衆議院

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第4号 平成17年9月28日(水曜日)

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平成十七年九月二十八日(水曜日)

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 議事日程 第四号

  平成十七年九月二十八日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 民主党の前原誠司です。民主党・無所属クラブを代表し、小泉総理の所信表明に対して質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、二つの点で国民の皆さん方におわびを申し上げなければなりません。

 一点は、我が党に所属をしていた小林憲司前衆議院議員が覚せい剤の所持、使用で逮捕されたことであります。国会議員以前に国民の一人として絶対にあってはならない反社会的行為であり、言語道断。党として即刻除籍し、比例名簿から削除いたしました。政治への信頼を著しく傷つけたことに対し、国民の皆さん方に深くおわび申し上げます。

 もう一点は、民主党が今回の総選挙で大きく議席を減らしたことであります。政権交代を期待し、二千四百八十万人もの方々が民主党の小選挙区候補者に投票してくださったにもかかわらず、期待におこたえすることができませんでした。今回の結果を真摯に受けとめ、強烈な反省に立って、必ずや次の総選挙で政権交代を実現するために、新体制での反転攻勢をお誓いいたします。(拍手)

 民主党は、国民全体の利益になることであれば、政府・与党に協力します。反対のための反対はしません。しかし、政府・与党の間違った政策、問題先送り、看板倒れの改革に対しては、厳しく対峙してまいります。主要な政策課題については常に対案を示し、常に、みずからが政権与党であればどういう対応をするか、そういう視点に立って、真の改革を競い合いたいと思います。

 今回の総選挙に関して二点、小泉総理にぜひとも伺いたいことがあります。

 第一点は、総理は、今回の解散・総選挙は郵政解散であり、郵政民営化法案への賛否を問う選挙だと繰り返し言われてきました。本来、政権のあり方や政権政策の全体像を問うべき総選挙を、あたかも一法案の国民投票のように利用しました。しかも、郵政民営化法案が参議院で否決されたにもかかわらず、同法案を可決した衆議院を解散しました。これは解散権の濫用ではないでしょうか。今後、重要法案が否決されれば、また国民投票のような解散を行うつもりですか。総理の議会制民主主義に対する根本的な考え方をお伺いしたい。(拍手)

 郵政法案以外、定率減税廃止を含めた税制改革、年金改革、地方分権、外交などの重要な国政課題について、自民党のマニフェストには、数値目標や達成期限などほとんど具体的な記述はありません。そうであれば、仮に郵政法案が成立すれば、これらの重要政策課題について具体的なマニフェストを提示して、もう一度衆議院を解散して国民の信を問うことが憲政のあるべき姿ではないでしょうか。それとも、総理は、郵政法案への賛否ですべての課題について負託を受けたと強弁されるんでしょうか。総理の総選挙に対する基本認識をお答えください。(拍手)

 第二点は、今回の選挙でより露骨になった自公選挙協力について伺います。

 多くの自民党候補者が、自民党の比例名簿に登載されていながら、比例区は公明党へと連呼し、ポスターやはがきにも比例は公明党へと明記をしました。そして投票の依頼をしました。総理、副総理、大臣経験者までもが、憶面もなく、比例は公明にと公言してはばかりませんでした。

 連立与党といっても、しょせん別の政党です。異なったマニフェストを掲げている以上、自民党公認候補が比例は公明と連呼するのは、国民に対する信義則違反ではありませんか。また、小選挙区の票をバーターに比例の票を強要する公明党も公明党です。どうしてもお互いの票が欲しいのであれば、いっそ一つの政党になればいいのではないでしょうか。自民党総裁としての見解を伺います。

 我が党は、この点が改善されなければ政党政治の形骸化につながるとの強い危機感を持ち、あらゆる手段を使って正常化への努力を行うことを申し述べておきます。(拍手)

 「改革を止めるな。」これが自民党の選挙のキャッチフレーズでした。しかし、この四年五カ月で一体どんな改革が実現されたんでしょうか。

 道路公団の民営化議論は、本来、採算の合わない高速道路はこれ以上つくらないという問題意識からスタートしました。しかし、民営化されたのは、パーキングエリアやサービスエリア、あるいは道路の維持管理のみ。国の命令で採算の合わない高速道路もつくり続けられる仕組みが確立して、完成後は借金ともども国の保有機構が買い取ることになりました。改革の骨抜きどころか、民営化の名をかりた、国民を欺く改悪でしかありません。

 年金改革も同じであります。国民の負担をふやし給付は減らす、こんなつじつま合わせなら、子供でも考えつきます。むだ遣いを徹底的になくして予算配分を大胆に変えて、国民が将来に不安を感じない、持続可能な仕組みをつくることこそが真の改革ではありませんか。(拍手)

 小泉総理がこだわる郵政民営化もしかりです。形だけ株式会社にすれば中身はどうでもいいというわけにはいきません。私は、この法案の実態は、むしろ、官業焼け太り・民業圧迫法案だと考えます。

 郵便貯金の資金量は大手都市銀行七行の預金総額にほぼ匹敵し、簡易保険の規模は生命保険会社大手四社の合計とほぼ同じです。このようなマンモス金融・保険会社と、既存の銀行や生命保険会社は、果たして対等な競争ができるんでしょうか。

 我が党が主張しているように、まずは郵貯の規模を段階的に縮小して、着実、確実に官から民へと資金を分散させて適正規模にし、簡保は分割して一つ一つの規模を小さくすることが必要ではないでしょうか。

 また、郵貯、保険の金融二社は、二〇一七年までに表面的には民営化されることになっていますが、逆に言えば、それまでは実質政府の保証がついた形で、公社では制限されていたさまざまな業種に進出できることになります。迎え撃つ民間企業は、不公平な競争を最長十年間も強いられることになるのです。しかも、現在一千万円の郵便貯金の預入限度額は最終的には取り払うと政府は明言をしています。官から民へどころか、民から官へ資金がより集まることになるんではないでしょうか。

 現に、日本郵政公社は、民営化を前提として、ドライブスルーの採用、配送業務でのコンビニエンスストア、大手百貨店との提携、窓口での投資信託の販売など、駆け込み的に業務拡大に乗り出しています。まさに、官業焼け太り、民業圧迫が現実のものとなっています。

 このような疑念をどう払拭して、どのように解決するつもりなのか。完全民営化までの移行期間の短縮や、民営化の移行プロセスを監視する民営化委員会に勧告権を付与することの是非を含め、総理の明確な答弁を求めます。(拍手)

 当初出された政府の基本方針では、郵貯、簡保は完全民営化するとの考えが示されていましたが、法案の策定過程で自民党の郵政族と妥協し、持ち株会社が民営化された郵貯、簡保二社の株を買い戻すことが可能になりました。これでは、政府の関与が半永久的に可能となります。妥協を迫ったいわゆる抵抗勢力も刺客によって自民党から排除されて、国民の信任も得られたわけですから、堂々ともとの基本方針どおり、政府持ち株会社による買い戻しをなくすことが筋ではないでしょうか。お答えください。

 所信表明で、総理は、これまでに十兆円にも上る歳出改革を断行したと豪語されました。しかし、在任中に、国と地方、短期も合わせた借金全体では、七百五十兆円から一千兆円に、何と二百五十兆円もふえました。借金全体の四分の一は、小泉総理、あなたがつくられたものであります。この責任を総理はどのように受けとめて、そしてどう解決するつもりなのか。明確にお答えをいただきたいと思います。(拍手)

 公務員の給与についても伺います。

 人事院勧告のもととなる民間給与は、相変わらず企業規模百人以上かつ事業所規模五十人以上が基準になっています。人事院勧告決定については、零細企業も含めた民間給与の実態を踏まえたものとすべきではないでしょうか。答弁を求めます。

 民主党は、特殊法人の役職員が民間企業へ天下ることを規制するため、道路公団等天下り規制法案をさきの通常国会に提出いたしましたが、政府・与党はこれを放置しています。ぜひ、徹底した議論を行い、実現させようではありませんか。答弁を求めます。

 日本道路公団における橋梁工事に関して、長年にわたる大規模な官製談合が発覚しました。何と、道路公団のナンバーツーである内田副総裁らみずからが談合にかかわっていたことが明らかになりました。談合を行えば、競争原理が働かないために落札価格は高くなります。しかも、細切れ発注ときている。多くの企業はもうかり、得をする。それらの企業に公団OBは天下り、自民党は献金を受けている。しかし、そのツケを払わされているのは納税者であり、通行料金を払う利用者ではありませんか。このような理不尽な構造にメスを入れることこそ、真の改革ではないでしょうか。(拍手)

 まず、このような談合がなぜ繰り返され、長期にわたって見逃されてきたのか。恐らく、今回の橋梁談合は氷山の一角に違いありません。他の発注分野についても政府は徹底的に調査して、その結果を公表すべきであります。その意思はおありでしょうか。また、官製談合防止や刑法などの強化にも取り組むべきです。お答えください。

 道路公団の談合体質は、民営化によってなくなるとは到底思えません。新たに設立される会社は、料金収入で利益を上げることができず、建設費用はすべて政府保証がついて保有・債務返済機構に移しかえるだけであります。したがって、コスト削減のインセンティブは全く働きません。道路公団の発注工事に関して徹底的な調査を行い、対策が講じられるまで道路公団の民営化を凍結すべきだと考えますが、総理、いかがでしょう。

 何よりも、今回の官製談合事件で責任をとるべき立場にある公団トップの近藤総裁が、責任をとるどころか、そのまま民営会社の会長に横滑りをするとは言語道断、国民をばかにしているとしか言いようがありません。絶対に天下らせるべきではありません。国民の目線に立った、毅然とした答弁を総理に求めます。

 談合参加企業から自民党への多額の政治献金が行われていることも問題です。これらの企業から国民政治協会に九三年から十年間で、献金額を合計すると、実に十六億円近くのお金になります。要は、税金、通行料の不当利得の一部が献金されているということであり、談合参加企業からの企業献金は全額返還すべきであると思います。総理の答弁を求めます。(拍手)

 自民党マニフェストでは、非効率な特別会計や特定財源制度について聖域なく抜本的に見直すと公約しています。非効率な特別会計や特定財源とは何を指すのでしょうか。自公政権がこれほど国の借金を莫大なものにし、しかも少子高齢化が急速に進む現状において、主に道路の建設、補修のみに使われている道路特定財源を一般財源化し、社会保障や少子化対策、教育の充実など、箱物から人への投資に重点を移すべきだと我々は考えます。特別会計、特定財源の見直し、特に道路特定財源の一般財源化について、総理の見解を伺います。

 総理は、歳出削減だけで財政再建は無理と会見で発言されました。これは財政再建に向けて増税は必要との認識を示されたものでしょうか。また、増税が必要であると認識されているのであれば、いつ、どのような規模の増税が必要と考えているのでしょうか。消費税、所得税、法人税、資産税、すべてが増税の対象になるのか、お答えください。

 政府税制調査会の答申には、平成十八年度において定率減税を廃止と書かれています。自民党はマニフェストにおいて「政府税調の考え方はとらない。」と明記をしました。国民のだれもが、これで定率減税の廃止はないと確信しているはずであります。ところが、谷垣財務大臣は、選挙後の十三日の記者会見において、定率減税廃止の方向を打ち出しました。これは国民に対する公約違反、背信行為ではないでしょうか。郵政法案の賛否を問う選挙だったから関係ないとでも言われるのでしょうか。明確な答弁を求めます。

 また、政府税調の答申には、給与所得控除の縮減があります。自民党も公明党もサラリーマン増税には反対をして総選挙を戦いました。控除縮減に対する賛否もここではっきりさせていただきたい。

 一昨日の所信表明でも二〇一〇年代初頭のプライマリーバランス均衡化がうたわれていますが、時期もあいまい、ましてや具体的手法については全く説明がありません。我々は、まず税金のむだ遣いをなくすこと、行革なくして増税なしの姿勢を貫くべきだと考えます。総理の見解を伺います。(拍手)

 我が党は他党に先駆け、議員年金の廃止を以前より訴えてまいりました。自公両党も議員年金の廃止に向け、ようやく重い腰を上げたことには敬意を表します。むだ遣いを削るのであれば、まず隗より始めよであります。みずからを変えられずに、国民にばかり改革を迫ることは許されません。

 自民党マニフェストには「議員年金についても改革する。」とありますが、これは具体的にどのような改革を念頭に置いているのでしょうか。私たちは今国会に議員年金廃止法案を提出いたします。総理も自民党に議員年金廃止を指示されました。お互いの案を持ち寄って、国民が納得するいい法案にしようじゃありませんか。改めて総理の決意をお聞かせください。

 年金改革について伺います。

 総選挙のマニフェストでは、自民党は「持続可能で安心な年金制度を構築した。」とし、公明党は「百年先までの財政見通しを確立、」とあります。端的に伺います。国民が現在の年金制度を信頼していると心底お考えですか。この制度が本当に百年持続可能だと自信を持って言えますか。

 民主党は、みずからの案の見直すべき点は見直し、よりよい案に練り上げた上で、改めて国民に選択肢を提供したいと考えています。与党も、実質破綻をしている国民年金の対策、生活保護制度との矛盾も含め、より詰めた一元化案を早急に取りまとめ、協議に応じるべきであります。総理の答弁を求めます。(拍手)

 現在、我が国の外交は八方ふさがりで、国連改革は巨額の費用を投じながら大失敗。中国や韓国など、アジアとの関係はがたがた。FTAは中国などにおくれをとり、頼みのアメリカとの関係も、米軍再編、BSE、イラク問題、国連改革等ですき間風が吹いています。これまでの戦略なき外交のツケが今、まさに一挙に噴き出した感があります。北朝鮮の問題もしかりであります。

 去る九月十九日、六者協議において、北朝鮮の核放棄をうたう共同声明が採択されました。しかし、核放棄への具体的なプロセスや検証方法、北朝鮮が要求した核の平和利用の扱い、軽水炉建設問題、共同声明に盛り込まれなかった高濃縮ウランの扱いなど、依然として課題が山積しています。

 北朝鮮は、一九九四年の枠組み合意で核凍結と査察受け入れに合意しながら、その後、公然と核開発を再開したばかりか、NPTからの脱退を表明するなど、国際間の約束を次々にほごにしてきました。今後、関係各国は、共同声明の中身が着実に履行され、具体的かつ実質的な成果として実現する責任を持っています。既に北朝鮮は、国連で、軽水炉の提供まで核放棄に応じないという、六者合意の内容を覆すような主張をしています。日本のスタンスをまず総理に伺いたい。

 また、日朝両国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとると約束をしています。しかし、拉致事件については一言の言及もありません。一方では、経済協力を推進する文言がありますが、一兆円にも上る巨額の破綻処理で大きな経済問題、社会問題を引き起こした朝銀系信組に対する資金の流れもいまだ不透明なままになっています。

 総理は以前、予算委員会での私との議論で、日朝国交正常化の前提は、核問題の解決だけではなくて、拉致、ミサイル、朝銀マネーの包括的な解決だと答弁されました。そのお考えは今も変わりがありませんか。エネルギーなどの経済支援も、核問題のみならず、拉致、ミサイル、朝銀問題が包括的に解決されてから行うのが筋だと考えます。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)

 先日亡くなられた後藤田正晴元官房長官は、生前、小泉改革についてこのように語っておられました。小泉総理の官から民へについてぜひ言いたいのは、一体、官が担当しなければならない境界線はどこまでだ、利潤を美徳とする民が引き受ける限度はどこだと。そこの分界線を明示しないまま官から民へは乱暴だよ。けだし名言であります。

 同様のことは、国と地方の役割分担についても当てはまります。国として国民に責任を負わなければならないのはどこまでの仕事なのか、地域に任せるべきはどのような仕事なのか、その境界線を明確にしないまま、ともかく三兆円規模という極めて中途半端な税源移譲を進めようとするから、三位一体改革の現状はバナナのたたき売りとも酷評される状態にあります。

 生活保護のような最も基礎的な国の任務については、無原則に国の補助率を引き下げ、地方に責任を転嫁する。他方、役割を終えた箱物整備補助や各種奨励的補助金などの霞が関の既得権を温存するなど、現状の三位一体改革は全くもって本末転倒であり、国から地方へという基本方針はまやかしとなっています。これからの地方分権、三位一体改革をどう進めるおつもりなんでしょうか。

 道路公団、年金、郵政そして三位一体と検証してきましたが、小泉改革なるものがいかに看板倒れで内容を伴わないものかは明らかです。いい改革はとめてはなりませんが、悪い改革はとめなければなりません。我が党は、今後、重要政策課題では対案を出してまいります。ぜひ、いい改革の中身でお互い競い合おうではありませんか。

 霞が関という既得権益の殻を破れない自民党政治に、真の改革を行えるはずがありません。政権交代でなければ日本は変わらない。今度こそ真の改革の御旗を取り戻し、すべては国民のための政治を行うために、全身全霊を傾けて政権交代に向けて努力を続けることを国民の皆さん方にお約束をし、答弁が不十分であれば再質問をさせていただくことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 前原議員にお答えいたします。

 今回の解散と議会制民主主義との関係についてでございますが、衆議院の解散は衆議院議員の身分を失わせる重い行為であることを認識しつつ、選挙により新たに民意を問うことの要否については、内閣がその政治的責任において決断すべきものと考えております。

 郵政民営化は、まさに行政、財政、経済、金融などあらゆる分野の構造改革につながる改革の本丸であり、今後の我が国の方向を定める極めて重要な案件であります。その実現につき、内閣の政治的責任において主権者たる国民の信を問うことは、憲法上認められた解散権の行使であり、濫用に当たるとは考えておりません。

