衆議院

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第4号 平成19年10月3日(水曜日)

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平成十九年十月三日(水曜日)

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 議事日程 第四号

  平成十九年十月三日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(河野洋平君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 民主党の鳩山由紀夫です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、福田総理の所信表明演説に対し、質問をいたします。(拍手)

 まず、相次ぐ自然災害被害に対する支援について申し上げます。

 能登そして中越沖地震では、今なお多くの被災者が困難な日常生活を強いられています。また、台風や豪雨で、秋田県を初め各地に大きな被害が出ています。官邸が開店休業中であっても、災害は待ったなしです。亡くなられた方の御冥福をお祈りし、被災者の皆様にお見舞いを申し上げます。

 民主党は、住宅本体の再建に対して応援ができるように、被災者生活再建支援法の改正をかねてから訴え続けてまいりました。与党案よりもやはり民主党案の方が被災者の気持ちにこたえる内容となっています。今国会での改正案成立のため、与党が民主党案に賛同するよう求めます。

 福田総理、第九十一代内閣総理大臣御就任おめでとうございます。

 安倍内閣を継承した福田総理がまず最初に取り組むべき仕事は、この二カ月間、政治空白によって国民と国会を放置し、政府の信頼を失墜させた自公政権の責任を明らかにすることであります。多くは申し上げませんが、無理に無理を重ねたあげく、突然に政権を投げ出した安倍前総理の責任は重大です。

 しかし、この責任は、自民党全体、そしてこれを容認した連立与党公明党の責任であることは、改めて指摘するまでもありません。

 この間、内政でも外交でも政治のリーダーシップは全く発揮されませんでした。また、安倍総理入院後も臨時代理すら置かず、危機管理も無視されました。この一連の経過そのものが大政治スキャンダルであります。自民党は憲政に大きな汚点を残したと言わざるを得ません。

 しかし、総理の所信には、通り一遍の謝罪で、安倍政治への本質的な反省も路線転換も見えません。

 今回、首班指名においては、衆議院は福田氏を、参議院は小沢氏を首相に指名し、衆参の意思が分かれました。私たちは、直近の民意は参議院側にあると信じています。すなわち、福田新内閣は、安倍内閣と同様に、民意を受けたものではありません。

 福田総理、したがって、あなたの最初の仕事は、衆議院を解散し、総選挙において、自民党福田内閣か民主党小沢内閣か、国民の審判を仰ぐことであります。総理の決断を求めます。

 福田総理は、政治家があいまいな考えしか持っていなければ、若者や国民は将来に不安を持つとおっしゃいました。しかし、所信表明を伺った今も、私に言わせれば、総理の理念や政策基調こそあいまいそのものであります。総理が即席と自認するだけのことはありますが、これでは、あなたの言うとおり、国民の不安は増すばかりであります。

 総理は、御自身が支えた小泉内閣の路線は正しく、改革と成長を車の両輪として、方向性は変えずに、生じた諸問題に処方せんを講じていくとおっしゃいました。これは、改革の影の部分に光を当てるとした安倍総理と何ら変わりありません。

 しかし、他方では、福田総理は、自立と共生を基本に、希望と安心の国にするともおっしゃっています。総理は、小泉路線を基調としたまま諸問題に対応すれば自立と共生の社会が実現すると本気で考えておられるのでしょうか。

 小泉・安倍政権のにせ改革は、弱肉強食の競争至上主義で、弱者を切り捨て、さまざまな格差を広げ、国民生活を厳しくし、まさに社会の希望と安心を壊してきたではありませんか。

 郵政民営化で利用者に不便はかけないとしながら、地域の郵便局を減らし、高齢者やサラリーマンの税金と社会保険料負担をふやし、分権改革と称して地方財政の切り捨てや地場産業の荒廃を進め、障害者自立支援と称して障害者の自立を妨げてきました。

 また、百年安心と吹聴し、実態は崩壊寸前の年金制度、患者やお年寄りを切り捨てる医療改革、現場を顧みず負担増と混乱を招いている介護保険制度など、国民の安心、安全を奪ってきたのは小泉・安倍路線ではありませんか。

 総理は、路線は変えず小手先の修正をすればこれらは解決できると御認識なのですか。これは基本路線そのものが間違っていたからではありませんか。総理から明快な説明を求めます。(拍手)

 民主党は、今回の参議院選挙で、「国民の生活が第一」を基本に、消えた年金対策と年金制度の抜本改革、子育て支援、農業再生といった、三つの約束、七つの提言を柱とした小沢マニフェストで、理念と具体的な政策を国民の皆様に明確にお示しをし、大きな共感と御支持をいただき、参議院で第一党になりました。

 自民党のトップがだれにかわろうとも、国民の皆様にお約束をした小沢マニフェストを着実に実行していく民主党の姿勢は揺るぎません。今国会で具体的な法案として提出し、実現に向けて取り組んでいくことを改めて国民の皆様にお約束をいたします。

 まず民主党は、小沢マニフェストにある年金制度の改革、子ども手当、高校無償化や奨学金の充実、農業の戸別所得補償制度、最低賃金引き上げを含めた中小企業対策などを予算の抜本改革によって実現いたします。

 そもそも自立と共生は、民主党が政権政策の基本方針に明示し、小沢マニフェストの政策はそのすべてがその原点から発しているものであります。福田総理が突然、唐突に自立と共生を言われ、自助、助け合いなどと言葉だけを並べても、小泉・安倍路線の若干の修正では理念にはほど遠いものと言わざるを得ません。

 福田総理、もしあなたが上辺でなく、民主党の理念を本気で採用されるなら、予算全体を抜本的に組み替えてください。もし小手先の帳じり合わせで間に合わせようとされるなら、今後一切自立と共生の言葉を使わないでいただきたい。いかがでしょうか。

 福田総理は、そもそも参議院選挙で自民党が政権与党の責任で示した安倍マニフェストはどうされるのですか。総理の理念や政策に合致するのですか。あれは安倍自民党のもので福田自民党の約束ではないと言うのであれば、一刻も早く福田マニフェストを国民に示すべきではありませんか。責任ある答弁を求めます。

 総理は、衆参で議決が異なると国として新しい政策を進めることが困難になると言われましたが、これは民意をないがしろにする権力者の暴言ではありませんか。さきの通常国会で安倍自公政権は、数におごり強行採決を繰り返して、議会制民主政治を危うくしました。福田総理は口先では野党との協議を言われますが、困難な場合どうするのか、強行採決はせず民意に従うのか、国民に明確にお示しください。

 総理は、協議、協議と盛んに言われますが、民主党は、談合のような密室協議にはおつき合いしかねます。民主党は政策をマニフェストとして明快に示しています。まずは政府の考え方を、具体方針を示してください。その上で表舞台、すなわち国会の場で大いに議論し協議しようじゃありませんか。党首会談を求める前に、党首討論を十分にやろうじゃありませんか。総理の決意を求めます。

 これまでは、国会論戦で必要不可欠な事実の公表、情報の提供を求めても、政府・与党はこれを隠して出しませんでした。福田総理、こうした隠ぺい体質は改めると明確に約束してください。

 また、疑惑に対してなぜ証人喚問や参考人招致ができないのかという国民からの批判にどう答えるのですか。例えば、さきの国会で偽装請負に関連して民主党が求めた御手洗経済財政諮問会議議員の参考人招致などについて、総理の御見解を伺います。

 安倍内閣は、相次ぐ閣僚の政治と金にまつわる疑惑で、政治への信頼をどん底に落とし、政権を崩壊させました。

 これほど国民が重視しているにもかかわらず、福田総理、あなた御自身が代表を務める自民党群馬県第四選挙区支部及び関係政治団体の政治資金収支報告書、そして、あなた自身の選挙会計報告で、二〇〇三年以降、添付されている領収書コピーのあて名が百三枚も改ざんされていると報じられています。そして、〇三年と〇五年には、国と請負契約を結んでいる清掃業者から違法な二百万円の寄附を受けています。これは明確な政治資金規正法違反、公職選挙法違反ではありませんか。

 総理は、特にみずからを厳しく戒めると言われましたが、まず御自身の疑惑について国民にきちんと説明し、全容を明らかにしてください。

 総理は、問題を指摘された新任の石破、渡海両大臣に、国民にきちんと説明するようにと指示されたと伺いますが、疑惑を指摘された閣僚が資料を提示し説明責任を果たすのは最低限の務めです。それができない閣僚は、みずから職を辞すか、罷免すべきことも当然であります。総理がどのように任命責任を果たされるのか、お伺いをします。

 さらにまた、自民党役員や自民党支部の問題も次々と指摘されています。自民党総裁としてどう対応されるのか、国民にお示しください。

 そして、政治資金の公開を進めることです。民主党は、政治資金規正法を改正し、すべての政治団体が一円から領収書を添付することを訴えています。自公両党は、前通常国会でざる法を強行採決したことを厳しく反省すべきでありますが、今回の政権合意においても、領収書は添付するけれども、公開については自民党は反対と聞いています。

 それは、総理や閣僚の政治資金に問題があるからですか。福田総理、もっと指導力を発揮してください。野党との協議、協議と言う前に、国民にどのような提案をされるのか、まず、この場で具体的に示してください。(拍手)

 年金記録問題もしかりです。問題の早期の解決と救済は政治の責任であります。

 自公政権は、来年三月末までの名寄せの完了を、選挙中に政府広報まで使って国民に公約をいたしました。しかし、総理の所信では、それをあいまいにしています。総理は、政府公約を果たしますか、それとも、これは前政権の公約と逃げるのですか。御答弁を願います。

 さらに、社会保険庁、市町村などでの年金保険料の横領が指摘され、また、多額の無駄遣いが報告されています。民主党は、保険料の無駄遣いをなくすために、今国会にも年金流用禁止法案を提出していますが、賛成されるのか否か、お答えください。

 民主党は、年金制度を一元化して、すべての国民がひとしく平等に加入する透明で公平な仕組みに改め、その基礎部分の財源を全額税で賄う確実で安定した制度を提唱しています。

 与党は、現行制度を百年安心として、民主党の一元化案を今日まで否定してこられましたが、所信では、長期的な制度設計が必要と言われています。百年どころか二、三年ももたなかったことをみずから認めたものと受けとめます。

 総理は、与野党協議を言う前に、まず責任ある与党案を国民に示すべきです。お答えください。

 行政の無駄を一掃して「生活が第一」の財源を確保するには、補助金や特別会計、そして天下りで政治家、官僚、業界団体が癒着して支え合う、なれ合いともたれ合いの不公正な構造そのものを正さなくてはなりません。

 自公政権のもとでは、現実には、天下りや談合で税金や保険料を無駄遣いし、ピンはねする族議員や官僚、一部業界など強者の利権は巧みに守られ続けてきたのであります。

 民主党は、さきの国会でも、天下り根絶法案、官製談合防止法案などを提出し、天下り根絶を目指しています。

 しかし、福田総理の所信では、与党合意したはずの天下りや官製談合の根絶という言葉が既に消えました。福田内閣は官僚復権内閣と言われていますが、与党が強行採決した政府公認天下りバンク法に象徴されるように天下りや官製談合を放置するのか否か、明確な方針を伺います。(拍手)

 さて、小泉・安倍路線で壊された地方を再生しなくてはなりません。

 私は、地方を回るたびに、シャッターが閉まったままの商店街、荒れ放題の耕作放棄地や山林、閉鎖された工場や学校など、疲弊した地方の姿に愕然とします。とりわけ農林業は地域社会を支える柱です。自公政権は効率ばかり追求して大規模集約化を進め、小規模農家は切り捨てられてまいりました。また、安易な輸入自由化を推進し、林業も衰退させました。

 民主党は、国民の食の安全と地域社会を支える農林業と森林の再生のために、戸別所得補償制度の導入と、森と里の再生プランという具体策をマニフェストに示しました。

 福田総理は小規模農家に安心をとおっしゃいますが、具体策がありません。それどころか、現実には、自公政権は全く逆のことをやっているではありませんか。総理は、これまでの政策路線の失敗を率直に認め、民主党案を採用すべきではありませんか。御答弁ください。

 地方経済を担う中小零細企業、そして、そこで働く従業員、家族の皆さんも泣いています。

 民主党は、中小企業憲章を制定し、研究開発支援などで中小企業対策予算をまずは三倍に引き上げるとともに、下請いじめを法律で禁止し、中小企業金融の円滑化や税制面での支援をお約束しています。

 総理は、中小零細企業の苦悩をどうやって救うのですか。具体的な政策を、官僚言葉ではなく、生身の政治家としてお答え願います。

 そもそも地方の再生には、行政の仕組みを根本から変える必要があります。

 民主党は、中央集権のひもつき補助金で地方や業界を縛る、支配と依存の自民党型の仕組みを改め、中央政府の役割を極端に限定し、地方に権限と財源を大胆に移譲し、地方のことは地方が自立して決められる地域主権の国づくりを目指しています。総理も地方再生に力を入れるとはおっしゃっています。

 所信では交付税改革の言葉が消えましたが、地方税財政の改革とは、国から地方への大胆な財源移譲と考えてよろしいのでしょうか。それとも小手先の改革ですか。具体的な方針を聞かせてください。

 小泉・安倍路線の被害者を救済しなくてはなりません。

 総理は、急激な負担増で障害者の方の自立を妨げた障害者自立支援法について抜本的見直しの検討と発言されたやに聞きますが、所信には消えていました。

 民主党は、一割負担を廃止する法案を既に提出し、障害者の方が真に自立できる道を提案しています。総理は民主党案に賛成されるのかどうか、明確に答えてください。

 公的年金控除や老年者控除の廃止縮小で、高齢者の皆さんの生活を厳しくしたのも自公政権であります。

 福田総理は総裁選で高齢者医療負担の凍結の検討を言われましたが、所信ではもう既に、あり方の検討と早くも後退しています。そもそも負担増は与党が昨年強行採決したものであり、民主党は反対してまいりました。

 凍結ではなく、まずは中止をして、これまでの過ちを認め、医療や介護、税制、雇用など高齢者の生活全体を改善し、再生する観点で抜本的に見直すべきと考えますが、総理の御認識を伺います。

 与党は、小泉・安倍路線でイザナギ超えの景気拡大と吹聴しますが、デフレが続く中、九兆円近くの国民負担増を強制され、多くの国民が厳しい暮らしを余儀なくされています。

 一九九四年に一位だった一人当たりの名目GDPは、十八位にまで凋落いたしました。これまでの経済政策は根本から検証すべきではありませんか。お考えを伺います。

 福田総理は、若者が将来に希望が持てるようにすると言われます。では、雇用政策はどうされるのですか。

 景気がよいというのに非正規雇用が拡大し、生活できない低賃金が定着しようとしています。パート労働者の社会保険加入も、雇用の安定と賃金の適切な引き上げがなければ絵にかいたもちです。残業代不払い法案は完全にあきらめたのですか。最低賃金引き上げについても所信では触れられません。

 雇用の安定と勤労者の所得の向上に向けての具体策を福田総理に伺います。

 このように、総理は、政策もあいまいですが、財源も示していません。その一方で、総理は、消費税を含む税体系の抜本的な改革を実現すると明言しておられます。

 民主党は、厳しい国民生活の現実を見れば、消費税を当面上げるべきではないと考えますし、上げる必要はないと試算結果も出ています。この民主党の主張は、参議院選挙で示された民意ではありませんか。

 福田総理は、それでも消費税を今引き上げるべきと考えておられるのか。では、それは何のために、何%必要なのですか。国民の皆さんに、逃げずに具体的に答えてください。(拍手)

 次に、外交姿勢について伺います。

 福田総理は、外交でも自立と共生の理念を言っておられます。一方、安倍前政権は主張する外交を掲げ、麻生前外務大臣は自由と繁栄の弧と称して価値の外交を唱えました。価値の外交とは、同じ価値観の国同士が仲よくしようというもので、その外にある国々を排除することになりかねず、自立と共生の理念とは両立しません。

 価値観の違いで相手をたたくのではなく、互いに違いを認め、尊重し合って協調し、共生の関係を築き、相互利益を求めることこそ自立と共生の主体的な友愛外交であり、民主党がマニフェストで示した外交であります。

 総理の自立と共生の外交とは何なのか、それならば、自由と繁栄の弧の価値の外交はやめたのかも含めて、具体的に示してください。

 総理の外交姿勢を問うときに、歴史認識は基本です。

 福田総理はアジア近隣諸国との関係から靖国参拝はしない意向と聞いていますが、総理がこれまで積極的にかかわってこられた新たな追悼施設についてどうされるのか、具体的な方針をお聞きします。

 さらに、最近、沖縄戦における集団自決に関する日本軍の関与についての教科書記述が削除される問題が大きな議論になっています。四日前の沖縄県民大会では、十一万人の沖縄県民が集結をいたしました。福田総理は、歴史を歪曲させるような検定意見に対して、沖縄県民にどうお答えになるのか、検定制度のあり方も含めて、この場でお示しください。

 次に、テロ特措法、イラク特措法についてお伺いします。

 インド洋であれイラクであれ、自衛隊が一体何をやっているのか、その活動ぶりは国民にはほとんど知らされてきませんでした。

 その中で、先月二十一日、防衛省は、二〇〇三年二月にインド洋上で海上自衛隊がアメリカの補給艦に給油したのは約二十万ガロンではなく、実際はその四倍の約八十万ガロンだったと訂正しました。

