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第8号 平成18年2月17日(金曜日)

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平成十八年二月十七日(金曜日)

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  平成十八年二月十七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 竹中総務大臣の平成十八年度地方財政計画についての発言並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明並びに質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の発言(平成十八年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、平成十八年度地方財政計画についての発言並びに内閣提出、地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。総務大臣竹中平蔵君。

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 平成十八年度地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨について御説明申し上げます。

 まず、平成十八年度地方財政計画の概要について御説明申し上げます。

 極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、累次の経済財政運営と構造改革に関する基本方針等に沿って、歳出全般にわたり厳しく見直しを行い、その抑制に努めております。一方、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額を確保することを基本としております。

 引き続き生ずる財源不足については、特例地方債の発行、一般会計からの加算等により補てんすることとし、地方財政の運営に支障が生じないようにしております。

 さらに、三位一体の改革による国庫補助負担金の改革に対応し、所得譲与税による税源移譲の措置を講じております。

 以上の方針のもとに、平成十八年度の地方財政計画を策定いたしました結果、歳入歳出の規模は八十三兆千五百八億円となり、前年度に比べ六千百七十九億円、〇・七%の減となっております。

 次に、地方税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 現下の経済財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するためのあるべき税制の構築に向けた改革の一環として、個人の所得課税に係る国から地方公共団体への税源の移譲を行うための個人住民税の税率の見直し、定率減税の廃止、土地及び住宅に係る不動産取得税の税率の引き下げ措置の延長、平成十八年度の固定資産税の評価がえに伴う土地に係る固定資産税及び都市計画税の税負担の調整、地方のたばこ税の税率の引き上げ等の措置を講ずるほか、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととし、あわせて所得譲与税の増額等について所要の改正を行うこととしております。

 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成十八年度分の地方交付税の総額につきましては、一般会計から交付税特別会計への繰り入れ等により、十五兆九千七十三億円を確保するとともに、普通交付税の算定のための単位費用の改定等を行うほか、児童手当特例交付金の創設、退職手当債の拡充、首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備に係る財政上の特別措置の延長、地方公務員共済組合の事務に要する費用に係る地方団体の負担の特例措置の延長等を行うため、関係法律を改正することとしております。

 以上が、地方財政計画の概要並びに地方税法等の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

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 国務大臣の発言(平成十八年度地方財政計画について)並びに地方税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの地方財政計画についての発言及び二法律案の趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。やまぎわ大志郎君。

    〔やまぎわ大志郎君登壇〕

やまぎわ大志郎君 自由民主党のやまぎわ大志郎です。

 私は、自由民主党並びに公明党を代表して、ただいま議題となりました平成十八年度地方財政計画、地方税法及び地方交付税法について質問いたします。(拍手)

 初めに、市町村合併の推進について伺います。

 日本は、戦後六十年間、目覚ましい発展を遂げ、名実ともに先進国の一員となりました。しかし、日本の発展はこれで終わりではありません。私たちの生活をより豊かなものにするためには、最も身近な行政主体である市町村が中心になって、よりきめ細かな行政サービスを行う必要があります。

 また、国、地方ともに極めて厳しい財政状況にあり、地方自治体全体で平成十七年度末には二百兆円を超える借金を抱えると見込まれています。財政再建を図るためには、地方においても一段と効率的な行政体制を実現する必要があります。

 この流れに沿って市町村合併が進められ、平成十一年三月末に三千二百三十二であった市町村が、今年度末には千八百二十一になるとの見込みですが、これでもまだまだ不十分だと考えます。

 地方分権の推進と、国と地方を通じた財政再建には、地方自治体の体力が絶対に要求されます。三位一体の改革とともに、改革の前提条件として、地方自治体の合併をさらに進める必要があると考えますが、大臣の所見を伺います。

 次に、三位一体の改革について伺います。

 十八年度予算によって三位一体の改革に一つの区切りがつきました。三兆円の税源移譲が行われたことは、地方分権を進める上で画期的な改革であったと考えます。しかし一方で、補助金改革については、義務教育費国庫負担金、児童手当、児童扶養手当など、補助率のカットが多くを占め、地方からは自由度が高まっていないとの声もあります。

