衆議院

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第19号 平成18年11月30日(木曜日)

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平成十八年十一月三十日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十三号

  平成十八年十一月三十日

    午後一時開議

 第一 官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、達増拓也君外五名提出)

 第二 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、保岡興治君外六名提出)

 第三 建築士法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、達増拓也君外五名提出)

 日程第二 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、保岡興治君外六名提出)

 日程第三 建築士法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、内閣提出)


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、達増拓也君外五名提出)

 日程第二 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、保岡興治君外六名提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、達増拓也君外五名提出、官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案、日程第二、保岡興治君外六名提出、入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長上田勇君。

    ―――――――――――――

 官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案及び同報告書

 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔上田勇君登壇〕

上田勇君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、達増拓也君外五名提出の法律案は、官製談合等の防止の徹底を図るため、刑法並びに入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律等を改正しようとするものであり、その主な内容は、談合罪を目的犯でないものとし、公務員の談合関与行為に対する処罰規定を設けるとともに、特定法人及び入札談合等関与行為の範囲拡大、談合に関与した職員の賠償責任等の厳格化等の措置を講じようとするものであります。

 次に、保岡興治君外六名提出の法律案は、官製談合防止の徹底を図るため、入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律を改正しようとするものであり、その主な内容は、公正取引委員会による改善措置要求等の対象となる特定法人の範囲を拡大し、入札談合等関与行為の類型を追加するとともに、国等の職員による入札等の公正を害すべき行為についての罰則を設ける等の措置を講じようとするものであります。

 両案は、いずれも第百六十四回国会に提出され、継続審査となっていたものでありますが、昨二十九日提出者佐藤剛男君及び近藤洋介君からそれぞれ提案理由の説明を聴取し、直ちに質疑に入りました。同日質疑を終局した後、討論を行い、順次採決をいたしましたところ、まず、達増拓也君外五名提出の官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案は賛成少数をもって否決すべきものと決し、次に、保岡興治君外六名提出の入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。太田和美君。

    〔太田和美君登壇〕

太田和美君 民主党の太田和美です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました民主党・無所属クラブ提出の官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案に賛成、与党提出の入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、本法案の経緯を申し上げますが、民主党は、国民への許しがたい背信行為である官製談合の根絶を図るため、昨年十月に、官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案を提出しました。しかし、与党は審議に応じず、審議未了、廃案となりました。

 その後、防衛施設庁による官製談合事件の発覚等も踏まえ、民主党は、ことしの通常国会において、刑罰をより強化した法案を再度提出しました。これに対し、与党もようやく重い腰を上げ、官製談合防止法改正案を提出しましたが、民主党が幾度となく両案の審議を求めても、与党はみずから提出した法案すら審議に応じないという極めて不可解な行動をとり、両案とも継続審議となりました。まさに、本音では、やる気がなかった、先延ばししたかったと批判されても仕方がありません。

 それが、ここ数カ月の間に相次いで発覚した福島県、和歌山県、宮崎県などの官製談合事件により国民の批判が一気に高まったことを受けて、やっと今回両案を審議することになったわけです。

 しかし、委員会における質疑で明らかになったように、民主党案、与党案を比較した場合、官製談合防止の徹底を図る上で、民主党案は効果の面ですぐれた内容となっておりますが、哲学や理念、法体系などにおいて大きく異なる与党案には大きな矛盾と欠陥が含まれ、官製談合の防止には全く不十分であると言わざるを得ません。(拍手)

 以下、主な理由を申し上げます。

 第一に、民主党案は、刑法等を改正することによって、より一層公務員の談合関与に対する罰則を強化する内容となっております。

 まず、現行の談合罪の規定から、公正な価格を害し、不正な利益を得る目的という構成要件を削除して談合罪を実効あるものにするとともに、新たに公務員談合関与罪を設け、談合に関与した公務員を処罰の対象としております。特に、公務員談合関与罪については、三年以下の懲役刑のみとしているため、公務員は、同罪が確定されると、執行猶予の有無を問わずその職を失うことになるため、民主党案はより抑止効果が大きいと考えます。

 一方、与党案では、官製談合がこれほどまでに重大な犯罪であるにもかかわらず、刑法での対応を避け、しかも罰金刑による裁量の余地を残しています。懲役刑の年数だけを比べた場合、与党案の方が重い罰則を科しているようにも見えますが、これは単なる目くらまし、やったふりにすぎないことは明白です。

 第二に、民主党案は、職員の賠償責任等を厳格化するため、責任追及の要件を重過失から過失に改めるとしています。

 そもそも、予算執行の任務に当たる職員は、適正な予算執行のため、会計法規を遵守して慎重に職務を遂行することが求められるものであり、軽過失による法令違反が免責される現行規定の合理性は疑わしいと言わざるを得ません。しかし、与党案では、責任の厳格化によって円滑な業務執行に重大な支障を来すおそれがあるとして、この旨の規定を盛り込もうとしませんでした。この考えは、全く理解できません。

 第三に、民主党案は、入札談合等関与行為に該当する行為として、発注者側による一定の不作為、いわゆる黙認を追加しているのに対し、与党案では、こうした発注者側の黙認について何ら触れられず、官製談合のかなりの部分は野放しになったままです。官製談合廃絶のためには、談合が行われている実態にメスを入れることが必要であり、与党案のように、幇助を追加するだけでは十分な効果が上がらないものと考えます。

 最後に、官製談合の起きる背景には、天下りの問題があります。

 民主党は、天下りが談合の温床となっていると考え、本法案とセットで天下り規制法案を参議院に提出しました。しかし、政府は、公務員の天下りを原則二年間禁止する規制を撤廃する、天下りの自由化プランを検討しています。官製談合を防止しようという議論をしている一方で、官製談合を促進する政策を検討する政府・与党に、改革などできるはずもありません。

