衆議院

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第6号 平成17年10月11日(火曜日)

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平成十七年十月十一日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成十七年十月十一日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 永年在職の議員深谷隆司君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 皇室会議予備議員の選挙

 皇室経済会議予備議員の選挙

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

 郵政改革法案(松本剛明君外七名提出)

 郵政民営化法案(内閣提出)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出)

 郵便局株式会社法案(内閣提出)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 本院議員として在職二十五年に達せられました深谷隆司君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 表彰文を朗読いたします。

 議員深谷隆司君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) この際、深谷隆司君から発言を求められております。これを許します。深谷隆司君。

    〔深谷隆司君登壇〕

深谷隆司君 ただいま、院議をもちまして在職二十五年の表彰を賜りましたが、議会人として忘れることのできない栄誉であります。ここに謹んで厚く御礼申し上げる次第です。ありがとうございます。(拍手)

 私は、台東区議会議員、東京都議会議員を経て衆議院議員に当選いたしましたが、昭和四十七年、三十七歳のときでありました。ちなみに、このとき当選されました自民党の新人は二十九名、ただいま残っておりますのは、小泉総理を初めとしてわずか六名でございます。

 当時は、田中政権のもと、まさに自社対決の時代で、国会はしばしば混乱をきわめておりました。

 私が最初に与えられた議席は最前列でございまして、いざというとき真っ先に飛び出すための戦闘要員でございました。実際、第七十一国会は会期延長をめぐって騒然となりまして、私は、議長席に駆け上り、時の前尾繁三郎議長を抱え、お守りしたのであります。そのときの光景はテレビ、新聞で全国に報道されまして、思えばこれが私のマスコミ初デビューのときでございました。今、最後列に座っておりますが、あのころを振り返り、年月の流れに感慨無量であります。

 私の政治生活はまことに波乱多く、二十五年の表彰を受けるまでに三十三年の年月を要してしまいました。三たび敗れましたが、特に現職通産大臣のときに惜敗をいたしまして、国政復帰までに五年も要してしまいました。

 私の取り柄は、どんなときでもただの一度も志を変えなかったことだと思っております。ある人が、あなたは忍耐強いと言ってくださいました。しかし、本当に忍耐強かったのは、逆境のときもひたすら私を信じ、必死に支えてくださった応援者の皆様であります。

 ここに万感の思いを込めて、私を支え続けてくださった方々に感謝の誠をささげたいと思っております。そして、私ごとに及びますけれども、苦労をともにしてくれた我が妻、我が家族、我が親族にも感謝の心を伝えたいと思います。ありがとう。(拍手)

 今日まで私は、郵政大臣、自治大臣、国家公安委員長、そして二度にわたる通産大臣を務めてまいりました。議会にありましては逓信委員長、予算委員長を務め、自民党では総務会長などを歴任いたしてまいりました。

 この間、さまざまなことがありました。特に、自民党が野に下ったとき、私は予算委員会の筆頭理事として論陣を張り、多くの仲間たちと、結果的に細川政権、羽田政権交代を実現させました。本来知性派である私が、心ならずも武闘派と呼ばれたのはこの時代のことであります。

 大臣時代には、雲仙・普賢岳、阪神・淡路大震災後の処理、復興を手がけ、また、オウム事件の解決に当たり、さらには中小企業国会を催すなど、微力ながら多くの仕事をこなしてまいりました。しかし、過去を語るにはまだ若い年代でありますので、今ここで多くを語ろうとは思っておりません。

 むしろ、私の脳裏を占めておりますのは、この国の行方、日本の未来のことであります。

 今、日本は内憂外患、まさに困難な曲がり角に立っております。とりわけ、今後の人口減少などは重大な課題であります。この百年、日本の人口は三倍にとふえ続けました。そして、この右肩上がりの人口増をもとにして、年金、福祉などさまざまな制度ができ上がっております。百年後には人口が半分になると言われております。

 これからの急激な人口減少時代に対応していくには、まさに小泉総理の言われる改革こそ急務であると存じます。本日、くしくも郵政民営化法案が可決されようとしております。私は、あらゆる角度から改革に協力し、日本の将来に禍根を残さぬように努めてまいりたいと思っております。(拍手)

 私は、第二次世界大戦で我が国が敗れましたとき、はるか遠い満州のハルピンの地で終戦を迎えました。そして、私を政治家に育ててくれた今は亡き両親に連れられて、決して戻れないと言われた日本に一年後に引き揚げることができたのであります。幾山河を越え、海を渡り、ようやくの思いで長崎県佐世保にたどり着いたとき、子供心に見た緑多き美しき日本の姿を今も忘れることはできないのであります。

 私には愛する日本がある。このために尽くしたい。私の政治家としての原点はまさにここにあるのであります。

 議場におられる同僚議員の皆さん、政党政派は違っても、国を愛する心は同じであります。これからも、この国のためにともに働いていこうではありませんか。

 私は、改めて、この愛してやまない日本のために私の人生をささげることをここにお誓い申し上げ、感謝のごあいさつといたします。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 皇室会議予備議員の選挙

 皇室経済会議予備議員の選挙

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

議長(河野洋平君) 皇室会議予備議員、皇室経済会議予備議員、裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員、裁判官訴追委員及び同予備員、検察官適格審査会委員及び同予備委員、日本ユネスコ国内委員会委員、国土審議会委員及び国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙を行います。

中山泰秀君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、皇室会議予備議員、皇室経済会議予備議員、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員の予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、皇室会議予備議員に

      森  喜朗君 及び 渡部 恒三君

を指名いたします。

 なお、その職務を行う順序は、ただいま指名した順序によることといたします。

 次に、皇室経済会議予備議員に

      森  喜朗君 及び 渡部 恒三君

を指名いたします。

 なお、その職務を行う順序は、ただいま指名した順序によることといたします。

 次に、裁判官弾劾裁判所裁判員に

      瓦   力君    保岡 興治君

      衛藤征士郎君    鳩山 邦夫君

      中井  洽君    川端 達夫君

   及び 田端 正広君

を指名いたします。

 また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に

      平沢 勝栄君    望月 義夫君

      五島 正規君 及び 高市 早苗君

を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は、ただいま指名した順序によることといたします。

 次に、裁判官訴追委員に

      森山 眞弓君    津島 雄二君

      中馬 弘毅君    長勢 甚遠君

      高村 正彦君    臼井日出男君

      山岡 賢次君    河村たかし君

      西村 真悟君 及び 江田 康幸君

を指名いたします。

 また、裁判官訴追委員の予備員に

      岸田 文雄君    谷畑  孝君

      細川 律夫君    渡辺 具能君

   及び 太田 昭宏君

を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は、ただいま指名した順序によることといたします。

 次に、検察官適格審査会委員に

      柳澤 伯夫君    谷津 義男君

      太田 誠一君 及び 松本  龍君

を指名いたします。

 また、

 上川陽子君を柳澤伯夫君の予備委員に、

 吉野正芳君を谷津義男君の予備委員に、

 近藤基彦君を太田誠一君の予備委員に、

 大畠章宏君を松本龍君の予備委員に

指名いたします。

 次に、日本ユネスコ国内委員会委員に

      遠藤 利明君    小渕 優子君

      馳   浩君 及び 平野 博文君

を指名いたします。

 次に、国土審議会委員に

      中谷  元君    保岡 興治君

      柳澤 伯夫君    渡辺 喜美君

      古賀 一成君 及び 土肥 隆一君

を指名いたします。

 次に、国土開発幹線自動車道建設会議委員に

      武部  勤君    久間 章生君

      与謝野 馨君    古賀  誠君

      鉢呂 吉雄君 及び 小沢 鋭仁君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

中山泰秀君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 松本剛明君外七名提出、郵政改革法案、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、右七案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 郵政改革法案(松本剛明君外七名提出)

 郵政民営化法案(内閣提出)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出)

 郵便局株式会社法案(内閣提出)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 松本剛明君外七名提出、郵政改革法案、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、右七案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。郵政民営化に関する特別委員長二階俊博君。

