衆議院

メインへスキップ



第9号 平成20年11月6日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十年十一月六日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  平成二十年十一月六日

    午後一時開議

 第一 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第一、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、日程第二、保険業法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。財務金融委員長田中和徳君。

    ―――――――――――――

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

 保険業法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔田中和徳君登壇〕

田中和徳君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、財務金融委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 初めに、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、金融機関等をめぐる情勢の変化に対応して金融機能の強化等を図るため、金融機関等の資本の増強等に関する特別の措置を講じ、金融機関等の業務の健全かつ効率的な運営及び地域における経済の活性化を期するものであり、その主な内容は、国の資本参加に係る申し込みの期限の延長、国の資本参加の要件等の一部緩和、協同組織中央金融機関等に対して、あらかじめ国が資本参加することを可能とする枠組みの整備等であります。

 次に、保険業法の一部を改正する法律案について申し上げます。

 本案は、最近における保険業を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、生命保険会社が破綻した場合に、生命保険契約者保護機構が行う資金援助等について、政府による補助を可能とする規定を三年間延長するものであります。

 両案は、去る十月二十八日当委員会に付託され、翌二十九日中川国務大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、三十一日には参考人の意見を聴取し、十一月五日には麻生内閣総理大臣に対する質疑を行うなど、慎重な審議を行いました。

 かくて、同日質疑を終局いたしましたところ、金融機能強化法改正案に対し、自由民主党及び公明党の共同提案に係る、経営強化計画の記載事項の明確化、協同組織金融機能強化方針の記載事項の追加及び協同組織金融機能強化方針に係る報告の公表事項の追加を内容とする修正案が提出され、提出者を代表して自由民主党の木村隆秀君から趣旨説明を聴取いたしました。

 次いで、両案及び金融機能強化法改正案に対する修正案を一括して討論に付しましたところ、自由民主党及び公明党を代表して江崎洋一郎君から両案及び修正案に賛成の意見が、民主党・無所属クラブを代表して松野頼久君から金融機能強化法改正案に対する修正案に賛成、修正部分を除く原案に反対の意見が、日本共産党を代表して佐々木憲昭君から両案及び修正案に反対の意見が、それぞれ述べられました。

 討論終局後、順次採決いたしましたところ、金融機能強化法改正案は賛成多数をもって修正議決すべきものと決し、保険業法改正案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、金融機能強化法改正案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 両案につき討論の通告があります。順次これを許します。松野頼久君。

    〔松野頼久君登壇〕

松野頼久君 民主党の松野頼久でございます。

 民主党・無所属クラブを代表しまして、ただいま議題となりました金融機能強化法案の修正部分には賛成、除く原案には反対、保険業法改正案には賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 深まる金融危機の中、麻生総理は「生活対策」と称して追加経済対策を発表されました。民主党の「生活が第一」という、まねたような話でありますが、不況下で国民の生活を下支えするという考え方には大いに賛同するものであります。

 しかし、十月三十日に記者会見までしてしたにもかかわらず、具体的な中身が全く見えてこないものであります。

 全世帯にばらまきを行うと明言された生活支援定額給付金については、税金を使った究極の選挙対策であると言わざるを得ません。

 また、当初の定額減税から生活支援定額給付金に変わり、その配付方法もクーポン券方式なのか現金なのか、所得制限をつけるのかつけないのか、実施時期に関しても年内なのか年度内なのかと、いまだその具体的な中身は迷走しています。

 さらに、経済効果を期待しているのでしょうが、三年後の消費税増税と一緒に発表してしまっては、期待した経済効果も台なしではありませんか。

 加えて、この追加経済対策の財源も明らかになっておりません。赤字国債は発行せず、財政投融資特別会計の金利変動準備金を充てるとの話ですが、本来は特別会計法の規定に基づき国債の償還財源として用いる準備金を使うのであれば、赤字国債の発行と同じことではないですか。

 私たち民主党ならば、四千六百を超える天下り法人に毎年支出されている十二兆円を超える支出や、約九兆円に及ぶ各省の庁費、旅費等、行政の無駄遣いを徹底的に洗い出すとともに、予算を根本的に組み替え、生活に直結する予算を捻出させてみせます。政権交代こそが最大の景気対策であります。

