衆議院

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第12号 平成19年3月8日(木曜日)

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平成十九年三月八日(木曜日)

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  平成十九年三月八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名

議長(河野洋平君) 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名を行います。

加藤勝信君 中央選挙管理会委員及び同予備委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(河野洋平君) 加藤勝信君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、中央選挙管理会委員に

      坂田 桂三君    谷合 靖夫君

      後藤  茂君    足立 良平君

   及び 鳥居 一雄君

を指名いたします。

 また、同予備委員に

      元宿  仁君    今井 正彦君

      西川  洋君    尾崎 智子君

   及び 長谷雄幸久君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣柳澤伯夫君。

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 雇用保険法等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律において、労働保険特別会計については、雇用保険三事業及び労働福祉事業について廃止を含めた見直しを行うこと、また、雇用保険の失業等給付に係る国庫負担のあり方について廃止を含めて検討することとされており、船員保険特別会計については、必要な措置を講じた上で労働保険特別会計に統合するものとされているところであります。

 このため、これら同法の規定を踏まえた特別会計改革に必要な措置を講ずるとともに、雇用保険制度の直面する課題に対応するための見直し等を行うこととし、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、雇用保険について、失業等給付のうち高年齢雇用継続給付に係る国庫負担を廃止するとともに、平成十九年度以降の当分の間、失業等給付に係る国庫負担について、国庫が負担することとされている額の百分の五十五に相当する額を負担することとし、また、雇用保険三事業のうち、雇用福祉事業を廃止することとしております。

 また、雇用保険の失業等給付に係る保険料率の弾力的な変更幅を千分の二から千分の四に拡大する等の見直しを行うとともに、被保険者資格と基本手当の受給資格要件を一本化し、育児休業給付の給付率を暫定的に引き上げるほか、特例一時金や教育訓練給付についての所要の見直し等を行うこととしております。

 第二に、船員保険制度について、雇用保険制度に準じた見直し等を行うほか、労働者災害補償保険制度及び雇用保険制度に相当する部分をそれぞれの制度に統合し、それ以外の部分を全国健康保険協会に移管することとしております。

 第三に、労働者災害補償保険制度について、労働福祉事業のうち労働条件確保事業を廃止し、事業名を変更する等の見直しを行うこととしております。

 最後に、この法律の施行期日については、平成十九年四月一日としておりますが、雇用保険の適用及び給付内容の見直しは平成十九年十月一日、船員保険の統合に関する事項については平成二十二年四月一日から施行すること等としております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。吉野正芳君。

    〔吉野正芳君登壇〕

吉野正芳君 自由民主党の吉野正芳です。

 私は、ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、公明党を代表して質問をいたします。(拍手)

 戦後、我が国は、奇跡の復興を遂げたと言っても過言ではありません。復興の原動力になったのは、額に汗して働いた日本国民の努力であります。国も、あらゆる施策を日本の再建、発展のために講じてきたところであります。

 その一つに、労働行政の整備がありました。

 昭和二十一年の労働組合法の施行を皮切りに、昭和二十二年には労働省が発足し、労働基準法、職業安定法という労働行政のいわば二本柱となる法律が制定され、加えて、労働者のセーフティーネットとなる労災保険制度と失業保険制度が創設されました。まさに、昭和二十二年は戦後労働行政元年と言っても過言ではないでしょう。

 ことしは、それからちょうど六十年の節目の年に当たります。この記念すべき年に、種々の雇用・労働法制の改正が予定され、まさに今国会は雇用・労働国会と位置づけられると思います。その第一番目の法案が雇用保険法等の一部を改正する法律案であります。厚生労働大臣に、その趣旨、目的をお伺いいたします。

 今回の改正法案の中で、国民が最も関心がある事項の一つは、雇用保険料の引き下げであります。

 この雇用保険料の引き下げは、その成果を国民に還元する意味で、大変有意義なものと考えますが、失業等給付に係る保険料の引き下げにより、労使の保険料負担は全体でどれくらい軽減できるのか、また、失業等給付の保険料率引き下げのための改正内容を厚生労働大臣にお尋ねいたします。

