衆議院

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第15号 平成18年3月17日(金曜日)

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平成十八年三月十七日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十号

  平成十八年三月十七日

    午後一時開議

 第一 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 第二 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員西村真悟君の議員辞職勧告に関する決議案(村田吉隆君外三名提出)

 日程第一 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

 日程第二 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(第百六十三回国会、内閣提出)

 独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案(内閣提出)

 独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)及び食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

中山泰秀君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 村田吉隆君外三名提出、議員西村真悟君の議員辞職勧告に関する決議案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 議員西村真悟君の議員辞職勧告に関する決議案(村田吉隆君外三名提出)

議長(河野洋平君) 議員西村真悟君の議員辞職勧告に関する決議案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。議院運営委員長佐田玄一郎君。

    ―――――――――――――

 議員西村真悟君の議員辞職勧告に関する決議案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔佐田玄一郎君登壇〕

佐田玄一郎君 ただいま議題となりました議員西村真悟君の議員辞職勧告に関する決議案につきまして、議院運営委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、本決議案の理由ですが、弁護士でもある議員西村真悟君が、他人に自分の弁護士名義を使用させ、報酬を受け取った弁護士法違反により、逮捕、起訴され、本人がその容疑を認めており、国民の厳粛なる負託を裏切るだけでなく、本院の名誉と権威を著しく傷つけたこと等であります。

 本決議案は、去る十日に自由民主党及び公明党から共同で提出され、同日本委員会に付託されました。

 本決議案の取り扱いにつきましては、理事会で慎重に協議を重ねてまいりました結果、本日の委員会において、提出者塩谷立君から趣旨の説明を聴取し、質疑の申し出がありませんでしたので、討論、採決の結果、本決議案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告いたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第一 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長稲葉大和君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人に係る改革を推進するための農林水産省関係法律の整備に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔稲葉大和君登壇〕

稲葉大和君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、独立行政法人に係る改革を推進するため、平成十七年度末に中期目標期間が終了する農林水産省所管の独立行政法人について、農業・生物系特定産業技術研究機構等四法人の統合、水産総合研究センター等二法人の統合、役職員の身分の非公務員化等の措置を講じようとするものであります。

 委員会におきましては、去る二月二十七日中川農林水産大臣から提案理由の説明を受け、昨三月十六日質疑を行いました。質疑終局後、討論を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 日程第二は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第二 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案(災害対策特別委員長提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。災害対策特別委員長大野松茂君。

    ―――――――――――――

 地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔大野松茂君登壇〕

大野松茂君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 地震防災対策特別措置法は、平成七年六月に、災害対策特別委員会提出により制定されたものであります。

 本法に基づき、各都道府県においては、地震防災緊急事業五カ年計画を定め、各般の施設整備等を鋭意講じてきたところでありますが、地震防災緊急事業の進捗率は低い状況にあるとともに、近年の地震災害から得た教訓などに伴い、対応すべき新たな課題も生じております。

 本案は、こうした状況にかんがみ、地震防災緊急事業に係る国の負担または補助の特例等の措置の有効期限を延長するとともに、地震防災対策の充実強化のために必要な措置を講じようとするものであります。

 次に、本案の主な内容について御説明いたします。

 第一に、都道府県防災会議等は、都道府県地域防災計画等において、想定される地震災害を明らかにして、地震防災対策の実施に関する目標を定めるよう努めることといたしております。

 また、地震防災緊急事業五カ年計画は、都道府県地域防災計画等に地震防災対策の実施に関する目標が定められているときは、当該目標に即したものでなければならないこととしております。

 第二に、地震防災緊急事業に係る国の負担または補助の特例等の措置の有効期限を平成二十三年三月三十一日までとするとともに、この特例措置に公立の小中学校等の屋内運動場の補強を追加することとしております。

 第三に、都道府県及び市町村は、想定される地震災害の軽減を図るため、当該地域における地震動の大きさ、津波により浸水する範囲等について、また、これに加えて市町村は、地震災害に関する予報及び警報の伝達方法、避難場所その他の地震が発生したときの円滑な避難を確保するために必要な事項について、印刷物の配布その他の必要な措置を講ずることにより、住民に周知させるように努めなければならないものとしております。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 本案は、昨日の災害対策特別委員会において、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって成案と決定し、これを委員会提出法律案とすることに決したものであります。

 なお、本委員会におきまして、地震防災対策の推進に関する件を本委員会の決議として議決したことを申し添えます。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

中山泰秀君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 第百六十三回国会、内閣提出、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案、内閣提出、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案、右両案を一括議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(第百六十三回国会、内閣提出)

 独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長中谷元君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案及び同報告書

 独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中谷元君登壇〕

中谷元君 ただいま議題となりました両案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、両案の要旨について申し上げます。

 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案は、独立行政法人情報通信研究機構を、その業務を一層効率的かつ効果的に行うことができるよう、役職員が国家公務員である特定独立行政法人からいわゆる非公務員型の独立行政法人にするとともに、所要の規定を整備するものであります。

 次に、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案は、国の消防機能の強化を図るため、独立行政法人消防研究所を解散し、その事務を国が引き継ぐこととするほか、研究所の解散に伴う所要の措置を講じようとするものであります。

 独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案は、第百六十三回国会に提出され、昨年十月二十七日に本委員会に付託されましたが、継続審査となっていたものであり、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案は、去る二月二十八日本委員会に付託されたものであります。

 委員会におきましては、両案について、三月二日竹中総務大臣から提案理由の説明を聴取し、去る十五日質疑を行い、これを終局いたしました。本日、討論の後、採決いたしましたところ、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案は賛成多数をもって、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案は全会一致をもって、原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、各案に対し附帯決議が付されました。

 また、委員会において、独立行政法人の組織・業務の見直しに関する件について決議を行いました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

中山泰秀君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長石田祝稔君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人工業所有権情報・研修館法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔石田祝稔君登壇〕

石田祝稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、知的財産立国の実現に向け、独立行政法人工業所有権情報・研修館がその業務を一層効率的かつ機動的に行うことができるようにするため、同法人をいわゆる非公務員型の独立行政法人とするとともに、その役職員について従前と同様の秘密保持義務を課すなどの措置を講じるものであります。

 本委員会においては、去る二月二十四日二階経済産業大臣から提案理由の説明を聴取し、三月八日に審査を行い、質疑を終了いたしました。本日、討論を行い、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)及び食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案について、趣旨の説明を順次求めます。農林水産大臣中川昭一君。