 この油がアメリカの空母キティーホークに再給油され、イラク作戦に使われたのではないかとの国会質問に対し、当時官房長官だった福田総理は、二十万ガロンはキティーホーク一日分の消費量であり、イラク作戦への転用は現実的にあり得ないと述べ、国会でも同様の答弁をしています。

 総理、自衛隊の海外活動という極めて重大な事案にもかかわらず、なぜこんな偽りの報告がなされたのですか。結果的に、時の官房長官や防衛庁長官が国民をだましたことになりませんか。

 先日のテレビ番組で、町村官房長官は、一船一船確認し問題はなかった、そこを改めて照会中との発言をしています。ならば、証拠はあるのですね。

 ところが、先週の防衛省の発表では、海上自衛隊の給油実績の実に五五%、半分以上が主に米英の補給艦への間接給油で、その大半がイラクでの大規模戦闘が実施された〇二年度までというではありませんか。しかも、直接、間接に給油された艦船がどこに向かったか、政府は把握していなかったというではありませんか。

 国民に知らせない、政府も知らない、事実と異なったことを知らせる、ばれたら訂正する。これでは、政府を信用しろという方が無理じゃありませんか。給油活動を含め、海外での自衛隊活動の実態を隠さず国民の皆さんに明確にお答えください。

 民主党は、この法律の延長であれ新法であれ、今の海上自衛隊の活動の継続には反対します。

 その理由の第一は、国連決議の欠如であります。

 民主党は、国際社会の共通の意思を反映した国連安保理決議に規定された国連の活動には、我が国の憲法の定めるところに従い、主体的判断と民主的統制のもとに参加する可能性があると考えていますが、そうでない場合には参加すべきではないという明確な判断基準を持っています。

 現在、自衛隊が参加している不朽の自由作戦は、米軍中心の軍事活動、いわゆる戦争であり、国連の活動として直接的に規定する安保理決議はありません。米国のシーファー大使が引き合いに出された安保理決議一七四六も、不朽の自由作戦に言及しているにすぎません。

 また、今回、アフガンで展開する国際治安部隊、ISAFの活動延長に関する新たな決議文の前文に不朽の自由作戦の参加国への謝意が示されましたが、これによっても国連活動として規定されたわけではなく、本質的な状況はまるで変わっていません。これに関して、もし総理に御異論があればお聞かせください。

 アフガニスタンの状況が全く好転しない中で、政府が展望も出口戦略さえ持たないことも反対の理由です。うまくいっていると言われているアフガニスタンも、実情はイラクに極めて似てきました。

 対テロ戦争は、時間的に既に太平洋戦争を超えました。この間、テロの撲滅を目的に軍事行動が続いてまいりましたが、テロは撲滅されるどころか、急増しているのが現実であります。

 私も二度アフガニスタンを訪れましたが、治安が悪化し、SPなしでは首都カブールですら歩けない状態です。かつては日本の国旗を立てていれば安全であったのに、最近は旗を掲げること自体が危険になったとも言われました。

 治安状況が極めて悪化していること自体、作戦全体が失敗している何よりもの証左ではありませんか。総理の現状認識と出口戦略についてお伺いします。

 言うまでもなく、民主党はいかなるテロ行為も容認するものではありません。テロをなくすために、日米関係を重視しながら、国際社会と連帯し、協力して取り組むのは当然のことであります。しかし、肝心なのはその方法であります。戦争でテロがなくなるわけはないのです。

 テロの根本には、貧困や差別、抑圧といった社会の病巣があると言われています。民主党は、まさにこの社会の病巣そのものを取り除き、民生を安定させることこそテロ対策の重要な柱であり、平和の礎になると信じています。

 例えば、政治行政分野でのさまざまな支援、医療、教育などの人道援助、農業や経済産業の育成といった非軍事的な民生分野での協力や地方復興活動など、NGOなどとも連携して、アフガニスタンが望む国家建設を支援する外交こそ展開するべきじゃありませんか。

 イラクについても同様です。イラク特措法に基づいて派遣されている航空自衛隊の任務は、人道支援ではもはやありません。主にクウェート―バグダッド間での米兵や貨物の輸送でありますが、この区間は、御案内のとおり、既にたくさんの商業便が飛んでいます。商業便が飛んでいる以上、航空自衛隊の活動は意味を失っています。

 米国内でさえ、イラク撤退論が強まっています。民主党は、イラク特措法廃止法案を出します。政府も片意地を張らず、意味を失った自衛隊を撤退させようじゃありませんか。

 アフガニスタンでもイラクでも、軍事行動に協力してテロを増幅させるより、生活再建を第一に民生面での協力をして、テロ撲滅を訴える先頭に日本が立とうじゃありませんか。

 イスラム諸国とも親しく接してきた日本だからこそできることもあるはずじゃありませんか。今こそ、日本にふさわしい支援活動とは何かを考え、実施することこそ主体的な外交ではありませんか。総理の御所見を伺います。(拍手)

 さて、北朝鮮問題をめぐって、先月末に六者協議が再開され、米朝協議や昨日の南北首脳会談の開催など、さまざまな動きが急展開しています。

 総理は所信で、北朝鮮の非核化を目指し、拉致問題を解決し、日朝国交正常化に最大限の努力を払うと言われました。対話の工夫が必要との認識も示しておられます。

 しかし、事態の急展開に対して、どのような戦略で、どのような工夫をされているのか、さっぱり見えてきません。拉致問題の解決に向けて、どのような手だてを尽くされるのでしょうか。

 米国が北朝鮮をテロ支援国家の指定から外す時期まで合意案に明記されていると北朝鮮側が言う中で、総理は、この事実関係も含め、具体的にどのような手だてをお考えなのか、お示しください。

 中東では、イランとイスラエル、欧米との関係が急速に悪化しています。

 イランのアハマディネジャド大統領は、イスラエルの抹消を唱え、国連の制裁決議にもかかわらず、ウランの濃縮活動を続けています。イランがウラン濃縮活動を停止しなければ、ブッシュ大統領がイラン空爆に踏み切るとの懸念や、イスラエルが来年にもイランの核施設を攻撃する可能性も言われています。まさに一触即発で大規模な戦争になりかねません。何としても、この危機的な状況を外交努力で平和裏に解決しなければなりません。

 多くの国が一方に偏った外交をしている中で、両国と交流を持ち唯一の被爆国である日本こそ、中東の非核化のために全力を尽くすべきときであります。総理の中東外交の基本方針を伺いたい。

 ミャンマーでは、ついに恐れていたことが現実になってしまいました。軍政に対する反政府デモに治安部隊が発砲し、取材中だった日本人ジャーナリスト長井健司さん初め多くの死傷者が出てしまいました。犠牲となった方々の御冥福を心からお祈りいたしますとともに、ミャンマー軍事政権に強く抗議をいたします。

 私は、ミャンマーの民主化を支援する議員連盟の一人としても、日本こそ軍事政権側とアウン・サン・スー・チーさん側との橋渡しをできる数少ない国だと信じていましたが、このような事態になりまことに残念でなりません。

 私は、日本政府の反応がとても鈍いと感じています。日本政府こそ、国際社会の先頭に立って、今こそ軍政側に厳しく自制を求め、スー・チーさんを初めとして拘束されているすべての人々を解放させ、ミャンマーの民主化が実現するようにあらゆる努力を行うべきです。その覚悟はおありか、お伺いをします。

 人権は国際社会の普遍的な課題です。この九月十三日、アイヌ民族の皆さんが二十年以上も国連で主張してきた悲願の「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択されました。画期的なことであります。しかし、日本政府はいまだにアイヌ民族を先住民族とすら認めていません。

 来年は北海道洞爺湖サミットが開かれます。この環境サミットのときに、自然とともに生きる知恵を持ち、国連で先住民族と認められているアイヌ民族を日本政府が認めていないことを国際社会にどう説明するんですか。国内と国外で対応を使い分けるなどという二枚舌はやめようじゃありませんか。総理のお考えを伺いたい。

 総理が幾ら自民党は変わると主張され、幾ら民主党にすり寄られても、安倍内閣と変わらない福田内閣の顔ぶれやあいまいな政策を見れば、急場しのぎの暫定政権であることは明白です。

 総理は背水の陣内閣と自称されましたが、この言葉自体が、国民生活の視点ではなく、自民党政権の死守しか頭にないからじゃありませんか。自民党が政権に居座るために連立政権や与野党協議を吹聴するのは、初手から国民を欺くことにほかなりません。

 多くの問題を積み残したまま郵政民営化もスタートしました。郵政選挙の結果である自民党の三百議席は役割を終えました。その意味からも、福田新総理がまず行うべきは、衆議院を解散して国民の皆さんに信を問うことではありませんか。

 民主党は、一日も早く、「国民の生活が第一」とする小沢マニフェストをまともな政治で実現するために、政権交代を国民の皆様とともに目指していくことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 鳩山議員の御質問に対しまして順次お答えをさせていただきます。

 まず、被災者生活再建支援法についてのお尋ねがございました。

 本法に基づきます被災者生活再建支援制度につきましては、本年三月、内閣府に検討会を設け、見直しに向けて本格的な検討を行ってきたところでございます。また、与党におきまして、この制度が真に被災者の立場に立った、使い勝手のよいものとすべく、本法の見直し案をまとめられたと聞いております。

 本法の見直しにつきましては、今後とも、幅広い議論を踏まえ適切に対処してまいりたいと考えます。

 衆議院解散についてのお尋ねがございました。

 国民生活を守り、国家の利益を守るということは、与野党の立場を超えた政治の使命であります。今般、政権を担うこととなり、私は、重要な政策課題について、一つ一つ野党の皆様と誠意を持って話し合いながら、国民の負託にこたえてまいりたいと存じます。

 今、政治に求められていることは、解散について云々することではなく、国民の不信の声を真摯に受けとめ、国民の不安に対してきめ細かく対応していくことであります。まずは、私が申し上げました所信に基づいて、国民の目線に立った政治と行政を進めてまいりたいと考えております。(拍手)

 次に、これまでの構造改革の基本路線そのものが間違っていたのではないかというお尋ねがございました。

 これまで政府として経済社会全般にわたる構造改革に取り組んでまいりましたが、景気は回復し、そして雇用は拡大するなど、一定の成果が上がってきております。

 しかし、我が国はなお、本格的な人口減少社会の到来、少子高齢化に伴う社会保障費の増大、内外経済の構造的な変化、地球環境問題などの難題に直面する中で、これらを乗り切り、より成熟した社会をつくっていくためには、時代に適合しなくなった制度や組織を改めるなど、日本の将来を見据えた改革を進めていかなければなりません。

 ただし、改革を続行していくに当たりまして、私は、老いも若きも、大企業も中小企業も、そして都市も地方も、自助努力を基本としながら、お互いに尊重し合い、支え、助け合うこと、すなわち自立と共生が必要であるとの考えのもと、将来のあるべき日本の姿を見据え、どのようにその姿に近づけるかを常に念頭に置きながら、国民の皆様方の目線に立って行ってまいることを申し上げております。その先に、若者があすに希望を持ち、そしてお年寄りが安心できる、希望と安心の国を目指して、持てる力のすべてを傾けて取り組んでまいる所存でございます。(拍手)

 次に、予算の抜本的な組み替えについてのお尋ねがございました。

 私は、自立と共生という考え方、すなわち、自助努力を基本としながらも、お互い尊重し合い、支え、助け合うことが必要であるという考え方のもと、ぬくもりのある政治を行ってまいります。

 今後の予算編成に当たっては、こうした考え方のもと、これまでの改革を続行する中で、歳出全般を徹底して見直し、成長力の強化、地域の活性化、生活の安心、安全などの分野に重点的な配分を行い、めり張りつけを徹底してまいります。

 次に、さきの参議院選挙におけるマニフェストについてのお尋ねがございました。

 さきの参議院選挙に当たって国民の皆様にお示ししたマニフェスト、これは自由民主党として国民の皆様にお約束をしたものであり、その基本的な考え方については、私の理念や政策と大きく異なるものではありません。

 私の考えは、先般の所信表明演説の中で申し上げましたとおり、構造改革の継続を基本に据えながら、しかし、そうした中にあっても、実態を十分に把握し、生じた問題には一つ一つきちんと処方せんを講じていく考えであります。

 野党との協議が困難な場合にはどうするかというお尋ねがございました。

 国民生活を守り、国家の利益を守ることは、与野党の立場を超えた政治の使命であります。いかに困難な状況にあっても、一つ一つ誠意を持って話し合うことによって、国民のためになる結論を出していくことができると私は信じております。

 次の御質問でございます。国会の場で議論し、協議すべきでないかというお尋ねがございました。

 今後、重要な政策課題について、野党の皆様とさまざまな場で話し合いをさせていただきたいと考えております。国会の進め方は国会がお決めになることではありますが、国会での議論は、党首討論も含め、大いにやらせていただきたいと存じます。

 ただ、単に批判の応酬に終始するのではなく、そうした議論の結果として国民のためによりよい結論を出していくことが、私たち政治家が国民の負託にこたえる道であると信じております。(拍手)

 次に、政府・与党の隠ぺい体質を改めるべきではないかというお尋ねがございました。

 これまでが隠ぺい体質であったかどうかはわかりませんが、誠意を持って話し合いをさせていただきたいと申し上げている以上、議論の前提として必要な情報については、可能な限り、御要望に応じて開示していきたいと考えております。

 次に、国会における証人喚問や参考人招致についてのお尋ねがございました。

 国会の運営については国会がお決めになることであり、私から申し上げるべきではないと考えております。

 さまざまな政策課題についての政府の考えについては、各閣僚が国会で誠意を持って御説明させていただき、話し合いをさせていただきたいと考えております。

 次に、私自身の政治資金問題についてのお尋ねがございました。

 領収書のあて名を書き直した件につきましては、本来、領収書をとり直したりすべきところを、経理の担当者がその手間を省いてしまったものであります。実際の領収書の受け取り先について、実態を踏まえて補正したものであり、政治資金規正法上、特に問題はないものと理解をいたしております。

 私が代表を務めます自民党支部が国と契約している業者から受けていた寄附の件につきましては、その会社が国と契約を結んでいたとは知らずに受け入れた通常の寄附であり、公職選挙法に違反するとは考えておりません。

 なお、政治資金にかかわる問題につきましては、いささかの疑念も生じさせないよう努める所存でございます。

 次に、石破防衛大臣と渡海文部科学大臣の政治資金問題についてのお尋ねがございました。

 政治資金問題につきましては、まず閣僚から襟を正すべく、問題を指摘された場合には説明責任を尽くすよう指示しているところでございます。

 両大臣につきましては、その方針に従い、それぞれ説明責任を果たすよう最大限努めているものと理解いたしております。

 次に、政治資金問題に対する自民党総裁としての対応についてお尋ねがございました。

 政治資金問題につきましては、国民の皆様から厳しい御批判をいただいたところであり、自民党総裁として真摯に受けとめております。

 与党において、政治資金の透明性をさらに高めるため、その改善に向けた考え方を取りまとめたところでございます。今後、野党の皆様と十分に御議論させていただきたいと思います。

 次に、政治資金の公開についてのお尋ねがありました。

 政治資金についての新たなルールについては、国民から信頼に足るものかどうかという基本的な考え方に基づいて行われるべきであります。

 そうした観点から、まず、民間では会社の経理報告や監査をどうしているかということも参考にしながら、現行ルールは具体的な取り扱いで判断に困ることもある実態も考慮して、統一的な解釈のもとでしっかりとチェックを行っていくための仕組みをつくっていくことも検討すべきであると思います。

 いずれにしても、具体的なルールのあり方については、今後、与野党の間で十分に御議論をいただき、結論を得ていくことが必要であると考えております。

 年金記録問題についてのお尋ねがございました。

 私も、年金記録に対する国民の不安を解消していくことが重要であると考えております。本年七月五日に政府・与党で決定した方針には変わりはありません。

 平成二十年三月までを目途に、五千万件の年金記録について名寄せを実施するとともに、記録が結びつくと思われる方に加入履歴を送付すること、その後、平成二十年十月までを目途に、それ以外のすべての方にもお知らせをお送りすること、また、コンピューターの記録と台帳等との計画的な突き合わせ等を行うといった取り組みを進めてまいります。

 これらの取り組みを一つ一つ計画的かつ着実に進めることにより、国民の信頼を回復してまいりたいと思います。

 次に、年金保険料の流用禁止についてのお尋ねがございました。

 年金保険料は、使途を徹底的に見直し、現在では、年金給付のほかには年金給付に密接に関連する事業運営費に限って充てております。年金給付と密接不可分な経費に保険料を充てることは、民間保険はもとより、他の公的保険や諸外国の例から見ても妥当なものであると考えております。重要なことは、税財源であれ保険料財源であれ、無駄遣いは絶対にさせないということであり、今後さらにこのことを徹底してまいります。

 次に、年金制度の与野党協議と、責任ある与党案についてのお尋ねがございました。

 年金制度については、平成十六年の制度改正において、長期的な給付と負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするための見直しを行ったところであり、適切なものと考えております。その後、経済状況の改善等により、本年二月に発表した暫定試算でも、年金財政の見通しは好転しております。

