衆議院

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第3号 平成20年1月22日(火曜日)

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平成二十年一月二十二日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第三号

  平成二十年一月二十二日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員辞職の件

 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙

 国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)


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    午後二時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員辞職の件

議長(河野洋平君) 議員福田良彦君から辞表が提出されております。これにつきお諮りいたしたいと思います。

 まず、その辞表を朗読させます。

    〔参事朗読〕

    辞職願

  今般 一身上の都合により衆議院議員を辞職いたしたく御許可願います。

   平成二十年一月二十一日

          衆議院議員 福田 良彦

  衆議院議長 河野 洋平殿

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 福田良彦君の辞職を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、辞職を許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙

議長(河野洋平君) 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙を行います。

御法川信英君 検察官適格審査会委員の予備委員の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(河野洋平君) 御法川信英君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、検察官適格審査会委員の予備委員に増原義剛君を指名し、谷津義男君の予備委員といたします。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(河野洋平君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。太田昭宏君。

    〔太田昭宏君登壇〕

太田昭宏君 私は、公明党を代表し、福田総理の施政方針演説に関連し、当面する重要政策課題に絞って、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)

 本年は、新年早々、株安、円高、原油の高騰という波乱の幕あけになりました。激動の世界、そして加速度的なグローバル化の中、世界の中の日本、国際社会の中の日本がいかにかじ取りをしていくか、まさに正念場のときを迎えております。そして、激しい構造変化にさらされている庶民の生活実感への敏感力を持つ政治が求められています。景気、経済の活性化、財政再建、少子高齢・人口減少社会における持続的な社会保障制度の確立、地球環境問題への全面的取り組み等、まさに山場であります。

 世界の動向を見るときに、政治の停滞は許されない、政治は内向きであってはならない、今こそ政治が国民のために仕事をしなくてはならない、いささかも、政治の停滞によって日本が沈没することはあってはなりません。

 「民の欲する所、天必ず之に従う」、公明党は、どこまでも「生活に直結」「政治に実現」を掲げ、今こそ、庶民や中小企業や地域で困っている人の側に立った戦いを貫いてまいる決意であります。そして、生活に直結した政策実現のトップバッターとして、また与野党の橋渡し役として努力をしてまいる所存であります。

 福田総理、総理は、生活重視、消費者重視の並々ならぬ決意を表明され、そして与野党の対話を重視する姿勢を示されています。全く同じ考えであります。施政方針演説で示された消費者行政の一元化、私は消費者庁をつくるべきであると主張していますが、このことも含め、変化激しき時代の中での日本のかじ取り、そして生活重視の政治姿勢について、まず御決意を伺います。

 私は、安心、安全の勢いのある国づくりを目指しますが、まず大事なのは、景気、経済の力強さ、勢いであります。

 昨年末の国民経済計算確報版の結果は、我が国経済の先行きに大きな暗雲を投げかけました。それによれば、一人当たり国民所得は、OECD加盟三十カ国中、九三年に二位、二〇〇〇年には三位だったものが、二〇〇六年には十八位にまで低下いたしました。また、名目GDPは、ここ十年、判で押したように五百兆円近傍のまま横ばいが続いています。ここ三年だけを見れば、アメリカは二〇%、EUは二六%、韓国に至っては四六%も増加しています。

 また、注目しなくてはならないのは給与所得であります。雇用者報酬の総額を見ますと、ここ十年、九七年の約二百八十兆円をピークに、二百六十から七十兆円あたりで横ばいのままであります。これまでもたびたび指摘してきたとおり、景気回復の果実がいまだ家計に十分浸透していない証左であります。

 この国を勢いのある国にしなければなりません。決してこの国を沈みゆく国にしてはなりません。我が国に漂う閉塞感を打破し、人口減少社会にあっても、元気な日本、とりわけ家計を元気にする施策に今こそ力を入れるべきであると考えます。

 私は、年頭より、GDPを上げる、給与を上げる、給与所得を二〇一〇年までの三年間で過去最高水準に上げることを訴えてきているところであります。

 経済を成長させ、GDPを拡大させるためには、資本力、技術力、労働力の三つの要素をいかに効率よく活用し、いかに引き上げていくかであります。

 まず、技術力の面で大切なことは、日本の魅力、底力を遺憾なく発揮し、イノベーションを中心とした成長力の抜本的強化です。政府・与党として、この一年、イノベーションに力を注いでまいりましたが、さらにこれを強めることが産業の高付加価値化を求められる我が国において不可欠であります。

 日本の強みを生かした先進的な新産業の創出も重要であります。IT革命を先導したアメリカ・シリコンバレーも大きな戦略の転換を図り、昨今は、環境、新エネルギー、バイオなどへ重心を移すなど、世界はダイナミックに変わり、戦略的であります。日本もおくれてはなりません。環境技術・新エネルギー技術分野はまさに日本の強みであり、さらにこれらの施策を強化していくべきであります。

 そして、何よりも大事な点は、労働力、すなわち雇用であります。人口減少社会の中で、まさに今、この点が大きな不安の源になっているのであります。

 私は、雇用政策に関しては、特に若年者、高齢者、女性の社会参画に施策を集中的に講じることが大切だと考えます。

 まず第一に、年長フリーターも含めた若年者雇用については、年長フリーター自立能力開発システムの拡充やニート支援を行う地域若者サポートステーションの倍増など、若者の活力こそ日本の活力維持のかなめであるとの視点での取り組みが重要だと考えます。

 第二に、高齢者については、団塊の世代が退職期を迎える今、元気な六十代が活躍できる社会の実現こそが日本の成長の大きなかぎであり、定年延長、継続雇用の普及とともに、労働者の募集・採用時の年齢制限禁止の義務化などに官民で力を合わせるべきであります。

 第三に、女性の社会参画を拡大するための取り組みが重要であります。特に、仕事と家庭が両立できるサポート体制の構築、再雇用の促進、企業内保育所の設置など、結婚、子育てによって退職、離職をしない、いわゆるM字カーブからの脱却の施策が重要だと考えます。

 さらには、非正規雇用から正規雇用への流れをつくるなど、働く人の所得、待遇の拡大を図るべきです。パートと正社員の中間に位置するショートタイム社員を新たな雇用形態として充実させるための支援策も検討すべきです。一方、偽装請負などの違法な事例には厳しい態度で臨むべきであり、日雇い派遣等の派遣労働についても労働者保護の視点から、情報公開の拡大、対象業種範囲など規制のあり方も含め、抜本的な見直しに踏み込むべきではないかと考えます。

 あわせて、日本の活力、経済の拡大にとって、世界の成長、なかんずくアジアの需要をいかに取り込むかという戦略が重要です。日本がアジアの成長の核となり、日本の強みである製造業と金融資本を両輪にしてアジアの製造業の発展に寄与し、アジアからの需要を日本に取り込むことが重要であると考えます。さらには、EPAなど各国・地域との経済連携を加速することや、我が国への投資を呼び込むための金融市場や物流など国内のインフラ整備が不可欠であります。

 そして、給与所得を上げるという点についてでありますが、そのため、私は、労働分配率の引き上げを訴えたい。

 近年の労働分配率の動向を見ますと、中小企業はほぼ横ばいでありますが、大企業は低下傾向が続いています。グローバル化の進展などもあり、残念ながら、企業は社員よりも株主を重視する姿勢に傾き、社員への報酬などよりも企業所得や株主配当を優先させ、結果、労働分配率は低下しております。

 総理は、施政方針演説で労働分配率の向上に言及されましたが、政府として強く大企業に要請するとともに、政労使が一体となって、労働分配率向上に資する施策の策定、環境整備を早急に行うべきであると考えます。これら施策を強力に推進することにより、女性や高齢者の雇用・所得拡大で世帯所得を大幅にアップさせることが可能であると考えます。

 以上、国民の目線から、私の意見、決意を申し上げましたが、それぞれの項目につきまして、福田総理の認識と決意を承りたいと存じます。(拍手)

 さらに、日本経済の活性化を図るためには、中小企業の活性化が不可欠であります。

 公明党はこれまで、中小・小規模企業支援の拡充について強く取り組んでまいりました。特に、長年の課題であった事業承継税制の抜本拡充を含めた制度的な枠組みがようやく実現することになりました。歓迎の声が党にも寄せられています。

 今後の中小企業支援策として、第一に、下請代金法の厳格な運用や、大企業による下請事業者への特段の配慮を求めます。まずは、下請適正取引のためのガイドラインの徹底など、着実に取り組みを重ねることであります。

 第二は、数多くある中小企業相談窓口の一本化を図り、中小・小規模事業者の経営支援に積極的に乗り出すべきと考えます。

 第三は、いわゆるマル経融資制度の拡充、売り掛け債権の早期現金化支援、急な資金ニーズに対応する予約保証制度の導入、第三者保証や本人保証を不要とする融資や無担保融資のさらなる拡大を求めたい。

 また、近い将来、中小・小規模企業者の金融支援をトータルに行うための中小企業資金繰り円滑化法の制定も必要だと考えますが、中小企業施策に関する総理の御意見を承りたいと存じます。

 次に、生活現場で深刻な問題となっている諸点について質問をいたします。

 まず、介護人材の確保についてであります。

 高齢者の増加により、今後、少なくとも十年間で新たに四十万人から六十万人の介護マンパワーの確保が必要とされています。しかし、介護事業の現場では、長時間で重労働にもかかわらず給与が低過ぎることなどから、離職者が後を絶ちません。募集しても人が集まらないという深刻な人材不足が生じています。

 私は、介護の人材を確保するために、介護労働の専門性をまず正当に評価する、そして生活設計が可能な給与を保障できる介護報酬を次期改定において措置すべきだと考えます。また、介護保険の事務手続を見直して、非常に煩雑だという声を聞きますから、書類の作成業務から介護従事者を解放すべきであります。

 今、介護の現場で誇りと情熱を持って必死で働いている方々の切実な叫びにどのようにこたえていくのか、総理の見解を伺います。

 次に、救急医療についてであります。

 今、全国各地で、救急患者が受け入れ先の病院をたらい回しされるなどの事件が頻発して、報道されています。こうした事態に対し、私ども公明党では、全都道府県の消防本部等に救急中央情報センターを設置し、診察の可否や空床の有無、手術準備の有無をリアルタイムで知らせる救急受け入れ表示システムを導入すること、指導医を常駐させて、迅速な救急処置、そして搬送が行えるようにすること、近隣の都道府県との連携体制を確立することを提案しています。国民が安心できる体制を構築するため、新たな立法措置として、救急医療対策推進法の制定を強く求める次第です。総理及び関係大臣の御見解を伺います。

 この問題の背景には、救急医療を担っている地域の中核病院の医師不足、看護師不足問題があります。

 まず、緊急医師派遣システムをフル稼働させて国を挙げて対応するとともに、勤務医の過酷な労働実態の改善を図るため、診療報酬の改定措置も含め、都道府県とも協力し、できる限りの対策を果敢に実施すべきであると考えます。一方、中長期的には、医学部の定員増を図るとともに、かつての大学の医局が担っていた医師の生涯教育、人事ローテーションシステムを地域ごとに構築すべきと考えますが、この点について、総理、関係大臣の御意見を伺います。

 もう一つは、看護師不足についてであります。前回の診療報酬改定で導入された、例えば七対一の看護配置基準により、看護師が大学病院などに引き抜かれて、地域医療を支えている病院では、看護師不足により入院患者を受け入れられないという事態が生じています。こうした事態については、今回の改定で是正するとともに、現場の混乱を招くような安易な診療報酬の改定を今後は行わないよう強く要望しておきます。

 原油高騰対策について申し上げます。

 世界的な石油需要増大や短期利ざやをねらった投機的動きなどにより、原油価格が高騰しています。公明党は昨年末、原油高騰対策案をまとめ、政府挙げての取り組みを求めてきました。その結果、中小・小規模企業者の既往債務の返済緩和、セーフティーネット保証や貸し付け、高速道路料金の引き下げ、そして福祉灯油など生活弱者への支援、離島航路あるいは地方バス路線維持などへの補助、石油価格の監視体制の強化、便乗値上げの阻止など、九十項目以上にわたるきめ細かな対応策が開始されています。

 私は、積極的なエネルギー外交を求めたいと思います。そしてさらに、ガソリン価格の高騰で国民生活が圧迫されていることを考えますと、自賠責保険料の大幅な引き下げが先般決定をされましたが、さらなる一般ユーザーの負担軽減を真剣に検討すべきだと思いますが、総理の御見解を求めます。