 以上、与党案では、厳しい世論を正面から受けとめようとせず、談合を徹底的に追及しようという姿勢が根本的に欠けているのは明らかです。これに対し、民主党案では、明確に官の犯罪行為を位置づけられるため、摘発をしやすくなり、抑止効果が高まることは明白であります。よって、私は、民主党案に賛成し、与党案に反対すべきものと考えます。

 民主党は、今後とも、官製談合の根絶に向けて全力で取り組むことを国民の皆様にお誓いし、私の討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 斉藤鉄夫君。

    〔斉藤鉄夫君登壇〕

斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、自由民主党、公明党を代表し、ただいま議題となっております与党提出の入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案につきまして賛成、民主党の提出した官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案につきまして反対の立場から討論を行います。(拍手)

 現行の入札談合等関与行為防止法は、平成十五年一月から施行されており、これまでに公正取引委員会がこの法律に基づき改善措置要求を行った事例は、平成十七年九月の日本道路公団発注の鋼橋上部工工事に関する入札談合事件等、既に三例あります。また、これらのほかにも、平成十八年二月に、防衛施設庁発注の建設工事をめぐる入札談合事件において、発注機関の職員が刑法の談合罪等に基づき起訴される等、いわゆる官製談合事件が国、地方を問わず多く見られる状況が続いてきたところでございます。

 本法律案は、このような状況を踏まえ、官製談合の防止を徹底するために提出されたものであります。

 平成十八年一月に、自民党独禁法調査会のもとに官製談合防止法検討ワーキングチームが設置され、公明党にも同様に官製談合対策プロジェクトチームが設置され、さらに与党合同で与党官製談合防止法検討ワーキングチームが設置されて、検討を重ねてまいりました。

 検討の結果、官製談合の防止を徹底するためには、発注機関の職員に対してより重い刑罰を科すこと、また入札談合等関与行為の類型を追加すること等が適切であり、同法のより一層の強化が必要であるとの結論に達し、与党において議員立法として本法律案をまとめたものでございます。

 本法律案では、発注機関の職員が、その所属する発注機関が入札等により行う売買、貸借、請負その他の契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示することまたはその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、五年以下の懲役または二百五十万円以下の罰金に処する刑罰規定を創設することとしており、懲役刑を重くすることにより未然防止の効果を高めるとともに、罰金刑を残すことにより柔軟な対応を可能としております。

 また、入札談合等関与行為については、これまでの公正取引委員会の執行状況を踏まえ、特定の入札談合等に関し、事業者等の明示または黙示の依頼を受け、またはこれらの者にみずから働きかけ、当該入札談合等を容易にする目的で、職務に反し、入札に参加する者として特定の者を指名し、またはその他の方法により入札談合等を幇助することを追加することとしており、これにより入札談合等関与行為の認定がより行いやすくなるものと考えられます。

 さらに、入札談合等関与行為防止法の適用対象である特定法人の範囲に関して、国または地方公共団体が法律により、常時、発行済み株式の総数または総株主の議決権の三分の一以上に当たる株式の保有を義務づけられる会社のうち、公共性の高い事業を営む民営化会社について、出資比率が二分の一を下回った後も、入札談合等関与行為防止法の適用が可能となるよう改正を行い、官製談合の防止の徹底を図ることとしております。

 また、今回の改正案の大きな特徴の一つに、損害賠償と懲戒処分に係る調査結果の公表を義務づけておりますが、これは公明党が強く主張し、自由民主党の賛意を得て盛り込んだものであります。発注機関は、入札談合等関与行為による国等の損害の有無についての調査、入札談合等関与行為を行った職員の賠償責任の有無等の調査及び入札談合等関与行為を行った職員に係る懲戒事由の調査について、それぞれその結果を公表しなければならないこととしており、発注機関が損害賠償や懲戒処分についてより適切な対応をすることを求めております。公務員に新たな罰則を新設するにとどまらず、広く国民に責任の所在とその結果を知らしめるところにより、抑止力を一層高め、政治への責務を果たすものとなっております。

 以上の点を踏まえますと、本法律案が施行されることによりまして、官製談合の防止の徹底が一層確実なものになると期待されます。

 なお、民主党の提出した官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案においても、談合に関与した公務員に対する刑罰規定の刑法における創設及び入札談合等関与行為の類型の追加等が行われておりますが、民主党案では、その適用対象が公の入札に限られること、公務員の関与という意味が不明確であること、また懲役刑三年という罰則規定は与党案に比べて軽いため、その抑止力は低く、罰金刑がなく事案に応じた弾力的かつ妥当の処罰が不可能であること、不作為類型の追加という考え方は、善良な公務員の円滑な職務の執行に問題が起こるおそれが高いこと、また損害賠償と懲戒処分に係る調査結果の公表という観点を持っていないことなどから、官製談合の防止の徹底を図るという点において、自由民主党、公明党による与党案の方が一層適切なものであると確信いたします。

 我々与党といたしましては、本法律案の成立を期待するとともに、官製談合が根絶されることを祈念して、私の討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一、達増拓也君外五名提出、官製談合等の防止のための刑法等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第二、保岡興治君外六名提出、入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 建築士法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第三、建築士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長塩谷立君。

    ―――――――――――――

 建築士法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔塩谷立君登壇〕

塩谷立君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、建築物の安全性の確保を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、一定規模の建築物の設計に当たり、構造設計一級建築士または設備設計一級建築士による構造関係規定または設備関係規定への適合性の確認を義務づけること、

