性にかんがみ、政府が、従来の出資額のほか、二千七百七十五億八千五百万円の範囲内において追加出資することができることとするものであります。
本案は、去る三月十七日当委員会に付託され、十八日谷垣財務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(河野洋平君) 採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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日程第二 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)
日程第三 介護保険法施行法の一部を改正する法律案(内閣提出)
○議長(河野洋平君) 日程第二、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案、日程第三、介護保険法施行法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。
委員長の報告を求めます。厚生労働委員長鴨下一郎君。
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国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案及び同報告書
介護保険法施行法の一部を改正する法律案及び同報告書
〔本号末尾に掲載〕
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〔鴨下一郎君登壇〕
○鴨下一郎君 ただいま議題となりました両案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う国民健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、平成十七年度における国及び地方公共団体を通じた財政改革のための国の補助金等の整理及び合理化等に伴い所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、第一に、国民健康保険の保険給付等に要する費用に対する国庫負担を見直し、都道府県負担を導入すること。
第二に、基礎年金の給付に要する費用について、平成十七年度において、国庫は、現行の負担に加え、各制度を通じて千百一億円を負担すること。
その他、国庫補助金等の廃止及び交付金の創設等を行うことであります。
本案は、去る二月二十二日の本会議において趣旨説明が行われ、同日本委員会に付託されました。
本委員会におきましては、三月九日に尾辻厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、十一日から質疑に入りました。十七日には参考人から意見を聴取するなど審査を行い、十八日に質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
次に、介護保険法施行法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、介護保険法の施行前から特別養護老人ホームに入所している低所得者に対して講じられている負担軽減措置について、その期間をさらに五年間延長しようとするものであります。
本案は、去る三月四日本委員会に付託され、九日に尾辻厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、十一日から質疑に入り、十八日に質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(河野洋平君) これより採決に入ります。
まず、日程第二につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
次に、日程第三につき採決いたします。
本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。
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介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明
○議長(河野洋平君) この際、内閣提出、介護保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣尾辻秀久君。
〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕
○国務大臣(尾辻秀久君) 介護保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
介護保険制度については、本年で施行から五年を迎えるところですが、サービスの利用者数が施行当初の二倍を超えるなど、制度として国民の間に順調に定着しつつあります。一方で、サービス利用の伸びに伴い給付費も急速に増大しており、今後、高齢化が一層進展する我が国において、制度の持続可能性を確保していくことが喫緊の課題となっております。このような中で、介護保険制度が将来にわたり国民生活の安心を支え続けられるよう、また、認知症の高齢者の増加等の新たな課題に対応できる制度となるよう、制度全般にわたる改革を行うこととした次第であります。
以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、予防給付の対象者、内容、マネジメント体制の見直しを行うことなどにより、介護保険制度を予防重視型のシステムへ転換することとしております。
第二に、在宅と施設の間の利用者負担の不均衡の是正等の観点から、介護保険施設等における居住費及び食費を保険給付外とするとともに、低所得者の施設利用が困難となることのないよう、所得に応じた新たな給付を行うこととしております。
第三に、認知症の高齢者の増加等に対応し、身近な生活圏域単位での新たなサービス体系を確立するため、都道府県知事が事業者の指定等を行うこれまでのサービス体系に加え、市町村長が事業者を指定し、指導監督等を行うことができる地域密着型サービスを創設することとしております。
第四に、サービスの質の確保・向上を図るため、介護サービス事業者等の指定等について更新制を設けるとともに、介護サービス事業者について情報の公表を義務づけることとしております。
以上のほか、認定調査を委託できる者の範囲の見直しなど要介護認定の見直し、「痴呆」の用語の見直し、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し等の所要の改正を行うこととしております。
最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成十八年四月一日としております。
以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)
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介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
○議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大村秀章君。
〔大村秀章君登壇〕
○大村秀章君 自由民主党の大村秀章です。
ただいま議題となりました介護保険法等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表し、小泉総理並びに厚生労働大臣に質問をさせていただきます。(拍手)
質問に先立ちまして、三月二十日に発生をいたしました福岡県西方沖地震によりお亡くなりになられた方に心よりお悔やみを申し上げますとともに、被災された多くの方々に心からお見舞いを申し上げます。
自民党といたしましては、直ちに武部幹事長を本部長とする緊急対策本部を設置し、いち早く現地調査団を派遣し、玄界島等を調査いたしました。
被災された方々は、大変不安な気持ちで過ごしておられます。精神的ケア、けがをされた方の処置等を、生活に対する支援も含め、地方自治体とも連携し、政府と一体となって、一日も早い復興復旧に全力で取り組んでまいりたいと存じます。
さて、質問に入らせていただきます。
まず、社会保障制度の一体的見直しについてお伺いいたします。
我が国におきましては、現在、他国が経験したことのない急速な勢いで少子高齢化が進展しており、こうした状況に対応して、国民生活を支える社会保障制度を再構築していくことが喫緊の課題となっております。すなわち、将来の展望を視野に入れ、経済社会とバランスがとれ、長期にわたって国民生活を支えることのできる持続可能な社会保障制度をつくっていくことが最重要の課題となっているわけでございます。
その点、これまでは、今回提案されている介護や医療、年金などそれぞれの課題について個別に検討を進め、改革に取り組んできた面がありますが、今後は、社会保障制度を一体的に見直していく議論が必要となっており、国会においても、与野党の枠を超えて建設的な議論を積み重ねていくことが求められているものと考えます。
そこで、あるべき社会保障の全体像を描き、国民の将来に対する不安を解消していくために、社会保障の一体的見直しについてどのように取り組んでいくのか、小泉総理の見解をお伺いしたいと存じます。