    ―――――――――――――

 郵政改革法案及び同報告書

 郵政民営化法案及び同報告書

 日本郵政株式会社法案及び同報告書

 郵便事業株式会社法案及び同報告書

 郵便局株式会社法案及び同報告書

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び同報告書

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔二階俊博君登壇〕

二階俊博君 ただいま議題となりました内閣提出の郵政民営化関連六法案及び民主党・無所属クラブ提出の郵政改革法案につきまして、郵政民営化に関する特別委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出の郵政民営化関連六法案について申し上げます。

 本六法案は、民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれをゆだねることが、より自由で活力ある経済社会を実現することにかんがみ、郵政民営化を実施するため必要な事項を定めるものであります。

 その主な内容は、平成十九年十月一日に日本郵政公社を解散するとともに、その機能を引き継ぐ日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、郵便貯金銀行、郵便保険会社、郵貯・簡保の旧契約を承継する独立行政法人を新たに設立するほか、準備期間及び移行期間を通じて、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するための措置等を講じるものであります。

 なお、本六法案は、さきの国会に提出された郵政民営化関連六法案に、衆議院における修正事項を盛り込むほか、民営化の実施時期を半年間延期するなどの措置を講ずるものであります。

 次に、民主党・無所属クラブ提出の郵政改革法案について申し上げます。

 本案は、地域住民の生活の安定向上を確保するとともに、公的部門から民間部門への資金の流れを変えることなどにより、自由で活力ある経済社会を実現するため、郵政事業の改革について、そのあり方及び当面緊急に講ずべき措置等について定めるものであります。

 その主な内容は、

 平成十九年十月一日以降において、郵便の業務は、引き続き日本郵政公社において行うこと、

 郵便貯金等の業務は、日本郵政公社の子会社として設立する郵便貯金会社において行うこと、

 簡易生命保険を廃止するとともに、旧契約の業務については、五年以内に完全民営化する複数の郵政保険会社に分割して引き継ぐこと、

 その他、預入限度額の段階的引き下げ、日本郵政公社等による財投債等の購入禁止等を定めております。

 以上の各案は、十月六日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、本委員会に付託されました。

 委員会におきましては、同日竹中郵政民営化担当大臣並びに提出者三谷光男君から提案理由の説明を聴取いたしました。

 質疑は、翌七日及び本日、各案を一括して行い、七日には小泉内閣総理大臣の出席を求め、本日質疑を終局いたしました。

 次いで、討論に入り、自由民主党及び公明党を代表して公明党の桝屋敬悟君から、内閣提出の六法案に賛成、民主党・無所属クラブ提出の法案に反対、民主党・無所属クラブの石関貴史君から、内閣提出の六法案に反対、民主党・無所属クラブ提出の法案に賛成、日本共産党の塩川鉄也君から、内閣提出の六法案及び民主党・無所属クラブ提出の法案にいずれも反対、社会民主党・市民連合の重野安正君から、内閣提出の六法案及び民主党・無所属クラブ提出の法案にいずれも反対、国民新党・日本・無所属の会の亀井久興君から、内閣提出の六法案及び民主党・無所属クラブ提出の法案にいずれも反対の意見がそれぞれ述べられました。

 次いで、順次、各案について採決いたしました結果、民主党・無所属クラブ提出の郵政改革法案は賛成少数をもって否決すべきものと決し、内閣提出の郵政民営化関連六法案は、いずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。石関貴史君。

    〔石関貴史君登壇〕

石関貴史君 民主党の石関貴史です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の郵政民営化関連六法案に対し反対、松本剛明君外七名提出の郵政改革法案に賛成の立場で討論を行います。(拍手)

 改革を行うに当たって、その改革が本当に国民のためになるということを確保するためには、まずもってその目的と手段を明確にすることが重要です。

 郵政事業の改革を行うに当たっては、何が最も重要な目的なのでしょうか。それは、何が郵政事業における国民の権利であるのかを明らかにして、その国民の権利をしっかり保障し、安心を確保することです。そしてさらに、現在、郵政事業という巨大な官の中に莫大な国民の貴重な資産、資金がため込まれ、これが公的部門の非効率な事業に垂れ流されているという現実を変え、その資金が民の世界へ確実に流れるようにすることです。官から市場への改革です。

 このような目的を達成するための手段として、私たちは、郵便と決済サービスを国の責任で全国サービスを提供する一方で、郵便貯金、簡易保険の資金量は民業圧迫にならないように縮小するべきだと主張してきました。

 小泉総理が述べておられる官から民へ、あるいは民間でできることは民間にという考え方については、異論はありません。

 しかしながら、政府の郵政民営化法案は、本当にこのような官から民へという考え方が適切に実現されていくのか、大いに疑問です。本当に官から民へという考え方を実現するのであれば、まずは、官と民の役割を定義し、峻別する必要があります。

 ところが、政府案においては、これに係る定義、峻別が明確になされておりません。すなわち、何が郵政事業における国民の権利か、これが明らかにはされていません。民営化すれば市場が自動的に官の分野と民の分野を振り分けて、それぞれの分野のサービスが適切に国民に提供されるよう調整してくれるのか。市場はそのような機能は果たしません。

 さらに、政府案においては、郵政事業においてため込まれた国民の貴重な資金が民間セクターの真に効率的な事業に回るようになるのかということについても疑問が残ります。それどころか、国民の貴重な資金が相変わらず特殊法人、独立行政法人などの非効率な公的セクターに流れ続けるおそれがあります。またさらには、官の関与が長期に残る可能性がある中で、民業を圧迫する形で事業融資などの新規分野への不適切な進出が行われ、そのツケが最終的に国民に回ってくるおそれがあります。

 先ほど申しましたように、官から民へ、民間にできることは民間に、これらのスローガンには私も賛同します。しかし、だからすべてを民営化というのは決して正しい選択ではありません。まずは官の分野を明確に確定した上で、それ以外の分野について、民間ができることからは官は手を引き民間に任せる、そういうことこそが本当に正しい選択だと私は考えます。(拍手)

 以下、具体的に理由を申し上げます。

 政府案に反対する理由の第一は、政府案は、官がやるべき部分までも民にやらせようというものであることです。郵便と決済、少額貯金のサービスを受ける権利は国民の権利であり、これを保障するためには、これらの業務は国の責任で行うべきであります。

 これに対し、松本剛明君外七名提出の郵政改革法案(以下、民主党案と呼ばせていただきますが)では、郵便と決済、少額貯金のサービスはすべての国民がひとしく受けられるべきであることが明記されており、まさに安心の改革案という名にふさわしいものであります。

 第二に、政府案は、民営化、民営化といいながら、現実には民の顔をした巨大な官の特殊会社をつくるものであり、民営化の名に値しないことであります。持ち株会社は国が三分の一超の株式を保有する特殊会社、郵便と窓口ネットワークの新会社はその一〇〇%子会社、貯金と保険の新会社とは株式を持ち合い、事実上の一体経営が続きます。

 これに対し、民主党案では、郵便は公社、郵便貯金は公社の一〇〇%子会社で行う一方、簡易保険は廃止し、郵政保険会社の株式も五年以内に完全処分することとしています。一たん処分した株式を買い戻したりすることはありません。

 第三に、政府案によってできる新会社は、民業圧迫をもたらすことが確実であることです。郵便局にコンビニや貸し出し、株式仲介や不動産、果ては住宅リフォーム仲介などの新規業務をやらせれば、とりわけ地方の事業者は皆淘汰されてしまいかねません。

 これに対し、民主党案は、民間にできることは官が手を引くという理念のもと、政府案のような新規業務は行わないこととなっています。しかも、郵便貯金についても、定額貯金を廃止し、預入限度額を引き下げることで、民業の補完に徹することが明確にされております。

 第四に、政府案では、郵貯・簡保資金は、官から民へと流れないことです。郵便貯金銀行及び郵便保険会社は実質的には政府系金融機関ともいうべきものであり、小泉内閣がこれまでどおり野方図な国債、財投債発行を続ければ、それらの資金は決して民間部門へと流れることにはなりません。

 これに対し、民主党案では、定額貯金の廃止と預入限度額の引き下げによって、百兆円規模の資金が民間金融機関や直接金融などへ流れることになります。この結果、地方の金融機関に分散した資金はその地域の中小企業などに貸し出され、地域経済も活性化します。しかも、郵政公社や郵便貯金会社による財投債の購入を禁止し、財政規律を働かせようという重要な措置も盛り込まれています。

