衆議院

メインへスキップ



第27号 平成17年5月26日(木曜日)

会議録本文へ
平成十七年五月二十六日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十三号

  平成十七年五月二十六日

    午後一時開議

 第一 独立行政法人住宅金融支援機構法案(内閣提出)

    …………………………………

 一 郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時三十二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

梶山弘志君 日程第一は延期されることを望みます。

議長(河野洋平君) 梶山弘志君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一は延期することに決まりました。

     ――――◇―――――

 郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣竹中平蔵君。

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) このたび、政府から提出いたしました郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の六法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 郵政民営化は、民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが、より自由で活力ある経済社会の実現に資することにかんがみ、内外の社会経済情勢の変化に即応し、日本郵政公社(以下「公社」と申し上げます。)にかわる新たな体制を確立するものであり、地域社会の健全な発展及び市場に与える影響に配慮しつつ、公社が有する機能を分割し、その機能を引き継ぐ新たな株式会社を設立するとともに、一定の期間、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置を講ずるものであります。これにより、経営の自主性、創造性及び効率性を高め、公正かつ自由な競争を促進するとともに、多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便の向上、資金のより自由な運用を通じた経済の活性化を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とするものであります。この郵政民営化を実現するため、これら六法案を提出するものであります。

 それぞれの法律案の概要について、順次御説明申し上げます。

 初めに、郵政民営化法案についてであります。

 第一に、郵政民営化の基本的な理念及び方針並びに国等の責務を定めております。

 第二に、郵政民営化を推進するとともに、その状況を監視するため、政府に、郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会を平成二十九年三月三十一日まで設置することとし、郵政民営化委員会が、三年ごとに、郵政民営化の進捗状況について総合的な検証を行うこと、郵政民営化推進本部がその検証等について国会に報告すること等郵政民営化推進本部及び郵政民営化委員会の所掌事務、組織等について定めております。

 第三に、準備期間中の公社の業務について、国際貨物運送に関する事業を行うことを主たる目的とする会社に出資することができる等の特例等を定めております。

 第四に、日本郵政株式会社を準備期間中に設立することとし、日本郵政株式会社に、公社の業務等の承継に関する実施計画を作成させ、この実施計画に関する事項を決定する経営委員会を設置することその他の準備期間中の業務の特例等並びに移行期間中の郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式の保有及び完全処分等の業務の特例等について定めております。

 第五に、郵便事業株式会社、郵便局株式会社及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構(以下「機構」と申し上げます。)を平成十九年四月一日に設立することとし、その設立及び移行期間中の業務の特例等について定めております。

 第六に、一般の商法会社として郵便貯金銀行及び郵便保険会社を日本郵政株式会社に設立させるとともに、銀行法及び保険業法の特例等として、郵便貯金銀行及び郵便保険会社がそれぞれ銀行業の免許及び生命保険業免許を平成十九年四月一日に受けたものとみなすことを定めるほか、預入限度額、保険金額等の限度額、業務範囲等について適正な競争関係等を確保するための必要な制限を加えるとともに、民営化に関する状況に応じ、移行期間中にこれらの制限を解除し、自由な経営を可能としていくこと等について定めております。

 第七に、公社の業務等の日本郵政株式会社等及び機構への承継に関する基本計画、その承継を円滑に行うための税制上の措置その他の所要の規定を設けております。

 次に、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案についてであります。

 いずれの法案も会社の目的、業務の範囲等について定めるものでありますが、まず、日本郵政株式会社につきましては、第一に、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社の発行済み株式の総数を保有し、両社の経営管理を行うこと並びに両社の業務の支援を行うことを目的とすることを定めております。

 第二に、政府は、常時、日本郵政株式会社の発行済み株式の総数の三分の一を超える株式を保有していなければならないことを定めております。

 第三に、日本郵政株式会社は、郵便事業株式会社及び郵便局株式会社が発行する株式を引き受けるとともに、両社の発行済み株式の総数を保有していなければならないこと、両社の経営の基本方針の策定及びその実施の確保並びに両社の株主としての権利の行使の業務を行うほか、その目的を達成するために必要な業務を行うことができることを定めております。

 郵便事業株式会社につきましては、第一に、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むことを目的とすることを定めております。

 第二に、郵便事業株式会社は、郵便の業務及び印紙の売りさばきの業務を営むほか、お年玉付郵便葉書等及び寄附金付郵便葉書等の発行の業務を営むことができるとともに、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、これらの業務以外の業務を営むことができることを定めております。

 郵便局株式会社につきましては、第一に、郵便窓口業務及び郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことを目的とすることを定めております。

 第二に、郵便局株式会社は、郵便事業株式会社の委託を受けて行う郵便窓口業務及び印紙の売りさばきの業務を営むほか、地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律に定められた事務に係る業務、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務を営むことができるとともに、これらの業務の遂行に支障のない範囲内で、これらの業務以外の業務を営むことができることを定めております。

 第三に、郵便局株式会社は、郵便局の設置について、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならないことを定めております。

 さらに、郵便事業株式会社に関し、第三種郵便物、第四種郵便物に係る業務等であって一定の要件を満たす社会貢献業務に関する規定を、郵便局株式会社に関し、地域住民の生活の安定の確保のために必要であること等の要件を満たす地域貢献業務に関する規定を、それぞれ設けるとともに、日本郵政株式会社は、社会貢献業務または地域貢献業務の実施に要する費用に充てる資金を郵便事業株式会社または郵便局株式会社に対し交付するものとし、その財源を運用によって得るために、日本郵政株式会社に、社会・地域貢献基金を設けることを規定しております。

 また、これら三会社に対する監督に関する規定その他所要の規定を設けております。

 次に、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案についてであります。

 この法律案は、機構が、公社から承継した郵便貯金及び簡易生命保険を適正かつ確実に管理し、これらに係る債務を確実に履行し、もって郵政民営化に資することを目的とすることのほか、機構の役職員、業務、財務、会計等について定めております。

 最後に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案についてであります。

 この法律案は、郵政民営化法、日本郵政株式会社法、郵便事業株式会社法、郵便局株式会社法及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法が施行されることに伴い、郵便貯金法、簡易生命保険法、日本郵政公社法等十三の関係法律を廃止するほか、郵便法について郵便認証司の制度を設けるなど百五十八の関係法律について規定の整備等を行うとともに、所要の経過措置を定めるものであります。

 これら六法案は、一部を除き、平成十九年四月一日から施行することとしております。なお、システム対応上の問題がある場合には民営化の実施時期を延期できるよう、所要の規定を設けております。

 以上が、郵政民営化法案等の六法案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。柳澤伯夫君。

    〔柳澤伯夫君登壇〕

柳澤伯夫君 自由民主党の柳澤でございます。(拍手)

 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました法案につきまして質問をするのでありますが、民主党・無所属クラブ及び社会民主党・市民連合の議員の出席が、田中眞紀子議員を除きありません。(拍手)極めて遺憾であります。両会派の諸君には、一刻も早く国会審議に復帰されるよう強く求めます。

