衆議院

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第10号 平成20年3月18日(火曜日)

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平成二十年三月十八日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成二十年三月十八日

    午後零時三十分 本会議

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本日の会議に付した案件

 政治資金適正化委員会委員の指名

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


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    午後零時三十七分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 政治資金適正化委員会委員の指名

議長(河野洋平君) 政治資金適正化委員会委員の指名を行います。

御法川信英君 政治資金適正化委員会委員の指名については、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(河野洋平君) 御法川信英君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、政治資金適正化委員会委員に

      上田 廣一君    小見山 満君

      池田 隼啓君    谷口 将紀君

   及び 牧之内隆久君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について、趣旨の説明を求めます。総務大臣増田寛也君。

    〔国務大臣増田寛也君登壇〕

国務大臣(増田寛也君) 日本放送協会の平成二十年度の収支予算、事業計画及び資金計画につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この収支予算、事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、総務大臣の意見を付して国会に提出するものであります。

 まず、収支予算について、その概要を御説明申し上げます。

 一般勘定事業収支につきましては、事業収入が六千五百七十五億円、事業支出が六千四百七十二億円となっており、事業収支差金百二億円のうち債務償還充当を差し引いた収支過不足六十八億円については、財政安定のための繰越金に繰り入れることとしております。

 一般勘定資本収支につきましては、資本収入、資本支出がともに八百四億円となっております。また、建設費が七百六十九億円となっております。

 また、改正放送法に基づき、平成二十年度の収支予算から、新たに番組アーカイブ業務勘定を設けて、区分経理を実施することとしております。

 次に、事業計画につきましては、放送番組の一層の充実、地上デジタル放送の普及や改正放送法に基づく新たな国際放送による海外への情報発信の充実等が盛り込まれております。

 資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金の需要及び調達に関する計画を立てたものであります。

 これに付する総務大臣の意見につきましては、協会の平成二十年度の収支予算等について、これを着実に遂行すべきものと認めるが、本年一月、職員によるインサイダー取引が発覚したことは、報道機関としての信頼性を揺るがす重大な問題であって、まことに遺憾であり、協会においては、国民・視聴者からの信頼を早急に回復すべく、抜本的な再発防止策の推進に全力で取り組むとともに、職員の高い倫理意識の確立に努めることが必要であるとしております。あわせて、新たな不祥事が受信料収入に影響を及ぼす可能性も考慮し、一層の業務の効率化に努めることが必要であるとしております。

 その上で、収支予算等の実施に当たり、改正放送法を踏まえ、実効性あるガバナンスの実現に組織一体となって全力で取り組むこと、平成二十三年のデジタル放送への全面移行のために欠くことのできない中継局の整備や共同受信施設のデジタル放送対応等にできる限り前倒しをして取り組むこと、我が国の文化・産業等の発信を通じて我が国の対外イメージの向上等に資する外国人向けテレビ国際放送を実施することなど、特に配意すべき点を付記しております。

 以上が、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。これを許します。森本哲生君。

    〔森本哲生君登壇〕

森本哲生君 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件、すなわち日本放送協会の収支予算、事業計画及び資金計画について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、去る二月二十九日、総務委員会が委員長職権によって開催され、地財三法の審議が不十分であるにもかかわらず、強行採決という暴挙が再びなされたことについて強く抗議をいたします。

 一カ月前、憲政史上類を見ない、つなぎ法案の強行採決後、与党は議長あっせんにより法案を撤回し、予算について徹底した審議を行うことに合意したはずでした。しかしながら、再び強行採決の暴挙に出ました。

 権力的な国会運営、都合のよい法案のごり押しという旧態依然とした方法は、昨年夏以降のねじれ国会という新たな環境下では全く通用はいたしません。政府・与党は、このことをきちんと理解すべきであります。今後、公正で円滑な国会運営に配慮されることを強く要請する次第であります。

 それでは、NHK予算の質問に移ります。

 NHKの職員による横領や着服など、不祥事は後を絶ちません。ことしに入ってからも、記者が無免許運転の上スピード違反で検挙をされました。さらに一月、事もあろうに、報道にかかわる職員三人によるインサイダー取引が証券取引等監視委員会の指摘により発覚をいたしました。

 報道目的の情報を一般市民より先に入手できる地位を自己の利益のために悪用するという言語道断の事件であります。NHK職員は、報道に携わる者としてだけでなく、国民から広く受信料を徴収して運営される公共放送の職員として、より高い倫理意識を求められているだけに、この事件は通常のインサイダー取引より重大な問題なのであります。

 他の民放と比べても、NHKの相次ぐ不祥事から内部の統制がきいていないことを見てとれます。経営委員会が設置され、NHKのガバナンスを強化する取り組みが行われていますが、まずは、NHKの執行部の経営責任が問われなければなりません。不祥事を起こした当事者はもとより、NHKの経営陣も、受信料徴収のためまじめに働いている職員やすばらしい番組制作、すばらしい番組制作といえば、今私は、NHKの大河ドラマ「篤姫」を見せていただいております。制作費については意見が分かれるところであります。今和泉家を去る娘於一に母お幸の最後の言葉が今とても印象に残っております。

 一部を紹介いたしますと、一方を聞いてさたするな、人々の声に満遍なく虚心に耳を傾け、その人の身になってよくよく考えよ、以下は省略をいたしますが、このくだりは私自身にとって学ぶべきことも多いと感じております。心しなければならない問題でもあると思っております。(拍手)ありがとうございます。

 代表質問でありますから、このことはここでとめることにいたしますが、このすばらしい番組を制作するスタッフや、受信料を払い、また応援をされている国民の皆さんに対して、今回の不祥事は極めて申しわけないことと猛省すべきなのであります。

 こうした相次ぐ不祥事で、NHKのコンプライアンス体制が不十分なことはだれの目にも明らかになりましたが、総務大臣は、この一連の不祥事に接して、NHKの法令遵守の取り組みが効果を上げない理由はどこにあるとお考えでしょうか、お答えください。

 インサイダー事件が発覚したのはことしの一月十七日でありました。事件の深刻さにかんがみ、一月二十三日、民主党の総務部門会議において、事件の概要及び対応についてNHK経営委員会及び執行部からヒアリングを行いました。まず驚いたのが、経営委員会の対応の遅さであります。事件発覚からほぼ一週間を経過していたにもかかわらず、委員会も招集せず、執行部から説明を受けていないので多くは話せないという答えでありました。大臣、このような悠長さは、経営委員会自体に当事者意識、危機感が欠如しているからだとお思いにはなられませんでしょうか、お答えください。

 昨年の放送法改正で、常勤の委員を設けるなど経営委員会の体制が強化されました。それにもかかわらず、ガバナンスが効果を発揮しているとは到底思えません。その理由は、結局、経営委員会と執行部の役割が明確でないところにあるのではないか。大臣にお尋ねいたしますが、NHKの経営の最高責任者はだれか、また、執行部が経営委員会より権限があるのはどのような部分なのか、お答えください。

 次に、NHK受信料についてお尋ねをいたします。

 このように不祥事が続けば、せっかく持ち直してきた受信料収入への影響は免れないと考えます。今回のNHK予算は、インサイダー取引事件発覚以前に作成されたものでありますが、大臣は、多少の苦言を呈しているものの、そのまま追認をしておられます。不祥事による受信料支払い拒否の影響はどれぐらいと見込んでいるのか、大臣はNHKから聞いておられるのか。聞いておられるのであれば、その影響を考慮して、総務大臣は当然予算の見直しを求めるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか、お答えください。

