衆議院

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第34号 平成20年5月29日(木曜日)

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平成二十年五月二十九日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二十二号

  平成二十年五月二十九日

    午後一時開議

 第一 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 児童扶養手当法の一部を改正する法律案(第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出)

 第三 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)

     ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 児童扶養手当法の一部を改正する法律案(第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出)

 日程第三 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長東順治君。

    ―――――――――――――

 特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔東順治君登壇〕

東順治君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 近年、悪質な訪問販売等による消費者被害が増加しており、特に高齢者に対して到底必要とされないほど多量の商品を売りつける事例や、悪質な勧誘行為を助長するようなクレジット業者による不適切な貸付枠の設定などが問題となっております。

 本案は、このような悪質商法対策を充実し強化するため、法律の規制対象となる商品やサービスなどについて、政令により指定する方式から、原則としてすべての商品やサービスなどを適用対象とする方式に変更するとともに、訪問販売について、通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買契約の申し込みを撤回することができる等の制度を創設するほか、個別の契約ごとに貸付枠の設定を行うクレジット業者について登録制度を導入し、加盟店の勧誘行為に関する調査等を義務づけるとともに、不正な勧誘行為があった場合には消費者にクレジット契約の取り消し及び既に支払った金額の返還請求を認める等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月十五日本会議において趣旨説明及び質疑が行われ、同日本委員会に付託されました。

 本委員会においては、翌十六日甘利経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、参考人から意見を聴取するなど慎重な審査を重ね、昨日質疑を終了いたしました。質疑終局後、採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 児童扶養手当法の一部を改正する法律案(第百六十八回国会、西村智奈美君外二名提出)

 日程第三 児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二、西村智奈美君外二名提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案、日程第三、内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長茂木敏充君。

    ―――――――――――――

 児童扶養手当法の一部を改正する法律案及び同報告書

 児童福祉法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔茂木敏充君登壇〕

茂木敏充君 ただいま議題となりました両案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、西村智奈美君外二名提出の児童扶養手当法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、母子家庭の所得の状況が改善されていない現状にかんがみ、児童扶養手当の支給開始後五年を経過した場合における減額措置に係る規定を削除するもので、第百六十八回国会に提出され、今国会に継続されたものであります。

 次に、内閣提出の児童福祉法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、次代の社会を担うすべての子供が健やかに生まれ、かつ、育成される環境の整備を図るため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、家庭的保育事業等を法律上位置づけること、

 第二に、養子縁組を前提としない養育里親の制度化及び小規模住居型児童養育事業の創設を行うとともに、入所児童の虐待防止の規定を設けること、

 第三に、次世代育成支援に係る事業主行動計画の策定の義務づけの範囲を拡大すること

等であります。

 本案は、去る五月二十日本委員会に付託されたものであります。

 本委員会では、両案について、五月二十一日提案理由の説明を聴取し、二十三日質疑に入り、昨二十八日参考人から意見を聴取するなどの審査を行った後、質疑を終局いたしました。質疑終局後、西村智奈美君外二名提出の法律案について、内閣の意見を聴取し、採決を行った結果、賛成少数をもって否決すべきものと議決し、次いで、内閣提出の法律案について採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、内閣提出の法律案に対して附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二、西村智奈美君外二名提出、児童扶養手当法の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は否決であります。この際、原案について採決いたします。

 本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立少数。よって、本案は否決されました。

 次に、日程第三、内閣提出、児童福祉法等の一部を改正する法律案につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(河野洋平君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 国家公務員制度改革基本法案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第四、国家公務員制度改革基本法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長中野清君。

    ―――――――――――――

 国家公務員制度改革基本法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中野清君登壇〕

中野清君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国家公務員一人一人が、その能力を高めつつ、国民の立場に立ち、責任を自覚し、誇りを持って職務を遂行することとするための国家公務員制度改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、国家公務員制度改革推進本部を設置することにより、これを総合的に推進するもので、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、議院内閣制のもと、国家公務員が内閣、内閣総理大臣及び各大臣を補佐する役割を適切に果たすこととするための措置を講ずるものとしております。

 第二に、採用試験について、多様かつ優秀な人材を登用するための措置を講ずるものとしております。

 第三に、官民の人材交流の推進とともに、官民の人材の流動性を高めるための措置を講ずるものとしております。

 第四に、国際社会の中で国益を全うし得る高い能力を有する人材を確保し、及び育成するための措置を講ずるものとしております。

 第五に、職員の倫理の確立及び信賞必罰の徹底のための措置を講ずるものとしております。

 第六に、職員が意欲と誇りを持って働くことを可能とするための措置を講ずるものとしております。

 第七に、内閣人事庁を設置するものとし、このために必要な法制上の措置は、この法律の施行後一年以内を目途として講ずるものとしております。

 第八に、国家公務員の労働基本権のあり方については、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討することとしております。

 第九に、国家公務員制度改革を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする国家公務員制度改革推進本部を置くこととしております。

 本案は、去る五月九日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日渡辺国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、五月十四日から質疑に入り、参考人からの意見聴取を行うなど慎重に審査を行いました。

 二十八日には、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案により修正案が提出されました。

 その主な内容は、幹部職員の人事管理の内閣による一元化を明確化するための措置を講ずること、政務専門官を置く旨の規定及びその他の職員の国会議員への接触制限に関する規定を削除し、政官関係の透明化を含めた政策の立案等の責任の明確化等に関する措置を講ずること、定年を段階的に六十五歳に引き上げることを検討すること、内閣人事庁の設置にかえて、内閣官房に内閣人事局を置くこと、労働基本権に関する規定を改めること等であります。

 本修正案の趣旨説明を聴取した後、原案及び修正案を一括して質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論を行い、採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

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議長(河野洋平君) 討論の通告があります。順次これを許します。塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の国家公務員制度改革基本法案並びに自民党、民主党、公明党提出の修正案について、反対の討論を行います。(拍手)

 我が国の国家公務員制度は、戦後、日本国憲法のもとで、国民全体の奉仕者として、公務の民主的かつ能率的な運営を保障することを目的としてきました。ところが、歴代自民党政権のもとで、こうした理念は実現をされず、公務員の労働基本権を制限し、政官財癒着の行政を行ってきました。キャリアと呼ばれる特権官僚は、国民のために奉仕するのではなく、与党政治家や財界、業界に奉仕し、その見返りとして、天下りなどみずからの利権を拡大してきたのであります。そして、その害悪は、薬害や官製談合の腐敗、汚職など、今日も噴出し続けているのであります。

 こうした政官財癒着内閣制ともいうべき構造にメスを入れる公務員制度改革が求められているのであります。

 ところが、今回の法案は、反対に、政官財癒着体制を一層強化するものとなっています。

 官民人事交流の規制緩和は、官民の垣根を取り払って、営利を目的とする民間企業が行政に入り込むことを本格的に進めるものであります。内閣府原子力安全委員会事務局の規制調査官のポストが、原発メーカーである三菱重工業、三菱電機、日立製作所の指定席となっていることを私は指摘しましたが、こうした官業の癒着がさらに拡大することは明らかであります。

 官業の癒着を断ち切るためには、天下りの規制こそ必要です。ところが、昨年の国公法の改悪で二年間の規制さえ取り払い、自由化をされ、本法案には何の規定もありません。

 次に、キャリア制度の問題です。

 渡辺担当大臣は、キャリア制度を廃止すると言いますが、法案は、幹部候補制度と結びついた総合職試験を導入するとしています。これは、現行のキャリア制度を法定化することで、特権的高級官僚制度を強化するものにほかなりません。