 それでは、郵政民営化法案ほか関連する五法案につきまして、小泉総理大臣及び関係の大臣に御質問申し上げます。

 小泉総理は、御就任以来、我が国の社会経済の再活性化のため、官から民へ、中央から地方へを基本方針とする構造改革を積極的に進めてこられました。その中にあっても、本日の議題である郵政事業の民営化は、総理が改革の本丸と呼ばれるように、長年みずからの胸に温めてこられ、また、現に総理として並々ならぬ御決意と情熱を持って取り組んでおられる最重要な政策課題であります。

 他方、郵政事業は、明治の初頭、先覚者前島密が、当時この分野で既得権を持っていた飛脚の人々を説得し、あるいは庄屋、名主や本陣など当時の地方名望家の善意に頼んで、粒々辛苦のうちに構築し、今なお国家財政と国民生活に深く根をおろした公共のシステムの一つであります。今回の法案による改革は、このような郵政事業百三十年の歴史を転換しようとするものであり、まさに画期的な改革ということになります。

 そうした意義を持つ改革だけに、この郵政民営化関連六法案をめぐっては、自由民主党内におきます審議を振り返ってみましても、論議は広く、深く、激しいものとなりました。

 私は、ここに国会審議が始まるに当たり、これまで党内論議において提起された疑問や懸念のうち、幾つか代表的なものを取り上げ、改めて政府の見解をただしたいと思います。政府におかれましては、今後の国会審議を通じて、与野党議員からの各般の質疑に対し、真摯に、かつわかりやすく説明を行い、広く国民の理解と協力を求めていくことが肝要であることをまず指摘しておきたいと思います。

 質問は、まず、いわゆるそもそも論についてであります。

 郵政三事業は、全国あまねく設置された郵便局を通じて、基本的な通信手段や金融サービスを提供しておりますが、これらのサービスに対して、国民の多くはかなり高い満足度を持っている状況にあります。また、郵政事業は、公社になって以降、さまざまな経営の改善が行われ、その結果、直近の二年度は各事業とも黒字になり、今現在、経営に困難が生じているわけではありません。こうした現況にありますため、郵政民営化については、その必要性が国民にわかりにくく、世論調査等を見ても、国民の関心は必ずしも高くはありません。

 私は、政治の使命は、先見性や洞察力を持って国民より一歩、あるいは少なくとも半歩先を進むことだと信じるものであります。そして、この使命に照らし、行うべき改革は万難を排しても行わなければならないと考えておりますが、このような観点から、総理に改めて、郵政民営化の目的と必要性について明確な御説明をお願いしたいと思います。

 そもそも論としてもう一つあります。それは、今なぜ民営化する必要があるのか、なぜ今なのかという問題であります。

 日本郵政公社法においては、公社は、四年を一期とする中期経営目標とそれを達成するための中期経営計画をつくり、総務大臣は、目標期間終了時に、その達成状況を評価することになっております。このような法的な枠組みの中に公社があることを考えますと、発足後まだ一期も終わっていない段階で、なぜ民営化を行うことになるのか。

 総理御自身は、従来から、公社化は民営化の一里塚であり、民営化こそ真の目標だとの考え方を明らかにしてこられましたが、ここに改めて、なぜ今民営化に取り組むかについて、総理から直接の御説明をお聞かせいただきたいと思います。

 次に、郵政民営化法案の内容についての質問に移ります。

 第一は、国民の立場、より具体的には利用者の立場からの質問であります。

 その第一は、郵便局が今までどおり維持されるのかの問題です。郵便局が国営事業から営利を目的とする民間企業に変われば、採算がとれない過疎地の郵便局などはすぐに廃止されてしまうのではないか。郵便局が地域で唯一の金融機関であるような過疎地で郵便局が廃局になれば、地域住民の生活には多大な不便が生じます。政府提出法案においては、郵便局の存続を確保するためにどのような担保が置かれているのか、お尋ねをいたします。

 二つ目は、すべての郵便局における金融サービスの確保の問題です。

 政府案では、郵便貯金銀行と郵便保険会社は、その窓口業務を郵便局会社に委託することになっております。そうなると、貯金銀行、保険会社とも不採算地域の郵便局からは委託業務を引き揚げてしまうのではないか、郵便局はあっても、例えば貯金は取り扱わないといったものができてしまわないか。この懸念に対して、政府提出法案ではどのような手だてがなされているのか明らかにされたいと思います。

 三つ目は、現在行われている三種、四種郵便やひまわりサービスが継続されるかの問題です。

 これらのサービスは、公共の目的のため、採算を度外視して提供されております。民営化によってこれらのサービスが切り捨てられるとすれば、到底国民の支持は得られないでありましょう。政府提出法案ではこの問題はどう扱われているか、お答え願いたいと思います。

 第二は、日本郵政公社で働く皆さんの立場からの質問です。

 その一つは、民営後の四つの会社が健全に経営できるのかの問題であります。

 現在の郵政公社は、三事業一体で経営しているからこそ健全な経営ができていると言われます。地方の郵便局では、一人の局員が、あるときは郵便業務、別のときには貯金事務と、一人で何役もの仕事を柔軟にこなして、効率を上げています。分社化された場合、このような仕事の融通性がなくなって、効率が悪くなり、経営が悪化するのではないか。

 また、郵便局会社の職員の立場からは、少なくとも郵便とは今後とも一体でいたい、郵便だけは自分たちの本来業務としてやり続けたい、なぜ郵便と窓口とを分けるのかという現場の実感からする切実な声も伝えられております。

 そもそも、何のために四分社化する必要があるのか、また、各社の経営は健全に維持されるのか、これらについて政府の考え方を御説明いただきたい。

 二つ目は、現在の公社職員の雇用確保の問題であります。いわゆる郵政民営化五原則の一つとして、公社職員の雇用に配慮することがうたわれました。政府提出法案においては、この点はどのように担保されているのか、お尋ねいたします。

 以上五点については、郵政民営化担当大臣に御説明をお願いいたします。

 さて第三は、金融市場に関連する質問であります。

 その一つは、郵便貯金銀行の活動が既存の金融機関に対してどういう影響を与えるかであります。郵便貯金銀行は、どのようなビジネスモデルを基本に運営されるのでしょうか、本格的に貸出業務にも進出するとすれば、オーバーバンキングが指摘される現在の金融市場において混乱要因にならないのでしょうか、特に体力の弱い地方の金融機関に不安を招くようなことはないのか、懸念する向きが少なくありません。このような懸念に対して、金融行政を担当される立場からはどのように考えているか、金融担当大臣の御所見をお伺いいたします。

 最後は、国債市場への影響です。

 今後我が国が財政健全化を促進するとしても、我が国の公的部門は今後十年以上にわたり、借換債を含め、かなりの規模で国債などを発行し続けなければならないと見込まれます。郵政事業がこれまでどおり円滑に国債などを引き受けてくれないとなれば、その消化に支障が出ることはないのか。この懸念に対して、政府はどのように考えているか、財務大臣に御説明いただきたいと思います。

 以上、郵政民営化法案について基本的な問題を質問いたしました。政府の御答弁により、国民の皆さんの御理解が深まり、郵政事業が新しい枠組みのもとで、国民の期待にこたえるべく新たな歴史を切り開いていくことを期待して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 柳澤議員にお答えいたします。

