衆議院

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第27号 平成22年5月11日(火曜日)

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平成二十二年五月十一日(火曜日)

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  平成二十二年五月十一日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時三分開議

議長(横路孝弘君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明

議長(横路孝弘君) この際、内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。環境大臣小沢鋭仁君。

    〔国務大臣小沢鋭仁君登壇〕

国務大臣(小沢鋭仁君) ただいま議題となりました環境影響評価法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 平成十一年六月の本法の完全施行以降、環境影響評価の適用実績は着実に積み重ねられてきている一方、法の施行から十年が経過する中で、法の施行を通して明らかになった課題等を踏まえ、さらなる取り組みの充実が必要となっております。

 具体的には、今日の環境政策の課題は一層多様化、複雑化しており、平成二十年六月に公布された生物多様性基本法、地球温暖化対策の推進や再生可能エネルギーの導入促進等の状況の変化を踏まえ、環境影響評価が果たすべき機能や評価技術をめぐる状況の変化への対応が求められております。

 これに関しては、法附則第七条において、「政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」こととされており、また、平成十八年四月に閣議決定した第三次環境基本計画においても、法の施行の状況について検討を加え、法の見直しを含め必要な措置を講ずることとされているところでございます。

 こうした状況を踏まえ、法の施行後の状況の変化及び法の施行を通じて明らかになった課題等に対応するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、対象事業の範囲の拡大についてであります。

 法対象事業の条件の一つとして、交付金の交付を受けて実施される事業を追加しております。

 第二に、事業計画の立案段階における環境保全のために配慮すべき事項についての検討手続の新設についてであります。

 第一種事業を実施しようとする者は、方法書手続の実施前に、事業計画の立案段階における環境影響評価を実施し、その結果を記した計画段階環境配慮書を作成して、主務大臣への送付及び公表等を行わなければならないこととしております。

 第三に、環境影響評価書に記載された環境保全措置等に係る公表手続の新設についてであります。

 事業者は、事業着手後の環境保全措置の状況等に関し、報告書を作成し、公表及び許認可等権者への送付を行わなければならないこととしております。環境大臣は許認可等権者に意見を述べることができることとし、許認可等権者は事業者に対し意見を述べることができることとしております。

 その他の改正事項として、環境影響評価手続におけるインターネットの活用等の情報提供手段の拡充、地方公共団体の意見提出に関する手続の見直し等所要の措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)の趣旨説明に対する質疑

議長(横路孝弘君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山崎誠君。

    〔山崎誠君登壇〕

山崎誠君 民主党の山崎誠です。

 私は、ただいま議題となりました環境影響評価法の一部を改正する法律案につきまして、民主党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)

 まず、環境に対する基本的な考え方についてお伺いいたします。

 私は、さきの連休を利用して、山口県上関町長島に行ってまいりました。瀬戸内海に残された、生き物の宝庫であり、瀬戸内の原風景を今に伝える。対岸には、自然との共生が息づく祝島。何物にもかえがたいはずの、かけがえのない豊かな自然が、そして人々の美しい暮らしが、今、原子力発電所建設に伴う埋立工事により壊されようとしています。

 豊かな自然はなぜ大切か。人間は、絶妙なバランスで成り立ち支え合っている生態系の一部であり一員です。健全な生態系の維持なくしては、人類の生存はあり得ません。自然へのノスタルジーや郷愁で言っているのではありません。科学的な事実として理解していただきたいのです。豊かな自然が人類の生存には欠くべからざる基盤です。

 経済成長を前提とした幸福追求に邁進してきた我々は、今、その成長の限界に到達しつつあります。それとともに、地球温暖化、生物多様性・生態系の破壊、地球レベルの環境危機に直面しています。

 人類の生存を確かなものにするために、経済優位の価値基準を修正して、環境重視の社会へとかじを切らなければなりません。国づくり、物づくり、人づくり、あらゆる場面で自然環境との調和を実現する、新しい自然共生社会の創造が求められていると考えます。

 経済が不可欠なものであることは、もちろん言うまでもありません。しかしながら、鳩山総理もその所信表明演説で述べられたとおり、人のための経済でなければ意味がありません。経済そのものの成長や、経済によりもたらされる利便性や物質的な価値が優先され過ぎていないか。経済優先で、環境が破壊され、人類の生存そのものが脅かされていないか。それでは本末転倒です。環境の世紀にあって、私たちは、環境と経済の調和を真の意味で実現しなければなりません。