 NHK受信料に関しては、一昨年六月の政府・与党合意に、受信料義務化の検討が盛り込まれていました。菅前総務大臣は、受信料の二割引き下げとセットで行うべしとも言われておりました。昨年の放送法改正では受信料の義務化は先送りされましたが、増田大臣も、菅前大臣が明言されていたように、受信料の二割値下げは義務化に向けてのメルクマールとお考えでしょうか、お答えをいただきたいと存じます。

 昨年九月、執行部は受信料の六・五%の値下げ案を次期経営計画に盛り込みましたが、経営委員会は内容が不十分だとして突き返されました。

 そこで、大臣に四点。一点目、六・五%の値下げ幅は不十分だとお考えか。二点目、新たに就任した福地会長は既に受信料値下げは難しいと発言されていることについて、どう思われているのか。三点目、経営委員会の対応をどう評価されておられるのか。四点目、経営委員会が受信料の値下げを盛り込んだ経営計画をみずから提案して議決することができるのでしょうか。以上、お答えください。

 次に、NHKの受信料契約収納に係るコストに関してお尋ねをいたします。

 平成十九年度の契約収納コストは、受信料収入の一二・四%に当たる七百六十一億円であり、民主党はたびたび、コストの比率が高過ぎると改善を求めてまいりました。NHKは、平成二十年度、口座振替、クレジットカード払いの増加、訪問集金の全廃によって、効果的、効率的な契約収納体制を構築するといたしておりますが、契約収納費として依然七百五十六・六億円を計上し、受信料収入に対する割合も一一・九%と、昨年とほとんど変わりはありません。これでは効率的になっているとは思えないのであります。これは経営委員会も議決した予算ですが、総務大臣、NHKが業務効率化に最大限取り組んでいるとお考えなのでありましょうか、お答えをお願いします。

 次に、政府の要請放送についてお尋ねいたします。

 放送法は、政府がNHKに対し、放送区域、放送事項を指定して国際放送を行うことなどを命令することができるとしてきました。昨年、政府は、ラジオ国際放送に対して、放送の具体的な内容まで指示を加えた、前例のない命令を下されました。昨年、放送法の改正により、命令放送は要請放送となりましたが、NHKには努力義務が課せられております。総務大臣にお尋ねいたしますが、要請放送は今までの命令放送とどう違っているのか、お答えください。

 民主党は、政府が個別具体的な内容まで関与することを防ぐために、「総務大臣は、前項の要請をする場合には、協会の放送番組の編集の自由に配慮しなければならない。」という条項を加えました。しかし、政府が三月十二日に実施した要請には、去年に引き続き、北朝鮮による日本人拉致事件に特に留意することという具体的内容が含まれています。もとより、拉致問題の一刻も早い解決に向けて政府が断固たる対応をとるべきということは言うまでもありませんが、だからといって、政府が放送事業者に対して圧力ともとれる行動をとることは厳に慎まなければなりません。

 総務大臣にお聞きします。

 民主党が加えた修正項目にかかわらず、なぜこのような具体的内容に踏み込むことができるのでしょうか、お答えください。また、総務大臣が要請するところの特に留意した放送とはどのような放送を指すのでしょうか、わかりやすく具体的に説明をお願いいたします。

 次に、国民にとっても身近な問題である地上デジタル放送への移行についてお尋ねをいたします。

 政府は、二〇一一年七月までにデジタル放送移行を完了し、アナログ放送を停止することといたしております。あと三年少々を残すばかりですが、デジタル放送中継地点の整備など、国内のデジタル放送カバー率を一〇〇%にするのは、国が最終的な責任を持って行うのでしょうか。また、今後、政府はデジタル移行までにどれぐらいの国費を投入する必要があると見込んでおられるのか、総務大臣にお答え願います。

 次は、受信環境についてお尋ねします。

 デジタル放送対応テレビは、全五千万世帯のうち一千四百万世帯に普及したところであります。デジタルチューナーつきテレビは現在十万円前後でありますが、低所得者や年金生活者にとっては大変な負担であります。簡易のデジタル放送受信機も、価格を抑えた製品を製造している会社は数えるほどであります。

 そこで、安価なデジタル放送の受信チューナーの開発普及が喫緊の課題となります。総務省は関係団体に働きかけるといたしておりますが、あと三年を残すだけとなった現在、どのような働きかけをされ、関係団体がどのような取り組みをされていると把握されておられるのか、お答え願います。

 最後に、放送と政治のあり方について一言申し上げます。

 自由民主党は、NHKと民放でつくる放送倫理・番組向上機構、いわゆるBPOの放送倫理検証委員会に対して、民放が放送した情報番組内の道路特定財源に関する内容について、事実誤認があり、政治的公平性を欠いているとして、調査要望の申し立てを提出されました。政治的公平性を欠いているかどうかについて政権を持つ与党が安易に申し立てすることは、報道の自由に対する牽制と受け取られても仕方がありません。この件については、三月十四日、BPOの放送倫理検証委員会において、放送基準に照らして明らかに問題があるわけではないとして、委員会の審議の対象にしないという結論が出されております。

 道路特定財源のずさんな使途が次々報道される中で、与党が余裕をなくされているのでしょうが、政治と報道の適切な緊張を保つことの重要性を十分理解した上で、責任政党として自覚を持った行動をとられることを強く要望して、代表質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣増田寛也君登壇〕

国務大臣(増田寛也君) 森本議員からの御質問に順次お答えを申し上げます。

 まず、NHKの法例遵守の取り組みについてお尋ねがございました。

 今回、インサイダー取引が発覚したことは、コンプライアンスの確立に向けたNHKのこれまでの取り組みが十分でなかったことを示すものであり、組織として徹底した取り組みができていなかったことがその理由と考えております。そのため、NHK予算に付した総務大臣の意見において、NHKにおいて、これまでの取り組みの実効性を十分検証した上で、抜本的な再発防止策の推進に全力で取り組む必要がある旨指摘しているところであります。

 次に、インサイダー事件に関する経営委員会の対応についてお尋ねがございました。

 経営委員会においては、事案の重大性にかんがみ、事件発覚一週間後の一月二十四日に緊急の臨時会合を開催し、経営委員会としての見解を公表するとともに、執行部に対し、第三者委員会の設置を求める等の申し入れを行ったと承知をしております。

 総務省としては、今後とも、経営委員会と執行部が緊密に連携して、国民・視聴者からの信頼回復に組織を上げて取り組んでいただきたいと考えております。

 次に、経営委員会と執行部の役割についてお尋ねがありました。

 経営委員会と執行部は、それぞれ異なる役割を担うものであり、経営委員会は、NHKの経営に関する基本方針等の意思決定及び役員の職務執行の監督を行う権限と責任を有するのに対し、会長は、NHKを代表し、経営委員会の定めるところに従い、具体的な業務執行を行う権限と責任を有しております。両者が適度な緊張関係のもと、緊密に連携しつつ、それぞれの役割を全うすることにより、全体として適正な業務運営が行われるものと考えております。

 なお、改正放送法においては、こうした両者の役割の一層の明確化を図ったところであります。

 次に、不祥事による受信料への影響についてお尋ねがございました。

 NHKからは、現時点では不祥事による大きな影響は出ていないと聞いております。ただし、今後の動向次第では受信料収入に影響を及ぼす可能性も排除できないことから、そのような可能性も考慮し、一層の業務の効率化に努めることが必要である旨、総務大臣の意見において指摘しているところであります。