 郵政民営化の目的、必要性、なぜ今民営化なのかという点についてのお尋ねでございます。

 郵政事業については、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も、民間企業が自由な経営のもとで同様のサービスを提供しており、公務員でなければできない事業ではなく、民間による運営が十分可能であると考えております。

 他方、現在の公社制度には、郵便局では郵便、郵貯、簡保しか取り扱えない等、業務範囲が限られるため、環境変化にも柔軟に対応できないこと、法人税等が非課税であること等、民間企業と対等な競争条件となっていないこと等の問題点があるところであります。

 このため、郵政民営化を実現することにより、国の関与をできるだけ控え、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とすることにより、質の高い多様なサービスが提供されるようにしていくとともに、郵便局を通じて国民から集めた約三百四十兆円もの膨大な資金を官から民に流す道を開く、約四十万人の郵政公社の職員が民間人になるとともに、従来免除されていた税金が支払われること等により財政再建にも貢献するなど、小さな政府の実現に資する等のメリットを引き出し、構造改革を一層前進させ、国民の利便性の向上が図られるようにしていくものであります。

 また、現在の郵政事業を取り巻く内外の経済社会環境は、通信・輸送手段の発達や金融の技術革新などにより、劇的に変化しております。

 このような環境変化に適切に対応するためには、速やかに民営化することが必要でありますが、最終的な民営化に至るまでには準備期間に加え相当年数の移行期間が必要であること等を考慮すると、直ちに民営化に取り組む必要があると思います。その実現に当たっては、過疎地を初め必要な郵便局ネットワークが維持されるようにするなど、国民の利便性には十分配慮することとしております。

 今回の郵政民営化関連六法案は、以上のような考え方に基づいて取りまとめましたが、その提出に当たっては、与党との間で精力的な調整を行いました。この過程における柳澤議員を初め関係者の皆様の御尽力に、心から御礼を申し上げます。今後、この法案について御審議いただき、速やかな成立を期待しております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 答弁に先立ちまして、郵政民営化関連法案の国会提出に当たりまして、政府・与党間の調整に御尽力をいただきました柳澤議員を初めとする関係者の皆様に、心から御礼を申し上げる次第でございます。

 さて、柳澤議員からは五問の質問をいただいております。

 まず、郵便局を維持するためにどのような担保が置かれているのかというお尋ねでございます。

 郵便局は、現在、郵便、郵便貯金、簡易保険の業務だけでなく、年金、恩給、公共料金の受け払いなどの公共的業務でありますとか、住民票の写し等の交付など地方公共団体からの受託事務など、幅広い業務を行っております。地域社会において大変重要な役割を果たしているというふうに認識をしております。

 郵政の民営化は、全国津々浦々に置かれている郵便局のこのような社会的な機能を維持しながら、より便利なサービスが地域住民に対して提供されるようにすることを目的とするものでございます。

 このため、今回の法案におきましては、与党との合意を踏まえまして、郵便局の設置について、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけることとしております。具体的な設置基準は省令で定めますが、特に過疎地については、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定する考えでございます。地域住民の利便性には十分配慮することとしております。

 郵政民営化について、郵便局における金融サービスの確保のための法律上の手当てについてお尋ねがございました。

 貯金、保険のサービスについては、法律上、ユニバーサルサービスの提供義務は課さないものの、郵便貯金銀行、郵便保険会社に対して銀行免許、生命保険業免許を法律によりみなし付与するに当たりまして、移行期間をカバーする安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを免許の条件として付すことにしております。これによりまして、郵便貯金銀行、郵便保険会社の郵便局会社への業務委託が担保されます。郵便局において貯金・保険サービスが提供されることになるというふうに考えます。

 郵便貯金銀行、郵便保険会社にとりまして、郵便局ネットワークは極めて重要でございます。また、両社にとって、新たに自前の店舗網や保険募集体制を整備するには膨大なコストがかかります。一方、郵便局会社にとっては、両社からの収入がその大宗を占めるものと見込まれます。したがいまして、移行期間終了後においても、全国一括の代理店契約が引き続き維持されるものと考えますが、この点についても、承継計画に対する主務大臣の認可の枠組みの中で、契約が十年以上の長期にわたり安定的、継続的であることを担保することができることとしております。

 仮に、郵便局会社にとって、ネットワークの一環としての重要性が低くなって、また採算性の面から、貯金・保険サービスの継続が困難となる郵便局が過疎地など一部に生じたとしても、これらのサービスが地域にとって必要性が高く地域貢献業務に当たる場合には、郵便局会社が社会・地域貢献基金から資金交付を受けることになり、これによって、これらの郵便局における貯金・保険サービスの提供が確保されるというふうに考えております。

 現在行われている第三種、第四種郵便やひまわりサービスは継続されるのかというお尋ねがございました。

 郵便事業につきましては、国民生活に密着した基礎的な通信手段として重要な社会的機能を有してきたところでございます。民営化後の郵便事業会社も引き続きこのような機能を有するサービスを提供していくことが当然必要であるというふうに考えております。

 第三種、第四種郵便物につきましては、社会文化の発展や福祉の増進等という観点から、現在、政策的低料金とすることを義務づけております。民営化後も、改正郵便法案第六十七条第四項によりまして、郵便事業会社に現在と同様の義務づけを行うこととしております。

 さらに、郵便事業株式会社法案の第四条におきまして、特に第三種、第四種郵便物のうち盲人用の点字、録音物等やひまわりサービスといった社会福祉の増進に寄与する郵便のサービスにつきましては、社会・地域貢献基金からその実施に必要な資金を受けられることとしております。これにより、確実かつ安定的な実施を確保することとしているところでございます。

 これらの措置により、利用者の利便性が維持される仕組みとしております。

 四分社化についてお尋ねがありました。

 郵政公社の四つの機能、窓口ネットワーク、郵便、貯金、保険、これらの四つの事業会社に分社化いたしますのは、まず第一に、一つの事業で生じた損失が他の事業に影響を及ぼし、郵便のユニバーサルサービスや郵便貯金会社、郵便保険会社の経営の健全性が損なわれることを未然に防ぐということ、第二に、経営責任を明確にするということ、第三に、コスト意識や業績評価を明確にするということ、これらによりまして、それぞれの機能が専門性を高めながら市場で自立できるようにするためでございます。

 その結果、良質で多様なサービスが安い料金で提供できるようになり、国民の利便性の向上が可能になるというふうに考えるわけでございます。

 民営化後の四会社の経営につきましては、郵政民営化の準備室が昨年十一月に骨格経営試算を作成しております。これによれば、新規事業等に着手しなかった場合の民営化後の四会社の十年間の利益は、いずれもおおむね黒字を維持するものの、事業規模の縮小に伴って利益が縮小していくことが見込まれます。このような、現在の郵政事業が縮小傾向にあるということに関しては、公社と認識を共有しているところでございます。

 一方、本年三月に同じく準備室が、新規業務に進出した場合の収益水準を試算したものでは、この試算で想定されている新規事業をすべて行った場合には、四会社の税引き前当期利益の合計は一兆円強と試算されているところでございます。