 まず、小沢環境大臣、そして直嶋経済産業大臣、前原国土交通大臣に伺います。

 経済と環境の調和という考え方について、環境の価値をどのようにとらえておられるか、御所見をお聞きいたします。

 議題になっております環境影響評価法は、まさに環境と経済の調和を図り、環境の悪化を未然に防止し、持続可能な社会を構築するための法律、制度です。環境基本法、生物多様性基本法の基本原理を具体的に担保する制度として極めて重要と考えます。

 そこで、改めて、環境影響評価法の意義について小沢環境大臣に伺います。

 本制度は施行十年を迎えますが、平成二十年度末時点で、本法の手続を完了した案件は百二十五件となっており、一定の役割を果たしてきたと言えます。

 そこで、これまでの環境アセスメントの実績をどのように評価しているのか、また、環境と経済の調和という観点からすると、環境保全の観点からの課題と事業者からの課題も挙がっているものと考えますが、どのような課題が挙がっているのか、小沢環境大臣にお伺いいたします。

 次に、改正内容について伺ってまいります。

 本改正のうち最も重要と思われる戦略的環境アセスメントの導入について伺います。

 現在の環境アセスメントにおいては、事業実施段階で行われるため、事業の枠組みがおおむね決定されており、環境保全のための柔軟な事業の見直しが難しい側面がございます。このために、せっかく行われる調査であっても、その評価、分析の段階で事業の推進に都合のよい解釈がなされる、いわゆるアワセメントとの批判を受けているところでございます。この点で、より上位の事業検討段階で環境影響評価を取り入れる戦略的環境アセスメントの実施に大いに期待するところであります。

 そこで、戦略的環境アセスメントの意義について小沢環境大臣に伺います。

 環境省としては、戦略的環境アセスメントについて、平成十九年からガイドラインを公表し取り組みを進めているところですが、これまで、例えば経済産業省の所管する発電所が対象になっていないなどの課題がございました。また、国土交通省に関連しては、リニア中央新幹線の計画など、事業主体は民間であっても、その環境影響の大きさからいって戦略的環境アセスメントを確実に実施すべき事業も控えております。

 こういった事業を所管する直嶋経済産業大臣、前原国土交通大臣に、戦略的環境アセスメントに取り組む決意をお伺いいたします。

 これまでの事業遂行過程を見ると、事業者は、環境アセスメントも一つの手続であり、クリアさえすればいいととらえるような傾向にあるのではないか。また、環境への悪影響の緩和にどれだけ実質的な効果を上げているのか、残念ながら疑問を感じる場面がございました。この点で、今回の改正で実現する環境大臣意見の範囲の拡大、電子縦覧の義務化、事後調査等に係る手続の具体化により、納得性が高く効果的な環境アセスメントに近づくものと期待しています。

 今回の法改正にあって、より納得性の高い効果的な環境アセスメントを実現するために工夫された点はどこか、小沢環境大臣にお伺いいたします。

 環境アセスメントは、これまでも、国の制度と地方自治体の制度が補完し合って実施されてまいりました。地方自治体にあっては、独自の基準で対象事業を幅広くカバーできるようにしたり、公聴会の開催や第三者機関による審査手続を設けるなど、先進的な特徴ある環境アセスメントを実施してきた実績がございます。

 地方主権に基づく国と地方自治体の新しい関係構築が進む中で、環境アセスメントの分野でも、これまで以上に地方自治体の自主性の尊重と連携が重要であると言えます。地方自治体の環境アセスメントとの連携の意義について小沢環境大臣にお伺いいたします。

 次に、環境アセスメントのあるべき姿について触れたいと思います。

 例えば地球温暖化対策を例にとります。

 地球温暖化対策において、指標の一つとしてCO2排出量を基準にする考え方がございます。この考え方自体には理解を示すところではございますが、CO2削減がひとり歩きをし、CO2削減が目的化されていないか、一部危惧をするところでございます。地球温暖化が問題なのは、それにより、生命がよって立つ自然環境、生態系が破壊されるところにあります。この原点を忘れてはなりません。

 例えば、さきの上関の例でいえば、温暖化対策として進められている原子力発電所建設のために、本来守るべき目的たる貴重な自然が破壊されようとしているんです。これでは元も子もありません。環境アセスメントは、本来、こうした矛盾にもメスを入れるものでなければなりません。

