衆議院

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第20号 平成18年4月6日(木曜日)

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平成十八年四月六日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十四号

  平成十八年四月六日

    午後一時開議

 第一 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出)及び医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出)の趣旨説明及び質疑

 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長石田祝稔君。

    ―――――――――――――

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔石田祝稔君登壇〕

石田祝稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、京都議定書に定められた温室効果ガスの排出削減約束の達成に向けて、国内における対策に最大限努力してもなお排出削減約束の達成に不足する排出削減量について、他国における温室効果ガスの排出削減量等を取得するいわゆる京都メカニズムを活用して対応するため、政府による排出削減量等の取得に係る制度を構築するものであります。

 本委員会においては、去る三月二十四日二階経済産業大臣から提案理由の説明を聴取し、三月二十九日質疑に入り、昨日質疑を終了いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長遠藤乙彦君。

    ―――――――――――――

 研究交流促進法及び特定放射光施設の共用の促進に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔遠藤乙彦君登壇〕

遠藤乙彦君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、科学技術に関する試験、研究及び開発に関し、国と国以外の者との交流等を促進するため、国の研究施設等の利用の促進及び特定先端大型研究施設その他の国等の研究施設の共用の促進に関する所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、国の試験研究機関等の研究施設及び土地の廉価使用に関する特例を設けること、

 第二に、国は、国及び独立行政法人等の研究施設の共用を促進するため、必要な情報を収集、整理し、広く研究者等に提供するための措置を講じること、

 第三に、独立行政法人理化学研究所により設置される特定高速電子計算機施設の共用を促進するため、所要の措置を講じるとともに、特定放射光施設の共用の促進に関する法律の題名を特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律に改めること

などであります。

 本案は、三月三十日本委員会に付託され、翌三十一日小坂文部科学大臣から提案理由の説明を聴取し、昨五日、質疑を行い、討論の後、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出)及び医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案並びに小宮山洋子君外四名提出、小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案及び園田康博君外三名提出、医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案について、趣旨の説明を順次求めます。厚生労働大臣川崎二郎君。

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 我が国は、国民皆保険のもと、だれもが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してきました。しかしながら、急速な高齢化など大きな環境変化に直面している中、国民皆保険を堅持し、医療制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、その構造改革が必要であります。

 このため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合等の措置を講ずることとしております。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、予防を重視しつつ、生活習慣病対策の充実や平均在院日数の短縮といった中長期的な医療費適正化対策を計画的に進めるとともに、現役世代並みの所得のある高齢者の患者負担の引き上げや療養病床に入院する高齢者の食費、居住費の負担の見直しなど短期的な対策を講ずることにより、医療費適正化を総合的に推進することとしております。

 第二に、七十五歳以上の後期高齢者を対象とする新たな医療制度を創設することとしております。

 この制度においては、七十五歳以上の高齢者の心身の特性等を踏まえ、それにふさわしい医療サービスを提供するとともに、保険料、現役世代からの支援及び公費を財源とし、都道府県単位ですべての市町村が加入する広域連合が運営することとしております。

 また、六十五歳から七十四歳までの高齢者の医療費について、国民健康保険及び被用者保険の加入者数に応じて負担する財政調整制度を創設し、超高齢化時代に備えた安定的な高齢者医療制度を創設することとしております。

 第三に、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合を進めていくこととしております。

 このため、国民健康保険においては、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化等を図るための共同事業の拡充を行うこととしております。

 また、政府管掌健康保険を公法人化し、都道府県ごとの医療費を反映した保険料率を設定することとしております。

 以上のほか、中央社会保険医療協議会について委員構成の見直しや団体推薦規定の廃止等を行うとともに、介護保険法における介護療養型医療施設の廃止等の所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、現役世代並みの所得のある高齢者の患者負担の引き上げなどについては平成十八年十月に、医療費適正化計画の策定や新たな高齢者医療制度の創設などについては平成二十年四月にするなど、改正事項ごとに所要の施行期日を定めることとしております。

 次に、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 我が国の医療提供体制については、国民の健康を確保し、国民が安心して生活を送れるための重要な基盤となっております。一方で、高齢化の進行や医療技術の進歩、国民の意識の変化など、医療を取り巻く環境が大きく変わる中、だれもが安心して医療を受けることができる環境を整備するための改革が不可欠となっております。

 このような観点から、国民の医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に提供される医療提供体制を確立するため、患者の視点に立った制度全般にわたる改革を行うこととし、本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、患者、国民による医療に関する適切な選択を支援するため、都道府県を通じた医療機関に関する情報の公表制度の創設や広告規制の大幅な緩和など、医療に関する情報提供を推進することとしております。

 第二に、医療計画制度を見直し、医療機能の分化、連携を推進することを通じて、地域において切れ目のない医療の提供を実現し、質の高い医療を安心して受けられる体制を構築することとしております。

 第三に、僻地や、小児科、産科などの特定の診療科における医師の偏在問題に対応し、地域における医師確保の推進を図ることとしております。

 第四に、地域における医療の重要な担い手である医療法人について、非営利性の強化などの規律の見直しを行うとともに、救急医療、小児医療など地域で必要な医療の提供を担う医療法人を新たに社会医療法人として位置づけることとしております。

 第五に、医療従事者の資質を向上し、国民の医療に対する安心を確保するため、医師、歯科医師、薬剤師、看護師等の医療従事者について、行政処分を受けた者に対する再教育制度の創設など行政処分のあり方を見直すこととしております。

 以上のほか、医療安全支援センターの制度化など医療安全の確保の推進、在宅医療の推進のための規定の整備等を行うとともに、外国人臨床修練制度の対象として新たに看護師等に相当する海外の資格を追加するなどの改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成十九年四月一日としております。

 以上が、健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 提出者柚木道義君。

    〔柚木道義君登壇〕

柚木道義君 民主党の柚木道義です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、法案提出者を代表いたしまして、民主党提出の小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案について、提案理由及び法案概要を説明いたします。本会議初登壇の機会をいただき感謝申し上げますとともに、子供たちの命にかかわる本重要法案について、しっかりと提案させていただきたいと思います。(拍手)

 さて、小泉政権のもと格差拡大が指摘されていますが、実は、医療格差についても、地域間格差、診療科間格差として小児医療においても指摘をされております。解消されない医師の不足、偏在、ふえ続ける医療事故、さらには、当直を挟んで連続三十二時間労働も珍しくない過酷な労働環境のもと、小児科医が過労自殺する現実も決して看過できません。

 他方、いざ子供が病気になったときに、何時間も待たされたり、救急車でたらい回しにされたあげくに、かけがえのない命を医療体制の不備によって失われてしまう御家族がおられます。我が国は、大変残念ながら、一歳から四歳までの乳幼児死亡率が先進十四カ国の平均を約二割も上回るのが現状です。

 こうした問題点解決に向けた本法案の概要を以下に説明いたします。

 第一に、基本理念として、地域事情に配慮しながら、いつでも安心して小児医療が受けられる体制をつくり、小児医療にかかわる医療従事者の養成や確保、配置、労働時間の管理などを適切に行い、良質で適切な医療体制をつくります。

 第二に、国と自治体は、小児医療提供体制施策の策定と実施責務を負います。

 第三に、厚生労働大臣は、小児医療体制整備を総合的に進めるための基本方針を定め、都道府県は、その方針に沿って、医療計画の中で体制確保を定めます。

 第四に、国及び地方公共団体は、緊急小児医療提供体制として、中核小児科センター、地域小児科センターの整備、さらに小児医療連携体制整備などを行い、小児救急医療にかかわる医療従事者の人材確保、養成のための施策をとります。

 第五に、国は、小児医療計画を達成するため、都道府県に対し、小児医療計画による事業費について必要な助成を講じます。

 第六に、小児医療提供施設管理者は、適切な労働時間を設定し、勤務交代制をしくなど、必要な措置を講じます。

 第七に、小児医療は、夜間、休日の診療が強く求められ、他科に比べて多くの時間と労力の必要性を踏まえ、健康保険等の診療報酬見直しを行います。

 なお、本法案は、平成十九年四月一日施行とします。

 さらに、平成二十年度以降、小児医療費について、義務教育就学前は被保険者等の負担をゼロとし、義務教育の間は同じく負担割合を一割とするために必要な措置をとります。

 以上が、本法案の提案理由及びその概要です。

 ところで、小泉総理は、厚生大臣時代も含めて、過去二回の医療費の被用者本人負担引き上げの際、いずれも抜本改革を行うとおっしゃっておられながら、その都度、改革は先送りされてきました。そして、今回の制度改定で、小児医療については診療報酬改定で乳幼児深夜加算などをわずかに引き上げたものの、これだけでは病院勤務医の過重労働解消にはつながりません。

 折しも、希望格差社会などと言われる今日です。だからこそ、この少子化時代に、希望格差社会が、ひいては医療格差社会、そして、この本のタイトルにもあるような「健康格差社会」、大変衝撃的な内容になっております。そういったことにならないためにも、すべての責任感ある議員の皆様方から本民主党法案の趣旨に必ず御賛同いただけるものと、心よりの希望と確信を持って、私からの趣旨説明を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

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議長(河野洋平君) 提出者岡本充功君。

    〔岡本充功君登壇〕

岡本充功君 ただいま議題となりました医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案、通称医療の安心・納得・安全法案について、提出者を代表し、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 本法案は、第百五十四回通常国会に提出された医療の信頼性の確保向上のための医療情報の提供の促進、医療に係る体制の整備等に関する法律案、通称患者の権利法案を基礎として、現在の医療提供体制に必要な項目を法案化したものです。

 良質かつ適切な医療が提供されることは大前提であります。それに加えて、今まさに、医療に対する安心感、医療を受ける人の納得、医療の安全をどのように高めるかは喫緊の課題です。

 今回、政府が提出した医療制度改革関連二法案は、医療財政改革が中心的課題となっています。健康保険法を改正し、さらなる負担を求めようとする前に、過去の医療制度改革の総括を行い、置き去りにされてきた医療の質の向上という大きな課題に対し、この機会にきっちりと結論を出すことが政治の責任であると考えています。

 そもそも、医療とは、医療を受ける者と医師との共同作業で行われるべきものです。現在、ようやくインフォームド・コンセント、説明に基づく同意という概念が広がり始めました。医療を受ける者のうち、求める者に対してはさらに自己選択や自己決定ができるという、インフォームド・チョイス、説明に基づく選択、そしてインフォームド・デシジョン、説明に基づく自己決定といった概念もあります。医療を受ける者の主体性が尊重されていく必要があるのであります。

 また、医療事故を未然に防ぐ体制整備も求められています。万が一医療事故が生じた場合においても、徹底的な原因究明とその報告が行われ、同じ事態が繰り返されないようにすることは、医療の安全を高める重要な要素です。

 この法案を早く成立させ、医療を受ける者の安心、納得、安全を確立することで医療の質を高め、医療財政改革のみでは得ることのできない満足感を、医療を受ける多くの国民の皆様に与えることができると考えています。

 以下、法律案の概要を申し上げます。

 第一は、医療を受ける者に対する医療に関する情報の提供について、基本的な事項、医療機関等に関する情報の開示、報告を定めるとともに、広告規制について、原則自由化の方向性を示しています。

 第二は、医師等は診療について十分な説明を行うこと、説明、報告に当たっては医師と医療従事者間の連携がとられること、さらに、薬剤師においては調剤に関する説明を十分に行うこととしています。

 第三には、カルテなど診療記録の開示等です。医療機関の管理者は、医療を受ける者等から請求があれば、医療を受ける者に悪影響を及ぼす場合などを除き、診療記録を開示しなければならないとしています。また、医療を受ける者等の申し出があれば、医療に要した費用の内容の詳細な内訳がわかる書面を交付することとしています。

 そして第四に、医療機関における相談対応のあり方を規定するとともに、都道府県が相談支援機関として医療相談支援センターを設置することを定めています。

 第五に、安全かつ適正な医療確保のための体制整備として、医療機関に医療安全委員会を設置すること及び医療事故等の報告の規定を置き、第六に、医療技術に関する評価及び医療機関に関する評価について定めています。

 これらの諸施策を実現することで、医療を受ける人の尊厳が保持され、医療を受ける人の理解と自己決定に基づいた良質かつ適切な医療の提供が促進され、日本の医療の信頼性の確保と向上がなされること、医療を受ける人々の権利利益の擁護を行おうとするものです。

 以上が、本法案の提案理由とその概要でございます。

 私は、この議場でも数少ない医師免許を持つ議員の一人として、実際に病院で診療を続ける議員として、現場の声を皆様方にお届けしたい、その思いで、この法案をまとめさせていただきました。

 医療はお金の問題だけではありません。人はいつか必ず死にます。不幸にして不治の病を患ったとしても、安心、納得、安全な医療を受け満足してみとられるかどうかは、議員各位におかれても決して人ごとではないはずであります。ぜひ、この法案の趣旨を十分御理解賜り、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げ、提案理由の説明といたします。(拍手)

     ――――◇―――――

 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案(小宮山洋子君外四名提出)及び医療を受ける者の尊厳の保持及び自己決定に資する医療情報の提供、相談支援及び医療事故等の原因究明の促進等に関する法律案(園田康博君外三名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。石崎岳君。

    〔石崎岳君登壇〕

石崎岳君 自由民主党の石崎岳でございます。

 私は、自由民主党を代表しまして、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案等について質問をさせていただきます。(拍手)

 我が国は、国民皆保険制度のもと、世界に冠たる医療水準と世界一の平均寿命を実現してまいりました。今後、急速に高齢化が進展していく中で、安心の基盤である国民皆保険制度を堅持していくために、医療制度のさらなる改革は避けて通れない大きな課題であります。

 最も大切なことは、人口構造の急激な変化に対応して、医療制度を将来にわたって持続可能なものに再構築していくこと、さらには、患者の視点に立って患者本位の医療を実現することではないかと思います。

 今回の法案では、安心・信頼の医療、医療費適正化の推進、新たな医療保険制度という三つの大きな柱が掲げられておりますが、こうした改革にどのように取り組んでいかれるのか、小泉総理に基本的な考え方をお伺いしたいと思います。

 今回の医療制度改革におきましては、医療費の適正化が大きな焦点となっております。議論の過程において、経済財政諮問会議の民間議員から、経済成長率をもとにしたマクロ指標により医療給付費の伸びを抑制する、いわゆる伸び率管理の導入が提案されました。しかし、これでは必要な医療が確保されなくなるおそれがあるとの観点から、結局、昨年十二月の政府・与党の医療制度改革大綱におきましては、医療給付費の伸びを検証する際の目安となる指標を示すことになったところであります。いわば努力目標という形でありますが、現実的に医療費適正化の実効性をどのように確保していくのか、厚生労働大臣に伺います。

 今回の制度改正では、新たな高齢者医療制度の創設が目玉となっております。特に、七十五歳以上の後期高齢者を対象とした独立した医療制度の創設がうたわれております。これまでの老人医療制度では、財政運営の責任主体が不明確で、保険者機能がなかなか発揮できないとの反省から、新たな制度設計がなされたものと思いますが、この後期高齢者の医療制度の財政運営は、都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が担うこととされました。私が住む北海道は百八十の市町村があり、それぞれの地域性や財政力に大きな違いがあります。

 そこでお伺いしますが、北海道に限らず全国の新たな広域連合が円滑な意思決定を行い、保険者機能をしっかり果たすために、どういう方針で臨まれるのか、厚生労働大臣の見解を伺います。

