衆議院

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第7号 平成18年2月16日(木曜日)

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平成十八年二月十六日(木曜日)

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  平成十八年二月十六日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣谷垣禎一君。

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) ただいま議題となりました平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について御説明申し上げます。

 平成十八年度予算においては、一般歳出の規模について、二年連続で前年度の水準以下に抑制するとともに、新規国債発行額についても三十兆円を下回る水準としたところであり、あらゆる分野にわたり歳出を厳しく見直した上で、めり張りのある予算の配分を実現いたしました。

 しかしながら、我が国の財政収支は引き続き厳しい状況となっており、特例公債の発行等の措置を講ずることが必要であります。

 本法律案は、厳しい財政事情のもと、平成十八年度の財政運営を適切に行うため、同年度における公債の発行の特例に関する措置等を定めるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、平成十八年度の一般会計の歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行することができることとするなどの特例措置を定めております。

 第二に、平成十八年度において、電源開発促進対策特別会計の電源立地勘定から二百九十七億円、電源利用勘定から二百九十八億円を限り、一般会計に繰り入れることができることとするとともに、後日、予算の定めるところにより、それぞれその繰入金に相当する額に達するまでの金額を、一般会計から同特別会計の電源立地勘定または電源利用勘定に繰り入れることとしております。

 第三に、平成十八年度において、財政融資資金特別会計法第十五条の規定による財政融資資金特別会計からの国債整理基金特別会計への繰り入れをするほか、財政融資資金特別会計から、十二兆円を限り、国債整理基金特別会計に繰り入れることができることとしております。

 第四に、平成十八年度において、国民年金事業、厚生年金保険事業及び国家公務員共済組合の事務の執行に要する費用に係る国等の負担を抑制するため、国民年金法、国民年金特別会計法、厚生保険特別会計法及び国家公務員共済組合法の特例を設けることとしております。

 次に、所得税法等の一部を改正する等の法律案について御説明申し上げます。

 本法律案は、現下の経済財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向け、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施するとともに、定率減税を廃止し、あわせて法人関連税制、土地・住宅税制、国際課税、酒税、たばこ税等につき所要の措置を講ずるものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、所得税から個人住民税への三兆円規模の本格的な税源移譲に関し、所得税の税率構造を改組するとともに、平成十一年以降、景気対策のための暫定的な軽減措置として継続されてきた定率減税について、経済状況の改善等を踏まえ廃止することとしております。

 第二に、法人関連税制について、民間の研究開発活動を促進する観点から研究開発税制を見直すとともに、産業競争力の向上を図る等の観点から情報基盤強化税制の創設等を行うこととしております。

 第三に、中小企業関係税制について、中小企業の経営基盤の強化を図る観点から、中小企業投資促進税制の対象資産を拡充するとともに、同族会社の留保金課税の見直し等を行うこととしております。

 第四に、土地・住宅税制について、土地取引の活性化を図る観点から土地の売買等に係る登録免許税の特例を創設するとともに、既存住宅の耐震化を促進する等の観点から所得税の耐震改修税額控除制度の創設等を行うこととしております。

 第五に、国際課税について、租税回避行為を防止する等の観点から非永住者の範囲の見直し等を行うこととしております。

 そのほか、酒類の分類の簡素化及び酒類間の税負担格差の縮小、たばこ税の税率の引き上げ、所得税の地震保険料控除の創設、相続税の物納制度等の見直しを行うほか、情報通信機器等に係る投資促進税制の廃止等既存の特別措置の整理合理化を図るとともに、特別国際金融取引勘定に係る利子の非課税制度等期限の到来する特別措置の適用期限を延長するなど所要の措置を講ずることとしております。

 以上、平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

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 平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出)及び所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田村謙治君。

    〔田村謙治君登壇〕

田村謙治君 民主党の田村謙治です。

 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 最近、格差社会という言葉、そして格差社会が生み出すさまざまなゆがみについて、目にすること、耳にすることが多くなりました。小泉総理は、二月一日の参議院予算委員会で、「私は格差が出るのは別に悪いこととは思っておりません。」と述べられています。

 民主主義、資本主義を標榜している我が国において、ある程度の格差が出るのは当然でありましょう。しかしながら、それはすべての人が公平に機会を得られる制度づくりを進め、その中で正当な努力と才覚が報われるようにするということでなければなりません。

 その場合、政府は底を上げる方向での格差是正に取り組まなければならないのですが、小泉改革は全く逆のことを行っています。改革には痛みが伴うと言いながら、郵政民営化など華々しく見える小泉改革の影で、与党や政府の既得権益は温存し、不正による利益を得ている事件が後を絶たず、何の罪もない一般庶民に痛みを押しつける形で格差を拡大させています。

 その典型的な例が、定率減税の廃止です。

 所得税等負担軽減措置法には、その第一条に、抜本的見直しを行うまでの間、所得税法及び法人税法の特例を定めるものとすると明記されております。政府は、近年の税制改正において人的控除を見直すとともに、十八年度税制改正において個人住民税の税率を一〇%にフラット化するなどの税率構造の見直しを進めてきたことが抜本的見直しであるかのように言っています。

 小泉総理が行った人的控除の見直しは、配偶者控除の上乗せ部分廃止で、所得税、住民税合わせ七千三百億円強、老年者控除の廃止で二千二百億円強、公的年金等控除の縮小で千二百億円弱の増税です。人的控除を整理するとともに給付の切り下げを行うだけでは、単なる負担増のオンパレードにすぎません。