 また、今回の改正を経ても、事業者が行ういわゆる事業アセスメントという意味で、限界があると考えます。自然環境という社会的資産を守る責任を一民間企業に負わせることにそもそも無理があるのではないでしょうか。国が主導して責任を持つ仕組みが必要です。

 こういった観点から、環境アセスメントのさらなる改善に向けて、次の四項目を提案したいと思います。

 第一に、より上位の政策決定レベル、国の基本構想あるいは基本計画段階から戦略的環境アセスメントを実施すること。事業実施の可否を決定する段階に環境影響評価を取り入れることが必要です。

 第二に、その際、学識経験者等多方面から多角的に意見を聞く仕組み、第三者機関による環境審査制度を創造すること。また、すべての環境アセスメントの実施内容に対して環境省内でランクづけを行い、環境アセスメントに責任のある事業者や事業官庁を評価する仕組みを設けること。

 第三に、複数の施設や事業の影響を複合的、累積的にとらえることができるようにするための科学的な知見を集約する仕組み、特定の事業の範囲にとどまらない、より広範な環境影響をとらえる仕組みを構築すること。

 そして最後に、壊れやすく、一度壊れるともとに戻すことが困難であり、そのメカニズムに未知な領域が多く残る自然環境の特性を踏まえて、予防原則の考え方に基づき環境影響を評価すること。

 以上のような提案に対して、小沢環境大臣の御所見をお伺いいたします。

 自然環境保全の取り組みは、縦割り行政の枠を取り払い、地域との連携の上で地球的な見地から推進しなければなりません。国家戦略の柱と位置づけて、国を挙げて取り組む必要があります。

 また、どんなによい制度をつくっても、運用する人の意識が変わらなければ生きた仕組みにはなりません。目先の利益、利便にとらわれない広い視野と未来を見通す豊かな想像力、そして何よりも、人も地球も本当に大切にする優しさが今私たちに求められています。

 良好な自然環境の中にあって初めて人間は、本来の豊かな暮らし、幸せを実現することができるんです。日本人の原点である里山、里地、そして里海を守り、自然との共生を実現する、世界に誇れる日本を再生しようではありませんか。

 本年開催されるCOP10、生物多様性条約第十回締約国会議、これを自然再生の出発点と位置づけ、この地球上に、そして私たちのこの日本に残された貴重な自然を未来へと受け継ごうではありませんか。

 最後に、小沢環境大臣に、生物多様性条約第十回締約国会議議長としての決意をお伺いし、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小沢鋭仁君登壇〕

国務大臣(小沢鋭仁君) 山崎議員にお答え申し上げたいと思います。

 環境の価値、あるいは環境と経済の調和という考え方における御質問がございました。

 地球温暖化や生物多様性の危機といった問題に代表されるように、健全で恵み豊かな環境は、現在を生きる我々のみならず、将来世代にわたる人類の生存の基盤であるとともに、持続可能な経済活動の基盤でございます。四十六億年前に生まれたと言われる命の星地球のこの環境を、将来にわたって守っていかなければなりません。

 また、環境と経済といった観点に即して申し上げれば、かつて、環境問題は経済活動の阻害要因、こう言われた時代がございました。しかし、今は、環境は経済成長をもたらす重要な柱である、この認識が一般的だと思っています。

 環境と経済の両立を超えて、環境を取り込んだ経済、すなわち環境と経済の統合、これがまさに新しい成長の原動力になる、そう私は確信しているところでございまして、環境と成長の両立を目指した環境政策を鳩山内閣として推進してまいります。

 環境影響評価法の意義についての質問がありました。

 環境影響評価法は、平成十一年の施行以来、環境汚染を未然に防止するため、持続可能な社会に合致した、より環境保全に配慮した事業の実施に貢献してきたものと認識をしております。本改正を踏まえ、今後とも制度の適切な運用に努めてまいります。

 環境アセスメントの実績と課題についての御質問がございました。

 環境影響評価法は、その完全施行から十年を迎え、事業の環境保全に適正な配慮がなされることを確保する大きな役割を果たしてきたと認識しております。

 一方、法の施行を通じて、事業の早期段階における環境面への配慮の必要性等の課題が浮かび上がってきています。また、事業者の方々からは、環境影響評価手続に要する期間の長期化等を懸念する声も伺っています。

 本改正は、より早い段階での環境面での検討を行うことによって、環境影響の回避、事業の早期着手が図られる等、これまでの問題解決につながり得るものと考えます。今後とも、法の適切な運用に努めてまいります。