 さて、金融機能強化法案についてですが、私たち民主党は、資金繰りの厳しい中小企業に対する金融の円滑化という本法の趣旨に対しては賛成であります。ただ、問題は、法案の細部に極めて筋の悪い内容が潜り込んでいることであります。すなわち、農林中央金庫と新銀行東京の問題であります。

 農林中金に公的資金が注入されることになれば、マネーゲームのツケを払うことに費やされることが必至であります。もちろん、この十数年の間、低金利が続いたために、低リスクの金融商品では十分な運用収益が上げられなかったという金融環境が、マネーゲームに至った原因だったという面もありましょう。しかし、だからといって、農業者から集めた貯金を主な原資としていながら、四十五兆円ものお金を市場で運用し、さらにその六六%が海外運用であるという姿は異常であります。

 農林中央金庫法第一条では、農林中央金庫は、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とすると規定されており、まさに、農林水産業の発展が最大の目的であります。この条文を経営陣及び監督官庁は片時も忘れてはならないのであります。

 委員会審議の中で、農林中央金庫及び系統金融機関が、農業者向け融資の内訳、すなわち、米農家に幾ら、野菜農家に幾ら、畜産農家に幾ら等々、基本的な融資データを有していないことが明らかになりました。いかに生産者を見ていないかのあらわれであります。

 このように、農林水産業の生産者等への融資を主たる業務と認識せずに、本来の目的から逸脱した農林中央金庫に公的資金を注入することは、マネーゲームの失敗を国民の税金で救済するに等しく、地域の中小企業や生産者に対する金融の円滑化という本法の目的から大きく逸脱しているものと言わざるを得ません。

 また、政治的中立性が担保されていない農協系金融機関に国民の税金が投入されることも、極めて問題であります。今後はこのような体質を改め、真の農業生産者のための金融機関となることを強く求めるものであります。

 次に、新銀行東京については、ずさんな経営により大きな損失を出しており、まさに乱脈融資の源と言っても過言ではありません。このような損失を国民の税金で穴埋めすることには断固反対であります。

 最後に、本法を施行するに当たり、政府は、十年前の金融危機の際、金融機関に公的資金を注入した金融機能早期健全化法を検証しなければなりません。このときも、政府は、中小企業向け貸し出しの総額を増加させるとの告示を出しましたが、にもかかわらず、その後の十年間で、銀行では七十兆円、信用金庫と信用組合ではそれぞれ七兆円も中小企業向けの融資残高が減りました。

 中小零細企業や一次産業の生産者は、国家の財産であります。今回は、本法の目的を忠実に実行し、中小企業や生産者の金融の円滑化が確実に実行されますことを強く求め、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 吉田六左エ門君。

    〔吉田六左エ門君登壇〕

吉田六左エ門君 自由民主党の吉田六左エ門であります。

 私は、自由民主党を代表し、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案に対し、賛成の立場から討論を行います。よろしくお願いを申し上げます。(拍手)

 現在、世界的な金融市場の混乱が我が国経済、金融にも大きな影響を及ぼしており、中小企業は厳しい状況に直面しています。こうした中、金融機関は、資本基盤を強化し、金融仲介機能を発揮することが強く求められています。

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案は、こうした状況の中、国の資本参加の申請期限を平成二十四年三月末まで延長するとしています。一つ、一律に経営責任の明確化を求める制度を見直す、二つ、協同組織中央金融機関等への資本参加を可能とする新たな枠組みを設けるなど、現行法の使い勝手を改善しております。さらに、委員会における審議を経て、経営責任の明確化や透明性の一層の向上に関し、修正が図られています。

 今回の改正は、世界的な金融市場の混乱の中、必ずしも個々の金融機関の責めに帰するべきでない事情により自己資本への影響が懸念される状況に対応し、国の資本参加の申請がしやすい環境を整備することにより、金融機関の資本基盤を強化し、もって中小企業向け貸し出しの円滑化を図ろうというものであり、現下の状況においてぜひとも必要なものであると考えます。

