衆議院

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第23号 平成21年4月14日(火曜日)

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平成二十一年四月十四日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十四号

  平成二十一年四月十四日

    午後一時開議

 第一 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第二 平成十九年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 第三 平成十九年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 第四 平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 第五 平成十九年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 第六 平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第二 平成十九年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第三 平成十九年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第四 平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第五 平成十九年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第六 平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(河野洋平君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(河野洋平君) 日程第一、第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長河野太郎君。

    ―――――――――――――

 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔河野太郎君登壇〕

河野太郎君 外務委員長の河野太郎でございます。

 ただいま議題となりました第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、御報告申し上げます。

 本件は、三月二十六日外務委員会に付託され、二十七日中曽根外務大臣より提案理由を聴取し、四月三日より質疑に入りました。四月六日には外務委員会として公式に沖縄を視察し、八日には参考人をお招きして御意見を伺い、十日に麻生内閣総理大臣の出席を求め、質疑を行うなど、慎重に審議を進めてまいりました。

 審議時間がさらに必要だとの御意見もございましたが、理事会で、十日の質疑終了後、討論、採決という日程が合意され、採決の結果、自由民主党並びに公明党が賛成、民主党・無所属クラブ、共産党及び社民党が反対、賛成多数で承認すべきものと決しました。

 なお、民主党・無所属クラブは、我が国政府の真水の財政支出部分のみを協定化する理由、グアム移転の全体計画の整合性、経費の積算根拠などについて、政府の説明責任が果たされていないとして反対、共産党は、米軍のグアム基地の強化に我が国政府が財政支出することに反対し、さらに普天間基地代替施設の名護市辺野古付近への建設につながる本協定は沖縄の負担軽減につながらないと反対、社民党は、普天間基地代替施設の建設される辺野古付近の住民の負担がふえること、さらに海兵隊の削減規模が不明確であることなどを理由に反対いたしました。

 本協定は、まず、我が国政府が海兵隊のグアム移転に際し二十八億ドルを上限とする財政支出を行うこと、米国政府が普天間基地代替施設の建設に進展のあることなどを条件に海兵隊のグアム移転に必要な措置をとることを取り決めております。

 本件の審査の中で、海兵隊の八千人の削減は、実数ではなく、海兵隊の定員の数であることが明らかにされ、また、政府の統一見解で、我が国が仮に普天間基地の代替施設を完成することができなくとも、本協定三条第二項の違反にならないことが明確になりました。

 さらに、本協定の締結いかんにかかわらず、普天間基地代替施設の建設に当たっては、環境影響評価法並びに公有水面埋立法の法令に従った手続が必要であるということも確認されました。

 外務委員会の視察に際し、沖縄県会議長より、沖縄県議会は本協定に反対である旨が表明され、さらに沖縄県からは、本協定に関連して、地位協定の運用の改善ではなく地位協定の改定そのもの並びに基地の使用協定の締結を求める強い声が出されました。

 以上、我が外務委員会が承認すべきものと決した本協定が真に沖縄の負担軽減につながることを願い、御報告させていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第二 平成十九年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第三 平成十九年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第四 平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その1)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第五 平成十九年度特別会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

 日程第六 平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額総調書及び各省各庁所管経費増額調書(その2)(承諾を求めるの件)(第百六十九回国会、内閣提出)

議長(河野洋平君) 日程第二ないし第六に掲げました平成十九年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)(承諾を求めるの件)外四件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。決算行政監視委員長川端達夫君。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔川端達夫君登壇〕

川端達夫君 ただいま議題となりました平成十九年度一般会計予備費使用総調書及び各省各庁所管使用調書(その1)外四件につきまして、決算行政監視委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 これらの各件は、財政法の規定等に基づき、国会の事後承諾を求めるため提出されたものであります。

 まず、平成十九年度一般会計予備費(その1)は、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第9因子製剤による特定C型肝炎ウイルス感染者等に対する給付金の支給に必要な経費、主要国首脳会議の開催準備に必要な経費等十九件で、その使用総額は五百九十七億円余であります。

 次に、平成十九年度特別会計予備費(その1)は、食料安定供給特別会計麦管理勘定における麦の買い入れに必要な経費で、その使用総額は五百四十九億円余であります。(その2)は、森林保険特別会計における保険金等の不足を補うために必要な経費で、その使用総額は十四億円余であります。

 最後に、平成十九年度特別会計予算総則第七条第一項の規定による経費増額(その1)は、道路整備特別会計における道路事業の調整等に必要な経費の増額等五特別会計の十一件で、その経費増額の総額は六百十六億円余であります。(その2)は、交付税及び譲与税配付金特別会計交付税及び譲与税配付金勘定における地方譲与税譲与金に必要な経費の増額で、その額は五十五億円余であります。

 委員会におきましては、これら各件につき第百七十回国会において財務大臣から説明を聴取し、昨十三日に質疑を行い、採決の結果、各件はいずれも多数をもって承諾を与えるべきものと議決いたしました。

 以上、御報告いたします。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) これより採決に入ります。

 まず、日程第二及び第四の両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

 次に、日程第三、第五及び第六の三件を一括して採決いたします。

 三件は委員長報告のとおり承諾を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(河野洋平君) 起立多数。よって、三件とも委員長報告のとおり承諾を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(河野洋平君) この際、内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣金子一義君。

    〔国務大臣金子一義君登壇〕

国務大臣(金子一義君) 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存するなど外国貿易の重要度が高い我が国の経済社会及び国民生活にとって、海上を航行する船舶の安全の確保は極めて重要でありますが、近年発生している海賊行為は、海上における公共の安全と秩序の維持に対する重大な脅威となっております。

 公海等における海賊行為については、国連海洋法条約において、すべての国が最大限に可能な範囲でその抑止に協力するとされているとともに、関係者や関係船舶の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使することが認められております。

 このような状況及び国連海洋法条約の趣旨にかんがみると、海賊行為の処罰及び海賊行為への適切かつ効果的な対処について法整備をすることが喫緊の課題であり、この法律案を提案することとした次第であります。

 次に、この法律案の概要につき御説明申し上げます。

 第一に、船舶に乗り組みまたは乗船した者が、私的目的で、公海または我が国領海等において行う航行中の他の船舶の強取、運航支配、船舶内の財物の強取、船舶内にある者の略取、人質による強要等の行為を海賊行為と定義しております。

 第二に、海賊行為をした者につき、その危険性や悪質性に応じて処罰することとしております。

 第三に、海賊行為への対処は、海上保安庁が必要な措置を実施するものとし、海上保安官等は、海上保安庁法において準用する警察官職務執行法第七条の規定による武器の使用のほか、他の船舶への著しい接近等の海賊行為を制止して停船させるため他に手段がない場合においても、武器を使用することができるようになっております。

 第四に、防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て海賊対処行動を命ずることができるものとし、当該承認を受けようとするときは、原則として、対処要項を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならないこととするとともに、内閣総理大臣は、国会に所要の報告をしなければならないこととしております。

 第五に、海賊対処行動を命ぜられた自衛官につき、海上保安庁法の所要の規定、武器の使用に関する警察官職務執行法第七条の規定及び他の船舶への著しい接近等の海賊行為を制止して停船させるための武器の使用に係るこの法律案の規定を準用することとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。江渡聡徳君。

    〔江渡聡徳君登壇〕

江渡聡徳君 自由民主党の江渡聡徳でございます。

 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま提案されました海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案、いわゆる海賊対処法案について、内閣総理大臣及び関係閣僚に御質問いたします。(拍手)

 まず初めに、一昨日、海賊に人質にされていたアメリカ船籍の船長リチャード・フィリップスさんが、海賊対処のためにソマリア沖に派遣されていたアメリカ海軍によって無事救出されました。改めて海賊問題の深刻さを痛感させられたところでございます。

 さて、我が国は、改めて申すまでもなく、貿易立国であり、原油の九九・六%、鉄鉱石の一〇〇%を輸入に依存しているなど、我が国の経済社会及び国民生活にとって輸出入の安定性が極めて重要であることは論をまたないところであります。重量ベースでその九九・七%は海上運送が分担しており、安定した輸出入の確保は、海上交通の安全確保なしには到底考えられません。

 このような中、近年、海上交通の要衝であるソマリア沖・アデン湾において、極めて凶悪な海賊被害が多数報告されております。昨年一年間で百十一件の事案が発生し、四十二隻が海賊に乗っ取られました。本年に入っても、四月十三日現在で七十三件が発生し、十四隻が乗っ取られており、既に昨年の半分を上回っております。現在でも、十四隻の船舶とともに約二百六十人の乗組員等が人質になっております。我が国に関係する船舶では、本年三月に自動車運搬船が銃撃を受ける等の被害が生じております。

