衆議院

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第1号 平成18年1月20日(金曜日)

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平成十八年一月二十日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第一号

  平成十八年一月二十日

    午前十時開議

 第一 議席の指定

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本日の会議に付した案件

 日程第一 議席の指定

 文部科学委員長及び経済産業委員長辞任の件

 文部科学委員長及び経済産業委員長の選挙

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会、政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会、沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会及び北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 日本国憲法改正国民投票制度に係る議案の審査等及び日本国憲法の広範かつ総合的な調査(国会法第百二条の六の調査をいう。)を行うため委員五十人よりなる日本国憲法に関する調査特別委員会を設置するの件(議長発議)

 小泉内閣総理大臣の施政方針に関する演説

 麻生外務大臣の外交に関する演説

 谷垣財務大臣の財政に関する演説

 与謝野国務大臣の経済に関する演説


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    午後零時二分開議

議長(河野洋平君) 諸君、第百六十四回国会は本日召集されました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 御報告いたします。

 昨年十一月十五日、清子内親王殿下の御結婚の儀が行われましたので、当日、議長は、本院を代表して、皇居において、天皇皇后両陛下に御祝詞を申し上げました。

 右、御報告を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 議席の指定

議長(河野洋平君) 日程第一、議席の指定を行います。

 衆議院規則第十四条によりまして、諸君の議席は、議長において、ただいまの仮議席のとおりに指定いたします。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) この際、新たに議席に着かれました議員を紹介いたします。

 第百三十二番、四国選挙区選出議員、高井美穂君。

    〔高井美穂君起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 常任委員長辞任の件

議長(河野洋平君) 常任委員長辞任の件につきお諮りいたします。

 文部科学委員長斉藤鉄夫君及び経済産業委員長谷口隆義君から、それぞれ常任委員長を辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 常任委員長の選挙

議長(河野洋平君) つきましては、文部科学委員長及び経済産業委員長の選挙を行います。

中山泰秀君 文部科学委員長及び経済産業委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、文部科学委員長に遠藤乙彦君を指名いたします。

    〔拍手〕

 次に、経済産業委員長に石田祝稔君を指名いたします。

    〔拍手〕

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(河野洋平君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 災害対策を樹立するため委員四十人よりなる災害対策特別委員会

 政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 青少年問題の総合的な対策を確立するため委員二十五人よりなる青少年問題に関する特別委員会

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等の諸問題を調査するため委員四十五人よりなる国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別委員会

及び

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 次に、日本国憲法改正国民投票制度に係る議案の審査等及び日本国憲法の広範かつ総合的な調査(国会法第百二条の六の調査をいう。)を行うため委員五十人よりなる日本国憲法に関する調査特別委員会を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました七特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) この際、暫時休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三分開議

議長(河野洋平君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(河野洋平君) 内閣総理大臣から施政方針に関する演説、外務大臣から外交に関する演説、財務大臣から財政に関する演説、与謝野国務大臣から経済に関する演説のため、発言を求められております。順次これを許します。内閣総理大臣小泉純一郎君。

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 内閣総理大臣に就任して四年九カ月、私は、日本を再生し、自信と誇りに満ちた社会を築くため、改革なくして成長なし、この一貫した方針のもと、構造改革に全力で取り組んでまいりました。

 この間、改革を具体化しようとすると、逆に、成長なくして改革はできない、不良債権処理を進めれば経済が悪化する、財政出動なくして景気は回復しないという批判が噴出しました。道路公団民営化の考えを明らかにしたときは、そんなことはできるはずがない、郵政民営化に至っては暴論とまで言われました。

 このような批判が相次ぐ中、揺らぐことなく改革の方針を貫いてきた結果、日本経済は、不良債権の処理目標を達成し、政府の財政出動に頼ることなく、民間主導の景気回復の道を歩んでいます。道路公団の民営化の際には、初めて高速道路料金の値下げを実施しました。一たび国会で否決された郵政民営化法案は、正論であるとの国民の審判により成立を見ることになりました。(拍手)

 改革を進める際には、総論賛成、各論反対に直面し、現状を維持したい勢力との摩擦、対立が起こります。政治は、一部の利益を優先するものであってはならず、国民全体の利益を目指すものでなければなりません。郵政民営化の是非を問うたさきの総選挙における国民の審判は、これを明確に示しました。これまで着実に改革を進めることができたのは、多くの国民の理解と支持があったからこそであります。(拍手)

 今日、日本社会には、新しい時代に挑戦する意欲とやればできるという自信が芽生え、改革の芽が大きな木に育ちつつあります。ここで改革の手を緩めてはなりません。私は、自由民主党及び公明党による連立政権の安定した基盤に立って、郵政民営化の実現を弾みに改革を続行し、簡素で効率的な政府を実現します。(拍手)

 政府の規模を大胆に縮減するには、国、地方を通じた公務員の総人件費削減、政府系金融機関や独立行政法人などの改革、政府の資産・債務管理の見直し、特別会計の整理合理化は避けて通れません。これらの改革の基本方針を定めた行政改革推進法案を今国会に提出し、成立を期します。

 公務員の総人件費を削減いたします。現在六十九万人の国家公務員について、今後五年間で五%以上減らします。横並び、年功序列の給与体系を抜本的に改めるとともに、給与水準も民間の給与実態に合わせたものとなるよう見直します。

 政府系金融機関の改革については、民業補完の原則を徹底します。残すべき機能は、中小零細企業や個人の資金調達支援、重要な海外資源の獲得や国際競争力の確保に不可欠な金融、円借款の三分野に限定し、八つの機関の統廃合や完全民営化を実現いたします。

 庁舎、宿舎などの国有財産を有効に活用するため、民間への売却や貸し付けを進めてまいります。

 道路特定財源については、現行の税率を維持しつつ、一般財源化を前提に見直しを行います。

 公共的な仕事や公益の追求は、国だからできて民間では難しいというこれまでの考え方から脱却し、役所より民間に任せた方が効果的な分野については、官から民への流れを加速します。

 官民の競争を通じてすぐれたサービスを提供する市場化テストを実施したところ、ハローワークの就職支援、社会保険庁の国民年金保険料の収納事業、刑務所の周辺警備の三分野で、百二十社を超える入札がありました。本格的導入を内容とする法案を提出し、住民票の写しや戸籍謄本の窓口業務、統計調査の業務など対象の拡大を図ります。

 公益法人制度については、明治以来百年ぶりに抜本的な見直しを行い、役所の許可を廃止し登記による設立に改めることなどを内容とする法案を国会に提出します。

 国から地方へ、この方針のもと、地方の意見を真摯に受けとめ、三兆円の税源移譲、地方交付税の見直し、四兆七千億円の補助金改革を実施いたします。

 三千二百あった市町村が、今年度末には一千八百になります。これに伴い、市町村の議員数は一万八千人減ります。引き続き市町村合併を推進するとともに、北海道が道州制に向けた先行的取り組みとなるよう支援いたします。

 来年度予算においては、一般歳出の水準を今年度以下にするとともに、新規国債発行額を削減し、三十兆円以下に抑えました。景気対策の一環として導入した定率減税は、経済情勢を踏まえ廃止します。本年六月を目途に、歳出歳入を一体とした財政構造改革の方向についての選択肢及び工程を明らかにし、改革路線を揺るぎないものといたします。公正で活力ある社会にふさわしい税制の実現に向け、国民的な議論を深めながら、消費税、所得税、法人税、資産税など税体系全体にわたって、あらゆる角度から見直しを行ってまいります。

