衆議院

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第10号 平成22年2月25日(木曜日)

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平成二十二年二月二十五日(木曜日)

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  平成二十二年二月二十五日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 議院運営委員長松本剛明君解任決議案(逢沢一郎君外二名提出)

 衆議院議長横路孝弘君不信任決議案(谷垣禎一君外四名提出)

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後二時十六分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

高山智司君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 逢沢一郎君外二名提出、議院運営委員長松本剛明君解任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(横路孝弘君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(横路孝弘君) 御異議なしと認めます。

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 議院運営委員長松本剛明君解任決議案(逢沢一郎君外二名提出)

議長(横路孝弘君) 議院運営委員長松本剛明君解任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。江渡聡徳君。

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 議院運営委員長松本剛明君解任決議案

    〔本号末尾に掲載〕

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    〔江渡聡徳君登壇〕

江渡聡徳君 自由民主党の江渡聡徳でございます。

 私は、自由民主党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました議院運営委員長松本剛明君解任決議案につき、提案の理由を御説明いたします。(拍手)

 その前に、一言申し上げたいと思います。

 昨年の衆議院総選挙は、まさに平成維新とも呼ぶべき大変革であり、我が党にとりましても大変厳しいものでありました。それゆえに、国民が我々国会議員に求めたものは大変大きなものであります。まさに、現在の日本における山積する課題に対して、しっかりとした答えと、将来に希望を持てる国づくりのための方向性を示してほしいと、我々国会議員全員に託したものではないでしょうか。

 今こそ、与野党を超えた真剣な議論が必要であり、そのための真摯な行動こそが、そして建設的な議論を尽くすことこそが、国民が求めたものではないでしょうか。我々は、国民の選良たる国会議員として、いま一度、よりよい言論の府としての国会を取り戻すべきではないでしょうか。

 しかるに、今の国会の状況はいかがでありましょうか。

 我々は、この国会で、景気対策の充実、財政健全化への道筋を示すことなど、充実した予算審議を求めてきたのであります。今ここにいる皆さんに訴えかけたいのは、その国会審議のあり方そのものが民主党の独裁的な手法でねじ曲げられようとしている、この事実であります。

 民主党が与党となり、鳩山政権が発足して以来、政治に対する姿勢や国会運営で明らかになったことは、昨年の総選挙の結果を盾に、政権交代で公正で透明な政治を望んだ民意とは逆に、数は力の横暴な論理のもと、我が国の民主主義を根底から破壊に向かわせようとする、まさにそういう危機の瀬戸際にあるということであります。

 例えば、一つ、多数を背景に、憲法と国会法をねじ曲げ、これまでの国会で積み重ねてきたよき慣例と伝統を破って、民主政治の根本である野党の主張にも耳を傾ける努力を一切せず、強引な国会運営に終始していること。

 一つ、議長、議院運営委員長を初めとする各常任委員長も、公正な運営を確保するためにそのリーダーシップを発揮すべきであるのに、政府・与党側の出先機関に成り下がり、党利党略にくみして、恥じるところがないこと。

 一つ、国民が厳しく批判し関心を抱いている鳩山総理や小沢民主党幹事長みずからの政治と金の問題で、一切説明責任も自浄能力も発揮しようとせず、数の力でそれらにふたをしようと強引に事を進めていること。

 一つ、子ども手当法案、高校授業料無償化法案について、みずからのマニフェストの一丁目一番地であるにもかかわらず、総理みずから答弁に立たず、形式的な審議だけにしようとしている。つまり、総理が出席して十分な審議を行う重要広範議案とせず、総理隠しをするため、総理の出席を拒んでいること。

 一つ、国民との契約としていたマニフェスト違反への開き直り、予算審議前の箇所づけ公表など、とても民主主義を体現し実現しようとする政党とは思えないことなどであります。

 このまま国会の状況を無批判に受容し放置すれば、我が国の議会制民主主義は、かつての大政翼賛会的な国会になりかねないのであります。

 国民各層、各地域、それぞれの職業や立場の人たちの多様な意見を反映し、議論を通じてよりよき方向へ集約していくという、まさに我が国国会の本来の機能が失われようとしております。我々は、強くそれを危惧するものであります。

 選挙で多数の民意を受けた以上、何をやっても白紙委任されたと言わんばかりのやりたい放題、すべてにおいて数の横暴でよしとする態度は、健全な我が国の民主主義に対する冒涜であり、破壊であります。

 今、我々がこのことに抗議する意義は決して小さいものではないのであります。国民生活の安定や国際社会への貢献に向け、健全で正常な民主主義を取り戻すための訴えであることを、議員を初め国民の皆様方にはぜひとも御理解をいただきたいと願うものであります。

 民主党初め与党に対しては、我々の対案について十分な議論を行うとともに、既に要求している石川知裕君議員辞職勧告決議案、鳩山総理関係者及び小沢民主党幹事長の証人喚問と参考人招致、箇所づけ漏えい問題の精査結果の公表と関係者の処分等について、誠実かつ速やかな対応を強く求める次第であります。

 それでは、案文を朗読します。

  本院は、議院運営委員長松本剛明君を解任する。

   右決議する。

 以下に、その理由を申し述べます。

 解任の理由として、松本剛明君が議院運営委員長として余りにも強権的に委員会運営を行っている点を申し述べます。

 議院運営委員長は、国権の最高機関である国会にあって、中立公正な立場から職務を遂行し、議会運営の全般に責任を持つべきであることは言うまでもありません。そのことは、私が初当選の時代、議院運営委員を務めていたころ、当時の議院運営委員長で、今は亡き亀井善之先生から教えられたことでもあります。

 亀井善之先生からは、議院運営委員長は、衆議院において、議長、副議長の指導のもとに、よりよい国会運営をしなければならない、それゆえに、職務の遂行に当たっては中立公正を旨としなければならない、幾ら与党の一員といえども、委員長たる者は、与党の話は四割、野党の話は六割を聞いて、国民主権を具現するための議会運営に努めなければならない、与党がおごって国会運営をしたならば、結果として困るのは国民なのだから、そのように教えていただきました。

 歴代の議院運営委員長がその高い志で議会運営をしてこられたからこそ、言論の府としての国会があったのであります。

 しかるに、松本剛明君は、歴代の議院運営委員長が築いてきた、国権の最高機関である国会において中立公正に委員会の運営を行い、国会の権威を守るという、その崇高な職務をおとしめたのであります。その行為は、さきの臨時国会においても、一方的に本会議趣旨説明を決定したり、強権的に採決で法案を付託したりするなどの暴挙を繰り返してまいりました。その松本剛明君の、政府・与党の党利党略に加担する独裁的な手法に対して、昨年十一月十九日の本会議において突きつけられた解任決議案にすべての野党が賛成したのは、記憶に新しいところであります。

 この決議案は、残念ながら、数の力でねじ伏せられました。しかし、議会の慣例とルールを無視した政治的道義的責任から逃れるすべはなく、今国会召集前の議院運営委員会の理事会において、民主党の理事が、丁寧な議会運営に努める、その旨を表明せざるを得ませんでした。

 ところが、驚くべきことに、その舌の根も乾かぬうちに、今国会においても、また議院運営委員長松本剛明君が同じような行為を繰り返しております。

 国税と地方税の関連法案の審議において、所管であります財務金融委員会や総務委員会の態勢が整っていない状況において、我々は、国会全体を見据えながら、現実的な日程を提案してまいりました。それにもかかわらず、議院運営委員長松本剛明君は、野党側の主張に耳をかさず、これらの法案の趣旨説明、質疑を一度の本会議で扱うべきであるという与党の提案をそのまま職権で押し切り、十六日の本会議を強行したのであります。

 これに続き、二十三日には子ども手当法案、そして本日二十五日に高校無償化法案の本会議趣旨説明を、こちらも、所管する委員会の態勢も整っていないことを承知の上で、松本剛明君は、野党の反対意見を封じて、議事日程を決定したのであります。

 近年は、衆議院で予算を審議している間は歳出法案の本会議趣旨説明を行っておりません。なぜなら、民主党の諸君は、野党時代、よりよい国会審議のために、参議院での予算委員会での基本的質疑が終わるまでは法案審議に入るべきではないと主張され、当時与党であった我々は、よりよい国会運営のためにその意見を取り入れてまいりました。にもかかわらず、この豹変ぶりは、党利党略そのものではないでしょうか。今まで築き上げてきた国会ルールを無視した行為であります。

 さらに看過できないのは、野党四党が重要広範議案に指定すべきとし、横路議長にまで申し入れている議案を勝手に重要広範議案から外した行為は、悪質この上ないものであります。

 従来、重要広範議案については、与野党間で真摯な協議を行い、野党の主張が受け入れられる形で決定されてまいりました。しかし、今回は、野党の主張を無視した形で進められました。何という傲慢な姿勢でありましょうか。

 子ども手当法案は、民主党がマニフェストに掲げた最重要政策であり、鳩山総理自身が本会議や委員会に出席し、先頭に立って答弁や説明に責任を果たすのは至極当然のことであり、まさに国会軽視、国民軽視ともとれる暴挙であります。政府・与党には重要法案を真摯に議論するという考えがないのでありましょうか。

 もとより、議案の扱いは野党の希望に応じて決定されるべきものであり、多数を持てば話し合いは不要とばかりに、議会の合意形成を真っ向から排除するという態度に終始しては、多様な意見を反映すべき立法府としての存在意義が崩壊していくばかりであります。

 鳩山総理を初め、民主党の方々がおっしゃっている政治主導というものは、このように国会ルールを無視することなのでしょうか。それとも、強引な手法を使ってでも早期に法案を成立させようとする国会運営の裏には、何か別のねらいがあるのでしょうか。

 重要広範議案外しは、国会審議の場から鳩山総理を外し、総理の政治と金の問題にふたをしようとしているのでしょうか。まさに鳩山隠しのための方策なのでありましょうか。そこまでしなくてはならないほど、鳩山総理はこの問題から逃げ出したいのでしょうか。それとも、財政の中期展望もなく、成長戦略もなく、そのためにマニフェストに掲げた政策実施のための恒久財源の当てもないからなのでしょうか。あるいは、マニフェスト違反を白日のもとにさらされることを嫌ってのことなのでしょうか。

 さらに申し上げれば、我々自由民主党が公明党、みんなの党と共同提出している石川知裕君議員辞職勧告決議案につき、現職議員が起訴され、刑事責任が問われているという重大な事態であるにもかかわらず、議院運営委員長松本剛明君は、適時適切だと判断したら取り扱う、そのようにあいまいな発言を繰り返して、結論を引き延ばそうとしております。

 さきの長崎県知事選挙と町田市長選挙におきましては、与党が推薦する候補者が敗れ、我々が支援した候補者が圧勝しました。それはひとえに、政治と金にまつわる疑惑解明を求める国民の願いの結果でもあります。

 選挙結果に関して、鳩山総理は、政治と金の問題の影響を受けたというべきだと語り、小沢民主党幹事長も、プラスの要因に働いたはずはないと認めております。

 これらの選挙の結果は、民主党の皆さんがこれまで声を大にして唱えてきた直近の民意であり、政治と金の問題について国政に大きく警鐘を鳴らすものであります。そうであるならば、議員辞職勧告決議案を上程して、国会の自浄作用を示すべきであります。今以上に適時適切なタイミングはないはずであります。

 与党の皆さん、いかがお考えでしょうか。今、与党の皆さんの良識が問われているのであります。

 平成の脱税王と批判されている鳩山総理、秘書であった石川議員や大久保氏が逮捕、起訴されているにもかかわらず開き直りを続ける小沢民主党幹事長、お二人とも、疑惑を向けられているみずからの政治資金問題に対し、いまだに国会の場において説明責任を果たそうとしておりません。このことに関して、各種世論調査でも、大多数の国民が納得していないことは周知の事実であります。

 また、最近では、北海道教職員組合による違法献金問題の驚くべき実態が次々と報道されております。

 民主党は、速やかに所属議員の疑惑の解明に努め、議会を一刻も早く政策を議論する建設的な場に戻すべきであります。

 民主党の諸君、皆さんがみずから掲げた目玉政策を優先する余り、少数会派に譲歩することなく、いたずらに性急な国会運営を続けているということをどうお考えでありましょうか。

 法案審議に一定の効率性は必要でありますが、今与党が進めている、まさに問答無用の対応は、余りにも丁寧さを欠き、先人が築き上げてきた議会制民主主義を破壊するばかりであります。これらの行為は、まさしく、民主党が野党時代に念仏のように唱え、非難してきた理不尽な行為そのものではないでしょうか。民主党の諸君に猛省を促すものであります。

 数の力で言論の府を支配し、国民生活や政策の財源確保を後回しにして、マニフェストの実現という果実を求める与党と結託し、ただただ与党方針のみに従う松本剛明君の行為は、議院運営委員長として与野党の立場を超えた合意形成づくりという努力を怠り、国会の権威を守ろうとする気概に乏しく、国会全体に責任を負う議院運営委員長として、その職務を遂行するには著しく適格性に欠けていると言わざるを得ません。

 また、松本剛明君は、昨年の委員長就任の際、「国民主権を具現する議会政治の歩みに思いをいたしますとき、国会の運営に携わるその責務の重大さを改めて痛感いたす次第でございます。 私は、まことに浅学非才の身でございますが、今後、議長、副議長の特段の御指導のもと、議会運営に経験豊かな皆様方の御協力によりまして、当委員会の公正な運営に微力を尽くしてまいりたいと存じております。」と、このように述べております。

 ところが、今、松本剛明君のとっている行動は、残念ながら、就任あいさつの精神とはほど遠く、与党に偏った不公正、不公平な議会運営が次から次へと続く状況であります。もはや議院運営委員長の職にとどまることは認めがたく、松本剛明君は速やかにその職を辞するべきであります。

 以上の理由から、ここに議院運営委員長松本剛明君の解任を強く求めるものであります。

 良識ある議員各位の御賛同を心からお願い申し上げ、提案理由の説明といたします。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 討論の通告があります。順次これを許します。横山北斗君。

    〔横山北斗君登壇〕

横山北斗君 民主党、横山北斗です。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました議院運営委員長松本剛明君解任決議案について、反対の立場で討論をいたします。(拍手)

 自民党は、昨年十一月にも、松本議院運営委員長の委員会運営が強権的であり、委員長としての公平性、公正性を欠くとして、今回と同様の決議案を提出してきました。

 あれからわずか三カ月しかたっていないにもかかわらず、またもやこのような決議案を提出する自民党に対し、強く抗議するものであります。

 国民は、一日も早い予算の成立を望んでおります。しかし、自民党は、国民の声を無視し、今週月曜以降、自民党の委員には予算委員会に出席いただけない事態となっています。しかも、今月十八日には、公平公正な委員会運営に腐心していた鹿野予算委員長に対し、解任決議案を突きつけました。

 先週は予算委員長、今週は議院運営委員長、解任決議案を乱発する戦術を、自民党はいつまでとり続けるつもりでしょうか。

 本決議案提出の理由として、松本議院運営委員長が、予算の衆議院通過を待つことなく、子ども手当法案及び高校無償化法案という歳出にかかわる法案審議を強行したという点が挙げられています。

 しかしながら、一昨年の通常国会では、道路整備費財源特例法が予算の衆議院通過前に審議入りしています。それ以前にも、義務教育費国庫負担法、鉄道事業法、国民健康保険法、産業再生機構法など、先例はたくさんあります。予算審議中を理由に法案審議を拒否すること自体、過去、自民党がしてきた行為に対して全く正当性がありません。