 戦略的環境アセスメントの意義に関する御質問がございました。

 戦略的環境アセスメントは、事業者が従来よりも早い段階において複数案の比較検討等の環境影響評価を行うことで、より一層環境保全に配慮した事業の実施を確保することを目的としたものであり、環境政策の推進にとって大きな意義を有するものと考えております。

 納得性の高い効果的な環境アセスメントに関する御質問がございました。

 今回の改正案では、事業実施段階の環境アセスメントの納得性と効果をより高めるために、これまで環境大臣の関与がなかった埋立事業等についても助言を可能とすることにより、これらの事業が環境保全についてより適正に配慮して実施されること、電子縦覧が導入されることにより、住民や地方公共団体等がアセス結果に容易にアクセスできること、事後調査結果等が報告されることにより、アセス手続後の環境の状態等を踏まえた、より適切な保全措置が実施されることなどの工夫を行っております。

 地方自治体の環境アセスメントとの連携の意義について御質問がございました。

 我が国では、従来から、法と条例が一体となって幅広い事業を対象に環境アセスメントが実施されるなど、議員の御指摘のとおり、国の制度と地方自治体の制度が補完し合う形で環境アセスメントの取り組みが進められてまいりました。

 地方自治体が独自の観点から環境アセスメントの取り組みを推進していくことは非常に重要であると認識をしております。今後も、地方自治体の自主性を尊重してまいるとともに、情報交流等を通じた連携を深めてまいりたいと考えております。

 今後の環境アセスメントのあるべき姿について、四つの提案、御質問をいただきました。

 より上位の段階での環境影響評価の取り組みについては、中央環境審議会答申においても検討の必要性を指摘されているところでございます。

 また、学識経験者の知見の活用については、今後、環境省が助言を求めるための専門家を登録し、必要に応じて助言を求める仕組みを構築する予定でございます。

 こうした点を踏まえ、御指摘のあった環境影響評価制度をめぐるさまざまな課題につきましては、まずは今回の改正法を的確に施行し、その状況を踏まえながら、今後の課題として検討を深めてまいりたいと思います。

 COP10議長としての決意に関する御質問がございました。

 ことしの十月、百九十カ国を超える国々、国際機関、NGO等々の参加を見込むCOP10が愛知県名古屋で開かれます。

 我が国は、COP10の議長国として、ポスト二〇一〇年目標の策定や、遺伝資源の利用とその利益の公正な配分に関する国際的な枠組みなど、多岐にわたる課題を取りまとめることが求められています。

 生物多様性条約の目的が地球規模で達成され、人と自然との共生が実現されるよう、議長国として、議論の取りまとめに貢献し、COP10を成功に導くべく、リーダーシップを発揮してまいりたいと思います。

 必ず成功させたいと思っております。どうぞ御協力をお願いいたします。(拍手)

    〔国務大臣直嶋正行君登壇〕

国務大臣(直嶋正行君) 山崎議員の御質問にお答えいたします。

 まず、環境と経済の調和についてのお尋ねでございます。

 環境と経済は、いずれもかけがえのない価値であり、二者択一ではなく、両者の調和を図っていくことが豊かな国民生活を実現していく上で不可欠であると認識をいたしております。

 経済産業省としても、このような認識のもと、今般御審議いただく環境影響評価法改正法も活用し、事業者が適切に環境配慮を行うよう、対応してまいりたいと思っております。

 戦略的環境アセスメントに取り組む決意についての御質問がございました。

 発電所への戦略的環境アセスメントの導入に当たっては、周辺環境への最大限の環境配慮とエネルギー政策の両立を図りつつ、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 まずは、今回導入されます配慮書手続においては、発電事業については、環境大臣が定める基本的事項に沿って、経済産業大臣が事業の特性に応じて具体的内容を定めることが必要となっているため、本改正法案成立後速やかに、環境大臣と協議しつつ、制度の詳細を検討してまいりたいと思っております。(拍手)

    〔国務大臣前原誠司君登壇〕

国務大臣(前原誠司君) 山崎議員にお答えをいたします。

 環境と経済の調和という考え方について、環境の価値をどうとらえているのかというお尋ねがありました。

 環境は、人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであり、社会資本整備に当たっての前提と認識をしております。

 国土交通省所管の事業に当たりましては、環境影響評価を適切に実施することによりまして、環境の保全について適正な配慮がなされることを確保することはもとより、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築することを旨として、環境と社会経済活動の調和を図ってまいりたいと考えております。