 今回の改正法案には、国庫負担の廃止、削減もその内容に含まれております。

 行政改革推進法は、雇用保険の国庫負担のあり方について、廃止を含めて検討する旨規定されております。雇用保険制度の国庫負担は基本手当の二五%を負担しており、失業は政府の経済政策、雇用対策と無縁ではなく、政府もその責任の一端を担うべきであるとの考え方によるものとされております。このような国庫負担のあり方を検討するには当然慎重に行われたものと考えますが、今回、このような国庫負担を廃止、削減する理由及び内容について、厚生労働大臣にお尋ねをいたします。

 先ほど私は昭和二十二年は戦後労働行政元年と申し上げましたが、我が国憲政史上重要な年でもあります。それは、日本国憲法が施行された年であります。そして、当時の失業保険制度は、この憲法第二十七条第一項「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」という、いわゆる勤労権を保障した規定を具現化したものであります。この勤労権を行使せんがため、人々は失業状態から何とか脱しようと職を求める、つまり求職活動を行います。これをサポートするのが雇用保険制度であります。

 私は、この憲法第二十七条第一項は、ある意味、厳しい規定だと思います。つまり、働く意思がない、言いかえれば、勤労権を行使したくない国民までは関知しないとうたっているのであります。こうしてみると、雇用保険制度による失業者に対する給付は、働く意思のある方々にのみ給付し、かつ、できるだけ早く勤労権の行使を可能とする、つまり早期再就職していただくことが重要であると考えます。

 このように、雇用保険制度を憲法の精神にのっとり運営していくためには、国が責任を持って失業認定と職業相談、職業紹介を一体的に実施することが必要であると考えますが、厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

 次に、少子化対策として、育児休業給付の拡充があります。具体的には、休業前賃金の四〇%を五〇%に引き上げる内容となっておりますが、平成二十二年三月までの暫定措置となっております。

 そこで、今回の育児休業給付の給付率の引き上げについて、暫定措置として実施する理由も含め、その内容と少子化対策に対する厚生労働大臣の意気込みをお聞かせください。

 最後に、雇用保険制度は我が国の産業社会を支える大事なセーフティーネットであり、その健全な運営は何よりも重要なものであります。また、今こそ日本の将来を担う人材の育成確保を図るべきだと思います。雇用保険制度の健全な運営とその事業の活用により、活力ある日本社会の構築をお願いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 吉野正芳議員にお答え申し上げます。

 まず第一のお尋ねは、法案の趣旨、目的でございました。

 この法案は、先ほど趣旨説明で御説明申し上げましたとおり、まず、行政改革推進法におきまして、雇用保険三事業等について廃止を含めた見直しを行うこと、また、失業等給付の国庫負担のあり方についてこれまた廃止を含めて検討すること、このような規定がなされていることを踏まえまして、また、雇用保険制度の安定した制度運営を確保し、直面する諸課題に対応するために所要の改正を行っているものでございます。

 次に、保険料の引き下げについてお尋ねがありました。

 今回の改正法案では、失業等給付の保険料につきましては、現在、雇用保険の財政状況が好転している一方で、今後の経済情勢の動きによっては給付が大幅に増加する可能性も否めないところでございますことから、弾力条項の変動幅を拡大することとし、これを前提に、来年度の保険料率を一・六%から一・二%に引き下げることを予定いたしております。また、この保険料率引き下げによりまして、労使で約六千億円の負担軽減を見込んでいるところでございます。

 次に、国庫負担の廃止、削減についてお尋ねがございました。

 今回の改正法案におきましては、行政改革推進法の規定や雇用保険財政の現状等を踏まえまして、さらに、御指摘の雇用対策に関する国の責任も念頭に置きつつ、雇用保険制度の安定的な運営を確保することができることを前提にいたしまして、国庫負担の廃止、削減を検討いたしました。この結果、高年齢雇用継続給付に係る国庫負担を廃止するとともに、当分の間、国庫負担を本来の負担額の五五%に引き下げることといたした次第でございます。

 次に、雇用保険の失業認定と職業相談、職業紹介の一体的な実施についてのお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、失業者への雇用保険の給付を適切に行い、かつ、受給者に早期に再就職をしていただくためには、国が責任を持って失業認定と職業相談、職業紹介を一体的に実施することが必要不可欠であると考えております。今後とも、制度の適切な運営を図ってまいります。