 一方で、原油高騰対策として、道路特定財源の暫定税率を廃止せよとの議論がありますが、私は、原油高対策と暫定税率の問題は切り離して考えるべきだと思います。

 政府は、暫定税率が廃止された場合、今後の道路整備や維持管理などにどのような影響を与えるのか、地方財政はどうなるのか、国民の生活やまちづくりにどういう影響を与えるのか、きちんと国民に示し、御理解をいただく努力が必要であると思いますが、総理並びに総務大臣の御見解を求めます。(拍手)

 次に、年金についてお尋ねいたします。

 年金記録問題では、社会保険庁のずさんな記録管理の実態が明らかとなり、国民の年金制度に対する不信は頂点に達しています。国民の大切な年金を受ける権利を守り、年金制度の信頼を取り戻すためには、この記録問題の解決を避けては通れません。しかし、未統合の記録を一件一件名寄せし、確実に統合していく作業は膨大であり、その一方で、自分の正当な年金を受給したいと一日も早い解決を待ち望む多くの方々がおられます。

 この記録問題の解決、年金制度の信頼回復にどのように取り組むのか、あわせて、今後の年金記録システムをどのように構築していくのか、総理の決意をお聞きいたします。また、記録問題に関して、責任の所在を明らかにするとともに、厳正な処分を要請します。

 年金制度について申し上げます。

 公明党は、無年金、低年金の対策の充実を強く主張してまいりました。保険料の追納期間の延長や受給資格期間二十五年の短縮、さらには低所得者に対する基礎年金加算制度の創設など、老後の生活基盤を充実させるための制度改善を行うべきと考えます。総理のお考えを伺います。

 防衛省が庁から省へ移行して一年。守屋前事務次官の収賄事件や、次々と明らかになった防衛装備品の調達に絡む巨額の裏金や水増し請求、情報漏えいや給油量誤報告事案など、防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を失墜させる事件が相次ぎ、国民は怒り心頭に発しています。

 我が国の平和と安全を守る役割を担う省として再建するため大胆な防衛省改革を断行すべきと考えますが、総理の決意を伺います。

 まず、調達改革への取り組みを早急に進めることであります。

 これまでも、装備品をまとめ買いすることや民生品を使用することなどにより単価の低減を図ること、木製の掃海艇をプラスチック製のものに変更してライフサイクルコストの低減に努めていますが、さらに、経費削減の数値目標を設定し、知恵を絞り、防衛関係費の抑制を図るべきと考えますが、総理の見解をお尋ねいたします。

 一連の不祥事の渦中、守屋前事務次官のもとで策定された我が国の防衛力における五年間の所要経費の上限や整備すべき主要装備の数量を定めた現行の中期防が適正なものであるかとの疑惑は、多くの国民が抱くところであります。国民の疑惑を払拭するためには、現在、防衛省改革会議で議論されております改革案の方向性を踏まえつつ、現行の中期防を廃止し、来年度中に新たな中期防を策定すべきであります。

 さらに、平成二十一年には必要な修正を行うとされている現防衛大綱についても、新たな中期防の策定と整合的に議論し、国民に全体像を示す努力をするべきと考えますが、総理の所見を伺います。

 次に、行政の無駄削減への取り組みについてお伺いをいたします。

 第一に、随契の見直しです。特に、昨年末の独立行政法人改革において、公明党の主張もありまして、平成十八年度に締結した独法の随意契約について、競争性のない随意契約約一兆円のうち約七千億円を一般競争入札等に計画的に移行することができました。今後とも、国、地方及びすべての政府関係法人について、随意契約から透明性の高い競争入札へと移行させ、あわせて天下りによる癒着を根絶する必要があります。

 第二に、毎年、会計検査院が指摘する行政経費の無駄遣いについて、各省庁が返還を約束したにもかかわらず、いまだに返還されていない金額が、過去二十年間で何と百億円を超えている実態が我が党の調査で判明いたしました。また、公務員の不正経理について責任の追及があいまいになっています。今こそ、税金の無駄の徹底排除を政治主導で行う必要があります。

 具体的には、決算検査報告書に不当事項に係る国への返還状況等を掲記する、第二、会計検査院に各省庁への懲戒処分要求を義務づける、三、不正経理を防止するため会計法令に罰則を規定するなど、会計検査院法や会計関係法の改正が必要だと考えます。

 以上、二点につきまして、総理の率直なお考えをお聞かせください。

 次に、地球環境問題についてお尋ねします。

 地球温暖化は人類の生存の基盤を脅かす重大な問題であります。ことしのG8洞爺湖サミットは、本格的な温暖化対策に踏み出すチャンスであり、議長国として、我が国は温暖化対策をリードすべきだと強く訴えます。

 昨年末、COP13でバリ行動計画が合意され、今は温室効果ガスの削減義務を負っていない米国や中国など大排出国を含めて、次期枠組みづくりの交渉が始まりました。今後の交渉は、米国を除く先進国のさらなる排出削減を話し合う既存の作業部会と、すべての国が参加する新たな作業部会との、いわゆるツートラックで進められることになります。

 そのうち、既存の作業部会の決議では、先進国の排出について、二〇二〇年までに九〇年比二五%から四〇%削減、世界全体の排出量を、今後十年から十五年以内に減少に転じ、二〇五〇年までに二〇〇〇年の半分以下にするとの数値が盛り込まれました。他方、新たな作業部会の設置を盛り込んだバリ行動計画でも、同様の数値を示したIPCC報告書の該当部分が脚注に記載されました。

 少なくとも京都議定書批准国ではこれらの数値が共通認識となったわけですが、これらの数値について政府の見解をお伺いいたします。また、サミット議長国として、これらの数値を踏まえた我が国の中長期目標を掲げる必要があると考えますが、総理のお考えを伺います。

 次に、国内対策についてお伺いをいたします。

 京都議定書の議決から十年。ことしから排出削減の第一約束期間が始まりましたが、我が国の排出量は、九〇年比六%削減どころか、昨年度は六・四%増となっております。今我が国に必要なことは、地球が文明に迫る新しいエネルギー産業革命を認識し、それに立ち向かう覚悟と勇気を国民全体が共有すること、そして、地球温暖化というリスクをチャンスに変える発想の転換であります。

 我が国においても、もはや関係省庁のみに政策決定をゆだねるわけにはまいりません。そこで提案します。日本の経済、社会を大きく見通せる方に委嘱し、総理直属の賢人会議を創設し、学識者、専門家の協力も得て、明確なる国家の意思と戦略を方向づけしていってはどうでしょうか。賢人会議等での検討課題は、脱炭素社会への道筋やあり方、さらには国内排出量取引、環境税、新エネルギー対策の抜本的強化なども検討課題に挙げられます。総理の御所見をお伺いいたします。

 特に、現在の自主的取り組みの限界を考えると、確実かつ費用効果的に排出削減が行える制度として排出量取引制度は重要課題です。既にEUでは導入し、アメリカ、オーストラリアなどでも検討が進められ、各国の制度をリンクする検討も始まっています。私は、営業の自由や平等原則などを十分に踏まえた日本型の国内排出量取引制度について検討と協議を加速すべきだと考えますが、環境大臣の見解を伺います。

 一方、排出量削減のかぎを握るのは新エネルギーの普及です。しかし、我が国の普及状況は、目標達成計画と比較しても、太陽光発電で四分の一、風力発電で三分の一程度と立ちおくれています。我が国は二〇一〇年度に新エネルギーを約三%とする目標を掲げていますが、EUでは二〇年までに再生可能エネルギーを二〇%とする共通目標を掲げており、まさにけた違いであります。電力の固定価格買い取り制度など、新エネルギー導入の抜本的支援策について、総理の御所見をお伺いいたします。

 さて、九二年の地球環境サミットに合わせ気候変動枠組み条約とともに採択をされましたのが生物多様性条約でありました。自然との共生を目指し、生物多様性基本法の制定を提案いたしますが、生物多様性保全の取り組み強化についての総理の御見解を伺います。

 次に、日中の環境協力についてお伺いいたします。

 私は、中国の環境悪化は我が国にも直接の影響を与える問題であることから、日中の共同出資で日中環境基金を設置し、日本の経験、技術、人材等も生かして中国の環境保全に協力すべきと提案をしてまいりました。こうした環境協力は日中の戦略的互恵関係構築にふさわしいテーマであると考えますが、日中環境協力並びに環境基金について、総理の御見解を伺います。

 我が国にとって外交はますます重要となっています。我が国は、引き続き日米同盟関係を基軸にし、その上で、中国、韓国を含むアジアの近隣諸国との友好関係を発展させていかねばなりません。この重要で基軸となる日米関係を一層維持発展させるためにはいかなる施策が必要であるか、また、在日米軍再編という我が国の安全保障にとって大きな影響を持つ問題に、沖縄を初めとする地元の皆様の負担軽減にも大いに意を用いつつ、どのように取り組んでいくお考えか、総理の忌憚ない御意見を伺いたいと存じます。

 ことしは日本アフリカ交流年であり、五月には第四回アフリカ開発会議が横浜で開催をされます。これは、日本とアフリカの関係を深化させる絶好の機会であります。

 アフリカ大陸は、豊かな天然資源を背景に急成長している国がある一方で、貧困や飢餓、感染症の蔓延や紛争の頻発あるいは環境破壊など多くの深刻な課題に直面をしております。アフリカの発展がなければ二十一世紀の世界の平和と安定もありません。今回の会議を通じ、アフリカ諸国のオーナーシップを後押しする中長期的な行動計画を策定し、国際社会に発信していただきたいと提案いたします。この点について、総理の御所見を伺います。

 また、七月の洞爺湖サミットは、環境やアフリカ開発の課題も含め議題は多岐にわたりますが、決して忘れてならないことは、日本はアジア諸国から唯一参加しているということであります。日本は、アジアと世界の結びつきをより強固にし、この地域の経済的発展を促すよう力を注ぐべきであり、特に、日中関係、日韓関係をさらに強化し、政治、経済、環境、歴史問題などあらゆる分野について隣国として忌憚のない対話を今以上に活発化すべきです。

 また、北朝鮮に関しては、拉致問題の国際課題化を図るとともに、核問題についても毅然たる姿勢を貫き、G8サミット参加国の協力も得て、アジア地域のみならず世界全体の安全保障体制を強化していかねばならないと思います。

 世界の安定なくしては日本の繁栄と平和もあり得ないという意味では、テロ撲滅のための国際的協力に日本が貢献し続けることも重要なポイントであります。特に、公明党が従来最も重視してきた人間の安全保障の観点から、テロの温床と指摘されている貧困の撲滅や人権擁護、安全な水の確保など、ベーシック・ヒューマン・ニーズにかかわる支援の強化は喫緊の課題と言えます。

 このような大局的、包括的な立場に立って議論をリードする役割こそ、G8サミット主催国の日本の総理大臣に求められていると私は考えますが、福田総理の御見解と御決意を求めたいと思います。

 以上、当面する重要課題について述べてまいりました。公明党が掲げる「生活に直結」「政治に実現」への総理のリーダーシップを強く望み、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 太田議員にお答えを申し上げます。

 変化の激しい時代の日本のかじ取りと生活重視の政治姿勢についてのお尋ねがございました。

 日本は、戦後の焼け跡の中から国民の力によって復興し、高度経済成長をなし遂げました。しかし、世界第二位の経済大国となるなど、さまざまな意味で成熟した現在の日本は、新たな時代へと踏み出す大きな転換点にあります。

 その主役は、一人一人の生活者であり、消費者であります。人々の価値観が多様化しつつある今、私は、一人一人の国民が前向きに夢を抱くことができるような国づくりを進めてまいりたいと思っております。その夢がこの日本で実現できるよう、一人一人の国民が活躍する舞台を用意するのが私の責任であると考えます。

 日々の生活の中で人々が抱く不安や政治、行政への期待は多様化しております。政治も行政も、そうした生活者、消費者の立場に立ってきめ細かな対応を行うよう転換を図ってまいります。

 そうした観点から、現在、すべての法律や制度について国民目線の総点検を進めておりますが、行政組織のあり方についても例外ではありません。各省縦割りになっている消費者行政を、統一的、一元的に推進するための強い権限を持つ新組織を発足させてまいります。