 我々民主党も、各種控除の見直し自体は行うべきであると考えています。高所得者に有利な所得税の所得控除よりも、必要な人に対し確実な支援が可能となる給付を中心とする仕組みに変えるべきという考えのもとで、例えば、扶養控除を廃止し、そのかわりに子供一人当たり月額一万六千円の子ども手当を創設する、そういう提案を我々民主党はしております。このような提案こそが、人口減少時代にふさわしい、本当の抜本的見直しではないでしょうか。

 人的控除の見直しによる負担増に加え、定率減税を廃止すれば、中低所得者層の負担が過重になることは目に見えています。それでも、定率減税廃止は問題ないと政府は考えているのでしょうか。明快な答弁を求めます。

 そもそも、抜本的見直しと言うのであれば、所得税のみの見直しではなく、消費税を含めた税制全体を抜本的に見直すべきではないでしょうか。

 年金一元化の議論の際にも、厚生年金と国民年金の統合は困難であると政府は言い、その理由の一つとして、自営業者は所得の捕捉が十分でないということを挙げていました。我々民主党は、納税者番号制度の導入や、消費税にヨーロッパの付加価値税のようなインボイス制を導入することなどを提案していますが、これこそが抜本的見直しであり、クロヨンとも言われる所得捕捉の不公平についての対策は棚上げにして、所得税を少しいじっただけでは抜本的と言うに値しません。

 お金を使う人が払うという意味で、所得税より公平な消費税には手をつけずに、所得税のみを増税するのは、所得が完全に把握されている給与所得者、サラリーマンをねらい撃ちにしたものとしか考えられません。取りやすいところから取るという安易な姿勢が、ますます社会の格差を拡大させるのではないでしょうか。財務大臣のお考えを伺います。(拍手)

 一年余り前のことですが、当時の自民党の与謝野政調会長と公明党の井上政調会長の間で、平成十七年度予算・税制に係る合意が取り交わされました。その合意によって、十七年度においては定率減税の見直しによる増収分の大半を基礎年金の国庫負担に充てることとされました。与謝野大臣は政調会長当時、どのような理念に基づいてこのような合意をなされたのでしょうか。

 当時、総理は、年金についての抜本的改革をしたと強弁をされていましたが、それも、保険料率を引き上げて負担をふやす一方、給付を引き下げるという単なるその場しのぎで、とても抜本的改革にはほど遠いものでした。この見直しさえも、実際の出生率とは異なる数値を前提にした偽計であって、その責任をだれもとっていません。国民年金の保険料不払いが増加の一途であることは、年金の抜本的改革を行っていない政府の怠慢を象徴しています。

 平成十八年度の予算においても、定率減税の廃止による増収分の一部、二千二百億円を基礎年金の国庫負担に充てるとの与党合意がなされたと聞いております。それは、未納や未加入がない給与所得者、サラリーマンにさらなる負担を押しつけ、多くの国民年金の保険料不払いを肩がわりさせるものにほかなりません。政府のお考えを伺います。

 政府は、我々民主党が主張している年金一元化のような本当に抜本的な改革には手をつけずに、抜本的見直し、抜本的改革という言葉でその場しのぎの見直しを粉飾しようとしました。今回の所得税改正を抜本的見直しと言うのも、政府の怠慢をごまかす粉飾ではないでしょうか。(拍手)

 昨年の総選挙で、自民党は、税制改革、年金改革、地方分権、外交など郵政民営化以外の重要な国政課題について、マニフェストには数値目標や達成期限などほとんど具体的な記述はありませんでした。定率減税の廃止について、ことしの一月二十五日、参議院本会議にて我が党の岩本司議員が公約違反であると指摘したことに対して、小泉総理は、これまでの与党税制改正大綱等に既に示していると答弁されました。与党の文書に記載されているから問題ないということであれば、自民党は総選挙マニフェストを何のために出しているのでしょうか。また、既に決定した方針であったのなら、定率減税廃止の有無について我々民主党が選挙中に重ねて問うたにもかかわらず、なぜ自民党は有権者に説明をしなかったのでしょうか。有権者に説明をしなかったどころか、小泉マニフェストには、「所得税については、所得が捕捉しやすい「サラリーマン増税」を行うとの政府税調の考え方はとらない。」とまで記述してあります。これこそ、選挙で自民党株を上げるための風説の流布そのものではないでしょうか。(拍手)

 次に、個人住民税の税率フラット化について伺います。

 個人住民税の税率は、五%、一〇%、一三%の三段階になっていましたが、それを一〇%に一本化します。それは三位一体改革の一環として行われるものです。三位一体改革では、国庫負担率引き下げなど地方の裁量が広がらない形で国庫補助負担金の削除が行われました。つまり、税源移譲が行われても、中央から地方へ権限が移譲されないのであれば、それは三位一体改革と言うに値しません。そのような粉飾の改革に伴う個人住民税の税率見直しは、抜本的見直しと言えるのでしょうか。総務大臣の明快な答弁を求めます。

 次に、消費税率引き上げについてお尋ねします。

 現在、政府・与党内で消費税論議が騒がしくなっています。谷垣大臣は、事あるごとに、消費税率引き上げ反対論を牽制し、来年の通常国会にも消費税率引き上げ法案の提出を目指すべきとの考え方を示しています。その一方で、消費税増税より歳出削減を先行すべきという自民党幹部の方もいらっしゃいます。

 増税よりも歳出削減を先行すべきというのは、かねて我々民主党が主張してきたことです。歳出削減について、行政改革や公共事業の大幅カットなど、三年前の前々回の総選挙のマニフェストから掲げ、昨年の総選挙においても、政府の無駄遣いを徹底的になくすことを一番に約束し、具体的な数値目標を入れた歳出削減計画を示しました。我々民主党から見れば、今ごろになって歳出削減をと言い出すこと自体が遅過ぎるんです。