 また、保険業法の一部を改正する法律案は、最近の経済社会情勢の変化を踏まえ、保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、生命保険契約者保護機構に対する政府補助を可能とする規定を平成二十四年三月末まで延長するものです。

 さらに厳しさを増す経済社会情勢のもと、地域経済、中小企業等を支援し、保険契約者等を保護するため、これらの法案は不可欠であることを再度訴え、国民、特に中小零細の皆さんが真に期待をしておられますこの法律改正、速やかなる成立を党派、思想、信条を超えて願い、私の賛成の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 佐々木憲昭君。

    〔佐々木憲昭君登壇〕

佐々木憲昭君 私は、日本共産党を代表し、金融機能強化法案及び保険業法改正案に対する反対討論を行います。(拍手)

 まず最初に、金融機能強化法改正案についてであります。

 本法案に反対する理由は、第一に、国際的な金融危機のもとで、投機的な資金運用に乗り出し自己資本を毀損した日本の金融機関を、公的資金を使って応援するものとなっているからであります。

 我が国は、一九九六年の住専処理以来、四十六兆円を超える公的資金を金融機関に投入し、十兆円以上の国民負担を発生させたのであります。公的資金を使った巨額の資本増強を初めとする銀行甘やかし政策が、失敗しても最後は税金で救ってくれるという安易な依存心を生み出したわけであります。それが、貯蓄から投資へという旗印のもとで進められた金融の規制緩和政策とも相まって、今日のような投機活動に傾斜した銀行、金融機関を生み出す一因となったのであります。

 本来、金融安定化の資金は、金融業界全体の責任と負担で確保すべきものであります。そうしてこそ、金融業界に自己規律を生み出し、相互監視機能を強めることにつながるのであります。

 アメリカでは緊急経済安定化法が成立しましたが、最終的損失を国民に回す日本とは根本的に違う仕組みになっているのであります。五年後に純損失が生じた場合、大統領が銀行業界に負担を求める法案を出すものとなっております。

 我が国の法案は、公的資金を投入する仕組みを復活させ、投機で失敗しても国民の税金で救済されるという、新たなモラルハザードを生み出すものとなっており、到底容認できるものではありません。

 反対する第二の理由は、本法案による資本注入が銀行の貸し渋り対策となる保証がないことであります。

 実績を見ていただきたい。過去十二年間に十二兆四千億円もの資本注入が行われました。しかし、銀行業界全体で八十四兆円も中小企業向け融資が削減されたのであります。公的資金による資本注入が貸し渋り対策につながらなかったことは、この事実からも明らかではありませんか。

 さらに、本法案では、中小企業向け貸出残高など地域経済貢献目標が未達成の場合、株主責任や経営責任を問う現行法の仕組みを削除しております。これは、目標達成を一層あいまいにするものとなっています。本法案の資本注入が貸し渋り対策として機能する保証はありません。

 今求められているのは、貸し渋りや貸しはがしを進めている金融機関の姿勢を正すことであります。銀行が自分の利益のみを優先させ、中小企業がつぶれても当然とする姿勢、リスクをとろうとしないこの姿勢を改めさせることこそ肝要であります。

 また、中小企業を直接応援する政策を進めることが必要です。信用保証制度の責任共有制度の導入や政府系金融機関の弱体化など、この間政府が行ってきた施策を根本的に見直すことを求めるものであります。

 最後に、保険業法改正案についてです。

 保険契約者保護制度は、保険会社の破綻時に機構が資金援助等を行うことにより破綻保険会社の保険契約者等を保護する仕組みであります。本来、その費用は保険業界全体で負担するのが原則であります。

 大和生命の破綻を含め、これまでの保険会社破綻の背景には、過度の高リスク金融商品での運用、生保不信による解約増、バブル期の乱脈経営などがあります。

 こうした経営責任と監督責任をあいまいにしたまま税金投入をする仕組みを残せば、業界と政府のモラルハザードを招きます。責任のない国民に破綻保険会社の損失を無制限に負担させる、このような仕組みを延長する本法案には反対であります。