 しかしながら、国民がより安心して頼れる制度とするためには、政治の責任として、与野党の立場を超えた議論が行われることが重要であり、さまざまな知恵を出し合い、透明で建設的な協議が行われるようにお願いをしたいと思います。

 次に、天下りや官製談合の根絶に対する方針についてお尋ねがございました。

 公務員制度については、公務員が高いモラルを維持し、能力を高め、誇りを持って職務に専念できるような、総合的な制度となるように改革を進めてまいります。

 さきの通常国会で成立した国家公務員法等の一部を改正する法律は、いわゆる天下り問題を根絶するものであります。具体的には、各省庁による再就職あっせんを官民人材交流センターに一元化するほか、離職後の再就職に関する規制の導入等により、退職管理の適正化を図ることといたしております。

 また、官製談合はあってはならないことであり、本年三月に強化された官製談合防止法の厳正な執行や入札契約制度の改革等により、その根絶を図ってまいります。

 次に、民主党の農業・林業政策についてのお尋ねがございました。

 私は、地域の主要産業である農林業を核に農山村の活性化を図っていくため、意欲のある担い手を支援することにより、力強い経営を育成してまいります。また、現場の声を真摯に受けとめながら、集落でまとまって特色ある営農を行うことへの支援を初め、小規模な生産者に対してもきめ細かな支援を行ってまいります。

 次に、中小企業対策についてお尋ねがございました。

 景気が回復を続ける中においても、多くの中小企業が苦しい経営状態にあることは私も十分認識しております。

 大企業と中小企業の調和のとれた成長を図るため、予算、金融、税制等を効果的、集中的に活用するとともに、下請取引の適正化、事業承継の円滑化を推進し、生産性向上に向けた中小企業の努力を徹底的かつきめ細かく支援してまいります。

 次に、地方税財政の改革についてお尋ねがございました。

 地方と都市がともに支え合う共生の考え方のもと、地方がみずから考え、実行できる体制の整備に向け、地方自治体に対する一層の権限移譲を行うとともに、財政面からも地方が自立できるよう、地方税財政の改革に取り組みます。

 具体的には、新分権一括法案の三年以内の国会提出に向け、国と地方の役割分担や国の関与のあり方の見直しを行います。その上で、補助金、交付税、税源配分の見直しの一体的な検討を進めます。また、地方税と交付税を合わせた、地方が自由に使える財源を適切に確保するとともに、地方間の税収の偏りの是正に取り組んでまいります。

 こうした改革を進めるに当たっては、地方の意見を十分に聞いてまいります。

 次に、障害者自立支援法についてお尋ねがございました。

 民主党の法案については、利用者負担の算定方法について旧法と現行法の考え方を併存させており、負担の考え方が整合的かどうか、また、市町村等の事務が無理なく行えるかどうかなどの点で課題があると考えております。

 政府としては、連立政権合意も踏まえ、抜本的見直しに向けて、三年間で国費千二百億円の特別対策の政策効果を見定めつつ、制度全体にわたる議論を行ってまいります。

 高齢者医療負担の凍結についてお尋ねがございました。

 昨年の医療制度改革は、今後、高齢化に伴う医療費の増加が見込まれる中で、現役世代と高齢者の負担の公平を図りつつ、医療制度を持続可能な制度とすることを目的として実施したものであります。

 こうした改革の理念や方向性は堅持しつつ、高齢者の方々が置かれている状況に十分配慮しながら、きめ細かな対応に努める必要があると考えておりまして、今後、予算措置を含めて十分に検討してまいります。

 これまでの経済政策は根本から検証すべきではないかとのお尋ねがございました。

 先ほどもお答えしましたとおり、これまで経済社会全般にわたる構造改革に取り組んできましたが、景気は回復し、そして雇用は拡大するなど、一定の成果が上がってきております。

 しかし、我が国はなお、少子高齢化に伴う社会保障費の増大、内外経済の構造的な変化などの難題に直面しておる中で、これらを乗り切るためには、時代に適合しなくなった制度や組織を根本から見直すということなど、日本の将来を見据えた改革を進めていかなければなりません。

 雇用の安定と勤労者の所得の向上についてのお尋ねがありました。

 若者の非正規雇用の増加がワーキングプアを生んでいるとの指摘も見られるところです。こうした状況を踏まえ、だれもがみずからの能力を生かし、安定した仕事について、将来に希望を持って暮らせるよう、労働条件の改善など、働く人を大切にする施策を進めていくことは所信表明演説で申し上げたところでございます。

 具体的には、フリーター二十五万人常用雇用化プランの推進などの正規雇用化の支援、そして最低賃金制度の見直しを含めた成長力底上げ戦略の推進等に取り組んでいるところでございまして、こうした取り組みを通じて、働く人たちの雇用の安定と所得の向上を図ってまいります。

 なお、事務系労働者の働き方の改革については、働く人たちの理解を得ながら取り組まなければならない課題と考えておりまして、今後とも労働時間制度のあり方について検討してまいります。

 消費税の引き上げについてお尋ねがございました。

 歳出歳入一体改革の実現に向けて、歳出改革に徹底して取り組むことが重要です。しかし、必要な歳出までもが削られて国民生活に影響が生ずる事態は避けなければなりません。

 したがって、国民生活に関係が深く、歳出改革だけでは対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保しなければなりません。

 このため、消費税を含む税体系全般の抜本的改革について、今後、早急に本格的な議論を進めることとしており、現段階で消費税のみを取り上げて具体的な方向性を申し上げる状況にはないと考えております。

 いずれにせよ、野党の皆様ともしっかり議論を行い、国民の理解を得ながら、改革の実現に向けて取り組んでまいります。(拍手)

 次に、自立と共生の外交についてお尋ねがございました。

 私が目指す自立と共生の外交とは、ビジョンを持って二十一世紀の責任国家にふさわしい行動をとるとともに、他国そして共同体としての地球をおもんぱかるというものであります。

 私は、このような考え方に基づいて、激動する国際情勢の中で、今後の世界の行く末を見据え、我が国が国際社会の中でその国力にふさわしい責任を自覚し、そして国際的に信頼される国家を目指し、世界平和に貢献する外交を展開します。

 具体的には、日米同盟と国際協調を外交の基本として、日米の信頼関係の一層の強化と積極的アジア外交を進めます。また、地球環境や貧困といった問題に対する支援を、自助努力を基本としながら、政府開発援助などの活用によりまして積極的に進めてまいります。

 自由、民主主義、基本的人権、市場主義経済といった基本的な価値や制度が重要であるという認識には変わりはありません。

 次に、新たな追悼施設についてのお尋ねがございました。

 この施設は、戦争で命を落とされた、民間人も含めたすべての方を追悼するものでありますが、多くの国民の皆様に理解され、敬意を表されるものであることが重要でございます。そしてまた、国民世論の動向等も見きわめてまいりたいと思います。

 次に、沖縄の集団自決に関する教科書検定についてのお尋ねがございました。

 教科書検定は、審議会における専門的な審議を経て実施されることとなっております。御指摘の九月二十九日の県民大会には県知事を初め多くの方々が参加されており、その思いを重く受けとめ、文部科学省においてしっかりと検討してまいります。

 次に、海自補給艦から米補給艦への給油量の訂正についてお尋ねがございました。

 この件は、平成十五年当時、海上幕僚監部において給油量に関するデータを集計する作業を行った際、御指摘の米補給艦への給油量を他艦船への給油量と取り違えて入力した事務的な誤りによるものでございます。

 今回、このような事務的誤りが発生したことはまことに遺憾であり、防衛省において給油量の訂正をしたところでございますが、防衛大臣から事務方に、今後このような誤りが起きることのないように徹底を指示したところでございます。

 次に、テロ対策特措法に基づく自衛隊の活動の実態についてお尋ねがございました。

 テロ対策特措法に基づきインド洋で行っている海上自衛隊の活動については、法の趣旨に沿って行われていることにつき、国民の御理解が得られるよう情報の開示に努めるべきであると考えます。

 他方、海上自衛隊の活動内容について、これをつまびらかにすることにより、自衛隊や各国の部隊の運用等への支障が生じるおそれがあるということも考慮する必要がございます。

 いずれにせよ、各国の理解も得ながら、可能な限り情報を開示できるよう、防衛省において努めていると承知しております。

 なお、御指摘の官房長官の発言は、個別の補給に際し、その都度、対象艦船が海上阻止活動の参加艦船であることを確認している旨述べたものと承知しております。

 次に、海上自衛隊による活動と国連決議との関連についての御指摘がございました。

 すべての国連加盟国は、安保理決議一三六八号等を踏まえ、国際的なテロリズムを防止し、抑止するために適切と認める措置を積極的にとるべき立場にあります。

 我が国による補給活動は、まさにこれらの安保理決議を踏まえて行われている活動でございます。また、先般採択された安保理決議一七七六号は、海上阻止活動に対する各国の貢献を評価し、その継続の必要性を強調しております。これは、テロリストの拡散を防ぐための国際社会の一致した活動の重要性が改めて安保理決議によって確認されたものと認識しております。

 次に、アフガニスタンの現状認識といわゆる出口戦略についてのお尋ねがございました。

 アフガニスタンでは、統治機構を整備するプロセスが完了し、高い経済成長率の実現、教育や医療の改善、インフラ整備、難民の帰還等が見られております。また、多国籍軍の支援も得つつ、アフガニスタン政府自身の治安改善努力も行われています。

 同時に、困難かつ息の長い取り組みでございますテロとの闘いは依然継続しており、引き続き国際社会による支援が必要であります。復興支援と治安・テロ対策の双方に引き続き取り組むことによって、同国を早期に安定させ、再びテロの温床とならないようにする必要があると考えております。

 次に、アフガニスタンにおけるテロ撲滅のための方策についてのお尋ねがございました。

 アフガニスタンが再びテロの温床とならないようにするためには、復興支援と治安・テロ対策の双方に引き続き取り組むことが必要であります。

 我が国はこれまでも、人道支援に加え、同国の政治プロセスへの支援や治安の改善に向けた支援、医療や教育、農村開発等の分野での支援等十二億ドル以上の支援を通じ、アフガニスタンの民主化や復興努力を支援してきております。

 今後も、国際社会と緊密に協力しつつ、貧困等のテロ発生を助長する要因の除去にも資する復興支援を幅広く行ってまいります。

 次に、イラクからの航空自衛隊の撤収についてのお尋ねがございました。

 米軍を含む多国籍軍部隊は、国連安保理決議に基づいてイラクの安全及び安定の維持や復興の支援を行っておりまして、この多国籍軍に対する空自部隊の空輸支援は、イラク特措法上の安全確保支援活動または人道復興支援活動のいずれかに当たるものであります。

 また、国連はイラクにおける要員の安全に細心の注意を払っており、安全上の観点から、イラク国内と国外の各地点間の要員の移動について、一部の区間を除きまして民間機の利用も認めておらず、実際の利用もないという説明を受けております。また、潘国連事務総長などからも、自衛隊による空輸支援の継続要請があるほか、謝意表明もなされておるところであります。空自による活動の意味が失われているという指摘は全くございません。

 イラクの安定と復興は道半ばであり、空自による輸送支援を継続的、安定的に続ける必要があると考えており、現時点において撤収は考えておりません。

 次に、アフガニスタン及びイラクに対する我が国の支援策についてのお尋ねがございました。

 アフガニスタン及びイラクがテロの温床とならないようにするためには、幅広い取り組みが必要であります。

 我が国は、アフガニスタンについては、自衛隊によるインド洋における補給活動に加え、これまでに政治、治安、復興等の分野で十二億ドル以上の支援を行ってきております。また、イラクにつきましては、これまでに自衛隊による人的貢献や五十億ドルの経済協力を着実に実施し、復興に向けたイラク国民の取り組みに積極的に協力してまいっております。

 今後も、イスラム諸国も含めた国際社会と緊密に協力しながら、テロ発生を助長する要因の除去にも資する幅広い取り組みを主体的に行ってまいります。

 拉致問題の解決についてお尋ねがございました。

 我が国は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算して国交正常化を図るべく、最大限の努力を払ってまいります。今後とも、日朝協議に真剣に取り組み、六者会合などの場を通じ、米国を初めとする関係国とも緊密に連携協力しながら、北朝鮮側に対し拉致問題の解決に向けた具体的な行動を求めていきます。

 私は、中国の温家宝総理、韓国の盧武鉉大統領と電話会談を行いましたが、その際にも拉致問題への我が国の立場への理解を求めました。

 また、御指摘の共同文書案については、現時点の案に北朝鮮のテロ支援国家指定解除の期限は明記されていないと承知しております。いずれにせよ、ブッシュ大統領は私に対しまして、拉致問題を忘れることはない、六者会合で緊密に協力していきたいと述べております。

 次に、我が国の中東外交の基本方針についてお尋ねがございました。

 中東の平和と安定は、我が国のエネルギー安全保障の観点から重要であるばかりでなく、国際社会の平和と繁栄に直結する問題です。

 我が国はこれまでも、唯一の被爆国として、イスラエルの核兵器不拡散条約の加入問題やイランの核問題など、中東地域の非核化を含め、首脳、外相を初めとする関係閣僚の訪問などを通じて働きかけを行ってまいっております。

 引き続き、中東の平和と安定の実現に向け、国際社会と協力しつつ積極的に取り組んでまいる所存であります。

 ミャンマー情勢についてのお尋ねがございました。

 情勢が悪化したミャンマーで邦人の方が亡くなられたことはまことに遺憾であり、日本政府として、ミャンマー政府に対し抗議を行うとともに、その真相究明を求めているところであります。

 ミャンマーの民主化や人権の状況については強い懸念を有しております。政府としては、ミャンマー政府に対し、実力を行使するのではなく、対話を通じて事態を解決するよう働きかけを行っております。私自身、中国の温家宝総理に対し事態解決に向けて協力を求め、また、薮中外務審議官を通じた働きかけも行いました。政府としては、国際社会のさまざまな取り組みと連携しつつ、迅速かつ粘り強く働きかけを行ってまいります。

 最後に、アイヌ民族についての政府の考え方についてのお尋ねがございました。

 御指摘の宣言には先住民族を定義づける記述はなく、アイヌの人々が同宣言に言う先住民族であるかについては結論を下せる状況にはございません。

 なお、政府としては、アイヌの人々が固有の文化を発展させてきた民族であるということは認識しており、文化振興等に関する施策を引き続き推進してまいります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 伊吹文明君。

    〔伊吹文明君登壇〕

伊吹文明君 自由民主党の伊吹文明です。

 自由民主党・無所属会を代表し、福田総理の所信に対し、質問をいたします。(拍手)

 まず最初に、臨時国会冒頭における安倍前総理の辞任表明の後、福田新内閣発足までの間、新総裁選出という我が党の事情により二週間以上もの貴重な時間を費やしたことを、国民の皆様、また各党の同僚の議員各位に対し、深くおわび申し上げます。

 また、ミャンマーで取材中に不慮の死を遂げられた通信社記者、長井健司さんに心よりお悔やみを申し上げます。パスポートの発行は、日本の国民の生命や権利を渡航先の国のルールに従い守っていただくということです。政府は、この点を再確認し、ミャンマー政府に対し事実関係の解明と適切な対応を求めるとともに、渡航先の国々の治安状況を国民に周知させる努力を強く要請いたします。

 さて、我が国は、内外を問わず厳しい状況に置かれております。自由民主党は、友党である与党公明党とともに、この難局に直面し、その使命を果たさんとする福田新総理を支え、国民のために、謙虚に着実に課題を克服し、結果を出していく決意であることをお約束いたします。(拍手)

 在任一年という短い期間でしたが、教育基本法や憲法改正国民投票法など、だれもが必要であると考えながらなし遂げ得なかった、本来、政治が果たさねばならない国家の基本問題に改革の道筋をつけ、志半ばに健康問題で辞任された安倍総理に対し、心よりねぎらいを申し上げ、一日も早い御快癒をお祈り申し上げます。

 福田総理、私は、国政の現状を一刻の猶予もならないと申し上げました。国内では、ことしの夏の豪雨や台風、また中越沖地震等の災害により、大きな被害が生じています。被災者の方々にお見舞いを申し上げ、今なお避難生活を余儀なくされている事態に対し、政府に万全の対策を求め、与党もしっかり対応することをお約束いたします。

 また、米国のサブプライムローン問題に起因する外国為替市場の不安から国内経済をどう守るか、長寿・少子化時代の社会保障の将来展望を国民にどう示すか、バブル経済崩壊から日本を立ち直らせるための構造改革の痛み、副作用をいかに克服するか等々、まさに難問山積であります。

 一方、国際情勢はどうでしょう。安定した日米同盟と国連中心の国際協調のもと、我が国は、国際社会で信頼される国家として平和な歩みを続けてきました。しかし、世界の平和と繁栄への協力と貢献が、今、水泡に帰しかねない危機にあります。信頼は得るより取り戻すことが難しいだけに、日本の外交、安全保障政策の基本をもう一度再確認しなければなりません。

 福田政権は、このような多事多難の中を船出しています。

 私はここで、あえて野党、特に参議院の第一党となられた民主党の皆様、そしてこの国会中継をごらんいただいている国民の皆様に申し上げたいことがございます。

 憲法は国会の二院制を定めております。国民と国家を第一に考えるのが立法府の使命であります。であれば、衆議院、参議院の別なく、また与党、野党の別なく、二つの院の第一党は、党利党略ではなく、国民の幸せのため、提案し、議論し合い、合意を出して政治を前に進めることが政党の責務ではないでしょうか。