 また、縦割り行政の弊害の是正を口実として、幹部職員の内閣一元管理の強化を強調していますが、これは、国民への奉仕ではなく、政権党の意向に沿った官僚組織を生み出す懸念があります。

 消費者行政の縦割りなど、省益優先と言われる弊害が今日噴出しているのは、族議員がばっこする自民党政権のもとで、省庁ごとに政官業の癒着が恒常化しているからにほかなりません。ここにメスを入れることこそ、縦割り弊害を大もとから正す道にほかなりません。

 指摘しておかなければならないのは、今回の国家公務員制度改革が、財界が求める構造改革の一環として持ち出されていることです。この間、小泉・安倍内閣が、政治主導、官邸主導と称して、国民に痛みを強いる労働法制の規制緩和や後期高齢者医療制度の導入を推進してきたのであります。

 最後に、労働基本権の回復を明記していないことは重大です。

 基本権の回復は、既にILOから三度の勧告を受け、政府の専門調査会でさえ、協約締結権を付与すべきであるとしています。にもかかわらず、この公務員制度改革の根本問題をあいまいにした本法案は、断じて認めるわけにはいきません。

 なお、修正案も、この骨格を変更するものではありません。

 以上、反対の討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 江崎洋一郎君。

    〔江崎洋一郎君登壇〕

江崎洋一郎君 自由民主党の江崎洋一郎でございます。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、内閣提出の公務員制度改革基本法案及び修正案、以下両方をあわせて本法律案と呼ばせていただきますが、これにつきまして、賛成の立場から討論を行うものであります。(拍手)

 我が国の公務員制度は、委員会での審議においても言及があったように、明治以降、規格大量生産型の近代工業社会を確立する過程で形成されました。明治以降の近代化、戦後の復興、高度経済成長の過程において、我が国の成功はもちろん官僚機構だけが要因ではありませんが、官僚機構が重要な役割を果たしてきたことは事実であります。しかし、残念ながら、その後、官僚機構は次第に輝きを失い、今や国民からの信頼を大きく損なっております。これは、官僚機構が硬直化し、高度経済成長期までのみずからの成功体験に埋没してしまった結果ではないでしょうか。

 今、我が国の社会経済は、大きな構造変化にさらされております。グローバル化の進展などに加え、他国でも経験したことのない急速な少子高齢化が進行しつつあります。政府が、迅速にすぐれた政策を打ち出すことができるかどうかで、国の行く末を大きく左右される状況にあります。公務員制度も、新たな時代に対応できるものに変革しなければならないことは必然であります。制度改革の必要性が指摘されて久しい中、もはや猶予は許されません。

 かつて、福沢諭吉翁は、政府の官吏を粗略にせざるは、その人の身のとうときにあらず、その人の才徳をもってその役儀を勤め、国民のためにとうとき国法を取り扱うがゆえにこれをとうとぶのみとの言葉を残しました。残念ながら、その後、いつの間にか、官僚を官僚であるがゆえにとうとび、特別扱いするような風土ができ上がってしまったのではないでしょうか。我々は、公務員は国家のためにあるというこの福沢翁の当たり前の教えを、公務員制度の原点として常に胸に刻みつつ、改革に取り組む必要があると考えます。

 本法律案は、採用から退職まで、公務員の人事制度全般に係る抜本的な改革方針を定める法案として、提出に至ったものであります。

 しかし、国会提出の後も、マスコミでは何度も成立困難との報道がなされ、見通しは容易に立ちませんでした。しかし、こうした状況を打破できたのは、福田総理の強いリーダーシップが示されたことによるものであります。また、自由民主党、公明党、民主党の方々が共通の認識を持って、真の政治主導実現のために議論を尽くされ、修正協議、そして合意に至ったことは、まことに喜ばしい限りであります。こうした経緯を踏まえ、私は、本法律案に全面的に賛成いたします。

 本法律案は、まず何よりも、政治主導を確立し、議院内閣制のもとでの国家公務員の役割を明確に定める画期的なものであります。

 そして、公務員の人事プロセスを抜本的に改革するものであります。本法律案によれば、公務員は、採用の後、一定の期間を経て幹部候補に選抜されると、複数の府省にまたがって人事異動を重ね、また、民間企業や地方の現場の経験も積みながら、幹部候補として育成されます。また、幹部職員は、内閣人事局が一元的に、適格性審査と候補者名簿の作成を担うこととなります。民間で長く経験を積んだ人材、一たん役所から民間に転出した人材なども、幹部職員に大いに登用されるようになります。

 こうした改革により、各省仲間内の利益ばかりを考える官僚でなく、政府全体を見渡す視野と見識を持ち、現場の事情も肌でわかる官僚が育成、登用されるようになります。また、官民の垣根を越えて多様な人材が政府に集まり、異なった経験や知識をぶつけ合いながら、新たな政策をつくり上げていくことも可能になります。まさに、新たな時代に対応できる公務員制度になるものと考えます。

 また、政官の接触については、記録の作成、保存その他の管理を行うことにより、官僚の行き過ぎたロビーイング活動をコントロールし、官僚内閣制との批判がある現状を変えていくことができます。さらに、これに伴って、政治家の側も官との関係の的確な対応が求められ、政治の側の改革を促すきっかけにもなると考えます。

 今回の法律案は基本法、いわばプログラム法であり、改革はこれからが本格的なスタートとなります。世界でも経験のない少子高齢化を初め、新たな時代に対応した経済社会システムを構築、運営していくためには、新たな官僚機構が必要であります。

 変革の手段を持たない国家は自己保存の手段も持たない、これは十八世紀のイギリスの政治家エドマンド・バークの言葉でございますが、今の日本ほど、変革の手段を持つことができるかどうかが厳しく問われている国家はありません。

 この法律のもとで、新たな時代の変革に対応できる、すぐれた官僚機構をつくり上げることを強く期待し、私の討論とさせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) 泉健太君。

    〔泉健太君登壇〕

泉健太君 民主党の泉健太でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました国家公務員制度改革基本法案に対する修正案及び修正部分を除く政府提出原案につきまして、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 まず、本基本法案の審議並びに修正協議をめぐっては、政府内でのさまざまな曲折はございましたけれども、一時は基本法案の成立が危ぶまれながら、各政党実務者の努力によって修正案が合意を見ましたことは、大変喜ばしく存じております。

 さて、公務員制度改革の目的は、縦割りで閉鎖的な官僚組織を透明で効率的なものへと改め、多様、有能な人材を大いに活用することによって、真に国民の利益となる行政組織をつくることにあります。

 同時に、そのことは、政と官のいびつな関係を見直し、官僚が国会と内閣をコントロールする官僚主導内閣から、国民の信託を受けた政治家が官僚と内閣をコントロールする政治主導内閣、本来の意味での議院内閣制へと改める霞が関改革を抜きにしては実現できないことを意味しております。これらの趣旨にかんがみれば、当初の政府原案については、向かうべき方向性がはっきりと示されず、不十分な点が多々見られました。

 民主党では、これら公務員制度改革の趣旨及び改革すべき具体的方策について、党内で幾度にもわたる議論を重ね、霞が関改革・国家公務員制度等改革重点事項を取りまとめました。また、本法律案については、内閣委員会審議、そして与野党修正協議の場において、修正すべき点について主張を重ねてまいりました。

