衆議院

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第4号 平成18年10月2日(月曜日)

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平成十八年十月二日(月曜日)

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 議事日程 第四号

  平成十八年十月二日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表し、安倍総理の所信表明に対する質問をいたします。(拍手)

 演説に先立ちまして、このたびの悠仁親王殿下の御誕生を国民の皆さんとともにお喜びを申し上げ、お健やかな御成長を心よりお祈りを申し上げます。(拍手)

 安倍総理、御就任おめでとうございます。(拍手)総理御自身が所信で述べられておられますように、今の日本は、これまでの失政によって多くの難問に直面をしています。私たち民主党は、国民の立場に立って、しっかりとみずからの務めを果たしてまいります。

 総理となられて初の所信演説が和製英語の乱用と抽象論ばかりであったことに落胆したのは、私ばかりではないと思います。特に消費税についての、逃げず、逃げ込ませずという表現は一体何なのでしょうか。結局は逃げると宣言したことにほかならないのではないでしょうか。これでは官僚の文書と全く同じです。参議院選挙が終われば、結局、消費税を上げるつもりではありませんか。リーダーシップをおっしゃるのであれば、明快な答弁を求めます。(拍手)

 ことしの正月、私は、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を見に行きました。私も団塊の世代の一人でありますが、あのころ、日本はまだ貧しくて、でも、あすはきょうよりもきっとよくなると信じて、大人たちは一生懸命働き、子供たちは一生懸命勉強してまた遊んで、みんな必死に生きていました。

 しかし、物質的には豊かになる一方で、日本の美しいふるさとは環境があっという間に破壊されてしまいました。そして、稼ぐが勝ちという言葉に象徴されるような金もうけ至上主義、拝金主義が蔓延し、バブルが生じ、最近ではライブドア事件や村上ファンド事件、耐震強度偽装事件などが立て続けに起こりました。

 高潔さを求められなければならない政治家の皆さんや高級官僚は癒着をし、金銭にまつわる事件は後を絶たず、福井日銀総裁のような、公的な立場を利用して金もうけをしたと受けとめられても仕方ないような、そのような人物があらわれ、モラルの崩壊を来してしまっています。

 良質な中産階級が傷つき、不条理な格差が拡大しつつあります。毎日百人近くの方々がみずから命を絶ち、連日のように親が子を、また子が親をあやめるような信じられない事件が発生しています。

 安倍総理は、改革のたいまつを受け継いでいく、構造改革をむしろ加速させ補強していきたいと言われましたが、このような風潮を助長したのが五年半にわたった小泉政治です。

 安倍総理、あなたは小泉内閣で官房長官や自民党幹事長などを歴任し、まさに小泉政治に連帯責任を負う立場にありました。ならば、あなたはまず、日本のよさを壊してきたこの五年半の政治を反省して検証すべきではないでしょうか。その反省も検証もなく、ただただ小泉政治の負の遺産を受け継いでも、日本の未来が見えてくるわけないじゃありませんか。総理の反論がもしあればお伺いをいたします。

 安倍総理、あなたは所信で、美しい国の姿として四つの条件を挙げられました。

 その第一が、歴史を大切にすることであります。ではなぜ、宰相たるあなたが戦争に関する認識を語らず、問われるたびに歴史家にゆだねると言い逃れているのでありましょうか。

 また二番目に、規律を知る、凜とした国としていますが、官製談合や天下りが後を絶たず、国民にばかり規律を求めるのでしょうか。政府・自民党の中で天下りの全面解禁すら検討しているではありませんか。

 三つ目に挙げられた、未来へのエネルギーを持ち続けるという点についても、格差を放置し、その解消の具体策を示さないあなたの所信表明では、未来を開くエネルギーは生まれません。

 そして四つ目の、世界に信頼され、尊敬される国ですが、アジアの近隣諸国と信頼関係を築くこともできず、アメリカからも困ったものだと思われている外交の失敗を具体的にどう立て直すのか、答えが見えてまいりません。

 要は、小泉政治、すなわちあなたの加担してきた過去の弱みをつかれないよう、先手を打って批判を封じようとしているだけではありませんか。総理が目指す美しい国の四つの矛盾に満ちた主張に対する私の指摘、国民の疑問に対して、具体的にお答えを願います。(拍手)

 私は、総理の「美しい国」から、友愛精神の提唱者であるクーデンホーフ・カレルギー伯爵が一九六八年に書いた「美の国 日本」を連想いたしました。しかし、カレルギー伯の理念は、日本という国は調和を大切にする国だということであり、それを自立と共生の精神に置きかえ、現在の日本の社会をつくり上げていこうと考えているのが私ども小沢民主党であります。(拍手)

 小沢代表は、政治とは生活であると述べています。幾ら美辞麗句を並べ立てても、国民が具体的に生活の中で幸せを享受できなければ政治とは言えません。これまで、改革の名のもとに、まじめに働く人が痛めつけられ、そして弱った人をさらに弱らせる政治がまかり通ってきたじゃありませんか。そうではなく、広がる格差、社会の不条理に対してこれを是正し、自立した一人一人が人間としての尊厳を重んじ、互いに理解し尊重し合い、多様な人々と助け合い、調和してともに生きていける社会にしていくことこそ、本来の政治じゃありませんか。

 それに対して、あなたが唱える美しい国は、あなた好みの国家主義、権威主義が幅をきかせ、政治が生活から遠ざかる国であることがあなたの発言に見え隠れしています。私は、そうした国民の願いとかけ離れた安倍政権なら、徹底的に闘ってまいります。(拍手)

 小泉政権の五年間で、給与所得や年金額が減り、不安定な非正規雇用が増加する一方で、税や保険料の負担がふえ、医療、介護の自己負担が上がり、自立の美名のもとに弱者や地方への支援は削られてまいりました。そして、気がついたときには、日本は先進国の中で二番目に貧困率が高い国になってしまっています。

 生活の柱である雇用の面では、ニート、フリーターが急増し、パートやアルバイト、派遣、有期雇用といった非正規雇用者は既に千六百万人以上に達し、全体の三人に一人の割合を占めています。その結果、民間の平均給与は八年連続で減り、特に、二十歳代、三十歳代の実に三割以上の方々が二百万円以下の収入で暮らしています。

 民主党は、意欲ある人が年齢にかかわらず働ける労働環境を整備するとともに、年齢層、求職者の状況に応じたきめ細かい就労支援策を既に提案申し上げています。また、正社員と非正社員との間の合理的な理由のない格差を是正することを主張しています。総理は所信でも雇用の改善をうたってはおられますが、具体策は何も示されていません。今ここで、ぜひ具体策をお示しいただきたい。(拍手)

 格差の拡大は、弱い立場の人々により大きな影響を与えています。政治は、戦後を生き抜き現在の豊かな日本を築いていただいた高齢者の方に感謝の念を持たなければなりません。ところが、現実には、高齢者の生活苦や介護にまつわる悲惨な事例が後を絶たないのです。

 ことしの納税通知を見て初めて増税を知り、市役所の窓口に苦情が殺到しているという報道も見られます。改革の名のもとに行われた、特に高齢者、年金生活者へのさまざまな課税強化によって、ことしに入り大幅に負担がふえたのです。

 例えば、来年になりますと、基礎年金百五十八万円の年金生活者世帯では四万七千円、厚生年金二百八十万円のモデル世帯では五万四千円もの負担増になります。大阪の七十歳の男性からは、お兄様が脳梗塞で半身不随になり、ようやく昨年、特別養護老人施設に入所できたけれども、年金収入が十二万円のところ、介護保険法改正による自己負担引き上げなどで入所費用が一気におよそ二倍の十六万円余りに引き上げられて、年金で賄えなくなったとお手紙をいただきました。

 総理は、一連の負担増が高齢者、年金生活者を直撃しているこの現実について、どのように弁解をされ、その是正に取り組まれるのか、明快な見解を求めます。(拍手)

 また、障害をお持ちの娘さんのお父さんからは、与党の強行採決で成立をした障害者自立支援法の改悪により、娘さんが施設から退去を余儀なくさせられたというお手紙をいただきました。

 この法律は、自立どころか、障害者に過重な負担を強い、自立を妨げる悪法です。障害者自立支援法は直ちに抜本的な再見直しが必要なんです。緊急的な対応策として、定率一割負担をまず凍結し、昨年までの支援費制度時の水準に戻すことを民主党は法案として求めますが、総理の答弁を求めます。(拍手)

 さらに、多重債務が大きな社会問題となっています。我が党の長妻昭議員の質問により、消費者金融大手五社が昨年度受け取った死亡保険金は四万件に近く、その死亡理由の一割が自殺だったことが明らかになりました。

 まず、政府は、違法な金利での貸し付けや取り立てを徹底的に取り締まるべきです。上限金利を上回る金利での貸し付け、そして、命で借金をあがなえとばかり迫る取り立て、そうした違法、不法な行為と毅然として対峙することが、凜とした国ではないのですか。

 ところが、政府が提出を予定している貸金業規制法改正案は、弱者の救済ではなく、業者の既得権益保護の立場から、当面、例外的に高金利での貸し付けを認めると聞いています。破綻に追い込み、自殺を容認するような制度の維持を図る政府の姿勢は、到底容認できません。

 私たちは、改正法施行後から直ちに、出資法の上限金利を利息制限法の水準まで引き下げるとともに、特例を一切認めるべきではないと考えますが、総理の明確な見解を求めます。(拍手)

 今、日本の人づくりが根底から揺らいでいます。格差、機会の不平等、いじめ、校内暴力、学力低下、続発する虐待や子供を巻き込む非人間的、非常識な事件など、社会のゆがみが教育や子供たちに重くのしかかり、深刻な事態になっています。人なくして国はなく、人づくりなくして国づくりはありません。

 現在の教育では、理念も責任体制もあいまいです。驚くべきことに、国、都道府県、市区町村、学校現場の責任関係が極めて不明確で、だれも子供たちの教育に責任を負わない無責任な仕組みになっているのです。

 私たち民主党は、人づくりの国を目指して教育を根本からつくり直すために、日本国教育基本法案をさきの国会に提出しました。それは、自立と共生の理念のもとで、真の主権者である国民を育てることであります。そして、教育行政における責任の所在を明確にし、最終的な責任は国が持つとした上で、実際の教育は地域の子供は地域が育てることを基本に、保護者、地域住民、学校関係者が一体となって自立して行えるよう、現場主権の確立を明記しています。

 総理、民主党の日本国教育基本法案に対する率直な御感想をお伺いします。妥協の産物である中身の薄い政府案では、教育現場の再生はあり得ません。

 一説には、安倍総理は、実は小泉内閣提出の政府法案には満足しておらず、持論を通すために教育再生会議を設置したのだともされています。もしそうであるならば、政府案は廃案にして、民主党案の成立に御協力いただく方が教育の再生につながるのではありませんか。(拍手)