 主要銀行の不良債権残高はこの三年半で二十兆円減少し、金融システムの安定化が実現した今日、貯蓄から投資への流れを進め、国民が多様な金融商品やサービスを安心して利用できるよう、法制度を整備します。

 どの町も村も、独自の魅力を持っているはずです。地域や町の潜在力を引き出し、日本あるいは世界の中で一流の田舎や都市になろうとする意欲を支援してまいります。

 既に七百件を超える構造改革特区が誕生しました。特区第一号に認定された姫路市では、廃棄されたタイヤを再資源化する事業に対し役所の許可を不要としました。今や姫路市は、環境・リサイクル産業の集積地に変貌しつつあります。このほか、幼稚園と保育所の一体的運用など、五十三の規制緩和の特例を全国に拡大しました。

 三年前には五百万人だった外国人旅行者は、昨年、愛・地球博の開催や、韓国、台湾に対する査証免除措置などにより、七百万人に迫る勢いです。ビジット・ジャパン・キャンペーンなどにより、二〇一〇年までに外国人旅行者を一千万人にする目標の達成を目指します。

 外国からの日本への投資を五年間で倍増させる計画は、着実に進展しています。北海道でスキー観光客向けのリゾート事業を始めたオーストラリアの企業、デジタル家電の研究開発拠点を設けたアメリカ企業など、外国からの投資は、地域の活性化や雇用の拡大につながるとともに、技術に新たな刺激を与え、我が国にとって歓迎すべきものであります。さらに大きな目標を掲げて、一層の投資促進を図ってまいります。

 中心市街地の空洞化に歯どめをかけ、高齢者でも暮らしやすい、にぎわいのある町を再構築してまいります。

 新産業の創造には、高い技術力により物づくり基盤を支えている中小企業の存在が欠かせません。東京・墨田区にある従業員六名の町工場は、針先をミクロン単位まで細くすることで痛くない注射針を開発するなど、不可能を可能にする物づくりの駆け込み寺と呼ばれています。独創的な技術を持っている人材の確保、育成、新事業への挑戦支援など、やる気のある中小企業を応援してまいります。また、国際競争力の強化、生産性の向上、地域経済の活性化などを目指した新たな成長戦略のあり方を夏までに示します。

 世界的な日本食ブームやアジア諸国の生活水準の向上を背景に、リンゴやイチゴ、長芋、コシヒカリ、アワビなど日本の農水産物が海外で高級品として売れています。北海道と青森県のホタテ加工業者は、五年以上かけEUの厳しい衛生管理審査に合格して輸出を始め、昨今はアメリカ、韓国へ販路を拡大しています。意欲と能力のある経営に支援を重点化し、攻めの農政を進めます。

 市場における公正な競争を確保するため、改正された独占禁止法に基づき、違反行為には厳正に対処します。

 社会保障制度を将来にわたり揺るぎないものとしていくため、給付と負担のあり方などを含め制度全般を見直し、年金、介護に続き、本年は医療制度の改革を進めます。

 国民皆保険を堅持しつつ、患者本位で持続可能な医療制度となるよう、予防を重視し、医療費の適正化に取り組むとともに、高齢者の患者負担の見直しや診療報酬の引き下げを行います。七十五歳以上の高齢者の医療費を世代間で公平に負担する新たな制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合を目指します。

 年金制度に対する国民の信頼を確保するため、国民年金の未納、未加入対策を強力に推進するとともに、社会保険庁については、年金と医療保険の運営を分離し、それぞれ新たな組織を設置するなど解体的出直しを行います。また、厚生年金と共済年金の一元化に取り組みます。(拍手)

 昨年は、出生数が百十万人を下回り、戦後初めて人口が減少すると見込まれます。少子化の流れを変えなくてはなりません。就任時に表明したとおり、昨年度末までに保育所の受け入れ児童を十五万人ふやしました。それでもまだ足りない現状を踏まえ、引き続き待機児童ゼロ作戦を推進いたします。昨年度末には、小学生が親の帰宅までの間、安心して過ごせる場としての放課後児童クラブを、目標どおり一万五千カ所整備しました。さらに、経験豊かな退職者や地域の力をかりて、多様な放課後児童対策を展開いたします。子育て期の経済的負担の軽減を図るために児童手当を拡充するとともに、育児休業制度の普及など企業や地域のきめ細かな子育て支援を進め、子育ての喜びを感じながら働き続けることができる環境を整備してまいります。(拍手)

 本年度、審議会等における女性委員の割合を三割にするという目標を達成しました。二〇二〇年までに社会のあらゆる分野において、指導的立場に女性が占める割合が三割になることを目指し、一たん家庭に入った女性の再就職を支援するなど、昨年末に改めて策定した男女共同参画基本計画を推進します。

 多くの健康被害が発生しているアスベスト問題に迅速に対処するため、既存の制度では補償を受けられない被害者を救済するための法案を提出するとともに、アスベストの早期かつ安全な除去など被害の拡大防止に取り組みます。(拍手)

 鳥インフルエンザの脅威に対しては、資金協力や専門家派遣などの国際支援を行うとともに、治療薬の備蓄、ワクチンの開発と供給を進めてまいります。

 昨年十二月、科学的知見を踏まえ、アメリカ産牛肉の輸入を再開しました。消費者の視点に立って、食の安全と安心を確保してまいります。

 ことしの春に日本司法支援センターを設立し、秋には全国で業務を開始します。どこでも気軽に法律相談をできるよう、国民に身近で頼りがいのある司法を実現いたします。(拍手)

 世界一安全な国日本の復活は、今後も内閣の最重要課題であります。

 一昨年四月に二千カ所あった空き交番は、一年間で七百カ所解消しました。平成十九年春までの三年間に空き交番をゼロにします。犯罪を引き起こした者が再び罪を犯す例が後を絶ちません。再犯防止に向け、情報の共有化など関係機関のより緊密な協力体制を構築してまいります。

 増加している外国人犯罪に対処するため、入国時に指紋による審査を導入するとともに、警察と入国管理当局の連携を強化して、二十五万人と推定される不法滞在者を平成二十年までに半減することを目指します。

 テロの未然防止を図るため、情報の収集、分析、重要施設や公共交通機関の警戒警備等の対策を徹底いたします。

 新宿歌舞伎町を初めとする繁華街や一般の住宅地においては、地域住民による防犯活動が活発化しており、二年前には三千だった防犯ボランティア団体が一万四千にふえ、八十万人が自主的にパトロールを行っております。小さな子供たちを犯罪から守るため、警察や学校だけでなく、PTAや地域住民とも連携して、登下校時の警戒強化、不審者情報の共有などを進めます。

 昨年末に決定された基本計画により、犯罪被害者や遺族が一日も早く立ち直り、安心して生活できるよう支援いたします。

 一時期一万七千人に及んだ交通事故死者数は、昨年、半世紀ぶりに六千人台に下がりました。五千人以下にすることを目指して交通安全対策を進めるとともに、公共輸送についても、安全管理体制の構築を推進します。