 言うまでもなく、三位一体の改革は、地方分権を進めるための改革でなくてはいけません。地方でできることは地方にとのキャッチフレーズのもと、地方の自由度を高めることが今回の改革の目的であったはずです。補助率をカットするだけでは、国が地方をコントロールする実態は変わらず、地方の自由度は高まっていないとも考えられますが、大臣の所見を伺います。

 次に、三位一体の改革の一つである交付税改革について伺います。

 地方交付税は、三位一体の改革を進める中で、ここ数年大幅に減少してきました。平成十六年度は、いわゆる三兆円ショックと言われる三兆円もの交付税削減が行われ、地方自治体が予算編成に大変苦慮し、悲鳴が上がったということもありました。

 三位一体の改革が始まってから、交付税は、この三年間で、交付税の身がわりとも言える臨時財政対策債も含めて、五・一兆円も減少しました。この努力により、国、地方のプライマリーバランスがここまで改善してきたのは事実です。

 しかし、国の財政再建のためには、さらに交付税を減らす必要があるとの意見もあります。国の財政再建のためだけに交付税を減らすということでは、地方からの反発もあります。実際、既に地方からは心配の声が上がっています。総務大臣は、今後の地方交付税の総額見通しについてどうお考えか、所見を伺います。

 次に、地方分権の今後について伺います。

 三位一体の改革は一つの区切りをつけましたが、地方分権の推進が終わりを告げたわけでは当然ありません。地方自治体からは、三位一体の改革その二ともいうべき、さらなる改革を求める声があります。

 総務大臣は、これからの地方分権のあり方、それを踏まえた地方財政のあり方について研究会を設置したと聞いています。今後、地方行財政のさらなる分権を目指して、どのように検討を進めていくのか、伺います。

 次に、三位一体の改革の最大の成果である税源移譲について伺います。

 今回の所得税から個人住民税への税源移譲によって、個人住民税の税率は一〇%のフラット税率になると聞いています。応益性を重視した個人住民税の特性から考えれば、望ましい改革であると思います。しかし、低所得者の税率が上がることから、弱い者に対する増税ではないかとの誤解に基づいた声も聞かれます。また、税源移譲によって地域間の経済格差が広がるのではないかとの声も上がっています。税源移譲は、国、地方を合わせれば増減税のないものと認識しておりますが、これらの声に対し、具体的に税負担の調整をどのように行うのか、伺います。

 最後に、三位一体の改革は、単に地方自治体の財政を抑制するものではなく、地方分権の理念に沿って、地方の自由度とそれに伴う責任を拡大するとともに、地方自治体の行財政改革を促進する方向でなければいけません。全国の各地方自治体の懸命な努力と相まって、大きな成果を上げ、地方分権のさらなる推進につながることを期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) やまぎわ議員から五問、質問をいただきました。

 まず、市町村合併の推進についてであります。

 地方分権を推進する上で、住民に最も身近な総合的な行政主体であります市町村の規模、能力を充実していくことが重要であると思っております。また、国、地方を通じた厳しい財政状況のもと、市町村の行政をより効率的なものとするため、その行財政基盤を強化していくことが不可欠でございます。

 旧合併特例法のもとで、市町村合併は相当程度進展をいたしましたが、地域ごとの進捗状況にはなおかなりの差異が見られると思っております。こうしたことから、引き続き市町村合併を積極的に推進してまいります。

 次に、補助金改革の中には補助率をカットしただけのものもあり、地方の自由度は高まっていないのではないかとのお尋ねがございました。

 まず、今回の三位一体改革では、四兆円を上回る国庫補助負担金を改革し、約三兆円の国から地方への税源移譲を行います。こうしたことは初めてのことであり、地方からも、画期的であり、今後の地方分権を進める上で大きな前進であるとの評価をいただいております。

 一部に補助率引き下げが含まれており、それだけでは地方の自由度は高まらないのではないかという声もございます。その一方で、例えば、公立保育所運営費や学校、社会福祉施設の施設整備費等の一般財源化によりまして、地方みずからの創意工夫と責任で政策を決められる幅も着実に拡大しております。三兆円の税源移譲の実現による地方の自主財源の強化ともあわせて、今回の改革全体として地方分権の進展に資するものと考えているところでございます。

