衆議院

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第31号 平成18年5月18日(木曜日)

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平成十八年五月十八日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十四号

  平成十八年五月十八日

    午後一時開議

 第一 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 第三 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第六 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)

 第七 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)

 第八 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 第九 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第十 中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

 日程第三 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第六 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)

 日程第七 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)

 日程第八 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 日程第九 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第十 中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 ねんきん事業機構法案(内閣提出)及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員松野頼三君は、去る十日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 松野頼三君に対する弔詞は、議長において去る十六日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され しばしば国務大臣の重任にあたられた正三位旭日大綬章 松野頼三君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 日程第一 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長中谷元君。

    ―――――――――――――

 地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中谷元君登壇〕

中谷元君 ただいま議題となりました地方公務員等共済組合法の一部を改正する法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、市町村合併の進展等による地方議会議員年金の財政状況を踏まえ、同制度の長期的安定を図るため、退職年金等の給付水準を引き下げるとともに、市議会議員共済会及び町村議会議員共済会の財政計算を一本化し、両共済会の間で財政調整を行う等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月九日本委員会に付託され、同月十一日竹中総務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。同月十六日質疑を行い、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の締結について承認を求めるの件(参議院送付)

議長(河野洋平君) 日程第二、社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長原田義昭君。

    ―――――――――――――

 社会保障に関する日本国とカナダとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔原田義昭君登壇〕

原田義昭君 ただいま議題となりました日加社会保障協定につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 我が国政府は、カナダとの間で、人的交流に伴って生ずる年金制度への二重加入等の問題の解決を図ることを目的とする協定を締結することで一致し、平成十六年十月より両国政府間で交渉を行ってまいりました。その結果、平成十七年十月に協定案文について合意に達しましたので、本年二月十五日、東京において署名が行われました。

 本協定の主な内容は、

 日加両国での年金保険料の二重負担を解消するため、一時的に派遣される就労者については、自国の年金制度を継続することとし、派遣期間が五年を超えると見込まれる場合には、かわって就労地国の年金制度に加入すること、

 両国の保険期間を通算することにより両国における年金受給権の確立を図ること、

 給付額の計算に際しては、それぞれの国内法の規定に従って、自国の年金制度への加入期間に応じた額を支給すること

等でございます。

 本件は、去る四月十二日に参議院より送付され、五月九日に外務委員会に付託されたものであります。

 外務委員会におきましては、十二日麻生外務大臣から提案理由の説明を聴取し、十七日質疑を行い、採決を行いました結果、全会一致をもって承認すべきものと議決した次第でございます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第三 健康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、健康保険法等の一部を改正する法律案、日程第四、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 健康保険法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔岸田文雄君登壇〕

岸田文雄君 ただいま議題となりました両案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、健康保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、医療保険制度の将来にわたる持続的かつ安定的な運営を確保するため、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、

 第一に、生活習慣病対策の充実や平均在院日数の短縮といった中長期的な医療費適正化対策を計画的に進めるとともに、現役並み所得を有する高齢者の患者負担の引き上げ等保険給付の内容及び範囲の見直しを行うこと、

 第二に、七十五歳以上の後期高齢者の保険料、現役世代からの支援及び公費を財源に、都道府県単位ですべての市町村が加入する広域連合が運営する新たな後期高齢者医療制度を創設するとともに、六十五歳から七十四歳までの前期高齢者に係る医療費について各保険者の加入者数に応じて負担する財政調整制度を創設すること、

 第三に、政管健保を公法人化し、都道府県ごとの医療費を反映した保険料率を設定するなど、都道府県単位を軸とした保険者の再編統合を推進すること

等であります。

 次に、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、国民の医療に対する安心、信頼を確保し、質の高い医療サービスが適切に提供される体制を確立するため、所要の改正を行おうとするもので、その主な内容は、

 第一に、都道府県を通じた医療機関に関する情報の公表制度の創設や広告規制の大幅な緩和等を行うこと、

 第二に、医療計画制度を見直し、医療機能の分化、連携を推進し、地域において切れ目のない医療の提供体制を構築すること、

 第三に、僻地や、小児科、産科などの診療科における医師の偏在問題に対応し、地域における医師確保の推進を図ること

等であります。

 両案は、去る四月六日の本会議において趣旨説明が行われ、同日本委員会に付託されました。

 本委員会では、翌七日川崎厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、十二日から質疑に入り、二十五日及び二十六日には参考人から意見を聴取し、また、五月八日には福岡県及び福島県に委員を派遣して意見を聴取するなど審査を行い、昨十七日には小泉内閣総理大臣の出席を求め、質疑を行いました。

 その後、質疑を終局し、採決を行った結果、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告いたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。郡和子君。

    〔郡和子君登壇〕

郡和子君 民主党の郡和子でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の健康保険法等の一部を改正する法律案及び良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 この国に民主主義はないのか、医療はだれのものなのか。

 昨日の厚生労働委員会での与党による強行採決は、国民を愚弄し、政治を私物化するものであります。二〇〇二年の健康保険法改正案のときには五十六時間の審議が行われましたが、しかし、今回はまだ三十四時間にすぎません。国民を代表して、断固抗議するものであります。(拍手)

 政府のこれまでの失政により、日本の医療は今壊滅の危機にさらされています。理想の医療、それは、国内のどこででも、いつでも、最善、最良の医療を無理のない金銭負担で、安心して受けられることです。医師を初めとする医療従事者と患者、患者家族との間で培われた確かな信頼関係の中で、平等、公平に受けられる医療、この日本が世界に誇るべき医療体制は、政府の失政により崩壊の一途をたどっております。

 医師は、訴訟や逮捕を恐れて防衛医療に走り、あるいは診療環境の悪化によって地域の基幹病院から逃げ出し、周産期医療、小児医療を担う医療機関は次々と閉鎖され、医療難民が続出しているのであります。健康格差は拡大し、保険証を返還する世帯は、二〇〇〇年度十万世帯が二〇〇五年には百三十万世帯に激増し、受診がおくれ病状が悪化、死亡した患者が多数出ていると報じられております。まさしく、政治が人の命を削っているのであります。そして、犠牲者はこれからもまだたくさん出てきましょう。まさに、「苛政は虎よりも猛し」でございます。

 何がこの医療崩壊を招いたのか。

 第一に、戦略なき臨床研修制度導入の影響です。若い医師たちは、堰を切ったかのように臨床経験を積める市中病院へと流出しました。そして、それまで研修を軽視していた大学医局も研修に人手を割かなければならなくなり、人手不足だと大騒ぎしております。そして、医師を大学へと引き揚げ、地域の基幹病院の診療がストップしたのです。医師不足に悩む病院では、残された医師に診療が集中し、過労死寸前の労働を強いられております。