 第二に、建築士試験の受験資格の見直し、建築士事務所に所属する建築士に対する定期講習の受講の義務づけを行うこと、

 第三に、分譲マンションなどの、発注者とエンドユーザーの異なる一定の建設工事については、一括下請負を全面的に禁止すること

等であります。

 本案は、去る十一月十三日本委員会に付託され、十五日冬柴国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、二十八日に質疑に入り、二十九日参考人からの意見聴取を行い、同日質疑を終了いたしました。質疑終了後、採決いたしました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第四、貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長伊藤達也君。

    ―――――――――――――

 貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔伊藤達也君登壇〕

伊藤達也君 ただいま議題となりました法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、多重債務問題の解決の重要性及び貸金業が我が国の経済社会において果たす役割にかんがみ、貸金業の登録要件の強化、貸金業協会及び貸金業務取扱主任者に係る制度の拡充並びに指定信用情報機関制度の創設を行うとともに、貸金業者による過剰貸し付けに係る規制の強化を行うほか、みなし弁済制度の廃止、業として金銭の貸し付けを行う者が貸し付けを行う場合の上限金利の引き下げ、業として行う著しい高金利の貸し付けに対する罰則の創設、利息とみなされるものの範囲に係る規定の整備等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る十一月七日当委員会に付託され、十四日山本国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、十五日より質疑に入り、十七日及び二十一日には参考人の意見を聴取するなど、慎重かつ熱心な審査が行われました。

 二十二日には、本案に対し、古本伸一郎君外三名から、民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案に係る修正案が提出され、趣旨の説明を聴取した後、本案及び修正案について質疑を行い、昨二十九日質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。これを許します。川内博史君。

    〔川内博史君登壇〕

川内博史君 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案について、多重債務者問題解決のためには即刻施行をする必要があるみなし弁済規定の廃止、いわゆるグレーゾーン金利の廃止と出資法上限金利の引き下げ、これの施行が政府案では三年後を目途になっているという不十分な内容の法案ではありますが、不十分な内容だけに、本法案の施行状況やあるいは三年後に行われる見直しに際して私たちが主体的にコミットをしていくために、賛成の立場から討論をさせていただきます。(拍手)

 消費者金融などによる多重債務者問題は、厳しい取り立てなどで自殺あるいは夜逃げに追い込まれる債務者の方たちが目立ち、重大かつ深刻な社会問題であります。

 民主党は、この問題を重く受けとめ、出資法の上限金利が著しく高いこと、出資法と利息制限法の上限金利の間にグレーゾーンが存在することなど、制度的な欠陥を是正するために全力を尽くしてまいりました。結党翌年の一九九九年の段階で、グレーゾーン金利を廃止すべく、出資法の上限金利を現行の利息制限法の上限金利並みに引き下げることなどを柱とする法案も提出をしておりました。

 この間七年の月日が経過をし、多重債務、一家離散、そして自殺へと追い込まれた方々の心中を察すると、ざんきにたえません。政府・与党としてもっと早く手を打つべきではなかったのか、猛省を促したいと存じます。

 委員会審議を通じて、貸金業界をめぐるさまざまな疑惑、癒着の構造が明らかになっています。

 日銀の超低金利政策のもとで、あるいは、公的資金の注入の恩恵を受けていた大手銀行が消費者金融業界に融資をし、庶民に高利で貸し付け、食い物にしていた構図が改めて明らかになっています。大手銀行、信託銀行、地方銀行、生保などの金融機関からの消費者金融大手五社に対する貸出総額は、三兆円を超えております。しかも、こうした業界には、監督官庁である財務省、金融庁あるいは日本銀行出身者が天下り、この五年間で七十人を超える方々が天下っているという実態が明らかになりました。

 さらには、団信、消費者信用団体生命保険については、無担保無保証といいながら、実は命を担保にとっていたという実態や、借り手の死因判明分に占める自殺率は、消費者金融大手五社の平均が二五・五%にも及び、自殺者が四人に一人に達しているという実態が明らかになりました。さらには、大手十七社のうち、借り手の自殺率が三三・三%に達する業者もあり、おぞましい事実が次から次へと出てまいりました。

 消費者金融業界をめぐる政官業のもたれ合いあるいは癒着の構造は想像を絶するものがあり、極めて根深いのではないでしょうか。彼らは、お金で買えないものはないとでも言うかのように、さまざまなロビー活動を展開されていらっしゃいましたし、これからも続けていかれるのでしょう。しかし、私たちは、国権の最高機関として、借り手と貸し手という立場を見れば、圧倒的に弱い弱い立場に置かれている借り手、債務者、消費者あるいは国民の立場を守るという、文字どおり、社会的公正あるいは社会的正義というお金では買えない価値があるということを、国会の意思として示していかなければならないと思います。

 このような背景を十分に認識した上で、政府案は、当初の特例高金利あるいは実質的な利息制限法の上限金利引き上げにつながる案を撤回し、大筋では、施行時期を除けば、民主党の提言に沿った方向で取りまとめていただいております。

 これに対して、私たちは、五項目の法律の修正案を提出させていただきました。とりわけ、非営利の小規模、ボランティアによる市民バンクの活動が存続をできるよう、登録に係る財産的基礎要件を適用しないとした提言については、与党の先生方からも賛同する声、理解を示す声が出されていたにもかかわらず実現を見なかった、大変残念であります。

 与野党で合意が形成されつつあった項目について、金融庁当局が修正案を取り入れる作業を進めず、非協力的な姿勢を示したことは遺憾であります。委員会審議におきましても、山本大臣が前向きの御答弁をいただいた後に、わざわざ事務当局がそれより後退した答弁をわざと行うなどの光景が見られました。こうした態度は、政治主導の国会運営を脅かすものであり、民主主義の根幹を揺るがすものと批判せざるを得ないのであります。(拍手)