 こうした改革は時代の要請であり、いかなる困難に直面しようともやり抜く覚悟であります。自由民主党と公明党の連立政権の基盤の上に立って、野党の皆様とも丁寧に話し合いをさせていただきながら、一つ一つの政策を着実に前に進めてまいりたいと思います。(拍手)

 次に、活力ある経済社会の構築と家計を元気にする施策についてのお尋ねがございました。

 日本経済は、平成十四年初めから息の長い回復を続けております。しかし、足元では、賃金が伸びず、景気回復の家計への波及がおくれております。政府としては、景気回復の果実が家計に十分波及し、国民が景気回復を実感できるよう、正規・非正規雇用の格差の是正や、日雇い派遣の適正化等の労働派遣制度の見直しなどの施策に積極的に取り組んでまいります。

 また、高齢化が本格化する中にあって、GDPを拡大し、所得を上昇させていくために、技術革新の加速、開かれた日本、中小企業や農業の活力を引き出し、すべての人が成長を実感できる全員参加の経済という三つの柱から成る経済成長戦略を具体化し、直ちに実行してまいります。

 技術開発の強化についてのお尋ねがございました。

 太田議員が御指摘のとおり、資源・エネルギーに乏しい我が国が、国際競争が激化する中で、持続的な経済成長を実現していくためには、他国の追随を許さない技術を持ち続けていくことが不可欠であります。

 とりわけ、国際社会が温室効果ガスの削減に取り組んでいる状況の中で、我が国が有する世界最高水準の省エネ技術や新エネ技術の優位性を今後とも維持することは、地球環境問題に積極的に貢献していくためにも、また、我が国の強みを維持していくためにも重要であります。

 これまでも、政策課題に対応するための政府の研究開発予算のうち約三割を環境・エネルギー分野に投入してきましたが、環境エネルギー技術革新計画の策定を通じて、さらに資源を重点投入すべき革新的な技術分野や効率的な研究開発体制のあり方について検討を行い、環境・エネルギー技術の開発を国として戦略的に進めることとしております。

 次に、人口減少下における雇用政策のお尋ねがございました。

 少子化、高齢化の進行による人口減少は、労働力人口の減少につながり、経済成長の制約となることが懸念されます。

 こうした課題を克服するためにも、若者、高齢者、女性など、働く意欲と能力を持つすべての人々が、安心して働き、安定した生活ができる社会を実現することが重要であります。

 具体的には、まず、年長フリーターを含む若者の対策として、フリーター常用雇用化プランなどにより若年者の正規雇用化を進めるとともに、地域の若者の自立支援を行う地域若者サポートステーションを拡充し、より多くの地域において展開するなど、次代を担う若者の雇用、生活の安定を図ってまいります。

 次に、高齢者の対策として、六十五歳までの雇用確保や、労働者の募集・採用時における年齢制限禁止の義務化の徹底、さらに、年齢にかかわりなく働き続ける社会を目指し、七十歳まで働ける企業の普及促進を図るなど、高い就業意欲を持つ高齢者の活躍できる場を創出してまいります。

 さらに、女性の就業率向上を目指し、安心して働くことのできる保育・子育て支援サービスの充実、育児や介護のために離職した女性に対する再就職・企業支援を行うなど、就業意欲を失うことなく働き続けることのできる環境整備を進めてまいります。

 こうした雇用政策にそれぞれ着実に取り組むことにより、働く意欲と能力を持つすべての人々の労働参加を実現してまいります。

 次に、短時間正社員と労働者派遣についてのお尋ねがございました。

 フルタイム正社員より労働時間が短い短時間正社員は、多様な働き方を提供しながら就業時間に比例した待遇が得られるもので、昨年十二月に取りまとめた仕事と生活の調和推進のための行動指針において、十年後に二五%の企業での導入を目標に掲げました。この目標の実現に向け、政府としても、企業の導入を支援するための専用サイトの開設等を通じまして制度の普及に努めてまいります。

 また、労働者派遣についても、偽装請負など違法派遣の一掃に向け指導監督を一層強化するとともに、日雇い派遣の適正化のためのガイドラインを早急に創設するなど、働く人を大切にする視点に立って労働者派遣制度の見直しを行ってまいります。

 世界の成長、特にアジアの需要を取り込むための戦略の重要性についてのお尋ねがございました。

 我が国の成長力を強化していくためには、日本を世界により開かれた国とすることにより、アジア、世界との間の人、物、金、情報の流れを拡大し、世界の活力を我が国の成長のエネルギーとしていくことが必要であります。

 このため、経済成長戦略の柱の一つであるグローバル戦略を具体化し、WTO交渉、アジア太平洋地域との経済連携協定の交渉の早期妥結、対日投資倍増計画の確実な達成、日本の空の自由化や貿易手続の効率化、金融資本市場の国際競争力の一層の向上など、施策を展開してまいります。

 次に、労働分配率の向上についてのお尋ねがございました。

 労働者の賃金については、各企業の労使間において、経営状況等を踏まえた話し合いの上で決定されるべきものでありますが、景気回復の果実が家計に十分波及し、国民が景気回復を実感できるよう、御指摘のような近年の労働分配率の動向等も踏まえ、労使間で議論が行われることを期待いたしております。

 政府としては、労働分配率の向上に向けて、三十五万人の常用雇用化を目的としたフリーター常用雇用化プランなど若者の正規雇用化の支援、それから、改正パートタイム労働法による均衡待遇の確保や改正最低賃金法等による労働条件の改善、また、日雇い派遣の適正化等の労働者派遣制度の見直しなどについて、生活者の視点に立ちつつ、大企業を含む労使に積極的に連携協力を呼びかけながら、積極的に取り組んでまいります。

 次に、中小企業対策についてのお尋ねがございました。

 我が国経済の活力を支えるのは中小企業の底力であり、中小企業の活性化に万全を期してまいります。

 まず、大企業と中小企業の調和のとれた成長を実現するため、各都道府県に下請取引の駆け込み寺を整備し、下請適正取引ガイドラインの普及啓発を図るとともに、下請代金法の厳格な運用をするなど、下請対策に強力に取り組んでまいります。

 また、全国二百から三百カ所に地域連携拠点を整備し、中小企業の経営支援のためのあらゆる相談を受けられるようにします。

 中小企業経営の命綱である金融の円滑化にも万全を期してまいります。マル経融資の審査期間の短縮、売り掛け債権の早期現金化、さらには予約保証制度の導入など現場のニーズを踏まえ、法的措置も含め、中小企業の資金繰り円滑化の総合的な施策を展開してまいります。

 これらに加えまして、事業承継に関する総合的な支援策を実現するなど、予算、金融、税制等を効果的に活用し、地域で汗を流す中小企業の皆様の努力をきめ細やかに支援してまいります。

 次に、介護労働者の人材確保に関するお尋ねがございました。

 介護を取り巻く状況については、他の産業と比較して介護労働者の離職率が高い等の指摘がなされており、高齢者の生活を支える人材の確保については、大変重要な課題であると認識しております。

 このため、太田議員の御指摘のとおり、介護報酬については、介護事業者の経営や介護労働者の実態に関する調査結果を十分に分析し、国民が負担する介護保険料等の水準にも留意しつつ、平成二十一年四月の改定時に適切な報酬の設定に努めてまいります。

 また、労働時間の短縮につながる事務負担の軽減については、現在検討を行っているところであり、作成書類の簡素化など、来年度より実施可能なものから順次取り組むことを考えております。

 このような具体的な取り組みを通じて、介護労働者が働きやすい環境の整備を進めることによりまして、将来にわたって安定的に人材を確保するとともに、介護サービスの仕事が魅力あるものとなるよう努めてまいります。(拍手)

 次に、救急医療や医師不足問題についてのお尋ねがございました。

 救急医療をめぐる昨今の事件を踏まえれば、速やかに国民が安心できる体制を構築すべきとの問題認識は、私も同様に持っております。御提案の趣旨も踏まえまして、救急患者の受け入れを確実に行うための体制整備を進めてまいります。

 そして、医師不足問題につきましては、その緊急性にかんがみ、昨年五月末に政府・与党で取りまとめた緊急医師確保対策等に基づきまして、医学部の定員増、医師不足地域に対する国による緊急臨時的な医師派遣、交代勤務制等の導入の支援、また、診療報酬改定等を通じた病院勤務医の負担軽減など、実効性のある対策を行ってまいります。

 原油高騰対策に関し、積極的なエネルギー外交について御質問がございました。

 我が国としては、二国間の対話や多国間の枠組みを通じ、産油国に対しては増産や投資拡大を通じた石油市場の安定化を、消費国に対してはエネルギー効率向上による需要の抑制、代替エネルギーの導入促進を働きかけるなどのエネルギー外交を積極的に行っております。引き続きこれらの活動を強化していきたいと考えております。

 ガソリン価格の高騰に対する自動車一般ユーザーへの支援策についてお尋ねがございました。

 原油価格の高騰については、昨年十二月二十五日の原油高騰・下請中小企業に関する緊急対策関係閣僚会議において、国民生活等を含めた緊急対策を取りまとめたところであります。この対策パッケージはまさに実施段階に入っているところでございまして、政府一体となって、真に実効ある対策の実施に努めてまいります。

 また、自賠責保険料については、近年の交通事故発生件数の減少等を受け、平成二十年四月から、全車種平均で二四・一%の引き下げを行うこととしたところであり、一般的な自家用乗用車であれば九千二百六十円の引き下げがなされることとなり、これにより一般ユーザーの負担の軽減が相当程度図られるものと認識しております。

 国民生活の観点から、自動車の一般ユーザーの負担にも配慮しながら、今後、各種施策に取り組んでまいります。

 次に、道路特定財源の暫定税率の廃止の影響についてのお尋ねがございました。

 道路特定財源の暫定税率が廃止された場合、国、地方を合わせて約二兆六千億円の税収が失われます。このため、国民生活に欠かせない道路整備の実施が困難となるほか、地方公共団体によっては、福祉や教育などの住民サービスの見直しにつながるおそれもあります。

 年金記録問題についてのお尋ねがございました。

 この問題については、昨年七月五日に政府・与党として決定した方針に基づき、一億人のすべての年金受給者や現役加入者の方々にねんきん特別便を本年十月までにお送りし、その間、国民お一人お一人に御自身の記録を御確認いただきながら、年金記録の統合作業を着実に進めてまいります。その際、自治体、経済界とも連携をして、国を挙げた体制で取り組んでまいります。

 加えて、来年四月以降は、ねんきん定期便を毎年、現役加入者全員の方にお送りすることにより、国民が自分の年金記録を確認できる仕組みを構築し、再びこういった問題が生じないようにしてまいります。

 同時に、年金記録をしっかりと管理する事務管理体制を整える必要があり、平成二十二年一月に社会保険庁を解体して新たに設ける日本年金機構について、国民の信頼にきちんとこたえられるように、しっかりとした組織にしてまいります。

 年金記録の問題は、四十年以上にわたるさまざまな問題が積み重なって生じたものでありますが、私の内閣で解決するよう、年金制度への信頼回復に向け全力を尽くしてまいります。

 年金制度に関するもう一つお尋ねがございました。

 年金制度は、国民の老後生活を支える柱であり、無年金や低年金の方が生じないようにするため、御指摘も踏まえて、まずは納付方法の多様化など、きめ細やかな対応を進めてまいります。

 保険料の追納期間の延長や受給資格期間の短縮、低所得者に対する加算制度の創設など制度的な対応について御指摘をいただきましたが、実際に保険料の納付率の向上につながるか、どのように所要の安定財源を確保するのかなど、さまざまな論点もあり、よく議論していく必要があると考えております。

 いずれにしても、中長期的な視点に立って、年金制度を確実で信頼できる制度とするために、社会保障国民会議において、年金制度を含め社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて議論を行ってまいります。

 次に、防衛省改革についてお尋ねがございました。

 国の防衛は国家存立の基本ともいうべきものであり、国民の信頼なくしてはなし得ません。しかるに、前防衛事務次官が収賄で逮捕、起訴されたことを初め、相次ぐ水増し請求、情報漏えい、給油量取り違えなど、国民の信頼を損ねるさまざまな問題が生じていることは極めて遺憾であります。

 防衛省・自衛隊が国民の信頼を回復し、その負託にこたえるためには、これまでの業務のあり方や慣行を総点検し、文民統制の徹底、厳格な情報保全体制の確立、防衛調達の透明性の確保について抜本的な対策を講じる必要がございます。

