衆議院

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第23号 平成18年4月14日(金曜日)

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平成十八年四月十四日(金曜日)

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  平成十八年四月十四日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 永年在職の議員中馬弘毅君、伊藤公介君及び亀井久興君に対し、院議をもって功労を表彰することとし、表彰文は議長に一任するの件(議長発議)

 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 永年在職議員の表彰の件

議長(河野洋平君) お諮りいたします。

 本院議員として、また、国会議員として在職二十五年に達せられました中馬弘毅君、伊藤公介君及び亀井久興君に対し、先例により、院議をもってその功労を表彰いたしたいと存じます。

 表彰文は議長に一任されたいと存じます。これに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。

 これより表彰文を順次朗読いたします。

 議員中馬弘毅君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員伊藤公介君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

    …………………………………

 議員亀井久興君は国会議員として在職すること二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意の伸張に努められた

 よって衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する

    〔拍手〕

 この贈呈方は議長において取り計らいます。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) この際、ただいま表彰を受けられました議員諸君の登壇を求めます。

    〔被表彰議員登壇、拍手〕

議長(河野洋平君) 表彰を受けられました議員諸君を代表して、中馬弘毅君から発言を求められております。これを許します。中馬弘毅君。

中馬弘毅君 ただいま、私ども議員三名が院議をもって永年在職議員として表彰の栄誉を賜りました。まことに光栄に存じ、ここに、年長のゆえをもちまして、お許しを得て、一同を代表し、慣例に従い、みずからの来し方を振り返りつつ、お礼の言葉を申し上げたいと存じます。(拍手)

 このように永年にわたり活動を続けてこられましたのも、私を支え、励ましてくださった地元大阪を初め幅広い支援者の皆様方、九州宮崎の郷里の人々、その都度適切な御指導、御協力をいただいた先輩、同僚議員各位のおかげでございます。

 また、一番身近で支えてくれた家族や友人、後援会や事務所の皆さん、そして文字どおり苦楽をともにしてくれた家内に、改めて感謝のまことをささげます。(拍手)

 私がこの道を志したのは昭和四十六年、それまで勤めていた民間会社を辞して行動を起こしたのは、父の一周忌を終えた四十七年十一月八日、その日からでした。

 しかし、衆議院は既に解散目前でしたが、志した以上その意志を世間に明確にすべしとの決断のもとに、周りから無謀と言われながらも立候補し、街頭演説と立会演説会だけの選挙、これが私のスタートでございました。

 昭和四十年代後半は、高度成長のひずみが特に都市部で増大し、不安や不満がうっせきしていた時代です。

 国会での論議は国民の生活実感から離れ、当時の政党の主張はそれぞれの支持基盤の代弁が強過ぎて、教育や文化、公害や生活環境や生きがいの問題が真剣に議論されていない。そのような状況を反映してか、どの党も支持しないといういわゆる無党派層が急増し、特に都市部では反自民の風潮が強かったときでありました。

 批判や不満があるなら改善に向けて黙って行動すべしというのが私の信条です。既存の組織に頼らず、幅広い市民層から選ばれた政治家を目指し、四年間に選挙区の隅々まで足を運び、小さな座談会を開いて支持者の輪を広げていきました。さらに、私は、各地、各界の人々に自分の考えを話して回りました。多くの方々は君の言うとおりだと理解を示してくれましたが、政党支持がなければ、また団体、組織の支援がなければ当選は無理だというのが大半でした。

 しかし、その中で、私の立場に理解を示していただいたのは、地元の菅野和太郎先生や、当時の若手代議士河野洋平さんや藤波孝生さんでした。また、私と同じ野にあって活動していて何度か議論し合ったのが、田中秀征さんや中川秀直さんでした。

 昭和五十一年、保守改革を目指して立ち上がった河野洋平代議士らの新自由クラブの結党に参加し、その年の十二月の総選挙での初当選は、特に私が目指したとおりの政治家への第一歩でした。(拍手)

 以後、二度の落選の苦杯をなめましたが、私が一貫して政策課題として持ち続けたのが、自立した特色ある地方自治体樹立に向けての地方分権と都市政策であります。

 自治政務次官就任の幹部あいさつで、基礎的地方自治体の数をまず三分の一の千にすべしと市町村合併を提唱し、また衆議院地方行政委員長のとき、この壇上で「地方分権推進に関する国会決議」を読み上げたのも、はや十三年前になります。

 平成十一年三月、都市選出の議員諸兄とまとめ上げた自民党「都市基本政策」も、今、着実に実行に移されるようになりました。

 「中央から地方へ」「官から民へ」「規制を改革して活力ある社会へ」、まさにこれまでの官主導の民主主義から、個人や地域や企業が自立した真の民主主義への転換であり、許認可などで規制された中での自由から、自己責任のもと、思い切り持てる能力を発揮できる真の自由主義への転換であります。

 このたび、これらの改革のまとめ役に任ぜられた責任の重大さを痛感しつつ、同僚議員各位の御協力を得て、明治維新、第二次世界大戦後に次ぐ、第三の民主革命ともいうべき今回の改革に微力を尽くしてまいる所存であります。一層の御指導と御鞭撻をお願い申し上げ、感謝とお礼の言葉とさせていただきます。

 本当にありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 本日表彰を受けられました他の議員諸君のあいさつにつきましては、これを会議録に掲載することといたします。

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    伊藤 公介君のあいさつ

  ただいま、院議をもって在職二十五年の表彰を賜りました。この栄誉は、私をこれまで激戦の選挙でお支えいただいてきた地元町田市・多摩市をはじめ、旧選挙区の多摩地区の皆様にお与えいただいたものと心から感謝申し上げます。

  私が初当選をしてから既に二十九年の歳月が流れております。初当選は昭和五十一年十二月の第三十四回衆議院議員選挙でした。ロッキード事件で政治倫理が争点になり、「永田町の政治をかえる」とのキャッチフレーズで、新自由クラブからの立候補でした。自民党の金権体質を批判した新自由クラブは国民の大きな支持を得て、私の応援のために現議長の河野洋平党首が来られた時には、団地やマンションの窓が一斉に開き、それは私が初めて体験した政治のドラマでした。演説への歓声が嵐のようにもの凄く大きかったことを今でも鮮烈に記憶しております。

  私が政治を目指すきっかけは海外での体験にあります。ちょうど、東京オリンピックの年でした。ベルリンの目抜き通りのクールフステンダム通りに立ち並ぶ世界のショーウィンドウのところどころに黒山の人だかりがありました。近づいてみますと、ショーウィンドウの中にはソニー、ナショナル、キャノン、オリンパス等の日本製品が立ち並び、人々の注目を集めておりました。

  戦争に敗れた東洋の小さな国が世界のショーウィンドウを独占している光景に、二十代の私はこれほど自分の国に対して誇りと愛国心を感じた瞬間はありませんでした。その後、渡航したアメリカでは、フロンティア精神と経済的繁栄の一方で、人種差別や貧困を目の当たりにし、ロバート・ケネディ大統領の選挙戦の最中で、ケネディの行くところ人の波で、特に若い人たちに圧倒的に支持されている光景に私自身、政治への関心を持つ大きなきっかけとなったものでした。