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案の趣旨につきまして、御説明申し上げます。

 近年の我が国農業をめぐる情勢を見ますと、農業従事者の減少、高齢化による農業の生産構造の脆弱化が進む中、その構造改革を加速化するとともに、WTOにおける国際規律の強化にも対応し得る施策への転換を図ることが喫緊の課題となっております。

 政府といたしましては、このような課題に対処し、国民に対する食料の安定供給の確保に資するよう、これまですべての農業者を対象に品目ごとに講じてきた施策を見直し、認定農業者等の担い手の経営全体に着目してその安定を図るために必要な交付金を交付する措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、交付金の交付対象となる農産物及び農業者の範囲であります。

 対象農産物として、米穀、麦、大豆、てん菜、でん粉の製造の用に供するバレイショのように、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であって、相互の組み合わせによる生産が広く行われている農産物を定めるとともに、対象農業者として、認定農業者または特定農業団体その他の一定の要件を満たす農作業受託組織、すなわち一定の要件を満たすいわゆる集落営農であって、その耕作の業務の規模が一定の基準に適合する等の要件を満たすものを定めることとしております。

 第二に、我が国の農業における生産条件に関する不利を補正するための交付金であります。

 我が国の地理的条件が悪いこと等に起因する諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正するため、対象農産物のうち、その生産費が販売価格を上回るものについて、両者の差額に応じた交付金を交付することとしております。

 第三に、収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するための交付金であります。

 豊凶変動等による対象農産物に係る収入の減少が農業経営に及ぼす影響を緩和するため、みずから一定の積み立てを行っていることを要件として、収入減の一部を補てんする交付金を交付することとしております。

 第四に、交付金の交付業務の適正な執行の確保についてであります。

 交付金の交付業務の適正な執行を確保するため、不正の手段で交付金の交付を受けた者に対し交付金の返還を命ずるとともに、必要な場合にはその徴収ができることとしております。

 なお、これらの措置を講ずることに伴い、大豆交付金暫定措置法を廃止することとしております。

 以上、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者山田正彦君。

    〔山田正彦君登壇〕

山田正彦君 私は、提出者を代表して、ただいま議題となりました食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案につきまして、その提案理由及び趣旨を御説明いたします。

 最近、スーパーに行くと、中国産の野菜はもちろん、米国産のブロッコリー、チリ産の養殖サケなど、外国産が所狭しと並んでいます。さらに、我々が毎日食べている食用油、そのほとんどは、米国からの遺伝子組み換えの大豆、またカナダからの遺伝子組み換えの菜種からつくられています。その食用油を絞った遺伝子組み換えの大豆のかすでつくられているみそ、しょうゆ、これの大半が今賄われているとしたら、一体どうなるのでしょうか。EUは遺伝子組み換え食品を厳しく規制しております。

 最近の調査によれば、アトピー症がこの十年間で二倍に増加していること、また、このところの杉花粉症の蔓延など、我々日本人は、過去経験しなかった体質の変化を今来しつつあります。

 米国からの輸入牛肉、BSEのおそれもさることながら、鳥インフルエンザの脅威など、今日ほど、食の安全について、我々政治家がその責任を果たさなければならないときはありません。(拍手)

 一方、日本の食料自給率はカロリーベースで四〇%、穀物自給率に至っては二七%、世界で百二十四番目、北朝鮮よりも低くなっています。世界の人口が爆発的に増加し、地球温暖化などの影響もあって、このままでは、近い将来、必ず食料危機がやってまいります。また、水産においても、資源の枯渇もさることながら、輸入魚の増大によって魚価が大幅に下落、かつては一〇〇%を超えていた水産物の自給率は今や五五%、水産大国としての面影もありません。

 日本にとって、今こそ、食の安全、食料安全保障が大事なときはありません。

 さて、政府提案の法律案に触れさせていただきます。

 民主党は、直接支払いを政府に強く求めてきましたが、構造改革に反するとしてこれまで拒否されてきました。今回、初めて直接支払いを取り入れたことは画期的なことです。それだけに、国民、農業者の期待も大きく、我々も強い関心を持って迎えました。残念ながら、大きく期待外れの内容となっております。

 何となれば、この法案の前提である基本計画では、十年後に自給にとって最も大切な小麦は八十六万トンと横ばいであり、大豆に至っては二十三万トンから二十七万トンと四万トンの増加の計画でしかありません。

 これでは、政府の自給率目標達成四五%は到底及びませんし、もともと政府が予定していた四五%の自給率目標は、相変わらず、食育で米の消費を伸ばすとか、カロリーベースで消費を十年後に四%落として自給率を上げるという、まやかしのものでしかありません。

 さらに、直接支払いの対象となる農家も農地四ヘクタール以上の認定農家に限られるとされていますが、それでは、長崎県の場合を例にとっても、農家の耕作面積は平均して一・二ヘクタールですから、五百人ほどの農家しか直接支払いの対象にならないことになります。集落営農に対する助成をすると言っておりますが、経理を一元化するということは大変難しいことであります。しかも、予算額は明らかにされていません。千七百億円ほどだとは聞いていますが、もしそうだとすれば、政府案では、自給率目標の達成はおぼつかない、お粗末なものと言わざるを得ません。

 本法案は、このような考え方をもとに、ここに提出するものであります。

 以下、法案を説明いたします。

 まず第一に、食料自給率は、十年後には必ず五〇%にすること、将来は六〇%にすることを法案に明記して、国民に約束いたします。(拍手)

 そのために、大胆に単年度で一兆円の直接支払いの予算を組みます。その財源は、橋や道路などに使われている農業土木、公共事業予算一兆三千億円から五千億円、民主党が予定している地方への一括交付金十八兆円のうちから五千億円を充てることにいたします。

 そして、国が、米、小麦、大豆、菜種、飼料作物、地域振興作物としてのてん菜など、主要農産物を定めて、生産数量の目標を設定し、内外生産条件の格差を是正するために直接支払いを行います。こうした直接支払いを通じて、具体的には、小麦は八十三万トンから四百万トンへ、大豆は二十七万トンから五十二万トンへ、現在わずかしか生産されていない菜種も三十二万トンへ、それぞれ大増産を目指します。

 これによって、残留農薬の心配のない国産のパン、うどん、遺伝子組み換えでない国産の大豆を利用した豆腐、納豆、みそ、しょうゆ、昔懐かしい菜種油など、安全、安心なものを食べることができるようになります。