 先月に入ってから、寒波や大雪により、各地で被害が発生しています。民家の雪おろしや雪崩の警戒強化、交通や電力の確保、食料品や石油製品の安定供給などの生活支援に万全を期してまいります。

 耐震強度の偽装事件は、住まいという生活の基盤への信頼を土台から崩すものであります。マンションの居住者及び周辺住民の安全を最優先に、居住の安定確保に努めるとともに、国民の不安を解消するため、実態を把握し、書類の偽造を見抜けなかった検査制度を点検し、再発防止と耐震化の促進に全力を挙げます。(拍手)

 今後の日本を支えていくのは人であります。物で栄えて心で滅ぶことのないよう、新しい時代を切り開く心豊かでたくましい人材を育てていかなければなりません。

 教育基本法については、国民的な議論を踏まえ、速やかな改正を目指し、精力的に取り組んでまいります。

 社会の中で子供を健やかに育てるとの認識に立ち、学校だけでなく、家庭や地域と連携しながら、体験活動や触れ合い交流を通じて命のとうとさ、社会貢献の大切さを教え、道徳や規範意識を身につけることを促します。

 豊かな心と健やかな体の育成に、健全な食生活は欠かせません。食育推進基本計画を策定し、食生活の改善に加え、我が国の食文化の普及、地元の食材を使った給食の推進など、食育を国民運動として展開してまいります。(拍手)

 教育現場の創意工夫を促すとともに、習熟度別の指導、学校の外部評価、保護者や地域住民の学校運営への参画、学校選択制の普及を通じて、教育の質の向上を図ります。

 国民に夢と感動を与えるトップレベルのスポーツ選手を育成するとともに、国民が生涯を通じてスポーツに親しめる環境を整備いたします。

 定職につかず臨時的に仕事に従事しているフリーターや、学業、仕事、職業訓練いずれにもつかないニートと呼ばれる人が増加しています。民間の力を活用して研修を全国で実施するなど、若者の就業を支援します。

 文化芸術は、国の魅力を世界に伝えるだけでなく、多様な価値観を有する世界各国の間をつなぐかけ橋になると信じます。伝統文化ばかりでなく、映画やアニメ、ファッションなど、我が国の文化芸術は世界で高く評価され、多くの人々を魅了しています。新進気鋭の人たちによる創作活動を支援したり、子供たちに我が国の文化芸術を体験させる活動を充実するとともに、日本ブランドを育成し、国内外に広く発信してまいります。模倣品、海賊版の取り締まり強化や特許審査の迅速化など、知的財産を創造し、保護、活用するための基盤を整備します。

 科学技術の振興なくして我が国の発展はありません。科学技術創造立国の実現に向け、国全体の予算を減らす中、科学技術の分野は増額し、第三期基本計画を策定して研究開発を戦略的に実施してまいります。(拍手)

 大学発ベンチャー企業は一千百社を超え、地域と協力しながら、町づくりや地域再生の核となっている大学もあらわれています。沖縄に科学技術大学院大学を設立するため、法人を立ち上げました。世界最高水準を目指し、教員、学生の半分以上を外国から迎えるとともに、アジアなど海外の大学との連携を図ってまいります。

 就任時に約束したとおり、政府の公用車をすべて低公害車に切りかえました。今や、ペットボトルの六割以上が回収され、その大半がシャツやふろしき、卵パックなどに生まれ変わっています。物を大切にするもったいないという心と科学技術の力を結びつけ、ごみを減らし、使えるものは繰り返し使い、ごみになったら資源として再利用する社会を実現し、環境保護と経済発展の両立を図ります。(拍手)

 原油価格の高騰が続いていますが、今日の世界情勢を踏まえ、安全保障の観点から、石油や天然ガスの安定供給の確保、省エネルギーの一層の促進、新エネルギーの開発、安全を大前提とした原子力発電の推進に取り組んでまいります。

 我が国にとって、京都議定書で約束した目標を達成することは容易ではありません。人類を脅かす気候変動問題の解決に向け、昨年策定した計画を官民挙げて着実に進めます。すべての国が行動を起こし、世界が一つになって温暖化対策を進めていくことができるよう、アメリカ、中国、インド等も参加する共通ルールの構築に向け、主導的な役割を果たしてまいります。(拍手)

 我が国は、この四年半で、高速インターネットの加入者数が八十五万から二千二百万人へ、インターネットを使った株式取引の割合が六%から二九%へそれぞれ急成長し、世界で最も低い料金で素早く多くの情報に接することができる、世界最先端のIT国家となりました。IT新改革戦略に基づき、診療報酬明細書の完全オンライン化や役所に対する電子申請の利用拡大などを進め、高い信頼性と安全性が確保され、国民一人一人がITの恩恵を実感できる社会をつくってまいります。

 「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」この憲法前文の精神を体して、戦後、我が国は、自由と民主主義を守り、平和のうちに豊かな社会を築いてまいりました。今後も、日米同盟と国際協調を外交の基本方針として、いかなる問題も武力によらずに解決するとの立場を貫き、世界の平和と安定に貢献してまいります。(拍手)

 在日米軍の兵力の構成見直しに当たっては、抑止力の維持と沖縄を初めとする地元の負担軽減の観点から、関係自治体や住民の理解と協力が得られるよう、全力を傾注いたします。

 テロとの闘い、貧困の克服、感染症対策など国際社会が抱える問題に対して、ODAの戦略的活用や人的貢献により、日本も積極的に協力してまいります。国連が効果的に機能するよう、安全保障理事会を含めた国連の改革に取り組みます。

 イラク国民は、みずからの手で平和な民主国家をつくり上げようと、テロに屈せず、懸命に努力しています。二年にわたるサマワでの自衛隊員の献身的な活動は、医療指導や住民への給水に加え、多くの学校や道路の改修など多岐にわたっており、我が国自衛隊は、日本国民の善意を実行する部隊として、現地から高い評価と信頼を得ております。現地情勢と国際社会の動向を注視しつつ、自衛隊員の安全確保に万全を期しながら、日本は国際社会の責任ある一員として、イラクの国づくりを支援してまいります。(拍手)

 先月、国連総会で、北朝鮮の人権状況を非難する決議が初めて採択され、拉致問題の解決の必要性が国際社会において広く認識されました。北朝鮮との間では、平壌宣言を踏まえ、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決するため、関係国と連携しながら粘り強く交渉してまいります。

 ロシアとの間では、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結するとの基本方針のもと、さまざまな分野における協力を拡大いたします。

 中国、韓国とは、経済、文化、芸術、スポーツなど幅広い分野において、いまだかつてないほど交流が盛んになっています。中国はアメリカを抜いて我が国最大の貿易相手国となり、四十年前の国交正常化当時は年間一万人だった日韓の人の交流は、今や一日一万人を超えています。一部の問題で意見の相違や対立があっても、中国、韓国は我が国にとって大事な隣国であり、大局的な視点から協力を強化し、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を築いてまいります。(拍手)

 先月開催された東アジア首脳会議では、多様性を認め合いながら、自由と民主主義を尊重し、貿易の拡大、テロの根絶、鳥インフルエンザ対策などに協力して取り組み、開かれた東アジア共同体を目指すことで一致しました。ASEAN諸国の地域統合を支援するとともに、アジア太平洋諸国との友好関係を増進してまいります。

