衆議院

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第18号 平成17年4月7日(木曜日)

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平成十七年四月七日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十二号

  平成十七年四月七日

    午後一時開議

 第一 水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 都市鉄道等利便増進法案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国立国会図書館法の一部を改正する法律案(本院提出、参議院回付)

 日程第一 水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 都市鉄道等利便増進法案(内閣提出)

 会社法案(内閣提出)及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時四分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 参議院から、本院提出、国立国会図書館法の一部を改正する法律案が回付されております。この際、議事日程に追加して、右回付案を議題とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 国立国会図書館法の一部を改正する法律案(本院提出、参議院回付)

議長(河野洋平君) 国立国会図書館法の一部を改正する法律案の参議院回付案を議題といたします。

    ―――――――――――――

 国立国会図書館法の一部を改正する法律案の参議院回付案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の参議院の修正に同意の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、参議院の修正に同意することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長山岡賢次君。

    ―――――――――――――

 水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山岡賢次君登壇〕

山岡賢次君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、コイヘルペスウイルス病の発生等、海外からの疾病の侵入及び国内での蔓延のリスクが一層高まっている状況に対処し、水産防疫をより的確に実施するため、輸入許可の対象となる水産動物の範囲の拡大、養殖業者等に対する疾病発生時の届け出の義務づけ等を行おうとするものであります。

 委員会におきましては、去る三月三十日島村農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、昨四月六日質疑を行いました。質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 都市鉄道等利便増進法案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、都市鉄道等利便増進法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長橘康太郎君。

    ―――――――――――――

 都市鉄道等利便増進法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔橘康太郎君登壇〕

橘康太郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、都市鉄道等の利用者の利便を増進するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、既存の都市鉄道施設の間を連絡する新線の建設等を行う速達性向上事業に係る計画について、国土交通大臣が認定するとともに、認定を受けた者は、計画に従い、事業を実施しなければならないこと、

 第二に、駅施設及び駅周辺施設の一体的整備により乗り継ぎの円滑化等を図るための計画について、国土交通大臣が認定するとともに、この計画で整備等を行うとされた者は、計画に従い、駅施設の整備等を行わなければならないこと、

 第三に、速達性向上事業等に関し、事業者間で協議が調わないときは、申請に基づき国土交通大臣が裁定を行うこと

などであります。

 本案は、去る三月二十九日本委員会に付託され、翌三十日北側国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、四月六日質疑を行い、質疑終了後、討論を行い、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 会社法案(内閣提出)及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣南野知惠子君。

    〔国務大臣南野知惠子君登壇〕

国務大臣(南野知惠子君) 会社法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、最近の社会経済情勢の変化に対応するために会社に関する各種制度を見直すとともに、これを現代用語の表記にし、わかりやすく再編成する措置を講じようとするものであります。

 第一に、この法律案は、会社に関する各種制度について、体系的かつ抜本的な見直しを行うこととしており、その要点は、次のとおりであります。

 まず、利用者に利用しやすい会社法制とするため、株式会社と有限会社を新たな会社類型として統合することにより、現在有限会社としてしか認められていない、取締役の人数規制や取締役会・監査役の設置義務のない株式会社を認めることとするほか、最低資本金制度を見直して、現在一千万円以上の出資が必要とされている株式会社の設立時の出資額規制を撤廃することとしております。

 次に、会社経営の機動性、柔軟性を向上させるため、合併等の組織再編成に関する手続を整備し、株主、債権者の保護を図りつつ、機動的な組織再編を実現しようとするほか、機関設置等における定款自治の範囲の拡大等を行うこととしております。

 また、会社経営の健全性を確保するため、株主代表訴訟において、原告株主が株式交換等で株主たる地位を失っても一定の場合には原告適格を失わないこととするなど株主代表訴訟制度を合理化することとするほか、公認会計士、税理士の資格を持つ会計参与が取締役とともに計算書類を作成する会計参与制度の創設、会計監査人を設置することができる会社の範囲の拡大等の措置を講ずることとしております。

 さらに、創業の活性化等のため、出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係については組合的規律が適用される新たな会社類型の新設を行うこととしております。

 このほか、株式の譲渡制限に係る定款自治の拡大、自己株式の市場売却の許容、会社に対する金銭債権の現物出資に係る検査役の調査の省略、株主に対する利益の還元方法の見直し、委員会等設置会社とそれ以外の会社の取締役の責任に関する規定の調整、大会社における内部統制システムの構築の義務化等の改正をすることとしております。

 第二に、この法律案は、会社法制を現代語化しようとするものであります。

 会社法制を規定している現在の商法典は、明治三十二年に制定された法律であり、片仮名の文語体で表記されているほか、現在は使われていない用語が多く用いられており、このために利用者にわかりやすい平仮名の口語体に改めるべきであるという指摘がされております。

 また、商法の中核をなす会社法制につきましては、商法本体に合名会社、合資会社、株式会社についての規定が置かれ、有限会社については個別の単行法が設けられているほか、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律において大規模会社や小規模会社について商法の特例規定が置かれているために、利用者にとってわかりにくいものとなっているという指摘があります。

 そこで、この法律案は、片仮名・文語体の表記を平仮名・口語体に改めるとともに、会社法制についての規定を一つの法典としてまとめ、わかりやすく再編成することとしております。

 続いて、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、会社法の施行に伴い、有限会社法ほか八の関係法律を廃止し、商法ほか三百二十五の関係法律に所要の整備を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。

 以上が、これら法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 会社法案(内閣提出)及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。井上信治君。

    〔井上信治君登壇〕

井上信治君 自由民主党の井上信治です。

 ただいま議題となりました会社法案及び同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして、自由民主党を代表して質問させていただきます。(拍手)

 時代が変わり、我が国の経済を取り巻く環境は日々急激に変化しています。高度情報化社会の到来とともに、企業活動のボーダーレス化が進み、熾烈な国際競争の中で個々の企業の競争力の強化が求められています。また、中国やインドを初めとする途上国が飛躍的に発展する中で、日本経済の再生は間違いなく喫緊の最重要課題であります。

 そのような社会経済情勢のもと、年功序列や終身雇用などの雇用形態、株式の持ち合いなどの従来の日本的慣行が見直され、我が国の経済の実態はグローバルスタンダードに近づきつつあるように思えます。