 厚生労働省は、労働基準法違反の状態を放置したまま、医師確保対策と称して、将棋のこまのように医師を動かし、配置することしか考えていません。そして、医師不在の病院に残されたのは国民であります。総理、いつまで国民を欺き、医師を消耗品として扱い続けるのですか。

 医療の原点は、患者の権利を保障すること、そして、医師を初めとする医療従事者が誇りを持って働ける基本的な権利を保障することです。しかしながら、政府案は、この権利を保障する責務を放棄し、何一つ実効性のない政策を改革と偽って、ツケばかりを国民に押しつけております。強行採決という恥ずべき手段で押し通そうとしているこの最悪の医療改悪のシナリオは、今すぐ撤回すべきであります。(拍手)

 医療費の適正化とは何でしょうか。それは、科学的な根拠、すなわち、エビデンスのある治療にお金を払い、効果も安全性もわからない治療を制限し、コストを節約することです。

 しかし、政府案の前提となっている二〇二五年の医療費推計値五十六兆円、これに始まって、政府案は、何から何まで根拠のない数字を並べ立てています。これまでも厚生労働省は、制度見直しのたびに医療費の伸び率を不当に高く見積もってきました。このように、国民を恐喝するかのような数字をでっち上げ、適正化と言い張り、削減目標とした推計値との差額は、ことごとく国民の自己負担へと回されることになります。政府は、医療費適正化のための方策を全く考えず、国民に負担を押しつけるばかりではありませんか。

 超高齢社会を展望した新たな医療保険制度と称して、現役世代と別枠の保険制度を導入しようとしております。この新たな制度創設の真のねらいは、今後増大する高齢者の医療費を、その人口に占める割合に合わせて削減する口実を獲得することであります。少ない年金暮らしの弱いお年寄りからも保険料を天引きするなど、むち打つような方策まで用意されています。

 さらに、唐突に決定された療養病床の二十三万床削減は、入院している患者を、地域における受け皿も十分に整わないうちにほうり出す通告です。行き場のない介護難民をつくろうとしている。これは、現在入院している患者を震え上がらせ、将来入院するかもしれないすべての国民に対して、老後に対する不安と危機感をあおる政策です。安心して医療が受けられず、さらに、体が弱ったときに身を置く場所もない。これでは、この国の未来に展望は開けません。国民は落ちついて仕事ができない。これによる社会不安は、必ずや経済不安を呼び起こすことでしょう。

 介護保険法の改正で導入された介護療養病床も朝令暮改で消えることとなり、新聞報道によれば、自民党は、介護保険の自己負担を一割から二割に引き上げるという策略を練っているそうではありませんか。

 政府案のすべてが砂上の楼閣であることを浮き彫りにしたのが、メタボリックシンドロームを柱とする生活習慣病対策の虚構性であります。

 日本の八つの学会が、WHOやアメリカで提案されたメタボリックシンドロームの診断基準を、日本向けにアレンジしたものをつくりました。しかし、その後間もなく、アメリカとヨーロッパの権威ある学会が、メタボリックシンドロームは診断基準として確立しておらず、批判的に吟味すべきであるとする共同声明を発表しました。厚生労働省は、この事実を知っていながらあえて無視し、検討会に提出して検討することすら避けたのです。私は、これを知ったときに、あの薬害エイズ事件で、海外の重要な情報を厚生労働省と医学の権威が握りつぶしたという記憶がまざまざとよみがえり、怒りで打ち震えました。

 地方公聴会で聞いた医師不足に苦しむ地域の方々の声は、翌日のメタボリックシンドロームの異様とも言える新聞報道でかき消されたのです。そして、ちまたにあふれる製薬会社のパンフレットにはメタボリックシンドロームの文字が躍り、いたずらに健康不安をあおり立てています。

 生活習慣病で医療費は抑制できない、これは医療経済学者の常識となっているところです。厚生労働省は、事実をねじ曲げて国民から医療費をまき上げる。まさしく医療詐欺社会であります。(拍手)

 医療費抑制と過剰な事務作業を医療機関に課せば医療が崩壊することは、イギリスの例を見ても明らかです。政府の医療法改正案は、良質な医療を提供すると称し、医師不足にあえぐ医療機関に、無意味でエビデンスのない書類を山のように書かせる難行苦行を強いるもので、劣悪な医療へと拍車をかけるだけであります。

議長(河野洋平君) 郡君、申し合わせの時間が過ぎましたから、結論を急いでください。

郡和子君(続) 民主党は、傷ついた兵士のような医師や医療従事者をいやすことで患者の安全を確保することを最優先に考え、緊急に対策が必要な小児医療、がん対策の法案、そして、医療現場に信頼関係を取り戻すことに軸を置いたいわゆる医療の安心・納得・安全法案を提出し、雪崩を打つかのような医療崩壊を食いとめ、新しい活力の流れを医療の現場によみがえらせるという戦略を描きました。

 小泉総理は、就任時、自民党をぶっ壊すと明言されました。しかし、まさに今、日本の医療をあなたはぶち壊しているのです。医療崩壊元年。この国に生まれ、支え合って生きる、命を全うする、その社会基盤を奪い去る政府案に、悲鳴が聞こえてまいります。

 私たち民主党は、小泉改革による耐えがたい痛みに立ち上がり、日本の医療を再構築することをここに宣言し、反対討論を終わらせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、健康保険法及び医療法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。(拍手)

 まず最初に、本法案は、国民の命と健康にかかわる極めて重大な法案であるにもかかわらず、昨日の厚生労働委員会において、自民、公明の与党が審議を打ち切り、採決を強行する暴挙を行ったことに、満身の怒りを込めて抗議をするものであります。(拍手)

 小泉構造改革のもとで、国民健康保険の保険料を払えない世帯がふえ、保険証の取り上げが三十二万件に達するなど、国民の命と健康は重大な危機に直面しています。

 本法案は、医療給付費の削減を至上の命題とし、高齢者を中心に患者負担を拡大する、都道府県には入院日数の短縮目標を義務づけ、高齢者医療制度を創設して新たな負担増を打ち出すものであり、しかも、産科や小児救急を初めとする地域医療の拡充、医師の確保や看護師の充足など、国民の切実な声である医療供給体制の充実とはほど遠い制度改悪となっています。