  青春時代の海外体験を通じ、「世界に誇れる日本になって欲しい」という強い気持ちを持ちながら、帰国後、サラリーマン生活を経て代議士秘書となり、政治への道を目指すこととなりました。

  しかし全くの徒手空拳、二十九歳の初挑戦は落選することになりましたが、「待っている政治から出かけていく政治へ」をスローガンに地元町田駅頭をはじめ、広い三多摩の各駅頭に立ち続け、昭和五十一年十二月五日、トップ当選を果たし、国会への第一歩を踏み出すこととなりました。以来国会議員としての二十五年、今日まで無我夢中で走り続けてくることができました。

  昭和六十年ボン・サミットに中曽根総理に随行させていただき、レーガン大統領、サッチャー首相、ドイツのコール首相等、世界の首相との会見は議員として生涯忘れられない一こまです。

  平成二年には、国土庁政務次官として土地税制に取り組みました。平成三年からは、時代のニーズに合った土地・建物関係を構築すべく、法務委員長として借地借家法等の改正に取り組ませていただきました。

  文教委員長としては著作権法の改正、外務委員長としては児童の権利条約等幅広く仕事をさせていただくこともできました。

  また、党にあっては都市問題対策協議会の会長、公団住宅を守る議員連盟の会長として、都市における税制や、多くの勤労者の方々の住環境問題にも取り組ませていただいてまいりました。

  しかし、何といっても、一番の感慨は国土庁長官として六千四百三十三人もの犠牲者を出した阪神淡路大震災の一年後の復旧復興を任された緊張の一日一日でした。予期せぬ災害の中から、一人一人が家族とともに力強く立ち上がっていかれる必死なお姿、街づくりが見事に復活していく日本人の底力に心を打たれ続けた毎日でございました。「絶望している人々に光を与えることが政治の仕事です。」それが私の国土庁長官としての最初の会見でした。

  私有財産制度の日本で、大規模災害といえども、住宅に対する支援はできないという歴代の政府答弁に対して風穴を開けたい、という挑戦でした。ローン返済中の我が家を失った人はゼロからの出発ではなく、マイナスからの出直しとなってしまいます。「被災者生活支援法」はその延長線上のものでした。二十代の青春時代、熱い想いで政界に挑戦させていただいたことを思いますと、なお道半ば、という感を強くする昨今でございますが、「世界に誇れる日本」という情熱を持ち続けながら、一層の精進をしてまいりますことをお誓いさせていただきたいと思います。

  最後になりましたが、これまで東京という、流動性の極めて大きい団地群の選挙区で九回の選挙をお支えいただいた、町田市、多摩市をはじめ中選挙区時代の多摩地区の皆様、的確な御指導と御鞭撻をいただいた諸先輩方、勇気を与えてくれた友人たち、これまで苦労をともに支えてくれた事務所スタッフ、そして家族に、改めて心を込めて感謝を申しつつ、私の謝辞といたします。

  まことにありがとうございました。

    …………………………………

    亀井 久興君のあいさつ

  このたび、院議をもって永年在職者議員として表彰を賜りました。身に余る光栄であり、議会人として、終生忘れることのできない感激であります。

  私が国会議員として初めて議席を得た昭和四十九年の参議院選挙から今日まで、既に三十二年を経ておりますが、その間、昭和六十一年と平成五年の総選挙において、二度苦杯をなめ、通算して七年間の長きにわたっていわゆる浪人生活を経験いたしました。そうした苦しい時期を乗り越えて、今日を迎えることができましたのは、ひとえに、私の政治理念と政治姿勢に共鳴し、一貫して御支援いただいた郷土島根の皆様をはじめ、諸先輩、同僚議員、友人等多くの方々の御指導と御鞭撻のおかげであり、心から厚くお礼申し上げます。

  また、私事ではありますが、先々の生活のことを一切考えることなく、自らの信念を曲げずに、まっしぐらに進んでゆく私に、嫌な顔ひとつせず、常に理解し、協力してくれた妻陽子をはじめ、家族にも心から感謝の意を表したいと思います。

  さて、第二次世界大戦後、我が国は絶えざる国民の努力と、健全な議会政治に支えられて世界第二の経済大国に発展いたしましたが、市場経済を維持しながら、多くの国民が中流意識を持つという、本来資本主義ではつくり得ない所得構造を実現させたことは、世界に誇るべきことだと思います。

  また、世界各地で依然として民族や宗教の対立によるさまざまな紛争が続き、多くの人々がテロの恐怖におびえている今日、平和な国際社会を実現するために、古くから我々が大切にしてきたお互いの文化や伝統を尊重し合うという共生の理念を、平和の理念として世界に発信していく大きな役割を我が国は担っていると思います。

  さらに我が国の長い歴史を通じて培われてきた優れた伝統文化を大切にしながら、それぞれの地域の個性を生かして、均衡ある国土を形成することは、私にとって常に変わらぬ政治課題であります。

  私は昨年八月の衆議院解散直後に、長い間、政治活動を続けてきた自民党を離党し、同志とともに国民新党を結成いたしましたが、憲法に明記されている三権分立の基本理念を守りながら、国民から信頼される議会政治を実現し、他国から敬愛される品格ある国家を創るため、一層努力する決意を申し述べ、お礼のごあいさつといたします。

     ――――◇―――――

 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに古本伸一郎君外六名提出、証券取引委員会設置法案について、順次趣旨の説明を求めます。国務大臣与謝野馨君。

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) ただいま議題となりました証券取引法等の一部を改正する法律案及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 まず、証券取引法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 本法律案は、金融資本市場を取り巻く環境の変化に対応し、投資者保護のための横断的な法制として、証券取引法を改組して金融商品取引法、いわゆる投資サービス法とする等の整備を行うことにより、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、貯蓄から投資に向けての市場機能の確保及び金融資本市場の国際化への対応を図ろうとするものであります。

 以下、その大要を申し上げます。

 第一に、証券取引法の題名を金融商品取引法に改めるとともに、組合契約等に基づく権利が包括的に有価証券の定義に含まれるよう整備を行い、デリバティブ取引の定義に有価証券以外の資産を原資産とするもの等も含めるなど、その規制対象の拡大を図ることとしております。さらに、有価証券及びデリバティブ取引に係る販売、勧誘のほか、投資助言、投資運用及び顧客資産の管理に係る業務を金融商品取引業と位置づけ、原則登録制とするとともに、所要の行為規制等を整備することとしております。

 これとあわせて、銀行法、保険業法ほか関係法律においても、幅広い金融商品についての横断的な法制の整備を図る観点から、金融商品取引法における金融商品取引業に係る行為規制の準用等、所要の整備を行うこととしております。

 第二に、公開買い付け制度について、規制対象範囲の拡充等や投資者への情報提供の充実等のための規定の整備を行い、また、大量保有報告制度について、機関投資家に認められている特例報告の提出頻度及び期限の短縮等を図るための規定の整備を行うこととしております。さらに、企業内容等の開示制度について、四半期報告制度の整備や財務報告に係る内部統制の評価制度の整備等、所要の整備を行うこととしております。

 第三に、開示書類の虚偽記載や不公正取引等に係る罰則を強化し、また相場操縦行為等に係る規定の整備を行うこととしております。

 第四に、取引所における自主規制業務が適切に運営されることを確保するため、自主規制業務を担う別法人として自主規制法人を設立することができ、または株式会社形態の取引所に自主規制委員会を設置することができるよう、所要の制度を整備することとしております。