介護保険の質問に入ります。
二〇〇〇年四月に介護保険制度がスタートしてからちょうど五年。制度創設当時を振り返りますと、介護問題が深刻化し、家族に重い負担がのしかかる中で、一刻も早く介護を社会全体で支える仕組みの創設が望まれておりました。
こうした状況のもと、保険あってサービスなしとなるのではないかとか、多様な高齢者の状態を公平、公正に認定できるのか、保険者である市町村の体制は大丈夫かなどのさまざまな懸念がある中で、まずはスタートしたわけであります。
しかしながら、五年たってみますと、介護サービス基盤の整備は大きく前進し、介護保険制度は我々の社会に着実に定着しつつあるわけでございます。
一方で、介護に係る費用は年々増大し、創設当時の三・六兆円から、五年たって六・八兆円と急増しております。これから十年後の二〇一五年には、いわゆる団塊の世代が高齢期に到達し、さらに二十年後の二〇二五年には、二人で一人の高齢者を支える時代を迎えるわけでございます。さらに、今後、ひとり暮らしの高齢者や認知症高齢者の大幅な増加が見込まれるなど、我が国の将来を展望する上で、念頭に置くべき高齢者像も大きく変化をしていく重要な時期に来ているわけであります。
そこで、介護保険制度のこの五年間の施行状況を振り返り、どのようにこの制度を評価しているのか、また、今後の超高齢社会を展望し、どのような方向へ制度を改革していくべきなのか。介護保険法を審議した際の責任者は、当時の厚生大臣でありました小泉総理でありました。ちょうど八年前の厚生委員会でありましたけれども、私も、当時の委員会で当時の小泉厚生大臣に質問させていただいた覚えがございます。その責任者でありました小泉総理のこの介護保険についての御見解をお伺いしたいと存じます。
次に、介護予防についてお伺いいたします。
今回の介護保険制度改革は、制度を将来にわたり持続可能なものとしていくということを基本といたしまして、その観点から、先ほど尾辻大臣が御説明されましたように、予防重視型システムへの転換、施設給付の見直し、新たなサービス体系の確立、サービスの質の確保・向上など、広範な改革を進めるものであります。今後の超高齢社会におきましても、将来にわたって着実に国民の老後の安心を支え続けていくためには、引き続き給付の効率化、重点化を図ることが必要となっているものと考えます。
今回の改革の柱の一つである予防重視型システムへの転換は、高齢者が要介護にならずに元気で生き生きと過ごすことができるようにすること、また、要介護となっても、できる限り悪化を防ぎ、可能な限り自立した生活ができるようにしようとするものでございまして、大変重要な考えであるわけであります。
そこで、今回、予防重視型システムへの転換としてどのような改革を考えているのか、また、利用者にとってサービスはどのように変わるのか、尾辻厚生労働大臣にお伺いいたします。
続いて、被保険者、受給者の範囲についてお伺いいたします。
現在、介護保険制度は、四十歳以上の国民が負担する保険料によって高齢者の介護を支える制度として国民の間に定着しつつありますが、創設当初から、だれの手でだれを支える制度とするかという被保険者、受給者の範囲は大きな論点の一つでありました。さまざまな議論の中で、四十歳以上を対象としてスタートし、五年後の制度見直しの際に改めて議論をすることとされたわけであります。
今回の見直しの議論においても、年齢や障害の種別により制度を分けるのではなく、すべての介護ニーズを介護保険制度で一元的に支えていこうという意見でありますとか、障害者のニーズにつきましては税で支えるべきだという意見など、実にさまざまな議論がなされたわけでございます。与党においても活発な議論が行われ、その結果、この点につきましては、社会保障制度の一体的見直しとあわせて検討を行い、これに基づいて、平成二十一年度を目途として所要の措置を講ずるものとする旨の附則の検討規定が置かれたところでございます。
この、だれの手でだれを支える制度とするかという根本的な課題につきまして、社会保障制度全体を視野に入れた上で、介護保険制度のあり方を考えていく必要があると考えます。
そこで、制度創設当初からの課題である被保険者、受給者の範囲の問題につきましてどのように考えているのか、尾辻厚生労働大臣にお伺いしたいと存じます。明確に御答弁願いたいと存じます。
最後に、今回の介護保険制度を初め、国民生活を支える社会保障制度を持続可能な安定的なものとしていくために、私ども国会が与野党ともに不断の改革に取り組んでいくことの必要性、重要性を改めて申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 答弁に先立ち、今般の地震について一言申し上げます。
去る三月二十日に発生した福岡県西方沖を震源とする地震は、福岡県及び佐賀県で震度六弱を記録し、大きな被害をもたらしました。お亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、被災者の方々に心からお見舞いを申し上げます。
政府としては、被災者への支援、被災地の復旧復興に全力を尽くしてまいります。
大村議員に答弁いたします。
社会保障の一体的見直しでございますが、社会保障の見直しは早急に取り組む課題であり、年金制度を初めとした社会保障制度の議論に国民的立場から取り組むことは、政治の責任であります。
現在、与野党協議の進め方についての調整が進められておりますが、今後の与野党協議の状況を見守りつつ、将来にわたり持続可能な社会保障制度の構築に向け、着実に改革を進めてまいりたいと考えております。
なお、現在、政府においては、早急な制度改革が求められる介護保険制度や医療保険制度の改革に順次取り組むとともに、経済財政諮問会議や経済界、労働界の参加を得た社会保障の在り方に関する懇談会において、年金、医療、介護などの社会保障制度全般について幅広く議論をいただいているところでございます。
介護保険制度の評価と改革の方向でございますが、介護保険制度はサービス利用者数が三百二十万人に達し、この五年間で制度発足当初の二倍を超え、家族の介護負担が軽くなった、サービスや事業者を選びやすくなったなど、国民の評価も年々高まっており、老後の安心を支える制度として順調に定着したものと考えております。
今回の見直しは、介護保険制度が、今後の高齢化が進んだ社会においても、将来にわたり持続可能なものとなるよう、思い切った給付の効率化、重点化を図るとともに、サービスの質の向上を図る改革を行おうとするものでございます。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕
○国務大臣(尾辻秀久君) 予防重視型システムへの転換についてのお尋ねがありました。
介護保険制度の基本理念である自立支援の観点からすれば、できるだけ高齢者を要介護状態にしないこと、また、軽度の方々を重度にしないことが重要です。
このため、今回の制度改正においては、要介護状態となる前の段階の方々から、軽度の方々まで一体的に介護予防サービスを提供する予防重視型システムへの構築を進めていくこととしております。
具体的には、要介護状態となる前の段階の方々や軽度の方々に対するサービスについて、予防の観点から、より効果的なものへと見直しを行うとともに、こうしたサービスが適切に提供されるよう、ケアマネジメントの見直しを行うこととしております。
被保険者、受給者の範囲についてお尋ねがありました。
この問題については、社会保障審議会介護保険部会において長期にわたり御議論いただき、政府としても精力的に検討を行ってまいりました。
改正法案においては、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しとあわせて検討を行い、その結果に基づいて、平成二十一年度を目途に所要の措置を講ずる旨が附則に規定されたところであります。
この問題については、国民の合意形成が大変重要であると考えており、今後、検討規定の趣旨も踏まえ、給付と負担のあり方など社会保障全体についての議論を行う中で、被保険者、受給者の範囲についても精力的に検討を行い、平成二十一年度を目途として所要の措置を講じてまいります。(拍手)
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○議長(河野洋平君) 橋本清仁君。
〔橋本清仁君登壇〕
○橋本清仁君 民主党の橋本清仁です。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました介護保険法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)
質問に入る前に、福岡県西方沖地震においてお亡くなりになられた方の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された方々へ心からのお見舞いを申し上げます。
我々民主党は、いち早く設置した対策本部を中心に、全力を挙げて復旧、支援に取り組んでまいりますことを被災者にお約束申し上げます。
政府におかれましても、迅速かつ的確な復旧、支援を強く要請いたします。
それでは、ただいま議題となりました介護保険法等の一部を改正する法律案について質問いたします。
介護保険は、介護を必要とする方だけでなく、愛する家族の介護を支える者、つまり、これから急激な少子高齢化時代を支えていく我々若い世代にとっても、極めて大切な制度です。