 育児休業給付の給付率の引き上げについてお尋ねがありました。

 今回の改正法案におきましては、少子化対策が我が国の喫緊の課題であることも勘案し、育児休業給付の給付率を五〇%に暫定的に引き上げることといたしておりますが、引き上げに当たっては、雇用保険制度として最大限の対応を図ることとし、かつ、雇用継続給付としての趣旨を徹底させるため、育児休業終了後の給付割合を一〇%から二〇%に引き上げることといたしております。

 暫定措置といたしましたのは、子ども・子育て応援プランにおきまして、平成二十一年度までの期間において少子化対策に重点的に取り組んでいくこととされていることなどを踏まえたものであります。

 少子化対策に取り組む決意についてお尋ねをいただきました。

 少子化対策につきましては、国民が希望する結婚や出産を実現できる環境を整備し、希望と現実の乖離をできるだけ小さくしていくことが課題であると考えております。

 このため、先般発足した「子どもと家族を応援する日本」重点戦略検討会議におきまして、若い方々が結婚したいけれども結婚できない、子供を持ちたいけれどもちゅうちょしてしまうのはなぜなのかという点に焦点を当てて、制度、政策、意識改革などあらゆる観点から、効果的な対策の再構築、実行に向けて全力で取り組んでいくことといたしております。私も、この方向で懸命の努力をいたしていく所存でございます。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 田名部匡代君。

    〔田名部匡代君登壇〕

田名部匡代君 民主党の田名部匡代です。

 ただいま議題となりました政府提出の雇用保険法改正案について、民主党・無所属クラブを代表し、質問いたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、このところ、与党による強引な国会運営に対し、強く抗議をいたします。

 巨大与党は、数の力に物を言わせ、予算案や国税、地方税関連法案を委員長職権を濫用して強引に通したのに引き続き、きょうもまたこの本会議を職権濫用で強引に進めております。まさに数の暴挙と言わざるを得ません。安倍総理は、松岡農林水産大臣の事務所費問題を初めとする政治と金の問題や格差問題など、都合の悪い問題を覆い隠すためにこのような暴挙を始めたとしか思えません。重ねて強く抗議し、安倍総理と与党の猛省を促したいと思います。

 それでは、質問に入ります。

 働く人の三分の一が非正規雇用である現状を考えたとき、格差を是正、縮小するものとして大事なことは、非正規雇用者が正規雇用への登用機会を得られることだと考えます。しかし、今国会で明らかになった経済財政諮問会議の御手洗氏が会長を務める企業の偽装請負は、その方向性とは全く逆行するものであります。偽装請負はほかの企業でも発覚しておりますので、しっかりとした原因究明をし、今後の対策を講じる必要があります。

 民主党は、参考人招致をし、徹底して審議を行うべきだと主張してきました。それもうやむやなままとなっております。雇用問題を担当する厚生労働大臣として、この御認識をまず初めにお伺いしたいと思います。

 現在、景気が回復し、企業の売り上げに対する利益率が過去最高と言われてはおりますが、労働分配率は低下し、消費も伸びておりません。特に、地方においては、景気回復の実感がないだけではなく、努力しても報われないのが現状であります。

 私の地元青森県では、全国で一番平均給与が低く、しかも五年前と比べ一万二千円も給与が下がっています。有効求人倍率は〇・四六倍、失業率も六・九%と最も苦しい県の一つであります。また、高校卒業した就職希望者で県内に就職しているのはおおよそ五五%、働く場所がない若者や、家族を残して出稼ぎに出る方々、多くの方々が地元に残りたくても残れずにふるさとを離れ、働きに出ているのが現状です。

 この厳しさは何も青森県に限ったことではありません。厚生労働省が発表した平成十八年賃金構造基本統計では、五年前との比較で、給与が上がっているのは東京を初めとする九県のみで、あとはすべて下がっています。地域間だけではなく、正社員と非正社員の格差、生活保護水準以下の暮らししかできないワーキングプアの問題など、格差は以前に増して広がっています。

 このように不安定な雇用状況の中、雇用保険制度は働く人にとって唯一かつ身近なセーフティーネットであるはずです。ところが、現行制度は、週二十時間以上という一定の労働条件、一年以上の雇用が見込まれなければ加入することはできません。