 外交、安全保障についてお伺いします。

 冷戦終結から十七年。民主党は、新たな思考で外交に取り組むことを一貫して主張してきました。

 それは、日本が、さきの戦争に対する反省を踏まえ、さまざまな文化、価値観を持つ人々や国々と、ともに生きるという意味での共生と、そして人類存続のための人間と自然との共生を理念としています。そして、主体性と戦略性を持って、世界の国々、人々との間の相互信頼を築き、自由で公正で、かつ平和な国際社会を創造する外交を展開することであります。

 総理も、新たな思考に基づく、主張する外交へと転換するときと言われました。その言葉は、これまでの自民党政権の外交は、思考も古く、国際社会で何も主張してこなかったことをお認めになったことと理解をいたします。

 では、どのようにして転換をするのか、新たな思考とは何であり、何を主張していくのか、明らかにされていません。この場で明快に総理の日本外交の総括と具体的な転換の視点を示していただきたいと思います。(拍手)

 日米同盟を我が国の安全保障の基軸として、日米両国の相互信頼関係を築き、対等な真の日米同盟を確立していくことが、我が国の安全、国際社会の平和と安定にとって重要であります。しかし、これは、ただ安易に米国に追随する政府の姿勢とは全く異なっています。

 小泉内閣は、イラク戦争の大義に疑問が渦巻く中、独自の検証も国民への説明もないまま戦争を支持し、イラクへ自衛隊を派遣しました。ところが、大量破壊兵器の存在ばかりでなく、旧フセイン政権とアルカイダの関係さえ否定する報告が出され、テロは拡大をし、イラク人の犠牲者も連日とどまることを知りません。

 米軍再編においても、我が国自身の安全保障についての構想が語られることなく、国会や基地周辺で暮らす住民への説明もないまま、巨額な経費負担を迫られており、これでは安倍内閣も先が思いやられます。

 一方、総理は、中国や韓国は大事な隣国で、経済を初め、過去に例がないほど緊密な関係になっていると言われました。しかし、小泉政権のこの五年間で、首脳間の政治的な信頼関係が損なわれ、これらの国々との冷静かつ建設的な話し合いが停滞をしています。

 中国との間では、東シナ海ガス田開発、尖閣諸島問題、環境問題など多くの課題がありますが、協議が思うに任せず、韓国との間では、竹島問題、対北朝鮮交渉での連携などが頓挫したままです。他のアジア諸国ばかりか、最良と自画自賛する同盟国アメリカの議会関係者からも、日本のアジア外交を懸念する声が続々と上がってきています。

 アジア地域の平和と安定には、政治のリーダーシップが重要であり、アジア外交の立て直しが欠かせません。しかし、総理は具体的な戦略を何も語っていません。相手を理解し、共生の視点から納得と合意を見出し、平和と繁栄の礎を築いていくことこそ、責任ある外交ではありませんか。総理の具体的な見解を求めます。(拍手)

 小泉政権の五年間は、北朝鮮の瀬戸際外交に翻弄され続けた五年間でありました。居直りを繰り返す北朝鮮は、ミサイルを発射し、核実験や新たな核燃料棒の抜き取りも懸念をされています。小泉政権の北朝鮮外交は完全に失敗したんじゃありませんか。

 拉致問題では、民主党が拉致問題担当大臣の設置を以前から提起し、今回の組閣でその提案を採用していただいたものだと理解をいたします。

 ただ、総理は、拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ないと力説をされました。また、北朝鮮が特定失踪者も含めてすべての拉致被害者を日本に帰国させたとき初めて拉致問題は解決すると取材で答えておられますが、これが総理としての方針と理解してよろしいのですね。では、どのようにして彼らの生還を求めていくのか、具体的にお答えを願いたい。

 十月十九日は、日本とソ連が国交を回復して五十年目の日に当たります。私は、その日、日ソ共同宣言は決して二島返還のみで終わらせるものではないことを主張しに、モスクワを訪れます。

 日ロ関係において、小泉政権は全くの無為無策だったではありませんか。この間、ロシアは、北方領土の開発と国境警備の強化を通じて領有の既成事実化を図るなど、東京宣言以来積み上げてきた北方領土交渉は振り出しに戻った感がいたします。

 八月には、北方領土の周辺海域で日本漁船がロシア警備艇に拿捕され、残念ながら、乗組員が銃撃で亡くなるという悲劇が起きてしまいました。さらに、先月、日本の大手商社が加わっている石油・天然ガス計画サハリン2に対して、開発認可が取り消されるとの報道もございます。いずれも、日ロ関係を怠ってきたツケと思わずにはいられないのです。

 安倍総理、ここでも小泉前総理の継承ですか。それとも、北方領土問題の解決と日ロ関係の打開に向けた新たな熱意がもしおありなら、その御見解を伺いたいのであります。

 総理は、総裁選で、戦後レジームからの新たな船出と言われました。しかし、総理の著書などで、一時はA級戦犯容疑者であった岸信介元首相への思い入れを読ませていただくと、戦後から船出して戦前のレジームへ回帰するのではないかと疑わざるを得ないのであります。

 人間観、歴史観を持たずには政治はできません。私は、二度と悲惨な戦争の惨禍を繰り返さないという意味で、日本の過去の非たる部分は非と認めるべきだと考えます。

 自民党には歴史観があると言われた総理に、それではお伺いをいたします。

 さきの大戦と戦前に日本がアジアでとった行為について、日本政府は、小泉前総理ですら、植民地支配と侵略という認識を示しておられますが、安倍総理は、この認識をそのままお認めになるのか、あるいは否定なさるのか、総理の御見解をまずお伺いいたします。(拍手)

 総理は、いわゆるA級戦犯について、ある雑誌に、A級戦犯とそれ以外の人たちを分けろという考え方は的を射ていないと御発言になっています。いわゆるA級戦犯と言われる人には国家指導者としての責任がないというお考えなのでしょうか。そうであれば、一体だれに責任があるとお考えなのか、お尋ねをいたします。

 私は、国家のために殉じた人々に対して国家の指導者が尊崇の念をあらわすことは当然であると思っています。靖国神社は、戦死した方々を慰霊するために創建されたものです。しかし、いわゆるA級戦犯と言われる国家指導者は、戦死者ではないにもかかわらず祭られているのであります。

 総理は、靖国神社に行く、行かないということを言うつもりはないと逃げておられます。これは、確たる信念を持ち、たじろがず、批判を覚悟で臨むという総理御自身の政治姿勢と矛盾しているばかりではなく、中長期的に見れば、国際的な相互信頼関係を妨げるのであります。

 総理は近々、中国、韓国を訪問される予定と報道されていますが、それは結構なことでありますが、立場を明確にしないあいまい戦術では、逆に信頼を損ない、いずれ破綻をして、小泉前総理の二の舞になることは目に見えているではありませんか。

 靖国神社の参拝について、総理の明確な答弁をここで求めます。(拍手)

 さて、総理は、昨年の総選挙で郵政民営化法案に反対をし自民党を追い出された議員の復党について、ほとんど同じ考えの人が野党にいることは国民にわかりづらいと述べ、前向きな考えを示したと伝え聞いています。

 あなたは、小泉執行部の一員として、その同じ考えの人を党から除名し、対抗馬として刺客まで放ったのではないですか。そのあなたが、今度は選挙目当て、数合わせのために除名者の復党を示唆するとは、公約を翻し、国民を愚弄するものじゃありませんか。

 まさに、権力のために理念も原則も公約もヘチマもない、場当たり的な御都合主義の政治にほかなりません。公党としての約束ほごは、政治への信頼、社会規範の根底を崩します。こんな公約守れなくてもどうということはないとうそぶいた小泉前総理以上に深刻であります。改めて総理のお考えをお伺いいたします。(拍手)

 最後に、党首討論は毎週やろうじゃありませんか。小沢代表も、そのため万全の準備を整えているところでございます。中川自民党幹事長も、なるべく多くやった方がいいとの見解を示されました。安倍総理の決意をぜひ伺いたい。(拍手)

 今のゆがんだ社会をより公正に正し、国民生活をより豊かで安心なものにしていくため、利権や既得権益で縛られた日本の今のこの政治を一新しなければなりません。政官業癒着の政治は、官僚に依存した自民党政権が続く限り、手をかえ品をかえ日本を縛り続け、日本の未来は開けてこないのであります。政権交代こそ真の改革への出発点であります。民主党は、国民の皆さんに私たちの姿勢、考え方を示し、現政権と真っ正面から対決をしてまいります。

 民主党が、国民の立場に立って、国政に粉骨砕身取り組むことを改めてここでお誓いを申し上げ、私の代表質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 鳩山由紀夫議員にお答えいたします。

 逃げず、逃げ込まずという消費税への姿勢についてのお尋ねがありました。

 我が国財政は極めて厳しい状況にあり、成長なくして財政再建なしの理念のもと、経済成長を維持しつつ、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出削減や行政改革等を徹底してまいります。

 このような改革を徹底して実施した上で、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保するため、抜本的、一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。

 消費税については、このような抜本的、一体的な税制改革の中で議論を行っていく必要があると考えております。(拍手)

 小泉前総理の政治についてのお尋ねがありました。

 この五年半にわたる構造改革と国民の自助努力の相乗効果により、我が国は長い停滞のトンネルを抜け出し、未来への明るい展望が開けてきたと認識しており、今後もこの改革の炎を燃やし続けていきたいと考えております。(拍手)

 私は、特定の団体や個人のための政治を行うつもりは一切ありません。額に汗して勤勉に働き、家族を愛し、自分の暮らす地域やふるさとをよくしたいと思い、日本の未来を信じたいと願っている人々、そして、すべての国民の期待にこたえる政治を行ってまいります。

 美しい国について、四点お尋ねがありました。

 まず第一として、歴史を大切にすることについてのお尋ねがありました。

 私にとって歴史を大切にすることとは、自分の生まれ育ったこの国に自信を持ち、今までの日本が紡いできた長い歴史を、その時代に生きた人たちの視点で見詰め直そうとする姿勢であると考えています。

 一方で、政治家の発言は政治的、外交的な意味を持つものであることから、歴史の分析について政治家が語ることについては謙虚であるべきと考えております。

 第二として、規律を知る、凜とした国についてのお尋ねがありました。

 私の言う、自由な社会を基本とし、規律を知る、凜とした国は、自由な社会を基盤にして、自立した個人がみずからを律し、全体として規範を遵守していく社会の実現を想定しており、このため、教育の抜本的改革や、民間の過度の公的援助依存体質からの脱却などを実現してまいります。

