衆議院

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第3号 平成18年1月24日(火曜日)

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平成十八年一月二十四日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第三号

  平成十八年一月二十四日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員田邉國男君は、昨年十二月十九日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 田邉國男君に対する弔詞は、議長において昨二十三日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに農林水産委員長 政治改革に関する調査特別委員長の要職につき また国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等田邉國男君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の選挙

 裁判官訴追委員及び同予備員の選挙

 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

議長(河野洋平君) 裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員及び同予備員、検察官適格審査会委員の予備委員、日本ユネスコ国内委員会委員、国土審議会委員及び国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙を行います。

中山泰秀君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員の予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に

      棚橋 泰文君 及び 藤村  修君

を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は、棚橋泰文君を第一順位とし、藤村修君を第三順位といたします。

 次に、裁判官訴追委員に

      愛知 和男君    船田  元君

      山田 正彦君 及び 大口 善徳君

を指名いたします。

 また、裁判官訴追委員の予備員に倉田雅年君を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は第一順位といたします。

 次に、検察官適格審査会委員の予備委員に

      福井  照君 及び 増原 義剛君

を指名し、

 福井照君は柳澤伯夫君の予備委員とし、

 増原義剛君は谷津義男君の予備委員

といたします。

 次に、日本ユネスコ国内委員会委員に松野博一君を指名いたします。

 次に、国土審議会委員に細田博之君を指名いたします。

 次に、国土開発幹線自動車道建設会議委員に

      中川 秀直君 及び 山崎  拓君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(河野洋平君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。神崎武法君。

    〔神崎武法君登壇〕

神崎武法君 私は、公明党を代表して、小泉総理の施政方針演説を初め政府四演説に対して質問をいたします。(拍手)

 改革には、常に抵抗や障害がつきものです。しかし、何のための改革かという原点を常に私たち政治家が確認していけば、その決意と行動は揺るぎないものとなり、改革は実現すると確信します。まさに、その原点こそ、国民のための改革であります。

 自民党との連立政権も七年目に至りました。言うべきはきちんと言うという姿勢は堅持しつつも、今日まで築いてきた信頼関係をさらに深めながら、一致結束し、改革の実を上げてまいります。国民の安全、安心の確保、行政改革の推進、人口減少社会への対応、アジア外交など、内外に山積する諸課題の解決へ全力を傾注してまいる決意であります。(拍手)

 昨年末からの記録的な大雪は、全国的にも甚大な被害をもたらしました。雪おろし中の転落事故や突風による列車事故が発生するなど、本当に胸が痛みました。亡くなられた方々の御冥福と、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 被災地域の皆様は、なお一層の不安を抱えています。食料や物資の援助、医療チームの派遣、市町村道への除雪費支援など特別交付税の措置、自衛隊派遣など、雪害から住民生活を守るため、あらゆる手だてを尽くしていただきたい。このことを、まず政府に強く要請するものであります。また、雪害と寒波の影響で農産物や灯油の価格が高騰し、国民生活へも多大な影響が出ており、これらの対応も急務であります。

 今後、高齢化、過疎化が進む中で、ハード面、ソフト面、そして町づくりの観点からも、我が国の豪雪対策を再点検する必要があると思いますが、国民を守るための総理の決意と、今後の具体的な取り組みについてお伺いしたいと存じます。

 日本経済は、かつての金融不安は完全に払拭され、景気は緩やかな回復が続いております。また、株価も上向き、全体として明るさを取り戻し、景気回復の影響は企業から家計へとにじみ出てきており、デフレ脱却まで、あともう一押しのところとなりました。経済の活性化を促し、また国民の安全、安心を確保していくためにも、平成十七年度補正予算案及び十八年度本予算案の早期成立が不可欠であると考えます。

 小泉内閣が進めてきた構造改革は、特に総理のブレーンである経済財政諮問会議が大きな役割を果たす中で改革が進められてきたことに象徴されるように、特に経済や財政の分野を中心としたものであり、この点においては、マクロ経済全体として見るならば、小泉構造改革は大きな成果をおさめつつあると言えましょう。

 しかしながら、これら経済を中心とした構造改革の進展に伴い、その影ともいうべきゆがみが日本社会の足元で広がってきていることも事実であります。

 それは、勝ち組、負け組の言葉に代表される二極化、格差の拡大の問題であります。もちろん、経済社会構造が大きく変化し、一人一人の生き方や社会が多様化している側面もありますが、特に今般の景気回復局面で、都市と地方、企業の業種間、大企業と中小企業、あるいは中高齢者と若年者との格差が一層拡大したという指摘がなされております。さらには、世代内、なかんずくニート、フリーターなどの増加も反映し、若年者世代間の所得、生活格差は、将来の日本経済社会への影響が強く懸念されるところであります。

 公明党はかねてより、構造改革は痛みが伴うものであり、構造改革を進めることと同時に、万全なセーフティーネットを整備する必要があると強く主張してまいりました。小泉内閣は、今、こうした日本社会を取り巻く状況を十分に踏まえつつ、格差の縮小、解消に全力を挙げていかなければなりません。政府内からは、データ上では格差は確認できないなどとの言葉が出ていますが、現場の切実な声にも真摯に耳を傾けるべきだと強く申しておきます。

 景気、経済をよくする、財政をよくするということももちろん重要でありますが、それだけが政治が真に目指すべき究極の目的ではないはずであります。まさに、一人一人の幸福を最優先する、その実現を図るために構造改革を進めるという視点が最重要なのであります。

 小泉総理のこれまでの構造改革についての総括と、今後の構造改革を進めるに当たっての決意を国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。

 昨日、証券取引法違反の疑いでライブドアの堀江社長らが逮捕されました。事件の全容は明らかではないものの、伝えられるところが事実とするならば、極めて悪質かつ重大な事件と言わざるを得ず、まことに遺憾です。今後、捜査当局による真相解明を見守りたいと思います。

 株式、証券市場は経済の重要なインフラです。その市場は、正確な情報、公正なルールに基づいて投資家が企業の価値を決めるものであります。もし、そうしたルールを逸脱し、投資家を欺く犯罪行為が行われていたとしたら、ゆゆしき事態であります。証券市場がマネーゲームの場と化してしまっては絶対になりません。早急に不正行為の防止に向けたルールづくりの検討を進め、法令上の整備が必要であるならば速やかに今国会で対応すべきと考えます。

 また、今回の事件を含め、東京証券取引所のシステムの信頼性もクローズアップされました。システムの問題で全銘柄の売買が停止になったのは前代未聞の出来事であり、日本の証券市場に対する内外の信用を大きく失墜させてしまいました。

 個人も含め幅広く投資家が安心して参加し続けられるよう、公正で信頼性の高い証券市場の構築が急務です。今、私が指摘した問題について、総理の見解を求めます。

 今般のライブドア事件を通じ、デートレーダーと言われる一部の個人投資家には、本来の投資とはかけ離れ、一日じゅうパソコンに向かってマネーゲームに興じているという実情も明確になりました。もちろん、投資それ自体を否定するものではありませんが、これは、金こそが最大の価値とのあしき拝金主義が我が国に徐々に広がりつつあるという重大な警鐘と見るべきであります。

 私は、先ほど指摘した勝ち組、負け組という言葉をあえてかりるならば、社会や家族のために汗水を流して働く、その人こそ本当の勝ち組であるという当たり前の価値観を基本に据えた社会を取り戻していく、このことに今こそ政治が真正面から取り組んでいくことが重要であると強く指摘しておきたいと思います。(拍手)

 昨年は、戦後初めて人口が減少し、当初の予測より早く人口減少社会へ突入しました。人口減少社会というと暗いイメージがありますが、悲観論に立つのではなく、むしろ、どう前向きにとらえるかが重要であります。

 私は、人口減少社会を前提とした新たな構造改革は、国民一人一人が真の豊かさを実感できる成熟した社会を築くチャンスであるととらえております。まずは、この人口減少社会に対する総理の認識と御所見を伺います。

 私は、この人口減少社会を乗り越えるためには、大きく三点の改革が急務であると考えます。第一は、子育てを中心軸に据えた社会システムの構築、第二は、徹底して無駄を排除した効率的な政府の実現、第三は、一定の経済成長の確保と多様な働き方を可能とする構造改革であります。

 第一の、子育てを中心軸に据えた社会システムの構築ですが、少子化対策を社会保障制度の柱に位置づけ、抜本的に拡充することが必要です。

 我が党としては、少子化対策の枠組みにとどまらない、子育てを中心軸に据えた社会システムを構築するものとして、少子社会トータルプランをこの春取りまとめたいと考えております。その柱の第一は、児童手当の拡充や出産費用の軽減等の経済支援、第二は、社会全体で子育てを支えるシステムの構築、第三は、仕事と子育ての両立など、ライフステージに合わせて柔軟な働き方が選択できる雇用システムへの転換です。

 いずれにせよ、安心して子育てができるよう、国民に対してインパクトのある少子化対策が必要と考えますが、総理のお考えをお聞かせください。

 第二は、徹底して無駄を排除した効率的な政府の実現です。

 私ども公明党は、行革元年と言われる本年を真剣に取り組む決意であります。

 公明党は、既に一部自治体でも行われている事業仕分け作戦を国の事業にも導入すべきであると昨年夏より強く主張してまいりました。

 総理の今回の施政方針演説には、官から民へ、市場化テストとの表現はありますが、その前提である事業の継続、廃止を仕分けする発想が明確ではありません。

 昨年末に政府として取りまとめた行政改革の重要方針においては、自民、公明両党の衆院選統一公約を受け、事業の要否、つまり、必要な仕事かそうでない仕事かの仕分けを国として行うこととしました。

 重要方針に、透明性の確保に配慮しつつ民間関係者などの意見を聞く場を活用しながら、事業の要否及び主体について仕分けを行うと明記したことは非常に重要であり、今後、公開の場で事業の要否について民間、自治体関係者の協力のもとで仕分けを行うという方向性が明確になったわけであります。

 まずは、この趣旨を今国会において提出が予定されている行政改革推進法案(仮称)においても明記されることが重要であると考えますが、総理の御所見を賜りたい。

 また、今後の行政改革の取り組みの中で、事業仕分けの手法を具体的に用いる場合、例えば、公務員の総人件費改革に取り組む行政減量・効率化有識者会議(仮称)のもとに民間、自治体関係者を中心とした具体的なスキームをつくることになると思いますが、そこでいま一度、歳出削減の王道である事業仕分け作戦に取り組む総理の御決意を確認しておきたいと思います。

 一方、税金の無駄遣いをなくす観点からも、官製談合を防止することが重要であります。

 現行の官製談合防止法には罰則規定がないので実効性が乏しいとか、適用対象をもっと拡大すべきとの指摘もあります。再発防止のために、与党としても早急に協議し、見直し案を今国会に提出いたしますが、この官製談合の再発防止に関する総理の御見解を承りたいと存じます。

 効率的な政府の実現に向け、政府・与党として、議論を積み重ねた結果、政策金融八機関について、民営化、廃止する機関を除き、原則として一機関とする改革を取りまとめました。

 民間金融機関による円滑な資金供給の確保を見きわめつつ、民業補完に徹する政策金融改革は着実に進めていくべきでありますが、その際、政策金融の最重要機能の一つが中小零細企業、個人の資金調達への支援であることは言うまでもありません。