 しかし、現在の会社法制は、明治三十二年制定の商法及び昭和十三年制定の有限会社法を基本としているため、もはや急激な経済情勢の変化に十分に対応することが困難となっています。時代の要請に応じて頻繁に改正を繰り返してきた制度も、さらなる時代の変化に対応できず、国民のニーズにこたえられなければ、その存在意義を問われてしまいます。特に、企業活動における憲法とも言える会社法制は、市場原理に基づいて行われる個々の企業活動を活性化させるとともに、その営利追求に秩序をもたらし、健全な市場を育成していくことを重要な使命としており、今、その抜本的な改正が求められています。

 会社法案について質問するに当たり、まず、大前提たる今回の改正の理念について伺います。

 この数年間、会社法制については毎年のように改正が行われてきたために、各種制度間に不均衡が生じ、かえって利用者にわかりにくくなっていることも事実です。今回の会社法案は九百七十九条にも及ぶ未曾有の大法典であり、そうであるならば、単に時代の変化に対応するだけにとどまらず、これからの我が国の経済がどうあるべきか、長期的かつ持続的に二十一世紀の日本経済のグランドデザインを描くことのできるような新制度を構築していかなければならないと考えますが、南野大臣の御見解を伺います。

 会社の経営は、株主を初めとするステークホルダーの真の利益と企業価値の維持向上を目的とするものであり、これに反する経営者などの関係者の行為については厳しく責任が問われなければなりません。昨今の三菱自動車、コクドなどの民間企業が犯した事件は許しがたいものであります。

 政府は、民間でできることは民間でという改革を推し進めておりますが、何が本当に民間で行うべきことなのかを改めて問い直すとともに、経営の自由度の高い民間企業であるからこそ、その監督機能を強化することが重要です。

 そこで、今回の会社法案においては、近代的経営の基本である企業の透明性の確保及びガバナンス強化について、どのような観点からどのような改正を行っているのでしょうか、南野大臣にお尋ねします。

 人材、資源、資本が流動化し、企業活動がグローバル化した現在の経済社会にあって、企業の組織再編の手法を拡充することは、その競争力の向上、ひいては我が国経済の活性化の観点から大変重要であります。我が国のMアンドA件数はこの五年間で倍増し、最近の新聞を見れば毎日のようにMアンドAに関する報道がされており、まさに大MアンドA時代が到来したというべきでしょう。

 会社法案では、こうした変化に対応すべく、企業の組織再編行為に係る規制についても見直しが行われておりますが、その具体的内容はどのようなものなのでしょうか。また、今回の改正により、我が国経済にどのような影響を与えることが期待できるのでしょうか。南野大臣にお尋ねします。

 最近の新聞報道といえば、忘れてならないのが敵対的買収の問題であります。

 昨今のニッポン放送とライブドアに関する一連の報道は、会社はだれのものかという最も基本にして深遠な問題を我々に思い起こさせます。企業が株式を上場する以上、常に敵対的買収のおそれにさらされることは不可避であり、それが市場経済の原則とも考えられます。他方で、株主や経営者だけでなく、従業員、取引先、地域経済などのステークホルダーの意図を無視することは望ましくありません。

 今回の改正では、合併対価の柔軟化などにより企業活動を規制してきたくさびを取り除き、他方、敵対的買収に対する対応策を盛り込むなど、規制緩和と選択肢の拡大という両方の側面から経営の自由度を高める法整備を進めております。

 会社法案では、敵対的買収と企業防衛策につき、どのような対応を考えているのでしょうか。特に、外資系企業による敵対的買収が過度に増大するおそれがないか、南野大臣にお答え願います。

 最後になりますが、現在の会社法制は、国民にわかりづらい片仮名表記になっているのみならず、会社形態の区分は形骸化し、ある企業に適用される規定が複数の法律に分かれるといった事態も生じており、このような法体系がなぜ今まで放置されていたのかと疑念を感じ得ません。今回の改正により、おくればせながら利用者の使い勝手は向上するでしょうが、今後とも、国民にとって理解しやすく利用しやすい法務行政の実現を望んでまいります。

 いずれにしても、会社法制は、現代社会において重要な地位を占める会社を規律する法制度であり、その抜本改正は、今後の我が国経済の動向を左右するとともに、会社と関係を有するすべての国民に重大な影響を及ぼすものであることを十分に認識するようお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣南野知惠子君登壇〕

国務大臣(南野知惠子君) 井上信治議員にお答え申し上げます。

 まず、会社法案はどのような理念に立って立案しているのか、お尋ねがございました。

 会社法案は、有限会社の株式会社への統合など利用者の視点に立ち、社会経済情勢の変化に対応すべく、会社類型の見直し、会社経営の機動性、柔軟性の向上、会社経営の健全性の確保等を基本理念としまして、会社に関する各種制度の見直しを行ったものであります。

 次に、会社法案における企業の透明性の確保及びガバナンスの強化に関するお尋ねがございました。

 会社法案では、企業の透明性の確保及びガバナンスの強化は企業経営の健全性の確保に不可欠の要素であるという視点から、すべての株式会社において会計監査人制度の採用を可能とすることや、すべての株式会社における決算公告の義務化、主として中小企業の計算書類の適正さの確保に資する会計参与制度の創設、大会社に対する内部統制システムの構築の義務化などの改正を行うこととしております。

 次に、会社法案における企業の組織再編行為に関する改正の内容と期待されるその効果についてお尋ねがございました。

 会社法案では、合併等の対価の柔軟化や被支配会社における株主総会を省略できる略式組織再編を認めるなど、会社の組織再編手続の規定を整備することとしております。これにより、株主や会社債権者の保護を図りつつ、機動的な組織再編が行われることによって企業の競争力が強化されることを期待しております。

 最後に、敵対的買収に対する企業防衛策についてのお尋ねがございました。

 会社法案では、種類株式や新株予約権の制度を改正し、諸外国で用いられているいわゆるポイズンピルや黄金株等の防衛策を導入しやすくしております。したがいまして、敵対的買収が過度に増大するおそれはないものと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 村越祐民君。