 なお、国家公務員の再就職等の問題については、行政及び公務員に対する国民の信頼を確保するため、退職管理の適正化に向け、総合的に検討を行う必要があると考えております。

 また、官製談合の問題については、与野党から官製談合防止法の改正案が国会に提出されており、今後議論されるものと期待しております。

 第三として、未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続けることについてのお尋ねがありました。

 私は、努力した人が報われ、勝ち組と負け組が固定化しない社会、チャンスにあふれ、だれでも再チャレンジが可能な社会をつくることにより、社会の活力が維持され、未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続けることが可能となると考えております。こうした観点から、政府としては、総合的な再チャレンジ支援策を推進してまいります。

 第四として、世界に信頼され、尊敬される国についてお尋ねがありました。

 私は、世界に向けて日本の魅力をアピールするとともに、その強さを生かして積極的に貢献していくことが重要と考えます。そのための人材を育成し、リーダーシップのあるオープンな国を目指してまいります。

 また、大事な隣国である中国や韓国との間で信頼関係を強化し、双方の努力を通じて、未来志向で率直に話し合える関係を構築してまいります。

 さらに、普遍的な価値観と共通の利益を有する日米同盟については、その基盤である信頼関係をより強固にするため、総理官邸とホワイトハウスの関係を初めとして、両国間で常に意思疎通できる枠組みを整えます。

 私の唱える美しい国が国民から離れているとの御指摘がありました。

 美しい国は、国民一人一人が考え、はぐくんでいくものであります。私は、新しい国づくりにともにチャレンジしたいと願うすべての国民の皆様に、美しい国づくりに参加していただきたいと考えています。このような観点から、私は、国民との対話を何よりも重視してまいります。(拍手)

 雇用改善のための具体策についてお尋ねがありました。

 いわゆる勝ち組と負け組が固定化せず、だれでも再チャレンジ可能な社会を構築するため、団塊世代などベテラン人材を初めとする高齢者や女性、ニートやフリーターの積極的な雇用を促進することとしております。

 具体的には、フリーター二十五万人常用雇用化プラン等を推進し、二〇一〇年までにフリーターをピーク時の八割に減らすとともに、だれもが意欲と能力を生かして働ける全員参加型社会の構築を図るため、七十歳まで働ける企業の実現に向けた取り組みを推進し、正規、非正規労働者間の均衡処遇の実現に向け法的整備を含めた検討を進めるなど、実効性のある再チャレンジ支援策を推進してまいります。

 高齢者、年金生活者の負担についてのお尋ねがありました。

 先般の税制改正は、世代間及び高齢者間の公平を確保する観点から行われましたが、標準的な年金以下の年金だけで暮らしている高齢者世帯には、十分に配慮する措置を講じています。また、介護保険や医療保険では、在宅と施設の給付と負担の公平性の観点等から、食費、居住費についての自己負担を求めるなどの見直しが行われましたが、保険料及び利用料等について、所得の低い方に対しては負担軽減措置を講じるなど、適切に配慮をしております。

 障害者自立支援法についてのお尋ねがありました。

 本制度は、障害者の方々に対するサービスの計画的な整備、就労支援の強化など、障害者の方々が安心して暮らすことのできる地域社会の実現を目指すものであります。また、制度を皆で支えるため、国の負担を義務化する一方で、利用者の方にも原則一割の負担をお願いしておりますが、その際、家計に与える影響を十分考慮した負担上限額の設定や個別の減免措置などの配慮を講じているところであり、引き続き制度の周知定着を図ってまいります。

 貸金業の制度改正等、多重債務問題への対応についてお尋ねがありました。

 本件については、利用者の債務負担を軽減しながら、また利用者利便にも配慮しながら、新たな多重債務者を発生させない枠組みを一日も早く構築する必要があります。

 先日、与党において基本的に了承された案を踏まえつつ、しっかりと法案策定作業を進めるなど、この問題に政府を挙げて取り組んでまいります。

 教育基本法案についてお尋ねがございました。

 新しい時代の教育の基本理念を明確に提示し、国民の共通理解を図りつつ、社会全体による教育改革を着実に進め、我が国の未来を切り開く教育を実現するにふさわしい法案として、政府として教育基本法案を前国会に提出したところであります。

 私の目指す「美しい国、日本」を実現するためには、次代を背負って立つ子供や若者の育成が不可欠であり、教育再生を国政の最重要課題の一つと位置づけております。まずは、今国会における本法案の成立を期して、しっかりと取り組んでまいります。

 また、すべての子供に高い学力と規範意識を身につける機会を保障するため、公教育を再生します。このため、内閣に教育再生会議を発足させ、その推進を図ります。

 なお、民主党提出の日本国教育基本法案については論評を差し控えたいと思いますが、国会において、それぞれの法案について活発な議論が行われることを期待しております。

 日本外交の基本姿勢についてお尋ねがありました。

 私は、日本の外交、安全保障の基盤である日米の同盟関係が世界とアジアのための日米同盟であることをより明確にし、その基盤に基づき、アジアの強固な連帯のために積極的に貢献する外交へと転換してまいります。

 その際、先般の北朝鮮のミサイル発射に対する制裁決議を日本が主導して提案したように、日本の国益をしっかりと確保し、同時に、地域や世界のために日本は何をすべきか、世界は何を目指すべきかを積極的に主張し、リーダーシップを発揮していく所存です。

 アジア外交についてお尋ねがありました。

 アジアの平和と繁栄を維持強化するため、アジア全域の連帯の強化に主導力を発揮します。そのために、大事な隣国である中国、韓国と、あらゆるレベルと分野で相互理解と率直な対話や協力を積み重ね、双方の努力を通じて未来志向の関係を築いていきます。同時に、インドや豪州等の基本的価値を共有する民主主義国、さらにASEAN諸国との連携を一層強化していきます。

 拉致問題に関する政府の方針についてお尋ねがありました。

 拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ません。政府としては、対話と圧力の方針のもと、引き続き、拉致被害者が全員生存しているとの前提に立って、すべての拉致被害者の生還を強く求めていきます。そのため、今般、私を本部長として設置された拉致問題対策本部を中心として、政府一体となって拉致問題解決に向けた総合的な対策を推進していきます。

 日ロ関係についてお尋ねがありました。

 小泉前総理のもとで、日ロ行動計画に基づき両国関係の進展に努めてきました。引き続き、日ロ両国間で幅広い分野における関係を前進させ、信頼関係に基づくパートナーシップの構築に努めていきます。そのためにも、最大の懸案である北方領土問題の解決に向け、粘り強く取り組んでまいります。

 過去に日本がアジアでとった行為についてのお尋ねがありました。

 さきの大戦をめぐる政府としての認識については、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等により示されてきているとおり、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたというものであります。

 いわゆるA級戦犯の国家指導者としての責任についてお尋ねがありました。

 さきの大戦に対する責任の主体については、さまざまな議論があることもあり、政府として具体的に断定することは適当ではないと考えます。

 いずれにせよ、我が国は、サンフランシスコ平和条約第十一条により極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しており、国と国との関係において、この裁判について異議を述べる立場にはないと考えています。

 私の靖国神社参拝についてのお尋ねがありました。

 靖国神社参拝につきましては、国のために戦ってとうとい命を犠牲にした方々に対して、手を合わせ、御冥福をお祈りし、尊崇の念を表する気持ちは持ち続けていきたいと思っております。

 私がこれまで、行くか行かないか、あるいは参拝したかしていないかについて宣明するつもりはないと申し上げてきたことは、私が個人としてまさに考えるところであります。

 昨年の総選挙で自民党を除名された議員の復党についてのお尋ねがありました。

 郵政民営化につきましては、さきの臨時国会において郵政民営化法案が成立したことを受け、安倍内閣において平成十九年九月からの郵政民営化を確実に実施いたします。こうした方針を含め、私が掲げる国づくりの方向について与野党から幅広い御協力をいただけることを期待しております。

 いずれにせよ、昨年の総選挙で自民党を除名された議員の復党の問題につきましては、個別の事情を勘案し、党として判断していくべき問題であると考えます。

 党首討論についてお尋ねがございました。

 党首討論は、国民に対して各党の政策に対する基本的な立場を明確に示し、政策論争を活発化させる重要な機会であると認識しております。

 いずれにせよ、国会の運営につきましては、政府が申し上げるべきことではなく、与野党でよく協議していただきたいと考えております。(拍手)

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議長(河野洋平君) 中川秀直君。

    〔中川秀直君登壇〕

中川秀直君 私は、自由民主党を代表して、戦後生まれ初の総理である第九十代安倍晋三内閣総理大臣の内外諸問題に対する基本姿勢について伺います。(拍手)

 初めに、悠仁親王殿下の御誕生をすべての国民とともにお喜びし、お健やかな御成長を心よりお祈り申し上げます。(拍手)

 他方、六月末の九州地方を中心とした豪雨により、また、さきの台風十三号により不幸にもお亡くなりになられました方々に、心から哀悼の意を表します。さらに、負傷された方や被災者の方々に対し、心からお見舞い申し上げます。この上は、被災地の方々が一日も早く平穏な暮らしを取り戻せますよう、我が党は復旧復興対策に全力を挙げる所存であります。

 さて、総理の所信表明をお伺いして、私は、ケネディ大統領が世界に尊敬されるアメリカになろうと呼びかけたことを思い出しました。今日の日本がさまざまな問題を抱える中で、時代が安倍総理を日本丸のかじ取りに押し上げたのであります。自由民主党も全力でお支えいたします。どうか、命がけで国民の期待にこたえていただきたいと思います。(拍手)

 総理は、みずからの考え、みずからの立場について、開かれた保守主義と述べております。今や、かつての社会民主主義者ですら、みずからを保守本流と名乗る時代であります。だからこそ、総理の言われるところの開かれた保守主義とはいかなるものなのか、まずお考えをお聞かせください。

 総理は、所信表明において美しい国の姿を詳しく説明されました。美しい国づくりとは、成長戦略により活力に満ちた経済とし、再チャレンジ支援によりチャンスに満ちた社会とする。さらに、頑張る地方応援プログラムや日本型社会保障制度、子育てフレンドリーな社会、教育再生により、優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする社会とし、海外からの投資倍増でオープンな国づくりを目指すことと受けとめました。

 総理いわく、歴史、伝統、文化を大切にしながら、自由な社会を基本とし、規律を知る、凜とした国。未来に向かって成長するエネルギーを常に持ち続け、世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国。

 新内閣の支持率は約七割であります。総理が示した「美しい国、日本」の国家像は、多くの国民の共感を呼んだのではないでしょうか。(拍手)