 さらに、民主党修正案の目玉でございました、無人契約機による新たな借り入れを抑制すること、NPOバンクの財産的基礎要件の適用除外を三年後の見直しの時点で法律の本則に書き込む、これが私たちがかち取った点であります。また、債務者に対して地方公共団体にカウンセリング窓口を設置すること、資金需要者に対するセーフティーネットを拡充強化することを盛り込ませていただきました。

 政府案では、第四条、第五条、第七条の法律案の根幹部分、いわゆるグレーゾーンの廃止、出資法の上限金利の引き下げというこの根幹部分を施行前に見直すという、我が国憲政史上、内閣提出法案としてはただ一本であるという不見識な附則、見直し規定、条文がありましたが、私たちの審議によって、総量規制、みなし弁済規定の廃止、出資法の上限金利を利息制限法の上限金利まで引き下げることのこの根幹部分は見直すことはないという山本大臣の答弁をいただきました。しかし、なお少額短期貸し付けの特例高金利の創設と利息制限法の金利区分の見直しによる実質的な金利の引き上げという改悪の余地を本法案は残しています。これらについて、私たち民主党が賛成をする以上、立法者の意思として、私たち立法者の意思として、特例高金利の創設と利息制限法の実質的利上げはないということを改めて申し上げておきたいと存じます。

 貸金業制度の改革については、今般の法改正に終わらせず、金融制度の抜本改革も視野に入れ、国民的レベルで恒常的に議論を継続していくことが不可欠であります。委員会質疑あるいは附帯決議などで政府が約束した事柄については、取り組み状況を厳しく監視させていただき、金融庁などから逐一報告を求めていくことを申し上げておきたいと思います。

 さらに、法案に明記された、政府を挙げて取り組むとされた多重債務者対策本部はいかに行動していくのか、しっかりと見させていただくということを申し上げて、私の賛成討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

加藤勝信君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 第百六十四回国会、内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(河野洋平君) 加藤勝信君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(第百六十四回国会、内閣提出)

議長(河野洋平君) 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長木村太郎君。

    ―――――――――――――

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔木村太郎君登壇〕

木村太郎君 ただいま議題となりました防衛庁設置法等の一部を改正する法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果について御報告申し上げます。

 本案は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務の重要性にかんがみ、防衛庁を防衛省とするなど、防衛庁設置法、自衛隊法及び安全保障会議設置法等の一部を改正するものであり、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、防衛庁を防衛省とすること、

 第二に、防衛省の長は、防衛大臣とすること、

 第三に、自衛隊法上の内閣の首長としての内閣総理大臣の権限については変更せず、内閣府の長としての内閣総理大臣については、これを防衛大臣と改めること、

 第四に、国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動等を自衛隊の本来任務として位置づけること、

 第五に、安全保障会議の諮問事項に、内閣総理大臣が必要と認める周辺事態への対処に関する重要事項及び自衛隊の国際平和協力活動に関する重要事項を明示すること

等であります。

 本案は、第百六十四回国会に提出され、継続審査となり、去る十月二十七日の本会議において趣旨説明及び質疑が行われました。

 本委員会におきましては、十月二十七日久間防衛庁長官から提案理由の説明を聴取し、十一月九日から質疑に入り、二十四日には参考人から意見を聴取するなど慎重に審査を行い、本日質疑終局後、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、防衛庁設置法・自衛隊法改正案に反対の討論を行います。(拍手)

 戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を規定した憲法九条のもとで、歴代政府は専守防衛を建前とし、自衛隊の任務を日本防衛に限定してきました。それを根底から覆し、海外での活動を自衛隊の任務に位置づけるのが本法案の核心であります。日本の安全保障政策を大転換するものにほかなりません。にもかかわらず、そのことを正面から説明せず、国民的な議論を回避し、わずか十四時間二十分の審議で採決を強行しようとしている政府・与党に対し、断固抗議するものであります。

 自衛のための必要最小限度の実力だから憲法に違反しないというのが歴代政府の憲法見解です。だからこそ、自衛隊法三条は、自衛隊の任務を日本防衛に限定してきたのであります。憲法見解と不離一体のものとしてつくられた任務規定を変更し、海外での活動を自衛隊の任務に位置づけることは、憲法に反する行為と言わなければなりません。歴代政府の憲法見解を根底から覆し、憲法九条を真っ向から踏みにじる明白な違憲立法であり、断じて許されません。

 新たに任務とされた海外活動なるものは、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法など、米軍に対する後方支援活動そのものであります。こうした海外での米軍戦争支援を自衛隊の存立目的である任務に位置づけ、それにふさわしい体制づくりを進めるというのであります。自衛隊の編成、装備、作戦、訓練のあらゆる面で日米の軍事一体化を推し進め、まさに自衛隊を海外派兵隊、米軍戦争支援隊にするものであります。

 九・一一テロ以降、アメリカが公然と打ち出したブッシュ・ドクトリン、すなわち先制攻撃戦略は、イラク、アフガニスタンの危機的な情勢悪化と泥沼化、テロと戦争の連鎖の前に、その破綻は明白であります。にもかかわらず、いまだにブッシュ戦略につき従い、海外での米軍戦争支援を自衛隊の任務として本格化させるなど、世界の平和秩序への逆行以外の何物でもありません。

 防衛省問題では、政府が挙げてきたあれこれの理由が全く成り立たないことが短い審議の中でも明らかになりました。防衛庁長官自身が、これまでの防衛庁でも何ら支障はなかったと言い、憲法九条からあえて省にしていないと説明すれば外国の理解は得られると答弁したのであります。根拠は総崩れであります。

 たび重なる談合、水増し事件で問われてきた防衛庁、防衛施設庁の腐敗、隠ぺい体質には何らメスは入っていません。防衛施設庁談合事件を逆手にとって、省昇格を進め、米軍再編を初めとする住民無視の軍事行政を迅速かつ強力に推し進める体制をつくろうとしているのであります。断じて容認できません。