 国連海洋法条約では、公海における旗国主義の原則の例外として、公海等において行われる海賊行為について、いずれの国も管轄権を行使することが認められているとともに、すべての国に対して、最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力するという義務も課しております。

 また、昨年六月以降、四回の国連安保理決議が採択され、各国に軍艦を派遣することを要請しており、既に、アメリカ、ドイツ、インド、中国、韓国等二十カ国以上が艦船を派遣しております。また、国連安保理決議に基づき設けられたソマリア沖海賊対策コンタクトグループや国際海事機関による地域会合では、周辺諸国の取り締まり能力向上に向けた支援等についての議論が行われております。

 このように、まさに世界各国が、海賊行為を人類共通の敵である犯罪行為として、さまざまな取り組みを行っているところであります。

 我が国も、本年三月十三日、内閣総理大臣の指示のもと、防衛大臣が応急措置として海上警備行動を発令し、現在、派遣された二隻の護衛艦によって我が国に関係する船舶のエスコートが実施されております。この措置は、いつ重大な被害が発生しないとも限らない状況を受け、また法案の成立には一定の時間を要することを踏まえた英断であり、内閣総理大臣、防衛大臣を初め関係者に敬意を表するところであります。

 最近の内閣府世論調査では、国民の六三%が肯定的な回答をしております。また、日本の取り組みを非常に高く評価すると欧州連合のフィリップ・ジョーンズ司令官も表明したと聞いており、国内外から極めて高く評価されていることは疑いもありません。

 我が国商船隊約二千三百隻に占める日本籍船はわずか九十隻余りであり、船員も外国人船員が多くを占めております。外国籍船に乗り組む外国人船員に対する海賊行為については、エスコートの対象外となるものがありますし、犯罪としての取り締まりも十分にできない状況となっております。

 そのような状況の中で、四月四日と四月十一日、現地に派遣されている護衛艦が、外国商船からの救助要請にこたえ、不審船を事実行為として追い払う事案がありました。すばらしい対応だと思っておりますが、法令に基づく措置が実施できない以上、相手次第では十分な対応ができないおそれがあります。一刻も早く改善しなければならないと考えております。

 以上のような状況の中、本法案は、我が国が国際社会と歩調を合わせて海賊対処に積極的に貢献することを可能とする極めて有意義な法案であります。日本船主協会、全日本海員組合という海運労使双方から、早急な法整備に対し強い期待が表明されております。

 衆議院での審議開始に当たり、私は、最近の国際情勢や世論の動向等を踏まえ、以下の点について、内閣総理大臣及び関係閣僚より御所見を賜りたいと存じます。

 第一に、海賊行為により海上運送の安全性が脅かされており、我が国に与える影響は甚大だと考えますが、安全で安定的な海上運送の重要性、海賊対処を行う必要性について、法案担当大臣たる金子海洋政策担当大臣の御所見を賜ります。

 第二に、海賊行為への対処は、第一義的には、海上における人命、財産の保護や治安の維持について責務を有する海上保安庁の任務であると考えます。ソマリア沖・アデン湾に海上保安庁の巡視船を派遣できないのか、金子国土交通大臣の御認識を賜ります。

 第三に、公海上における私的目的である海賊行為の取り締まりは、国連海洋法条約により我が国も管轄権を有しており、警察活動としてこれを取り締まることは憲法第九条の禁止する武力行使に当たらないと考えますが、総理の御所見を賜ります。

 第四に、ソマリア沖で海賊行為が頻発する状況の背景には、ソマリアでは、法執行機関が全く機能していないことや、社会インフラが破壊され、若年層の失業率が高いという事情もあると言われております。

 我が国としては、海賊行為への対処に加え、ソマリア沖における海賊問題の根本的解決のために、周辺諸国の取り締まり能力向上の支援やソマリア情勢の安定化に積極的に取り組むべきだと考えますが、外務大臣の御所見を賜ります。

 最後に、以上の点を踏まえまして、本法案の成立に向けた総理の御決意をお聞かせ願いたいと存じます。

 結びに当たりまして、今このときにおいても、ソマリア周辺の海域で、海上警備行動として、現行法の制約の中で可能な限り海上輸送の安全確保に取り組んでおられる自衛隊員、海上保安官の方々に深く敬意を表したいと思います。それゆえ、我々議員は、真剣な審議を行った上で、一日も早く本法案を成立させ、政府が万全の体制で海賊対処に取り組むことができるようにしなければならないわけであります。

 与党として全力を尽くしますことを表明し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 江渡議員の質問にお答えをいたします。

 まず最初に、海賊行為の取り締まりと憲法第九条についてのお尋ねがありました。

 海賊行為にありまして、日本の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為を行った者に対し法令の範囲内で武器を使用することは、憲法第九条が禁じております武力の行使には当たらない、そう考えております。

 次に、本法律の成立に向けた決意についてのお尋ねがありました。

 海賊行為は、海上輸送の安全確保という日本の国益を脅かす死活的な問題だと考えております。特に、ソマリア沖の海賊は、日本を含め国際社会への脅威であり、緊急に対処すべき課題であります。

 日本国民の生命財産の保護は政府の最も重要な責務であり、当面の応急措置としての海上警備行動に加えて、海賊行為へ適切かつ効果的に対処するための法律を整備することは、喫緊の課題であると考えております。

 私は、本法案の早期成立に全力を傾注してまいります。(拍手)

    〔国務大臣金子一義君登壇〕

国務大臣(金子一義君) 安全で安定的な海上輸送の重要性、海賊対処を行う必要性についてお尋ねがありました。

 麻生総理から御答弁させていただきましたとおり、ソマリア沖・アデン湾において急増する海賊行為は、重大な我が国にとっての脅威であります。海賊に適切に対処することは、政府として、緊急かつ重要な課題であるとも認識しております。

 ソマリア沖・アデン湾に海上保安庁の巡視艇を派遣できないのかとのお尋ねがありました。

 海上保安庁では、東南アジア海域における海賊対策も含め、引き続きその第一義的責務を果たしてまいります。しかしながら、ソマリア沖・アデン湾の海賊対策として海上保安庁の巡視艇を派遣することは、日本からの距離、海賊が所持する武器、各国海軍の軍艦等が対応していることなどを総合的に勘案すると、現状においては困難と考えております。

 なお、海上警備行動の発令により派遣される自衛艦への海上保安官の同乗、ソマリア周辺国の海上保安機関の法執行能力向上の支援等、必要な範囲で積極的に支援をしていくこととしております。(拍手)

    〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕

国務大臣(中曽根弘文君) ソマリア沖海賊問題の根本的解決のための取り組みについてお尋ねがございました。

 我が国といたしましては、議員御指摘のとおり、周辺沿岸国の海上取り締まり能力の向上、それから海賊事案増加の背景にある不安定なソマリア情勢の安定化という両面での支援を行ってきております。

 前者につきましては、イエメン及びオマーンの海上保安機関の職員の招聘、研修など能力向上のための支援に取り組んでおり、引き続き、周辺沿岸国に対し、我が国として何ができるか検討していく考えでございます。

 後者につきましては、ソマリアに対する人道支援、治安改善支援を実施しており、その総額は、最近二年間で約六千七百万ドルに達しています。

 我が国といたしましては、今後とも、ソマリアの安定化のために積極的に協力をしていく考えでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 山口壯君。

    〔山口壯君登壇〕

山口壯君 民主党の山口壯です。

 民主党・無所属クラブを代表して、政府提出の海賊対処法案について質問します。(拍手)

 ソマリア沖の海賊事案に対しては、現在、我が国も含めて各国が軍艦等を派遣し、多国籍のオペレーションが行われていますが、にもかかわらず、先週六隻の船が海賊にハイジャックされ、海賊行為がとまらないことを受けて、世界の専門家の間では、幾つかの問題点が指摘されつつあります。

 第一に、現在の多国籍のオペレーションは、基本的には寄ってくる海賊を追っ払うだけの対症療法であり、海賊天国と化したソマリアそのものへの対策になっていないという問題点。直接に問題の根源を絶たないと、海上の作戦だけでは海賊行為はとまらないと見られるに至っています。

 そして第二に、海賊の出没する地域が、多国籍のオペレーションを避けるように変化しており、アデン湾よりずっと南、ケニア沖においてもハイジャックが起こっていますが、そこまでは今のオペレーションではカバーできないという問題点。さらに、軍艦は大体において警告射撃による対応をするだけで、海賊を捕まえることが少なく、捕まえた場合でも、彼らをいわばキャッチ・アンド・リリースしてしまっているのが現状です。

 現在行われているオペレーションのままでは、今後たとえ補強しても、それは問題の一部にふたをするにすぎないと見られるに至っています。

 これらの点を踏まえ、我が国は海賊問題にどのように対処すべきでしょうか。

 今回の政府提出の法案は、その第五条で、「海賊行為への対処は、」「海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。」とし、第一義的には海上保安庁が対処することになっているように読めます。