 今回の法案には、平成二十四年に介護療養型医療施設を廃止することが盛り込まれております。療養病床の再編成は、医療と介護の役割分担を進め、病院が高齢者介護の受け皿となってきた、いわゆる老人病院問題という三十年来の懸案を解決しようというものでありますが、関係者からは、地域での十分な受け入れ体制が整わないまま再編成が行われるのではないかとの不安が寄せられ、自民党の中でも大変大きな議論となりました。

 そこで、療養病床の再編成に今後どのように取り組んでいかれるのか、厚生労働大臣の見解をお伺いします。

 次に、今回の医療制度改革においては、都道府県単位を軸とする保険者の再編統合を進めることとされております。中でも、財政基盤が脆弱な市町村国保については、かねてより財政運営の安定化が求められてきたところであります。私が住む札幌市は、毎年恒常的に数十億円の国保の赤字が発生し、一般会計からの繰り入れと借り入れ合わせて毎年三百億円以上の予算を使って、赤字の穴埋めと保険料を抑える対策を行っています。

 今回の法案においては、保険財政共同安定化事業の創設などが盛り込まれておりますが、市町村国保の安定的な運営に向けて、今後どのように取り組んでいかれるのか。

 また、政管健保は、都道府県単位の財政運営となり、医療費の地域格差が保険料に反映される仕組みとなります。現時点での保険料の試算では、一番高い北海道が八七パーミル、一番低い長野県が七六パーミルとなり、その差一一パーミルの保険料の格差が生ずることとなります。

 この点について、財政論だけではなく、なぜこのような格差が生じたのかという地域医療の観点からの議論が必要と思いますが、厚生労働大臣の率直な見解をお伺いいたします。

 さて、今国民が求めているのは、医療の安心、信頼の確保であります。そこで、患者に対する医療情報の提供について伺います。

 現在、患者が医療機関を選択する際に参考となる情報は、広告などに限られております。患者は、医療機関に関する十分な情報を得ることができず、自分がどの医療機関にかかればベストなのかわからない中で、名の知れた大病院を選択するか、もしくは地域の医療機関を選択しているというのが現状ではないでしょうか。

 その一方で、政府は、今回の改革において、地域において医療の連携体制を構築するという柱を掲げておりますが、患者が十分な情報の提供を受け、適切な医療機関の選択をすることができなければ、結局、絵にかいたもちに終わってしまいます。

 政府の掲げる、質が高く効率的な医療提供体制の構築という理念を具現化するためには、患者が安心して医療機関を選択し、適切な医療を受けられるよう支援することが不可欠な要素であると考えますが、今回の改革においてどのような対応が図られるのか、厚生労働大臣に伺います。

 次に、医療計画制度の見直しについて伺います。

 医療サービスは、良質であるだけでなく、効率的に提供される必要があることは言うまでもありません。その上で、医療機関を選択する患者の視点に立てば、がん、脳卒中、糖尿病といった疾病ごと、さらには、救急医療や小児医療、周産期医療といった分野ごとに、地域の医療機関の連携が目に見える形で示され、住民、患者が安心して地域で過ごせるようにしなければなりません。

 このように考えれば、住民に身近な都道府県が責任を持って医療機関の連携体制のビジョンを描き、その状況を住民、患者にわかりやすく情報提供するように改革すること、そして、それを国がしっかり支援していくことが必要ではないでしょうか。

 今後、どのような対策を実施していくおつもりなのか、これは総理の御決意をお伺いしたいと思います。

 最後に、医師不足問題についての対応をお伺いいたします。

 国民に良質な医療を提供するためには、医療の担い手である医師を確保していくことが不可欠ですが、現実には、地域ごとの医師の偏在や、小児科、産科などの特定の診療科における医師の不足が深刻化しており、その解決が今や喫緊の課題となっております。

 昨年十二月の医療制度改革大綱におきましても、この医師不足問題について、都道府県ごとの医療対策協議会の設置や医学部入学定員の地域枠の拡大など、地域の実情に応じた医師確保対策を総合的に講じていくとしておりますが、例えばこの医療対策協議会も、関係者が協議する場であり、強制力はなく、その効果には限界があると指摘をされております。

 そこで、政府においては、どのような対策を考え、今後具体的にどう取り組んでいかれるのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 我が国の医療は、保険証一枚でいつでもどこでも医療が受けられるすばらしい体制が整備されてまいりました。しかし、厳しい財政状況と高齢化の進展を考えますと、医療の改革は国民の生命、健康を守る意味で政治の最優先課題でもあります。患者の視点に立った医療の質の向上と、効率的な医療提供体制の再構築に向けた政府の努力を強く期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 石崎議員に答弁いたします。

 医療制度改革の基本的な考え方についてですが、医療制度については、急速な高齢化の進展に伴う医療費の増加が見込まれます。

 このため、今般の改革におきましては、生活習慣病予防や長期入院の是正など、計画的に政策を実施し、中長期的に医療費の伸びを抑制するとともに、保険として給付する範囲の見直しや、おおむね三・二%の診療報酬の引き下げを行い、医療費適正化を総合的に推進することとしております。

 これらとあわせ、七十五歳以上の高齢者を対象とした新たな医療制度の創設や都道府県単位を軸とした保険者の再編統合など、超高齢社会を展望した医療保険制度体系の見直しを行うこととしており、こうした改革を通じ、将来にわたり持続可能な制度を構築していくこととしております。

 また、今般の改革においては、小児科、産科等の医師不足対策や診療報酬における重点評価、医療計画制度の見直しを通じた急性期から在宅療養に至るまでの地域医療の連携体制の構築、患者に対する医療費の内容のわかる領収書の提供や都道府県を通じた情報提供制度の創設など医療に係る情報提供の推進、レセプトのオンライン化などにより、国民の医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に受けられる体制を構築してまいりたいと考えております。

 医療計画制度の見直しでございますが、良質な医療を効率的に提供する体制を構築するため、がん対策、小児救急医療など、疾病や分野ごとに地域における医療の連携体制を確保し、かつ、医療機関の連携の状況を住民、患者にわかりやすく情報提供するよう、都道府県の作成する医療計画の制度を見直すこととしております。

 このため、国としても、医療提供体制の確保に関する基本方針の策定や、全国の先進的な事例の紹介、小児救急医療など地域にとって必要な医療を医療機関が連携して提供した場合の診療報酬上の評価などを通じ、各都道府県の取り組みを支援してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 石崎議員から七問のお尋ねがございました。お答え申し上げます。

 医療費適正化についてのお尋ねがございました。

 高齢化の進展に伴う医療費の増大が見込まれている中、人口構造の変化に対応できる持続可能なシステムをつくり上げていくことが必要であります。このため、今回の改革においては、国と都道府県が医療費適正化計画を作成し、生活習慣病予防や長期入院の是正などの中長期的な医療費適正化対策を計画的に進めるとともに、現役並みの所得がある高齢者などの患者負担の見直しや診療報酬の引き下げなどを行うこととしており、医療費適正化を総合的に推進してまいります。

 後期高齢者医療制度における広域連合の保険者機能についてお尋ねがございました。

 後期高齢者医療制度においては、独自の首長及び議会を有する広域連合が保険料決定や給付に要する費用の支払いなどを行う仕組みとしております。広域連合が責任を持って保険者機能を発揮できるよう、広域連合の設立及び保険料の決定等の円滑な施行に向けて努めてまいります。

 療養病床の再編成についてお尋ねがございました。

 今回の療養病床の再編では、療養病床は医療の必要度が高い患者に限定し、医療保険で対応するとともに、医療の必要度の低い方々への対応としては、療養病床が老人保健施設等の介護施設に転換することにより、大きな改修をすることなく受け皿となることが可能と考えております。再編に当たっては、入院している方々の追い出しにつながらないよう、今後六年間は、医療、介護双方の病床について円滑な転換ができるよう、経過的な類型を設けることとしております。

 また、入所者の状態に応じてふさわしいサービスを提供する観点から、老人保健施設等の基本的なあり方等について検討を行う旨の規定が健康保険法等の一部を改正する法律案の附則に盛り込まれたところであり、今後、検討を進めてまいります。

 再編に当たっては、入院、入所されている方々の不安を招かないよう適切に対応してまいります。

 市町村国保の運営の安定化についてお尋ねがございました。

 今回の改正では、保険者支援制度等の国保基盤の強化策を継続することにより、低所得者を抱える保険者の財政の安定化を図るとともに、都道府県単位で高額医療費の発生リスク分散や保険料の平準化を目的とする保険財政共同安定化事業を創設することにより、保険財政運営の広域化を進めることとしております。

 政管健保の都道府県別の保険料率についてお尋ねがありました。

 政管健保は、全国一本の保険料率であり、地域の取り組みで医療費が低くなっても保険料率に反映されないといった問題があるため、年齢構成や所得水準といった保険者の努力では対応できない部分は地域間で調整した上で、都道府県ごとの医療費を適切に反映した保険料率を定めることとしております。

 なお、都道府県ごとの保険料率への移行に当たり、保険料率の大幅な上昇が生ずる場合には激変緩和のための措置を講じることとしております。

 医療に関する情報提供の推進についてお尋ねがございました。

 今回の医療制度改革においては、都道府県を通じた医療情報の提供制度の創設や広告規制の大幅な緩和を行うとともに、医療安全支援センターの制度化など都道府県や医療機関における相談機能を充実することにより、患者への医療情報の提供を推進してまいります。

 最後に、医師の偏在や不足の問題についてお尋ねがございました。

 今回の医療制度改革においては、医療計画制度を見直し、小児救急医療などの具体的な医療連携の確保や、都道府県が中心となって、大学病院など地域の医療関係者と、僻地への医師派遣などの医療従事者確保の具体策を検討し、実施する枠組みの制度化などの措置を講じることとしております。

 また、都道府県において小児医療や周産期医療の医療機能の集約化、重点化の検討を行い、具体的な対策を講ずるとともに、国としても、制度、予算、診療報酬等さまざまな側面から、引き続き総合的な医師確保対策に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 仙谷由人君。

    〔仙谷由人君登壇〕

仙谷由人君 民主党・無所属クラブの仙谷でございます。

 私は、ただいま議題となりました内閣提出二法案に対しまして、民主党・無所属クラブを代表して、総理並びに厚生労働大臣に質問をいたします。あわせて、民主党・無所属クラブ提出の法案に対しても質問をいたします。(拍手)

 まず初めに、現在の医療を取り巻く問題をどう認識されているのかをお伺いいたします。

 総理、今、日本の医療のシステムが激しく動揺し、勤務医の方々の中で開業ブームが起きていることを御存じでしょうか。急性期病棟において労働基準法違反が常態化する中で、勤務医の方々がへとへとになりながらも献身的に努力をされております。このことによって急性期病棟は辛うじて支えられているわけでございますが、このことを御存じですか。しかし、このような法違反、無理な体制のシステムが崩壊することは目に見えております。現に、現在崩壊しつつあることを御存じでしょうか。総理の御認識を伺います。

 とりわけ、ことしは産科、小児科、僻地医療の崩壊元年と言われていることも御存じでしょうか。昨年十二月二十二日付「小児科・産科における医療資源の集約化・重点化の推進について」、遅きに失したとはいえ、この通達が出されたわけでありますが、この通達以降、どのような施策が政府において実施されたのか、具体的にお示しをいただきたいと存じます。

 医療は国民の最大関心事であります。科学技術の進歩により期待が高まる反面、現実の医療提供体制の矛盾と不備がもたらす国民の不安、不信、不満は充満しております。また、経済的、社会的格差が拡大するのみならず、健康格差、医療格差という言葉まで語られていることを総理は御存じなのでしょうか。

 四年前の健康保険法改正で、政府は、勤労者負担を二割から三割へと上げました。高齢者への負担をも一挙に増加させました。私たちの反対を押し切って強行いたしました。ところが、その際約束をしていた医療提供体制の整備もかけ声だけに終わっております。皆さん、毎年の厚生労働白書をごらんください。四年前と昨年の厚生労働白書、ほとんど同じことしか書かれておりません。十年一日のごとくとはこのことではないでしょうか。こうした今までの医療行政を全く反省せず、進行する医療システムの崩壊を放置して、今また、保険財政の逼迫を口実に国民負担を強要するのみの本法案が極めて不当なものであることを、私は声を大にして指摘いたします。(拍手)

 ただただ医療費抑制を自己目的化し、約束すらほごにし、国民への医療サービス提供体制を崩壊に導きつつあることに、何の御自覚もないんでしょうか。

 総理並びに厚生労働大臣に、現在の医療が抱える深刻な矛盾、医療提供体制の危機的状況をどのように認識しているのかを明確にお答えいただきたいと存じます。

 さて、今回、政府・与党が進めようとする法案は、金計算と根拠なき数字合わせの改革であります。医療現場の疲弊、矛盾をどのように改善させることができるのか、以下お伺いをいたします。

 今回の政府案では、老人保健法に基づいて自治体が四十歳以上を対象に行ってきた健診事業を廃止いたします。この事業で行われてきた検診はいかなる効果があったのか、実績をお聞かせいただきたいと存じます。

 例えば、乳がん検診は、マンモグラフィー併用検診の受診率が五〇%を超えると、発見率と五年生存率が目に見えて上がると言われております。そのような質の検診が行われてきたのか、厚生労働大臣にお答えいただきたいと存じます。

 各保険にこれを任せた場合、例えば財政的疲弊にあえぐ市町村国保がこの検診を怠る可能性が大でありますけれども、これにどう対応しようとしているのか、従来の健診事業に対するチェックとその結果に基づく対応策をお示しいただきたいと存じます。

 今回の医療制度改革の柱は、医療費適正化であります。その根拠として示されているのが、医療費の動向をもとにした二〇二五年時点の医療費の推計であります。ところが、九四年には百四十一兆円になるとおっしゃる。これが九七年には百四兆円になるとおっしゃる。二〇〇〇年になりますと八十一兆円、二〇〇二年には七十兆円、昨年、二〇〇五年には六十五兆円。二〇二五年時点の医療費の推計をこのように変更しているわけであります。全く根拠なき推計と言わざるを得ません。

 そして、この根拠なき推計をもとに、将来の医療費の財政負担にはたえられないとおっしゃるのが、適正化の理由であります。そして、この推計の根拠は、五年前から十年前の五年間の医療費の増額をもとにして推計したというのであります。これでは、オオカミ少年もびっくり、寅さんでもべらぼうめとどなりかねないバナナのたたき売りであります。

 総理、どのような根拠でこのような推計がなされたのか、改めて明確にしていただきたい。と同時に、この間違いについて、私は、国民に対する謝罪を求めます。

 イギリスでは、医療に係る給付の抑制が行き過ぎたために、医療が質、量の両面で不十分になりました。このNHSの疲弊の反省を踏まえ、今まさに、医療に必要な財源は投入する方向へと、ブレア政権は方針を大転換しております。

 今回の過大な将来見通しに基づいた医療費の削減方針が、方針転換前のイギリスのように、日本の医療制度を機能不全に陥らせることはないと断言できるんでしょうか。

 この医療の荒廃をさらに進めることになったときの責任を、総理はどのようにおとりになるんでしょうか。責任ある答弁を求めます。

 民主党は、すべての国民が同一の制度に加入し、公平な負担のもとで、全国あまねく標準治療を受けられるようにすることが理にかなうと考え、今後十年をめどに保険制度の一元化を目指すことにしました。

 政府・与党は、医療制度改革大綱で、「医療保険制度の一元化を目指す。」と将来の一元化をうたいましたが、今回の法案では、一元化のプロセスについては何ら明らかにしていません。

 政府・与党の言う一元化とは、何を意味しているんですか。総理に、期限と手法を明示した説明を求めます。

 民主党は、高齢者医療について、七十歳以上は一割負担、現役並み所得を得られている方も二割負担として、政府案の言う自己負担分の増加には反対であります。社会的入院を減少させるとともに、真に医療を必要とする患者の食費、居住費の自己負担は現状どおりにすべきだと主張いたします。