 次に、地方交付税の総額の見通しはどうかというお尋ねがございました。

 三位一体の改革を進める中で、交付税総額は、臨時財政対策債を含めまして、平成十六年度から十八年度にかけて五・一兆円の抑制をしております。これは、三年間で地方一般歳出を四・一兆円抑制するなど、地方が行財政改革に懸命の努力をしてきたことによるものであるというふうに思っております。

 御指摘のように、国の財政再建のために交付税を減らそうという意見があるとすれば、それだけでは決して地方の理解は得られないというふうに思います。交付税は、国、地方間のいわば中間的な支出であって、最終的な政府支出ではございません。国の立場だけから交付税削減のみを主張するのは建設的な議論とは言えないと思っております。

 二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の黒字化に向けて、国と地方が歩調を合わせて歳出歳入一体改革を進めることが必要であります。総務省としては、この議論と整合を図りつつ、交付税等の地方財政に対する予見可能性を高め、地方団体が財政運営をしていく上での指針となるように、中期地方財政ビジョンの策定に取り組んでまいる所存でございます。

 次に、今後の地方行財政の分権についてお尋ねがございました。

 地方分権に向けた改革に終わりはないとの認識のもと、平成十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、さらに地方分権を推進して、真に地方の自立と責任を確立するための取り組みを行ってまいります。

 このため、先般設置した地方分権二十一世紀ビジョン懇談会において、地方の自由度を拡大し、責任を明確化する観点から、今回の三位一体の改革後の将来の地方分権のあるべき姿を見据えながら、地方行財政制度について幅広く議論していきたいと考えているところでございます。

 この中では、道州制も視野に入れた国と地方の役割分担の抜本的な見直し、自由度の拡大や国の関与の縮小、これらを踏まえた地方税財政制度のあり方等の議論を深めまして、地方分権のさらなる推進に努めてまいりたいというふうに思っております。

 最後に、税源移譲についてのお尋ねでございます。

 税源移譲に当たりましては、住民税を累進税率から比例税率にすることにより、地方団体間の税源の偏在を縮小することとしているところでございます。

 また、国税から地方税に移譲する際に、人的控除額の差や住宅ローン控除の減少によって納税者の負担がふえることのないように、所得税の税率を設定するとともに、住民税における減税措置を講じ、税負担の調整をすることとしております。

 以上、やまぎわ議員に御答弁申し上げます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 福田昭夫君。

    〔福田昭夫君登壇〕

福田昭夫君 民主党の福田昭夫です。

 また残念な事件が起きました。滋賀県長浜市で幼稚園児が殺害されました。被害に遭われたお子さんたちの死を悼み、御冥福をお祈り申し上げますとともに、御両親を初め御親族の方々、関係者の方々に心からお悔やみを申し上げます。緊急の対策だけではなく、抜本的な対策が必要だと痛感をいたしております。

 それでは、質問に入ります。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の地方税法等の一部を改正する法律案、地方交付税法等の一部を改正する法律案、地方財政計画について質問します。(拍手)

 冒頭、本法案とも密接な関係にあり、我が国の地方分権の将来に大きな影響を与えている三位一体改革について質問します。

 小泉総理は、昨年十一月の三位一体改革の政府・与党合意によって、四兆円の国庫補助負担金改革と三兆円の税源移譲を達成したと成果を誇っているように見受けられます。

 しかし、政府の三位一体改革は、補助金の国庫負担率を引き下げるという数字合わせにすぎません。結果的には、霞が関の権限は維持され、地方の自由度はふえません。国の方から見れば、例えば、これまで二分の一を負担して行使していた権限を三分の一の負担でできるのですから、従来よりも効率よく国が地方を支配できることになりました。十年前なら大いに称賛されるところでありますが、地方分権の時代を迎えた今日、このような数字合わせを改革と呼ぶのは欺瞞以外の何物でもありません。(拍手)

 政府の三位一体改革は、なぜ地方分権とはほど遠い結果に終わったのでしょうか。それは、小泉総理に、国と地方それぞれの役割は何か、地方分権によって国と地方のあり方をどのように変えるのかといった地方分権の理念がなかったからです。さらに申し上げると、ただ小さな政府というだけで、国民を幸せにするためにどういう国にするのかというビジョンがなかったからです。