 民営化会社は、さまざまな事業分野において大きな潜在力を有しております。公社から引き継ぐ人的資源、物的資源などを活用することによりまして、この試算値は実現可能性のある水準であると考えております。

 このように、四分社化によりまして、各事業が効率的に実施され、それぞれの市場で自立をし、発展する道が開かれ、結果として健全な経営につながるものと考えられるところでございます。

 最後に、公社職員の雇用への配慮についてのお尋ねがございました。

 公社職員の雇用につきましては、法律により新会社において確実に確保するものとしております。具体的には、公社解散の際に公社に所属する全職員は、承継計画において定めるところに従い、いずれかの新会社の職員になることとしております。

 また、民営化に伴う職員の待遇につきましては、第一に、新会社の職員の労働条件に関する事前の団体交渉及び労働協約の締結を可能としております。第二に、新会社の職員の労働条件を定めるに当たりまして、公社職員の勤務条件に対する配慮を会社に義務づけております。第三に、新会社における退職手当の支給に当たりましては、公務員時代の在職期間を通算することとしております。そして第四に、民営化後も当分の間、国家公務員共済組合制度を適用することとしております。

 いずれにしましても、政府といたしましては、職員が安心して意欲的に働くことのできる民営化を実現してまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣伊藤達也君登壇〕

国務大臣(伊藤達也君) 柳澤議員にお答えをさせていただきます。

 郵便貯金銀行の貸付業務進出が金融市場の混乱要因とならないかとのお尋ねがございました。

 民営化後の郵便貯金銀行の業務範囲の拡大につきましては、基本的には経営者の判断によることとなりますが、国の信用を背景に集められた巨額の資金によって郵便貯金銀行が貸付業務に急激に参入していくことは、民間金融機関との競争条件やあるいは金融・資本市場に影響を及ぼすこと等が考えられることから、民業圧迫といった状況が起きないよう適切に対応していくことが重要であると考えております。

 今回の法案におきましては、郵便貯金銀行について、移行期当初は公社と同じ業務範囲としつつ、民営化委員会の意見を聴取の上、段階的に業務範囲を拡大することとされており、金融庁といたしましても、金融・資本市場に混乱を生じないよう適切に対応してまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 柳澤伯夫議員にお答えいたします。

 私に対するお尋ねは、郵政民営化に伴う国債市場への影響について懸念はないかということでございました。

 私は、郵政民営化が進展していく中で、適切に国債管理政策を運営していくことは重要な課題であると認識しております。

 その際、まず重要なことは、財政構造改革の推進によりまして、国債に対する信認を確保していくことであります。そして、それとともに、市場のニーズ、動向等を十分踏まえた国債の発行、商品性の多様化等を通じた保有者層の拡大など、国債管理政策の適切な運営に努めてまいる所存でございます。

 一方、郵政民営化関連法案におきましては、昨年秋の郵政民営化の基本方針にございます、公社勘定の運用に際しては安全性を重視する、大量の国債を保有していることを踏まえ、移行期のあり方として、市場関係者の予測可能性を高めるため適切な配慮を行う、こういった点が十分盛り込まれております。

 いずれにいたしましても、郵政民営化に当たりまして、国債市場に不測の影響が及ぶことのないよう、適切に対処してまいりたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 桝屋敬悟君。

    〔桝屋敬悟君登壇〕

桝屋敬悟君 公明党の桝屋敬悟でございます。

 私は、ただいま議題となりました郵政民営化法案など関連六法案について、公明党を代表いたしまして質問させていただきます。(拍手)

 昨年の九月十日に郵政民営化の基本方針が閣議決定されて以来今日まで、大変な紆余曲折を経て、法案の策定作業が進められてまいりました。この本会議場に御出席の議員の皆さんも、実にさまざまな感慨を抱いて御出席をされているのではないかと思います。

 この本会議場に、民主、社民両党の皆さんのほとんどの姿がないのは甚だ残念でありますが、両党の出席がないにもかかわらず、本日の本会議場、静かな中にも地をはうような緊張感を感じているのは私一人ではないと思います。

 不思議な国会であります。国民は国会での審議を期待しているのであります。一日も早い正常化を祈らずにはおられません。(拍手)

 さて、やはり、初めに本日を迎えた小泉総理の思いを伺ってみたいのであります。

 総理は、大蔵政務次官の時代から今日まで四半世紀、郵政改革への執念を燃やし続けてこられました。この本会議場でも、私自身、激高した総理の激しい言葉を何度となく聞かせていただきました。さらに総理は、郵政民営化を旗印にされて三度の国政選挙を戦い、二度の自民党総裁選も戦われたわけであります。その小泉総理として、本日を迎えた思いを国民に聞かせていただきたいのであります。

 私ども公明党は、そうした総理の改革に対する姿勢を是としてまいりました。二〇〇三年衆議院選挙に向けて策定をいたしましたマニフェストの中で、官から民へ、そして民間にできることは民間にを基本とする郵政民営化に原則賛成する考えを表明し、国民そして利用者へのサービスを低下させないことを前提に、二〇〇七年四月民営化の政府方針を支持する考えを示してきたのであります。

 しかしながら、政府・与党間で今日まで行われてきた法案策定作業には、正直申し上げて随分と悩ませていただきました。公社化されたばかりであったということもあり、改革への議論の困難さを痛いほど感じさせていただいたのであります。さらに、政府側の進め方にも、いささか混乱の感があったのも否めないのであります。

 郵政民営化は改革の本丸と言われていますが、それだけに改革の仕上げ作業が大事だと申し上げたいのであります。あと一歩のところで挫折する改革が何と多いことか。何よりも、これからの国会審議において、多くの国民の理解が得られるように、総理そして政府の慎重、丁寧な対応を求めておきたいと思いますが、あわせて総理の所見を伺いたいと思います。

 さて、昨年九月に閣議決定された基本方針につきましては、私ども公明党も、具体的な制度設計の中身を見なければ判断できないとして、党内手続は保留した上で、いわゆる五つの基本原則が制度設計の中で確保されることが大事だとしてまいりました。本会議での質疑に当たって、まず基本原則の確認をさせていただきたいと思います。先ほどの柳澤先生の質問にダブるところもありますが、重ねてお伺いをしたいと思います。

 初めに、経済活性化原則であります。私ども公明党は、前述のマニフェストの中で、我が国の個人金融資産の四分の一を占める郵貯、簡保の資金を公的セクターが保有、運用するシステムから、市場を通して民間が活用できるシステムに改革することが重要であるとしてきましたが、今回の民営化が我が国経済の活性化に本当に寄与するものであるのかどうか、総理の所見を伺いたいと思います。

 国民の中には、今回の民営化では巨大民間金融機関の出現となり民業圧迫だとの批判もありますが、どのようにお答えになるのか、竹中担当大臣に伺いたいと思います。

 次に、構造改革全体との整合性の原則であります。特に、金融システム改革、規制改革、財政改革との整合性が大事であります。金融システム改革との関連では、議論の中で、いわゆる郵政三事業の一体的な実施が必要との強い声もあったわけでありますが、どのように国民に説明をされるのでしょうか。