 ソマリア沖における海賊行為は、犯罪案件と呼ばれるものであり、軍事的脅威のたぐいではないことについて、国際的な見方は一致しています。犯罪ですから、海上警察たる海上保安庁が主たる責任を担うという考え方で正しいと思います。

 麻生総理、今回の法案において、海賊対策は一義的には海上保安庁の担当であるとの理解でよろしいでしょうか、御答弁ください。

 ただし、これまでの政府の国会答弁等を聞く限り、まず海上自衛隊派遣の結論ありきなのではないかとの印象を強く受けます。

 今すぐの対処のために、政府はとりあえず海上自衛隊を海警行動として出したわけですが、海上警備行動ではもともと外国船を保護することはできず、先日、護衛対象外のシンガポールの船から助けてくれと言われて不審船を追っ払ったオペレーションについても、人道的にはともかく、その法的根拠についてはすっきりしません。仮にも自衛隊を動かすことですから、麻生総理、先日のシンガポール船にかかわるオペレーションの法的根拠は何なのか、確認させてください。

 今回の法案は、この後、十年、二十年、三十年をカバーする恒久法として考えているわけですから、海賊問題を根絶しようとすることが大事であり、その観点から海上保安庁第一義の趣旨が徹底されるべきです。

 にもかかわらず、ソマリア沖での海賊事案に対して、海上保安庁は巡視船派遣が困難と言い、その理由として三つ、第一に日本から遠いということ、第二に海賊が重火器を持っている点、そして第三に各国が軍艦等で対応していることに言及しますが、本当でしょうか。

 まず、ソマリアのような遠くまで行ける船がないとか、あるいは海賊がロケットランチャーのような重火器で武装しているからとかの点については、海上保安庁はプルトニウム運搬船護衛に使われる世界最大の巡視船「しきしま」を保有しています。

 昨日、私は実際に「しきしま」に乗船、現物を拝見させてもらいました。

 「しきしま」の大きさは「はたかぜ」型護衛艦とほぼ同じであり、イージス艦「こんごう」型護衛艦に迫るサイズです。航続距離も二万海里以上と非常に長く、ヨーロッパから日本まで、オーストラリアを南回りで来ても寄港なしで航海することができます。さらに、軍艦構造で、多数の水密区画に分けられているので、小さいミサイルやロケット砲に十分耐えられます。

 そして、兵装は、三十五ミリ機関砲二基、二十ミリ機関砲二基に加え、海上自衛隊の「はつゆき」型護衛艦などでも使用されている二次元対空レーダーも備えており、レーダー誘導、センサー誘導による精密な対空、対水上の射撃が可能で、テロリストや海賊が使用するであろう小型高速船、ヘリコプター、小型飛行機による攻撃を打ち砕くに十分な戦闘能力を備えています。加えて、大型のスーパーピューマヘリコプター、防弾仕様を二機搭載しており、周辺海域の哨戒を行うこともできます。また、小銃などで武装している特別警護隊を乗船させて不測の事態に備えています。

 「しきしま」一隻では対応できないと言われますけれども、それならば、とりあえず海上自衛隊の船を海上保安庁に所管がえして補うという案はどうでしょうか。最新鋭艦である必要はありません。海賊対処ができればいいのです。国有財産法十二条は、関係大臣、この場合は、防衛大臣、国土交通大臣及び財務大臣が合意すればそれが可能であると定めています。

 早く所管がえして一刻も早く船になれればいいと思いますが、操船についてもしも不安が残るのであれば、海上保安官に加えて幾ばくかの海上自衛官が海上保安官の身分を併有、同乗すればいいわけです。武器の使用についても同様です。自衛隊法六十条二項と自衛隊法施行規則六十条一項五号により、それは可能です。このような案について、麻生総理、いかがでしょうか。

 しかし、そもそも、法案が第一義的に海賊行為への対処は海上保安庁が行うという趣旨であるとすれば、それが可能になるよう、少なくとも中長期的には海上保安庁に「しきしま」のような軍艦構造の船を追加的に持たせることが本来必要なはずです。麻生総理のお考えをお聞かせください。

 また、各国が軍艦で対応しているから日本の海上保安庁が行けないというのは、説得力もないし、情けない。海上保安庁の現場の海の男たちが、他の国が軍艦を派遣しているから行きませんとは言わないと信じたい。

 現に、海上保安庁は、諸外国の海軍軍艦との連携行動として、海上阻止訓練という形で、平成十五年にはオーストラリア主催のものに、平成十六年には相模湾において、平成十七年にはシンガポール主催のものに、平成十九年には伊豆大島東方海域において、そして平成二十年にはニュージーランド主催のものに、それぞれ参加している実績があります。

 さらに、海上保安庁の船には軍関係の通信を聞ける設備がないということを挙げますが、ないのであれば、つければいい。また、将来、海賊対処も念頭に置いて巡視船を建造する際には、当然、そのような通信機器は初めから装備すべきです。

 以上、三つの理由は、どれもこじつけで無理があり、説得力を欠きます。

 この法案が、海賊行為への対処は第一義的には海上保安庁が行うというのであれば、その趣旨を実現すべく、もっと本気になるべきです。あるいは、それは見せかけだけで、まずは海上自衛隊派遣の結論ありきだったのでしょうか。少なくとも、「しきしま」は対処可能ですから、現地に赴くべきです。そして、一隻で足りないのであれば、とりあえず海上自衛隊の船を所管がえしても補うなりして、本気で海上保安庁で対処しようとすべきです。

 さて、法案では、我が国の海賊対策は一義的には海上保安庁の任務とされながら、防衛大臣が特別の必要がある場合を判断して自衛隊を出すことが可能となっており、判断の主体が海上保安庁にはなっていません。しかし、海上保安庁による対応が困難かどうかの判断は、海上保安庁が行うべきです。そして、海上保安庁の要請があって初めて自衛隊の派遣につながるという仕組みにしないと法案の趣旨にそぐわないと思いますが、いかがでしょうか。麻生総理の答弁をお聞かせください。

 なお、今回の海賊対処法案において、万が一海上自衛隊を派遣する場合の国会の事前承認の項目が欠落していますが、シビリアンコントロールの観点から、それは必要です。また、派遣実施計画をつくり、派遣期限、派遣地域を明確にした上、国会に報告すべきと考えます。これらの点について、麻生総理の答弁を求めます。

 ソマリア沖の海賊問題を完全に片づけるには、機能するソマリア政府、効果的な沿岸警備隊及び警察力が必要であり、これらが存在しないことこそが問題なのです。ソマリアを含む海賊発生周辺諸国の国情安定支援や沿岸警備能力向上支援なしには、海賊対策は上滑りに終わります。もし本気で海賊対策を考えるのであれば、我が国としてそれら支援を行っていく旨、今回の海賊対処法においても明らかにすべきと考えますが、麻生総理の所見をお聞かせください。

 さらに、我が国がリーダーシップをとって海上警察の国際連携の枠組みの創設に奔走すべきです。それが海洋国家たる我が国の重要な役割だと思います。ちなみに民主党は、さきのテロ根絶法案において、政府に先駆けてこの旨を盛り込んでいました。そして、日本は既にその先例を持っています。すなわち、東南アジアのマラッカ・シンガポール海峡の海賊問題について、海上保安庁は、巡視船派遣のみならず、沿岸国の海上保安機関との合同訓練等々により、海賊発生件数を激減させています。また、日本の主導により、アジア海賊対策地域協力、ReCAAPが設立されました。

 麻生総理、ソマリア沖の海賊問題についても、海上警察の国際連携の国際的枠組みを日本主導で創設すべきです。例えば、国連が、アフリカ諸国とともに、ソマリア沿岸を監視するための沿岸警備隊を組織するとの構想が言われます。日本は、現在、安保理の非常任理事国ですから、このような構想を日本がイニシアチブをとって実現することが海賊問題の解決にとって極めて重要と考えます。麻生総理の所見を伺います。

 また、中曽根外務大臣、特にソマリアについて、その貧困問題等を含め、政府はどのような対策を考えておられるのか、具体的にお知らせください。

 他の西側諸国は、現下の厳しい経済状況下、海賊対策のための方策にお金をかけるつもりがないと言われ、それで軍艦で対処しているとの面もあります。他の国が軍艦を出しているから日本も出さなきゃとの感覚でこの法案が出されていることに、中途半端さを感じます。今回の法案が恒久法として提出されている割には、そこに、海賊問題についての根本的解決を目指す気迫が感じられません。

 政府は、今とりあえずは緊急に海上自衛隊の海警行動で対応していますが、海賊対処新法をつくる以上は、海賊対策が軍艦で海賊を追っ払うだけの対症療法にとどまってはなりません。でなければ、海賊事案が後を絶たない。どうしても、海上警察による海賊取り締まりの構図に持っていくべきです。