 その結果、民主党の主張する意見もその大半を取り入れながら、衆議院内閣委員会にて与野党共同修正案が提出、可決されるに至ったのであります。

 以下、修正案及び修正部分を除く政府提出原案について、賛成の理由を申し述べます。

 賛成の第一の理由は、法案修正によって、内閣人事局が設置されることになるとともに、幹部職人事の名簿作成について、内閣官房長官にて一元的に作成される形態へと改められることであります。

 政府提出原案では、幹部職員の人事について、原則的には各府省が候補者名簿を作成し、必要がある場合のみ内閣も名簿を作成できるとされておりました。すなわち、各府省の官僚がみずから人事権を握り続けるということによって、既得権益を擁護しやすい制度となっておりました。

 しかしながら、民主党は、官僚の既得権益の打破のため、とりわけ幹部職員の人事については内閣による一元管理が必要であるとの主張を重ねてまいりました。

 その結果、修正案におきましては、幹部職員の候補者名簿の作成は内閣官房長官が行うとされ、政治による民主的コントロールが作用しやすい仕組みへと改められることになったのであります。

 賛成の第二の理由は、法案修正によって、政と官の接触制限を行わないということにしたことです。

 もちろん、大臣の意思に反して行われる官僚のロビーイング活動は許されるものではございません。一方で、官の保有するさまざまな情報が遮断されるという可能性もあるため、政官接触を禁止にするのではなく、接触に関する情報を公開することによって、より透明化が図られると考えます。

 言うまでもなく、公務員は国民全体への奉仕者ですから、その業務の遂行にあっては、国会による適切なコントロールが必要であります。社会保険庁のずさんな年金記録問題、また道路予算の無駄遣いも、民主党が官僚組織と予算執行を継続して追及することによって初めて明るみになったものであり、国会、とりわけ野党が行政をチェックすることの重要性はだれもが同意することだと思います。政官接触制限によって、これら官僚にとって都合の悪い情報は隠ぺいされる可能性があることを民主党は主張してまいりました。

 本来、制限すべきは、許認可や補助金の交付に関して、また公共事業の発注などが絡む法案などに関して、一部議員とそれに応じる官僚によって官僚が政治的調整にばっこすることであり、また政治家が行政に介入するいわゆる口ききであります。それらの問題を、接触の記録を広くオープンにして透明化することによって防いでいかなくてはなりません。また、これにより、官僚のロビーイング活動にも抑制効果が期待できます。

 修正案においては、これら民主党の主張が認められ、政官接触に係る条項が削除をされるとともに、接触記録の作成、保存、公開など、透明化のための措置について規定されるに至ったのであります。

 賛成の第三の理由は、法案修正によって、国家公務員の労働基本権に関し、協約締結権について、国民の理解のもとに「自律的労使関係制度を措置する」とはっきり明記がされることとなったことであります。

 民主党は、国民の公共の福祉の向上のため、多種多様な公共サービス需要に効果的、効率的にこたえるためには、公務員の働きがいやモラルを向上することが必要であり、そのためには働く者の基本的な権利を回復することが重要であると主張してまいりました。しかしながら、政府原案では、協約締結権について、便益及び費用を含む全体像を提示してその理解を得ることが必要不可欠であることを勘案して検討すると、あいまいなわかりにくい表現にとどまっており、この点について修正がなされることになったのであります。

 その他、硬直的な人事制度の温床となっているキャリア制度を廃止することや、公務員が本来の職場で自己の能力を最大限発揮できるよう定年延長を検討することなど、いずれも民主党が主張してきた趣旨が大きく取り入れられており、修正案及び修正部分を除く政府原案には賛成をすることが妥当であると考えたものであります。

 なお、民主党がかねてより強く主張してまいりました再就職あっせん、そして天下りの禁止については、残念ながら修正案には盛り込まれておりません。長年この天下り問題の徹底追及を行ってきた我が党としては非常に残念ではございますが、この公務員制度改革という重要改革課題は今後とも引き続き取り組んでいかなくてはなりませんし、そして、この天下りについては、政権交代によってこそ解決をされるものと判断をし、我が民主党は今後とも熱意を持って取り組む所存であります。

 今後は、修正された基本法に基づいてしっかりと詳細な制度設計が進められ、国民の期待にこたえる公務員制度改革が実現するよう強く求め、私の賛成討論とさせていただきます。(拍手)

議長(河野洋平君) 桝屋敬悟君。

    〔桝屋敬悟君登壇〕

桝屋敬悟君 私は、国家公務員制度改革基本法案に対する修正案を含む原案に対して、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 まず初めに、今回の法案の修正作業に当たりましては、法案の成立に向けた福田総理の強い御決意のもと、自民党、公明党そして民主党の間で法案成立を前提とした真摯な修正協議が行われたところでありまして、関係者の大変な御努力に対し、まずもって深甚の敬意を表したいと思います。

 思い返せば、平成十二年の行政改革大綱、そして翌年の公務員制度改革大綱以来、今日まで、与野党を超え、多くの国会議員の手によって時代に即応して我が国の公務員制度をつくり直そうとの努力が行われてまいりました。

 関連法案の骨子まで策定し頓挫したような紆余曲折を経て、昨年六月、まず能力・実績主義の導入や再就職規制を柱とした国家公務員法の改正が行われたわけであります。その際、いわゆるパッケージとして今後の公務員制度改革の基本を示す法律案を作成し、今国会に提出するということが閣議決定されてきたところでありまして、本日、修正の形で採決されるということは、今日までの改革作業を後戻しにはできないという与野党を超えた政治の合意が示されるわけでありまして、大いに歓迎をしたいと思います。

 賛成する第一の理由は、今回合意された修正案を見ても、改革の基本方針として、政治主導を明確にした上で、内閣一元管理のもと、上級幹部職員にふさわしい新人事制度を導入しようとしている点、また、内閣の重要政策の企画立案等に従事する職員を国家戦略スタッフとして機動的かつ柔軟に任用、配置できる仕組みや、各府省大臣を直接補佐する政務スタッフを置くことなどが明記されている点であります。

 これらは、時代の要請に応じ、国家的見地から総合的、戦略的な企画立案を行い、機動的、効率的な行政サービスの提供を実現するとして提言された平成十三年の公務員制度改革大綱にうたわれた内容そのものでありまして、まさに今後の五年に向けた一歩前進の法案だと考えるからであります。

 同時に、私は、真の政治主導を確立するためには、こうした改革にあわせ、優秀な役人を縦横に使いこなせる政治の力こそ必要であり、政治家改革こそ必要ではないかと自戒をしているところであります。政官接触の部分が削除されたことも、そうした観点から理解をしたいと考えております。

 賛成する第二の理由は、定年の引き上げについて具体的に明記された点であります。

 私ども公明党の調査によりましても、1種職員の勧奨退職者の平均年齢は、政府の方針にもかかわらず、遅々として上がらない実態があり、省庁によってはその取り組みに大きな格差があるのも事実であります。天下り問題に対応するためにも避けて通れない課題であります。今回の基本法案に明記されたことにより、各省庁の格段の取り組みを期待したいと考えております。

 賛成する第三の理由は、法案第十二条において、政府の専門調査会で整理された言葉だと理解をしておりますが、「自律的労使関係制度を措置する」とされた点であります。

 若干法文の言葉として熟度に欠ける点を懸念はするわけでありますが、私ども公明党としても、新たな能力・実績主義が導入されている点、社会保険庁など不適切な労使慣行が明らかにされてきた点などを踏まえると、総合的な公務員制度改革の一環としてぜひとも改革に取り組むべきと考えてきたところであります。