 具体的な制度設計に当たっては、ユーザー側の視点に立って改革を進めていくことが必要であります。政策金融改革に臨むに当たっての総理の見解を求めます。

 第三は、一定の経済成長の確保と多様な働き方を可能とする構造改革であります。

 景気回復を最優先とし、全力で進めてきた構造改革ですが、今後の人口減少社会を迎えた日本にとって必要となるのは、国民の生活に眼目を置き、豊かに自己実現ができる社会の構造改革が第一義と考えます。

 人口減少社会を迎えた今、いかに持続的な経済成長を確実にしていくのか、今重要な岐路に来ております。具体的には、労働生産性の向上とさらなる民間需要の創出に向けた構造改革、特に、意欲のある高齢者や女性の雇用の拡大、社会参加の推進など、働き方の構造改革が求められていると考えます。

 中でも、直面する団塊の世代の一斉退職の対応として、雇用等の受け皿の整備が急務です。六十歳を過ぎても仕事を持ち続けたいと考えている人は約八割を占めるという調査もあり、日本の高度経済成長をつくった世代がセカンドライフにおいても就労の意欲を持っております。今後の定年制のあり方を含む雇用制度について一層の検討が必要と考えます。

 また、ボランティアやNPO活動など社会参加を望む声も多く、地域コミュニティーの再生の観点から、その受け皿を整備する必要もあります。

 今後は、働く意思と能力のある団塊の世代が年齢ゆえに阻害されないようにし、社会参加を大きく推進することが必要と考えますが、総理の御見解を伺います。

 また、結婚、出産を機に離職する女性の割合は六割と高く、復職、再就職した割合は一割強という統計もある一方、再就職を希望する女性の声は強く、再就職を阻害している要因の解消とさらなる推進策が必要であります。また、若年者のフリーターの多くが三十代となり、能力訓練の機会を逸し、雇用不安にさらされております。

 いずれにしても、最も求められるのは、高齢者、女性、若年者などの年齢や性に関係なく能力開発ができ、価値観の多様化による国民の状況に即した選択の幅を広げ、多様な勤務時間の選択や有給休暇の時間単位の取得など、雇用環境の改革を進めるべきと考えますが、総理のお考えを伺います。

 次に、医療制度改革について質問いたします。

 超高齢社会においても国民皆保険制度を持続可能なものとしていくことを最大の目標として改革を進めるべきであります。そうした視点から、医療制度改革大綱が策定され、現在、それに基づいた具体化作業が本格化しておりますが、医療の質の向上と効率化について御質問いたします。

 まず、診療報酬の請求に使われる明細書、レセプトのオンライン化であります。

 年間十五億枚もの紙がやりとりされる従来のレセプトと違い、電子媒体の請求に変われば、同じ病気でも医療機関や地域による医療費格差を判別しやすくなり、必要以上の高コスト治療や架空・水増し請求も見つけやすくなります。また、医師が患者の病歴などを書き込むカルテの電子化は、患者が一度検査を受ければどの病院でも検査データを共有できるなどのメリットがあります。

 さらに、ベッド数が人口の割に多い公的病院の統合化や、長期入院を是正し在院日数の短縮を促す仕組み、さらには、新薬と同じ成分、効能であるにもかかわらず、特許期間が切れたために価格が大幅に安いジェネリック医薬品の普及促進など、医療提供体制の構造改革が今こそ求められていると思いますが、総理の御見解を伺いたい。

 一方、あくまでも患者第一の立場から、医療情報をどうわかりやすく提供していくのかも、国と自治体、医療機関の連携がかぎを握っております。患者が自分の病気について主治医以外の専門家の意見が聞けるセカンドオピニオン外来を含め、病院が保有する医療機器、専門医資格の有無、さらに治癒率や生存率などの医療実績の開示も、関係者の衆知を結集し、検討していかなければなりません。

 これらの取り組みとあわせて、私は、長期的な視点から、国民一人一人が健康で長寿の人生を歩めるよう、治療から予防へと医療の仕組みを転換することが重要です。そのためには、受診の重点化を含めた健診の体制整備を初め、運動習慣の徹底、食生活の改善、適正体重の維持などが求められています。その結果として、糖尿病を中心として生活習慣病対策を推進した場合の医療費適正効果は、二〇二五年度で約二兆円が厚生労働省試算で見込まれております。

 急がば回れではありませんが、当面の医療費問題だけに目を奪われることなく、健康予防、健診充実、運動推進などに政府・与党を挙げて取り組むことの必要性を訴えたいと思いますが、総理の見解を伺いたいと思います。

 次に、がん対策についてお伺いします。

 私は、二年前に強力ながん対策の推進を総理にお願いし、総理からも罹患率、死亡率の激減を目指すとの御答弁をいただき、その後一定の施策が講じられてまいりましたが、今回、さらなるがん対策の強化のためにお伺いいたします。

 年間三十万人の命を奪うがんはまさに国民病であり、公明党は昨年十一月、がん対策に関する提言を策定し、関係当局へ申し入れを行った結果、平成十八年度予算案にも反映はされましたが、まだまだ不十分であります。今後一層のがん攻略へのアプローチが求められております。

 まず、がんに対しては、治療、緩和ケアの両面からの視点、取り組みが不可欠にもかかわらず、緩和ケアの分野が特におくれているとの指摘があります。

 がん治療とともに、痛みをコントロールする緩和ケアを施すことは、患者の人権を尊重し、生活の質を高めるため大変に重要であり、緩和ケアの教育、普及を推進しつつ、緩和ケアをがんの治療とともにすべての患者が受けられるような医療提供の整備をすべきであります。これは、手術偏重と言われる我が国のがん対策の一種の方向転換を迫ることでもあると言われていますが、総理の率直な御見解を伺います。

 次に、がん医療水準の均てん化問題です。

 国民がいつ、どこに住んでいても質の高い医療を受けられるよう、地域がん診療拠点病院の機能強化と診療連携の推進、情報提供体制の整備をしていかなければなりません。また、現在、がん治療専門医が著しく不足しており、大学教育の段階からの専門医、医療スタッフの育成とともに、がん診療に従事する医師に対する研修機会の提供の促進も不可欠であります。加えて、抗がん剤等についての迅速かつ確実な治験の実施や、医療技術実用化に向けた産学協同の取り組みも求められております。

 これらを踏まえ、今、がん制圧計画の策定、がん登録・検診の推進などを柱とするがん対策法の制定を早急に検討すべきではないかと考えます。我が党としても独自の仮称がん対策法の策定を検討しているところでありますが、総理の御見解を伺います。

 先般、米国から輸入された牛肉に危険部位である脊柱が混入されていたという、我が国の消費者の信頼を根底から揺るがす、あってはならない事件が起きましたが、まことに遺憾であります。しかも、米国政府の検査官が脊柱の除去義務を認識していなかったとは驚きです。米国政府に対しては厳重に抗議し、しかるべき対応を求めていくべきです。また、我が国のリスク管理のあり方についても、これを機会に徹底的に検証すべきだと訴えておきたい。

 今後の輸入再開については、我が国政府は専門の調査団を派遣して、日本へ輸出を行う食肉工場などの安全性を厳正にチェックするなど、責任を持って国民の安全と安心を確保できる施策を講じた上で、慎重の上にも慎重を期して判断をするよう強く申しておきますが、総理の答弁を求めます。

 羽越線特急の脱線転覆事故については、風力計の設置位置や運行に関する風速の基準値に問題はなかったのか、今回の事故の反省に立ち、どのような対策を講じたのか。あわせて、今後の公共交通の安全を確保するためのシステムの確立や、ヒューマンエラーを事故に結びつけないための方策など、今後の総合的な安全対策について、国土交通大臣の御見解をお伺いします。

 今国会でアスベスト被害者救済法案が審議される運びとなりましたが、被害拡大防止法案の早期成立とあわせて、速やかに被害者へ給付金が支給されるよう全力を挙げてまいります。

 そこでお伺いしますが、中皮腫は病状が急速に進むことから、支給開始までの間、病気の苦しみに加え、経済負担に苦しむ未認定の闘病患者に何らかの援助はできないのかどうか。また、救済基金の拠出金確保のため、企業側に理解を求める施策はあるのか、あわせて総理にお伺いします。

 今回の被害拡大防止関連法案で、かなり徹底したアスベスト飛散防止策が講じられると伺っておりますが、今後運用面でどのようにしてその実効性を担保するのか、政府の御見解を承りたい。

 次に、耐震強度の偽装事件についてお伺いいたします。

 この事件は、住まいという生活基盤の信頼を崩した極めて悪質なものであり、まことに遺憾です。二度とこのような事件を繰り返さないため、政府は総力を挙げて取り組まなければなりません。

 最優先課題の第一は、居住者の安全と安定の確保であります。第二は、建築基準法の見直しを初めとする再発防止のための法整備です。そして、事件の真相究明と法令違反者に対する厳正な処分であります。

 耐震偽装の再発防止策を初め今後の対応策について、国土交通大臣のお考えをお聞きしたいと存じます。

 子供たちを犯罪から守るためには、警察、学校、PTA、地域住民等がしっかりと連携をしながら、地域の総合力を生かしながら治安対策を講ずることが重要です。

 具体的には、路線バスやスクールバスを利用した通学体制の確保、地域の防犯ボランティアやNPOなど地域住民による登下校の警戒強化、働く親でも子供の登下校時に送迎できるよう、時間単位で取得できる有給休暇の実現など、就労環境の見直しも必要です。さらには、平成十八年度から平成二十一年度にかけて毎年約一万人と見込まれる退職される地方警察官の、交番相談員やスクールガードリーダーなど、幅広い活用も考えられます。

 世界一安全な国日本の復活を目指し、今後、政府としてどのような施策を講じるのか、総理のお考えを承りたいと存じます。

 まちづくり三法の見直しについてお伺いします。

 全国の多くの都市で中心市街地の空洞化が一層進み、大半の商店街がシャッター通りと言われるほど寂れ、中心市街地が空洞化し、崩壊しつつあります。

 そのためにも、既存のストックを活用しながら、必要な機能を町中に集約するコンパクトシティーの実現こそ、人口減少社会、超高齢社会を迎える我が国に必要であります。そこで、まちづくり三法を抜本的に見直し、高齢者でも暮らしやすい、にぎわいのある町を再構築するために、町中にあった病院、福祉施設、役所などの郊外移転など町全体の拡散基調に一定の歯どめをかけなければなりません。

 また、大型店などの大規模集客施設が郊外へ流れていくことについても何らかの対応をしなければなりません。国土交通大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、農業問題についてお伺いします。

 平成十九年度から導入される品目横断的経営安定対策は、支援の対象を担い手に絞り、経営全体に着目した対策に転換することをねらいとしています。担い手になるには、一定規模以上の面積要件を満たす認定農業者や集落営農組織等にならなければなりません。

 我が国の水田稲作は、兼業農家を含む中小規模の経営農家など多様な担い手が支えてきました。規模要件によって、意欲とやる気のある多様な農業者が切り捨てられることがないよう、制度の移行に当たっては十分な配慮が必要だと考えます。