 私は、民主党を代表して、海賊問題の根本的解決を念頭に議論、提案させていただきました。役人はいろいろな理由を挙げてできないと言うとしても、政治家は、道なきところに道を開き、不可能を可能に変えていくのが仕事です。ソマリア沖に海上保安庁は堂々と行くべきです。そのために必要な環境を整えるのが私たちの仕事です。

 頑張りましょう。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 山口議員の御質問にお答えをさせていただきたいと存じます。

 まず最初に、本法案における海賊対策の第一義的な担当省庁についてのお尋ねがありました。

 海賊行為は海上における犯罪行為であるため、本法案におきましても、海賊行為への対処は、第一義的には、海上の法執行機関であります海上保安庁の責務であると考えております。

 次に、海上自衛隊による対応の法的根拠についてのお尋ねがありました。

 四月四日、護衛艦「さざなみ」が、シンガポール船籍の船舶から、小型船舶が接近している旨の通報を受け、大音響による呼びかけなどにより対応しておりますのは御存じのとおりです。本件の対応は、船員法第十四条の規定によって行ったものであります。

 海上自衛隊の護衛艦の海上保安庁への所管がえなどによる海賊対処についてお尋ねがあっておりました。

 海賊対処法案におきましては、海上保安庁のみでは対処することができない特別の場合には、自衛隊が有しております能力を活用して対処することといたしております。この仕組みは、現行の海上警備行動と共通のものであります。

 したがって、自衛隊について、あえて所管がえや身分の併有といった措置を行い、海上保安庁という外形を整えた上で海賊対処に従事させる合理的な理由を見出せないところであります。

 次に、「しきしま」のような巡視船を海上保安庁に保有させることについてお尋ねがありました。

 ソマリアの海賊問題に対応するため、「しきしま」のような大型の巡視船を追加的に海上保安庁が今保有するということを、現時点では考えておりません。

 遠方海域におけます重大事案への対処に関する望ましい体制のあり方全般につきましては、海賊行為をめぐる国際的な動向も踏まえつつ、引き続き検討してまいりたいと考えております。

 自衛隊の派遣の仕組みについてお尋ねがありました。

 本法案において、第七条第一項で、防衛大臣は、特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊に海賊対処行動を命ずることといたしております。また、第二項で、内閣総理大臣の承認を得るに当たって、防衛大臣は、海上保安庁など関係省庁と協議の上、自衛隊による海賊対処行動の必要性などを対処要項の中で明記することといたしております。したがって、海賊対処行動が必要である場合は適切に判断できるものと考えております。

 国会の関与などについてもお尋ねがありました。

 海賊行為への対処は警察行動でありまして、海上警備行動と同様に、国会の事前承認に関する規定を設けなかったものであります。

 他方、本法案では、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したときには、行動の必要性、区域、期間などを定めた対処要項の内容を遅滞なく国会に報告することといたしております。

 海賊対処行動では、自衛隊を的確な文民統制のもとで運用することが求められており、これらの報告により、国会への説明責任は十分に果たすことができると考えております。

 周辺沿岸国への支援について法案で明らかにすべきとのお尋ねがありました。

 周辺沿岸国などへの支援につきましては、海賊行為の根絶に向けた中長期的な観点から、沿岸国の海上取り締まり能力の向上、さらには、海賊行為急増の背景にありますソマリア情勢の安定化に向けた取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えております。

 他方、こうした取り組みを進める上で、新たな法律上の規定が必要というわけではないため、本法案には特段の規定を設けてはおりません。

 最後に、海賊対策のための国際的枠組みを日本主導で創設すべきとのお尋ねがありました。

 これは、国際社会におきましては、御存じのように、既に、国連安保理決議第千八百五十一号に従って設けられたコンタクトグループ、また、国際海事機関、いわゆるIMOのソマリア周辺海域海賊対策地域会合、いわゆるジブチ会合などで、種々の取り組みが進められております。ジブチ会合では、海賊対策のための地域協力の枠組みでもあります行動指針が採択をされているところであります。

 ソマリア沖海賊の根絶に向けた周辺国の海上取り締まり能力の向上や、また地域協力を推進するためには、こうした既存の枠組みを効果的に活用することが重要であります。

 日本といたしましては、これまでのアジア地域における海賊対策の経験を踏まえつつ、さきに挙げた既存の枠組みを通じて、持てる力を十分に生かしていきたいと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕

国務大臣(中曽根弘文君) ソマリアにおける貧困問題等への対策についてのお尋ねでございますが、我が国は、海賊事案増加の背景の一つであると考えられる不安定なソマリア情勢の安定化のために、人道支援や治安向上のための支援を行ってきております。それらの総額は、最近二年間で約六千七百万ドルに達しておりまして、食糧支援、難民支援、保健、水、衛生分野の支援、また人身取引対策のための支援あるいは警察支援、国境警備強化のための支援などを実施しているところでございます。

 我が国といたしましては、今後とも、ソマリアの安定のために積極的に協力をしていく考えでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 佐藤茂樹君。

    〔佐藤茂樹君登壇〕

佐藤茂樹君 公明党の佐藤茂樹でございます。

 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となりました海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案に関しまして質問いたします。(拍手)

 私は、与党の海賊対策等に関するプロジェクトチームの共同座長として、この法律案の作成、取りまとめにかかわらせていただきました。ようやく審議入りができることに、ひときわ感慨深いものを感じます。

 本日は、確認の意味も込めて、主要なポイントを質問させていただきます。

 近年、アフリカの角と呼ばれるソマリアの沖合及びアデン湾において、航行中の貨物船やタンカー等を襲撃し、乗組員や船舶を人質に身の代金を要求するという凶悪な海賊事件が頻発しております。昨年は前年の二・五倍に当たる百十一件もの海賊事件が発生しており、特に昨年秋以降、約二日に一件の割合に急増し、ことしは、四月十三日現在で七十三件と、既に昨年の件数の約七割となり、十四隻の船が抑留され、約二百六十名の乗員が人質になっており、状況はさらに悪化しております。

 この海域は、年間約二万隻の商船が行き交う世界貿易の大動脈であり、スエズ運河を経由し、アジアと欧州を結ぶ海上交通の要衝です。我が国に関連する船舶は年間二千隻を超えており、海賊の脅威に最もさらされているのが貿易立国である日本と言っても過言ではありません。

 海運業界からは、日本船主協会と全日本海員組合の労使双方がそろって政府や与党に対し、国民の生命財産の保護のために一日も早く自衛隊を派遣し、海賊対策を行うよう要請がありました。この切実な現場の声は、重く受けとめなければなりません。

 このような看過できない事態に対し、国連安保理は、昨年六月以降四回の決議を採択し、加盟国に海賊抑止のための協力を要請しました。これらを受けて、既に欧米諸国や中国、インドなど二機関、二十カ国以上が、軍艦等をソマリア沖やアデン湾に派遣し哨戒活動や護衛等を実施するなど、海賊対策を展開しております。

 麻生総理は、昨年十月の衆議院の特別委員会で、海賊対策を日本が行うことについて、前向きな答弁をされました。改めて、日本が海賊対策を行う背景と必要性について、総理の御所見を伺います。

 内閣府が三月十六日に発表した世論調査によりますと、「海賊対処に自衛隊がどのように取り組んでいくべきか」との問いに、「取り組んでいくべき」とした人が、「どちらかといえば」と答えた人と合わせて六三・二%に上り、「どちらかといえば必要ない」「必要ない」の計二九・一%を大きく上回りました。自衛隊が派遣されることに対して、多くの国民が理解を示していることがわかりました。

 そのような世論の理解とは裏腹に、一部野党から、自衛隊の派遣は筋違いとし、海上保安庁を派遣すべきとの声があります。

 そこで、今回、ソマリア沖の海賊対策のために海上保安庁ではなく海上自衛隊が派遣されることとなった理由を明快に説明いただきますよう、総理の御答弁を求めます。

 一方、既に海上警備行動の発令により海上自衛隊を派遣し、海賊対処を行っているのであれば、わざわざ新法をつくる必要はないのではないかとの声が一部にあります。今回、なぜ海賊対処法案を提出するに至ったのか、そしてその必要性について、総理の御所見をお尋ねします。

 私は、与党の現地視察団の一員として、二月上旬に、ソマリア周辺諸国並びにEU及び米国を中心とした有志連合の海上作戦部隊の司令部等を訪問いたしました。

 バーレーンで、CMF、有志連合海上作戦部隊のゴートニー司令官らと意見交換した際に、私が、日本は海賊対処に当たり、自衛隊艦船に海上保安官を同乗させ、海賊の対処は自衛隊が担い、司法警察業務は海上保安官が担う対応を考えている、米国はどのような取り組みをされているのかと尋ねましたところ、ゴートニー司令官は、米国でも全く同じ状況である、軍人には法執行権限がない、そのため合衆国連邦法執行官であるコーストガードを中心とする法執行チームが艦船に同乗して、法の執行を担っていると明快に述べられました。