 もちろん、給付を当てにしてみずから離職、転職を繰り返すケースは抑制する必要があります。しかし、冒頭申し上げましたように、働く人の三分の一が非正規雇用であるのに対し、この雇用保険制度が格差是正に対するセーフティーネットとして十分機能しているとは思えませんが、これで十分に機能していると厚生労働大臣は御認識でしょうか、答弁を求めます。

 次に、国が担うべき責任についてお伺いします。

 平成十八年度の雇用対策関係費は、予算全体の九割が労使折半の雇用保険料と経営者拠出の労災保険料から成り立っており、一般会計からの拠出は全体の一割にも満たない貧弱なものであります。しかも、一般会計といっても、そのほとんどが雇用保険料の国庫負担金であり、純粋な雇用対策費用は四百億円にも及びません。

 今回、政府は失業給付の国庫負担を四五%減でとどめたものの、当初は全廃を掲げ、国の担うべき責任を放棄する姿勢を示しておられました。国庫負担が不要だという議論は、雇用政策に国は責任を持つ必要はないということなのでしょうか。財務大臣の答弁を求めます。

 これまで事業者と労働者が積み上げてきた雇用保険料をさんざん無駄遣いしておきながら、また大きな損失を出しておきながら、保険料の積立金が健全だから国庫負担が不要という議論があったように聞いております。それはまことに勝手な話であります。多くの国民は、無駄遣いした保険料を全額返してほしいと思っているに違いありませんし、こんなことは、普通であれば責任が問われるべき問題です。これまでの責任は一体だれにあるとお考えでしょうか。今後同じようなことが発覚した場合、だれがどう責任をとるべきだと思われますか。十分な反省のもとで、国の責任を明確にしておく必要があります。厚生労働大臣にお伺いをしておきたいと思います。

 また、そもそも、全廃の議論をする前に、まずは労使が支払う保険料を今回引き下げ分よりももっと引き下げるべきだとは思わなかったのでしょうか。これも厚生労働大臣の答弁を求めます。(拍手)

 次に、失業給付手当についてお伺いします。

 今回の改正で、解雇、倒産等による非自発的失業者の受給要件は現行十二カ月の加入期間から六カ月となり、一部の短期労働者にとっては一歩前進ですが、自発的失業者の受給資格要件は現行十二カ月のままとなっています。

 例えば、更新ができると言われて働き始め、十一カ月目にして契約更新を拒絶された場合について、非自発的失業者と認定されるのでしょうか。何らかの対応策がおありなのか、厚生労働大臣、お答えください。

 また、受給要件が六カ月になった途端に、これまで雇用契約が六カ月だった短期労働者の契約期間がさらに短縮される事態が発生することが考えられます。そうであれば、今のうちに対策を講じる必要があるわけですが、これも厚生労働大臣に御答弁を求めます。

 次に、特例一時金について伺います。

 これまで、積雪寒冷地など特殊な気候条件により冬場の仕事の確保が厳しい地域では、季節的に雇用される労働者に対して五十日分の特例一時金が支給されてきました。それが、今回の改正案では、特例一時金を三十日分とする、ただし、当分、四十日相当とするとされております。この当分とは一体どのぐらいの期間をいうのか、なぜ三十日分としたのか、その根拠を、厚生労働大臣、お答えください。

 季節労働を余儀なくされ、特例一時金を受給している人は、青森県だけでも三万六千人を数え、全国では二十六万人もいます。季節労働者は特に北海道や東北といった雪国に多いわけですが、今回の特例一時金の減額で季節労働者の生活が一層苦しくなることは考えられませんか。厚生労働大臣、お答えください。

 先日、遠く北海道、東北の季節労働者の皆さんがお見えになり、今でもぎりぎりの生活をしている、これ以上一時金を減額されると生活していけないと訴えておられました。私は、冬場の必然的な解雇の責任を労働者のみに負わせるような方法は即刻見直すべきだと考えますが、今回どういう理由で日数が引き下げられたのでしょうか。大臣は雪国の生活実態を御存じなのでしょうか。また、直接季節労働者の声を聞かれたことがあるのでしょうか。厚生労働大臣、お答えください。

 特例一時金は減額するものの、地域雇用の推進をするとのお考えもあるようです。本来、減額する前に雇用の確保をすべきだと思いますが、これまでどのような雇用創出の政策を打ち出してきたのでしょうか。また、その成果はどうだったのでしょうか。経済産業大臣の具体的な御答弁を求めます。