 次に、戦略的環境影響評価に取り組む決意についてお尋ねがございました。

 中央新幹線の事業など、事業主体が民間であっても、国民の生活を支える社会資本整備を進めるに当たりましては、環境面を含め、社会面や経済面等のさまざまな観点から総合的に検討を行っていくことが重要だと考えております。

 例えば、お尋ねのございました中央新幹線につきましては、全国新幹線鉄道整備法に基づきまして、営業主体及び建設主体並びに整備計画の決定について交通政策審議会に諮問をしておりまして、今後、環境保全の観点も含めた総合的な審議がなされるものと承知をしております。

 国土交通省所管事業については、今般の法改正の趣旨を踏まえて、計画の立案の段階における環境配慮に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)

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議長(横路孝弘君) 福井照君。

    〔福井照君登壇〕

福井照君 自由民主党の福井照でございます。

 自由民主党・無所属の会を代表いたしまして、ただいま議題となりました環境影響評価法の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます。(拍手)

 まず冒頭、与党の強引かつ稚拙な国会運営に厳重に抗議を申し上げる次第でございます。

 本日のこの会議は、昨日の議院運営委員会におきまして、委員長職権で立てられたわけでございます。もはやお決まりのパターンになりました数による強硬な運営、民主党の政権運営能力の限界を示していると思います。

 このような無責任きわまりない国会運営を助長しておりますのは、政権のトップでいらっしゃいます鳩山総理の言葉の軽さにございます。鳩山総理は、予算委員会や党首討論というこの国会審議の場でみずから約束した資料の提出、四月二十一日の党首討論では、基本的には資料の提出は必要ないとみずから打ち消しました。そして、現在国民が最も関心を寄せております普天間問題につきましても、沖縄県民や徳之島の島民の気持ちをもてあそび、ぶれぶれの発言を垂れ流し続けているわけでございます。もはや鳩山政権は政権末期でございます。

 耳を覆いたくなるような日本のトップの発言に、国民はあきれ果てております。政治家の命とも言える言葉を極めて軽いものにおとしめたこの罪は極めて重大と言わざるを得ません。鳩山総理は、みずからの責任を自覚して、進退の決断をすべきであると思います。それがあなたに残された、得意な、最後の政治主導であると提言をさせていただきたいと思います。

 鳩山一郎総理は、日ソ国交回復で歴史に名を残しました。鳩山由紀夫総理は、さしずめ事業仕分けでしょう、事業仕分けで耳目を集め、そしてみずから仕分けされ退陣した総理として歴史に名を残すと思います。

 川端康成は、「美しい日本の私」として、人間は自然と一体であるという東洋の思想、哲学、これを昇華させて日本人は生き抜いていることを世界に示しました。大江健三郎は、「あいまいな日本の私」として、西洋と東洋の相克に悩みながら、東洋にも西洋にも軸足を置いて、国全体としては大きく発展している姿を世界に示しました。ことし、もしだれかがノーベル文学賞を受賞したら、今の日本を何と表現するでしょうか。迷走する日本の私でしょうか。ルーピーな首相を抱く日本の私でしょうか。期待だけさせて実行力のない政府を抱く日本の私でしょうか。

 先ほど、環境影響評価、この法律の趣旨が説明されました。アセスメントは、行政行為、経済行為が及ぼすありとあらゆる影響について、目線を高くして、広範囲、長期にわたってコントロールすることが目的です。しかし、国民の心のアセスメントもできない、そんな総理を抱く政府に、この法律を提出する資格はないというふうに考えております。

 普天間基地の代替施設建設事業については、現在、アセス法に基づく評価書手続に係る所要の手続が進められてきております。

 ちなみに、これまで手続に要した時間は約二年と八カ月、費用は、平成十八年度から二十年度までの支出ベースで四十六億円、そして平成二十一年度の予算ベースで二十八億円、合計七十四億円とされております。今後、仮に移設先が現在アセス手続中の場所と異なるような事態になった場合には、当然のことながら、別途、新たな労力、時間、費用が必要となるわけでございます。

 そこで、まず、これまで普天間基地の代替施設建設事業に係る環境影響評価手続に費やしてきた時間、労力、財政的負担の観点から、混迷の度を深める現下の移設先問題を環境大臣としてどのように受けとめておられるのか、小沢大臣の認識をお伺いしたいと思います。