本法案は、高齢者だけではなく、すべての世代の今、そして未来への安心を左右する大変重要な法案であることを肝に銘じ、小泉総理大臣、そして尾辻厚生労働大臣に質問いたします。
まず、被保険者、受給者範囲の拡大についてお尋ねいたします。
我々民主党は、これまで一貫して、介護保険のエージフリー化を通して、年齢や障害によらない介護の普遍化を目指してきました。
現行制度では、保険料徴収が四十歳からであるにもかかわらず、給付を受けられるのは原則六十五歳以上と、年齢制限が設けられております。この結果、四十歳から六十四歳までの難病やがん患者は、保険料を払っても受給要件を満たさないため必要な介護サービスが受けられないという状況が発生し、受益と負担の観点から大きな問題が生じています。
しかし、今回の見直しで最大の課題である被保険者、受給者範囲の拡大は、附則において検討条項とされただけであり、平成二十一年度という年限のみを設けて先送りされようとしています。
総理、あなたは厚生大臣時代、医療制度の抜本改革を約束しながら、今日まで実行しておりません。昨年の年金問題に引き続き、今回、介護保険制度までも抜本改革の先送りをするおつもりですか。
総理は常々、社会保障制度の一体的見直しとおっしゃっていますが、我々から言わせると、社会保障制度の一体的先送り以外の何物でもありません。国民に負担を押しつける医療、年金、介護、まさに三位一体の先送りです。(拍手)
介護の普遍化を実現するためにも、保険料負担者の年齢を拡大するとともに、受給者をゼロ歳からの全年齢に拡大することについて、総理の明確な答弁を伺いたい。
次に、予防重視型システムへの転換についてお伺いします。
民主党は、介護予防を充実させることにより介護状態の進行を防ぐことについては、以前から重要であると考えてきました。
しかし、今回の改正案における介護予防は、家事援助のホームヘルプサービスなどを抑制することに重点を置く一方で、健康な高齢者向けの介護予防を介護保険に取り込むという不可解な内容となっています。これは、老人保健事業の財源が三位一体改革で削られることを恐れて、単に老人保健事業の財源の肩がわりを介護保険ですることではないのですか。
また、介護予防の主なメニューである筋力トレーニングについては、現在、どの程度効果が立証されているのでしょうか。筋トレマシンでのトレーニングについても、費用対効果の検証や、三カ月の筋トレ終了以降の長期的な検証は極めて不十分であり、要支援や要介護一の高齢者の何割に筋力トレーニングが適切なのかも明らかではありません。
また、新予防給付の創設理由に、過剰な家事援助サービスが行われていたことが挙げられています。一部でサービスの乱用があることは確かであり、これは当然適正化すべきです。しかし、それは本来ケアマネジメントの問題であり、大部分の家事援助は適正なケアプランのもとで高齢者の在宅生活を支える命綱となっています。介護現場では、新予防給付の導入によって必要な家事援助サービスまでカットされるのではないかという不安が高まっています。
そもそも、要支援、要介護一の高齢者の半数がひとり暮らしであり、八十歳以上です。必要な家事援助のカットは、介護予防どころか、逆に症状の悪化や閉じこもりの増加すら招きかねません。また、家事援助が利用できると信じて介護保険料を支払ってきた加入者の介護保険への信頼を大きく損なうことにもつながってきます。
そこで、厚生労働大臣にお尋ねします。
第一に、筋力トレーニングの介護保険における導入には、慎重な検討が行われなければなりません。ところが、筋力トレーニングの検証のためのモデル事業の集約は、信じられないことに来月以降とされています。そのほかのさまざまな基準や定義、例えば、どのような基準で家事援助サービスをカットするかや、予防訪問介護、予防通所介護が何を意味するのかというような最も根本的な改正点も、夏や年末までの分科会で決定するということで、今は明らかにされていません。
国権の最高機関である国会において、前提となる必要なデータ、基準、改正で何がどう変わるかさえ明らかにせず、法案審議を要求するのでしょうか。昨年の年金審議のときの合計特殊出生率などに引き続く、厚生労働省の余りの国会軽視に強く抗議し、尾辻大臣に責任の所在の明確化を求めます。(拍手)
第二に、健康な高齢者を対象に行ってきた老人保健事業を介護保険に取り込むことは、給付の増大につながり、給付の抑制に逆行するのではありませんか。このような体系に変更する理由もお答えください。
第三に、要支援や要介護一の高齢者の約何割に筋力トレーニングが適切と推定しておられるのか、お答えいただきたい。
第四に、生活能力を低下させる家事代行型訪問介護は原則として行わないとしていますが、具体的にどのようなサービスをいうのですか。介護の現場が最も不安に思っている点、つまり、どのようなサービスがどういう基準でカットされるのかを明確にお答えいただきたい。
第五に、そもそも、こうした筋力トレーニングの創設や家事援助のカットを通じて、介護保険制度の根幹である利用者の自己決定とサービス選択の自由が阻害されかねないことにつき、明確なお答えをいただきたい。
第六に、ケアマネジメントの適正化を図る上で、マネジメントの独立性が担保できる仕組みをつくるとともに、介護従事者の労働条件の改善と質の向上が急務と考えますが、介護従事者の処遇改善の具体策につき、大臣の見解を伺いたい。
次に、在宅の重度介護者の問題についてお伺いします。
本来、介護保険は、重度介護状態になったとき、在宅でも必要なサービスが受けられることが強く求められています。しかし、重度介護は在宅と施設の支給限度額に大きな差があり、結果として、在宅で介護し続けるには、支給限度額のサービスでは不十分のため、施設に入らざるを得ない状況が生じています。まずは、ここを改革すべきではないでしょうか。在宅の重度介護者の問題につき、今回の改正では不十分であることに関し、明確な答弁を求めます。
施設給付の見直しについてもお伺いします。
現行制度では、在宅の利用者に比べ施設給付の方が手厚く行われており、利用者負担の公平性という観点から、今回の改正において、居住費と食費を保険給付の対象外とすることになっています。この方向性自体は、一概に否定できるものではありません。
しかし、施設入所者にとって負担増となることから、以下の四点について、厚生労働大臣にお尋ねします。
第一に、今後、低所得者が負担の大きい特別養護老人ホームなどに入れない、施設には入所できても個室に入れない状況が生じることが懸念されます。低所得者への対策について具体的にお示しください。
第二に、夫婦がそれぞれ施設に入所している場合や夫婦の一方だけが入所する場合、居住費が二重負担になります。二重負担問題に対する配慮についてお示しください。
第三に、在宅と施設を比較して居住費を取るのであれば、施設は、なるべく在宅と同様の環境であるべきです。今回、個室・ユニット、準個室、多床室の三類型に分けてそれぞれ居住費、食費を設定されていますが、施設の多床室では、スペースが狭い、プライバシーが確保されないなど、劣悪な環境にあるところも少なくありません。施設の個室・ユニット化を進めることが先であり、劣悪な環境を改善することなく多床室入所者から負担を求めることは適切ではないと考えますが、大臣の見解を伺います。
第四に、医療療養型病床との整合性の問題です。
今回の改正案では、この部分だけ平成十七年十月施行となっています。医療保険制度を改め、平成十八年十月から医療療養型病床も同様に負担することとしても、一年のずれが生じます。この一年の間に介護療養型から医療療養型への病床転換、逆流が発生する可能性を私はさきの厚生労働委員会で指摘しましたが、これに対する副大臣の答弁は、安易な病床転換は適当ではないことなどを都道府県に徹底させているというものでした。
こうした指導は拘束力を伴うものであるのかどうか、制度のすき間をねらって病床の転換を繰り返すことが現実に起こり得ないと断言できるのかどうかを明確にお答えください。
次に、地域包括支援センターについてお尋ねいたします。
地域包括支援センターは、果たして、所期の目的を達成するための必要な人材の確保や市町村の関係部署との連携など、しっかりとした体制整備は行えるのでしょうか。厚生労働大臣の明確な答弁をいただきたい。
最後に、高齢者の権利擁護、虐待問題についてお伺いします。
日々、施設や家庭において高齢者を虐待したという痛ましい事件が報道されています。高齢者に対する虐待は深刻な状況にあり、一刻も早く、何らかの対応をとらなければなりません。そして、万一、今回の改正で高齢者の命綱である家事援助がカットされることになれば、虐待はさらにふえる可能性があります。
民主党は、現在、高齢者虐待防止・介護者支援法案の取りまとめ作業を行っており、今国会中に提出し、その成立を図りたいと考えております。また、介護保険のサービスの利用に当たっては本人の自己決定権、選択権を保障できるよう、成年後見制度を初めとした権利擁護の制度充実も強く求めているところです。
そこで、総理にお尋ねします。
高齢期に至っても充実した人生を送るための、介護者支援を含めた虐待防止法の一刻も早い制定や、成年後見制度を初めとした権利擁護制度の充実に向けて、総理みずからがリーダーシップを発揮するつもりがあるのかどうか、御決意を伺いたい。
以上、お尋ねをしてまいりましたが、本改正案にはこれ以外にも不明確な点が多く存在しており、介護の現場に大きな混乱と不安を巻き起こしております。