 子ども手当法案についても、高校無償化法案についても、両法案を取り扱うことについては、議院運営委員会の理事会において、何日も何日も、長時間に及ぶ協議を重ねてまいりました。それでも意見が合わずにいた場合、最後は多数の意思を尊重するしかありません。民主主義は、少数決ではなく、多数決原理に立ちます。これは、多数が正しいと主張するのではなく、正しいことは多数が理解してくれるという、国民の良心に訴えるものです。

 その判断に立った松本議院運営委員長の判断を尊重することなく、解任に訴えるなど、考えられないことです。

 与党になった民主党と野党になった自民党、立場が逆になっただけで、やっていることは同じだという声を聞くことがあります。しかし、それは違う。どこが違うのか。私ども民主党は、野党時代、徹底して法案の議論はやりました。そして、議論をすればするほど、法案の問題点が明らかになり、これは廃案にすべきだということになったとき、自民党は強行採決を繰り返した。それを受けての審議拒否なら、批判は受けても、必ず理解を得られる。だからこその政権交代でした。

 しかし、今の自民党は、政策の論議さえしない。これで議会制民主政治が成り立つはずはありません。

 与党のみならず、健全な野党議員なら、議院運営委員長の解任になど、到底賛成しかねるものと私どもは確信しております。

 以上、国民生活を無視した時間の引き延ばし、その戦術としての議院運営委員長解任決議に断固反対し、私の討論を終わらせていただきます。(拍手)

議長(横路孝弘君) 伊東良孝君。

    〔伊東良孝君登壇〕

伊東良孝君 自由民主党・改革クラブ、伊東良孝でございます。

 私は、自由民主党・改革クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました議院運営委員長松本剛明君解任決議案に対し、賛成の討論を行うものであります。(拍手)

 議院運営委員長松本剛明君は、二月二十三日及び二月二十五日の二日間、巨大与党の多数を背景に、子ども手当法案及び高校無償化法案の趣旨説明、質疑を行う本会議を委員長職権で一方的にセットするという、憲政史上まれに見る暴挙に出ました。

 言うまでもなく、議院運営委員長は、国会にありまして広く議会運営全般に責任を持ち、公正公平な立場から国権の最高機関たる国会の権威を守るという、極めて重い責任を担っております。それにもかかわらず、松本議院運営委員長は、政府・与党の立場に偏った裁定を繰り返し、国会の権威を著しく傷つけました。私たちは、この公平性、公正性を欠いた理不尽な議事運営を断固として許すことができません。

 私は、このゆゆしき事態に臨み、以下に議院運営委員長松本剛明君を解任すべき明確な理由を申し上げ、国民の皆様に理不尽きわまりない国会運営、議事運営の実態を知っていただくとともに、松本委員長に強く猛省を促すものであります。

 解任の第一の理由は、松本委員長のその不見識かつ強権的な委員会運営にあります。

 一月十八日に召集された第百七十四回通常国会は、鳩山政権発足後初の通常国会であり、政権交代後初の本格予算審議や、昨年夏の衆議院選挙において民主党が掲げたマニフェスト関連の法案等、極めて重要な議案を抱え、スタートいたしました。

 中でも、子ども手当支給法案と高校無償化法案は、昨年の総選挙で民主党が訴えた鳩山政権の目玉政策であり、今国会の最重要法案の一つでありました。

 そこで、我々野党は、審議への総理出席を要求できるよう、子ども手当支給法案の重要広範議案への指定を一致して求めてまいりましたし、当然、鳩山総理大臣みずから審議の先頭に立ち、大きな疑問の残る財源等について御答弁いただけるものと考えておりました。しかし、与党は、明確な理由を述べることなく我々の要求を一蹴し、通常の趣旨説明、質疑としての本会議立てを一方的に行ったのであります。

 そもそも、予算の歳出に係る法案を衆議院で予算審議が続いている最中に審議入りするということ自体、全くもって不見識きわまりない対応だと言わざるを得ません。予算の成立が不透明な状態で、個別具体的な、しかも新規の歳出をどのように議論しようというのでありましょうか。参議院の予算委員会基本的質疑が終わるまで法案審議には応じないと主張してきたのは、昨年までの民主党の皆さんではありませんか。

 鳩山政権発足後、これまでも何度となく見られた姿でありますが、みずからの野党時代の主張にはふたをし、都合の悪いことには目をつぶり、多数を背景に強硬な姿勢で自分たちの我を通すという御都合主義的、強権的な姿勢は、責任ある与党の姿、国権の最高機関たる国会の姿とはとても思えません。

 また、二十三日に子ども手当法案の趣旨説明が強行されているさなか、鳩山総理が民主党の同僚議員とにこやかに談笑していたとする写真入りの記事が新聞で報道されました。自身の政権の最重要法案の審議中に、答弁することから逃げ、同僚議員と談笑している。鳩山政権、民主党の国会軽視の姿勢がこの場面に端的にあらわれていると言えるのではないでしょうか。

 皆さんのそのような不誠実な対応を既に有権者の皆さんも理解しておられることが、二十一日の長崎県知事選や東京町田市長選挙の結果で証明されたのであります。

 歴代の議院運営委員長は、与野党の意見が一致して充実した審議に入れるよう両者の歩み寄りを促し、公正な議会運営を行うための努力を重ねてまいりました。

 この両法案の趣旨説明の取り扱いや日程に関する野党の意見は、松本委員長の強引かつ一方的な委員会運営の前に黙殺されました。松本委員長は、野党が言う本来の議会のあるべき姿や議会運営の意見を無視し、ひたすら政府・与党の決めたとおりに、疑惑隠しと質疑封殺の日程を進めることだけに注力しているのであります。まさに権力の濫用という言葉以外に表現しようがありません。

 このような不誠実きわまりない委員会運営を続ける松本君は、中立公正を旨とする委員長という立場に不適格であることはだれの目にも明らかであります。我々は、議会に籍を置く者として、このような議会制民主主義の根本を揺るがす暴挙を断固として容認することはできません。

 解任の第二の理由に、議員石川知裕君議員辞職勧告決議案への不誠実な対応を挙げさせていただきます。

 今国会は、鳩山総理の政治資金問題、小沢幹事長の政治資金や膨大な不動産をめぐる問題、民主党と労働組合の選挙と不正献金によるもたれ合いといった、政治と金にまつわる三つの疑惑について、民主党政権の自浄能力が問われる国会でもあります。現在のところ、民主党に自浄能力は全くないと言わざるを得ません。

 我々は、国会審議を通じて、事あるごとに、鳩山総理の脱税疑惑に関する関係者の参考人招致や資料提出、また小沢一郎幹事長の不正資産疑惑に関する御本人や石川議員の証人喚問、関係者の参考人招致を繰り返し求めてまいりました。しかし、現職の議員が逮捕、総理の秘書が逮捕、合計五名も逮捕されるという事態に発展しているにもかかわらず、まことに残念なことに、我が党の要請に対する回答はゼロであります。

 これでは、民主党は集団で疑惑隠しをしていると言われても仕方ないのではないでしょうか。民主党の、他人に厳しく自分に甘い、臭い物にふたをするという二大体質に国民は強い疑いの目を向けていることにそろそろ気がつくべきであります。

 自由民主党・改革クラブ、公明党、みんなの党は、二月四日に、議員石川知裕君議員辞職勧告決議案を共同で提出いたしました。我々野党は、政治の信頼性が問われている問題なので、この決議案を優先的に議題とすべきだと強く求めてまいりました。しかし、提出から既に二十日もの時間が過ぎておりますが、一向に本会議で審議される気配がありません。

 松本議運委員長は、決議の取り扱いに関して、適時適切に判断する旨の発言をしております。それならば、リーダーシップを発揮して、すぐにでも本会議で取り上げるべきではなかったでしょうか。政府・与党の日程、党利党略に加担する一方で、政治倫理にかかわる極めて重大な問題の解決を先送りしようという姿勢からは、委員長としての公平性も、国会議員としての倫理観も欠けてしまっていると言わざるを得ません。

 これ以上、国会議論を形骸化させ、少数意見を抑圧する民主党型政治主導を許すわけにはまいりません。松本剛明君は、委員長としての公平性、公正性を全く持ち合わせておらず、その強権的な委員会運営は国会の権威を著しく傷つけました。松本君が議院運営委員長の任に不適格であることは火を見るより明らかであります。よって、議院運営委員長松本剛明君解任決議案に良識ある議員諸君の圧倒的な賛同を得て、一刻も早く正常な議会運営と充実した審議の場が取り戻せるよう強く訴えまして、私の討論を終わります。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(横路孝弘君) 採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(横路孝弘君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(横路孝弘君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百六十五

  可とする者(白票)       百三十九

  否とする者(青票)      三百二十六

議長(横路孝弘君) 右の結果、議院運営委員長松本剛明君解任決議案は否決されました。(拍手)

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逢沢一郎君外二名提出議院運営委員長松本剛明君解任決議案を可とする議員の氏名