 次に、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 この法律案は、証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴い、金融先物取引法等の四法律を廃止するとともに、金融商品の販売等に関する法律等の七十二法律の規定の整備等を行うものであります。

 以上が、これらの法律案の趣旨でございます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 提出者鈴木克昌君。

    〔鈴木克昌君登壇〕

鈴木克昌君 私は、民主党・無所属クラブの提出者を代表して、ただいま議題となりました証券取引委員会設置法案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 昨今の証券市場の混乱は、これまで以上に証券市場の監視・監督機能の強化が求められており、政府が経済的自由ばかりを追い求めて規制を緩め、証券取引のルールの整備、罰則の強化などを怠ってきた結果、証券取引等監視委員会は不公正取引の抑止力とはならず、市場監視機能は十分に機能してまいりませんでした。また、本日上場廃止となり、多くの個人株主に損害や影響を与えたライブドア事件も、このような現状に起因したものと言えましょう。

 政府は、金融商品取引法案の提出も含めて方策を打ち出していますが、それだけでは、ライブドア事件のような問題の再発を防止するには十分ではありません。しっかりとした対策として、証券取引等監視委員会を抜本的に強化して、市場の監視・監督機能を高めなければなりません。

 現行の証券取引等監視委員会は、いわゆる八条委員会として位置づけられ、みずから行政処分を下すことができません。また、証券取引等監視委員会は、発足から十数年を経過した現在においても、その活動を支える人材の確保が十分とは言えません。証券市場に通じたエキスパートを育成するためには、人事権を持った独立した行政機関とする必要があります。人材の育成、体制の整備なくして、金融業界の融合や国際化の中にあって急速に変化しつつある証券市場の適切かつ十分な監視は到底できません。

 独立性の高い、権限の強い行政機関を創設する必要性はこれまで以上に高まったと確信し、新たに、企画立案機能を金融庁に残し、監視・監督機能に特化させた内容とし、証券取引委員会設置法案を国会に提出した次第であります。

 以下、内容の概要を申し上げます。

 第一に、証券取引等の公正を確保し、投資者の保護を図るとともに、有価証券の流通等の円滑化を図るため、内閣府の外局として、証券取引委員会を設置することとしております。いわゆる三条委員会として位置づけられ、みずから行政処分を行う権限を有することとなります。

 第二に、証券取引委員会の所掌事務を、証券会社等の検査その他の監督に関すること、有価証券報告書等の審査及び処分に関すること、公認会計士等に関すること、証券取引法の規定による課徴金に関すること、証券取引等に係る犯則事件の調査に関すること等と定めることといたしております。

 第三に、証券取引委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行うこととしております。

 第四に、証券取引委員会は、委員長及び委員四名をもって組織し、委員長及び委員は、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとしております。

 なお、今後、銀行、保険、証券等の業務の垣根が低くなり、一体的な金融行政の必要性が高まることが予想されますが、それに対応して、将来、金融取引全般に関する監督・監視業務へのスムーズな移行をも視野に入れ、今回提出した法案につきましては、過去に提出した法案を基本としつつ、企画立案機能を金融庁に留保し、監視・監督機能の強化に特化させた内容といたしました。

 証券取引委員会の創設は、証券市場参加者の不公正取引に対する抑止力となるとともに、不公正取引を行った者に対して迅速かつ的確に処分をすることができるようになり、公正、透明な証券市場の確立につながると確信いたしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその概要であります。(拍手)

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 証券取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出)並びに証券取引委員会設置法案(古本伸一郎君外六名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。江崎洋一郎君。

    〔江崎洋一郎君登壇〕

江崎洋一郎君 自由民主党の江崎洋一郎でございます。

 私は、自由民主党を代表して、内閣提出の証券取引法等の一部を改正する法律案等二法案について質問いたします。(拍手)

 小泉内閣は、この五年間、改革なくして成長なしとの考えのもと、不良債権処理を断行するなど、多岐にわたる構造改革を進めてまいりました。これにより、我が国経済は長期にわたる低迷を脱し、民間主導の経済成長を続けるに至っておりますが、持続的な成長を図るためには、引き続き、政府・与党一丸となって、改革の手を緩めることなく取り組んでいく必要がございます。

 その中で、公正で透明な市場を構築することは、最も重要な課題の一つと考えます。

 証券取引法を初めとする現行の我が国の市場関係法制は、累次にわたる改正を重ねてきたものの、最近の事件でも明らかになったように、制度のすき間をつくような取引など、新たに克服すべき課題も生じてきております。本法案は、このような情勢に対応し、今までなじみ深かった証券取引法を抜本改正し、横断的かつ柔軟な金融商品取引法に改めるものであると認識しております。

 そこで、本法案の基本理念及びこれについての総理の御認識をお伺い申し上げます。

 自由民主党は、これまでも、利用者保護その他の諸課題に積極的に取り組み、政策形成をリードしてきたほか、年金担保融資対策、振り込め詐欺対策、昨夏の偽造・盗難キャッシュカード問題への対応におけるように議員立法による法改正を行うなど、成果を上げてまいりました。

 さらに、幅広い投資家保護のための法制整備についても、さまざまな角度から議論を重ねてきたところであります。本年に入り、ライブドアをめぐる事件も発生し、去る二月十七日には、公正で透明な市場の構築に向けて、提言を取りまとめました。

 今般の法案は、この提言を真摯に受けとめ、市場をめぐる諸課題への対応を図ろうとするものであります。そこで、不公正な取引や粉飾決算等の市場の信頼を揺るがしかねない事態を再発させないため、今般の法案で必要な方策が手当てされるものと考えますが、総理の御所見をお伺い申し上げます。

 また、この際、あわせて、本法案における公開買い付け制度、いわゆるTOB制度を初めとするディスクロージャー制度の見直しの基本的な考え方について、金融担当大臣にお伺い申し上げます。

 貯蓄から投資の流れをより確かなものとする観点からは、税制面での環境整備も重要でございます。これまでも、株式等の譲渡益や配当に対する税率を一〇%に軽減するといった取り組みが行われ、我が国の個人金融資産に占める株式投資信託の割合は、昨年末にはようやく一〇%を超える水準まで上昇してきましたが、米国や欧州に比べますと、依然として大きく水をあけられた状態であります。

 こうした状況を踏まえ、これまでと同様、税制面においても、貯蓄から投資への流れを促進するための取り組みを継続していく必要があるものと考えますが、総理の見解をお伺い申し上げます。

 金融資本市場の整備は、今回の改正にとどまることなく、時代の推移に対応し、引き続きより広範な課題にこたえていくことが求められております。例えば、企業の適正な情報開示のためには、企業内部の監査はもとより、外部監査人による監査が重要な役割を担っています。監査をめぐる最近の事件の教訓も踏まえ、監査法人制度のあり方を含めた制度の見直しに取り組んでいく必要があると考えますが、金融担当大臣の御所見をお伺い申し上げます。

 最後に、制度面で必要な規制を整備しても、その実効が伴わなければ意味がありません。本年のライブドアをめぐる事件を契機に、市場監視機能をつかさどる証券取引等監視委員会のあり方などについてもさまざまな議論がなされております。投資家保護や取引の公正を確保し、市場を健全に育成していくためには、今後、市場監視機能の強化をさらに図っていく必要があると考えますが、この点について、総理の見解をお伺い申し上げます。