 三位一体改革によって国と地方のあり方の何が変わったのか、官房長官に答弁を求めます。

 次に、平成十九年度以降の政府の地方分権政策について質問します。

 平成十四年の登場から現在に至るまで、我々は、三位一体改革には改革の全体像が示されていないと繰り返し批判してきました。そして、我々の批判に対し、総理はこの間ずっと、平成十八年度までの改革を具体化してから考えるという逃げの答弁を繰り返しています。

 しかし、三位一体改革の政府・与党合意、平成十八年度予算案、地方税法改正案などを通じて、曲がりなりにも平成十八年度までの案は示されました。そうである以上、平成十八年度までの改革を具体化してから考えるという小泉発言は、無責任きわまりない答弁です。

 官房長官に、改めて、平成十九年度以降どのような改革を行おうとしているのか、お尋ねします。

 また、去る一月二十七日の総務委員会で、私が第二期の三位一体改革についてお尋ねしたところ、竹中総務大臣は、第一期の延長線で補助金削減、税源移譲、交付税改革を続けるということはなかなか難しいと答弁されました。総務大臣は、三位一体改革の限界を認め、第二期改革はこれまでと違う形での改革を行おうと考えているのか。改めて二期改革の具体策についてお尋ねいたします。

 地方分権を進めるためには、何よりも、地方が自由に使える財源を確保することが必要です。三位一体改革では、三兆円が税源移譲されることになりました。しかし、地方はこれでは十分ではありません。地方六団体は、平成十九年度以降の改革において、国から地方へ三・六兆円を税源移譲することを提案しています。それは、消費税五%のうち地方消費税分を、現行の一%から二・五%に引き上げるというものです。この地方六団体の案について、総務大臣はどのように考えますか。答弁を求めます。

 また、小泉総理は、道路特定財源について一般財源化を前提に見直すとの方針ですが、国だけでなく地方においても、自動車重量譲与税などの使途の制限を外し、地方が自由に使える財源とすることについて検討する考えはないのでしょうか。総務大臣の答弁を求めます。

 もう一つ指摘しておかなければならないものに、交付金化の改革があります。

 三位一体改革の国庫補助負担金改革では、税源移譲に結びつく改革のほかに、補助金の交付金化の改革なるものが行われました。交付金化は、霞が関の補助金の窓口を一本化し、地方の使い勝手をよくするものだとのふれ込みで、その対象額は、何と七千九百四十三億円と巨額なものです。しかし、その実態は羊頭狗肉の典型です。

 問題とされる代表的な例が、国土交通省、農林水産省、環境省の三つの役所の補助金を内閣府の地域再生本部のもとに統合した地域再生交付金です。内閣府は実質的な調整権限を持たず、本来の担当である三省庁にお伺いを立てなければならないため、結局、地方は四つの役所と折衝しなければならなくなりました。

 そもそも、交付金化は、地方六団体が、地方の自由度が高まることはないのでやめてほしいと強く要望していたことです。このような改悪を政府は交付金化の改革と呼んでいます。地方が反対している交付金化を今後も続けるのか、財務大臣の答弁を求めます。

 次に、地方交付税改革について質問します。

 平成十八年度の地方財政計画では、地方交付税が前年度に比べて九千九百六億円削減されています。三位一体改革の期間を通じては、約五・一兆円も削減されました。

 一方で、政府は、二〇一〇年代初頭に国、地方合わせてプライマリーバランスをプラスにするという財政健全化目標を打ち出しています。財務省の資料によれば、地方のプライマリーバランスが既に平成十年度からプラスになっていることを考えれば、政府は、地方交付税の削減など、国の赤字を地方へ転嫁することで目標を達成しようとしていることは明らかであります。

 よく考えていただきたい。巨大な国の財政赤字をつくったのは歴代自民党政権の責任であり、任期中に百七十兆円もの新規国債を積み上げた小泉政権の責任も重大であります。その責任を棚に上げて地方に犠牲を求めるのは、厚顔無恥の一語に尽きます。(拍手)

 三位一体の一つは地方交付税制度の見直しだったはずですが、昨年の政府・与党合意でも、具体的な提案を何らなされていません。「地方交付税の見直しについては、今後の予算編成を通じて具体的な調整を行う。」と記載されているだけです。地方交付税改革は、地方自治体の今後の財政運営に大きな影響を与える問題であり、明確な言葉で今後の道筋が示されなければなりません。