 また、農業は、食料安全保障の観点からも極めて重要な産業です。その意味からも、食料自給率の向上と持続可能な農業の構築を目指し、断じて我が国の農業を衰退させないとの強い決意で、政府は総力を挙げて取り組むべきであります。

 総理の強いリーダーシップを期待しつつ、前向きな答弁を求めます。

 今後数年で教員の団塊の世代が退職し、教員の大量採用時代の到来を控え、優秀な教職員の確保、育成が喫緊の課題となっております。

 私は、OB教員については、次の世代の教育を担う教員の養成に大いに生かし、教員のサポート体制を確立することが重要だと考えます。

 また、教員の確保、養成とあわせて、教職員免許制度改革や教員評価システムの確立なども必要であると考えます。

 また、公明党が早くから主張しているとおり、小学校での英語教育を必修化すべきと考えます。横浜市では、三年後から公立の全小学校で英語教育を週一時間取り入れる計画が既に発表されております。このように、前向きに取り組む自治体も出てきております。

 次世代の教員養成及び小学校における英語教育の必修化について、総理及び文部科学大臣の御見解を求めます。

 アジア外交のかぎを握る中国、韓国との友好関係の改善のために政府は全力を挙げるべきだと私はかねてから申し上げてまいりました。

 両国と歴史及び文化の共同研究を進め、相互理解を深める一方、民間レベルでの文化、教育交流にも一段と力を注ぎ、相互の認識ギャップを埋めるあらゆる努力をしていくべきと考えますが、総理の前向きな答弁を求めます。

 一方、我が国が得意とする環境技術を駆使すれば、環境問題の克服のために国を挙げて取り組もうとしている中国に対して大きな貢献ができるのではないかと考えているところであります。中国は今、急速な経済成長の反面で、土壌、河川、農村の環境劣化、地下水の汚染、生物多様性の悪影響など広範な環境問題が指摘されており、その克服のために国を挙げて取り組もうとしております。

 我が国は、かつて高度経済成長の過程で、公害問題という痛ましくもとうとい国民的な犠牲の経験を持っております。今や課題はほぼ克服されつつあるとはいえ、その個人的被害や社会的コストは現在も続いています。そうした経験を踏まえれば、中国の環境問題に対して、我が国はむしろ一歩踏み出して、我が国自身の問題として精力的に取り組む必要があります。

 それは、地理的に隣接し、風向きや海流の関係上で、大気や黄砂、海洋の汚染など中国の環境悪化の影響を最も受けやすいこと。さらには、地球温暖化問題について、世界の経済大国として台頭しつつある中国の参加が何よりも不可欠となっているからであります。

 幸いにして、中国の一部には、日本の公害対策を手本にとの機運も生まれております。具体的には、京都メカニズムや循環経済の推進への協力、また地域の環境汚染企業へのアプローチなど、我が国の経験を生かした対中環境戦略の検討、ハイレベルな政策対話の場の設定、中国事務所の開設など研究機関の交流などを進めるべきであります。

 こうした政策対話の成果も踏まえ、さらに、対中国経済支援・協力における環境分野への重点化、民間企業も巻き込んだプロジェクトの推進などを、今強く望まれているアジア外交の強化という視点からも国を挙げて積極的に進めるべきだと考えますが、総理の御見解を承りたい。

 吉田兼好の徒然草の中に、弓の道の師弟の話があります。弟子が矢を二本手に持って的に向かいました。すると、師匠は弟子に対し、二つの矢を持ってはいけない、この矢で失敗しても次の矢で取り返せばよいなどと思わず、この一矢で決まるのだと思ってやらねばならぬと戒めたという有名な話であります。

 私も、今、責任ある与党の立場で、国民のための改革を断行するに当たり、この一矢で決めなければならないとの心境であります。まさに真剣勝負です。失敗は国民生活に多大な影響を及ぼすからであります。一人の真剣な政治家の勇気の行動が、必ず地域を変え、そして日本を変えるとの強靱な決意で、全身全霊をかけて国民に奉仕してまいりますことをお誓いし、私の代表質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 神崎代表に答弁する前に、昨日の衆議院本会議における長島議員の質問に対しまして補足答弁をさせていただきます。

 日中両国のナショナリズムへの対応、信頼構築についてお尋ねがございました。

 日中両国の国民感情がお互いに悪化しているとの御指摘がありますが、政府としては、両国の関係が偏狭なナショナリズムに流されることのないよう、国民間の直接の交流を通じて日中間の相互理解と相互信頼を増進すべく、中国との間で、未来を担う青少年世代を初め、さまざまなレベルでの交流を進めていく考えであります。

 神崎議員に答弁いたします。

 寒波・雪害対策でございますが、被害に遭われた方々や今なお困難な生活を余儀なくされている方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。

 今般の寒波、大雪については、既に昨年末より、政府・与党連携して速やかな対応に当たっております。去る十九日には、人命の被害防止、国民生活の安全等に遺漏なきよう、各大臣に改めて指示したところであります。

 これから例年は雪が多い時期であり、孤立集落などの発生も予想されるところであります。高齢者の方々の住宅の雪おろしやライフラインである道路の除雪、排雪等を支援するなど、雪害から住民生活を守るため、今後とも、引き続き災害救助法による支援、自衛隊の迅速な派遣、特別交付税措置など種々の対策を講じ、政府として総力を挙げ、万全を期してまいります。

 農産物や灯油の価格高騰への対応でございますが、農産物に関しては、主要産地に対して出荷量の確保を要請したところでありますが、引き続き価格動向を注視してまいります。また、灯油に関しては、石油元売各社に対して安定供給の確保と便乗値上げの防止を要請したところでありますが、引き続き価格動向を政府としても注視してまいります。

 豪雪対策の再点検でございますが、今後、高齢化、過疎化に対応するため、ハード、ソフト両面にわたる豪雪対策をしっかりと検討する必要があります。

 雪おろし作業が困難で、事故に遭いやすい山間の過疎地の高齢者の方々には、冬期の間、町中に移住していただくなどのアイデアも出されておりますが、国土交通省に各分野の専門家や自治体の代表から成る懇談会を立ち上げ、国土の保全も踏まえて従来の豪雪地帯対策の再点検を行い、特に高齢者の安全、安心対策等について検討してまいります。

 これまでの構造改革、また今後の構造改革を進めるに当たっての決意に関するお尋ねでございますが、小泉内閣が進める構造改革は、決して弱者を切り捨てるものではありません。勝者と敗者を決めるものでもありません。一時期敗者となっても、また勝者になり得るという、そういう機会をつくることが大事だと思っております。まずは国民一人一人、個人、企業、地域が主役となり、努力が報われ安心して再挑戦できる、そうした明るい社会の実現を目指しているものであります。

 こうした考え方のもとに、これまで、雇用・中小企業のセーフティーネットの確保に万全を期すとともに、新規起業の促進策、構造改革特区や都市再生など地方の意欲や挑戦を尊重した地域経済の活性化策、持続的な制度の構築に向けた社会保障制度改革に取り組んでまいりました。これらの改革の結果、主要行の不良債権問題が正常化して、我が国経済は、民間需要中心の持続的な回復軌道をたどってきていると思います。

 しかしながら、神崎議員御指摘いただいたように、将来の格差拡大につながりかねないフリーターとかニート等若年層の問題があります。こうした若年層の非正規化や未就業の増加、生活保護受給者の増加、また東京などの都市と地方の格差といった最近の動きには注意が必要であるというお考えには、私も同感であります。政府としても、ニート、フリーター、生活保護受給者の自立支援対策の充実や地方の再生について、現場の意見も踏まえながら、引き続き適切に取り組んでまいりたいと考えております。

 最近の証券市場についてでございますが、経済活動の重要な基盤である証券市場は、公正、透明で信頼されるものであることが必要であります。これまでも、課徴金制度の導入や証券取引等監視委員会の体制強化等の改革を行ってまいりましたが、今国会では、金融サービスに関する包括的、横断的な法規制の枠組みを整備することとしており、この中で不正行為の防止にしっかりと取り組んでまいります。

 また、証券取引所においても、今回のケースを深く反省し、システム整備を初め安定的かつ円滑な運営を確保していくことが重要であり、早急に対応する必要があると考えております。

 人口減少社会についてでございますが、本格的な人口減少・超高齢化社会の到来は、我が国経済社会が直面する重要な環境変化であり、これに適切に対応し、新たな成長基盤を確立することが重要であります。

 このため、御指摘のように、少子化対策を強力に推進するとともに、行財政改革を進めて簡素で効率的な政府を実現すること、科学技術の活用などにより一人当たり生産性の上昇を図ることが必要であると考えております。

 このように、人口減少という時代の潮流の変化に積極的に対応し、新たな成長基盤を確立することが国民一人一人の豊かさにつながるものと考えております。

 さらに、少子化問題への取り組みについて、この少子化の流れを変えることが重要な課題であり、子供を安心して生み育てる環境の整備、子供が健全に育っていくことのできる社会の実現のため、子供の立場から各種施策を推進してまいります。

 待機児童ゼロ作戦、多様な放課後児童対策、若者の就労支援など、子ども・子育て応援プランに基づいて少子化対策を全力で推進してまいります。

 六月を目途に、昨年設置された少子化社会対策推進会議が今後の少子化対策について議論を取りまとめることとしており、その結論も踏まえ、子ども・子育て応援プランをより充実してまいります。

 事業仕分けについてですが、公明党がこれまで行政効率化に積極的に取り組まれておることを私も高く評価しております。事業仕分けに係る提案は、不要な仕事や民間ができる仕事がないかどうか厳しく検証して、歳出削減につなげようとするものとして、その趣旨については同感であります。政府としては、事業仕分けの趣旨も踏まえ、行政のスリム化、効率化を一層徹底してまいります。

 また、昨年末に閣議決定した行政改革の重要方針に、国の行政機関の事業の要否及び主体について仕分けを行うことを盛り込んだところであり、今国会に提出予定の行政改革推進法案にもその趣旨を盛り込みたいと考えております。

 官製談合についてでございますが、最近、国、地方を問わず、入札談合事件の摘発が続いていることは極めて遺憾であります。また、いわゆる官製談合も指摘されている状況においては、談合排除の徹底を図るため、政府・与党としてもなお一層の取り組みが必要であると考えております。

 このため、昨年末、私は、議員立法である現行のいわゆる官製談合防止法について、与党において至急改革案を検討し取りまとめるよう、あわせて、公共工事の入札契約の改善など政府がやるべきことについて早急に政府部内で検討を行うよう指示をしたところであります。

 今後、与党とも緊密に連携しながら、できるだけ早期に結論を得られるよう、検討を進めてまいりたいと考えております。

 政策金融改革でございますが、貸出残高対GDP比半減、民業補完の原則を徹底した機能の限定、八つの機関の統廃合や民営化などを内容とする抜本的改革を実現いたします。具体的な制度設計に当たっては、借り手側の視点にも立ち、中小零細企業や個人の資金調達支援の機能は残しつつ、改革を進めてまいりたいと思います。

 高齢者の社会参加でございますが、我が国は今後、いわゆる団塊の世代が高齢期を迎え、本格的な高齢社会を迎えます。こうした中、高齢者が年齢にかかわりなく、社会の重要な一員として、その経験を生かしながら、生きがいを持って活躍できるような条件整備を図ることが重要であります。