 最後に、安倍内閣が憲法改正を公然と掲げるもとで、核武装発言、非核三原則の見直し、集団的自衛権行使の解釈変更を次々と打ち出しています。こうした憲法じゅうりんの動きと一体のものと進められている本法案の廃案を断固として要求し、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 今津寛君。

    〔今津寛君登壇〕

今津寛君 私は、自由民主党の今津寛であります。

 自由民主党を代表して、議題となっております内閣提出の防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 皆さん、中田厚仁さんという青年の名を覚えているでしょうか。私は、国会でPKO法案が可決成立した年に、カンボジア内戦終結に伴う自衛隊派遣に先立ち、同志の若い議員とともにカンボジアを訪れました。中谷元さんや赤城徳彦さん、そういえば今は民主党の岡田克也さんも一緒でした。

 私たちがプノンペンのホテルに到着するや、日本人の青年たちが面会を求め、自衛隊の海外活動は憲法で禁止されているはずなので、派遣を中止してほしいと言うのです。彼らとの議論の中で、私が、選挙を妨害しようとしているポル・ポト派は銃を持っているんだ、危ない、自衛隊のように十分に訓練を積んだ人でなければいけないんだと言ったところ、ある青年が、何を言っているんですか、僕たちはボランティアでカンボジアのために来ているのに、危害を加えられるはずがありません、自衛隊ではなくて、私たち青年が日本の名誉のために頑張りますと言うのです。

 二時間ぐらい話し合ったでしょうか。結局、結論は出ずに別れましたが、夜になると、ホテルのバーから電話があり、昼間の青年がどうしてももう一度会いたいと言うのです。私は、青年と朝まで夜を徹して、ビールを飲みながら話し合いました。ボランティアの仕事が終わったら東京で会おうとがっちり抱き合って別れました。

 中田さんは国連ボランティアとして世界の平和を心から願い、カンボジアで公正な選挙を実現するために、懸命に村々を回りました。川にぶつかればフェリーを使い、フェリーで行けなくなるとカヌーを使い、カヌーが使えないときは泳いで村々を回り、公正な選挙について説き続けました。

 その青年中田厚仁さんが、任務遂行中、凶弾に倒れたのは半年後のことでした。二十五歳でした。私は、今でも彼のきらきら輝いた目と笑顔を思い出します。そして、日本人の名誉のためにカンボジアに来たのだという言葉が忘れられません。日本の名誉のためにという言葉が忘れられません。

 中田厚仁さんが殉職された地にアツヒト村という新しい村が生まれ、ナカタアツヒト小学校が創設されました。このような熱い志を持った日本の青年がいたことを、いじめ問題などで悩んでいる今の子供たちに知ってもらいたいと私は思います。子供たちはどうか志を持って力強く生きてもらいたいと願います。

 カンボジアでは、中田さんが亡くなった翌月、文民警察官として任務遂行中、岡山県警の高田晴行さんも殉職をされました。平成十五年には、イラクの新しい国づくりに取り組んでいた外務省の奥克彦さんが殉職されました。

 こうした方々のとうとい犠牲や、あわせて海外における過酷な環境の中での自衛隊の献身的な活動によって、国際社会における日本の地位と尊厳が守られているということを私たちは忘れてはならないのです。(拍手)

 そして、国家国民のために命をかける覚悟が果たして自分にあるだろうかと、私はいつも自分に問いかけています。

 そもそも、国民の安全、安心と国家の繁栄のためには、国家の平和と独立を守ることが最重要であることは申し上げるまでもありません。したがって、どの国も国を守る軍隊を保持し、その管理運営のための国防総省や国防省を持っております。特に先進民主主義国では、国を守る軍隊にはそれにふさわしい位置づけを与え、敬意を表しながらも厳格なシビリアンコントロールを行っています。その中で、我が国のみが国防のための組織を庁として格下に位置づけてまいりました。

 近年、我が国を取り巻く安全保障環境は大きく変化しております。阪神・淡路大震災に代表される大規模災害は、ある日突然、国民の生命財産が奪われる可能性があることを我々に知らしめ、また、北朝鮮による弾道ミサイル発射や核実験、九・一一米国同時多発テロに見られる国際テロ組織の跳梁ばっこは、今日、明日、明後日、いつその脅威が我が国に、私たちのふるさとに、家族に襲いかかってきてもおかしくない現実を見せつけました。

 国民の生命財産を守る危機管理体制を一層充実強化するとともに、新たな脅威に対応するために、諸外国と協力して活動していくことが国政上の最重要課題となっているのではないでしょうか。

 世界を見渡せば、どこの国においても国の防衛を担当する行政組織は省であり、我が国のように庁と位置づけている国はほかにありません。今こそ、防衛庁を防衛省に改め、世界に対して我が国の安全保障や国際平和協力に対する強い決意を明確に示さなければなりません。

 自衛隊員たちは、入隊時の宣誓文にある、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」という言葉どおり、創隊以来一千七百名以上もの殉職者というとうとい犠牲を払いながら、みずからの生命を賭し、自衛隊を非難する人々を含めたすべての国民のために、任務完遂のためひたすら汗を流してまいりました。

 その典型の一つが、イラク人道復興支援特措法に基づくイラク派遣であります。平成十六年に、私の地元旭川の第二師団が最初の派遣部隊としてかの地に赴きました。二月一日、その日は零下二十度でした。雪が降っておりました。寒い朝でした。見送りの場にあって、私は、送る者と送られる者、妻子、父母、兄弟の思い、それを受けとめて厳しい任務につく隊員の心情に思いをいたし、全員無事に元気で帰ってきてほしいと痛切に感じたことを思い出します。