 さらに一点申し上げたいと思います。

 今回の修正論議の中で、報道等によりますと、天下り問題も論点の一つとされているとのことでありましたが、この点も結構な整理になったものと私は理解をしているわけであります。

 今回の国家公務員制度改革基本法案の成立がなぜ必要であったのか。私は、国家公務員を取り巻く状況は今大きく変化していると考えます。その一つが公益法人制度改革であります。御案内のとおり、本年十二月からは新公益法人制度が始まりますが、主務官庁の裁量権に基づく許可、監督という束縛から完全に外れるわけでありまして、ここに温存された各省庁との人と金の不明瞭な関係が断ち切られるわけであります。加えて、随意契約の廃止により、各省庁の公益法人への再就職の実態は激変するものと考えております。

 独立行政法人の見直しも進められております。こうした改革作業が着実に進められてきた中で、本体の国家公務員制度のみが改革が進まないということは許されないと考えます。今回の修正合意は、こうした全体の姿を民主党の皆さんも十分御理解いただいたものと考えているわけであります。

 最後になりますが、基本権問題も含め、改革作業は完了したわけではありません。今後の三年、五年という展望の中で、我が国の人事行政の中立公正性の確保のため、政府においては今後人事院との十分なる協議を進めていただきますようお願いを申し上げ、私の賛成討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 菅野哲雄君。

    〔菅野哲雄君登壇〕

菅野哲雄君 社会民主党・市民連合の菅野哲雄です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、政府提出の国家公務員制度改革基本法案並びに修正案に対し、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 公務員制度改革の目的は、府省割拠主義に基づく縦割り行政、官僚の天下りや政官業癒着を抜本的に正し、国民本位の行政の実現と制約され続けてきた公務員の労働基本権を回復することに主眼があると考えます。

 しかるに、政府原案は、幹部人事のあり方を一新するとしながら各府省が幹部候補の原案を作成する、あるいはキャリアシステムを廃止するといいながら総合職試験合格者が自動的に幹部候補になり、新たなキャリアシステムを生み出す危惧を払拭し切れませんでした。また、政府原案における政治家と職員の接触制限は、野党議員への行政情報の開示をこれまで以上に妨げていく可能性をはらんでいました。

 他方、修正案で、幹部職員の任用については官房長官が候補者名簿を作成することとし、総合職試験合格者の一括採用、一括配置の規定を削除したことは、政府原案における危惧を一定程度解消するものです。また、修正案で、政官接触制限は行わず、接触情報の記録化と情報開示が盛り込まれたことも前進点だと考えます。

 今後、天下りの根絶を初め、縦割り行政の弊害が完全に除去されるよう、必要な施策が講じられることを強く期待するものです。

 労働基本権の課題で、政府原案は、非現業職員への協約締結権回復について、あたかもこれから検討を始めるかのような印象を与える内容でした。これに対して、修正案における「国民に開かれた自律的労使関係制度を措置する」との規定は、非現業職員への協約締結権回復を前提にしたものと受けとめます。

 今後、消防職員、刑事施設職員への団結権、さらに公務員への争議権回復についても、ILO勧告に基づき前向きな方向で検討が進められていくことを強く期待いたします。また、国における使用者機関、団体交渉が不調に終わった際の調停・仲裁機関が、協約締結権の回復実現とセットで明確にされるべきとの意見を申し添えておきます。

 これから、能力・実績主義に基づく給与体系の見直しや新たな人事評価制度の導入が予定されております。公務員制度の総合的な改革に関する懇談会報告書では、勤続二十年で年功昇給停止など、職員の賃金、労働条件の大幅な変更が示唆されています。だとすれば、これら能力・実績主義の本格的導入前に協約締結権の回復を実現し、賃金、労働条件の決定は基本的に労使間の合意にゆだねるべきだと考えます。

 最後になりますが、公務員制度改革をめぐっては、二〇〇〇年十二月の行政改革大綱の閣議決定から約七年半という年月が経過しており、もはや改革に一刻の猶予もありません。透明で民主的な公務員制度改革が速やかに実現することを期待し、政府案、修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

     ――――◇―――――

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣舛添要一君。

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

国務大臣(舛添要一君) ただいま議題となりました障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 近年、障害者雇用は着実に進展してきておりますが、障害者の就労意欲が高まる中、中小企業における障害者雇用が低下傾向にあるほか、障害者の特性や程度によっては長時間の就労が困難な場合がある中で、現行の障害者雇用率制度が短時間労働に対応していない等、障害者の雇用機会が十分に確保されていない状況にあります。

 このため、中小企業における障害者雇用の促進や短時間労働者の雇用義務対象への追加等による障害者雇用施策の充実強化を図り、働く意欲、能力のある障害者の雇用を一層促進するため、この法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、中小企業における障害者の雇用機会を確保するため、障害者雇用納付金制度について、暫定的に常用労働者三百一人以上の事業主とされている適用対象を常用労働者百一人以上の事業主へ段階的に拡大するとともに、中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害者雇用を促進する場合に、まとめて雇用障害者数を算定する特例を設けることとしております。

 第二に、働き方の選択肢を拡大しながら障害者の雇用機会の拡大を図る観点から、週所定労働時間三十時間未満の短時間労働者を雇用義務の対象に追加することとしております。

 最後に、この法律は、平成二十一年四月一日から施行することとしておりますが、障害者雇用納付金制度の適用対象を常用労働者二百一人以上の事業主に拡大する部分及び短時間労働者の雇用義務対象への追加に関する部分は平成二十二年七月一日から、また、障害者雇用納付金制度の適用対象を常用労働者百一人以上の事業主に拡大する部分は平成二十七年四月一日から施行すること等としております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。園田康博君。

    〔園田康博君登壇〕

園田康博君 民主党の園田康博でございます。

 私は、ただいま議題となりました障害者の雇用の促進等に関する法律の改正案に対しまして、民主党・無所属クラブを代表して質問をいたします。(拍手)

 本年五月三日に、国連の障害者の権利に関する条約が二十カ国以上の締結を経て正式に発効いたしました。この条約は、障害者の権利及び尊厳を保護、促進するための包括的、総合的な国際条約であり、障害者の自立、非差別、社会への参加などの一般原則のほか、教育、労働などさまざまな分野において、障害者の権利を保護、促進する規定が設けられています。

 今後、我が国としても、条約の締結に向けて国内法制の整備などが求められてまいります。我が国における障害者施策全体をどのように進めていくおつもりなのか、また、障害者の権利擁護について、障害者の差別禁止の法制度をどのように構築していくおつもりなのか、官房長官に政府のお考えをお伺いいたします。

 あわせて、権利条約締結に向けての仮訳の確定及びそれに基づく国内法制の整備などに当たっては、条約策定過程において日本政府とともに活躍をされたJDF、日本障害フォーラムなど当事者団体の参画が必要不可欠であると考えます。

 しかし、現段階において、障害者団体の申し入れによる非公式な交渉は行われているものの、政府の取り組みとしての枠組みでは、障害者団体の参画は、わずかに厚生労働省においてことし四月からスタートした労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会のみと認識しております。今後、障害当事者の参画をどのように保障されていくおつもりなのか、官房長官に政府の御見解をお伺いいたします。