 政府としては、高年齢者雇用安定法に基づき、高齢者の就業の機会を確保するとともに、ボランティア活動等を通じた社会参加を推進してまいります。

 だれもが働くことができるような改革を進めるべきだということでございますが、人口減少社会を迎える中で、だれもが働く意欲と能力を十分に発揮できる環境づくりをすることが極めて重要であります。

 このため、若者が企業の物づくり等の現場において実習ができるようにする仕組み、働く意欲のある高齢者が就業に向けて訓練を受ける仕組みの充実など、性別にかかわりなく各世代が能力開発を行うことができ得るようにするための支援、働き方の多様化に対応して休暇取得の選択の幅を広げることにより、労働者の能力を十分に発揮できるようにするための労働時間制度の見直しの検討を進めております。

 医療提供体制の構造改革でございますが、今般の医療改革に当たっては、患者の視点に立って、質の高い効率的な医療の提供体制を構築することが重要であります。

 このため、医療に関する情報提供の充実、レセプトのオンライン化の推進、平成十八年度診療報酬改定における後発医薬品の使用促進、公的医療機関の病床の再編等によるサービスの効率化、急性期から在宅における療養に至るまで切れ目のない医療が提供される体制を構築することによる総入院期間の短縮など、総合的な医療提供体制の改革を進めることとしております。

 こうした改革を含む関連法案を今国会に提出し、医療提供体制の改革を進めてまいります。

 生活習慣病対策でございますが、生活習慣病対策を充実させることは、国民の健康増進、生活の質の向上、さらには中長期的な医療費の適正化の観点から重要な課題であります。

 このため、今般の医療制度改革において、運動、食生活、喫煙面での生活習慣の改善に向けた国民運動を展開するとともに、医療保険者の役割を明確化し、効果的、効率的な健診、保健指導を義務づけるなど、本格的な生活習慣病予防の取り組みを推進してまいります。

 がん対策、また緩和ケアでございますが、がん患者に対する緩和ケアは、麻薬等を用いて患者の身体的苦しみや精神的苦しみを緩和し、療養生活の質の向上を図っていく上で有効であり、引き続き、医療従事者等の研修の実施やマニュアルの普及等により知識、技術の向上に取り組んでまいります。

 また、がん対策については、がんの罹患率と死亡率の激減を目指し、国民、患者の視点に基づき、がん予防・早期発見の推進、がん医療水準の地域格差の是正、がんの在宅療養・終末期医療の充実、がん医療技術の開発振興を進めているところであります。

 政府としては、このような総合戦略の推進に全力で取り組んでいくことが重要と考えており、がん対策法の制定については、国民また患者の声をさらに聞きつつ、将来的な検討課題としたいと考えております。

 米国産牛肉輸入問題についてでございますが、危険部位の混入が確認されたため、すべての米国産牛肉の輸入手続を直ちに停止し、米国に対し遺憾である旨伝えるとともに、二度とこうしたことが起きることのないよう、しっかりとした対応を求めております。

 米国産牛肉の輸入手続を再開するためには、日米間で合意したルールの遵守が必要であり、国民の食の安全、安心を大前提に、米国に対し、原因究明と再発防止を求めております。政府としても、消費者の信頼回復を図ることができるよう、的確に対応してまいります。

 アスベスト問題でございますが、政府としては、アスベストによる健康被害の迅速な救済を図るため、既に救済法案を国会に提出したところであり、早急にその成立を図って、今年度内に施行したいと考えております。

 なお、給付金については、認定された後は、請求のあった時点にさかのぼって支給することとし、少しでも被害者の負担を軽減できるようにしたいと考えております。

 また、企業からの拠出金については、これまでに主要な事業者団体に対して説明を行い、おおむね御理解を得られたものと考えております。救済制度の円滑な運用を図るため、引き続き企業の理解と協力を求めてまいります。

 アスベスト飛散防止策についてでございますが、既に国会に提出した石綿被害防止一括法案では、従来の建築物の解体等に加え、新たに工作物の解体等の際にも徹底したアスベストの飛散防止策を講じなければならない等の措置を定めておりますが、法律の運用に当たっては、関係省庁が密接に連携するとともに、飛散防止策について地方公共団体や国民への周知徹底を図ることにより、その実効性をできるだけ確保したいと考えております。

 子供の安全対策についてでございますが、子供を犯罪から守るためには、警察、学校、地域住民等が連携して、地域の総合力を生かすことが重要であると考えております。

 このため、政府では、学校安全ボランティアの充実、路線バスの活用などを内容とする緊急対策六項目を盛り込んだ「犯罪から子どもを守るための対策」を取りまとめ、犯罪対策閣僚会議においてその着実な推進を確認したところであり、御提案の施策も踏まえて、今後とも、世界一安全な国日本の復活を目指し、取り組んでまいります。

 農政の展開についてでございますが、今後の農政展開に当たっては、地域の実情も踏まえつつ、やる気と能力のある農業経営へ支援を集中してまいります。また、攻めの農政を推進する観点から、我が国農産物の海外への輸出など、生産者や地域の創意工夫に基づく意欲的な取り組みを後押しすることにより、食料自給率の向上と持続可能な農業の構築を推進してまいります。

 次世代の教員養成、また英語教育についてでございますが、教員の大量採用時代の到来を控えて、優秀な教職員の確保、育成は極めて重要な課題であります。

 このため、すぐれた教育を次世代に継承するための退職教員の再活用や、教員評価の充実、教員免許制度改革などに努めてまいりたいと思います。

 また、グローバル社会に対応するため、小学校段階における英語教育を充実する必要がありますが、その実施方法については、専門的な検討を深める必要があると考えております。

 中国、韓国との関係でございますが、韓国とは従来より、歴史事実と歴史認識の相互理解を促進すべく歴史共同研究を実施しているほか、中国との間でも歴史共同研究につき検討を進めております。また、中国、韓国とは、文化、教育、芸術、スポーツ等さまざまな幅広い分野において、民間レベルも含め、いまだかつてないほど交流が盛んになっております。引き続き、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を築くために交流を強化していく考えであります。

 また、日中間の環境分野での協力についてでございますが、中国における環境保全は、日中双方にとって重要な課題であります。これまで中国との間でさまざまな環境協力を行ってきております。今後とも、我が国の経験を生かしつつ、民間も交え、環境分野の種々の日中協力を推進し、日中関係を発展させていきたいと考えます。

 自由民主党、公明党は、これまでも信頼関係に基づいて協力してやってまいりました。これからもこの信頼関係をもとに、安定した連立基盤の上に立ってもろもろの改革を進めていきたいと思います。よろしく御指導、御協力をお願い申し上げます。

 残余の質問については、関係大臣に答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣北側一雄君登壇〕

国務大臣(北側一雄君) まず、羽越線事故の安全対策についてお答えを申し上げます。

 羽越線事故につきましては、五名の方がお亡くなりになり、三十二名の方が重軽傷を負われました。今回の事故でお亡くなりになられた方々の御遺族の皆様に心からお悔やみを申し上げますとともに、けがをされた皆様の一刻も早い回復をお祈り申し上げる次第でございます。

 当該区間におけるJR東日本の運行規制の考え方等につきましては、これまでの知見や経験に基づき構築されてきたものでございますが、現在、事故原因について航空・鉄道事故調査委員会が調査を進めているところでございまして、これらが適切であったかどうかも含め、今後明らかにされるものと考えております。

 国土交通省といたしましては、同委員会の調査結果を待つまでもなく、一月十二日、主な鉄道事業者の安全担当役員を招集し、厳冬期の安全対策の再徹底と、特に強風対策について、ハード、ソフト両面でできることから速やかに実施するように指示をいたしました。

 また、JR東日本を含む全国の鉄道事業者に対し、風速計の設置位置が適切であるか、強風時の運転規制はどのように行っているか等について緊急総点検を実施しているところでございまして、この結果を踏まえ、風速計や運転規制に関する当面の安全対策を講じてまいりたいと考えております。

 さらに、気象や運転分野の専門家等から成る鉄道強風対策協議会を設置し、鉄道における強風対策のあり方について検討を進めているところでございまして、六月ごろを目途に中間取りまとめを行い、恒久的な強風対策を講じてまいりたいと考えております。

 国土交通省といたしましても、今回の事故の重大性にかんがみ、今後とも、引き続き事故原因の究明と再発防止に全力で取り組み、鉄道輸送の安全確保に万全を期してまいる決意でございます。

 また、今後の公共交通機関の安全対策についてお尋ねがございました。

 昨年四月に発生しましたJR西日本の福知山線における脱線事故等、ヒューマンエラーが関係すると見られる事故、トラブルが多発した状況にかんがみ、従来の監督行政の延長ではなく、運輸事業者に対する新たな監視、監督の手法等について検討するよう指示をするとともに、省内に外部の有識者を含めた公共交通に係るヒューマンエラー事故防止対策検討委員会を設置し、検討を進めてまいりました。

 この委員会が昨年八月に行った中間取りまとめにおきましては、事業者において、トップから現場まで一丸となった安全管理のための体制の構築を図ること、その安全管理の体制について国が監視する仕組み、安全マネジメント評価を導入すること等が提言をされたところでございます。この趣旨に従いまして、現在、事業者の安全管理体制の構築等を内容とする運輸の安全性の向上のための法案について、今国会への提出を予定しているところでございます。

 さらに、鉄道の運転士の資質向上、速度制限装置等に係る技術基準、航空交通管制等に係る対応等も含め、今後とも、国民の公共交通機関に対する信頼回復に向け、公共交通機関の総合的な安全対策の推進に全力を尽くしてまいる所存でございます。

 耐震偽装問題に対する今後の対応策についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、まず第一に、事業者に対する徹底した責任追及を前提に、地方公共団体と連携を図りながら、引き続き、危険な分譲マンションの居住者等の安全確保と居住の安定確保に全力を挙げてまいります。

 昨日の段階でございますが、分譲マンションの居住者の退去状況は、危険な分譲マンション十棟につきまして、当初の入居戸数は二百八十八戸でございましたが、昨日までの退去者及び退去の意向が明らかになりました方々は合計で二百八十四戸になりまして、残るところあと四戸というところまでになりました。この四戸の皆様にも、地方公共団体としっかり連携をとって、早く退去をしていただくように努めてまいりたいと考えております。

 また、偽装物件の全容解明など事実関係の調査を進め、建築基準法、建築士法等に基づき、順次、関係者を厳正に処分していく所存でございます。

 国民の不安への対応といたしましては、現在、既に、地方公共団体、専門家団体等による相談体制を設けておりますが、今後、全国約五百件のマンション等の耐震性能のサンプル調査を行う予定としております。

 また、再発防止策については、指定確認検査機関等の点検結果や、省内に設置しました構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会での行政対応の検証等を踏まえ、社会資本整備審議会において制度の見直しについて御審議を今いただいているところでございます。二月下旬までに中間報告を取りまとめていただく予定としております。この報告を踏まえ、早急に対応が必要なものについては、今国会において建築基準法等の改正を行う方針でございます。