我々民主党は、近い将来政権を奪取し、安心できる社会保障制度を確立することを国民に誓い、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 橋本議員に答弁いたします。
被保険者、受給者の範囲についてです。
この問題につきましては、今回の介護保険制度の見直しにおいても、関係者の間で主要な論点の一つとして議論が行われてきたところでございますが、なお範囲を拡大することについて賛否両論が見られることから、国民の合意形成に向けた検討がさらに必要であると考えております。
このため、今後、給付と負担のあり方など社会保障全体についての議論を行う中で、被保険者、受給者の範囲についても精力的に検討を行い、平成二十一年度を目途として所要の措置を講じてまいります。
高齢者の虐待防止、権利擁護についてでございます。
人生の最期まで尊厳を持って生きることができる社会の実現のために、高齢者に対する虐待の防止や、高齢者の意思を尊重し、その権利を擁護していくことは、大変重要な課題であります。
このため、今回の介護保険制度の見直しでは、地域の高齢者の実態把握や家族を含めた総合相談、支援を行うため、地域包括支援センターを新たに創設するとともに、高齢者の権利擁護事業を市町村の事業として位置づけることとしております。
また、高齢者虐待防止に向けた議員立法の動きとも十分に連携を図りながら、引き続き、高齢者の虐待防止や権利擁護の充実に向けて取り組んでまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕
○国務大臣(尾辻秀久君) まず、議論の前提となるデータの提出についてお尋ねがございました。
筋力向上トレーニングを含む運動器の機能向上につきましては、既にその有効性が確立されており、地域における先行的な取り組みにおいても効果が実証されているところでございまして、また、こうした実証データ等については既に公表されているところでございます。
したがいまして、現在実施しております市町村モデル事業におきましては、一定の有効性があることを前提に、実施に当たっての課題を主として明らかにしようとするものでございまして、事業の結果がなければその有効性等について議論できないとは考えておりません。
次に、老人保健事業の介護保険への取り込みに関するお尋ねがございました。
これまで地域において、老人保健事業の中での取り組みなど各種の介護予防事業が実施されてまいりましたが、これらの事業は、一貫性や連続性に欠けておりまして、サービス内容も統一性がないなど、課題が指摘されております。
このため、介護予防の観点から、評価、検証を通じて効果的であると認められる事業で構成される地域事業を創設するものでございます。
こうした地域支援事業の実施によりまして、要介護状態になることを予防することにより、保険財政においても一定の効果があるものと考えております。
筋力向上トレーニングの実施が適切な高齢者の割合についてのお尋ねがございました。
介護保険におきましては、自立を支援する観点から、利用者やさまざまな専門家がサービス内容について検討し、最も適切なサービスの組み合わせを利用者の同意を得ながら確定することが、サービス利用に際しての基本であります。
したがいまして、利用者にとって最も適切なケアプランの内容は、それぞれの個人の特性に応じたマネジメントを通じ、多様なサービスを組み合わせて決定されるものであるため、個別サービスである筋力向上トレーニングの実施が適切である高齢者がどの程度おられるかについて、一概に申し上げることは困難でございます。
軽度の方の家事援助の見直しについてお尋ねがございました。
介護保険法は、元来、自立支援を目的としており、要支援者には予防給付を行うこととしております。
しかしながら、施行後の実施状況を見ますと、軽度者は改善可能性が高いにもかかわらず、実際の改善が思わしくないことから、今回、軽度者に対する予防給付を見直すこととしております。
家事援助につきましては、自立支援に資しているかどうかという観点から、必要な見直しを行うこととしているものであります。
サービスの具体的な内容は、それぞれの個人ごとにケアマネジメントを経て決定されるものであり、利用者も含め、さまざまな専門家が、自立を支援する観点からサービス内容について検証し、最も適切なプランを策定するということは、既に申し上げたとおりでございます。
利用者の自己決定とサービス選択の自由についてお尋ねがありました。
新予防給付は、本人の選択を基本に、それを専門家が支えるという介護保険制度の基本的な考え方を変更するものではなく、このため、本人の自己決定やサービス選択の自由が阻害されるとの御指摘は当たらないものと考えております。
次に、ケアマネジメントの独立性の担保と介護従事者の質の向上等についてお尋ねがございました。
今回の見直しでは、ケアマネジャーが担当する利用者の標準人数を適切なケアマネジメントができる人数に見直すとともに、独立性を高める方向で報酬の見直しを行うなど、ケアマネジャーの独立性の確保と資質の向上に取り組んでいくこととしております。
また、認知症やターミナルケアに対応した研修の実施など、介護従事者の質の向上に取り組んでまいります。
在宅の重度の要介護者についてお尋ねがございました。
在宅において重度の要介護者を支えるための対策の充実は、大変重要であります。
このため、今回の介護保険制度の見直しでは、在宅においても、二十四時間安心して生活できる体制を整備するため、新たに夜間対応型訪問介護を創設いたしますとともに、通いを中心として、随時、訪問や泊まりができる小規模多機能型居宅介護を創設するなど、在宅サービスの充実を図ることとしております。
また、医療ニーズの高い重度の要介護者を支えるため、地域における主治医とケアマネジャー等の連携強化、ターミナルケア等の研修の充実など介護職員の質の向上など、医療と介護の機能分担と連携の強化に取り組んでまいります。
低所得者対策や二重負担問題についてのお尋ねもございました。
今般の見直しにおきましては、負担の公平性という観点から、介護保険施設等における居住費、食費について、居宅の方と同様、保険給付の対象外とすることとしております。
この見直しに当たりましては、低所得者の方に十分な配慮を行うことが必要であると考えておりまして、御指摘のケースも含め、低所得者の方にとって過重な負担とならないよう、所得に応じた低額の負担の上限額を設けるなど、措置を講じております。
介護保険施設入所者の居住費負担についてお尋ねがありました。
今般の見直しにおきましては、在宅と施設の負担の公平性という観点から、介護保険施設等における居住費、食費について、在宅の方と同様、保険給付の対象外とすることとしております。
居住費用の具体的な水準につきましては、居住環境の違いに配慮することとし、多床室に入所されている方については、その居住環境の程度から、平均的な家計においても御負担いただいている光熱水費相当を保険給付対象外とすることとしており、在宅とのバランスという観点からも妥当なものと考えております。
病床転換についてのお尋ねもございました。
介護療養型医療施設が医療療養型に病床転換するか否かにつきましては、入院患者の状況等を勘案し、最終的には各医療機関において判断されることと考えてはおりますけれども、患者の状態にそぐわない形での病床転換が行われないよう、都道府県に対して、引き続き指導をしてまいります。
最後に、地域包括支援センターについてのお尋ねがございました。
地域包括支援センターについては、平成十八年四月までに、各市町村の状況に応じ、地域の人的資源の有効活用などによる必要な人材の確保や関係機関との連携など、必要な体制整備が図られるものと考えております。
平成十八年四月までに準備が整わなかった市町村においては、二年間に限り、新予防給付に関する施行を延期することも可能な仕組みとしております。(拍手)
―――――――――――――
○議長(河野洋平君) 高木美智代君。
〔高木美智代君登壇〕
○高木美智代君 公明党の高木美智代でございます。(拍手)
初めに、一昨日に発生した福岡県西方沖地震において被害を受けた方々に対して、心よりお見舞い申し上げます。
私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました介護保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生労働大臣に質問いたします。
平成十二年四月からスタートした介護保険制度は、制度導入当初、要介護認定者が二百十八万人であったものが、現在は四百万人を超え、これに伴い、介護総費用も、平成十二年の三兆六千億円から十七年度には六兆八千億円へと増加の一途をたどっております。
将来にわたり給付と負担のバランスのとれた持続可能な制度へと改革することが必要ですが、その改革に当たっては、高齢者の生活機能の低下を防ぎ、自立と生活の質の向上を図るという制度本来の趣旨を踏まえた予防重視の考え方が極めて重要です。
こうした認識のもと、介護保険法附則第二条に基づき、法施行後五年をめどとした見直し作業が進められ、本改正案では、予防重視型システムへの転換、施設における居住費、食費の利用者負担の導入、地域密着型サービスを初めとする新たなサービス体系の確立など、柱とする内容が盛り込まれております。
これは、増大する給付費と、それに伴う将来の保険料の過度の上昇を抑えるために必要な改革と考えます。その上で、今回の改正が、単なる財政対策としてではなく、サービスの質の向上や利用者の生活改善につながるものでなくてはなりません。