 先日、防衛施設庁の談合事件は、防衛施設庁幹部の逮捕に発展しました。八年前に防衛庁の背任汚職事件が起こった際、今と同じ額賀防衛庁長官のもとで調達実施本部を解体するなどの改革を行ったはずでしたが、その体質は何ら変わっていませんでした。当時の防止策も見せかけにすぎなかったんです。

 防衛施設庁の役人が、公益法人などの外郭団体に天下りをして、数年後には関連業界に天下りをする。役人と関連業界がぐるになって談合を繰り返してきました。天下りについて規制強化をしたはずが、全くのしり抜けになっていたんじゃないでしょうか。

 我々民主党の予備的調査によって、三千九百八十七の外郭団体に二万二千九十三人もの役職員が天下り、それらの団体に五兆五千三百九十五億円もの補助金などがつぎ込まれていることが明らかになりました。結局は、国民の税金が食い物にされてきたのです。このような実態を放置している今の政権に、徹底した歳出削減ができるとは到底思えません。(拍手)

 まともな歳出削減ができないのに消費税増税を先送りするというのは、単に問題を先送りし、財政再建を棚上げするにすぎないと思いますが、御見解をお伺いいたします。

 最後に、たばこ増税についてもお伺いします。

 この問題は、直接、格差社会とリンクはしていませんが、小泉総理の税制への考え方を如実にあらわしているものと受けとめています。たばこ増税は年末の税制改正の土壇場で盛り込まれました。これは、総理の国債三十兆円枠と公明党の児童手当拡充の双方を両立させるための苦肉の策であり、その結果、何の理念も理屈もなく、取りやすいところから取るという発想のもとで、喫煙者に負担を押しつけることになったのではないでしょうか。たばこ増税の目的は何か、増税幅はどのような理由で決まったのか、明快な答弁を求めます。

 本改正法案における抜本的見直しというのは全くの偽装であって、直ちに構造計算をやり直し、再提出すべきと考えています。

 最後になりましたが、我々民主党は、今国会において、小泉改革が影を生み出した原因を徹底的に明らかにするとともに、格差社会を是正し、ぬくもりのある社会を実現するための本物の改革案を打ち出していくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 田村議員にお答えいたします。

 最初に、人的控除の見直しや定率減税の廃止についてのお尋ねがございました。

 近年の税制改正における諸控除の見直しは、経済社会の構造変化により生じている税制のゆがみを是正して、税負担を広く公平に分かち合うという観点から、配偶者特別控除、老年者控除、公的年金等控除について所要の見直しを行ったものであります。

 定率減税については、平成十一年に景気対策として導入された税負担の軽減措置について、現在の経済状況が導入時に比べ改善していること等を踏まえ廃止することとしたものであり、適切な措置と考えております。

 なお、社会保障制度につきましては、将来にわたり制度を持続可能なものとするため改革に取り組んできたところであります。また、厳しい財政事情のもと、これらの税制の見直しに関連して、基礎年金の国庫負担割合を着実に引き上げるとともに、少子化対策の拡充を図ったところであります。

 それから次に、税制の抜本的見直しに関連して御質問がございました。

 近年の税制改正におきましては、個人所得課税の基本的な枠組みである人的控除や税率構造の見直しを行ってきておりますことから、負担軽減法における抜本的な見直しが行われてきているものと考えております。

 なお、歳出歳入一体改革の一環としての税制の抜本的改革につきましては、経済の状況や財政、年金問題などさまざまな連立方程式を頭に入れながら、消費税のみならず、税制全体の改革について国民的な議論を行っていく必要があると考えております。

 それから次に、基礎年金の国庫負担をどうするかというお尋ねがございました。

 年金制度については、一昨年、長期的な給付と負担の均衡を確保して、持続可能なものとするための重要な改革が行われたものと認識しております。

 基礎年金の国庫負担については、平成十六年年金改正法の附則におきまして、平成十七年度及び平成十八年度において、我が国の経済社会の動向を踏まえつつ、所要の税制上の措置を講じた上で、国庫負担の割合を適切な水準へ引き上げることとされたところであります。

 この規定に基づいて、平成十八年度においては、定率減税の縮減、廃止を踏まえ、三分の一に千分の二十五を加えた率にまで引き上げることとしたところであります。

 なお、定率減税の廃止は、経済状況の改善等を踏まえ、景気対策としての暫定的な税負担の軽減措置をもとに戻すものでございまして、サラリーマンに限らず、自営業者を含めたすべての納税者を対象とするものでありますことから、基礎年金国庫負担割合引き上げに必要な財源負担をサラリーマンに押しつけたものとの指摘は当たらないと考えております。

 それから、消費税率の引き上げについてのお尋ねでございますが、財政再建に向けた取り組みとしては、まず徹底した歳出削減に取り組むことが必要でございまして、平成十八年度予算編成に当たりましても、一般歳出の水準を前年度以下にするとともに、新規国債発行額を三十兆円以下に抑えるなど、歳出改革路線を一段と強化したところであります。

 他方で、GDP比で一五〇%を超える債務残高、金利が上昇した場合の利払い費の増加や基礎年金の国庫負担割合の引き上げに加え、高齢化のもとでの社会保障費の増加圧力等を踏まえれば、歳出削減だけで財政再建が困難なことは明らかでございます。

 政府としては、歳出歳入一体改革について、本年六月を目途に選択肢及び改革工程を明らかにすることとしております。税制の抜本的改革についても、その一環として、国民的な議論を深めてまいりたいと考えております。