 本法案に反対する第一の理由は、高齢者や重症患者への情け容赦ない負担増と医療の切り捨てが強行されることであります。

 ことし十月から、高齢者の窓口負担は現行の二割から三割になり、療養病床の食費、居住費も保険適用から外されました。また、新設される高齢者医療制度では、年間六万円もの保険料が年金から天引きされ、滞納すれば保険証の取り上げもするというものであります。

 この負担増が、医療を必要とする患者の受診を抑制し、疾病を重症化させることは明らかであり、断じて容認することはできません。

 反対の第二の理由は、療養病床を、現在の三十八万床から六年間で二十三万床も削減することです。

 この病床に入院している高齢者の多くは、もともと受け入れ条件がないために退院が不可能な人たちです。政府は、病床削減では入院患者の追い出しにはならないことが大原則と弁解しておりますが、特養老人ホームの待機者が三十四万人を超え、療養病床にすら入れない高齢者がいる中で、医療や療養を必要とする多くの高齢者が施設から締め出されることは明らかであります。

 しかも、受け皿をふやすために、老健施設の基準を緩和したサテライト施設を認め、医師や介護職員を初め、調理室なども置かないことができるとするのでは、入所者の安全も安心も全く保障されないことになります。

 反対の第三の理由は、保険のきかない医療を拡大し、安心してかかれる保険医療を揺るがす仕組みを導入したことです。

 低い医療費は保険適用から外すという保険免責制度は今回見送られました。しかし、特定療養費制度を改変し、高度先進医療だけではなく、必ずしも高度でない先進医療にも混合診療を拡大します。また、差額ベッドはもちろんのこと、制限回数を超える医療行為なども保険がきかない医療とします。これでは、高額な医療費を払えない人は、結局、満足な治療も受けることができず、所得の格差が命の格差を広げることになります。

 本法案では、生活習慣病の健康診断や保健指導を義務づけますが、これもアウトソーシングを可能にしました。このような、国民の命と健康を守る医療の分野にまで営利優先、弱肉強食を持ち込み、公的医療制度を土台から破壊、解体しようとする暴挙は、断じて許すことができません。

 すべての国民は、貧富にかかわりなく医療を受ける権利を持っており、国はその権利を保障する義務を負うべきです。この立場に立って日本の医療を立て直すことこそ今強く求められていることを強く指摘して、反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 日森文尋君。

    〔日森文尋君登壇〕

日森文尋君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案、この両案について、反対の立場で討論いたします。(拍手)

 まず、冒頭、昨日、厚生労働委員会において、国民の命に直結する本重要法案を政府・与党が強行採決したことに対し、満身の怒りをもって抗議をいたします。(拍手)

 本法案は、政府の財政支出の削減のみが目的です。公的医療の範囲の縮小、削減は、国民共有の財産である国民皆保険制度を縮小し、所得による医療格差を持ち込むものです。医療費適正化は避けて通れない重要な課題ではありますが、本法案の基礎となる医療費の将来推計、健診効果による抑制効果は、正確な根拠に基づいたものではありません。

 また、医療改革において最も優先すべきは、国民の立場に立った医療の中身の改善と医療提供体制の構築、そして国民の信頼を得る医療保険制度の充実です。政府が、これらに対する明確なビジョンも戦略も何ら示さないまま、国民、患者、医療現場、そして地方に負担と責任を一方的に押しつけることは断じて許されません。

 患者負担の引き上げ、診療報酬の切り下げなど医療費抑制政策は、医療現場も荒廃させます。小児救急医療、産科医療の危機、医師、看護師等の不足、医療事故の頻発、医療従事者の労働条件の悪化、士気の低下など、既に窮状にある諸課題について、本法案は具体的な対策を講じていないばかりか、取り返しのつかない事態へと追いやるものにほかなりません。

 高齢者の窓口負担割合の引き上げ、高額療養費支援の縮小、療養病床における食費、居住費の自己負担化、高齢者医療制度の導入、療養病床の削減、廃止など、本法案は高齢者に多重の負担を押しつけています。目減りする年金、増加する保険料、さらに税負担の増、総合的な視点を欠くこの間の見直しは、国民の不信感を強め、社会保障制度そのものの存続を危うくするものです。

 私は、本法案を廃案とし、国民の命の尊厳に立つ医療制度改革をこそ行うべきだと主張して、反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)

     ――――◇―――――

 日程第五 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(河野洋平君) 日程第五、銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長佐藤剛男君。

    ―――――――――――――

 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔佐藤剛男君登壇〕

佐藤剛男君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における準空気銃を使用した犯罪の実情等にかんがみ、これによる危害の発生を防止するため、その所持を原則禁止する措置等を講ずるものであります。

 本案の概要は、圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃であって空気銃に該当しないもののうち、人を傷害し得るものを準空気銃と位置づけ、その所持を原則禁止するとともに、準空気銃を使用して人の生命または身体を害する罪その他の凶悪な罪に当たる違法な行為をした日から起算して十年を経過していない者に対しては、猟銃の所持の許可をしてはならないこととするほか、罰則規定その他所要の規定等を整備しようとするものであります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る五月十一日本委員会に付託され、翌十二日沓掛国家公安委員会委員長から提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、五月十七日質疑を行い、質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)

 日程第七 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)

 日程第八 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)

 日程第九 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第六、山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、日程第七、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、日程第八、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、日程第九、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長稲葉大和君。

    ―――――――――――――

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案及び同報告書

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案及び同報告書

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案及び同報告書

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔稲葉大和君登壇〕

稲葉大和君 ただいま議題となりました四法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、内閣提出の三法律案について申し上げます。

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案は、これまですべての農業者を対象に品目ごとに講じてきた価格政策を見直し、認定農業者等の担い手の経営全体に着目してその安定を図るために必要な交付金を交付する施策に転換しようとするものであります。

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案は、砂糖及びでん粉の原料作物の最低生産者価格を廃止し、生産条件の格差から生じる不利を補正するための交付金を交付するとともに、でん粉の価格調整制度を創設する等の措置を講じようとするものであります。

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案は、国内産麦の政府無制限買い入れ制度を廃止するとともに、政府が需給見通しを策定し、これに基づき麦の輸入及び備蓄を行おうとするものであります。

 次に、山田正彦君外四名提出の食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案について申し上げます。

 本案は、販売を行う農業者に対する単年度当たり約一兆円を目途とする直接支払いの導入や、米の生産調整の廃止等の方針を定めようとするものであります。

 四法律案は、去る三月十七日本委員会に付託され、同月二十三日中川農林水産大臣並びに提出者山田正彦君からそれぞれ提案理由の説明を受け、四法律案を一括議題とし、四月五日から質疑に入り、慎重かつ熱心に審査を重ねてまいりました。