あべ  俊子君   安倍  晋三君   逢沢  一郎君   赤澤  亮正君

秋葉  賢也君   麻生  太郎君   甘利   明君   井上  信治君

伊東  良孝君   伊吹  文明君   石田  真敏君   石破   茂君

石原  伸晃君   稲田  朋美君   今村  雅弘君   岩屋   毅君

江渡  聡徳君   江藤   拓君   遠藤  利明君   小里  泰弘君

小野寺 五典君   小渕  優子君   大島  理森君   大野  功統君

大村  秀章君   加藤  勝信君   加藤  紘一君   梶山  弘志君

金子  一義君   金子  恭之君   金田  勝年君   鴨下  一郎君

川崎  二郎君   河井  克行君   河村  建夫君   木村  太郎君

岸田  文雄君   北村  茂男君   北村  誠吾君   小池 百合子君

古賀   誠君   後藤田 正純君   高村  正彦君   近藤 三津枝君

佐田 玄一郎君   佐藤   勉君   齋藤   健君   坂本  哲志君

塩崎  恭久君   塩谷   立君   柴山  昌彦君   下村  博文君

新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君   園田  博之君

田中  和徳君   田野瀬良太郎君   田村  憲久君   平   将明君

高市  早苗君   高木   毅君   竹下   亘君   武田  良太君

武部   勤君   橘  慶一郎君   棚橋  泰文君   谷   公一君

谷垣  禎一君   谷川  弥一君   谷畑   孝君   徳田   毅君

中川  秀直君   中谷   元君   中村 喜四郎君   永岡  桂子君

長島  忠美君   長勢  甚遠君   二階  俊博君   西野 あきら君

西村  康稔君   額賀 福志郎君   野田   毅君   馳    浩君

鳩山  邦夫君   浜田  靖一君   林   幹雄君   平井 たくや君

平沢  勝栄君   福井   照君   福田  康夫君   古川  禎久君

古屋  圭司君   保利  耕輔君   細田  博之君   町村  信孝君

松浪  健太君   松野  博一君   松本   純君   三ッ矢 憲生君

宮腰  光寛君   村上 誠一郎君   村田  吉隆君   茂木  敏充君

森   喜朗君   森山   裕君   柳本  卓治君   山口  俊一君

山本  公一君   山本  幸三君   山本  有二君   与謝野  馨君

吉野  正芳君   赤松  正雄君   井上  義久君   池坊  保子君

石井  啓一君   石田  祝稔君   稲津   久君   漆原  良夫君

江田  康幸君   遠藤  乙彦君   大口  善徳君   神崎  武法君

佐藤  茂樹君   坂口   力君   高木 美智代君   高木  陽介君

竹内   譲君   富田  茂之君   西   博義君   東   順治君

古屋  範子君   浅尾 慶一郎君   江田  憲司君   柿澤  未途君

山内  康一君   渡辺  喜美君   衛藤 征士郎君   

否とする議員の氏名

安住   淳君   阿久津 幸彦君   阿知波 吉信君   相原  史乃君

青木   愛君   赤松  広隆君   東   祥三君   網屋  信介君

荒井   聰君   五十嵐 文彦君   井戸 まさえ君   池田  元久君

石井   章君   石井 登志郎君   石毛 えい子君   石関  貴史君

石田  勝之君   石田  三示君   石田  芳弘君   石津  政雄君

石原 洋三郎君   石森  久嗣君   石山  敬貴君   泉   健太君

磯谷 香代子君   市村 浩一郎君   糸川  正晃君   稲富  修二君

稲見  哲男君   今井  雅人君   内山   晃君   打越 あかし君

生方  幸夫君   江端  貴子君   枝野  幸男君   小川  淳也君

小沢  一郎君   小沢  鋭仁君   小野塚 勝俊君   小原   舞君

緒方 林太郎君   大泉 ひろこ君   大串  博志君   大島   敦君

大谷   啓君   大谷  信盛君   大西  健介君   大西  孝典君

大畠  章宏君   大山  昌宏君   太田  和美君   逢坂  誠二君

岡島  一正君   岡田  克也君   岡田  康裕君   岡本  英子君

岡本  充功君   奥田   建君   奥野 総一郎君   奥村  展三君

加藤   学君   加藤  公一君   鹿野  道彦君   海江田 万里君

柿沼  正明君   笠原 多見子君   梶原  康弘君   勝又 恒一郎君

金森   正君   金子  健一君   神山  洋介君   川口   浩君

川越  孝洋君   川島 智太郎君   川端  達夫君   川村 秀三郎君

河上 みつえ君   菅   直人君   木内  孝胤君   木村たけつか君

吉良  州司君   城井   崇君   黄川田  徹君   菊田 真紀子君

菊池長右ェ門君   岸本  周平君   北神  圭朗君   京野  公子君

工藤  仁美君   櫛渕  万里君   楠田  大蔵君   沓掛  哲男君

熊谷  貞俊君   熊田  篤嗣君   黒岩  宇洋君   黒田   雄君

桑原   功君   玄葉 光一郎君   小泉  俊明君   小平  忠正君

小林  興起君   小林 千代美君   小林  正枝君   小宮山 泰子君

小宮山 洋子君   小室  寿明君   小山  展弘君   古賀  一成君

古賀  敬章君   後藤  英友君   後藤   斎君   後藤  祐一君

郡   和子君   近藤  和也君   近藤  昭一君   近藤  洋介君

佐々木 隆博君   佐藤 ゆうこ君   斉木  武志君   斉藤   進君

齋藤   勁君   斎藤やすのり君   坂口  岳洋君   阪口  直人君

笹木  竜三君   階    猛君   篠原   孝君   柴橋  正直君

下条  みつ君   城島  光力君   白石  洋一君   神風  英男君

首藤  信彦君   瑞慶覧 長敏君   末松  義規君   杉本 かずみ君

菅川   洋君   鈴木  克昌君   鈴木  宗男君   仙谷  由人君

園田  康博君   空本  誠喜君   田島  一成君   田嶋   要君

田名部 匡代君   田中けいしゅう君   田中 眞紀子君   田中 美絵子君

田中  康夫君   田村  謙治君   平   智之君   高井  崇志君

高井  美穂君   高木  義明君   高野   守君   高橋  昭一君

高橋  英行君   高松  和夫君   高邑   勉君   高山  智司君

滝    実君   竹田  光明君   武正  公一君   橘   秀徳君

玉木  朝子君   玉木 雄一郎君   玉城 デニー君   玉置  公良君

樽床  伸二君   中後   淳君   津川  祥吾君   津島  恭一君

津村  啓介君   辻    惠君   筒井  信隆君   手塚  仁雄君

寺田   学君   土肥  隆一君   道休 誠一郎君   富岡  芳忠君

豊田 潤多郎君   中井   洽君   中川   治君   中川  正春君

中島  政希君   中島  正純君   中塚  一宏君   中根  康浩君

中野  寛成君   中野   譲君   中野渡 詔子君   中林 美恵子君

中山  義活君   仲野  博子君   永江  孝子君   長尾   敬君

長島  昭久君   長島  一由君   長妻   昭君   長安   豊君

仁木  博文君   西村 智奈美君   野木   実君   野田  国義君

野田  佳彦君   羽田   孜君   萩原   仁君   橋本  清仁君

橋本  博明君   橋本   勉君   畑   浩治君   鉢呂  吉雄君

初鹿  明博君   鳩山 由紀夫君   花咲  宏基君   浜本   宏君

早川 久美子君   原口  一博君   伴野   豊君   樋口  俊一君

樋高   剛君   平岡  秀夫君   平野  博文君   平山  泰朗君

福嶋 健一郎君   福島  伸享君   福田  昭夫君   福田 衣里子君

藤田  一枝君   藤田  大助君   藤田  憲彦君   藤村   修君

古川  元久君   古本 伸一郎君   細川  律夫君   細野  豪志君

本多  平直君   馬淵  澄夫君   前原  誠司君   牧   義夫君

牧野  聖修君   松岡  広隆君   松木けんこう君   松崎  公昭君

松崎  哲久君   松野  頼久君   松原   仁君   松宮   勲君

松本  大輔君   松本  剛明君   三日月 大造君   三谷  光男君

三村  和也君   三宅  雪子君   三輪  信昭君   三井  辨雄君

水野  智彦君   皆吉  稲生君   宮崎  岳志君   宮島  大典君

向山  好一君   村井  宗明君   村上  史好君   村越  祐民君

室井  秀子君   本村 賢太郎君   森岡 洋一郎君   森本  和義君

森本  哲生君   森山  浩行君   矢崎  公二君   谷田川  元君

柳田  和己君   山尾 志桜里君   山岡  賢次君   山岡  達丸君

山口  和之君   山口   壯君   山崎  摩耶君   山崎   誠君

山田  良司君   山井  和則君   山花  郁夫君   山本  剛正君

湯原  俊二君   柚木  道義君   横粂  勝仁君   横光  克彦君

横山  北斗君   吉川  政重君   吉田   泉君   吉田 おさむ君

吉田  公一君   吉田  統彦君   笠   浩史君   和嶋  未希君

和田  隆志君   若井  康彦君   若泉  征三君   鷲尾 英一郎君

渡辺 浩一郎君   渡辺   周君   渡辺  義彦君   渡部  恒三君

赤嶺  政賢君   笠井   亮君   穀田  恵二君   佐々木 憲昭君

志位  和夫君   塩川  鉄也君   高橋 千鶴子君   宮本  岳志君

吉井  英勝君   阿部  知子君   重野  安正君   辻元  清美君

照屋  寛徳君   中島  隆利君   服部  良一君   吉泉  秀男君

亀井  静香君   下地  幹郎君   松下  忠洋君   城内   実君

小泉  龍司君   石川  知裕君

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、暫時休憩いたします。

    午後三時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時三分開議

副議長(衛藤征士郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

高山智司君 議案上程に関する緊急動議を提出いたします。

 谷垣禎一君外四名提出、衆議院議長横路孝弘君不信任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

副議長(衛藤征士郎君) 高山智司君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(衛藤征士郎君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 衆議院議長横路孝弘君不信任決議案(谷垣禎一君外四名提出)

副議長(衛藤征士郎君) 衆議院議長横路孝弘君不信任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。田野瀬良太郎君。

    ―――――――――――――

 衆議院議長横路孝弘君不信任決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔田野瀬良太郎君登壇〕

田野瀬良太郎君 自由民主党の田野瀬良太郎です。

 私は、自由民主党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました衆議院議長横路孝弘君不信任決議案について、提案理由を説明申し上げます。(拍手)

 まず、案文を朗読いたします。

  本院は、衆議院議長横路孝弘君を信任せず。

   右決議する。

 以下、その理由を申し述べます。

 言うまでもなく、議長は、国権の最高機関たる国会の最高責任者として、国会法第十九条に定めるとおり、衆議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する立場にあります。

 横路孝弘君は、昨年九月、議長就任に当たり、「議院の公正円満な運営に努めますとともに、本院が真に国民の期待と信頼にこたえられるよう、最善の努力を尽くしてまいる所存」と、その所信を述べられました。

 しかるに、横路孝弘君は、その言葉とは裏腹に、与党による極めて横暴かつ強権的な議会運営を看過し、結果として、公平公正とはほど遠い、国民の期待にこたえることのできない議会の姿を国民の前に露呈してしまいました。もはや、国権の最高機関たる国会は、多数を占めれば何をやっても許されるというあしき前例を後世に残そうとしておるではありませんか。

 我々は、これ以上横路孝弘君が言論の府の長たる議長の職にとどまることは、日本の議会制民主主義の崩壊を招くと考え、衆議院議長横路孝弘君不信任決議案を提出するものであります。

 我々は、横路君が立法府の長でありながら、政府・与党の横暴な議会運営を唯々諾々と受け入れ、国会の権威を著しく傷つけたと考え、以下、横路君の、与野党対立に何も有効な手段もとれず、職責を果たさない具体的な事例を挙げることで、趣旨の説明をいたします。

 特別国会閉会後、長期間にわたり国会を開こうとしない鳩山内閣に対し、我々は、十月八日に、自民党、公明党、みんなの党の共同で、臨時国会召集要求書を横路議長と官邸に申し入れ、早急に臨時国会を召集し、国民に対し、その政策や所信を述べるべきだと要求いたしました。

 横路君が、この野党の申し入れを黙殺し、政府に対し何ら働きかけを行わなかった結果、臨時国会が召集されたのは何と十月の二十六日となり、その会期もわずか三十六日間という、政権交代後の本格的な論戦を行うには極めて短いものになりました。

 臨時国会の召集が遅くなり、論戦の期間が短くなったのはみずからの判断によるものにもかかわらず、政府は、十二件の閣法、三件の条約、二件の承認案件を提出し、そのすべてを成立させようという極めて無謀な方針をとったため、政府・与党は議事運営で無理を重ねる必要に迫られ、突如として、山岡国対委員長の指示なのでしょうか、それとも、小沢幹事長によるあの百四十人からの議員を連れての中国への朝貢外交のためなのでしょうか、党利党略むき出しのなりふり構わぬ強硬姿勢に打って出たのは、今の民主党の、恥ずかしい権力成金の姿勢そのものではありませんか。

 その臨時国会において重要法案と目されていたのは、金融円滑化法及びインフルエンザ被害救済法でありました。ともに国民生活に直接関係する法案であるため、我々野党も審議に協力すると表明していたにもかかわらず、十一月十六日の議院運営委員会で、両法案を一度の本会議で趣旨説明することを採決で決めるという、前例にない暴挙を行ったのであります。

 それだけにとどまらず、与党は、十一月十九日の財務金融委員会において、少数意見を無視する強引な議会運営に抗議して自民党、公明党が欠席する中、慣例を無視した定例日外での委員会採決を強行し、金融円滑化法の本会議への緊急上程を決めました。

 我々野党は、一方的な趣旨説明、質疑の決定や財務金融委員会の強引な採決などを、強権的であると横路議長に訴えましたが、このときも事態は全く動くことなく、結果として、政府・与党の横暴な運営を衆議院として認めることとなったのであります。

 今開かれておりますこの百七十四回通常国会においても、政府・与党追従の国会運営が繰り返されておるところでございます。

 我々野党は、議院運営委員会や予算委員会などの審議を通じて、政治と金の問題、政府による箇所づけ情報漏えい事件などに、参考人招致や証人喚問、参考資料の提出などを事あるごとに要求してまいりました。しかしながら、政府・与党は不誠実な答弁、対応に終始し、現在に至るまで我々の要求は何ら実現されておりません。

 そこで、野党四党は、二月二十二日に共同で、国会運営に関する申し入れを横路議長あてに提出し、公正なる議会運営を求めました。

 以下に、その内容を一つ一つ申し上げます。

 一つ、石川知裕衆議院議員の証人喚問と、辞職勧告決議案の直近の本会議における採決を行うこと。

 一つ、予算委員会等で我々が要求し、鳩山総理もその必要性を認めている、真相解明のための、総理の秘書ら関係者の証人喚問、参考人招致を早期実現させること。

 一つ、総理も説明責任を認めている、小沢民主党幹事長の証人喚問、参考人招致を早期実現させること。

 一つ、公共事業の箇所づけ情報漏えい問題に関して、官房長官が言明した、事実関係の精査結果の早期発表と国土交通省政務三役等の処分を行うこと。

 一つ、与党が提案している子ども手当支給法案、高校無償化法案の本会議趣旨説明の提案撤回と、衆議院での本予算審議中は予算関連法案の趣旨説明、質疑を行わない旨の確約、及び重要広範議案としての審議を行うこと。

 一つ、予算委員会で公聴会日程が委員長職権で強行に決定されたのは遺憾である。公聴会実施後の十分な審議時間を確保すること。

 以上、いずれも正当な要求であります。

 これらの要求に対して、横路議長は、各委員会の現場レベルの話として、我関せずの態度を決め込み、議長としての指導力を何一つとして発揮することはありませんでした。

 すべてとは言いません。この中には、議長の権限でできることがあるではありませんか。これほど重要かつ解明が求められている事態に対して、現場レベルの話とする姿勢だけでも、横路君の議長としての資質を疑うに十分と言えるのではないでしょうか。

 その後、異例なことながら、野党側から事態打開のための与野党国会対策委員長会談を申し入れたものの、民主党の山岡国対委員長は、一項目も回答できない、また、政治と金の問題は与野党国対委員長会談にはなじまないとして、まあ驚くべき、あきれるような見識で政党間協議自体を否定し、不健全な国会運営が続いております。

 結果、二月二十三日には子ども手当支給法案、二十五日には高校無償化法案といった鳩山政権の目玉政策にかかわる重要法案の趣旨説明、質疑が議院運営委員長の職権により次々と決められ、我々の要求事項は簡単に切り捨てられたのであります。

 このゆゆしき事態に、昨日、我が党が再度横路議長を訪ね、国会運営に関して善処を求めたことに対しても、何ら行動を起こさず、結果として、与野党の対立と議会の混乱に拍車をかけただけでありました。

 総選挙以来、鳩山内閣とそれを支える連立与党は、その獲得した多数を背景に、みずから思い描いた日程を強引に野党に押しつけ、これまで議会が積み上げてきた、よきルールや慣例を失わせてしまいました。

 国会は、皆さん、議論する場です。(発言する者あり)

副議長(衛藤征士郎君) 諸君、静粛に願います。

田野瀬良太郎君(続) 我々の与党時代は、野党に対し、ぎりぎり、できる限りの配慮をし、予算案の審議もできるだけ時間を確保し、参考人招致や証人喚問も可能な限り実現してまいりました。

 今の、議論を封じるかのような政府・与党の姿勢は、国会軽視どころではありません。もはや、国会無視と言っても過言ではないでしょう。

 本当に、与党の皆さん、皆さんは、こんなに自浄能力のない国会、こんな国会でよろしいんでしょうか。

 数の力で与党が何をしてもよい、政府・与党にとって都合の悪い問題は国会での議論を封殺してよいという思い上がりの姿勢は、捨てるべきであります。あなた方は、決して国民から白紙委任状を与えられておるわけではないんです。

 本来、議長は、言論の府の長として、与野党の合意形成を主導する立場にあり、中立公正な立場から、円満な合意形成を導く役割が求められているはずであります。国会のすべての責任は議長にあります。

 横路君は、衆議院議長という重責にありながら、政府・与党の党利党略のみに加担し、我が国の議会制度が崩壊していくさまを、ただただ傍観しておるだけであります。

 昨年の九月に横路君が議長に就任してからわずか半年で不信任決議を提出しなくてはならない事態に陥ったことは、極めて異常な事態であり、国会審議を混乱させた横路君の責任は大変重いと言わざるを得ません。

 議会人としての信念も矜持もなく、ただひたすらに平成の脱税王、永田町の不動産王に加担する横路君を信任するわけにはまいりません。

 この場に御参集の議員各位から党利党略を超えた絶大なる御賛同を賜りますようお願いを申し上げまして、私の趣旨説明といたします。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 討論の通告があります。順次これを許します。松木けんこう君。

    〔松木けんこう君登壇〕

松木けんこう君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました衆議院議長横路孝弘君不信任決議案について、反対の立場で討論をいたします。(拍手)

 初めに、旧来型の審議引き延ばし、審議拒否戦術を繰り返した末に、行き詰まったあげく……(発言する者あり)余り人のまねはしなくても大丈夫と思います。審議復帰の口実にするという、極めて身勝手、動機不純、党利党略的な目的のため、松本議院運営委員長解任決議案に続き、あろうことか横路議長に対する不信任決議案を提出するという憲政史上まれに見る暴挙に出た自民党の皆さんに対し、強く抗議をさせていただきます。

 自民党の皆様は、余りにも安易に常任委員長解任決議案などを乱発しておりますが、議長不信任決議案という極めて重大な問題を単なる国対戦術におとしめており、議会制民主主義に対する冒涜であり、反省を促すものであります。

 自民党など野党四党は、今月の二十二日、横路議長に対し六項目の申し入れをしたと伺っておりますが、その後、昨日、横路議長に対し、実に失礼な質問状を突きつけました。いわく、二十二日の野党四党による申し入れについては特段の配慮をいただけるとの認識でいたが、その後、黙殺された形になっているということは甚だ遺憾である。

 本来は与野党協議で決まる問題だというふうに思いますけれども、議長に一方的に申し入れた上に、議長は自分たちに配慮するものと決めつけて、すぐにそのとおりに回答を得られないとなると、自分たちの申し入れは黙殺された、けしからぬと言う身勝手さでございます。

 議長に対し、まるで言いがかりのような質問状を突きつけるのは、まさしく前代未聞であり、実に身勝手と言うほかは残念ながらありません。

 言うまでもなく、我が国経済は厳しい状況です。だからこそ、一日も早い予算成立が必要でございます。

 しかしながら、自民党の皆様は、国民生活を人質にとり、審議引き延ばしや審議拒否戦術を繰り返しています。予算委員長の解任決議案に始まり、先ほどの議院運営委員長の解任決議案などが、いかに理由のない、説得力のないものであったかは、議事の経過で明らかです。

 国会は言論の府ですから、議論は幾らでも受けて立つわけでございます。しかし、議論に入ることを阻止しようというのでは、議会制度の否定になるわけでございます。国権の最高機関と自民党の皆様は何度もおっしゃいます。それならば、国権の最高機関にふさわしい議論を、ぜひしようではありませんか。

 以上、理由を申し上げまして、不信任決議案に対しての反対討論とします。

 ありがとうございました。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) 梶山弘志君。

    〔梶山弘志君登壇〕

梶山弘志君 自由民主党の梶山弘志でございます。

 私は、自由民主党・改革クラブを代表して、ただいま議題となりました衆議院議長横路孝弘君不信任決議案に対し、賛成の討論を行います。(拍手)

 昨年の政権交代は、国民に大きな変化を感じさせました。そして、新しい政権与党のもとで一体どのような与野党論戦が繰り広げられるのか、国民は期待と不安を持ちながら国会を注視していたはずであります。ところが、国民の期待はあっという間にしぼみ、今や、崩壊しつつある議会政治に対して、国民の不安と不信感は日増しに高まるばかりであります。