 全員無事帰還を祈り、旭川での黄色いハンカチ運動が全国的に展開されました。超党派の国会議員による海外派遣自衛隊員を支援する国会議員の会も結成され、全面的にバックアップいたしました。

 イラクのサマワにおいては、危険が存在し、行動が非常に制約された環境下ではありましたが、隊員諸君は、与えられた条件のもとで任務の完遂に全力を尽くすという態度を貫いたのでございます。武士道の国、日本の侍として、隊員たちの努力は、イラクの人のみならず、国際社会からも大きな評価をいただいております。

 また、私がゴラン高原、インド洋、クウェート、インドネシアのバンダアチェなどの視察で出会った若い隊員たちは、使命の重さを認識し、自信と誇りに満ちたものでした。

 こうした長年の活動により、今や自衛隊は大多数の国民から高い評価と信頼を得るに至っております。このことは、政府による最近の世論調査において、自衛隊によい印象を持つ人が回答者全体の何と八割以上、陸上自衛隊のイラク派遣を評価する人が七割以上を占めていることにもあらわれております。国民にとって自衛隊は最も信頼できる組織の一つであり、いざというときの場合の国民のよりどころとなっております。

 我々国会議員は、国民の代表として、今こそ、我が国の独立と平和を守り、我が国の発展と繁栄を支え、日本を代表して国際平和の構築に取り組んでいる自衛隊の任務の重要性と、自衛隊に対する国民の高い信頼と期待を正当に評価すべきであります。

 これは、民主主義が成熟した先進国として当たり前のことでもあり、みずからのシビリアンコントロールに自信を持つということでもあります。最近、一部の不心得者によってその信頼が損なわれた事実は遺憾でありますけれども、不祥事件に対しては厳しく反省し、自浄作用を発揮する健全な組織の維持への努力を求めつつ、防衛庁・自衛隊に対し任務にふさわしい位置づけを与え、国家としての基本的な体制を一刻も早く整えるべきであります。そのために、今国会において本法案を成立させ、防衛庁の省移行と国際平和協力活動等の本来任務化を実現すべきであります。

 このことを強く訴え、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に対する賛成討論を終わらせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) 辻元清美君。

    〔辻元清美君登壇〕

辻元清美君 私は、社民党を代表して、反対討論を行います。(拍手)

 今日まで防衛庁を庁としてきたのは、戦前の軍国主義の反省に立ち、戦後の日本の土台をつくってきた平和主義の積極的な具現化であったということを、皆さん、今こそ思い起こすべきです。諸外国並みにといいますが、むしろ、平和国家としての意思をあらわすために、あえて省ではなく庁にしているのだと胸を張って世界にアピールした方が日本のためになり、変える必要はありません。

 一方、防衛庁の実態を見ると不祥事が絶えません。情報流出、薬物、誤射、無断海外渡航、そして最も憂慮すべきは、自衛隊員の自殺者が近年は年間百人を超えているという現実です。また、防衛庁の談合は三十年前から延々と組織ぐるみでやっていたことがわかりました。きょうも航空自衛隊の情報流出が発覚するというありさまです。士気を高めるために省にといいますが、まず、みずからの組織改革をすることが先ではないでしょうか。

 自衛隊法の本来任務に海外での諸活動を加える点は、自衛隊の基本的任務を根底から変えることにほかなりません。本来任務を専守防衛としてきたのは憲法との整合性を図るためであり、状況に流されて変えられるような次元の話ではありません。海外任務について「別に法律で定める」とされ、海外派遣の恒久法制定への意図も透けて見られます。

 今必要なことは、海外での自衛隊の活動を丁寧に検証することです。

 人道復興支援は、今では、軍事組織による大がかりな活動の時代ではなく、より機能的な非軍事組織にシフトしているのが国際的な流れです。

 また、現在、航空自衛隊は内戦状況のバグダッドに物資を運んでいます。しかし、その活動実態は明らかにされておりません。人道復興支援といいながら、なぜ明らかにできないのでしょうか。アメリカでさえ、イラク戦争は間違っていたという声が今高まっております。そのイラク戦争に自衛隊を今なお派遣中であり、その総括もなされない中で本来任務にしようというのは、余りにも愚かです。

 そして、この法案だけではなく、外務大臣の核保有議論発言や安倍総理の集団的自衛権の解釈見直し発言は、対立をつくり出し、戦争を呼び込むという安倍路線の本質のあらわれではないですか。議論は自由だと論理をすりかえるのは見苦しいばかりです。(発言する者あり)

 最後に申し上げたいと思います。

 今、やじで大きく声を飛ばしてはりますけれども、まるでこの状況は大政翼賛会みたいじゃないですか。反対の意見を封じ込めるのはやめてください。

 私は、最後に、国会を大政翼賛会にしないためにも、声を大にして反対と訴えて、私の反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 笹木竜三君。

    〔笹木竜三君登壇〕

笹木竜三君 民主党の笹木竜三です。

 私は、ただいま議題となりましたいわゆる防衛庁省移行法案について、民主党・無所属クラブを代表して、賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 国民の生命と財産を守るという仕事に携わる方々には、それにふさわしい環境で働いていただきたい。しかし同時に、その方々には、国民からすればより高いモラルと規律を期待していきたい、これも当然のことだと思います。

 この法案が単なる看板のかけかえに終わるのか、名実ともに防衛庁が新しく生まれ変わることができるのか、その一点をずっと考えて、この法案の審議に臨んでおりました。

 討論の冒頭ではありますが、極めて遺憾だったことは、前回の調達実施本部の不祥事を上回る形で発覚した防衛施設庁による官製談合問題について、政府は当初、民主党が事件の原因解明のために求めた資料提出にも、まさにびっくりと言わざるを得ない閉鎖的な対応をとってきたことです。