 近年、マルチジョブホルダーと呼ばれる就業形態がふえていますが、先日、私も地元で、朝は新聞配達、昼はスーパー、夜は居酒屋、そこでバイトをこなす母子家庭のお母さんからお話を伺いました。自分の将来、子供の将来に対して不安を切々と話しておられました。このように、複数の職場を合算して週二十時間以上働いている人たちへの雇用保険制度適用についても検討すべきではないかと思います。厚生労働大臣の御所見を伺います。

 次に、教育訓練給付についてですが、短時間労働者は、勤務先の会社が教育訓練を提供する機会も実態として少ないため、みずからが企業外で教育訓練を求めなければなりませんが、平成十七年度に教育訓練給付を利用した短時間労働者は全体のわずか三・四%にすぎませんし、最も教育訓練給付を必要としている非正規雇用の人たちは教育訓練給付対象外です。

 さきに申し上げましたが、労使折半分の保険料引き下げに当てるわけでもなく、ただ単に国庫負担を減らすというのであれば、非正規雇用など教育訓練をより必要とする若年層に再配分し、格差是正につなげるべきだと思いますが、そうした検討がなされているのでしょうか。厚生労働大臣、お答えください。

 私の地元青森県でも、本当に苦しみの声を上げている方がたくさんいます。地方は本当につらい思いをしています。天下りもなければ、二、三年勤めて何千万という退職金をもらえる職場もありません。そういう雇用先がある方々には無関係のことかもしれませんが、他の国民にとって雇用保険制度は極めて重要な役割を果たしております。しかし、今回の政府提出の改正案は、格差是正に真正面から取り組んでいないどころか、逆行した改革案だということを御指摘させていただき、御答弁によっては再質問をさせていただくことをお伝えし、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 田名部議員にお答え申し上げますけれども、実は、きょうの御質問については事前のお話が全くない上に、この議場における声も、必ずしもそちら側でうまく聞こえるという構造にないわけでございます。

 そこで、私は、今聞こえた限りのお話につきましてお答え申し上げますので、ぜひ、その後、もし補足の質問があれば、それを承って、また改めて答弁に立たせていただきたい、このように思います。

 最初は、偽装請負につきましてお話がございました。

 労働者派遣法に違反する、いわゆる偽装請負につきましては、安全衛生等の事業主責任の所在があいまいになり、労働災害の発生につながるなどの問題がある、私どもは、大変問題がある、このように認識をいたしております。

 このため、平成十六年四月から、監督指導業務をハローワークから労働局に集約いたしまして、専門的に対応する体制をつくり上げまして、この監督指導の業務の強化を図っているところでございます。

 昨年九月以降、偽装請負の防止、解消を図るため、請負事業主、発注者等に対する広報、集団指導の実施など周知啓発の強化、それからまた、職業安定行政と労働基準行政の間での情報共有の徹底、それから共同監督の計画的実施を初めとする監督指導の強化、さらには、死亡災害等重篤な労働災害を発生させた悪質な違反が認められた場合には、発注者に対する司法処分、請負事業主に対する刑事告発、行政処分といった厳格な対応などを進めているところでございます。

 このような取り組みを通じまして、今後とも違法事案の防止、解消に最大限の努力を傾けてまいりたい、このように考えます。

 次に、地域間格差の是正についてお話がございました。

 雇用情勢が全体としては改善する中で依然として改善がおくれている地域があり、地域差が見られることは我々も承知をいたしているところでございます。このため、雇用情勢が厳しい地域を重点的に支援するため、今国会に、地域雇用開発促進法の一部改正法案を提出しているところでございます。

 これに基づきまして、事業所の設置、整備に伴い地域の求職者を雇い入れる事業主等への助成措置を講ずるとともに、地域が提案する事業構想の中から雇用創造効果が高いものを選抜して、事業の実施を委託することといたしております。

 また、地域における雇用の確保と地域の産業振興とは密接不可分な関係であります。相互に連携協力して実施していくことが必要でありますので、地域雇用開発促進法の改正案におきましても、地域雇用対策と産業の集積の形成及び活性化を促進するための措置等との連携を図ることといたしております。

 これらの措置によって、地域における雇用対策と地域活性化の取り組みとの連携を図りながら、今後とも地域における雇用機会の創出を支援していきたい、このように考えております。(拍手)