    〔村越祐民君登壇〕

村越祐民君 民主党の村越祐民です。

 民主党・無所属クラブを代表しまして、ただいま議題となりました会社法案及び会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対しまして質問をいたします。

 なお、答弁いかんによっては再質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。(拍手)

 本題に入る前に、竹中郵政民営化担当大臣の資質について取り上げざるを得ません。(拍手)

 一昨日の四月五日、衆議院総務委員会では午前十時より郵政事業に関する集中審議を行う予定になっており、郵政問題担当の竹中大臣は、所管大臣である麻生大臣とともに委員会への出席が決まっていました。しかし、事もあろうか、竹中大臣は、当日の朝になって一方的に出席をキャンセルしたのです。

 その理由について、竹中大臣は、郵政民営化法案を具体化するため、調整に一刻の猶予もない状況にあるとの出席拒否の通告を行いました。まことにけしからぬ話です。(拍手)

 しかも、同日午後の本会議で竹中大臣は、総務委員会への出席について、与野党合意がなかったから出席をしなかったと答弁しました。午前中の出席拒否理由と全く異なる聞き苦しい答弁をされたのです。竹中大臣の総務委員会出席は、与野党理事間で先週確認されているんです。だからこそ、自民党の実川幸夫総務委員長がまことに遺憾と述べ、同じく自民党の川崎二郎議院運営委員長が甚だ不適当だと官房長官に電話で毅然と注意を促したのではありませんか。(拍手)

 政府・与党間の調整や多忙を理由に、今国会最大のテーマと総理みずからがのたまう郵政問題に関する委員会を勝手に欠席したことは、断じて容認できません。(拍手)

 そもそも、憲法六十三条は、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、」「答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。」と定めています。竹中大臣の今回の行動は明々白々な憲法違反で、政治的責任が問われてしかるべきです。(拍手)

 話は昭和二十九年十二月四日にさかのぼります。時の吉田茂総理が、当日の予算委員会を病欠し、翌々日の決算委員会も同じ理由で欠席したことがありました。吉田総理は診断書を院に送ったにもかかわらず、総理の欠席が大問題となり、問責決議と弾劾決議が衆参の委員会で可決され、同年十二月七日、吉田内閣は総辞職を余儀なくされました。

 竹中大臣、大臣の委員会出席というものは、かくも重たいものなんです。どうやら、その認識がおありでないようですね。

 我々の調査では、委員会から要求があったにもかかわらず担当大臣が審議を欠席したのは、それ以来のことです。いや、竹中大臣の場合は、与党内調整や多忙を理由にしているのですから、吉田元総理以上にひどい話です。

 竹中大臣は、郵政問題でたたかれるのを恐れたのか、あるいは単に無視をしたのか、いずれにせよ、こそくな理由でドタキャンをしたわけですから、吉田元総理を引き合いに出すのは、吉田総理には失礼な話というものです。

 竹中大臣は、総務委員会が開かれるはずだった時間帯には、事もあろうか、記者会見を開いたり、大臣室にこもりきりだったというのですから、委員会室で待機していた同僚議員や麻生大臣、この方は吉田元総理のお孫さんであるわけですけれども、そのお気持ちはいかばかりでありましょう。(拍手)

 竹中大臣、これだけの失態を演じたのにもかかわらず、あなたはいまだに反省の言葉すら述べていません。あたかも、小泉総理の覚えがめでたければあとはどうでもいい、そう言わんばかりです。

 そこで、大臣に三点お伺いします。

 そもそも、一体どうしてドタキャンをしたのか。たたかれるのが嫌だったからですか。忙しかったというのは理由になりません。国会審議より忙しい用事などあるのでしょうか。お答えください。

 あわせて、与野党合意の上で大臣を招致したという事実を否定する虚偽答弁をされましたが、潔く御自身の失態をお認めになったらどうですか。

 政治的責任をとるのだとすれば、それは大臣の職を辞することによってのみ果たし得ると思うが、いかがでしょうか。(拍手)

 この会社法改正案の質疑の場において、あえて竹中大臣御本人の資質に関する問題を取り上げているのは、郵政民営化においても、その手段として株式会社制度が利用されるがゆえに、基本法たる本法案が郵政民営化を論ずるに当たっての議論の出発点になると考えるからです。大臣の責任については、我が党としても改めて問いただしていくことになると思いますが、明確にお答えいただきたい。(拍手)

 本題に入ります。

 会社と一言で言っても、その形態のみならず、会社とどのようにかかわりを持つかによって、その問題の質が大きく変わってまいります。すなわち、ステークホルダーという言葉に象徴されますように、まさに利害関係人として、あるときは株主、債権者及び従業員、論者によっては消費者まで含めるといったほど、その対象はいろいろでございます。

 さて、御案内のとおり、ニッポン放送株の問題がマスコミに大きく取り上げられております。これはフジテレビとライブドアとの支配権争奪合戦なのですが、これからの改正につきましても、この争いを契機として、MアンドAやいわゆる敵対的買収の検討に注目が集まるものと考えます。

 ただ、ニッポン放送株問題に関しては、自民党が私企業間の争いに過敏に反応し、感情論的な発言を繰り返しております。経営者間の年齢差から、あたかも世代間抗争であるかのようにとらえる向きもあり、勢い問題の本質を見間違えるおそれもあります。

 この問題を冷静な視点で考えれば、実は、これからの法改正において重要な点を示唆するところがあると考えます。すなわち、法の不備と行政の予見能力の低さ、企業サイドの問題意識の欠落が見事にあぶり出されたのです。

 そこで私は、質問を通じて、以下、見落とされがちな問題点を浮き彫りにしていきたいと考えます。

 いわゆる敵対的買収について、ポイズンピルを初めさまざまな防衛策があります。ただ、敵対的買収がすべて悪だとは言えないにもかかわらず、この点について現在の議論の経過を見ると、経営者にとっての危機的な状況だけが強調され、濫用防止についてさほど言及されていないように思われます。

 この点につき、健全な制度運用と濫用に対する歯どめの調和点をどのようにお考えなのか、それぞれ法務大臣と経済産業大臣にお伺いします。

 また、経営者が敵対的買収の危機にさらされていることをもって、経営者にフリーハンド的な権限を与えることを正当化することにはなりません。近時、我が会社法がアジア圏の企業法制に対して影響を及ぼしつつある現状に照らし合わせても、こうした危機的状況においても、明確な基準による予測可能性の高い法制度の構築が求められるべきです。