 これまでの再発防止策は全く機能せず、二〇〇〇年、防衛庁調達本部による不祥事、二〇〇五年、防衛施設庁による官製談合問題と、不祥事、官製談合が続いただけでなく、組織的証拠隠滅までもが繰り返されてきました。

 また、防衛施設庁官製談合問題についての二つの報告書、「防衛施設庁入札談合等に係る事案の調査について」と「防衛施設庁入札談合等再発防止に係る抜本的対策報告書」は、まるで国会の議論を拒んでいるかのごとくに、それぞれ通常国会会期末の二日前、三日前に報告をされました。政府の国会軽視の姿勢を糾弾しなければならないのは当然のことです。防衛庁は、抜本的な体質改善、徹底した情報開示を行わない限り、まだまだ本当の改革はあり得ないと断言します。

 もとより、民主党としては、防衛庁が日本の安全保障を担うべき組織であり、その機能や規模にふさわしいあり方を議論していくことには異論はないところですが、同時に、本法案への対応を決するに当たっては、以下問題点に対する検証が不可欠、重要であるとの姿勢で審議に臨みました。

 第一に、シビリアンコントロールの重視です。

 確かに、総理の最高指揮監督権、内閣の国会に対する連帯責任、両院の議決による自衛隊関連の法律、予算の成立など、国会によるシビリアンコントロールは制度化されてはいます。また、事態対処法等の有事法制やPKO等、個別法、時限法による国会承認手続も法定はされています。

 しかしながら、実態としては、これまでの政府の説明責任の欠如や隠ぺい体質など、シビリアンコントロールの形骸化を示す事例が極めて多いのです。このような批判が絶えない現状をどう受けとめ、省移行を契機に具体的な改革が図られていくか、今後も厳しく注視していかなければならないと感じています。

 例えば、ドイツにおいては、危機が直前に迫っていることの確定は連邦議会がこれを行い、すべての連邦軍隊の国外への派遣決定は原則直前の連邦議会の承認が必要です。また、アメリカ議会は、ベトナム戦争の反省を契機に、戦争権限法を定めたことにより議会の関与を強めました。私も、内閣と国会が責任と権限を共有することで、シビリアンコントロールを強化すべき方向性をとるべきだと考えています。

 第二に、国際平和協力活動等の本来任務化についての懸念です。

 民主党も、国連安保理決議に基づくPKO等の国際平和協力活動は重要だと考えますが、一方で、特にイラク特措法のように、自衛隊の派遣の根拠に問題のある活動があるのも事実です。

 民主党は、イラク特措法、テロ特措法に反対しております。また、何度も何度もイラク特措法廃止法案を提出してきました。派遣の根拠となったイラクにおける大量破壊兵器の存在や密接とされたアルカイダとの関係が否定される、それにとどまらず、イラクは今、内戦、泥沼と称されるほど悪化している現状から、今後とも民主党の姿勢にいささかも変更がないことを付言しておきます。

 第三に、北朝鮮情勢等を踏まえた国内外の懸念にどうこたえるかです。

 北朝鮮のミサイル発射、地下核実験など、我が国を取り巻く安全保障環境は大きな変貌を遂げています。省に移行すれば、隊員の士気は言うに及ばず、対外的にも責任が重くなります。

 核を持たないことの強みをどう生かせるか、核を持たないことの弱みをいかに補い得るか。真剣に議論するつもりならば、堂々と委員会の場で議論すればよいのです。しかし、単なる軽口、あるいは衝動的な核保有発言、さらには、重要閣僚が核に関する不見識な発言をすれば、核不拡散体制の信頼性を揺るがし、我が国の国益を損ねることにしかならないのは明らかです。また、国民の生命を守るという視点に徹して、真に危機を想定するのだとすれば、核シェルターなど、国民保護の視点からの議論もあわせて行うべきだと考えます。

 薬物問題四十七件、無断海外渡航事案九百九十三件、自衛隊員の自殺者数七百七十九名。今挙げたのは、過去十年間、防衛庁で起こった不祥事案の数です。さらに、繰り返される機密情報流出事案、これは採決日の本日もメディアで報道をされています。附帯決議にもあるように、外部人材のトップ査察官への登用などによる、抜本的改革のためのチェック機関をぜひとも設置するべきだと考えます。

 国民の生命と財産を守るという崇高な職務に携わる方々には、ふさわしい環境で働いていただくべきです。だからこそ、国民が高いレベルの規律やモラルを求めるのも当然のことであると言えます。

 今回の防衛庁の省への昇格が、単なる看板のかけかえや焼け太りに終わるのではなく、名実ともに、我が国の防衛を担い、国民の生命と財産を守る行政の府になるためには、その組織体質の改革が不可欠です。我が国の防衛にとって、国会の責任は甚だ重いものであることを述べ、私の賛成討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 東順治君。

    〔東順治君登壇〕

東順治君 私は、公明党を代表し、議題となりました防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、自由民主党、そして民主党と同じく、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 本法律案は、外交、財政と並ぶ国の重要な基本政策である防衛を所管する防衛庁を、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという任務の重要性にかんがみ、内閣府の外局から各省と横並びの防衛省に移行させ、重要政策を担う責任ある行政組織としての位置づけを明確にすること。そして、これとあわせて、自衛隊の国際平和協力活動等を、これまでの付随的な任務から本来任務へと位置づけるというものであります。この本来任務化は、我が国の国際平和に対する強い取り組みの意思を国際社会により大きくメッセージとして発信することになるでありましょう。