 総務大臣、三位一体改革における地方交付税改革とは、何をしようとする改革なのですか。厳しい財政運営を迫られている地方にとって重要な財源である地方交付税を削減することを改革と呼んでいるのでしょうか。来年度以降も交付税総額を削り続けるつもりなのか、そうであれば、二〇一一年に向けて幾ら削るつもりなのか、明確な答弁を求めます。

 次に、地方自治体間の財政力格差の問題について質問します。

 三位一体改革の結果、税源移譲が実行されれば、それに伴って地方自治体の間で財政格差が生じます。今回の地方交付税法では、自治体間の財政力の格差拡大に対応するため、税源移譲の額を基準財政収入額に一〇〇%算入するとしていますが、それは当面の間の暫定措置にすぎません。

 いわゆる小泉改革と呼ばれるものは、我が国を格差社会にすることを助長してきました。三位一体改革の本質も、富める自治体とそうでない自治体をくっきりと分けることになると私は思います。特に、貧しい自治体にとって、税源移譲に伴う交付税の補てん措置と総額確保措置が将来いつまで続くのかがわからなくては、不安になります。

 三位一体改革に伴う財政力格差に対し、法案にあるような暫定措置ではなく、中長期的にどのような方針を持っているのか、総務大臣に質問いたします。

 今、我が国は新しい国の形をどうつくるかが求められています。民主党は、新しい国の形の一つとして、地方分権、地方主権型の社会を考えています。それは、地方を元気にさせるからであります。

 私は、江戸時代の末期に、倫理観を持った経済活動や心の教育に取り組み、農村復興はもちろん、藩の財政再建を実現した二宮尊徳翁のフロンティアスピリットあふれる教えに学んで、町づくり、県づくりに取り組んでまいりました。その大きな成果として、栃木県のプライマリーバランスを十四年ぶりに黒字にすることができました。

 地方分権の実現に多くの友人と力を合わせて頑張ってきた元市長、元知事として痛感していることがあります。それは、地方栄えずして国の繁栄なしということです。地方栄えずして国の繁栄はありません。(拍手)

 今回の三位一体の改革に当たり、わざわざ小泉総理から依頼され、地方六団体がまとめた改革案の実現率は、何とわずか一二・一%です。プロ野球の世界では、一割バッターは契約を破棄されると聞いています。政治の世界でも、同じように責任を問われるのではないでしょうか。

 国の財政赤字を単に地方に押しつけるだけの改革ではなく、真に地方分権の実現に資するような三位一体改革の全体像を示されることを強く要望して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣安倍晋三君登壇〕

国務大臣(安倍晋三君) 福田議員にお答えいたします。

 三位一体改革の評価と今後の改革についてお尋ねがありました。

 地方にできることは地方にという理念のもと、国の関与を縮小して地方の権限、責任を拡大するとともに、国、地方を通じた行政のスリム化を推進するため、三位一体の改革を進めてきたところであり、三兆円の税源移譲、四兆七千億円の補助金改革などを行うことといたしました。

 これらの改革の結果、地方の判断と責任で地域の実情に応じた行政サービスの提供が可能となるなど、地方分権が一層推進され、国と地方の改革が大きく前進したものと考えております。

 この結果については、地方からも、三兆円という大規模な税源移譲を基幹税により行うこととしており、これはこれまでにない画期的な改革であり、今後の地方分権を進める上において大きな前進であると評価されていると承知をしております。

 地方分権に向けた改革に終わりはないとの認識であります。平成十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、さらに地方分権を推進し、国、地方を通じた行財政改革を進める観点から、地方とも意見交換を行いつつ、今後とも、真に地方の自立と責任を確立するための取り組みを行ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣竹中平蔵君登壇〕

国務大臣(竹中平蔵君) 福田議員から五点、質問をいただきました。

 最初に、三位一体の第二期改革についてでございます。

 平成十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、さらに地方分権を推進し、真に地方の自立と責任を確立させるための取り組みを行ってまいります。

 その際、これまでの改革の手法にこだわるものではなく、また、将来の地方分権のあるべき姿を描き、地方行財政制度について幅広く議論することが重要であると考えまして、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会を設置しているところでございます。

 私としては、地方の自由度を拡大し、責任を明確化することが大切であると考えておりまして、今後、国と地方の役割分担の抜本的見直しや国の関与の縮小、これらを踏まえた地方税財政制度のあり方等について幅広く議論をしていきたいと思っているところでございます。