 それから最後に、たばこ税の見直しについてのお尋ねでございますが、たばこ税については、現下の極めて厳しい財政事情にかんがみ、国債発行を極力圧縮するための歳出歳入両面における取り組みの一環として、その税率を見直すこととしたものでございます。

 税率の引き上げ幅は、小売価格に占める税負担割合、消費動向、財政事情などを総合的に勘案したものでございます。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 平成十七年度予算・税制に係る合意の理念についてお尋ねがありました。

 平成十七年度予算・税制に係る合意は、平成十七年度税制改正における定率減税の見直しによる初年度の増収分について、一つ、地方交付税率相当分、一つ、特別障害者給付金支給法等による必要相当額を控除した金額を基礎年金国庫負担額に加算することとしたものであります。

 これは、持続可能で安心な年金制度を構築するとの観点から、当時、与党間での真摯な議論を踏まえ、基礎年金国庫負担割合の引き上げに当たって必要な税制上の措置を明らかにしたものであります。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 田村議員から一問、今回の三位一体改革では地方の裁量が広がらないのではないかとのお尋ねがございました。

 まず、今回の三位一体改革でありますが、四兆円を上回る国庫補助負担金を改革し、約三兆円の国から地方への税源移譲を行います。このような税源移譲は、言うまでもなく初めてのことでありまして、地方からも、画期的であり、今後の地方分権を進める上で大きな前進であるという評価をいただいているところでございます。

 一部に補助率引き下げが含まれておりまして、それだけでは地方の自由度は高まらないという指摘も承知をしております。しかし、その一方で、例えば公立保育所運営費でありますとか、学校、社会福祉施設の施設整備費等の一般財源化によりまして、地方みずからの創意工夫と責任で政策を決められる幅は着実に拡大をしております。三兆円の税源移譲の実現による地方の自主財源の強化とあわせて、今回の改革全体として地方分権の進展に資するものであるというふうに考えております。

 言うまでもなく、地方分権に向けた改革に終わりはありません。平成十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、地方団体の意見も聞きながら、さらに地方分権を推進し、真に地方の自立と責任を確立するために努力をしてまいります。(拍手)

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議長(河野洋平君) 三谷光男君。

    〔三谷光男君登壇〕

三谷光男君 民主党の三谷光男です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました平成十八年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 平成十八年度予算は、小泉総理にとって最後の当初予算となり、五回目の予算編成となりました。しかし、その中身を見る限り、小泉総理は何を目指して政権を運営してこられたのか、将来に何を残そうとされているのか、全く不明です。表向きは、一般会計総額で前年度に比べ三%、二・五兆円減の緊縮型になっていますが、その内実たるや、地方への補助金、地方交付税交付金のカットが中心であり、税金の無駄遣いの是正を望む国民の願いとはほど遠いものがあります。

 平成十八年度予算では、総理が就任直後から掲げた国債発行三十兆円枠を初めて実現することになりましたが、これは定率減税の廃止を初めとする国民への負担の押しつけによって得られた税収と、特別会計の積立金、剰余金の繰り入れといった、いわばその場しのぎによって実現されたものであり、国民が望む歳出改革の成果ではありません。

 小泉総理は、このたびの定率減税廃止や配偶者特別控除の廃止、酒税、たばこ税の引き上げ、年金課税の強化など、取りやすいところから取る、個人への負担に偏った増税を繰り返してきました。また、年金保険料はもとより、医療・介護保険料など社会保険料の引き上げを強行し、国民の負担がふえた総額は既に八兆円にも上っています。

 小泉総理は多くの改革を掲げてきましたが、看板倒れ、骨抜きに終わった道路公団民営化や、地方の裁量がふえない展望なき三位一体のような改革ばかりで、これらを通じた国民生活の改善はなく、国、地方の未来は見えません。負担をふやす、給付を減らすばかりを繰り返す社会保障制度の改悪などは国民の不安を高めるばかりです。

 これほど巨額の国民負担増を押しつけてきたにもかかわらず、財政状況は一向に改善をされていません。来年度予算のプライマリーバランスの赤字は約十一兆円と見込まれますが、これは小泉総理就任前の小渕政権下の平成十二年度予算とほぼ同規模にすぎません。就任以来積み上げられた国債発行額は百七十兆円。世界一の借金王として、将来世代に大きなツケを回した責任をどうお考えになられるのでしょうか。政府の明快な答弁を求めます。(拍手)

 個人負担の増大、天文学的な借金に加え、この数年来、国民生活は不安定なものとなり、社会の至るところでさまざまな格差が広がっています。これはまさに小泉改革の影の成果であり、ことしの予算編成でもこれまでの方針が維持されただけだと受けとめております。これまでの財政運営、予算編成について財務大臣はどう受けとめていらっしゃるのでしょうか。率直な答弁を求めます。

 民主党は、我が国の将来像、財政のあり方を示し、小泉政権との基本的な考え方の違いを明確にしていくために、独自の予算案を示しました。

 民主党案は、これまでの予算に見られる一律シーリングそのものを大胆に改革し、徹底的に無駄をなくす、手厚くすべきところは手厚くする考えをベースに、安全・安心が見える十兆円、地域が見える二十兆円、未来が見える三十兆円という三つの理念に基づいた予算編成を行います。

 具体的には、第一に、安全・安心が見える十兆円として、アスベスト総合対策やあかずの踏切対策等、建物、乗り物、食べ物、子供の安全を守る事業、奨学金の貸与等、人への投資を行う事業、子ども手当等、チルドレンファーストの理念に基づく事業、障害者の自立支援など、支援の必要な人には確かな支援を行う事業等に重点配分をします。