 さきの通常国会における審議で明らかになった郵政民営化法案の矛盾や問題点は、今国会における審議でもとうとう解消しませんでした。総選挙で示された民意は、郵政民営化には賛成であっても、矛盾や問題だらけの政府案を無条件で容認するというものではありません。

 以上申し上げて、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 大前繁雄君。

    〔大前繁雄君登壇〕

大前繁雄君 自由民主党の大前繁雄でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表して、内閣提出の郵政民営化関連六法案については賛成、民主党提出の郵政改革法案については反対の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、内閣提出の郵政民営化関連六法案について申し上げます。

 郵政民営化の是非については、さきの総選挙において退路を断って信を問い、自由民主党及び公明党による与党が国民の圧倒的な支持を受け、過半数を大きく超える議席を獲得したところであります。

 そのような国民の審判を背景に再度提出されることになりました政府案でございますが、これら六法案については、反対派の方々のみならず、賛成される方の中にも、政府案には問題点が多いがとまくら言葉のように話される方がいまだにおられるのは、大変残念なことであります。

 私は、百回近くに及んだ自民党内での激しい党内論議、百二十時間以上にわたって延々と続いた解散前、そしてこの特別国会の特別委員会の審議を通じて本法案の内容を吟味してまいりましたが、たどり着いた結論は、この政府案が竹中担当大臣を中心に練りに練った、実によくできた法案であるということであります。(拍手)

 本法案で示されている郵政民営化を実現することができれば、三百四十兆円にも達する巨額の資金を官から民に流す道を開き、約二十六万人の郵政公社の常勤職員が一切リストラされることなく民間人になり、小さな政府の実現に資すると同時に、多額の株式売却益、毎年の法人税、配当収入等により財政再建にも大きく貢献し、国民に大きな利益をもたらすことは自明でございます。

 また、郵政事業が従来から果たしてきた公共的な役割が民営化後においても引き続き果たされるよう、本法案では、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づける、過疎地における金融サービスなどの実施が確実となるよう基金を設置する等々の措置が講じられているところであります。

 このように、本法案は、民営化のメリットを最大限に引き出しつつ、郵政事業の公共的な役割にも十分に配慮した最善の策であり、直ちに採択すべきものであると考えます。

 続いて、民主党提出の郵政改革法案について申し上げます。

 本法案は、郵便貯金は定額貯金の廃止と限度額の引き下げ、簡保は廃止といったように、国が強制的に規模を縮小させる一方で、経営資源を活用した新規業務の展開については、その結論を先送りしております。事業の将来展望を描けない本法案により、職員の皆様が希望と意欲を持って職務に当たり、国民の利便性の向上を図ることができるのでしょうか。

 加えて、本法案では、郵便や通常貯金などについて国の責任で全国の郵便局でのサービス提供を維持するとしていますが、これを確保する具体的方策は何ら示されておりません。また、金融社会権のような未成熟な法概念を振り回すことは不適当きわまりありません。権利に基づき賠償請求があった場合など、果たしてこれに応ずる用意があるのでしょうか。

 このように、方針だけを掲げ、実現に向けた具体的な制度設計に踏み込まず、あいまいな点を多く残し、郵政事業改革の実現を将来に先送りしているだけの本法案は、対案というにはほど遠く、断固として反対するものであります。

 最後に、郵政民営化は明治以来の大改革であります。内閣提出の郵政民営化関連六法案の成立後、政府、郵政公社は、不退転の決意を持って事に当たり、今回の大改革を立派に成就されんことを心より希望いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、郵政民営化関連六法案に反対の討論を行います。(拍手)

 小泉総理が郵政民営化一本に絞って国民に賛否を問うたさきの総選挙で、与党の得票は小選挙区で過半数に至りませんでした。国民投票なら明確に否決であります。しかも、総理は、郵政公社には一円の税金も投入されていないことなど、重要な基本的事実を国民に全く語ってこなかったのであります。ところが、与党の議席の多数をもって信任されたと強弁し、わずか一日半という極めて短い審議で押し通すなど、断じて容認できません。

 本法案に反対する最大の理由は、国民に基礎的な金融サービスをあまねく公平に提供する国の責任を放棄するものだからであります。

 貯蓄や決済など基礎的な金融サービスを受けることは、国民の権利です。郵便局は、障害者対応のATMを一〇〇%設置し、口座維持手数料も取らず、すべての市区町村に金融ネットワークを張りめぐらせ、この権利を保障してきたのであります。

 今世界では、この基礎的な金融サービスを公的にどう保障するかが問われています。アメリカで低所得層の三八%、イギリスで五世帯に一世帯が銀行口座を持てず、大きな社会問題となっております。ニュージーランドでは公営のキウイ銀行が新たにつくられ郵便局の中に復活するなど、各国でも新たな取り組みが始まっています。ところが、日本では反対に、国の責任を放棄し、民間任せにしようとしているのであります。郵政民営化は、世界の流れにも時代の流れにも逆行する愚行そのものと言わなければなりません。

 そもそも、郵政民営化は、国民が求めているものではありません。郵貯、簡保、三百四十兆円の開放をビジネスチャンスとして要求してきた日米の金融資本にこたえるものにほかなりません。まさに国民にとっては百害あって一利なし、断固反対を表明し、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました政府提出の郵政民営化法案並びにその関連法案について、反対の立場から討論を行うものであります。(拍手)

 政治にかかわる者として、とりわけその権力のトップにある者には、何よりもまず過去に現在を一たん埋め込むことで現在を生きたものとして認識することが求められております。それと申しますのも、未来を構想するにはこうした知的行為が不可欠であり、それによって得られる知見がすべての土台となるからであります。

 それでは、今回の郵政民営化法案及びその関連法案が、この現在と過去との相関関係の理解の上に、あらゆる構想力を駆使して未来設計するという行為との間にどれほどの緊張関係を持って提案されたのか、結論から言えばノーと言わざるを得ません。

 明治五年の郵便の創設に始まる郵政事業の発足の歴史は、国民のコミュニケーションを軸とする社会文化発展史をなすものと言えます。この歴史に、我が国が現在既に直面し、今後もなお一層深刻化する少子高齢化、地域間格差を埋め込むならば、おのずと郵政事業の未来について制度設計はできるはずであります。

 競争至上主義に走って国民共有財産を十把一からげに市場にほうり出すことがいかに社会的マイナスとなるか、そこには未来を設計するに必要な一片の知見さえも見当たりません。民営化法案並びにその関連法案について反対する根本的理由はまさにここにあります。

 さて、一九八〇年代中期以降、国民にとって日に日に政府が遠い存在となっていることを、歴代自民党政府、とりわけ小泉総理は御存じでしょうか。この年代を境として、それまでの福祉国家とはほど遠い、自立自助、自己責任だけが重視される自由競争の社会に突入をいたしました。とりわけWTOの確立による国際的な大競争体制の進展は、すべてを市場競争万能主義に駆り立て今日に至っていることは、改めて指摘するまでもありません。

 この結果、我が国において何が引き起こされているかといえば、働く者の雇用は不安定化し、経営者には極めて都合のよい短期雇用、パート労働者が蔓延し、その結果として労働者の自殺者がウナギ登りに上昇しているのであります。

 一方、老後保障としての年金に対する国民、とりわけ若年層の信頼感は低下の一途をたどり、年金は崩壊の際に立たされています。国民に対する政府責任がこれほど不信のふちに立ったことがかつてあったでしょうか。政府と国民との距離はそれほどに乖離しているのであります。

 郵政民営化も、この政府と国民との距離をさらに拡大するものとなることは自明の理であります。行政サービスの拠点としての郵便局が地域社会から統合再編をされることは、地域社会における政府の存在そのものが目に見えて失われていくわけであります。このことは、諸外国の例を引き合いに出すまでもなく、JRのローカル線撤収一つ見ても明らかでありましょう。これが民営化に反対する第二の理由であります。