 次に、受信料の義務化と値下げの関係についてお尋ねがございました。

 受信料の支払い義務化については、受信料の引き下げ及びNHKの経営改革とセットで考えるべきであり、この条件がそろわない状況で支払い義務化をすることは国民・視聴者の理解が得られない、このように考えております。

 次に、受信料の値下げについてお尋ねがございました。

 総務省としては、経営委員会と執行部が緊密に連携しつつ、組織を挙げて国民・視聴者からの信頼回復と徹底した経営改革に取り組み、その結果見込まれる増収等について、真に必要な経費を見きわめつつ、将来の受信料の減額を検討することを期待しております。

 福地会長の発言については、まず値下げありきではないとした上で、地上デジタル放送への投資等、今後検討すべき諸課題があるとの認識を示したものであって、必ずしも値下げ困難という趣旨ではない、このように聞いております。

 経営委員会の対応については、先般、次期経営計画の策定に向けて重要検討事項を取りまとめ、執行部に提示したところであり、その中で、まず抜本的な構造改革等を徹底的に検討した後、余る部分が出てくれば値下げに充当することを検討していくべきとしている、このように承知しております。

 また、経営委員会が経営計画を提案し議決できるかについては、放送法上、経営委員会がその議決事項についてみずから提案し議決することは排除されておりません。

 次に、NHKの業務の効率化についてお尋ねがございました。

 NHKは、その財源となる受信料を広く国民に負担いただいているものであり、業務の執行に当たり最大限の効率化を図ることが必要と考えております。そのため、総務大臣の意見において、訪問集金の廃止等を通じて契約収納業務の抜本的な効率化を進める等、業務の合理化、効率化を徹底すべき旨を指摘しているところであります。

 次に、要請放送と命令放送の相違点についてお尋ねがございました。

 放送法改正により、従来の「命ずる」の文言を「要請」に変更するとともに、応諾はNHKの努力義務としており、要請放送は、従来の命令放送と比較して、NHKの編集の自由により一層配慮した制度となっております。

 次に、国際放送の要請に当たって、具体的な内容に踏み込むことができるのかについてお尋ねがありました。

 前国会で御答弁申し上げたとおり、制度上、放送事項を具体的に指定して要請することもあり得るものと考えておりますが、今般の北朝鮮による日本人拉致問題に特に留意する旨の要請は、個別具体的な放送の内容や回数までを指定するものではなく、こうした点についてはNHKの判断にゆだねるものであります。

 次に、地上デジタル放送への移行についてお尋ねがありました。

 政府としては、二〇一一年のデジタル完全移行に当たっては、アナログ放送のすべての受信世帯にデジタル放送を送り届けることが必要と考えております。このため、総務省では、放送事業者や市町村と協力して、最大限の努力を行っております。

 地上デジタル放送への完全移行に向けて、平成二十年度予算案においては五十九・七億円を計上しているところであり、平成二十一年度以降の予算についても必要に応じて適切な予算の確保に努めてまいります。

 最後に、デジタル放送の受信チューナーについてお尋ねがありました。

 総務省では、低廉で簡易なチューナーについて、関係メーカー各社の取り組み促進を図るため、社団法人デジタル放送推進協会の協力を得て、簡易なチューナーの仕様ガイドラインを取りまとめ、昨年十二月に公表をいたしました。

 今後とも、総務省としては、関係府省等とも連携しつつ、メーカー等に対し、簡易なチューナーの開発普及への積極的な取り組みを要請していく予定でございます。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣高村正彦君。

    〔国務大臣高村正彦君登壇〕

国務大臣(高村正彦君) ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府は、日本国に合衆国軍隊を維持することに伴う経費の日本側による負担を図り、日本国にある合衆国軍隊の効果的な活動を確保するためこの協定を締結することにつき、アメリカ合衆国政府と協議しつつ、検討を行ってまいりました。

 その結果、最終的合意に達しましたので、平成二十年一月二十五日に東京で、先方シーファー駐日米国大使との間でこの協定に署名を行うに至った次第であります。

 この協定は、日本国が、日本国に雇用されて合衆国軍隊等のために労務に服する労働者に対する一定の給与の支払い及び合衆国軍隊等が公用のため調達する電気等の支払いに要する経費を負担すること、並びに日本国政府の要請に基づき、アメリカ合衆国が合衆国軍隊の行う訓練を他の施設及び区域を使用するよう変更する場合に、その変更に伴って追加的に必要となる経費を負担することを規定するとともに、アメリカ合衆国がこれらの経費の節約に一層努めること等を規定しております。

 この協定は、二〇一一年三月三十一日まで効力を有するものとされております。

 また、この協定は、現行の協定が本年三月三十一日まで効力を有することになっておりますので、できる限り速やかに発効する必要があります。

 この協定の締結は、日米安保条約の目的達成のため日本国に維持されている合衆国軍隊の効果的な活動に資するものであり、ひいては日米関係全般並びに我が国を含むアジア太平洋地域の平和及び安定に重要な意義を有するものと考えられます。

 以上が、この協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。近藤昭一君。

    〔近藤昭一君登壇〕

近藤昭一君 民主党の近藤昭一です。

 民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました在日米軍駐留経費負担特別協定について質問いたします。(拍手)

 さて、政府は一体いつまで説明のつかない税金の支出を続けるのでしょうか。今回この協定を審議するに当たり、改めてその予算の大きさに驚きました。

 現在の国会をねじれ国会と呼び、野党を非難する人がいます。しかし、日本の国会は二院制をとっており、時には二院が違う結論を出すことでチェック機能が働くのです。決してねじれと呼ぶべきではありません。政府がやっていることと国民の求めていることの違いこそがねじれであると思います。道路特定財源の問題もしかり、この特別協定の問題もしかりであります。

 さて、本題に入ります。

 日米地位協定第二十四条は、米軍駐留経費に関し、借地料など施設提供に伴う経費のみ日本が、それ以外はすべて米国が負担すると規定しています。しかし、一九七八年、円高・ドル安傾向が強まる中、米側の要求に応じ、思いやりを理由として、規定では負担する必要のない駐留軍労働者の人件費の一部、六十二億円の支出を決定いたしました。翌年には施設整備費なども支払い対象に追加し、予算は増加の一途をたどり、一九八六年には八百億円を超える額に達しました。

 しかしながら、米側のさらなる経費負担要求は続き、支払い根拠に困った日本政府は、一九八七年に初めて在日米軍駐留経費負担特別協定を締結しました。その際、政府は、暫定的、限定的、特例的な措置であり、期限を五年と定めるとして国会の承認を得たのであります。しかし、この暫定的措置は恒常化し、その予算額は約千四百億円前後に高どまりをしております。

 二〇〇八年度予算案を見ると、特別協定に基づく千四百十六億円を含めて二千八十三億円もの額が在日米軍駐留経費負担、いわゆる思いやり予算として計上されています。

 米軍の駐留を受け入れている他国と比較しても、この額は突出をしています。二〇〇四年の米国防総省の同盟国の貢献に関する報告書、これを見ても日本は断トツの一位であり、その額、約四十四億一千万ドルで、その負担割合は七四・五%、第二位のドイツは十五億六千万ドル、三二・六%、第三位の韓国は八億四千万ドル、四〇%となっています。また、同報告書に基づく米軍兵士一人当たりの経費負担額では、日本は約十万六千ドル、約一千三百万円と、ドイツ、韓国と比べても約五倍と飛び抜けて高い金額になっています。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 今回の新協定をめぐっては、経費の効率性について国民の支持を得る必要があることを踏まえ、労務費に関して、負担の減額を求めて交渉の場において鋭意協議したとされています。しかしながら、交渉の成果は目標からほど遠いものでした。この厳しい財政状況の中、一体、この結果をどう受けとめて、どうしていくつもりか、外務大臣の御所見をお聞きいたします。