 自由で活力ある市場の発展には、単に制度の整備だけではなく、市場関係者が一丸となって責任を果たしていくことも必要と考えます。自由民主党としても、市場監視機能の強化などの課題に積極的に取り組んでおります。

 今般の法案と市場関係者の努力が結実し、国内外の投資家にとって真に魅力ある我が国市場が構築されなければならないということを改めて申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 江崎議員に答弁いたします。

 法案の基本理念についてですが、今般の法案は、幅広い金融商品について横断的な利用者保護の枠組みを整備することにより、金融資本市場の公正性、透明性を確保するものであり、このことを通じ、利用者利便を向上させ、貯蓄から投資への流れを支え、国際市場としての我が国市場の魅力をさらに高めることから、まさに時代の要請にこたえる法案であると考えております。

 法案で講じられる方策についてですが、今般の法案では、幅広い金融商品に関する横断的な投資者保護法制の整備、四半期開示の法定化など開示制度の拡充、罰則の強化などの方策を講じているところであります。これらの方策を通じて、我が国市場の公正性、透明性が一層向上し、国際的にも信頼される市場が構築されていくものと考えます。

 金融・証券税制でございますが、今後の金融・証券税制については、金融商品間の課税の中立性を確保し、簡素でわかりやすい税制を構築するとの観点から、金融所得を一体として課税することを基本に検討を進めてまいりたいと考えております。その際、貯蓄から投資へといった政策目的に基づいて講じられた現行の税制上の優遇措置についても、導入の背景や政策目的、導入後の活用状況等を踏まえ、検討していく必要があると考えております。

 市場監視機能の強化の必要性についてですが、証券市場は、経済活動の重要な基盤であり、公正、透明で信頼されるものである必要があります。このような観点から、証券取引等監視委員会は、さまざまな不公正取引に対して厳正に対処してきていると承知しております。

 今後とも、証券市場をめぐる状況の変化に的確に対応し、投資家保護や不公正取引の防止にしっかりと取り組むよう、証券取引等監視委員会における優秀な人材の確保及び専門性の向上等、市場監視機能の強化をさらに図ってまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 開示制度の見直しについてお尋ねがありました。

 公正、透明な証券市場を確立していくためには、株券等の大量買い付けや保有の状況、企業の財務内容等に関する情報が適時適切に開示されることが極めて重要であります。

 このため、本法案では、党の御提言も踏まえ、公開買い付け制度について、脱法的取引への対応や投資者への情報提供の充実等を図るとともに、大量保有報告制度の特例報告について、提出頻度、期限の大幅な短縮等を図っております。また、企業内容等の開示制度について、四半期報告制度の法定化や財務報告に係る内部統制の強化等の措置を講じているところでございます。

 次に、監査法人制度のあり方等についてのお尋ねがありました。

 公認会計士、監査法人は、企業財務情報の信頼性の確保について極めて重要な役割を担うものであり、監査法人や公認会計士の信頼を揺るがしかねない事態が引き続き生じていることについては、真摯に受けとめる必要があると考えております。

 このため、監査法人のあり方等については、金融審議会の公認会計士制度部会を再開し、総合的に検討を行っていく考えであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 小沢鋭仁君。

    〔小沢鋭仁君登壇〕

小沢鋭仁君 民主党の小沢鋭仁でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました政府提出の証券取引法等の一部を改正する法律案外一案について、小泉総理及び与謝野大臣に質問を行います。(拍手)

 なお、民主党・無所属クラブ提出の証券取引委員会設置法案につきましては、同僚の鷲尾英一郎君が後ほど質問をさせていただきます。

 小泉政権が誕生して約五年。それに先立つ数年間を含め、この間、我が国の金融・証券市場を取り巻く環境は、極めて大きな変化の中にありました。金融ビッグバンとも称されるこの改革は、国内で起こり得るもろもろの事件、出来事、あるいは新商品への対応という一面もありますが、基本的には、世界経済のボーダーレス化に伴う環境の変化に対する我が国市場の不可欠な対応だったと私は思っています。

 通信技術の進展により、今や金の流れは一瞬です。円やドルといった形を持った紙幣の束、すなわちキャッシュがジュラルミンのケースに入って行き交うのではなく、電磁的方法によって、一瞬のうちに利益の生じるところに流れていくのです。みずほ証券による大量発注ミスで一瞬にして二十億円を稼いだ青年の例は、まさにそのことを象徴する出来事でありました。

 また、クリントン時代に財務長官を務めていたルービン氏は、その回顧録の中で、国の発展のためには信用を高め、海外からの安定的な資金を呼び込むことが重要だと述べています。グローバル化が進んだ今日において、我が国の金融システムも当然のことながら変わらなければなりません。ただいま議題となっている本法案も、こうした文脈の中で理解していくことが重要だと思います。

 本日は、小泉総理に出席をしていただいております。まず、そうした大きな金融システムの変化の中で、我が国がどのような経済社会を目指していくのかという点についてお尋ねをさせていただき、その後、法案に即し、具体的な質問をさせていただきます。

 まず、お金がお金を生むという言葉があります。一方、額に汗して働くという言葉もあります。株式投資は、長期的には、多くの株主たちが資本を持ち寄り、会社を興し、経営し、社会的貢献を果たしていくことになるわけですが、昨今盛んなデートレードと呼ばれるようなごくごく短期の取引においては、それを行う人々も社会への貢献などという意識は持たないでしょうし、まさに金で金を稼ぐ行為だと言えましょう。

 また、ライブドア事件に象徴されるように、株式市場を使ったいわば錬金術的な経営を求める人々も少なくはありません。そして、さきの選挙において、その堀江容疑者を、小泉総理、武部自民党幹事長、竹中大臣等、日ごろから改革を声高に唱えている皆さんがそろって褒めたたえたのでありました。堀江容疑者自身も、小泉改革が事業の推進に役立ったと語っています。

 総理、総理の唱える改革は、金で金を稼ぐ、お金を持っている人がそのお金を使ってさらに金持ちになる、そういうことをやりやすくする改革でしょうか。それは、格差をさらに拡大する可能性があると考えます。それをよしとするのでしょうか。国民は、単に格差の拡大に不満を抱いているのではありません。社会に何の貢献もなく、錬金術的やり方で生じる格差の拡大に怒っているのです。

 額に汗して働くこととお金でお金を稼ぐことが併存する今日の経済社会において、何を大切にして、どのような社会を目指しているのか、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)

 ちなみに、さきの代表選で選ばれた小沢一郎民主党代表は、その演説の中で、一部の勝ち組だけが得をするのは自由でも公正でもない、民主党の目指すべき社会は、黙々と働く人、努力する人、正直者が報われる公正な社会であると述べていることを申し添えておきます。

 求める社会像ということでは、フランスの学者ミッシェル・アルベール氏が「資本主義対資本主義」という名著の中で、資本主義といっても一様ではなく、大きく分けると、米国を筆頭とするアングロサクソン型と、ドイツ、フランスのようなライン型に分けることができると分析をしています。アングロサクソン型は短期の利益を重視するのに対し、ライン型は中長期の利益、さらには従業員や地域の利益というものを大切にする社会としています。日本は、彼によれば、後者のライン型資本主義に属するとされています。