議長(河野洋平君) 重野安正君、申し合わせの時間が過ぎましたから、結論を急いでください。

重野安正君(続) 総選挙における多数議席の獲得によって国民の理解を得たとする与党の数の力で、本案はわずか二日間の委員会審議によって本院での通過が図られようとしています。

 私は、この民営化を要請してきた背景に何があるのか、一口に言ってアメリカとの関係があると思います。これは郵政民営化の本質に深くかかわる問題であり、そういうものを私は認めるわけにはまいりません。根本問題として指摘をし、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、松本剛明君外七名提出、郵政改革法案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、内閣提出、郵政民営化法案外五案を一括して採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 六案の委員長の報告はいずれも可決であります。六案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(河野洋平君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(河野洋平君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百七十六

  可とする者(白票)      三百三十八

  否とする者(青票)       百三十八

    〔拍手〕

議長(河野洋平君) 右の結果、内閣提出、郵政民営化法案外五案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

    ―――――――――――――

郵政民営化法案外五案を委員長報告のとおり決するを可とする議員の氏名

あかま 二郎君   安次富  修君   安倍  晋三君   阿部  俊子君

逢沢  一郎君   愛知  和男君   赤池  誠章君   赤城  徳彦君

赤澤  亮正君   秋葉  賢也君   麻生  太郎君   甘利   明君

新井  悦二君   井澤  京子君   井上  喜一君   井上  信治君

井脇 ノブ子君   伊藤  公介君   伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君

伊藤  達也君   伊吹  文明君   飯島  夕雁君   石崎   岳君

石田  真敏君   石破   茂君   石原  伸晃君   石原  宏高君

稲田  朋美君   稲葉  大和君   猪口  邦子君   今井   宏君

今津   寛君   岩屋   毅君   宇野   治君   上野 賢一郎君

浮島  敏男君   臼井 日出男君   江崎  鐵磨君   江崎 洋一郎君

江渡  聡徳君   衛藤 征士郎君   遠藤  武彦君   遠藤  利明君

遠藤  宣彦君   小川  友一君   小此木 八郎君   小里  泰弘君

小野  次郎君   小野  晋也君   小野寺 五典君   小渕  優子君

尾身  幸次君   越智  隆雄君   近江屋 信広君   大島  理森君

大塚  高司君   大塚   拓君   大野  松茂君   大野  功統君

大前  繁雄君   大村  秀章君   太田  誠一君   岡下  信子君

岡部  英明君   岡本  芳郎君   奥野  信亮君   加藤  勝信君

加藤  紘一君   嘉数  知賢君   海部  俊樹君   鍵田 忠兵衛君

梶山  弘志君   片山 さつき君   金子  一義君   金子 善次郎君

金子  恭之君   上川  陽子君   亀井  善之君   亀岡  偉民君

鴨下  一郎君   川崎  二郎君   川条  志嘉君   河井  克行君

河村  建夫君   瓦    力君   木原  誠二君   木原   稔君

木村  太郎君   木村  隆秀君   木村   勉君   木村  義雄君

岸田  文雄君   北川  知克君   北村  茂男君   北村  誠吾君

久間  章生君   倉田  雅年君   小池 百合子君   小泉 純一郎君

小坂  憲次君   小島  敏男君   小杉   隆君   木挽   司君

古賀   誠君   後藤  茂之君   後藤田 正純君   河野  太郎君

河本  三郎君   高村  正彦君   近藤 三津枝君   近藤  基彦君

佐田 玄一郎君   佐藤  剛男君   佐藤   勉君   佐藤 ゆかり君

佐藤   錬君   斉藤 斗志二君   坂井   学君   坂本  剛二君

桜井  郁三君   櫻田  義孝君   笹川   堯君   清水 鴻一郎君

清水 清一朗君   塩崎  恭久君   塩谷   立君   七条   明君

実川  幸夫君   篠田  陽介君   柴山  昌彦君   島村  宜伸君

下村  博文君   新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君

杉浦  正健君   杉田  元司君   杉村  太蔵君   鈴木  馨祐君

鈴木  俊一君   鈴木  淳司君   鈴木  恒夫君   関   芳弘君

薗浦 健太郎君   園田  博之君   田中  和徳君   田中  良生君

田野瀬良太郎君   田村  憲久君   平   将明君   高市  早苗君

高木   毅君   高鳥  修一君   竹下   亘君   竹本  直一君

武部   勤君   棚橋  泰文君   谷   公一君   谷垣  禎一君

谷川  弥一君   谷畑   孝君   谷本  龍哉君   玉沢 徳一郎君

中馬  弘毅君   津島  雄二君   土屋  品子君   土屋  正忠君

寺田   稔君   とかしきなおみ君  戸井田  徹君   渡海 紀三朗君

土井   亨君   土井  真樹君   冨岡   勉君   中川  秀直君

中川  泰宏君   中谷   元君   中根  一幸君   中野   清君

中野  正志君   中森 ふくよ君   中山  太郎君   中山  成彬君

中山  泰秀君   仲村  正治君   永岡  桂子君   長崎 幸太郎君

長島  忠美君   長勢  甚遠君   並木  正芳君   二階  俊博君

丹羽  秀樹君   丹羽  雄哉君   西川  京子君   西川  公也君

西田   猛君   西野 あきら君   西村  明宏君   西村  康稔君

西銘 恒三郎君   西本  勝子君   額賀 福志郎君   根本   匠君

野田   毅君   葉梨  康弘君   萩生田 光一君   萩山  教嚴君

萩原  誠司君   橋本   岳君   馳    浩君   鳩山  邦夫君

浜田  靖一君   早川  忠孝君   林    潤君   林   幹雄君

林田   彪君   原田  令嗣君   原田  義昭君   平井 たくや君

平口   洋君   平沢  勝栄君   平田  耕一君   広津  素子君

深谷  隆司君   福井   照君   福岡  資麿君   福田  峰之君

福田  康夫君   福田  良彦君   藤井  勇治君   藤田  幹雄君

藤野 真紀子君   二田  孝治君   船田   元君   細田  博之君

馬渡  龍治君   牧原  秀樹君   増原  義剛君   町村  信孝君

松岡  利勝君   松島 みどり君   松浪 健四郎君   松浪  健太君

松野  博一君   松本  和巳君   松本   純君   松本  文明君

松本  洋平君   三ッ林 隆志君   三ッ矢 憲生君   三原  朝彦君

御法川 信英君   水野  賢一君   宮腰  光寛君   宮澤  洋一君

宮路  和明君   宮下  一郎君   武藤  容治君   村上 誠一郎君

村田  吉隆君   望月  義夫君   茂木  敏充君   盛山  正仁君

森   英介君   森   喜朗君   森山  眞弓君   やまぎわ大志郎君

矢野  隆司君   谷津  義男君   安井 潤一郎君   保岡  興治君

柳澤  伯夫君   柳本  卓治君   山内  康一君   山口  泰明君

山崎   拓君   山中 あき子君   山本  明彦君   山本  公一君

山本  幸三君   山本   拓君   山本ともひろ君   山本  有二君

与謝野  馨君   吉川  貴盛君   吉田六左エ門君   吉野  正芳君

若宮  健嗣君   渡辺  具能君   渡辺  博道君   渡辺  喜美君

渡部   篤君   赤羽  一嘉君   赤松  正雄君   井上  義久君

伊藤   渉君   池坊  保子君   石井  啓一君   石田  祝稔君

上田   勇君   漆原  良夫君   江田  康幸君   遠藤  乙彦君

大口  善徳君   太田  昭宏君   神崎  武法君   北側  一雄君

佐藤  茂樹君   斉藤  鉄夫君   坂口   力君   田端  正広君

高木 美智代君   高木  陽介君   谷口  和史君   谷口  隆義君

富田  茂之君   西   博義君   東   順治君   福島   豊君

冬柴  鐵三君   古屋  範子君   桝屋  敬悟君   丸谷  佳織君

今村  雅弘君   江田  憲司君   江藤   拓君   武田  良太君

徳田   毅君   中村 喜四郎君   野田  聖子君   古川  禎久君