 このたびの選挙で明らかとなった国民の声を厳粛に受けとめ、改革を進めることは、主権者たる国民の意思が議会によって代表される議会制民主主義にも沿うものと考えております。

 今回の総選挙ですべての課題について負託を受けたと考えるかとのお尋ねでございます。

 今回の総選挙の結果については、郵政民営化を進めよ、賛成であるという審判を国民が下したと思います。同時に、私が総理大臣に就任以来進めてきた金融、税制、規制、歳出にわたる広範囲な構造改革の方針とその成果について、広く国民の支持をいただいたものと受けとめております。(拍手)

 私は、この国民の声を厳粛に受けとめ、責任を持って郵政民営化を実現するとともに、今後、構造改革路線をしっかりとした軌道に乗せていきたいと考えております。

 民主党は大幅に議席を減らしましたけれども、日本をあきらめずに、前原新代表のもとで、政権交代ができる政党として今後発展されることを期待しております。

 自民党と公明党の協力のあり方についてでございますが、私は、総理大臣に就任以来、自民党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って構造改革を進めてまいりました。今回の総選挙においても自民党と公明党は協力してまいりましたが、各選挙区において個別の候補者が具体的にどのような協力方法をとるかについては、それぞれの事情を勘案しながら、各候補者が適切に判断して対応してきたものと考えております。

 今後とも、自民党、公明党が互いにその政策について尊重しながら連立関係を維持し、引き続き構造改革を断行していく考えであります。

 郵政民営化についての質問でございますが、現在、民主党は対案を取りまとめられていると聞いております。対案を出されることを歓迎します。国会審議の中で検討していきたいと思っております。

 まず、郵貯、簡保の規模縮小を図るべきではないかとの御質問でありますが、郵政事業は郵貯、簡保の収益で雇用やネットワークが支えられております。強制的、急激に規模縮小すれば、経営は成り立たず、雇用やネットワークも維持できません。また、限度額引き下げは利用者に不便を強いることにもなるし、ネットワークが維持できなければ地域の利便性は著しく低下します。

 そもそも、官があらかじめ適正規模を決めて、強制的に規模を縮小させる官主導のやり方は、官から民への構造改革に果たしてふさわしいのかどうか、その点も考えなきゃいけないと思います。

 これに対して政府・与党案は、市場経済の中で適正規模を実現する民間本位の改革案であり、また、雇用とネットワークを維持しながら、国民の大切な資産を民間向け資金として活用し、経済活性化につなげる最善の改革案であると考えております。

 実質的な政府保証による民業圧迫の疑念などについての御質問がございました。

 金融業務については、信用が競争上決定的に重要であるので、法案におきましては、金融二社は一般商法会社として設立し、全株処分によって国の信用、関与を断ち切ることとし、また、株式処分等、国の関与の度合いの低減に応じ、民営化委員会の意見を聴取の上、段階的に規制緩和していくこととするなど、民業圧迫とならないよう配慮しております。

 また、移行期間を十年としているのは、早急に民営化を進める必要があるとの基本認識に立ちつつも、郵政民営化がさまざまな分野にかかわる大規模な改革であることなどから、円滑な民営化を実現するため、相当程度の時間をかける必要があることを勘案したものであります。

 さらに、民営化委員会については、内閣総理大臣を本部長とし全閣僚で構成される郵政民営化推進本部に設置される機関であることから、本部長のリーダーシップのもとに、民営化委員会の意見を施策に適切に反映させていくこととなると考えております。

 また、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の買い戻しについての御質問ですが、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の買い戻しに関しては、移行期終了後については、これらの会社は普通の銀行、普通の保険会社となるので、持ち株会社が他の金融機関の株式を取得するのと同様に、独占禁止法や銀行法等の一般的な法規制のもとに、特殊会社の規制の範囲内で両社の株式を市場から買い戻すことを妨げないこととしたものであります。買い戻しが行われるとしても、他の銀行や保険会社の株式を取得する場合と同様の一般的なルールのもとで行われるものであり、郵便貯金銀行、郵便保険会社が民間金融機関と同一の条件で自由な経営を行うとの民営化の基本方針に反するものではありません。

 債務残高累増の責任についてお尋ねでございますが、近年の債務残高累増の主たる要因は、高齢化の本格的な進展による社会保障関係費の増加や、経済情勢の深刻な悪化等による税収の低迷等であると考えております。

 他方で、小泉内閣においては、発足以来、財政規律を堅持するという方針のもと、重立った歳出項目について歳出の抑制を行い、公共事業費を約四割削減するなど、既に十兆円に上る歳出改革を断行したところであります。

 こうした結果、国及び地方の基礎的財政収支赤字が平成十四年度の五・五%から平成十七年度には四%に改善する見込みであり、また、平成十七年度予算において新規国債発行額を四年ぶりに減額するなどの成果を上げてきております。

 今後とも、引き続き、公務員の人件費を含め、まずは徹底した歳出削減、むだな税金の使い道の排除に取り組んでまいります。(拍手)

 人事院勧告のもととなる民間企業の企業規模についてでございますが、公務員給与と民間給与との比較方法については、政府として、比較する民間企業の規模も含めて早急に総合的検討を行うよう人事院に対し要請しているところであり、今後、人事院において検討が進められる予定であると承知しております。

 特殊法人の役職員の天下り規制についてでございますが、幹部が談合行為で逮捕されるという事件を起こした日本道路公団においては、幹部職員について一定の場合に再就職を禁止する措置を自主的に講じたと聞いております。

 また、国家公務員型の独立行政法人の役職員については、離職後二年間の営利企業への就職が制限されているところであります。一方、すべての特殊法人、非公務員型の独立行政法人の役職員に対して営利企業への就職の制限を課することは、職業選択の自由との関係も考慮しつつ、なお検討すべきものと考えます。

 いずれにしても、特殊法人、独立行政法人の業務運営の適正性や効率性を確保し、国民の信頼を得ることは必要であります。

 道路公団の橋梁談合に関するお尋ねですが、公共工事の入札、契約について、いわゆる官製談合等の不正行為はあってはならないことであり、今般、日本道路公団の現職幹部が逮捕、起訴されたことは極めて遺憾であります。

 事件の全容の解明については、今後、司法の場に移ることとなりますが、公団から再就職したOBが公団発注工事の営業に直接関与していることや、談合行為に関するペナルティーが軽かったことなどが要因の一つにあったものと考え、再発防止策においてはこれらについての対策を強化しております。

 談合に関する調査は、民営化後においても、日本道路公団の業務を承継した高速道路会社において引き続き実施され、その際には、他の発注分野についても徹底的に調査し、公表するものと聞いております。

 官製談合防止法等の強化については、各党において検討が行われていると承知しておりますが、政府としても、国民意識の動向、刑罰体系全体の中での整合性など、種々の観点を総合考慮しながら、今後検討していくべきものと考えております。

 道路公団の民営化の凍結及び会長人事の見直しに関するお尋ねでございますが、談合の再発防止については、既に日本道路公団において不正行為防止策を取りまとめ、実行に移しており、民営化後も徹底して取り組むこととしております。

 今般の民営化は、従来の公団方式の弊害を解消し、約四十兆円に上る債務を確実に返済しつつ、真に必要な道路について、早期に、できるだけ少ない国民負担のもとで建設するとともに、料金の引き下げ等のサービスの向上を図ることを目的とするものであり、その実現に向け、予定どおり十月一日から道路公団を民営化いたします。

 近藤総裁には、二度とこのようなことが起こらないよう、民営化後においても、不正行為防止策をしっかりと実行することにより、一刻も早く高速道路事業に対する国民の信頼を回復していただきたいと考えており、会長人事の見直しは考えておりません。

 談合参加企業からの企業献金についてでございますが、個別企業がどういう行為をしているかについて常に把握することは難しく、また、一般論として、企業は経済活動とあわせて政治活動の自由が認められているところであると考えます。しかしながら、問題を指摘されている企業からの献金につきましては、今後、個別の状況を慎重にチェックした上で、対応を検討してまいりたいと考えます。

 自民党政権公約における特別会計改革、道路特定財源を初めとする特定財源制度の見直しについてのお尋ねですが、非効率な特別会計や特定財源制度について聖域なく抜本的に見直すとは、すべての特別会計、特定財源制度の事業内容等を精査すること等により、非効率なものを洗い出し、温存を許すことなく根本的に見直すとの趣旨であります。私は、既に、道路等の特定財源について、暫定増税をしている税制との関係、その使い道のあり方など、基本方針を検討するよう指示したところであります。

 税制改正に関し、財政再建に向けた増税の必要性、増税の時期や規模、増税の対象となる税目についてのお尋ねでございます。

 私は、まずは徹底した行財政改革に取り組むべきものと考えております。他方で、現在、国債依存度が四〇%に達しており、歳出削減だけで財政再建が困難なことは明らかであり、御指摘の発言もそうしたみずからの考えを述べたものであります。

 今後の少子高齢化、グローバル化等の大きな構造変化を踏まえますと、社会共通の費用を広く公平に分かち合い、持続的な経済社会の活性化を実現する必要があります。そうした観点から、消費税、所得税、法人税、資産税などの税制全体のあり方を総合的に考えて、国民的な議論を深め、平成十八年度内を目途に税制改革についての結論を得たいと考えております。

 定率減税の廃止についてでございますが、定率減税は、景気対策として導入された暫定的な税負担の軽減措置であることから、経済情勢等に応じその規模を見直していくべきものであり、これまでの与党税制改正大綱等において、その縮減、廃止に向けた道筋について示されてきたところであります。

 定率減税の残り半分については、年末の平成十八年度税制改正において、これまでの議論を踏まえ、経済情勢等を十分に見きわめつつ今後議論していくべき事柄と考えております。

 給与所得控除の縮減についてですが、平成十八年度において、給与所得控除の見直しにより、いわゆるサラリーマンに対しねらい撃ち的に負担増を求めるようなことは考えておりません。

 いずれにせよ、個人所得課税のあり方については、家族のあり方や人々の働き方といった、人の生き方や価値観に密接にかかわる税であることを踏まえ、今後の税体系全体のあり方の論議の中で十分な国民的議論を尽くしていくべき事柄であると考えております。

 財政健全化に関し、財政再建の具体的手段についてですが、政府としては、二〇一〇年代初頭に政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えることを目指して、社会保障制度改革や三位一体の改革、公共事業費の削減などさまざまな分野の改革に聖域なく取り組んでおり、今後とも歳出歳入一体の財政構造改革を強力に進めてまいります。

 基礎的財政収支改善に向けた中期的取り組みについては、経済財政諮問会議の議論等を通じ、おおむね来年半ばを目途に改革の方向についての選択肢及び改革工程を明らかにし、平成十八年度までに結論を得る考えであります。

 国会議員の年金制度についてのお尋ねですが、議員年金の改革につきましては、自民党、公明党で廃止を前提に検討しております。早急に与党案を取りまとめ、民主党を初めとする各党各会派において十分御議論いただき、国民から理解と信頼を得られる制度とすることを期待しております。

 年金制度が持続可能と考えるかとのお尋ねですが、年金制度にとって、どのような制度体系をとるとしても、長期的な給付と負担の均衡を確保することは制度の根幹にかかわる重要な問題であり、昨年の年金改革によって、将来に向けて持続可能な制度とすることができたと考えています。

 一方で、年金制度の一元化、国民年金の未納、未加入問題への対応、雇用構造の変化に伴う短時間労働者への厚生年金の適用拡大など、依然として大きな課題があります。

 所信表明演説の中でも申し上げたとおり、年金制度は長期的な視野に立って改革を進める必要があり、与野党が胸襟を開いて協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠であります。私としましても、民主党も参加される両院合同会議における議論が早急に再開されることを期待しており、そこでの議論も踏まえつつ、これらの諸課題について、迅速に改革に向け取り組んでまいります。

 年金の一元化等についてでございますが、私は、年金制度の一元化に関して、国民全体を対象とする年金の一元化を展望する上で、これまでも、まずは厚生年金と共済年金の一元化が先に来るのではないかと申し上げてきたところでありますが、既に、被用者年金の一元化に向け、制度間における給付や負担の水準の相違等、被用者年金の一元化を進めるに当たって検討すべきさまざまな課題について幅広く議論し、その処理方針をできる限り早く取りまとめるよう指示したところであります。

 また、国民年金の未納、未加入問題の解消は、年金制度への信頼にかかわる重要課題であり、強制徴収の実施や免除制度の適用など、的確な対策を強力に推進しております。

 いずれにせよ、年金制度は長期的な視野に立って改革を進める必要があり、与野党が胸襟を開いて協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠であります。早急に民主党も参加して両院合同会議における議論が再開されることを期待しております。(拍手)

 六者会合でございますが、今般の六者会合において、北朝鮮がすべての核兵器及び既存の核計画の検証可能な廃棄を約束したことは、六者会合を通じて朝鮮半島の非核化を実現する上での重要な基礎となるものであります。今回の合意を迅速かつ着実に実行に移すべく、次回会合では北朝鮮による核廃棄の手順等が議論されますが、我が国は引き続き関係各国と緊密に協調し、問題の解決に向け最大限努力する考えであります。

 日朝国交正常化についてでございますが、日朝平壌宣言にあるとおり、核、拉致、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して日朝国交正常化を実現し、その上で経済協力を行っていくとの政府の考えは一貫しております。六者会合の共同声明にあるエネルギー支援等については、今後具体的に議論されますが、我が国の参加については、諸懸案の進展を含む日朝関係全般の状況も踏まえ検討してまいります。

 地方分権、三位一体改革の進め方についてでございますが、地方にできることは地方にという理念のもと、国の関与を縮小し、地方の権限、責任を拡大して地方分権を一層推進してまいります。このため、四兆円程度の補助金改革、三兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しの三位一体の改革について、地方の意見を真摯に受けとめ、平成十八年度までに確実に実現いたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 前原誠司君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 二点の質問、そして一つの意見を申し上げたいと思います。(拍手)

 一つについては、今回の国民投票的な解散・総選挙について、これからの諸施策について白紙委任を受けたのではないという質問をいたしました。しかし、総理の答弁は、今までの改革が評価されて選挙に勝ったんだということで、これからの内容について国民がどう判断したかについては全く答弁がありませんでした。

 それと、自民党のマニフェストには具体的な達成期限、数値目標が書いていないから、選挙をやり直せということも申し上げたが、それについての答弁はない。それとあわせて、定率減税の問題につきましては、これは自民党のマニフェストから比べて公約違反ではないかということについても、逃げて答弁をされませんでした。明確に答弁を求めます。(拍手)

 もう一つの質問は、自公の選挙協力についてであります。

 それぞれの選挙区で判断をするということは、明確にお答えをいただきたいのは、自民党の公認候補が公明党に投票依頼してもいいということを認めたということかどうか、それをもう一度はっきり答弁をしてもらいたい。

 これを認めたということになれば、議会制民主主義はがたがたに壊れますよ、皆さん。そんなことを国民が許すはずがない。もし自民党公認候補が他党へ、公明党へ投票してくれということがいいのであれば、明確にお答えをいただきたいと思います。

 最後に、意見だけ申し上げて私の再質問を終わりたいと思いますが、天下り規制というものが小泉さんは甘過ぎる。改革、改革ということを言うのであれば、そういったことをしっかりと国民の目線で締めていくのが本当の改革ではありませんか。近藤総裁は自民党の参議院議員だったんですよ。自民党の参議院議員を総理みずからが任命をして、その人が監督不十分で談合を起こしたんじゃないですか。その責任もとらせずに天下らせる、こんなふざけた話はないということをもう一度申し上げて、私の再質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 前原議員に、再質問に対し、再答弁いたします。

 今回の総選挙ですべての課題について負託を受けたと考えるかというお尋ねに対する再質問だと思うのであります。

 郵政民営化が最大の争点でありました。しかし、それと同時に、国民の皆さんは、この四年余り、私が政権を担当してきたその実績、そして構造改革路線を進めてきた方針、それも十分勘案して判断を下されたと思っております。(拍手)

 この国民の声、支持を厳粛に受けとめまして、今後、郵政民営化のみならず、構造改革路線をしっかりと軌道に乗せていきたいと考えております。

 また、定率減税の問題につきましても、定率減税の残り半分につきましては、年末の平成十八年度税制改正において、これまでの議論を踏まえ、経済情勢等を十分に見きわめつつ、今後議論していくべき事柄と考えております。

 また、自民党と公明党の協力のあり方につきましては、各選挙区において個別の候補者が具体的にどのような協力方法をとるかについては、それぞれの事情を勘案しながら各候補者が判断すべき問題であります。

 既に自民党と公明党は連立政権を組んでおり、お互いの信頼関係を醸成しながら今まで安定した政権運営をやってまいりました。そういうことを踏まえて、それぞれが互いに協力して、切磋琢磨をして、連立関係を維持して、引き続き構造改革を進めていくことが連立政権の責務であると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 武部勤君。

    〔武部勤君登壇〕

武部勤君 私は、自由民主党を代表し、総理の所信表明演説に対して質問を行います。(拍手)

 郵政民営化が象徴する小泉改革の是非が問われた選挙後の特別国会であります。今後の改革の大きな課題に絞って質問をいたしたいと存じます。

 質問に先立ち、九州を中心に、さきの大型台風がもたらした風水害により被災した方々、また、米国南東部に相次いだ台風により現在も被害の影響に苦しんでおられる大勢の皆様に謹んでお見舞いを申し上げ、犠牲となられた方々に対し改めて心からなる御冥福をお祈り申し上げます。一刻も早い被害の復旧に、国会としても党派を超えて協力し合い、取り組んでまいる所存であります。