 第二に、地域が見える二十兆円として、税源移譲と一括交付金の創設により、大胆な地方分権を行うとともに、中小企業支援など地域経済の活性化に向けた投資を行います。

 第三に、未来が見える三十兆円として、子供や孫に借金をツケ回さないため、国債残高を三十兆円縮小します。

 国民や野党の意見を聞いて最終的に予算を成立させるべきであると私は考えており、政府原案を一行たりとも修正しないのではなくて、民主党予算案や公述人の意見も聞いて、国民のために予算をつくりかえていく姿勢を持つべきであると考えますが、財務大臣、いかがでしょうか。

 特別会計の改革についてお尋ねします。

 民主党は、無駄遣いの温床となっている特別会計に徹底的にメスを入れていきます。その名のとおり、特別な会計を活用することによって既得権を温存しようとする省庁の体質を是正すること。三十一ある特別会計すべてにゼロベースで見直しをかけ、徹底的に無駄遣いを改めていきます。そこにぶら下がる、これまた無駄遣いの温床、官僚の天下り先にもなっている独立行政法人や指定法人にも大胆にメスを入れていきます。

 昨年総選挙の自民党マニフェストでは、非効率な特別会計や特定財源制度について、聖域なく抜本的に見直すと公約をしています。しかし、道路特定財源の見直しだけをとっても、昨年、基本方針こそまとめたものの、最終的な結論は先送りされました。本年六月に最終結論を得るというお話ですが、本当でしょうか。また、その中身として、総理は、暫定税率のまま一般財源化を主張しているとの報道がありますが、それは真意なのでしょうか。

 特別会計改革についても、政府の出した答えはあいまいそのものです。政府案では、登記特別会計など三つの特別会計しか一般会計化を明記しておりません。その他ほとんどの特別会計について、一般財源化を検討、廃止を検討、独立行政法人化を検討、検討、検討といった内容ばかりです。これは、問題を先送りし、抜本的な改革をやる意思がないと断じざるを得ません。(拍手)

 一方で、政府は、財政融資資金特別会計の準備金の国債整理基金への繰り入れや、外為特会、電源特会等の剰余金の一般会計への繰り入れなど、積立金、剰余金の活用を殊さらに言い立てていますが、実際はまだまだ手ぬるい。石油・エネルギー特会の剰余金を初め、繰り入れを図らなければならない積立金、剰余金はまだまだたくさん残っています。

 そして、余ったお金は、苦しい財布に戻すか、国民にお返しをするというのは、いわば当たり前の話で、むしろ肝心なことは、それぞれの特別会計において行われてきた無駄遣いをどう改めていくかということですけれども、中身の無駄遣いには全く手がつけられていないというのが実情です。

 小泉内閣は、この特別会計改革、本気でやる意思があるのでしょうか。あるならば、いつまでに、またどのように行うおつもりなのか、財務大臣、そして経済財政諮問会議担当大臣、それぞれから明快な答弁を求めます。(拍手)

 最後に、年金事務費の負担特例についてお伺いをします。

 年金保険料が社会保険庁の公用車購入費用や宿舎建設費用に充てられていることに対して、国民から強い批判があったことは記憶に新しいところであります。しかし、十八年度予算においても、千十四億円もの年金保険料が社会保険庁事務費に流用をされています。

 一昨年四月に、総理は、衆議院厚生労働委員会で、年金保険料は基本的に年金に充てる、事務費に充てないという指摘を真摯に受けとめるべきだと、そして、より効率化を図らなければならないと答弁をされ、昨年二月十五日の衆議院本会議において、我が党の平岡議員が答弁と実態との食い違いについてただしたのに対し、総理は、国の財政状況を見ながら年金事務費に保険料を充てることも許されると考えており、平成十七年度においても、国の厳しい財政状況にかんがみ、特例措置を継続すると答弁をされました。

 国の財政が厳しいから年金保険料を流用するという考え方は、国民の年金制度への信頼を損なうと同時に、こうした流用を続けること自体、過去になされた答弁での約束のほご以外の何物でもないと考えますが、財務大臣のお考えはいかがでしょうか。明快な答弁を求めます。(拍手)

 さらに、国民から強い批判のあった職員宿舎や公用車などの経費は国庫負担としていますが、国庫負担であれば職員宿舎や公用車に金をかけてもいいという話ではありません。

 先般、民主党の要請に基づく、公益法人等における国家公務員の天下りと補助金等の交付状況に関する予備的調査の結果が出ました。結果の概要は、天下り先団体三千九百八十七団体、天下り役職員数二万二千九十三人、天下りの役員数八千八百八十四人、この天下り先団体への補助金等交付額の総計は、何と五兆五千三百九十五億円です。

 悪評高い社会保険庁の関係分だけ拾い上げても、団体数百十三団体、天下り役職員数七百一人、うち天下り役員数二百九人、天下り先への補助金等交付額の総計は六十六億八千七百万円です。まさに役人天国です。

 この実態を見て、国民は社会保険庁事務費の保険料からの流用を許すんでしょうか。豪華な職員宿舎の費用や公用車の使用を税金から使うことを許すんでしょうか。

 また総理は、効率的で厳正な予算の執行を図り、国民の信頼を損なうことがないよう努めるとも答弁をされていますが、平成十八年度予算では、前年度よりも八十一億円も保険料からの流用がふえています。なぜでしょうか。効率的で厳正な執行に努めながら、なぜふえなければならないのか、財務大臣、教えてください。

 民主党はこれまで、政府の予算案に対し、国民が本当に願う予算づくりのためにさまざまな指摘をしてまいりました。無駄遣いをきちんと是正できる、国民が本当に願う予算を、未来が見える予算をつくることができるのは民主党だということを最後にお訴えして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 三谷議員にお答えいたします。