 民主党の皆様は、かつて、我々が手順を尽くして丁寧に進めてきた国会対応ですら、多数の横暴、権力の濫用と非難して、あらゆる妨害をしかけてきましたが、いざ立場が変わってみれば、大きく豹変し、多数を背景とした問答無用の運営を繰り返してきたのであります。そして、与党の戦略に加担をし、少数会派の意見を封殺しているのが、横路孝弘君、あなたなのであります。

 総選挙後、初めての論戦となる十月末にようやく開会された臨時国会で、松本剛明議運委員長は、強権的な運営に終始をし、職権濫用で本会議日程を決め、法案の趣旨説明や緊急上程を進めていきました。この理不尽な行為に対し、我々は横路君に抗議を申し入れましたが、聞き入れられることなく、少数会派の存在そのものが放置されたのであります。

 かかる重大な事態に憂え、我々は、松本剛明議院運営委員長並びに玄葉光一郎財務金融委員長の解任決議案を提出し、野党は、こぞって賛成したのであります。驚くべきことに、これらの解任決議案が否決されるや、議院運営委員会は、我が党欠席の中で、採決で法案を強行付託し、各委員会は一斉に委員長職権で日程を取り決め、十分な質疑時間もとらないまま法案審議を進めたのでありました。

 我々の要求は、丁寧な審議を尽くすこと、党首討論や予算委員会集中審議を開催することなど、建設的かつ現実的なものでありました。鳩山総理や小沢民主党幹事長にまつわる政治と金の疑惑を隠すためか、与党は、全く応じることなく、臨時国会を閉じたのであります。

 この間、立法府は多数を制したものが独裁的に権力を振るっても構わないかのごとき与党の振る舞いに、横路君は、ひたすら他人事を決め込み、なすがまま、荒れるがまま、状況を傍観していたのであります。

 そして、不正常なまま本年を迎え、我々が引き続き正常化に向けての要求を続ける中、議会の慣例とルールを破り続けた政治的道義的責任から逃れるすべもなく、与党は、通常国会召集前の議運理事会において、丁寧な議会運営に努める旨を表明し、ようやく今国会冒頭の議事日程が整いました。

 しかし、与党は、悪びれもせず、またしても信じがたい暴挙に打って出たのであります。

 歳入法案である国税と地方税が重要な法案であるという認識は与野党ともに一致していますが、我々は、所管する財務金融委員会や総務委員会など国会全体を見据えつつ、法案の趣旨説明と付託を検討すべきであると考えていました。ところが、与党は、少数会派の意見を切り捨て、あろうことか、同じ本会議で議題とすることを委員長職権で決め、横路君は、何ら異を唱えることなく、本会議を強行したのであります。

 これに引き続き、いまだ衆議院において予算審議中であるにもかかわらず、歳出法案である子ども手当法案の趣旨説明を決め、我が党が欠席している中で開会いたしました。この異常な事態に、議運理事会において野党は強く抗議いたしましたが、与党は、お構いなしに、本日の高校無償化法案の趣旨説明を一方的に決定したのであります。

 民主党の皆さん、あなたたちは、野党時代に、参議院予算委員会での基本的質疑が終了しなければ法案審議には応じられないと強く抵抗していたのではないですか。与野党の立場が変わっても、民主党の政局一辺倒の御都合主義は変わることなく、健全な議会運営の足を引っ張ってばかりじゃないですか。

 さらに看過できないのは、子ども手当法案、高校無償化法案ともに、野党四党が重要広範議案に指定すべきと主張していたところを、与党の都合で勝手に重要広範から外すという傲慢な姿勢であります。これらの法案は、民主党がマニフェストの筆頭に掲げて選挙戦を戦ったものであり、我々や民主党に一票を投じた有権者はもちろんのこと、広く国民に対して、鳩山総理がみずから答弁に立って、法案の内容や効果、その財源などを明確にすべきでありましょう。

 そもそも、議案の扱いは、野党の希望に応じて与野党で協議するものであって、このたびの、ルールを無視した決定過程は断じて許すことができません。そして、ここでも横路君は、与党と結託して、与野党調整に手を差し伸べようとはしませんでした。

 政治と金をめぐる問題として、鳩山総理の毎月千五百万円の子ども手当や小沢民主党幹事長の政治資金問題に関し、我々は、本人が説明責任を果たすべきであるとし、また、予算委員会を中心として関係者の証人喚問や参考人招致を求め、国会の場で徹底して疑惑の解明を図るべきであると主張してきました。民主党には全く自浄能力がないことは、さまざまな機会を通じて既に承知しているからであります。

 今や平成の脱税王と称される鳩山総理の贈与税納付問題につき、各地の税務署には、税金を納めるのがばかばかしいとの声が届き、我が党所属議員が意見交換をした税務関係者の方からは、納税者の疑問に対してどう説明をしてよいのかわからないといった発言もあったようであります。

 各種世論調査は、鳩山総理と小沢民主党幹事長の消極的な対応に大多数の国民が納得していないことを示しており、さまざまな報道機関も、本人みずからが進んで国会の場において説明責任を果たし、一刻も早く与野党で政策論議ができるようにすべきであると何度も報じております。

 また、最近は、民主党所属議員に対する北海道教職員組合による違法献金事件の驚くべき実態が続々と明らかになり、政治に対する国民の不信感はますます増幅するばかりであります。

 このように、国会の自浄作用が厳しく問われているときにあって、なぜ横路君は国会の権威を守ろうとしないのでしょうか。

 さらに、忘れてならないのは、自民党、公明党、みんなの党が共同で提出した石川知裕君議員辞職勧告決議案の扱いであります。

 現職議員の逮捕、起訴は重大な事態であり、我々は、議員の身分は重いものであるということを十分承知の上で、国会議員が刑事責任を問われるという現実を深刻に受けとめ、決議案を提出いたしました。松本議院運営委員長は、適時適切だと判断したら取り扱うと、あいまいな発言をし、結論を引き延ばすばかりであります。

 民主党がよく使ってきた言葉に、直近の民意という言葉がありますが、さきの長崎県知事選挙や東京都の町田市長選挙にあっては、与党が推薦する候補者が大差をつけられて敗れ去っております。この選挙結果に関連して、鳩山総理も小沢民主党幹事長も政治と金の問題の影響を認めており、有権者の批判の声が突きつけられている今以上に適時適切なタイミングはないはずであります。

 この問題についても、横路君は、本院を代表する者として、政治浄化に向けた指導力を発揮し、決議案の本会議上程を与党側にあっせんすべきではないでしょうか。

 また、公共事業の箇所づけ情報漏えい問題につき、官房長官は、予算委員会において陳謝をし、今後、事実関係を十分精査の上、内閣においてしかるべく処分を含め対処させていただきますと述べましたが、いまだ、事実関係の精査結果は示されておらず、国土交通省の政務三役の処分もなされておりません。これは、国会軽視そのものではないでしょうか。

副議長(衛藤征士郎君) 梶山弘志君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。

梶山弘志君(続) その予算委員会では、委員長職権によって公聴会が決定され、我が党欠席のまま実施されました。

 河野洋平前議長は、公聴会について、公述人の意見を審議に反映させ、すぐに採決が行われないようにするとのすぐれた見解を示し、与党も、この考えを尊重していたはずであります。

 ところが、与党は、河野見解をあっさりとほごにし、衆議院規則に盛り込まれている「一方にかたよらないように公述人を選ばなければならない。」という定めも破って、みずからが描いた日程を進めることのみに専心しております。

 以上、申し上げてきたとおり、著しく中立性を欠き、議長としての指導力を発揮できない横路孝弘君が議長の職にとどまるのは極めて不適切であり、間違いなく不信任に値するものです。

 健全な議会を望む良識ある議員各位の圧倒的多数をもって、本決議が速やかに可決されますよう強く希望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

副議長(衛藤征士郎君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

副議長(衛藤征士郎君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百四十一

  可とする者(白票)        百十五

  否とする者(青票)      三百二十六

副議長(衛藤征士郎君) 右の結果、衆議院議長横路孝弘君不信任決議案は否決されました。(拍手)

    ―――――――――――――

谷垣禎一君外四名提出衆議院議長横路孝弘君不信任決議案を可とする議員の氏名

あべ  俊子君   安倍  晋三君   逢沢  一郎君   赤澤  亮正君

秋葉  賢也君   麻生  太郎君   甘利   明君   井上  信治君

伊東  良孝君   伊吹  文明君   石田  真敏君   石破   茂君

石原  伸晃君   稲田  朋美君   今村  雅弘君   岩屋   毅君

江渡  聡徳君   江藤   拓君   遠藤  利明君   小里  泰弘君

小野寺 五典君   小渕  優子君   大島  理森君   大野  功統君

大村  秀章君   加藤  勝信君   加藤  紘一君   梶山  弘志君

金子  一義君   金子  恭之君   金田  勝年君   鴨下  一郎君

川崎  二郎君   河井  克行君   河村  建夫君   木村  太郎君

岸田  文雄君   北村  茂男君   北村  誠吾君   小池 百合子君

古賀   誠君   後藤田 正純君   高村  正彦君   近藤 三津枝君

佐田 玄一郎君   佐藤   勉君   齋藤   健君   坂本  哲志君

塩崎  恭久君   塩谷   立君   柴山  昌彦君   下村  博文君

新藤  義孝君   菅   義偉君   菅原  一秀君   園田  博之君

田中  和徳君   田野瀬良太郎君   田村  憲久君   平   将明君

高市  早苗君   高木   毅君   竹下   亘君   竹本  直一君

武田  良太君   武部   勤君   橘  慶一郎君   棚橋  泰文君

谷   公一君   谷垣  禎一君   谷川  弥一君   谷畑   孝君

徳田   毅君   中川  秀直君   中谷   元君   中村 喜四郎君

永岡  桂子君   長島  忠美君   長勢  甚遠君   二階  俊博君

西野 あきら君   西村  康稔君   額賀 福志郎君   野田   毅君

馳    浩君   鳩山  邦夫君   浜田  靖一君   林   幹雄君

平井 たくや君   平沢  勝栄君   福井   照君   福田  康夫君

古川  禎久君   古屋  圭司君   保利  耕輔君   細田  博之君

町村  信孝君   松浪  健太君   松野  博一君   松本   純君

三ッ矢 憲生君   宮腰  光寛君   村上 誠一郎君   村田  吉隆君

茂木  敏充君   森   英介君   森   喜朗君   森山   裕君

柳本  卓治君   山口  俊一君   山本  公一君   山本  幸三君

山本  有二君   与謝野  馨君   吉野  正芳君

否とする議員の氏名

安住   淳君   阿久津 幸彦君   阿知波 吉信君   相原  史乃君

青木   愛君   赤松  広隆君   東   祥三君   網屋  信介君

荒井   聰君   五十嵐 文彦君   井戸 まさえ君   池田  元久君

石井   章君   石井 登志郎君   石毛 えい子君   石関  貴史君

石田  勝之君   石田  三示君   石田  芳弘君   石津  政雄君

石原 洋三郎君   石森  久嗣君   石山  敬貴君   泉   健太君

磯谷 香代子君   市村 浩一郎君   糸川  正晃君   稲富  修二君

稲見  哲男君   今井  雅人君   内山   晃君   打越 あかし君

生方  幸夫君   江端  貴子君   枝野  幸男君   小川  淳也君

小沢  一郎君   小沢  鋭仁君   小野塚 勝俊君   小原   舞君

緒方 林太郎君   大泉 ひろこ君   大串  博志君   大島   敦君

大谷   啓君   大谷  信盛君   大西  健介君   大西  孝典君

大畠  章宏君   大山  昌宏君   太田  和美君   逢坂  誠二君

岡島  一正君   岡田  克也君   岡田  康裕君   岡本  英子君

岡本  充功君   奥田   建君   奥野 総一郎君   奥村  展三君

加藤   学君   加藤  公一君   鹿野  道彦君   海江田 万里君

柿沼  正明君   笠原 多見子君   梶原  康弘君   勝又 恒一郎君

金森   正君   金子  健一君   神山  洋介君   川内  博史君

川口   浩君   川越  孝洋君   川島 智太郎君   川端  達夫君

川村 秀三郎君   河上 みつえ君   菅   直人君   木内  孝胤君

木村たけつか君   吉良  州司君   城井   崇君   黄川田  徹君

菊田 真紀子君   菊池長右ェ門君   岸本  周平君   北神  圭朗君

京野  公子君   工藤  仁美君   櫛渕  万里君   楠田  大蔵君

沓掛  哲男君   熊谷  貞俊君   熊田  篤嗣君   黒岩  宇洋君

黒田   雄君   桑原   功君   玄葉 光一郎君   小泉  俊明君

小平  忠正君   小林 千代美君   小林  正枝君   小宮山 泰子君

小宮山 洋子君   小室  寿明君   小山  展弘君   古賀  一成君

古賀  敬章君   後藤  英友君   後藤   斎君   後藤  祐一君

郡   和子君   近藤  和也君   近藤  昭一君   近藤  洋介君

佐々木 隆博君   佐藤 ゆうこ君   斉木  武志君   斉藤   進君

齋藤   勁君   斎藤やすのり君   坂口  岳洋君   阪口  直人君

笹木  竜三君   階    猛君   篠原   孝君   柴橋  正直君

下条  みつ君   城島  光力君   白石  洋一君   神風  英男君

首藤  信彦君   瑞慶覧 長敏君   末松  義規君   杉本 かずみ君

菅川   洋君   鈴木  克昌君   鈴木  宗男君   仙谷  由人君

園田  康博君   空本  誠喜君   田島  一成君   田嶋   要君

田名部 匡代君   田中けいしゅう君   田中 眞紀子君   田中 美絵子君

田中  康夫君   田村  謙治君   平   智之君   高井  崇志君

高井  美穂君   高木  義明君   高野   守君   高橋  昭一君

高橋  英行君   高松  和夫君   高邑   勉君   高山  智司君

滝    実君   竹田  光明君   武正  公一君   橘   秀徳君

玉木  朝子君   玉木 雄一郎君   玉城 デニー君   玉置  公良君

樽床  伸二君   中後   淳君   津川  祥吾君   津島  恭一君

津村  啓介君   辻    惠君   手塚  仁雄君   寺田   学君

土肥  隆一君   道休 誠一郎君   富岡  芳忠君   豊田 潤多郎君

中井   洽君   中川   治君   中川  正春君   中島  政希君

中島  正純君   中津川 博郷君   中塚  一宏君   中根  康浩君

中野  寛成君   中野   譲君   中野渡 詔子君   中林 美恵子君

中山  義活君   仲野  博子君   永江  孝子君   長尾   敬君

長島  昭久君   長島  一由君   長妻   昭君   長安   豊君

仁木  博文君   西村 智奈美君   野木   実君   野田  国義君

野田  佳彦君   羽田   孜君   萩原   仁君   橋本  清仁君

橋本  博明君   橋本   勉君   畑   浩治君   鉢呂  吉雄君

初鹿  明博君   鳩山 由紀夫君   花咲  宏基君   浜本   宏君

早川 久美子君   原口  一博君   伴野   豊君   樋口  俊一君

樋高   剛君   平岡  秀夫君   平野  博文君   平山  泰朗君

福嶋 健一郎君   福島  伸享君   福田  昭夫君   福田 衣里子君

藤田  一枝君   藤田  大助君   藤田  憲彦君   藤村   修君

古川  元久君   古本 伸一郎君   細川  律夫君   細野  豪志君

本多  平直君   馬淵  澄夫君   前原  誠司君   牧   義夫君

牧野  聖修君   松岡  広隆君   松木けんこう君   松崎  公昭君

松崎  哲久君   松野  頼久君   松原   仁君   松宮   勲君

松本  大輔君   松本  剛明君   松本   龍君   三日月 大造君

三谷  光男君   三村  和也君   三宅  雪子君   三輪  信昭君

三井  辨雄君   水野  智彦君   皆吉  稲生君   宮崎  岳志君

宮島  大典君   向山  好一君   村井  宗明君   村上  史好君

村越  祐民君   室井  秀子君   本村 賢太郎君   森岡 洋一郎君

森本  和義君   森本  哲生君   森山  浩行君   矢崎  公二君

谷田川  元君   柳田  和己君   山尾 志桜里君   山岡  賢次君

山岡  達丸君   山口  和之君   山口   壯君   山崎  摩耶君

山崎   誠君   山田  良司君   山井  和則君   山花  郁夫君

山本  剛正君   湯原  俊二君   柚木  道義君   横粂  勝仁君

横光  克彦君   横山  北斗君   吉川  政重君   吉田   泉君

吉田 おさむ君   吉田  公一君   吉田  統彦君   笠   浩史君

和嶋  未希君   和田  隆志君   若井  康彦君   若泉  征三君

鷲尾 英一郎君   渡辺 浩一郎君   渡辺   周君   渡辺  義彦君

渡部  恒三君   赤嶺  政賢君   笠井   亮君   穀田  恵二君

佐々木 憲昭君   塩川  鉄也君   高橋 千鶴子君   宮本  岳志君

吉井  英勝君   阿部  知子君   重野  安正君   辻元  清美君

照屋  寛徳君   中島  隆利君   服部  良一君   吉泉  秀男君

亀井  静香君   下地  幹郎君   松下  忠洋君   城内   実君

小泉  龍司君   石川  知裕君

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) この際、議長に本席を譲ります。(拍手)