 残念ながら、我が党は、さきの参議院選で民意を得られず敗北した事実を謙虚に受けとめるものであります。その上で申し上げれば、民主党は、政府の法案に反対し、直近の民意は政権交代であるとして早期の解散を、ただいまも鳩山幹事長は求められておりますが、将来の衆議院選挙で与党が過半数を得た場合、民主党の皆さんは、七月の参議院選挙は古い民意であったとして、それまでの主張を放棄されるのでありましょうか。多分、そのような行動はとられないでしょう。参議院の第一党としての立場、主張は常に貫かれるのではありませんか。

 本院の皆様一人一人の議員は民意の代表者であり、参議院もまたしかりであります。とすると、自民党も民主党も、お互いに衆参第一党として責任を分担し、国民不在の自己主張に陥ることなく、協力して国民の負託にこたえねばならないのではないでしょうか。

 代表質問は所信の考えをただすものであり、日本政治の一翼を担う参議院の第一党の党首、残念ながら今、議席におられませんが、質問はできませんけれども、あえて国民の判断をお願いするために指摘しておきたいと存じます。

 さて、福田総理が常に言われているように、「どのような立派な政策も、国民の信なくしては実現できない」は、まさに至言であります。政権をお預かりしている我が党も、参議院で過半数を得て法案を成立、不成立にさせる力を持っておられる民主党初め野党の皆さんも、政治全体の信頼回復に努め、本院に示された民意、参議院に示された民意の上に、国民の負託にこたえるよう、ともに努力をしようではありませんか。(拍手)

 福田総理、御尊父赳夫先生には、その人生をつづった「回顧九十年」という滋味深い著書があります。その中に、池田内閣当時の「高度成長と消費は美徳」に対し、「安定成長と節約は美徳」を掲げたとのくだりがあります。

 政治は、政策を判断する尺度としての政治理念と、それをいかに進めるかの政治手法の二つによって動いています。政治手法についていえば、スピード感とトップダウンの政治に国民は少し疲れたと感じておられるのではないでしょうか。民主主義や、それを担保する法制度は、本来時間のかかるものであり、時には大衆を高揚させるポピュリズム型政治により大きく振れる欠点があります。しかし、民主制は独裁制よりはるかにすぐれたものであることを歴史は証明しております。

 福田総理、私は、今国民が望んでいるのは、国民を信頼し、謙虚に説明をし、選良なる与野党を含めた議員の経験と英知を結集し、堅実に一歩一歩歩む、御尊父流に言えば「安定した政治と謙虚さ、説得こそ美徳」の政治手法かと思います。どのような政治手法で臨まれるかをお伺いいたします。

 その手法の上に取り戻さねばならぬ信頼は、政治を預かる政治家への信頼、政治を具体化する行政と地方自治体への信頼、国民が平和に暮らしていけるための地球社会からの信頼の三つであります。これにこたえるには、具体化の裏づけが必ずしも十分でない約束手形によるのではなく、実現可能な具体案を与野党で提示し合い、話し合いを重ねて、現金決済によって処理することであります。

 その前提に立って、以下、政治資金、年金問題、国際社会のテロとの闘いに対する我が国の貢献の三点について質問をいたします。

 まず、政治資金問題です。

 国民の政治家に対する不信の最たるものは、政治家が特別職の公務員であるにもかかわらず、一般の国民より優遇され、特権的な扱いを受けているのではないかというものであります。すべての政治家が、有権者のこの批判を謙虚に受けとめ、特に政治資金の出と入りの透明化のため、現実的な改革を行わねばなりません。

 その際、参考とすべきは民間企業の監査の仕組みであります。民間企業には、すべての支出について、一円から領収書もしくはそれにかわるべき書類の徴収と保管を義務づけられております。しかし、企業活動の一つ一つが競争相手たる他企業に知られないよう、守秘義務を負った税理士、公認会計士等に領収書等を提示することにより信頼性は担保されているのであります。

 政治家の日常活動の多くは、次の選挙をにらんだ準備活動であります。したがって、政治資金についても、一円以上のすべての支出について領収書等の添付を義務づけた上で、例えば、国会に設置する独立した第三者機関の厳格なチェックを受けた後、一定額以上の支出については当然公開するのが妥当な方法であると存じます。

 総理は、かねてより、民間の扱いと同様の、第三者機関を通じた政治資金の透明性、公平性確保の考えを示しておられます。その基本的なお考えを示していただきたいと思います。

 政治資金については、政治家により、一つの資金管理団体のみで政治活動を経理している人、幾つもの政治団体により分別経理をしている人、政党支部で本来政党助成であるべき資金に頼っている人、地区委員会の経理に依存している人、さまざまであります。したがって、公開基準は、政治活動と選挙の公平公正の見地からすべての政治家に共通のルールとすべきで、与野党を超えて各党が議論していく問題であります。私は、政治資金問題について、具体的かつ実現可能性のある改革案を得るため、各党間の協議を呼びかけるものであります。(拍手)

 次に、政府への信頼を大きく揺るがせている年金問題について伺います。

 年金を預かる社会保険庁のたび重なる行政執行の不手際、怠慢に加え、社会保険庁や市町村の職員が国民の血税に等しい年金保険料を横領していた犯罪も発覚いたしました。答弁は求めませんが、舛添厚生労働大臣、増田総務大臣には、徹底した事実の解明と責任追及をお願いしておきます。

 社会保険庁については、旧国鉄が、管理者と組合のなれ合いの結果、国民に多大な迷惑をかけた事実を思い出させます。管理者と自治労等労働組合の関係を完全に断ち切り、国鉄民営化以上の決意を持って、非公務員型の新組織を創設しなければなりません。総理に社会保険庁改革の決意をお伺いいたします。

 次に、五千万件以上の年金記録問題について、政府は、来年三月までに未確認の記録の名寄せを完了し、来年十月までにすべての年金受給者、加入者に加入歴をねんきん特別便としてお知らせするとしています。また、第三者委員会での被保険者記録の相談、訂正も全国で進んでいます。私は、この問題が認知されてからの政府の対応は誠実であったと評価しますが、過去数十年にわたり表面化しなかったこの問題に対する国民の不安解消には、こうした対策を確実に、スピーディーに実現し、信頼を得ていく以外、手だてがありません。年金記録問題解決への取り組みに対する総理の決意をお伺いいたします。

 すべての国民にとって、老後の安心の基本は、安定した、信頼できる年金制度の構築であります。こうした観点から、平成十六年の年金改革で、国民年金や厚生年金等の一部をなす国民共通の基礎年金の国庫負担率の割合を平成二十一年度までに二分の一へ引き上げることが決定されました。

 少子高齢化の進展など社会情勢の変化に対応する安定した制度運営のかぎは、いかにして安定した財源を確保するかです。年金は、みずから保険料を納めるという自助を基本に、国民の税金による公助を加えた共助の仕組みであります。国民共通の基礎年金について、全額税で賄うべきとの主張があります。国民共通の基礎年金は、四十年間の保険料の納付により、国民年金または厚生年金等の一部として六万六千円が支給されるものであります。

 基礎年金を全額税で賄う場合、年金保険料を払ってきた人と払ってこなかった人がひとしく扱われるという不公平、また、六十五歳以上の人に満額を払った場合の所要額二十二兆円を消費税を上げずに現行税制で賄う場合には、所得税を払っている人の負担で払っていない人の年金を負担することとなる不公平感の問題があります。

 私自身は、みずからの政治理念から、自助を軽視した全額税方式にはくみしませんが、二分の一の国庫負担にしろ全額税方式にしろ、すべての人がひとしく受け取る基礎年金の財源は、すべての人が負担する消費税で賄うのが穏当な方法ではないでしょうか。しかし、今、そのような消費税の引き上げが許される状況であるでしょうか。総理は年金国庫負担二分の一の実現をどのような道筋で進めようとされるのか、お伺いいたします。

 年金制度は、国民共通の財産です。少子高齢社会、人口減少時代を迎えた我が国にとって、急速に膨らんでいく年金の給付財源をすべての国民が公平に負担する仕組みを確立し、国民の将来不安を取り除くことは、与野党を超えた責務ではないでしょうか。

 民主党を初めとする野党の皆さんは、参議院で過半数の議席を得たという、皆さんのおっしゃる民意に今こそこたえるときではないでしょうか。皆さんの主張される基礎年金の全額税方式も、二分の一の税負担という方針も、しょせん、基礎年金を安定させるため、どこまで保険料でなく税に頼るかということです。とすれば、不公平感のない税体系のあり方、税の割合はどこまでか、その財源の実現可能性はどうか等々、法案の成否を左右する力を持たれた今、野党の皆さんも私たちと同様、政府と行政に責任を負う立場になられたのでありますから、財源の不確かな約束手形ではなく、支払いが確実な現金ベースの具体案を、協力して国民のために示そうではありませんか。(拍手)

 政府においても、野党に協力を求め、真摯かつ誠実に政府の考えている年金の将来像について説明をしていただきたいと思います。総理の御決意をお伺いいたします。

 第三は、国際社会での日本の信頼についてであります。

 平和と安全はコストなしに手に入るとの思い込みが日本国民にあると指摘した評論家がおられました。しかし、現実の日本の安全保障は、日米の安定した同盟関係と国連を中心とするアジア等の世界の諸国との信頼関係の上に構築されております。この信頼関係を損なわぬため、それぞれの国の憲法、法律の範囲の中で、おのおのの国が信頼にこたえる責務を果たすことが大切なのであります。

 今国会の最大の課題と言われるインド洋上の給油等を可能とする法律の扱いは、まさにこの試金石であります。我々は、現行のテロ特措法という国会の意思により、十一月一日までは国際社会へのこの責務を果たすことができます。問題は、その後の国会の意思であります。

 私は今、この演壇に立ち、十五年前にベストセラーになった有力な、そして今もなお最有力の政治家の著書の一節を思い出しております。外交の一つの信念はアメリカとの緊密な関係の維持との前提で、この著者は、湾岸戦争への百三十億ドル、当時の為替レートで一兆七千億円のお金だけの貢献を厳しく批判しておられます。私もそのとおりだと思います。多国籍軍を主導した米国からの輸送機、補給艦派遣要請にこたえなかったこと、掃海艇派遣がおくれたことを批判しておられます。

 テロとの闘いに参加している各国艦船へのインド洋上での現在の補給活動は、国連決議に基づくものではないでしょうか。この点、テロ特措法の所管大臣たる官房長官より御説明をお願いいたします。

 この著書「日本改造計画」の著者である小沢民主党党首は、今議席にはおられませんが、かつて我が自民党の幹事長時代、尊敬をもって仰ぎ見ていた私は、小沢代表は今も変わらず党より国を愛しておられる信念の政治家であると確信いたしております。我が愛する日本が国際社会で名誉ある地位を維持するため、また過半数以上の国民がインド洋上の給油活動継続を支持している最近の各種世論調査の民意にこたえるためにも、民主党は、反対だけではなく、ぜひ現実的な対案を国民に示され、与野党協議の上、早急に結論を得ようではありませんか。(拍手)

 また、新聞、テレビなどで私の訴えをごらんいただいている有権者の皆様には、現実問題の具体的処理という政権担当能力を見きわめていただくよい機会ではないでしょうか。

 福田総理、日本が国際社会での信頼を継続できる根拠法案を国会にいつごろまでに提示されるのか、また、話し合いによって結論を得られるなら、その決意をお伺いいたします。

 九・一一テロにより、私たちも二十四人の同胞のとうとい命を失いました。国際社会は、九・一一テロが自由と平和、国際秩序に対する重大な挑戦であり、破壊活動であると受けとめたからこそ、国連決議一三六八号が中国やロシアを含め全会一致で採択され、おのおのの国はテロ掃討作戦に国内法の許す範囲で参加しています。米英仏独初め、イスラム教国をも含めて行われている不朽の自由作戦に、我が国も給油活動を継続し、日本の物流のシーレーンを守る中で、国際的な義務を果たし、国際社会の信頼にこたえるべきだと考えます。

 我が国の後方支援を国際社会が評価し、国連の感謝決議も行われています。この特別措置法の期限が切れる十一月一日以降の法的根拠について、我々与党も民主党に対し、大局的な観点に立った協力を粘り強く呼びかけてまいります。政府においても、早急に新たな法案の骨子を取りまとめ、野党とも一緒に協議を始めていただきたいと思います。

 私たちの社会の価値基準は、世界の多くの国々と共有する、自由と民主主義です。もちろん、どのような理念、制度、政策にも、必ず長所と短所、効果と副作用があります。バブル後の日本経済を見事に立ち直らせた構造改革についても、同様のことが言えるでしょう。

 バブル崩壊後の日本経済は、最も低い数値で、実質成長率はマイナス一・二%、日経平均は七千八百円であったと記憶しています。今や実質成長率は二%、日経平均はきょう一万七千円を超えております。バブル崩壊の日本経済をむしばんでいた病に対する手術あるいは投薬治療とも言える構造改革は、見事な治療効果を上げたと言えましょう。

 しかし、手術の後遺症あるいはやむを得ぬ副作用の結果、都市と地方、大企業と中小零細企業、所得のある者とない者、また所得差による教育の格差などにどのように対応していくかが、参議院選挙で示された民意の一つであります。構造改革という言葉で一括されている自由主義経済、自由主義社会の原点をしっかり確認した上で、いわゆる格差問題に私たちは立ち向かわねばなりません。総理のいわゆる構造改革への率直な評価をお聞きいたします。

 先ほど引用いたしました小沢代表の「日本改造計画」は、皆さん御承知のとおり、グランドキャニオンにはさくがなく、立入禁止という立て札がない。つまり、当局に安全を守ってもらうのではなく、それを当然視する日本よりも、自分の安全は自分で守るというアメリカ流の自己責任原則の記述より始まっております。保護、管理の拡大を求めるのではなく、個人に自己責任の自覚を求める旨をうたっておられます。

 個人の尊重、自助と自己責任は自由主義の基本であり、私には何の異存もございません。しかし、同時に、自由主義社会の原則や市場のメカニズムは時に答えを間違えるものであり、利益を最大にしようとする中でモラルの荒廃を生ずる等の欠点があります。これにどう対処するかは、いつの時代にも政治、特に自由主義社会の政治が直面する難問であります。

 今回の参議院選挙で示された民意は、「日本改造計画」にも描かれ、我が自民党も行ってきた改革の痛みや後遺症への国民の拒否反応でもあったかと思います。

 小沢民主党代表は、参議院選挙の公約において、「日本改造計画」のお考えから見事な変身を遂げられ、民主党は参議院の第一党となられたのであります。先ほど鳩山民主党幹事長がとうとうと述べられた民主党のマニフェストに記されている基礎年金の全額税方式、子ども手当の創設、高速道路の無料化、最低賃金の引き上げのための中小企業への助成、農家への戸別所得補償など、すべて国民にとってうれしい、また歓迎される公的介入・助成策であります。問題は、この約束手形を実現する財源措置の実現可能性にあります。

 例えば、補助金を交付金と名を変えるだけで六兆円強の財源が出てくるようですが、突き詰めれば、福祉、社会保障、地方に回っていた補助金を六兆円減額するということでありましょう。それで福祉や格差に苦しむ地方財政がもつかどうかを具体的に詰めることこそ、政権を担当する政党の責任であり、能力なのであります。

 総理の言われる希望と安心の国づくりの中で、地方や弱者へどのような目配りを考えておられるのか、公明党、自民党の政権協議を踏まえ、約束手形ではなく、現金決済にたえ得るお考えをお伺いしたいと思います。

 福田総理には、その堅実な政治手法、現実処理能力により政策を積み上げ、地道に一歩一歩日本国を前に進めていただくことを期待いたしております。

 哲学者であり、政治家であったローマ皇帝マルクス・アウレリウスは、みずからを戒める「自省録」の中で次のように言っております。

 あらゆるときにかたく決心せよ。自分が現在引き受けていることを、質素で飾り気のない威厳と愛情、自立と正義をもって果たそうと。

 この言葉を総理にお贈りし、私の質問の結びといたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 伊吹議員の御質問にお答えをいたします。

 まず、私の政治姿勢についてのお尋ねがございました。

 国民の皆様方の信頼なくして、どのように立派な政策も、また必要な改革も実行することはできません。私は、国民から信頼される政治を行ってまいりたいと存じております。そのためにも、常に国民の目線で国政を進め、そして、真に消費者や生活者の視点に立って、これまでの政治や行政のあり方のすべての見直しをしていく決意でございます。

 また、現在は、衆議院と参議院とでは与野党が逆転しているという大変厳しい状況にあります。しかし、国民生活を守り、国家の利益を守ることは、与野党の立場を超えた政治の使命であります。いかに困難な政策課題であっても、一つ一つ野党の皆様と誠意を持って話し合うことによって、国民のためになる結論を出していくことができるものと信じております。