 また、財政改革との関連では、先ほども出ましたが、国債管理政策上の懸念を挙げたいと思います。当面の我が国財政では、国債の円滑な引き受け、消化が極めて重要であります。この二つの問題については竹中担当大臣に伺いたいと思います。

 さらに、利便性の原則と郵便局ネットワークの活用原則であります。私ども公明党としても、最も重要な観点と認識して検討を進めてきたところであります。郵政が国民や地域経済のために果たしてきた役割を踏まえ、さらに利便性が向上する改革でなければならないと考えます。

 特に、郵便局の設置基準でありますが、随分と議論になりました過疎地は当然のこととして、都市部における重要性を改めて指摘しておきたいと思います。国民の厳しい声の中には、今回の郵政改革は、改革ではなく郵政つぶしになってしまうとの危惧の声もあるわけでありますが、総理、いかがでしょうか。

 また、第三種、第四種郵便物など政策的低料金や盲人用郵便、心身障害者団体が発行する定期刊行物などについて引き続き公共的なサービスとして実施されるのかどうか、ぜひとも総理にお答えをいただきたいと思います。

 さらに、郵便局の金融サービスを担保するために、今回の改革では、地域・社会貢献基金を設置し、郵便局会社が策定する地域貢献業務計画に基づいて活用されることになりますが、この計画策定に当たっては地域の有識者の意見を尊重することとされています。

 私ども公明党としては、全国単位で策定される地域貢献業務計画や地域の有識者との意見交換で果たして郵便局単位のニーズが的確に把握されるのかどうか、大きな懸念を持っているところでありますが、この点については竹中担当大臣にお答えをいただきたいと思います。

 なお、この基金については、せんずるところ、郵貯、簡保の利益が原資となっているではないか、全国の郵便局における金融サービスを担保するのであれば国が負担すべきではないかとの声も聞かれますが、いかがでしょうか。竹中担当大臣にあわせて伺いたいと思います。

 最後に、郵政公社の雇用への配慮原則であります。全国二十八万人、非常勤のスタッフを合わせると三十八万人、こうした郵政職員の協力、努力なくして民営化はあり得ないと考えます。職員に不安を与えず士気を鼓舞できる体制をどうつくるかは、まさに経営の成否を左右することになります。どのように担保されるのか、総理に伺いたいと思います。

 さて、いわゆる五つの基本原則について確認をさせていただきましたが、最後に、冒頭の話に戻りたいと思います。

 今回の郵政民営化関連法案につきましては、激しい議論が何度も繰り返され、法案策定から国会提出までの経緯は、私ども公明党にとりまして経験したことのないものでありました。法案の骨子を固めるため激しい議論があったとはいえ、法案を前にしての議論に十分な時間がとれなかったのも事実であります。

 したがって、国会におけるこれからの審議が大事であります。私ども公明党も真摯に、そして丁寧に議論を重ねてまいりたいと決意しておりますが、こうした国会審議を通じて、民営化を推進する立場からも、そして慎重な立場からもさまざまな議論が行われ、ぎりぎりの議論の中で新しい知恵も生まれてくるのではと考えます。

 私ども公明党は、何度も、実現可能な改革でなければならないと申し上げてまいりました。そうした観点からも、総理、国会での審議の中で、必要であれば法案の修正もあり得べしとの姿勢が必要と考えますが、改めて総理の見解を伺いたいと思います。

 最後に、「郵便の業は、国脈となって国の血液を快通し、その健剛を保つべき永世にわたる大業の発端なり」とは、郵便の父と言われた前島密翁の言葉であります。今回の改革が、大業のさらなる発展につながることを祈りながら、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 桝屋議員にお答えいたします。

 私の本日を迎えた思いはどうか、国会審議における政府の対応及び姿勢についてお尋ねでございます。

 私は、平成十三年、そして平成十五年の二度の自民党総裁選において、郵政民営化の実現を主張し、総裁に選出されました。また、衆議院選挙、参議院選挙におきましても、郵政民営化を公約として主張し、政権を引き続き担当することについて国民の信任を受けてまいりました。

 したがって、小泉内閣として、郵政民営化を実現することは、政治的にも、国民に対する当然の責務であると思っております。私が進める構造改革そのものであるとも思っております。

 本日、衆議院の本会議で郵政民営化関連法案が審議されるに当たり、いかに自民党が変わったかということとともに、今後、小泉内閣の最重要課題である郵政民営化の関連法案を必ず成立させなければならないという思いを一層強くしております。

 この法案の提出に当たっては、政府部内では経済財政諮問会議等を通じて議論を進め、与党とも精力的に調整をしたところであります。この過程における公明党の皆様方の御協力、御尽力、心から御礼を申し上げます。

 また、国民への説明も同時に進め、郵政民営化に対する理解も深まってきたところであると感じております。

 このようにして取りまとめた今般の郵政民営化関連六法案につきましては、郵政事業を改革する最善の案として国会に提出したところであります。今後、国会において速やかに御審議をいただき、その過程において政府案についてよく説明させていただくことにより、御理解をいただけるものと考えております。

 郵政民営化と経済活性化の関係についてでありますが、私は、民間にできることは民間にゆだねることが経済の活性化につながると考え、資金の流れも公的部門から民間部門へと変えることが必要だと考えてまいりました。

 こうした中、現在の公社のままでは、約三百四十兆円に及ぶ巨額の郵貯・簡保資金は、公的な資金として運用範囲を制限せざるを得ず、国債等の公的部門に流れていくという構図は変えることができないため、郵政民営化等により、郵便貯金銀行、郵便保険会社が、一般の銀行、生命保険会社として段階的に経営の自由度を持って活動できるようにすることによって、その資金が市場経済の中に吸収統合され、約三百四十兆円もの膨大な資金を官から民に流す道を開くこととしたものであります。

 このように、資金の流れの入り口である郵便貯金、簡易保険の改革は不可欠であります。なお、資金の流れの出口である特殊法人改革、入り口と出口をつなぐ財政投融資制度についても、これまでも改革を進めてまいりましたが、今後とも、政府系金融機関の見直しなどの改革を推進してまいります。

 さらに、郵政民営化により、郵便事業会社は、急拡大する国際物流事業等の新規業務に進出することができるようになり、郵便局では、これまで以上に良質で多様なサービスが提供できるようになります。

 このようにして、郵政民営化は、公正かつ自由な競争のもと、資金の流れの変革や国民の利便の向上を通じて、経済全体の活性化につながっていくものと考えております。

 郵便局ネットワークに関してでございますが、今回の郵政改革は、郵便局をつぶすものではありません。民営化後においても利用者の利便性を確保するために必要な郵便局は維持してまいります。このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけることとしております。

 具体的な設置基準は省令で定めますが、特に過疎地については、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持してまいります。また、都市部についても、公明党が主張されるように、国民の利便性には支障の生じることのないよう配慮する考えであります。

 第三種、第四種郵便物について、引き続き公共的なサービスとして実施されるのかとのお尋ねでございますが、民営化後も、郵便事業株式会社に対し、現在と同様に政策的低料金とすることを義務づける、特に、心身障害者団体が発行する定期刊行物や盲人用の点字、録音物等社会福祉の増進に寄与する郵便サービスについては、社会・地域貢献基金から資金の交付を受けられることとし、確実かつ安定的な実施を確保することとしており、利用者の利便性は維持する仕組みとしております。