 政府としては、防衛省改革会議における議論をも踏まえまして、防衛省・自衛隊が我が国の平和と独立を守る役割を担う組織として再生できるよう、できる限り早期に具体的施策を策定し、抜本的な改革を進める決意であります。

 防衛省の調達改革への取り組みについてお尋ねがございました。

 防衛省では、防衛装備品の調達に関する具体的な合理化、効率化への取り組みとして、去る十二月に、太田議員御指摘のような、まとめ買い、民生品の活用などの施策を行うことにより、平成二十三年度までの五年間で装備品のコストを一五%縮減する目標を初めて設定したところでございます。この数値目標の達成のため、防衛省において今後具体的な施策を着実に実施していくことが必要と考えております。

 中期防衛力整備計画と防衛計画の大綱についてのお尋ねがございました。

 中期防や防衛大綱の取り扱いに関する議員御指摘の点については、今後、防衛省改革会議における議論の内容や安全保障環境の変化などを踏まえて、政府部内で必要な検討を早急に行っていくべきものと考えております。

 次に、随意契約の見直しについてのお尋ねがございました。

 国及び独立行政法人等の締結する随意契約については、競争性、透明性を高め、適正化を図るべく、見直しを鋭意進めてきたところであります。さらに、昨年十一月には、随意契約の適正化に向けたこれまでの取り組みをより徹底するため、私の指示に基づき、より競争性の高い契約方式への移行など、各府省が定めた見直し計画の厳正な実施、第三者機関や独立行政法人評価委員会等による監視体制の強化などの措置を行うこととしております。

 また、いわゆる天下り問題につきましては、昨年の国家公務員法等の改正により、各府省等による再就職あっせんを全面的に禁止し、官民人材交流センターに一元化するほか、民間に就職した職員の出身省庁への働きかけも規制し、これを罰則で担保するとともに、新たに外部監視機関による厳格な監視を行うことといたしました。

 政府としては、無駄を排除する観点からも、引き続きこうした取り組みを通じて、地方公共団体も含めて、随意契約について競争性、透明性を高め適正化を図るとともに、いわゆる天下りの問題についても適切な対応に努めてまいる所存であります。

 税金の無駄を排除するための会計検査院法、会計関係法の改正についてお尋ねがございました。

 会計検査院より指摘された事態に関する国等への返還状況を公表し、その改善に努めることは、国民の行政に対する信頼を取り戻すためにも重要であると考えておりまして、不当事項に係る国等への返還状況を決算検査報告に掲記することについて会計検査院に要請をしたところであります。

 また、会計検査院に各府省への懲戒処分要求を義務づけること、不正経理の防止のために会計法令に罰則を規定することなどのために会計検査院法や会計関係法の改正を行うことについては、政府及び関係機関においてよく検討させていただきたいと考えております。

 環境問題であります。

 国連での交渉において言及された温室効果ガスの排出削減に係る数値に対する認識及び我が国の中長期目標の必要についてお尋ねがございました。

 我が国は、クールアース50において、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を世界全体で半減させるという長期目標の共有を提唱しています。御指摘の決議に言及された数値は、IPCCの評価報告書で言及された数値の一部が例示されたものであり、決議文にもあるとおり、同報告書で示された他の数値とともに、今後の国際交渉において留意すべき数値であると理解をいたしております。

 世界全体の温室効果ガスの排出削減を実現していくことを念頭に、我が国は、G8議長国としての立場を考えながら、いかなる対応をとるべきか検討中であります。その検討の中で、我が国としても、温室効果ガスの排出削減についてどのような国別の目標をどのような手法によって設定すべきか、多様な選択肢を含め、真剣な議論を行っているところであります。我が国としては、できるだけ早い段階でこの議論の結果を明らかにしてまいります。

 次に、低炭素社会への道筋やあり方等について賢人会議を創設して検討してはどうかというお尋ねがございました。

 地球温暖化問題への対応は今や待ったなしの状況にあり、我が国が率先してこの問題に取り組んでいくためには、京都議定書の目標達成は言うまでもなく、我が国を低炭素社会へと転換していく必要がございます。

 そのためには、政府の政策対応の変更にとどまらず、自治体や国民の皆さん一人一人の参加も得ながら、ライフスタイル、都市や交通のあり方など、社会の仕組みを根本から変えていく必要があります。近々、世界や日本の将来を見通せる専門的かつ高い見識を有する方々に御参集をいただき、環境問題に関する有識者懇談会を開催し、低炭素社会を実現するためにはどのような対応が必要になるのか幅広く検討していただくとともに、低炭素社会では暮らしぶりや社会のありようはどう変わるのかなどをわかりやすく国民にお示ししていきたいと考えております。

 次に、新エネルギーの普及に係る支援策についてお尋ねがございました。

 二〇〇五年のEUにおける再生可能エネルギーの導入割合は、平均六・六%です。各国別の導入割合を見ると、スウェーデンは二九・六%、フィンランドは二三・七%と比較的高い国もあれば、英国は一・七%、ドイツは四・七%と比較的低い国もあり、導入割合はその自然環境により異なっております。

 日本において、新エネルギーに水力発電、地熱発電等を加えた再生可能エネルギーの導入割合は五・一%であり、EU主要国と比較して遜色のない水準ではあります。

 しかしながら、新エネルギーの普及は、エネルギー源の多様化や地球温暖化対策の観点から極めて重要であり、現在の水準に満足することなく、普及に向けた取り組みを加速していく必要があると認識しております。

 具体的には、新エネルギーの技術開発や設備導入支援、電力会社への新エネルギー電源の利用義務づけ制度等の強化拡充など、ドイツや米国の取り組みも参考にしながら、新エネルギー対策の抜本的強化について、速やかに総合的な検討を行ってまいります。

 生物多様性基本法の制定、生物多様性保全の取り組み強化についてお尋ねがございました。

 政府としては、昨年、第三次生物多様性国家戦略を閣議決定し、トキ、イリオモテヤマネコなど希少種の保護や、湿原、サンゴ礁など生態系の保全等、自然と共生する社会の形成に向けた施策を総合的に推進しております。

 こうした取り組みを後押しする観点から、与党において生物多様性保全の強化に向けた法制度に関する検討の動きがあることは承知しております。政府としても、さまざまな観点からの検討が行われ、議論が進展することを期待いたしております。

 日中環境協力及び環境基金についてお尋ねがございました。

 中国の環境問題は、我が国のみならず、アジアひいては世界の環境に影響を及ぼし得る重要な問題であります。

 私の昨年十二月の訪中では、中国指導者との会談において、気候変動を初めとする環境・省エネ分野での日中協力は子孫と国際社会に対する責務である旨述べ、戦略的互恵関係の重要な分野として両国の協力をさらに推進していくことを強調しました。具体的には、環境関連情報の共有や人材育成、技術移転、共同研究などを進めてまいります。

 御指摘のお考えについても、我が国の有する高い技術、知見、経験と解決すべき具体的な問題を念頭に置きながら、これらに対処するためにはいかなる方策が有効、適切であるかといった観点より引き続き検討してまいります。(拍手)

 次に、日米関係を一層維持発展させるための施策についてのお尋ねがございました。

 日米同盟の維持発展のためには、政治、経済、安全保障、文化などのさまざまな分野において、協力関係、交流を不断に強化していくことが必要です。

 日米安全保障体制の信頼性の向上を図るとともに、テロとの闘いなど国際社会が直面する課題に緊密に連携して取り組むことも重要であります。また、我が国が、米国との関係を踏まえて、アジア諸国における安定と成長の定着を目指す積極的外交を展開することも日米関係の一層の深化につながると考えます。

 在日米軍再編については、抑止力維持と地元の負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾けつつ、地域の振興についても全力で取り組みながら着実に進めてまいります。

 また、同盟関係を支える信頼関係を将来にわたり支えていくための人的・知的交流をさらに進めます。

 次に、第四回アフリカ開発会議、TICAD4を通じ、アフリカ諸国の自助努力を後押しする行動計画を策定すべきとの御提案がございました。

 本年五月に我が国で開催されるTICAD4は、「元気なアフリカを目指して 希望と機会の大陸」をテーマに、近年アフリカで見られる政治、経済両面の前向きな動きをさらに後押しし、アフリカにおける持続可能な開発を確かなものとするために、国際社会の知恵と資金を結集することを目的にしております。

 我が国としても、御提案のような行動計画をTICAD4の場で発表できるよう、現在、アフリカ諸国及び援助供与国、国際機関等の意見も踏まえ、その具体化に向けて準備を進めているところであります。

 最後に、サミット主催国として、種々の外交課題に取り組む上での見解と決意についてお尋ねがございました。

 アジア外交に関し、我が国は、中国及び韓国との関係の強化、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決、将来の東アジア共同体の形成を視野に入れた、開かれた地域協力の推進等に積極的に取り組んでまいります。こうしてもたらされるアジア地域の平和と安定は、ひいては国際社会全体の平和と安全につながるものと考えます。

 テロとの闘いに関しては、国際テロリズムの防止、根絶に向け、国際社会と連携して取り組んでいく考えであります。また、テロを生む社会的・経済的背景に存在する諸問題の解決を図ることが重要との考えのもと、人間一人一人の保護と能力強化を重視する人間の安全保障の観点も踏まえつつ、貧困の撲滅等の諸課題に取り組みます。

 北海道洞爺湖サミットでは、こうした種々の外交課題に関する我が国の立場を念頭に置きつつ、G8議長国として、大局的な観点から議論を主導し、地球規模課題の解決に向け、他の参加国の協力も得て大きな成果を上げたい考えであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

国務大臣(舛添要一君) 太田昭宏議員から、救急医療につきまして、法制面での対応も含めた御提案がございました。

 厚生労働省といたしましても、救急医療の確保は喫緊の課題と考えております。このため、先般改正いたしました医療法で平成二十年四月までに都道府県が策定することとなっている医療計画においても、救急医療を重点的に位置づけ、体制整備を促しているところでございます。

 また、最近の事案も踏まえ、都道府県に対して、改めて現行の取り組みについて徹底した総点検を行うとともに、御指摘のような、受け入れ可能な医療機関に関する情報の迅速で正確な更新、受け入れ医療機関の円滑な選定を支援する医師等の配置などの取り組みを要請しております。

 これらの取り組みを進めるため、二十年度予算に所要の予算を盛り込んでいるところでございまして、厚生労働省としては、御提案の趣旨も踏まえつつ、今後とも、関係省庁と連携の上、救急患者を確実に受け入れるシステムの構築に努めてまいります。

 こうした対策を進めていく中で、必要に応じて法制面での対応についても検討してまいります。

 次に、医師不足問題などについてお尋ねがございました。

 医師確保対策につきましては、昨年五月末に政府・与党が一体となって取りまとめた緊急医師確保対策を受け、国レベルでの医師不足地域への医師派遣体制の充実を図るとともに、医療補助者の配置の推進等による勤務医の過重労働の改善などの実施を行うほか、二十年度の診療報酬改定においては、勤務医の負担軽減や救急医療等の重点的な評価を行うため、診療報酬本体について〇・三八%のプラス改定を行うこととしており、これらの施策を通じて実効性のある医師確保対策の推進に努めてまいります。

 また、医師不足地域等で従事する医師の確保のために、医学部の定員増を行うほか、医師のキャリア形成を担い、医師不足地域に医師を派遣する中核病院に対する支援にも努めてまいります。

 さらに、将来を見据えた改革を行うため、本年四月を目途として、あるべき医療の姿や医療の確保に関する政策目標等を示す安心と希望の医療確保ビジョンの策定を進め、地域に必要な医師の確保の推進に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣増田寛也君登壇〕

国務大臣(増田寛也君) 太田議員から、道路特定財源の暫定税率が廃止された場合の影響についてお尋ねがございました。

 仮に道路特定財源の暫定税率がなくなりますと、地方団体の財源は、地方譲与税分も合わせますと九千億円減収、また、国の道路特定財源である揮発油税を原資とする地方道路整備臨時交付金約七千億円も含めますと、地方への影響は約一兆六千億円にも及びます。

 暫定税率の廃止によりまして、地域に密着した生活道路や通学路の整備、あかずの踏切対策などの安全対策、冬場におきます道路の除雪、老朽化が進む橋梁の耐震補強などの維持補修が不十分となりまして、住民の日常生活に重大な影響が生じることが懸念をされます。また、新直轄方式による都市間を結ぶ幹線道路の整備に支障が生ずることも懸念をされます。