 具体的には、敵対的買収の場面で、相手方企業を担保に借り入れた資金で買収を行ういわゆるLBOの場合があります。このLBOは、米国での経験則上、買収後に企業が解体される可能性が高く、企業の解体とともに地域社会そのものを崩壊させてしまうという弊害があることから、何らかの規制が求められるものと考えます。

 そこで、具体的なLBOへの規制、例えば、買収者の資本に対する貸し金比率の規制を行うことをどのようにお考えか、法務大臣にお伺いします。

 株式会社の本質的な特質である株主の有限責任制は、換言すれば、会社倒産時に会社債権者に泣いてもらう仕組みだとも言えます。そこで、倒産リスクを回避する手段として、財産的基盤の弱い会社の出現を事前に阻止しようと、最低資本金制度が平成二年改正で導入されました。しかし、平成十五年に、いわゆる中小企業挑戦支援法によって、いわゆる一円会社の設立が許容されました。

 経済産業省が平成十六年に公表した実態調査からは、同法によって起業が促進されたことはうかがえますが、同時に、経営上の問題点として、資金調達の困難性が浮き彫りになっています。

 そこで、制度運用について、起業が促進されたこと以外に具体的にどのような成果があったのか、経済産業大臣にお伺いします。

 さらに、基本法たる会社法において、最低資本金制度に関して再度方針の転換に至った理由について、法務大臣にお伺いいたします。

 債権者が取引に係るリスクを的確に把握するためには、常日ごろの企業情報、特に計算書類の開示がなされていることが必要です。開示情報の正確性を担保する手段として会計参与制度が導入されようとしています。

 特に、中小企業に限定して考えた場合、会計参与の担い手は税理士が中心になるものと思われますが、当該制度が十分に機能するためには、中小企業に対する啓蒙とともに、会計専門家としての責任の重大性について改めて税理士の皆さんに強く認識をしていただき、果たすべき役割を再確認していただくことが肝要と思われますが、いかがでしょうか。谷垣財務大臣に答弁を求めます。

 小泉総理は以前、いみじくも「人生いろいろ、会社もいろいろ」と述べておられましたが、今次会社法案によれば、一口に株式会社といっても、いろいろな機関形態が選択可能となるようです。ただ、選択肢を知らない利用者は従前の制度をそのまま利用することになってしまいます。枠組みをつくるだけではだめで、それを支える基盤を構築することで、ようやく完成を見るのです。

 会社法案の検討に当たっては制度の定着に向けた施策までもが求められますが、この点について法務大臣、具体的にお答えください。

 郵政民営化で株式会社形態をとる際にどのような機関構造が望ましいとお考えか、民営化によってつくり出される巨大企業において、実効的なガバナンスを達成するのに最良の選択肢は何であるとお考えか、竹中大臣、お答えください。

 改めて申し上げますが、株式会社法制は郵政民営化を論ずる上で避けて通れない問題です。にもかかわらず、本法案を審議する前から、郵政民営化の基本的方向なるものだけがひとり歩きしています。精緻な議論の形跡がないことは、基本的方向はもとより、郵政民営化そのものに対する疑義を惹起させているのです。小泉構造改革は総じて総論明確、各論不明確なのであって、要するに、かけ声ばかりで、制度や政策の先にある個別具体の国民の顔が見えてこないのです。つまりは、血が通っていないんです。(拍手)

 国民の顔を見ながら、具体的な人の顔を見ながら、国民の幸せを追い求める。そのためには地道な作業が必要なんです。そうした地道な作業の先にささやかな幸せが待っている。我々は、その幸せづくりのために、ここにこうして集まっているのではないでしょうか。

 それなのに、この本会議場にこうして空席が目立つのはどうしてなのでしょう。小泉首相がいらっしゃらないのはどうしてなのでしょうか。本法案をこれから審議していくに当たって、真摯で精緻な議論が行われることを希求いたしまして、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 四月五日の本院総務委員会の件及びそれにかかわる与野党合意についてお尋ねがございました。

 国会運営に関する事柄については、与野党間で協議し、合意されたところに従って対応しているところであります。今回の総務委員会の件に関しましては、いろいろな経緯の中で、情報収集面で不十分な点があり、状況を正確に掌握しておりませんでした。大変御迷惑をおかけいたしました件については、まことに遺憾に存じます。今後、的確な情報伝達が行われるように努めてまいります。

 また、政治的責任についてお尋ねがございました。国会に対しましては、誠意を持って答弁に当たり、十分に説明責任を果たしてまいりたいと存じますので、御理解を賜りますようお願い申し上げます。

 郵政民営化に伴い設立される会社の組織形態についてお尋ねがありましたが、郵政民営化後の株式会社は機関構造について会社法等の一般的規制を受けることとなり、特別な規制を設けることは予定しておりません。したがって、各会社がどのような機関構造となるかについては、各会社の目的、営む事業等の性格、ガバナンスのあり方に応じ、経営判断によって最適なものが選択されるものと考えているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣南野知惠子君登壇〕

国務大臣(南野知惠子君) 村越祐民議員にお答え申し上げます。

 まず、敵対的買収への対抗措置の健全な制度運用と濫用に対する歯どめについてお尋ねがございました。

 敵対的買収への対抗措置は、基本的には、それぞれの会社において工夫すべきところでございますが、企業の価値を維持向上させるものでなければならず、専ら経営者の自己保身を目的とするものについては、株主による差しとめや取締役に対する損害賠償請求等の対象となり、このことによって濫用が防止される仕組みとなっていると理解しております。

 次に、LBOに対する規制に関するお尋ねがございました。

 LBOに関する規制として、例えば、資本金に対する一定の比率以上の借り入れを一般的に禁ずることとすれば、多くの企業が資金繰りに窮するおそれがありますし、買収資金に限って規制をするとしても、友好的な買収のための資金調達をも困難にするという弊害を生じさせることになります。したがって、民事法制の観点からは、LBOに対する規制を行うことは考えていません。