古屋  圭司君   保坂   武君   保利  耕輔君   堀内  光雄君

森山   裕君   山口  俊一君

否とする議員の氏名

安住   淳君   赤松  広隆君   荒井   聰君   石関  貴史君

泉   健太君   市村 浩一郎君   岩國  哲人君   内山   晃君

枝野  幸男君   小川  淳也君   小沢  一郎君   小沢  鋭仁君

大串  博志君   大島   敦君   大畠  章宏君   逢坂  誠二君

岡田  克也君   岡本  充功君   奥村  展三君   加藤  公一君

金田  誠一君   川内  博史君   川端  達夫君   河村 たかし君

菅   直人君   吉良  州司君   黄川田  徹君   菊田 真紀子君

北神  圭朗君   北橋  健治君   玄葉 光一郎君   小平  忠正君

小宮山 泰子君   小宮山 洋子君   古賀  一成君   五島  正規君

後藤   斎君   郡   和子君   近藤  昭一君   近藤  洋介君

佐々木 隆博君   笹木  竜三君   篠原   孝君   下条  みつ君

神風  英男君   末松  義規君   鈴木  克昌君   仙谷  由人君

園田  康博君   田島  一成君   田嶋   要君   田名部 匡代君

田中 眞紀子君   田村  謙治君   高木  義明君   高山  智司君

武正  公一君   達増  拓也君   津村  啓介君   筒井  信隆君

寺田   学君   土肥  隆一君   中井   洽君   中川  正春君

仲野  博子君   永田  寿康君   長島  昭久君   長妻   昭君

長浜  博行君   長安   豊君   西村  真悟君   西村 智奈美君

野田  佳彦君   羽田   孜君   鉢呂  吉雄君   鳩山 由紀夫君

原口  一博君   伴野   豊君   平岡  秀夫君   平野  博文君

福田  昭夫君   藤村   修君   古川  元久君   古本 伸一郎君

細川  律夫君   細野  豪志君   馬淵  澄夫君   前田  雄吉君

前原  誠司君   牧   義夫君   松木  謙公君   松野  頼久君

松原   仁君   松本  大輔君   松本  剛明君   松本   龍君

三日月 大造君   三谷  光男君   三井  辨雄君   村井  宗明君

森本  哲生君   山岡  賢次君   山口   壯君   山田  正彦君

山井  和則君   柚木  道義君   横光  克彦君   横山  北斗君

吉田   泉君   笠   浩史君   鷲尾 英一郎君   渡辺   周君

渡部  恒三君   赤嶺  政賢君   石井  郁子君   笠井   亮君

穀田  恵二君   佐々木 憲昭君   志位  和夫君   塩川  鉄也君

高橋 千鶴子君   吉井  英勝君   阿部  知子君   菅野  哲雄君

重野  安正君   辻元  清美君   照屋  寛徳君   日森  文尋君

保坂  展人君   糸川  正晃君   亀井  静香君   亀井  久興君

滝    実君   綿貫  民輔君   下地  幹郎君   鈴木  宗男君

平沼  赳夫君   横路  孝弘君

     ――――◇―――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣細田博之君。

    〔国務大臣細田博之君登壇〕

国務大臣(細田博之君) 趣旨説明に先立ち、パキスタン等における大地震について申し上げます。

 十月八日、パキスタンを震源とする大規模地震が発生し、未曾有の被害が出ています。既にわかっているだけでも約二万人以上ものとうとい命が犠牲となり、楢原覚JICA専門家とその御子息がお亡くなりになりました。心からお悔やみ申し上げます。

 政府としては、国際緊急援助隊の救助チームと医療チームを派遣し、また二千五百万円相当の緊急援助物資を供与いたしました。さらに現在、谷川外務副大臣が現地に向かっているところであります。

 また、被害状況が悪化している現状にもかんがみ、我が国政府として二千万ドルの無償支援の実施を決定いたしました。これらの我が国の支援が被災された方々の救援に役立つことを願っております。

 さらに、現地では、道路や通信等のインフラが壊滅的な打撃を受けており、救援物資の運搬手段としてヘリコプター等のニーズが出てきております。今後、こうした点を含め、現地のニーズを見きわめながら、我が国としてできる限りの支援を行っていく考えであります。

 趣旨説明に入ります。

 ただいま議題となりました、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、平成十三年九月十一日にアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃がもたらした脅威が依然として存在していることを踏まえ、我が国として、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに引き続き積極的かつ主体的に寄与するものとし、もって我が国を含む国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的として提出するものであります。

 以上が、この法律案の提案理由であります。

 この法律案の内容は、現行法の有効期限をさらに一年間延長し、施行の日から五年間とするものであります。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。後藤斎君。

    〔後藤斎君登壇〕

後藤斎君 民主党の後藤斎でございます。

 ただいま議題となりましたテロ特措法の一部を改正する法律案について、民主党・無所属クラブを代表して御質問いたします。(拍手)

 二〇〇一年九月十一日、米国で起きた同時多発テロ事件から四年一カ月がたちました。九・一一及びその他のテロの犠牲で亡くなられた方々に、改めて哀悼の意をあらわしたいと思います。また、先週、パキスタン北部の大地震で、先ほど官房長官からも話がありましたように、一部報道では、四万人以上の方々がお亡くなりになられたというふうな報道もあります。犠牲になられた方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 民主党としても、政府のパキスタン支援活動に協力するとともに、本日午前、前原代表がパキスタンの大使との面会をしながら、できるだけの支援ニーズの把握、そして本日、早ければ夕刻にも、若林参議院議員を団長として調査団を派遣することにしております。我が国は、その復興のため、迅速かつ最大限の協力を行うことだと考えておりますが、外務大臣にもう少し丁寧にその点についてお伺いをしたいと思います。

 この四年間、国際社会は一致団結してテロの撲滅に取り組んでまいりました。しかし、残念なことに、インドネシアのバリ島、スペイン、ロンドンなどで残虐なテロが次々と起こっております。我が国も国際テロリズムのターゲットとして名指しされるまでに至っております。

 私たちは、このテロリズムという今や世界に広がる脅威にいかに取り組んでいくのか、大変な課題に直面しているのです。先般の総選挙で、小泉総理は、国民の生命と財産、国家の根幹にかかわる重要な諸問題については、方針や政策を具体的に示すことを回避されました。テロリズムの問題についても全く語られませんでした。この法律の期限が迫っているにもかかわらずです。

 アフガニスタンは、九・一一を受け、国際社会がテロ対策の必要性を認識し、共同の行動をとるということを明らかにした、いわばテロとの闘いの原点であり、民主党は、アフガンで安定と復興を達成させることの重要性を強く認識しております。真に必要であれば、国会による民主的統制を徹底した上で、自衛隊の活用もあり得るとの対応もとってまいりました。

 しかし、政府は、テロ掃討作戦が依然終結していない状況などを抽象的に挙げられ、海上自衛隊による活動の延長を重ねてまいりました。この活動が本当にテロ対策の上で有効かどうかについて、政府は十分な説明責任を果たさずにいるのです。これは、シビリアンコントロールの観点から極めて問題だと言わざるを得ません。テロ掃討作戦については、給油活動のほか、不審船舶への質問、立入検査、船舶の行き先変更要請、武器・麻薬・禁制品の押収などを実施しているとのことですが、その実態と効果について、また費用対効果や国際協調体制の動向等について、国民に対し、しっかり説明することを求めます。従来の隠ぺい体質を根本的に改め、それぞれの状況を具体的に防衛庁長官に御説明願います。

 私たち民主党は、実力組織の海外派遣という極めて重要な判断を行う際、国会による事前承認が必要であると繰り返し主張してまいりました。我が国政府の隠ぺい体質を考えると、その重要性は一層高いと考えます。今回の延長については、法案改正の審議と賛否を通じて国会としての意思表示がなされるので、シビリアンコントロールが行使されると解することもできますが、四年前の特別措置法の制定時、また二年前の延長時に、政府が民主党の事前承認とすべきとの主張を受け入れなかったことは、実に遺憾でありました。

 今回の延長期間をあえて一年としたのは、漫然と特措置法の延長を続けることなく、来年には活動を打ち切るとの小泉総理の方針であるとの理解でよろしいのか、官房長官にお伺いをいたします。また、自衛隊の海外派遣に対するシビリアンコントロールのあり方について本質的な議論をすることが不可欠であることを、強くお訴えをしていきたいと思います。