 地方におきましては、道路事業は、過去の道路整備に係る公債費負担も含めまして、道路特定財源だけでは足りません。多くを一般財源や地方債によりまして賄っているのが現状でございます。

 したがいまして、とりわけ削減が困難な維持補修費や公債費の負担が大きい団体にとりましては、暫定税率の廃止に伴いまして、例えば道路以外の分野に充てるべき財源を地方債の償還に活用せざるを得ないことから、予算全体のやりくりに極めて苦慮する団体もあり得ます。

 さらに、軽油引取税や自動車取得税の暫定税率が廃止された場合には、その前後に消費者の買い控えなどが生じまして、軽油や自動車の流通に混乱が生じるなど、国民生活に大きな影響を与えるおそれもございます。

 このように、この問題、国民生活に直結する問題でございますので、ぜひとも暫定税率の維持が必要と考えておりまして、切に御理解のほどお願いを申し上げる次第でございます。(拍手)

    〔国務大臣鴨下一郎君登壇〕

国務大臣(鴨下一郎君) 太田昭宏議員から、温室効果ガスの国内排出量取引制度などについてお尋ねがありました。

 環境省は、本制度を今後の温暖化対策の有効な選択肢の一つであると認識をしております。これまでも事業者に自主的に参加してもらう取引制度を実施してきておりますけれども、排出量取引についての知見や経験の蓄積を進めているところであります。また、EUにおいて先行して導入されている排出量取引制度等の国際的動向についても注視しております。

 環境省としては、今後の我が国の排出量の動向等を踏まえつつ、我が国の実情に合った排出量取引制度のあり方についての検討を、関係者等の理解を得ながら加速してまいります。この際には、これまでに得た知見を活用して、諸外国の制度の改善すべき点は改善するという姿勢で検討を進めてまいりたいと考えております。

 昨年末にバリで開催されました気候変動枠組み条約締約国会議に政府代表として出席してまいりましたが、今我々は、経済、文化、生活などあらゆる面で地球全体の大転換期を迎えている、こういう実感をいたしました。このような中で、我が国は率先して世界全体での大幅削減に積極的に貢献していかなければなりません。それを実現するための低炭素社会の構築に向け、幅広い検討を進めてまいります。

 また、日中の環境協力につきましては、中国における環境の現状にかんがみ、重要な課題と受けとめております。

 昨年十二月には、中国国家環境保護総局長との間で公害対策と温暖化対策をあわせ推進するコベネフィット協力について合意文書を結び、中国における具体的な環境協力事業を進めることといたしました。また、北京での日中主要閣僚会合や富山での日中韓三カ国環境大臣会合でも、温暖化、公害、黄砂など幅広い環境分野での協力推進に合意いたしました。

 今後、日中間の環境協力をより進めるため、太田代表の指摘を十分に受けとめまして、この充実策を検討してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、福田総理に質問いたします。(拍手)

 まず、暮らしの問題です。総理は、施政方針演説の中で、生活者が主役という言葉を繰り返しました。しかし、貧困と格差が進み、国民生活はいわば底が抜けてしまったような不安と危機に見舞われている現状をどう打開するのか、その具体的処方せんは何も語られませんでした。

 そこで、四つの角度から総理の基本的見解をただします。

 第一は、雇用の問題です。

 この間、派遣最大手グッドウィルに事業停止処分が下されました。港湾、建設など禁止されている業務への違法派遣、二重派遣、偽装請負など、派遣労働が無法の巣窟とされている実態が明るみに出されました。

 労働者派遣法の相次ぐ規制緩和によって、派遣労働者は三百二十一万人に急増し、そのうち二百三十四万人は登録型派遣、派遣会社に登録しておき、仕事があるときのみ雇用するという極めて不安定な状態のもとに置かれています。

 派遣労働者の苦しみは、その多くが懸命に働いても年収二百万円以下という異常な低賃金だけではありません。社会保険に入れない、残業代が出ない、交通費が出ない、社員食堂が使えない、名前でなくハケン君などと呼ばれるなど、人間としての尊厳を踏みにじられる差別を受け、物のように使い捨てにされていることが、若者たちを深く傷つけています。一度派遣に入ったら抜け出せません、私たちは苦しんで涙して働いても希望も何もありません、若者が生きられない、こんな世の中であっていいでしょうか。これは、私たちに寄せられた痛切な声であります。

 総理の基本認識を伺いたい。こんな働かせ方が、あなたの言う若者が希望が持てる社会にふさわしい働き方と言えるでしょうか。お答え願いたいと思います。

 政府は、派遣労働の規制緩和を進める際、臨時的、一時的なものに限定し、常用雇用の代替にしてはならないことが原則だと繰り返し言明してきました。しかし、現実を見れば、正規雇用が減り、非正規雇用が急増し、派遣労働が常用雇用の代替とされていることは明らかではありませんか。総理はこの現実を認めますか。常用雇用の代替にしてはならないというなら、労働者派遣法の抜本的改正に踏み込み、派遣は臨時的、一時的業務に制限し、日雇い派遣やスポット派遣という極めて不安定な登録型派遣は直ちに禁止し、均等待遇のルールをつくるべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 第二は、社会保障の問題です。

 年金記録問題について、総理は私の内閣で解決すると明言しましたが、早くもねんきん特別便の見直しが必至になる事態が生まれています。問われているのは、侵害された国民の権利を回復するために、国民に最大限の情報を伝え、協力をお願いし、国民の知恵と力を結集して解決を図るという姿勢に徹するかどうかであります。総理の答弁を求めます。

 二〇〇八年度は、一昨年の通常国会で自民、公明が強行した医療改革法が本格的に始動し、療養病床の大幅削減、公立病院つぶしなど、さらなる医療荒廃が引き起こされようとしています。

 とりわけ国民の怒りが噴き出しているのが、後期高齢者医療制度であります。私たちは焼け野原だった日本を必死に働いて復興させた世代です、後期高齢者医療制度を知ったとき、その私たちが今国から捨てられようとしていると思いました、悔しい。今、私たちのもとに全国からこうした声がたくさん寄せられております。

 この制度に対する高齢者の怒りは、負担増への怒りだけではありません。七十五歳という年齢を重ねただけで差別される、国保や健保から追い出され、別枠の制度に囲い込まれ、過酷な保険料徴収が行われ、診療報酬も別建てとされ保険医療が制限されるなど、人間としての存在が否定されたような扱いを受けることへの深い憤りなのです。私たちは今国から捨てられようとしている、総理は全国の多くの高齢者のこの声にどう答えますか。そもそも、一体どこに七十五歳で区切る根拠があるのですか。年齢によって高齢者を切り離して格差をつける制度を導入しようなどというのは、国民皆保険の国では世界でも日本だけではありませんか。

 政府は、国民の激しい怒りを前に、高齢者の負担のごく一部分の一時的凍結を打ち出しています。こうした目先の取り繕い、ごまかしをしなければならないのは、制度の破綻をみずから認めたものであり、後期高齢者医療制度の実施は今からでも中止することを強く要求するものであります。

 また、医療、年金、介護、障害者福祉などあらゆる社会保障制度の改悪の根源にある社会保障費抑制路線、社会保障予算の自然増を認めず毎年二千二百億円ずつ削減する路線を転換することを要求します。総理の答弁を求めます。

 第三は、農業と食料の危機であります。

 この十年余りで生産者米価は四割近く下落し、二〇〇六年産の米価は一俵当たり平均一万四千八百二十六円まで落ち込みました。米の生産費は農水省の計算でさえ一俵当たり一万六千八百二十四円なのに、それを大きく下回りました。この米価で得られる農家の一時間当たりの労働報酬は、わずか二百五十六円にすぎません。ほとんどの農家が米づくりを続けられなくなるがけっ縁まで追い込まれています。

 米価の異常な下落は、政治の責任以外の何物でもありません。政府は、この十年余り、WTO農業協定にあわせて米の価格保障を廃止し、米市場の下支えも撤廃し、米価を市場任せにしてきました。米の輸入拡大が米価下落に拍車をかけました。総理、どんな言いわけをしても、米価収入を時給二百五十六円まで下落させた農政は大失政と言うほかないではありませんか。総理は、その重大な政治的責任をどう自覚されているのでしょうか。

 日本の食料自給率は、世界でも異常な低さの三九%まで低下しました。日本農業の立て直しは、ひとり農家の存亡にとどまらず、日本国民の存亡、国土と環境の存廃にかかわる大問題であります。我が党は、そのために次の三つの政策転換を強く求めます。

 一つは、農産物の価格保障と所得補償を組み合わせて、農家が安心して農業に打ち込める再生産を保障することです。生産者米価については、不足払い制度を創設し、農家の手取りを当面、生産費に見合う一俵一万七千円以上に引き上げるべきであります。

 二つは、大多数の農家を切り捨てる品目横断対策を中止し、家族経営を応援するとともに、大規模経営や集落営農も含めて、農業を続けたい人、やりたい人すべてを応援する農政に切りかえることであります。

 三つは、無制限な輸入自由化をやめ、国連人権委員会が採択した食料主権、各国が食料・農業政策を自主的に決定する権利を保障する貿易ルールをつくることを目指すべきであります。総理の答弁を求めます。

 第四は、税金のあり方の問題です。二つの問題に絞って、端的に伺います。

 一つは、道路特定財源の問題です。

 道路特定財源の最大の問題点は、ガソリン税など自動車関係の税金が道路建設にしか使えないというこのシステムが、無駄な道路づくりの自動装置となっていることにあります。さらに、暫定税率と称して税率を上乗せしてきたことが、無駄な道路づくりを加速させてきました。

 政府は、今後十年間で五十九兆円を使う道路中期計画の策定を進めています。しかし、国民生活に本当に必要な道路の計画を積み上げるのではなく、初めに五十九兆円を使い切ることを決める総額先にありきという方式は、それ自体が無駄な道路づくりをやみくもに進める方式にほかなりません。実際、その内容を見れば、全国各所で、拠点空港や港湾から十分以内で高速道路に接続する道路をつくるなど、不要不急の無駄な計画が満載されているではありませんか。政府が暫定税率を含めて年間五・六兆円に及ぶ道路特定財源をさらに十年間延長することに固執している理由は、五十九兆円という道路中期計画にそのお金を使い切ることにあるのではありませんか。

 我が党は、道路特定財源をやめて一般財源化し、道路だけでなく、福祉や教育、暮らしにも自由に使えるようにすることを要求します。また、暫定税率を撤廃することを要求します。道路中期計画を撤回し、道路は、国民生活から見て必要不可欠で緊急性の高いものをよく吟味し、絞って整備することを求めます。さらに、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税を導入することを提案するものです。総理の答弁を求めます。

 いま一つは、庶民に増税、大企業に減税という逆立ちした税金のあり方を正すことです。

 総理は、施政方針演説の中で、社会保障のための安定的な財源として、消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図ると述べました。昨年末に発表された与党税制改正大綱では、消費税を社会保障を賄う主要な財源と位置づけた上で社会保障財源を充実すると明記しています。

 総理も、消費税を社会保障を賄う主要な財源と位置づけ、それを充実するという立場、すなわち、社会保障のためとして消費税を増税するという立場でしょうか。国民の暮らしの支えとなるべき社会保障の財源に国民の暮らしを破壊する消費税を充てることには我が党はもとより反対ですが、総理はみずからの立場を正直に述べるべきです。

 他方で、総理は、施政方針演説の中で、大企業向けの研究開発減税をさらに拡充すると述べました。この十年間で、大企業に対しては、法人税率を大幅に引き下げた上に、数々の特権的な減税によって、五兆円を超える減税のばらまきが行われています。総理、空前の利益を上げている大企業への行き過ぎた減税こそ正すべきではありませんか。研究開発減税の拡充という、一握りの巨大企業だけが潤うさらなる減税のばらまきを行うというのは、全く向いている方向が逆さまではありませんか。答弁を求めます。

 以上、雇用、社会保障、農業、税金のあり方、四つの角度から問題点をただしてきましたが、今、経済政策の軸足をどこに置くかが厳しく問われています。

 これまで政府は、企業が栄えれば、めぐりめぐって家計に波及し、国民生活がよくなるという成長シナリオを唱え続けてきました。ところが、昨年末以降の月例経済報告では、このシナリオは口にできなくなりました。大田経済財政特命大臣の演説でも、企業の体質は格段に強化されたが、賃金上昇に結びつかず、家計への波及がおくれていると認めざるを得なくなりました。大企業中心の成長シナリオは破綻しました。