 我々与党プロジェクトチームで取りまとめた海賊対処の取り組みが、米国でも同様であることが確認できました。

 二月二十日に呉港沖合で、海上自衛隊と海上保安庁による海賊対処の共同訓練が行われ、私も視察をさせていただきましたが、明確な役割分担と相互の連携協力が見事に行われておりました。

 そこで、今回の法律案で、「特別の必要がある場合」として自衛隊が海賊対処行動を行うに際しても、現行法の取り組みと同様に、自衛隊艦船に海上保安官を同乗させ、海賊行為への対処は自衛隊が担い、司法警察業務は海上保安官が担うという役割分担と、相互の緊密な連携協力のもとに海賊対処が行われるべきでありますし、準備段階から必要に応じて共同訓練などを行い、緊密な連携協力を図るべきであると考えますが、国土交通大臣を兼務されている海洋政策担当大臣並びに防衛大臣の御所見を伺います。

 次に、武器使用について二点お伺いします。

 海賊行為は海上における犯罪行為であり、その対処のための武器使用は、あくまで警察官職務執行法第七条を基本として行われると認識しておりますが、今回の法律案では、武器使用の規定を整備し、停船射撃という、民間船舶に接近する海賊を停船させるための武器使用が盛り込まれました。何ゆえ、武器使用権限を整備して停船射撃まで認めることに至ったのか、その理由を海洋政策担当大臣にお尋ねいたします。

 これに関連して、海賊対処法案が停船射撃を認めたことを根拠に、自衛隊の海外派遣における武器使用の拡大に道を開くかのような批判があります。

 しかしながら、そもそも海賊対処は、公海上の私的目的による犯罪行為を取り締まる警察活動であり、また、今回の武器使用権限の整備は、海上保安庁と海上自衛隊の両方に通じるものであり、自衛隊が海外で行ってきた別の任務の議論と混同すべきではありません。

 今回の海賊対策という公海における警察活動での武器使用権限の整備が、自衛隊の海外活動全体の武器使用の無原則な拡大に結びつくものではないと考えておりますが、防衛大臣の御所見をお尋ねします。

 次に、自衛隊の派遣については、どこまでも国民の十分な理解と支持があって行われるべきだと考えます。そのような考えから、公明党は、他の諸法令との整合性の観点から、国会報告を義務づけるべきだと主張し、自衛隊への海賊対処行動の発令後と終了後に、それぞれ遅滞なく、国会に報告しなければならないと法案に明記されました。

 国会報告を加えたことは、文民統制の観点からも、国民の不安を払拭する内容になったと思いますが、総理の御所見をお尋ねします。

 ソマリア沖・アデン湾の海賊は、ソマリアを本拠地にしております。ソマリアは、長年にわたり内戦状態が続き、国家機能を失ったいわゆる破綻国家であり、海賊を取り締まる能力を持ち合わせておりません。国際社会は、ソマリア情勢が安定化し、ソマリアが国家として復興しない限り、海賊の根絶はできないとの認識で一致しております。

 また、ジブチ等の周辺国からは、日本が東南アジアで行った沿岸国の海上保安能力の構築の実績を踏まえ、日本に対して、沿岸国の海上保安能力の向上への支援の期待が高いことも、私たち現地視察団は伺ってまいりました。

 すなわち、ソマリア沖・アデン湾の海賊問題の解決へ向けては、対症療法として目の前の脅威を抑止するための自衛隊派遣により行う海賊対策とともに、車の両輪として、ソマリア情勢の安定化、沿岸国の海上保安能力の構築、向上への支援や、ODAを使った復興のための中長期的な援助を行うことが必要であると考えますが、外務大臣の御見解をお尋ねします。

 結びに当たり、現地で任務についている海上自衛隊の護衛艦には、既に、四月四日と十一日の二度にわたって、日本に全く関係のない外国籍船から救助が求められ、船員法の規定に基づいて大音響発生装置を使うなどして対処をしていると伺っています。

 現場の自衛官の御苦労を考えるときに、我々立法府には一刻の猶予も許されません。一日も早く海賊対処法案が成立し、保護対象や武器使用権限についても、法に基づいて十分な海賊対策が効果的に行え、海上交通の安全と生命財産を守ることができるようになる日が来ることを念願し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 佐藤議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、海賊対策を行う背景や必要性についてのお尋ねがあっております。

 海賊行為は、海上輸送の安全確保という日本の国益を脅かす死活問題であります。特に、ソマリア沖の海賊は、日本を含め国際社会にとりましての脅威であって、緊急に対応すべき課題とも考えております。

 また、昨年の一連の国連安保理事会の決議は、海賊対処のための軍艦の派遣などを要請してきております。これにこたえ、欧米、アジアの国々が軍艦などを派遣しており、国際的な対応が行われておりますのは御存じのとおりです。

 日本国民の生命財産の保護は、政府の最も重要な責務の一つであり、新法が整備されるまでの応急措置としての海上警備行動に加えて、海賊行為へ適切かつ効果的に対処するための法律を整備することは喫緊の課題、そのように考えております。

 ソマリア沖へ自衛隊を派遣した理由についてのお尋ねがあっておりました。

 ソマリア沖の海賊対策に海上保安庁が当たることは、日本からの距離、一万二千キロ以上ございます、海賊が所持しております武器、また各国が海軍の軍艦などで対応していることなどを総合的に勘案すると、現状においては困難であろうと考えております。

 この海域では、最近も海賊事案が多発をいたしております。日本国民の人命、財産を緊急に保護する必要がありますことから、海上警備行動により海上自衛隊を派遣することにした背景であります。

 海賊対処法案の必要性などについてお尋ねがありました。

 既に実施をしております海上警備行動によります対応は、最近急増しております海賊事案に対して、新法整備までの応急措置として行っているものであります。

 しかしながら、海賊事案に、より適切かつ効果的に対応するという観点からは、保護対象が我が国に関係する船舶に限られている点や武器使用権限などの面で、必ずしも十分ではないといった課題があります。そこで、これらの点に対応するために本法案を提出したものであります。

 最後に、国会報告についてのお尋ねがありました。

 本法案では、内閣総理大臣は、自衛隊の海賊対処行動を承認したとき及びその行動が終了したときには、遅滞なく国会報告を行う旨が定められております。

 海賊対処行動では、自衛隊が長期間にわたり日本の領域外で活動することが想定されておりますため、自衛隊が的確な文民統制のもとで運用されることが求められているところであります。これらの報告により、国会への説明責任を十分に果たすことができると考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣金子一義君登壇〕

国務大臣(金子一義君) 佐藤議員にお答えいたします。

 海上保安庁と自衛隊の役割分担と連携協力についてお尋ねがありました。

 本法案では、現行の海上警備行動の仕組みと同様、海上保安庁のみで海賊への対処が不可能もしくは著しく困難な場合には、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣が自衛隊に海賊対処行動を命ずることができることとしております。

 この場合においても、海上保安庁としては、海賊行為を犯した者の逮捕、捜査等の司法警察権を担ってまいりますが、これを円滑かつ適切に実施するためには、海賊対処行動を行う自衛隊と緊密な連携協力が不可欠であります。

 海上保安庁と海上自衛隊は、海上警備行動に先立ち、海賊対処に関する共同訓練を実施してまいりました。海賊対処行動においても、このような役割の分担のもと、適切な海賊対処ができるよう、平素から、情報の交換、共同訓練の実施を通じて、緊密な連携協力を図ってまいります。

 もう一問、いわゆる停船射撃に関する規定を設けた理由についてお尋ねがありました。

 海賊行為への対処は、警察活動となるため、その武器使用に当たっては、本法案において準用する警察官職務執行法第七条の規定を基本として行うものであります。

 一方、ソマリア沖の海賊の実態を踏まえると、本法案において国内法上の犯罪として規定された海賊行為については、その後の重大な危害の発生を回避するため、海賊が船舶で民間の被害船舶に接近してきた段階で抑止する必要があります。

 したがって、本法案等において準用する警察官職務執行法第七条第一号の規定をいわば補完するものとして、本法案六条、海上保安官であります、及び第八条二項、自衛官であります、において、停船させることを目的とした武器の使用に関する規定を整備したものであります。(拍手)

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 佐藤議員にお答えいたします。

 まず、海賊対処に関する海上保安庁との連携協力についてお尋ねがありました。

 海上警備行動によるソマリア沖・アデン湾への護衛艦派遣につきましては、海上保安官が護衛艦に同乗し、司法警察業務を行うこととしております。このため、海上自衛隊と海上保安庁との連携強化を図る観点から、派遣準備の一環として、共同訓練などを実施いたしました。