    〔副議長退席、議長着席〕

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) この際、暫時休憩いたします。

    午後五時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後六時二十二分開議

議長(横路孝弘君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。文部科学大臣川端達夫君。

    〔国務大臣川端達夫君登壇〕

国務大臣(川端達夫君) 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 今日、高等学校等は、その進学率が約九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果が広く社会に還元されていることから、高等学校等の教育に係る費用について社会全体で負担していくことが要請されております。

 また、高等学校等については、家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう、家庭の経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっております。

 さらに、諸外国では多くの国で後期中等教育を無償としており、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約においても、中等教育における無償教育の漸進的な導入について規定されておりますが、我が国はこの規定を留保していることから、この留保の撤回に向けた施策を進めることが求められております。

 この法律案は、このような観点から、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに、私立高等学校等の生徒がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとするものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、公立高等学校については、原則として授業料を徴収しないものとするとともに、これに要する経費について地方公共団体に交付するものであります。

 第二に、私立高等学校等に在学する生徒は、高等学校等就学支援金の受給資格について都道府県知事等の認定を受けて、一定額の高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとするとともに、その保護者等の収入の状況に照らして特に経済的負担を軽減する必要がある生徒については、支給額を増額することとしております。また、高等学校等就学支援金は、私立高等学校等の設置者が生徒にかわって受領し、生徒の授業料に充てるものとしております。なお、この支給に要する費用の全額は、国が都道府県に交付することとしております。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

     ――――◇―――――

 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

副議長(衛藤征士郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。江端貴子君。

    〔江端貴子君登壇〕

江端貴子君 民主党の江端貴子でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案、いわゆる高校無償化法案について質問いたします。(拍手)

 一人一人の命を大切にすること、コンクリートから人づくりへ予算の使い道を改めること、そして、国民の生活が第一の政治を実現することが、私たち民主党が昨年のマニフェストで訴えてきたことであり、多くの国民の皆様から御支持いただいたことです。

 マニフェストの中で、私が一番強くお訴えし、国民の皆様からの御期待も多いのが、子ども手当と、そして今回御提案された高校無償化の実現です。

 私は、鳩山総理が施政方針で述べられた、未来を担う子供たちがみずからの無限の可能性を自由に追求していける社会の実現こそが、今の日本に何よりも求められていると思います。

 また、川端文部科学大臣も、先日の予算委員会において、日本の将来を築く、その中心で支えるのは人で、人の教育こそまさに日本の未来を支える一番重要な課題であり、その上で、社会の大きな支えとなる人材を育てる高校教育において、その費用を社会全体が支えていくという考えのもとに高校無償化制度があると答弁されておられました。全くそのとおりだと、改めて本制度の実現に向け、その意を強くしているところでございます。

 鳩山内閣が、大変厳しい財政状況の中ではあっても、国民との約束である国民生活が第一の予算編成を行い、公約どおりに法律案を提案されることに敬意を表します。そして、私ども政権与党としては、多くの国民の皆さんのため、ぜひこの政策をことし四月から確実に実現してまいりたいと考えております。

 私は、そうした立場から、政府提案法案について、順次お伺いします。

 まず初めに、今回提出された公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案は、社会全体で子供たちの学びを支えていくための画期的な制度改革を目指しているものであり、その円滑な実施のためには、国民の皆様の御理解と御協力が必要です。この場で、改めて、国民の皆様に対して、制度の導入の趣旨、意義について、文部科学大臣から、わかりやすい御説明をお願いいたします。

 そして、このことに加えて、高校無償化と義務教育との関係について質問いたします。

 日本国憲法第二十六条で、「義務教育は、これを無償とする。」そして、教育基本法第五条では、「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。」とされています。それを受けた学校教育法に、小学校と中学校の義務教育が規定されています。

 今回、政府案は、公立高等学校では授業料を徴収しないこととしていますが、中学卒業者の九八%が高等学校に進学している状況も考えると、国民の皆さんから、民主党は高校無償化を契機に高校を義務教育にするのかという疑問の声もいただきます。この点、学制改革という大きなテーマにもなりますが、川端文部科学大臣の御所見をお聞かせください。

 私立学校をめぐる課題について質問します。

 民主党は、マニフェストで、公立高校の実質無償化、私立高校生には年額十二万円助成と訴え、国民の皆さんから多くの御支持をいただきました。

 ただ、高校無償化という言葉が浸透した結果、公立高校だけでなく、私立高校も無償化というイメージが広がっています。私立高校生を持つ親にとっては、ぜひその方向で進めてほしいとの希望もありますが、政府案は、マニフェストどおりに、公立高校の授業料の無償化、そして私立学校の生徒には原則約十二万円の就学支援金支給とされています。なぜ私立高校の授業料は無償化されないのか、文部科学大臣に御答弁を求めます。

 また、公立は授業料を取らない一方で、私学は残るという意味では、公立と私立の格差が依然として存在し、私学の方がハンディを負っているのではないかと心配されます。この懸念にどうこたえるのか、あわせて川端文部科学大臣の答弁をお願いいたします。

 次に、公立高校以外の生徒などが受け取る就学支援金の支給対象について質問します。

 政府案では、就学支援金を受けられる生徒または学生が通う高等学校等について定められており、私立高校や中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部、高等専門学校の第一学年から第三学年とあり、さらには、専修学校及び各種学校のうち、高等学校の課程に類する課程を置くものとして、文部科学省令で定める学校の生徒も支給対象とされています。一方で、これらのほかに、例えば、いわゆる外国人学校などにも高校生世代が通っているケースがございます。

 そこで、川端大臣にお伺いいたします。

 専修学校や各種学校のうち、省令で定めるものとなっている部分について、現状でどのような学校を想定しておられるのでしょうか。また、就学支援金について、日本国内に居住していれば、外国人学校に通う生徒にも支給されるのでしょうか。あわせて御答弁をお願いいたします。

 ところで、政府案は、来年度からの実施、つまり、ことし四月以降に公立高校や私立高校等に在籍する生徒、学生が対象です。しかし、今、経済的理由で学費を納付できない高校生がふえていて、この年度末に卒業クライシスが訪れるという差し迫った緊急の問題があります。たった一年の違いで子供の一生が左右されることがあってはなりません。

 民主党では、先般、大阪と埼玉の高校生から、そうした子供たちの大変に厳しい状況を聞かせていただきました。

 家庭が生活困窮のため授業料を滞納せざるを得ず、このままでは卒業できない生徒、自分も働かないと生活できないため学校を中途退学せざるを得ない生徒など、子供たちの学びの機会を奪う貧困の連鎖の実態があります。

 その場には、長妻厚生労働大臣初め、高井文部科学大臣政務官、山井厚生労働大臣政務官も駆けつけてくださり、一緒に要望を聞いていただきました。

 私は、授業料減免、奨学金や公的貸し付けなど既存制度をフルに活用し、卒業クライシスのような悲劇が起こらないよう、政府としても支援していただきたいと考えます。文部科学大臣から、そうした子供たちへの朗報となる力強い答弁をお願いいたします。

 政府法案は、高校生たちの学びの機会保障に大変大きく寄与するものであり、できるだけ早く成立させるべきです。

 それに加えて、入学金、修学旅行費用、学用品の購入など、授業料以外の教育費負担をも軽減するために、私は、奨学金制度についてもさらなる拡充が必要ではないかと思います。特に、現在各都道府県において実施されている奨学金制度については、貸与型が中心ですが、子供たちが安心して勉学に打ち込めるようにするために、私は、給付型の奨学金制度も確立すべきではないかと考えます。この点、文部科学大臣の御所見を伺います。

 公立高校では授業料を取らない、そして私立学校等の生徒たちには就学支援金が支給されるというこの新しい制度については、国民の皆さん方にまだ十分に浸透しておりません。もちろん、来年度予算と関連法案の成立が前提ではありますが、政権与党としては、可能な限り、関係方面への広報、周知を行うべきだと考えております。

 来年度から制度が円滑にスタートするよう、政府として万全の準備をしていただきたいと思いますが、文部科学大臣のお考えをお聞かせください。

 昨年の総選挙で、私の選挙区では、鳩山代表を迎え、最終演説が行われました。そのときの大きなうねり、国民の皆様からの熱い思いを忘れることがあってはなりません。そのためにも、一刻も早くこの法案を通し、高等学校の教育にかかわる方々への支援を実現したい、その思いを新たにいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣川端達夫君登壇〕

国務大臣(川端達夫君) 江端議員から六点の質問がありました。

 最初に、制度導入の趣旨及び意義、高校無償化と義務教育化との関係についてお尋ねがありました。

 高等学校等は、その進学率が九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果は広く社会に還元されるものであることから、その教育について社会全体で負担していく方向で諸施策を進めていくべきであります。

 また、高等学校等については、家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が安心して教育を受けることができるよう、家庭の経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっております。

 さらに、多くの国で後期中等教育を無償としており、国際人権A規約にも中等教育における無償教育の漸進的な導入が規定されているなど、高校無償化は世界的な常識であります。

 このようなことから、高等学校等における保護者の教育費負担の軽減を図るため、公立高等学校について授業料を不徴収とするとともに、私立高校等については高等学校等就学支援金を支給するものであります。

 また、本法律案では、家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるためのものであり、保護者に対して、生徒の高等学校教育への就学を義務づけるものではございません。

 次に、私立高校の授業料を無償としない理由、公私間格差への懸念についてお尋ねがありました。

 私立高校生に対しては、高等学校等就学支援金として公立高校生一人当たりの負担軽減額と同等の額を支給するとともに、低所得世帯について、増額して支給することとしています。

 また、これに加え、現在都道府県が独自に行っている授業料減免補助が就学支援金に上乗せされることにより、支援が充実することを期待しております。

 なお、高校生修学支援基金も授業料の減免補助等に活用できることから、各都道府県においては、これらを活用して、低所得世帯の私立高校生の支援を充実していただくことを期待しております。

 このように、私立高校生に対しては手厚い支援を行っているところであり、公私間格差は縮小するものと考えております。

 なお、私立高校は建学の精神に基づいて特色ある教育を行っており、その自主性を尊重する必要があることにかんがみれば、私立高校について授業料の全額無償化を行い、国の関与が強まることについては、課題が多いものと考えております。

 次に、専修学校及び各種学校のうち、就学支援金の支給対象となる範囲についてお尋ねがありました。

 専修学校や外国人学校を含む各種学校については、法律案において、高等学校の課程に類する課程として文部科学省令で定めるものを対象とすることとしております。

 具体的な支給の対象については、一定の要件を満たすものを指定することを検討しているところであり、今後の国会の審議も踏まえつつ、文部科学省において適切に判断してまいりたいと考えております。

 次に、今年度卒業する生徒への支援についてお尋ねがありました。

 経済的理由により修学困難な高校生に対しては、すべての都道府県において、公立高校授業料の減免や奨学金事業を実施するとともに、私立高校が行う授業料減免措置への補助が行われており、この補助に対し、文部科学省が私学助成としてその一部を補助しているところであります。

 さらに、平成二十一年度第一次補正予算において、都道府県に新たに高校生修学支援基金を設け、都道府県による高校奨学金事業への支援の充実を図ったところであります。

 また、本年二月に各都道府県教育委員会等に通知を発出し、授業料の減免措置等の施策について高校生や保護者等への周知を図るよう依頼するとともに、各学校において生徒や家庭の実情を十分に把握した上で相談に応じるなど、きめ細かな対応が行われるよう配慮を求めてきたところであります。

 文部科学省としては、学ぶ意欲のある高校生が経済的理由によって学業を断念し、または卒業できなくならないように努めてまいりたいと考えております。

 次に、高校奨学金についてお尋ねがありました。

 経済的理由により修学困難な者の授業料以外の教育費負担については、高校の実質無償化後においても、引き続き各都道府県が行う高校奨学金事業により軽減が図られるものと認識しております。

 また、先ほど述べた高校生修学支援基金により、高校奨学金の希望者数の増に対応したところでございます。

 御指摘の給付型奨学金についても、大変重要な課題と認識しており、今後ともさらに検討してまいります。

 最後に、高校無償化の制度に係る広報、周知についてお尋ねがありました。

 高校無償化の制度の概要については、政府の責任において今国会に提出した予算案及び法律案を、地方公共団体や学校関係者に対して、各種会議、団体への説明、意見交換会や資料提供などを通じて、説明を行ってきたところであります。

 今後とも、国会における御審議の状況も踏まえつつ、本年四月からの円滑な制度の実施に向けて、地方公共団体や各学校法人を初め、保護者や生徒など広く国民の皆様に対して適宜適切に情報を提供してまいりたいと考えております。

 よろしくお願いします。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 馳浩君。

    〔馳浩君登壇〕

馳浩君 自由民主党・改革クラブ代表の馳浩です。

 高校無償化法案について、川端文部科学大臣初め、関係大臣に質問します。(拍手)

 まず、川端大臣の政治団体達友会架空事務所費六千六百七十万円問題について質問します。

 あなたは、記者会見で、達友会事務所が事務所機能を持たず、家賃、光熱水費などは発生しないことを認めました。虚偽記載ではありませんか。東京の議員会館事務所費を達友会が負担していたと説明しました。実際の事務作業は、あなたの秘書が議員会館で行っていたのではありませんか。

 あなたは、一月十二日の記者会見で、事務所費の明細は今精査中、最低限三年の部分は精査できると答弁しています。精査した結果、どうでしたか。政治資金の透明性が問われています。会計帳簿や領収書を明示して説明すべきではありませんか。