 金融システムのあるべき姿を考えていく場合、この分析は極めて有益な示唆を与えてくれますが、総理のこれまでの発言等を見ると、穏やかなライン型の資本主義から、生き馬の目を抜くようなアメリカ型の経済社会を目指しているように思えます。いかがでしょうか。

 一方、さきに述べたように、海外から資金を呼び込めるような金融システムを構築していくことも必要です。この点に関して、一月二十三日毎日新聞夕刊に載ったニューズウィーク日本版副編集長ジェームズ・ワグナー氏の見解は、大変興味深いものでありました。端的にポイントのみを紹介すれば、日本の商習慣では「許可されたことのみやっていい」という考え方だが、米国は「禁じられたこと以外はやっていい」と考えるというものです。

 例えば、ライブドアによるニッポン放送の株式取得の際行われた時間外取引について、当時の伊藤金融担当大臣の発言と自民党の与謝野政調会長の間で、見解の相違があったと受けとめられました。一般論か個別論かという点はさておき、市場は、伊藤大臣は適法とし与謝野会長はいわばグレーと言ったと受けとめたのです。この出来事によって、まさに日本のマーケットは恣意的、裁量的に運営されていて、透明性に欠けると海外の投資家から受けとめられたのです。ワグナー氏は、さらに、「すき間を突いて業績を上げるのはビジネスの基本。それ自体、悪いことでも何でもない。」と言っています。

 このような意見は、これまでの日本の商習慣とは異なる気がいたしますが、グローバル化した経済の中で日本のマーケットが信用を得ていくためには、そうした意見を前提にシステムの透明化を図るべき時代だと思います。特に、日本のように行政指導などという言葉で象徴される裁量行政がまかり通った過去があるところでは、厳にそうした行為は慎み、徹底的に透明な市場にしていくことが最重要だと考えますが、総理並びに与謝野大臣の答弁を求めます。(拍手)

 次に、証券取引所のあり方についてであります。

 ライブドア事件を初め、東京証券取引所がたびたび取引を停止する事態に追い込まれました。証券取引所がみずからの判断で取引停止を決めたのは前代未聞のことであり、主要国の取引所でも異例の出来事で、東証の国際的な信用を失墜させたものと言わざるを得ません。

 政府案において、自主規制機能を取引所から独立した法人が担うケース、同一法人内に独立性の高い自主規制委員会を置くケースも選択できる措置が盛り込まれております。しかし、証券取引所の公的な性格を担保するためには、取引所が公開会社となることの是非が議論されなくてはならないと考えます。

 民営化のメリットは資金調達にあると思われますが、一方、公開会社となれば、大阪証券取引所のケースのように、特定の個人、団体による買収という事態も当然予想されなければなりません。

 また、公開会社でなくても資金調達をする方法はさまざま考えられます。多くの国民は、取引所は公的機関で民間会社だとは認識していません。それをさらに上場し、公開会社になることまで目指していくことが果たして必要かどうか、総理の見解を求めたいと思います。

 政府は、この法案で、縦割り規制から横断的な規制に変え、投資性の強い金融商品・サービスにすき間のない規制をかけるものと説明していますが、関係省庁の抵抗に遭い、中途半端なものにとどまったとの印象を免れません。投資家、消費者保護の対策も不十分なままだと受けとめています。例えば、商品先物、不動産特定共同事業は、本法案の対象外となっています。なぜこのような骨抜きの法案になったのか。総理、総理はこの法案の取りまとめに際し、どのようなリーダーシップを発揮されたのですか。

 その総理のリーダーシップについて、おもしろいエピソードを聞きました。総理の関心の度合いは、説明を聞く際のいすへの腰かけ方でわかるというものです。例えば、三位一体改革の話のときには深々と腰かけ、黙って説明を聞く、道路公団問題のときには座り方がやや浅くなり、時折意見を言う、郵政問題の際には転がり落ちんばかりに身を乗り出して、身ぶり手ぶりでほとんど自分でしゃべっているという話です。私にもその姿が目に浮かぶようです。

 この金融システム改革については、座り方はどうだったのでしょうか。結果としては不十分に終わっているのですが、省庁間の縦割りの弊害をどのように除去しようとされたか、総理の取り組みについて御答弁ください。

 最後に、総理の最も関心の高い郵政問題と金融システム改革の関係に言及し、私の意見を申し上げます。

 郵政の特別委員会で、私は総理に、郵政問題は郵便事業も問題だが、本質的な問題は郵貯、簡保の金融問題で、日本の金融市場の将来設計図をきちんと描かぬままこの問題に突っ込むことは、極めて危険だと申し上げました。

 金融問題としての郵政問題は金融システム全体のサブシステムであり、世界の大きな変革の流れの中で、日本の金融システム全体の将来図は、この法案においても、いまだ全く描けていないのであります。

 振り返ってみれば、この問題に限らず、小泉政治は常にそうでありました。私から見た小泉政治の特徴は、大枠は米国を模倣して何も考えず追随し、金融システム全体の中のサブシステムである郵政とか、日本外交全体で国益を考えることなく靖国参拝問題を言い張るとか、自分の個人的関心にのみ一点集中してエネルギーを注ぎ、改革だと言い張るものです。これでは多くの国民は浮かばれず、路頭に迷うばかりであります。

 一国の総理のリーダーシップとして最も大事なことは、サブシステムに血眼になることではなく、システム全体の見取り図を描くことだと考えます。

 この分野について言えば、後戻りすることのできないグローバル化、情報化の中で、いかに世界から信頼され、国民からも安心、公正だと評価される金融システム全体の将来図を提示することであります。小泉政治にはそうした問題意識が決定的に欠けているという点を指摘して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 小沢議員に答弁いたします。

 目指すべき社会についてですが、私は、総理に就任以来、国民一人一人、また各企業が持てる力を発揮できる社会、そして努力が報われる社会、一度や二度失敗してもまた再挑戦できる社会を目指して構造改革に取り組んでまいりました。

 このような社会を実現していくに当たっては、挑戦を続ける意志や力を持ちながらも十分な資金を持たない国民や企業に、必要な資金を円滑に融通する金融の役割が着実に果たされることが必要であります。このため、不良債権処理の問題を含め、金融分野を構造改革の重点分野と位置づけ、各般の取り組みを進めてまいりました。

 さらに、本法案により、国民が多様な金融商品やサービスを安心して身近に利用できる環境を整備し、活力ある金融システムを構築し、国民経済全体の健全な発展に結びつけていきたいと考えております。

 アメリカ型の経済社会を目指しているのかということでございますが、私は、市場経済を重視するという意味においても、アメリカの例もあればヨーロッパや日本の例もあると考えており、金融サービスのみならず、社会保障制度など、国家の役割も我が国とアメリカでは異なるところであります。

 重要なことは、一定の市場のルールのもとで、個人や企業が知恵を出し、それぞれの創意工夫を発揮するとともに、投資家等が市場での取引に安心して参加できるようにしていくことであると考えております。その際、民間が活力を発揮できるよう、ルールづくりなど、環境を整備することが国の役割であると考えており、単純にアメリカ型の経済社会を目指しているものではございません。