その意味から、一貫性、連続性ある総合的な介護予防システムを盛り込んだ本改正案は、制度本来の趣旨にのっとったものであると評価しておりますが、小泉総理はどのように御認識か、改めて、法改正の趣旨について伺います。
また、今回、この法律の目的として要介護状態となった高齢者等の尊厳の保持が明確化されたことは、高齢者介護のあり方において極めて重要であると思いますが、総理の御見解をお伺いします。
次に、改正の具体的内容について、厚生労働大臣に伺います。
まず、改正の第一の柱として予防重視型システムへの転換が挙げられておりますが、その内容は、制度導入以来、軽度の要介護者が大幅に増加し、軽度者が重度化している現状を踏まえ、要介護状態の軽減や悪化防止に効果的な新予防給付を創設する一方、要支援、要介護になるおそれのある方に対しても効果的な予防サービスを提供する地域支援事業を導入するというものです。
これらは、公明党が発表した介護予防十カ年戦略における、高齢者の生活機能の維持改善を図るための地域予防拠点の整備等が盛り込まれ、また、与党の健康フロンティア戦略における、高齢期だけではなく現役時代からの取り組みとあわせ、健康寿命の延伸を目指す内容に沿ったもので、評価できるものであります。
実際の介護予防マネジメントのあり方や対象者の選定方法、また、家事援助サービス等のこれまでのサービス利用や利用者の選択権についてどこまで認められるものなのか、具体的にお答えください。
また、地域生活支援事業の事業規模は、政令で一定の限度額が定められるとともに、利用者には市町村が利用料を請求できることとなっております。
これらについて、地域ニーズに合ったサービス量が確保されるよう、また利用者負担にはね返らないよう、限度額について十分配慮を行うべきと思いますが、いかがお考えか、お答えください。
あわせて、これらの取り組みを進める上で重要となる効果的な予防メニューの選定や、予防拠点の整備計画についての具体的な進め方を伺います。
続いて、改正の第二の柱である施設給付の見直しについて伺います。
在宅と施設の利用者負担の公平性を確保するとともに、介護保険と年金給付の重複を是正する観点から、施設入所者の居住費と食費を原則、介護保険の対象外とするとしておりますが、この改正により施設利用が困難とならないように、公明党としても低所得者への配慮を強く求めてきたところであります。(拍手)
具体的に、年金・所得水準など、利用者の負担能力に応じたきめ細かな負担軽減措置についてどのようにお考えか、また、これ以外にも、本改正案において利用者のトータルな負担軽減策を盛り込んでいるのかどうか、あわせて伺います。
続いて、改正の第三の柱である新たなサービス体系の創設について質問いたします。
独居高齢者や認知症高齢者の増加、在宅支援の強化、高齢者虐待の防止といった観点から、地域密着型サービスや地域包括支援センターを創設することは極めて重要であり、こうした取り組みは、介護保険の基本理念の一つである地方分権の強化にもつながると考えます。
特に、地域密着型サービスは、市町村が事業者の指定や指導監督を行うこととなっておりますが、その際、各種の基準や介護報酬について、市町村の創意工夫が十分反映できる仕組みになっているのかどうか。
また、今回、独居高齢者や認知症高齢者が住みなれた地域での生活が継続できるよう、地域の特性を踏まえた介護福祉基盤や介護予防拠点の整備を推進するための地域介護・福祉空間整備等交付金が新たに創設されることになります。この交付金についても、地域ニーズに合った弾力的な運用がどこまで確保されているのか、具体的にお答えください。
次に、被保険者、受給者の見直しについては見送られましたが、今後どのように検討していくおつもりか、お伺いします。
特に、四十歳以上の末期がん患者については、介護保険でサービスを受けられるようにすべきだとの声が多く、いち早く介護保険の対象に加えるべきと考えますが、お伺いします。
以上、改正案の幾つかの柱について質問させていただきましたが、公明党は、制度発足当時から、すべての国民で、すべての国民の介護の負担を分かち合う制度とすべきとの理念を示しております。
今回の見直しに当たっては、施行後五年間の実情を踏まえ、より普遍的な制度へと近づけることについて、国民の理解を得るよう努力していくべきと考えます。
高齢者やその家族が生涯の生活設計を行う上で、重要な柱の一つとして安定的に存在し、機能し続けるものでなければなりません。
ホイットマンの言葉に、「若い者は美しい。しかし、老いたる者は若者よりもさらに美しい」とあります。人生の達人としてさらに輝きを増しながら、元気で長生きという、明るく活力ある健康長寿社会を築く、安心の基盤となる法改正を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 高木議員に答弁いたします。
総合的な介護予防システムでございますが、介護保険制度の基本理念は、高齢者の方々の自立した生活を支援することであり、この理念に照らせば、できるだけ高齢者を要介護状態にしないこと、また、軽度の方々を重度にしないことが重要であります。
このため、今回の制度改正においては、要介護状態となる前の段階から、軽度の方まで一体的に介護予防サービスを提供する予防重視型システムの構築を進めるなど、高齢者の自立を目指して改革に取り組むこととしております。
介護保険法の目的規定の見直しでございますが、人生の最期まで個人として尊重され暮らしていくことは、だれもが望むものであります。介護を必要とする状態になっても、尊厳を持って生活を送ることができる社会の実現が必要であります。
今回の介護保険制度の見直しにおいては、尊厳の保持を高齢者介護の基本に置かれるべき大切な理念と位置づけ、その旨を介護保険法の目的に明確に規定したところでございます。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕
○国務大臣(尾辻秀久君) 介護予防マネジメントのあり方等についてのお尋ねがございました。
今回提案しております予防重視型システムへの転換につきましては、改善の可能性が高い軽度の方々を介護認定審査会において選定いたしまして、地域包括支援センターにおいて公正中立な立場から介護予防マネジメントを行い、介護予防の観点から既存のサービスの内容等を見直すとともに、効果が確認された新たなサービスの導入を図ることとしております。
なお、サービス提供に当たりましては、さまざまな専門家が利用者の自立を支援する観点から、その内容について検証し、利用者の同意を得ながら、最適なサービスを選択することとしております。
地域支援事業の規模についてお尋ねがありました。
地域支援事業は、市町村の行う介護予防事業と住民に対する相談事業等をその内容とするものであります。
この事業が効率的かつ効果的に行われ、介護保険財政の負担とならないよう、一定規模の限度を定めることとしておりますが、その水準については、市町村の事業が的確に実施できるよう、十分配慮してまいります。
地域支援事業の予防メニューや介護予防拠点についてのお尋ねがありました。
地域支援事業につきましては、要支援、要介護状態となることを防止する観点から、現在、市町村において実施されている各種の介護予防事業を評価、検証し、効果的事業を取り入れていくこととしております。
また、介護予防拠点につきましては、地域の高齢者が通いやすいよう、既存の民家等の既存資源を活用する形で整備を進めることとしておりまして、地域介護・福祉空間整備等交付金で支援していくこととしております。
施設給付の見直しについてお尋ねがございました。
施設における居住費、食費の見直しに当たりましては、低所得者の方へのきめ細かな配慮が必要と考えておりまして、過度な負担とならないよう、所得に応じた低額の負担の上限額を設けて、その負担の軽減を図ることとしております。
こうした措置に加えまして、特に低所得の方については、月々のサービスの利用料についても、その負担上限額をより低くすることとしており、これにより、居住費、食費を含めた利用者負担の合計額が従前よりも低くなるよう配慮を行っております。
地域密着型サービスは、介護が必要となっても住みなれた地域で暮らし続けることができるよう、日常生活圏域で提供されるべきサービス類型として創設するものでございます。その指定基準や介護報酬につきましては、全国共通のものを定めた上で、地域の実情に応じたサービス提供を可能とする観点から、市町村が一定の範囲で変更できることとしており、市町村の創意工夫が反映できる仕組みとなっております。
地域介護・福祉空間整備等交付金についてのお尋ねがございました。
地方の創意工夫と自主性を生かすことができるよう、平成十七年度から、施設ごとの補助金を改めまして、各自治体が作成する整備計画に対し、一括して交付する交付金制度を創設することとしたところであります。
本交付金により、各自治体は、地域におけるサービス基盤の整備の状況などを踏まえて、事業者への助成の程度を変更したり、交付金総額の範囲の中で整備量をふやすなど、弾力的な基盤整備を行うことが可能になると考えております。
被保険者、受給者の範囲についてのお尋ねがございました。
先ほどお答え申し上げましたとおり、この問題については、国民の合意形成が大変重要であると考えておりまして、今後、検討規定の趣旨も踏まえ、給付と負担のあり方など社会保障全体についての議論を行う中で、被保険者、受給者の範囲についても精力的に検討を行いまして、平成二十一年度を目途として所要の措置を講じてまいります。