 ただいま申し上げたような政治姿勢のもとに、今後、全力を傾けて、内閣総理大臣としての職責を果たしてまいる覚悟でございます。

 次に、政治資金制度の見直しに係る基本的な考え方についてのお尋ねがございました。

 国民からの信頼なくして、どのような立派な政治であっても進めていくことはできません。政治に対する国民の信頼を回復するため、政治資金の透明性をさらに高めていかなければならないと考えております。

 その際、国民から見れば、資金管理の方法が民間と政治家で異なっているというのは理解しがたいというのは、もっともな御提案でございます。そうした意味で、民間企業の監査の仕組みというものは大いに参考にされるべきものだろうと思っております。

 また、現在の政治資金ルールは、具体的な取り扱いで判断に困ることもある実態もございます。結果として、これが国民から疑念を持たれる原因ともなっております。そのため、統一的な解釈のもとで、すべての政治家の資金管理についてしっかりとチェックを行っていくような第三者機関の設置は、十分検討に値するものであると考えております。

 今後、このような考え方も踏まえながら、与野党の間で十分に御議論いただき、結論を得ていくことが必要であると考えております。

 社会保険庁改革に対する決意についてお尋ねがございました。

 社会保険庁については、これを廃止して、非公務員型の二つの法人に分割することといたしまして、公的年金については日本年金機構を、健康保険については全国健康保険協会を設立することといたしております。

 新組織につきましては、能力と実績による人事管理を導入して職員の意識改革を図るとともに、外部委託などにより、サービスの向上と事業の適正かつ効率的な実施を推進し、新組織が国民の期待する役割を果たすものとなるように努めてまいります。

 次に、年金記録問題についてのお尋ねがございました。

 年金記録に対する国民の不安を解消していくためには、国民の皆様一人一人の年金記録が点検され、正しく年金が支払われることが重要であります。

 このため、本年七月五日に政府・与党で決定した方針に基づき、まずは、平成二十年三月までを目途に、五千万件の年金記録について名寄せを実施するとともに、記録が結びつくと思われる方に加入履歴を送付し、御本人による確認を通じて記録を結びつけてまいりたいと思います。その後、平成二十年十月までを目途に、それ以外のすべての方にもお知らせをお送りし、これをきっかけとしたお問い合わせ等により国民一人一人の年金記録の確認を行います。また、コンピューターの記録と台帳等との計画的な突き合わせ等についても行います。

 これらの取り組みを、一つ一つ計画的かつ着実に進め、国民の信頼を回復してまいりたいと存じます。

 次に、年金国庫負担二分の一の実現の道筋についてのお尋ねがございました。

 年金制度については、平成十六年の制度改正において、長期的な給付と負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするための見直しを行ったところでございます。

 この平成十六年年金改正法において、基礎年金の国庫負担割合については、所要の安定した財源を確保するための税制の抜本的な改革を行った上で、平成二十一年度までに二分の一に引き上げることとしております。

 この法律も踏まえ、今後、早急に、本格的な議論を進め、消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組むことといたしておりまして、その際、国民の御理解が進むことが重要であると考えております。そのための努力が政府に求められているものと考えております。

 基礎年金国庫負担割合については、こうした取り組みにより、所要の安定した財源を確保した上で、二分の一への引き上げの実現へ向けて取り組んでまいります。

 年金制度における野党との協力についてお尋ねがございました。

 国民生活を支える基盤である公的年金について、国民が安心して頼れる制度とするためには、長期的な視野に立った制度設計が不可欠であり、この方向性を示すことは、まさに政治が果たすべき大きな責任であります。

 この責任を果たすためには、与野党の立場を超えて議論が行われることが重要であり、国民の負託にこたえるべく、さまざまな知恵を出し合い、透明で建設的な協議が行われるようにお願いをしたいと思っております。

 インド洋における海上自衛隊の補給活動継続についてのお尋ねがございました。

 政府としても、この補給活動を継続するための必要な法的措置のあり方について、現在検討中でございますが、速やかに骨子を取りまとめて野党を含め国民の皆様にお示しし、協議を始めたいと考えております。

 インド洋における補給活動は、海上阻止活動の不可欠の基礎となっておりまして、国連安保理決議一七七六号にも示されているように、国際的にも高く評価され、活動の継続が期待されております。

 我が国は、この活動を通じて、我が国を含む国際社会の平和と安全を確保するための国際社会の取り組みの一端を担うとともに、インド洋における海上交通の安全の確保にも貢献してまいります。我が国としては、テロとの闘いにおける我が国の国際的な責務を今後とも果たしていくために、この活動を引き続き実施していく必要がございます。(拍手)

 次に、構造改革の評価についてお尋ねがございました。

 これまで経済社会全般にわたる構造改革に取り組んできましたが、景気は回復し、雇用は拡大するなど、一定の成果は上がっております。

 今後、我が国が、本格的な人口減少社会の到来、少子高齢化に伴う社会保障費の増大、内外経済の構造的な変化、地球環境問題などの難題に直面する中で、これらを乗り切り、より成熟した社会をつくっていくためには、時代に適合しなくなった制度、組織を改めるなど、日本の将来を見据えた改革を進めていかなければなりません。このため、安定した経済成長とともに、歳出改革、行政改革などを引き続き進めてまいります。

 ただし、御指摘のように、格差と言われるさまざまな問題が生じていることも事実であり、私は、実態から決して目をそらすことなく、改革の方向性は変えずに、生じた問題には一つ一つきちんと処方せんを講じていくことに全力を注いでまいります。

 地方や弱者の方への目配りについてお尋ねがございました。

 まず、地域間格差の実態から目をそらすことなく、地方の切実な声にこれまで以上に耳を傾け、自立と共生という改革理念のもと、地方と都市とがともに支え合う考え方に立つことが重要であります。

 このため、地方の再生に向けた戦略を一元的に立案し、実行する体制をつくり、地域の実情に応じた支援を集中的、効果的に実施いたしますとともに、財政面からも地方が自立できるよう、地方再生への構造改革に取り組んでまいります。

 また、地域にお住まいの方が必要な医療を受けられないという不安にこたえて、小児科や産婦人科などの医師不足の解消策、救急患者の受け入れを確実に行うためのシステムづくりというような救急医療の充実を図るとともに、障害をお持ちの方やお年寄りなど、それぞれの方が置かれている状況に十分配慮しながら、高齢者医療制度のあり方についての検討を含め、きめ細やかな対応に努めてまいります。

 私は、将来世代へ負担を先送りしないという姿勢を堅持しつつも、ぬくもりのある政治を行うことにより、希望と安心の国づくりに持てる力のすべてを傾けて取り組んでまいる所存であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 伊吹議員にお答えを申し上げます。

 インド洋上での補給活動と安保理決議との関係についてお尋ねがございました。

 ただいま福田総理からお答えを申し上げましたが、テロ対策特別措置法に基づくインド洋上での海上自衛隊の補給活動は、テロリストの拡散等を防ぐための国際社会の一致した行動であり、また、海上輸送に資源の多くを依存する我が国の国益にも資するものでございます。日本が国際社会において果たすべき責任でもあります。国連を初め国際社会から高く評価され、具体的な継続の要望も各国からいただいているところでございます。

 それまでの安保理決議もあり、すべての国連加盟国は、二〇〇一年九月十一日の同時多発テロの翌日に採択をされました安保理決議第一三六八号等を踏まえ、国際的なテロリズムを防止し、抑止するために適切と認める措置を積極的にとるべき立場にあります。我が国による補給活動は、まさにこれらの安保理決議を踏まえて行われている活動であります。

 さらに、去る九月十九日に採択されました安保理決議第一七七六号は、海上阻止活動等に対する各国の貢献を評価するとともに、これを含む努力の継続の必要性を強調しております。

 以上のとおり、海上自衛隊による補給活動の継続は、我が国の国際社会における責務を果たす上で重要であります。国会議員各位及び国民の皆様方の御理解を賜りたいと存じます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、総理に所信表明について質問を申し上げます。答弁が不十分であれば、時間の範囲内で再質問をいたします。(拍手)

 福田総理は所信表明で、「若者があすに希望を持ち、お年寄りが安心できる、希望と安心の国」を表明しましたが、具体策と期限がありません。民主党と協議、協議と言うなら、我が党のように、まず具体策を出してください。

 まずは、安倍前内閣の政策のうち、福田内閣で継承する政策と継承しない政策をお教え願います。また、安倍前内閣との最大の違いは何ですか。戦後レジームからの脱却をどう評価しますか。お尋ねします。

 民主党は、年金の信頼回復に全力で取り組んでまいりました。

 年金保険料を年金支給以外には使わないという大原則を打ち立てることが重要です。保険料は特別会計にある青天井の財源との意識で浪費されます。民主党が参議院に提出した年金流用禁止法を、総理は先ほど反対との趣旨の答弁がありました。なぜ賛成いただけないのでしょうか。

 伊吹幹事長は、我が党の主張と異なり、年金制度について、微修正で対応可能との先ほど質問がございました。福田総理は、現在の制度のままで本当に百年安心とお考えですか。御自身の言葉でお答えください。

 消えた年金問題は、いまだ深刻です。

 安倍前総理は、参議院選挙前に、最後の一人に至るまで徹底的にチェックをし、すべてお支払いすることをお約束すると発言されました。当然、福田総理もこの公約を遵守されると思いますが、いかがでございますか。

 また、来年三月までに終了するのはどのような対策なのか、お示しください。その時点で統合すべき記録がすべて統合されるのか、明確にお答えを願います。

 大きな問題が発生したときの必要なプロセスは、実態解明、責任追及、解決策の実行、この三つのプロセスです。いまだにすべてがお粗末です。

 消えた年金問題は、いつ、どのような状態になった時点で最終的な解決と言えるのか、お聞かせください。

 解決するための経費の支出は、徹底した責任追及なしには、到底国民の皆様に納得いただけません。今後、どのように、だれの責任を追及していくのか、その中に、解決を先延ばしした安倍前総理の不作為責任も含まれるのか、歴代社保庁長官の責任も追及するのか、お答えください。

 自民党は、参議院選挙前に、消えた年金問題のビラを作成し、ホームページにも掲載しました。そこには、「第二弾 ご安心ください!! あなたの年金は大丈夫です!!」とのタイトルに続いて、五千万口に関して、「政府・与党は今後一年間で全ての統合を完了させます。」とあります。すべての記録の統合完了が一年以内というのは本当ですか。具体的に何年何月までですか。自民党総裁でもある総理にお尋ねします。

 また、自民党の同じビラの裏面には、「政府・与党案」として、「今後一年で問題解決・全額支払い」とあります。今後一年で本当に全額支払いを実現できるのですか。一年以内とは何年何月までですか。

 ビラの中身が虚偽だったのであれば、撤回し、謝罪をしていただきたい。(拍手)

 統合されている記録にも、納付月数など受給額が減ってしまう入力ミスが確認されています。五千万件を統合さえすれば問題が解決するわけではありません。なくした財布を見つけても中が空っぽであれば意味がないのと同じです。

 民主党の強い要請で、ことし八月から、政府は五千万件のうち七千八百四十件をサンプル調査しています。七千八百四十件に該当する紙記録を捜し出して照合し、入力ミスが何件あるかも調査願います。いかがですか。

 納付月数や標準報酬月額、資格取得・喪失日が抜けていたり、入力ミスがあったりする記録は何件ありますか。七千八百四十件の保険料は、一件当たり平均幾らですか。それが判明すれば、五千万件の保険料総額や受給額総額が推定できます。このようなサンプル調査をいつまでに完了するのか、お答えください。

 民主党は、消えた年金問題の抜本解決の一つは、納付が記された手書き紙記録との照合と考えています。自治体や社保庁にある厚生年金や国民年金すべての紙記録を捜し出して、コンピューターデータと照合して、データを徹底的に正しくするのです。一年以内に紙記録との照合、訂正を終えるには、どの程度の人、物、金が必要になるのか、ぜひお答えを願います。

 現時点で、政府、自治体が保管している紙記録は、ダブりも含めて五億七千十五万件とも聞いていますが、それは本当ですか。全体の何割が紙記録として残っているのですか。

 これまで、記録回復によって受給額が増額した方は数多くいらっしゃいます。先月から過去一年間で増額された受給額は全額で幾らですか。また、これまでの相談対応などの中で、コンピューターには入力がなかったものの、紙記録には記録があったケースは何件ですか。つまり、入力ミスの件数です。

 年金記録第三者委員会の認定が滞っています。これまでの被害者すべての記録漏れや消滅の時期、納付事務所、納付方法などを工夫して公開して、被害者データベースをつくることが重要と考えますが、いかがですか。

 保険料の横領問題もお尋ねをいたします。

 社保庁と自治体には、本当にもう未公表の横領等はないのですか。すべての現役職員とすべてのOBに聞き取り調査を実施すべきと考えます。民主党の強い要請で社保庁の聞き取り調査は始まったようですが、全体の聞き取り対象人数と期限をお示しください。

 その他、多くの苦情が寄せられている脱退手当金、特例納付、不在者設定、障害年金、現況届の不正などに関して、徹底した実態調査を要請します。いかがですか。脱退手当金の横領の件数、国民年金基金の未払い件数と総額もぜひお示しをください。特に、厚生年金や国民年金の受給資格があるにもかかわらず申請していない方は、何人、総額幾らですか。いわゆる未払いの実態をお示しください。

 結局、日本の年金は、取るだけ取って払い渋りの一言に尽きます。(拍手)

 年金は国家の信頼に直結します。年金の信頼が地に落ちた今、国家の危機であると言っても過言ではありません。特に消えた年金問題の解決は、現在のように、社保庁があいた時間を使って片手間で作業をするのではなく、国家プロジェクトとして内閣挙げて取り組んでいただきたい。いかがですか。

 総理の年金問題に関する発言を伺っていると、まるで他人事です。たかが年金ではありません。国家の危機であるという意識をお持ちかどうか、見解を求めます。

 年金ばかりか、退職金にも問題はないでしょうか。

 厚生労働省所管の独立行政法人勤労者退職金共済機構は、中小企業の退職金支払いを支援しています。従業員を対象に一人当たり最低月五千円の掛金を事業主負担で機構に支払えば、機構から従業員に対して退職金が支払われるというものです。

 機構は、五人の理事のうち四人もが厚生労働省の元職業安定局長など天下りです。

 ところが、この仕組みができた昭和三十四年度から平成十八年度までで、未請求が四十九万二千二百五十一人、三百六十五億九千万円もありました。これが未払いになっています。人数では全体の五・七五%に上ります。この実態と反省をお示しください。

 民主党は、年金を削る前に天下りを削れ、社会保障を削る前に税金の無駄遣いを削れと訴えてまいりました。

 日本には、先進国では見られない、税金や保険料の無駄遣いを自動的に発生させるシステムが国の中心に埋め込まれています。このシステムにメスを入れれば、多くの財源が出てまいります。見方を変えれば、財源を生み出す宝の山なのです。

 このシステムの五つの代表例のイニシャルをとるとHAT―KZ、ハットカズとなります。

 最初は、H、ひもつき補助金システムです。

 自治体が必要とする事業と国が補助する事業に差があり、補助金をもらうためには、自治体が必要としない事業までも要望せざるを得なくなる。必要性の低い事業が生まれる温床です。省庁の権益を引きずるひもつき補助金を一括交付化する必要があります。天下り団体に天下りとセットで流れる補助金や委託費にもメスを入れる必要があります。

 遠藤前農水大臣がトップの農業共済でも見られた、不適正な補助金が返還されていないという問題もあります。民主党が要請した調査では、会計検査院が指摘を公表した事例に限っても、平成八年度から平成十七年度まで十年間で、会計検査院が不適正な経理と指摘して当該省庁が返還することを弁明書で国会に約束したもののうち、十八団体、二十三件、十二億二千四百七十四万円の国の補助金がいまだ返還されないままになっています。それぞれの実態と反省、返還されない理由、全額返還させる場合はその時期を伺います。そもそも不適正と指摘されるような形で補助金を出してしまった反省や監督責任はないのか、あわせて伺います。

 また、五件の事案について未返還であるとの指摘を受けた財団法人高年齢者雇用開発協会は、職員十九人中五人の天下りを受け入れています。天下りと不適正補助金の関連性はないのか、お答え願います。

 二番目は、A、天下りあっせん・仲介システムです。

 先進国で日本だけは、政府が天下りあっせん、仲介を業務の一環として実施しています。天下りにも類型があります。三つです。

 持参金型天下り。これは天下りが国からの発注や補助金とセットである典型的な事例です。

 最終役職が格上の天下りを受け入れると、補助金や契約など国からの税金の流れがどの程度ふえるのか。また、新たに天下りを受け入れたり受け入れ人数をふやすと、税金の流れがふえるのか。すべての団体に関して、再度相関関係の調査をお願いします。期限もお示しください。

 次に、人質型天下りです。これは、指導、監督、検査などの手心を加えてもらおうと受け入れる天下りです。

 例えば、会計検査院からの天下りを検査対象団体が受け入れると、団体が先輩を人質にとった格好になり、会計検査院にとっては厳しい検査ができにくくなります。

 実際に、国会でも指摘しましたが、会計検査院は、日本中央競馬会、JRAの不適切な会計処理を知りながら見過ごしていた疑いがあります。JRAは検査対象団体で、会計検査院の天下りをこれまで合計八人も受け入れていました。しかも、検査にOBが立ち会っていました。地方競馬場への検査にまで同行したということです。