 市場の透明性確保についてですが、金融資本市場は、経済活動の重要な基盤であり、公正、透明で広く内外から信頼されるものであることが必要です。

 こうした観点から、政府としては、これまでも、情報開示の充実や課徴金制度の導入、証券取引等監視委員会の体制強化等の改革に取り組んでまいりましたが、今回の法改正における四半期開示の法定化などによる開示制度の拡充、公開買い付け制度に関する規定の整備などの措置により、市場の公正性、透明性がより一層向上するものと考えております。

 証券取引所のあり方についてですが、株式会社化が進んでいるところでありますが、一方で公共的性格を有していることから、その自主規制業務が適切に運営されることを確保することが必要であります。

 このため、今回の法案において、資金調達の円滑化、多様化などを目的として証券取引所が上場を行う場合であっても、業務の健全かつ適切な運営を損なうおそれがあると認めるときは上場を承認しないこととする等の所要の措置を講じることとしたところであります。

 金融システム改革についての取り組み、今般の法案における商品先物、不動産特定共同事業の取り扱いを含め、省庁間の縦割りの弊害をどのように除去したのかというお尋ねでございます。

 私は、就任当初から、不良債権処理や資本市場の構造改革を進めるとの方針を明確に打ち出し、金融担当大臣に指示してきたところであります。その結果、不良債権問題を正常化させ、その後の金融資本市場の課題として、投資家が安心して参加でき、国際的にも評価される金融資本市場の整備に取り組むこととしたものであります。

 このような方針のもと取りまとめた今般の法案は、幅広い金融商品に関し、横断的な投資者保護を図っているところであります。また、商品先物、不動産特定共同事業の取り扱いについては、商品先物取引は石油など現物の生産、流通等、不動産特定共同事業は不動産取引というように、商品の対象となる事業そのものに係る政策と切り離すことができないため、それぞれの業法の対象としておりますが、これらの業法においても、金融商品取引法と同等の利用者保護規制を新たに設けたところであり、骨抜きとの批判は当たらないと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 市場の透明性についてのお尋ねがありました。

 金融当局としては、これまでも、公正、透明な市場の構築に向け、各種制度の改革や明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政の徹底に取り組んできたところでございます。

 今回の法改正においても、この観点から、投資一任業務等も登録制の金融商品取引業と位置づけることとする、四半期開示制度を法定化するといった措置を講じております。

 今後とも、市場の公正性、透明性の向上に引き続き努力をしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 鷲尾英一郎君。

    〔鷲尾英一郎君登壇〕

鷲尾英一郎君 民主党の鷲尾英一郎です。

 冒頭、申し上げておかなければならないことがあります。

 本日の厚生労働委員会において、国民の生命にかかわる医療制度改革法案を審議する委員会正常化初日に、多数の与党議員の中座によって定足数割れが生じ、議論が中断いたしました。こうした姿勢に、国民の命にかかわる重要法案への誠意を全く感じることができないと言わざるを得ません。国権の最高機関の一員たる自覚を持っていただきたい、こういうことを一言述べさせていただき、質問に入らせていただきます。(拍手)

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ提出の証券取引委員会設置法案について法案提出者に、政府提出の証券取引法等の一部を改正する法律案外一案について内閣総理大臣及び関係大臣に質問を行います。

 本日、この重要法案の審議が始まりましたが、東京証券取引所マザーズ市場に上場しているライブドア株とライブドアマーケティング株の上場廃止の日となったことは、歴史の皮肉と言えるかもしれません。

 バブル崩壊後、金融システム改革、資本市場改革が叫ばれる中で、公正な証券市場を構築するために、従前の裁量行政による規制のあり方は大きく見直されることになりました。今求められているのは、従来の裁量によっていたものを、すべてルール化して事後チェック型の行政に移行することであります。

 しかし、日本ではこのルールが未整備だったと言わざるを得ません。こうしたルールの不備をついてライブドア事件が起こったのであって、その結果は、皆さん御存じのように、一般投資家二十万人もの人々が不測の損害をこうむったのであります。このように、広範な影響を与える証券市場そして株式会社制度について、日本は余りにも無防備なのではないか、そういう気がしてなりません。

 そこで、小泉総理にお伺いしたいことがございます。

 証券市場そして株式会社制度は、アメリカで起きた一九三三年の世界大恐慌に象徴されるように、時として、極めて危険な代物となり得ると考えますが、日本が構築しようとしている公正な証券市場を適正に運用していくためには、従前の欧米の法体系の部分的な模倣ではなく、日本全体で法形成能力を伸長していかねばなりません。そのためには、証券市場のあるべき姿及び日本経済の進むべき方向性、いわゆるビジョンをお示しいただく必要があります。総理の御所見を求めます。

 また、特に司法制度の改革において、このような経済事情の変化に対応するために日本の法形成能力をどのように向上させていくべきか、総理の御所見をお伺いしたいと思います。

 続きまして、民主党提出者に質問いたします。

 第一に、従来から民主党は証券取引委員会設置法案を提出しておりますが、先ほどの趣旨説明から、法案に変更を加えての提出ということになります。この国会で改めて提出した真意と、そしてその決意のほどをお伺いいたします。

 第二に、証券取引委員会を三条機関とした理由についてお尋ねいたします。

 政府・与党を中心に、現在の証券取引等監視委員会の権限のままで十分との指摘がありますが、なぜ民主党案は三条機関とする必要があるのですか。現行の証券取引等監視委員会の組織、人員を拡充するだけで十分ではないかとの批判がありますが、どうお答えになりますか。提出者の御所見を求めます。

 第三に、証券取引委員会における行政処分の仕組みについてお尋ねいたします。

 民主党が提唱する証券取引委員会は、審判・審決機能、一審的機能を与え、調査から行政処分を一貫して行う機関とすべきと考えています。この点について、なぜかような法案となっているのか、御答弁をいただきたい。あわせて、独占禁止法においては課徴金加算制度及び減免制度がありますが、金融市場においてはどのようにお考えなのか、御答弁願います。

 第四に、証券取引委員会の所管事務についてであります。

 法案では、証券取引委員会は制度の企画立案に関する事務を所管せず、証券業等の監督と証券取引等の監視に特化した機関としておりますが、その理由をお示しください。

 なお、政府案については、商品先物、不動産特定共同事業などは金融商品取引法の対象外となっております。とりわけ、被害、トラブルが頻発している商品先物については対象とすべきとの声も聞かれますが、この点、対象外とした理由をお伺いすると同時に、商品先物取引の取引実態及び今後の金融商品市場のありようをどのように考えておられるのか、関係大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 あわせて、この点について民主党提出者の御所見もお願いいたします。

 最後に、証券取引委員会等における人材育成についてお尋ねします。

 我が国の事後チェック型行政では、取引を監視する人材の育成が欠かせません。これについて関係大臣に御所見を求めたいと思います。

 また、証券取引委員会事務局の職員の人材育成についてどのように考えておられるのか、提出者に御答弁をお願いして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鷲尾議員に答弁いたします。

 証券市場のあるべき姿、日本経済の進むべき方向性についてですが、私は、民間にできることは民間にとの方針のもとに、一定のルールのもとで民間による自由な競争と消費者、利用者による幅広い選択を可能とすることにより、国民が持っている潜在力が自由に発揮できるようにしていくことが日本経済にとって重要であるとの考えに立って改革を進めてまいりました。