 我々は、それらの確実な実現を図るために、計画を立てて販売するすべての農家に一兆円の直接支払いをいたします。ばらまきにならないよう、農地を集約する者への規模加算、捨てづくりにならないよう、品質加算、棚田の維持、有機農業の実践など、環境保全への取り組みに応じた加算も行います。

 米国では、新農業法のもと、今や農家所得の四六%は国からの直接支払いで賄われています。また、EU諸国も、その所得の五二%は国からの助成金で占められています。欧米諸国はこのようにして、自給率を八〇%から一〇〇%の水準に維持しております。

 一方、日本の農家は、国からの助成がほとんどない状況の中、外国との厳しい競争にさらされ、農業では食べていけなくなり、深刻な状況に置かれています。一刻も早く一兆円の直接支払いを実現する必要があります。

 また、この際、米の生産調整は廃止いたしますが、米については、市場に出回ることがないよう、棚上げ方式で大胆な備蓄を行い、バイオマス利用などの活用を法案に盛り込んでおります。

 第二に、水産行政に関しては、何としても枯渇した資源の回復を図るために、漁業者ごとに漁獲量を割り当てるTAC制度を取り入れます。同時に、漁業者への収入の安定を図るため、直接支払いを実現します。また、沿岸、沖合漁業に係る漁業権制度については、新規参入の促進も含め、現行制度を抜本的に改めます。(拍手)

 さらに、磯の清掃、藻場や海中の森の造成、種苗の放流など、自主的に漁場の生産力の向上に取り組む集落に対して、直接支払いを行います。

 第三に、食料の安全、安心についてですが、例えば、米国から牛肉を輸入する場合、ステーキ肉に塩コショウをかけただけで加工食品の扱いとなり、原産地の表示はしなくてよくなりますが、今回の法案は、すべての加工食品の原料原産地表示を義務づけることになります。また、日本は、世界で最大の食料純輸入国でありますので、主要な輸入食料に対して、輸入先国での検査官らによる査察を含め、輸入検疫体制の整備を図ります。

 ただいま申し上げました、このような改革を実践することによって、食料の自給率目標を達成し、食の安全、安心も確保されるわけです。

 以上が、本法案の提案理由及びその概要であります。

 議員各位の御審議と御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)及び食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。原田令嗣君。

    〔原田令嗣君登壇〕

原田令嗣君 自由民主党の原田令嗣です。

 ただいま議題となりました政府提出の農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、担い手経営安定新法について、自由民主党並びに公明党を代表して質問いたします。(拍手)

 緑豊かな山河と美しい田園風景に彩られてきた日本。この日本の国土のうち、何と埼玉県に匹敵する面積、三十八万ヘクタールが今、耕作放棄地となっています。これ以上貴重な農地の荒廃が進めば、これは農業者だけでなく、国民にとって重大な問題であります。

 そして、我が国の農業従事者は、七十歳以上の昭和一けた世代の方々がなお中核となっています。元気な高齢者に御活躍いただかなければならないこれからの日本といえども、これ以上農業を高齢者頼みにすることはできません。意欲のある担い手を急いで育成していかなければ、農業を守り、支えることは不可能だと言っても過言ではありません。

 他方、我が国農業をめぐる国際環境は厳しさを増しています。大詰めを迎えているWTO交渉の中で、農業は、もちろん各国固有の事情を特に重視しなければならない分野です。昼夜を問わず交渉に携わっておられる中川大臣に敬意を表するとともに、今後とも、日本として主張すべきところはしっかり主張していただくことをお願いしたいと思います。

 農業従事者の高齢化、そして厳しい国際環境などを考えたとき、貴重な農地を守り、食料を国民に安定的に供給する体制をつくることが、まさに焦眉の課題であります。経営能力を持った意欲ある担い手に施策を集中し、効率的で安定的な経営を中心とする農業への構造改革を進めていく、まさに農政の大転換が今必要であると考えています。

 こうした立場から、政府案について質問させていただきます。

 我が国農業の将来展望についてお尋ねします。

 政府は、農業構造についての目標を明らかにして、改革の推進に努める必要があると考えます。日本農業のあるべき姿、どのようなビジョンをお持ちなのか、まず伺いたいと思います。

 次に、法案の内容についてです。本法案で創設しようとしている新たな経営安定対策の意義について伺います。

 これまでは、小規模農家を含め、すべての生産者を対象に、米、麦、大豆などへの品目別の支援を行ってきました。今回の対策では、対象を、原則四ヘクタール以上の経営改善意欲のある個人、法人の認定農業者と、そして小規模農家が共同で経営を目指す、原則二十ヘクタール以上の集落営農としています。また、品目をまとめ、経営単位に支援を行う、新しい仕組みに転換していくことがもう一つのポイントです。

 こうした対策がどのように農業構造の改革につながるのか、御見解を伺いたいと思います。

 続いて、食料自給率、すなわち食料の安全保障とのかかわりについてお尋ねします。

 我が国の食料自給率は、カロリーベースで先進国中最低の四〇%のまま、横ばい状態にあります。昨年改定された食料・農業・農村基本計画では、平成二十七年度に向けた目標を四五%に定めています。この水準は控え目な目標とも言えますが、生産面だけでなく、食生活の改善など消費面での取り組みも重要であり、目標達成は容易なことではないと思います。新たな対策を導入することにより、食料自給率の向上にどのような効果があるのか、伺います。

 次に、地域の実情への配慮についてお尋ねします。

 我が国では、平地から中山間地まで、多様な農業が展開されています。地域の実情を考えない全国一律な制度では、例えば、規模は小さいけれどもやる気のある農業者の意欲をそぎ、かえって構造改革の推進に支障を来すおそれもあると考えます。

 今回の対策において、地域ごとの実情に配慮した制度設計がどのようになされているのか、伺いたいと思います。

 ここで、民主党案の法案について触れておきたいと思います。

 我が国の農業を切り開いていくためには、意欲と経営能力のある担い手に対して施策を集中的、重点的に実施することが重要です。民主党案にある、すべての販売農家に対する直接支払いでは、現状の零細な農業構造を固定化してしまい、意欲ある担い手の育成をかえって阻害することになると考えています。

 また、民主党案では、直接支払いの導入に伴い、米の生産調整を廃止することとしています。しかし、その具体的なプロセスも、それがもたらすマイナス面への対策についても、何ら示されていません。対象作物が十分に明らかにされていないまま、直接支払いの総枠をあらかじめ、おおむね一兆円と決めています。

 こうした民主党案は、現実性のない、単なる人気取りのためのばらまき政策だと指摘されても仕方ありません。(拍手)