 WTO新ラウンド交渉は成功させなければなりません。日本は、後発の開発途上国から輸入する産品の関税を原則撤廃するとともに、途上国が新たな市場を開拓できるよう支援いたします。

 昨年十二月、マレーシアと経済連携協定に署名しました。さらに、アジアを初め各国との協定締結に向け、精力的に取り組みます。

 我が国周辺の大陸棚及び海底資源の調査を進め、海洋権益の確保に万全を期してまいります。

 テロや弾道ミサイル等の新たな脅威や緊急事態に対して、国や地方、国民が迅速かつ的確に行動できるよう、国民保護法に基づき、有事における態勢を整備します。

 象徴天皇制度は、国民の間に定着しており、皇位が将来にわたり安定的に継承されるよう、有識者会議の報告に沿って、皇室典範の改正案を提出します。

 戦後六十年を経て、憲法の見直しに関する議論が各党で進んでいます。新しい時代の憲法のあり方について、国民とともに大いに議論を深める時期であります。憲法改正のための国民投票の手続を定める法案については、憲法の定めに沿って整備されるべきものと考えます。

 我が国は、明治維新以降、幾たびか国家存亡の危機に立たされました。戦後の平和な時期においても、二度の石油危機、円高ショック、あるいは阪神・淡路大震災を初めとする大災害など、経済と国民生活の根幹を揺るがす危機に見舞われました。しかしながら、先人たちはいずれの難局をも克服し、日本は今日まで発展を遂げてまいりました。

 いつの時代においても、高い志を抱いて行動する人々が大きな役割を果たしています。さきの総選挙では、経歴や学歴にかかわらず、政治を変えたいという志ある人が何人も国会議員に当選しました。欧米諸国で日本食を広めている料理人、フランスでワイン醸造を始めた女性など、海外のさまざまな分野で日本人が活躍しています。また、外国人が日本に来て、廃業寸前の造り酒屋を再建し町おこしに貢献したり、しにせ旅館のおかみとなり地域の温泉地を国内外に広めるなど、生き生きと活動している例も多く見られます。国技である相撲では、朝青龍や琴欧州の外国人力士が活躍する一方、野球の本場アメリカでは、野茂、イチロー、松井、井口選手など大リーガーとして立派な成績を上げています。皆、志を持って挑戦し、懸命に努力し、さまざまな試練を克服して、夢と希望を実現しています。(拍手)

 我々には、難局に敢然と立ち向かい困難を乗り越える勇気と、危機を飛躍につなげる力があります。先人たちの築き上げた繁栄の基盤をさらに強固にし、新しい時代、激動する内外の環境変化に対応できる体制を構築しなければなりません。

 幕末の時代、吉田松陰は、志士は溝壑にあるを忘れず、すなわち、志ある人は、その実現のためには溝や谷に落ちてしかばねをさらしても構わないと常に覚悟しているという孔子の言葉で、志を遂げるためにはいかなる困難をもいとわない心構えを説きました。

 私は、改革をとめるなとの国民の声を真摯に受けとめ、あすの発展のため、残された任期、一身を投げ出し、内閣総理大臣の職責を果たすべく全力を尽くす決意であります。

 国民並びに議員各位の御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 外務大臣麻生太郎君。

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 第百六十四回国会の開会に際し、外交方針について所信を申し述べさせていただきます。

 我が国外交を支える理念は、戦後日本の歩みを貫いてきた考え方に同じであります。自由と民主主義、基本的人権と市場経済を重んじる思想であり、我が国は今後とも、人類が歴史の中でかち取ってきたこれらの普遍的価値にのっとる外交を進めてまいります。

 外交とは、我が国及び国民の平和と安全を確保し、幸せを目指すために行うものであります。現在、国際社会が直面する課題は多く山積しておりますが、我が国はその責任ある一員として、日米同盟と国際協調を基本とし、近隣諸国や国連などの国際機関とも緊密に協力しつつ、平和と幸福の世界を目指してまいります。

 価値観と利益をともにする同盟国米国との関係は、日本外交にとってのかなめです。

 国際テロや大量破壊兵器の拡散、感染症や環境破壊のような人間の安全保障にかかわる新たな課題と取り組む上で、日米同盟は今日その重要性を増しております。

 日米両国は、世界の諸問題を解決するため多くの国と協調しつつ、協力し合っております。今後ともこのような世界の中の日米同盟を強化します。

 同様に、日米安保体制の信頼性を高める努力を続けます。いわゆる兵力態勢の再編は、そのための重要な取り組みであります。昨年十月の2プラス2で日米が発表した共同文書を踏まえ、実施日程を含む具体的計画について米側と協議をしてまいります。その際、沖縄県を初め、米軍施設・区域を抱える地元の負担軽減に最大限努めなければならないことは申すまでもありません。

 我が国として、中国は古今の歴史を通じ最も大切にしてきた国の一つであり、近年、両国間では経済関係や人的交流が飛躍的に増大、拡大をしております。日中関係の発展は、我が国外交の基本方針の一つであります。

 我が国は、中国が平和的発展の努力を通じて、近隣諸国とともに経済発展の果実を分かち合い、アジア、国際社会における主要なパートナーとして、民主主義や人権といった人類共通の普遍的価値を信奉し、政治経済面でより一層責任ある役割を果たしていくことを歓迎します。

 我々日本人は、中国の人々の過去をめぐる心情を重く受けとめるとともに、中国の人々に対しては、過去の問題にこだわり過ぎることなく、冷静に大局を見据え、ともに成熟した友人として切磋琢磨する関係、広範な世界的、地域的課題のため、ともに汗を流すという姿こそ基本的潮流とする関係を築くことをぜひ呼びかけたいと思います。(拍手)

 韓国と我が国は、昨年、国交正常化四十周年をともにことほぎました。両国関係の今日は、おのおのの先達たちが抱いた志と払った努力にその多くを負っております。未来を目指し両国が手を携え進む際、立ち返る原点はそこにあります。

 それゆえ、日韓両国は昨年を友情年と定め、「進もう未来へ、一緒に世界へ」という標語を掲げました。友情年は昨年末終わりましたが、精神は今後に生き続けることだと確信します。今日、両国は相互依存を深め、ますます多くの共通課題に取り組む間柄となったからです。同時に、我々は、韓国の人々の過去をめぐる心情を重く受けとめ、人道的観点から、過去に起因する諸問題に真摯に対応していきたいと存じます。

 我が国は、韓国及び中国との未来へ向けた友好協力関係を一層強化していきます。これは我が国の揺るぎない基本方針であります。和解と協調を導きの精神とし、対話を深める中から、両国民との間に明るい未来図が描かれなくてはなりません。まさにその目的のため、我が国は、両国と協力して、未来を担う青少年世代を初め、さまざまなレベルでの交流を大いに進めていきたいと思っております。

 さて、昨年十二月に初会合を持った東アジア首脳会議は、将来の東アジア共同体形成を視野に入れ、経済的繁栄と民主主義を通じ平和と幸福を目指す共通の意思を確かめる場となりました。

 我が国は、この先、東アジア共同体を、自由や民主主義という普遍的価値、そしてグローバルな規範にのっとった、開かれたものとして築いてまいります。そのため、ASEAN諸国、さらにはインドや豪州、ニュージーランドといった民主主義国との戦略的関係も強めていかなければなりません。