 政府法案では、新たな高齢者医療制度の創設をうたっておりますけれども、現役世代の保険料の一部を支援金として充てているこの制度の位置づけは、保険制度なのでしょうか、それとも福祉制度なのでしょうか。この制度の創設の意義とともに説明を厚生労働大臣に求めます。

 厚生労働省案は、広域連合を運営主体とし、他方、保険料徴収は市町村にゆだねております。医療費の入り口と出口で法主体が異なるため、保険者機能を担うのはどの機関なのか、全く明確ではありません。本制度の運営の責任主体はどこにあるのか、もし財政運営を失敗した広域連合が出てきた場合にはその責任はどのようにとることになるのか、厚生労働大臣の説明を求めます。

 本法案に規定された医療安全の確保策は、医師を含む医療従事者の資質に起因する医療ミスにどう対処するのかを示しているだけであります。しかし、そもそも医療事故は、医師を含めた人為的なミスによってだけ発生するわけではありません。

 最近、福島県立大野病院事件が発生をいたしました。医師法二十一条の異状死の届け出義務違反によって産科医を逮捕し、業務上過失致死を加えて起訴に至る、私に言わしめれば暴挙ともいうべき事件が発生したのであります。全国の勤務医から怒りや絶望が巻き起こっております。三百六十五日、二十四時間の連続勤務など、過酷な労働環境の中で患者のニーズに誠実に対応しようとして奮闘している医師を、事故が起きたときに個人に対して刑事責任を問うという、極めて短絡的な対応がなされているのであります。他方、公正な立場からの原因究明の制度、手段はなく、多くの事故被害者は怒りを抱えたままであります。

 医療政策の欠陥や機関としての病院の構造上の問題を医療従事者の資質に転嫁するだけでは、医療事故は永遠になくなりません。医療事故への原因別の対処方法が必要だと考えますけれども、本法案に含まれる医療事故対策は、なぜか医療従事者に対する処分しか記されておりません。なぜなのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。(拍手)

 一昨日、民主党は、これらの政府提出法案に対して、がん対策基本法案、小児医療緊急推進法案並びに医療の安心・納得・安全法案の三法案を提出いたしました。

 民主党案に対して、二つお伺いをいたします。

 まず、民主党は、過去に患者の権利法案を提出していたわけでありますが、今回の医療の安心・納得・安全法案は、どのような点が従前の法案と異なり、いかにバージョンアップされたのか、このことをお伺いいたしたいと存じます。

 また、小児医療緊急推進法案については、小児科救急における勤務医の過酷な労働実態がまず基本的な問題だと考えますが、その実態をどう認識し、過労による医療事故を防ぐと同時に小児科治療のシステムを再構築しようとしているのか、そのために労働条件をどう改善しようとしているのか、またその労働条件改善の手段は何なのか、お答えをいただきたいと存じます。

 今、医療をめぐる全国民注視の中でこの審議が開始されました。

 国民は、単なる医療の消極的受け手としてだけではなく、みずから情報を求め、よりよい治療を求めて発言をし始めております。例えば、がん治療を例に挙げれば、豊かな経済力を誇っているはずの先進国日本において、世界標準の治療薬が使えない、治療が受けられない、特に化学療法や放射線治療の恩恵を受けられない、その悲劇を克服しようと、患者自身が今大きく声を上げて運動を拡大しております。

 政府・与党の皆さんが、こうした声に謙虚に耳を傾け、財政的な数字合わせに終始することなく、真の医療の改善のために方策を出し直されるように呼びかけ、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 仙谷議員に答弁いたします。

 現在の医療を取り巻く問題についてですが、我が国の医療提供体制については、国民皆保険制度のもとに、患者の医療施設へのフリーアクセスを確保するなどの評価すべき点がありますが、一方で、小児科や産科などの診療科や特定の地域において医師の偏在が生じるとともに、小児救急医療などに従事する勤務医の労働環境が厳しいものとなっている、医療機能の分化、連携が十分進んでいない、諸外国に比べ人口当たりの病床数が多い、平均在院日数が長いなどの課題があります。

 このため、医師の確保の問題については、都道府県において、平成十八年度末までに小児医療や周産期医療の医療機能の集約化、重点化の検討を行い、具体的な対策を取りまとめることとするとともに、国としても、今回の法改正において、地域の医療関係者の協議により都道府県の医師確保対策を検討する仕組みを制度化することとするとともに、今月から改定された新しい診療報酬において、小児科、産科等を重点的に評価するなど、制度、予算、診療報酬等さまざまな側面から総合的な対策に取り組んでおります。

 また、療養病床について医療の必要度が高い患者を受け入れるものに限定する再編成や、急性期から在宅療養に至るまでの地域医療の連携体制を構築するための医療計画制度の見直しなどを講じるとともに、医療に関する情報提供の充実、医療安全対策の強化にも取り組んでまいります。

 医療費の将来見通しと医療費の削減方針の影響でございますが、医療費の将来見通しについては、内外を通じて確立された手法はないことから、過去の一定期間の実績から得られた一人当たり医療費の伸び率をもとに機械的に算出しているものであり、見通しの作成時点における現実の医療費の伸びの趨勢が変動すれば、将来見通し自体も変動するものであります。

 今回の見通しにおいて用いた医療費の伸びの実績は、平成十二年の介護保険制度創設や平成十四年改正による健康保険の三割負担導入など、医療費に大きな影響を与える制度改正が毎年のようにあったことなどから、比較的制度改正による影響の少なかった平成七年度から平成十一年度の伸びを用いたところであり、意図的との批判は当たらないと考えております。

 なお、今般の改革においては、生活習慣病の予防や長期入院の是正など、計画的に政策を実施し、中長期的に医療費の伸びを抑制するとともに、保険として給付する範囲の見直しや、おおむね三・二%の診療報酬の引き下げを行うなど、医療費適正化を総合的に推進するとともに、国民の医療に対する安心、信頼を確保するための施策を盛り込んでおり、これにより、質の高い医療サービスが適切に受けられる体制や持続可能な医療保険制度を構築していくこととしております。

 医療保険制度の一元化についてですが、具体的な姿についてはさまざまな考え方がありますが、給付の平等を図りつつ、負担の公平と財政運営の安定化を図る必要があることは共通しており、今回の改正においては、都道府県単位を軸として、国保及び被用者保険双方について再編統合を行うとともに、新たな高齢者医療制度を創設することとしております。

 なお、被用者保険と国保とを完全に統合する医療保険制度の一元化については、サラリーマンと自営業者の所得把握等の違いや、事業主負担の扱いをどうするかといった課題があり、国民的な議論が必要であると考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 仙谷議員から七問の御質問がございました。お答え申し上げます。

 医療提供体制の状況についてお尋ねがございました。

 これまでの医療保険制度及び医療提供体制の両面にわたる改革により、国民のだれもが、必要な医療をいつでもどこでも安心して受けられる体制の構築に努めてまいりました。しかしながら、医療機能の分化、連携が十分進んでいないことや、特定の地域等における医師の偏在等の課題もあります。

 このため、今般の医療制度改革において、これらの課題に対応し、良質な医療を効率的に提供することができる体制の確保に向けた改革に取り組んでまいります。

 老人保健事業についてお尋ねがございました。

 同事業の評価については、平成十六年度に老人保健事業の見直しに関する検討会で検討を行い、市町村での保健活動の推進や関係職種の役割の定着が図られたこと、生活習慣病等の予防活動の実施体制が構築されたこと等が評価されている一方、医療保険者が行う健診等との役割分担が不明確である、受診者に対するフォローアップが不十分であるといった課題が指摘されております。

 今般の制度改正では、これらの指摘を踏まえ、医療保険者に生活習慣病健診等の実施を義務づけ、役割分担の明確化を図るとともに、被扶養者に対する健診の充実や、生活習慣病のリスクのある者に対する保健指導の徹底など、積極的な取り組みを進めてまいります。

 乳がん検診についてお尋ねがございました。

 がん検診については、国として、検診の有効性の評価や精度管理等の質の向上に努めており、その結果をがん検診指針に反映させてまいりました。平成十六年度においては、乳がん検診の受診率は、視触診も含めた全体の受診率が一一・三%であり、このうちマンモグラフィーによるものは四・六%にとどまっております。

 このため、平成十七年度より、健康フロンティア戦略の一環として、女性のがん検診の推進に取り組んでいるところであり、平成十八年度予算においては、啓発普及やマンモグラフィーの機器整備等の予算として約二十四億円を計上しております。

 医療保険者による健診についてお尋ねがありました。

 生活習慣病に着目した健診等については、医療保険者に実施を義務づけ、役割の明確化を図ることにより、従来手薄であった被扶養者に対する健診の充実や保健指導の徹底といった効果が期待できるものと考えております。

 また、国が健診内容について基準を示すほか、市町村国保等の健診費用について国や都道府県が補助するなど、健診の充実に向けて取り組むことといたしております。

 後期高齢者医療制度の創設の意義についてお尋ねがございました。

 急速な高齢化に伴い医療費の増大が見込まれる中で、医療費の負担について国民の納得と理解が得られるようにするためには、高齢世代と現役世代の負担を明確化し、わかりやすい制度とする必要があります。

 このため、七十五歳以上の後期高齢者について、医療保険制度の一環として、後期高齢者の一人一人を被保険者として保険料を徴収し、医療給付を行う独立の医療制度を創設することにより、財政運営の責任主体を明確化するとともに、高齢者の保険料と支え手である現役世代の負担の明確化、公平化を図ることといたしております。

 後期高齢者医療制度の運営責任についてお尋ねがございました。

 後期高齢者医療制度については、保険料徴収等の事務は市町村が行うこととした上で、都道府県単位ですべての市町村が加入する広域連合を運営主体とすることとしており、最終的な財政運営の責任は広域連合が担うことになるものと考えております。

 なお、財政リスクの軽減については、国、都道府県が共同して責任を果たす仕組みを設けることとしております。

 最後に、医療事故についてお尋ねがございました。

 医療事故の防止のためには、医療従事者の資質の向上を含めた総合的な取り組みが必要と考えています。今回の医療法改正案においては、全医療機関に対する医療安全の確保の義務づけ、患者の相談への対応や医療機関への助言を行う医療安全支援センターの制度化、行政処分を受けた医療従事者に対する再教育の義務づけを盛り込んでおり、このような取り組みを通じて医療事故の防止を図ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔山井和則君登壇〕

山井和則君 仙谷議員の二つの質問にお答え申し上げます。

 まず第一点目。二〇〇二年に民主党は患者の権利法を提出いたしましたが、それから四年の月日がたち、時代の変化に応じて、このたびの医療の安心・納得・安全法案においては、次のような点をさらに明確化いたしました。

 まず第一に、チーム医療ということを前面に打ち出し、医師等は診療の十分な説明を行うのみならず、医師と医療従事者が十分に連携をして行うことを規定しました。

 第二に、患者の相談窓口として、医療相談支援センターを設置することを規定いたしました。

 そして第三に、医療機関は医療安全委員会を設置することを義務づけ、また医療事故に関しては、国が専門的な調査機関を創設することを規定いたしました。

 そして四点目は、医療機関の客観的な評価をする仕組みを規定いたしました。

 次に、第二の質問、これは大きく分けて二つになりますが、小児救急医療の実態は今どうなっているのか、そして後半では、その改善策はどうなるのかということをお答え申し上げます。

 小児救急医療の現場においては、夜間は、当直という名のもと、ほとんど仮眠もとれない、二日間三十二時間連続勤務という状況が八割以上の病院でございます。これは、明らかに労働基準法違反であります。私も、二晩、小児外来の救急で小児科医の方々について病院で過ごしましたが、夜間も患者さんが後を絶たず、十分な仮眠もとれない、そのまま続けて医師の方々は翌日の勤務を続けるわけであります。

 このような過酷な労働実態の中で、若い医師は小児科を去り、勤務医は開業医に流れ、さらには小児科医の過労死すら起こっている現状があります。

 過労自殺をされた方の遺書がございます。御遺族の了解を得て、少しだけ御紹介させていただきます。

 私のような四十歳代半ばの身には、月五、六回の当直勤務はこたえます。また、看護婦、事務職員を含めスタッフには疲労蓄積の様子が見てとれ、これが医療ミスの原因となってはと、はらはら毎日の業務を遂行している状態です。経済大国日本の首都で行われている余りに貧弱な小児医療。不十分な人員のもとで行われている、その名に値しない救急・災害医療。この閉塞感の中で、私には医師という職業を続けていく気力も体力もありません。

 こういう遺書を残して、四十四歳で、サッカーと子供をこよなく愛する中原利郎医師は、みずからの命と引きかえに、日本のこの貧しい小児医療の現状を主張されたわけであります。これが一九九九年。それから七年間たって、現状はますます深刻化し、小児救急を受診するお子さんの数は倍増し、小児科医の負担はさらに厳しくなっております。

 このような現状を踏まえて、今回の我が党の、民主党の小児医療緊急推進法案においては、後ほど法案の大枠は郡和子議員から答弁がありますが、労働実態においては、夜間の救急に関しては当直ではなく夜勤と位置づけ、三交代制を導入して、そのことによって労働基準法を厳格に守れる体制を整備いたします。そのために、財政的な大胆な支援はもとより、あらゆる支援を行います。このことによって、小児科医の四割を占める女性の医師も安心して働き続けられる制度を充実いたします。

 最後に、小泉総理、そして与党の皆さんに申し上げたい。

 きょう提案されたこの政府案で、本当にこのような危機的な小児救急の現状を持ち直すことができるんですか。先ほど仙谷議員からも話がございましたが、福島県で産婦人科の医師が逮捕をされました。これを機に、ますます深刻化している産婦人科の医療システム、今回の法案で立て直すことができるんですか。新聞を見れば、連日のように、医師不足で地方や僻地の病院や病棟が閉鎖しているじゃないですか。この現状を解決できるんですか。小泉総理、そして何よりも、このような現場の危機的な現状を総理は御存じなんですか。

 今回の政府案は、医療費抑制だけを目的とした、都道府県に任せる無責任な案であります。政治の使命は、国民の命を守ることであります。与野党の別なく、きょうから真摯に議論をして、この崩壊しつつある日本の医療をしっかりと立て直す、その道筋をこの国会で出していかねばなりません。そのことを強く申し上げて、答弁といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 園田康博君。

    〔園田康博君登壇〕

園田康博君 民主党の園田康博でございます。

 ただいま議題となりました政府提出の健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブを代表して、総理並びに厚生労働大臣に質問をいたします。あわせて、民主党提出の小児医療提供体制の確保等のために緊急に講ずべき施策の推進に関する法律案に対しても質問をいたしたいと存じます。(拍手)

 現在、診療報酬制度、医療提供体制に関する制度、健康保険制度などの医療に関する制度は、ことごとく制度疲労が極限まで進行しています。その理由には、それぞれの制度が成立した時代から年月を経て、当時の社会経済状況と様相が一変し、制度創設時点で想定しなかった事態に対応できなくなったことが挙げられます。

 例えば、国民健康保険制度創設当時は、その加入者は、自営業者、農業者など生業を持つ者を想定していましたが、現在は、退職者や無業者、さらには、被用者でありながら国保に加入している者が急速にふえているという状況がございます。

 また、総理は、社会に広がりつつある格差の実態について余り御認識されておられないようでございますが、高度成長期を経て家族像が変容し、近年、単身高齢世帯が増加するに伴い、加入者の年齢、所得構成の保険制度間の格差も広がっております。