 最後に、新たな経営安定対策の導入に当たって、政府に要望したいと思います。

 まず、それぞれの地域において、どのような担い手を中心としていくのか、地域の農業ビジョンについて十分な話し合いを進めていくことが何よりも大切です。平成十九年度からの実施へ向け、農業者が混乱を来さないよう、地方自治体、農業委員会、JAなどが一体となって取り組むことが重要です。政府の十分な配慮と支援を望みます。

 さらに、日本の農業、農村は、水や緑を守りながら、地域の歴史、文化、伝統を受け継ぎ、食育を初め教育に果たす役割など多面的な機能を持っています。今回の施策転換で、農業用水や環境の保全管理など、地域における集落の社会的機能が損なわれないよう十分な対策をとることもあわせて要望しておきたいと思います。

 日本農業の再生には、農業者とともに消費者、国民の理解と支持が不可欠です。このたびの農政の大転換の意義と内容をよく理解されるよう、行き届いた説明を政府に切望して、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 原田議員にお答え申し上げます。

 まず、農業の将来展望についてのお尋ねでございますが、平成十一年七月に制定された食料・農業・農村基本法において、国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するために必要な施策を講ずることとされております。

 このため、基本法に基づき、施策を推進していくに当たって、目指すべき「効率的かつ安定的な農業経営」が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の姿を明らかにすることとし、平成十七年三月に「農業構造の展望」として示したところであります。

 この「農業構造の展望」におきましては、平成十六年に二百九十三万戸であった総農家数が、平成二十七年には二百十万戸から二百五十万戸程度となり、このうち、「効率的かつ安定的な農業経営」は、第一に、家族農業経営が三十三万戸から三十七万戸程度、二番目として、集落営農経営が二万から四万程度、三番目として、法人経営が一万程度と見込むとともに、これらの経営により経営される農地が七割から八割となると見込んでおります。

 次に、新しい経営安定対策の意義についてのお尋ねでありますが、農業従事者の減少、高齢化など、農業の生産構造の脆弱化が進行する中で、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う強靱な農業構造を構築することが、現下の農政の喫緊の課題であります。

 また、従来の品目別に講じられてきた対策は、幅広い農業者を一律に対象としていたことから、農業経営の規模拡大など経営の発展につながりにくく、需要に応じた生産の誘導といった機能も十分に発揮されていない面があり、現状のままでは我が国農業に新しい展望が開けず、もはや手おくれとなるおそれも大きいのではないかと考えております。

 このため、意欲と能力のある担い手を対象とした新たな対策に転換し、このような担い手が将来にわたり安定して農業を営めるような品目横断的な直接支払いを導入することにより、農業構造の改革を進めていくことといたしたいと考えております。

 次に、食料自給率との関係についてのお尋ねでありますが、新たな経営安定対策の導入により、生産性の高い担い手が生産の相当部分を占める強靱な農業構造の実現を通じて農産物の生産コストの低減や品質の向上が図られるとともに、消費者や食品産業の需要に的確に対応し、農産物を安定的に供給できる体制が確立されることにより、国内農産物の生産の拡大と自給率の向上に資すると考えております。

 なお、食料自給率は、国内生産のみならず、国民の消費のあり方によっても左右されるものであり、食生活の見直しに向けた取り組みの強化なども通じて、その向上を図ることが重要であると考えております。

 最後に、地域の実情に配慮した制度設計についてのお尋ねでありますが、新たな経営安定対策の対象者の要件は、土地利用型農業の構造改革を推進していく観点から、認定農業者であって、経営規模が都府県では四ヘクタール以上、北海道では十ヘクタール以上のもの、または、一定の要件を満たす集落営農組織であって、経営規模が二十ヘクタール以上のものを基本とすることとしております。

 一方、集落の農地が少ない場合や、経営規模は小さいものの、複合経営などにより相当水準の所得を確保する場合においては、この基本要件の規模に達していなくとも、国が別途の基準を設け、対象とすることができることとしているところであり、地域の状況に十分配慮した制度設計になっていると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 松木謙公君。

    〔松木謙公君登壇〕

松木謙公君 民主党・無所属クラブを代表しまして、私、松木謙公が質問をさせていただきます。(拍手)

 まず、ただいま議題となりました政府提出の農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案及び民主党山田正彦君外提出の食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案について質問をさせていただきます。

 日本書紀に見える崇神天皇の詔に、「農(なりわい)は天下(あめのした)の大きなる本(もと)なり。民(おおみたから)の恃(たの)みて以て生くる所なり。」とあるがごとく、古来より日本は、豊葦原の瑞穂の国と呼ばれ、秋になれば美しい稲穂が波打つ風景がイメージをされ、皇居では天皇陛下が五穀豊穣を祈念して季節ごとに田植えや稲刈りをされるという伝統の政を最も大切に継承されてきたことに象徴されるように、農業こそは農耕民族であった日本人の文化、魂とも深くかかわるとうとい存在でございました。

 言うまでもありませんが、農業が国民の食料を安定供給する基幹産業であると同時に、国土の保全、緑と清浄な水の涵養、さらには、都会の人たちに自然の潤いといやしを提供する場でもあり、生き物を慈しむ情操教育の場としての価値など、多面的かつ重要な役割を担ってまいりました。

 しかしながら、今日、農村地帯を歩いてみますと、至るところに休耕田で雑草の生い茂った田んぼが見受けられます。また、後継者がいない嘆きも聞こえてまいるわけでございます。

 平成十七年の統計ですが、専業農家が全国で四十四万二千戸、しかも、その六割が高齢者であるという実態を見ても、農業の置かれている厳しい状況が明らかなのですが、時代の推移に任せて、このまま農村を荒廃させていってよいものなのでしょうか。

 私は、農業を衰退させながらの経済の発展には大きな不安を覚えております。まるで国の基が朽ちつつあるように感じるわけでございます。それは、ただ農業が衰退することのみならず、日本人の生き方、精神生活も含めてもっと深い部分で根本的な荒廃を招いていって、そして危機感を覚えないわけにはまいりません。今こそ、農業をもう一度根本的に見直して、その発展に向けての施策を打ち出していくときと考えております。(拍手)

 さて、政府案では、こうした農業の担い手という用語が法律の名称にも取り込まれていますが、農林水産省の永遠の課題である大規模農家の育成は、私の知る限り、自立経営農家、中核農家、主業農家、認定農業者、プロ農家と、言葉が躍るばかりで、ほとんどその目的が達成されていないのではないかと思うのであります。つまり、担い手に的を絞った政策は、残念ながら、ことごとく失敗をしてきたと申し上げても過言ではないんじゃないでしょうか。