 今後、検査対象団体は検査院からの天下りは受け入れるべきではないと考えますが、各省庁経由で検査対象団体にそのように指導をいただけるでしょうか。明確にお答えを願います。

 次に、創業型天下りです。これは、官僚OB同士で企業を設立する際に、設立前に出身省庁と将来の受注の約束を結ぶ手法です。出身省庁から直接受注すると怪しまれるために、財団法人を経由するケースもあります。

 国会でもただしましたが、当時、運輸省OBが設立した株式会社国際開発システムがこの事例に当たります。

 また、平成五年十月に設立された、新潟県に本社のある北陸建設サービス株式会社は、発起人三人全員が国交省OBです。資本金二千万円、四百株はすべて国交省OBから募りました。現在も、社長含め役員三人が国交省出身者です。この会社の売上高のほとんどは国交省からの受注です。国交省から、清掃、賄い、電話交換、運転手派遣など、随意契約で一年で五億円以上受注した年もありました。創業後、現在まで、国交省からの随意契約の総額をお教えください。反省の弁があれば、お答え願います。

 創業者が国家公務員OBの会社について、ぜひ実態を調査願いたい。いかがですか。また、創業型天下りに対する政府の取り締まり方針について、明確に御答弁願います。

 公益法人の事業を独占的に引き継ぐ天下り株式会社もあります。公益法人から出資を受けているか、あるいは事業の譲渡や継承をしている株式会社のうち、天下りを受け入れているのは何社ありますか。また、当該公益法人と株式会社の双方に在籍したことのある国家公務員OBは、何法人、何人いますか。

 かんぽの宿で食堂業務を引き継いだ株式会社夢閑歩サービスや、国立病院の駐車場管理などを手がける株式会社保健医療ビジネスなど、公益法人からの不透明な営業譲渡が散見されます。政府の対策をお示しください。

 公益法人が解散しても、業務を引き継いで、株式会社という形で天下り団体が温存される事例は何事例ありますか。とんでもない話です。

 また、独立行政法人が、天下りを受け入れる企業や公益法人、合わせて四十三法人に対して出資していることが判明しました。事実関係と、問題がないのか、見解を問います。

 総務省の天下り団体である特殊法人公営企業金融公庫があります。その社宅に、なぜか総務省の官僚が入居しています。問題はないのですか。

 民主党の調査で、国からの天下りだけで四千五百団体に二万八千人が在籍しており、その団体に半年で国から六兆円の税金が流れ込んでいることが明らかになりました。天下り団体を養うために、必要性の低い仕事をでっち上げているケースも含まれています。政府は、六兆円のうち、具体的に幾らをいつまでに削減するおつもりですか。お答えください。

 政府は、これまでこそこそやっていた天下りを、官民人材交流センターという名前の天下りバンク設立で、天下りあっせんを合法化しました。とんでもない話です。民主党法案のように、天下りのあっせんは一切禁止していただきたい。いかがですか。

 ある官僚は、ハローワークでは仕事が見つからないと話していました。政府が運営しているのに、ふざけた話です。官僚だけは、特別の豪華版ハローワークをつくって、手厚く再就職の世話を受けます。いまだ日本は官尊民卑の国なのでしょうか。天下りバンクに注ぎ込む税金があるのなら、ハローワークを改革していただきたい。総理、重大なことです、お答えください。

 ことし六月の内閣委員会で、渡辺大臣は、「私としては、いわゆる押しつけ的あっせんの件数は、確認された限りで三年間千九百六十八人と受けとめております」と答弁されました。平成十六年から十八年の三年間で、天下りあっせんが確認された総人数が千九百六十八人です。つまり、天下りのあっせんすべてがいわゆる押しつけ的あっせんと認めたわけです。そうであれば、あしたから天下りのあっせんは一切中止していただきたい。当然のことと考えますが、総理、いかがですか。

 天下り団体そのものの改革も不可欠です。幾つの独立行政法人と天下り公益法人を削減するのか、具体的数字をお答え願います。

 国所管の法人の内部留保金に関して、運用指針では、三〇%程度以下が望ましいとされています。しかし、平成十八年十月現在、二千六百七十一法人で三〇%を超え、超えた部分の総額が三千九百九十七億円に上ります。そのうち、天下りとともに補助金、委託費も受けている団体が二百十七法人で、三〇パー超の金額の合計が四百十一億円に達します。事実でしょうか。この中には、解散すべき団体や内部留保金を国に返還すべき団体もあると考えますが、いかがですか。御答弁ください。

 年金に関する事業を委託していた社団法人日本国民年金協会も内部留保金四二%、財団法人社会保険協会も三六%でした。年金の普及啓発が目的の天下り団体ですが、効果を上げているとは思えません。内部留保金を年金財源に返還した上で、解散も検討するべきと考えます。見解を求めます。

 三番目は、T、特別会計システムです。

 天下りの団体を養う原資となる、チェックのききにくい省庁の財布と言われるものです。

 政府は、二十八ある特別会計を幾つまで減らすおつもりですか。現在の特別会計予算の総額と縮小後の予算総額の数値目標も含めて伺います。

 四番目は、K、官製談合システムです。

 天下りを受け入れてもらうために、天下りOBが受け入れ企業に談合情報などを提供して利益を上げさせる犯罪的行為です。

 道路公団のOBの中には、年収一千五百万円で週に一日しか会社に行かないという厚遇で建設会社に天下っていたケースもあると聞いています。週一回会社に行って、談合情報を営業マンに渡すのです。

 政府には、ほかに官製談合がないのかどうか、徹底した再調査をお願いします。

 民主党は、官製談合根絶に向け、公務員OBも対象とするなどの官製談合防止法改正案を提出しました。法案を成立させるべきと考えますが、いかがですか。

 五番目は、Z、随意契約システムです。

 入札をせずに、あらかじめ決められた特定の企業、公益法人と契約することです。

 会計法では、国の契約は原則入札ですが、緊急性、独自製品、低額契約などに限定して随意契約が認められています。しかし、拡大解釈をして特定の天下り団体や企業に随意契約で高値発注をするケースが後を絶ちません。

 民主党の指摘で、国交省の地方整備局から天下り団体への随意契約が問題となり、政府は、平成十九年度から改善するとしました。しかし、例えば九州地方整備局では、平成十八年度に比べて、天下りを受け入れる公益法人との契約が、件数、金額とも比率では上がっているではないですか。全地方整備局の実態を示した上で、改善策を提示願います。

 民主党は、随意契約透明化法案を提出しました。今後、この提案を取り入れ、積極的な情報公開、契約の適正化を図っていくお考えはありますか。

 以上が、ハットカズシステム、H、ひもつき補助金システム、A、天下りあっせん・仲介システム、T、特別会計システム、K、官製談合システム、Z、随意契約システムです。

 自民党からは、直ちに増税しなければ財政がもたないとの声が上がっています。確かに、官僚の説明をうのみにすれば、日本には無駄遣いはありません。しかし、御自身で調査をして、現場に行って、よく目を凝らして見てください。そして、背後にある、浪費を生み出す巨大なシステムを実感してください。

 政府は、無駄をなくすなどして、予算を前年と比べて幾ら削減できると試算しているのですか、お答え願います。

 自民党が増税なしには財源を出せないというのであれば、政権交代をして、民主党に政府の大掃除をさせてください。(拍手)

 このハットカズシステムに代表される巨額の浪費を生み出すシステムに本当に切り込む覚悟があるのか、総理の決意と手順をお聞かせください。

 官僚の人事評価基準の見直しも不可欠です。

 今、官僚が出世しようとすれば、最低限、予算を使い切る、天下り団体は減らさないことが必要です。この基準を百八十度変えて、予算を効率的に使って余らせる、不要な天下り団体は削減する、このことで評価が上がる仕組みにするのです。無駄遣いをなくす官僚が出世できるシステムです。総理の見解を求めます。

 会計検査院改革も不可欠です。

 日本の会計検査院は、みずからの運営費の二倍しか無駄遣いを節約していません。イギリスの八倍、アメリカの七十八倍に比べると見劣りします。

 会計検査院には、相手省庁が了解しないと検査報告書には記載しない、つまり公表しないというとんでもない不文律があると言われています。

 会計検査院は、各省庁に、会計処理などに関して疑問を投げかける照会文書を平成十八年次までの五年間で千八百五十八件提出しました。そのうち二百十九件は、照会文書を投げかけたにもかかわらず、検査報告書には載っていません。省庁に聞くと、検査報告書に未記載の案件でも、照会文書をきっかけに改善したものもあり、不適切な会計処理であるケースもあるということです。

 二百十九件の照会文書のうち、省庁が改善をしたケースは何件ありますか。

 検査院や省庁は、検査報告書未記載の不適切な会計処理を、隠さず、すべて公表すべきではないでしょうか。総理の見解を求めます。

 検査報告書に記載されていない案件に関して、照会文書を十件以上受け取った省庁は六つありますが、そのうち五省が所管の検査対象団体に検査院からの天下りを受け入れています。天下りを受け入れることと検査報告書に記載されないことと関連はありますか。

 会計検査院は公表するか否かの判断を適切にしていると思われますか。

 以上、総理に見解を求めます。

 公共事業についてお尋ねします。

 日本の公共事業は、費用対効果がなければ認められません。つまり、BバイC、ベネフィット・パー・コストが一以上なければならないのです。多くの事業において、途中で事業費であるC、コストが膨れても、それと歩を合わせるように、効果であるB、ベネフィットも都合よく膨らんでいきます。本当に正しく試算がなされているのですか。お尋ねします。

 農水省所管では、福島県母畑の国営農用地再編整備事業で、当初予算から何と十二倍も増加しています。国交省所管では、霞ケ浦開発事業で、当初予算から九倍も増加しています。本当に費用対効果の数字が適正なのですか。見解を求めます。

 また、農水省所管事業では、完了後十年以内及び継続中の国営土地改良事業で、費用対効果、BバイCが一を下回った事業が七事業もあります。完了事業が五つ、継続中が二つです。費用対効果がなかったということです。反省はないですか。事業名とともにお尋ねします。

 過去二十年で、当初の事業費見込み額と最終的な事業費を比べると二倍以上に膨らんだ公共事業は幾つあり、膨張した総額は幾らですか。

 製品の事故が後を絶ちません。先進国で、消費者が日本ほど軽んじられている国はないでしょう。

 例えば、電気製品が燃える事故です。消防庁によると、平成十八年、こんろやストーブを除き、出火原因が電気機器であるものは千九百六件も確認されています。冷蔵庫五十一件、扇風機四十八件、テレビ四十四件、電子レンジ三十八件、洗濯機二十三件、掃除機六件などです。しかし、驚くことに、メーカー名や型番はほとんど公開されていません。今後、政府は、発火原因とともにすべての製品名を公表すべきと考えますが、いかがですか。公表時期もお答えください。

 自動車も燃えています。消防庁によると、平成十八年に、自動車の発火のうち、エンジン、配線、電気装置、排気管など、自動車及び装備品そのものに原因があると疑われるものが千九百三十九件ありました。消防庁は、メーカーや車種を公表していません。すべての発火事故の車種と原因を公表すべきと考えますが、いかがですか。これも公表時期をお示しください。

 また、政府や関連団体は、車のメーカー別、車種別の乗員死亡率リストを作成できるデータを持っていますが、公表していません。米国では当たり前のリストの公表を求めます。お答えください。

 車のリコール隠しの背景の一つに、メーカーなどが、車の欠陥をめぐる和解や示談の場において、口どめを条件にすることが挙げられます。国が受けた消費者からの相談実態をお示しください。

 欠陥の口どめを和解や示談の条件にすることに関して、政府の見解を求めます。また、リコールを担当する国交省審査課から自動車メーカーへの再就職状況をお尋ねします。今後も再就職を続けますか。

 民主党は、危険情報公表法を何度も国会に提出しています。これは、事故が発生するおそれがある製品などを事前に公表する法律です。製品に限らず、建築物や食品、医薬品、遊具なども網羅するものです。今後、この法案に賛同いただきたいと考えますが、いかがですか。

 原爆症の認定基準の見直しについてお尋ねします。

 政府は、新たな基準をどのようなものにする方針でしょうか。同時に、いつまでに決めるのか、めどもお示しください。

 肝炎対策についてお尋ねします。

 昨日、民主党は、インターフェロン治療などの医療費を上限月一万円に軽減する肝炎医療費助成法案を参議院に提出しました。一日百二十人もの方が、肝硬変や肝臓がんでお亡くなりになっています。この法案が成立すれば、毎年新たに三万人の肝炎患者の命を救うことができます。この法案に賛同いただけますか。医療費助成についての見解も求めます。

 また、C型肝炎訴訟については、いたずらに訴訟を長引かせるのではなく、国は高裁の判決を待たずに和解のテーブルに着くべきと考えますが、お考えをお聞かせください。

 民主党は、生活維新、生活が第一をスローガンに掲げています。

 現在、日本のあらゆる制度が役所や業界にとって都合のよいものとなっています。生活者の立場に立っていません。世の中に起こる多くの事件は、この制度がもたなくなっていることを示しています。

 すべての制度を生活者の立場から、公正、安全、透明性などの観点からつくり変えていく必要があります。生活者主権の改革です。これは、かつての大企業は敵との消費者運動とは異なります。生活者の立場に立つ厳しい制度や市場によって、逆に企業の国際競争力も高まるのです。この改革をどう考えますか。

 消えた年金問題に関して、政府は、実に五十年も前から把握していました。総理は、なぜ長年放置されてきたとお考えですか。私は、日本の統治機構に欠陥があると考えています。

 自民党長期政権の中で、官と政治の間に一種の不可侵条約が結ばれました。人事など官には干渉しないかわりに、官に対して、自分の選挙区に公共事業などを持ってきてもらう箇所づけの期待をしました。もたれ合いの構図です。自民党型システムの内閣では、大臣に実質的な人事権はありません。それでどうやって官僚をコントロールできるんですか。

 これまで、自民党が省庁の不正を新たに指摘して是正したことがあったでしょうか。暴露するのはほとんど野党とマスコミです。長年のもたれ合いで、自浄能力なき政治と官との関係に成り下がってしまいました。総理の見解を求めます。(拍手)

 政治家と官僚が対立している場合ではありません。官僚を大臣の真の部下とするためにも、現在百三十人以上いる政府の局長以上を政権党や大臣が任命する政治任用制度が必要だと考えますが、いかがですか。

 暴走する官をコントロールできないのは戦後始まったことではありません。戦前の旧帝国陸軍も、統帥権独立、天皇の軍隊との建前のもと、内閣も国会も、最終的には天皇すらもコントロール不能の独立帝国を築いてしまいました。本来は、敗戦後に、統治機構の徹底的な見直しをして、暴走する官に歯どめをかけるしっかりした仕組みを取り入れるべきでした。新憲法を制定して、表面的には統治の仕組みは変わりましたが、戦争の総括や統治機構の根本的見直しのないまま、今日までずるずる来てしまいました。総理はどう考えますか。

 吉田満著作の「戦艦大和ノ最期」では、死地に向かう若き将校たちの会話が引用されています。戦艦大和の哨戒長である臼淵磐大尉はこう語っています。「敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ハレルカ」「日本ノ新生ニ、サキガケテ散ル、マサニ本望ヂヤナイカ」。

 敗戦を覚悟しても死地に向かった将校は、新生日本を渇望していました。しかし、戦後、日本は、経済的には復興を遂げましたが、本当に生まれ変わったのでしょうか。現在も官に引き継がれている戦前のあしきDNA、遺伝子を断ち切らなければなりません。

 政府は、平成七年の村山談話で、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで」と公式見解を示しました。この「国策を誤り、」とはどのような事案を指すのですか。総理は、ぜひ時系列で具体的にお答えください。

 国策を誤った事案とその原因を徹底的に明らかにすることが、統治機構を見直す第一歩となります。戦争体験者が御存命の今が最後のチャンスです。戦争の記憶が消えていく今、戦争の記録にしても、同じ敗戦国のドイツとは異なり、日本には政府公認のものがありません。

 沖縄での集団自決に対する軍の関与一つとっても、解釈が変わるいいかげんな政府です。総理は、沖縄の集団自決に関する軍の関与の事実についてどうお考えですか。

 この際、国民的議論の中で戦争の総括をした上で、政府の公認記録を残す作業を開始すべきと考えますが、いかがですか。重要なことです。見解をぜひ福田総理、お尋ねします。

 これまで日本は、場当たり的なびほう策を重ねて何とかここまでやってまいりました。しかし、もはや限界でございます。私は、一刻も早く政権交代を実現することが国益にかなうと強く考えております。

 最後に、福田総理に、政権交代の必要性と解散時期についてお尋ねして、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 長妻議員にお答えいたします。

 議員から、大変幅の広い、また多くの質問をいただきました。大変ありがたいことでございますけれども、関連する御質問、多少まとめながら答弁をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 まず、安倍内閣からの政策の継承、安倍内閣との違い、戦後レジームからの脱却をどう評価するかということについてお尋ねがございました。

 一昨日の所信表明演説におきまして、安倍内閣からの継承や違いといった点を意識するのではなく、私が日ごろから考えている政策について率直に申し述べさせていただきました。