 次に、提供施設整備についてお尋ねしたいと思います。

 思いやり予算が初めて計上された一九七八年の翌年には、施設整備費用もまたその対象に追加されました。これは、それまでの政府解釈を百八十度転換させるものでした。その後、至れり尽くせりの超豪華施設が全国でつくられるようになりました。

 横須賀海軍基地では、五階建て、総面積約二万八千平方メートル、総工費七十八億円の艦隊レクリエーションセンターが日本の負担で建設され、二十四時間オープンのフィットネスジム、バスケットボールコート、スナックバーなどを備えたこの施設は、米本土にもないような豪華な施設になっています。他の在日米軍基地でも同様で、超大型ショッピングセンター、大型体育館、学校などが続々と建設されました。

 家族住宅に目を向けますと、一九七九年から現在までの間、三沢飛行場で二千三十三戸、池子弾薬庫で八百五十四戸、岩国飛行場で七百三十二戸など、全国の米軍基地で総計一万一千二百九十五戸が建設されています。一戸当たりの費用を池子弾薬庫を例に計算してみますと、約七千八百万円にもなります。この金額には地代が含まれていません。ちなみに、その床面積は百五十七平方メートルに上り、二階には四つの寝室があるという、平均的日本人の暮らしから見れば夢のような超高級住宅であります。

 また、日本国憲法は宗教施設への公金支出を禁じています。しかしながら、キャンプ・コートニーには三・六億円を費やして教会が建てられました。

 こうした支出は妥当と言えるのでしょうか。外務大臣、御所見をお聞かせください。

 次に、駐留軍等労働者に対する労務費についてお尋ねしたいと思います。

 労働者の雇用形態の中に諸機関労務協約というものがあり、現在、六千二百七十八人がこの労務協約のもと、諸機関において勤務しています。これはどんな労務かというと、米海軍横須賀基地就職ガイドには、「個人に娯楽や余暇、フードサービスなどを提供し、その収益で運営する「独立採算制」の職場。」とわかりやすく説明されており、その職種には、カウンターアテンダント、バーテンダー、ウエーター、ゴルフコース整備員など幅広いものがあります。

 独立採算制の組織においては収益に基づいた経営が行われるべきで、このような諸機関の労務費を負担することについて、どのような見解を持っておられるのか。政府の説明でも、この件に関しては、米側との交渉において重ねて問題提起したとされています。一体どのような提起を行ったのか、また、今後どのように取り組んでいかれるのか、お聞かせください。

 昨年十月の財政制度審議会においても、駐留米軍兵士数と基地労働者数の比率が他国に比べて高いことが指摘されています。日本は、百人の米軍人に対し、七十六人の労働者が雇用されています。ちなみに、韓国は四十七人、イタリアは四十三人、ドイツは三十一人であります。圧倒的に多いこの比率をどう考えるのか、外務大臣の御所見をお伺いいたします。

 また、職種別一覧を見ると、相当数の労働者が弾薬取扱員、弾薬作業員、兵器修理工、兵器作業員などの業務についていることがわかります。防衛省が雇用し給与の支払いを行っている労働者が米軍の兵器及び弾薬を扱っていることに関し、防衛大臣はどのようにお考えか、お聞かせください。

 次に、光熱水料についてお尋ねいたします。

 韓国は施設整備費などを日本同様負担していますが、光熱水料は負担していません。日本だけが負担をしています。今回、この光熱水料に関しても、かなり強気の姿勢を持って日本は交渉に臨んだと伝えられています。

 そこで、外務大臣にお尋ねします。

 日本の交渉団は、どのような方針を持って光熱水料削減に臨んだのか。そして、削減額は三年間で八億円とわずかな額になってしまいましたが、これをどのように考えておられるのか。

 米軍再編に伴う米軍基地移転経費の分担の問題についてお尋ねします。

 少し前の話になりますが、二〇〇六年四月、在日米軍再編協議の米側担当者であるローレス国防次官補が、再編計画の実施に要する費用の総額を今後八年間で三兆円と発言しました。

 グアムへの海兵隊移転について、日米が応分の負担をするという立場から協議が行われ、二〇〇六年四月、日米防衛首脳会談において、総経費百二・七億ドルのうち日本側は六十・九億ドル、約六千九十億円でありました。米側は四十一・八億ドルをそれぞれ分担することとなりました。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 金額やスキームに関して今後変更があり得るとの説明を受けましたが、グアム移転経費に関し、二年前提示された金額は現時点でも妥当な数字で、日本側の負担は適正であると考えているのか、教えてください。

 最後に、日本国内の現状に目を向けてまいりましょう。

 国民生活に密着した緊急性の高い政策課題が山積みしています。

 後期高齢者医療制度が創設されました。今後、七十五歳以上の高齢者の年金から保険料が天引き徴収されるようになります。しかし、約八百億円あれば、高齢者に保険料負担を求める必要はなくなります。

 全国の待機児童数は約一万八千人。約六百八十億円あれば、この問題は十分解消できます。

 救急医療体制拡充のためには、年間四百億円の予算で救急医二千人を確保することができます。また、約一千億円で周産期医療のための救急医療センターを各都道府県に建設することができます。

 特別養護老人ホームへの入居待機者数は現在約四十万人、この問題は特に大変です。しかし、初年度約七千四百億円、その後は年間約五千億円の負担でこれを解消していくことができます。

 在日米軍駐留関連経費の総額は約六千億円。貴重な税金であります。使い道はしっかり見定め、説明できない使い方はしない。国民の要望とねじれた使い方はしないということが重要であります。在日駐留米軍だけが安泰で、日本国民の安心、安定が保たれないような社会をつくってはなりません。

 国際協調の時代、国家公務員約六十一万人のうち約二十七万人を占める自衛隊、さらに、日本が経費を負担してサポートする米軍約三万人はやはり多過ぎるのではないでしょうか。

 雇用という面では、基地に依存した形ではなく、地域に密着した未来志向、平和志向を目指すべきと思います。

 武力に頼った外交は、今、世界の各地で破綻をしています。特別協定のみならず、日米地位協定、そして世界の平和と発展について国会の場で議論し、そして米国と意見を率直に交わし合う、それが今求められているのではないでしょうか。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣高村正彦君登壇〕

国務大臣(高村正彦君) まず、新たな特別協定の交渉の結果についてのお尋ねですが、新たな特別協定については、政府としては、厳しい財政事情の中で、同経費負担についても節約合理化の必要があり、経費の効率性について国民の支持を得る必要があることを踏まえ、米側との交渉を行ってまいりました。その結果、過去の協定の単純延長ではなく、実際に一定の削減を達成することができ、また、包括的見直しを行うことでも一致しており、その意味で、政府として適切な対応をとったと考えております。

 次に、提供施設整備についてのお尋ねがありました。

 提供施設整備は、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を確保するとの観点から、従来から、日米地位協定の範囲内で、米側の希望を聴取するとともに、日米安保条約の目的達成との関係、我が国の財政負担との関係、社会経済的影響等を総合的に勘案の上、個々の施設ごとに我が国の自主的判断により適切に措置してきており、支出は妥当と考えております。

 次に、いわゆる十五条諸機関についてのお尋ねがありました。

 日本側がこれら十五条諸機関の労働者の給与を負担することは、同諸機関の経営基盤を安定させ、米軍人等の福祉、士気及び能率の維持の確保に寄与するものであります。これは、在日米軍の効果的な活動の確保という新たな特別協定の目的に合致するものであり、ひいては、これら労働者の雇用の安定にも資するものであります。