 今回の海賊対処法案に基づき自衛隊が海賊へ対処する場合につきましても、このような海上自衛隊と海上保安庁との間での緊密な連携協力が重要であると考えておるところでございます。

 次に、海賊対処法案の武器使用権限についてお尋ねがありました。

 海賊対処法案においては、公海等における海賊行為を国内法上の犯罪として規定した上で、海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な武器使用権限を整備したものであります。

 他方、海賊対処以外の自衛隊による海外での活動については、他国の領域における活動であるなどさまざまな面で、海賊対処とはその前提が異なるものであります。したがって、自衛隊の海外活動全体の武器使用に関する議論に直接結びつくものではないと理解しているところでございます。(拍手)

    〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕

国務大臣(中曽根弘文君) ソマリア沖海賊問題の解決に向けての中長期的な援助についてのお尋ねがございました。

 我が国といたしましては、議員御指摘のとおり、周辺沿岸国の海上取り締まり能力の向上、また、海賊事案増加の背景にあります不安定なソマリア情勢の安定化という、両面での支援を行ってきております。

 前者につきましては、イエメン及びオマーンの海上保安機関の職員の招聘、研修など能力向上のための支援に取り組んでおりまして、引き続き、周辺沿岸国に対し我が国として何ができるか、アジアにおける経験も踏まえまして検討していく考えでございます。

 後者につきましては、ソマリアの人道支援や治安向上のための支援を行ってきております。それらの総額は、最近二年間で約六千七百万ドルに達しております。

 我が国といたしましては、今後とも、ソマリアの安定化のために積極的に協力をしていく考えでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表して、海賊対処法案について質問します。(拍手)

 本法案は、海賊対処を口実にして、自衛隊の海外活動と武器使用権限を拡大し、憲法九条が禁ずる海外での武力行使に道を開くものであり、断じて容認できません。

 まず指摘しなければならないことは、政府が、海賊対処の根拠法が必要だとして本法案を提出しながら、既に海上自衛隊の護衛艦二隻をソマリア沖に派遣していることです。

 明確な法的根拠もなしに、どうして実力部隊を海外に派遣できるのですか。しかも、派遣前にはできないとしてきた外国船舶の護衛活動にまで踏み出しているのです。これほど露骨に国会と国民を愚弄し、憲法をじゅうりんするものはありません。

 政府は、今回の自衛隊派遣の根拠を、海上警備行動だと説明しています。しかし、海上警備行動は、我が国領海、その周辺で海上保安庁では対応できない事態を想定したものだと歴代政府は説明してきたのではありませんか。官房長官も記者会見で、原則日本の領海内と述べていたのであります。領海はおろか、はるかかなたのソマリア沖まで派遣できるといつから政府見解を変更したのですか。明確な答弁を求めます。

 いわゆる海賊行為は、国際的な犯罪であり、許されることではありません。ソマリア沖の海賊は、現地、周辺国の警察活動を基本に、国際的な連携協力で対処すべき問題です。日本は、東南アジアで行ってきたように、地域協力の枠組みづくりや、ソマリアと周辺国の海上警察力を強化するための技術援助、財政援助を行うべきです。

 同時に、ソマリア問題の根本的な解決が必要です。

 ソマリアでは、九一年にバレ政権が崩壊し、内戦状態に陥って以降、国連PKO初の平和執行部隊の派遣、対テロ戦争の名による米軍の空爆と軍事介入などが行われてきました。外国漁船による違法操業、有毒廃棄物の不法投棄が横行し、これが元漁民を海賊行為に走らせたと言われています。まさに、これまでの国際社会の関与のあり方が問われているのであります。

 政府は、私の質問に対し、ソマリア領海内における違法操業や有害物質の不法投棄に対抗するための地元漁民による自衛手段という側面があった、米国は空爆なども行っていると答弁していますが、これまでこうした問題にどう取り組み、今後どう対応しようとしているのですか。

 政府は、海上自衛隊の補給艦をインド洋に派遣し、米軍艦船に対する給油支援を行ってきました。自衛隊は、ソマリア空爆を行う米軍の軍事行動を支援してきたのではありませんか。

 ソマリアの内戦と貧困という陸の問題が解決しない限り、海賊という海の問題も解決しないことは、国際社会の共通認識です。

 今、ソマリアでは、昨年八月、暫定連邦政府とソマリア再解放連盟の穏健派グループが武力行使の停止などで合意し、内戦終結と国民的和解に向けた努力が続けられています。憲法九条を持つ日本は、こうしたソマリア和平を後押しする外交努力と民生支援で積極的役割を果たすべきであります。答弁を求めます。

 今回の法案は、国連海洋法条約に則して、海上保安庁が国籍を問わず海賊行為を処罰し対処することを前面に出していますが、その核心は、自衛隊に海賊対処行動という新たな海外任務を与えることにあります。

 第七条は「特別の必要がある場合」に自衛隊の派遣を命令できるとしていますが、それは、どういう場合ですか。派遣規模、地理的範囲に限定はあるのですか。政府の一存で、世界の海に派遣できるのではありませんか。

 武器使用規定も重大です。政府は九〇年代以降、さまざまな口実で自衛隊の海外派遣を行ってきましたが、その武器使用は、隊員の生命身体の防護が原則だとしてきました。ところが、今回、海賊対処という任務遂行のための武器使用に踏み出しています。抵抗、逃亡する海賊への危害射撃、海賊行為を制止するための船体射撃まで規定しています。これによって、自衛隊が、戦後初めて、海外で人を殺傷する事態を引き起こしかねないのではありませんか。

 さらに、政府は、ソマリアの隣国であるジブチと自衛隊駐留のための地位協定を締結しました。P3C哨戒機などの航空部隊を現地に派遣するためと言いますが、P3Cが入手した情報は、米軍にも提供するのではありませんか。それは、対テロ戦争を行う米軍への情報提供につながるのではありませんか。明確な答弁を求めます。

 最後に、海賊対処を口実に、自衛隊の海外での武力行使、海外派兵恒久法に道を開く本法案はきっぱり廃案にするよう求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 赤嶺議員の質問にお答えをさせていただきます。

 まず最初に、自衛隊による海賊対処の法的根拠についてのお尋ねがあっておりました。

 ソマリア沖におきましては、海賊事案が多発、急増しておりますのは御存じのとおりです。日本国民の人命、財産を緊急に保護する必要がありますことから、新法の整備までの応急措置として、海上警備行動により、我が国に関係する船舶を海賊行為から防護することといたしました。

 また、海上警備行動の保護対象に該当しない船舶への対応は、強制力の行使を伴わない行為として行ったものであり、問題はありません。

 海上警備行動に係る政府見解についてお尋ねがありました。

 海上警備行動は、海賊対処を含め、海上における人命、財産の保護について、海上保安庁のみでは対応できない特別の必要がある場合に命じることとされております。

 また、その地理的範囲につきましては、任務を達成するための必要な限度で、公海に及ぶものであり、これらの政府の見解は、従来より一貫いたしております。

 地域協力の枠組みづくりや、ソマリアと周辺国の海上警備力を強化するための協力を行うべきとのお尋ねもありました。

 国際社会におきましては、御存じのように、国連安保理決議第千八百五十一号に従いまして設けられましたコンタクトグループや、国際海事機関、いわゆるIMOのソマリア周辺海域海賊対策地域会合、いわゆるジブチ会合などで、既に種々の取り組みが進められております。ジブチ会合では、海賊対策のための地域協力の枠組みである行動指針が採択されてもおります。

 ソマリア沖海賊の根絶に向けた周辺国の海上取り締まり能力の向上や、また地域協力を推進するためには、こうした既存の枠組みを効果的に活用することが重要であります。

 また、ソマリアと周辺沿岸国の海上取り締まり能力の向上のためには、ソマリアに対する治安改善支援や、イエメン及びオマーンの海上保安機関の職員の招聘、研修などに既に取り組んでおりまして、引き続き、日本として何ができるか、検討していく考えであります。

 ソマリア和平と民生支援について日本が役割を果たすべきとのお尋ねがありました。

 国土全体を実効的に統括する政府が存在をしていないと思われるソマリアの現状は、海賊問題やこの地域の安定という観点からも懸念のされるところであります。

 こうしたソマリアの現状を考えて、我が国は、これまでも人道支援、治安改善への支援を実施してきており、その総計、過去二年間で約六千七百万ドルに達しております。

 政府としては、今後とも、ソマリアの安定化のために積極的に協力をしていく考えであります。

 今回の法律案に対し、「特別の必要がある場合」及び派遣規模、地理的範囲についてのお尋ねがありました。

 本法案の「特別の必要がある場合」とは、海上保安庁のみでは海賊行為に対処することができない場合、または著しく困難な場合のことであります。

 また、防衛大臣は、内閣総理大臣の承認を受けようとするときには、海上保安庁など関係行政機関の長と協議をして、海賊対処行動の必要性、派遣規模、活動区域などについて定めた対処要項を作成することといたしております。これにより、派遣する自衛隊の部隊の規模、活動区域などが適切に定められることとなります。