 まず、小泉内閣における国債発行額及びこれまでの財政運営、予算編成、さらには社会格差等に関してお尋ねがございました。

 近年、国債発行額が多額となっている主たる要因は、高齢化の本格的な進展による社会保障関係費の増加や、あるいは景気の低迷に対応するための減税などであると考えておりまして、三谷議員もよく御承知のところでございます。

 しかしながら、これまで小泉内閣においては、景気対策としての財政出動を求める議論もある中で、さらに国債を増発しないで済むよう、簡素で効率的な政府を目指して徹底した行財政改革を行ってまいりました。そして、財政健全化に向けまして、公共事業費を約四割削減するなど、十三兆円を上回る歳出改革を断行いたしました。また、税制改正についても、景気状況や経済社会の構造変化に対応して適切な措置を講じてきたところでございます。

 さらに、十八年度予算におきましても徹底した無駄の排除に取り組みまして、一般歳出の水準を二年続けて前年度以下にするとともに、歳入面からの取り組みも行いました結果、一般会計の基礎的財政収支は三年連続で改善いたしました。それから、民主党が去年の夏のマニフェストで二〇〇八年度予算において実現するとされておりました国債発行額三十兆円未満、これも二年前倒しして実現したところでございます。

 しかしながら、膨大な債務を抱えます我が国財政が極めて厳しい状況にありますことは変わりなく、引き続いて財政構造改革に対する政府の断固たる取り組み姿勢を示す必要がございます。

 このため、政府としては、歳出歳入一体改革について、六月を目途に選択肢及び改革工程を明らかにすることとしておりまして、税制の抜本的改革についても、その一環として国民的な議論を深めてまいりたいと考えております。

 なお、社会格差についての御指摘がございましたが、構造改革を進めるに当たりましては、意欲や能力が最大限に発揮できる、やり直しの可能な社会を築いていくことが重要でございまして、機会の均等が確保されるように留意する必要があると考えております。

 それから次に、民主党の予算案や公述人の意見も聞いて予算を成立させるべきだとのお尋ねがございました。

 平成十八年度予算は、医療制度改革、三位一体改革などさまざまな改革の成果を反映するとともに、予算執行実績の精査等に基づきまして、歳出全般を厳しく見直すとの考え方に立って編成したところでございます。

 こうした努力によりまして、先ほど申しましたように、一般歳出を二年連続で前年度の水準以下に抑制いたしますとともに、国債発行額を三十兆円を下回る水準とするなど、歳出改革路線を堅持、強化いたしました。

 その一方で、政府案には、防災対策や学校の安全対策等、国民生活の安全、安心の確保に関する経費、我が国の発展の基盤となる科学技術振興に関する経費、子育て支援に関する経費など、国民生活において必要不可欠な経費を適切に計上しているところでございます。

 政府としては、現在の政府案が最善のものと考えておりますが、政府案については、現在、予算委員会において活発な御議論がなされております。今後、公述人からの御意見もちょうだいした上で、速やかに御審議をいただいて、一日も早い成立を目指すことが必要であると考えております。

 なお、民主党予算案につきましては、具体的内容が必ずしも、私ども十分明らかに承知をしておりませんので、評価を行うことは差し控えさせていただきたいと思います。

 それから、道路特定財源の見直しについてお尋ねがございました。

 道路特定財源の見直しにつきましては、昨年末に取りまとめられた基本方針におきまして、「現行の税率水準を維持する。」「特定財源制度については、一般財源化を図ることを前提とし、」「歳出・歳入一体改革の議論の中で、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得つつ、具体案を得る。」とされているところであり、今後この基本方針に基づいて見直しを進めてまいります。

 それからさらに、特別会計改革についても御議論がございました。

 特別会計については、それぞれの設置趣旨にまでさかのぼってゼロベースで見直しを行って、その結果を行政改革の重要方針に盛り込んだところでございます。具体的には、今後五年を目途に、特別会計の数を現行の二分の一から三分の一程度に大幅に削減し、明治二十三年の制度発足以来最少とするとともに、今後五年間において合計約二十兆円程度の財政健全化への貢献を目指すこととしております。

 その第一歩として、十八年度予算におきましては、歳入面において財政健全化に資するため、合計十三兆八千億円の積立金、剰余金を活用するほか、歳出面におきましても、特殊法人等への財政支出を千九百九十九億円削減するなど、着実に成果を出しているところでございます。

 政府としては、改革案に沿って、十八年度予算を第一歩として着実に改革を推進してまいります。

 次に、年金事務費の負担の特例措置について、その考え方と保険料負担の増加要因についてお尋ねがございました。

 年金事務費の費用負担については、雇用保険等では保険料を事務費に充てていること、それから、年金事務費は年金給付に要するコストであることから、給付と負担の関係を明確化する観点から保険料で負担すべきとの考え方もあること、こういったこと等にかんがみまして、厳しい財政状況を踏まえて、年金事務費に保険料を充てることとしたところでございます。

 また、年金事務費の国庫負担と保険料負担の区分については、平成十七年度予算において国会等での議論も踏まえて見直したところでございまして、平成十八年度予算においても同様の区分としているところでございますが、保険料負担は平成十七年度予算に比べ八十一億円増加しております。これは、社会保険オンラインシステムの見直しや、先般の年金制度改正に伴うシステム開発等のためのシステム関係経費が大幅に増加していること等によるものでございます。