 そもそも、達友会に、会報発行や勉強会などの活動の実態はあるのでしょうか。収支報告書の支出の部分は、明細費で出てくる政治活動費のほとんどが飲食費です。この中には、ニューハーフクラブの領収書も含まれていました。

 この団体の収入の九割以上は、民主党滋賀県第一区総支部と川友政治研究会からの寄附金です。川端さんの飲食費を捻出するだけのトンネル団体だったのではありませんか。

 自殺をした我が党の松岡大臣、また赤城大臣は、実態のない架空事務所費問題で民主党の追及を受け、責任をとり、辞職しました。あなたは辞職しますか。責任をとりますか。辞職をしないとしたら、恥ずかしいと思いませんか。

 次に、北海道教職員組合のやみ献金問題について質問します。

 民主党の小林千代美代議士の選対委員長代行は、連合札幌会長が務め、買収の選挙違反で逮捕され、小林さんも連座制が問われようとしております。(発言する者あり)

副議長(衛藤征士郎君) 静粛に。静粛に願います。

馳浩君(続) この捜査の過程で、今度は、北教組から違法な選挙資金が裏金として授受されたことが会計担当者の証言で明るみとなり、公職選挙法違反や政治資金規正法違反で、現在、札幌地検が捜査中です。北教組事務所も家宅捜索を受けています。

 規範意識や道徳心、公共の精神を教える立場の教育者としてあるまじき事件です。子供を犠牲にして、組合活動と言いつつ選挙丸抱え、教職員組合の裏金で議席を買って政権交代とは、笑止千万、言語道断。余りに異常であり、断じて許せません。川端大臣の見解を求めます。

 大臣は、予算委員会で、こういう団体は、県の人事委員会に登録されている、いわゆる交渉団体です、その資格として、登録する要件として資金の流れを把握する仕組みにはなっておりません、文部科学行政の中で、このお金はどうだったかを調べることはできませんと答弁しています。

 そこで、原口総務大臣に質問いたします。

 人事委員会に登録する要件として、収支報告書の提出や監査人選定など、資金の流れを解明するような法整備が必要だと思いませんか。そして、組合の不透明な資金の流用や、虚偽の収支報告や会計処理をするような違法な団体は、人事委員会の交渉団体として、勧告や登録停止や抹消が必要だと思いませんか。自由民主党は、そのために議員立法の準備をいたします。原口大臣や川端大臣の見解を求めます。

 文部科学省としても、平和闘争資金などの名目の選挙前のカンパの流れや、教職員組合の収支決算や政治資金の流れを把握できるようにしておく必要を感じませんか。

 教職員の違法な政治的行為について規制している教育公務員特例法第十八条第二項の削除をする議員立法を我が党は準備しています。この法律では国家公務員並みに教職員の政治的行為の制限をしていますから、国家公務員並みに罰則も必要だと思いませんか。そして、教育における政治的な中立性を守るべきだと思いませんか。大臣の見解を求めます。

 教職員の違法な政治資金といえば、山梨県教職員組合の違法な裏献金事件が記憶に新しくあります。参議院選挙で輿石東候補を応援するために一億円を超えるカンパをして裏金をつくり、問題が事件化しました。政治資金規正法で略式起訴され、刑事罰まで受けた組合の幹部は、昨年春にめでたく教頭に昇進しています。大臣、全国に、このような刑事罰を受けた人物の管理職登用の実例はありますか。

 政治資金規正法違反で略式起訴された鳩山総理の秘書は、秘書を解任されています。しかし、同様の山梨県教職員組合幹部は、めでたく教頭に昇進しています。異常だとは思いませんか。川端大臣の見解を求めます。

 次に、高校無償化法案について質問します。

 そもそも、この政策を実行するに当たって、中教審に諮問しましたか。どのような政策効果のねらいがありますか。莫大な税金を投入するのであり、教育関係者による慎重な審議が必要ではありませんか。政策効果はどのように検証しますか。

 大臣は、高校無償化法案の目的や成果、効果について、二月十五日の予算委員会で、我が党の下村博文委員の質問に答え、莫大な税金を投入して無償化することで子供たちに勉強してくださいという強いメッセージになる、税金を使って勉強の環境を整えることを認識させることで社会性や公共性を自覚させる、保護者も含めて社会、公共というものを自覚して立派な大人になるという自覚を促す効果という、極めて抽象的な答弁をしました。

 現場の声に耳を傾けたり専門家の緻密な議論の積み重ねの結果としての政策とはとても思われません。莫大な税金を投入することの政策効果を全く説明しておりません。この政策で果たして、子供たちの学力向上に貢献し、公共心育成につながるのでしょうか。税金投入と政策効果の関連性についての答弁を求めます。

 そして、政策効果を練り上げる意味でも、今からでも遅くありませんから、制度の導入について中教審に諮問すべきではありませんか。大臣の答弁を求めます。

 次に、我が党の考え方を申し上げます。

 進学率九八%を超え、実質的に義務教育に準ずる教育機関である高校教育費の負担軽減策は重要と考えます。しかし、親責任や高校進学しない子供もいることを考えると、限られた財源で公平な支援をする必要があります。つまり、所得制限が必要です。

 低所得層において教育費の負担が重いことを考え、経済的な事情で進学を断念せざるを得ない、意欲と能力のある子供をなくすため、年収三百五十万円未満の生活保護世帯、準要保護世帯に対し、入学金、修学旅行費、教科書代などの経費の支援を目的とする新たな就学援助制度の創設や給付型の奨学金制度を予算の範囲内で創設すべきと考えます。

 また、公立学校と私立学校の役割は、都会と地方では微妙に違います。本当ならば公立高校に進学したかったけれども、合格できずに、通学圏の私学にやむを得ず進学する、いわゆる滑りどめの私学に通学せざるを得ない子供や保護者にとって、教育費の負担は重くのしかかります。所得制限の上で、公私間格差解消に努めるべきと考えています。大臣の見解を求めます。

 次に、税の公平性を考えると、同年齢で高校に進学しない子供たちへの支援をどうするかも重要な課題です。政府のお考えはありますか。

 次に、特定扶養控除見直しについて質問します。

 文部科学省の平成二十二年度税制改正要望では、家庭の教育費負担の軽減に資する特定扶養控除の維持を要望しておりました。その内容は、「扶養控除の見直しが行われる際には、現行の扶養控除や特定扶養控除が家庭の教育費負担の軽減に資している現状を踏まえ、より一層負担が軽減されるよう、税制上の配慮を行う。」となっています。

 しかし、信じられないことに、財務省との予算折衝で、いよいよ高校授業料無償化の財源が不足することが明らかになると、文部科学省側から特定扶養控除の見直しを提案したのです。しかも、川端大臣は、高校授業料無償化とリンクしての特定扶養控除の見直しについて、かねがね言ってきたとまで述べています。これは、総選挙の際のマニフェストに反するものではありませんか。

 それならば、なぜ税制改正要望で特定扶養控除の維持を要求したのですか。わずか二カ月足らずで、舌の根も乾かぬうちに、特定扶養控除の上乗せ部分廃止についてみずから提案するのですか。矛盾していませんか。マニフェストを変更したこの間の経緯は、国民に全く明らかになっていません。政務三役が政治主導で決めれば何をやってもいいのでしょうか。まさしく、マニフェスト第一主義の財源あさりです。大臣の説明を求めます。

 次に、各種学校も無償化に含まれますが、どの各種学校が対象となるか明確ではありません。国会にリストをお示しくださいますか。概算要求では四千八百校の各種学校を積算根拠としていますが、その中に朝鮮学校は対象となっているのでしょうか。先ほど、文部科学省の担当者は、朝鮮学校も対象となっていると発言をしておりました。

 もし対象となるとすれば、そのことについて、拉致問題担当の中井大臣はどう考えますか。拉致問題解決を優先する圧力に使いますか。それとも、教育は別次元ですか。川端大臣にも見解を求めます。

 無償化の対象となる各種学校については、文部科学省令で定めるとなっています。法案が成立しないと省令は決められないのですか。とすると、事務手続がおくれませんか。四月一日からの実行に間に合いますか。省令である以上、原則、文部科学委員会では審議の対象になりません。無償化の対象となる各種学校の範囲、基準について、省令の内容の妥当性をだれがチェックするのですか。極めて重要な制度変更であり、政務三役の密室で決めずに、国民に開かれた国会の場で議論すべきではありませんか。川端大臣の方針を伺います。

 また、各種学校の中に外国人学校も対象となる可能性があると昨年の委員会で政務三役が答弁しておられました。

 すると、そもそも義務教育段階の外国人学校は経常経費補助の対象となっていませんから、高校生だけが支援費の対象となり、外国人学校に在籍する小中学生は置いてきぼりです。逆転現象が起きるのではありませんか。大臣の答弁を求めます。

 そもそも、このような重大な制度変更を行うには周知徹底が必要ですが、既に二月の最終週です。地方自治体からは不安の声が寄せられています。

 例えば、留年者に対しては、授業料徴収の方針が不明確です。法案では、公立高校の留年者の扱いについては明確に記載されていません。大臣、どうするのですか。

 文部科学省は、留年者の授業料を国庫負担しない方針としており、公立校の留年者の授業料を無償にする場合は自治体の負担となります。

 制度施行予定の四月以降、自治体が法案の例外規定に基づいて留年者から授業料を徴収する場合には、三月議会で条例を改正する必要がありますが、準備期間が足りません。三月議会で条例改正が行えなかった場合、六月議会に先送りになります。その際は、高校無償化法案が優先されるため、自治体が、留年者は有償とした場合でも、四月、五月の授業料は徴収できなくなります。万が一には、自治体に対して臨時議会の招集を要請しますか。

 また、東京都の公立高校の授業料は十二万二千四百円、大阪府の公立高校の授業料は十四万四千円であり、自治体に新たな負担が生じます。実際に東京都は、差額分を生徒に負担させないために三億九千万円の新たな負担が生じる予定であり、経費節減での穴埋めを検討しています。

 文部科学省は激変緩和的な措置で、負担がふえる自治体に対応するそうですが、その内容は明らかではありません。大臣、どうやって対応しますか、明確な方針をお示しください。

 こういう事実を踏まえても、地方自治体は大変苦慮しており、国民への周知徹底期間もとれないことを考えると、制度の拙速な導入は混乱を引き起こします。

 大臣、拙速を避け、少なくともこの一年間をかけて、中教審や文部科学省内でのオープンな場での検討を積み重ねるべきではありませんか。川端大臣の明確な決断を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣川端達夫君登壇〕

国務大臣(川端達夫君) 最初に、政治団体達友会の活動及び事務所費について御質問がありました。

 政治団体達友会は、規約の中で、衆議院議員川端達夫氏の政治活動を後援することを本来の目的として設立された団体であり、その目的を踏まえて活動していたものと承知をしております。

 本団体の主たる事務所の届け出は、外部からの連絡拠点として、その代表者または会計責任者の自宅としてきました。このため、達友会の政治資金収支報告書に記載されている経常経費には家賃及び水道光熱費等は計上しておりませんが、その団体の活動の結果、発生した経費のうち、経常経費に相当するものが計上されており、具体的には、備品、消耗品として、新聞、事務機器、文具類、車、ガソリン等の経費、事務所費として、電話、ファクス、コピー等に係る経費が含まれていると承知しております。

 したがって、すべて実態を伴うものであり、議員御指摘の架空事務所費には当たらないと認識をしております。

 また、政治活動についてお触れになりましたが、政治活動についても、当該団体の目的を踏まえて行った活動の結果として発生した経費であり、それは、政治資金規正法に基づき、適切に処理されていたと承知しております。

 私としては、本件について、今後とも、政治資金規正法に基づき、適切に説明責任を果たしていきたいと考えております。

 次に、北海道教職員組合の問題についてお尋ねがありました。

 北海道教職員組合の問題については、検察当局によって捜査が進められているところであり、コメントは差し控えますが、教育にかかわる団体は、子供たちへの影響を考えて、法令にのっとり適正に活動する必要があることは、言うまでもありません。

 文部科学省としては、本件に関し、公務員たる教職員が政治的行為の制限に違反するなど違法な行為を行っていたか否かについて、北海道教育委員会及び札幌市教育委員会に対して、速やかに事実確認を行うよう指導を行ったところであります。

 文部科学省としては、仮に、公務員である教職員に違法な活動があれば、教育委員会と連携して、法令にのっとり毅然と対処してまいります。

 次に、職員団体に関する法整備の必要性等についてお尋ねがありました。

 職員団体制度については、地方公務員法により、統一した仕組みが設けられ、また国家公務員についても、国家公務員法において同様の仕組みが設けられており、御指摘の点については、公務員法制全体にかかわる事柄であると考えております。

 次に、公立学校の教員が政治的行為の制限に違反した場合、国家公務員と同様に罰則規定を適用できるように政治的中立性を確保すべきではないかとのお尋ねがありました。

 お尋ねの罰則規定の適用については、昭和二十九年の教育公務員特例法改正の国会審議の過程で、議員修正を受けて現行の規定になったものであり、その経緯を十分に踏まえた上で慎重に検討することが必要ではないかと考えています。

 また、教育は、中立かつ公正に行われるべきものであり、特に学校は、児童生徒等に対する教育の場であることから、政治的中立性を確保することは重要であります。

 文部科学省としては、今後とも、公立学校の教員の政治的行為の制限に関して、服務規律の確保が図られるよう、指導の徹底に努めてまいります。

 次に、刑事罰を受けた人物の管理職登用についてお尋ねがありました。

 過去に処分等を受けた者を管理職に登用するかどうかについては、任命権者である各教育委員会の権限と責任のもとに適切に行われるべきものと考えております。

 次に、中教審への諮問についてお尋ねがありました。

 中教審への諮問については、これまでも、教職員定数の改善など教育条件の整備に係るものについては、必ずしも諮問を行わず、文部科学省として必要な措置を講じてきたところであります。

 ただし、高等学校の実質無償化については、その重要性を踏まえ、教育関係者からの意見を幅広く制度に生かす観点から、関係団体との意見交換会や中教審委員を含む有識者との懇談の場などにおいて意見を伺った上で、制度の検討を行ってきたところであります。

 また、本年一月二十一日の中教審総会においても、本制度について御意見を伺ったところでございます。

 なお、対象となる高校生に対しては、本制度の意義について学校を通じて生徒、保護者に周知することにより、みずからの学びが社会に支えられていることの自覚を醸成し、国家、社会の形成者としての成長を目指し、学習意欲の維持向上を図ることを期待しているものであります。

 次に、所得制限と公私間格差についてお尋ねがありました。

 高等学校等への進学率は約九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果は広く社会に還元されるものであることから、その教育費について社会全体で負担していく方向で諸施策を進めていくべきであります。

 これに加え、多くの国で後期中等教育を無償としており、国際人権A規約にも中等教育における無償教育の漸進的な導入が規定されるなど、高校無償化は世界的な常識でもあります。

 このようなことから、すべての意志のある高校生が安心して勉学に打ち込めるよう、本法律案では所得制限を設けないこととしたものであります。

 また、私立高校生に対する高等学校等就学支援金の支給については、低所得者世帯の高校生に対し手厚い支援を行うことなどにより、むしろ公私間格差は縮小するものと考えております。

 次に、高校に進学しない子供たちへの支援についてお尋ねがありました。

 本法律案は、家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志ある人が安心して教育を受けることができるよう、高等学校等の実質無償化を進めるものであります。