 野党は危険なタカ派政権と批判していますが、私は、それは全く間違った見方であると確信をいたしております。誤解されるナショナリズムについて、総理の本当の思いをお聞かせください。

 次に、経済成長戦略についてお伺いします。

 今や、「改革なくして成長なし」の五年半にわたる小泉政権の改革のたいまつは、しっかりと「成長なくして日本の未来なし」の安倍政権へと引き継がれました。

 経済成長率に関する経済学の常識として世界で広く受け入れられている理論に、低い所得水準の国の成長率は高い所得水準の国よりも高いというものがあります。こうした観点から見ても、日本より所得水準が高いアメリカの成長率よりも日本の経済成長率が低いということは、おかしなことであると考えます。日本の経済成長率はもっと高められると考えるのが自然であり、安倍内閣は、それを実現するための内閣であると確信します。

 骨太の方針二〇〇六の財政健全化策の前提にある名目経済成長率三%程度という手がたい予測にすら悲観的な見方がある中で、成長なくして日本の未来なしに込められた総理の基本認識と成長実現に向けた御決意を伺います。

 私は、成長戦略の第一歩はデフレの完全脱却であると考えます。総理は、自由民主党総裁就任の際、あらゆる政策を導入してまずはデフレ脱却を目指していくべきである、デフレ脱却をしてしっかりと成長していくことが財政の再建につながっていくと述べられておりますが、改めて、安倍政権におけるデフレの完全脱却に向けた御決意を伺います。

 二十一世紀の日本が豊かな国であり続けるためには、教育の再生が極めて重要な国家戦略であることは言うまでもありません。

 米国のブッシュ大統領は、ことしの一般教書演説の中で、中国、インドとの競争を意識し、数学、科学教育を重視するアメリカ競争力構想を打ち出し、今後十年間で一千三百七十億ドル以上を投資すると宣言しました。

 我が国の理数科やものづくり教育を支えた理科教育振興法や産業教育振興法関連予算は、最盛期の二割程度になっております。今こそ、教育基本法改正、教員免許の更新制導入などの教育改革に加え、新たな科学技術教育振興法を制定し、子供たち、孫たちの時代の教育再生とイノベーションの基盤をつくるべきであると考えますが、総理の御所見をお伺いします。

 総理は、画期的な新しい技術の革新、新しい取り組み、新しい考え方など、いわゆるイノベーションによる生産性向上を経済成長戦略の重要な柱としております。特に、情報通信技術分野において規制によって分断されている市場を新たに結合していく必要があるとの御意見をお持ちと伺っておりますが、改めて、こうした規制改革の重要性について御所見を伺います。

 今回の安倍内閣の布陣は、企業活動が活性化すれば、雇用がふえ、税収がふえる、経済成長と財政再建は矛盾するものではないとの安倍経済政策、アベノミクスの基本哲学をひしひしと感じるものであります。イノベーション加速のための税制が果たすべき役割について、総理の御所見を伺います。

 総理は、地方を支える農林水産業を新世紀にふさわしい戦略産業として位置づけられ、おいしく安全な日本産品の輸出を平成二十五年までに一兆円規模にすることを目指すとしております。このような農林水産業の戦略産業化には農業のイノベーションも不可欠であると考えますが、近い将来、株式会社の農業参入をイメージされているのかも含め、総理の基本認識を伺います。

 自由民主党は、経済成長と財政再建が相互に響き合う好循環を実現していくことが何よりも求められるとの立場に立脚しております。また、さきの自由民主党総裁選挙において、歳出削減等の努力もせずに、ただ十年後の財政再建だけを目的に大幅な増税をするようなことはしないということで決着しました。

 総理は、所信表明の中で、国民負担の最小化を第一の目標として歳出削減を徹底する、国や地方の無駄や非効率を放置したまま国民に負担増を求めることはできないという決意を述べております。財政再建と増税の関係について、総理の御所見を改めて伺います。

 また、総理は、所信表明の中で、筋肉質の政府を実現するための一環として、公務員の労働基本権など、公務員制度全般について見直しを進める決意を表明しました。

 財務省の調査によれば、全国の地方公務員の給与は、それぞれの地域の従業員百人以上の民間企業で働く人々よりも、平均で二一%も高いという結果が出ております。とりわけ、東北地方や九州地方では、地方公務員が地域の民間給与よりも三割から四割近くも高い給与をもらっている自治体が目立っております。

 私は、こういう官民給与格差はアンフェアな格差であり、しかも、国民の税金からそうした給与が出ているという点において、早急に是正しなければならないものと考えます。

 私は、公務員の民間並み合理化をすれば、二〇一一年度の基礎的財政収支黒字化に必要な増税額を限りなくゼロに近づけることができるのではないかとも考えます。こうした観点から、総理が、公務員の民間並み合理化の障害になっている公務員の労働基本権の制限の見直しを表明されたことを高く評価するものであります。(拍手)

 公務員制度改革について、民間同様の能力・実績主義を取り入れるお考えがあるのか、信賞必罰をどう組み込むのか、さらにまた、キャリア制度のあり方、分限処分の実施、労働基本権の付与と身分保障との関係等について、総理はどのようにお考えでしょうか。労働基本権問題等についての政府の行政改革推進本部専門調査会の結論の時期、公務員制度改革関連法案の提出の時期を含め、お尋ねします。

 次に、私は、社会保険庁の解体的出直しなくして年金の信頼回復なしと考えます。

 さきの通常国会終了後、八月三日に公表された社会保険庁の国民年金保険料の不正免除問題についての最終報告書では、平成十七年四月から平成十八年六月までの間に行われた違法な免除や猶予手続、勝手な不在者扱い等、不正な事務処理件数は三十八万五千四百四十件にも上っていたことが明らかになりました。

 社会保険庁の体質問題の根底にあるのは、社会保険庁職員の大多数が参加する労働組合、自治労国費評議会の問題であることは周知の事実であります。コンピューター導入反対、年金見込み額試算は行わない、資格記録票も交付しない、ファクシミリ番号も公表しないという自治労国費評議会諸君の極めて異常な国民無視の闘争こそが、国民に不便をかけ続けてきた根源的理由なのであります。(拍手)

 公務員として使命も果たさず、しかも、身分や特権を守るために百件以上にも上る覚書や確認事項を当局との間で結んでいた事実は、もはや、この組織を公務員のまま存続させることの限界を示しております。社会保険庁職員を国家公務員のまま存続させる案では、解体的出直しにならないことは明らかであります。

 昨日の一部報道によれば、年金保険料徴収に関する市場化テストのモデル事業で、民間の方がコストが三割から五割も低く、一方、徴収率は社会保険庁を上回るとの見通しが明らかになっております。

 総理は、自民党総裁選の公約において、社会保険庁の徹底的改革と同時に、社会保険番号の導入や徴収一元化を行うことを掲げておられます。年金など社会保障改革の目的は、国民のための制度を守ることにあり、組織を守るためではないのであります。

 公務員身分を含め、総理の総裁選における公約を完全実施する解体的出直し案を、遅くとも参院選前に提示することが政府・与党の責任であると考えますが、総理の考えを伺います。(拍手)

 私は、総理の地方分権に関する基本的な考えは、道州制導入、新分権一括法制定、税源移譲の三位一体であるととらえております。これに対して、野党の中には、道州制は地方分権ではない、税源移譲はしないという考え方をもって地方分権と称する人もおります。私は、税源移譲なくして地方分権なしと考えますが、道州制や交付税改革も含め、地方分権についての総理の基本的な考えを伺います。

 骨太の方針二〇〇六には、総理が官房長官時代におまとめになった「再チャレンジ支援」の中に、正社員とパートなど労働者間の均衡処遇を目指すとあります。これは、自由民主党と公明党との連立政権合意の中にも盛り込まれた安倍内閣の重要政策であり、ワーク・ライフ・バランスの回復を通じた子育てフレンドリーな社会づくりにも寄与するものと考えます。正規、非正規雇用の均衡処遇に向けた総理の御決意を伺います。

 次に、外交・安全保障問題について伺います。

 私は、今回の米軍再編の合意は、総理が目指す自立国家に向けた第一歩であり、同時に、世界とアジアのための日米同盟としての基礎を固めるものであると評価しております。在日米軍再編については、今後、関係する自治体、住民の切実な声に耳を傾けて全力で取り組む必要がありますが、今後の進め方について総理の考えを伺います。

 また、国際社会が一丸となったテロとの闘いは、いまだに終わっておりません。今国会ではテロ対策特別措置法の延長を行い、我が国もテロとの闘いへの主体的な努力を続けていくことが必要と考えますが、総理の考えをお尋ねします。

 総理は、所信表明で、中国、韓国を、ロシアとともに大事な隣国と位置づけております。そして、中国、韓国との信頼関係強化がアジアや世界にとって極めて大切であるとの認識を示すとともに、未来志向で率直に話し合えるよう双方がお互いに努めていくことが重要であるとの認識を示しております。この所信表明は、主張する安倍外交の重要なメッセージが込められていると考えます。

 中国もこれに反応し、安倍新首相は日中関係の改善に積極的な態度を示しており、中国はこれを歓迎すると公式に述べるなど、中韓両国もしっかりとこのメッセージを受けとめていると考えます。(拍手)

 改めて、アジアの強固な連帯確立のために、積極的に貢献する外交に向けた総理の御決意を伺います。

 総理は、戦後六十年の歩みについて、さきの大戦により国民の多くが塗炭の苦しみの中にあり、多くの国々の国民に対して大きな被害を与え、傷跡を残した、そのことに対する率直な反省から平和的な国づくりをしてきたとの認識を述べています。そして、総理は、戦後日本の平和的かつ民主的な発展への誇りをもとに、二十一世紀の日本の国家像にふさわしい誇りある国づくりのため、新たな憲法の制定を目指しております。

 改めて、戦後日本の出発点、戦後日本の歩み、そして憲法改正の意義、そのプロセスについて総理の御所見を伺います。

 終わりに、今、格差を感じる人に光を当て、国民すべてを勝ち組にするためにも、日本の未来をつくる経済成長の確かな道筋を固めなければなりません。富はまずこれを創造してからでなければ分配はできないからであります。(拍手)

 かつて、チャーチルは、社会主義は富める者を引きずりおろすが、自由主義は貧しき者を引き上げると言いました。自由民主党は、そうした意味での真の自由主義の党として、民意の党、成長の党、分権の党として、美しい国創り内閣とチーム一丸となって安倍総理を全力で支えていく決意であることをここに改めて表明し、質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中川秀直議員にお答えをいたします。

 開かれた保守主義についてのお尋ねがありました。

 私にとって保守とは、いわゆるイデオロギーではなく、日本及び日本人について考える際に、自分の生まれ育ったこの国に自信を持ち、今までの日本が紡いできた長い歴史を、その時代に生きた人たちの視点で見詰め直そうとする姿勢であると考えています。