 米側との交渉の経緯についてでありますが、今回の交渉を通じ、十五条諸機関を含め、労務費の一層の節約合理化につき米側に強く求めました。日米間のぎりぎりの交渉の結果として、今般得られた合意に達した経緯につき御理解を得たいと考えております。

 次に、駐留米軍人数に対する駐留軍労働者の比率についてお尋ねがありました。

 一般論として申し上げれば、各国における駐留軍労働者の数や接受国側の負担の割合を含め、米軍駐留経費負担のあり方は、当該各国を取り巻く安全保障環境等の種々の要因を総合的に勘案して負担されているものであり、一概に数字のみを取り上げて多い少ないを論ずることは困難であります。

 次に、交渉における光熱水料の扱いについてのお尋ねがありました。

 既に答弁申し上げたとおり、厳しい財政事情の中で、同経費負担についても節約合理化の必要があることを踏まえ、米側との交渉を行った結果、双方がぎりぎり受け入れられる削減幅として、二年目及び三年目の負担額を平成十九年度の予算額から一・五%削減して約二百四十九億円に固定することといたしました。

 我が方としては、エネルギー単価のいかんにかかわらず日本側負担が平成十九年度予算額の水準よりも削減されること、また、昨今のエネルギー価格の上昇基調にかんがみれば、その実質的負担は御指摘の三年間で八億円よりもさらに軽減される見込みがあるとの利点があることから、このように合意した次第でございます。

 最後に、在沖海兵隊のグアム移転経費についてのお尋ねがありました。

 経費の日米間の分担については、平成十八年五月の2プラス2において、日米間で最終的に合意に達したものであります。二十八億ドルの直接的な財政支援を含む六十・九億ドルという我が国の支援により、在日米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍施設・区域が集中する沖縄の負担軽減が実現できるものであり、現時点でも引き続き適切なものであると考えております。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) 近藤昭一議員にお答えをいたします。

 駐留軍等労働者の業務についてのお尋ねをいただきました。

 駐留軍等労働者にはさまざまな職務がございますが、その中には、御指摘のように、在日米軍の部隊や整備補給施設に勤務し、艦艇、航空機、車両、武器弾薬等の整備補給業務に従事している者もおります。このような駐留軍等労働者は、在日米軍基地の活動を支え、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保に寄与しているもの、このように考えておる次第でございます。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費特別協定について質問します。(拍手)

 まず初めに、相次ぐ米軍犯罪についてであります。

 先月十日、沖縄県北谷町で起こった米海兵隊員による女子中学生暴行事件に対し、深い悲しみと怒りの声が上がっています。言葉巧みに少女をだまし、暴行するという許しがたい米兵の蛮行に、満身の怒りを込めて抗議するものです。少女は告訴を取り下げ、米兵は釈放されました。少女の思いを受けとめ、今、政治が何をするかが問われています。

 一九五五年、沖縄本島中部にある旧石川市で、米兵による少女暴行殺害事件が起きました。由美子ちゃん事件です。市内の幼稚園に通っていた当時六歳の永山由美子ちゃんが、米兵に車で拉致され、嘉手納基地内で何度も暴行されたあげくに殺されました。由美子ちゃんは、米軍のごみ捨て場で、唇をかみしめ、右手に数本の雑草を握り締めて死んでいるのを発見されました。米軍の直接占領下で、沖縄県民は人権をじゅうりんされ、虫けらのように扱われたのです。

 七二年、沖縄は、日本国憲法のもとへ復帰を果たしました。しかし、問題は全く解決されませんでした。日米安保体制のもと、基地の島沖縄の現実は何も変わらなかったからです。そして九五年、米海兵隊員三名が小学校六年生の少女を車で拉致し、暴行するという事件が起きたのです。

 こうした事件は氷山の一角にすぎません。戦後六十三年間、米軍犯罪は繰り返されてきたのです。政府はこの事実をどう認識しているのですか。

 政府はこれまで、事件が起きるたびに、綱紀粛正、再発防止を繰り返してきました。しかし、明らかになっているだけでも、全国で毎年百件近い米軍犯罪が起きているのです。今回も、日米両政府が再発防止を言い出したやさきから、米兵による女性強姦致傷事件、民家や事務所への侵入などが相次いでいるではありませんか。基地ある限り米軍犯罪はなくならない、政府はこの事実を認めるべきではありませんか。フェンスの中で人殺しの訓練を行う米兵に、フェンスの外で人権を守らせることなどできないのであります。

 女子中学生暴行事件を受け、沖縄県議会と県内四十一市町村すべての議会が抗議決議を可決しました。今月二十三日には、事件が起こった北谷町で、米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会が開かれます。政府はこの声を正面から受けとめ、地位協定の抜本的見直しと基地の縮小、撤去に踏み出すべきではありませんか。

 米軍基地の重圧に苦しんできた沖縄で、ジュゴンの住む美しい海を埋め立て、新たな米軍基地を建設するなど、もってのほかと言わなければなりません。防衛省は先週から環境アセス調査に着手しましたが、専門家もアセス史上最悪の事例として厳しく指摘しています。基地建設と環境保護は両立しないのです。名護市辺野古への新基地建設はきっぱり断念し、普天間基地は直ちに閉鎖、撤去すべきです。答弁を求めます。

 次に、特別協定です。

 長期にわたる米軍駐留を支えてきたのが、日本政府による財政負担です。政府が思いやりと称して駐留経費の負担を開始してから三十年です。

 そもそも、日米地位協定二十四条は、米軍の維持経費は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と規定しています。米軍のさまざまな特権を定めた地位協定からいっても、日本に負担義務はないのです。

 ところが、政府は、一九七八年、アメリカの費用分担要求にこたえ、基地従業員の福利費などの負担に踏み切り、翌年からは、隊舎や家族住宅などの施設整備を始めました。その後、一九八七年、急激な円高と基地従業員の雇用維持を口実に、地位協定の解釈からも説明のつかない手当の負担に踏み切るために、本特別協定が締結されました。

 しかも、その内容は、給与本体、光熱水料、訓練移転へと拡大され、米軍人軍属の給与以外の駐留経費は、ほとんどすべてが日本側負担になっています。予算額は当初の六十二億円から今や毎年二千億円、七八年以降の負担総額は五兆円を超え、アメリカからは最も気前のいい国と評されてきました。地位協定の原則がありながら、三十年にわたる世界に例のない負担を国民にどう説明するのですか。

 政府は、特別協定締結当時、アメリカの財政赤字を最大の理由とし、暫定的、限定的、特例的な措置だと説明しました。我が国自身が巨額の財政赤字を抱え、国民生活の予算を次から次へ削っているにもかかわらず、どうしてこのような負担を継続するのですか。政府の財政制度審議会ですら、日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変わった、従来どおりの負担の継続は適当ではないと指摘しているではありませんか。

 ところが、昨年十一月、訪米した福田総理は、同盟へのコミットは揺るぎないと述べているだけで、減額要求さえしませんでした。日米安保条約が続く限り、駐留経費の負担を継続するというのが政府の立場なのですか。思いやり予算と特別協定はきっぱり廃止すべきではありませんか。

 政府の財政支援は、思いやり予算にとどまりません。九五年の少女暴行事件以来、米軍基地のたらい回しを進めるためのSACO関連経費を支出し、さらには、米軍再編の名による米国領グアムでの米軍基地建設まで負担しようとしています。