 この制度では、全日制の高校だけでなく、高校の通信制課程、定時制課程、単位制高校、専修学校などのうち、高校の課程に類する課程を置くものなどについても対象となっていることから、個人のニーズに応じた多様な学習機会が保障されることになります。

 高校に進学しなかった人についても、本法律案における支援対象には年齢制限が設けられていないことから、高校に入学することで支援対象になるものであり、本人の学ぶ意欲に応じて学習する道は開かれているものと考えております。

 次に、特定扶養控除の見直しの経緯についてお尋ねがありました。

 特定扶養控除については、文部科学省は、高校実質無償化政策と相まって、トータルとしてより一層教育費負担が軽減されるよう、税制上の配慮を行う旨、要望していたところであります。したがって、特定扶養控除と政策効果が共通する高校の無償化の実現のために、その縮減を提案いたしました。

 この案は、マニフェストの趣旨に沿って、ほとんどの家庭において便益が増となるようになっており、平成二十二年度税制改正大綱で決定されているところであります。また、十九歳から二十三歳未満の特定扶養親族に係る控除の上乗せ分については、文部科学省より存続を提案し、大綱で決定されているところであります。

 以上により、教育費の負担軽減に資するよう配慮するという当初の要望内容と矛盾するものではなく、マニフェストは守られているものと認識しております。

 各種学校の対象範囲及び義務教育段階の外国人学校への支援についてお尋ねがありました。

 専修学校や各種学校については、高等学校の課程に類する課程として文部科学省令で定めるものを対象とすることとしております。

 具体的な支給対象については、一定の要件を満たすものを指定することを検討しているところであり、今後の国会における審議も踏まえつつ、文部科学省において適切に判断し、法案が成立次第、速やかに省令を定めてまいりたいと考えております。

 なお、本制度は生徒個人への支援であり、学校そのものに支援するものではありません。

 また、義務教育段階では、外国人を含む希望するすべての児童生徒に、公立で受け入れる体制を整えており、みずからの選択で高校に行くこととは性格が違うものと認識をしております。

 次に、高校無償化について、準備期間が不足しているのではないかとのお尋ねがございました。

 高校実質無償化制度の概要については、政府の責任において今国会に提出した予算案及び法律案を、地方公共団体や学校関係者に対して、各種会議、団体への説明、意見交換会や資料提供などを通じ、説明を行ってきたところでございます。

 今後とも、国会における御審議の状況も踏まえつつ、本年四月からの円滑な制度の実施に向けて、地方公共団体や各学校法人等に対して、各種会議における説明、意見交換、資料提供などを通じ、適宜適切に情報提供をして、協力を求めてまいる所存でございます。

 次に、高校無償化により地方公共団体に新たな負担が生じるのではないかとのお尋ねがありました。

 今回の法律による公立高校の無償化スキームは、公立高校運営費のうち、授業料を徴収することとした場合における授業料収入に相当する額を国が地方公共団体に交付することによって実施するものであります。

 具体的な交付金の算定方法は政令で定めることとしておりますが、原則として、標準的な授業料額を基礎として、生徒数を乗じるとともに、地方財政措置されている授業料減免相当額を控除して、一律に算定することが基本であると考えております。

 しかしながら、東京都や大阪府のように、他の地方公共団体より高額な授業料を設定している都府県もあることや、授業料減免の実施状況が都道府県によりさまざまであることから、これらの事情も考慮してほしいという地方公共団体の要望も踏まえ、制度導入当初においては、実際の授業料収入を勘案した算定とすることなど、留年者の取り扱いも含め、必要な対応について検討したいと考えております。

 最後に、国民への周知期間が十分とれていないのではないかとのお尋ねがありました。

 高校実質無償化制度の概要については、政府の責任において今国会に提出した予算案及び法律案を、地方公共団体や学校関係者に対して、各種会議、地方団体への説明、意見交換会や資料提供などを通じ、説明を行ってきたところでございます。

 今後とも、国会における御審議の状況も踏まえつつ、本年四月からの円滑な制度の実施に向けて、地方公共団体や各学校法人等に対し、各種会議における説明、意見交換や資料提供などを通じ、適宜適切に情報をしてまいりたいと思います。

 政府としては、国民の期待を裏切ることのないよう、平成二十二年度からの開始をお願いしているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣原口一博君登壇〕

国務大臣(原口一博君) 馳議員にお答えいたします。

 職員団体の登録についてお尋ねがございました。

 職員団体の登録制度は、構成員の範囲、規約の作成、変更や役員の選挙方法など、団体交渉に関する適格性等を判断する観点から定められるものであり、その要件については慎重な検討が必要である、こう考えております。(拍手)

    〔国務大臣中井洽君登壇〕

国務大臣(中井洽君) 馳議員お尋ねの件につきましては、昨年十二月、川端文科大臣に対しまして、高校の実質無償化の対象校を定めるに当たっては、我が国が北朝鮮に制裁を行っていることを十分に考慮すべきだと私から申し入れてございます。

 いずれにいたしましても、文科省がこれからの御議論等も踏まえて適切に判断をされると考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 西博義君。

    〔西博義君登壇〕

西博義君 公明党の西博義でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案について、文部科学大臣並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、与党の国会運営について一言申し上げます。

 先日の子ども手当法案に引き続き、議運委員長職権で本会議を立て、法案審議に入ることを強行いたしました。参議院予算委員会の基本的質疑が終わるまでは法案審議を行わないとした民主党の主張は、一体何だったのでしょうか。与党の国会運営に携わっている諸氏に対して、議会人として、節度ある国会運営を求めるものであります。

 さて、資源に乏しい我が国が現在の豊かな社会を築くことができたのは、国家、社会の存立基盤である教育に大きな力を傾けてきたからであります。その意味で、知識基盤社会と言われる今日、我が国が継続的発展を遂げるためには、社会全体で教育に取り組まねばならないことは論をまちません。

 現在、高校は、約九八%の子供たちが進学する国民的な教育機関となっています。そして、その教育効果は広く社会に還元されております。このような状況を考えると、教育費については社会全体で負担していくことは一つの考え方であると思います。その際には、公平性や公正性という基本的な問題についてしっかりと踏まえなければなりません。

 まず、公平性の問題について質問いたします。

 高校教育は、義務教育と比較して、多様な能力や適性、関心、希望に応じた教育を行う性格が強い教育段階であります。このことから、高校教育に関して、受益者負担をどうするのか、負担を求めないとした場合の是非が問われなければなりません。特に、高校に進学しない者との間の公平性の観点から見て適当かどうかという問題について、文部科学大臣の御答弁をいただきたいと思います。

 次に、公正性の問題についてお聞きします。

 この法案の趣旨は、経済状況の悪化を踏まえて、家庭の状況にかかわらず、高校での勉学が続けられるようにすることです。

 本法案を見ますと、公立高校については、世帯収入の高低にかかわらず、すべての世帯に対して一律に授業料は徴収しないこととしています。また、私立高校に通う生徒についても、所得制限を設けずに就学支援金を給付することとしています。

 このような一律な支援は、法案の趣旨を外れているように思われます。貴重な税金を使うわけですから、公正な使用が求められます。高額所得者も含めた一律の支援は、公正性の観点から見て適切なのかどうか、この点について見解を示されたい。また、法案の趣旨を逸脱した理由についてお答えをいただきたいと思います。

 高校の授業料無償化の導入の根拠について伺います。

 文部科学省の平成二十年度問題行動調査によると、中退の理由は、高校生活に熱意がない、授業に興味がわかないといった、学校生活・学業不適応を理由に挙げる生徒が三九%を占めたのに対して、経済的理由と答えたのは三・三%であります。また、授業料の減免と私立高校生の中退抑止の関係について、普通科の生徒には効果がないとの結果も報告されております。

 こうした調査や報告からは、一律に支援すべき根拠が見出せません。どうして一律支援とする内容とするに至ったのか伺いたい。また、その根拠となるような他の調査や研究があるならば、ぜひ示していただきたい。

 既に、経済的に厳しい家庭には、授業料の減免措置が実施されています。そうした家庭に関しては、今回の高校の授業料無償化による恩典が余り及びません。高校でかかる費用は、高校の授業料だけではなく、ほかにもあります。また、低中所得者層では、学習塾に通うことが難しいという厳しい現実、経済格差があります。

 そうした実際の教育費用や経済格差の実態を踏まえるならば、真に、法案の趣旨である安心して勉学に励める環境を整備するため、高額所得者を含む一律の支援ではなく、低中所得者層へ重点的な支援を行うべきではないでしょうか。教育費の単なる負担軽減ではなく、経済的な格差の是正を政策の目的とすべきではないかと考えますが、こうした提案について見解を伺いたいと思います。

 地方に任された経済的な格差是正について質問いたします。

 この法案では経済的な格差の是正ができないため、文部科学省は、都道府県が実施してきた授業料減免の財源を活用し、入学金や教科書、学用品や教科外活動費など授業料以外の教育費の支援に充ててほしいと考えを示しております。

 みずから行うべきを行わず、地方自治体に押しつけるというのは、間違いであります。各都道府県の間には支援の格差がありますし、財政力の違いもあります。これでは、社会全体で教育を支えるといいながら、地域間で格差を残すことになります。総務大臣に、この点に関して見解を伺いたいと思います。

 次に、高校の授業料無償化の財源について質問いたします。

 民主党は、マニフェストの中で、税金の無駄を洗い出すとともに、予算を全面的に組み替えることで、政策実現に必要な財源を生み出すと訴えてきました。

 子ども手当に関しては、マニフェストで扶養控除や配偶者控除の廃止を記載していますが、高校の授業料無償化に関しては、高校生分の特定扶養控除を廃止するとは記述されておりません。政府税調の議論の中で特定扶養控除の廃止が決められたわけです。

 そもそも、人的控除のあり方についてしっかりとした検討がなされ、位置づけが明確にされるべきであるのに、そうした議論がなされたとは到底言えません。なし崩し的に扶養控除が変更され、人的控除に関する税の哲学が大きく揺らいでいます。そのような状況のもと、高校の授業料を無償化するから特定扶養控除は廃止であるというのは、いささか乱暴であると言わざるを得ません。

 無駄の根絶、予算の組み替えによる財源の捻出という主張はどうなったのでありましょうか。今回の特定扶養控除廃止による増収は、平年度ベースで一千億円にも届いておりません。残りはどのように財源を確保するのでしょうか。また、財源が足りないからといって、将来、残っている扶養控除も廃止するのでしょうか。この三点について、財務大臣からお答えをいただきたい。

 私立学校や各種学校などに関連して質問いたします。

 高校の授業料無償化に関して、私学関係者の懸念についてお答えをいただきたい。

 私立では、結果的に授業料は無償にならず、差額分についてどうしても家計の負担が残ります。競合する公立高校に生徒を奪われかねないとの危機感が広まっております。

 また、私学の経営上、年度初めに授業料を一括徴収できないとなると、国から予算がおりてくるまでの間の資金繰りが必要となります。資金繰り問題への対応についてのお考えを伺いたい。

 また、これまでの私学助成が削られるのではないかとの不安もありますが、この点について、私学助成を減らすのかどうか、答弁をいただきたい。

 さらに、自分たちの学校が就学支援金の支給対象になるのか、まだ不透明なところがあります。

 文部科学省は、本法案が成立次第、省令で支給対象を定めるとしております。入学はもう間近に控えており、進路はもう決めているか、すぐに決めなくてはならない時期です。例えば、高校中退者を受け入れているフリースクールや、日系ブラジル人などを受け入れている外国人学校などはどうなるのか。支給対象については、省令の内容を法案審議の前に、速やかに明示されることを強く要請いたします。これらの懸念及び要請についてお答えいただきたい。

 教育予算に関連して質問いたします。

 今国会に提出されている平成二十二年度文部科学省予算案は、三千百九億円増と五・九%の伸び率となっていますが、中身を見ると、実質的には高校の授業料無償化のために計上された予算額三千九百三十三億円がふえただけであり、結果的には、この授業料無償化実現のために、他の教育予算に食い込んでしまったという姿になっております。

 また、地震防災対策特別措置法が改正されて学校耐震化の加速化を図ろうというやさきに、「コンクリートから人へ」というスローガンのもと、その方針は大きく後退してしまいました。

 文部科学省予算案については、こうした学校耐震化、途中でとまってしまった本格的な義務教育諸学校教職員定数改善、教科書予算の大幅な拡充など、行うべきものがあります。

 教育格差については、経済的な格差と同様に、公立と私立との間の教育の質の差が問題視されており、質における教育格差を是正することも急務であります。

 なぜ、高校の授業料無償化が、子供の安全より優先されたのか、義務教育関係予算の充実より優先されたのか、説明をいただきたい。

 最後に、高校の授業料無償化と連立政権の教育政策との関係について伺います。

 教育費用を社会全体で負担しようとの理念は共有します。私どもも、公明党は幼児教育の無償化を訴えてまいりました。これは、少子化対策が喫緊の課題であり、子供を生み育てやすい環境を整えることを目的としております。

 しかし、高校の授業料無償化法案は、本当に困っている家庭の教育費負担の軽減につながらないという設計になっており、先ほど指摘したように、公正性の観点から問題があります。

 日本の教育における実態を踏まえると、低中所得層への重点的な支援がより重要であります。民主党マニフェストでは、「全ての人にとって適切かつ最善な教育が保障されるよう学校教育環境を整備し、教育格差を是正する。」とあります。この考え方に基づいた適切な施策が実行されるべきです。このままでは、経済格差の是正、質的な教育格差の是正になりません。

 以上、指摘してきました諸点を踏まえて、政府・与党には再検討を促しまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣川端達夫君登壇〕

国務大臣(川端達夫君) 西議員にお答えいたします。

 六点、質問がありました。

 最初に、高等教育に関して受益者負担を求めないことの是非についてのお尋ねがありました。

 高等学校等は、その進学率が約九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果は広く社会に還元されているものであることから、その教育費について社会全体で負担していく方向で諸施策を進めていくべきであります。

 また、高等学校等については、家庭の経済状況にかかわらず、すべての意志のある高校生等が安心して教育を受けることができるよう、家庭の経済的負担の軽減を図ることが喫緊の課題となっております。

 このようなことから、高等学校等における保護者の教育費負担の軽減を図るため、公立高等学校について授業料を不徴収とするとともに、私立高校等については高等学校等就学支援金を支給するものであります。

 なお、本法における支援対象には年齢制限が設けられていないことから、高校に入学せず就職した人についても、定時制や通信制の課程も含め、高校に入学することで支援の対象となるものであり、本人の学ぶ意欲に応じて学習する道は開かれているものと考えております。

 次に、高額所得者も含めた支援の是非についてお尋ねがありました。

 先ほど申し上げたとおり、高等教育に要する教育費を社会全体で負担していく方向で諸施策を進めていくべきであることに加え、多くの国で後期中等教育等を無償としており、国際人権A規約にも中等教育における無償教育の漸進的導入が規定されるなど、高校無償化は世界的な常識でもあります。

 このようなことから、すべての意志のある高校生が安心して勉学に打ち込めるよう、本法律案では所得制限を設けないこととしたものでございます。

 なお、低所得者世帯については就学支援金を増額して支給することとしており、支援の充実を図っているところであります。

 次に、一律支給の根拠についてお尋ねがありました。

 先ほど述べましたように、本法案の趣旨といたしましては、家庭の状況にかかわらず、すべての意志のある高校生が安心して勉学に打ち込める社会を構築することであります。

 対象となる高校生やその保護者に対して本制度の意義を高校を通じて周知することにより、高校生が、みずからの学びが社会に支えられていることの自覚を醸成し、国家、社会の形成者としての形成を目指して学習意欲の維持向上を図ることとしております。