 次に、期間雇用者の受給資格要件の見直しについてお尋ねがありました。

 期間雇用者につきましては、有期労働契約の締結に際して契約の更新があることが明示されていた場合、労働者の希望にかかわらず一年未満で契約更新がなされなかったとき、これらの場合については、解雇、倒産等による離職者と同様、受給資格要件を六カ月とすることとしており、期間雇用者に対しては十分な配慮を行うことといたしております。

 雇用対策に係る国の責任についてのお尋ねがありました。

 国庫が失業等給付に係る費用の一部を負担しているのは、失業が政府の経済政策、雇用政策と無縁ではなく、政府もその責任の一端を担うべきである、このような考え方に出るものでございます。今回の国庫負担の削減は、こうした国の責任をも踏まえ、基本的な国庫負担の枠組みは残しながら、当分の間、本来の負担額を引き下げることとしたものでございます。

 次に、保険料の引き下げについてもお尋ねがございました。

 今回の改正法案では、失業等給付の保険料については、現在、雇用保険の財政状況が好転している一方、今後の経済情勢の動きによっては給付が大幅に増加する可能性も、これは否定できない、こういう考え方から、弾力条項の変動幅を拡大することとしながら、これを前提に、来年度の保険料率を一・六%から一・二%に引き下げることと予定した次第であります。また、この保険料率引き下げによる、労使で約六千億円の負担軽減を見込んでいるところであります。

 青森県の就業者数と雇用保険の被保険者数が違うのではないか等々、青森県の経済の状況、雇用の状況についてのお話がございます。

 御指摘の就業者数には、自営業者や会社の役員等、雇用者でない就業者が含まれておりますので、またさらに、雇用保険の適用対象とならない公務員等も含まれておりますところから、雇用者の数が就業者に比べて非常に少ない、こういう事情が青森県において見られるのではないか、このように考えているところでございます。

 教育訓練給付の受給要件の緩和についてお尋ねがございました。

 教育訓練給付については、平成十五年の改正により、被保険者期間が五年以上であることから三年以上であることに要件を緩和しておりますが、依然として、若年者が比較的この制度を利用しにくいとの声がございます。

 今回の改正におきましては、暫定的に、被保険者期間が一年以上の者について、初回に限り教育訓練給付を受けることを可能とすることとしたものでございまして、これによりまして、若年者の自発的な職業能力開発を促し、若年者の雇用の安定に資するものと考えております。

 なお、暫定措置の期間については、若年者の雇用失業情勢の動向や当該要件緩和の効果の検証を踏まえ、適切な時期までとすべきであると考えております。

 あとの御質問がもしありとすれば、それはまた再質問をいただくか、さらには委員会等で御質問をいただくかしてお答えを申し上げたいということを申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣甘利明君登壇〕

国務大臣(甘利明君) 私には、雇用創出の施策と効果について質問がありました。

 中小企業は、日本の全体の雇用の七割を支えているわけであります。同時に、中小企業は地域経済を支えているわけであります。今日まで、予算、税制そして金融を通じて、各般の中小企業政策そして雇用政策に取り組んでまいりました。

 今国会には、あわせて、地域振興、中小企業関連法案を提出いたします。一つは、地域の資源を活用して企業化をしていく方途を法律にしたものでありますし、そしてもう一つは、企業立地の新しい仕組みであります。

 これらを通じまして、地域の中小企業を振興し、あわせて雇用を創出する、地域に雇用と税収を生み出す仕組みを構築していきたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣尾身幸次君登壇〕

国務大臣(尾身幸次君) 私に対しましても、この質問、事前通告がございませんでした。国会におきまして、有意義な意見交換をし、かつ、率直に討論をするという、この国会のよき慣行を崩すことになるわけでありまして、まことに遺憾のきわみであります。

 雇用保険制度改革と財政についてお尋ねがありました。

 雇用保険につきましては、雇用保険の財政状況や経済情勢が好転していることを踏まえ、高年齢雇用継続給付に対する国庫負担の廃止、受給資格要件の見直し、育児休業給付の引き上げ、国庫負担の一定割合の引き下げ等を内容とする制度改革を実施することとしております。これによりまして、国庫負担を約千八百億円削減するとともに、国民の保険料負担を約六千億円余り削減することとしております。