 一方で、そうした歴史に根差した保守主義という基盤の上に立ちながらも、それは閉鎖的あるいは排他的なものであってはならず、現実に対しても虚心に目を向けることで、開かれた保守主義を目指していきたいと思っています。

 ナショナリズムについてのお尋ねがありました。

 私の考えるナショナリズムとは、自分たちが生まれ、育ち、そしてなれ親しんだ自然や祖先、家族、また地域のコミュニティーに対する帰属意識であります。そういう帰属意識があるからこそ、だれかに言われなくとも、ごく自然なみずからの感情として、そうした自然や家族、地域に誇りを持ち、これらを壊さないように愛情を持って守ろうとする、そうしたものがナショナリズムであると考えております。

 経済成長の実現に向けた基本認識と決意についてのお尋ねがありました。

 我が国が美しい国として繁栄を続けていくためには、安定した経済成長が続くことが不可欠です。この考えのもと、今後十年間で年率二・二%以上の実質経済成長を視野に、経済成長戦略大綱などの政策を着実に実行してまいります。さらに、イノベーションの力とオープンな姿勢により、日本経済に新たな活力を取り入れ、安定した経済成長の実現に全力を尽くします。

 デフレの完全脱却に向けた決意についてのお尋ねがありました。

 我が国は、経済、社会全般にわたる構造改革と国民の自助努力の相乗効果により、長い停滞のトンネルを抜け出し、デフレからの脱却も視野に入るなど、改革の成果があらわれ、未来の明るい展望が開けてきました。

 重点強化期間である今年度内に物価の安定基調を確実なものとし、物価の安定のもとでの民間主導の持続的な成長を図るため、政府、日銀は一体となった取り組みを行ってまいります。政府は、成長なくして財政再建なしの理念のもと、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇六に基づき、構造改革を加速、深化してまいります。日本銀行に対しては、引き続き金融面から確実に経済を支えていただくことを期待しております。

 教育改革についてお尋ねがございました。

 天然資源に恵まれない我が国においては、人材は国家発展の基礎であります。このため、まずは教育基本法案の早期成立を期すとともに、教員免許の更新制の導入等により、教育改革を精力的に推進します。

 また、科学技術の発展のため、人材の育成は極めて重要であります。このため、現在、スーパーサイエンスハイスクール等の事業を積極的に実施しているところであり、引き続き、イノベーションの基盤となる人材の育成に取り組んでまいります。(拍手)

 規制改革の重要性についてお尋ねがありました。

 規制改革の推進は、これまで規制によって困難であった革新的なビジネスモデルや製品を生み出すことを可能とするものであり、イノベーションの創造に資するものであると考えております。情報通信分野も含め、引き続き規制改革を推進してまいります。

 イノベーション加速のため税制の果たすべき役割についてお尋ねがありました。

 経済がグローバル化する中で、イノベーションを加速させ、国際競争力を強化するため、税制の果たす役割は重要であると考えております。近年の税制改正においても、このような観点から研究開発税制等を導入してきたところです。

 今後、イノベーションの加速を図るためには、税制において国際的なイコールフッティングを確保することが重要であり、競争上ハンディキャップになっているものがないかどうか、今後の税制改革の中で検証してまいります。

 農林水産業の戦略産業化についてのお尋ねがありました。

 農林水産業は、大きな潜在能力を秘めている産業であり、イノベーションの力を活用することにより、その可能性を最大限に引き出し、新世紀にふさわしい戦略産業としていきます。このため、バイオマス利用の加速化や輸出の拡大などに攻めの姿勢で取り組むとともに、株式会社の農業参入の促進や、意欲と能力のある担い手の育成、確保などにより、産業構造の改革を図ります。

 財政再建と増税との関係についてのお尋ねがありました。

 我が国財政は極めて厳しい状況にあり、歳出歳入の一体改革に正面から取り組む必要があります。成長なくして財政再建なしの理念のもと、経済成長を維持しつつ、国民負担の最小化を第一の目標に歳出削減を徹底してまいります。また、抜本的な行財政改革を強力に推進し、簡素で効率的な、筋肉質の政府を実現します。

 このような改革を徹底して実施した上で、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保するため、抜本的、一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。

 公務員制度改革についてお尋ねがありました。

 公務員制度改革については、能力・実績主義や分限処分のあり方などさまざまな論点について、現行のシステムにとらわれず検討を行い、公務の現場にしっかり根づくような内容の改革を行いたいと考えております。

 また、公務員の労働基本権に関する問題については、行政改革推進本部専門調査会でさまざまな角度から検討を始めており、その方向を見きわめたいと考えています。

 これらの検討状況を踏まえ、必要な法案の提出時期を考えてまいりたいと思います。

 社会保険庁の解体的出直しについてのお尋ねがありました。

 社会保険庁については、業務改革、職員の意識改革及び組織改革を強力に推進し、国民の信頼回復を一日も早く図ることができるよう、徹底した改革を行い、解体的出直しを実現しなければならないと考えております。

 現在、社会保険庁改革の関連法案を国会に提出し、御審議をいただいているところであり、これが解体的出直しにふさわしいかどうか、また、すべて公務員でやらなければならないかどうかということも含めて、国会で十分に御議論をいただいた上で、国民のための年金制度を真に守ることのできる新組織を早期に実現してまいります。(拍手)

 地方分権についてのお尋ねがありました。

 地方の活力なくして国の活力はありません。やる気のある地方が自由に独自の施策を展開し、魅力ある地方に生まれ変わるよう、必要となる体制の整備を含め、地方分権を進めます。

 地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与、国庫補助負担金の廃止、縮小等を図ります。

 地方税については、国、地方の財政状況を踏まえつつ、交付税、補助金の見直しとあわせ、税源移譲を含めた税源配分の見直しを行うなど、一体的な検討を図ります。

 また、道州制の本格的導入に向けた道州制ビジョンの策定を進めてまいります。

 正規、非正規労働者間の均衡処遇についてお尋ねがありました。

 正規、非正規を問わず、どのような働き方を選択しても、安心、納得して働き、経済的自立や結婚、出産、子育てをしていくことのできる環境を整備することが重要な課題であると認識しております。

 このため、パート労働者への社会保険の適用拡大、有期雇用を含む労働契約のルールの整備や、均衡処遇や能力開発等を進めるためのパート労働法の改正など、正規、非正規労働者間の均衡処遇の実現に向け、法的整備を含めた検討にしっかりと取り組んでまいる決意であります。

 在日米軍再編の今後の進め方についてのお尋ねがありました。

 在日米軍再編は、抑止力を維持しつつ地元の負担を軽減するものであり、ぜひとも実現させなければなりません。政府としては、今後とも、沖縄県など地元の切実な声によく耳を傾け、地域振興策などについてもしっかりと取り組むことにより、米軍再編を着実に進めてまいります。

 テロ対策特別措置法の延長についてのお尋ねがありました。

 国際社会によるテロとの闘いは依然続いており、我が国は、国際協調のもと、テロとの闘いを我が国自身の問題と認識し、引き続き重要な役割を果たさねばならないと考えております。現行のテロ対策特措法は本年十一月一日に期限を迎えますが、以上のような状況にかんがみて、同法の期限を一年間延長したいと考えております。(拍手)

 アジア外交についてお尋ねがありました。

 アジアが自由で活力ある地域となるよう、アジア諸国との外交に主導力を発揮します。大事な隣国である中国、韓国とは、あらゆるレベルと分野で対話と協力を積み重ね、双方の努力を通じて未来志向の関係を構築していきます。両国との首脳会談については、常に扉をオープンにしてきており、その実現に向けて双方で努力していきます。

 同時に、インドや豪州等の基本的価値観を共有する民主主義国、さらにはASEAN諸国との連携を一層強化します。こうした取り組みを通じて、アジア全域の連帯を進めていきます。

 戦後日本の出発点、戦後日本の歩み、憲法改正の意義とそのプロセスについてのお尋ねがありました。

 戦後の日本は、さきの大戦で国内外に大きな被害を与えたことへの率直な反省の上に立って、半世紀以上にわたって、自由と民主主義、そして基本的人権を守り、国際平和にも貢献してまいりました。そして、高度成長もなし遂げました。私たちは、こうしてつくり上げたこの国の形に堂々と胸を張るべきだと思います。

 しかしながら、国の理想、形を物語るものである憲法は、日本が占領されている時代に占領軍の深い関与のもとで制定されたものであり、また、六十年近くを経て現実にそぐわないものとなっています。だからこそ、私たち自身の手で、二十一世紀にふさわしい日本の未来の姿あるいは理想を憲法として書き上げていくことが必要であると考えています。

 与野党において議論が深められ、方向性がしっかりと出てくることを願っております。まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を期待します。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(横路孝弘君) 松本剛明君。

    〔松本剛明君登壇〕

松本剛明君 民主党の松本剛明です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、所信表明について総理に御質問をいたします。(拍手)

 安倍総理、御就任おめでとうございます。

 ただ、先ほど中川幹事長のお話を承っておりましたら、御自分で全部仕切られるかの勢いのようで、あたかも安倍総理は庇護のもとにあるかのようでございました。ぜひ御自立をいただいて、亡くなられた安倍晋太郎先生のように、寛容で幅広く、バランスのとれた大人物になられんことを祈念しております。

 それでは、質疑に入りますが、総理には、国民にわかりやすく、真摯に議論にこたえていただきますように望みます。外来語での御説明ではなく、ここは日本でございますから、私どもも「公正な社会、ともに生きる国」と申し上げていますが、美しい日本語はたくさんあります。おかげさま、もったいない、お互いさま、すばらしい、美しい大和言葉があるではありませんか。ぜひそのような議論をさせていただきたいと思います。(拍手)

 なお、この議論も、有意義なものとなるよう、再質問の権利を留保することをあらかじめ申し上げたいと思います。

 所信をお聞きして、何か違和感を覚えました。地域を歩いて人々と話をしている私たちの実感からかけ離れているのです。読み返してみると、生活とか暮らしという言葉も余りありませんでした。私たちの国は、国民から成り立っています。繰り返し美しい国とおっしゃる前に、国民一人一人の生活に目を向けてください。それが政治の使命であります。

 本来の政治の役割は、まじめに働く人々が報われる安定した社会をつくることです。本当に窮している人にはセーフティーネット、他方で、民間の力が経済を伸ばせるように、裁量ではない、透明で公正なルールを確立し、それを遵守させる体制をつくることであります。

 また、日本のよさは、経済力でも学力でも中間層が厚かったことにあります。世界が認める我が国の発展を支えてきた構造を、残念ながら、自民党政権が無策で壊し、そして小泉政権下でそれが加速をいたしました。