 昨十七日質疑を終局し、討論を行い、採決いたしました結果、山田正彦君外四名提出の食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案は賛成少数をもって否決され、内閣提出の三法律案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 四案につき討論の通告があります。これを許します。黄川田徹君。

    〔黄川田徹君登壇〕

黄川田徹君 民主党の黄川田徹であります。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案等三法案に反対、山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案に賛成の立場で討論を行います。(拍手)

 まずもって、政府案に反対する第一の理由は、政府案が経営安定対策の目的を「食料の安定供給の確保に資する」としつつ、食料自給率目標は四五%としたままであり、全く見直していないことであります。

 世界的な食料供給の不足が予測される中で、食料の相当部分を輸入に依存している我が国において、国民に対する食料の安定供給を確保するため、食料自給率の向上を図ることは国の重大な責務であります。

 しかしながら、昨年国会に提出された新たな食料・農業・農村基本計画に定められた食料自給率目標四五%は、旧基本計画と同水準であり、これは、従来の農政の失敗により食料自給率目標の達成がおぼつかなくなったため、その目標年次を単純に五年間先送りしただけであります。

 政府は、みずからが提案した法案による政策を戦後農政の大転換と自画自賛し、食料の安定供給を究極の目的として掲げていますが、その結果として目指すべき食料自給率が四五%のままでは、まさに大山鳴動してネズミ一匹であります。お粗末の一語に尽きると思います。政府提出法案に対して、私の地元の言葉、気仙の言葉で言えば、おだづなよであります。

 これに対し、民主党案は、食料自給率目標を十年後に五〇%、将来的には六〇%として法案に明記し、国民に約束しており、その根拠として、麦、大豆、菜種などの生産数量の目標の考え方を示し、目標達成への道筋を明らかにしているなど、説得力のあるものとなっております。

 政府案に反対する第二の理由は、経営所得安定対策の対象農業者を、担い手とされる一部の農業者に限定し、かつ経営規模という形式的な要件で対象者を選別するという手法をとっていることであります。

 政府は、本法案の対象は農家の三割、農地の五割としており、わずか三割の農家を対象に施策を集中化、重点化することにより構造改革の加速化や自給率向上に資すると説明しておりますが、これは、専業農家あるいはまた兼業農家、経営規模の拡大を目指す農家、経営規模の縮小を考える農家など、さまざまな農家が有機的に結合した農業、農村現場の実情を無視した暴論であります。

 政府は、現場の実情に配慮して特例措置を用意したと説明しておりますけれども、特例というものは、原則不合格であるというところを改めて特別に認めてやるという発想でありまして、農家の誇りを傷つけるもので、大変失礼な話であると私は思っております。また、特例措置でどれだけの農家がカバーされるのか、政府が全く明らかにしていないことからも、その効果の疑わしさは明白であります。

 今まで営農にいそしんできた農家のうち七割もの多くの農家が、国によって非担い手のレッテルを張られ、施策の対象から除外されたら、これらの農家の経営が不安定となり、生産を放棄せざるを得なくなることから、食料自給率の低下を招くことは必至であります。耕作放棄地も増大するわけであります。

 さらに、担い手と非担い手を峻別し、七割の農家を切り捨てることになれば、農村地域社会が営々とはぐくんできた互助の精神、さまざまな連携の取り組みが失われ、農村地域社会は崩壊の危機に瀕するでありましょう。

 また、政策の裏打ちは、何といっても予算であります。戦後農政の大転換と喧伝する割には、必要額を明示することもなく、法案審議の過程で、我が党の山田議員との質疑の中で、これまでの予算額を下回ることが明らかになるなど、担い手にとっても不安を感じざるを得ない代物となっていると思っております。

 これが、政府のもくろむ農業の構造改革の目指すものなのであります。

 これに対し、民主党案は、大規模農家や小規模兼業農家の有機的な結合により営まれている農村集落の実情を踏まえ、計画的に生産する販売農家を直接支払いの対象としております。経営規模という形式的要件を課すことなく、計画的に生産することを要件とし、広く販売農家を直接支払いの対象とし、農業経営の底上げを図ることとしております。これに、経営規模に応じた加算、品質に応じた加算、環境保全に資する度合いに応じた加算を行うことによりまして、めり張りのきいた交付を行うことにより、ばらまき批判やモラルハザードの問題にも対処するとともに、環境支払いも組み込んだ、わかりやすい制度設計となっておりまして、総額一兆円の直接支払いを実施することとしております。

 政府案に反対する第三の理由は、米の生産調整を相変わらず継続することを前提としていることであります。

 米の生産数量を統制し、農業者の自由な経営展開を国が縛ってきたことが今日の農業をめぐる閉塞感の一因であることは、今さら申すまでもありません。政府は、米政策の改革を法案と表裏一体の関係に位置づけておりますが、その内実は、米の生産調整を農業者、農業団体主体で実施するとしつつ、生産調整を実施しなければ施策の対象としないことで、国は後ろから糸を引き、強制的な減反政策を継続するという極めて巧妙な手法をとっているものであります。これでは、実質的には何も変わりません。

 これに対し、民主党案では、米をつくるかつくらないかは農業者の経営判断にゆだねることとしております。民主党案の直接支払いは、国が定める生産数量の目標に従って計画的に生産をした販売農家を対象としておりまして、その単価は、大豆、麦が米より有利になるように設定し、米から大豆、麦への生産転換を促します。仮に、豊作などにより需要を上回る生産がなされた場合には、国が買い上げ、棚上げ方式により備蓄し、飼料やバイオマスその他の用途へ活用するなどにより、米の需給と価格の安定を図るとともに、地球温暖化の防止や循環型社会の形成にも資することとしております。

 また、民主党案においては、食料の安定供給確保の観点から、食料自給率目標や直接支払いの導入に加えまして、漁業生産の確保のための個別TAC制度の導入、食料の安全性と消費者の安心を確保するための加工食品等の原料原産地表示や輸入検疫体制の強化を盛り込むなど、総合的な改革の方針を打ち出しております。

 政府案には、こうした視点は、からきしありません。政府は、農業の構造改革の加速化のための法案であることを繰り返し主張されておりますけれども、多くの農家を施策の対象から切り捨て、営農意欲を失わせ、国民に対する食料の安定供給を危うくする政策がもたらすものは、日本の農業、農村の破壊であると言わざるを得ません。

 以上が、民主党案に賛成し、政府案に反対する理由であります。

 都市の景観とともに、農山漁村の風景も大切にしていきたいと思っております。農業、林業、水産業を単なる産業政策としてとらえるのではなく、地域政策としてしっかりと取り組んでいかなければなりません。日一日と集落が消えていくような政治にくみすることはできません。