 次に、最低資本金制度に関する方針を転換した理由についてお尋ねがございました。

 この制度のうち設立に対する規制となっていた部分を廃止した理由は、平成二年の商法改正により最低資本金制度が導入された後の経済情勢、諸外国の立法動向、近年における起業の促進の必要性の増大などの状況の変化にかんがみて、会社設立の障害となっている最低資本金制度を廃止し、他方で会社の財務状況の開示を充実させるとの方針が適当であるとの結論に至ったことによるものであります。

 最後に、会社法案における新たな制度の定着に向けた施策についてのお尋ねがございました。

 会社法案では、株式会社の機関設計の自由度を拡大することを初めとして、各会社がみずからの実態に最も適した制度を採用できるように選択の幅を広げております。したがって、会社法の成立後は、特に各会社が十分な情報を得た上で適切な選択ができるよう、法律の内容について積極的な広報活動に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 村越議員にお答えいたします。

 会計参与と税理士についてのお尋ねがございました。

 会計参与制度につきましては、主として中小規模の株式会社の計算書類の適正さを担保するための制度として創設することとされておりまして、その担い手として税理士が含まれておりますのは、従来より税理士が中小企業の会計業務に適切に対応してきたことによるものと聞いております。

 今後、税理士が会計参与としてその責務を十分に果たしていくことができますように、今般の会社法案を含めまして、会社法制全般について幅広い知識の習得に努めるとともに、会計参与のあり方についても理解を深めていただきたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 村越議員にお答え申し上げます。

 敵対的買収に対する対抗措置についてのお尋ねでございますけれども、経済産業省といたしましては、敵対的買収に対する防衛策は、経営者の保身となるものではなく、あくまで企業価値を守るためのものとして運用されるべきものであると考えております。

 こうした公正な防衛策のあり方につきまして検討するため、昨年九月から、企業価値研究会を立ち上げ、検討を重ねてまいりました。

 先月七日に公表いたしました論点公開の骨子では、公正な防衛策とするために、防衛策は平時から導入しその内容を開示すること、有事の際の防衛策の扱いについては、取締役の恣意的な判断を排除することなどの工夫を提示しております。

 当省といたしましては、論点公開に寄せられるさまざまな意見を踏まえ、法務省と共同いたしまして、合理的な防衛策に関する指針の策定などを行いたいと考えております。

 次に、最低資本金規制特例についてのお尋ねですが、これまで本制度を利用した会社設立件数は二万二千社を超え、制度創設以来、法人の新規登記件数は着実に増加しております。

 また、二〇〇四年三月に実施いたしました実態調査によりますと、本制度による副次的効果といたしまして、制度を利用した起業により約四万人の新規雇用が創出されたと推定され、また、本制度を利用した女性起業家の割合が二一%となっており、女性の社会進出を促す効果もあらわれております。

 以上のように、財政負担に依存することなく、起業に係る制度のハードルの引き下げにより、我が国経済の活性化にとって好ましい効果が生まれているものと認識しております。(拍手)

議長(河野洋平君) 村越祐民君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。村越祐民君。

    〔村越祐民君登壇〕

村越祐民君 答弁漏れがございましたので、竹中大臣と、また南野大臣、まだ若干不明な点がありましたので、南野大臣に一点お伺いしたいと思います。(拍手)

 まず、竹中大臣。私は、責任をとる場合は辞職するほかはないんじゃないかというお伺いをしました。この点に関してお答えになっていないので、明快にお答えいただきたい。

 我が党は、大臣がおやめになるまで徹底的に追求していくということを改めて宣言をしておきます。(拍手)

 それから、南野大臣。今回の会社法案は、いわばこれまでのかたい会社法からやわらかい会社法へと大きく方向転換をするものだと考えます。選択肢がふえることは歓迎されるにしても、特に中小企業の経営者の皆様は、技術革新であったり営業活動、あるいは資金繰りに奔走する過酷な日々が続いているんです。起業実態に即した改正というのがこの会社法案ですが、中小企業経営者の皆様に十分メリットを知っていただかなければ、この法案の意義も半減してしまうのではないでしょうか。

 大臣の御回答ではそうした点が欠落しているんです。言いかえれば、国民の顔が見えていないと指摘されても仕方がないと思います。少なくとも大臣御自身が、この会社法案が成立した後、それを定着させるための施策としてどのようなことをお考えなのか、アイデアのみでも結構ですので、お答えいただきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 政治責任につきましては、先ほど申し上げましたとおり、国会に対しまして、誠意を持って答弁に当たり、十分に説明の責任を果たしてまいりたいと存じますので、御理解を賜りますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣南野知惠子君登壇〕

国務大臣(南野知惠子君) 村越祐民議員からの追加の御質問でございます。

 積極的な広報活動をというようなことの内容であったかというふうに思っておりますが、法務省はこれまで、新しい法律が制定される都度、法務省のホームページへの掲載、ポスター、パンフレット等による広報、担当者による各種雑誌への解説記事の執筆、主要都市での説明会の開催等を行うほか、実際に制度を利用する関係団体、先ほどお尋ねの中小企業なども含まれておりますが、それらの協力を得て、その周知徹底を図ってきました。

 本法律案につきましても、このようなさまざまな施策を通じて、法律の内容の周知徹底に遺漏のないよう努めてまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 谷口隆義君。

    〔谷口隆義君登壇〕

谷口隆義君 公明党の谷口隆義でございます。(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 御静粛に願います。

谷口隆義君(続) 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました会社法案及び同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして質問を行うものであります。(拍手)

 今回の会社法案は、日本経済が高度成長から安定成長、バブル崩壊に至る中で、日本企業は、企業業績の低迷や不祥事の多発に加え、経済のグローバル化、また金融や雇用の不安など新しい構造問題を抱えることになり、従来の商法では対応が困難となり、規制緩和の流れの中で、大幅な自由化を進めつつ新たなルールを整備したものであります。

 具体的には、その表記の平仮名・口語化を図るのみならず、会社の実態に応じた会社区分の見直しなど、実際の利用者の立場を意識した抜本的な改正が行われており、高く評価したいと思っております。