 アフガニスタンでは、この九月に実施をされた議会選挙に基づく国民議会のスタートで、国内の政治プロセスも一つの節目を迎えております。今後は、ますます麻薬撲滅対策、対テロ情報収集等への協力、司法協力、教育、金融支援などなど、テロの根を絶やす対策に比重を移すべきであると考えます。民主党は、テロの根を絶やすには力による取り組みだけでは無理であると、従来より強く訴えてまいりました。拡散の様相を呈するテロが世界各地で発生していることは、その証左であります。自衛隊の活動以外の分野の支援は十分なのでしょうか。総理がリーダーシップをとり、我が国の総合的なテロ対策に関する方針を取りまとめ、包括的な対テロアクションプランを示すべきだと私は考えます。

 国連安全保障理事会入りを目指したG4決議案は、九月の国連総会で廃案になりました。テロ対策を初め国際社会の直面する問題について、何ら明確なビジョンを示さないまま、日本の安保理入りが各国から強い支持を受けることができると思っておられるのでしょうか。外務大臣の御所見を求めます。

 我が国のODAを今後どのようにテロ対策に活用していくべきとお考えかも、あわせてお答えいただきたいと思います。

 総理、あなたは、テロ特措置法しかり、国家にとって重要な法案や問題について、常に、できる限り国会での議論を避け、また議論を深めるということを逃げてまいりました。また、突然の記者会見などをもって説明責任を果たしたつもりになって、物事を強行突破する手法が、議会制民主主義において極めて問題であるというのは間違いありません。

 サマワで活動する自衛隊の基本計画は、本年十二月十四日に期限を迎えます。イラクでの戦闘やテロによる死傷者は増大をし、サマワ周辺の状況もことしに入ってますます悪化をしております。ワシントンでイラク戦争反対の十万人集会が開かれたことも記憶に新しいところであります。このような状況も踏まえ、民主党は、先週六日にイラク特措置法廃止法案を再度国会に提出いたしました。

 イラクの現状が戦闘地域でなくして、どのような状況になれば戦闘地域と認定されるのか、納得のいく答弁を官房長官に求めたいと思います。また、民主党は、イラクへの自衛隊派遣という極めて重要な問題について、国会の開会中に集中的に議論すべきであると考えますが、その点についても明快な御答弁をお伺いしたいと思います。よもや、国会の閉会中に強行なさるというようなことがないよう強く申し入れたいと思います。(拍手)

 イラクに軍隊を積極的に派遣する国々は、当初から大変少なかったわけですが、今その数もますます減っているということであります。各国によるさらなる撤退の動きがたくさん報じられております。その中には、サマワの治安に当たり、我が国自衛隊の安全をも確保してくれているオーストラリア軍も含まれ、一部報道によれば、来年五月にも撤退するということでもあります。イラク特措置法にも、自衛隊の安全が確保されなければならないということが明記をされております。オーストラリア軍が先に撤退した場合、自衛隊の安全確保がいかに担保されていけるのか、防衛庁長官にお伺いいたします。

 我が国の自衛隊による給水活動はことしの春には終了し、サマワでの活動はほとんどなくなっておるというふうに報道がされております。イラクが独立国家として歩んでいく以上、その国内の人道支援、復興支援はイラク政府が主体となる形で進めていくべきです。自衛隊でなければできない活動が今何があるのか、防衛庁長官の明快な御説明をお願い申し上げます。

 イラクで活動する自衛官の方々には心から敬意を表します。イラクに軍隊を派遣する諸国の多くの大統領や首相が、自国軍隊の活動の激励とともに現地の視察のためにイラクを訪問しております。イラクが戦闘地域でなく安全が確保された地域と強弁されるなら、なおさら、大変な御苦労をされている自衛官の慰問及び現地把握のため、なぜ総理御自身が訪問されないのか、明快な答弁を官房長官にお求めしたいと思います。

議長(河野洋平君) 後藤君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡単に願います。

後藤斎君(続) 私たち民主党、私、後藤斎は、国際社会の平和と安定、そしてそれを目指すことが我が国の真の国益であり、国民の皆さんの総意であると確信をし、前原代表のもと、その実現に向け一致団結していくこと、議会制民主主義をないがしろにする政府の横暴には体を張って闘っていくこと、大義なき自衛隊派遣には命をかけて闘っていくことをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣細田博之君登壇〕

国務大臣(細田博之君) 後藤議員にお答えいたします。

 まず、テロ特措法の延長期間についてお尋ねがありました。

 我が国は、テロ特措法を既に一度延長し、四年間にわたり同法に基づく活動を継続してまいりましたが、この間、国際社会のテロとの闘いの取り組みの様相やアフガニスタン内外の情勢には変化が見られます。今後、こうした変化をきめ細やかに注視していく必要があることなどから、一年後に立法府において我が国の活動の必要性や内容について改めて御判断をいただくこととすることが適当であると判断したものであります。

 同法の新たな期限以降の対応につきましては、これから一年間の国際社会によるテロとの闘いへの取り組み、我が国として果たすべき役割等、種々の要素を総合的に勘案いたしまして、我が国として主体的に判断いたします。

 次に、戦闘地域要件についてのお尋ねがありました。

 イラク特措法上の実施区域が非戦闘地域要件を満たすかどうかにつきましては、我が国が独自に収集した情報、諸外国等から得た情報を総合的に分析し、合理的に判断するものであります。

 これまでに我が国が独自に収集した情報や関係機関等から得られた情報等もあわせ、総合的に判断すれば、自衛隊が活動するサマワ周辺がいわゆる非戦闘地域の要件を満たさなくなったとは考えておりません。

 イラクへの自衛隊派遣についてお尋ねがありました。

 現行の基本計画における派遣期間終了後の対応につきましては、国会での御議論をも踏まえ、その時点におけるイラク国内及び国際的な諸情勢を慎重に見きわめて判断すべきであると考えております。

 最後に、総理のイラク訪問についてお尋ねがありました。

 現在、自衛隊及び在イラク大使館は、困難な環境のもと、人道復興支援の推進など、イラク人による国づくりの支援に優先的に取り組んでおります。

 こうした中、総理のイラク訪問については、内外の状況をも総合的に判断する必要がありますが、総理としても、イラクを訪問して自衛隊員及び大使館員を直接激励したいと希望しておられることは、総理御自身が国会において答弁されているとおりであります。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 後藤議員にお答えいたします。

 今般のパキスタン地震について、現在の取り組み及び今後の支援策というお尋ねでございました。

 冒頭官房長官から御説明を申し上げましたように、政府としては、国際緊急援助隊の救助チーム四十九名、医療チーム二十一名を既に派遣しております。また、二千五百万円相当のテント等の緊急援助物資を、これも既に供与したところでございます。さらに、現在、谷川外務副大臣が現地に向かっておりまして、今夕到着をいたします。現地のニーズを把握し、要人とも会い、我が国としての施策の立案に資するべく準備をしているところでございます。

 さらに、被害状況が悪化しております現状にかんがみまして、政府としても二千万ドルの無償支援の実施を決定いたしたところであります。

 さらに、現地では、道路、通信等のインフラが壊滅的な打撃を受けておりまして、救援物資の運搬手段としてヘリコプター等のニーズが出てきております。今後、こうした点を含めて現地のニーズを見きわめながら、政府全体としてできる限りの支援を行っていく考えであります。

 次に、国連改革と我が国の安保理入りについてお尋ねがありました。

 テロ、紛争、貧困など、個々の国家だけでは対処できないさまざまな問題の取り組みにおいて、唯一の普遍的かつ包括的な機関であります国連は、主要な役割を果たすことが期待をされております。

 小泉総理は、こうした国連に対する国際社会の信頼を高めるべく、ことしの九月の国連総会首脳会合において新たな国連ビジョンを提示したところであります。具体的には、貧困と闘う人々に手を差し伸べる優しさのある国連、平和構築への道筋をつけテロとの闘いに積極的に取り組む強い国連、今日の世界における願いや規範を反映した効果的な国連を主張したところであります。