 今後とも、関係省庁及び関係地方公共団体と連携し、遺漏のないよう、迅速的確な対応に努めてまいります。

 最後に、まちづくり三法の見直しについてお尋ねがございました。

 まちづくり三法の見直しにつきましては、与党での御議論を踏まえながら、国土交通省といたしましても、人口減少・超高齢社会における望ましい町づくりのあり方という観点から検討を進めてまいりました。

 これからの社会においては、高齢者も含めた多くの人にとっての暮らしやすさを確保するという観点から、都市の既存ストックを有効に活用し、コンパクトな町づくりを推進していくことが必要であると考えております。

 このため、都市機能の無秩序な拡散に歯どめをかけるため、都市計画制度の改正を行い、大規模集客施設の立地に当たり、都市計画の手続を経ることにより地域の判断を町づくりに反映させるとともに、病院等の公共公益施設の立地についても開発許可を要することを検討しております。

 また、こうした措置とあわせて、中心市街地の活性化に資するため、まちづくり交付金や平成十八年度に創設を予定しております暮らし・にぎわい再生事業などを活用し、町中への都市機能集積を図ってまいります。

 こうしたことを内容とする関係法律の改正案を今国会に提出する予定でございます。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 神崎議員の御質問にお答えを申し上げます。

 教員の大量採用時代の到来を控えまして、優秀な教職員の確保、育成についてのお尋ねでございますが、既に総理からもお答えがございましたように、教員にすぐれた人材を得ることは学校教育の成否を左右するものであり、特に教員の大量退職、採用時代の到来が見込まれる状況においては極めて重要な課題でございます。

 このため、すぐれた教育実践を次世代の教員に継承するため、退職教員を指導教員として学校現場で再活用するなど、これからの取り組みを一層進めてまいりたいと存じます。

 また、質の高い教員の養成確保を図るため、教職大学院制度の創設など教員養成課程の充実、教員免許制度の改革、そして教員評価の充実に精力的に取り組んでまいりたいと存じます。

 小学校における英語教育の必修化についてのお尋ねでございますが、英語の教育については、小学校段階において、いわゆる英語活動という形で現在約九割の小学校で実施されております。また、昨年十月の中央教育審議会の答申におきましても、「小学校段階における英語教育を充実する必要がある。」と指摘されているところでございます。

 私といたしましては、語学教育はネーティブスピーカーの発音にできるだけ早く接することが有利だと考えておりまして、これらを踏まえて、現在、すべての小学校で共通に英語教育として指導する場合の目標や教育内容、国語力育成との関係、開始学年、実施時期、指導者の確保、コンピューターなどICTの利活用方策などにつきまして、専門的に検討をしておるところでございます。

 今後、先般公表いたしました教育改革のための重点行動計画に基づきまして学習指導要領の見直しを行います中で、広く御意見を伺いながら検討、そして結論を得てまいりたいと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、小泉首相に質問します。(拍手)

 まず、政府の緊急な対応が求められる二つの問題について伺います。

 一つは、豪雪災害の問題です。

 私は、昨年来の豪雪災害によって亡くなられた方々に深い哀悼の気持ちを述べるとともに、豪雪で日々御苦労されている皆さんに心からのお見舞いを申し上げます。

 記録的な豪雪は、地域の生活に大きな困難をもたらし、住民の皆さんは心身ともに疲れ、厳冬期を迎えて不安を募らせています。既に我が党は、政府に対し、豪雪災害に関する緊急の申し入れを行っておりますが、今何よりも重要なことは、政府が、これ以上の犠牲者は絶対に出さない、被害の拡大は最小限に抑えるという立場に立って、雪おろしやライフラインの確保を初め、万全の対策を講じることであります。

 現地に伺った我が党議員団に対し、現地ではこれ以上被害を広げてはならないと懸命に取り組んでいる、政府もそれにこたえる対策をという切実な要望が出されました。この声を肝に銘じて対策に当たるべきであります。首相の答弁を求めます。

 いま一つは、米国産牛肉のBSE汚染問題です。

 政府の輸入再開は、危険部位の除去、月齢二十カ月以下という二つの条件を米国が遵守することを前提に行われたものでしたが、この前提が守られる保証が全くなかったことを今回の事態は明らかにしました。加えて深刻なことは、米国が二つの条件を守っているかどうかを確認するために農水省と厚労省が米国内の食肉処理施設を査察し、適切と認定した直後に今回の事態が起こったことです。

 一連の経過は、政府のBSE対策なるものが、国民の安全よりも米国の要求を優先させた、まさに偽装対策だったことを示しています。首相は、その重大な責任をどう認識しているのですか。

 輸入牛肉対策を根底から見直し、全頭検査、全月齢の危険部位除去といった日本と同様の安全基準が確保されるまで、米国産牛肉の輸入は再開しないという方針を明確にすべきであります。首相の答弁を求めます。

 次にただしたいのは、小泉構造改革が何をもたらしたかという問題です。首相が、官から民へ、小さな政府のかけ声で進めた規制緩和万能路線の害悪が、今、次々に明らかになっています。

 第一は、耐震強度偽装事件であります。

 無法行為を行った当事者たちの責任、政治家の関与について、徹底的な究明を行うことは当然です。同時に、問題の根本は、一九九八年の建築基準法改悪で、建築確認を、官から民へといって民間検査機関に丸投げできるようにした規制緩和にあります。

 我が党は、九八年の法改悪の際、民間任せでは検査の公正中立性の確保は困難になる、安かろう悪かろうという検査になると警告し、この法改悪に厳しく反対しました。この警告は現実のものとなりました。民間検査機関による検査が急増し、安さと速さの競い合いが起こり、安全は置き去りにされました。ゼネコンや住宅メーカーなどが出資する民間検査機関が増加し、ゼネコン、住宅メーカーが自分の物件を自分の手で検査するという、公正中立性が損なわれる事態が進みました。

 今問われているのは、倫理も使命感もない悪徳業者の責任だけではありません。建築行政という国民の命を守る制度にまで、規制緩和と利潤第一主義を持ち込み、大穴を開けてしまった自民党政治の責任が問われているのであります。住宅ローンを抱えて苦しむ被害者への補償と再発防止も、問題のこの根本にメスを入れる立場に立ってこそ、責任ある解決の道が開かれます。首相の見解を求めます。

 第二は、ライブドア事件であります。

 自社の株価をつり上げ、そこで得た資金を元手に企業買収を繰り返す。その中で、偽計取引、うその情報の流布、粉飾決算などの違法行為が行われていた疑惑が大問題になっています。

 この事件の根本にあるのは何か。ライブドアが株価つり上げに使った手法は、株式交換、株式分割、投資事業組合という三つの手法を組み合わせて錬金術を行うというものでした。株式交換は、一九九九年の商法改正で導入されたものであります。株式分割も、二〇〇一年施行の改正商法で自由勝手にできるようになったものであります。ここでも事件の根本にあるのは、自民党政治が進めた規制緩和万能路線ではありませんか。

 安倍官房長官は、堀江さんの仕事の成功は小泉改革の成果、規制緩和の成果だと述べていました。私もそのとおりだと思います。首相は、自分の進めた規制緩和万能路線がライブドア事件の土壌をつくったという認識と反省がありますか。

 首相は、今になって人ごとのような発言を繰り返しておりますが、人の心はお金で買えると公言してはばからなかった堀江氏を、改革の旗手などと勝ち組のリーダーとして持ち上げ、党運営への協力を仰ぐことまでしたのは、小泉首相、自民党ではなかったか。その責任をどう自覚されているのか、しかとお答えください。

 第三は、格差社会と貧困の広がりという問題です。首相に二つの点をただしたい。

 一つは、現状への認識の問題です。

 首相が、この問題について問われ、格差拡大というのは誤解だと述べたと報道されたことに、私は驚きました。一九九七年と比較して、生活保護世帯は六十万から百万世帯に、教育扶助、就学援助を受けている児童生徒は六・六%から一二・八%に、貯蓄ゼロの世帯は一〇%から二三・八%に、どれも激増しています。首相の目には、貧困と格差の中で苦しむ庶民の姿は目に入らないのでしょうか。この事実を前にしても、格差拡大は誤解だと言うのですか。

 いま一つは、こうした現状をつくった責任の問題です。

 大企業、財界は、正社員を減らし、派遣、パートなど非正社員への置きかえを進め、労働者の三人に一人、若者の二人に一人は不安定雇用のもとに置かれ、その八割は月収二十万円未満という極端な低賃金です。格差社会と貧困の広がりの根本に、派遣労働の自由化など、小泉政権の進めた規制緩和万能路線があるという責任の自覚はありますか。答弁を求めます。

 耐震偽装で国民の命を危険にさらし、ぬれ手にアワの錬金術師を生み出す一方で、格差と貧困によって国民から夢も希望も奪い去る。こんな寒々とした弱肉強食の政治を続けていいのかが今問われています。

 日本共産党は、小泉政治によって極限にまでひどくなったルールなき資本主義を正し、国民の安全に責任を持ち、人間らしい労働を支え、格差と貧困を是正する、人間が人間として尊重されるルールある経済社会への改革を強く求めるものです。

 次に、庶民増税と社会保障切り捨てについて質問します。

 来年度予算案に盛り込まれた国民負担増は、定率減税の全廃、お年寄りの医療費の値上げなど、二兆七千億円に上ります。小泉政権発足以来、二〇〇二年度予算から二〇〇六年度予算案までの五回の予算編成で国民に押しつけた負担増を合計しますと、年間十三兆円に上ります。歴代自民党政権の中でも、これほど巨額の国民負担増を押しつけた政権はかつてありません。

 これだけの負担を国民に押しつけて、国の借金はどうなったか。小泉政権が五回の予算編成で新規に発行した国債、新たな借金は、何と百七十兆円に上ります。これは、その前の五年間、一九九七年度から二〇〇一年度の予算編成での新規国債発行の百五十三兆円を大きく上回ります。みずからを世界一の借金王と称した小渕首相などが五年間で発行した新規国債よりも、小泉首相が五年間で発行する新規国債の方が多いのであります。小泉首相は、史上最悪の借金王と呼んでも過言ではありません。

 なぜ、空前の国民負担を押しつけながら空前の新規国債発行となるのか。税財政に二つの大きなゆがみがあるからであります。

 第一は、大企業、大資産家への減税を温存、拡大していることであります。

 小泉政権は、前政権が行った法人税、高額所得者減税を続けただけでなく、研究開発減税やIT減税など、大企業向けの減税をさらに拡大しました。加えて、株式の配当や譲渡にかける税金を、税率一〇%まで大幅に引き下げました。大企業には減税、庶民には大増税。額に汗して働く庶民への税金よりも、株取引で巨額の富を得た錬金術師への税金が低い。こんな不合理なことがありますか。空前のもうけを上げている大企業、大資産家に、もうけ相応の負担を求めるべきではありませんか。答弁を求めます。

 第二は、巨大開発の無駄遣いを温存、拡大していることです。

 首相は、公共事業の総額を減らしたと言いますが、削減したのは住宅、福祉、学校など国民生活に不可欠の事業であり、関西国際空港二期事業、スーパー中枢港湾、大都市部の高速道路、大型ダムなど、巨大開発の無駄遣いは温存、拡大しています。聖域なき歳出削減と言いながら、ここには巨大な聖域がつくられているではありませんか。