 先日、ある市長さんから、役所の窓口がおかげさまで大変繁盛していますと皮肉を言われました。著しい増税に驚いた人々が問い合わせに殺到しているのであります。郵政民営化は、政府が公言してきた方向とは違う方向に行きそうですし、国民負担についても、消費税を上げないと叫び続けながら、それ以外の税と保険料はことごとく引き上げてまいりました。

 所得税、住民税の配偶者特別控除上乗せ部分廃止、公的年金等控除の縮小、老年者控除廃止、酒税、たばこ税引き上げ等々、そして定率減税全廃と、大変な増税を毎年続け、医療、年金、介護では、保険料や自己負担の引き上げを繰り返しています。今月も、医療費アップと厚生年金保険料引き上げがあります。

 増税は、直接の負担増にとどまらず、非課税世帯が課税対象に変わることで介護保険料も上がるなど、大きくきいてくる仕組みになっています。取りやすいところから取る、そういう乱暴なやり方で、一人一人の生活に目配りをされてこなかったことがこういうことになっています。国民は、何が起こったのかよく知らされないまま、鳩山幹事長からも申し上げたように、今、悲鳴を上げています。

 財政について危機的状況にあることは多少御認識をいただいているようですが、ここまで放漫財政で国民に大きな借りをつくってこられたことを、政権党としてよく反省をしていただきたい。利権、談合、天下りを許してきた自民党に返済してもらいたいくらいであります。

 そういう中で、自公政権は国民にツケを押しつけてきました。この上、歳出削減と称して国民に痛み、官に権益を許し続けるのでしょうか。

 先ほどの中川幹事長のお話で、あたかも公務員制度改革をおやりになるかのようなお話がありましたが、いわば経営者である政権党として、ここまで何もやってこなかった実績があるということをお忘れなく、自覚をしていただきたいと思います。(拍手)

 総理の言葉にも、質疑にも一つもありませんでしたが、まず天下りのことをやるべきではないでしょうか。本当に天下りをなくそうとしておられるのでしょうか。平成十七年度の予算ベースで、野党の私たちが把握できるだけでも、三千団体、二万人、補助金、委託金、随意契約の合計は五兆円になります。

 民主党は、前国会で、官製談合、天下り問題を徹底的に追及してまいりました。不正を防ぐために、行為規制の導入とともに、規制期間の長期化、迂回措置の防止、対象先の拡大等、天下りそのものの規制をも強化する、両面からの規制を提案いたしました。この問題を根絶しない限り、巨額の税金の無駄遣いが解消されないからであります。

 ところが、前内閣の担当大臣が示された案は、立件が困難な口きき行為の形式的な禁止と引きかえに、ただでさえ不十分な現行の天下りの二年間禁止措置を、事もあろうに撤廃しようとするもので、まさに改革に逆行した内容であります。これは、他国に類のない天下り慣行を抱える霞が関による、巧みで実効性のない、換骨奪胎案にほかならない。総理が総合的にとおっしゃったが、まさかこのことを指すのではないと思いたいと思います。

 天下りの実質解禁を容認し役人天国をさらに悪化させる、この天下の愚策を採用しない勇気をお持ちかどうか、しっかりと御見解を伺いたいと思います。(拍手)

 地方分権も、かけ声倒れでここまで来ました。三位一体改革では、地方に負担を押しつけるばかりで、地方の自由度は変わらず、霞が関の権限は温存されたままであります。

 地方分権は、中央のコントロールではなく、住民に近いところから政策を展開して生活の向上に資することに大きな意義がありますが、同時に、行政機構の簡素化にもつながります。道州制を言われますが、大切なことは、個別補助金の全廃等、中身のある方針を示して改革を行うことであります。与党は地方分権と言いながら、これもここまでやれてこなかった実績があるということを御自覚をいただいて、改めて総理に、どこまでやる御意思があるか承りたいと思います。

 古い自民党の聖域である公共事業については、総理のお考えがよくわかりません。総理は、地方に行くと、個別の事業について、山陰自動車道や北陸新幹線はオーケー、北海道新幹線はノー。北海道の人をお嫌いなんでしょうか。そんなことを言ってみたりしながら、予算は全体として抑制するとおっしゃっています。

 そこで、具体的にお聞きをします。

 来年度予算における公共事業の予算の取り扱い方針、概算要求基準では対前年度比三%減としていますが、現在、要求総額は一八%増まで積み上がっています。総理は、そこから二〇%、一兆三千億削って三%カットまで達成をできるのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。そして、都市と地方の、どのような重点を置くのか、未来への投資とおっしゃいますが、何を指すのか、あわせて御答弁をお願いいたします。

 総理は、所信で、抜本的、一体的な税制改革を推進すると言われました。いつも自民党政権はそう言いながら、対症療法の継ぎはぎ税制いじりを繰り返してきました。国民から信頼されるためには、きちんと説明し、約束どおり行うことであります。

 よくわかりませんでしたので、もう一度、消費税について伺いましょう。

 逃げず、逃げ込まずという姿勢と言われました。どういう意味なのでしょうか。消費税を上げる意思があるような御発言もありました。来年秋からの議論とも聞きます。もし、選挙までは国民に言わず、選挙後に増税というなら、総理は伝統がお好きのようでありますが、伝統的な自民党の手段であります。

 改めて、消費税についての総理の御意思を承ります。歳出削減先行と言うなら、そのめどはいつまでで、消費税はいつまでは上げないのか、国民の前に明らかにするべきであります。

 関連して、一つ御提案を申し上げます。

 政府にも各党にも税制を議論する場があります。代表なくして課税なし。国民の代表で構成する国会に専ら税制を議論する場があるべきだと私は思います。ぜひこの臨時国会で税制の特別委員会の設置をしていただくように御提案を申し上げます。国会のことでありますが、総理は自民党総裁として御指示ができるはずであります。御見解を承ります。

 税金の使途についての説明も不信の原因の一つです。与党の政党が、定率減税廃止は基礎年金国庫負担引き上げのためと、かつて選挙で約束をいたしました。ところが、総理は、税制改革の時期について、その国庫負担の財源確保のことも絡めてとおっしゃいます。その財源がまだ手当てされていなかったかのようであります。では、定率減税廃止による国民の負担増はどこへ行ってしまったのでしょうか。ぜひお答えをいただきたいと思います。

 税制の透明性確保も重要です。最近、国際展開している我が国企業が移転価格税制を適用され、大きな追徴課税を受けるケースが多発しています。悪質な課税逃れには厳正な課税で対処すべきであります。ただ、他方で、税額の算定や執行基準に国税庁の裁量の余地が極めて大きいとの批判もあります。経済活性化の観点からも、税制の透明化を推進し、納税者側との事前確認制度などの機動的な運営が必要と考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか。

 年金について伺います。

 国民が強い関心と不安を抱いているのが社会保障でありますが、その中でも、年金は高齢者の経済的な基盤であり、まず年金を安定させて、そしてその上で、保険料や窓口負担を含めた医療や福祉の制度も議論していかなければなりません。

 総理は年金制度はお得と言われますが、今後の世代の納付保険料と受給年金額の割合は二倍強、事業者負担も含めれば一倍強です。しかも、資本主義経済に当然の金利も考慮すれば、お得というのは全く不適切な表現ではないでしょうか。

 同時に、年金受給者との世代間格差もあります。若い世代はこのことに強い不満を抱いていますが、これに対する回答もありません。

 総理は、破綻とは年金が一銭も払われないことと極端な定義をし、年金が破綻するのは間違いと断じています。しかし、年金が一円でいいわけがありません。国民が心配しているのは、将来また負担増や給付減が繰り返されるのではないか、実際の受取年金額が老後の生活の頼りとなるのに十分な額なのかということなのです。

 ところが、総理は、わずか二年前に政府が所得代替率五〇%は必ず守ると国民に約束されたにもかかわらず、出生率が一・一に下がっても四六%はあると、あっさり五〇%割れのことに言及をされました。こういう姿勢が年金制度に対する不信、不安を助長するものであります。(拍手)

 民主党は、国民の不安、不信にこたえ、年金制度は危機に瀕しているとの認識を前提に、国民年金の問題も直視し、年金制度の一元化を図り、高齢者の生活の安定を確保し、社会の安定にもつながるように政策を提案しています。

 しかし、総理は、被用者年金の一元化には多少触れても、多くの国民にかかわる厚生年金と国民年金は現行の制度を維持し、所得代替率については国民との約束は守れなくてもしようがない、そういうスタンスとお見受けをいたしました。

 被用者年金の一元化も、官民格差の解消だけなら統合を展望する必要はありません。将来に大きな不安のある共済を救済するために、民間サラリーマンの厚生年金の積立金が共済の年金給付に充当されることになるのではないか、そういう疑念が払拭されません。

 総理は、本年四月に基本方針を閣議決定した怪しげな被用者年金一元化を行うだけで、年金制度については、一昨年の、だれも信じていない、いわゆる百年安心プランでよしとされるのでしょうか。御答弁をいただきたいと思います。(拍手)

 不信の原因は社会保険庁にもあります。政府に自浄作用がないために、民主党の追及により、やっと次々問題が明らかになりました。与党が、出された法案を御自分で批判されるようになることを、世の中では行き詰まりと言うと私は思います。看板のかけかえのようなねんきん事業機構法案は、まず撤回をされることであります。

 どうもこの部分は、お役所がつくられた答弁と質疑が与党内でもうまくつながっていないように私はお聞きをいたしましたが、さらに国税庁との統合等、本当に抜本的な改革を行うおつもりがあるのか、解体的なのか解体なのかぐらいはぜひお答えをいただきますように、総理に伺いたいと思います。

 農業政策について伺います。

 課題の第一は、農業の衰退であります。

 農業は、自民党長期政権のもと、昭和三十五年から、GDPに占める農業生産のシェア、作付面積、農業就業者数のいずれも激減、食料自給率は八割から半減して四割にまで落ちました。多額の税金を投入して、効果はマイナス。国民のお金を無駄にした、これこそばらまきの結果責任を問われるのではないでしょうか。

 農業は、大規模・小規模、専業・兼業農家が一体となって地域経済を支え、地域社会を構成し、地域の環境を守り、国民に安全な食料を提供しています。

 民主党は、これを持続可能なものとし、さらには安全保障の観点から、自給率を上げる政策として、前国会において農林漁業再生基本法を提出いたしました。具体的には、米、麦、大豆など自給率の向上に資する農産物について、販売価格が生産コストを下回っても、農家が農村に住み、生活していけるように、国が農家に直接に個別所得補償をするものであります。