 議員諸君、選挙とは何か。それは、国民の我々に対する審判であり、期待であり、批判であり、要望であります。すなわち、国民の意思であります。今回、衆議院選挙で示された国民の意思は、迷わず、ひるまず、改革をさらに推し進めよとのものでありました。国民は、郵政の民営化もできずにどんな改革ができるのかとの総理の強い決意に圧倒的な支持を与えてくださったことを、我々は決して忘れてはなりません。

 総理は、選挙に当たって、郵政民営化こそすべてにつながる行政の改革であり、政治の構造改革でもあると語られました。が、その言葉どおり、まず政治の大きな構造改革が一気に実現しました。

 選挙中に細田官房長官がいみじくも指摘したとおり、郵政民営化に反対する人たちは何にでも反対していた人たちと言って過言ではありません。我が自由民主党は、そうした改革の抵抗勢力と決別いたしました。

 一方、民主党も改革を余儀なくされているのではないでしょうか。先ほどの代表質問を聞く限り、いささか期待を裏切った感が否めませんが、新しい党の代表に、四十三歳と若く、労働組合などに縛られない政策立案を訴えた前原誠司君を選出したことが、それを端的に物語っていると思います。

 今回の選挙では、与党の勝利により株価が強い上昇基調となるなど、内外ともに改革の加速による強い日本再生への期待が高まっております。総理御自身は、今回の選挙結果をどう受けとめ、今後どのような決意で改革に臨まれるのか、お伺いをいたします。

 次に、郵政民営化についてお尋ねいたします。

 かつて二宮尊徳は、困窮した村々を救うときに、ありとあらゆる食用のものを植え、それは田畑のみならず神社やお寺の境内にまで及びました。中途半端なことでは国を救うことはできない、やる以上は徹底的にやるのだという強い決心を示したのであります。

 ところで、今回の選挙によって、国民が郵政改革に望んでいるのはあくまで民営化であることがはっきりしました。民主党は選挙中に、民営化せず国家公務員の身分を残して、郵貯の預け入れ限度額を引き下げるという中途半端な改革案を主張いたしましたが、リストラに耐え、懸命に歯を食いしばって働き、やっと経済を上向かせるところまで来た国民の心情に全くアピールしませんでした。民主党はその事実を重く受けとめ、一日も早く民営化法が成立するよう、与党に御協力いただきたいと願うものであります。(拍手)

 郵政民営化がいよいよ現実のものとなるに当たり、利用者である国民や、現に働いている郵政職員が不安を持たないで済むのか、民営化の理念とは何か、そのメリット並びに前回の提出法案から主な変更点は何か、竹中郵政民営化担当大臣にわかりやすく御説明いただきたいと存じます。

 さて、再び二宮尊徳の話になりますが、尊徳は、政治の目的の一つは民の米びつを満たすことだと述べております。すなわち、民間の経済活動の邪魔にならないような、行政のむだを省いて、民のための政治を行うのだという意味であります。国民は米びつを満たすことを念じて、日々努力を重ねております。ならば、国民は郵政民営化の次の改革についても大いなる注目をいたしていると思われますが、そのことについて伺いたいと存じます。

 総理は、選挙を通じて古い自民党を脱ぎ捨て、新しい自民党をつくり上げました。改革に何でも反対し、公共事業を初め官が使うお金をふやし、官の規制や許認可を強めようという役人天国推進勢力と決別したのであります。

 これより先、改革の痛みとは官のリストラであります。政府の予算や補助金をもらい、規制や許認可などによって守られてきた人々の既得権を剥奪し、官のむだを徹底的になくすことであります。そうしなければ、我々は国民に対して申しわけない。官のリストラを達成してこそ、将来的な国民負担を軽減することができます。そして、これこそが、規制の撤廃と官業の民間開放による新たな事業機会や起業の促進であり、雇用機会の創出であり、全国一律ではない、個性的で魅力あふれる地域社会の実現でなければなりません。

 総理は、所信表明で、郵政民営化は簡素で効率的な政府の実現を加速すると述べられました。小さな政府の実現に取り組む決意のほどをお示しいただきたいと思います。

 また、昨日の経済財政諮問会議で、政府の規模を十年以内に半減するという提案がなされたと聞いております。具体的にどのように進めていくのかについて、竹中大臣の御見解を伺います。

 さて、郵政民営化で官の第二の財布は入り口がなくなります。次は出口の徹底した改革をしなければなりません。政府系金融機関については、住宅金融公庫を廃止し、国民の利便性を維持しつつ民業の補完に徹する改革が実現しておりますが、残る八機関の改革はこれからが本番であります。

 政府系金融機関は、経済事情を考慮して改革時期を先送りしてまいりましたが、総理の改革により不良債権問題は解決し、経済情勢も大幅に改善しました。中小企業融資にはさまざまな制度が整えられ、民間金融機関の中小企業に対する無担保無保証ローンも浸透し始めております。住宅金融公庫の改革に際しては、総理が語られたように、民間金融機関の長期固定・低金利住宅ローンは今や当たり前になっております。

 政府系金融機関についても民営化、統廃合などの思い切った改革を行うべきと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 そして、政府系金融機関と並ぶ官の第二の財布の出口として、特殊法人改革も引き続き重要な課題であります。

 小泉内閣の特殊法人改革は、あと三つを残すだけというところまで参りました。一つは政府系金融機関、一つは、経済産業省の裏金問題の温床にもなった公営ギャンブル法人、そして最後の一つは、不祥事による放送受信料未払い拡大に直面しているNHKであります。特殊法人改革の総仕上げに対する総理の御決意をお伺いいたしたいと存じます。

 次に、公務員改革についてお尋ねいたします。

 今、国民は公務員に対して非常に大きな不信感を持っております。それは、大阪市役所で明らかになった、あきれるほどの優遇ぶりや、やみ専従などの勤務実態、山梨県教職員組合で明らかとなった組織ぐるみの政治介入、また社会保険庁労組の覚書問題など、事件や不祥事の続発を見れば当然のことであります。

 公務員はなぜ仕事をしないのか。公務員の給与はなぜ民間に比べて高いのか。特に、官公庁の労働組合の実態はどうなっているか。一般論としてさまざまな問題が指摘されています。国民に奉仕するのではなく、みずからの身分と既得権を守ることが最優先の目的になっているのであるとすれば、国民に大きくのしかかる社会保障費の負担増や消費税の議論の前に、公務員改革は絶対避けて通れない最重要政治課題と言わなければなりません。(拍手)

 小さな政府の実現に向けて、今後、公務員の人件費削減をどこまでしっかりやっていくおつもりなのか、決意をお示しいただきたいと思います。

 特に、公務員給与については、人事院勧告は国の財政事情を考慮したものとなっておりません。今日の厳しい財政事情を考慮した公務員給与になるよう検討する必要があります。例えば、地方自治体では、地方公務員の給与について人事委員会の勧告をそのまま実施するのではなく、知事や市長が組合と交渉し、勧告よりも引き下げる動きが広まっています。この点についても、総理のお考えをお伺いいたします。

 また、公務員改革においては、天下りの抑制も重要な課題であります。例えば、二〇一〇年とか二〇一五年から全廃すると今のうちに決めておけば、スムーズに対応できるのではないでしょうか。総理の御認識をお伺いいたします。

 次に、特別会計と特定財源制度についてお聞きいたします。

 これらについては、あきれたむだ遣いぶりに国民の強い批判があると同時に、際限のない事業の拡大と継続が官の肥大化を招いており、小さな政府を実現するため、廃止を含めた見直し、削減、効率化など、徹底した改革が不可欠であります。

 私は、改革に当たっては、一、財政再建への貢献、二、官から民への視点、三、むだ遣いの一掃、この三つの視点が必要と考えます。役割を終えた特別会計の廃止や統合、特別会計を管理する役人のむだ遣いの徹底的な排除に加え、市場化テストによる事務事業の民間移譲などの特別会計の廃止も大胆に進めるべきであります。

 さらに、公共事業特会については、事業の縮小や他の必要な事業への使途の拡大、あるいは一般財源化も念頭に見直す必要があると考えます。そのため、まず国土交通省や農林水産省など、複数の事業特会を抱えている役所の特別会計を一本化しなくてはなりません。

 また、道路特定財源については、例えば、本四公団の債務処理のため十七年度は四千八百億円を充当しております。しかし、十八年度に終了することに伴い、十九年度から同規模以上の剰余金が生じる見通しであります。道路特定財源を将来どうするのか。いずれにしても、一方で剰余金があって、一方で国民負担をさらに求めるようなことだけは、これからは絶対にあってはならないのであります。

 特別会計、特定財源についても思い切った改革が必要と考えますが、どのようなスケジュールで改革を進めていくのか、総理の御認識をお尋ねいたします。(拍手)

 さて、国、地方合わせて七百七十兆円もの長期債務残高を抱える財政の健全化も急務な課題であります。当面、国と地方を通じた二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を達成し、その後、国債残高を着実に減額していくためには、歳出の恒久的削減措置や、社会保障費の伸び率を適正化する改革が不可欠であります。

 しかしながら、私は、そうした措置をしただけで国民に増税という形の安易な負担増を求めるべきではないと考えます。財政再建は歳出削減と増税の組み合わせしかないと考えるのは間違いであります。大事なのは、政府の歳出規模だけではなく、国民生活や経済に対する政府の関与においても小さな政府にする改革でなければなりません。

 つまり、規制撤廃を新たな成長のエンジンとして大胆に進め、民間主導の経済活性化を実現する改革と、市場化テストを活用して、官が税金を使って行う仕事を民間に移譲していく改革をミックスすることによって税収増を実現する、こうして国民への増税を極力回避しつつ、財政健全化を進めていくべきであります。(拍手)

 私は、これこそ小泉改革の目指すべき方向であると信ずるものであります。増税により国民に安易に負担増を求めることなく、小さな政府の改革を徹底して財政健全化を実現するとの力強い御決意を、総理のメッセージとして国民に発していただきたいと存じますが、いかがでしょうか。

 また、借金まみれの民間企業なら、必ず資産を処分して借金を減らします。政府も、資産を処分して借金を減らすべきではないでしょうか。あわせて総理のお考えをお伺いいたします。

 我が国の少子高齢化の勢いはすさまじく、社会保障費は増大し続け、その財源の確保はまことに重要な課題であります。私は、徹底した改革を行った上で、国民が納得できる形で税負担増をお願いすることは避けて通れないことだと考えております。

 我が党の政権公約は、「十九年度を目途に、社会保障給付全般に要する費用の見通し等を踏まえつつ、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う観点から、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する。」としておりますが、十九年度はあくまで目途であり、小さな政府へ向けた改革と社会保障制度の改革をしっかりと行い、国民に増税の提案ができる環境を整えることが大前提であります。

 総理は、選挙中の討論で、十九年度はまだ早いと考えていると述べられましたが、消費税を含む税制の抜本的改革を行う時期や条件について、お考えをお聞きいたしたいと存じます。

 ここで、残された構造改革のテーマについて質問いたします。

 第一に、医療制度の構造改革であります。

 社会保障費は毎年一兆円のペースで増加しており、社会保障制度も既得権にとらわれずに改革していかなければなりません。その意味で、我が党が政権公約に掲げた、将来も国民負担を五〇%以内に抑制するとの数字は大変重要であります。

 年金制度と介護保険制度については、既に大幅な改革が行われました。来年は、残る医療制度改革について、伸び率を適正化する仕組みを講じて国民負担を抑制し、社会保障全体を持続可能なものにしていかなければなりません。

 第二に、農業の構造改革であります。

 日本の農業を国際的に戦える農業へと改革するには、農協等のさらなる構造改革を強力に進めていかなければなりません。

 これらの課題に取り組む総理の御決意をお伺いいたします。

 また、小さな政府を実現する重要なツールとなる市場化テストについて、今後の導入スケジュールとあわせて総理の御見解をお聞かせください。

 さて、日本で初めて年金制度を実施したのは、名君として名高い会津の保科正之でありました。その保科正之は、天下は民あってのもの、民の暮らしを安んずることが政治の責任と申しております。これは現代でも同じでありまして、国民が安心できる年金制度をつくることは、政治の絶対的な命題であると考えます。

 年金制度につきましては、昨年の改革によって持続可能な基盤が確立されました。また、国民負担の上限と年金受給額の下限が設定されました。しかしながら、国民が真に安心するためには、年金制度のさらなる改革を行う必要があります。年金の一元化については、与野党が協力して検討していかなければなりません。が、まずは公務員の既得権の一つとなっている共済年金を早急に厚生年金に統合し、官民格差の是正を行うべきであります。いつまでに統合するおつもりなのか、その目標時期について総理の見解をお伺いしたいと存じます。

 なお、批判される議員年金制度については、我々与党が責任を持って改革することをお約束いたします。(拍手)

 以上、改革の課題について質問いたしましたが、改革が勝ち組、負け組を肯定する競争社会を目指したものでないことは言うまでもありません。その意味で憂慮すべきは、経済が上向いても地域間格差は残念ながら是正されていないということであります。また、大企業と中小企業とのいわゆる民民格差の拡大も懸念されます。

 今必要なことは、日本全体が改革の成果を享受し、豊かな未来を確信できるような政策のめり張りであり、選択と集中であると思います。経済が上向いている今こそが、地域で頑張っている企業や個人を元気にする最大のチャンスだと考えますが、改革の光を出おくれている地域や企業にどう当てていくべきか、総理の御見解をお聞かせください。

 また、原油価格が高騰しておりますが、我が国の物流や経済に及ぼす影響は甚大であり、地域経済を一層疲弊させかねません。緊急かつ時限的な何らかの助成策も必要ではないかと考えますが、この点について、中川経済産業大臣に御見解をお伺いいたします。

 今回の衆議院選挙で自民党は八十三人の新人議員が当選し、従来のしがらみにとらわれない、特定の利益集団に支配されない自民党に生まれ変わりました。我が党は分裂という政治的犠牲を払いましたが、新しい自民党への国民の期待はその影響をはるかに上回り、歴史的な大勝利をいただいたのであります。我々は、今回あらわされた国民の圧倒的な支持と、時代の変化を加速したいとの国民の願いに、あくまでも謙虚に、誠実にこたえていかなければなりません。

 我が党は、選挙を通じて国民に、従来のしがらみや既得権にとらわれず改革を進める覚悟を示しました。今回、我が党が国民に示した意思は、時代を超えて引き継がれていく約束であります。たとえ小泉総裁の任期が来年九月で終わったとしても、自民党そのものが改革政党であり、そのトップは改革の推進者であり続けるのであります。

 当面、十八年度予算に向けては三位一体改革の総仕上げをしなければなりませんが、小泉改革チームとなった自民党は、どのような難題でも、それが国民のためである限り、友党公明党とともに総理の改革実現に結束し、答えを出し、実行していく決意であります。

 総理が思い残すことなく改革に全身全霊で邁進されますよう念願し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 武部議員に答弁いたします。

 今回の選挙結果及び今後の改革への決意についてでございますが、今般、自由民主党と公明党と合わせて、目標の過半数を超える議席を獲得することができました。これまでも多くの国民の御支援により改革を進めてまいりましたけれども、この総選挙の結果、多くの国民は引き続き改革を進めていけという声だと受けとめまして、この改革をとめることなく、改革路線をしっかりとした軌道に乗せていきたいと考えております。まずは郵政民営化法案を実現させ、そして山積する内外の諸課題に取り組み、残された任期一年、内閣総理大臣の職責を果たすべく、全力を尽くしてまいります。(拍手)

 小さな政府の実現に向けて取り組む決意についてでございますが、郵政民営化は、約二十六万人の郵政公社の常勤職員が民間人になるとともに、従来免除されていた税金が支払われること等によりまして財政再建にも貢献するなど、小さな政府の実現を加速するものであります。

 私は、今回、この郵政民営化のみならず、政府系金融機関の改革、そして地方にできることは地方にという三位一体の改革、さらには公務員の総人件費等の削減、財政構造改革等、今までの基本方針にのっとってこの改革をさらに進めていかなきゃならない、そうすることによって政府の規模というものを縮減していかなきゃならないと思っております。それが将来の世代の税負担の軽減につながるものと考えているからでございます。

 政府系金融機関についての問題についてお尋ねでございます。

 特殊法人改革については、既に、道路公団を廃止して民営化する、住宅金融公庫についても民間で取り組んでいる直接融資を基本的に廃止するなど、事務事業の徹底した見直しを行いました。この結果、特殊法人等向け財政支出を実質的に一兆五千億円削減する等の成果が上がっております。

 政府系金融機関の改革は、資金の入り口の郵政民営化に続く重要な出口の改革であります。住宅金融公庫を除く八機関についてまだ残っておりますが、経済財政諮問会議において、十一月をめどにあるべき姿の実現に関する基本方針を取りまとめるため、政策金融の手法を用いて真に行うべきものを厳選し、統廃合、民営化等を含めてしっかりと議論していく考えでございます。

 さらに、公営競技関係法人については、組織のあり方や助成金交付事業の透明化等について議論を行い、平成十七年度中に結論を得る考えであります。

 また、NHKについては、国民・視聴者の信頼回復や受信料の公平負担及び健全経営の確保に向けた取り組みがなされることを期待しております。

 今後とも、特殊法人等から移行した独立行政法人も含め、事業の廃止、縮小、重点化等を通じて財政支出の縮減を図るなど、改革の実施に取り組んでまいります。

 公務員の人件費削減についてでございますが、政府の規模を大胆に縮減するとの観点から、国、地方を通じ、公務員の給与に関し、地域の民間の給与実態に合わせるなど給与体系の見直しを進めるとともに、公務員の定員の純減目標を設定し、削減を平成十八年度より行ってまいります。