 いずれにしても、年金事務費については、保険料で賄うにせよ、税金で賄うにせよ、いずれも国民の負担によって賄われるものである以上、無駄遣いは許されないことは当然でございまして、適切かつ効率的な執行を図ること等によりまして国民の信頼を高めることが重要だと考えております。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 特別会計についてお尋ねがありました。

 特別会計改革につきましては、政府、与党双方において検討が進められ、昨年末に閣議決定された行政改革の重要方針に、「特別会計改革の方向性」及び「特別会計改革の具体的方針」が盛り込まれたところであり、これに基づき、今後五年を目途に改革を完了するものと承知しております。

 経済財政諮問会議におきましては、特別会計改革は重要な課題の一つと認識しており、歳出歳入一体改革の審議の中で、引き続きさらに検討を深めてまいりたいと考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 石井郁子君。

    〔石井郁子君登壇〕

石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等の改正案及び公債発行特例法案について質問します。(拍手)

 まず最初に、所得税、住民税の定率減税の廃止についてです。

 自民党は、昨年の総選挙の際、「「サラリーマン増税」を行うとの政府税調の考え方はとらない。」と政権公約に掲げました。にもかかわらず、今回の所得税法等改正案に所得税、住民税の定率減税の全廃を盛り込みました。二年間で三兆四千億円の大増税です。これは、明らかに公約違反ではありませんか。

 小泉総理は、定率減税は自営業者なども対象とした減税だからサラリーマン増税ではないと言いますが、こんな詭弁は通用するものではありません。まさか、増税はないと信じた国民が悪いとでも言うのですか。答弁を求めます。

 そもそも、所得税、住民税の定率減税は、小渕内閣時代に、経済的危機を打開するための恒久的減税として、法人税の税率引き下げ、所得税最高税率の引き下げとともに実施されました。にもかかわらず、所得税、住民税の定率減税だけが全廃されることにも国民は大きな疑問を感じています。

 今、大企業は、史上最高と言われる収益を上げています。二〇〇六年三月期、上場企業の経常利益は、三期連続で最高を更新することが確実と言われています。しかし、多くの国民は景気回復を実感できず、所得の低下が続いています。サラリーマン世帯の年収は、一九九七年と比べて八十七万円も減少しているのです。景気回復を理由にするのなら、所得税の最高税率引き下げと法人税の税率引き下げこそが廃止されるべきではないでしょうか。答弁を求めます。(拍手)

 第二に、大企業への優遇税制の問題です。

 大企業に対しては、恒久的減税だけでなく、連結納税制度の導入や研究開発減税などの減税を行ってきました。本法案は、国際競争力を理由に、研究開発減税を継続し、情報基盤強化のために新たな減税を創設するなど、大企業減税を温存しています。小泉内閣は、国民には自己責任を求めますが、大企業には求めようとしません。史上最高の収益を上げ、潤沢な資本を持つ企業にとって、研究開発や設備投資は、まさに自己責任でやるべきことではないでしょうか。

 さらに、研究開発減税は、毎年多額の研究開発を行う大企業に、最大二〇%もの法人税を軽減するものです。このような一部の大企業への減税の大盤振る舞いが、果たして多くの日本企業の研究開発や情報基盤強化の投資につながるのでしょうか。

 小泉総理は、税制改正は増減税だけを見るのではなく、持続的な経済の活性化を考えなければならないと言います。しかし、企業減税はそもそも赤字法人には適用されません。莫大な利益を上げている企業だけが優遇されることになるのです。これでは、経済活性化ではなく、富める企業の活性化策ではありませんか。大臣の答弁を求めます。

 第三に、小泉内閣の税制改革についてお聞きします。

 小泉内閣は、二〇〇二年の骨太の方針で、あるべき税制を打ち出しました。しかし、この間進められてきた税制改革は、配偶者特別控除の縮小や高齢者向け控除の縮小など、庶民への負担をふやし続けるものでした。小泉内閣五年間の庶民増税の結果、ことしで年間約三兆五千億円もの増税になります。結局、あるべき税制とは、庶民増税、大企業減税を目指すものではありませんか。

 今国会、格差社会、所得の格差が重要な焦点となっています。生活保護世帯は六十三万から百三万世帯に増大し、教育扶助、就学援助を受けている児童生徒は十年前の六・六%から一二・八%にふえているのです。所得の格差を縮小する役割を果たしているのが社会保障と税制です。大臣は、現在の税制による所得再分配機能は十分機能していると考えているのでしょうか。小泉内閣が進める税制改革とは、所得の格差を一層拡大するものではありませんか。答弁を求めます。

 第四に、消費税の問題です。

 財務大臣は、六月をめどにまとめる歳出歳入一体改革で、消費税について、二〇〇七年の通常国会に法案を出せるようにするのが一つの目標だろうなどと、事あるたびに消費税増税に強い意欲を示しています。そもそも消費税は、低所得者にずしりと重い逆進性の強い税であり、再配分機能にマイナスの影響を持つ税制です。この消費税を増税すれば、所得格差はますます広がるではありませんか。見解を求めます。

 また、少なくない中小零細業者が消費税を転嫁できず、身銭を切っています。本日、改正消費税による個人事業者の最初の確定申告が始まりました。消費税の免税点を売り上げ一千万円に引き下げたことにより、消費税を納められず廃業する業者が多く出ることが懸念されています。財務省は、この問題について調査したのでしょうか。転嫁できない業者はどのようにすればいいと考えているのか、答弁を求めます。

 最後に、公債発行特例法について質問します。

 小泉内閣は、二〇〇六年度予算において国債発行を三十兆円以内に抑えたことを自賛していますが、これは、定率減税の廃止や医療改悪、地方交付税の削減など、国民と地方自治体に負担をかぶせた結果にすぎません。小泉内閣が在任中の五年間に発行した新規財源債は、総額百七十一兆円にも及びます。