 私からは、利用者の立場を意識した改正という視点から、会社法案の内容についてお伺いをいたします。

 これまでの会社法制の改正は、大規模会社の制度改正に重きが置かれていた感が否めません。しかしながら、会社法制の最大のユーザーは紛れもなく中小企業であり、中小企業こそが我が国経済の活力の源泉であり、雇用の大きな担い手でもあります。我が国経済のさらなる回復を望むのであれば、中小企業の自由で活発な事業活動を後押しする方向での改正は不可欠であります。

 今回の会社法案では中小企業にどのような整備を行い、その改正は中小企業にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。南野法務大臣、中川経済産業大臣にお尋ねをいたします。

 利用者の立場に立った改正ということで忘れてはならないのが、既存の法律を利用していた会社に新たな負担を生じさせないということであります。今回の会社法案では株式会社と有限会社が統合されることになり、既存の有限会社が一体どうなるのかが重要な問題になるわけであります。

 この点に関しまして、どのような経過措置が設けられているのでありましょうか。また、例えば純資産がマイナスといったような有限会社の場合、統合に当たってどのような対応をお考えでありましょうか。南野法務大臣にお尋ねをいたします。

 次に、仮称合同会社、LLCと申しますけれども、LLCについてお伺いをいたします。

 これは、創業の活発化、情報・金融・高度サービス産業の振興、共同研究開発、産学連携の促進を図るということで出資者の有限責任が確保された新しい事業体の創設であります。

 機動的、弾力的に経営を行い得るという観点からは、企業行動を一層活性化するもので評価できるものでありますが、一方で、アメリカにおける粉飾事例エンロンに見られるように、本体の損失を数多くの特別目的会社、SPCといいますけれども、SPCにつけかえをし、連結範囲に入れないことにより粉飾をするような悪用例があったわけであります。

 今回のLLC、また、現在法案審査中の組合形態の有限責任事業組合、LLPにおいても同様の懸念があるわけでございます。連結範囲を考える場合、新しい事業体ということでどの範囲までが連結グループに含まれるのかを検討する必要があると考えます。伊藤金融担当大臣はどのようにお考えなのか、御答弁をお願いいたします。

 次に、企業買収についてお伺いをいたします。

 我が国企業社会にあっては、株式持ち合いの解消などによる浮動株の増加や外国人持ち株比率の増大に伴い、敵対的買収に対する懸念が増大いたしております。先ごろのニッポン放送株式をめぐるライブドアとフジテレビの買収劇は国民の大きな関心を呼んでおり、当該企業にかかわる皆様も心中穏やかならざるものがあると思うわけであります。

 現行法においても、株主の利益を損なわない限り、敵対的買収に対する防衛策は可能であるわけでありますけれども、今回の会社法案では、これが現行法と比べてどのように変わるのでありましょうか。南野法務大臣にお伺いをいたします。

 また、敵対的買収防衛策についてどのような検討が行われているのでありましょうか。中川経済産業大臣にお伺いをいたします。

 改正会社法の中における企業観についてお尋ねをいたします。

 企業は一体だれのものなのかという議論があります。株主のものという考え方もあり、また、先ほどから出ておりますけれども、企業の利害関係者、従業員、債権者、地域住民などのステークホルダーのものという考え方もあるわけであります。

 我が国では、企業とは社会的実在であるという考え方が従来は強かったように考えるわけであります。企業を商品のごとく高値で売るということが何の抵抗もなく行われることがあるわけでありますけれども、企業の社会的存在という視点を見逃すわけにはまいりません。会社法案では、一体どのような理念のもとで考えられているのでありましょうか。南野法務大臣にお尋ねをいたします。

 会社法制は、現代社会において欠かせない存在である会社を規律する基本法に位置づけられている法制度であり、その改正は、会社法の直接の利用者のみならず、会社と関係を有するあらゆる人々に影響を及ぼすものであります。国際社会の中での我が国企業のあり方が問われ、また経済社会の変化に対応した企業行動が求められる時代にあって、本法案の重要性を十分認識すべきであると申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣南野知惠子君登壇〕

国務大臣(南野知惠子君) 谷口隆義議員にお答え申し上げます。

 まず、会社法案における中小企業に関する改正内容についてのお尋ねがございました。

 会社法案では、会社制度の利用者の大半を占める中小企業の視点に立った規律の見直しを行うという観点から、株式会社と有限会社の会社類型の統合、最低資本金制度の見直し、機関設計の規律の柔軟化、会計参与制度の創設等の改正を行うこととしております。

 次に、既存の有限会社についての経過措置についてお尋ねがございました。

 株式会社と有限会社とが統合されることにより既存の有限会社に新たな負担を強いるべきではないとの観点から、既存の有限会社については、純資産がマイナスである場合を含めてそのまま存続し、商号その他の有限会社法に特有の規律の実質が維持されるような経過措置を設けております。

 次に、敵対的買収に対する企業防衛策についてどのような改正があるのかとのお尋ねがございました。

 会社法案では、普通株式をいわゆるポイズンピルつきの種類株式に変更する手続を設け、公開会社が黄金株だけを譲渡制限株式にすることを認めるなどの改正を行うことにより、諸外国で一般的なポイズンピルや黄金株等を用いた防衛策を導入しやすくしております。

 最後に、会社法案における企業観についてのお尋ねがございました。

 会社は、株主による出資を存続の基盤としているという意味で、株主のものであると同時に、議員御指摘のとおり、取締役の意思決定により、従業員、取引先を初めとする会社の利害関係者のために活動する社会的存在であるという側面もございます。会社法案では、会社を単なる商品ではなく、経済を支える基本的な構成単位ととらえた上で、各利害関係者の利益に十分配慮した法制を整備しております。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 谷口議員にお答えを申し上げます。

 まず、会社法の改正が中小企業に与える影響についてのお尋ねでございますが、今回の改正事項の中で、特に中小企業に関連が深いものとして、株式会社制度と有限会社制度の統合、株式会社における機関設計の柔軟化、会計参与制度の導入などが挙げられます。

 このような改正は、中小企業の効率的な経営や信用力の向上に資するものであり、経済産業省といたしましても、その円滑な普及に努めてまいりたいと考えております。

 敵対的買収の防衛策についてのお尋ねでございますけれども、経済産業省では、昨年九月から、企業価値研究会を立ち上げ、企業価値向上、グローバルスタンダード、内外無差別、選択肢の拡大という四つの視点から、公正な防衛策のあり方について検討を重ねてまいりました。