 東アジア首脳会議参加国の間で、貿易・投資、エネルギーからテロ、感染症にわたる共通課題に関し、具体的協力を進めてまいります。新型インフルエンザと闘うため、今月、我が国は、その早期封じ込めに関する国際会議をWHOとともに共催いたしました。また、我が国は、本年度中に、アジア諸国へ向け一億三千五百万ドルの支援を行います。

 北朝鮮をめぐっては、その諸問題の解決が地域の平和、安定をつくるため、また、国際的な不拡散体制維持のため不可欠であることをまず強調しておきます。

 日朝平壌宣言に従い、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を解決し、過去を清算することにより国交正常化を目指すのが我が国の方針であります。同時に、拉致問題を含む諸懸案の包括的な解決なくして国交正常化はありません。

 さきの日朝政府間協議で一致を見たとおり、拉致問題等の懸案事項と安全保障、そして国交正常化のおのおのに関する包括並行協議を早期に始めます。この中で、拉致を初めとする諸懸案解決に向け、対話と圧力の考えのもと、誠意ある対応を北朝鮮から引き出す所存です。同時に、六者会合を通じ、核問題の平和的解決を目指します。

 次に、ロシアとの関係については、最大の懸案である北方領土問題をめぐって、日ロ間になお見解の相違があります。我が国は、昨年十一月、プーチン大統領の訪日の際開いた首脳会談の結果をも踏まえ、これまで両国が交わした合意と文書を基礎として、国民の広範な支持を得ながら、ロシアと粘り強い交渉を続けます。我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を早期に締結しなくてはなりません。

 本年、ロシアは、G8サミットを初めて自国で開きます。この機をとらえ、ロシアとさらに活発な対話を続けます。日ロ行動計画に従って協力を深め、未来を志向する関係づくりに努めてまいる所存です。

 さて、本年は、日豪友好協力基本条約署名三十周年に当たります。日豪交流年とされ、記念事業が両国で実施されます。さらに、我が国が沖縄を舞台にする第四回太平洋・島サミットを開きます。あたかも太平洋の年となる本年、これらを機に関係諸国と理解を深め、交流と協力を図っていかなくてはなりません。

 また、我が国の安全と繁栄のため、欧州や中南米等との関係も強化してまいります。

 我が国は、昨年、国連の改革、特に安保理の改革を目指して働きました。国際社会が直面する課題によく対応できる組織にしなければならないと考えたからであります。

 常任理事国となる道は険しいものの、我々の運動は、国連全加盟国を巻き込む具体的な安保理改革の議論を呼び起こしました。結果として昨年九月、国連首脳会合の採択した成果文書は、安保理の早期改革を国連改革全体にとって不可欠と認めております。

 安保理改革が第二段階へ入ったことしは、我が国国連加盟五十周年に当たります。改革へ向け、これまでの成果と課題を踏まえ、G4の間での信頼関係を維持しつつ、米国と協議を進めてまいります。あわせて、中国、韓国など近隣諸国との対話に注力する所存です。

 我が国は、国連改革を包括的にとらえ、開発、人権、平和構築などの課題に対し、国連の力を強めなければならないと考えております。そのため、今までと同様、積極的な役割を果たします。国連分担率を地位と責任に応じたものとし、国連の運営全体が透明で納得のいくものとなるよう、業務の見直しを含む国連行財政改革にも取り組まなければなりません。

 我が国は、本年、安保理の非常任理事国として任期の二年目を迎えようとしております。この一年、我が国は、安保理PKO作業部会の議長として、部会活性化に多大の貢献をなしました。また、平和を築き安定をもたらさねばならない諸地域で、安保理が主導的な役割を果たせるよう、加盟国間の合意づくりに建設的な役割を果たしました。我が国は本年も、安保理理事国にふさわしいこれら活動に邁進します。

 具体的には、PKO、国際的選挙監視活動、また中東、アフリカなどで平和を定着させる活動に取り組みます。国連では、我が国も支持してきた平和構築委員会がじき発足します。この機に、国際社会と協力し、平和の維持、構築、紛争の再発防止といった活動を担う専門的人材をアジアにおいて育成する取り組みを検討したいと考えております。

 我が国は、国連総会に対して一九九四年以来、毎年核軍縮決議案を提出してまいりました。昨年は同案に過去最多の支持を得ました。軍縮・不拡散分野における我が国の果たす役割に、改めて思いをいたすところです。イランの核問題も、平和的解決へ向け努めなくてはなりません。

 国際的なテロとの闘いは、我が国が主体的に担うものでありました。アフガニスタンでは、国際社会の支援のもと、重要な統治機構整備の段階が終わりました。喜ぶべきですが、アフガニスタンとその周辺では、テロの脅威を除去、抑止する国際的な取り組みはいまだ続いております。我が国は、前回の特別国会でテロ対策特別措置法の期限を延ばしました。引き続き、アフガニスタンの国づくりへ向け、支援を続ける考えであります。

 イラクの復興も、いまだ道半ばにあります。昨年末、我が国は、自衛隊をイラクへ送る基本計画を一年延長しました。イラクの政治プロセスは、今胸突き八丁に差しかかっていると存じます。昨年十二月に国民議会選挙が大きな混乱なく実施されたことは、政治プロセスの極めて大きな進展だったと思います。イラク人自身の建国努力に、我が国は今後とも支援を惜しみません。

 中東和平問題の解決は、我が国が石油資源の八割以上を輸入する中東地域の平和と安定を目指す上で不可欠であります。我が国として、イスラエルとアラブ双方から信頼される日本の立場を生かし、イスラエルとパレスチナの共存共栄の実現と域内協力を通じた信頼醸成に向け取り組んでいくつもりであります。

 次に、経済外交に関して、何よりグローバルルールの構築が重要であります。昨年十二月の香港閣僚会議の成果に基づき、本年中にWTOドーハ・ラウンド交渉を合意に持ち込めるよう、積極的に取り組む所存です。

 WTOのもと、多角的な貿易体制の信頼性を維持し、高めていくことは、我が国にとって引き続き重要な課題であります。他方、途上国にとって、生産、流通・販売、購入それぞれの活性化なくして、世界貿易に入っていくことができないという現実があります。この問題を解く一助にと、我が国は、香港閣僚会議を前に、開発イニシアチブを打ち出しました。今後、その着実な実施に努めます。また、日本企業の活動を世界で支えていくことは、我が国外交が最も重んじる仕事の一つであるということは言うまでもありません。

 我が国は、昨年末、マレーシアとの間で経済連携協定、通称EPAに署名をしました。これを弾みとし、東アジアを中心としつつも、今後世界を広く視野に入れて、経済連携強化へ向け取り組みを進めていくつもりであります。

 そして、アジアの諸国を襲った津波の記憶が去らない今、我が国国民の海外での活動に安心をもたらす施策を進めます。大規模緊急事態に対し迅速的確に対応できる体制をつくっていかねばなりません。

 ODAは、戦略的な外交を行う上での重要な手段であります。外交政策に基づき、ODAを戦略的、総合的、機動的に活用し、二国間関係や国際環境を改善していく必要があります。総理の指導のもと、外務大臣が中心となって援助を実施する今の体制をさらに工夫し、強化をしてまいります。