 また、私も、直後の一般討論演説において、平和構築、委員御指摘のテロを含む新たな脅威への対処、開発等の主要問題につき、日本として今後とも積極的に取り組んでいく決意を述べたところであります。

 また、安保理改革につきましては、現在、改革実現に向けた機運はかつてなく高まっており、いわば第二の出発点にいると認識をしております。日本としては、これまでの開発、軍縮、不拡散、人間の安全保障等の分野で果たしてきた積極的な役割を訴えることなどを通じまして、また、これまでの外交努力を通じて得られた蓄積を踏まえつつ、我が国の常任理事国入り及び安保理改革に対する各国の理解と協力を得ながら、今後とも、改革に向けさらなる外交努力を行っていくこととしております。

 最後に、テロ対策にODAをどのように活用していくのかというお尋ねでございましたけれども、途上国によるテロ対処能力の向上は、途上国自身の発展のみならず、日本を含む国際社会の平和と安定にとって極めて重要なものであり、我が国としては、今後とも、ODAを活用したテロ対策支援を強化していく考えであります。

 具体的には、現在も既に実施しておりますテロ対策関連機材の供与、出入国管理能力の強化といった直接的な支援のほかに、テロを生む背景となっております貧困あるいは平和の構築、こうした問題についての途上国への開発支援を拡充していく考えでございます。(拍手)

    〔国務大臣大野功統君登壇〕

国務大臣(大野功統君) 後藤議員にお答え申し上げます。

 まず、海上阻止活動の効果と国際協調体制についてのお尋ねがありました。

 諸外国の艦船の海上阻止活動は、実際に海上で武器や麻薬を押収するなどの具体的な成果を上げており、テロリストや武器等の海上移動を未然に防止するという意味では抑止効果を発揮いたしております。抑止効果を費用対効果という面からのみ評価することは困難でありますが、諸外国は引き続きテロとの闘いを継続しており、このような国際協調体制のもとに行われている海上阻止活動は極めて重要であると考えております。

 次に、ムサンナ県からオーストラリア軍が撤退した場合の自衛隊の安全確保についてのお尋ねがありました。

 陸自派遣部隊は、安全確保に必要な装備を携行し、事前に十分な訓練を行っております。また、現地にて各種安全確保策を実施しております。これら施策により、比較的治安が安定しており、治安組織も育成されつつある現地ムサンナ県の状況下で、みずからも安全確保を図ることが可能であります。さらに、安全確保により万全を期するため、英豪軍やイラク治安当局等と密接な意見交換を行い、治安に関する情報を収集しているところであります。

 いずれにせよ、ムサンナ県において治安維持を担当する豪軍、英軍について、同県から撤退するという公式の決定はなされていないものと承知いたしております。

 次に、イラクにおいて自衛隊でなければ実施できない活動についてお尋ねがありました。

 イラクの復興はイラク人自身の手で行われることが望ましいものの、現段階においては、いまだ国際社会の支援が必要な状況であります。

 我が国は、イラクの安定が我が国の安全に重要との観点から復興を支援しており、陸自部隊においては、現地のニーズを十分踏まえつつ、医療支援活動や公共施設の復旧整備活動を実施しております。現地の治安情勢等を踏まえれば、自己完結能力があり、みずから身を守ることができる自衛隊以外に、現時点で、現地において復興支援活動を安全に実施し得る主体はないものと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 佐藤茂樹君。

    〔佐藤茂樹君登壇〕

佐藤茂樹君 公明党の佐藤茂樹でございます。

 私は、自由民主党及び公明党を代表し、ただいま議題となりましたテロ対策特別措置法の一部を改正する法律案につきまして質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、十月八日、パキスタン北部で強い地震があり、同国やインド、アフガニスタンなど広い地域が被災をいたしました。また、インドネシアのバリ島で、十月一日、同時爆弾テロが起き、二十二人が死亡し、多くの方が重軽傷を負われました。大地震とテロの犠牲者に心から哀悼の意を表しますとともに、負傷された方々に衷心よりお見舞いを申し上げ、被災地の一刻も早い復興をお祈りいたします。我が党として、本日、パキスタン大使館に、所属議員の思いとして義援金を届けさせていただきました。

 さて、我が国として、直ちに対応し、国際緊急援助隊をいち早く派遣されたことなどは評価いたしますが、問題はこれからです。先ほど官房長官から基調の御報告をいただきましたが、今後、日本政府はできる限りの支援をしなければならないと考えますが、取り組みの現状と今後の支援策について、官房長官にお伺いします。

 テロとの闘いは、国際社会が一致団結して取り組まなければならない長期的かつ困難な闘いであります。九・一一同時多発テロ事件が発生してから四年と一カ月がたった現在も、主犯と目されるアルカイダのウサマ・ビンラディンやタリバン最高指導者のオマル師は依然逃走中であり、アルカイダやタリバンの残党は現在もアフガニスタン・パキスタン国境地帯に潜伏していると見られており、テロリスト掃討作戦は継続中であります。

 先ほどのバリ島同時爆弾テロ事件や、七月に発生したロンドン地下鉄等爆破テロ事件など、世界各地でアルカイダの関与が疑われる国際テロ事件が頻発しています。特に、アフガニスタンを舞台とする不朽の自由作戦や海上阻止行動には、イラク戦争に反対したフランスやドイツも部隊を派遣しているのを初め、約八十カ国が何らかの協力を行っています。

 我が国は、国際社会の一員として、テロとの闘いを我が国みずからの安全保障の問題と認識し、国際社会と協調しつつ、ふさわしい責任を果たすため、テロ対策特措法に基づく協力支援活動を継続していくことは現状においては必要であると考え、私どもは改正案に賛成いたします。(拍手)

 その上で、四点にわたってお尋ねいたします。

 まず一番目に、延長期間を一年とした政府の真意についてお伺いします。

 私どもは、シビリアンコントロールの視点から、立法府が特措法を見直す機会がふえるという点で延長期間一年を了といたしますが、政府が二年前には二年とされた延長期間を今回は一年とされたのは、二年前の段階と何がどう違うと判断されたのか。具体的には、アフガニスタンの情勢なのか、国際社会の関与のあり方なのか、日本の国内事情なのか、明確ではございません。改めて、テロ対策特別措置法の期間延長が必要であると判断された根拠と、延長期間を一年とした理由について、官房長官にわかりやすく御答弁いただきたいと存じます。

 二番目にお尋ねしたいことは、インド洋に派遣されている自衛隊の活動を今後見直す際の判断基準は何かということであります。

 昨年、イラクの人道復興支援活動の基本計画を変更して一年延長を決めた際、政府は、今後のイラクでの自衛隊の活動については、四つの見きわめる視点を基本計画の中に明記されました。インド洋で協力支援活動を行う自衛隊についても、今後の活動のあり方について、延長期間一年の中で、何を見きわめ判断されるのか、視点を明確にすべきだと考えますが、官房長官の御所見を伺います。

 三番目にお伺いしたいことは、四年間、インド洋で自衛隊が協力支援活動を行ったことによって、テロ対策にどのような効果を上げたのか、役立っているのかということであります。

 海上阻止行動が、テロリストや武器等関連物資の移動を阻止する目的で行われていますが、四年間で具体的にテロ対策の面でどのような効果を上げたのか、外務大臣に国民にわかるように御説明いただきたいと存じます。

 四番目にお尋ねしたいことは、海上自衛隊がパキスタンの活動を給油、給水で支援していることの意義を政府としてどのようにとらえておられるかということであります。

 私は、インド洋での自衛隊の協力支援活動の持つ意味は、昨年の夏、質的に変わり、重要性を増してきたと認識しております。昨年の七月から、海上阻止行動に、従来のG8などの欧米各国だけでなく、イスラム教国パキスタンがその活動に加わり、それに日本の海上自衛隊が給油、給水の支援をしています。パキスタンの活動は日本の自衛隊の給油、給水に依存していて、日本がなくてはならない不可欠な存在になっているということの意味は極めて重要であると考えますが、外務大臣の見解を伺います。