 しかも、政府は、三兆円とも言われる再編経費について、いまだにそのおおよその額すら示していません。グアムの米軍基地建設や嘉手納基地以南の土地返還などの具体的内容は、今も全く不明確なままです。この際、再編計画の全容と経費総額を明らかにするよう政府に求めます。

 米軍再編は基地負担を軽減するというのが、政府の説明でした。ところが、嘉手納基地では、新たにPAC3ミサイルの配備やパラシュート降下訓練が強行されました。今も大量の外来機、空母艦載機が飛来して、轟音をまき散らしながら訓練を行っています。キャンプ・ハンセンでは、再編合意にもなかった米陸軍の射撃場建設が始まり、昨日、陸上自衛隊による共同使用が開始されました。負担は増すばかりというのが、住民の声です。基地負担の軽減など、全くのまやかしではありませんか。

 米軍再編の名による辺野古への新基地建設やグアムの新たな戦略拠点づくり、座間、横田での日米戦闘司令部の一体化、横須賀への原子力空母の配備、岩国への空母艦載機の移駐、全国への日米共同訓練の拡大などは、米軍と自衛隊が一体となって海外で戦争できる態勢づくりにほかなりません。

 政府は、こうした危険きわまりない計画の受け入れを交付金という金の力で迫っているのであります。基地被害に苦しむ自治体、住民を愚弄するものであり、断じて容認できません。このようなやり方と再編計画の撤回を要求します。

 最後に、今月二十日、イラク戦争開始から五年を迎えます。イラクでは、今も米軍と武装勢力の間で戦闘が続いています。米国はイラクを自由にすると言った、今あるのは人を殺す自由だけ、イラク国民の声を政府は受けとめるべきです。

 憲法九条を守り、イラクからもインド洋からも自衛隊を直ちに撤退させるよう要求し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 赤嶺議員から六問いただきました。

 まず、過去に米軍人等による犯罪が繰り返されていることについてのお尋ねでございますけれども、アジア太平洋地域には依然として不安定、不確実な状況が続いており、引き続き米軍が沖縄に駐留することが必要であります。

 他方、米軍人等による事件、事故等が発生していることは極めて遺憾なことでございます。米軍関係者による事件が繰り返されないよう、より実効的かつ包括的な再発防止策の実施に取り組んでまいりたいと存じます。

 次に、日米地位協定の改正及び米軍施設・区域の縮小、撤去についてのお尋ねがございました。

 日米地位協定につきましては、政府としては、その時々の問題について運用を改善することにより、機敏に対応していくことが合理的であるという考えでございまして、これまでも改善に努めてきたところであります。さらに、今後とも、目に見える運用改善の成果を一歩一歩積み上げていくよう、最大限努力していく考えであります。

 また、これまでも、SACO合意等により沖縄の施設・区域の整理、統合、縮小に努めてきたところであります。今般の米軍再編におきましても、米海兵隊員の約八千人のグアム移転、嘉手納以南の土地返還、訓練の移転等を着実に進め、地元の負担軽減を図ってまいりたいと思います。

 次に、普天間飛行場及び代替施設についてのお尋ねがございました。

 普天間飛行場については、沖縄県民の負担軽減を図るためにも、一日も早くその移設、返還を実現する必要があると考えております。

 現在の代替施設案は、自然環境にも留意して検討し、地元の名護市等との合意も踏まえましてアメリカ側と合意をしたものでございます。政府としては、今後とも、環境影響評価の手続を適切に進め、環境保護の観点にも十分配慮しつつ、普天間飛行場の移設、返還を着実に進めてまいります。

 次に、在日米軍駐留経費負担の継続についてのお尋ねがございました。

 政府としては、現行特別協定終了後の在日米軍駐留経費負担のあり方についても、日米両国を取り巻く現下の諸情勢を総合的に勘案してまいりました。その上で、これまでの特別協定と同様に、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則は原則として維持しつつ、暫定的、限定的、特例的な措置を定めるものとして、新たな特別協定を締結することが適当であるとの判断を改めて行ったものでございます。

 次に、日米安保条約と在日米軍駐留経費負担についてのお尋ねがありました。

 アジア太平洋地域において依然として不安定で不確実な状況が存在している中で、在日米軍駐留経費負担は、我が国の安全保障にとって不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしております。政府としては、厳しい財政事情にも配慮しつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のために、在日米軍駐留経費負担につき今後とも適切に対応していく考えでございます。

 最後に、イラク及びインド洋からの自衛隊の撤退についてのお尋ねがございました。

 まず、イラク特措法に基づく航空自衛隊による輸送活動の終了の条件について一概に申し上げることは困難ではございますが、あえて申し上げれば、イラクの政治状況、現地の治安状況、国連及び多国籍軍の活動や構成の変化等の諸事情をよく見きわめつつ、イラクの復興の進展状況等を勘案して、我が国として自主的な判断をしていく考えでございます。

 また、補給支援特措法に基づくインド洋における海上自衛隊による補給支援活動の終了の条件についてでありますが、一概に申し上げることはこれまた困難でございますが、あえて申し上げますれば、アルカイダ等の活動状況、国際社会のテロとの闘いへの取り組みの推移、我が国として果たすべき国際的な役割等、種々の要素を総合的に勘案して、これまた自主的に判断をしていく考えでございます。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣高村正彦君登壇〕

国務大臣(高村正彦君) まず、米軍の施設・区域がある限り米軍犯罪はなくならないのではないかとのお尋ねでありますが、政府としては、累次にわたり綱紀粛正、再発防止を求めてきたにもかかわらず、先般、米軍関係者による事件が続いて発生したことは、極めて遺憾であると考えております。

 米軍関係者によるこのような事件が繰り返されないようにするために重要なことは、より実効的かつ包括的な再発防止策に取り組むことであります。このため、政府は、二月二十二日に、再発防止に係る当面の措置を発表したところであり、引き続き日米間で協力し、再発防止策を着実かつ継続的に実施していく考えでございます。

 次に、日米地位協定の改正及び米軍施設・区域の縮小、撤去についてお尋ねがありました。

 日米地位協定については、政府としては、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるとの考えのもと、これまでも種々の分野で実績を積み重ねてきております。今後とも、目に見える運用改善の成果を一歩一歩積み上げていくよう、最大限努力していく考えであります。

 また、今般の米軍再編は、在日米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減を実現するものであり、今後とも、沖縄などの地元の切実な声によく耳を傾けて、米軍再編を着実に進めてまいります。

 次に、米軍駐留経費負担についてお尋ねがありました。

 新たな特別協定は、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則それ自体は維持しつつ、一定の期間に限り、特定の経費に限って負担することとするものであり、日米地位協定の特則であります。

 在日米軍駐留経費負担は、アジア太平洋地域において依然として不安定で不確実な状況が存在している中で、我が国の安全保障にとって不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしております。この点にかんがみ、政府として、新たな特別協定に基づき一定の負担を行うこととしたものであります。

 次に、在日米軍駐留経費負担の継続についてお尋ねがありました。

 政府としては、現行特別協定終了後の在日米軍駐留経費負担のあり方についても、これまでの特別協定と同様に、日米両国を取り巻く現下の諸情勢を総合的に勘案の上、日米地位協定第二十四条に定める経費負担の原則は原則として維持しつつ、暫定的、限定的、特例的な措置を定めるものとして、新たな特別協定を締結することが適当であるとの判断を改めて行ったものであります。