 我が国は、今後ともODAの力を大切にし、貧困に苦しむ人々を助け、自助自立を促し、貧困からも生み出される途上国のテロとの闘いを支えることによって、世界に安寧を広める努力を続けてまいります。また、地震の惨害を経たパキスタンに対して行ってきたように、ODAは災害復旧を助けるためにも活用してまいります。

 今後三年、アフリカ向けODAを倍増し、今後五年にODA事業量を百億ドル積み増すことは、昨年我が国が誓った国際公約であり、着実に実施してまいります。

 最後に、外交における言葉の重みについて触れさせていただきたいと存じます。

 今我々は、情報の収集・分析能力の抜本的向上に努めております。情報とは主に言葉によってあらわされるものであるからには、我々は、正しい情報を聞き取る鋭い耳と、言葉の本質を洞察する頭脳を持たなければなりません。

 他方、我が国の発言はますます重みを持ってきております。我が国には伝えるべき信条がありますが、それは言葉となって初めて信条とみなされるものだと思います。

 今後は、これまでにも増して、我が国外交の目指すところを論じ、国内外に伝えていくことに私自身努力することをお約束し、演説を終わらせていただきたいと存じます。

 皆様の御支援をお願い申し上げます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 財務大臣谷垣禎一君。

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 平成十八年度予算及び平成十七年度補正予算の御審議に当たり、今後の財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。

 我が国経済は、これまで成長の制約となっていた三つの過剰、すなわち過剰雇用、過剰設備、過剰債務が解消し、企業部門の好調さが家計部門に波及する中、民間需要中心の回復軌道をたどっております。

 こうした回復の動きを地域や中小企業にも広く浸透させ、持続可能なものとするため、構造改革をさらに一層推進してまいります。また、デフレは脱却に向けた進展が見られるものの依然継続しており、その脱却を確実なものとするため、日本銀行と一体となって政策努力のさらなる強化拡充を図ってまいります。

 一方、四つ目の過剰とも言える政府の債務については、国、地方合わせた長期債務残高が平成十八年度末でGDP比一五〇%を超える見込みであるなど、極めて厳しい状況にあります。市場が財政の持続可能性に懸念を感じ始めた場合、その懸念がリスクプレミアムとなって金利上昇につながるおそれがあり、経済全体に悪影響を与えかねません。こうした懸念を生じさせないためにも、財政構造改革に対する政府の断固たる取り組み姿勢を示す必要があります。

 そのため、政府としては、まずは、二〇一〇年代初頭における国、地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指しております。

 さらに、歳出及び歳入のあり方等を一体的に検討することとしており、本年の年央を目途に、この歳出歳入一体改革について、選択肢及び改革工程を明らかにし、平成十八年度内に結論を得ることとしております。税制の抜本的改革についても、こうした歳出歳入一体改革の一環として、国民的な議論を深めてまいりたいと考えております。

 歳出歳入一体改革においては、債務残高対GDP比の引き下げ等、さまざまな論点について議論を行う必要があると考えております。また、歳出歳入一体改革は、単なる財政の収支合わせにとどまるものではありません。我が国の将来の国のあり方につながる課題であると考えております。高福祉・高負担の国もありますし、低福祉・低負担の国もあります。現在の日本は、現世代が負担に比べて大きな便益を受け、その差を、日々刻々、将来世代に先送りしているという意味において、中福祉・低負担ともいうべき状態にあるのではないでしょうか。今後少子高齢化が進む中、現世代の責務として、将来に向けてどのように持続可能な制度を確立するかを考えていかなければなりません。国民にできるだけ具体的な選択肢を示した上で、国民的な議論を積み重ねることが不可欠であると考えております。

 平成十八年度予算編成及び税制改正に当たっては、以上の認識を踏まえ、新規国債発行額について三十兆円にできるだけ近づけるとともに、一般歳出の水準について前年度よりも減額するとの方針のもと、取り組んでまいりました。

 歳出面については、医療制度改革、国と地方の三位一体の改革、公務員総人件費改革など、内閣として取り組んできたさまざまな改革の成果を反映いたしました。また、歳出全般を厳しく見直し、一般歳出について社会保障と科学技術振興の分野を除き前年度より減額するなど、予算配分の重点化を図りました。

 これにより、一般歳出の規模は前年度を下回り、四十六兆三千六百六十億円となりました。また、一般会計全体の予算規模は七十九兆六千八百六十億円となりました。

 次に、主要な経費について申し述べます。

 社会保障関係費については、少子化対策等の推進を図る一方、社会保障制度を将来にわたり持続可能で安定的、効率的なものとしていく観点から、医療保険につき、高齢者の自己負担の見直し等の制度改革を行うとともに、診療報酬を全体で三・一六%引き下げる等の取り組みを行っております。

 文教及び科学振興費については、義務教育における質の向上に向けた構造改革、子供の安全、安心の確保、科学技術分野における選択と集中の一層の推進を図っております。

 防衛関係費については、抑制を図る中で、弾道ミサイル等の新たな脅威への対応等に重点化を図りつつ、効率的で節度ある防衛力整備を行っております。

 公共事業関係費については、全体として抑制しつつ、防災、減災による安全の確保や我が国の競争力の向上に直結する投資等への重点化を行っております。

 経済協力費については、国際的なテロ対策支援や人間の安全保障の推進等へ重点化を図るとともに、より効率的な執行に努めることとしております。

 中小企業対策費については、地方にできることを地方に移譲しつつ、国の産業競争力強化に資する基盤技術開発等への重点化を行っております。

 エネルギー対策費については、事務事業の見直しを行いつつ、安定供給確保のための施策や地球温暖化問題への対応等を着実に進めております。

 農林水産関係予算については、農業構造改革の加速化や食の安全、安心の確保等に向けた重点化を行っております。

 治安関係予算については、治安関連職員の増員を初め、安全で安心して暮らせる社会の実現に向けた重点化を行っております。

 三位一体の改革については、昨年十一月に政府・与党合意が取りまとめられ、四兆円を上回る補助金改革を達成し、三兆円規模の税源移譲を行うこととしております。さらに、地方交付税については、地方歳出の徹底した見直しを通じ地方に配分される総額を約一兆円抑制しつつ、地方税も含む地方一般財源総額については、地方団体が安定的な財政運営を行えるよう、前年度を上回る額を確保しております。

 また、予算執行実績や決算検査報告等の反映など予算の質の向上、効率化を図っております。

 さらに、昨年十二月の行政改革の重要方針に盛り込まれた改革についても、着実に反映しております。

 公務員の人件費については、同重要方針における総人件費改革の実行計画を踏まえ、行政機関について千四百五十五人の純減を図るなど定員の大幅な純減と給与構造改革の実施等を通じ、改革の着実な実行を図っております。

 政府資産・債務改革については、財政融資資金貸付金残高の縮減、国有財産の売却促進等により資産規模のスリム化等に最大限努力するとともに、資産、債務両面における管理の強化に積極的に取り組んでまいります。このような観点から、民間利用の促進等による国有財産の有効活用、未利用国有地等の一層の売却促進等を図るなど、効率性重視に向けた国有財産行政の改革を強力に推進してまいります。このために必要な国有財産法等の改正案を今国会に提出することとしております。また、国家公務員宿舎については、民間の視点を十分に活用しつつ、都心からの移転、再配置に関する具体的な計画案を策定してまいります。