 それならば、経済政策の軸足を、大企業から家計、国民へと転換させるべきではないでしょうか。家計を直接応援する政策に切りかえるべきではないでしょうか。私は、そうしてこそ、貧困と格差を打開し、日本の経済と社会を健全に発展させる道が開かれると確信いたします。総理の見解を求めます。(拍手)

 次に、地球温暖化から人類の未来をいかに救うかについて質問します。

 総理は、施政方針演説で、世界の先例となる低炭素社会への転換を進め、国際社会を先導すると意気込みました。それならば、答えていただきたい問題が二つあります。

 第一は、国際社会における日本政府の対応です。

 昨年十二月、インドネシア・バリ島で、国連気候変動枠組み条約第十三回締約国会議、COP13が開催されました。この会議では、国連が今後二十年の努力が重要だと述べたことを受けて、EU、欧州連合が、二〇二〇年までに先進国が温室効果ガスの三〇%削減を行うという数値目標を主張しました。ところが、会議で採択されたロードマップにはこの数値目標を書き込むことはできませんでした。二〇二〇年までの数値目標を書き込むことを邪魔した国として厳しい批判の的となったのは、アメリカ、日本、カナダでありました。総理、日本政府が国際社会でとっている行動は、国際社会を先導するどころか、足を引っ張るものではありませんか。

 総理は、施政方針演説で、北海道洞爺湖サミットで、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を半減させる長期目標の合意をつくると述べましたが、今大切なのは、長期目標を実効あるものとするためにも、二〇二〇年までの中期削減目標を明確にし、先進国の合意とすることです。日本政府は、国際政治の場で、EUが主張している二〇二〇年までに三〇%削減という目標を踏まえ、中期削減目標を正面から掲げるべきだと考えますが、総理にその意思はありますか。お答え願いたい。

 第二は、京都議定書で、日本は二〇一二年までに六%削減という目標を世界に約束しているにもかかわらず、現状では、削減どころか、六・四%もふやしているという問題です。

 これは、欧州諸国が、政府と経済界との公的な削減協定の締結、自然エネルギーの大規模な導入、削減目標を企業ごとに明確にした排出量取引、環境税の導入など、政府がイニシアチブを発揮した規制と誘導によって大幅削減に踏み出していることと対照的であります。

 日本政府の対応の最大の問題は、産業界の温室効果ガス削減を日本経団連の自主行動計画任せにしてきたことにあります。このままでは目標達成の保証はありません。政府は、欧州諸国が行っているように、経済界に削減を義務づける公的協定を結ぶべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 最後に、自衛隊の海外派兵の恒久法について質問します。

 総理は、施政方針演説で、「迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる一般法の検討を進めます。」と述べました。ここで言う一般法とは、アフガニスタン戦争、イラク戦争など個別の戦争ごとに特別措置法をつくらなくても、政府の判断で自衛隊の海外派兵ができる、いわゆる恒久法を意味するものだと思います。

 総理、なぜ今、恒久法なのですか。だれのための恒久法なのですか。米国のアーミテージ元国務副長官は、恒久法についての日本国内の議論に励まされると述べ、米国は、短い予告期間で部隊を配備できる、大きな柔軟性を持った安全保障パートナーの存在を願っていると述べました。恒久法とは、アメリカが世界のどこで起こした戦争でも、その支援のために自衛隊を派兵する法的枠組みをつくるものではありませんか。

 紛争が起きても平和的、外交的に解決する、戦争のない世界を目指す流れこそ、世界の圧倒的大勢であります。この流れに逆らい、憲法九条を踏み破って恒久的な海外派兵法をつくる動きに日本共産党は厳しく反対することを表明して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 志位議員にお答え申し上げます。

 労働者派遣についてのお尋ねがございました。

 近年の派遣労働者の増加は、経済産業構造の変化や価値観の多様化などにより、企業と労働者の双方が多様な働き方を求めるようになっていることを背景とするものと認識しております。これまでの労働者派遣法などの見直しは、労働者の保護に欠けることのないよう留意しつつ、こうしたニーズに対応し実施してきたものと考えております。

 しかしながら、若者を中心とした低所得の非正規雇用が増加し、固定化することには十分な注意が必要と考えております。だれもがみずからの能力を生かし、安定した仕事について、将来に希望を持って暮らせるよう、正規雇用への転換促進など、働く人を大切にする施策を進めてまいります。

 労働者派遣制度については、当面の対応として、日雇い派遣の適正化などのためのガイドラインを早急に策定するほか、制度の根幹にかかわる問題については、厚生労働省に研究会を設け、検討を進めてまいります。

 年金記録問題についてのお尋ねがございました。

 この問題の解決に当たっては、本年十月までにすべての受給者や現役加入者の方々にねんきん特別便をお送りし、国民お一人お一人に適切にお答えいただくことが必要であります。

 このため、まずは、ねんきん特別便を受け取られた方が気軽に御相談できるよう、自治体、経済界とも連携して、十分な体制を整えてまいります。現在お送りしているねんきん特別便を見直すということではなくて、相談に来られた方に対し、記憶の呼び起こしを積極的に働きかけるなど、お一人お一人の立場に立った懇切丁寧な対応を行ってまいるということであります。このように、国を挙げて国民本位の対応を進めることにより、年金記録の統合作業を着実に進めてまいります。

 次に、後期高齢者医療制度についてお尋ねがございました。

 七十五歳以上の後期高齢者については、複数の慢性疾患にかかっている、治療が長期化するといった特性にふさわしい医療を提供することが必要であります。また、高齢化に伴う医療費の増加が見込まれる中、現役世代と高齢者の負担の公平を図りつつ、持続可能な制度とする必要があります。このため、平成十八年の医療制度改革において、後期高齢者を対象とした独立の医療制度を創設することとしたものであります。

 国民皆保険のもと、高齢者を特別な制度としている他国の例は把握しておりませんが、急速に高齢化が進む我が国においては、国民皆保険を堅持し、医療制度を将来にわたり持続可能な制度とすることが重要であり、後期高齢者医療制度の理念や方向性は適切なものと考えております。

 一方で、高齢者の方々の立場に立ったきめ細かな対応に努める必要があると考えておりまして、与党プロジェクトチームにおける検討結果を踏まえ、保険料についての激変緩和措置を講じ、制度を円滑に実施してまいります。

 社会保障費の抑制についてのお尋ねがございました。

 本格的な人口減少社会が到来する中で、次世代に負担を先送りすることのないよう、引き続き歳出全般にわたる抑制努力を行っていくことが必要であります。

 特に、社会保障については、高齢化の進展等に伴い、引き続き経済の伸びを上回って増大していくことが見込まれております。社会保障の国民の暮らしを支えるセーフティーネットとしての役割の重要性、これは十分認識しておりまして、こうした認識に立ちつつ、給付の合理化、効率化にも引き続き取り組んでいく必要があると考えております。

 米価の下落についてお尋ねがございました。

 米を全量管理していた食糧管理法とは異なり、現在の食糧法では、米については、民間流通を原則とし、生産調整と政府の備蓄により、米の需給と価格の安定を図っているところであります。民間流通のもとで米の販売価格も産地品種銘柄ごとにさまざまであり、また、経営コストも生産規模等により差が生じております。

 近年、米の価格は低下傾向にありますが、こうした中でも米の過剰生産の傾向が続いており、十九年産米は、作況九九でありながら、価格が大幅に下落する事態となったところであります。このため、政府が適正備蓄水準まで米を買い入れる緊急対策を実施するとともに、二十年産の生産調整が確実に実行されるよう、全力を挙げてまいる所存でございます。

 次に、生産者米価について不足払い制度を創設すべきとのお尋ねがございました。

 販売価格にかかわらず一定水準の収入や所得を保障するような仕組みについては、政府が買い入れ米価を算定していた食糧管理法時代に戻ることと同じでございまして、時代の流れに逆行するものであること、米の安売り競争を招きかねず、また、生産者のコスト縮減意欲が低下するおそれがあることなどの理由から、適当でないと考えております。

 品目横断的経営安定対策についてお尋ねがございました。

 将来にわたり食料を安定的に供給していくためには、経営安定対策等の推進により、農業経営の体質を強化していくことが重要であります。

 品目横断的経営安定対策につきましては、農村現場の声を真摯に受けとめ、昨年末に見直しを行ったところであります。今後、施政方針演説で申し上げたとおり、意欲のある担い手を支援するとともに、小規模、高齢の農家の方々が安心できるよう、集落営農を立ち上げやすくするなど、きめ細やかな対応に努めてまいります。

 貿易ルールについてのお尋ねがございました。

 食料に関する国際的な貿易ルールの構築に関しましては、現在、WTO農業交渉において議論が行われております。我が国としては、食料安全保障等を確保する観点から、多様な農業の共存を基本理念として、食料輸出国と輸入国のバランスのとれた貿易ルールの確立を目指して、積極的に取り組んでいるところであります。

 道路特定財源の事業量についてお尋ねがありました。

 現行の道路整備計画が今年度末に期限を迎えるに当たり、改めて道路整備の必要性を検討いたしました。その結果として、地域の自立、活性化に役立つ道路の整備や、災害に耐えられる橋梁の維持補修、救急病院への交通の利便性の確保、環境対策にも役立つ都市部の渋滞対策や、あかずの踏切の解消など、国民生活に欠かせない対策は、厳しい財政事情のもとでありますが、今後も進めていかなければならないと考えております。

 中期計画の事業量五十九兆円は上限との位置づけであり、暫定税率の維持は、五十九兆円というお金を道路整備に使い切ること自体を目的としているものではありません。

 道路特定財源の一般財源化についてお尋ねがありました。

 道路特定財源の一般財源化は、厳しい財政事情のもと、受益者負担の考え方を踏まえ、真に必要な道路整備に充てた上で、道路歳出を上回る税収について、環境対策等の政策課題への対応も考慮して、納税者の理解の得られる歳出の範囲内で一般財源を確保することとしております。

 暫定税率の撤廃についてお尋ねがございました。

 道路特定財源諸税の税率水準については、地域の自立、活性化や国民生活のために本当に必要な道路整備などを実施していくとともに、地球温暖化問題への対応を行うためにも現行水準を維持させていただくよう、国民の皆様にお願いすることとしたところであります。

 道路の整備方針についてお尋ねがございました。

 国民生活のために必要な道路整備を進めるに当たっては、施策の重点化と厳密な事業評価を行って、事業の必要性や緊急性をよく吟味し、計画的に進めることが重要であります。

 例えば、通学路の歩道整備では、全国約十九万キロの通学路のうち、事故の危険性が高く歩道がない約四万四千キロに重点化して取り組むことにするなど、国民生活にとっての必要性や緊急性を明確化することを重要な柱といたしております。

 次に、環境税についてお尋ねがございました。

 地球温暖化防止のための環境税については、国民に広く負担を求めることになるため、地球温暖化対策全体の中での具体的な位置づけ、その効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取り組みの現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るよう努めながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題であると考えております。

 また、消費税についてのお尋ねがございました。

 これからの社会保障を持続可能な制度とするために、安定した財源を確保しなければなりません。このため、社会保障や少子化対策に要する費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、消費税を含む抜本的な税制改革について早期に実現を図る必要があります。その際、御指摘の与党税制改正大綱の「基本的考え方」や、欧州諸国において、経済動向に左右されにくい消費税が国の主要な財源とされていることも十分参考になると考えております。

 政府としては、社会保障国民会議において、社会保障のあるべき姿や負担の仕方などについて国民的な議論を行っていくこととしておりまして、そこでの議論も踏まえながら、税体系の抜本的改革についての検討を進めてまいりたいと考えております。社会保障の財源として消費税をどのように考えるかについても、こうした議論の中で幅広く検討してまいります。

 次に、研究開発税制についてのお尋ねでございます。

 我が国の持続的な経済成長を実現するためには、技術革新を加速することが必要であります。こうした観点から、平成二十年度税制改正において、民間の研究開発投資を促進するため、研究開発税制の拡充を行うこととしております。この研究開発税制の拡充は、大企業のみならず中小企業にも適用されるものであり、巨大企業だけが潤う減税のばらまきとの御指摘は当たらないと考えております。