 以上で、反対討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) 谷口隆義君。

    〔谷口隆義君登壇〕

谷口隆義君 公明党の谷口隆義でございます。

 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び保険業法の一部を改正する法律案につきまして、賛成の立場から討論を行います。(拍手)

 今回の米国発の金融危機は、米国並びに欧州の大手金融機関が破綻あるいは実質国有化されるなど、一九二九年の大恐慌以来、グリーンスパン氏が言うような百年に一度の危機的な事態となっております。欧米の金融危機は実体経済の悪化をもたらし、急激な円高も相まって、自動車を初め我が国の輸出の減少が始まっております。また、欧米の株式市場の大幅下落が、我が国株式市場での外国人を初めとする株売りにつながり、東証の平均株価は大幅下落となっております。

 欧米におきましては、信用収縮や、ひいては金融システムの混乱が現実のものと心配される中で、我が国の金融機関は、以前の大変な金融危機を乗り越え、不良債権の処理も進み、自公連立政権での安定したかじ取りで景気を長期的な回復軌道に乗せたことによりまして、金融システムは欧米に比べ致命傷は免れ、被害は最小限度に食いとめられたわけであります。

 しかし、世界的な株安の影響で大幅な株価下落となり、金融機関は、株式含み益が減少したり含み損を抱えたりということで、自己資本比率が低下をいたしております。さらに、世界経済の低迷により今後の景気悪化も予想され、金融機関が、特に地域の中小企業に対して、貸し渋り、貸しはがしが懸念をされておるところでございます。

 そのような中で、地域の中小企業に対する信用収縮を起こさないように、予防的に公的資本注入を可能とするのが金融機能強化特措法改正案の趣旨であります。現下の世界的な金融危機に対応するための緊急措置であり、賛成をするものであります。

 改正案につきましては、現行法で資本注入の申し入れが二件の実績にとどまったことを踏まえまして、金融機関が資本注入の申し入れをしやすくするために、金融機関の経営責任を制度上一律には求めないことといたしております。現下の金融情勢では、スピード感を持って円滑な資本注入を可能にすることが重要であり、危機対応としてやむを得ないと考えておるところであります。

 ただし、一律に責任を求めないということは野方図にするということではありません。委員会審議において、国の資本参加を受ける以上、モラルハザードを招かないよう責任ある経営がなされることが大原則であることが確認されたわけであります。

 例えば、今回の金融危機の影響により資本注入が必要になった場合と、従前の経営方針によって経営が悪化した場合とは区別をいたします。資本注入の申請に必要となる経営強化計画に、これまでの経営に対する分析に基づき抜本的な経営管理の体制の改善を図るための方策を記載させることといたしております。

 この点につきましては、議員提出の修正案により、その趣旨が法文上明確化されたわけであります。さらに、国の資本参加後も半期ごとに国がフォローアップし、必要に応じて監督上の措置を講じていくことといたしております。

 資本注入の申し入れのしやすさと経営責任の明確化とのバランスを図った本改正案とその修正案を評価するものであります。

 また、過去の公的資本注入では、必ずしも中小企業への貸し出しがふえなかったことが批判をされております。このたびの改正案による公的資本注入では、確実に中小企業への貸し出しの円滑化がなされなければなりません。

 法案では、資本注入の申請に必要となる経営強化計画に中小企業への信用供与の円滑化の方策を盛り込ませ、資本参加の決定時にこれを公表し、半期ごとにも報告、公表して、パブリックプレッシャーのもとで金融機関による自主的な取り組みを促します。

 また、金融庁が計画の履行状況についてフォローアップをするとともに、指標に改善が見られない場合には、報告徴求によりその原因を精査し、改善の努力が見られない場合には、必要に応じて計画を履行するため業務改善命令等を講ずることといたしております。その中で、特に経営体制等の内部に問題がある場合にはより強い手段をとることも委員会質疑の中で確認をいたしました。