 郵政公社職員の雇用への配慮についてでございますが、公社職員の新会社への移行に当たっては、電電公社や専売公社の民営化と同様、法律で雇用の継続の保障を明確にすることとしております。

 また、職員の待遇については、新会社での労働条件について、民営化前に団体交渉や労働協約の締結を認めるとともに、公社での勤務条件に対する配慮を義務づけるなど、不利益が生じることがないよう十分配慮することとしております。

 これらの措置により、職員が安心して意欲的に働くことのできるような民営化を実現してまいりたいと考えます。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 桝屋議員から五問質問をいただきました。

 重ねまして、桝屋議員初め関係の皆様方に、これまでの御尽力、感謝を申し上げます。

 まず、民業圧迫との批判もあるとのお尋ねでございます。

 金融業務においては、信用というものが競争上決定的に重要でございますけれども、郵便貯金銀行、郵便保険会社につきましては、まず第一に、全株処分までは政府出資の形で国の信用、関与が残るということ、第二に、規模が巨大であるということ、第三に、一般事業会社を子会社に持つ持ち株会社の傘下に置かれることが特例的に認められていること等、一般の金融機関には見られない優位性を持っていると考えられます。

 このため、法案におきましては、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式については持ち株会社に完全処分義務を課すとともに、また、移行期当初は公社と同様の業務範囲からスタートをして、経営の自由度とイコールフッティングのバランスをとって、一方で民業圧迫とならないように、また他方で経営が順調にいくように、民営化委員会の意見を聴取の上、透明、公正なプロセスのもとで段階的に業務の拡大を図っていくというふうにしております。

 また、民営化により、郵便貯金銀行、郵便保険会社は、市場経済の中で、民間企業としてみずからの責任と経営判断に基づき資金の調達、運用を行っていくことになりますので、おのずとしかるべき規模に収れんしていくものと考えられますが、郵貯、簡保のバランスシートのスリム化は、その裏面において民における資金の流れがふえているということでございます。

 さらに、政府保証つきの旧契約に対応する資金に関しましては、国債等、安全資産に運用することとしており、郵便貯金銀行、郵便保険会社が政府保証つきで集めた巨額の資金をもって貸し付け等の新規業務に進出していくことのないような制度設計にしております。

 このように、法案においては、市場や金融システムへのショックを吸収しつつ郵貯、簡保を円滑に民間経済の中に吸収統合するように配慮しているところでございます。

 三事業一体の方が望ましいのではないかというお尋ねがございました。

 郵政公社は、郵便、窓口ネットワーク、貯金、保険という特性の異なる四つの機能を有しておりますが、四分社化により、各機能それぞれの専門性が高められ、それぞれの事業が自立して健全かつ効率的に行われ、結果として国民の利便性を高めることが期待されます。

 また、我が国の金融システムが、より効率的で利便性の高いものとなるように、貯金、保険の金融部門を分社化した上で、銀行法、保険業法等の一般金融法令を適用し、民営化後の郵便貯金銀行、郵便保険会社を民間金融システムに吸収統合することが必要であるというふうに考えているところでございます。

 国債の円滑な引き受け、消化をどうするのかというお尋ねがございました。

 今回の郵政民営化関連法案におきましては、国債市場における予測可能性への配慮等の観点から、まず第一に、郵政民営化前のいわゆる旧契約の郵便貯金、簡易生命保険につきましては、新会社、郵便貯金銀行や郵便保険会社において新契約と一括して運用すること、第二に、旧契約分は国債等の安全資産で運用すること、そして第三に、移行期間中においては、新会社の資産運用の見通しについて機構を通じ公表するといった措置を講じているところでございます。

 いずれにせよ、国債の安定的な消化を図る上では、何よりも健全な財政運営が肝要であります。二〇一〇年代初頭には、政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収で賄えるよう、歳出歳入両面から財政構造改革を推進するとともに、円滑な消化を図るべく、個人向け国債の販売等により、保有者層を多様化するなど、国債管理政策を適切に運営していくこととしているところでございます。

 地域貢献業務計画の策定における郵便局単位のニーズの把握についてお尋ねがございました。

 地域貢献業務が郵便局を活用して行う業務であることにかんがみれば、これを実施する必要性は、基本的に郵便局単位のきめの細かい地域のニーズに応じて判断し、地域貢献業務計画を策定することになります。

 したがいまして、地域の有識者等の意見聴取の具体的な方法についても、郵便局単位のきめの細かい地域のニーズが適切に判断できるようなものであることが必要でございます。

 このような考え方については、主務大臣が地域貢献業務計画を認可する際に、地域の有識者等からの意見聴取が適切に行われたかどうかを審査することになりますので、それにより担保がなされるというふうに考えているところでございます。

 以上、御答弁を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、郵政民営化関連法案について、小泉総理に質問をいたします。(拍手)

 そもそも、なぜ郵政事業を民営化する必要があるのか、この最も根本的な問題について、総理はいまだに国民に納得できる説明をしておりません。

 国民にとって、郵便局は、身近にあって便利な存在です。郵便局は、貯金や年金の受け取りなど国民生活に不可欠なサービスを全国あまねく提供しております。また、土日でもATM手数料がかからないなど、現在の郵便局のサービスを多くの国民が評価しているのであります。現に有効に機能している郵便局システムを解体し、なぜ民営化をする必要があるのでしょうか。

 政府は、民営化の理由として、郵政事業が肥大化して民業を圧迫していると言ったり、現行のままだとじり貧で郵政公社が立ち行かなくなるから民営化が必要だと言うなど、百八十度違う支離滅裂な説明をしております。このような説明では、国民は全く理解ができません。だからこそ、多くの国民が身近な郵便局がなくなるのではないかと懸念をし、四十七都道府県議会を初め、ほとんどすべての地方議会が民営化に反対する意見書を採択しているのであります。

 総理の民営化論は国民の理解を全く得ていない、このことをまず指摘して、質問に入ります。(拍手)

 本法案は、民間にできることは民間にゆだねるべきだという小泉総理の主張に基づき昨年九月に閣議決定をされた民営化の基本方針の実行を目的としております。

 そこでまず、基本方針で掲げている民営化の三つのメリットについてお聞きいたします。

 基本方針は、民営化の第一のメリットとして、利便性の向上を挙げています。しかし、実態はどうか。民間では、利益の上がらない店舗を撤退しているではありませんか。これに対して郵便局は、過疎地にも店舗を維持しサービスを提供し、民間にできない全国一律サービスを行っているのであります。民営化で利便性が向上するという理屈は成り立ちません。

 第二のメリットとして、郵政公社を民営化すれば、納税の義務が生じ、税収入がふえると言います。しかし、現行の郵政公社は、利益の五割を国庫に納付する仕組みになっており、法人税より高率であります。民営化の方が国の収入がふえるというのは全く根拠がありません。