 医療提供体制においては、生命と直結する救急医療など、その技術と人材が求められる分野に対する評価が診療報酬でもなされていないために、十分な人材の確保が困難となり、所属する医師、看護師等の医療従事者の疲弊を招き、医療の質の保証ができなくなっているのであります。

 民主党は、今回の政府医療制度改革の柱を、診療報酬制度や小児科問題やがん対策などに象徴される今取り組むべき医療提供体制について抜本的に改めることにあると考えております。その問題の核心部分に踏み込まないままに財政的観点から改革を進めるという点で、従来の医療制度改革と同様に、全く不十分な取り組みであると言わざるを得ません。

 総理並びに厚生労働大臣にお尋ねを申し上げます。今回の法改正を行うことにより、国民の生命を将来においてどのように守り、どのような医療提供体制をつくっていこうとお考えなのか、御見解をお答えください。

 政府が言う医療費の適正化は、医療給付費の抑制を目標に掲げています。医療にかかわる費用は、その対象範囲によって、医療費総額、国民医療費、医療給付費に区分されており、医療給付費は政府が支出する費用をあらわすものでございます。なぜ今回の適正化対象を医療給付費にしたのでしょうか。厚生労働大臣に説明を求めます。

 また、政府支出である医療給付費を抑制するために、政府は今後、患者の自己負担比率の引き上げや食費、居住費負担の引き上げ等を実施することはあるのでしょうか。総理、お答えください。

 医療費適正化の言葉が躍っておりますが、現在の医療提供体制は、患者、被保険者にとって適正な状態であると言えるでしょうか。

 医者、医療従事者の対人口比率、対ベッド比率をアメリカ、ドイツ、フランス、イギリスと比較すると、日本の医者、医療従事者数は最少でございます。千人当たり医師数は、ドイツ、フランスが三・四人、イギリスでも二・二人であるのに対し、日本は二・〇人。病床百床当たり医師数も、アメリカが六十六・八人であるのに対し、日本はわずか十三・七人でございます。後者の病床当たり医師数については、日本の病床数が多過ぎるということもあるでしょうが、人口当たり医師数や看護師数の少なさは群を抜いているではありませんか。

 医者の診療科別の偏在や地域別偏在もありますが、根本的な問題として、現在の医療従事者数では十分な配置ができていないのではないでしょうか。政府は、医師を含む医療従事者の充足率を確認し、必要な医療人材の確保を通じた医療の質の確保、向上を行うことを根拠として医療費のあり方を見るべきと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 今回の医療関連法改正において、新たに負担増の施策が組み込まれました。高齢者の窓口負担、高額療養費の定額部分の引き上げ、医療の必要性の少ない入院高齢者の食費、居住費自己負担化等でございます。このように、今回の負担増は、主に高齢者を直撃することになります。

 少子高齢化社会になり、医療を受ける機会のふえる高齢者が増加するに伴い、政府は、医療財政が厳しくなるという仮説に基づいて、高齢者の負担増を盛り込んでおります。一昨年の改正年金法では、マクロ経済スライドの導入により、二〇二五年までの間で一五%の年金給付額を抑制し、さらに、昨年の介護保険法改正で施設入所者の食費、居住費自己負担化の盛り込み、ことしの介護保険料見直しでは平均で二五%、八百円増の四千九十円に保険料の引き上げが行われる中で、医療保険でもさらなる負担増を求めることが可能なほど高齢者の生活に余裕はないと考えられます。

 社会保障制度全体の抑制策から生じる高齢世代の生活レベルの低下、それに伴う受給抑制が、身体状況を悪化させてから受診をさせることになり、当初の目的と反する結果を招くことにならないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。

 政府法案において、小児の医療費負担軽減を図る趣旨で、軽減期間を三歳未満から義務教育就学前まで延長することとしています。少子化対策の一環としての措置と考えられますが、二年前、そしてことしの三位一体改革関連の児童手当法改正のように、給付対象を段階的に引き上げていくような手法では、国の少子化に対する危機意識は弱いという印象しか与えません。健康弱者である乳幼児期から義務教育終了時までは、安心して医療にかかることができるように、年齢に合わせた負担軽減を行い、育成する家庭の不安を少しでも和らげるべきと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。

 また、今回民主党から小児医療緊急推進法案を提出されておりますが、どうして小児医療に絞った法案を提出されたのか、その経緯を御説明ください。

 政府は、現在三十八万床ある療養型病床を十五万床まで削減することを打ち出しています。しかし、政府の調査によれば、現在、医療、介護の療養型施設に入所するうち七割の人は、何らかの医療的な管理が必要とされています。すなわち、三十八万床のうち二十七万床は必要であると言えるわけですが、政府は十五万床まで削減すると言っております。これでは、政府の調査で医療が必要とされる人たちの分まで病院からほうり出されるのではないでしょうか。

 医療が必要でないと考えられる十一万床分の入院者も、在宅に戻ったり介護関連施設に入居できないことから入院を継続しているんです。その現実を踏まえれば、療養型医療施設の廃止は、介護関連施設や在宅介護の充実が伴わなければ、行き場のない高齢者を社会にほうり出すことにほかなりません。六年間の経過期間を置いておりますが、第三期の施設整備計画が十八年度から開始される中では、施設整備は三年間凍結となります。政府は、この六年間、実質三年間で介護療養型医療施設の廃止を実施できると考えていらっしゃるのでしょうか。厚生労働大臣、明確にその根拠をお示しください。

 政府は、医師の過剰を発生させないために、医学部の定員設定を通じ人材供給をコントロールしておりますが、現に医療現場に従事している医者、医療従事者の不足が指摘されているところでございます。

 人材の偏在は地域医療に影を落としていることは、報道からもかいま見ることができます。政府は過剰な医療従事者を生み出さない方針でありますが、現在の就労状況を見ますと、医療現場はオーバーワークに耐えることで辛うじて人員不足を補い、機能しているにすぎません。これは、先ほど民主党の提案者からも説明があったとおりでございます。このような状況で、医療提供量、質、医療安全確保は十分だと言えるでしょうか。

 報道をにぎわす医療事故は、その原因をたどれば、医療人材の不足から生じる医療スタッフの過労、そして注意力の減退や非常時の判断ミスから、すなわち現在の医療提供体制の構造的な原因から生じているとも考えられるわけでございます。少なくとも、救急医療を中心とした医療提供体制に人材の補充が必要であり、連続勤務を強いられる実態を改善する必要があるのではないでしょうか。このように医師不足や過酷な勤務実態の解消のため、そして医師の使命感、達成感を高めるために政府は何をなすべきであるとお考えか、厚生労働大臣の御見解をお伺いします。

 また、医療事故の原因を究明するためには、中立な調査機関を設置し、そして専門家を含めた冷静な判断に基づく必要があると考えますが、大臣の御見解をあわせて御答弁願います。

 今般の診療報酬改定において、内容のわかる領収書の発行が義務づけられることとなりましたが、どのような薬が使われ、どのような治療や検査が行われているかなどの医療の内容を詳細に把握しようとしますと、レセプト並みの詳細な内容を記した文書の交付が必要となります。しかし、今回の診療報酬改定では、この「さらに詳細な医療費の内容が分かる明細書」を発行するのは努力義務となっており、医療過誤が疑われる場合の患者が医療内容を把握するには高いハードルが残っていることになります。なぜ詳細な医療費の内容がわかる明細書を発行することを義務づけることができないのか、厚生労働大臣の御見解をお伺いいたします。

 民主党は、単なる財政抑制の視点に立つのではなく、患者本位の立場で安心、納得、安全の医療提供体制、これを構築し、国民生活の向上のために全力を尽くすことをお誓い申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 園田議員に答弁いたします。

 今回の医療制度改革についてですが、国民皆保険を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくため、医療保険制度及び医療提供体制の両面において改革を行うこととしております。

 医療提供体制については、急性期から在宅療養に至るまでの地域医療の連携体制を構築するための医療計画制度の見直し、小児医療などにおける医師確保対策などを講じるとともに、医療に関する情報提供の充実、医療安全対策の強化にも取り組んでまいります。

 こうした改革により、今後とも、国民のだれもが、必要な医療をいつでもどこでも安心して受けられる体制を確保してまいります。

 患者負担のさらなる見直しについてですが、今回の医療制度改革においては、将来の医療給付費の規模の見通しを示し、これを医療給付費の伸びの実績を検証する際の目安とし、一定期間後、この目安となる指標と実績とを突き合わせることにより、医療費適正化方策の効果を検証し、その検証結果を将来に向けた施策の見直しに反映させる、現実に医療給付費の対国民所得比等の一定の増加が見込まれる場合、施策の見直しの必要性について検討を行うこととしております。

 患者負担のさらなる見直しについては、他の施策の見直しとあわせて、国民的議論を踏まえつつ検討していくべきものと考えております。

 医療従事者の確保と医療の質の向上でございますが、医療従事者の数については、これまで、医師や看護師を中心として需給見通しを作成してきたところであり、医師数については、毎年おおむね七千人から八千人程度が新たに医師になるなど、着実に増加しております。しかしながら、我が国では、諸外国に比べ人口当たりの病床数が多いため医療従事者の配置が十分ではない、また特定の地域や診療科での医師の偏在の問題があると指摘されております。

 このため、今回の法案で、療養病床について、医療の必要度が高い患者を受け入れるものに限定する再編成を行うこととするとともに、地域の医療関係者の協議により都道府県の医師確保対策を検討する仕組みを制度化する、今月改定された新しい診療報酬において小児科、産科等を重点的に評価するなどの施策を推進しております。

 また、看護師等については、従来より、各都道府県のナースセンターにおいて、就業していない看護師の再就業の促進等を図ってきており、これらの施策を通じて医療従事者の確保に取り組んでまいります。

 高齢者の負担増でございますが、急速な少子高齢化の進展の中で、社会保障制度の持続可能性を高めることが必要であることから、一昨年の年金制度改革、昨年の介護保険制度改革を行ってまいりましたが、さらに医療保険制度についても、高齢化に伴う医療費の増加が見込まれる中、給付と負担の均衡を図り、将来にわたり持続可能な制度を確保するための改革を実現することが必要であります。

 このため、今般の改革においては、現役並みの所得を有する高齢者の患者負担については、負担の均衡の観点から、現役世代と同じ三割負担とするなどの見直しを行うこととしております。

 その際、高齢者については現役世代よりも低額の自己負担限度額を設定するとともに、低所得者については自己負担限度額を据え置くなど、十分な配慮を行うこととしており、必要な医療まで妨げられるものではないと考えております。

 小児医療の負担軽減ですが、今回の制度改正では、少子化対策の観点も踏まえ、平成二十年度から、乳幼児に対する自己負担割合を三割から二割へ軽減する措置の対象年齢を、三歳未満から義務教育就学前まで拡大することとしており、その確実な実現を図ることが必要と考えております。

 年齢に合わせたさらなる負担軽減については、各年齢ごとの医療費の実態や年齢間の自己負担割合のバランス、各地方自治体における個別の取り組み等を踏まえると、厳しい医療保険財政のもと、慎重な検討が必要と考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 園田議員から六問、御質問がございました。お答え申し上げます。

 今回の医療制度改革のねらいについてお尋ねがございました。

 我が国は、国民皆保険のもと、だれもが安心して医療を受けることができる医療制度を実現し、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準を達成してまいりました。

 今後、急速な高齢化の進展に伴う医療費の増加が見込まれる中においても、すべての国民に良質な医療を効率的に提供することができるよう、医療保険、医療提供体制について、制度全般にわたる改革を行ってまいります。

 医療費適正化の目安についてお尋ねがありました。

 医療費適正化の取り組みについては、生活習慣病予防や長期入院の是正を進めることにより、国民医療費全体についても適正化していくものであり、医療給付費のみの適正化を図るものではありません。

 なお、医療費の将来見通しについては、公的保険財政における給付と、それを支える負担の関係を示すため、国民医療費ではなく医療給付費を用いたところであります。

 療養病床の再編成についてお尋ねがございました。

 今回の療養病床の再編では、中医協が行った医療区分の調査結果等において、医療の必要度が高い方が約四割であることを踏まえ、三十八万床の療養病床のうち十五万床について医療保険で対応するとともに、医療の必要度の低い方々への対応としては、療養病床が老人保健施設等の介護施設に転換することにより、大きな改修をすることなく受け皿となることが可能と考えております。

 また、介護サービス基盤の整備については、地方公共団体ともよく連携して計画的な充実に努めてまいります。

 なお、平成十八年度から二十年度までの第三期計画期間においても、地域の実情に応じた一定の転換は可能であると考えております。

 医師不足の解消や労働環境の改善についてお尋ねがございました。

 医師の偏在問題への対応や勤務医の労働環境の改善のためには、医療機能の分化、連携を推進し、限られた人材を急性期医療を中心に有効に活用していくことが重要であると考えております。

 そのため、都道府県で小児医療、産科医療の医療機能の集約化、重点化の検討を行い、具体的な対策を講じるとともに、小児救急医療などについて地域医療の連携体制を構築するため医療計画制度を見直すほか、制度、予算、診療報酬等、全般にわたる対策を講じることといたしております。

 医療事故の原因究明機関の設置についてお尋ねがございました。

 医療事故の原因究明は、再発防止や医療に対する信頼を確保する上で重要であることから、診療行為に関連した死亡を対象に、専門家によって中立的に原因を究明し、再発防止の検討を行うモデル事業を実施し、課題の整理を今行っております。その実施状況を踏まえ、死因究明制度の検討を進めてまいります。

 最後に、医療費の明細書についてお尋ねがございました。

 今回の診療報酬改定においては、保険医療機関等に、診療報酬点数表の検査、手術等の各部単位で金額の内訳のわかる領収書を無償で交付することを義務づけたところであります。

 さらに個別点数ごとの詳細がわかる明細書については、保険医療機関等の体制を考慮すれば、現時点における義務づけは困難であり、患者から求めがあった場合の努力義務としたところでございます。(拍手)

    〔郡和子君登壇〕

郡和子君 民主党の郡和子でございます。

 提出者として、園田議員の御質問にお答え申し上げます。

 なぜ小児医療に絞った法案の提出かという御質問でございました。

 子供は国の宝、チルドレンファーストという視点に立って、民主党は、子供の安全や子育て支援について特に最優先課題として取り組んでいるところでございます。医療分野におきましても、危機的状況がかねてから指摘されているところです。先ほども山井議員から、普通の子供好きの小児科医が、業務に絶望してみずから命を絶ち、そして遺書につづられた文章の紹介がございました。労働環境の面からも、今の小児医療が抱える大きな問題提起をさせていただいたところでございます。小児医療は、まさに瀕死の状況にございます。

 小児医療に従事する医師だけではございません。どこにでもいる普通の子供たちを、医療体制の不備のために死なせることがあってよいのか。大変悲しいことですけれども、こうした事例は枚挙にいとまがございません。

 社会のひずみは、いつも本当に立場の弱いところにダメージを与えるものでございます。この状況を何としても変え、お子さんや保護者の満足度、安心感を高めるために、小児医療を取り巻くさまざまな問題点について、緊急かつ計画的に対策を講ずる必要があると考えているところでございます。政府の取り組みは、小泉総理の御答弁にもございましたけれども、余りに手ぬるいと申し上げなければなりません。

 なぜ小児医療に特化した法案を用意したのかという質問ですけれども、端的に申し上げれば、日本の小児医療を取り巻く現状が、医師の偏在、地域間格差、不採算性、そして勤務医の過重労働という、我が国の救急医療が抱える根本的な問題を最も顕著に示しているからでございます。

 私ども民主党は、小児医療への取り組みが日本の医療全体を改善に導くかぎだ、突破口になると考えて、今回この小児医療緊急推進法案を提出させていただきました。(拍手)