 なお、新たな特別協定では、光熱費について、日本側負担を平成十九年度予算額の水準から削減することで日米間の意見の一致を見ております。

 最後に、日米安保条約と在日米軍駐留経費負担についてお尋ねがありました。

 アジア太平洋地域において依然として不安定で不確実な状況が存在している中で、在日米軍駐留経費負担は、我が国の安全保障にとって不可欠な日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重要な役割を果たしております。政府としては、厳しい財政事情に十分配慮しつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のため、在日米軍駐留経費負担につき今後とも適切に対応していく考えであります。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) まず、普天間飛行場及び代替施設についてのお尋ねをいただきました。

 普天間飛行場につきましては、沖縄県民の負担軽減を図りますためにも、一日も早くその移設、返還を実現する必要があると考えております。

 現在の代替施設案は、自然環境にも十分留意して検討し、地元の名護市などとの合意を踏まえて米側と合意をしたものでございます。政府といたしましては、今後とも、環境影響評価の手続を適切に進め、環境保護の観点にも十分配慮しつつ、普天間飛行場の移設、返還を着実に進めてまいります。

 次に、米軍再編計画の全容と経費総額についてのお尋ねをいただきました。

 在沖米海兵隊のグアム移転や嘉手納飛行場以南の土地返還につきましては、その詳細な計画を現在日米間で検討しておるところでございます。

 そのような要素もあり、米軍再編に伴う日本側の経費負担についても申し上げる段階ではございませんが、今後、厳しい財政事情を踏まえまして鋭意検討を進め、所要の経費を精査いたしてまいります。

 次に、沖縄におけるPAC3ミサイルの配備やパラシュート訓練等についてのお尋ねをいただきました。

 御指摘のPAC3の配備は、弾道ミサイルの脅威から我が国、特に沖縄を防護する純粋に防御的なものであり、パラシュート降下訓練は、SACO最終報告に沿って、伊江島補助飛行場において実施してきていますが、天候面での制約などにより訓練所要を満たさない米軍兵士が多数生じていることから、これら訓練を行う喫緊の必要性のある救難隊員により例外的に行われたものでございます。また、キャンプ・ハンセンで米軍が工事を進めておりますレンジ3の改修は、既存の射撃場を使用して行っていた小銃による射撃訓練をより安全で効率的かつ効果的に行うため、訓練の統合、改善を行うものでございます。

 今般の米軍再編は、在日米軍の抑止力を維持しつつ、普天間飛行場の早期移設、返還、在沖米海兵隊のグアムへの移転、嘉手納飛行場以南の土地の返還などを通じ、沖縄の負担軽減を実現するものでございます。防衛省としては、沖縄など地元の切実なお声によく耳を傾け、関係省庁と連携しつつ、地域の振興などに全力を挙げて取り組みながら、米軍再編を着実に進めてまいります。

 次に、再編交付金制度と米軍再編計画の撤回についてのお尋ねでございます。

 再編交付金は、米軍再編による負担を受け入れる地元市町村の我が国の平和と安全への貢献に対し国としてこたえ、もって米軍再編の円滑かつ確実な実施に資することを目的とするものでございます。

 在日米軍の再編は、抑止力を維持しつつ、地元の負担の軽減を図るものであり、引き続き、地元のお声によく耳を傾け、再編交付金を含めた地域振興策などについても誠意を持って取り組みながら、日米合意に従って米軍再編を着実に進めてまいります。

 最後に、イラク及びインド洋での活動から自衛隊を撤退させるべきとのお尋ねをいただきました。

 現在、イラクにおきましては、イラク国民による国家再建のための自主的な努力が行われており、国際社会はかかるイラク自身の努力を支援してきております。イラクは今後数年間が国づくりのかぎを握る重要な時期であり、現在我が国が実施しております航空自衛隊機による輸送支援は、イラク政府や国連からもその活動継続への大きな期待が寄せられておるところでございます。

 また、テロとの闘いは国際社会が継続して取り組まなければならない最重要課題の一つであり、インド洋における海上自衛隊による補給支援活動は、我が国に最もふさわしい形でのテロとの闘いに対する活動と考えております。本年一月、補給支援特措法が成立したことを受け、二月から海上自衛隊補給艦が活動を再開しておりますが、この活動につきましても、海上阻止活動を実施しているパキスタン、米国を初め、各国から高く評価をされておるところでございます。

 イラク特措法に基づく航空自衛隊の活動と補給支援特措法に基づきます海上自衛隊の活動は、資源の多くを中東地域に依存する我が国の国益にかかわるものであるとともに、国際社会に対して我が国が果たすべき責任を履行するものであります。現時点におきまして、これらの法律に基づく自衛隊の活動を終了させることは考えておりません。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 照屋寛徳君。

    〔照屋寛徳君登壇〕

照屋寛徳君 照屋寛徳です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました在日米軍駐留経費負担特別協定について質問を行います。(拍手)

 去る二月十日、沖縄で米海兵隊員による極悪非道な少女暴行事件が発生しました。その後も、住居侵入、現住建造物損壊、タクシー強盗致傷事件などの事件が多発をしております。今回の少女暴行事件は、被害者の告訴取り下げにより容疑者米兵が不起訴になったとはいえ、少女の尊厳と人権をじゅうりんする犯罪が惹起された事実は消え去るものではありません。そっとしておいてほしいという真情を吐露して、告訴を取り下げざるを得ない羽目に追い込まれた少女や家族の思いを痛苦に受けとめなければなりません。この事件に対する政府の対応と官房長官の認識を伺います。

 事件、事故が発生するたびに、日米両政府は遺憾の意を表明し、綱紀粛正、再発防止を唱えますが、何ら実効性がなく、沖縄県民にとっては手あかのついた陳腐な言葉にすぎません。根本的な解決のためには、基地撤去以外にあり得ません。政府は、事件、事故の具体的で実効性ある再発防止策をどのように講じていくのか、官房長官の決意を伺います。

 今回の事件で浮かび上がったのが、米軍人軍属等の基地外居住問題であります。政府は、今後、基地外居住軍人軍属等の人数について、通告制度を設けることを明らかにしました。全くもって不十分です。社民党は、基地外に居住する米軍人軍属等の氏名、階級、所属部隊、我が国における住所もしくは居所などを含めて、通告、登録する制度に日米地位協定を具体的に改定すべきだと提唱しておりますが、外務大臣の考えを伺います。

 私は、日米地位協定は、主権と人権と環境の視点から改定すべきと考えます。現行協定は、不平等、不公平であり、米軍に対して多くの特権免除を与えております。運用改善ではない、日米地位協定の全面的改定について、官房長官の認識を伺います。

 在日米軍駐留経費の日本側負担、いわゆる思いやり予算に関する新特別協定の締結は、大幅な削減を目指した政府の方針が腰砕けに終わり、抜本的な見直しからはほど遠い内容となっております。深刻な格差拡大社会の中にあって、国民生活は崩壊寸前であります。大事なのは、教育、雇用、医療や社会保障など、国民への思いやりのある政治の実現であって、米軍への思いやりではありません。

 国民の血税である我が国政府の予算で建てられた沖縄における米軍基地内住宅は、約二割が空き家であることが判明しました。政府は、これまでに幾らの予算を投じ、何戸の米軍用住宅を在日米軍のためにつくったのか、防衛大臣にお尋ねします。

 新特別協定では、駐留軍労働者の労務費負担のあり方がさまざまに論じられております。MLC、基本労務契約において、駐留軍労働者の法的雇用主は日本政府であります。防衛大臣は、駐留軍労働者の法的雇用主が日本政府であるという認識をお持ちでしょうか。法的雇用主として、駐留軍労働者のために何をなすべきだとお考えでしょうか、お答えください。