 経済政策の軸足についてのお尋ねがございました。

 私は、経済政策においては、すべての人が成長を実感できる経済成長戦略を実行したいと思っております。

 具体的には、意欲ある人が皆働けるように、定年制のあり方や六十歳以降の継続雇用・再雇用のルールについて検討を進めるとともに、ジョブカード制度を四月から導入します。また、正規・非正規雇用の格差の是正や日雇い派遣の適正化などを行います。

 さらに、地域経済の活力の復活と中小企業の生産性の向上を実現するために、地域連携拠点を全国に二百から三百カ所整備し、ITを徹底して活用し、経験豊富な大企業の退職者や中小企業、農業、大学が相互に連携して、新たな商品やサービスを生み出す取り組みを支援いたします。また、中小企業の事業承継を円滑にするための税制の抜本的見直しを行うことといたしております。

 地球環境問題について、我が国の国際交渉における姿勢についてのお尋ねがございました。

 温室効果ガスの濃度安定化という気候変動枠組み条約の究極目的の実現のためには、すべての主要排出国の参加する実効性のある枠組みを構築することが何よりも重要であります。

 我が国は、このような観点から、さきのバリで開催された気候変動枠組み条約締約国会議では、具体的数値の設定など今後の交渉によって決めるべき事項について合意を目指すよりも、そうした枠組み構築のための交渉の場を立ち上げることを最重要課題として対応いたしました。

 その結果として、すべての国が参加し、先進国と途上国双方の緩和のあり方について交渉することを可能とする二〇一三年以降の枠組み交渉の場の立ち上げに合意ができました。このことは、バリ会議の大きな成果であったと認識しております。

 次に、我が国の中期削減目標の設定についてでございますが、中長期削減目標の設定及び打ち出し方については、各国間にも異なる意見が存在しております。

 世界全体の温室効果ガスの排出削減を実現していくことを念頭に、いかなる対応をとるべきか、検討中であります。その検討の中で、我が国として、温室効果ガスの排出削減について、どのような国別の目標をどのような手法によって設定すべきか、多様な選択肢を含め、真剣な議論を行っているところであります。我が国としては、できるだけ早い段階でこの議論の結果を明らかにしてまいります。

 産業部門の温室効果ガスの削減についてお尋ねがございました。

 現行の京都議定書目標達成計画において、自主行動計画は「産業・エネルギー転換部門における対策の中心的役割を果たすものである。」と位置づけられております。また、透明性、信頼性、目標達成の蓋然性が向上されるよう、政府の関係審議会等において定期的にフォローアップを行っているところであります。

 目標達成計画の見直しに当たり、自主行動計画の拡大強化を働きかけてまいりましたが、目標の引き上げや、これまで計画を策定していなかった業種における新規策定、数値目標を設定していなかった業種における目標の定量化等の促進が進められておるところであります。

 このように、自主行動計画による効果が着実に上がっている中で、計画を公的協定とすることは現時点では考えておりませんが、今後も産業界のさらなる努力を促すなど、六%削減目標の確実な達成のために、あらゆる部門における対策の一層の強化を進めてまいります。

 いわゆる一般法の検討の目的についてのお尋ねがございました。

 平和で安定した国際社会は、我が国にとってかけがえのない財産です。我が国としては、日米同盟と国際協調を基本に、テロとの闘いなどの地球規模の課題の解決に積極的に取り組み、世界の平和と発展に貢献する平和協力国家として、国際社会において責任ある役割を果たすことが重要であります。

 いわゆる一般法の整備は、我が国がこのような平和協力国家としての役割を果たす上で、迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくために望ましく、また、国際平和協力に関する我が国の基本的方針を内外に示す上でも有意義と考えます。一般法については、このような観点から検討を進めていくべきものと考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(横路孝弘君) 重野安正君。

    〔重野安正君登壇〕

重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表し、福田総理の施政方針演説に対し、当面する重要政策課題に絞って質問をいたします。(拍手)

 総理、私は、施政方針演説を聞いて、本当にむなしい気がいたしました。生活者、消費者が主役となる社会の実現を柱にし、国民本位で、国民の目線で、国民の立場に立ってと、国民という言葉を四十八回も使われました。しかし、政治が国民のものであるのは当たり前のことでありまして、逆に言うと、総理が国民という言葉を使わなければならないほど、この間の小泉政権以来の構造改革路線や、安倍前内閣の新国家主義的な政治が国民から遊離していたことを裏づけるものと思わざるを得ません。

 おいしい言葉が躍っていますが、福祉は切り捨てられ、雇用の劣化に苦しみ、貧困にあえぐ多くの国民は、活力が出てこないほど疲弊しているのであります。演説の中には、貧困という言葉すらありませんでした。格差拡大、二極化と貧困、窮乏化にあえいでいる現状が総理に届いていますか。

 貯蓄率は最低になり、自殺者は九年連続で年間三万人を超えています。働く者の三人に一人が非正規労働者です。年収二百万円以下の層が一千万人を超え、ワーキングプアも当たり前の言葉になりました。ネットカフェすら利用できない若者層もふえています。OECDの統計を引くまでもなく、貧困率が上がり、北九州では、生活保護すら受けられず、三年連続で餓死者が出て、行政が刑事告発される事態になっているではありませんか。

 死に追いやられる痛ましい事件、たらい回しにされ十分な医療も受けられない現実。政治とは行動であり、結果であります。総理は、こうした事態をどう受けとめておられますか。御認識をお伺いいたします。

 当時の柳澤厚生労働大臣すら、これ以上サービスの受け手としての国民に制度改正でもって負担を増大させることはもうあり得ないと言わざるを得ないほど、社会保障の削減は限界です。しかし、福田総理の国民本位のもとでも、小泉政権以来毎年二千二百億円ずつ削減されてきた社会保障費の自然増加分の抑制が続けられています。結局、総理の強調する自立と共生は、国に甘えてばかりいないで自立しろ、税と保険料の負担だけはよこせ、あとのことは弱い者同士で勝手に支え合えというように聞こえます。

 政治や行政などの仕組みを国民本位に転換させるというのであれば、格差と貧困を生んできた構造改革路線の総括と転換こそが必要であると考えますが、総理の御所見を伺います。

 経済財政政策についてお尋ねします。

 総理は、二〇一一年度に基礎的財政収支の黒字化を確実に達成すると言い切っていますが、内閣府のまとめた二〇一一年度までの経済財政見通しによると、福田政権の成長戦略の効果はゼロに等しいということでしょう。名目成長率の低下と税収の伸び悩みによって、基礎的財政収支の黒字化が本当にできるのか、疑問です。どのような道筋を描いているのか、総理の見解をお聞かせください。

 さて、上場企業の経常利益は過去五年連続で最高記録を更新する勢いにあります。この間、配当や役員報酬がふえる一方、労働分配率は低下し続け、個人消費の足取りは非常に重く、内需は冷え込んでいます。こうした事態を総理はどう受けとめておられますか。

 与党は、企業部門が元気になればいずれ雇用者にも利益が及ぶと言ってきましたけれども、アメリカのサブプライムローン問題の影響と原油高の影響で、個人に恩恵が来る前に不況下の物価上昇が訪れようとしている。今こそ、GDPの六割を占める個人消費に効く経済政策を打ち出すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 もはや格差ではなく貧困が問題となりつつある非正規労働者の労働・生活実態、それに影響を受けた正規労働者の労働・生活条件の後退を放置する労働法制は、明らかに政府の責任です。ワーキングプアと呼ばれるような人たちがあなたに聞きたいのは、人間らしく働き、生きていける具体的な政策です。そもそも、日雇い派遣のような不安定な働き方が今のように広がっていることが異常であると言わなければなりません。派遣法の規制強化についての総理のお考えをお聞かせください。

 障害者自立支援法についてお尋ねします。

 総理は、自民党総裁選に立候補されたときの公約では、障害者自立支援法を抜本的に見直すとしていました。障害者の皆さんから期待が高まったのに、しかし、その後はどんどん後退しているではありませんか。総理、障害を持つことは自己責任ですか。障害者は努力が足りないのですか。障害者が生きるための公共サービスを受けることは受益ですか。応益負担を応能負担に戻すといった抜本見直しこそ必要だと考えます。総理、いかがですか。(拍手)

 年金記録問題についてお尋ねします。

 総理は、私の内閣で解決するよう全力を尽くすと明言されています。既に、宙に浮いた年金記録約五千万件のうち九百四十五万件は統合が難しい記録であり、厚生年金の旧台帳と呼ばれる年金記録約一千三百六十五万件のうち六万件も事実上照合作業に役立たない状態にあり、時間の経過とともにこの傾向はさらに増加すると思われますが、来年度予算に盛り込まれた年金記録漏れ問題の対策費は二百九十八億円にすぎません。本当に解決できるのですか、この場で約束していただきたいと思います。

 地域では第一次産業が衰退をし、限界集落が問題になっています。学校も統廃合が進み、過疎地域に生まれ育ったがゆえに教育の平等を享受できない現状があります。身近な生活圏で必要な医療が受けられるというごくごく当たり前だった安心が改革の陰で崩れ始め、医療格差が広がっています。鉄道もバスもない、農協も学校も役場もなくなった、そして郵便局も今消えようとしている、そういう地域が広がっているではありませんか。読売新聞が行った全国自治体首長アンケートでは、全体の九割が小泉改革によって中央と地方の格差が広がったと感じています。地域を切り捨て、地域格差を広げたのは、政府・与党の進めてきた政策の帰結ではないかと思うのですが、総理の認識を伺います。

 こうした現実に対し、政府の対策は極めて貧弱であると言わなければなりません。ふるさと納税は、規模も手法もこそくです。法人事業税の召し上げは、分権への逆行にほかなりません。三位一体の改革で五兆円以上の地方交付税が削減されたことが自治体の財政運営を困難にし、格差を広げている。国の財源保障の責任の放棄ではなく、格差是正機能を有する地方交付税の復元が必要だと考えますが、総理の見解を伺います。

 今年七月の洞爺湖サミットに向けて、総理が議長としてサミットをどう主導していくのかが問われています。温室効果ガスの具体的な削減目標を盛り込んだ新たな提案を大胆に打ち出すべきだと考えます。しかし、日本として責任を持って達成しなければならない京都議定書の目標達成すら危ういと言われている状況では、議長国として世界に顔向けできません。

 削減目標六%のうち三・八%を占めるのが森林吸収源です。今の予算規模では到底間に合わないのではないか。国として責任を持った森林・山村対策が必要であると考えますが、いかがですか。

 また、自然エネルギー対策のない温暖化対策はあんこのないたい焼きみたいなものであります。原子力関係の予算を太陽光や風力発電などの自然エネルギーの開発や普及の促進に転換すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 道路特定財源について伺います。

 暫定税率が導入されたときはそれなりの時代環境によるものだったと思います。しかし、道路の整備状況も大きく変化しています。

 広辞苑によれば、暫定とは、「本式に決定せず、しばらくそれと定めること。臨時の措置。」であります。にもかかわらず、暫定税率が三十年以上も維持され、今回さらに十年延長しようとしていますが、原油価格の急激な上昇は車保有数の多い特に地方の住民を直撃している状況の中で、検討することなく半世紀近くも続けようとしている政府の姿勢、そういう政府の姿勢を我々は認めるわけにはまいりません。

 中期計画も、六十五兆円の原案が一挙に五十九兆円になるなど、利権確保のためのつじつま合わせにすぎません。真に必要なものに精査し規模を縮小することは可能です。既得権益として当たり前のように財源を確保し、惰性のように使い続ける構造、税金を政官業の利権の巣として維持し続けること自体にメスを入れ、税の使い方を真剣に再検討することこそ改革であると考えますが、総理、いかがですか。

 公務員制度改革について伺います。

 昨年十月、行政改革推進本部専門調査会は、「一定の非現業職員について、協約締結権を新たに付与する」とする報告を取りまとめていますが、これさえ政府部内には慎重姿勢が強いと聞いています。公務員の労働基本権については、ILOからも勧告が出されていますが、総理の見解はいかがですか。また、独立行政法人の見直しに関連して、当該法人で働く職員の雇用確保について万全を期すべきだと考えますが、どのようにお考えですか。