 さらに政府は、第三のメリットとして、特殊法人等への資金の流れが変わることを挙げていますが、これは政府がむだ遣いをやめれば済む話であります。

 結局、三つのメリットは、何のメリットでもないことは、もはや明らかではありませんか。総理の答弁を求めます。(拍手)

 以下、法案に即して質問いたします。

 第一は、金融の全国一律サービス、ユニバーサルサービスを投げ捨て、郵便局ネットワークをずたずたにしていくものだということであります。

 今回の法案は、これまで金融のユニバーサルサービスを提供してきた郵便貯金事業、簡易保険事業から、その義務づけをなくすものです。これでは、郵貯銀行、郵便保険会社が郵便局でサービスを提供するかどうかは、経営判断にゆだねられることになるのではありませんか。また、郵便局の方にも、必ず金融サービスを提供しなければならないという義務づけはありません。これで、すべての郵便局で郵便貯金や保険のサービスが受けられるという保証が一体どこにあるのですか。明確な答弁を求めます。

 また、郵便貯金銀行と郵便保険会社の全株式を処分して、完全民営化するまでは、郵便局でサービスを提供する代理店契約を義務づけるとしています。しかし、その義務づけがなくなる二〇一七年四月完全民営化以降は、経営判断で撤退が可能になるのではありませんか。

 政府は、過疎地の郵便局で金融サービスを維持するために、一兆円の基金を日本郵政株式会社に積み立てることを義務づけ、その運用益百二十億円を郵便局会社に交付するとしています。しかし、それで郵便局が現在提供している郵便貯金や保険サービスを維持できる保証はどこにあるのですか。明確な答弁を求めます。

 第二に、国民・利用者負担の増加とサービスの低下の問題です。

 分社化したことによって、郵貯銀行や郵便保険会社は業務の委託費を手数料で支払うことになります。この手数料に対して消費税が発生します。この新たな国民負担額は、一体幾らになるのですか。

 また、民営化したことによって、郵便貯金には預金保険料という新たなコストが発生し、郵便保険会社には負担金が発生します。郵便貯金銀行や郵便保険会社が新たに支払うことになるこれらのコストは幾らになるのですか。

 郵政公社を分割・民営化することで新たに発生するコストを最終的に負担するのは国民、利用者にほかなりません。土日のATM手数料無料など、現在では銀行より安い郵便貯金の手数料が値上げをされない、銀行並みにならない、この保証はどこにあるのですか。

 以上、三点について答弁を求めます。(拍手)

 また、現在の郵政公社でも指摘をされているサービス低下が、さらに加速することになるのではありませんか。普通郵便局に寄せられた誤配など市民からの苦情は、現にふえているのではありませんか。

 私の総務委員会での追及をきっかけに、郵政公社では、昨年十月から十二月のわずか三カ月ですが、サービス残業調査を行い、その結果、五万七千人、三十二億円に上るサービス残業が行われていたことが明らかとなっています。不払い労働によって現実のサービスが提供されていたのであります。民営化によって人員削減を強行すれば、労働条件を悪化させるだけではなく、国民へのサービスが一層低下をすることは明らかではありませんか。明確な答弁を求めます。

 第三に、今回の法案は、民営化後の制度がどうなるのか、制度設計の根幹さえ明らかになっていない欠陥法案だということであります。審議の前提として、少なくとも次の三点について明らかにすべきであります。

 一つは、郵便局の設置基準の問題です。

 郵便局会社法案第五条で、郵便局の設置基準は省令で定めるとしていますが、その基本すら明らかになっておりません。過疎地では、現に存するネットワークを維持するということが四月四日の政府の骨子で示されているだけで、その過疎地の定義もそれ以外の基準も示されておりません。これでは、郵便局会社には、一体幾つの郵便局の設置義務が課されるのか全くわかりません。法案審議の前提として、政府は、この省令案を示すべきではありませんか。

 二つ目は、郵貯銀行の代理店の問題です。

 二〇〇七年の民営化後は、郵便局が郵便貯金業務を行うためには、銀行代理店となることが必要です。しかし、銀行代理店に兼業を禁じている現行の銀行法の規定のままでは、そもそも郵便局は銀行代理店となれずに、郵便貯金サービスを提供できないのではありませんか。この規定を一体どのように改めるつもりですか。それによっては、銀行代理店となれず、郵便貯金サービスが提供できない郵便局が幾つも誕生することになります。こんな重大な内容がなぜ示されないのですか。政府は、その内容を明確に示すべきであります。

 銀行代理店となった郵便局の業務に問題があった場合、金融庁は、これらの代理店に対して、現行の銀行法では業務改善命令を出すことができないのではありませんか。改善命令も出せずに、銀行代理店である郵便局に対する監督責任がどうして果たせるのですか。お答えください。

 三つ目は、新しく設立されるそれぞれの会社の職員配置の問題です。

 法案では、職員が新会社に引き継がれることは示されていますが、それぞれの会社は何人の職員を持って発足することになるのか、一切明示されておりません。四十万人に上る郵政労働者の配置基準も示さずに、どうして民営化会社の経営基盤を判断することができるでしょうか。例えば、保険外交員の所属が保険会社になるのか、郵便局会社になるのか、この場で明確に答えるべきではありませんか。明確な答弁を求めます。

 以上、政府が掲げた民営化の論拠は、本格的審議を前にして、ことごとく崩れているのであります。国民にとって百害あって一利なし、こんな法案は、撤回、廃案以外にないことを強調し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 塩川議員にお答えいたします。

 郵政民営化のメリットについてですが、民営化では郵便局が維持されず、利便性が向上するという理屈は成り立たないとの御指摘でありますが、今回の郵政改革は、郵便局をつぶすものではなく、民営化後においても利用者の利便性を確保するために、過疎地を初め都市部でも必要な郵便局は維持してまいります。このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけることとしており、御指摘は当たらないと考えております。

 次に、民営化の方が国の収入がふえるというのは全く根拠がないとの御指摘ですが、郵政民営化は、市場原理のもとで自由な経営を行うことにより、公正な競争を通じて、国民に対してより高度化、多様化したサービスを提供することを可能とし、将来にわたって郵政事業を発展させるものであります。こうした民営化後の新会社に法人税を含めた納税の義務を課すことにより、国、地方の税収がふえるとともに、株式の売却収入等を通じて財政再建に役立てる、私はこのような民営化を目指しているのであります。

 なお、国庫納付金と法人税を比較されておりますが、そもそも国庫納付金制度は、利益を上げることを目的としていない郵政公社に、経営の健全性の確保に必要とされる以上の余剰金が生じた場合に、これを国に納付させることとするものであり、民営化を前提とした法人税とはその制度の趣旨が異なるものであり、納付率と税率の比較のみをもって論ずることは適切ではないと考えております。

 資金の流れの変化については政府がむだ遣いをやめれば済むとの御指摘でありますが、官から民への方針を最も大胆かつ効果的に進めていくためには、入り口の郵貯、簡保、出口の特殊法人、この間をつないでいる財政投融資制度、これらを全体として改革することが必要であり、既に財投改革や特殊法人等改革が進められ、改革の成果が上がってきており、今後さらに政府系金融機関の見直しなどの改革に取り組んでまいります。