 戦略的環境アセスメントの適用除外についてもお伺いします。

 本改正案では、第五十二条第三項におきまして、戦略的環境アセスメント、SEAの適用除外規定が設けられております。そして、本規定に基づく適用除外は、政令で定められることになっております。

 本規定は、普天間基地の新たな移設先を念頭に設けられたのではないか、そう勘ぐれないわけではありません。仮に、この規定が恣意的に運用されるようであれば、せっかくのこのSEA導入の法的位置づけも有名無実化するわけでございます。そうした懸念に対して、小沢環境大臣はどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。

 経済と環境の両立、成長戦略についてもお伺いします。

 アセスメントの制度が、経済活動に過度の悪影響を及ぼしたり、低炭素社会づくりを推進する上での足かせとなっているようであれば、それは本末転倒と言わざるを得ません。

 しかも、鳩山内閣で行われようとしている個別的、具体的な政策は、全体としての脈略や整合性もない上に、戦略性のかけらもない、場当たり的なものと言わざるを得ません。このことは、地球温暖化対策における二五%削減の中期目標がきちんとした裏づけもないまま公表されたこと一つをとっても明らかでございます。

 鳩山政権がやろうとしているのは、コンクリートから人へといった耳ざわりのよい美名のもとに、公共事業というだけでやみくもに予算を削るだけのパフォーマンスにすぎません。そのパフォーマンスのツケは、やがては、地域経済を疲弊させ、そして民間活力をそぐ結果を招くことになります。経済と環境の両立はおろか、言っていることとやっていることが真逆の政策ばかり、残念ながら、それが政権発足八カ月の鳩山政権の実態でございます。そうじゃないとおっしゃるなら、環境、経済産業両大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

 SEAの柔軟な制度設計の必要性についても御質問させていただきます。

 まず、今回の改正案につきまして、戦略的環境アセスメント、いわゆるSEAが導入され、法的に位置づけられることになってございます。EU初め諸外国においてもSEAの導入が進んでおります。そうした流れに歩調を合わせていくことは、日本が環境面において国際社会で対等であるばかりか、それ以上に、リーダーシップを発揮していく上で極めて大切なことであると考えております。

 しかしながら、SEAや、今回同時に追加される事後調査の結果の公表の創設といった環境配慮の規定につきまして、小沢環境大臣は、参議院環境委員会で、事業の特性に応じた柔軟な制度とするという旨の答弁をされておりますけれども、柔軟な制度とは具体的にどのようなことなのか、この際、明確に御説明をしていただきたいと思います。

 諸外国におけるSEAの導入状況についても御質問させていただきます。

 本改正案によって導入されるSEAについては、さきの参議院での議論の中で繰り返し確認されております。参議院では、民間事業の取り組みに対していわゆるSEAが導入されたことは先進国でも例がないといった答弁がなされております。

 そこで、諸外国においてSEAを民間事業者に対して導入している例があるのかないのか、改めてその有無についてお答えをいただきたいと思います。

 民間事業者に対するSEA導入の背景と必要性についてもお伺いいたします。

 今回の改正案では、環境面からの要請というだけで、事業の実施位置や事業の規模等の構想段階におきまして、民間事業者に対して事業の情報の公開を義務づけるというものになってございます。

 そこで、本改正案で民間事業者に対してもSEAを導入することとした背景とその必要性について、小沢環境大臣に御説明を求めたいと思います。また、民間事業者に対してもSEAを導入することとした点について、直嶋経済産業大臣の御所見もあわせてお伺いしたいと思います。

 SEA導入による効果を定量的に評価、そして提示する必要性があるのではないか。民間事業者のその負担増に見合う効果がどれくらいあるのか、それをある程度定量的に評価できる仕組みがどうしても必要であると考えますけれども、小沢環境大臣の見解をお伺いいたします。

 そして、SEAと民間事業者、特に電力事業者との関係についてお伺いいたします。

 小沢環境大臣が三月末に示しました中長期ロードマップ試案では、具体的に二〇二〇年までに八基の原子力発電所を新増設するというふうにされております。

 そこで、確認いたしますけれども、本改正案のSEAの導入は、民間事業者に過度の負担を強いたり、企業の活力を奪うような制度ではないと環境大臣は果たして断言できるのかどうか。過度の負担とならないような制度設計を行うというのであれば、法改正後ではなく、本案審査中に具体的な制度の方針を示していただきたい。