 政治は国民のものだということ、これは自民党の立党宣言にある言葉でありますけれども、同じ自民党に所属する小泉元総理、安倍前総理と、目指すべき方向性においては大きく異なるところはございません。構造改革を今後とも継承してまいります。

 そういう中にあって、私は、実態を十分に把握した上で、生じた問題には一つ一つきちんと処方せんを講じていく、そういう考え方をいたしております。

 安倍前総理が言われた戦後レジームからの脱却という言葉については、その真意を十分に承知しているわけではありませんけれども、時代の変化を踏まえ、将来を見据えながら、見直すべきものは見直していくということは当然であると考えております。

 年金保険料の流用禁止についてのお尋ねがございました。

 年金保険料は、使途を徹底的に見直し、現在では、年金給付のほかには年金給付に密接に関連する事業運営費のみに充てております。年金給付と密接不可分な経費に保険料を充てることは、民間保険はもとより、他の公的保険や諸外国の例から見ても妥当なものであると考えております。重要なことは、税財源であれ保険料財源であれ、無駄遣いは絶対にさせないということであり、今後さらにこのことを徹底してまいります。

 年金制度の信頼性についてお尋ねがございました。

 年金制度については、平成十六年の制度改正において、長期的な給付と負担の均衡を確保し、制度を持続可能なものとするための見直しを行ったところであります。適切な制度となっているものと考えております。

 次に、年金記録問題への対応策についてお尋ねがございました。

 私も、年金記録問題に対する国民の不安を解消していくことは重要であると考えておりまして、本年七月五日に政府・与党で決定した方針に基づいて、まずは、平成二十年三月までを目途に、基礎年金番号に未統合の五千万件の年金記録について名寄せを実施し、記録が結びつくと思われる方に加入履歴をお送りし、そして、その後、平成二十年十月までを目途に、それ以外のすべての方にもお知らせをお送りするとともに、これらの取り組みによってもなお残された記録については、過去の勤務事業所、住所地市町村などに照会を行って、徹底的に調査を行います。

 こうした着実な取り組みにより、国民の皆様一人一人の記録が点検され、基礎年金番号への統合が行われて、正しく年金が支払われるようにしてまいりたいと思います。

 年金記録問題の解決、責任問題等についてのお尋ねがございました。

 年金記録問題については、基礎年金番号に未統合の五千万件等の名寄せ、ねんきん特別便等によるすべての方へのお知らせ、また御本人による確認を通じた記録の統合、コンピューターの記録と台帳等との計画的な突き合わせ等の施策を行うことにより、一人一人の年金記録が点検され、正しく年金が支払われるということにより解決していくものと考えております。

 また、年金記録問題の発生の経緯、原因、責任の所在等については、年金記録問題検証委員会において検証を進めており、その結果も踏まえ、適切に対処することといたしております。

 年金記録問題への取り組みについて、安倍前総理は最大限の努力を傾注されたところでありまして、私も、この問題の解決に向け全力を尽くすことによって責任を果たしてまいりたいと考えております。

 自民党の広報資料についてのお尋ねがございました。

 これについては、当時、名寄せや突合といった国民にとって耳なれない、わかりにくい用語が社会保険庁において使用されていたため、自民党としては、国民にわかりやすい表現を用いる観点から、統合という言葉を用いたものと聞いております。

 また、「今後一年で問題解決」とは、その時点から一年で未確認の年金記録五千万件の名寄せをすべて完了させることを述べたものであり、「全額支払い」とは、年金記録の訂正に伴い年金の未払いが判明した場合、年金時効特例法により、さかのぼって全額をお支払いすることを述べたものであります。

 いずれにしても、年金記録問題への対応としては、その後、七月五日に政府・与党が決定した方針に基づき計画的に取り組んでおります。

 サンプル調査についてのお尋ねがございました。

 お尋ねのサンプル調査は、年金記録問題検証委員会が、基礎年金番号に未統合となっている五千万件の年金記録について、問題の発生の経緯、原因等を調査する観点から、未統合の原因となっている氏名、生年月日の正確性など、必要な事項について調査しているものであります。

 検証委員会の調査、検証は現在も継続中であることから、検証を適切に実施する観点から詳細を明らかにすることはできませんが、サンプル調査についても鋭意取りまとめ中であり、検証委員会の報告書の中で結果が明らかにされるものと承知をいたしております。

 年金の台帳等とコンピューターの記録との突き合わせについてお尋ねがございました。

 年金記録問題への対応においては、正しい年金をより早くお支払いすることが重要という観点から、まずは基礎年金番号に統合されていない五千万件の記録について名寄せを実施し、記録が結びつくと思われる方に加入履歴等のお知らせをすることを最優先課題としており、コンピューターの記録と台帳等との突き合わせについては、効率的に行われるよう、今後、具体的な実施方法の検討を進め、来年度以降に計画的に実施することとしております。

 また、御指摘の一年以内で突き合わせを行うと仮定した場合に必要な人員、経費等の算出については、実施方法の詳細を踏まえた上で試算すべきものと考えております。

 なお、御指摘の紙記録の件数は、現在、社会保険庁において確認中であります。

 コンピューターには記録がなかったが、社会保険庁の資料に記録があったものの件数及び記録回復による受給額増額についてのお尋ねがございました。

 昨年八月より実施している年金記録相談の特別強化体制の中で、コンピューターでは記録を確認することができず、被保険者等が保有する領収書等に基づき被保険者記録を訂正したもののうち、社会保険庁及び市町村の資料に記録があったものの件数は二百二十件であると承知いたしております。

 なお、未統合の記録の基礎年金番号への統合等によりまして年金額が増額になったものの総額については、現在の社会保険オンラインシステム上では把握する仕組みとなっていないと承知しております。

 年金記録問題に関するデータベースの作成についてのお尋ねがございました。

 年金記録問題については、御指摘のデータベースの作成が直ちに正しい年金の支払いにつながるかどうかという問題もあり、年金記録確認第三者委員会における公正な判断を通じて適切に対応することが重要であると考えております。

 保険料の横領問題に関するお尋ねがございました。

 自治体については、先般、厚生労働大臣及び総務大臣より市町村に対し調査の協力要請をしたところでありますが、現時点で、市町村において把握している事案はすべて御報告をいただいたと考えております。

 社会保険庁については、現役の正規職員に対し、他に横領等事案の存在を承知していれば申し出るよう指示するとともに、OB職員については、住所等が判明した者に順次調査票を送付し、調査を実施しており、最終的な回答の締め切りは十月十二日としております。

 国民年金保険料の特例納付などの実態調査、脱退手当金の横領件数、年金の未払いの実態についてのお尋ねがございました。

 特例納付の事務の状況については、既に調査結果を公表したところであり、不在者設定についても、一部の調査結果を公表し、残った部分についてなお調査しているところであります。

 その他の脱退手当金や障害年金につきましては、国民の方々に不当な不利益が生ずることのないよう、制度をよく説明するとともに、不服申し立て等に適切に対応してまいります。

 なお、不正に現況届がなされた事例については、調査は困難と考えております。

 脱退手当金の横領件数については、公表した五十二件の社会保険庁職員による横領等事案のうち一件であります。

 国民年金基金の年金について裁定請求を行っていない方の人数等については、現在、国民年金基金連合会において調査中であります。

 なお、お尋ねの年金の未請求の件数等については、現行の社会保険オンラインシステム上、把握する仕組みとなっておりません。

 年金問題に対する認識についてお尋ねがありました。

 今回の年金記録の問題は、国民の皆様の政府に対する信頼を損なうものであったと考えております。それ以上に、国家の威信にかかわる問題であるとも思っております。

 この問題の解決は、内閣の最重要課題の一つであると考えており、本年七月五日に政府・与党が決めた方針に基づき、一つ一つ着実に対策を進め、国民の皆様の信頼を回復してまいります。(拍手)

 次に、中小企業退職金共済制度についてのお尋ねがありました。

 退職して五年経過後も未請求の退職金の状況は御指摘のとおりでありますが、金額では当該期間の支払い済み額の累計に対して〇・六三%であり、また、件数で見ると、この十年間に半分以下に減少しております。

 しかしながら、退職金の未請求者を発生させないようにすることは極めて重要であると考えており、今後は、機構から直接従業員に請求手続を促すなど、改善を図っていくことといたしております。

 なお、機構の役員については、業務内容を考慮し選任されているというような認識をいたしておりますが、今後とも適材適所で選任されるべきものと考えております。

 未返還の補助金についての実態や、その理由、高年齢者雇用開発協会等に関するお尋ねがございました。

 一部の補助金が未返還となっており、その理由は、事務作業がおくれている場合、返還する者が資力に乏しい場合などがございますけれども、早期に返還されるよう努めております。

 返還を求めなければならない事態の発生はまことに遺憾であり、今後さらに適切な執行に万全を期してまいります。

 また、高年齢者雇用開発協会に対する補助金の不適正支給については、協会の職員に国家公務員の出身者がいることとの関連性が指摘されましたけれども、助成金等の支給に際し、要件の確認が不十分であったことによるものと認識をいたしております。

 次に、いわゆる天下りと補助金、契約などの関係についてお尋ねがありました。

 国家公務員の再就職については、国民から疑念を抱かれるものであってはならないのは当然であり、その透明性を確保することが重要です。

 これまでに具体的にお尋ねいただいた件につきましては、再就職先の法人に確認すべき事項が含まれるなど、少なくとも一カ月程度の調査期間が必要となる見込みですが、既に調査に着手しておりまして、可能なものから順次回答してまいります。

 会計検査院の天下りについてお尋ねがございました。

 政府はこれまで、国家公務員のいわゆる天下り問題に対し、国民の厳しい批判があることを真摯に受けとめ、行政に対する信頼を取り戻すため、公務員制度改革を進めてまいりました。

 なお、会計検査院は、内閣から独立した地位を有する機関として、厳正かつ公正な会計検査を実施することが求められており、職員の再就職についても、こうした趣旨を踏まえて適切に行われるべきものと考えております。

 北陸建設サービス株式会社との随意契約についてのお尋ねがありました。

 北陸建設サービス株式会社との創業後、現在までの随意契約の総額については、年数が経過しており不明でありますが、平成十四年度から十七年度までの間、同社との随意契約の各年の平均額は約四億三千万円となっております。

 過去の契約については、事務所の清掃業務等を庁舎内の秘密保持の観点等から随意契約により委託してきたものですが、政府の随意契約の全般について、問題がないか見直すことといたしておりました。現在は、その方針に基づきすべて一般競争入札によっており、今後とも適正な業務発注に努めてまいります。

 次に、退職国家公務員が設立した会社の実態及び当該退職公務員に係る規制についてお尋ねがございました。

 退職国家公務員による会社の設立については、国民に疑念を抱かれることがあってはならないのは当然であり、その透明性を確保することが重要です。

 これまでに具体的にお尋ねいただいた件につきましては、再就職先の法人に確認すべき事項など一定の調査期間が必要なものが含まれますが、既に調査に着手しており、可能なものから順次回答してまいります。

 また、さきの通常国会で成立した国家公務員法等の一部を改正する法律では、退職国家公務員が会社を設立した場合も含め、営利企業等の地位についている元職員の出身省庁への働きかけを規制し、これに関する不正行為に対して刑罰を導入しています。

 さらに、実効性を確保するため、外部監視機関を設置し、厳格な監視を行うことといたしております。

 次に、公益法人からの事業譲渡等についてのお尋ねがございました。

 お尋ねの事例につきましては、現在調査を行っており、可能なものから順次回答してまいります。

 次に、株式会社夢閑歩サービス及び株式会社保健医療ビジネスについてのお尋ねがありました。

 御指摘のかんぽの宿の食堂業務については、財団法人簡保加入者サービス協会が受託していたところですが、公益法人改革の一環として、同協会は平成十九年三月に当該業務を株式会社夢閑歩サービスに譲渡し、同年四月に解散したものであります。

 なお、当該事業譲渡は公認会計士、弁護士に確認した上で行われたものと承知しております。

 また、御指摘の株式会社保健医療ビジネスについては、平成十年当時、財団法人厚生共済会において収益事業の比率が大きく、適当ではなかったため、その改善を図る観点から、当時の厚生省の指導により当該財団法人の収益事業を当該株式会社へ譲渡したものであります。

 次に、公益法人が解散し、株式会社に業務を引き継いだ場合についてお尋ねがありました。

 公益法人の設立当時には公益目的として社会的に評価されていた事業でも、社会経済情勢の変化により、事業内容が営利企業と競合する状況になる場合があります。そのような場合で、公益法人にふさわしい事業内容に改善することができないときは、各主務官庁は、公益法人に対して株式会社等に転換するよう指導しております。過去五年間において、指導に従い、公益法人から株式会社等に業務を譲渡して解散した法人は十二法人です。

 なお、国所管の公益法人が事業を株式会社へ譲渡した事例における国家公務員出身者の状況については、先ほど答弁いたしましたが、現在調査を行っており、結果がまとまり次第御報告いたします。

 次に、独立行政法人の出資についてお尋ねがございました。

 各府省による調査の結果、独立行政法人が出資等を行っている企業、公益法人のうち退職公務員等が再就職しているものは四十三法人であったと承知しております。

 また、政府としては、独立行政法人による出資については、法令で定められた業務のために必要がある場合に限ることとしております。

 個々の出資については、独立行政法人の整理合理化方策の検討を行っている中で、必要に応じて、その適否を検討するとともに、評価の枠組みにおいても関連公益法人等への出資、出捐の必要性等を厳しくチェックしてまいりたいと考えております。

 次に、公営企業金融公庫の宿舎への総務省職員の入居についてのお尋ねがありました。

 国と公営企業金融公庫は相互に人事交流を行っており、国から出向して公庫の職員となった者が公庫の有する宿舎に入居することは予定されているところでございます。しかしながら、国家公務員が公庫の職員でないにもかかわらず入居した場合など、国民の誤解を招くおそれのあるものについては、できる限り早く退去するよう求めたところであります。

 次に、公務員の再就職先への支出のお尋ねがございました。

 御指摘の六兆円は衆議院調査局の調査結果を民主党で集計したものであり、コメントは差し控えさせていただきますが、国は、公務員の再就職状況とは関係なく、政策的な必要に基づいておのおのの支出を行っております。

 今後とも、真に必要な経費については適切に措置する一方、天下りについては、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止するとともに、財政支出全般について聖域なく見直しを行ってまいります。

 公務員の再就職先のあっせんの禁止についてお尋ねがございました。

 各府省が行う再就職あっせんは、国民の目から見れば、予算や権限を背景とした押しつけ的なあっせんと受けとめられかねないことから、さきの通常国会で成立した国家公務員法改正法において、各府省の再就職あっせんを全面的に禁止し、中立、透明な仕組みによる官民人材交流センターに一元化することとしたところでございます。

 仮に、官民人材交流センターを設けず、あっせんを禁止し、ハローワークを利用することとした場合、公務員には身分保障が存在するため役所に残ろうとし、行政の減量や効率化を妨げる要因にもなりかねないものと考えております。

 現在、センターの具体的な制度設計については、官房長官のもとの有識者懇談会における検討結果を踏まえ、平成二十年中にセンターを立ち上げるべく、鋭意取り組んでまいります。

 独立行政法人の見直しについては、現段階で具体的な削減数字を念頭に置くことはなく、百一の全法人について、原点に立ち返って徹底的に見直しを行い、本年内を目途に独立行政法人整理合理化計画を策定いたします。

 公益法人については、基本的に法人の自主性が尊重されるべきものであり、国がその廃止を強制することは法人の性格からなじまないと考えております。なお、行政委託型の公益法人については、行政改革の立場から引き続き注視してまいります。

 次に、公益法人の内部留保についてお尋ねがございました。

 公益法人については、その財産を用いて積極的に公益事業を実施することが求められます。したがって、その内部留保は、公益事業の適切かつ継続的な実施に必要な程度とすることが適切であります。

 国所管の公益法人で、内部留保の水準が一事業年度の活動に必要な額の三〇%を超える法人は、平成十八年十月一日現在で二千六百七十一法人であり、これらの法人の三〇%を超える金額の合計は約三千九百九十八億円となっております。

 また、これらの法人のうち、国家公務員の出身の理事が在職し、かつ国から補助金、委託費を受けているものは二百十七法人であり、三〇%を超える金額の合計は四百十一億円となっています。

 個別の公益法人の適正な内部留保の水準は、当該法人の事業内容、財務状況等によっても異なります。大きな内部留保を有することをもって直ちに法人の解散等が必要であるということは考えておりません。御指摘のような批判があることも踏まえまして、積極的に公益事業が行われるよう、各主務官庁において適切に指導監督を行ってまいります。

 次に、社団法人日本国民年金協会及び財団法人社会保険協会についてお尋ねがございました。

 これらの法人はいずれも公益性のある事業を行っていると承知しておりますが、両法人の内部留保について適切な水準とするなど、適正な事業運営が行われるよう指導監督してまいります。

 次に、特別会計についてお尋ねがございました。

 そもそも特別会計の廃止だけでは財源につながらず、その事業等を見直さなければ、単に一般会計に移管されるだけになります。政府としては、徹底した事業の見直しを踏まえ制定された特別会計に関する法律に基づき、平成十八年度に三十一あった特別会計を平成二十三年度までに十七に縮減することとしております。