 このような措置により、中小企業への信用供与の円滑化を確実に実現しようとしており、評価をいたします。

 なお、与野党の修正協議における民主党からの、農林中金に公的資本注入をする場合に、改めて国会の議決を必要とするという提案につきましては、農林中金だけ他の協同組織金融機関の中央機関と異なる扱いをすることになり、農林中金に対する信用不安を招きかねないということから、賛成をしかねるわけであります。

 さらに、新銀行東京を念頭に置いて、地方公共団体が支配株主となっている金融機関について法案の対象としないと民主党が修正提案をいたしました。地方公共団体が支配株主となっている事由をもって特定の金融機関を法案の対象として除外することは難しいと考えますが、地方公共団体が支配株主となっている金融機関につきまして、まず支配株主となっている地方公共団体が一義的にその経営健全化に責任を負うことは当然であると考えておりますことを申し添えるわけであります。

 また、保険業法の改正案は、生命保険会社のセーフティーネットを確保するものであります。生命保険会社が破綻をした場合に、生命保険契約者保護機構が責任準備金の九〇%までを補償いたしますが、生命保険会社の拠出のみで資金援助の対応が困難な場合、政府より補助を可能とする規定を、平成二十一年三月末から平成二十四年三月末まで延長するものであります。現下の厳しい金融状況のもとで、引き続き生命保険契約者の保護を的確に図るもので、賛成をいたします。

 以上、賛成の理由を申し上げまして、私の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表し、政府提案のいわゆる金融機能の安定化法に対する反対の討論を行います。(拍手)

 討論に先立ち、一言申し上げたいと思います。

 昨日、米国大統領選挙で勝利したオバマ氏は、アメリカの心を一つに、武力ではなく民主主義に由来する新しい政治を打ち立てることを世界に宣言しました。

 日本の政治もまた、平和外交においても金融危機対策にあっても、グローバル化した経済のもとで拡大する一方の格差にしっかりと目を向けて、新たな国際社会の調和をつくり上げるために全力を注ぐべきときと考えます。そのためにも、政権のチェンジが必要なことは論をまちません。

 さて、本法案に関してですが、反対する第一の理由は、そもそも金融機関に予防的な資本注入を行うに当たって、中小企業への継続的な融資に向けた明確な数値目標、あるいは中小企業側に立ったチェック体制が極めて不十分なことです。これでは、注入した資本がこれまで同様金融機関の内部に留保される可能性が極めて高く、貸し渋りの防止や中小企業への資金の円滑化に役立つ具体的な保証は相変わらずありません。

 第二に、原案では、資本注入を受ける金融機関の経営者、さらには株主の責任が全く明らかにされておらず、修正案では経営強化計画に従前の経営体制の見直しが盛り込まれるところとなりました。

 しかし、金融機関の役員の高額報酬については全く触れられておりません。国民の血税である公的資金を受けながら高額の報酬を受け続けることは、国民感情からしても断じて許すことができません。

 米国の新たな金融安定化法では、経営者の高額な退職金を禁じるなど銀行役員の報酬を引き下げる報酬制限がしっかりと盛り込まれています。我が国でも、申請する金融機関に対して、その公共性並びに健全な運営を期すために、役員報酬については開示し、抑制を図るべきです。

 第三に、新設された協同組織金融機関の中央機関への資本注入についても大きな問題があります。

 特に、農林中金は、農林水産業者を基盤とし、これらへの金融の円滑を図り、もって農林水産業の発展に寄与することと定められております。しかし、農林漁業分野への貸出金残高は、九・八兆円のうちわずか一・二%にすぎません。多額の資金をサブプライム関連商品などに投資し、あげくの果て一千億円超の損失額を計上しているのです。まさに投機に走った結果であり、その責任をあいまい化することなどできません。

 第四は、放漫経営で経営が行き詰まることが予想される新銀行東京が対象から相変わらず除外されていないことです。

 新銀行東京は、石原都政によって設立されましたが、放漫経営やずさんな融資実態から赤字となり、新たに東京都による四百億円の追加出資を受けざるを得ない状態です。政府は、特定の銀行は外すことはできない、あるいは審査会で判断する等々としていますが、新銀行東京の経営悪化は、現下の金融不安とは全く関係のないものです。財務金融委員会の附帯決議では、自治体に第一義的な責任があるとされていますが、この程度では何の規制策にもなりません。