 また、民間事業者である発電所に対してSEAを導入する理由は何か。現行法における制度の不備を補うためにSEAを導入するというのであれば、現行法上での問題を個別具体的な事例を示しながらお答えをいただきたいと思います。

 SEA手続を迅速に進める必要性についてもお伺いをいたします。

 今回導入されることになりましたSEA、政府答弁によれば、おおむね半年程度の期間が余計にかかるというふうに想定されるとしておりますけれども、事業者にとっては、現在でも二年半から三年をアセス手続に費やしている、さらに半年間も手続に費やすということになります。

 このようなコストを負担するのは個々の事業者でございます。日本企業の中には環境配慮に熱心な事業者が数多く存在しますけれども、昨今の経営環境の変化のスピードにはすさまじいものがございます。企業間競争においては、他に先んじて一刻でも早い事業展開が求められますけれども、SEA導入による時間的ロスについて、直嶋経済産業大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

 風力発電についてもお伺いをいたします。

 小沢環境大臣が三月三十一日に示されました中長期ロードマップ試案におきましては、風力発電は二〇〇五年の導入量に比べて二〇二〇年にその十倍の量を目標にしておりますけれども、SEA導入後の平均的な手続期間だけで三年を要すると言われている中で、この目標を本当に達成できるのか、小沢環境大臣の見解と道筋をお示しいただきたいと思います。

 設備更新に対する環境アセスのあり方についてもお伺いをいたします。

 現行のアセス手続においては、同じ場所における設備更新、いわゆるリプレースに対して通常のアセス手続と同様の手続が求められております。むしろ、このような事業にこそアセス法の手続を簡略化させるなど、低炭素社会の構築に向け、民間事業者の投資を促進していけるような制度を構築すべきと考えます。

 このリプレース事業におけるアセス手続の簡略化の必要性について、小沢環境大臣及び直嶋経済産業大臣の御所見をお伺いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣小沢鋭仁君登壇〕

国務大臣(小沢鋭仁君) 福井議員から十一問、質問をいただきました。お答えを申し上げたいと思います。

 まず、普天間飛行場の移設先問題に係る環境大臣の認識についての御質問がございました。

 普天間飛行場代替施設の影響評価については、環境大臣として大変関心を持っているところでございますが、お尋ねの移転先問題については、現在、政府全体で取り組んでおるところでございますので、そういう状況でございますので、コメントは控えさせていただきたいと思います。

 改正法第五十二条三項の戦略的環境アセスメント適用除外規定の運用に関する御質問がございました。

 普天間代替施設建設事業につきましては、どのような事業が行われるか決まっていない段階において、五十二条第三項の適用について申し上げることはできません。

 なお、第五十二条三項については、災害発生後の対応等、社会的要請から事業に速やかに着手することが求められる場合があることから、配慮書手続の適用除外の規定を設けたものでございまして、具体的に何が対象になるかについて、現段階では特に決めているものではございません。

 環境と経済の両立、成長戦略に関する御質問がございました。

 環境は経済成長をもたらす重要な柱であります。思い切った環境政策を行うことにより、経済成長を牽引し、雇用を創出しつつ、同時に、豊かな国民の暮らしと社会を実現していくべく、環境影響評価法の改正を含め、全力で取り組んでまいります。

 事業の特性に応じた柔軟な制度についての御質問がございました。

 SEAについては、中央環境審議会答申を踏まえ、事業の種類、特性等に応じた柔軟な制度とする旨、お答えをさせていただきました。

 柔軟な制度と申し上げましたのは、具体的には、個々の事業の事業主体や事業内容の特性等に応じ、位置、規模または施設の配置、構造等のさまざまな要素について検討ができるような制度とすることを想定しております。

 諸外国における民間事業者によるSEAの導入例についての御質問がございました。

 今回、日本において導入するSEAは、EU等海外のSEAと同一ではなく、個別事業の位置、規模または施設の配置、構造等の検討段階を対象とするものであり、海外では、事業実施段階の環境影響評価として実施されている場合もございます。

 日本版SEAが民間事業者によって行われた事例について、網羅的な統計はございませんが、風力発電施設の新設に伴って発電機の配置等を検討したオランダの事例や、原子力発電施設の新設に伴って発電機の配置等を検討したカナダの事例が存在をいたします。