 特別会計については、今後五年を目途に、特別会計自体の統廃合も含め踏み込んだ改革を進めてまいります。平成十八年度予算においても、徹底した歳出の見直しを行うとともに、合計約十三兆八千億円の積立金、剰余金を財政健全化のため活用しております。このうち、財政融資資金特別会計の積立金については、政府資産・債務改革の観点も踏まえ、十二兆円を国債整理基金特別会計に繰り入れ、国債残高の圧縮に充てることといたしました。この措置は、将来の国債費の負担を軽減するとともに、いわゆる国債の平成二十年度問題の解決にも寄与するものと考えております。

 歳入面については、三位一体の改革の一環として所得税から個人住民税への三兆円規模の税源移譲を実現するとともに、経済状況の改善を踏まえ定率減税を廃止することとしております。あわせて、法人関連税制、土地・住宅税制、国際課税、酒税、たばこ税等について所要の措置を講じることとしております。

 これにより、租税等の収入は四十五兆八千七百八十億円を見込んでおります。また、その他収入は三兆八千三百五十億円を見込んでおります。

 以上、歳出歳入両面における取り組みの結果、新規国債の発行予定額は二十九兆九千七百三十億円となり、一般会計の基礎的財政収支も三年連続で改善いたしました。このように、平成十八年度予算は、歳出改革路線を堅持、強化した姿となっており、財政健全化に向けた歩みをさらに進め、歳出歳入一体改革の議論の土台固めを行うことができたものと考えております。

 また、国債残高が多額に上り、今後も借換債を含む国債の大量発行が見込まれる中、国債管理政策を財政運営と一体として適切に運営していく重要性がますます高まってきております。このような観点から、国債発行に当たっては、安定消化を図るとともに、中長期的な調達コストの抑制に努めることを基本とし、市場のニーズ、動向等を踏まえた発行等に取り組んでまいります。

 さらに、平成十八年度財政投融資計画については、財投改革の総点検のフォローアップを行い、各事業の財務の健全性を確認した上で、対象事業の重点化、効率化を進めた結果、その規模は十五兆四十六億円となっております。これは、ピーク時である平成八年度の四割を切る水準であります。

 次に、平成十七年度補正予算について申し述べます。

 歳出面においては、やむを得ざる追加財政需要への対応として、災害対策費、義務的経費の追加及びアスベスト対策関連経費等を計上するとともに、国債整理基金特別会計への繰り入れ及び地方交付税交付金等を計上する一方、既定経費の節減等を行っております。

 歳入面においては、租税等の収入及びその他収入の増加を見込むとともに、前年度の決算上の剰余金を計上しており、また、国債の発行予定額を減額しております。

 以上の結果、平成十七年度補正後予算の総額は、当初予算に対し歳出歳入とも四兆五千二百十九億円増加し、八十六兆七千四十八億円となっております。

 また、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行っております。

 国際社会における責任を果たし、我が国経済の将来にわたる発展に資する観点から、国際機関やG7、アジア諸国等と協力し、世界経済の安定と発展に貢献していくことは重要な課題であります。

 特に、我が国と密接な関係を有するアジアにおいて、通貨危機の予防、対処のための域内の枠組みであるチェンマイ・イニシアチブのさらなる強化や、アジアの貯蓄を域内の投資に活用するためのアジア債券市場育成イニシアチブの推進等に取り組んでまいります。

 また、投資交流の促進については、租税条約ネットワークの強化が重要であり、今後も租税条約の改定に取り組んでまいります。

 為替相場については、経済の基礎的条件を反映し安定的に推移することが重要であり、今後とも、その動向を注視し、必要に応じて適切に対処してまいります。

 WTO交渉については、我が国は、昨年末の香港閣僚会議において開発イニシアチブの発表などを通じて貢献いたしましたが、今後とも、新ラウンド交渉を本年末までに終結させることを目指して取り組んでまいります。また、経済連携協定交渉については、昨年、マレーシアとの協定署名等の進展がありました。今後とも、各国との交渉の進展に向けて努力してまいります。これらの交渉においては、税関手続の簡素化や国際的調和の確保など、貿易円滑化にも取り組んでまいります。

 平成十八年度関税改正においては、石油製品関税の引き下げや、知的財産侵害物品の水際取り締まりの充実強化等を図ることとしております。

 以上、平成十八年度予算及び平成十七年度補正予算の大要等について御説明いたしました。関係法律案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

 我が国は、現在、人口減少社会の到来と世界的な競争条件の変化という二つの大きな構造変化に直面しており、財政構造改革を初めとする改革をさらに加速していかなくてはなりません。

 そのためには、構造改革の先にある社会は、弱肉強食の社会ではなく、個を確立した個々人が、互いに切磋琢磨、競争しつつも、本来日本人が持っている家族や地域社会のきずなの中で支え合っていく、活力と信頼に満ちた社会であることを示していく必要があるのではないでしょうか。(拍手)

 阪神・淡路大震災の際に駆けつけた若者や、児童の安全を守る地域住民の姿に、きずなに支えられた新しい公の胎動が感じられます。国民一人一人がみずから公を担うことによって、家族、地域社会、そして国民と国家のきずなが再構築されるのではないかと考えております。みずからが公に参画するという意識の中から、財政のあり方に対するより深い理解が生まれてくるのではないでしょうか。

 国民各位の御理解と御協力を切にお願いする次第でございます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 国務大臣与謝野馨君。

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 経済財政政策担当大臣として、その所信を申し述べます。

 我が国経済は、輸出、設備投資の回復に加え、個人消費の増加により持続的な景気拡大へと歩を進めつつあります。こうした持続的な成長軌道への日本経済の復調ぶりは、企業の収益・景況感、雇用・所得状況などにも明確に示されています。日はまた上るという見方が海外であらわれるなど、海外投資家も積極的な評価を行い始めました。

 日本経済は、総じて言えば、十年余りにわたる長期停滞のトンネルを抜け出したと考えます。

 いわゆるバブル経済の崩壊によって、我が国は諸外国にも類を見ない巨額の資産価値の下落を経験いたしました。時を同じくして、グローバル経済下での競争環境の激変という事態にも直面をいたしました。いわば経済非常時ともいうべき局面に陥ったわけであります。

 こうした難局のもとで、我が国の国民、個々の企業や事業家は、おのおのの持ち場で、まさに粒々辛苦して克服の努力を進めてまいりました。

 小泉内閣は、過去五年間、経済財政諮問会議を活用した明確な方針設定と、郵政民営化や公共事業費削減など、批判や反対にも揺るがない、断固たる構造改革実行という首尾一貫した姿勢を貫いてまいりました。これにより、国民の変革意識を喚起し、自立自助へと方向づけてきました。

 こうした国民個々の変革努力の積み重ねと政府による改革断行が相まって、日本経済は、その潜在力が素直にマクロの数字に反映される平時の経済に復帰しつつあると考えます。ただし、若年層の失業率は高く、また、中小企業を取り巻く環境は大企業に比べて厳しいものがあり、地域経済についても依然としてばらつきが見られることには留意が必要です。

 我が国経済の先行きにつきましては、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれ、平成十八年度の実質成長率は一・九%程度になると見込んでおります。