末期がん患者の方々に対する介護保険の適用についてのお尋ねもございました。
がんは我が国の死因の第一位となっていますが、多くのがん患者の方々が病院で最期を迎えておられる現状にあります。
しかしながら、適切な在宅医療と介護サービスがあれば、住みなれた自宅で最期を迎えることが可能でございまして、現にそのような希望をお持ちの方々も少なくない状況にあります。
こうした方々のニーズに対応する観点から、現行の介護保険制度の中での対応方策について今後検討してまいります。(拍手)
―――――――――――――
〔議長退席、副議長着席〕
○副議長(中野寛成君) 山口富男君。
〔山口富男君登壇〕
○山口富男君 日本共産党を代表して、介護保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生労働大臣に質問します。(拍手)
質問に先立って、福岡県西方沖を震源とする地震で被災された皆様に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。被災者への救援と復旧など必要なあらゆる対策に万全を期すよう、総理に求めるものです。
質問に入ります。
今回の法改正は、介護保険法発足に当たって義務づけられた、実施五年後の制度見直しです。したがって、介護保険制度の五年間の実態を踏まえ、現行制度の抱える問題点の解決を図るものでなければなりません。
五年間の実態で問われているものは何か。保険料や利用料負担が重過ぎて必要なサービスを受けられない、負担増は今後も続くのではないか、施設不足も深刻で待機者が解消されない、ここに介護保険に対する国民の不安があります。これは、世論調査にもはっきり示されています。
総理、今必要なことは、このような国民の不安を解消するために、安心して必要な介護サービスを受けられるよう改善することです。そのためには、国庫負担の引き上げによる保険料、利用料の国としての減免制度の創設、特養ホーム待機者の解消を初めとした介護施設の基盤整備などを進めるべきではありませんか。(拍手)
ところが、本法案は、介護に対する国の財政負担の抑制を理由に、不安の解消どころか、高齢者の介護サービス利用を制限し、大幅な国民負担増を強いるものとなっています。
まず、介護予防の導入をめぐる問題です。
法案は、介護予防の名のもとに、軽度の高齢者の要介護区分と給付を再編し、軽度介護者の利用を制限しています。
介護予防導入の理由として、軽度介護者の介護度が改善されていない、家事援助サービスが逆に自立を妨げているなどが挙げられています。しかし、家事援助が高齢者の能力低下を招き、介護度の改善に役立っていないなどというのは言いがかりにすぎません。
要支援や要介護一の軽度の要介護者にとって、訪問介護を初めとする居宅サービスは、日常生活の安心感と生活の意欲を引き出し、在宅生活を維持、継続できる不可欠のサービスです。
もともと、介護保険法の第一条は「自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービス」を提供することを目的としています。総理、このサービスを手厚く充実させてこそ、要介護者の重度化を抑制し、自立の維持、継続につながるのではありませんか。(拍手)
居宅支援を制限し、取り上げることは、利用者の生活を悪化させ、状態の重度化すら引き起こしかねません。これでは、介護を予防するどころか、在宅生活の維持が困難となる要介護者が生まれてしまうではありませんか。結局、介護保険給付費を削減し、国の財政負担の軽減を図るために、軽度介護者へのサービスを抑制するということではありませんか。
本法案は、予防介護システムへの転換の柱として地域支援事業を創設し、従来、国と地方が行ってきた老人保健事業、介護予防・地域支え合い事業、在宅介護支援センター運営事業を介護保険に組み込むとしています。これによって、国の補助率や補助金を幾ら削減するというのですか。
さらに、老人保健法の健康診査など、国や地方自治体の責任を後退させ、老人健診や福祉事業に利用者一割負担を導入するというのですか。介護予防の重視といいながら、国の負担を軽減し、公衆衛生や高齢者福祉への公的責任を投げ出すことになるではありませんか。はっきり答弁願いたい。(拍手)
次に、介護保険三施設の利用者の居住費、食費を保険給付から外して自己負担に変える問題です。
利用者負担を導入する理由は、在宅と施設のバランスがとれないというものです。これは、施設入所者の多くが低所得者であることを無視した暴論です。しかも、本来、居宅サービスであるはずのショートステイやデイサービスに新たな負担をかけ、通過施設である老人保健施設や療養型医療施設にまで居住費を強いるというのですから、総理、全く説明がつかないではありませんか。
自己負担の導入によって、介護三施設の入所者平均で、一人当たり年間約四十万円の負担増が強いられます。例えば、国民年金だけの年金受給者の平均年金額は、月四万六千円程度です。ホテルコスト代などの導入は、所得の低い要介護者を施設利用から事実上締め出すことになるではありませんか。
その上、厚生労働省は、将来の保険料引き上げを見込んでいます。総理、介護保険だけでなく、配偶者特別控除、老年者控除の廃止、市町村民税の課税対象への引き上げ、さらに定率減税の縮小、廃止が加わることになれば、国民は連続的な何倍もの負担増に襲われることになります。どうして、その負担に耐えられるというのですか。
次に、特別養護老人ホームなどの施設整備と待機者をめぐる問題です。
政府は、特養、老健、介護療養型など介護三施設と介護つき有料老人ホームなどの居住系サービスの入所者について、この十年間で入所者を一割程度抑制し、要介護二以下の方を制限する方向を打ち出しています。
昨年度、政府は、特養ホームの建設費への国の補助を三分の二に削減するなど、社会福祉施設の抑制を強行しました。地方自治体の整備計画はめどが立たなくなり、住民も地方自治体にも不安が広がっています。特養ホームの待機者数はこの五年間ふえ続け、二〇〇四年には三十四万人に達しています。待機者は高齢であり、その解消は一刻を争うものです。一体どのように解消するのか、総理の明確な答弁を求めます。
本法案に関連して、政府は、社会福祉施設の整備を地域介護・福祉空間整備等交付金に組み込み、地方自治体の計画が国の基本方針にかなうものでなければ、交付金を支給しないとしています。この方向が機械的に実施されれば、住民や地方自治体の施設整備の要望への阻害要因となり、施設整備のおくれ、待機者の拡大を招くのではありませんか。
最後に、介護労働者をめぐる問題です。
介護サービスの向上にとって、ケアマネジャーやホームヘルパーなど、介護労働者の労働条件の改善は極めて切実です。政府も、昨年八月、通達を出し、介護労働者も労働基準法の適用を受けることを認めました。移動、待機、研修時間などは労働時間であり賃金を支払う、年次有給休暇もとれるなど、実態に見合った介護報酬の引き上げを図る必要があります。そのような改善をどのように進めるのですか。
さらに、社会福祉施設職員の退職金制度への公的支援が、今回、介護保険関連施設に限って中止され、給付も一割削減されます。介護労働者の在職期間は劣悪な労働条件の影響で一般労働者より短く、支払われる退職金も低い水準にとどまっています。補助金を削減する理由など、どこにもないではありませんか。
以上、本改正案は、介護不安を拡大し、介護をめぐる国民負担増と給付減というレールを敷くものであり、許すことはできません。その撤回を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 山口議員に答弁いたします。
国庫負担の引き上げによる保険料の減免、特別養護老人ホームの整備についてです。
急速な高齢化が進展する中で、介護保険制度を持続可能なものとしていくため、保険料、公費、利用者負担の適切なバランスを図っていく必要があり、現在でも五割を公費で負担していることを考えれば、国庫負担を含む公費負担割合をこれ以上引き上げることは適切ではないと考えております。
また、低所得者の方々については、既に現行制度において、必要な負担軽減措置を講じているところであります。
特別養護老人ホームの入所申込者については、その入所の緊急性の度合いはさまざまでありますが、これまでも必要な施設は計画的に整備してきており、今後も、できる限り住みなれた地域で生活を続けることができるよう、在宅サービスと施設サービスをバランスのとれた形で整備していくことが重要と考えております。
軽度者の居宅サービスの充実でございますが、制度施行後、軽度者の居宅サービス利用は大幅に増大したものの、介護の状態の維持改善に必ずしもつながっていない状況にあります。
このため、今回の改革においては、従来の家事代行型の訪問介護等について、生活機能の維持向上の観点から提供方法、提供期間等について見直しを行うとともに、生活の基本となる筋力の向上や栄養改善のための新たなサービスを導入することとしており、これらにより、軽度者に対する自立支援を一層進めることとしております。
介護保険施設の居住費、食費の見直しについてです。
介護保険制度は、国民の間に定着し、サービスの利用も増加しておりますが、その一方で、将来の保険料を余り高くせず、持続可能な制度としていくことが重要な課題となっております。