 民主党が政権を獲得した暁には、食料の国内生産と安全性が確保される真の農政改革が実現されることをここに明言しつつ、私の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第六、山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第七ないし第九の内閣提出の三案を一括して採決いたします。

 三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第十 中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第十、中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長石田祝稔君。

    ―――――――――――――

 中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔石田祝稔君登壇〕

石田祝稔君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近の中小企業組合における事業運営の状況等にかんがみ、組合の運営全般について規律の強化を図るため、一定規模以上の組合に対し、員外監事の設置を義務づける等の措置を講じるとともに、中小企業組合が行う共済事業についても、一定規模以上の共済事業を行う組合は、他の事業との兼業を原則として禁止する等、事業の健全運営を確保するための措置等を講じようとするものであります。

 本委員会においては、去る五月十日二階経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、昨日終了いたしました。質疑終局後、討論、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 ねんきん事業機構法案(内閣提出)及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、ねんきん事業機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣川崎二郎君。

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) ねんきん事業機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、ねんきん事業機構法案について申し上げます。

 公的年金制度は、国民の信頼を基礎として常に安定的に実施されるべきものであります。しかしながら、その運営を担う社会保険庁については、事業運営に関するさまざまな指摘がなされるとともに、不祥事案も生じたところであり、組織のあり方を含めた抜本的な改革を行い、公的年金制度に対する国民の信頼を確保することが不可欠であります。

 このため、本法案は、社会保険庁を廃止し、新たにねんきん事業機構を設置するとともに、適正な事業運営を確保するための措置を講ずるなど、その解体的出直しを行うものであります。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、厚生労働省に、特別の機関としてねんきん事業機構を置き、その所掌事務を定めるとともに、その長をねんきん事業機構代表執行責任者とし、地方組織として地方年金局及び年金事務所を置くこととしております。

 第二に、ねんきん事業機構の適正な事業運営を確保するため、ねんきん事業機構代表執行責任者及び外部の専門家で組織される年金運営会議を設置し、重要事項の決定に際しては同会議の議を経なければならないものとするとともに、特別監査官を置き、外部の専門家を登用することにより監査機能の強化を図るほか、事業運営に被保険者等の意見を反映するための措置や、年金個人情報の利用及び提供の制限、年金委員の創設などの措置を講ずることとしております。

 以上のほか、厚生労働省設置法等関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、一部を除き、平成二十年十月一日としております。

 次に、国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 公的年金制度に対する国民の信頼を確保し、その安定的な運営を図るためには、社会保険庁の組織の改革とあわせて、国民年金事業等の運営の改善を図る必要があります。

 このため、本法律案を提出し、国民年金事業等について、サービスの向上、保険料の納付の促進、公正で透明かつ効率的な事業運営の確保などの措置を講ずることとしております。

 以下、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、住民基本台帳ネットワークシステムから被保険者等に係る情報を取得することにより、その氏名及び住所の変更等の届け出を原則として廃止するとともに、社会保険と労働保険の手続の期限を一致させることにより、事業主による手続の簡素化を図ることとしております。

 第二に、クレジットカードによる保険料納付制度の導入など、国民年金保険料を納めやすい環境を整えるとともに、その滞納者に対して通常より短期の有効期間を定めた国民健康保険の被保険者証を交付することができる仕組みの導入、長期間にわたって保険料の自主的な納付がない場合に保険医療機関等に係る指定等を認めないこととすること、事業主に対して国民年金制度の周知等について協力を求めることができることなど、関係者や関係制度との連携のもとでの保険料の納付促進策を講ずることとしております。

 第三に、年金事務費に保険料財源を充当できるようにするとともに、いわゆる福祉施設規定を廃止し、新たに年金教育・広報、年金相談、情報提供等の国民年金事業等の円滑な実施を図るための措置に係る規定を整備するほか、基礎年金番号を法定化することとしております。

 以上のほか、国家公務員共済組合法等関係法律について所要の改正を行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日は、平成十九年四月など、改正事項ごとに所要の施行期日を定めることとしております。

 以上が、ねんきん事業機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 ねんきん事業機構法案(内閣提出)及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。戸井田とおる君。

    〔戸井田とおる君登壇〕

戸井田とおる君 自由民主党の戸井田とおるです。

 私は、自由民主党及び公明党の与党を代表して、ただいま議題となりましたねんきん事業機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 社会保険庁については、これまでのさまざまな不祥事や国民の立場に立ったとは言えない事業運営に関し、さまざまな批判や指摘を受け、公的年金制度に対する国民の深刻な不信感を招いたところであります。

 このため、与党においても、社会保険庁改革のあり方について、既存の観念にとらわれることなく幅広い議論を重ねてきた結果、現在の社会保険庁を廃止し、政管健保の運営を国から分離するとともに、公的年金の運営主体として新たに厚生労働省の特別の機関としてねんきん事業機構を設置するなど、社会保険庁の解体的出直しを図る方針を決定したところであります。

 今回の法案は、こうした社会保険庁改革の総仕上げとなり、昨年末に閣議決定された行政改革の重要方針においても明らかにされたように、内閣が推進する行政改革においても重要な位置づけを有するものと認識しておりますが、まず、厚生労働大臣に、今回の法案提出に当たっての社会保険庁改革への意気込みをお伺いいたします。

 次に、社会保険庁の業務改革について質問いたします。

 公的年金制度に対する国民の信頼感を高めるためには、社会保険庁の組織改革とあわせて、国民の目に見える形で業務改革を着実に進めていくことが不可欠であると考えます。

 これまでの社会保険庁の業務運営に関する大きな課題の一つとして、年金相談の待ち時間が長いなど、利用者の立場に立ったサービスが提供されていないという問題が指摘されてきました。

 社会保険庁においても、一昨年来、村瀬長官のもと、民間の発想を大胆に導入しつつ、年金相談サービスの充実を図るなど、各般の業務改革の取り組みがなされてきたと承知いたしておりますが、これまでに講じてきた被保険者や年金受給者に対するサービス向上策とその成果を明らかにするとともに、今後さらに、今回の法案に基づく対応を含め、どのように取り組んでいくのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、公的年金制度に対する国民の信頼の確保という観点からは、国民年金保険料の納付率の向上のための取り組みについて抜本的な強化を図ることが喫緊の課題となっております。

 平成十六年度の国民年金保険料の納付率は六三・六%と依然厳しい状況にあり、平成十七年度に入ってからはようやく目に見える形で上昇しておりますが、今後さらに、確実な上昇傾向を実現させることが必要であります。