 我が国では、小児救急医療体制が二十四時間、三百六十五日整備されているということになっておりますが、現状は問題が山積しており、国民が望む小児医療体制が提供されているとはとても言いがたい状況でございます。

 私の地元仙台で、母親の不安、心配の解消を理念に、ホームページを充実させ、子育てサークルにも取り組む小児科医がいらっしゃいます。外来の患者さんにもう少し時間をかけたいと、食事をとる時間を惜しんで診療されていますが、子育て支援という観点からも、小児医療への取り組みは重要な課題であると御自身の取り組みを通しておっしゃっておられます。

 医療現場におきましては、不採算経営による小児科病棟の閉鎖、また勤務医の過重労働が指摘され、核家族化や共働き家庭の増加などを背景にして、救急、休日、夜間診療などへの期待が高まっておりますが、供給体制と保護者のニーズとの間にずれやミスマッチが生じていて、もはや看過できない状況でございます。

 そこで、民主党は小児医療緊急推進法案を提出いたしましたが、この根底に流れておりますのは、以下五つの基本的な考え方でございます。

 それは、小児医療体制を図る国の責任において、一般財源を集中投入して整備する、小児の医療供給体制のシステム化を進める、そのことによって、勤務医の過重労働を軽減する、小児科医を着実に確保する、地域の実情に応じた、子供にとって安心で安全な医療提供体制を確保するということであります。

 当面、システム化の推進に伴いまして、救急医療体制の広域化は避けられないことだと思います。そして、遠距離の受診にならざるを得ないという場面も出てきましょう。しかしながら、ここでとても重要なことは、二十四時間、三百六十五日、いつでも診療が受けられる道筋があることを明確に示し、医療提供体制への不安を解消し、同時に、育児に対する相談支援のネットワークを構築することであると考えております。

 救える小さな命を救ってあげられる環境を国として責任を持って構築すること、今、我が国の小児医療は特段の政治判断が必要であるということを重ねてお訴え申し上げ、私の答弁を終わらせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 上田勇君。

    〔上田勇君登壇〕

上田勇君 私は、公明党を代表いたしまして、健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案等につきまして、質問させていただきます。(拍手)

 国民の生命と健康を支える医療制度は、国民生活の最も重要な基盤であります。我が国の医療制度については、国際的にもすぐれたものと評価されているところですが、今後、急速な高齢化の進展が見込まれる中で、大幅な医療費増大のおそれや、現役世代の過度な負担などが懸念されております。

 こうした課題を踏まえつつ、国民皆保険制度を堅持し、将来にわたり持続可能な制度とすることは、将来世代に対する我々の責任であると考えます。医療制度改革は、まさにこうした目的のために行われるものでなければならないということをまず冒頭申し上げたいと思います。

 さて、今回の医療制度改革に当たりましては、政府・与党において精力的な議論を重ね、昨年十二月に医療制度改革大綱を取りまとめました。その大綱においては、患者、国民の視点から医療はいかにあるべきかについて、安心、信頼の医療の確保と予防の重視、医療費適正化の総合的な推進、超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現という基本的な考え方に基づき、医療制度の構造改革を推進するとしたところであります。

 そこで、まず総理に、今回の医療制度改革は何を目指すのか、それにより我が国の医療制度がどのようになるのか、今回の改革のねらいについてお伺いいたします。

 次に、高齢者の患者負担の見直しについてお伺いいたします。

 高齢者の医療費は、主に公費と現役世代の保険料による支援で支えられております。世代間負担の公平を図るとの観点から、負担能力のある高齢者には応分の負担をしていただくため、法案におきましては、平成十八年十月に、現役並みの所得がある高齢者の患者負担を現行の二割から三割に、平成二十年四月には、七十歳から七十四歳までの高齢者の患者負担を一割から二割に引き上げるといった内容となっております。所得の低い方々には自己負担限度額を据え置くなどの措置が講じられてはいるものの、高齢者の患者負担の引き上げについては、とても負担できないとの懸念の声もあります。

 そこで、今回の見直しの趣旨と低所得者に対する具体的な配慮につきまして、厚生労働大臣にお伺いをしたいと思います。

 高齢者の自己負担につきましては、医療保険と介護保険でそれぞれ負担限度額が定められていますが、家族が医療保険と介護保険の双方を利用すると、自己負担の合計額が著しく高額になる場合があります。

 公明党は、かねてから、制度は別でも家計から見れば同じ負担であり、こうした場合の負担の軽減を図るため、医療保険と介護保険でかかった負担額を合算して、一定の限度額を超える場合にはその差額を支給するという、高額医療と高額介護の合算制度の導入を訴えてきたところであります。

 今回の改革において、高額医療と高額介護の合算制度の実現が図られることとなりましたけれども、その具体的な内容と検討状況につきまして、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 今回の医療制度改革の大きな柱の一つとして、後期高齢者医療制度の創設が挙げられます。

 新たな高齢者医療制度の創設につきましては、長年の課題であり、これまでもその実現に向けて検討が行われてきましたが、最終的に関係者の理解が得られず、先送りとなってきたところであります。

 今回の改革において、七十五歳以上の後期高齢者を対象とした新たな医療制度を創設し、保険料、現役世代からの支援及び公費を財源としつつ、都道府県単位ですべての市町村が加入する広域連合が運営することになったわけでありますが、こうした後期高齢者医療制度を創設する趣旨につきまして、総理から御答弁をお願いいたします。

 次に、医療費適正化の具体的な方策について質問いたします。

 我が国の医療制度を持続可能なものとしていくためには、医療費の増加をもたらしている構造的な要因を改革し、医療サービスの質を向上させながら、医療費の適正化を進めていくことが必要であります。とりわけ、他の先進諸外国と比べて長期にわたり、また地域ごとに大きな格差のある入院期間の短縮を進めていくことが必要と考えますが、長期入院の背景には、地域における医療機能の分化、連携や、在宅での医療の受け皿が不足しているといった問題があると考えられます。

 そこで、平均在院日数の短縮を図るために、具体的にどのように実効性のある取り組みを進めていくことを考えておられるのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 長期入院の是正に関連して、今回の法案には、介護療養型医療施設の廃止が盛り込まれています。

 療養病床は、医療の必要性の高い患者を受け入れるものに限定をし、医療保険で対応するとともに、医療の必要性の低い患者については、病院ではなく、老健施設や居住系サービス、在宅等で受けとめるという今回の療養病床の再編成は、基本的に理にかなった方向だとは考えます。また、介護保険制度創設から六年を経て介護基盤の整備も進んできた中で、今回の医療制度改革と診療報酬・介護報酬改定が同時に行われるこの機会に、長年の課題の解決に道筋をつけることは必要なことだというふうに考えております。

 しかしながら、利用者の皆様方からは、必要な受け皿がきちんと確保されるのか、そういった点につきまして不安の声も聞かれております。今回の措置に当たり、必要な受け皿をどのように整備していくことを考えておられるのか、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 ところで、今回の医療制度改革におきましては、かねてから私たち公明党が主張してきました予防重視を柱の一つとして位置づけている点について、高く評価したいと思います。

 近年、我が国では、糖尿病等の生活習慣病の患者が増大し続けており、国民一人一人が健康で長寿の人生を歩めるよう、治療重点の医療から、予防も重視した保健医療体系への転換を図っていくことが重要であります。

 法案では、医療保険者に、四十歳以上の加入者に対して、糖尿病等に着目した健診、保健指導を義務づけることなどが盛り込まれていますが、国民の健康増進、生活の質の向上、さらには中長期的な医療費適正化を図っていくためには、健診、保健指導を初めとする生活習慣病を予防する取り組みが必要不可欠であります。

 厚生労働省が推進しております健康日本21でも必ずしも目標どおりの成果が上がっていないのが実情と承知しておりますけれども、今後、確実に実効性を上げていくためには、従来とは異なった施策の充実が必要であると考えます。具体的な考え方につきまして、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 次に、医療提供体制の改革についてお伺いいたします。

 医療制度改革の実施に当たっては、国民の医療に対する安心、信頼が得られる、効率的で質の高い医療サービスを提供する医療提供体制の確立が必要であります。

 このため、具体的には、患者第一の立場から、患者が自分の病気について主治医以外の専門家の意見が聞けるセカンドオピニオンを推進するなど、患者に対する情報提供を進めるとともに、地域における医療の連携体制を構築していくことが必要であると考えますが、これらの課題についてどのように取り組んでいかれるのか、厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 次に、レセプトのオンライン化について質問いたします。

 我が国においては、レセプトの電子化率が二割程度にとどまっていますが、年間約十六億件に上るレセプトについて、紙でのやりとりから電子媒体での請求に変われば、医療事務が効率化されるだけではなく、医療費の分析が容易になり、医療の構造改革につながっていくのではないかと考えられます。

 政府におきましては、レセプトのオンライン化を進めていく方針を打ち出しておりますが、それによりどのような効果が期待されると考えておられるのか、また、今後どのように進めていかれるのか、総理にお伺いしたいというふうに思います。

 また、レセプトのみならず、カルテについても電子化が進めば、患者が一度検査を受ければどの病院でも検査データを共有できるような、そういったメリットがあると思います。電子カルテ等、医療分野のIT化をどのように推進していくお考えなのか、総理にお伺いしたいと思います。

 各界の有識者の中には、今後の医療費の伸び率を名目経済成長率の範囲内におさまるよう管理していくべきとの意見もあります。医療制度を中長期的に持続可能なものにしていくためには、経済成長とのバランスについても考慮していくことは必要でありますけれども、高齢化の進行や医療技術・サービスの進歩を考えるときに、機械的に医療費総額を抑制していくということは適切でない面が多いものと思料されます。

 最後に、総理に、中長期的な医療費のあるべき水準についての考え方をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 上田議員に答弁いたします。

 今回の医療制度改革についてですが、今般の改革においては、生活習慣病予防や長期入院の是正など計画的に政策を実施し、中長期的に医療費の伸びを抑制するとともに、保険として給付する範囲の見直しや、おおむね三・二%の診療報酬の引き下げを行い、医療費適正化を総合的に推進することとしております。

 これらとあわせ、七十五歳以上の高齢者を対象とした新たな医療制度の創設や都道府県単位を軸とした保険者の再編統合など、超高齢社会を展望した医療保険制度体系の見直しを行うこととしており、こうした改革を通じ、将来にわたり持続可能な制度を構築していくこととしております。

 また、小児科、産科等の医師不足対策や、診療報酬における重点評価、医療計画制度の見直しを通じた急性期から在宅療養に至るまでの地域医療の連携体制の構築、患者に対する医療費の内容のわかる領収書の提供や都道府県を通じた情報提供制度の創設など医療に係る情報提供の推進、レセプトのオンライン化などにより、国民の医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に受けられる体制を構築してまいりたいと考えます。

 後期高齢者医療制度を創設する趣旨についてですが、医療費の負担について国民の納得と理解が得られるようにするためには、高齢世代と現役世代の負担を明確化し、わかりやすい制度とする必要があります。

 このため、七十五歳以上の後期高齢者について独立の医療制度を創設することにより、財政運営の責任主体を明確化するとともに、高齢者の保険料と支え手である現役世代の負担の明確化、公平化を図ることとしております。

 さらに、後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療が提供できるよう、新たな診療報酬体系を構築することとしております。

 レセプトのオンライン化についてですが、医療機関の診療報酬請求に係る事務処理の軽減と迅速化、審査支払い機関の審査の効率化、重点化、保険者の保健事業への活用など、医療保険事務全体を通じた効率化が図られるほか、収集されたデータは医療政策の立案に当たって活用できるといった効果が期待できると思います。

 本年四月から医療機関に計画的に導入を進め、平成二十三年度当初までには原則としてすべてのレセプトのオンライン化を実施することとしております。

 また、医療分野のIT化については、医療機関における電子カルテ等の標準化の推進、情報セキュリティー基盤の確保等に取り組むことにより、効果的に推進していくこととしております。

 中長期的な医療費のあるべき水準についてですが、生活習慣病予防や長期入院の是正を計画的に進めるとともに、保険として給付する範囲の見直しや三・二%の診療報酬の引き下げといった政策を組み合わせ、個別政策の積み上げによる総合的な医療費適正化を推進していくこととしております。

 あわせて、将来の医療給付費の伸びの見通しを作成し、これを医療給付費の実績を検証する際の目安とすることとしております。

 こうした取り組みにより、国民が安心し信頼できる医療を確保しつつ、医療費の伸びを、国民が負担可能な範囲としていきたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 上田議員から六問の御質問がございました。お答え申し上げます。

 高齢者の患者負担の見直しについてお尋ねがございました。

 医療費の増大が見込まれる中、今回の改革案では、高齢者に応分の負担をしていただくという観点から、現役並み以上の所得を有する高齢者について現役世代と同じ三割負担とするなど、見直しを行うこととしております。

 なお、高齢者については、現在、低所得者について一般の高齢者より低額の自己負担限度額を設定しておりますが、見直し後においても、自己負担限度額を据え置くことなどの措置を講ずることとしております。

 高額医療・高額介護合算制度についてお尋ねがございました。

 医療保険と介護保険の自己負担の合算額が著しく高額となる場合の対応として、平成二十年度より、被保険者の申請に基づき、医療と介護の自己負担額の合算額が負担限度額を超える場合に、その差額を支給することといたしております。

 負担限度額については、七十五歳以上の一般所得者について年額五十六万円とすることを基本に、医療保険各制度や所得区分ごとの限度額を踏まえてきめ細かく設定することを考えており、例えば、七十五歳以上の一般所得者について、これまでの医療と介護の限度額を合わせて最大で年額九十八万円の負担が、約四十二万円軽減されることになります。

 平均在院日数の短縮についてお尋ねがございました。

 今回の改革においては、国と都道府県が平成二十年度から五年ごとに作成する医療費適正化計画において、平均在院日数の短縮に関する具体的な政策目標を掲げた上で、その達成に向けた取り組みを計画的に進めていくこととしております。

 具体的には、まず、療養病床の再編成に取り組み、長期入院の是正を図ることとしております。また、医療機能の分化、連携の推進や在宅療養支援の強化などにより、平均在院日数の短縮を進めてまいります。

 療養病床の再編成についてお尋ねがございました。

 今回の療養病床の再編では、療養病床は医療の必要度が高い患者に限定し、医療保険で対応するとともに、医療の必要度の低い方々への対応としては、療養病床が老人保健施設等の介護施設に転換することにより、大きな改修をすることなく受け皿となることが可能と考えております。

 再編に当たっては、入院している方々の追い出しにつながらないよう、今後六年間は、医療、介護双方の病床について、円滑な転換ができるような経過的な類型を設けることとしております。

 なお、介護サービス基盤の整備については、中重度者の在宅サービスや不足地域の施設サービスにつき、地方公共団体ともよく連携して、計画的な充実に努めてまいります。

 生活習慣病対策についてお尋ねがございました。

 生活習慣病対策については、これまでも健康フロンティア戦略等を推進してまいりましたが、今回の医療制度改革においても、予防重視を柱の一つに位置づけたところであります。

 具体的には、糖尿病等の有病者、予備群の減少に向け、運動、食生活、喫煙面での生活習慣の改善に向けた国民の意識啓発に積極的に努めるとともに、医療保険者の役割を明確化し、効果的、効率的な健診、保健指導を義務づけるなど、本格的な生活習慣病予防の取り組みを推進してまいります。

 最後に、医療提供体制の改革についてお尋ねがございました。

 今般の医療制度改革においては、セカンドオピニオンの推進のための診療報酬上の措置を新たに講じるとともに、都道府県を通じた医療情報の提供制度を創設するなど、患者への情報提供を推進することとしております。