 この税財政の二つのゆがみにメスを入れなければ、どんなに国民負担をふやそうと、借金はふえる一方であります。その借金を口実に消費税増税を押しつけるなど、絶対に許せる話ではありません。

 日本共産党は、格差拡大と貧困に追い打ちをかける庶民への負担増に反対します。大企業と大資産家への応分の負担によって、所得を再分配し、格差を是正する、公正で民主的な税財政への改革を強く要求します。首相の見解を求めます。

 次に、外交、平和に対する基本姿勢について質問します。

 首相が靖国神社参拝に固執し続けていることは、日本外交の孤立と行き詰まりをいよいよ深刻なものとしました。問題は、中国、韓国などアジアの諸国との関係悪化だけにとどまりません。米国のブッシュ大統領は、昨年、対日戦勝六十周年の記念演説の中で、アジア解放のための戦争という、靖国神社が立っている侵略戦争正当化論を厳しく批判しました。首相の連続参拝に対して、米国下院のハイド外交委員長は遺憾の意を伝える書簡を日本政府に寄せました。首相は、米国政府や議会からも寄せられている懸念や批判をどう受けとめているのですか。

 戦後の国際秩序は、かつて日独伊が行った戦争が侵略戦争であったという共通の認識の上に成り立っています。日本は正しい戦争をしたと宣伝することをみずからの使命に置いている靖国神社に首相が参拝することは、戦後の国際秩序を土台から否定する行為にほかなりません。この問題を居直りや既成事実の積み重ねで解決できると考えたら、大きな考え違いであります。侵略戦争への反省を言葉だけでなく行動でも示してこそ、世界とアジアの信頼を回復する道が開けます。首相の見解を求めます。

 日米両国政府が米軍再編の名で基地強化と日米の軍事一体化を進めようとしていることに、全国の自治体から厳しい怒りと批判が広がっています。私は、首相に三点に絞って伺いたい。

 第一。首相は、二〇〇四年十月に、自治体と相談し、自治体がオーケーしたら米側と交渉すると明言していました。ところが、自治体とは何の相談もなく、米側との協議で勝手に基地強化案をつくって押しつけようとする。これは、みずからの言明をほごにし、自治体の意思を全く無視した乱暴きわまるやり方ではありませんか。

 第二。在日米軍は、沖縄、岩国の海兵隊、横須賀の空母打撃群など、海外遠征専門のいわば殴り込み部隊であります。キャンプ座間に移設しようとする米陸軍の新司令部も、イラク戦争で多くの人々の命を奪った、ストライカー旅団と呼ばれる殴り込み部隊の司令部であります。米国が地球的規模で行っている米軍再編の中で、日本のように海外遠征専門の部隊の強化を図っている国がほかに一つでもありますか。お答えください。

 第三。今回の米軍再編で、約一兆円と言われる海兵隊司令部のグアムへの移転費用を日本が負担するという計画が進行しています。米国の領土にある基地の建設に日本国民の税金を投入するというのは、現行法では許されず、歴史上も世界でも類のないことではありませんか。

 首相は、基地強化受け入れを平和と安全の代価だと述べて、押しつけようとしています。しかし、基地強化の動きは、日本の平和と安全とは無縁なばかりか、日本を地球的規模でのそれこそ殴り込み戦争の一大根拠地にし、世界とアジアの平和を脅かす震源地に変えるものにほかなりません。日本共産党は、この動きに正面から対決して、自治体ぐるみの闘いの一翼を担い、力を尽くすものであります。

 最後に、憲法問題について質問いたします。

 自民党は、昨年十一月の党大会で新憲法草案を正式に決定しました。この草案は、憲法九条二項を削除し、自衛軍の保持を明記するとともに、その任務として、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動なるものへの参加を規定しています。ここで言う自衛軍の海外での活動には、武力の行使も含まれるのではありませんか。これは、米国がイラク戦争のような戦争を引き起こした際に、自衛隊が武力行使をもって参加することを可能にするものではありませんか。はっきりお答え願いたい。

 米国のアーミテージ前国務副長官は、昨年末、日本のメディアに寄せた一文の中で、日本は、イラクへの自衛隊派兵など、既に地球規模のパートナーになったが、これから先の課題は、その軍事力によってどのような地球的役割を果たせるかにあり、その決断には憲法九条の問題がかかわっていると述べています。地球的規模での軍事力の行使のために九条の改定を、これが米国の要求であります。首相は、この要求にどのようにこたえますか。

 二十一世紀の世界の大勢を見れば、軍事力でなく、平和的な外交によって問題を解決する流れが大きく広がり、その中で、日本国憲法第九条に対して、国際的にも新しい注目と評価が寄せられています。日本共産党は、世界に誇るこの日本の宝を守り抜くために、憲法改悪反対で一致する政党、団体、個人と力を合わせ、広大な国民的共同をつくるために全力を挙げることを表明しまして、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 志位議員にお答えいたします。

 豪雪対策についてですが、被害に遭われた方、また、今なお困難な生活を余儀なくされている方々に対して、心からお見舞いを申し上げます。

 今般の寒波、大雪については、既に昨年末より、政府・与党連携して速やかな対応に当たっております。去る十九日には、人命の被害防止、国民生活の安全等に遺漏なきよう、各大臣に改めて指示したところであります。

 例年はこれから雪が多い時期であり、孤立集落などの発生も予想されるところから、被害の拡大防止のため、今後とも、災害救助法による支援、自衛隊の迅速な派遣、補助金の緊急配分など種々の対策を講じてまいります。

 米国産牛肉輸入問題でございますが、米国産牛肉の輸入再開につきましては、食品安全委員会で科学的な議論を尽くし、国民の意見も聴取した上で取りまとめられた答申を踏まえて決定されたものであり、偽装との批判は当たらないと考えております。

 今般、日米間で合意したルールに反する輸入牛肉が確認されたことから、国民の食の安全、安心を大前提とする考え方に立って、直ちにすべての米国産牛肉の輸入手続を停止したところであります。

 米国産牛肉の輸入手続を再開するためには、日米間で合意したルールの遵守が必要であり、二度とこうしたことが起こることのないよう、国民の食の安全、安心を大前提に、米国に対し、原因究明と再発防止を求めております。

 耐震偽装に関してのお尋ねですが、建築確認検査制度の民間開放について、阪神・淡路大震災を教訓として制度の充実、効率化を図るため、平成十年から、地方公共団体が行ってきた確認検査事務について、必要な審査能力を有する公正中立な民間の機関においても行うことができることとしたものであります。民間開放の進展により、建物完成後の完了検査率が倍増し、違反建築物件数が大幅に減少するなど、制度の実効性が確実に向上しており、民間にできることは民間にという方向は間違っていないものと考えております。

 しかしながら、今回、一部の地方公共団体や民間検査機関において書類の偽装を見抜くことができなかったことから、現在、建築確認検査制度の総点検を行い、再発防止に向けた見直しを検討しているところであります。さらに、民間検査機関に対する指導監督の強化など、早急に対応が必要なものについては、今国会において制度の改正を行うことといたします。

 ライブドアの事件についてでございますが、今回の事件そのものについては、現在捜査当局による捜査が行われているところであり、その状況を見守っていきたいと思います。

 規制改革は、消費者、利用者による多様な選択と民間による創意工夫により経済社会の活性化を図るものであります。御指摘の株式交換制度の導入も、企業価値を高める組織再編行為の手段を多様化し、株式分割制度の見直しは、投資単位を小額化して流動性を高め、多くの便益がもたらされたと考えております。

 しかしながら、いかに創意工夫といっても、定められたルールに従う必要があるのは当然であります。ルール違反に対して厳正に対処するとともに、現行のルールで対応できない場合はルールの見直しを行うこととしており、規制緩和万能路線との御批判は当たらないと考えております。

 堀江氏の応援についてでございますが、堀江氏については、現在捜査当局による捜査が行われているところであり、その状況を見守っていきたいと思いますが、この件と、昨年の衆議院選挙において自民党幹部などが堀江氏を応援したこと等とは別の問題であると考えております。

 小泉構造改革によって格差が拡大しておるのではないかとのお尋ねでありますが、所得や資産の格差の問題については、予算、税制、規制改革などの検討に当たっては、よく注視していく必要があると考えます。

 この点について、近年、ジニ係数、ちょっと聞きなれない言葉でありますが、ジニ係数の拡大に見られるように所得の格差が広がっているとの指摘がありますが、統計データからは、所得再分配の効果や高齢者世帯の増加、世帯人員の減少といった世帯構造の変化の影響を考慮すると、所得格差の拡大は確認されない、また、資産の格差についても明確な格差の拡大は確認されないという専門家の報告を受けております。

 しかしながら、将来の格差拡大につながるおそれのあるフリーター、ニート等若年層の非正規化や未就業の増加、生活保護受給者の増加、また東京などの都市と地方の格差といった最近の動きには注意が必要であります。このため、政府としては、これまで、ニート、フリーター、生活保護受給者の自立支援対策の充実や地方の再生を進めております。

 引き続き景気の回復を図るとともに改革を続行し、地域や多くの国民が持っている潜在力が自由に発揮されて、国民一人一人が持てる力を発揮できるよう、経済社会の構築に向けて全力で取り組むことが重要であると考えております。

 派遣労働についてでございますが、労働者派遣法など労働法制に関する規制改革は、労働者の保護に欠けることのないよう留意しつつ、多様な働き方を選択できるようにするとの観点から進めてきたものであり、必要なものであったと考えております。

 他方で、パートタイム労働者と正社員との均衡処遇を確保することは重要な課題であると認識しており、均衡処遇に取り組む事業主への支援の強化や公正な処遇が確保される短時間正社員制度の普及など、だれもが安心して働くことができるような労働環境の整備を進めてまいります。

 税財政改革でございますが、これまでの税制改正においては、景気状況や経済社会の構造変化に対応して適切な措置を講じてまいりました。来年度税制改正においても、経済状況の改善等を踏まえ個人及び企業に対する減税措置を大幅に整理する一方で、中小企業関係税制を拡充するなど、適切な措置を講ずることとしております。したがって、不合理な大企業、大資産家への減税との批判は当たらないと考えております。

 今後、持続的な経済社会の活性化を実現していく上で財政がその足かせとならないようにするため、将来に向けた財政健全化の道筋を示していくことが大きな課題であります。そのため、あらゆる無駄を省き、簡素で効率的な政府を目指して徹底した行財政改革を行ってまいります。

 さらに、公正で活力ある社会にふさわしい税制の実現に向け、消費税、所得税、法人税、資産税など税体系全体の改革について、国民的な議論を深めてまいります。

 公共事業についてですが、平成十八年度の公共事業予算においては、防災、減災等による安全、安心の確保、我が国の国際競争力強化、都市・地域再生等の緊急課題に重点化を図りつつ、全体として四・四%削減し、御指摘の個別事業についても、予算の枠内で事業の効果等を厳密に検証した上で計上したものであります。

 今後とも、公共事業については、事業の必要性、緊急性等を厳しく審査しつつ、重点化、効率化を推進してまいります。

 私の靖国参拝で米国での受けとめ方についてのお尋ねでございますが、靖国参拝については、我が国内でもさまざまな意見があります。米国内においていろいろな意見があるのは承知しております。しかし、ブッシュ大統領から靖国参拝批判を受けたことは一度もありません。