 政府案では、担い手としての対象農業者を認定農業者と一定の要件を満たす集落営農に限定をしております。

 しかし、認定農業者は二十万人程度であり、政府案の四ヘクタール以上の農家となれば、十万人さえ下回ることは火を見るより明らかでございます。また、全国に一万を数える集落営農組織は、一元経理がネックとなっており、対象となる集落営農はほとんどなくなるのではないでしょうか。

 そこで、政府案、民主党案それぞれにおいて、対象となる担い手の数とその対象面積について、どれくらいと推計しているのか、お示しをいただきたい。

 一方、民主党案においては、自給率を高めるために、計画的に生産する販売農家をすべて対象にしていますが、欧米先進国と比べても零細である日本農業の構造改革、すなわち大規模専業農家の育成についてはどのように行う考えなのでしょうか、方針をお聞かせください。

 また、政府案は、担い手さえその経営安定を図れば、市場原理によって非担い手の離農が促進されるとともに、規模の集積が図られ、国民に対する食料の安定供給が確保されることを前提にしております。

 しかし、食料自給率の低い我が国では、食料の安定供給が一部の担い手のみで達成されるものでは決してありません。専業、兼業を含め大多数の販売農家の経営努力がこれまでの日本農業を支えており、今後の自給率向上にも、こうした非担い手とされる農家の役割も重要であると思うのであります。

 私の地元は、日本の一番北でございます。一番大きな選挙区であります。(発言する者あり)北海道十二区と申します。厳しい気候条件のもとで、農業も面積当たりの生産力が劣るため、規模は大きくなければなりません。しかし、本州では、四ヘクタール以下の規模でも意欲的に農業に取り組む農家もたくさんおられます。

 農業が今後も永続的に発展していくためには、地域社会の存続が何より不可欠であることは言うまでもありません。しかし、政府案では、悠久の歴史の中で、地域でともに農業を営んできた者を、担い手と非担い手に選別することになり、農村地域社会が営々とはぐくんできた互助の精神、さまざまな連帯の取り組みが崩壊に向かう一端となってしまうのではないでしょうか。

 政府案によれば、農村地域が二極化し、地域社会が崩壊するおそれがあるのではないか。政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。

 対象作物を見ますと、両法案とも自給率の向上を目指すなど共通のものもありますが、それぞれの特徴もあるわけであります。

 例えば、政府案は、私の選挙区である北海道の輪作についての配慮はあるようでございますが、他の地域についてはどうなっているんでしょうか。政府案では、対象作物について各地方の実情をどのように反映されるつもりなのか、お伺いをさせていただきます。

 民主党案では、菜種が例示され、地方公共団体の意見も聞いて定めるようになっており、より地方の実情に合わせたものに選定されるようになっておりますが、民主党案の菜種は一体どういう考えのもとに例示されているのでしょうか。

 私は、両法案とも直接支払いの導入を明記した点では、大きな前進だったと評価をしております。とりわけ、民主党案は、政府案とは異なり、農業と漁業と並列に論じて、自給率の向上、多面的機能の向上に対し、直接支払いをすることとしております。

 私は、農林漁業は一体だと常々考えております。例えば、森林で醸成された栄養分に富んだ水が水田を潤して、海に流れ込んでプランクトンを発生させます。漁民が植林に参加する魚つき林がその典型例だというふうに思っております。

 かつて輸出産業の一翼を担った漁業も、今や自給率が五五%に下がってしまいました。我が国の自給率向上のためには、我が国周辺水域の資源の回復を図り、生産力を回復していくしかありません。そうした観点から、適切な資源管理を行い、漁業者に直接支払いをしていくべきだと思いますが、民主党案ではこの点が規定されていて、政府案よりも進んでいると思いますが、具体的にはどのようなことを考えているのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

 価格支持策には少なからず問題がありました。例えば、農民はまじめに働き、安定収入を求めます。したがって、価格支持が行われている作物に過剰が生じます。また、大規模農家に多くの補助金が支給され、不平等ではないかということで、本当に必要な農家に、いわば社会保障的に直接支払いが導入されていました。日本の米が典型例でございます。

 EUでは、一九七五年に条件不利地域に対する直接支払いが始まり、一九八五年には環境に対する直接支払い、そして一九九二年、ウルグアイ・ラウンドの協議の最中におけるいわゆるマクシャリー改革で、価格支持にかわる施策として大々的に導入されました。これらの支払いは、WTOでも緑ないし青の政策、削減する必要のない補助金として位置づけられてまいりました。これをようやく、おくればせながらも、我が国でも導入をすることは歓迎しなければいけません。

 ところが、政府案では大規模農家に限定することになっていますが、これは明らかに直接支払いの本旨にもとることになるのではないでしょうか。一見、制度は似ていても、緑の補助金とはみなされなくなるのではないでしょうか。とても危惧をしておりますが、この点についてお答えをいただきたい。

 私は、農業は防衛と同じだと思っております。国の安全保障と同様に、食料の安全保障の確立なくしては国家の永続的存立はあり得ないと思っております。

 諸外国においても、不測時の食料供給、ヨーロッパ等でもさまざまな国がさまざまな形で法的整備も含めた危機管理体制を築いております。主要輸出国や生産国における不作、輸出国の港湾ストライキなどによる輸送障害、さらには、局地的な紛争あるいは事故によって生ずる世界の農業生産や貿易の混乱などの不測の事態に対処するには、基本的な条件整備として、何よりも平時におきます農地、農業従事者、農業技術といった国内における食料供給力の維持確保が重要であると考えます。また、食料の備蓄には、その適切かつ効率的な運営ということが必要であると思います。

 食料の安全保障に対する姿勢、特に備蓄に対して、政府、民主党、それぞれのお考えをお聞かせください。

 また、政府が自給率を四〇%から四五%にすることとしている中で、民主党は食料の自給率を五〇%まで上げるとしていますが、どのようにしてこれが可能なのか、御説明をいただきたいと思います。

 ところで、先ほど原田議員の方から幾つか指摘がありました。ばらまき政策ではないかという話と、担い手の経営発展を阻害するのではないか、米の生産過剰を招き、米価を大きく下落させるのではないかといった、こういう指摘がたしかあったと思います。

 国会で論議を尽くす意味では、これらの点についても民主党がきちんと見解を示すこと、これも重要だと私は思っていますので、急ではありますけれども、お答えをいただきたい。(拍手)