 財源は、自民党が守ってこられた農業土木予算一兆二千億の一部、従来の生産調整関係予算を抜本的に組み替えるものであり、財政負担増は生じません。

 高い価格を払ってきた消費者の負担を納税者の負担とするものでありますが、これまでの効果のない税金の使い方を根幹から改めることで、納税者の負担はふえないわけです。この仕組みで、消費者には安い農産物が保障され、農家には安心と生産意欲が生まれます。

 自民党政権でどこかに税金が消えていく仕組みを打ち壊さなければいけません。農産物価格が国際価格と同じになることから、貿易を歪曲するものでもなく、WTOでも緑の政策として認められます。

 課題の第二は、自由化であります。

 我が国の将来のためには、国際的な通商交渉において主導権を持ってリードすることが極めて重要であります。しかし、政府は、言葉でWTO体制推進、FTA促進と唱えるばかりで、農業が現実にネックとなっている、そこのところをクリアできずに、日本は大きなおくれをとっています。

 民主党が提案をする政策を展開することで、農産物の貿易自由化も可能となり、自由化されても市場価格の下落に対する対抗力がつくわけであります。同時に、安全性、新鮮さなど、質を重視する我が国の消費者は国内産の農産物を求めることから、自給率の向上にもつながります。

 食べ物は、地産地消、できたものをそこで食べる、旬産旬消、ときのものをそのときに食べるが原則であります。民主党の政策で、食べ物の理想のあり方に近づくことにもなるわけであります。

 政府は、来年度から、四ヘクタール以上の農地を保有する農家に対して直接支払い制度を導入するとのことですが、各地に赴いて農家の方々と話を重ねてきた私たちから見れば、余りにも現実とかけ離れています。農林水産業を戦略産業と声高に叫んでも、内容が農水省の古い農地規模拡大策ではどうにもならないではないですか。ぜひ御答弁をお願いいたします。

 平均的な農家を切り捨て、産業としての農業も、地域社会も、環境も崩壊させかねない政策を強行されるのか、御所見を承りたいと思います。

 また、自由化について、私が知る限り、農林水産大臣は自由化に反対であったと理解していますが、政府として自由化反対なのか、それとも自由化推進に向けて総理から農水大臣に信念を捨てさせられたのか、御答弁を求めたいと思います。

 民主党は、日米同盟は我が国安全保障の基軸として極めて重要である、日米両国は相互信頼に基づく対等な関係を確立すべきと考えています。しかし、日米安保の実態は、有事のリスクは米国、平時のコストは日本という非対称的なもので、その構造を背景に日本側のコストが過剰になり、結果として、米側の要求丸のみ、地球規模の米軍の下請的構図になっているのではないかとの国民の不安があります。

 それだけに、今回の在日米軍基地再編への取り組みでは、我が国の安全保障の視点から米軍と自衛隊の役割分担を検証し、同時に、基地所在地、周辺地域の負担軽減も推進できるように、こちらからの提案を携えて協議に臨んでほしかったと思います。しかし、政府は、普天間基地移設に関しては米国の期待を裏切って不信を買い、結局、負担軽減をお願いする姿勢に終始したのではないでしょうか。

 安定した同盟関係維持に、国民の支持と基地負担を抱える地元の理解が必須です。国民や地元自治体への説明を先送りにして信頼を損ねることは、国益に反します。これまでの姿勢を改め、具体的に、日米地位協定の改定、普天間飛行場閉鎖の早期実現、自治体との協議推進体制の確立、負担軽減策、日米同盟の将来ビジョンの策定などを通じ国民の懸念にこたえるべきと考えますが、総理の御所見を伺います。

 経費についても承りたいと思います。

 概算要求では詳細が明らかにされませんでしたが、報道では、一兆九千億円近くとの試算が報じられました。地域振興策など基地周辺住民の理解を得るための経費を減額した結果との見方も紹介をされています。米軍再編に伴う予算についての具体的内容、また必要とされる法的枠組みの検討状況についても御説明ください。これまでのように、地元にも国民にも、さらには米国に対しても、その場しのぎの対応では信頼を失うばかりであることを御理解いただいて御答弁を願います。

 集団的自衛権については、個別具体的な例に即し、よく研究するとのことでありますが、これまで、政府解釈、答弁のかなり細かい膨大な積み重ねがあります。踏襲されるのか、変更もあり得るのか、御答弁を願います。

 日本国憲法にのっとって、自衛権は専守防衛の範囲で、我が国が急迫不正の侵害を受けた場合に限り、個別的であれ集団的であれ行使できると考えるべきではないでしょうか。研究して実質的な拡大を行おうとするなら、こそくなやり方であります。解釈を内閣法制局の官僚に任せるのではなく、原則を正面から議論すべきと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)

 民主党は、いわゆる有事法制の審議の過程で、緊急事態基本法の制定の必要性と危機管理の総合調整機能、情報機能、安全保障会議機能を強化する体制を提言し、自民、公明、民主の三党間で合意を積み重ねてきたところでありました。

 しかし、ことしの春になって、当時の長勢官房副長官、現法務大臣でいらっしゃいますけれども、ここから合意を私はほごにされました。当時の安倍官房長官の御判断だと承知をいたしております。公党間の合意を覆されたことも問題でありますが、何よりも、一たんは与党もお認めになった国民にとって必要なことを、組織防衛に走る官僚に葬られたことは残念でなりません。やはり自民党の上に官僚がいるんだと痛感をいたしました。

 今回、総理は、米国のNSCを模した組織の設置を唱えられました。情報機能も含めて体制について二点は多少カバーされるかもしれませんが、肝心の国民の安全確保に直結する危機管理については何もありません。

 改めて、総理も幹事長として署名されたこともある、国民の安全のために必要な緊急事態法制と危機管理の体制の整備について、見解を伺いたいと思います。

 以上、総理にお聞きをしてまいりましたが、伺いたいことはまだまだ山積みであります。ぜひ、国会の場で、予算委員会、党首討論もたっぷり開いていただいて、国民の前で建設的に議論をいたしましょう。

 最近、与党の方々が、民主党の政策をよく読んでおられないのかもしれませんが、私どもが反論できないところで一方的に内容を歪曲して批判をしておられます。与党はいい政策を実現すれば、国民が見ているんです。自信がないからといって、野党を非難して反射的に与党に支持を求めるような情けないことは言わないでください。

 まずは、この質疑にしっかりと明快な御答弁を求めます。答弁によっては再質問させていただくことを申し添えて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 松本剛明議員にお答えをいたします。

 公務員の再就職についてのお尋ねがありました。

 私は、世界のグローバル化が進む中で、時代の変化に迅速かつ的確に対応した政策決定を行うため、官邸のスタッフについて、官民を問わず優秀な人材を登用する枠組みを早急に構築することとしております。

 公務員の再就職の問題を考えるに当たっても、官の優秀な人材が民に出て活躍をしたり、また、民の経験を経た者が官の中でその能力を発揮するなど、国全体における官民の人材交流、人材活用の重要性に十分考慮する必要があります。このことを踏まえながら、早期退職慣行の是正にも取り組みつつ、退職管理の適正化に向け、総合的に検討を行う必要があると考えております。

 一方、再就職後の公務員の不正な行為に対しては、厳正なる対処をする必要があると考えております。

 このような視点に立って、前行政改革担当大臣からいただいた提案を踏まえ、公務員制度改革全体の中で改革案を検討します。

 地方分権についてのお尋ねがありました。

 地方の活力なくして国の活力はありません。やる気のある地方が自由に独自の施策を展開し、魅力ある地方に生まれ変わるよう、必要となる体制の整備を含め、地方分権を進めます。地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与、国庫補助負担金の廃止、縮小等を図ってまいります。

 来年度における公共事業予算の取り扱いについてお尋ねがありました。

 今後五年間の公共事業関係費については、基本方針二〇〇六において、歳出歳入一体改革を進める中で、重点化、効率化を徹底することにより、これまでの改革努力を基本的に継続するとされたところであります。この方針に基づき、来年度の公共事業予算についても、概算要求基準において対前年度比三%減としており、コスト縮減や入札改革の徹底、事業のめり張りづけの強化等により、これを達成してまいります。

 公共事業についてのお尋ねがありました。

 公共事業については、都市と地方とを問わず、真に必要な社会資本整備を重点化や効率化を徹底しながら進めるとともに、都市と地方の間における不均衡の解決、地域の自立や活性化に資する事業を実施してまいります。また、未来への投資として、国際競争に勝ち抜くためのインフラ整備や国民生活の安全、安心の確保につながる社会資本整備など、我が国の将来を見据えて必要と判断される公共事業を実施してまいります。

 消費税引き上げに対する意思についてのお尋ねがありました。

 我が国財政は極めて厳しい状況にあり、成長なくして財政再建なしの理念のもと、経済成長を維持しつつ、国民負担の最小化を第一の目標に、歳出削減や行政改革等を徹底してまいります。

 このような改革を徹底して実施した上で、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保するため、抜本的、一体的な税制改革を推進し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。消費税については、このような抜本的、一体的な税制改革の中で議論を行っていく必要があると考えています。

 現在の諸情勢を勘案すれば、十九年度予算の歳出削減の状況、来年七月ごろに判明する十八年度決算の状況、医療制度改革を踏まえた社会保障給付の実績等を見る必要があり、これらを踏まえて、税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えております。

 いずれにせよ、財政再建の重要性にかんがみ、平成十九年度予算については、従来の改革努力を継続し、徹底した歳出削減に取り組んでまいります。

 税制特別委員会の設置についてお尋ねがありました。

 御指摘のように、税は極めて重要な国政の課題でありますが、特別委員会の設置については、まずは国会において協議をいただくべきものであると考えます。

 定率減税廃止に伴う増収分の使途についてのお尋ねがありました。

 平成十七年度及び十八年度の税制改正による定率減税の縮減、廃止に伴う所得税の増収分については、三二%は地方交付税法に基づき地方交付税に充てられております。残余については、使途が法定されていない一般財源であることから、厳密に特定することは困難でありますが、与党における御議論等も踏まえ、定率減税の縮減、廃止に関連づけられた歳出項目としては、十六年年金改正法附則の規定に基づく基礎年金国庫負担割合の千分の二十五の引き上げの一部や、十七年度分については、特別障害者給付金支給法及び医療観察法により必要となる額に相当する額が挙げられます。

 なお、残る基礎年金国庫負担割合の二分の一への引き上げについては、十六年年金改正法附則において、平成十九年度を目途に、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、平成二十一年度までに実施することとされており、基本方針二〇〇六の関係記述も踏まえ、財源のあり方も含め、検討していく必要があります。