 財政が厳しい中で、この雇用保険制度のサステーナビリティーを維持することが極めて大切でありまして、そういう意味で、この改革は大変大事であり、必要なものであると考えております。(拍手)(発言する者あり)

議長(河野洋平君) ただいま議場内交渉係が協議中でございます。そのまましばらくお待ちください。

 厚生労働大臣から答弁を補足したいとのことであります。これを許します。厚生労働大臣柳澤伯夫君。

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 重ねての答弁でございまして、田名部議員の質問要旨もようやくちょっと目に触れることができましたので、これにできるだけ沿う形で田名部議員にお答え申し上げたい、このように思います。

 したがいまして、先ほど答弁したものも含めまして答弁をさせていただきたいと思いますので、お許しを賜りたいと思います。

 まず第一に、雇用対策に係る国の責任についてお尋ねがあったわけでございます。

 雇用保険を運営するというのは国庫負担も伴って行われているわけですが、これは国の責任を踏まえて行っているものであるという御指摘でございまして、この点は、私どもも、毫も今回の改正で変えていないのでございます。国庫が失業等給付に係る費用の一部を負担しているのは、失業が政府の経済政策、雇用政策と無縁ではない、政府もその責任の一端を担うべきであるとの考え方によるものでございまして、今回の国庫負担の削減も、こうした国の責任を踏まえ、基本的な国庫負担の枠組みを残しつつ、当分の間、本来の負担率を引き下げることとさせていただいたものであるということでございます。

 それから、保険料の引き下げについてお尋ねがありました。

 今回の改正案では、失業等給付の保険料については、現在、雇用保険の財政状況が実は好転いたしているわけでございます。そうして、そういうことのある一方、しかし、それではこの保険料負担をすごく減らすことができるかといえば、また今後の経済状況の動きによっては給付が大幅に増加して保険会計の収支が非常に困難に陥ってしまうおそれも否めないわけでございまして、そういうことから、弾力条項の変動幅を拡大することとしながら、これを前提にして来年度の保険料率を一・六%から一・二%に引き下げることを提案させていただいているということでございます。

 なお、これによる労使の負担軽減の金額は約六千億円ということになると見込まれているわけでございます。

 それから、期間雇用者等の受給資格要件の見直しについてお尋ねがありました。

 期間雇用者につきましては、有期労働契約の締結に際して契約の更新があることが明示されていた場合について、労働者の希望にかかわらず一年未満、さっき田名部議員は十一カ月でリストラされてしまった場合どうするんだというお話があったわけですが、この場合には、原則は長い期間を置いたんですが、解雇、倒産等による離職者と同じようにこれをみなして、受給資格要件を六カ月にするということでございますので、御提起の十一カ月の従事者というものは保険の適用になるというように、期間雇用者に十分な配慮を行うこととしているわけであります。(拍手)

 それから、特例一時金の見直しについてのお尋ねがありました。

 これは、地域によって、雇用されたり、また自分の農業に戻ったり、また雇用されたりというような労働形態があるわけでございますけれども、循環的な給付である特例一時金については、かねてより実は見直しの必要性が指摘されておりまして、今回の改正におきましては、他の被保険者とのバランス等を考慮して給付水準の見直しを行ったものでございます。

 今回の見直しに当たって、実情をよくつかんでいたのかという御質疑があったようでございますが、特例一時金につきましては……(発言する者あり)ありました、あったんですが、聞こえなかったんです。その支給状況等の実態を把握した上で、関係する地方の自治体や労使団体の御要請も踏まえながら検討を行ったものでございます。

 今後とも、適切に受給者の実態の把握を行い、引き続き給付のあり方を検討してまいりたい、このように考えております。(拍手)

議長(河野洋平君) 田名部匡代君から再質疑の申し出があります。申し合わせの時間の範囲内でこれを許します。田名部匡代君。

    〔田名部匡代君登壇〕

田名部匡代君 民主党の田名部匡代でございます。

 先ほど通告がなかったというお話がございましたけれども、私は、本日、雇用保険法について質問をするということはお知らせをしてあります。また、内容についてでありますけれども、具体的な数字を聞いているわけではなく、基本的な所管大臣のお考えを聞いているにすぎません。そのぐらいのことは当然答えていただくべきことだと思っております。(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 御静粛に願います。