 国民の間での公平な保険料負担を実現し、公的年金制度に対する国民の理解と信頼を醸成していくため、今後、今回の法案に基づく対応を含め、どのように納付率向上のための対策を講じていく方針であるのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、社会保険庁の事業運営における問題の一つとして、保険料を年金給付に関すること以外に安易に使っているという問題が指摘されてきました。今後、公的年金制度に対する国民の信頼を回復し、国民年金保険料の納付率の向上を実現していくためにも、予算執行の面において、さらに徹底した無駄の排除と透明性の確保を図ることが不可欠であると考えます。この点についての厚生労働大臣のお考えをお伺いいたします。

 今回の社会保険庁改革を真の解体的出直しの改革とするためには、新組織の設立を契機に、これまでの事業運営の問題の原因となってきた労働組合とのもたれ合いの慣行や体質を断ち切ることが何よりも重要であります。したがって、社会保険庁を廃止し、新組織を設立したとしても、現在の社会保険庁職員が漫然と新組織へ移行することを許容するようでは、国民の理解を得ることはできません。

 この点については、自由民主党として、特に厳格な措置を講ずることを求めてきたところでありますが、今回の法案においてどのように具体化されているのか、厚生労働大臣の見解をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 戸井田議員から五問、御質問をいただきました。順次お答え申し上げます。

 社会保険庁改革に対する私の基本的な考えについてお尋ねがございました。

 公的年金制度に対する国民の信頼を回復するためには、社会保険庁について、組織のあり方を含めた抜本的な見直しを行うことが不可欠であります。

 このため、平成二十年十月に社会保険庁を廃止するとともに、政管健保の運営を国から分離の上、新たにねんきん事業機構を設置して、あわせて、職員の大幅な削減、外部専門家の登用、民間企業的な人事、処遇の導入等の構造改革を図り、国民の信頼を得られる新組織の実現に向けて最善を尽くしてまいります。

 社会保険庁におけるサービス向上策についてお尋ねがございました。

 社会保険庁においては、利用者の立場に立ったサービスを提供するため、相談時間の延長や全国共通の電話番号の導入など年金相談の充実を図るほか、裁定請求書の事前送付など積極的な年金個人情報の提供を実施しております。これらにより、窓口における待ち時間が短縮されたり、年金電話相談がつながりやすくなりました。

 今後は、平成二十年度からのポイント制の導入を着実に進めるほか、今回の法案において、さらに、住基ネットの活用により被保険者等の住所変更の届け出等を原則廃止するほか、労働保険との連携を推進し、事業主による手続の簡素化を図ることとしております。

 国民年金保険料の納付率向上のための対策についてお尋ねがございました。

 納付率のさらなる向上を図るため、保険料を納めやすい環境の整備や、未納者の負担能力に応じたきめ細やかな収納対策に加えて、本法案においては、クレジットカードによる納付の導入や、市町村国保との連携などの対策を盛り込んでおります。今後とも、これらの対策の徹底を図り、納付率の向上に全力を挙げてまいります。

 社会保険庁の予算執行についてお尋ねがございました。

 平成十七年度以降、年金保険料は年金給付と年金給付に関係すること以外には使わないこととするとともに、予算執行に当たっては、調達委員会による経費の削減等に努めてきたところでございます。今後、組織改革にあわせて設置いたします年金運営会議や特別監査官の厳しいチェックのもと、厳正な予算執行を行い、徹底的な無駄の排除と透明性の確保を図ることとしております。

 最後に、社会保険庁職員の新組織への移行についてお尋ねがございました。

 今回の社会保険庁改革においては、これまでの組織体質を一掃することが重要であり、法案では、通常規定される職員の引き継ぎ規定を設けず、個々人の勤務成績等を公正に評価の上、個別に転任の手続を行うこととしております。また、任用に際しては、公的年金制度の意義を自覚し、誠実かつ公正に職務を遂行する旨の服務の宣誓を義務づけることとしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 田名部匡代君。

    〔田名部匡代君登壇〕

田名部匡代君 民主党の田名部匡代でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりましたねんきん事業機構法案及び国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 まず冒頭、昨日の衆議院厚生労働委員会において、医療給付費の抑制という財政主導の医療制度改革法案について、政府・与党が委員会審議を一方的に打ち切り、医療制度崩壊の危機に対して何ら解決策を示すことなく、強行採決したことに強く抗議をいたします。

 むしろ、崩壊のスピードを加速するような、審議半ばで説明責任を放棄した行動を、私たち民主党は、断固許すことができません。そのことを申し上げ、質問に移らせていただきます。

 まず、このねんきん機構法案、国民年金法改正案の質疑を始めるに当たり、過去、社会保険庁において、徴収した保険料が無駄遣いをされ、幹部職員の汚職が相次ぎ、年金情報ののぞき見といった、想像を絶する、まさにやりたい放題の不祥事がこれでもかと国民の前に提示されたことを、厚生労働大臣は覚えていらっしゃいますでしょうか。

 年金掛金で公用車が購入され、社会保険庁の一億円以上の随意契約は平成十五年で四十五件、総額にして一千百九十二億円であります。また、社会保険庁職員の野球観戦、ミュージカル、クラシック、狂言鑑賞、それに年金の掛金が使われたという事実も判明いたしました。さぞかし楽しいレクリエーションだったと思われますが、この不始末の責任は一体だれがとったのでしょうか。だれもとっていないのであります。

 大臣、これらの問題はだれに責任があり、なぜこういった問題が繰り返されてきたとお考えでしょうか。二度と同じことを繰り返さないために、何をすべきだと思われますか。

 社会保険庁は地に落ちた、国民が愛想を尽かした、解体的出直しが必要だということは与党の皆さんも認めたところであります。ところが、今回政府・与党から提示された案は、単なる看板のかけかえにすぎず、極めて不十分な内容であります。

 当初、与党内には民営化や独立行政法人化の意見もあったと聞きますが、なぜそうしなかったのでしょうか。社会保険庁改革として外部から招かれた村瀬長官による改革の効果に対する総括はなされたのでしょうか。社会保険庁問題によって失った信頼は、組織改編で取り戻せるのでしょうか。この程度の改革で職員の意識の刷新は本当にできるのでしょうか。大臣はどのようにお考えですか。お答えください。

 次に、名は体をあらわすと申しますが、ねんきん事業機構の「ねんきん」を平仮名に書きかえた理由は何なのでしょうか。これも小泉構造改革の戦略の一環なのでしょうか。大臣は記者会見で、国民にわかりやすいネーミングで、やわらかい印象を与えたいとおっしゃっておられましたが、国民が求めているのは、わかりやすいネーミングなどではありません。わかりやすい事業機構の内容であると考えますが、この平仮名で書かれた、ねんきん事業機構に込める思いを熱く語っていただきたいと思います。