 米国政府においては、私の参拝の真意が理解されていると私は考えておりますし、米国を含め、諸外国において広く理解されるよう、引き続き努力してまいります。

 戦争への反省を行動で示すべきではないかとの御指摘でありますが、戦後六十年、日本は、平和のうちに自由と民主主義を守り、まさに戦争への反省を行動で示して豊かな社会を築いてきたと思います。まさに、我が国の戦後の歴史は戦争への反省を行動で示してきておりまして、各国から、日本の世界平和、また世界に対する協力に対して高い評価を受けております。

 米軍再編についてでございますが、在日米軍の兵力態勢再編に関しては、抑止力の維持と地元の負担軽減との考えに基づく勧告につき、その実現のため、関係閣僚などが関係自治体を訪問し、その内容や方向性について誠心誠意説明しているところであります。今後、三月の具体案の最終的な取りまとめに向け、地元の御理解も得ながら日米協議を加速してまいります。

 世界における米軍再編についてでございますが、各国における米軍再編のあり方を一概に比較することは困難でありますが、一般に、米国は、新たな安全保障環境に最も適切に対処し得るよう、より機動性の高い態勢を実現することを目標に軍事態勢の見直しを行っていると承知しております。

 在日米軍は、従来より、高い機動力、即応性を通じ、我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与しております。そのような在日米軍の抑止力を維持し、同時に地元の負担軽減を図る観点から、在日米軍の兵力態勢の再編に関する協議を行ってきております。

 グアムへの移転費用でございますが、現時点では具体的な措置について何ら決定しておりませんが、我が国は、抑止力の維持と地元の負担軽減の観点から、在沖縄海兵隊司令部の要員等の移駐をなるべく早く実現するため、資金的その他の措置などを含めて、米国政府と協力して検討していきたいと考えております。

 憲法についてでございますが、憲法の基本理念である平和主義は、民主主義及び基本的人権の尊重と並んで、憲法が制定されてから今日に至るまで、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。

 また、憲法九条や自衛隊のあり方については、さまざまな議論がありますが、我が国が平和主義に立脚しつつ、国際社会の平和と安全の確保に積極的に寄与していることは、国際的にも理解が得られていると考えております。今後の憲法改正の議論も、こうした方向を堅持しながら、我が国の実態に合致するものを模索すべきものと考えております。

 憲法改正については、自民党は、昨年十一月に新憲法草案を取りまとめたところでありまして、また、各党や国会においても現在議論が行われております。これらを通じて、新しい時代における憲法のあり方について、大いに今後国民的議論を深めていただきたいと考えております。

 なお、米国政府より憲法第九条の改定について要求があった事実はありません。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(横路孝弘君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 社会民主党の重野安正です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、内閣総理大臣の施政方針演説に関連し、総理並びに関係閣僚に質問いたしますが、その前に、羽越線列車脱線事故や昨年末からの北信越地方を中心とする豪雪によって大切な御家族を失い、現に困難な生活を強いられている方々に心からお見舞い申し上げ、政府の迅速かつ的確な対応を求め、質問に入ります。(拍手)

 そこで、まず冒頭、ライブドアにかかわる総理の政治責任について質問いたします。

 昨日午後、堀江氏は、地検特捜部の事情聴取を受け、逮捕されました。堀江氏を昨年の総選挙に押し出しておきながら、事件と関係ないとまるで人ごとのように総理は言っておられますが、これほど無責任なことがあるでしょうか。

 選挙中、あなたの側近中の側近、武部幹事長、竹中当時の郵政担当大臣が堀江氏の手を持ち上げて笑顔を振りまいているテレビの画像を見ている国民が、そんな言葉を信じると思いますか。あなたのような人に政治に出てもらいたいと言ったのは、かくいう総理自身ではありませんか。堀江氏は、郵政民営化是か非か、刺客候補と、総理演出の最大の役者の一人であったではありませんか。その総理推薦の役者が証券市場を揺るがす問題で検察の捜査を受け、逮捕された以上、総理が政治責任を負うのは当然でありませんか。

 さらに言えば、額に汗して働くよりも、株などによって勝ち組となることをもてはやす社会的風潮も、結局は総理の言う構造改革の結果であり、ライブドアはその申し子の一つではありませんか。勝ち組、負け組と区分けされ、虚業と言ってもいいような業界に関心が高まる社会。そして、負け組はますます見捨てられる社会。ライブドアの今回の事件は、そうした社会を象徴しているのであります。総理の見解を伺いたい。

 もう一点、アメリカからの輸入牛肉においてBSEにかかわる危険部位が発見された問題について質問いたします。

 輸入再開がなされてわずか一カ月もたたないにもかかわらず、国民が危惧した問題が発生したことは、何といっても、BSE汚染国であることを当のアメリカが認めていないことにあります。そのため、生産過程そのものに対する緊張感が乏しいことに由来するものであることは間違いありません。

 問題は、こうしたアメリカに対して、科学的見地からの判断を二の次とし、ブッシュ大統領の来日に合わせ輸入再開を許可した小泉総理の態度であり、アメリカの輸出業務上の技術的問題といって済まされるものではありません。国民の安全を無視し、ブッシュ大統領との個人的関係を重視した政治判断による輸入再開決定がこのような事態を招いたわけであり、その責任は極めて重いものがあると考えますが、総理の見解を伺います。

 外交問題について質問します。

 これまでの政府・与党の外交は、日米関係、国連中心、アジア重視の、均衡ある外交を基本としてきたはずであります。ところが、小泉内閣に至って、アメリカの大義なきイラク戦争への支持と自衛隊派遣に見られるアメリカのユニラテラリズムへの同調によって、今や国連中心主義は極めて色あせたものとなっております。もっとも、そうしたアメリカへの同調が国連改革に対する非協力であったとは、これまた随分皮肉なものではありませんか。

 まず、アジア外交問題ですが、中韓両国との首脳会談が持ち得ないマイナス面は、はかり知れないものがあります。しかし、問題は、それにとどまるものではありません。両国との問題が、今や我が国以外のアジア・サミット参加十五カ国全体の懸念となり、それによって、我が国が戦後六十年過ぎてもなお歴史と向き合い、しかも和解していないことが、これら諸国の共通認識となったことであります。

 これをアジアにおける我が国外交の行き詰まりと言わずして、何と言い得ましょうか。一体、これをどう打開するのか、総理並びに外務大臣の答弁を求めます。

 総理は、日米関係がよければよいほど、中国、韓国、アジア諸国を初め世界各国と良好な関係を築けると、昨年十一月、ブッシュ大統領との会談後、語っておられました。これは一体どういう意味でありましょうか。よもや、ユニラテラリズムに立つアメリカをこれまで以上に助長することで、アメリカのアメリカによるアメリカのための世界一極支配を強めることに我が国がなお一層加担するとでも言うのでありましょうか。

 そうであるならば、これまでの国連中心主義は雲散霧消することになりますが、国連中心主義と総理の言葉とはどのように並び立つのでありますか、お聞かせください。

 あるいはまた、この言葉は、アジア重視の外交との関連でも問題は来さないのでありましょうか。良好な日米関係を至上とすることで、対中国はもちろん、ASEANとの間に摩擦を生じないのか。この点でも私は重大な危惧を覚えるものでありますが、総理の責任ある説明をいただきたい。

 そこで、外務大臣に質問します。

 大臣は、総理のこの言葉をどのように受けとめておられるか。また大臣は、先般、中国の軍事力について脅威論を述べられましたが、いかなる根拠、認識のもとになされたのか、あるいはこれは内閣の対中国政策の基本なのか、何ら説明されておりません。大臣の見解をお聞かせください。

 次に、国民の所得格差と税制問題について質問いたします。

 政府の所得再分配調査報告書によっても、国民の当初所得の数値は先進国の中でも高く、再配分後の所得格差がアメリカ、イギリスに次いで三番目であることが明らかとなっております。この原因が、サッチャリズム、レーガノミックスによる新自由主義、それに範をとった我が国の諸制度の急速な規制緩和にあることは申し上げるまでもありません。

 そこで、税制、特に所得税の再配分機能の低下について質問いたします。

 過去に、所得税制の最高税率は七〇%、十五段階とされていた時代もありましたが、今では三七%、四段階にまで引き下げられております。これからもわかるように、高額所得者優遇税制こそ税の再配分機能を著しく喪失させている根源であることは明らかであります。

 財務大臣、消費税引き上げを強調する前に、改めて所得税の累進化を強めるべきではありませんか。また、定率減税の全面廃止はこの再分配機能をさらに低下させる可能性が高いと考えますが、どのように推計しているのか、お示し願いたい。

 若年層において生活格差問題はさらに深刻であり、その原因が高校、大学卒の二割弱がパート、アルバイトとなっている実態にあることも、政府の国民生活白書でも認めるところであります。

 こうした若年層の所得格差、それがもたらす生活格差が、経済はもとより、社会的にどれほどの損失をもたらしているか、政府は真剣に考えたことがあるでしょうか。現在の規制緩和路線を続ける限り、不況を脱したといっても、この雇用の二重構造は解消しないどころか、拡大するだけではありませんか。経済財政大臣の見解をお聞かせください。

 総理、派遣の原則自由化、上限三年への延長など、自由化ばかりしてきた労働者派遣法を全面的に見直すとともに、国際化を言うなら、同一労働同一賃金という国際原則ぐらい我が国も遵守したらいかがですか。見解を伺います。

 昨年暮れ閣議決定した行政改革の重要方針で、政府は、小さくて効率的な政府なるものを掲げております。しかし、昨年度の年次経済財政報告では、「小さな政府とは」と題して、政府支出、国民負担から見た政府の大きさについての説明は多々なされておりますが、ここでも定義づけはなされておりません。それどころか、国民負担率や政府規制の強さなどさまざまな指標を取り上げ、現状の我が国と諸外国とを比較することで、むしろ我が国政府は小さな政府とする論述ばかりが目立っております。

 そこで質問しますが、現在の我が国政府は、大きな政府ですか、小さな政府ですか。現状の政府規模に対する総理並びに財務、経済財政各大臣の見解を伺いたい。また、行政改革の重要方針に言う小さな政府とは、いかなる指標、いかなる定義をもってそのことが言われているのか、この点について総理の見解をお示しいただきたい。

 さらに申し上げれば、一体、小さな政府とは、国民にとっていかなる範囲で行政サービスと責任を負うのか。国民生活に不可欠な分野を民間に開放したあげくが今回のマンション偽装事件であることを考えれば、官から民への勢いに乗って野方図につくられる政府が国民には高い政府となる可能性は、極めて高いものがあります。その意味でも、定義と中央政府の具体像を明確に示すことは総理の責任であり、それなくして国民は理解できません。総理の具体的説明を要求するものであります。

 最後に、この日本列島における過疎集落の現状について質問いたします。

 二〇〇〇年までの十年間におよそ五千の集落が減りました。そのうち半数は中山間地域であります。さらに、耕作放棄地面積に至っては年々拡大し、昨年では約二十二万二千ヘクタールもの貴重な土地が放棄されるに至っております。高齢化による中山間地集落の減少や無人化、それに伴う耕作放棄地の拡大が農業の持つ保水機能など多面的機能を失わせ、それによって下流地域の河川のはんらんや沿岸の侵食を招いております。