こうした中、施設入所者の居住費や食費は、在宅の場合、自分で負担する経費であり、在宅と施設の利用者負担の不均衡を是正する必要があることも踏まえ、利用者に負担していただくこととしたものであります。
ショートステイやデイサービスにおける居住費や食費についても、同様の観点から利用者に負担していただくこととしたものでありますが、こうした見直しは、保険料や税の負担を軽減することにもつながるものと考えております。
なお、この見直しに当たっては、低所得の方へのきめ細かな配慮として、所得に応じた低額の負担の上限額を設け、負担の軽減を図ることとしたところであります。
介護保険料と国民の負担についてですが、少子高齢化等の経済社会の構造変化が進む中、活力ある経済社会を構築するためには、行財政改革に徹底的に取り組むとともに、必要な公的サービスの費用を広く公平に分かち合うための税制の見直し、持続可能な制度を構築するための社会保障制度改革を進めていく必要があります。
年金課税や定率減税の見直しを含む税制改革や、社会保険料の引き上げを含む社会保障制度における給付と負担の見直しについても、こうした観点から取り組んだものであり、負担増の側面のみを取り上げて議論することは適当ではないと考えております。
なお、今回の介護保険制度の見直しにおいては、給付の重点化、効率化を図ることにより、保険料の急激な上昇を抑えるよう努めているところであります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕
○国務大臣(尾辻秀久君) 介護予防の導入についてお尋ねがございました。
施行後の実施状況を見ますと、現行のサービスは、軽度の方々の状態の維持改善に資するものとなっていないことから、要介護状態となる前の段階や軽度の方々に対するサービスについて、予防の観点から、より効果的なものへと見直しを行うとともに、こうしたサービスが適切に提供されるようケアマネジメントの見直しを行っていくこととしておりまして、これにより、軽度者に対するサービスの質的向上が図られるものと考えております。
また、介護予防の推進による重度化の防止等により、保険財政においても一定の効果を見込んでおりますが、これは、高齢者の方々にも御負担いただいている保険料の急激な上昇を抑えることに資するものと考えております。
地域支援事業による補助金削減についてのお尋ねがございました。
平成十八年度から創設を予定しております地域支援事業は、介護予防事業と住民に対する相談事業等をその主な内容とするものでございまして、公費と保険料により賄うこととしております。
地域支援事業と現行の補助事業との関係の整理につきましては、平成十八年度予算編成の中で検討してまいります。
利用者負担の導入による公的責任の後退についてのお尋ねがございました。
地域支援事業は、保険者である市町村が実施の責任を持ち、国や都道府県がこれを重層的に支えるものでございまして、御指摘は当たらないものと考えております。
なお、事業の実施に当たりましては、現在の老人保健事業と同様に、市町村において、無理のない範囲で利用者に対して費用の一部負担を求めることができることとしております。
地域介護・福祉空間整備等交付金についてのお尋ねがございました。
三位一体改革の一環として関連法案の中で御提案をいたしております本交付金は、整備のおくれている地域を重点的に支援するとともに、地方自治体の創意工夫を生かした効率的な介護サービス基盤の整備を可能とするものであり、これにより、全国的にバランスのとれた整備を進めてまいります。
介護労働者の労働条件の改善についてのお尋ねがございました。
ケアマネジャーやホームヘルパーなどの介護労働者の労働条件につきましては、労働基準法に基づいて、事業者とそれぞれの労働者との個々の契約で決められるものでございます。
一方で、介護報酬につきましては、一定のサービスの質を確保する観点から、介護サービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定することとしており、今後とも、こうした観点から、事業者の経営の実態等を踏まえ、適切な報酬の設定に努めてまいります。
社会福祉施設職員の退職手当についてお尋ねがございました。
この制度は、国等から三分の二の助成を受けて、社会福祉法人の施設等で働く職員に対し、国家公務員に準じた退職給付を行うものでございます。
平成十三年の閣議決定を踏まえ、介護保険における民間とのイコールフッティングの観点から、介護保険関連施設について、既加入職員に十分な経過措置を講じた上で、公的助成を廃止するものでございまして、また、給付水準につきましては、将来にわたる制度の安定性の観点から、一割の抑制を図ることとしております。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(中野寛成君) 阿部知子さん。
〔阿部知子君登壇〕
○阿部知子君 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
私は、社会民主党・市民連合を代表して、介護保険法等の一部を改正する法律案について、総理並びに厚生労働大臣に質問を行います。(拍手)
質問に先立って、九州の福岡、佐賀両県にまたがる震災においてお亡くなりになられた方々に心からのお悔やみと、また、被災された皆さんにお見舞いを申し上げます。
他方、この間、マラッカ海峡沖で海賊により拉致、人質となっておられました日本人二人を含む三人の解放を国民とともに心から喜び、国として海の安全保障に全力を挙げて取り組むこと、また、社民党もそれをともに課題といたしたいと思います。
さて、二〇〇〇年四月にスタートいたしました介護保険制度が、五年目の見直しを迎えております。
二〇二五年、三人に一人が六十五歳以上という未曾有の超高齢社会を迎えるに当たって、年金、医療、雇用、労働災害に次ぐ五番目の社会保険として、介護を社会的に支える仕組みが発足したわけですが、一方で、私どもの国の社会保障制度は、この間重大な危機に瀕しております。
まず、生活の基盤そのものを支える年金は、いわゆる昨年の百年安心と言われた制度が発足したにもかかわらず、国民年金も厚生年金もその空洞化はとどまるところを知らず、他方、世界に誇る国民皆保険制度の基盤であった国民健康保険は、今や四百六十万人にも及ぶ未納者を抱えております。
また、社会の大切な支え手である働く世代は、この間の非正規雇用の増大とも相まって社会保障すらなく、年々下がる賃金のもとで日々の労働に追い立てられており、自殺者五年連続三万人以上という、私どもにとって全く恥ずべき社会を生み出しております。
しかし、現状がどうあれ、私たちはその社会に絶望することなく未来を語り、未来をつくることができる存在であることも、また事実です。
あしたの天気は変えられないけれども、あしたの社会と政治は国民一人一人の思いによって変えることができる。日本国憲法にうたう国民主権とは、そのような主体としての国民に最大の期待を寄せているはずです。
その意味では、この介護保険を見直す視点も、単に利用者が五年前の百五十万人から四百万人に増加した、あるいは介護保険給付が七兆円近くになってしまったというような観点からではなく、そもそも介護保険制度に国民が何を求め、この五年間が何をもたらし、また、今後どうあってほしいと願っているのかを原点に置いた見直しこそ重要となるはずです。
まず、予防給付の導入について伺いますが、そもそも、この介護保険に求められたものが、介護が必要になってもその人らしく尊厳を持って生きるための制度でありました。そこには、老いを受容し、介護の社会化を図ろうという強い意志がありましたし、一人一人が孤立して老いや障害を抱えるのではない社会像が生まれたと思います。
しかし、今回の見直しにかかわる政府提案では、このような老いの受容をめぐる哲学がいつの間にかするりとすりかえられて、とにかく要介護状態にならないための手段として、介護保険が新予防給付の名のもとに、さらに切り分けられようとしています。
いわく、介護保険導入後、要支援、要介護一の人たちが著しく増加し、軽症者にホームヘルプサービスなどを提供することが、本人が何もせず動かなくなることで廃用症候群をつくってしまう等々、在宅の重要なかなめである居宅介護をこうして切り詰めていこうとする方向です。
それにかわる筋力トレーニングなどのメニューのために新段階をわざわざ設定し、新たな認定作業と利用者の選別が行われますが、栃木県大田原市を例にとれば、要支援、要介護一、四百四十三人のうち、この新たなメニューの可能な人は六十三人、わずか一四%しかいないなど、都市部でさえ利用者は極めて限定され、まして山間部、町村部では、新たな支援対象を切り分けることすら難しく、結局はこれまでのサービスも利用できずに、負担あって給付なしの高齢者が生まれてしまいます。
こうした実態を果たして厚生労働省はつまびらかにしているのでしょうか。先ほどの尾辻大臣の答弁では納得がいきません。
そもそも、発生したリスクに対し事後的に支払うことを基本とする保険にあって、予防を保険給付対象にすることの適否や、それによる費用膨張をどう判断するのか。むしろ、介護予防は、地域ぐるみの保健活動の中で、乳幼児期から高齢期までの一貫したプログラムに組み込んでいく地域保健行政の充実を今こそ図るべきと考えますが、小泉総理はいかがお考えでしょうか。(拍手)
まず、国民、利用者の視点に立ったとき、この介護保険の見直しは、この保険がいかに広く国民に知られ、十分に利用され、また、利用勝手はどうかから始まるはずですが、そもそも、利用者の声はどの程度聞かれたのでしょうか。厚生労働大臣に伺います。