 しかし、出口の改革だけで入り口が公社のままでは、巨額の郵貯・簡保資金は、公的な資金として運用範囲を制限せざるを得ず、国債等の公的部門に流れていく構図は変わりません。

 このため、資金の流れを官から民へ変えるには、入り口の改革、すなわち郵政民営化によって、郵貯・簡保資金を民間資金に転化し、民間部門に流れていくようにする必要があると考えております。

 貯金・保険サービスの保証及び基金についてですが、郵便貯金銀行、郵便保険会社に対する免許を付与するに当たり、完全民営化までの移行期間中は、安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを条件とすることにより、郵便局会社への業務委託が担保され、郵便局における貯金・保険サービスの提供を保証することとしております。

 また、移行期間終了後においては、郵便貯金銀行、郵便保険会社、両社にとって、郵便局ネットワークの重要性や新たに自前の店舗網や保険募集体制を整備するには膨大なコストがかかること等を考えると、全国一括の代理店契約が引き続き維持され、適切な手数料が支払われることにより、郵便局における貯金・保険サービスの提供が基本的に確保されるものと考えております。

 さらに、仮に過疎地などの一部の郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難となる場合には、社会・地域貢献基金を活用してサービスの提供を確保することとしております。

 この基金の規模については、将来過疎化が大幅に進行したとしても、過疎地域等における貯金、保険のサービスの提供に必要な額を運用益によって賄えるように設定していることから、これにより、地域にとって必要性の高い貯金、保険のサービスの提供を確保することは可能と考えております。

 分社化により発生する委託料に係る消費税、預金保険料等のコストについてですが、二〇〇七年度における額について、一定の前提のもとに試算をすれば、新規業務等を行わない場合における郵便貯金銀行と郵便保険会社の窓口委託手数料に係る消費税は約七百億円、郵便貯金銀行が支払う預金保険料は四百億円程度、郵便保険会社が負担する生命保険契約者保護機構負担金は十億円程度と見込まれております。

 これらのコストは、民間企業と同様の義務を負うとの観点から、当然負担すべきものであります。

 郵政民営化により郵便貯金の諸手数料が値上げされるのではないかとのお尋ねですが、民営化後の手数料の水準は、新会社の経営判断によるものであります。

 現在、民間銀行の例を見ると、サービスの内容に応じて手数料設定はさまざまであり、中には郵政公社の手数料より低いものもあります。民営化後の郵便貯金銀行においても、経営判断により、商品、サービスの多様化に応じさまざまな手数料が設定されることになりますが、全国のネットワークと地域の顧客の信頼が強みとなることから、民営化によってこれらを損なうことなく、利用者の利便性が向上することを期待しております。

 郵政公社のサービス低下が加速し、普通郵便局に寄せられた市民からの苦情はふえているのではないかとのお尋ねであります。

 郵政公社においては、民間出身の生田総裁のリーダーシップのもとに、「真っ向サービス」との方針を掲げ、郵便サービスの改善に努めており、利用者からの苦情についても、全国十三カ所にお客さま相談センターを設置するなどの取り組みを進めているものと承知しております。

 民営化による人員削減が労働条件の悪化やサービス後退につながるのではないかとのお尋ねですが、日本郵政公社職員の新会社への移行に当たっては、電電公社や専売公社の民営化と同様、法律で雇用の継続の保障を明確にすることとしております。したがって、今回の民営化は人員削減を目的とするものではなく、人員削減によるサービス後退につながることはあると思いません。

 また、職員の待遇については、新会社での労働条件について、民営化前に団体交渉や労働協約の締結を認めるとともに、公社での勤務条件に対する配慮を義務づけるなど、不利益が生じることがないよう十分配慮することとしております。

 郵便局の設置基準についてですが、郵便局の具体的な設置基準は省令で定めることとしておりますが、その際には、現在の設置基準を十分参考としつつ、特に過疎地については、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する、都市部についても、国民の利便性には支障の生じることのないよう配慮する考えであります。

 また、過疎地の定義については、過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域を基本として検討していく考えであります。

 民営化後の郵便局における銀行代理店規制についてですが、御指摘のとおり、現行の銀行法令のもとでは、銀行の代理店が一般法人の場合にはその兼業を禁止しており、郵便の窓口業務を初め、銀行の代理店の業務以外の業務を行う民営化後の郵便局株式会社が郵便貯金サービスを提供するには、所要の手当てをする必要があります。

 このため、代理店の兼業制限等の規制について、郵政民営化関連法案においては内閣府令の手当てに関する規定を設けたところであり、今後、代理店業務の健全かつ適切な運営を確保するための措置を内閣府令において盛り込む考えであります。

 銀行代理店となった郵便局に対する監督でございますが、現行の銀行法においては、銀行代理店に対しては、銀行を通じて監督することとされており、郵政民営化後においても、郵便貯金銀行に対する監督を通じ、郵便貯金銀行が適切な措置を講じることにより、代理店となる郵便局株式会社の健全かつ適切な業務運営を確保してまいります。

 民営化の際の新会社の職員配置についてですが、新設される各会社への具体的な職員の帰属については、主務大臣が作成する基本計画に従い、新会社の経営陣となる経営委員会が、ビジネスモデルを勘案しつつ、承継計画において定めることとなります。その際、公社職員の帰属先については、公社における担当業務や勤務場所などの勤務条件に配慮して定められることとなります。

 なお、保険外交員は、郵政民営化の基本方針において、郵便保険会社の窓口業務や集金業務は窓口ネットワーク会社に委託することとしていることから、基本的には郵便局会社に帰属するものと考えております。(拍手)

議長(河野洋平君) 竹中国務大臣から答弁を補足したいとのことであります。これを許します。国務大臣竹中平蔵君。

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 先ほどの桝屋議員の質問に対しまして、一問答弁漏れがございました。申しわけございません。

 基金の原資は国が負担すべきではないかとのお尋ねでございます。

 日本郵政公社は、これまでも第三種、第四種郵便や過疎地の金融サービスなどを提供してきたところでございます。郵便事業株式会社及び郵便局株式会社は、それぞれ法の趣旨にのっとって、こうした地域や社会に貢献し利用者利便に資する業務を引き続き提供する必要があると考えております。

 このような業務を賄うための原資につきましては、日本郵政公社は、これまで国費の投入なく自立経営してきたところでございます。民営化に伴い新たに国費を投入することは、民営化の趣旨から適当ではないものと考え、持ち株会社が保有する郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の売却益等を活用することとしたものでございます。

 以上、補足をさせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       国務大臣    伊藤 達也君

       国務大臣    竹中 平蔵君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 杉浦 正健君

       内閣府副大臣  西川 公也君

     ――――◇―――――

 去る二十四日は、会議を開くに至らなかったので、ここに議事日程を掲載する。

 議事日程 第二十二号

  平成十七年五月二十四日(火曜日)

    午後一時開議

 第一 独立行政法人住宅金融支援機構法案(内閣提出)

    …………………………………

  一 郵政民営化法案(内閣提出)、日本郵政株式会社法案(内閣提出)、郵便事業株式会社法案(内閣提出)、郵便局株式会社法案(内閣提出)、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.