 最近は、格差社会、こういうふうによく言われます。都市と農村とがよく比較され、歴然と格差が存在することはだれもが知っています。今国会においても、所得を初めさまざまな格差が取り上げられて、論議をされてきました。

 議員定数はいつも人口比で決められますが、農山漁村、中山間地域の人口減はとどまることを知りません。少子高齢社会とよく言われますが、高齢化は、農山漁村では三十年も四十年も前から顕在化してきたことであります。このことについて、都市側は無視を続けていたわけではありませんでしょうけれども、しかし、そういうことになっております。山村では、とっくの昔に若者は減り、子供の声が聞こえなくなりました。しかし、これもどちらかといえば知らんぷりをされてきたのではないでしょうか。

 先進国の中で、これほど農村から人がいなくなって、遊休農地が生じている国はありません。これに対し、ヨーロッパの美しい農村を見ていただきたいと思います。EUが共通農業政策のもと、早くから直接支払いを導入し、都市、農村の格差が生じないように配慮してきたからにほかなりません。

 日本の再生は、農山漁村の美しさを取り戻し、活性化をさせる以外にありません。他人のお金をかき集め、マネーゲームに狂奔するホリエモン的な人間を知ってか知らずか許してしまった、お金で何でも買えると言ってはばからない人間をヒーローとしてしまっては、日本を誤った方向に向けてしまうのではないでしょうか。

議長(河野洋平君) 松木君、申し合わせの時間が過ぎました。なるべく簡単に願います。

松木謙公君(続) 日本の片隅で、大地と格闘し、海で魚をとっている、そういう同胞を助けなければいけないというふうに私は思っております。ぜひそこら辺をお答えいただきたいというふうに思っております。

 以上、私の方からの質問とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣中川昭一君登壇〕

国務大臣(中川昭一君) 松木議員にお答え申し上げます。

 まず、対象となる担い手の数、面積についてのお尋ねですが、新たな経営安定対策の対象者の要件は、認定農業者または一定の要件を満たす集落営農組織であって、一定の経営規模等の要件を満たすものとしております。

 現在、行政と農業団体とが連携協力して担い手の育成を強力に行っているところであり、制度スタート時において、新たな経営安定対策の対象がどの程度になるかにつきましては、このような規模拡大や集落営農の組織化等の取り組みの進展度合いにより施策の対象面積が大きく変わること等から、現時点で確たる数値を見通すことは困難でございます。

 次に、農村地域の二極化についてのお尋ねでありますが、農業従事者の減少、高齢化等による農業の生産構造の脆弱化が進む中で、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う強靱な農業構造を構築することが、我が国農政にとって待ったなしの課題であるというふうに認識をしております。

 このまま生産構造の脆弱化が進めば、農業のみならず、地域社会の維持発展にも支障が生じかねないと考えております。

 このため、担い手に対象を絞った新たな経営安定対策を導入することとしておりますが、小規模な農家や兼業農家につきましても、一定の要件を満たす集落営農に参加する場合や、経営面積は小さくても複合経営等により一定の農業所得がある場合には対策の対象となることができるなど、門戸は十分に開かれているところであり、農村地域の二極化や地域社会の崩壊をもたらすものではないというふうに考えております。

 次に、対象作物への地域の実情の反映についてのお尋ねですが、新たな経営安定対策は、我が国の土地利用型農業の構造改革の推進を目的としていることから、その対象品目につきましては、国民に対する安定供給を図ることが特に必要である米、麦、大豆、てん菜及びでん粉原料用バレイショの五品目とすることとしており、特定の地域の特定の農産物の実情を反映するといった観点から対象品目を定めるという枠組みとはしておりません。

 次に、直接支払いについてのお尋ねでありますが、直接支払いの対象者につきましては、それぞれの国が抱える農政の課題に対応した要件が定められているものであり、EUや米国と異なり、強靭な農業構造を構築することが課題となっている我が国におきましては、これに対応した要件とする必要があると考えております。

 このような観点から、我が国の経営安定対策につきましては、やる気と能力のある担い手であることを対象要件の一つとしたところであり、これが直接支払いの本旨にもとるという理由はないというふうに考えております。

 また、直接支払いの対象者を一定の規模要件を満たすものに限ることとしても、基準期間後の生産とリンクするものではないことから、WTO農業協定上における緑の政策に該当するものと考えております。

 次に、食料の安全保障に関する姿勢についてのお尋ねですが、国民の生存にとって不可欠である食料の安定供給を図ることは、国の基本的な責務であります。

 現在、世界で約八億人もの栄養不足人口があり、世界的な人口増加、途上国の経済発展等による食料需要の増大が見込まれる中、今後一層、世界の食料需給は逼迫する可能性が指摘されており、不測時における食料の安全保障の確保は重要と考えております。

 将来にわたり食料の安定供給を確保していくためには、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これに輸入と備蓄を組み合わせることが必要であると考えております。

 このため、食料自給率の目標を策定し、その達成に向けて、農地、農業用水、担い手、農業技術等の確保を図り、国内農業の食料供給力の強化を図ることとしております。

 また、備蓄につきましては、国内外での不作の発生状況、輸送問題の発生事例などを考慮し、主食である米と供給の多くを輸入に依存している食糧用小麦などについて、必要な水準の備蓄を適切かつ効率的に実施しております。

 最後に、食料自給率の向上についてのお尋ねでありますが、我が国の食料自給率は、カロリーベースで見れば四〇%と、主要先進国の中で最低の水準となっております。また、世論調査によりますと、国民の約八割が我が国の将来の食料供給に不安を抱いているという結果が出ております。

 このため、昨年三月に閣議決定されました食料・農業・農村基本計画におきましては、消費面及び生産面での課題を示しつつ、食料自給率の向上について、十年後の平成二十七年度の目標を四五%と設定いたしました。

 この目標達成に向けて、新たな基本計画のもと、消費面では、日本型食生活の推進に向けて、食事バランスガイドの普及、活用に努めるなど、わかりやすく実践的な食育を進めているところであります。

 また、生産面では、食品産業と農業の連携強化や経営感覚にすぐれたやる気と能力のある担い手の育成、確保を図ることにより、需要に即した生産を進めているところであります。

 今後、食料自給率向上協議会におきまして策定した十七年度の行動計画の達成状況を検証し、新たな行動計画の策定に反映していくこととしており、工程管理を適切に実施することにより、自給率向上の取り組みが迅速かつ着実に実施されるよう、関係者と一体となって取り組んでまいりたいと存じます。(拍手)