 移転価格税制についてのお尋ねがありました。

 移転価格税制は、国外関連者との取引を通じた海外への所得移転に対処し、適正な国際課税の実現を図るもので、これまでも同税制の適用基準の明確化を図るとともに、納税者の予測可能性を確保するとの観点から、納税者からの事前確認の申し出に対して積極的に対応し、迅速かつ的確な処理に努めていると考えております。

 今後とも、我が国の課税所得の国外への流出を防止するとの観点から、事前確認制度の運営も含め、移転価格税制の的確な執行を通じて適正な国際課税の実現に努めてまいります。

 年金制度についてのお尋ねがありました。

 年金制度については、平成十六年の制度改正において、保険料水準の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組みの導入等により、長期的な給付と負担の均衡を確保し、持続可能な制度とすることができたと考えております。

 なお、給付水準については、将来にわたり現役世代の所得の五〇%を維持できる見通しですが、仮に少子化が長期間にわたり予想以上に進行し、将来、五年以内に五〇%を下回ることが見込まれることとなった場合には、給付と負担のあり方について改めて検討し、所要の措置を講ずる旨、法律で定められています。

 公的年金の一元化については、民間サラリーマン、公務員を通じて、将来に向け、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し同一の公的年金給付を受けるという公平性の確保などの観点から、まずは厚生年金と共済年金の一元化を速やかに実現してまいりたいと考えております。

 社会保険庁改革についてのお尋ねがありました。

 社会保険庁については、業務改革、職員の意識改革及び組織改革を強力に推進し、国民の信頼回復を一日も早く図ることができるよう徹底した改革を行い、解体的出直しを実現しなければならないと考えております。

 現在、国会に提出している社会保険庁改革の関連法案については、平成二十年十月に社会保険庁を廃止するとともに、新たにねんきん事業機構を設置し、地方組織の抜本改革、外部専門家の登用、約一万人の公務員の削減等を行うものであり、看板のかけかえという批判は当たらないと考えております。

 いずれにしても、今回の法案が解体的出直しにふさわしいものであるかどうか、また、すべて公務員でやらなければならないかどうかということも含めて、国会で改めて十分な御議論をいただいた上で、国民の信頼を得ることができる新組織を早期に実現してまいります。(拍手)

 農家に対する直接支払い制度の導入についてのお尋ねがありました。

 政府としては、意欲と能力のある担い手に対し支援を集中化、重点化することにより構造改革を進め、生産性や品質の向上などの課題の解決を図ることが避けて通れないものと考えております。

 このため、担い手に対象を絞った新たな経営安定対策を十九年産から導入すべく、先般の通常国会において関連法律を整備したところであり、その円滑な実施に向け万全を期す決意であります。

 農産物の貿易交渉についてのお尋ねがありました。

 農産物の貿易交渉においては、輸出促進等攻めの姿勢を持ちつつ、日本の農業、農村の面から譲れないところは交渉で全力を尽くして守っていく考えであります。この方針は、政府・与党一体のものであります。

 普天間飛行場の移設、返還を含む在日米軍再編の進め方についてのお尋ねがありました。

 在日米軍再編は、抑止力を維持しつつ地元の負担を軽減するものであり、ぜひとも実現させなければなりません。

 政府としては、今後とも、沖縄県など地元の切実な声によく耳を傾け、地域振興策などについてもしっかりと取り組むことにより、米軍再編を着実に進めてまいります。また、日米地位協定については、引き続き運用の改善に努めてまいります。日米同盟については、世界とアジアのための日米同盟の考え方に基づき、一層強固にしてまいります。

 在日米軍再編の予算と法的枠組みについてのお尋ねがありました。

 在日米軍再編に伴う日本側の経費負担については、現在、再編案の詳細な計画等について日米間で検討しているところでもあり、具体的に申し上げる段階ではありませんが、鋭意検討を進め、できるだけ早期に明らかにしてまいりたいと考えています。

 法的枠組みについては、地域振興策等の必要性を踏まえ、法整備が必要か否かも含めて検討を進めているところです。

 集団的自衛権についてのお尋ねがありました。

 政府としては、これまでの憲法解釈や国会における議論の積み重ねを十分に尊重しつつ、大量破壊兵器やミサイルの拡散、テロとの闘いといった国際情勢の変化や、武器技術の進歩、我が国の国際貢献に対する期待の高まりなどを踏まえ、日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいります。

 なお、研究に当たりましては、これまでの国会等における御議論も十分踏まえながら、整々と検討を進めてまいりたいと考えております。

 緊急事態法制と危機管理の体制の整備についてのお尋ねがありました。

 国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態に迅速的確に対処できる体制の構築は政府の責務であり、着実に取り組んでまいります。なお、新たな法制の整備については、現段階ではその必要性は乏しいものと認識しております。

 他方、危機管理体制の整備に関しては、政府全体として総合力を発揮し、国民の安全を確保するよう取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(横路孝弘君) 松本剛明君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。松本剛明君。

    〔松本剛明君登壇〕

松本剛明君 民主党の松本剛明でございます。

 私の持ち時間の範囲で改めて総理に御答弁を求めていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。(拍手)

 まず第一点は、天下りの件でありますが、先般、中馬大臣が示された、天下りそのものの二年間の禁止はもうやめてしまう、この案を採用する方向だ、こういう理解でよろしいのかどうか、御確認の答弁を願いたいと思います。

 二つ目は、消費税。何度お聞きをしても明快な御答弁がいただけませんが、これは、参議院の選挙までは、総理は、逃げず、逃げ込まずと言いますが、これでは、参議院の選挙の後まで逃げて、逃げ込むという方が正しい表現ではないかというふうに思います。

 来年の秋からというのではなく、大切な税制の議論を、今からでも国会にしっかり委員会を求めてやろうではないかと御提案を申し上げているわけであります。

 総理にお伺いをしたいと思います。参議院の選挙後も消費税は上げないとここでおっしゃるのか、そうでなければ、もう参議院の選挙後は上げるというお考えなのだというふうに私は理解をさせていただきたいと思います。参議院選挙後、上げないということをここでおっしゃるかどうか、承りたいと思います。

 三点目は、社会保険庁の法案についてであります。

 内容がふさわしいかどうかというのをこれから国会で議論する、出した内閣がそう言われたのではどうにもなりません。ぜひ、撤回をされるのか、それとも、もうこの法案でよしとされるのか、御決断をいただきたいと思います。

 最後は、集団的自衛権の問題であります。

 これまでの議論を尊重、踏まえるとおっしゃいましたが、変わることはあり得る、こういう理解でいいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

 天下り、前大臣案を採用されるのかというのが第一点。参議院の選挙後も消費税は上げないとお答えになるのかどうかが第二点。そして、社会保険庁の法案、ふさわしいかどうかわからないのに法案を撤回しないということを続けるのかどうか、三つ目。そして四つ目は、集団的自衛権、お変えになるかどうか。

 以上四点について、改めてお伺いをいたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほどお答えをいたしましたように、まず第一点でございますが、前行政改革担当大臣からいただいた提案を踏まえ、公務員制度改革全体の中で改革案を検討してまいります。

 第二点、消費税についてでありますが、先ほどお答えをいたしましたような、抜本的、一体的な税制改革の中で議論を行っていく必要があると考えています。

 現在の諸情勢を勘案すれば、十九年度予算の歳出削減の状況、そして来年七月ごろに判明する十八年度決算の状況、医療制度改革を踏まえた社会保障給付の実績等を見る必要があり、これらを踏まえて、税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えています。

 いずれにせよ、財政再建の重要性にかんがみ、平成十九年度予算については、従来の改革努力を継続し、徹底した歳出削減に取り組んでまいります。

 そして、三点目でございますが、社会保険庁の法案についての取り扱いでございます。

 今回の法案が解体的出直しにふさわしいものであるかどうか、また、すべて公務員でやらなければならないかどうかということも含めて、国会で改めて十分な御議論をいただいた上で、国民の信頼を得ることができる新組織を早期に実現してまいります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) 内閣総理大臣から答弁を補足したいとのことであります。これを許します。内閣総理大臣安倍晋三君。

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 集団的自衛権についてもう少し詳しくということでありますが、先ほど私が答弁したのが、今の段階で私の考え方を要約して述べたものでございます。

 私が述べましたことは、いわば、国際情勢の変化、また武器技術の進歩、また我が国の国際貢献に対する期待の高まりなどを踏まえ、日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく検討をしてまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(横路孝弘君) 松本剛明君からさらに再質疑の申し出がありますが、残りの時間がわずかでありますから、ごく簡単にお願いいたします。松本剛明君。

    〔松本剛明君登壇〕

松本剛明君 私の持ち時間の中で、再度、再々度質問させていただきたいと思います。(拍手)

 もう一度お聞きをいたしますが、天下りについて、前大臣の案のかなめは、二年間の天下り禁止のこれまでの規制を撤廃することであります。これを撤廃するのかしないのか、その点の回答を求めたいのが一つ。

 そして、消費税については、今のお答えは、参議院選挙が終わるまでは議論しない。上げないなら、今から議論しなくていいと言ったらいいじゃないですか。参議院選挙後には上げるということをおっしゃったという理解でいいのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

 社会保険庁と集団的自衛権の問題については、ぜひ内閣の方で、今の御自身の御答弁を読み直していただいて整理をする必要があるのではないかと思います。

 以上です。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 天下りについて再々質問がございました。

 先ほど申し上げましたとおり、前行政改革担当大臣からいただいた提案を踏まえて、公務員制度改革全体の中で改革案を検討してまいります。

 また、消費税につきましては、先ほど私がお答えをさせていただきましたように、抜本的、一体的な税制改革の中で議論を行っていく必要があると考えています。

 先ほど申し上げましたような現在の諸情勢を勘案すれば、十九年度予算の歳出削減の状況、来年七月ごろに判明する十八年度決算の状況、医療制度改革を踏まえた社会保障給付の実績等を見る必要があり、これらを踏まえて税制改革の本格的、具体的な議論を行うのは来年秋以降になると考えています。(拍手)

     ――――◇―――――

中山泰秀君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(横路孝弘君) 中山泰秀君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       総務大臣  菅  義偉君

       法務大臣  長勢 甚遠君

       外務大臣  麻生 太郎君

       財務大臣  尾身 幸次君

       文部科学大臣  伊吹 文明君

       厚生労働大臣  柳澤 伯夫君

       農林水産大臣  松岡 利勝君

       経済産業大臣  甘利  明君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       環境大臣  若林 正俊君

       国務大臣  大田 弘子君

       国務大臣  久間 章生君

       国務大臣  佐田玄一郎君

       国務大臣  塩崎 恭久君

       国務大臣  高市 早苗君

       国務大臣  溝手 顕正君

       国務大臣  山本 有二君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  下村 博文君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君


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