副議長(横路孝弘君) 重野安正君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔にお願いいたします。

重野安正君(続) こうした我が国集落の状況を象徴するものと言わなければなりません。

 山林が国土の八割を占める急峻な地形にある我が国の安全を保障する上で、農林業の果たしてきた総合的な役割をもう一度見直す時期ではありませんか。上流域におけるマンパワーの劣化対策を含む総合的な施策の展開を図るべきだと考えますが、総理の具体的対応策を伺い、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 重野議員に答弁いたします。

 堀江氏についてですが、現在捜査当局による捜査が行われているところであり、その状況を見守っていきたいと思います。違法行為があれば厳正に対処すべきことは当然であります。

 なお、この件と、昨年の衆議院総選挙において自民党幹部が堀江氏を応援したこととは別の問題であると考えております。

 ライブドアの今回の事件が、負け組がますます見捨てられる社会を象徴しているのではないかというお尋ねでありますが、私どもが進めている構造改革は、決して弱者を切り捨てるものではありません。自助と自律の精神のもとに、国民一人一人や企業、地域が主役となり、努力が報われ安心して再挑戦できる社会の実現を目指しているものであります。

 これまで、雇用・中小企業のセーフティーネットの確保に万全を期すとともに、新規起業の促進策、構造改革特区や都市再生など地方の意欲や挑戦を尊重した地域経済の活性化策、持続的な制度の構築に向けた社会保障制度改革などに取り組んでまいりました。

 引き続き改革を進めて、地域や多くの国民が持っている潜在力が自由に発揮されて、国民一人一人が将来の夢と希望を実感できる活力ある社会の構築に向けて全力で取り組んでまいります。

 米国産牛肉についてでございますが、先日、危険部位の混入が確認されたため、すべての米国産牛肉の輸入手続を直ちに停止しているところであり、二度とこうしたことが起きることのないよう、国民の食の安全、安心を大前提に、米国に対し、原因究明と再発防止を求めております。

 なお、昨年末の米国産牛肉の輸入再開は、食品安全委員会において科学的な議論を尽くし、国民の意見も聴取した上で取りまとめられた答申を踏まえて決定されたものであり、政治判断による輸入再開決定との批判は当たらないと考えております。

 中国、韓国との外交、アジア外交についてでございますが、豊かで安定したアジア地域の実現は、我が国の安全と繁栄に不可欠であり、引き続きそのために努力してまいります。特に、大事な隣国である中国、韓国との関係について、一部の問題で意見の相違や対立があっても、首脳間を含むあらゆるレベルでの対話を通じ、大局的な観点から協力を強化し、相互理解と信頼に基づいた未来志向の関係を築いてまいりたいと思います。

 良好な日米関係と日中関係及びASEAN関係についてですが、昨年十一月の日米首脳会談では、日米関係が良好であること、これは日本にとって、アメリカにとっても重要なことである、その日米関係の良好の上に中国、韓国、世界各国と協調していくことが日本にとっても大変いいことであるということを私は述べて、日米関係がよければ、あとの関係はどうなってもいいなんということは一言も言っておりません。そういう批判は誤解であり、曲解であります。

 我が国としては、緊密な日米関係の基盤に立ちつつ世界各国との関係を強化していく考えであり、これからも日米同盟と国際協調の基本方針を堅持していくことが日本の利益にかなうものと考えております。

 日米関係と国連重視との関係についてですが、日米両国は、国際社会が直面する諸課題に対し、世界の中の日米同盟との考え方のもとに、世界の国々や国連等の国際機関と協調しながら、協力して取り組んできております。したがって、日米同盟の重視と国連を含む国際機関との協調とは矛盾するものとは思っておりません。

 労働者派遣法については、労働者の保護に欠けることのないよう留意しつつも、引き続き多様な働き方を選択できるようにするための適切な見直しを行ってまいります。

 また、パートタイム労働者の処遇については、正社員との均衡処遇に取り組む事業主への支援の強化や公正な処遇が確保される短時間正社員制度の普及など、だれもが安心して働くことができるような労働環境の整備を進めてまいります。

 なお、同一労働同一賃金を確保するために法規制を強化することについては、労使を含めた国民的合意形成を図りつつ対応していくことが必要と考えております。

 小さな政府についてお尋ねですが、御指摘のように、十七年度の年次経済財政報告においては、GDP比で見た政府支出の規模や潜在的国民負担率は、OECD諸国の中でも低い水準にあると指摘しております。しかし、我が国の公的債務の水準や、少子高齢化の進展によって政府の支出規模や国民負担が今後増大していくことが見込まれることを考えれば、各般にわたる行政改革を徹底し、将来の国民負担の上昇を抑制することが必要であります。

 このため、私は、国の役割を見直し、国が行う必要がないのであれば民間または地方にゆだねることにより、全体として政府の役割を見直すとともに、無駄を徹底的に省いていくという考え方を示す意味で、簡素で効率的な政府を目指すと申し上げてきたところであり、こうした方針をさらにわかりやすく説明するため、政府の規模を大胆に縮減すると申し上げてまいりました。

 このように、小さな政府とは、政府活動の各分野で改革を進めていくことが重要であるとの考え方をわかりやすく説明するためのものであります。

 なお、民間にできることは民間にゆだねるに当たっては、一定のルールが守られ、国民の利益が守られるべきは当然であり、ルール違反があれば厳正に対処するとともに、現行のルールで対応できない場合はルールの見直しを行うこととしております。

 今回、民間開放が進展した建築確認検査事務について、一部の機関において偽装が見過ごされたことはまことに遺憾でありますが、この点についても、指定確認検査機関への立入検査等を行うとともに、建築物の安全性を確保するための制度の見直しについての議論を進めており、民間検査機関に対する指導監督の強化など早急に対応が必要なものについては、今国会において制度の改正を行うことといたします。

 農政については、山林が広範囲である我が国について、農林業は、単に食料や木材の安定供給だけでなく、国土の保全などといった重要な機能を有しております。今後ともこうした機能が引き続き適切に発揮されるよう、意欲と能力のある経営に支援を重点化し、地域における農林業の担い手を育成、確保するとともに、上流域など中山間地域の振興等を強力に進めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 重野議員から三問ちょうだいをいたしております。

 まず、中国、韓国との関係及びアジア外交につきましてのお尋ねがあっておりますが、豊かで安定したアジア地域の実現というのは、我が国の安全と繁栄という意味におきまして不可欠であります。特に、隣国であります中国及び韓国との関係につきましては、これは、一部の意見の相違や対立というものがありましても、あらゆるレベルでの交流を通じ、未来へ向けました友好協力関係を強化していくということは、我が国の揺るぎない基本方針であります。したがいまして、政府としては、両国との間で、大局的な観点に立ちまして、相互理解と信頼に基づく関係を築いてまいりたいと考えております。

 次に、小泉総理の発言についてお尋ねがあっておりますが、総理がお答えになりましたとおり、緊密な日米関係の基盤に立ちつつ、世界各国との関係を強化していくとの考えを述べられたものと受けとめております。また、総理が先ほどお答えにもなりましたとおり、日米同盟の重視と国連を含みます国際機関との協調というものは相互に矛盾しないものと考えております。

 最後に、中国の脅威についてのお尋ねがありました。

 日本としては、中国の経済発展は脅威ではなく好機であるという認識をしており、かかる認識につきましては累次この表明をいたしております。他方、中国の軍事力の近代化や十七年連続二けたの伸びを続けております中国の国防費につきましては、その不透明な部分というものがあり、中国側にその透明性の向上を働きかけているところであります。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 重野議員にお答えいたします。

 まず最初に、所得税の累進性強化についてのお尋ねがございました。

 所得税の税率構造のフラット化による累進緩和は、勤労意欲や事業意欲などへの配慮から行われてきたものであります。

 平成十八年度税制改正においては、所得税から個人住民税への税源移譲に伴い、個人住民税において税率を一〇%にフラット化する一方、所得税においては、所得再分配機能が適切に発揮されるよう、最低税率を五%に引き下げるとともに、最高税率を四〇%に引き上げることにより、より累進的な税率構造を構築することとしております。

 また、今後、公正で活力ある社会にふさわしい税制の実現に向け、税体系全体の抜本改革を総合的に論議する中で、税制全体として国民にどのような税負担を求めることが適当かといった観点から、消費課税や所得課税など各税の果たすべき役割や構造についても、幅広く議論していく必要があると考えております。

 次に、定率減税についてでございますが、定率減税の廃止は、平成十一年に景気対策として導入された、納税者の所得税額の一定割合を一律にカットするという税負担の軽減措置を、経済状況の改善等を踏まえ、もとに戻すものであります。

 これは、結果として、所得水準が低く所得税を納めていない非納税者には税負担が生じない一方、所得水準が一定以上で所得税を納めている納税者には税負担の増が生じることとなることから、定率減税の廃止が再分配機能をさらに低下させるとの御指摘は必ずしも当たらないものと考えております。

 それから、最後に、小さな政府についてでございますが、総理からも御答弁がございましたが、昨年の年次経済財政報告におきましては、政府支出、国民負担等を取り上げて、我が国政府は、現在、諸外国と比べれば小さな政府であるが、多額の公的債務や少子高齢化の進展等により、このままの政策を継続すれば、支出、負担といった面で今後大きな政府に向かうことが予想されるとしています。

 こうした中、将来に向けて、どのように持続可能な制度を確立するかについては、国民にできるだけ具体的な選択肢を示した上で、国民的な議論を積み重ねることが不可欠であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 若年層における雇用の二重構造についてのお尋ねがありました。

 若年層を中心に、フリーター等の非正規雇用が増加していることは、将来の格差拡大要因として懸念されるところであります。こうした非正規雇用の増加は、産業構造が変化している中、企業経営の効率化や労働者側の就業意識の変化によってもたらされるものでありますが、格差拡大を防止するため、正規雇用を望む若年のフリーター等に対する支援など、適切な対策を講じていく必要があると考えております。

 政府としては、フリーターの常用雇用化などを盛り込んだ「若者の自立・挑戦のためのアクションプラン」に基づき諸施策を講じているところであり、今後とも格差の拡大の防止に向け、若年者を初めとした雇用対策に積極的に取り組んでまいります。

 現在の政府が大きな政府なのか、小さな政府なのかについてお尋ねがありましたが、総理、財務大臣の答弁に尽きていると思っております。

 以上です。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       総務大臣    竹中 平蔵君

       法務大臣    杉浦 正健君

       外務大臣    麻生 太郎君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       文部科学大臣  小坂 憲次君

       厚生労働大臣  川崎 二郎君

       農林水産大臣  中川 昭一君

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国土交通大臣  北側 一雄君

       環境大臣    小池百合子君

       国務大臣    安倍 晋三君

       国務大臣    猪口 邦子君

       国務大臣    沓掛 哲男君

       国務大臣    中馬 弘毅君

       国務大臣    額賀福志郎君

       国務大臣    松田 岩夫君

       国務大臣    与謝野 馨君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 長勢 甚遠君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 阪田 雅裕君


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