 経済活動の重要な基盤である証券市場においても、公正、透明なルールのもとで、多様な商品、サービスの利用者が保護される環境を整備することが、活力ある金融システムの構築、ひいては国民経済全体の健全な発展に結びつくものと考えております。

 こうした観点から、政府としては、これまでも日本社会のあるべき姿を見据えながら法制度の整備などに努めてまいりましたが、今回の法改正により、市場の公正性、透明性がより一層向上するものと考えております。

 経済事情の変化に対応した日本の法形成能力についてですが、活力ある健全な金融システムの確立は我が国の経済活動及び国民生活の基盤であり、今回の法案も含め、時代の要請に応じた金融の法制度の構築の重要性が一層高まっております。

 このような基本認識のもとに、政府としても、時代の要請にこたえつつ、我が国の実情にも即した金融の法制度を構築するため、幅広い視野と専門的能力を有する人材の登用、育成等に努めていく必要があると考えます。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) 商品先物取引等についてのお尋ねがございました。

 商品先物取引は、現物取引の生産、流通をめぐる政策と密接に関連するものとして、既に商品取引所法において規制が設けられております。

 このため、今般の法案では、商品先物取引を金融商品取引法の直接の対象とするのではなく、商品取引所法において金融商品取引法と同等の利用者保護規制を整備しております。

 なお、商品先物取引については、昨年五月に施行された商品取引所法の改正法において、利用者保護の観点から規制の大幅強化が図られており、取引に関する苦情も引き続きあるものの、現時点では改正法施行前に比べて減少傾向にあるものと承知しております。

 いずれにせよ、今般の法案を通じて、投資家保護のため、横断的法制の整備を図ってまいります。

 次に、人材育成についてのお尋ねがございました。

 市場の公正性を確保し、投資家の保護を図っていく上で、取引を監視する優秀な人材の確保及び職員の専門性の向上は必要不可欠であります。

 このため、裁判官、検事、弁護士、公認会計士、デリバティブ等の民間専門家を積極的に登用しているほか、広く証券市場の最新動向や取引検査実務に即したノウハウの取得等、さまざまな専門研修を日ごろより実施しているところであります。

 今後とも、これらの人材の確保、育成にさらに努めてまいります。(拍手)

    〔吉田泉君登壇〕

吉田泉君 鷲尾議員にお答えをいたします。

 御指摘のとおり、民主党は過去三回、証券取引委員会設置法案を提出してまいりました。昨今の規制緩和の結果、証券取引市場においては大変自由度が増大しております。それに対して事後チェック機能を強化して、市場の公正性の確保を図ることが喫緊の課題だと考えたからであります。

 現在、金融庁の中に置かれている証券取引等監視委員会では、権限が弱く、行政処分も下せません。もっと独立性があって権限の強い証券取引委員会を設置する。それができていれば、今回のライブドア事件は未然に防ぐことができたかもしれませんし、問題が大きくならないうちにおさまったかもしれません。二十万人の投資家の損失がこれほど大きくなることもなかったと思われます。

 また、今般のライブドア事件では、公認会計士の一部が粉飾決算を認識しながら適正意見をつけていた疑いが強まっています。民主党は、公認会計士が本来の役割を果たせない構造があるのではないかと考えております。

 こうした問題点を解消するためにも、本法案では、証券取引委員会の所掌事務に公認会計士に関することを含めることとし、従来の公認会計士・監査審査会を同委員会内に設置することとしております。

 公正な市場を確保し、投資家保護に万全を期すことができますよう、この国会での本法案成立に全力を注いでまいる所存でございます。

 二点目は、三条機関にする理由でございます。

 国家行政組織法上のいわゆる三条機関、独立行政委員会は、八条機関と異なって、より独立性が高く、公正中立な立場でみずから行政処分を行うことが可能であります。これによって、証券会社等の検査その他の監督、有価証券報告書等の審査及び処分、課徴金の納付命令、犯則事件の調査、告発などを一貫して委員会みずからの権限で行うことができるようになり、金融庁にその都度お伺いを立てる必要がなくなります。

 このような、市場の番人にふさわしい強い権限を持った監視・監督機関の存在を求める声は大変強まっております。そのためには、現在の証券取引等監視委員会の位置づけを根本から見直さなければならないと考えているところでございます。

 三点目に、この証券取引委員会には、審判・審決機能、すなわち一審的機能を与え、調査から行政処分までを一貫して行う機関とすべきではないかとのお尋ねがございました。

 この法案では、証券取引委員会が不公正取引の調査、審判官による審判、納付命令を行います。それらがこの委員会の中で完結していますので、まさに御指摘の提案にかなうものとなっていると考えております。

 このような措置を通じて、調査、審判のみならず、それらを踏まえた処分手続まで一貫した対応を行うことが可能となり、法益を害する行為、取引に対して、より迅速的確な対応が可能となるものであります。(拍手)

    〔大串博志君登壇〕

大串博志君 民主党の大串博志でございます。

 鷲尾議員の残余の質問に対してお答え申し上げさせていただきます。

 課徴金加算制度や減免制度についてのお問い合わせがありました。

 御指摘のとおり、本年一月四日より施行の改正独占禁止法において、一定条件のもとに、違反者が立入検査前に違反を申請すれば課徴金が減免される制度などが導入されています。

 証券取引においても、このような課徴金の加算制度や減免制度の導入を早期に図っていくことで、問題となる行為や取引に対して、状況に応じた柔軟な対応がより早い段階で可能となるものであり、取引の速度が非常に速くなっている現状において、より的確な対応をとることが可能となるものと考えております。

 次に、証券取引委員会を監督、監視に特化した理由について質問がございました。

 近年、金融のグローバル化やコングロマリット化が進んでおり、投資家の保護に対応していくためには、金融制度に係る企画立案については金融庁のもと、すなわち閣内の大臣のもとで民主的コントロールをより直接的に及ぼすことが適当と判断したものでございます。

 他方、今般、三条委員会として、独立性の強い、処分権限も備えた、そして監督、監視に特化した機関として証券取引委員会の設立を提案するものでありまして、これはライブドア問題の反省に基づき、政府においてはいわゆる金融商品取引法案を中心とした取り組みが打ち出されていますが、監督・監視機能そのものの抜本的強化を行わないで、果たしてそれで十分か、第二のライブドア事件は防げるのかという観点から、より強力な市場監督・監視機関を設立するという抜本的な対策が必要と考えた次第であります。

 この観点から、証券取引の監督、監視については、外部からの圧力などに左右されることがない、公正中立かつ独立した立場から行われることが重要であり、今般の我が党案においては、証券取引委員会を監督・監視機能に特化させた組織としているものでございます。

 三番目に、商品先物、不動産特定共同事業などについてのお問い合わせがありました。

 御指摘のとおり、政府案においては、商品先物、不動産特定共同事業などについて、利用者保護ルールについて基本的に同様の規制を適用することとなっておりますけれども、法律の枠組みとしては、金融商品取引法とは別建てとなっており、監督当局も別建てとなっているために、真に一様な投資家保護が維持できるのか疑問です。