 次に、機構の組織形態についてお伺いします。

 今申し上げたように、問われているのは、中身が本当に伴っているかということです。つまり、根拠法令を変えたところで、効率性、行政サービスの観点から利用者の立場に立った改革にならなければ意味がありません。

 昨年五月、社会保険庁の在り方に関する有識者会議では、公的年金制度を運営する新組織について、意思決定機能、業務執行機能及び監査機能について、その権限と責任の分担を明確にし、その機能強化を図り、新たな組織として再出発させるという報告書が出されました。ところが、政府案では、この取りまとめが十分に反映されているとは到底言えません。特別の機関というのは、国土地理院や原子力安全・保安院のような国家行政組織上の位置づけなのでしょうが、実質的には厚生労働省の外局と同じではないのですか。

 そこで、大臣にお尋ねします。

 まず、ねんきん事業機構の長に村瀬長官の横滑り人事はあり得るのでしょうか。与党からは、新組織への職員移行に際し、業務目的外閲覧による処分を重視するようにとの求めがあったと聞いていますが、これが実施されるのでしょうか。また、かねてから、厚生労働省出身のキャリア職員、本庁生え抜き職員、地方採用の職員という三層構造問題が指摘されてきました。この対応策は何をお考えでしょうか。お答えください。

 次に、具体的な事業運営についてお伺いします。

 今回、新たな組織において意思決定機関として設置される年金運営会議の独立性が担保されるかどうかは、ねんきん事業機構の運営に当たり、極めて重要なポイントだと考えています。

 この年金運営会議は、トップの代表執行責任者と四人以内の外部の専門家の委員で組織されるとありますが、これも従来の審議会等と実質的な違いはありません。唯一目を引くのが、厚生労働省の出身者は委員に採用しないという点であります。わざわざ採用しないという規定を盛り込まなければならなかったのは、これまでの組織のあり方を反省してのことでしょうか。この点について、ぜひその理由を教えていただきたいと思います。もちろん、反省の弁でも結構であります。

 あわせて、厚生労働省以外の省庁出身者が専門家委員になることについては妨げていないわけでありますが、他省庁OBとバーター取引をする指定席となることはまさかあるわけがないと思いますが、御見解をお伺いいたします。

 さて次に、国民年金保険料の収納強化策を掲げる国民年金法改正案についてお伺いします。

 この中に盛り込まれた方策には、強制的なメニューがそろっております。そもそも、社会保険庁改革と年金未納対策は全く別なものであります。名前を変えた社会保険庁に年金未納対策を語る資格がおありなのかというのが国民の実感だと思います。

 なぜ払うべき国民年金保険料を払わない人がふえているのか。それは、今の年金制度が非常に不安だからであります。天下りは依然として社会保険庁にあって、改革といっても、ただ看板をかけかえるだけでは信頼回復にはほど遠いのではありませんか。例えば、年金の徴収権を思い切って切り離すといった透明性の高い大きな改革があって初めて、国民は、これでもう無駄遣いはない、年金も信頼できるようになったと実感するのではないでしょうか。それがなければ、新組織の重要課題である収納率アップなど夢のまた夢ではないでしょうか。大臣のお考えをお伺いいたします。

 特に、この収納強化策の中には、国民年金保険料の未納者に対して短期国民健康保険証の交付が可能となる、すなわち、市町村の判断としつつも、国民健康保険証の有効期限を短縮できるようにして、更新のたびに年金保険料も払ってもらえるようにするという方策が盛り込まれております。高所得者にもかかわらず払わないという悪質な未納者ならまだしも、このターゲットとなるのは、保険料を払いたくても払えない、所得の低い世帯にならざるを得ません。異なる制度を利用した収納対策はなぜ許されるのか、さらに、市町村としてのメリットはどこにあるのか、お答えください。

 振り返れば、国民年金保険料の徴収率が落ちたのも、国の機関に任せたというところに問題があったのではないでしょうか。かつては全国の市町村が徴収していたのに、二〇〇二年四月からはそれが社会保険庁に移管されました。社会保険庁の出先である社会保険事務所は三百を超えているとはいえ、市町村の数に比べれば、社会保険事務所が住民の実態を把握しているとは言えず、この移管が未納増加の大きな原因とも言われております。国民年金保険料の徴収対策にあっては、市町村の実態を十分把握しつつ、連携強化に向けた体制整備が不可欠でありますが、その実効性をどう担保するのか、お考えを伺います。

 さて、本法案では強制的な収納対策についていろいろなメニューが提示されておりますが、これらはしょせん、本質的な問題を回避するための方便にすぎないことを最後に指摘しなければなりません。すなわち、年金保険料の徴収は社会保険庁、税金は国税庁という縦割り行政は放置されたままなのであります。本気で効率的に徴収する、国民が納付しやすい制度にするというのであれば、なぜ徴収だけでも一括して行わないのでしょうか。

 私ども民主党は、公的年金制度については、全国民が加入する所得比例年金を創設する、それに当たって所得捕捉を公平に行い、かつ的確な年金給付を担保するために、税及び年金保険料徴収と年金給付に共通の納税者番号制度を導入します。あわせて、国税庁と社会保険庁を統合し、一元化された所得比例年金の保険料については所得税などと同時に歳入庁で徴収をする、歳入庁構想を提示しております。

 もう一点は、効率化の問題です。せっかく社会保険庁改革というときに、なぜ税金と一緒に年金保険料を集めないのでしょうか。税金と一緒に年金保険料を集める方が効率的ではありませんか。幾ら民間出身の長官が頑張ったと胸を張っても、平成十四年の納付率は六二・八%、十六年度は六三・六%、十四年と十六年を比べても一%も上がっておりません。いわば納付率の向上は遅々として進んでいない状態にあります。

 年金保険料は一年間に二十兆円以上、これが現金で社会保険庁に入ってくるのでありますから、この権限を手放したくないゆえに、社会保険庁の改革が中途半端になっているのではありませんか。やはりお金を集めるのは一つの組織に集約をして、支払う組織と分離していくことが効率性や実効性につながるのであり、無駄遣いも少なくなっていくと私は考えております。

 この改革に当たり、これまでの数々の不祥事をしっかりと反省し、見せかけの改革ではなく、看板のかけかえの改革ではなく、本当の意味の改革、つまり真に国民のためになる改革に真剣に取り組むべきだということを最後に申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣川崎二郎君登壇〕