とりわけ、介護保険が発足して以降、すべての社会福祉サービスの窓口が介護保険に切り詰められている現状や、医療保険と違い、ミーンズテストがあって利用者のアクセスが複雑で、どうすれば必要な介護が受けられるか十分理解されていないという初歩的問題すらいまだに抱え、さらには、自己負担額の心配からサービスの利用に制限がかかり、利用率が伸び悩んでいる反面、要介護度四、五の方々は、サービスは上限のぎりぎりまで利用して、週二回の訪問看護、一日三回のホームヘルプサービス、しかし、これではとても在宅は賄えないというような実情を、果たして大臣、御存じでしょうか。
さらに、いわゆるホテルコストについて伺いますが、こうした現状が十分に把握、検討されずに、まず財政面から利用者の自己負担増を早々と図るのが今回のホテルコスト論です。冒頭申し上げましたように、年金支給への不安が払拭されないまま、本来現物給付として提供されるべき医療や介護の自己負担増があれば、当然、負担に耐えられない層の発生と、いつまで続くかわからない介護への不安は増大します。
この間、医療の分野でも食費の負担を特定療養費として医療保険から外し、加えて、介護の分野でも介護保険給付の枠外に置くやり方は、現実には弱者に厳しい負担増を強いています。
低所得者層への配慮は語られますが、利用者本人の収入ではなく世帯単位という考えを置くことによって、実際の減免を受ける人は極めて限られ、むしろ家族への負い目を感じながら暮らしている御高齢者がいかに多いことか。介護の社会化というからには、今後はきっちりと個人単位の所得に基づく徴収を考えるべきでありますが、厚生労働大臣に伺います。
あわせて、居住費については、老いの住まいの問題全体を十分国政の中でそもそも検討すべきであり、利用者がどこに住まうのかを選択できるような状態をつくった上で初めて検討されるべきです。我が国の現状では、同居の家族に遠慮せず夜間の訪問看護を受けられるような広い居住空間を持つ人は決して多くはなく、かつ単身ともなれば、重度ではとても介護保険では在宅を賄い切れないことは先ほど申し述べたとおりです。こうした住まいの問題の深刻さに、果たして小泉総理はどこまでお考えを及ぼしておられましょうか。
この間、グループホームが数を伸ばし、介護保険導入前の二百六十六カ所から、現在六千カ所にまでなっています。しかし、先日の石川県のグループホーム入所者の虐待死に例をとるまでもなく、介護現場は、手薄な人手、不安定雇用、低賃金の三重苦のもとで、そこで働く人たちの誇りや生活や研修を十分保障する職場とは残念ながらなり得ていません。この事件は、現在百五十万人に及ぼうとする介護労働者の置かれた現状を余すところなく指し示していると思います。
厚生労働省として、こうした介護現場の改革のために、その労働実態の把握、さらに改善にどう取り組んでいかれるのか、厚生労働大臣に伺います。
最後に、介護保険の今後について。
政府案の附則は、被保険者、受給者の見直しについて、二〇〇九年度を目途に所要の措置を講ずるとされていますが、現在四十歳から六十四歳の二号被保険者の保険給付は十五疾患に限定されているため、要介護認定は〇・三%、サービスの利用は〇・二%にすぎず、がんの末期患者も難病の患者も受けることができません。
介護の社会化を、さらに広範な支え手の意識、とりわけ若い人たちの理解と共感の上に実行、維持していくことが、社会の価値のあり方として極めて重要と考えておりますが、その前提には、まず現状にある、ここにある矛盾、負担と給付の矛盾をきっちりと解決すべきと考えますが、大臣、いかがでしょうか。
また、中期的には、保険料の設定を個人賦課方式に徹底し、さらに、きちんとした累進方式へと転換し、国庫負担割合をふやして財源的安定を図るべきですが、この点については、総理はいかがお考えでしょう。
国民の十分な理解と納得なくして社会保険制度の維持がなし得ないことは、年金問題の教えるところです。迂遠に見えても、真にこの介護保険を定着させるための道を国民の皆さんとともに歩むことを決意して、私の代表質問といたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕
○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員に答弁いたします。
予防給付でございますが、介護保険制度においては、要介護状態の悪化の防止のための給付にあわせ、要介護状態となることへの予防のための給付が、保険給付として既に位置づけられております。これは、高齢者の自立支援を図るという制度の基本理念に沿ったものと考えており、今回の制度改革においても、予防重視型システムへ転換する観点から、軽度者に対する給付内容を、介護予防効果のより高いものへ見直す等の措置を講じることとしております。
一方、高齢者に対する介護予防対策は、若年期からの健康づくり対策の一環としても取り組むことが重要であると考えており、今後予定されている医療制度改革等において、生涯を通じた健康づくりの観点からも検討していくこととしております。
要介護高齢者の住まいについてのお尋ねです。
要介護状態となっても、地域において在宅生活を継続できるよう、介護を受けながら住み続けることのできる住まいの確保は重要であると考えております。
このため、今回の介護保険制度の見直しにおいて、重度の要介護高齢者でも、身近な地域において、必要なときに訪問、通い、宿泊などの多様なサービスを組み合わせて受けることができる多機能なサービスや、夜間巡回介護サービスなど、地域密着型介護サービスを新たに創設するとともに、介護サービスを提供する職員がいる住まいの範囲を、これまでの有料老人ホーム、ケアハウスに加え、高齢者向け賃貸住宅の一部にも拡大することとしております。
介護保険料の設定の方法ですが、保険料の設定の方法については、負担の公平さ、仕組みのわかりやすさ、市町村の事務負担などを勘案して決められるべきものと考えております。
このため、介護保険料については、原則個人単位とし、所得に応じた五段階の定額制としていますが、その際、高齢者の四分の三が住民税非課税層であることを踏まえ、一部、世帯の課税状況を勘案することで、より低所得者の負担能力に配慮した保険料設定としているところであります。
今回の介護保険制度の見直しに際しては、この保険料の設定方法についても、市町村等関係者とも十分協議を行っており、現時点でこれを変更する考えはありません。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕
○国務大臣(尾辻秀久君) 予防給付の内容についてお尋ねがございました。
新予防給付におきましては、運動器の機能向上等の新しいサービスのみならず、既存のサービスについても内容等を見直した上で給付の対象とすることとしておりまして、利用者はこれらのさまざまなサービスの中から、必要なサービスを選択できるものと考えております。
利用者の実態の把握についてお尋ねがございました。
今般の介護保険制度の見直しに当たりましては、サービスの利用の状況など、制度施行後の状況を詳細に検証いたしますとともに、平成十五年七月に実施いたしました高齢者介護に関する世論調査等の各種世論調査等を参考として、利用者の実態や国民意識などを十分把握した上で、改革案を取りまとめたところでございます。
食費の負担についてのお尋ねがございました。
今回の見直しにおきましては、施設と在宅の公平性の確保等の観点から、介護保険施設等における食費等について、在宅と同様、保険給付の対象外とすることとしております。
その際、低所得者に対しては配慮を行っておるところでございますが、その範囲については、負担の公平性や利用者にとってのわかりやすさの観点から、保険料段階を基準として設定しているところでございます。
介護保険料設定の仕組みは、原則個人単位とし、一部、世帯概念を取り入れることで低所得者の負担能力に配慮したものとなっているところでございまして、これを基準とする食費の設定方法につきましても、低所得者の負担能力に配慮した適当なものと考えております。
介護労働の現場の実態把握と改善についてのお尋ねがございました。
介護労働に従事する方の労働実態については、これまでも、必要な調査を行い、その把握に努めてきたところであります。
今後とも、介護労働者の労働実態の適切な把握に努めますとともに、事業主に対する相談援助や助成金の支給などにより、介護労働者の雇用管理の改善に取り組んでまいります。
第二号被保険者の給付制限についてのお尋ねがございました。
御指摘の給付制限を取り払うことは、現行制度の基本的な性格を変更するものでございまして、被保険者、受給者の対象年齢を引き下げるかどうかとあわせて議論する必要がございます。
このことにつきましては、附則に規定されたとおりに精力的に検討を行いまして、平成二十一年度を目途として所要の措置を講じてまいります。(拍手)
○副議長(中野寛成君) これにて質疑は終了いたしました。
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○副議長(中野寛成君) 本日は、これにて散会いたします。
午後二時四十二分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 小泉純一郎君
財務大臣 谷垣 禎一君
厚生労働大臣 尾辻 秀久君
出席内閣官房副長官及び副大臣
内閣官房副長官 杉浦 正健君
厚生労働副大臣 西 博義君