 民主党提案の証券取引委員会は、金融サービス業の監督機能及び金融取引市場の監視機能についても、将来的に一つの機関に行わせることを視野に入れたものであります。その際には、昨今、金融商品としての側面が大きくなってきている商品先物についても、省庁の縦割りにとらわれることなく、金融商品取引法、さらにはその先に視野に入れるべき包括的な金融サービス法制において対象に含めていくことも考えていくべきであり、将来の検討課題として取り組んでいくべきものだと考えております。

 最後に、人材育成についてお尋ねがございました。

 証券市場監視の強化等のため、証券実務に精通する人材の育成が急務と考えますが、現行制度においては幾つもの障害があると考えます。

 まず、公務員については、短いローテーションで人事を回し、専門家が育ちにくい環境にあること、そして、民間から優秀な弁護士や会計士を採用する場合には処遇等の面が阻害要因となっていること、さらには、証券取引等監視委員会が独自に人材を採用する完全な権限を持っていない点であります。

 こうした問題を解消する立場に立ち、まずは、公務員制度改革を進める中で、意欲と能力のある多彩な人材を登用することが可能となる仕組みを構築してまいります。こうした改革は、証券取引委員会事務局の職員採用の柔軟化等にも資するものと認識しております。

 さらに、ロースクール、アカウンティングスクール等の修了者などに証券、監査等の分野で活躍できる機会を与える視点に立って、これら人材育成を果たす施策を実現し、このような施策を講じつつ、証券取引委員会においても独自採用を行い、プロパー職員を育成していくための支援策を展開していくことが極めて重要なものと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 谷口和史君。

    〔谷口和史君登壇〕

谷口和史君 公明党の谷口和史でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の証券取引法等の一部を改正する法律案、いわゆる金融商品取引法案について、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 日本経済は、小泉連立政権におけるたゆみない改革努力のもと、長いトンネルをようやく抜け出し、着実に回復を始めましたが、そうしたやさきに今回のライブドア事件が発生しました。

 振り返ると、八〇年代後半、日本はバブル経済に浮かれ、投機が投機を呼ぶ異常なマネーゲームを生み出しました。今回の景気回復局面でも、その陰にバブル期と同様のひずみが生じているとすれば、決して看過することはできません。もちろん、経済の原動力であるマーケットが活況を呈すること自体は望ましいことですが、金もうけのみを追求する風潮が浸透し、市場が単なるマネーゲームの場へと堕することにならないか、十分に注視していく必要があります。特に、今回のライブドア事件は、マネーゲームによるひずみが端的にあらわれたものと言わざるを得ません。

 健全で公正かつ透明、そして信頼される証券市場を構築するため、このような事件が二度と起こらないよう、適切に対応するとともに、関連する制度を早急に整備することが不可欠であります。

 公明党は、去る二月十六日に緊急対策を取りまとめ、政府に対してその実行を強く求めたところであります。

 くしくもライブドア株がきょう上場廃止となりましたが、ライブドア事件についてどのような認識を持っているのか、また、事件を踏まえ、本法案の中で政府としてどのような対応をとろうとしているのか、冒頭、小泉総理にお伺いいたします。

 また、ライブドア事件をめぐっては、ライブドアを担当していた監査法人が解散を表明し、その監査法人に所属していた公認会計士が有価証券報告書の虚偽記載の共犯で起訴されるという、異例の事態が生じております。さらに、カネボウの粉飾事件など、たび重なる不祥事により、公認会計士監査の信頼性は大きく揺らいでいるのではないかと思います。

 公認会計士、監査法人制度については、三年前に公認会計士法が改正されましたが、改めて、公認会計士、監査法人制度等のあり方について見直していく必要があるのではないかと考えます。

 投資者に対する適切な情報開示の重要性が一層高まる中で、外部監査人の役割も重要性を増すことになると考えますが、本法案では、企業の財務報告に関し、公認会計士、監査法人に新たにどのような役割を求めることとしているのか、また、公認会計士監査の信頼確保に向けて今後どのように取り組んでいくのか、金融担当大臣の御所見を伺います。

 次に、個別具体的にお伺いをいたします。

 外貨建て預金や変額保険、さらには商品先物取引など、新たに一本化される金融商品取引法に統合されない投資商品も残るものと承知をしております。なぜこれらの投資商品を金融商品取引法の直接の対象としなかったのか、また、これらの投資商品に関してどのような投資者保護策を講じているのか、金融担当大臣の御所見をお伺いします。

 また、本法案では、取引を希望していない顧客に対して訪問または電話による勧誘を禁止する、いわゆる不招請勧誘の禁止規定を整備しており、一般投資家の被害を未然に防止する効果が期待をされます。

 ただし、その具体的な禁止対象については、投資者保護が特に必要なものとし、政令で指定することとされておりますが、すべての金融商品について原則禁止とすべきとの意見もあります。こうした意見も踏まえつつ、今後、必要に応じて機動的に政令改正等を行う体制を整えなければ、せっかくの規定も意味がありません。

 そこで、不招請勧誘の禁止対象について、政令指定をどのように行っていくのか、金融担当大臣の御所見を伺います。

 いずれにせよ、本法案は、投資家保護ルールの確立と公正、透明で信頼される市場の構築に向けた大きな一歩であることは間違いありません。

 本法案が速やかに成立することを期待し、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 谷口議員に答弁いたします。

 ライブドア事件と本法案における政府の対応についてですが、ライブドア事件については、問題となった不正行為に厳正に対処するとともに、その再発を防止し、金融資本市場の公正性、透明性を確保することが重要と考えております。

 本法案では、投資事業組合やファンドを含む幅広い金融商品に関する横断的な投資者保護法制の整備、四半期開示の法定化など開示制度の拡充、罰則の強化などの方策を講じることとしており、この中で不正行為の防止にしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣与謝野馨君登壇〕

国務大臣(与謝野馨君) まず、公認会計士等の監査についてお尋ねがございました。

 公認会計士、監査法人は、企業財務情報の信頼性の確保について極めて重要な役割を担うものでございます。本法案では、新たに導入する四半期報告制度や財務報告に係る内部統制の評価制度において、公認会計士等の監査を義務づけることとしております。

 また、金融審議会の公認会計士制度部会を再開し、監査法人のあり方等について総合的に検討を行っていくなど、今後とも監査の信頼確保にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

 また、投資性の強い預金、保険や商品先物取引等の投資商品の取り扱いについてお尋ねがありました。

 御指摘の預金、保険については、銀行法及び保険業法において既に利用者保護規制の対象とされており、また、商品先物取引については、現物取引の生産や流通をめぐる政策と密接に関連するものとして、既に商品取引所法において規制が設けられております。

 このため、今般の法案では、これらの投資商品を金融商品取引法の直接の対象とするのではなく、これら各業法において金融商品取引法と同等の利用者保護規制を整備しております。これにより、投資商品に関して、投資者保護のための横断的法制の整備が図られているものと考えております。

 次に、不招請勧誘の禁止対象の政令指定についてお尋ねがありました。

 政令指定については、現時点では、商品性や利用者被害の発生等の実態を考慮し、外国為替証拠金取引等の店頭金融先物取引を定めることが適当ではないかと考えております。

 今後、利用者被害の実態等にかんがみ、禁止対象に追加すべき取引類型が生じた場合には、政令において機動的に対応をしてまいります。

 以上です。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  小泉純一郎君

       国務大臣    与謝野 馨君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 長勢 甚遠君

       内閣府副大臣  櫻田 義孝君


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