 条約における雇用・労働分野については、公共・民間部門での障害者雇用の促進などのほか、あらゆる形態の雇用に係るすべての事項に関する差別の禁止、職場において合理的配慮が提供されることの確保などのための適当な措置をとることにより、障害者の権利を実現、促進することとされています。

 とりわけ、職場における合理的配慮の提供という、これまで我が国にはない概念が盛り込まれておりますので、障害者が働くということに関しては、障害者の雇用促進に関する法律に限らず、権利保障、差別禁止などの観点から労働及び福祉関連施策全般を見直していく議論が必要ではないかと考えますが、厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

 現行法において、平成十七年の改正の際、精神障害者は、雇用義務等及び納付金関係業務に係る規定の適用に関する特例として、精神障害者保健福祉手帳保持者が雇用率、すなわち実雇用率でありますが、に算定できることになりましたが、あくまでも特例であり、みなし規定であります。精神障害者についても身体・知的障害者とともに雇用義務の対象とすることは精神障害者の雇用の促進の観点からも急務と考えますが、いかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。

 また、雇用率の義務化とともに雇用支援の一層の推進を図ることが重要であると考えますが、具体的な施策をお伺いいたします。

 もちろん、現行の法定雇用率一・八%も引き上げる方向で改善すべきと考えますが、御所見をお伺いいたします。

 現行の障害者雇用促進法の職業リハビリテーションにおいては、いわゆる発達障害や難病などを幅広くその対象としておりますが、実際の就職の際に必要となる施策のうち、法定雇用率や特定求職者雇用開発助成金などの施策は障害者手帳の所持者に限定されており、手帳のない者は利用できない制度となっております。手帳の有無にかかわらず、発達障害者や難病などの者でも法定雇用率の対象や諸制度の対象となるよう改善すべきと考えます。

 さらに、もう一歩踏み込んで、法制度間で異なる障害の定義を見直し、就労・雇用施策においては、個々の障害者の持つ労働能力に基づく障害の定義を導入すべき時期に来ているのではないかと考えますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

 もちろん、法定雇用率の認定基準そのものの見直しも必要と考えます。現行法においては、「障害者雇用率は、労働者の総数に対する身体障害者又は知的障害者である労働者の総数の割合を基準として設定するものとし、少なくとも五年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定める。」と規定をされています。そもそも、現在の法定雇用率一・八%は、知的障害者が義務化となった一九九七年改正以来、見直されておりません。さらに、今改正で導入が予定されている短時間労働者を初め、精神障害者並びに発達障害者や難病などを持つ者などを雇用義務化すれば、当然、現在の雇用率は大幅に引き上がることになると理解をしておりますが、厚生労働大臣の御認識及び今後の検討についてお伺いをいたします。

 障害者雇用納付金制度について、創設以来三十年にわたって、企業規模三百人以下の中小企業に対する納付金制度の適用の徴収及び調整金の支給が猶予されてまいりましたが、今回の法改正により、一定の期間は置くものの、百一人以上から適用とし、実施において二百一人以上の中小企業を対象としたものであります。

 ただ、中小企業を取り巻く厳しい経営環境、負担能力に配慮し、雇用率算定の特例などが設けられました。複数の中小企業が、事業協同組合などを活用して共同事業として障害者を雇用した場合に、当該組合などと組合員企業とをまとめて雇用率を算定するという特例でありますが、本来、企業ごとで障害者を雇うことが原則であり、あくまでも中小企業における雇用がより効果的に進むよう配慮した特例措置であるということで理解をしてよろしいのでしょうか。

 また、そもそも、障害者を共同事業として集約することの意義は何でしょうか、お伺いをいたします。

 あわせて、共同事業で行った場合、各企業そのものにおいて障害者を全く雇い入れなくてもよいのでしょうか、お伺いをいたします。

 今回の改正案に関して、週所定労働時間二十時間以上三十時間未満の短時間労働については、障害者のニーズなどを踏まえながら雇用義務対象とされ、実雇用率の算定に当たっては〇・五カウントとされたところであります。週所定労働時間が三十時間以上で働くことができる、あるいは働くことを希望する障害者が、その希望により選択できるようにしていくことが重要であり、安易に、あるいはその意に反して週三十時間以上の労働から短時間労働に代替されることがないよう対策を講じる必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか、お伺いをいたします。

 障害者の就労及び雇用支援施策の推進を考える場合、障害者福祉施策との有機的な連携が重要となることは言うまでもありません。今回の改正においても、地域障害者職業センターの業務の追加などの措置が盛り込まれております。

 地域障害者職業センターは、各都道府県一センター、五支所が設置されておりますが、センターの専門性とノウハウを生かした地域の就労支援力の底上げとは具体的にどのような事業及び効果を想定されているのでしょうか。センターのこれまでの実績もあわせてお伺いをいたします。

 労働政策審議会意見書によりますと、障害者就業・生活支援センターは、福祉から雇用への円滑な移行を促進し、身近な地域で職業生活の継続を支えるための支援を行う機関として重要な役割を担っているもので、計画的かつ早急な設置が必要だとされており、新雇用戦略においても、障害者就業・生活支援センターを全障害福祉圏域に設置するとされています。

 その際に重要なことは、当センターで働く労働者の労働条件を確保することと雇用の安定を図る措置を講ずることにより、障害者雇用に携わる人材を確保し、その能力を高めていくことができると考えます。

 障害者就業・生活支援センターで障害者雇用に携わる労働者の労働条件の実態はどのようになっていますでしょうか。厚生労働省は実態を把握しておられるのでしょうか。また、今後、設置数の増加に当たり、人材確保のための方策をどのように考えておられるのでしょうか、お伺いをいたします。

 障害者の就労、雇用を継続するためには、あわせて生活支援でバックアップすることが不可欠であります。しかし、この間の政府の障害者施策は、ともすると、福祉的就労から一般雇用、就労支援により一般雇用に重点が偏っているように見受けられます。福祉あるいは雇用、福祉から雇用ではなく、障害者にとっては福祉も雇用も必要であると考えますが、その点、どのように御認識をされておられるのか、改めて厚生労働大臣の御認識をお伺いいたします。

 また、障害者の所得の確保に係る施策のあり方については、就労支援を第一に挙げておりますが、現に一般雇用されている障害者の経済的な状況などについてどのように把握されておられるのか、厚生労働省の把握状況についてもお伺いいたします。

 民主党は、障害者が当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活することができる社会を目指しており、障害者の生活と自立、社会参加は権利として位置づけ、個々の人権の保障及び促進のため、具体的な施策の構築、また、国民の共存共栄の理念のもと、障害当事者の自己決定、自己選択の原則が保障される法制度を構築するために、議論を重ねてまいりました。

 障害者自立支援法のように、政府は、制度改正を急ぐ余り、十分な国民的理解を得られず、制度がスタートしてから慌てて特別対策、緊急措置などを講じて体裁を整える。これでは、いつまでたっても制度に対する信頼が得られず、我が国の障害福祉制度は確立、促進いたしません。

 私ども民主党は、自立支援法の改正案を提出させていただいております。立法府の責任として審議を行い、抜本改革に結びつけたいと思っております。

 障害当事者のニーズに基づいて、国民的合意を得ながら障害者福祉施策を推進する必要があると考えておりますので、障害者の暮らしの実態、生活環境、就労状況などの実態を調査検証した上で、抜本的な改革を行い、将来にわたり安定した障害者福祉制度を構築し、障害者が安心して地域で暮らすことのできる社会を実現したいと考えております。