 先月七日に公表いたしました論点公開の骨子では、公正な防衛策とするため、防衛策は平時から導入しその内容を開示すること、有事の際の防衛策の扱いについて、取締役の恣意的な判断を排除することなどの工夫を提示しております。

 当省といたしましては、論点公開に寄せられるさまざまな意見を踏まえ、法務省と共同して、合理的な防衛策に関する指針の策定などを行いたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣伊藤達也君登壇〕

国務大臣(伊藤達也君) 谷口議員にお答えをさせていただきたいと思います。

 LLCやLLPの連結の範囲についてお尋ねがございました。

 証券取引法に基づく連結財務諸表においては、親会社が他の会社等を支配している場合、これらを子会社として連結しなければならないとされており、LLCやLLPについても、親会社が支配していると認められる場合には連結されることになります。

 LLCやLLPは、組織形態が多様であることが予想されるため、支配しているか否かの判定に当たっては、実態に応じた検討を行う必要があるものと考えます。今後は、LLCやLLP等をめぐる経済取引の動向等を注視し、企業会計基準委員会と連携しながら、適正な会計処理が行われるよう努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表して、会社法改正案について質問します。(拍手)

 今、日本の企業に問われているのは、国民に衝撃を与えたさまざまな不祥事の発生原因を明らかにし、コンプライアンスを初め、企業の社会的責任を明確にする法整備であります。

 この一年、コクド、西武鉄道による商法違反、証券取引法違反事件、JFEの汚水排水事件、三菱地所、三菱マテリアルの土地汚染隠ぺい事件、三菱ふそうトラックによるたび重なるリコール隠し、カネボウの粉飾決算など、重大な企業犯罪が繰り返されております。

 このような行為が、時には国民の命を奪い、健康をむしばんでおります。それだけでなく、企業そのものの存立基盤を揺るがせ、日本経済再生の障害にさえなっているのであります。

 この事態を克服するため、今なすべきことは、企業経営の透明性と規律を高めること、国民や従業員による監視を強めることであり、そのことを通じて企業に社会的責任を果たさせることではないでしょうか。初めに、竹中経済財政政策担当大臣の答弁を求めます。

 提案された会社法案は、果たしてこれらの問題にこたえるものになっているのでしょうか。

 第一は、経営者の自由度拡大と社会的責任の問題です。

 今回の会社法改正では、これまで会社法制が課してきたさまざまな規制を大幅に緩和するとともに、利益配当決定の権限を株主総会から取締役会に移すなど、経営者の経営の自由度を大幅に拡大しています。また、これまで無過失責任とされていた取締役の責任を過失責任に後退させ、さらに、経営者の責任追及の手段とされていた株主代表訴訟のハードルを引き上げる改悪が行われています。

 これでは、企業犯罪が減るどころか、逆に増大するなどの弊害が起こってくるのではありませんか。法務大臣の答弁を求めます。

 第二は、グローバル化への対応です。

 求められているのは、集団訴訟やディスカバリー制度など、アメリカにおいて一般投資家が事後的に経営者の責任を追及するために有効に機能している制度であります。ところが、日本経団連など経営者団体の強い反対によって実現しなかったのであります。

 アメリカでは、エンロンやワールドコム事件を契機に、不十分ながら、不正を働いた経営者への罰則強化、監査法人への監視強化、情報公開の強化などを柱とした企業改革法を成立させています。

 ところが、日本では、大和銀行事件など株主代表訴訟による巨額の賠償判決を契機に、企業経営者の責任を問うどころか、経営者のなり手がいないなどとして、取締役の責任を引き下げる商法改悪を行いました。

 さらに、今回の会社法案によって、日本において経営者の行動を事後チェックする事実上唯一の手段として有効に機能してきた株主代表訴訟に厳しい要件を持ち込み、取締役の責任を軽減しようとしております。

 グローバル化のかけ声で、財界にとって都合のよいところだけを取り入れ、経営への牽制を減少させ、どうして企業犯罪を減らすことができるのでしょうか。せめて当面、アメリカ並みに経営者へのきちんとしたチェック体制を確立すべきではありませんか。法務大臣の答弁を求めます。

 第三は、企業グループをめぐる問題です。

 コクドと西武鉄道のように、親会社と子会社、持ち株会社とグループ企業の不透明な関係が明らかになるなど、企業グループの責任の所在が問われております。

 日本の企業法制は、一方で、グループ全体としての経営判断、連結会計、連結納税など経営におけるグループ支配を認めながら、他方で、企業責任については親会社と子会社は別とされています。そのため、例えば親会社によって子会社が破産させられても、子会社の債権者や労働者は親会社の責任を問うことはできないという理不尽な仕組みになっております。

 欧米では、子会社に問題があれば親会社の責任を問う会社結合法制が当然のルールとなっています。なぜ、今回の改正でこうした制度をとらなかったのでしょうか。法務大臣の答弁を求めます。

 第四は、大企業の租税回避の問題です。

 この間、ハンナン、武富士などが巨額の脱税で摘発され、コクドは法人税を一円も払わず、堤義明氏の膨大な所得隠しが指摘されています。こうした巨額脱税、租税回避がなぜ許されたのか。国民は、大企業の租税回避疑惑の真相究明と改善を求めております。

 法制上、行政上どこに問題があったのか、どう改善していくのか。谷垣財務大臣の答弁を求めます。

 今回の会社法改正によって、合同会社、LLCとか、有限責任事業組合、LLPといった新たな会社類型が創設されようとしております。

 このことについて、法制審議会部会長の江頭東大教授は、経済界としては税制上のパススルーさえできればいいのであって、必ずしも新しい会社類型が必要だったわけではない、規制が緩いということで、むしろ大企業が子会社をつくるのに使われるのではないかと指摘をしております。