 過去十年余りにわたる長期停滞のトンネルを抜け、我が国は、いよいよその持てる力を総動員し、直面する歴史的課題に正面から挑戦していく局面に入ったと考えます。

 いわば、新たな挑戦の十年が始まったとの時代認識に立って経済財政政策を担当してまいる所存です。

 具体的には、人口減少、少子高齢化が本格化する前に、経済財政政策の二つの最優先課題として、財政健全化と成長力・競争力強化、これを同時に実現していく必要があると認識しております。

 これら二つの課題に官民それぞれが、攻めの姿勢で取り組んでいくための土台づくりを早急に行ってまいりたいと考えております。

 現時点でのマクロ経済の最大の懸念材料は、我が国経済が現在もデフレの状況にあることと考えます。

 デフレからの脱却は、中期的なマクロ経済財政運営の基礎となるものであります。民間需要主導の持続的な成長と両立するような安定的な物価上昇率を定着させるべく、政府、日本銀行が一体となって取り組んでいく必要があります。政府としては、経済活性化に裏打ちされた力強い資金需要を創出する一方で、日本銀行には、引き続き実効性のある金融政策を講ずるとともに、市場の信認を確かなものとするよう期待しております。

 経済財政運営の最優先事項の第一は、民間需要主導の持続的な経済成長との両立を図りつつ、危機的状況にある我が国財政を着実に健全化していくための具体的道筋を明らかにし、それを確実に実行することであります。

 これまで政府は、二〇一〇年代初頭に基礎的財政収支を黒字化するという目標の実現に向け、歳出改革を中心に努力を傾注してまいりました。この目標を達成するためには、さらにこれまで以上の歳出削減や税制を含む諸改革を行うことが必要です。

 この基礎的財政収支の黒字化は確実に達成する必要がありますが、国民が真に将来を安心できる財政の姿を実現するという観点から見れば、そこに至る一里塚にすぎません。重要なことは、公債残高の発散的増大が生じたり、公債市場の混乱による金利急騰のリスクが高まったりすることがないように、二十年程度先まで視野に入れつつ、財政健全化の道筋を明らかにしていくことであります。

 その際、市場からの信認を得るに足る堅実な前提を基礎として、楽観論にも悲観論にも偏ることのないリアリズムに徹した議論を行っていくべきと考えます。

 こうした観点から、歳出歳入一体改革についての選択肢及び改革工程を本年六月を目途にお示しするべく、経済財政諮問会議の場では精力的に議論を行ってまいります。

 審議においては、例えば以下のような項目を一体的に検討し、選択肢や工程を明らかにしてまいりたいと考えております。

 第一に、長期的な経済シナリオや経済社会環境を反映した政府の支出規模の目安、主な歳出分野についての具体的な目標を盛り込んでいくことが重要と考えます。

 第二に、社会保障や地方交付税など大きな義務的歳出項目について、中期的な改革の方向性をお示しいたします。

 社会保障制度については、人口減少、少子高齢化のもとでも持続可能なものとなるように、世代間の公平性や効率化等の観点に立ち、改革を強力に推進していくことが必要と考えます。

 また、地方交付税については、補助金の問題とあわせて、政府部門において効率的な予算の利用や節約が自律的に生み出されるようなシステムへの思い切った転換が必要であり、こうした観点からの改革を進めることが肝要であると考えます。

 第三に、包括的かつ抜本的な税制改革のあり方について議論をいたします。持続的な経済社会の活性化を目指して徹底した議論を行い、必要な負担増を求める際には国民の十分な理解を前提としたものであることが必要であります。

 第四に、歳出歳入一体改革の一環として、引き続き、公務員総人件費削減、政策金融改革、政府資産・債務改革、特別会計改革、市場化テストによる官業の民間開放など、政府自身の効率化、歳出削減につながる改革には手を緩めることなく取り組んでまいります。

 財政の健全化は、民間需要主導の経済成長の持続なくしては不可能です。二つの目標を両立させていくことが必要不可欠であり、マクロ経済と財政との関係に十分注意を払いながら、財政収支改善の速度等のあり方について検討してまいります。

 こうした議論を通じて、日本が将来目指すべき国の形についての選択肢を国民にわかりやすく示すことが必要であります。国民の幅広い議論を喚起した上で、十八年度中に歳出歳入一体改革についての結論を得ます。

 経済財政運営の最優先事項の第二は、中国、インドの台頭など世界の経済地図の劇的な変動の中で、我が国の潜在力を最大限に引き出し、豊かで美しい日本を保つだけの国際競争力を維持することであります。

 悲観論や縮み思考では将来は開けません。七〇年代の原油価格の高騰は、省資源・省エネルギー型技術を得意とする我が国企業の競争優位を後押しする結果となったことが好例であります。労働力人口減少は、資本蓄積と生産性向上により克服することができます。急速な高齢化社会は、各国に例を見ない新たな就業構造と市場をつくり出す機会ともなります。こうした我が国の強みを戦略的に生かしつつ、成長するアジアのダイナミズムを取り込んだ強靱な経済システムの構築に向けて構造改革を進めることが求められます。

 そのためには、第一に、人材、資金、特許などの知的資本、チームワークなどの組織資本が円滑に生産性の高い部門にシフトし、二十一世紀にふさわしい新たな産業構造に転換していくための環境を整備することが必要であります。

 第二に、都市、環境、健康、食、文化、教育などの面での質の高い、新しい需要がさらなる技術・サービス革新を生み出すといった好循環をもたらす仕組みの検討が求められます。こうした好循環の創出は、国際競争力を強化するために不可欠の要素であります。潜在需要を掘り起こすための公共部門の新たな役割についても議論してまいります。また、官製市場の改革・開放をさらに進めてまいりたいと考えます。

 第三に、豊富なグローバル資本や成長するアジアの活力を取り込みつつ、我が国の強みを戦略的に活用できるような経済連携の枠組みづくりが求められます。

 経済財政諮問会議では、こうした成長力と競争力の強化に向けた戦略的対応をグローバル戦略として議論を深め、本年の骨太方針に盛り込んでいく所存であります。

 恒産なくして恒心なしとの言葉があります。将来の世代が夢を持って安心、安全を享受しながら活躍できるように、また、豊かで美しい日本を将来世代に引き継いでいけるように、私たちの世代が責任を持って改革を続行しなければなりません。

 経済財政諮問会議は、これまでの構造改革に大きな役割を果たしてまいりました。本年も、小泉総理のリーダーシップのもと、歳出歳入一体改革を初めとして、改革の加速、深化に向けて真摯な審議を行ってまいります。

 国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をお願いし、所信の表明といたします。(拍手)

     ――――◇―――――

中山泰秀君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る二十三日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       総務大臣    竹中 平蔵君

       法務大臣    杉浦 正健君

       外務大臣    麻生 太郎君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       文部科学大臣  小坂 憲次君

       厚生労働大臣  川崎 二郎君

       農林水産大臣  中川 昭一君

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国土交通大臣  北側 一雄君

       環境大臣    小池百合子君

       国務大臣    安倍 晋三君

       国務大臣    猪口 邦子君

       国務大臣    沓掛 哲男君

       国務大臣    中馬 弘毅君

       国務大臣    額賀福志郎君

       国務大臣    松田 岩夫君

       国務大臣    与謝野 馨君


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