 国民の皆様にもそのことをお約束申し上げ、質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣町村信孝君登壇〕

国務大臣(町村信孝君) 園田議員にお答えします。

 まず、障害者権利条約の締結に向けた国内法制の整備等についてのお尋ねがありました。

 我が国は、昨年九月に同条約に署名を行っており、今後、可能な限り早期に批准、締結を目指し、関係府省によって構成されております障害者権利条約に係る対応推進チームにおいて検討を進め、必要な国内法令の整備を図ってまいります。

 また、障害による差別禁止につきましては、平成十六年の障害者基本法の改正において明示されておりますが、差別禁止法制のあり方につきましては、条約の締結に向けて必要な検討を行う中で慎重に考えてまいります。

 次に、障害者権利条約の締結に向けた障害当事者の参画についてのお尋ねがありました。

 政府におきましては、障害者権利条約の締結に向けた検討に当たり、本条約が障害者の人権及び基本的自由の完全な実現を確保し、促進する上で重要な意義を有していることを十分に踏まえ、御指摘の障害当事者の団体でありますJDF、日本障害フォーラム等との意見交換をこれまでも実施してきているところであります。

 今後とも、政府としては、さまざまな機会における障害者団体等の意見を参考としながら、本条約の締結に向けて検討を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

国務大臣(舛添要一君) まず、障害者権利条約を踏まえた労働福祉施策の見直しについてお尋ねがございました。

 今後、権利条約の締結に向けましては、採用、賃金、昇進等の雇用のさまざまな局面で、合理的配慮として具体的にどのような配慮がなされるべきか、差別禁止や合理的配慮についてどのような形で担保していくか等について検討が必要であると考えております。

 権利条約は、障害者の自立、社会への参加等の一般原則のほか、さまざまな分野での権利保護、促進を定めた包括的、総合的な条約であります。障害者が働くということについて、雇用の促進施策にとどまらない幅広い議論が必要だと考えております。

 次に、精神障害者を雇用義務の対象とすることについてお尋ねがございました。

 平成十九年の障害者雇用状況報告を見ますと、精神障害者については、五十六人以上の規模の企業における雇用者数は約四千人程度にとどまるなど、まだまだ企業での雇用が十分に進んでいるとは言えない状況にございます。

 このため、企業の理解の促進やステップアップ雇用奨励金など障害特性に応じた支援の充実強化を行う中で、精神障害者の雇用の進捗状況を見きわめつつ、雇用義務の対象とするかどうか検討をしたいと考えております。

 次に、労働能力に基づく障害の定義の導入についてお尋ねがございました。

 障害者雇用施策におきましては、職業リハビリテーションなどにつきましては、障害の種類のいかんを問わず広く障害者を対象とする一方で、雇用率制度については、障害者手帳を所持する身体障害者、知的障害者などに対象を限定しております。そういう施策に応じてその範囲を定めているところであるということを御理解いただきたいと思います。

 御指摘のような労働能力に基づく障害認定については、発達障害者などへの支援のあり方や福祉における障害認定のあり方の動向などを見きわめつつ、やはり検討を行う必要があると考えております。

 続きまして、短時間労働の雇用義務化、精神障害者、発達障害者等の雇用義務化の場合の法定雇用率について御質問がございました。

 御指摘のように、法定雇用率は、雇用されている者及び雇用されていないものの働く希望や能力を有する者の総数を分母として、同様の状態の障害者の総数を分子として、その割合を基準として設定いたしたものでございます。このような設定方法のもと、精神障害者等を雇用義務の対象として含めると、通常、法定雇用率は引き上がる方向になりますが、それぞれの障害者を雇用義務の対象とするかどうかについて、職域の開発や雇用の進捗状況などを見きわめて検討する必要があると考えております。

 続きまして、事業協同組合等に係る雇用率算定特例についてのお尋ねがございました。

 御指摘の算定特例は、単独では障害者の雇用が困難である中小企業が共同で事業を行うことにより、障害者の雇用機会を確保できるようにすることを目的としたものであります。

 一方で、特例の適用に当たって、個々の中小企業において全く障害者が雇用されていないことはやはり適当でないわけですから、各事業主の雇用する障害者数が厚生労働大臣が定める数以上であることを要件とすることとしてございます。したがいまして、個々の中小企業も含めた全体での障害者雇用の促進が図られるように工夫をしておりますことを御理解いただければと思います。

 次に、短時間労働への安易な代替の防止策についてお尋ねがございました。

 本法律案におきましては、短時間労働を雇用義務の対象とするに当たり、委員御指摘のように、週所定労働時間が三十時間以上の労働の場合の二分の一のカウントとすることにしております。このような算定方法とすることによって、フルタイム勤務の障害者を短時間勤務に代替することに対する歯どめになっていると考えます。

 また、短時間労働の障害者が三十時間以上で働くことを希望する場合は、事業主が適切な雇用管理を行うよう、周知徹底を図りたいと考えております。

 次に、地域障害者職業センターの実績及び新規の業務についてお尋ねがございました。

 地域障害者職業センターは、障害者雇用促進法に基づく中核的な職業リハビリテーション機関として、全国ネットワークを形成していることから、昨年度は、二万六千四百九十六人に対しまして職業評価や職業リハビリ計画の策定などの支援を実施しております。

 現在、福祉施設利用者や特別支援学校卒業生の雇用への移行促進が課題となっておりますが、地域の就労支援機関等において効果的な支援が行われますように、地域障害者職業センターにおいて、まず、就労支援を担う専門的な人材の育成、続きまして、就労支援機関に対する助言、援助を基幹業務として実施することといたしております。

 次に、障害者就業・生活支援センターにおける人材確保についてお尋ねがございました。

 障害者就業・生活支援センターで障害者の就業支援にかかわる方々の個別の労働条件は把握しておりませんが、就業支援担当者二名について、合わせて八百六十万円の予算を措置しているところでございます。

 また、設置箇所数の増加に合わせて、人材確保にも配慮して、より専門性の高い人材配置のための委託費の加算、地域の支援ニーズや実績に応じた人員の加配等、支援体制の充実強化等を図ったところでございます。

 続きまして、福祉から雇用への移行についてお尋ねがございました。

 障害者の方に対しては、御指摘のように、セーフティーネットを確保しつつ、可能な限り就労による自立や生活の向上が図られるよう、福祉、雇用両面における支援を行うことが必要だと考えております。今後とも、こうした考えのもと、雇用施策、福祉施策、さらには教育施策の連携を十分に図りながら、障害者の方々の支援に努めてまいりたいと思います。

 最後に、雇用されている障害者の経済状況等の把握状況についてお尋ねがございました。

 厚生労働省において、民間事業所において雇用されている障害者の賃金や労働時間の状況等を把握するための実態調査、これは五年ごとに行っておりますが、平成十五年の調査によれば、障害種別の月間賃金は、身体障害者が約二十五万円、知的障害者が約十二万円、精神障害者が約十五万円等となっております。

 今後とも、こうした調査を通じまして、雇用されている障害者の経済状況等の把握に努めてまいりますとともに、その調査結果をもとに、障害者の自立支援、そして雇用政策について、さらなる努力を続けてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 高木美智代君。