 また、経済的理由以外の理由で中退を考えている生徒についても、高校に在学を続けることに伴う費用負担が軽減されることによって中退を思いとどまることや、仮に中退しても、再度入学することを経済的に支援することができるものと考えております。

 次に、一律の支援でなく、低中所得者層へ重点的に支援すべきでないかとのお尋ねがございました。

 本施策は、高等学校等は、その進学率が約九八%に達し、国民的な教育機関となっており、その教育の効果は広く社会に還元されているものであることから、その教育費について社会全体で負担していく方向で諸施策を進めていくべきであることを踏まえて導入をすることとするものです。

 本施策においては、授業料が実質無料とならない私立高校生等に対して、公立高校生一人当たりの負担軽減費と同等の額を支給するとともに、低所得世帯については増額して支給することにより、低所得者層への支援についても充実を図っているところでございます。

 私学関係者の懸念についてお尋ねがございます。

 公立学校との競合につきましては、私立高校生に対する就学支援金の支給について、低所得者世帯の高校生に手厚い支援を行うことなどにより、むしろ公私間格差は縮小するものと考えております。

 私立学校の資金繰りにつきましては、就学支援金の円滑な支給に努めるとともに、万が一の場合に備えて、就学支援金の支給を受けるまでの間の資金繰りを支援するため、日本私立学校振興・共済事業団において短期融資を行う予定といたしております。

 私学助成につきましては、国庫補助と地方交付税措置を合わせた国の財源措置の拡充を図るとともに、国の財源措置における生徒等一人当たり単価も充実しているところでございます。

 専修学校や外国人学校を含む各種学校については、高等学校の課程に類する課程として文部科学省令で定めるものを対象とすることとしております。具体的な支給の対象については、一定の要件を満たすものを指定することを検討しているところであり、今後の国会における審議も踏まえつつ、文部科学省において適切に判断してまいりたいと考えております。

 就学支援金制度の円滑な実施に向け、関係者の御理解を求めてまいります。

 最後に、文部科学省予算案について、高校の実質無償化が子供の安全との関係や義務教育関係予算よりもなぜ優先されたのかとのお尋ねがございます。

 平成二十二年度文部科学省予算においては、重点化を図りつつ、必要な経費の確保に努めたところであります。

 公立学校施設の耐震化関連予算は、重点化により増額し、前年度当初予算との比較ではふえており、高校の実質無償化が子供の安全より優先しているとの指摘は当たらないと考えております。

 また、義務教育関連予算についても重点化を図りつつ、教職員定数の大幅な改善など必要な経費を計上しているところであり、これについても、高校の実質無償化が優先しているという指摘は当たらないと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣菅直人君登壇〕

国務大臣(菅直人君) 西博義議員にお答えを申し上げます。

 まず、民主党のマニフェストには高校生分の特定扶養控除廃止の記述がなかったのではないかという御指摘であります。

 御承知のように、今回は特定扶養控除全部を廃止するわけではありませんで、高校生についての上乗せ部分について廃止をすることになっておりまして、このことでマニフェストに反するというふうには認識をいたしておりません。

 また、平年度ベースで千億円で、残りの財源をどうするかという御指摘ですが、もともとこの控除の廃止を財源として設計されているものではなくて、二十二年度の予算については、国の総予算の見直しにより二・三兆円、さらには基金の返納等により一兆円の税外収入を確保して、そういった生み出されたものから新たな政策を実行したものであります。

 二十三年度以降については、今後策定する中期財政フレーム等によって歳出歳入にわたる徹底した予算の見直しを行っていく、このように思っております。

 なお、残っている扶養控除も廃止するのかという御指摘でありますが、先ほど申し上げましたように、高校無償化のこととの関係でこの財源、さらにはそれを加えた財源というふうな仕組みにはなっておりませんで、一般的な税制調査会における議論の中でいろいろな問題は議論の俎上にはのると思いますが、特にこの問題に関連して何か控除を廃止するといったような、そういう考え方にはなっていないことを申し上げて、答弁とさせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣原口一博君登壇〕

国務大臣(原口一博君) 西博義議員から、私立高校生に対する支援の格差についてお尋ねがございました。

 平成二十二年度においては、地域主権の確立に向けた第一歩として、地方が自由に使える財源をふやし、自治体が地域のニーズにこたえられるように、財源保障機能及び財政調整機能を担う地方交付税を前年度に比べて約一・一兆円増額したところでございます。

 その上で、都道府県が、西議員が御指摘のように、行う私学助成及び授業料軽減費補助について、私立高校生への支援を初め、地域の実情に応じたさまざまな施策を展開できるように、地方交付税措置を、前年度に比べてここも約百億円増額することとしております。

 今後とも、子供たちの学ぶ機会をしっかりと支えられるように努力を重ねていきます。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(衛藤征士郎君) 宮本岳志君。

    〔宮本岳志君登壇〕

宮本岳志君 私は、日本共産党を代表して、高校無償化法案について文部科学大臣に質問をいたします。(拍手)

 昨年度の公立高校の初年度納入金は十二万四千四百五十円、私立高校の初年度納入金は平均七十万九千七百九十円に上っています。我が国では、高校生や父母はこのような高い学費が押しつけられ、学費が払えずに高校を中退せざるを得ない、こういう悲劇が繰り返されてきました。

 世界の大勢が高校教育無償化に向かう中で、我が党は、一貫して高校無償化を主張し、その実現のために全力を挙げてきました。我が国でもようやく、新制高校発足以来六十二年目にして、高等学校教育無償化の方向が打ち出されたことは、国民の粘り強い運動の成果であり、当然のことだと思います。

 私は、さらなる無償化推進のため、幾つかの問題について質問いたします。

 第一の問題点は、公立高校の授業料を不徴収にする一方で、私立高校の授業料については一定額の補助にとどまり、公私間の格差を助長しかねないことであります。

 私立高校は、我が国の公教育の重要な部分を担っています。生徒数も全体の三割を超え、建学の精神に基づき、多様な高校教育を保障してきました。まさに私立高校なくして我が国の後期中等教育は成り立ちません。ヨーロッパなどでは、私立高校の大半が公費で運営され、学費は無償あるいは低額であります。その意味では、私立高校の無償化をなし遂げて初めて文字どおりの高校教育無償化と言えるのであります。

 私立高校の生徒について、年額十一万八千八百円の補助では、年収三百五十万円以上の家庭の生徒は、初年度納入金で差し引き六十万円ものお金を支払わなければなりません。余りにも大きな負担が残るではありませんか。この負担の格差は不平等だと思いませんか。見解をお伺いいたします。

 日本共産党は、私立高校について、当面、年収五百万円以下の世帯については、授業料はもとより、入学金、施設整備費についても無料にする、年収八百万円以下の世帯に対しては、その半額補助を行うべきだと提言をしてきました。こうした方向で学費軽減を図るべきだと考えますが、見解を伺います。

 同時に、国から私立高校へ支援金が行くようになるからと、これまで自治体が行ってきた私学授業料減免に充てていた予算を減額してしまう動きが広がっています。

 長野県では、一億七千万円の授業料助成の県単独予算が組まれていましたが、それがわずか二千七百万円に減らされました。千葉県でも三億円が八千三百万円に、愛知県に至っては六十八億円が三十二億円に、実に三十六億円もの減額であります。約三分の二を超える道県が減額となる見通しです。新潟県では、結局、保護者負担が昨年とほとんど変わらなくなってしまいました。これでは父母負担の軽減にはなりません。

 これらの県がこれまでと同額の減免予算を確保すれば、年収三百五十万円から五百万円の世帯も実質無償にできるではありませんか。自治体は学費軽減の事業を縮小すべきではありません。大臣の見解を求めます。

 公立高校の授業料を不徴収としても、決して父母負担がなくなるわけではありません。先日、文部科学省が公表した子供学習費調査によれば、授業料、修学旅行費、通学費などの学校の教育費の平均は三十五万六千九百三十五円にのぼっています。たとえ授業料の十一万八千八百円が不徴収となっても、依然として二十三万八千百三十五円もの父母負担は残されたままであります。こうした父母負担を軽減することは急務と言わなければなりません。

 昨年八月の自公政権下の概算要求ですら、四百五十五億円の、高校生を対象にした給付制奨学金の創設が盛り込まれておりました。ところが、鳩山新政権の本予算案では、これ自体がなくなりました。なぜ給付制奨学金の創設をやめたのか。貧困の広がりの中で、返還の必要のない給付制奨学金制度を創設すべきではありませんか。大臣の決断を求めます。

 高校実質無償化を専修学校や各種学校にも広げ、我が国に置かれている外国人学校にも適用するのは当然です。どの国の子供に対しても学ぶ権利を保障するのが国際ルールです。特定の国の外国人学校を排除すべきではありません。見解を求めます。

 次に、無償化実施の財源として、所得税、住民税の特定扶養控除の十八歳以下の上乗せ分を廃止しようとしていることについてです。

 通常の授業料よりも低い定時制、通信制や特別支援学校に子供を通わせている家庭や、そもそも高校に通っていない子供を持つ家庭では、増税による負担増だけが残ります。高校無償化の代償として、増税による負担増など絶対に生み出してはなりません。政府は、二〇一一年の実施までに適切な措置を講じるとしていますが、どのような措置を講じるお考えか、見解を求めます。

 アメリカでは、早くも一八二七年にマサチューセッツ州で高校教育無償化に踏み出し、南北戦争以前に既に六州で高校教育無償化を図りました。イギリスも一九一八年に、トルコでは一九二六年から無償です。諸外国では早くから高校教育までの無償化が常識となってきました。なぜ、日本はこんなにおくれてしまったのでしょうか。総教育費支出のGDPに占める割合は、OECD諸国の平均四・九%を下回り、わずか三・三%にすぎません。

副議長(衛藤征士郎君) 宮本岳志君、申し合わせの時間が過ぎましたから、なるべく簡潔に願います。

宮本岳志君(続) 三十カ国中、下から二番目です。余りにも教育に対する公的支出は貧困だと言わねばなりません。

 教育に対する公的支出を世界の水準まで引き上げ、高校無償化を私学にも広げ、そして大学の学費も段階的に無償化に向かうべきであります。そして、世界にたった二カ国だけに残った、国際人権規約の段階的無償化条項の留保などという恥ずかしい現状を直ちに正して、留保を撤回すべきではありませんか。

 世界一高い学費から学生たちを解放し、経済的理由で学業をあきらめる若者を一人も出さない、これこそが我が国の豊かな発展の基盤をつくる確かな保障でもあります。大臣の御決意を伺って、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣川端達夫君登壇〕

国務大臣(川端達夫君) 宮本議員にお答えいたします。

 七点、質問がありました。

 まず、公私間格差についてのお尋ねでございます。

 私立高校生に対しては、高等学校等就学支援金として公立高校生一人当たりの負担軽減額と同等の額を支給するとともに、低所得世帯については増額して支給することとしています。

 また、これに加え、現在都道府県が独自に行っている授業料減免補助が就学支援金に上乗せされることにより、支援が充実することを期待しております。

 なお、高校生修学支援基金も授業料の減免補助等に活用できることから、各都道府県においては、これらを活用して低所得世帯の私立高校生への支援を充実していただくことを期待しております。

 このように、私立高校生に対しては手厚い支援を行っているところであり、むしろ公私間格差は縮小すると考えております。

 次に、私立高校生の学費負担軽減についてのお尋ねがありました。

 私立高校生の学費負担の軽減を図ることは重要と考えており、政府としても、低所得世帯に対する就学支援金の支給額の増額等を図ったところでございます。厳しい財政事情のもとではありますが、今後とも、私立高校生の支援の充実に努めてまいります。

 次に、都道府県における私立高校授業料減免補助についてお尋ねがありました。

 低所得世帯の私立高校生については、現在の都道府県独自の授業料減免補助が就学支援金に上乗せされることにより、支援が充実することを期待しています。

 平成二十二年度の授業料減免補助に関する各都道府県の対応を見ますと、例えば年収二百五十万円程度未満の世帯に対しては、既に全額免除相当の補助を行っている県を除くすべての都道府県で、現在よりも手厚い支援となるよう検討していると伺っております。

 また、これまでに把握できた四十五都道府県の平成二十二年度当初予算案における授業料減免補助の予算額は、前年度に比べて減額している県、増額している県のいずれもありますが、総額では約二百六十三億円が計上されております。

 国は、都道府県に対して、国庫補助、地方交付税措置や高校生修学支援基金による支援を行っており、平成二十二年度予算案において、地方交付税措置の拡充を図ることとしております。

 これらの支援措置をも活用して、都道府県においては、地域の実情に即した適切な対応がとられることを強く期待しております。

 次に、高校生への給付制奨学金の制度の創設のお尋ねがありました。

 経済的理由により修学困難な高校生に対しては、現在、すべての都道府県において奨学金事業を実施しており、また、平成二十一年度第一次補正予算により、都道府県に新たに高校生修学支援基金を設け、都道府県による高校生奨学金事業への支援の拡充を図ったところであります。

 経済的理由により修学困難な者への授業料以外の教育費負担については、高校の実質無償化後においても、引き続き各都道府県が行う高校奨学金事業により軽減が図られるものと考えております。

 給付型奨学金については、平成二十二年度予算案への計上を見送ったところですが、大変重要な課題と認識しており、今後とも、さらに検討してまいります。

 次に、外国人学校への適用についてお尋ねがありました。

 法律案においては、専修学校及び外国人学校を含む各種学校への適用については、高等学校の課程に類する課程として文部科学省令で定めるものを対象とすることとしています。

 具体的な支給の対象については、一定の要件を満たすものを指定することを検討しているところでありますが、今後の国会における審議も踏まえつつ、最終的に文部科学省において適切に判断してまいりたいと考えております。

 次に、特定扶養控除の見直しに伴い負担増になる家庭への支援についてお尋ねがありました。

 御指摘のように、授業料徴収額が低廉な学校種や高校に通っていない子供を持つ家庭においては、高校の実質無償化による便益より、特定扶養控除の縮減による負担が大きくなることはあり得るものと認識をしております。

 このことについては、昨年十二月に閣議決定された税制改正大綱において「現行よりも負担増となる家計については適切な対応を検討します。」とされており、教育費負担の実態を踏まえつつ、特定扶養控除縮減により実際に家計に影響が生じる平成二十三年末に向けて、必要な対策が行われるよう検討してまいりたいと考えております。

 最後に、国際人権規約の留保撤回と学費負担の軽減のお尋ねがありました。

 教育は、国民の豊かな生活ばかりでなく社会全体の発展と活性化を実現するものであり、その費用は社会全体で助け合い負担をするという考え方のもと、家庭の状況にかかわらず、すべての意志ある人が安心して質の高い教育を受けることができるようにしなければならないと考えております。

 このため、国際人権A規約における漸進的無償化条項の留保撤回も視野に入れながら、本法案により高等学校を実質無償化するとともに、大学の授業料減免、奨学金の充実などに取り組み、学費負担の軽減に努めてまいります。

 以上でございます。(拍手)

副議長(衛藤征士郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(衛藤征士郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後七時五十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣  菅  直人君

       総務大臣  原口 一博君

       文部科学大臣  川端 達夫君

       国務大臣  中井  洽君

 出席副大臣

       文部科学副大臣  鈴木  寛君


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