 なお、保険業法改正案につきましては、基本的に支持できると判断し、賛成いたします。

 最後に、本格的な金融対策は、解散・総選挙によって選ばれた新しい政権によってのみ可能となると考えます。イエス・ウイ・キャン、この言葉に込められた国民の未来に対する熱い希望にこたえることが政治家の責務であることを申し添えて、私の反対討論といたします。(拍手)

議長(河野洋平君) 糸川正晃君。

    〔糸川正晃君登壇〕

糸川正晃君 国民新党の糸川正晃です。

 私は、国民新党・大地・無所属の会を代表し、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。(拍手)

 以下、具体的に理由を申し述べます。

 まず第一に、公的資本注入に対する経営責任の追及が極めて不十分な点であります。

 本年三月末で申請期限が切れた現行の金融機能強化法は、公的資本注入に当たっては厳しく経営責任を問うこととなっておりました。ところが、本法律案は、公的資本注入の要件を大幅に緩和することとし、金融機関の経営責任の明確化の要件や、抜本的な組織再編成を伴わない場合に加重されていた要件を、制度上、一律に求めないこととしております。しかし、これでは、金融機関自身の救済策になってしまうことは明白であります。国民の血税を注入する以上、過去の経営責任を明確化することは当然のことではないでしょうか。

 現行の金融機能強化法がこれまでにわずか二件しか利用されず、注入額も四百五億円にとどまったからといって、安易に要件を緩和し、注入を許すことは、金融機関のモラルハザードを助長する以外の何物でもありません。さらに、健全な金融機能を発揮することに対し、深刻な悪影響が生じることを深く憂慮せざるを得ません。

 本法律案は、国民の血税を注入することの重大さに対する認識が欠如しており、公的資本注入の前提要件を破壊するものとさえ言えるものであって、まさに改悪と言わざるを得ません。

 なお、委員会における修正では、責任ある経営体制の確立に関する事項に、従前の経営体制の見直しに関する事項が含まれることを明確にしたほか、協同組織中央金融機関等における従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項を追加しております。しかし、公的資本注入に当たって経営責任が確実に問われるのか、いまだ不明確であります。

 第二に、公的資本注入によって中小企業向け貸し出しがふえる保証がない点も、この法律案の重大な問題点であります。

 これまでも、中小企業向け貸し出しは減少の一途をたどっております。金融庁は、府令の改正により、経営強化計画の中に中小企業向け貸し出しの比率の維持向上を盛り込むとしておりますが、貸出残高の数値目標を義務づけることは、資金需要との関係等があり、困難であるとしております。これでは、公的資本を注入したとしても、中小企業向け貸し出しがふえる保証は全くありません。公的資本が金融機関自身のために使われてしまい、法の本来の目的が果たせる保証がないのです。

 このような本法律案の制度設計は、金融機関のみの立場に立ち、借り手の立場を無視していることの証左であります。むしろ、金融機関という貸し手ではなく、中小企業を初めとした借り手の立場を中心にした救済策を講じるべきだと考えます。

 真に必要としている中小企業にあまねく資金が行き渡るような制度を構築するのが、今、政府に課せられた最大の責務ではないでしょうか。弱者を切り捨てる名ばかりの政策ではなく、すべての国民を幸せにする真の安心を確立することが必要です。中小企業を助け、恵まれない地域社会を守り抜き、地方の活力と額に汗して働く人が報われる社会を取り戻す必要があります。公的資本を注入することよりもモラトリアムを導入することこそ、現下の中小企業にとって最も有効な政策であると考えております。

 本法律案は、現行の金融機能強化法を金融機関という貸し手を救済する仕組みに改悪するものであって、中小企業金融の円滑化につながらないばかりか、モラルハザードを助長し、健全な金融機能を阻害する以外の何物でもなく、反対するものであります。

 以上、理由を申し述べ、討論を終わります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       国務大臣  中川 昭一君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.