    〔高木美智代君登壇〕

高木美智代君 公明党の高木美智代でございます。

 私は、自由民主党並びに公明党を代表し、ただいま趣旨の説明がありました障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 我が国の障害者数は約七百二十万人となっており、実に国民の六%が、何らかの障害を持たれていることになります。障害を持つ方が地域での自立と共生を実現するためには、所得保障が不可欠であり、雇用の促進並びに障害基礎年金の引き上げ等、進めなければならないと考えます。

 一九六〇年の制定以来、障害者雇用促進法の改正を重ねた結果、現在、常用雇用されている障害者数は約五十万人に増加しておりますが、障害者の就労意欲と相まって、障害者のニーズに合った雇用促進が一層求められております。

 公明党は、障害者本人の視点に立ち、ジョブコーチの養成と拡充やトライアル雇用の促進等に取り組んでまいりました。昨年十一月には、福田総理に、雇用政策に関する柱の一つとして具体的に申し入れを行いました。

 障害者の方のニーズの第一番目は、地域の身近な場所で働きたいということです。

 大企業では障害者の雇用数も増加しておりますが、法定雇用率達成企業数は約四四%、まだ半数に満たない状況があります。かつてバブル崩壊の前までは、障害者を雇用していたのは身近な中小企業でした。今回の改正案では、障害者雇用納付金制度の適用対象を現行三百一人以上の大企業から百一人以上の中小企業にも拡大し、促進を図ることとしております。我が国の企業数の約九割を占める中小企業における雇用の促進は極めて重要であり、激しい国際競争の中で奮闘する中小企業の雇用率低下に対して歯どめをかけるものと理解しますが、そのためには、経済的負担や環境整備への支援が欠かせません。

 百一人以上企業への拡大については、平成二十七年四月一日を施行日としておりますが、今回の改正案で盛り込まれている、複数の中小企業が事業協同組合などを活用して共同で障害者雇用を図るといったことも含め、事業主に対しては、きめ細やかな周知、指導を図るとともに、障害者を受け入れる環境整備のための経済的支援や、職場実習、職場定着に至るまでの人的支援策を充実することが求められます。

 具体的支援策についてどのようにお考えか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、率先して範を示すべき公務部門においても、全体の実雇用率では二・一七%と法定雇用率を超えてはおりますが、地方公共団体や独立行政法人等の中には、いまだ達成していない機関があります。雇用の数や率のみならず、なかなか一般就労が難しい知的障害や精神障害を持つ方の雇用にも積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、厚生労働大臣及び障害者施策を担当しておられる岸田国務大臣のお考えを伺います。

 また、今回の改正案において、特例子会社がない場合であっても、企業グループ全体で雇用率を算定するグループ適用制度の創設が盛り込まれておりますが、一定の子会社などに偏ることへの懸念もあります。それぞれの子会社においても障害者雇用を進めることができるように留意することも必要と考えますが、厚生労働大臣の御所見を伺います。

 次に、障害者のニーズの第二番目は、短時間労働であります。

 働く意欲がある一方で、障害の特性、程度、体力面における課題を考えれば、週三十時間以上という就労は困難でも、短時間の労働であれば可能との声が多くあります。既に、前回の改正では、通院や服薬の関係から短時間勤務を希望する精神障害者については、短時間労働者も実雇用率への算定が特例措置として講じられました。

 今回の改正案では、週二十時間以上三十時間未満の短時間労働者を追加し、雇用義務算定にカウントすることとしております。本改正は、福祉的就労から一般雇用に移行するための段階を設ける意味で有効であり、就労形態について選択肢が広がると思われますが、単なる不安定な雇用形態としてはなりません。障害者本人の希望と適性に合った雇用を確保できるよう配慮が必要と考えます。職業生活の自立促進の観点から、きめ細やかな支援について、厚生労働大臣のお考えを伺います。

 障害者の就労促進において重要となるのは、特別支援学校からの一般就労を促進することです。

 現在、一般就労への就職率は約二〇%。今後、特別支援学校における教育の課程において、ハローワークと密接な連携の上で、職業教育を積極的に取り入れるなど就労移行への支援メニューを充実させることが求められております。

 東京の大田区では、特別支援学校や福祉施設からの一般就労を促進するため、障害者就労促進担当者会議を設置し、地域のネットワークを活用し、成果を上げております。一般就労への入り口というべき特別支援学校の卒業生に対し、充実した細やかな支援がなされております。

 教職員の方の就労支援スキル向上のための支援策や、学校と地域の連携を含め、福祉と労働、教育と労働の連携をさらに強固にしていく必要があると考えますが、文部科学大臣にお伺いいたします。

 先日の経済財政諮問会議において舛添厚生労働大臣より示された新雇用戦略において、障害者のハローワークにおける就職件数を二〇一〇年度までに十四・四万件に、また、雇用されている障害者数を二〇一三年度までに六十四万人にとの数値目標が明示されました。

 そのためには、地域拠点的役割を担うべき障害者就業・生活支援センターを拡充し、就業、生活の両面にわたる相談や支援が十分に提供できるよう、今年度、全国二百五カ所に設置予定ですが、身近な福祉圏内に設置し、適切な人員配置がなされることが求められます。

 また、ジョブコーチについても、現在約千五百人ですが、さらなる拡充が必要であります。

 障害者が職場定着までのきめ細やかな支援の中で自立へと進めるように、障害者就業・生活支援センターを中心とした地域拠点基盤づくりとジョブコーチなどの人的な拡充が必要と考えますが、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 また、雇用率制度の対象となっていない発達障害の方や難病を持つ方々に対しても、本人の意欲に応じて、その障害の特性を踏まえたきめ細やかな就労支援を図ることが必要と考えますが、厚生労働大臣の御所見を伺います。

 ところで、規定の二十カ国が締結したことを受けて、去る五月三日、国連障害者の権利に関する条約が発効いたしました。この条約は、障害者の人権を明確に保障した初の国際条約であり、二〇〇六年十二月の国連総会において全会一致で採択され、我が国も昨年九月、署名を行ったところです。

 公明党は、早期より障害者権利条約の批准を訴えており、五月八日に福田総理あてに早期批准を求める申し入れを行いました。

 また、公明党はかねてより、すべての人が互いにその人権を尊重しつつ、責任と権利を分かち合い、誇りを持って自立できるユニバーサル社会の形成を推進してまいりました。昨年の自由民主党、公明党の政権政策合意の中でユニバーサル社会基本法の制定について盛り込まれ、現在、与党のプロジェクトチームにおいて法制化の取り組みが進められております。

 このユニバーサル社会基本法とともに、障害者権利条約の早期批准に向けた観点からも、本法律案の改正は前進への一歩と考えます。ユニバーサル社会、ノーマライゼーションという大きな視点から見たときに、これらの法、また条約に込められた理念を具体化すべく、障害にかかわらず個性、能力を発揮できるよう、すべての企業において障害者への理解が促進され、就労できる環境を整備することが重要と考えますが、厚生労働大臣並びに岸田国務大臣の御決意とお考えをお伺いできればと存じます。

 公明党は、今後とも、障害者の真の自立支援とユニバーサル社会の構築への視点に立った政策を推進すべく、全力を尽くしてまいることをお誓いし、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

国務大臣(舛添要一君) 高木議員にお答えいたします。

 中小企業に対する周知や支援策についてのお尋ねがございました。

 中小企業における障害者雇用をより効果的に促進するためには、これまで暫定的に適用対象外としていた中小企業に障害者雇用納付金制度の適用対象を拡大することとあわせて、中小企業に対する支援策の充実強化を実施することが重要であると考えております。