 また、医療計画制度を見直し、急性期から在宅での療養に至るまでの切れ目のない医療サービスが提供されるよう、がん対策、小児救急医療、周産期医療など、地域における良質で効率的な医療提供の連携体制の構築に取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法等の一部改正案及び医療法等の一部改正案について、総理及び厚生労働大臣に質問します。(拍手)

 小泉内閣の五年間、年金や医療などの連続改悪で、負担増と給付減が繰り返されてきました。その上、四月から、障害者自立支援法や介護保険の負担増が始まっています。この社会保障の切り捨てが、老後や病気などへの国民の力を削り取り、経済格差を押し広げてきました。

 今日、長時間労働は一層深刻となり、非正規雇用が三割にも達し、生活保護も百万世帯を超えています。その中で、国民の間には、深刻な健康被害が広がり、社会保障に対する強い不安や不満が広がっています。本法案による負担のさらなる押しつけがこの格差を一層広げることは明らかです。

 とりわけ、国民皆保険の土台である国民健康保険の事態は深刻です。保険料の滞納が四百七十万世帯に達し、保険証の取り上げはこの五年間で三・三倍に拡大しています。正規の保険証がないために病院にも行けず、そのために命を落とすなど、悲惨な事件も報じられています。国民医療の現実がここに象徴されていると考えます。この深刻な事態についてどう認識をするのか、見解をお聞きします。

 本法案の特徴の一つは、高齢者などへの情け容赦ない負担増と医療の切り捨てにあります。もう一つは、医療給付費の削減を医療費適正化計画に定めて強行し、混合診療など保険のきかない医療を拡大しようとすることであります。

 そこで、第一に、患者負担の拡大について伺います。

 本法案によれば、ことし十月から、七十歳以上の現役並み所得者の窓口負担は二割から三割になります。療養病床に入院する七十歳以上の食費、居住費も、保険の適用が外され、自己負担となります。この負担増は、二〇〇八年四月からは六十五歳以上に対象が拡大され、一カ月の入院費は十三万円を超えてしまいます。さらに、医療費が高額になったときの高額療養費制度も、限度額が引き上げられます。人工透析患者に対しては、一定所得以上の負担を月額一万円から二万円にふやそうというものです。

 医療費の削減を理由に、高齢者や重い病気に苦しむ患者に負担を強いることは、一層大きな苦痛を押しつけると思いませんか。

 二〇〇八年四月から導入される高齢者医療制度は、現在家族に扶養され、保険料がかからない二百四十万人の高齢者も含めて、七十五歳以上のすべてを対象にし、年間平均で七万四千円の保険料を徴収するというものです。介護保険料と合計すると、月額一万円を超える額が年金から天引きされます。

 有病率が高く、病院に通う機会の多いお年寄りに対して、いわばねらい撃ち的に負担の拡大を押しつけることは許せません。医療機関への敷居を高くすれば、国民の健康を破壊するだけではないでしょうか。お答えください。

 次に、医療費適正化計画や療養病床削減などについてです。

 経済財政諮問会議は、GDPの伸び率と高齢化を加味した基準で医療費を管理し、医療給付費の総額抑制を求めました。本法案では、医療費適正化計画を策定して目安指標を定めるとしています。どちらも医療費抑制がねらいですが、この目安とは一体どのような内容を持つものですか。具体的数値などを示して、適正化計画に盛り込むことになるのでしょうか。

 都道府県の医療費適正化計画では、国の基本方針に沿って生活習慣病や在院日数などの数値目標を定め、この目標が達成できなかったり全国平均を下回った場合には、都道府県の責任を求める内容になっています。生活習慣病を減少するために、国民の健康の悪化の原因を取り除き、健康診断や保健指導を引き上げ、疾病の早期発見、早期治療体制を整備するなどは、本来、国の責任で行われるべき施策ではありませんか。答弁を求めます。

 平均在院日数の削減については、全国平均の在院日数と最も短い県との差を半分に縮小するという目標を立てます。国は、この目標達成度を評価して、診療報酬の特例を都道府県が設けることができるとしています。この特例が、患者を病院から追い出し、医療機関に病床転換を強要するなど、事実上、懲罰的な設定とはなりませんか。

 政府は、医療の必要度が低いといって、現在三十八万床ある療養病床を、今後六年間でその六割、二十三万床を削減するとしています。しかし、それでは、長期入院患者に必要な医療的管理や容体の急変に適切に対応する病床の確保ができなくなりはしませんか。

 施設から在宅へが国の方針です。ところが、在宅医療の体制や地域での介護の体制はどうでしょうか。例えば、特別養護老人ホームが足りなくて待機者が三十八万人を超えるなど、地域の受け皿は全く不足しています。病床が削減されれば、入院患者の行き先がなくなります。これは、患者の追い出しそのものではありませんか。お答えください。

 そもそも、日本の医療費水準は、国際的に見て決して高くはありません。一人当たりの医療費はOECD加盟国中九番目、総医療費をGDP比較で見ると、七・九%で十七番目です。医療費の削減どころか、経済力に見合った医療の充実こそ果たすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 最後に、保険のきかない医療を拡大することについてです。

 日本経団連は、医療の給付費の増加を抑えるため、保険外サービスと保険サービスの併用を進めるべきであると主張し、大企業の保険料負担を軽減したいという強い要求を露骨にしています。

 昨年の厚生労働省の医療制度改革試案には、外来受診一回当たり五百円から千円までを保険の対象から外すという保険免責制度が盛り込まれました。リハビリなど定期的に通院が必要な患者にとっては負担が大きくなり、風邪や腹痛ぐらいでは病院に行くのを我慢することになるのは避けられないと思います。本改正案には入りませんでしたが、政府文書に書き入れたこと自体が極めて重大です。保険免責制度の導入はすべきでないと考えますが、明確な答弁を求めます。

 現在は、差額ベッド代などの徴収を例外的に認めています。この特定療養費制度を、保険に適用するための評価を行う療養費と、将来の保険の適用を前提とせず患者が選択できる療養費とに再編しますが、これまで例外的であった差額ベッド代など以外にも、高度医療技術や生活療養などの名目で、保険を適用しない分野を拡大する懸念があります。

 そうなれば、新しい医療技術や新薬の利用、手厚い治療などはお金のある人だけが受けられ、そうでない人は十分な治療が受けられないという治療の格差をつくり出すことになります。所得の格差が命の格差につながるような社会は、あってはならないと考えますが、いかがでしょうか。

 憲法二十五条の精神に照らし、医療での国の責任と負担を大幅に拡充し、すべての人が安心してかかれる医療制度を築くべきです。

 本改正案はこの道を大きく踏み外すものであり、撤回を強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 高橋議員に答弁いたします。

 国民健康保険の資格証明書についてですが、国民健康保険は住民の相互扶助により成り立つ社会保険制度であり、すべての被保険者に公平に保険料を負担していただくことが制度の存立の前提であります。低所得等の事情のある被保険者の方々について保険料を軽減するなどの措置を講じておりますが、負担能力があるにもかかわらず保険料を納めていない方の未納分は他の被保険者の負担となり、被保険者間の公平が損なわれることから、資格証明書制度は必要なものと考えております。

 なお、資格証明書の交付を受けた被保険者の医療費は、保険者から償還されるものであり、医療の機会を奪うものではないと考えております。

 患者負担の拡大についてですが、高齢化に伴う医療費の増加が見込まれる中、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいきません。今般の改革においては、負担の均衡の観点から、現役並みの所得を有する高齢者の患者負担については現役世代と同じ三割負担とするなどの見直しを行う一方、低所得者については自己負担限度額を据え置くなど十分な配慮を行うこととしており、必要な医療まで妨げられるものではないと考えております。

 医療費の国際比較についてですが、制度や社会的背景の違いなどもあり、単純に国際比較することは困難ですが、我が国の総医療費の対GDP比は、現時点においてさほど高水準にあるとは言えないものの、国民一人当たりの医療費は主要先進国の中で比較的高水準にあり、今後、急速な高齢化の進展に伴い、一人当たり医療費の高い高齢者がふえていくことによって、医療費の増大やこれに伴う財政支出の増大が見込まれるものと考えております。

 したがって、国民皆保険制度を堅持し、将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療費適正化を総合的に推進していく必要があると考えております。

 特定療養費制度についてですが、今回の見直しは、保険の対象外の先進的な医療や海外で承認されている医薬品を早期に少ない負担で利用したいとの国民の要請にこたえるため、安全面に配慮をしつつ、全額自己負担であったものの一部を保険給付の対象とするものであり、国民が安心して医療を受けることができる公的医療保険制度を損なうものではないと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 高橋議員から五点、御質問がございました。お答え申し上げます。

 医療費適正化計画についてお尋ねがございました。

 国及び都道府県が作成する医療費適正化計画においては、生活習慣病の予防や長期入院の是正等の中長期対策に関する政策目標が達成された場合の効果を踏まえ、その結果として医療費の見通しを記載することとしております。

 一方で、目安となる指標については、中長期の医療費適正化対策の効果をもとにして、公的保険給付の見直し等を積み上げた効果を織り込んだ形で、将来の医療給付費の規模の見通しを示したものであります。

 この見通しについては、実績と突き合わせて医療費適正化方策の効果を検証し、施策の見直しの必要性について検討する際の目安であり、一律の機械的、事後的な調整を行うものではありません。

 生活習慣病対策についてお尋ねがございました。

 生活習慣病対策については、これまでも健康フロンティア戦略等を推進してまいりましたが、今回の医療制度改革においても、医療保険者による効果的、効率的な健診、保健指導を徹底するなど、本格的な生活習慣病予防の取り組みを推進していくこととしております。

 具体的な施策の推進に当たっては、地域の特性を踏まえた取り組みが重要であることを踏まえ、都道府県、市町村、医療保険者等の関係者と十分に連携協力し、糖尿病等の有病者、予備群の減少に向けた取り組みを進めてまいります。

 都道府県ごとの診療報酬の特例についてお尋ねがございました。

 この特例は、都道府県における医療費適正化の目標を達成するために必要な場合に設けることができることとしておりますが、その際にはあらかじめ都道府県知事と協議することとしており、地域の実情も踏まえつつ、適切な医療を提供する観点から見て合理的であると認められる範囲内において設定することになると考えております。

 療養病床の見直しについてお尋ねがございました。

 福祉施設が不足する中で、病院が高齢者介護の受け皿となってきた、いわゆる社会的入院の問題は、介護保険施行時にも大きな論点となりましたが、解決しないまま今日に至っている長年の懸案であります。

 介護保険制度の施行から六年を経て、介護基盤の整備も進んできた中で、療養病床は医療の必要性の高い患者を受け入れるものに限定して、より手厚い職員配置により対応することで必要かつ適切な医療を十分提供できるものと考えており、医療の必要性の低い方々への対応としては、療養病床を老人保健施設やケアハウスなど生活環境を重視した施設等へ移行することにより、いわゆる社会的入院問題の解決を図るものであります。

 こうした移行が円滑に進むよう、都道府県等とも連携を図りつつ、転換支援のための助成等を行うことにより、介護サービス基盤の計画的な整備に努めてまいります。

 最後に、保険免責制についてお尋ねがございました。

 昨年十月に公表した厚生労働省試案においては、国民的議論に供するため、保険免責制を含む各方面からのさまざまな提案について提示したところであります。

 しかしながら、保険免責制についてはさまざまな議論があり、今回の法案に盛り込まないこととしたところであり、現時点においては保険免責制の導入については考えておりません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府が提出した医療制度改革関連法案に対する質問を行います。(拍手)

 健康保険法等の一部を改正する法案の根底に流れる考え方は、総医療費のうち税や保険料による医療給付費をとにかく減らし、国民、患者に転嫁しようというもので、その結果、医療というセーフティーネットすら危うくするものです。そもそも医療制度改革をうたうのならば、まず、地方の医師不足、小児科、産婦人科、救急医療の窮状、多発する医療事故などの現状を直視し、改善に向けた方向性、すなわちビジョンをこそ語るべきです。

 あわせて提案された医療法の改正案も、さまざまな困難を抱える医療の現実から目を背ける机上の空論ばかりです。具体的なのは財政問題のみで、このままでは国民負担や都道府県負担を増すばかりか、やみくもな診療報酬本体の引き下げによって医療崩壊の道を歩みかねない、とんでもない改悪案だと言わざるを得ません。

 まず、前者の法案の前提となった医療給付費の将来見通しについてお伺いしたいと思います。

 政府案は、制度改正なしに医療費が推移した場合、二〇二五年度の医療給付費が五十六兆円になるとしていますが、この試算は、一人当たり医療費の伸びは、一般医療費二・一%、高齢者医療費三・二%としています。これは、一九九五年度から九九年度の実績平均を用いたとのことです。

 しかし、なぜ、わざわざ九五年度から九九年度の実績平均というような古いデータを用いたのでしょうか。介護保険の導入や診療報酬の引き下げなどがあったため、大きな制度改革のなかった年を選んだと厚生省も小泉首相も先ほどおっしゃいましたが、それならば、例えば九七年度から二〇〇三年度までの七年間で、大きな制度改正のあった年度を除き、伸び率が高かった五年の実績を平均して、一般医療費〇・九四%、高齢者医療費一・九八%となります。この数字を使えば、二〇二五年度の医療給付費は四十二兆九千億円となるという指摘もあります。

 政府の試算は、将来の医療給付費を過大に見せるための作為的なものではないか。医療給付費の将来見通しに関して、総理のさらなる明確な答弁を求めます。

 また、こうした医療費の過大な試算は、逆に、医療という社会基盤への投資効果を過小に見積もり、医療費を単なるマイナスイメージへと転化するものと考えます。医療の充実が、雇用を初めとする地域経済の安定的な発展の基盤となるという視点を、果たして総理はお持ちではないのでしょうか。

 二点目は、医療は人間存在にとって必要不可欠なニーズと評価した上で、総医療費適正化に向けた努力を国は本当にこれまで行ってきたのか否かという点であります。

 例えば糖尿病などは、健康診断とその後の検査や相談体制を充実するだけで、悪化だけでなく発病そのものを抑え、総医療費を抑制することができることは、個別の自治体の実践によって明らかになっておりますが、にもかかわらず、一方で、長時間労働や深夜業等、労働条件の悪化とも相まって、現実には増加の一途をたどっております。

 健康日本21など、国はどのように総括しているのか、また、これまでのやり方から何が変わるのか、厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 三点目に、都道府県における医療計画と国の医療費適正化計画についてお伺いしたいと思います。

 医療法の改正案では、都道府県の医療計画を国の医療費適正化計画と整合性を持たせることを求めています。また一方で、この間の三位一体改革の中で、国から都道府県に対する医療に関する統合補助金を給付することが決まっておりますが、医療計画の達成度合いによって統合補助金に差をつけるとも言われております。もしもそのようなことを行うのであれば、都道府県にとっては決して十分ではない額で、責任だけを押しつけられるばかりで、医療の地域間格差はますます拡大するという結果を生みます。

 本格的に都道府県に移管するという方向性を持つのであれば、都道府県などの意見を十分に聞いた上で、思い切った財源移譲を図るくらいの度量があっても当然と考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。

 あわせて、官であれ公であれ民であれ、これまで非営利的に行われてきた医療サービスに対して、救急、小児、産科などを提供する施設は、官民を問わず、さらに積極的に財政支援していく、寄附控除や税制優遇措置も必要と考えます。