 次に、テロ対策特別措置法に関連して、イラクにおける我が国の人道復興支援活動について、自衛隊派遣を延長するかどうかについては、状況を見て十二月十四日までに決定されるという前提の上で、特に、自衛隊のいわゆる出口戦略に絞って、三点お尋ねいたします。

 一点目に、ちまたには、来年前半にも、サマワの治安維持に当たっているイギリス軍とオーストラリア軍がサマワから撤退するため、それにあわせて自衛隊の撤退が検討されているという報道がなされていますが、そのような事実があるのか、外務大臣に明快な答弁をお願いいたします。

 二点目に、現地の動きとして、実際に、イラク中部の都市ナジャフとカルバラでは、既に治安維持権限が多国籍軍からイラク治安組織側に移管され、多国籍軍は撤収しております。同権限の移管を行う都市の選定を担当する、条件付き移管に関する共同委員会では、次に治安権限の移管が行われる候補地としてサマワの名前が挙がっているようであります。

 そこで、条件付き移管に関する共同委員会でのサマワについての協議を含め、サマワの治安権限が近くイラク側へ移管されるのか否かの見通しと、イラク側が治安権限を行使する場合、陸上自衛隊の安全確保には支障がないのかということについて、防衛庁長官の御答弁をお願いいたします。

 三点目に、我が国以外の多国籍軍参加国は、イラクの治安維持が目的で軍隊を駐留させています。一方、我が国の自衛隊は、人道復興支援を目的として主体的にイラクに駐留しているため、イラクの治安が回復し、他の軍隊が撤退しても、それだけでは自衛隊を撤退させる理由とはなりません。したがって、我が国政府は、そもそも特措法の目的を達成したのか否かという基準で、陸上自衛隊の出口戦略を主体的に練らなければならないと思います。この出口戦略についての政府の基本的な考え方について、官房長官の御所見を求めます。

 最後に、いわゆる出口戦略というような大事な課題については、今後、政府・与党間で緊密かつ十分な連携と議論の場を確保すべきだということを強く主張し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣細田博之君登壇〕

国務大臣(細田博之君) 佐藤議員にお答えいたします。

 まず、パキスタン地震への現在の取り組みと今後の支援策についてお尋ねがございました。

 政府としては、冒頭御説明申し上げましたとおり、とりあえずの支援策として、国際緊急援助隊の救助チーム、医療チームの派遣、二千五百万円相当の緊急援助物資の供与、さらに、政府として二千万ドルの無償支援協力の実施について決定をいたした次第でございますが、今後につきましても、被災国の要望を踏まえましてできる限りの支援を行っていく考えであります。

 テロ特措法の期間延長の理由についてお尋ねがありました。

 米国同時多発テロによってもたらされたテロの脅威は依然として存在しており、我が国としても、これを除去するための国際社会の取り組みに引き続き積極的かつ主体的に寄与していく必要があることから、テロ特措法の延長が必要と判断したものであります。

 また、我が国は、テロ特措法を既に一度延長し、四年間にわたり同法に基づく活動を継続してまいりましたが、この間、国際社会のテロとの闘いの取り組みの様相やアフガニスタン内外の情勢には変化が見られます。また、国際的にも、最近に至ってもテロが多発しているという状況がございます。今後、こうした変化をきめ細やかに注視していく必要があることなどから、一年後に立法府において我が国の活動の必要性や内容について改めて判断を行うこととすることが適当だと判断したものであります。

 次に、協力支援活動を行う自衛隊の今後の活動のあり方についての判断基準についてお尋ねがありました。

 協力支援活動を行う自衛隊の活動の今後のあり方につきましては、アフガニスタンにおけるテロリスト掃討作戦等の進捗状況、同国の内外の情勢、国際社会によるテロとの闘いへの取り組みの推移、我が国として果たすべき役割等、種々の要素を総合的に勘案して、我が国として主体的に判断する必要があると考えております。

 御指摘の四つの視点とは、基本計画に盛り込まれておりますが、第一に、現地の復興の進展状況の変化、第二に、選挙の実施等によるイラクにおける政治プロセスの進展の状況、第三に、イラク治安部隊の能力向上など現地の治安に係る状況、四、多国籍軍の活動状況及び構成の変化など諸事情、こう記されておるわけでございます。

 次に、イラクへの自衛隊派遣のいわゆる出口戦略についてのお尋ねがありました。

 十二月十四日に派遣期限を迎える自衛隊の活動の今後につきましては、復興支援活動の目的がどの程度達成されたかという点などを含め、国際協調の中で日本の果たすべき責任、イラク復興支援の現状、諸外国の支援状況等を踏まえまして、日本の国益を十分勘案して判断を行う必要があると考えております。また、その際には、与党内における御議論も十分に踏まえながら判断してまいる所存であります。(拍手)

    〔国務大臣大野功統君登壇〕

国務大臣(大野功統君) 佐藤議員にお答えいたします。

 まず、サマワにおける治安権限の移譲についてのお尋ねがありました。

 御指摘の委員会は、多国籍軍からイラク側への段階的な治安権限の移譲のための条件を策定するため八月初めに設置され、来年以降の多国籍軍のあり方についてイラク政府と多国籍軍関係者が検討を行っておりますが、何らかの具体的決定が行われたとは承知いたしておりません。

 なお、米英等は、来年以降の多国籍軍のあり方については、今後の現地情勢を踏まえる必要があり、具体的なタイムスケジュールを設定することはできないとの立場を一貫して維持しており、サマワにおいて治安権限が多国籍軍からイラク側へ近く移管される見通しがあるとは承知いたしておりません。

 次に、イラク側への治安権限の移譲の場合の自衛隊の安全確保についてのお尋ねがありました。

 陸上自衛隊派遣部隊は、安全確保に必要な装備を携行するとともに、事前に十分な訓練を実施しているところであります。また、宿営地内外において各種安全確保策を実施いたしております。いずれにせよ、これら施策により、比較的治安が安定しており、治安組織も育成されつつある現地ムサンナ県の状況下で、みずから安全確保を図ることが可能であります。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 佐藤議員にお答えいたします。

 インド洋での海上阻止行動の効果についてのお尋ねでございました。

 インド洋で行われている海上阻止活動は、国際社会によるテロとの闘いの取り組みとして、テロリストや関連物資の海上移動、拡散の抑止に大きな効果を発揮しております。二〇〇一年九月以降四年間で、総計で約十三万七千回の無線照会及び約一万一千回の乗船検査を実施しているところでございます。

 具体的な乗船検査の例を申し上げますと、例えばことしの五月、乗船検査を行った船から、テロリストの資金源となり得る約四千二百ポンド、約二トンの麻薬、それからことしの三月には約六千ポンド、約三トンの麻薬を発見し、押収いたしました。また、昨年の五月には、乗船検査を行った船舶から約五百五十丁の銃器及び弾薬を発見しているところであります。

 次に、インド洋での活動の中で、パキスタンの参加の重要性についての御指摘がございました。

 国際的なテロリズムの防止及び根絶のためには、イスラム国であるパキスタンを含め国際社会が一致結束して取り組むことが重要でありまして、各国がそれぞれの能力に応じた貢献をすることが必要であると考えております。

 日本といたしましても、こうした国際社会が一体となった取り組みに対して、引き続き補給等協力支援活動を通じて積極的かつ主体的に寄与していく考えでございまして、パキスタンの参加というのは大変国際的に見ても意味があるもの、私どももさように認識をしているところであります。

 最後に、イギリス軍及びオーストラリア軍のイラク・サマワからの撤退について、何らかの意向が我が国に伝えられた事実はあるのかというお尋ねでございました。

 イギリス及び豪州の基本的考え方は、イラクの治安部隊が活動できるようになるまで多国籍軍の任務が必要であり、逆に、イラクの治安部隊の能力が育成されれば、多国籍軍の活動を終了するというものでございます。

 このような判断に当たっては現地の状況を十分踏まえる必要があり、現時点で、イギリス、オーストラリア両国が具体的な撤退時期を決めているわけではなく、撤退について何らかの意向が我が国に伝えられたという事実はございません。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣  町村 信孝君

       国務大臣  大野 功統君

       国務大臣  竹中 平蔵君

       国務大臣  細田 博之君


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