 民間事業者に対するSEA導入の背景及び必要性についての御質問がございました。

 現行法では、事業の位置、規模、配置等の枠組みが決定されている段階で手続が開始されるため、環境影響の回避、低減等が不十分となる傾向がございます。

 SEAは、事業者が従来より早い段階において環境影響評価を行うことで、より一層環境保全に配慮した事業の実施を確保することを目的として導入するものでございます。民間事業者にとっても、早期段階で複数案を提示し、環境に配慮することにより、周辺住民の理解が促進され、結果として、事業の円滑な実施に資するものであると考えます。

 SEA導入による効果を定量的に評価、提示する必要性についての御質問がございました。

 一般に、制度を新たに導入する場合に、効果の把握が重要であることは同感でございます。しかしながら、生態系のような環境の価値を定量化することには技術的な問題もなかなかあって、SEA導入による効果の定量的な評価については慎重な検討が必要であると考えております。

 SEAの導入による民間事業者への負担に関する御質問がございました。

 新設されるSEA手続にかかる期間、コストについては、現行においても、方法書を準備する以前から既存情報等を用いた調査が行われているため、大幅な事業者の負担の増加は見込まれないものと考えております。

 発電所に対してSEAを導入する理由及び現行法における問題についての御質問がありました。

 現行法では、事業の位置、規模、配置等の枠組みが決定されている段階で手続が開始されるため、環境影響の回避、低減等が不十分となる傾向があります。例えば、早期段階で案の選定に関して住民等第三者の参画がなく、環境影響の低減が図れなかったと指摘される事例も存在します。

 日本版SEAの導入によってより早い段階での環境面の検討を行うことにより、事業者がより柔軟な措置をとることが可能となり、環境影響の回避、事業の早期着手が図れるなど、これまでの問題点の解決につながるものと考えております。

 中長期ロードマップにおける風力発電の目標に関する御質問がございました。

 アセス手続が風力発電の足かせとなるのではないかとの意見があることは承知をしておりますが、できるだけ早い段階で周囲の意見を聞いて、それをしんしゃくして事業を進める方が結局は早く実施できると考えておりまして、SEAを含むアセス手続は、むしろこれらの事業の円滑な実施に資するものであり、温暖化対策を推進する上でも重要であると考えております。

 リプレース事業におけるアセス手続の簡略化に関する御質問がございました。

 発電所のリプレース事業については、土地改変等による環境影響が限定的で、温室効果ガスや大気汚染物質による環境負荷の低減が図られることから、方法書における評価項目の絞り込みを通じたアセス手続に要する期間の短縮等、弾力的な運用で対応してまいりたいと考えております。

 以上でございます。(拍手)

    〔国務大臣直嶋正行君登壇〕

国務大臣(直嶋正行君) 福井議員の御質問にお答えをさせていただきます。

 まず、環境と経済の両立についての御質問でございます。

 環境と経済は、いずれもかけがえのない価値であり、二者択一ではなく、両者の調和を図っていくことが豊かな国民生活を実現していく上で不可欠であるというふうに思っております。

 鳩山内閣の新成長戦略においても、我が国のすぐれた技術力を生かして新たな市場と産業の創出を図ることとしておりまして、政府を挙げてグリーンイノベーションを促進することといたしております。環境と経済の両立の実現に向け、全力を尽くしてまいる所存でございます。

 次に、民間事業者へのSEA導入についての御質問でございます。

 改正法により新設される計画段階配慮手続は、事業の位置、規模または施設の配置、構造等の複数案を検討するものであります。

 経済産業省の所管する民間事業である発電所においては、立地地点や規模などの複数案を検討することは困難でありますが、施設の配置や構造など複数案を検討することが可能なものもございます。民間事業者に過度の負担を強いることのないよう、事業の種類、特性に応じた柔軟な方法でしっかりと環境配慮がなされるようなものとしてまいりたいと思っております。

 次に、SEAの導入による時間的ロスについての御質問でございます。

 配慮書手続の新設による事業者の負担は著しく大きいということはないというふうに思っておりますが、事業者の負担に十分配慮をし、事業の特性に応じた柔軟なものとなるよう、制度の詳細を検討してまいりたいと思っております。

 発電所のリプレース事業に対する手続簡略化についての御質問がございました。

 発電所のリプレース事業については、評価項目の絞り込みによる期間の短縮等、弾力的な運用で対応することが必要であると考えております。(拍手)

議長(横路孝弘君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(横路孝弘君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十五分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       経済産業大臣  直嶋 正行君

       国土交通大臣  前原 誠司君

       環境大臣  小沢 鋭仁君

 出席副大臣

       環境副大臣  田島 一成君


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