 公務員給与の取り扱いについてでございますが、政府においては、これまで徹底的な行財政改革に取り組み、国家公務員についても、平成十三年度以降、約十四万人の職員の非公務員化、五%を超える給与水準の引き下げ等の措置を講じてまいりました。

 本年度の人事院勧告については、本日、勧告どおり実施することといたしました。勧告には、地域における国家公務員給与の見直しなど給与構造の抜本的な改革等が盛り込まれており、その実施は、総人件費の削減、ひいては行財政改革の推進に資するものと考えております。

 天下りの抑制についてでございますが、早期退職慣行の是正を進めているほか、特殊法人等の長及び役員の選任について国家公務員出身者の割合を二分の一以下とするなど、各省を厳しく指導してきたところであります。この問題に対する国民の強い批判があることを真摯に受けとめ、今後とも内閣としてしっかり取り組んでまいります。

 公共事業などの特別会計、特定財源についてでございますが、自民党がマニフェストで、非効率的な特別会計や特定財源制度について聖域なく抜本的に見直すことを公約し、さらに、今般、幹事長みずからこの本会議で、特別会計や特定財源の思い切った改革が必要という提言をされました。これを心から歓迎いたします。政府と歩調を合わせて、しっかりと党側もこの改革に御協力をいただきたいと思います。(拍手)

 御指摘のように、特別会計、特定財源については、受益と負担の関係を明確にできるなどの意義がある一方、近年、硬直化してむだな支出が行われているのではないかとの問題が指摘されております。

 私は、道路等の特定財源について、暫定増税をしている税制との関係、また、使い道のあり方の見直しなどの基本方針について、年内に検討するよう指示しております。

 いずれにせよ、国全体としての一層の歳出の合理化、効率化の観点から、政府・与党一体となって、御指摘の点について一層徹底した改革を行ってまいります。

 財政健全化に関して、小さな政府を目指す改革を徹底すべきとのお尋ねでございますが、私は、就任以来、財政健全化に向けて、公共事業費を約四割削減するなど、既に十兆円に上る歳出改革を断行してまいりました。引き続き、二〇一〇年代初頭には政策的な支出を新たな借金に頼らずにその年度の税収等で賄えるよう、財政構造改革を全力で進めていかなければなりません。このため、財政再建に貢献すべく、郵政民営化を初めとする構造改革を断行し、政府の規模を大胆に縮減してまいります。

 政府の資産に関してでございますが、これまでも、NTTなど民営化法人の株式や物納財産等の未利用国有地などを積極的に売却し、財政健全化に貢献してきているところであります。さらに、郵政民営化は、株式の売却などにより財政再建にも貢献するものと考えます。

 今後とも、経済財政諮問会議において、政府が持つ資産、債務の管理強化に関する議論を進めていくこととしており、政府の規模の縮減の実現に向け、着実に取り組んでいきたいと考えます。

 消費税を含む税制の改革についてでございますが、私は、まずは徹底した行財政改革に取り組むべきものであると考えておりまして、これまで申し上げてきたとおり、在任中に消費税を引き上げる考えはございません。

 しかし他方で、現在、国債依存度が四〇%に達しており、歳出削減だけで財政再建が可能であるとは思っておりません。そのために、消費税を含めたあらゆる税制について大いに議論を進めるべきであると考えております。

 今後、消費課税だけでなく、幅広く税制全体のあり方を総合的に考えて、結論を平成十八年度内を目途に得たいと考えております。

 医療費の伸び率の適正化についてでございますが、社会保障給付費の中で、医療費は平成十五年度で約三十一兆円となっております。今後、高齢化の進展に伴い、国民所得を上回る勢いで伸びていくことが見込まれております。

 したがって、国民負担を極力抑制するとともに、国民皆保険制度の持続可能性を確保するため、医療費を適正化する仕組みを構築することは早急に取り組むべき重要な課題であります。

 このため、医療費適正化の実質的な成果を目指す政策目標の設定や、保険給付の内容、範囲の見直しなどについて年内に結論を得た上で、医療保険制度改革関連法案を次期通常国会に提出するようしっかり取り組んでまいります。

 農業の改革についてでございますが、今後の農政の展開に当たっては、やる気と能力のある農業経営への支援の集中化、重点化を図るほか、我が国農産物の海外への輸出など、生産者や地域の創意工夫に基づく意欲的な取り組みを後押しする攻めの農政に転換することが重要であります。

 御指摘の農協改革についても、農林水産大臣みずから先頭に立って、担い手育成に対応した事業展開など、改革の推進に積極的に取り組んでいるところであります。

 市場化テストでございますが、この市場化テストについては、いわゆるお役所仕事を徹底的に見直して、民間にできることは民間にを実現するために、官と民が競争してサービスの効率化を進めるもので、重要な手段と考えております。

 このため、市場化テストを本格的に導入するための法的基盤を整えるべく、お役所仕事改革法ともいうべき公共サービス効率化法案の次期通常国会への提出に向けた準備を政府を挙げて加速してまいりたいと考えます。

 被用者年金の一元化の目標時期についてですが、年金制度の一元化について、私は、まずは厚生年金と共済年金の一元化が先に来るのではないかと申し上げてまいりました。私は、既に、被用者年金の一元化に向け、制度間における給付や負担の水準の相違等、被用者年金の一元化を進めるに当たって検討すべきさまざまな課題について幅広く議論し、その処理方針をできるだけ早く取りまとめるよう指示したところであります。

 改革の光を地域や企業にどう当てていくかということでございますが、我が国経済は、企業部門と家計部門がともに改善し、全体としては緩やかに回復しておりますが、地方経済については、北海道や東北でやや弱含みとなるなど、依然としてばらつきが見られております。また、中小企業については、持ち直しの基調にあるものの、その環境については大企業に比べて厳しいものがあります。

 こうした認識のもとに、政府としては、五百四十八件に及ぶ構造改革特区の認定、稚内から石垣までをモットーとする都市再生、地域再生法等による支援、一地域一観光の方針のもとで観光振興による地域経済の活性化の促進、中小企業への円滑な資金供給や新事業への挑戦支援など、改革の成果を地域や中小企業にも浸透させてきております。

 今後、御指摘のように、さらに民間主導の経済成長を図る中で地域の再生に積極的に取り組む方針であります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 武部議員から、二問質問をいただきました。

 まず、郵政民営化の理念及びメリットについてのお尋ねでございます。

 郵政民営化は、民間にできることは民間にゆだね、構造改革を着実に推進し、小さくて効率的な政府の実現によって経済の活性化を図るものであります。

 郵政民営化を実現することによりまして、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とすることにより、質の高い多様なサービスが提供できるようになります。約三百四十兆円の郵貯、簡保の資金を官から民に流す道を開くことにもなります。約二十六万人の郵政公社の常勤職員が民間人になるなど、小さな政府の実現に資する等のメリットがもたらされると考えられます。

 国民や職員の不安等についてもお尋ねがございましたが、公的部門の民営化に当たっては、民営化後も事業の公共性に配慮した制度設計がなされなければならないと考えております。こうした観点から、法案でも、必要な郵便局ネットワークの維持等、さまざまな制度設計上の工夫を凝らしております。

 また、郵政民営化における公社職員の雇用や待遇については、公社職員の新会社での雇用を法律により確実に確保するとともに、公社での勤務条件への配慮の義務づけ等、不利益が生ずることがないよう所要の措置を講ずることとしております。

 加えて、前回提出法案からの主な変更点についてもお尋ねがございましたが、前回提出法案からの主な変更点は、第一に、民営化の実施スケジュールを半年延期したことであります。ただし、郵政民営化推進本部や郵政民営化委員会の設置等については延期をしておりません。第二に、前回提出法案について衆議院で修正された事項を法案に反映させております。これらの修正に伴い、所要の技術的修正を行っておりますが、それ以外の変更はございません。

 いずれにしましても、以上のような郵政民営化に向けて、担当大臣として全力を尽くしたいというふうに考えております。

 次に、政府の規模を十年以内に半減するという経済財政諮問会議における提案の具体的な進め方についてお尋ねがございました。

 議員御指摘のとおり、昨日の経済財政諮問会議では、総理の所信表明に示された政府の規模の大胆な縮減に向けまして、例えば、公務員の総人件費改革、政策金融改革、政府の資産負債管理や規制改革等については、政府の規模を十年以内に半減を目指すといった提案が民間有識者議員からなされたところであります。

 明確で大胆な目標に向けて改革を進めることに関して認識が共有されていると考えております。これを受けて、どのような形で政府の規模を定義し、それを実現していくことができるか議論を深めながら、政府の規模の半減に向け、十一月を目途に政策金融改革等の基本方針を取りまとめたいと考えております。

 いずれにしましても、日本経済の将来にとって、ここ一、二年の構造改革の取り組みが極めて重要であります。小さくて効率的な政府の実現に向け、全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 原油価格高騰への対応についてお答え申し上げます。

 原油価格上昇がガソリン、軽油等の石油製品価格に与える影響につきまして、全国のガソリンスタンドでのモニタリング地点を昨年六月から倍増し、監視の強化を図るとともに、中小企業を含めた我が国経済、産業に与える影響につきまして、これまで累次にわたりきめ細かい実態調査に努めてきたところでございます。

 先週発表した調査結果では、大企業につきましては、総じて見れば、影響が深刻化している状況は見られなかった一方、中小企業につきましては、約六割の企業が収益を圧迫され、九割近くの企業が価格転嫁が困難となるなどの実態が明らかになりました。また、業種別に見ますと、運輸業、漁業、石油製品製造業、プラスチック製造業、さらにはクリーニング業等々に大きな影響が出ていると承知いたしております。

 このため、全国に特別相談窓口を設置し、経営状況が厳しくなっている中小企業につきましては、商工組合中央金庫を初めとする政府系金融機関によるセーフティーネット融資の利用を初め、きめ細かく相談に応じるとともに、親事業者団体に対し、下請振興基準に基づき下請事業者へ配慮するよう要請文書の発出を指示したところでございます。

 また、国際的な石油の安定需給を確保するため、IEA加盟国との石油備蓄の協調放出、外交ルートを通じた産油国への増産要請など国際的な取り組みを進めるとともに、省エネルギーの推進、新エネルギーの導入等、一次エネルギー源の多様化促進など国内のエネルギー政策にも取り組んでおります。

 私は、引き続き、価格動向、転嫁の状況や個別産業への影響など原油をめぐる諸情勢を十分注視しつつ、関係各府省庁とも十分な連携を図りながら、原油価格高騰問題に迅速かつ適切に対処してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 国民の皆さん、鳩山由紀夫です。私は、民主党・無所属クラブを代表して、さきの小泉総理の所信に対して質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、前原代表も触れられましたが、今は亡き後藤田正晴先生に対して、心からなる弔意をささげます。

 後藤田先生は、常日ごろ、権力の独善に対して強い戒めの気持ちをあらわしておられました。今、自民党がややもすると権力の独善に陥りがちなこの時期に、後藤田先生のような方が自民党の中に全くおられないことが残念のきわみでございます。

 なればこそ、私たち民主党が、今は亡き後藤田先生にかわって、自公政権の独善を防ぐ役割をしっかりと果たしてまいります。私も、前原代表を支えながら、その先頭に立つことをお誓い申し上げます。(拍手)

 さて、改めて申し上げますが、「改革を止めるな。」さきの総選挙で小泉総理はこのスローガンを掲げ、自民党こそ改革政党であるというイメージを国民の皆さんにばらまいたのであります。しかし、それは錯覚にすぎません。総理の言う改革は、実際には、官僚や族議員が失う既得権を最小限に抑えながら、ほんの少しだけ進んだ改革を針小棒大に看板に大書し、改革が進んだ、改革が進んだと繰り返して国民に暗示をかけているだけじゃありませんか。

 道路公団の民営化と郵政の民営化がまさにその象徴であります。むだな高速道路は建設をすべてストップするための道路公団民営化だったはずが、特殊会社の資金調達に政府保証をつけることによって、むだな高速道路でさえ建設される見込みではありませんか。さらには、民間資金を官から民へ流すための郵政民営化法案だったはずが、特殊法人などへの垂れ流しを温存して、官業の一層の肥大化を招くような法案になりました。郵政民営化の目的にも合わない法案を郵政民営化法案と名づけて国民に幻想を与えてきたのが、小泉さん、あなたの改革ではありませんか。政官業の癒着構造を黙認して、彼らの既得権を守りつつ、それに切り込んだ、切り込んだと言い募ってきたのが小泉総理の改革ではありませんか。

 私たちは、民主党こそが看板も中身も真の改革政党になることを国民の皆さんにはっきりと誓います。冒頭、その点を強調申し上げて、質問に入ります。

 まず、政治改革について伺いたい。

 自民党のいわゆる改革から欠落しているその最たるものが政治改革と言わなければなりません。さきの総選挙においても、小泉総理が政治改革を争点にする気配は全くありませんでした。

 自民党旧橋本派の一億円やみ献金事件や迂回献金など、政治と金の問題が国民に極めて大きな、深刻な政治不信をもたらしました。これは、橋本元総理の政界引退によって一件落着という話では全くありません。

 事件発覚以来、民主党は、真相解明と再発防止を図るため、橋本元総理を初め関係者の証人喚問を求めてまいりました。残念ながら、小泉総理を筆頭に与党の皆さんが拒否し続けたため、いまだに実現に至っておりません。総理、やみ献金事件の真相解明を図るつもりはおありになるのかどうか、改めて見解を求めます。(拍手)

 民主党は、国民から信頼される政治、クリーンな政治を実現するために、そうした迂回献金を禁止する規定を初め、政治資金の透明化のため実効性ある法案を提案してまいりました。しかし、自民党は、私たちの提案に見向きもせず、ほんの小手先の見直しでけりをつけようとしているのであります。

 報道によれば、自民党は政治資金規正法改正案を今国会に改めて提出されるようですが、迂回献金の禁止規定がなければ、抜け道だらけで実効性はありません。自民党の皆さんの本音は、改革をとめるなではなく、迂回献金をとめるな、やみ献金の道をとめるななのではありませんか。

 総理は、自民党には迂回献金はないと盛んに絶叫しておられましたが、まさか、迂回献金はないのだから法規制も必要ないなどと、むちゃくちゃな理屈をこねるのではありませんね。迂回献金を禁止する法律改正に自民党は取り組むのか無視し続けるのか、総理に明確な答弁を求めます。(拍手)

 次に、地方分権について質問します。

 分権改革こそは、小泉改革の本質的な欠陥が露呈するところであります。つまり、「この国のかたち」に対する理念も全くなく、単なる数字合わせと、三位一体というネーミングによって改革が進んでいるイメージだけをばらまいているにすぎません。中央と地方の関係については、現行制度の枠組みを基本的に維持したまま、中央政府の権限が余り減らない項目を選んで補助金を削減しているのですから、改革の名に全く値しません。

 民主党は、基礎自治体にできないことだけを都道府県や道州などの広域自治体が、広域自治体にできないことを国が行うという補完性の原理に立って、国と地方、そして、地方の中の仕組みを見直してまいります。

 そこで、総理に質問いたします。

 いわゆる補完性の原理に基づいた地域主権の発想についてどう考えるのか。補完性の原理に立てば、今のように実質的権限が地方に移らない分権改革などあり得ないと思いますが、いかがですか。

 政府の三位一体改革においては、八千五百億円の義務教育費国庫負担金の取り扱いが暫定措置とされており、その結論いかんでは、四兆円の補助金削減という数字合わせすら達成できないことになります。本年七月の中央教育審議会の報告によれば、この取り扱いは存続と一般財源化の両論併記であって、方向性を見出すことは困難です。

 総理、政府の最高責任者として、教育制度の根幹にかかわるこの義務教育費国庫負担金を存続すべきか廃止すべきか、その考えをここで示してください。

 また、自民党マニフェストには、三位一体改革の推進については「十九年度以降も地方の意見を尊重」すると記載されています。これではまるで、これまで小泉総理が三位一体改革の中で地方の声を尊重してきたように聞こえ、地方六団体も強い違和感を持ったに違いありません。本年七月には、地方六団体から国庫補助負担金等に関する改革案が出されていますが、まずこれにどう対応するつもりか、総理に質問いたします。

 民主党は、分権政策を推進するに当たっては、国と地方の協議を法制化して、地方の声、現場の声を真摯に受けとめながら、実質の伴う分権を実現していくべきだと考えていますが、総理の見解を伺います。

 企業経営において、改革とは、非効率やむだを排することと、将来を考えて必要な部門に重点的な投資を行うことが車の両輪であります。

 民主党は、政府予算のむだ遣いを一掃する一方、子育てに関しては政府の資源を投入することを一貫して訴えてまいりました。私たちは「コンクリートからヒトへ」の転換と呼んでいます。実際、団塊ジュニアの世代が三十歳代前半の今を逃せば、少子化への対応は手おくれになりかねません。

 こうした観点から、私たちは、中学卒業まで月額一万六千円の子ども手当を支給することや、出産時助成金の創設など、経済的負担の軽減策に始まり、保育・小児医療の充実、育児休業制度の拡充まで、子育てをしながら安心して働き続けられる仕組みをしっかりつくるための提案を行っています。さらに、教育費が極めて高い日本の高等教育の現状を改善するために、学校に助成するシステムをやめて、学ぶ意欲のあるすべての子供たちが奨学金を受けられるようにすべきだとも主張しています。