 最後に、自衛隊が人を殺生することになるではないかとのお尋ねがありました。

 海賊への対処につきましては、警察官職務執行法第七条では対応できないことがあり得るため、本法では、新たに、停船のために武器を使用することができる旨、規定をいたしております。

 個別具体の状況における武器の使用につきましては、海上保安庁及び防衛省において作成される具体的かつ詳細な武器使用基準に照らして適切に判断されるものと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕

国務大臣(中曽根弘文君) ソマリア周辺における海賊問題の背景等につきお尋ねがございました。

 ソマリアの海賊の起源を確定的に述べることは困難でございますけれども、国連の報告書等によりますと、御指摘のとおり、ソマリア領海内における外国船の違法操業や有害物質の不法投棄を受けて経済状況が悪化する中で、地元漁民により行われるようになったとの側面があるとされています。

 他方、最近の海賊事案の多くは、このような性格のものから、人質の身の代金を目当てにした襲撃、乗っ取りへと変化したと認識をしております。その背景には、ソマリアの貧困問題や、法執行機関等の能力不足等があると考えられます。

 政府といたしましては、自衛隊派遣による海賊対策とともに、これまで、ソマリア情勢の安定化、沿岸国の海上取り締まり能力の向上という両面での支援を行ってきております。今後とも、ソマリアの安定化や周辺国の取り締まり能力強化のために積極的に協力をしていく考えでございます。(拍手)

    〔国務大臣浜田靖一君登壇〕

国務大臣(浜田靖一君) 赤嶺議員にお答えいたします。

 まず、海上自衛隊の補給支援活動について、米軍のソマリア空爆を支援しているのではないかとのお尋ねがありました。

 我が国としては、補給支援特措法のもと、テロ対策海上阻止活動に係る任務に従事する各国艦船に対し補給を行うこととしております。

 その際、補給の都度行う確認作業を通じて、我が国が補給する燃料が補給支援特措法の趣旨に沿って適切に使用されることをあらかじめ確認した上で補給を行っており、御質問のように、ソマリアの空爆を行う米軍に支援する目的で補給支援活動を行ったことはございません。

 次に、海賊対処法案における自衛隊による海賊対処についてお尋ねがございました。

 総理がお答えしましたとおり、本法案については、防衛大臣は、海上保安庁のみで海賊行為に対処することができない、または著しく困難であるとして「特別の必要がある場合」には、内閣総理大臣の承認を得て、海賊対処行動を命ずることができる旨定められております。

 また、防衛大臣は、内閣総理大臣の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、海賊対処行動の必要性、派遣部隊の規模、活動区域等について定めた対処要項を作成することとされており、派遣部隊の規模や活動区域等を適切に定めた上で派遣を決定することになります。

 次に、海賊対処法案による武器使用についてのお尋ねがございました。

 総理がお答えしたとおり、ソマリア沖の海賊の実態を踏まえると、海賊が船舶で被害船舶へ接近するなどの行為については、その後の重大な危害の発生を回避するため、これをその段階で抑止する必要性が高く、警職法第七条第一号の規定をいわば補完するものとして停船のための武器の使用を整備したものであります。

 いずれにせよ、自衛隊の武器使用は、法令に従い、適切に行われることになります。

 最後に、海賊対処のためのP3Cの派遣についてお尋ねがございました。

 ソマリア沖・アデン湾における日本関係船舶の護衛を効果的に実施するため、固定翼哨戒機P3Cを派遣し哨戒活動を実施することについて引き続き準備を進めているところでありますが、具体的な活動内容については検討中であります。

 以上であります。(拍手)

    〔国務大臣金子一義君登壇〕

国務大臣(金子一義君) 赤嶺議員から、ソマリアと周辺国の海上警察力を強化するための技術援助、財政援助を行うべきとの御質問がありました。

 昨年、イエメンの沿岸警備隊職員等を、JICA、海上犯罪取り締まり研修会に招聘いたしました。また、海上保安能力の向上を目指すイエメン政府からの要請を受けて、我が国は同国にODA調査員を派遣することとしておりますが、海上保安庁からもこの調査団に職員を派遣するなどして協力することとしております。

 海上保安庁としては、今後も、国連やIMOにおいて地域的な連携協力体制を構築する動きも踏まえつつ、東南アジア海域の海賊対策で培った知見を生かし、ソマリア周辺諸国の海上法執行能力の向上支援等の分野において、可能な範囲で積極的に対応していくこととしております。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 阿部知子君。

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 社会民主党の阿部知子です。

 ただいま議題となりました政府提出の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について、社会民主党・市民連合を代表して質問いたします。(拍手)

 冒頭、私どもは、ソマリア沖・アデン湾近辺でこの間多発している海賊事案を深く憂慮し、海の平和と海運関係者の安全を心から願うものです。

 さて、最初の質問ですが、なぜ今新法なのかという問題です。

 ソマリア沖の海賊事件は二〇〇五年以降増加し、〇七年前半には、海賊の多発によって国連の支援物資の輸送が危機に陥りました。同年末には、日本企業が運航するタンカーが襲撃されています。同年十一月には国際海事機関の決議が、〇八年六月以降は、国連安保理の累次にわたる決議が行われています。こうした国際社会の懸念を十分に国会で論議することなく、突如としてこのたびの自衛隊の出動という事態になるというのは、余りにも唐突であります。

 加えて、海上警備行動の領域を拡大解釈の上、自衛隊派遣をまず既成事実化し、さらに新法の成立を急ぐ理由は、国民には全く説明がされておりません。今なぜ海賊対処法なのか、いきなりの自衛隊派遣なのか、総理大臣にまずお伺いいたします。

 次に、我が国が行うべき海賊対策についてお尋ねいたします。

 近年、世界の海賊の四、五割を占めていた東南アジア海域は、日本が積極的に推進したアジア海賊対策地域協力協定、いわゆるReCAAP等の着実な対策の成果もあって、二〇〇〇年の二百四十二件が〇八年には五十四件と、年々減少してまいりました。沿岸諸国の海上法執行能力向上のための専門家の派遣や研修、情報収集・提供機能を果たすセンターの設立、訓練実施、巡視船の提供など、海上保安庁が中心になって取り組んできた海賊対策は、大きな成果を上げて、国際的にも高く評価されてきたのではないでしょうか。

 一方、今回のソマリア沖事案では、各国軍隊が対応することで、むしろ周辺諸国の連携に支障が生じ始めています。その意味でも、海賊対策として日本が果たすべき役割、日本に求められている役割は、海洋国家日本のノウハウを生かしたこれまでの海上保安活動のさらなる強化ではないかと考えますが、外務大臣、いかがですか。

 最後に、海上保安庁の問題について質問いたします。

 本法案において、海賊行為への対処は海上保安庁の責任としながら、実質的には、直ちに自衛隊による海賊対処行動の発令につながる構造となっています。海上保安庁としての具体的な取り組み以前に、防衛大臣が特別の必要があるとして海賊対処行動に踏み出すのであれば、海上保安庁が第一義的に海賊対策の取り組みを行うことにはなりません。

 今回の海上警備行動発令の際も、総合的に勘案した結果、海上保安庁による対処は困難として直ちに自衛艦が派遣されましたが、本当に海上保安庁による対処が困難なのか、真剣に検討したようには到底見えません。まして、自衛隊派遣によって治安警察行動と軍事活動の境界があいまいになることは、海上保安庁にとっても大きなマイナスだと思います。

 防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得て海賊対処行動を発令する際、この判断に国土交通大臣はどのように携わるのか。今回の海上警備行動の発令に際しても、海上保安庁の能力をどのように評価し、対処不能という判断にどのように携わったのか。国土交通大臣に御質問いたします。

 社民党は、海賊に対処するために日本に求められる役割は、拙速な自衛艦の派遣ではなく、海洋国家としてのノウハウを生かしたソフトパワーの国際協力であると考えます。

 また、本質的には、ソマリア問題を解決し、ソマリアに実効的な統治体制をつくることが不可欠です。国際社会による政治的な解決を支えながら、貧困や差別、暴力の蔓延を防ぐための活動に積極的に取り組む必要があります。

 日本が海賊の根絶のために果たすべき役割、平和国家としての理念に即した役割が他にあるということを強く申し上げて、私の質問とさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 阿部議員の質問にお答えをさせていただきます。

 本法案の必要性についてのお尋ねでありました。

 海賊行為は、海上輸送の安全確保という日本の国益を脅かしております死活的な問題だと考えております。特に、ソマリア沖の海賊は、日本を含め国際社会への脅威であり、緊急に対応すべき課題とも考えます。