 旧テロ特措法のもとで提供してきた燃料が目的外のイラク戦争に転用されていた問題は、米国の情報公開制度で市民団体が入手した資料によって明らかになったのがきっかけでした。我が国の情報公開の実態や、日本政府の説明責任の果たし方は余りにもお粗末です。

 米軍では永久保存する航海日誌を、自衛隊は四年で破棄してしまうことになっています。今回、そのルールさえ守られず勝手に処分されている実態が明らかになりました。防衛調達は複数年度にわたることが多いにもかかわらず、防衛行政の文書保存期間も三年とか五年のものがほとんどであります。防衛機密と称すれば一切を秘匿できるという発想をまず改め、保存期間を長くするとともに、せめて事後的に検証できるような体制を整えるべきであります。公文書問題に詳しい総理の御所見をお伺いいたします。

 最後に、総理は、わざわざ改憲に向けた議論が進むことに期待を示しました。しかし、与党の強行採決で成立した改憲手続法に基づく憲法審査会の活動開始に行政府の長である総理が踏み込むのはおかしいと言わざるを得ません。憲法の論議をするのならば、生存権や労働権自体が空洞化していることを深く反省すべきでありましょう。総理のぬくもりのメッキはもうはげています。国民生活を無視し、居直りを続けるのではなく、正々堂々と国民の信を問うべきであることを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇〕

内閣総理大臣(福田康夫君) 重野議員にお答え申し上げます。

 格差の拡大、貧困などについてのお尋ねがまずございました。

 国民生活のさまざまな局面で格差と言われる問題が生じており、こうした事態から目をそらすことなく、一つ一つの課題にきめ細かく取り組んでいくことが重要であると考えております。

 このため、国民の立場に立って、三十五万人常用雇用化を目標としたフリーター常用雇用化プランなど若者の正規雇用化の支援、改正パートタイム労働法による均衡待遇の確保や改正最低賃金法等による労働条件の改善、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなど、正規・非正規雇用の格差の是正や、いわゆるワーキングプアの抑制に積極的に取り組むとともに、生活保護世帯の自立支援プログラムの導入を一層推進するなど、国民が安心して生活できる社会を実現してまいりたいと思っております。

 次に、構造改革路線の総括と転換についてのお尋ねでございます。

 国民に新たな活力を与え、生活の質を高めるために、これまでの生産者、供給者の立場からつくられた法律、制度さらには行政や政治を、国民本位のものに改めなければなりません。これは、まさに時代に適合しなくなった制度や組織を改めるという改革にほかならないものであります。

 ニートやフリーター、厳しい状況にある地域や中小企業などのさまざまな問題にも一つ一つきちんと対応しつつ、国民の立場に立って、引き続き必要な改革を進めてまいる所存であります。

 その際、財政健全化への努力も継続していくことが必要であり、真に必要なニーズにこたえるための財源の重点配分を行いつつ、基本方針二〇〇六に示された五年間の歳出改革を着実かつ計画的に実施してまいります。

 基礎的財政収支黒字化の道筋についてのお尋ねでございます。

 御指摘の内閣府の試算においては、「日本経済の進路と戦略」に盛り込まれた政策が実行される場合には、潜在成長率が徐々に高まることなどから、二〇一一年度までに、実質成長率は二%台半ばまで、また名目成長率では三%台前半まで上昇する姿を見込んでおります。

 こうした経済の展望は、種々の不確実性を伴うため、相当な幅を持って見る必要がありますが、いずれにせよ、政府としては、今後とも、成長力強化に取り組むことを通じて、安定した成長を図るとともに、歳出改革を徹底して実施し、それでも対応し切れない社会保障や少子化などに伴う負担増に対しては、安定的な財源を確保し、将来世代への負担の先送りを行わないようにします。こうした取り組みを進め、まずは、二〇一一年度に国、地方の基礎的財政収支の黒字化を確実に達成してまいります。

 労働分配率の低下と内需の冷え込みについてお尋ねがございました。

 近年の労働分配率の動向などを踏まえ、労働分配率の向上と雇用の安定化の実現を図ってまいります。

 そのため、フリーター常用雇用化プランなど若者の正規雇用化の支援、改正パートタイム労働法による均衡待遇の確保、改正最低賃金法等による労働条件の改善、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどについて、生活者の視点に立ちつつ、積極的に取り組み、すべての人が成長を実感できる経済を実現してまいります。

 個人消費に効く経済政策についてのお尋ねがございました。

 景気は緩やかながら回復は続いており、先行きについても、企業部門が底がたく推移し、景気回復が続くと期待されておりますが、ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の下振れリスクや金融資本市場の変動、原油価格の動向が内外経済に与える影響には十分留意する必要があります。

 このように、景気が息の長い回復を続ける中で、足元では、賃金が伸びず、景気回復の家計への波及がおくれております。景気回復の果実が家計に十分波及し、国民が景気回復を実感できるよう、労働分配率の向上に向けて、正規・非正規雇用の格差の是正や、日雇い派遣の適正化等労働者派遣制度の見直しなどの施策に積極的に取り組み、全員参加の経済戦略を展開してまいります。

 労働者派遣法についてお尋ねがございました。

 御指摘の日雇い派遣については、労働者の側でも一定のニーズがある反面、不安定な働き方であり、これを見直すべきとの意見などさまざまな議論があると認識しております。

 このため、労働者派遣制度については、当面の対応として、日雇い派遣の適正化などのためのガイドラインを策定するほか、制度の根幹にかかわる問題については、厚生労働省に研究会を設け、検討を進めてまいります。

 障害者自立支援法の抜本的見直しについてのお尋ねがございました。

 障害者自立支援法の利用者負担については、既にきめ細やかな軽減措置を講じているところでありますが、与党における検討結果も踏まえ、来年度において、低所得者を中心としたさらなる軽減等の緊急措置を講じることといたしております。

 年金記録問題についてのお尋ねがございました。

 本年三月までに、五千万件の未統合記録と一億人のすべての年金受給者や現役加入者の方々の記録をコンピューター上で突き合わせ、その結果、記録が結びつく可能性がある方々へねんきん特別便をお送りしてまいりますが、こうした作業を行ってもなお統合できずに残る記録につきましては、四月以降も、引き続き粘り強く統合作業を進めてまいります。

 さらに、ねんきん特別便を、四月から五月までにすべての受給者に、六月から十月までにすべての加入者に順次お送りいたします。また、これに並行して、国民お一人お一人に記録を御確認いただくことなどによりまして、年金記録の統合作業を行ってまいります。

 これらの取り組みを初めとして、年金記録問題対策の実施に必要な経費として、平成二十年度予算では約二百九十八億円を計上しております。

 なお、御指摘の厚生年金の旧台帳については、御指摘の六万件も含め、検索を容易にするため、その保管方法のあり方について早急に検討していくことといたしております。

 引き続き、各般の施策に一つ一つ着実に取り組み、解決に向けて全力を尽くしてまいります。

 地域格差問題についてのお尋ねでございます。

 今回の景気回復が続く中で、産業構造、人口動向の違いなどから、なかなか景気回復を実感できないでいる地域がございます。

 このため、このたび取りまとめる経済成長戦略の具体化を通じて、安定した経済成長を続けることにより、経済成長の成果を広く行き渡らせることが重要と考えております。また、昨年十一月に取りまとめた地方再生戦略に基づき、地方の創意工夫を生かした自主的な取り組みを政府一体となって強力に後押ししてまいります。これらにより、すべての地域が成長を実感できる全員参加の経済社会を構築すべく、全力で取り組んでまいります。

 次に、地方交付税についてのお尋ねでございますが、地域間の財政力格差を調整するとともに、全国どのような地域であっても一定水準の行政を確保する地方交付税の機能は、今後とも重要であると認識しております。

 平成二十年度においては、引き続き地方歳出を見直すとともに、喫緊の課題である地方の再生に向けた施策の充実等に必要な財源を確保するため、地方交付税の総額を前年度を上回って確保しているところであります。

 次に、森林吸収源対策でございますが、温室効果ガスの削減目標を達成するためには、今後六年間で合計三百三十万ヘクタールの間伐が必要となります。このため、平成二十年度においては、平成十九年度補正予算も合わせて総額五百四十六億円の追加的な予算を計上し、目標達成に努めているところであります。

 今後とも、森林吸収源対策としての森林整備を進めるとともに、国産材の利用拡大を軸とした林業・木材産業の再生を図り、山村地域を活性化していく考えであります。

 原子力と自然エネルギーの関係についてのお尋ねがございました。

 原子力発電は、発電過程で二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーであり、供給安定性にすぐれた電源であります。地球温暖化問題とエネルギーの安定供給を同時に解決するかなめとなるエネルギーとして推進していくことが必要でございます。

 また、御指摘の太陽光や風力発電などの自然エネルギーの開発普及の促進は、地球温暖化対策に加えて、エネルギー源の多様化の観点からも重要であります。こうした自然エネルギーについては、コストや供給安定性に課題があるため、課題の解決に向けた技術開発や導入拡大のための支援措置など、既に対策を講じているところでありますが、さらに導入を加速するための方策について総合的な検討を行っているところであります。

 地球温暖化問題が待ったなしの状況にあることを考えると、原子力か自然エネルギーかの二者択一ではなく、それぞれの特性を生かす形で、総合力でこの問題に対処していく必要がございます。

 次に、道路特定財源の見直しの意義についてお尋ねがございました。

 道路特定財源については、これまでも、おおむね五年ごとに検討の上、国会において必要との議決をいただいてきたものであり、この制度の活用によって着実に道路整備水準の向上が図られてきたものと考えております。

 今回も、改めて道路整備の必要性について検討を行った結果、地域の自立、活性化に役立つ道路の整備や、環境対策にも役立つ都市部の渋滞対策や、あかずの踏切の解消など、国民生活に欠かせない対策は今後も進めていかなければならないと考えております。その際、徹底したコスト縮減により、今後十年間の事業量の上限を五十九兆円といたしました。

 道路を初めとする公共事業の執行に当たっては、厳格な事業評価の実施による優先度の明確化、発注手続に対する第三者機関の監視等を行ってまいります。

 公務員の労働基本権についてお尋ねがございました。

 現在、公務員制度については、有識者から成る懇談会を設け、採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について検討いただいているところであります。労働基本権の問題についても、懇談会において、昨年十月の専門調査会報告を踏まえつつ議論が行われているところであります。

 懇談会の検討結果を踏まえ、公務員が能力を高め、国民の立場に立ち、誇りと責任を持って職務を遂行できるよう、総合的な公務員制度改革を進めてまいります。

 次に、独立行政法人の職員の雇用確保についてのお尋ねがございました。

 独立行政法人の廃止等見直しに伴う職員の雇用の問題に対しては、政府として適切に対処すべきものと考えます。

 このため、昨年末に閣議決定した独立行政法人整理合理化計画では、独立行政法人の見直しがあった場合には、他の独立行政法人及び政府関係機関等における受け入れ措置等によりまして横断的な雇用確保に努力することを盛り込んだところでございます。

 次に、防衛省の情報公開と行政文書の管理についてお尋ねがありました。

 防衛行政について、できる限り情報を公開して国民の理解を得ることが重要であるにもかかわらず、防衛省・自衛隊において不適切な文書管理がなされていたことは遺憾であります。

 防衛省においては、行政文書の管理状況調査の結果を踏まえて、文書管理に関する教育の徹底、実効的なチェック体制の確立、規則の見直しなど、文書管理のあり方の根本的な見直しに取り組んでおります。これらの取り組みを通じて、行政文書を適切に保存するとともに、可能な限りの情報公開に努め、国民に対する説明責任をしっかり果たすことが必要であると考えます。

 以上であります。(拍手)

副議長(横路孝弘君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  福田 康夫君

       総務大臣  増田 寛也君

       法務大臣  鳩山 邦夫君

       外務大臣  高村 正彦君

       財務大臣  額賀福志郎君

       文部科学大臣  渡海紀三朗君

       厚生労働大臣  舛添 要一君

       農林水産大臣  若林 正俊君

       経済産業大臣  甘利  明君

       国土交通大臣  冬柴 鐵三君

       環境大臣  鴨下 一郎君

       防衛大臣  石破  茂君

       国務大臣  泉  信也君

       国務大臣  大田 弘子君

       国務大臣  上川 陽子君

       国務大臣  岸田 文雄君

       国務大臣  町村 信孝君

       国務大臣  渡辺 喜美君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官  大野 松茂君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  宮崎 礼壹君


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