 先ほど来の御答弁では、例えば診療報酬の引き上げ等々がございましたが、既に、医療保険制度の枠内の手直しでは到底是正できないほどの窮状がございます。ここに御出席の各議員の皆さんが、本当に社会的支援をこれらの診療科に必要とお考えであるならば、寄附の控除やあるいは税制優遇を、皆さんの英断と、さらに谷垣財務大臣の御英断をもって実現していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 四点目に、政府は、七十五歳以上の全高齢者を対象とする後期高齢者医療制度を提案しています。

 しかし、有病率と受診率がともに高いハイリスク層を一くくりにしたのでは、保険原理が働かないばかりか、リスクを社会的に管理していこうとする国民皆保険制度の理念にも反してまいります。また、保険者間の財政調整を基盤にする方法では、根本的に限界がございます。そもそも国民健康保険制度は、他制度から流入する加入者増大の一方で、既に徴収率が九〇%ぎりぎりのところまで落ちております。また、無保険者もふえております。

 国民健康保険の空洞化と受診の機会喪失による医療格差、命の格差に対してどのような解決策をお考えなのか、お伺いしたいと思います。

 五点目に、多発する医療ミス、医療過誤についてお伺いいたします。

 医療事故の背景には、恒常的な医師、看護師不足だけでなく、医師の能力の問題、倫理的な問題、さらには医療の閉鎖性など、さまざまな要因があります。これまで多くの事故が、警察、検察によって起訴されたり、あるいは家族やその患者さん御自身によって裁判の場で争われてまいりました。実際にこの十年間で、医事関係訴訟件数は、九五年の四百八十八件から二〇〇四年の千百七件へと二倍以上にふえております。

 医療事故を教訓化し、医療の安心、安全につなげていくためには、原因究明のための医療機関への立入調査権、再発防止に向けた勧告権等、きちんとした行政権限を持った、仮称医療基準監督局のような機関をつくり、迅速な被害者救済と医療現場の再生を図ることが必要と考えますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

 最後に、命をたっとぶ職業である医師の育成と配置について、現状は、国公立大学、私立大学とも、補助という形で多額の税金を投入しながら、育成された医師は都市部に集中し、医師配置の地域間格差は目を覆うばかりです。命の平等を守る体制づくりのために、医師の育成だけでなく、配置に関しても国が責任を持つ必要があると考えます。

 一九七三年からこれまで既に、各都道府県に一医科大学という方針のもとに医師の養成を計画してきた政策は、自治医科大学を除いて、ほとんど地方への医師の定着を実現しませんでした。ここに御出席の議員各位も御承知のとおりです。このことへの総括と今後の医師養成、また配置をどうお考えか、文部科学大臣と厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、とりわけ小泉総理には、みずからも、日本の社会の将来を担う若い医師たちに明確なメッセージを送り、リーダーシップをとって、国がルールづくりを行う必要があると思いますが、いかがでしょうか。

 国民の命の尊厳のためにこそ医療制度改革は行われるべきであります。小手先だけ、しかも、国民、患者、医療現場、そして地方に負担と責任を丸投げするだけの本法案は改革に値いたしません。医療の密室性を打破し、公正で納得し得る医療制度に変えていくために私も奮闘することを申し述べて、質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 阿部議員に答弁いたします。

 医療費の将来見通しについてですが、内外を通じて確立された手法はないことから、過去の一定期間の実績から得られた一人当たり医療費の伸び率をもとに、機械的に算出しております。

 今回の見通しにおいて用いた医療費の伸びの実績は、平成十二年の介護保険制度創設や平成十四年改正による健康保険の三割負担導入など、医療費に大きな影響を与える制度改正が毎年のようにあったことなどから、比較的制度改正による影響の少なかった平成七年度から平成十一年度の伸びを用いたところであり、作為的との批判は当たらないと考えております。

 医療計画と統合補助金についてですが、平成十八年度予算においては、三位一体改革の趣旨を生かし、国の関与を極力少なくすることにより、小児救急医療や災害時の医療の確保など、各都道府県が地域の実情を踏まえ、みずから主体的に作成した医療計画に基づく事業に対して国が支援する統合補助金を創設したところであり、これにより、都道府県の創意工夫によって、質の高い医療サービスが提供されるよう努めてまいります。

 国民健康保険の空洞化及び受診機会の確保についてですが、今回の改正では、市町村国保の財政を安定化させるため、低所得者を多く抱える保険者への支援措置を継続するとともに、都道府県単位で国保財政の安定化、保険料の平準化を図るため、高額な医療費を市町村が共同で支え合う事業を行うこととしています。

 また、クレジットカードによる保険料の徴収を可能とする等、収納対策の推進に取り組むとともに、低所得者に対する保険料の軽減などにより、必要な受診を確保する措置を講じているところであります。

 医療事故についてですが、これまでも、特定機能病院などについて、医療事故の報告を第三者機関に行うことを義務づけ、再発防止に有用な情報を公表することを制度化する、医療機関に対して安全管理委員会の設置など医療安全の確保を義務づけ、必要に応じ医療機関を調査、指導するなど、医療現場を含めた総合的な取り組みを進めております。

 さらに、今回の医療法改正案においては、都道府県が設置する医療安全支援センターを制度化し、医療事故についての患者の相談への対応や、患者との話し合いが進むよう医療機関への助言を行うなど、体制の整備を図ることとしております。

 医師の育成と配置についてですが、医師数については、毎年おおむね七千人から八千人程度が新たに医師になるなど着実に増加しているものの、特定の地域等における偏在の問題があります。

 このため、医師の配置については、今回の医療法等の改正法案において、各都道府県が中心となって、大学病院など地域の医療関係者と協議の上、地域における医師確保の具体策を検討する仕組みを制度化するとともに、今月改定された新しい診療報酬において、小児科、産科等について重点的に評価したところであり、今後とも、法律、予算、診療報酬などのさまざまな側面からの施策を総合的に推進することとしております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 阿部議員にお答え申し上げます。

 予防医療についてお尋ねがございました。

 生活習慣病の予防については、これまでも健康日本21や健康フロンティア戦略等を推進してまいりましたが、今回の医療制度改革においても、予防重視を柱の一つに位置づけたところであります。

 具体的には、糖尿病等の有病者、予備群の減少に向け、生活習慣の改善に関する国民の意識啓発に努めるとともに、特に、健診、保健指導に関しては、被扶養者に対する健診の充実や生活習慣病のリスクのある者に対する保健指導の徹底など、積極的な取り組みを進めてまいります。

 医師の養成と配置についてお尋ねがございました。

 医師数については、毎年三千五百人から四千人程度が増加し、各都道府県においても医師数の増加が見られております。しかし、近年、特定の診療科等における医師不足が深刻になっており、小児科や産科における医療資源の集約化、重点化を進めるとともに、都道府県が中心となって、医師確保の具体策を検討する医療対策協議会を制度化するなど、総合的な医師確保対策の実施に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣谷垣禎一君登壇〕

国務大臣(谷垣禎一君) 阿部議員にお答えいたします。

 救急、小児、産科などを提供する施設に対する財政支援や税制上の優遇措置についてお尋ねがございました。

 救急、小児、産科等に対しては、今回の診療報酬改定において重点的に評価を行うなどの措置を講じているところでございます。

 それから、寄附金優遇を含む税制上の優遇措置については、医療提供施設の開設主体には医療法人、地方公共団体、公益法人などさまざまな形態があり、その法的位置づけ等に沿った課税関係が構築されております。今般の医療制度改革や公益法人制度改革等を踏まえ、今後とも適切な検討を行ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 阿部議員にお答え申し上げます。

 無医大県解消計画と今後の医師養成及び配置についてお尋ねがございました。

 この問題につきましては、昭和四十八年度以来、国立大学で十六校を整備し、昭和五十四年度には無医大県が解消いたしております。また、昭和五十八年度には、当面の目標であった人口十万人当たり医師数百五十人を達成し、医師数の偏在の是正に大きく貢献したと認識をいたしております。

 しかし、近年の地域における医師不足に対応するため、全医学部で地域医療教育を実施しているほか、各大学の地域医療教育に関するすぐれた取り組みに対し、重点的な財政支援を行っているところであります。

 今後とも、関係省庁と連携し、地域医療を担う医師の養成、確保に積極的に取り組んでまいります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

    〔議長退席、副議長着席〕

 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

副議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部科学大臣小坂憲次君。

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い、保護者の就労の有無等にかかわらず、小学校就学前の子供の教育及び保育に関する多様な需要に適切、柔軟に対応できる新たな枠組みが求められているところであります。

 この法律案は、こうした状況にかんがみ、認定こども園に係る制度を設け、幼稚園及び保育所等において、小学校就学前の教育及び保育並びに保護者に対する子育て支援を総合的に提供するための措置を講ずるものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、幼稚園または保育所等のうち、就学前の教育及び保育を一体的に提供するとともに、子育て支援事業を実施するものは、都道府県知事から認定こども園の認定を受けることができることとします。また、認定の基準は、文部科学大臣と厚生労働大臣が協議して定める基準を参酌して、都道府県が定めることといたします。

 第二に、認定こども園に関する特例として、幼稚園と保育所とが一体的に設置される認定こども園については、設置者が学校法人または社会福祉法人のいずれである場合にも、児童福祉法及び私立学校振興助成法に基づく助成を受けることができることといたしております。また、認定こども園である保育所については、設置者と保護者との直接契約による利用とし、入所する子供や保育料の決定を設置者が行うことができるよう、児童福祉法の特例を規定するものであります。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。松浪健四郎君。

    〔松浪健四郎君登壇〕

松浪健四郎君 ここ東京は春らんまん。

 自由民主党の松浪健四郎でございます。

 美しい桜の花が満開です。この花見客の楽しそうな様子を見ておりますと、この国に生まれてよかったなと幸せをつくづくと実感します。この実感を子供たちや孫たちに伝えていかなければなりません。

 さて、私は、自由民主党並びに公明党を代表して、ただいま議題となりました就学前の教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案について、小坂憲次文部科学大臣に質問いたします。(拍手)

 我が国は、小泉内閣のもとで、これまで実現困難と考えられてきた数々の構造改革を断行してまいりました。経済も回復局面を迎え、社会も国民も自信と活力を取り戻してきていると言っても間違いはないでしょう。明るい兆しが見えてきた我が国社会がこの先どうなっていくのか、その答えは、我が国の未来を担う子供たちの中にあると言えます。

 しかしながら、近年の子供たちを取り巻く環境は、急激に変化しております。少子化の進行により、子供たちが互いに切磋琢磨しながら成長する機会が少なくなってきております。また、家庭は教育の原点であり、親は人生最初の教師であると言われますが、今、子供の成長にとって大きな役割を果たすべき家庭の教育力の低下が指摘されております。さらに、成長の過程で自分の将来の明確な目標を持つことができないがゆえに、無気力なままニートやフリーターとなる若者も存在するという現実も憂うべきでありましょう。

 私は、教育者の一人として、長年大学で学生たちの指導に当たってきておりますが、若者たちには、感性や創造力を磨き、社会で立派に活躍できる人材に育ってほしいと常々願っております。国の宝である子供の未来を見据えて、その健やかな成長をしっかりと支え、子供が心豊かにたくましく生き抜いていくことができる環境整備を進めることこそ、我々に課せられた最大の責務であります。(拍手)

 特に、乳幼児期は、人とかかわる力、基本的な生活習慣など、生涯にわたる人間形成の基礎が培われる極めて大切な時期であり、乳幼児期の子供の発育、発達は、その後の人生にとって大きな影響があると言われております。このため、人間形成の基礎段階である乳幼児期の子供の育ちを大人がどう支えていくのかということこそが、極めて重要な政策課題であります。

 そこでお伺いします。就学前の子供の健やかな育ちを確保するために、どのような基本的な考えで取り組んでいるのか、小坂大臣の御見解をお聞かせください。

 また、就学前の子供を支える幼稚園と保育所については、施設の共用化や職員資格の併有促進などの面で連携が進められてきましたが、今回の法案についても、中央教育審議会の幼児教育部会と社会保障審議会の児童部会とが合同で検討を行うなど、教育行政と保育行政とがしっかりと連携しながら検討が進められる中で提案に至ったものと承知しております。

 こうした提案に至るにはさまざまな課題認識があったものと考えますが、今回の法案を提出するに至った背景と、認定こども園の基本的な枠組みについて、大臣の御見解をお伺いいたします。

 子供の健やかな成長のためには、幼稚園や保育所における取り組みを充実させることも必要ですが、その前提として、親とのきずなの中で、家庭においてしっかりと教育を受けることが必要であります。したがって、認定こども園が実施することとなる子育て支援については、単なる親の育児の肩がわりにならないようにする必要があると考えますが、こうした観点を含め、子育て支援の充実について大臣の決意をお聞かせください。

 就学前の子供の健やかな育ちをしっかりと支えていく環境づくりは、国民の願いであると確信いたします。この法案が、教育関係者、保育関係者も含め、子供の最善の利益を第一に考えようという多くの関係者の理解のもとに、関係省庁の連携によって提案されたことは、歴史的に大きな意義があるものと考えます。

 この法律案を契機に、すべての子供の健やかな成長と、すべての親が子育てに喜びを感じることができる社会づくりに向けた取り組みが一層進んでいくことを期待して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 松浪議員にお答え申し上げます。

 議員より三点お尋ねがございました。

 まず、子供の健やかな育ちのための取り組みの考え方についてのお尋ねにつきましては、生涯にわたる人間形成の基礎を培う大切な時期である幼児期に、適切かつ質の高い幼児教育、保育が提供されることは、極めて重要であります。このため、家庭、地域、幼稚園や保育所などの施設が連携し、それぞれの機能を十分に発揮させることにより、すべての子供の健やかな育ちを確保していくことが大切であると考えております。こうした考えのもとに、引き続き、厚生労働省を初め関係省庁と連携しつつ、取り組みを進めてまいります。

 次に、法案提出の背景と、認定こども園の基本的な考え方についてのお尋ねにつきましては、近年の急激な少子化の進行や、家庭、地域を取り巻く環境の変化に伴い、就学前の子供の教育、保育等に関するニーズは多様化しており、保護者の就労の有無にかかわらず、継続して同一の施設を利用したい、保育に欠ける子供も欠けない子供も同じ施設で受け入れ、子供の育ちに必要な規模の集団を確保したいなどの要請に適切、柔軟に対応できる新たな枠組みが求められております。

 本法律案は、このような状況にかんがみ、就学前の子供に対する教育及び保育と、地域における子育て支援を総合的に提供する機能を備える施設を認定こども園として認定する制度を設け、子供が健やかに育成される環境の整備を図るものであります。

 最後に、親の育児の肩がわりにならない子育て支援の充実についてのお尋ねにつきましては、子供の健やかな育ちを支えていくためには、家庭の教育を基盤としながら、幼稚園や保育所などの施設の機能を活用して、保護者の子育てに対する喜びや理解の向上が極めて重要と考えております。

 このため、この法案においても、家庭や地域の教育力を高める観点から、子育て支援を認定こども園の必須の機能としております。

 こうした認定こども園制度の創設に加え、家庭教育への支援、親子の交流の場づくり等の支援を通じ、今後とも、保護者の育児力向上のための子育て支援施策の充実に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 高井美穂さん。

    〔高井美穂君登壇〕

高井美穂君 民主党の高井美穂です。本日最後でございますので、どうぞよろしくお願いします。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案、いわゆる認定こども園法案について質問をいたします。(拍手)

 季節は春です。今まさに、満開の桜の下を、小さな手を振りながら子供たちが人生の新たなスタートを切ろうとしています。

 本会議場に御参集の先輩議員、同僚議員の皆様に、子育て中の親の一人としてもお願いを申し上げます。

 この中にはチルドレンと称される方もいらっしゃると伺っておりますが、汚れなく純真だった、本当に子供だったときのことを思い出していただきたいのです。ちょっとした周りの変化が心に大きな影響を与えるということが普通であったのではないでしょうか。子供の目線に立って、この法案をみずからのものとして慎重に御審議いただけますよう、心からお願いをいたします。(拍手)