 また、特別会計歳出のうち実質的に見直しの対象となる歳出は、平成十九年度予算において、特別会計の歳出単純合計約三百六十二兆円から、特別会計間の重複計上額のほか、国債償還費等、社会保障給付といった特別会計改革とは別途議論すべきものを除外した約十一・六兆円であります。

 この十一・六兆円については、無駄遣いの排除の観点から改革に取り組み、十九年度予算において対前年度〇・七兆円程度削減しており、今後とも合理化、効率化の徹底を図っていく所存でございます。

 次に、官製談合についてお尋ねがございました。

 談合への職員の関与を疑うに足る事実がある場合、関係府省において徹底して事実解明を行うことは当然であり、調査結果に基づき万全の対策を講ずる必要があると考えます。

 官製談合防止法案については、既に国会で継続審議中であり、立法府で十分御議論をいただきたいと考えます。政府としては、官製談合を根絶するため、現行官製談合防止法を厳正に執行してまいります。

 次に、地方整備局における公益法人との契約についてお尋ねをいただきました。

 公益法人との随意契約については、昨年六月の随意契約見直し計画に従い、競争性のある契約方式に移行中であります。

 全地方整備局における公益法人との契約の状況については、作業が膨大となるため直近の数字を直ちにお答えすることは困難ですが、今後、地方整備局を含む計画全体のフォローアップを行った上で、効率的かつ透明な公共調達が実現されるよう、計画の着実な実施を図ってまいります。

 次に、民主党が提出された随意契約等透明化法案についてのお尋ねがございました。

 政府としては、随意契約に係る情報についても、契約の相手方、契約金額、随意契約によることとした理由等を各府省のホームページにおいて従前から公表しているところであります。

 今後とも、こうした取り組みを着実に推進し、引き続き政府調達の適正化、透明化に努めてまいる所存でございます。

 無駄遣いをなくすことなどによる予算の削減額についてお尋ねがございました。

 政府としては、基本方針二〇〇六等におきまして、今後の歳出抑制の全体像とともに、各分野の歳出改革の内容など具体的な姿を示しているところでございまして、今後の予算編成に当たっては、こうした方針のもと、御指摘のあった項目も含めて、歳出全般にわたる徹底した見直しを行って無駄を排除し、歳出の抑制に最大限の努力を行ってまいります。

 税金の無駄遣いをなくしていく取り組みについてのお尋ねがございました。

 補助金については、厳正な執行に万全を期してまいります。

 天下りについては、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止します。

 特別会計については、特別会計に関する法律に基づき統廃合等を行い、合理化、効率化の徹底を図ります。

 官製談合については、官製談合防止法の適正な執行や入札契約制度の改善等により根絶を図ります。

 随意契約については、見直しを着実に推進し、引き続き適正化、透明化に努めてまいります。

 次に、官僚の人事評価基準の見直しについてお尋ねがありました。

 公務員制度改革の一環として、さきの通常国会において国家公務員法を改正し、能力・実績主義の人事管理を徹底するため、新たな人事評価制度を構築することといたしたところであります。

 新たな制度については、簡素で効率的な行政運営の観点も念頭に置きつつ、人事評価基準を含めた詳細設計を行ってまいります。

 次に、決算検査報告に掲記されていない案件に係る措置や公表、会計検査院職員の再就職と決算検査報告掲記との関連、決算検査報告掲記の判断の適否についてお尋ねがございました。

 予算の厳正かつ効率的な執行等を図るため、会計検査院の照会文書を受けた各府省に対しましては、適切な対応をとるように改めて求めているところであります。

 会計検査院の照会文書は、会計検査事務の過程において検査を受けるものの説明を求めるために発せられる質問であり、会計検査院の正式な見解や意見の表明ではないと承知しております。

 そして、会計検査院では、意思決定の中立性や厳正、公正な検査の実施を確保するため、照会文書の内容を公表しないこととしていると承知しており、政府といたしましては、内閣に対し独立した地位にある会計検査院の判断を尊重し、決算検査報告に掲記されていない照会文書の内容、さらにはその内容に関してとられた措置を明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 会計検査院の職員の再就職については、当該職員が在職中に培った経験や能力が再就職先において必要とされていることから行われていると承知しております。そして、会計検査院の職員が会計検査の対象である団体に再就職している場合においても、会計検査院としては当該団体に対し厳正な会計検査を実施していると承知しております。

 会計検査院は、各事案を決算検査報告に掲記するかどうかを一件ごとに、その事実関係や規模、重大性、発生原因、事態の広がり等を検討して総合的に判断していると承知しております。政府といたしましては、決算検査報告を活用し、予算の厳正かつ効率的な執行と経理の適正な運営に努めてまいりたいと考えております。

 次に、公共事業における事業効果の試算、費用対効果が一を下回った事業、事業費の増加等についてお尋ねがございました。

 完了後十年以内及び継続中の農水省所管事業で費用対効果が一を下回った地区は、高知西南、高幡、飛騨東部第一、富良野東部及び鳥海南麓の国営農地開発事業と中海及び諫早湾の国営干拓事業の七地区があります。これらは、いずれも事業開始後の農業をめぐる状況や社会情勢の変化により、やむを得ず事業規模を縮小したものであります。この結果、事業効果も減少しましたが、これまで行った事業が無駄にならないよう、必要最小限の事業を継続し、結果として、費用対効果が一を下回ったものであります。

 公共事業については、御指摘のような批判もあり、平成十年度から事業の再評価制度を導入し、費用、効果等について、学識経験者等から構成される事業評価監視委員会等における審議、評価結果の公表など、客観性、透明性の確保に努め、厳格な事業評価を実施しております。

 公共事業費の増加に関する御質問については、作業が膨大となるため、過去二十年間の数字をお答えすることは困難ですが、平成十六年五月の議員提出の質問に対する答弁書等に基づいてお答えすれば、平成五年度から平成十八年度までの十四年間において、当初の総事業費見込み額が百億円以上で、最終的な事業費が二倍以上となった、国土交通省及び農林水産省所管の国などの実施に係る事業は八十一件、当初見込み額を超えた額は約五兆八千億円でした。

 次に、電気製品や自動車が燃える事故についてのお尋ねがございました。

 火災の原因には、種々さまざまなものが考えられます。電気製品や自動車が燃える事故に関しては、市町村消防本部による火災原因調査の結果について、メーカー名、型式等の製品情報や人命等の被害状況を取りまとめ、関係省庁間で必要な情報共有を行うとともに、年内中を目途に公表を始めることといたしております。

 なお、消費生活用製品に起因する火災等の重大事故については、消費生活用製品安全法に基づき、経済産業省において、その情報の報告を求め、公表しております。

 自動車の欠陥をめぐる情報の口どめと国交省審査課から自動車メーカーへの再就職についてお尋ねがありました。

 国土交通省で受け付けた自動車ふぐあい情報について一定の条件で検索したところ、情報の口どめについて触れているものが四件ありました。

 自動車のリコールに係るふぐあい情報が適切に報告されないことは、口どめの有無にかかわらず、問題があると考えます。国民生活の安全、安心の確保、ひいては消費者の保護を図るため、自動車のリコールに係るふぐあい情報については、道路運送車両法に基づきメーカーに報告を義務づけており、引き続きその確実な履行を図ってまいります。

 国交省審査課から自動車メーカーへの再就職については、係員一名が、平成十九年四月に二十六歳で自己都合により退職して、自動車メーカーへ再就職いたしております。

 今後の営利企業への再就職についても、法令に基づき適切に対処してまいります。

 次に、包括的な危険情報公表についてのお尋ねがございました。

 私は、真に消費者や生活者の視点に立ち、さまざまな分野において、国民の安全、安心を重視する政治、行政へと転換していく考えであります。

 この観点から、前広に危険情報を収集、公表して対応していくということは重要な課題であると認識しており、この点では長妻議員と共通するところがあると考えております。

 政府といたしましては、具体的な制度の実効性の観点も踏まえながら、事故の未然防止に係る制度整備を含め、消費者にとって真に意味のある対応をしっかりととってまいります。

 次に、原爆症認定の見直しについてお尋ねがございました。

 原爆症の認定につきましては、現在、厚生労働省に検討会を設置し、そのあり方について検討を進めているところであり、その議論を踏まえて、できる限り早く結論を得ることといたしております。

 肝炎対策についてのお尋ねがございました。

 肝炎対策については、これまでに種々の対策を講じてきたところでありますけれども、従来の延長線上でない新たな対策を講じるよう検討を進めているところであります。

 民主党の法案が昨日提出されたことは承知しておりますが、政府としては、今後さまざまな御議論を踏まえつつ、できる限り早期に肝炎対策の具体案を取りまとめてまいります。

 訴訟への対応については、先月、大阪高裁から、和解勧告をするかどうかを検討するために各当事者の意見を聞きたいとの考えが示されておりますが、これまでの五つの地裁判決内容がすべて異なっているということも踏まえ、現在、関係省庁において検討しているところでございます。

 生活者の立場での制度改革についてのお尋ねがございました。

 私も、所信表明演説の中で申し上げたとおり、成熟した先進国となった我が国においては、生産第一という思考から、国民の安全、安心が重視されなければならない時代になったという認識を持っております。政治や行政のあり方のすべてを、国民の皆様が日々安全で安心して暮らせるかどうかという、真に消費者や生活者の視点に立った発想で見直していくべきであると考えております。

 こうしたことが企業の国際競争力にもつながるとの長妻議員の御意見は、まさにそのとおりであると思います。長妻議員にもぜひとも御協力をいただいて、与野党で建設的な議論を行いながら、国民のためにこうした改革を前進してまいりたいと思います。

 年金記録問題の原因についてお尋ねがございました。

 年金記録問題については、現在、政府部内において、その原因を含め事実関係の調査を進めているところでございます。

 次に、もたれ合いによって自浄能力なき政治と官の関係に成り下がったのではないかとのお尋ねがございました。

 年金記録問題などによって政治や行政に対する国民の不信が高まっていることについて、私は、率直に受けとめております。また、御指摘のようなもたれ合い、自浄能力がないといった印象を国民に与えているということになれば、政治家も公務員も、そのことを深刻に受けとめ、信頼の回復に向けて真剣に取り組んでいかなければならないと思っております。

 国民の信頼を取り戻すための秘策はございません。国民の立場に立った政治、行政をこつこつと進めていくほかに手はないと思っております。野党の皆様とも十分に御議論させていただき、協力をいただきながら、国民の皆様の目線に立った政治、行政を進めてまいりたいと思います。

 局長以上の職員を対象とする政治任用制度の必要性についてのお尋ねがございました。

 公務員制度については、政治任用などの幹部職員の任用のあり方を含め、公務員の採用から退職にわたる課題について、有識者から成る懇談会において、我が国の政治の統治システムを踏まえた総合的、整合的な検討を進めているところであります。検討結果を踏まえ、行政に対する信頼を取り戻すため、公務員一人一人が高いモラルを維持し、能力を高め、誇りを持って職務に専念できるような総合的な制度となるように、公務員制度改革を進めてまいります。

 次に、戦争の総括や統治機構の抜本的見直しが戦後行われていないのではないかとのお尋ねがございました。

 我が国は、戦後、平和主義に基づいた現行憲法を制定し、一貫して世界の平和と繁栄のために貢献してまいりました。こうした我が国の憲法と戦後の歩みは、さきの悲惨な戦争についての率直な反省の上に立っているものでございます。

 また、統治機構のあり方についても、戦後は、それまでの反省の上に立って、三権分立のもとで相互にチェックしバランスを図るなど、現行憲法を制定する際に大きな見直しが行われたものと認識しております。

 衆議院と参議院とでは与野党が逆転している今日のこのような状況では、制度が有効に機能する方途を探る時期でもあると考えております。今こそ、与野党が国会で議論を尽くし、国民生活の向上に必要な政策を一緒になってつくり上げていくべきであると考えております。(拍手)

 次に、いわゆる村山談話の内容についてお尋ねがありました。

 お尋ねの「国策を誤り、」に何が該当するのかについて、個々の事件や出来事をめぐりさまざまな議論があり得ると考えております。いずれにせよ、政府としては、平成七年及び平成十七年の内閣総理大臣談話に示されたさきの大戦についての認識を踏まえ、将来に誤りなきを期すことこそが重要であると考えております。

 沖縄の集団自決についてのお尋ねがございました。

 教科書検定は、審議会における専門的な審議を経て実施されることとなっております。今回の検定は、沖縄の集団自決に関する記述について、軍の関与を否定するものではないと承知しておりますが、この件に関しては、沖縄県民の思いを強く重く受けとめ、文部科学省においてしっかりと検討してまいります。

 次に、戦争に関する政府の公認記録を残す作業を開始すべきとのお尋ねがございました。

 政府としては、今後も、さきの大戦の悲惨な教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく、世界の平和と繁栄に貢献していく決意であります。

 国立公文書館、外交史料館及び防衛研究所で保存している戦前、戦中のアジア歴史資料については、アジア歴史資料センターにおいて、インターネットを通じて利用できることとされており、今後ともその充実に努めてまいります。

 なお、歴史資料などにつきましては、今後、その収集、保存に力を入れていかなければいけないと考えております。

 次に、政権交代の必要性と解散時期についてのお尋ねがございました。

 国民生活を守り、国家の利益を守ることは、与野党の立場を超えた政治の使命でございます。今般、政権を担うこととなり、私は、重要な政策課題について、一つ一つ野党の皆様と誠意を持って話し合いながら、国民の負託にこたえてまいりたいと思います。

 今、政治に求められていることは、解散について云々することではなく、国民の不信の声を真摯に受けとめ、国民の不安に対してきめ細かく対応していくことであります。まず、私が申し上げました所信に基づいて、国民の目線に立った政治と行政を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

副議長(横路孝弘君) 長妻昭君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。長妻昭君。

    〔長妻昭君登壇〕

長妻昭君 ただいま福田総理から御答弁いただきましたけれども、大変不十分で、期限もない答弁が目立ちました。三つに絞って再質問を申し上げます。(拍手)

 一つは、消えた年金問題、国家の威信にかかわると福田総理は答弁されました。今、国家プロジェクトとしてこの問題をやらなければ、社会保険庁が片手間では追っつきません。今、まだ年金記録が抜けていることを御自身も気づいていない方というのがたくさんおられます。すべての紙記録を引っ張り出してコンピューターのデータを正しくする、その作業は政治のリーダーシップ、国家プロジェクトでやる以外にない。お答えをください。

 そして二番目、無駄遣いを幾らなくすのかということです。自民党・政府は、前年比幾ら無駄遣いを絶対額減らすのか、具体的な数字をお出しください。

 三番目です。戦争の公認記録、政府公認記録を残すという作業でございますけれども、日本にはさきの大戦の公認記録がございません。それをきちっと残す、資料館ではなくて政府が責任を持って残す、そういう作業を始めるのかどうか。これが最後のチャンスだと私は考えております。

 ぜひ総理、御答弁をぜひいただきたい。お願いします。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) まず、年金記録問題、これは政府への信頼を損なう大変重大な問題であると考えております。

 政府といたしましては、正しい年金をより早くお支払いするということが重要という観点から、まずは、基礎年金番号に統合されていない五千万件の記録について名寄せを実施し、記録が結びつくと思われる方に加入履歴等のお知らせをするということを最優先課題としておりまして、取り組んでまいります。

 御指摘の、コンピューターの記録と台帳等との突き合わせについては、今後、具体的な実施方法の検討を進め、来年度以降に計画的に実施することといたしております。

 次に、戦争に関する政府の公認記録の問題でありますけれども、既に、国立公文書館、外交史料館及び防衛研究所で保存している戦前戦中のアジア歴史資料について、これはインターネットで、アジア歴史資料センターから閲覧できるということになっております。

 そのような手段を今後ともさらに強化していきたい、そしてまた、歴史資料につきましても、その収集、保存に力を入れていきたいというふうに考えておるところでございます。(拍手)

副議長(横路孝弘君) 内閣総理大臣から、答弁を補足したいとのことであります。これを許します。内閣総理大臣福田康夫君。

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 先ほど、私は答弁をさせていただいたと思っておるんですけれども、繰り返させていただきます。

 無駄遣いをなくすことなどによる予算の削減額についてのお尋ねでございますね。このことについてお答えいたします。

 政府としては、基本方針二〇〇六等において、今後の歳出抑制の全体像とともに、各分野の歳出改革の内容など具体的な姿を示しているところでございます。今後の予算編成に当たっては、こうした方針のもと、御指摘のあった項目も含めて、歳出全般にわたる徹底した見直しを行って無駄を排除し、歳出の抑制に最大限の努力を行ってまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

御法川信英君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明四日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(横路孝弘君) 御法川信英君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  福田 康夫君

       総務大臣  増田 寛也君

       法務大臣  鳩山 邦夫君

       外務大臣  高村 正彦君

       財務大臣  額賀福志郎君

       文部科学大臣  渡海紀三朗君

       厚生労働大臣  舛添 要一君

       農林水産大臣  若林 正俊君

       経済産業大臣  甘利  明君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       環境大臣  鴨下 一郎君

       防衛大臣  石破  茂君

       国務大臣  泉  信也君

       国務大臣  大田 弘子君

       国務大臣  上川 陽子君

       国務大臣  岸田 文雄君

       国務大臣  町村 信孝君

       国務大臣  渡辺 喜美君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  大野 松茂君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君


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