 それに対して、総理の所信表明でも少子化対策は全く触れられていません。少子化対策の政府予算が高齢者対策の十九分の一であるという現実は、余りにバランスを欠いており、まさに政府のやる気のなさを物語っています。

 総理、少子化対策について何で有効な手だてを全く打とうとしないのでしょうか。(拍手)

 「脱・役人天国」と強調している自民党のマニフェストは、自民党のマニフェストは実は官僚に丸投げした作文であったという報道があります。事実であれば、小泉政治の本質が官僚主導政治であることを象徴する話であり、すべての改革が骨抜きになっている理由もよくわかります。そして、旧態依然とした自民党が改革政党を名乗っていられるのもむべなるかなであります。

 総理に申し上げます。あなたは、郵政民営化の前に、マニフェストを民営化すべきでありました。(拍手)

 事実上の官僚丸投げだからこそ、小泉改革は冷たい改革であると申し上げなければなりません。

 改革に痛みが伴うことは十分にわかりますが、痛みはフェアでなければなりません。自分たちは守りながら社会的弱者だけをねらい撃ちするような痛みを与えることは、不条理を拡大することであり、私は改革とは呼びません。

 国民にはさまざまな人がいます。不幸にして、生涯、心身に何らかのハンディキャップを負ってしまった人々もたくさんおられます。そういう人々に対しても、命を守り、安心を保障することは国の責務であります。彼らも自立を望んでいるんです。

 ところが、政府の障害者自立支援法案では、障害者が生きていくために必要な支援サービスの費用について、障害が重くなるほど本人負担が重くなる内容になっています。負担の軽減対策も、家族との合算を前提としているために、障害を持つ人は家族に依存しなければ生きていけないのです。これでは、まるで障害者自立阻止法案ではありませんか。

 どんな障害を持つ人でも、独立した家に住み、生計を確保するよう支援するのが国際的な福祉の理念であります。我が国は反対で、障害のある人々を、社会参加どころか、家族からの自立さえ阻む方向に向かわせようとしているじゃありませんか。とんでもない話であります。

 理念がまるで世界の流れと逆行している障害者自立支援法案を、何の修正もなく再度国会に提案するんでしょうか。総理にお伺いします。

 その際には、民主党は、国の財政責任を明確化し、障害者の側に徹底的に立った対案を提出いたします。どちらが真の政治か、堂々と議論しようじゃありませんか。(拍手)

 官僚任せの小泉政権は、国民が苦しむ問題への対応がいつもおくれるところにも大きな問題があります。その端的な例が、連日深刻な被害の報告されているアスベスト問題であります。

 民主党は、まずは被害者の救済を急ぎ、アスベストの総合的な対策を盛り込んだ法律案を今国会に提出すべく準備を進めています。これに対して、政府・与党がアスベスト法案を提出するのは、伺いますと、来年の通常国会になると聞いています。小泉内閣の危機感のなさに唖然とするほかありません。

 総理、なぜ今国会にアスベスト対策法案を提出しないのか。できるところから速やかに法律改正を行い、政府を挙げて取り組むべきだと考えますが、見解を求めます。(拍手)

 次に、災害対策について質問いたします。

 ことしも、集中豪雨や台風、地震などと災害が相次ぎ、多くの方々が被災されました。亡くなられた方々の御冥福を祈るとともに、被害に遭われた多くの皆様方にお見舞いを申し上げます。

 災害からの速やかな復興には、生活の基盤である住宅に対する再建支援のための制度が不可欠ですが、制約が多く、実際に支援を受けられる被災者は極めて限られています。

 このため、民主党は、被災者生活再建支援のための要件を緩和して、真に必要な支援を受けられるようにする法案を提出してまいりました。

 総理、現行制度の見直しの必要性についてはどうお考えですか。政府の危機管理体制、特に日本版FEMA構想への見解もあわせて答弁を求めます。

 ところで、台風十四号やハリケーン・カトリーナ、そしてリタのすさまじい破壊力は、私たちを戦慄させました。地球温暖化が進めば台風やハリケーンの巨大化を招くと以前から指摘されてまいりましたが、そのおそれが早くも現実のものとなりました。このような状況下でも、京都議定書の批准すら拒否する国があることは残念でなりません。

 私たちは、まず国内における温室効果ガス削減の長期目標を早急に設定することを提案します。そして、ポスト京都議定書に向け、京都議定書よりもはるかに厳しい温室ガス規制を、現在の京都議定書システムからも外れているアメリカや中国なども参加をする形で実施すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。(拍手)

 私は、四年前と昨年十一月の二回、アフガニスタンを訪れました。首都カブールで北部に向かう米軍機を眺めながら、間接的であれ日本が空爆を支援しているのかと複雑な気分になったものです。アフガニスタンの治安はむしろ悪化しているように感じましたし、日本の給油活動がテロ掃討やアフガニスタンの復興にどの程度役立っているのか、アフガンの一般市民は全く知らないのです。また、日本国民にその説明もありません。

 政府はテロ特措法の延長を求めていますが、総理、その意義があるならば、国民が納得するように説明するべきではありませんか、答弁を求めます。また、この給油活動がイラク作戦に参加する米軍艦船に転用されているとの指摘もありますが、総理、そのような事実はあるのか、あわせてお答えください。

 二〇〇一年九月十一日のアメリカ同時多発テロ事件以降、先般のロンドンでの惨事など、テロは拡散の様相を呈しています。テロとの闘いは日本に対するテロへの備えをも含むものでなければなりません。この点、総理の所信は非常に淡泊なものでありましたが、総理には日本がテロの標的になっているという認識がおありになるのかどうか、あるのならば、その具体策を聞かせてください。

 次に、イラクへの自衛隊派遣について質問します。

 民主党は、現在のイラクにはイラク特措法に言う非戦闘地域はなく、自衛隊をすぐに撤退させるべきだと主張してまいりました。冒頭に紹介した後藤田先生は、自衛隊のイラク派遣について、派遣は間違いだ、武力行使と一体化しないなんて牽強付会の議論だ、小泉君は戦争を知らない、全く知識がないと厳しく批判をしておられたのを思い出します。小泉総理は、以前、自衛隊のいるところが非戦闘地域だと答弁されました。これは、法律論的に問題があるだけではなく、自衛官の命を軽く扱ういいかげんなもので、一国の総理にあるまじき発言でありました。

 イラクでは戦闘やテロによる死傷者が増大し、サマワ周辺の状況もことしに入って悪化しているのは明らかですが、総理は相変わらず非戦闘地域と強弁されるんでしょうか、明確な答弁を求めます。

 現在、イタリアが撤退を開始したほか、イギリスそしてサマワの治安に当たるオーストラリアなどの撤退へ向けた動きが報じられています。米軍についても、現地の司令官が二〇〇六年春と夏には大規模な兵力削減に着手できると発言をしています。自衛隊によるサマワでの給水活動も、ことしの春にはもう終わっています。自衛隊がとどまる意味は、もはやほとんどありません。

 民主党は、イラクから自衛隊を速やかに撤退させるべきだと考えますが、総理の見解を改めて伺います。

 イラク移行政府からの要請を口実に、本音は、米国の顔色をうかがって退くに退けないということであれば、余りにも情けない話であります。また、よもやこの特別国会の閉会後にこそこそと決めるなんということはないでしょうね。こうした重要な問題は、まさに当然、国会開会中に決められるべきことだと思いますが、総理の見解を伺います。(拍手)

 総理、日本の国連安保理常任理事国入りは、事実上暗礁に乗り上げました。国内世論の期待感をあおるだけあおっておきながら、おひざ元のアジア、そして最も重要な影響力を持つアメリカとの間でも意見調整が全くできていないまま、G4の仲間入りをして小切手外交を展開して、手詰まり状態に陥った戦略性の欠如は目を覆うばかりであります。これまでの政府の安保理入り戦略、もしあればの話でありますが、それに対する総括と、G4案の取り扱いを含めた今後の方針について、総理の答弁を求めます。

 この常任理事国入りとも関係しますが、小泉外交で最も改革を必要としているのがアジア近隣諸国との関係です。小泉総理、あなたは中国や韓国の首脳と腹を割った話のできる関係を築いておられるんでしょうか。

 東シナ海で中国が操業を始めたと伝えられています天外天、春暁といった、私も行ってまいりましたが、ガス油田の問題についても、実務者レベルで何十回交渉したところで、解決の糸口すらつかめずに時間が浪費し、中国の開発が既成事実化してしまうだけであります。必要なのは、トップで、トップ同士で話をつけることであります。総理が近隣諸国の首脳との間で満足なコミュニケーションを行えないことが我が国の国益を大きく損なっており、私は残念でなりません。(拍手)

 総理の所信では、近隣諸国との間に相互理解と信頼に基づいた未来志向の友好関係を構築するとうたわれていますが、中国や韓国との関係をこれだけ悪化させたのはあなたではありませんか。靖国参拝への対応を含め、信頼醸成のための具体的な手だてについても本来触れられるべきだったのではありませんか。外交はひとりよがりではできません。言うべきことは言う、しかし、謙虚さと相手に対する思いやりを忘れてはならないということを、そういう態度で総理が臨むことを強く注文しておきます。

 日米関係においても、この姿勢が重要であることは論をまちません。日米同盟は我が国の安全保障の基調でありますが、日本国民の生命や財産を守るためのものであり、その犠牲の上に立つものでは決してありません。沖縄の過重負担の解消は、総理も正式に表明されていることであります。しかし、一九九六年のSACO合意に基づく普天間米軍基地の返還さえ、いまだめどが立っていない状況であります。総理の所信表明にも全く触れられませんでした。

 総理、あなたは、在日米軍基地の再編問題、とりわけ沖縄の米軍基地の整理、縮小、統合問題、なぜ全くリーダーシップを発揮しようとしないのですか。郵政民営化だけの問題じゃないんです。はるかにもっと重要な在日米軍基地問題、沖縄問題に関して改革をやらないで、何で改革と言うのでありましょうか。(拍手)

 最後に、国家の基本法であります憲法について触れておきます。

 与党が衆議院で三分の二を占めた今、強引な手法で憲法改正を進めていくのではないかという懸念の声が起きています。確かに私自身も憲法改正には賛成であります。しかしながら、大事なことは、どんな理念に基づいて憲法を見直すかであります。端的に申し上げれば、統治者の側の論理に基づく改正ではなく、国民の側に立った改正が求められているのであります。例えば、「国のかたち」に関しては地域主権の発想に徹底的に立つこと、安全保障に関しては国連や国会の決定を重視することなどであります。そして、広く国民の皆さんの意見を伺い、国民の皆さんとともにつくり上げていくことであります。統治者の立場を利用した強権的な改正の議論や手法を用いることであるならば、断じて反対をいたします。小泉総理の憲法改正に関する理念を披瀝ください。

 憲法の定めによれば、衆議院で三分の二以上の勢力を得れば、参議院で否決された法案を成立させることができるほか、本会議や委員会を秘密会とすることや、衆議院議員を除名することさえできるのであります。与党が道を誤れば、民主主義を死なせることだって可能なのであります。

 歴史を顧みてください。昭和十一年の二・二六事件直後にいわゆる粛軍演説を敢行した斎藤隆夫衆議院議員は、昭和十五年には再び反軍演説を行い、衆議院議員を除名されたのであります。そして、昭和十七年にはいわゆる翼賛選挙が行われ、衆議院の八割以上を大政翼賛会の推薦議員が占めることになりました。その後の我が国がどのような道を歩んだかは、今さら言うまでもありません。

 小泉総理を支持した国民の多くも、決して巨大与党の出現を望んでいたわけではありません。あなたに国政のすべてを白紙委任するつもりなど毛頭ありません。むしろ、巨大与党が暴走し、我が国がいつか来た道を再び歩むのではという不安を抱く方が急増しているのであります。

 私の祖父鳩山一郎は、大政翼賛政治に対する、まさに大政翼賛政治に対する対抗軸として、友愛の政治を唱えてきたのであります。小泉総理、刺客を放つなどといった恫喝で政治を治めてはなりません。政治は愛をもって治めるべきものであります。異なる意見を封じ込めることは自由主義の死につながるものであります。自由主義の真髄である人格の尊厳に目覚め、友愛精神を基調にすることによって初めて民主政治が成り立つのであります。(拍手)

 この目的を果たすために、民主党は、二つの重大な使命を果たしてまいります。一つは、巨大与党が暴走して自由主義、民主主義を死に至らしめないようにしっかりとチェック役を果たすことであります。そしてもう一つは、そのことによって、民主党こそがこれからの日本をリードするに足る政党であるとの評価を国民の皆様方からいただき、国民の側に立った民主政権、すなわち民主党政権を樹立することであります。この決意を強く申し上げ、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山由紀夫議員に答弁いたします。

 政治と金の問題でございますが、政治と金の問題は、政治家一人一人が常に襟を正して当たらなければならない問題であります。政治家が政治資金を受け取る際には、政治資金規正法にのっとって適正に処理されなければならないというのは言うまでもありません。

 また、国会における関係者の証言が必要かどうか、国会において決めるべき問題であり、各党各会派において十分に議論していただきたいと考えます。

 自民党では、昨年秋に幹事長のもとで、いわゆる迂回献金があるかどうかについて調査した結果、自民党が政治資金規正法に違反するいわゆる迂回献金を行った事実はないという報告を受けております。

 また、国民の政治に対する信頼を損なうことがないよう、自民党内において政治資金の一層の透明化に関する改革を決定し、各議員、選挙区支部長などに対して決定事項の遵守を徹底したところであります。

 いずれにしても、今後とも、政治資金の適正な処理と透明性を確保し、政治に対する国民の信頼を得られるよう努力してまいります。

 政治資金規正法改正についてでございますが、さきの通常国会において、与党は、一定額以上の寄附の振り込みを義務づけ、政治団体間の寄附に上限を設けるなど、政治資金の一層の透明性を確保するための改正案を提出し、野党の改正案とともに御審議いただいたところであります。

 規制の対象や内容についてはいろいろな御意見がありますので、規定の実効性などの点も含め、各党各会派で十分御議論いただきたいと考えます。

 地方分権についてですが、地方が自由に使える財源をふやし、地方の自立を可能にして、みずからの創意工夫と責任で自治体の政策を決められるようにすることが重要であります。国は、本来果たすべき役割を重点的に担うようにすべきであると考えます。

 このため、地方にできることは地方にという理念のもとに三位一体の改革を進めることにより、国の関与を縮小して地方の権限、責任を拡大する地方分権を推し進めるとともに、国、地方を通じた行政のスリム化を推進してまいります。

 今後とも、国と地方の協議の場などを通して地方の意見を真摯に受けとめながら、三位一体の改革を確実に実現し、地方分権を推進してまいります。

 義務教育費国庫負担金についてでありますが、所信表明演説で申し上げましたように、四兆円程度の補助金改革、三兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しの三位一体の改革は、地方の意見を真摯に受けとめ、来年度までに確実に実現する方針であります。

 義務教育費国庫負担金の取り扱いについては、昨年末の政府・与党合意に基づき行われている中央教育審議会の審議結果を踏まえつつ、この方針のもと、本年中に結論を出してまいります。

 地方六団体の改革案への対応についてでございますが、今後、昨年の政府・与党合意を踏まえ、かつ地方の意見を真摯に受けとめて補助金改革を進めてまいります。

 少子化対策ですが、昨年末に、若者の自立、働き方の見直し、地域のきめ細かな子育て支援など幅広い分野で施策内容や目標を提示した子ども・子育て応援プランを策定したところであり、これを着実に進めてまいります。

 あわせて、プラン等に示されたとおり、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図ることは重要であり、現在進められている社会保障制度全般についての一体的な見直しにおいてもさらに検討を進めてまいります。

 障害者自立支援法案の再提出についてでございますが、この法案は、今後も新たにサービスを利用する障害者がふえることが見込まれる中で、精神障害者の方も含め、障害者が必要なサービスを利用できるよう、在宅福祉サービスに関する国等の負担を義務的なものとするとともに、利用者負担の見直しを行うなど、障害保健福祉施策を抜本的に見直すものであります。

 利用者負担については、障害者等の家計に与える影響を十分に考慮して、月ごとの負担の上限額を設定することや、収入、預貯金の状況に応じて個別に減免するなど、きめ細やかな負担の軽減措置を講じることとしており、障害のある方が自立して生活していく観点から、十分な配慮をしているところであります。

 この法案は、さきの国会の衆議院における修正内容を盛り込み、施行期日を平成十八年四月一日に延期した上で、近く国会に提出を予定しておりますが、その一刻も早い成立が必要と考えております。

 アスベスト問題でございますが、この問題については、既存の法律で救済できない被害者の救済について、実態把握を行い、新法を次期通常国会に提出することとしているほか、関係閣僚会合を開催し、アスベストの使用の実態把握、建築物の解体時の対策、早期の全面禁止など、関係省庁で緊密な連携を図りつつ、機動的に対策を進めているところであります。

 被災者生活支援制度については、これまでも支給限度額の引き上げ、居住安定支援制度の創設等の改正を行い、また、領収書の添付の廃止、家財道具等の細かな経費区分の廃止、概算払いの限度額の拡大等の運用改善を行ったところであり、今後とも制度の積極的活用を図ってまいります。

 政府の危機管理体制については、関係省庁の機能を生かしながら政府全体として総合力を発揮できるよう、これまでも内閣危機管理監を設置するなど、内閣を中心とした体制の強化を図ってきたところであり、引き続き不断に検討を行ってまいります。