田名部匡代君(続) 厚生労働大臣から答弁漏れのお答えがありましたけれども、まだ何点か答弁漏れがございますので、御質問をさせていただきます。

 まず、キヤノンの偽装請負について、参考人招致をするのでしょうかとお伺いをしております。明確に御答弁ください。

 また、非正規雇用者がふえるに当たって、現在のこの雇用保険制度で十分な機能を果たしているのでしょうかと伺いました。これも御答弁ください。(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 御静粛に願います。

田名部匡代君(続) そして、これまで雇用保険料がさんざん無駄に使われてきたことに対して、だれに責任があり、今後同じことが起こったときにはどのようにだれが責任をとるのかということをお伺いしました。

 また、短期雇用の方が、更新ができると言われ、その後一年未満で契約更新を拒絶された場合について、その方は非自発的失業者と認定されるのか、対策があるのかをお答えください。(発言する者あり)

議長(河野洋平君) 御静粛に願います。大臣が質問が聞き取れないようですから、御静粛に願います。

田名部匡代君(続) そして、これまで雇用契約が六カ月だった短期労働者の契約期間がさらに短縮される事態が発生することが予測をされるわけですが、これらの対策を講じる用意があるのか、お答えください。

 また、特例一時金については、今回、当分の間、四十日とすると。その当分とは一体どのぐらいの期間のことをいうのか。つまり、当分というのはとらえ方がいろいろあります。一カ月なのか、一年なのか、十年なのかわかりませんので、明確にお答えをいただきたいと思います。

 そして、特例一時金につきまして、今回どういう理由で日数が引き下げられたのでしょうか。これについても答弁漏れでございました。

 そして、経済産業大臣のお答えでありましたが、私がお伺いをしたのは、これまでどのような雇用創出の政策を打ち出し、その結果がどうであったのか。つまり、特例一時金を受給する二十三万人もの雇用の確保が約束をできなければ、これはやるべき順番が逆だということでありますので、本当にそれができるのかという意味でお伺いをしました。ぜひ、これまでの成果を具体的にお答えください。

 そして、厚生労働大臣。雇用保険制度適用について、マルチジョブホルダーに対してこの制度を適用すべきではないか、それを検討すべきではないかとお伺いをしました。これも答弁漏れです。

議長(河野洋平君) 申し合わせの時間が過ぎました。なるべく簡潔に願います。

田名部匡代君(続) 以上、答弁漏れでございましたので、ぜひお答えをいただきたいと思います。お願いいたします。(拍手)

    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇〕

国務大臣(柳澤伯夫君) 田名部議員に、お答えになるのか、ちょっと私、同僚の議員にも助けていただきまして、質問のポイントを聞かせていただいたんですが、それにのっとりまして補足をさせていただきたい、このように思います。

 まず第一に、今度、五十日を原則三十日にしたんですが、当分の間、四十日にとどめますよという制度でございますけれども、これについて、当分の間というのはどの法律にもたくさん使われている文言でございまして、もう田名部議員も多分非常に御経験をお積みでございますので、当分の間は当分の間だということがおわかりいただけているのではないかと思います。

 まさにそういうことでございまして、ここで、当分の間について私が個人的な御意見を、見解を申し上げるというのは余り適当でない。むしろ田名部議員が、同僚あるいは先輩の、立法作業にたくさん携わった方々に、当分の間というのがどういう意味か、田名部議員にとって有利なことなのか、不利なことなのかということをお尋ねいただいて、当分の間というものは、そのまま法文の文章として受けとめていただくのが私は正しい考え方だというふうに思います。

 それから、一時金の支払いについての日数の短縮の理由をお尋ねになりましたが、先ほど私が申し上げましたように、この点については非常にいろいろ従来から指摘があったということ、そういう社会的ないろいろな指摘の中で、当局として、私どもとして、これを問題として取り上げて、今度改正に臨んだという意味合いでございます。

 それから、最後に、参考人として偽装請負の方をお呼びすることについてはどうかということについてお尋ねがあったわけですけれども、これについては、それぞれの議場あるいは議事の場、委員会等で、理事会でもって取り扱いが決まってくる、このように考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   菅  義偉君

       財務大臣   尾身 幸次君

       厚生労働大臣  柳澤 伯夫君

       経済産業大臣  甘利  明君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣  石田 祝稔君


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