 駐留軍労働者にも我が国の労働関係法令が適用されることは明々白々であります。ところが、使用者たる米軍は、労働基準法や労働安全衛生法などを守っておりません。防衛大臣は、その実態をどのように把握し、米軍に遵守を迫っていくつもりでしょうか、考えをお聞かせください。

 二〇〇八年度予算案に占める在日米軍関係経費の日本側負担は、総額で約六千一百七十億円に上ります。その内訳は、在日米軍の駐留に必要な総コスト約五千七百九十九億円、SACO関係経費約百八十億円、米軍再編関係経費約百九十一億円となっておりますが、このうち千四百三十八億円が特別協定による負担となっております。日本の駐留経費負担は、米軍が駐留しているすべての国の負担総計分を上回る金額です。日本だけが突出をしています。我が国の財政事情が厳しき折、国民の税金を使って米軍に対する思いやりの巨額な財政支出を続ける必要など全くありません。

 また、米軍再編関係経費は、今後、負担規模が三兆円に上ると予測されており、今回の特別協定における訓練移転費や光熱水費等の節約努力規定も、その実効性は担保がありません。防衛大臣は、今後の包括的見直しに言及しておりますが、包括的見直しのための日米両政府による協議機関の設置のめどづけはできたのでしょうか、お尋ねします。

 私が節約努力規定を設けても実効性がないと断言するのは、根拠があります。現行地位協定十八条五項では、合衆国のみが責任を有する場合、日本側二五%、米国側が七五%を費用負担する旨、規定されております。ところが、現実には全く履行されておりません。

 外務大臣、嘉手納、厚木、横田基地などの騒音訴訟で、米国が費用負担すべき確定事件は何件あり、負担すべき総額は幾らか。そのうち、米国が支払い済みの金額は幾らか、明確にお答えください。

 以上、新特別協定に関連する問題点の幾つかをただしてまいりました。米軍に対して日米地位協定上の義務を超えた思いやりを続ける必要性はなく、我が国の財政にそのような余力はありません。今こそ、政治の責任で根本的な再検討を始めるべきであるということを強く申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 照屋議員から三問御質問いただきました。

 まず、先般沖縄で発生した米軍人による女子中学生暴行被疑事案に関するお尋ねでございました。

 政府としては、かかる事案の発生は極めて遺憾であると考えております。また、被害に遭われた少女や御家族の思いを政府としても重く受けとめているところでございます。本件事案は、告訴が取り下げられたため不起訴処分ということになりましたけれども、政府としては、極めて遺憾であるという認識に何ら変わるところはございません。

 次に、在日米軍による事件、事故の再発防止策についてお尋ねがございました。

 米軍関係者によるこのような事件が繰り返されないようにするために重要なことは、より実効的かつ包括的な再発防止策に取り組むことであります。

 このため、政府は、二月二十二日に再発防止に係る当面の措置を発表したところであります。細かい内容は省略をいたしますけれども、例えば、米軍の外出規制措置でありますところのリバティーカード制度の見直しであるとか、あるいは希望する自治体への防犯カメラの設置とか、米軍教育プログラムの充実、あるいは共同パトロールの導入の検討などでございます。こうしたことを引き続き日米間で協力して検討し、そして、再発防止策を着実かつ継続的に実施していく考えでございます。

 最後に、日米地位協定の改正についてのお尋ねがございました。

 日米地位協定につきましては、政府としては、その時々の問題について運用の改善により機敏に対応していくことが合理的であるという考え方のもと、これまでも種々の分野で実績を積み重ねてまいりました。政府としては、今後とも、目に見える運用改善の成果を一歩一歩積み上げていくよう、最大限努力をしてまいる考えでございます。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣高村正彦君登壇〕

国務大臣(高村正彦君) まず、米軍の施設・区域外に居住する米軍人等の氏名や階級等を通告、登録するよう日米地位協定を改正すべきとのお尋ねでありますが、地元から、施設・区域外に居住する米軍人等の実態把握について御要望があったことから、今後、米側が年に一度、市町村ごとに施設・区域外居住者数について情報を提供し、日本政府はこれを適切な方法により関係自治体と共有することといたしました。

 政府としては、まず、かかる取り組みを進めつつ、引き続き自治体の要望を踏まえながら、施設・区域外の居住方針等について日米合同委員会等で議論することとしており、日米地位協定の改正は考えておりません。

 嘉手納、厚木、横田などの米軍機による騒音訴訟についてのお尋ねがありました。

 既に確定した航空機騒音等訴訟八件における賠償金額の合計は約百二十二億円ですが、政府としては、米国政府に損害賠償金等の分担を要請するとの立場で協議を重ねてきております。しかしながら、この問題について、我が国政府と米国政府の立場が異なっていることから、妥結を見ていない状況にあるため、米国が負担すべき金額等について現時点でお答えすることは困難であります。(拍手)

    〔国務大臣石破茂君登壇〕

国務大臣(石破茂君) まず、米軍用住宅の建設予算と戸数についてお尋ねをいただきました。

 在日米軍駐留経費負担により、米軍の家族住宅を提供施設整備として昭和五十四年度から実施してきておりますが、昭和五十四年度から平成十九年度までの予算額は約五千四百五十九億円であり、その戸数は、現在建設中のものも含めまして、一万一千二百九十五戸でございます。

 次に、駐留軍等労働者の法的雇用主及び駐留軍等労働者に対しなすべきことについてのお尋ねでございます。

 駐留軍等労働者の法的雇用主は日本国でございます。このことは、当然私は認識をいたしております。

 在日米軍基地で働く駐留軍等労働者が不安なく勤務できる状態を確保してまいりますことは、雇用主としての日本国政府の立場上当然のことであり、在日米軍の駐留を円滑に行う面からも重要なことであると考えております。駐留軍等労働者の雇用につきまして、今後とも安定した基盤の上に置くべく努めるとともに、駐留軍等労働者の適正な勤務条件を定め、福祉の充実等のために一層配意をしてまいります。

 駐留軍等労働者に対します国内労働関係法令の適用についてでありますが、駐留軍等労働者の具体的な労働条件等は、日米間で締結されております労務提供契約により規定をされておるところでございます。駐留軍等労働者には我が国の国内労働関係法令が適用されるものと認識をしておりますが、一部合致していないものがあることはよく承知をいたしております。

 防衛省といたしましては、国内労働関係法令にのっとった労務提供契約の改正が図られますよう、日米合同委員会の枠組みの中で鋭意協議を重ねてきたところでございます。所要の労務提供契約の改正について、国内労働関係法令にのっとった措置が講ぜられますよう、今後とも精力的に米側と協議を行ってまいります。

 在日米軍駐留経費負担の包括的な見直しについてでございます。

 昨年十二月十二日、日米両政府は、二〇〇八年四月から二〇一一年三月までを対象とする新たな特別協定に関連して、同協定の期間内において、在日米軍駐留経費負担をより効果的で効率的なものとするために包括的な見直しを行うことで一致をいたしました。この協議のタイミング、協議事項及び協議の実施体制等につきましては、現段階で明確に決まっているわけではございませんが、新たな特別協定発効後、速やかに協議してまいるべく努めていく所存でございます。

 以上であります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣  増田 寛也君

       外務大臣  高村 正彦君

       防衛大臣  石破  茂君

       国務大臣  町村 信孝君

 出席副大臣

       総務副大臣  佐藤  勉君

       外務副大臣  木村  仁君


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