 地球温暖化対策につきましては、我が国は、本年四月に策定した京都議定書目標達成計画に基づき、京都議定書の約束達成に向けた取り組みと、二〇一三年以降の中長期的取り組みとの整合性を確保しつつ、脱温暖化社会の実現を目指しております。また、今後、温室効果ガスの排出量の多い米国や中国、インド等も参加する共通ルールを構築していくため、二〇一三年以降の温暖化対策の枠組み交渉において、我が国として主導的な役割を果たしていく考えであります。

 テロ特措法の延長及び同法に基づく給油活動でございますが、米国同時多発テロによってもたらされたテロの脅威は依然として存在しており、我が国としても、これを除去するための国際社会の取り組みに引き続き積極的かつ主体的に寄与していく必要があることから、テロ特措法の延長が必要と判断したものであります。

 同法に基づく給油が別目的に使用されたのではないかとのお尋ねですが、そのような御指摘があることは承知しておりますが、我が国の支援は、同法に基づくものであることが米国と締結している交換公文に明記される等、相手国との確かな信頼関係のもとに行われているものであり、そのような事実はないものと考えております。

 日本に対するテロでございますが、国際テロリストのものとされる声明において我が国が標的の一つとして名指しされるなど、日本が国際テロの標的とされる可能性があるものと認識しております。このような現下の情勢を踏まえ、国内におけるテロの未然防止を図るため、既に関係省庁が緊密な連携をとりながら、テロ関連情報の収集分析、出入国管理、ハイジャック対策、重要施設や公共交通機関の警戒警備等、各種テロ対策の徹底に努めております。

 イラクでの自衛隊についての活動ですが、サマワの治安情勢は予断を許さないものでありますが、依然として、イラクの他の地域と比べれば比較的安定していると考えております。これまでの情報を総合的に勘案して判断すれば、自衛隊の活動するサマワ周辺については、現時点で非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。

 現在の基本計画における派遣期間終了後の対応については、国会での議論を踏まえ、国際協調の中で日本の果たすべき責任、イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を見ながら、日本の国益を十分に勘案して判断すべきものと考えております。

 安保理改革でございますが、我が国は、国際社会が直面するさまざまな課題に対処するためには、国際連合、特に安保理の実効性、信頼性の向上が必要との認識に基づき、ドイツ、インド、ブラジル等の諸国とともに安保理改革を先導してきました。その結果、改革の機運はかつてなく高まり、先般の国連首脳会合で採択された成果文書でも、安保理を含む国連改革の機運は維持されております。今後とも、同じ考えを持つ各国の理解と協力を得ながら、改革に向け全力を尽くす考えであります。

 中国及び韓国首脳との関係についてでございますが、中国の胡錦濤国家主席とは本年四月に、韓国の盧武鉉大統領とは本年六月に首脳会談を行い、それぞれの二国間関係が極めて重要であるとの認識を共有するとともに、忌憚のない意見交換を行っております。引き続き、両国との未来志向の協力関係を構築していくべく、両国首脳との間で率直な対話を進めていく考えであります。

 近隣諸国との信頼醸成についてでございますが、我が国と中国や韓国を初めとするアジア諸国とは、ともに手を携えて地域の平和と繁栄を実現していくことが重要であります。引き続き、これらの国々との間で、意見が異なる個別の問題についても対話を深め、幅広い分野における協力と国民各層における交流を強化することを通じ、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を構築していく考えであります。

 在日米軍の再編でございますが、在日米軍の兵力構成見直しについては、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄等地元の負担の軽減を図る観点から、米国と協議を進めてきております。今後、政府が一体となってこの問題にしっかり取り組んでいきたいと思います。

 憲法改正についてでございますが、民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重という現行憲法の基本理念については、多くの国民からも広く支持されてきたものであり、将来においても堅持すべきものと考えます。他方、憲法九条や自衛隊のあり方についてはさまざまな議論がありますが、戦後六十年の我が国の歩みを振り返れば、日本の国民が軍国主義を否定し、国際的な平和と安定に積極的に寄与していることは、国際的にも理解が得られているものと考えております。今後の憲法改正の議論も、この方向を堅持しながら、我が国の実態に合致するものを模索すべきであります。

 憲法改正につきましては、時間をかけて十分に議論することが必要であります。自民党は、党としての改正案を取りまとめる予定であり、公明党を初め各党や国会においても議論が行われております。また、民主党も憲法改正に賛成だと伺っておりますし、現在の鳩山由紀夫議員も憲法改正に賛成と表明されております。自民党、公明党のみならず、民主党とも協力しながら、新しい時代における憲法のあり方について、大いに国民的議論を深めていただきたいと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(横路孝弘君) 神崎武法君。

    〔神崎武法君登壇〕

神崎武法君 私は、公明党を代表して、小泉総理の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)

 質問に先立って、一言申し上げます。

 先ほど、民主党前原新代表の質疑の中で、さきの選挙に関して、我が党に対するいわれなき批判と中傷の発言がありました。

 さきの衆議院選挙での民主党大敗北をみずからの無責任な政策の失敗によるとの自覚もなく、事もあろうに、選挙における自民党と公明党の連携の強さを批判するとは、まさに言語道断であります。

 言うまでもなく、我が党が小泉総理とともに郵政民営化を一貫して推進してきたことは、国民すべてが認めるところであります。郵政民営化を初めとする改革を一層推進するためには、連立与党として自民、公明両党がともに選挙に勝利することが重要であり、比例区は公明党との呼びかけは、各選挙区で自民党候補が個別に判断したところのもので、極めて自然な主張であります。

 なお、我が党がこれまで比例票を自民党に強要したことは全くないことを、この際はっきり申し上げておきます。

 このたびの衆議院総選挙は、郵政民営化を初めとする改革の是非が最大の争点であり、同時に、連立六年目を迎える自民党、公明党による連立政権に対する評価を問うものでもありました。結果は、自民、公明両党に対し、合わせて三百二十七もの議席を与えていただき、自公連立政権は圧倒的な信任を得ることができたのであります。

 公明党は、連立政権に課せられた責任の重みと、改革を加速させよとの国民の民意をしかと受けとめ、改革断行に邁進する決意であります。まずは、今特別国会におきましては、その象徴的な取り組みとし、郵政民営化法案を自民党と協力し速やかに成立を期してまいります。(拍手)

 一昨日行われました小泉総理の所信表明演説は、総選挙の圧勝を受けての演説でした。それだけに、郵政改革を初め、改革への自信と決意のみなぎる演説でありました。ただ、その一方で、国民からは、郵政後の改革の方向性を具体的に示してほしかったとの声も散見されます。

 そこで、私は、郵政民営化後のこれからの構造改革に関する具体像について、もう一歩踏み込んで、具体的な方向性や率直なお考えをお伺いいたします。

 財政健全化へ向けた構造改革、特に歳出改革や行財政改革については、構造改革の柱であり、国民は、小泉政権がどのように改革をする考えなのか、大変に注目をしております。

 公明党は、これまでも公務員数の削減や公共事業費並びにコストの削減等、徹底した行政改革を推進してまいりましたが、さらなる抜本改革が急務であります。そのために、事業仕分け作戦というものを提唱いたします。

 これは、既存のすべての行政の制度や事業について、予算項目ごとに必要か不必要かを徹底的に見直す。次に、必要な事業については、官でやるか民間でやるかに区分けする。最後に、官が行う事業は、国でやる事業か地方でやる事業かを仕分けするというものであります。この作業は、すべての制度、事業を洗い直すと同時に、小泉改革の柱の一つである官から民へという市場化テストや、三位一体改革を補完することにもなります。

 私たち公明党は、事業仕分け作戦は、財政健全化に取り組む上でぜひとも行う必要があると強く考えております。そのために、総理には、強いリーダーシップを発揮し、大胆な歳出削減を行う事業仕分け作戦を展開し、徹底的な税金節約の音頭をとっていただきたいと考えます。総理の御決意を伺います。

 二点目に、公務員制度改革は改革の柱であります。現在、その議論は公務員数の削減と人件費見直しが中心となっていますが、公務員の働き方を根本的に改める。そのため、能力、実績主義の人事制度へ改革をするなど、制度全体の改革が不可欠であります。この改革の成果を国民に示すことなく、国民から評価を得られるとは思えません。

 しかしながら、昨年来、与党は改革の具体化を図ってまいりましたが、官公労などの強い抵抗によって法案の取りまとめができず、改革論議が滞っております。これは、まことに遺憾であります。抵抗に屈することなく、断固やり遂げなければなりません。

 そこで、膠着状態のこの局面をどのように打開し、取り組もうとされているのか、総理の率直なお考えを伺いたいと存じます。

 第三点目に、日本道路公団の幹部が談合事件によって逮捕されるという、あってはならない事件が起こりました。この事件で明らかになったように、特殊法人等の職員は、現状では再就職に対する規制が皆無であり、一定の規制をかけるのは当然必要であります。

 また、今回の談合に限らず、天下りの規制と同時に、談合防止の強化は不可欠であります。公共工事の入札は原則一般競争入札とするなど、だれの目から見ても公平中立な競争を実現するための入札制度へと一刻も早く移行すべきだと考えますが、これらの点について、総理のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。(拍手)

 さて、このたびの総選挙で示された国民の民意は、郵政民営化を突破口として、構造改革をスピードアップせよという点だけでは決してありません。世論調査を見るまでもなく、子育て支援、年金、医療等の改革は待ったなしだ、安心の社会保障を何としても確立してほしいとの国民の切なる要望は一層強まっています。

 そこでまず、人口減少社会を乗り越える構造改革について、政府には、ぜひとも勇断をしていただきたいとの観点から、次の点をお伺いいたします。

 少子高齢化が加速し、当初の二〇〇七年からという想定よりも早く人口減少時代に突入する可能性が高まってきました。

 社会保障、経済・財政、教育、雇用、社会資本整備など、あらゆる角度から人口減少社会を見据えた構造改革、社会システム自体の転換は緊急性を要します。その改革の視点として、公明党は、子供の幸せや子育ての安心こそ最優先されるべきとの改革の視点で、チャイルドファースト、すなわち子供最優先社会の構築を提言しております。

 そのためには、これまでの少子化対策の範囲にとどまらず、人口減少社会を乗り越えるための構造改革として、総理が先頭に立って推進していく体制を構築すべきだと考えます。総理の御見解を伺います。

 次に、子育てに取り組む家庭への支援として、非常に重要になるのが働き方の見直しであります。

 我が国の勤務時間は他の先進諸国に比べてもなお長く、特に父親は十分な育児の時間の確保ができないのが実情であります。そのため、今後は、ワークシェアリングの推進や短時間正社員の制度化など、長時間労働の是正に取り組むべきであります。

 また、結婚や出産を機に離退職された女性の再就職支援の問題は、生活を犠牲にしない働き方への構造改革という観点に加え、人口減少下における良質な労働力の確保という観点からも、極めて重要な問題であります。

 構造改革の一環として、働き方の見直しについてどのようにお考えか、総理並びに厚生労働大臣に伺います。

 次に、子育てに対する経済的負担の軽減については、少子化対策の中心的課題であります。子育ての責任を両親だけにゆだねるのではなく、社会や国家も応分の責任を分担するという考え方のもと、国は今こそ取り組まなければなりません。

 公明党が拡充に取り組んできた児童手当は、西欧諸国の水準と比べればいまだ十分な内容ではなく、対象年齢の引き上げや手当額の倍増などさらなる拡充が必要ですが、いかがお考えですか。

 出産費用につきましても、検査費等を含めると現行の出産育児一時金では不十分であります。実態を踏まえた費用の拡充が求められています。

 これ以外にも、子育て以前の問題として、経済力に欠ける若年者、フリーター同士が結婚して子供ができるケースも多く、それが経済苦に陥り、ひいては子供への虐待につながることもあります。その対策として、新婚向け住宅の確保や家賃補助及び子育て世帯向けの住宅支援を初め、総合的な経済支援策を短期集中的に講ずべきであります。

 そのためには、社会保障給付費に占める児童・家族向け給付の割合がわずか三・八%という極めて少ない現状を改め、子育て支援に重点シフトするなど、予算配分の思い切った見直しも必要と考えますが、総理並びに厚生労働大臣の決意と具体的な経済支援策のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 さて、衆院選の最中に台風十四号が日本列島を縦断し、甚大な被害をもたらしました。災害によりお亡くなりになられた方々に改めて心から御冥福をお祈り申し上げますとともに、被害を受けられた地域の皆様方に衷心よりお見舞い申し上げます。

 その上で、特に浸水対策についてお伺いいたします。

 実は、我が国においても、ニューオーリンズと同じように、東京、大阪、名古屋の大都市のいわゆるゼロメートル地帯に四百万人以上の住民が暮らしております。

 近年の地球温暖化に伴う異常気象と、それによる集中豪雨や水害の頻発により、河川などの堤防設計のレベルが低い堤防に対する緊急対策、洪水や高潮の防災基準を早急に設定し直すなど、総合的に防災のあり方を再点検していくべきだと考えますが、北側国土交通大臣の見解を伺います。

 地震対策も一刻の猶予も許されません。住宅、建築物の耐震化は地震の第一撃から国民の命を守る最大の決め手でありますが、耐震化工事への助成、さらに住宅耐震化を誘導するための耐震診断への助成、これらに対する税制優遇策が必要だと考えますが、国土交通大臣の積極的な見解を求めます。

 次に、アスベスト問題についてお尋ねいたします。

 中皮腫などで現に苦しまれている被害者、亡くなられた方や御遺族のことも考え合わせ、政府として迅速、誠実にこの問題に取り組むべきであります。

 公明党は、対策本部を設け、現地調査を行い、被害者や遺族から話を伺い、政府にも対策を申し入れてきました。

 現在、被害者の救済を中心に、汚染や被害の拡大防止、実態調査と情報開示、治療・相談体制の整備など、総合的な対策を講じるため、できるだけ早期の新法制定を目指し、作業を進めているところであります。

 その上で、何点か御質問をいたします。

 第一に、労災認定されずに現に闘病されている方への支援策は喫緊の課題であり、新法に基づく被害申請を待つまでもなく、何らかの緊急対策を講じるべきだと考えます。

 第二に、アスベスト被害者の実態調査と建造物の総点検です。特に建造物については、調査の結果、直ちに情報開示を行い、吹きつけアスベストに関する対策等を早急に講じる必要があります。

 第三に、今後、建造物解体の際のアスベスト飛散が最大の汚染源となることから、建造物の解体や増改築、災害時の封じ込め技術の開発や体制づくりを急ぐべきであります。

 最後に重要な指摘をしておきますが、政府が二〇〇八年度までとしているアスベストの全面禁止を、例えば来年度中までに大幅な前倒しを図るべきと考えます。

 以上の点につきまして、総理並びに厚生労働大臣から、国民に安心を与えるべく、明快な答弁を求めます。(拍手)

 次に、社会保障制度改革についてお尋ねいたします。

 本年四月に、年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議が設置され、ことし秋までに骨格の成案を得ることを目指し、与野党協議が開始されました。私は、早急にこの両院合同会議を再開し、制度改正の骨格について結論を出すべきだと考えますが、総理の御見解をお聞かせください。

 年金制度は、昨年の年金改正において、長期的な給付と負担の均衡を確保し、持続可能な制度改革を行いました。今後は、被用者年金の一元化や国民年金の未納、未加入問題、短時間労働者の厚生年金の適用問題等に結論を出さなければなりません。

 もちろん、国民年金を含めた一元化は、その実現可能性への検討を行うことは重要です。しかし、その点のみをクローズアップさせ、いたずらに議論を停滞させ、さきに述べた被用者年金の一元化の問題までも先送りすることは許されません。与野党で結論を得たものから順次迅速に進めていくべきであります。

 こうした諸課題にどのように対応されるおつもりか、総理のお考えを伺います。

 国会議員の議員年金制度の改革について、議会制度協議会で改革案の策定作業が行われていますが、国民からは国会議員だけが優遇されているとの強い批判を浴びており、これこそ早急に取り組まなければなりません。

 公明党は、既に同協議会に、現行の議員年金制度を廃止し、将来は公的年金制度に統合する、その間は暫定措置として、現行七〇%の国庫負担率を五〇%に引き下げる、既受給者の支給額をおおむね平均一〇%程度削減するという案を提示しています。

 一部で議員年金廃止だけを主張している党がありますが、これでは国庫負担が逆にふえてしまうということもしっかり認識しなければならないと思います。

 議員年金制度改革について、総理の御所見を伺います。

 医療制度については、これからの高齢社会にたえ得る抜本的改革を進めていかなければなりません。治療中心から予防重視へ、そして、あくまでも患者第一を基準に、不必要な医療費の削減と高い質の医療を提供するためにどのような仕組みが望ましいのか。こうした視点に立って、新たな高齢者医療制度の創設や保険者の再編統合、診療報酬の見直しなどについてしっかりと取り組むべきだと考えますが、総理の御答弁を賜りたい。

 外交問題についてお尋ねいたします。

 我が国外交は、日米同盟と国連を中心とする国際協調を両輪としてまいりました。この基軸を基本としつつも、懐の深い平和外交をより積極的に展開するためにも、アジア外交により力を注ぐ必要があります。その場合、どこまでもその根本は、人間対人間の対話による信頼関係、首脳間の信頼関係が不可欠であります。

 特に、アジア外交のかぎを握る中国、韓国との相互理解は一体どうなっているでしょうか。私は、この点については、残念ながら、信頼とは言いがたいぎくしゃくした関係となっているのが現実ではないかと見ております。