 以下、主な賛成の理由を申し述べます。

 まず第一に、我が国の危機管理体制をよりよきものとするため、防衛庁から防衛省への移行が必要だということです。防衛庁が担う国の防衛という任務と役割は、国家の存立、国民の生命財産に直結するからであります。そのためには、現行の、閣議も求められず、諸外国と同格ではないエージェンシーという内閣府の外局から、しかるべき責任を有する省となり、専従の主任の大臣、すなわち防衛大臣を置き、法律の策定、予算のあり方、自衛隊の運用などの政策立案をきちんと行い得る体制を整えることが必要だと考えるところであります。

 しかし、さはさりながら、同時に、これまで国民の間には省移行に伴う不安や懸念があることも、見落とせない大きな事実でありました。そこで、法案審議では、専守防衛に徹する、シビリアンコントロールを確保する、非核三原則を堅持する、軍事大国にはならない等々、我が国の安保政策の基本に一切変更がないことが、防衛当局に対して再三にわたって確認をされたのであります。もちろん、集団的自衛権の行使を認めないなどの憲法の政府統一見解に変更がないことも、当然のことながら確認されたことは言うまでもありません。

 私はまた、これに加え、防衛庁に対しまして、直接国民への説明の場を積極的に設けるべきであるとの提案もいたしました。結果、東京、大阪、名古屋、旭川、長崎の全国五カ所で公開の説明会が実施され、人道復興支援活動でイラクに派遣された自衛隊員の涙ぐましい献身的な活動が報告されるなど、どの会場でも実りある説明会が行われたと聞いております。積極的に国民に説明をしていくことの大切さを、私は改めて痛感したものであります。これらにより、国民の疑問や不安は大きく払拭されたものと私は考えます。

 その第二の理由は、国際社会の平和と安定に積極的に取り組むため、国際平和協力活動等の本来任務化が必要だということであります。

 私たち公明党は、PKO協力法の施行以来、一国平和主義からの脱却を進め、国際協調の観点から、憲法の枠内で自衛隊を活用した国際平和協力活動等を支持し、推進をしてまいりました。そして、ゴラン高原などでの国連平和維持活動、スマトラ沖の大津波やジャワ島地震での国際緊急援助活動、インド洋でのテロ対策のための補給活動、イラクでの人道復興支援活動等々が展開されるなど、この間、既に二十回の活動に、約三万人に及ぶ自衛隊員が派遣されてきたのであります。

 こうした活動における自衛隊員の献身的な行動ぶりについては、国内外で回を追うごとに高い評価を得てまいりました。一例として、本年二月の内閣府の世論調査の数字を挙げれば、国際平和協力活動の今後の取り組みに対して、国民の約八五%もの支持を得るに至っております。大変大きな期待感があるのであります。

 今後、こうした活動が、本来任務とすることによって、厳しい環境の中で活動する自衛隊の皆さんは一層の自覚と誇りを持って職務に専念することになるでありましょう。このたびの改正を歓迎するものであります。(拍手)

 以上、本法案に賛成する主な理由を申し述べました。防衛庁が、速やかに防衛省に移行し、我が国と国民の安全、安心のために、そして国際社会の平和と繁栄のために一意専心し、今後ますますの成果を上げていくことを期待いたしまして、私の討論を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 糸川正晃君。

    〔糸川正晃君登壇〕

糸川正晃君 国民新党の糸川正晃です。

 私は、国民新党・無所属の会を代表して、議題となっております内閣提出の防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 北朝鮮による弾道ミサイル発射や核実験の実施、九・一一米国同時多発テロに見られるように、近年、大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散の進展と国際テロ組織の活動は国際社会全体に対する大きな脅威となっています。こうした我が国を取り巻く安全保障の大きな変化に対応するためには、我が国の危機管理体制を一層充実強化する必要があります。

 本法案により、防衛庁を省と位置づけ、国の防衛という国家の存立にかかわる重要な任務に専任する主任の大臣を置くことは、まさにこうした時代の要請にこたえるものと考えます。

 また、近年、我が国の平和と安全を確保するためには、我が国を含む国際社会の平和と安定を実現していくことが不可欠となっています。

 これまで自衛隊は海外においてさまざまな活動を実施してきましたが、その成果に対しては国際社会から高い評価が寄せられています。我が国として、引き続き国際社会の平和と安定のための取り組みに主体的かつ積極的に対応していくためには、本法案により自衛隊の任務における国際平和協力活動等の位置づけを見直し、さらなる体制整備に努力していくことが必要不可欠と考えます。

 政府からは、本法案の成立によっても、専守防衛、非核三原則、シビリアンコントロールなど我が国の防衛政策の基本については一切変更されない旨の答弁がなされております。また、本法案では、自衛隊に関する責任と権限を有する主任の大臣を置くこととされ、国際平和協力活動や周辺事態への対処が安全保障会議の諮問事項として明示されております。したがって、本法案によりシビリアンコントロールの一層の徹底が図られるものと考えます。

 昭和二十九年に発足し、一昨年創立五十周年を迎えた防衛庁・自衛隊は、旧軍に対する国民の反感もあり、その存在自体についてさえ国民の理解が十分得られない時期が続きました。しかしながら、自衛隊員は、そのような状況にもくじけることなく、みずからの任務に対する強い使命感を胸に、日夜厳しい訓練に耐え、国内外のさまざまな現場において黙々と我が国の平和と安全のために尽くしてきました。こうした自衛隊員の長年の努力により、今や自衛隊は国民の多くから高く評価され、大いに頼りにされる組織となっているのであります。

 我が国国民の生命と財産を守るため、国内外において困難な諸活動に従事してきた自衛隊の皆さんの献身的な努力にこたえ、今後彼らの任務遂行を一層円滑ならしめるような体制を整えるためにも、今国会において本法案を成立させ、防衛庁の省移行を実現すべきであります。

 以上で、本法律案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       国土交通大臣 冬柴 鐵三君

       国務大臣   久間 章生君

       国務大臣   塩崎 恭久君

       国務大臣   山本 有二君


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