 次に、地方消費税への税源移譲を行う地方六団体の案についてのお尋ねがございました。

 地方消費税は、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な基幹税として重要であるというふうに認識をしております。

 私としては、平成十八年度までの三位一体の改革の成果を踏まえて、今後の国と地方のあり方について新たな方向性とビジョンを検討してまいりたいと考えておりますが、御指摘の提案をされている地方六団体の方々ともよく意見交換をしてまいるつもりでございます。

 次に、地方の道路特定財源についてのお尋ねでございます。

 昨年十二月に政府・与党で取りまとめた道路特定財源の見直しに関する基本方針におきましては、「特定財源制度については、一般財源化を図ることを前提とし、来年の歳出・歳入一体改革の議論の中で、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得つつ、具体案を得る。」とされているところでございます。御指摘の地方の道路特定財源についても、この基本方針を踏まえて検討してまいります。

 次に、三位一体改革における交付税改革、そして今後の交付税総額の見通しについてお尋ねがございました。

 交付税改革については、平成十六年度から平成十八年度にかけて、臨時財政対策債を含め、総額を五・一兆円抑制するとともに、行政改革インセンティブ算定の創設を行いましたし、また、アウトソーシングによる効率化の反映を行うなど、制度の改革にも取り組んできたところでございます。

 今後の取り組みとしては、厳しい財政状況のもとで、二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の黒字化に向けまして、国と地方が歩調を合わせて歳出歳入一体改革を進めることとしております。また、総務省としては、この議論と整合を図りつつ、中期地方財政ビジョンの策定に取り組んでまいります。

 また、このような取り組みの中で、国と地方の役割分担の見直しや国の関与の縮小、それを踏まえた地方税財政制度のあり方等を幅広く検討してまいります。

 したがいまして、単に交付税だけを取り上げ議論をするつもりはありませんし、また、初めに総額の削減ありきというものではないと考えております。

 最後に、財政力格差への中長期的な対応についてお尋ねがございました。

 三位一体改革においては、財政力格差の拡大の懸念に対応した措置を講じております。

 まず、個人住民税を比例税率化して、税源偏在の是正を図っております。

 また、財政力格差が生じないよう交付税による確実な調整措置を講ずることとしております。なお、この措置は当分の間のものとしておりますが、今後、この見直しを行う場合には、地方団体の意見を十分に踏まえつつ、地方財政の状況等を勘案して検討をすることとしております。

 一方、中長期的な地方財政のあり方については、先ほども申し上げましたように、極めて厳しい財政状況のもと、引き続き財政の健全化に向けて取り組んでいくことが必要でございます。また、国と地方の役割分担の見直し、地方の自由度の拡大や国の関与の縮小など、地方分権の推進に向けたさらなる取り組みも必要でございます。

 いずれにしましても、団体間の財政力格差には十分に注意を払いながら、税源の乏しい団体であっても一定の行政水準が確保できるよう、適切に対応してまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 福田議員にお答えいたします。

 まず、補助金の交付金化についての御議論でございますが、交付金化の改革は、地方の裁量度を高め、自主性を大幅に拡大する改革でございまして、税源移譲に結びつく改革、スリム化の改革と並んで、重要な補助金改革の一つとされているところです。

 具体的には、通常の補助金とは異なり、事業間や年度間で流用が可能であること、個別事業の採択基準に合わない事業も交付対象としていることなど、地方の自由度、裁量度を拡大するものであり、地方分権に資するものと考えております。

 また、十八年度予算におきましては、地方の意見、要望も踏まえまして、例えば、省庁の枠を超えた地域再生基盤強化交付金について、申請に係る窓口のワンストップ化を徹底する、まちづくり交付金については、地方の創意工夫を生かす提案事業枠を拡充する等の使い勝手の向上にも取り組んでいるところでございます。

 今後とも、十八年度までの改革の成果を踏まえつつ、国と地方の行財政改革を進める観点から、真に地方の自立と責任を確立するための取り組みを行ってまいります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  竹中 平蔵君

       財務大臣  谷垣 禎一君

       国務大臣  安倍 晋三君

 出席副大臣

       総務副大臣 山崎  力君


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