 信頼関係は大切です。主権国家同士の立場は立場として、信頼をどのように構築していくおつもりなのか、総理からぜひともメッセージを示していただきたいと思います。

 追悼平和祈念施設について伺います。

 戦後六十年、日本は、平和憲法に基づき、国家の行為によって二度と戦争の惨禍が起きることのないよう決意し、恒久平和を希求し行動してまいりました。

 そして今、過去の歴史を学んだ教訓を礎として、国家や国際平和のためにとうとい命を落とされたすべての人を追悼し、将来にわたって不戦を誓い、平和への祈りをささげられる、宗教的に中立で国立の象徴的施設の設置を望む国民世論が高まっております。この際、そうした施設の設置を検討するための予算を確保の上、調査を実施すべきだと考えます。これは、我が国のあり方、国家像にもかかわることであります。総理の明確な答弁を御期待申し上げます。(拍手)

 総選挙では、私たち公明党、自民党の連立政権に対し、国民の皆様は多大な信任を与えてくださいました。

 しかし、それは同時に、改革が停滞し、新しい社会への確かな道筋が開かれなければ、その次には大きな失望が待っているのだという、国民の強い警告にも聞こえます。

 改革は、常に抵抗や障害との戦いであります。総理は、所信の表明で、改革に対する決意を力強くこう訴えられました。自民党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って、引き続き構造改革を断行する覚悟であると。

 この言葉は、私の、そして我が党の不退転の覚悟でもあります。同時に、公明党は、日本を前に、改革を前に進めるため、懸命に戦う決意であることを最後に申し述べ、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎議員にお答えいたします。

 事業仕分けについてのお尋ねでございますが、公明党がこれまで、むだゼロ、行政効率化に積極的に取り組まれたことに対し、厚く御礼を申し上げます。

 今回の提案も、不要な仕事や民間ができる仕事がないかどうかを厳しく検証し、歳出削減につなげようとするものと理解しておりますが、その趣旨については私も全く同感であります。

 政府としては、同様の考え方に立って、これまで官が行ってきた事業について官と民が競争してサービスの効率化を進める市場化テスト法、いわゆるお役所仕事改革法の策定などに取り組むこととしており、いずれにせよ、十八年度予算編成に当たっても、歳出のむだをできる限り見直していくとの公明党の提案の趣旨に沿って、歳出見直しを徹底して行う考えであります。(拍手)

 公務員制度改革につきましては、御指摘のように、職員の意欲と仕事の成果を引き出していくような能力・実績主義の人事管理を徹底していくことが必要であります。新しい人事制度の構築に向けて、人事評価の試行の取り組み状況も踏まえながら、粘り強く取り組んでまいります。

 特殊法人等の職員の再就職に対する規制、公共工事の入札制度についてでございますが、日本道路公団幹部が談合事件で逮捕された事件は、まことに遺憾であります。このため、日本道路公団においては、幹部職員について一定の場合に再就職を禁止する措置を自主的に講じたと聞いております。しかし、すべての特殊法人、非公務員型の独立行政法人の役職員に対して営利企業への就職の制限を課することは、職業選択の自由との関係も考慮しつつ、なお検討すべきものと考えます。

 また、入札制度については、国土交通省と日本道路公団では既に入札談合の再発防止対策を取りまとめたところであり、一般競争入札の拡大や、価格のみならず技術や品質を含めた競争を拡大する等、公平中立で透明性の高い競争を促進し、談合防止の徹底を図ってまいります。

 少子化対策でございますが、少子化が急速に進行して若い力が減少する場合には、国の基盤に影響を及ぼすことにもなりかねません。子供を安心して産み、子育ての喜びを実感できる社会を実現し、少子化の流れを食いとめることは重要な課題であります。少子化に対処するため、保育、働き方の見直し、教育、経済的支援など各種施策を、少子化社会対策会議を中心に、政府を挙げて総合的に推進してまいります。

 働き方の見直しについてですが、人口減少社会において、働きながら安心して子育てができる、また子育て後の女性の能力が生かされるよう働き方を見直すことは非常に重要な課題であります。

 このため、育児など労働者の生活の実情に応じた労働時間等の設定を可能とする時短促進法の改正案を今国会に再提出するとともに、短時間正社員などの働き方を広げることによるワークシェアリングの推進に努めてまいります。

 また、出産等を理由に離職した方に対して、ハローワークにおける職業相談、職業紹介等を通じて円滑な再就職の促進に努めてまいります。

 児童手当及び子育ての総合的な経済支援についてですが、児童手当については、公明党の御尽力もあり、平成十六年四月一日より、支給対象年齢を小学校就学前から小学校第三学年修了前まで引き上げたところであります。

 子育て支援に当たっては、御指摘のように、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、次世代育成支援の推進を図ることは重要な課題であります。

 このような方針のもと、児童手当のさらなる拡充を初め、さまざまな角度から子育て支援の強化を図るべきとの御意見をいただきましたが、地域や家庭の多様な子育て支援、働き方にかかわる施策、児童手当等の経済的支援など多岐にわたる施策について、総合的かつ効率的な視点に立って、財源も確保しつつ、そのあり方を積極的に検討してまいります。

 アスベスト問題ですが、関係閣僚会合を開催し、関係省庁の緊密な連携のもとに対応を進めております。

 御指摘の、労災認定されない者に対する救済、被害者や使用実態についての調査と公表、建築物の解体時等の対策、早期のアスベスト全面禁止は、いずれも重要な課題であります。関係省庁の緊密な連携のもとに誠実に対応していく考えであります。

 両院合同会議を早急に開催し、年金制度改革の骨格について結論を出すべきとのお尋ねでございます。

 両院合同会議は、将来にわたり持続可能な社会保障制度の構築に向けて、各党の利害を超えた真摯な議論を行うために設置され、これまで八回にわたり開催されて、年金制度のあり方について真剣に議論いただいたと承知しております。

 年金制度については、長期的な視野に立って改革を進める必要があり、私としては、御指摘のように、与野党間で早急に協議が再開され、与野党が胸襟を開いて意見の相違を埋める努力をすることが不可欠であると考えております。

 年金に関する諸課題への対応でございますが、国民年金の未納、未加入問題の解消は年金制度への信頼にかかわる重要課題であり、強制徴収の実施や免除制度の適用など的確な対策を強力に推進しております。

 また、短時間労働者の厚生年金の適用拡大については、昨年の改正法においても検討条項が規定されていることなどを踏まえ、早急に検討を進めてまいります。

 さらに、厚生年金と共済年金の被用者年金の一元化についても、政府としての具体的な処理方針をできる限り早く取りまとめるべく指示をしたところであります。

 いずれにせよ、年金制度は、与野党が胸襟を開いて協議を行い、意見の相違を埋める努力をすることが不可欠であります。早急に両院合同会議における議論が再開されることを期待しております。そこの議論を踏まえつつ、御指摘の諸課題についても、迅速に改革に向けて取り組んでまいります。

 国会議員の年金制度でございますが、議員年金の改革については、公明党は廃止を主張されております。また、自民党としても廃止を前提に取り組む必要があると考えており、早急に自民党、公明党、与党間の案を取りまとめる必要があると考えております。

 なお、議員年金の廃止により国庫負担が逆にふえることは避けるべきであり、各党各会派において十分議論していただき、国民から理解と信頼を得られる制度とすることを期待しております。

 医療制度についてでございますが、患者本位の良質かつ効率的な医療提供体制を構築するとともに、高齢化等に伴う医療費の過大、不必要な伸びを抑制し、国民皆保険制度を将来にわたって持続可能なものとしていく必要があると考えております。

 このため、高齢者の特性に応じ、世代間、保険者間の負担の公平化を図る新たな高齢者医療制度の創設、保険者機能の発揮を促す都道府県単位を軸とした保険者の再編統合、経済、財政とのバランスを踏まえるとともに、患者の選択や医療機関の機能を反映した診療報酬の見直しなどの改革案を年末までに取りまとめ、医療制度改革関連法案を次期通常国会に提出したいと考えております。

 中国、韓国との関係でございますが、我が国と中国や韓国とは、ともに手を携えて地域の平和と繁栄を実現していくことが重要であります。引き続き、両国との間で幅広い分野における協力と国民各層における交流を強化することを通じ、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を構築していく考えであります。

 国立の追悼平和祈念施設については、お尋ねのような調査を実施するか否かも含め、国民世論の動向や与党の意見も踏まえながら検討する必要があると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣尾辻秀久君登壇〕

国務大臣(尾辻秀久君) 働き方の見直しについてお尋ねがございました。

 御指摘いただきましたように、人口減社会において、働きながら安心して子育てができ、また子育て後の女性の能力が生かされるよう働き方を見直すことは、構造改革の一環としても非常に重要な課題であると考えております。このために、総理からもお答え申し上げましたけれども、時短促進法の改正を含む法案を今国会に再提出することといたしております。

 また、昨年末に策定いたしました子ども・子育て応援プランに基づきまして、短時間正社員など公正な処遇が図られた多様な働き方を広げるためのワークシェアリングの普及促進、長時間にわたる時間外労働の是正、両立支援ハローワークにおける再就職の援助等の推進などに取り組んでいるところでございまして、これら取り組みにより、仕事と子育ての両立ができるような働き方の実現に努めてまいります。

 社会保障給付の子育て支援への配分や児童手当など、経済的支援策の考え方についてのお尋ねがございました。

 子ども・子育て応援プラン等に示されたとおり、社会保障給付について、大きな比重を占める高齢者関係給付を見直し、これを支える若い世代及び将来世代の負担増を抑えるとともに、社会保障の枠にとらわれることなく次世代育成支援の推進を図ることは重要な課題でございます。

 私どもといたしましても、予算配分の見直しに努力をいたしますとともに、現在進められております社会保障制度全般についての一体的な見直しの中で検討を進めることが重要であると考えております。このためには多岐にわたる施策が必要となりますけれども、既に総理よりも、積極的に検討するというお答えを申し上げたところでございます。

 アスベストの全面禁止についてのお尋ねがございました。

 石綿製品の製造等については、特に毒性の強い青石綿及び茶石綿を平成七年に全面禁止いたしました。さらに、石綿が重篤な健康障害の原因となり得るものでありますことから、現在使用等が許されております石綿についても、早急に全面禁止を行うことが必要であると考えております。

 厚生労働省といたしましては、専門の委員による石綿製品の全面禁止に向けた石綿代替化等検討会を八月に立ち上げて検討いたしているところでございまして、来年一月までに報告書を取りまとめました上で、早急に所要の手続を行い、全面禁止を前倒ししたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣北側一雄君登壇〕

国務大臣(北側一雄君) 水害対策についてお尋ねがございました。

 昨年は十個の台風が上陸をいたしまして、全国各地で甚大な豪雨災害が発生したことを踏まえ、豪雨災害対策緊急アクションプランを策定するとともに、ハザードマップの整備を義務化する水防法の改正を行いました。現在、これらの施策に鋭意取り組んでいるところでございます。

 ことしも、時間雨量百ミリを超える首都圏集中豪雨や連続雨量一千ミリを超える台風十四号などにより、これまでに死者・行方不明者四十一名、床上、床下浸水棟数二万七千棟以上の甚大な被害が発生しました。これまでの記録を大きく超える豪雨に対する堤防の安全性の確保や、さらには半地下ビルの浸水や中山間地における迅速な避難に係る対策などの課題が明らかとなっております。

 また、アメリカでは、巨大ハリケーンにより、ニューオーリンズのゼロメートル地帯を中心に、五十万人以上が被災する大災害が発生をいたしました。我が国においても、三大都市圏ではゼロメートル地帯に約四百万人が生活しており、同様の課題が存在しております。

 こうした課題に対応するため、これまでの対策を総点検して、必要に応じ抜本的な見直しを図るよう指示したところでございます。専門家にも入っていただきまして、新たに、大規模な降雨による災害対策やゼロメートル地帯の高潮対策を検討するための委員会を近日中に設置をさせていただきまして、年内を目途に対策を取りまとめてまいりたいと考えております。

 近年の集中豪雨や台風の増加といった気候変動の傾向は今後も続くと言われております。このことを的確に踏まえた水害・土砂災害対策を展開し、国民の安全、安心の確保に万全を期してまいりたいと考えております。

 住宅、建築物の耐震化についてお尋ねがございました。

 新潟県中越地震、福岡県西方沖地震など、近年地震が頻発をしております。本年六月には、国土交通省に設置しました住宅・建築物の地震防災推進会議におきまして、今後十年間で耐震化率を少なくとも九〇%に引き上げるという目標及び緊急に取り組むべき施策について取りまとめていただきました。

 さらに、昨日の中央防災会議におきまして、建築物の耐震化緊急対策方針といたしまして、耐震改修を促進する制度の見直しに直ちに取り組むこと等が決定をされました。

 このため、地方公共団体が目標を定めて計画的に耐震化を促進するための仕組みの整備や、学校、老人ホーム等の建築物に対する指導等の強化を内容とする耐震改修促進法の改正について、今国会に提出をすることとしております。

 こうした法制度の整備とあわせまして、地域住宅交付金及びまちづくり交付金の提案事業を活用して耐震改修の促進を図っているところでございますが、平成十八年度予算要求におきましては、補助事業については、緊急輸送道路沿道建築物に対する拡充や、補助対象地域を限定する地域要件の緩和を図るとともに、税制につきましては、耐震改修に要した費用の一定割合を税額から控除する耐震改修促進税制の創設を要望しているところでございます。その実現に向けまして全力で取り組んでまいる決意でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、小泉首相に質問いたします。(拍手)

 まず、郵政民営化問題についてであります。

 首相は、総選挙の結果をもって郵政民営化は多くの国民の信任を得たとして、一気呵成に法案成立を図ろうとしております。しかし、ここには二つの重大な問題があります。

 第一に、与党は、議席では圧倒的多数を占めましたが、小選挙区で得た得票は四九%にすぎないということであります。

 首相は、民営化に賛成か反対か国民に聞きたいと述べ、民営化の是非を問う国民投票だと位置づけて審判を仰ぎました。しかし、民営化に賛成と答えた国民は半数に満たなかったのであります。この結果をもって多くの国民の信任を得たとは到底言えないのではありませんか。

 第二は、首相が国民に真実を語ったかという問題であります。

 首相は、民営化すれば公務員が減らせる、税金を払うようになると繰り返しましたが、郵政事業には国民の税金が一円も使われていないこと、郵政公社のままでも利益の半分は国庫に納付する仕組みになっていること、この二つの事実を解散から投票日までの期間に一度でも国民に語ったことがありますか。はっきりとお答え願いたい。もしも、これらの重大な事実を語ってこなかったとすれば、この選挙結果は、国民を欺いて得た結果だと断ぜざるを得ないのであります。

 もともと、郵政民営化は国民の要求によって始まったことではありません。日米の大銀行と大手保険会社、アメリカ政府によって、郵貯、簡保を民営化せよ、縮小、廃止せよとの要求が繰り返され、それにこたえて進められたというのが事の真相でした。首相はこの真相も国民に隠し続けたではありませんか。

 真実を語らず、事の真相を隠し、それでも得た得票は半数に満たなかった。この選挙結果をもってまともな審議抜きに郵政民営化法案をごり押しすることは、絶対に許されるものではありません。日本共産党は、徹底審議の上で廃案にすることを強く求めるものであります。(拍手)

 次に、国民の暮らしにかかわる二つの緊急の問題について質問いたします。

 一つは、政府が前国会で廃案となった障害者自立支援法案を再び強行しようとしていることです。

 この法案の最大の問題は、障害者が利用するすべてのサービスに一割の自己負担を導入することにあります。利用料負担は授産施設や共同作業所の利用にも押しつけられます。授産施設で働くことなどせず、家でじっとしていろとでも言うのでしょうか。これは自立に努力している障害者の方の痛切な声であります。懸命に働いて手にするわずかな工賃をはるかに上回る利用料を取り立て、働く場と生きがいを奪うことがどうして自立支援なのか、しかと説明していただきたい。障害者の自立を妨げ、生きる権利を奪う法案は、きっぱり断念するべきであります。

 いま一つは、庶民増税の問題です。

 谷垣財務大臣は、投票日の翌々日の記者会見で、所得税、住民税の定率減税を廃止する方針を表明いたしました。定率減税が廃止されますと、総額で三・三兆円の増税、年収四百万円から九百万円までの圧倒的多数のサラリーマン世帯で、所得税、住民税が二割以上もふえることになります。事は極めて重大であります。自民党は、総選挙で掲げた政権公約で、サラリーマン増税を行うとの政府税調の考え方はとらないと明記していたからであります。

 首相にただしたい。

 六月に政府税調が打ち出した方針は、その冒頭で、平成十八年度に定率減税を廃止する必要があると述べています。定率減税の廃止というのは、まさに政府税調が行うとしたサラリーマン増税そのものではありませんか。定率減税の廃止に踏み出すことは、サラリーマン増税を行うとの政府税調の考え方はとらないとしたみずからの政権公約を踏みにじる、文字どおりの公約違反ではありませんか。はっきりとお答え願いたい。

 さらに首相にただしたい。

 一九九九年に恒久的減税として行われたのは、所得税、住民税の定率減税だけではありません。大企業向けの法人税の減税、大金持ちが潤う所得税の最高税率の引き下げも同時に行われました。

 なぜ、大企業、大金持ちへの減税はそのままにして、庶民をねらい撃ちにする増税だけを行うのか。この六年間に、大企業のもうけは倍増し、大企業の株主への配当も倍増し、大企業の役員の賞与は三倍近くになっています。反対に、家計の所得は総額で十四兆円も落ち込んでいます。見直すというならば、大企業、大金持ちへの行き過ぎた減税措置こそ真っ先に見直すべきではありませんか。少なくとも、今年度で期限が切れる大企業向けの特別の優遇税制、年間一・二兆円に上る研究開発減税とIT減税は予定どおり終了すべきではありませんか。答弁を求めます。