国務大臣(川崎二郎君) 田名部議員から十一問の御質問がございました。順次お答え申し上げます。

 まず、社会保険庁におけるこれまでの不祥事等に関するお尋ねがございました。

 これまでの不祥事等については、昨年一月、その背景にある組織体質と組織の構造問題にまで踏み込んだ考察を行い、調査報告書を公表の上、必要な処分を行ったところであります。今回の改革案は、こうした考察の結果を踏まえて作成したものであり、その着実な実現に最善を尽くすことが何よりも重要であると考えております。

 今回の改革案は、単なる看板のかけかえではないかとのお尋ねがございました。

 今回の改革案は、公的年金制度に対する国民の信頼を回復するため、平成二十年十月に社会保険庁を廃止するとともに、政管健保の運営を国から分離の上、国の責任のもとに、確実な保険料の収納と給付を確保し、安定的な運営を図ることが必要との考え方に基づき、新たに年金事業に特化した機関としてねんきん事業機構を設置するものであります。あわせて、職員の大幅な削減、外部専門家の登用、民間企業的な人事、処遇の導入等の構造改革を図ることとしております。

 また、これまで村瀬長官の下で進めてまいりましたさまざまな業務改革や職員の意識改革の取り組みに加え、さらに、国民年金保険料の収納対策の強化を初め、もう一段の取り組みを進め、組織体質の一掃に努めてまいります。

 ねんきん事業機構という名称についてお尋ねがありました。

 この名称については、社会保険庁の事業運営は国民の立場に立っているとは言えないとの指摘への深い反省に立ち、平仮名の「ねんきん」という文字を用いることにより、真に国民の立場に立ち、複雑な制度も責任を持ってわかりやすくお伝えするという基本理念、精神を明らかにし、国民から信頼される組織の実現を目指すものであります。

 ねんきん事業機構の組織のあり方についてお尋ねがございました。

 ねんきん事業機構については、私のもとに設置した社会保険新組織の実現に向けた有識者会議において、新組織は年金運営会議や特別監査官といった新しい構造、機能等を備えたものとなること等から、特別の機関とすることが適当との意見の取りまとめが行われたものであり、また、組織の具体的なあり方は、御指摘の官房長官主宰の有識者会議の取りまとめに沿ったものとなっております。

 なお、ねんきん事業機構の代表執行責任者については、当面、三年程度の任期により民間から登用することを想定しており、公的年金の運営という重要な職務をゆだねるにふさわしい人材を幅広く求めていきたいと考えております。

 新組織への職員の移行についてお尋ねがございました。

 今回の社会保険庁改革においては、これまでの組織体質を一掃することが重要であり、法案では、通常規定される職員の引き継ぎ規定を設けず、業務目的外閲覧による処分を重視しつつ、個々人の勤務成績等を公正に評価の上、個別に転任の手続を行うこととしております。また、任用に際しては、公的年金制度の意義を自覚し、誠実かつ公正に職務を遂行する旨の服務の宣誓を義務づけることとしております。

 社会保険庁職員の三層構造についてお尋ねがございました。

 この点については、今回の組織改革において、都道府県ごとの社会保険事務局を廃止することにより、地方事務官制度に由来する意識、体質を改めるとともに、能力主義に立った民間企業的な人事、処遇を導入するほか、人事異動のサイクルの原則を従来の二年から三年以上にしたところであります。いわゆる三層構造に起因する構造的な問題の解決に資すると考えております。

 年金運営会議の委員についてお尋ねがございました。

 年金運営会議がねんきん事業機構の長の意思決定に関し十分な牽制機能を果たすためには、会議の委員には外部の視点で意見を述べることが求められることから、厚生労働省出身者ではないことを委員の資格要件として定めております。

 なお、他省庁出身者についてまで一律に排除しておりませんが、御指摘のように他省庁出身者の指定席とする考えは全くございません。

 社会保険庁改革と保険料収納率の関係についてお尋ねがございました。

 今回の改革においては、国民年金保険料の収納率向上が現下の最重要課題となっている中で、新たに年金事業に特化した組織としてねんきん事業機構を設置するとともに、国民の意向を十分に反映させ、適正かつ効率的な運営を確保するために、外部人材の登用による意思決定機能や監査機能の抜本的な強化、大幅な人員削減、民間企業的な人事、処遇の導入、地方組織の改革等の抜本的な改革を行うこととしており、これらの改革は公的年金の運営に対する国民の信頼感を高め、保険料収納率の向上に寄与するものと考えております。

 国民年金保険料の未納者に対する国保の短期被保険者証の交付についてお尋ねがございました。

 今般の医療保険制度改革により、現在の介護保険料に加え、新たに高齢者医療制度や国保の前期高齢者の保険料も年金から天引きすることとされ、住民の年金受給権の確保は市町村が保険者となる医療保険や介護保険の安定的な運営に不可欠であることから、今回の仕組みを設けたものであります。保険料の負担能力がない方に対しては、市町村の窓口で案内を行い、保険料免除に結びつけ、年金受給権の確保を図ることとしております。

 今回の措置により、市町村においては、年金受給権の確保によって地域経済の発展が下支えされるとともに、医療保険や介護保険の安定的な運営も期待できるものと考えております。

 国民年金保険料の徴収に関する市町村との連携についてお尋ねがございました。

 近年の国民年金保険料納付率の低下は、平成七年度以降、二十歳到達者に対する職権適用により未加入者が減少し、その分未納者が増大してきたこと等を背景としたものであり、仮に市町村が引き続き保険料収納事務を担っていたとしても、納付率の低下傾向は免れなかったものと考えております。

 現在、市町村から所得情報の提供を受け、未納者の負担能力に応じたきめ細かい対応を行う体制を構築しているところであり、今般、法案に盛り込んだ市町村国民健康保険との連携方策なども含め、今後ともさまざまな形で市町村との連携を進めてまいります。

 最後に、年金保険料と国税の一元徴収についてお尋ねがありました。

 年金保険料と国税の徴収を一元化することについては、徴収の対象や徴収業務の基本的な性格が大きく異なることから、収納率の向上や徴収事務の効率化につながるとは考えにくいものであります。

 また、公的年金の徴収機関と給付機関を分離することについては、事業全体の円滑な実施の妨げになるおそれがあるとともに、無駄遣いの防止につながるとは言えないものと考えております。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    竹中 平蔵君

       外務大臣    麻生 太郎君

       厚生労働大臣  川崎 二郎君

       農林水産大臣  中川 昭一君

       経済産業大臣  二階 俊博君

       国務大臣    沓掛 哲男君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣 赤松 正雄君


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