    〔仲野博子君登壇〕

仲野博子君 松木議員の、菜種をなぜ対象作物としたかという質問にお答えをいたしたいと思います。

 皆さん、自給率を問題にされるとき、まずカロリー自給率が念頭にきます。次に穀物自給率であります。米をほぼ自給しているため、それぞれ四〇%と二八%でありますが、油脂の自給率は、その原料の大豆と菜種をほとんど海外に頼っていることから、著しく低い自給率となっております。

 菜種は、かつて最盛期には二十六万ヘクタールと、日本じゅうどこでも栽培をされ、春の田畑を真っ黄色に彩りました。私の生まれ故郷の青森県むつ横浜町は、人口五千五百人の小さな町でありますが、今もその菜種をつくり続け、作付面積日本一を誇っております。

 民主党農林漁業再生プランでは、自給率の下がった土地利用型作物に直接支払いを行い、生産と関係をさせることにより自給率の向上を図ることとしております。大豆とともに、自給率が低下をし、油の原料となることから対象としたのが一番目の理由でございます。

 次に、菜種は日本じゅうどこでもつくることができます。簡単につくれる作物であり、初期投資も何も要りません。したがいまして、遊休農地、不耕作地の多い中山間地域でもすぐ栽培可能であります。

 三番目に、民主党案は、農業の多面的機能についても直接支払いをすることにしております。

 皆さん、一面を黄色く染める菜の花を思い浮かべてください。菜の花畑に入り日薄れというおぼろ月夜の歌詞にありますように、日本人ならその風景に懐かしさを感じるのではないでしょうか。(拍手)

 民主党案は、日本の春の風景を復活させ、国産の油の原材料にもなり、廃油は燃料にもなるという、循環型社会を象徴する作物として菜種を復活させることを考え、対象作物とすることとしております。

 余談になりますが、菜の花議員連盟があり、与党の先生も入っておられます。そのメンバーである篠原議員が、昨年の秋、第一議員会館の土手にたくさん菜種をまかれたそうです。皆さん、この春の土手は昨年に比べてずっと黄色くなります。

 続いて、松木議員の、漁業の直接支払いについての御質問にお答えをしたいと思います。

 かつて、我が国の漁業は世界をまたにかけて漁業生産を行い、輸出の一翼を担っておりましたが、二百海里で遠洋漁業が衰退をし、今や自給率も五五%に低下をしてしまいました。沿岸漁業も、水産資源の減少から、年々生産量が落ち、漁村は疲弊しております。さらに、近年の燃料価格の高騰や大型クラゲの被害は、漁業を危機的状況に追い込んでおります。

 こうした漁業を復活するため、我が国では、平成八年度より、漁獲量を一定に抑えるTAC制度が導入されておりますが、この制度をさらに進め、個別の漁船ないし漁業者ごとに漁獲量の割り当てを行うことといたしております。そして、こうした譲渡性を持つ個別漁獲割り当て方式の導入にあわせて、漁業者の安定した収入を確保するために、直接支払いを行うこととしております。

 このほかに、漁業者が自主的に取り組む資源管理のための、海の掃除、稚魚の放流、一定期間の休漁などに対して、農業の中山間地域における直接支払いと同様に、漁業においても直接支払いを講ずることも考えられるわけでございます。(拍手)

    〔岡本充功君登壇〕

岡本充功君 松木議員の御質問にお答えいたします。

 まず、備蓄についてお答えいたします。

 麦、大豆などに米並みの収入を確保することを目的とした直接支払いにより、米の生産が長期的に減少することが予想されます。その一方、米の生産調整を廃止し、かつ米も直接支払いの対象とすることから、一時的に余剰を生ずる可能性があります。

 これらの余剰米を、異常気象などによる世界的な食料危機に備えて備蓄しようとするものであります。その備蓄量としては、一九九三年の冷害時に二百五十九万トンを緊急輸入したことから、少なくとも三百万トンの国家備蓄が必要であると考えています。

 備蓄は、余剰米を国が買い上げ、おのおのの産地でもみのままカントリーエレベーターに隣接されたサイロに低温のままで保管する棚上げ方式を想定しています。

 なお、三百万トン以上の余剰米や一定期間保有した備蓄米は、飼料やバイオマスなどに利活用することを想定しています。

 次に、食料自給率についてお答えいたします。

 日本の食料自給率は、従来、食料安全保障を重視すべきというかけ声ばかりであり、自給率を上げるための国内施策がとられたこともなければ、国際交渉の場でそれを具現化する提案がなされたこともありませんでした。

 その結果、カロリーベースの食料自給率は四〇%と、先進各国の中でもずば抜けた最低値が続いております。世論調査でも、我が国の食料の先行きに不安を感じる国民が八割に至り、長期政権下での農政が怠慢だったのではないかというそしりは免れないと考えております。こういった国民の不安を払拭すべく、あらゆる手段を講じて食料自給率を高め、農業、農村の活性化を図らねばならないと考えているわけです。

 そういった中で、本法案では、食料自給率の向上に資するような土地利用型農業に焦点を当てて対策を講じています。そして、十年後の食料自給率を五〇%に、そして将来的には六〇%以上にすることを目標としています。目標達成のためのビジョンといたしましては、過去最大の生産量、すなわち我が国の農業の潜在的生産可能量まで農業生産を拡大することで目標を達成したいと考えています。

 具体的には、小麦四百万トンで自給率八%上昇、大豆五十二万トンで自給率〇・九%上昇、菜種三十二万トンで自給率〇・九%上昇という計算になります。こうすることで自給率を五〇%に上げることが可能になります。

 また、食料自給率の将来目標は六〇%以上としました。これは、過去最大の作付面積で、過去最大の単収になると、合計二一%の自給率上昇となることから計算しました。

 農地面積は、昭和三十六年の六百九万ヘクタールをピークに減少し続け、平成十五年には四百七十四万ヘクタールへと、四十年余りの間に百三十五万ヘクタールも減少しています。農地面積の確保は大きな課題であります。

 一方、最大単収は今後とも伸びる可能性があります。例えば小麦では、最大収量時である一九六一年の単収は二百九十五キログラム・パー・ヘクタールにすぎませんでしたが、現在では四百三十八キログラム・パー・ヘクタールと一・六倍になっており、同じ収量を上げるのに必要な農地面積は六二%で済むことになっています。こうして考えていくと、過去最大の農地面積と過去最大の単収の積による将来目標値六〇%は十分達成可能と考えます。