 まず、今回の法案を提出された政府が、幼児教育や子育てに対してどのような理念をお持ちか、お尋ねいたします。

 言うまでもなく、少子化は、経済面から社会の支え手が減るという損失だけでなく、文化面からも日本の誇るべき物つくりの技術や伝統を引き継いでくれる人が少なくなっていくという大きな損失でもあります。また、大人が子供というすばらしい人類の宝物に接する機会が減り、弱者に対する優しい目線を持つことや、守ってあげねばならない人権の重みを体験で覚えるという機会を失うことにつながる極めて残念なことであると思います。子供政策への理念は家族政策への理念とも言えます。今回の法案からは、先を見据えた理念が全く伝わってまいりません。

 また、戦後標準化した、夫は仕事、妻は家事、子育てを行って豊かな家族生活を目指すという性役割に基づく家族モデルを実現できる人が少なくなっている現在、今までの男性稼ぎ主型の生活保障システムから脱却して、両立支援型、つまり、ワーク・ライフ・バランス型の生活保障システムに転換していくことが必要であります。そのためには、保育サービス、児童手当、育児休業、高齢者介護サービスなど、家族を支援する制度を一層充実させねばなりません。

 一九九八年以降七年連続で、年間の自殺者は三万人を超えております。そのうちの一万人は、四十代、五十代の男性であります。男性のみが家計を支えるために身を粉にして働くという男性稼ぎ主モデルに固執することは、男性にとっても不幸であるし、女性にとっても労働力を生かせないという不幸であります。

 多様なライフスタイルの中で、こども園は、一番に子供たちのために、そして、若い世代の両親が安心して社会に出るために、さらに、こども園で働く職員の皆さんが今までと同じように誇りと自信を持って仕事ができるような制度にすべきだと考えます。

 少子化・男女共同参画を担当されている猪口内閣府特命担当大臣に、目指すべき生活保障システムについての見解を伺います。

 政府部内の幼保一元化論議は、当初、総理大臣のリーダーシップのもと、関係省庁の抵抗を抑えて政治決着させる予定だったはずです。今回のこども園は、いわゆる骨太方針第三弾に突如として盛り込まれたわけですが、省の縦割り支配をそのまま残した政治的妥協の産物によるものであり、なぜこのような重要な問題をこうした形で拙速に取り扱おうとするのか理解できません。(拍手)

 また、昨年から実施してきたこども園型の総合施設モデル事業の最終報告が取りまとめられる前にこうして法案化され提出されるのは、現場や当事者の意見を十分に盛り込んだものとは全く言えないと思います。今回、なぜこんなに急いで中途半端な形の法案を出すのでしょうか。安倍官房長官にお尋ねをいたします。

 こども園の目指すところ、並びに所管省庁について質問いたします。

 現状の文部科学省所管の幼稚園、厚生労働省所管の保育所がこども園として併存することは、まさに縦割り行政の弊害であり、利用者の利便軽視の典型であると言わざるを得ず、その弊害を子供にまで及ぼしかねません。実際に利用する子供や保護者の目線に立った場合、保育所か幼稚園かによって、同じところに通っているのに、入園基準や受けられるサービス、費用負担のあり方に差が生じるというのは理解しがたいことであります。

 どこがどこの所管であるかは、子供や親には全く関係のないことで、いつまでも文科省か厚労省かの管轄にこだわることこそ一番の問題であります。また、政府が進めるスリムな政府、重複を排除した行政、こういう方針にも反するのではないでしょうか。民主党はかねてから、子ども家庭省を創設し、将来的に幼稚園及び保育所の制度や機能を統合し、子ども園に統一していくべきであると主張してきました。

 今回の法律案によるこども園について、政府は将来的にどういう方向へ持っていこうとしているのか、その将来像について、小坂文部科学大臣及び川崎厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 法案では、こども園の所管は文部科学省と厚生労働省の二つの省にまたがっています。つまり、こども園という一つの施設に対し、異なる二つの省が所管することになります。責任の所在があいまいになるばかりか、利用者や施設サイドからも、担当窓口がわかりにくい、たらい回しになるのではないかとの懸念があります。認定こども園の事務はもとより、文部科学省の幼稚園関連事務、厚生労働省の保育所関連事務についても、担当部局を一つの省庁で所管した方がいいと考えますが、いかがでしょうか。

 民主党は、総合的に少子化、子育てを担当する子ども家庭省の設置を理想としていますが、それが無理なら、せめて内閣府に子ども家庭局を設置することを検討していただきたいのです。朝日新聞二〇〇三年六月十五日付朝刊によると、内閣府内部でも一時「こども庁」構想が浮上したと書いてありましたが、事実でしょうか。官房長官の見解を伺いたいと思います。

 次に、認定施設の基準関係について質問いたします。

 施設整備等に関する各種規制の水準については、平成十六年十二月二十四日、規制改革・民間開放推進会議の第一次答申で、現行の幼稚園及び保育所の緩い方の水準を原則とすべきとあります。今回の法律案によると、幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型など、四つの形態の施設がこども園として認定されることになりますが、これらの施設における教育、保育、子育て支援の質の保証は担保できるのでしょうか。施設認定基準のあり方及び施設の質について、文部科学大臣及び厚生労働大臣の答弁を求めます。

 子供を育て、教育するこども園については、施設、つまり箱物以上に、実際に子供と触れ合う職員のあり方が重要であることは言うまでもありません。幼稚園教諭や保育士、さらにはカウンセラーなど専門家を含む人材を、だれがどのような方針のもとにつくっていくか、文部科学大臣及び厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 次に、認定こども園の財政措置、補助制度についてお尋ねをいたします。

 幼保連携型については、幼稚園と保育所の補助の組み合わせとなっており、複雑化しています。また、今回提出の法律案で、地方裁量型の施設の補助については一般財源化されることとなりますが、市町村の財政力には歴然とした格差があるのが現状です。幼稚園機能と保育所機能をあわせ持った地方裁量型の施設への補助については、結果的に地域間の格差を助長するものとなるのではないでしょうか。また、保護者の間の負担の格差への配慮や働く親を持つ待機児童への配慮も必要ではないでしょうか。文部科学大臣、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 次に、待機児童の問題について質問いたします。

 厚生労働省の「保育所の状況」、平成十六年四月発表の分によると、保育園には現在百九十七万人の乳幼児が通っていますが、待機児童については、二〇〇四年が二・四万人、二〇〇五年は二・三万人、依然として解消されていないのが現状です。

 日本政府が一九九四年四月二十二日に批准している子どもの権利条約第十八条三項では、「締約国は、父母が働いている児童が利用する資格を有する児童の養護のための役務の提供及び設備からその児童が便益を受ける権利を有することを確保するためのすべての適当な措置をとる。」としていますが、我が国にはその実行と進捗状況の報告の義務があります。政府はこの十二年間の進捗状況を国連にどのように報告しているのでしょうか。

 待機児童の解消に向けて、私は、この間の政府の取り組みは全く十分ではなかったと思っています。待機児童解消や少子化対策の一環として、今回の法律案による効果はどの程度あるとお考えか、少子化・男女共同参画を担当されている猪口大臣の見解を伺います。

 教育や保育の質を守りながら、将来的に一本化していく。つまり、文科省と厚労省の省益争いや幼稚園、保育所の既得権争いに翻弄されることなく、子供にとってよい環境を提供するという視点に立った条件整備が必要であります。

 場当たり的な対策ではなくて、子供といういとおしい守るべき存在への優しい視線を持って、日本の未来を担う人間への投資を惜しむことなく、政府として最低限の責務をきちんと果たしていただきたいということを申し上げて、私の質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小坂憲次君登壇〕

国務大臣(小坂憲次君) 高井議員にお答え申し上げます。

 五点の御質問をいただいております。

 最初に、認定こども園の将来像についてのお尋ねでありますが、認定こども園制度は、既存の幼稚園、保育所制度の運用では対応困難な多様なニーズに対応するため、地域の実情に応じ、利用者のための新たな選択肢を提供しようとするものであります。すべての幼稚園、保育所を認定こども園に統合しようとするものではありませんが、今後、本制度の積極的な活用により、地域の実情に応じ、就学前の教育、保育機能の充実が一層図られることを期待しております。

 次に、認定こども園の認定基準と質の保証のお尋ねでございます。

 認定こども園の認定基準は、地域の実情に応じた認定を可能とするため、都道府県が定めることとしております。この場合、国は、質の確保の観点から、認定基準に関する指針を示すこととしております。この国の指針においては、現在の幼稚園、保育所の基準を基本とし、質の保証に配慮した上で、一定の弾力的な取り扱いを規定することとしております。

 都道府県においては、こうした国の指針を参酌し、一定の質を確保しつつ、地方の実情に応じた検討がなされ、条例で適切に基準が定められるものと考えております。

 次に、職員育成の考え方のお尋ねでございますが、認定こども園の職員については、教育、保育の質の確保の観点から、ゼロから二歳児については保育士資格、三から五歳児については保育士資格と幼稚園教諭免許を併有することが望ましいと考えております。

 今後とも、幼稚園教員資格認定試験の実施等を通じ、職員資格の併有の一層の促進を図るとともに、研修等の充実により、職員の資質向上が図れるよう努めてまいります。

 また、子育て相談のためのカウンセラーなどの人材につきましては、地域の多様な人材の活用や専門機関等との連携協力を促してまいります。

 次に、児童福祉法の特例に関する法律案第十三条の運用についてのお尋ねであります。

 認定こども園の認定を受けた保育所の利用については、市町村長による保育料の変更命令を規定するなど、低所得者等の利用を排除することのないよう制度設計しており、この趣旨に沿ってしっかりと運用してまいります。

 最後に、幼保連携型や地方裁量型の補助制度についてのお尋ねでありますが、幼稚園、保育所の双方の認可を有する幼保連携型については、現行の幼稚園や保育所に対する補助制度を活用する仕組みとしており、補助制度を複雑化するものではありません。また、その執行については、設置者の利便性の観点に立ち、国と地方を通じた関係部局間の連携を確保してまいります。

 また、幼稚園、保育所のいずれの認可も有しない地方裁量型については、地方分権の流れを踏まえたものであり、その財政措置についても、地域の実情に応じて適切に対応していただくことが適当と考えております。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 既に小坂大臣から御答弁をさせていただいたのと同じ答弁になりますけれども、同じ御質問をいただきましたので、私からも申し上げます。

 認定こども園の将来像についてお尋ねがございました。

 認定こども園は、地域の多様なニーズに対応するための新たな選択肢を提供するものであり、すべての幼稚園、保育所をこれに統合するものではありません。本制度の積極的活用により、就学前の教育、保育機能の充実が一層図られることを期待しております。

 認定こども園の認定基準と質の保証についてお尋ねがございました。

 認定基準については、一定の質の確保の観点から国が指針を示し、都道府県においては、この指針を参酌して地方の実情に応じた検討が行われ、条例で適切に基準が定められるものと考えております。

 職員養成についてお尋ねがございました。

 認定こども園の職員については、〇―二歳児は保育士資格、三歳から五歳児は保育士資格と幼稚園教諭免許の併有が望ましいと考えております。今後とも、両資格の併有の促進など、人材の確保、職員の資質向上を図ってまいります。

 幼保連携型や地方裁量型の補助制度についてお尋ねがございました。

 幼保連携型の認定こども園については、現行の補助制度を活用する仕組みとしており、補助制度を複雑化するものとは考えておりません。また、地方裁量型については、地方分権の流れを踏まえ、その財政措置については、地域の実情に応じて適切に対応していただくことが適当と考えております。(拍手)

    〔国務大臣猪口邦子君登壇〕

国務大臣(猪口邦子君) 高井議員に御答弁申し上げます。

 まず、目指すべき生活保障システムについてのお尋ねがありました。

 これにつきましては、働き方の見直しや、仕事と家庭や育児の両立支援、また男女共同参画の推進等を通じて、男性も女性もともに能力を発揮できる環境を整備する中で、子育ての喜びを感じながら働き続けることができる社会の実現が重要であると考えております。そのためには、高井議員の御指摘のとおり、子育て世帯を支援する各種施策の充実が必要でありまして、少子化対策の推進に取り組んでまいる所存でございます。

 続いて、高井議員から、児童の保育、養護についての国連への報告についての御質問がございました。

 我が国は、このような報告につきまして、児童の権利条約に関する政府報告書を通じてやっております。児童の権利条約に関しましては、平成八年と平成十三年の過去二回の我が国の政府報告書において、エンゼルプラン及び新エンゼルプランによります我が国の保育サービスの充実等について報告しております。

 次に、待機児童についてでございますが、平成十四年度からはさらに待機児童ゼロ作戦を進め、その結果、平成十七年四月の待機児童は二年連続で減少するなど、その効果が着実にあらわれていると考えております。さらに、平成十七年度からは、子ども・子育て応援プランに基づきまして、保育サービスの一層の充実に努めているところでございます。

 次に、就学前の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の制度化につきましては、子ども・子育て応援プランにおいても、きめ細かい地域子育て支援のための施策として位置づけております。今回の法律案は、その本格的な具体化を図るものでございます。

 この法律案では、認定こども園は、親が働いているといないとにかかわらず、ゼロ歳から就学前までのすべての子供を対象としている、また、子育ての相談や親子の集いの場を提供するなど、地域の子育て支援機能を担うものとしているなど、多様な保育サービスへのきめ細かい対応を図るものとなっております。認定こども園は、待機児童の解消や在宅育児支援も含め、地域の子育て支援の推進において大きな役割を果たすものと考えております。

 私といたしましては、文部科学省と厚生労働省とも連携しながら、待機児童の解消を初め、少子化対策の総合的な推進と充実に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣安倍晋三君登壇〕

国務大臣(安倍晋三君) 高井議員にお答えいたします。

 まず、子育て、幼児教育に対する理念についてのお尋ねがありました。

 子育て家庭を社会全体で支援し、また、保護者の就労の有無等にかかわらず質の高い幼児教育、保育を提供することは極めて重要であります。このため、就学前の教育、保育の充実、働き方の見直し、子育て支援の充実などの施策について、政府を挙げて取り組んでいく必要があると考えております。

 なお、今般の法案は、文部科学省と厚生労働省の両省が、閣議決定の方針に従い、総理のリーダーシップのもと、人事交流も含めて連携し、提案に至ったものであります。その際、両省の関係審議会が合同で制度設計の検討を行うなど、広く学識経験者や関係者の意見を踏まえ、子供の健やかな育ちを第一に考えて制度化しているものと認識をしております。

 次に、幼稚園及び保育所の所管等についてお尋ねがありました。

 幼稚園及び保育所については、小学校以上の教育行政、地域の子育て支援などの福祉行政、働き方の見直しなどの労働行政と一体的に推進をしていく必要があります。したがって、一つの省庁に所管を一元化するのではなく、文部科学省と厚生労働省が密接に連携し、これらの関連する分野も含め、きめ細かく対応していくことが適当であると考えています。

 その上で、子ども・子育てについては、全閣僚が参加する少子化社会対策会議、そのもとで私が主宰する少子化社会対策推進会議などを通じて、省庁横断的に関係する施策の総合的な推進を図ってまいります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       財務大臣    谷垣 禎一君

       文部科学大臣  小坂 憲次君

       厚生労働大臣  川崎 二郎君

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国務大臣    安倍 晋三君

       国務大臣    猪口 邦子君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 長勢 甚遠君

       文部科学副大臣 馳   浩君

       厚生労働副大臣 赤松 正雄君


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