 本日、神戸空港が開港しますが、日本共産党は、無駄と浪費の大型公共事業や大企業、大金持ちへの減税が、財政悪化の重要な原因になったと考えます。財政再建には、歳出の浪費に抜本的にメスを入れ、大企業の優遇税制を見直し、税財政のゆがみを改めることが必要ではありませんか。

 以上、財務大臣の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 石井議員にお答えいたします。

 まず、定率減税の廃止についてでございますが、定率減税の廃止は、経済状況の改善等を踏まえまして、景気対策としての暫定的な税負担の軽減措置をもとに戻すものでございまして、サラリーマンに限らず、自営業者を含めたすべての納税者を対象とするものでございますから、いわゆるサラリーマン増税とは異なりまして、公約違反、または詭弁である、こういった御指摘は見当違いであろうと考えております。

 それから次に、所得税の最高税率と法人税率の引き下げについてのお尋ねがございました。

 平成十一年度の税制改正において実施されました個人所得課税の最高税率及び法人課税の実効税率の引き下げにつきましては、勤労意欲に対する配慮あるいは国際化の進展といった経済社会の構造変化への対応として、抜本的な税制改革を一部先取りする形で実施されたものでございまして、単純な景気対策である定率減税とは位置づけが異なるものでございます。

 したがって、定率減税を廃止するなら、これらの税率の引き下げこそ廃止されるべきだという御指摘は当たらないと考えております。

 それから、企業関係の税制改正についての御議論でございますが、今般の税制改正法案におきましては、研究開発税制の上乗せ措置やIT投資促進税制を今年度限りで廃止するなど、企業関係の政策税制を大幅に整理することとしておりまして、大企業優遇といった御批判は当たらないと考えております。

 他方、本法律案には、中小企業対策、あるいは民間の研究開発の促進、情報システムの安全性向上、こういったことに関するさまざまな政策税制を盛り込んでおります。こうした施策を通じて、中小企業を含む企業部門が活性化されることは雇用や所得環境の改善にもつながって、経済全体の活性化に資するものと考えているところでございます。

 それから、税制改正と格差ということについて御議論がございました。

 近年の税制改正におきましては、経済社会の構造変化によって生じているゆがみを是正し、税負担を広く公平に分かち合うという観点から、配偶者特別控除、それから老年者控除、あるいは公的年金等控除について、所要の見直しを行っております。

 所得の再分配機能については、税制等の歳入面のみならず、社会保障等の歳出面も含め政策全体としてどのような措置が講じられているかについて総合的に検討する必要がございます。

 今後の税制改正におきましては、歳出面も含めた政策全体としての所得再分配機能のあり方にも留意しながら、公正で活力ある社会にふさわしい税制の実現に向けて、消費税、所得税、法人税、資産税など税体系全体の改革について、国民的な議論を深めてまいりたいと考えております。

 それから、消費税は逆進性があるじゃないかという御指摘でございますが、少子高齢化が進展する中で、持続可能な社会保障制度を確立して国民の将来不安を払拭する、これは極めて重要な課題でございます。消費税は、あらゆる世代が広く公平に負担を分かち合う税でございますとともに、社会保障を初めとする公的サービスを安定的に支える歳入構造をつくっていく上で極めて重要な税であると考えております。

 所得再分配の問題は、先ほども申しましたが、消費税だけではなく、所得税を初めとする税制全体、さらには社会保障制度等の歳出面を含めた財政全体のあり方を議論する中で、幅広く議論していかなければならないと考えております。

 それから、中小事業者の消費税の転嫁等の問題についてお尋ねがございました。

 消費税は、消費一般に広く公平に負担を求める税の性格から、価格への転嫁を通じて最終的には消費者に負担をお願いする税でございますが、こういう税の性格を踏まえまして、消費税の正しい転嫁のあり方についての認識が事業者及び消費者の間により一層浸透するように、広報、相談、指導を行ってきたところでございます。

 消費税の事業者免税点の引き下げは、消費税に対する国民の信頼性や制度の透明性を向上させるという観点から実施したものでございまして、円滑かつ適正な価格への転嫁が行われるよう、引き続き、関係省庁と協調しながら、広報、相談、指導に努めてまいりたいと考えております。

 それから、最後に、財政再建のために税財政のゆがみを是正すべきではないかというお尋ねがございました。

 財政健全化に向けて、まずは徹底した無駄の排除が必要であるという認識のもとに、これまで小泉内閣では、公共事業費を約四割削減する等、十三兆円を上回る歳出改革を断行してまいりました。また、先ほども申し上げたところでありますが、十八年度予算におきましても、一般歳出の水準を前年度以下にするとともに、新規国債発行額を三十兆円以下に抑えるといった歳出改革路線を一段と強化したところでございます。

 また、税制面では、景気状況や経済社会の構造変化に対応して適切な措置を講じてまいりました。十八年度の税制改正におきましても、経済状況の改善等を踏まえまして、個人及び企業に対する減税措置を大幅に整理する一方で、中小企業関係税制を拡充するなど、適切な措置を講ずることとしております。

 今後、持続的な経済活性化を実現していく上で財政がその足かせとならないようにするためには、引き続き財政構造改革に対しまして政府の断固たる取り組み姿勢を示す必要がございます。本年六月に示す歳出歳入一体改革の選択肢などの取りまとめに向けて、精力的に議論を行ってまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  竹中 平蔵君

       財務大臣  谷垣 禎一君

       国務大臣  与謝野 馨君

 出席副大臣

       財務副大臣 竹本 直一君


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