 日本国民の生命財産の保護は、政府の最も重要な責務の一つであり、新法整備までの応急措置としての海上警備行動に加えて、海賊行為へ適切かつ効果的に対処するための法律を整備するということは、喫緊の課題と考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣より答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣中曽根弘文君登壇〕

国務大臣(中曽根弘文君) 海賊対策として日本が果たすべき役割についてお尋ねがございました。

 議員御指摘のとおり、我が国が作成を主導いたしましたアジア海賊対策地域協力協定、ReCAAPでございますが、これは、アジア地域における海賊事案に有効に対処する上で極めて重要な役割を果たしております。

 我が国といたしましては、こうした経験などを踏まえまして、今後も海賊対策に努力していく考えでございますが、他方、海賊行為は、凶悪な犯罪行為でございます。昨年、実際に日本人が人質にとられた事案が発生したことなどにかんがみましても、こうした取り組みとあわせて、当面の措置としての海上警備行動に加え、海賊行為への適切かつ効果的な対処について法整備することは、喫緊の課題と考えております。(拍手)

    〔国務大臣金子一義君登壇〕

国務大臣(金子一義君) 阿部議員にお答えいたします。

 海上保安庁の対処能力の限界についてお尋ねがありました。

 一般的に、海上保安庁の対処能力については、一律に限界が定まっているわけではなく、個別具体の事案について、その内容、発生場所などを総合的に勘案して、対処可能か否かを判断することとなります。

 ソマリア沖・アデン湾の海賊対策として海上保安庁の巡視艇を派遣することは、日本からの距離、海賊が所持する武器、各国海軍の軍艦等が対応していることを総合的に勘案すると、現状において、困難と判断したところであります。

 この判断に当たりましては、海上保安庁の長官から、ソマリア沖の海賊の現状、各国の対応、海上保安庁としての考え方などについて逐次報告をもらい、最終的に巡視艇の派遣は困難と判断したものであります。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(河野洋平君) 下地幹郎君。

    〔下地幹郎君登壇〕

下地幹郎君 下地幹郎です。

 私は、国民新党・大地・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について質問をいたします。(拍手)

 この法案は、一九九四年に発効し、我が国においても一九九六年に効力を生じた、海の憲法とも言われる海洋に関する国際連合条約の国内法の整備を図るものであると考えております。

 同条約の百条には、「すべての国は、最大限に可能な範囲で、」「海賊行為の抑止に協力する。」とされており、これまで海賊行為の処罰について何ら規定のなかった我が国において、本法案で海賊罪を定め、我が国が海賊行為に適切かつ効果的に対処することは非常に重要なことであると思います。

 近年、特に、ソマリア沖を航行する貨物船やタンカー船など、船舶が海賊に襲撃される事件が多発し、二〇〇三年から〇八年の間だけでも二百五十件以上もの海賊事件が発生しており、こうした状況は、アデン湾を通過する年間二万隻、うち日本関係船舶二千隻の脅威となっているだけでなく、世界全体の社会の安定と経済の発展に大きな不安材料となっています。

 このために、各国と力を合わせてアデン湾において海賊対策を行うことは、国際社会における我が国の役割であると思います。

 しかしながら、これまでの国会審議で既に明らかなように、海賊対処については、法に定められた海上での犯罪に対処することから、警察活動として対処するということであります。

 また、国土交通大臣や防衛大臣のこれまでの国会答弁でも、海賊対策は第一義的には海上保安庁の責務であるという発言がありました。

 ついては、本法案の第五条に規定された、「海賊行為への対処は、この法律、海上保安庁法その他の法令の定めるところにより、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。」としている条文は、海賊対処について、海上保安庁が第一義的に対処することを指していると理解してよいのか、確認をさせていただきたいと思います。

 政府は、海上保安庁が第一義的に対処することができず、海上警備行動を発令し、海上自衛隊が護衛艦二隻をもってアデン湾において任務を遂行している要因を次のように説明しております。

 一つには、海上保安庁の巡視船が、海賊が使用する武器に対応できないこと。二つ目には、アデン湾が地理的に日本から大きく離れていること。三つ目には、各国が海軍で対応していること。

 海上保安庁が第一義的に任務を遂行できないという現状を解決するためには、新たな整備を行い、今後、海上保安庁が海賊対策を行えるようにしなければなりません。

 そのためには、海賊対策を行えるような巡視船を二隻から三隻建造する必要があります。海上保安庁にその予算措置を行わなければ、いつまでも海上自衛隊が海賊対処を行わなければならないということになってしまいます。

 一義的に海上保安庁というならば、なぜ、二十一年度の予算においても今回の補正予算においても新たな巡視船建造の予算要求を行わないのか、国土交通大臣の答弁をいただきたい。

 そして、海上保安庁が巡視船を建造する間だけ海上自衛隊が海賊対処行動を行うということであれば理解できます。

 国際社会に対して日本が貢献するためにも本法律の整備は必要であると考えておりますが、海賊対策は第一義的には海上保安庁ということに対して何ら改善を行う予算措置もせず、今回の法律のみを成立させるということは、国民から疑問を持たれることになります。

 これからも、事実上、海賊対策は海上自衛隊にしかできないというならば、目的をはっきりさせ、特別措置法として、きちんと自衛艦が対処をすることを法律で明記し、国会承認を経た上で派遣するべきであると考えておりますが、そのことについて総理のお考えをお聞かせください。

 今月四日と十二日、二回、海上自衛隊は、アデン湾において、海賊に襲撃されてSOSを出している外国船舶の救助を行いました。

 しかし、現在の法律、海上警備行動のもとでは、本来、外国船舶は警護できないとされていて、やむを得ない措置とはいえ、やはり現行法のもとで自衛隊を派遣することには無理があったと思われます。自衛隊を派遣するならば、あらゆるケースを想定した上で、適切に任務が遂行できるような法整備をした上で行うべきであります。

 そのためには、本法律案を早急に成立させ、アデン湾で任務に励んでいる海上自衛官のためにも、今後海賊対処行動を行うべき海上保安庁の強化のためにも、また国際社会における日本の信頼のためにも、そして日本経済の安定のためにも、与野党協議をしっかりと行い、政府が修正に前向きであることが重要であると思います。

 そのことについて総理のお考えをお聞かせいただき、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣麻生太郎君登壇〕

内閣総理大臣(麻生太郎君) 下地議員の質問にお答えをいたします。

 まず最初に、恒久法とすることの是非についてのお尋ねがあっておりました。

 本法案は、特定の海域などにおける海賊対処を想定したものではなく、海賊行為の処罰及び海賊行為への適切かつ効果的な対処について一般的に定めるものでありまして、特別措置法が適当とは考えておりません。

 また、自衛隊による対処につきましては、現行の自衛隊法による海上警備行動と同様の仕組みとしたものであります。海賊行為への対処は、警察行動であることから、当然に国会の承認が必要となるものではないというように理解をいたしております。

 政府案の修正についてのお尋ねがありました。

 政府としては、船主協会など関係団体等の御意見及び与党プロジェクトチームの御意見を踏まえ、法案を取りまとめ、国会に提出をさせていただいたところです。

 法案の修正につきましては、具体的な提案をいまだ受けていない段階でお答えすることは適当でないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣金子一義君登壇〕

国務大臣(金子一義君) 下地議員にお答えいたします。

 海賊対処法第五条の規定についての趣旨であります。

 海賊行為は、海上における犯罪行為となるため、海賊行為への対処は、第一義的には海上の法執行機関である海上保安庁の責務であります。海賊対処法第五条は、その趣旨を明確にするための規定であります。

 新たな海賊対処の任務も遂行できる巡視船の建造の必要性についてお尋ねがありました。

 ソマリア沖海賊への対処を目的として、直ちに「しきしま」級巡視船を建造することについては、その建造に長い期間と多額の費用が要されること、これらの巡視船の活動が可能になった時期にはソマリア沖海賊が鎮静化している可能性があること、現在自衛隊の艦船が派遣されていること等から、政府全体の結論として、現時点においては考えておりません。

 海上保安庁として、昭和五十年代に集中的に整備されました巡視船艇、航空機が大量に耐用年数を超えているため、我が国周辺海域を任務とするこれら巡視船艇等の緊急代替整備に最優先で現在取り組んでいるところでありまして、引き続き、その推進に努めてまいります。

 また、このたび、海賊対処法案において海上保安庁の責務が改めて明確にされたことも踏まえまして、遠方海域における重大事案の対処のあり方について検討してまいりたいと思っております。

 以上であります。(拍手)

議長(河野洋平君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(河野洋平君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  麻生 太郎君

       外務大臣  中曽根弘文君

       財務大臣  与謝野 馨君

       国土交通大臣

       国務大臣  金子 一義君

       防衛大臣  浜田 靖一君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  松本  純君

       国土交通副大臣  加納 時男君


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