 新しい会社類型が大企業の課税回避のために使われることになりはしませんか。財務大臣の答弁を求めます。

 企業のあり方を考える際、避けて通れないのは政治献金の問題であります。

 企業と株主の関係から見て、営利を目的とする企業の経営者が勝手に会社の財産を特定政党に献金すれば、それは本来、目的外の行為であって、株主の利益を侵害する背任行為となります。他方、企業が利益追求のために献金し、その見返りを求めれば、それはわいろそのものであります。

 このような企業献金を野放しにしてきたことが、特定の企業、業界と政治の腐敗、政官業癒着を生み出す原因の一つとなったのであります。

 しかも、国民との関係で見れば、選挙権を持たない企業が金の力によって政治を動かすことが、国民の参政権を著しく侵害することになるのは明らかであります。

 企業・団体献金の禁止が、日本社会の中で企業が健全に発展する上で不可欠の緊急課題であることを強く指摘しておきます。(拍手)

 最後に、竹中大臣に質問をいたします。

 一昨日の本会議で、あなたは、与野党合意の上で、私が出席する必要があるとの判断がなされたものについてはきちんと対応するが、総務委員会ではそのような合意がなされたとは、私は承知しておりませんと答弁をいたしました。

 しかし、五日の総務委員会では、竹中大臣の出席について与野党が合意し、タイムテーブルまで作成をされていたのであります。

 当日になって突如欠席することは、議会軽視も甚だしく、その上本会議で、事実と全く異なる答弁をし、本日また、情報収集が不足していたなどと開き直るに至っては、国会を二重三重に愚弄するものと言わなければならず、断じて容認できるものではありません。(拍手)

 竹中大臣に、本会議答弁の撤回と明確な謝罪を求めるとともに、どう責任をとるのか明らかにすることを求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣南野知惠子君登壇〕

国務大臣(南野知惠子君) 佐々木憲昭議員にお答え申し上げます。

 まず、会社法案では、大幅な規制緩和により弊害が生ずるのではないかというお尋ねがございました。

 御指摘の利益配当決定権限についての改正は、利益配当の決定手法に関する株主側の選択肢を拡大するものでありますし、取締役の責任についての改正は、近代私法の原則である過失責任主義を採用することにより、その合理化を図るものでございます。

 さらに、株主代表訴訟についての改正は、株主全体の利益を図るという制度の本来の趣旨にのっとって制度の一層の実効化を図るものでございます。

 したがいまして、これらの改正により、弊害が生ずることはないものと考えております。

 次に、会社法制について、経営者への厳しい規律を設けるべきではないかとのお尋ねがございました。

 会社法案では、会社経営が健全に行われるようにするため、すべての株式会社において決算公告を義務づけることや、すべての大会社において取締役等の職務執行の適正を確保する体制の構築を義務づけることなどの改正を行っているところでございます。

 最後に、親会社が子会社に問題を生じさせた場合の親会社の責任に関するお尋ねがございました。

 親会社の違法な行為によって損害を受けた子会社の債権者や従業員は、民法や会社法案の規定により、親会社やその取締役に対して損害賠償を請求することができますので、会社法案では、その保護のための特別な制度は設けておりません。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 佐々木憲昭議員にお答えいたします。

 まず、大企業の租税回避といった問題についてお尋ねがありました。

 個別の事案に関してはお答えをいたしかねますが、法制面で申しますと、企業の租税回避問題等については、平成十七年度の税制改正におきましても、組合損失を利用した租税回避行為への対応措置を講ずるなど、これまでも適切な対応を行ってきたところでございます。

 執行面では、企業の租税回避問題等に対しては、これは厳正な態度で臨んで、税務調査を通じて適正、公平な課税の実現に努めているところでございます。

 今後とも、制度、執行の両面で連携を図りながら、租税回避行為の防止と適正な課税の実現に努めてまいります。

 それから、新しい会社類型が大企業の課税回避のために使われることになるのではないかというお問いかけでございました。

 会社法案によって創設されます合同会社制度については、創業段階のベンチャー企業あるいは合弁会社その他、少人数により事業を行うための会社に適した新たな会社類型として、私法上の観点から創設されるものと承知しておりまして、その趣旨に沿った活用を期待しております。

 この合同会社の課税関係については、その法的位置づけや他の会社形態とのバランスなどを踏まえながら、御指摘のような租税回避に用いられることのないよう、適切な課税関係を構築していく必要があると考えております。

 また、そういう課税関係を踏まえまして、国税当局においても、適正、公平な執行に努めてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 佐々木議員にお答え申し上げます。

 企業の法令遵守経営についてのお尋ねがございました。

 健全な企業経営は、消費者を初めとする社会からの信頼と共感が基本であります。近年の企業不祥事の多発を背景として、事業者に対する消費者の信頼が揺らいでおります。このような事態を放置すれば、我が国の市場経済そのものへの不信にもつながりかねません。

 このため、昨年改正された消費者基本法では、事業活動に関して、事業者みずからが遵守すべき基準を作成することなどにより消費者の信頼を確保するよう努めることが、事業者の責務として新たに規定されたところでございます。

 また、労働者が事業者の犯罪行為や法令違反行為を通報しても、解雇等の不利益な取り扱いがなされないように保護するとともに、事業者の法令遵守を促すことを目的として、公益通報者保護法が制定されたところでございます。

 企業が法令遵守を徹底し、社会的責任を果たしていくことで、国民生活の安全、安心が確保されるよう、今後とも、これらの法律に基づく施策を着実に実施してまいる所存でございます。

 四月五日の本会議における私の答弁についてお尋ねがございました。

 国会運営に関する事柄については、与野党間で協議し、合意されたところに従って対応しているところであります。今回の総務委員会の件に関しましては、いろいろな経緯の中で、情報収集面で不十分な点があり、状況を正確に掌握しておりませんでした。大変御迷惑をおかけいたしました件について、まことに遺憾に存じます。今後、的確な情報伝達が行われるように努めてまいります。

 また、国会に対しまして、誠意を持って答弁に当たり、十分に説明責任を果たしてまいりたいと存じますので、御理解を賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣    南野知惠子君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       農林水産大臣  島村 宜伸君

       経済産業大臣  中川 昭一君

       国土交通大臣  北側 一雄君

       国務大臣    伊藤 達也君

       国務大臣    竹中 平蔵君

 出席大臣政務官

       法務大臣政務官 富田 茂之君


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