 このような試算をもとに計算すれば、やる気のある販売農家を力強く支援する本法案が成立し、これまでの猫の目農政を転換することで、独立国として国民が安心して暮らせる食料自給率を達成することができると考えています。(拍手)

    〔篠原孝君登壇〕

篠原孝君 まず、松木議員の、どのように担い手を育成し、規模拡大を図るかという質問にお答えいたします。

 政府案は、四ヘクタール以上という大規模農家のみを直接支払いの対象にしており、今は小規模でも将来意欲的に農業に取り組もうという担い手の農家を支援の外に外しております。しかし、四ヘクタール以上の農家など、そう多くありません。全国を見ても十万戸ほどしかありません。四ヘクタール以上の農家に直接支払いしても、日本社会全体の農業生産力の向上もできず、農村地域の活性化も到底実現できません。

 これまた松木議員が御指摘のとおり、これまでの農政は、名前を変えながらも大規模農家の育成に力を注いでまいりました。しかし、大規模専業農家の数は一向にふえず、むしろ逆の結果となっています。こうした厳然たる過去の実績からして、農家に着目した政策は実効性がないと言えるのではないでしょうか。

 現在の農政の根本の問題は、農業に希望を見出せないことにあります。きちんとした農政が確立され、農業の将来に展望が開け、収益が上がるとわかれば、農業後継者は自然とふえていくはずです。その証拠に、収益性の高い花とか野菜とか果実、中小家畜等の農家には後継者も多いのに、収益性の低い、いわゆる土地利用型作物の農家には後継者が少ないことが挙げられます。つまり、大規模農家なり担い手は、育成するものではなく、農業を活性化することによって、結果として生まれてくるものだと考えております。(拍手)

 民主党案は、日本の農業、農村全体を元気にするべく、全販売農家を対象に直接支払いを行い、日本じゅうの意欲のある農家に体力をつけさせ、全体をかさ上げする中で、徐々に大規模農家なり担い手を育てていくものとしております。

 その後、規模拡大の意欲のある農家に対して単価を高くする規模加算や、品質の高い農作物をつくる農家に対して単価を高くする品質加算を行うなど、弾力的な運用によって、農業者が自主的に意欲を得る、経済性を考えるように促し、究極的には専業的担い手に支援を集中していくこととしております。

 次に、直接支払いの対象農業者数と農地面積に関する御質問にお答えいたします。

 民主党案は、自給率の向上のために、実際に農産物を栽培しているすべての農家を対象とすべきと考えております。

 米の販売農家数は、稲作農家数で二百六十七万戸、その中の六五%の百七十五万戸です。加えて、民主党案で対象とすることになっております他の主要五作物の販売農家数の合計は五十五万戸ですので、米の販売農家と重複しないと仮定すると、二百三十万戸が対象になります。ただ、実際は多くが重複していると考えられますので、多くても二百万戸程度と推定しております。

 農地については、二〇〇二年で見ますと、米の耕作面積が百四十七万ヘクタール、その他の主要作物の耕作面積の累計が百三十三万ヘクタールですので、合計で二百八十万ヘクタールですが、販売農家の農地の割合が、どのくらいかわかりません、七割と仮定すると、対象となる農地はおよそ二百万ヘクタールになると推計されます。

 それから、先ほど原田議員の三つの御指摘がありました。それを受けて松木議員からは、ぜひ、その問題も大事だから答えろという要請がございましたので、簡単に答えさせていただきます。(拍手)

 まず、原田議員は、零細な農業構造を民主党の案では固定化して、意欲のある担い手の経営を阻害するのではないかという御指摘がありました。

 しかしながら、価格支持というのは二つの欠点があったわけです。過剰になってしまう、それから、日本ではありませんけれども、ヨーロッパの場合は百ヘクタールとか二百ヘクタールのでっかい農家があるわけです。そこに不労所得が行く。だから、それはよくないので、本当に補助が必要な零細な農家に補助が行くように直接所得支持とか直接所得補償とかいう名のもとに始められたわけです。そういう点では、原田議員の御指摘、全くごもっともです。規模拡大に資さないのが直接支払いです。

 しかし、民主党は、運用を弾力的にすることにしております。目的は自給率の向上です。ですから、先ほど申し上げましたように、規模加算、品質加算をやりながら、大規模農家に支援を集中することによって、専業農家を育成していけるのではないかと思っております。

 それから、大事な生産調整廃止のプロセスへの疑問、それから、そんなことをしていると米がまた再び過剰になり、価格も下落するのではないかという御指摘です。

 この御指摘もごもっともでございますが、ほかの作物をより有利に、例えば米よりも麦や大豆を有利な形で直接支払いの単価を設定すれば、そちらの方に自然と向いていくわけでして、そういったことにより、過剰も生じないし、価格の下落も生じないのではないかと思っております。

 それから、先ほど岡本議員が答弁されたとおりでございますけれども、備蓄という考え方もあります。

 それから次に、一兆円のばらまきということに対する指摘でございます。

 しかし、一兆円というのは、正直申し上げまして、それほどきちんとしたものではございませんが、三兆円ある農林予算のうちの一兆円を直接支払いに充てたらどうかという提案でございます。政策目的が違うわけです。全農家、農村全体を活性化することにより、その中から専業的農家を育成しようとしております。

 ですから、ばらまきという代名詞は、たくさん予算を使い、担い手の育成に失敗し、農業、農村を疲弊させた農政につくべき代名詞であって、我々民主党の法案の上につく代名詞ではないと思っております。(拍手)

 それから、最後に一言申し上げたいと思います。

 原田議員の質問に対して、民主党案に対して三つの批判ないし指摘がなされました。私は、ぜひ堂々と質問していただきたいと思います。ただ批判するばかりで、提案者に対して答弁の機会を与えないというこそくな行為は、とても巨大与党のすることではないと思います。

 原田議員の三つの批判の言いっ放しというのは、堂々と提案して、議論して、国民のためになる、よりよい政策を練り上げるというこの国会の役割を余りにも軽視しているのではないでしょうか。民主党が対案路線をとる中で、与党自民党が批判路線をとるというのはいかがなものでしょうか。

 民主党からの反論を恐れて質問をされない政府・与党に猛省を促して、私の答弁を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣     竹中 平蔵君

       農林水産大臣   中川 昭一君

       経済産業大臣   二階 俊博君

       国務大臣     沓掛 哲男君

 出席副大臣

       農林水産副大臣  宮腰 光寛君


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