 次に、イラクへの自衛隊派兵と憲法問題について質問いたします。

 イラクの情勢は、イラクの首相自身が、我々は戦争状態にある、それも最悪の種類の戦争であると述べるなど、極めて深刻です。情勢悪化の根本原因は、無法な侵略戦争に続く軍事占領、さらに、米英軍などが掃討作戦と称して女性や子供も含めた民間人を無差別に殺りくしていることが、暴力とテロの悪循環をつくっていることにあります。首相はイラクの情勢悪化とその原因をどう認識しているのですか。

 十二月に派兵期限が切れる自衛隊について、首相は、情勢を見て判断すると述べましたが、情勢の前向きの打開のためにも、期限を決めた占領軍の撤退、自衛隊の速やかな撤退こそ必要ではありませんか。答弁を求めます。

 最後に、憲法問題について質問します。

 首相は、選挙の中で憲法についても国民に何も語りませんでした。ところが、選挙が終わるとすぐに、与党と民主党によって国民投票法案のための特別委員会設置が強行されるなど、改憲に向けた動きが起こっていることに多くの国民の不安と批判が広がっています。

 憲法改定の焦点が九条を変えることにあることは明瞭です。そこで、総理に伺いたい。一体、首相は、九条のどこをどう変えようというお考えなのですか。黙っていないで、みずからの考えを述べるべきであります。これまで政府は、憲法九条のもとでは海外での武力の行使はできないことを建前としてきました。首相は、この建前を突破するような方向での改定を考えているのでしょうか。はっきりとお答え願いたい。

 ことしは戦後六十年の記念の年であります。戦後、日本の軍隊は、一人の外国人も殺さず、幸いなことに、これまでのところ一人の戦死者も出さないできました。これは憲法九条が存在したおかげであり、その歴史は世界に誇るべきものであると私は確信いたします。憲法九条を変え、日本を海外で戦争をする国にしてはならないということを強く訴えて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 志位議員にお答えいたします。

 今回の総選挙に対する認識でございますが、今回、自民党、公明党合わせて、目標の過半数を超える議席を獲得することができました。国民の改革をとめるな、構造改革を進めよという声だと受けとめて、郵政民営化を実現するとともに、引き続き構造改革を断行していきたいと考えております。

 郵政事業には国民の税金が一円も使われていないこと、郵政公社のままでも利益の半分は国庫に納付する仕組みになっていることを国民に語っていないのではないかとのお尋ねであります。

 御指摘の点につきましては、総選挙の際の討論の場においても、郵政公社は、固定資産税や印紙税、また預金保険料を民間と同じように納付しておらず、見えない国民負担が存在すること、また、公社のままでは、経営が中期的にはじり貧であり利益は期待できないが、基準額を超える利益が発生しない場合には納付金は納めない可能性がある、民営化すれば、民間とのイコールフッティングのもとに事業を拡大できるための利益が上がり、法人税も期待できるといった点を説明したところでございます。

 このたびの総選挙においても、このような点を含めた郵政民営化の利点を十分説明した上で郵政民営化の是非を問い、結果として多数の支持を得たところであり、国民に語っていないとの御指摘は当たらないと考えております。

 郵政民営化が米国の要求とかかわりがあるのではないかとのお尋ねでありますが、私は、米国が郵政民営化の必要性を説いている前から郵政民営化の必要性を訴えてまいりました。米国の要求にこたえたものであるとの御指摘は当たらないと考えております。

 障害者の福祉サービスに係る利用者負担の導入について、障害者自立支援法案の成立を断念すべきとのお尋ねでございます。

 障害福祉サービスについては、今後も新たにサービスを利用する障害者がふえることが見込まれる中で、必要なサービスを確保するためには、その費用について、利用者の方々も含め、皆で支え合っていくことが必要となっております。

 このため、近く国会に提出を予定しております障害者自立支援法案においては、在宅福祉サービスに関する国等の負担を義務的なものとするとともに、利用者負担を見直し、定率一割負担を導入することとしておりますが、あわせて、障害者等の家計に与える影響を十分に考慮して、月ごとの負担の上限額を設定することや収入、預貯金の状況に応じて個別に減免するなど、各般のきめ細かな負担の軽減措置を講じることとしておりまして、障害のある方が自立して生活していくという観点から十分な配慮をしているところであります。

 このような見直しにより、障害者の働く場の提供など障害者の自立に必要なサービスが確保されるものと考えておりまして、障害者が、制度の安定的な運営のもとに、今後も、大きな暮らしの変化がないように、また大きな負担にならないように、十分な配慮をしていかなければならないと思っております。この法案の一刻も早い成立が必要と考えております。

 定率減税の廃止でございますが、定率減税の見直しは、景気対策として、暫定的な税負担の軽減措置を経済情勢等に応じて見直すというものでありまして、また、この定率減税というのは、サラリーマンのみならず、自営業者などすべての所得税納税者を対象とするものであることから、いわゆるサラリーマン増税とは異なるものと考えております。

 いずれにせよ、定率減税の残り半分については、年末の平成十八年度税制改正において、これまでの議論を踏まえ、経済情勢等を十分に見きわめつつ、今後議論していくべき事柄と考えております。

 大企業、金持ちへの減税措置を見直すべきではないかとのお尋ねでありますが、平成十一年度税制改正において実施された個人所得課税の最高税率及び法人課税の実効税率の引き下げは、国際化の進展といった我が国経済社会の構造変化に対応した抜本的な税制改革の一部先取りとして実施されたものであり、景気対策である定率減税とは位置づけが異なるものと考えております。

 今年度で期限が切れる研究開発減税とIT減税についてでございますが、研究開発減税における税額控除率の上乗せ措置やIT減税は、集中的に政策効果を高める観点から、三年間の時限措置として実施されているものであり、これらの措置の今後のあり方については、こうした導入の経緯や経済状況等を踏まえて検討してまいります。

 イラク情勢についてですが、イラクでは、地域ごとに異なるものの、依然、予断を許さない治安情勢が続いております。その原因にはさまざまなものがありますが、イラク国民は、現在、みずからの手で平和な民主国家を建設中であり、その一環として、イラク政府は治安改善に努力しております。我が国は、このような努力が実を結ぶことを期待しております。

 イラクへの自衛隊派遣についてでございますが、現在の基本計画における派遣期間終了後の対応については、国際協調の中で日本の果たすべき責任、イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を踏まえ、日本の国益を十分に勘案して判断すべきものと考えます。

 憲法改正についてでございますが、民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重という現行憲法の基本理念については、多くの国民からも広く支持されてきたものであり、将来においても堅持すべきものと考えています。

 他方、憲法九条や自衛権のあり方についてはさまざまな議論がありますが、戦後六十年の我が国の歩みを振り返れば、日本の国民が軍国主義を否定し、国際的な平和と安定に積極的に寄与していることは、国際的にも理解が得られているものと考えております。今後の憲法改正の議論も、この方向を堅持しながら、我が国の実態に合致するものを模索すべきものであります。

 憲法改正については、時間をかけて十分に議論することが大事であります。自民党は、党としての改正案を取りまとめる予定でありまして、公明党を初め各党や国会においても議論が行われております。これらを通じて、新しい時代における憲法のあり方について大いに国民的議論を深めていただきたいと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 阿部知子さん。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、小泉首相に対しての質問を行います。(拍手)

 まず、政治姿勢についてお伺いさせていただきますが、自民党の大勝を受けて開催された第百六十三特別国会は、とてつもない大きな勢力が、小さき者、弱い者、そして心優しき者すべての嘆きやためらいやあるいは抵抗すらをも踏みつぶして、えたいの知れない怪物が政界を覆い尽くそうとするような危機感すら抱かせます。

 しかし、この選挙で果たして小泉改革は本当に信任されたのでしょうか。郵政民営化法案に関しても、賛成とする者、反対とする者の票を全国集計いたしますと、賛成とする者三千三百五十万票、反対とする者三千四百五十万票と、明らかに反対とする者の方が多くなっております。総理が訴えたように、もしもこれが国民投票だったら、当然否決されたわけであります。(拍手)

 自民が得票率全体で四七・八%で全議席の七三・〇%を確保したというのは、小選挙区制のマジックにすぎません。したがって、郵政民営化が信任されたわけでも、まして、内政、外交上の重要課題が小泉内閣と与党に丸投げされたわけでも決してありません。

 従わなければ切って捨てるのが小泉流だそうですが、国家権力を傍若無人に振り回すことがいかに過去、歴史的に見て我が国を不幸にしたかは、後藤田正晴氏も指摘するごとく、しっかりと自民党の皆さんにこそ今学んでいただきたいと思いますが、まずこの段にあって、総理の今後の政権運営の基本方針、基本姿勢についてお尋ねをいたします。

 次に、郵政民営化に関しましてですが、お伺いいたします。

 選挙中、郵政民営化は、公務員を減らして小さな政府にするとか、あるいは官から民へ資金の流れを変えるなどと言われました。

 そもそも経営形態を論ずるのであれば、官と民とを問わず、少子高齢社会に欠くことのできない生活を支える良質な公共サービスを、どういう仕組みで提供するのかがまず問われなくてはなりません。この間の道路公団の民営化にしても、数多くの天下り構造と橋梁談合などの利権構造には一切メスを入れることなく、また、国民に対し事実を明らかにする努力はさらさら行われる気配がございません。一方の民間企業でも、三菱自動車あるいはカネボウなどの不祥事が絶えないところは、皆さんのよく御存じなところと思います。官と民とを問わず、企業経営の透明性や情報公開こそが、まず問われているのだと考えます。

 私ども社会民主党は、まず何よりも、国民への情報開示と第三者機関によるチェック機能の強化を郵政公社改革の第一とすべきと考えております。

 そもそも三十一の特別会計、そこに群がる特殊法人、そして国会に会計報告すらされない独立行政法人の実態など、すべてが余りにやぶの中です。

 出口改革を行うと声高に叫ぶのであれば、特別会計及び特殊法人、独立行政法人、さらには役人の天下り、取引実態などのすべてについて、国民につまびらかに情報公開することまで踏み込んで総理は行うお考えがおありかどうか、まずこの点を一点明確にしていただきたいと思います。

 また、総理は、官から民へ、官から民へを殊さら強調されます。しかし、三百四十兆円に上る郵貯・簡保資金を市場に丸投げすることは余りに無謀と考えます。住民参加の真の公共利用のもとにおき、地域開発、環境、医療、介護、教育など、低成長経済時代あるいは少子高齢社会にふさわしい、また、必ずしも市場競争では実現できない社会基盤の整備にこそ使うべきと考えますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

 私ども社会民主党は、この選挙で「もう一つの日本」という社会像を提案してまいりました。それは、この間の小泉改革の五年間が、私たちの暮らす日本社会を、とても住みづらく息苦しいものにしていると実感するからです。

 九割中流と言われた日本で、九〇年代後半からの雇用の流動化のかけ声のもとに、所得、身分、教育の格差は拡大し続け、働く者の三分の一はパート、アルバイト、派遣などの非正規雇用となり、その賃金は正社員の二分の一以下という状態が恒常化しております。年金、健保などの社会保険を持たない人々はふえる一方で、それが若年層を直撃し、非婚化、少子化、そして社会の不穏化がひそやかに進行しております。希望格差社会とは、そのような時代を呼ぶ象徴的なネーミングであると思います。もちろん、自殺者の数も連続七年間三万人を超えております。

 そうした国民の状況を見ずして、このたびの選挙で小泉首相の打ち出したものは、さらに勝ち組のための改革を進めるものでありました。強きを助け弱きをくじくにも等しい、冷たい改革だと思います。これに対置して、私どもは温かい改革を主張し、とりわけ働き方における差別をなくしていくべく、同一労働同一賃金並びに社会保障などの均等待遇を要求いたしました。

 ヨーロッパでは当たり前となったこうした取り組みから遠ざかる一方の日本の現状を、果たして総理はどのように考えておられるのか、そのお考えをお聞かせください。

 この選挙で、小泉首相は憲法改正問題をよろいの下に隠し続けました。ところが、選挙が終わるや否や、改憲のステップづくりを与党内合意すらとらず推し進めようとしています。憲法の主権者は国民であるということすらあえて無視するのが小泉流なのでしょうか。米軍基地の再編問題にしても、大事なことはすべて、国民にはよらしむべし知らしむべからずの態度を一貫してとり続けています。

 憲法九条は言うに及ばず、イラクの特措法にすら抵触するイラクへの自衛隊派遣も既成事実化され二年近くが過ぎようとしていますが、この間一度たりとも、この自衛隊の活動の実態あるいはそれに要する費用、経費がこの国会に報告されたことがあるでしょうか。ミサイル防衛網についても、米国からの高価な劣悪品の購入を決めたばかりのところに、さらに当初予定の三倍にも膨れ上がるMD開発総額が明らかになり、国民負担は天井知らずです。

 現在、日本経済にもし好転の兆しがあるとすれば、それは間違いなくアジアの経済発展に負うところのものと考えます。東アジア共同体を目指す東アジア首脳会議が十二月にマレーシアで開催されますが、日中関係が現在のように冷え込んだままで、果たして本当にこの会議が成果を上げるのか否か、危ぶまれてなりません。今こそ戦略的対話が求められていると考えます。

 靖国参拝問題を含めて、日中関係の改善を総理はどのように具体的に進めていかれるのか、お考えを伺います。

 超大型ハリケーン・カトリーナに襲われた世界の帝国アメリカは、被害の多くが貧困層に集中し、避難民の衰弱死、略奪、強盗が当たり前という惨状をあらわにし、その弱肉強食の行き着く先を我が国に明らかにしたと思います。

 総理は、政治は非情であるとおっしゃいました。果たして、総理、国民に対しても非情で臨むのでしょうか。苦しんでいる国民に対し、努力が足りないからだ、政府に甘えるなというふうに、自己責任で切り捨てるのですか。障害者の自立はおろか生存権すら奪うというあの悪法、障害者自立支援法案を憶面もなくさらにこの国会に提案しようという神経は、そうした国民切り捨てそのものであります。

 社民党は、与党のおごり、強権政治を許さず、連帯と公正を本当に重んじる温かな社会の再生に全力を挙げることをお約束して、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員にお答えいたします。

 政権運営の認識の基本でございますが、おかげさまで、今回の総選挙で目標としておりました、自民党、公明党合わせて過半数の議席を超える支持をいただきました。この国民の声を厳粛に受けとめまして、郵政民営化初め構造改革を引き続き進めていきたいと思っております。

 特別会計の実態などについて、情報開示に関するお尋ねですが、行政運営に関する情報の的確な開示を通じて、透明性の高い行政を実現することが重要であると認識しております。既に、特別会計、特殊法人、独立行政法人に関して、民間基準に準拠した財務諸表等の整備、公表や、独立行政法人等の役員についている退職公務員の状況の公表などを行い、透明性の確保に努めております。

 このような取り組みを引き続き着実に推進することにより、国民への情報の的確な開示を進めてまいりたいと考えております。

 郵貯・簡保資金の使途についてですが、資金の流れを官から民へ構造改革するとの一貫した考えのもとに、入り口の郵貯、簡保、出口の特殊法人、この間をつないで資金を配分している財政投融資制度、これらを全体として改革することが重要であります。

 郵貯、簡保は、民営化することにより、郵貯・簡保資金を民間資金に転化し、国民の大切な資産を民間部門で活用することが可能となり、こうした資金の流れの改革により経済の活性化につながることとなります。したがって、郵貯・簡保資金をどのような分野で活用することとするかは、あらかじめ官のコントロールによって決めるべきではなく、民間の創意工夫にゆだね、適切な競争環境の中で判断されるべきものと考えております。

 働き方の問題についてですが、いわゆる非正規労働者の増加は、経済産業構造の変化や価値観の多様化などにより、企業や労働者の多様な働き方に対する要望が高まっていることなどを背景としているものであると考えております。

 このような要望を踏まえて、正社員との均衡処遇を図るためのパートタイム労働指針の周知、公正な処遇が確保される短時間正社員の導入の促進等により、働き方にかかわらず、だれもが安心して働くことができるような労働環境の整備を進めていくことが必要だと思います。

 なお、短時間労働者への厚生年金適用の拡大等については、平成十六年年金制度改正法においても施行後五年を目途に検討すべきとされていることなどを踏まえ、早急に検討を進めてまいります。

 東アジア首脳会議及び日中関係でございますが、東アジア首脳会議においては、多様性を認めながら経済的繁栄を共有する開かれた東アジア共同体の構築に向け、積極的な役割を果たしていく考えであります。

 日中関係については、本年四月の日中首脳会談において、私と胡錦濤中国国家主席との間で、日中関係の重要性を再確認するとともに、未来志向の協力関係を発展させていくことで一致しました。引き続き、意見が異なる個別の懸案についても対話を深め、大局的な観点から、幅広い分野における協力を一層強化していく考えであります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       総務大臣    麻生 太郎君

       法務大臣    南野知惠子君

       外務大臣    町村 信孝君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       文部科学大臣  中山 成彬君

       厚生労働大臣  尾辻 秀久君

       農林水産大臣  岩永 峯一君

       経済産業大臣  中川 昭一君

       国土交通大臣  北側 一雄君

       環境大臣    小池百合子君

       国務大臣    伊藤 達也君

       国務大臣    大野 功統君

       国務大臣    竹中 平蔵君

       国務大臣    棚橋 泰文君

       国務大臣    細田 博之君

       国務大臣    村上誠一郎君

       国務大臣    村田 吉隆君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 杉浦 正健君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 阪田 雅裕君


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