 このため、今回の改正におきまして、中小企業が事業協同組合等を活用して障害者を雇用した場合の雇用率算定の特例を設け、その周知を図るとともに、障害者の雇用・職場定着に関するノウハウの提供やジョブコーチ支援等、中小企業への支援を充実すること、中小企業により重点を置いて助成金を支給すること等を予定しております。

 今後とも、こうした支援策を通じて、中小企業における障害者雇用を進めてまいります。

 次に、公務部門における障害者雇用の促進についてお尋ねがございました。

 御指摘のとおり、残念ながら、公的機関においても法定雇用率未達成の機関があり、特に、都道府県教育委員会においては雇用状況が低迷している状況にございます。

 このため、公的機関については、昨年十二月に決定された障害者基本計画に基づく重点施策実施五カ年計画において、平成二十四年度までにすべての機関で雇用率を達成することを目標としており、目標の達成に向けて厳正な指導を行いたいと考えております。

 さらに、公的部門におきましては、今後は知的障害者や精神障害者の雇用に率先して取り組むことが重要であることから、障害者が一般雇用に向けて経験を積むことを目的としたチャレンジ雇用を推進、拡大しているところでございます。

 次に、企業グループ特例についてのお尋ねがございました。

 企業グループ特例の適用に当たりましては、御指摘のように、個々の子会社における障害者雇用が大幅に後退することのないよう、親会社が障害者雇用の促進、安定に責任を持つこと、単独では障害者の雇用義務が課されない子会社も含めグループ内のすべての子会社を対象とすることにより、より多くの障害者雇用が必要となること、グループ内のすべての子会社に一定数以上の障害者雇用を課すこと等を要件とすることとしており、グループ内の特定の子会社に障害者雇用が偏ることのないよう、企業グループ全体での障害者雇用の促進が図られるように努めてまいります。

 続きまして、短時間労働に対応した雇用率の見直しに当たっての支援についてのお尋ねがございました。

 短時間労働に対応した雇用率の見直しにつきましては、週所定労働時間が二十時間以上の雇用保険の被保険者となるような者を対象とするとともに、安易な短時間労働への代替を防ぐ観点から、週所定労働時間が三十時間以上の場合の二分の一のカウントとしたいと考えてございます。

 また、本年四月に施行された改正パートタイム労働法等も踏まえ、今後策定する障害者雇用対策基本方針において事業主が配慮すべき事項について検討するとともに、ハローワークや地域障害者職業センター等において、事業主が適切に雇用管理を行うよう相談など支援を行ってまいります。

 続きまして、障害者就業・生活支援センター及びジョブコーチの拡充についてお尋ねがございました。

 障害者就業・生活支援センターについては、重点施策実施五カ年計画において全障害保健福祉圏域に設置するとされたところであり、同センターにおける支援体制の充実とともに、計画的かつ早急な設置を進めているところでございます。

 また、ジョブコーチにつきましても、重点施策実施五カ年計画に基づき、平成二十三年度までに五千人養成することとしており、高齢・障害者雇用支援機構による養成とあわせて、民間による研修を活用し、養成を実施しているところでございます。

 今後とも、障害者就業・生活支援センターやジョブコーチの拡充を推進し、障害者一人一人の特性に配慮した支援体制の充実に努めてまいります。

 難病の方や発達障害者に対する就労支援についてのお尋ねがございました。

 難病の方や発達障害者については、障害者手帳をお持ちにならない方についても職業リハビリの支援対象となっており、ハローワークにおけるきめ細かな職業相談・紹介、障害者職業センターにおける専門的な職業リハビリテーションなどを実施しているところでございます。

 また、事業主に対して、障害特性の理解を進め、雇用管理ノウハウを提供するためのマニュアルを作成し、事業主の理解の促進を図っているところであります。

 今後とも、ハローワークや障害者職業センターにおける障害特性を踏まえたきめ細やかな就労支援に取り組んでまいります。

 最後に、障害にかかわらず個性、能力を発揮するための、企業における理解の促進、就労環境の整備についてお尋ねがございました。

 私は、ユニバーサル社会、ノーマライゼーション、こういう大きな目標を遂げた社会が本当の意味の先進国である、そういう思いで日々厚生労働行政に携わっております。

 我が国は、昨年九月、障害者権利条約に署名したところでございますが、最近においては、ユニバーサル社会の形成に向けた動きがあるなど、障害者雇用をさらに進めていく機運が高まっているところであります。

 こうした中、今回の法律案は、障害者の意欲や能力に応じ、障害者の働く選択肢や雇用機会を拡大しようとするものであり、こうした取り組みを通じながら、企業における障害者の理解促進、就労環境の整備に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣岸田文雄君登壇〕

国務大臣(岸田文雄君) まず、私の方には、公務部門における障害者雇用の促進についてお尋ねがございました。

 障害者にとって雇用、就業は、地域で生き生きと生活していくための重要な柱となるものであり、国、地方公共団体等の公的機関は、障害者の雇用に関し率先して範を示すことが重要と認識をしております。

 政府においては、昨年十二月に障害者施策推進本部で策定いたしました重点施策実施五カ年計画において、平成二十四年度までにすべての公的機関において障害者雇用率を達成することとしています。また、同計画においては、就労が困難とされる知的障害や精神障害を有する方を各府省で非常勤職員として率先して雇用し、一般就労へとつなげるチャレンジ雇用を本年度中にすべての府省で実施することとしています。

 今後とも、これらの施策の着実な実施を図り、障害者の雇用の促進を図ってまいりたいと考えております。

 もう一つ、障害者への理解促進と障害者の就労環境整備についてお尋ねがございました。

 政府においては、障害の有無にかかわらず、国民だれもが相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の理念の普及を図るため、昨年十二月に策定した重点施策実施五カ年計画に基づき、国民の共生社会に関する周知度が五〇%を超えるよう、各種施策に取り組んでいます。

 また、昨年十二月の障害者週間においては、障害者の雇用に関するセミナーを開催するなど、障害者雇用への理解を促進し、障害者の働きやすい環境づくりに努めてきたところです。

 今後とも、共生社会の理念の普及を図るとともに、障害者雇用への理解を促進し、障害者が働きやすい環境づくりを促進してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣渡海紀三朗君登壇〕

国務大臣(渡海紀三朗君) 高木議員から、特別支援学校における就労支援についてお尋ねがございました。

 障害のある生徒が自立をし、社会参加していくためには、社会の変化や生徒の障害の状態に応じて職業教育や進路指導の改善充実を図る必要があります。

 このため、文部科学省では、特別支援教育総合研究所が実施する研修を通じて就労支援に係る教員の専門性の向上を図るとともに、学校と労働関係機関や企業等が緊密な連携のもと、職業教育の改善や職場開拓などに向けた実践研究を進めております。また、教育委員会等に対して、厚生労働省が行う特別支援学校を対象とした就労支援セミナーや事業所見学会などの活用を促しているところであります。

 文部科学省としては、これら教育施策と雇用施策の連携を一層強化して、障害のある生徒の就労が促進されるよう努めてまいります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       文部科学大臣  渡海紀三朗君

       厚生労働大臣  舛添 要一君

       経済産業大臣  甘利  明君

       国務大臣  岸田 文雄君

       国務大臣  町村 信孝君

       国務大臣  渡辺 喜美君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣  岸  宏一君


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